JP2008075118A - 被覆金属微粒子およびその製造方法、 - Google Patents

被覆金属微粒子およびその製造方法、 Download PDF

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Abstract

【課題】耐食性に優れ、かつ比表面積が大きい被覆金属微粒子、及びかかる被覆金属微粒子を製造する方法を提供する。
【解決手段】Tiを含む粉末(ただしTi酸化物粉末を除く)と、酸化物の標準生成自由エネルギーがΔGM-O>ΔGTiO2の関係を満たす金属Mの酸化物粉末とを混合する工程と、得られた混合粉末を非酸化性雰囲気中で650〜900℃の温度で熱処理することによって、前記金属Mの酸化物を還元するとともに、得られた金属Mの微粒子の表面をTiOを主体とするTi酸化物で被覆して被覆金属微粒子を得る工程と、前記被覆金属微粒子を生体擬似液に浸漬する工程を有することを特徴とする。
【選択図】図5

Description

磁気テープや磁気記録ディスク等の磁気記録媒体、電波吸収体、インダクタ、プリント基板等の電子デバイス、ヨーク等の軟磁性体、光触媒、核酸抽出用やたんぱく質捕捉用の磁気ビーズ、医療用マイクロスフィア等に用いる被覆磁性金属粒子、およびその製造方法に関する。
電子機器の高性能化及び小型軽量化に伴い、電子デバイスの高性能化及び小型軽量化とともに、電子デバイスを構成する材料の高性能化及びナノサイズ化も要求されている。例えば磁気テープに塗布する磁性粒子は、磁気記録密度の向上を目的として、ナノサイズ化と磁化の向上が同時に要求されている。
ナノ磁性粒子は主に共沈法や水熱合成法等の液相合成法により製造されている。液相法で得られるナノ磁性粒子はフェライトやマグネタイト等の酸化物粒子である。最近では有機金属化合物の熱分解を利用した方法も採用されており、例えばFe(CO)5からFeのナノ粒子が製造されている。
金属の磁性粒子は酸化物磁性粒子に比べて磁化が大きいため、工業的利用への期待が大きい。例えば、金属Feの飽和磁化は218A・m2/kgと酸化鉄に比べて非常に大きいので、磁場応答性に優れ、信号強度が大きくとれるという利点がある。しかし金属Fe等の金属粒子は容易に酸化し、例えば100μm以下、特に1μm以下の微粒子状にすると、比表面積の増大により大気中で激しく燃えるので、乾燥状態で取り扱うのが難しい。そのため、フェライトやマグネタイト等の酸化物粒子が広く利用されてきた。
乾燥金属粒子を取り扱う場合、金属粒子を直接大気(酸素)に触れさせないように粒子表面に被膜を付与することが不可欠である。しかし、自身の金属酸化物で表面を被覆する方法は、少なからず金属を酸化劣化させる。また、特許文献1に示す方法のように高温でグラファイトの被膜を形成する方法では、工程や装置が複雑となり、生産性の点で十分ではない。その上、グラファイトはグラフェンシートが積層した構造を有するため、球状の金属粒子を被覆した場合、必ず格子欠陥が導入される。これらの欠陥が存在する被覆では、磁気ビーズ等、高耐食性が要求される用途では不満足である。そのため、高耐食性の金属微粒子、及びそれを安価に製造し得る工業生産性に優れた方法が望まれている。これに対して、本発明者らは簡便な方法により、酸化物で被覆された耐食性等に優れた金属微粒子を提供する方法を見出した(例えば特許文献2)。すなわち、金属M1の酸化物粉末と、酸化物の標準生成自由エネルギーがΔGM1−O>ΔGM2−Oの関係を満たす元素M2を含む粉末とを混合し、その混合粉末を非酸化性雰囲気中で熱処理することにより、元素M2によって還元された金属M1の金属微粒子の表面をM2、M2の酸化物、M2の窒化物の少なくとも一つによって被覆された金属微粒子が提供される。
特開平9−143502号公報 特開2005―120470号公報
特許文献2の製造方法によれば、簡便な方法で被覆された金属微粒子を提供することが可能であるが、金属微粒子には安定で、耐食性の高いものが要求される。金属微粒子を安定かつ完全に被覆して高耐食性を発現するためには、被覆層を厚くする必要がある。しかし被覆層を単純に厚くすると全体の粒子径が大きくなってしまう。粒子径の増大は比表面積の低下を招き、例えば医療用マイクロスフィアとして用いる場合には目的物質との反応性が低下してしまう。すなわち金属微粒子の耐食性を向上させることと、比表面積を大きくすることとの両立は困難であった。
上記問題に鑑み、本発明は、耐食性に優れ、かつ比表面積が大きい被覆金属微粒子、及びかかる被覆金属微粒子を製造する方法を提供することを目的とした。
本発明の被覆金属微粒子の製造方法は、以下の3つの工程を有する。第1の工程は、Tiを含む粉末(ただしTi酸化物粉末を除く)と、酸化物の標準生成自由エネルギーがΔGM-O>ΔGTiO2の関係を満たす金属Mの酸化物粉末とを混合する、混合工程である。第2の工程は、得られた混合粉末を非酸化性雰囲気中で650〜900℃で熱処理することによって、前記金属Mの酸化物を還元するとともに、得られた金属Mの微粒子の表面をTiOを主体とするTi酸化物で被覆して被覆金属微粒子を得る熱処理工程である。ここで「TiO2を主体とする」とは、X線回折測定で検出されるTiO2以外のTi酸化物(例えば不定比組成のTin2n-1)も含むTi酸化物に相当する回折ピークの中で、TiOに相当するピークの強度が最大であることを意味する。均一性の観点から、実質的にTiO2からなるのが好ましい。ここで「実質的にTiO2からなる」とは、X線回折パターンでTiO2以外のTi酸化物のピークが明確に確認できない程度にTiO2の割合が多いことを言う。従って、X線回折パターンでノイズ程度にTiO2以外のTi酸化物のピークがあっても、「実質的にTiO2からなる」の条件は満たす。第3の工程は、得られた前記被覆金属微粒子を生体擬似液に浸漬する、浸漬処理工程である。この浸漬処理工程によって、凹凸の構造、例えば花弁状の凹凸を前記被覆金属微粒子の表面に形成することができる。ここで、生体擬似液とは、血漿を模倣して作製された水溶液であり、生理食塩水、PBSバッファー、ハンクス液、擬似体液(Simulated Body Fluid/SBF液)が挙げられる。より好ましくはNa、K、Mg2+、Ca2+、Cl-、HCO3-、HPO4 -、SO4 2-を含む水溶液であることが好ましく、ハンクス液およびSBF液がこれに相当する。
また、本発明の被覆金属微粒子は、金属のコア粒子がTiOを主体とするTi酸化物で被覆された被覆金属微粒子であって、前記金属は、その酸化物の標準生成自由エネルギーがΔGM-O>ΔGTiO2の関係を満たす金属Mであり、前記被覆金属微粒子は表面に凹凸を有し、前記凹凸は花弁状の凹凸である被覆金属微粒子であることを特徴とする。この花弁状凹凸を粒子表面に付与することにより、比表面積が増大し、1粒子あたりの反応性が向上する。例えばたんぱく質を捕捉する磁気ビーズとして用いる際には、捕捉率が向上するため、前記被覆金属微粒子は、生体物質分離などの用途に用いられる磁気ビーズに好適である。
また、本発明の他の被覆金属微粒子は、金属のコア粒子がTiOを主体とするTi酸化物で被覆された被覆金属微粒子であって、前記金属は、その酸化物の標準生成自由エネルギーがΔGM-O>ΔGTiO2の関係を満たす金属Mであり、前記被覆金属微粒子は表面に凹凸を有し、前記凹凸は金属Mの酸化物を主体とするナノワイヤであることを特徴とする。前記ナノワイヤの形成により、被覆金属微粒子の比表面積が増大し、1粒子あたりの表面反応性が向上する。かかる構成の被覆金属微粒子も、前記被覆金属微粒子と同様に磁気ビーズ用途に好適である。
さらに、前記被覆金属微粒子において、前記被覆金属微粒子の密度と比表面積から換算される平均粒子径<d>と、レーザー回折型粒径分布測定器で測定したd50との比<d>/d50が0.07以下であることが好ましい。なお、ここで平均粒径<d>とは、被覆金属微粒子の粉末を、粒径が等しい球体の集合体と仮定し、密度と比表面積の値から換算される平均粒子径である。<d>/d50が0.07超であると比表面積が小さくなり、1粒子当たりの反応有効面積が低下し、抗体などのたんぱく質捕捉能向上が十分ではなくなる。より好ましくは<d>/d50が0.06以下、さらに好ましくは0.05以下である。
さらに、前記被覆金属微粒子において、X線回折パターンにおいてTiOの最大ピークの半値幅が0.3°以下であり、かつ金属Mの最大ピークに対するTiO2の最大ピークの強度比が0.03以上であることが好ましい。該構成は、TiOの結晶性が高いとともに、被覆であるTiO2の割合が高いことを意味し、コアとなる金属微粒子を十分強固に保護することができる。
さらに、前記被覆金属微粒子において、抗体(IgG)濃度200 μg/mlの溶液1ml中に前記被覆金属微粒子10mgを加え16時間攪拌したときのIgG吸着量が前記被覆金属微粒子1mgあたり10μg以上であることが好ましい。前記被覆金属微粒子は高耐食性かつ高比表面積を有することから、高い抗体捕捉能を発揮する。かかる高い捕捉能を有する被覆金属微粒子は、抗体も含めたたんぱく質等の生体物質分離用磁気ビーズとして好適である。
さらに、前記被覆金属微粒子において、前記金属MがFeであることが好ましい。高飽和磁化の被覆金属微粒子が得られる。
さらに、前記被覆金属微粒子において、濃度6Mのグアニジン塩酸塩水溶液1ml中に前記被覆金属微粒子25mgを24時間浸漬した後で、Feのイオン溶出量が100mg/l以下であることが好ましい。前記構成のように、Feをコアの金属とすることで高い飽和磁化を有するとともに、高い耐食性も有する被覆金属微粒子は、生体物質分離用磁気ビーズとして特に好適である。磁気ビーズとしての性能を維持し、生体物質分離能への影響を抑えるためには、前記Feのイオンの溶出量は50g/mlがより好ましい。
本発明によれば、耐食性に優れ、かつ比表面積が大きい被覆金属微粒子、及びかかる被覆金属微粒子の製造方法を提供することができる。
本発明の被覆粒子の製造方法は、Tiを含む粉末(ただしTi酸化物粉末を除く)と、酸化物の標準生成自由エネルギーがΔGM-O>ΔGTiO2の関係を満たす金属Mの酸化物粉末とを混合する工程と、得られた混合粉末を非酸化性雰囲気中で650〜900℃の温度で熱処理することによって、前記金属Mの酸化物を還元するとともに、得られた金属Mの微粒子の表面をTiOを主体とするTi酸化物で被覆して被覆金属微粒子を得る工程と、前記被覆金属微粒子を生体擬似液に浸漬する工程を有する。以下、本発明について具体的に説明する。
(1)被覆金属微粒子の製造工程
まず、Tiを含む粉末(ただしTi酸化物粉末を除く)と酸化物の標準生成自由エネルギーがΔGM-O>ΔGTiO2の関係を満たす金属Mの酸化物粉末とを混合し、得られた混合粉末を非酸化性雰囲気中で熱処理することにより、金属Mの酸化物をTiにより還元するとともに、得られた金属Mの微粒子の表面をTiO2を主体とするTi酸化物で被覆する。
金属Mの酸化物粉末の粒径は、被覆金属微粒子の目標粒径に合わせて選択し得るが、0.001〜5μmの範囲内であるのが好ましい。粒径が0.001μm未満では、金属酸化物粉末の「かさ」が大きくなるだけでなく二次凝集が激しいため、以下の製造工程での取り扱いが困難である。また5μm超だと、金属酸化物粉末の比表面積が小さすぎ、還元反応が進行しにくい。金属酸化物粉末の実用的な粒径は0.005〜1μmである。金属Mは、例えば遷移金属、貴金属及び希土類金属から選ばれるが、磁気ビーズ用途など磁性材料として用いる場合であればFe、Co、Ni又はこれら合金が好ましい。この場合、その酸化物としてはFe2O3、Fe3O4、CoO、Co3O4、NiO等を用いればよい。特にFeは飽和磁化が高い点、酸化物としてはFe2O3が安価である点、後述する凹凸が粒子表面に効率よくが形成する点で好ましい。より高い磁化を得ることを目的としてFeCo合金生成のためにFeとCoを所定の比率で混合してもよい。酸化物の標準生成自由エネルギーがΔGM-O>ΔGTiO2の関係を満す金属Mの酸化物であれば、Tiを含む非酸化物粉末によって還元することができる。ΔGM-Oは金属Mの酸化物の標準生成エネルギーであり、ΔGTiO2(−889 kJ/mol)はTiの酸化物の標準生成エネルギーである。例えばFe2O3(ΔGFe2O3=−740 kJ/mol)はΔGFe2O3>ΔGTiO2を満たす。すなわち、TiはFeより酸化物の標準生成エネルギーが小さいため、Fe酸化物を効率良くかつ確実に還元することができる。TiO2の被覆が形成されていることにより、金属微粒子の比重が低下する。さらに、TiO2は親水性であるので、TiO2被覆金属微粒子は、例えば磁気ビーズ用のように水中に分散させる場合に好適である。
Tiを含む粉末は、Ti単体粉末の他、Ti-X(ただしXは、標準酸化物生成自由エネルギーΔGX-OがTiO2の生成標準自由エネルギーΔGTiO2より大きい元素である。)により表されるTi化合物又はそれらの混合物の粉末である。具体的には、XはAg、Au、B、Bi、C、Cu、Cs、Cd、Ge、Ga、Hg、K、N、Na、Pd、Pt、Rb、Rh、S、Sn、Tl、Te及びZnからなる群から選ばれた少なくとも一種である。Ti酸化物は還元剤として機能しないので、Tiを含む粉末から除く。ΔGX-O<ΔGTiO2を満たす元素Xの場合、元素Xが還元剤として作用するので、Ti酸化物が生成しなくなる。M酸化物を還元するに足るTiが含まれていれば、Xの含有量は特に限定されない。Ti-XとしてはTiCが好ましい。反応後にTiO2以外の相が形成されにくいからである。還元反応を効率的に行なうためには、Tiを含む非酸化物粉末の粒径は0.01μm〜20μmであるのが好ましい。0.01μm未満の粒径であると、大気中でTiを含む非酸化物粉末が酸化し易いので、ハンドリングが難しい。また20μm超であると比表面積が小さく、還元反応が進行しにくい。特に0.1μm〜5μmの粒径がより好ましい。該範囲の粒径の粉末を用いれば、大気中での酸化を抑制しつつ、還元反応の十分な進行を図ることができる。
M酸化物の粉末に対するTi含有粉末の割合は、少なくとも還元反応の化学量論比であることが好ましい。Tiが不足すると、熱処理中にM酸化物粉末が焼結し、バルク化してしまう。例えばFe2O3とTiCとの組合せの場合、Fe2O3+TiCに対してTiCは25質量%以上であることが好ましい。TiCが25質量%未満であると、TiCによるFe2O3の還元が不十分である。一方、TiCの比率が高くなりすぎると、Feの比率が低下し、得られるTiO2被覆Fe微粒子の飽和磁化が低下し、保磁力が増大する。従って、TiCの上限は50質量%が好ましい。Fe2O3+TiCに対するTiCの割合はより好ましくは30〜50質量%であり、さらに好ましくは30〜40質量%であり、特に好ましくは30〜35質量%である。保磁力は、TiCが35質量%になると8 kA/mに達し、40質量%になると10 kA/mに達し、50質量%になると15 kA/mに達する。M酸化物粉末とTi含有非酸化物粉末との混合には、乳鉢、スターラ、V字型ミキサ、ボールミル、振動ミル等の攪拌機を用いる。
M酸化物粉末とTi含有粉末(Ti酸化物粉末を除く)の混合粉末を非酸化性雰囲気中で熱処理すると、M酸化物粉末とTi含有粉末との還元反応が起こり、TiO2を主体とするTi酸化物で被覆された金属Mの粒子が生成する。熱処理雰囲気は非酸化性であるのが好ましい。非酸化性雰囲気としては、例えばAr,He等の不活性ガスや、N2、CO2、NH3等が挙げられるが、これらに限定されない。但し、量産性の観点からは、安価なN2が好ましい。熱処理温度は650〜900℃が好ましい。650℃未満であると還元反応が十分に進行せず、また900℃超であると不定比組成のTinO2n-1が主として生成することがある。TinO2n-1は、900℃超で金属MがTiO2から酸素を取り込むか、TiO2が非酸化性雰囲気中に酸素を放出することにより生成する。その結果、金属Mの還元が不十分であるか、被覆層が不完全となる。熱処理温度が650〜900℃の場合に、欠陥が少なく、均一性の高いほぼTiO2からなる被膜が形成される。TiO2からなる被膜は、光触媒用の被覆金属微粒子を作製するのにも好適である。
被覆金属微粒子の表面に花弁状の凹凸を付与するために、被覆金属微粒子を生体擬似液に浸漬させることが好ましい(生体擬似液浸漬処理)。生体擬似液は、血漿を模倣して作製された水溶液であり、Na、K、Mg2+、Ca2+、Cl-、HCO3-、HPO4 -、SO4 2-を含む水溶液であることが好ましい。より好ましくは擬似体液(Simulated Body Fluid; SBF)やハンクス液(Hank’s balanced salt solution)である。生体擬似液浸漬処理の手法は、被覆金属微粒子を25〜100℃の温度で生体擬似液に浸漬させることが好ましい。例えば生体擬似液に被覆金属微粒子を投入し、湯浴等で加温することにより処理することができる。温度が25℃未満であると被覆金属微粒子と生体擬似液との反応が進行しにくくなり好ましくない。100℃を越えると水が蒸発するため実効的ではない。より好ましくは30〜60℃であり、更に好ましくはヒト体温付近である30〜40℃である。上記生体擬似液浸漬処理により、被覆金属微粒子表面に凹凸として、被覆金属微粒子本体に比べて微細な花弁状の凹凸(花弁状構造体)を付与することができる(花弁状粒子)。花弁状の凹凸とは、薄片状の構造体が入り組んだ状態がなす凹凸である。
表面に凹凸を有する本発明に係る被覆金属微粒子についてさらに詳述する。本発明に係る被覆金属微粒子は、金属のコア粒子がTiOを主体とするTi酸化物で被覆された被覆金属微粒子であって、前記金属は、その酸化物の標準生成自由エネルギーがΔGM-O>ΔGTiO2の関係を満たす金属Mであり、前記被覆金属微粒子は表面に凹凸を有する。この凹凸は、うねりや空孔などの、前記生体擬似液浸漬処理前の被覆であるTiOそのものの凹凸とは構造が異なる。前記凹凸は例えば花弁状の凹凸である。該花弁状の凹凸は、被覆金属微粒子の表面に連続的に形成され、該表面の少なくとも一部を覆うように形成されるが、被覆粒子の表面全体を覆うように形成されていることがより好ましい。かかる構成の被覆金属微粒子は、前記製造方法によって、得ることができる。この花弁状の凹凸は金属Mの酸化物を主体としている。前記花弁状の凹凸は、この花弁状の凹凸によって比表面積が大きくなる。
前記凹凸の他の形態として、金属Mの酸化物を主体とするナノワイヤとしてもよい。ここで、ナノワイヤとは、直径がナノサイズ、すなわち1μm未満のワイヤである。金属Mの酸化物を主体とするナノワイヤを粒子表面に生成させるためには、前記被覆金属微粒子をアルカリ源含有水溶液に浸漬させることが好ましい。この浸漬処理においては、表面に剥き出しの金属Mが水溶液と反応することによって金属Mの酸化物がナノワイヤ状に生成する。ナノワイヤ状とならず粒子表面に酸化膜として金属Mの酸化物が形成することもある。このため、前記アルカリ浸漬処理は被覆金属微粒子の耐食性を向上させる効果もある。アルカリ浸漬処理に用いるアルカリ源は、水溶液としたときアルカリ性を呈する化合物であれば良く、例えばNaOH、KOHの他、アルカリ性界面活性剤等が挙げられる。より好ましくはNaOHである。十分アルカリ浸漬処理の効果を発揮するためにはNaOH濃度は0.3〜10Mが好ましい。0.3M未満であると希薄のためアルカリ浸漬処理の効果が発現し難い。10M以上では安全に取り扱うことが困難である。アルカリ浸漬処理は、例えばボールミル等を用いて、アルカリ水溶液に被覆金属微粒子を浸漬し、攪拌することにより行なうことができる。また被覆金属微粒子を加温したアルカリ水溶液中に保持してもよい。温度は25℃以上、100℃未満が好ましい。25℃未満であるとアルカリ水溶液と被覆金属微粒子との反応が進行しにくくなる。100℃以上は水が蒸発するため実効的でない。より好ましくは30〜70℃である。加温処理は、例えばアルカリ水溶液と被覆金属微粒子を投入したポリ容器を湯浴で加温することにより行なうことができる。上記加温処理によって、被覆金属微粒子の表面に金属Mの酸化物を主体とするナノワイヤ(以下、M酸化物ナノワイヤ)が形成される。このM酸化物ナノワイヤにより比表面積が大きくなる。M酸化物ナノワイヤの直径は0.05〜0.1μm、長さは0.5〜3μmであるのが好ましい。これより大きいと、被覆金属微粒子の飽和磁化の低下や、M酸化物ナノワイヤの遊離が起きやすくなる。
(2)被覆金属微粒子の構造及び特性
上記方法により得られる被覆金属微粒子の粒径は、M酸化物粉末の粒径に依存する。高い耐食性及び分散性を得るためには、被覆金属微粒子の平均粒径d50は0.1μm〜10μmが好ましく、0.1〜6μmがより好ましい。平均粒径が0.1μm未満であると、被覆金属微粒子は十分な厚さの被膜を確保できずに耐食性が低くなるだけでなく、1粒子当たりの磁化が極めて小さくなり磁気応答性が低くなってしまう。また平均粒径が10μmを超えると、液体中での被覆金属微粒子の分散性が低下する。平均粒径d50はレーザー回折による湿式粒径測定器で測定した値を用いる。また被覆金属微粒子の密度と比表面積から換算される平均粒子径を<d>とすると<d>/d50は0.07以下が好ましい。0.07を越える値であると被覆金属微粒子の比表面積が小さくなり、磁気ビーズとしての機能が低下する。十分な磁気応答性を確保しつつ、磁気ビーズ性能を高めるためには、<d>/d50が0.06以下であることがより好ましい。
M金属粒子とTi酸化物被覆層とは1対1のコア−シェル構造になっている必要はなく、TiO2を主体とするTi酸化物層中に2個以上のM金属粒子が分散した構造であっても良い。Ti酸化物の中に2個以上のM金属粒子が含まれていると、金属Mは高含有率で、かつ確実に被覆されるので好ましい。本発明では、M酸化物の還元によるM金属微粒子の形成と、Ti酸化物被膜の形成とが同時に行われるので、M金属微粒子とTi酸化物被膜との間にM金属酸化物層が認められない。また650℃以上の熱処理により得られるTi酸化物被膜の結晶性は高く、ゾル−ゲル法等により得られる非晶質又は低結晶性のTi酸化物被膜より高い耐食性を示す。また、TiO2を主体とした被膜を有する本発明の被覆金属微粒子は、被膜に欠陥が少ないので、不定比組成のTinO2n-1の被膜を有するものよりも高い耐食性を示す。
被覆金属微粒子のX線回折パターンにおけるTiO2の最大ピークの半値幅が0.3°以下で、金属Mの最大ピークに対するTiO2の最大ピークの強度比が0.03以上である場合に、Ti酸化物の結晶性が良い(従って、被覆金属微粒子の耐食性も良い)と判断した。非晶質又は低結晶性の場合、ピークは観察されないかブロードであるため、最大ピーク強度比は小さく、半値幅は広い。最大ピーク強度比はより好ましくは0.05以上である。最大ピーク強度比が高くなると被膜の割合が多くなり、飽和磁化が低下する。そのため、最大ピーク強度比は3以下が好ましい。
金属Mが磁性金属Feの場合、前記製法により得られた被覆金属微粒子は50〜180A・m2/kgの範囲の飽和磁化を有し、磁性粒子として機能する。これは、被覆金属微粒子が磁性金属FeとTiO2から形成されている場合、Fe+Tiに対するTiの割合が11〜67質量%であることに相当する。Tiの割合は、X線回折パターンから被覆金属微粒子がFeとTiO2からなることを確認した後で、被覆金属微粒子の飽和磁化の測定値から算出できる。磁性粒子の飽和磁化が50 A・m2/kg未満と小さいと、磁界に対する応答が鈍い。また180A・m2/kg超であるとTiO2を主体とするTi酸化物の含有率が小さく(Fe+Tiに対するTiの質量比率が11%未満)、金属Fe粒子を十分にTi酸化物で被覆できないために耐食性が低く、磁気特性が劣化しやすい。従って、高い飽和磁化及び十分な耐食性を同時に得るために、被覆金属微粒子の飽和磁化は180A・m2/kg以下とするのが好ましい。磁気ビーズ等に用いる場合の回収効率や磁気分離性能に優れるためには、被覆金属微粒子の飽和磁化は95〜180A・m2/kgであるのがより好ましい。この範囲の飽和磁化は、92A・m2/kg程度の飽和磁化しか有さないマグネタイト(Fe3O4)では得られない。分散性の観点から、被覆金属微粒子の保磁力は15 kA/m以下が好ましく、8kA/m(100 Oe)以下がより好ましく、6kA/m以下が最も好ましい。保磁力が大きい場合でもTiO2被膜を厚くすれば高分散性が得られるが、そうすると被覆金属微粒子の飽和磁化が低下してしまう。保磁力が8kA/mを超えると、磁性粒子は無磁場でも磁気的に凝集しやすくなるので、液中での分散性が低下する。
モル濃度が6 Mのグアニジン塩酸塩水溶液1 ml中に、金属MがFeである被覆金属微粒子25 mgを25℃で24時間浸漬したときのFeイオン溶出量は100 mg/l以下であるのが好ましい。この被覆金属微粒子は高カオトロピック塩濃度においても高い耐食性を示すため、カオトロピック塩水溶液中での処理を必要とするDNA抽出等の用途に好適である。Feイオン溶出量が100 mg/l以下の耐食性レベルは、アルカリ浸漬処理を施さない場合でも発現することがあるが、確実に上記耐食性レベルを得るためにはアルカリ浸漬処理を行うのが好ましい。
本発明の被覆金属微粒子は、高耐食性を有し、水溶液中で安定である上、比表面積が大きいためDNAやたんぱく質などの生体物質を効率良く吸着させることができる。例えばたんぱく質を吸着させるために被覆金属微粒子表面を以下のように機能化することができる。第1処理としてゾル-ゲル法によって被覆金属微粒子をシリカで被覆することが好ましいが、本処理は省略することもできる。第2処理として、被覆金属微粒子を無水コハク酸と混和することにより、上記被覆金属微粒子の表面にカルボキシル基を導入する。このカルボキシルを導入した被覆金属微粒子10 mgをカルボジイミドで活性化させた後、200 μg/mlに調整したIgG抗体の緩衝溶液1 mlに投入して室温で16時間攪拌することにより、被覆金属微粒子1mgあたりIgG抗体を10μg以上吸着させることができる。本発明の被覆金属微粒子は比表面積が大きく、特にナノワイヤや花弁状構造体によって極めて大きい比表面積を有する為、生体物質を被覆金属微粒子表面に吸着させる磁気ビーズ用途に好適である。
(実施例1)
平均粒径0.03μmのα-Fe2O3粉末と、平均粒径1μmのTiC粉末とを、7:3の質量比(TiC:30質量%)でボールミルにより10時間混合し、得られた混合粉末をアルミナボート内で、窒素ガス中で800℃で8時間熱処理し、室温まで冷却した。得られた試料粉末をリガク社:RINT2500にてCu−Kα線を線源としてX線回折測定したところ、X線回折パターンに出現した回折ピークはα−Fe及びルチル構造のTiOと同定された。酸化物の標準生成エネルギーは、ΔGFe2O3=−740 kJ/molに対して、ΔGTiO2=−889 kJ/molであるため、TiO2の標準生成エネルギーの方が小さい。従って、α-Fe2O3がTiにより還元され、TiO2が生成したと言える。さらにこの試料粉末5 gとイソプロピルアルコール(IPA)50mlとを100mlのビーカに投入し、10分間超音波を照射した。次いで永久磁石をビーカの外面に1分間接触させ、磁性粒子だけをビーカ内壁に吸着させ、黒灰色の上澄み液を除去した。この磁気分離操作を50回繰り返し、得られた精製磁性粒子を室温で乾燥させた。
前記磁性粒子1gを1M濃度のNaOH水溶液50ml中に投入し、60℃で24時間保持するアルカリ浸漬処理を行なった。アルカリ浸漬処理後、磁性粒子を純水で洗浄し乾燥させて試料粉末を得た。得られた試料粉末のd50をレーザー回折型粒径分布測定器(HORIBA:LA−920)にて測定したところ、2.0μmであった。また磁気特性を、最大印加磁界を1.6MA/mとしてVSM(振動型磁力計)により測定したところ、飽和磁化(Ms)は112Am/kg、保磁力(Hc)は5.3kA/mであった。上記試料粉末をSEMにより観察した結果を図1に示す。粒子以外に繊維状のナノワイヤ1が多数析出している様子が分かる。上記ナノワイヤの直径は50〜200nmの範囲、その長さは0.5〜1μmの範囲であるものが多い。上記ナノワイヤの形状は直線状であり、その直径は全長に渡ってほぼ一定である。上記ナノワイヤは被覆金属微粒子に接触しているものが多く、被覆金属微粒子から成長したことを表している。また、その成長方向はランダムであり、カーボンナノチューブに見られるような同方向にナノワイヤ同士が配向したバンドル構造は見られない。このナノワイヤをアルバック・ファイ製PHI700TMにてオージェ電子分光分析した。図2はナノワイヤから得たオージェ電子スペクトルであるが、FeとOに相当するスペクトルが主要であり、微量のTiも検出した。なお、Cは不可避不純物、Alは試料を設置しているAlステージから検出されたものであり、ナノワイヤに含まれるものではない。図2より、ナノワイヤが酸化鉄主体であることが分かる。また上記ナノワイヤを透過型電子顕微鏡(TEM)付属のエネルギー分散X線分析装置(EDX)で組成分析した。結果を図3に示す。O、Fe及びTiを検出した。なお、CuはTEM観察用試料を保持しているメッシュから検出されるものであり、ナノワイヤに含まれる元素ではない。このスペクトルから算出した各元素の原子比率はFe:Ti:O=38.0:2.3:59.7であった。以上、EDXの結果からも、上記ナノワイヤは酸素以外の元素の中でFeの原子割合が最も大きく、酸化鉄主体であることが分かる。また、このナノワイヤは5%以下の微量のTiが含まれていることが分かる。また、得られた試料粉末について測定したX線回折パターンを図4に示す。各回折ピークはα-Fe、ルチル構造のTiO、Feに相当する。Feはアルカリ浸漬処理によって析出したものである。2θ=27.4°のとき得られたTiOの最大回折ピークの半値幅は0.14°であり、TiOの最大回折ピーク強度のα−Feの最大回折ピーク[(110)ピーク]強度に対する比は0.06であった。これから、TiOが高い結晶性を有することが分かる。上記試料粉末25mgを濃度6Mのグアニジン塩酸塩水溶液1ml中に25℃で24時間浸漬させた(浸漬試験)後のFeイオン溶出量をICP分析(エスアイアイナノテクノロジー社:SPS3100H)により測定した。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1と同様にして得た精製磁性粒子にアルカリ浸漬処理を施さずに、d50、磁気特性、Feイオン溶出量を評価した。結果を表1に示す。
ここで上記被覆金属微粒子の製造工程において、アルカリ源の濃度を変化させた場合の特性の変化を表2に示す。アルカリ源であるNaOHの濃度を変えることにより、Feイオン溶出量を低減することが可能である。NaOH濃度0.2M以上でFeイオン溶出量は100mg/l以下、0.4M以上で50mg/l以下となり、耐食性が向上する。このようにアルカリ源の濃度を変えることにより、被覆金属微粒子に高耐食性を付与することができる。NaOH濃度が1Mである実施例1の被覆金属微粒子では、25mg/l以下のFeイオン溶出量となっており、比較例1に比べて高い耐食性を示している。
(実施例2)
混合粉末の熱処理温度を900℃、熱処理時間を8hに変えた以外は実施例1と同様にして被覆金属微粒子を作製した。この試料粉末の磁気特性を実施例1と同様にして測定したところ、飽和磁化は120Am/kgであったため、含有されるFeは55mass%と算出された。上記試料粉末がFeとTiOから成ることを考慮してこの試料粉末の粒子密度ρを以下の計算式を用いて算出した。
1/ρ=0.55/ρFe+0.45/ρTiO2
ここで、ρFe=7.8Mg/m3、ρTiO2=5.07Mg/m3を用いた。その結果、ρ=6.7Mg/m3であった。またこの試料粉末のd50を実施例1と同様にして測定した。またこの試料粉末の比表面積を(株)マウンテック製Macsorb-Hmmodel-1201を用いてBET法によって測定した。結果を表3に示す。また密度6.7Mg/m3を用いて比表面積値Sから平均粒子径を換算した。すなわち、
S=6/(<d>・ρ)
の式から換算粒径<d>を求めた。<d>/d50の値と共に表3に示す。
(実施例3〜7)
実施例2で得た試料粉末2gを擬似体液(Simulated Body Fluid/SBF液)50ml中に投入し、表3に示す各条件で浸漬させた(実施例3〜7)。水洗後、乾燥して試料粉末を得た。実施例1と同様にして測定したd50及び実施例2と同様にして測定した比表面積、<d>及び<d>/d50の値を表3に示す。また実施例6の試料粉末をSEM観察すると、花弁状の表面凹凸2を有する粒子(以下、花弁状粒子)が観察された。結果を図5に示す。花弁状の凹凸を詳細に観察すると、厚さ10nm程度の燐片上の凹凸が複雑に共存した表面構造であり、サブミクロンサイズの花弁が幾重にも重なったように観察される。この花弁状凹凸は粒子表面に均一に生成している。図5に示すような表面を有する粒子が実施例3〜5、7の試料にも見られた。また実施例6の試料粉末について実施例1と同様にしてX線回折パターンを測定したところ、図4と同様のパターンを得た。2θ=27.4°のとき得られたTiOの最大回折ピークの半値幅は0.16°であり、TiOの最大回折ピーク強度のα−Feの最大回折ピーク[(110)ピーク]強度に対する比は0.06であった。これから、TiOが高い結晶性を有することが分かる。
(実施例8)
実施例2で得た試料粉末2gをハンクス液50ml中に投入し、表3に示す条件で浸漬させた。実施例1 と同様にしてd50、実施例2と同様にして比表面積、<d>、<d>/d50を求めた。結果を表3に示す。
(実施例9)
比較例1で得た試料粉末2gを実施例6と同様にSBF液中に浸漬させ、実施例1と同様にしてd50、実施例2と同様にして比表面積、<d>、<d>/d50を求めた。結果を表3に示す。
表3より、本発明の試料においてはd50に比べて<d>が非常に小さく、<d>/d50が0.06以下であることが分かる。図2で示したナノワイヤの生成が比表面積の増大(<d>の微細化)の原因であると推察される。特に生体擬似液中に試料粉末を浸漬させることによって比表面積が増大しており、<d>/d50は0.04以下まで低下している。これは図5で示した花弁状粒子が比表面積の増大に寄与しているためである。
(実施例10)
実施例6で作成した試料粉末に、以下に説明する手法で抗体を吸着させた。上述の試料粉末と体積比1%の3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)水溶液とを混和し、1時間攪拌した。さらに、大気中において120 ℃で3時間加熱処理を施した。得られた試料粉末のd50を実施例1と同様にして測定したところ、3.7μmであった。次に、無水コハク酸と混和することにより、上記磁性粒子の表面にカルボキシル基を導入した(以後、カルボキシル基コート磁気ビーズ)。前記カルボキシル基コート磁気ビーズに抗体を吸着させた。すなわちこの磁気ビーズ10mgをカルボジイミドで活性化させた後、クエン酸緩衝液により200μg/mlに調整したIgG抗体(Rabbit-IgG)溶液1 mlを投入し室温で16時間攪拌した。攪拌後磁気分離により上澄み液を分取した。カルボキシル基コート磁気ビーズ1 mgあたりのIgG吸着量は投入したIgG量(200 μg)から上記上澄み液に残留したIgGの量を引き10で割ることにより求めた。上澄み液に残留したIgG濃度、および加えたIgG溶液の濃度は吸光度を測定し定量、調整した。IgG濃度は260 nmの吸光度(A260)、280 nmの吸光度(A280)および320 nmの吸光度(A320)を日立ハイテクノロジーズ社製ダイオードアレー型バイオ光度計U-0080D(1cmの光路長セルを使用)にて測定し、以下の式に従い算出した。
IgG濃度(mg/ml)=(A280-A320)×1.55-(A260-A320)×0.76
その結果、磁気ビーズ1 mgあたりのIgG吸着量10.4μgであった。
(実施例11)
実施例6で作成した試料粉末を、以下に説明する手法でシリカ被覆処理を施した。上述の試料粉末5gをエタノール溶媒100ml中に分散し、これにテトラエトキシシランを1ml添加した。次にこの溶媒を攪拌しながら純水22gとアンモニア水4gの混合溶液を添加し、上記混合溶液を1時間攪拌した。攪拌後、シリカ被覆磁性粒子を磁石でビーカ内壁に捕捉しながら上澄み液を除去した。このシリカ被覆処理を合計3回繰り返した後、イソプロピルアルコールで溶媒置換を行い、ドラフト内で乾燥させた。このシリカ被覆磁性粒子に実施例10と同様にしてカルボキシル基を導入し、IgG抗体の吸着性能を評価した。結果を表4に示す。
(比較例2)
比較例1で得た試料粉末について実施例10と同様にしてカルボキシル基を導入し、IgG抗体の吸着性能を評価した。結果を表4に示す。
(比較例3)
比較例1で作成した試料粉末に実施例11と同様の手法でシリカ被覆処理を施し、実施例10と同様にしてカルボキシル基を導入し、IgG抗体の吸着性能を評価した。結果を表4に示す。
以上より、本発明の磁気ビーズは1mgあたりIgG抗体を10μg以上吸着し、優れた抗体吸着性能を示すことが分かる。また、さらに表面にシリカ被覆を形成することにより、IgG抗体の吸着量は15μg以上となり、いっそう優れた抗体吸着性能を発揮していることがわかる。
アルカリ浸漬処理後の試料粉末についてSEM観察した結果である。 被覆金属微粒子の表面のナノワイヤから得たオージェ電子スペクトルである。 被覆金属微粒子の表面のナノワイヤをエネルギー分散X線分析装置(EDX)で組成分析した結果である。 アルカリ浸漬処理後の試料粉末について測定したX線回折パターンである。 花弁状の凹凸を有する被覆金属微粒子のSEM観察像である。
符号の説明
1:ナノワイヤ 2:花弁状の表面凹凸

Claims (8)

  1. Tiを含む粉末(ただしTi酸化物粉末を除く)と、酸化物の標準生成自由エネルギーがΔGM-O>ΔGTiO2の関係を満たす金属Mの酸化物粉末とを混合する工程と、得られた混合粉末を非酸化性雰囲気中で650〜900℃の温度で熱処理することによって、前記金属Mの酸化物を還元するとともに、得られた金属Mの微粒子の表面をTiOを主体とするTi酸化物で被覆して被覆金属微粒子を得る工程と、前記被覆金属微粒子を生体擬似液に浸漬する工程を有する被覆金属微粒子の製造方法。
  2. 金属のコア粒子がTiOを主体とするTi酸化物で被覆された被覆金属微粒子であって、前記金属は、その酸化物の標準生成自由エネルギーがΔGM-O>ΔGTiO2の関係を満たす金属Mであり、前記被覆金属微粒子は表面に凹凸を有し、前記凹凸は花弁状の凹凸であることを特徴とする被覆金属微粒子。
  3. 金属のコア粒子がTiOを主体とするTi酸化物で被覆された被覆金属微粒子であって、前記金属は、その酸化物の標準生成自由エネルギーがΔGM-O>ΔGTiO2の関係を満たす金属Mであり、前記被覆金属微粒子は表面に凹凸を有し、前記凹凸は金属Mの酸化物を主体とするナノワイヤであることを特徴とする被覆金属微粒子。
  4. 前記被覆金属微粒子の密度と比表面積から換算される平均粒子径<d>と、レーザー回折型粒径分布測定器で測定したd50との比<d>/d50が0.07以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の被覆金属微粒子。
  5. X線回折パターンにおいてTiOの最大ピークの半値幅が0.3°以下であり、かつ金属Mの最大ピークに対するTiO2の最大ピークの強度比が0.03以上であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の被覆金属微粒子。
  6. 請求項2〜5のいずれかに記載の被覆金属微粒子において、濃度200μg/mlの抗体IgG溶液1ml中に前記被覆金属微粒子10mgを加え16時間攪拌したときのIgG吸着量が前記被覆金属微粒子1mgあたり10μg以上であることを特徴とする被覆金属微粒子。
  7. 前記金属MがFeであることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の被覆金属微粒子。
  8. 請求項7に記載の被覆金属微粒子において、濃度6Mのグアニジン塩酸塩水溶液1ml中に前記被覆金属微粒子25mgを24時間浸漬した後で、Feのイオン溶出量が100mg/l以下であることを特徴とする被覆金属微粒子。
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