以下、図面とともに本発明に係る移動端末、アドホックネットワーク制御システム及びアドホックネットワーク制御方法の好適な各種の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
図1に本実施形態に係る移動端末10の構成、及び複数の当該移動端末10によって構成されるアドホックネットワークN1を示す。アドホックネットワークN1は、データの中継機能を有する複数の移動端末10により構成されて、当該移動端末間でデータの中継を繰返すことにより、所望の端末までデータを伝送することが可能なネットワークである。アドホックネットワークN1を構成する移動端末10は、アドホックネットワークN1を構成するために以下に述べる機能を有している。
移動端末10は、アドホックネットワークN1を構成する別の端末との間で制御信号を送受信し、必要に応じて中継を行う。この制御信号は、パケットとして構成され、アドホックネットワークN1においてデータの伝送が行われる際のルーティングに必要なデータを含んでいる。また、移動端末10は、端末間で送受信対象となるデータとしてのパケット送信の際に、受信した制御信号に基づいてルーティングを行いルーティングにより形成されたルートで所望の端末までパケットを送信する。また、移動端末10は、別の端末により形成されたルートに自端末10が含まれていた場合、当該別の端末からのその旨の制御信号を受け取り、当該制御信号に基づき当該ルートに応じたコネクションを更に別の端末との間に確立してデータの中継を行う。
移動端末10としては、具体的には例えば、携帯電話機のような携帯型の端末を用いることができる。また、自動車等の移動車両に搭載された端末が用いられてもよい。移動端末10が自動車に搭載された場合、移動端末10に供給する電力量が豊富にあるため、アドホックネットワークが抱えている大きな課題の一つである省電力化の問題が解決される。
引き続いて、移動端末10の機能構成について説明する。図1に示すように、移動端末10は、アドホックネットワーク機能部11と、計測部12と、判断部13と、制御部14と、情報取得部15と、基準値設定部16とを備えて構成される。
アドホックネットワーク機能部11は、アドホックネットワークN1を構成する機能を担う手段である。アドホックネットワークN1を構成する機能とは、上述したように、別の端末との間で制御信号を含むデータの中継を行ったり、コネクションを確立したりするルーティングに関する処理を行う機能(ルーティング機能)である。また、アドホックネットワーク機能部11は、(中継に係るものではなく)自端末10自身のデータの送受信についても行う。自端末10自身のデータは、送受信される際にはパケットとして構成され、例えば、移動端末10で動作するアプリケーションプログラムで用いられるものであり、アプリケーションプログラムから入出力される。
計測部12は、自端末10の移動速度を計測する計測手段である。移動速度の計測は、例えば、GPS(Global Positioning System)により計測される自端末10の位置の時間変化に基づいて行われる。また、圧電素子等により構成される速度センサを用いて計測してもよい。また、移動端末10が自動車に搭載されている形態の場合は、自動車の速度計から速度の情報を取得してもよい。計測部12による移動速度の計測は、例えば、常時行われてもよいし、数秒毎に定期的に行われてもよい。計測部12は、自端末10の移動速度の情報を、例えば時速等の形式で判断部13に出力する。
判断部13は、計測部12により計測された移動速度が所定の基準値を超えているか否かを判断する判断手段である。アドホックネットワークN1においては、移動端末10の移動速度が速い程、移動端末10に係るコネクションが不安定となり切断されやすくなる。判断部13における判断は、自端末10がアドホックネットワークN1における不安定なノードとなりえるか否かの判断である。
従って、自端末10の移動速度と比較される所定の基準値は、上記の目的に沿ったものとなることが好ましい。例えば、歩行者程度のスピードまでであれば、ほぼ停止状態とみなしてルーティング対象に入れるとして、基準値を4km/hとする。また、端末間の距離が長くなる態様が想定される場合は、歩行程度の速度でも影響があることを考慮して、時速1km/hとしてもよい。逆に、通信速度が速い、あるいはデータ量が少ない場合には、例えば自転車移動程度の20km/h等のもっと大きい値としてもよい。
この基準値は、移動端末10のメモリ等により保持されており、判断部13に予め固定値として設定されていてもよいし、後述するように、基準値設定部16によりアドホックネットワークN1の状態等に応じて設定されるようにしてもよい。判断部13による判断結果は、制御部14に通知される。
制御部14は、判断部13により移動速度が所定の基準値を超えていると判断された場合に、アドホックネットワーク機能部11に対して機能を停止する制御を行う制御手段である。具体的には、制御部14は、アドホックネットワーク機能部11に対して、アドホックネットワークN1のためのデータの中継、即ち、アドホックネットワークN1のノードとしてデータを中継することを禁止する制御を行う。中継が禁止されるデータとしては、制御信号及び端末間で送受信対象となるデータが含まれる。この制御を受けると、アドホックネットワーク機能部11は、中継すべきデータを受信しても中継先に送信しない。また、自端末10に対して送信されたデータを全て受信しないようにしてもよい。この制御は、不安定なノードを、アドホックネットワークN1から除くためのものである。
また、制御部14は、データの中継だけでなく、更に、アドホックネットワーク機能部11に対して、(中継に係るものでなく)自端末10自身のデータの送出を禁止することが好ましい。送出が禁止されるデータとしては、上記と同様に、制御信号及び端末間で送受信対象となるパケットが含まれる。
また、制御部14は、既にアドホックネットワーク機能部11に対してデータの中継を禁止する制御を行ったと共に判断部13により移動端末10の移動速度が所定の基準値を超えていないと判断された場合に、アドホックネットワーク機能部11に対してアドホックネットワークN1のためのデータの中継の再開する制御を行う。この制御は、不安定でなくなったノードを、アドホックネットワークN1に復帰させるためのものである。
情報取得部15は、判断部13における判断のための基準値を設定するための情報を取得するための情報取得手段である。具体的にどのような情報をどのように取得するかは後述する。取得された情報は、基準値設定部16に出力される。情報取得部15による情報の取得は、例えば、定期的に行われる。
基準値設定部16は、情報取得部15により取得された情報に基づいて、判断部13における判断のための基準値を設定する基準値設定手段である。基準値設定部16により、アドホックネットワークN1の状態等に応じて、基準値が適切に設定されうる。具体的にどのような情報に基づいて、どのような基準値を設定するかは後述する。以上が、移動端末10の機能構成である。
図2に移動端末10のハードウェア構成を示す。図2に示すように、移動端末10は、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(ReadOnly Memory)103、操作部104、無線通信部105、ディスプレイ106及びアンテナ107等のハードウェアにより構成されている。これらの構成要素が動作することにより、上述した移動端末10の各機能が発揮される。
引き続いて、図3のフローチャートを用いて、本実施形態に係る移動端末10で実行される処理(アドホックネットワーク制御方法)を説明する。この処理は、移動端末10がアドホックネットワークN1を構成している際の処理である。移動端末10はアドホックネットワークN1を構成しているので、アドホックネットワーク機能部11が、アドホックネットワークN1を構成する別の端末との間で、データの中継を行う。
まず、移動端末10では、計測部12により、自端末10の移動速度が計測される(S01、計測ステップ)。計測された移動速度を示す情報は、判断部13に出力される。判断部13によって、その情報が受け取られ、移動速度が基準値を超えているか否かが判断される(S02、判断ステップ)。判断結果は、判断部13から制御部14に通知される。
制御部14では、当該判断結果が参照され、移動速度が基準値を超えていた場合は以下の処理が行われる。アドホックネットワーク機能部11のルーティング機能が動作していた場合には、制御部14からアドホックネットワーク機能部11に対して、ルーティング機能を停止する制御が行われる(S03,S04、制御ステップ)。具体的には、アドホックネットワークN1のための、制御信号を含むデータの中継が禁止される。更には、中継だけでなく、移動端末10自身のデータの送受信を行うことも禁止されることが好ましい。この制御により、移動端末10は、一切のデータ(パケット)の送受信を許容しない状態となる。移動速度が基準値を超えており、移動端末10がアドホックネットワークN1において不安定なノードになるおそれがあるためである。
これにより、アドホックネットワークN1において、移動端末10に係るデータの中継及び送受信が行われない状態となる。従って、別の端末から移動端末10に対してデータの送信が行われても、移動端末10による、当該データに対して中継等の処理は行われず、当該データは破棄される。なお、ルーティング機能が停止された移動端末10が、アドホックネットワークN1において既にルートを形成していた場合は、そのルートは切断される。ルートが切断された場合、当該ルートにおいて移動端末10に隣接する端末によりルート切断が認識され、リルート処理が実施される。リルート処理については、T. Clausen, P. Jacquet, A. Laouiti, P. Muhlethaler, a. Qayyum et L. Viennot,「OptimizedLink State Routing Protocol」,IEEE INMIC Pakistan 2001.に記載されているように、通常のルーティング技術により実現される。
一方、制御部14からアドホックネットワーク機能部11に対して上記の制御が行われており、アドホックネットワーク機能部11のルーティング機能が動作していない場合には、制御部14からアドホックネットワーク機能部11への制御は特に行われず処理が終了する(S03、制御ステップ)。
制御部14において、判断部13による判断結果が参照され、移動速度が基準値を超えていない場合は以下の処理が行われる。アドホックネットワーク機能部11のルーティング機能が動作していた場合には、制御部14からアドホックネットワーク機能部11への制御は特に行われず処理が終了する(S05、制御ステップ)。移動速度が基準値を超えておらず、移動端末10がアドホックネットワークN1において不安定なノードになるおそれがないので、機能を停止する必要がないためである。
一方、制御部14からアドホックネットワーク機能部11に対して上記の制御が行われており、アドホックネットワーク機能部11のルーティング機能が動作していない場合には、制御部14からアドホックネットワーク機能部11に対して、ルーティング機能を再開する制御が行われる(S05,S06、制御ステップ)。移動速度が基準値を超えない状態となったので、移動端末10がアドホックネットワークN1において不安定なノードになるおそれがないので、機能を停止する必要がないためである。
上述したように、本実施形態では、移動端末10において、移動速度が所定の基準値を超えるとアドホックネットワークN1のためのデータの中継が禁止される。これにより、本実施形態に係る移動端末10を含んで構成されるアドホックネットワークN1では、所定の基準値を超える移動速度で移動している移動端末10を含むルートが形成されることがなく、ルートの通信品質が向上する。また、ルートとして選択されることがない移動端末10により制御信号が中継されることがないので、ルーティングの際の当該制御信号による無駄な処理負荷増加や無線資源利用を防止することができる。
また、本実施形態のように、更に移動端末10自身からデータの送出を禁止することとすれば、移動速度が所定の基準値を超えた移動端末10からのデータの送出がなされることがない。従って、アドホックネットワークにおいてルーティングにより生成されるルートの通信品質を更に向上させると共に、ルーティングの際の無駄な処理負荷増加や無線資源利用を更に防止することができる。
ところで、判断部13での比較における移動速度の比較対象の基準値は、適宜設定されるようにしてもよい。情報取得部15により基準値を設定するための情報が取得され、当該情報に基づいて基準値設定部16により基準値の設定が行われる。具体的には、以下のように行われる。
基準値の設定は、例えば、アドホックネットワークN1内のトラヒックを示す情報に基づいて行われる。情報取得部15により、アドホックネットワークN1内のトラヒックを示す情報が取得される。ここで用いられるトラヒックを示す情報は、具体的には例えば、アドホックネットワークN1内における時間当たりのトラヒックの発生量(セッション数)及び通信時間(の平均値)である。これらの情報は、アドホックネットワークN1のトラヒックモデルを示す情報である。これら情報は、例えば、自端末10のトラヒックの実績や転送しているトラヒックを検出して、それらから算出される。また、例えば、別の端末から送受信されたデータのデータ量の情報を受信して、その情報から算出してもよい。情報取得部15は、時間当たりのトラヒックの発生量及び通信時間を示す情報を基準値設定部16に通知する。
基準値設定部16では、情報取得部15から通知された情報に基づいて基準値が決定される。具体的には例えば、基準値設定部16において予め定められた閾値を保持しておき、時間当たりのトラヒックの発生量(セッション数)及び通信時間の平均値がその閾値以上か以下かに応じて、それぞれ予め保持していた基準値から決定する。
基準値の決定ルールは、以下の点を考慮されて定められる。通信時間が短いトラヒックが多数を占めるようなトラヒックモデルであれば、高速移動している端末をルートとして選択しても通信中に切断される確率は低いため基準値は(相対的に)高くしてもよい。一方、逆に通信時間が長ければ、通信中の切断確率が上がってしまうため基準値を低くすることが有効となる。
基準値設定部16により決定された基準値は、判断部13における判断に用いられる基準値として設定される。このような構成にすることにより、アドホックネットワークN1においてルーティングされるルートを、トラヒックに応じた適切な通信品質にすることができる。
また、基準値の設定は、例えば、アドホックネットワークN1に含まれる移動端末の移動速度を示す情報に基づいて行われる。ここでの移動端末は、自端末10だけでなく、自端末10以外の端末も含まれる。情報取得部15により、アドホックネットワークN1に含まれる移動端末の移動速度を示す情報が取得される。ここで用いられる移動端末の移動速度を示す情報は、具体的には例えば、アドホックネットワークN1に含まれる移動端末の移動速度(の平均値)である。この情報は、アドホックネットワークN1の端末のモビリティモデルを示す情報である。これら情報は、例えば、別の端末から当該端末の移動速度の情報を受信して、それらから情報から算出される。また、情報の取得は以下の方法により行われてもよい。自端末10のモビリティモデルは、計測部12による計測実績から把握可能である。別の端末のモビリティモデルは、自端末10で測定されるルートの切断率に基づいて導出される。例えば、よく切断されるようであれば動きの多いモビリティモデル、切断されなければ動きの少ないモビリティモデルとして導出できる。情報取得部15は、モビリティモデルを示す情報を基準値設定部16に通知する。
基準値設定部16では、情報取得部15から通知された情報に基づいて基準値が決定される。具体的には例えば、基準値設定部16において予め定められた閾値を保持しておき、モビリティモデル(移動端末の移動速度の平均値)がその閾値以上か以下かに応じて、それぞれ予め保持していた基準値から決定する。
基準値の決定ルールは、以下の点を考慮されて定められる。高速移動している端末ばかりであるとき、基準値を低くしてしまうと、ルートが確立されないこととなってしまう。一方、低速移動している端末が多数を占める場合は、基準値を低くすることにより、より品質の高いルートを設定することができるようになる。
基準値設定部16により決定された基準値は、判断部13における判断に用いられる基準値として設定される。このような構成にすることにより、アドホックネットワークN1においてルーティングされるルートを、移動端末の移動性(モビリティ)に応じた適切な通信品質にすることができる。
また、基準値の設定は、例えば、アドホックネットワークN1に含まれる移動端末における通信の要求品質を示す情報に基づいて行われる。ここでの移動端末は、自端末10だけでなく、自端末10以外の端末も含まれる。情報取得部15により、アドホックネットワークN1に含まれる移動端末における通信の要求品質を示す情報が取得される。ここで用いられる通信の要求品質を示す情報は、具体的には例えば、アドホックネットワークN1に含まれる各端末において予め設定された、「通信の品質を問わず切断されてもよいか否か」という情報である。これら情報は、例えば、別の端末から上記の設定された情報を受信することにより取得される。また、情報の取得は以下の方法により行われてもよい。情報取得部15は、通信の要求品質を示す情報を基準値設定部16に通知する。
基準値設定部16では、情報取得部15から通知された情報に基づいて基準値が決定される。具体的には例えば、基準値設定部16において予め定められた閾値を保持しておき、切断されてもよいと設定されている端末の数がその閾値以上か以下かに応じて、それぞれ予め保持していた基準値から決定する。
基準値の決定ルールは、以下の点を考慮されて定められる。品質を問わず切断されてもよいと設定されている端末が多数であれば、基準値を低く設定することでルート確立の割合を高くすることができる。一方、高品質通信を必要とする端末が多数であれば、基準値を高くしておくことでルート確立の割合は低くなるが、確立されたルートの品質を高めることが可能である。
基準値設定部16により決定された基準値は、判断部13における判断に用いられる基準値として設定される。このような構成にすることにより、アドホックネットワークN1においてルーティングされるルートを、要求される通信品質に応じた適切な通信品質にすることができる。
また、基準値の設定は、例えば、アドホックネットワークN1に含まれる移動端末の数(ノード密度)を示す情報に基づいて行われる。情報取得部15により、アドホックネットワークN1に含まれる移動端末の数を示す情報が取得される。なお、アドホックネットワークN1に含まれる移動端末の数は、アドホックネットワークN1に接続されている移動端末であれば、通常、認識している。情報取得部15は、アドホックネットワークN1に含まれる移動端末の数を示す情報を基準値設定部16に通知する。
基準値設定部16では、情報取得部15から通知された情報に基づいて基準値が決定される。具体的には例えば、基準値設定部16において予め定められた閾値を保持しておき、アドホックネットワークN1に含まれる移動端末の数がその閾値以上か以下かに応じて、それぞれ予め保持していた基準値から決定する。
基準値の決定ルールは、以下の点を考慮されて定められる。ノード密度が高い場合には、基準値を低く設定することにより、ルーティング機能が動作する端末を多数確保できるため高いルート確立の割合を確保できる。一方、ノード密度が低い場合には、ルーティング機能が動作する端末が減少してしまい、低いルート確立の割合になってしまう。
基準値設定部16により決定された基準値は、判断部13における判断に用いられる基準値として設定される。このような構成にすることにより、アドホックネットワークN1においてルーティングされるルートを、アドホックネットワーク内の端末(ノード)の数(ノード密度)に応じた適切な通信品質にすることができる。
[第2実施形態]
上述した実施形態では、アドホックネットワークN1を構成する移動端末10自体で制御を行っていたが、アドホックネットワークN1を構成する移動端末10がアドホックネットワークN1とは別の通信網に接続できる場合は、本実施形態で説明するように通信網に含まれるアドホックネットワーク制御装置により制御が行われてもよい。
図4に本実施形態に係るアドホックネットワーク制御システム1を示す。図4に示すようにアドホックネットワーク制御システム1は、移動体通信網N2に含まれるアドホックネットワーク制御装置20と、アドホックネットワークN1を構成する機能及び移動体通信網N2に接続する機能を有する移動端末30とを含んで構成されている。アドホックネットワークN1は、第1実施形態で説明したものと同様である。移動端末30としては、具体的には例えば、第1実施形態で説明したものと同様に、携帯電話機のような携帯型の端末や、自動車等の移動車両に搭載された端末が用いられる。
移動体通信網N2は、自網に接続される移動端末30に対して移動体通信サービスを提供する通信網である。移動体通信網N2は、基地局や交換機等の装置により実現されている。アドホックネットワーク制御装置20は、アドホックネットワークN1を制御する装置である。アドホックネットワーク制御装置20は、アドホックネットワークN1を構成する移動端末30が移動体通信網N2に接続することにより、移動端末30との間で情報の送受信を行うことが可能となる。アドホックネットワーク制御装置20は、例えば、移動体通信網N2における無線制御装置等に、後述するアドホックネットワーク制御装置20としての機能を含ませることにより実現することができる。なお、本実施形態では通信網は、移動体通信網N2としているが、必ずしも移動体通信網である必要はなく、移動端末30が接続することができる通信網であればよい。
引き続いて、アドホックネットワーク制御装置20及び移動端末10の構成について説明する。図4に示すように、アドホックネットワーク制御装置20は、計測部21と、判断部22と、送信部23とを備えて構成される。
計測部21は、各移動端末30の移動速度を計測する計測手段である。移動速度の計測は、例えば、次のような方法で行われる。移動体通信網N2は、移動端末30が何れの基地局に対して位置登録を行っているかを把握している。計測部21は、移動端末30が何れの基地局に対して位置登録を行っているかの時系列情報を取得して、当該情報と基地局間の距離の情報とから、移動端末30の移動速度を算出する。例えば、10分間で、移動端末30が基地局A→B→Cと位置登録を行っている基地局が変化したとして、基地局A−C間の距離が5kmであれば、移動速度は500m/分と算出される。なお、各基地局間の距離の情報は、予め計測部21により保持されている。
また、移動端末30と基地局と間で送受信される電波は、基地局からの距離に応じた強度となるので、基地局により受信される電波の強度変化の情報を取得して、電波の強度変化から移動距離を求めて、移動速度を算出することとしてもよい。電波強度の情報としては、例えば、受信電力、受信電界強度、S/N比(Signal to Noise Ratio)、C/N比(Carrier to Noise Ratio)等の情報を用いることができる。移動端末30と基地局と間で送受信される電波は、基地局からの距離に応じた強度となることについては、例えば、「ディジタル移動通信」(桑原守二監修、科学新聞社、1992年)に記載されている。あるいは、電波のフェージングピッチ(周期)から移動速度を算出してもよい。計測部21は、移動端末30の移動速度の情報を、例えば時速等の形式で判断部22に出力する。
なお、計測部21は、必ずしも上記のように自身が移動端末30の移動速度を計測する必要はなく、第1実施形態で説明したような方法で移動端末30が自端末30の移動速度を計測して、計測された移動速度の情報を移動端末30から受信することとしてもよい。
判断部22は、計測部21により計測された、移動端末30の移動速度が所定の基準値を超えているか否かを判断する判断手段である。第1実施形態における判断部13に相当する。基準値は、アドホックネットワーク制御装置20のメモリ等により保持されている。また、基準値は、判断部22に予め固定値として設定されていてもよいし、第1実施形態で説明したように基準値設定部によりアドホックネットワークN1の状態等に応じて設定されるようにしてもよい。基準値設定部により基準値が設定される場合は、必要に応じて、移動端末30等から基準値設定のための情報を取得する。判断部22による判断結果は、送信部23に通知される。
送信部23は、判断部22により移動端末30の移動速度が所定の基準値を超えていると判断された場合に、移動端末30に対してアドホックネットワークN1のためのデータの中継を禁止する制御信号を送信する送信手段である。また、送信部23は、データの中継だけでなく、更に、移動端末30に対して、自端末30からのデータの送出を禁止する制御信号を送信することが好ましい。
また、送信部23は、既に移動端末30に対して制御信号を送信しており、移動端末30においてデータの中継を禁止する制御がされている場合には、制御信号を送信しない。また、送信部23は、既に移動端末30に対して制御信号を送信しており移動端末30においてデータの中継が禁止されていると共に、判断部22により移動端末30の移動速度が所定の基準値を超えていないと判断された場合に、移動端末30に対してアドホックネットワークN1のためのデータの中継の再開する制御信号を送信する。
なお、アドホックネットワーク制御装置20において、計測部21による移動速度の計測、判断部22による判断及び送信部23による送信は、移動端末30毎に行われる。従って、移動速度に関する情報等は、アドホックネットワーク制御装置20において、移動端末30毎に管理される。
図5に示すように、アドホックネットワーク制御装置20(を構成する無線制御装置等)は、CPU201、主記憶装置であるRAM202及びROM203、ネットワークカード等のデータ送受信デバイスである通信モジュール204、並びにハードディスク等の補助記憶装置205等のハードウェアを備えるコンピュータとして構成される。これらの構成要素が動作することにより、上述したアドホックネットワーク制御装置20の機能が発揮される。以上が、アドホックネットワーク制御装置20の構成である。
図4に示すように、移動端末30は、アドホックネットワーク機能部31と、受信部32と、制御部33とを備えて構成される。アドホックネットワーク機能部31は、アドホックネットワークN1を構成する機能を担う手段である。第1実施形態におけるアドホックネットワーク機能部11と同様の機能を有する。
受信部32は、アドホックネットワーク制御装置20から送信される、アドホックネットワークN1のためのデータの中継を禁止する制御信号を受信する受信手段である。制御信号の送受信は、移動体通信網N2を介して行われる。受信した制御信号は、制御部33に出力される。
制御部33は、受信部32により受信された制御信号に基づいて、アドホックネットワーク機能部31に対して機能を停止する制御を行う制御手段である。具体的には、制御部33は、アドホックネットワーク機能部31に対して、アドホックネットワークN1のためのデータの中継、即ち、アドホックネットワークN1のノードとしてデータを中継することを禁止する制御を行う。中継が禁止されるデータとしては、制御信号及び端末間で送受信対象となるパケットが含まれる。この制御を受けると、アドホックネットワーク機能部31は、中継すべきデータを受信しても中継先に送信しない。また、自端末30に対して送信されたデータを全て受信しないようにしてもよい。
また、制御部33は、受信部32により受信された制御信号が、データの中継だけでなく、更に、アドホックネットワーク機能部31に対して、(中継に係るものでなく)自端末30自身のデータの送出を禁止するものでもある場合、そのような制御も行う。送出が禁止されるデータとしては、上記と同様に、制御信号及び端末間で送受信対象となるデータが含まれる。
以上が、移動端末30の機能構成である。また、移動端末30のハードウェア構成は、第1実施形態における移動端末10と同様のものである。
引き続いて、図6のシーケンス図を用いて、本実施形態に係るアドホックネットワーク制御システム1で実行される処理(アドホックネットワーク制御方法)を説明する。この処理は、複数の移動端末30によってアドホックネットワークN1が構成されている際の処理である。ここでは、特定の移動端末30とアドホックネットワーク制御装置20との処理を説明する。
移動端末30はアドホックネットワークN1を構成しているので、アドホックネットワークN1を構成している別の端末からデータが送信される(S11)と、アドホックネットワーク機能部31によりデータの中継等のルーティング処理が行われる(S12)。ここで、移動端末30に送信されるデータには、アドホックネットワークN1のために中継等をすべき制御信号も含まれる。ここで、移動端末30が、アドホックネットワーク制御装置20の判断部22における基準値を超える程度の移動速度で(高速)移動を行うものとする。
アドホックネットワーク制御装置20では、計測部21により、移動端末30の移動速度が計測される(S13、計測ステップ)。計測された移動速度を示す情報は、判断部22に出力される。判断部22によって、その情報が受け取られ、移動速度が基準値を超えているか否かが判断される(S14、判断ステップ)。判断結果は、判断部22から送信部23に通知される。
送信部23では、当該判断結果が参照される。ここでは移動速度が基準値を超えているので送信部23から移動端末30に対してルーティング機能を停止する制御信号が送信される(S15、送信ステップ)。なお、移動速度が基準値を超えていない場合には、制御信号は送信されない。
当該制御信号がアドホックネットワーク制御装置20から送信された移動端末30では、受信部32により制御信号が受信される(S15、受信ステップ)。制御信号は、受信部32から制御部33に出力される。この制御信号に基づいて、制御部33からアドホックネットワーク機能部31に対して、ルーティング機能を停止する制御が行われる(S16、制御ステップ)。具体的には、アドホックネットワークN1のための、制御信号を含むデータの中継が禁止される。更には、制御信号が、データの中継だけでなく、移動端末30自身のデータの送受信を行うことも禁止するものである場合、そのような制御も行われる。この制御により、移動端末30は、一切のデータ(パケット)の送受信を許容しない状態となる。移動速度が基準値を超えており、移動端末30がアドホックネットワークN1において不安定なノードになるおそれがあるためである。
これにより、アドホックネットワークN1において、移動端末30に係るデータの中継及び送受信が行われない状態となる。従って、他端末から移動端末30に対してデータの送信が行われても(S17)、移動端末30による、当該データに対して中継等の処理は行われず、当該データは破棄される。なお、ルーティングが停止された移動端末10が、アドホックネットワークN1において既にルートを形成していた場合は、上述したようにそのルートは切断され、他端末間で必要に応じてリルート処理が実施される。
ここで移動端末30が、アドホックネットワーク制御装置20の判断部22における基準値を超えない程度の移動速度で(低速)移動を行うものとする。アドホックネットワーク制御装置20では、計測部21により、移動端末30の移動速度が計測される(S18、計測ステップ)。計測された移動速度を示す情報は、判断部22に出力される。判断部22によって、その情報が受け取られ、移動速度が基準値を超えているか否かが判断される(S19、判断ステップ)。判断結果は、判断部22から送信部23に通知される。
送信部23では、当該判断結果が参照される。ここでは移動速度が基準値を超えていないので送信部23から移動端末30に対してルーティング機能を再開する制御信号が送信される(S20、送信ステップ)。なお、移動速度が基準値を超えている場合には、制御信号は送信されない。
当該制御信号がアドホックネットワーク制御装置20から送信された移動端末30では、受信部32が制御信号を受信する(S20、受信ステップ)。制御信号は、受信部32から制御部33に出力される。この制御信号に基づいて、制御部33からアドホックネットワーク機能部31に対して、ルーティング機能を再開する制御が行われる(S21、制御ステップ)。具体的には、アドホックネットワークN1のための、制御信号を含むデータの中継、及び移動端末30自身のデータの送受信を行うことが再開される。移動速度が基準値を超えない状態となったので、移動端末10がアドホックネットワークN1において不安定なノードになるおそれがないので、機能を停止する必要がないためである。
ルーティング機能が再開されたので移動端末30は、アドホックネットワークN1を構成している別の端末からデータが送信される(S22)と、アドホックネットワーク機能部31によりデータの中継等のルーティング処理が行われる(S23)。
上述したように、本実施形態によれば、アドホックネットワーク制御装置20によりルーティング機能を制御する態様であっても、アドホックネットワークN1では、所定の基準値を超える移動速度で移動している移動端末10を含むルートが形成されることがなく、ルートの通信品質が向上する。また、ルートとして選択されることがない移動端末10により制御信号が中継されることがないので、ルーティングの際の当該制御信号による無駄な処理負荷増加や無線資源利用を防止することができる。
更に、本実施形態によれば、移動端末30において、移動速度の基準値との比較等の処理を行う必要がないので、移動端末30における従来の機能からの追加を少なくすることができ、本発明の実施を容易に行うことができる。
また、本実施形態のように、移動端末30の移動速度をアドホックネットワーク制御装置20において計測することとすれば、移動端末30において計測を行う必要がないので、本発明の実施をより容易に行うことができる。
なお、本実施形態において、アドホックネットワーク制御装置20における制御対処となる移動端末30は、アドホックネットワークN1を構成するすべての移動端末である必要はなく、一部の移動端末のみを制御対象としてもよい。
[第3実施形態]
上述した2つの実施形態では、移動端末10,30の移動速度が所定の基準値を超えていた場合、当該移動端末10,30に対して一律にアドホックネットワークN1のためのデータの中継を禁止する制御を行っていた。データの中継の禁止の制御が行われると、制御対象の移動端末10,30は他の移動端末との電波が送受信できる範囲に存在しており継続して中継動作を行うことが可能であっても、ルーティング動作を停止し中継動作を終了してしまう。これにより、アドホックネットワークN1では、当該制御対象の移動端末10,30を含むルートでデータを送信していた移動端末におけるルート探索処理を誘発してしまうおそれがある。本実施形態では、上記に対処するための構成を、第1実施形態及び第2実施形態の変形例として示す。
まず、第1実施形態の変形例を説明する。本実施形態では、図1に示す移動端末10において、制御部14は、アドホックネットワーク機能部11に対してデータの中継を禁止する制御を行う際に、まず、自端末10がアドホックネットワークN1のためのデータの中継を行っているか否かを判断する。即ち、制御部14は、判断部13により自端末10の移動速度が所定の基準値を超えていると判断された場合に、上記の判断を行う。具体的には、アドホックネットワーク機能部11に対して、中継を行っているか否かの問い合わせ(中継動作中確認)を行うことにより、制御部14は、上記の判断を行う。
制御部14は、アドホックネットワーク機能部11がその時点でデータの中継を行っていると判断した場合、アドホックネットワーク機能部11に対して、当該データの中継のみを継続させる制御を行う。また、その場合、制御部14は、アドホックネットワーク機能部11に対して、新規のルートの受付、及び自端末10自身のデータの送出を禁止する制御を行う。一方、制御部14は、データの中継を行っていないと判断した場合は、アドホックネットワーク機能部11に対して、アドホックネットワークN1のノードとして全てのデータの中継を禁止する制御を行う。
アドホックネットワーク機能部11は、制御部14から中継動作中確認が行われると、自端末10がデータを中継するルートに含まれている旨の情報を自身が保持しているか否かによって中継を行っているかを判断する。アドホックネットワーク機能部11は、判断結果を制御部14に、中継動作中確認応答として通知する。
アドホックネットワーク機能部11は、制御部14からデータの中継のみを継続させる制御が行われた場合は、データの中継を継続する。具体的には、アドホックネットワーク機能部11は、自身が保持する情報により特定されるルートにより送信されるデータを受信した場合は、当該データを当該ルートに応じて中継する。また、その場合、アドホックネットワーク機能部11には、制御部14から新規のルートの受付、及び自端末10自身のデータの送出を禁止する制御が行われる。具体的には、アドホックネットワーク機能部11は、上述した実施形態と同様に、ルーティングを行う制御信号を受信した場合、ルーティングの処理を行わない。
引き続いて、図7のフローチャートを用いて、本実施形態に係る移動端末10で実行される処理(アドホックネットワーク制御方法)を、制御部14による制御の判断の処理を中心に説明する。この処理は、上述した実施形態と同様に、移動端末10がアドホックネットワークN1を構成している際の処理である。
まず、移動端末10では、計測部12により、自端末10の移動速度が計測される(S31、計測ステップ)。計測された移動速度を示す情報は、判断部13に出力される。判断部13によって、その情報が受け取られ、移動速度が基準値を超えているか否かが判断される(S32、判断ステップ)。判断結果は、判断部13から制御部14に通知される。
制御部14では、当該判断結果が参照され、移動速度が基準値を超えていた場合は以下の処理が行われる。アドホックネットワーク機能部11のルーティング機能が動作していた場合には、制御部34によって、自端末10がアドホックネットワークN1のためのデータの中継を行っているか否かが判断される(S33,S34、制御ステップ)。この判断は、上述したようにアドホックネットワーク機能部11に対して中継動作中確認がなされることにより、行われる。
中継動作中であると判断された場合は、制御部14からにアドホックネットワーク機能部11に対して、データの中継のみを継続させる制御が行われる(S35、制御ステップ)。この制御により、アドホックネットワーク機能部11は、データの中継を行うが、新規のルートの受付、及び自端末10自身のデータの送出を行わない状態となる。
上記において、中継動作中でないと判断された場合は、上述した実施形態と同様に、制御部14からアドホックネットワーク機能部11に対して、ルーティング機能を停止する制御が行われる(S36、制御ステップ)。具体的には、アドホックネットワークN1のための、制御信号を含むデータの中継が禁止される。更には、中継だけでなく、移動端末10自身のデータの送受信を行うことも禁止されることが好ましい。
一方、制御部14からアドホックネットワーク機能部11に対して上記の制御が行われており、アドホックネットワーク機能部11のルーティング機能が動作していない場合には、上述した実施形態と同様に、制御部14からアドホックネットワーク機能部11への制御は特に行われず処理が終了する(S33、制御ステップ)。
また、制御部14において、判断部13による判断結果が参照され、移動速度が基準値を超えていない場合は、上述した実施形態と同様に、以下の処理が行われる。即ち、アドホックネットワーク機能部11のルーティング機能が動作していた場合には、制御部14からアドホックネットワーク機能部11への制御は特に行われず処理が終了する(S37、制御ステップ)。また、制御部14からアドホックネットワーク機能部11に対して上記の制御が行われており、アドホックネットワーク機能部11のルーティング機能が動作していない場合には、制御部14からアドホックネットワーク機能部11に対して、ルーティング機能を再開する制御が行われる(S37,S38、制御ステップ)。
引き続いて、図8のシーケンス図を用いて、本実施形態に係る移動端末10で実行される処理(アドホックネットワーク制御方法)を説明する。この処理は、複数の移動端末10によってアドホックネットワークN1が構成されている際の処理である。ここでは、特定の移動端末10の処理を説明する。
移動端末10はアドホックネットワークN1を構成しているので、アドホックネットワークN1を構成している別の端末からデータが送信される(S41,42)と、アドホックネットワーク機能部11によりデータの中継等のルーティング処理が行われる(S43)。ここで、移動端末10に送信されるデータには、アドホックネットワークN1のために中継等をすべき制御信号も含まれる。ここで、移動端末10が、判断部13における基準値を超える程度の移動速度で(高速)移動を行うものとする。
続いて、計測部12により、移動端末10の移動速度が計測される(S44、計測ステップ)。計測された移動速度を示す情報は、判断部13に出力される(S45)。判断部13によって、その情報が受け取られ、移動速度が基準値を超えているか否かが判断される(S46、判断ステップ)。判断結果は、判断部13から制御部14に通知される。
続いて、制御部14からアドホックネットワーク機能部11に、中継動作中確認が行われることにより、自端末10がアドホックネットワークN1のためのデータの中継を行っているか否かが判断される。(S47、制御ステップ)。続いて、アドホックネットワーク機能部11によって、制御部14から中継動作中確認が行われると、自身がデータの中継を行っているか(データの中継動作中)かが判断され、判断結果が制御部14に中継動作中確認応答として通知される(S48)。
ここでは、移動端末10(のアドホックネットワーク機能部11)はアドホックネットワークN1のためのデータの中継を行っているものとする。この場合、制御部14によって自端末10がデータの中継を行っていると判断されて、制御部14からアドホックネットワーク機能部11に、データの中継のみを継続させる制御が行われる。即ち、アドホックネットワーク機能部11には、新規のルートの受付、及び自端末10自身のデータの送出を禁止する制御が行われる。これらの制御は、制御部14からアドホックネットワーク機能部11に対して、上記のように一部機能を停止させる命令により行われる(S49、制御ステップ)。
アドホックネットワーク機能部11では、この命令に基づいて、一部のルーティング機能が停止され(S50、制御ステップ)、移動端末10では、既に確立されているルートにより送信されたデータのみが中継されることとなる。
この後、他端末から移動端末10にデータが送信される(S51,S52)と、移動端末10ではデータに応じて以下の処理が行われる(S53)。即ち、アドホックネットワーク機能部11では、他端末から送信されたデータが受信されて、当該データが中継を行っているデータに係るものであるか否かが判断される。当該判断は、当該データが、アドホックネットワーク機能部11が保持する情報により特定されるルートにより送信されるデータであるかどうかにより判断される。受信されたデータが中継を行っているデータに係るものであった場合は、アドホックネットワーク機能部11によりデータは中継される。受信されたデータが、それ以外のデータであった場合は、アドホックネットワーク機能部11によるデータの中継は行われない。
続いて、移動端末10では、再度、計測部12により、移動端末10の移動速度が計測される(S54、計測ステップ)。計測された移動速度を示す情報は、判断部13に出力される(S55)。判断部13によって、その情報が受け取られ、移動速度が基準値を超えているか否かが判断される(S56、判断ステップ)。判断結果は、判断部13から制御部14に通知される。ここで、移動端末10は、依然として高速移動を続けているものとする。
続いて、上述した処理と同様に、制御部14からアドホックネットワーク機能部11に、中継動作中確認が行われることにより、自端末10がアドホックネットワークN1のためのデータの中継を行っているか否かが判断される。(S57、制御ステップ)。続いて、アドホックネットワーク機能部11によって、制御部14から中継動作中確認が行われると、自身がデータの中継を行っているか(データの中継動作中)かが判断され、判断結果が制御部14に中継動作中確認応答として通知される(S58)。
ここでは、移動端末10(のアドホックネットワーク機能部11)はアドホックネットワークN1のためのデータの中継を行っていないものとする。即ち、S53からS57までの間に、タイムアウト等により、移動端末10に係るデータのルートが消滅し、アドホックネットワーク機能部11が、自端末10がデータを中継するルートに含まれている旨の情報を保持してない状態となっているものとする。
この場合、制御部14によって自端末10がデータの中継を行っていないと判断されて、第1実施形態と同様に、制御部14からアドホックネットワーク機能部11に、ルーティング機能を停止させる制御が行われる。この制御は、制御部14からアドホックネットワーク機能部11に対して、ルーティング機能を停止させる命令により行われる(S59、制御ステップ)。
これにより、アドホックネットワークN1において、移動端末10に係るデータの中継及び送受信が行われない状態となる(S60、制御ステップ)。従って、他端末から移動端末10に対してデータの送信が行われても(S61,S62)、移動端末10による、当該データに対して中継等の処理は行われず、当該データは破棄される。
上述した構成によれば、移動端末10を含むルートでデータの送信が行われており、移動端末10の移動速度が速くなった場合にルーティング機能の制御が行われた場合であっても、ルーティング機能の制御に起因するルート探索処理(リルート処理)を誘発してしまうことを防ぐことができる。
まず、引き続いて第2実施形態の変形例を説明する。本実施形態では、図4に示すアドホックネットワーク制御システム1において、アドホックネットワーク制御装置20の送信部23は、移動端末30に対してデータの中継を禁止する制御信号を送信する際に、まず、移動端末30がアドホックネットワークN1のためのデータの中継を行っているか否かを判断する。即ち、送信部23は、判断部22により移動端末30の移動速度が所定の基準値を超えていると判断された場合に、上記の判断を行う。具体的には、移動端末30に対して、中継を行っているか否かの問い合わせ(中継動作中確認)を行うことにより、送信部23は、上記の判断を行う。
送信部23は、移動端末30がその時点でデータの中継を行っていると判断した場合、移動端末30に対して、当該データの中継のみを継続させる制御信号を送信する。また、その場合の制御信号は、移動端末30に対して、新規のルートの受付、及び移動端末30自身のデータの送出を禁止するものでもある。一方、送信部23は、移動端末30がデータの中継を行っていないと判断した場合は、第2実施形態と同様に、移動端末30に対して、アドホックネットワークN1のノードとして全てのデータの中継を禁止する制御信号を送信する。
移動端末30では、アドホックネットワーク制御装置20から中継動作中確認が行われると、アドホックネットワーク機能部31が、自端末10がデータを中継するルートに含まれている旨の情報を自身が保持しているか否かによって中継を行っているかを判断する。アドホックネットワーク機能部31は、判断結果をアドホックネットワーク制御装置20に、中継動作中確認応答として通知する。
移動端末30では、アドホックネットワーク制御装置20からデータの中継のみを継続させる制御信号が送信された場合には、受信部32が当該制御信号を受信し、制御部33に出力する。制御部33は、当該制御信号に基づいて、アドホックネットワーク機能部31を制御する。即ち、アドホックネットワーク機能部31は、データの中継を継続する。具体的には、アドホックネットワーク機能部31は、自身が保持する情報により特定されるルートにより送信されるデータを受信した場合は、当該データを当該ルートに応じて中継する。また、その場合、アドホックネットワーク機能部31には、制御部33から、制御信号に基づく新規のルートの受付、及び移動端末30自身のデータの送出を禁止する制御が行われる。具体的には、アドホックネットワーク機能部31は、上述した実施形態と同様に、ルーティングを行う制御信号を受信した場合、ルーティングの処理を行わない。
引き続いて、図9のシーケンス図を用いて、本実施形態に係るアドホックネットワーク制御システム1で実行される処理(アドホックネットワーク制御方法)を説明する。この処理は、複数の移動端末10によってアドホックネットワークN1が構成されている際の処理である。ここでは、特定の移動端末30とアドホックネットワーク制御装置20との処理を説明する。
移動端末30はアドホックネットワークN1を構成しているので、アドホックネットワークN1を構成している別の端末からデータが送信される(S71,72)と、アドホックネットワーク機能部31によりデータの中継等のルーティング処理が行われる(S43)。ここで、移動端末30に送信されるデータには、アドホックネットワークN1のために中継等をすべき制御信号も含まれる。ここで、移動端末30が、アドホックネットワーク制御装置20の判断部22における基準値を超える程度の移動速度で(高速)移動を行うものとする。
アドホックネットワーク制御装置20では、計測部21により、移動端末30の移動速度が計測される(S74、計測ステップ)。計測された移動速度を示す情報は、判断部22に出力される。判断部22によって、その情報が受け取られ、移動速度が基準値を超えているか否かが判断される(S75、判断ステップ)。判断結果は、判断部22から送信部23に通知される。
続いて、送信部23から移動端末30に、中継動作中確認が行われることにより、移動端末30がアドホックネットワークN1のためのデータの中継を行っているか否かが判断される。(S76、送信ステップ)。送信部23から中継動作中確認が行われると、移動端末30では、アドホックネットワーク機能部31によって、自身がデータの中継を行っているか(データの中継動作中)かが判断され、判断結果がアドホックネットワーク制御装置20に中継動作中確認応答として通知される(S77)。
ここでは、移動端末30(のアドホックネットワーク機能部31)はアドホックネットワークN1のためのデータの中継を行っているものとする。この場合、アドホックネットワーク制御装置20の送信部23によって移動端末30がデータの中継を行っていると判断されて、送信部23から移動端末30に、データの中継のみを継続させる制御信号(一部機能停止の制御信号)が送信される(S78、送信ステップ)。移動端末30では、受信部32により制御信号が受信される(S78、受信ステップ)。
制御信号は、受信部32から制御部33に出力される。この制御信号に基づいて、制御部33からアドホックネットワーク機能部31に対して、データの中継のみを継続させる制御が行われる。即ち、アドホックネットワーク機能部31には、新規のルートの受付、及び移動端末30自身のデータの送出を禁止する制御が行われる。これらの制御は、制御部33からアドホックネットワーク機能部31に対して、上記のように一部機能を停止させる命令により行われる(S79、制御ステップ)。
アドホックネットワーク機能部31では、この命令に基づいて、一部のルーティング機能が停止され(S80、制御ステップ)、移動端末30では、既に確立されているルートにより送信されたデータのみが中継されることとなる。
この後、他端末から移動端末30にデータが送信される(S81,S82)と、移動端末30ではデータに応じて以下の処理が行われる(S83)。即ち、アドホックネットワーク機能部31では、他端末から送信されたデータが受信されて、当該データが中継を行っているデータに係るものであるか否かが判断される。当該判断は、当該データが、アドホックネットワーク機能部31が保持する情報により特定されるルートにより送信されるデータであるかどうかにより判断される。受信されたデータが中継を行っているデータに係るものであった場合は、アドホックネットワーク機能部31によりデータは中継される。受信されたデータが、それ以外のデータであった場合は、アドホックネットワーク機能部31によるデータの中継は行われない。
続いて、アドホックネットワーク制御装置20では、再度、計測部21により、移動端末30の移動速度が計測される(S84、計測ステップ)。計測された移動速度を示す情報は、判断部22に出力される。判断部22によって、その情報が受け取られ、移動速度が基準値を超えているか否かが判断される(S75、判断ステップ)。判断結果は、判断部22から送信部23に通知される。ここで、移動端末30は、依然として高速移動を続けているものとする。
続いて、上述した処理と同様に、アドホックネットワーク制御装置20の送信部23から移動端末30に、中継動作中確認が行われることにより、移動端末30がアドホックネットワークN1のためのデータの中継を行っているか否かが判断される。(S86、送信ステップ)。続いて、移動端末30では、アドホックネットワーク機能部31によって、アドホックネットワーク制御装置20から中継動作中確認が行われると、自身がデータの中継を行っているか(データの中継動作中)かが判断され、判断結果がアドホックネットワーク制御装置20に中継動作中確認応答として通知される(S87)。
ここでは、移動端末30(のアドホックネットワーク機能部31)はアドホックネットワークN1のためのデータの中継を行っていないものとする。即ち、S83からS86までの間に、タイムアウト等により、移動端末30に係るデータのルートが消滅し、アドホックネットワーク機能部31が、自端末30がデータを中継するルートに含まれている旨の情報を保持してない状態となっているものとする。
この場合、送信部23によって移動端末30がデータの中継を行っていないと判断されて、第2実施形態と同様に、送信部23から移動端末30に、ルーティング機能を停止させる制御信号(機能停止の制御信号)が送信される(S88、送信ステップ)。移動端末30では、受信部32により制御信号が受信される(S88、受信ステップ)。
制御信号は、受信部32から制御部33に出力される。この制御信号に基づいて、制御部33からアドホックネットワーク機能部31に対して、ルーティング機能を停止させる命令により行われる(S89、制御ステップ)。
これにより、アドホックネットワークN1において、移動端末30に係るデータの中継及び送受信が行われない状態となる(S90、制御ステップ)。従って、他端末から移動端末30に対してデータの送信が行われても(S91,S92)、移動端末30による、当該データに対して中継等の処理は行われず、当該データは破棄される。
上述した構成によれば、移動端末30を含むルートでデータの送信が行われており、移動端末30の移動速度が速くなった場合にルーティング機能の制御が行われた場合であっても、ルーティング機能の制御に起因するルート探索処理(リルート処理)を誘発してしまうことを防ぐことができる。