以下、本発明をプリンタに具体化した一実施形態を図1〜図14に従って説明する。図2は、本実施形態におけるプリンタの斜視図である。
記録装置としてのプリンタ11は、例えばインクジェット式プリンタである。プリンタ11には、本体12の背面側に媒体としての用紙Pを給紙する給送手段としての自動給紙装置(Auto Sheet Feeder;以下、ASF13という)が装備されている。ASF13には、給紙トレイ14、ホッパー15、エッジガイド16及び用紙サポート14aを備えた用紙ガイド17が取着されている。ASF13は用紙ガイド17にセットされた用紙を1枚ずつ本体12内に給紙する給紙駆動機構を備える。
また、本体12内には主走査方向(図2におけるX方向)に往復動するキャリッジ18が設けられ、キャリッジ18の下部に記録ヘッド19が備えられている。キャリッジ18を主走査方向Xに移動させる過程で記録ヘッド19から用紙Pにインクを噴射する記録動作と、用紙Pを副走査方向Yに所定の搬送量で搬送する紙送り動作とを交互に繰り返すことによって、用紙Pへの印刷が行われる。印刷された用紙Pは本体12の前側下部に開口する排紙口12Aから排出されるようになっている。なお、キャリッジ18及び記録ヘッド19により記録手段が構成される。
図1は自動給紙装置及び搬送装置を示す。図1に示すように、本体背面部に斜状に配置された給紙トレイ14の上面側にはホッパー15が上端部の軸15aを中心として所定角度の範囲を傾動可能な状態に支持されている。ホッパー15は給紙トレイ14との間に介装された圧縮バネ21によって、給紙トレイ14から離間する方向(図1における左上方向)に付勢されている。
ホッパー15の下端付近には、円柱状の給紙ローラ22が回転軸23を中心に回転可能な状態に配置されている。ホッパー15は、図1(a)に示す退避位置と図1(b)に示す給紙位置との間を往復動するようになっている。
給紙トレイ14の下流側(図1における左側)端部上面には案内部14bが設けられている。また、案内部14bの上端近傍位置には給紙ローラ22と対向する位置にリタードローラ24が配置されている。リタードローラ24は、トルクリミッター等のトルク制限機構によって一定の回転負荷が付与された状態で従動回転可能かつ給紙ローラ22に対し接近・離間可能に設けられている。本実施形態では、ホッパー15及びリタードローラ24は連動して動作するように構成されている。
ASF13より用紙搬送方向下流側位置には、インクカートリッジ26を搭載したキャリッジ18がガイド軸27に沿って主走査方向X(図1の紙面直交方向)に移動可能に設けられている。記録ヘッド19の下方には所定の間隔を開けてプラテン28が配置されている。プラテン28を副走査方向(同図左右方向)に挟んだその両側には紙送りローラ29と排紙ローラ30とがそれぞれ配置されている。
紙送りローラ29は搬送駆動ローラ29aと搬送従動ローラ29bとの一対からなり、排紙ローラ30は排紙駆動ローラ30aと排紙従動ローラ30bとの一対からなる。本実施形態では、搬送駆動ローラ29aと排紙駆動ローラ30aは、同一の駆動源であるPFモータ58(紙送りモータ)(図5参照)によって駆動され、それぞれ協働して用紙Pの紙送り・排紙等を行う。給紙ローラ22は、ASFモータ56により駆動され、紙送りローラ29と協働して用紙Pの給紙・紙送り等を行う。
給紙ローラ22と紙送りローラ29との間には、その下端が用紙搬送経路に達する長さで延出するレバー31と、レバー31の上端部を検知対象とする光学式のセンサ部32とからなる紙検出センサ33が設けられている。紙検出センサ33は、レバー31の下端を押す用紙P1が無い状態ではレバー31がバネの付勢力で図1(a)に示す原位置に復帰してオフしており、給紙の途中で用紙P1がレバー31の下端を押してこれを図1(b)に示すように回動させるとオンする。詳しくは、センサ部32は発光器と受光器とを備え、発光器からの投光を遮っていたレバー31が用紙P1に押されて回動し、その投光が受光器により受光されることで紙検出センサ33がオンする構成である。
リタードローラ24は、図1(a)に示すように給紙ローラ22の外周面から離間する退避位置と、図1(b)に示すように給紙ローラ22の外周面に当接する給紙位置との間を上下動可能に構成されている。印刷が行われていない図1(a)に示す待機時には、リタードローラ24は下方へ移動して給紙ローラ22から離間する退避位置に配置される。一方、図1(b)に示す印刷時には、リタードローラ24が上動して給紙ローラ22との間に用紙をニップ可能な位置に配置され、これに伴いホッパー15が圧縮バネ21の付勢方向へ傾動して、ホッパー15上に積重された用紙Pが給紙ローラ22に押し付けられる。
ホッパー15が上動することで給紙ローラ22に付勢された用紙Pは、そのうち最上位の1枚が給紙ローラ22の回転によって給紙ローラ22とリタードローラ24との間に挟持されつつ給紙される。この給紙過程においてリタードローラ24の回転抵抗と、給紙ローラ22の周面の摩擦抵抗と、用紙Pの表面の摩擦抵抗とのバランスによって、給紙ローラ22に付勢された用紙Pは、そのうち最上位の1枚の用紙P1のみが、他の用紙から分離されて給紙される。
リタードローラ24およびホッパー15は、用紙の頭出しが終わった時に次に給紙すべき次ページがない場合に退避位置へ復帰する。よって、給紙すべき次ページの用紙があるうちは、ホッパー15及びリタードローラ24は図1(b)に示す給紙位置に配置される。これにより用紙は僅かな紙間隔を開けただけで連続的に給紙される。
給紙ローラ22を継続的に回転させると、先に給紙された先行用紙P1と次ページの後続用紙P2が隙間なく連続的に給紙されることになる。しかし、先行用紙P1と後続用紙P2との間に所定の隙間がないと、先行用紙P1の後端が紙検出センサ33のレバー31の下端を過ぎても、レバー31が図1(a)に示す原点位置に復帰できず、後続用紙P2の先端を検知できない。
用紙P1,P2間に紙検出センサ33により検知されうるだけの隙間を開ける方法としては、先行用紙P1が給紙ローラ22とリタードローラ24の間にニップされなくなる位置まで給紙される度に、ホッパー15及びリタードローラ24を退避位置へ移動させる方法が挙げられる。この方法によると、ホッパー15及びリタードローラ24を退避させている時間の間、後続用紙の給紙開始時期が遅れ、先行用紙と後続用紙との間に隙間を開けることはできる。しかし、1秒以下の僅かな時間の退避であっても、例えば排紙や長い紙送りが行われるときに退避すると、先行用紙と後続用紙との隙間が開き過ぎてしまい、印刷のスループットを低下させる原因となる。このため、本実施形態では、ホッパー15及びリタードローラ24を給紙位置のまま保持する。そして、本実施形態では、先行用紙と後続用紙間の隙間を確保する搬送制御であるページ間制御が採用されている。なお、このページ間制御の内容については後述する。
給紙された用紙P1は、先端部分が紙送りローラ29間を通ってキャリッジ18とプラテン28間の記録開始位置に頭出しされる。記録ヘッド19の下面にはインクを噴射する多数のノズル(ノズル群)が開口しており、ノズル群のうち搬送方向最上流に位置するノズル(最上流ノズルと称す)の位置がヘッド基準位置(図1(b)における「▼」の位置)であり、このヘッド基準位置に用紙上の印刷開始位置が一致する位置まで用紙P1を搬送することで、用紙P1の頭出しは行われる。
頭出し位置は、用紙上の印刷開始位置を決めている余白(トップマージン)や縁なし印刷などのレイアウト条件に応じて決まり、給紙の際にはその頭出し位置に応じた搬送距離が指示される。用紙P1の給紙終了後(つまり頭出し後)、記録ヘッド19の印刷動作と紙送り動作とが交互に実施さて、印刷は進められる。
本実施形態では、給紙された用紙が頭出しされるまでの用紙搬送が「給紙動作」、頭出しされた用紙の印刷が終わるまでの用紙搬送が「紙送り動作」、印刷が終わった用紙の後端が紙検出センサ33に検知されなくなるまでの用紙搬送が「排紙動作」として定義されている。なお、印刷が終わった時点で既に用紙後端が紙検出センサ33に検知されなくなる位置まで用紙の搬送が進んでいる場合は、その用紙に対する排紙動作は行われず、後続用紙の給紙動作が行われ、この給紙動作に伴い連動して排紙ローラ30が回転することで先行用紙の排紙が行われる。
図3は、自動給紙装置(ASF)および搬送装置(PF)を側面から見た模式図である。同図を用いて、ページ間制御処理において定義される各種の位置および距離を説明する。記録ヘッド19の最上流ノズル位置がヘッド基準位置Hである。ヘッド基準位置H(最上流ノズル)〜紙送りローラニップ点間の距離が「La」、紙送りローラニップ点〜紙検出センサ33間の距離が「Lb」、紙検出センサ33〜給紙ローラニップ点(給紙ローラ22とリタードローラ24とのニップ点)間の距離が「Lc」となっている。
先行する用紙P1が図3の位置まで搬送されれば、用紙P1は給紙ローラ22のニップから解放される。このため、図3の位置まで搬送された以後は、用紙を同速度で搬送できる駆動速度で給紙ローラ22と紙送りローラ29(さらには排紙ローラ30)とを駆動される必要はなくなる。すなわち、用紙P1の後端側が給紙ローラ22にニップされているうちは、紙送り時において用紙P1は給紙ローラ22と紙送りローラ29との2箇所でニップされる。この期間は、給紙ローラ22と紙送りローラ29とを同速度で同期させて駆動させる必要がある。これは、同速度で同期させないとすると、用紙搬送過程で用紙P1が給紙ローラ22と紙送りローラ29間の部分で過度に引っ張られたり過度に弛んだりして不適切な搬送となってしまうからである。
しかし、用紙P1の搬送方向上流側の端部(後端)が給紙ローラ22のニップから解放された以後は、先行用紙P1と次ページの用紙P2(後続用紙)は個別に搬送されるので、給紙ローラ22と紙送りローラ29の搬送を同期させる必要はなくなる。本実施形態では、先行用紙P1の後端が給紙ローラ22のニップから解放された位置になると、給紙ローラ22の回転を一旦停止させ、この停止中に、紙送りローラ29による用紙P1の搬送が進んで、先行用紙P1と後続用紙P2との間に規定の隙間が確保された後、給紙ローラ22の回転を再開して、後続用紙P2の給紙を再開する構成となっている。このようなページ間制御処理を行うことにより、用紙P1,P2間に必要な隙間を確保する。用紙P1,P2間に規定の隙間が確保されることで、その後、隙間によって紙検出センサ33がオフしてから、後続用紙P2の先端を検知してオンするので、この後続用紙P2を紙検出センサ33により検知することができる。よって、紙検出センサ33により検知された位置を基準とし、該基準の位置から所定の距離を搬送して行われる後続用紙P2の頭出しが可能になる。
先行用紙P1が給紙ローラ22によるニップから解放された後、給紙ローラニップ点から後続用紙P2の先端が距離「Ld」だけ飛び出した位置に、給紙ローラ22の回転を停止させる停止位置であるページ間制御位置Gを設定している。この飛び出す距離「Ld」は、先行用紙P1が給紙ローラ22のニップから確実に解放されてから給紙ローラ22を停止できるマージンに相当する。先行用紙P1の後端がページ間制御位置Gに達したときにヘッド基準位置Hと対向する用紙P1上の位置をページ間制御位置Ngとする。本実施形態では、用紙P1の位置を、ヘッド基準位置Hと対向する用紙上の位置で管理しているので、用紙P1の後端から距離(La+Lb+Lc−Ld)だけ搬送方向下流側の位置がヘッド基準位置Hに到達したとき、用紙の後端がページ間制御位置Gに位置することになるページ間制御位置Ngに用紙が達したと判断する。
図3において、距離「Lgap」は、用紙P1,P2間を離間させるべき距離(以下、隙間距離Lgapという)である。ページ間制御位置から隙間距離「Lgap」だけ用紙P1が紙送りされた後、一時停止されていた給紙ローラ22の回転を再開する。「Psize」は、プリンタドライバより指定される用紙長(搬送方向長さ)である。この用紙長「Psize」から距離(La+Lb+Lc−Ld)を差し引いた位置がページ間制御位置Ngである。よって、用紙P1の先端からの距離Nxで表されるページ間制御位置Ngは、用紙長「Psize」に応じて変化することになる。ここで、「Nx」は、用紙P1の先端がヘッド基準位置Hに達した位置からの用紙P1の紙送り量を示す。本実施形態では、用紙P1の先端がヘッド基準位置Hに達したときからの用紙の搬送距離(紙送り量)を紙送り量カウンタ65(図5参照)で計数し、この計数値で用紙P1の位置を管理している。紙送り量カウンタ65の計数値である紙送り量Nxが(Psize−(La+Lb+Lc−Ld))である値Ngに達したことをもって、用紙P1がページ間制御位置Ngに達したと判断する。
次に、自動給紙装置を備えるプリンタの電気的構成を図5に基づいて説明する。
図5に示すように、プリンタ11は各種制御を司る制御部40を備えている。制御部40はホストコンピュータ35(PC)と通信可能に接続されるインタフェイス41を備えている。インタフェイス41に接続されたバス42には、CPU43、ASIC44(Application Specific IC(特定用途向けIC))、ROM45、RAM46及び不揮発性メモリ47等が接続されている。CPU43はROM45に記憶されたプログラムを実行することで、給紙制御、紙送り制御、印刷制御、排紙制御などを行う。
ホストコンピュータ35はプリンタドライバ(図示せず)を備え、ユーザの入力指示に基づきモニタ35aに表示させた印刷設定画面で、ユーザが入力装置35bを操作して設定した、用紙サイズ、用紙種類、レイアウトなどの各種印刷パラメータを取得する。プリンタドライバは、入力装置35bから印刷実行の指示を受け付けると所定の処理を行って印刷データを生成する。詳しくはプリンタドライバは、印刷対象の画像データを表示解像度から印刷解像度へ変換する解像度変換処理、例えばRGB表色系からCMYK表色系への色変換処理、プリンタ11が表現可能な階調値に変換するハーフトーン処理、プリンタ11に転送すべきデータ順(吐出順序)に並び替えるラスタライズ処理(マイクロウィーブ処理)を順次行う。そして、得られた印刷画像データに指示すべきコマンドをヘッダに付して印刷データを生成する。このヘッダにはコマンドの他、用紙サイズを始めとする印刷パラメータや、コマンドで指示すべき内容を示す用紙搬送時の目標速度・搬送距離(紙送り量等)のパラメータが含まれる。
CPU43は、ホストコンピュータ35のプリンタドライバからインタフェイス41及びバス42を通じて印刷データを入力し、ホストコンピュータ35から最初に受信した印刷データ中のヘッダから用紙長Psizeを取得する。また、CPU43は、印刷データのヘッダに含まれるコマンドを解釈して給紙・紙送り・排紙などの各種コマンドと、指示の具体的な内容が数値等で示された例えば給紙・紙送り・排紙時に用紙を搬送すべき目標速度、搬送距離などのパラメータを取得する。
ASIC44は、CPU43から印刷データのうちヘッダ以外の印刷画像データを受け取り、この印刷画像データに画像処理等を施し、記録ヘッド19のノズルからインク滴を吐出する吐出信号の生成に用いられる所定階調値のビットマップデータに変換する。ASIC44は、変換したビットマップデータをヘッドドライバ48に送る。ヘッドドライバ48はビットマップデータに基づき記録ヘッド19を制御してノズルからインク滴を吐出させる。
また、CPU43には、モータドライバ49,50,51,52が接続されている。CPU43は、各モータドライバ49〜52を介してキャリッジモータ55、ASFモータ56、サブモータ57、PFモータ58(紙送りモータ)を駆動制御する。詳しくは、CPU43はモータドライバ50に制御データを指令し、このモータドライバ50は制御データに基づく回転方向、回転速度で回転するようASFモータ56を駆動制御する。また、CPU43は、モータドライバ52に制御データを指令し、このモータドライバ52は制御データに基づく回転方向、回転速度で回転するようPFモータ58を駆動制御する。さらに他のモータドライバ49,51についても同様の方法でキャリッジモータ55、サブモータ57を駆動制御する。
また、PFモータ58の出力軸は輪列(図示せず)を介して搬送駆動ローラ29a及び排紙駆動ローラ30aと動力伝達可能に連結されている。なお、モータドライバ52、PFモータ58、紙送りローラ29及び排紙ローラ30等により、搬送手段が構成される。
ここで、ASFモータ56は、給紙ローラ22を回転駆動させる。また、サブモータ57は、リタードローラ24及びホッパー15と動力伝達可能に連結されており、リタードローラ24及びホッパー15とがそれぞれの退避位置と給紙位置との間を連動するように駆動させる。
ASFモータ56は、その出力軸の回転を検出するロータリエンコーダ61を備え、またPFモータ58は、その出力軸の回転を検出するロータリエンコーダ62を備えている。各ロータリエンコーダ61,62は、それぞれ対応するモータの回転速度に反比例する周期をもつパルス信号を生成して出力する。CPU43には、入力系として紙検出センサ33及び各ロータリエンコーダ61,62が接続されており、CPU43は紙検出センサ33のオン・オフ信号、及び各ロータリエンコーダ61,62からの各パルス信号をそれぞれ入力する。
また、CPU43は、紙送り量カウンタ65、ASFカウンタ66、PFカウンタ67を内蔵している。紙送り量カウンタ65は紙検出センサ33がオンするとCPU43によりリセットされ、そのリセット後にエンコーダ62から入力されるパルス信号のパルスエッジを計数する。その後、紙送り量カウンタ65が用紙P1の紙送り量に相当する計数値を計数すると、ASFモータ56の駆動を停止させ、用紙P1の給紙(頭出し)が行われる。給紙終了後、紙送り量カウンタ65の計数値が図3に示す距離(La+Lb)に相当する値を差し引いて、用紙P1の先端がヘッド基準位置H(最上流ノズル)に到達したときの用紙P1の位置を原点とする紙送り量に相当する計数値に更新される。よって、給紙終了後における紙送り量カウンタ65の計数値Nxは、用紙P1の先端がヘッド基準位置Hに達してからの紙送り量に相当する値が計数される。CPU43は紙送り量カウンタ65の計数値Nxから頭出し後の用紙Pの位置(搬送位置)を把握する。
また、ASFカウンタ66は、ASFモータ56の回転を検出するエンコーダ61から入力するパルス信号のパルスエッジを計数する。ASFカウンタ66は、ASFモータ56の駆動が開始されるに先立ってリセットされ、ASFモータ56により回転駆動される給紙ローラ22によって給紙される用紙の給紙量(搬送距離)に相当する計数値を計数する。このため、CPU43は、ASFカウンタ66の計数値から給紙中の用紙がその給紙開始位置から給紙終了位置までの区間内のどの位置にあるかを把握できる。CPU43は、ASFカウンタ66の計数値から、給紙開始位置を原点とする用紙が給紙(搬送)された搬送距離を把握し、該搬送距離に応じてASFモータ56を速度制御する。
また、PFカウンタ67は、PFモータ58の回転を検出するエンコーダ62から入力するパルス信号のパルスエッジを計数する。PFカウンタ67は、PFモータ58の駆動が開始されるに先立ってリセットされ、PFモータ58により回転駆動される紙送りローラ29によって搬送される用紙の搬送量(搬送距離)に相当する計数値を計数する。このため、CPU43は、PFカウンタ67の計数値から紙送り中の用紙がその紙送り開始位置から紙送り終了位置までの区間内のどの位置にあるかを把握できる。CPU43は、PFカウンタ67の計数値から、紙送り開始位置を原点とする用紙が紙送り(搬送)された距離を把握し、該距離に応じてPFモータ58を速度制御する。詳しくは、CPU43は、不揮発性メモリ47から加減速テーブル(図6に示す)を読み出して、該加減速テーブルに従って搬送開始位置からの距離に応じた速度(周期の逆数)になるようにASFモータ56及びPFモータ58をそれぞれ速度制御する。なお、この明細書において、ASFモータ56の駆動を指して「ASF駆動」、PFモータ58の駆動を指して「PF駆動」と表記する場合がある。
本実施形態のプリンタ11では、先行用紙と後続用紙の間に所定量の隙間(間隔)を確保するためのページ間制御が採用されている。ROM45には、図10にフローチャートで示されるページ間制御処理ルーチンのプログラムが記憶されている。CPU43が、このプログラムを実行してページ間制御を実行することにより、先行用紙と後続用紙の隙間が確保される。
図4は、ページ間制御位置Ngを通過する紙送りが行われる際に実行されるページ間制御処理を説明する用紙の模式図である。同図では矢印で示す上方向が排紙方向(紙送り方向)である。固定位置にある記録ヘッド19に対して用紙が紙送り方向に相対移動して用紙搬送が行われるが、この図では、用紙P1と共に視点が動くように見て、用紙P1に対して記録ヘッド19が相対移動するように描かれている。なお、図4において記録ヘッド19(19A〜19C)中に描かれている太線はノズル列を示す。
用紙P1の先端側(図4における上端)から印刷が1ライン毎に進められ、1ラインの印刷の度に間欠的に指示された紙送り量の紙送りがなされ、上端側から下方へ向かって印刷は進められる。このとき記録ヘッド19は印刷が進むに連れて用紙P1に対して、同図における上側から下側へ向かって相対移動する。例えば図4に示す記録ヘッド19Aの位置が、用紙の先端がヘッド基準位置H(最上流ノズル)に一致した紙送り量「0」の原点位置を示す。用紙P1の原点位置からの紙送り量は、紙送り量カウンタ65に計数され、CPU43は紙送り量カウンタ65の計数値から、用紙P1の搬送方向(副走査方向Y)における位置を把握できるようになっている。
図4に示す用紙P1において網掛けで示した領域は、記録ヘッド19が印刷を施す印刷領域PA1,PA2を示している。同図に示すように、2つの印刷領域PA1,PA2間に印刷が施されない空白領域BAが存在する場合、印刷領域PA1の印刷を終えた記録ヘッド19Bは、印刷領域PA2の印刷開始位置である記録ヘッド19Cの位置まで相対移動するように、用紙P1は搬送距離「a」だけ紙送りされる。この紙送り過程でページ間制御位置Ngを通過する場合、この搬送距離「a」の紙送り動作が、記録ヘッド19Bのときの用紙位置からページ間制御位置Ngまでの搬送距離「b1」の紙送り動作と、ページ間制御位置Ngから記録ヘッド19Cのときの用紙位置までの搬送距離「c1」の紙送り動作とに分割される。つまり、PF駆動は、搬送距離「b1」と搬送距離「c1」との2回の紙送り動作に分割される。
このときASF駆動は、PF駆動が行われる間、ページ間制御位置Ngまでの搬送距離「b2」の給紙動作と、搬送距離「c2」の給紙動作に分割される。搬送距離「b1」のPF駆動と、搬送距離「b2」のASF駆動とは、搬送距離「b1」「b2」が共に等しく用紙搬送速度が同速度で行われる。これは、ページ間制御位置Ngに到達前の用紙搬送では、用紙P1が給紙ローラ22と紙送りローラ29との両方にニップされているので、給紙ローラ22と紙送りローラ29とを同期駆動させる必要があるからである。仮に同期駆動させなかった場合、用紙P1の給紙ローラ22と紙送りローラ29間の部分に弛みができたり過度な張力が付与されたりする不適切な搬送となる。このため、搬送距離「b1」と「b2」は等しく同期して同じ搬送速度で用紙P1が搬送されるように、ASF駆動とPF駆動とが行われる。
搬送距離「b1」のPF駆動が終わると、連続して搬送距離「c1」のPF駆動が行われる。一方、ASF駆動については、搬送距離「b2」の給紙動作を終えた後、搬送距離「c1」の紙送り動作を開始したPF駆動によって用紙P1が距離Lgap分だけ搬送された時点で、遅れてASF駆動は開始される。つまり、PF駆動に遅れてASF駆動が開始されることで、PF駆動により紙送りされる先行用紙P1と、ASF駆動により給紙される後続用紙P2との間に距離Lgap分の隙間が確保される。ASF駆動が遅れて加速を開始することになるので、搬送中において先行用紙P1と後続用紙P2の隙間が一時的に距離Lgapよりも広がるなど若干変動することもあるが、決まった搬送距離を搬送されることで、搬送終了後の隙間が距離Lgapとなる。
その後、ASF駆動とPF駆動とが同じ搬送距離ずつ用紙搬送を行うので、距離Lgap分の隙間が確保されたまま、先行用紙P1の紙送りと後続用紙P2の給紙が僅かの隙間分の距離Lgapを隔てるだけで連続的に行われる。なお、図4において、ページ間制御位置Ngは、用紙の後端(図4における下端)が、図3におけるページ間制御位置Gに位置したときの当該用紙におけるヘッド基準位置Hに対向する位置であり、用紙の後端から用紙搬送方向へ距離(La+Lb+Lc−Ld)の位置となる。
図6は、ASFモータとPFモータを速度制御する際に参照する加減速テーブルを示す。ROM45には、ASFモータ56とPFモータ58との各速度プロファイルを決める加減速テーブルのデータが記憶されている。そのうち図6では、PFモータ用の加減速テーブルのみ示している。本実施形態の加減速テーブルは、目標速度毎に用意されている。図6では、目標速度V1の加減速テーブルVT1と、目標速度V2(但しV1<V2)の加減速テーブルVT2とを示している。目標速度が異なるだけでどちらもテーブルの基本構成は同じであるので、ここでは加減速テーブルVT1を例に説明する。加減速テーブルVT1は、加速プロファイルを決める加速テーブルVTa1と、減速プロファイルを決める減速テーブルVTb1とからなり、それぞれ距離Dと周期Tとの対応関係を示すテーブルにより構成される。ここで、周期Tとは、エンコーダ61,62のパルスエッジ周期である。それぞれ距離Dと周期Tが対応付けて設定されている。
CPU43は、ASFモータ56及びPFモータ58の駆動開始(用紙搬送開始)に先立ち、ASFカウンタ66及びPFカウンタ67を予めリセットする。CPU43は、例えば紙送り時においては、エンコーダ62から入力するモータ回転速度に反比例した周期をもつパルスのエッジを計数するPFカウンタ67の計数値を、モータ回転開始位置(用紙搬送開始位置)からの距離D(モータ駆動量)として取得する。CPU43は、選択した加減速テーブルVTを参照して、モータドライバ52に距離Dに対応する周期Tを指令することでPFモータ58を速度制御している。
CPU43は、ASFモータ56についてもエンコーダ61からの入力パルスのエッジを計数するASFカウンタ66の計数値を、モータ回転開始位置からの距離Dとして取得する。そして、選択した加減速テーブルVTを参照して、モータドライバ51に距離Dに対応する周期Tを指令することでASFモータ56を速度制御している。なお、エンコーダ61,62から取得したパルスのエッジ周期を計時して、その計時した検出周期が目標周期Tに一致するようフィードバック制御を行ってもよい。
定速域の速度である目標速度V1,V2は加速テーブル中のデータ群のうち最短周期T1,T2(目標周期)から決まる。なお、図6では2つの加減速テーブルVT1とVT2とで、距離Dと周期Tの対応する数値が同じになっているが、実際は、目標速度V1,V2に応じて適切な加減速プロファイルが得られるような数値が設定されている。なお、図示はしないが、ASFモータ用の加減速テーブルについても、基本的に同様の構成となっている。また、ASFモータ用の加減速テーブルVTは、用紙を頭出し位置まで確実に給紙できることが優先される加減速プロファイルが得られるように作成されるのに対し、PFモータ用の加減速テーブルは、紙送り動作時の用紙の停止位置精度が優先される加減速プロファイルが得られるように作成されている。もちろん、加減速プロファイルは設計思想に応じて適宜変更できる。
加減速テーブルVT1,VT2に基づいて加速域・減速域でのその時々の距離Dに応じた目標値(周期T)が決まるので、CPU43はその時々の距離Dに応じた目標値と電圧指令値とをモータドライバ50,52に出力する。モータドライバ50,52は入力した目標値に従ってそれぞれ対応するASFモータ56、PFモータ58をそれぞれ速度制御する。また、モータドライバ50,52は、入力した電圧指令値に従ってそれぞれ対応するASFモータ56、PFモータ58に印加される電圧を制御する。この電圧によりASFモータ56、PFモータ58を流れる電流値が決まり、電流値に応じた回転トルクが得られる。電圧指令値は別途テーブルを用いて距離Dごと、あるいは加減速域を複数に区分した速度域ごとに決められる。なお、減速テーブルにおける距離Dの開始点である減速開始位置の求め方については後述する。
図7は、加減速テーブルに基づく速度制御によって得られる速度プロファイルの速度波形を示す。この速度波形のグラフでは、横軸が距離D、縦軸が速度Vで示されている。図7において左側のグラフが図6における加減速テーブルVT1に対応し、右側のグラフが図6における加減速テーブルVT2に対応する。ここで、速度Vは周期Tの逆数に相当する値である。また、用紙の搬送距離(図7のグラフにおけるb1,c1)は、印刷データのヘッダ中の紙送りコマンド、給紙コマンド、排紙コマンドと共に与えられる、搬送距離の具体的な数値データを指示する搬送距離パラメータ(例えば「Dy」とする)から取得する。図7に示す二つのグラフは、この搬送距離Dyが、Dy=b1の例と、Dy=c1の例である。
図7に示すように、加減速テーブルVTに基づく速度波形は略台形形状を描くが、その台形波形の高さは目標速度に比例する。そして、台形波形の高さが高くなるほど加速するのに必要な移動距離Da(図7の各グラフではDa1,Da2)と、減速するのに必要な移動距離Db(図7の各グラフではDb1,Db2)が長くなる傾向にある。このため、目標速度Vc(図7のグラフではV1,V2)(又は目標周期Tc)に到達できるためには、加速開始点(距離D=0)から目標速度Vc(又は目標周期Tc)に到達するまでの加速過程の移動距離Daと、目標速度Vc(又は目標周期Tc)から停止するまでの減速過程の移動距離Dbとの合計(Da+Db)が、最低距離として必要になる。よって、搬送距離Dy(=b1,c1)が決まると、この搬送距離Dyが最低距離(Da+Db)以上であることが、採用できる加減速テーブルVTの条件となる。
CPU43は、印刷データのヘッダから給紙コマンドを受け付けると給紙シーケンスを実行し、紙送りコマンドを受け付けると紙送りシーケンスを実行し、さらに排紙コマンドを受け付けると排紙シーケンスを実行する。CPU43はヘッダから給紙・紙送り・排紙のコマンドを取得する際は、コマンドと共に該コマンドを実行する際の具体的な実行内容を指示するパラメータとして、目標速度と搬送距離Dyを取得する。コマンドのパラメータで指示される目標速度(以下、第一目標速度という)は、例えば給紙・紙送り・排紙毎及び印刷モードに応じて設定された値である。印刷モードとしては、例えば印刷画質より印刷速度を優先する高速印刷モードや、印刷速度より印刷画質を優先する画質優先モードなどがある。
加減速テーブルVTの選択は次のように行う。まず、コマンドのパラメータとして与えられた第一目標速度を目標速度とする加減速テーブルVTを調べ、最低距離(Da+Db)と、今回の搬送距離Dyとを比較し、「Dy」が最低距離(Da+Db)以上であれば、そのまま第一目標速度用の加減速テーブルVTを採用する。一方、「Dy」が最低距離(Da+Db)未満であった場合は、最低距離の関係で、その第一目標速度用の加減速テーブルは採用できないので、搬送距離Dyが最低距離(Da+Db)以上という条件を満たす他の加減速テーブルのうち、最も高速な目標速度(第二目標速度)のものを選択する。
搬送距離Dyと加減速テーブルVTが決まると、CPU43はモータ速度制御を開始する。例えば図6で左側に示された目標速度V1の加減速テーブルVT1、及び図7で左側に示されたグラフを参照しつつ、PFモータ58の速度制御を例にして説明する。CPU43は、まずPFカウンタ67をリセットした後、選択した加減速テーブルVT1のうち加速テーブルVTa1を参照して、PFカウンタ67の計数値である距離Dに対応する周期Tをモータドライバ52に逐次指令してPFモータ58を加速させる。距離DがDa1に達して指令する周期Tが目標周期T1になると加速を終了し、以後の定速域では目標周期T1をそのまま指令し続ける。そして、減速開始位置(距離「Dy−Db1」の位置)に到達すると、減速テーブルVTb1を参照して減速開始位置からの距離Dに応じた周期Tを逐次指令してPFモータ58を減速させる。
ところで、給紙ローラ22の搬送速度は、ASFモータ56の回転速度と、ASFモータ56と給紙ローラ22間の輪列の減速比と、給紙ローラ22の外径などにより決まる。また、紙送りローラ29の搬送速度は、PFモータ58の回転速度と、PFモータ58と搬送駆動ローラ29a間の輪列の減速比と、搬送駆動ローラ29aの外径などにより決まる。本実施形態では、ASFモータ56の回転速度とPFモータ58の回転速度が同速度であれば、給紙ローラ22の搬送速度と紙送りローラ29の搬送速度が同速度になるように、前記両輪列の減速比と各ローラ径などの値が設定されているものとする。このため、図7のグラフ、さらには図8,図9のグラフにおける速度Vは、ASF駆動とPF駆動時における用紙の搬送速度を示すものではあるが、搬送速度に対する換算比率が共に等しいASFモータ56とPFモータ58の各回転速度を表すものともなっている。
次にCPU43が実行する図10のフローチャートで示される用紙搬送処理ルーチンを、図7〜図9のグラフを参照しつつ説明する。
ステップS10では、給紙動作を行う。すなわち、サブモータ57の駆動によりホッパー15及びリタードローラ24が図1(b)に示す給紙位置に配置された状態で、ASFモータ56及びPFモータ58を駆動させて用紙Pの給紙を行う。この給紙動作により用紙P1は頭出しされる。このとき紙送り量カウンタ65には、用紙P1の先端がヘッド基準位置H(図3参照)に一致したときの位置を原点とし、この原点から搬送された紙送り量に相当する計数値が計数されている。
次のステップS20では、印刷動作を行う。すなわち、キャリッジモータ55を駆動してキャリッジ18を主走査方向Xに移動させるとともにその移動途中の印刷位置で記録ヘッド19のノズルからインクを吐出することにより1パス分の印刷が行われる。
ステップS30では、今回の紙送りを行うと、ページ間制御位置Ngを超えるか否かを判断する。詳しくは、紙送り量カウンタ65の現在の計数値Nxに、搬送距離Dyを加算した値が、ページ間制御位置Ngを超えるか否かを判断する。ページ間制御位置Ngを超える場合はステップS50に進み、ページ間制御位置Ngを超えない場合はステップS40に進む。なお、先行用紙P1の現在位置Nxがページ間制御位置Ngに一致する場合は、計数値Nxに搬送距離Dyを加算して得られる値(Nx+Dy)がページ間制御位置Ngより大となり、ページ間制御位置Ngを始めて超える紙送りとなるので、この場合もページ間制御位置Ngを超えると判断する。
ステップS40では、紙送り動作を行う。つまり、紙送りコマンドの指示に従いASFモータ56及びPFモータ58を駆動して搬送距離Dyだけ用紙を紙送りする。
一方、ステップS30において今回紙送りを行うとページ間制御位置Ngを超えると判断された場合は、以下のステップS50,S60を実行して、先行用紙と後続用紙の間に規定の隙間Lgapを開ける処理を行うことになる。
ステップS50では、ページ間制御位置まで紙送り動作を行う。つまり、ステップS30で今回紙送りを行うとページ間制御位置Ngを超えると判断した場合は、今回の紙送り動作を、紙送り開始位置(現在位置Nx)からページ間制御位置Ngまで用紙を搬送する第一紙送り動作と、ページ間制御位置Ngから紙送り終了位置(Nx+Dy)まで用紙を搬送する第二紙送り動作との2回に分ける。そのうち1回目の第一紙送り動作をこのステップの処理で行う。第一紙送り動作では、ASFモータ56とPFモータ58を同速度で同距離駆動させる。つまり、給紙ローラ22と紙送りローラ29で用紙を同じ搬送速度で同じ距離だけ搬送させる。
このとき、第一紙送り動作の搬送距離は「Ng−Nx」に決まる。搬送距離(Ng−Nx)が第一目標速度用の加減速テーブルVTの最低距離(Da+Db)以上となる場合は、この第一目標速度用の加減速テーブルVTを採用する。最低距離の条件を満たさない場合は、搬送距離(Ng−Nx)が最低距離(Da+Db)以上となる他の加減速テーブルVTのうち目標速度が最も高速となるものを選択する。この加減速テーブルVTの選択処理を、ASFモータ56とPFモータ58とについてそれぞれ行い、それぞれが採用する加減速テーブルVTを選択する。そして、選択した両加減速テーブルVTの目標速度が異なる場合は、低速側の目標速度に合わせ、高速側の目標速度の加減速テーブルVTを、低速側の目標速度の加減速テーブルVTに変更する。こうしてASFモータ56とPFモータ58についてそれぞれ目標速度を同じとする加減速テーブルVTが決定される。
もちろん、ASFモータ56と給紙ローラ22間の輪列と、PFモータ58と紙送りローラ29間の輪列とが異なる減速比であって、ASFモータ56の回転速度と給紙ローラ22の搬送速度の比と、PFモータ58の回転速度と紙送りローラ29の搬送速度の比とが異なる場合は、あくまで給紙ローラ22と紙送りローラ29の各搬送速度が同速度になるように、ASFモータ56とPFモータ58用の各加減速テーブルVTを決定することになる。なお、先行用紙P1の現在位置Nxがページ間制御位置Ngに一致する場合は、第一紙送り動作の搬送速度が「0」であることから、ステップS50の第一紙送り動作は行われず、ステップS60の第二紙送り動作のみ行われる。
ステップS60では、印刷位置まで紙送り動作を行う。つまり、第二紙送り動作を行う。この紙送り動作では、まず先にPFモータ58の駆動を開始させ、PFモータ58がページ間制御距離Lgapだけ駆動した後、ASFモータ56の駆動を開始する。ASFモータ56の駆動開始タイミングは、PFモータ58の駆動開始時にリセットされたPFカウンタ67の計数値がページ間制御距離Lgapの値に達したことをもって判断する。このように本実施形態では、用紙搬送の駆動源となるASFモータ56とPFモータ58との2つのモータのうち、先に駆動されたPFモータ58の駆動位置を計測する位置パラメータであるPFカウンタ67の計数値が所定値(待機終了位置)に達したら、待機していた他方のASFモータ56の駆動を許可する制御を行う。このモータ制御により先行用紙と後続用紙の間に規定の隙間Lgapが確保される。
次のステップS70では、印刷動作を行う。この印刷動作はステップS20と同様の処理である。
ステップS80では、印刷完了であるか否かを判断する。印刷データ中に排紙コマンドを受け付けた場合に印刷完了であると判断する。印刷完了であればステップS90に進み、まだ印刷完了でなければステップS30に戻る。すなわち、ステップS80で印刷完了と判断されるまで、S30〜S80の処理を繰り返す。紙送り動作(S40)と印刷動作(S70)が交互に行われ、紙送りを行うと紙送り量カウンタ65の計数値Nxがページ間制御位置Ngを超えると判断された場合、ページ間制御(S50,S60)を行う。そして、S80で印刷完了と判断されれば、ステップS90に進む。
ステップS90では、印刷完了位置はページ間制御位置を超えているか否かを判断する。ここで、印刷完了位置は、排紙コマンドを受け付けた現在の紙送り量カウンタ65の計数値Nxを指す。印刷完了位置がページ間制御位置Ngを超えていればステップS100に進み、ページ間制御位置Ngを超えていなければステップS110に進む。
ステップS100では、用紙先端検知まで給紙動作を行う。つまり、この給紙動作では、後続用紙の先端が紙検出センサ33に検知される位置まで、PFモータ58とASFモータ56を同時に同距離駆動させる。
一方、ステップS90において印刷完了位置はページ間制御位置Ngを超えていないと判断された場合は、以下のステップS110,S120を実行して、先行用紙と後続用紙の間に規定の隙間Lgapを開ける処理を行うことになる。
ステップS110では、ページ間制御位置まで排紙動作を行う。つまり、ステップS90でページ間制御位置Ngを超えていないと判断した場合は、用紙を排紙させる途中で後続用紙との間に規定の隙間を開けるページ間制御を行う必要がある。そのため、まず用紙P1を紙送り量カウンタ65の計数値がNgとなる図3に示すページ間制御位置まで排紙させる。
次のステップS120では、用紙先端検知まで給紙動作を行う。すなわち、先行用紙をページ間制御位置Ngまで排紙させた後、後続用紙の先端が紙検出センサ33に検知される位置まで後続用紙を給紙する給紙動作を行う。この給紙動作では、PFモータ58は、後続用紙が図3に示す位置から紙検出センサ33により検知される位置まで搬送するのに必要な距離である用紙先端検出距離(Lc−Ld)に、ページ間制御距離Lgapを加えた距離(Lc−Ld+Lgap)だけ駆動し、一方、PFモータ58がページ間制御距離Lgapだけ駆動した後、ASFモータ56を用紙先端検出距離(Lc−Ld)だけ駆動させる。
こうして用紙搬送制御処理のプログラムを終了したときには、後続用紙の先端が紙検出センサ33により検知される位置まで後続用紙が給紙されるとともに、この後続用紙の先端と規定の隙間Lgapを開けて後端が位置するように先行用紙が排紙された状態となる。その後、再び当該プログラムが実行されることで後続用紙の頭出しから開始される。
なお、ステップS50,110の処理において、ASF駆動とPF駆動との両方で先行用紙P1をページ間制御位置Ngまで搬送する処理が搬送ステップに相当し、ASF駆動を停止する処理が給送停止ステップに相当する。また、ステップS60,S120において、用紙P1,P2の間隔がページ間制御距離Lgapに達するのを待ってからASF駆動を再開する処理が給送再開ステップに相当する。さらにステップS50,S110において、先行用紙P1がページ間制御位置Ngに達した際にPF駆動を一旦停止させる処理が搬送停止ステップに相当する。
次にページ間制御を伴う用紙搬送処理を行うプリンタ11の動作について説明する。
用紙に印刷が行われるときにページ間制御位置Ngを通過するケースには、3つの場合がある。1つは、例えば用紙の略全面に印刷が施される場合など、最小送りピッチの紙送り動作と1パスの印刷動作が交互に行われる印刷途中における紙送りの際にページ間制御位置Ngを通過する場合である。この場合、紙送り量が2つに分割されて、先行用紙は2回の紙送り動作で搬送されるとともに、後続用紙はそのうち1回目の紙送りのみ行われる。その後、先行用紙は印刷動作と交互に最小送りピッチずつ紙送りされるが、紙送り量カウンタ65の計数値が値(Ng+Lgap)に達するまで、ASFモータ56の駆動は許可されない。そして、先行用紙と後続用紙の間に規定の距離Lgapが開くと、ASFモータ56の駆動が許可され、紙送りの際にASFモータ56とPFモータ58が共に同距離駆動される。
2つめは、図4に示すように、2つの印刷領域PA1,PA2間に空白領域BAが存在し、印刷領域PA1の印刷を終えた位置から、印刷領域PA2の印刷開始位置まで、搬送距離「a」の紙送りを行う途中でページ間制御位置Ngを通過する場合である。この場合、搬送距離「a」の紙送りを行うと、ページ間制御位置Ngを通過すると判断される(S30でYES)。すなわち、現在の紙送り量カウンタ65の計数値Nxに、搬送距離aを加算した紙送り量計数値(Nx+a)がページ間制御位置Ngを超える(Nx+a>Ng)と判断される。そして、搬送距離aの紙送りは、搬送距離b1と搬送距離c1との2回のPF駆動に分割されるとともに、搬送距離b2と搬送距離c2との2回のASF駆動とに分割される。まず搬送距離b1のPF駆動と搬送距離b2(=b1)のASF駆動が略同時に行われ、用紙はページ間制御位置Ngに搬送される。次に搬送距離c1のPF駆動が行われた後、先行用紙が距離Lgapだけ駆動されると、ASF駆動が許可されて搬送距離c2のASF駆動が開始される。これにより先行用紙と後続用紙の間に距離Lgap分の隙間が確保される。
3つめは、用紙P1の先端付近の領域にのみ印刷が施されて印刷完了後の排紙途中でページ間制御位置Ngを通過する場合である。この印刷完了時時に先行用紙P1は給紙ローラ22にニップされた状態にある。この場合、先行用紙がページ間制御位置Ngに到達するまでに必要な搬送距離(Psize−La−Lb−Lc−Nx)のASF駆動及びPF駆動による排紙動作が行われ、さらに先行用紙がページ間制御位置Ngに達した位置から、後続用紙が紙検出センサ33により検知される位置まで搬送するのに必要な搬送距離(Lc−Ld)のASF駆動と、搬送距離(Lc−Ld+Lgap)のPF駆動とによる給紙動作が行われる。そして、後者の給紙動作においては、PF駆動が規定の隙間Lgap分だけ駆動された後にASF駆動が許可される。
本実施形態では、上記3つのいずれの場合も、ページ間制御位置Ngを通過する用紙搬送の際に、ページ間制御位置Ngまでの用紙搬送と、その後に行われるPF駆動のページ間制御距離Lgap分の駆動後に遅れてASF駆動が許可されることにより距離Lgap分の隙間が確保される。この3つのケースのうち、2つめの空白領域BAを跨ぐ紙送りの場合と、3つめの排紙動作の場合は、2回に分割する前の当初の搬送距離が比較的長くなる。この場合、1回の搬送駆動が分割される位置によって、前の回の搬送距離b1と後の回の搬送距離c1とが異なるのが通常である。1回の搬送駆動が2回の搬送駆動に分割された場合、分割された2回の搬送距離は短くなるので、最低距離の関係で、搬送距離の短い搬送動作の搬送速度が、搬送距離が長い搬送動作の搬送速度と異なるケースが発生する。
もっとも、ASF駆動については隙間距離Lgapを開けるために給紙の開始を待つので、ASF駆動を一時的に停止させる必要があるが、PF駆動の方は途中で一旦停止させることなく1回の搬送駆動で紙送り動作や排紙動作を行う構成とすればスループットの面からも効率的である。しかし、PF駆動を停止させないとすると、前の回の搬送速度と後の回で搬送速度が異なる場合、途中で変速させる必要があり、変速にも対応できる専用の加減速テーブルを別途用意しなければならない。そのため、本実施形態においては、PF駆動においても途中で一旦停止させる構成を採用している。
図8及び図9は、ページ間制御を説明するグラフを示す。図8は、ページ間制御位置Ngで分割される2回の搬送駆動で搬送距離がそれぞれ異なる場合であり、特に前の回の搬送距離よりも後の回の搬送距離が長い例である。また、図9は、ページ間制御位置Ngで分割される2回の搬送駆動で搬送距離がそれぞれ等しい場合である。いずれのグラフも図4に示す空白領域BAを跨ぐ紙送りの例で示している。各図において上側のグラフがASF駆動を示し、下側のグラフがPF駆動を示している。そして、各グラフにおいて、横軸が距離Dで、縦軸が速度V(周期Tの逆数)となっている。
まず図8のグラフを参照しつつ、搬送距離aをページ間制御位置Ngで2つに分割した場合、前の搬送距離b1よりも後の搬送距離c1の方が長い場合におけるページ間制御について説明する。PF駆動は搬送距離aを一度に搬送することも可能であるが、先行用紙が給紙ローラ22と紙送りローラ29の両方にニップされているページ間制御位置Ngまでの搬送は、ASF駆動とPF駆動とを同速度にする必要がある。これは、先行用紙が給紙ローラ22と紙送りローラ29にニップされた間の部分に過度な引っ張りや過度な弛みが加わることを防止するためである。一方、ASF駆動の加減速テーブルVTは、搬送距離b2未満の最低距離となる加減速テーブルVTのうち目標速度が最も高速なものが選択されるが、搬送距離b2が元々短いことから低速の目標速度V1が設定された加減速テーブルVT1が選択されることになる。このため、搬送距離aを一度のPF駆動で搬送しようとすると、搬送距離b2のASF駆動に合わせて、搬送距離aの全域を低速の目標速度V1でPF駆動させる必要がある。この場合、長い搬送距離aを低速でPF駆動させることになるので、スループットの低下をもたらす。このスループットの低下は搬送距離aが長いほど顕著に表れる。一方、ページ間制御位置Ngを過ぎた後に速度V1から速度V2へ加速させる速度変更を行う構成も考えられるが、この場合、変速用の加減速テーブルが必要になる。
そこで、本実施形態では、ASF駆動がページ間制御位置Ngで一旦停止している時にPF駆動を一旦停止させている。すなわち、図8のグラフに示すように、ページ間制御位置Ngに達するまでは、搬送距離b2を速度V1でASF駆動させるとともに、搬送距離b1(=b2)を速度V1でPF駆動させる。つまり、ASFモータ56とPFモータ58とを同速度V1で同距離b2(=b1)だけ駆動させる。そして、PFモータ58の駆動を一旦停止させた後、直ちに駆動を再開して搬送距離c1だけ駆動する。このとき搬送距離c1は搬送距離b1に比べ十分長いので、より高速な目標速度V2(>V1)が設定された加減速テーブルVT2が選択され、速度V2で搬送される。この場合、搬送距離b1に比べ搬送距離c1が長いほどスループットの低下が抑えられ易くなる。
次に、図9のグラフに示すように、搬送距離b1と搬送距離b2が等しい場合は、それぞれの搬送距離b1,c2を搬送する際のPFモータ58の速度は共に等しく速度V3となる。本実施形態では、ページ間制御位置Ngを挟んだ前後において同速度V3で駆動される場合も、ASFモータ56の駆動が停止される時にPFモータ58の駆動を一旦停止させている。これは、一旦停止する場合と停止しない場合とを判別する判断処理を追加しなくて済むように、ページ間制御位置NgでのASFモータ56の駆動停止時にPFモータ58を一律に一旦停止させる構成としている。
以上詳述したように、この第1実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)ページ間制御位置Ngを通過する用紙搬送の場合、ページ間制御位置NgまでASFモータ56とPFモータ58とを同速度で駆動させるとともに、ページ間制御位置Ngからの残りの搬送距離を搬送させるに際し、PFモータ58が隙間分の距離Lgapだけ駆動された後に、ASFモータ56の駆動開始を許可する構成を採用した。先行用紙と後続用紙が連続的に給紙されても、先行用紙と後続用紙の間に規定の隙間を確保できる。よって、後続用紙の先端を紙検出センサ33により確実に検知することができる。
(2)搬送速度が搬送距離に依存する構成において、ASFモータ56がページ間制御位置Ngで停止するときにPFモータ58の駆動も一旦停止させた。このため、ページ間制御位置Ngまでの搬送距離よりもページ間制御位置Ngからの残りの搬送距離が長い場合、1回目のPFモータ58の駆動速度V1よりも2回目のPFモータ58の駆動速度V2を高速に設定でき、スループットの低下を抑えることができる。
(3)加減速テーブルVTの最低距離の関係で、搬送距離が短い場合にASFモータ56の駆動速度を低速に抑えざるを得ず、このASFモータ56の駆動速度にPFモータ58の駆動速度を低速に合わせざるを得ない場合でも、ページ間制御位置Ngを過ぎた後に、搬送距離b1を搬送する際の搬送速度よりも、残りの搬送距離c1を搬送する際の搬送速度をより高速に切り替えることが可能である。
(4)ASFモータ56がページ間制御位置Ngで停止するときに、PFモータ58の駆動を一旦停止させる。よって、変速用の加減速テーブルを追加することなく、元々備えられている加減速テーブルVTを用いて、ページ間制御位置Ngを過ぎた後により高速な搬送速度へ切り替えることが可能になる。
(5)ASFモータ56がページ間制御位置Ngで停止するときに、一律にPFモータ58の駆動を一旦停止させる構成とした。よって、PFモータ58の駆動を一旦停止させるか停止させないかを判別する判断処理を追加しなくて済むので、制御内容を簡単にすることができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態における紙間隔形成処理について図11〜図14に従って説明する。この第2実施形態は、PF駆動をASF駆動の停止に際して一旦停止させることなく、ページ間制御位置Ngを過ぎた位置からASF駆動速度をより高速に変速させる構成である。なお、プリンタ11の構成及び電気的構成は前記第1実施形態と同様であるので、前記第1実施形態と共通の構成については説明を省略し、特に異なるページ間制御について詳しく説明する。
CPU43は、前記第1実施形態で説明した図10に示す用紙搬送制御処理を行う。この用紙搬送制御処理において、ステップS30の判断処理でYESの場合と、ステップS90の判断処理でNOの場合とにおいて、ページ間制御を行うときは、前記第1実施形態におけるステップS50,S60及びステップS110,S120の処理に替えて、図14に示すページ間制御処理を実行する。なお、図14に示すフローチャートにおいては、搬送距離b1,c1だけ用紙を搬送させる際のPFモータ58の駆動を、「PF駆動b1」「PF駆動c1」とそれぞれ表記し、搬送距離b2,c2だけ用紙を搬送させる際のASFモータ56の駆動を、「ASF駆動b2」「ASF駆動c2」とそれぞれ表記している。また、用紙を搬送距離b2,c2だけ搬送させるために必要なASFモータ56の駆動量を、ASF駆動量b2,c2と表記し、用紙を搬送距離b1,c1だけ搬送させるために必要なPFモータ58の駆動量を、PF駆動量b1,c1と表記している。
図11は、ページ間制御を行う際の速度波形を示すグラフである。同図における上段がASF駆動を示し、下段がPF駆動を示している。前記第1実施形態では、ASF駆動をページ間制御位置Ngで停止させる際にPF駆動も一旦停止させたが(図8のグラフ参照)、この第2実施形態では、図11における下段のグラフに示すようにPF駆動については、ASF駆動をページ間制御位置Ngで停止させた際に一旦停止させることはせず、ページ間制御位置Ngを過ぎた所定のタイミングで、定速V1から速度V2まで加速している。但し、変速に対応できる変速専用の加減速テーブルVTを追加している訳はなく、加減速テーブルVTは、前記第1実施形態と同様に図6に示すものを使用している。
CPU43は、まず印刷データのヘッダから今回の用紙の搬送距離(紙送り量又は排紙量、給紙量)を取得する。現在の紙送り量カウンタ65の計数値Nx(<Ng)に、今回の搬送距離a(PF駆動量)を加算した値(Nx+a)が、ページ間制御位置Ngを超える((Nx+a)>Ng)場合、CPU43はページ間制御を行うべきであると判断する。この判断を行ったCPU43は、PF駆動量aを、PF駆動量b1とPF駆動量c1(但しa=b1+c1)とに2分割する。ここで、PF駆動量b1は、今回の紙送りを行う前の現在位置Nxからページ間制御位置Ngまでの距離である。また、PF駆動量c1は、ページ間制御位置Ngから搬送終了位置(Nx+a)までの距離である。
また、CPU43は、現在位置からページ間制御位置までの給紙が可能なASF駆動量b2と、PFモータ58がLgapだけ駆動後に駆動開始されたときに搬送終了位置まで搬送可能なASF駆動量c2とを算出する。こうしてPF駆動量b1,c1と、ASF駆動量b2,c2とが決まる。
まずステップS210では、PF駆動量b1、ASF駆動量b2から駆動可能な速度(目標速度)を選択する。CPU43は、PF駆動量b1、ASF駆動量b2にそれぞれ対応する目標速度をまず個別に求める。CPU43が搬送指示を受け付けるときは一緒に目標速度が指示されている。加減速テーブルは、PF駆動用とASF駆動用とが別々に用意されている。これは、PF駆動では紙送り後の停止位置精度を優先するのに対して、ASF駆動では目標位置まで確実に移動できることを優先し、適切な速度プロファイルが双方で異なるからである。
まず指示された目標速度に対応する加減速テーブルを取得する。この加減速テーブルの最低距離以上のPF駆動量b1であれば、この加減速テーブルを採用する。一方、この加減速テーブルの最低距離未満のPF駆動量b1であれば、PF駆動量b1が最低距離以上となる他の加減速テーブルの候補を探し出し、そのうち最も高速の目標速度が得られる加減速テーブルを選択する。これと同様の方法で、ASF駆動量b2についてもASF駆動用の加減速テーブルの中から適切な一つが選択される。
こうして各駆動量b1,b2から、PF駆動用の加減速テーブルと、ASF駆動用の加減速テーブルとが決まる。ところで、用紙P1が給紙ローラ22とリタードローラ24との間にニップされている場合、給紙ローラ22と紙送りローラ29は用紙P1を同速度で搬送させる必要がある。そのため、各駆動量b1,b2(搬送距離)から決まるPF駆動用の加減速テーブルとASF駆動用の加減速テーブルとで目標速度が異なる場合は、低速な目標速度の方に目標速度を合わせるように加減速テーブルが変更される。こうしてPF駆動用の加減速テーブルとASF駆動用の加減速テーブルが決まることで、それぞれの目標速度が決まる。つまり、ASF駆動とPF駆動とで用紙搬送速度である第一搬送速度が同じになるように目標速度、すなわち加減速テーブルが決まることになる。例えば図6に示す目標速度V1の加減速テーブルVT1が選択される。
ステップS220では、PF駆動量c1、ASF駆動量b2から駆動可能な速度(目標速度)を選択する。ところで、先行用紙P1がページ間制御位置を過ぎた後においては、先行用紙P1は給紙ローラ22によるニップから解放されているので、PFモータ58とASFモータ56とを異なる搬送速度で駆動させることができる。よって、ページ間制御位置を過ぎた後の用紙搬送過程では、各駆動量c1,c2から最低距離の条件を満たす加減速テーブルが決められ、各加減速テーブルが決められることで目標速度が決まる。例えば図6に示す目標速度V2の加減速テーブルVT2が選択される。
ステップS230では、PF駆動量a(=b1+c1)を設定する。
ステップS240では、ASF駆動c2の起動タイミングを設定する。すなわち、PF駆動b1(又はASF駆動b2)の後、距離Lgap分のPF駆動終了時点が、ASF駆動c2の起動タイミングとなるので、PFカウンタ67の計数値換算値で「b1+Lgap」を設定する。
ステップS250では、PF駆動c1の加速開始タイミングの検索・設定処理を行う。すなわち、まずPF駆動b1の際に参照される目標速度V1の加減速テーブルVT1(又は加速テーブルVTa1)における定速周期(目標速度の周期Tの値)「T1」(図6,図3参照)を取得する。次に、PF駆動量c1の加減速テーブルVT2(又は加速テーブルVTa2)を参照して、先の定速周期「T1」と同じ周期T1となるまでに必要な距離Dのデータを取得する。図13の例では、加速テーブルVTa2において周期「T1」のときの距離Dは「D1」なので、停止状態から周期「T1」の速度になるまでに要する距離のデータ「D1」が得られる。PF駆動量b1の距離を用紙P1が移動し終わった位置はページ間制御位置Ngである。よって、用紙P1がページ間制御位置Ngに到達すれば、先行用紙P1は給紙ローラ22のニップから解放されるので、PFモータ58を変速しても問題はない。よって、PF駆動量b1の移動を終えた位置に達したタイミングで変速を開始してよい。しかしながら、本例では、PF駆動量b1の移動を終えた位置のタイミングで加減速テーブルVT2に従って速度零から加速を開始したと想定して加速テーブルVTa2を参照のみする(周期は指令しない)。そして参照して決まる周期T(速度)が加減速テーブルVT1の定速周期T1(目標速度V1)に達したタイミングで、加減速テーブルVT1から加減速テーブルVT2へ切り替える。そして、このような加減速テーブルVT1,VT2の切り替えを行うことにより、2つの加減速テーブルVT1,VT2に基づく2つの速度プロファイル波形を合成し、目標速度V1から目標速度V2へ変速する変速制御を実現している。
ステップS260では、PF駆動量c1の参照開始位置を設定する。すなわち、前のステップS250で取得した距離データD1の計数を開始する開始点(加速テーブル参照開始位置E)、本例では、ページ間制御位置に到達するまでのPF駆動量b1に相当するので、加速テーブル参照開始位置Eとして、PFカウンタ67の計数値換算値で「b1」を設定する。以上までの各ステップS210〜260の処理により必要なデータ設定の準備が終了する。
次のステップS270では、ASFモータ56の駆動を開始し、ASF駆動量b2の駆動を開始する。
ステップS280では、PFモータ58の駆動を開始し、PF駆動量aの駆動を開始する。
ステップS290では、PFカウンタ67の駆動距離Npfが加速テーブル参照開始位置Eに達した(Npf≧b1)か否かを判断する。本例では、加速テーブル参照開始位置Eを、用紙がページ間制御位置に達したときの位置に設定しているので、PFカウンタ67が計数する駆動距離NpfがPF駆動量b1に達すると、加速テーブル参照開始位置Eに達したと判断する。加速テーブル参照開始位置Eに達した場合は、次のステップS300に進み、加速テーブル参照開始位置Eに達していない場合は達するまで待機する。
ステップS300では、PF駆動量c1の加減速テーブルVT2のパラメータを設定する。すなわち、それまで参照していた加速テーブルVTa1に替えて次に使用する加速テーブルVTa2を参照できる状態にすべく、加速テーブルVTa2における距離と周期のデータをパラメータとして設定する。
ステップS310では、駆動距離Npfが加速開始タイミング位置Fに達したか否かを判断する。PFカウンタ67が計数する駆動距離Npfが加速開始タイミング位置Fに相当する値(b1+D1)に達した場合はステップS320に進み、加速開始タイミング位置Fに相当する値に達していない場合は達するまで待機する。この待機中において、CPU43は、加速テーブル参照開始位置Eから加速テーブルVTa2を参照するが、加速テーブル参照開始位置Eからの距離Pが「D1」に達するまでは、距離Pを参照して計数するのみでその距離Pに対応する周期Tを指令することはしない。
ステップS320では、PF駆動量c1の加速テーブルVTa2を適用する。このときそれまでの定速周期「T1」と同じ周期「T1」に対応する距離「D1」を、参照開始位置として適用する。そして、CPU43は、参照する加速テーブルを、加速テーブルVTa1から加速テーブルVTa2へ切り替え、その参照開始位置D1から加速テーブルVTa2に従った速度制御を開始する。
次のステップS330では、PFカウンタ67の駆動距離NpfがASF駆動量c2の給紙を開始する起動タイミングに達したか否かを判断する。すなわち、PF駆動量が「b1」に達した後にLgapの距離を移動したか否かを判断する。詳しくは、PFカウンタ67が計数する駆動距離Npfが「b1+Lgap」に達したか否かを判断する。もちろんASFカウンタ66による「b2」の計数後、PFカウンタ67が「Lgap」分の値をさらに計数したか否かを判断してもよい。PF駆動量が「b1」に達した後にLgapの距離を移動してNpf≧b1+Lgapを満たす場合はステップS340に進み、Lgapの距離を移動していない場合はLgapの距離を移動するまで待機する。
ステップS340では、ASF駆動c2を開始する。こうしてASF駆動停止後、距離Lgap分だけPF駆動が行われるのを待ってから、ASF駆動が再開される。
上記の例では、PF駆動量aを2分割したPF駆動量b1とPF駆動量c1の大小関係が、b1<c1となる場合であったが、これとは逆に、図12に示すように、b1>c1となる場合は、ASF駆動はASF駆動量b2の駆動を終えて停止した後、PF駆動量がページ間制御距離Lgapだけ駆動後にASF駆動量c2の加速を開始する。この場合、PF駆動速度は2つの定速域をもつように途中で減速されることはなく、PF駆動量aから決まる加減速テーブル(但し、ASF駆動量b2から決まる加減速テーブルと目標速度を合わせるように決められた加減速テーブル)に従って駆動される。このため、用紙P1が次の記録位置に到達する際の遅れを防止できる。
なお、この第2実施形態では、図10のステップS50,S110において、ASF駆動とPF駆動との両方で先行用紙P1をページ間制御位置Ngまで搬送し、ASF駆動を停止する処理が、給送手段を停止又は減速させるステップに相当する(但し、本実施形態は停止させる例)また、ステップS60,S120において、用紙P1,P2の間隔がページ間制御距離Lgapに達するのを待ってからASF駆動の加速を開始する処理が制御ステップに相当する。そして、図14において主にステップS240〜S320の各処理が変速ステップに相当する。
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(6)また、用紙が給紙ローラ22とリタードローラ24間に挟持されている間は、給紙ローラ22と紙送りローラ29とが同速度で回転駆動されるようにASFモータ56及びPFモータ58を駆動する必要がある。ページ間制御位置を跨ぐ搬送の場合は、ページ間制御位置までの搬送距離以下の最低距離に設定された加減速テーブルのうち最高速度が得られるものをそれぞれ選び、ASFとPF毎に選ばれた各目標速度のうち低い方に合わせる。よって、搬送開始位置から搬送終了位置(給紙位置又は紙送り位置)までの範囲を分断するページ間制御位置が、第1搬送距離よりも第2搬送距離の方がかなり長くなる場合、ページ間制御位置以後の給紙速度で高い目標速度を設定できる場合でも、給紙を途中で停止させないで搬送終了位置(給紙位置又は紙送り位置)まで駆動させ続けた場合、第二搬送距離c1が長いにも関わらず第一搬送距離b1から決まる紙送り速度に合わせた低速で給紙を行わざるを得ない。しかし、本実施形態では、用紙がページ間制御位置に達してASFモータ56を一旦停止させた際にPFモータ58を変速により加速させるので、PFモータ58を一旦停止させる第1実施形態に比べ、より高速に給紙することができる。そして、第一搬送距離b1より第二搬送距離c1の方が長い場合に、第一搬送速度V1よりも高速な第二搬送速度V2で先行用紙P1を搬送できるので、先行用紙P1と後続用紙P2との間に規定以上の隙間Lgapを確保できるとともに印刷のスループットを向上できる。
(7)ページ間制御位置Ngを跨ぐ搬送動作の場合、ページ間制御位置Ngまで給紙されて停止した後続用紙P2が、先行用紙P1との間に規定以上の隙間Lgapが確保されるまで待つときに、PFモータ58の駆動を一旦停止させることなく、加速して行う構成とした。このため、定速速度(目標速度)を1つだけもつ加減速テーブルを用いて対応でき、第一搬送速度と第二搬送速度という複数の目標速度(定速速度)をもつ変速対応可能な加減速テーブルを別途追加する構成を採用しなくて済む。このような変速対応可能な加減速テーブルを採用することになると、複数の目標速度ごとに非常に多くの組合せの加減速テーブルを追加しなければならなくなるが、それをしなくて済む。よって、メモリの記憶容量を増やしたり、メモリの増設の必要がない。
(8)第一搬送距離b1>第二搬送距離c1の場合、搬送距離から決まる加減速テーブルの各目標速度である第一搬送速度V1が第二搬送速度V2よりも低速となるが、第一搬送速度を途中で減速させることなく(つまり第二搬送速度に減速させることなく)第一搬送速度V1で搬送を行った。よって、途中で減速する構成に比べ、給紙を高速に行うことができる。
なお、前記各実施形態に限定されず、以下の形態も採用できる。
(変形例1)前記第2実施形態では、PF駆動量b1の駆動を終えた位置、すなわちページ間制御位置Ngを加速テーブル参照開始位置としたが、これに限定されない。要するに、加速テーブル参照開始位置Eは、加速開始タイミング位置Fに到達したときに用紙が給紙ローラ22によるニップから解放される位置であれば足りる。例えばページ間制御位置Ngに到達する前の位置を加速テーブル参照開始位置とし、加速テーブル参照開始位置から距離D1を計数した加速開始タイミング位置から加速を開始する。用紙が搬送された時に給紙ローラ22によるニップから解放されているタイミングであれば足りる。例えば、図15に示すように、加速テーブルVTa2から定速の周期T1のときの距離D1を、b1から差し引いた「b1−D1」を参照開始位置として、この参照開始位置から距離D1だけ移動した位置b1を加速開始タイミングとする。この構成であれば、給紙ローラ22とリタードローラ24とによるニップから解放された直後のタイミングで加速を開始できる。PF駆動速度の加速を開始しても、その後の搬送過程において、後続用紙との間に規定の隙間Lgapを維持しつつ同時給紙を行うことができる。
また、PF駆動速度は最初の定速域に維持されている間にASF駆動速度はやがて減速に移行するが、この減速過程でASF駆動速度がPF駆動速度より徐々に遅くなっていき、この減速過程で規定の隙間Lgapが開く場合は、ASF駆動速度についても、停止後直ちに加速に移行させて停止待ち時間をほぼ零にすることもできる。さらには、停止前の減速途中からASF駆動c2の加速を開始することもできる。このとき速度合成の方法はPF駆動量と同様の方法で実施すればよい。
また、ASF駆動b2の停止又は減速途中から次のASF駆動c2の加速を開始した場合も、その加速途中でPF駆動速度に比べて速度の遅い期間では、給紙される後続用紙と先行用紙との間隔が徐々に広がる。よって、ASF駆動速度を停止又は減速途中から加速を開始するタイミングで、規定の隙間Lgapが確保されていなくても構わない。要するに、給紙された後続用紙の先端が紙検出センサ33に検知される位置まで後続用紙が搬送されるまでに、先行用紙との間に規定の隙間Lgapが確保されれば足りる。
(変形例2)前記第1実施形態では、第一搬送速度と第二搬送速度を同じ速度にできる条件でも、ASFモータ56が停止されるときにPFモータ58を一旦停止させる構成としたが、これに限定されない。例えば図16に示すように、駆動距離b2から加減速テーブルVTの最低距離条件から決まる第一搬送速度V3と、駆動距離c1から加減速テーブルVTの最低距離条件から決まる第二搬送速度V3とを同じ速度にできる条件では、PFモータ58を、ページ間制御位置Ngを過ぎても一旦停止させることはせず、第一搬送速度V3で駆動距離aだけ駆動させてもよい。CPU43は、ASF駆動距離b2が最低距離以上となる条件を満たす加減速テーブルVTに設定された目標速度のうち最も高速な目標速度(第一搬送速度)を求めるとともに、PF駆動距離c1が最低距離以上となる条件を満たす加減速テーブルVTに設定された目標速度のうち最も高速な目標速度(第二搬送速度)を求める。そして、第一搬送速度と第二搬送速度とが同じであるか否かを判断する。第一搬送速度と第二搬送速度とが同じであれば、CPU43はPF駆動距離a(=b1+c1)でPFモータ58を駆動させる。一方、第一搬送速度と第二搬送速度とが同じでなければ、PFモータ58をPF駆動距離b1とPF駆動距離c1との二回駆動させる。
ここで、第一搬送速度と第二搬送速度とが所定の許容範囲内で同じであれば足りる。例えばPFモータ58を途中で一旦停止させる第一駆動よりも、PF駆動距離aを一度に駆動させた第二駆動の方が短時間で用紙搬送を完了できる場合は、第一搬送速度と第二搬送速度が多少異なっていても同じと判断されるように判断に許容範囲をもたせる。また、PFモータ58を途中で一旦停止させて高速に切り替える場合の搬送所要時間と、途中で停止させることなく第一搬送速度でPF駆動距離aを一度で駆動する場合の搬送所要時間とを、加減速テーブルVTのデータを用いてそれぞれ計算し、前者の搬送所要時間より後者の搬送所要時間の方が短いと判断される場合は、後者の方法でPF駆動距離aを一度で駆動させる第二駆動を選択する構成も採用できる。これらの構成によれば、次の印刷位置に早く用紙を搬送できるので、印刷のスループットの向上を図ることが可能になる。また、先行用紙が途中で一旦止まらないことから、ASFモータ56の停止後、先行用紙P1がページ間制御距離Lgapだけ搬送される所要時間が短くなり、ASFモータ56がページ間制御距離Lgap分のPF駆動を待つ待機時間が短く済む。例えば排紙途中でページ間制御位置Ngを通過する際に次の後続用紙の給紙(頭出し)を早く完了でき、印刷開始時期を早められるので、印刷のスループットの低下の抑制に寄与できる。
(変形例3)前記第1実施形態では、図10におけるステップS30でページ間制御位置Ngを超えると判断した場合、搬送開始位置(直前の停止位置)からページ間制御位置Ng(所定位置)までの距離に応じた第一搬送速度でまず搬送駆動し、次にページ間制御位置Ngから搬送終了位置(次の停止位置)までの距離に応じた第二搬送速度で搬送駆動する構成とした。そして、その結果として、第二搬送速度が第一搬送速度より大きくなる条件を満たす場合、PFモータ58がページ間制御位置Ng(所定位置)で一旦停止され、その停止前後で第一搬送速度から第二搬送速度に変更される構成となっていた。また、このとき、ASFモータ56の所定位置での停止前後における各搬送速度の関係が、第二搬送速度>第一搬送速度を満たす場合にPFモータ58が一旦停止され、またPFモータ58の所定位置での停止前後における各搬送速度の関係が、第二搬送速度>第一搬送速度を満たす場合にPFモータ58が一旦停止されることになっていた。これに対し、次の構成も採用できる。すなわち、ページ間制御位置Ngを超えると判断した場合(S30)、搬送開始位置から所定位置までの搬送距離(第一搬送距離)と、所定位置から紙送り終了位置までの搬送距離(第二搬送距離)とから、加減速テーブル(速度制御データ)を参照して第一搬送速度及び第二搬送速度を取得する。そして、第二搬送速度が第一搬送速度より高速になる条件を満たすか否かを判断する。この場合、第一搬送速度と第二搬送速度は、PFモータ58の搬送速度を用いればよいが、ASFモータ56の搬送速度を用いることもできる。PFモータ58の搬送速度を用いる場合は、搬送距離b1から決まる第一搬送速度と、搬送距離c1から決まる第二搬送速度とを比較する。一方、ASFモータ56の搬送速度を用いる場合は、搬送距離b2から決まる第一搬送速度と、搬送距離c2(又はLgap+c2)から決まる第二搬送速度とを比較する。そして、いずれの場合も、第二搬送速度>第一搬送速度を満たす場合、PFモータ58の駆動を所定位置で一旦停止させるようにする。なお、第一搬送速度と第二搬送速度の比については、ASF駆動とPF駆動との間で正の相関があるので、ASF駆動で第一搬送速度>第一搬送速度を満たすときは、PF駆動においても第二搬送速度>第一搬送速度を非常に高い割合で満たすことになる。なお、上記の構成は、第2実施形態においても適用できる。但し、第2実施形態においては、加速テーブル参照開始位置Eから次の停止位置までの搬送距離から第二搬送速度を求めることになる。
(変形例4)前記実施形態では、ページ間制御位置を給紙ローラ22とリタードローラ24とのニップ点よりも僅かに給紙方向下流側の位置Gに設定したが、ページ間制御位置はこれに限定されない。ニップ点よりも給紙方向下流側の位置であって、紙検出センサ33の検知位置よりも搬送方向上流側であれば足りる。このようにページ間制御位置は、ニップ点と検知位置間の範囲内の位置に設定されれば、後続用紙の先端が検知されるべき位置に後続用紙が搬送されるまでの間に、事前にページ間制御を行って隙間Lgapを確保しておくことはできる。
(変形例5)前記実施形態では、加減速テーブルをもつ構成であったが、加減速テーブルをもたない構成でも構わない。加速と減速は直線勾配に設定され、加速域および減速域において距離に対する周期(速度)は直線式を用いた計算で求める。例えば、加速勾配A、距離をDxとすると、周期Taは、Ta=A・Dxにより計算される。減速域も同様に、減速勾配−Bとすると、周期Taは、Ta=−B・Dxにより計算される。また、加速領域、減速領域のうち少なくとも一方に加速度又は減速度の勾配が変化する点が1つ以上設定されていてもよい。この場合も、距離に対する周期は簡単な計算で求めることができる。
(変形例6)第一搬送速度から第二搬送速度へ変更させる際の搬送手段の停止は、給送手段による後続媒体の給送開始待ちのときに限定されない。給送手段(給紙ローラ22)と搬送手段(紙送りローラ29)の両方で搬送される領域を過ぎた以後であれば、給送手段による搬送中に搬送手段を一旦停止させても構わない。例えば給送手段を一旦停止させる前、後続媒体の給送開始以後であっても構わない。
(変形例7)前記実施形態では、ASFモータ56とPFモータ58とを別々に設け、給紙ローラ22と紙送りローラ29とを別々の駆動源で駆動させる構成としたが、給紙ローラ22と紙送りローラ29が1つのモータ(駆動源)を共有する構成でもよい。この場合、電磁クラッチでモータとの接続を切り離して給紙ローラ22を所定位置において一旦停止させる構成をとる。
(変形例8)ページ間制御位置Ngを通過する用紙搬送を行う際に、ページ間制御位置Ngの前後の搬送距離からそれぞれ決まるPFモータ58の搬送速度(目標速度)が異なる場合、前記第1実施形態ではPF駆動を一旦停止させたり、前記第2実施形態では加減速テーブルから決まる速度プロファイルを合成する制御を行ったりしたが、目標速度の異なる2つの速度プロファイルを合成して異なる値の2つの目標速度(定速域)をもつ合成専用の速度プロファイルとした加減速テーブル(速度制御データ)を設けてもよい。
(変形例9)前記実施形態では、ページ間制御位置Ngを跨ぐ用紙搬送の際は、用紙をページ間制御位置Ngで停止させた後、PF駆動によって先行用紙がページ間制御距離Lgap分だけ先に搬送されるのを待った後に、ASF駆動を開始して後続用紙を給紙させる構成とした。これに対し、ページ間制御距離Lgap分の距離を待つことなく直ちにASF駆動を開始して、PF駆動の搬送距離よりもページ間制御距離Lgap分だけ短い給紙距離に達した時点でASF駆動を停止させる構成としてもよい。この構成によっても、少なくとも用紙の搬送が終わってASF駆動とPF駆動の両方が停止した段階では、先行用紙の後端と後続用紙の先端との間に規定の隙間を確保できる。
(変形例10)駆動源はDCモータに限定されない、他の電気モータを使用できる。例えばステッピングモータを使用できる。ステッピングモータとしては、例えば二相励磁方式、一相励磁方式、一−二相励磁方式、マイクロステップ駆動(バーニア駆動)方式のものを採用することもできる。また、回転子は、永久磁石型(PM型)、歯車状鉄心形(VR型)、ハイブリッド型(HB型)のいずれも採用できる。
(変形例11)前記実施形態では、ASFモータとPFモータの駆動制御を、CPU43がプログラムを実行することによりソフトウェアにより実現したが、ソフトウェアによる方法に限定されない。例えば給紙・紙送り処理を制御回路(カスタムICなど)によりハードウェアで実現してもよく、さらに給紙・紙送り処理をハードウェアとソフトウェアとの組合せ(協働)により実現することもできる。
(変形例12)インクジェット式プリンタに限定されない。ドットインパクト式プリンタなどの他のシリアルプリンタに適用してもよい。また、最大用紙幅の全域に渡って記録可能なノズルを有するラインヘッド型の記録ヘッドを備え、記録ヘッドが主走査方向に移動することなく、媒体に記録を行う記録装置に適用することもできる。この場合、ラインヘッドが記録する媒体は搬送方向に一定速度で搬送され、搬送方向に移動中の媒体にラインヘッドによる記録が行われる。
(変形例13)前記実施形態では、記録装置をインクジェット式プリンタに具体化したが、液体としてインク以外の液体を噴射するその他の液体噴射式の記録装置にも適用できる。ここで、「記録」は、印刷による記録に限定されず、例えば回路の配線パターンなどに使用される材料を含む液状体を噴射して媒体としての基板上に配線パターンを描く記録をも含む。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの材料が分散または溶解された液状体を噴射する液体噴射装置(記録装置)であってもよい。この場合、液滴を噴射して基板上に画素パターンや配線パターンなどの所定パターンが描画される。例えばシート状の基板を給送手段で1枚ずつ順次給送し、給送された基板上に記録手段により配線パターン等の所定パターンを液体噴射法で描画する場合、媒体としての基板の間隔を開け、しかも複雑な速度制御を用いなくとも速度変更が可能になることから、スループットを向上させて生産性向上を図ることができる。
以下、前記実施形態および各変形例から把握される技術的思想を記載する。
(1)前記制御手段は、前記第一搬送速度と前記第二搬送速度を略同じにできる条件では、前記第一搬送速度から前記第二搬送速度に変更する際であっても前記搬送手段を停止させないことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
(2)前記制御手段は、前記第一搬送速度と前記第二搬送速度を略同じにできる条件でも、前記第一搬送速度から前記第二搬送速度に変更する際に前記搬送手段を停止させることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
(3)請求項1乃至11のいずれか一項において、前記所定位置を通過する搬送の際に先行媒体を搬送すべき搬送距離の移動途中で搬送手段を一旦停止させる第一駆動と、搬送距離を一度で搬送するように搬送手段を駆動させる第二駆動とのうち、先行媒体の搬送所要時間が短く済む一方を選択する選択手段をさらに備え、前記制御手段は、前記選択手段が選択した一方の駆動内容に従って前記搬送手段を制御することを特徴とする記録装置。
(4)請求項12において、前記搬送ステップでは、前記第一搬送速度と前記第二搬送速度を略同じにできる条件では、前記第一搬送速度から前記第二搬送速度に変更する際であっても前記搬送手段を停止させないことを特徴とする媒体搬送方法。
(5)請求項12において、前記搬送ステップでは、前記第一搬送速度と前記第二搬送速度を略同じにできる条件でも、前記第一搬送速度から前記第二搬送速度に変更する際に前記搬送手段を停止させることを特徴とする媒体搬送方法。
11…記録装置としてのプリンタ、13…給送手段としての自動給紙装置(ASF)、15…可動部としてのホッパー、18…記録手段を構成するキャリッジ、19…記録手段を構成する記録ヘッド、21…圧縮バネ、22…給紙ローラ、24…リタードローラ、29…搬送手段を構成する紙送りローラ、30…排紙ローラ、33…検知手段としての紙検出センサ、35…ホストコンピュータ、40…制御部、43…制御手段を構成するとともに判断手段としてのCPU、45…記憶手段としてのROM、50…制御手段を構成するモータドライバ、52…制御手段を構成するモータドライバ、56…第1駆動源としてのASFモータ、58…第2駆動源としてのPFモータ、65…位置検出手段としての紙送り量カウンタ、VT1,VT2…速度制御データとしての加減速テーブル、V1…第一搬送速度としての目標速度、V2…第二搬送速度としての目標速度、Nx…搬送位置を示す計数値、P1…先行媒体としての先行用紙、P2…後続媒体としての後続用紙、P…媒体としての用紙、a,b1,b2,c1,c2…搬送距離。