JP2008066399A - 超電導線材の接続構造、超電導コイルおよび超電導線材の接続方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】接続抵抗を低減できる超電導線材の接続構造、超電導コイルおよび超電導線材の接続方法を提供する。
【解決手段】超電導線材の接続構造は、基板11,21と、超電導層13,23と、安定化層14,24とを備える、複数の超電導線材10,20の接続構造である。複数の超電導線材10,20は、超電導層13,23を成長させてなる接続層100により接続されていることを特徴としている。超電導線材の接続構造は、基板11,21と、超電導層13,23と、安定化層14,24とを備える、複数の超電導線材10,20を準備する工程と、複数の超電導線材において安定化層14,24を除去することにより、複数の被接続部を形成する工程と、複数の被接続部上に超電導層13,23を成長させてなる接続層100を形成することにより、複数の超電導線材を接続する工程とを備えている。
【選択図】図1
【解決手段】超電導線材の接続構造は、基板11,21と、超電導層13,23と、安定化層14,24とを備える、複数の超電導線材10,20の接続構造である。複数の超電導線材10,20は、超電導層13,23を成長させてなる接続層100により接続されていることを特徴としている。超電導線材の接続構造は、基板11,21と、超電導層13,23と、安定化層14,24とを備える、複数の超電導線材10,20を準備する工程と、複数の超電導線材において安定化層14,24を除去することにより、複数の被接続部を形成する工程と、複数の被接続部上に超電導層13,23を成長させてなる接続層100を形成することにより、複数の超電導線材を接続する工程とを備えている。
【選択図】図1
Description
本発明は、超電導線材の接続構造、超電導コイルおよび超電導線材の接続方法に関し、たとえば接続抵抗を低減できる超電導線材の接続構造、超電導コイルおよび超電導線材の接続方法に関する。
従来、超電導線材は、金属からなる基板上に中間層を積層し、さらに中間層上に超電導層を積層している。中間層や超電導層は、たとえばPLD法などの物理蒸着法やTFA−MOD法などの有機金属堆積法(MOD法)により形成されている。
MRI用マグネット、NMR用マグネット、およびシリコン引き上げ炉用マグネットなどの産業用マグネットには、長尺化された上記のような超電導線材が必要となる。そのため、超電導線材を接続して、長尺化を図る必要がある。しかし、永久電流モード通電を行なう場合には、超電導線材の接続部の抵抗をゼロに近づける必要がある。
超電導線材の接続方法として、たとえば特開2000−133067号公報(特許文献1)に、はんだ接続法として、酸化物超電導導体の接続構造および接続方法が開示されている。特許文献1には、基板と、基板上に形成された酸化物超電導層と、超電導層上に形成された安定化層とからなる複数の超電導線材の安定化層同士についてはんだを介して接続される接続構造および接続方法が開示されている。
また、たとえば特開平7−192837号公報(特許文献2)に、拡散接合法として、酸化物超電導線材の接続方法が開示されている。特許文献2には、酸化物超電導線材の外周面を導電性金属層で被覆してなる超電導線材同士の一部を重ね合わせて、重ね合わせにより対接する部分の少なくともいずれか一方の導電性金属の厚さを最大95%除去し、除去した導電性金属層面にペースト層を被着形成し、熱処理を施して接続する方法が開示されている。
また、たとえば特開2001−319750号公報(特許文献3)に、酸化物超電導導体の接続方法が開示されている。特許文献3には、基板と基板上に形成された超電導層とを備える2の超電導線材の端部で超電導層を除去して基板を露出させ、基板同士を接合して、露出部分に酸化物超電導層を形成する接続方法が開示されている。
特開2000−133067号公報
特開平7−192837号公報
特開2001−319750号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示の酸化物超電導導体の接続方法は、はんだを介して2つの超電導線材を接続させるはんだ接続法を採用しているが、はんだを超電導層に直接接続させることは困難である。そのため、銀安定化層や銅安定化層などの安定化層を超電導層上に形成し、安定化層同士をはんだを介して接続する。この場合には、安定化層とはんだとの間に電気抵抗が残存してしまうという問題がある。このように電気抵抗が残存すると、接続部が超電導状態を保つ永久電流ジョイントは困難である。
また、上記特許文献2に開示の酸化物超電導線材の接続方法では、超電導層上に形成した安定化層同士を拡散接合させる拡散接合法を採用しているが、拡散接合法は、はんだ接合法に比べて接続抵抗値は低減されるものの、安定化層を介しての接続抵抗が低減できない。すなわち、導電性金属とペースト層との間に電気抵抗が残存してしまうという問題がある。そのため、永久電流ジョイントは困難である。
さらに、上記特許文献3に開示の酸化物超電導導体の接続方法では、超電導層を除去しているので、あらたに超電導層を形成した部分と、端部以外の超電導層の部分との接続部分において、その結晶成長をそれぞれ別に基板上に行なっている。また、基板同士を加熱圧接により接続して、接続した基板端部の上に超電導層を形成している。そのため、基板の加熱圧接によって基板の結晶性が乱れてその上に成長させた超電導層は結晶性が低下し、さらには成長した結晶の組成の相違から接続抵抗がまだ残存してしまうという問題がある。
それゆえ本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、接続抵抗を低減できる超電導線材の接続構造、超電導コイルおよび超電導線材の接続方法を提供することである。
本発明の超電導線材の接続構造は、基板と、基板上に形成された超電導層と、超電導層上に形成された安定化層とを備える、複数の超電導線材の接続構造である。複数の超電導線材は、超電導層を成長させてなる接続層により接続されていることを特徴としている。
本発明の超電導線材の接続構造によれば、超電導層と組成ずれが小さい接続層により複数の超電導線材が接続されている。そのため、超電導層と接続層との間に組成のずれから生じる接続抵抗を低減できる。
上記超電導線材の接続構造において好ましくは、接続層は、複数の超電導線材の一方または両方の端部の超電導層上に形成されていることを特徴としている。これにより、複数の超電導線材を最も長尺に接続された超電導線材の接続構造となる。
本発明の超電導コイルは、上記超電導線材の接続構造を備えている。本発明の超電導コイルによれば、接続抵抗の低減された長尺な所望の長さの超電導線材を備えている。そのため、高い超電導特性を維持した超電導コイルとなる。
本発明の超電導線材の接続方法は、準備する工程と、被接続部を形成する工程と、超電導線材を接続する工程とを備えている。準備する工程は、基板と、基板上に形成された超電導層と、超電導層上に形成された安定化層とを備える、複数の超電導線材を準備する。被接続部を形成する工程は、複数の超電導線材において安定化層を除去することにより、被接続部を形成する。超電導線材を接続する工程は、複数の被接続部上に超電導層を成長させてなる接続層を形成することにより、複数の超電導線材を接続する。
特に上記特許文献3と異なり、本発明の超電導線材の接続方法では元々形成されている超電導層をそのまま維持し、その上に超電導層を成長させてなる接続層を形成している。この結果、本発明の超電導線材の接続方法によれば、準備された複数の超電導線材の超電導層上に接続層を形成するので、接続層と超電導層との組成ずれが小さい。そのため、複数の超電導層の表面上に形成される接続層と、超電導層との間の接続抵抗を低減できる。
上記超電導線材の接続方法において好ましくは、被接続部は、超電導線材の端部に形成され、2の被接続部を並列または対向させて、2の被接続部に接続層を形成することを特徴としている。これにより、準備した超電導線材を最も長尺に接続することができる。
上記超電導線材の接続方法において好ましくは、被接続部の表面粗さRaを50nm以下に平坦化する工程をさらに備えている。これにより、被接続部上に、良好な超電導特性を有する接続層を形成できる。
なお、上記「表面粗さRa」とは、JIS B 0601に準拠して測定される値である。
上記超電導線材の接続方法において好ましくは、接続層は、物理蒸着法またはフッ素を含まない有機金属堆積法により形成されることを特徴としている。これにより、超電導層の組成ずれが小さいとともに、優れた品質の結晶からなる接続層を容易に形成できる。
本発明の超電導線材の接続構造によれば、超電導層を成長させてなる接続層により、複数の超電導層上で複数の超電導線材を接続しているので、接続抵抗を低減できる。
また、本発明の超電導線材の接続方法によれば、複数の超電導層上に超電導層を成長させてなる接続層を形成することにより、接続抵抗を低減できる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における超電導線材の接続構造を示す概略斜視図である。図1を参照して、本発明の実施の形態1における超電導線材の接続構造を説明する。
図1は、本発明の実施の形態1における超電導線材の接続構造を示す概略斜視図である。図1を参照して、本発明の実施の形態1における超電導線材の接続構造を説明する。
図1に示すように、実施の形態1における超電導線材の接続構造は、基板11,21と、基板11,21上に形成された超電導層13,23と、超電導層13,23上に形成された安定化層14,24とを備える、複数の超電導線材10,20の接続構造である。複数の超電導線材10,20は、超電導層13,23を成長させてなる接続層100により接続されていることを特徴としている。
実施の形態1では、超電導線材の接続構造は、2の超電導線材10,20の接続構造である。超電導線材の接続構造は、2の超電導線材10,20と、接続層100とからなる。接続層100は、複数の超電導線材10,20の端部において、超電導層13,23上に、超電導線材10,20の幅方向にまたがるように形成されている。
具体的には、超電導線材10は、基板11と、基板11上に形成された中間層12と、中間層12上に形成された超電導層13と、超電導層13上に形成された安定化層14とを備えている。超電導線材20は、基板21と、基板21上に形成された中間層22と、中間層22上に形成された超電導層23と、超電導層23上に形成された安定化層24とを備えている。
基板11,21の中間層12,22と対向する側(中間層12,22が形成されていない場合には超電導層13,23と対向する側)の面は平坦であることが好ましい。たとえば基板11,21の当該面の表面粗さRaは、50nm以下であることが好ましい。50nm以下とすることによって、当該面上に優れた中間層12,22または超電導層13,23を形成できる。
基板11,21を構成する材料は金属であることが好ましい。基板11,21は、配向金属基板を用いることがさらに好ましい。なお、配向金属基板とは、基板表面の面内の2軸方向に関して、結晶方位が揃っている基板を意味する。配向金属基板としては、たとえばNi(ニッケル)、Cu(銅)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Co(コバルト)、Fe(鉄)、Pd(パラジウム)、Cu(銅)、Ag(銀)、およびAu(金)のうち2以上の金属からなる合金が好適に用いられる。これらの金属を他の金属または合金と積層することもでき、たとえば高強度材料であるSUSなどの合金を用いることもできる。なお、基板11,21の材料は特にこれに限定されず、たとえば金属以外の材料を用いてもよい。基板11,21は、たとえば長尺な帯状の形状を有している。
中間層12,22は、基板11,21上に形成されている。なお、超電導層10,20は、中間層12,22を備えていなくてもよい。中間層12,22を備えていると、超電導層13,23の結晶が良好になるとともに、基板11,21と超電導層13,23との間に元素拡散反応が生じないので、超電導線材10,20は、中間層12,22を備えていることが好ましい。
中間層12,22の超電導層13,23が形成される側の表面は平坦であることが好ましい。たとえば、中間層12の当該表面の表面粗さは50nm以下とすることが好ましい。表面粗さRaを50nm以下とすることによって、その表面上に優れた超電導層13,23を形成できる。
中間層12,22を構成する材料は、岩塩型、蛍石型、ペロブスカイト型、およびパイロクロア型の少なくともいずれか1つの結晶構造を有する酸化物であることが好ましい。このような結晶構造を有する酸化物として、酸化セリウム(CeO2)、酸化ホルミニウム(Ho2O3)、酸化イットリウム(Y2O3)、および酸化イッテルビウム(Yb2O3)などの希土類元素酸化物、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化マグネシウム(MgO)、およびチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、BZO(BaZrO3)、酸化アルミニウム(Al2O3)などのLn−M−O化合物(Lnは1種以上のランタノイド元素、MはSr、Zr、およびGaの中から選ばれる1種以上の元素、Oは酸素)が挙げられる。特に、中間層12,22を構成する材料が、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化セリウム(CeO2)、酸化マグネシウム(MgO)、およびチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)などが結晶定数および結晶配向の観点から好適に用いられる。これらの材料は、超電導層13,23との反応性が極めて低く、超電導層13,23と接触している境界面においても超電導層13,23の超電導特性を低下させない。特に、基板11,21を構成する材料として金属を用いる場合には、表面に結晶配向性を有する基板11,21と超電導層13、23との差を緩和して、超電導層13,23を高温で形成する際に、表面に結晶配向性を有する配向金属からなる基板11,21から超電導層13,23への金属原子の流出を防止する役割を果たすことができる。なお、中間層12,22を構成する材料は特にこれに限定されない。
また、中間層12,22は、良好な結晶配向性を有していることが好ましい。良好な結晶配向性を有する材料としては、上記材料が挙げられる。
また、中間層12,22は、複数の層により構成されていてもよい。中間層12,22が複数の層により構成される場合、中間層12,22を構成するそれぞれの層は互いに異なる材質または一部が同じ材質により構成されていてもよい。
超電導層13,23は、中間層12,22上に形成される。中間層12,22が存在しない場合には、超電導層13,23は、基板11,21上に形成される。
超電導層13,23の端部の接続層100と対向する表面は、平坦であることが好ましい。たとえば、超電導層13,23の当該表面の表面粗さは50nm以下とすることが好ましい。表面粗さRaを50nm以下とすることによって、その表面上に優れた接続層100を形成できる。
超電導層13,23を構成する材料は特に限定されないが、たとえばRE−123系の超電導体とすることが好ましい。なお、RE−123系の超電導体とは、REBa2Cu3Oy(yは6〜8、より好ましくはほぼ7、REとはイットリウム、またはGd、Sm、Hoなどの希土類元素を意味する)として表される超電導体を意味する。このようにすれば、フレキシブルな金属からなる基板11,21上に中間層12,22および超電導層13,23を形成すると、大きな臨界電流値および臨界電流密度を示す超電導線材10,20を実現できる。
安定化層14,24は、超電導線材10,20において、接続層100が形成されている端部を除いた超電導層13,23の上に形成されている。なお、接続層100上に安定化層14,24を形成してもよい。
安定化層14,24は、超電導層13,23の表面保護のために、超電導層13,23上にAg(銀)安定化層やCu(銅)安定化層などの表面保護層や安定化層を設けている。
接続層100は、2の超電導線材10,20の一方の端部の超電導層13,23上に形成されている。実施の形態1では、2の超電導線材10,20の接続構造としているので、超電導線材10,20の一方の端部に接続層100を形成することにより、超電導線材10,20の長尺化を図ることができる。なお、3以上の超電導線材の接続構造であれば、接続層100は、複数(3以上)の超電導線材の一方または両方の端部の超電導層上に形成されていることが好ましい。
接続層100は、超電導層13,23を成長させてなる。すなわち、接続層100を構成する材料は、超電導層13,23を構成する材料と同じとなる。また接続層100は、超電導層13,23を成長させてなるので、接続層100の組成と、超電導層13,23の組成とのずれが小さくなる。そのため、接続層100と超電導層13,23との間の接続抵抗は低減できるとともに、超電導層13,23の超電導特性の低下を防止できる。
超電導線材10,20の延びる方向(長さ方向)である接続層100の長さLは、10mm〜100mmとすることが好ましく、超電導線材10,20の幅方向である接続層100の幅Wは、3mm〜50mmとすることが好ましく、接続層100の厚さDは、0.2μm〜10μmとすることが好ましい。
次に、図1および図2を参照して、本発明の実施の形態1における超電導線材の接続方法について説明する、なお、図2は、本発明の実施の形態1における超電導線材の接続方法を示すフローチャートである。
図2に示すように、まず、基板11,21と、基板11,21上に形成された超電導層13,23と、超電導層13,23上に形成された安定化層14,24とを備える、複数の超電導線材10,20を準備する工程(S10)を実施する。実施の形態1では、2の超電導線材10,20を準備する。
具体的には、たとえば長尺な帯状の基板11,21を準備する。たとえばNi合金やCu合金などの配向金属からなる基板11,21を準備することが好ましい。
そして、基板11,21の表面上にそれぞれ中間層12,22を形成する。中間層12、22としては、たとえばYSZやCeO2などからなる層を形成する。また、成膜方法としては、任意の成膜方法を用いることができるが、たとえばパルスレーザ蒸着法(Pulsed Laser Deposition:PLD法)などの物理蒸着法を用いることができる。なお、中間層12,22を形成する工程は省略されてもよい。
そして、中間層12,22(中間層12,22が形成されていない場合には、基板11,21)の表面上に、超電導層13,23を、たとえば気相法および液相法、またはそれらの組み合わせにより形成する。超電導層13,23としては、たとえばHoBCOなどからなる層を形成する。気相法としては、たとえばレーザ蒸着法、スパッタリング法、および電子ビーム蒸着法などが挙げられる。液相法としては、たとえば有機金属堆積法などが挙げられる。レーザ蒸着法、スパッタリング法、電子ビーム法、および有機金属堆積法の少なくとも1つの方法により行なわれると、結晶配向性および表面平滑性に優れた表面を有する超電導層13,23を形成することができる。
そして、超電導層13,23の表面上に、安定化層14,24をたとえば物理蒸着法や電気めっき法などにより形成する。安定化層14,24は、たとえばAgまたはCuなどからなる層を形成する。
準備する工程(S10)では、基板11,21、中間層12,22、または超電導層13,23の表面を平坦化することが好ましい。平坦化する方法は、任意の平坦化方法を用いることができ、たとえばメカノケミカル法、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法、ウエットエッチング法、または機械研磨法などを用いることができる。具体的には、基板11,21、中間層12,22、または超電導層13,23の表面粗さRaを50nm以下にする平坦化することが好ましい。50nm以下とすることによって、超電導層13,23の特性を向上できる。
次に、複数の超電導線材10,20において安定化層14,24を除去することにより、複数の被接続部を形成する工程(S20)を実施する。この工程(S20)で、安定化層14,24を除去すると、除去された安定化層14,24下の超電導層13,23が露出する。この露出した部分を被接続部としている。
この工程(S20)では、被接続部は、超電導線材10,20の端部に形成されることが好ましい。具体的には、超電導線材10,20の一方の端部において、安定化層14,24を除去する。安定化層14,24の除去方法は、任意の方法を用いることができるが、たとえば機械的研磨、化学的研磨、ウエットエッチング、またはこれらの組み合わせなどにより行なうことができる。特に、超電導層の膜厚と臨界電流(Ic)特性を維持し、かつ安定化層のみを除去する観点から、安定化層のみを選択的に溶解できるウエットエッチング法により行なうことが好ましい。
次に、被接続部の表面粗さRaを50nm以下に平坦化する工程を実施することが好ましい。具体的には、平坦化する方法は、任意の方法を用いることができるが、たとえばメカノケミカル、機械的研磨、化学的研磨、ウエットエッチング、またはこれらの組み合わせなどにより行なうことができる。特に、被接続部を中心とした領域に限定して平滑化する観点から、メカノケミカル研磨や機械的研磨により行なうことが好ましい。
平坦化する工程において、被接続部の表面粗さRaは、50nm以下とすることが好ましく、20nm以下とすることがより好ましい。Raを50nm以下とすることによって、被接続部上に、超電導層13,23と同じ組成の結晶が成長しやすくなるとともに、接続層100の超電導特性を向上できる。Raを20nm以下とすることによって、接続層100の超電導特性をより向上できる。なお、被接続部の表面粗さRaは、接続層100が形成される側の面の表面粗さRaを意味する。
次に、複数の被接続部上に超電導層13,23を成長させてなる接続層100を形成することにより、複数の超電導線材10,20を接続する工程(S30)を実施する。接続層100は、元々の超電導層13,23の超電導特性を損なうことなく成長可能な物理蒸着法またはフッ素を含まない有機金属堆積法により形成されることが好ましい。実施の形態1では、物理蒸着法により形成している。
具体的には、たとえば複数の被接続部を横に並べる。この際、超電導層13,23が水平になるように並列に配置することがより好ましい。そして、複数の被接続部上に接続層100を形成する。実施の形態1のように、被接続部を超電導線材10,20の端部に形成した場合には、2の被接続部を並列させて、2の被接続部に物理蒸着法により接続層100を形成する。
接続層100の成膜方法は、任意の成膜方法を用いることができるが、物理蒸着法としては、たとえば成長速度が高速である観点から、PLD法により接続層100を形成することが好ましい。PLD法によれば、たとえば接続層100の厚みDを10μm程度に容易に形成できる。
以上の工程(S10〜S30)を実施することにより、図1に示す超電導線材10,20の接続構造を得ることができる。
なお、実施の形態1では、準備する工程(S10)で2の超電導線材10,20を準備しているが、3以上(たとえばn個)の超電導線材を準備する場合には、(n−2)枚の超電導線材については、両端部について安定化層を除去し、残りの2枚の超電導線材については一方の端部について安定化層を除去する(S20)ことが好ましい。この場合には、n枚の超電導線材のうち、2の被接続部ごとに並列または対向させて、2の被接続部ごとに接続層100を形成することが好ましい。そして、被接続部を一方端にのみ形成した2枚の超電導線材が、超電導線材の接続構造の両端に配置されるように、接続層を形成することが好ましい。これにより、(n−1)枚の接続層により接続された超電導線材の接続構造が得られる。
以上説明したように、本発明の実施の形態1における超電導線材の接続構造によれば、基板11,21と、基板11,21上に形成された超電導層13,23と、超電導層13,23上に形成された安定化層14,24とを備える、複数の超電導線材の接続構造であって、複数の超電導線材10,20は、超電導層13,23を成長させてなる接続層100により接続されていることを特徴としている。接続層100は、超電導層13,23上に形成されているので、超電導層13,23の影響を受けて成長するので、超電導層13,23と接続層100との間に、組成の相違から生じる接続抵抗を低減できる。このような接続層100により超電導層13,23上をまたぐように接続しているので、超電導層13,23と接続層100との間に生じる接続抵抗を低減できる。そのため、超電導層13,23の臨界電流値および臨界電流密度などの超電導特性の低下を防止できる。
上記超電導線材の接続構造において好ましくは、接続層100は、複数の超電導線材10,20の一方または両方の端部の超電導層13,23上に形成されていることを特徴としている。これにより、複数の超電導線材10,20を最も長尺に接続できるので、複数の超電導線材10,20の長さを有効に利用した超電導線材の接続構造となる。
本発明の実施の形態1における超電導線材の接続方法によれば、基板11,21と、基板11,21上に形成された超電導層13,23と、超電導層13,23上に形成された安定化層14,24とを備える、複数の超電導線材10,20を準備する工程(S10)と、複数の超電導線材10,20において安定化層14,24を除去することにより、複数の被接続部を形成する工程(S20)と、複数の被接続部上に超電導層13,23を成長させてなる接続層100を形成することにより、複数の超電導線材10,20を接続する工程(S30)とを備えている。準備された複数の超電導線材10,20の超電導層13,23上に接続層100を形成するので、接続層100の組成と超電導層13,23の組成とのずれが小さくなる。そのため、複数の超電導層13,23をまたがって形成される接続層100と、超電導層13,23との間の接続抵抗を低減できる。よって、超電導層13,23の臨界電流値および臨界電流密度などの特性の低下を防止できる。なお、本発明の実施の形態1における超電導線材の接続方法では、複数の超電導線材10,20において元々形成されている超電導層13,23をそのまま維持するとともに、超電導層13,23上にエピタキシャル法により超電導層13,23を成長させてなる接続層100を形成する点において、上記特許文献3に記載の酸化物超電導導体の接続方法と大きく相違している。
上記超電導線材の接続方法において好ましくは、被接続部は、超電導線材10,20の端部に形成され、2の被接続部を並列または対向させて、2の被接続部に接続層を形成することを特徴としている。これにより、準備した超電導線材10,20を最も長尺に接続することができるので、複数の超電導線材10,20の長さを有効に利用した超電導線材の接続構造となる。
上記超電導線材の接続方法において好ましくは、被接続部の表面粗さRaを50nm以下に平坦化する工程をさらに備えている。これにより、被接続部上に、超電導層13,23との組成ずれが小さいとともに、超電導層13,23の特性を維持する接続層100を形成しやすくなる。そのため、複数の超電導層13,23と接続層100との接続抵抗をより低減できる。
上記超電導線材の接続方法において好ましくは、接続層100は、物理蒸着法またはフッ素を含まないMOD法により形成されることを特徴としている。これにより、局所的に非常に速く、結晶性に優れた接続層100を形成できる。また、特にPLD法などの物理蒸着法は成長速度が速いので、接続層100の膜厚を厚くして、複数の超電導層13,23と接続層100との接続抵抗をより低減できる。
(実施の形態2)
図3を参照して、本発明の実施の形態2における超電導線材の接続構造について説明する。なお、図3は、本発明の実施の形態2における超電導線材の接続構造を示す概略斜視図である。
図3を参照して、本発明の実施の形態2における超電導線材の接続構造について説明する。なお、図3は、本発明の実施の形態2における超電導線材の接続構造を示す概略斜視図である。
図3に示すように、実施の形態2における超電導線材の接続構造は、実施の形態1と同様の2の超電導線材10,20の接続構造である。接続層110は、複数の超電導線材10,20の端部において、超電導層13,23上に、超電導線材10,20が重なるように形成されている。すなわち、超電導線材10,20は、接続層110を中心として対向させて配置されている。その他の構成については、実施の形態1と同様であるので、その説明は繰り返さない。
次に、実施の形態2における超電導線材の接続方法について説明する。まず、基板11,21と、基板11,21上に形成された超電導層13,23と、超電導層13,23上に形成された安定化層14,24とを備える、複数の超電導線材10,20を準備する工程(S10)を実施する。この工程(S10)は、実施の形態1と同様であるので、その説明は繰り返さない。
次に、複数の超電導線材10,20において安定化層14,24を除去することにより、複数の被接続部を形成する工程(S20)を実施する。この工程(S20)は、実施の形態1と同様であるので、その説明は繰り返さない。
次に、被接続部の表面粗さRaを50nm以下に平坦化する工程を実施してもよい。この工程は、実施の形態1と同様であるので、その説明は繰り返さない。なお、本実施の形態で後述する接続する工程(S30)でフッ素を含まないMOD法を適用する場合には、被接続部の表面粗さRaを必ずしも50nm以下とする必要はない。その理由は、フッ素を含まないMOD法では、無フッ素系MOD溶液から結晶成長を出発させるので、被接続部の表面の平滑性が大きくても良好な超電導層の形成が可能であるからである。
次に、複数の被接続部上に超電導層13,23を成長させてなる接続層110を形成することにより、複数の超電導線材10,20を接続する工程(S30)を実施する。実施の形態2では、接続層110は、フッ素を含まない有機金属堆積法(無フッ素系MOD法)により形成されている。
具体的には、たとえば2の被接続部を対向させる。2の被接続部は接触していることが好ましい。また、被接続部を密着させておくことがより好ましい。なお、特にこの配置に限定されず、たとえば同一平面内に配置しておいてもよい。
そして、対向させた被接続部の接触界面に無フッ素系MOD溶液を浸漬させる。浸漬させる方法は特に限定されないが、たとえば対向させた状態の2の被接続部を無フッ素系MOD溶液に浸漬させる。また、たとえば被接続部を対向させる前に、被接続部の表面に無フッ素系MOD溶液を塗布してから、被接続部を対向などさせる。無フッ素系MOD溶液を浸漬させることにより、非接続部の表面(表面が凹凸状態であれば凹凸の隙間も含む)に無フッ素系MOD溶液を付着できる。
ここで、無フッ素系MOD溶液とは、超電導層13,23と同じ組成からなる層を成長させるための溶液である。たとえばHoBCOからなる層を成長させる場合には、無フッ素系MOD溶液は、HoとBaとCuとが1:2:3の割合で含まれているアセチルアセトナート系MOD溶液を用いる。無フッ素系MOD法を用いることにより、無フッ素系MOD溶液は中性溶液であるため、超電導層13,23や中間層12,22にダメージを与えず、超電導層13,23や中間層12,22の結晶を維持できるとともに、フッ素を含んでいないので人体や環境への負荷が非常に軽減される。
そして、400℃以上500℃以下の温度範囲で熱処理を行なう仮焼成工程を実施する。仮焼成工程により、有機成分を除去できる。そして、700℃以上900℃以下の温度範囲で熱処理を行なう本焼成工程を実施する。本焼成工程により、超電導層13と超電導層23との界面にエピタキシャル成長させて接続層110を形成できる。そして、350℃〜550℃において、酸素分圧0.1気圧〜酸素1気圧の雰囲気において、超電導層13,23および接続層110に酸素をドープする酸素アニール工程を実施する。酸素アニール工程では、77Kで高い臨界電流値を得ることができる。
仮焼成工程および本焼成工程では、超電導線材10,20に0.5kgf〜10kgfの圧力を印加して行なうことが好ましい。0.5kgf以上の圧力を印加することによって、MOD膜(接続層110)の焼成時の大きな体積変化を吸収でき、接続される2つの超電導層13,23間に良好にエピタキシャル成長してなる接続層110を得ることができる。10kgf以下の圧力を印加することによって、超電導層13,23および接続層110の超電導特性の低下を防止できる。
以上説明したように、実施の形態2における超電導線材の接続方法によれば、接続層110は、フッ素を含まない有機金属堆積法により形成されている。たとえば超電導層13,23の原料を含むフッ素系有機酸を用いて有機酸塩を被接続部の上に塗布(または浸漬)して焼成して接続層を形成するTFA−MOD法を用いると、原料中のフッ素が抜けていく状態で結晶成長する。しかも、フッ化物の溶液は反応性に富むので、超電導層13,23や安定化層14,24を溶かしてしまう場合があった。しかし、実施の形態2における中性溶液であるフッ素を含まない有機金属堆積法により接続層110を形成することにより、超電導層13,23の影響を受けてエピタキシャル成長するため、超電導層13,23の表面上に超電導層13,23と組成のずれが小さい共通の新たな超電導層である接続層110を形成できる。そのため、超電導層13,23と接続層110との間に生じる接続抵抗を低減できる。よって、超電導層13,23の臨界電流値および臨界電流密度などの特性の低下を防止できる。
また、フッ素を含まない有機金属堆積法により接続層110を形成する場合には、非真空系の雰囲気で超電導線材を接続できる。そのため、大型機器への適用が可能となり、接続方法の自由度が大きい点で有利となる。
(実施の形態3)
図4を参照して、本発明の実施の形態3における超電導コイルについて説明する。実施の形態3における超電導コイルは、実施の形態1または実施の形態2における超電導線材の接続構造を備えている。なお、図4は、本発明の実施の形態3における超電導コイルを示す概略斜視図である。
図4を参照して、本発明の実施の形態3における超電導コイルについて説明する。実施の形態3における超電導コイルは、実施の形態1または実施の形態2における超電導線材の接続構造を備えている。なお、図4は、本発明の実施の形態3における超電導コイルを示す概略斜視図である。
具体的には、図4に示すように、超電導コイル200は、ダブルパンケーキ型コイルとしている。超電導コイル200は、超電導線材10を長さ方向において2分割に切断された超電導線材10a,10bを、円筒状の巻枠201a,201bに巻装され、巻線である超電導線材10a,10bの最外周において、接続層220により接続されている。接続層220は、実施の形態1における接続層100または実施の形態2における接続層110と同様である。
接続層220と超電導層との接続抵抗が低減されて、永久電流ジョイントとすることができるので、超電導コイル200は、永久電流モード通電を行なうことができる。
なお、実施の形態3では、ダブルパンケーキ型コイルとしているが、特にこれに限定されない。たとえば超電導線材がらせん状に巻かれてなる超電導コイルを形成することもできる。また、複数の超電導線材を用いて、実施の形態1または2における超電導線材の接続構造を備えている場合には、所望の長さの超電導線材を備える超電導コイル200となる。
次に、実施の形態3における超電導コイル200の製造方法について説明する。まず、超電導線材10a,10bにより巻枠201a,201bに巻装する。
次に、接続したい超電導線材の端末部を引き出す工程を実施する。実施の形態3では、巻線である超電導線材10a,10bの最外周の端部を引き出す。
次に、2つの端末部の安定化層を除去することにより、被接続部を形成する工程を実施する。この工程により、端末部の超電導層の表面(被接続部)を露出させて、並列または対向に配置させる。実施の形態3では、被接続部を対向させて配置させている。また、巻線である超電導線材10a,10bの最外周の端部において、安定化層14を除去することにより、複数の被接続部を形成する工程(S20)を実施する。この工程(S20)は、実施の形態1または2と同様である。
次に、複数の被接続部上に超電導層13を成長させてなる接続層220を形成する工程(S30)を実施する。工程(S20,S30)は、実施の形態1または実施の形態2と同様である。なお、超電導コイル200のような大型機器において超電導線材10a,10bを接続する場合には、実施の形態2におけるフッ素を含まない有機金属堆積法により接続層220を形成することが好ましい。
次に、必要に応じて、接続層220上に安定化層を形成する工程、仮焼成工程、本焼成工程、または酸素アニール工程などを実施する。
以上の工程を実施することにより、図4に示す実施の形態3における超電導コイルを製造できる。なお、超電導コイルは、図4に示す超電導コイル200に限定されず、たとえば図5に示すように超電導線材10a、10bの端部を並べて接続される超電導コイル300としてもよい。超電導コイル200,300は、密に巻くことができる。また、図6に示すように、超電導線材10a,10bは隙間を設けて接続された超電導コイル400としてもよい。超電導コイル400は、意図的に磁場を変化させることができる。
以上説明したように、本発明の実施の形態3における超電導コイル200,300,400によれば、実施の形態1または2における超電導線材の接続構造を備えている。従来、たとえば物理蒸着法を用いて超電導コイルにおける超電導線材を接続する場合には、超電導コイルをすべて真空チャンバに配置しなければ、永久電流ジョイントは得られなかったが、超電導コイルを真空チャンバ内に配置することは、物理的に不可能であった。しかし、実施の形態3における超電導コイル200,300,400によれば、複数の超電導線材の端末部のみを引き出して、永久電流ジョイントを実現できる接続層220を形成することにより、永久電流通電モードが実現できる超電導コイル200,300,400を得ることができる。また、フッ素を含まないMOD法を適用することによって、非真空雰囲気下で大型マグネットの端末を低抵抗で接続することが可能となる。
また、超電導コイル200,300,400は、実施の形態1または2における超電導線材の接続方法により接続されているので、長尺な超電導線材10a,10bを用いて接続しても接続抵抗を低減して、超電導状態とすることができる。また、超電導線材を複数接続することにより必要な所望の長さにして、超電導コイル200,300,400を得ることもできる。
〔実施例〕
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、実施の形態1における超電導線材の接続方法にしたがって、図1に示す超電導線材の接続構造を得た。
実施例1では、実施の形態1における超電導線材の接続方法にしたがって、図1に示す超電導線材の接続構造を得た。
具体的には、まず、基板と、基板上に形成された超電導層と、超電導層上に形成された安定化層とを備える、複数の超電導線材を準備する工程(S10)を実施した。この工程(S10)では、基板として、Ni合金からなり、厚さ100μm、幅1cm、長さ100cmを準備した。そして、基板上に酸化セリウムからなる中間層を電子ビーム蒸着法により形成した。そして、中間層上に、PLD法により、酸素分圧200mTorrの雰囲気で820℃の基板温度で、2μmの厚さのHoBCOからなる超電導層を形成した。そして、超電導層上に、真空蒸着法により、10μmの厚さのAgからなる安定化層を形成した。そして、酸素100%の雰囲気で、500℃で1時間の熱処理を実施した。これにより、超電導線材を得た。そして、得られた超電導線材を2枚準備した。
次に、複数の超電導線材において安定化層を除去することにより、複数の被接続部を形成する工程(S20)を実施した。この工程(S20)では、2枚の超電導線材の一方端から超電導線材の長さ方向までの5cmの領域について安定化層を化学エッチングにより除去した。
次に、複数の被接続部上に超電導層を成長させてなる接続層を形成することにより、複数の超電導線材を接続する工程(S30)を実施した。この工程(S30)では、超電導層の水平面を厳密に保ちながら、2枚の超電導線材の端部を並べて固定した。そして、PLD法により、長さLを5cm、幅Wを2cm、厚さDを1μmとして、HoBCOからなる接続層を形成した。そして、接続層の表面上にAgからなる安定化層を10μm形成した。そして、酸素100%の雰囲気で、500℃で1時間、熱処理を行なった。これにより、実施例1における超電導線材の接続構造を得た。
(評価方法)
準備する工程(S10)で準備した1の超電導線材および実施例1における超電導線材の接続構造について、臨界電流を測定した。臨界電流は、77Kの条件で測定した。なお、測定値は、1cm長当たり1μVの電圧を印加したときの発生した電流値とした。なお、実施例1における超電導線材の接続構造では、2の超電導線材の接続されていない(接続層が形成されていない)側の端部に電流リードを取り付けて、さらに接続層を含むように電圧タップを取り付けて、電流−電圧特性を測定した。
準備する工程(S10)で準備した1の超電導線材および実施例1における超電導線材の接続構造について、臨界電流を測定した。臨界電流は、77Kの条件で測定した。なお、測定値は、1cm長当たり1μVの電圧を印加したときの発生した電流値とした。なお、実施例1における超電導線材の接続構造では、2の超電導線材の接続されていない(接続層が形成されていない)側の端部に電流リードを取り付けて、さらに接続層を含むように電圧タップを取り付けて、電流−電圧特性を測定した。
(測定結果)
実施例1における超電導線材の接続構造での臨界電流は、140Aであった。一方、準備した超電導線材の臨界電流は、160Aであった。この結果から、接続前の臨界電流とほぼ同様の特性を示すことが確認できた。
実施例1における超電導線材の接続構造での臨界電流は、140Aであった。一方、準備した超電導線材の臨界電流は、160Aであった。この結果から、接続前の臨界電流とほぼ同様の特性を示すことが確認できた。
(実施例2)
実施例2では、実施の形態2における超電導線材の接続方法にしたがって超電導線材の接続構造を得た。
実施例2では、実施の形態2における超電導線材の接続方法にしたがって超電導線材の接続構造を得た。
具体的には、まず、基板と、基板上に形成された超電導層と、超電導層上に形成された安定化層とを備える、複数の超電導線材を準備する工程(S10)を実施した。この工程(S10)は、実施例1と同様の超電導線材を2枚準備した。
次に、複数(2枚)の超電導線材において安定化層を除去することにより、複数の被接続部を形成する工程(S20)を実施した。この工程(S20)は、実施例1と同様に、2枚の超電導線材の一方の端部の安定化層を除去した。
次に、複数の被接続部上に超電導層を成長させてなる接続層を形成することにより、複数の超電導線材を接続する工程(S30)を実施した。この工程では、無フッ素系MOD法により行なった。具体的には、被接続部同士を合わせて密着させて固定した。そして、HoとBaとCuとが1:2:3の割合で含まれているアセチルアセトナート系MOD溶液(フッ素が含まれていないフッ素フリーMOD溶液)に被接続部を浸漬させた。そして、520度で1時間、空気中で熱処理を行なう仮焼成工程を実施した。そして、酸素200ppmを含むAr雰囲気で850℃で1.5時間の熱処理を行なう本焼成工程を実施した。これにより、HoBCOからなる接続層を形成した。そして、酸素100%の雰囲気で500℃で1時間、熱処理を行なう酸素アニール工程を実施した。これにより、実施例2における超電導線材の接続構造を得た。
(評価方法)
実施例1と同様にして、実施例2における超電導線材の接続構造について臨界電流を測定した。具体的には、実施例2における超電導線材の接続構造では、2の超電導線材の接続されていない(接続層が形成されていない)側の端部に電流リードを取り付けて、さらに接続層を含むように電圧タップを取り付けて、電流−電圧特性を測定した。また、実施例2における超電導線材の接続構造において、接続層において長さL5cmの両端1cmを除く中央部の3cmの領域について臨界電流を測定した。
実施例1と同様にして、実施例2における超電導線材の接続構造について臨界電流を測定した。具体的には、実施例2における超電導線材の接続構造では、2の超電導線材の接続されていない(接続層が形成されていない)側の端部に電流リードを取り付けて、さらに接続層を含むように電圧タップを取り付けて、電流−電圧特性を測定した。また、実施例2における超電導線材の接続構造において、接続層において長さL5cmの両端1cmを除く中央部の3cmの領域について臨界電流を測定した。
(測定結果)
実施例2における超電導線材の接続構造での臨界電流は、152Aであった。また、接続層の中央部の臨界電流は、180Aであった。準備した超電導線材の臨界電流は、160Aであったため、接続前の臨界電流とほぼ同様の特性を示すことが確認できた。また、無フッ素系MOD法により超電導層が増加したため、接続層の中央部では、臨界電流が向上し、非常に良い結果を得られた。
実施例2における超電導線材の接続構造での臨界電流は、152Aであった。また、接続層の中央部の臨界電流は、180Aであった。準備した超電導線材の臨界電流は、160Aであったため、接続前の臨界電流とほぼ同様の特性を示すことが確認できた。また、無フッ素系MOD法により超電導層が増加したため、接続層の中央部では、臨界電流が向上し、非常に良い結果を得られた。
(実施例3)
実施例3では、実施例1の超電導線材の接続方法において、被接続部の表面粗さRaを50nm以下に平坦化する工程をさらに実施した。具体的には、実施例1における安定化層を除去する工程(S20)を実施した後に、被接続部を、メカノケミカル手法を用いて、表面粗さRaを10nm以下に平坦化した。
実施例3では、実施例1の超電導線材の接続方法において、被接続部の表面粗さRaを50nm以下に平坦化する工程をさらに実施した。具体的には、実施例1における安定化層を除去する工程(S20)を実施した後に、被接続部を、メカノケミカル手法を用いて、表面粗さRaを10nm以下に平坦化した。
(評価方法)
実施例1と同様に、実施例3における超電導線材の接続構造の臨界電流を測定した。
実施例1と同様に、実施例3における超電導線材の接続構造の臨界電流を測定した。
(測定結果)
実施例3における超電導線材の接続構造での臨界電流は、155Aであった。一方、準備した超電導線材の臨界電流は、160Aであったため、接続前の臨界電流とほぼ同様の特性を示すことが確認できた。また、実施例1の臨界電流と比較して、平坦化する工程を実施することにより、接続抵抗は1nΩ以下となり、より低減できることが確認できた。
実施例3における超電導線材の接続構造での臨界電流は、155Aであった。一方、準備した超電導線材の臨界電流は、160Aであったため、接続前の臨界電流とほぼ同様の特性を示すことが確認できた。また、実施例1の臨界電流と比較して、平坦化する工程を実施することにより、接続抵抗は1nΩ以下となり、より低減できることが確認できた。
(実施例4)
実施例4では、実施例2の超電導線材の接続方法において、仮焼成工程および本焼成工程で圧力を印加する工程、および被接続部の表面粗さRaを50nm以下に平坦化する工程をさらに実施した。具体的には、安定化層を除去する工程(S20)を実施後に、実施例3と同様にして被接続部の表面粗さRaを20nm以下にメカノケミカル法で研磨した。また、実施例2の接続層を形成する工程における仮焼成工程および本焼成工程において、被接続部に2kgfの圧力を印加して行なった。
実施例4では、実施例2の超電導線材の接続方法において、仮焼成工程および本焼成工程で圧力を印加する工程、および被接続部の表面粗さRaを50nm以下に平坦化する工程をさらに実施した。具体的には、安定化層を除去する工程(S20)を実施後に、実施例3と同様にして被接続部の表面粗さRaを20nm以下にメカノケミカル法で研磨した。また、実施例2の接続層を形成する工程における仮焼成工程および本焼成工程において、被接続部に2kgfの圧力を印加して行なった。
(評価方法)
実施例2と同様に、実施例4における超電導線材の接続構造について、端部間および接続層の中央部間の臨界電流を測定した。
実施例2と同様に、実施例4における超電導線材の接続構造について、端部間および接続層の中央部間の臨界電流を測定した。
(測定結果)
実施例4における超電導線材の接続構造での臨界電流は、160Aであった。また、接続層の中央部の臨界電流は、210Aであった。一方、準備した超電導線材の臨界電流は、160Aであったため、接続前の臨界電流とほぼ同様の特性を示すことが確認できた。また、実施例2の臨界電流と比較して、平坦化する工程を実施することにより、接続層での接続抵抗をより低減できることが確認できた。
実施例4における超電導線材の接続構造での臨界電流は、160Aであった。また、接続層の中央部の臨界電流は、210Aであった。一方、準備した超電導線材の臨界電流は、160Aであったため、接続前の臨界電流とほぼ同様の特性を示すことが確認できた。また、実施例2の臨界電流と比較して、平坦化する工程を実施することにより、接続層での接続抵抗をより低減できることが確認できた。
(実施例5)
実施例5では、実施の形態3における超電導コイルの製造方法にしたがって超電導コイルを製造した。具体的には、基板と、基板上に形成された超電導層と、超電導層上に形成された安定化層とを備える、複数の超電導線材を準備する工程を実施した。この工程(S10)では、Ni合金からなり、厚さ100μm、幅1cm、長さ25mの基板を準備した。そして、基板上に酸化セリウムからなる中間層を電子ビーム蒸着法により形成した。中間層を構成する酸化セリウムは、表面粗さRaを12nm以下、面内配向性を5°とした。そして、中間層上に、PLD法により、実施例1と同じ条件で、1.8μmの厚さのHoBCOからなる超電導層を形成した。そして、超電導層上に、実施例1と同様に、10μmの厚さのAgからなる安定化層を形成した。これにより、得られた超電導線材を2分割して、12.5m長の超電導線材を2枚準備した。
実施例5では、実施の形態3における超電導コイルの製造方法にしたがって超電導コイルを製造した。具体的には、基板と、基板上に形成された超電導層と、超電導層上に形成された安定化層とを備える、複数の超電導線材を準備する工程を実施した。この工程(S10)では、Ni合金からなり、厚さ100μm、幅1cm、長さ25mの基板を準備した。そして、基板上に酸化セリウムからなる中間層を電子ビーム蒸着法により形成した。中間層を構成する酸化セリウムは、表面粗さRaを12nm以下、面内配向性を5°とした。そして、中間層上に、PLD法により、実施例1と同じ条件で、1.8μmの厚さのHoBCOからなる超電導層を形成した。そして、超電導層上に、実施例1と同様に、10μmの厚さのAgからなる安定化層を形成した。これにより、得られた超電導線材を2分割して、12.5m長の超電導線材を2枚準備した。
次に、2枚の超電導線材を、内径8cm、高さ2cmのFRP巻枠に巻いて、2つのWパンケーキ型コイルを製作した。そして、巻いた2枚の超電導線材の端部10m長を実施例2と同じ手法で、2の超電導線材において安定化層を除去することにより、2の被接続部を形成する工程(S20)を実施した。次に、実施例2と同様に無フッ素系MOD法を用いて、2枚の被接続部上に超電導層を成長させてなる接続層を形成することにより、2枚の超電導線材を接続する工程(S30)を実施した。これにより、実施例5における超電導コイルを得た。
(評価方法)
準備する工程(S10)で分割する前の超電導線材について、実施例1と同様に臨界電流を測定した。また、実施例5における超電導コイルにおいて、接続層により接続した端部と反対の端部に電流リードを取り付けて、液体窒素中で通電試験を実施して、臨界電流を測定した。
準備する工程(S10)で分割する前の超電導線材について、実施例1と同様に臨界電流を測定した。また、実施例5における超電導コイルにおいて、接続層により接続した端部と反対の端部に電流リードを取り付けて、液体窒素中で通電試験を実施して、臨界電流を測定した。
(測定結果)
実施例5における超電導コイルの臨界電流の臨界電流は、145Aであった。一方、準備した超電導線材の両端末部の臨界電流は225Aであった。この超電導コイルは145Aの通電電流において約0.05Tの自己磁界を発生することがわかっている。0.05Tでは、臨界電流は磁場がゼロのときに比べて約65%であることから、超電導コイルにおける超電導線材の臨界電流値は146A(225A×0.65)となる。このことから、超電導線材の接続構造を備えている実施例5の超電導コイルは、超電導状態での通電が可能であることが確認できたとともに、超電導特性をほぼ100%維持できる接続が得られることが確認できた。実施例5によれば、長尺の超電導線材を備える場合においても実際の機器に適用できることがわかった。
実施例5における超電導コイルの臨界電流の臨界電流は、145Aであった。一方、準備した超電導線材の両端末部の臨界電流は225Aであった。この超電導コイルは145Aの通電電流において約0.05Tの自己磁界を発生することがわかっている。0.05Tでは、臨界電流は磁場がゼロのときに比べて約65%であることから、超電導コイルにおける超電導線材の臨界電流値は146A(225A×0.65)となる。このことから、超電導線材の接続構造を備えている実施例5の超電導コイルは、超電導状態での通電が可能であることが確認できたとともに、超電導特性をほぼ100%維持できる接続が得られることが確認できた。実施例5によれば、長尺の超電導線材を備える場合においても実際の機器に適用できることがわかった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10,10a,10b,20 超電導線材、11,21 基板、12,22 中間層、13,23 超電導層、14,24 安定化層、100,110,220 接続層、200,300,400 超電導コイル、201a,201b 巻枠、L 長さ、W 幅、D 厚さ。
Claims (6)
- 基板と、前記基板上に形成された超電導層と、前記超電導層上に形成された安定化層とを備える、複数の超電導線材の接続構造であって、
前記複数の超電導線材は、前記超電導層を成長させてなる接続層により接続されていることを特徴とする、超電導線材の接続構造。 - 前記接続層は、前記複数の超電導線材の一方または両方の端部の前記超電導層上に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の超電導線材の接続構造。
- 請求項1または2に記載の超電導線材の接続構造を備える、超電導コイル。
- 基板と、前記基板上に形成された超電導層と、前記超電導層上に形成された安定化層とを備える、複数の超電導線材を準備する工程と、
前記複数の超電導線材において前記安定化層を除去することにより、複数の被接続部を形成する工程と、
前記複数の被接続部上に前記超電導層を成長させてなる接続層を形成することにより、前記複数の超電導線材を接続する工程とを備える、超電導線材の接続方法。 - 前記被接続部は、前記超電導線材の端部に形成され、
2の前記被接続部を並列または対向させて、前記2の被接続部に接続層を形成することを特徴とする、請求項4に記載の超電導線材の接続方法。 - 前記被接続部の表面粗さRaを50nm以下に平坦化する工程をさらに備える、請求項4または5に記載の超電導線材の接続方法。
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