(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態の全体構成図であり、車両用空調装置の冷凍サイクルRには冷媒を吸入、圧縮、吐出する圧縮機1が備えられている。圧縮機1は動力断続用の電磁クラッチ2を有し、圧縮機1には電磁クラッチ2およびベルト3を介して車両エンジン4の動力が伝達される。
電磁クラッチ2への通電は空調用電子制御装置5により断続され、電磁クラッチ2が通電されて接続状態になると、圧縮機1は運転状態となる。これに反し、電磁クラッチ2の通電が遮断されて開離状態になると、圧縮機1は停止する。
圧縮機1から吐出された高温、高圧の過熱ガス冷媒は凝縮器6に流入し、ここで、図示しない冷却ファンより送風される外気と熱交換して冷媒は冷却されて凝縮する。この凝縮器6で凝縮した冷媒は次に受液器7に流入し、受液器7の内部で冷媒の気液が分離され、冷凍サイクルR内の余剰冷媒(液冷媒)が受液器7内に蓄えられる。
この受液器7からの液冷媒は膨張弁(減圧手段)8により低圧に減圧され、低圧の気液2相状態となる。この膨張弁8からの低圧冷媒は蒸発器(冷房用熱交換器)9に流入する。この蒸発器9は車両用空調装置の空調ケース10内に設置され、蒸発器9に流入した低圧冷媒は空調ケース10内の空気から吸熱して蒸発する。
膨張弁8は蒸発器9の出口冷媒の温度を感知する感温部8aを有する温度式膨張弁であり、蒸発器9の出口冷媒の過熱度を所定値に維持するように弁開度(冷媒流量)を調整するものである。蒸発器9の出口は圧縮機1の吸入側に結合され、上記したサイクル構成部品によって閉回路を構成している。
空調ケース10において、蒸発器9の上流側には送風機11が配置され、送風機11には遠心式送風ファン12と駆動用モータ13が備えられている。送風ファン12の吸入口14には図示しない内外気切替箱を通して車室内の空気(内気)または車室外の空気(外気)が切替導入される。
次に、空調装置通風系のうち、送風機11下流側に配置される空調ユニット15部は、通常、車室内前部の計器盤内側において、車両幅方向の中央位置に配置される。これに対して、送風機11部は空調ユニット15部に対して助手席側にオフセット配置される。
空調ケース10内において蒸発器9は上下方向に延びるように配置されており、この蒸発器9の下側部位に蒸発器9をバイパスして空気を流す第1バイパス通路16が形成されている。この第1バイパス通路16の開度を調整するバイパスドア(パラレルバイパスドア)17が、図1の例では、蒸発器9の空気下流側で、かつ、下側の部位に配置されている。このバイパスドア17は回動可能な板状ドアであり、このバイパスドア17はサーボモータからなる電気駆動装置18により駆動される。
空調ケース10内で、蒸発器9の下流側にはエアミックスドア(シリーズバイパスドア)19が配置されている。このエアミックスドア19の下流側には車両エンジン4の温水(冷却水)を熱源として空気を加熱する温水式ヒータコア(暖房用熱交換器)20が設置されている。そして、この温水式ヒータコア20の側方(上方部)には第2バイパス通路21が形成されている。この第2バイパス通路21は温水式ヒータコア20をバイパスして空気を流すためのものである。
エアミックスドア19は回動可能な板状ドアであり、サーボモータからなる電気駆動装置22により駆動される。エアミックスドア19は、温水式ヒータコア20を通過する温風とバイパス通路21を通過する冷風との風量割合を調節するものであって、この冷温風の風量割合の調節により車室内への吹出空気温度を調節する。すなわち、本例においては、エアミックスドア19により温度調節手段が構成されており、バイパスドア17はエアミックスドア19に対して補助温度調節手段の役割を果たす。
温水式ヒータコア20の下流側には下側から上方へ湾曲して延びる温風通路23が形成され、この温風通路23からの温風と第2バイパス通路21からの冷風が空気混合部24付近で混合して、所望温度の空気を作り出すことができる。
さらに、空調ケース10内で、空気混合部24の下流側に吹出モード切替部が構成されている。すなわち、空調ケース10の上面部にはデフロスタ開口部25が形成され、このデフロスタ開口部25は図示しないデフロスタダクトを介して車両フロントガラス内面に空気を吹き出すものである。デフロスタ開口部25は、回動自在な板状のデフロスタドア26により開閉される。
また、空調ケース10の上面部で、デフロスタ開口部25より車両後方側の部位にフェイス開口部27が形成され、このフェイス開口部27は図示しないフェイスダクトを介して車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すものである。フェイス開口部27は回動自在な板状のフェイスドア28により開閉される。
また、空調ケース10において、フェイス開口部27の下側部位にフット開口部29が形成され、このフット開口部29は図示しないフットダクトを介して車室内乗員の足元に向けて空気を吹き出すものである。フット開口部29は回動自在な板状のフットドア30により開閉される。
上記した吹出モードドア26、28、30は共通のリンク機構(図示せず)に連結され、このリンク機構を介してサーボモータからなる電気駆動装置31により駆動される。
次に、本実施形態における電気制御部の概要を説明すると、空調ケース10内で、蒸発器9の空気吹出直後の部位に、サーミスタからなる蒸発器吹出温度センサ(蒸発器冷却度合検出手段)32が設けられ、蒸発器吹出温度Te を検出する。また、空調ケース10内で、第1バイパス通路16には蒸発器バイパス空気温度TB を検出するサーミスタからなるバイパス空気温度センサ33が設けられている。
ところで、前記した空調用電子制御装置5には、上記したセンサ32、33の他に、空調制御のために、内気温Tr 、外気温Tam、日射量TS 、温水温度TW 等を検出する周知のセンサ群35から検出信号が入力される。また、車室内計器盤近傍に設置される空調制御パネル36には乗員により手動操作される操作スイッチ群37が備えられ、この操作スイッチ群37の操作信号も空調用電子制御装置5に入力される。
この操作スイッチ群37としては、温度設定信号Tset を発生する温度設定スイッチ37a、蓄冷モード信号を発生する蓄冷スイッチ37b、風量切替信号を発生する風量スイッチ37c、吹出モード信号を発生する吹出モードスイッチ37d、内外気切替信号を発生する内外気切替スイッチ37e、圧縮機1のオンオフ信号を発生するエアコンスイッチ37f等が設けられている。
さらに、空調用電子制御装置5は車両エンジン用電子制御装置38に接続されており、車両エンジン用電子制御装置38から空調用電子制御装置5には車両エンジン4の回転数信号、車速信号等が入力される。
車両エンジン用電子制御装置38は周知のごとく車両エンジン4の運転状況等を検出するセンサ群(図示せず)からの信号に基づいて車両エンジン4への燃料噴射量、点火時期等を総合的に制御するものである。さらに、本発明の対象とするエコラン車、ハイブリッド車においては、車両エンジン4の回転数信号、車速信号、ブレーキ信号等に基づいて停車状態を判定すると、車両エンジン用電子制御装置38は燃料噴射の停止等により車両エンジン4を自動的に停止させる。
また、運転者の運転操作により車両が停車状態から発進状態に移行すると、車両エンジン用電子制御装置38は車両の発進状態をアクセル信号等に基づいて判定して、車両エンジン4を自動的に始動させる。なお、空調用電子制御装置5は、車両エンジン4の稼働中に、蒸発器9の凝縮水蓄冷量、あるいは車両エンジン停止後における蒸発器吹出温度の挙動等を推定し、この推定結果に基づいて車両エンジン4の停止許可、停止禁止の信号を出力したり、また、車両エンジン4停止後の蒸発器吹出温度Te の上昇等に基づいて車両エンジン4の再稼働要求の信号を出力する。
空調用電子制御装置5および車両エンジン用電子制御装置38はCPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータと、その周辺回路にて構成されるものである。空調用電子制御装置5は、上記のごとき車両エンジン制御信号を出力する車両エンジン制御信号出力部、電磁クラッチ2による圧縮機断続制御部、内外気切替ドアによる内外気吸込制御部、送風機11の風量制御部、バイパスドア17およびエアミックスドア19による温度制御部、吹出口25、27、29の切替による吹出モード制御部等を有している。
次に、上記構成において本実施形態の作動を説明する。図2のフローチャートは空調用電子制御装置5のマイクロコンピュータにより実行される制御処理の概要を示し、図2の制御ルーチンは、車両エンジン4のイグニッションスイッチがオンされて制御装置5に電源が供給された状態において、空調制御パネル36の操作スイッチ群37の風量スイッチ37c(あるいはオートスイッチ)が投入されるとスタートする。
先ず、ステップS100ではフラグ、タイマー等の初期化がなされ、次のステップS110で、センサ32、33、センサ群35からの検出信号、操作スイッチ群37の操作信号、車両エンジン用電子制御装置38からの車両運転信号等を読み込む。
続いて、ステップS120にて、下記数式1に基づいて、車室内へ吹き出される空調風の目標吹出温度(TAO)を算出する。この目標吹出温度(TAO)は車室内を温度設定スイッチ37aの設定温度Tset に維持するために必要な吹出温度である。
TAO=Kset ×Tset −Kr ×Tr −Kam×Tam−Ks ×Ts +C(数式1)
但し、Tr :センサ群35の内気センサにより検出される内気温
Tam :センサ群35の外気センサにより検出される外気温
Ts :センサ群35の日射センサにより検出される日射量
Kset 、Kr 、Kam、Ks :制御ゲイン
C :補正用の定数
次に、ステップS125にて空調モードが蓄冷、放冷、通常のいずれのモードであるか選定する。本例では、エンジン4(圧縮機1)の稼働時に蓄冷スイッチ37が投入されているときは蓄冷モードを選定し、エンジン4(圧縮機1)の稼働時に蓄冷スイッチ37が投入されていないときは通常モードを選定する。そして、空調作動時(送風機11の作動時)においてエンジン4が停止し、圧縮機1が停止したときは放冷モードを選定する。
次に、ステップS130にて目標蒸発器吹出温度TEOを算出する。この目標蒸発器吹出温度TEOは、次に述べる第1目標蒸発器吹出温度TEO1 第2目標蒸発器吹出温度TEO2 および第3目標蒸発器吹出温度TEO3 に基づいて算出する。
まず、第1目標蒸発器吹出温度TEO1 の決定方法を具体的に説明すると、図3はマイクロコンピータのROMに予め設定され、記憶されているマップであり、このマップに基づいて、TAOが高くなる程、第1目標蒸発器吹出温度TEO1 が高くなるように決定する。従って、TEO1 =f(TAO)として表すことができる。なお、TEO1 は本例では12°Cが上限となっている。
次に、第2目標蒸発器吹出温度TEO2 も、マイクロコンピータのROMに予め設定され、記憶されている図4のマップに基づいて決定する。第2目標蒸発器吹出温度TEO2 は、外気温度Tamに対応して決定されるものであって、外気温度Tamの中間温度域(図4の例では、18°C〜25°C)では冷房、除湿の必要性が低下するので、第2目標蒸発器吹出温度TEO 2を高く(図4の例では12°C)して、圧縮機1の稼働率を低減することにより、車両エンジン4の省動力を図る。
一方、外気温度Tamが25°Cを越える夏期の高温時には冷房能力確保のため、第2目標蒸発器吹出温度TEO2 は外気温度Tamの上昇に反比例して低下する。一方、外気温度Tamが18°Cより低くなる低温域では、窓ガラス曇り防止のための除湿能力確保のために、第2目標蒸発器吹出温度TEO2 は外気温度Tamの低下とともに低下する。外気温度Tamが10°Cより低くなると、TEO2 は0°Cとなる。従って、TEO2 はf(Tam)として表すことができる。
次に、第3目標蒸発器吹出温度TEO3 は、蓄冷スイッチ37bの投入時に予め設定された氷点下の所定値Tf (例えば、−2°C)に決められる。
そして、車両エンジン稼働中における通常モード時(蓄冷モードでないとき)では、上記第1、第2目標蒸発器吹出温度TEO1 、TEO2 に基づいて、最終的に、目標蒸発器吹出温度TEOを下記の数式2に基づいて決定する。
TEO=MIN{f(TAO),f(Tam)}(数式2)
すなわち、上記第1目標蒸発器吹出温度TEO1 =f(TAO)、第2目標蒸発器吹出温度TEO2 =f(Tam)のうち、低い温度の方を最終的に、目標蒸発器吹出温度TEOとして決定する。 一方、蓄冷スイッチ37bの投入された蓄冷モード時には、目標蒸発器吹出温度TEOは強制的に、氷点下の所定値Tf に引下げられる。
次に、ステップS14 0にて送風ファン11により送風される空気の目標送風量BLWを上記TAOに基づいて算出する。この目標送風量BLWの算出方法は周知であり、上記TAOの高温側(最大暖房側)および低温側(最大冷房側)で目標風量を大きくし、上記TAOの中間温度域で目標風量を小さくする。そして、送風機11のファン駆動モータ13の回転数は、この目標風量BLWが得られるように制御装置5の出力により制御される。
次に、ステップS150にて上記TAOに応じて内外気モードを決定する。この内外気モードは周知のごとくTAOが低温側から高温側へ上昇するにつれて、全内気モード→内外気混入モード→全外気モードと切替設定され、この内外気モードが得られるように内外気ドア(図示せず)の操作位置が制御装置5の出力により制御される。
次に、ステップS160にて上記TAOに応じて吹出モードを決定する。この吹出モードは周知のごとくTAOが低温側から高温側へ上昇するにつれてフェイスモード→バイレベルモード→フットモードと切替設定され、この吹出モードが得られるように吹出モードドア26、28、30の操作位置が制御装置5の出力により電気駆動装置31を介して制御される。 次に、ステップS170にて、エアミックスドア19の目標開度SWM 、バイパスドア17の目標開度SWB を算出して、エアミックスドア19およびバイパスドア17の開度を決定する。このステップS170の詳細は図5により後述する。 次に、ステップS180にて、目標蒸発器吹出温度TEOと実際の蒸発器吹出温度Te とを比較し、圧縮機作動を断続制御する。すなわち、蒸発器吹出温度Te が目標蒸発器吹出温度TEOより低下すると、制御装置5により電磁クラッチ2の通電を遮断して圧縮機1を停止させ、逆に、蒸発器吹出温度Te が目標蒸発器吹出温度TEOより上昇すると、制御装置5により電磁クラッチ2に通電して圧縮機1を作動させる。これにより、蒸発器吹出温度Te が目標蒸発器吹出温度TEOに維持される。通常制御時では、この蒸発器吹出温度Te を上記TAOと外気温Tamに応じて制御することにより、蒸発器9でのフロスト(着霜)防止と、冷房除湿能力の確保と、圧縮機稼働率の低下による車両エンジン省動力とを達成する。
また、蓄冷モード時は目標蒸発器吹出温度TEOを氷点下の所定値Tf に引き下げることにより、蒸発器9の凝縮水を凍結させて、蒸発器9の凝縮水蓄冷量を増大させる。
次に、ステップS190に進み、空調側条件に基いて車両エンジン制御信号(前述の車両エンジン4の停止許可、停止禁止、および車両エンジン4停止後の再稼働要求の信号)を出力する。
図5は図2のステップS170の詳細であり、まず、ステップS1701にて蓄冷モード、放冷モード、省動力モードかを判定する。ここで、蓄冷モードは前述のごとく蓄冷スイッチ37bが投入されて、目標蒸発器吹出温度TEOを氷点下の所定値Tf に引き下げられている状態である。また、放冷モードは蓄冷スイッチ37bが投入されている状態において、車両が信号待ち等で停車して、車両エンジン用制御装置38から車両エンジン停止の要求信号が出されて、車両エンジン4(圧縮機1)が停止する状態である。つまり、圧縮機1の停止により蒸発器9では凝縮水の蓄冷量の放冷作用により空気を冷却する。この状態を放冷モードという。
さらに、省動力モードとは、図4の特性図に示される外気温Tam=18°C〜25°Cの中間温度域において設定される12°Cという高温側目標温度が目標蒸発器吹出温度TEOとして設定されている状態をいう。
そして、蓄冷モード、放冷モード、および省動力モードのいずれにも該当しないとき(通常制御時)は、ステップS1702に進み、バイパスドア17の目標開度SWB =0とし、バイパスドア17を第1バイパス通路16の全閉位置に操作する。そして、ステップS1703に進み、エアミックスドア19の目標開度SWM を次の数式3により算出する。
SWM =J(Te ,Tw ,TAO)(数式3)
すなわち、SWM は蒸発器吹出空気温度Te 、ヒータコア20の温水温度Tw および目標吹出空気温度TAOの関数として算出され、目標吹出空気温度TAOを得るための目標開度SWM を算出する。ここで、目標開度SWM は、ヒータコア20の通風路を全閉する最大冷房位置を0%とし、第2バイパス通路21を全閉する最大暖房位置を100%とする百分率で算出される。
そして、上記ステップS1702、S1703による吹出温度制御は通常制御であって、送風空気の全量が蒸発器9を通過して冷却された後に、エアミックスドア19の開度により、ヒータコア20を通過する温風と第2バイパス通路21を通過する冷風との風量割合が調整されて、車室内への吹出空気温度が目標吹出空気温度TAOとなるように制御される。なお、本発明による第3制御モードは、本例では上記ステップS1702、S1703により構成される。
次に、ステップS1701にて蓄冷モードであると判定されたときは、ステップS1704に進み、第1バイパス通路16を通過するバイパス空気(非冷却空気)の温度TB と、蒸発器9の吹出空気温度Te とに基づいて蒸発器9の通過空気と第1バイパス通路16の通過空気との混合空気の最高温度TMmaxを算出する。すなわち、TMmaxは次の数式4により算出される。
TMmax=F(Te ,TB )(数式4)
次に、ステップS1705にて、混合空気の最高温度TMmaxと目標吹出空気温度TAOとを比較して、TMmaxの方が高いときは、ヒータコア20による再加熱が不要であるので、ステップS1706に進み、エアミックスドア19の目標開度SWM =0(%)として、エアミックスドア19を最大冷房位置(図1の実線位置)に固定したままとする。
そして、ステップS1707にて、バイパスドア17の目標開度SWB を次の数式5により算出する。
SWB =H(Te ,TB ,TAO)(数式5)
すなわち、SWB は蒸発器吹出空気温度Te 、第1バイパス通路16を通過するバイパス空気温度TB 、および目標吹出空気温度TAOの関数として算出され、目標吹出空気温度TAOを得るための目標開度SWB の位置にバイパスドア17を操作する。ここで、目標開度SWB は、第1バイパス通路16の全閉位置を0%とし、第1バイパス通路16の全開位置を100%とする百分率で算出される。
このように、ステップS1706、S1707による制御が行われる場合は、エアミックスドア19は最大冷房位置に固定され、一方、バイパスドア17を目標開度SWB となるように操作することにより、車室内への吹出空気温度を制御することができる。この結果、蓄冷モードによる蒸発器凝縮水の蓄冷量増加効果と、圧縮機駆動動力の軽減効果(省動力効果)とを両立できる。
すなわち、図6(a)、(b)は、本実施形態による省動力効果を説明する図であって、図6(a)は、従来の通常のシリーズエアミックス方式に、蓄冷モードを組み合わせた場合における、車室内への吹出温度制御の模式図で、25°Cの吸込空気の全量を蓄冷のために蒸発器9にて−2°Cに冷却した後に、ヒータコア20による再加熱により10°Cの吹出空気を作り出している。従って、図6(a)の破線で示すように蒸発器吹出温度を省動力制御により最初から10°Cに制御する場合に比して、蒸発器9の冷却能力を大きくする必要があり、その分だけ、圧縮機1の断続制御よる圧縮機稼働率が高くなって、圧縮機駆動動力の増加を招く。
一方、図6(b)は、本実施形態によるパラレルエアミックス方式における、車室内への吹出温度制御の模式図で、25°Cの吸込空気に対して、第1バイパス通路16を通過する25°Cの非冷却空気と蒸発器9通過後の−2°Cの冷風との混合により10°Cの吹出空気を作り出している。
従って、第1バイパス通路16を通過するバイパス風量の分だけ、蒸発器9の通過風量が減少するので、図6(a)の方式に比して蒸発器9の吹出温度Te を目標吹出温度TEO(Tf =−2°C)に冷却するために必要な蒸発器9の冷却能力を風量の減少分だけ小さくすることができる。その結果、圧縮機1の断続制御よる圧縮機稼働率を低下させて省動力を図ることができる。よって、図6(a)の方式に比して蓄冷効果の向上と省動力効果とを両立できるのである。
なお、本発明による第1制御モードは、本例では上記ステップS1706、S1707により構成される。
次に、ステップS1705にて混合空気の最高温度TMmaxよりも目標吹出空気温度TAOの方が高いときは、ヒータコア20による再加熱が必要であるので、ステップS1708に進み、バイパスドア17の目標開度SWB =100(%)として、バイパスドア17を第1バイパス通路16の全開位置に固定する。そして、ステップS1709にて、エアミックスドア19の目標開度SWM を次の数式6により算出する。
SWM =G(TMmax,Tw ,TAO)(数式6)
すなわち、この場合は最高温度TMmaxの混合空気がエアミックスドア19によりヒータコア20と第2バイパス通路21とに振り分けられるので、SWM は混合空気の最高温度TMmaxと、ヒータコア20の温水温度Tw と、目標吹出温度TAOとの関数として算出され、目標吹出空気温度TAOを得るための目標開度SWM の位置にエアミックスドア19を操作する。
上記の制御においても、バイパスドア17が第1バイパス通路16を全開して、蒸発器通過風量を減少させることにより、省動力効果を発揮していることは同じである。
なお、本発明による第2制御モードは、本例では上記ステップS1708、S1709により構成される。
一方、ステップS1701で放冷モードが判定されたとき、すなわち、停車時の車両エンジン(圧縮機)停止後に蒸発器凝縮水の蓄冷量の放冷により空気を冷却するときにおいても、上記ステップS1704〜S1709による吹出温度制御を行う。そして、放冷モードにおいても、第1バイパス通路16を通過する蒸発器バイパス空気の存在により蒸発器通過空気の風量が減少するので、蒸発器凝縮水の蓄冷量の放冷時間を図6(a)の方式に比して延ばすことができる。
従って、信号待ち等の車両エンジン停止時における冷房フィーリングを蒸発器凝縮水の蓄冷量にてより長い時間良好に維持できる。
また、ステップS1701で省動力モードが判定されたときも、上記ステップS1704〜S1709による吹出温度制御を行う。この省動力モードにおいても、蒸発器通過空気の風量減少により、省動力を効果的に発揮できる。
(第1実施形態の変形例)
なお、第1実施形態は以下のごとく種々変形可能である。
(A)上記の第1実施形態では、空調制御パネル36の操作スイッチ群37の1つとして、蓄冷モード信号を発生する蓄冷スイッチ37bを設け、この蓄冷スイッチ37bの投入により蓄冷モードを設定するようにしているが、このような方式に限らず、空調運転状況に基づいて蓄冷モードを自動的に設定することもできる。例えば、目標吹出温度TAOの変化に基づいて蓄冷モードを自動的に設定することが考えられる。目標吹出温度TAOは冷房開始直後のクールダウン時とか冷房高負荷時には−20°C以下のような非常に低い温度が算出されるので、この目標吹出温度TAOが極く低温域にあるときは、冷房能力を最大限発揮するために、蓄冷モードを設定せず、通常制御時とする。
一方、目標吹出温度TAOが所定レベル(例えば、−20°C以上)まで上昇すると、通常の冷房負荷状態に移行したとして、蓄冷モードを自動的に設定してもよい。
また、エンジン4(圧縮機1)の稼働時は原則として常時蓄冷モードを設定し、そして、エンジン4(圧縮機1)の稼働時において、蓄冷モードの禁止条件を判定したときだけ、通常制御時(通常制御モード)を設定するようにしてもよい。
(B)中間季節等において、高い除湿能力が要求される条件(例えば、内気モードで、乗員数が多い時等)の下では、蒸発器9の除湿(冷却)能力を高めるために、目標吹出温度TEOを比較的低い温度にし、一方、目標吹出温度TAOは車室内の温度制御のために高くする場合がある。
このように、特に高い除湿能力が要求される条件下では、蓄冷モードおよび放冷モードであっても、通常制御時(ステップS1702、S1703)と同様に、バイバスドア17は全閉位置に固定して、エアミックスドア19によるヒータコア20の加熱量調整により吹出空気温度の制御を行うようにしてもよい。
(C)上記の第1実施形態では、蓄冷モードの際に、目標吹出温度TEOを例えば、−2°Cのような氷点下の低温域に引き下げて蓄冷効果の向上を図るようにしているが、蓄冷モードの際に、目標吹出温度TEOを通常制御時の最低温度(例えば3°C)より低く、かつ、0°Cより高い温度(例えば1°C)まで、引き下げて蓄冷効果の向上を図るようにしてもよい。
(D)上記の第1実施形態では、蒸発器9の下側に第1バイパス通路16およびバイパスドア17を配置しているが、蒸発器9の左右の片側あるいは両側に第1バイパス通路16およびバイパスドア17を配置することも可能であり、また、蒸発器9の上側に第1バイパス通路16およびバイパスドア17を配置することも可能である。
また、バイパスドア17を蒸発器9に対して空気下流側でなく、空気上流側に配置することも可能である。
(第2実施形態)
第2実施形態は蒸発器冷却度合を検出する検出手段に関するもので、本発明者の実験検討によると、蓄冷モード時に蒸発器9の凝縮水を凍結させ凝縮水に蓄冷をする場合に、蒸発器9表面での氷の発生状況が種々な要因で不均一になりやすい。そのため、蒸発器9の吹出側空気温度は、氷のある部位では空気流れが阻止されるので、氷のない部位に比して低温になってしまうことが分かった。
従って、蒸発器冷却度合を、通常用いられている蒸発器吹出空気の温度センサ32により検出すると、蒸発器9の吹出側における検出部位の差異により検出温度に大きな差が発生し、蒸発器9でのフロスト(凍結)が必要以上に進行してしまう原因になる。
図7は圧縮機1の断続作動による蒸発器温度の挙動を示す実験データであり、横軸は圧縮機1の作動のON,OFFであり、図7(a)に示すように蒸発器吹出空気温度であると、5箇所の検出部位の差異により最大、5.1°Cの検出温度差が発生してしまう。
また、図7(b)に示すように蒸発器フィン温度であっても、6箇所の検出部位の差異により最大、4.8°Cの検出温度差が発生してしまう。
これに対し、図7(c)に示すように蒸発器冷媒温度であると、4箇所の検出部位の差異が最大でも、2.1°C以内に抑えることができることを確認できた。
図8は蒸発器9のサイド冷媒通路を構成するサイドプレート90に温度センサ32を密接配置している。サイドプレート90はアルミニュウムのような熱伝導の良好な金属材であるから、蒸発器冷媒温度をサイドプレート90の壁面を介して温度センサ32により良好に検出できる。
図9は蒸発器9の冷媒入口配管91に温度センサ32を密接配置して蒸発器冷媒温度を検出する例を示す。ここで、温度センサ32を蒸発器9の冷媒出口配管92側に配置してもよいし、また、蒸発器9のタンク部93、94に配置してもよい。要は、蒸発器冷媒温度を直接検出し得る部位に配置された温度センサであればよい。
(第3実施形態)
第3実施形態は第1実施形態の制御をより具体化して、蒸発器通過空気とバイパス通路通過空気との混合空気温度TMを正確に算出し、同時に、吹出空気温度制御の精度向上を図ることを目的とするものであって、第3実施形態の全体構成および制御の全体の流れは第1実施形態の図1、2と同じであるので、説明を省略する。
図10は第3実施形態の特徴を示すフローチャートであり、第1実施形態の図5に対応する。以下、図10に基づいて、ステップS170のエアミックスドア19の目標開度SWM 、バイパスドア17の目標開度SWB の算出について詳細に説明する。
まず、エアミックスドア19の目標開度SWM 、バイパスドア17の目標開度SWB の算出式について説明する。
エアミックスドア19の目標開度SWM は、次の数式7にて算出される。
SWM =(TAO−TM)/(TW −TM)(数式7)
但し、TAO:目標吹出空気温度
TM :蒸発器通過空気とバイパス通路通過空気との混合空気温度
TW :ヒータコア温水温度
このエアミックスドア目標開度SWM は、ヒータコア20の通風路を全閉する最大冷房位置を0%とし、第2バイパス通路21を全閉する最大暖房位置を100%とする百分率で算出される。この数式7によるエアミックスドア19の目標開度SWM 算出のためには、混合空気温度TMを算出しておく必要がある。
次に、上記数式7のエアミックスドア19の目標開度SWM 算出の考え方を用いて、バイパスドア17の目標開度SWB を次の数式8によって算出する。
SWB =K(TM−Te )/(TB −Te )(数式8)
但し、TM :蒸発器通過空気とバイパス通路通過空気との混合空気温度
Te :蒸発器吹出温度
TB :バイパス空気温度
K :空調ケースの形状によって決まる定数
ここで、バイパスドア17の目標開度SWB は、第1バイパス通路16の全閉位置を0%とし、第1バイパス通路16の全開位置を100%とする百分率で算出される。
蒸発器通過空気とバイパス通路通過空気との混合空気温度TMは、上記数式8から導き出される次式9により算出できる。
TM=Te +〔SWB (TB −Te )〕/K(数式9)
但し、Te :蒸発器吹出温度
TB :バイパス空気温度
SWB :バイパスドア17の目標開度
K :空調ケース10の形状によって決まる定数
上記数式9における空調ケース10の形状によって決まる定数Kは、バイパスドア全開時(SWB =1)の蒸発器通過風量Ve とバイパス通路通過風量VB によって定まる定数として次の数式10にて算出される。
K=(Ve +VB )/VB(数式10)
例えば、バイパスドア全開時の蒸発器通過風量とバイパス通路通過風量が等しい場合(Ve :VB =1:1)には、K=2となる。
次に具体的な制御内容について説明する。
まず、ステップS1701にて蓄冷モード、放冷モード、省動力モードかを判定する。ここで、蓄冷モードは前述のごとく蓄冷スイッチ37bが投入されて、目標蒸発器吹出温度TEOを氷点下の所定値Tf に引き下げられている状態である。また、放冷モードは蓄冷スイッチ37bが投入されている状態において、車両が信号待ち等で停車して、エンジン用制御装置38からエンジン停止の要求信号が出されて、エンジン4(圧縮機1)が停止する状態である。つまり、圧縮機1の停止により蒸発器9では凝縮水の蓄冷量の放冷作用により空気を冷却する。この状態を放冷モードという。
さらに、省動力モードとは、外気温Tam=18℃〜25℃の中間温度域において設定される12℃という高温側目標温度が目標蒸発器吹出温度TEOとして設定されている状態をいう。
そして、蓄冷モード、放冷モード、および省動力モードのいずれにも該当しないとき(通常制御時)は、ステップS1702に進み、バイパスドア17の目標開度SWB =0とし、バイパスドア17を第1バイパス通路16の全閉位置に操作する。そして、ステップS1703に進み、目標吹出空気温度TAOを得るためのエアミックスドア19の目標開度SWM を上記数式7により算出する。
このときバイパスドア17の目標開度SWB =0なので、蒸発器通過空気とバイパス通路通過空気との混合空気温度TM=蒸発器吹出温度Te となり、エアミックスドア19の目標開度SWM は蒸発器吹出温度Te 、ヒータコア20の温水温度Tw および目標吹出空気温度TAOの関数として次式にて算出される。
SWM =J(Te ,Tw ,TAO)(数式11)
そして、上記ステップS1702、S1703による吹出温度制御は通常制御であって、送風空気の全量が蒸発器9を通過して冷却された後に、エアミックスドア19の開度により、ヒータコア20を通過する温風と第2バイパス通路21を通過する冷風との風量割合が調整されて、車室内への吹出空気温度が目標吹出空気温度TAOとなるように制御される。なお、本発明による第3制御モードは、本例では上記ステップS1702、S1703により構成される。
次に、ステップS1701にて蓄冷モードであると判定されたときは、ステップS1704に進み、第1バイパス通路16を通過するバイパス空気(非冷却空気)の温度TB と、蒸発器9の吹出空気温度Te とに基づいて蒸発器9の通過空気と第1バイパス通路16の通過空気との混合空気の最高温度TMmaxを算出する。
このとき、バイパスドア17の目標開度SWB =1(バイパスドア17の全開位置)として、TMmaxは次の数式12により算出される。
TMmax=F(Te ,TB )(数式12)
次に、ステップS1705にて、混合空気の最高温度TMmaxと目標吹出空気温度TAOとを比較して、TMmaxの方が高いときは、ヒータコア20による再加熱が不要であるので、ステップS1706に進み、エアミックスドア19の目標開度SWM =0(%)として、エアミックスドア19を最大冷房位置(図1の実線位置)に固定したままとする。
そして、ステップS1707にて、バイパスドア17の目標開度SWB を次の数式13により算出する。
SWB =H(Te ,TB ,TAO)(数式13)
すなわち、SWB は蒸発器吹出温度Te 、第1バイパス通路16を通過するバイパス空気温度TB 、および目標吹出空気温度TAOの関数として算出され、目標吹出空気温度TAOを得るための目標開度SWB の位置にバイパスドア17を操作する。
このように、ステップS1706、S1707による制御が行われる場合は、エアミックスドア19は最大冷房位置に固定され、一方、バイパスドア17を目標開度SWB となるように操作することにより、車室内への吹出空気温度を制御することができる。この結果、蓄冷モードによる蒸発器凝縮水の蓄冷量増加効果と、圧縮機駆動動力の軽減効果(省動力効果)とを両立できる。
なお、本発明による第1制御モードは、本例では上記ステップS1706、S1707により構成される。
次に、ステップS1705にて混合空気の最高温度TMmaxよりも目標吹出空気温度TAOの方が高いと判定された場合には、ヒータコア20による再加熱が必要である。
まず、ステップS1710に進み窓ガラスの曇り防止等のための除湿制御を行うかどうかの判定を行う。具体的には、吹出モードがデフロスタモードであるときには除湿制御を行う。また、吹出モードがデフロスタモードでなくとも、窓ガラスが曇り易い状況や湿度が高い状況であれば、除湿が必要であると判定してよいので、例えば外気温Tamが所定温度(例えば10℃)以下である場合においても除湿が必要であると判定する。
ステップS1710にて除湿が不要であると判定された場合には、ステップS1708に進み、バイパスドア17の目標開度SWB =100(%)として、バイパスドア17を第1バイパス通路16の全開位置に固定する。そして、ステップS1709にて、エアミックスドア19の目標開度SWM を次の数式14により算出する。このとき、SWB =1なのでTM=TMmaxとなる。
SWM =G(TMmax,Tw ,TAO)(数式14)
すなわち、この場合は最高温度TMmaxの混合空気がエアミックスドア19によりヒータコア20と第2バイパス通路21とに振り分けられるので、SWM は混合空気の最高温度TMmaxと、ヒータコア20の温水温度Tw と、目標吹出温度TAOとの関数として算出され、目標吹出空気温度TAOを得るための目標開度SWM の位置にエアミックスドア19を操作する。
上記の制御においても、バイパスドア17が第1バイパス通路16を全開して、蒸発器通過風量を減少させることにより、省動力効果を発揮していることは同じである。
なお、本発明による第2制御モードは、本例では上記ステップS1708、S1709により構成される。
一方、ステップS1710にて除湿が必要であると判定された場合には、以下の除湿制御(S1711〜S1713)を行う。すなわち、本来省動力効果を発揮させるためには、上記第2制御モード(S1709、S1710)のようにバイパスドア17を全開させる必要があるが、窓ガラス曇り易い状況や車室内が高湿度のため乗員に不快感を与えるような場合等には、蒸発器9をバイパスして第1バイパス通路16を通過する空気は除湿が行われず、除湿効果を低下させる。
そこで、以下の除湿制御においては、バイパスドア17を若干閉じる(SWB を小さくする)ことにより、蒸発器9を通過する空気量を増加させ、省動力と除湿効果を両立させている。なお、本発明による第4制御モードは、本例ではステップS1711〜S1713により構成される。
まず、ステップS1711に進み、バイパスドア17を第1バイパス通路16の半開位置に固定するため、バイパスドア開度SWB を、例えばSWB =0.5(50%)とする。
次に、ステップS1712にて蒸発器通過空気とバイパス通路通過空気の混合空気温度TMを上記数式9にて算出する。この混合空気温度TMは、上記ステップS1711で決定されたバイパスドア開度SWB を用い、蒸発器吹出温度Te とバイパス空気温度TB の関数として、次式15にて算出できる。
TM=K(Te ,TB ,SWB )(数式15)
次に、ステップS1713に進み、エアミックスドアの目標開度SWM を上記数式7に基づいて算出する。すなわち、上記ステップS1712にて算出したTMと、ヒータコア温水温度Tw 、目標吹出温度TAOを用いて次式16にて算出する。
SWM =L(TM,Tw ,TAO)(数式16)
また、ステップS1701で放冷モードが判定されたときにおいても、上記ステップS1704〜S1713による吹出温度制御を行う。この放冷モードにおいても、第1バイパス通路16を通過する蒸発器バイパス空気の存在により蒸発器通過空気の風量が減少するので、蒸発器凝縮水の蓄冷量の放冷時間を延ばすことができる。
また、ステップS1701で省動力モードが判定されたときも、上記ステップS1704〜S1713による吹出温度制御を行う。この省動力モードにおいても、蒸発器通過空気の風量減少により、省動力を効果的に発揮できる。
以上のように、蒸発器9をバイパスするバイパス通路16が設けられた車両用空調装置において、上記数式9より、蒸発器吹出温度Te 、バイパス空気温度TB およびバイパスドア開度SWB の関数として混合空気温度TMを算出し、この混合空気温度TMを用いることにより、エアミックスドア19の目標開度SWM を精度よく算出することができ、車両用空調装置の温度制御の基本となる目標吹出温度制御の内容を変更することなく、目標吹出空気温度TAOを求めることができる。
(第3実施形態の変形例)
上記第3実施形態では、本発明を、停車時などのエンジン動力不要時にエンジン4を停止する車両に搭載され、エンジン4の停止後も車室内の空調を行う車両用空調装置に適用したが、これに限らず、エンジン停止空調を行わない車両用空調装置であっても、蒸発器9をバイパスするバイパス通路16が設けられている車両用空調装置であれば広く適用可能である。
上記第3実施形態では、、第1バイパス通路16にサーミスタからなるバイパス空気温度センサ33を設け、バイパス空気温度センサ33により検出したバイパス空気温度TB を用いて混合空気温度TMを算出しているが、これに限らず、バイパス空気温度センサ33を廃止して、外気モードの場合にはバイパス空気温度TB に代えて外気温Tamを用い、内気モードの場合にはバイパス空気温度TB に代えて内気温Tr を用いても、バイパス空気温度TB を用いた場合と同様に混合空気温度TMを算出できる。
さらに、外気温センサ、内気温センサを設けない場合には、例えばTB =25[℃]という固定値を設定して混合空気温度TMを算出してもよい。
上記第3実施施形態では、ステップS1710(除湿判定手段)において、吹出モードがデフロスタモードであるとき、または、外気温Tamが所定温度(例えば10℃)以下である場合に除湿が必要であると判定したが、これに限らず、窓ガラスが曇りやすい状況、あるいは車室内湿度が高い状況であれば車室内の除湿が必要であると判定してよい。
例えば、吹出モードがデフロスタモードでなくとも、周知の吹出モードであるフットモードまたはフットデフモードの場合には、一定の割合でデフロスタ吹出口から空気を吹き出すので、これらの吹出モードが選択されている場合という条件により車室内の除湿の要否を判定してもよい。車室内湿度を検出する湿度センサを設け、車室内湿度が所定湿度以上の場合に除湿が必要であると判定してもよい。
また、窓ガラス温度を検出するガラス温度センサを設け、窓ガラスの温度が所定ガラス温度以下の場合に除湿が必要であると判定してもよい。車室内に外気を導入する外気モードより内気を循環させる内気モードのほうが窓ガラスが曇りやすいので、内気モードで空調が行われている場合に車室内の除湿が必要であると判定してもよい。
さらに、上記各条件を任意に組み合わせて、例えば外気温Tamが所定温度(例えば10°C)以下で、かつ、車室内湿度が所定湿度以上である場合に車室内の除湿が必要であると判定してもよい。
上記第3実施形態では、ステップS1711において、バイパスドアの目標開度SWB を、例えばSWB =0.5という固定値を用いたが、除湿の必要性(湿度の度合い等)に応じてバイパスドア開度SWB を可変制御してもよい。
すなわち、湿度が高い場合には、除湿の必要性が高いので、バイパスドア開度SWB を小さくして、より多くの空気が蒸発器9を通過するようにし、省動力に対して除湿をより優先させる。また、湿度がそれほど高くない場合には、バイパスドア開度SWB を大きくして、より多くの空気が第1バイパス通路16を通過するようにし、除湿に対して省動力をより優先させる。
第3実施形態では、蒸発器通過空気とバイパス通路通過空気の混合空気温度TMを用いてエアミックスドア19の目標開度SWM を算出しているが、これに限らず、この混合空気温度TMは、ヒータコア20へ流入する温水流量を調節する温水弁を備え、この温水弁により温水流量を調節して、車室内への吹出空気温度を調節する車両用空調装置において、目標温水流量を算出するために用いることもできる。
(第4実施形態)
最初に、第4実施形態の課題について説明すると、信号待ち等による停車は市街地走行等では頻繁に発生するので、エンジン停止(圧縮機停止)も頻繁に繰り返すことになる。そして、圧縮機停止と圧縮機稼働との繰り返しにより蒸発器9の冷却除湿作用も頻繁に断続され、これに伴って、車室内湿度が大幅に変化する。このことをより具体的に説明すると、エンジン稼働中に、蒸発器温度制御の目標温度(TEO)を例えば、−3°C〜−4°C程度の氷点下の温度に引き下げて、蒸発器凝縮水を凍結させる蓄冷モードを実行すると、通常制御時〔目標温度(TEO)=+3°C〜+4°C程度〕に比して、蒸発器温度と蒸発器吸込空気温度との温度差が拡大して、蒸発器での除湿量が上昇するので、蓄冷モードの状態においては、車室内の湿度が充分低下した状態にある。
一方、信号待ち等により車両が停車すると、車両エンジン4(圧縮機1)が停止されるので、蒸発器凝縮水の蓄冷量の放冷を利用して空調空気を冷却する。この放冷モードの状態では、今まで凍結していた凝縮水が融解し、その融解水分による空気への加湿状態が起こることと、放冷モードの直前では、車室内湿度が極めて低レベルの状態になっていることが原因となって、車室内の湿度が急激に上昇する(湿度上昇率:大)という現象が起こる。
その結果、車室内の乗員は、放冷モード時に温度上昇だけでなく、車室内湿度の急上昇の影響を受けて、湿度感(湿度による蒸し暑さ)の観点で冷房フィーリングを著しく悪化させる。また、この湿度感による冷房フィーリングの悪化から、放冷モードの持続時間を短くしなければならない。
従って、冷房フィーリングの点からエンジン停止時間を短くしてエンジンを再稼働しなければならず、環境保護の面から好ましくない。
第4実施形態は上記点に鑑みてなされたもので、エンジン停止時(圧縮機停止時)における放冷モードでの、湿度感に起因する冷房フィーリングの悪化を抑制することを目的としている。
また、第4実施形態では、エンジン停止(圧縮機停止)時における放冷モードでの、冷房フィーリング維持可能な時間を延長させることを他の目的とする。
第4実施形態の全体構成は第1実施形態の図1と同じであるので、説明を省略する。また、第4実施形態の制御全体の流れも図11に示すように第1実施形態の図2とほぼ同じであり、第4実施形態では、ステップS120にて図2のステップS120、S130に相当する役割を果たしている。図12は図11のステップS120の詳細を示す。
次に、上記構成において第4実施形態の作動を説明する。図11において、ステップS120にて、車室内へ吹き出される空調風の目標吹出温度TAO、および目標蒸発器吹出温度TEOを算出する。図12はこのステップS120の詳細を示すもので、まず、ステップS1201にて基準目標吹出温度TAOA を算出する。この基準目標吹出温度TAOA は、車室内を温度設定スイッチ37aの設定温度Tset に維持するために必要な吹出温度であって、前述の数式1にて車室の熱負荷条件に基づいて算出することができる。
次に、ステップS1202にて、エンジン稼働中(車両走行中)に蓄冷モードの実行可能な条件にあるかどうか判定する。この判定は具体的には上記基準目標吹出温度TAOA に基づいて行うことができる。すなわち、冷房起動直後のように車室内温度を設定温度Tset に向けて急速に低下させる必要のあるクールダウン時とか、あるいは高外気温時で、かつ、乗車人数の多いときのような冷房高負荷時には、上記基準目標吹出温度TAOA が−20°C以下のような低温域にあるので、このような所定値以下の低温域にTAOA があるときは、冷房性能の発揮の方を優先させるために、蓄冷モードの実行を禁止して通常モードとする。
この蓄冷モードを禁止する時はステップS1203に進み、通常モード時の目標蒸発器吹出温度TEOA を算出する。この通常モード時の目標蒸発器吹出温度TEOA は、次に述べる第1目標蒸発器吹出温度TEOA1と第2目標蒸発器吹出温度TEOA2に基づいて算出する。
まず、第1目標蒸発器吹出温度TEOA1は図13(前述の図3と同じ特性)のマップに基づいて決定する。次に、第2目標蒸発器吹出温度TEOA2も図14(前述の図4と同じ特性)のマップに基づいて決定する。 そして、エンジン稼働中における通常モード時(蓄冷モードでないとき)では、上記第1、第2目標蒸発器吹出温度TEOA1、TEOA2に基づいて、最終的に、目標蒸発器吹出温度TEOA を決定する。
すなわち、上記第1目標蒸発器吹出温度TEOA1=f(TAOA )、第2目標蒸発器吹出温度TEOA2=f(Tam)のうち、低い温度の方を最終的に、目標蒸発器吹出温度TEOA として決定する。
そして、ステップS1203からステップS1204に進み、車室内への目標吹出温度TAO=基準目標吹出温度TAOA とする。 一方、ステップS1202にて基準目標吹出温度TAOA が所定値(例えば、−20°C)より高いときは冷房負荷が定常状態であるとして、蓄冷モードを実行可能と判定する。従って、ステップS1205に進み、車両エンジン4が稼働中か判定する。この判定は、エンジン用制御装置38から入力される車速信号やエンジン回転数信号が所定値以上かどうかで判定できる。
そして、ステップS1205でエンジン稼働中であるときは蓄冷モードが実行可能であり、ステップS1206に進み、蓄冷用目標蒸発器吹出温度TEOB を決定する。このTEOB は氷点下の所定温度Tf (例えば、−2°C〜−1°C)であり、これにより、蒸発器9の凝縮水を氷点下の温度Tf に冷却して凍結することができ、蓄冷モードを実行することになる。この蓄冷モードにおいても、ステップS1204にて目標吹出温度TAO=基準目標吹出温度TAOA と決定される。
一方、ステップS1205でエンジン停止時であるときは放冷モードであり、、ステップS1207に進み、放冷モードにおける湿度補正制御を行う。すなわち、目標吹出温度TAO=放冷用TAOB とする。この放冷用TAOB は次の数式17aにより算出する。
TAOB =TAOA −{f(Te )+g(f′(Te ))}(数式17a)
ここで、Te は蒸発器吹出温度センサ32により検出される実際の蒸発器吹出温度であり、上記数式17aにおいて、f(Te )の項は、車室内湿度(相対湿度)による補正分である。すなわち、車室内湿度は蒸発器吹出温度Te と相関があるので、Te に基づいて推定することができる。具体的には、Te が上昇するにつれて車室内湿度も上昇する関係にあるので、車室内湿度による補正分f(Te )は、例えば、図15のようにTe の上昇につれて増加する関係で表すことができる。
また、上記数式17aにおいて、g(f′(Te ))の項は、車室内湿度(相対湿度)の変化率(上昇率)による補正分であって、例えば、図16のように定めることができる。図16の横軸のf′(Te )は、蒸発器吹出温度Te の時間微分により推定される車室内湿度の変化率であり、f′(Te )の増加に応じて車室内湿度の変化率による補正分g(f′(Te ))が増加する関係となる。
以上のようにして、放冷モードにおけるTAOB は、図17の上段部分に示すように、基準目標吹出温度TAOA に対して、車室内湿度による補正分f(Te )と車室内湿度(相対湿度)の変化率による補正分g(f′(Te ))とにより、車室内の湿度上昇に基づいて低温側へ補正される。本例では、上記したステップS1207により本発明の補正手段を構成している。
上記したステップS120による、TAOとTEOの算出を終えた後に、ステップS140、S150、S160を経てステップS170に進み、エアミックスドア19の目標開度SWM 、バイパスドア17の目標開度SWB を算出して、エアミックスドア19およびバイパスドア17の開度を決定する。エアミックスドア19の目標開度SWM は、エアミックスドア19の最大冷房位置(図1の実線位置)を0%とし、エアミックスドア19の最大暖房位置(図1の一点鎖線位置)を100%とする百分率で表される。同様に、バイパスドア17の目標開度SWB も第1バイパス通路16の全閉位置を0%とし、第1バイパス通路16の全開位置を100%とする百分率で表される。
ここで、目標開度SWM および目標開度SWB の算出は、次の3つのモードに分けて行う。すなわち、(1)エンジン稼働時における通常モード時は、冷房除湿性能確保のために、バイパスドア17の目標開度SWB =0%(第1バイパス通路16の全閉位置)にする。そして、エアミックスドア19の目標開度SWM は、車室内への吹出温度がTAO(=TAOA )となるように決定される。
具体的には、目標吹出空気温度TAOと蒸発器吹出温度Te とヒータコア20の温水温度Tw とに基づいて目標開度SWM を決定することができる。この通常モード時における、エアミックスドア19の目標開度SWM の算出の考え方は従来通りである。
(2)エンジン稼働時における蓄冷モード時は、第1バイパス通路16を通過するバイパス空気と蒸発器9を通過する冷風との混合により目標吹出空気温度TAOが得られる範囲内では、エアミックスドア19の目標開度SWM =0%(図1の実線で示す最大冷房位置)に固定して、バイパスドア17の開度調整により吹出空気温度を調整する。すなわち、バイパスドア17の目標開度SWB をバイパス空気温度TB と蒸発器吹出温度Te と、TAO(=TAOA )とに基づいて決定する。
蓄冷モード時において、バイパスドア17を全開しても、吹出空気温度が目標吹出空気温度TAOより低い場合は、エアミックスドア19の開度調整(すなわち、ヒータコア20の加熱量調整)により吹出空気温度を調整する。エアミックスドア19の目標開度SWM は、第1バイパス通路16のバイパス空気と蒸発器通過空気との混合空気の温度と、ヒータコア20の温水温度Tw と、目標吹出空気温度TAOとに基づいて決定される。
(3)放冷モード時においては、車室内への目標吹出温度TAOB が、図17の上段部分に示すように基準目標吹出温度TAOA に対して、車室内湿度による補正分f(Te )と車室内湿度の変化率による補正分g(f′(Te ))とにより、車室内の湿度上昇に基づいて低温側へ補正される。
そして、バイパスドア17の目標開度SWB とエアミックスドア19の目標開度SWM は、具体的には図17の下段部分に示すように決定される。以下、放冷モード時のSWB 、SWM の決定方法について詳細に説明すると、放冷モード時の開始直後(車両エンジン4の停止直後)では、蒸発器吹出温度Te が蓄冷モード時の氷点下の低い温度Tf (=−3°C〜−4°C)にあるので、バイパスドア17の目標開度SWB は第1バイパス通路16の全開位置(開度=100%)に決定される。
このとき、蒸発器通過空気(冷風)に第1バイパス通路16の非冷却空気を混合するだけでは車室内への吹出空気温度がTAOB より低くなる場合がある。この場合は、エアミックスドア19の目標開度SWM を所定開度に決定して、ヒータコア20による再加熱により車室内への吹出空気温度をTAOB に制御する。
そして、放冷モードの経過につれて、蒸発器吹出温度Te が上昇するつれてヒータコア20による再加熱量を減らすために、エアミックスドア19の目標開度SWM が減少していき、そして、エアミックスドア19の目標開度SWM =0%(最大冷房位置)に到達した後は、バイパスドア17の目標開度SWB を全開位置(開度=100%)から徐々に減少させることにより、車室内への吹出空気温度をTAOB に制御する。
以上の説明から理解されるように、放冷モード時に、車室内への吹出空気温度を、低温側に補正された目標吹出温度TAOB に制御するためには、放冷モード開始後の時間tの経過に対して、エアミックスドア19の目標開度SWM を0%(最大冷房位置)側へ補正するタイミングを早め、また、バイパスドア17の目標開度SWB を全開位置(開度=100%)から開度減少方向に補正するタイミングを早めればよい。
ところで、放冷モード時においては、その開始時点での蒸発器吹出温度Te が蓄冷モード時の氷点下の低い温度Tf (=−2°C〜−1°C)であるので、放冷モード開始後の時間tの経過に対して、Te の上昇率が大きくなり、Te の上昇に伴う車室内湿度の上昇率も大きくなる。そのため、乗員は放冷モード時に湿度上昇による湿度感(蒸し暑さ)のために不快感を感じやすい。
しかし、本第4実施形態によると、放冷モード時における目標吹出温度TAOB を基準目標吹出温度TAOA に対して車室内湿度による補正分f(Te )と車室内湿度の変化率による補正分g(f′(Te ))の両方により、低温側へ補正しているので、蒸発器吹出温度Te の上昇に対して、湿度感による不快感を感じる知覚レベルを図17上段の温度レベルTe3まで高めることができる。換言すると、放冷モード開始後、乗員が湿度感により不快感を感じるタイミングが時間t3 であり、この時間t3 経過まで放冷モードによる冷房フィーリングを良好に維持できることになる。
これに対して、比較例として、放冷モード時においても、目標吹出温度TAOの低温側への補正を全くせずに、基準目標吹出温度TAOA のままとした場合には、車室内への吹出温度が湿度感を考慮しない高めの温度となるので、乗員は湿度感による不快感を蒸発器吹出温度Te に対して図17上段の温度レベルTe1で感じてしまう。
つまり、湿度感による不快感の知覚レベルが蒸発器吹出温度Te に対して上記温度レベルTe3よりかなり低い温度Te1になってしまう。その結果、放冷モードによる冷房フィーリングを良好に維持できる時間がt1 という短い時間になってしまう。
また、放冷モード時における目標吹出温度TAOB の低温側への補正量として、車室内湿度による補正分f(Te )だけを考慮する場合は、乗員が湿度感による不快感を感じる知覚レベルが図17上段の温度レベルTe2となり、その結果、放冷モードによる冷房フィーリングを良好に維持できる時間がt2 となり、上記t1 とt3 の中間の時間になる。
従って、放冷モードにおける車室内湿度上昇に対する冷房フィーリングの維持のためには、目標吹出温度TAOB を車室内湿度による補正分f(Te )と車室内湿度の変化率による補正分g(f′(Te ))の両方により低温側へ補正することが最も好ましいことになる。 上記は、図11のステップS170による説明であり、ステップS170の次に、ステップS180にて、目標蒸発器吹出温度TEO(TEOA またはTEOB )と実際の蒸発器吹出温度Te とを比較し、圧縮機作動を断続制御する。すなわち、蒸発器吹出温度Te が目標蒸発器吹出温度TEOより低下すると、制御装置5により電磁クラッチ2の通電を遮断して圧縮機1を停止させ、逆に、蒸発器吹出温度Te が目標蒸発器吹出温度TEOより上昇すると、制御装置5により電磁クラッチ2に通電して圧縮機1を作動させる。これにより、蒸発器吹出温度Te が目標蒸発器吹出温度TEOに維持される。なお、蓄冷モード時は目標蒸発器吹出温度TEOをTEOB (氷点下の所定値Tf )に引き下げることにより、蒸発器9の凝縮水を凍結させて、蒸発器9の凝縮水蓄冷量を増大させる。
次に、ステップS180に進み、空調側条件に基いてエンジン制御信号(前述の車両エンジン4の停止許可、停止禁止、および車両エンジン4停止後の再稼働要求の信号)を出力する。(第4実施形態の変形例)
なお、第4実施形態は以下のごとく種々変形可能である。
上記の第4実施形態では、図12のステップ1202にて目標吹出温度TAOに基づいて蓄冷モードを実行するか判定しているが、空調制御パネル36の操作スイッチ群37の1つとして、蓄冷モード信号を発生する蓄冷スイッチを設け、この蓄冷スイッチの投入により蓄冷モードを設定するようにしてもよく、この場合は蓄冷スイッチの投入有無より蓄冷モードの実行を判定すればよい。
また、エンジン4(圧縮機1)の稼働時は原則として常時蓄冷モードを設定し、そして、エンジン4(圧縮機1)の稼働時において、蓄冷モードの禁止条件を判定したときだけ、通常制御時(通常制御モード)を設定するようにしてもよい。
また、中間季節等において、高い除湿能力が要求される条件(例えば、内気モードで、乗員数が多い時等)の下では、蒸発器9の除湿(冷却)能力を高めるために、目標蒸発器吹出温度TEOを比較的低い温度にし、一方、目標吹出温度TAOは車室内の温度制御のために高くする場合がある。
このように、特に高い除湿能力が要求される条件下では、蓄冷モードおよび放冷モードであっても、通常制御時(ステップS1702、S1703)と同様に、バイバスドア17は全閉位置に固定して、エアミックスドア19によるヒータコア20の加熱量調整により吹出空気温度の制御を行うようにしてもよい。
また、第4実施形態では、蓄冷モードの際に、目標吹出温度TEOを例えば、−2°Cのような氷点下の低温域に引き下げて蓄冷効果の向上を図るようにしているが、蓄冷モードの際に、目標蒸発器吹出温度TEOを通常制御時の最低温度(例えば3°C)より低く、かつ、0°Cより高い温度(例えば1°C)まで、引き下げて蓄冷効果の向上を図るようにしてもよい。
また、バイパスドア17を蒸発器9に対して空気下流側でなく、空気上流側に配置することも可能である。
また、第1バイパス通路16およびバイパスドア17を廃止して、車室内への吹出空気温度の調節手段として、ヒータコア20による加熱量を調節する加熱量調節手段(エアミックスドア19あるいは温水弁等)のみを設けるものにおいても第4実施形態は実施できる。
(第5実施形態)
図18は第5実施形態の全体構成図であり、図19は図18の空調装置通風系のうち、送風機11下流側の空調ユニット15部分を示すもので、図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、相違点のみ説明する。
空調ユニット15部は、通常、車室内前部の計器盤内側において、車両幅方向の中央位置に配置される。その場合、空調ユニット15部は車両の前後方向および上下方向に対して図19に示すように配置され、送風機11部は空調ユニット15部に対して助手席側にオフセット配置されている。
空調ケース10内において最も車両前方側の部位に空気入口10aが開口しており、送風ファン12の送風空気はこの空気入口10aから空調ケース10内の蒸発器9の上流部位に流入するようになっている。
そして、空調ケース10内で、蒸発器9は上下方向に延びるように配置されており、この蒸発器9の下側部位に蒸発器9をバイパスして空気を流す第1バイパス通路16が形成されている。この第1バイパス通路16の開度を調整するバイパスドア(パラレルバイパスドア)17が蒸発器9の空気上流側で、かつ、下側の部位に配置されている。
このバイパスドア17は蒸発器9の前面側の下側部位に配置された回転軸17aを有し、この回転軸17aを中心として回動可能な板状ドアである。ここで、図18、19の2点鎖線で示すバイパスドア17の操作位置は、第1バイパス通路16の全開位置であり、この2点鎖線の操作位置は、蒸発器9の通風路の一部(下側の部位A)を最大限閉じる位置であって、これにより、下側の部位Aの通風抵抗を高める。
また、上記2点鎖線のバイパス通路開放位置において、バイパスドア17と蒸発器9の熱交換コア部の表面との間には、所定の微小間隙Bを形成するようになっている。この微小間隙Bは例えば、2〜6mm程度であり、より具体的には5mm程度が好ましい。
空調ケース10内で、蒸発器9の下流側にはエアミックスドア(シリーズバイパスドア)19が配置されている。このエアミックスドア19の下流側には車両エンジン4の温水(冷却水)を熱源として空気を加熱する温水式ヒータコア(暖房用熱交換器)20が設置されている。そして、この温水式ヒータコア20の側方(上方部)には第2バイパス通路21が形成されている。この第2バイパス通路21は温水式ヒータコア20をバイパスして空気を流すためのものである。
エアミックスドア19は回転軸19aを中心として回動可能な板状ドアであり、温水式ヒータコア20を通過する温風とバイパス通路21を通過する冷風との風量割合を調節するものであって、この冷温風の風量割合の調節により車室内への吹出空気温度を調節する。
温水式ヒータコア20の下流側には下側から上方へ湾曲して延びる温風通路23が形成され、この温風通路23からの温風と第2バイパス通路21からの冷風が空気混合部24付近で混合して、所望温度の空気を作り出すことができる。
さらに、空調ケース10内で、空気混合部24の下流側に吹出モード切替部が構成されている。すなわち、空調ケース10の上面部にはデフロスタ開口部25が形成され、このデフロスタ開口部25は図示しないデフロスタダクトを介して車両フロントガラス内面に空気を吹き出すものである。デフロスタ開口部25は、回転軸26aにより回動自在な板状のデフロスタドア26により開閉される。
また、空調ケース10の上面部で、デフロスタ開口部25より車両後方側の部位にフェイス開口部27が形成され、このフェイス開口部27は図示しないフェイスダクトを介して車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すものである。フェイス開口部27は回転軸28aにより回動自在な板状のフェイスドア28により開閉される。
また、空調ケース10において、フェイス開口部27の下側部位にフット開口部29が形成され、このフット開口部29は図示しないフットダクトを介して車室内乗員の足元に向けて空気を吹き出すものである。フット開口部29は回転軸30aにより回動自在な板状のフットドア30により開閉される。
上記した吹出モードドア26、28、30の回転軸26a、28a、30aは共通のリンク機構(図示せず)に連結され、このリンク機構を介して図1のサーボモータからなる電気駆動装置31により駆動される。
次に、上記構成において第5実施形態の作動を説明する。図18、19は、バイパスドア17が第1バイパス通路17を閉じている通常時の状態を示し、一方、図20はバイパスドア17が第1バイパス通路17を開放して蒸発器9の通風路の下側の一部を閉じている蒸発器バイパス時の状態を示す。
そして、エンジン稼働中において、冷房開始直後のように車室内を急速に冷房したいクールダウン時とか、車室内乗員数が多いとか、高外気温時のような冷房高負荷時には、蒸発器9の冷却能力を最大限に発揮するために図18、19の通常状態(蒸発器バイパス閉塞状態)を設定する。また、クールダウン時とか冷房高負荷時ではないとき、つまり、通常の冷房負荷状態では、次回のエンジン停止時に備えて、蒸発器凝縮水への蓄冷量を増加させる蓄冷モードを予め設定しておく必要がある。図20の蒸発器バイパス状態は、この蓄冷モードの設定状態である。
ここで、図20の蒸発器バイパス状態は、蓄冷モードだけでなく、春秋の中間季節における省動力モードのために使用してもよいし、また、停車時等の一時的なエンジン停止時における蒸発器9の放冷モードにおいても使用できる。
上記した図18、19の通常状態(蒸発器バイパス閉塞状態)と、図20の蒸発器バイパス状態はバイパスドア17の開閉により切り替えることができる。バイパスドア17の開閉は、例えば、車室内へ吹き出される空調風の目標吹出温度TAOに基づいて決定することができる。
そして、目標吹出温度TAOは上記のクールダウン時とか冷房高負荷時には非常に低い温度が算出されるので、この目標吹出温度TAOが極く低温域にあるときはバイパスドア17を図18、19の通常状態に操作する。そして、目標吹出温度TAOが所定レベルまで上昇すると、通常の冷房負荷状態であると判定して、バイパスドア17を図18、19の通常状態から図20の蒸発器バイパス状態に切り替える。
なお、上記目標吹出温度TAOによる自動的なバイパスドア17の切替動作方式によらず、手動操作方式でバイパスドア17の切替を行ってもよい。例えば、空調制御パネル36の操作スイッチ群37の1つとして、蓄冷モードスイッチを設けて、この蓄冷モードスイッチが乗員の操作により投入されたとき、バイパスドア17を図20の蒸発器バイパス状態に操作するようにしてもよい。
ところで、図18、19の通常時の状態では、バイパスドア17が第1バイパス通路17を閉じるとともに、蒸発器9の通風路への通風の妨げとならない位置に操作されているので、蒸発器9の熱交換コア部に対して最大風量を送風することができる。従って、蒸発器9の最大能力の発揮に支障はない。そして、最大冷房時には、上記目標吹出温度TAOに基づいて、エアミックスドア19が図18、19の実線で示す最大冷房位置に操作されて、ヒータコア20への通風路を全閉し、第2バイパス通路21を全開する。従って、蒸発器9の冷媒蒸発潜熱により冷却された冷風をヒータコア20で再加熱することなく、フェイス開口部27を通して車室内へ吹出して、車室内を冷房する。
そして、図18、19の通常時の状態において、冷房負荷が低減して最大冷房状態から温度制御域に移行すると、エアミックスドア19がヒータコア20への通風路を開き、第2バイパス通路21の開度を減少させる。これにより、第2バイパス通路21を通過する冷風とヒータコア20を通過する温風との風量割合を調整して車室内への吹出空気温度を制御することができる。
これに対して、エンジン稼働中に、蒸発器凝縮水への蓄冷量を増大する蓄冷モードを実行する時には、バイパスドア17を図20の蒸発器バイパス状態に切り替える。この状態では、バイパスドア17が第1バイパス通路16を開くとともに、蒸発器9の熱交換コア部の通風路の一部(下側の部位A)を最大限閉じる。
送風ファン12の送風空気の一部は第1バイパス通路16を通過して蒸発器9をバイパスして冷却されないまま通過する。従って、バイパスドア17の操作位置の調整により第1バイパス通路16の開度を調整して、第1バイパス通路16を通過する非冷却空気と、蒸発器9を通過する冷風との風量割合を調整することにより、車室内への吹出空気温度を制御できる。
ここで、バイパスドア17の操作位置(開度)は、第1バイパス通路16を通過する非冷却空気の温度TB と、蒸発器吹出温度Te と車室内への目標吹出温度TAOに基づいて決定すればよい。
以上により、蓄冷モード時には、エアミックスドア19を最大冷房位置に固定したままでも車室内への吹出空気温度を制御でき、車両エンジン4の省動力(圧縮機駆動動力の低減)を図ることができる。
つまり、バイパスドア17により蒸発器9の熱交換コア部の通風路の一部を閉じて通風抵抗を高めるため、蒸発器9の通過風量が減少する。そのため、蒸発器9の吹出温度Te を目標吹出温度TEOに低下させるに必要な冷却能力を風量の減少分だけ小さくすることができ、圧縮機1の断続制御による圧縮機稼働率を低下させて省動力を図ることができる。
そして、バイパスドア17が蒸発器9の熱交換コア部の通風路の一部を閉じるため、この閉塞部分では空気側との熱交換がほとんどないため、凝縮水を強制的にフロスト(凍結)させることができる。
なお、蒸発器9の目標吹出温度TEOは、前述の図3、4、13、14のごとく目標吹出温度TAOに応じてTAOの上昇に応じて高く設定したり、あるいは、外気温度Tamに応じて、春秋の中間温度域で最も高く設定し、外気温度Tamの低温域およひ高温域では低く設定したりするが、蓄冷モードでは、目標吹出温度TEOを例えば、−2°Cのような氷点下の低温域に引き下げて、蒸発器凝縮水を強制的に凍結させて蓄冷量の向上を図ることが好ましい。
このように、目標吹出温度TEOを氷点下の低温域に引き下げて、蒸発器9の吹出温度Te が氷点下の低温になっても、車室内への吹出空気温度は、バイパスドア17の操作位置(第1バイパス通路16の開度)の調整により調整できるので、上述の通り車両エンジン4の省動力を実現できる。 そして、前述の図6(a)、(b)で説明した理由により蓄冷効果の向上と省動力効果とを両立できる。
また、本第5実施形態では、蒸発器9を上下方向に延びるように配置しているので、蒸発器9で発生する凝縮水は自重にて蒸発器9の熱交換コア部の下側に集まってくる。そのため、蒸発器9の熱交換コア部の通風路の下側部分をバイパスドア17により閉じることにより、蒸発器9の熱交換コア部の下側に集まってくる凝縮水を強制的に凍結させて蓄冷量を増加できる。
また、バイパスドア17が図20に示すバイパス通路全開位置に操作されている状態において、バイパスドア17と蒸発器9の熱交換コア部の表面とを密着させると、バイパスドア17が熱交換コア部の表面に一体に凍結してドア17が操作不能となる恐れがある。
しかし、第5実施形態によると、バイパスドア17が蒸発器9の通風路の一部を最大限閉じる位置に移動したときにも、バイパスドア17と蒸発器9の熱交換コア部の表面との間に2〜6mm程度の所定の微小間隙Bを形成しているから、蒸発器9の熱交換コア部下側部位Aが凍結した際に、バイパスドア17が熱交換コア部の表面と一体に凍結することがない。従って、バイパスドア17の凍結による操作不能を未然に防止できる。
ところで、蒸発器9は空調ケース10内に配置される機器のうち、最大の体格を有する部品であり、そのため、車両搭載スペースへの制約上、蒸発器9の周囲に充分な通路断面積を持った第1バイパス通路16を設計することが実用上困難となることが多い。そこで、第5実施形態では、第1バイパス通路16の開放時に、バイパスドア17により蒸発器9の熱交換コア部の通風路の一部を閉じて、蒸発器9側通風路の通風抵抗を増大させ、これにより、第1バイパス通路16を通過するバイパス風量(非冷却空気の風量)を増加させている。
本発明者らの実験検討によると、第1バイパス通路16を通過するバイパス風量(非冷却空気の風量)と蒸発器通過の冷風との混合により、車室内温度制御のために必要な吹出温度を得るためには、バイパス風量として、少なくとも、全風量の40%以上必要であることが分かった。
図21、22は本発明者らの実験結果を示すもので、図21の縦軸は、送風ファン12による全体風量と、バイパス風量の全体風量に対する割合(%)を示し、横軸はバイパスドア17による、蒸発器9の熱交換コア部の通風路塞ぎ高さを示している。ここで、実験に用いた蒸発器9の熱交換コア部の高さ=235mm、同熱交換コア部の幅(左右方向寸法)=253mmであり、従って、熱交換コア部の通風路面積=59455mm2 である。
また、バイパスドア17と蒸発器9の熱交換コア部の表面との間の微小間隙B=5mmである。さらに、第1バイパス通路16の通路高さ=60mm、第1バイパス通路16の幅=233mmであり、従って、第1バイパス通路16の断面積=13980mm2 である。
図21に示すように、バイパスドア17による、蒸発器9の熱交換コア部の通風路塞ぎ高さの増大に応じてバイパス風量の割合を増加でき、塞ぎ高さ=80mm以上にてバイパス風量の割合を40%以上に増大できる。
図22は蒸発器塞ぎ高さと、バイパス風量、全体風量の低下率および蒸発器下流側の混合空気の温度との関係を示す実験結果で、塞ぎ高さ=100mmにてバイパス風量を41%に増大し、蒸発器下流側の混合空気温度を10.3°Cに調整できることが分かった。ここで、蒸発器下流側の混合空気温度は、蒸発器吹出温度Te =0°C、バイパス空気温度TB =25°Cの場合における混合空気温度である。なお、塞ぎ高さ=100mmの場合、全体風量の低下率=4%であり、比較的小さな値に抑えることができるので、全体風量の低下はこの程度ならば支障ない。
なお、信号待ち等による一時的な停車時に、車両エンジン4が停止されると、圧縮機1も必然的に停止状態になるので、冷凍サイクルRの冷媒蒸発潜熱による蒸発器9の冷却作用が停止されるが、エンジン稼働中に予め、蒸発器凝縮水を凍結させて蒸発器凝縮水蓄冷量を増大してあるので、エンジン停止時は、この蒸発器凝縮水蓄冷量(水の融解潜熱および水の顕熱)を利用して、蒸発器9の冷却作用を発揮できる。
信号待ち等による一時的な停車時間は、通常、1分間前後であるので、この程度の短時間であれば、蒸発器凝縮水の蓄冷量を利用して、冷房フィーリングを悪化させないレベルで冷房を持続可能となる。
停車時の冷房作用は、蒸発器凝縮水蓄冷量の放冷により行うので、放冷モードと称することができ、この放冷モードにおける車室内への吹出空気温度の制御も、前述の蓄冷モードと同様に、エアミックスドア19は最大冷房位置に固定したままで、バイパスドア17の操作位置(開度)の調整により行うことができる。
(第6実施形態)
上記した第5実施形態では、放冷モードにおいて図20に示すようにバイパスドア17が第1バイパス通路16を全開するとともに、蒸発器9の熱交換コア部の通風路の一部(下側部位A)を最大限閉じる状態にあるときには、蒸発器9の通風路の下側部位Aでは通過風量がほとんどなくなって、この下側部位Aでの熱交換がほとんどなくなるので、蒸発器9の上下で凝縮水の氷の融解時間に大きな差が発生する。
その結果、放冷モードにおける蒸発器吹出空気の上下温度差が拡大するので、1個の温度センサ32により蒸発器吹出空気温度を正確に検出することが困難となり、放冷モードにおける車室内への吹出温度を良好に制御できないという事態が発生する。
第6実施形態は上記点を考慮して、放冷モードにおける蒸発器吹出空気の温度差(温度分布)を低減するものである。図23は、第6実施形態によるバイパスドア17の開度制御の考え方を示すもので、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOが高くても、放冷モードの初期からバイパスドア17を、蒸発器9の通風路の一部(下側部位A)を所定開度開く位置に操作するものである。
第6実施形態によるバイパスドア制御をより具体的に説明すると、図23の横軸は空調装置運転経過時間であり、車両エンジン4の稼働による蓄冷モードを実施した後に車両エンジン4が停止されて放冷モードが開始された時点を、経過時間=0とし、放冷モードの経過時間を+側の時間で表し、蓄冷モードの経過時間を−側の時間で表している。
そして、放冷モードの初期(経過時間=0)から目標吹出温度TAOと関係なく、バイパスドア17を、蒸発器9の通風路の一部(下側部位A)を所定開度θ1だけ開く位置に操作する。このことは、第1バイパス通路16側から見れば、バイパス空気風量が減少して、車室内吹出温度の低下を招く。
従って、放冷モードの開始前(蓄冷時)の車室内吹出温度を維持するためには、バイパス空気風量の減少分をヒータコア20の再加熱で補う必要がある。そこで、放冷モードの開始前に比較して放冷モードの開始後は、エアミックスドア19の操作位置を一旦所定開度θ2だけ最大暖房位置(HOT位置)側に移動させる。しかし、その後は、エアミックスドア19を最大冷房位置(COOL位置)側に向けて徐々に移動させて、車室内吹出温度を目標吹出温度TAOに維持する。
ところで、放冷モードの初期からバイパスドア17を、蒸発器9の通風路の下側部位Aを所定開度θ1だけ開く位置に操作するから、この下側部位Aにも、ある程度の風量の空気を送風できる。そのため、放冷モードの初期から蒸発器9の通風路の上側の氷だけでなく、下側部位Aの氷も融解させることができる。これにより、蒸発器9の吹出温度の上下方向の温度差(温度分布)を著しく低減できるので、蒸発器吹出直後に配置した1個の温度センサ32でもって、蒸発器吹出温度を正確に検出できる。ここで、温度センサ32の配置場所は、後述の図25に示すように蒸発器9の吹出直後で、バイパスドア17より若干量上方位置(蒸発器コア部の上下方向の概略中央位置)に設定すればよい。
図23において、蒸発器吹出温度aは第6実施形態によるもので、蒸発器吹出温度bは比較例(図6(a)のごとく第1バイパス通路16、バイパスドア17を持たない通常の空調装置)によるものである。比較例の場合は、送風空気の全量が蒸発器9を通過するので、蒸発器9の通過風量が大きい。そのため、氷の融解速度が速く、蒸発器吹出温度bの上昇速度が速い。
その結果、比較例の場合は、放冷モードの開始後、41秒経過で蒸発器吹出温度bが快適性の得られる車室内吹出温度cに到達してしまうので、放冷モードの持続可能時間が短い。
これに対して、第6実施形態によると、放冷モードにおいてバイパスドア17により第1バイパス通路16を開くことにより、蒸発器9の通過風量を減少して氷の融解を遅らせて、蒸発器吹出温度aの上昇速度を低下できる。これにより、、蒸発器吹出温度aが上記車室内吹出温度cに到達する時間を放冷モードの開始後、矢印1(丸付き数字1)のごとく60秒まで延長できる。
しかも、比較例の場合は、蒸発器9の通過風量が大きいため、氷の融解速度が速く、空気中への水分の蒸発割合が大きいので、車室内湿度の急上昇に基づく不快感を乗員が感じやすい。これに対して、第6実施形態では、蒸発器9の通過風量を減少して氷の融解を遅らせるので、空気中への水分の蒸発割合を小さくできる。そのため、車室内湿度の上昇割合を小さくでき、湿度感(湿度による蒸し暑さ)の不快を抑制できる。
これにより、車室内の乗員が不快感を感じる限界蒸発器吹出温度Teoを矢印2(丸付き
数字2)のごとく比較例の場合より1°C高くすることができ、この結果、放冷モードの可能時間をさらに4秒程度延長できる。
なお、図23の実験条件として、蒸発器9の熱交換用コア部(通風部)の大きさは、高さ=215mm、幅=253mm、厚さ(奥行き寸法)=58mmである。また、蒸発器9での保水量(凝縮水量)=100g、バイパスドア17の長さ=90mm、空調ケース10への風量=200m3/hである。また、バイパスドア17の初期開度(放冷モード開始時の開度)は、図15(d)を全開とした時の1/4開度である。
次に、図24は放冷モードにおけるバイパスドア17の開度と、放冷可能時間および蒸発器吹出温度バラツキとの関係を示す実験データであり、実験条件は図23と同じである。
図24の横軸はバイパスドア17の初期開度(放冷モード開始時の開度)であり、縦軸は放冷可能時間および蒸発器吹出温度バラツキである。放冷可能時間は、図23において説明した限界蒸発器吹出温度Teoに蒸発器吹出温度が上昇するまでの時間である。蒸発器吹出温度バラツキは、蒸発器吹出温度の最高値と最低値との差である。
図24に示すように、バイパスドア17の初期開度が1/4開度付近までは蒸発器9の通過風量が小さくて氷の融解を遅らせるので、放冷可能時間をバイパスドア初期開度=0/4(蒸発器側全閉状態)と同等レベルに維持できる。一方、バイパスドア17の初期開度を1/4開度以上に増大させることにより、蒸発器吹出温度バラツキを10°C以下に抑えることができることが分かった。
従って、バイパスドア17の初期開度を1/4開度付近に設定することにより、放冷可能時間の維持と、蒸発器吹出温度バラツキの抑制とを両立できる。
図25は温度センサ32による実際の蒸発器吹出温度検出値と、蒸発器吹出温度平均値との関係を示す実験データであり、実験条件は図23と同じであって、バイパスドア17の開度は、蓄冷モードでは図23(a)の蒸発器側全閉位置であり、放冷モードでは初期開度=1/4開度〜全開の間で変化させている。
図25の実験では、温度センサ32の配置場所として蒸発器9の吹出直後の上部32aと、上下方向における中央部32bと、下部32cの3カ所を設定している。中央部32bは、前述したようにバイパスドア17より若干量上方位置である。
図25の実験結果に示すように、バイパスドア17より若干量上方の中央部32bに配置した温度センサ32によれば、温度センサ32を1個用いるだけでも、蒸発器吹出温度の平均値に極めて近似した温度(±2°Cの範囲内の温度)を検出できることが判明した。すなわち、バイパスドア17の初期開度設定により蒸発器吹出温度のバラツキを抑制して、1個の温度センサ32でも蒸発器吹出温度の平均値に近似した値を検出できるのである。
(第7実施形態)
図26は第7実施形態の全体構成図であり、図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、相違点のみ説明する。
送風機11の吸入側には内外気切替箱11aが配置され、この内外気切替箱11aの内気導入口11bと外気導入口11cが内外気切替ドア11dにより切替開閉される。内外気切替箱11aから吸入された車室内の空気(内気)または車室外の空気(外気)が送風機11により空調ケース10内に送風される。
なお、第7実施形態では、空調ケース10内において第1実施形態の第1バイパス通路16およびバイパスドア17を設けない構成となっている。そのため、温水式ヒータコア16の側方に位置するバイパス通路21と、温水式ヒータコア16を通過する温風とバイパス通路21を通過する冷風との風量割合を調節するエアミックスドア19のみを設けている。
また、空調ケース10内で、蒸発器9の空気吹出直後の複数(本例では2箇所)の部位に、サーミスタからなる蒸発器吹出温度センサ(蒸発器冷却度合検出手段)321、322が設けられている。この複数の蒸発器吹出温度センサ321、322は、蒸発器9におけるフロスト(着霜)の発生状況を判定するために、蒸発器9吹出直後の所定距離離れた複数部位の吹出空気温度を検出する。空調ケース10内で、蒸発器9の空気吸込側には、蒸発器9の吸込空気温度を検出するサーミスタからなる蒸発器吸込空気温度センサ34が設けられている。
ところで、空調用電子制御装置5には、上記したセンサ321、322、34の他に、空調制御のために、内気温、外気温、日射量、温水温度等を検出する周知のセンサ群35からの検出信号、空調制御パネル36の操作スイッチ群37からの操作信号等が入力される点は第1実施形態等と同じである。
なお、第7実施形態の空調用電子制御装置5は冷房高負荷時には車両エンジン用電子制御装置38に対して停車時の車両エンジン停止を禁止する信号(すなわち、停車時の車両エンジン稼働要求の信号)を出力する。
次に、上記構成において第7実施形態の作動を説明する。図27のフローチャートは空調用電子制御装置5のマイクロコンピュータにより実行される制御処理を示している。車両エンジン11のイグニッションスイッチ(図示せず)がオンされ、かつ空調制御パネル36の操作スイッチ群37のオートスイッチがオンされると、図27の制御ルーチンが起動される。そして、ステップS100にて目標蒸発器吹出温度TEO=4°Cに初期化し、ステップS110にて各種センサ、スイッチ類からの信号を読み込む。
次に、ステップS120にて前述の数式1に基づいて目標吹出温度TAO(以下TAOという)を算出(決定)する。ここで、TAOは、乗員により設定された設定温度に車室内を維持するために必要な目標吹出空気温度である。
次のステップS120にて定常時目標蒸発器吹出温度TEOA を決定する。この目標蒸発器吹出温度TEOA の決定は、次に述べる第1目標蒸発器吹出温度TEOA1および第2目標蒸発器吹出温度TEOA 2 に基づいて行う。
まず、第1目標蒸発器吹出温度TEOA1は図28(図3と同じ特性)のマップに基づいて決定する。次に、第2目標蒸発器吹出温度TEOA2も、図29(図4と同じ特性)のマップに基づいて決定する。
そして、上記第1目標蒸発器吹出温度TEOA1=f(TAO)、第2目標蒸発器吹出温度TEOA2=f(Tam)のうち、低い温度の方を最終的に、定常時目標蒸発器吹出温度TEOA として決定する。
次に、ステップS140に進み、蒸発器9で発生する凝縮水の蓄冷量制御を行う蓄冷モードを実行してよい条件にあるかどうか判定する。ここで、蓄冷モードによる凝縮水の蓄冷量制御とは、信号待ちのような一時的な停車時における次回の車両エンジン停止に備えて、車両エンジン稼働中に予め、凝縮水の蓄冷量を制御することを言う。
より具体的には、凝縮水の蓄冷量を増加させるためには、蒸発器温度の低下により凝縮水の温度を低下させるか、あるいは凝縮水の量を増やすことが必要である。ここで、凝縮水の蓄冷量をより効果的に増加させるには、凝縮水を氷点下以下の温度まで冷却して凝縮水を凍結させ、潜熱の形で蓄冷するのがよい。
そして、本例においては、蓄冷モードを、次の3つの条件のいずれにも該当しない場合に実行させる。すなわち、図30のステップS1410〜S1430に示すように、(1)高速走行時、(2)蒸発器9のフロスト発生状況が所定の限界レベルに到達した時、および(3)冷房高負荷時のいずれにも該当しない場合は、蓄冷モードの実行を許可し、一方、上記(1)〜(3)の条件のいずれか1つに該当するときは蓄冷モードの実行を禁止する。
つまり、(1)高速走行時は停車頻度が少ないと予測できるので、停車時の車両エンジン停止に備えて凝縮水の蓄冷制御を行う必要がない。(2)蒸発器9のフロストが進行して、所定の限界レベルに到達した時は、これ以上に蒸発器9への霜付着による蒸発器冷却性能の低下が起きることを阻止するために、蓄冷モードを実行しない。また、フロスト発生状況が所定の限界レベルに到達した時は、既に、凝縮水の凍結により蓄冷量が増加しているので、その意味からも蓄冷モードを実行する必要がない。(3)冷房高負荷時は、蓄冷モードを実行しても車両エンジン停止時に車室内への吹出空気温度が直ぐ上昇して冷房フィーリングを悪化させるので、車両エンジン停止自体をキャンセルし、車両エンジン稼働中の蓄冷モードも実行しない。
図30のステップS1410による高速走行の判定は、例えば、車速>70km/h、または車両エンジン回転数>2500rpmで判定する。なお、カーナビゲーションの地図情報から高速走行を判定することもできる。
また、ステップS1420による蒸発器9のフロスト発生の判定は、次のごとく行う。蒸発器9におけるフロストは部分的に発生し、この部分的なフロストが次第に拡大していく。そして、フロストの発生部位では空気通過が制限されて蒸発器吹出温度が低下して、フロストの発生部位と発生しない部位との間で蒸発器吹出空気に温度差が発生する。そこで、複数箇所に設けた蒸発器吹出温度センサ321、322の検出温度差が所定値(例えば、5°C)以上であるとき、蒸発器9のフロストが所定の限界レベルに到達したと判定できる。
ここで、蒸発器9のフロスト限界レベルの判定は、複数箇所の温度センサ321、322の検出温度差が所定値以上であって、かつ、この所定値以上の温度差の状態が所定時間(例えば、3分間)継続した場合というAND条件でもって行うことにより、判定精度を高めるようにしてもよい。さらには、上記判定条件に、複数箇所の温度センサ321、322の少なくとも1つの検出温度が0°Cであるとい判定条件を追加してもよい。
また、ステップS1430による冷房高負荷判定は、実際の蒸発器吹出温度TEと目標吹出空気温度TEOとの温度差(TE−TEO)が所定値(例えば、5°C)以上のときを冷房高負荷時と判定する。なお、実際の蒸発器吹出温度TEは複数の蒸発器吹出温度センサ321、322の検出温度の平均値である。 そして、ステップS1430にて冷房高負荷時と判定されたときは、ステップS1440で車両エンジン停止禁止(車両エンジン稼働要求)の指令信号を車両エンジン用電子制御装置38に出す。この車両エンジン停止禁止の指令信号が出たときは、車両が停車しても、車両エンジン用電子制御装置38は車両エンジン4を停止しないので、圧縮機1の稼働状態が継続され、これにより、冷房高負荷時に圧縮機1停止による車室内温度の急上昇を未然に防止して、乗員の不快感を抑える。
そして、ステップS140にて凝縮水の蓄冷モード「禁止」と判定されたときは、ステップS150に進み、目標蒸発器吹出温度TEO=定常時目標蒸発器吹出温度TEOA とする。次のステップS160にて、目標蒸発器吹出温度TEOと実際の蒸発器吹出温度TEと比較し、TE>TEOのときは、ステップS170に進み、電磁クラッチ2をオンし、圧縮機1を作動させる。逆に、TE≦TEOのときは、ステップS180に進み、電磁クラッチ2をオフし、圧縮機1を停止する。
一方、ステップS140にて前記(1)〜(3)の条件のいずれにも該当せず、凝縮水の蓄冷モード「実行」と判定されたときは、ステップS190に進み、車両エンジン停止後目標蒸発器吹出温度TEOB を決定する。
この車両エンジン停止後目標蒸発器吹出温度TEOB は具体的には車両エンジン(圧縮機)停止後、所定時間(例えば1分)経過後の目標蒸発器吹出温度であって、図31のマップに示すようにTAOに基づいて決定される。図31の例では、TAOが所定温度(12°C)に上昇するまではTAOとともにTEOB が上昇し、TAOが12°C以上の範囲ではTEOB が12°Cに固定されるようになっている。
なお、図31の特性は一例であって、例えば、TEOB =12°C一定としてもよいし、また、TEOB =TAO−1°Cとしてもよい。このように、TEOB の具体的決定方法は種々変形可能であり、要は車両エンジン(圧縮機)停止後、所定時間(例えば1分)経過後における冷房フィーリングを損なわない範囲で目標蒸発器吹出温度TEOB を決定すればよい。また、上記の車両エンジン(圧縮機)停止後の所定時間を一例として1分としているのは、信号待ち等による一時的な停車時間(車両エンジン停止時間)が平均的には1分程度であるからである。
次に、ステップS200に進み、車両エンジン停止後蒸発器吹出温度TEoff を推定する。この車両エンジン停止後蒸発器吹出温度TEoff は、車両エンジン停止後、所定時間(例えば1分)経過後の蒸発器吹出温度を、車両エンジン稼働中の現時点での蒸発器吸込空気の条件(温度、湿度)、風量、現時点での蒸発器吹出空気温度TE等に基づいて推定する。
具体的には、車両エンジン停止後蒸発器吹出温度TEoff は次の数式17bおよび図32のマップに基づいて推定する。
車両エンジン停止後TEoff =現時点でのTE+ΔT(数式17b)
ここで、ΔTは図32のマップに示すように蒸発器吸込空気温度と風量とに基づいて決定され、蒸発器吸込空気温度と風量の上昇につれて上昇する。
次に、ステップS210に進み、上記の車両エンジン停止後目標蒸発器吹出温度TEOB と車両エンジン停止後蒸発器吹出温度TEoff とを比較し、車両エンジン停止後TEoff >TEOB のときはステップS220に進み、TEO=TEO−1°Cに補正する。逆に、車両エンジン停止後TEoff ≦TEOB のときはステップS230に進み、TEO=TEO+1°Cに補正する。 なお、ステップS220、S230の演算が、図27の制御ルーチンのスタート後の初回であるときは、ステップS100での初期化によりTEO=4°Cになっているので、4°C±1°Cの演算を行い、2回目以降の演算では現時点でのTEOに対して±1°Cの演算を行う。
そして、ステップS220、S230で演算されたTEOと、実際の蒸発器吹出温度TEとの比較により、ステップS160〜S180で電磁クラッチ2(すなわち、圧縮機1)の作動を断続する。
以上の説明から理解されるように、本例においては、ステップS190〜S230に至る目標蒸発器吹出温度TEOの設定ステップと、ステップS160〜S180による圧縮機断続制御ステップとにより、蓄冷モードが実行される。
一方、信号待ち等の停車時には、車両エンジン用電子制御装置38は車両エンジン4の回転数信号、車速信号、ブレーキ信号等に基づいて停車状態を判定すると、冷房高負荷時の車両エンジン停止禁止の指令信号(図30のステップS1440)が出ている場合を除き、車両エンジン用電子制御装置38は燃料噴射の停止等により車両エンジン4を自動的に停止させる。
従って、停車時には冷凍サイクルの圧縮機1も必然的に停止する。しかし、空調用電子制御装置5は圧縮機制御以外の風量、吹出温度制御等の機能はそのまま、走行時と同様に継続する。
このように、停車時には車両エンジン4の停止に伴って圧縮機1も停止するのであるが、車両走行中に前もって、車両エンジン停止後目標蒸発器吹出温度TEOB よりも、車両エンジン停止後蒸発器吹出温度TEoff が上回ると推定されるときには、ステップS220において目標蒸発器吹出温度TEOを所定値α(例えば1°C)だけ引き下げて、蒸発器凝縮水の温度低下と凝縮水量の増加を図って、凝縮水の蓄冷量を増加させる。これにより、車両エンジン停止時は、蒸発器凝縮水の蓄冷量の放冷により空調空気の冷却作用を得ることができ、車両エンジン停止後蒸発器吹出温度TEoff を車両エンジン停止後目標蒸発器吹出温度TEOB 以内に抑えて、車両エンジン停止後の冷房フィーリングの悪化を抑制できる。
本第7実施形態では、停車時における車両エンジン停止時間として1分間を想定しているので、車両エンジン停止時間が1分間より長くなる場合は車両エンジン停止後蒸発器吹出温度TEoff が車両エンジン停止後目標蒸発器吹出温度TEOB より上昇することになるが、この場合の対処としては車両エンジン4を始動して、圧縮機1を作動させる以外に手段はない。
従って、車両エンジン停止後に、車両エンジン停止時間の延長により車両エンジン停止後蒸発器吹出温度TEoff が車両エンジン停止後目標蒸発器吹出温度TEOB より上昇した場合は、車両エンジン稼働要求の指令信号を空調側から出して自動的に車両エンジン4を始動するようにしてもよい。これによれば、圧縮機1の作動が再開されて、蒸発器9による冷却作用を再開することにより、冷房フィーリングの悪化を防止できる。
また、停車状態から運転者が発進操作を行うと、アクセル信号等により車両エンジン用電子制御装置38は車両エンジン4を自動的に始動させ、圧縮機1を作動させる。
(第8実施形態) 上記の第7実施形態では、車両エンジン稼働中(圧縮機稼働中)に、車両エンジン4の停止(すなわち、圧縮機1の停止)後における蒸発器吹出空気温度TEoff の挙動(温度上昇)を推定(ステップS200)して、車両エンジン稼働中における目標蒸発器吹出空気温度TEOを補正(ステップS220、S230)することにより、車両エンジン稼働中に前もって凝縮水温度を制御して凝縮水の必要蓄冷量を確保するようにしている。
これに対して、第8実施形態では車両エンジン稼働中に、前もって、送風機11の風量の補正を行って凝縮水量を確保することにより、車両エンジン稼働中に前もって凝縮水の必要蓄冷量を確保するものである。すなわち、図33に示すように、蒸発器9での凝縮水量は、送風機11の風量と相関があり、風量が少ない程、風圧により吹き飛ばされる凝縮水が減少して、蒸発器9に保持される凝縮水量が増加する関係にある。
そこで、この点に着目して、第8実施形態では図34のフローチャートに示すように、ステップS220aでは送風機11の目標風量BLW=目標風量BLW−αとして、凝縮水量を増加させ、また、ステップS220aでは送風機11の目標風量BLW=目標風量BLW+αとして、凝縮水量を減少させる。
これによると、車両エンジン停止後目標蒸発器吹出温度TEOB よりも、車両エンジン停止後蒸発器吹出温度TEoff が上回ると推定されるときには、ステップS220aにおいて目標風量BLWを減少させて蒸発器凝縮水量を増加させ、凝縮水の蓄冷量を増加させる。これにより、車両エンジン停止時は、蒸発器凝縮水の蓄冷量の放冷により空調空気の冷却作用を得ることができ、車両エンジン停止後蒸発器吹出温度TEoff を車両エンジン停止後目標蒸発器吹出温度TEOB 以内に抑えて、車両エンジン停止後の冷房フィーリングの悪化を抑制できる。
なお、図34のフローチャートにおいて、図27と相違する点のみ簡単に説明すると、ステップS100aでは目標風量BLW=最大レベルHiに初期化する。ステップS130aでは目標蒸発器吹出温度TEOを決定する。この目標蒸発器吹出温度TEOは第1実施形態における定常時目標蒸発器吹出温度TEOA と同じ方法で決定する。
また、ステップS130bでは、定常時の目標風量BLWA をTAOに基づいて図35のように決定する。ステップS150aでは、目標風量BLW=定常時の目標風量BLWA とする。他の点は図27同じである。
なお、第8実施形態による目標風量BLWの補正制御と、第7実施形態による目標蒸発器吹出温度TEOの補正制御とを組み合わせて実施してもよいことはもちろんである。
(第9実施形態) 上記の第7、第8実施形態では、車両エンジン稼働中に、車両エンジン4停止(すなわち、圧縮機1の停止)後における蒸発器吹出空気温度TEoff の挙動(温度上昇)を推定して、車両走行中に前もって凝縮水の蓄冷量(凝縮水温度または凝縮水量)を確保するようにしている。
これに対して、第9実施形態では、車両エンジン4の状態および蒸発器9における凝縮水の発生状況に応じて内外気導入モードを制御する。すなわち、図36は第9実施形態を示すフローチャートであり、ステップS300にて空調装置の冷凍サイクルRがオン(起動)しているか判定する。この冷凍サイクルRの起動は具体的には空調制御パネル36の操作スイッチ群37のエアコンスイッチ(圧縮機作動スイッチ)が投入されているかどうかで判定する。
冷凍サイクルRがオン状態のときは、ステップS310にて各種センサ、スイッチ群からの信号を読み込む。このステップS310は図27、34のステップS110と同じである。
次のステップS320にて、図27、34のステップS120と同様に目標吹出温度TAOを算出する。次に、ステップS330にて目標風量BLWを算出する。この目標風量BLWはTAOに基づいて図35のBLWA と同様の特性にて決定される。次に、ステップS340にて内外気モードを決定する。この内外気モードも図37に示すようにTAOに基づいて決定される。図37は内外気モード決定の特性を例示するもので、TAOの低温側(最大冷房側)では内気モードを選択し、TAOの高温側(最大暖房側)では外気モードを選択し、中間温度域では、内外気混入モードを選択する。
次に、ステップS340aにて吹出モードがTAOに基づいて図38に例示するように決定される。すなわち、TAOの低温側ではフェイス吹出口27から空気を吹き出すフェイスモードを選択し、TAOの中間温度域ではフェイス吹出口27とフット吹出口29の両方から同時に空気を吹き出すバイレベルモードを選択し、TAOの高温域ではフット吹出口29から空気を吹き出すフットモードを選択する。
次に、ステップS350にて、車両エンジン稼働中(走行中)か判定する。例えば、車速<10km/hで、かつ、車両エンジン回転数<100rpmのときは車両エンジン停止時(非稼働)と判定して、ステップS360に進み、強制的に内気モードを設定する。すなわち、内外気ドア11dをステップS340の内外気モードとは関係なく強制的に内気導入位置(図26の実線位置)に操作して、空調ケース10内へ内気のみを導入する。
また、車両エンジン稼働中(圧縮機稼働中)であるときは、ステップS370に進み、冷凍サイクルRのオン状態が連続して所定時間(本例では5分)以上経過したか判定する。この判定は蒸発器9における凝縮水の保持状況を判定するためのもので、冷凍サイクルRの起動直後では蒸発器9が乾燥状態にあって、凝縮水の保水量が零の状態にある。
そこで、冷凍サイクルRのオン状態が5分以内であるときは、ステップS380に進み、内外気モードを強制的に外気モードにする。すなわち、内外気ドア11dをステップS340の内外気モードとは関係なく強制的に外気導入位置(図26の破線位置)に操作して、空調ケース10内へ外気のみを導入する。
このステップS380による強制外気モードは5分間継続して、蒸発器9での凝縮水量を確保する。つまり、車室内の内気中の限られた水分を凝縮させるよりも、水分量の限定されない外気を導入して蒸発器9の除湿作用により速やかに凝縮水量を確保できる。そして、ステップS370による5分間経過後はステップS340により決定された内外気モードが選択される。
また、夏期冷房時では通常、内気温度<外気温度の関係にあるので、上記のように車両エンジン停止時に内外気モードをステップS360にて強制的に全内気モードとすることにより、車両エンジン停止時における冷房負荷を低減して、車両エンジン停止時における車室内吹出温度の上昇をより効果的に抑制できる。
なお、図36では説明の簡略化のために、圧縮機1の断続制御部分について図示していないが、目標蒸発器吹出空気温度TEOと実際の蒸発器吹出空気温度TEとの比較により圧縮機1の作動を断続制御することは第9実施形態でも同じである。
上記第9実施形態では、車両エンジン停止時にステップS360にて強制的に内気のみを導入する内気モードを設定しているが、これの代わりに、内気導入割合の高い内気主体モードを設定してもよい。同様に、冷凍サイクルRの起動直後に、ステップS380にて強制的に外気のみを導入する外気モードを設定しているが、これの代わりに、外気導入割合の高い外気主体モードを設定してもよい。
また、内気温度と外気温度の高低を比較し、内気と外気のうち、低い温度の方を車両エンジン停止時には空調ケース10内に選択導入するように、内外気モードをステップS360にて決定してもよい。
また、内気温度と外気温度の高低を比較し、その温度差が所定値以上のときは、車両エンジン停止時に内気と外気のうち、低い温度の方の導入割合を車両エンジン稼働時よりも大きくするように、内外気モードをステップS360にて決定してもよい。
また、内気温度と外気温度の高低を比較し、その温度差が所定値以内のときは、内気と外気のうち、低湿度側の方を空調ケース10内に選択導入するように、内外気モードをステップS360にて決定してもよい。
(第10実施形態)
図39は第10実施形態を示すフローチャートであり、上記第9実施形態におけるステップS360による内気モードの設定の代わりに、ステップS360aにて車両エンジン停止時の目標風量BLW1 を設定する。この車両エンジン停止時の目標風量BLW1 は、図40(a)〜(c)に示すように、車両エンジン停止直前の目標風量BLW2 に対して同等以下(BLW1 ≦BLW2 )に設定している。すなわち、車両エンジン停止直前の目標風量BLW2 の小量域では、BLW1 =BLW2 とし、そして、車両エンジン停止直前の目標風量BLW2 の大量域では、BLW1 <BLW2 として、送風機11の風量を低下することにより、車両エンジン停止時における冷房負荷の低減を図って、車両エンジン停止時における車室内吹出温度の上昇をより効果的に抑制できる。
なお、上記第9、第10実施形態を組み合わせて、車両エンジン停止時には内気モードを設定すると同時に、車両エンジン停止時の目標風量BLW1 をBLW1 ≦BLW2 の関係に設定して、車両エンジン停止時における冷房負荷をさらに低減するようにしてもよい。
さらに、上記第9、第10実施形態による内外気導入モード制御および車両エンジン停止時の目標風量BLW1 を設定する制御を第7、第8実施形態に組み合わせてよい。
(第11実施形態)
車両用空調装置においては、日射量、外気温、乗車人数等による冷房負荷の変動が大きく、冷房負荷の大きい時には、圧縮機1が連続運転しても蒸発器吹出温度TEが0°C以下に低下せず、凝縮水を凍結できない場合がある。
そこで、第11実施形態では車両エンジン稼働中に、冷房負荷低減のための処置を特別に採ることにより、蒸発器9の凝縮水温度を低下させて、凝縮水を積極的に凍結させる。これにより、凝縮水の単位重量当たりの蓄冷量を増加させることができ、車両エンジン停止時の放冷モードでは凝縮水の顕熱だけでなく、融解潜熱をも利用して空気を冷却できるようにしている。
すなわち、図41は第11実施形態のフローチャートであり、ステップS300〜S350は図36、図39と同じである。車両エンジン稼働中であると、ステップS350からステップS390に進み、冷房高負荷か判定する。この判定は例えば、車室内への目標吹出空気温度TAOに基づいて行うことができ、TAOが−20°Cより低いとき冷房高負荷時とする。
そして、冷房高負荷のときは、ステップS400に進み、クールダウン中か判定する。ここで、クールダウンとは、冷凍サイクルRの起動直後であって、車室内温度が設定温度よりも大幅に高い状態にあり、車室内温度を設定温度に向かって急速に低下させる必要のある状態を言う。このクールダウン中の判定もTAOに基づいて行うことができ、TAOが例えば、−30°Cより低いときをクールダウン中とする。
クールダウン中であれば、ステップS300に戻って、ステップS330による目標風量BLWとなるように、送風機11の風量を制御する。従って、通常制御通りの風量となり、クールダウン性能を損なうことはない。
一方、クールダウン中でないとき、すなわち、クールダウン終了後の冷房高負荷時には、ステップS400からステップS410に進み、送風機11の目標風量を、ステップS330による通常制御時のBLWより小さいBLWO (BLWO ≦BLW)とする。
ここで、図42(a)〜(d)はステップS410による風量BLWO の具体的な決定方法を例示するもので、クールダウン終了後のTAO低温域(すなわち、冷房域)において、BLWよりもBLWO を種々なパターンで小さくしている。
一方、このように、クールダウン終了後のTAO低温域にあるときは、通常制御時の目標風量BLWより小さいBLWO を特別に設定することにより、冷房負荷を低減できる。これにより、車両エンジン稼働中において第7実施形態等による蓄冷モード(例えば、目標蒸発器吹出温度の低温側への補正)を実行した際に、冷房高負荷時であっても、蒸発器温度を低下させて、凝縮水を凍結させることが可能となる。
つまり、第11実施形態では冷房高負荷時に、冷房負荷の低減策を特別に採って、冷房性能よりも蒸発器温度の低下の方を優先させて凝縮水を凍結させることができる。
図41の上記ステップS410において、目標風量の低減と強制内気モードの設定とを組み合わせて、冷房負荷の低減効果を高めるようにしてもよい。
また、上記ステップS410において、目標風量の低減の代わりに、吹出モードとしてバイレベルモードを強制的に設定するとともに、内外気モードとして内気モードを強制的に設定し、これにより、冷房負荷の低減を行うようにしてもよい。すなわち、車両用空調装置においては、通常、フット吹出口29と内気導入口11bとが比較的短い距離で近接配置されているので、バイレベルモードによるフット吹出口29からの吹出冷風をショートサーキットで内気導入口11bに再吸入させることができ、これにより、蒸発器9の吸込空気温度が低下し、冷房負荷を低減できる。
また、上記ステップS410において、目標風量の低減の代わりに、内気温度と外気温度の高低を比較し、その温度差が所定値以上のときは、低温側の方を導入したり、低温側の方の導入割合を増やすようにしてもよい。
このように、冷房高負荷時における負荷低減策は種々なものを採用できる。
さらに、冷房高負荷時に、冷凍サイクルRの蒸発器9における冷媒蒸発圧力(サイクル低圧)を低下させ、これにより、冷媒蒸発温度を強制的に0°C以下に低下させて蒸発器凝縮水の凍結を促進するようにしてもよい。すなわち、冷凍サイクルRの減圧手段として、温度式膨張弁8の代わりに、蒸発器出口冷媒の温度、圧力に応動して、弁開度が電気的に制御される電気式膨張弁を用いて、冷房高負荷時には電気式膨張弁の開度を通常制御時よりも小さい小開度に強制的に絞ることにより、サイクル高低圧差を拡大して、低圧を下げるようにすればよい。
なお、第11実施形態において、上記のステップS390、S400による冷房負荷大、クールダウン中の判定を、TAOの代わりに内気温と設定温度との温度差等に基づいて行うこともできる。また、その他に、外気温、蒸発器吸込空気温度、風量等に基づいて冷房負荷大、クールダウン中の判定を行うこともできる。 また、図30のステップS1430で説明したように、実際の蒸発器吹出温度TEと目標吹出空気温度TEOとの温度差(TE−TEO)に基づいて冷房高負荷の判定を行ってもよい。
なお、上記した第7から第11実施形態では、蒸発器吹出温度を圧縮機1の作動の断続制御により行う場合について説明したが、車両用空調装置では蒸発器吹出温度を圧縮機1の容量制御により行うことも周知であり、このような圧縮機容量制御方式のものにおいても本発明を同様に実施できる。すなわち、圧縮機容量制御により蒸発器吹出温度を制御して凝縮水の蓄冷量を制御し、これにより、車両エンジン停止時における冷房フィーリングを向上することができる。
また、上記の実施形態では、蒸発器冷却度合を検出するために、蒸発器吹出空気温度を温度センサ321、322により検出しているが、蒸発器9のフィン表面温度、蒸発器9の冷媒温度、冷媒蒸発圧力等を検出して、蒸発器冷却度合を検出するようにしてもよい。
また、圧縮機断続作動等のハンチング防止のために、蒸発器吹出空気温度等の判定ステップにヒステリシスを設けた方が好ましい。
(第12実施形態)
最初に、第12実施形態の課題を説明すると、信号待ち時等で停車して、エンジンが停止される毎に、圧縮機も停止して蒸発器温度が上昇し、車室内への吹出空気温度が上昇するので、乗員の冷房フィーリングを損なうという不具合がある。また、蒸発器温度の上昇により凝縮水が乾ききって、蒸発器表面のカビ等に起因する悪臭を発生する場合がある。
上記点に鑑みて、第12実施形態はエンジン停止等に伴う圧縮機強制停止時における冷房フィーリングの悪化を抑制することを目的とする。
図43は第12実施形態の全体構成図であり、第7実施形態の図26とほぼ同じであり、空調ケース10内で、蒸発器9の空気吹出直後の部位に、サーミスタからなる蒸発器吹出温度センサ(蒸発器冷却度合検出手段)32を1箇所だけ設けている点が相違する。
また、図44は空調制御の全体のフローチャートであり、第1実施形態の図2とほぼ同じであり、相違点はステップ170のみである。すなわち、第12実施形態では、図43に示すようにバイパスドア17を持たない構成であるので、ステップ170において、エアミックスドア19の開度SWを算出するのみでよい。その他のステップは図2と同じである。
次に、上記構成において第12実施形態の作動を説明する。図44の制御ルーチンでは、図2と同様に、ステップS100での初期化、ステップS110での信号読み込み、ステップS120での目標吹出温度(TAO)の算出を行い、次に、ステップS125にて空調モードが蓄冷、放冷、通常のいずれのモードであるか選定する。
本例では、エンジン4(圧縮機1)の稼働時に蓄冷モードの禁止条件を判定したときだけ通常モードを選定し、そして、エンジン4(圧縮機1)の稼働時のその他の時は蓄冷モードを選定する。一方、空調作動時(送風機11の作動時)においてエンジン4が停止し、圧縮機1が停止したときは放冷モードを選定する。
次に、ステップS130にて目標蒸発器吹出温度TEOを算出する。すなわち、通常モードの場合は、図3の第1目標蒸発器吹出温度TEO1 および図4の第2目標蒸発器吹出温度TEO 2に基づいて通常モード用のTEOを算出する。また、蓄冷モード時は、氷点下の蓄冷用TEO(例えば、−2°C〜−1°C)を算出する。 次に、ステップS140での送風量BLWの算出、ステップS150での内外気モード決定、ステップS160での吹出モード決定を行う。次に、ステップS170にて、エアミックスドア19の目標開度SWを下記数式18に基づいて算出する。
SW=〔(TAO −Te)/ (Tw−Te)〕×100 (%)(数式18)
なお、Tw はヒータコア20の温水温度、Te は蒸発器9の吹出温度である。上記目標開度SWが得られるようにエアミックスドア19の操作位置が制御装置5の出力により制御される。 次に、ステップS180にて、目標蒸発器吹出温度TEOと実際の蒸発器吹出温度Te とを比較し、圧縮機作動を断続制御する。すなわち、蒸発器吹出温度Te が目標蒸発器吹出温度TEOより低下すると、制御装置5により電磁クラッチ2の通電を遮断して圧縮機1を停止させ、逆に、蒸発器吹出温度Te が目標蒸発器吹出温度TEOより上昇すると、制御装置5により電磁クラッチ2に通電して圧縮機1を作動させる。
これにより、蒸発器吹出温度Te が目標蒸発器吹出温度TEOに維持され、通常モード時には、蒸発器9の冷却能力の制御および蒸発器9のフロスト(着霜)防止を行うことができる。また、蓄冷モード時には、蒸発器吹出温度Teを氷点下の温度(例えば、−2°C〜−1°C)に制御して凝縮水を凍結させ、潜熱の形で蓄冷することができる。 次に、ステップS190に進み、空調側条件に基いてエンジン制御信号を出力する。このステップS190の詳細は図45に示す通りである。図45において、まず、ステップS1901ではエンジン稼働中(車両走行中)に蒸発器9の凝縮水蓄冷量Qを推定する。
これを具体的に説明すると、エンジン稼働中(車両走行中)は圧縮機1の稼働中であり、温度センサ32により検出される実際の蒸発器吹出温度Te に基づいて蒸発器9の凝縮水蓄冷量Qを推定することができる。すなわち、実際の蒸発器吹出温度Te が低い程、凝縮水蓄冷量Qが大である。
特に、エンジン稼働中(車両走行中)に蒸発器吹出温度Te を0°C以下にする蓄冷制御モードを設定して、凝縮水を凍結させれば、潜熱の形で蓄冷をすることができるので、凝縮水蓄冷量Qを大幅に増加できる。
また、蒸発器9での凝縮水保持量が多い程、凝縮水蓄冷量Qが大きくなるから、蒸発器吹出温度Te だけでなく、凝縮水保持量に相関関係のある蒸発器9吸込空気の風量、吸込空気の条件(温度、湿度)等をも考慮して、凝縮水蓄冷量Qを推定すれば、凝縮水蓄冷量Qの推定の精度を高めることができる。例えば、吸込空気の風量が大きくなれば、蒸発器9の凝縮水への風圧上昇により凝縮水保持量が減少する関係があるので、凝縮水保持量と風量は反比例の関係にある。また、吸込空気の湿度が上昇すれば凝縮水分量が増加して、凝縮水保持量が増加する。
次に、ステップS1902では停車時におけるエンジン停止可能時間Toff を上記凝縮水蓄冷量Qに基づいて推定する。ここで、エンジン停止可能時間Toff は、エンジン停止(すなわち、圧縮機停止)後においても、凝縮水蓄冷量Qにより蒸発器吹出温度Te を冷房フィーリングの維持可能な所定温度(例えば、12°C)以下に抑えることが可能な時間である。従って、エンジン停止可能時間Toff は図46のように凝縮水蓄冷量Qに対して比例関係を持って決定することができる。
次に、ステップS1903にて、予め設定された最短エンジン停止時間Toff 1 (例えば、20秒)と上記エンジン停止可能時間Toff とを比較し、後者のToff の方が短いときは、ステップS1904に進み、エンジン停止の禁止を要求する。すなわち、空調用制御装置5からエンジン用制御装置38に対してエンジン停止禁止の制御信号を出力するので、停車時であっても、車両エンジン4の稼働状態が継続され、圧縮機1の稼働状態も継続される。
この結果、車両エンジン4および圧縮機1の停止、稼働が短時間のうちに繰り返されて、乗員に不快感を与えたり、エンジン4の燃費を悪化させることを防止できる。すなわち、エンジン起動時には大量の燃料を消費するため、20秒以内のような極く短時間のエンジン停止であれば、エンジン停止をせずに、アイドル状態で運転を継続した方が燃費改善のために好ましい。
一方、ステップS1903にて、エンジン停止可能時間Toff が最短エンジン停止時間Toff 1 より長いときは、ステップS1905に進み、空調用制御装置5からエンジン用制御装置38に対してエンジン停止許可の制御信号を出力する。従って、エンジン用制御装置38では停車時に車両側のエンジン停止条件を満足しておれば、空調側からのエンジン停止許可の制御信号を受けて、車両エンジン4を停止させる。
次に、ステップS1906にて、今回、始めて車両エンジン4が稼働状態から停止状態に移行したか判定する。このエンジン稼働状態から停止状態への移行が今回、始めてであるときはステップS1907に進み、タイマーを0にリセットしてスタートさせる。すなわち、このタイマーにてエンジン停止後の経過時間Tの計測を開始する。
次に、ステップS1908にて、エンジン停止後の経過時間Tがエンジン停止可能時間Toff を越えたか判定し、エンジン停止可能時間Toff 以内の間はエンジン停止状態が継続される。そして、TがToff を越えると、ステップS1909に進み、エンジン用制御装置38に対してエンジン稼働要求の制御信号を出力する。これにより、エンジン用制御装置38では停車時であっても、車両エンジン4を自動的に起動し、稼働状態に戻す。
以上の説明から理解されるように、第12実施形態によると、エンジン稼働中に予め、エンジン停止可能時間Toff を図46のように凝縮水蓄冷量Qに基づいて決定しておき、停車時には、このエンジン停止可能時間Toff の間だけエンジン4を停止するようにしているから、この間は凝縮水蓄冷量Qによる放冷(冷却)作用にて蒸発器9への送風空気を冷却して、冷房フィーリングの悪化を防止できる。 そして、エンジン停止可能時間Toff の経過後は車両エンジン4の稼働を自動的に開始させるから、圧縮機1を稼働状態に復帰させて、再び、蒸発器9での冷媒蒸発による通常の冷却作用で冷房効果を発揮できる。
(第12実施形態の変形例)
第12実施形態は以下のごとく種々変形可能である。
第12実施形態では、エンジン停止可能時間Toff をエンジン稼働中における凝縮水蓄冷量Qに基づいて推定しているが、エンジン停止可能時間Toff を例えば、エンジン停止後の蒸発器9における凝縮水乾き完了時間Tdry をエンジン稼働中に推定しておき、この凝縮水乾き完了時間Tdry に基づいてエンジン停止可能時間Toff を推定してもよい。
すなわち、蒸発器9においては、温度上昇により凝縮水が乾ききるときに、蒸発器9表面のカビ等に起因する異臭が発生するという関係のあることが知られている。上記の凝縮水乾き完了時間Tdry は、エンジン稼働中における蒸発器吹出温度Te 、蒸発器吸込温度Ti 、風量BLWが低い程、大きくなる関係にある。
従って、これらのTe 、Ti 、BLWに基づいて、凝縮水乾き完了時間Tdry をエンジン稼働中に推定し、この凝縮水乾き完了時間Tdry よりも若干量だけ短くなるようにエンジン停止可能時間Toff を決定すればよい。
また、エンジン停止後における蒸発器吹出温度Te が冷房フィーリングを悪化させない所定温度に上昇するまでの時間Tteは、エンジン稼働中における蒸発器吹出温度Te 、蒸発器吸込温度Ti 、風量BLWが低い程、大きくなる関係にある。従って、この時間Tteに基づいてエンジン停止可能時間Toff を決定するようにしてもよい。
また、エンジン稼働中に上記した凝縮水乾き完了時間Tdry および蒸発器吹出温度Teの上昇により定まる時間Tteを両方とも推定し、そのうち、短い方の時間に基づいてエンジン停止可能時間Toff を決定するようにしてもよい。
さらには、凝縮水蓄冷量Qにより定まるエンジン停止可能時間と、凝縮水乾き完了時間Tdry と、蒸発器吹出温度Teの上昇により定まる時間Tteとをエンジン稼働中に推定し、それらの中で最も短い時間に基づいてエンジン停止可能時間Toff を決定するようにしてもよい。
また、図45のフローチャートでは、ステップS1903、S1904にて、最短エンジン停止時間Toff 1 よりもエンジン停止可能時間Toff が短いときは、エンジン停止禁止の制御信号を出力して、停車時であっても、車両エンジン4の稼働状態を継続しているが、この制御を廃止して短時間でもエンジン停止を行うようにしてもよい。この場合、冷房フィーリングの観点からはエンジン停止が短時間であるから支障はない。
また、圧縮機1の駆動源として車両エンジン4の他に電動モータ(図示せず)を設けて、圧縮機1を車両エンジン4と電動モータとによりハイブリッド駆動することも可能である。この場合は車両エンジン4の停止時に、エンジン停止時間Tがエンジン停止可能時間Toffを越えたときにステップS1909にてエンジン稼働要求の代わりに、電動モータに稼働要求して、圧縮機1を起動させるようにしてもよい。
従って、エンジン停止可能時間Toffは圧縮機停止可能時間であるとも言うことができる。
また、上記ハイブリッド駆動の場合、電動モータとして発電機を兼ねるモータジェネレータを使用すれば、エンジン稼働時にはエンジン4によりモータジェネレータを駆動してバッテリ充電用の発電機として作用させ、そして、エンジン停止時にモータジェネレータにより圧縮機1を駆動するようにしてもよい。
(第13実施形態)
第13実施形態は、上記第12実施形態と同様にエンジン停止に伴って圧縮機1が停止した後に、エンジン稼働要求(または、電動モータ稼働要求)により、圧縮機1を再起動させる条件の判定に関する。
図47、48は本発明者らによる実験データであり、図47は放冷モードにおける車室内吹出温度および蒸発器吹出温度の変化を示しており、図48は放冷モードにおける車室内吹出温度、車室内湿度、および蒸発器吹出温度の変化を示している。図47、48において、停車時のエンジン停止に伴って圧縮機1が停止して、放冷モードが開始されると、蒸発器吹出温度が上昇し、これにより、車室内湿度も上昇し始める。
そして、乗員は最初に車室内の湿度変化(湿度上昇による蒸し暑さ)を感じる。次に、蒸発器吹出温度の上昇により車室内への吹出温度が目標吹出温度TAOより上昇すると、温度変化を乗員は感じる。その後に、乗員は湿度上昇の不快感(湿度感)を感じ、次に、温度上昇の不快感(温熱感)を感じる。最後に、蒸発器温度が上昇して凝縮水が乾ききる過程において、臭い発生を感じる。なお、高外気温時における冷房開始直後(クールダウン時)においては、温熱感の方を湿度感より先に感じる。また、図48に示すように、室内湿度がガラス飽和湿度まで上昇すると、車両窓ガラスに曇りを発生することになる。
そこで、第13実施形態においては、熱負荷条件に基づいて放冷モード時の蒸発器吹出温度上限値(以下限界Teという)を算出し、実際の蒸発器吹出温度Teがこの限界Teを上回ると、エンジン稼働要求(または、電動モータ稼働要求)により、圧縮機1を再起動させる。
ここで、限界Teとは、放冷モード時の蒸発器吹出温度の上昇により湿度変化、湿度変化、臭い発生、および曇り発生を感じさせない知覚限界点の温度(上限値)を言う。
図49は限界Teを決定するマップの具体例であり、熱負荷が高いとき、すなわち、日射量が多いほど、また、外気温が高いほど、湿度変化、湿度変化、臭い発生を感じやすくなるので、これらに基づく限界Teは低い温度となる。
また、ガラス飽和湿度に到達する室内湿度は外気温とともに低下するので、曇り限界から決まる限界Teは外気温とともに低下する。従って、外気温が20°C以下になると、曇り限界から限界Teを決める場合が生じる。
図50は第13実施形態による制御例であり、車両エンジン4が停止して放冷モードが開始されると、ステップS300にて図49のマップにより限界Teを決定する。次に、ステップS310にて実際の蒸発器吹出温度Teが限界Teより低いか判定し、低いときはステップS320に進み、車両エンジン4の停止を継続する。
一方、放冷モード開始後の時間が経過して、実際の蒸発器吹出温度Teが限界Teを上回ると、ステップS310からステップS330に進み、車両エンジン4の稼働要求をエンジン用制御装置38に行って、車両エンジン4を起動させ圧縮機1を再起動させる。これにより、放冷モードにおいて、乗員が温熱感、湿度感、臭い発生、曇り発生を感じる前に圧縮機1稼働による通常の冷房作用を再開できる。
(第14実施形態)
最初に、第14実施形態の課題を説明すると、エンジンを停止して空調を行う放冷モードにおいては、圧縮機も停止するため、蒸発器温度が徐々に上昇して、蒸発器の除湿量が低下するため、車室内の湿度が上昇することになる。また、この放冷モードの状態では、今まで凍結していた凝縮水が融解し、その融解水分による空気への加湿状態が起こるため、車室内の湿度がさらに上昇してしまう。従って、これらの原因により窓ガラスが曇りやすくなるという現象が生ずる。さらに、車室内湿度の上昇により、湿度感(湿度による蒸し暑さ)の観点で冷房フィーリングを悪化させる。
上記点に鑑みて、第14実施形態では、車室内の除湿性能を向上させることを目的とする
図51は第14実施形態の全体構成図であり、図1からバイパス通路16およびバイパスドア17を廃止した図に相当する。図52は第14実施形態の空調制御の全体のフローチャートであり、図2に類似している。
なお、図51の空調用電子制御装置5は、車両エンジン4の稼働中に、蒸発器9の凝縮水蓄冷量、あるいはエンジン停止後における蒸発器吹出温度の挙動等を推定し、この推定結果に基づいて車両エンジン4の停止許可および停止禁止の信号を出したり、車両エンジン4停止後の蒸発器吹出温度の上昇、車室内空気の除湿の必要性等に基づいてエンジン再稼働要求の信号を出力する。
次に、上記構成において第14実施形態の作動を説明する。図52のフローチャートは空調用電子制御装置5のマイクロコンピュータにより実行される制御処理の概要を示し、図52の制御ルーチンは、車両エンジン4のイグニッションスイッチがオンされて制御装置5に電源が供給された状態において、空調制御パネル36の操作スイッチ群37の風量スイッチ37c(あるいはオートスイッチ)が投入されるとスタートする。なお、初期化ステップS100は1回だけ行われ、以後ステップS110からS180の制御が繰り返し行われる。
先ず、ステップS100ではフラグ、タイマー等の初期化がなされ、次のステップS110で、センサ32、33、センサ群35からの検出信号、操作スイッチ群37の操作信号、エンジン用電子制御装置38からの車両運転信号等を読み込む。
続いて、ステップS120にて、車室内へ吹き出される空調風の目標吹出温度TAOを算出する。
この目標吹出温度TAOは、車室内を温度設定スイッチ37aの設定温度Tset に維持するために必要な吹出温度であり、前述の数式1に基づいて算出される。
ステップS125にて空調モードが蓄冷、放冷、通常のいずれのモードであるか選定する。エンジン4(圧縮機1)の稼働中(車両走行中)における蓄冷モードと通常モードの選定は、例えば、具体的には上記基準目標吹出温度TAOに基づいて行うことができる。
すなわち、冷房起動直後のように車室内温度を設定温度Tset に向けて急速に低下させる必要のあるクールダウン時とか、あるいは高外気温時で、かつ、乗車人数の多いときのような冷房高負荷時には、上記基準目標吹出温度TAOが−20°C以下のような低温域にあるので、このような所定値以下の低温域にTAOがあるときは、冷房性能の発揮の方を優先させるために、蓄冷モードの実行を禁止して通常モードとする。これに対し、上記基準目標吹出温度TAOが−20°Cより高い温度域にあるときは蓄冷モードとする。
そして、空調作動時(送風機11の作動時)においてエンジン4が停止し、圧縮機1が停止したときは放冷モードを選定する。
また、後述の除湿要否判定手段S1801にて車室内の除湿が必要であると判定されている場合には、以下の理由から通常モードが選択される。すなわち、車室内の除湿を行うためには、蒸発器吹出温度Te (蒸発器9の温度)を低く保持する必要があるため、エンジン4を稼働させて圧縮機1を作動させる必要がある。また、この場合には、エンジン4を停止して空調を行う放冷モードを実行しないので、目標蒸発器吹出温度TEOを低く設定する蓄冷モードを実行するとすれば、蒸発器9の表面で凍結する凝縮水の付着量が増大しすぎて蒸発器9の空気の通過が妨げられることとなる。
次に、ステップS127にて目標蒸発器吹出温度TEOを算出する。上記通常モードの実行時は、通常モード時の目標蒸発器吹出温度TEOA を決定する。この通常モード時の目標蒸発器吹出温度TEOA は、図28の第1目標蒸発器吹出温度TEOA1と図29の第2目標蒸発器吹出温度TEOA2に基づいて算出する。
すなわち、エンジン稼働中における通常モード時では、上記第1目標蒸発器吹出温度TEOA1=f(TAOA )、第2目標蒸発器吹出温度TEOA2=f(Tam)のうち、低い温度の方を最終的に、目標蒸発器吹出温度TEOA として決定する。
また、後述の除湿要否判定手段S1801にて車室内の除湿が必要であると判定されている場合には、上述のごとく通常モードが選択される。そして、除湿要否判定手段S1801にて車室内の除湿が必要であると判定され通常モードが選択された場合には、蒸発器9の除湿能力を高めるため、予め低温(例えば3°C)に設定された第3目標蒸発器吹出温度TEOA3を目標蒸発器吹出温度TEOA として決定する。
一方、蓄冷モード実行時には、蓄冷用目標蒸発器吹出温度TEOB を決定する。このTEOB は氷点下の所定温度Tf (例えば、−2°C〜−1°C)であり、これにより、蒸発器9の凝縮水を氷点下の温度Tf に冷却して凍結することができ、蓄冷モードを実行することになる。
上記したステップS127によるTEOの算出を終えた後に、ステップS130に進み、送風機11により送風される空気の目標送風量BLWを上記TAOに基づいて算出する。この目標送風量BLWの算出方法は周知であり、上記TAOの高温側(最大暖房側)および低温側(最大冷房側)で目標風量を大きくし、上記TAOの中間温度域で目標風量BLWを小さくする(図35)。そして、送風機11のファン駆動モータ13の回転数は、この目標風量BLWが得られるように制御装置5の出力により制御される。
次に、ステップS140にて上記TAOに応じて内外気モードを決定する。この内外気モードは周知のごとくTAOが低温側から高温側へ上昇するにつれて、全内気モード→内外気混入モード→全外気モードと切替設定(図37)され、この内外気モードが得られるように内外気ドア(図示せず)の操作位置が制御装置5の出力により制御される。
次に、ステップS150にて上記TAOに応じて吹出モードを決定する。この吹出モードは周知のごとくTAOが低温側から高温側へ上昇するにつれてフェイスモード→バイレベルモード→フットモードと切替設定(図38)され、この吹出モードが得られるように吹出モードドア26、28、30の操作位置が制御装置5の出力により電気駆動装置31を介して制御される。 次に、ステップS160にて、エアミックスドア19の目標開度SWM を算出して、エアミックスドア19の開度を決定する。エアミックスドア19の目標開度SWM は、エアミックスドア19の最大冷房位置(図1の実線位置)を0%とし、エアミックスドア19の最大暖房位置(図1の一点鎖線位置)を100%とする百分率で表される。 次に、ステップS170に進み、目標蒸発器吹出温度TEO(TEOA またはTEOB )と実際の蒸発器吹出温度Te とを比較し、圧縮機作動を断続制御する。すなわち、蒸発器吹出温度Te <目標蒸発器吹出温度TEOであれば、制御装置5により電磁クラッチ2の通電を遮断して圧縮機1を停止させ、逆に、蒸発器吹出温度Te >目標蒸発器吹出温度TEOであれば、制御装置5により電磁クラッチ2に通電して圧縮機1を作動させる。これにより、蒸発器吹出温度Te が目標蒸発器吹出温度TEOに維持される。
なお、蓄冷モード時は目標蒸発器吹出温度TEOをTEOB (氷点下の所定値Tf )に引き下げることにより、蒸発器9の凝縮水を凍結させて、蒸発器9の凝縮水蓄冷量を増大させる。
次に、ステップS180に進み、空調側条件に基いてエンジン制御信号(前述の車両エンジン4の停止許可、停止禁止、および車両エンジン4停止後の再稼働要求の信号)を出力する。
このエンジン制御信号の出力について図53に基づいて説明する。
まず、ステップS1801にて車室内空気の除湿が必要かどうかを判定する。具体的には、乗員が空調制御パネル36の吹出モードスイッチ37cを操作して、吹出モードがデフロスタモードになったとき(デフロスタスイッチが押されたとき)には、乗員が窓ガラスの防曇が必要と判断した場合であり、除湿が必要と判定される。あるいは、吹出モードがデフロスタモードになっていなくても、センサ群35の外気温センサにより検出した外気温Tamが所定温度Tam1 (例えば10°C)以下の場合には、車両窓ガラスが曇りやすい状態なので、除湿が必要であると判定する。
ステップS1801は除湿要否判定手段を構成するもので、ステップS1801にて除湿が必要であると判定された場合には、ステップS1802に進み、エンジン4の稼働状態を検出し、ステップS1803にてエンジン4が稼働中かどうかを判定する。この判定は、エンジン制御用装置38から入力される車速信号やエンジン回転数信号が所定値以上かどうかで判定できる。
その結果、ステップS1803でエンジン4が稼働中と判定された場合には、ステップS1804に進み、エンジン停止禁止信号を出力する。これにより、エンジン用制御装置38では、停車時であって車両側のエンジン停止条件を満足していても、空調側からのエンジン停止禁止の制御信号を受けてエンジン4を停止させない。
一方、ステップS1803でエンジン4が停止中と判定された場合には、ステップS1805に進み、エンジン稼働の要求信号を出力する。これにより、エンジン用制御装置38では停車時であっても、車両エンジン4を自動的に起動し、エンジン4を稼働させる。
そして、エンジン制御信号出力ステップS180の終了後、ステップS110に戻り、以後上記のステップS110〜S180の制御を繰り返す。上記ステップS120で説明したように、ステップS1801(除湿要否判定手段)にて除湿が必要であると判定された場合には、通常モードにて空調が行われる。
以上から理解されるように、除湿要否判定手段S1801にて車室内の除湿が必要であると判定された場合には、空調側条件に基づくエンジン制御信号の出力により、強制的にエンジン4が稼働状態になり、通常モードにて空調が行われることになる。
すなわち、車両走行中であって蓄冷モード実行時に、車室内の除湿が必要と判定された場合には、蓄冷モードをキャンセルして通常モードを実行する。そして、信号待ち等で停車してもエンジン4の停止を行わず、通常モードでの空調を継続する。また、停車中であって放冷モード実行時に、車室内の除湿が必要と判定された場合には、放冷モードをキャンセルしてエンジン4を始動させ、通常モードを実行する。
以上により、窓ガラスが曇りやすい状況で除湿が必要な場合に、エンジン4の停止を行わず、あるいはエンジン4の停止時であればエンジン4を稼働させて、通常モードを実行することによって、圧縮機1を作動させて蒸発器9の温度を低下させることができる。これにより、蒸発器9の除湿能力を発揮させ、車室内に充分除湿された空気を送風することができ、窓ガラスの防曇性を向上させることができる。
(第14実施形態の変形例)
第14実施形態では、図1からバイパス通路16およびバイパスドア17を廃止しているが、もちろん、図1のようにバイパス通路16およびバイパスドア17を備える車両用空調装置に上記第14実施形態の考えを適用できる。
図1の構成によれば、蓄冷モードにおいてバイパス通路16を通過するバイパス風量の分だけ、蒸発器通過風量が減少するので、蒸発器9の必要冷却能力を低減でき、圧縮機駆動動力を効果的に節減できる。また、上記放冷モードにおいても、蒸発器通過風量が減少して、蒸発器凝縮水の蓄冷量の放冷時間を延ばすことができる。
しかしながら、車室内に送風される空気の除湿という観点からみると、蒸発器9をバイパスしてバイパス通路16を通過する空気は、蒸発器9による除湿が行われないため除湿が不充分となる。
そこで、ステップS160にてエアミックスドア19の目標開度SWM とバイパスドア17の目標開度SWBを算出するようにして、上記除湿要否判定手段S1801にて除湿が必要と判定されている場合には、ステップS160においてバイパスドア17の目標開度SWB =0(第2バイパスドア16の全閉位置)にする。
従って、本例によると、除湿要否判定手段S1801にて除湿が必要と判定された場合には、まず、上記第14実施形態における通常モードの実行(エンジン4の稼働)が行われ、これに加えて、バイパスドア17によるバイパス通路16の全閉が行われる。
これによって、通常モードの実行により蒸発器9の温度が低下して、蒸発器9の除湿能力が向上し、さらに、送風機11から吹き出されたすべての空気が蒸発器9を通過して蒸発器9にて除湿されることとなり、車室内の送風される空気の除湿効果をより効果的に高めることができる。従って、車室内に充分除湿された空気を送風することができ、窓ガラスの防曇性を向上させることができる。
また、第14実施形態は以下のごとく種々変形可能である。
第14実施形態では、車室内の除湿が必要がどうかを判定する除湿要否判定手段S1801は、吹出モードがデフロスタモードになった場合(デフロスタスイッチが押されたとき)、あるいは、外気温センサにより検出した外気温Tamが所定温度Tam1 (例えば10°C)以下の場合に車室内の除湿が必要であると判定したが、これらに限らず、窓ガラスが曇りやすい状況であれば車室内の除湿が必要であると判定してよい。
例えば、吹出モードがデフロスタモードでなくとも、周知の吹出モードであるフットモードまたはフットデフモードの場合には、一定の割合でデフロスタ吹出口から空気を吹き出すので、これらの吹出モードが選択されている場合という条件により車室内の除湿の要否を判定してもよい。車室内の湿度を検出する湿度センサを設け、車室内の湿度が所定湿度以上の場合に除湿が必要であると判定してもよい。
また、窓ガラス温度を検出するガラス温度センサを設け、窓ガラスの温度が所定ガラス温度以下の場合に除湿が必要であると判定してもよい。車室内に外気を導入する外気モードより内気を循環させる内気モードのほうが窓ガラスが曇りやすいので、内気モードで空調が行われている場合に車室内の除湿が必要であると判定してもよい。
さらに、上記各条件を任意に組み合わせて、例えば外気温Tamが所定温度Tam1 (例えば10°C)以下で、かつ、車室内湿度が所定湿度以上である場合に車室内の除湿が必要であると判定してもよい。
また、第14実施形態では、目標吹出温度TAOに基づいて自動的に蓄冷モードを設定しているが、エンジン4(圧縮機1)の稼働時に蓄冷モードの禁止条件を判定したときだけ通常モードを設定し、それ以外は蓄冷モードを設定してもよい。また、空調制御パネル36の操作スイッチ群37の1つとして、蓄冷モード信号を発生する蓄冷スイッチを設け、この蓄冷スイッチの投入により蓄冷モードを設定するようにしてもよく、この場合は蓄冷スイッチの投入有無より蓄冷モードの実行を判定すればよい。
ただし、蓄冷スイッチが投入されていても、除湿要否判定手段S1801により車室内の除湿が必要であると判定された場合には、蓄冷モードがキャンセルされ、通常モードが実行される。
また、第14実施形態では、蓄冷モードの際に、目標吹出温度TEOを例えば、−2°Cのような氷点下の低温域に引き下げて蓄冷効果の向上を図るようにしているが、蓄冷モードの際に、目標吹出温度TEOを通常制御時の最低温度(例えば3°C)より低く、かつ、0°Cより高い温度(例えば1°C)まで、引き下げて蓄冷効果の向上を図るようにしてもよい。
(第15実施形態)
最初に、第15実施形態の課題を説明する。
停車時の放冷モードにおいて蒸発器凝縮水(凍結状態)の蓄冷量の放冷により車室内の冷房を行うと、凝縮水の融解、温度上昇とともに蒸発器吹出温度Teが次第に上昇するので、車室内への吹出温度が目標吹出温度TAOより高くなって冷房能力が低下する。そのため、放冷モードを実行できる時間には限界がある。
市街地走行時においては、信号待ち等の停車時間は1分以内の場合が80%以上を占めているため、放冷モードにて車室内冷房を行う時間を通常1分と設定している。放冷モードの時間がこれを超える場合には、エンジンを始動して圧縮機を作動させて対処することになる。
そして、車両走行中の圧縮機の作動状況によっては、圧縮機が停止状態で停車することもありうるが、圧縮機が作動状態で停車するか停止状態で停車するかにより、停車時の放冷モードを維持できる時間(エンジンが始動するまでの時間)が大きく左右される。即ち、圧縮機停止状態で蒸発器吹出温度が目標温度範囲の上限まで上がりきったときに停車すると、放冷モードを維持できる時間が短くなり、信号待ち等の停車中にエンジンが始動してしまうことになる。これは、走行停車を頻繁に繰り返すような市街地走行では、停車中に頻繁にエンジンが始動して燃費の悪化を招くことになる。
上記点に鑑みて、第15実施形態ではエンジン停止時(圧縮機停止時)における放冷モードでの冷房可能時間を延長し、エンジンの省動力化を図ることを目的とする。
第15実施形態の全体構成図は、図51と同じでよい。空調用電子制御装置5はエンジン用電子制御装置38に接続されており、エンジン用電子制御装置38から空調用電子制御装置5には車両エンジン4の回転数信号、車速信号、ブレーキ信号等が入力される。空調用電子制御装置5は、これらの車速信号、ブレーキ信号等に基づき、後述の停車予測判定手段(ステップS14)において車両が停止するかどうかの判定を行う。
エンジン用電子制御装置38は周知のごとく車両エンジン4の運転状況等を検出するセンサ群(図示せず)からの信号に基づいて車両エンジン4への燃料噴射量、点火時期等を総合的に制御するものである。さらに、本発明の対象とするエコラン車、ハイブリッド車においては、車両エンジン4の回転数信号、車速信号、ブレーキ信号等に基づいて停車状態を判定すると、エンジン用電子制御装置38は燃料噴射の停止等により車両エンジン4を自動的に停止させる。
また、運転者の運転操作により車両が停車状態から発進状態に移行すると、エンジン用電子制御装置38は車両の発進状態をアクセル信号等に基づいて判定して、車両エンジン4を自動的に始動させる。なお、空調用電子制御装置5は、車両エンジン4の稼働中に、蒸発器9の凝縮水蓄冷量、あるいはエンジン停止後における蒸発器吹出温度の挙動等を推定し、この推定結果に基づいて車両エンジン4の停止許可、停止禁止の信号を出力したり、また、車両エンジン4停止後の蒸発器吹出温度Te の上昇等に基づいて車両エンジン4の再稼働要求の信号を出力する。
次に、上記構成において第15実施形態の作動を説明する。図54のフローチャートは空調用電子制御装置5のマイクロコンピュータにより実行される制御処理の概要を示し、図54の制御ルーチンは、車両エンジン4のイグニッションスイッチがオンされて制御装置5に電源が供給された状態において、空調制御パネル36の操作スイッチ群37の風量スイッチ(あるいはオートスイッチ)が投入されるとスタートする。
先ず、ステップS10においてセンサ32、センサ群35からの検出信号、操作スイッチ群37の操作信号、エンジン用電子制御装置38からの車両運転信号等を読み込む。
次に、車室内へ吹き出される空調風の目標吹出温度TAO、および目標蒸発器吹出温度TEOを算出する。まず、目標吹出温度TAOを前述の数式1て算出する。この目標吹出温度TAOは、車室内を設定温度Tset に維持するために必要な吹出温度である。
次に、第1目標蒸発器吹出温度TEOA (第1目標値)を、次に述べる目標吹出温関連温度TEOA1と外気温関連温度TEOA2に基づいて算出する。
まず、目標吹出温関連温度TEOA1の決定方法を具体的に説明すると、マイクロコンピータのROMに予め設定され、記憶されているマップ(前述の図13)に基づき、TAOが高くなる程、目標吹出温関連温度TEOA1が高くなるように決定する。従って、TEOA1=f(TAO)として表すことができる。なお、TEOA1は本例では12°Cが上限になっている。
次に、外気温関連温度TEOA2も、マイクロコンピータのROMに予め設定され、記憶されているマップ(前述の図14)に基づいて決定する。外気温関連温度TEOA2は、外気温度Tamに対応して決定されるものである。従って、TEOA2=f(Tam)として表すことができる。 そして、エンジン稼働中における通常モード時(蓄冷モードでないとき)では、上記目標吹出温関連温度TEOA1=f(TAO)、外気温関連温度TEOA2=f(Tam)のうち、低い温度の方を最終的に第1目標蒸発器吹出温度TEOA として決定する。
次に、ステップS11で蒸発器9で発生する凝縮水の蓄冷量制御を行う蓄冷モードを実行してよい条件にあるか否かを判定する。ここで、蓄冷モードによる凝縮水の蓄冷量制御とは、信号待ちのような一時的な停車時における次回のエンジン停止に備えて、エンジン稼働中に予め、凝縮水の蓄冷量を制御することをいう。具体的には、凝縮水の蓄冷量を増加させるためには、蒸発器温度の低下により凝縮水の温度を低下させるか、あるいは凝縮水の量を増やすことが必要である。ここで、凝縮水の蓄冷量をより効果的に増加させるには、凝縮水を氷点以下の温度まで冷却して凝縮水を凍結させ、潜熱の形で蓄冷するのがよい。
そして、本実施形態においては、蓄冷モードを、以下の3条件のいずれにも該当しない場合に実行する。即ち、(1)高速走行時、(2)蒸発器9のフロスト発生状況が所定の限界レベルに達したとき、(3)冷房高負荷時のいずれにも該当しない場合は蓄冷モードの実行を許可し、一方、上記(1)〜(3)の条件のいずれか1つにでも該当する場合は蓄冷モードの実行を禁止する。
つまり、(1)高速走行時には停車頻度が少ないと予測でき、(2)蒸発器9のフロスト発生状況が所定の限界レベルに達したときには、これ以上に蒸発器9への霜付着による蒸発器冷却性能低下を防止するため、(3)冷房高負荷時には、蓄冷モードを実行してもエンジン停止時に車室内への吹出空気温度がすぐに上昇して冷房フィーリングを悪化させるのでエンジン停止自体をキャンセルし、エンジン稼働中の蓄冷モードも実行しない。
そして、蓄冷モード「禁止」と判断された場合にはステップS12に進み、通常モードを実行し、目標蒸発器吹出温度TEO=第1目標蒸発器吹出温度TEOA とする。次に、目標蒸発器吹出温度TEOと実際の蒸発器吹出温度Teと比較し、Te>TEOの場合は、電磁クラッチ2をオンして圧縮機1を作動させる。逆に、Te≦TEOの場合は、電磁クラッチ2をオフして圧縮機1を停止する。より具体的には、圧縮機断続作動のハンチング防止のために、上記判定に1℃のヒステリシスを設け、例えばTe≧4℃で圧縮機1を作動させ、Te≦3℃で圧縮機1を停止させている。
一方、蓄冷モード「実行」と判定されたときはステップS13に進み、第2目標蒸発器吹出温度TEOB (第2目標温度)を決定する。このTEOB は、エンジン(圧縮機)停止後の所定時間(例えば1分)経過後における冷房フィーリングを損なわない範囲で決定され、具体的には氷点下の所定温度Tf (例えば−2°C)とされる。そして目標蒸発器吹出温度TEO=第2目標蒸発器吹出温度TEOB とする。本例でエンジン停止後の所定時間を一例として1分と設定しているのは、信号待ち等による一時的な停車時間(エンジン停止時間)が平均的に1分程度であるためである。
次に、上記の蓄冷モード「禁止」のときと同様に、目標蒸発器吹出温度TEOと実際の蒸発器吹出温度Teと比較し、Te>TEOのときは、電磁クラッチ2をオンして圧縮機1を作動させ、Te≦TEOのときは、電磁クラッチ2をオフして圧縮機1を停止する。具体的には圧縮機断続作動のハンチング防止のために、例えばTe≧−1℃で圧縮機1を作動させ、Te≦−2℃で圧縮機1を停止させている。実際には、圧縮機1を作動または停止させてから蒸発器吹出温度Teが切り換わるまでに多少のずれがあり、図55に示すように、エンジン稼働時間txにおいて、Te≧−1℃で圧縮機1を作動させてTe≦−2℃で圧縮機1を停止させた場合には、Teは0℃〜−3℃の間で変動する。
これにより、蒸発器9の凝縮水を氷点下の温度Tf に冷却して凍結することができ、蓄冷モードを実行することになる。なお、通常モードおよび蓄冷モードのいずれにおいても、車室内への吹出温度は目標吹出温度TAOとなるようにドア19により調節される。
次に、ステップS14(停車予測判定手段)に進み、によって車両が停止するかどうかを予測判定する。具体的には、空調用電子制御装置5に入力された車速信号、ブレーキ信号等の検出値に基づいて、以下の条件に従って行われる。
即ち、本例においては(1)車速が40km/h以下で、(2)ブレーキペダルが踏まれたという2条件をいずれも満たした場合に、車両が停止すると判定される。この条件は車両停止判断条件の一例であり、例えば加速度センサからの信号を空調用電子制御装置5に入力し、(1)車速が40km/h以下で、(2)エンジンブレーキ等による減速より急速な減速がなされたという2条件のいずれも満たした場合に車両が停止すると判定してもよい。
上記ステップS14により車両が停車すると予測判定された場合にはステップS15に進み、実際の蒸発器吹出温度Te≦目標蒸発器吹出温度TEOのときであっても、電磁クラッチ2をオフせずオンのままで圧縮機1の作動状態を強制的に維持する圧縮機強制作動制御を行う。これにより、図56に示すように後述の放冷モード開始時t1には、蒸発器吹出温度Teをより低い状態にしておくことができる。
一方、ステップS14により車両が停車すると予測判定されなかった場合には、ステップS10に戻り、蓄冷モードを実行可能か否かを判定する。
次に、ステップS16で、車速信号により検出した車両速度Vrが所定速度VS (例えば5〜8km/h)以下であるかどうかを判定する。
車両速度Vrが所定速度Vs以上であると判定された場合には、上記ステップS15に戻って圧縮機強制作動制御を継続し、車両速度Vrが所定速度Vs以下であると判定された場合には、上記の圧縮機強制作動制御を解除する。
これは、ステップS14で停車すると予測判断されて、ステップS15で圧縮機強制作動制御を実行している場合において、そのまま停車せず、渋滞等で低速走行状態になったときに、圧縮機強制作動制御を継続して蒸発器吹出温度Teが必要以上に低下するのを防止するためである。
次に、ステップS17で、車両が停止してエンジンが停止したかどうかを判定する。本例においては、車両が停止している場合には、エンジン用電子制御装置38は燃料噴射の停止等により車両エンジン4を自動的に停止させる。
エンジン4が停止していないと判定された場合には、ステップS13に戻り、蓄冷モードを実行し、エンジン4が停止していると判定された場合には、ステップS18に進み放冷モードを実行する。
即ち、停車時には冷凍サイクルの圧縮機1も必然的に停止して、冷凍サイクルRの冷媒蒸発潜熱による蒸発器9の冷却効果が停止されるが、エンジン稼働時間tx中に予め、蒸発器凝縮水を凍結させて蒸発器凝縮水蓄冷量を増大してあるので、エンジン停止時間tyには、この蒸発器凝縮水蓄冷量(水の融解潜熱および水の顕熱)を利用して、蒸発器9の冷却作用を発揮できる。
ところで、放冷モード実行時に、エンジン停止時間の延長によって蒸発器吹出温度Teが車室内への目標吹出温度TAOより上昇するような場合には、エンジン稼働要求の指令信号を空調側から出して自動的にエンジン4を始動する。本第1実施形態においては、停車時におけるエンジン停止時間tyを1分間と設定しているので、エンジン停止時間が1分間より長くなる場合は、エンジン4を始動して圧縮機1を作動させる。これにより、圧縮機1の作動が再開されて蒸発器9の吸熱による冷却作用を再開する。
ところで、ステップS14、S15を実行せず、本例の圧縮機強制作動制御を行わない場合には、図56の2点鎖線で示すように、圧縮機1が停止して蒸発器吹出温度Te′が上昇した状態(例えば0℃)で停車し、放冷モードを開始する場合がある。この場合には、放冷モード開始時t1から40秒経過後のt2時点で、蒸発器吹出温度Te′=10℃まで上昇してしまう。従って、エンジン4を停止したままで放冷モードにて車室内を冷房できる時間が短くなり、短時間でエンジンが始動して燃費が悪化することになる。
本第15実施形態のように、蓄冷モードにて停車すると予測判定された場合に、圧縮機強制作動制御を行う場合には、図56の実線に示すようにTe≦−3℃になっても圧縮機1を強制的に作動させるので、停車時にはTeは−4℃まで下がる。ここから放冷モードを実行すると、放冷モード開始時t1から60秒経過後のt3にて、蒸発器吹出温度Te=10℃となる。
従って、信号待ち等で停車している間は、蒸発器吹出温度Teが車室内への目標吹出温度TAOより上昇するのを防止できるので、エンジン4(圧縮機1)を停止したままで車室内を良好に冷房することが可能になり、信号待ち等の停車時(エンジン動力不要時)にエンジンが始動するのを防止することができる。これにより、停車時にエンジンを自動的に停止する車両の目的である燃費向上という効果を高めることができる。
なお、上記ステップS16で車両速度Vrが所定速度Vs以下と判定されてから実際に停車するまでは、圧縮機強制作動制御を解除されて蓄冷モードを実行し、Te≧−1℃で圧縮機1を作動させ、Te≦−2℃で圧縮機1を停止させる制御を行う。しかし、所定速度Vsは5〜8km/hという低速度であるため、そのまま停車する場合には(ステップ18に進む場合)、蓄冷モードの実行は、ほとんど無視できる程度の短時間だけ行われるので、蒸発器吹出温度Teは上昇することなく低温のまま放冷モードを開始することができる。
(第15実施形態の変形例)
図54のステップS14において車両が停車すると予測判断された場合に、上記第15実施形態では、ステップS15にて圧縮機強制作動制御を行っているが、この圧縮機強制作動制御の代わりに次のごとき制御を行ってもよい。
圧縮機1は、目標蒸発器吹出温度TEO(例えば−2℃)と蒸発器吹出温度Teと比較した結果、Te>TEOのときは作動させ、Te≦TEOのときは停止するように作動状態を断続制御されるように構成されている。
そこで、本変形例では、図54のステップS14において停車予測判定手段により車両が停車すると予測判断された場合に、第2目標蒸発器吹出温度TEOB (第2目標値、例えば−2℃)より低い温度である第3目標蒸発器吹出温度TEOC (第3目標値、例えば−5℃)を設定する。そして、ステップS15において、目標蒸発器吹出温度TEO=第3目標蒸発器吹出温度TEOC とし、この第3目標蒸発器吹出温度TEO(上記−5℃)と蒸発器吹出温度Teと比較した結果、Te>TEOのときは圧縮機1を作動させ、Te≦TEOのときは圧縮機1を停止するように圧縮機1の作動状態を断続制御する。
このように、蓄冷モード実行時に車両が停車すると予測判断された場合には、上記第15実施形態に比較して目標蒸発器吹出温度TEOをより低い温度に再設定して圧縮機1を断続制御することにより、ステップS15の圧縮機強制作動制御を行う場合と同様に、放冷モード開始時t1において蒸発器吹出温度Teを低い状態にすることができ、第15実施形態と同様の効果を得ることができる。
更に、第15実施形態は次のように変形することができる。本変形例では圧縮機1として、容量を任意に変更することができる可変容量型圧縮機1が用いられている。
図54のステップS12の通常制御時においては、圧縮機1の容量は、エンジン4の稼働時に蒸発器吹出温度Teが第1目標蒸発器吹出温度値TEOA になるように可変制御される。
そして、ステップS13の蓄冷モードにおいては、第1目標蒸発器吹出温度TEOA より低い第2目標蒸発器値TEOB を設定して、エンジン4の稼働時に蒸発器吹出温度Teが第2目標蒸発器温度TEOB になるように、圧縮機1の容量は可変制御される。
そして、ステップS14において停車予測判定手段より車両が停車すると予測判断された場合には、ステップS15において、圧縮機1の容量を増大して大容量状態を強制的に維持する圧縮機容量制御を行う。これにより、冷凍サイクルRの冷却能力が上がり、蒸発器吹出温度Teを下げることができる。
本変形例のような構成によっても、上記第15実施形態と同様に、放冷モード開始時t1において蒸発器吹出温度Teを低い状態にすることができ、第15実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第16実施形態)
第16実施形態は、空調用蒸発器に蓄冷機能を付加するようにした冷凍サイクル装置に関するもので、車両用空調装置に適用して好適なものであり、最初に第16実施形態の課題を説明する。
蒸発器凝縮水の蓄冷量を効果的に増大させるには、エンジン稼働中に蒸発器凝縮水を氷点以下に冷却して凍結させ、潜熱の形で蓄冷することが有効である。
ところで、車両用空調装置においては、冷凍サイクルの蒸発器に供給する冷媒を減圧する減圧装置として温度式膨張弁を使用している。この膨張弁は蒸発器出口の冷媒過熱度を所定値に維持するように冷媒流量を調整している。これにより、蒸発器全体で一様に冷媒を蒸発させ、蒸発器出口の吹出空気の温度分布を均一にしている。
蒸発器凝縮水を凍結させるためには蒸発器温度を氷点下の温度に引き下げる必要があり、このためには膨張弁減圧後の冷媒圧力すなわち冷媒蒸発圧力を氷点下の温度に対応した圧力に引き下げる必要がある。
しかし、膨張弁は蒸発器出口の冷媒過熱度を所定値に維持するように冷媒流量(弁開度)を調整しているので、この冷媒流量調整作用を維持しながら冷媒蒸発圧力を引き下げるためには圧縮機の大型化等のサイクル高性能化が必要となる。従って、搭載スペース、圧縮機駆動動力等に制約のある現状のシステムでは上記のサイクル高性能化という対策は実現困難である。
上記点に鑑みて第16実施形態では、サイクル高性能化を必要とせずに、蒸発器温度を氷点下の温度に引き下げて蓄冷機能を発揮できる冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
図57は第16実施形態の全体構成図であり、車両用空調装置の冷凍サイクルRには冷媒を吸入、圧縮、吐出する圧縮機1が備えられている。圧縮機1は動力断続用の電磁クラッチ2を有し、圧縮機1には電磁クラッチ2およびベルト3を介して車両エンジン4の動力が伝達される。
電磁クラッチ2への通電は後述の空調用電子制御装置5により断続され、電磁クラッチ2が通電されて接続状態になると、圧縮機1は運転状態となる。これに反し、電磁クラッチ2の通電が遮断されて開離状態になると、圧縮機2は停止する。
圧縮機1から吐出された高温、高圧の過熱ガス冷媒は凝縮器6に流入し、ここで、図示しない冷却ファンより送風される外気冷却風と熱交換して冷媒は冷却されて凝縮する。この凝縮器6で凝縮した冷媒は次に受液器7に流入し、受液器7の内部で冷媒の気液が分離され、冷凍サイクルR内の余剰冷媒(液冷媒)が受液器7内に蓄えられる。
この受液器7からの液冷媒は膨張弁(減圧手段)8により低圧に減圧され、低圧の気液2相状態となる。この膨張弁8からの冷媒は蒸発器(冷房用熱交換器)9に流入する。この蒸発器9は車両用空調装置の空調ケース10内に設置され、蒸発器9に流入した低圧冷媒は空調ケース10内の空気から吸熱して蒸発する。膨張弁8は蒸発器9の出口冷媒の温度を感知する感温部8aを有する温度式膨張弁であり、蒸発器9の出口冷媒の過熱度を所定値に維持するように冷媒流量(弁開度)を調整するものである。
蒸発器9の出口は圧縮機1の吸入側に結合される。また、膨張弁8の入口側には冷房用(第1)電磁弁40が接続され、そして、この冷房用電磁弁40と膨張弁8の直列回路に、蓄冷用(第2)電磁弁41と固定絞り42の直列回路が並列接続されている。本例では、2つの電磁弁40、41により減圧装置切り替え用の弁手段を構成している。固定絞り42はオリフィス、キャピラリチューブ等により構成できる。上記した構成部品によって冷凍サイクルの閉回路を構成している。
空調ケース10において蒸発器9の上流側には送風機11が配置され、送風機11には遠心式送風ファン12と駆動用モータ13が備えられている。送風ファン12の吸入口14には図示しない内外気切替箱を通して車室内の空気(内気)または車室外の空気(外気)が切替導入され、送風ファン12の送風空気は空調ケース10内の蒸発器9の上流部位に流入するようになっている。
なお、蒸発器9は周知のごとくアルミニウム製の金属薄板により成形された断面偏平状のチューブとこのチューブの外面側に接合されたコルゲートフィンとからなるコア部を有し、このコア部を空調空気は図57の左右方向に流れて冷却される。
空調ケース10内で、蒸発器9の下流側にはエアミックスドア19が配置されている。このエアミックスドア19の下流側には車両エンジン4の温水(冷却水)を熱源として空気を加熱する温水式ヒータコア(暖房用熱交換器)20が設置されている。そして、この温水式ヒータコア20の側方(上方部)にはバイパス通路21が形成されている。このバイパス通路21は温水式ヒータコア20をバイパスして空気(冷風)を流すためのものである。
エアミックスドア19は回転軸19aを中心として回動可能な板状ドアであり、温水式ヒータコア20を通過する温風とバイパス通路21を通過する冷風との風量割合を調節するものであって、この冷温風の風量割合の調節により車室内への吹出空気温度を調節する。すなわち、本例においては、エアミックスドア19により温度調節手段が構成されている。
温水式ヒータコア20を通過した温風とバイパス通路21を通過した冷風は、温水式ヒータコア20の下流側において混合して、所望温度の空気となり、空調ケース10の下流端部に配置されている吹出モード切替部(図51等参照)から車室内へ吹き出す。すなわち、空調ケース10の下流端部に位置するデフロスタ開口部、フェイス開口部、およびフット開口部を通して所望温度の空気が車両フロントガラス内面、車室内乗員の上半身、車室内乗員の足元に向けて吹き出すようになっている。
次に、第16実施形態における電気制御部の概要を説明すると、空調ケース10内で蒸発器9の空気吹出直後の部位に、サーミスタからなる蒸発器吹出温度センサ(蒸発器冷却度合検出手段)323、324が設けられ、蒸発器吹出温度を検出する。ここで、第1蒸発器吹出温度センサ323は蒸発器9の空気吹出直後の部位において蒸発器9の冷媒入口側(氷を作る蓄冷部)に配置され蓄冷側の吹出温度TEiを検出する。
また、第2蒸発器吹出温度センサ324は蒸発器9の空気吹出直後の部位において蒸発器9の冷媒出口側(氷を作らない部位)に配置され空気側の吹出温度TEaを検出する。蒸発器9の凝縮水は下方側に溜まりやすいので、蒸発器9の冷媒入口側(氷を作る蓄冷部)が空調ケース10の下方側に配置され、蒸発器9の冷媒出口側(氷を作らない部位)が空調ケース10の下方側に配置されている。上記した2個のセンサ323,324の検出温度TEi、TEaはそれぞれ空調用電子制御装置5に入力するようになっている。
なお、空調用電子制御装置5はマイクロコンピュータ等により構成される制御手段であって、この空調用電子制御装置5には、上記したセンサ323,324の他に、空調制御のために、内気温Tr 、外気温Tam、日射量TS 、温水温度TW 等を検出する図示しない周知のセンサ群(図51等参照)、および車室内計器盤近傍に設置される図示しない空調制御パネル(図51等参照)の操作スイッチ群から温度設定信号Tset 等の操作信号が入力される。
次に、上記構成において第16実施形態の作動を説明する。図58は空調用電子制御装置5により実行される制御ルーチンであり、ステップ101にて蓄冷側の吹出温度TEiおよび空気側の吹出温度TEaを読み込む。次のステップ102にて冷凍サイクルの作動モードを決定する。
すなわち、ステップ102内のステップaにて蓄冷側の吹出温度TEiと第1設定値T1(本例では−3℃)および第2設定値T2(本例では−4℃)とを比較し、この比較に基づいてステップaのごとくon,offの判定信号を出す。
同様に、ステップbにて空気側の吹出温度TEaと第3設定値T3(本例では11℃)および第4設定値T4(本例では10℃)とを比較し、この比較に基づいてon,offの判定信号信号を出す。
次に、ステップcに進み、蓄冷側吹出温度TEiのon,off判定信号と空気側吹出温度TEaのon,off判定信号とに基づいて冷凍サイクルの作動モードとして、冷房、蓄冷,OFFのいずれか1つを決定する。次に、ステップ103に進み、冷房モードであるか判定し冷房モードであるときは、ステップ104にて冷房用電磁弁40をONし蓄冷用電磁弁41をOFFする。そして、ステップ105にて電磁クラッチ2をONする。
従って、冷房モードにおいては温度式膨張弁8により減圧された冷媒が蒸発器9に流入して、膨張弁8は蒸発器9の出口冷媒の過熱度を所定値に維持するように冷媒流量(弁開度)を調整する。
次に、ステップ103の判定が冷房モードでないときは、ステップ106に進み、蓄冷モードであるか判定し蓄冷モードであるときは、ステップ107にて冷房用電磁弁40をOFFし蓄冷用電磁弁41をONする。そして、ステップ105にて電磁クラッチ2をONする。従って、蓄冷モードにおいては固定絞り42により減圧された冷媒が蒸発器9に流入する。
ここで、固定絞り42により減圧された冷媒の蒸発圧力が氷点下の蒸発温度に対応した圧力まで低下するように固定絞り42の絞り量(減圧量)が設定してある。従って、蓄冷モードにおいては、蒸発器9のうち、冷媒入口側の部位、すなわち、減圧直後の気液2相冷媒が流れる部位では、氷点下の蒸発温度により空気を氷点下の温度まで冷却できる。一方、蒸発器9のうち、冷媒出口側の部位、すなわち、蒸発後の過熱ガス冷媒が流れる部位では、蒸発潜熱の吸熱がなくなるので、冷媒出口側部位を通過する空気の温度はプラス側の温度となる。
また、ステップ102内のステップcにてOFFモードが選択されたときはステップ106からステップ108に進み、電磁クラッチ2をOFFするので、圧縮機1が停止する。
図59は本実施形態の作動説明図であり、図59(a)の縦軸は蒸発器吹出温度であり、横軸はサイクル起動後の経過時間である。サイクル起動後、時刻t1、t2、t3、t4にて空気側吹出温度TEaのon,off判定信号が切り替わって蓄冷モードと冷房モードとを切り替える。なお、図59では蓄冷側吹出温度TEiの判定信号はon信号のままである場合を示している。
そして、図59(c)に蓄冷モードと冷房モードとにおける、蒸発器9での冷媒の気液状態と、空気側吹出温度TEaおよび蓄冷側吹出温度TEiを示している。
蓄冷モードにおいては、蒸発器9において、減圧直後の気液2相冷媒が流れる冷媒入口側の部位では、固定絞り42の絞り作用により強制的に蒸発圧力が引き下げられて、氷点下の蒸発温度を得ることができる。これにより、圧縮機1の大型化のサイクルの高性能化を必要とせずに、凝縮水を凍結させて、蓄冷機能を発揮できる。 図59(a)のTEoは空気側吹出温度TEaと蓄冷側吹出温度TEiの平均温度であり、この平均温度TEoに基づいてエアミックスドア19の開度を設定することにより、車室内への吹出温度を制御できる。
以上は車両エンジン4の稼働時の作動である。これに反し、信号待ち等による一時的な停車時に、車両エンジン4が停止されると、圧縮機1も必然的に停止状態になるので、冷凍サイクルRの蒸発器9の冷却作用が停止される。しかし、エンジン稼働中に予め、蒸発器凝縮水を凍結させてあるので、エンジン停止時は、この蒸発器凝縮水蓄冷量(水の融解潜熱および水の顕熱)を利用して、蒸発器9の冷却作用を発揮できる。
信号待ち等による一時的な停車時間は、通常、1分間前後であるので、この程度の短時間であれば、蒸発器凝縮水の蓄冷量を利用して、冷房フィーリングを悪化させないレベルで冷房を持続可能となる。
停車時の冷房作用は、蒸発器凝縮水蓄冷量の放冷により行うので、放冷モードと称することができ、この放冷モードにおける車室内への吹出空気温度の制御も、前述の車両エンジン4の稼働時と同様に蒸発器吹出空気の平均温度TEoに基づいてエアミックスドア19の開度を設定することにより、車室内への吹出温度を制御できる。
(第17実施形態)
図60は第17実施形態であり、膨張弁8の下流側に電磁弁40と固定絞り42との並列回路を接続したものである。そして、冷房モード時には電磁弁40を開弁して膨張弁8により冷媒を減圧し、蓄冷モード時には電磁弁40を閉弁して固定絞り42により冷媒を十分低い圧力まで減圧する。これにより、第17実施形態は減圧装置切り替え用の弁手段として電磁弁40を1個使用するだけで、第16実施形態と同等の作用を果たすことができる。
(第18実施形態)
図61は第18実施形態であり、膨張弁8の上流側に電磁弁40と固定絞り42との並列回路を接続したものであり、その他の点は第17実施形態と同じである。
(第19実施形態)
図62は第19実施形態であり、膨張弁8の上流側に電磁弁40を接続し、この両者8、40に対して、固定絞り42を並列に接続したものであり、その他の点は第17、第18実施形態と同じである。なお、第19実施形態において膨張弁8の下流側に電磁弁40を接続してもよい。
(第20実施形態)
図63〜65は第20実施形態であり、冷凍サイクルの減圧装置として電気膨張弁70を用いて、蓄冷モード時には電気膨張弁70の弁開度を冷房時に比較して強制的に小さい開度に制御することにより蓄冷機能を発揮するようにしたものである。
電気膨張弁70の制御のために蒸発器9の冷媒出口部に、温度センサ71と圧力センサ72を配置している。温度センサ71は蒸発器出口冷媒温度TLを、また圧力センサ72は蒸発器出口冷媒圧力PLを空調用電子制御装置5に入力するようになっている。
図64は電気膨張弁70の具体的構造を例示するものであり、受液器7からの冷媒が流入する冷媒入口73と、蒸発器9へ向かって冷媒を流出させる冷媒出口74との間に絞り通路75を設け、この絞り通路75の開度を弁体76により調整する。この弁体76は作動軸77と一体に構成されている。この弁体76と作動軸77はステップモータ78のロータ79により駆動される。
ステップモータ78は励磁コイル80、81を有し、この励磁コイル80、81の発生する磁極とロータ79の永久磁石82に着磁された磁極(N極、S極)との磁気吸引力、磁気反発力によりロータ79に回転力が発生する。このロータ79の回転は固定支持部材83とのねじ嵌合によりロータ79の軸方向の変位に変換されるので、作動軸77を介して弁体76が軸方向に変位し、これにより、絞り通路75の開度を弁体76により調整できる。ここで、弁体76の軸方向変位量(絞り通路開度)は励磁コイル80、81への入力パルス数により決定できる。
次に、図65は第20実施形態による電気膨張弁70の制御を例示するもので、ステップ110にて温度センサ71からの蒸発器出口冷媒温度TLと、冷媒圧力センサ72からの蒸発器出口冷媒圧力PLを読み込む。次のステップ111にてこのTLとPlとに基づいて蒸発器出口冷媒の実際の過熱度SHを算出する。
次のステップ112にて冷凍サイクルの作動モードが冷房モードか判定する。この判定は図58のステップ103と同じ判定である。冷房モードである時はステップ113に進み、冷房モード時の目標過熱度SH1を低めの値(5〜10℃)に設定する。
そして、ステップ114にて実際の過熱度SHと冷房モード時の目標過熱度SH1とを比較し、実際の過熱度SHが冷房モード時の目標過熱度SH1より小さいときはステップ115にて弁体76(図64)の開度を減少させ、逆に実際の過熱度SHが冷房モード時の目標過熱度SH1より大きいときはステップ116にて弁体76の開度を増大させる。
このように、弁体76の開度(絞り通路75の開度)を調整することにより、蒸発器出口冷媒の実際の過熱度SHを目標過熱度SH1に維持することができる。
一方、冷房モードでない時はステップ112からステップ117に進み、蓄冷モードか判定し、蓄冷モードであるときはステップ118に進み、蓄冷モード時の目標過熱度SH2を高めの値(10〜20℃)に設定する。そして、ステップ119にて実際の過熱度SHと蓄冷モード時の目標過熱度SH2とを比較し、実際の過熱度SHが蓄冷モード時の目標過熱度SH2より小さいときはステップ115にて弁体76(図8)の開度を減少させ、逆に実際の過熱度SHが蓄冷モード時の目標過熱度SH2より大きいときはステップ116にて弁体76の開度を増大させる。
このように、弁体76の開度(絞り通路75の開度)を調整することにより、蒸発器出口冷媒の実際の過熱度SHを目標過熱度SH2に維持することができる。
ここで、蓄冷モード時には目標過熱度SH2を高めの値(10〜20℃)に設定しているので、電気膨張弁70の弁開度が冷房時に比較して小さい開度に強制的に制御されるので、電気膨張弁70通過後の冷媒圧力を、凝縮水を凍結させるに必要な圧力まで低下させることができる。
なお、第20実施形態では冷房モード時および蓄冷モード時に、それぞれ目標過熱度SH1、目標過熱度SH2を設定し、電気膨張弁70の弁開度を制御しているが、蓄冷モード時には目標過熱度SH2の設定をやめて、電気膨張弁70の弁開度を冷房モード時の所定割合の開度(例えば、80%)となるように制御してもよい。
この場合は蓄冷モード時に蒸発器出口冷媒の過熱度制御を行わないので、蒸発器出口冷媒の実際の過熱度SHが所定値(例えば、20℃)まで上昇したとき、蓄冷モードを解除して冷房モード時に切り替えるのがよい。このようにすれば、蓄冷モード時に蒸発器出口冷媒の過熱度が過大な値になって、冷房能力が極端に低下することを未然に防止できる。
(第21実施形態)
図66は第21実施形態であり、冷凍サイクルの減圧装置として温度式膨張弁700を用いる場合に、蓄冷モード時に温度式膨張弁700の弁開度を冷房時に比較して強制的に小さい開度に制御するための補助駆動機構を温度式膨張弁700に内蔵するようにしたものである。
最初に、温度式膨張弁700の概要を図66により説明すると、アルミニュウム製の本体ケース701の冷媒入口702は絞り通路703に連通し、この絞り通路703の開度を球状の弁体704により調整するようになっている。この球状の弁体704は弁棒705、および感温棒706を介してダイヤフラム707の変位を受けて変位し、絞り通路703の開度を調整する。
絞り通路703を通過して減圧された低温、低圧の気液2相冷媒は冷媒流出通路708から蒸発器9の冷媒入口部に流入する。蒸発器9で蒸発したガス冷媒は蒸発器出口側通路709を通過した後に、圧縮機1の吸入口に吸入される。感温棒706は、アルミニュウム等の熱伝導の良好な金属からなり、蒸発器出口側通路709を流れる過熱ガス冷媒の温度を感知する感温手段をなす。
感温棒706の上端部は本体ケース701の最上部の外面側に配置されたダイヤフラム(圧力応動部材)707に当接している。従って、このダイヤフラム52が上下方向に変位すると、この変位に応じて円柱状感温棒706、弁棒705を介して弁体704も変位するようになっている。本例では、弁棒705と感温棒706とにより変位伝達部材が構成されている。
ダイヤフラム707の外周縁部は、上下のケース部材710、711の間に挟持されて支持されている。そして、ケース部材710、711内の空間はダイヤフラム707により上側室(第1圧力室)712と下側室(第2圧力室)713に仕切られている。上側室712は密封空間であって、その内部には冷凍サイクル内の循環冷媒と同種の冷媒ガスが充填されており、この封入ガスは感温棒706の感知した蒸発器出口の過熱ガス冷媒温度が金属製ダイヤフラム707を介して伝導され、この過熱ガス冷媒温度に応じた圧力変化を示す。
そして、下側室713は、感温棒706の周囲の空隙を通して、蒸発器出口側通路709に連通しており、この蒸発器出口側通路709の冷媒圧力が下側室713内に導入される。
一方、弁体704は支持部材714により支持されており、コイルばね(ばね手段)715のバネ力が作用する。コイルばね715は電磁ソレノイド機構716の可動プランジャ717により支持されている。電磁ソレノイド機構716は弁体704の補助駆動機構を構成するものであって、その電磁コイル718に通電すると、可動プランジャ717と固定磁極部材719との間に電磁吸引力が発生して、可動プランジャ717が固定磁極部材719に向かって吸引される。
本体ケース701の最下部のねじ穴部に調整ナット720がねじ止め固定されており、この調整ナット720はその外周部にシール用のOリング721が装着され、ねじ穴部との間を気密にシールしている。調整ナット720の締めつけ位置の調整により、コイルばね715の取付荷重を調整できる。
第21実施形態の温度式膨張弁700による作用を説明すると、図66は冷房モード時の状態を示しており、可動プランジャ717は固定磁極部材719から離れ、調整ナット720の上面に当接して支持されている。
この状態では、冷房モード時に適合した過熱度が得られるようにコイルばね715の取付荷重を設定してあるので、冷房モード時には温度式膨張弁700の弁開度が通常のものと同様に調整され、蒸発器出口冷媒の過熱度が所定値(例えば、5℃〜10℃)に制御される。
一方、蓄冷モードが選択されると、空調用電子制御装置5により電磁ソレノイド機構716の電磁コイル718に通電されるので、可動プランジャ717と固定磁極部材719との間に電磁吸引力が発生して、可動プランジャ717が固定磁極部材719に向かって吸引される。
その結果、コイルばね715が圧縮されコイルばね715の取付荷重が増大するので、弁体704の開度を減少させる。これにより、絞り通路703にて減圧された冷媒の圧力を、凝縮水が凍結するに必要な圧力まで低下させることができる。
図67は第21実施形態による温度式膨張弁700の弁開度の制御特性を示すもので、破線aは電磁ソレノイド機構716の電磁コイル718に通電しない冷房モード時の弁開度特性であり、実線bは電磁ソレノイド機構716の電磁コイル718に通電する蓄冷モード時の弁開度特性である。
(第22実施形態)
図68は第22実施形態であり、冷凍サイクルの減圧装置として温度式膨張弁700を用いる場合に、第21実施形態では、蓄冷モード時に温度式膨張弁700の弁開度を冷房時に比較して強制的に小さい開度に制御するための補助駆動機構として電磁ソレノイド機構716を用いているが、第22実施形態では吸着剤の加熱断続による圧力調整機構723を用いている。
すなわち、ダイヤフラム707の上側室(第1圧力室)712にキャピラリチューブ722を介して圧力調整機構723の吸着剤収容室724を連通させ、この吸着剤収容室724の内部を仕切り板725により仕切り、その上側に吸着剤726を収容し、仕切り板725の下側に電気加熱ヒータ727を収容している。
ここで、吸着剤726は例えば、粒状の活性炭からなり上側室712の内部に充填されている冷媒ガスを吸着可能なものである。そして、この吸着剤726は加熱されて温度が上昇すると、吸着ガスを放出し、逆に温度が低下すると冷媒ガスを吸着すると特性を持っている。
これにより、冷房モード時には電子制御装置5により電気加熱ヒータ727に通電すると、電気加熱ヒータ727が発熱して吸着剤726の温度が上昇するので、吸着剤726が吸着ガスを放出し、上側室712の圧力が上昇する。これにより、弁体704の開度が増大するので、図67の破線aに示す冷房モード時の弁開度特性が得られる。
また、蓄冷モード時には、電子制御装置5により電気加熱ヒータ727への通電を遮断することにより、吸着剤726の温度が低下するので、吸着剤726が冷媒ガスを吸着するので、上側室712の圧力が低下する。これにより、弁体704の開度が減少するので、図67の破線bに示す蓄冷モード時の弁開度特性が得られる。(第16〜第22実施形態の変形例)
なお、第16〜第22実施形態は、以下のごとく種々変形可能である。
第16実施形態において用いた固定絞り42の代わりに、下流側圧力が所定値まで低下すると開弁する定圧膨張弁を用いてもよい。
上記の各実施形態では、蒸発器9に発生する凝縮水を凍結させて蓄冷機能を発揮させる場合について説明したが、蓄冷材(水等)を封入した蓄冷パックを蒸発器9の周囲に配置し、蓄冷パックを凍結するようにしてもよい。
(第23実施形態)
第23実施形態は冷却度合いを検出する検出手段としての温度センサ32(例えば、図1参照)の検出値に対する算出方法の改良に関するもので、最初に第23実施形態の課題を説明する。
図69は蓄冷モ−ドと放冷モードの切替に伴う蒸発器吹出温度Teの変動を示すもので、蓄冷モ−ドにおいて蒸発器吹出温度Teが蓄冷時の目標蒸発器吹出温度に到達すると、その後は蒸発器吹出温度Teの変動が僅少となる。しかし、蓄冷モ−ドから放冷モードに切り替わると、蒸発器9自身の吸熱作用がなくなって、氷の潜熱と水の顕熱により空気を冷却するのであるが、氷の潜熱に比して水の顕熱は大幅に小さいので、氷が融解して水の顕熱により空気を冷却するようになると、蒸発器吹出温度Teは急速に上昇していく。
このように、蓄冷モ−ドに比して放冷モードの方が蒸発器吹出温度Teの変動が大きいので、放冷モード時に室内吹出空気の温度制御を適切に行うためには、温度センサ32の測温応答性を高めることが必要であり、このためにはサーミスタからなる温度センサ32の測温部熱容量を小さくして時定数を小さくすることになる。ここで、時定数はセンサ雰囲気温度の変化に対しセンサ出力値の変化が所定割合に到達するまでの時間(秒)である。
しかし、温度センサ32の時定数を単純に小さくすると、蒸発器吹出温度Teの変動が僅少となる蓄冷モ−ドにおいて、圧縮機1の断続回数が急増して、電磁クラッチ2等の耐久性に悪影響を及ぼす。
この点に鑑みて第23実施形態では、蓄冷モ−ドおよび放冷モードのいずれにおいても、蒸発器冷却度合を示す温度を適切に算出することを目的とする。
図70は第23実施形態による蒸発器吹出温度Teの算出のための制御フローチャートであり、図2等のステップS110において実行される制御ルーチンである。
図70のステップS1110において温度センサ32の検出温度Teを読み込み、ステップS1120にて蓄冷モ−ドか放冷モードかを判定する。放冷モードであると、ステップS1130に進み、温度センサ32の時定数τ=τ1とする。また、蓄冷モ−ドであるときはステップS1140に進み、温度センサ32の時定数τ=τ2とする。ここで、τ1<τ2の関係に定めてある。
そして、ステップS1150において、次の数式19にて演算上(見かけ上)の蒸発器吹出温度Te’を算出する。
Te’=Te’*(τ−1)/τ+ Te/τ(数式19)
なお、Te’については前回までの算出値を記憶しておき、この記憶値を次回のTe’の算出に用いる。Teは温度センサ32の現在の検出温度である。
第23実施形態では蒸発器吹出温度に基づいた制御、すなわち、蓄冷モード時の圧縮機断続制御(凝縮水蓄冷量の制御)、放冷モード時の室内吹出温度制御等は、すべて、上記算出値Te’に基づいて行う。
ここで、Te’の具体的算出例を述べると、前回までの算出値Te’=3°C、今回の検出温度Te=1°Cとすると、
時定数τ1=2の場合、
Te’=3*(2−1)/2+1/2=2°C
これに対し、時定数τ2=10の場合、
Te’=3*(10−1)/10+1/10=2.8°C
このように、蓄冷モ−ドと放冷モードとで、温度センサ32の時定数τを切り替え、放冷モードでは小さい時定数τ1を用いて演算上(見かけ上)の蒸発器吹出温度Te’を算出することにより、放冷モードにおける実際の蒸発器吹出温度Teの早い変化に対して、応答よく追従できるので、室内吹出温度制御の制御遅れを最小限に抑制できる。
一方、蓄冷モ−ドでは大きい時定数τ2を用いて演算上(見かけ上)の蒸発器吹出温度Te’を算出することにより、実際の蒸発器吹出温度Teの変化に対する応答を遅らせて、圧縮機1の断続回数の増加を抑えることができる。そのため、電磁クラッチ2等の耐久性を向上できる。
なお、図69に示すように、蓄冷モ−ドの開始直後には、蒸発器吹出温度Teが比較的速い速度で低下するので、蓄冷モ−ドの開始直後と安定期とを区別して、蓄冷モ−ドの開始直後の時期では蓄冷モ−ドの安定期より温度センサ32の時定数τを小さくしてもよい。
(第24実施形態)
上述した各実施形態では、いずれも、信号待ち等の車両エンジン停止に伴う圧縮機1の停止時に、蒸発器凝縮水の蓄冷量にて空気を冷却する放冷モードを実施することにより、車両エンジン停止時における冷房フィーリングの向上を図っているが、本発明は車両エンジン4の稼働中に、車両エンジン4側の要求により圧縮機1を一時的に停止させる場合にも、冷房フィーリングの向上を図ることができるものである。第24実施形態は、このような圧縮機制御を行う車両用空調装置に適用した場合である。
第24実施形態の全体システムは図1と同じでよく、図71は第24実施形態による制御フローチャートであり、図2と類似しており、同一もしくは均等部分には同一符号を付して説明を省略する。
図71のステップS110aで、センサ32、33、センサ群35からの検出信号、操作スイッチ群37の操作信号(空調信号)を読み込み、ステップS110bで、車両エンジン用電子制御装置38からの車両運転信号を読み込む。そして、ステップS175で、蓄冷モ−ドの禁止条件の有無を判定する。この判定は、例えば、図30の判定と同じでよく、(1)高速走行時、(2)蒸発器9のフロスト発生状況が所定の限界レベルに到達した時、および(3)冷房高負荷時のいずれか1つに該当するときは蓄冷モードの禁止条件に該当するとし、ステップS177に進み、通常時の蒸発器目標温度TEO(例えば、+3°C〜4°C)を設定する。
一方、上記(1)〜(3)の条件のいずれにも該当しない場合は、蓄冷モードの禁止条件に該当しないとして、ステップS176に進み、蓄冷時の蒸発器目標温度TEO(例えば、−1°C〜−2°C)を設定する。
その後、ステップS180では圧縮機1の断続が実際の蒸発器吹出温度Teが、通常時の蒸発器目標温度TEO(例えば、+3°C〜4°C)または蓄冷時の蒸発器目標温度TEO(例えば、−1°C〜−2°C)となるように圧縮機1の断続が制御される。
そして、ステップS180aでは、車両走行用エンジン4のスロットル開度の増加等に基づいてエンジン加速時を判定する。エンジン加速時であると、ステップS180bにて圧縮機1を一時的に停止させる。これにより、圧縮機1の駆動負荷が解除され車両エンジン4の加速性を向上できる。
このように、車両エンジン4の稼働中においても、車両エンジン4側の要求により圧縮機1を一時的に停止させる場合がある。この圧縮機1の停止状態を、ステップS180の断続制御による圧縮機停止と区別するために、圧縮機1の強制停止モードという。
第24実施形態によると、蓄冷モードの禁止条件に該当しないときは、常に、蓄冷モードを実行して蒸発器凝縮水に蓄冷してあるので、車両エンジン4の加速性向上等のために圧縮機1を一時的に強制停止しても、その強制停止モードの際に蒸発器凝縮水の蓄冷量による放冷モードを実施して、良好な冷房フィーリングを維持できる。
(第25実施形態)
蒸発器9における凝縮水を凍結させて、この凝縮水の蓄冷量を増加させる蓄冷モードが車両の連続走行により長い時間連続して行われると、蒸発器9でのフロストが極端に進行して、蒸発器9通過風量の低下を招き、蒸発器9の冷房性能を低下させる。
そこで、第25実施形態は、このようなフロストの極端な進行による蒸発器冷却性能の低下を未然に防止することを目的とするものであって、第7実施形態の図27、図30のステップS140による蓄冷モード禁止制御と同様のものである。
第25実施形態による車両用空調装置の全体システム構成は図1、図18等と同じでよいので、説明を省略する。図72は第25実施形態による全体制御のフローチャートであり、図73は図72の蓄冷制御ステップS560の詳細フローチャートである。
図72において、ステップS510は図71のステップS110a、110bと同様の空調信号および車両運転信号の読み込みを行う。ここで、Teは、蒸発器冷却度合を示す蒸発器吹出温度、SWbはバイバスドア17の開度、SWmはエアミックスドア19の開度、Ncは圧縮機回転数、Tinは蒸発器吸い込み空気温度、RHinは蒸発器吸い込み空気湿度(相対湿度)、BLWは送風機駆動用モータ13の印加電圧、Svは車速である。
なお、吸い込み空気湿度RHinは蒸発器9の吸い込み空気通路に設けた湿度センサ(図示せず)により検出するが、吸い込み空気温度Tinは、既存の外気温度センサ、内気温センサの検出温度から求めてもよい。
次のステップS520にて車速信号Sv等に基づいて車両が走行中であるか判定する。走行中でないとき、すなわち、停車中は、車両エンジン4が停止され、圧縮機1も停止するので、ステップS530に進み、放冷モードの制御が行われる。
この放冷モードの制御は、乗員が温熱感、湿度感、臭い発生、曇り発生を感じる知覚限界まで、凍結した凝縮水の蓄冷量でもって冷房作用を発揮し、そして、知覚限界到達後は車両エンジン4を再稼働して、圧縮機1を再稼働させ、蒸発器9の冷却作用による冷房作用を再開する。このような知覚限界制御の具体例は、図47〜図50に示す第13実施形態で既述しているので、詳細な説明は省略する。
一方、ステップS520にて車両が走行中であると判定されたときは、ステップS540に進み、車両が減速中であるか判定する。車両が減速中であると、ステップS550に進み、圧縮機1の電磁クラッチ2を強制的に接続状態にして、圧縮機1を強制的に稼働(ON)状態とする。
これにより、減速(制動)後の次回の停車に備えて、前もって凝縮水の蓄冷量を増加させておくことができる。なお、圧縮機1を強制稼働させると、圧縮機駆動負荷の増加分だけ、エンジンブレーキの効きがよくなるという利点もある。この圧縮機1の強制稼働制御は第15実施形態の図54のステップS15の制御と同様のものである。
そして、車両が減速中でないときは、ステップS560に進み、蓄冷モードの制御を行う。この蓄冷モードの制御の詳細は図73により後述する。その後、ステップS570において、上記各ステップS530、S550、S560による制御値を出力して、各モードを実行する。
次に、図73により蓄冷モード制御の詳細を説明すると、まず、ステップS561にて除霜中であるか判定する。ここで、除霜中とは、後述のステップS565において目標蒸発器吹出温度TEO=通常時TEO(例えば、3℃〜4℃)として、蒸発器冷却度合を凍結状態の凝縮水が融解する温度レベルまで上昇させる状態のことを言う。
除霜中でないときは、ステップS562に進み、蓄冷連続可能時間tcoを決定する。この蓄冷連続可能時間tcoは、基本的には、蒸発器冷却度合を示す蒸発器吹出温度Teと蒸発器吸い込み空気の状態(温湿度等)に基づいて決定するもので、その具体的な決定方法は後述する。
次に、ステップS563にて蓄冷連続時間tcが蓄冷連続可能時間tco以内であるか判定する。ここで、蓄冷連続時間tcは、後述のステップS564にて目標蒸発器吹出温度TEO=蓄冷時TEO(例えば、−1℃〜−2℃)として、凝縮水が凍結し得る程度の低温状態に蒸発器冷却度合が連続して維持される時間を言う。
蓄冷連続時間tcが蓄冷連続可能時間tco以内である時はステップS564に進み、蓄冷モードを維持する。すなわち、TEO=蓄冷時TEO(例えば、−1℃〜−2℃)として、凝縮水を凍結させる蓄冷モードの状態を維持する。
これに対し、蓄冷連続時間tcが蓄冷連続可能時間tcoを越えると、ステップS565に進み、蒸発器9の除霜制御を行う。すなわち、TEO=通常時TEO(例えば、3℃〜4℃)として、蒸発器冷却度合を凍結状態の凝縮水が融解する温度レベルまで上昇させることにより、蒸発器9の除霜を行う。なお、通常時TEOは具体的には図28、29のマップにより決まる第1、第2目標蒸発器吹出温度のうち低い温度である。
そして、ステップS561にて除霜中であると判定されたときは、ステップS566に進み、除霜必要時間tjoを決定する。この除霜必要時間tjoは、基本的には、蒸発器冷却度合を示す蒸発器吹出温度Teと蒸発器吸い込み空気の状態(温湿度等)に基づいて決定するもので、その具体的な決定方法は後述する。
次に、ステップS567にて除霜時間tjが除霜必要時間tjo以内であるか判定する。ここで、除霜時間tjは、ステップS565にてTEO=通常時TEO(例えば、3℃〜4℃)として、凍結した凝縮水の融解(除霜)を連続して行う時間を言う。
除霜時間tjが除霜必要時間tjo以内である時は、ステップS565に進み、除霜モードを維持する。これに反し、除霜時間tjが除霜必要時間tjoを越えると、ステップS564に進み、蓄冷モードの状態に復帰する。
図74は上記作動説明を図示するもので、蓄冷連続可能時間tcoによる蓄冷モードにおける蒸発器通過風量の低下度合と除霜必要時間tjoによる除霜モードにおける蒸発器通過風量の回復度合とを示している。
次に、上記蓄冷連続可能時間tcoの決定方法を具体的に説明すると、図75は蒸発器吸い込み空気状態の違いによる蒸発器通過風量の低下度合を示す実験結果であり、図中、実線1(丸付き数字1)は蒸発器吸い込み空気湿度RHin=30%の場合であり、破線2(丸付き数字2)はRHin=30%で、かつ圧縮機回転数Nc=3000rpm(高速回転時)の場合であり、1点鎖線3(丸付き数字3)はRHin=50%の場合であり、2点鎖線4(丸付き数字4)はRHin=70%の場合である。なお、丸付き数字1、3、4はいずれも圧縮機回転数Nc=1400rpm(低速回転時)でのデータである。
図75の丸付き数字1、2、3、4の比較から理解されように蒸発器吸い込み空気湿度RHinの上昇により蒸発器凝縮水の発生量が増加して、蒸発器9でのフロストの進行が促進され、蒸発器通過風量の低下度合が大きくなる。そのため、RHin=70%の場合4(丸付き数字4)は、蓄冷連続時間=900秒(15分)で蒸発器通過風量が10%も低下してしまう。
図76は蒸発器吸い込み空気湿度RHinおよび蒸発器吸い込み空気温度Tinと、蓄冷連続可能時間との関係を示すもので、湿度RHinおよび温度Tinが上昇するほど、蒸発器凝縮水の発生量が増加するので、湿度RHinおよび温度Tinの上昇に従って蓄冷連続可能時間が短くなるように決定する。
なお、蒸発器吸い込み空気状態とは上記温湿度の他に蒸発器通過風量を包含する概念の用語として用いており、蒸発器通過風量の増加により蒸発器凝縮水の発生量が増加するので、蒸発器通過風量の増加に従って蓄冷連続可能時間が短くなるように決定する。
ここで、蒸発器通過風量は送風機11の風量と相関があり、そして、送風機11の風量は送風機駆動用モータ13の回転数を決めるモータ印加電圧BLWにより決まるから、図77に示すようにこのモータ印加電圧BLWの上昇に従って蓄冷連続可能時間が短くなるように決定する。
また、蒸発器通過風量は、バイバスドア17の開度SWbとエアミックスドア19の開度SWmによっても変化する。すなわち、図78の右側部においてバイバスドア17がCOOL位置側へ移動してバイバスドア17の開度SWbが小さくなるに従って、蒸発器通過風量が増加する。また、エアミックスドア19が最大冷房位置(COOL位置)側へ移動してエアミックスドア19の開度SWmが大きくなるに従って通風路圧損が減少して蒸発器通過風量が増加する。
よって、上記関係から、図78の左側部に示すようにバイバスドア17の開度SWbが小さくなるほど、また、エアミックスドア19の開度SWmが大きくなるほど、蓄冷連続可能時間が短くなるように決定する。
次に、図79は蒸発器吹出温度Teと蓄冷連続可能時間との関係を示すもので、蒸発器吹出温度Teが0℃より高いときは、蒸発器9の除霜の必要がないので、蓄冷連続可能時間は急増加させる。一方、蒸発器吹出温度Teが0℃より低いときは、温度Teが低下するほど蓄冷連続可能時間が所定時間t0より徐々に短くなるように決定する。
更に、図80は蓄冷時の平均圧縮機回転数と蓄冷連続可能時間との関係を示すもので、平均圧縮機回転数が高いほど冷凍サイクル循環流量が増加して、圧縮機稼働による蒸発器吹出温度Teの低下度合が速くなる。従って、蒸発器吹出温度Teの制御のために圧縮機1の作動が断続制御されるときに、蒸発器吹出温度Teの低温側へのオーバーシュート量が圧縮機高回転時ほど大きくなる。
そのため、圧縮機1の断続制御時における蒸発器吹出温度Teの平均値が圧縮機高回転時ほど低くなる。これにより、平均圧縮機回転数が高くなるほど蓄冷連続可能時間が短くなるように決定する。
以上、要するに、本実施形態では、蒸発器吸い込み空気状態を表す情報として吸い込み空気の温湿度および蒸発器通過風量(実際にはモータ印加電圧BLWとドア開度SWb、SWmで推定)を求め、これらの情報と、蒸発器冷却度合を表す蒸発器吹出温度Teと、平均圧縮機回転数とに基づいてそれぞれ個別の蓄冷連続可能時間を決定し、この個別の蓄冷連続可能時間から別途定めた所定の関数関係でもって最終的に蓄冷連続可能時間tcoを算出するようにしている。
このような算出方法によれば、蓄冷連続可能時間tcoを、蒸発器9の凝縮水凍結によるフロスト進行による風量低下度合に精度よく対応して設定できる。従って、この蓄冷連続可能時間tcoに基づいて蒸発器9の除霜制御の開始タイミングを設定することにより、サイクル運転条件の変動にかかわらず、フロスト進行による風量低下が常に所定レベル(例えば、図74のような10%のレベル)であるときに除霜制御を開始することができる。
そのため、フロストによる大幅な風量低下を未然に防止することができ、蓄冷モード実行による冷房性能低下を未然に回避できる。しかも、除霜制御の開始タイミングが過度に早いことによる蓄冷不足が発生することも同時に防止できる。
次に、図73のステップS566における除霜必要時間tjoの決定方法を具体的に説明すると、図81は除霜時における蒸発器吸い込み空気状態の違いによる蒸発器通過風量の回復状況の変化を示すもので、蒸発器吸い込み空気の湿度が高いほど、吸い込み空気の全熱量(エンタルピ)が大きいので、フロストの融解速度が大きくなり、蒸発器通過風量の回復が早いことを示している。
図82は蒸発器吸い込み空気湿度RHinおよび蒸発器吸い込み空気温度Tinと、除霜必要時間との関係を示すもので、湿度RHinおよび温度Tinが上昇するほど、フロストの融解速度が大きくなるので、湿度RHinおよび温度Tinの上昇に従って除霜必要時間が短くなるように決定する。
また、蒸発器通過風量が増加するほど、フロストの融解速度が大きくなるので、図83に示すように蒸発器通過風量の増加に従って除霜必要時間が短くなるように決定する。なお、蒸発器通過風量は、前述の図77にて説明したように送風機モータ印加電圧BLWにより推定することができるので、このモータ印加電圧BLWの上昇に従って除霜必要時間が短くなるように決定してもよい。
また、蒸発器通過風量は、前述の図78にて説明したようにバイパスドア17の開度SWbとエアミックスドア19の開度SWmによっても変化するので、図84に示すようにバイバスドア17の開度SWbが小さくなるほど、また、エアミックスドア19の開度SWmが大きくなるほど、除霜必要時間が短くなるように決定する。
次に、図85は蒸発器吹出温度Teと除霜必要時間との関係を示すもので、蒸発器吹出温度Teが0℃より低いときは、蒸発器9の除霜を行うことができないので、除霜必要時間は急増加し、一方、蒸発器吹出温度Teが0℃より高いときは、温度Teが高くなるほど除霜必要時間が所定時間t1より徐々に短くなるように決定する。
以上、要するに、本実施形態では、蒸発器吸い込み空気状態を表す情報として吸い込み空気の温湿度および蒸発器通過風量(実際にはモータ印加電圧BLWとドア開度SWb、SWmで推定)を求め、これらの情報と、蒸発器冷却度合を表す蒸発器吹出温度Teとに基づいてそれぞれ個別の除霜必要時間を決定し、この個別の除霜必要時間から別途定めた所定の関数関係でもって最終的に除霜必要時間tjoを算出するようにしている。
このような算出方法によれば、除霜必要時間tjoを、蒸発器9のフロスト融解状況の進行による風量回復度合に精度よく対応して設定できる。従って、この除霜必要時間tjoに基づいて蒸発器9の除霜終了のタイミングを設定することにより、蒸発器吸い込み空気状態の変動にかかわらず、蒸発器9の除霜モードを適切なタイミングで終了できる。
次に、本第25実施形態の変形例について説明すると、蒸発器9のフロスト状況の進行に最も大きい影響を与えるのは蒸発器吸い込み空気状態と蒸発器冷却度合であって、これら要素に比較して圧縮機回転数の影響度は小さいので、蓄冷連続可能時間tcoの決定に際して圧縮機回転数を考慮しないようにしてもよい。
また、上記説明では、蒸発器吸い込み空気状態として吸い込み空気湿度RHinを検出しているので、湿度センサが必要となるが、一般に、湿度センサは高価であるので、実用上は湿度センサを必要としないシステムが要望される。
車両用空調装置では図26に示すように内外気切替ドア11dにより内気と外気を送風機11の吸入側に切替導入するようになっており、そして、この内外気切替に伴って吸い込み空気の湿度が大きく変動するので、この内外気切替により吸い込み空気の湿度を判定(推定)することにより、湿度センサを廃止することが可能となる。
すなわち、内気モードでは空調の温度制御が定常域に入ると、除湿後の低湿度内気を再循環するので、吸い込み空気の湿度が低めの湿度で安定するようになり、比較的推定しやすい。例えば、蒸発器吹出温度Te=−2℃で安定している時には、吸い込み空気の湿度(車室内湿度)が乗員数、換気量等により変動するものの、内気温Tr=25℃で20〜40%RHという低めの値で安定する。
これに対し、外気モードでは吸い込み空気の湿度(外気湿度)が、車外の気候条件により全く異なることになり、最悪条件では100%RHとして制御する必要がある。一般に、低湿度内気を再循環する内気モードよりも外気モードにおいて吸い込み空気湿度が高くなる。そして、外気モードでは外気温が上昇するほど、吸い込み空気と蒸発器9との温度差が増大して、蒸発器9での除湿量が増加する。
このため、図86に示すように、外気モード→半内気モード(外気と内気を半分程度づつ混入するモード)→外気導入モードへと切り替わり、外気の吸入割合が多くなるほど、蓄冷連続可能時間が短くなるように決定する。ここで、内気モードでは外気温の変動による蒸発器9での除湿量の変化が少ないので、外気温による蓄冷連続可能時間の変化を非常に小さくしている。
以上のことから内外気モードを判定することにより、吸い込み空気湿度RHinを検出しなくても、検出する場合に近似した精度で蓄冷連続可能時間tcoを決定できる。
図86に示すマップを用いて蓄冷連続可能時間tcoを決定する場合は、図72のステップ510において、蒸発器吸い込み空気温度Tinの代わりに内気温Trと外気温Tamを読み込み、また、蒸発器吸い込み空気湿度RHinの代わりに内外気モード信号を読み込むようにすればよい。
なお、図80のマップでは、圧縮機回転数に基づいて蓄冷連続可能時間を決定するようにしているが、圧縮機1を駆動する車両エンジン4の回転数、および車速は圧縮機回転数に関連して変化するので、エンジン回転数または車速が上昇するほど、蓄冷連続可能時間が短くなるように決定してもよい。
(他の実施形態)
(a)上記の各実施形態では、蓄冷モード時に蒸発器冷却度合(蒸発器吹出温度)を通常時よりも引き下げて、蒸発器凝縮水の温度を下げるか、あるいは蒸発器凝縮水を凍結することにより、蒸発器凝縮水の蓄冷量を増加させている。
しかし、蓄冷モード時に、蒸発器凝縮水の量を増加させるための操作を行うことにより、蒸発器凝縮水の蓄冷量を増加させてもよい。例えば、図36、38のステップS380のように外気を強制導入することにより、蒸発器9の凝縮水量を増加させてもよい。あるいは、車両に、蒸発器凝縮水、雨水等を溜める専用のタンクを設置しておき、このタンク内の水をポンプにて蒸発器9の上部に供給することにより、蒸発器9の凝縮水量を増加させてもよい。
(b)上記の各実施形態では、蒸発器冷却度合(蒸発器吹出温度)の制御を圧縮機1の断続制御により行う場合について説明したが、車両用空調装置では蒸発器吹出温度Te の制御を圧縮機1の容量制御により行うことも周知であり、このような圧縮機容量制御方式のものにおいても本発明を同様に実施できる。
例えば、図2のステップS180において、圧縮機1の断続制御の代わりに、圧縮機1の容量制御を行って、蒸発器吹出温度Te が蒸発器目標吹出温度TEOに維持されるようにすればよい。
(c)上記の各実施形態のうち、第1実施形態等では、蒸発器冷却度合を検出するために、蒸発器吹出空気温度を温度センサ32等により検出しており、また、第2実施形態では蒸発器冷媒温度を温度センサ32により検出しているが、蒸発器9のフィン表面温度、冷媒蒸発圧力等を検出して、蒸発器冷却度合を検出するようにしてもよい。
(d)上記各実施形態では、ヒータコア20を通過する温風とバイパス通路21を通過する冷風との風量割合を調整するエアミックスドア19により、車室内への吹出空気温度を調節する温度調節手段を構成しているが、この温度調節手段として、ヒータコア20へ流入する温水流量を調節する温水弁を用い、この温水弁により温水流量を調節して、車室内への吹出空気温度を調節することができる。