以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
<電子写真感光体>
図1は、本発明の電子写真感光体の他の好適な実施形態を示す模式断面図である。図1に示す電子写真感光体100は、導電性基体1と、下引層2aと、感光層4と、保護層7とから構成されている。下引層2aの感光層側には、電子受容性物質が下引層2aの導電性基体側よりも高濃度で含有されている。本明細書においては、電子受容性物質が高濃度で含有される下引層2aの感光層側部分を、電子受容性物質高濃度含有領域3aと称す。また、感光層4は、下引層2a上に、電荷発生層5及び電荷輸送層6がこの順序で積層された構造を有している。
また、図2は、本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図2に示す電子写真感光体110は、導電性基体1と、下引層2bと、電子受容性物質含有層3bと、感光層4と、保護層7とから構成されている。電子受容性物質含有層3bは、電子受容性物質を下引層2bよりも高濃度で含有する層である。また、感光層4は、電子受容性物質含有層3b上に、電荷発生層5及び電荷輸送層6がこの順序で積層された構造を有している。
図1及び2に示す電子写真感光体100及び110は、電荷発生層5と電荷輸送層6とに機能が分離された感光層4を備えるものであるが、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層(単層型感光層)に含有するものであってもよい。更に、電子写真感光体100及び110において、保護層7は必ずしも設けられていなくてもよい。
以下、図1及び2に示す電子写真感光体100及び110に基づいて、各要素について説明する。
導電性基体1としては、例えば、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、亜鉛、ニッケル等の金属ドラム;シート、紙、プラスチック、ガラス等の基材上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、インジウム等の金属を蒸着したり、酸化インジウム、酸化錫などの導電性金属化合物を蒸着したりしたもの;上記基材に金属箔をラミネートしたもの又はカーボンブラック、酸化インジウム、酸化錫、酸化アンチモン粉、金属粉、沃化銅等を結着樹脂に分散し、それを塗布することによって導電処理したもの;等が用いられる。
導電性基体1の形状はドラム状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。尚、導電性基体1を金属パイプとした場合、表面は素管のままであってもよいし、事前に鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング等の処理が行われていてもよい。
次に、図1に示した電子写真感光体100における下引層2aについて説明する。
電子写真感光体100において、下引層2aは少なくとも導電性粒子と電子受容性物質とを含有する層であり、その感光層4側には、導電性基体1側よりも電子受容性物質が高濃度で含有されている電子受容性物質高濃度含有領域3aが形成されている。なお、下引層2aにおいて、電子受容性物質高濃度含有領域3aは、それ以外の領域と明確な区切りがなくてもよい。すなわち、下引層2aをその積層方向に沿った面で切断した断面において、電子受容性物質の濃度分布が、導電性基体1との界面近辺よりも感光層4との界面近辺で高濃度になっていればよい。下引層2a中の電子受容性物質の濃度は、導電性基体1との界面近辺から感光層4との界面近辺にかけて徐々に高くなっていてもよく、所定の位置から急激に変化していてもよい。
下引層2aにおいて、感光層4側の電子受容性物質の濃度を導電性基体1側よりも高濃度にするための方法としては特に制限されず、どのような手段を用いて達成してもかまわない。かかる方法としては、例えば、下引層2aを形成するための下引層形成用塗布液を導電性基体1上に塗布後、塗膜を完全に乾燥硬化させる前に、電子受容性物質が溶剤中に高濃度で溶解している溶液の中に浸漬して塗膜に電子受容性物質を浸透させ、下引層2aの表面側(感光層4側)の電子受容性物質の濃度を高濃度にする方法(以下、「浸漬処理方法」と言います)、溶剤やバインダーと、電子受容性物質とが相溶しにくくなるように各成分の組み合わせを選択して下引層形成用塗布液を調製し、この塗布液を用いて導電性基体1上に下引層2aを形成したときに表面側(感光層4側)に電子受容性物質が集中するように調節する方法などが挙げられる。
なお、上述の浸漬処理方法を用いる場合、浸漬前の塗膜中、すなわち下引層形成用塗布液中の固形分全量を基準とした電子受容性物質の含有量よりも、塗膜を浸漬する溶液中の固形分全量を基準とした電子受容性物質の含有量の方が高いことが必要である。また、かかる方法においては、浸漬前の塗膜中、すなわち下引層形成用塗布液中には電子受容性物質が含まれていなくてもよい。更に、かかる方法において、電子受容性物質は必ずしも塗膜中に浸透していなくてもよく、例えば、塗膜表面に電子受容性物質を高濃度で含有する膜が形成された状態や、塗膜表面に電子受容性物質が付着又は結合した状態であってもよい。
下引層2aにおいて、電子受容性物質の濃度が導電性基体1側よりも感光層4側で高濃度になっていることは、例えば、下引層2aをその積層方向に沿った面で切断した断面を顕微鏡等で観察する方法等により確認することができる。
ここで、下引層2aに含有される導電性粒子としては、金属酸化物微粒子が好ましく用いられる。金属酸化物微粒子を下引層2aに含有させることで、例えば下引層2aを厚膜化した場合であっても、下引層2aの抵抗上昇を制御することができる。
金属酸化物微粒子としては、体積抵抗率が1×102〜1×1011Ω・cmの範囲の粉体が好ましく用いられる。その理由は、下引層2aがリーク耐性獲得のために適切な抵抗を有していることが必要なためである。なお、金属酸化物微粒子の体積抵抗率が1×102Ω・cmより低いと十分なリーク耐性が得られにくい傾向があり、1×1011Ω・cmよりも高いと残留電位の上昇を引き起こしやすくなる傾向がある。
金属酸化物微粒子としては、例えば、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム及び酸化アルミニウム等の金属酸化物のうちの1種以上を含む微粒子が挙げられ、酸化亜鉛が特に好ましく用いられる。また、これらの中でも上記範囲内の体積抵抗率を有する金属酸化物微粒子が好ましく用いられる。
金属酸化物微粒子としては、表面処理の異なるものあるいは粒子径の異なるものなどを2種以上混合して用いることもできる。また、金属酸化物微粒子としては、比表面積が10m2/g以上のものが好ましく用いられる。比表面積値が10m2/g以下のものは帯電性低下を招きやすく、良好な電子写真特性が得られにくくなる傾向がある。更に、金属酸化物粒子の体積平均粒径は50〜200nmの範囲であることが好ましい。
下引層2aにおける金属酸化物微粒子の含有量は、下引層2a中の固形分全量を基準として40〜95質量%であることが好ましく、70〜90質量%であることがより好ましい。この含有量が40質量%未満であると金属酸化物微粒子の量が不足して残留電位の上昇を招きやすい傾向があり、95質量%を超えると金属酸化物微粒子の量が多いことにより粒子同士の凝集が生じやすくなる傾向がある。
下引層2aに含有される電子受容性物質としては、所望の特性が得られるものならばいかなるものでも使用可能であるが、特にキノン基を有する化合物が好ましく用いられ、アントラキノン構造を有する化合物がより好ましく用いられる。
また、本発明における電子受容性物質は、上述した金属酸化物微粒子等の導電性粒子と反応可能な基を有するものであることが好ましく、水酸基を有するアントラキノン構造を含む化合物が特に好ましく用いられる。この水酸基を有するアントラキノン構造を含む化合物としては、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物などが挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。電子受容性物質として更に具体的には、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン、1−ヒドロキシアントラキノン、2−アミノ−3−ヒドロキシアントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシアントラキノンなどが特に好ましく用いられる。
下引層2aにおいて電子受容性物質は、分子状又は固形物状態で含有されているが、その含有量は、下引層2a中の固形分全量を基準として0.004〜16質量%の範囲であることが好ましく、0.02〜8質量%の範囲であることがより好ましい。この電子受容性物質の含有量は下引層2a全体としての含有量であり、それよりも電子受容性物質高濃度含有領域3aにおける電子受容性物質の含有量は高くなっており、下引層2aの導電性基体1側における電子受容性物質の含有量は低くなっている。
また、下引層2aにおける電子受容性物質と導電性粒子との含有量の比としては、電子受容性物質の含有量が導電性粒子100質量部に対して0.01〜20質量部の範囲であることが好ましく、0.05〜10質量部の範囲であることがより好ましい。この含有量が0.01質量部未満では、下引層2a内の電荷蓄積改善に寄与するだけの十分なエレクトロン注入性を付与できないため、繰り返し使用時に残留電位の上昇などの維持性の悪化を招きやすくなる傾向がある。また、含有量が20質量部を超えると、導電性粒子同士の凝集を引き起こしやすく、下引層2a形成時に該下引層2a内で導電性粒子が良好な導電路を形成することができず、繰り返し使用時に残留電位の上昇などの維持性の悪化を招きやすくなるとともに、黒ポチなどの画質欠陥も引き起こしやすくなる傾向がある。
下引層2aに含有されるバインダー樹脂としては、良好な膜を形成できるもので、かつ所望の特性が得られるものであれば公知のいかなるものでも使用可能であるが、例えば、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等を用いることができる。中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。
また、下引層2aにはシランカップリング剤を含有させることが好ましい。シランカップリング剤は、良好な抵抗調整、下引層2aから感光層4への注入障壁形成の観点で好ましく用いられる。特にアミノ基を有するシランカップリング剤は、下引層2aに良好なブロッキング性を与えるため好ましく用いられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、所望の感光体特性を得られるものであればいかなる物でも用いることができる。かかるシランカップリング剤の具体的例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、シランカップリング剤は2種以上混合して使用することもできる。上記アミノ基を有するシランカップリング剤と併用して用いることができるシランカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
下引層2aにおけるシランカップリング剤の含有状態は、下引層2aに通常に添加しても、上述した導電性粒子表面に表面処理された状態で含有させてもよい。
シランカップリング剤により導電性粒子を表面処理する方法は、公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法あるいは湿式法を用いることができる。
乾式法にて表面処理を施す場合には、金属酸化物微粒子等の導電性粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、シランカップリング剤を直接あるいは有機溶媒に溶解させて滴下し、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって均一に処理される。シランカップリング剤を添加あるいは噴霧する際には、溶剤の沸点以下の温度で行うことが好ましい。溶剤の沸点以上の温度で噴霧すると、均一に攪拌される前に溶剤が蒸発し、シランカップリング剤が局部的にかたまってしまい均一な処理ができにくい欠点があるため、好ましくない。シランカップリング剤を添加あるいは噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。
湿式法としては、金属酸化物微粒子等の導電性粒子を溶剤中で攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミルなどを用いて分散し、そこにシランカップリング剤溶液を添加して攪拌あるいは分散したのち、溶剤を除去することで均一に処理される。溶剤の除去方法としては、ろ過あるいは蒸留により留去する方法が用いられる。溶剤除去後にはさらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法においては、表面処理剤を添加する前に金属酸化物微粒子等の導電性粒子に含有される水分を除去することもでき、その例として表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法を用いることができる。
下引層2a中の金属酸化物微粒子等の導電性粒子に対するシランカップリング剤の量は所望の電子写真特性が得られる量であれば任意に設定できる。
下引層2aは、下引層2aを構成する各成分を溶媒に分散させて得られる下引層形成用塗布液を用いて形成することができる。なお、下引層形成用塗布液中の導電性粒子とバインダー樹脂との配合比(質量比)は、所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で任意に設定できるが、40:60〜95:5とすることが好ましい。また、上述の浸漬処理方法により電子受容性物質高濃度含有領域3aを形成する場合等、電子受容性物質高濃度含有領域3aの形成方法によっては、下引層形成用塗布液中に電子受容性物質を加えなくてもよい。
下引層形成用塗布液には電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を加えることができる。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
ジルコニウムキレート化合物の例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
チタニウムキレート化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
アルミニウムキレート化合物の例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物又は重縮合物として用いることができる。
下引層形成用塗布液を調整するための溶媒としては、公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択することができる。より具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いることができる。これらの溶剤は、単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。2種以上混合して用いる場合、混合溶媒としてバインダー樹脂を溶かすことができる溶媒であれば、いかなる組み合わせでも使用することが可能である。
下引層形成用塗布液の作製は、バインダー樹脂、導電性粒子、電子受容性物質等の各成分を溶剤とともに混合することで行うことができる。この際、先にバインダー樹脂を溶剤に溶解した後、導電性粒子や電子受容性物質等を加えてもよい。
下引層形成用塗布液中に導電性粒子等を分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの公知の方法を用いることができる。
本発明においては、導電性粒子等の固形物を下引層2a中にできる限り均一に分散させることが好ましく、その観点からは一定以上のせん断力で一定時間以上分散させることが望ましい。
上記分散条件としては、例えば直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルによる分散では、ガラスビーズの充填率を70〜95体積%程度として、0.1〜100時間分散させることが好ましい。
さらに、下引層2aを形成する際の下引層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
なお、下引層形成用塗布液中で導電性粒子と電子受容性物質とを反応させる場合には、上述した下引層形成用塗布液の分散工程において、導電性粒子と、該導電性粒子と反応可能な基を有する電子受容性物質とを反応させても、塗布膜の乾燥、硬化中に反応させても良いが、塗布液中で反応させた方が均一に反応させることができるため好ましい。
下引層2aは、下引層形成用塗布液を導電性基体1上に塗布し、上述した浸漬処理方法等により電子受容性物質高濃度含有領域3aを形成する場合にはその処理を行い、乾燥により溶剤を除去することで形成することができる。
こうして形成された下引層2aは、ビッカース強度が35以上であることが好ましい。また、下引層2aの体積抵抗率は1×106〜1×1013Ω・cmの範囲であることが好ましく、1×108〜1×1012Ω・cmの範囲であることがより好ましい。体積抵抗率が1×106Ω・cm未満では、十分な帯電電位が得られなかったり、リークが発生したりする傾向がある。また、体積抵抗率が1×1013Ω・cmを超えると、繰り返し使用時に安定した電気特性を得ることが困難となる傾向がある。
さらに、下引層2aは、所望の特性が得られるのであれば、いかなる厚さに設定することができるが、厚さが15μm以上であることが好ましく、15〜50μmであることがより好ましい。下引層2aの厚さが15μm未満であるときには、充分な耐リーク性能を得ることが困難となる傾向にあり、50μmを超えるときには、長期使用時に残留電位が増大しやすくなり、画像濃度異常を招きやすい傾向がある。
また、下引層2aの表面粗さは、モアレ像防止のために、使用される露光用レーザー波長λの1/4n(nは上層の屈折率)〜1/2λに調整されることが好ましい。表面粗さ調整のために下引層2a中に樹脂などの粒子を添加することもできる。こうした樹脂粒子としては、シリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA樹脂粒子等を用いることができる。また、表面粗さ調整のために下引層2aを研磨することもできる。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等を用いることができる。
本発明の電子写真感光体100は、下引層2aと感光層4との界面に、電子受容性物質が高濃度で分布された電子受容性物質高濃度含有領域3aを備えることにより、感光層4から下引層2aへのエレクトロン注入性を向上させることができる。その一方で、下引層2aの導電性基体1側の領域では電子受容性物質の濃度を低くする又は電子受容性物質を含有させないことで、長期間繰り返し使用時に下引層2a中でホールの移動が繰り返されても、ホールがトラップされる可能性を十分に低くすることができる。したがって、本発明の電子写真感光体100は、長期間繰り返し使用した場合であっても、残留電位の上昇や画質欠陥の発生を十分に抑制することが可能となる。
次に、図2に示した電子写真感光体110における下引層2b及び電子受容性物質含有層3bについて説明する。
電子写真感光体110において、下引層2bは少なくとも導電性粒子を含有する層である。ここで、下引層2bは、電子受容性物質が任意成分であり且つ電子受容性物質高濃度含有領域3aを有しない以外は、上述した電子写真感光体100における下引層2aと同様の構成とすることができる。
下引層2bには、電子受容性物質含有層3bよりも低濃度であれば、電子受容性物質を含有させることができる。なお、下引層2bに電子受容性物質を含有させる場合、その含有量は、下引層2b中の固形分全量を基準として16質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。この含有量が16質量%を超えると、分散が不均一となり画像形成した場合に画像に黒点が発生しやすい傾向がある。
下引層2bは、下引層2bを構成する各成分を溶媒に分散させて得られる下引層形成用塗布液を用いて形成することができる。なお、下引層形成用塗布液中の導電性粒子とバインダー樹脂との配合比(質量比)は、所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で任意に設定できるが、40:60〜95:5とすることが好ましい。
下引層形成用塗布液に添加し得る添加物や溶剤、塗布液の調製方法及び塗布方法、下引層2bの形成方法、並びに、下引層2bの好ましい物性等については、上記電子写真感光体100における下引層2aの場合と同様である。
電子受容性物質含有層3bは、電子受容性物質を下引層2bよりも高濃度で含有する層である。ここで、電子受容性物質としては、上記電子写真感光体100における下引層2aに含有されるものと同様のものが挙げられる。
また、電子受容性物質含有層3bには、下引層2a,2bに含有されるものと同様の導電性粒子を含有させることができる。電子受容性物質含有層3bに導電性粒子を含有させる場合、電子受容性物質は上記導電性粒子と反応可能な基を有するものであることが好ましく、水酸基を有するアントラキノン構造を含む化合物が特に好ましく用いられる。この水酸基を有するアントラキノン構造を含む化合物としては、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物などが挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。電子受容性物質として更に具体的には、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン、1−ヒドロキシアントラキノン、2−アミノ−3−ヒドロキシアントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシアントラキノンなどが特に好ましく用いられる。
電子受容性物質含有層3b中の電子受容性物質の含有量(濃度)は、下引層2bよりも高いことが必要であるが、電子受容性物質含有層3b中の固形分全量を基準として0.004〜16質量%であることが好ましく、0.02〜8質量%であることがより好ましい。この含有量が0.004質量%未満であると、電荷移動が十分に行われ難くなる傾向があり、16質量%を超えると、分散が不均一状態となり画像形成した場合に黒点が発生しやすい傾向がある。
電子受容性物質含有層3bに用いられるバインダー樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、電子受容性物質含有層3bの構成材料として、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子などを含有する有機金属化合物などを用いることができる。これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。これらの中でも、ジルコニウムもしくはシリコンを含有する有機金属化合物は、残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れているため好ましい。
シリコン化合物の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ))シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。特に好ましく用いられるシリコン化合物としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−リシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物の例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
有機チタン化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
有機アルミニウム化合物の例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
電子受容性物質含有層3bは、電子受容性物質含有層3bを構成する各成分を溶媒に分散させて得られる電子受容性物質含有層形成用塗布液を用いて形成することができる。この電子受容性物質含有層形成用塗布液を調製する際の電子受容性物質の配合割合(固形分全量基準)を、下引層形成用塗布液を調製する際の電子受容性物質の配合割合(固形分全量基準)よりも大きくすることで、下引層2bよりも電子受容性物質を高濃度で含有する電子受容性物質含有層3bを形成することができる。
電子受容性物質含有層形成用塗布液を調整するための溶媒としては、公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択することができる。より具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いることができる。これらの溶剤は、単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。2種以上混合して用いる場合、混合溶媒としてバインダー樹脂を溶かすことができる溶媒であれば、いかなる組み合わせでも使用することが可能である。
電子受容性物質含有層形成用塗布液の作製は、バインダー樹脂、導電性粒子、電子受容性物質等の各成分を溶剤とともに混合することで行うことができる。この際、先にバインダー樹脂を溶剤に溶解した後、導電性粒子や電子受容性物質等を加えてもよい。
電子受容性物質含有層形成用塗布液中に電子受容性物質等を分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの公知の方法を用いることができる。
本発明においては、電子受容性物質や必要に応じて添加される導電性粒子等の固形物を電子受容性物質含有層3b中にできる限り均一に分散させることが好ましく、その観点からは一定以上のせん断力で一定時間以上分散させることが望ましい。
上記分散条件としては、例えば直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルによる分散では、ガラスビーズの充填率を70〜95体積%程度として、0.1〜100時間分散させることが好ましい。
さらに、電子受容性物質含有層3bを形成する際の電子受容性物質含有層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
なお、電子受容性物質含有層形成用塗布液に導電性粒子を配合した際に、導電性粒子と電子受容性物質とを反応させる場合には、上述した電子受容性物質含有層形成用塗布液の分散工程において、導電性粒子と、該導電性粒子と反応可能な基を有する電子受容性物質とを反応させても、塗布膜の乾燥、硬化中に反応させても良いが、塗布液中で反応させた方が均一に反応させることができるため好ましい。
電子受容性物質含有層3bは、電子受容性物質含有層形成用塗布液を下引層2b上に塗布し、乾燥により溶剤を除去することで形成することができる。
電子受容性物質含有層3bは、上層の塗布性改善の他に電気的なブロキング層の役割も果たすが、膜厚が大きすぎる場合には電気的な障壁が強くなりすぎて減感や繰り返しによる電位の上昇を引き起こす。したがって、電子受容性物質含有層3bの膜厚は、0.1〜5μmであることが好ましい。
本発明の電子写真感光体110は、下引層2bと感光層4との間に、電子受容性物質を下引層2bよりも高濃度で分布させた電子受容性物質含有層3bを備えることにより、感光層4から下引層2bへのエレクトロン注入性を向上させることができる。その一方で、下引層2b中の電子受容性物質の濃度を低くする又は下引層2bに電子受容性物質を含有させないことで、長期間繰り返し使用時に下引層2b中でホールの移動が繰り返されても、ホールがトラップされる可能性を十分に低くすることができる。したがって、本発明の電子写真感光体110は、長期間繰り返し使用した場合であっても、残留電位の上昇や画質欠陥の発生を十分に抑制することが可能となる。
次に、感光層4について説明する。
感光層4を構成する電荷発生層5は、例えば、電荷発生物質を下引層2a又は電子受容性物質含有層3b上に真空蒸着する、或いは、電荷発生物質を含む分散液を下引層2a又は電子受容性物質含有層3b上に塗布することにより形成される。分散液の塗布により電荷発生層5を形成する場合、電荷発生物質を有機溶剤、結着樹脂及び添加剤等とともに分散し、得られた分散液(電荷発生層形成用塗布液)を用いることができる。
本実施形態において、電荷発生物質としては、公知の電荷発生物質のいずれも使用できる。具体的には、例えば、赤外光用の電荷発生物質としてフタロシアニン顔料、スクアリリウム、ビスアゾ、トリスアゾなどのアゾ系顔料、ペリレン及びジチオケトピロロピロールなどが挙げられ、可視光用の電荷発生物質として縮合多環顔料、ビスアゾ顔料、ペリレン、トリゴナルセレン及び色素増感した酸化亜鉛微粒子等が挙げられる。これらの中で、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料を用いることが好ましい。このような顔料を用いることにより、高感度で、且つ、繰り返し安定性に優れる電子写真感光体100,110を得ることができる。
フタロシアニン顔料及びアゾ系顔料は一般に数種の結晶型を有しているが、目的にあった電子写真特性が得られる結晶型であるならば、これらのいずれの結晶型でも用いることができる。特に好ましく用いられる電荷発生物質としては、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロススフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、無金属フタロシアニン、オキシチタニルフタロシアニン及びクロロインジウムフタロシアニン等が挙げられる。
フタロシアニン顔料結晶は、公知の方法で製造されるフタロシアニン顔料を、自動乳鉢、遊星ミル、振動ミル、CFミル、ローラーミル、サンドミル、ニーダー等で機械的に乾式粉砕するか、乾式粉砕後、溶剤と共にボールミル、乳鉢、サンドミル、ニーダー等を用いて湿式粉砕処理を行うことによって製造することができる。
上記の処理において使用される溶剤としては、芳香族類(トルエン、クロロベンゼン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等)、脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、芳香族アルコール類(ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等)、エステル類(酢酸エステル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルスルホキシド、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、及び、これら有機溶剤を複数種混合したもの、並びに、水と上記の有機溶剤とを混合したものが挙げられる。
使用される溶剤は、顔料結晶1質量部に対して、1〜200質量部の範囲で用いるのが好ましく、10〜100質量部の範囲で用いるのがより好ましい。処理温度は、−20℃以上溶剤の沸点以下の範囲であることが好ましく、−10〜60℃の範囲であることが好ましい。また、粉砕の際に食塩、ぼう硝等の磨砕助剤を用いることもできる。磨砕助剤は顔料の質量に対して0.5〜20倍用いることが好ましく、1〜10倍用いることがより好ましい。
また、フタロシアニン顔料結晶は、アシッドペースティングあるいはアシッドペースティングと前述したような乾式粉砕あるいは湿式粉砕とを組み合わせる処理により、結晶制御することもできる。アシッドペースティングに用いる酸としては、硫酸が好ましく、濃度70〜100%、好ましくは95〜100%のものが使用され、溶解温度は、−20〜100℃、好ましくは−10〜60℃の範囲に設定される。硫酸の量は、フタロシアニン顔料結晶の質量に対して、1〜100倍、好ましくは3〜50倍の範囲に設定される。析出させる溶剤としては、水あるいは、水と有機溶剤の混合溶剤が任意の量で用いられる。析出させる温度については特に制限はないが、発熱を防ぐために、氷等で冷却することが好ましい。
結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる、また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択することもできる。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は1種を単独で或いは2種以上混合して用いることができる。これらの中では、特にポリビニルアセタール樹脂が好ましく用いられる。
電荷発生層形成用塗布液における電荷発生物質と結着樹脂との配合比(質量比)は、10:1〜1:10の範囲が好ましい。
電荷発生層形成用塗布液に含まれる有機溶剤としては、公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択することができる。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いることができる。また、これらの溶剤は1種を単独で或いは2種以上混合して用いることができる。なお、溶剤を混合して用いる場合、使用される溶剤としては、混合溶剤としてバインダー樹脂を溶かすことができる溶剤であればいかなるものでも使用することが可能である。
電荷発生物質、結着樹脂及び有機溶剤を分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等を使用した方法を用いることができる。更に、この分散の際に、電荷発生物質の粒径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることで、感光体の感度・安定性を向上させることができる。
また、電荷発生物質には、電気特性の安定性向上、画質欠陥防止などのために表面処理を施すことができる。表面処理剤としてはシランカップリング剤、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物などを用いることができるがこれに限定されるものではない。これらの具体例としては、上述した下引層形成用塗布液の添加剤や電子受容性物質含有層3bに用いる有機金属化合物が同様に用いられる。
また、電荷発生層形成用塗布液には、電気特性向上、画質向上などのために種々の添加剤を添加することもできる。添加剤の具体例としては、上述の下引層形成用塗布液に用いた添加剤を同様に用いることができる。
電荷発生層形成用塗布液を下引層2a又は電子受容性物質含有層3b上に塗布する方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
電荷発生層5の膜厚は、0.01〜3μmの範囲が好ましく、0.1〜1μmの範囲がより好ましい。
電荷輸送層6は、電荷輸送物質及び結着樹脂を含有して構成される。
電荷輸送物質は特に限定されず、公知のものをいずれも使用できる。具体的な電荷輸送物質としては下記に示すものが挙げられる。
すなわち、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチル)フェニルアミン、N,N'−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N’−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N’−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体等の正孔輸送物質、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送物質、及び、以上に示した化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等が挙げられる。また、これらの電荷輸送物質は、1種又は2種以上を組み合せて使用できる。
また、電荷輸送物質としては、モビリティーの観点から、下記一般式(a−1)、(a−2)又は(a−3)で示される化合物が好ましい。
上記式(a−1)中、R34はメチル基を、k10は0〜2の整数を示す。また、Ar6及びAr7は置換もしくは未置換のアリール基、−C6H4−C(R38)=C(R39)(R40)、又は、−C6H4−CH=CH−CH=C(Ar)2を示し、置換基としてはハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又は炭素数1〜3のアルキル基で置換された置換アミノ基が挙げられる。また、R38、R39、R40は水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は、置換若しくは未置換のアリール基を、Arは置換又は未置換のアリール基を示す。
上記式(a−2)中、R35及びR35’はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基を、R36、R36’、R37及びR37’はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(R38)=C(R39)(R40)、又は、−CH=CH−CH=C(Ar’)2を、R38、R39及びR40はそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を、Ar’は置換又は未置換のアリール基を示す。また、m4及びm5はそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。
ここで、上記式(a−3)中、R41は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、置換若しくは未置換のアリール基、又は、−CH=CH−CH=C(Ar’’)2を示す。Ar’’は、置換又は未置換のアリール基を示す。R42、R42’、R43、及びR43’はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、又は置換若しくは未置換のアリール基を示す。
電荷輸送層6に用いる結着樹脂としては、公知のものであればいかなるものでも使用することができるが、電気絶縁性のフィルム形成可能な樹脂が好ましい。例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−カルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリアクリルアミド、カルボキシーメチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーワックス、ポリウレタン等の絶縁性樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材などの高分子電荷輸送材が挙げられる。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのうち、電荷輸送物質との相溶性、溶剤への溶解性、強度の点で、特にポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂が好ましく用いられる。
電荷輸送物質と結着樹脂との配合比(質量比)は、電気特性低下や膜強度低下に注意して設定することが好ましく、例えば10:1〜1:5が好ましい。
また、電荷輸送層6の形成に高分子電荷輸送材を単独で用いることもできる。高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する公知のものを用いることができる。特に、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、高い電荷輸送性を有しており、とくに好ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも電荷輸送層として使用可能であるが、上述した結着樹脂と混合して成膜してもよい。この場合も、電荷輸送物質と結着樹脂との配合比(質量比)は10:1〜1:5が好ましい。
電荷輸送層6は、電荷輸送物質及び結着樹脂、並びに必要に応じてその他の添加剤を適当な溶剤に溶解させた電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層5上に塗布し乾燥することにより形成できる。
電荷輸送層形成用塗布液に用いられる溶剤としては、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状或いは直鎖状エーテル系溶剤、及び、これらの混合溶剤等が挙げられる。
電荷輸送物質、結着樹脂及び溶剤を分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、コロイドミル、衝突式メディアレス分散機、貫通式メディアレス分散機等の方法を用いることができる。
また、電荷輸送層形成用塗布液には塗膜の平滑性向上のためのシリコーンオイル等のレベリング剤を微量添加することもできる。更に、塗布液の分散安定性を向上させるため、及び塗膜形成時の凝集を防止するために分散助剤を少量添加することも有効である。分散助剤としては、フッ素系界面活性剤、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマー、シリコーンオイル等が挙げられる。
電荷輸送層形成用塗布液は、溶媒、結着樹脂及び電荷輸送材料を含む溶液の温度を0℃〜50℃に維持しながら混合して調製することが好ましい。液温をかかる温度範囲内に制御する方法としては、例えば、水で冷やす、風で冷やす、冷媒で冷やす、塗布液を製造する室温を調節する、温水で暖める、熱風で温める、ヒーターで暖める、発熱しにくい材料で塗布液製造設備を作る、放熱しやすい材料で塗布液製造設備を作る、蓄熱しやすい材料で塗布液製造設備を作るなどの方法が利用できる。
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層5上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、スプレー塗布法、ロールコータ塗布法、ワイヤーバーコーティング法、グラビアコータ塗布法、ビードコーティング法、カーテンコーティング法、ブレードコーティング法、エアーナイフコーティング法等の方法を用いることができる。
電荷輸送層6の膜厚は、5〜50μmの範囲が好ましく、10〜45μmの範囲がより好ましい。
本実施形態の電子写真感光体においては、複写機中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光、熱による電子写真感光体の劣化を防止する目的で、感光層4中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。
より具体的には、フェノール系の酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニル−アクリレート、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート]−メタン、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ−[5,5]−ウンデカン等が挙げられる。
ヒンダードアミン系化合物としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイミル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,3,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等が挙げられる。
有機イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。
有機燐系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルフォスフィート、トリフェニルフォスフィート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−フォスフィート等が挙げられる。
有機硫黄系および有機燐系酸化防止剤は2次酸化防止剤と言われ、フェノール系あるいはアミン系などの1次酸化防止剤と併用することにより相乗効果を得ることができる。
光安定剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体が挙げられる。
より具体的には、ベンゾフェノン系光安定剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系光安定剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5’−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
上記の化合物以外の光安定剤としては、例えば、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ニッケルジブチル−ジチオカルバメート等が挙げられる。
また、感光層4中には、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として、少なくとも1種の電子受容性物質を含有せしめることができる。
電子受容性物質としては、例えば、無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等が挙げられる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl、CN、NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特によい。
保護層7は、積層構造からなる電子写真感光体100,110における帯電時の電荷輸送層6の化学的変化を防止したり、感光層4の機械的強度を向上させ、表面層の磨耗、傷などへの耐性をさらに改善したりするために設けられる。
保護層7としては、硬化性樹脂及び電荷輸送性化合物を含んで構成される樹脂硬化膜や、導電性材料を含む結着樹脂から形成される膜などが挙げられる。本実施形態においては、硬化性樹脂及び電荷輸送性化合物を含んで構成される樹脂硬化膜が好ましい。
硬化性樹脂としては、公知の樹脂をいずれも使用できるが、膜の強度、感光体の電気特性及び画質維持性などの観点から、架橋構造を形成できるものが好ましい。このような樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シロキサン系樹脂等が挙げられる。
保護層7に用いられる電荷輸送性化合物としては、反応性官能基を有するものであって、使用する硬化性樹脂と相溶するものが好ましく、更に、使用する硬化性樹脂と化学結合を形成するものがより好ましい。反応性官能基を有する電荷輸送化合物としては、下記一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)又は(VI)で表される化合物が好ましい。
F[−D−Si(R1)(3−a)Qa]b (I)
[式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を示し、Dは可とう性を有する2価の基を示し、R1は水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を示し、Qは加水分解性基を示し、aは1〜3の整数を示し、bは1〜4の整数を示す。]
F[−(X1)n1R2−Z1H]m1 (II)
[式(II)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を示し、R2はアルキレン基を示し、Z1は酸素原子、硫黄原子、NH又はCOOを示し、X1は酸素原子又は硫黄原子を示し、m1は1〜4の整数を示し、n1は0又は1を示す。]
F[−(X2)n2−(R3)n3−(Z2)n4G]n5 (III)
[式(III)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を示し、X2は酸素原子又は硫黄原子を示し、R3はアルキレン基を示し、Z2は酸素原子、硫黄原子、NH又はCOOを示し、Gはエポキシ基を示し、n2、n3及びn4はそれぞれ独立に0又は1を示し、n5は1〜4の整数を示す。]
[式(IV)中、Fは正孔輸送性を有する化合物から誘導される有機基を示し、Tは2価の基を示し、Yは酸素原子又は硫黄原子を示し、R
4、R
5及びR
6はそれぞれ独立に水素原子又は1価の有機基を示し、R
7は1価の有機基を示し、m2は0又は1を示し、n6は1〜4の整数を示す。但し、R
6とR
7は互いに結合してYをヘテロ原子とする複素環を形成してもよい。]
[式(V)中、Fは正孔輸送性を有する化合物から誘導される有機基を示し、Tは2価の基を示し、R
8は1価の有機基を示し、m3は0又は1を示し、n7は1〜4の整数を示す。]
[式(VI)中、Fは正孔輸送性を有する化合物から誘導される有機基を示し、R
9は1価の有機基を示し、Lはアルキレン基を示し、n8は1〜4の整数を示す。]
上記一般式(I)〜(VI)中、Fは、光電特性、具体的には特に光キャリア輸送特性を有するユニットであり、従来、電荷輸送物質として知られている構造をそのまま用いることができる。具体的には、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性を有する化合物骨格、およびキノン系化合物、フルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性を有する化合物骨格を用いることができる。
上記一般式(I)中、−Si(R1)(3−a)Qaは、加水分解性基を有する置換ケイ素基であるが、この置換ケイ素は、Si基により互いに架橋反応を起こして、3次元的なSi−O−Si結合を形成する。即ち、この置換ケイ素基は、保護層7中にいわゆる無機ガラス質ネットワークを形成する役割を担う。
上記一般式(I)中、Dは可とう性を有する2価の基を示すが、具体的には、光電特性を付与するためのF部位と、3次元的な無機ガラス質ネットワークに直接結合で結びつく置換ケイ素基とを結びつける働きを担い、かつ、堅さの反面もろさも有する無機ガラス質ネットワークに適度な可とう性を付与し、膜としての強靱さを向上させるという働きを担う有機基を表す。Dとして具体的には、−CnH2n−、−CnH(2n−2)−、−CnH(2n−4)−で表わされる2価の炭化水素基(ここで、nは1〜15の整数を表す)、−COO−、−S−、−O−、−CH2−C6H4−、−N=CH−、−(C6H4)−(C6H4)−、及び、これらを任意に組み合わせた特性基、更にはこれらの特性基の構造原子を他の置換基と置換したもの等が挙げられる。
上記一般式(I)中、bは2以上であることが好ましい。bが2以上であると、上記一般式(I)で表される光機能性有機ケイ素化合物中にSi原子を2つ以上含むことになり、無機ガラス質ネットワークを形成し易くなり、機械的強度が向上する。
また、上記一般式(I)〜(VI)で表わされる化合物における上記Fは、下記一般式(VII)で表される基であることが好ましい。下記一般式(VII)で表わされる基は、正孔輸送能を有する基であり、これを保護層7に含有させることは、特に保護層7における光電特性と機械特性を向上の観点から好ましい。
[式(VII)中、Ar
1、Ar
2、Ar
3及びAr
4はそれぞれ独立に置換又は未置換のアリール基を示し、Ar
5は置換若しくは未置換のアリール基又はアリーレン基を示し、且つAr
1〜Ar
5のうち1〜4個は、上記一般式(I)で表わされる化合物における下記一般式(VIII)で示される部位、上記一般式(II)で表わされる化合物における下記一般式(IX)で示される部位、上記一般式(III)で表わされる化合物における下記一般式(X)で示される部位、上記一般式(IV)で表わされる化合物における下記一般式(XI)で示される部位、上記一般式(V)で表わされる化合物における下記一般式(XII)で示される部位、又は、上記一般式(VI)で表わされる化合物における下記一般式(XIII)で示される部位、と結合するための結合手を有し、kは0又は1を示す。]
−D−Si(R1)(3−a)Qa (VIII)
−(X1)n1R1−Z1H (IX)
−(X2)n2−(R2)n3−(Z2)n4G (X)
また、上記一般式(VII)中のAr1〜Ar4で示される置換又は未置換のアリール基としては、具体的には、下記一般式(1)〜(7)に示されるアリール基が好ましい。
上記式(1)〜(7)中、R11は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、それらで置換されたフェニル基若しくは未置換のフェニル基、又は炭素数7〜10のアラルキル基を示し、R12〜R14はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、それらで置換されたフェニル基若しくは未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基又はハロゲン原子を示し、Arは置換又は未置換のアリーレン基を示し、Xは上記一般式(VIII)〜(XIII)で表される構造のいずれかを示し、c及びsはそれぞれ0又は1を示し、tは1〜3の整数を示す。
また、上記式(7)で示されるアリール基におけるArとしては、下記式(8)又は(9)で示されるアリーレン基が好ましい。
上記式(8)、(9)中、R15及びR16はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基、または未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基、又は、ハロゲン原子を示し、tは1〜3の整数を示す。
また、上記式(7)で示されるアリール基におけるZ’としては、下記式(10)〜(17)で示される2価の基が好ましい。
上記式(10)〜(17)中、R17及びR18はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基、または未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基、又は、ハロゲン原子を示し、Wは2価の基を示し、q及びrはそれぞれ1〜10の整数を示し、tはそれぞれ1〜3の整数を示す。
また、上記式(16)〜(17)中、Wは下記式(18)〜(26)で示される2価の基を示す。なお、式(25)中、uは0〜3の整数を示す。
また、上記一般式(VII)におけるAr5の具体的構造としては、k=0の時は上記Ar1〜Ar4の具体的構造におけるc=1の構造が、k=1の時は上記Ar1〜Ar4の具体的構造におけるc=0の構造が挙げられる。
また、上記一般式(I)で示される化合物として、より具体的には、下記化合物(I−1)〜(I−61)が挙げられる。なお、下記化合物(I−1)〜(I−61)は、一般式(VII)で示される化合物のAr1〜Ar5及びkを下記の表に示されるように組み合わせ、且つ、アルコキシシリル基(s)を下記の表に示される特定のものとしたものである。
また、上記一般式(II)で示される化合物としては、より具体的には、下記化合物(II−1)〜(II−37)が挙げられる。なお、下記表中、結合手は記載されているが置換基が記載されていないものはメチル基を示す。
また、上記一般式(III)で示される化合物としては、より具体的には、下記化合物(III−1)〜(III−47)が挙げられる。なお、下記表中、Me又は結合手は記載されているが置換基が記載されていないものはメチル基を、Etはエチル基を示す。
また、上記一般式(IV)で表される化合物としては、より具体的には、下記化合物(IV−1)〜(IV−40)が挙げられる。なお、下記表中、Me又は結合手は記載されているが置換基が記載されていないものはメチル基を、Etはエチル基を示す。
また、上記一般式(V)で表される化合物としては、より具体的には、下記化合物(V−1)〜(V−55)が挙げられる。なお、下記表中、Me又は結合手は記載されているが置換基が記載されていないものはメチル基を示す。
また、上記一般式(VI)で表わされる化合物において、上記一般式(VI)中、R9は炭素数1〜18の1価の有機基であることが好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜18の1価の炭化水素基、又は、−(CH2)f−O−R24で表わされる基であることがより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基、又は、−(CH2)f−O−R24で表わされる基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。なお、R24は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、環を形成してもよいが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの脂肪族炭化水素基であることが好ましく、fは1〜12の整数を示し、1〜4の整数であることが好ましい。また、上記一般式(VI)中、Lは枝分かれしてもよい炭素数1〜18のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基であることがより好ましい。なお、上記一般式(VI)において、R9又はLが複数存在する場合、それぞれは同一でも異なっていてもよい。
また、上記一般式(VI)で示される化合物の具体例としては、以下に示す化合物(VI−1)〜(VI−59)が挙げられる。なお、上記一般式(VI)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。また、下記表中、結合手は記載されているが置換基が記載されていないものはメチル基を示す。
上記一般式(I)〜(VI)で表される電荷輸送性化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
また、保護層7には、上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物とともに、硬化膜の機械的強度を更に向上させる目的で、下記一般式(XIV)で表されるような2つ以上のケイ素原子を有する化合物を用いることも好ましい。
B(−Si(R50)(3−a)Qa)d (XIV)
[式(XIV)中、Bは2価以上の有機基を示し、R50は水素原子、アルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を示し、Qは加水分解性基を示し、aは1〜3の整数を示し、dは2以上の整数を示す。]
上記一般式(XIV)で表わされる化合物としては特に限定されないが、例えば、下記化合物(XIV−1)〜(XIV−5)で表される化合物を好ましいものとして挙げることができる。なお、式(XIV−1)〜(XIV−5)中、T1及びT2はそれぞれ独立に、枝分かれしていてもよい2価又は3価の炭化水素基を示す。また、Aは、−SiR50 (3−a)Qaで表される加水分解性を有する置換ケイ素基を示す。h、i、jはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。また、式(XIV−1)〜(XIV−5)で表される化合物は、分子内のAの数が2以上となるように選ばれる。
上記一般式(XIV)で表される化合物の好ましい例を以下に示す。なお、下記表中、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示し、Prはプロピル基を示す。
また、上記一般式(I)で表される化合物と共に、更に架橋反応可能な他の化合物を併用してもよい。このような化合物として、各種シランカップリング剤、および市販のシリコーン系ハードコート剤等を用いることができる。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
市販のハードコート剤としては、KP−85、CR−39、X−12−2208、X−40−9740、X−41−1007、KNS−5300、X−40−2239(以上、信越シリコーン社製)、および、AY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)、などが挙げられる。
また、保護層7には、表面潤滑性を付与する目的でフッ素原子含有化合物を添加できる。表面潤滑性を向上させることによりクリーニング部材との摩擦係数が低下し、耐摩耗性を向上させることができる。また、電子写真感光体表面に対する放電生成物、現像剤および紙粉などの付着を防止する効果も有し、電子写真感光体100の寿命向上に役立つ。
フッ素含有化合物は、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素原子含有ポリマーをそのまま添加するか、あるいはそれらポリマーの微粒子を添加することができる。
また、保護層7が上記一般式(I)で表される化合物により形成される硬化膜の場合、フッ素含有化合物としては、アルコキシシランと反応できるものを添加し、架橋膜の一部として構成するのが望ましい。
そのようなフッ素原子含有化合物の具体例としては、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、などが挙げられる。
上記フッ素含有化合物の添加量は、保護層7中の固形分全量を基準として20質量%以下とすることが好ましい。添加量が20質量%を越えると、架橋硬化膜の成膜性に問題が生じる場合がある。
保護層7は十分な耐酸化性を有しているが、さらに強い耐酸化性を付与する目的で、酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤等の公知の酸化防止剤を用いてもよい。酸化防止剤の添加量としては、保護層7の固形分全量を基準として15質量%以下が好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマイド、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2−t−ブチル−6−(3−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
保護層7には公知の塗膜形成に用いられるその他の添加剤を添加することも可能であり、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、界面活性剤、等公知のものを用いることができる。
保護層7は、上述した各種材料及び各種添加剤を含有する保護層形成用塗布液を感光層3上に塗布し、加熱処理することで形成することができる。これにより、上記一般式(I)〜(VI)で表される化合物等が3次元的に架橋硬化反応を起こし、強固な硬化膜が形成される。加熱処理の温度は、下層である感光層3に影響しなければ特に制限はないが、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは100〜160℃である。
保護層7の形成において、架橋硬化反応は、無触媒で行なってもよく、適切な触媒を用いてもよい。触媒としては、塩酸、硫酸、燐酸、蟻酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等の酸触媒、アンモニア、トリエチルアミン等の塩基、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、オクエ酸第一スズ等の有機スズ化合物、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の有機チタン化合物、有機カルボン酸の鉄塩、マンガン塩、コバルト塩、亜鉛塩、ジルコニウム塩、アルミニウムキレート化合物等が挙げられる。
保護層形成用塗布液には、塗布を容易にするために、必要に応じて溶剤を添加することができる。溶剤として具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、ジメチルエーテル、ジブチルエーテル等の通常の有機溶剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
保護層7の形成において、保護層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
保護層7の膜厚は0.5〜20μmであることが好ましく、2〜10μmであることがより好ましい。
電子写真感光体100,110においては、より高い解像度を得る観点から、感光層4及び保護層7の合計の膜厚は50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましい。この膜厚が小さい場合、本実施形態における下引層2a,2bと高強度な保護層7との組み合わせが特に有効である。
また、本発明の電子写真感光体において、導電性基体1から最も遠い側に配置される最表面層には、潤滑性を付与させ、最表面層を磨耗しにくくしたり、傷がつきにくくするため、更に電子写真感光体表面に付着した現像剤のクリーニング性を高めるために、潤滑性粒子を含有させることが好ましい。最表面層は、電子写真感光体100,110においては保護層7であり、電子写真感光体100,110において保護層7を有しない場合には電荷輸送層6である。潤滑性粒子としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂粒子、シリコーン系樹脂微粒子等が挙げられる。これらの中でもフッ素系樹脂粒子が特に好ましく用いられる。これらの潤滑性粒子は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
フッ素系樹脂粒子としては、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂およびそれらの共重合体の中から1種あるいは2種以上を適宜選択するのが望ましいが、特に、4フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が好ましい。
上記フッ素系樹脂粒子の平均一次粒径は0.05〜1μmの範囲であることが好ましく、0.1〜0.5μmの範囲であることがより好ましい。この平均一次粒径が0.05μm未満であると、分散時あるいは分散後にフッ素系樹脂粒子の凝集が進みやすくなる傾向がある。また、平均一次粒径が1μmを超えると、画質欠陥が発生しやすくなる傾向がある。
最表面層におけるフッ素系樹脂粒子の含有量は、最表面層の固形分全量を基準として0.1〜40質量%の範囲であることが好ましく、1〜30質量%の範囲であることがより好ましい。この含有量が0.1質量%未満ではフッ素系樹脂粒子の分散による改質効果が十分でない傾向があり、一方、40質量%を越えると光通過性が低下し、かつ、繰返し使用による残留電位の上昇が生じやすくなる傾向がある。
<画像形成装置及びプロセスカートリッジ>
次に、本発明の電子写真感光体を搭載した画像形成装置及びプロセスカートリッジについて説明する。
図3は本発明の画像形成装置の好適な一実施態様を示す模式断面図である。図3に示す画像形成装置200は、回動可能に設けられたドラム状(円筒状)の本発明の電子写真感光体30を備えている。この電子写真感光体30の周囲には、電子写真感光体30の外周面の移動方向に沿って、帯電装置8、露光装置10、現像装置11、転写装置12、クリーニング装置13及び除電器(イレーズ装置)14がこの順で配置されている。
帯電装置8は、非接触帯電方式であるコロナ帯電方式の帯電装置であり、電子写真感光体30を帯電させる。帯電装置8としては、コロトロン帯電器やスコロトロン帯電器が挙げられる。この帯電装置8は、電源9に接続されている。
露光装置10は、帯電した電子写真感光体30を露光して電子写真感光体30上に静電潜像を形成するためのものであり、例えば、感光体30表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、所望の像様に露光できる光学系機器等が挙げられる。光源の波長は感光体の分光感度領域にあるものが使用される。半導体レーザの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400〜450nm近傍に発振波長を有するレーザも利用できる。また、カラー画像形成のためにはマルチビーム出力が可能なタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
現像装置11は、静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成するためのものであり、例えば、磁性若しくは非磁性の一成分系現像剤又は二成分系現像剤等を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置が使用される。現像剤は、重合法により得られる体積平均粒子径3〜9μmのトナー粒子を含有することが好ましい。
転写装置12は、電子写真感光体30上に現像されたトナー像を被転写媒体20に転写するためのものであり、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が使用される。
クリーニング装置13は、転写後の電子写真感光体30上に残存するトナーを除去するためのものであり、これにより清浄面化された電子写真感光体は、次の画像形成プロセス(電子写真プロセス)に繰り返し供される。クリーニング装置13としては、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、ロールクリーニング等を用いることができるが、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としては、ウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。クリーニング装置13は、電子写真感光体30に対して線圧10〜150g/cmで当接するブレード部材を有することが好ましい。
除電器(イレーズ装置)14は、電子写真感光体30の残存電荷を消去し、残留電位が次のサイクルに持ち込まれる現象を防止するためのものであり、例えば、イレース光照射装置が挙げられる。これにより、電子写真感光体が繰り返し使用される場合に、画像品質をより高めることができる。なお、本発明の画像形成装置は、除電器14を備えない構成を有していてもよい。
また、画像形成装置200は、転写工程後の被転写媒体にトナー像を定着させる定着装置15を備えている。定着装置15としては、特に制限はなく、それ自体公知の定着装置、例えば熱ロール定着装置、オーブン定着装置等が挙げられる。
図4は、本発明の画像形成装置の他の好適な実施形態を示す模式断面図である。図4に示す画像形成装置210は、電子写真感光体30を接触帯電方式により帯電させる帯電装置8を備えていること以外は、図3に示した画像形成装置200と同様の構成を有する。特に、直流電圧に交流電圧を重畳した接触式の帯電装置を採用する画像形成装置210において、電子写真感光体30は、優れた耐リーク性を有するため、好ましく使用できる。なお、この場合には、除電器14が設けられていないものもある。
接触帯電方式では、ローラー状、ブレード状、ベルト状、ブラシ状、磁気ブラシ状等の帯電部材が適用可能である。特に、ローラー状やブレード状の帯電部材については、電子写真感光体30に対し、接触状態又はある程度の空隙(100μm以下)を有した非接触状態として配置してもよい。
ローラー状の帯電部材、ブレード状の帯電部材、ベルト状の帯電部材は帯電部材として有効な電気抵抗(1×103Ω〜1×108Ω)に調整された材料から構成される物であり、単層又は複数の層から構成されていても構わない。
帯電部材の材質としては、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、EPDM、エピクロルヒドリンゴム等の合成ゴムやポリオレフィン、ポリスチレン、塩化ビニル等からなるエラストマーを主材料とし、導電性カーボン、金属酸化物、イオン導電剤等の任意の導電性付与剤を適量配合し、帯電部材として有効な電気抵抗を発現させたものを用いることができる。
さらに、ナイロン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーン等の樹脂を塗料化し、そこに導電性カーボン、金属酸化物、イオン導電剤等の任意の導電性付与剤を適量配合して得られた塗料を、デイッピング、スプレー、ロールコート等の任意の手法により積層して用いることができる。
一方、ブラシ状の帯電部材については、従来用いられてきたアクリル、ナイロン、ポリエステル等に導電性を付与させた繊維を予めフッ素含浸処理した後、既存の手法を用いて植毛し、ブラシ状の帯電部材を作製することができる。また、各種繊維をブラシ状の帯電部材に形成した後に、フッ素含浸処理を行っても構わない。
なお、ここで言うブラシ状の帯電部材とは、ローラー状に形成されたもの、及び平板上に植毛されたもの等のいずれでもよく、その形状は特に限定されない。更に、磁気ブラシ状の帯電部材とは磁力を有するフェライト及びマグタイト等を、多極磁石を内包するシリンダ外周上に放射状に配置したものであり、予め用いられるフェライト及びマグタイト等をフッ素含浸処理した後に磁気ブラシとすることが望ましい。
図5は、本発明の画像形成装置の他の好適な一実施形態を示す模式断面図である。画像形成装置220は、タンデム式中間転写方式の画像形成装置であり、ハウジング400内において4つの電子写真感光体401a〜401d(例えば、401aがイエロー、401bがマゼンタ、401cがシアン、401dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成可能である)が中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。
従来、紙等の被転写紙に顕画像を転写する方式として、転写ドラム上に紙等の被転写紙を巻き付け、感光体上の顕画像を各色毎に被転写紙に転写する転写ドラム方式等が知られている。この場合には、タンデム式中間転写方式に比べ、感光体から中間転写体への顕画像の転写が、中間転写体を複数回回転する必要があったが、タンデム式中間転写方式は中間転写体409が1回転することで複数の感光体401a〜401dから転写でき転写速度の向上が実現でき、また転写ドラム方式のように被転写媒体を選ばないというメリットから、今後の有望な転写方式である。
ここで、画像形成装置220に搭載されている電子写真感光体401a〜401dは、それぞれ電子写真感光体30と同様のものである。
電子写真感光体401a〜401dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール402a〜402d、現像装置404a〜404d、1次転写ロール410a〜410d、クリーニング装置415a〜415dが配置されている。現像装置404a〜404dのそれぞれには、トナーカートリッジ405a〜405dに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給可能である。また、1次転写ロール410a〜410dは、それぞれ中間転写ベルト409を介して電子写真感光体401a〜401dに当接している。
さらに、ハウジング400内の所定の位置にはレーザー光源(露光装置)403が配置されている。レーザー光源403から出射されたレーザー光は、帯電後の電子写真感光体401a〜401dの表面に照射できるようになっている。これにより、電子写真感光体401a〜401dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。
中間転写ベルト409は、駆動ロール406、バックアップロール408及びテンションロール407により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介してバックアップロール408と当接するように配置されている。バックアップロール408と2次転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409は、例えば駆動ロール406の近傍に配置されたクリーニングブレード416により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
また、ハウジング400内の所定の位置にはトレイ(被転写媒体トレイ)411が設けられており、トレイ411内の紙等の被転写媒体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413との間、さらには相互に当接する2個の定着ロール414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排紙される。
上述の説明においては中間転写体として中間転写ベルト409を使用する場合について説明したが、中間転写体は、上記中間転写ベルト409のようにベルト状(例えば、無端ベルト状のもの)であってもよく、ドラム状であってもよい。中間転写体として中間転写ベルト409のようなベルトの形状の構成を採用する場合、一般にベルトの膜厚は50〜500μmが好ましく、60〜150μmがより好ましい。なお、ベルトの膜厚は、材料の硬度に応じて適宜選択することができる。また、中間転写体としてドラム形状を有する構成を採用する場合、基材としては、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、銅等で形成された円筒状基材を用いることが好ましい。この円筒状基材上に、必要に応じて弾性層を被覆し、該弾性層上に表面層を形成することができる。
なお、本発明でいう被転写媒体とは、電子写真感光体上に形成されたトナー像を転写する媒体であれば特に制限はない。例えば、電子写真感光体から直接、紙等に転写する場合は紙等が被転写媒体であり、また、中間転写体を用いる場合には中間転写体が被転写媒体になる。
上記無端ベルトの材料としては、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンフタレート、PC/ポリアルキレンフタレート(PAT)のブレンド材料、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等の熱可塑性樹脂からなる半導電性の無端ベルト等が提案されている。
また、特許2560727号、特開平5−77252号公報等において、通常のカーボンブラックを導電性微粉末としてポリイミド樹脂に分散させた中間転写体が提案されている。
ポリイミド樹脂は、高ヤング率材料であることから、駆動時(支持ロール、クリーニングブレード等の応力)による変形が少ないので、色ズレ等の画像欠陥が生じにくい中間転写体となる。ポリイミド樹脂は、通常、略等モルのテトラカルボン酸二無水物或いはその誘導体と、ジアミンとを溶媒中で重合反応させてポリアミド酸溶液として得られる。テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、下記の一般式(XV)で示されるものが挙げられる。
[式中、Rは、脂肪族鎖式炭化水素基、脂肪族環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基、並びにこれらの炭化水素基に置換基が結合した基からなる群より選ばれる4価の有機基を示す。]
テトラカルボン酸二無水物として具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
一方、ジアミンの具体例としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ第三ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ベンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロボキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ピペラジン、H2N(CH2)3O(CH2)2O(CH2)NH2、H2N(CH2)3S(CH2)3NH2、H2N(CH2)3N(CH3)2(CH2)3NH2等が挙げられる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合反応させる際の溶媒としては、溶解性等の点から極性溶媒が好適に挙げられる。極性溶媒としては、N,N−ジアルキルアミド類が好ましく、具体的には、例えば、これの低分子量のものであるN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
中間転写体は、ポリイミド樹脂中に酸化処理カーボンブラックを含有している。酸化処理カーボンブラックは、カーボンブラックを酸化処理することで、表面に酸素含有官能基(例えば、カルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等)を付与して得ることができるものである。
この酸化処理は、高温雰囲気下で、空気と接触、反応させる空気酸化法、常温下で窒素酸化物やオゾン等と反応させる方法、及び高温下での空気酸化後、低温下でオゾン酸化する方法等により行うことができる。
酸化カーボンとして、具体的には、三菱化学製のMA100(pH3.5、揮発分1.5%)、同MA100R(pH3.5、揮発分1.5%)、同MA100S(pH3.5、揮発分1.5%)、同#970(pH3.5、揮発分3.0%)、同MA11(pH3.5、揮発分2.0%)、同#1000(pH3.5、揮発分3.0%)、同#2200(pH3.5,揮発分3.5%)、同MA230(pH3.0、揮発分1.5%)、同MA220(pH3.0、揮発分1.0%)、同#2650(pH3.0、揮発分8.0%)、同MA7(pH3.0、揮発分3.0%)、同MA8(pH3.0、揮発分3.0%)、同OIL7B(pH3.0、揮発分6.0%)、同MA77(pH2.5、揮発分3.0%)、同#2350(pH2.5、揮発分7.5%)、同#2700(pH2.5、揮発分10.0%)、同#2400(pH2.5、揮発分9.0%)、デグサ社製のプリンテックス150T(pH4.5、揮発分10.0%)、同スペシャルブラック350(pH3.5、揮発分2.2%)、同スペシャルブラック100(pH3.3、揮発分2.2%)、同スペシャルブラック250(pH3.1、揮発分2.0%)、同スペシャルブラック5(pH3.0、揮発分15.0%)、同スペシャルブラック4(pH3.0、揮発分14.0%)、同スペシャルブラック4A(pH3.0、揮発分14.0%)、同スペシャルブラック550(pH2.8、揮発分2.5%)、同スペシャルブラック6(pH2.5、揮発分18.0%)、同カラーブラックFW200(pH2.5、揮発分20.0%)、同カラーブラックFW2(pH2.5、揮発分16.5%)、同カラーブラックFW2V(pH2.5、揮発分16.5%)、キャボット社製MONARCH1000(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製MONARCH1300(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製MONARCH1400(pH2.5、揮発分9.0%)、同MOGUL−L(pH2.5、揮発分5.0%)、同REGAL400R(pH4.0、揮発分3.5%)等が挙げられる。
このようにして得られる酸化処理カーボンブラックは、一部に過剰な電流が流れ、繰返しの電圧印加による酸化の影響を受けにくい。さらに、その表面に付着する酸素含有官能基の効果で、ポリイミド中への分散性が高く、抵抗バラツキを小さくすることができるとともに、電界依存性も小さくなり、転写電圧による電界集中が起き難くなる。
その結果、転写電圧による抵抗低下を防止し、電気抵抗の均一性を改善し、電界依存性が少なく、さらに環境による抵抗の変化の少ない、用紙走行部が白く抜けること等の画質欠陥の発生が抑制された高画質を得ることができる中間転写体となる。2種類以上の酸化処理カーボンブラックを添加する場合、これら酸化処理カーボンブラックは実質的に互いに導電性の異なるものであると好ましく、例えば酸化処理の度合い、DBP吸油量、窒素吸着を利用したBET法による比表面積等の物性が異なるものを用いる。このように物性の異なる2種類以上のカーボンブラックを添加する場合、例えば高い導電性を発現するカーボンブラックを優先的に添加した後、導電率の低いカーボンブラックを添加して表面抵抗率を調整すること等が可能である。
酸化処理カーボンブラックとして具体的には、SPECIAL BLACK4(デグサ社製、pH3.0、揮発分:14.0%)、SPECIAL BLACK250(デグサ社製、pH3.1、揮発分:2.0%)等が挙げられる。これら酸化処理カーボンブラックの含有量は、ポリイミド樹脂に対して10〜50質量%程度が好ましく、より好ましくは12〜30質量%である。この含有量が10質量%未満であると、電気抵抗の均一性が低下し、耐久使用時の表面抵抗率の低下が大きくなる場合があり、一方、50質量%を超えると、所望の抵抗値が得られ難く、また、成型物として脆くなるため好ましくない。
酸化処理カーボンブラックを分散したポリイミド樹脂製の中間転写体は、酸化処理カーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液を作製する工程、円筒状金型内面に膜(層)形成する工程、イミド転化を行う工程を経ることで得ることができる。
2種類以上の酸化処理カーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液の製造方法については、溶媒中に2種類以上の酸化処理カーボンブラックを予め分散した分散液中に上記酸二無水物成分及びジアミン成分を溶解させ重合させる方法、2種類以上の酸化処理カーボンブラックを各々溶媒中に分散させ2種類以上のカーボンブラック分散液を作製し、この分散液に酸無水物成分及びジアミン成分を溶解させ重合させた後、各々のポリアミド酸溶液を混合する方法等が考えられ、適宜選択してカーボンブラックを分散したポリアミド酸溶液を作製する。
中間転写体は、このようにして得られたポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に供給・展開して被膜とし、加熱によりポリアミド酸をイミド転化させることにより得られる。このイミド転化の際には、所定の温度で0.5時間以上保持することによって、良好な平面度を有する中間転写体を得ることができる。
ポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に供給する際の供給方法としては、ディスペンサーによる方法、ダイスによる方法などが挙げられる。ここで、円筒状金型としては、その内周面が鏡面仕上げされたものを用いることが好ましい。
また、金型に供給されたポリアミド酸溶液から被膜を形成する方法としては、加熱しながら遠心成形する方法、弾丸状走行体を用いて成形する方法、回転成形する方法などが挙げられ、これらの方法により均一な膜厚の被膜が形成される。
このようにして形成された被膜をイミド転化させて中間転写体を成形する方法としては、(i)金型ごと乾燥機中に入れ、イミド転化の反応温度まで昇温する方法、(ii)ベルトとして形状を保持できるまで溶媒の除去を行った後、金型内面から被膜を剥離して金属製シリンダ外面に差し替えた後、このシリンダごと加熱してイミド転化を行う方法、などが挙げられる。平面度及び外表面精度が良好な中間転写体を得るためには、ベルトとして保持できるまで溶媒の除去を行った後、金属製シリンダに差し替えてイミド転化を行う上記(ii)の方法が好ましい。
上記方法(ii)において、溶媒を除去する際の加熱条件は、溶媒を除去できれば特に制限されないが、加熱温度は80〜200℃であることが好ましく、加熱時間は0.5〜5時間であることが好ましい。このようにしてベルトとしてそれ自身形状を保持することができるようになった成形物は金型内周面から剥離される。このとき、金型内周面に離型処理を施すこともできる。
次いで、ベルト形状として保持できるまで加熱及び硬化させた成形物を、金属製シリンダ外面に差し替え、差し替えたシリンダごと加熱することにより、ポリアミド酸のイミド転化反応を進行させる。かかる金属製シリンダとしては、線膨張係数がポリイミド樹脂よりも大きいものが好ましく、また、シリンダの外径をポリイミド成形物の内径より所定量小さくすることで、ヒートセットを行うことができ均一な膜厚でムラのない無端ベルトを得ることができる。また、金属製シリンダ外面の表面粗度(Ra)は、1.2〜2.0μmであることが好ましい。金属製シリンダ外面の表面粗度(Ra)が1.2μm未満であると、金属製シリンダ自身が平滑過ぎるため、得られる中間転写体においてベルトの軸方向に対する収縮による滑りが発生しないため、延伸がこの工程で行われ、膜厚のバラツキや平面度の精度の低下が発生する場合がある。また、金属製シリンダ外面の表面粗度(Ra)が2.0μmを超えると、金属製シリンダ外面がベルト状中間転写体の内面に転写し、さらには外面に凹凸を発生させ、これにより画像不良が発生しやすくなる場合がある。なお、本発明でいう表面粗度とはJIS B601に準じて測定されるRaをいう。
また、イミド転化の際の加熱条件としては、ポリイミド樹脂の組成にもよるが、加熱温度が220〜280℃、加熱時間が0.5〜2時間であることが好ましい。このような加熱条件でイミド転化を行うと、ポリイミド樹脂の収縮量がより大きくなるため、ベルトの軸方向についての収縮を緩やかに行うことにより、膜厚バラツキや平面度の精度の低下を防ぐことができる。
このようにして得られたポリイミド樹脂からなる中間転写体の外面の表面粗度(Ra)は、1.5μm以下であることが好ましい。中間転写体の表面粗度(Ra)が1.5μmを超えると、ガサツキ等の画像欠陥が発生しやすくなる傾向にある。なお、ガサツキの発生は、転写の際に印加される電圧や剥離放電による電界がベルト表面の凸部に局所的に集中して凸部表面が変質することによって、新たな導電経路の発現により抵抗が低下し、その結果得られる画像の濃度低下が起こることに起因すると考えられる。
このようにして得られる中間転写体は、その平面度が5mm以下となるが、好ましくは、3mm以下が望ましい。平面度が5mm以下ではガサツキがなく、色ずれも少ない。しかし、ベルト端部が上下にハネている場合、平面度が5mm以下でも、中間転写体の使用中に破断することはないが、周辺部材に接触したあとが残ることが希にある。更に、平面度が3mm以下になると中間転写体を使用中に周辺部材に接触することもなく色ずれもほとんどなくなる。
図6は、本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態を示す模式断面図である。プロセスカートリッジ300は、本発明の電子写真感光体30とともに、帯電手段8、現像手段11、クリーニング手段13、露光のための開口部18、及び除電器14を取り付けレール16を用いて組み合せて一体化したものである。そして、このプロセスカートリッジ300は、転写手段12と、定着手段15と、図示しない他の構成部分とからなる画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。このようなプロセスカートリッジ300は、例えば図3〜6に示した画像形成装置のいずれにも適用することができる。
本発明の画像形成装置及びプロセスカートリッジによれば、本発明の電子写真感光体を用いているため、長期間にわたって良好な画質の画像を安定して形成することができる。
1…導電性基体、2a,2b…下引層、3a…電子受容性物質高濃度含有領域、3b…電子受容性物質含有層、4…感光層、5…電荷発生層、6…電荷輸送層、7…保護層、8…帯電手段、9…電源、10…露光手段、11…現像手段、12…転写手段、13…クリーニング手段、14…除電器、15…定着手段、16…取り付けレール、18…露光のための開口部、20…被転写体、30,100,110…電子写真感光体、200,210,220…画像形成装置、300…プロセスカートリッジ。