JP2008048650A - アミノ基を含む多糖類とシリカゲルからなるたばこフィルタ素材およびそれを用いたたばこフィルタ。 - Google Patents

アミノ基を含む多糖類とシリカゲルからなるたばこフィルタ素材およびそれを用いたたばこフィルタ。 Download PDF

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Abstract

【課題】ニコチンやタールなどの喫味成分を保持しつつ、ホルムアルデヒドを選択的に効
率よく除去するのに有用なたばこフィルタを提供する。
【解決手段】たばこフィルタを、アミノ酸類およびアミノスルホン酸類から選択された少なくとも1種のアミノ基を有する多糖類と平均細孔径20nm以上のシリカゲルとで構成されているたばこフィルタ用素材で構成する。前記たばこフィルタ用素材は、さらに、ポリオール類などの保湿剤を含んでいてもよい。前記たばこフィルタ用素材はアミノ基を有する多糖類の使用量が少ないにも係わらず、ホルムアルデヒドを効率よく選択除去できる。そして、両端部をフィルタロッドで構成し中間部にこれらのたばこフィルタ用素材を配したたばこフィルタでは例えば、ニコチンおよびタールをそれぞれ保持率75%以上に保持しつつ、ホルムアルデヒド保持率を40%以下にすることができ、通気抵抗値を上げることがない。
【選択図】なし

Description

本発明は、ニコチンやタールなどの喫味成分を保持しつつ、アルデヒド類(特に、ホルムアルデヒド)を選択的に効率よく除去するのに有用なたばこフィルタ用素材、このたばこフィルタ用素材で構成されたたばこフィルタおよびこのたばこフィルタを備えたたばこに関する。
たばこ煙中の成分をろ過するための吸着体として種々の構成成分が提案されている。このような構成成分としては、酸性成分の吸着、ホルムアルデヒドの吸着などを目的としてアミン成分などの塩基性成分を添加するものが多く報告されている。
例えば、特開昭59−88078号公報(特許文献1)、特開昭59−1519882号公報(特許文献2)、および特開昭60−54669号公報(特許文献3)には、活性炭素にポリエチレンイミンや蒸気圧が低い脂肪族アミンを添着させたタバコ煙フィルタ用吸着剤を、特表2002−528105号公報(特許文献4)および特表2002−528106号公報(特許文献5)には、3−アミノプロピルシリルおよび関連原子団を共有結合したたばこフィルタを、特表2003−505618号公報(特許文献6)にはアンモニウム塩を含む充填材を、特開昭57−71388号公報(特許文献7)には、タバコの風味を向上させるためアミノ酸を添加することをそれぞれ開示している。
しかし、上記のような塩基性成分の多く、特に合成高分子アミンは、分解や低分子量成分の残存により特有のアミン臭を呈することが多い。また、塩基性成分自体又はその中に含まれる揮発性物質は、揮発して人体に対して毒性を示すことが多い。なお、塩基性成分は、添着する際の液性を酸性側にすることにより、その揮発を抑制できるが、何らかの理由、例えば、他の塩基性物質との接触や加水分解などにより、遊離する虞がある。また、アミノ酸などは、多くの場合に結晶化し、揮発性も低いが、このような結晶状態では、吸着に対する活性が低く、十分な効果を期待できない。このように、通常の塩基性成分を用いた吸着体では、酸性物質やアルデヒドなどの除去にある程度有効であると考えられるものの、安全性やその効果に問題があり、たばこフィルタ用吸着剤として実用的でなかった。
一方、このような塩基性物質のうち、キチンやキトサンなどのキトサン誘導体は、結晶化や揮発を生じることがなく、また、人体に対しても安全であり、抗菌性を有することが知られている。例えば、特開平11−100713号公報(特許文献8)には、キトサンを含有し、滅菌率が26%以上であるキトサン含有セルロースアセテート繊維が開示されている。この文献には、セルロースアセテートの溶剤にキトサンを所定の大きさ以下(最大粒子径3μm以下)に粉砕、分散させた分散液を添加又は混合する方法、直接キトサンを添加又は混合し、所定の分散条件によりキトサンの大きさを調製する方法などにより、キトサンを紡糸原液中に分散含有させることが記載されている。
また、このようなキチンやキトサン誘導体を用いたたばこフィルタも提案されている。
例えば、特開昭53−142600号公報(特許文献9)には、タバコフィルタ素材に対してキチンもしくはキチン誘導体を3wt%以上の割合で含有するタバコフィルタが開示されている。この文献には、キチンはポリ−N−アセチル−D−グルコサミンであり、このキチンを含有させる方法として、キチンから得られる粉末を直接タバコフィルタ素材に配合してもよくあるいはキチンを無水酢酸、ジクロル酢酸、メタンスルホン酸あるいはリチウム、カルシウム、マグネシウムの塩化物あるいは臭化物を含有するジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の極性溶媒に溶解した後イソプロピルエーテル等の凝固液中に押出して繊維化あるいはフィルム化して得た繊維あるいはフィルムを配合してもよいことが記載されている。また、この文献には、キチンおよびキチン誘導体はその構造にアセチル基を所有するために、特にアセテートフィルタに配合した場合、アセテートのアセチル基との相乗効果によって独特の軽い香喫味をタバコに与えることが記載されており、具体的には、実施例において、タールの除去率が34〜41%、ニコチンの除去率が28から29%であり従来品と同等もしくはそれ以上であったことが記載されている。
特開昭60−168373号公報(特許文献10)には、キチン又はその誘導体(キチンのアセチルアミノ基の一部又は全部を脱アセチル化したキトサン、そのOH基やCH2OH基がエーテル化、エステル化、ヒドロキシエチル化あるいはO−メチル化された化合物など)からなる繊維を素材とするタバコ用フィルターが開示されている。この文献には、前記繊維を製造する方法として、キチン又はその誘導体を溶剤に溶かしてドープとなし、このドープを湿式紡糸して繊維化する方法が好ましく用いられることが記載されている。この文献のたばこフィルタは、トリアセチルセルロースやレーヨンを素材としたフィルタに比べて使用中にタールやニコチンを吸着しやすく、従来のものに比べて1.5〜2倍以上の吸着付着能力を有している。
特開昭62−111679号公報(特許文献11)には、喫煙時における煙中の変異原物質を除去するために、多糖類イオン交換体や粉末状多糖類(セルロース、アガロース、アミロース、キチン、キトザンなど)を含有するたばこ用フィルター材が開示されている。この文献には、多糖類イオン交換体や粉末状多糖類をたばこ本体のフィルタとして、またアセテートフィルタの空間に分散またははさみ混む形状で使用できることが記載されている。
特開平7−31452号公報(特許文献12)には、キチンまたはキトサンを5〜100重量%有するたばこ用フィルタが開示されている。この文献には、キチン・キトサンは、例えば、酢酸、コハク酸、安息香酸、フタル酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸などのカルボン酸、グリシン、グルタミン酸、フェニルアラニンなどのアミノ酸、燐酸、硼酸などの無機酸、または、有機もしくは無機多価酸の部分エステル等と塩を形成してもいてもよいことが記載されている。
また、この文献には、キチン・キトサンは、キチン・キトサン溶液を、例えば、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、ジルコニア、活性炭あるいは、レーヨン、綿、木材パルプなどのセルロース、デンプン、ゼラチン、カゼインなどの蛋白質、または、セルロースアセテート、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロンなどの合成樹脂等の粉末もしくは繊維から成る基体に含浸させた後に乾燥して用いてもよいことが記載されている。この文献に記載のフィルタでは、たばこ煙中のニコチン・タールやアルデヒド類などの有害成分を効果的に吸着捕集できる。なお、前記キチン・キトサン溶液を使用する具体的な方法として、実施例5では、脱脂綿80mgをキチン・キトサン(脱アセチル化度50%)の1%水溶液に浸した後に真空乾燥し、20mgのキチン・キトサンが含浸した脱脂綿100mgを紙筒に充填してフィルタチップを形成し、ニコチン捕集率48%、タール捕集率45%、アクロレイン捕集率72%のフィルタを得たことが記載されている。
なお、従来、ニコチンやタールがタバコ煙中の主な有害成分と考えられ、ニコチンやタールのデリバリーに関心がもたれ、多くの国でニコチンとタールの表示義務が課せられている。
しかし、ニコチンそのものは、タバコの嗜好成分であり、喫煙の満足感に直接関与すると考えられる。また、タールについても、タバコ煙成分中のタール成分を相対的に高いレベルで除去することは、香喫味を損なうために好ましいことではない。すなわち、タールやニコチンを含めた揮発性の低い煙成分を無差別に除去すると、味が軽くなるとともに満足感が得られなくなる。
一方、アルデヒド類、特にホルムアルデヒドは、刺激的な臭いを有するだけでなく、最近アレルギーの原因物質のひとつとして注目されているように、健康上好ましくない物質であり、極力除去することが好ましい。
従って、タバコ煙成分中のタールやニコチンの量を相対的に高いレベルに保ったまま、煙成分中のアルデヒド成分(特にホルムアルデヒド)のみを選択的に除去することが求められている。 しかし、上記のようなキチンやキトサン誘導体を用いたばこフィルタは、比較的人体に対して安全である一方で、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類だけでなく、ニコチンやタールなどの物質も多く除去してしまうため、喫味(又は香喫味)を損なう。
詳細には、キチンやキトサン誘導体などの粒子や繊維をたばこフィルタにそのまま用いた場合には、ホルムアルデヒドに対する選択吸着性は得られず、活性炭などと同様にホルムアルデヒドのみならず、タールやニコチンも多く吸着してしまう。その結果、タールやニコチンが少なくなり、喫煙者にとって喫味が物足りなくなり、喫煙者が意図しないうちに煙を深く吸い込んだり、また喫煙中に煙を吸い込む頻度が多くなったりする。
さらに、キトサンなどはそれ自身が固く脆い物であり、キトサンの繊維からなるフィルタでは、フィルタから脱落したキトサン繊維が人体に吸い込まれ気管支の鞭毛を傷つけたりする可能性もある。
また、前記特許文献12に記載されているように、たばこ用の煙フィルタとして常用されているセルロースアセテートのフィルタにキトサンの粒子を添加した場合でも、粒子が脱落し上記と同様に気管支の鞭毛を傷つけたりする可能性がある。
したがって、ホルムアルデヒドの選択吸着性を維持しつつ、タールやニコチンの吸着量が少ないたばこ煙用フィルターが求められていた。
特開昭59−88078号公報(特許請求の範囲) 特開昭59−1519882号公報(特許請求の範囲) 特開昭60−54669号公報(特許請求の範囲) 特表2002−528105号公報(特許請求の範囲) 特表2002−528106号公報(特許請求の範囲) 特表2003−505618号公報(特許請求の範囲) 特開昭57−71388号公報(特許請求の範囲) 特開平11−100713号公報(特許請求の範囲、段落番号[00 12]) 特開昭53−142600号公報(特許請求の範囲、第2頁左上欄1 行〜右上欄2行、実施例) 特開昭60−168373号公報(特許請求の範囲、第1頁右欄1 6行〜第2頁右上欄15行) 特開昭62−111679号公報(特許請求の範囲、第2頁左上欄 1〜17行) 特開平7−31452号公報(特許請求の範囲、段落番号[000 4][0006]、実施例)
従って、本発明の目的は、アルデヒド類(特に、ホルムアルデヒド)を選択的に除去するのに有用なたばこフィルタ用素材を提供することにある。
本発明の他の目的は、たばこフィルタの構成成分として好適に利用でき、タールやニコチンなどの喫味(又は香喫味)成分を高濃度で維持しつつ、アルデヒド類(特に、ホルムアルデヒド)を効率よく除去できるたばこフィルタ用素材を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、人体に対して安全で、喫味を損なうことなく、アルデヒド類(特に、ホルムアルデヒド)を選択的に除去でき除去でき、かつ通気抵抗の変化がすくないたばこフィルタを提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定のアミノ基を有する多糖類と特定のシリカゲル(特に、平均孔径20nm以上程度のシリカゲル)とを組み合わせたたばこフィルタ用素材でたばこフィルタなどを構成すると、前記アミノ基を有する多糖類のアミノ基に起因すると思われる化学的な吸着性能が発揮されるためか、タールやニコチンなどを高濃度で保持しつつ、アルデヒド類(特に、ホルムアルデヒド)を選択的に吸着できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のたばこフィルタ用素材は、アミノ基を有する多糖類と平均細孔径が20nm以上であるシリカゲルとで構成されている。前記たばこフィルタ用素材は、特に、温度22℃および60%RHにおいて、平衡水分率が0.01〜5.00%であるシリカゲルにアミノ基を有する多類が担持された複合物であってもよい。 前記たばこフィルタ用素材はアミノ基を有する多糖類がキトサンであってもよい。
前記シリカゲルは、シリカゲルの粒度は、その90重量%以上が10メッシュパスでありかつ70メッシュオン(好ましくは10メッシュパス50メッシュオン、特に好ましくは10メッシュパス32メッシュオン、より好ましくは14メッシュパス25メッシュオン)であってもよい。また、前記シリカゲルの平均細孔径が20nm以上で320nm以下(例えば25nm以上で320nm以下、例えば30nm以上320nm以下)であってもよい。
このような平均細孔径が適度に大きいシリカゲルは、アミノ基を有する多糖類との組み合わせにより、一層アルデヒド類の選択除去性を向上できる。また、温度22℃および60%RHにおいて、前記シリカゲルの平衡水分率は0.10〜5.00%程度(例えば0.10〜1.00%)であってもよい。
前記たばこフィルタ用素材において、アミノ基を有する多糖類の割合は、シリカゲル100重量部に対して、例えば、0.03〜15重量部程度、例えば1〜5重量部程度であってもよい。
代表的な本発明のたばこフィルタ用素材では、(i)アミノ基を有する多糖類がキトサンであり、(ii)シリカゲルが、平均細孔径25nm以上、温度22℃および60%RHにおける平衡水分率0.10〜1.00%のシリカゲルであり、(iii)アミノ基を有する多糖類の割合がシリカゲル100重量部に対して、0.05〜10重量部であってもよい。
本発明のたばこフィルタ用素材は、さらに、保湿剤を含んでいてもよい。
このような保湿剤は、ポリオール類(例えば、グリセリンなど)で構成されていてもよい。このような保湿剤は、前記たばこフィルタ用素材によるアルデヒド類の選択吸着性を効率よく向上するのに有用である。
このような選択吸着性の向上効果は、平均細孔径が比較的大きいシリカゲルで特に有効に作用するようである。そのため、前記保湿剤は、細孔径が大きいシリカゲルと好適に組み合わせることができる。
代表的な前記保湿剤を含むたばこフィルタ用素材には、シリカゲルが平均細孔径25nm以上のシリカゲルであり、保湿剤がポリオール類であり、保湿剤の割合が、シリカゲル100重量部に対して0.1〜10重量部程度のたばこフィルタ用素材などが含まれる。
更に、本発明のたばこフィルタ用素材は(i)アミノ基を有する多糖類がキトサンであり、(ii)シリカゲルが、平均細孔径25nm以上、温度22℃および60%RHにおける平衡水分率0.10〜1.00%のシリカゲルであり、(iii)アミノ基を有する多糖類の割合がシリカゲル100重量部に対して、0.05〜10重量部であり、(iv)酸成分を含む、ものであってもよい。酸性分は乳酸であってもよい。
本発明のたばこフィルタ用素材は、アルデヒド類の選択除去性に優れており、特に、たばこフィルタ用途に用いるためのたばこフィルタ用素材であってもよい。
本発明には、前記たばこフィルタ用素材で構成されたたばこフィルタも含む。このようなたばこフィルタは、アルデヒド類(特にホルムアルデヒド)を効率よく選択除去できるので、好適である。
本発明のたばこフィルタの場合、少なくとも3個の部分から構成されているたばこフィルタであって、中間部に請求項1記載のたばこフィルタ素材が配置されているたばこフィルタであってもよい。
また本発明のたばこフィルタにおいては、両端部がセルロースエステル繊維を含むトウ構造のフィルタロッドから構成されているたばこフィルタであってもよい。
本発明には、さらに、前記たばこフィルタ用素材でたばこフィルタを構成することにより、たばこ煙中のアルデヒド類(特に、ホルムアルデヒド)[詳細には、前記たばこフィルタを通過(又は流通)するたばこ煙中のアルデヒド類]を低減する方法も含まれる。このような方法では、ニコチン、タールなどの喫味成分を高いレベルで保持でき、例えば、ニコチンおよびタールをそれぞれ保持率75%以上に保持しつつ、ホルムアルデヒド保持率を50%以下にすることができる。
また、本発明には、前記たばこフィルタを備えたたばこも含まれる。
本発明のたばこフィルタ用素材は、特定のアミノ基を有する多糖類とシリカゲル(特に平均孔径30nm以上のシリカゲル)とを組み合わせているのでアルデヒド類(特に、ホルムアルデヒド)を選択的に除去するのに有用である。
特に、本発明のたばこフィルタ用素材は、タールやニコチンなどの喫味(又は香喫味)成分を高濃度で維持しつつ、アルデヒド類(特に、ホルムアルデヒド)を効率よく除去できる。そのため、本発明のたばこフィルタでは、人体に対して安全で、喫味を損なうことなく、アルデヒド類(特に、ホルムアルデヒド)を選択的に除去できる。
[たばこフィルタ用素材]
本発明のたばこフィルタ用素材(複合たばこフィルタ用素材、複合物などということがある)は、アミノ基を有する多糖類およびシリカゲルで構成されている。
(アミノ基を有する多糖類)
本発明において用いられるアミノ基を含有する多糖類としては、グルカン誘導体であって、置換基にアミノ基を有する(保有する)ものであれば特に限定されないが、代表的なものとしてはキトサンが挙げられる。
キトサンは、前記のように、キチンのアセチル基の少なくとも一部が脱アセチル化されていればよく、キトサンの平均脱アセチル化度は、例えば、20%以上(例えば、30〜100%程度)、好ましくは40%以上(例えば、50〜99%程度)、さらに好ましくは60%以上(例えば、65〜98%程度)であってもよい。
本発明で使用するキトサンは、通常、アルデヒド類(特に、ホルムアルデヒド)の選択除去率を高めるため、比較的高い脱アセチル化度を有している(すなわち、多くのアミノ基を有している)場合が多い。すなわち、高い脱アセチル化度を有するキトサンは、キチンなどに比べて多くのアミノ基を持っており、アルデヒド類(特に、ホルムアルデヒド)の選択除去効果に優れている。
そのため、キトサンの平均脱アセチル化度は、例えば、60%以上(例えば、65〜100%程度)、好ましくは70%以上(例えば、75〜99%程度)、さらに好ましくは80%以上(例えば、85〜98%程度)であってもよい。
なお、キトサンにおいて「脱アセチル化度」とは、キトサンのアセチル基をA1モル、キトサンの脱アセチル基(すなわちアミノ基)をA2モルとするとき、下記式で表される。このようなアセチル化度は、例えば、H−NMR、13C−NMRなどで分析することができる。

A2/(A1+A2)×100(%)

また、キトサンの塩基解離定数pKbは、例えば、25℃において、5.5以上(例えば、6〜12程度)、好ましくは6以上(例えば、6.3〜10程度)、さらに好ましくは6.5以上(例えば、6.8〜9程度)であってもよく、より一層高いアルデヒド(特に、ホルムアルデヒド)除去率を得るためには、通常、7以上(例えば、7.3〜11程度)、好ましくは7.5以上(例えば、7.8〜10程度)、さらに好ましくは8以上(例えば、8.5〜9.5程度)であってもよい。
なお、前記キトサンは、誘導体化されたキトサン誘導体であってもよい。このようなキトサン誘導体としては、例えば、キトサン塩(例えば、ピロリドンカルボン酸塩、乳酸塩、アルギン酸塩などのカルボン酸塩)、ヒドロキシル化キトサン[ヒドロキシプロピルキトサンなどのヒドロキシルアルキル基(ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基など)により保護(又は置換)されたキトサン、グリセリル化キトサンなど]、カチオン化キトサンなどが挙げられる。また、キトサン誘導体には、キトサンの骨格を構成するOH基やCH2OH基が、保護基(又は置換基)、例えば、アルキル基(メチル基などのアルキル基など)、エステル基(又はアシル基、例えば、アセチル基など)などで保護又は置換されたキトサンなども含まれる。
このようなキトサン誘導体のうち、キトサン塩、ヒドロキシル化キトサン、カチオン化キトサンなどは、極性溶媒[水、水性溶媒(アルコールなど)など]に可溶である場合が多く、後述のキトサン溶液を効率よく調製できる。 アミノ基を有する多糖類(特に、キトサン)の粘度平均重合度は、10〜5000(例えば、50〜4000)程度の範囲から選択でき、例えば、100〜3000、好ましくは200〜2000、さらに好ましくは300〜1500(例えば、400〜1000)程度であってもよい。
尚、キトサンなどの通常のアミノ基を有する多糖類は、上記のように通常、高い重合度を有し、低濃度(例えば、1重量%濃度程度)であっても、比較的大きい溶液粘度を有しており、高濃度の溶液を調製するのが困難な場合があり、このような高い重合度の多糖類を用いて担体を処理する場合、アミノ基を有する多糖類の担体に対する必要な添着量(被覆量)が得られなくなる虞がある。
そのため、本発明では、アミノ基を有する多糖類として、アミノ基を有する多糖類溶液における溶液粘度が比較的小さいものを使用してもよい。このようなアミノ基を有する多糖類は、酢酸を1重量%の濃度で含む水溶液を溶媒とする1重量%の酢酸水溶液であるとき、20℃の条件で、溶液粘度が、例えば、30mPa・s以下(例えば、0.1〜20mPa・s)、好ましくは0.5〜15mPa・s、さらに好ましくは1〜10mPa・s(例えば、3〜7mPa・s)程度に低分子量化されたアミノ基を有する多糖類(キトサンなど)であってもよい。また、このようなアミノ基を有する多糖類の数平均重合度は、3〜100、好ましくは4〜50、さらに好ましくは5〜30程度であってもよい。
このような低分子量化されたアミノ基を有する多糖類は、例えば、特開平3−220202号公報に記載の方法などを利用して、アミノ基を有する多糖類を予め低分子量化(又は解重合)することにより得ることができる。また、このような低分子量化された多糖類は、後述のリン酸やヒドロキシ酸などの作用により、アミノ基を有する多糖類溶液において、低分子量化されてもよい。
本発明のたばこフィルタ用素材において、アミノ基を有する多糖類の含有量(又は添着量)は、担体100重量部に対して、30重量部以下(例えば、1〜25重量部)、好ましくは20重量部以下(例えば、2〜20重量部)、さらに好ましくは15重量部以下(例えば、3〜15重量部程度)、特に10重量部以下(例えば、5〜10重量部)程度であってもよい。アミノ基を有する多糖類の含有量が多すぎると、タールやニコチンの吸着量が大きくなる虞がある。
(シリカゲル)
本発明では、前記アミノ基を有する多糖類とシリカゲルとを組み合わせることにより、アルデヒド類の選択吸収性を向上させる。シリカゲルの平均粒径は、用途に応じて適宜選択でき、例えば、50〜2500μm、好ましくは100〜2000μm、さらに好ましくは200〜1800μm(例えば、300〜1500μm)程度であってもよく、通常250〜1400μm程度であってもよい。上記のような範囲であれば、適度な通気抵抗を損なうことなく、たばこフィルタなどに適用できる。
シリカゲルの粒度について言えば、シリカゲルの粒度が、90重量%以上が、10メッシュパス70メッシュオン、好ましくは10メッシュパス50メッシュオン、特に好ましくは10メッシュパス32メッシュオン、より好ましくは14メッシュパス25メッシュオンのものを用いることができる。例えば、14メッシュパスでかつ32メッシュオンであるものを用いることが出来る。すわなち、粒度として0.50mm以上であり1.20mm以下であるシリカゲルを用いることができる。
シリカゲルの平均細孔径(平均孔径)は、20nm以上で320nm以下(例えば25nm以上で320nm以下、例えば30nm以上320nm以下)であってもよい。
通常、ガスなどの吸着には、比較的小さい細孔径を有するシリカゲルが使用される場合が多い。これに対して、本発明では、大きい細孔径を有するシリカゲルと前記アミノ基を有する多糖類との組み合わせて、アルデヒド類の選択除去性をより一層高めることができる。
シリカゲルの比表面積(平均比表面積)は、例えば、0.5m/g以上(例えば、1〜1200m/g程度)、好ましくは1.5m/g以上(例えば、2〜1000m/g程度)、さらに好ましくは5m/g以上(例えば、6〜800m/g程度)であってもよく、通常3〜300m/g(例えば、4〜200m/g、好ましくは5〜150m/g、さらに好ましくは6〜100m/g、特に7〜80m/g程度)であってもよい。
シリカゲルの平均細孔容積は、例えば、0.1〜2mL/g、好ましくは0.3〜1.8mL/g、さらに好ましくは0.5〜1.5mL/g程度であってもよい。
また、シリカゲルの温度22℃および60%RHにおける平衡水分率(又は平衡吸水率、すなわち、温度22℃および60%RHの条件下で、平衡状態における水分含有率)は、例えば、0.01〜50%、好ましくは0.1〜30%程度であってもよい。特に、本発明では、温度22℃および60%RHにおける平衡水分率が、例えば、0.01〜3.50%(例えば、0.10〜2.80%)、好ましくは0.05〜2.0%(例えば、0.12〜1.90%)、さらに好ましくは0.10〜1.0%(例えば、0.15〜0.98%)のシリカゲルを好適に使用してもよい。
なお、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類は水に可溶である場合が多いため、ホルムアルデヒドの除去という観点からは、たばこフィルタなどは、水分を多く含んでいるのが好ましい。しかし、多量の水分は、たばこに対する悪影響(例えば、喫味の低下など)を及ぼす虞がある。本発明では、特定の平均細孔径と平衡水分量のシリカゲルを使用するので、たばこフィルタそのものに水分を含有させる必要はないため、特に、上記のような比較的小さい水分吸収能を有するシリカゲルを用いると、たばこに悪影響を及ぼすことなく、たばこフィルタに適度な水分を含有させ、ホルムアルデヒドを効率よく選択除去できる。
なお、シリカゲルは、表面処理されていてもよい。また、シリカゲルの形状は、通常、粒子状(又は粉粒状)であり、このような粉粒状シリカゲルの形状(表面形状)は、滑らかな形状(球状など)であってもよく、凹凸状(例えば、破砕状など)であってもよい。 所望する平均細孔径と粒度のシリカゲルが入手できない場合は、平均細孔径が所望する大きな粒子のシリカゲルを破砕した上で篩で分級して所望の粒度のものを得ることができる。
アミノ基を有する多糖類の割合は、シリカゲル100重量部に対して、30重量部以下(例えば、1〜25重量部)、好ましくは20重量部以下(例えば、2〜20重量部)、さらに好ましくは15重量部以下(例えば、3〜15重量部程度)、特に10重量部以下(例えば、5〜10重量部)程度であってもよい。なお、本発明のたばこフィルタ用素材では、アミノ基を有する多糖類の種類やシリカゲルの種類によっては、ごく少量、例えば、シリカゲル100重量部に対して7重量部以下(例えば、0.01〜6重量部程度)、好ましくは5重量部以下(例えば、0.02〜5重量部程度)、さらに好ましくは4重量部以下(例えば、0.05〜3重量部程度)のアミノ基を有する多糖類あっても、アルデヒド類を選択的に除去可能である。
前記たばこフィルタ用素材は、アミノ基を有する多糖類およびシリカゲルを含んでいればよく、たばこフィルタ用素材におけるこれらの成分の形態は特に制限されないが、少なくともアミノ基を有する多糖類とシリカゲルとが接触している形態であるのが好ましい。すなわち、前記たばこフィルタ用素材は、アミノ基を有する多糖類とシリカゲルとの複合物(又は複合体)であってもよい。好ましい形態では、前記たばこフィルタ用素材において、アミノ基を有する多糖類がシリカゲルに担持され[又はアミノ基を有する多糖類がシリカゲル(シリカゲル表面)に付着していてもよい。
(保湿剤)
前記たばこフィルタ用素材(又はたばこフィルタ)は、さらに保湿剤(保湿成分)を含んでいてもよい。アミノ基を有する多糖類およびシリカゲルと保湿剤とを組み合わせて使用することにより、アルデヒド類の選択除去性をより一層向上できる。このような保湿剤によるアルデヒドの選択除去性向上効果は、特に、比較的細孔径が大きいシリカゲルとの組み合わせにおいて大きく見られる場合が多いようである。
保湿剤としては、ポリオール類{ジオール類[例えば、アルカンジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコールなどのC2−10アルカンジオール、好ましくはC2−8アルカンジオール、さらに好ましくはC2−6アルカンジオール、特にC2−4アルカンジオールなど)、ポリアルキレングリコール(ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどのジ乃至テトラC2−4アルキレングリコールなど)など]、トリオール類[アルカントリオール(グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオールなどのC3−10アルカントリオール、好ましくはC3−6アルカントリオール、さらに好ましくはC3−4アルカントリオール)など]、4官能以上のポリオール[3官能以上のポリ
オール(前記アルカントリオールなど)の多量体(例えば、ジグリセリン、トリグリセリンなどのポリグリセリン)など]など}、これらのポリオール類の誘導体[例えば、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メチルカルビトール、エチルカルビトールなど)、(ポリ)アルキレングリコールモノアシレート(エチレングリコールモノアセテートなど)など]などが挙げられる。
また、保湿剤には、室温(例えば、15〜25℃程度)で固体状の成分も含まれる。このような固体状の保湿剤としては、ヒドロキシル基又はエーテル結合(エーテル基)を有する合成高分子[ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドなど)など]、天然高分子(ゼラチン、デキストリン、デンプンなど)、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースなどのアルキル−ヒドロキシアルキルセルロースなどのヒドロキシル基を有するセルロース誘導体、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロース、エチルセルロースなどのアルキルセルロースなどのセルロースエーテル類など)、炭水化物(又は糖類)[例えば、単糖類(例えば、キシロース、ブドウ糖など)、二糖類(セロビオース、トレハロースなど)、糖アルコール類(例えば、イノシトール、ボルネシトールなどのイノシトール類、キシリトールなど)など]などが挙げられる。これらの保湿剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
好ましい保湿剤には、ポリオール類(特に、グリセリンなどの3官能以上のポリオール類)が含まれる。
なお、室温で液体状の保湿剤(例えば、ポリオール類)の沸点は、例えば、150℃以上(例えば、180〜500℃程度)、好ましく200℃以上(例えば、210〜400℃程度)、さらに好ましくは220℃以上(例えば、230〜350℃)、特に250℃以上(例えば、260〜320℃程度)であってもよい。 なお、保湿剤は、少なくとも前記たばこフィルタ用素材を構成すればよく、シリカゲル(およびアミノ基を有する多糖類)と接触していてもよい。好ましい態様では、シリカゲルに保湿剤が担持され(又は付着して)いてもよい。
保湿剤の割合は、シリカゲル100重量部に対して、例えば、0.05〜15重量部、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.3〜7重量部、特に0.5〜5重量部、通常0.8〜3重量部程度であってもよい。また、保湿剤の割合は、アミノ基を有する多糖類100重量部に対して、5〜1000重量部、好ましくは10〜500重量部、さらに好ましくは30〜300重量部程度であってもよい。
(酸性成分)
前記たばこフィルタ用素材は、さらに酸性成分で処理されていてもよい。すなわち、前記アミノ基を有する多糖類溶液は、酸性成分を含んでいてもよい。このような酸性成分を使用すると、前記極性溶媒に対して非溶解性の(又は溶解性に乏しい)アミノ基を有する多糖類であっても、効率よく極性溶媒に溶解できる。すなわち、前記アミノ基を有する多糖類が誘導体化され、極性溶媒(水など)に対する溶解性を有している場合には、酸性成分は必ずしも必要ではない。しかし、前記アミノ基を有する多糖類が、例えば、キトサンのような極性溶媒に対して非溶解性(又は難溶性)の多糖類である場合には、アミノ基を有する多糖類(キトサンなど)と酸性成分とを組み合わせて担体を処理することが好ましい。
詳細には、前記アミノ基を有する多糖類(キトサンなど)は、緻密かつ硬質な物質であり、吸着性能を有効に発揮できない。そのため、アミノ基を有する多糖類(キトサンなど)を適当な溶媒に溶解して担体に含有させると、担体に付着するキトサンの表面積を大きくすることが考えられるが、アミノ基を有する多糖類(キトサンなど)は、通常、慣用の前記極性溶媒(水、アルコール類など)に溶解しない。
そこで、本発明では、通常、アミノ基を有する多糖類(キトサンなど)と、酸性成分とを組みあわせることにより、アミノ基を有する多糖類(キトサンなど)を溶解させた溶液の形態で担体を処理できる。このような溶液を用いた処理により、担体に対して均質にかつ高い表面積でキトサンを含有させることができ、少ない含有量であっても、ホルムアルデヒドなどの除去効率を向上できる。
また、酸性成分(および極性溶媒)を、たばこフィルタ用素材内に含有(又は残存)させることにより、アミノ基を有する多糖類を可塑化するとともに、極性溶媒の効果で、アミノ基を有する多糖類(キトサンなど)の水素結合の作用を抑制又は緩和できるためか、アルデヒド類(特に、ホルムアルデヒド)の除去に大きく関与するアミノ基を有する多糖類(キトサンなど)のアミノ基を有効に働かせることができ、前記多糖類のホルムアルデヒドなどの除去性能を向上させることができる。
本発明に用いる酸性成分としては、アミノ基を有する多糖類(キトサンなど)を極性溶媒に対して溶解可能(又は可溶)にする酸性成分(およびアルデヒド成分を選択除去できる酸性成分)であれば特に限定されず、酸基を有する成分、例えば、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸など)、有機酸[脂肪族カルボン酸(例えば、酢酸などのアルカンカルボン酸など)、芳香族カルボン酸(安息香酸など)、ヒドロキシ酸など]などが挙げられる。酸性成分は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。なお、酸性成分としては、無臭又は低臭の成分を好適に用いることができる。
ヒドロキシ酸としては、芳香族ヒドロキシ酸(例えば、サリチル酸、マンデル酸など)などであってもよいが、通常、脂肪族ヒドロキシ酸であってもよい。このような脂肪族ヒドロキシ酸としては、例えば、脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸類[モノ又はジヒドロキシモノカルボン酸(グリコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸などのモノ又はジヒドロキシC2-10アルカンモノカルボン酸、好ましくはモノ又はジヒドロキシC2-8アルカンモノカルボン酸、さらに好ましくはモノヒドロキシC2-6アルカンモノカルボン酸など)、脂肪族ヒドロキシ多価カルボン酸類(例えば、タルトロン酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸などのモノ又はジヒドロキシC3-10アルカンジカルボン酸、好ましくはモノ又はジヒドロキシC4-8アルカンジカルボン酸など)などが挙げられる。ヒドロキシ酸は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
これらのヒドロキシ酸のうち、経口安全性、アルデヒド類(特に、ホルムアルデヒド)の選択除去性などの観点から、モノ又はジヒドロキシモノカルボン酸が好ましく、特に、モノヒドロキシC2-6アルカンモノカルボン酸(特に乳酸)が好ましい。
なお、不斉炭素原子を有するヒドロキシ酸(例えば、乳酸など)は、ラセミ体であってもよく、光学活性体であってもよい。 これらの酸性成分のうち、リン酸、ヒドロキシ酸などは、アミノ基を有する多糖類(キトサンなど)の分子量を効率よく低減する効果もある。すなわ BR>ソ、キトサンなどのアミノ基を有する多糖類は、一般に高重合度(高分子量)であり、溶液とした場合の粘度が高すぎて扱いにくいものであるため、高濃度の溶液を作ることが困難である。従って、このような多糖類を工業的に使用する場合には、本発明においては添着量が少なくなる。例えば、通常の高重合度のキトサンを希酸に溶解したものでは、1重量%程度の溶液でも低粘度になることは少なく、非常に高粘度である。
アミノ基を有する多糖類(キトサンなど)を低分子量化する代表的な方法としては、酵素を用いて分解する方法、硫酸を用いて低分子化反応を行う方法などが知られているが、これらの方法で得られる低分子化キトサンは重合度分布が広いため、その利用価値が劣り、また収率も低い。これに対してリン酸などを用いた場合には、分子量分布が狭い低分子化キトサンを得ることができる。これらの方法については、例えば、特開平3−220202号公報などに記載されている。 このような観点から、好ましい酸性成分には、リン酸、ヒドロキシ酸、特にヒドロキシ酸(特に、乳酸などのモノヒドロキシC2-6アルカンモノカルボン酸)などが含まれる。
たばこフィルタ用素材において、酸性成分(リン酸、ヒドロキシ酸など)の含有量(又は残存量)は、前記アミノ基を有する多糖類溶液の濃度やその種類にもよるが、例えば、担体100重量部に対して、1〜30重量部(例えば、1〜25重量部)、好ましくは2〜20重量部、さらに好ましくは2〜15重量部(例えば、2〜10重量部)、特に3〜5重量部程度であってもよい。 また、たばこフィルタ用素材において、酸性成分(リン酸、ヒドロキシ酸など)の含有量(又は残存量)は、担体100mgに対して、例えば、0.001〜1モル、好ましくは0.005〜0.5モル、さらに好ましくは0.01〜0.3モル(例えば、0.02〜0.2モル)、特に0.03〜0.15モル程度であってもよい。
さらに、たばこフィルタ用素材において、酸性成分の割合は、アミノ基を有する多糖類のグリコース単位1モルあたり、酸基(例えば、ヒドロキシ酸のカルボキシル基など)換算で(又は酸性成分全体の酸基の総量で)、0.1〜3モル、好ましくは0.3〜2.5モル、さらに好ましくは0.5〜2モル(例えば、0.7〜1.5モル)程度であってもよい。
(たばこフィルタ用素材)
以下本発明のたばこフィルタ用素材について説明をする。
なお、前記たばこフィルタ用素材(又はたばこフィルタ)は、さらに他の成分、例えば、無機微粉末(カオリン、タルク、ケイソウ土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナなど)、熱安定化剤(アルカリ又はアルカリ土類金属の塩など)、着色剤、白色度改善剤、油剤、歩留まり向上剤、サイズ剤、生分解又は光分解促進剤(アナターゼ型酸化チタンなど)、天然高分子又はその誘導体(セルロース粉末など)などを含んでいてもよい。他の成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
本発明のたばこフィルタ用素材は、各成分の含有形態に応じて調製でき、例えば、アミノ基を有する多糖類とシリカゲルと(必要に応じて、保湿剤などの他の成分と)を接触(又は混合)させることにより製造できる。
特に、アミノ基を有する多糖類とシリカゲルと(必要に応じて保湿剤などの他の成分と)の複合物[又はアミノ基を有する多糖類(および保湿剤)を含むシリカゲル、特にアミノ基を有する多糖類(および保湿剤)がシリカゲルに担持した複合物]は、例えば、アミノ基を有する多糖類(および保湿剤などの他の成分)を含む溶液又は分散液をシリカゲルに添加する方法(添加法)、アミノ基を有する多糖類(および保湿剤などの他の成分)を含む溶液又は分散液にシリカゲルを浸漬する方法などにより調製できる。前記添加法において、添加方法としては、特に制限されず、溶液又は分散液をシリカゲルに噴霧、散布するなどの方法で添加してもよい。
溶液又は分散液の調製に用いる溶媒としては、特に制限されず、例えば、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルカノール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、カルビトール類など)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(テトラヒドロフランなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、炭化水素類(脂肪族又は脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類など)などが挙げられる。なお、液状の保湿剤(ポリオール類)を使用する場合には、保湿剤を溶媒とすることもできる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。通常、溶媒は、水、アルカノール類などの極性溶媒で構成する場合が多い。
なお、溶液又は分散液において、固形分[アミノ基を有する多糖類(および保湿剤などの他の成分)]の割合は、例えば、0.05〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは0.5〜20重量%程度であってもよい。なお、付着処理後又は担持処理後のシリカゲルには、溶媒を除去するため、乾燥処理を施してもよい。乾燥処理は、真空乾燥、熱風乾燥などを利用できる。
本発明のたばこフィルタ用素材は、アルデヒド類を選択的に除去できるので、たばこフィルタ用素材(特に、脱ホルムアルデヒド用たばこフィルタ用素材)として有用である。このため、本発明のたばこフィルタ用素材は、例えば、フィルタ用途、特にたばこフィルタに好適に適用できる。以下、たばこフィルタ用途について詳述する。
(たばこフィルタ)
前記のように、本発明のたばこフィルタ用素材は、たばこフィルタを構成できる。すなわち、本発明のたばこフィルタは、通常、たばこフィルタを構成する素材(たばこフィルタ用素材)と、前記たばこフィルタ用素材とで構成できる。そして、このようなたばこフィルタは、たばこフィルタ用素材(又はたばこフィルタ、単に、フィルタ用素材、素材などということがある)に前記たばこフィルタ用素材を含有させることにより製造できる。
前記たばこフィルタ用素材を含有させる方法としては、たばこフィルタ用素材に、前記たばこフィルタ用素材の構成成分(アミノ基を有する多糖類、シリカゲル、保湿剤などの他の成分など)を個別に含有させる方法であってもよく、前記のようにして予め調製した複合物を含有させる(又は添加する)方法であってもよい。本発明では、通常、予め調製した前記複合物をたばこフィルタに含有させる場合が多い。
代表的なたばこフィルタとしては、例えば、(i)たばこフィルタ用素材(又はたばこフィルタ)と、このたばこフィルタ用素材に充填された前記たばこフィルタ用素材(特に複合物)とで構成されたたばこフィルタ、(ii)たばこフィルタ用素材(又はたばこフィルタ)に前記たばこフィルタ用素材(特に複合物)が分散されたたばこフィルタなどが挙げられる。好ましい形態には、充填されたたばこフィルタ(i)が含まれる。
(トリプル構造のたばこフィルタ)
本発明のたばこフィルタ用素材が充填されたたばこフィルタ(i)では、例えば、複数に分割[2分割(デュアル(dual)、3分割(トリプル(triple)など]された構造を有するたばこフィルタ用素材の少なくとも一つの分割部分(例えば、2分割されたフィルタ用素材の一方の部分、3分割されたフィルタ用素材の中央部分など)を、前記たばこフィルタ用素材(又は前記たばこフィルタ用素材が充填されたフィルタ用素材)で構成(又は置換又は充填)することにより、たばこフィルタ用素材(又はたばこフィルタ)に前記たばこフィルタ用素材を充填してもよい。
以下に本発明の少なくとも3個の部分から構成されているたばこフィルタについて説明する。
本発明のトリプル構造のたばこフィルタは少なくとも3個の部分から構成されていることを特徴とする。すなわち、たばこフィルタが少なくとも両端部、中間部の3個の部材から構成されており、中間部(すなわち中央の部分)に本発明の担持体が配置されている構造を取る。
本発明のたばこフィルタでは両端部にフィルターロッドで形成した部分を配置し、中央部にはフィルターロッドではなく、本発明のたばこフィルタ用素材を配置する構造を取る。この構造のたばこフィルタとした場合には通気抵抗を低くすることができ好ましい。
なお、フィルタロットの素材は、例えば、天然又は合成繊維{例えば、セルロースエステル繊維(セルロースアセテート繊維など)、セルロース繊維[木材繊維(針葉樹、広葉樹などの木材パルプ繊維など)、種子毛繊維(例えば、リンターなどの綿花)、ジン皮繊維、葉繊維(例えば、マニラ麻、ニュージーランド麻など)など]、再生セルロース繊維(ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、硝酸人絹など)、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)など}などの繊維(又は繊維状物質)、などで構成できる。これらのたばこフィルタ用素材の構成成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
また、フィルタロットの構造はトウ構造とするのが好ましい、前記トウ構造は、繊維(特にセルロースエステル繊維)の単繊維(フィラメント)を束ねる(集束する)ことにより形成された繊維束の形態であり、このようなトウ構造のフィルタ素材において、トウ(繊維束)を構成するフィラメント数は、例えば、3000〜1000000本(例えば、3000〜100000本)、好ましくは5000〜100000本程度であってもよい。
たばこフィルタにおいて、シリカゲルの割合は、たばこフィルタ全体に対して、例えば、0.1〜90重量%、好ましくは0.5〜70重量%、さらに好ましくは1〜50重量%程度であってもよい。また、たばこフィルタにおいて、アミノ基を有する多糖類の割合は、たばこフィルタ全体に対して、例えば、0.001〜10重量%、好ましくは0.005〜5重量%、さらに好ましくは0.01〜1重量%程度であってもよい。
さらに、たばこフィルタにおいて、シリカゲルおよびアミノ基を有する多糖類の総量の割合は、たばこフィルタ全体に対して、例えば、0.2〜95重量%、好ましくは1〜80重量%、さらに好ましくは2〜60重量%程度であってもよい。
また、保湿剤を用いる場合、保湿剤の割合は、例えば、たばこフィルタ全体に対して、例えば、0.001〜10重量%、好ましくは0.005〜5重量%、さらに好ましくは0.01〜1重量%程度であってもよい。
なお、たばこフィルタ(たばこフィルタ用素材)は、水を含んでいてもよい。このような水分は、たばこフィルタ用素材そのものに含有されていてもよく、シリカゲルに含有される水であってもよく、更にはたばこ煙中に含まれていても良い。
たばこフィルタ全体に対する水の割合は、例えば、0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜8重量%、さらに好ましくは0.1〜7重量%(例えば、0.3〜5重量%)程度であってもよい。
前記たばこフィルタは、たばこフィルタ用素材又はたばこフィルタの構造に応じて慣用の方法により成形できる。例えば、前記充填されたたばこフィルタでは、予め前記たばこフィルタ用素材により成形されたフィルタープラグの空間に前記フィルタ素材を充填する方法などにより製造してもよい。
本発明のたばこフィルタは、前記たばこフィルタ用素材で構成されているため、ニコチンやタールなどの喫味成分を高いレベルで保持しつつ、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類を効率よく除去できる。そのため、本発明には、前記たばこフィルタ用素材でたばこフィルタ(又はたばこ)を構成することにより、前記たばこフィルタ(又はたばこ)を通過するたばこ煙中のアルデヒド類(特に、ホルムアルデヒド)を低減する方法[詳細には、前記たばこフィルタを通過するたばこ煙中のニコチンおよびタールを保持しつつ、アルデヒド類(特に、ホルムアルデヒド)を低減する方法]も含まれる。
例えば、前記たばこフィルタのホルムアルデヒド保持率(重量換算)は、70%以下(例えば、0〜65%)の範囲から選択でき、例えば、60%以下(例えば、1〜55%程度)、好ましくは50%以下(例えば、3〜45%程度)、さらに好ましくは40%以下(例えば、5〜35%)であり、高いレベルでホルムアルデヒドを除去できる。
また、前記たばこフィルタのニコチン保持率(重量換算)およびタール保持率(重量換算)は、それぞれ、50%以上(例えば、55〜100%)の範囲から選択でき、例えば、60%以上(例えば、65〜100%)、好ましくは70%以上(例えば、75〜99%)、さらに好ましくは75%以上(例えば、80〜98%)、特に80%以上(例えば、85〜97%)程度である。
特に、前記たばこフィルタのニコチン保持率(重量換算)は、60%以上(例えば、65〜100%)の範囲から選択でき、例えば、70%以上(例えば、75〜99%)、好ましくは80%以上(例えば、82〜98%)、さらに好ましくは85%以上(例えば、88〜97%)程度である。また、前記たばこフィルタのタール保持率(重量換算)は、50%以上(例えば、55〜100%)の範囲から選択でき、例えば、55%以上(例えば、60〜100%)、好ましくは65%以上(例えば、70〜99.9%)、さらに好ましくは70%以上(例えば、75〜99.5%)、特に75%以上(例えば、80〜99%)程度である。
なお、前記保持率(ホルムアルデヒド保持率、ニコチン保持率、タール保持率)とは、前記たばこフィルタを通過するたばこ煙中のホルムアルデヒド量(又はニコチン量又はタール量)を基準として測定できる。すなわち、前記「保持率」とは、前記たばこフィルタ用素材を含まないたばこフィルタ用素材で構成されたたばこフィルタを所定の条件(流量、時間、回数など)において通過するたばこ煙中のホルムアルデヒド量(又はニコチン量又はタール量)をXとし、同一の条件(流量、時間、回数など)において、前記たばこフィルタ用素材で構成されたたばこフィルタを通過するたばこ煙中のホルムアルデヒド量(又はニコチン量又はタール量)をYとするとき、下記式で表される。

保持率(%)=(Y/X)×100

また、本発明では、たばこフィルタの通気抵抗を増大させることなく、たばこフィルタ内に前記たばこフィルタ用素材を組み込むことができる。そのため、本発明のたばこフィルタは、たばこ煙用に適した通気性を有しており、たばこフィルタの通気抵抗は、長さ120mm、円周24.5±0.2mmのたばこフィルタを、流量17.5ml/秒で空気を通過させたときの圧力損失で測定したとき、150〜600mmWG(ウォーターゲージ)の範囲から選択でき、例えば、160〜500mmWG、好ましくは170〜400mmWG、さらに好ましくは180〜350mmWG程度であってもよい。
また、本発明のたばこは、前記たばこフィルタ(又はたばこフィルタ用素材)を備えている。たばこフィルタの配設部位は特に制限されないが、巻紙により、棒状に成形されたたばこにおいては、口元の部位、又は口元と紙巻きタバコとの間に配設する場合が多い。なお、たばこの断面外周は、前記フィルタの断面外周に対応している場合が多く、通常、15〜30mm、好ましくは17〜27mm程度であってもよい。
本発明のたばこフィルタ用素材は、フィルタ、特にたばこフィルタ(およびたばこ)を構成するのに有用である。このような本発明のたばこフィルタ(およびたばこ)では、喫煙時において、ニコチン、タールなどの喫味成分を保持しつつ、適度な通気抵抗も保持できるので、喫味(香喫味)、さらには喫煙の満足感を損なうことがなく、人体に有害なホルムアルデヒドなどのアルデヒド類を選択的に除去できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において各特性(通気抵抗、ニコチン量、タール量、ホルムアルデヒド量)は、市販のたばこ[ピース・ライト・ボックス(登録商標第2122839号)(日本たばこ産業株式会社製)]を用いて、下記の方法により測定した。
[通気抵抗] 上記のたばこ[ピース・ライト・ボックス(登録商標)(日本たばこ産業株式会社製)、フィルタ部分の長さ25mm、円周約25mm]を用いて作成したたばこ煙用フィルタサンプルの通気抵抗を測定した。
通気抵抗は、たばこ煙用フィルタサンプル内に、流量17.5ml/秒で空気を通過させたときの圧力損失(mmWG)として、自動通気抵抗測定器(フィルトローナ社製、FTS300)を用いて測定した。
[ニコチン量、タール量]
たばこ煙用フィルタサンプルを用い、ピストンタイプの定容量型自動喫煙器(ボルグワルド社製RM20/CS)により、流量17.5ml/秒で喫煙時間2秒/回、喫煙頻度1回/分の条件での喫煙を、計10本のたばこ煙用フィルタサンプルについて行った。フィルタを通過した煙中のニコチン及びタールはガラス繊維製フィルタ(ケンブリッジフィルタ)で捕集し、ニコチン量はガスクロマトグラフ((株)日立製作所製G−3000)を用いて測定した。タール量は重量法により測定を行った。
対照品のケンブリッジフィルタに付着したニコチン量およびタール量をそれぞれTn、Ttとし、比較例及び実施例でケンブリッジフィルタに付着したニコチン量およびタール量をそれぞれCn、Ctとして次式によりニコチン及びタールの保持率を算出した。

ニコチン保持率(%)=100×(Cn/Tn)
タール保持率(%)=100×(Ct/Tt)。
[ホルムアルデヒド保持率]
たばこ煙用フィルタサンプルを用い、ピストンタイプの定容量型自動喫煙器(ボルグワルド社製RM20/CS)により、流量17.5ml/秒で喫煙時間2秒/回、喫煙頻度1回/分の条件で喫煙を行った。フィルタを通過した煙中のホルムアルデヒドは、DNPH(ジニトロフェニルヒドラジン)溶液で捕集し、DNPHで誘導体化した上でガスクロマトグラフ((株)日立製作所製G−3000)を用いてUV(紫外線)の吸光度を用い測定した。
対照品で捕集されたホルムアルデヒド量Tfとし、下記の比較例及び実施例で捕集したホルムアルデヒド量をCfとして次式によりホルムアルデヒド保持率を算出した。

ホルムアルデヒド保持率(%)=100×(Cf/Tf)。
(比較例1)キトサン乳酸塩粉末単体
比較例1では、キトサン乳酸塩の粉末(大日精化工業(株)製)を単独で用い、以下のようにしてたばこ煙用フィルタサンプルを作成した。市販の煙草[ピース・ライト・ボックス(登録商標第2122839号)(日本たばこ産業株式会社製)]のセルロースジアセテート捲縮繊維トウのフィルタ本体(25mm)の末端から14mmの部分をカミソリで切断した。切断した長片すなわち、タバコ葉充填片のフィルタ部に長さ20mm、内径8mmのガラス管を残フィルター長に相当する長さ(11mm)だけ挿入し、これらをシーリングテープにて結束した。
このガラス管によって生じた9mmの空間に、空調室(22℃、60%RH)で水分が平衡になるまで調湿したキトサン乳酸塩粉末100mgを充填した。次に、先に切断した短片すなわち、14mmのフィルタ部(110mg)を用いてガラス管に栓をした。そして、このガラス管とフィルタの接続部分にもシーリングテープを巻いて密閉した。したがって、セルロースジアセテート捲縮繊維トウのフィルタの長さとしては、25mmとなる。また、フィルタ間の延長された部分にはたばこキトサン乳酸塩粉末が充填されている状態とした。
キトサン乳酸塩粉末100mg中の水の重量については表−1に記載する。
得られたたばこ煙用フィルタサンプルについて、上記の通気抵抗、ニコチン、タール量、ホルムアルデヒド量の測定を行った。そして、ニコチン、タール及びホルムアルデヒド保持率を前記式により算出した。ニコチン保持率は94%、タール保持率は94%、ホルムアルデヒド保持率は70%(すなわち、除去率30%)、通気抵抗は174mmWGであった。このたばこフィルタはホルムアルデヒド低減効果が少ないものであった。結果を表−1に記載する。
(比較例2)シリカゲル単体
比較例2では、本発明で特定する範囲外の平均細孔径が小さいシリカゲルを単独で用いた、このシリカゲルの性状を表7に示す。
シリカゲル(富士シリシア株式会社製、「MB4B相当破砕状品」、粒度14〜32メッシュ)を使用した。
シリカゲルは、比較例1と同様にして、22℃、湿度60%の空調室に静置して、平衡になるまで調湿して用いた。
そして、このようにして得られたシリカゲルの粒状物を比較例1と同様に、フィルタ間に空隙を作りシリカゲルを充填した。シリカゲルの充填量は煙草一本当たり100mgであった。添加量について表2に記載する。
得られたたばこ煙用フィルタサンプルについて上記の通気抵抗、ニコチン、タール量、ホルムアルデヒド量の測定を行った。そして、ニコチン、タール及びホルムアルデヒド保持率を前記式により算出した。結果を表2に記載する。
(比較例3・4)キトサン乳酸塩とシリカゲルとの複合体
比較例3及び4では、キトサン乳酸塩とシリカゲルの複合体を用いた。但し、用いたシリカゲルの平均細孔径は7.0nmであり本発明の権利範囲外のものである。用いたシリカゲルの性状について表−7に記載する。
複合体は以下の方法で作成した。シリカゲル(富士シリシア株式会社製、「MB4B相当破砕状品」、粒度14〜32メッシュ)5gをガラス容器に取り、このガラス容器にキトサン乳酸塩の3重量%水溶液〔平均脱アセチル化度85%のキトサン2重量%および乳酸1重量%を含むキトサン水溶液(大日精化工業(株)製、「ダイキトサンW−10」を水で5倍希釈したもの〕3.2g(比較例3)を添加し、キトサン乳酸塩の水溶液がシリカゲルに吸収され、見かけ上均一な状態になるまで、ガラス棒で約5分間攪拌し、見かけ上均一な粒子状の含水混合たばこフィルタ用素材を得た。以下この複合体作成方法を添加法と記載する。
尚、比較例4では比較例3の溶液にさらに保湿剤としてグリセリン1重量%を添加した溶液を用いた以外は比較例3と同様にした。
得られた含水混合たばこフィルタ用素材を真空乾燥機を用いて、温度60℃で、重量変化がなくなるまで乾燥し、次いで、22℃、湿度60%の空調室に、重量変化がなくなるまで静置し、たばこフィルタ用素材を得た。
市販の煙草[ピース・ライト・ボックス(登録商標第2122839号)(日本たばこ産業株式会社製)]のセルロースジアセテート捲縮繊維トウのフィルタ本体(25mm)の末端から14mmの部分をカミソリで切断した。切断した長片すなわち、タバコ葉充填片のフィルタ部に長さ20mm、内径8mmのガラス管を残フィルター長に相当する長さ(11mm)だけ挿入し、これらをシーリングテープにて結束した。
このガラス管によって生じた9mmの空間に、上記たばこフィルタ用素材100mgを充填した。次に、先に切断した短片すなわち、14mmのフィルタ部(110mg)を用いてガラス管に栓をした。そして、このガラス管とフィルタの接続部分にもシーリングテープを巻いて密閉した。したがって、セルロースジアセテート捲縮繊維トウのフィルタの長さとしては、25mmとなる。また、フィルタ間の延長された部分にはたばこフィルタ用素材が充填されている状態とした。
たばこフィルタ用素材100mg中のシリカゲル重量、キトサン乳酸塩重量、水の重量については表−1に記載する。
得られたたばこ煙用フィルタサンプルについて、上記の通気抵抗、ニコチン、タール量、ホルムアルデヒド量の測定を行った。そして、ニコチン、タール及びホルムアルデヒド保持率を前記式により算出した。結果を表−1に記載する。
Figure 2008048650
(比較例5)
比較例5では、本発明で特定する平均細孔径を満たすシリカゲルを単独で用いた、このシリカゲルの性状を表7に示す。
シリカゲル(富士シリシア株式会社製、「MB300相当破砕状品」、粒度16〜32メッシュ)を使用した。
シリカゲルは、比較例1と同様にして、22℃、湿度60%の空調室に静置して、平衡になるまで調湿して用いた。
そして、このようにして得られたシリカゲルの粒状物を比較例3と同様に、フィルタ間に空隙を作りシリカゲルを充填した。シリカゲルの充填量は煙草一本当たり100mgであった。添加量について表2に記載する。
得られたたばこ煙用フィルタサンプルについて上記の通気抵抗、ニコチン、タール量、ホルムアルデヒド量の測定を行った。そして、ニコチン、タール及びホルムアルデヒド保持率を前記式により算出した。結果を表2に記載する。
(実施例1〜4)
実施例1と2では比較例5と同様のシリカゲルとキトサンの複合体を用いた。
複合体は比較例3と同様の方法で作成した。但し実施例1と2では使用したキトサン乳酸塩の3重量%水溶液の量は5.3g(実施例1)と4.7g(実施例2)であった。
更に実施例3と実施例4では比較例3の溶液にさらに保湿剤としてグリセリン1重量%を添加した溶液を5.3g及び4.7g用いた以外は比較例3と同様にした。添加量について表2に記載する。
Figure 2008048650
(比較例6)
比較例6では、本発明で特定する平均細孔径を満たすシリカゲル(富士シリシア株式会社製、「MB500相当破砕状品」、粒度16〜32メッシュ)を使用した。このシリカゲルの性状を表7に示す。
以下比較例5と同様にして本発明のたばこ煙用フィルタサンプルを作成した。
得られたたばこ煙用フィルタサンプルについて上記の通気抵抗、ニコチン、タール量、ホルムアルデヒド量の測定を行った。そして、ニコチン、タール及びホルムアルデヒド保持率を前記式により算出した。結果を表3に記載する。
(実施例5〜8)
実施例5〜8では比較例6と同様のシリカゲルとキトサンの複合体を用いた。
複合体は比較例3と同様の方法で作成した。但し実施例5と6では使用したキトサン乳酸塩の3重量%水溶液5.3g(実施例5)と4.7g(実施例6)であった。
更に実施例7と実施例8では比較例3の溶液にさらに保湿剤としてグリセリン1重量%を添加した溶液を5.3g(実施例7)及び4.7g(実施例8)用いた以外は比較例3と同様にした。添加量について表3に記載する。
得られたたばこ煙用フィルタサンプルについて上記の通気抵抗、ニコチン、タール量、ホルムアルデヒド量の測定を行った。そして、ニコチン、タール及びホルムアルデヒド保持率を前記式により算出した。結果を表3に記載する。
Figure 2008048650
(比較例7)
比較例7では、本発明で特定する平均細孔径を満たすシリカゲル(富士シリシア株式会社製、「MB800相当破砕状品」、粒度16〜32メッシュ)を使用した。このシリカゲルの性状を表7に示す。
以下比較例5と同様にして本発明のたばこ煙用フィルタサンプルを作成した。
得られたたばこ煙用フィルタサンプルについて上記の通気抵抗、ニコチン、タール量、ホルムアルデヒド量の測定を行った。そして、ニコチン、タール及びホルムアルデヒド保持率を前記式により算出した。結果を表4に記載する。
(実施例9〜10)
実施例9〜10では比較例7と同様のシリカゲルとキトサンの複合体を用いた。
複合体は比較例3と同様の方法で作成した。但し実施例9では使用したキトサン乳酸塩の3重量%水溶液4.8g(実施例9)であった。
更に実施例10では比較例3の溶液にさらに保湿剤としてグリセリン1重量%を添加した溶液を4.8g用いた以外は比較例3と同様にした。添加量について表4に記載する。
得られたたばこ煙用フィルタサンプルについて上記の通気抵抗、ニコチン、タール量、ホルムアルデヒド量の測定を行った。そして、ニコチン、タール及びホルムアルデヒド保持率を前記式により算出した。結果を表4に記載する。
Figure 2008048650
(比較例8)
比較例8では、本発明で特定する平均細孔径を満たすシリカゲル(富士シリシア株式会社製、「MB1000相当破砕状品」、粒度14〜32メッシュ)を使用した。このシリカゲルの性状を表7に示す。
以下比較例5と同様にして本発明のたばこ煙用フィルタサンプルを作成した。
得られたたばこ煙用フィルタサンプルについて上記の通気抵抗、ニコチン、タール量、ホルムアルデヒド量の測定を行った。そして、ニコチン、タール及びホルムアルデヒド保持率を前記式により算出した。結果を表5に記載する。
(実施例11〜14)
実施例11〜14では比較例8と同様のシリカゲルとキトサンの複合体を用いた。
実施例11と12では複合体は以下の方法(浸漬法)で作成した。
比較例3と同じキトサン乳酸塩の3重量%水溶液10gをガラス容器に取り、このガラス容器に、シリカゲル(富士シリシア株式会社製、「MB1000相当破砕状品」、5gを添加し、スターラーチップを用いて約5分間攪拌した後、ブフナーロートを用いて固形物をろ別し、見かけ上均一な粒子状の含水混合たばこフィルタ用素材を得た。
得られた含水混合たばこフィルタ用素材を真空乾燥機を用いて、温度60℃で、重量変化がなくなるまで乾燥し、次いで、22℃、湿度60%の空調室に、重量変化がなくなるまで静置し、評価用の本発明のたばこフィルタ素材を得た。
実施例12では実施例11の溶液にさらに保湿剤としてグリセリン1重量%を添加した溶液を10g用いた以外は実施例11と同様にした。
実施例13では複合体は比較例3と同様の方法で作成した。但し実施例13では使用したキトサン乳酸塩の3重量%水溶液4.8gであった。
更に実施例14では比較例3の溶液にさらに保湿剤としてグリセリン1重量%を添加した溶液を4.8g用いた以外は比較例3と同様にした。添加量について表5に記載する。 このたばこフィルタ素材を、比較例3と同様にして、たばこに充填した。得られたたばこ煙用フィルタサンプルについて上記の通気抵抗、ニコチン、タール量、ホルムアルデヒド量の測定を行った。結果を表5に記載する。
Figure 2008048650
(比較例9)
比較例9では、本発明で特定する平均細孔径を満たすシリカゲル(富士シリシア株式会社製、「MB3000相当破砕状品」、粒度16〜32メッシュ)を使用した。このシリカゲルの性状を表7に示す。
以下比較例5と同様にして本発明のたばこ煙用フィルタサンプルを作成した。
得られたたばこ煙用フィルタサンプルについて上記の通気抵抗、ニコチン、タール量、ホルムアルデヒド量の測定を行った。そして、ニコチン、タール及びホルムアルデヒド保持率を前記式により算出した。結果を表6に記載する。
(実施例15〜16)
実施例15〜16では比較例3と同様の添加法により、シリカゲルとキトサンの複合体を用いた。
但し実施例15では使用したキトサン乳酸塩の3重量%水溶液の量は4.3gであった。
更に実施例16では比較例3の溶液にさらに保湿剤としてグリセリン1重量%を添加した溶液を4.3g用いた以外は比較例3と同様にした。添加量について表4に記載する。
得られたたばこ煙用フィルタサンプルについて上記の通気抵抗、ニコチン、タール量、ホルムアルデヒド量の測定を行った。そして、ニコチン、タール及びホルムアルデヒド保持率を前記式により算出した。結果を表6に記載する。
Figure 2008048650
上記の通り、実施例及び比較例で使用したシリカゲルの性状を表7に示す。
Figure 2008048650
また、たばこ煙用フィルタサンプルにおける各成分の組成(又は複合体の組成)とともに結果を表1から表6に記載する。これらの表において「FA」とは「ホルムアルデヒド」、「Tar」とは「タール」、「Nico.」とは「ニコチン」、「PD」とは「通気抵抗」をそれぞれ示す。

Claims (7)

  1. アミノ基を有する多糖類と平均細孔径が20nm以上であるシリカゲルとで構成されているたばこフィルタ用素材。
  2. 温度22℃および60%RHにおいて、平衡水分率が0.01〜5%であるシリカゲルで構成されている請求項1記載のたばこフィルタ用素材。
  3. アミノ基を有する多糖類がキトサンである請求項1記載のたばこフィルタ用素材。
  4. シリカゲルの粒度が10メッシュパスでありかつ70メッシュオンである請求項1記載のたばこフィルタ用素材。
  5. さらに乳酸を含む請求項1記載のたばこフィルタ用素材。
  6. 少なくとも3個の部分から構成されているたばこフィルタであって、中間部に請求項1記載のたばこフィルタ素材が配置されているたばこフィルタ。
  7. 両端部がセルロースエステル繊維を含むトウ構造のフィルタロッドから構成されている請求項6に記載のたばこフィルタ。
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