JP2008050403A - 酸素吸収性樹脂 - Google Patents

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Abstract

【課題】湿度によらずバリア性が良好で、ボイル処理やレトルト処理などの加熱殺菌処理を行った際もバリア性が良好で、耐熱性、成型加工性に優れた材料と、それを利用してなる多層構造物を提供する。
【解決手段】分子中に、ベンゾキノン類、アントラキノン類およびナフトキノン類から選ばれるキノン類(B)に由来する構造単位を有する熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂であることを特徴とする酸素吸収性樹脂、ならびに該酸素吸収性樹脂からなるバリア層を有する多層構造物。
【選択図】 なし

Description

本発明はガスバリア性、耐熱性、成形性にすぐれる樹脂組成物、およびそれを利用してなる多層構造物に係る発明である。詳しくは、食品、飲料、薬品等の包装に適した樹脂組成物、特にボイル・レトルトした際のガスバリア性に優れる樹脂組成物と、それを利用してなる多層構造物に関するものである。
食品や飲料等の包装に用いられる包装材料は、様々な流通、冷蔵等の保存や加熱殺菌などの処理等から内容物を保護するため、強度や割れにくさ、耐熱性といった機能ばかりでなく、内容物を確認できるよう透明性に優れるなど多岐に渡る機能が要求されている。さらに、近年では、食品の酸化を抑えるため外部からの酸素の侵入を防ぐ酸素バリア性や、二酸化炭素バリア性、各種香気成分等に対するバリア性機能も要求されている。
ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6等の脂肪族ポリアミドからなるシート、フィルムは、透明で機械物性に優れるばかりでなく、その扱いやすさ、加工のしやすさから、包装材料用として広く用いられている。しかし、酸素等のガス状物質に対するバリア性が劣るため、内容物の酸化劣化が進みやすかったり、香気成分、二酸化炭素が透過しやすいため、内容物の賞味期限が短くなる欠点があった。
また、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルを主体とするプラスチック容器(ボトルなど)がお茶、果汁飲料、炭酸飲料等に広く使用されている。また、プラスチック容器の中で、小型プラスチックボトルの占める割合が年々大きくなっている。ボトルは小型化するに従い単位体積当たりの表面積の割合が大きくなるため、ボトルを小型化した場合、内容物の賞味期限は短くなる傾向にある。また、近年、酸素や光の影響を受けやすいビールのプラスチックボトルでの販売や、プラスチックボトル入りお茶のホット販売が行なわれ、プラスチック容器の利用範囲が広がる中、プラスチック容器に対するガスバリア性の更なる向上が要求されている。
酸素等のガス状物質に対するバリア性を向上させる目的で、上記熱可塑性樹脂と塩化ビニリデンやエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール等のガスバリア性樹脂を組み合わせたフィルムなどが利用されている。しかしながら、塩化ビニリデンを積層したフィルムは保存される条件によらずガスバリア性に優れるものの、燃焼させた際にダイオキシンが発生し、環境を汚染する問題がある。エチレン−ビニルアルコール共重合体やポリビニルアルコールは前述のような環境汚染の問題はないものの、これらをバリア層とした多層フィルムは、比較的湿度の低い環境下で保存された場合は優れたガスバリア性を発揮するものの、保存される内容物が水分活性の高いものであったり、高湿度の環境下で保存されたり、さらに内容物を充填後にいわゆるボイル処理やレトルト処理などの加熱殺菌処理を施すとガスバリア性は大幅に低下する傾向にあり、内容物への酸素透過が多くなり内容物の保存性に問題が生じる問題があった。
一方、酸素を吸収させることによって、容器の酸素バリア性を向上させる技術が多数公開されている。たとえば、被還元性有機化合物を還元した後に、酸素によって酸化させることで、酸素を吸収させる方法が開示されている(特許文献1参照)。この文献によれば、室温や低湿度の条件では確かに酸素バリア性を向上させることができる。しかし、適用可能な樹脂が酸素バリア性の低い、ポリオレフィンなどに限られており、初期の酸素バリア性が良くても長期間保存すると、しだいに酸素バリア性が悪化し、内容物を長期間保存できない問題を有していた。また、バリア性の高いエチレン−ビニルアルコール等の樹脂を用いても、保存される内容物が水分活性の高いものであったり、高湿度の環境下で保存されたり、さらに内容物を充填後にいわゆるボイル処理やレトルト処理などの加熱殺菌処理を施すと、ガスバリア性は大幅に低下することから、内容物への酸素透過が多くなり内容物の保存性に問題が生じていた。また、エチレン−ビニルアルコール等の樹脂は耐熱性が悪いことから、成形加工性が悪いという問題を生じることがあった。
ところで、ガスバリア性の優れた材料として、キシリレンジアミンと脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応から得られるキシリレン基含有ポリアミド、特にメタキシリレンジアミンとアジピン酸から得られるポリアミドMXD6が知られている。ポリアミドMXD6は、酸素、炭酸ガス等のガス状物質に対して低い透過性をしめすのみならず、耐熱性、成型加工性に優れた材料であり、高湿度下やボイル・レトルト処理などの加熱殺菌処理を施した際もガスバリア性低下の起こりにくい材料である。しかしながら、ポリアミドMXD6は、エチレン−ビニルアルコール共重合体に比較すると低湿度下ではガスバリア性が劣ることがあり、改善を求められていた。
一方、ポリアミドMXD6の酸素バリア性を向上させる技術として、水素化アントラキノン類をポリアミドMXD6に添加する技術が開示されている(特許文献2参照)。この文献によれば、確かに酸素バリア性を向上させることができる。しかし、低分子量の化合物を添加することから、ポリアミドMXD6の粘度が著しく低下し、成型加工性が甚だしく悪くなるという問題を生じていた。また、低分子量の化合物が成型加工中または、成型後の容器からブリードアウトするという問題を有していた。
特許第2922306号公報 国際公開第2006/000055号パンフレット
本発明の目的は、上記課題を解決し、湿度によらずバリア性が良好で、ボイル処理やレトルト処理などの加熱殺菌処理を行った際もバリア性が良好で、耐熱性、成型加工性に優れた材料と、それを利用してなる多層構造物を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の末端、側鎖もしくは主鎖に、ベンゾキノン類、アントラキノン類およびナフトキノン類から選ばれるキノン類を結合させた酸素吸収性樹脂が、湿度によらずバリア性が良好で、ボイル処理やレトルト処理などの加熱殺菌処理を行った際もバリア性が良好で、また耐熱性、成型加工性に優れることを見出し本発明に到った。
即ち本発明は、分子中に、ベンゾキノン類、アントラキノン類およびナフトキノン類から選ばれるキノン類(B)に由来する構造単位を有する熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂であることを特徴とする酸素吸収性樹脂に関する。また、本発明は該酸素吸収性樹脂からなるバリア層を有することを特徴とする多層構造物に関する。
本発明によれば、湿度によらずガスバリア性に優れ、ボイル処理やレトルト処理などの加熱殺菌処理を行った際もバリア性が良好で、耐熱性、成型加工性に優れたポリアミドを得ることができるため、本発明の工業的意義は大きい。
本発明の酸素吸収性樹脂は、分子中に、ベンゾキノン類、アントラキノン類およびナフトキノン類から選ばれるキノン類(B)に由来する構造単位を有する熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂である。該構造単位は、これらの樹脂の末端、側鎖あるいは主鎖に結合されて存在する。キノン類(B)に由来する構造単位は、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂の1〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは3〜40重量%であることが好ましく、5〜25重量%であることがさらに好ましい。この範囲であると、酸素吸収性が良好であり、骨格の熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂の有する特徴を大きく損なうことが無い。
本発明で使用できる熱可塑性樹脂として、ポリアミド、ポリエステル、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリグリコール酸、ポリカーボネート、ポリオレフィン類などを例示できる。中でも、ポリアミドおよびポリエステルが好ましく、ポリアミドがより好ましい。
また、本発明で使用できる熱硬化性樹脂として、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが例示できる。
本発明でポリアミドを使用する場合、その数平均分子量(Mn)は、18000〜43500が好ましく、より好ましくは、20000〜30000である。この範囲であると、耐熱性、成形加工が良好である。
本発明で使用できるポリアミドとしては、ナイロン6,ナイロン11,ナイロン12,ナイロン66,ナイロン610、ナイロン666などの脂肪族ポリアミドや、芳香族ポリアミドなどを例示できるが、骨格中に芳香環を含むものが好ましい。
骨格中に芳香環を含むポリアミド(以下、「ポリアミド(A)と称す」における芳香環は芳香族ジアミン、芳香族ジカルボン酸のいずれに由来するものであってもよい。ポリアミド(A)としては、例えば、芳香族ジアミンを主成分とするジアミン成分と、芳香族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸を重縮合すること、または、芳香族ジアミンを主成分とするジアミン成分と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分とを重縮合すること、または、脂肪族ジアミンを主成分とするジアミン成分と、芳香族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸を重縮合することにより得られるポリアミド等が挙げられるがこの限りではない。これらのポリアミドは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。該ポリアミドは、バリア性能が高く、耐熱性、成形加工性が良好である。ポリアミド(A)は、一種類もしくは複数の樹脂をブレンドして使用することができる。
本発明において使用できるジアミン成分としては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
本発明で使用できるジカルボン酸成分としては、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸などの炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等に例示される芳香族ジカルボン酸類などを例示できるが、これらに限定されるものではない。
さらに、ポリアミドの重縮合時に分子量調節剤として少量のモノアミン、モノカルボン酸を加えてもよい。
本発明で利用できるポリアミド(A)として、たとえば、ポリ(ヘキサメチレンイソフタラミド)(PA−6I)、ヘキサメチレンイソフタラミド/ヘキサメチレンテレフタラミドコポリマー(PA−6I/6T)、ポリ(メタキシリレンイソフタラミド)(PA−MXDI)、カプロラクタム/メタキシリレンイソフタラミドコポリマー(PA−6/MXDI)、カプロラクタム/ヘキサメチレンイソフタラミドコポリマー(PA−6/6I)などを例示できる。
本発明で特に好ましく利用できるポリアミド(A)として、上記以外に、メタキシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分とを重縮合することにより得られるポリアミド(以下、「ポリアミド(C)と称す」が挙げられる。ポリアミド(C)は、バリア性能が高く、耐熱性、成形加工性が良好である。メタキシリレンジアミンは好ましくは70モル%以上、より好ましくは75モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上含むものである。ジカルボン酸成分は、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸を好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上含むものである。炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示できるが、これら中でもアジピン酸が好ましい。
ポリアミド(C)の製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法、重合条件により製造される。ポリアミドの重縮合時に分子量調節剤として少量のモノアミン、モノカルボン酸を加えてもよい。例えば、メタキシリレンジアミンとアジピン酸からなるナイロン塩を水の存在下に、加圧状態で昇温し、加えた水および縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法により製造される。また、メタキシリレンジアミンを溶融状態のアジピン酸に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によっても製造される。この場合、反応系を均一な液状状態で保つために、メタキシリレンジアミンをアジピン酸に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミドおよびポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
また、ポリアミド(A)は、溶融重合法により製造された後に、固相重合を行うことによって重縮合を行っても良い。ポリアミド(A)の製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法、重合条件により製造される。
ポリアミド(A)の数平均分子量(Mn)は、18000〜43500が好ましく、より好ましくは、20000〜30000である。この範囲であると、耐熱性、成形加工が良好である。
ポリアミド(A)には、溶融成形時の加工安定性を高めるため、あるいはポリアミド(A)の着色を防止するためにリン化合物を添加することができる。リン化合物としてはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含むリン化合物が好適に使用され、例えば、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のリン酸塩、次亜リン酸塩、亜リン酸塩が挙げられるが、特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の次亜リン酸塩を使用したものがポリアミドの着色防止効果に特に優れるため好ましく用いられる。リン化合物の濃度はリン原子として1〜500ppm、好ましくは350ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。
ポリアミド(A)の末端アミノ基濃度が1〜200μeq/gであることが好ましい。この範囲内であると、ポリアミド(A)とカルボキシル基を有するアントラキノン類、または/かつカルボキシル基を有する部分的に水素化されたアントラキノン類の結合が容易になり、酸素吸収能力が良好となる。また、ポリアミド(A)の末端カルボキシル基濃度は1〜200μeq/gであることが好ましい。
本発明における酸素吸収機構は必ずしも明らかではないが、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂と結合したキノン類(B)が、樹脂分子内から電子または水素原子を引き抜くことによって還元されると考えられる。その後、還元されたキノン類(B)は、酸素と反応し酸化され酸素を吸収するものと考えられる。または、キノン類(B)によって、電子または水素原子を引き抜かれ化学的に不安定となった樹脂が酸素と反応し、酸素を吸収するものと考えられる。
本発明で使用されるキノン類(B)は、ベンゼン環などの環に2つのカルボニル基(たとえばケトン構造)が存在する化合物であり、たとえば、ベンゾキノン、アントラキノン、ナフトキノンなどのキノンや、これらにヒドロキシル基、メチル基、エチル基、アミノ基、カルボキシル基などの官能基が付加したキノンなどの誘導体が挙げられ、さらにこれらのキノンやその誘導体に部分的に水素が付加されたもの、またはその互異性体でも良い(以下、それぞれベンゾキノン類、アントラキノン類、ナフトキノン類と称す)。官能基の種類、数および位置に特に制限は無い。また、上記ベンゾキノン類、アントラキノン類、ナフトキノン類は、二量体や三量体などであっても良い。
ベンゾキノン類としては、1,2−ベンゾキノン(o−ベンゾキノン)、1,4−ベンゾキノン(p−ベンゾキノン)、2−クロロ−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、2,5−ジクロロ−3,6−ジヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジクロロ−1,4−ベンゾキノン、2,6−ジクロロ−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノン、3,5−ジ−tert−ブチル−1,2−ベンゾキノン、2,6−ジブロモ−N−クロロ−1,4−ベンゾキノンイミン、2,6−ジブロモ−N−クロロ−1,4−ベンゾキノンモノイミン、2,5−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン、テトラクロロ−1,2−ベンゾキノン、テトラヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン、テトラフルオロ−1,4−ベンゾキノン、N,2,6−トリクロロ−1,4−ベンゾキノンモノイミン、トリメチル−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン、1,4−ベンゾキノンジオキシム、メチル−1,4−ベンゾキノンなどが挙げられるがこれらに限定されない。
アントラキノン類としては、アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、ジヒドロキシアントラキノン、トリヒドロキシアントラキノン、1,2,3,4−テトラヒドロアントラキノン、1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン、ヘキサヒドロアントラキノン、1−アミノアントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシアントラキノン、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸二ナトリウム、アントラキノン−1−スルホン酸ナトリウム、アントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム一水和物、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、1,5−ジクロロアントラキノン、1,5−ジヒドロキシアントラキノン、1,8−ジヒドロキシアントラキノン、1,4−ジヒドロキシアントラキノン、4,5−ジヒドロキシアントラキノン−2−カルボン酸、1,4−ジメチルアントラキノン、1,2,4−トリヒドロキシアントラキノン、2−(ヒドロキシメチル)アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノンなどが挙げられるがこれらに限定されない。
ナフトキノン類としては、1,2−ナフトキノン、1,4−ナフトキノン、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、5−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、5,8−ジヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロ−5,8−ジヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、1,2−ナフトキノン−4−スルホン酸ナトリウムなどが挙げられるがこれらに限定されない。
キノン類(B)は、ベンゾキノン類、アントラキノン類およびナフトキノン類から選ばれることが好ましい。また、キノン類(B)は、部分的に水素化されたベンゾキノン類、アントラキノン類およびナフトキノン類、ならびに官能基を有するベンゾキノン類、アントラキノン類およびナフトキノン類から選ばれることがより好ましい。また、キノン類(B)は、官能基を有する部分的に水素化されたベンゾキノン類、アントラキノン類、ナフトキノン類から選ばれることがさらに好ましい。部分的に水素化されたアントラキノン類、または官能基を有する部分的に水素化されたアントラキノン類は、アントラキノン骨格の少なくとも、1、4、4a、5、8、8a、9、9a、10、10aの位置に係る不飽和結合のひとつ以上が飽和されていることが好ましい。さらに、キノン類(B)が、テトラヒドロアントラキノン、ヘキサヒドロアントラキノン、官能基を有するテトラヒドロアントラキノンおよび官能基を有するヘキサヒドロアントラキノンから選ばれることが特に好ましい。これらのキノン類は、骨格中に芳香環を含むポリアミド(A)と、ベンゼン環を有するという共通項から、電子等の授受等において他のポリマー以上に、相互作用を示し、他のポリマーよりも、良好な酸素吸収性を示すものと考えられる。
また、キノン類(B)はカルボキシル基を有するアントラキノン類および/またはカルボキシル基を有する部分的に水素化されたアントラキノン類あるいはその互変異性体であることが好ましい。カルボキシル基を有すると、ポリアミドの末端アミノ基やポリエステルの末端水酸基と、容易に結合できるため好ましい。
前記カルボキシル基を有するアントラキノン類および/またはカルボキシル基を有する部分的に水素化されたアントラキノン類あるいはその互変異性体は、以下の式(1)または式(2)に示される化合物あるいはその互変異性体から選ばれることが好ましい。
Figure 2008050403

Figure 2008050403
また、キノン類(B)はアミノ基を有するアントラキノン類および/またはアミノ基を有する部分的に水素化されたアントラキノン類あるいはその互変異性体であることが好ましい。アミノ基を有すると、ポリアミドの末端カルボキシル基と、容易に結合できるため好ましい。
前記アミノ基を有するアントラキノン類および/またはアミノ基を有する部分的に水素化されたアントラキノン類あるいはその互変異性体は、1−アミノ−4−ヒドロキシアントラキノン、2−アミノ−3ヒドロキシアントラキノン、1,5−ジアミノ−4,8−ジヒドロキシアントラキノン、1−アミノアントラキノン、2−アミノアントラキノン、1−アミノ−4−メチルアントラキノン、1,2−ジアミノアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、1,5−ジアミノアントラキノン、1,5−ジアミノ−4,8−ジヒドロキシアントラキノン、あるいはその互変異性体から選ばれることが好ましい。
熱可塑性樹脂とキノン類(B)を結合させるには、単軸押出機や、二軸押出機などによってメルトブレンドして反応させても良く、熱可塑性樹脂の重合時にキノン類(B)を加えて反応させても良い。熱硬化性樹脂の場合は、硬化前にアントラキノン類を樹脂に配合して加熱硬化することで熱硬化樹脂に結合させることができる。
メルトブレンドにより熱可塑性樹脂とキノン類(B)を結合させた場合には、キノン類(B)は、主として熱可塑性樹脂の末端に結合する。熱可塑性樹脂がポリアミドの場合、キノン類(B)としてカルボキシル基を有するものを使用するとポリアミドの末端アミノ基と反応して結合する。この場合、キノン類(B)は、カルボキシル基を有するアントラキノン類および/またはカルボキシル基を有する部分的に水素化されたアントラキノン類が好ましい。この結合は、ポリアミドの末端アミノ基とアントラキノン類のカルボキシル基が反応することに基づく。同様に、キノン類(B)としてアミノ基を有するものを使用するとポリアミドの末端カルボキシル基と反応して結合する。この場合、キノン類(B)は、アミノ基を有するアントラキノン類および/またはアミノ基を有する部分的に水素化されたアントラキノン類が好ましい。
この場合、ポリアミドの末端アミノ基の1%〜100%が、カルボキシル基を有するアントラキノン類および/またはカルボキシル基を有する部分的に水素化されたアントラキノン類と、結合していることが好ましい。より好ましくは、10%〜100%、さらに好ましくは50〜100%、特に好ましくは、70〜100%である。また、ポリアミドの末端カルボキシル基の1%〜100%が、アミノ基を有するアントラキノン類および/またはアミノ基を有する部分的に水素化されたアントラキノン類と、結合していることが好ましい。より好ましくは、10%〜100%、さらに好ましくは50〜100%、特に好ましくは、70〜100%である。
熱可塑性樹脂の重合時にキノン類(B)を加えて反応させる場合、例えば、ポリアミドやポリエステルを重合する際には、原料モノマーとしてカルボキシル基を有するキノン類(B)を使用する。キノン類(B)をジカルボン酸成分として用いる場合には、キノン類(B)として二つのカルボキシル基を有するものを使用することが好ましい。この場合、ジカルボン酸成分の1〜80mol%がキノン類(B)であることが好ましく、より好ましくは3〜60mol%、さらに好ましくは5〜50mol%である。同様に、アミノ基を有するキノン類(B)を、ポリアミドを重合する際に使用することもでき、この場合、二つのアミノ基を有するものを使用することが好ましい。また、ジアミン酸成分の1〜80mol%がキノン類(B)であることが好ましく、より好ましくは3〜60mol%、さらに好ましくは5〜50mol%である。
ポリアミド重合反応の最後に、ひとつのアミノ基および/またはカルボキシル基を有するキノン類(B)を入れて熱可塑性樹脂末端カルボキシル基および/またはアミノ基と反応させることもできる。
本発明の酸素吸収性樹脂は、60%RH、23℃条件で測定したときに酸素透過係数が、0.05cc・mm/m・day・atm以下となる。より好ましくは0.01cc・mm/m・day・atm以下、さらに好ましくは、0.001cc・mm/m・day・atm以下となる。
また、前記酸素吸収性樹脂には、目的を損なわない範囲で、キノン類(B)が結合されていない他樹脂を一種もしくは複数ブレンドできる。また、ガラス繊維、炭素繊維などの無機充填剤;ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、モンモリロナイト、有機化クレイなどの板状無機充填剤、各種エラストマー類などの耐衝撃性改質材、結晶核剤;脂肪酸アミド系、脂肪酸金属塩系、脂肪酸アマイド系化合物等の滑剤;銅化合物、有機もしくは無機ハロゲン系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系、硫黄系化合物、リン系化合物等の酸化防止剤;熱安定剤、着色防止剤、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、離型剤、可塑剤、着色剤、難燃剤などの添加剤、酸素捕捉能を付与する化合物であるコバルト金属を含む化合物やポリアミドのゲル化防止を目的としたアルカリ化合物等の添加剤を添加することができる。
本発明において、多層構造物のバリア層として前記酸素吸収性樹脂を用いると、ガスバリア性、成形性が良好で好ましい。多層構造物として、多層フィルム、多層シート、多層ボトル、多層ブローボトルなどを例示できる。
本発明の多層構造物の製造方法について特に制限はなく、公知の技術を使用することができる。例えば、共押出法によりフィルムを成形した後、各種容器に加工できる。共押出法としてはTダイ法、インフレーション法等公知の方法を利用することができる。また、射出成形により多層プリフォームを製造した後、ブロー成形し多層ボトルとすることができる。
本発明の多層構造物は、四方シール袋や、各種ピロー袋、スタンディングパウチ等の袋状容器、容器用の蓋材等の各種包装材料、またはボトルなどとして利用することができる。さらに多層フィルムを原反として延伸フィルムを製造後、容器を製造することもできる。多層無延伸フィルムを熱成形し、カップ状の容器とすることもできる。また、紙とラミネートし多層構造物としても良い。本発明の多層構造物には、様々な物品を収納、保存することができる。例えば、炭酸飲料、ジュース、水、牛乳、日本酒、ウイスキー、ビール、焼酎、コーヒー、茶、ゼリー飲料、健康飲料等の液体飲料、調味液、ソース、醤油、ドレッシング、液体だし、マヨネーズ、味噌、すりおろし香辛料等の調味料、ジャム、クリーム、チョコレートペースト等のペースト状食品、液体スープ、煮物、漬物、シチュー等の液体加工食品に代表される液体系食品やそば、うどん、ラーメン等の生麺及びゆで麺、精米、調湿米、無洗米等の調理前の米類や調理された炊飯米、五目飯、赤飯、米粥等の加工米製品類、粉末スープ、だしの素等の粉末調味料等に代表される高水分食品、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品、その他農薬や殺虫剤等の固体状や溶液状の化学薬品、液体及びペースト状の医薬品、化粧水、化粧クリーム、化粧乳液、整髪料、染毛剤、シャンプー、石鹸、洗剤等、種々の物品を収納することができる。
特に、本発明の多層構造物は、水分活性の高い物品を収納する包装容器、高湿度下に曝される包装容器、さらにはレトルトやボイル等の加熱殺菌処理が施される包装容器の材料として適したものである。
本発明の多層構造物は、前記バリア層(層(1))以外の層(層(2))を少なくとも1層有する。層(2)を構成する材料としては特に制約はなく、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン類、ポリアミド類、ポリスチレン、紙等が挙げられる。
前記層(2)は、主としてポリエステルにより構成される層であることが好ましい。前記ポリエステルとしては、80モル%以上がテレフタル酸であるジカルボン酸成分と、80モル%以上がエチレングリコールであるジオール成分を重合反応させて得られた熱可塑性ポリエステル樹脂(以下、ポリエステル(D)と称す)が好ましい。ここで、ジカルボン酸成分の90モル%以上がテレフタル酸であることがより好ましい。また、ジオール成分の90モル%以上がエチレングリコールであることがより好ましい。
ポリエステル(D)としては、ポリエチレンテレフタレートが好適に使用される。ポリエチレンテレフタレートは、透明性、機械的強度、射出成形性、延伸ブロー成形性などにおいて優れた特性を発揮することから好ましい。
ポリエステルに(D)おけるテレフタル酸以外の他のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4又は2,6−ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、デカン−1,10−カルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸等を使用することができる。またエチレングリコール以外の他のジオール成分としてはプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を使用することが出来る。更に、ポリエステル(D)の原料モノマーとして、p−オキシ安息香酸等のオキシ酸を使用することもできる。
前記ポリエステル(D)の固有粘度は、0.55〜1.30、好ましくは0.65〜1.20である。固有粘度が上記0.55以上であると多層プリフォームを透明な非晶状態で得ることが可能であり、また得られる多層ボトルの機械的強度も満足するものとなる。また固有粘度が1.30以下の場合、成形時に流動性を損なうことなく、ボトル成形が容易である。
本発明の特徴を損なわない範囲で前記ポリエステル(D)には他の熱可塑性樹脂や各種添加剤を配合して使用することができる。前記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等が例示できる。また、前記添加剤としては、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、着色剤、プリフォームの加熱を促進し成形時のサイクルタイムを短くするための赤外吸収剤(リヒートアディティブ)などが例示できる。
また、前記層(2)には、ポリアミド類を好ましく使用でき、脂肪族ポリアミドがフィルムの外観を損なうことなく、機械物性が良好できることから特に好ましく用いられる。脂肪族ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン666等の共重合体を単独で、または複数以上を使用することができる。なかでも、ナイロン6、ナイロン66およびナイロン666がフィルムの機械物性を改善する効果が高いことから好ましく用いられる。層(2)は、脂肪族ポリアミドにより主として構成される層であることが好ましい。
また、前記層(2)には、多層構造物の機械物性を向上できることから、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン類、プロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレンブロックコポリマー、プロピレン−エチレンランダムコポリマー等のポリプロピレン類、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、ポリブテン、ポリペンテン、アイオノマー樹脂等の各種ポリオレフィン類を好ましく用いることができる。層(2)は、ポリオレフィン類により主として構成される層であることが好ましい。
本発明の多層構造物は、必要に応じて変性ポリオレフィン樹脂等からなる接着性樹脂層を各層間に積層しても良い。
前記層(2)には、機械物性をさらに向上させるため、各種エラストマー類などの耐衝撃性改質材を加えることができ、さらには結晶核剤、脂肪酸アミド系、脂肪酸金属塩系、脂肪酸アマイド系化合物等の滑剤、銅化合物、有機もしくは無機ハロゲン系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系、硫黄系化合物、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウムなどのリン系化合物等の酸化防止剤、熱安定剤、着色防止剤、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、離型剤、可塑剤、着色剤、難燃剤などの添加剤、酸化チタン等の無機顔料や染料等の有機顔料が含まれていても良い。
本発明の多層構造物は、パウチや蓋などの包装材料とした際にシーラントの役割を有する層を積層しても良い。シーラントとして使用可能な熱可塑性樹脂としては、シーラントとしての役割を発揮できるものであれば特に制限はなく、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン類、プロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレンブロックコポリマー、プロピレン−エチレンランダムコポリマー等のポリプロピレン類、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、ポリブテン、ポリペンテン、アイオノマー樹脂等の各種ポリオレフィン類、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、イージーピール性を有する熱可塑性樹脂等が挙げられる。シーラント層は、上述の樹脂からなる単層でも良く、2層以上の多層構造を有していても良い。多層構造の場合、必要に応じて変性ポリオレフィン樹脂等からなる接着性樹脂層を各樹脂層間に積層しても良い。
シーラント層には、シーラントとしての能力を損なわない範囲で、各種エラストマー類などの耐衝撃性改質材、結晶核剤、脂肪酸アミド系、脂肪酸金属塩系、脂肪酸アマイド系化合物等の滑剤、銅化合物、有機もしくは無機ハロゲン系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系、硫黄系化合物、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウムなどのリン系化合物等の酸化防止剤、熱安定剤、着色防止剤、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、離型剤、可塑剤、着色剤、難燃剤などの添加剤、酸化チタン等の無機顔料や染料等の有機顔料が含まれていても良い。
さらに機械物性の向上や商品性を高めるための目的で、本発明の多層構造物にはポリエステルやポリアミド、ポリプロピレン等からなる無延伸又は延伸フィルムを押出ラミネートやドライラミネート等により積層しても良い。
本発明の多層構造物として多層ボトルが例示できる。該多層ボトルは、例えば2つの射出シリンダーを有する射出成形機を使用して、ポリエステル(D)と前記酸素吸収性樹脂をスキン側、コア側それぞれの射出シリンダーから金型ホットランナーを通して金型キャビティー内に射出して得られた多層プリフォームを、公知の方法によって更に2軸延伸ブロー成形することにより得られる。
一般に、多層プリフォームのブロー成形は所謂コールドパリソン法やホットパリソン法などの従来公知の方法がある。例えば、多層プリフォームの表面を80〜120℃に加熱した後にコアロッドインサートで押すといった機械的手段により軸方向に延伸し、次いで、通常2〜4MPaの高圧空気をブローして横方向に延伸させブロー成形する方法、多層プリフォームの口部を結晶化させ、表面を80〜120℃に加熱した後に90〜150℃の金型内でブロー成形する方法などである。
本発明において、プリフォーム加熱温度は90〜110℃が好ましく、95℃〜108℃がさらに好ましい。この範囲であると、成形性が良好である。
本発明では、バリア性、成形性などが優れることから、多層ボトルはポリエステル(D)層/バリア層/ポリエステル(D)層の3層構造、または、ポリエステル(D)層/バリア層/ポリエステル(D)層/バリア層/ポリエステル(D)層の5層構造を有することが好ましい。
3層構造あるいは5層構造の多層ボトルは、3層構造あるいは5層構造の多層プリフォームを、公知の方法によって更に2軸延伸ブロー成形することにより得られる。3層構造あるいは5層構造の多層プリフォーム製造方法に特に制限は無く、公知の方法を利用できる。たとえば、スキン側射出シリンダーから最内層および最外層を構成するポリエステル(D)を射出し、コア側射出シリンダーからバリア層を構成する樹脂を射出する工程で、先ず、ポリエステル(D)を射出し、次いでバリア層を構成する樹脂とポリエステル(D)を同時に射出し、次にポリエステル(D)を必要量射出して金型キャビティーを満たすことにより3層構造(ポリエステル(D)層/バリア層/ポリエステル(D)層)の多層プリフォームが製造できる。
また、スキン側射出シリンダーから最内層および最外層を構成するポリエステル(D)を射出し、コア側射出シリンダーからバリア層を構成する樹脂を射出する工程で、先ずポリエステル(D)を射出し、次いでバリアを構成する樹脂を単独で射出し、最後にポリエステル(D)を射出して金型キャビティーを満たすことにより、5層構造(ポリエステル(D)層/バリア層/ポリエステル(D)層/バリア層/ポリエステル(D)層)の多層プリフォームが製造できる。
なお、多層プリフォームを製造する方法は、上記方法だけに限定されるものではない。
多層ボトル中の、ポリエステル(D)層の厚さは0.01〜1.0mmであるのが好ましく、バリア層の厚さは0.005〜0.2mm(5〜200μm)であるのが好ましい。また、多層ボトルの厚さはボトル全体で一定である必要はなく、通常、0.2〜1.0mmの範囲である。
前記多層ボトルにおいてバリア層の重量は、多層ボトル総重量に対して1〜20重量%とすることが好ましく、より好ましくは2〜15重量%、特に好ましくは3〜10重量%である。バリア層の重量を上記範囲とすることにより、ガスバリア性が良好な多層ボトルが得られるとともに、前駆体である多層プリフォームから多層ボトルへの成形も容易となる。
以下実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、酸素吸収性樹脂および多層構造物の評価は以下の方法で行った。酸素吸収性樹脂に関しては単層フィルムのガスバリア性を評価した。
<ガスバリア性>
(1)単層フィルム、多層フィルム、多層ボトル
ASTM D3985に準じて23℃、50%RHの雰囲気下にて酸素透過率を測定した。また、単層フィルムについては、酸素透過係数を算出した。測定は、モダンコントロールズ社製、OX−TRAN 2/61を使用した。値が低いほどガスバリア性が良好であることを示す。
(2)カップ
レトルト後のカップの酸素透過率を、23℃、内部100%RH、外部50%RHの雰囲気下にてASTM D3985に準じて測定した。また、容器内に透過する累積酸素量を算出した。測定は、モダンコントロールズ社製、OX−TRAN 2/61を使用した。値が低いほど酸素バリア性が良好であることを示す。
<参考例1>キノン類(B)の合成(1)
Diels−Alder反応を利用し、下記の方法にて下記式(1)の化合物を合成した。
1,4−ナフトキノン(東京化成工業株式会社製)とエタノールをフラスコに仕込んだ後、ソルビン酸をフラスコに追加投入した。攪拌しながら昇温し、5時間還流し反応を終了させた。12時間冷却させたのち、濾過し粗生成物を得た。得られた粗生成物はエタノールで再結晶し、精製し、化合物(1)を得た。
Figure 2008050403
<参考例2>キノン類(B)の合成(2)
Diels−Alder反応を利用し、下記の方法にて下記式(2)の化合物を合成した。
1,4−ベンゾキノン(東京化成工業株式会社製)とエタノールをフラスコに仕込んだ後、ソルビン酸をフラスコに追加投入した。攪拌しながら昇温し、5時間還流した。さらにソルビン酸をフラスコに追加投入し、攪拌しながら昇温し、5時間還流し反応を終了させた。12時間冷却させたのち、濾過し粗生成物を得た。得られた粗生成物はエタノールで再結晶し、精製し、化合物(2)を得た。
Figure 2008050403
<実施例1>
化合物(1)2重量%とポリメタキシリレンアジパミド(三菱ガス化学株式会社製 MXナイロンS6007 固相重合品、数平均分子量:23500、相対粘度(樹脂1g/96%硫酸100ml、測定温度25℃):2.70)98重量%をタンブラーにてドライブレンドし、二軸押出機に供給し、バレル温度250℃、滞留時間10minの条件で押出反応させペレットを得た。得られたペレットを単軸押出機に供給し、バレル温度250℃の条件で押出、Tダイ温度260℃の条件で押出し、50μm厚みのフィルムを得た。酸素透過率は0.002cc/m.day.atm、酸素透過係数は、0.0001cc/m.day.atmであった。
<実施例2>
メタキシリレンジアミンとアジピン酸を溶融状態でポリアミドの相対粘度が2.30になるまで重縮合後、重合釜内部に化合物(1)1重量%相当量を投入し、攪拌後、重合槽下部のノズルからストランドとして取り出し、空冷した後ペレット形状に切断し、ペレットを得た。その後、ポリアミドの相対粘度が2.70になるまで固相重合したペレットを、実施例1と同様に押出し、50μm厚みの単層フィルムを得た。酸素透過率は0.003cc/m.day.atm、酸素透過係数は、0.00015cc/m.day.atmであった。
<実施例3>
メタキシリレンジアミンとアジピン酸を溶融状態でポリアミドの相対粘度が2.30になるまで重縮合後、重合釜内部に化合物(2)1重量%相当量を投入し、攪拌後、重合槽下部のノズルからストランドとして取り出し、空冷した後ペレット形状に切断し、ペレットを得た。その後、ポリアミドの相対粘度が2.70になるまで固相重合したペレットを、実施例1と同様に押出し、50μm厚みの単層フィルムを得た。酸素透過率は0.0025cc/m.day.atm、酸素透過係数は、0.000125cc/m.day.atmであった。
<実施例4>
2台の押出機、フィードブロック、Tダイ、冷却ロール、引き取り機等からなる多層フィルム製造装置を用いて、第1の押出機からナイロン6(宇部興産製、商品名UBE1020B、以下N6と略す)を、第2の押出機から前記実施例2と同様にして得た固相重合ペレット(バリア層を形成)を共押出し、N6層(10μm)/バリア層(5μm)/N6層(10μm)の層構成を有する2種3層の多層フィルムを製造した。バリア層は均一に存在し、安定してフィルムを成形することができた。酸素透過率は0.02cc/m.day.atmであった。
<実施例5>
下記の条件により、ポリエステル(D)層/バリア層/ポリエステル(D)層からなる3層プリフォーム(27g)を射出成形し、冷却後、プリフォームを加熱し2軸延伸ブロー成形を行い、多層ボトルを得た。尚、ポリエステル(D)層を構成する樹脂としては、固有粘度(フェノール/テトラクロロエタン=6/4(重量比)の混合溶媒を使用。測定温度30℃。)が0.75のポリエチレンテレフタレート(日本ユニペット製 RT543C)を使用し、バリア層を構成する樹脂としては、実施例2と同様にして得た固相重合ペレットを使用した。バリア層は均一に存在し、安定した品質のプリフォームを得られ、成形性は良好であった。得られた多層ボトルの総重量に対するバリア層の重量は5重量%であった。また、多層ボトルの酸素透過率(23℃、50%RH)は、0.001cc/day・0.21atm・packageであった。
(3層プリフォーム形状)
全長95mm、外径22mm、肉厚4.2mm。なお、3層プリフォームの製造には、名機製作所(株)製の射出成形機(型式:M200、4個取り)を使用した。
(3層プリフォーム成形条件)
スキン側射出シリンダー温度:280℃
コア側射出シリンダー温度 :260℃
金型内樹脂流路温度 :280℃
金型冷却水温度 :15℃
(多層ボトル形状)
全長223mm、外径65mm、内容積500ml、底部形状はシャンパンタイプ、胴部にディンプルは無し。なお、2軸延伸ブロー成形はフロンティア社製ブロー成形機(型式:EFB1000ET)を使用した。
(2軸延伸ブロー成形条件)
プリフォーム加熱温度:103℃
延伸ロッド用圧力:0.5MPa
一次ブロー圧力:1.0MPa
二次ブロー圧力:2.5MPa
一次ブロー遅延時間:0.35sec
一次ブロー時間:0.28sec
二次ブロー時間:2.0sec
ブロー排気時間:0.6sec
金型温度:30℃
<実施例6>
3台の押出機、フィードブロック、Tダイ、冷却ロール、巻き取り機等を備えた多層シート製造装置を用い、1台目の押出機からポリプロピレン(日本ポリプロ社製、商品名;ノバテックPP、グレード名;EC9、メルトインデックス;0.5:以下、PPと略す)を240℃で、2台目の押出機から接着性樹脂(三井化学社製、商品名;アドマー、グレード;QB550)を230℃で、3台目の押出機から、実施例3と同様にして得た固相重合ペレット(ガスバリア層を形成)を255℃でそれぞれ押し出し、フィードブロックを介してPP層/接着性樹脂層/ガスバリア層/接着性樹脂層/PP層の3種5層構造の多層シートを製造した。なお各層の厚みは、300/20/40/20/300(μm)とした。
次いで、プラグアシストを備えた真空圧空成形機を使用して、シート表面温度が170℃に達した時点で熱成形を行い、口径62mm×底径52mm×深さ28mm、表面積73cm、容積70mlのカップ状容器を得た。
次いで、容器内に水を70ml入れ、PP/アルミ箔/PET=50/9/12(μm)のフィルムで開口部をヒートシールした後、オートクレーブを使用して、30分間、121℃で密封容器をレトルト処理した。次いで、フィルムに穴を開けて水を60ml抜いた後、ガス導入管及びガス排出管を挿しこみ、挿しこみ部をエポキシ系接着剤で固めて封した後、酸素透過率測定装置を用いて酸素透過率を測定した。結果を表1に示す。
<比較例1>
実施例1と同様にしてMXナイロンS6007単独成分からなる単層フィルムを得た。酸素透過率は2cc/m.day.atm、酸素透過係数は、0.1cc/m.day.atmであった。
<比較例2>
バリア層として、化合物(1)2重量%とMXナイロンS6007 98重量%のドライブレンド物を使用した以外は、実施例5と同様に多層プリフォームを製造した。バリア層の粘度低下が大きいため、バリア層は均一に存在せず、安定した品質のプリフォームを得ることができず、成形性は良好であった。また、得られた多層ボトルの総重量に対するバリア層の重量のばらつきも大きく3〜10重量%であった。
Figure 2008050403
以上の実施例で示したように、本発明の酸素吸収性樹脂とそれを利用してなる多層構造物は、湿度によらずバリア性が良好で、ボイル処理やレトルト処理などの加熱殺菌処理を行った際もバリア性が良好なものであった。また、成形性が良好なものであった。

Claims (19)

  1. 分子中に、ベンゾキノン類、アントラキノン類およびナフトキノン類から選ばれるキノン類(B)に由来する構造単位を有する熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂であることを特徴とする酸素吸収性樹脂。
  2. 前記構造単位が、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の末端、側鎖もしくは主鎖に結合している請求項1に記載の酸素吸収性樹脂。
  3. 前記キノン類(B)が、部分的に水素化されたベンゾキノン類、アントラキノン類およびナフトキノン類、またはその互異性体から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の酸素吸収性樹脂。
  4. 前記キノン類(B)が、官能基を有する部分的に水素化されたベンゾキノン類、アントラキノン類およびナフトキノン類、またはその互異性体から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の酸素吸収性樹脂。
  5. 前記キノン類(B)が、テトラヒドロアントラキノン、ヘキサヒドロアントラキノン、官能基を有するテトラヒドロアントラキノンおよび官能基を有するヘキサヒドロアントラキノンから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の酸素吸収性樹脂。
  6. 前記構造単位を有するポリエステルである請求項1に記載の酸素吸収性樹脂。
  7. 前記構造単位を有するポリアミドである請求項1に記載の酸素吸収性樹脂。
  8. 前記ポリアミドの末端アミノ基が、カルボキシル基を有するアントラキノン類および/またはカルボキシル基を有する部分的に水素化されたアントラキノン類あるいはその互変異性体と、結合していることを特徴とする請求項7に記載の酸素吸収性樹脂。
  9. 前記カルボキシル基を有するアントラキノン類および/またはカルボキシル基を有する部分的に水素化されたアントラキノン類あるいはその互変異性体が、以下の式(1)または式(2)に示す化合物あるいはその互変異性体から選ばれることを特徴とする請求項8に記載の酸素吸収性樹脂。
    Figure 2008050403

    Figure 2008050403
  10. 前記ポリアミドの末端カルボキシル基が、アミノ基を有するアントラキノン類および/またはアミノ基を有する部分的に水素化されたアントラキノン類あるいはその互変異性体と、結合していることを特徴とする請求項7に記載の酸素吸収性樹脂。
  11. 前記アミノ基を有するアントラキノン類および/またはアミノ基を有する部分的に水素化されたアントラキノン類あるいはその互変異性体が、1−アミノ−4−ヒドロキシアントラキノン、2−アミノ−3ヒドロキシアントラキノン、1,5−ジアミノ−4,8−ジヒドロキシアントラキノン、1−アミノアントラキノン、2−アミノアントラキノン、1−アミノ−4−メチルアントラキノン、1,2−ジアミノアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、1,5−ジアミノアントラキノン、1,5−ジアミノ−4,8−ジヒドロキシアントラキノン、あるいはその互変異性体から選ばれることを特徴とする請求項10に記載の酸素吸収性樹脂。
  12. 前記ポリアミドが、骨格中に芳香環を含むポリアミドであることを特徴とする請求項7に記載の酸素吸収性樹脂。
  13. 前記ポリアミドが、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸を50モル%以上含むジカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリアミドであることを特徴とする請求項7に記載の酸素吸収性樹脂。
  14. ポリアミドの数平均分子量(Mn)が18000〜43500であることを特徴とする請求項7に記載の酸素吸収性樹脂。
  15. ポリアミドの末端アミノ基濃度が1〜200μeq/gであることを特徴とする請求項7に記載の酸素吸収性樹脂。
  16. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂からなるバリア層を有することを特徴とする多層構造物。
  17. 前記バリア層以外の層として、ポリエステルにより主として構成される層を有する請求項16記載の多層構造物。
  18. 前記バリア層以外の層として、ポリオレフィン類により主として構成される層を有する請求項16記載の多層構造物。
  19. 前記バリア層以外の層として、脂肪族ポリアミドにより主として構成される層を有する請求項16記載の多層構造物。
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