JP2008049711A - 成形金型および貫通穴を有する成形品の製造方法 - Google Patents

成形金型および貫通穴を有する成形品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 この発明は、特殊な成形機や装置を必要とせず、後工程なしで、貫通穴を有する成形品を効率よく形成できる成形金型および成型方法並びに成形品を得る。
【解決手段】 第3の流路8が連通口11を介してキャビティ18に連通するように固定側の型13に形成され、ピン15がキャビティ18内を通って連通口11から第3の流路8内に延出するように可動側の型13に配設され、キャビティ流入口19が連通口11の内周面とピン15の外周面との間に形成される環状の流路に構成されている。そして、キャビティ流入口19は、第3の流路8の流路断面積に対して小さい流路断面積を有している。
【選択図】 図2

Description

この発明は、成形金型および貫通穴を有する成形品の製造方法に関し、特に、任意形状の穴内面の精度が特に厳しく要求され、表面にウェルドラインが許容されない成形品を、特殊な成形機や装置を必要とせず、後工程なしで、効率良く成形できる成形金型および貫通穴を有する成形品の製造方法に関するものである。
一般に筒状の成形品をサイドゲートやピンゲートなどで射出成形する場合、溶融成形材料を金型のキャビティ内に充填する過程で、成形品の内径形状を規定するピンによって溶融成形材料の流れは分流され、再度合流した部分にウェルドラインが発生し、成形品の強度低下や外観不良を引起こす。そのため、ゲートをディスク状に形成し、流入する溶融成形材料を当該ディスクゲートの全周から円筒状のキャビティ内に供給することで、ウェルドラインの発生を抑制してきた。
この種の従来技術では、キャビティ内にコアピンを配置して固定側の型と可動側の型とを衝合させ、キャビティ内にスプルーからディスクゲートを介して樹脂を充填させるようにしている。そして、コアピンが固定側の型に装着され、スプルーがコアピンの内部に設けられ、ディスクゲートがコアピンの先端部とこれに対向する可動側の型との間に設けられている。さらに、筒状のゲートカットパンチが、可動側の型の内部に、ディスクゲートと成形体との間に介在する連通部に向けて進退可能に配設されている。このゲートカットパンチは、樹脂充填時に後退位置にあり、樹脂の充填後、その硬化前に前進してディスクゲート内の樹脂をキャビティ内に押し込んでゲートカットするように構成されている。
この従来技術によれば、金型でゲートカットがなされるため、成形後にディスクゲート部分を切断・除去する工程は不要となる。さらに、ゲートカットパンチによりゲート部分の樹脂をキャビティ内に押込むので、キャビティ内の樹脂圧力が上昇し、樹脂硬化後のひけの発生が抑制される。また、ゲートカットパンチを筒状にし、成形品の内径部をゲートカットパンチが摺動しない構造にすることで、内径面に高い精度や複雑な形状が要求される成形品、例えば滑り軸受、キー付きギヤ、スリーブ、ワッシャ、軸受軌道輪などの部品にも適用できるとしている。(例えば、特許文献1)
特開平7−178779号公報(特許請求の範囲、図4)
この従来技術においては、金型を閉じた状態でゲートカットパンチを駆動するための駆動源(例えばエアシリンダ、油圧シリンダ、モータ、成形機のエジェクタ機構など)とこれらを制御する装置が必要となる。さらに、この駆動力をゲートカットパンチに伝達するための動力伝達機構が金型内に付加されるため、金型構造はより複雑化する。
また、ゲートカットパンチにより、成形体として不要な樹脂をキャビティ内に押込むことで、ひけの発生を抑制している。しなしながら、樹脂をキャビティ内に押込む時に、キャビティ内の樹脂圧力が全体に均等に上昇するとは限らず、ゲート近傍だけに偏って圧力が上昇した場合には、この部分に応力が生じ、応力の解放に伴って内径が小さくなるなど、内径精度が悪くなってしまう。また、成形品内部に残留した応力は、成形後の成形品の割れや変形を発生させる原因となる。また、ゲートカットによるバリの発生は避けられず、バリが内径面側に突出した場合には、その内径精度を確保することが困難となる。
さらに、ゲートカットパンチによりゲート部分の樹脂を押し込む際、ゲートカットパンチの先端に過大な荷重が加わり、それがある限界荷重を超えるとゲートカットパンチが座屈もしくは破壊してしまう。また、限界荷重を超えなくても、成形サイクルで繰り返し荷重がゲートカットパンチに加わるために、ゲートカットパンチの磨耗および疲労破壊の懸念がある。そのため、頻繁なゲートカットパンチの交換が必要となる。
また、ゲートカットパンチは金型内で駆動するので、摺動面における金型部品のクリアランス管理が難しく、隙間が狭いとかじりを引き起こし、逆に隙間が広いとゲートカットパンチ自体が傾き、成形品の穴とそれに垂直な成形品の面との直角度が悪くなり、成形品の精度に影響を及ぼす。また、金型の構造上ゲートカットパンチの内部に、温度調整用媒体の流路、熱伝導率に優れる材料、ヒートパイプなどを設けることが難しい。そのため、ゲートカットパンチの温度が一様にならず、キャビティ内に温度分布ができて成形品精度に影響を及ぼす。また、ゲートカットパンチが部分的に過熱されると、熱膨張し、摺動面のかじりを引起こす原因にもなりうる。
この発明は、上記の課題を解消するためになされたもので、任意形状の穴の内面に高い寸法精度が求められ、しかも成形品表面にウェルドラインの発生が許されない成形品を、特殊な成形機や装置を必要とせず、後工程なしで、効率良く成形することのできる成形金型および成形方法並びに成形品を得ることを目的とする。
この発明による成形金型は、キャビティ内に第1ピンを配置して固定側の型と可動側の型とを衝合させ、溶融された成形材料を成形材料流路からキャビティ流入口を介して上記キャビティ内に充填することにより、上記第1ピンにより内形を規定される貫通穴を有する成形品を成形する成形金型において、成形時には上記成形材料流路が連通口を介して上記キャビティに連通するように上記固定側の型に形成され、上記第1ピンが上記キャビティ内を通って上記連通口から上記成形材料流路内に延出するように上記可動側の型に配設され、上記キャビティ流入口が上記連通口の内周面と上記第1ピンの外周面との間に形成される環状の流路に構成され、かつ、上記成形材料流路の流路断面積に対して小さい流路断面積を有し、さらに上記第1ピンに対向する第2ピンが、上記成形材料流路の体積の増大を抑えるように上記成形材料流路内に延出して配設されているものである。
また、この発明による貫通穴を有する成形品の製造方法は、第1の成形材料流路が形成された第1の固定側の型と、第2の成形材料流路およびキャビティが形成された第2の固定側の型と、可動側の型とを型閉めして、上記キャビティと上記第2の成形材料流路とを連通口を介して連通させ、上記可動側の型に配設された第1ピンが上記キャビティ内を通って上記連通口から上記第2の成形材料流路に延出され、かつ、上記第1の固定側の型に配設された第2ピンが上記第1ピンに対向して上記第2の成形材料流路の体積の増大を抑えるように上記第2の成形材料流路内に延出されるように成形金型を配置する型閉め工程と、溶融された成形材料を上記第1の成形材料流路に注入し、上記連通口の内周面と上記第1ピンの外周面との間に形成される環状のキャビティ流入口に上記キャビティ流入口の全周から上記キャビティ内に充填する充填工程と、上記溶融された成形材料を冷却して固化させ、上記キャビティ内で固化した成形材料と上記第1ピンとの間に、および、上記第2の成形材料流路内で固化した成形材料と上記第2ピンとの間にそれぞれ離型抵抗力を発生させる冷却工程と、上記キャビティ内で固化した成形材料と上記第2の成形材料流路内で固化した成形材料とを、最小の流路断面積を有する上記キャビティ流入口の部位で切り離す第1の型開き工程と、上記第1の固定側の型と上記第2の固定側の型とを離間させる第2の型開き工程と、上記キャビティ内で固化した成形材料および上記第1の成形材料流路および上記第2の成形材料流路内で固化した成形材料を取り外し、上記キャビティ内で固化した成形材料の上記第1ピンの挿入部位を貫通穴として上記貫通穴を有する成形品とする取り外し工程とを備えたものである。
この発明によれば、特殊な成形機や装置を必要とせず、貫通穴を有する成形品を効率よく形成できる成形金型が得られる。また、成形後に、成形材料流路内で固化した成形材料とキャビティ内で固化した成形材料とを切断する必要がない。また、成形品の貫通穴の内面の寸法精度が高められ、かつ、ウェルドラインが成形品表面に発生しない。
以下、この発明の実施の形態を図について説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る成形品を説明する図であり、図1の(a)はその側面図、図1の(b)はその上面図である。
図1において、成形品20は、成形材料としてのポリカーボネート樹脂(PC樹脂)から作製され、円筒状のボス部20aと、ボス部20aの下端に同軸に一体に形成された円盤部20bとから構成されている。そして、貫通穴としての穴部20cが成形品20の軸心位置に穿設されている。さらに、凹部20dがボス部20aの上端面の穴部20cの外周縁部に凹設されている。
この貫通穴を有する成形品20においては、穴部20cと、円盤部20bとが最も精度を要求される部位であり、特に、穴部20cの内周面の円筒度および穴部20cと円盤部20bとの直角度が厳しく要求される。
図2はこの発明の実施の形態1に係る射出成形用の成形金型を示す断面図である。
図2において、成形金型は、衝合面(パーティングラインA)を境として固定側の型1と可動側の型13とから構成されている。
固定側の型1は、一面に溶融成形材料の金型流入口5を有する第1の型2と、一面を第1の型2の他面に密接させて配設され、他面にボス部20aの外形を規定するキャビティ4を有する第2の型3とから構成されている。そして、流路方向を第1の型2の一面と直交とする第1の流路6が金型流入口5から他面に至るように第1の型2に穿設されている。また、流路方向を第2の型3の一面と平行とする第2の流路7が、第1の流路6に対応する位置からキャビティ4に対応する位置に至るように第2の型3の一面に形成され、さらに、流路方向を第2の型3の一面と直交とする第3の流路8が第2の流路7とキャビティ4とを連通するように第2の型3に形成されている。また、第2ピンとしてのピン9が第1の型2を挿通し、その先端を第3の流路8内に延出させるように、第1の型2の他面と直交するように第1の型2に配設されている。そして、媒体流路10がピン9内に形成されている。また、環状の凸部12がキャビティ4と第3の流路8との連通口11の縁部をキャビティ4内に突出させて第2の型3に形成され、凹部20dの内形を規定している。
また、円盤部20bの外形を規定するキャビティ14が可動側の型13の一面にキャビティ4と相対するように形成され、穴部20cの内形を規定する第1ピンとしてのピン15が可動側の型13を挿通し、キャビティ14、4を通って、連通口11から先端部を第3の流路8内に延出させるように、可動側の型13に配設されている。そして、媒体流路16がピン15内に形成されている。また、成形材料溜まり部17がピン15の先端面に凹設されている。なお、このピン15は、ピン9と軸心を一致させて対向して配設されている。
そして、成形金型は、固定側の型1と可動側の型13とを衝合面Aで密接して構成される。これにより、第1の流路6、第2の流路7および第3の流路8が直列に連結され、金型流入口5からキャビティ4に至る成形材料流路が構成される。また、キャビティ4、14が一体となって成形品20の外形を規定するキャビティ18を構成している。また、ピン15がキャビティ18の軸心位置を通り、連通口11から第3の流路8内に延出し、その先端がピン9の先端に相対している。そして、連通口11の内周面とピン15の外周面との環状の隙間がキャビティ流入口19を構成している。なお、金型流入口5からキャビティ4に至る成形材料流路において、このキャビティ流入口19の流路断面積が最小となるように構成されている。
ここで、固定側の型1および可動側の型13の材料は、特に限定されないが、例えば冷間金型用合金工具鋼(SKD−11)、ステンレス鋼(SUS−420、SUS−440)などの鋼材が用いられる。
また、ピン9、15には、例えば冷間金型用合金工具鋼(SKD−11)、ステンレス鋼(SUS−420、SUS−440)などの鋼材を用いることができるが、金型温度調整用媒体との熱交換効率を高くするために、熱伝導率が高く、熱容量が小さい材料、例えば銅合金やアルミニウム合金を用いることが望ましい。なお、穴部20cの径が小さく、ピン15内に媒体流路16を形成できないような場合には、熱伝導率の優れた材料やヒートパイプ等を配置し、その根元部を金型温度調整用媒体により直接冷却するようにしてもよい。
ついで、このように構成された成形金型を用いて成形品20を射出成形する方法について図3および図4を参照しつつ説明する。なお、図3はこの発明の実施の形態1に係る成形方法を説明する工程断面図、図4はPC樹脂の引っ張り強度と温度との関係を示す図である。
まず、固定側の型1が、第1の型2の他面と第2の型3の一面とを密接させて一体化されて用意される。ついで、可動側の型13を衝合面Aで固定側の型1に密接させ、図2に示される成形金型とする(型閉め工程)。ここで、図示していないが、固定側の型1および可動側の型13にも媒体流路が形成されている。そして、固定側の型1および可動側の型13に形成されている媒体流路と、ピン9、15に形成されている媒体流路10、16とが直列に接続され、成形金型の外部に配設された媒体供給装置(図示せず)に接続されて、温度調整回路を構成している。この媒体供給装置は、水の温度を設定された温度に維持する機能を有している。そこで、媒体供給装置から金型温度調整用媒体としての水が温度調整回路に流通され、固定側および可動側の型1、13およびピン9、15が設定された温度に保持される。
ここで、各媒体流路は必ずしも直列に接続される必要はなく、並列に接続して1つの媒体供給装置に接続するようにしてもよい。また、各媒体流路を専用の媒体供給装置に接続し、各媒体流路に独立して水を供給して、各部品の温度を独立して制御するようにしてもよい。
ついで、PC樹脂を加熱溶融してなる溶融成形材料が金型流入口5から注入される。溶融成形材料は、金型流入口5から第1の流路6を経て第2の流路7に流れ込み、第2の流路7を流れて第3の流路8に流れ込む。そして、第3の流路8に流れ込んだ溶融成形材料は、ピン15の先端の成形材料溜まり部17を充填した後、ピン15の先端でキャビティ流入口19のリング形状に分流される。これにより、図3の(a)に示されるように、キャビティ流入口19の全周からキャビティ18内に流入・充填される(充填工程)。
そして、溶融成形材料がキャビティ18内に完全に充填された後、溶融成形材料の金型流入口5からの注入を一定圧力で一定時間継続する(保圧工程)。この保圧工程により、キャビティ18内の溶融成形材料の凝固収縮分が補充される。
そして、保圧工程の終了後、溶融成形材料が固化し、キャビティ18の形状を保持できるまで、金型内を冷却し続ける(冷却工程)。この冷却工程において、溶融成形材料は金型に熱を奪われて温度を低下させながら固化する。この温度低下にともなって成形材料は収縮し、第2の流路7および第3の流路8内の成形材料はピン9に抱きつき、キャビティ18内の成形材料はピン15に抱きつく。このピン9、15に対して作用する成形材料の収縮力と、成形材料とピン9、15の表面との静摩擦係数との積が、成形材料が型から離れまいとする力、即ち離型抵抗力となる。
ついで、図3の(b)に示されるように、可動側の型13が固定側の型1から離間される(第1の型開き工程)。この時、キャビティ18内の成形品20とピン15との間には離型抵抗力が作用し、第1乃至第3の流路6、7、8内の成形材料固化体21とピン9との間には離型抵抗力が作用している。そこで、成形品20と成形材料固化体21とは、最小の流路断面積を有するキャビティ流入口19の部位で切り離され、成形品20が可動側の型13に残留し、成形材料固化体21が固定側の型1に残留する。
ついで、図3の(c)に示されるように、第1の型2と第2の型3とが離間される(第2の型開き工程)。この時、第1乃至第3の流路6、7、8内の成形材料固化体21とピン9との間には離型抵抗力が作用しているので、成形材料固化体21は第1の型2に残留する。
ついで、図3の(d)に示されるように、成形品20を可動側の型13から取り外し、成形材料固化体21を第1の型2から取り外す(取り外し工程)。この取り外し方法としては、エジェクタピン(図示せず)を介して油圧シリンダ、エアシリンダ等の外部の力を伝達して成形品20や成形材料固化体21を取り出す方法、成形品20や樹脂固化体21と金型との密着面に空気を吹き付けて取り出す方法、ロボットや人の手でつまみ出す方法等がある。
その後、第1および第2の型2、3を密接させ、さらに可動側の型13を固定側の型1に密接させて(型閉め工程)、次の射出成形サイクルに移行する準備を行う。
つぎに、この成形方法における成形条件について説明する。
充填工程において溶融成形材料の良好な流動性を確保し、保圧工程においてキャビティ18内の溶融成形材料に所定の圧力を印加できるように、金型の温度はできるだけ高いことが望ましい。しかし、金型の温度を高くし過ぎると、冷却工程において、成形品20および成形材料固化体21が十分に冷却されなくなり、それらの取り出し時に不具合が発生する。即ち、第1の型開き工程において、成形材料が所望としない部位、例えば成形品のボス部20aや第3の流路8の部位で引き裂かれたり、成形材料の最表層部が剥離して金型の表面に残留する不具合が発生する。また、取り出し工程において、エジェクタピンを用いて成形品20を取り出す場合には、成形品20を傷付けたり、最悪突き破る不具合が発生する。さらに、成形材料から発生する分解ガスの量が増大し、金型の腐食を促進させるという不具合が発生する。
そこで、これらの不具合の発生を抑えて、溶融成形材料の良好な流動性および離型性を確保するために、成形材料に応じて金型温度の上限値を設定する必要がある。そして、成形材料としてPC樹脂を用いているので、金型温度の上限値はほぼ418Kとなる。ここで、Kはケルビン温度である。
また、一般に、ポリアミド樹脂(PA樹脂)、ポリアセタール樹脂(POM樹脂)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)に代表される結晶性樹脂を成形材料に用いた場合、金型温度には、上述の上限値に加えて、下限値も存在する。即ち、結晶性樹脂においては、これ以上は結晶化が進行しないという最大の結晶化度(飽和結晶化度)が存在する。成形品の結晶化度が飽和結晶化度に到達しない場合、結晶歪が増大する。そして、この結晶歪が内部応力として作用し、寸法精度を低下させることになる。したがって、寸法精度の高い成形品を得るには、成形工程中において、成形品の結晶化度を飽和結晶化度に到達させる必要がある。例えば、PPS樹脂の場合、金型温度が403K以上であれば、飽和結晶化度に到達する。なお、PC樹脂は非晶性樹脂、即ち結晶構造を有しないので、金型温度の下限値は特に限定されない。
ただし、キャビティに薄肉部分があるなど金型によっては、金型温度が低くなりすぎると、溶融成形材料が金型内に充填中に温度低下してしまい、キャビティ内に完全に充填される前に固化し、溶融成形材料の流動が停止してしまうことになる。成形材料としてPC樹脂を用いた場合、金型内での流動性を十分に確保するために、金型温度は一般的には353K以上にしておくことが望ましい。
また、第1の型開き工程において、成形品20と成形材料固化体21とが切り離される。これには、成形品20とピン15との間に作用する離型抵抗力を、図4に示される成形材料の引っ張り強度とキャビティ流入口19の流路断面積との積で決定される切断力の大きさよりも大きくする必要がある。つまり、その離型抵抗力が切断力より下回ると、成形品20と成形材料固化体21とが切断されず、一体となって離型されることになる。そして、切断力を小さくするか、離型抵抗力を大きくするかの調整を行うことになる。
成形材料の引っ張り強度は、図4に示されるように、成形材料の温度に依存し、低温状態ほど大きくなる。従って、成形材料が高温の状態で第1の型開き工程を行えば、切断力が小さくなり、成形品20と成形材料固化体21とを安定して切り離すことができる。一方、離型抵抗力を大きくするには、ピン9、15の表面を荒らしたり、アンダーカットをつけることで静摩擦係数を上げることになる。
ただし、本実施の形態では、成形品の貫通穴内面に高い寸法精度が求められているため、ピン15自体に、表面を荒らしたり、アンダーカットをつけて、離型抵抗力を大きくすることはできない。そこで、本実施の形態では、切断力が離型抵抗力より下回る時の成形材料の温度は333K以上であることから、ここではより安定して切断できるように成形材料の温度が393Kに低下した段階で、第1の型開き工程を実施し、成形品20と成形材料固化体21とを切断した。
このことから、成形材料としてPC樹脂を用いた場合、媒体供給装置から水を温度調整回路に流通させ、固定側および可動側の型1、13およびピン9、15は一般的に353Kから418Kの温度範囲に設定しておくことが望ましい。
また、型開き工程時における成形材料の温度は、333K以上であればよい。
なお、金型温度および第1の型開き工程時における成形材料の温度は、成形材料に応じて適宜設定することになる。
また、ピン9、15の温度は、必ずしも他の金型温度と同一に制御する必要はない。例えば、ピン9、15の温度を他の金型温度より低い温度に制御することにより、成形材料の固化が促進されるので、成形時間が短縮されるとともに、金型から取り出された成形品20の収縮量が減り、穴部20cの内径寸法精度が向上される。
また、PC樹脂は、非晶性樹脂であることから、明確な融点を有していないが、約503K〜533K以上に加熱すると流動性を有するようになる。そして、PC樹脂は、高温状態ほど粘度が下がり、流動性がよくなる傾向を示す。しかし、加熱しすぎると、PC樹脂が熱によって変色したり、焼けたり、場合によっては分解して材料劣化する恐れがあるので、加熱温度の上限は633K程度である。一方、加熱温度が543Kより低くなると、PC樹脂が金型内を流動しているうちに固化し、キャビティ内に充填されなくなったり、キャビティの形状を完全に形成しない等の欠陥が生じる恐れがある。そこで、良好な流動性を確保するために、PC樹脂を543K〜633Kに加熱することが望ましい。
また、充填の速度、保圧力、保圧時間、冷却時間等の成形条件は、成形品の形状および寸法が良好となるように決定される。
このように、この実施の形態1による成形金型によれば、キャビティ流入口19の流路断面積が第3の流路8の流路断面積より小さく形成され、ピン9が第2および第3の流路7、8内に延設され、ピン15がキャビティ18内を通ってキャビティ流入口19から第3の流路8内に延設されている。そこで、溶融成形材料がキャビティ18内に充填され、冷却固化されると、キャビティ18内で固化された成形材料がピン15に抱きつき、第2および第3の流路7、8内で固化された成形材料がピン9に抱きつく。これにより、第1の型開き工程において、キャビティ18内で固化された成形材料とピン15との間に離型抵抗力が生じ、第2および第3の流路7、8内で固化された成形材料とピン9との間に離型抵抗力が生じ、成形品20と成形材料固化体21とをキャビティ流入口19の部位で切り離すことができる。
そこで、従来装置において必要であったゲートカットパンチのような摺動部品が不要となり、摺動部品を制御する装置も不要となり、駆動力をゲートカットパンチに伝達する動力伝達機構も不要となり、さらにクリアランス管理も不要となり、金型構造が簡略化され、低コスト化が図られる。さらに、従来装置のように頻繁に交換するゲートカットパンチのような摺動部品がないので、ランニングコストが低減される。
一般に、充填工程においては、流動する溶融成形材料の先端が空気と接触するため、温度が低下しやすく、その一部が固化したり劣化したりする。さらに、第1乃至第3の流路6、7、8中に存在する異物等が流動する溶融成形材料の先端に巻き込まれる恐れがある。この実施の形態1では、成形材料溜まり部17がピン15の第3の流路8内に延出する先端面に凹設されているで、第3の流路8内に流動してきた溶融成形材料は、成形材料溜まり部17を充填した後、キャビティ流入口19からキャビティ18内に流入する。そこで、溶融成形材料の先端部に存在する固化物、劣化物あるいは異物は成形材料溜まり部17に捕捉されて、キャビティ18内への流入が抑えられ、高品質の成形品20が得られる。
また、ピン9、15に媒体流路10、16が設けられ、水を媒体流路10、16に流通させてピン9、15の温度を制御できるようになっているので、ピン9、15の温度を一様に制御でき、キャビティ18内に温度分布のバラツキをもたらすことを防止でき、キャビティ18内の温度分布のバラツキに起因する成形品の精度の悪化を抑制できる。また、金型内に充填された成形樹脂の過大となりやすい部分をピン9、15により直接冷却できるので、硬化時間を制御することができるとともに、成形時間を短縮することもできる。
また、ピン9が第2および第3の流路7、8内に延設されているので、流路の体積の増大を抑えることができる。そこで、金型に注入される溶融成形材料の量が低減されるので、成形品20の精度の悪化や、凝固時間およびサイクル時間の長時間化を抑えることができる。
また、ピン15が可動側の型13に設けられているので、高い精度の円筒度に形成されたピン15を円盤部20bの面に対して高い精度の垂直度で可動側の型13に構成することができる。これにより、厳しい内周面の円筒度が要求される穴部20cと、この穴部20cに対して厳しい直角度が要求される円盤部20bとを備えた成形品20を成形することができる。
また、キャビティ流入口19がピン15周りに環状に形成されているので、溶融成形材料が環状のキャビティ流入口19からキャビティ18内に流れ込み、キャビティ18内で分流および合流することなく充填され、ウェルドラインの発生を抑えることができる。
また、環状の凸部12がキャビティ4と第3の流路8との連通口11の縁部をキャビティ4内に突出させて第2の型3に形成されているので、第1の型開き工程において、成形品20と成形材料固化体21とをキャビティ流入口19の部位で切り離す際に、バリが生じても、該バリは成形品20の凹部20d内に存在し、成形品20の端面より突出することがなく、成形品20の外形寸法に影響を与えることもない。
また、この実施の形態1による成形金型を用いて成形品20を成形すれば、成形後の切断・除去工程が不要となり、効率よく成形品20を成形することができる。
また、第1の型開き工程を、成形材料の温度が、成形品20とピン15との間に作用する離型抵抗力が成形材料の引っ張り強度とキャビティ流入口19の流路断面積との積で決定される切断力よりも大きくなるような成形材料の温度以上の状態で行っているので、成形品20と成形材料固化体21とをキャビティ流入口19の部位で切り離すための切断力が小さくなり、第1の型開き工程で成形品20と成形材料固化体21とを安定して効率よく切断することができる。
なお、上記実施の形態1では、円筒状のボス部20aと、ボス部20aの下端に同軸に一体に形成された円盤部20bとから構成されている成形品20を成形するものとして説明しているが、この発明は、貫通穴を有する成形品であればその形状が限定されるものではなく、例えば図5乃至図7に示される成形品30、31、32に適用できる。
図5に示される成形品30は、円筒状のボス部30aと、ボス部30aの下端に中心を一致させて一体に形成された矩形状の平板部30bと、ボス部30aの軸心位置に穿設されたから構成された正方形断面の穴部30cとから構成されている。そして、平板部30bおよび穴部30cは四角形に限定されるものではなく、三角形、五角形でもよい。また、図6に示される成形品31は、円筒状のボス部31a、ボス部31aの下端に同軸に一体に形成された円盤部31bと、ボス部31aの軸心位置に穿設された段付き穴部31cとから構成されている。さらに、図7に示される成形品32は、平板部32aと、平板部32aに穿設された穴部32bとから構成されている。また、成形品20では、穴部20cの上端縁部に凹部20dを設けるものとしているが、成形品の高さ寸法が厳しく管理されない場合には、凹部20dを特に設ける必要はない。
また、上記実施の形態1では、成形材料固化体21とピン9との間に発生する離型抵抗力が、第1の型開き工程で、成形品20と成形材料固化体21との切り離しに寄与するものと説明しているが、第3の流路8がキャビティ4側に先細り形状に形成されていることから、仮に成形材料固化体21とピン9との間に発生する離型抵抗力が小さくなっても、成形材料固化体21に作用する第1の型開き方向の引っ張り力は第3の流路8に受けられ、成形品20と成形材料固化体21との切り離しが確実に行われる。従って、成形品20とピン15との間に発生する離型抵抗力と成形材料の切断力との調整が重要となる。
また、上記実施の形態1では、第1の型開き工程で可動側の型13と固定側の型1との間を離間し、第2の型開き工程で第1の型2と第2の型3との間を離間するものとしているが、第1の型開き工程で固定側の第1の型2と第2の型3との間を離間し、第2の型開き工程で可動側の型13と固定側の第2の型3との間を離間してもよい。この場合、成形材料固化体21とピン9との間に作用する離型抵抗力を、図4に示される成形材料の引っ張り強度とキャビティ流入口19の流路断面積との積で決定される切断力の大きさよりも大きくする必要がある。また、仮に成形品20とピン15との間に発生する離型抵抗力が小さくなっても、成形品20に作用する第1の型開き方向の引っ張り力は成形品20のボス部20aの上面および円盤部20bの上面に受けられ、成形品20と成形材料固化体21との切り離しが確実に行われる。従って、成形材料固化体21とピン9との間に発生する離型抵抗力と切断力との調整が重要となる。
実施の形態2.
図8はこの発明の実施の形態2に係る射出成形用の成形金型を示す断面図である。
図8において、成形金型は、衝合面(パーティングラインA)を境として固定側の型1Aと可動側の型13Aとから構成されている。
固定側の型1Aは、一面に溶融樹脂の金型流入口5を有する第1の型2Aと、一面を第1の型2Aの他面に密接させて配設され、他面にボス部20aの外形を規定する2つのキャビティ4を有する第2の型3Aとから構成されている。そして、流路方向を第1の型2Aの一面と直交とする第1の流路6が金型流入口5から他面に至るように第1の型2Aに穿設されている。ここで、2つのキャビティ4は、第1の流路6の流路中心に対して対称な位置関係に形成されている。そして、流路方向を第2の型3Aの一面と平行とする第2の流路7が、第1の流路6に対応する位置から2つのキャビティ4に対応する位置に至るように第2の型3Aの一面に形成され、さらに、流路方向を第2の型3Aの一面と直交とする第3の流路8が第2の流路7とキャビティ4とをそれぞれ連通するように第2の型3Aに形成されている。また、ピン9が第1の型2Aを挿通し、その先端を各第3の流路8内に延出させるように、第1の型2Aの他面と直交するように第1の型2Aに配設されている。そして、媒体流路10が各ピン9内に形成されている。また、図示していないが、環状の凸部12がそれぞれキャビティ4と第3の流路8との連通口11の縁部をキャビティ4内に突出させて第2の型3Aに形成されている。
また、円盤部20bの外形を規定する2つのキャビティ14が可動側の型13Aの一面に各キャビティ4と相対するように形成され、穴部20cの内形を規定するピン15が可動側の型13Aを挿通し、各キャビティ14、4を通って、連通口11から先端部を第3の流路8内に延出させるように、可動側の型13Aに配設されている。そして、媒体流路16が各ピン15内に形成されている。また、成形材料溜まり部17が各ピン15の先端面に凹設されている。なお、このピン15は、ピン9と軸心を一致させて対向して配設されている。
そして、成形金型は、固定側の型1Aと可動側の型13Aとを衝合面Aで密接して構成される。これにより、第1の流路6、第2の流路7および第3の流路8が直列に連結され、金型流入口5からキャビティ4に至る成形材料流路が構成される。また、キャビティ4、14が一体となって成形品20の外形を規定するキャビティ18を構成している。また、ピン14がキャビティ18の軸心位置を通り、連通口11から第3の流路8内に延出し、その先端がピン9の先端に相対している。そして、連通口11の内周面とピン15の外周面との環状の隙間がキャビティ流入口19を構成している。なお、金型流入口5からキャビティ4に至る成形材料流路において、このキャビティ流入口19の流路断面積が最小となるように構成されている。
この実施の形態2による成形金型は、成形品20を2個取りできる点を除いて、上記実施の形態1と同様に構成されている。従って、この実施の形態2においても、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
また、この実施の形態2においては、成形品20を2個取りできるので、生産性が向上される。
なお、上記実施の形態2では、成形品20を2個取りできるように2つのキャビティ18を設けるものとしているが、2つのキャビティ18を多列に配列するように設けることにより、多数個取りが可能となり、より生産性が向上される。そして、この発明においては、従来装置における必要であったゲートカットパンチのような摺動部品が不要であり、摺動部品を制御する装置も不要であり、駆動力をゲートカットパンチに伝達する動力伝達機構も不要であることから、成形金型の構成が簡素化され、多数個取りにも容易に対応可能である。
実施の形態3.
図9はこの発明の実施の形態3に係る成形金型を用いた成形方向を説明する工程断面図である。
この実施の形態3では、図9に示されるように、固定側の型1Bは、第1の型2Bと、一面を第1の型2Bの他面に密接させて配設される第2の型3Bとから構成されている。そして、金型流入口5が第1の型2Aの一面に形成され、流路方向を第1の型2Bの一面と直交とする第1の流路6が金型流入口5から他面に至るように第1の型2Bに穿設されている。また、ボス部20aの外形を規定するキャビティ4が第2の型3Bの他面に形成され、第3の流路8が連通口11を介してキャビティ4に連通するように第2の型3Bの一面に形成されている。また、2つのピン9が第1の流路6の流路中心に対して対称な位置関係で第1の型2Bを挿通し、その先端を第3の流路8内に延出させるように、第1の型2Bの他面と直交するように第1の型2Bに配設されている。そして、媒体流路10がピン9内に形成されている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
ついで、この実施の形態3による成形品の成形方法について説明する。
まず、固定側の型1Bが、第1の型2Bの他面と第2の型3Bの一面とを密接させて一体化されて用意される。ついで、可動側の型13を衝合面Aで固定側の型1Bに密接させ、図9の(a)に示される成形金型とする(型閉め工程)。ここで、媒体供給装置(図示せず)から金型温度調整用媒体としての水が温度調整回路に流通され、固定側および可動側の型1B、13およびピン9、15が設定された温度に保持される。
ついで、PC樹脂を加熱溶融してなる溶融成形材料が金型流入口5から注入される。溶融成形材料は、金型流入口5から第1の流路6を経て第3の流路8に流れ込む。そして、第3の流路8に流れ込んだ溶融成形材料は、ピン15の先端の成形材料溜まり部17を充填した後、ピン15の先端でキャビティ流入口19のリング形状に分流される。これにより、図9の(a)に示されるように、キャビティ流入口19の全周からキャビティ18内に流入・充填される(充填工程)。
そして、溶融成形材料がキャビティ18内に完全に充填された後、溶融成形材料の金型流入口5からの注入を一定圧力で一定時間継続する(保圧工程)。
そして、保圧工程の終了後、溶融成形材料が固化し、キャビティ18の形状を保持できるまで、金型内を冷却し続ける(冷却工程)。
ついで、図9の(b)に示されるように、可動側の型13が固定側の型1Bから離間される(第1の型開き工程)。この時、キャビティ18内の成形品20とピン15との間には離型抵抗力が作用し、第1および第3の流路6、8内の成形材料固化体21とピン9との間には離型抵抗力が作用している。そこで、成形品20と成形材料固化体21とは、最小の流路断面積を有するキャビティ流入口19の部位で切り離され、成形品20が可動側の型13に残留し、成形材料固化体21が固定側の型1Bに残留する。
ついで、図9の(c)に示されるように、第1の型2Bと第2の型3Bとが離間される(第2の型開き工程)。この時、第1および第3の流路6、8内の成形材料固化体21とピン9との間には離型抵抗力が作用しているので、成形材料固化体21は第1の型2Bに残留する。
ついで、図9の(d)に示されるように、成形品20を可動側の型13から取り外し、成形材料固化体21を第1の型2Bから取り外す(取り外し工程)。
その後、第1および第2の型2B、3Bを密接させ、さらに可動側の型13を固定側の型1Bに密接させて(型閉め工程)、次の射出成形サイクルに移行する準備を行う。
従って、この実施の形態3においても、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
また、この実施の形態3によれば、第2の流路7が省略されているので、金型流入口5からキャビティ18までの流路体積が縮小され、1つの成形品を成形するのに必要な成形材料の量を節約することができる。
また、金型流入口5からキャビティ18までの流路長さが短縮されるので、保圧工程時に、金型流入口5からキャビティ18内の成形材料に圧力を伝達し易くなり、より高精度の成形品を成形できる。
実施の形態4.
図10はこの発明の実施の形態4に係る成形金型を用いた成形方向を説明する工程断面図である。
この実施の形態4では、図10に示されるように、金型流入口5が可動側の型1Cの一面に形成され、ボス部20aの外形を規定するキャビティ4が固定側の型1Cの他面に形成されている。また、第3の流路8が連通口11を介してキャビティ4に連通するように固定側の型1C内に形成されている。さらに、流路方向を固定側の型1Cの一面と直交とする第1の流路6が金型流入口5から第3の流路8に至るように固定側の型1Cに穿設されている。また、2つのピン9が第1の流路6の流路中心に対して対称な位置関係で、その先端を第3の流路8内に延出させるように、固定側の型1Cの一面と直交するように固定側の型1Cに配設されている。そして、媒体流路10がピン9内に形成されている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
ついで、この実施の形態4による成形品の成形方法について説明する。
まず、可動側の型13を衝合面Aで固定側の型1Cに密接させ、図10の(a)に示される成形金型とする(型閉め工程)。ここで、媒体供給装置(図示せず)から金型温度調整用媒体としての水が温度調整回路に流通され、固定側および可動側の型1C、13およびピン9、15が設定された温度に保持される。
ついで、PC樹脂を加熱溶融してなる溶融成形材料が金型流入口5から注入される。溶融成形材料は、金型流入口5から第1の流路6を経て第3の流路8に流れ込む。そして、第3の流路8に流れ込んだ溶融成形材料は、ピン15の先端の成形材料溜まり部17を充填した後、ピン15の先端でキャビティ流入口19のリング形状に分流される。これにより、図10の(a)に示されるように、キャビティ流入口19の全周からキャビティ18内に流入・充填される(充填工程)。
そして、溶融成形材料がキャビティ18内に完全に充填された後、溶融成形材料の金型流入口5からの注入を一定圧力で一定時間継続する(保圧工程)。
そして、保圧工程の終了後、溶融成形材料が固化し、キャビティ18の形状を保持できるまで、金型内を冷却し続ける(冷却工程)。
ついで、図10の(b)に示されるように、可動側の型13が固定側の型1Cから離間される(型開き工程)。この時、キャビティ18内の成形品20とピン15との間には離型抵抗力が作用し、第1および第3の流路6、8内の成形材料固化体21とピン9との間には離型抵抗力が作用している。そこで、成形品20と成形材料固化体21とは、最小の流路断面積を有するキャビティ流入口19の部位で切り離され、成形品20が可動側の型13に残留し、成形材料固化体21が固定側の型1Cに残留する。
ついで、図10の(c)に示されるように、成形品20を可動側の型13から取り外し、成形材料固化体21を固定側の型1Cから取り外す(取り外し工程)。
その後、可動側の型13を固定側の型1Cに密接させて(型閉め工程)、次の射出成形サイクルに移行する準備を行う。
従って、この実施の形態4においても、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
また、この実施の形態4によれば、固定側の型1Cが1つの型で構成されているので、上記実施の形態1における第2の型開き工程が省略され、成形工程の簡素化が図られ、生産性が向上される。
また、この実施の形態4においても、第2の流路7が省略されているので、上記実施の形態3と同様に、1つの成形品を成形するのに必要な成形材料の量を節約することができるとともに、金型流入口5からキャビティ18までの流路長さが短縮され、保圧工程時に、金型流入口5からキャビティ18内の成形材料に圧力を伝達し易くなり、より高精度の成形品を成形できる。
ここで、この実施の形態4では、上記実施の形態1と異なり、第3の流路8がキャビティ4側に口開き形状に形成されていることから、成形材料固化体21とピン9との間に発生する離型抵抗力が、成形品20と成形材料固化体21との切り離しに寄与する。従って、実施の形態4では、成形品20とピン15との間に発生する離型抵抗力と成形材料固化体21とピン9との間に発生する離型抵抗力と成形材料の切断力との調整が重要となる。
なお、上記各実施の形態では、熱交換効率に優れ、その取り扱いが容易であることから金型温度調整用媒体として水を用いているが、金型温度調整用媒体は、水に限定されるものではなく、例えばエチレングリコールや各種油等の液体、あるいは飽和水蒸気や加熱蒸気等の気体を用いてもよい。
また、上記各実施の形態では、成形材料としてPC樹脂を用いるものとしているが、他に適用できる成形材料としては、具体的には、(1)ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、(2)ポリ塩化ビニル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等の脂肪族ポリアミド系樹脂、(3)ポリフタルアミド樹脂等の芳香族ポリアミド系樹脂、(4)ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、(5)ポリオキシメチレン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、フッ素系樹脂等の結晶性樹脂、(6)ポリスチレン系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアレリート系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、アクリロニトリル−スチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン系樹脂等の非晶性樹脂、(7)芳香族ポリエステル系樹脂、芳香族ポリエステルアミド系樹脂等の液晶ポリマーがある。さらに、これらのアロイや、ガラス繊維等のフィラーを配合した樹脂を用いることもできる。
また、上記各実施の形態では、樹脂を射出成形するものとしているが、例えばアルミニウム合金やマグネシウム合金に代表される金属材料のダイカスト成形にも適応できる。
また、この発明は、無機材料を用いた粉末成形にも適用できる。粉末成形としては、セラミック射出成形、金属粉末射出成形、超硬合金射出成形等がある。これらの粉末成形では、成形材料に可塑性を付与するためにバインダが混入される。バインダとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブラチール、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシポロピルセルロースや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリオキシメチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、パラフィンワックスやカルナバ蝋等のワックス類等がある。
この発明の実施の形態1に係る成形品を説明する図である。 この発明の実施の形態1に係る射出成形用の成形金型を示す断面図である。 この発明の実施の形態1に係る成形方法を説明する工程断面図である。 PC樹脂の引っ張り強度と温度との関係を示す図である。 この発明の実施の形態1に係る成形品の実施態様を説明する図である。 この発明の実施の形態1に係る成形品の他の実施態様を説明する図である。 この発明の実施の形態1に係る成形品のさらに他の実施態様を説明する図である。 この発明の実施の形態2に係る射出成形用の成形金型を示す断面図である。 この発明の実施の形態3に係る成形金型を用いた成形方向を説明する工程断面図である。 この発明の実施の形態4に係る成形金型を用いた成形方向を説明する工程断面図である。
符号の説明
1、1A、1B、1C 固定側の型、6 第1の流路(成形材料流路)、7 第2の流路(成形材料流路)、8 第3の流路(成形材料流路)、9 ピン(第2ピン)、12 凸部、13 可動側の型、15 ピン(第1ピン)、17 成形材料溜まり部、18 キャビティ、20、30、31、32 成形品、20c、30c、31c、32b 穴部(貫通穴)、21 成形材料固化体。

Claims (6)

  1. キャビティ内に第1ピンを配置して固定側の型と可動側の型とを衝合させ、溶融された成形材料を成形材料流路からキャビティ流入口を介して上記キャビティ内に充填することにより、上記第1ピンにより内形を規定される貫通穴を有する成形品を成形する成形金型において、
    成形時には上記成形材料流路が連通口を介して上記キャビティに連通するように上記固定側の型に形成され、
    上記第1ピンが上記キャビティ内を通って上記連通口から上記成形材料流路内に延出するように上記可動側の型に配設され、
    上記キャビティ流入口が上記連通口の内周面と上記第1ピンの外周面との間に形成される環状の流路に構成され、かつ、上記成形材料流路の流路断面積に対して小さい流路断面積を有し、さらに
    上記第1ピンに対向する第2ピンが、上記成形材料流路の体積の増大を抑えるように上記成形材料流路内に延出して配設されることを特徴とする成形金型。
  2. 成形材料溜まり部が上記第1ピンの上記成形材料流路内に延出する先端に凹設されていることを特徴とする請求項1記載の成形金型。
  3. 上記第1および第2ピンが温度制御されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の成形金型。
  4. 第1の成形材料流路が形成された第1の固定側の型と、第2の成形材料流路およびキャビティが形成された第2の固定側の型と、可動側の型とを型閉めして、上記キャビティと上記第2の成形材料流路とを連通口を介して連通させ、上記可動側の型に配設された第1ピンが上記キャビティ内を通って上記連通口から上記第2の成形材料流路に延出され、かつ、上記第1の固定側の型に配設された第2ピンが上記第1ピンに対向して上記第2の成形材料流路の体積の増大を抑えるように上記第2の成形材料流路内に延出されるように成形金型を配置する型閉め工程と、
    溶融された成形材料を上記第1の成形材料流路に注入し、上記連通口の内周面と上記第1ピンの外周面との間に形成される環状のキャビティ流入口に上記キャビティ流入口の全周から上記キャビティ内に充填する充填工程と、
    上記溶融された成形材料を冷却して固化させ、上記キャビティ内で固化した成形材料と上記第1ピンとの間に、および、上記第2の成形材料流路内で固化した成形材料と上記第2ピンとの間にそれぞれ離型抵抗力を発生させる冷却工程と、
    上記キャビティ内で固化した成形材料と上記第2の成形材料流路内で固化した成形材料とを、最小の流路断面積を有する上記キャビティ流入口の部位で切り離す第1の型開き工程と、
    上記第1の固定側の型と上記第2の固定側の型とを離間させる第2の型開き工程と、
    上記キャビティ内で固化した成形材料および上記第1の成形材料流路および上記第2の成形材料流路内で固化した成形材料を取り外し、上記キャビティ内で固化した成形材料の上記第1ピンの挿入部位を貫通穴として上記貫通穴を有する成形品とする取り外し工程と
    を備えたことを特徴とする貫通穴を有する成形品の製造方法。
  5. 成形材料流路およびキャビティが形成された固定側の型と、可動側の型とを型閉めして、上記キャビティと上記成形材料流路とを連通口を介して連通させ、上記可動側の型に配設された第1ピンが上記キャビティ内を通って上記連通口から上記成形材料流路に延出され、かつ、上記固定側の型に配設された第2ピンが上記第1ピンに対向して上記成形材料流路の体積の増大を抑えるように上記成形材料流路内に延出されるように成形金型を配置する型閉め工程と、
    溶融された成形材料を上記成形材料流路に注入し、上記連通口の内周面と上記第1ピンの外周面との間に形成される環状のキャビティ流入口に上記キャビティ流入口の全周から上記キャビティ内に充填する充填工程と、
    上記溶融された成形材料を冷却して固化させ、上記キャビティ内で固化した成形材料と上記第1ピンとの間に、および、上記第2の成形材料流路内で固化した成形材料と上記第2ピンとの間にそれぞれ離型抵抗力を発生させる冷却工程と、
    上記キャビティ内で固化した成形材料と上記成形材料流路内で固化した成形材料とを、最小の流路断面積を有するキャビティ流入口の部位で切り離し、上記キャビティ内で固化した成形材料を上記可動側の型に、上記成形材料流路内で固化した成形材料を上記固定側の型に、それぞれ上記離型抵抗力により残留させる型開き工程と、
    上記キャビティ内で固化した成形材料および上記成形材料流路内で固化した成形材料を取り外し、上記キャビティ内で固化した成形材料の上記第1ピンの挿入部位を貫通穴として上記貫通穴を有する成形品とする取り外し工程と
    を備えたことを特徴とする貫通穴を有する成形品の製造方法。
  6. 上記第1の型開き工程における成形材料の温度は、その温度における成形材料の引っ張り強度と上記キャビティ流入口の流路断面積との積が、上記キャビティ内で固化した成形材料と上記第1ピンとの間に発生する離型抵抗力および上記第2の成形材料流路内で固化した成形材料と上記第2ピンとの間に発生する離型抵抗力の少なくとも一方より下回るように設定されていることを特徴とする請求項4あるいは請求項5に記載の貫通穴を有する成形品の製造方法。
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