JP2008075177A - 高周波焼入れ軸部品用鋼及び軸部品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.4〜0.6%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.3〜2%、S:0.03%以下(0%を含まない)、Cr:0.3%以下(0%を含まない)、Ti:0.005〜0.05%、B:0.0005〜0.005%、をそれぞれ含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる高周波焼入れ軸部品用鋼であって、軸部品用鋼の表面からの深さがD/4(D:軸部品用鋼の直径)である位置のビッカース硬さが275HV〜350HVである高周波焼入れ軸部品用鋼を製造する。
【選択図】図2
Description
C:0.4〜0.6%(質量%の意味、以下同じ)、
Si:0.1〜1.5%、
Mn:0.3〜2%、
S:0.03%以下(0%を含まない)、
Cr:0.3%以下(0%を含まない)、
Ti:0.005〜0.05%、
B:0.0005〜0.005%、
をそれぞれ含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる高周波焼入れ軸部品用鋼であって、該軸部品用鋼の表面からの深さがD/4(D:軸部品用鋼の直径)である位置のビッカース硬さを275HV〜350HVとしたものであり、好ましくは、更にCu:0.5%以下(0%を含まない)、Ni:0.5%以下(0%を含まない)、Nb:0.05%以下(0%を含まない)、V:0.3%以下(0%を含まない)、Zr:0.1%以下(0%を含まない)の1種または2種以上を含み、より好ましくは、更にMo:0.5%以下(0%を含まない)を含み、さらに好ましくは、Pb:0.3%以下(0%を含まない)、Bi:0.1%以下(0%を含まない)、Ca:0.005%以下(0%を含まない)、Mg:0.005%以下(0%を含まない)、Te:0.1%以下(0%を含まない)、REM:0.1%以下(0%を含まない)、よりなる群から選択されるいずれか1種または2種以上の元素を更に含むものである。
また、「軸部品の断面」は、軸方向に対して垂直である。
本実施の形態の軸部品用鋼材は、静的ねじり強度とねじり疲労強度を向上させるために、化学成分組成が適切に調整されていることを特徴の1つとする。よってまず、鋼材の化学成分組成について説明する。
Cは、鋼材の強度を確保するために必要な元素であり、軸部品として重要な特性である静的ねじり強度とねじり疲労強度を高めるのに有用である。従って、Cの含有量は、0.4%以上、好ましくは0.43%以上、さらに好ましくは0.45%以上にする。しかしCを過剰に含有させると、鋼材の割れ感受性が高くなり、静的ねじり強度が逆に低下してしまう。したがって、Cの含有量は、0.6%以下、好ましくは0.57%以下、さらに好ましくは0.55%以下にする。
Siは、焼入れ性を改善し、低温焼戻しに対する軟化抵抗を高めるため、高周波焼入れ部の硬さを確保するのに必要な元素である。従ってSiの含有量は、0.1%以上、好ましくは0.15%以上、さらに好ましくは0.2%以上にする。しかし、Siを過剰に含有させると軸部品が脆化してしまうので、Siの含有量は、1.5%以下、好ましくは、1.2%以下、さらに好ましくは、1.0%以下にする。
Mnも、Siと同様に、焼入れ性を改善するものあり、軸部品として重要な特性である静的ねじり強度を確保するのに有用である。従って、Mnの含有量は、0.3%以上、好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは0.7%以上にする。しかし、Mnを過剰に含有させると、焼割れが生じる場合があるので、2%以下、好ましくは1.8%以下、さらに好ましくは1.6%以下、さらに好ましくは1.4%以下にする。
Sは、鋼材の強度、殊に加工方向に対して横目の強度を著しく低下させる。従ってSの含有量は、0.03%以下、好ましくは0.025%以下、さらに好ましくは0.02%以下にする。Sの含有量は少ない程望ましいが、Sを完全に除去することは技術的に困難であり、通常、0%超である。また、SはMnと共に硫化物系介在物を形成して被削性を改善するため、前記上限値以下であれば、積極的に鋼中に残存させてもよい。好ましいSの含有量は、0.005%以上、特に、0.01%以上である。
Crは、焼入れ性を向上するものであり、軸部品の静的ねじり強度を高めるのに有効である。しかし、過剰に含有させると軸部品用鋼が硬くなり過ぎ、切断などの加工性を低下させる。従って、Cr量の上限は、0.3%、好ましくは0.25%、さらに好ましくは0.2%とする。
Tiは、NやOとの親和性が強く、Bの焼入れ性の改善や粒界強化に有効であり、軸部品の静的ねじり強度やねじり疲労強度を高めるのに極めて有効である。また、結晶粒の微細化にも有効である。従って、Tiの含有量は、0.005%以上、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.015%以上である。一方、Tiを過剰に含有させると圧延材が硬くなり過ぎ、切断などの加工性を低下させる。従って、Ti量の上限は、0.05%、好ましくは0.045%、さらに好ましくは0.04%とする。
Bは、少量の添加で焼入れ性を高めると共に粒界強度を高める効果を有するので、軸部品の静的ねじり強度やねじり疲労強度を高めるのに極めて有効である。従って、B含有量は、0.0005%以上、好ましくは0.00055%以上、さらに好ましくは0.0006%以上にする。しかし、Bを多量に添加しても、上記した効果が飽和し、更には割れ発生の原因にもなるので、B量の上限は、0.005%、好ましくは0.0045%、さらに好ましくは0.004%としている。
Alは、完全に除去することは技術的に困難であり、通常、0%超である。Alの含有量が多くなると酸化物系介在物の量が増大して軸部品の靭性が劣化する。従って、Al含有量の上限は、0.05%であり、好ましくは0.04%であり、さらに好ましくは0.03%である。一方、Alは脱酸剤として作用するため、また鋼の結晶粒の微細化のために積極的に添加する場合がある。この場合のAl含有量の下限値は、例えば0.0005%、好ましくは0.001%、さらに好ましくは0.002%である。
Pは、粒界偏析を起こして粒界強度を低下させ、鋼材の脆化の原因となるので、その含有量は、できる限り低いことが好ましい。従ってP量を、0.02%以下、好ましくは0.015%以下、より好ましくは0.01%以下に抑制することが推奨される。
Nは、Tiと結合して析出硬化を促進させるが、多過ぎると鋼材の脆化の原因となるので、0.01%以下、好ましくは0.008%以下、さらに好ましくは0.006%以下に抑える。
Oは、酸化物系介在物を形成して軸部品の靭性を低下させる原因になるので、0.005%以下、好ましくは0.0045%以下、さらに好ましくは0.004%以下に抑える。
Moは、焼入れ性を向上させると共に粒界強度を高める作用があり、軸部品の静的ねじり強度を向上させるのに有効である。Mo含有量の下限値は、例えば、0.05%、好ましくは0.1%、さらに好ましくは0.15%である。しかし、Moを過剰に含有させると圧延材が硬くなりすぎ、切断などの加工性を低下させる。従って、Mo含有量の上限は0.5%、好ましくは0.45%、さらに好ましくは0.4%である。
本発明の軸部品方向は、前記成分組成を満足しているだけでなく、D/4位置の硬さ(内部硬さ)275HV以上、好ましくは280HV以上、さらに好ましくは285HV以上に高められていることが重要である。あらかじめ内部硬さを高めておけば、高周波焼入後の表面硬さと内部硬さを適切にバランスさせることができ、軸部品の表面を起点とする破壊と軸部品内部を起点とする破壊の両方を防止できる。
上述したように、軸部品用鋼の内部硬さを所定の範囲内に制御するため、圧延、鍛造等によって得られる原料鋼材(棒鋼)を次のように調質する。例えば、前記材料鋼材を温度800℃〜950℃に加熱した後に、水焼入れし、焼戻しする。この焼入れ焼戻しによって軸部品用鋼は焼戻し組織になっており、より詳細には、焼戻しマルテンサイト組織が形成されている。焼戻しマルテンサイトは、フェライトやパーライトの組織に比べて硬い材料であるため、鋼材に含まれる焼戻しマルテンサイトの比率を高めることにより、軸部品用鋼のビッカース硬さを高めることができる。軸部品用鋼の断面に占める焼戻しマルテンサイトの好ましい面積比率は、70%以上であり、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。
入れ前の組織の状態に大きく左右される。すなわち、殆どCを固溶しないフェライトと、Cを約0.77%固溶しているパーライトが混在する非調質鋼材は、Cの濃度が不均一であるために、高周波焼入れを行なってもCが十分に拡散しない。このような状態では、製造される軸部品のねじり疲労強度が低くなってしまう。これに対して、高周波焼入れ前の鋼材の組織を焼戻しマルテンサイトとすれば、C濃度の不均一が解消されるため、ねじり疲労強度を向上させることができる。
本発明の軸部品は、前記軸部品用鋼を必要な形状に加工した後、高周波焼入れすることによって得られる。そして本発明の軸部品は、鋼材の段階で上述したように内部硬さが適切な範囲に高められており、かつその後の高周波焼入れによって表面硬さが高められているため、内部硬さと表面硬さとを適切にバランスでき、ねじり疲労強度を高めることができる。更には、このようにして得られる軸部品では、ねじり疲労強度の向上が、静的ねじり強度の低下を伴うことなく達成できる。特に焼入れ比が小さい場合にねじり疲労強度の向上と、静的ねじり強度の低下防止との両立をより顕著に達成できる。焼入れ比を比較的小さくしても、調質鋼を高周波焼入れした場合には内部硬さが高められているため、内部起点の疲労破壊を確実に防止でき非調質鋼を高周波焼入れした場合に比べてねじり疲労強度が高まるためと思われる。上述したように、高周波焼入れによる表面硬貨の程度は、軸部品の表面から、ビッカース硬さが450HVとなる位置までの距離tと、軸部品の断面の半径Rとの比t/R(焼入れ比)によって評価できるが、ねじり疲労強度の向上と静的ねじり強度の低下防止を高いレベルで達成できる焼入れ比の範囲は、0.5以下、好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.35以下である。ただし、高周波焼入れの実効を図るためには、焼入れ比は、0.1以上、好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.25以上とする。
表1に示す成分組成の鋼(残部はFeおよび不可避的不純物)を真空高周波誘導炉(VIF)にて溶製し、50kg〜150kgのインゴットに鋳造し、1200℃に加熱してから直径30mmの棒鋼に熱間鍛造し、1200℃で1時間恒温保持した後に、大気中で放冷することにより溶体化処理を行なった。
<調質鋼>
上記の溶体化処理を行なった棒鋼を約800℃〜950℃に加熱し、水焼入れした後、加熱温度:約650℃、保持時間:約1時間の条件で焼戻し調質鋼を得た。この調質鋼の焼戻しマルテンサイト組織は、面積率で70%以上であり、D/4位置のビッカース硬さ(高周波焼入れ前)は、下記表2及び表3に示す通り275HV以上であった。
<非調質鋼>
上記の溶体化処理を行なっただけの非調質鋼には、焼戻しマルテンサイト組織がなく、またD/4位置のビッカース硬さ(高周波焼入れ前)は、下記表2及び表3に示す通り275HV未満であった。
<高周波焼入れ>
高周波焼入れ装置の形式:移動焼入れ型
高周波焼入れ装置の仕様出力:200k[W]
仕様周波数:40k[Hz]
加熱保持時間:1.0〜1.5[秒]
焼入れ時の冷却剤:ソリュブル液(YS−16)、濃度:1.0〜2.5%
電圧条件:6.5k[V]、電流条件:7.0[A]
<焼戻し>
温度:150[℃]
時間:60[分]
<静的ねじり試験>
使用した試験機:神鋼造機株式会社製 ねじり疲労試験機
試験機の性能:動荷重 −10kN・m〜+10kN・m
静荷重 −10kN・m〜+10kN・m
試験条件 :ねじり速度・・・30度/分(角度制御)
<ねじり疲労試験>
使用した試験機:神鋼造機株式会社製 ねじり疲労試験機
試験機の性能:動荷重 −10kN・m〜+10kN・m
静荷重 −15kN・m〜+15kN・m
試験条件 :周波数・・・2〜3Hz(0.8k〜1.0kN・mのトルク制御)
試験終了条件:破断、若しくは、100万回
表2及び表3から明らかなように、高周波焼入れ前に予め調質処理して高周波焼入れ前のビッカース硬さ(D/4位置)を275HV以上にした軸部品(試験番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、39、41、43、45、47)は、同じ成分組成であって非調質の軸部品(試験番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、40、42、44、46、48)に比べて静的ねじり強度及びねじり疲労強度が向上している。
本実施例では、C:0.49%、Si:0.51%、Mn:0.99%、S:0.015%、Cr:0.20%、Al:0.033%、Ti:0.022%、B:0.0016%、P:0.011%、N:0.0053%、O:0.0013%、Cu:0.02%である鋼材(残部はFe及び不可避的不純物)を用い、実験例1と同様にして調質または非調質の加工品(ねじり試験形状品)を製造した。
電圧・電流条件:
条件A・・・ 電圧:6.5k[V]、電流:6.0[A]
条件B・・・ 電圧:6.5k[V]、電流:6.5[A]
条件C・・・ 電圧:6.5k[V]、電流:7.0[A]
条件D・・・ 電圧:7.0k[V]、電流:7.0[A]
条件E・・・ 電圧:7.0k[V]、電流:8.0[A]
条件F・・・ 電圧:7.5k[V]、電流:8.0[A]
Claims (5)
- C:0.4〜0.6%(質量%の意味、以下同じ)、
Si:0.1〜1.5%、
Mn:0.3〜2%、
S:0.03%以下(0%を含まない)、
Cr:0.3%以下(0%を含まない)、
Ti:0.005〜0.05%、
B:0.0005〜0.005%、
をそれぞれ含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる高周波焼入れ軸部品用鋼であって、該軸部品用鋼の表面からの深さがD/4(D:軸部品用鋼の直径)である位置のビッカース硬さが275HV〜350HVであることを特徴とする高周波焼入れ軸部品用鋼。 - 更に、Cu:0.5%以下(0%を含まない)、Ni:0.5%以下(0%を含まない)、Nb:0.05%以下(0%を含まない)、V:0.3%以下(0%を含まない)、Zr:0.1%以下(0%を含まない)の1種または2種以上を含有する請求項1記載の高周波焼入れ軸部品用鋼。
- 更に、Mo:0.5%以下(0%を含まない)を含有する請求項1または請求項2に記載の高周波焼入れ軸部品用鋼。
- 更に、
Pb:0.3%以下(0%を含まない)、
Bi:0.1%以下(0%を含まない)、
Ca:0.005%以下(0%を含まない)、
Mg:0.005%以下(0%を含まない)、
Te:0.1%以下(0%を含まない)、
REM:0.1%以下(0%を含まない)、
よりなる群から選択されるいずれか1種または2種以上を含有する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の高周波焼入れ軸部品用鋼。 - 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の高周波焼入れ軸部品用鋼を高周波焼入れすることにより製造される軸部品であって、軸部品の表面から、ビッカース硬さが450HVとなる位置までの距離tと、軸部品の断面の半径Rとの比t/Rが0.1以上、0.5以下であることを特徴とする軸部品。
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