JP2008045079A - 蛍光体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】酸化物原料を用いて、光学用途に適した窒化物または酸窒化物粉末を製造する方法を提供すること。
【解決手段】Alと、Oと、Rの元素(ただし、Rは、Mn、Ce、Pr、Nd、Eu、Tb、Dy、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素)とを含み、必要に応じてNの元素を含む前駆体化合物に対して、還元窒化雰囲気中で加熱処理を施し、前駆体中の酸素含有量を減少させるとともに窒素含有量を増加させることによって、蛍光体粉末を合成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、窒化物または酸窒化物蛍光体の製造に関する。さらに詳細には、AlN結晶に光学活性な元素を付活した蛍光体の製造に関する。
蛍光体は、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)、白色発光ダイオード(LED)などに用いられている。これらのいずれの用途においても、蛍光体を発光させるためには、蛍光体を励起するためのエネルギーを蛍光体に供給する必要があり、蛍光体は真空紫外線、紫外線、電子線、青色光などの高いエネルギーを有した励起源により励起されて、可視光線を発する。しかしながら、蛍光体は前記のような励起源に曝される結果、蛍光体の輝度が低下しがちであるため、輝度低下のない蛍光体が求められている。そのため、従来のケイ酸塩蛍光体、リン酸塩蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、硫化物蛍光体などの蛍光体に代わり、輝度低下の少ない蛍光体として、サイアロン蛍光体などの窒化物や酸窒化物を母体結晶として、これに光学活性な希土類元素を固溶させた蛍光体が提案されている。
一方、酸化物原料を用いて窒化物または酸窒化物を合成する手法として、炭素粉末を利用した還元窒化法が提案されている。例えば、αサイアロンの製造方法として、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、M金属の酸化物にカーボン粉末を添加したものを窒素気流中で1400〜1700℃に加熱して粉末を得る炭素還元窒化法(例えば、特許文献2)が知られている。
αサイアロン以外の窒化または酸窒化物粉末の合成法としては、酸化アルミニウム粉末をアンモニア及び炭化水素の混合ガス中で還元窒化して窒化アルミニウム粉末を得る方法(例えば、特許文献4)が知られている。さらに、酸化ケイ素粉末をアンモニア及び炭化水素の混合ガス中で還元窒化して窒化ケイ素粉末を得る方法(例えば、特許文献5)が報告されている。これらの方法によって得られた窒化アルミニウム粉末および窒化ケイ素粉末は、光学用途ではなく、その発光特性も確認されていない。
特開2006−008721号公報 特開昭62−167209号公報 特開2005−3006692号公報 特開2002−097006号公報 特開昭63−162516号公報
光学用途に適した着色がない粉末を得る方法として、発明者らは、クエン酸を用いたゾルゲル法で合成した複合酸化物を出発原料とするガス還元窒化法を提案した。この方法を利用して、6.9%CaO−10.34%Al−82.76%SiO組成の酸化物混合物を前駆体として、アンモニアガスとメタンガスを流しながら1500℃まで2時間熱処理することにより、前駆体中の酸素含有量が減少すると同時に窒素含有量が増加して、Ca−α−サイアロン(Ca−Si−Al−O−N)を合成することに成功した(例えば、特許文献1,3)。
しかしながら、αサイアロン以外の多成分の窒化物や酸窒化物の蛍光体については、酸化物原料を用いて光学用途に適した窒化物、酸窒化物蛍光体を合成する手法は確立されていない。
本発明は、酸化物原料を用いて、光学用途に適した窒化物または酸窒化物を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、かかる状況下、窒化物や酸窒化物を構成する元素を含む前駆体化合物(酸化物原料)に対して、還元窒化雰囲気のガスを反応させる手法について鋭意研究を重ねた結果、特定の前駆体組成を有するものは、焼成反応によりAlN結晶を母体とする蛍光体粉末となることを見出し、この知見を押し進めた結果、以下(1)〜(12)に記載する構成を講ずることによって、微細かつ光学特性に優れた粉末が得られることを知見したものである。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。具体的に、以下(1)から(12)に述べる。
(1)窒化物または酸窒化物を主成分とする蛍光体を製造する方法であって、Alと、Oと、Rの元素(ただし、Rは、Mn、Ce、Pr、Nd、Eu、Tb、Dy、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素)とを含み、必要に応じてNの元素を含む前駆体化合物に対して、還元窒化雰囲気中で加熱処理を施すことを特徴とする方法。ここで、前記還元窒化雰囲気中での加熱処理において、前駆体中の酸素含有量を減少させるとともに窒素含有量を増加させることにより蛍光体を合成する。
(2)合成物である窒化物または酸窒化物を主成分とする蛍光体中に含まれる酸素と窒素の量が、
0 ≦ O /(O + N) ≦ 0.20
の関係を満たす、上記(1)に記載の方法。
(3)該窒化物または酸窒化物を主成分とする無機結晶が、AlN、AlNポリタイプ(結晶構造中にAlNからなる4面体ユニットを有する結晶)、あるいはAlNと同一の結晶構造を有する固溶体結晶である、上記(1)に記載の方法。
(4)前記前駆体化合物が、酸化アルミニウムと、R元素を含む化合物とを含むことを特徴とする上記(1)に記載の方法。ここで、酸化アルミニウムは酸化アルミニウム粉末であってよい。従って、前記前駆体化合物が、酸化アルミニウム粉末とR元素を含む化合物の混合物であってよい。
(5)前記前駆体化合物が、酸化アルミニウム粉末の表面にR元素の化合物が付着した複合体を含むことを特徴とする上記(1)に記載の方法。ここで、該複合体は、所定の媒体に酸化アルミニウム粉末を分散させた後、乾燥して得ることができる。また、該所定の媒体は、R元素を含む化合物を溶解させた溶媒を含んでよい。
(6)前記前駆体化合物の平均粒径(比表面積換算径)が20nm以上500nm以下であり、前記窒化物または酸窒化物を主成分とする蛍光体の平均粒径が20nm以上500nm以下であることを特徴とする上記(1)に記載の方法。また、前記前駆体化合物の平均粒径(メジアン径D50)が1μm以下であり、合成物である窒化物または酸窒化物を主成分とする蛍光体の平均粒径が1μm以下であってもよい。
(7)前記還元窒化雰囲気は、アンモニアガス、または水素と窒素の混合ガスを含むことを特徴とする上記(1)に記載の方法。ここで、前記還元窒化雰囲気に少なくともアンモニアガス、または水素と窒素の混合ガスを含むようにしてもよい。
(8)前記還元窒化雰囲気は、炭化水素ガスを含むことを特徴とする上記(7)に記載の方法。
(9)前記還元窒化雰囲気がアンモニアガスと、メタンまたはプロパンガスの混合ガスを含むことを特徴とする上記(1)に記載の方法。ここで、該還元窒化雰囲気がアンモニアガスと、メタンまたはプロパンガスの混合ガスであってよい。
(10)前記前駆体中の炭素元素の含有量が5質量%以下であることを特徴とする上記(1)に記載の方法。
(11)前記加熱処理の温度が、1000℃以上1800℃以下である、上記(1)に記載の方法。
(12)Rの元素として、少なくともMnを含む上記(1)に記載の方法。
本発明の製造方法により得られる蛍光体は、従来の材料より高純度であり、蛍光体として適している。このような蛍光体は、VFD、FED、PDP、CRT、白色LEDなどにおいて好適であり、産業の発展に大いに寄与することが期待される。
以下に本発明を実施例に基づいて詳しく説明する。
本発明では、前駆体化合物として、Alと、Oと、Rの元素(ただし、Rは、Mn、Ce、Pr、Nd、Eu、Tb、Dy、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素)とを少なくとも含み、必要に応じてNの元素を含むものを使用する。
Alの元素は、光学用途のAlN無機結晶を構成する金属元素である。Rの元素は発光中心として働く金属元素であり、元素の種類によって励起特性や発光色が異なるので、用途により適するR元素を選定するとよい。前駆体を構成する元素のうち、RとAlの多くは焼成中に揮散することなく反応物中に残留する。一方、Oの一部は焼成中に雰囲気ガスと反応して反応物の外に取り除かれ、替わりに反応ガスからNが反応物中に導入される。このようにして、前駆体化合物からRとAlとOとN、またはRとAlとNからなる無機結晶が合成される。
RとしてMnを含むもの、例えばMnが固溶したAlN結晶は、紫外線または電子線で励起されて赤色を発光する蛍光体となる。特に、電子線で高輝度に発光するので、CRTやFEDなどの電子線励起の画像表示装置の用途に適している。
酸素の除去と窒素の導入は、処理温度、処理ガスの組成と流量、反応時間により制御し、合成物である窒化物または酸窒化物を主成分とする無機結晶中に含まれる酸素と窒素の量が、
0 ≦ O /(O + N) ≦ 0.20
の関係を満たすまで処理を行うのがよい。これより酸素が多いと輝度が高く良質な蛍光体または蛍光体用のホスト結晶が得られ難い。ここで、O/(O+N)が0となるときは、酸化物が実質的にない場合である。
合成物である窒化物または酸窒化物を主成分とする無機結晶の形態は問わないが、高輝度の蛍光体とする場合は粉末形態が望ましい。その粒度は、用途により異なるが、ナノ蛍光体とする場合は、出発原料として平均粒径(比表面積換算径)が20nm〜500nm程度のナノ粉末を用いるのがよい。通常の蛍光体である1μm〜10μmの粒径を得るには、50nm〜5μmの粒径の原料粉末を用いて、熱処理中に1μm〜10μmの粒径まで粒成長させることができる。また、熱処理後にさらに高温で熱処理を行うことにより粒成長処理を行ってもよい。ここで、比表面積換算径とは、粉体の比表面積をBET法により測定し、その値と同じ比表面積を与える球体の直径として定義される。
なお、本明細書において、平均粒径とは、以下のように定義される。粒子径は、沈降法による測定においては沈降速度が等価な球の直径として、レーザ散乱法においては散乱特性が等価な球の直径として定義される。また、粒子径の分布を粒度(粒径)分布という。粒径分布において、ある粒子径より大きい質量の総和が、全粉体のそれの50%を占める場合の粒子径が、平均粒径D50として定義される。この定義および用語は、いずれも当業者において周知であり、例えば、JISZ8901「試験用粉体及び試験用粒子」、または、粉体工学会編「粉体の基礎物性」(ISBN4−526−05544−1)の第1章等諸文献に記載されている。本発明においては、分散剤としてヘキサメタクリン酸ナトリウムを添加した水に試料を分散させ、レーザ散乱式の測定装置を使用して、粒子径に対する体積換算の積算頻度分布を測定した。なお、体積換算と重量換算の分布は等しい。この積算(累積)頻度分布における50%に相当する粒子径を求めて、平均粒径D50とした。以下、本明細書において、平均粒径は、上述のレーザ散乱法による粒度分布測定手段によって測定した粒度分布の中央価(D50)に基づくことに留意されたい。平均粒径を求める手段については、上述以外にも多様な手段が開発され、現在も続いている現状にあり、測定値に若干の違いが生じることもあり得るが、平均粒径それ自体の意味、意義は明確であり、必ずしも上記手段に限定されないことを理解されたい。
ここで、BET法は、1938年にBrunauer,Emmett,Tellerの3名が単分子層吸着理論であるLangmuir理論を多分子層吸着に拡張した、比表面積の計算方法である。分子は無限に積み重なって吸着できるものとし、吸着層間には相互作用がなく、各層においてLangmuir式が成立するものと仮定する。BET式は、Pが一定温度で吸着平衡状態であるときの吸着平衡圧、Poが吸着温度における飽和蒸気圧、Vが吸着平衡圧Pにおける吸着量、Vmが単分子層吸着量(気体分子が固定表面で単分子層を形成したときの吸着量)、CがBET定数(固体表面と吸着物質と間の相互作用に関するパラメータ)として、以下のように表される。
具体的には、粉体の比表面積分析は、粉体粒子表面に吸着占有面積の判った分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める。最も良く利用されるのが不活性気体の低温低湿物理吸着によるものである。
前駆体化合物として、RとAlそれぞれの元素の化合物の混合体を用いる場合は、以下の方法により前駆体化合物を準備することができる。
すなわち、前駆体化合物は、加熱により酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウムまたは窒化アルミニウムとなる化合物(化合物AlX)と、加熱によりRの酸化物、酸窒化物または窒化物となる化合物(化合物RX)とを少なくとも含む混合物である。ただし、窒化アルミニウム及びRの窒化物のみからなる組み合わせは、含まない。
加熱により酸化アルミニウムになる化合物とは、空気中や酸素を含む雰囲気中または不活性雰囲気中で加熱したときに酸化アルミニウムになる化合物であり、加熱により酸窒化アルミニウムあるいは窒化アルミニウムとなる化合物とは、窒素やアンモニアなどのガスを構成する分子中に窒素元素を含むガスの雰囲気中または不活性雰囲気中で加熱したときに酸窒化アルミニウムあるいは窒化アルミニウムになる化合物である。AlXとしては、Alの酸化物、水酸化物、アルコキシド、炭酸塩、硝酸塩、塩化物、フッ化物、有機酸塩、クエン酸塩などを挙げることができる。Alの酸化物、すなわち酸化アルミニウムを原料として使用する場合は、α型(三方晶系のコランダム型構造、空間群:R3c)のほか、γ型、δ型、ρ型、θ型などの結晶構造のものを用いることができる。中でも、γ型とδ型は反応性が高いので原料として優れている。
加熱によりRの酸化物となる化合物とは、空気中や酸素を含む雰囲気中または不活性雰囲気中で加熱したときにRの酸化物になる化合物であり、加熱によりRの酸窒化物あるいは窒化物になる化合物とは、窒素やアンモニアなどのガスを構成する分子中に窒素元素を含むガスの雰囲気中または不活性雰囲気中で加熱したときにRの酸窒化物あるいは窒化物になる化合物である。RXとしては、Rの酸化物、水酸化物、アルコキシド、炭酸塩、硝酸塩、塩化物、フッ化物、有機酸塩、クエン酸塩などを挙げることができる。
前駆体中のOとNの比は最終製品の割合よりもOが多い組成とするのがよい。このようにして決められた組成の前駆体を焼成するにあたり、焼成反応の時間により制御してO/N比が所定の値となったところで反応を終了させることにより、所定の組成を得ることができる。
反応を終了させるO/N比としては、合成物である窒化物または酸窒化物を主成分とする無機結晶中に含まれる酸素と窒素の量が、
0 ≦ O /(O + N) ≦ 0.20
の関係を満たす組成が、蛍光体のホストとした場合の輝度が高くなるため光学用途として好ましい。
特に微細な粉末を得たい場合は、次の方法によるのがよい。Rを含む化合物を溶剤に溶解させた溶液中にAlX粒子(好ましくは酸化アルミニウム粒子)を分散させた後に、乾燥、脱溶剤することにより、AlX粒子表面にRの塩が付着した形態の前駆体化合物が得られる。
この工程の一手法として、RXを水溶液としたものにAlXを均一に分散させ攪拌しながらクエン酸を添加してAlX粒子の表面にRXのクエン酸塩を付着させた後に乾燥、脱水して得た複合クエン酸塩の前駆体化合物を焼成して合成する手法を挙げることができる。ここで用いるRXとしては、Rの硝酸塩や塩化物を挙げることができる。
別の手法として、RXを水または溶剤に溶解させ、これにAlXを均一に分散させた後に、噴霧乾燥して得たAlX粒子表面にRXが付着した前駆体化合物を焼成する手法を挙げることができる。
本発明では、前駆体化合物に対して還元窒化雰囲気中で加熱処理を施し、前駆体中の酸素含有量を減少させるとともに窒素含有量を増加させることにより、酸窒化物あるいは窒化物の無機結晶を生成させる還元窒化処理が行われる。
還元窒化処理に用いられる雰囲気ガスは、窒素元素を含むガス及び水素や炭化水素などの還元性ガスの混合ガスとすることができる。アンモニアガスまたはアンモニアガスと炭化水素ガスの混合ガスが好ましい。また必要に応じて、窒素ガスや希ガス(例えば、アルゴンガス)など比較的不活性なガスとの混合ガスとすることができる。アンモニアガスを用いた場合は、アンモニア中の水素が前駆体中の酸素を除去し、アンモニア中の窒素が替わりに前駆体に取り込まれると考えられる。アンモニアガスと炭化水素ガスの混合ガスを用いた場合は、炭化水素ガスと前駆体中の酸素が反応してHOやCOとして取り除かれ、アンモニア中の窒素が替わりに前駆体に取り込まれると考えられる。
炭化水素ガスとしては、反応条件で気体であることが必要であり、メタン、エタン、プロパン、ブタンや、LNGから得られるガスなどの短鎖の炭化水素ガスが用いられる。混合ガス中のアンモニアに対する炭化水素の割合は、10容積%以下が望ましく、更に3容積%以下が望ましい。3容積%を超えると焼成中に炭素が析出して粉体中に残留するおそれがある。最適なガスの流速は反応容器によって異なるが、0.01〜0.1m/秒が一般には好ましい値と考えられる。反応温度は、1000℃〜1800℃(1000℃以上1800℃以下)、望ましくは1200℃〜1600℃である。この温度範囲内で、低温で焼成すると微細な粉末が得られ、高温で焼成するとやや粒径が大きい結晶性が良い粉末が得られ易い。反応時間は原料粉末の組成や種類によって異なるが、ガス還元窒化による酸素量減少と窒素量増加が目的とする無機結晶の理論値となったところで終了するのがよい。典型的な反応時間は0.5〜5時間とするのが好ましい。
本発明では必要に応じて、ガス還元窒化反応を促進するために、前駆体化合物に、カルシウム、カリウム、アルミニウムから選ばれる元素のフッ化物、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩の1種または2種以上の反応促進剤を添加した後に還元窒化雰囲気中で加熱処理を施すことができる。これらの反応促進剤は高温で液相を生成して拡散が活発になるため反応が効率よく進む。また、粒成長も促進されるため、特に大きな粒径の粉末を製造する場合はこれらの反応促進剤を添加するとよい。上記の反応促進剤のなかでも、フッ化カルシウム(CaF)、塩化カルシウム(CaCl)、フッ化アルミニウム(AlF)、塩化アルミニウム(AlCl)又はこれらの組合せによる効果が大きい。反応促進剤の添加割合は、前駆体化合物100gに対して0.5gから20gの範囲がよい。0.5gより少ないと反応促進効果が少なく、20gより多いと他の組成物ができ易くなると考えられるためである。また、必要に応じて反応後に、反応促進剤を溶解する溶剤(水、有機溶剤、酸)で処理することができる。なかでもフッ化水素酸、硫酸、塩酸、硝酸の1種または2種以上の混合物の水溶液は反応促進剤の除去効果が高い。
上述してきた方法によって得られる、本発明の窒化物または酸窒化物を主成分とする蛍光体は、AlN、AlNポリタイプ(結晶構造中にAlNからなる4面体ユニットを有する結晶)、あるいはAlNと同一の結晶構造を有する固溶体結晶を含むことに留意されたい。
次に本発明を以下に示す実施例によってさらに詳しく説明するが、これはあくまでも本発明を容易に理解するための一助として開示したものである。従って、本発明が、これらの実施例に限定されるものではないことはいうまでもない。
実施例1: Mnを固溶させたAlNを得るべく以下の合成を行った。
合成工程を図1に示す。気相法により合成した比表面積径40nmの酸化アルミニウム粉末(結晶相:γ−Al、δ−Al)2.0gを純水に添加して、超音波照射を15分間行うことにより酸化アルミニウム粉末が均一に分散したコロイド水溶液を得た。次に、このコロイド水溶液にMn濃度1000mg/mlの硝酸マンガン(Mn(NO)水溶液4.18mlを添加し、さらに15分間の超音波照射を行い、均一混合溶液を得た。この溶液を加熱して水分を除去して乾燥させた後、メノウ乳鉢で解砕して酸化アルミニウム粒子表面にMnの硝酸塩を付着させた粉末状の前駆体を得た。前駆体の組成(単位モル%)は、
99.6%Al−0.4%Mn(NO
である。
次に、この前駆体粉末約0.3gをアルミナボートに入れて、内径24mmのアルミナ炉心管中に置いて、炉心管の外部に発熱体を有する管状炉にセットした。炉心管の一端よりアンモニアガスを流量325ml/分で導入し、500℃/時の速度で700℃まで昇温した。この温度よりアンモニアガス流量を1300ml/分に設定すると同時にメタンガスを流量19.5ml/分で炉内に導入し、引き続き1300℃まで500℃/時の速度で昇温した。当温度で1時間保持したのち、メタンガスの供給を停止し、アンモニア気流中で室温まで冷却した。
得られた合成物は原料粉末の形態を保っており、メノウ乳鉢で簡単にほぐすことができた。合成物は、目視にて着色がないことを確認した。BET法による比表面積計を用いて測定した比表面積は31.4m/gであり、この値から計算した粒径は59nmであった。この粉末に標準試料としてSiを添加し、X線回折測定を行った。得られたX線回折パターン(図2)を調べた結果、AlNの単相であった。X線から求めた格子定数は、a=3.1112(1)Å、c=4.9793(2)Åであった。また、比較例1で合成したMnを添加しない純粋なAlNのX線回折結果(図6)と比べて、不純物相は検出されなかった。
合成物20mgをスズカプセルに投入し、これをニッケルバスケットに入れたものを、LECO社製TC−436型酸素窒素分析計を用いて、粉体試料中の酸素と窒素を定量した。測定結果は、窒素含有量は31.6質量%、酸素含有量は5.54質量%であり、前駆体と比べて窒素含有量は増加し、酸素含有量は減少したことが確認された。走査型電子顕微鏡を用いて、合成物の形態を観察した。図3に示す様に、直径100nm以下の微細な粒子から構成されており、BET法で測定した粒径の値と合致した。
合成物の光励起による蛍光特性(フォトルミネッセンス)を、日立製作所製蛍光分光光度計F4500を用いて測定した。測定結果は図4のとおりであり、200nmか300nmの紫外線で励起されて、550nmから650nmの範囲の波長を持つ蛍光が観察され、610nm近辺にピークを持つ赤色の光を発光する蛍光特性を有することが確認された。なお、最も効率よく励起される波長は240nmである。
合成物の電子線励起によるカソードルミネッセンス(CL)蛍光特性を、CL検知器を備えたSEMを用いて評価した。この装置は、電子線を照射して発生する可視光を光ファイバーで分光器に導き、電子線励起による発光スペクトルを測定することができる。5kVの加速電圧の電子線で励起したところ、図5に示す発光スペクトルが観察された。この蛍光体は電子線で励起されて600nmの波長の赤色発光を示すことが確認された。また、数十個の粒子のCL特性を測定したところ、特定の部位が発光している箇所はなく粒子内が均一に発光していることが確認された。本発明の手法によれば、Mnを付活しAlN蛍光体の微細な粉末を製造することができる。
比較例1:
実施例1の手順に従いMnを添加しない前駆体を作製し、実施例1と同じ条件で還元窒化反応処理を行った。
得られた合成物は原料粉末の形態を保っており、メノウ乳鉢で簡単にほぐすことができた。BET法による比表面積計を用いて測定した比表面積は41m/gであり、この値から計算した粒径は45nmであった。この粉末に標準試料としてSiを添加し、X線回折測定を行った。得られたX線回折パターン(図6)を調べた結果、AlNの単相であった。X線から求めた格子定数は、a=3.1110(1)Å、c=4.9796(2)Åであった。また、合成物20mgをスズカプセルに投入し、これをニッケルバスケットに入れたものを、LECO社製TC−436型酸素窒素分析計を用いて、粉体試料中の酸素と窒素を定量した。測定結果は、窒素含有量は31.3質量%、酸素含有量は6.96質量%であり、前駆体と比べて窒素含有量は増加し、酸素含有量は減少したことが確認された。
合成物に254nmの波長の紫外線を照射したところ、目視で蛍光は観察されなかった。
実施例2〜3;
実施例1の手順に従いMn濃度の異なる前駆体の還元窒化反応処理を行ったところ、表1に示す粉末が得られた。
実施例1と同様の方法で、フォトルミネッセンスおよびカソードルミネッセンスを測定した。実施例2のフォトルミネッセンス測定結果を図7に示す。実施例3のフォトルミネッセンス測定結果を図8に示す。いずれの試料も、実施例1と同様に、紫外線で励起され赤色の蛍光を示した。
実施例2および実施例3のカソードルミネッセンス測定結果を図5に示す。いずれの試料も、電子線で励起され赤色の蛍光を示した。
本発明の製造方法によれば、不純物の混入による着色のない窒化物または酸窒化物を含む蛍光体またはその光学用途に適した無機化合物が容易に得られるので、産業上好ましい。また、本発明の製造方法によって得られる無機化合物は、VFD、FED、PDP、CRT、白色LED等の蛍光体材料が適用される用途に適用され得る。
実施例1の手順を示すフローチャートである。 Al0.998Mn0.002N(実施例1)合成物のX線回折パターンである。 実施例1の合成物のSEM写真である。 実施例1のフォトルミネッセンススペクトルである。 実施例1、実施例2、実施例3のカソードルミネッセンススペクトルである。 Mnを含まないAlN(比較例1)のX線回折パターンである。 実施例2のフォトルミネッセンススペクトルである。 実施例3のフォトルミネッセンススペクトルである。

Claims (12)

  1. 窒化物または酸窒化物を主成分とする蛍光体を製造する方法であって、Alと、Oと、Rの元素(ただし、Rは、Mn、Ce、Pr、Nd、Eu、Tb、Dy、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素)とを含み、必要に応じてNの元素を含む前駆体化合物に対して、還元窒化雰囲気中で加熱処理を施すことを特徴とする方法。
  2. 前記窒化物または酸窒化物を主成分とする蛍光体中に含まれる酸素と窒素の重量比が、
    0 ≦ O /(O + N) ≦ 0.20
    の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記窒化物または酸窒化物を主成分とする蛍光体が、AlN、AlNポリタイプ(結晶構造中にAlNからなる4面体ユニットを有する結晶)、あるいはAlNと同一の結晶構造を有する固溶体結晶を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 前記前駆体化合物が、酸化アルミニウムと、R元素を含む化合物とを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  5. 前記前駆体化合物が、酸化アルミニウム粉末の表面にR元素の化合物が付着した複合体を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  6. 前記前駆体化合物の平均粒径(比表面積換算径)が20nm以上500nm以下であり、前記窒化物または酸窒化物を主成分とする蛍光体の平均粒径が20nm以上500nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  7. 前記還元窒化雰囲気は、アンモニアガス、または水素と窒素の混合ガスを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  8. 前記還元窒化雰囲気は、炭化水素ガスを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
  9. 前記還元窒化雰囲気がアンモニアガスと、メタンまたはプロパンガスの混合ガスを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  10. 前記前駆体中の炭素元素の含有量が5質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  11. 前記加熱処理の温度が、1000℃以上1800℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  12. Rの元素として、Mnを含む請求項1に記載の方法。
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