JP2008041282A - 誘導加熱調理器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】直流電圧を変換して高周波の交流電圧を供給するインバータと、前記インバータの出力段に接続され、それぞれ略同心円状且つ略同一平面上に配設された複数の加熱コイルと、前記加熱コイルの下方に配設された高透磁率材料とを備えた誘導加熱調理器であって、前記各加熱コイルのインダクタンスをそれぞれ略一致させることを特徴とする。
【選択図】図6
Description
また、加熱コイルと被加熱物との間のギャップを可変させ、インダクタンスを可変とする技術として、『直流電源と、前記直流電源の一端に接続される加熱コイルと、前記加熱コイルの他端と前記直流電源の他端に接続される第一スイッチング素子と、前記加熱コイルと共振回路を形成する第一共振コンデンサと、前記加熱コイルまたは前記第一共振コンデンサと並列接続される第二スイッチング素子と第二共振コンデンサの直列回路と、前記加熱コイルと負荷との間隙(以後、「ギャップ」と称する。)を変えるギャップ切替手段を有するインバータ回路と、前記インバータ回路を駆動・制御する駆動制御回路を備え、前記駆動制御回路は、前記両スイッチング素子を一定周波数で交互に導通するとともに、前記ギャップ切替手段は、前記加熱コイルにより加熱される負荷に応じてギャップを切替えてなる誘導加熱調理器。』というものが提案されている(特許文献2)。
また、『調理容器を載置するトッププレートと、前記トッププレートの下部に配設され前記調理容器を加熱する加熱コイルと、前記加熱コイル下方に磁性体を保持するとともに、前記加熱コイルを保持する加熱コイル保持部材とを有し、前記加熱コイル保持部材に絶縁板を載置し、絶縁板の厚みでトッププレートと加熱コイルとのギャップを所定の距離に維持した誘導加熱調理器。』というものも提案されている(特許文献3)。
さらには、有限要素法を用いて被加熱物とリターンヨークから加熱コイルのインダクタンス値を導出しているものもある(非特許文献1)。
また、加熱効率の低下を回避するためにコイル電流位相差を0に近づけると、加熱効率は向上するものの、コイル電流が減少し所定電力投入が困難となる場合があるという課題もあった。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、加熱効率の低下を回避し、また所定電力投入を容易にすることのできる誘導加熱調理器を得ることを目的とするものである。
直流電圧を変換して高周波の交流電圧を供給するインバータと、
前記インバータの出力段に接続され、それぞれ略同心円状且つ略同一平面上に配設された複数の加熱コイルと、
前記加熱コイルの下方に配設された高透磁率材料(以後、リターンヨークと呼ぶ)とを備えた誘導加熱調理器であって、
前記各加熱コイルのインダクタンスをそれぞれ略一致させることを特徴とする。
図1は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の回路構成図を示すものである。
図1において、商用電源1からの電圧は、整流回路2および平滑回路3により直流電圧となり、アーム4a〜4cを有するインバータに供給される。
インバータのアーム4a〜4cは、それぞれスイッチング素子を有し、アーム4cを共通アームとして、アーム4aとアーム4cで1つのフルブリッジインバータを構成するとともに、アーム4bとアーム4cでもう1つのフルブリッジインバータを構成する。
アーム4aとアーム4cで構成されるフルブリッジインバータの出力段には、内側コイル(以下、「コイル5a」と称す)と共振コンデンサ6aの直列共振回路が接続される。
アーム4bとアーム4cで構成されるフルブリッジインバータの出力段には、外側コイル(以下、「コイル5b」と称す)と共振コンデンサ6bの直列共振回路が接続される。
コイル5aとコイル5bは、その線材が略同心状且つ略同一平面上に配された径の異なる渦巻形状で形成されている。
制御手段7は、インバータの各アームの駆動を制御する信号を出力する。
図1のコイル5aとコイル5bは、コイルベース10により一体化固定されている。
また、コイル5aとコイル5bの下方にはコイルベース10を介して高透磁率材料(以下、「リターンヨーク9」と称す)が配されている。
コイル5a、コイル5bの上面には、天板11を介して被加熱物8が載置される。
なお、本発明における「被加熱物載置手段」は、上記天板11が該当する。
コイル5aは共振コンデンサ6a(容量Ca)と直列共振回路を形成し、またコイル5bは共振コンデンサ6b(容量Cb)と別の直列共振回路を形成している。
制御手段7からの出力信号によりアーム4aとアーム4cで構成されるフルブリッジインバータが動作を始めることで、コイル5aと共振コンデンサ6aの直列共振回路が通電される。
また、アーム4bとアーム4cで構成されるフルブリッジインバータが動作を始めることでコイル5bと共振コンデンサ6bの直列共振回路が通電される。
これら同時通電により、コイル5aとコイル5bの上面に載置された被加熱物8は誘導加熱される。
以下、この火力設定位相差に起因して生じる、各アームに流れる電流の変化と、入力電力の変化とについて説明する。
図1のように、略同心上且つ略同一平面上に配された2つの加熱コイルにより被加熱物8を誘導加熱した時、コイル5a、5bと共振コンデンサ6a、6bからなる直列共振回路の定数(加熱コイルインダクタンスLa、Lb値と共振コンデンサ容量Ca、Cb値)によっては、コイル5aに流れる電流(以下、「内コイル電流」と称す)とコイル5bに流れる電流(以下、「外コイル電流」と称す)との間に図4(A)に示すようなコイル電流位相差が生じる。
しかし、La値とLb値が略一致した加熱コイルを用いた場合は、図4(B)に示すようにコイル電流位相差≒0でコイル電流が増大し、インバータへの入力電力も増大することで所定電力投入が可能となる。そしてこの時加熱効率は最大値を得ることになる。
図5によると、火力設定位相差の変化に伴って、コイル電流やコイル電流位相差、インバータへの入力電力、加熱効率が変化していることが分かる。
加熱効率は、コイル電流位相差が大きくなるほど低下するが、これは交番磁束の打ち消し合いが起こり、コイル損失が増大することに起因する。
加熱効率を向上させるため、火力設定位相差を調整することでコイル電流位相差≒0とすると(図5の点線部)、加熱効率は向上する一方で、コイル電流が減少することによりインバータへの入力電力も減少してしまい、所定電力投入が困難となる問題が発生する。即ち、加熱効率の向上と所定電力投入とを両立させることが困難になるという課題が生ずる。
そして、コイル電流位相差≒0の時に加熱効率が最大値を得ることは、図5に示す通りである。
即ち、La値とLb値が略一致した加熱コイルを用いることにより、コイル電流位相差≒0とすることで加熱効率を最大化しながらも、所定電力投入を容易にすることを同時に達成できるのである。
巻数調整方法としては、La>Lbの場合はコイル5aの巻数を減らす、又はコイル5bの巻数を増やすようにし、La<Lbの場合はコイル5aの巻数を増やす、又はコイル5bの巻数を減らすことで行うことができる。
また、本実施の形態1では、インバータ構成と火力制御方法を、3アームによる2フルブリッジインバータ位相可変制御としているが、その限りでは無く、4アームによる2フルブリッジインバータ位相可変制御や、2アームによる2ハーフブリッジインバータデューティ可変制御等としても効果は同様であることを記しておく。
コイル電流位相差をなくすことができ、加熱効率の低下を回避し、また所定電力投入を容易にすることができる。また、2つの加熱コイルは略同心上且つ略同一平面上としているため、非同心上且つ略同一平面上でインダクタンス値が略一致した2つの加熱コイルとした場合(左右に隣接させて設置、図示せず)と比較して、被加熱物底面の加熱むらがなくなり、均一加熱が可能となるという効果がある。
実施の形態1では、略同心上且つ略同一平面上に配された2つの加熱コイルのインダクタンス値La、Lbの関係をLa≒Lbとするのに、加熱コイル毎に線材巻数を調整するようにした。
本発明の実施の形態2では、加熱コイルの線材と被加熱物との間隙(ギャップ)を加熱コイル毎に調整するようにしてインダクタンス値を略一致させる構成を示す。
図6において、コイルベース10は加熱コイル毎に設けられており、コイル5a下面のコイルベース10と、コイル5b下面のコイルベース10とは段差を有している。
従って、コイル5aと被加熱物8(天板11)との間のギャップは、コイル5bと被加熱物8(天板11)との間のギャップと異なる構成となっている。
また、コイル5aと被加熱物8との間のギャップは、制御手段7の出力信号に基づきコイルギャップ調整手段12を機械的に上下方向へ可動させ、これに伴いコイルベースを上下方向に移動させることにより調整できる構成としている。
リターンヨークは、加熱コイル毎に設けられたコイルベースに対応して設けられ、個々のコイルベースの下方に固定されている。即ち、リターンヨークは加熱コイル毎に設けられていることになる。図6においては、コイル5aに対応するリターンヨークをリターンヨーク9、コイル5bに対応するリターンヨークをリターンヨーク9’としている。
コイルギャップ調整手段12が上下方向へ可動すると、コイルベースと、その下方に固定されたリターンヨークとが、これに伴って上下方向に移動する。
その他の加熱コイル構成やインバータ構成は実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
線材巻数で決定したインダクタンス値がLa>Lbの場合には、図6に示すようにコイル5aと被加熱物8とのギャップを小さくすることにより被加熱物内の渦電流による反発磁界によってLa値は小さくなり、La≒Lbとすることが可能となる。
La<Lbの場合には、コイル5aと被加熱物8とのギャップを大きくすることにより被加熱物内の渦電流による反発磁界は弱められLa値は大きくなり、La≒Lbとすることが可能となる。
このようにすることで、コイル5aとコイル5bのインダクタンス値を略一致させるに際し、物理的制約やコイル損失抑制(=コイル電流抑制)の理由等によりコイル5aとコイル5bの線材巻数調整が困難な場合にも、コイルベース形状の工夫と、コイルギャップ調整手段12とにより、コイル5aと被加熱物8とのギャップを変化させ、インダクタンスを略一致にすることができる。
同様に、La<Lbとなった場合には、コイル5aと被加熱物8とのギャップが大きくなるような信号を制御手段7からコイルギャップ調整手段12に供給することで、La≒Lb特性を有する加熱コイルを得ることが可能となる。
このようにすることで、加熱コイル個体ばらつき(コイル電気特性のばらつき)が生じた時にもLa≒Lbとすることができる。
また、コイルが3つ以上ある場合は、例えばそれぞれの加熱コイル毎にコイルギャップ調整手段を設けることで、同様の効果が得られる。
なお、コイルギャップ調整手段12を設けない場合であっても、製品製造時の段階において、あらかじめLa≒Lbとなるようにギャップを調整しておくことにより、被加熱物8の材質・形状等が極端でなければ、同様の効果が得られる。
即ち、被加熱物8の径が極端に小さい(例えば小鍋)場合や、形状が長方形であるような場合を除けば、被加熱物8を天板11に載置した後も、La≒Lbの状態を維持することができる。
物理的制約やコイル損失抑制(=コイル電流抑制)の理由等によりコイル5aとコイル5bの線材巻数調整が困難な場合にも2つの加熱コイルのインダクタンス値を略一致させることができ、コイル電流位相差をなくすことができることから加熱効率の低下を回避し、また所定電力投入を容易にすることができる。
また、加熱コイル工作上、コイル電気特性に個体ばらつきが生じても、コイルギャップ調整手段を用いることによりインダクタンス値を略一致させることが可能となり、加熱コイル個体ばらつきによる性能不具合を解消することができる。
本発明の実施の形態3に係る誘導加熱調理器は、複数の加熱コイルのインダクタンス値を略一致とするために調整を行う加熱コイルと被加熱物とのギャップを、最大で7mmまでに限定したものである。
加熱コイル構成やインバータ構成は実施の形態2と同様であり説明を省略する。
加熱コイル(コイル5aとコイル5b)の線材と被加熱物8とのギャップを4.5mm〜10.5mmの範囲で変化させた時の加熱コイル損失と加熱効率を測定したところ、図7に示すように、ギャップ増加に伴い加熱コイル損失は増大するが、加熱効率は約7mmまでは低下しないという結果であった。
コイル損失の増大は、インバータへの入力電力が一定である状態で、ギャップの増加に伴いコイル電流が増大するためであり、加熱効率の低下は、ギャップの増加に伴い被加熱物8への交番磁束が低減するためであるが、図7のデータから、交番磁束の低減割合はギャップ4.5mm〜7mm程度では変化が無いと言える。
ギャップ増加による加熱効率の低下を回避することができ、且つ複数の加熱コイルのインダクタンス値を略一致させることができ、高性能な誘導加熱調理器を提供することが可能となる。
実施の形態2では、略同心上且つ略同一平面上に配された2つの加熱コイルのインダクタンス値La、Lbの関係をLa≒Lbとするのに、加熱コイルの線材と被加熱物との間隙(ギャップ)を加熱コイル毎に調整するようにしたものであるが、本発明の実施の形態4においては、加熱コイルの線材とリターンヨークとの間隙(ギャップ)を加熱コイル毎に調整するようにしてインダクタンス値を略一致させる構成を示す。
図8において、リターンヨークは加熱コイル毎に設けられており、コイル5a下面のリターンヨーク9と、コイル5b下面のリターンヨーク9’とは段差を有している。
従って、コイル5aとリターンヨーク9との間のギャップは、コイル5bとリターンヨーク9’との間のギャップと異なる構成となっている。
また、コイル5aとリターンヨーク9とのギャップは、制御手段7の出力信号に基づきリターンヨークギャップ調整手段13を機械的に上下方向へ可動させ、これに伴いリターンヨークを上下方向に移動させることにより調整できる構成としている。
その他の加熱コイル構成やインバータ構成は実施の形態2と同様であるので、説明を省略する。
線材巻数で決定したインダクタンス値がLa>Lbの場合には,図8に示すようにコイル5aとリターンヨーク9とのギャップを大きくすることにより線材の磁界強度が弱まることからLa値は小さくなり、La≒Lbとすることが可能となる。
La<Lbの場合には、コイル5aとリターンヨーク9とのギャップを小さくすることにより線材の磁界強度が強まることからLa値は大きくなり、La≒Lbとすることが可能となる。
このようにすることで、コイル5aとコイル5bのインダクタンス値を略一致させるに際し、物理的制約やコイル損失抑制(=コイル電流抑制)の理由等によりコイル5aとコイル5bの線材巻数調整が困難な場合にも、コイルベース形状の工夫とリターンヨークギャップ調整手段13により、コイル5aとリターンヨーク9とのギャップを変化させ、インダクタンスを略一致させることができる。
同様に、個体ばらつきによりLa<Lbとなった場合には、コイル5aとリターンヨーク9とのギャップが小さくなるような信号を制御手段7からリターンヨークギャップ調整手段13に供給することで、La≒Lb特性を有する加熱コイルを得ることが可能となる。
このようにすることで、加熱コイル個体ばらつき(コイル電気特性のばらつき)が生じた時にもLa≒Lbとすることができる。
また、コイルが3つ以上ある場合は、例えばそれぞれの加熱コイル毎にリターンヨークギャップ調整手段を設けることで、同様の効果が得られる。
なお、リターンヨークギャップ調整手段13を設けない場合であっても、製品製造時の段階において、あらかじめLa≒Lbとなるようにギャップを調整しておくことにより、被加熱物8の材質・形状等が極端でなければ、同様の効果が得られる。
即ち、被加熱物8の径が極端に小さい(例えば小鍋)場合や、形状が長方形であるような場合を除けば、被加熱物8を天板11に載置した後も、La≒Lbの状態を維持することができる。
物理的制約やコイル損失抑制(=コイル電流抑制)の理由等によりコイル5aとコイル5bの線材巻数調整が困難な場合にも2つの加熱コイルのインダクタンス値を略一致させることができ、コイル電流位相差をなくすことができることから加熱効率の低下を回避し、また所定電力投入を容易にすることができる。
また、加熱コイル工作上、コイル電気特性に個体ばらつきが生じても、リターンヨークギャップ調整手段を用いることによりインダクタンス値を略一致させることが可能となり、加熱コイル個体ばらつきによる性能不具合を解消することができる。
実施の形態4では、略同心上且つ略同一平面上に配された2つの加熱コイルのインダクタンス値La、Lbの関係をLa≒Lbとするのに、加熱コイルの線材とリターンヨークとの間隙(ギャップ)を加熱コイル毎に調整するようにした。
本発明の実施の形態5においては、リターンヨークの材質又はサイズを加熱コイル毎に異ならせるようにしてインダクタンス値を略一致させる構成を示す。
図9において、コイル5a下面のリターンヨーク9と、コイル5b下面のリターンヨーク9’とは材質、サイズのいずれか一方又はその双方を異ならせた構成となっている。
その他の加熱コイル構成やインバータ構成は実施の形態4と同様であるので、説明を省略する。
線材巻数で決定したインダクタンス値がLa>Lbの場合には、リターンヨーク9の材質をリターンヨーク9’より低透磁率材料とする、又はリターンヨーク9のサイズをリターンヨーク9’よりも小さくすることによりLa値は小さくなり,La≒Lbとすることが可能となる。
La<Lbの場合には、図9に示すようにリターンヨーク9の材質をリターンヨーク9’より高透磁率材料とする、又はリターンヨーク9のサイズをリターンヨーク9’よりも大きくすることによりLa値は大きくなり、La≒Lbとすることが可能となる。
このようにすることで、コイル5aとコイル5bのインダクタンス値を略一致させるに際し、物理的制約やコイル損失抑制(=コイル電流抑制)の理由等によりコイル5aとコイル5bの線材巻数調整が困難な場合にも、リターンヨークの素材や大きさを工夫することで、La≒Lbとすることができる。
また、リターンヨークの材質、サイズのいずれか一方のみを変更することとしたが、材質とサイズの双方を変更させることとしても効果は同様である。
物理的制約やコイル損失抑制(=コイル電流抑制)の理由等によりコイル5aとコイル5bの線材巻数調整が困難な場合にも2つの加熱コイルのインダクタンス値を略一致させることができ、コイル電流位相差をなくすことができる。
これにより、加熱効率の低下を回避し、また所定電力投入を容易にすることができる。さらには、従来形状のコイルベース10でインダクタンス値を略一致させることができるため、設計が容易で安価な加熱コイルを得ることができる。
実施の形態5では、略同心上且つ略同一平面上に配された2つの加熱コイルのインダクタンス値La、Lbの関係をLa≒Lbとするのに、リターンヨークの材質、サイズのいずれか一方又はその双方を加熱コイル毎に異ならせるようにした。
本発明の実施の形態6においては、複数の加熱コイルそれぞれの巻回始めと巻回終わり間の距離(巻きピッチ)を加熱コイル毎に調整する、又は複数の加熱コイルのうち、内側加熱コイル外径と外側加熱コイル内径との距離(スペース)、即ち加熱コイルの配置間隔を調整することによりインダクタンス値を略一致させる構成を示す。
図10は、図2と比較してコイル5aとコイル5b夫々の巻きピッチを調整する、又はコイル5a外径とコイル5b内径とのスペースを調整した場合であり、コイル損失抑制(=コイル電流抑制)の理由からコイル5aとコイル5bの線材巻数調整は行っておらずコイル5a、コイル5b共に図2と巻数を同値としている。
その他の加熱コイル構成やインバータ構成は実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
コイル5aとコイル5bのインダクタンス値を略一致させるに際し、コイル損失抑制(=コイル電流抑制)の理由等によりコイル5aとコイル5bの線材巻数調整が困難な場合には、以下のようにしてインダクタンスの調整を行う。
コイル5aとコイル5b夫々の巻きピッチ(図10の矢印部)を調整することでインダクタンスの調整を行う。これは線材の撚りピッチを大きくし、線材の巻きテンションを大きくして巻きピッチを小さくする、また線材の撚りピッチを小さくし、線材の巻きテンションを小さくして巻きピッチを大きくすることで調整可能である。
巻きピッチを小さくすると被加熱物8との重なり面積が減少するために被加熱物8と交錯する交番磁束が減少し、インダクタンス値は小さくなる。逆に巻きピッチを大きくすると被加熱物8との重なり面積が増加するために被加熱物8と交錯する交番磁束が増加し、インダクタンス値は大きくなる。
このようにして加熱コイルの線材巻数調整を行うことなく、インダクタンス値調整を行うことができる。
(2)加熱コイルの配置間隔の調整
コイル5a外径とコイル5b内径とのスペース(図10の矢印部)、即ち加熱コイルの配置間隔を調整することでインダクタンスの調整を行う。コイル5aとコイル5bは被加熱物8を介して電磁的結合しているため、スペースを変えることのみでインダクタンス値調整が可能である。
このようにして加熱コイルの線材巻数調整を行うことなく、インダクタンス値調整を行うことができる。
また、加熱コイルが3つ以上ある場合には、それぞれの加熱コイルの巻きピッチや配置間隔を調整することで、同様の効果が得られる。
実施の形態5と同様に物理的制約やコイル損失抑制(=コイル電流抑制)の理由等によりコイル5aとコイル5bの線材巻数調整が困難な場合にも2つの加熱コイルのインダクタンス値を略一致させることができ、コイル電流位相差をなくすことができる。
これにより、加熱効率の低下を回避し、また所定電力投入を容易にすることができる。さらには、従来形状のコイルベース10でインダクタンス値を略一致させることができるため、設計が容易で安価な加熱コイルを得ることができる。
本発明の実施の形態7に係る誘導加熱調理器は、複数の加熱コイルのインダクタンス値を略一致とするために調整を行う内側加熱コイル外径と外側加熱コイル内径との距離(スペース)、即ち加熱コイル間の配置間隔を、4mm以上に限定したものである。
加熱コイル構成やインバータ構成は実施の形態6と同様であり説明を省略する。
コイル5aとコイル5bのスペースを0mm〜8mmの範囲で変化させた時のコイル5aとコイル5bの結合係数を有限要素シミュレーションで算出したところ、スペースの増加に伴い結合係数は低下するという結果であった。
これは、スペースの増加に伴いコイル5aが発生する交番磁束がコイル5bを交錯しにくくなり、且つコイル5bが発生する交番磁束がコイル5aを交錯しにくくなることに起因する。
しかし、コイル5aとコイル5bのスペースが小さく、コイル5aとコイル5bの結合係数が0.4以上となると、小鍋モード駆動時にコイル5bに“誘導電流”が多大に流れてしまい、漏洩磁束の増大につながる。
即ち、結合係数が0.4以下であれば“誘導電流”は少なく、漏洩磁束も低減されることから、結合係数を0.4以下とするのが望ましい。図11に示すデータより、結合係数が0.4以下となるのは、コイル5aとコイル5bのスペースが4mm以上の場合であることが分かる。
小鍋モード駆動時の漏洩磁束を低減することができ、且つ複数の加熱コイルのインダクタンス値を略一致させることができ、高性能な誘導加熱調理器を提供することが可能となる。
本発明の実施の形態8に係る誘導加熱調理器は、複数の加熱コイルに流れるコイル電流を加熱コイル毎に調整することによりインダクタンス値を略一致させるものである。
加熱コイル構成やインバータ構成は実施の形態1〜7と同様であり説明を省略する。
先述のとおり、図1に示すインバータは制御手段7からの出力信号(図3)を受けて動作を行うが、アーム4c駆動信号に対するアーム4a駆動信号の位相や、アーム4c駆動信号に対するアーム4b駆動信号の位相(即ち、火力設定値)をそれぞれ可変することにより、内コイル電流値や外コイル電流値はそれぞれ変化する。
これら加熱コイル電流値とインダクタンス値との間には、下式(1)が成立する。
物理的制約の理由等によりコイル5aとコイル5bの線材巻数調整が困難な場合にもインバータ制御方法の工夫で2つの加熱コイルのインダクタンス値を略一致させることができ、コイル電流位相差をなくすことができることから加熱効率の低下を回避し、また所定電力投入を容易にすることができる。
以上の実施の形態1〜8では、略同心上且つ略同一平面上に配された2つの加熱コイルのインダクタンス値La、Lbの関係をLa≒Lbとするための調整手段について述べたものであるが、本発明の実施の形態9においては、複数の加熱コイルの線材撚り数を加熱コイル毎に異ならせる構成を示す。
図12において、コイル5aとコイル5bには素線を複数撚り合わせたリッツ線材を使用している。その他の加熱コイル構成やインバータ構成は実施の形態1〜8と同様であり説明を省略する。
実施の形態1〜8で示す調整手段によりコイル5aとコイル5bのインダクタンス値を略一致させ、図1に示すインバータのアーム4a、4b、4cを駆動させることでコイル5aとコイル5bに通電させる。
この動作により加熱コイル上面に載置された被加熱物8は誘導加熱されるが、この時コイル5aとコイル5bは各々に流れるコイル電流に応じて発熱するため、例えばコイルベース10下方からコイル5aとコイル5bの線材に向けて送風させることにより線材を冷却する必要がある。
例えば、加熱コイル内側(コイル5a近辺)の冷却能力が不足した場合、図12に示すように、コイル5aのリッツ線構造の最外円周を略同一としながら素線径を小さくして撚り数を多くすることでコイル5aの巻線抵抗を小さくし(表皮効果による)、コイル5aのコイル損失を低減させてコイル5a温度を低減する。
加熱コイル外側(コイル5b近辺)の冷却能力が不足した場合は、コイル5bのリッツ線構造の最外円周を略同一としながら素線径を小さくして撚り数を多くすることでコイル5bの巻線抵抗を小さくし(表皮効果による)、コイル5bのコイル損失を低減させてコイル5b温度を低減する。
コイル温度が高い側のコイル温度を低減できると共に、複数の加熱コイルのインダクタンス値は略一致が保たれるため、コイル電流位相差をなくすことができることから加熱効率の低下を回避し、また所定電力投入を容易にすることができる。
さらに、加熱コイルの冷却能力に応じて加熱コイル毎の撚り数を決定するようにしているので、冷却能力の高い側の加熱コイルについては撚り数を少なくでき,安価な加熱コイルを得ることができる。
本発明の実施の形態10に係る誘導加熱調理器では、インバータを構成する複数のスイッチング素子を1つのモジュール(パワーモジュール)に収める構成について説明する。
IPMは、IGBTなどのパワーデバイスと、その駆動回路や保護回路などを組み込んで構成したモジュールである。
図1におけるインバータ用アーム4a〜4cを構成する6つのスイッチング素子をIPMに収めた構成とすることで、ノイズ耐性向上による信頼性の改善や、部品数削減による工作性の改善効果が得られる。
Claims (17)
- 直流電圧を変換して高周波の交流電圧を供給するインバータと、
前記インバータの出力段に接続され、それぞれ略同心円状且つ略同一平面上に配設された複数の加熱コイルと、
前記加熱コイルの下方に配設された高透磁率材料(以後、リターンヨークと呼ぶ)とを備えた誘導加熱調理器であって、
前記各加熱コイルのインダクタンスがそれぞれ略一致するように、各加熱コイルの巻数を調整したことを特徴とする誘導加熱調理器。 - 直流電圧を変換して高周波の交流電圧を供給するインバータと、
前記インバータの出力段に接続され、それぞれ略同心円状且つ略同一平面上に配設された複数の加熱コイルと、
前記加熱コイルの上方に配設された被加熱物載置手段と、
前記加熱コイルの下方に加熱コイル毎に配設されたリターンヨークとを備えた誘導加熱調理器であって、
前記被加熱物載置手段に被加熱物を載置した際に、前記各加熱コイルのインダクタンスがそれぞれ略一致するように、各加熱コイルと前記被加熱物載置手段との間のギャップを調整したことを特徴とする誘導加熱調理器。 - 前記加熱コイルと前記被加熱物載置手段との間のギャップを調整するギャップ調整手段と、
前記ギャップ調整手段の動作を指示する信号を出力する制御手段とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の誘導加熱調理器。 - 前記加熱コイルを下方より支持するコイルベースを加熱コイル毎に設け、
前記コイルベースの下方に、当該コイルベースが支持する加熱コイルに対応して設ける前記リターンヨークを固定し、
前記ギャップ調整手段は、前記制御手段の出力する信号に基づき、前記コイルベースを上下方向に可動させることを特徴とする請求項3に記載の誘導加熱調理器。 - 前記加熱コイルと被加熱物との間のギャップの最大値を7mmとしたことを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の誘導加熱調理器。
- 直流電圧を変換して高周波の交流電圧を供給するインバータと、
前記インバータの出力段に接続され、それぞれ略同心円状且つ略同一平面上に配設された複数の加熱コイルと、
前記加熱コイルの上方に配設された被加熱物載置手段と、
前記加熱コイルの下方に加熱コイル毎に配設されたリターンヨークとを備えた誘導加熱調理器であって、
前記被加熱物載置手段に被加熱物を載置した際に、前記各加熱コイルのインダクタンスがそれぞれ略一致するように、前記加熱コイルと前記リターンヨークとの間のギャップを調整したことを特徴とする誘導加熱調理器。 - 前記加熱コイルと前記リターンヨークとの間のギャップを調整するリターンヨークギャップ調整手段と、
前記リターンヨークギャップ調整手段の動作を指示する信号を出力する制御手段とを備えたことを特徴とする請求項6に記載の誘導加熱調理器。 - 前記リターンヨークギャップ調整手段は、
前記リターンヨークを下方より支持するとともに、
前記制御手段が出力する信号に基づき、上下方向に可動することを特徴とすることを特徴とする請求項7に記載の誘導加熱調理器。 - 直流電圧を変換して高周波の交流電圧を供給するインバータと、
前記インバータの出力段に接続され、それぞれ略同心円状且つ略同一平面上に配設された複数の加熱コイルと、
前記加熱コイルの下方に配設されたリターンヨークとを備えた誘導加熱調理器であって、
前記各加熱コイルのインダクタンスがそれぞれ略一致するように、前記リターンヨークの材質を調整したことを特徴とする誘導加熱調理器。 - 直流電圧を変換して高周波の交流電圧を供給するインバータと、
前記インバータの出力段に接続され、それぞれ略同心円状且つ略同一平面上に配設された複数の加熱コイルと、
前記加熱コイルの下方に配設されたリターンヨークとを備えた誘導加熱調理器であって、
前記各加熱コイルのインダクタンスがそれぞれ略一致するように、前記リターンヨークのサイズを調整したことを特徴とする誘導加熱調理器。 - 直流電圧を変換して高周波の交流電圧を供給するインバータと、
前記インバータの出力段に接続され、それぞれ略同心円状且つ略同一平面上に配設された複数の加熱コイルと、
前記加熱コイルの上方に配設された被加熱物載置手段と、
前記加熱コイルの下方に配設されたリターンヨークとを備えた誘導加熱調理器であって、
前記被加熱物載置手段に被加熱物を載置した際に、前記各加熱コイルのインダクタンスがそれぞれ略一致するように、各加熱コイルの巻きピッチを調整したことを特徴とする誘導加熱調理器。 - 直流電圧を変換して高周波の交流電圧を供給するインバータと、
前記インバータの出力段に接続され、それぞれ略同心円状且つ略同一平面上に配設された複数の加熱コイルと、
前記加熱コイルの上方に配設された被加熱物載置手段と、
前記加熱コイルの下方に配設されたリターンヨークとを備えた誘導加熱調理器であって、
前記被加熱物載置手段に被加熱物を載置した際に、前記各加熱コイルのインダクタンスがそれぞれ略一致するように、各加熱コイルの配置間隔を調整したことを特徴とする誘導加熱調理器。 - 前記配置間隔を4mm以上としたことを特徴とする請求項12に記載の誘導加熱調理器。
- 直流電圧を変換して高周波の交流電圧を供給するインバータと、
前記インバータの出力段に接続され、それぞれ略同心円状且つ略同一平面上に配設された複数の加熱コイルと、
前記加熱コイルの上方に配設された被加熱物載置手段と、
前記加熱コイルの下方に配設されたリターンヨークとを備えた誘導加熱調理器であって、
前記被加熱物載置手段に被加熱物を載置した際に、前記加熱コイルのインダクタンスが略一致するように、前記インバータから供給され前記加熱コイルに流れるコイル電流を加熱コイル毎に調整することを特徴とする誘導加熱調理器。 - 前記加熱コイルをリッツ線構造とし、該リッツ線の最外円周を略同一としながら素線径を変えて、加熱コイル毎に線材撚り数を異ならせるようにしたことを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれかに記載の誘導加熱調理器。
- 前記各加熱コイルを冷却する冷却手段を設け、
当該冷却手段の加熱コイル毎の冷却能力に応じて、各加熱コイルの線材撚り数を調整したことを特徴とする請求項15に記載の誘導加熱調理器。 - 前記インバータを構成する複数のスイッチング素子を1つのモジュールに収めたことを特徴とする請求項1ないし請求項16のいずれかに記載の誘導加熱調理器。
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