JP2008055317A - 逆浸透膜による海水淡水化設備および淡水化方法 - Google Patents
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Abstract
従来、2段の逆浸透膜処理において2段目の逆浸透膜の濃縮水が1段目の供給水に戻される処理方法では2段目の逆浸透膜の濃縮水の濃度が高い場合は1段目の供給水の濃度が高くなり、結果として2段目の逆浸透膜の透過水の濃度が高くなる場合があり、また、2段目の逆浸透膜モジュールの透過水について吸着樹脂で処理する方法では、ホウ素の濃度自体が低いため、吸着樹脂量当たりのホウ素吸着容量が小さく、効率が低く、また、処理水に吸着樹脂から溶出した不純物が混入し、飲料水用には適さない場合があり、その除去用に活性炭の設置が必要になるなどの問題がある。
【解決手段】
逆浸透膜で処理した透過水を再度、逆浸透膜で処理する2段での膜処理方法において、2段目の逆浸透膜モジュールの濃縮水を吸着樹脂塔で処理し、1段目の逆浸透膜モジュールの供給水に返送するシステムとする。
【選択図】図1
Description
ニューメンブレンテクノロジーシンポジウム2002予稿集(第6−1−1頁〜第6−1−10頁)
(1)2段の逆浸透膜モジュールを有する海水淡水化設備において、2段目の逆浸透膜モジュールより得られた少なくとも一部の濃縮水を1段目の逆浸透膜モジュールへ返送する経路に吸着樹脂塔を備えることを特徴とする海水淡水化設備。
(2)該吸着樹脂が水溶液中の除去対象物を選択的に吸着捕集する作用を有するものである(1)に記載の海水淡水化設備。
(3)除去対象物がホウ素である(1)または(2)に記載の海水淡水化設備。
(4)1段目の逆浸透膜モジュールが酢酸セルロース系高分子からなる中空糸膜からなることを特徴とする(1)〜(3)いずれか記載の海水淡水化設備。
(5)2段目の逆浸透膜モジュールがポリアミド系高分子からなる膜からなることを特徴とする(1)〜(4)いずれか記載の海水淡水化設備。
(6)2段目の逆浸透膜モジュールの供給水にアルカリを添加する手段を有することを特徴とする(1)〜(5)いずれか記載の海水淡水化設備。
(7)(1)〜(6)いずれか記載の海水淡水化設備を用いた海水の淡水化方法であって、吸着樹脂塔に流入する濃縮水中の除去対象物の濃度が5mg/L以上であることを特徴とする海水淡水化方法。
(8)除去対象物がホウ素である(7)に記載の海水淡水化方法。
(9)該吸着樹脂塔内の濃縮水の流量を吸着樹脂容積で除した値を空間速度SVとしたとき、SVが2〜20H−1であることを特徴とする(7)または(8)に記載の海水淡水化方法。
(10)該吸着樹脂塔に流入する濃縮水のpHが7〜10である(7)〜(9)いずれか記載の海水淡水化方法。
図1に示すような2段逆浸透膜システムにおいて、1段目の逆浸透膜モジュールとして三酢酸セルロース製の高圧仕様の中空糸型逆浸透膜エレメントが圧力容器内に2本装着された中空糸型逆浸透膜モジュール、東洋紡績(株)製HB10255FIを1本用い、2段目の逆浸透膜モジュールとして外径が8インチの芳香族系ポリアミド製のスパイラル型逆浸透膜エレメントが圧力容器に2本装着されたスパイラル型逆浸透膜モジュールを1本用い、吸着樹脂塔の吸着樹脂は、ホウ素の濃度が50から300mg/Lの範囲でのホウ素の吸着性能、すなわち、吸着樹脂容積当たりのホウ素の吸着容量が9g/L(湿潤樹脂)である含水酸化セリウムを主成分とする吸着樹脂を42L用いた。ここで、スパイラル型逆浸透膜エレメントは操作圧力、0.7MPa、温度25℃、食塩濃度500mg/L、回収率15%での食塩除去率が99.7%、透過水量30m3/日の性能を有するものである。海水を限外ろ過膜モジュールで除濁された前処理海水は硫酸注入によりpHが6.5に調整された後、1段目の逆浸透膜モジュールに供給され、その透過水にNaOHを添加し、pHを9に設定し2段目の逆浸透膜モジュールに供給され処理された。なお、pHはガラス電極法で測定した。2段目逆浸透膜モジュールの濃縮水は吸着樹脂塔で処理された後、1段目の逆浸透膜モジュールの供給水へ返送した。吸着樹脂塔での吸着はpHが9で、空間速度SVは14H−1で、3塔に分けられた吸着樹脂塔のうち2塔で吸着処理、1塔で酸による再生処理を実施した。但し、この場合の運転条件は以下の通りであった。原水の海水の温度25℃、全溶解性物質濃度、TDS濃度34500mg/L、ホウ素濃度4.7mg/L、1段目の操作圧力7.5MPa、2段目の操作圧力1.5MPa、1段目の逆浸透膜モジュールの回収率61.5%、2段目の逆浸透膜モジュールの回収率85%である。得られた2段処理としての生産水すなわち2段目の逆浸透膜モジュールの透過水の水質はTDS4mg/L、ホウ素0.8mg/Lであり、ホウ素の水道水質基準1mg/L以下を十分満足するものであった。吸着樹脂容積当たりのホウ素の吸着容量は3g/L−R(湿潤樹脂)であった。生産水を分析したところ、吸着樹脂からの溶出が懸念されるセリウムは検出されず、一般細菌数は100個/mL以下であった。なお、1、2段目の水質等は表1にまとめて示した。ここでは海水のTDS濃度は電気伝導度からの塩分の換算値とした。(海洋観測指針(第1部)気象庁、1999年、第38項) 透過水のTDS濃度は溶解性蒸発残留物として重量法(水道公定法)に従って求めた。ホウ素濃度は、吸光光度法(水道公定法)で測定した。回収率は逆浸透膜モジュールの供給水流量に対する透過水流量の割合を示している。また、吸着樹脂量あたりのホウ素の吸着量は吸着樹脂塔の樹脂量と、被処理水中のホウ素濃度と処理水中のホウ素濃度の差異、流量から算出した。また、セリウムの定量は誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP法)で測定し、0.02%以下であれば不検出と判定した。一般細菌数は標準寒天培地法、すなわち、36±1℃で24±2時間培養したとき、培地に集落を形成する細菌の集落数を測定する方法を用いて測定した。
逆浸透膜モジュールの配置が図3であること以外、実施例1と同様に海水を処理した。但し、2段目の逆浸透膜モジュールへの濃縮水の20%を吸着樹脂塔で処理せずに系外に排出した。吸着樹脂容積当たりの処理水量が実施例1と同じ程度となるように、樹脂量を80%にした。得られた2段処理としての生産水、すなわち、2段目の逆浸透膜モジュールの透過水11の水質はTDS4mg/L、ホウ素0.8mg/Lであり、ホウ素の水道水質基準1mg/L以下を十分満足するものであった。吸着樹脂容積当たりのホウ素の吸着容量は3g/L−R(湿潤樹脂)であった。生産水質は、セリウムは不検出、一般細菌数は100個/mL以下であった。また、1、2段目の水質等は表1にまとめて示した。
吸着樹脂として、多孔性の架橋ポリスチレン基体にN−メチルグルカミン基を導入した、総交換容量が0.6meq/mL−R(湿潤樹脂)以上のホウ素吸着用のキレート樹脂を用いた以外は実施例1と同様に海水を処理した。但し、吸着樹脂量は44L使用した。得られた2段処理としての生産水、すなわち、2段目の逆浸透膜モジュールの透過水11の水質はTDS4mg/L、ホウ素0.8mg/Lであり、ホウ素の水道水質基準1mg/L以下を十分満足するものであった。吸着樹脂容積当たりのホウ素の吸着容量は2.9g/L−R(湿潤樹脂)であった。生産水を分析したところ、吸着樹脂からの溶出が懸念されるスチレンは不検出、一般細菌数は100個/mL以下であった。また、1、2段目の水質等は表1にまとめて示した。ここで、スチレンはヘッドスペースGC−MS法で定量し、0.002mg/L以下であれば不検出とした。
吸着樹脂として、容積あたりの総交換容量が0.6meq/mL−R(湿潤樹脂)以上のホウ素吸着用の、N−メチルグルカミン基を有するMR型スチレン系陰イオン交換樹脂を用いた以外は実施例1と同様に海水を処理した。但し、吸着樹脂量は44L使用した。得られた2段処理としての生産水、すなわち、2段目の逆浸透膜モジュールの透過水11の水質はTDS4mg/L、ホウ素0.8mg/Lであり、ホウ素の水道水質基準1mg/L以下を十分満足するものであった。吸着樹脂容積当たりのホウ素の吸着容量は2.9g/L−R(湿潤樹脂)であった。生産水を分析したところ、吸着樹脂からの溶出が懸念されるスチレンは不検出、一般細菌数は100個/mL以下であった。また、1、2段目の水質等は表1にまとめて示した。
吸着樹脂として繊維状のセルロースを基体としN−メチルグルカミン基を有するキレート樹脂を用いた以外は実施例1と同様に海水を処理した。ただし、かさ密度が小さいためSVは6H−1で実施した。また、このキレート剤のpH8における乾燥重量1gあたりのホウ素の吸着容量は0.73mmol/g−dry fiberであり、吸着樹脂量は44kg使用した。得られた2段処理としての生産水、すなわち、2段目の逆浸透膜モジュールの透過水11の水質はTDS4mg/L、ホウ素0.8mg/Lであり、ホウ素の水道水質基準1mg/L以下を十分満足するものであった。吸着樹脂重量当たりのホウ素の吸着容量は2.9g/kg−R(湿潤樹脂)であった。生産水を分析したところ、吸着樹脂からの溶出が懸念される有機物は不検出であった。また、1、2段目の水質等は表1にまとめて示した。ここで、有機物はTOC計(自動測定:湿式酸化法)で測定し、5mg/L以下であれば不検出とした。
図1のモジュール配置で、原水を別の吸着樹脂で処理し、事前にホウ素濃度のみを3.7mg/Lに低減したこと以外は実施例1と同様に2段逆浸透膜処理を実施した。得られた2段処理としての生産水の水質はTDS4mg/L、ホウ素0.6mg/Lであり、ホウ素の水道水質基準1mg/L以下を十分満足するものであったが、吸着樹脂量当たりのホウ素吸着容量は2.8g/L−R(湿潤樹脂)であり、吸着効率は実施例1、2と比較するとやや低いものであった。生産水質は、セリウムは不検出、一般細菌数は100個/mL以下であった。なお、1、2段目の水質等は表1にまとめて示した。
図5のモジュール配置で、2段目の逆浸透膜モジュールの濃縮水を吸着樹脂塔で処理せずに、1段目の逆浸透膜モジュールの供給水に返送した以外は実施例1と同様に2段逆浸透膜処理を実施した。得られた2段処理としての生産水の水質はTDS4mg/L、ホウ素1mg/Lであり、ホウ素の水道水質基準1mg/L以下を満足するものの余裕のない値であった。生産水質は、セリウムは不検出、一般細菌数は100個/mL以下であった。なお、1、2段目の水質等は表1にまとめて示した。
図6のモジュール配置で、2段目の逆浸透膜モジュールの濃縮水を吸着樹脂塔で処理せずに、1段目の逆浸透膜モジュールの供給水に返送し、2段目の逆浸透膜モジュールの透過水を吸着樹脂塔で処理した以外は実施例1と同様に2段逆浸透膜処理を実施した。得られた2段処理としての生産水の水質はTDS4mg/L、ホウ素0.5mg/Lであった。ただし、吸着樹脂容積当たりのホウ素の吸着容量は2g/Lであり、実施例1、2の場合と比較すると吸着の効率が大幅に低かった。生産水質は、吸着樹脂からの溶出に起因すると考えられるセリウムが約0.03%検出され、一般細菌数は100個/mL以上であった。飲料水等への直接使用するためには、活性炭処理などの追加処理が必要であった。なお、1、2段目の水質等は表1にまとめて示した。
図1のモジュール配置で、原水を別の吸着樹脂処理し、事前にホウ素濃度のみを1.6mg/Lに低減したこと以外は実施例1と同様に2段逆浸透膜処理を実施した。得られた2段処理としての生産水の水質はTDS4mg/L、ホウ素0.5mg/Lであり、ホウ素の水道水質基準1mg/L以下を十分満足するものであったが、吸着樹脂容積当たりのホウ素吸着容量は2.2g/L−R(湿潤樹脂)であり、実施例1、2の場合と比較すると吸着の効率が大幅に低かった。生産水質は、セリウムは不検出、一般細菌数は100個/mL以下であった。なお、1、2段目の水質等は表1にまとめて示した。
吸着樹脂として実施例5で使用したものと同様のセルロースを母体とするファイバー状のキレート樹脂を用い、樹脂を44kgとした以外は比較例2と同様に2段逆浸透膜処理を実施した。ただし、SVは6H−1で実施した。得られた2段処理としての生産水の水質はTDS4mg/L、ホウ素0.5mg/Lであった。ただし、吸着樹脂重量当たりのホウ素の吸着容量は2g/kg−R(湿潤樹脂)であり、実施例5の場合に比べて小さく、吸着の効率が低かった。また、生産水質は、吸着樹脂からの溶出に起因すると考えられる有機物が6mg/L検出され、飲料水等への直接使用するためには、活性炭処理などの追加処理が必要であった。なお、1、2段目の水質等は表1にまとめて示した。
2:2段目の逆浸透膜モジュール
3:吸着樹脂塔
4:高圧ポンプ
5:低圧ポンプ
6:原水
7:1段目の逆浸透膜モジュールの供給水
8:1段目の逆浸透膜モジュールの透過水
9:1段目の逆浸透膜モジュールの濃縮水
10:2段目の逆浸透膜モジュールの供給水
11:2段目の逆浸透膜モジュールの透過水
12:2段目の逆浸透膜モジュールの濃縮水
13:吸着樹脂塔の処理水
14:アルカリ注入装置
15:1段目の逆浸透膜モジュールの透過水の一部
16:2段目の逆浸透膜モジュールの濃縮水の一部
17:吸着樹脂塔の供給水
18、19、20、21、22、23:流量調整バルブ
Claims (10)
- 2段の逆浸透膜モジュールを有する海水淡水化設備において、2段目の逆浸透膜モジュールより得られた少なくとも一部の濃縮水を1段目の逆浸透膜モジュールへ返送する経路に吸着樹脂塔を備えることを特徴とする海水淡水化設備。
- 該吸着樹脂が水溶液中の除去対象物を選択的に吸着捕集する作用を有するものである請求項1に記載の海水淡水化設備。
- 除去対象物がホウ素である請求項1または2に記載の海水淡水化設備。
- 1段目の逆浸透膜モジュールが酢酸セルロース系高分子からなる中空糸膜からなることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の海水淡水化設備。
- 2段目の逆浸透膜モジュールがポリアミド系高分子からなる膜からなることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の海水淡水化設備。
- 2段目の逆浸透膜モジュールの供給水にアルカリを添加する手段を有することを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の海水淡水化設備。
- 請求項1〜6いずれか記載の海水淡水化設備を用いた海水の淡水化方法であって、吸着樹脂塔に流入する濃縮水中の除去対象物の濃度が5mg/L以上であることを特徴とする海水淡水化方法。
- 除去対象物がホウ素である請求項7に記載の海水淡水化方法。
- 該吸着樹脂塔内の濃縮水の流量を吸着樹脂容積で除した値を空間速度SVとしたとき、SVが2〜20H−1であることを特徴とする請求項7または8に記載の海水淡水化方法。
- 該吸着樹脂塔に流入する濃縮水のpHが7〜10である請求項7〜9いずれか記載の海水淡水化方法。
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