JP2008046396A - 表示パネルおよび表示装置 - Google Patents

表示パネルおよび表示装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2008046396A
JP2008046396A JP2006222312A JP2006222312A JP2008046396A JP 2008046396 A JP2008046396 A JP 2008046396A JP 2006222312 A JP2006222312 A JP 2006222312A JP 2006222312 A JP2006222312 A JP 2006222312A JP 2008046396 A JP2008046396 A JP 2008046396A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
display panel
electric field
medium
panel according
substrate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2006222312A
Other languages
English (en)
Inventor
Yasushi Shibahara
靖司 芝原
Yusuke Nishihara
雄祐 西原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sharp Corp
Original Assignee
Sharp Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sharp Corp filed Critical Sharp Corp
Priority to JP2006222312A priority Critical patent/JP2008046396A/ja
Publication of JP2008046396A publication Critical patent/JP2008046396A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Liquid Crystal (AREA)
  • Devices For Indicating Variable Information By Combining Individual Elements (AREA)

Abstract

【課題】高速応答性並びに広視野の表示性能を有する、軽量な表示パネルおよび表示装置を提供する。
【解決手段】プラスチック基板1,2間に、電界の無印加時に光学的等方性を示し、電界の印加により光学的異方性の程度が変化する媒質層3を封入し、電極4,5によって媒質層3に印加する電界を切り替えることで表示を行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、高速応答性並びに広視野の表示性能を有する、軽量な表示パネルおよび表示装置に関するものである。
液晶表示装置は、薄型、軽量で、かつ消費電力が低いという特徴から、テレビ等の画像表示装置、モニター等のOA機器、さらに携帯情報端末機器等に広く用いられている。
ところで、近年、液晶表示装置の携帯情報端末機器への利用が広がるにつれて、液晶表示装置の更なる軽量化、薄型化、耐衝撃性の向上などが強く望まれるようになっている。そこで、従来使用されてきたガラス基板の代わりにプラスチック基板を用いた液晶表示パネルが提案されている。
しかしながら、プラスチック基板を液晶表示パネルの基板に適用するためには、いくつかの課題がある。
最も大きな課題の1つは、プラスチック基板の線膨張係数(線膨張率)が大きいことである。線膨張係数が大きいと、温度変化による寸法の変動が大きくなるため、ガラス基板を用いる場合よりもより高精度のパターニングが必要になる。例えば、TFT(薄膜トランジスタ)のような駆動素子の作製において、特に高精度のパターン精度が必要になる。また、TFTが形成される基板(TFT基板)として従来のガラス基板を用い、対向基板にプラスチック基板を用いる場合でも、対向基板に形成されたカラーフィルタおよび/またはブラックマトリクスと、TFT基板の画素電極との位置合わせをより高い精度に行う必要が生じる。また、プラスチック基板は、延伸方向とその直交方向で線膨張係数に異方性がある場合が多い。このため2枚のプラスチック基板を貼り合わせて加熱するとパネルが変形してしまうことがある。
そこで、プラスチック基板の熱変形を少なくするために、例えば特許文献1には、電極を形成するプラスチック基板の内部に線状あるいは帯状の繊維を埋め込む技術が開示されている。
また、対向配置する一対の基板の線膨張係数が互いに大きく異なる場合に、紫外線硬化樹脂からなるシール材を用いて両基板を貼り合わせると、紫外線硬化樹脂が硬化する前に基板同士の相対位置が所定の位置からずれてしまう場合がある。
そこで、特許文献2では、内壁側から外壁側へ重ねた熱硬化性樹脂層と紫外線硬化樹脂層とを含む複数の樹脂層からなるシール材を用いることによって紫外線硬化樹脂と熱硬化性樹脂との間隔をなくし、両基板の線膨張係数の違いによる位置ずれを防止する技術が開示されている。
また、ガラス繊維を含有するプラスチック基板を用いる場合、プラスチック基板を形成する樹脂が硬化するときに、ガラス繊維の重なり部分において樹脂に応力がかかり、その部分の樹脂が複屈折を持つという問題がある。
そこで、特許文献3では、繊維布を含有する樹脂基板を用いるとともに、繊維の軸と偏光板の軸とが同軸になるように配置することで、複屈折が生じることを防止している。
特開2001−133761号公報(2001年5月18日公開) 特開2003−216059号公報(2003年7月30日公開) 特開2005−208185号公報(2005年8月4日公開) 特開2001−249363号公報(2001年9月14日公開) D.Demus、外3名編,「Handbook of Liquid Crystals Low Molecular Weight Liquid Crystal」,Wiley-VCH,1998年,vol.2B,p.887−900 山本潤,「液晶マイクロエマルション」,液晶,2000年,第4巻,第3号,p.248−254 山本潤,「液晶科学実験講座第1回:液晶相の同定:(4)リオトロピック液晶」,液晶,2002年,第6巻,第1号,p.72−83 Hirotsugu Kikuchi、外4名,「Polymer-stabilized liquid crystal blue phases」,p.64−68,[online],2002年9月2日,Nature Materials,vol.1,[2003年7月10日検索],インターネット〈URL:http://www.nature.com/naturematerials〉 Eric Grelet、外3名,「Structural Investigations on Smectic Blue Phases」,PHYSICAL REVIEW LETTERS,The American Physical Society,2001年4月23日,vol.86,No.17,p3791−3794 Norihiro Mizoshita、外2名,「Fast and High-Contrast Electro-optical Switching of Liquid-Crystalline Physical Gels: Formation of Oriented Microphase-Separated Structures」,Adv. Funct. Mater.,2003年4月,vol.13.No.4,p313−317
しかしながら、上記従来の技術では、配向膜の焼成工程においてプラスチック基板が高温にさらされるため、プラスチック基板の線膨張係数が大きいために生じるパターニング精度不足、位置ずれ等の問題を十分に解消できない場合があった。
つまり、従来の液晶表示パネルでは、液晶を配向させるために、ポリイミド等の配向膜を基板上に高温で焼成した後、ラビング処理を施す必要があった。このため、表示パネルの基板としてプラスチック基板を用いる場合、配向膜の焼成過程でプラスチック基板が高温にさらされてプラスチック基板の膨張が顕著になり、高品位な画像表示を行うために必要なパターニング精度、位置合わせ精度を得ることができない場合があった。
また、ラビング処理は、ポリイミドなどの高分子からなる配向膜を布などでこする手法であるために、微細な埃の発生や高圧静電気による微細放電(局部的放電)の発生を招来するという問題があった。埃は、高精細画素電極の形成工程や、成膜、露光、エッチングの繰り返しによるTFT等のスイッチング素子の形成工程等において大きな障害となる。また、局部的放電は、配向膜自体の損傷や、ITOなどの透明電極やスイッチング素子の断線あるいは静電破壊の原因になる。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、高速応答性並びに広視野の表示性能を有する、軽量な表示パネルおよび表示装置を提供することにある。
本発明の表示パネルは、上記の課題を解決するために、少なくとも一方が透明な一対の基板と、当該一対の基板間に狭持された媒質層とを備え、上記媒質層に電界を印加することによって当該媒質層を光学変調させて表示を行う表示パネルであって、上記媒質層は、電界無印加時に光学的等方性を示し、電界印加により光学的異方性の程度が変化する媒質を含み、上記一対の基板のうちの少なくとも一方は、プラスチック基板であることを特徴としている。
なお、本発明において、「電界印加により光学的異方性の程度が変化する」とは、電界の印加に伴って光学的異方性の大きさが変化すること、より具体的には、電界の印加に伴って屈折率楕円体の形状が変化することを示す。すなわち、本発明の表示パネルでは、電界無印加時と電界印加時とにおける屈折率楕円体の形状の変化を利用することで、異なる表示状態を実現することができる。
すなわち、物質中の屈折率は、一般には等方的ではなく、方向によって異なっており、この屈折率の異方性、つまり、上記物質の光学的異方性は、通常、屈折率楕円体にて示される。一般に、任意の方向に進行する光に対しては原点を通り、光波の進行方向に垂直な面が、屈折率楕円体の切り口と考えられ、この楕円の主軸方向が光波の偏光の成分方向であり、主軸の長さの半分がその方向の屈折率に相当する。よって、このような屈折率楕円体にて光学的異方性を捉えれば、従来の液晶表示装置においては、電界印加時と電界無印加時とで、液晶分子の屈折率楕円体の形状(屈折率楕円体の切り口の形状)は楕円形のまま変化せず、その長軸方向の向きが変化(回転)することで異なる表示形態を実現していたのに対し、本発明では、電界無印加時と電界印加時とにおける、上記媒質を構成する分子の屈折率楕円体の形状(屈折率楕円体の切り口の形状)の変化を利用することで、異なる表示状態を実現するようになっている。
また、従来の液晶表示パネルとは異なり、本発明の表示パネルに用いる媒質は、電界無印加時に光学的等方性を示し、電界印加時により光学的異方性を示す。このため、従来の液晶表示パネルのように配向膜によって電界無印加時における液晶分子の配向状態を規定する必要が無いので、本発明の表示パネルでは、従来の液晶表示パネルで不可欠であったポリイミド等の配向膜を必要としない。
このため、本発明の表示パネルでは、配向膜を形成するための高温焼成プロセスを必要としないので、線膨張係数の大きいプラスチック基板を用いる場合であっても、基板上に形成される各種部材(例えば、電極、スイッチング素子、配線、接続端子、カラーフィルタ、ブラックマトリクス等)のパターニング精度、および両基板の位置合わせ精度を向上させることができる。
また、ラビング配向処理等の配向処理を必要としないので、埃の発生や高圧静電気による局所的放電の発生を防止し、これらに起因する基板上に形成される上記各種部材の形成不良、断線、静電破壊といった問題を防止できる。また、配向膜の焼成工程、ラビング等の配向処理工程を省くことにより、製造費用を削減できる。
また、従来の液晶表示パネルでは、両基板から比較的長い距離まで液晶分子の相関があったため(基板近傍の液晶分子の配向状態の変化が両基板から離れた位置の液晶分子にまで影響を及ぼしていたため)、液晶表示パネルに外力が印加されると、基板近傍で生じた配向乱れが基板から離れた位置まで大きく広がるという問題があった。特に、柔軟性を有するフレキシブル基板を用いた従来のフレキシブル液晶ディスプレイでは、この配向乱れによる表示品位の低下が大きな問題となっていた。
これに対して、本発明の表示パネルに用いる媒質は、電界無印加時に光学的等方性を示すので、すなわち電界無印加時に自発的に光学的等方性を示すように配向しているので、分子の相関距離が従来の液晶表示パネルに比べて短い(基板近傍の液晶分子の配向状態の変化が両基板から離れた位置の液晶分子に影響を及ぼしにくい)。このため、表示パネルに外力が印加された場合であっても、殆ど配向乱れは生じないので、配向安定性を高くできる。また、たとえ配向乱れが生じたとしても、従来の液晶表示パネルとは異なり、媒質の相関距離が短いので、配向乱れが基板から離れた位置にまで広がることがなく、外力に起因する配向乱れが表示に大きな影響を与えることを抑制できる。また、上記の構成によれば、軽量かつ、フレキシブルな特性(形状を任意に変形可能な特性)を持つ表示パネルが実現できる。
また、従来の液晶表示パネルは、電界印加に伴う液晶分子の回転による配向方向の変化のみを利用して表示を行うものであり、液晶分子が一定方向に整列した状態で、揃って回転するため、液晶固有の粘度が応答速度に大きく影響していた。これに対して、本発明の表示パネルでは、媒質における光学的異方性の程度の変化を用いて表示を行うので、従来の液晶表示パネルのように液晶固有の粘度が応答速度に大きく影響するといった問題がなく、高速応答を実現することができる。なお、本発明の表示パネルは、高速応答性を備えているので、例えばフィールドシーケンシャルカラー方式の表示装置に利用することもできる。
また、本発明の表示パネルは、電界無印加時に光学的等方性を示し、電界印加時に光学的異方性を示す媒質を用いている。この場合、屈折率楕円体の形状は、電界無印加時には球状であり、電界を印加することによって楕円に変化する。つまり、光学的異方性(配向秩序度、屈折率)の程度を変化させることにより表示を行う。このため、液晶分子の配向方向を変化させて表示を行う従来の液晶表示パネルよりも、広視野角特性および高速応答性を有する表示パネルを実現できる。
なお、上記プラスチック基板は、無機酸化物を含む構成であってもよい。上記の構成によれば、プラスチック基板の線膨張係数を低くすることができる。
また、上記無機酸化物は、微粒子状であってもよい。上記の構成によれば、無機酸化物を均一に分散させてプラスチック基板に含有させることができるので、プラスチック基板の線膨張係数を均一化することができる。
また、上記媒質層の周縁を封止する、紫外線硬化性樹脂からなる環状のシール材を備えている構成としてもよい。上記の構成によれば、紫外線照射により基板同士を貼り合わせることができ、基板同士を貼り合わせるために高温の処理を必要としないので、線膨張係数の高い基板を表示パネルに用いる場合であっても、位置合わせ精度が低下することを防止できる。
また、上記媒質層の周縁を封止する、熱硬化性樹脂と紫外線硬化性樹脂とからなる環状のシール材を備えている構成としてもよい。例えば、上記環状のシール材は、熱硬化性樹脂および紫外線硬化性樹脂の混合物でもよく、化合物中に熱硬化性の反応基と紫外線硬化性の反応基の双方を含む成分を含む構成でもよく、熱硬化性樹脂からなる樹脂層と紫外線硬化性樹脂からなる樹脂層とを含む構成であってもよい。また、上記環状のシール材は、内壁側から外壁側へ重ね合わされた複数の樹脂層からなり、上記複数の樹脂層には熱硬化性樹脂からなる層と、紫外線硬化性樹脂からなる層とが含まれている構成であってもよい。
なお、紫外線硬化性樹脂からなるシール材は、熱硬化性樹脂からなるシール材よりも粘度が低く、基板との密着性が悪い。そこで、紫外線硬化性樹脂からなるシール材で一対の基板を仮止めしてから、熱硬化性樹脂からなるシール材で最終的に貼り合わせるようにしてもよく、この場合にはより確実に両基板を貼り合わせることができるという効果を奏する。
また、上記プラスチック基板は、少なくとも一方向に配列された複数の繊維を含む構成であってもよい。ここで、繊維の配列方向とは、繊維の長軸が向く方向である。
上記の構成によれば、プラスチック基板に、少なくとも一方向に配列された複数の繊維を含むことにより、このプラスチック基板の線膨張係数を小さくし、温度変化に対する寸法安定性を向上させることができる。つまり、温度変化による寸法の変動を抑えられる。
また、上記一対の基板のうちの少なくとも一方における他方の基板との対向面とは反対側の面に偏光板が配置されていてもよい。上記の構成によれば、上記媒質層の光学的異方性の程度を変化させることによって複屈折を発現させ、上記偏光板によって透過率を変調させることができる。
上記複数の繊維のうちの少なくとも一部の繊維の配列方向は、上記偏光板の吸収軸方向に対して略平行または略垂直であってもよい。ここで、略平行あるいは略垂直とは、実質的に平行または垂直であると見なせる範囲であり、具体的には、0°±5°または90°±5°の範囲である。
上記の構成によれば、一方向に配列された複数の繊維の配列方向と偏光板の吸収軸とを、略平行または略直交させることによって、プラスチック基板の複屈折に起因する色むらの発生を抑制、あるいはユーザに視認されない程度に色むらの程度を抑制できる。
また、上記プラスチック基板は、第1方向に配列された複数の繊維と、上記第1方向に略直交する第2方向に配列された複数の繊維とを含む構成であってもよい。
上記の構成によれば、繊維を互いに略直交する2つの方向に配列させることによって、線膨張係数を始めとする物性(例えば、機械特性や熱特性)を基板面平行方向について等方的にできる。また、互いに略直交する交差する2つの方向に配列された複数の繊維は、織布であることが好ましい。織布を用いると不織布よりも機械強度を向上する効果が高い。また、平織の織布であることが好ましい。平織の織布は、繊維が互いに重なることによって形成される段差が小さいので、朱子織や綾織などに比べて、プラスチック基板の厚さのばらつき(または表面の凹凸)を小さくできる。
また、上記一対の基板の両方がプラスチック基板であってもよい。上記の構成によれば、表示パネルをより軽量化することができる。また、例えば、両基板に可撓性あるいは柔軟性を有するプラスチック基板を用いることにより、フレキシブルな表示パネルを実現できる。
また、上記一対の基板のうちの一方がプラスチック基板であり、他方の基板がガラス基板であってもよい。上記の構成によれば、表示パネルが変形したときに、一方の基板が他方の基板の曲げ変形に応じて伸縮することで2枚の基板のずれ(基板表面ずれ)が生じにくくなり、衝撃による配向不良を抑制できる。
また、複数の画素を有しており、上記各画素に、電界印加時における上記媒質の屈折率楕円体の長軸方向が異なる少なくとも2つのドメインが存在する構成としてもよい。上記の構成によれば、斜め視角の色付き現象を上記各ドメインによって互いに補償しあうことができ、視野角特性を従来よりも向上させることができる。例えば、極角±60度の範囲内での表示の色変化を抑制することができる。
また、上記各ドメインにおける上記屈折率楕円体の長軸方向と、上記偏光板の吸収軸とがなす角度が45度±10度未満の範囲内であってもよい。
上記各ドメインにおける上記屈折率楕円体の長軸方向と上記偏光板の吸収軸とがなす角度が45度のときに透過率が最大になる。したがって、上記各ドメインにおける上記屈折率楕円体の長軸方向と上記偏光板の吸収軸とがなす角度は45度であることが最も望ましい。また、上記角度が35度≦θ≦55度の範囲内であれば、上記角度が45度の場合の90%以上の透過率が得られる。ここで、上記角度が45度のときの透過率を100%とすれば、透過率がほぼ90%以上であれば人間の目には最大輝度を有していると感じられる。このため、上記角度が35度≦θ≦55度の範囲内であれば、人間の目には、ほぼ最大輝度もしくは最大輝度に近い輝度を有していると感じられ、35度<θ<55度の範囲内であれば、人間の目には、最大輝度を有していると感じられる。
また、上記一対の基板の線膨張係数が互いに異なる構成であってもよい。上記の構成によれば、例えば少なくとも一方の基板にプラスチック基板を用いることで、軽量の表示パネルを作成することができる。
また、上記一対の基板のうちの線膨張係数が小さい方の基板に、上記媒質層を駆動するための駆動回路に接続される配線が設けられている構成であってもよい。
上記の構成によれば、線膨張係数が小さい方の基板に上記配線を設けることで、当該基板の熱膨張に起因する上記配線の形成不良を防止できる。また、媒質層を駆動する配線を設けない基板として、媒質層を駆動する配線を設ける基板に比べて、線膨張係数の大きい基板を用いることができるので、軽量、安価な表示素子が作成できる。
また、上記プラスチック基板のうちの少なくとも一方は、複数の繊維が織り合わされてなる繊維布と樹脂材料からなる樹脂層とを含む複合体層を有しており、上記繊維布の線膨張係数が上記樹脂材料の線膨張係数よりも小さい構成としてもよい。
上記の構成によれば、繊維布の線膨張係数が樹脂材料の線膨張係数よりも小さいので、樹脂材料のみでプラスチック基板を形成する場合に比べて、プラスチック基板の線膨張係数を低くすることができる。
また、上記プラスチック基板のうちの少なくとも一方は、樹脂材料と充填材とを含み、上記充填材の線膨張係数が上記樹脂材料の線膨張係数よりも小さい構成としてもよい。
上記の構成によれば、充填材の線膨張係数が樹脂材料の線膨張係数よりも小さいので、樹脂材料のみでプラスチック基板を形成する場合に比べて、プラスチック基板の線膨張係数を低くすることができる。
また、上記繊維は無機酸化物で形成されている構成としてもよい。上記の構成によれば、プラスチック基板の線膨張係数を低くすることができる。
また、上記充填材は無機酸化物で形成されていてもよい。上記の構成によれば、プラスチック基板の線膨張係数を低くすることができる。
また、上記媒質は、電界無印加時に光の波長未満の配向秩序(秩序構造)を有するものであってもよい。配向秩序が光の波長未満であれば、光学的に等方性を示す。それゆえ、電界無印加時に配向秩序が光の波長未満となる媒質を用いることにより、電界無印加時における表示状態を確実に異ならせることができる。
また、上記媒質は、400nm以下の選択波長域または螺旋ピッチを持つ構成であってもよい。
上記媒質が400nmより大きい螺旋ピッチを有する場合、その螺旋ピッチを反映した色に呈色してしまう場合がある。つまり、上記媒質の螺旋ピッチが400nmより大きい場合には、その螺旋ピッチを反映した波長の光が選択的に反射されてしまい、表示パネルの表示色が螺旋ピッチを反映した色に呈色してしまう場合がある。このような螺旋ピッチを反映した波長の光を選択的に反射にする現象は、選択反射と呼ばれる。
そこで、上記媒質の選択反射波長域または螺旋ピッチを、400nm以下とすることにより、このような呈色を防止することができる。すなわち、400nm以下の光は、人間の目ではほとんど認識できないので、上記のような呈色が問題になることはない。
なお、選択反射波長は上記媒質の持つ螺旋軸への入射角度にも依存する。このため、上記媒質の有する秩序構造が一次元的な構造ではない場合、例えば三次元的な構造を持つ場合には、光の螺旋軸への入射角度は分布を持ってしまう。したがって、選択反射波長の幅にも分布ができる。よって、選択反射波長域全体が400nm以下であることが好ましい。
また、上記媒質の選択反射波長域または螺旋ピッチは380nm以下であることがさらに好ましい。国際照明委員会CIE(Commission Internationale de l'Eclairage)では、人間の目で認識できない波長は380nm以下と定めている。したがって、上記媒質の選択反射波長域または螺旋ピッチが380nm以下であれば、上記呈色を確実に防止することができる。
また、上記媒質の螺旋ピッチは253nm以下であることがさらに好ましい。上記呈色は螺旋ピッチ、入射角度だけでなく、媒質の平均屈折率とも関係する。このとき、呈色する色の光は、波長λ=nPを中心とした波長幅Δλ=PΔnの光である。ここで、nは平均屈折率、Pは螺旋ピッチである。また、Δnは屈折率の異方性である。
Δnは、誘電性物質によりそれぞれ異なるが、例えば液晶性物質を上記媒質として用いた場合、液晶性物質の平均屈折率nは1.5程度、Δnは0.1程度である。この場合、呈色する色を可視域外とするためには、螺旋ピッチPは、λ=400とすると、400/1.5=267nmになる。また、Δλは0.1×267=26.7nmになる。したがって、上記媒質の螺旋ピッチを、267nmから26.7nmの約半分である13.4nmを引いた253nm以下とすることにより、このような呈色を防止することができる。
また、上記媒質の螺旋ピッチは240nm以下であることがさらに好ましい。上記ではλ=nPの関係において、λを400nm(人間の目が概ね認識できない波長)としたが、λを380nm(人間の目が確実に認識できない波長)とした場合には、媒質の平均屈折率を考慮した場合に上記のような呈色を防止するための上記媒質の螺旋ピッチは240nm以下となる。したがって、上記媒質の螺旋ピッチを240nm以下とすることにより、上記のような呈色を確実に防止することができる。
また、上記媒質が、電界の2次に比例して屈折率が変化する媒質を含む構成であってもよい。また、上記媒質は、液晶性物質を含む構成であってもよい。また、上記媒質は、コレステリックブルー相を示す分子からなるものであってもよい。また、上記媒質は、スメクチックブルー相を示す分子からなるものであってもよい。
上記した物質は何れも電界を印加することによって光学的異方性の程度が変化する物質であり、何れも上記媒質として用いることができる。
また、上記媒質層に、水素結合体が含まれている構成であってもよい。上記の構成によれば、水素結合体あるいは重合性化合物によって媒質と基板との接着性を増加させ、表示パネルを湾曲させる力が加わった場合の耐久性を増すことができる。さらに、水素結合体あるいは重合性化合物によって電界印加による光学的異方性の程度の変化を促進することができる。
特に、可撓性を有する柔軟なプラスティックフィルム基板を用いる場合、表示パネルに物理的外圧が加えられると、基板が容易に変形し、対向する2枚の基板間隔が変化しやすい。基板間隔が変化すると、媒質層の膜厚の均一性が損なわれ、分子の配向状態が乱れて表示機能が損なわれる場合がある。このため、基板が変形しても媒質層の膜厚を一定に保持することの要求は強い。上記の構成によれば、水素結合体あるいは重合性化合物により、媒質と基板との接着性を増加させ、表示パネルを湾曲させる力が加わった場合の耐久性を増すことができる。
なお、上記重合性化合物は、鎖状高分子、網目状高分子、環状高分子などの高分子であってもよい。また、上記重合性化合物は、構造的異方性を有するのものであってもよい。構造的異方性を有する重合性化合物を用いる場合、上記分子の配向方向の変化を、上記重合性化合物との分子間相互作用によって促進させることができる。したがって、構造的異方性を有する重合性化合物は、電界印加時における光学的異方性の発現を促進させるために好適である。
また、上記媒質層には、液晶性を示す媒質が封入されており、上記重合性化合物は、上記媒質に液晶相を発現させた状態で形成されたものであってもよい。
上記の構成によれば、上記重合性化合物は、上記媒質が液晶相を示す状態における、上記媒質を構成する分子の配向方向に沿う部分の割合が大きくなる。したがって、上記重合性化合物によって、電界印加時に、上記媒質を構成する分子が、上記液晶相状態における配向方向と同様の方向に配向するように、分子の配向を促進させることができる。したがって、電界印加時における光学的異方性の発現を、確実に促進させることができる。
また、上記重合性化合物は、電界無印加時には光学的に等方性であることが好ましい。この構成によれば、上記重合性化合物が、少なくとも電界無印加時には光学的に等方性であるので、電界無印加時の透過率が低下することがなく、良好な表示を行うことができる。
また、上記重合性化合物は、上記媒質層を多数の小領域に分割し、上記媒質を構成する分子の配向秩序構造を固定化するものであってもよい。
上記の構成によれば、上記重合性化合物によって媒質層内に多数の小領域を形成し、上記媒質層に封入されている媒質を構成する分子の配向秩序構造を固定化する。これにより、上記媒質層に電界を印加していない状態または電界を印加している状態において、上記媒質層を光学的に等方的な状態にすることができる。また、上記媒質層が光学的等方性を示す温度範囲を広くすることができる。これにより実用的な温度範囲では低電圧駆動できなかった媒質においても、低電圧駆動できる温度範囲拡大を可能にすることが出来たので、実用性を飛躍的に向上させることができる。
また、本発明の表示装置は、上記の課題を解決するために、上記したいずれかの表示パネルを備えていることを特徴としている。上記の構成によれば、軽量、かつ高品位な画像表示が可能な表示装置を実現できる。
以上のように、本発明の表示パネルは、上記媒質層は、電界無印加時に光学的等方性を示し、電界印加により光学的異方性の程度が変化する媒質を含み、上記一対の基板のうちの少なくとも一方は、プラスチック基板である。また、本発明の表示装置は、上記の表示パネルを備えている。
それゆえ、配向膜を形成するための高温焼成プロセスを必要としないので、線膨張係数の大きいプラスチック基板を用いる場合であっても、電極やスイッチング素子、配線等のパターニング精度、および両基板の位置合わせ精度を向上させることができる。また、ラビング配向処理等の配向処理を必要としないので、埃の発生や高圧静電気による局所的放電の発生を防止し、これらに起因する電極、スイッチング素子、配線等の形成不良、断線、静電破壊といった問題を防止できる。また、配向膜の焼成工程、ラビング等の配向処理工程を省くことにより、製造費用を削減できる。また、上記媒質は、分子の相関距離が従来の液晶表示パネルに比べて短いので、表示パネルに外力が印加された場合に配向乱れが生じることを抑制し、配向安定性を高くできる。
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について説明する。本実施形態にかかる表示パネルは、駆動回路や信号線(データ信号線)、走査線(走査信号線)、スイッチング素子等とともに表示装置に配されて用いられるものである。
(表示装置60の構成)
まず、本実施形態にかかる表示パネルを用いた表示装置について、図2および図3に基づいて説明する。図2は、本実施形態にかかる表示パネル70を備えた表示装置の概略構成を示すブロック図である。図3は、表示パネル70に備えられる表示素子120の周辺の概略構成を示す模式図である。
図3に示すように、表示装置60は、画素71…がマトリクス状に配された表示パネル70と、駆動回路としてのソースドライバ61およびゲートドライバ62と、電源回路63等とを備えている。なお、ソースドライバ61およびゲートドライバ62は、表示パネル70を構成する基板上に備えられていてもよく、表示パネル70の外部に備えられていてもよい。
各画素71には、図2に示すように、表示素子120およびスイッチング素子50が設けられている。
また、表示パネル70には、複数のデータ信号線SL1〜SLn(nは2以上の任意の整数を示す)と、各データ信号線SL1〜SLnにそれぞれ交差する複数の走査信号線GL1〜GLm(mは2以上の任意の整数を示す)とが設けられ、これらデータ信号線SL1〜SLnおよび走査信号線GL1〜GLmの組み合わせ毎に、画素71…が設けられている。
電源回路63は、ソースドライバ61およびゲートドライバ62に、表示パネル70にて表示を行うための電圧を供給し、これにより、ソースドライバ61は表示パネル70のデータ信号線SL1〜SLnを駆動し、ゲートドライバ62は表示パネル70の走査信号線GL1〜GLmを駆動する。
スイッチング素子41としては、例えばFET(電界効果型トランジスタ)あるいはTFT(薄膜トランジスタ)等が用いられ、スイッチング素子50のゲート電極42が走査信号線GLiに、ソース電極43がデータ信号線SLiに、さらに、ドレイン電極24が、表示素子120に接続されている。また、表示素子120の他端は、全画素71…に共通の図示しない共通電極線に接続されている。これにより、各画素71において、走査信号線GLi(iは1以上の任意の整数を示す)が選択されると、スイッチング素子41が導通し、図示しないコントローラから入力される表示データ信号に基づいて決定される信号電圧が、ソースドライバ61によりデータ信号線SLi(iは1以上の任意の整数を示す)を介して表示素子120に印加される。表示素子120は走査信号線GLiの選択期間が終了してスイッチング素子50が遮断されている間、理想的には、遮断時の電圧を保持し続ける。
(表示素子120の構成)
図1(a)は、電界無印加状態(OFF状態)における表示素子120の要部の概略構成を模式的に示す断面図であり、図1(b)は、電界印加状態(ON状態)における表示素子120の要部の概略構成を模式的に示す断面図である。
この図に示すように、表示素子120は、対向する一対のプラスチック基板1,2と、プラスチック基板1,2との間に挟持された、光学変調層である媒質層3とを備えている。媒質層3には、電界の印加により光学的異方性の程度が変化する媒質(以下、媒質Aと記す)が含まれている。
また、プラスチック基板(TFT基板)1におけるプラスチック基板(対向基板)2との対向面には、媒質層3に電界を印加するための電界印加手段である電極(櫛歯状の電極)4,5が互いに対向配置されている。さらに、プラスチック基板1,2における、両基板の対向面とは反対側の面には、それぞれ偏光板7,8が備えられている。
(プラスチック基板1,2)
プラスチック基板1およびプラスチック基板2は、媒質層3に封入される媒質を保持する媒質保持手段(光学変調層保持手段)としての機能を有している。なお、プラスチック基板1,2に挟まれる領域の周縁部には、図3に示したように、媒質層3を封止するための環状のシール材10が設けられている。
また、プラスチック基板1および2は、従来の液晶素子に用いられるガラス基板と同様に、可視光に対する透過率が高く(可視光に対して透明であり)、かつ、複屈折を有しないことが望まれる。
プラスチック基板1,2としては、耐熱性に優れた熱可塑性プラスチックを用いることが好ましい。例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ノルボルネン系樹脂等が好ましく、機械的強度、光学的特性、耐熱性等の観点からポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ノルボルネン系樹脂が特に好ましい。
また、プラスチック基板1,2としては、板状のプラスチック基板や、フィルム状のプラスチック基板を用いることができる。板状のプラスチック基板としては、例えば、アクリル樹脂よりなる厚さ約0.4mm程度のものを用いることができる。
また、フィルム状のプラスチック基板としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、アセチルセルロース、ポリスチレン、ポリエチレンおよびそれらの変性体などからなる厚さ約0.05〜0.2mm程度のものを用いることができる。また、これらの材料からなるフィルム状のプラスチック基板の表裏両面にエチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコールまたはSiOxなどからなるガスバリヤ層と、エポキシ樹脂などからなる表面層がそれぞれ形成されていてもよい。これらのフィルム状のプラスチック基板を用いることにより、形状を任意に変形可能なフレキシブルな表示パネルを作成できる。
なお、プラスチック基板1,2の厚さは0.05mm以上1.1mm以下であることが好ましい。厚さが0.05mm未満の場合には十分な剛性が得られない。また、1.1mm以下の厚さにすることで、ガラス基板を用いる場合よりも軽量化を図ることができる。
また、プラスチック基板1および2の平均線膨張係数と配線に用いられる金属の平均線膨張係数との差が大きい場合、高温にさらされたとき断線を生じるおそれがある。このため、プラスチック基板1および2は、30℃以上200℃以下での平均熱線膨張係数が−5ppm以上70ppm以下であることが好ましく、−3ppm以上50ppm以下であることがより好ましい。
また、プラスチック基板1,2に、無機酸化物からなる微粒子が含めてもよい。プラスチック基板1,2に含める無機酸化物は特に限定されるものではないが、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム等が好ましい。また、プラスチック基板1,2における微粒子の濃度(含有量)を、この微粒子とプラスチック基板1,2に封入される媒質との総重量に対して、5wt%〜90wt%とすることが好ましい。プラスチック基板1,2における微粒子の濃度が5wt%未満であると、剛性向上の効果が十分に得られない。また、プラスチック基板1,2における微粒子の濃度が、95重量%を超えると粒子を均一に分散させることが困難になり透明性が低下する。
また、プラスチック基板1,2に含める無機酸化物の粒径は1nm以上380nm以下であることが好ましい。国際照明委員会CIE(Commission Internationale de l'Eclairage)によると、人間の目の認識できない波長は380nm以下であると定められている。よって、無機酸化物の粒径を380nm以下にすることで、人間の目に微粒子が認識されることを防止できる。また、無機酸化物の粒径が1nm未満の場合には粒子を均一に分散させることが困難であるが、1nm以上であれば、粒子を均一に分散させることができる。なお、粒子を均一に分散させる方法としては、例えば、基板に用いる熱可塑性プラスチックを、有機溶剤により溶解し、同じ有機溶剤を分散媒とした無機酸化物ゾルを添加・攪拌する方法などがある。
また、無機酸化物の粒径は1nm以上300nm以下であることがより好ましい。粒径が300nmを超えると可視領域の波長の光を散乱してしまうため基板の透明性を損なってしまう場合があるためである。
本実施形態では、プラスチック基板1,2として、酸化珪素(シリカ)を含有させた約0.4mm厚のPES(PolyEther Sulfone;ポリエーテルスルホン)フィルムを用いた。具体的には、プラスチック基板1,2として、PESの粉末8重量部をジメチルアセトアミド72重量部に溶解させたものに、粒径約15nmの酸化珪素(シリカ)を20重量%含み分散媒がジメチルアセトアミドであるシリカゾル20重量部を添加して室温で攪拌した後、トルエン中に静かに沈殿させて凝固させ、凝固分を濾別し、残ったトルエンとジメチルアセトアミドの混合液を蒸発させ、押出機で厚さ0.4mmのシート状に押し出して得たプラスチック基板を用いた。
環状のシール材10は、表示パネル70の内壁側(媒質層3側)に配置される熱硬化性樹脂からなる樹脂層10aと、表示パネル70の外壁側に樹脂層10aに重ねられて配置される紫外線硬化性樹脂からなる樹脂層10bとからなる。表示パネル70(表示素子120)は、プラスチック基板1とプラスチック基板2とを、環状のシール材10によって貼り合わせ、その空隙に、上記媒質Aを封入することにより形成される。
本実施形態では、プラスチック基板2の光変調領域(各画素が設けられている領域)の周縁に熱硬化性樹脂をディスペンサ法で環状に塗布して樹脂層10aを形成した。さらに樹脂層10aの外周と重なるように(樹脂層10aを取り囲むように)紫外線硬化性樹脂からなる樹脂層10bをディスペンサ法で環状に塗布して樹脂層10bを形成した。なお、熱硬化性樹脂と紫外線硬化性樹脂は幅約0.3mm、厚さ約20μmでそれぞれ塗布した。
次に、プラスチック基板1とプラスチック基板2とが、所定の位置で対向するように位置合わせを行ったうえで、プラスチック基板1とプラスチック基板2とを対向させて貼り合わせた。これにより、プラスチック基板2上に設けられていた樹脂層10a,12は、プラスチック基板1とプラスチック基板2に挟まれた状態となる。
この状態において、UVプレス装置を用いて紫外線を紫外線硬化性樹脂からなる樹脂層10bに照射し、樹脂層10bを硬化させてプラスチック基板1とプラスチック基板2とを仮止めした。紫外線を照射するランプ光源は特に限定されないが、本実施形態ではメタルハライドランプを用いた。次に、貼り合わされたプラスチック基板1とプラスチック基板2とを加熱し、熱硬化性樹脂からなる樹脂層10aを硬化させた後、徐々に冷却した。
ここで、一対の基板の熱膨張係数が大きく異なる場合には、内壁側の樹脂層を硬化させるための熱を加えた際に熱膨張係数が大きい方の基板が膨張によって凸状に変形するが、外壁側の樹脂層で仮止めされた部分は所定の基板間隔に保持される。これにより、内壁側の樹脂層は外壁側の樹脂層とほぼ同じ位置で最終的に一対の基板を固定されるので、内壁側の樹脂層の硬化が完了し、膨張した基板が元のサイズに収縮すると、一対の基板は所望の位置関係と所定間隔を保持したまま精度良く貼り合わせることができる。
このようにして、プラスチック基板1とプラスチック基板2は所望の位置関係で、かつ、所定間隔で精度良く貼り合わされる。つまり、本実施形態では、内壁側の樹脂層として紫外線硬化性樹脂を用い、外壁側の樹脂層として紫外線硬化性樹脂を用い、まず、外壁側の樹脂層で仮止めを行って一対の基板が横方向にずれることを防止したうえで、内壁側の樹脂層で最終的に一対の基板を固定する。これにより、良好な表示品位の表示素子が得られる。
なお、上記熱硬化性樹脂としては、表示装置用のシール材として従来より用いられている樹脂を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、熱硬化型エポキシ樹脂を用いることができる。また、上記紫外線硬化性樹脂としては、一般的に紫外線硬化型接着剤と呼ばれているものを用いることができ、例えば、日本ロックタイト社製の速硬化型LX1347、NORLAND社製のNOA−61、THREE BOND社製のAVR−100などを用いることができる。
また、樹脂層10aとして用いられる熱硬化性樹脂および樹脂層10bとして用いられる紫外線硬化性樹脂に、ロッド状のスペーサを2重量%程度含有してもよい。このスペーサによって、プラスチック基板1とプラスチック基板2との間隔を所定値に適切に保つことができる。本実施形態では、媒質層3の層厚(すなわちプラスチック基板1,2間の距離)を5μmとした。また、本実施形態では、熱硬化性樹脂に含有されるロッド状スペーサおよび紫外線硬化性樹脂に含有されるロッド状スペーサとして、同じロッド径のものを用いた。具体的には、日本電気硝子社製のマイクロ・ロッドを用いた。ただし、スペーサの種類はこれに限るものではなく、例えば球形のスペーサを用いてもよい。
また、必要に応じて、プラスチック基板1とプラスチック基板2との間に図示しないスペーサ(例えばリブ状スペーサ、プラスチックビーズやガラスファイバースペーサ等のスペーサなど)を配置してもよい。本実施形態では、リブ状スペーサをプラスチック基板2上に形成した。リブ状スペーサは、プラスチック基板2上に感光性樹脂を塗布し、塗布された感光性樹脂の層をフォトリソグラフィ法によってパターニングすることにより形成される。
また、本実施形態ではプラスチック基板2側に熱硬化性樹脂と紫外線硬化性樹脂の両方を塗布したが、これはプラスチック基板1側であっても構わない。また、一方の基板に熱硬化性樹脂、他方の基板に紫外線硬化性樹脂を塗布し、一対の基板が貼り合わされた時に熱硬化性樹脂からなる樹脂層10aと紫外線硬化性樹脂からなる樹脂層10bが内壁側から外壁側へ向かって重なるようにしてもよい。
つまり、一対の基板が貼り合わされた状態において、熱硬化性樹脂からなる樹脂層10aと紫外線硬化性樹脂からなる樹脂層10bとが内壁側から外壁側へ向かって重なるようにしてもよく、熱硬化性樹脂および紫外線硬化性樹脂の塗布パターンは特に限定されるものではない。また、塗布方法についても、上記ディスペンサ法に限定されるものではなく、オフセット法などの印刷法であってもよい。
(媒質A)
本実施形態に用いられる上記媒質Aは、電界を印加することにより、光学的異方性が変化する媒質である。物質中に外部から電界Ejを加えると、電気変位Dij=εij・Ejを生じるが、そのとき、誘電率(εij)にもわずかな変化が見られる。光の周波数では屈折率(n)の自乗は誘電率と等価であるから、上記媒質Aは、電界の印加により、屈折率が変化する物質と言うこともできる。
このように、表示素子120は、物質の屈折率が外部電界によって変化する現象(電気光学効果)を利用して表示を行うものであり、電界印加により分子(分子の配向方向)が揃って回転することを利用した液晶表示素子とは異なり、光学的異方性の方向は殆ど変化せず、その光学的異方性の程度の変化(主に、電子分極や配向分極)により表示を行うようになっている。
上記媒質Aとしては、ポッケルス効果またはカー効果を示す物質等、電界無印加時に光学的には等方(巨視的に見て等方であればよい)であり、電界印加により光学的異方性が発現する物質、典型的には、電界印加により光学変調(特に電界印加により複屈折が上昇することが望ましい)を発現する媒質であればよい。
ポッケルス効果、カー効果(それ自身は、等方相状態で観察される)は、それぞれ、電界の一次または二次に比例する電気光学効果であり、電圧無印加状態では、等方相であるため光学的に等方的であるが、電圧印加状態では、電界が印加されている領域において、電界方向に化合物の分子の長軸方向が配向し、複屈折が発現することにより透過率を変調することができる。例えば、カー効果を示す物質を用いた表示方式の場合、電界を印加して1つの分子内での電子の偏りを制御することにより、ランダムに配列した個々の分子が各々別個に回転して向きを変えることから、応答速度が非常に速く、また、分子が無秩序に配列していることから、視角制限がないという利点がある。なお、上記媒質Aのうち、大まかに見て電界の一次または二次に比例しているものは、ポッケルス効果またはカー効果を示す物質として扱うことができる。
ポッケルス効果を示す物質としては、例えば、ヘキサミン等の有機固体材料等が挙げられるが、特に限定されるものではない。上記媒質Aとしては、ポッケルス効果を示す各種有機材料、無機材料を用いることができる。
また、カー効果を示す物質としては、「5CB」(4−シアノ−4’−ペンチルビフェニル、ネマチック液晶)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。5CBの化学構造式を下記に示す。
Figure 2008046396
カー効果は、入射光に対して透明な媒質中で観測される。このため、カー効果を示す物質は、透明媒質として用いられる。通常、液晶性物質は、温度上昇に伴って、短距離秩序を持った液晶相から、分子レベルでランダムな配向を有する等方相に移行する。つまり、液晶性物質のカー効果は、ネマチック相ではなく、液晶相−等方相温度以上の等方相状態の液体に見られる現象であり、上記液晶性物質は、透明な誘電性液体として使用される。
液晶性物質等の誘電性液体は、加熱による使用環境温度(加熱温度)が高いほど、等方相状態となる。よって、上記媒質として液晶性物質等の誘電性液体を使用する場合には、該誘電性液体を透明、すなわち可視光に対して透明な液体状態で使用するために、例えば、(1)媒質層3の周辺に、図示しないヒータ等の加熱手段を設け、該加熱手段により上記誘電性液体をその透明点以上に加熱して用いてもよいし、(2)バックライトからの熱輻射や、バックライトおよび/または周辺駆動回路からの熱伝導(この場合、上記バックライトや周辺駆動回路が加熱手段として機能する)等により、上記誘電性液体をその透明点以上に加熱して用いてもよい。また、(3)上記プラスチック基板1,2の少なくとも一方に、ヒータとしてシート状ヒータ(加熱手段)を貼合し、所定の温度に加熱して用いてもよい。さらに、上記誘電性液体を透明状態で用いるために、透明点が、上記表示素子の使用温度範囲下限よりも低い材料を用いてもよい。
上記媒質Aは、液晶性物質を含んでいることが望ましく、上記媒質Aとして液晶性物質を使用する場合には、該液晶性物質は、巨視的には等方相を示す透明な液体であるが、微視的には一定の方向に配列した短距離秩序を有する分子集団であるクラスタを含んでいることが望ましい。なお、上記液晶性物質は可視光に対して透明な状態で使用されることから、上記クラスタも、可視光に対して透明(光学的に等方)な状態で用いられる。
このために、上記表示素子は、上述したように、ヒータ等の加熱手段を用いて温度制御を行ってもよいし、媒質層3を、高分子材料等を用いて小区域に分割して用いてもよく、上記液晶性物質の直径を例えば0.1μm以下とする等、上記液晶性物質を、光の波長よりも小さな径を有する微小ドロップレットとし、光の散乱を抑制することにより透明状態とするか、あるいは、使用環境温度(室温)にて透明な等方相を示す液晶性化合物を使用する等してもよい。上記液晶性物質の直径、さらにはクラスタの径(長径)が0.1μm以下、つまり、光の波長(入射光波長)よりも小さい場合の光の散乱は無視することができる。このため、例えば上記クラスタの径が0.1μm以下であれば、上記クラスタもまた可視光に対して透明である。
なお、上記媒質Aは、上述したようにポッケルス効果またはカー効果を示す物質に限定されない。このため、上記媒質Aは、分子の配列が、光の波長以下(例えばナノスケール)のスケールのキュービック対称性を有する秩序構造を有し、光学的には等方的に見えるキュービック相(非特許文献1、3参照)を有していてもよい。キュービック相は上記媒質Aとして使用することができる液晶性物質の液晶相の一つであり、キュービック相を示す液晶性物質としては、例えば、下記構造式(2)
Figure 2008046396
で示されるBABH8等が挙げられる。このような液晶性物質に電界を印加すれば、微細構造に歪みが与えられ、光学変調を誘起させることが可能となる。
BABH8は、136.7℃以上、161℃以下の温度範囲では、光学波長未満(可視光の波長未満)のスケールの秩序構造からなるキュービック相を示す。また、BABH8は、格子定数が約6nmであり、光学波長よりも1桁以上も小さい。そして、BABH8の秩序構造(配向秩序)が光学波長未満であるため透明である。すなわち、上記温度範囲において、該BABH8は、電界無印加時に光学的等方性を示す。したがって、BABH8を本実施形態の表示素子に適用する場合、直交ニコル下において良好な黒表示を行うことができる。
一方、上記BABH8の温度を、例えば上記した加熱手段等を用いて136.7℃以上、161℃以下に制御しながら、電極4,5(櫛形電極)間に電圧を印加すると、キュービック対称性を有する構造(秩序構造)に歪みが生じる。すなわち、上記BABH8は、上記の温度範囲において、電界無印加状態では等方的であり、電界印加により異方性が発現する。
これにより、上記媒質層3において複屈折が発生するので、上記表示素子は、良好な白表示を行うことができる。なお、複屈折が発生する方向は一定であり、その大きさが電圧印加によって変化する。また、電極4,5(櫛形電極)間に印加する電圧と透過率との関係を示す電圧透過率曲線は、136.7℃以上、161℃以下の温度範囲、すなわち、約20Kという広い温度範囲において安定した曲線となる。このため、上記BABH8を上記媒質Aとして使用した場合、温度制御を極めて容易に行うことができる。すなわち、上記BABH8からなる媒質層3は、熱的に安定な相であるため、急激な温度依存性が発現せず、温度制御が極めて容易である。
また、上記媒質Aとしては、液晶分子が光の波長以下のサイズで放射状に配向した集合体で充填された、光学的に等方的に見えるような系を実現することも可能であり、その手法としては非特許文献2に記載の液晶マイクロエマルションや非特許文献3に記載の液晶・微粒子分散系(溶媒(液晶)中に微粒子を混在させた混合系、以下、単に液晶微粒子分散系と記す)の手法を応用することも可能である。これらに電界を印加すれば、放射状配向の集合体に歪みが与えられ、光学変調を誘起させることが可能である。
なお、これら液晶性物質は、何れも、単体で液晶性を示すものであってもよいし、複数の物質が混合されることにより液晶性を示すものであってもよいし、これらの物質に他の非液晶性物質が混入されていてもよい。また、非特許文献6に記載されているようなゲル化剤を添加してもよい。
また、上記媒質Aとしては、有極性分子を含有することが望ましく、例えばニトロベンゼン等が媒質Aとして好適である。なお、ニトロベンゼンもカー効果を示す媒質の一種である。
以下に、上記媒質Aとして用いることができる物質もしくは該物質の形態の一例を示すが、本発明は以下の例示にのみ限定されるものではない。
〔スメクチックD相(SmD)〕
スメクチックD相(SmD)は、上記媒質Aとして使用することができる液晶性物質の液晶相の一つであり、図5および図6に示すように、三次元格子構造を有し、その格子定数が光の波長以下である。すなわち、スメクチックD相はキュービック対称性を有する。このため、スメクチックD相は、光学的には等方性を示す。
スメクチックD相を示す液晶性物質としては、例えば、非特許文献1に記載の下記一般式(3)で表されるANBC16等が挙げられる。
Figure 2008046396
上記ANBC16は、171.0℃〜197.2℃の温度範囲において、スメクチックD相が発現する。スメクチックD相は、複数の分子がジャングルジム(商標登録)のような三次元的格子を形成しており、その格子定数は光学波長以下である。すなわち、スメクチックD相は、キュービック対称性を有する。なお、上記ANBC16の格子定数は約6nmである。このため、スメクチックD相は、光学的に等方性を示す。
ANBC16がスメクチックD相を示す上記の温度領域において、ANBC16に電界を印加すれば、ANBC16の分子自身に誘電異方性が存在するため、分子が電界方向に向こうとして格子構造に歪が生じる。すなわち、ANBC16に光学的異方性が発現する。なお、ANBC16に限らず、スメクチックD相を示す物質であれば、本実施形態の表示素子の媒質Aとして適用することができる。
〔液晶マイクロエマルション〕
液晶マイクロエマルションとは、非特許文献2において提案された、O/W型マイクロエマルション(油の中に水を界面活性剤で水滴の形で溶解させた系で、油が連続相となる)の油分子をサーモトロピック液晶分子で置換したシステム(混合系)の総称である。
液晶マイクロエマルションの具体例としては、例えば、非特許文献2に記載されている、ネマチック液晶相を示すサーモトロピック液晶であるペンチルシアノビフェニル(5CB)と、逆ミセル相を示すリオトロピック(ライオトロピック)液晶であるジドデシルアンモニウムブロマイド(DDAB)の水溶液との混合系がある。
また、この混合系は、典型的には逆ミセルの直径が50Å程度、逆ミセル間の距離が200Å程度である。これらのスケールは光の波長より一桁程度小さい。また、逆ミセルが三次元空間的にランダムに存在しており、各逆ミセルを中心に5CBが放射状に配向している。したがって、この混合系は、光学的には等方性を示す。
そして、この混合系からなる媒質に電界を印加すれば、5CBに誘電異方性が存在するため、分子自身が電界方向に向こうとする。すなわち、逆ミセルを中心に放射状に配向していたため光学的に等方であった系に、配向異方性が発現し、光学的異方性が発現する。なお、上記の混合系に限らず、電界無印加時には光学的に等方性を示し、電界印加によって光学的異方性が発現する液晶マイクロエマルションであれば、本実施形態の表示素子の媒質Aとして適用することができる。
〔リオトロピック液晶〕
リオトロピック(ライオトロピック)液晶とは、液晶を形成する主たる分子が、他の性質を持つ溶媒(水や有機溶剤など)に溶けているような他成分系の液晶を意味する。また、上記の特定の相とは、電界無印加時に光学的に等方性を示す相である。このような特定の相としては、例えば、非特許文献3に記載されているミセル相、スポンジ相、キュービック相、逆ミセル相がある。
両親媒性物質である界面活性剤には、ミセル相を発現する物質がある。例えば、イオン性界面活性剤である硫酸ドデシルナトリウムの水溶液やパルチミン酸カリウムの水溶液等は球状ミセルを形成する。また、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルと水との混合液では、ノニルフェニル基が疎水基として働き、オキシエチレン鎖が親水基として働くことにより、ミセルを形成する。他にも、スチレン−エチレンオキシドブロック共重合体の水溶液でもミセルを形成する。
例えば、球状ミセルは、分子が空間的全方位にパッキング(分子集合体を形成)して球状を示す。また、球状ミセルのサイズは、光の波長以下であるため、異方性を示さず、等方的に見える。しかしながら、このような球状ミセルに電界を印加すれば、球状ミセルが歪むため異方性を発現する。よって、球状ミセル相を有するリオトロピック液晶もまた、本実施形態の表示素子の媒質Aとして適用することができる。なお、球状ミセル相に限らず、他の形状のミセル相、すなわち、紐状ミセル相、楕円状ミセル相、棒状ミセル相等を媒質Aとして使用しても、同様の効果を得ることができる。
また、濃度、温度、界面活性剤の条件によっては、親水基と疎水基とが入れ替わった逆ミセルが形成されることが一般に知られている。このような逆ミセルは、光学的にはミセルと同様の効果を示す。したがって、逆ミセル相を媒質Aとして適用することにより、ミセル相を用いた場合と同等の効果を奏する。なお、前述した液晶マイクロエマルションは、逆ミセル相(逆ミセル構造)を有するリオトロピック液晶の一例である。
また、非イオン性界面活性剤であるペンタエチレングリコール−ドデシルエーテルの水溶液には、スポンジ相やキュービック相を示す濃度および温度領域が存在する。このようなスポンジ相やキュービック相は、光の波長以下の秩序を有しているので透明な物質である。すなわち、これらの相からなる媒質は、光学的には等方性を示す。そして、これらの相からなる媒質に電圧を印加すると、配向秩序が変化して光学的異方性が発現する。したがって、スポンジ相やキュービック相を有するリオトロピック液晶もまた、本実施形態の表示素子の媒質Aとして適用することができる。
〔液晶微粒子分散系〕
また、媒質Aは、例えば、非イオン性界面活性剤ペンタエチレングリコール−ドデシルエーテル(Pentaethylenglychol-dodecylether、C125)の水溶液に、表面を硫酸基で修飾した直径100Å程度のラテックス粒子を混在させた、液晶微粒子分散系であってもよい。また、この液晶微粒子分散系の配向秩序(秩序構造)は光学波長未満である。上記液晶微粒子分散系ではスポンジ相が発現するが、本実施形態において用いられる媒質Aとしては、前述したミセル相、キュービック相、逆ミセル相等を発現する液晶微粒子分散系であってもよい。なお、上記ラテックス粒子に代えて上記DDABを使用することによって、前述した液晶マイクロエマルションと同様な配向構造を得ることもできる。
また、溶媒中に分散させる微粒子(液晶微粒子)は、1種または2種以上のものにより構成されることが好ましい。
また、平均粒子径が0.2μm以下の微粒子を用いることが好ましい。平均粒子径0.2μm以下の微小な大きさの微粒子を用いることにより、媒質層3内における微粒子の分散性が安定し、長時間経っても微粒子が凝集したり、相が分離したりしない。したがって、例えば、微粒子が沈殿して局所的な微粒子のムラが生じることより、表示素子としてムラが生じることを充分に抑制できる。
また、各微粒子の粒子間距離は200nm以下であることが好ましく、190nm以下であることがさらに好ましい。
三次元的に分布した粒子に光を入射すると、ある波長において回折光が生じる。この回折光の発生を抑制すれば、光学的等方性が向上し、表示素子のコントラストが上昇する。
三次元的に分布した粒子による回折光は入射する角度にも依存するが、回折される波長λは概ねλ=2dで与えられる。ここで、dは粒子間距離である。
ここで、回折光の波長が400nm以下であれば、人間の目にほとんど認識されない。このため、λ≦400nmとすることが好ましく、その場合、粒子間距離dを200nm以下とすればよい。
さらに、国際照明委員会CIE(Commission Internationale de l'Eclairage)では、人間の目で認識できない波長は380nm以下と定めている。このため、λ≦380nmとすることがさらに好ましく、その場合、粒子間距離dを190nm以下とすればよい。
また、粒子間距離が長いと粒子間の相互作用が充分に働かず、ミセル相、スポンジ相、キュービック相、逆ミセル相などの相が発現しにくくなるので、この観点からも、粒子間距離は200nm以下であることが好ましく、190nm以下であることがさらに好ましい。
また、媒質層3における微粒子の濃度(含有量)を、この微粒子と媒質層3に封入される媒質との総重量に対して、0.05wt%〜20wt%とすることが好ましい。媒質層3における微粒子の濃度が0.05wt%〜20wt%となるように調製することにより、微粒子の凝集を抑制することができる。
なお、媒質層3に封入する微粒子は特に限定されるものではなく、透明なものでも不透明なものでもよい。また、微粒子は、高分子などの有機質微粒子であってもよく、無機質微粒子や金属系微粒子などであってもよい。
有機質微粒子を用いる場合、例えば、ポリスチレンビーズ、ポリメチルメタクリレートビーズなどのポリマービーズ形態の微粒子を用いることが好ましい。また、これらの微粒子は架橋されていてもよく、架橋されていなくてもよい。無機質微粒子を用いる場合、例えば、ガラスビーズやシリカビーズ等の微粒子を用いることが好ましい。
金属系微粒子を用いる場合、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類金属が好ましい。例えば、チタニア、パラジウム、銀、金、銅が好ましく、これらの金属あるいはこれら金属元素の酸化物などからなる微粒子を用いることが好ましい。これら金属系微粒子は1種類の金属のみで用いてもよいし、2種類以上の金属を合金化、複合化して形成してもよい。例えば、銀粒子の周りをチタニアで覆ってもよい。銀粒子だけで金属微粒子を構成すると、銀の酸化により表示素子の特性が変化する恐れがあるが、パラジウムなどの金属で表面を覆うことにより銀の酸化が防げる。また、ビーズの形態の金属系微粒子はそのまま用いても良く、加熱処理したものや、ビーズ表面に有機物を付与したものを用いてもよい。付与する有機物としては液晶性を示すものが好ましい。
上記の有機物を付与した金属系微粒子は、例えば、金属イオンを水、アルコール類、エーテル類などの溶媒に溶解または分散してから、上記有機物と混合し、これを還元することによって得られる。
また、分散させる微粒子としてフラーレン、および/または、カーボンナノチューブで形成されたものを用いてもよい。フラーレンとしては、炭素原子を球殻状に配置したものであればよく、例えば炭素原子数nが24から96の安定した構造のものが好ましい。このようなフラーレンとしては、例えば、炭素原子60個からなるC60の球状閉殻炭素分子群などが上げられる。また、カーボンナノチューブとしては、例えば、厚さ数原子層のグラファイト状炭素原子面を丸めた円筒形状のナノチューブなどが好ましい。
また、微粒子の形状は特に限定されるものではなく、例えば、球状、楕円体状、塊状、柱状、錐状や、これらの形態に突起を持った形態、これらの形態に孔が開いている形態などであってもよい。また、微粒子の表面形態についても特に限定されるものではなく、例えば、平滑でも良く、凹凸や孔、溝を有していてもよい。
〔デンドリマー〕
デンドリマーとは、モノマー単位毎に枝分かれのある三次元状の高分岐ポリマーである。デンドリマーは、枝分かれが多いために、ある程度以上の分子量になると球状構造となる。この球状構造は、光の波長以下の秩序を有しているので透明な物質であり、電界印加によって配向秩序が変化して光学的異方性が発現する。したがって、デンドリマーもまた、本実施形態の表示素子の媒質Aとして適用することができる。また、前述した液晶マイクロエマルションにおいてDDABに代えて上記デンドリマーを使用することにより、前述した液晶マイクロエマルションと同様な配向構造を得ることができる。このようにして得られた媒質もまた、上記媒質Aとして適用することができる。
〔コレステリックブルー相〕
また、媒質Aとして、コレステリックブルー相を適用することができる。なお、図7には、コレステリックブルー相の概略構成が示されている。
図7に示すように、コレステリックブルー相は、螺旋軸が3次元的に周期構造を形成しており、その構造は、高い対称性を有していることが知られている(例えば、非特許文献1,4参照)。コレステリックブルー相は、光の波長以下の秩序を有しているのでほぼ透明な物質であり、電界印加によって配向秩序が変化して光学的異方性が発現する(光学的異方性の程度が変化する)。すなわち、コレステリックブルー相は、光学的に概ね等方性を示し、電界印加によって液晶分子が電界方向に向こうとするために格子が歪み、異方性を発現する。よって、コレステリックブルー相を示す分子からなる媒質を、本表示素子の媒質Aとして適用できる。
なお、コレステリックブルー相を示す物質としては、例えば、「JC1041」(商品名、チッソ社製混合液晶)を48.2mol%、「5CB」(4−シアノ−4’−ペンチルビフェニル、ネマチック液晶)を47.4mol%、「ZLI−4572」(商品名、メルク社製カイラルドーパント)を4.4mol%の割合で混合してなる組成物がある。該組成物は、330.7Kから331.8Kの温度範囲で、コレステリックブルー相を示す。
また、この混合物質に、重合性モノマー、あるいは、重合性モノマーおよび重合開始剤を加えてもよい。すなわち、上記の混合物質からなる媒質を構成する分子の配向秩序構造を、重合性化合物によって媒質層内に多数の小領域(微細ドメイン)を形成することにより固定化してもよい。また、この場合、この媒質が本表示素子の媒質層3に封入された後、媒質層3に電界が印加されていないときにも分子の配向秩序構造を固定化する構成としてもよい。つまり、電界無印加時における光学的等方性の秩序構造(電界無印加時における媒質層3に封入した媒質の秩序構造(配向秩序))を、重合性化合物により安定化してもよい。
上記構成によれば、重合性化合物によって、電界無印加時における光学的等方性の秩序構造を安定化することができる。これにより、駆動電圧が大きな温度依存性を示すために実用的な温度範囲において実質的に低電圧で駆動することができない媒質(低電圧で駆動できる温度範囲が狭く、重合性化合物がない場合には実用的でない媒質)を用いる場合でも、重合性化合物を設けることにより広い温度範囲で駆動電圧を低電圧化することができる。したがって、低電圧で光学的異方性を発現させる(光学的異方性の程度を変化させる)ことが可能となるので、実用レベルの駆動電圧で動作可能であり、高速応答特性および広視野特性を備えた表示素子を実現することができる。
例えば、光重合性モノマーとしてEHA(2-ethylhexyl acrylate、モノアクリレート、アルドリッチ(Aldrich)社製)およびRM257(ジアクリレートモノマー(diacrylate monomer)、メルク社製)、光重合開始剤としてDMPAP(2,2-dimethoxy-2-phenyl acetophenon、アルドリッチ社製)を、以下に示す分量比で加えてもよい。
EHA 4.0mol%
RM257 2.6mol%
DMPAP 0.33mol%
JC−1041xx 44.7mol%
5CB 43.4mol%
ZLI−4572 4.9mol%
なお、上記の分量比で混合した後、混合物質が常にコレステリックブルー相になるように温度調節しながら、電界を印加せず紫外線照射を行って得られた媒質は、326.4Kから260K以下まで安定してコレステリックブルー相を示した。すなわち、温度範囲を従来の1.1Kから大幅に拡大することができた。これにより、液体相よりも低い駆動電圧を有するものの、実用的な温度範囲を有していなかった相の温度範囲を飛躍的に拡大することができた。このようなコレステリックブルー相は、例えば後述する図4のような電極構造にて駆動することが可能であり、表示素子として広い温度範囲において低電圧で駆動することが可能になる。図7にコレステリックブルー相および固定化のメカニズムを示す。
また、上記構成によれば、重合性化合物によって、媒質と基板との接着性が増し、素子を湾曲させる力が加わった場合の耐久性を増すことができる。
また、上記したように、本発明に適したコレステリックブルー相は光学波長未満の欠陥秩序を有しているので、光学波長領域では概ね透明であり、概ね光学的に等方性を示す。ここで、概ね光学的に等方性を示すというのは、コレステリックブルー相は液晶の螺旋ピッチを反映した色を呈するが、この螺旋ピッチによる呈色を除いて、光学的に等方性を示すことを意味する。なお、螺旋ピッチを反映した波長の光を選択的に反射にする現象は、選択反射と呼ばれる。この選択反射の波長域が可視域に無い場合には呈色しない(呈色が人間の目に認識されない)が、可視域にある場合にはその波長に対応した色を示す。
ここで、400nm以上の選択反射波長域または螺旋ピッチを持つ場合、コレステリックブルー相(ブルー相)では、その螺旋ピッチを反映した色に呈色する。すなわち、可視光が反射されるので、それによって呈する色が人間の目に認識されてしまう。したがって、例えば、本発明の表示素子でフルカラー表示を実現してテレビなどに応用する場合、その反射ピークが可視域にあるのは好ましくない。
なお、選択反射波長は、上記媒質の持つ螺旋軸への入射角度にも依存する。このため、上記媒質の構造が一次元的ではないとき、つまりコレステリックブルー相のように三次元的な構造を持つ場合には、光の螺旋軸への入射角度は分布を持ってしまう。したがって、選択反射波長の幅にも分布ができる。
このため、ブルー相の選択反射波長域または螺旋ピッチは可視域以下、つまり400nm以下であることが好ましい。ブルー相の選択反射波長域または螺旋ピッチが400nm以下であれば、上記のような呈色が人間の目にほとんど認識されない。
また、国際照明委員会CIE(Commission Internationale de l'Eclairage)では、人間の目の認識できない波長は380nm以下であると定められている。したがって、ブルー相の選択反射波長域または螺旋ピッチが380nm以下であることがより好ましい。この場合、上記のような呈色が人間の目に認識されることを確実に防止できる。
また、上記のような呈色は、螺旋ピッチ、入射角度だけでなく、誘電性媒質の平均屈折率とも関係する。このとき、呈色する色の光は波長λ=nPを中心とした波長幅Δλ=PΔnの光である。ここで、nは平均屈折率、Pは螺旋ピッチである。また、Δnは屈折率の異方性である。
Δnは、誘電性物質によりそれぞれ異なるが、例えば液晶性物質を上記媒質層3に封入する物質として用いた場合、液晶性物質の平均屈折率は1.5程度、Δnは0.1程度なので、この場合、呈色する色が可視域にないためには、螺旋ピッチPは、λ=400とすると、P=400/1.5=267nmになる。また、ΔλはΔλ=0.1×267=26.7になる。したがって、上記のような呈色が人間の目にほとんど認識されないようにするためには、上記媒質の螺旋ピッチを、267nmから26.7nmの約半分である13.4nmを引いた253nm以下にすればよい。すなわち、上記のような呈色を防止するためには、上記媒質の螺旋ピッチが253nm以下であることが好ましい。
また、上記の説明では、λ=nPの関係において、λを400nmとしたが、λを国際照明委員会CIEが人間の目の認識できない波長として定めている380nmとした場合には、呈色する色が可視域外とするための螺旋ピッチは240nm以下となる。すなわち、上記媒質の螺旋ピッチを240nm以下とすることにより、上記のような呈色を確実に防止することができる。
例えば、JC1041(混合液晶、チッソ社製)を50.0wt%、5CB(4-cyano-4'-pentyl biphenyl、ネマチック液晶)を38.5wt%、ZLI−4572(カイラルドーパント、メルク社製)を11.5wt%混合した物質がある。この物質は、約53℃以下で液体的な等方相から光学的な等方相に相転移するが、螺旋ピッチが約220nmであり、可視域未満にあるために呈色しなかった。
また、上記混合試料を87.1wt%、TMPTA(trimethylolpropane triacrylate、アルドリッチ(Aldrich)社製)を5.4wt%、RM257を7.1wt%、DMPA(2,2-dimethoxy-2-phenyl-acetophenone)を0.4wt%を混合し、コレステリック−コレステリックブルー相転移温度近傍においてコレステリックブルー相に保ちながら紫外線を照射して、光反応性モノマーを重合した試料を作成した。この試料がコレステリックブルー相を示す温度範囲は、上記混合試料よりも広がった。
上述のように、本発明に適したコレステリックブルー相は光学波長未満の欠陥秩序を有している。欠陥構造は隣り合う分子が大きく捩れていることに起因していているので、コレステリックブルー相を示す誘電性媒質は大きなねじれ構造を発現させるためにカイラル性を示す必要がある。大きな捩れ構造を発現させるためには、誘電性媒質にカイラル剤を加えることが好ましい。
カイラル剤の濃度としてはカイラル剤の持つ捩れ力にもよるが、8wt%または4mol%以上であることが好ましい。カイラル剤の割合が8wt%または4mol%以上とすることにより、コレステリックブルー相の温度範囲が約1℃以上になった。カイラル剤の割合が8wt%または4mol%未満の場合は、コレステリックブルー相の温度範囲が狭くなった。
また、カイラル剤の濃度が11.5wt%以上であることが、さらに好ましい。カイラル剤の濃度が11.5wt%以上の場合、螺旋ピッチが約220nmになり呈色しなかった。
このように、カイラル剤の濃度が高いとコレステリックブルー相を発現しやすくなり、さらにコレステリックブルー相が持つ螺旋ピッチも短くなるので好ましい。
ただし、カイラル剤の添加量が多くなり過ぎると、媒質層3全体の液晶性が低下するという問題が生じる。液晶性の欠如は、電界印加時における光学的異方性の発生度合いの低下に繋がり、表示素子としての機能の低下を招く。また、液晶性が低下することにより、コレステリックブルー相の安定性の低下に繋がり、コレステリックブルー相の温度範囲の拡大が見込めなくなる。このため、カイラル剤の添加濃度の上限値が決まり、本願本発明者等の解析によれば、その上限濃度は80wt%であることがわかった。すなわち、カイラル剤の濃度は80wt%以下であることが好ましい。
また、本実施形態では、カイラル剤としてはZLI−4572を用いたが、これに限るものではない。
なお、上記の説明では、コレステリックブルー相におけるカイラル剤添加による効果を述べてきたが、カイラル剤添加による上記の効果はコレステリックブルー相に限定されるものではなく、スメクチックブルー相やネマチック相等の液晶相を示す誘電性媒質においても、略同様の効果を得ることができる。
〔スメクチックブルー相〕
また、媒質Aとして、スメクチックブルー相を適用することができる。スメクチックブルー(BPSm)相は、コステリックブルー相と同様、高い対称性の構造を有し(例えば、非特許文献5参照)、光の波長以下の秩序を有しているのでほぼ透明な物質であり、電圧印加によって配向秩序が変化して光学的異方性が発現する。すなわち、スメクチックブルー相は、光学的に概ね等方性を示し、電界印加によって液晶分子が電界方向に向こうとするために格子が歪み、異方性を発現する。
なお、スメクチックブルー相を示す物質としては、例えば、非特許文献5に記載されているFH/FH/HH−14BTMHC等が挙げられる。該物質は、74.4℃〜73.2℃でBPSm3相、73.2℃〜72.3℃でBPSm2相、72.3℃〜72.1℃でBPSm1相を示す。BPSm相は、非特許文献5に示すように、高い対称性の構造を有するため、概ね光学的等方性が示される。また、物質FH/FH/HH−14BTMHCに電界を印加すると、液晶分子が電界方向に向こうとすることにより格子が歪み、同物質は異方性を発現する。よって、同物質は、本実施形態の表示素子の媒質Aとして使用することができる。
また、媒質Aとして、水素結合ネットワーク(水素結合体、水素結合性材料)を用いることもできる。ここで、水素結合ネットワークとは、化学結合ではなく水素結合によって形成された結合体を意味する。
このような水素結合ネットワークは、例えば、ゲル化剤(水素結合性材料)を媒質層3に封入する媒質に混合することによって得られる。ゲル化剤としては、アミド基を含むゲル化剤が好ましく、1つの分子内にアミド基を少なくとも2つ含むゲル化剤、尿素系、リシン系のゲル化剤がさらに好ましい。例えば、下記の構造式(4)からなるゲル化剤Aまたは構造式(5)ゲル化剤Bを用いることができる。
Figure 2008046396
Figure 2008046396
これらのゲル化剤は液晶性物質などの誘電性物質を少量のゲル化剤を混入することでゲル化することができる。
また、例えば、非特許文献6(p.314,Fig.2)に記載されているゲル化材(水素結合性材料)、Lys18(下記構造式(6)参照)を媒質層3に封入する媒質に0.15mol%混合することによって得られる。
Figure 2008046396
すなわち、Lys18を媒質に0.15mol%混合することによって実現される、非特許文献6(p.314,Fig.1)のようなGel(ゲル)状態を示す水素結合ネットワークを、配向秩序の安定化に用いることができる。これらの水素結合ネットワークを用いる場合でも、重合性化合物を重合させて得られる配向秩序の安定化と同等の効果を得られる。
また、高分子ネットワークの場合、紫外線照射のプロセス増加、紫外線照射による材料の劣化、未反応基による信頼性の低下といった懸念事項があるが、これらはゲル化剤の場合、発生しないという利点がある。
また、上記構成によれば、水素結合ネットワークによって、媒質と基板との接着性が増し、素子を湾曲させる力が加わった場合の耐久性が増した。
以上のように、本実施形態の表示素子において媒質Aとして使用することができる物質は、電界の印加により光学的異方性(屈折率、配向秩序度)が変化するものでありさえすれば、ポッケルス効果またはカー効果を示す物質であってもよく、キュービック相、スメクチックD相、コレステリックブルー相、スメクチックブルー相の何れかを示す分子からなるものであってもよく、ミセル相、逆ミセル相、スポンジ相、キュービック相の何れかを示すリオトロピック液晶もしくは液晶微粒子分散系であってもよい。また、上記媒質Aは、液晶マイクロエマルションやデンドリマー(デンドリマー分子)、両親媒性分子、コポリマー、もしくは、上記以外の有極性分子等であってもよい。
また、上記媒質は、液晶性物質に限らず、電界印加時に光の波長以下の秩序構造(配向秩序)を有することが好ましい。秩序構造が光の波長以下であれば、光学的に等方性を示す。したがって、電界印加時に秩序構造が光の波長以下となる媒質を用いることにより、電界無印加時と電界印加時とにおける表示状態を確実に異ならせることができる。
以下、本実施形態では、上記媒質Aとして、上記構造式(1)で示される液晶性物質5CBを使用するものとするが、上記媒質Aとしては、これに限定されるものではなく、上述した各種物質そのもの、または、各種物質の混合物を適用することができる。
なお、外部加温装置(加熱手段)により上記液晶性物質5CBをネマチック等方相の相転移直上近傍の温度(相転移温度よりも僅かに高い温度、例えば+0.1K)に保ち、電極4,5間に電圧を印加することにより、透過率を変化させることができた。なお、上記液晶性物質5CBは、約34℃未満の温度でネマチック相、それ以上の温度で等方相を示す。
(表示素子120の表示原理)
次に、本実施形態の表示素子における表示原理について、図8(a)、図8(b)、図9、図10を参照して以下に説明する。
なお、以下の説明では、主に、透過型の表示素子を使用し、電界無印加時に光学的にはほぼ等方(好適には等方)であり、電界印加により光学異方性を用いる場合を例に挙げて説明する。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。
図8(a)は、電界無印加状態(OFF状態)における表示素子120の構成を模式的に示す要部平面図であり、図8(b)は、電界印加状態(ON状態)における表示素子120の構成を模式的に示す要部平面図である。
また、図8(c)は、図8(a)および図8(b)に示した表示素子120における印加電圧と透過率との関係を示すグラフである。また、図9に示した(a)〜(g)は、表示素子120と従来の液晶表示素子との表示原理の違いを、電界無印加時(OFF状態)および電界印加時(ON状態)における媒質の平均的な屈折率楕円体の形状(屈折率楕円体の切り口の形状にて示す)およびその主軸方向にて模式的に示す断面図であり、(a)〜(g)は、順に、電界の印加による光学的異方性の変化を利用して表示を行う表示素子120の電界無印加時(OFF状態)の断面図、該表示素子の電界印加時(ON状態)の断面図、TN(Twisted Nematic)方式の液晶表示素子の電界無印加時の断面図、該TN方式の液晶表示素子の電界印加時の断面図、VA(Vertical Alignment)方式の液晶表示素子の電界無印加時の断面図、該VA方式の液晶表示素子の電界印加時の断面図、IPS(In Plane Switching)方式の液晶表示素子の電界無印加時の断面図、該IPS方式の液晶表示素子の電界印加時の断面図を示す。
物質中の屈折率は、一般には等方的でなく方向によって異なっている。この屈折率の異方性(光学的異方性)は、基板面に平行な方向(基板面内方向)でかつ両電極の対向方向、基板面に平行な方向(基板面内方向)でかつ両電極の対向方向に垂直な方向、基板面に垂直な方向(基板法線方向)を、それぞれx,y,z方向とすると、任意の直交座標系(X1,X2,X3)を用いて下記関係式(1)
Figure 2008046396
(nji=nij、i,j=1,2,3)
で表される楕円体(屈折率楕円体)で示される。ここで、上記関係式(1)を楕円体の主軸方向の座標系(Y1,Y2,Y3)を使用して書き直すと、下記関係式(2)
1 2/n1 2+Y2 2/n2 2+Y3 2/n3 2=1 ・・・(2)
で示される。n1,n2,n3(以下、nx,ny,nzと記す)は主屈折率と称され、楕円体における三本の主軸の長さの半分に相当する。原点からY3=0の面と垂直な方向に進行する光波を考えると、この光波はY1とY2との方向に偏光成分を有し、各成分の屈折率はそれぞれnx,nyである。一般に、任意の方向に進行する光に対しては原点を通り、光波の進行方向に垂直な面が、屈折率楕円体の切り口と考えられ、この楕円の主軸方向が光波の偏光の成分方向であり、主軸の長さの半分がその方向の屈折率に相当する。
まず、電界の印加による光学的異方性の変化を利用して表示を行う表示素子と従来の液晶表示素子との表示原理の相違について、従来の液晶表示素子として、TN方式、VA方式、IPS方式を例に挙げて説明する。
図9の(c)および(d)に示すように、TN方式の液晶表示素子は、対向配置された一対の基板101,102間に液晶層105が挟持され、上記両基板101,102上にそれぞれ透明電極103,104(電極)が設けられている構成を有し、電界無印加時には、液晶層105における液晶分子の長軸方向がらせん状に捻られて配向しているが、電界印加時には、液晶分子の長軸方向が電界方向に沿って配向するようになっている。この場合における平均的な屈折率楕円体105aは、電界無印加時には、図9の(c)に示すように、その主軸方向(長軸方向)が基板面に平行な方向(基板面内方向)を向き、電界印加時には、図9の(d)に示すように、その主軸方向が基板面法線方向を向く。すなわち、電界無印加時と電界印加時とで、屈折率楕円体105aの形状は楕円であり、電界印加によって、その長軸方向(主軸方向、屈折率楕円体105aの向き)が変化する。すなわち、屈折率楕円体105aが回転する。なお、電界無印加時と電界印加時とで、屈折率楕円体105aの形状および大きさは、ほぼ変わらない。
VA方式の液晶表示素子は、図9の(e)および(f)に示すように、対向配置された一対の基板201,202間に液晶層205が挟持され、上記両基板201,202上にそれぞれ透明電極(電極)203,204が備えられている構成を有し、電界無印加時には、液晶層205における液晶分子の長軸方向が、基板面に対して略垂直な方向に配向しているが、電界印加時には、上記液晶分子の長軸方向が電界に垂直な方向に配向する。この場合における平均的な屈折率楕円体205aは、図9の(e)に示すように、電界無印加時には、その主軸方向(長軸方向)が基板面法線方向を向き、図9の(f)に示すように、電界印加時にはその主軸方向が基板面に平行な方向(基板面内方向)を向く。すなわち、VA方式の液晶表示素子の場合にも、TN方式の液晶表示素子と同様、電界無印加時と電界印加時とで、屈折率楕円体205aの形状は楕円であり、電界印加によって、その長軸方向が変化する(屈折率楕円体205aが回転する)。また、電界無印加時と電界印加時とで、屈折率楕円体205aの形状および大きさは、ほぼ変わらない。
また、IPS方式の液晶表示素子は、図9の(g)および(h)に示すように、同一の基板301上に、1対の電極302,303が対向配置された構成を有し、図示しない対向基板との間に挟持された液晶層に、上記電極302,303により電圧が印加されることで、上記液晶層における液晶分子の配向方向(屈折率楕円体305aの主軸方向(長軸方向))を変化させ、電界無印加時と電界印加時とで、異なる表示状態を実現することができるようになっている。すなわち、IPS方式の液晶表示素子の場合にも、TN方式およびVA方式の液晶表示素子と同様、図9の(g)に示す電界無印加時と図9の(h)に示す電界印加時とで、屈折率楕円体305aの形状は変わらずに、その主軸方向が変化する(屈折率楕円体305aが回転する)。
このように、従来の液晶表示素子では、電界無印加時でも液晶分子が何らかの方向(典型的には一方向)に配向している。そして、電界を印加することによって、各液晶分子の配向方向が揃った状態で、その配向方向を変化させて表示(透過率の変調)を行っている。すなわち、電界無印加時と電界印加時とで、屈折率楕円体の形状および大きさを保ったまま(つまり楕円形のまま)になっており、屈折率楕円体の主軸(長軸)方向のみが、電界印加によって回転(変化)することを利用して表示を行っている。したがって、屈折率楕円体の長軸方向は電界印加方向に対して、垂直あるいは平行とは限らない。つまり、従来の液晶表示素子では、液晶分子の配向秩序度はほぼ一定であり、配向方向を変化させることによって表示(透過率の変調)を行っている。さらに換言すれば、従来の液晶表示素子では、電界印加によって、配向秩序度はほぼ一定のまま、配向容易軸の方向が変化する。
これに対し、本実施形態にかかる表示素子120は、図9の(a)および(b)に示すように、電界無印加時における屈折率楕円体35aの形状は球状、すなわち、光学的に等方(nx=ny=nz、可視光波長以上のスケールでの配向秩序度≒0(ほぼゼロ))であり、電界を印加することによって異方性(nx>ny、可視光波長以上のスケールでの配向秩序度>0)が発現して、屈折率楕円体35aが楕円になる(光学的異方性を示す)。また、このとき屈折率楕円体35aの長軸方向は電界方向と平行になる。つまり、誘電性物質の誘電異方性が正(ポジ型液晶)の場合、全ての電圧値において、屈折率楕円体35aの長軸方向は電界方向に平行になり、誘電異方性が負(ネガ型液晶)の場合、全ての電圧値において、屈折率楕円体35aの長軸方向は電界方向に平行垂直(直交状態)になる。本発明において、電界方向と屈折率楕円体35aの主軸方向の少なくとも一つとは、常に平行もしくは直交である。なお、本発明において、可視光波長以上のスケールでの配向秩序度≒0(配向秩序度が殆ど無い)というのは、可視光より小さいスケールで見た場合には、液晶分子等が、ある方向に並んでいる割合が多い(配向秩序がある)が、可視光より大きいスケールで見ると、配向方向が平均化されていて配向秩序が無いことを意味している。すなわち、配向秩序度が可視光波長域、および、可視光波長域より大きい波長の光に対して何ら影響を与えない程度に小さいことを示す。例えば、クロスニコル下で黒表示を実現している状態を示す。一方、本発明において、可視光波長以上のスケールでの配向秩序度>0とは、可視光波長以上のスケールでの配向秩序度が、ほぼゼロの状態よりも大きいことを示し、例えば、クロス二コル下で白表示を実現している状態を示す。(この場合、階調表示であるグレーも含まれる)。
すなわち、本実施形態にかかる表示素子120では、電界無印加時には、図8(a)に示すように媒質層3における分子9は、あらゆる方向を向いている。但し、これらの分子は、可視光波長スケール未満の秩序(秩序構造、配向秩序)を有しているので、光学的異方性が発現せず(可視光波長以上のスケールでの配向秩序度≒0)、図9(a)に示すように、屈折率楕円体35aの形状が球状となる。しかしながら、図8(b)に示すように、電界印加時には、個々の分子9が正の誘電異方性を有しているため基板面内方向(基板面に平行な方向)を向こうとして配向状態が変化する。また、この際、図9(b)に示すように、可視光波長未満の秩序構造に歪みが生じて光学的異方性(可視光波長以上のスケールでの配向秩序度>0)が発現する。このように、本実施形態にかかる表示素子では、電界無印加時には屈折率楕円体35aの形が等方的(nx=ny=nz)であり、電界印加によって屈折率楕円体35aの形に異方性(下界面(すなわち、図9(b)においては下側の基板1との界面)付近:nx>ny、上界面(すなわち、図9(b)においては上側の基板2との界面)付近:ny>nx)が例えばこのように発現する。つまり、本実施形態にかかる表示素子120では、電界印加によって屈折率楕円体35aの形状、大きさが変化する。ここで、上記nx,ny,nzは、それぞれ、基板面に平行な方向(基板面内方向)でかつ両櫛形の電極4,5の対向方向の主屈折率、基板面に平行な方向(基板面内方向)でかつ両櫛形の電極4,5の対向方向に垂直な方向の主屈折率、基板面に垂直な方向(基板法線方向)の主屈折率を表している。
また、図10は、表示素子120における電界印加時の上記媒質Aの一分子(分子9)の屈折率楕円体35aの形状を示す模式図である。このように、上記屈折率楕円体35aの形状は、原点を通り、光波の進行方向に垂直な面を切り口とする、屈折率楕円体(楕円)の切り口の形状にて示され、前記したように、楕円の主軸方向が光波の偏光の成分方向であり、主軸の長さの半分がその方向の屈折率に相当する。
本実施形態かかる上記媒質Aは、上記したように電界無印加時に光学的等方性(等方相)を示し、電界を印加することによって光学的異方性を発現させる。このため、電界無印加時における屈折率楕円体35aの形状は球状、すなわち、光学的に等方であり、電界を印加することによって異方性が発現するようになっている。
そこで、図10に示すように電界方向に垂直な方向の屈折率によって示される、光学的異方性の発現による、電界印加時の楕円の主軸方向(すなわち、光波の偏光の成分方向)の屈折率、つまり、上記分子9の長軸方向における屈折率(異常光屈折率)をne、上記楕円の主軸方向に垂直な方向の屈折率、つまり、上記分子の短軸方向における屈折率(常光屈折率)をnoとすると、上記屈折率異方性(Δn)(複屈折変化)は、Δn=ne−noで表される。
すなわち、本発明において、上記屈折率異方性(Δn)は、Δn=ne−no(ne:異常光屈折率、no:常光屈折率)で示される複屈折変化を示し、本発明は、上記neおよびnoが変化するのに対し、従来の液晶表示装置は、上記neおよびnoは変化しない。
また、上記電界印加時の屈折率楕円体35aの長軸方向は、電界方向に対して平行(誘電異方性が正の媒質の場合)、または、垂直(誘電異方性が負の媒質を用いる場合)となる。
これに対して、従来の液晶表示素子では、電界印加によって屈折率楕円体の長軸方向を回転させて表示を行うので、屈折率楕円体の長軸方向は、電界方向に対して平行または垂直になるとは限らない。
このように、本実施形態にかかる表示素子120は、光学的異方性の方向は一定(電界印加方向は変化しない)で例えば可視光波長以上のスケールでの配向秩序度を変調させることによって表示を行うものであり、媒質Aそのものの光学的異方性(例えば可視光波長以上のスケールにおける配向秩序)の程度を変化させている。したがって、従来の液晶表示素子とは表示原理が大きく異なっている。
なお、媒質層3に封入される媒質Aは、電界の印加によって、光学的異方性の程度が変化するものであればよく、電界無印加時には光学的に概ね等方(可視光以上のスケールでの配向秩序度≒0)であり、電界印加により光学変調を誘起(つまり、電界印加により光学的異方性を示す)される媒質であってもよい。また、上記媒質Aは、電界印加に伴い、分子9、または分子集合体(クラスタ)の可視光以上のスケールでの配向秩序度が上昇(光学変調が既に誘起されている状態(可視光以上のスケールでの配向秩序度>0)から、可視光以上のスケールでの分子9の配向秩序度がさらに上昇)する物質(媒質)であってもよい。
本発明において、電界の印加により媒質Aの光学異方性の程度が変化するとは、前記したように、電界の印加に伴って屈折率楕円体35aの形状が変化することを示し、上記したように電界無印加時に光学的等方性を示し、電界を印加することによって光学的異方性の程度が変化する場合、つまり、電界を印加することによって光学的異方性が発現する場合、屈折率楕円体35aの形状は、電界の印加により、球状から楕円に変化する。
本実施形態にかかる表示素子120は、図8(a)に示すように、櫛形の電極4,5に電界(電圧)を印加していない状態では、プラスチック基板1,2間に封入される媒質Aが等方相を示し、光学的にも等方となるので、黒表示になる。
一方、図8(b)に示すように、電極4,5に電界を印加すると、上記媒質Aの各分子が、その長軸方向が上記電極4,5間に形成される電界に沿うように配向されるので、複屈折現象が発現する。この複屈折現象により、電極4,5間の電圧に応じて表示素子の透過率を変調することが可能になる。
なお、相転移温度(転移点)から十分遠い温度においては表示素子120の透過率を変調させるために必要な電圧は大きくなるが、転移点の直上(転移点より高く、かつ点移転の近傍)の温度では0〜100V前後の電圧で、十分に透過率を変調させることが可能になる。
例えば、電界方向の屈折率と、電界方向に垂直な方向の屈折率とを、それぞれn//、n⊥とすると、複屈折変化(Δn=n//−n⊥)と、外部電界、すなわち電界E(V/m)との関係は、下記関係式(3)
Δn=λ・Bk・E2 …(3)
で表される。なお、λは真空中での入射光の波長(m)、Bkはカー定数(m/V2)、Eは印加電界強度(V/m)である。
カー定数Bkは、温度(T)の上昇とともに1/(T−Tni)に比例する関数で減少することが知られている。このため、カー定数Bkは、転移点(Tni)近傍では弱い電界強度で駆動できていたとしても、温度(T)が上昇するとともに急激に必要な電界強度が増大する。このため、転移点から十分遠い温度(転移点よりも十分に高い温度)では透過率を変調させるために必要な電圧が大きくなるが、相転移直上の温度では、約100V以下の電圧で、透過率を十分に変調させることができる。
(電極4,5)
次に、電極4,5の詳細について説明する。図4は、本実施形態における電極4,5の構造および電極4,5の構造と偏光板吸収軸との関係を説明する図である。
本実施形態では、電極4,5としてITOを使用し、線幅5μm、電極間距離(電極間隔)5μm、厚み0.6μmとした。ただし、上記した電極4,5の材料、線幅、電極間距離、厚みは単なる一例であって、これに限定されるものではなく、他の透明電極材料(例えば、ポリチオフェン系樹脂等の透明な有機系導電性材料など)を用いてもよい。
図4に示すように、電極4,5は、その電界印加方向が、少なくとも2方向になるようにプラスチック基板1上に設けられている。電界印加方向が少なくとも2方向存在することにより、媒質層3に、媒質Aの光学的異方性の方向(屈折率楕円体の長軸方向)が異なる媒質ドメインを形成できる。これにより、表示素子120の視野角特性を向上させることができる。
また、図4に示すように、電極4,5は、上記2方向の電界印加方向が互いに垂直になるように設けられている、これにより、媒質Aの屈折率楕円体の長軸方向が互いに直交する(90度の角度をなす)媒質ドメインを形成できる。このため、各媒質ドメインにおける斜め視角の色つき現象を互いに補償しあうことが可能になる。したがって、透過率を損なうことなく、視野角特性をより向上させることができる。
また、図4に示すように、各ドメインにおける媒質Aの屈折率楕円体の長軸方向が互いに直交し、かつ、各ドメインにおける媒質Aの屈折率楕円体の長軸方向と上記偏光板7,8の偏光板吸収軸7a,8aとの角度が45度の角度をなすよう、電極4,5および偏光板7,8が配置されている。これにより、斜め視角の色付き現象の補償度が増し、視野角特性をさらに向上させることができる。
このように電界印加方向が少なくとも2方向存在する電極としては、例えば、櫛歯部分4a,5aが楔型形状を有し、かつ、互いに噛み合う方向に対向配置された櫛形電極が挙げられる。「楔形形状」とは、櫛歯部分4a,5aが、所定の角度(鋸歯角度α)で折れ曲がった形状のことをいう。また、櫛歯部分4a,5aは、図4に示すように、楔型形状複数有した形状でもよい。このように、楔型形状を複数有する形状の一例としては、鋸歯形状が挙げられる。
ここでいう「櫛形電極」とは、図4に示すように、複数の電極(櫛歯部分)4a,5aが、1つの電極(櫛根部分)4b,5bから、その長手方向に対して所定の方向に伸長した電極のことをいう。また、「鋸歯形状」とは、図4に示すように、櫛歯部分が、櫛根部分4bの長手方向に対して遠ざかる方向に、鋸歯角度αで交互に折れ曲がりながら伸長した形状のことをいう。
このような鋸歯形状を有する電極の一例としては、図4に示す電極4,5の構成が挙げられる。図4に示すように、電極4は、櫛根部分4bと櫛歯部分4aとからなる。櫛歯部分4aは、櫛根部分4bの長手方向に対して遠ざかる方向に、交互に折れ曲がりながら伸長している。また、櫛歯部分4aは、鋸歯成分4cおよび鋸歯成分4dが構成する鋸歯単位4eが連続して伸長した構成になっている。この鋸歯単位4eは、鋸歯成分4cと鋸歯成分4dとが鋸歯角度αの角度をなすように折れ曲がった構成である。そして電極4の櫛歯部分4aにおいては、櫛根部分4bの長手方向に対して遠ざかる方向に、等間隔で交互に折れ曲がりながら伸長した構成になっている。
また、電極5における櫛歯部分5aも、電極4における櫛歯部分4aと同様に、鋸歯成分5cおよび鋸歯成分5dが構成する鋸歯単位5eが連続して伸長した構成になっており、鋸歯単位5eにおける鋸歯成分5cと鋸歯成分5dとが、鋸歯角度αの角度をなすように折れ曲がった構成である。
また、図4に示すように、電極4と電極5とは、それぞれの櫛歯部分4aと櫛歯部分5aとが噛み合うように対向配置されている。すなわち、電極4と電極5とは、櫛歯部分4aにおける鋸歯成分4cおよび鋸歯成分4dが、各々櫛歯部分5aにおける鋸歯成分5cおよび鋸歯成分5dと平行になるように、対向配置されている。それゆえ、電極4,5に電圧を印加すると、電界印加方向が互いに異なる2つの電界が形成される。すなわち、鋸歯成分4cと鋸歯成分5cとの間の電界(図4の電界印加方向45c)、および、鋸歯成分4dと鋸歯成分5dとの間の電界(図4の電界印加方向45d)が形成される。
また、上記の鋸歯単位4e、および、鋸歯単位5eは、その形状から、「く」の字型形状を有しているとも言える。それゆえ、上記「鋸歯形状」は、鋸歯単位に相当する「く」の字成分が、櫛根部分の長手方向に対して遠ざかる方向に伸長した形状であるともいえる。また、「櫛歯部分が鋸歯形状」とは、櫛歯部分が「く」の字型形状を有するジグザグ線の形状であるともいえる。
また、上記の鋸歯単位4e、および、鋸歯単位5eは、その形状から、「v」の字の形状を有しているとも言える。それゆえ、上記「鋸歯形状」は、鋸歯単位に相当する「v」の字成分が、櫛根部分の長手方向に対して遠ざかる方向に伸長した形状であるともいえる。また、「櫛歯部分が鋸歯形状」とは、櫛歯部分が「v」の字型形状を有するジグザグ線の形状であるともいえる。
また、図4に示すように、電界印加方向45cと電界印加方向45dとは互いに垂直である。このため、媒質Aの屈折率楕円体の長軸方向が互いに直交する(90度の角度をなす)媒質ドメインが存在し、各媒質ドメインにおける斜め視角の色つき現象を互いに補償しあうことが可能になる。
また、本実施形態にかかる表示素子120において、媒質層3は、図8(b)に示すように電界印加方向に配向秩序度が上昇することにより光学的異方性が発現し、透過率が変化するシャッタ型の表示素子として機能し得る。したがって、互いに直交する偏光板吸収軸方向に対して、その異方性方向は、45度の角度をなす時に最大透過率を与える。なお、媒質Aの各媒質ドメインの光学的異方性が発現する方位(屈折率楕円体の長軸方向)が、偏光板吸収軸にそれぞれ±θ(度)の角度に存在するとしたときの透過率(P)は、P(%)=Sin2(2θ)より見積もられる。それゆえ、上記θが45度の時の透過率を100%とすれば、ほぼ90%以上であれば人間の目には最大輝度を有していると感じられることから、上記θは、35度<θ<55度であれば、人間の目には最大輝度を有していると感じられる。すなわち、本実施形態に示すように、電界が例えばプラスチック基板1に略平行に印加される表示素子では、各電界印加方向45c,45dの電界印加により発生する光学的異方性の方向と、上記偏光板7,8の吸収軸7a,8aとがなす角度がそれぞれ約45度(45度±10度未満の範囲内、好適には45度±5度以内の範囲内、最も好適には45度)であり、かつ、各電界印加方向45c,45dの電界を印加したときの屈折率楕円体の長軸方向が互いに約90度(90度±20度未満の範囲内、好適には90度±10度の範囲内、最も好適には90度)の角度をなすことが望ましい。
また、本実施形態では、図4に示すように、両プラスチック基板1,2にそれぞれ設けられた偏光板7,8は、互いに偏光板吸収軸方向が直交するように配置されているとともに、各偏光板7,8における偏光板吸収軸7a,8aは、電極4,5により形成される、上述の2方向の電界印加方向45c,45dに対して45度の角度をなしている。
また、本実施形態にかかる表示パネル70は、マトリクス状に配置された複数の画素71の各列および各行にデータ信号線SLiおよび走査信号線GLiがそれぞれ設けられていると共に、各画素71内に、櫛形の電極4からなる櫛形状の画素電極と、櫛形の電極5からなる対向電極とが設けられた構成を有している。より具体的には、本実施形態にかかる表示パネル70は、マトリクス状に配置された複数のデータ信号線SLiおよび走査信号線GLiと、データ信号線SLiと走査信号線GLiとの各交差点に対応して設けられた少なくとも一つのスイッチング素子50と、該スイッチング素子50に接続された櫛形状の画素電極である櫛形の電極4と、上記櫛形の電極4の櫛歯部分4a,4a間に挿設され、上記櫛歯部分4aと咬合するように形成された櫛歯部分5aを有する櫛形状の対向電極である櫛形の電極5とを備え、各櫛歯部分4a,5aが、各画素71内に、両櫛形の電極4,5によって互いに90度の角度をなす電界が印加される少なくとも2つのドメインDM,DM’が形成されるように、プラスチック基板1,2に略平行な面内で、それぞれ湾曲角(屈曲角)90度でジグザグ状(楔型形状)に折れ曲がっている構成を有している。
これにより、本実施形態では、各櫛歯部分4a,5aがそれぞれ90度の角度で折れ曲がっていると共に、各櫛歯部分4a,5aが、互いに咬合するように対向して配置されていることで、櫛歯部分4a,5a間に、互いにほぼ直交する電界が印加される少なくとも2つのドメインDM,DM’(微小領域)が形成されるようになっている。
すなわち、本実施形態にかかる表示パネル70(表示素子120)は、各櫛歯部分4a,5aが、それぞれ、互いに90度の角度をなす屈曲部(鋸歯成分)4a1、4a2、…4ar,5a1、5a2、…5ar(rは2以上の任意の整数)からなり、屈曲部(鋸歯成分)4a1,5a1と屈曲部(鋸歯成分)4a2,5a2とで互いにほぼ直交する方向が互いに90度の角度をなす少なくとも2つのドメインDM,DM’が設けられている構成を有している。
また、本実施形態では、各ドメインDM,DM’の電界印加時における屈折率楕円体の方向と、偏光板7,8の吸収軸とがなす角度は、それぞれ約45度(45度±10度の範囲内、より好適には45度±10度未満の範囲内)であることが好ましく、各ドメインDM,DM’の電界印加時における光学的異方性の方向は、互いに約90度(90度±20度の範囲内、より好適には90度±20度未満の範囲内)の角度をなしていることが好ましい。
つまり、前述したように、偏光板吸収軸に対してθが35度≦θ≦55度の範囲内、特に、35度<θ<55度の範囲内では大きな輝度の差異を感じないために、色付き現象の補償に対しても互いのドメイン領域の輝度が10%程度の差であれば、色の差異をほぼ感じることはなく、この範囲でほぼ実用上十分な効果が得られる。よって、互いのドメイン領域の光学的異方性のなす角度(例えばドメインDM,DM’のなす角度)が、90度±20度の範囲内(つまり、70度以上、110度以下の範囲内)であることが好ましく、90度±20度未満の範囲内(つまり、70度を超えて110度未満の範囲内)であることがより好ましく、90度±10度の範囲内(つまり、80度以上、100度以下の範囲内)であることがより一層好ましく、最も望ましい角度が90度ということになる。
さらに、本実施形態では、各画素71における各ドメインDM,DM’の割合は、屈折率楕円体の長軸方向の異なる2つのドメインDM,DM’の割合(面積和の割合)が1:9〜1:1(好適には、約1:1)であることが好ましい。上記比率が1:9〜1:1の範囲内である場合、目視上、色付きの改善(補償)効果が大きい。
極角±60度の範囲内での色変化(同じ画像を異なる角度から見たときの色変化(色度座標距離√{△x2+△y2}で示される色度座標変化の範囲)を、測定したところ、ドメイン分割を行わない場合に比べて、ドメイン分割した場合(上記のように光学的異方性の向きが90度異なる2つのドメインDM,DM’の割合が1:1の場合)には、色変化(色度座標距離)をおよそ半分程度に収めることができた。また、色変化は、上記2つのドメインの割合が1:9から1:1に近づくのにしたがって小さくなり、1:1のときが最も小さくなった。
また、上記した各説明においては、主に、各画素71内に、屈折率楕円体の長軸方向が同じドメインが2種類設けられている場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、屈折率楕円体の長軸方向が同じドメインが2種類以上設けられていてもよい。つまり、各画素71における媒質Aの屈折率楕円体の長軸方向は、2方向のみに限定されるものではなく、前記したように、各画素に、電界印加時における上記媒質の屈折率楕円体の長軸方向が異なる少なくとも2つのドメインDM,DM’が存在していればよい。
このように、各画素71に、電界印加時における上記媒質Aの光学的異方性の方向が異なる少なくとも2つのドメインDM,DM’が存在し、各ドメインDM,DM’の電界印加時または電界無印加時における屈折率楕円体の長軸方向と、上記偏光板7,8の吸収軸7a,8aとがなす角度が、前記したように、それぞれ45度±10度の範囲内、好適には45度±10度未満の範囲内であり、かつ、各ドメインDM,DM’の電界印加時または電界無印加時における屈折率楕円体の長軸方向が、前記したように、互いに90度±20度の範囲内、好適には90度±20度未満の範囲内の角度をなすことで、斜め視角の色付き現象を互いに補償しあうことができ、透過率を損なうことなく、視野角特性を大きく向上させることができる。
なお、図4では、データ信号線SLを直線になるように形成したが、データ信号線SLを直線とせず、画素71内の電極4,5の折れ曲がりと平行になるように形成してもよい。つまり、電極4,5の櫛歯部分4a,5aをデータ信号線SLに沿って設け、データ信号線SLを、櫛歯部分4a,5aの形状に沿ってジグザグ状に折れ曲がる構成にしてもよい。
また、櫛歯部分4a・5aは、走査信号線GLに沿って延設されていてもよく、データ信号線SLおよび走査信号線GLの少なくとも一方が、ジグザグ状に形成されていてもよい。
以上のように、本実施形態にかかる表示パネルに用いる媒質は、電界無印加時に光学的等方性を示し、電界印加時により光学的異方性を示す。このため、従来の液晶表示素子のように配向膜によって電界無印加時における液晶分子の配向状態を規定する必要が無い。つまり、本実施形態の表示パネルでは、ポリイミド等の配向膜を必要としない。よって、従来、液晶表示素子において、線膨張係数の高さから、プラスチック基板を用いようとする際に問題となっていた配向膜の高温焼成プロセスが必要ない。
なお、本実施形態にかかる表示パネルの周辺を支持して、中央部に3kg/cm2まで圧力を加えても、全く配向乱れは生じなかった。これは、本実施形態にかかる表示パネルに用いた媒質が、従来の液晶に比べて分子の相関距離が短いため、配向乱れの発生が抑制されたと考えられる。つまり、本実施形態にかかる表示パネルに用いられる媒質は、上記のように、分子の相関距離が従来の液晶に比べて小さい。よって、表示パネルに外力が印加された場合、殆ど配向乱れは生じない。また、たとえ配向乱れが生じても従来の液晶表示素子と異なり、媒質の相関距離が短いので、配向乱れが広がることはなく、表示に大きな影響を与えることを抑えることができるので、フレキシブルディスプレイとして用いる場合、最適である。
また、本実施形態にかかる表示パネルは、媒質における光学的異方性の程度の変化を用いて表示を行うので、従来の液晶表示装置よりも高視野角、高速応答を実現することができる。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1で説明した部材と同じ部材については同じ符号を付してその説明を省略する。
実施形態1では、本発明を透過型の表示パネルに適用する場合の例について説明したが、本実施形態では、本発明を反射型の表示パネルに適用する場合の例について説明する。
図11は、本実施形態にかかる表示パネルに備えられる表示素子120bの要部の概略構成を示す断面図である。この表示素子120bは、実施形態1における表示素子120に代えて表示装置60の表示パネル70に備えられるものである。
この図に示すように、本実施形態にかかる表示素子120bは、対向する2枚のプラスチック基板1bおよび2の間に、光学変調層である媒質層3が挟持されてなる。また、プラスチック基板1bにおけるプラスチック基板2との対向面には、反射板91、および媒質層3に電界を印加するための電界印加手段である電極(櫛歯状の電極)4,5が互いに対向配置されている。さらに、プラスチック基板2におけるプラスチック基板1bとの対向面とは反対側の面には、位相差板90および偏光板8が備えられている。
このように、表示素子120bは、基板2側から入射した光をプラスチック基板1bに配置された反射板91によって反射して基板2側から出射する、反射型の表示素子である。したがって、プラスチック基板1bは必ずしも光を透過する必要がなく、透明性を要求されない。
プラスチック基板1bに使用する樹脂のガラス遷移温度Tgは特に限定しないが、耐熱性の観点から200℃以上であることが好ましい。具体的にはシアネート樹脂、ビスマレイミドを構成成分として含む熱硬化型のポリイミド樹脂、多官能エポキシ樹脂などを挙げることができる。なかでも、シアネート樹脂を主成分として含むことが特に好ましい。プラスチック基板1bに使用するシアネート樹脂としては、ビフェノールジシアネート、ジ(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、4,4’−チオジフェニルシアネート、2,2’−ジ(4−シアネートフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビスフェノールEジシアネート、フェノール/ジシクロペンタジエン共重合体のシアネート、フェノールノボラック型シアネート樹脂、クレゾールノボラック型シアネート樹脂、および/またはそのプレポリマーを用いることができる。中でも耐熱性が高く線膨張係数が低いことからノボラック型シアネート樹脂および/またはそのプレポリマーが好ましい。ここでいうノボラック型シアネート樹脂とは任意のノボラック樹脂と、ハロゲン化シアン等のシアネート化試薬とを反応させることで得られるもので、またこの得られた樹脂を加熱することでプレポリマー化することができる。本発明におけるノボラック型シアネート樹脂の数平均分子量は、250未満であると、架橋密度が小さく、耐熱性や線膨張係数に劣る場合があり、900を超えると、架橋密度が上がりすぎて反応が完結できない場合があるため、260以上900以下であることが好ましく、300以上600以下であることがより好ましい。また、プレポリマーを用いる際には、上記数平均分子量のノボラック型シアネート樹脂をメチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン等の溶媒に可溶な範囲でプレポリマー化して用いることが望ましい。本発明で言うところの数平均分子量は、東ソー株式会社製HLC−8120GPC装置(使用カラム:SUPER H4000、SUPER H3000、SUPER H2000×2、溶離液:THF)を用いて、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィー報で測定した値である。本発明の基材層に用いる樹脂組成物は、上記ノボラックシアネート樹脂および/またはそのプレポリマーに、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の他の熱硬化樹脂、フェノキシ樹脂、溶剤可溶性ポリイミド樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルスルホン等の一種類以上の熱可塑性樹脂を併用しても良い。併用する量は樹脂組成物の1重量%以上40重量%以下であることが好ましい。1重量%未満であると添加効果が発現されにくく、40重量%を超えるとノボラック型シアネートの耐熱性、熱膨張等の特性が損なわれる場合がある。
また、プラスチック基板1bに用いる樹脂組成物は、シアネート樹脂等の樹脂成分と共に無機充填材(充填材)を併用することが好ましい。無機充填材は弾性率を高め、線膨張係数を低下させ、吸水性を低下させるために配合されるものである。無機充填材としては、例えばタルク、アルミナ、ガラス、シリカ、マイカ等が挙げられるが、特に限定はしない。これらの中では溶融シリカが低熱膨張性に優れる点で好ましい。さらに溶融シリカの中でも平均粒径2μm以下の球状溶融シリカを用いることが充填性向上の点で好ましい。また、平均粒径は粘度制御の点で0.2μm以上が好ましい。本発明で平均粒径は株式会社堀場製作所粒度分布測定装置 LA920を用いて、レーザ回折/散乱法で測定を行った。無機充填材の配合量としては、シアネート樹脂等の樹脂成分100重量部に対して、10重量部以上400重量部以下が好ましく、より好ましくは40重量部以上300重量部である。10重量部より少ないと無機充填材を添加することによる低熱膨張化の効果が少なく、400重量部を超えると樹脂組成物中の無機充填材の割合が大きすぎて、折り曲げなどに対して弱くなり、つまり柔軟性が低下し、また重量も増大し、ガラス基板の代わりにプラスチック基板を用いることの優位性が減少する。
また、プラスチック基板1bに用いる樹脂組成物には、カップリング剤を添加することが好ましい。カップリング剤は樹脂と無機充填材の界面との濡れ性向上に寄与し、充填材を均一に分散させることができる。その結果として、プラスチック基板1bの耐熱性や吸湿性を改良する効果が認められる。カップリング剤としては通常用いられるものなら何でも使用できるが、これらの中でもエポキシシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アミノシランカップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤の中から選ばれる1種以上のカップリング剤を使用することが無機充填材界面との濡れ性が高く、耐熱性向上の点で好ましい。また、カップリング剤の添加量は、無機充填材に対して0.05重量%以上、3重量%以下が望ましい。
また、シアネート樹脂を用いる場合には、樹脂組成物に硬化促進剤を添加することが好ましい。硬化促進剤としては、公知のものを用いることができ、例としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト等の有機金属塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の3級アミン類、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類、フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール、フェノールノボラック樹脂等のフェノール化合物および有機酸等、またはこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でもフェノールノボラック樹脂が硬化性、イオン性不純物が少ない等の点で好ましい。硬化促進剤の配合量は使用条件に応じて適宜変更することが可能であるが、ノボラック型シアネート樹脂および/またはそのプレポリマーを基準として0.05重量%以上、10重量%以下であることが望ましい。
また、プラスチック基板1bに用いる樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、滑剤、耐熱剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、光安定剤等の成分を配合することができる。
また、プラスチック基板1bは、樹脂層を積層しても良いし、また、銅箔等の金属板とともに加熱成形することにより、金属層と樹脂層から成る積層体とすることもできる。金属層は、水蒸気を透過させにくいため、樹脂層の吸湿による寸法変化を抑える効果が期待でき、好ましい。また、エッチング処理等により、金属層の一部または全てを剥離して用いても良い。
本実施形態で用いるプラスチック基板1bは、以下のように作成した。すなわち、ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製PT60)100重量部およびフェノールノボラック樹脂(住友デュレズ製PR−51714)2重量部をメチルエチルケトンに常温で溶解し、エポキシシランカップリング剤(日本ユニカー製A−187)1重量部、球状溶融シリカ(株式会社アドマテックス製SO−25R 平均粒径0.5μm )150部を添加し、高速攪拌機を用いて10分攪拌した。そして、調製したワニスをガラスクロス(厚さ200μm、日東紡績製、WEA−7628)に含浸し、120℃の加熱炉で2分乾燥してワニス固形分(プリプレグ中に樹脂とシリカの占める成分)が約50%のプラスチック基材を得た。そして、このプラスチック基材を2枚重ね、離型処理した鏡面のステンレス板を当て板として、圧力4MPa、温度220℃で1時間加熱加圧成形を行い、250℃の窒素雰囲気下で1時間硬化させることによってプラスチック基板1bを得た。なお、ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製PT60)100重量部およびフェノールノボラック樹脂(住友デュレズ製PR−51714)2重量部をメチルエチルケトンに常温で溶解したものをプラスチック基板1bの両面にコートし、平滑性を高めた。
また、本実施形態で用いるプラスチック基板2は、従来のガラス基板と同様に、可視光に対する透過率が高く、かつ、複屈折を有しないことが望まれる。プラスチック基板2を構成する透明樹脂は、一般的な透明樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂、フェノール―エポキシ系樹脂混合系、ビスマレイミド―トリアジン樹脂混合系などの熱硬化樹脂や、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、アセチルセルロース、ポリスチレン、ポリエチレンおよびそれらの変性体等などの熱可塑性樹脂を使用することができる。
なお、プラスチック基板2の表面に保護膜(ハードコート層)を形成しても良い。保護膜は、有機材料で形成されても良いし、無機材料で形成されてもよい。典型的には、耐熱性やバリア性(水分や酸素ガスなどを遮蔽する性能)および機械的強度に優れた無機材料(例えば二酸化ケイ素膜)を用いて形成される。なお、プラスチック基板2は、可視光を透過する用途に好適に用いられるものであるので、保護膜としても当然に可視光透過性を有するものが用いられる。また、複合基板と保護膜との界面における反射を抑制するために、複合基板の樹脂マトリクスと屈折率が概ね一致する材料を用いることが好ましい。
また、エポキシ樹脂に、充填材として、ガラスビーズを含浸したプラスチック基板2を用いてもよい。ガラスビーズとしては、例えば、直径1μm程度のガラスビーズを用いてもよい。
ここで、樹脂材料、例えばエポキシ樹脂の線膨張係数(70ppm以上)は、ガラスビーズの線膨張係数(10ppm以下)よりも大きく、充填材の線膨張係数は樹脂材料の線膨張係数よりも小さい。このため、樹脂材料と充填材とを用いてプラスチック基板を形成することによって、樹脂材料のみでプラスチック基板を形成する場合に比べてプラスチック基板の線膨張係数を小さくすることができる。
また、プラスチック基板2の厚さは0.05mm以上1.1mm以下が好ましい。厚さが0.05mm未満の場合には十分な剛性が得られない。また、1.1mm以上の厚さだと重量が増し、ガラス基板に対しての軽量という優位性が薄くなる。
本実施形態では、プラスチック基板2として、酸化珪素(シリカ)を含有させた約0.4mm厚のPES(PolyEther Sulfone)フィルムを用いた。より具体的には、ポリエーテルスルホンの粉末8重量部をジメチルアセトアミド72重量部に溶解させたものに、粒径が約15nmである酸化珪素(シリカ)を20重量%含み分散媒がジメチルアセトアミドであるシリカゾル20重量部を添加して室温で攪拌した後、トルエン中に静かに沈殿させて凝固させ、凝固分を濾別した。残ったトルエンとジメチルアセトアミドの混合液を蒸発させ、押出機で厚さ0.4mmのシート状に押し出しプラスチック基板2を作成した。
プラスチック基板1bにおけるプラスチック基板2との対向面上には、図11に示すように、媒質層3に対してプラスチック基板1bの基板面に略平行な電界(横向きの電界)を印加するための電界印加手段である電極4,5が互いに対向配置されている。
以上のように、本実施形態にかかる表示パネルに用いる媒質は、電界無印加時に光学的等方性を示し、電界印加時により光学的異方性を示す。したがって、実施形態1と略同様の効果を奏する。
また、本実施形態では、スイッチング素子50としてのTFTおよび電極4,5を、プラスチック基板2よりも耐熱性が高く、線膨張係数の低いプラスチック基板1b上に形成している。このため、温度変化による寸法の変動の問題を抑制できる。また、本実施形態では、プラスチック基板(対向基板)2として、プラスチック基板1bよりも線膨張係数が大きいプラスチック基板を用いることができる。これにより、ガラス基板を用いた場合に比べて表示パネルを軽量化できる。
なお、実施形態1では透過型表示パネルの例を説明し、実施形態2では反射型表示パネルの例について説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、透過型表示画素と反射型表示画素とを一つの表示パネルに持つ半透過型表示パネルにも適用可能である。
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1,2で説明した部材と同じ部材については同じ符号を付してその説明を省略する。
図12は、本実施形態にかかる表示パネルに備えられる表示素子120cの要部の概略構成を示す断面図である。この表示素子120cは、実施形態1における表示素子120に代えて表示装置60の表示パネル70に備えられるものである。
この図に示すように、本実施形態にかかる表示素子120cは、対向する2枚のプラスチック基板(TFT基板)1cおよびプラスチック基板(対向基板)2cの間に、光学変調層である媒質層3が挟持されてなる。また、プラスチック基板1cにおけるプラスチック基板2cとの対向面には、媒質層3に電界を印加するための電界印加手段である電極(櫛歯状の電極)4,5が互いに対向配置されている。さらに、プラスチック基板1c,2cにおける、両基板の対向面とは反対側の面には、それぞれ偏光板7,8が備えられている。
図13(a)〜図13(c)は、それぞれ、本実施形態にかかる表示パネルに用いられるプラスチック基板1c,2cの平面図、斜視図、要部を拡大した平面図である。
これらの図に示すように、プラスチック基板1c,2cは、繊維束11と樹脂マトリクス12とを有する複合基板である。つまり、プラスチック基板1c,2cは、樹脂材料中に繊維束11が埋め込まれており、繊維束11によって上記樹脂材料がマトリクス状の領域に分割された構成である。
繊維束11は、基板面内の互いに直交する2つの方向(x軸方向およびy軸方向)に沿って配列されている。具体的には、繊維束11は、図13(c)に示すように、x軸方向に配列された繊維束11(11x)と、y方向に配列された繊維束11(11y)とを交互に上下に交差させて織り合わせた平織の織布を構成している。繊維束11を構成する繊維はいずれも同じで、それぞれの密度も互いに等しい。例えば、繊維束11の幅は約200μmで、繊維束11の間のピッチはx方向およびy方向のいずれにおいても約500μmである。繊維束11を構成する繊維の直径は約10μmである。
プラスチック基板1c,2cは、従来のガラス基板と同様に、可視光に対する透過率が高く、かつ、複屈折を有しないことが望まれる。したがって、プラスチック基板1c,2cを構成する繊維束11および樹脂マトリクス12の材料として、それぞれ可視光に対して透明で、互いの屈折率が略等しく、かつ、複屈折を有しない材料を用いることが好ましい。
樹脂マトリクス(樹脂材料)12としては、一般的な透明樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂、フェノール―エポキシ系樹脂混合系、ビスマレイミド―トリアジン樹脂混合系などの熱硬化樹脂や、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、アセチルセルロース、ポリスチレン、ポリエチレンおよびそれらの変性体等などの熱可塑性樹脂を使用することができる。
また、繊維束11を構成する繊維(透明繊維)としては、Eガラス、Dガラス、Sガラスなどの無機繊維および芳香族ポリアミド等の樹脂などによる有機繊維を使用することができる。なお、本実施形態では、複数本の上記繊維を束にした繊維束11を用いているが、これに限らず、例えば複数本の繊維を基板中に分散させて配置してもよい。ただし、複数本の繊維を束ねて繊維束として用いることが好ましく、織布として用いることがさらに好ましい。
ここで、プラスチック基板1c,2cに用いられる樹脂材料の線膨張係数は、プラスチック基板1c,2cに用いられる繊維の線膨張係数よりも大きい(例えばエポキシ樹脂の線膨張係数は70ppm以上であり、ガラス繊維の線膨張率は10ppm以下である)。このため、繊維束11あるいは繊維布の線膨張係数は樹脂材料の線膨張係数よりも小さい。したがって、樹脂材料と繊維とを用いてプラスチック基板1c,2cを形成することによって、樹脂材料のみでプラスチック基板を形成する場合に比べてプラスチック基板の線膨張率を小さくすることができる。
プラスチック基板(複合基板)1c,2cの機械的強度を向上するため、さらに機械的特性および光学的特性の均一性を高めるために、繊維を面内に均等に配置することが好ましく、繊維径(あるいは繊維束の径)は細い方が好ましく、繊維のピッチ(あるいは繊維束のピッチ)も狭い方がよい。具体的には、個々の繊維径としては、約20μm以下が好ましく、約10μm以下であることがさらに好ましい。また、繊維束11の幅としては200μm以下であることが好ましく、繊維束のピッチは500μm以下であることが好ましい。
また、複合基板の線膨張係数を始めとする物性(例えば、機械特性や熱特性)を等方的にするために、繊維束を互いに略直交する2つの方向に配列(繊維の長軸が向く方向を配列方向という)することが好ましい。
また、互いに略直交する交差する2つの方向に配列された複数の繊維あるいは繊維束は、織布(上記2方向に配列された複数の繊維あるいは繊維束を組み合わせて織った布)であることが好ましい。織布を用いると不織布よりも機械強度を向上する効果が高い。また、織布(繊維布)の織り方は、平織が特に好ましいが、朱子織および綾織等の一般的な織り方であってもよい。また、不織布を使用することもできる。平織の織布は、繊維あるいは繊維束が互いに重なることによって形成される段差が小さいので、朱子織や綾織などに比べて、複合基板の厚さのばらつき(または表面の凹凸)を小さくできるので好ましい。
複合基板の透明性は高い方が好ましいので、繊維と樹脂マトリクスとの界面における拡散反射や繊維による散乱を抑制するために、繊維の屈折率と樹脂マトリクスの屈折率とを略一致させることが好ましい。一般に、繊維の材料よりも、樹脂マトリクスの材料の方が選択の範囲が広く、また、樹脂骨格に置換基(例えばフッ素原子を導入すると低屈折率化、臭素原子を導入すると高屈折率化できる)などの方法で上記の樹脂を改質することによって屈折率を調整することができる。
複合基板は、上記の繊維(繊維束または織布)および樹脂マトリクスの材料を用いて、種々の公知の方法で製造される。熱硬化性樹脂を用いる場合には、圧縮成形法、圧延成形法、注型法やトランスファー成形法などで製造することができ、熱可塑性樹脂を用いる場合は、圧縮法、射出成形法、押出し法などを用いて成形することができる。
プラスチック基板(複合基板)1c,2cの表面に保護膜(ハードコート層)を形成してもよい。保護膜は、有機材料で形成されてもよく、無機材料で形成されてもよい。典型的には、耐熱性やバリア性(水分や酸素ガスなどを遮蔽する性能)および機械的強度に優れた無機材料(例えば二酸化ケイ素膜)を用いて形成される。なお、プラスチック基板1c,2cは可視光を透過する必要があるので、保護膜としても当然に可視光透過性を有するものが用いられる。また、複合基板と保護膜との界面における反射を抑制するために、複合基板の樹脂マトリクスと屈折率が概ね一致する材料を用いることが好ましい。
例えば、直径10μmのEガラス繊維を約50本有する繊維束(幅約200μm)を互いに直交するように約500μmピッチで平織した織布を用い、樹脂マトリクスとしてエポキシ樹脂を用いて形成した複合基板(例えば厚さ0.17mm)は、1nm未満の面内リタデーションと、約20nmの厚さ方向のリタデーションを有し、本実施形態にかかる表示パネルのプラスチック基板1c,2cとして好適に用いられる。なお、これらの面内リタデーションは、日本分光社製分光エリプソメータM−220を用いて測定された。
また、プラスチック基板1c,2cの繊維軸は、直交する2つの方向(x軸方向およびy軸方向)に沿って配列されており、偏光板7,8の吸収軸方向と平行または垂直に設けられている。
また、プラスチック基板1c,2cの厚さは0.05mm以上1.1mm以下であることが好ましい。厚さが0.05mm未満の場合には十分な剛性が得られない。また、1.1mm以上の厚さだと重量が増し、ガラス基板に対して軽量であるという優位性が薄くなる。
以上のように、本実施形態にかかる表示パネルは、x方向およびy方向に配列された複数の繊維を含むプラスチック基板1c,2cを備えている。これにより、このプラスチック基板の線膨張係数を小さくし、温度変化に対する寸法安定性を向上させることができる。つまり、温度変化によるプラスチック基板の寸法の変動を抑えられる。なお、本実施形態では、x方向(第1方向)およびy方向(第2方向)に配列された複数の繊維を備えているが、これに限るものではない。ただし、少なくとも1方向に配列していることが好ましい。
また、プラスチック基板1c,2cは、x方向に配列された複数の繊維と、x方向に略直交するy方向に配列された複数の繊維とを含んでいる。このように、繊維を互いに略直交する2つの方向に配列させることによって、線膨張係数を始めとする物性(例えば、機械特性や熱特性)を等方的にできる。
また、本実施形態では、両プラスチック基板1c,2cにそれぞれ設けられた偏光板7,8は、互いに偏光板吸収軸方向が直交するように配置されている。そして、プラスチック基板1c,2cに含まれる繊維は、直交する2つの方向(x方向およびy方向)に沿って配列しており、この2つの方向は偏光板7,8の吸収軸7a,8aに対して平行または垂直になっている。これにより、プラスチック基板1c,2cの繊維が屈折率異方性を有している場合であっても、光漏れを抑制することができ、コントラスト比の良好な表示パネルを形成できる。
なお、本実施形態では、プラスチック基板1c,2cの両方を複合基板としているが、これに限るものではなく、対向する2枚の基板のうちの少なくとも一方が複合基板であればよい。これにより、軽量かつ安価な表示パネルを製造できる。なお、スイッチング素子、配線、電極、接続端子等を形成する基板に線膨張係数の小さい複合基板を用いることにより、基板の膨張による上記各部材の形成精度の低下や位置ずれを防止できる。
〔実施形態4〕
本発明のさらに他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1〜3で説明した部材と同じ部材については同じ符号を付してその説明を省略する。
図14は、本実施形態にかかる表示パネルに備えられる表示素子120dの断面図である。この表示素子120dは、実施形態1における表示素子120に代えて表示装置60の表示パネル70に備えられるものである。
この図に示すように、本実施形態にかかる表示素子120dは、対向配置されたガラス基板(TFT基板)81とプラスチック基板(対向基板)2との間に、光学変調層である媒質層3が挟持されてなる。また、ガラス基板81におけるプラスチック基板2との対向面には、媒質層3に電界を印加するための電界印加手段である電極(櫛歯状の電極)4,5が互いに対向配置されている。さらに、プラスチック基板1c,2cにおける、両基板の対向面とは反対側の面には、それぞれ偏光板7,8が備えられている。
プラスチック基板2としては、実施形態1に示したプラスチック基板2または実施形態3に示したプラスチック基板2cと同様のものを用いることができる。本実施形態では、厚みが0.1mmのポリエーテルスルホンからなるプラスチック樹脂フィルムを用いた。
ガラス基板81としては、例えば、ホウ珪酸ガラス、ソーダ・ライムガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス、シリカガラスなどからなるものを用いることができる。本実施形態では、ガラス基板81として、無アルカリガラスからなる厚さ0.7mmの基板を用いた。
なお、本実施形態では、ガラス基板81におけるプラスチック基板2との対向面にリブ状スペーサを形成した。より具体的には、ガラス基板81上に感光性樹脂を塗布し、塗布された感光性樹脂の層をフォトリソグラフィ法によってパターニングすることによってリブ状スペーサを形成した。
本実施形態で用いるガラス基板81とプラスチック基板2は線膨張係数が互いに異なるため、貼り合わせる工程において加熱を受けて膨張すると基板間隔が広がる。ここで、スペーサとして例えばプラスチックビーズを用いた場合、基板間隔が広がった際にプラスチックビーズが移動する恐れあり、その場合には、基板間隔を均一に保持することが困難になる恐れがある。しかし、リブ状スペーサはガラス基板81上に固定されるので、基板間隔が広がってもその位置が変わることはない。したがって、一対の基板の線膨張係数が互いに異なる場合には、例えば上記リブ状スペーサのように、少なくとも一方の基板に固定されたスペーサを用いることが好ましい。
本実施形態にかかる表示パネルの周辺を支持して、ガラス基板81側から中央部に4kg/cm2まで圧力を加えても、全く配向乱れは生じなかった。また、落下試験(落下高さを段階的に高くしていき、各落下高さで落下させたときの配向乱れの有無を調べた)でもパネルが割れるまで配向乱れは生じなかった。これは、本実施形態にかかる表示パネルに用いた媒質が、従来の液晶に比べて分子の相関距離が短いため、配向乱れの発生が抑制されたこと、および、一方の基板(プラスチック基板2)に伸縮可能な可撓性樹脂基板を用いることにより、パネル変形による両基板のずれの発生が抑制されたことによると考えられる。
なお、本実施形態では、プラスチック基板2として伸縮しやすい基板(プラスチック樹脂フィルム)を用いたが、ガラスでも非常に薄くすれば基板間のずれは小さくなる。
また、本実施形態では、スイッチング素子50や、電極4,5を、プラスチック基板2に比べて線膨張係数の大きいガラス基板81上に形成した。これにより、プラスチック基板が持つ線膨張率の大きさに起因して温度変化による寸法の変動が生じ、スイッチング素子50や電極4,5の寸法精度が低下することを抑制できる。
〔実施形態5〕
本発明のさらに他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1〜4で説明した部材と同じ部材については同じ符号を付してその説明を省略する。
図15は、本実施形態にかかる表示パネルに備えられる表示素子120eの断面図である。この表示素子120eは、実施形態1における表示素子120に代えて表示装置60の表示パネル70に備えられるものである。
この図に示すように、本実施形態にかかる表示素子120eは、対向する2枚のプラスチック基板(TFT基板)1cおよびプラスチック基板(対向基板)2の間に、光学変調層である媒質層3が挟持されてなる。また、プラスチック基板1cにおけるプラスチック基板2との対向面には、媒質層3に電界を印加するための電界印加手段である電極(櫛歯状の電極)4,5が互いに対向配置されている。さらに、プラスチック基板1c,2における、両基板の対向面とは反対側の面には、それぞれ偏光板7,8が備えられている。
プラスチック基板1cは、実施形態3に示したプラスチック基板1cと同様のものを用いることができる。また、プラスチック基板2としては、実施形態1に示したプラスチック基板2と同様のものを用いることができる。つまり、表示素子120eは、繊維束11と樹脂マトリクス12とを有する複合基板からなるプラスチック基板1cと、繊維束11を含まないプラスチック基板2とを用いて構成されている。
なお、本実施形態では、プラスチック基板2として、厚さ約0.2mmのPES(PolyEther Sulfone)フィルムを用いた。ただし、プラスチック基板2の構成はこれに限らず、例えばエポキシ系樹脂、フェノール樹脂、フェノール―エポキシ系樹脂混合系、ビスマレイミド―トリアジン樹脂混合系などの熱硬化樹脂や、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、アセチルセルロース、ポリスチレン、ポリエチレンおよびそれらの変性体等などの熱可塑性樹脂からなるフィルム状の基板を用いてもよい。
以上のように、本実施形態では、一方の基板には樹脂材料中に繊維が含まれたプラスチック基板を用い、他方の基板には繊維を含まないフィルム状のプラスチック基板を用いている。これにより、両基板にプラスチック基板を用いることで、表示パネルの重量をより軽量化できる。
また、本実施形態では、上記一方の基板(樹脂材料中に繊維が含まれたプラスチック基板)側にスイッチング素子50や電極4,5を形成している。つまり、スイッチング素子50や電極4,5を線膨張係数の小さい方の基板上に形成している。これにより、温度変化に伴う基板の寸法変動を抑制し、スイッチング素子50や電極4,5の形成不良や位置ずれを抑制できる。
なお、本実施形態では、上記一方の基板の線膨張係数を小さくするために、樹脂材料中に繊維を含ませた基板を用いているが、これに限らず、例えばエポキシ樹脂などの樹脂材料中に、充填材としてガラスビーズを含浸したプラスチック基板を用いてもよい。ガラスビーズとしては、例えば直径1μmのガラスビーズを用いることができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明の表示素子は、軽量、広視野角特性および高速応答特性、耐衝撃性に優れた表示素子であり、例えば、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話等の情報端末等に備えられる表示装置、テレビ等の表示装置、パーソナルコンピュータ等のOA機器に用いられる表示装置などに広く適用することができる。
本発明の一実施形態にかかる表示パネルの要部の概略構成を模式的に示す断面図であり、(a)は電界無印加状態(OFF状態)、(b)は電界印加状態(ON状態)を示している。 本発明の一実施形態にかかる表示装置の要部の概略構成を示すブロック図である。 本発明の一実施形態にかかる表示パネルに備えられる表示素子の周辺の概略構成を示す模式図である。 本発明の一実施形態にかかる表示パネルにおける各画素の電極構成を示す他の説明図である。 スメクチックD相におけるキュービック対称性の構造を、ロードネットワークモデルで示す模式図である。 スメクチックD相におけるキュービック対称性の構造を示す模式図である。 コレステリックブルー相、および、本発明の一実施形態における固定化のメカニズムを示す説明図である。 (a)は本発明の一実施形態にかかる表示パネルに備えられる表示素子の、電界無印加状態(OFF状態)を示す要部平面図であり、(b)は上記表示素子の、電界印加状態(ON状態)を示す要部平面図である。(c)は、上記表示素子における印加電圧と透過率との関係を示すグラフである。 本発明の一実施形態にかかる表示パネルと従来の液晶表示パネルとの表示原理の違いを示す説明図である。 本発明の一実施形態にかかる表示パネルにおける、媒質層の屈折率楕円体の形状を示す模式図である。 本発明の他の実施形態にかかる表示パネルの要部の概略構成を模式的に示す断面図である。 本発明のさらに他の実施形態にかかる表示パネルの要部の概略構成を模式的に示す断面図である。 (a)は図12に示した表示素子に用いられるプラスチック基板の平面図であり、(b)は上記プラスチック基板の斜視図であり、(c)は上記プラスチック基板の一部を拡大した平面図である。 本発明のさらに他の実施形態にかかる表示パネルの要部の概略構成を模式的に示す断面図である。 本発明のさらに他の実施形態にかかる表示パネルの要部の概略構成を模式的に示す断面図である。
符号の説明
1,1b,1c プラスチック基板(基板)
2,2c プラスチック基板(基板)
3 媒質層
4,5 電極
7,8 偏光板
7a,8a 偏光板吸収軸
10 環状のシール材
10a 樹脂層(紫外線硬化性樹脂層)
10b 樹脂層(熱硬化性樹脂層)
11 繊維束
12 樹脂マトリクス
35a 屈折率楕円体
50 スイッチング素子
60 表示装置
70 表示パネル
71 画素
81 ガラス基板
90 位相差板
91 反射板
120,120b,120c,120d,120e 表示素子
A 媒質

Claims (28)

  1. 少なくとも一方が透明な一対の基板と、当該一対の基板間に狭持された媒質層とを備え、上記媒質層に電界を印加することによって当該媒質層を光学変調させて表示を行う表示パネルであって、
    上記媒質層は、電界無印加時に光学的等方性を示し、電界印加により光学的異方性の程度が変化する媒質を含み、
    上記一対の基板のうちの少なくとも一方は、プラスチック基板であることを特徴とする表示パネル。
  2. 上記プラスチック基板は、無機酸化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
  3. 上記無機酸化物は、微粒子状であることを特徴とする請求項2に記載の表示パネル。
  4. 上記媒質層の周縁を封止する、紫外線硬化性樹脂からなる環状のシール材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
  5. 上記媒質層の周縁を封止する、熱硬化性樹脂と紫外線硬化性樹脂とからなる環状のシール材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
  6. 上記一対の基板のうちの少なくとも一方における他方の基板との対向面とは反対側の面に偏光板が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
  7. 上記プラスチック基板は、少なくとも一方向に配列された複数の繊維を含むことを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
  8. 上記複数の繊維のうちの少なくとも一部の繊維の配列方向は、上記偏光板の吸収軸方向に対して略平行または略垂直であることを特徴とする請求項7に記載の表示パネル。
  9. 上記プラスチック基板は、第1方向に配列された複数の繊維と、上記第1方向に略直交する第2方向に配列された複数の繊維とを含むことを特徴とする請求項7に記載の表示パネル。
  10. 上記一対の基板の両方がプラスチック基板であることを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
  11. 上記一対の基板のうちの一方がプラスチック基板であり、他方の基板がガラス基板であることを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
  12. 複数の画素を有しており、上記各画素に、電界印加時における上記媒質の屈折率楕円体の長軸方向が異なる少なくとも2つのドメインが存在することを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
  13. 上記各ドメインにおける上記屈折率楕円体の長軸方向と、上記偏光板の吸収軸とがなす角度が45度±10度の範囲内であることを特徴とする請求項12に記載の表示パネル。
  14. 上記一対の基板の線膨張係数が互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
  15. 上記一対の基板のうちの線膨張係数が小さい方の基板に、上記媒質層を駆動するための駆動回路に接続される配線が設けられていることを特徴とする請求項14に記載の表示パネル。
  16. 上記プラスチック基板のうちの少なくとも一方は、複数の繊維が織り合わされてなる繊維布と樹脂材料からなる樹脂層とを含む複合体層を有しており、上記繊維布の線膨張係数が上記樹脂材料の線膨張係数よりも小さいことを特徴とする請求項14に記載の表示パネル。
  17. 上記繊維は無機酸化物で形成されていることを特徴とする請求項7または16に記載の表示パネル。
  18. 上記プラスチック基板のうちの少なくとも一方は、樹脂材料と充填材とを含み、上記充填材の線膨張係数が上記樹脂材料の線膨張係数よりも小さいことを特徴とする請求項14に記載の表示パネル。
  19. 上記充填材は無機酸化物で形成されていることを特徴とする請求項18に記載の表示パネル。
  20. 上記媒質は、電界無印加時に光の波長未満の配向秩序を有していることを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
  21. 上記媒質は、400nm以下の選択波長域または螺旋ピッチを持つことを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
  22. 上記媒質は、電界の2次に比例して屈折率が変化する媒質を含むことを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
  23. 上記媒質は、液晶性物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
  24. 上記媒質は、コレステリックブルー相を示す分子を含むことを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
  25. 上記媒質は、スメクチックブルー相を示す分子を含むことを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
  26. 上記媒質層に、水素結合体が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
  27. 上記媒質層に、高分子が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
  28. 請求項1〜27のいずれか1項に記載の表示パネルを備えていることを特徴とする表示装置。

JP2006222312A 2006-08-17 2006-08-17 表示パネルおよび表示装置 Pending JP2008046396A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006222312A JP2008046396A (ja) 2006-08-17 2006-08-17 表示パネルおよび表示装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006222312A JP2008046396A (ja) 2006-08-17 2006-08-17 表示パネルおよび表示装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2008046396A true JP2008046396A (ja) 2008-02-28

Family

ID=39180186

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006222312A Pending JP2008046396A (ja) 2006-08-17 2006-08-17 表示パネルおよび表示装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2008046396A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009265611A (ja) * 2008-04-29 2009-11-12 Samsung Electronics Co Ltd 表示装置
JP2013218314A (ja) * 2012-03-13 2013-10-24 Semiconductor Energy Lab Co Ltd 高分子/液晶複合体、液晶表示装置及び電子機器
JP2021082835A (ja) * 2008-04-25 2021-05-27 株式会社半導体エネルギー研究所 半導体装置

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021082835A (ja) * 2008-04-25 2021-05-27 株式会社半導体エネルギー研究所 半導体装置
JP7150908B2 (ja) 2008-04-25 2022-10-11 株式会社半導体エネルギー研究所 半導体装置
JP2009265611A (ja) * 2008-04-29 2009-11-12 Samsung Electronics Co Ltd 表示装置
JP2013218314A (ja) * 2012-03-13 2013-10-24 Semiconductor Energy Lab Co Ltd 高分子/液晶複合体、液晶表示装置及び電子機器

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8120746B2 (en) Display panel and display device having medium whose optical anisotropy magnitude changes according to electric field
JP4451299B2 (ja) 表示素子および表示装置
KR100826371B1 (ko) 표시 소자 및 표시 장치
US7342632B2 (en) Display element and display device
JP4246175B2 (ja) 表示素子及び表示装置
US8111358B2 (en) Dispay panel and display apparatus
WO2006025234A1 (ja) 表示素子および表示装置
KR20130047649A (ko) 액정 리타드 패널 및 나노 액정층을 구비하는 횡전계 방식 액정표시소자
JPH08278488A (ja) 液晶表示素子およびその製造方法
TW201643524A (zh) 液晶光學元件
JP3072513B2 (ja) 高分子分散型液晶表示パネル
JP4147217B2 (ja) 表示素子および表示装置
US20130342798A1 (en) Liquid crystal display panel, liquid crystal display apparatus, and liquid crystal display cell
JP5015274B2 (ja) 表示パネルおよび表示装置
JP3050769B2 (ja) 液晶表示素子及びその製造方法
JP2010262055A (ja) 表示素子および表示装置
JP2008046396A (ja) 表示パネルおよび表示装置
JP3108571B2 (ja) 液晶表示入出力装置
JP4938044B2 (ja) 表示素子および表示装置
JP2005215339A (ja) 表示素子
Kim et al. 13‐3: Development of High‐performance TFT‐LCDs using Optically‐Isotropic Nano‐size Encapsulated Liquid Crystals
KR20130080577A (ko) 스마트 패드 디스플레이용 모노머 조합 액정
JP2000298266A (ja) 高分子分散型液晶表示パネル及びその製造方法
JPH07134286A (ja) 光変調素子およびその製造方法