JP2013112826A - 耐摩耗性と面疲労特性に優れた高周波焼入歯車およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.25〜0.65%、Si:0.70〜2.00%以上、Mn:0.30〜2.00%、Cr:1.50%以下、必要に応じて、Nb:0.010〜0.060%、Ti:0.005〜0.050%、B:0.0005〜0.0100%の1種以上を含有し、(1)式で計算されるZの値が15≦Z≦30で、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、高周波焼入れ部の組織が焼戻しマルテンサイト主体で内部に粒径300nm未満の炭化物が100μm2当り90個以上微細に分散している高周波焼入れ歯車。Z=10Si+Cr+50(D×Ceq)/A (1)ここで、Si、Crはそれぞれの元素の含有する量(質量%)を示す。Dは焼入れ性指数、Ceqは炭素当量、AはAc3変態点とする。上記成分組成の鋼を、熱間鍛造を行った後に焼入れ・焼戻しを行い、その後歯車形状に加工し、表面硬化熱処理として高周波焼入れ・焼戻しを行う。
【選択図】なし
Description
(1)高周波焼入れ後において、現用の高周波焼入れ歯車と同等以上の優れた性能を得るためには、硬度分布を従来鋼と同等とすることが前提として必要で、焼入れ性指数:D値による調整が有効である。
(2)適量のSi、Cr量を含有することにより焼戻し軟化抵抗を高めると、歯車接触面での発熱による軟化が抑制され、歯車駆動時に歯面の亀裂発生が防止可能である。
(3)焼戻し軟化抵抗は10Si+Cr(但し、Si、Crは含有量(質量%))の値で整理される。
(4)高周波焼入れ前の焼入れ・焼戻し組織において炭化物の析出をコントロールし、高周波焼入れ後の硬化層に微細な炭化物を分散させる。それにより、高周波焼入れ部の硬さがさらに向上し、炭化物の存在により耐摩耗性が向上するとともに、焼戻しにおいて軟化が起こりにくくなる。
(5)曲げ疲労強度は、高周波焼入れ特有の結晶粒微細化効果で向上するが、さらにAc3変態点を高くして、高周波加熱後の結晶粒度を微細化すると、著しく向上する。
(5)Ac3変態点の上昇による高周波焼入れ後の結晶粒微細化は、衝撃特性および面疲労強度も大きく増大させる。
1.質量%で、C:0.25〜0.65%、Si:0.70〜2.00%以上、Mn:0.30〜2.00%、Cr:1.50%以下を含有し、(1)式で計算されるZの値が15≦Z≦30で、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、高周波焼入れ部の組織が焼戻しマルテンサイト主体で内部に粒径300nm未満の炭化物が100μm2当り90個以上微細に分散していることを特徴とする耐摩耗性と面疲労特性に優れた高周波焼入れ歯車。
Z=10Si+Cr+50(D×Ceq)/A ・・・(1)
ここで、Si、Crはそれぞれの元素の含有する量(質量%)を示す。Dは焼入れ性指数、Ceqは炭素当量、AはAc3変態点で、(2)、(3)、(4)式で計算された値とする。
D=8.76*√(C)*(1+0.64*Si)*(1+4.1*Mn)*(1+2.33*Cr)・・・(2)
但し、式において各合金元素は含有量(質量%)で、Bを添加した場合はD値はこの計算式による値の2倍とする。
Ceq=C+Si/7+Mn/5+Cr/9+0.023・・・(3)
但し、式において各合金元素は含有量(質量%)とする。
A=921−203√C+44.7*Si−30*Mn−11*Cr・・・(4)
但し、式において各合金元素は含有量(質量%)とする。
2.成分組成に、更に、質量%で、Nb:0.010〜0.060%、Ti:0.005〜0.050%、B:0.0005〜0.0100%の1種以上を含有することを特徴とする1記載の耐摩耗性と面疲労特性に優れた高周波焼入れ歯車。
3.1または2に記載の成分組成の鋼を、熱間鍛造を行った後に焼入れ・焼戻しを行い、その後歯車形状に加工し、表面硬化熱処理として高周波焼入れ・焼戻しを行い、高周波焼入れ部の組織を焼戻しマルテンサイト主体で内部に粒径300nm未満の炭化物が100μm2当り90個以上微細に分散しているものとすることを特徴とする、耐摩耗性と面疲労特性に優れた歯車の製造方法。
4.前記高周波焼入れ・焼戻し後、更に歯面にショットピーニングまたは研磨を行うことを特徴とする、3記載の耐摩耗性と面疲労特性に優れた歯車の製造方法。
[成分組成] 以下の説明において、%は質量%とする。
C:0.25〜0.65%
Cは強度確保のために必要であり、高周波焼入れ後の表面硬さを決定する。含有量が0.25%未満では表面硬さが500HV以下にまで低下するために歯車としての強度を確保できない。一方、0.65%を超えると歯車内部の靭性が低下して、疲労亀裂の進展が早くなるために、曲げ疲労特性が低下するため、0.25〜0.65%とする。
Siは焼戻し軟化抵抗を高め、それにより面疲労特性を向上させるのに有効な元素である。その効果を得るため0.70%以上とする。また、焼戻し軟化抵抗向上は炭化物の析出を遅らせる効果によるものであるため、高周波焼入れ前の焼入れ・焼戻し後において、炭化物を微細に析出させる事ができる。その結果、高周波焼入れの急速加熱においても、炭化物が固溶しやすくなり、高周波焼入れ後の表面硬度を高める事が出来る。更に、Ac3変態点を上昇させて高周波焼入による結晶粒を微細化させる効果もある。上述した効果は2.00%を超えると飽和するので、含有量を0.70〜2.00%とする。
Mnは焼入れ性を高める元素であり、その効果を得るため0.30%以上とする。一方、2.00%を超えると過剰に焼入れ性が上がりすぎて靭性が劣化して曲げ疲労特性が低下する。また、加工性も劣化する、よって0.30〜2.00%とする。
Crは焼入れ性と焼戻し軟化抵抗を高め、また、焼戻し時の炭化物析出にも大きく影響する元素であるため含有する。含有量が1.50%を超えると、焼入れ性が高くなりすぎるため歯車内部の靭性が劣化し、曲げ疲労強度が低下するため、1.50%以下とする。
Zは焼戻し軟化抵抗、焼入れ性、Ac3変態点を考慮したパラメータであり、Z=10Si+Cr+50(DxCeq)/A とする。ここで、Si、Crはそれぞれの元素の含有する量(質量%)を示す。Dは焼入れ性指数、Ceqは炭素当量、AはAc3変態点で、以下の(2)〜(4)式で計算された値とする。
D=8.76*√(C)*(1+0.64*Si)*(1+4.1*Mn)*(1+2.33*Cr)・・・(2)
但し、式において各合金元素は含有量(質量%)で、Bを添加した場合はD値はこの計算式による値の2倍とする。
Ceq=C+Si/7+Mn/5+Cr/9+0.023・・・(3)
但し、式において各合金元素は含有量(質量%)とする。
A=921−203√C+44.7*Si−30*Mn−11*Cr・・・(4)
但し、式において各合金元素は含有量(質量%)とする。
Nbは炭窒化物形成により結晶粒を微細化させ、曲げ疲労強度を向上させる。結晶粒を微細化させるには0.010%以上必要であるが、0.060%を超えて含有してもその効果は飽和する。よってNbを含有する場合は0.010〜0.060%とする。
Tiは炭窒化物形成により結晶粒を微細化させ、曲げ疲労強度を向上させる。結晶粒を微細化させるには0.005%以上必要であるが、0.050%を超えて含有してもその効果は飽和する。よって、Tiを含有する場合は0.005〜0.050%とする。
Bは焼入れ性を上げるのに有効である。その効果は0.0005%以上で得られるが、0.0100%を超えて含有してもその効果は飽和する。よって、Bを含有する場合は0.0005〜0.0100%とする。
高周波焼入れ部のミクロ組織を、粒径300nm未満の炭化物が100μm2当り90個以上微細に分散した焼戻しマルテンサイトを主体とするミクロ組織に規定する。高周波焼入れ部のミクロ組織は歯車として必要な強度・靭性と耐摩耗性が得られるように焼戻しマルテンサイトを主体とする。主体とは少なくとも95%含む場合とする。焼戻しマルテンサイトに存在する炭化物は耐摩耗性に有効であるが粒径300nmを超えて大きくなると、介在物と同様に疲労破壊の起点となり、疲労強度が低下する。
20φ(mm)丸棒を切断し、No.1〜37の鋼については焼入れ・焼戻し後に高周波焼入れ・焼戻しを行い、従来鋼については浸炭焼入れ・焼戻しをした後、断面の硬度分布を測定し、ビッカース硬さで550HVの得られる深さを調査し有効硬化層深さとした。さらに表面から50μm深さ位置での硬度を表面硬度とし、内部(非硬化部)の硬度とともにビッカース硬度計を用いて測定した。また、No.1〜37の鋼については高周波焼入れ部位をFE−SEMで観察し、粒径300nm未満の炭化物について100μm2あたりの個数をカウントした。粒径は短径、長径の平均値とした。
各鋼材を用いてJIS3号衝撃試験片を作製し、No.1〜37の鋼については高周波焼入れ・焼戻しを、従来材については浸炭焼入れ焼戻しを施した後、シャルピー試験機により試験温度20℃における衝撃値を調査した。
直径32mmの丸棒鋼から、平行部直径10mmの試験片を採取し、平行部に平行部と直角方向に深さ1.5mmの切り欠き(切り欠き係数:1.4)を全周にわたってつけた回転曲げ疲労試験片を調製した。No.1〜37の鋼については高周波焼入れ焼戻しを、従来鋼については浸炭焼入れ・焼戻し処理を行った。小野式回転曲げ疲労試験機を使用して107回を疲労限度として回転曲げ疲労試験を行い、回転曲げ疲労強度を測定した。
面圧疲労特性をローラーピッチング試験により調査した。直径32mmの丸棒鋼から図3に示す試験面の直径が26mm、幅が28mmの円筒部を有する試験片を作製した。また、直径70mmの丸棒鋼を用いて、鍛造により直径135mmとした後、焼準処理を行い、直径130mm、幅18mmの大ローラーを作製した。
比較例No.32、33、34はB含有量が本発明範囲よりも低いために焼入れ性が不足しており、硬化層深さが浅く、内部硬度も低めであるために全体の強度が不足して回転曲げ疲労強度が不足した。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.25〜0.65%、Si:0.70〜2.00%以上、Mn:0.30〜2.00%、Cr:1.50%以下を含有し、(1)式で計算されるZの値が15≦Z≦30で、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、高周波焼入れ部の組織が焼戻しマルテンサイト主体で内部に粒径300nm未満の炭化物が100μm2当り90個以上微細に分散していることを特徴とする耐摩耗性と面疲労特性に優れた高周波焼入れ歯車。
Z=10Si+Cr+50(D×Ceq)/A ・・・(1)
ここで、Si、Crはそれぞれの元素の含有する量(質量%)を示す。Dは焼入れ性指数、Ceqは炭素当量、AはAc3変態点で、(2)、(3)、(4)式で計算された値とする。
D=8.76*√(C)*(1+0.64*Si)*(1+4.1*Mn)*(1+2.33*Cr)・・・(2)
但し、式において各合金元素は含有量(質量%)で、Bを添加した場合はD値はこの計算式による値の2倍とする。
Ceq=C+Si/7+Mn/5+Cr/9+0.023・・・(3)
但し、式において各合金元素は含有量(質量%)とする。
A=921−203√C+44.7*Si−30*Mn−11*Cr・・・(4)
但し、式において各合金元素は含有量(質量%)とする。 - 成分組成に、更に、質量%で、Nb:0.010〜0.060%、Ti:0.005〜0.050%、B:0.0005〜0.0100%の1種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の耐摩耗性と面疲労特性に優れた高周波焼入れ歯車。
- 請求項1または2に記載の成分組成の鋼を、熱間鍛造後、焼入れ・焼戻しを行い、その後歯車形状に加工し、表面硬化熱処理として高周波焼入れ・焼戻しを行い、高周波焼入れ部の組織を焼戻しマルテンサイト主体で内部に粒径300nm未満の炭化物が100μm2当り90個以上微細に分散したものとすることを特徴とする、耐摩耗性と面疲労特性に優れた歯車の製造方法。
- 前記高周波焼入れ・焼戻し後、更に歯面にショットピーニングまたは研磨を行うことを特徴とする、請求項3記載の耐摩耗性と面疲労特性に優れた歯車の製造方法。
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