JP2008058194A - ウエストナイルウイルス感染の鑑別方法 - Google Patents

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【課題】ウエストナイルウイルス(WNV)感染の鑑別方法であって、特に、ウエストナイルウイルス(WNV)感染と日本脳炎ウイルス(JEV)感染との鑑別方法を提供すること。
【解決手段】本発明のウエストナイルウイルス(WNV)感染の鑑別方法は、WNVタンパク質を特異的に認識し、かつ、日本脳炎ウイルス(JEV)のタンパク質とは交差反応しない抗体を用いてWNV感染を鑑別する方法であって、好ましい態様の1つは、WNVの非構造タンパク質の1つであるWNV−NS1を特異的に認識する抗WNV−NS1抗体を用いて、血清検体に含まれるWNV−NS1、および、血清検体に含まれる抗WNV−NS1抗体の少なくとも一方を測定することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、ウエストナイルウイルス感染の鑑別方法に関し、より詳細には、ウエストナイルウイルス感染と日本脳炎ウイルス感染とを鑑別する方法に関する。
ウエストナイルウイルス(以下、「WNV」という。)は、フラビウイルス属の+鎖RNAウイルスであり、日本脳炎ウイルス(以下、「JEV」という。)、マレー渓谷脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルスと共に日本脳炎血清グループに分類されている。WNVは、ヒトやウマに感染すると、発熱、髄膜炎、脳炎等を発症することが知られており、1999年には、米国に侵入して急速に流行域を拡大した(非特許文献1)。現在、日本国内においてWNV感染は確認されていないが、侵入が危惧されている。他方、同じフラビウイルス属であるJEVは日本において土着しており、ヒトやウマはJEVに対する免疫を有している。
今後、わが国へのWNVの侵入が想定されることから、WNV感染の鑑別方法の早期確立が求められている。しかし、WNVはJEVと同属であることから、鑑別方法の確立には次のような問題がある。すなわち、WNVとJEVは近縁であり、血清学的交差性が高いため、従来の中和試験や赤血球凝集抑制試験では、両者の感染を鑑別することが困難であるという問題である。より具体的に説明すれば、ほとんどの日本人はJEVに対する免疫を有するため、WNVに感染すると、交差性の日本脳炎に対する抗体が二次免疫応答により高く上昇することが考えられる。このため、特異性が高いとされる中和試験においても、WNVに対する抗体レベルと同等となり、WNV感染を証明することが困難な場合が予想される。
Clin Infect Dis 33: 1713-1719, 2001
そこで、本発明は、ウエストナイルウイルス(WNV)感染の鑑別方法であって、より詳細には、WNV感染とJEV感染とを鑑別する方法の提供を目的とする。
本発明のウエストナイルウイルス(WNV)感染の鑑別方法は、WNVタンパク質を特異的に認識し、かつ、日本脳炎ウイルス(JEV)のタンパク質とは交差反応しない抗体を用いてWNV感染を鑑別する方法であって、好ましい態様の1つは、WNVの非構造タンパク質の1つであるWNV−NS1を特異的に認識する抗WNV−NS1抗体を用いて、血清検体に含まれるWNV−NS1、および、血清検体に含まれる抗WNV−NS1抗体の少なくとも一方を測定することを特徴とする。
本発明において、「血清検体に含まれるWNV−NS1」とは、WNV感染により生体の血中に放出された感染WNV由来のNS1を意味し、「血清検体に含まれる抗WNV−NS1抗体」とは、WNV感染により生体において誘導され、血中に存在する抗WNV−NS1抗体を意味する。また、「WNV−NS1を特異的に認識する抗WNV−NS1抗体」とは、本発明の鑑別方法に使用される抗体をいい、後述の2H4抗体などが例示される。
WNVが属するフラビウイルスは、そのゲノムが3種の構造タンパク質(C、prMおよびE)と7種の非構造タンパク質(NS1、NS2A、NS2B、NS3、NS4A、NS4BおよびNS5)とをコードしている。このうち、非構造タンパク質の中でNS1は、生体へのWNV感染によって血中に多く放出され、抗NS1抗体が誘導されやすいのではないかと考え、本発明者は、血清検体に含まれるWNV−NS1抗原もしくは抗WNV−NS1抗体の検出・測定によって、WNV感染を高精度に鑑別できることを見出した。
また、非構造タンパク質に着目することによって、将来ウエストナイル(WN)ワクチンが導入された場合にもWNV感染を高精度に鑑別・診断することが可能である。すなわち、WNワクチンは精製不活化ワクチンであり、ワクチンの接種により生体内に誘導されるのは構造タンパク質に対する抗体のみである。一方、WNVに感染した場合には、ワクチン接種とは異なり、構造タンパク質に対する抗体に加えて非構造タンパク質に対する抗体も誘導される。このため、ワクチン接種では誘導されない非構造タンパク質に対する抗体を検出すれば、ワクチン接種された生体であるか、WNV感染した生体であるかを鑑別することができる。
このことから、本発明の鑑別方法における、特に抗体を標的とした鑑別方法において、WNVタンパク質のうち特に非構造タンパク質(上記7種のいずれか)を特異的に認識する抗体を用いて、血清検体に含まれるWNV非構造タンパク質に対する抗体を測定する方法は、好ましい方法である。
抗NS1抗体を用いた本発明のWNV鑑別方法によれば、WNV感染の有無を調べたい生体の血清検体について、WNV−NS1を特異的に認識する抗WNV−NS1抗体を使用することにより、血清検体に含まれるWNV−NS1抗原または抗WNV−NS1抗体の有無と量を検出・測定できる。また、WNV−NS1を特異的に認識する抗体を使用するため、同じフラビウイルス属であるJEV感染と区別してWNV感染を鑑別できる。前述のように、従来の中和試験等によると、検出結果が陽性であっても、WNV陽性であるかJEV陽性であるかの判別が困難であり、JEV感染による偽陽性の割合が多く生じることが予想される。しかし、本発明によれば、WNV感染のみを鑑別できるため、わが国のようにJEVが土着する場合でも、JEVの影響を受けることなくWNV感染の検出が可能である。また、血清中のWNV−NS1抗原と抗WNV−NS1抗体の測定は、それぞれ急性期と回復期におけるWNV感染の診断や、WNV侵入後のWNV浸潤状況の監視も可能となる。このため、本発明の鑑別方法は、WNVの侵入の有無に関する疫学調査に利用可能であり、その他検査・臨床分野において非常に有用な方法といえる。
本発明者はこれまでに、JEV由来のNS1(以下、「JEV−NS1」という。)を標的として、抗JEV−NS1抗体測定法によるJEV自然感染の検査方法を確立している(J Clin Microbiol 42: 5087-5093, 2004)。このJEV感染の検査方法と、本発明のWNV鑑別方法とを組み合わせることによって、WNV感染とJEV感染との鑑別を更に精度良く行うことが可能である。
本発明の鑑別方法の好ましい態様の1つは、前述のように、WNV−NS1を特異的に認識する抗WNV−NS1抗体を用いて、血清中のWNV−NS1または抗WNV−NS1抗体を測定すればよく、その他の条件は何ら制限されない。
本発明の鑑別方法に使用される抗WNV−NS1抗体について、その作製に使用する抗原、作製方法、性質等を以下に説明する。
(1)抗体作製用抗原
抗体作製のための抗原としては、例えば、WNVのEg101株(Complete genome:GenbankアクセッションNo.AF260968)由来のNS1の全長を使用してもよいし、その部分配列からなるペプチドを用いてもよい。
上記抗原は、例えば、(a)WNVを感染させた宿主の組織や細胞から調製する、(b)ペプチドシンセサイザー等を使用する公知のペプチド合成方法で化学的に合成する、または、(c)上記抗原をコードするDNAを含有する形質転換体を培養する、こと等によって製造できる。
(a)上記抗原を、WNVを感染させた宿主の組織や細胞から調製する場合は、その組織や細胞をホモジナイズした後、酸またはアルコール等で抽出を行い、得られた抽出液を、例えば、塩析、透析、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィーを組み合わせて精製単離することによって調製できる。
(b)上記抗原を化学的に合成する場合は、例えば、目的のアミノ酸配列からエピトープ領域と推定される10〜20個程度のアミノ酸配列を決定して、ペプチドを合成すればよい。エピトープ領域は、例えば、Kite & Doolittleの方法により親水性領域を予測すること等によって推定できる。
(c)上記抗原をコードするDNAを含有する形質転換体を用いて製造する場合、DNAは、公知のクローニング方法(例えば、Molecular Cloning(2nd ed.;J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)参照)に従って作製できる。
上記ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれでもよい。すなわち、目的のペプチドを構成し得る部分ペプチドまたはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合には、保護基の脱離によって目的ペプチドを製造できる。縮合方法や保護基の脱離方法としては、例えば、(i)M. Bodanszky & M.A. Ondetti、Peptide Synthesis, Interscience Publishers, New York (1966)、または、(ii)Schroeder & Luebke、The Peptide, Academic Press, New York (1965)等に記載されている公知の方法があげられる。
化学合成の反応後は、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶等の通常の精製法を組み合わせることにより、目的の抗原を精製単離できる。このような方法で得られるペプチドが遊離体である場合は、例えば、公知の方法によって適当な塩に変換でき、他方、ペプチドが塩である場合は、例えば、公知の方法によって遊離体に変換することもできる。
ペプチドのアミド体は、例えば、アミド形成に適した市販のペプチド合成用樹脂を使用することにより調製できる。前記樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2',4'−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2',4'−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂等があげられる。このような樹脂を用いて、α−アミノ基と側鎖官能基とを適当に保護したアミノ酸を、目的とするペプチドの配列通りに、公知の各種縮合方法に従って、前記樹脂上で縮合させる。そして、反応の最後に前記樹脂からペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、目的のペプチドを取得すればよい。もしくは、クロロトリチル樹脂、オキシム樹脂、4−ヒドロキシ安息香酸系樹脂等を用い、部分的に保護したペプチドを取り出し、さらに、常套手段で保護基を除去することによって目的のペプチドを得ることもできる。
保護されたアミノ酸の縮合に関しては、例えば、ペプチド合成に使用できる各種活性化試薬が用いられるが、中でもカルボジイミド類が好ましい。前記カルボジイミド類としては、例えば、DCC、N,N'−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N'−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミド等が例示される。各種活性化試薬による活性化には、ラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBtなど)とともに保護されたアミノ酸を直接樹脂に添加するか、または、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとして予め保護されたアミノ酸の活性化を行った後、前記樹脂に添加してもよい。
保護されたアミノ酸の活性化や前記樹脂との縮合に使用する溶媒としては、例えば、ペプチド縮合反応に使用可能な溶媒から適宜選択できる。前記溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の酸アミド類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノール等のアルコール類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、ピリジン等の三級アミン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、または、これらの適当な混合物等が例示される。反応温度は、特に制限されず、ペプチド結合形成反応において一般に設定される温度範囲から適宜選択でき、例えば、約−20℃〜約50℃の範囲である。
活性化されたアミノ酸誘導体は、通常、約1.5倍〜約4倍の過剰量で使用される。縮合が不十分な場合には、保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことによって、十分な縮合を行うことができ、また、反応を繰り返しても十分な縮合が得られない場合には、例えば、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化して、後の反応への影響を抑制することも可能である。
前記原料アミノ酸のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmoc等があげられる。カルボキシル基の保護基としては、例えば、C1−6アルキル基、C3−8シクロアルキル基、C7−14アラルキル基、2−アダマンチル、4−ニトロベンジル、4−メトキシベンジル、4−クロロベンジル、フェナシル基、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド、トリチルヒドラジド等があげられる。
セリンおよびスレオニンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護できる。このエステル化に適した基としては、例えば、アセチル基等の低級(C1−6)アルカノイル基、ベンゾイル基等のアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭酸から誘導される基等が挙げられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、ターシャリーブチル基等があげられる。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、ターシャリーブチル等があげられる。ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、Bom、Bum、Boc、Trt、Fmoc等があげられる。
原料のカルボキシル基が活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル[アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル]等があげられる。原料のアミノ基が活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドがあげられる。
保護基の除去方法(脱離方法)としては、例えば、Pd−炭素等の触媒存在下における水素気流中での接触還元、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸またはこれらの混合液等による酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジン等による塩基処理、液体アンモニア中におけるナトリウムによる還元等もあげられる。
前記酸処理による脱離反応は、一般に、−20℃〜40℃の温度で行われるが、酸処理においては、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基は、例えば、チオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は、例えば、前記1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオール等の存在下における酸処理による脱保護の他に、希水酸化ナトリウム、希アンモニア等によるアルカリ処理でも除去できる。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護および保護基、ならびにその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化等は、公知の基あるいは公知の手段から適当に選択できる。
ペプチドのアミド体を得る他の方法としては、まず、カルボキシル末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化した後、アミノ基側にペプチド鎖を所定の鎖長まで延ばす。そして、当該ペプチド鎖のN末端α−アミノ基の保護基のみを除いたペプチドと、C末端カルボキシル基の保護基のみを除いたペプチド(またはアミノ酸)とを製造し、この両ペプチドを前述の混合溶媒中で縮合させる方法があげられる。縮合反応の詳細については前述と同様である。縮合により得られた保護ペプチドを精製した後、前記方法で全ての保護基を除去することによって、所定の粗ペプチドを得ることができる。この粗ペプチドは、既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで、所定のペプチドのアミド体を得ることができる。
ペプチドのエステル体を得るには、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所定のアルコール類と縮合してアミノ酸エステルとした後、ペプチドのアミド体と同様にして所定のペプチドのエステル体を得ることができる。
前記抗原は、例えば、不溶化したものを直接免疫に使用してもよいし、適当な担体に結合または吸着させた複合体として免疫に使用してもよい。前記担体(キャリアー)と抗原(ハプテン)との混合比は、担体に結合あるいは吸着させた抗原に対して抗体が効率よく反応できれば、如何なるものを如何なる比率で結合あるいは吸着させてもよい。例えば、ハプテンに対する抗体の作製にあたり常用されている高分子担体を、例えば、ハプテン1に対し0.1〜100の割合(重量比)で使用することができる。このような高分子担体としては、天然の高分子担体や合成の高分子担体があげられる。天然の高分子担体としては、例えば、ウシ、ウサギ、ヒト等の哺乳動物の血清アルブミンや、例えば、ウシ、ウサギ等の哺乳動物のチログロブリン、例えば、ウシ、ウサギ、ヒト、ヒツジ等の哺乳動物のヘモグロビン、KHLヘモシアニン等が使用できる。
前記高分子担体としては、例えば、ポリアミノ酸類、ポリスチレン類、ポリアクリル類、ポリビニル類、ポリプロピレン類等の重合物、または、各種ラテックス等が使用できる。また、ハプテンとキャリアーとのカップリングには、種々の縮合剤を用いることができ、前記縮合剤としては、例えば、チロシン、ヒスチジン、トリプトファンを架橋するビスジアゾ化ベンジジン等のジアゾニウム化合物、アミノ基同士を架橋するグルタルアルデビト等のジアルデヒド化合物、トルエン−2,4−ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、チオール基同士を架橋するN,N'-o-フェニレンジマレイミド等のジマレイミド化合物、アミノ基とチオール基を架橋するマレイミド活性エステル化合物、アミノ基とカルボキシル基とを架橋するカルボジイミド化合物等が用いられる。また、アミノ基同士を架橋する際にも、一方のアミノ基にジチオピリジル基を有する活性エステル試薬(例えば、SPDP等)を反応させた後、還元することによってチオール基を導入し、他方のアミノ基に、マレイミド活性エステル試薬によってマレイミド基を導入した後、両者を反応させてもよい。
(2)ポリクローナル抗体の作製
前記抗原は、それ自体を単独で、あるいは、担体や希釈剤と共に、各種動物の抗体産生が可能な部位に投与することによって、ポリクローナル抗体を作製できる。前記投与方法としては、例えば、腹腔内注入、静脈注入、皮下注射等があげられる。また、抗原の投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントまたは不完全フロイントアジュバントを投与することもできる。
抗原の投与は、例えば、1回のみでも良いが、通常は、2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。ポリクローナル抗体を作製する動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリなどがあげられる。
血清における前記抗原に対する抗体の抗体価測定は、例えば、液相法(例えば、標識化した抗原と抗血清とを反応させた後、抗体に結合した標識剤の活性を測定する方法)、または、固相法(例えば、96穴プレートの各ウェル内壁面に抗原を固着させておき、ここに適当に希釈した血清溶液を添加し、抗体を抗原に結合させた後、ウェル中の溶液を洗浄することで余分な抗体を除去し、ウェル内壁面に結合した抗体量を測定する方法)によって行われる。
ポリクローナル抗体の分離精製は、例えば、免疫グロブリンの分離精製法(例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例えば、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相またはプロテインAあるいはプロテインG等の活性吸着剤によって抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法など)に従って行われる。
(3)モノクローナル抗体の作製
モノクローナル抗体の作製は、特に制限されないが、例えば、前記抗原を免疫された複数の動物(例えば、マウス)から抗体価の認められた個体を選択し、最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、目的のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを調製できる。
前記融合は、従来公知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法(Nature、256巻、495頁、1975年)に従って行うことができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルス等があげられ、好ましくはPEG等である。骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0、AP−1等があげられ、中でもP3U1が好ましく使用できる。抗体産生細胞(脾臓細胞またはリンパ節細胞)数と骨髄細胞数との比率は、通常、1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくは、PEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、通常、20〜40℃(好ましくは30〜37℃)で1〜10分間のインキュベートにより効率よく細胞融合を行うことができる。
前記抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングは、特に制限されず、従来公知の方法が採用できる。具体例としては、まず、前記抗原またはそれらの部分ペプチドを直接または担体とともに吸着させた固相(例えば、マイクロプレート)に対し、ハイブリドーマ培養上清を添加する。続いて、放射性物質や酵素等で標識した抗免疫グロブリン抗体(例えば、細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が好ましい)またはプロテインAを加え、前記固相に結合した目的のモノクローナル抗体を検出する方法がある。この他にも、例えば、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、さらに放射性物質や酵素等で標識した抗原を加え、前記固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法もあげられる。
モノクローナル抗体のスクリーニングならびに培養は、通常、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した、10〜20%牛胎児血清を含む動物細胞用培地(例えば、RPMI1640)で行われる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、前述の抗血清中の目的抗体の抗体価の測定と同様にして求めることができる。前記抗原に対するモノクローナル抗体の分離精製は、例えば、前述のポリクローナル抗体の分離精製と同様に行うことができる。以上のように、ハイブリドーマ細胞を動物の生体内または生体外で培養し、その体液または培養物から抗体を採取することによって、目的の抗体を製造することができる。
このようにして調製する本発明の抗WNV−NS1抗体は、WNV−NS1に特異的に反応し、JEV−NS1に反応しない抗体であることが好ましい。なお、JEV−NS1に対しては、例えば、実質的に反応しない程度であればよく、WNVの鑑別に影響を与えない範囲、非特異的反応による影響を補正できる範囲等であれば若干の反応が見られてもよい。
次に、本発明のWNV鑑別方法について説明する。本発明のWNV鑑別方法は、前述のように、WNV−NS1を特異的に認識する抗体を用いて、血清検体に含まれるWNV−NS1を測定する第一の方法と、血清検体に含まれる抗WNV−NS1抗体を測定する第二の方法とがある。これらの方法の一例について以下に説明する。
(1)第一のWNV鑑別方法
本発明の第一のWNV鑑別方法において、血清検体に含まれるWNV−NS1の測定方法は、WNV−NS1を特異的に認識する抗体を使用すればよく、その他の条件や工程等は特に制限されない。WNV−NS1を特異的に認識する抗体としては、前述の2H4抗体などがあげられ、例えば、その抗体分子そのものを使用してもよいし、抗体分子のF(ab’)2、Fab’またはFab画分等を用いてもよい。
測定方法の具体例としては、抗原抗体反応を利用した方法があげられる。例えば、WNV−NS1を特異的に認識する抗WNV−NS1抗体を血清検体に添加すると、血清検体中のWNV−NS1と抗WNV−NS1抗体との抗原抗体反応によって抗原抗体複合体が形成される。この抗原抗体複合体の量は、血清検体中のWNV−NS1量に相当するため、抗原抗体複合体の有無または量を検出することによって、血清中のWNV−NS1の有無または量を検出できる。抗原抗体複合体の検出(定性・定量)は、例えば、酵素免疫測定法(例えば、ELISA)、放射線免疫測定法、ラテックス凝集法、金コロイド粒子法等の免疫学的方法が採用できる。
また、血清検体中のWNV−NS1抗原の測定には、例えば、従来公知のサンドイッチ法、競合法等が利用できる。サンドイッチ法の場合は、例えば、
(a1)WNV−NS1を認識する抗体Aを固相化する、
(a2)血清検体を添加して、これに含まれるWNV−NS1と抗体Aとを反応させる、
(a3)WNV−NS1を特異的に認識する抗WNV−NS1抗体を添加して、抗体Aに結合したWNV−NS1と抗WNV−NS1抗体とを反応させる、
(a4)抗WNV−NS1抗体を認識する標識化抗体を添加して、抗WNV−NS1抗体と標識化抗体とを反応させる、そして
(a5)抗WNV−NS1抗体と標識化抗体との反応により形成された抗体複合体を、標識化抗体を利用して検出することにより、血清検体に含まれるWNV−NS1を測定すればよい。
検出方法としては、特に制限されないが、例えば、酵素、放射性同位元素、蛍光物質、発光物質等が用いられる。具体例としては、特に制限されないが、酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリホスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等があげられ、放射性同位元素としては、例えば、125I、131I、3H、14C等、蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等、発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等があげられる。さらに、抗体と標識物質との結合には、例えば、ビオチン−アビジン系の化合物を用いることができる。前記抗原抗体複合体の検出は、前述のように、例えば、前記複合体が有する標識の検出によって行うことができるが、その条件や方法は、何ら制限されず、使用する標識の種類に応じて従来公知の方法(例えば、吸光度測定、反射率測定、蛍光強度測定、発光量測定等)で行うことができる。
本発明の第一のWNV鑑別方法について、ELISAを利用した具体例を以下に示すが、本発明はこれらの例には限定されない。
まず、96穴マイクロプレートにWNV−NS1を認識する抗体Aを固相化する。抗体Aは、血清検体中のWNV−NS1と結合できるものであればよい。すなわち、WNV−NS1を認識できればよいことから、例えば、前述のようにして調製したモノクローナル抗体やポリクローナル抗体を使用してもよいし、WNV−NS1で過剰免疫した動物(例えば、ウサギ等)の血清をそのまま使用することもできる。
次に、この固相化プレートに検出対象の血清検体を添加して、固相化した抗体Aと血清検体中のWNV−NS1抗原とを反応させる。この反応によって、抗体AにWNV−NS1抗原が結合して、抗原抗体複合体が形成される。この反応条件は、特に制限されないが、例えば、温度37℃で2時間、温度4℃で12〜16時間である。なお、以後の抗原抗体反応も同様の条件で行うことができる。
血清検体は、血清成分による検出阻害を避けるため、予め希釈してから添加することが好ましい。血清検体の希釈度は、特に制限されないが、血清(E)と血清検体全量(F)との体積比(E:F)が、例えば、1:2〜1:5であり、好ましくは1:2である。希釈溶媒の種類は、特に制限されず、例えば、水、生理食塩水、緩衝液、緩衝生理食塩水(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)等が使用できる。この希釈溶媒は、さらに、Tween(商品名)等の界面活性剤、ウシ血清アルブミン等のアルブミンを含有してもよい。
続いて、前記固相化プレートに、WNV−NS1を特異的に認識する抗WNV−NS1抗体を添加して、WNV−NS1抗原と反応させる。
さらに、標識化抗体を添加して、上記抗WNV−NS1抗体と結合させる。この標識化抗体としては、抗WNV−NS1抗体と結合できればよいことから、例えば、免疫学的手法において広く使用されている従来公知のIgG抗体等があげられる。
最後に、抗WNV−NS1抗体と標識化抗体との複合体を検出することにより、血清中のWNV−NS1を測定できる。本発明の第一のWNV鑑別方法によるWNV−NS1の検出限界は、特に制限されず、種々の条件設定により変更できるが、例えば、2ng/mlである。
(2)第二のWNV鑑別方法
本発明の第二のWNV鑑別方法において、血清検体に含まれる抗WNV−NS1抗体の測定方法は、WNV−NS1を特異的に認識する抗体を使用すればよく、その他の条件や工程等は特に制限されない。
第二のWNV鑑別方法では、血清中の抗WNV−NS1抗体の測定によりWNV感染を鑑別するが、血清中の抗WNV−NS1抗体は、例えば下記の抗体結合阻害%に基づき、測定することができる。すなわち、血清検体に含まれる抗WNV−NS1抗体によって、鑑別に使用する(2H4などの)抗WNV−NS1抗体と、WNV−NS1抗原との結合が阻害される割合(抗体結合阻害%)を算出し、この割合から血清中の抗WNV−NS1抗体を測定することが可能である。抗体結合阻害%が大きい程、血清検体に相対的に多くの抗WNV−NS1抗体が含有されていると判断できる。
この抗体結合阻害%の算出方法としては、特に制限されないが、例えば、
(b1)WNV−NS1を認識する抗体Aを固相化する工程、
(b2)WNV−NS1含有液を添加して、当該WNV−NS1抗原と抗体Aとを反応させる工程、
(b3)血清検体、または血清を含まない液(血清非含有液)を添加して、反応させる工程、
(b4)WNV−NS1を特異的に認識する抗WNV−NS1抗体(抗体1)、または、WNV−NS1を認識しない抗体(抗体2)を添加して、反応させる工程、
(b5)抗体1および抗体2を認識する標識化抗体を添加して、抗体1または抗体2と標識化抗体とを反応させる工程、および、
(b6)抗体1または抗体2と標識化抗体との反応により形成された抗体複合体を検出する工程、を含み、
下記の表1に示すように、上記(b3)工程および(b4)工程においてそれぞれ、血清検体と抗体1とを添加した際における検出値[A]、血清検体と抗体2とを添加した際における検出値[B]、血清非含有液と抗体1とを添加した際における検出値[C]、血清非含有液と抗体2とを添加した際における検出値[D]を求め、これらの検出値を下記式に代入することによって抗体結合阻害%を算出すればよい。
抗体結合阻害%=100−[{(A−B)/(C−D)}×100]
このように、WNV−NS1を認識しない抗体(抗体2)を添加する系についても検出値を求め、上記式に代入すれば、抗原に対する非特異性反応が生じても補正されるため、より精度良く抗体結合阻害%を算出することができる。
以下に、本発明の第二のWNV鑑別方法について、ELISAを利用した具体例を示すが、特に言及しない点については、第一のWNV鑑別方法と同様に行うことができる。
まず、抗体Aを固相化した96穴マイクロプレートに、WNV−NS1含有液を添加して、当該WNV−NS1抗原と抗体Aとを反応させる。後の工程において、このWNV−NS1抗原に対する抗体結合阻害%を算出することから、既知量のWNV−NS1抗原を添加することが好ましい。プレートに添加するWNV−NS1抗原の濃度は、特に制限されないが、例えば、10〜500ng/mlが好ましく、より好ましくは50〜200ng/mlであり、特に好ましくは100ng/mlである。
次に、この固相化プレートに鑑別対象の血清検体を添加して、WNV−NS1抗原と、血清検体中の抗WNV−NS1抗体とを反応させる。血清検体は、予め希釈してプレートに添加することが好ましい。希釈度は、特に制限されないが、血清(E)と血清検体全量(F)との体積比(E:F)が、例えば、1:2〜1:100であり、好ましくは1:2〜1:20であり、より好ましくは1:5である。
この後は、前記第一のWNV鑑別方法と同様に、WNV−NS1を特異的に認識する抗体(抗体1)、標識化抗体を順次反応させ、抗体複合体を検出し、抗体結合阻害%を求めればよい。第二のWNV鑑別方法においては、前述の式に基づき抗体結合阻害%を求めた場合、予め定めた基準値(例えば、27.6%)以上を抗WNV−NS1抗体陽性と判断することができる。また、予め、抗体結合阻害%と抗WNV−NS1抗体との相対関係を示す検量線を作成しておくことにより、抗体結合阻害%から血清中の抗WNV−NS1抗体の量を求めることも可能である。
なお、本発明の鑑別方法は、上述の方法に限定されるものではない。たとえば、上記第二のWNV鑑別方法においては、抗体Aを使用してWNV−NS1を捕捉しているが、抗体Aを使用しなくても、精製WNV−NS1を使用することによってWNVとJEVとを鑑別することができる。また、上記第一のWNV鑑別方法においても、第二のWNV鑑別方法と同様に、非特異的反応の影響をIgGなどで測定することにより取り除くことが好ましい。
本発明の鑑別用試薬キットは、これまで述べた本発明の鑑別方法に用いられる抗体を含むものであればよく、ほかは特に限定されるものではない。前記2H4抗体は、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託されているハイブリドーマ(受領番号FERM AP-21013のWN−2H4細胞)により産生されるモノクローナル抗体であり、この抗体を用いてWNV感染を鑑別できるが、勿論、WNV蛋白を特異的に認識し、JEV蛋白とは交差反応しない他の抗体を用いて、WNV感染の鑑別を行ってもよい。
次に、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は下記の実施例および比較例によって何ら制限されるものではない。また、特に記載しない限り、「%」は、w/v%である。
1.材料と方法
<抗体の作製>
2H4抗体
以下の方法により、WNV−NS1に対する抗WNV−NS1モノクローナル抗体(MAb)2H4を作製した。なお、2H4は、本発明の鑑別に使用され、WNV−NS1を特異的に認識する抗WNV−NS1抗体の一例である。
使用した抗原は、WNVのEg101株(Complete genome:GenbankアクセッションNo.AF260968)由来の精製WNV−NS1である。
作製方法は、以下のとおりである。
ステップ1: WNVのEg101株をVero細胞に感染させ、感染培養液を回収。
ステップ2: WNV感染培養液を下記6H4抗体を用いて免疫沈降し、精製WNV−NS1を得る。
ステップ3: 精製WNV−NS1をマウスに免疫。
ステップ4: ケーラーとミルスタインの方法に従い、モノクローナル抗体2H4を産生するハイブリドーマ(受領番号FERM AP-21013のWN−2H4細胞)を作製。
2D5抗体
文献(J Clin Microbiol 42: 5087-5093, 2004)に記載の、JEV−NS1に対するモノクローナル抗体2D5(抗JEV−NS1 MAb)を使用した。
6H4抗体
以下の方法により、JEV−NS1に対するモノクローナル抗体であり且つWNV−NS1に交差反応性を示す6H4を作製した。
使用した抗原は、JEVの中山株(GenbankアクセッションNo.M16574)由来の精製JEV−NS1である。
作製方法は、以下のとおりである。
ステップ1: JEVの中山株をVero細胞に感染させ、感染培養液を回収。
ステップ2: JEV感染培養液を上記2D5抗体を用いて免疫沈降し、精製JEV−NS1を得る。
ステップ3: 精製JEV−NS1をマウスに免疫。
ステップ4: ケーラーとミルスタインの方法に従い、モノクローナル抗体を作製。
ウサギ抗WNV−NS1過剰免疫血清の調製
ステップ1: WNVのEg101株をVero細胞に感染させ、感染培養液を回収。
ステップ2: WNV感染培養液を0.1%トリトンX-100処理の後、6H4を用いて免疫沈降によりWNV−NS1を精製。
ステップ3: 精製WNV−NS1をウサギに3回免疫。
ステップ4: 抗体価が十分に上昇した時点で、ウサギから採血し、血清を分離。
<細胞の培養>
Vero細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)添加イーグル最少必須培地(MEM)で培養した。NS1発現細胞(2G2細胞)とNS1/NS2A発現細胞(2G12細胞)は、0.1mM非不可欠アミノ酸および400μg/mlアミノグリコシド系抗生物質(商品名G418)を含有する10%FBS添加MEMを用いて、選択的に培養を行った。いずれの細胞も培養温度は37℃とした。2G12細胞から得られた培養液は、血液検体に含まれる抗WNV−NS1抗体を測定対象とするELISA(抗WNV−NS1抗体測定ELISA)において、抗原検体として使用した。
上記NS1発現細胞およびNS1/NS2A発現細胞は、それぞれWNV−NS1を発現する形質転換細胞と、WNV−NS1およびWNV−NS2Aを発現する形質転換細胞であり、以下のようにして作製した。
ステップ1: WNVのEg101株をVero細胞に感染させ、WNV感染培養液を回収。
ステップ2: WNV感染培養液からWNVのRNAを抽出。
ステップ3: RT−PCRにより、cDNAを作製。
ステップ4: PCRにより目的配列部分を増幅。
ステップ5: WNVの目的配列とベクターにより、プラスミドを作製。
ステップ6: CHO細胞にプラスミドをトランスフェクションし、薬剤選択及び限界希釈法により、NS1及びNS1/NS2A連続発現細胞株を作製。
<Vero細胞への感染>
Vero細胞に、JEV中山株またはWNV Eg101株を接種して1時間吸着させた後、0.075%ウシ血清アルブミン(BSA)添加MEMで24〜72時間培養した(以下、それぞれ「JEV感染細胞」、「WNV感染細胞」という)。これらの培養液は、WNV−NS1抗原を測定対象とするELISA(WNV−NS1抗原測定ELISA)において、抗原検体として使用した。
<ウマ血清>
WNV−NS1抗原測定ELISA
北海道日高地方の日本脳炎ワクチン未接種1歳馬の血清30検体およびプール血清を使用した。
抗WNV−NS1抗体測定ELISA
抗WNV−NS1抗体陰性の検体として、抗JEV−NS1抗体陰性の初乳未摂取馬の血清8検体、北海道日高地方の日本脳炎ワクチン未接種1歳馬の血清20検体、北海道日高地方の日本脳炎ワクチン接種1歳馬の血清20検体、文献(J Clin Microbiol 42: 5087-5093, 2004)に記載のELISA値が0.122以下であるウマ血清20検体および抗JEV−NS1抗体陽性の自然感染馬の血清35検体を使用した。他方、抗WNV−NS1抗体陽性の検体として、WNV実験感染馬の血清2検体を使用した。これらの血清は日本中央競馬会競走馬総合研究所から分与された。
<ELISA>
WNV−NS1抗原測定ELISA
まず、文献(Vaccine 21: 3713-3720, 2003)記載の方法に準じ、96穴マイクロプレートをウサギ抗WNV−NS1過剰免疫血清で感作することにより、WNV−NS1を認識する抗体(抗体A)をウェルに固相化した。
一方、WNV感染培養液とウマ血清とを混合したWNV感染モデル血清、または、JEV感染培養液とウマ血清とを混合したJEV感染モデル血清を、0.05%Tween20(商品名)と1%BSAとを含有するリン酸緩衝生理食塩水(以下、「ELISA希釈液」という。)で2倍に希釈した。この血清希釈液を前記ウェルに添加して、37℃で1時間反応させた。続いて、前記ウェルに、2H4抗体およびアルカリホスファターゼ(AP)標識抗マウスIgG抗体(標識化抗体)を順次加えて、それぞれ37℃で1時間反応させた後、基質液(0.1%パラニトロフェニルリン酸液)を加えて反応させ、その後415nmの吸光度を測定した。また、非特異反応の影響を除外するため、並行して、2H4に代えて、所定の割合(抗体1:ELISA希釈液=1:123)に希釈した精製IgG1(BETHYL社、以下同様)を使用した以外は、同様にして反応ならびに吸光度測定を行い、2H4による吸光度と精製IgG1による吸光度との差を特異的反応とした。
抗WNV−NS1抗体測定ELISA
前述と同様に、96穴マイクロプレートをウサギ抗WNV−NS1過剰免疫血清で感作することにより、WNV−NS1を認識する抗体(抗体A)をウェルに固相化した。
一方、NS1/NS2A発現細胞(2G12細胞)を前述の方法で培養し、この培養液に含まれるNS1抗原量が100ng/mlとなるようにELISA希釈液で希釈し、この希釈培養液を前記ウェルに添加して、37℃で1時間反応させた。
そして、ウマ血清とELISA希釈液とを体積比1:5で混合し、この血清希釈液(または血清を含まないELISA希釈液)を前記ウェルに加えて37℃で1時間反応させた後は、前述のWNV−NS1抗原測定ELISAと同様にして、順次、2H4(または精製IgG1)、AP標識抗マウスIgG抗体、基質液を加えて反応させ、415nmの吸光度を測定した。このように反応系として、ウマ血清検体と2H4を添加した系、ウマ血清検体と精製IgG1を添加した系、ELISA希釈液と2H4を添加した系、ELISA希釈液と精製IgG1を添加した系のそれぞれについて吸光度を測定した。そして、これらの結果を下記式に代入してモノクローナル抗体(MAb)結合阻害%を求めた。MAb結合阻害%は、その値が大きい程、ウマ血清検体に含まれる抗WNV−NS1抗体の含有量が大きいと判断できる。
MAb結合阻害%=100−[{(A−B)/(C−D)}×100]
A:ウマ血清と2H4を添加した系の吸光度
B:ウマ血清とIgG1を添加した系の吸光度
C:ELISA希釈液と2H4を添加した系の吸光度
D:ELISA希釈液とIgG1を添加した系の吸光度
<免疫沈降>
培養液中の抗原(NS1抗原)を精製するために、プロテインAアガロースビーズ(Invitrogen社)を用いて免疫沈降を行い、サンプルバッファー(0.05Mトリス塩酸緩衝液(pH8.6)、2%ドデシル硫酸ナトリウム、2mMエチレンジアミンテトラ酢酸、15%グリセロール、0.01%ブロムフェノールブルー)で溶出した。前記2D5(抗JEV−NS1 MAb)、6H4(WNV−NS1に交差反応性を持つ抗JEV−NS1 MAb)、2H4を用いてJEV感染培養液およびWNV感染培養液を免疫沈降した。2G12細胞培養液は2H4および6H4を用いて免疫沈降を行った。
<銀染色>
免疫沈降において沈降させたタンパク質(NS1抗原)を100℃で2分加熱し、8.0%ポリアクリルアミドゲルを用いて150Vで70分電気泳動し、Silver Staining Kit(商品名、Pharmacia Biotech社)を用いて銀染色を行った。
<統計>
吸光度およびMAb結合阻害%の比較は、スチューデントのt検定により行った。
2.結果
(1)2H4抗体の性質解析
(1−1)ELISAによる各種抗体の性質解析
抗原に対する2H4抗体(抗WNV−NS1 MAb)ほか各種抗体の反応性(特異性)を解析した。具体的には、ウサギ抗WNV−NS1過剰免疫血清を96穴プレートに感作し、WNV感染培養液100ng/mlを反応させた後、ELISA希釈液で希釈した各種抗体(1:10から1:107)を反応させた。その後、標識抗体とパラニトルフェニルリン酸を順次反応させ、吸光度を測定した。同様に、ウサギ抗JEV−NS1過剰免疫血清とJEV感染培養液を用いて各種抗体の性質を解析した。
この結果を、図1に示す。同図は、各種モノクローナル抗体(MAb)の希釈度と吸光度との関係を示すグラフである。同図において、(●)はWNV−NS1を用いた結果であり、(○)はJEV−NS1を用いた結果であり、左図は2H4、中央は2D5、右図は6H4の結果を示すプロットである。この結果、同図に示すように、2H4は、他の抗体と比較して、WNV−NS1に特異的に反応し、且つ、JEV−NS1には実質的に反応しなかった。
(1−2)免疫沈降・銀染色
さらに、2H4がWNV-NS1に特異的に反応することを確認するために、前記方法により感染培養液を免疫沈降し、電気泳動に供した後、銀染色による検出を行った。
この結果を図2の電気泳動写真に示す。同図において、左3レーンは、JEV感染培養液について各種抗体(2D5、6H4、2H4)を用いた結果であり、右3レーンは、WNV感染培養液について各種抗体(2D5、6H4、2H4)を用いた結果である。矢印は、各ウイルス由来のタンパク質(NS1)の大きさを示し、NS1’は、NS1に加えてNS2A領域も含むタンパク質を示す。
同図に示すように、6H4がJEV−NS1を検出していることから、WNV感染培養液について6H4により検出された抗原はWNV−NS1であると考えられる。また、2H4と6H4により検出された抗原はほぼ一致し、また、分子量がNS1およびNS1に加えてNS2A領域も含むNS1’の分子量と一致したことから、2H4がWNV−NS1と反応することが確認できた。
(1−3)血清希釈度の決定
効率的にWNV−NS1を検出するために、および血清成分によるWNV−NS1検出阻害を避けるため、WNV−NS1抗原測定ELISAに供する血清検体について、その血清希釈度を検討した。ここで、血清希釈度とは、ウェル等に添加する血清検体における血清の希釈度であり、血清(E)と血清検体全量(F)との体積比(E:F)で表される。本実施例では、血清希釈度は「ウマ血清:(ウマ血清+感染培養液+ELISA希釈液)」となる。
血清希釈度1:2、1:5および血清なしの各条件で、WNV感染培養液由来NS1の濃度が所定濃度(0、0.01、0.1、1、10、100ng/ml)となるようにELISA希釈液で希釈して、血清検体を調製し、前述の方法と同様にしてWNV−NS1抗原測定ELISAを行い、吸光度を測定した。
これらの結果を図3に示す。同図は、各血清希釈液におけるNS1抗原濃度と吸光度の関係を示すグラフであり、○は希釈度1:2、▲は希釈度1:5、●は血清無添加の結果を示す。
同図に示すように検体が血清を含む場合(○、▲)、血清成分によりNS1抗原の検出が阻害され、血清無添加の検体(●)と比較して若干低い吸光度であったが、その傾きがほぼ等しいことから、WNV−NS1を特異的に検出しているといえる。また、1:2と1:5の希釈度では大きな差は見られなかったため、血清中の抗原をより効率的に検出するために、希釈度を1:2に決定した。
(1−4)WNV−NS1抗原の検出限界
WNV−NS1抗原測定ELISAにおいて、検出対象であるWNV−NS1抗原の検出限界を検討した。
WNV感染培養液とウマ血清とを混合し希釈して、WNV−NS1濃度2ng/mlおよび5ng/mlのWNV感染モデル血清を調製した。一方、JEV−NS1感染培養液とウマ血清とを混合し希釈して、JEV−NS1濃度100ng/mlのJEV感染モデル血清を調製した。そして、これらの感染モデル血清を用いて、前記WNV−NS1抗原測定ELISAにより吸光度測定を行った。これらの結果を図4に示す。同図は、各検体の吸光度ならびに全検体の平均値を示すグラフであり、■が5ng/ml WNV−NS1、◆が2ng/ml WNV−NS1、○が100ng/mlJEV−NS1の結果を示す。
同図に示すように、WNV−NS1濃度2ng/mlの吸光度(◆)および5ng/mlの吸光度(■)と、JEV−NS1濃度100ng/mlの吸光度(○)との間には有意差(p<0.001)が認められた。したがって、本実施例の方法において、WNV−NS1の検出感度は、少なくとも2ng/mlと推定される。また、この結果から、本実施例の方法によりWNV−NS1とJEV−NS1との高精度な鑑別が可能であることがわかる。
(2)抗WNV−NS1抗体測定ELISAの条件検討
(2−1)発現細胞における抗原分泌の確認
抗WNV−NS1抗体測定ELISAにおいては、前述のように、ウサギ抗WNV−NS1過剰免疫血清を感作(固相化)したマイクロプレートに、NS1/NS2A発現細胞(2G12細胞)の培養液を反応させた。この2G12細胞からのWNV−NS1分泌を確かめるために、培養液を2H4を用いて免疫沈降し、銀染色で検出した。
この結果を図5に示す。同図において、左2レーンは、WNV感染細胞培養液を、それぞれ2H4、6H4を用いて免疫沈降した結果を示す電気泳動写真であり、右2レーンは、2G12細胞培養液を、それぞれ2H4、6H4を用いて免疫沈降した結果を示す電気泳動写真である。
同図に示すように、2G12細胞培養液のバンドは、WNV感染細胞培養液のNS1と同じ位置であることから、2G12細胞はWNV−NS1を分泌していることが確認できた。
(2−2)NS1抗原濃度の決定
ウサギ抗WNV−NS1過剰免疫血清を感作した前記マイクロプレートに反応させるNS1抗原について、その至適濃度を決定した。
前記抗WNV−NS1抗体測定ELISAにおいて、2G12細胞培養液をNS1抗原量が所定濃度(0、10、20、50、100、200ng/ml)となるように変化させ、WNV実験感染馬の血清希釈度1:10と血清なしの条件下での吸光度を比較した。この結果を表2に示す。
表2に示すように、抗原濃度が100ng/mlの条件において、血清(+)の吸光度が高く、且つ、血清(+)と血清(−)との吸光度差が大きいことから、使用する抗原濃度は100ng/mlに決定した。
(2−3)血清希釈度の決定
抗WNV−NS1抗体測定ELISAに供する測定対象血清について、その至適血清希釈度を次のように決定した。
前記抗WNV−NS1抗体測定ELISAにおいて、抗WNV−NS1抗体陽性ウマ血清、および、抗JEV−NS1抗体陽性ウマ血清を用い、それらの血清希釈度(E:F)を変化(E=1、F=2、5、10、20、50、100、200、500、1000)させ、MAb結合阻害%を比較した。
抗WNV−NS1抗体陽性血清によるMAb結合阻害%と抗JEV−NS1抗体陽性血清によるMAb結合阻害%の差が大きかった1:2から1:10までの血清希釈度は、MAb結合阻害を詳しく調べるために抗WNV−NS1抗体陽性血清を6回、抗JEV−NS1抗体陽性血清を35検体測定し、平均値と標準偏差(SD)を求めた。血清希釈度1:20から1:1000では、抗WNV−NS1抗体陽性血清を3回、抗JEV−NS1抗体陽性血清を3検体測定し、平均値と標準偏差を求めた。これらの結果を表3に示す。
表3に示すように、血清希釈度が1:5の条件において、抗WNV−NS1抗体陽性血清(WN)と抗JEV−NS1抗体陽性血清(JE)とのMAb結合阻害%の差が最も大きいことから、至適血清希釈度は1:5と決定された。
(2−4)抗WNV−NS1抗体陽性のボーダーライン(基準値)の設定
抗WNV−NS1抗体陽性と判断するためのボーダーラインを決定した。
ウマ血清として、前述した抗WNV−NS1抗体陰性の103検体を使用した(抗JEV−NS1抗体陰性の初乳未摂取馬の血清8検体、日本脳炎ワクチン未接種1歳馬の血清20検体、日本脳炎ワクチン接種1歳馬の血清20検体、ELISA値0.122以下のウマ血清20検体および抗JEV−NS1抗体陽性の自然感染馬の血清35検体)。これらの検体について、前述の至適条件下での抗WNV−NS1抗体測定ELISAを行い、MAb結合阻害%を求めた。これらの結果を図6に示す。同図は、MAb結合阻害%と、所定のMAb結合阻害%を示す検体数を示すグラフである。
初乳未摂取馬の8検体は、血清中のIgGが少ないためにMAb結合阻害%が低くなっていると考えられ、ボーダーラインを設定する検体として含まないことにした。つまり、計95検体(抗JEV−NS1抗体陰性の日本脳炎ワクチン未接種1歳馬の血清20検体、日本脳炎ワクチン接種1歳馬の血清20検体、ELISA値0.122以下のウマ血清20検体、抗JEV−NS1抗体陽性の自然感染馬の血清35検体)を使用してボーダーラインを設定した。その結果、MAb結合阻害%の平均値は8.17、標準偏差は6.48であり、平均値+3SDは27.6%となり、27.6%を抗WNV−NS1抗体陽性と判断するボーダーに設定した。
使用した抗WNV−NS1抗体陰性の95検体には、抗JEV−NS1抗体陽性および強陽性の検体が含まれるため、JEV感染時のMAb結合阻害%は、ボーダーライン(27.6%)未満である。したがって、ボーダーライン以上のMAb結合阻害%は、WNV感染による特異的抗WNV−NS1抗体陽性と判断できる。そして、前記95検体のうち、ボーダーライン未満のMAb結合阻害%を示した検体は94検体であり、ボーダーライン以上のMAb結合阻害%を示した検体は1検体であることから、この抗WNV−NS1抗体測定ELISAによる特異度は98.9%、偽陽性率は1.10%であった。
(2−5)抗WNV−NS1抗体の検出
WNVを感染させたWNV実験感染馬(2検体)について、感染後、所定の期間(0日、4日、7日、10日、12日、14日、18日、21日、25日、28日、35日)における血清を採取し、至適条件下、抗WNV−NS1抗体測定ELISAを行ってMAb結合阻害%を求めた。これらの結果を表4に示す。
表4に示すように、感染後、経時的にMAb結合阻害%が大きくなり、抗WNV−NS1抗体の増加が確認された。一方のWNV実験感染馬(♯1)は感染後12日、他方のWNV実験感染馬(♯2)は感染後14日で抗WNV−NS1抗体が陽性となった。
以上のように、本発明の方法によれば、WNV−NS1を特異的に認識する抗体を用いて、血清中のWNV−NS1抗原、または抗WNV−NS1抗体を検出・測定することによって、同じフラビウイルス属であるJEV感染と区別してWNV感染を鑑別することができる。前述のように、従来の中和試験等によると、検出結果が陽性であっても、WNV陽性であるかJEV陽性であるかの判別が困難であり、JEV感染による偽陽性の割合が多く生じることが予想される。しかし、本発明によれば、WNV感染のみを鑑別することができるため、わが国のようにJEVが常在する場合でもWNV感染の高精度の鑑別が可能であり、急性期と回復期それぞれにおけるWNV感染の診断や、WNV侵入後のWNV浸潤状況の監視も可能となる。本発明の鑑別方法は、WNVの侵入の有無に関する疫学調査に利用でき、その他検査・臨床分野において非常に有用な方法といえる。
本発明の実施例において、各種モノクローナル抗体の希釈度とELISAにおける吸光度との関係を示すグラフである。 本発明の実施例において、各種モノクローナル抗体とNS1との免疫沈降の結果を示す電気泳動写真である。 本発明の実施例において、NS1抗原濃度とELISAにおける吸光度との関係を示すグラフである。 本発明の実施例において、検体のELISAにおける吸光度とその平均値を示すグラフである。 本発明の実施例において、各種モノクローナル抗体とNS1との免疫沈降の結果を示す電気泳動写真である。 本発明の実施例において、MAb結合阻害%と検体の分布を示すグラフである。

Claims (13)

  1. ウエストナイルウイルス(WNV)のタンパク質を特異的に認識し、かつ、日本脳炎ウイルス(JEV)のタンパク質とは交差反応しない抗体を用いて、WNV感染を鑑別する方法。
  2. ウエストナイルウイルス(WNV)感染の鑑別方法であって、
    WNVの非構造タンパク質の1つであるWNV−NS1を特異的に認識する抗WNV−NS1抗体を用いて、血清検体に含まれるWNV−NS1、および、血清検体に含まれる抗WNV−NS1抗体の少なくとも一方を測定することを特徴とする鑑別方法。
  3. ウエストナイルウイルス(WNV)感染と日本脳炎ウイルス(JEV)感染とを鑑別する、請求項1又は2記載の鑑別方法。
  4. 鑑別に使用する抗WNV−NS1抗体は、WNV−NS1と結合し、JEVの非構造タンパク質JEV−NS1とは実質的に結合しないモノクローナル抗体である、請求項3記載の鑑別方法。
  5. 血清検体が、ウマまたはヒト、その他の哺乳類もしくは鳥類など動物由来の血清検体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の鑑別方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の鑑別方法を用いて、ウエストナイル脳炎などのWNV感染症に罹患しているかどうかを判定する方法。
  7. 血清検体に含まれるWNV−NS1を測定する方法が、
    (a1)WNV−NS1を認識する抗体Aを固相化する工程、
    (a2)血清検体を添加して、これに含まれるWNV−NS1と抗体Aとを反応させる工程、
    (a3)WNV−NS1を特異的に認識する抗WNV−NS1抗体を添加して、抗体Aに結合したWNV−NS1と抗WNV−NS1抗体とを反応させる工程、
    (a4)抗WNV−NS1抗体を認識する標識化抗体を添加して、抗WNV−NS1抗体と標識化抗体とを反応させる工程、および
    (a5)抗WNV−NS1抗体と標識化抗体との反応により形成された抗体複合体を検出することにより、血清検体に含まれるWNV−NS1を測定する工程
    を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 血清検体に含まれる抗WNV−NS1抗体の測定が、当該抗WNV−NS1抗体によって、鑑別に使用する抗WNV−NS1抗体とWNV−NS1との結合が阻害される割合(抗体結合阻害%)を算出する工程を含み、
    抗体結合阻害%の算出方法が、
    (b1)WNV−NS1を認識する抗体Aを固相化する工程、
    (b2)WNV−NS1含有液を添加して、当該WNV−NS1抗原と抗体Aとを反応させる工程、
    (b3)血清検体、または血清を含まない液(血清非含有液)を添加して、反応させる工程、
    (b4)WNV−NS1を特異的に認識する抗WNV−NS1抗体(抗体1)、または、WNV−NS1を認識しない抗体(抗体2)を添加して、反応させる工程、
    (b5)抗体1および抗体2を認識する標識化抗体を添加して、抗体1または抗体2と標識化抗体とを反応させる工程、および、
    (b6)抗体1または抗体2と標識化抗体との反応により形成された抗体複合体を検出する工程、を含み、
    上記(b3)工程および(b4)工程においてそれぞれ、血清検体と抗体1とを添加した際における検出値[A]、血清検体と抗体2とを添加した際における検出値[B]、血清非含有液と抗体1とを添加した際における検出値[C]、血清非含有液と抗体2とを添加した際における検出値[D]を求め、これらの検出値を下記式に代入することによって抗体結合阻害%を算出する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
    抗体結合阻害%=100−[{(A−B)/(C−D)}×100]
  9. 抗体結合阻害%が予め定めた基準値以上のときに、血清検体に含まれる抗WNV−NS1抗体について陽性と判定する、請求項8記載の方法。
  10. 受領番号がFERM AP-21013であるハイブリドーマ(WN−2H4細胞)により産生されるモノクローナル抗体2H4を用いて鑑別を行う、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 受領番号がFERM AP-21013であるハイブリドーマ(WN−2H4細胞)により産生される、モノクローナル抗体。
  12. 受領番号がFERM AP-21013であるハイブリドーマ(WN−2H4細胞)。
  13. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法によって、WNV感染を鑑別するための鑑別用試薬キット。


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