JP2008069216A - プリプレグ - Google Patents

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Abstract

【課題】
本発明は、自動積層成形に適する活性エネルギー線にて硬化可能なプリプレグでありながら、積層体の内部品質が良好であるため、ショートビーム強度をはじめ様々な機械物性に優れた繊維強化複合材料を与えるプリプレグを提供することにある。
【解決手段】
構成要素[A]に構成要素[B]を含浸させ、構成要素[C]を片面または両面に配置することを特徴とするプリプレグ。
[A]強化繊維
[B]下記(B1)及び(B2)を含んでなる重合性樹脂組成物
(B1)カチオン重合性化合物またはラジカル重合性化合物
(B2)活性エネルギー線重合開始剤
[C]カチオン重合性化合物またはラジカル重合性化合物の層
【選択図】なし

Description

本発明は、自動積層成形に適する活性エネルギー線にて硬化可能なプリプレグに関するものであり、かかるプリプレグは、特に航空機部材、衛星、ロケット、宇宙往還機などの宇宙機部材及び自動車部材などに好適に用いられる。
ガラス繊維、炭素繊維及びアラミド繊維などの強化繊維と、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂及びビスマレイミド樹脂などの樹脂硬化物からなる繊維強化複合材料は、軽量でありながら、強度や剛性や耐衝撃性などの機械物性に優れるため、航空機部材、宇宙機部材、人工衛星部材、自動車部材、鉄道車両部材、船舶部材及びスポーツ用具部材などの数多くの分野に応用されてきた。これらの分野のうち、航空機部材と宇宙機部材では、特に優れた機械物性や耐熱性が要求されるため、強化繊維としては炭素繊維が最もよく用いられ、マトリックス樹脂としては熱硬化性樹脂のうち、優れた耐熱性、弾性率及び耐薬品性を有し、かつ硬化収縮が小さいエポキシ樹脂とポリアミンとの組み合わせが最もよく用いられている。これらの繊維強化複合材料の製造方法として、オートクレーブなどによる加熱・加圧成形が主流であるが、これが成形の高コスト化、成形設備の大型化、設備による成形サイズの制限、複雑形状成形の難しさの問題、成形物中の残留熱応力による強度低下やクラックの発生などを招いてしまう(例えば、特許文献1参照)。
前述の問題点を考慮して近年、加熱工程を必要としない繊維強化複合材料の成形方法の確立が重要視されている。その代表例が電子線、紫外線あるいは可視光など活性エネルギー線によって硬化するプリプレグを利用した方法である。その中でも、活性エネルギー線を用いた自動積層方法は、一層積層するごとに活性エネルギー線を当て瞬時に硬化させ、形状保持できる程度に硬化した所定厚みの積層体に、再度活性エネルギー線や熱にて後硬化させたりすることで、生産性良く低コストに積層体を得ることができる点で近年注目されている(例えば、非特許文献1参照)。
従来、オートクレーブによる熱硬化プリプレグの樹脂挙動は、加熱による樹脂の粘度低下、その後の樹脂フロー過程を介した積層界面の十分な濡れが行われることで、良好な積層界面の接着性が発現し、ボイドレスであり、積層界面の強い接着を実現するいわゆる内部品質の良い積層体を得ることができた。
しかしながら、自動積層方法による活性エネルギー線硬化プリプレグの樹脂挙動は、活性エネルギー線照射によってプリプレグ表面が一瞬にて硬化し、樹脂フローの過程を欠くため自動積層にて次層を積層する際、積層界面での十分な濡れがほぼ無くなり積層界面の接着性が悪化する。その結果、最終的な積層体では、良好な内部品質を得ることができず、積層界面の接着性を評価する層間剪断強度(ショートビーム強度)をはじめ様々な機械物性が低下するという大きな課題があった。(例えば、非特許文献1参照)
特開2004−050574号公報 第30回複合材料シンポジウム(2005年)講演要旨集P197−198
本発明の目的はこうした現状に鑑み、自動積層成形に適する活性エネルギー線にて硬化可能なプリプレグでありながら、積層体の内部品質が良好であるため、ショートビーム強度をはじめ様々な機械物性に優れた繊維強化複合材料を与えるプリプレグを提供することにある。
本発明のプリプレグは、前記課題を解決するために、次の構成を有する。すなわち、構成要素[A]に構成要素[B]を含浸させ、構成要素[C]を片面または両面に配置することを特徴とするプリプレグである。
[A]強化繊維
[B]下記(B1)及び(B2)を含んでなる重合性樹脂組成物
(B1)カチオン重合性化合物またはラジカル重合性化合物
(B2)活性エネルギー線重合開始剤
[C]カチオン重合性化合物またはラジカル重合性化合物の層
本発明は、自動積層成形に適する活性エネルギー線にて硬化可能なプリプレグである。従来技術では、活性エネルギー線照射による自動積層成形において良好な積層体の内部品質を得ることができなかった。
本発明では、積層体の内部品質が良好であるため、ショートビーム強度をはじめ様々な機械物性に優れた繊維強化複合材料を与えるプリプレグを得ることが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
構成要素[A]の強化繊維としては、複合材料の使用目的に応じた様々なものが使用できる。本発明に用いる強化繊維の具体例としては、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、タングステンカーバイド繊維、ガラス繊維などがあげられる。強化繊維は複数種を組合わせて使用することもできる。なかでも、軽量化と高強度化が求められる用途(例えば、航空機や宇宙機部材など)においては、優れた比強度と比弾性率を有する炭素繊維が好ましく使用される。
炭素繊維としては、用途に応じてあらゆる種類の炭素繊維を用いることが可能であるが、繊維本来の引張強度や繊維強化複合材料としたときの耐衝撃性が高いという面から、いわゆる高強度炭素繊維が好ましい。すなわち、ストランド引張試験におけるストランド引張強度が、4GPa以上の炭素繊維が好ましく、4.6GPa以上の炭素繊維がより好ましい。ストランド引張強度は高ければ高いほど好ましいが、6.0GPa程度もあれば十分な場合が多い。ストランド引張強度が7.0GPaを超えると、得られる繊維強化複合材料の加工性が悪くなる場合がある。
また、炭素繊維の引張り破断伸度は1.7%以上であることが好ましく、より好ましくは1.8%以上である。引張破断伸度も高ければ高いほど好ましいが2.0%程度もあれば本発明の目的として十分な場合が多い。ここでいうストランド引張試験とは、JIS R7601(1986)に基づいて行う試験をいう。
強化繊維の太さは、単繊維直径が1〜20μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは3〜10μmの範囲である。強化繊維が太すぎると、引張強度や引張弾性率が低下する傾向がある。また、強化繊維が細すぎると、強化繊維の生産性が低下してコスト高になる。
強化繊維の形態や配列については、特に限定されず、一方向に引き揃えた長繊維、トウ、織物、不織布、マット、ニット、組み紐、ロービング、チョップド等から適宜選択できるが、軽量、耐久性がより高い水準にある繊維強化複合材料を得るためには、強化繊維が、一方向に引き揃えられた長繊維、織物、トウ、ロービング等連続繊維の形態であるのが好ましい。
また、強化繊維の形態としては、プリフォームを適用することができる。ここで、プリフォームとは通常、長繊維の強化繊維からなる織物基布を積層したもの、またはこれをステッチ糸により縫合一体化したもの、あるいは立体織物・編組物などの繊維構造物を意味する。
本発明において構成要素[B]は構成要素(B1)、(B2)を含んでなる重合性樹脂組成物であり、構成要素(B1)はカチオン重合性化合物またはラジカル重合性化合物であり、構成要素(B2)は、活性エネルギー線重合開始剤である。
カチオン重合性化合物としては一般に知られているカチオン重合性基を有するモノマー、オリゴマーやポリマーであれば特に限定されないが、例えば、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ビシクロオルソエステル樹脂、スピロオルソカーボネート樹脂、チイラン樹脂、オキセタン樹脂などを挙げることができる。
なかでも、耐熱性及び活性エネルギー線硬化性をより有する点からエポキシ樹脂またはオキセタン樹脂、あるいはその混合物が好ましく用いられる。
エポキシ樹脂としては、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−ドデシレンオキサイド、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、リモネンオキサイド、α−ピネンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイドなどの単官能のモノマー、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルペンチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、o−,m−,p−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、オキサゾリドン環を含有するイソシアネート変性エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルキシレンジアミン、グリシジルアニリン、グリシジルo−トルイジンなどのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂、多価アルコールのポリグリシジルエーテル、信越シリコーン社製のK−62−722や東芝シリコーン社製のUV9300などのエポキシシリコーンのような多官能エポキシ樹脂、及び脂環式型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
オキセタン樹脂としては、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、2−ヒドロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−メトキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、レゾルシノールビス(3−メチル−3−オキセタニルエチル)エーテル、m−キシリレンビス(3−エチル−3−オキセタニルエチルエーテル)、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)] メチルエーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラック型オキセタンなどを挙げることができる。これらエポキシ樹脂及びオキセタン樹脂は、単独で使用しても併用しても良い。
ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物とは、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも一つ以上を有する化合物であればどのようなものでも良く、モノマー、オリゴマ−、ポリマー等の化学形態を持つものである。これらは単独で使用しても併用しても良い。
このようなラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エステル、ウレタン、アミドや無水物、アクリロ二トリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ポリウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明において、前記カチオン重合性化合物または前記ラジカル重合性化合物を単独で使用しても併用しても良い。
本発明において、構成要素[B]100重量%に対して、構成要素(B1)を、少なくとも60重量%以上、より好ましくは90重量%以上配合するのが良い。構成要素(B1)の配合量が少なすぎると重合性樹脂組成物の硬化物の機械物性が低下する場合がある。
本発明において用いられる構成要素(B2)としては、光、電子線、X線等の活性エネルギー線の作用によって重合性化合物の重合反応を開始させるものならいずれでも良い。
カチオン重合開始剤であれば、ルイス酸またはプロトン酸を発生しうるものなら特に限定されるものではないが、例えば、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨ−ドニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩、ルイス酸のセレノニウム塩、スルホン酸エステル、鉄−アレーン化合物、シラノール−アルミニウム錯体等の各種化合物が挙げられ、好ましくは、活性エネルギー線硬化性や熱安定性の観点から、ルイス酸のヨードニウム塩化合物またはルイス酸のスルホニウム塩化合物が用いられる。
ルイス酸のヨードニウム塩化合物またはルイス酸のスルホニウム塩化合物としては、例えば、米国特許第4231951号明細書に記載されたようなアリールスルホニウム錯塩;米国特許第4256828号明細書に記載されたような芳香族ヨードニウム錯塩及び芳香族スルホニウム錯塩;特開平10−24496号公報に記載されたような芳香族スルホニウム錯塩;特開平11−263804号公報に記載されたような芳香族ヨードニウム錯塩などをあげることができ、本発明では、これらを単独で使用しても併用しても良い。
なかでも、一般式(1)で表されるルイス酸のヨードニウム塩化合物が好ましく用いられる。
Figure 2008069216
一般式(1)で表されるルイス酸のヨードニウム塩化合物の具体例としては、下記の式(2)〜式(10)化合物などをあげることができ、本発明では、これらを単独で使用しても併用しても良い。
Figure 2008069216
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(式中、R、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基のいずれかを示し、それぞれのR、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、また、R、R、R、Rは水素原子、アルキル基のいずれかを示し、それぞれのR、R、R、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、さらに、XはB(C、SbF、AsF、PF、BF、CFSO、FSO、ClO、FPOのいずれかを示す。)
ラジカル重合開始剤であれば、例えばアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドで表される開始剤等が挙げられ、本発明では、これらを単独で使用しても併用しても良い。
本発明において、構成要素(B1)100重量部に対して、構成要素(B2)を、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部配合する。構成要素(B2)の配合量が少なすぎると重合性樹脂組成物の活性エネルギー線による硬化性が低下する場合があり、逆に多すぎると重合性樹脂組成物の硬化物の機械物性が低下したり、活性エネルギー線による硬化中、重合性樹脂組成物の暴走反応が起こり危険な場合がある。とりわけ、構成要素(B2)の配合量を0.5〜10重量部にすると、活性エネルギー線による硬化の際、重合性樹脂組成物を安全にかつ敏速に硬化でき、さらに重合性樹脂組成物の硬化物の機械物性の向上ができる。
本発明において、構成要素(B2)の重合開始反応を促進する目的で、光増感剤を配合することができる。光増感剤としては、例えば、アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー、ベンゾフラビン、セトフラビンT、フォスフィンRなどの色素、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、チオキサントンの誘導体、アントラキノン、アントラキノンの誘導体、アントラセン、1,2−ベンズアントラセン、ジブトキシアントラセン、ジプロポキシアントラセン、アントラセンの誘導体、ペリレン、ペリレンの誘導体、ベンゾフェノン、ベンゾフェノンの誘導体、ピレン、ピレンの誘導体、フェノチアジン、2−クロロフェノチアジン、2−メトキシフェノチアジン、フェノチアジンの誘導体、コロネン、コロネンの誘導体、ベンゾフェノン、ベンゾフェノンの誘導体、カンファーキノン、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、9,10−アントラキノン、アントラキノンの誘導体、フルオレノン、9−フルオレノン、フルオレノンの誘導体、テトラセン、テトラセンの誘導体などをあげることができ、本発明では、これらを単独で使用しても併用しても良い。これらの中でも、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、フェノチアジン、2−クロロフェノチアジン、2−メトキシフェノチアジン、カンファーキノン、ジブトキシアントラセン、ジプロポキシアントラセンは、可視域に特段の光吸収を持ち、本発明で用いられる構成要素(B2)と混合し、可視光開始剤として好ましく用いられる。
ここで、光増感剤の配合量は、構成要素(B1)100重量部に対して、好ましくは0.01〜20重量部、より好ましくは0.1〜10重量部とするのが良い。光増感剤の配合量が少なすぎると重合性樹脂組成物の活性エネルギー線による硬化性が低下する場合があり、逆に多すぎると重合性樹脂組成物が着色し、活性エネルギー線透過性が低下し、硬化性が低下する場合がある。
本発明において、構成要素[B]には、重合促進剤、高分子化合物、及び無機粒子を配合することができる。重合促進剤、高分子化合物、及び無機粒子は、単独で使用しても併用しても良い。
上記の重合促進剤としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリビニルアルコール、ベンジルアルコール、ピペロニルアルコールなどのアルコール類が好ましく用いられる。このような重合促進剤を配合することにより、カチオン重合またはラジカル重合の硬化度向上効果がある。
上記の高分子化合物としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー及びエラストマーからなる群から選ばれた1種以上が好ましく用いられる。このような高分子化合物を配合することにより、樹脂の粘度制御、プリプレグの取扱性の改善、マトリックス樹脂と炭素繊維との接着性の改善、及び靭性の向上の効果が発現され、なかでも、前記効果が高い熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
本発明において、高分子化合物を配合する場合には、構成要素(B1)100重量部に対して、高分子化合物を、好ましくは0.5〜50重量部、より好ましくは1〜30重量部配合するのが良い。高分子化合物の配合量が少なすぎるとマトリックス樹脂と強化繊維との接着性の効果が十分でなかったり、マトリックス樹脂の靱性向上の効果が十分でない場合がある。多すぎると構成要素[B]の粘度が過剰に上昇し作業性が低下したり、あるいは硬化物中で粗大分離して強度を低下させる場合がある。
高分子化合物の中で、熱可塑性樹脂としては、エポキシ樹脂またはオキセタン樹脂との相溶性、及び強化繊維との接着性の観点から、水素結合性の官能基を有する熱可塑性樹脂が好ましい。水素結合性官能基としては、アルコール性水酸基、アミド基、イミド基、スルホニル基などが好ましい。
具体的には、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリウレタンなどを挙げることができる。
ここで、市販品としては、例えば、ポリビニルブチラール及びポリビニルホルマールとして、“デンカブチラール”(登録商標)及び“デンカホルマール”(登録商標)(電気化学工業(株)製)、“ビニレック”(登録商標)(チッソ(株)製)、ポリイミド及びポリエーテルイミドとして“メルディン”(登録商標)(三井化学(株))及び“ウルテム”(登録商標)(ジェネラル・エレクトリック社製)、“Matrimid”5218(チバ社製)、ポリスルホン及びポリエーテルスルホンとして、“UDEL”(登録商標)(帝人アモコ(株)製)及び“スミカエクセル”(登録商標)(住友化学(株)製)、“RADEL”(登録商標)(帝人アモコ(株)製)などを使用することができる。
さらに、この熱可塑性樹脂の末端官能基としては、水酸基、カルボキシル基、チオール基、酸無水物などのものがカチオン重合性化合物と反応することができ、好ましく用いられる。具体的には、ポリエーテルスルホンの市販品である“スミカエクセル”(登録商標)PES3600P、“スミカエクセル”(登録商標)PES5003P、“スミカエクセル”(登録商標)PES5200P、“スミカエクセル”(登録商標)PES7200P(以上、住友化学工業(株)製)などを使用することができ、また、特表2004-506789号公報に記載されるようなポリエーテルスルホンとポリエーテルエーテルスルホンの共重合体オリゴマー、さらにポリエーテルイミドの市販品である“ウルテム”(登録商標)1000、“ウルテム”(登録商標)1010、“ウルテム”(登録商標)1040(以上、ジェネラル・エレクトリック社製)などが挙げられる。
なお、ガラス転移温度は、熱可塑性樹脂を約10mg精秤し、JIS K7121(2002)に従い、温度範囲25℃〜350℃、昇温速度10℃/分の条件で昇温し示差走査熱量分析装置にてガラス転移温度測定を行う。具体的には、得られた曲線の階段状変化を示す部分において、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度をガラス転移温度とする。
本発明において、熱可塑性樹脂の配合量が少なすぎるとマトリックス樹脂と強化繊維との接着性の効果が十分でない場合があり、多すぎると構成要素[B]の粘度が過剰に上昇し作業性が低下したり、あるいは硬化物中で粗大分離して強度を低下させる場合がある。
また、高分子化合物の中で、熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系またはポリアミド系の熱可塑性エラストマーが好ましく用いられる。ここでいう熱可塑性エラストマーとは、ハードセグメント成分とソフトセグメント成分からなるブロック共重合体であり、室温以下のガラス転移温度と室温以上の融点を有するポリマーである。ポリエステル系またはポリアミド系の熱可塑性エラストマーの場合は、ハードセグメント成分がポリエステル単位、あるいはポリアミド単位である構造を有する。これらの熱可塑性エラストマーとしては、例えば、国際公開第96/02592号パンフレットに記載のものを用いることができる。
また、多くの市販品も使用できる。市販のポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、東レ・デュポン社“ハイトレル”(登録商標)、東洋紡社“ベルプレン”(登録商標)、等を挙げることができ、ポリアミド熱可塑性エラストマーとしては、ATOFINA社の“PEBAX”(登録商標)、三菱化学社の“NOVAMID”(登録商標)などを挙げることができる。
以上に述べたような熱可塑性エラストマーを配合することにより、優れたタック性(粘着性)と、ドレープ性(変形性)と炭素繊維への含浸性にも優れたプリプレグを得ることができる。また、このような熱可塑性エラストマーを配合しない場合に比較して、樹脂の粘弾性関数の温度依存性、特に室温付近での変化が小さいため、プリプレグの取扱性の温度依存性が小さくなり、好ましい態様である。
更に、高分子化合物の中で、エラストマーとしては、固形ゴム、液状ゴムなどを用いることができる。一般に、固形ゴムは液状ゴムに比べて同一量をマトリックス樹脂に溶解した場合の粘度上昇が大きく、成形過程のマトリックス樹脂組成物を適度な粘度レベルに保ちながら、比較的成形物の耐熱性を維持することができる。特に、マトリックス樹脂の粘弾性関数の温度依存性が減少し、プリプレグを扱う作業環境温度の変動があっても取扱性が悪化しにくく、またプリプレグ放置によるタック性の経時変化を小さくし、繊維強化複合材料の表面平滑性を向上させることができる。
固形ゴムとしては、エポキシ樹脂及びオキセタン樹脂との相溶性の面から、ブタジエンとアクリロニトリルのランダムコポリマーであるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体が好ましく用いられる。アクリロニトリルの共重合比を変化させることによって、エポキシ樹脂及びオキセタン樹脂との相溶性を制御することができる。さらに、エポキシ樹脂及びオキセタン樹脂との接着性をあげるために、官能基を有する固形ゴムがより好ましく用いられる。官能基としては、カルボキシル基及びアミノ基などが挙げられる。アクリロニトリル−ブタジエン共重合体として、特に、カルボキシル基を含有する固形アクリロニトリル−ブタジエンゴムが好ましく用いられる。また、耐候性に優れるため、水素化ニトリルゴムも好ましく用いられる。
これら固形ゴムの市販品として、“NIPOL”(登録商標)1072、“NIPOL”(登録商標)1072J、“NIPOL” (登録商標)1472、“NIPOL” (登録商標)1472HV、“NIPOL” (登録商標)1042、“NIPOL” (登録商標)1043、“NIPOL” (登録商標)DN631、“NIPOL” (登録商標)1001、“ZETPOL”(登録商標)2020、“ZETPOL” (登録商標)2220、“ZETPOL”(登録商標)3110(以上、日本ゼオン(株)製)等が挙げられる。
また、エラストマーとしては、ゴム粒子であっても宵。ここで、ゴム粒子としては、架橋ゴム粒子、及び架橋ゴム粒子の表面に異種ポリマーをグラフト重合したコアシェルゴム粒子が好ましく用いられる。市販の架橋ゴム粒子としては、カルボキシル変性のブタジエン−アクリロニトリル共重合体の架橋物からなるFX601P(JSR(株)製)、アクリルゴム微粒子からなるCX−MNシリーズ(日本触媒(株)製)、YR−500シリーズ(東都化成(株)製)などを使用することができる。また、市販のコアシェルゴム粒子としては、ブタジエン・メタクリル酸アルキル・スチレン共重合体からなる“パラロイド”(登録商標)EXL−2655(呉羽化学工業(株)製)、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体からなる“スタフィロイド”(登録商標)AC−3355、TR−2122(武田薬品工業(株)製)、アクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル共重合体からなる“PARALOID”(登録商標)EXL−2611、EXL−3387(Rohm & Haas社製)などを使用することができる。
上記の無機粒子としては、シリカ、アルミナ、スメクタイト、合成マイカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、ガラス粉、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化バリウムなどが好ましい。これらの無機粒子は、主としてマトリックス樹脂組成物の増粘などのレオロジー制御、揺変性付与の効果を有する。
本発明において、構成要素[C]は、カチオン重合性化合物またはラジカル重合性化合物の層であり、強化繊維に重合性樹脂組成物を含浸してなる一次プリプレグの片面または両面に配置される。従来、自動積層による活性エネルギー線硬化プロセスは、活性エネルギー線によってプリプレグ表面が一瞬にて硬化し、樹脂フロー過程を欠くプロセスであった。
本発明において、構成要素[C]は、活性エネルギー線感受性が小さいため、プリプレグに配置した際、活性エネルギー線にてほとんど硬化せずに樹脂フロー過程を有している。自動積層にて次層を積層する際、積層界面が十分に濡れていると、良好な積層界面の接着性が発現する。この積層界面の接着性は、活性エネルギー線にて硬化した積層体が形状保持するのを助ける役割がある。形状保持できる程度に活性エネルギー線にて硬化した積層体を活性エネルギー線にて後硬化した際、あるいは熱にて後硬化した際、重合性樹脂組成物が構成要素[C]と混ざり合うことで、構成要素[C]が硬化し強固な接着特性を有する積層界面を持ち、ショートビーム強度などの機械物性に優れた内部品質の良い積層体を得ることができる。
構成要素[C]としては、カチオン重合性化合物またはラジカル重合性化合物からなり、フィルム、粒子、不織布、並びにマット材からなる群から選ばれた1種以上の形態を有するものが用いられる。例えば、フィルム、粒子、不織布並びにマット材を単層で用いることができるし、複数枚重ね合わせ複数の層として用いることもできる。
本発明において、構成要素[C]としては、前記形態の中でも、タック性が制御し易く、成形治具への接着性が優れる点でフィルムの形態が好ましく用いられる。
フィルムの厚さは、好ましくは1〜500μmであり、より好ましくは10〜300μmである。フィルムの厚さが薄すぎると、フィルムが部分的に塗布できない場合があったり、取扱性が著しく悪化する。また、フィルムの厚さが厚すぎると、活性エネルギー線通過性が悪化し、プリプレグの硬化度が低下する。
本発明において、構成要素[C]は、カチオン重合性化合物またはラジカル重合性化合物を含むものであり、構成要素[B]に用いる(B1)と同様なカチオン重合性化合物またはラジカル重合性化合物を用いることができ、これらは単独で使用しても併用しても良い。また、構成要素[B]に用いる(B1)と同じ化合物であっても、異なっていても良い。
本発明において、構成要素[C]には、熱重合開始剤を配合することができる。構成要素[C]に熱重合開始剤を配合しても、活性エネルギー線感受性はさほど高まらないため、プリプレグに配置した際、活性エネルギー線にて硬化せず樹脂フロー過程を有する。ここで、活性エネルギー線にてプリプレグを硬化した後、熱にて後硬化した積層体では、熱重合開始剤を配合することにて、構成要素[C]が硬化し強固な接着特性を有する積層界面を持ち、ショートビーム強度などの機械物性に優れた内部品質の良い積層体を得ることができる。
本発明において、構成要素[C]には、カチオン重合性化合物またはラジカル重合性化合物100重量部に対して、熱重合開始剤を、好ましくは0.1〜60重量部、より好ましくは0.5〜50重量部含むのが良い。熱重合開始剤の配合量が少なすぎると熱による硬化性が低下する場合があり、逆に多すぎると硬化物の機械物性が低下したり、硬化中、暴走反応が起こり危険な場合がある。
熱重合開始剤とは、カチオン重合性化合物またはラジカル重合性化合物を熱硬化させる作用があるものであれば特に限定されないが例えば、ポリアミン、酸無水物、フェノールノボラック、ポリメルカプタン、熱カチオン重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤、及びアニオン重合開始剤等を挙げることができる。これらは単独で使用しても併用しても良い。
なかでも、ポリアミン、酸無水物、熱カチオン重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤から選ばれる少なくとも一つの化合物が好ましく用いられる。
ポリアミンとしては、鎖状脂肪族ポリアミンである、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3−ペンタンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、脂環式ポリアミンである、イソホロンジアミン、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルアミン、4、4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、芳香族ポリアミンである、m−キシリレンジアミン、4,4’−メチレンジアニリン、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−イソプロピルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−イソプロピル−6−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−ブロモ−6−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(N−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(N−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(N−sec−ブチルアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−シクロヘキシリデンジアニリン、4,4’−(9−フルオレニリデン)ジアニリン、4,4’−(9−フルオレニリデン)ビス(N−メチルアニリン)、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−オキシジアニリン、2,4−ビス(4−アミノフェニルメチル)アニリン、4−メチル−m−フェニレンジアミン、2−メチル−m−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、2−クロロ−p−フェニレンジアミン、2,4,6−トリメチル−m−フェニレンジアミン、2,4−ジエチル−6−メチル−m−フェニレンジアミン、4,6−ジエチル−2−メチル−m−フェニレンジアミン、4,6−ジメチル−m−フェニレンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)等が好適に用いられる。
また、酸無水物としては、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水フタル酸、無水アルカンコハク酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水フマル酸等が好適に用いられる。さらに必要に応じて、酸無水物の構造異性体若しくは幾何異性体をはじめ、それらの混合物や変性物を用いても良い。
熱カチオン重合開始剤としては、ジアゾニウム塩、ヨ−ドニウム塩、スルホニウム塩、ルイセレノニウム塩、スルホン酸エステル、鉄−アレーン化合物、シラノール−アルミニウム錯体等の各種化合物が挙げられる。例えばスルホニウム塩系の“UVACURE”(登録商標)1590、“UVACURE”(登録商標)1591(以上、ダイセルUCB(株)製)、“DAICAT”(登録商標)11(ダイセル化学(株)製)、CD−1011(サートマー社製)、SI−60、SI−60L、SI−80、SI−80L、SI−100、SI−100L、SI−110、SI−145、SI−150、SI−160、SI−180(以上、三新化学(株)製)等;ヨードニウム塩系の“DAICAT”(登録商標)12(ダイセル化学(株)製)、CD−1012(サートマー社製);ジアゾニウム塩系のSP−150,SP−170(旭電化工業(株)製)などが挙げられる。なかでも、SI−60L、SI−80L、SI−100Lが好ましく用いられる。
熱ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾビス系硬化剤等が挙げられる。例えば有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイドベンゾエート、ジクミルパーオキサイド等を用いることができ、適宜に選定して使用すれば良い。アゾビス系硬化剤としては、2,2−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]}プロピオンアミド等を用いることができ、適宜選定して使用すれば良い。さらに、上記熱ラジカル重合開始剤とともにナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸亜鉛、オクテン酸コバルト等のナフテン酸やオクテン酸のコバルト、マンガン、鉛、亜鉛、バナジウムなどの金属塩を併用することができる。同様に、ジメチルアニリン等の3級アミンも使用することができる。
また、アニオン重合開始剤としては、アルキルリチウム化合物やビフェニル、ナフタレン、ピレン等のリチウム塩あるいはナトリウム塩が用いられる。また、多官能性開始剤、ジリチウム化合物、トリリチウム化合物を用いても良い。さらに必要に応じて、公知のアニオン重合末端カップリング剤を用いても良い。
本発明において、構成要素[C]には、活性エネルギー線重合開始剤を本発明の効果を損なわない範囲であれば配合していても良い。ここで用いる活性エネルギー線重合開始剤としては、構成要素[B]に用いる(B2)と同様なものを用いることができ、単独で使用しても併用しても良い。また、構成要素[B]に用いる(B2)と同じ活性エネルギー線重合開始剤であっても良いし、異なっていても良い。構成要素[C]に、活性エネルギー線重合開始剤を配合させる場合には、配合量としては、構成要素[C]に用いるカチオン重合性化合物またはラジカル重合性化合物100重量部に対して、0.1部未満、好ましくは0.01重量部、さらに好ましくは0重量部とするのが良い。配合量が多すぎると本発明の効果が得られず、活性エネルギー線照射によってプリプレグ表面が一瞬にて硬化し、良好な内部品質を得ることができず、積層界面の接着性が低下する。
本発明において、構成要素[C]には熱可塑性樹脂を含んでいても良く、その熱可塑性樹脂には、構成要素[B]に用いる熱可塑性樹脂と同様なものを用いることができ、これらを単独で使用しても併用しても良い。また、構成要素[B]と同じ熱可塑性樹脂であっても、異なっていても良い。熱可塑性樹脂を配合することで、構成要素[C]において、粘度制御、取扱性の改善が発現される。本発明において、構成要素[C]に熱可塑性樹脂を配合する場合には、その配合量は、カチオン重合性化合物またはラジカル重合性化合物100重量部に対して、好ましくは0.5〜50重量部、より好ましくは1〜30重量部とするのが良い。熱可塑性樹脂の配合量が少なすぎると粘度調整が困難になる場合があり、逆に多すぎると硬化物の機械物性が低下する場合がある。
また、構成要素[C]には前記重合促進剤、前記無機化合物を配合しても良い。重合促進剤や無機化合物を配合することで、カチオン重合及びラジカル重合の硬化度向上や粘度制御の効果がある。
本発明における構成要素[C]の80℃の温度における粘度は、0.01〜300Pa・sの範囲にすることでタックの制御、及びプリプレグへの塗布し易さで優れる。好ましくは1〜200Pa・sの範囲にある。80℃の温度における粘度が低すぎると、構成要素[C]が層として機能せず、強化繊維に含浸してしまう一方、高すぎると構成要素[C]を作製することが困難であり、生産性が低下する。
本発明のプリプレグは、たとえば次のようにして製造することができる。まず、構成要素[B]である重合性樹脂組成物を強化繊維に含浸し、一次プリプレグを構成する。重合性樹脂組成物を強化繊維に含浸するに際しては、重合性樹脂組成物をメチルエチルケトン、メタノールなどの溶媒に溶解して低粘度化し、含浸させるウエット法や、重合性樹脂組成物を加熱により低粘度化し、実質的に溶媒を用いずに含浸させるホットメルト法(ドライ法)などの方法を採用できる。
まず、ウェット法は、強化繊維を、構成要素[B]を溶媒に溶解した溶液に浸漬した後引き上げ、オーブンなどを用いて溶媒を蒸発させて一次プリプレグを得る方法である。一方、ホットメルト法は、加熱により低粘度化した構成要素[B]を直接強化繊維に含浸させて一次プリプレグを得る方法、または、一旦、構成要素[B]を離型紙などの上にコーティングしたフィルムをまず作成し、次いで、強化繊維の両側或いは片側から該フィルムを重ね、加熱加圧することにより、構成要素[B]を含浸させて一次プリプレグを得る方法である。これらの中でも、ホットメルト法が一次プリプレグ中に残留する溶媒がないため好ましい方法である。
一方、構成要素[C]を、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、スクィーズコーター、キスロールコーター、ナイフコーター、メタリングロッドコーター、ロータリースクリーンコーター、含浸コーター、ダイコーター、スプレーコーター、無延伸フィルム装置、多層フィルム装置、一軸延伸フィルム装置、ニ軸延伸フィルム装置、粉砕機、湿式粉砕機、フリース装置などを用いて製造し、上記方法により得られた一次プリプレグの片面または両面に構成要素[C]を配置することで本発明のプリプレグが得られる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。実施例で用いた樹脂原料、ショートビーム強度、80℃での粘度、プリプレグの活性エネルギー線照射後のタックの評価方法を以下に示す。各実施例で用いた重合性樹脂組成物の組成、カチオン重合性化合物またはラジカル重合性化合物の層の組成、形態、80℃での粘度、フィルム厚み、プリプレグの活性エネルギー線照射後のタック、ショートビーム強度の結果は、表1に纏めて示した。
<樹脂原料>
重合性樹脂組成物の調製には次の市販品及び試薬から選択した。
(1)重合性化合物
・“エポトート” (登録商標)YD128(東都化成(株)製):ビスフェノールA型エポキシ樹脂
・“セロキサイド”(登録商標)2021P(ダイセル化学工業(株)製):脂環式型エポキシ樹脂
・NC−3000(日本化薬(株)製):ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂
・“エピクロン”(登録商標)EXA−1514(大日本インキ(株)製):ビスフェノールS型エポキシ樹脂
(2)熱可塑性樹脂
・“スミカエクセル”(登録商標)5003P(住友化学(株)製):ポリエーテルスルホン
(3)活性エネルギー線重合開始剤
・“ロードシル” (登録商標)2074(ローディアジャパン(株)製):一般式(2)で表されるヨードニウム塩化合物
(4)熱重合開始剤
・“サンエイド”(登録商標)SI−100L(三新化学工業(株)製):芳香族スルホニウム塩化合物
・NH−2200(日立化成工業(株)製):メチルテトラヒドロ無水フタル酸
<ショートビーム強度(SBS)の測定>
プリプレグを以下の条件で片面(実施例1〜8、比較例3の場合は、構成要素[C]がある面)に活性エネルギー線照射した後、12枚積層し、180℃で2時間、0.59MPaで成形し得られた一方向繊維強化複合材料から、ASTM D2344に従い幅6.4mm、長さ14mmの試験片を作製し、3点曲げ試験を行い、SBSを測定した。
UV照射器:コンベア型紫外線硬化装置
(ECS−151S、アイグラフィックス(株)製)
ランプ:集光型120W/cmメタルハライドランプ
(波長404nmの照度800mW/cm
照射最短距離:10cm
ベルトコンベア速度:2m/分
照射回数:1回(実質照射時間:2秒)
<80℃での粘度>
80℃の粘度は、構成要素[C]を粘弾性測定装置を用い測定する。測定は半径20mmの平行平板を用い、平行間距離1.0±0.1mm、測定温度80℃、測定周波数0.5Hzの条件下での複素粘性率ηの値から求める。なお、本実施例では、粘弾性測定装置として、ARES(レオメトリックス(株)製)を用いた。
<プリプレグの活性エネルギー線照射後のタック>
プリプレグを上記照射条件で片面(実施例1〜8、比較例3の場合は、構成要素[C]がある面)に活性エネルギー線照射した後、プリプレグのタックを評価した。プリプレグのタック評価方法は、触感で行い、適度であり非常に扱いやすいタックで有れば○、タックがやや強め(べたつき気味)、あるいはやや弱め(ドライ気味)ではあるが支障のないタックであれば△、タックが無ければ×とした。
[実施例1]
表1に示す比率で構成要素(B1)である重合性化合物を配合し100℃の温度で加温した状態で均一になるまで良く攪拌して、重合性化合物を含む混合物を得た。次に、80℃の温度まで降温し、構成要素(B2)である“ロードシル”2074を加え均一に溶解するまで良く攪拌し重合性樹脂組成物を得た。
得られた重合性樹脂組成物をナイフコーターを用いてフィルム化し、このフィルム上に炭素繊維“トレカ”(登録商標)T700G(東レ(株)製、引張弾性率:240GPa、引張強度:4.9GPa、フィラメント数:24000)を並べ、加熱、含浸させて、た炭素繊維目付190g/cm、樹脂含有率40重量%の一次プリプレグを得た。
一方、表1に示す比率で構成要素[C]に用いる重合性化合物を配合し100℃の温度で加温した状態で均一になるまで良く攪拌して重合性化合物を含む混合物を得た。この重合性化合物を含む混合物をナイフコーターを用いて構成要素[C]である厚さ20μmのフィルムとし、上記一次プリプレグの片面にフィルムを引き詰めることで、プリプレグを得た。得られたプリプレグを用いてSBS、及び活性エネルギー線照射後のタックを測定した。また、得られた構成要素[C]の粘度を測定した。
[実施例2]
表1に示すとおりに、構成要素(B1)及び構成要素[C]における重合性化合物の比率を変更するとともに、熱可塑性樹脂である“スミカエクセル”5003Pを配合して重合性化合物を含む混合物を得た以外は実施例1と同様にしてプリプレグを得た。なお、“スミカエクセル”5003Pを配合するに際しては、100℃の温度で加温した状態で均一になるまで良く攪拌して得られた混合物を、さらに150℃の温度まで加温し、“スミカエクセル”5003Pを加え均一になるまで良く攪拌した。得られたプリプレグを用いてSBS、及び活性エネルギー線照射後のタックを測定した。また、得られた構成要素[C]の粘度を測定した。
[実施例3、4]
構成要素[C]のフィルムを作製するに際して、熱重合開始剤である“サンエイド”SI−100L、あるいはHN−2200をさらに配合して重合性化合物を含む混合物を得た以外は実施例2と同様にしてプリプレグを得た。なお、“サンエイド”SI−100L、あるいはHN−2200を配合するに際しては、150℃の温度まで加温した状態で均一になるまで良く攪拌して得られた混合物を、60℃の温度まで降温し、“サンエイド”SI−100L、あるいはHN−2200を加え均一になるまで良く攪拌した。得られたプリプレグを用いてSBS、及び活性エネルギー線照射後のタックを測定した。また、得られた構成要素[C]の粘度を測定した。
[実施例5、6、7]
フィルムの厚さを5μm、450μm、あるいは550μmに変更した以外は、実施例2と同様にしてプリプレグを作製した。得られたプリプレグを用いてSBS、及び活性エネルギー線照射後のタックを評価した。また、得られた構成要素[C]の粘度を評価した。
[実施例8]
構成要素[C]の形態として粒子を用いた。粒子の作製方法、及びプリプレグの作製方法を次に示す。実施例2で構成要素[C]に用いた重合性化合物を含む混合物を微粉砕機AP−S(ホソカワミクロン(株)製)を用いて凍結粉砕することで平均粒径64μmの粒子を作製した。なお、平均粒子径は、レーザー解析・散乱式粒度分布測定機LMS−24((株)セイシン企業製)を用い、取り込み回数500回で測定した。
実施例2と同様にして得た一次プリプレグの片面に前記粒子を目付20g/m散布することで、プリプレグを得た。得られたプリプレグを用いてSBS、及び活性エネルギー線照射後のタックを測定した。また、得られた構成要素[C]の粘度を測定した。
[比較例1]
構成要素[C]を配置しない以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを得た。得られたプリプレグを用いてSBS、及び活性エネルギー線照射後のタックを測定した。
[比較例2]
構成要素[C]を配置しない以外は、実施例2と同様にしてプリプレグを得た。得られたプリプレグを用いてSBS、及び活性エネルギー線照射後のタックを測定した。
[比較例3]
構成要素(B2)である“ロードシル”2074に替えて、構成要素(B2)に該当しない開始剤HN−2200を50重量部用いた以外は、実施例2と同様にしてプリプレグを得た。なお、HN−2200を配合するに際しては、150℃の温度まで加温した状態で均一になるまで良く攪拌して得られた混合物を、60℃の温度まで降温し、HN−2200を加え均一になるまで良く攪拌した。得られたプリプレグを用いてSBS、及び活性エネルギー線照射後のタックを測定した。また、得られた構成要素[C]の粘度を測定した。
<評価結果>
表1に示すとおり、実施例1〜8は、比較例1〜3と比較していずれもショートビーム強度が高く、強固な接着特性を有する積層界面を持ち、内部品質の良い積層体を得ることができる。また、実施例1〜8は比較例1〜3と比較していずれも活性エネルギー線照射後のプリプレグのタックが優れており、次層を積層する際、積層界面が十分に濡れているので、良好な積層界面の接着性を発現できる。特に、実施例3、4は、構成要素[C]に熱重合開始剤を配合しているので、より強固な積層界面を有し、ショートビーム強度が非常に優れていることが分かる。なお、比較例3では、活性エネルギー線で硬化しないことが分かった。
Figure 2008069216
本発明に係るプリプレグは、特に航空機部材、衛星、ロケット、宇宙往還機などの宇宙機部材及び自動車部材などに好適に用いられる。

Claims (7)

  1. 構成要素[A]に構成要素[B]を含浸させ、構成要素[C]を片面または両面に配置することを特徴とするプリプレグ。
    [A]強化繊維
    [B]下記(B1)及び(B2)を含んでなる重合性樹脂組成物
    (B1)カチオン重合性化合物またはラジカル重合性化合物
    (B2)活性エネルギー線重合開始剤
    [C]カチオン重合性化合物またはラジカル重合性化合物の層
  2. 構成要素[C]が、フィルム、粒子、不織布及びマット材からなる群から選ばれた1種以上の形態を有する請求項1に記載のプリプレグ。
  3. 構成要素[C]が、フィルムの形態を有する請求項1に記載のプリプレグ。
  4. フィルムの厚さが1〜500μmの範囲である請求項3に記載のプリプレグ。
  5. 構成要素[C]に熱重合開始剤を含む請求項1〜4のいずれかに記載のプリプレグ。
  6. 構成要素[C]に熱可塑性樹脂を含む請求項1〜5のいずれかに記載のプリプレグ。
  7. 構成要素[C]の80℃における粘度が0.01〜300Pa・sである請求項1〜6のいずれかに記載のプリプレグ。
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