JP2008077799A - 脂肪酸エステル量の測定方法および磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

脂肪酸エステル量の測定方法および磁気記録媒体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】磁気記録媒体表面および表面近傍に存在する脂肪酸エステル量を、簡便かつ正確に測定し得る手段を提供すること。
【解決手段】非磁性支持体上に、非磁性層を介して、または介さずに磁性層を有し、かつ前記非磁性層および/または磁性層に脂肪酸エステルを含む磁気記録媒体における磁性層表面および表面近傍に存在する脂肪酸エステル量を測定する方法。フーリエ変換赤外分光光度計を用いて磁性層表面の全反射吸収スペクトルを求め、次いで、前記磁性層表面に脂肪酸エステルを溶解し得る有機溶剤を接触させた後に、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて該接触後の磁性層表面の全反射吸収スペクトルを求め、前記脂肪酸エステル量として、前記接触前のスペクトルにおける吸収波数2700cm-1〜3000cm-1の領域のピーク面積と前記接触後の吸収波数2700cm-1〜3000cm-1の領域のピーク面積との差分を求める。
【選択図】なし

Description

本発明は、磁性層表面および表面近傍に存在する脂肪酸エステル量の測定方法に関する。更に、本発明は、前記測定方法を使用する磁気記録媒体の製造方法に関する。
近年、コンピュータ用および放送用媒体として、支持体上に少なくとも無機粉体と結合剤からなる塗布層を設けた塗布型磁気記録媒体が広く使用されている。塗布型磁気記録媒体はヘッドや機構部品と接触するため、高い信頼性を得るためには、これらの間で安定な摺動特性を保持することが重要である。そこで、良好な摺動性を付与するために磁性層や磁性層下層の非磁性層には脂肪酸エステル等の潤滑剤成分が配合されている。
しかし、磁性層等の成分として脂肪酸エステルを添加した媒体であっても、脂肪酸エステルが層内部に留まり磁性層表面や表面近傍に移動しなければ良好な潤滑効果を得ることができない。そのため、磁性層表面および表面近傍における脂肪酸エステル量を正確に分析する方法が求められている。
磁性層表層における有機化合物の分析方法としては、オージェ電子分光装置を用いた方法(AES法)、X線光電子分光分析装置を用いた方法(XPS法)などが知られている(例えば特許文献1参照)。
特開2001−6163号公報
しかし、上記AES法やXPS法は、真空系での測定であるため、測定時の磁気記録媒体表面からの脂肪酸エステルの揮散を常に考慮しなければならず、測定値がばらつく、専門的な技能や熟練を要し、結果を得るまでに数日を要する等の問題点がある。また、近年、磁気ディスクでは円滑な摺動には磁性層表面から数百nmレベルの塗膜特性が大きく影響すると言われているのに対し、AES法やXPS法による測定の検出深さは磁性層表面から数nm程度であるため摺動性に影響を及ぼす領域に存在する脂肪酸エステルを定量することができないという問題もある。
また、磁性層表面に、n−ヘキサンのような脂肪酸エステルを溶解する有機溶剤を接触させた後、磁気記録媒体の質量を測定し、有機溶剤接触前の質量との差異を求め、脂肪酸エステルを分析する方法もある。しかしながら、このような質量を測定する方法は、手間および時間がかかり、実用的ではないという問題点がある。
かかる状況下、本発明は、磁気記録媒体表面および表面近傍に存在する脂肪酸エステル量を、簡便かつ正確に測定し得る手段を提供することを目的としてなされたものである。
上記目的を達成する手段は、以下の通りである。
[1] 非磁性支持体上に、非磁性層を介して、または介さずに磁性層を有し、かつ前記非磁性層および/または磁性層に脂肪酸エステルを含む磁気記録媒体における磁性層表面および表面近傍に存在する脂肪酸エステル量を測定する方法であって、
フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて磁性層表面の全反射吸収スペクトル(ATR)を求め、次いで、
前記磁性層表面に脂肪酸エステルを溶解し得る有機溶剤を接触させた後に、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて該接触後の磁性層表面の全反射吸収スペクトル(ATR)を求め、
前記脂肪酸エステル量として、前記接触前のスペクトルにおける吸収波数2700cm-1〜3000cm-1の領域のピーク面積と前記接触後の吸収波数2700cm-1〜3000cm-1の領域のピーク面積との差分を求めることを特徴とする、前記測定方法。
[2] 複数の磁気記録媒体からなる磁気記録媒体のロットを準備する工程と、
前記ロットから少なくとも1つの磁気記録媒体を抽出する工程と、
前記抽出された磁気記録媒体の品質を評価する工程と、
前記品質評価により良品と判定された磁気記録媒体と同一ロット内の他の磁気記録媒体を製品媒体として出荷することを含む、磁気記録媒体の製造方法であって、
前記磁気記録媒体は、非磁性支持体上に、非磁性層を介して、または介さずに磁性層を有し、かつ前記非磁性層および/または磁性層に脂肪酸エステルを含むものであり、
前記評価される品質は、前記磁気記録媒体の磁性層表面および表面近傍における脂肪酸エステルの存在量であり、
前記抽出された磁気記録媒体の品質評価を、[1]に記載の方法によって行うことを特徴とする、前記方法。
[3] 前記磁気記録媒体はディスク形状を有し、
前記抽出された磁気記録媒体の前記差分が0.15〜0.60の範囲であれば良品と判定する、[2]に記載の製造方法。
[4]前記磁気記録媒体はテープ形状を有し、
前記抽出された磁気記録媒体の前記差分が0.02〜0.50の範囲であれば良品と判定する、[2]に記載の製造方法。
本発明の測定方法によれば、磁気記録媒体表面および表面近傍に存在する脂肪酸エステル量を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いた全反射吸収(ATR)スペクトルに基づいて測定するので、従来のAES法、XPS法等のように真空系を利用する必要がなく、簡便、迅速かつ正確な測定が可能となる。本発明の測定方法を用いれば、磁気記録媒体、特に磁気ディスク表面およびその近傍の脂肪酸エステル含有量を正確に把握できるとともに、測定結果に基づき脂肪酸エステル量を制御することができるので、高い耐久性を有するエラーレート上昇の少ない磁気記録媒体を得ることができる。
更に、本発明の磁気記録媒体の製造方法によれば、評価用試料の磁性層表面および表面近傍における脂肪酸エステル量を簡便、迅速かつ正確に測定し、所望量の脂肪酸エステルが存在する評価用試料と同一ロット内の他の磁気記録媒体を製品媒体として出荷することにより、信頼性の高い製品媒体を提供することが可能となる。
以下、本発明について更に詳細に説明する。

[脂肪酸エステル量の測定方法]
本発明の測定方法は、非磁性支持体上に、非磁性層を介して、または介さずに磁性層を有し、かつ前記非磁性層および/または磁性層に脂肪酸エステルを含む磁気記録媒体における磁性層表面および表面近傍に存在する脂肪酸エステル量を測定する方法であって、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて磁性層表面の全反射吸収(ATR)スペクトルを求め(以下、「第一の測定」という)、次いで、前記磁性層表面に脂肪酸エステルを溶解し得る有機溶剤を接触させた後に、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて該接触後の磁性層表面の全反射吸収(ATR)スペクトルを求め(以下、「第二の測定」という)、前記脂肪酸エステル量として、前記接触前のスペクトルにおける吸収波数2700cm-1〜3000cm-1の領域のピーク面積と前記接触後の吸収波数2700cm-1〜3000cm-1の領域のピーク面積との差分を求めるものである。
本発明で使用されるフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)は、当業界で広く知られており、汎用製品の中から適宜選択して用いることができる。なお本発明におけるATRスペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計としてThermo−Nicolet社製の商品名Nexus670を用い、一回反射水平状ATRアクセサリーを用い、トルクスクリュードライバーにて圧力16OZ./in.で媒体試料をGe結晶上に固定し、入射角65°、分解能4cm-1、MCT−A検出器を用いて、オートゲイン、アパーチャー34で200回積算にて測定を行って得られたスペクトルである。前記条件にて測定を行うことにより、測定精度および再現性の高い測定を行うことができる。
ATRスペクトルに基づく分析(以下、「ATR法」ともいう)によれば、磁性層表面から検出深さ約50nmまでの領域の情報を得ることができる。これに対し、XPSやAESによる分析では、検出深さは数nm程度である。よって、ATR法によれば、XPSやAESによる分析よりも、十倍以上の深さを評価することができる。近年、磁気ディスクにおいては円滑な摺動には磁性層表面から数百nmレベルの塗膜特性が大きく影響すると言われているため、XPSやAESよりも深い領域の情報が得られるATR法は、特に磁気ディスクの分析に好適である。
また、磁気テープにおいては極表層のみならず下方からの潤滑剤供給が重要であることが知られている。このような磁気テープの分析においては、表層に存在する脂肪酸エステル量だけでなく、表層より数十nmの深さ領域に存在する脂肪酸エステル量を評価することが潤滑効果を評価する上で好ましい。よって、XPSやAESよりも深い領域の情報が得られるATR法は、磁気テープの分析法としても好適である。
また、XPS法やAES法は、分析装置が高価である。更に、真空系を使用するため磁性層表面から脂肪酸エステルが揮発し測定値がばらつくという問題もある。それに対し、ATR法は、分析装置が比較的安価であり、更に大気圧下で測定できるため、より簡便、正確かつ迅速に磁性層表面および表面近傍に存在する脂肪酸エステル量を測定することが可能となる。
本発明の測定方法では、非磁性支持体上に、非磁性層を介して、または介さずに磁性層を有し、かつ前記非磁性層および/または磁性層に脂肪酸エステルを含む磁気記録媒体において、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて磁性層表面の全反射吸収(ATR)スペクトルを求める第一の測定を行う。ATRスペクトルにおいては、脂肪酸エステルに由来するメチレン基(−CH2−)の対称および非対称伸縮振動の吸収は、2830cm-1〜2930cm-1付近に現れる。また、この領域のピークには、上記脂肪酸エステル由来のピークに加えて磁性層の結合剤成分(塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、イソシアネート系硬化剤等)のピークが重なる場合がある。また、そのピーク面積は、磁性層表面およびその近傍に存在する上記成分の量が多いほど大きくなる。よって、得られたスペクトルにおける上記波数を含む2700cm-1〜3000cm-1の領域のピーク面積を、磁性層表面およびその近傍に存在する前記成分量として用いることができる。
次いで、本発明では、前記磁性層表面に脂肪酸エステルを溶解し得る有機溶剤を接触させた後に、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて該接触後の磁性層表面の全反射吸収(ATR)スペクトルを求める第二の測定を行う。前記接触により、磁性層表面および表面近傍に存在する脂肪酸エステルが除去されるため、第二の測定により得られるATRスペクトルにおける2700cm-1〜3000cm-1の領域のピーク面積は、磁性層表面およびその近傍に存在する脂肪酸エステル以外の成分量として用いることができる。その後、第一の測定により得られたATRスペクトルにおける吸収波数2700cm-1〜3000cm-1の領域のピーク面積と第二の測定により得られたATRにおける上記吸収波数領域のピーク面積との差分を求めることにより、脂肪酸エステルのみに由来するピーク情報、つまり磁性層表面およびその近傍に存在する脂肪酸エステル量を求めることができる。このように、本発明の測定方法では、前記差分として、磁性層表面およびその近傍に存在する脂肪酸エステル量を求めることができる。また、こうして得られる脂肪酸エステル量は、磁性層表面および表面近傍に含まれる脂肪酸エステル含有量の指標として用いることができる。また、得られた測定結果に基づき、磁性層塗布液の処方や媒体の製造条件等を調整することにより、磁性層表面およびその近傍に存在する脂肪酸エステル量を制御し、高い耐久性を有するエラーレート上昇の少ない磁気記録媒体を得ることができる。
なお、前記ピーク面積は、一般に補正ピーク面積と呼ばれるものであり、ATR−FT−IR(横軸は波数(cm-1)、縦軸は吸光度)におけるピークの下、ベースラインの上、および領域の左右の位置を定義する2本の垂直な線の間にある領域の面積(単位なし)をいう。
前記脂肪酸エステルを溶解し得る有機溶剤としては、例えばn−ヘキサンを用いることができる。また、前記接触時間は、磁性層表面および表面近傍の脂肪酸エステルを完全に除去できるように適宜設定すればよい。なお、前述のようにATR法による磁気記録媒体における吸収波数2700cm-1〜3000cm-1の領域の検出深さは50nm程度であるため、前記表面近傍とは、例えば磁性層表面から深さ50nmまでの領域である。例えばn−ヘキサン中に試料を室温で浸漬して5〜30分、好ましくは5〜10分静置することにより磁性層表面および表面近傍(例えば深さ50nmまでの領域)の脂肪酸エステルを除去することができる。
本発明の測定方法が適用される磁気記録媒体は、非磁性支持体上に、非磁性層を介して、または介さずに磁性層を有し、かつ前記非磁性層および/または磁性層に脂肪酸エステルを含むものである。本発明の測定方法によれば、前記差分として、磁性層表面および表面近傍の脂肪酸エステルの存在量を測定することができる。こうして磁気記録媒体用潤滑剤として広く用いられている脂肪酸エステル量を測定することにより、媒体の走行耐久性等の性能を評価することが可能となる。なお、本発明の測定方法が適用される磁気記録媒体の詳細は、本発明の磁気記録媒体の製造方法について後述する通りである。
[磁気記録媒体の製造方法]
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、
複数の磁気記録媒体からなる磁気記録媒体のロットを準備する工程と、
前記ロットから少なくとも1つの磁気記録媒体を抽出する工程と、
前記抽出された磁気記録媒体の品質を評価する工程と、
前記品質評価により良品と判定された磁気記録媒体と同一ロット内の他の磁気記録媒体を製品媒体として出荷することを含む。
前記磁気記録媒体は、非磁性支持体上に、非磁性層を介して、または介さずに磁性層を有し、かつ前記非磁性層および/または磁性層に脂肪酸エステルを含むものであり、前記評価される品質は、前記磁気記録媒体の磁性層表面および表面近傍における脂肪酸エステルの存在量である。そして、前記抽出された磁気記録媒体の品質評価は、先に説明した本発明の測定方法によって行われる。
通常、同一ロット内の製品は、同一条件下において製造されているため物性もほぼ同一である。よって、上記のように同一ロット内から評価用媒体を少なくとも1つ取り出し、取り出された媒体の磁性層表面および表面近傍における脂肪酸エステルの存在量を本発明の分析方法により分析し、所望量の脂肪酸エステルが存在することが確認された評価用媒体と同一ロット内の他の媒体を製品媒体として出荷することにより、所望量の脂肪酸エステルが磁性層表面および表面近傍に存在し優れた耐久性を発揮し得る製品媒体を高い信頼性をもって提供することが可能となる。なお、同一ロットとは、例えば支持体原反1巻から連続的に量産される製品群をいい、媒体の形状およびサイズにもよるが、通常1ロットには、例えば、1/2インチテープの場合、100巻〜30000巻程度の媒体が含まれ、2インチディスクの場合、1万枚〜300万枚程度の媒体が含まれる。
本発明の磁気記録媒体の製造方法において、前記良品と判定する基準は、磁気記録媒体の種類や使用環境、走行条件等に応じて適宜設定することができる。磁性層表面およびその近傍における脂肪酸エステル量が過多であると、連続走行中に張り付きや摩擦係数増大が発生するおそれがあり、少なすぎると連続走行中に媒体表面が損傷したり走行不良が起こるおそれがあるため、前記判定基準は、長時間にわたり安定走行を可能にするという観点から設定することが好ましい。例えば、ディスク形状を有する磁気記録媒体の場合、前記の差分が、例えば0.15〜0.60、好ましくは0.2〜0.5であれば、良品と判定することができる。前記判定基準は、特に深さ数百nm程度の塗膜特性が円滑な摺動に大きく影響すると言われている磁気ディスク、中でも、比較的口径が小さい磁気ディスク(例えば口径0.8〜8インチ、好ましくは0.8〜4インチ)に対して適用されるべきものである。また、テープ形状を有する磁気記録媒体の場合、前記差分が、例えば0.02〜0.5、好ましくは0.04〜0.4であれば、良品と判定することができる。
脂肪酸エステルは、磁気記録媒体用潤滑剤として広く使用されている成分であるため、脂肪酸エステル量を指標として媒体における潤滑効果を評価することができる。特に、良品判定の信頼性を高めるためには、潤滑剤成分が脂肪酸エステルからなる媒体に対し、前記判定を行うことが好ましい。
次に、本発明の磁気記録媒体の製造方法の詳細について説明する。
本発明の製造方法により製造される磁気記録媒体は、非磁性支持体上に、非磁性層を介して、または介さずに磁性層を有するものである。前記磁性層には、通常、強磁性粉末と結合剤が含まれる。
前記磁性層に含まれる強磁性粉末としては、六方晶フェライト粉末または強磁性金属粉末を使用することができる。強磁性金属粉末は公知のものが使用できる。前記強磁性粉末として六方晶フェライト粉末を用いることが、優れた高密度特性を得られるため特に好ましい。
六方晶フェライト粉末としては、例えば、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等を用いることができる。具体的には、マグネートプランバイト型のバリウムフェライトおよびストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネートプランバイト型フェライト、更に一部スピネル相を含有したマグネートプランバイト型のバリウムフェライトおよびストロンチウムフェライト等が挙げられ、その他、所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。一般にはCo−Zn、Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、SbーZn−Co、Nb−Zn等の元素を添加したものを使用できる。原料や製法によっては特有の不純物を含有するものもあるが、本発明ではそれらも使用できる。
前記六方晶フェライト粉末の平均板径は、特に限定されないが、10〜50nmであることが好ましく、15〜30nmであることがさらに好ましい。また、平均板径は、好ましくは記録トラック幅の1/40以下、さらに好ましくは1/50以下であり、かつ磁性層の厚みの1/3以下、さらに好ましくは1/4である。さらに、平均板径の下限値は、記録トラック幅の1/150であり、かつ磁性層の厚みの1/15であることが好ましい。また、平均板厚は5〜15nmであることが好ましく、7〜12nmであることがさらに好ましい。平均板径が10nmであり、かつ平均板厚が5nm以上であれば、磁気異方性が維持され、かつ良好な抗磁力(Hc)と熱安定性とが得られるため好ましい。
六方晶フェライト粉末の板状比(板径/板厚)は2〜5であることが好ましく、2.5〜4であることがさらに好ましい。板状比が小さいと磁性層中の充填性は高くなり好ましいが、充分な配向性が得られない。一方、大きすぎると粒子間のスタッキングによりノイズが大きくなる。このような観点から板状比(板径/板厚)は2〜5の範囲とすることが好ましい。
六方晶フェライト粉末のBET法による比表面積SBETは、通常20〜200m2/gであり、概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符号する。粒子板径・板厚の分布は通常狭いほど好ましい。これらは粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定することで比較できる。分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すとσ/平均サイズ=0.1〜2.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行うことができる。例えば、それ自体公知の酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法で行うことができる。
六方晶フェライト粉末の抗磁力(Hc)は、143〜398kA/m(1800〜5000Oe)であることが好ましく、167〜279kA/m(2100〜3500Oe)であることがさらに好ましい。抗磁力(Hc)が143kA/m以上であれば、記録減磁を受け難くなり、出力の低下もない。また、398kA/m以下であれば、ヘッドによる記録が可能であり、出力を維持できる。抗磁力(Hc)は、粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。
六方晶フェライト粉末の飽和磁化(σs)は、40〜80A・m2/kg(40〜80emu/g)であることが好ましい。飽和磁化(σs)は高い方が好ましいが、微粒子になるほど小さくなる傾向がある。飽和磁化(σs)の改良のために、マグネートプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合すること、含有元素の種類と添加量を適切にする方法などを用いることができる。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。
強磁性粉末を分散する際に強磁性粉末の粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することもできる。表面処理剤としては無機化合物または有機化合物を使用することができる。主な化合物としてはSi、Al、P、等の酸化物または水酸化物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。量は強磁性粉末の質量に対して0.1〜10質量%とすることができる。強磁性粉末のpHも分散に重要である。分散媒、ポリマーにより最適値が変わるが、通常pH4〜12の範囲に最適値がある。媒体の化学的安定性、保存性から6〜11程度が選択される。磁性体に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01〜2.0質量%が選ばれる。
六方晶フェライト粉末は、必要に応じてAl、Si、Pまたはこれらの酸化物などで表面処理を施すことが好ましい。その量は強磁性粉末の質量に対して0.1〜10質量%であり、表面処理を施すと潤滑剤の吸着が減少し媒体表面の潤滑剤量を増加させることができる。六方晶フェライト粉末は可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合がある。これらは、本質的に無い方が好ましいが、200ppm以下であれば特に特性に影響を与えることは少ない。
六方晶フェライト粉末の製法としては、(1)酸化バリウム・酸化鉄・鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後、溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得るガラス結晶化法、(2)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後、100℃以上で液相加熱した後、洗浄・乾燥・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る水熱反応法、(3)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後、乾燥して1100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る共沈法等があるが、本発明ではいずれの製法により製造された六方晶フェライトを用いてもよい。
前記磁気記録媒体は、非磁性支持体と磁性層の間に非磁性層を有するものであることもできる。非磁性層を設けることで、磁性層表面の潤滑剤層を制御し易いだけでなく、良好な表面性も得やすい。
非磁性層としては、非磁性無機粉末と結合剤を主体とするものが好ましい。非磁性層で用いられる非磁性無機粉末としては、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の無機質化合物が挙げられる。具体的には、例えば、α化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ヘマタイト、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカ−バイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどが挙げられ、これらは単独または組合せて使用できる。特に、小さい粒度分布を有すること、機能付与手段が多いこと等の観点から、二酸化チタン、酸化亜鉛、α−酸化鉄、硫酸バリウムを用いることが好ましく、二酸化チタンまたはα−酸化鉄を用いることが更に好ましい。
非磁性粉末の粒子サイズは、0.005〜2μmであることが好ましいが、必要に応じて粒子サイズの異なる非磁性粉末を組み合せることができ、さらに単独の非磁性粉末であっても粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。非磁性粉末の粒子サイズが0.01〜0.2μmであることがとりわけ好ましい。特に、非磁性粉末が粒状金属酸化物である場合は、平均粒子径0.08μm以下であることが好ましく、針状金属酸化物である場合は、長軸長が0.3μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましい。
非磁性粉末のタップ密度は0.05〜2g/mlが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5g/mlである。非磁性粉末の含水率は例えば0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%、更に好ましくは0.3〜1.5質量%である。非磁性粉末のpHは2〜11の範囲が好ましく、5.5〜10の範囲が特に好ましい。非磁性粉末の比表面積は、好ましくは1〜100m2/g、より好ましくは5〜80m2/g、更に好ましくは10〜70m2/gである。非磁性粉末の結晶子サイズは0.004〜1μmであることが好ましく、0.04〜0.1μmであることがさらに好ましい。DBP(ジブチルフタレート)を用いた吸油量は、好ましくは5〜100ml/100g、より好ましくは10〜80ml/100g、さらに好ましくは20〜60ml/100gである。比重は好ましくは1〜12、より好ましくは3〜6である。
非磁性粉末の形状は、針状、球状、多面体状、板状のいずれでもよい。モース硬度は4〜10であるものが好ましい。非磁性粉末のSA(ステアリン酸)吸着量は1〜20μmol/m2が好ましく、より好ましくは2〜15μmol/m2であり、さらに好ましくは3〜8μmol/m2である。これらの非磁性粉末はAl23、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23、ZnO、Y23等で表面処理することが好ましい。特に分散性に好ましいものはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2であり、さらに好ましいのはAl23、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用してもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
前記非磁性層で用いられる非磁性粉末の具体的な例としては、昭和電工製:ナノタイト、住友化学製:HIT−100、ZA−G1、戸田工業社製:αヘマタイトDPN−250、DPN−250BX、DPN−245、DPN−270BX、DPN−500BX、DBN−SA1、DBN−SA3、石原産業製:酸化チタンTTO−51B、TTO−55A、TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100、αヘマタイトE270、E271、E300、E303、チタン工業製:酸化チタンSTT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、αヘマタイトα−40、テイカ製:MT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、MT−600B、MT−100F、MT−500HD、堺化学製:FINEX−25、BF−1、BF−10、BF−20、ST−M、同和鉱業製:DEFIC−Y、DEFIC−R、日本アエロジル製:AS2BM、TiO2P25、宇部興産製:100A、500Aおよびそれを焼成したものが挙げられる。特に好ましい非磁性粉末は、前述したように、二酸化チタンとα−酸化鉄である。
なお、強磁性粉末等の各種粉体の表面は脂肪酸エステル等の潤滑剤を吸着する傾向がある。それらの表面をAl23やSiO2等で被着させることにより、表面の吸着量が低下し磁性層表面およびその近傍に存在する潤滑剤成分を多くすることができる。
前記磁性層および非磁性層では、結合剤として従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物を使用できる。なお、結合剤と脂肪酸エステルの相溶性が低いと脂肪酸エステルが表層部に移動しやすくなり、磁性層表面およびその近傍に存在する脂肪酸エステル量が多くなる傾向がある。結合剤と脂肪酸エステルの相溶性は各々の極性、例えば溶解性パラメータのような指標によって決まり、より異なる値を示すものの組み合わせが一般に相溶性を低くする。
前記熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量(GPC法で測定されたポリスチレン換算値)が、好ましくは1,000〜200,000、より好ましくは10,000〜100,000、重合度が約50〜1000程度のものを使用できる。熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクルリ酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル等を構成単位として含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂または反応型樹脂としては、塗布液の状態で質量平均分子量が200,000以下のものが好ましい。また、これらの樹脂は、樹脂が熱分解するまでの間に軟化または溶融しないものが好ましい。具体的には、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシーポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等が挙げられる。
上記の結合剤について、より優れた分散性と耐久性とを得るためには、必要に応じ、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM)2、−O−P=O(OM)2(以上につき、Mは水素原子またはアルカリ金属塩基)、OH、NR12、N+123(R1〜R3は炭化水素基)、エポキシ基、−SH、−CNなどから選ばれる少なくとも一つ以上の極性基を共重合又は付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基を用いる場合における極性基の量は、例えば10-1〜10-8モル/gであり、好ましくは10-2〜10-6モル/gである。
前記樹脂の詳細については、朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、電子線硬化型樹脂を各層に使用すると、塗膜強度が向上し、耐久性が改善されるだけでなく、表面が平滑化し、電磁変換特性をさらに向上させることもできる。これらの例とその製造方法については、特開昭62−256219号公報に詳細に記載されている。
前記結合剤の市販されている商品名としては、例えば、ユニオンカーバイト社製:VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD、VROH、VYES、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、PKHH、PKHJ、PKHC、PKFE、日信化学工業社製:MPR−TA、MPR−TA5、MPR−TAL、MPR−TSN、MPR−TMF、MPR−TS、MPR−TM、MPR−TAO、電気化学社製:1000W、DX80、DX81、DX82、DX83、100FD、日本ゼオン社製:MR−104、MR−105、MR110、MR100、MR555、400X−110A、日本ポリウレタン社製:ニッポランN2301、N2302、N2304、大日本インキ社製:パンデックスT−5105、T−R3080、T−5201、バーノックD−400、D−210−80、クリスボン6109、7209、東洋紡社製:バイロンUR8200、UR8300、UR−8700、RV530、RV280、大日精化社製:ダイフェラミン4020、5020、5100、5300、9020、9022、7020、三菱化成社製:MX5004、三洋化成社製サンプレンSP−150、旭化成社製サランF310、F210などが挙げられる。
前記樹脂は単独または組合せて使用できるが、好ましいものとして塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂の組合せ、またはこれらにポリイソシアネートを組み合わせたものが挙げられる。
ポリウレタン樹脂の構造としては、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用できる。前記磁気記録媒体において使用可能なポリウレタン樹脂の市販されている商品名としては、例えば、東洋紡社製UR8200、UR8300、UR8700などが挙げられる。
前記磁気記録媒体において使用可能なポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4−4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、これらのイソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等を使用することができる。上記イソシアネート類の市販されている商品名としては、例えば、日本ポリウレタン社製:コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMRミリオネートMTL、武田薬品社製:タケネートD−102,タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202、住友バイエル社製:デスモジュールL、デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHL等があり、これらを単独または硬化反応性の差を利用して二又はそれ以上の組合せで各層とも用いることができる。
前記非磁性層および磁性層で用いられる結合剤の含有量は、非磁性粉末または強磁性粉末の質量に対して、例えば5〜50質量%の範囲であり、10〜30質量%の範囲であることが好ましい。結合剤として塩化ビニル系樹脂を用いる場合には、結合剤の含有量は、非磁性粉末又は強磁性粉末の質量に対して5〜30質量%であることが好ましい。また、ポリウレタン樹脂を用いる場合には、ポリウレタン樹脂の含有量を非磁性粉末または強磁性粉末の質量に対して2〜20質量%とし、ポリイソシアネートの含有量を2〜20質量%の範囲とすることが好ましい。塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリイソシアネートは、相溶性と架橋形成の観点からこれらを組み合わせて用いることが好ましい。但し、例えば、微量の脱塩素によりヘッド腐食が起こる場合には、ポリウレタンのみ、またはポリウレタンとイソシアネートのみを使用することもできる。ポリウレタン樹脂を用いる場合、ガラス転移温度は、例えば−50〜150℃、好ましくは0℃〜100℃、破断伸びは、例えば100〜2000%、破断応力は、例えば0.49〜98MPa(0.05〜10kg/mm2、降伏点は、例えば0.49〜98MPa(0.05〜10kg/mm2)である。
前記磁性層および非磁性層における結合剤量、結合剤中に占める塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート、またはそれ以外の樹脂の量、各樹脂の分子量、極性基量、または先に述べた樹脂の物理特性などを必要に応じて磁性層、非磁性層、更にはバックコート層の間で適宜変更することはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきであり、多層磁性層に関する公知技術を適用できる。例えば、各層で結合剤量を変更する場合、磁性層表面の擦傷を減らすためには磁性層の結合剤量を増量することが有効であり、ヘッドに対するヘッドタッチを良好にするためには、非磁性層の結合剤量を多くして柔軟性を持たせることができる。
前記磁性層および/または非磁性層は、脂肪酸エステルを含有し、その他、必要に応じて添加剤を加えることができる。そのような添加剤としては、カーボンブラック、研磨剤、潤滑剤、分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤、溶剤などを使用することができる。
前記磁気記録媒体の磁性層および非磁性層には、これらの層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度の向上などの目的で、カーボンブラックを加えることができる。カーボンブラックとしては、例えば、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。比表面積は5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、粒子径は5〜300nm(5〜300mμ)、pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlであることが好ましい。
前記磁気記録媒体に使用可能なカーボンブラックの市販されている商品名としては、例えば、キャボット社製:BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、905、800、700、VULCAN XC−72、旭カーボン社製:#80、#60、#55、#50、#35、三菱化成工業社製:#2400B、#2300、#900、#1000、#30、#40、#10B、コロンビアンカーボン社製:CONDUCTEX SC、RAVEN 150、50、40、15、RAVEN−MT−P、日本EC社製:ケッチェンブラックECなどが挙げられる。カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用したり、表面の一部をグラファイト化したものを使用したりしてもかまわない。また、カーボンブラックを磁性層塗布液に添加する前に、予め結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは、単独または組合せて使用することができる。
カーボンブラックを磁性層に使用する場合、強磁性粉末、例えば六方晶フェライト粉末に対する質量の0.1〜30質量%で用いることが好ましい。カーボンブラックは、前述した通り、帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックの種類により異なる。したがって、これらのカーボンブラックは、磁性層および非磁性層でその種類、質量の組合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきものである。使用可能なカーボンブラックについては、例えば「カーボンブラック便覧(カーボンブラック協会編)」を参考にすることができる。
前記磁気記録媒体には、磁性層の耐久性を向上する目的で、磁性層に研磨剤を加えることができる。研磨剤として、例えば、α化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイヤモンド、窒化珪素、炭化珪素チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素など主としてモース硬度6以上の公知の材料を単独または組合せて用いることができる。また、これらの研磨剤どうしの複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。
上記の研磨剤には主成分以外の化合物または元素が含まれる場合もあるが、主成分が90%以上であれば効果に変わりはない。これら研磨剤の粒子サイズは0.01〜2μmの範囲であることが好ましく、特に電磁変換特性を高めるためには、その粒度分布が狭い方が好ましい。また、耐久性を向上させるには、必要に応じて粒子サイズの異なる研磨剤を組み合わせることができ、さらに単独の研磨剤であっても粒径分布を広くして同様の効果をもたせることも可能である。タップ密度は0.3〜2g/ml、含水率は0.1〜5%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m2/gであることが好ましい。研磨剤の形状は、針状、球状、サイコロ状のいずれでもよいが、形状の一部に角を有するものが研磨性が高く好ましい。
前記研磨剤の市販されている商品名としては、例えば、住友化学社製:AKP−12、AKP−15、AKP−20、AKP−30、AKP−50、HIT20、HIT−30、HIT−55、HIT60、HIT70、HIT80、HIT100、レイノルズ社製:ERC−DBM、HP−DBM、HPS−DBM、不二見研磨剤社製:WA10000、上村工業社製:UB20、日本化学工業社製:G−5、クロメックスU2、クロメックスU1、戸田工業社製:TF100、TF140、イビデン社製:ベータランダムウルトラファイン、昭和鉱業社製:B−3、東名ダイヤ社製:MD150、ランズ社製:LS−600Fなどが挙げられる。
上記の研磨剤は、必要に応じて非磁性層に加えることもできる。非磁性層に加えることで表面形状を制御したり、研磨剤の突出状態を制御したりすることができる。これら磁性層、非磁性層の添加する研磨剤の粒径、量はむろん最適値に設定すべきものである。
前記磁気記録媒体において、磁性層および非磁性層に使用可能なその他の添加剤としては、潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果などを有するものを挙げることができる。例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステングラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基をもつシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、アルキル燐酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、αナフチル燐酸、フェニル燐酸、ジフェニル燐酸、p−エチルベンゼンホスホン酸、フェニルホスフィン酸、アミノキノン類、各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、フッ素含有アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)およびこれらの金属塩(Li、Na、K、Cuなど)、または炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコール(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、炭素数12〜22のアルコキシアルコール、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)とからなるモノ脂肪酸エステル、ジ脂肪酸エステルまたはトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエーテルの脂肪酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミンなどを使用できる。
これらの添加剤の具体例としては、脂肪酸では、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸などが挙げられる。アルコール類では、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコールなどが挙げられる。
前記磁気記録媒体は、磁性層および/または非磁性層に脂肪酸エステルを含有する。前記脂肪酸エステルとしては、ブチルステアレート、オクチルステアレート、アミルステアレート、イソオクチルステアレート、ブチルミリステート、オクチルミリステート、ブトキシエチルステアレート、ブトキシジエチルステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、2−オクチルドデシルパルミテート、2−ヘキシルドデシルパルミテート、イソヘキサデシルステアレート、オレイルオレエート、ドデシルステアレート、トリデシルステアレート、エルカ酸オレイル、ネオペンチルグリコールジデカノエート、エチレングリコールジオレイルなどが挙げられる。特に、以下のいずれかの条件を満たす脂肪酸エステルを用いると、所望量の脂肪酸エステルを磁性層表面および表面近傍に存在させることができ、これにより優れた耐久性を得ることができる。
(i)分子量が400以上800以下である
(ii)分子中に極性の強いC=C結合やエーテル結合を持たない
(iii)分子中に分岐アルキル基を有する
前記脂肪酸エステルの具体的な例としては、イソヘキサデシルステアレート、ドデシルステアレート、トリデシルステアレート、ブチルミリステート、オクチルミリステート、2−オクチルドデシルパルミテート、2−ヘキシルドデシルパルミテートなどの高分子の脂肪酸エステルが挙げられる。但し、表面に出にくい脂肪酸エステルを使用することも可能で、この場合は添加量を増やすか、上記の高分子の脂肪酸エステルと併用することで所望量の脂肪酸エステルを磁性層表面およびその近傍に存在させることができる。この表面に出にくい脂肪酸エステルの例としては、ブチルステアレート、オクチルステアレート、アミルステアレート、オレイン酸オレイル、ブトキシエチルステアレートなどが挙げられる。
更に、前記磁気記録媒体は、磁性層および/または非磁性層に界面活性剤を含むことができる。界面活性剤としては、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加体等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウム又はスルホニウム類等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルフォン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基などの酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸または燐酸エステル類、アルキルベダイン型等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。
上記の潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下であることが好ましく、さらに10%以下であることが好ましい。
前記磁気記録媒体において使用可能な上記の潤滑剤、界面活性剤は、個々に異なる物理的作用を有するものであり、その種類、質量および相乗的効果を生み出す潤滑剤の併用比率は目的に応じて最適に定められるべきものである。非磁性層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、沸点、融点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を中間層で多くして潤滑効果を向上させる方法が挙げられる。無論、ここに示した例のみに限られるものではない。一般には磁気記録媒体全体での潤滑剤の総量として、強磁性粉末または非磁性粉末の質量に対し、ディスクの場合、好ましくは4〜30質量%、より好ましくは6〜20質量%の範囲で選択される。特に、走行耐久性確保のために所望量の脂肪酸エステルを磁性層表面および表面近傍に存在させるためには、磁性層に含まれる脂肪酸エステル量は、強磁性粉末の質量に対して0.1〜50質量%であることが好ましく、0.2〜25質量%であることが更に好ましい。テープの場合、磁気記録媒体全体での潤滑剤の総量として、強磁性粉末または非磁性粉末の質量に対し、0.1〜10質量%とすることができ、特に走行耐久性確保のためには、磁性層に含まれる脂肪酸エステル量は、強磁性粉末の質量に対して、0.2〜3質量%であることが好ましい。また、多層構造の媒体では、各層の脂肪酸エステルの添加量を変えることで、磁性層表面およびその近傍に存在する脂肪酸エステル量を制御することができる。一般にはより表面に近い層に添加する脂肪酸エステルが多いほど磁性層表面およびその近傍に存在する脂肪酸エステル量は多くなる。なお、支持体と磁性層の間に脂肪酸エステルを含む非磁性層を設けると、磁性層表面およびその近傍に存在する脂肪酸エステル量を制御しやすく、さらに表面状態の良好な媒体が得られるので、好ましい。非磁性層に脂肪酸エステルを含む場合には、その量は非磁性粉末の質量に対して0.5〜5質量%であることが好ましい。
前記添加剤は、そのすべてまたはその一部を、磁性層塗布液および非磁性層塗布液の製造のどの工程で添加してもかまわない。例えば六方晶フェライト等の強磁性粉末を添加するときは、混練工程前に添加する、該強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する、分散工程で添加する、分散後に添加する、塗布直前に添加する、等々の場合などがある。また、目的に応じて磁性層を塗布した後、同時または逐次塗布で、添加剤の一部または全部を塗布することにより目的が達成される場合がある。また、目的によってはカレンダ処理した後、またはスリット終了後に、磁性層表面に潤滑剤を塗布することもできる。
前記磁気記録媒体を製造するための塗布液中では、公知の有機溶剤を使用することができる。具体的には、例えば、任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等を混合して使用することができる。
これら有機溶媒は、必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。本発明で用いる有機溶媒はその添加量を変えてもかまわない。分散性を向上させるためにはある程度極性が強い方が好ましく、溶剤組成の内、誘電率が15以上の溶剤が50%以上含まれることが好ましい。また、溶解パラメータは8〜11であることが好ましい。
前記磁気記録媒体における非磁性支持体は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、ポリアラミド、芳香族ポリアミド、ポリベンゾオキサゾールなどの公知のフィルムが使用できる。中でもポリエチレンナフタレート、ポリアミドなどの高強度支持体を用いることが好ましい。また必要に応じて、磁性層面と支持体面の表面粗さを変えるため、特開平3−224127号公報に示されるような積層タイプの支持体を用いることもできる。これらの非磁性支持体には、予めコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理などを行ってもよい。また非磁性支持体としてアルミまたはガラス基板を適用することも可能である。
優れた電磁変換特性および走行性を有する磁気記録媒体を得るためには、非磁性支持体としてWYKO社製光干渉式表面粗さ計TOPO−3Dにより測定した中心面平均表面粗さSRaは、8.0nm以下が好ましく、より好ましくは4.0nm以下、さらに好ましくは2.0nm以下である。これらの非磁性支持体は、単に中心面平均表面粗さが小さいだけではなく、0.5μm以上の粗大突起がないことが好ましい。また、表面の突起形状は必要に応じて非磁性支持体に添加されるフィラーの大きさと含有量により自由にコントロールされるものである。これらのフィラーとしては、一例としてCa、Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機微粉末が挙げられる。非磁性支持体の最大高さSRmaxは1μm以下、十点平均粗さSRzは0.5μm以下、中心面山高さはSRpは0.5μm以下、中心面谷深さSRvは0.5μm以下、中心面面積率SSrは10〜90%、平均波長Sλaは5〜300μmであることが好ましい。所望の電磁変換特性と耐久性を得るため、これらの非磁性支持体の表面突起分布をフィラーにより任意にコントロールでき、例えば、0.01〜1μmの大きさの突起を各々0.1mm2あたり0〜2000個の範囲でコントロールすることができる。
前記非磁性支持体は可撓性であることが好ましい。また、F−5値は、0.49〜4.9MPa(5〜50kg/mm2)であることが好ましい。また、非磁性支持体の100℃30分での熱収縮率は好ましくは3%以下、さらに好ましくは1.5%以下、80℃30分での熱収縮率は好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.1%以下である。非磁性支持体の破断強度は49〜980MPa(5〜100kg/mm2)、弾性率は980〜19600MPa(100〜2000kg/mm2)であることがそれぞれ好ましい。非磁性支持体の温度膨張係数は10-4〜10-8/℃であることが好ましく、より好ましくは10-5〜10-6/℃である。湿度膨張係数は10-4/RH%以下であることが好ましく、より好ましくは10-5/RH%以下である。これらの熱特性、寸法特性、機械強度特性は支持体の面内各方向に対し10%以内の差で、ほぼ等しいことが好ましい。
前記磁気記録媒体を構成する層の厚みは、非磁性支持体の厚みが、例えば2〜100μmであり、好ましくは2〜80μmである。コンピュータ用磁気記録テープの場合、非磁性支持体は、3.0〜6.5μmであり、好ましくは3.0〜6.0μm、さらに好ましくは4.0〜5.5μmの範囲の厚さのものが使用される。磁性層の厚みは、例えば0.2μm以下であり、0.03〜0.15μmであることが好ましい。厚み変動率は±20%以内であることが好ましく、さらに好ましくは±5%以内である。磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。また、非磁性層を設ける場合、その厚みは0.2〜5.0μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜3.0μmであり、さらに好ましくは1.0〜2.5μmである。
なお、前記非磁性層は、実質的に非磁性層であればよい。例えば、所望の電磁変換特性を得ることができる範囲で、不純物としてまたは意図的に少量の磁性体を含んでもかまわない。ここに、実質的に非磁性層とは、非磁性層の残留磁束密度が50T・m(500G)以下、または抗磁力(Hc)が39.8kA/m(500Oe)以下であることを意味し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力を持たないことを意味する。
前記磁気記録媒体は、非磁性支持体と非磁性層または磁性層の間に密着性向上のための下塗層を有していてもよい。下塗層を有する場合、下塗層の厚みは、例えば0.01〜0.5μm、好ましくは0.02〜0.5μmである。また、前記磁気記録媒体は、磁性層を有する面とは反対の面上にバックコート層を有していてもよい。バックコート層を有する場合、その厚みは、例えば0.1〜4μm、好ましくは0.3〜2.0μmである。
前記磁気記録媒体は、非磁性支持体の両面に非磁性層と磁性層を設けてなる両面磁性層ディスク状磁気記録媒体であっても、片面のみに設けてなるテープ状またはディスク状磁気記録媒体であってもかまわない。前述のように、本発明の測定方法は、磁性層表面から深さ数百nm程度までの領域の塗膜特性が円滑な摺動に大きく影響すると言われている磁気ディスクに対して適用することが有効である。
前記磁気記録媒体における磁性層の飽和磁束密度は、好ましくは100〜300T・m(1000〜3000G)である。磁性層の抗磁力(Hc)は、好ましくは143〜398kA/m(1800〜5000Oe)であるが、より好ましくは167〜279kA/m(2100〜3500Oe)である。抗磁力(Hc)の分布は狭い方が好ましく、SFDおよびSFDrは0.6以下が好ましく、さらに好ましくは0.2以下である。テープ状磁気記録媒体において、角形比(SQ)は0.6以上であると出力が高く好ましい。SQに特に上限はないが0.90を越えると六方晶フェライト粉末のスタッキングによるノイズ増加が発生するため好ましくない。ディスク状磁気記録媒体では、ランダム配向を行う場合、SQが0.45〜0.65であることが好ましく、またSQがディスク内で等方化されていることが好ましい。円周配向を行う場合は、SQは円周方向にテープ状磁気記録媒体と同じく0.6以上であることが好ましい。
前記磁気記録媒体のヘッドに対する摩擦係数は温度−10〜40℃、湿度0〜95%の範囲において、例えば0.5以下、好ましくは0.3以下、表面固有抵抗は好ましくは磁性面104〜1012Ω/sq、帯電位は−500〜500Vが好ましい。磁性層の0.5%伸びでの弾性率は、面内各方向で好ましくは980〜19600MPa(100〜2000kg/mm2)、破断強度は好ましくは98〜686MPa(10〜70kg/mm2)、磁気記録媒体の弾性率は面内各方向で好ましくは980〜14700MPa(100〜1500kg/mm2)、残留伸びは好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.1%以下である。
磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50〜120℃が好ましく、非磁性層のそれは0〜100℃であることが好ましい。損失弾性率は1×107〜8×108Pa(1×108〜8×109dyne/cm2)の範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障が発生しやすい。これらの熱特性や機械特性は媒体の面内各方向において10%以内でほぼ等しいことが好ましい。磁性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは100mg/m2以下、さらに好ましくは10mg/m2以下である。塗布層が有する空隙率は非磁性下層、磁性層とも好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは20容量%以下である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。
磁性層のWYKO社製光干渉式表面粗さ計TOPO−3Dにより測定した中心面表面粗さRaは、例えば4.0nm以下、好ましくは3.0nm以下、さらに好ましくは2.0nm以下である。磁性層の最大高さSRmaxは0.5μm以下、十点平均粗さSRzは0.3μm以下、中心面山高さSRpは0.3μm以下、中心面谷深さSRvは0.3μm以下、中心面面積率SSrは20〜80%、平均波長Sλaは5〜300μmであることがそれぞれ好ましい。磁性層の表面突起は0.01〜1μmの大きさのものを0〜2000個の範囲で任意に設定することが可能であり、これにより電磁変換特性、摩擦係数を最適化することが好ましい。これらは支持体のフィラーによる表面性のコントロールや磁性層に添加する粉体の粒径と量、カレンダ処理のロール表面形状などで容易にコントロールすることができる。カールは±3mm以内とすることが好ましい。
前記磁気記録媒体が非磁性層と磁性層を有する場合、目的に応じ非磁性層と磁性層でこれらの物理特性を変えることは容易である。例えば、磁性層の弾性率を高くし走行耐久性を向上させると同時に非磁性層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りをよくすることができる。
前記磁気記録媒体の磁性層塗布液を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で使用する強磁性粉末、非磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料は、どの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。
混練工程では、オープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力を有するものを使用することが好ましい。ニーダを用いる場合、強磁性粉末または非磁性粉末と結合剤のすべてまたはその一部(但し、全結合剤の30%以上が好ましい)および強磁性粉末100質量部に対し15〜500質量部の範囲で混練処理することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。
また、磁性層塗布液および非磁性層塗布液を分散させるにはガラスビーズを用いることができるが、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いることができる。分散機は公知のものを使用することができる。分散条件を制御することにより、媒体の表面粗さを調整できるだけでなく、磁性層表面および表面近傍の脂肪酸エステルの存在量を制御することもできる。分散ビーズの粒径は、3〜7mmが好ましく、3〜5mmがより好ましい。分散処理時間は、500〜2000分が好ましく、700〜1800分がより好ましい。
本発明で重層構成の磁気記録媒体を塗布する場合、非磁性下層を塗布し乾燥させたのち、その上に磁性層を塗布し乾燥させる方法、非磁性下層と磁性層を同時に塗布し乾燥させる方法のどちらを用いてもよいが、前者の塗布方式を用いた方が磁性層表面および表面近傍に存在する脂肪酸エステル量を制御しやすい。
ディスク状磁気記録媒体の場合、配向装置を用いずに無配向でも十分に等方的な配向性が得られることもあるが、コバルト磁石を斜めに交互に配置すること、ソレノイドで交流磁場を印加するなど公知のランダム配向装置を用いることが好ましい。六方晶フェライト粉末の場合は一般的に面内および垂直方向の3次元ランダムになりやすいが、ランダム配向装置を用いることにより垂直方向に成分を持たない面内2次元ランダムとすることも可能である。またスピンコートを用い、接線方向に配向させる円周配向としてもよい。
テープ状磁気記録媒体の場合、通常、コバルト磁石やソレノイドを用いて長手方向に配向する。また磁石ゾーンに入る前に適度の予備乾燥を行うこともできる。
塗布膜の乾燥は、通常40℃以上、140℃以下の範囲で行われる。所望量の脂肪酸エステルを磁性層表面および表面近傍に存在させるためには、100℃以上での乾燥の滞在時間を5秒以上、20秒以下とすることが好ましい。これは、100℃以上とすることで乾燥中に脂肪酸エステルが表面に移動し偏在するためと推定している。乾燥処理による脂肪酸エステルの揮発を防ぐためには、乾燥温度を140℃以下にすることが好ましい。
カレンダ処理ロールとしてエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロールまたは金属ロールを用いることができ、特に両面磁性層とする場合は金属ロールどうしで処理することが好ましい。処理温度は、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。線圧力は好ましくは200kg/cm以上、さらに好ましくは300kg/cm以上である。また、テープ状磁気記録媒体、ディスク状磁気記録媒体のいずれもアルミナ、酸化クロム、ダイヤモンド等からなる研磨テープで表面処理を行うと、突起や異物が除去できるため好ましい。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるべきものではない。なお、実施例中の「部」は、質量部を示す。
1.磁気ディスク媒体の作製
磁性層塗布液
バリウムフェライト磁性粉体 100部
対Baモル比組成:Fe9.10、Co0.22、Zn0.71
Hc:2400Oe(192kA/m)
BET:70m2/g、σs:52A・m2/kg
平均板径:22nm、平均板状比:3.0
ポリウレタン樹脂 10部
ダイヤモンド(東名ダイヤ社製MD150) 3部
カーボンブラック(旭カーボン社製#50) 1部
メチルエチルケトン 125部
シクロヘキサノン 125部
非磁性層塗布液
非磁性粉体 α−Fe23 ヘマタイト 80部
平均長軸長:0.08μm、SBET:60m2/g、pH 9
表面処理層:表面にAl23が粒子全体に対して8質量%存在
カーボンブラック(コロンビアンカーボン社製コンダクテックスSC−U) 15部
ポリウレタン樹脂(東洋紡社製UR8200) 12部
フェニルホスフォン酸 5部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(8/2混合溶剤) 250部
上記の塗布液のそれぞれについて、各成分をニーダで混練した後、サンドミルを用いて分散させ、得られた分散液に表1に示す量のイソヘキサデシルステアレートとブチルステアレートを加えた。更にイソシアネートを非磁性層の塗布液には6部、磁性層の塗布液には3部加え、さらにそれぞれにシクロヘキサノン40部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層塗布液および磁性層塗布液をそれぞれ調製した。
得られた非磁性層塗布液を、乾燥後の厚さが1.2μmになるように厚さ62μmで中心面平均表面粗さが1.8nmのポリエチレンナフタレート支持体上に塗布し一度乾燥させ、その直後に乾燥後の厚さが1.2μmになるようにブレード方式により磁性層を塗布し、周波数50Hz、磁場強度25mTまた周波数50Hz、12mTの2つの磁場強度交流磁場発生装置の中を通過させ、ランダム配向処理を行い、乾燥後、7段のカレンダで温度90℃、線圧300kg/cm(294kN/m)にて処理を行い、3.7インチに打ち抜いた。その後55℃でのサーモ処理を行い塗布層の硬化処理を促進させた。このようにして、ディスクサンプル1〜6を作製した。
2.磁気テープの作製
磁性層塗布液
強磁性金属粉末 100部
平均長軸長:0.06μm
針状比:5
比表面積:86m2/g
Hc:2100Oe(167kA/m)
σs:135emu/g 135A・m2/kg
塩化ビニル重合体 MR110(日本ゼオン社製) 12部
ポリウレタン樹脂 UR8200(東洋紡社製) 3部
カーボンブラック(旭カーボン社製) 5部
αアルミナ(住友化学社製 HIT55) 5部
フェニルホスホン酸 3部
ステアリン酸(工業用) 2部
研磨剤 ダイアモンド微紛 1部
ブチルステアレート 15部
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製コロネートL) 6部
シクロヘキサノン 180部
メチルエチルケトン 180部
非磁性層塗布液
非磁性粉体 TiO2 80部
カーボンブラック(コンダクテックスSC―U) 20部
塩化ビニル重合体 MR110(日本ゼオン社製) 12部
ポリウレタン樹脂 UR8200(東洋紡社製) 5部
フェニルホスホン酸 4部
ステアリン酸 (工業用) 1部
ブチルステアレート 表に記載
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製コロネートL) 6部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(8:2混合溶剤) 250部
上記各成分をニーダで混練したのち、サンドミルを用いて10時間分散させ、得られた分散液にポリイソシアネ−トを2.5部、メチルエチルケトン3部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層塗布液および磁性層塗布液を調製した。
得られた非磁性層塗布液を、乾燥後の厚さが1.5μmになるように、厚さ62μmで中心面平均表面粗さが1.8nmのポリエチレンナフタレート支持体上に塗布し、100℃で乾燥し、その上に、磁性層塗布液を磁性層の厚さが80nmになるように逐次重層塗布(Wet and Dry:表2中「W/D」と記載)し、両層がまだ湿潤状態にあるうちに600mT(6000G)の磁力を持つコバルト磁石と600mT(6000G)の磁力を持つソレノイドにより配向させた。乾燥後、金属ロールのみから構成される7段のカレンダーで温度90℃にて線圧294kN/m(300kg/cm)で処理を行った。その後、非磁性支持体の磁性層を設けた面とは反対の面に、バックコート層塗布液(カ−ボンブラック(平均粒子サイズ:17nm)100部、αアルミナ(平均粒子サイズ:200nm)5部をニトロセルロース樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネートに分散した塗布液)を、乾燥後の厚みが0.5μmとなるように塗布してバックコート層を形成した。1/2吋の幅にスリットし、テープクリーニング装置で磁性層の表面をクリーニングし、テープサンプル7を得た。なお該テープクリーニング装置は、スリット品の送り出しおよび巻き取り機構を備え、不織布とカミソリブレ−ドがテープの磁性層面に押し当たるように取り付けられた装置である。
塗布方法、磁性層厚み、下層(非磁性層)に含まれる脂肪酸エステル量を、表2に示すように変更した以外は上記と同様の方法でテープサンプル8〜12を得た。なお、サンプル9および11は、非磁性層塗布液を塗布した後、非磁性層が湿潤状態にあるうちに磁性層塗布液を塗布(Wet and Wet;表2中「W/W」と記載)して作製した。
評価方法
(1)脂肪酸エステル存在量の測定
各サンプルについて、フーリエ変換赤外分光光度計(Thermo−Nicolet社製の商品名Nexus670)を用い、一回反射水平状ATRアクセサリーを用い、トルクスクリュードライバーにて圧力16OZ./in.でサンプルを磁性層側を上にしてGe結晶上に固定し、入射角65°、分解能4cm-1、MCT−A検出器を用いて、オートゲイン、アパーチャー34で200回積算にて、吸収波数2700cm-1〜3000cm-1の領域のピーク面積を求めた。次いで、サンプルを室温下でn−ヘキサン中に5分間浸漬して磁性層表面およびその近傍に存在する脂肪酸エステルを除去した後、上記条件にて吸収波数2700cm-1〜3000cm-1の領域のピーク面積を求めた。n−ヘキサン浸漬前のピーク面積から浸漬後のピーク面積を差し引き差分を求めた。算出された差分を表1および表2に示す。
(2)耐久性評価
1.ディスクサンプル
各サンプルについて、Zip250ドライブを用いて5℃10%RH環境下でヘッド位置を固定し、400時間走行させた後、磁性層表面を目視で観察し、以下の基準に従い評価した。結果を表1に示す。
○:傷が観察されないもの
△:弱い傷が発生したもの
×:強い傷が発生したもの
2.テープサンプル
磁気テープサンプルのAlTiCバーに対する摩擦係数μを次のようにして測定した。
摩擦係数:23℃,RH70%において、テープとAlTiC製のバーとを20gの張力(T1)で接触(巻きつけ角:180°)させて案内部材を介して試料を水平としてロードセルに保持し、この条件下で、試料を14mm/秒の速度で水平方向に走行させるのに必要な張力(T2)を測定した。測定距離は45mmとした。
この測定値をもとに次の計算式により、1パス目と100パス目の摩擦係数μ値を求めた値を表2に示す。
μ=(1/π)・ln(T2/T1)
Figure 2008077799
Figure 2008077799
評価結果
表1に示すように、磁気ディスクの場合は前記差分が0.15〜0.6の範囲であれば、連続走行させても顕著な傷や張り付きが発生することはなかった。また、表2に示すように、磁気テープの場合は前記差分が0.02〜0.5の範囲であれば、摩擦係数の増大や走行不良を起こすことなく、長時間にわたり安定走行が可能であった。
以上の結果から、ATR法により求められる前記差分を指標として、磁気記録媒体の性能を評価できることがわかる。
本発明によれば、磁気記録媒体の磁性層表面およびその近傍に存在する脂肪酸エステル量、特に高密度記録磁気ディスクにおいて摺動性に大きな影響を及ぼす領域に存在する脂肪酸エステル量を簡便に測定することができる。

Claims (4)

  1. 非磁性支持体上に、非磁性層を介して、または介さずに磁性層を有し、かつ前記非磁性層および/または磁性層に脂肪酸エステルを含む磁気記録媒体における磁性層表面および表面近傍に存在する脂肪酸エステル量を測定する方法であって、
    フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて磁性層表面の全反射吸収スペクトル(ATR)を求め、次いで、
    前記磁性層表面に脂肪酸エステルを溶解し得る有機溶剤を接触させた後に、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて該接触後の磁性層表面の全反射吸収スペクトル(ATR)を求め、
    前記脂肪酸エステル量として、前記接触前のスペクトルにおける吸収波数2700cm-1〜3000cm-1の領域のピーク面積と前記接触後の吸収波数2700cm-1〜3000cm-1の領域のピーク面積との差分を求めることを特徴とする、前記測定方法。
  2. 複数の磁気記録媒体からなる磁気記録媒体のロットを準備する工程と、
    前記ロットから少なくとも1つの磁気記録媒体を抽出する工程と、
    前記抽出された磁気記録媒体の品質を評価する工程と、
    前記品質評価により良品と判定された磁気記録媒体と同一ロット内の他の磁気記録媒体を製品媒体として出荷することを含む、磁気記録媒体の製造方法であって、
    前記磁気記録媒体は、非磁性支持体上に、非磁性層を介して、または介さずに磁性層を有し、かつ前記非磁性層および/または磁性層に脂肪酸エステルを含むものであり、
    前記評価される品質は、前記磁気記録媒体の磁性層表面および表面近傍における脂肪酸エステルの存在量であり、
    前記抽出された磁気記録媒体の品質評価を、請求項1に記載の方法によって行うことを特徴とする、前記方法。
  3. 前記磁気記録媒体はディスク形状を有し、
    前記抽出された磁気記録媒体の前記差分が0.15〜0.60の範囲であれば良品と判定する、請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記磁気記録媒体はテープ形状を有し、
    前記抽出された磁気記録媒体の前記差分が0.02〜0.50の範囲であれば良品と判定する、請求項2に記載の製造方法。
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