しかしながら、上述したワークフロー支援システムにおいて、ワークフローに従って送信された起案書等を審査し、承認を行う者の承認可能な範囲は、役職や職務等で一律に決定されているため、柔軟なシステム運営を行うことが困難であるという問題点があった。上述したように役職や職務によって承認可能な範囲を一律に決定しておくことはシステムには馴染み易いが、個々の事例毎に的確な審査・承認を行うことができるかについては、審査・承認を行う者の経験や能力に依存し、全ての事例に対して一律で的確な審査・承認を行うことは困難である。したがって、経験や能力に応じて承認可能な範囲を審査・承認を行う者毎に設定できるようにして、柔軟なシステム運営を可能にすることが望まれていた。ところが、経験や能力に応じて承認可能な範囲を審査・承認を行う者毎に設定するには、審査・承認を行う者毎に承認可能な範囲を管理しなければならないため、この承認可能な範囲をいかに特定し、管理するかが問題となっていた。
また、例えば、従業員が職務上得た法律上の権利を会社に帰属させるために、従来は文書で行われていた譲渡の承認手続をワークフロー支援システム上で実現するために様々な研究がなされている。ところが、コンピュータ上ではキー操作やマウス操作等で簡単に譲渡を承認することが可能であり、従業員が譲渡の意味を理解せずに譲渡の承認操作を行ってしまった場合等、譲渡の意思表示があやふやな場合であってもシステムはその従業員の操作を有効な譲渡の承認として理解してしまうため、有効な承認か無効な承認かをワークフロー支援システムで管理することは困難であるという問題点があった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、予め承認可能な範囲を特定し、承認行為が有効か無効かを容易に判定することができるようにして、ワークフロー支援システムの利便性の向上を図ることを第1の目的とする。
また、本発明は上記に鑑みてなされたものであって、ユーザによる承認の意思表示の有効性をシステム上で保証することができるようにして、ワークフロー支援システムの利便性および信頼性の向上を図ることを第2の目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1の電子承認方法にあっては、予め特定された承認可能な範囲をユーザ毎に登録する登録工程と、電子情報を参照し、前記電子情報の内容について承認または非承認を選択する選択工程と、前記選択工程で承認が選択された場合に、前記登録工程で登録された承認可能な範囲を参照し、前記選択工程で承認を選択したユーザが前記電子情報の内容について承認可能か否かを判定する判定工程と、前記判定工程で前記ユーザが承認可能であると判定された場合に前記承認を有効とし、前記ユーザが承認可能ではないと判定された場合に前記承認を無効とし、前記ユーザによる承認結果を管理する承認結果管理工程と、を含むものである。
また、請求項2の電子承認方法にあっては、予め設定されたワークフローに従って送信情報を順次送信するワークフロー支援システムにおける電子承認方法であって、前記送信情報中の記述内容または記述自体に知的所有権が存在する場合に、前記知的所有権を予め定めた第三者に譲渡する譲渡人として前記知的所有権の所有者を少なくとも一人設定した譲渡人情報を前記送信情報中に生成する譲渡人情報生成工程と、前記譲渡人情報生成工程で生成された譲渡人情報中の譲渡人が、前記知的所有権を予め定めた第三者に譲渡することに関して承認または非承認を選択する承認・非承認選択工程と、前記承認・非承認選択工程の選択結果を入力し、入力した選択結果を承認結果情報として前記送信情報中に生成する承認結果情報生成工程と、前記承認結果情報生成工程で生成した承認結果情報に応じて、前記ワークフロー上で指定された次の業務担当者へ前記送信情報を送信する情報送信工程と、を含むものである。
また、請求項3の電子承認方法にあっては、請求項2に記載の電子承認方法において、前記送信情報中に前記譲渡人情報および承認結果情報が存在する場合に、譲渡人および該当する承認または非承認の選択結果を表示する表示工程を含むものである。
また、請求項4の電子承認方法にあっては、請求項2または3に記載の電子承認方法において、前記承認結果情報が、前記承認または非承認の選択結果に加えて、前記承認結果情報を生成した際の日付情報を含むものである。
また、請求項5の電子承認方法にあっては、請求項2〜4のいずれか一つに記載の電子承認方法において、前記承認結果情報が、前記承認または非承認の選択結果に加えて、前記承認または非承認の選択を行った個人を特定するための特定情報を含むものである。
また、請求項6の電子承認方法にあっては、請求項1に記載の電子承認方法において、前記譲渡人情報生成工程が、前記送信情報の作成者が前記知的所有権の所有者である場合に、前記作成者を前記譲渡人として前記譲渡人情報を生成するものである。
また、請求項7の電子承認方法にあっては、請求項6に記載の電子承認方法において、前記譲渡人情報生成工程が、前記送信情報の作成者および知的所有権の所有者が異なる場合または/および知的所有権が複数人に共有されている場合に、前記知的所有権の所有者となり得る候補者の情報を記憶した候補者データベースから前記知的所有権の所有者を少なくとも一人指定することにより、前記譲渡人情報を生成するものである。
また、請求項8の電子承認方法にあっては、請求項7に記載の電子承認方法において、前記候補者データベースが、前記候補者の情報として、少なくとも候補者名および候補者固有の識別情報からなるアドレスを記憶しており、前記譲渡人情報生成工程が、前記候補者データベースから前記知的所有権の所有者を指定する際に、前記候補者データベースに基づいて前記アドレスを表示するアドレス表示工程と、前記アドレス表示工程で表示されたアドレスを用いて前記所有者を指定する所有者指定工程と、を含むものである。
また、請求項9の電子承認方法にあっては、請求項8に記載の電子承認方法において、前記候補者データベースが、前記アドレスに対応させて前記候補者名の漢字表記情報を記憶しており、さらに、前記所有者指定工程で指定したアドレスを前記譲渡人として画面表示する譲渡人表示工程と、前記譲渡人表示工程で画面表示されているアドレスを候補者名の漢字表記に変換するための変換処理の実行を指定する表記変換指定工程と、前記表記変換指定工程で変換処理の実行が指定された場合に、前記候補者データベースに記憶されている候補者名の漢字表記情報に基づいて、前記画面表示されているアドレスを該当する漢字表記に変換して画面表示する表記変換工程と、を含むものである。
また、請求項10の電子承認方法にあっては、請求項2または7に記載の電子承認方法において、さらに、前記譲渡人情報生成工程で生成した譲渡人情報中に複数の譲渡人が設定されている場合に、前記複数の譲渡人にそれぞれ順位を設定する順位設定工程を含むものである。
また、請求項11の電子承認方法にあっては、請求項3〜10のいずれか一つに記載の電子承認方法において、前記情報送信工程が、前記送信情報の作成者が前記譲渡人に該当する場合に、前記承認結果情報生成工程で承認の選択結果から前記承認結果情報が生成されると、次の業務担当者へ前記送信情報を送信し、または、前記送信情報の作成者および譲渡人が異なる場合に、前記作成者が前記送信情報の送信を指定すると、前記譲渡人に前記送信情報を送信するものである。
また、請求項12の電子承認方法にあっては、請求項1に記載の電子承認方法において、前記情報送信工程が、前記譲渡人情報生成工程で生成した譲渡人情報中に複数の前記譲渡人が設定されている場合であって、前記譲渡人のいずれかが前記承認・非承認選択工程で非承認を選択した場合に、前記送信情報の作成者に前記送信情報を返送し、全ての譲渡人が譲渡について承認するまで他の譲渡人以外の業務担当者へ前記送信情報を送信しないようにするものである。
また、請求項13の電子承認方法にあっては、請求項1に記載の電子承認方法において、さらに、前記送信情報の作成者から前記ワークフロー上で指定された業務担当者に前記送信情報が送信された場合に、前記送信情報中の知的所有権に該当する情報を改変できないように保持する情報保持工程を含むものである。
また、請求項14の電子承認方法にあっては、請求項1に記載の電子承認方法において、さらに、前記承認・非承認工程で承認または非承認を選択する際に、前記譲渡人が前記送信情報中の知的所有権に該当する情報を改変したか否かを判定する改変判定工程を含み、前記情報送信工程が、前記改変判定工程で前記送信情報中の知的所有権に該当する情報が改変されたと判定された場合に、前記承認結果情報生成工程で生成した承認結果情報を破棄し、前記送信情報を作成者に返送するものである。
また、請求項15の電子承認方法にあっては、請求項1に記載の電子承認方法において、さらに、前記譲渡人情報に設定されている全ての譲渡人が承認を選択した場合に、前記送信情報を知的所有権が存在する譲渡対象情報として設定し、書き換え不可能な記憶媒体に保存する保存工程を含むものである。
また、請求項16の電子承認方法にあっては、請求項1に記載の電子承認方法において、さらに、前記承認・非承認工程の前に、前記送信情報にアクセスしようとする者が前記譲渡人に該当するか否かを判定する譲渡人判定工程を含むものである。
また、請求項17の電子承認方法にあっては、請求項1に記載の電子承認方法において、知的所有権を前記第三者に譲渡する際の譲渡手続きに関し、知的所有権の所有者になると予想される者から将来行われる前記知的所有権の譲渡続きを電子的な情報のやりとりで行うことに同意する同意書の提出を受けた後、前記同意書を提出した個人の情報を登録した同意者データベースを生成する同意者データベース生成工程と、前記同意者データベース生成工程で生成した同意者データベースに基づいて、前記譲渡人情報生成工程で生成された譲渡人情報中に設定されている譲渡人から前記同意書が提出されているか否かを判定する提出判定工程と、を含むものである。
また、請求項18の電子承認方法にあっては、請求項17に記載の電子承認方法において、前記提出判定工程が、前記譲渡人が前記承認・非承認選択工程で承認または非承認を選択する際に、または全ての譲渡人が前記承認を選択した後に、前記同意書が提出されているか否かを判定するものである。
また、請求項19の電子承認方法にあっては、請求項17または18に記載の電子承認方法において、さらに、前記提出判定工程で前記同意書が提出されていないと判定された場合に、前記同意書を生成して印刷する印刷工程と、前記印刷工程で印刷した同意書の作成・提出が完了した旨の情報を入力する入力工程と、を含むものである。
さらに、請求項20のコンピュータ読み取り可能な記録媒体にあっては、前記請求項1〜19のいずれか一つに記載の電子承認方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したものである。
以上説明したように、本発明の電子承認方法(請求項1)によれば、予め特定された承認可能な範囲をユーザ毎に登録する登録工程と、電子情報を参照し、電子情報の内容について承認または非承認を選択する選択工程と、選択工程で承認が選択された場合に、登録工程で登録された承認可能な範囲を参照し、選択工程で承認を選択したユーザが電子情報の内容について承認可能か否かを判定する判定工程と、判定工程でユーザが承認可能であると判定された場合に承認を有効とし、ユーザが承認可能ではないと判定された場合に承認を無効とし、ユーザによる承認結果を管理する承認結果管理工程と、を含むことにより、予め承認可能な範囲を特定し、特定した承認可能な範囲を容易に管理可能としたため、ワークフロー支援システムの利便性の向上を図ることができる。
また、本発明の電子承認方法(請求項2)によれば、送信情報中の記述内容または記述自体に知的所有権が存在する場合に、知的所有権を予め定めた第三者に譲渡する譲渡人として知的所有権の所有者を少なくとも一人設定した譲渡人情報を送信情報中に生成する譲渡人情報生成工程と、譲渡人情報生成工程で生成された譲渡人情報中の譲渡人が、知的所有権を予め定めた第三者に譲渡することに関して承認または非承認を選択する承認・非承認選択工程と、承認・非承認選択工程の選択結果を入力し、入力した選択結果を承認結果情報として送信情報中に生成する承認結果情報生成工程と、承認結果情報生成工程で生成した承認結果情報に応じて、ワークフロー上で指定された次の業務担当者へ送信情報を送信する情報送信工程と、を含むことにより、譲渡の電子承認を容易に行うことができるため、ワークフロー支援システムの利便性の向上を図ることができる。
また、本発明の電子承認方法(請求項3)によれば、請求項2に記載の電子承認方法において、送信情報中に譲渡人情報および承認結果情報が存在する場合に、譲渡人および該当する承認または非承認の選択結果を表示する表示工程を含むことにより、知的所有権の共有者を容易に特定することができると共に、共有者が譲渡を承認したか否かをを容易に確認することができるため、ワークフロー支援システムの利便性の向上を図ることができる。
また、本発明の電子承認方法(請求項4)によれば、請求項2または3に記載の電子承認方法において、承認結果情報が、承認または非承認の選択結果に加えて、承認結果情報を生成した際の日付情報を含むことにより、知的所有権を譲渡した日付を容易に特定することができると共に、譲渡人が知的所有権の譲渡を承認したことを日付によって認識することができるため、ワークフロー支援システムの利便性および信頼性の向上を図ることができる。
また、本発明の電子承認方法(請求項5)によれば、請求項2〜4のいずれか一つに記載の電子承認方法において、承認結果情報が、承認または非承認の選択結果に加えて、承認または非承認の選択を行った個人を特定するための特定情報を含むことにより、譲渡人が自分自身を示す特定情報によって譲渡人が知的所有権の譲渡を承認したことを認識することができるため、ワークフロー支援システムの利便性および信頼性の向上を図ることができる。
また、本発明の電子承認方法(請求項6)によれば、請求項1に記載の電子承認方法において、譲渡人情報生成工程が、送信情報の作成者が知的所有権の所有者である場合に、作成者を譲渡人として譲渡人情報を生成することにより、送信情報の作成者が自動的に譲渡人として設定されるため、ワークフロー支援システムの利便性の向上を図ることができる。
また、本発明の電子承認方法(請求項7)によれば、請求項6に記載の電子承認方法において、譲渡人情報生成工程が、送信情報の作成者および知的所有権の所有者が異なる場合または/および知的所有権が複数人に共有されている場合に、知的所有権の所有者となり得る候補者の情報を記憶した候補者データベースから知的所有権の所有者を少なくとも一人指定することにより、譲渡人情報を生成することにより、共有者を譲渡人として設定する作業を容易に行うことができると共に、共有者の指定に誤りが発生することを防止することができるため、ワークフロー支援システムの利便性および信頼性の向上を図ることができる。
また、本発明の電子承認方法(請求項8)によれば、請求項7に記載の電子承認方法において、候補者データベースが、候補者の情報として、少なくとも候補者名および候補者固有の識別情報からなるアドレスを記憶しており、譲渡人情報生成工程が、候補者データベースから知的所有権の所有者を指定する際に、候補者データベースに基づいてアドレスを表示するアドレス表示工程と、アドレス表示工程で表示されたアドレスを用いて所有者を指定する所有者指定工程と、を含むことにより、候補者名および候補者固有の識別情報からなるアドレスを用いて同姓同名の他の者と本来の共有者等として誤って指定してしまうことを防止することができるため、ワークフロー支援システムの信頼性の向上を図ることができる。
また、本発明の電子承認方法(請求項9)によれば、請求項8に記載の電子承認方法において、候補者データベースが、アドレスに対応させて候補者名の漢字表記情報を記憶しており、さらに、所有者指定工程で指定したアドレスを譲渡人として画面表示する譲渡人表示工程と、譲渡人表示工程で画面表示されているアドレスを候補者名の漢字表記に変換するための変換処理の実行を指定する表記変換指定工程と、表記変換指定工程で変換処理の実行が指定された場合に、候補者データベースに記憶されている候補者名の漢字表記情報に基づいて、画面表示されているアドレスを該当する漢字表記に変換して画面表示する表記変換工程と、を含むことにより、アドレスからより人が認識し易い漢字表記に変換して譲渡人を特定することができるため、ワークフロー支援システムの利便性の向上を図ることができる。
また、本発明の電子承認方法(請求項10)によれば、請求項2または7に記載の電子承認方法において、さらに、譲渡人情報生成工程で生成した譲渡人情報中に複数の譲渡人が設定されている場合に、複数の譲渡人にそれぞれ順位を設定する順位設定工程を含むことにより、知的所有権を生み出す際に主たる活動を行ったものから順位付け等を行って複数の譲渡人(所有者)同士の位置づけを特定することができるため、ワークフロー支援システムの利便性の向上を図ることができる。なお、この順位に従って送信情報を送信することにしても良い。
また、本発明の電子承認方法(請求項11)によれば、請求項3〜10のいずれか一つに記載の電子承認方法において、情報送信工程が、送信情報の作成者が譲渡人に該当する場合に、承認結果情報生成工程で承認の選択結果から承認結果情報が生成されると、次の業務担当者へ送信情報を送信し、または、送信情報の作成者および譲渡人が異なる場合に、作成者が送信情報の送信を指定すると、譲渡人に送信情報を送信することにより、スムーズに送信情報を送信することが可能となるため、ワークフロー支援システムの利便性の向上を図ることができる。
また、本発明の電子承認方法(請求項12)によれば、請求項1に記載の電子承認方法において、情報送信工程が、譲渡人情報生成工程で生成した譲渡人情報中に複数の譲渡人が設定されている場合であって、譲渡人のいずれかが承認・非承認選択工程で非承認を選択した場合に、送信情報の作成者に送信情報を返送し、全ての譲渡人が譲渡について承認するまで他の譲渡人以外の業務担当者へ送信情報を送信しないようにして、システム上で譲渡の承認の有効性を管理するため、ワークフロー支援システムの信頼性の向上を図ることができる。
また、本発明の電子承認方法(請求項13)によれば、請求項1に記載の電子承認方法において、さらに、送信情報の作成者からワークフロー上で指定された業務担当者に送信情報が送信された場合に、送信情報中の知的所有権に該当する情報を改変できないように保持する情報保持工程を含むことにより、承認時と承認後の承認対象の一致性をシステム面から保証し、承認の有効性を管理するため、ワークフロー支援システムの信頼性の向上を図ることができる。
また、本発明の電子承認方法(請求項14)によれば、請求項1に記載の電子承認方法において、さらに、承認・非承認工程で承認または非承認を選択する際に、譲渡人が送信情報中の知的所有権に該当する情報を改変したか否かを判定する改変判定工程を含み、情報送信工程が、改変判定工程で送信情報中の知的所有権に該当する情報が改変されたと判定された場合に、承認結果情報生成工程で生成した承認結果情報を破棄し、送信情報を作成者に返送することにより、承認対象が改変された場合には再度承認作業を最初から行うことにして、承認時と承認後の承認対象の一致性をシステム面から保証し、承認の有効性を管理するため、ワークフロー支援システムの信頼性の向上を図ることができる。
また、本発明の電子承認方法(請求項15)によれば、請求項1に記載の電子承認方法において、さらに、譲渡人情報に設定されている全ての譲渡人が承認を選択した場合に、送信情報を知的所有権が存在する譲渡対象情報として設定し、書き換え不可能な記憶媒体に保存する保存工程を含むことにより、承認時と承認後の承認対象の一致性をシステム面から保証し、承認の有効性を管理するため、ワークフロー支援システムの信頼性の向上を図ることができる。
また、本発明の電子承認方法(請求項16)によれば、請求項1に記載の電子承認方法において、さらに、承認・非承認工程の前に、送信情報にアクセスしようとする者が譲渡人に該当するか否かを判定する譲渡人判定工程を含むことにより、譲渡人以外の者が譲渡に関して承認または非承認の選択を行うことができないようにしたため、ワークフロー支援システムの信頼性の向上を図ることができる。
また、本発明の電子承認方法(請求項17)によれば、請求項1に記載の電子承認方法において、知的所有権を第三者に譲渡する際の譲渡手続きに関し、知的所有権の所有者になると予想される者から将来行われる知的所有権の譲渡続きを電子的な情報のやりとりで行うことに同意する同意書の提出を受けた後、同意書を提出した個人の情報を登録した同意者データベースを生成する同意者データベース生成工程と、同意者データベース生成工程で生成した同意者データベースに基づいて、譲渡人情報生成工程で生成された譲渡人情報中に設定されている譲渡人から同意書が提出されているか否かを判定する提出判定工程と、を含むことにより、予め承認可能な範囲を特定し、特定した承認可能な範囲を容易に管理可能とすると共に、ユーザによる承認の意思表示の有効性をシステム上で保証することができるようにしたため、ワークフロー支援システムの利便性および信頼性の向上を図ることができる。
また、本発明の電子承認方法(請求項18)によれば、請求項17に記載の電子承認方法において、提出判定工程が、譲渡人が承認・非承認選択工程で承認または非承認を選択する際に、または全ての譲渡人が承認を選択した後に、同意書が提出されているか否かを判定することにより、ユーザによる承認の意思表示の有効性をシステム上で保証することができるようにしたため、ワークフロー支援システムの利便性および信頼性の向上を図ることができる。
また、本発明の電子承認方法(請求項19)によれば、請求項17または18に記載の電子承認方法において、さらに、提出判定工程で同意書が提出されていないと判定された場合に、同意書を生成して印刷する印刷工程と、印刷工程で印刷した同意書の作成・提出が完了した旨の情報を入力する入力工程と、を含むことにより、システム側でユーザに電子承認の意味を認識させることができると共に、ユーザによる承認の意思表示の有効性をシステム上で保証することができるようにしたため、ワークフロー支援システムの利便性および信頼性の向上を図ることができる。
さらに、本発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体(請求項20)によれば、請求項1〜19のいずれか一つに記載の電子承認方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したため、このプログラムを実行することにより、予め承認可能な範囲を特定し、特定した承認可能な範囲を容易に管理可能とし、ワークフロー支援システムの利便性の向上を図ることができる。
以下、本発明の電子承認方法およびその方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体の一実施の形態について、添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る電子承認方法が適用可能なワークフロー支援システムの概略構成図である。このワークフロー支援システムはサーバ/クライアントシステムで実現され、ネットワーク100を介して、ワークフローの管理やデータベースの管理を行うための複数のサーバ101・102と、ワークフロー支援システムを利用して何らかの行為に等に対する承認作業を含む各種の作業を行うための複数のクライアント103〜106と、各種文書を印刷するための複数のプリンタ107・108と、がそれぞれ接続されて構成されている。
ここでは、図1に示したワークフロー支援システムを会社内の特許出願の準備に利用することを例に取って本発明の電子承認方法について説明することにする。したがって、以下ではワークフロー支援システムによって管理されるワークフローのことを「特許出願ワークフロー」と記述することにする。また、特許出願ワークフローは、図1に示した複数のサーバ101・102や複数のクライアント103〜105が相互に関わり合うことによって管理されることになる。以下では、図1に示したワークフロー支援システムについて、特許出願ワークフローを管理するためのソフトウエアおよびハードウエアの全てを含む意味で「システム」と記述することにする。
図2は、特許出願ワークフローにおける処理の概略を説明するための説明図である。まず、この図2を用いて特許出願ワークフローの概略について説明することにより、本実施の形態に係る電子承認方法を特許出願ワークフロー中のいかなる場面で利用することが有効であるかを明らかにする。なお、図2は、3人の技術者がある発明を完成し、発明に関して記述した発明届出書の作成から特許事務所への出願依頼までのワークフローを示している。
まず、発明者Aは、完成した発明についての説明を含む発明届出書を作成する。発明届出書中には発明者A,発明者Bおよび発明者Cが共同発明者である旨が記述され、作成された発明届出書は発明部門DB200中に記憶される。なお、発明届出書の内容については後に詳細に説明する。また、図2において、201は共同発明者を特定するため等に利用されるアドレスDBである。このアドレスDB201についても、後に詳細に説明する。
発明者Aは、発明届出書の作成を終了すると、ワークフローに従って発明者B,発明者Cの順で発明届出書の内容確認のためにメールを送信する。発明者Bおよび発明者Cは、それぞれメールの内容に従って、発明部門DB200から発明届出書を読み出し、記述内容を確認する。
発明者Bおよび発明者Cが、発明者Aによって作成された発明届出書の内容に同意した場合、発明届出書の作成者である発明者Aが指定した発明部門の審査・承認者にメールが送信され(発明の届出)、発明の評価作業が行われることになる。ここで、発明部門の審査・承認者とは、例えば、発明者A〜Cの上司等に当たる者である。
発明部門の審査・承認者は、メールの内容に従って発明部門DB200から発明届出書を読み出し、発明届出書を参照しつつ発明の評価作業を行う。評価作業は、具体的に、予め用意された評価表の所定の項目に評価結果を入力し、評価点数計算をシステムに行わせて終了する。そして、発明部門の審査・承認者が発明の届出を承認すると、発明届出書は知的財産部の受付にメールで送信される。
なお、発明部門の審査・承認者が発明の届出を承認すると、発明届出書は評価表と共に発明届出書保存DB202に保存される。
知的財産部においては、知財受付担当者が発明届出書の受付作業を行う。具体的には、発明届出書に整理番号を付与する作業や発明届出書中の必要な事項を知財DB203に保存する作業が行われる。
そして、知財受付担当による受付作業が終了すると、発明届出書を用いて知的財産部で用いるための文書がシステムによって自動的に生成される。以下、この文書を「発明管理文書」と記述することにし、この発明管理文書には、例えば、届出部門,発明者,出願人,発明を説明するための記述や図面等が含まれている。この発明管理文書は、メールによって次の知財担当者に渡されることになる。
知財担当者は、発明管理文書を参照し、その内容に関して発明者に質問することができる。具体的に、知財担当者は、質問状作成を選択することによって生成された質問状に質問内容を記載し、発明者に対して送信する。なお、この質問状にはシステムによって発明届出書が添付される。
発明者は、質問状を開き知財担当者からの質問を確認すると共に、必要に応じて添付の発明届出書を参照し、質問に対する回答を作成して知財担当者に送信する。
その後、知財担当者は、この発明を出願するか、出願を取りやめるか等の処理方針を検討し、検討した結果をメール送信して知財審査・承認者の承認を仰ぐ。この知財審査・承認者は、例えば知財担当者の上司に当たる者であり、知財審査・承認者へのメールには、発明管理文書が添付されている。
知財審査・承認者が知財担当者の検討結果に承認を与えると、特許事務所宛に出願を依頼する知財発注担当者にメールが送信される。このメールには、特許事務所宛の「発明依頼書」が添付されている。発明依頼書には、発明届出書中の必要な書誌事項がコピーされると共に,発明を説明する記述および図面が添付され、かつ、知財担当者の判断事項、例えば出願期限日,代理人名等が含まれている。この発明依頼書はシステムによって自動的に生成されるものである。また、上述したような発明依頼書ではなく、発明届出書をそのまま添付することによって発明依頼書を生成しても良い。
そして、知財発注担当者から特許事務所宛に出願依頼がなされると、出願依頼書は発明届出書と同様に変更できないように保存される。
以上、特許出願ワークフローについて簡単に説明したが、この特許出願ワークフローにおいて最も問題となる処理は、発明者Aから発明部門審査・承認者までの処理である。図2においては明確に説明しなかったが、特許出願人を会社とする場合には発明者から特許を受ける権利の譲渡を受けなければならない。この特許を受ける権利の譲渡についてあやふやな承認作業を行った場合には、後に無用な紛争が起こりかねないという問題がある。そのため、特許を受ける権利の譲渡承認手続を特許出願ワークフロー中の一つの作業として行うことにする場合には、以下の点について注意する必要がある。
発明者側にあっては、キー操作またはマウス操作で簡単に譲渡の承認作業を行うことができるため、自分自身がいかなる権原を持っているのか、特許を受ける権利を譲渡するということを承認する行為とはどのような意味を持っているのかを十分理解していることが重要となる。
一方、システム側にあっては、特許を受ける権利の譲渡を承認しようとする者がその権原を持っているのか、特許を受ける権利を譲渡することが承認された場合にその承認の意思表示は有効なのかを判定できるようにすることが重要である。加えて、電子的に特許を受ける権利の譲渡承認作業を行うことから、発明者の譲渡の意思表示は電子情報として記録されることになるため、電子情報は改変し易いという問題からどのようにしてそのような譲渡の意思表示を将来にまで有効に保存することができるかが重要となる。
そこで、発明者Aから発明部門審査・承認者までの処理に本実施の形態に係る電子承認方法を適用し、特許出願ワークフローにおける特許を受ける権利の譲渡承認手続を例に取って、(1)電子譲渡同意書の提出および登録,(2)特許出願ワークフローにおける譲渡承認手続の順で、本実施の形態に係る電子承認方法を説明することにする。
(1)電子譲渡同意書の提出および登録
特許を受ける権利を譲渡するする際には、後の無用な紛争を防止するために、発明者が特許を受ける権利を会社に譲渡する旨が記述され、発明者の署名・押印のある譲渡書を発明者と会社の間で取り交わすことが一般的である。ところが、譲渡書を譲渡手続に用いることは、譲渡書が紙文書である以上、特許出願ワークフローで譲渡手続を行うことが不可能である。
そこで、本実施の形態に係る電子承認方法では、特許を受ける権利の譲渡手続を電子的な情報のやりとりで行うことに同意する旨が記述され、署名・押印のある電子譲渡同意書(本発明の同意書に該当する)を発明者となり得る者から提出を受け、この電子譲渡同意書を保存・管理することにする。
このように、発明者となり得る者に電子譲渡同意書を作成させることは、自分自身がいかなる権原を持っているのか、特許を受ける権利を譲渡するということを承認する行為とはどのような意味を持っているのかを十分理解させることに有効である。また、譲渡したか否かが争いになった場合にあっても、この電子譲渡同意書があれば、電子情報として記録されている譲渡の意思表示を示した情報を発明者が譲渡を承認したことを立証するための証拠として十分用いることが可能となる。
図3は、電子譲渡同意書の提出を受けた場合の処理を示すフローチャートである。発明者となり得る者から電子譲渡同意書の提出を受けると、電子譲渡同意書の提出者に関する情報を図2に示したアドレスDB201(本発明の同意者データベースに該当する)に登録する(S301:本発明の登録工程および同意者データベース生成工程に該当する)。アドレスDB201については後に詳細に説明するが、アドレスDB201は発明者となり得る者に関する情報を登録しているものである。電子譲渡同意書を提出した者については、例えば、アドレスDB201中の自分自身の情報に電子譲渡同意書が提出済みであることをを示す情報が追加される。なお、本実施の形態においては、アドレスDB201に電子譲渡同意書が提出済みであることを示す情報を追加することにしたが、アドレスDB201とは独立に、電子譲渡同意書を提出した者に関する情報を登録するためのデータベースを用意することにしても良い。
(2)特許出願ワークフローにおける譲渡承認手続
図4は、特許出願ワークフローにおける譲渡承認手続の処理手順を示すフローチャートである。発明が完成すると、その発明の発明者(本発明の作成者および譲渡人に該当する)は、発明届出書のフォームを読み出して、図2で説明したように発明届出書(本発明の送信情報に該当する)を作成する(S401)。
図5および図6は、発明届出書の一例を示す説明図である。まず、発明届出書500のフォームが呼び出されると、図5に示す「1.記入者」の欄に、発明届出書500を作成する発明者の氏名,アドレス,所属が自動的にセットされる。この発明者の氏名,アドレス,所属はアドレスDB201に登録されているものである。
続いて、「2.届出書番号」の欄の届出書番号取得ボタン501をクリックし、作成中の発明届出書500を管理するための番号を取得する。
「3.発明者」の欄には、発明届出書500を作成している発明者のアドレスが自動的に設定されて表示される。また、共同発明者が存在する場合には、全ての共同発明者もこの欄に登録される。
図7は、共同発明者を登録する処理を説明する説明図である。発明者は、アドレス帳ボタン502を選択し、図7に示す共同発明者設定画面700を画面表示する(本発明のアドレス表示工程に該当する)。この共同発明者設定画面700は、発明者となり得る候補者の候補者名および候補者固有の識別情報からなるアドレスおよび候補者名の漢字表記を表示する候補者表示部701と、選択ボタン703をクリックすることにより、候補者表示部701から指定した共同発明者のアドレスを表示する共同発明者アドレス表示部702と、共同発明者の指定を終了するためのOKボタン704と、共同発明者の指定をキャンセルするためのキャンセルボタン705と、を有している。
すなわち、マウス等で候補者表示部701中に表示された候補者のアドレスを指定し、選択ボタン703をクリックすることにより、アドレスの指定を介して共同発明者が指定され、共同発明者のアドレスが共同発明者アドレス表示部702に表示される(本発明の所有者指定工程に該当する)。
候補者表示部701に表示された候補者のアドレスおよび候補者名の漢字表記は、図2に示したアドレスDB201(本発明の候補者データベースに該当する)に登録されているものである。このアドレスDB201としては、会社において全社員の情報を登録してあるデータベースを用いることができる。また、共同発明者アドレス表示部702には、候補者表示部701から指定した共同発明者のアドレスだけでなく、作成者のアドレスも表示される。作成者は、共同発明者アドレス表示部702において、共同発明者のアドレスを並び替えることができ、筆頭発明者の設定等を行うことができる(本発明の順位設定工程に該当する)。
共同発明者設定画面700のOKボタン704をクリックすると、図5の「3.発明者」の欄に作成者を含む3人の共同発明者のアドレスが設定されると共に、発明者が3人であることが表示される(本発明の譲渡人表示工程に該当する)。
そして、漢字氏名変換ボタン503をクリックすると(本発明の表記変換指定工程に該当する)、アドレスDB201に登録されている漢字表記を用いて、共同発明者の漢字表記が図6に示す「12.譲渡欄」の譲渡履歴表示部516中に設定される(本発明の譲渡人情報生成工程および表記変換工程に該当する)。すなわち、「3.発明者」の欄に表示されたアドレスを漢字表記に変換して、譲渡履歴表示部516に表示する。
社外に発明者がいる場合には、「4.社外発明者」の欄に文字入力ボタン504をクリックして社外発明者名を直接入力し、または、リストから選択ボタン505をクリックして、予め用意された社外発明者リストから社外発明者を指定する。なお、社外発明者の設定を取り消すには、設定取消ボタン506をクリックする。
「5.出願人」の欄には、予め自社名が出願人として設定されており、共同出願人となる会社が他に存在している場合には、社外発明者の設定の場合と同様に、文字入力ボタン507およびリストから選択ボタン508をクリックし、該当する処理を行って共同出願人を設定する。なお、509は設定した共同出願人を取り消すための設定取消ボタンを示している。
「6.知財担当」の欄には、キーワード選択ボタン510をクリックして発明の技術分野を特定するためのキーワードを表示し、その中から適切なキーワードを指定することにより、発明の技術分野が特定される。その結果、特定された技術分野に基づいて、知財担当が決定される。
また、「7.発明の名称」の欄には発明の名称を入力する。さらに、「8.本文入力欄」には、ファイル添付511をクリックして予め作成しておいた発明の説明書の添付を設定しても良く、また、直接説明を入力しても良い。「9.図面入力欄」および「10.公報」の欄には、ファイル添付512および513をクリックして予め用意しておいた図面のファイルおよび特許公開公報等のファイルを添付する。
なお、「11.連絡欄」には、必要に応じて任意の連絡事項を入力することができる。
上述したようにして発明届出書を作成した後、発明者は、図6の「12.譲渡欄」に用意された譲渡ボタン514または否認ボタン515をクリックして、発明者自身が有する特許を受ける権利を会社に譲渡することに関する承認手続を行う(S402:本発明の選択工程および承認・非承認選択工程に該当する)。システムは、ステップS402の選択結果に基づいて、作成者が譲渡を承認したか否かを判定する(S403)。
作成者が否認ボタン515をクリックした場合には、特許を受ける権利が会社に譲渡されることなく、ステップS401に戻る。換言すれば、ワークフロー上の次の業務担当者に発明届出書500が渡ることはない。特許を受ける権利の譲渡を承認しないことは、事実上、発明届出書に記載した発明の特許出願をあきらめることになる。
一方、譲渡ボタン514をクリックした場合には、特許を受ける権利を会社に譲渡することを承認したことになる。その結果、図8に示す譲渡履歴表示欄516に、自分自身(譲渡承認手続を行った者)の氏名および所属に対応させて、譲渡の承認または非承認の選択結果,譲渡することを承認した発明者のサインおよび譲渡を承認した際の日付(本発明の日付情報に該当する)が表示される(本発明の承認結果情報生成工程および表示工程に該当する)。ここで、サインは、譲渡承認手続を行った個人を特定するための情報のことを意味し(本発明の特定情報に該当する)、図8においては上述したアドレスが設定されているが、電子的な印影等であっても良い。
ステップS403において作成者が譲渡を承認したと判定した場合に、システムは、アドレスDB201に登録された情報に基づいて、譲渡を承認した作成者から電子譲渡同意書が提出されているか否かを判定する(S404:本発明の判定工程および提出判定工程に該当する)。ステップS404において、電子譲渡同意書が提出されていないと判定された場合、システムは作成者に対し、以下に説明するようにして電子譲渡同意書の提出を要求し、作成者はシステムの要求に従って電子譲渡同意書を提出する処理を行う(S405)。
図9(a)〜図9(c)は、ステップS405における電子譲渡同意書の提出処理を説明する説明図である。システムは、ステップS404において電子譲渡同意書が提出されていないと判定した場合、図9(a)に示すように、電子譲渡同意書の提出を要求するメッセージを画面表示する。作成者がOKボタンをクリックすると、システムは、図9(b)に示すように電子譲渡同意書のフォームをプリントする(本発明の印刷工程に該当する)。そして、電子譲渡同意書のフォームの印刷が終了すると、図9(c)に示すように、電子譲渡同意書を作成して担当者へ送付するよう要求する。作成者は、プリントされた電子譲渡同意書のフォームに署名・押印して電子譲渡同意書を作成(同意)し、社内便にて担当者に送付する。そして、送付済ボタンをクリックすることにより、システム上に、電子譲渡同意書が送付中であることが登録される(本発明の入力工程に該当する)。
再び図4に戻り、システムがステップS404において既に電子譲渡同意書が提出されていると判定した場合、さらに、図6および図8に示した発明届出書500の「12.譲渡欄」に基づいて、共同発明者が存在するか否かを判定する(S406)。ステップS406において、共同発明者が存在しないと判定された場合は、後述するように、ワークフロー上の次の業務担当者へ発明届出書500を送信する処理が行われる。
一方、ステップS406において、共同発明者が存在すると判定した場合、システムは他の共同発明者に対して譲渡承認手続を行うことを要求する。図10は、発明が共有に係る場合に、発明届出書500の作成者以外の共同発明者に譲渡承認手続を行うよう要求するための譲渡回覧メールの一例を示す説明図である。システムは、既に作成された発明届出書500を添付した譲渡回覧メール1000を生成し、発明届出書500中の譲渡履歴表示部516(図6および図8参照)における発明者の表示順序に従って、次の発明者に生成した譲渡回覧メール1000を送信する(S407:本発明の情報送信工程に該当する)。なお、発明届出書500を作成した発明者と区別するために、他の発明者のことを共同発明者と記述することにする。
譲渡回覧メール1000の送信を受けた共同発明者は、図10に示した譲渡回覧メール1000に記載された作業手順に従って、特許を受ける権利の譲渡手続を行う(S408)。共同発明者は、ステップS408において、作成者によって作成された発明届出書500の内容を確認すると共に、譲渡ボタン514または否認ボタン515をクリックすることによって、自己の特許を受ける権利を会社に譲渡することに関する承認手続を行う。
なお、ここでシステムは、作成者が譲渡を承認した後、具体的には譲渡回覧メール1000が共同発明者に送信された場合に、発明届出書500の内容(特に図5に示す「7.本文入力欄」の情報)を他の共同発明者が改変することができないように管理することができる(本発明の情報保持工程に該当する)。これにより、全ての共同発明者が同一内容の発明届出書500に基づいて、特許を受ける権利を会社に譲渡するか否かを決定することができるため、譲渡の承認手続の有効性をシステム面から保証することができる。一方、これに代えて、システムが発明届出書500(特に図5に示す「7.本文入力欄」の情報)に改変が加えらたか否かを判定し(本発明の改変判定工程に該当する)、共同発明者の一人が発明届出書500の内容に改変を加えた場合には、他の共同発明者が行った譲渡の承認を破棄し、作成者から譲渡承認手続を再開するようにすることもできる。
そして、システムは、ステップS408の譲渡承認手続に基づいて、共同発明者が譲渡を承認したか否かを判定する(S409)。ステップS409において、共同発明者が譲渡を承認していない、即ち、否認ボタン515をクリックした場合、発明届出書は再び作成者の元に返送される。ここで、否認ボタン515をクリックする場合には、否認の理由を発明届出書500に記載する必要がある。
図11は、共同発明者の一人が特許を受ける権利の譲渡を否認した結果の一例を示す説明図である。図11においては、第3番目の発明者が譲渡を否認した例を示している。図11に示すように、否認ボタン515がクリックされると、譲渡履歴表示部516の該当する個所に否認したという結果が表示される。なお、図11においては、譲渡を否認した発明者のサインと否認時の日付が表示されていないが、これらを表示することにしても良い。
そして、システムは、共同発明者の一人が譲渡を否認すると、その発明届出書500を作成者に返送する。作成者は、否認した発明者の否認理由を参照し、発明届出書を書き直す等の処理を行った後、再度上述した共同発明者全員による譲渡の承認手続を再開する。
一方、ステップS409において、共同発明者が譲渡を承認したと判定した場合、システムはさらにこの共同発明者について電子譲渡同意書が提出されているか否かを判定する(S410)。なお、電子譲渡同意書が提出されていない場合の処理(S411)については、既にステップS405において図9(a)〜図9(c)を用いて説明した通りであるため、ここではこのステップについての説明を省略する。
また、ステップS410において、電子譲渡同意書が提出されていると判定した場合、システムは続いて、譲渡履歴表示部516に表示されている全ての発明者に譲渡回覧メール1000が送信されたか否かを判定する(S412)。ステップS412において、全ての発明者に譲渡回覧メール1000が送信されていないと判定した場合には、ステップS407に戻り、残りの発明者に譲渡回覧メール1000を送信して譲渡承認手続を続行する。
一方、ステップS412において、全ての発明者に譲渡回覧メール1000が送信されたと判定した場合には、発明届出書500を一旦作成者に返送する。図12は、全ての共同発明者が譲渡を承認した結果の一例を示す説明図である。図12に示すように、全ての共同発明者について譲渡を承認した結果,サインおよび譲渡を承認した日付が表示されている。
そして、発明者は、図6に示した「13.審査承認欄」の送信先設定ボタン517を選択し、発明の届出の承認を依頼する発明部門の審査・承認者を指定する(図2参照)。なお、518は設定した発明部門の審査・承認者を取り消すための取消ボタンを、519は発明者および共同発明者が行った特許を受ける権利を譲渡するという承認を解除するための譲渡解除ボタンをそれぞれ示している。
その後、審査承認依頼ボタン520をクリックすることにより、図2に示した発明部門審査・承認者に発明届出書500の承認を依頼する。この場合、図4に示した業務担当は、発明部門審査・承認者に該当することになる。
その後、発明部門審査・承認者が発明届出書500を参照しつつ、発明を評価した評価表(図示せず)を作成する。そして、発明部門審査・承認者が発明届出書500を知的財産部に届け出ることを承認した場合に、発明届出書500は知的財産部に送信され、かつ、図2に示した発明届出書保存DB202に保存される(本発明の保存工程に該当する)。
発明届出書保存DB202に一旦保存されると、もはや発明届出書500は改変不能な状態となる。すなわち、譲渡承認手続終了した発明届出書500は、譲渡対象情報として設定され、改変不能な状態で保存することにより、発明者が譲渡した特許を受ける権利の対象を特定できるという効果があると共に、この発明届出書500から特定される発明が少なくとも発明部門審査・承認者が承認を行った際に完成したということを立証するための証拠として用いることができるという効果がある。なお、発明届出書保存DB202は、CD−ROM等の書き換え可能な記憶媒体からなるものが望ましいが、書き換え可能な記憶媒体からなるものである場合は、ソフトウエア等で書き換え不可能な状態で厳重に管理する必要がある。
なお、発明部門審査・承認者に、発明届出書500を知的財産部に届け出ることが否認された場合(図6の否認ボタン522がクリックされた場合)、発明届出書の作成者は、否認理由に基づいて発明届出書500を修正して再度承認を依頼するか、発明届出書500の修正の程度に応じて、再度共同発明者間で譲渡承認手続を行った後、再度承認を依頼するかの処理を行うことができる。
また、システムはセキュリティ管理を行うことにより、発明者本人でなければ上述した譲渡回覧メール1000等にアクセスすることができないようになっている。具体的には、譲渡承認手続を行う前に、譲渡回覧メール1000等にアクセスしようとする者をがその情報へアクセスする権限を有しているか否かをシステムが判定し、権限を有しているもののみがそのような情報へのアクセスが許可されることになる(本発明の譲渡人判定工程に該当する)。また、発明者および所定の権限が与えられたもの以外は、発明届出書500を閲覧することは不可能となっている。すなわち、ID・パスワードが本人と一致しなければ、システムにログインすることができない。よって、発明者以外のものが特許を受ける権利の譲渡の承認手続を行うことができないため、発明者による譲渡承認の有効性をシステム側から保証することができる。
また、本実施の形態においては、発明者自身が発明届出書500を作成することを前提として電子承認方法について説明した。ところが、発明者自身が発明届出書500を作成するのではなく、代理の第三者作成を依頼することも考えられる。そのような場合に対応することができるように、本実施の形態においても発明者に依頼された第三者も発明届出書500を作成することができるようにしても良い。
上述した本実施の形態においては、図5および図6に示した発明届出書の発明者の欄や譲渡欄には、記入者の欄に設定された者の氏名またはアドレスが自動的に設定されることになっている。そのため、第三者が発明届出書500を作成する場合には、その者の氏名またはアドレスが発明者の欄および譲渡欄に入力されないような措置を施しておくか、発明者が発明届出書500を作成する場合であっても、自ら発明者の欄および譲渡欄に自分の氏名やアドレスを設定するようにシステムを変更することにしても良い。第三者が発明届出書500を作成する場合において、発明者を指定する処理は、上述した共同発明者を指定する処理と同様である。また、本実施の形態では、譲渡を承認した場合に次の業務担当者(共同発明者も含まれる)へ発明届出書500が送信されることになっているが、第三者が発明届出書500を作成することができるようにするため、発明届出書500を発明者に送信するための送信ボタン等を設けることもできる。したがって、第三者が発明届出書500を作成することにした場合の処理を図4で説明すると、ステップS402〜ステップS406の処理を省略したものと同様となる。
また、共同発明者に社外発明者が含まれている場合には、社外発明者については図3および図4で説明した電子承認方法を適用することができない。このような場合、社内の発明者は上述した譲渡承認手続を行い、社外発明者については、文書で譲渡承認手続を行うことにする。加えて、社内発明者が譲渡承認手続を行う際に、社外発明者の存在を確認するステップも付加しておくことができる。
さらに、本実施の形態においては、図4に示したステップS405およびステップS411において譲渡の承認を行う者から電子譲渡同意書が提出されているか否かを判定することにしている。このことは、電子譲渡同意書の提出チェックのタイミングを限定するものではなく、例えば、特許出願が終了した時点や、譲渡の承認手続を行うとき(未提出場合は譲渡ボタン514を少なくともクリックすることができないようにする等)など、あらゆるタイミングで電子譲渡同意書の提出チェックを行うことができる。
加えて、システム上において、電子譲渡同意書の提出が特許を受ける権利を譲渡することを承認できる条件としておくこともできる。この場合は、電子譲渡同意書の提出がない状態で行った譲渡の承認を無効とすることができる(本発明の承認結果管理工程に該当する)。このような措置をとることによって、譲渡の承認手続を厳格に管理することができる。
このように、本実施の形態に係る電子承認方法によれば、ワークフロー支援システム上で権利の譲渡の承認手続を容易に、かつ安全に行うことができる。特に、電子譲渡同意書を提出して提出者の情報をデータベースに登録しておくため、譲渡の承認を行った者がワークフロー支援システム上で譲渡の承認を本来行うことができる者であるのかを容易に判定することができ、ワークフロー支援システム側から譲渡の承認の安全性を保証することができる。
なお、本実施の形態においては、特許出願ワークフローに電子承認方法を適用することを前提として説明したが、承認の対象を特許に受ける権利に限定するものではない。すなわち、他の知的所有権に関する譲渡の承認のみならず、一般的なワークフローにおける承認手続にも用いることができる。特に、電子譲渡同意書のような書類等を用いて承認者の承認権限を個々に設定しておくことにより、柔軟かつ厳格な承認手続の管理を行うことができる。
さらに、本実施の形態で説明した電子承認方法は、予め用意されたプログラムを図4に示したフローチャートの手順に従って、パーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現される。このプログラムは、ハードディスク,フレキシブルディスク,CD−ROM,MO,DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行可能である。また、このプログラムは、上記記録媒体を介して、またはネットワークを介して配布することができる。