JP2008039537A - 回転部材の状態量測定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】フィルタ回路を用いた状態量(変位、荷重、回転速度等)の算出(測定)に伴う、不可避的な算出初期時の変動(初期暴れ)に基づく不都合を防止する。
【解決手段】フィルタリング処理を施された信号に基づいて、上記状態量の算出を開始しても、この状態量の算出結果をそのまま直ちには出力しない。即ち、予め設定したパルス数の算出が完了した事を条件に(図の各矢印までパルス数が達した事を条件に)、上記状態量の算出結果の出力を開始する。この様な機能を、上記算出を行なう演算器に持たせる。
【選択図】図6

Description

この発明に係る回転部材の状態量測定装置は、例えば車両(自動車)の懸架装置に回転自在に支持した車輪に加わる荷重の大きさを測定して、車両の安定運行の確保に利用する。或は、各種工作機械の主軸を支持する為の転がり軸受ユニットに組み込んで、この主軸に加わる荷重や、熱膨張等による変位を測定し、工具の送り速度等を適切に調節する為に利用する。測定対象である状態量は、回転部材に加わる荷重(回転側軌道輪と静止側軌道輪との間に作用する荷重、延いては、車輪、主軸等に加わる荷重)が最も一般的であるが、この荷重に基づく回転部材の変位量(回転側軌道輪と静止側軌道輪との間の相対変位量)、或は、この回転部材の傾斜角度(回転側軌道輪と静止側軌道輪との中心軸同士の傾斜角度)、上記回転部材の回転速度(回転側軌道輪であるハブ、又は、保持器等の回転速度)等を測定する事もできる。
車両の走行安定性を確保する為の装置として従来から、アンチロックブレーキシステム(ABS)やトラクションコントロールシステム(TCS)、更には電子制御式ビークルスタビリティコントロールシステム(ESC)が広く使用されている。これらの走行安定化装置を構成する為に、車輪の回転速度、車体に加わる加速度、ヨーモーメント等の複数の状態量をそれぞれ別々のセンサにより測定して、1個の制御器に送り込んでいる。そして、この制御器は、上記各状態量に応じて、エンジンの出力を制御する他、各車輪の制動力を互いに関連付けて(但し、場合により異なる制動力に)制御する。
上述の様な走行安定化装置の性能をより一層向上させる為には、各車輪に加わる荷重を測定する事が、効果的であると考えられる。例えば、各車輪に加わるアキシアル荷重を測定し、このアキシアル荷重が当該車輪のグリップ力を上回る直前に、エンジンの出力を低下させたり、或いは適切な車輪に制動力を加えれば、車両の走行安定性を、より一層向上させられるものと考えられる。この様な走行安定化の為に利用可能な転がり軸受ユニット用荷重測定装置として従来から、例えば特許文献1〜5に記載されたものが知られている。
このうちの特許文献1に記載された荷重測定装置では、非接触式の変位センサにより、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する1対の軌道輪部材である、外輪とハブとの径方向の相対変位量を測定する。そして、この相対変位量に基づいて、これら外輪とハブとの間に加わる荷重を求める。
又、特許文献2に記載された荷重測定装置では、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成するハブに、断面L字形の被検出体を外嵌固定し、この被検出体の軸方向側面と外周面とに、外輪に支持固定したセンサの検出部を対向させている。そして、このセンサにより、この外輪と上記ハブとの間の、軸方向及び径方向の相対変位量を測定し、これら両方向の相対変位量に基づいて、上記外輪と上記ハブとの間に加わるアキシアル荷重並びにラジアル荷重を求める。
又、特許文献3に記載された荷重測定装置では、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する、複列に配置された転動体の公転速度を、1対のセンサにより、これら各列の転動体を保持する保持器の回転速度として測定する。そして、これら各列の保持器の回転速度(転動体の公転速度)同士の間に存在する違いに基づいて、上記車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する外輪とハブとの間に加わる荷重(アキシアル荷重とラジアル荷重との一方又は双方)を求める。
更に、特許文献4、5に記載された荷重測定装置では、特性が変化する位相を測定すべき荷重の作用方向に対応して漸次変化させたエンコーダの被検出面に、1対のセンサの検出部を、この作用方向に離隔させた状態で対向させている。そして、これら両センサの出力信号同士の間に存在する位相差に基づいて、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する外輪とハブとの間に加わる荷重を求める。又、上記特許文献4、5には、特性が変化するピッチを、測定すべき荷重の作用方向に対応して漸次変化させた、エンコーダの被検出面に、1個のセンサの検出部を対向させる構造に就いても記載されている。この様な構造の場合には、このセンサの出力信号のデューティ比の変化に基づいて、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する外輪とハブとの間に加わる荷重を求める。
更に、上述した特許文献3には、転動体の公転速度に対応する保持器の回転速度を、これら各転動体の転動面と保持器のポケットの内面との隙間に基づく、この保持器の振れ回り運動に拘わらず、正確に測定する為の技術が記載されている。即ち、上記特許文献3には、回転速度を検出すべき部材(保持器)の回転中心と、この部材に支持されたエンコーダの幾何中心とが不一致の場合でも、この不一致に拘わらず、この部材の回転速度を正確に測定する(検出精度が悪化する事を防止できる)技術が記載されている。具体的には、回転速度を検出する為のセンサから出力される出力信号を、フィルタ回路を通過させる事により、回転速度算出に対する誤差となる、上記センサの検出信号の変動の影響を除去する。上記フィルタ回路としては、適応フィルタ、例えばLMSアルゴリズムや同期式LMSアルゴリズム等により作動する適応フィルタを採用する事が記載されている。
図9は、上記特許文献3に記載された、回転速度センサの出力信号から求めた回転速度のシミュレーション結果の1例を示している。この様な図9から、上記回転速度センサの出力信号から求めた回転速度を表す信号の変動(エンコーダの振れ回りに基づく変動)が、適応フィルタを用いる事により、低減できる事が分かる。即ち、この図9は、100min-1 で定速回転している回転部材の回転速度を、60パルス/1回転のエンコーダで計測する場合に就いて示している。実線イは、回転速度センサの検出結果に、タップ数=15の移動平均処理のみを施した結果である。この場合には、エンコーダの振れ回りにより、上記回転速度の算出値が、約70〜130min-1 の間を変動している。
一方、鎖線ロは、上記実線イで示した移動平均処理後のデータを、適用フィルタ(同期式LMSアルゴリズムにより動作する適用フィルタ)を用いて補正した(誤差を除去した)結果を示している。この様な鎖線ロから明らかな通り、適用フィルタの始動直後は算出値が変動しているものの、短時間経過後にフィルタ係数が自己適応し、算出結果が、ほぼ100min-1 の一定値に収束する。この事から、適応フィルタにより、ピッチ誤差や、回転中心と幾何中心とのずれが大きい(振れ回り運動をする)エンコーダを使用しても、回転部材の回転速度を正確に求められる事が分かる。
上述の様に、適応フィルタを用いる事で、回転速度の検出精度を向上させられる事が分かる。但し、この様な適応フィルタを用いる場合、上記図9からも明らかな様に、回転速度算出の最初の部分で、過渡的な算出結果の変動(暴れ)が存在してしまう。この様な変動(暴れ)は、例えばフィルタ回路としてローパスフィルタ等を用いた場合でも存在するが、同期式LMSアルゴリズム等により作動する適応フィルタを用いた場合に、その変動(暴れ)が顕著になる。この様な変動(暴れ)を低減すべく、LMS適応フィルタのステップサイズパラメータμを必要に応じて変化させる事が考えられる。この点について、図10を用いて説明する。
この図10は、上記特許文献3に記載された、同期式LMSアルゴリズムを用いたシミュレーション結果の2例を示している。この図10中(A)は、上記ステップサイズパラメータμが小さい(0.05)場合を、同じく(B)は、上記ステップサイズパラメータμが大きい(0.3)場合を、それぞれ示している。この様な図10の(A)と(B)とを比較すれば明らかな様に、上記ステップサイズパラメータμを大きくする事で、初期の収束性を改善させる事ができる事が分かる。この為、例えば車両(自動車)が停止状態から走り始めたばかりの状況等、上記適応フィルタを用いた算出結果を早期に収束させたい場合には、算出初期(測定初期)の上記ステップサイズパラメータμの値を大きくする事が考えられる。
但し、この様にステップサイズパラメータμを大きくする事により、上記適応フィルタを用いた算出結果を早期に収束させても、算出初期時の変動(初期暴れ)を完全になくす事はできない他、この算出初期時の変動幅(振幅)が大きくなる可能性がある。そして、この様な算出結果をそのまま使用した場合には、次の様な不都合を生じる可能性がある。即ち、例えば、各列の保持器の回転速度を算出すると共に、これら各列の保持器の回転速度の違いに基づいて転がり軸受ユニットを構成する外輪とハブとの間に作用する荷重を求め、この荷重に応じて自動車の走行安定性を確保する為の制御を行なう場合には、この制御を行なう制御器が、上記算出初期時の変動に基づいて、上記外輪とハブとの間に異常な荷重が作用していると誤認識し、不適切な制御を行なう可能性がある。尚、この様な不都合を防止すべく、上記算出結果が収束するのに十分な時間が経過してから、この算出結果を使用し始める事が考えられる。但し、この算出結果を使用し始めるまでの時間の設定によっては、例えば自動車が高速で走行中にも拘わらず、上記自動車の走行安定性を確保する為の制御が行なえなくなる可能性がある。急発進時には、走行開始直後でも、走行安定性が損なわれる可能性がある為、上記可能性の存在は好ましくない。
特開2001−21577号公報 特開2004−45219号公報 特開2005−331496号公報 特開2006−113017号公報 特開2006−177741号公報
本発明の回転部材の状態量測定装置は、上述の様な事情に鑑みて、フィルタ回路を用いた状態量の算出(測定)に伴う、不可避的な算出初期時の変動(初期暴れ)に基づく不都合を防止すべく発明したものである。
本発明の回転部材の状態量測定装置は、エンコーダと、センサと、フィルタ回路と、演算器とを備える。
このうちのエンコーダは、回転部材に支持されてこの回転部材と共に回転するもので、被検出面の特性を円周方向に関して交互に変化させている。
又、上記センサは、その検出部を上記被検出面に対向させた状態で回転しない部分に支持され、この被検出面の特性変化に対応してその出力信号を変化させる。
又、上記フィルタ回路は、上記センサの出力信号若しくはこの出力信号に基づいて得られる処理信号に、フィルタリング処理を施す。より具体的には、このフィルタ回路は、上記出力信号若しくは上記処理信号の変動のうち、上記回転部材の状態量算出に対する誤差となる変動の影響を除去する(例えば、エンコーダの被検出面の円周方向に亙る特性変化に関する誤差に基づく、誤差成分を除去する)ものである。
又、上記演算器は、上記フィルタ回路によりフィルタリング処理を施された上記出力信号若しくは上記処理信号に基づいて{より具体的には、出力信号若しくは処理信号が変化するパターン(変化の周期、振幅、周波数、位相、デューティ比等)に基づいて}、上記エンコーダを支持した上記回転部材の状態量を算出する。尚、算出対象(測定対象)であるこの状態量としては、例えば、回転部材に加わる荷重、回転部材の(相対)変位量、回転部材の傾斜角度、回転部材の回転速度等が挙げられる。
特に、本発明の回転部材の状態量測定装置に於いては、上記演算器は、上記フィルタリング処理を施された上記出力信号若しくは上記処理信号に基づいて、上記状態量の算出を開始しても、この状態量の算出結果を(例えばこの算出結果を使用する制御器等に対し)そのまま直ちには出力せずに、予め設定された所定の条件を満たした事を条件に、上記状態量の算出結果の出力を(上記制御器等に対し)開始する機能を備える。
この場合に、上記予め設定された所定の条件は、請求項2に記載した様に、予め設定したパルス数の算出が完了した事、又は、請求項3に記載した様に、上記回転部材の回転速度が予め設定した値に達した事とする事ができる。そして、上記予め設定したパルス数の算出が完了した事を条件に(請求項2の場合)、又は、上記回転部材の回転速度が予め設定した値に達した事を条件に(請求項3の場合)、上記状態量の算出結果の出力を開始する。
又、本発明の回転部材の状態量測定装置を実施する場合で、例えば上記状態量として回転部材の(相対)変位量又はこの回転部材に加わる荷重を算出する場合には、上記エンコーダの被検出面の特性が円周方向に関して変化するピッチ若しくは位相を、検出すべき変位又は荷重の方向に対応して(検出すべき変位又は荷重に伴って上記被検出面が変位する方向に)、この被検出面の幅方向に関して連続的に変化させる。要するに、上記エンコーダは、この被検出面の幅方向と上記検出すべき変位又は荷重に対応してこのエンコーダが変位する方向又は荷重が加わる方向とが一致する状態で、上記回転部材に組み付ける。
又、請求項4に記載した様に、エンコーダの被検出面にそれぞれの検出部を対向させた状態で、少なくとも1対(複数)のセンサを設置する。又、上記エンコーダの被検出面のうちで、少なくとも何れかのセンサの検出部が対向する部分は、円周方向に関して特性が変化する境界を、上記エンコーダの被検出面の幅方向に対し連続的に変化(例えば傾斜)させる。そして、上記少なくとも何れかのセンサの出力信号の変化の位相を、当該センサの検出部が対向する、上記エンコーダの被検出面の幅方向位置に対応して変化させる。そして、上記演算器は、フィルタリング処理を施された出力信号若しくは処理信号に基づいて(変化の位相を表す信号に基づいて)、上記エンコーダを支持した回転部材の(相対)変位量又はこの回転部材に加わる荷重を求める。
或は、請求項5に記載した様に、上記エンコーダの被検出面の円周方向に離隔した位置に、それぞれの検出部を対向させた状態で、少なくとも1対(複数)のセンサを設置する。そして、上記演算器は、フィルタリング処理を施された出力信号若しくは処理信号に基づいて、上記エンコーダを支持した回転部材の径方向に関する(相対)変位量又はこの回転部材に加わるラジアル荷重を求める。
又、本発明の回転部材の状態量測定装置を実施する場合に好ましくは、請求項6〜8に記載した様に、上記回転部材を、転がり軸受ユニットの回転側軌道輪若しくはこの回転側軌道輪に結合固定されてこの回転側軌道輪と共に回転する部材とする。尚、上記転がり軸受ユニットは、使用状態で回転する上記回転側軌道輪と、使用状態でも回転しない静止側軌道輪と、これら回転側軌道輪と静止側軌道輪との互いに対向する周面に存在する静止側軌道と回転側軌道との間に設けられた複数個の転動体とを備えたものである。この様な転がり軸受ユニットとしては、例えば請求項10に記載した様に、自動車の車輪を支持する為の車輪支持用転がり軸受ユニットとする。
そして、上記演算器に、フィルタリング処理を施された出力信号若しくは処理信号に基づいて、上記回転側軌道輪と上記静止側軌道輪との相対変位量を算出する機能を持たせる。又、必要に応じて、請求項7に記載した様に、上記回転側軌道輪と静止側軌道輪との相対変位量を、これら回転側軌道輪と静止側軌道輪との間に作用する荷重を求める為に使用する。
尚、回転側軌道輪と静止側軌道輪との間に作用する荷重を求める為には、必ずしもこれら回転側軌道輪と静止側軌道輪との相対変位量を求める必要はない。即ち、請求項8に記載した様に、演算器に、フィルタリング処理を施された出力信号若しくは処理信号に基づいて、上記回転側軌道輪と静止側軌道輪との間に作用する荷重を直接(上記相対変位量を求める過程を経る事なく)算出する機能を持たせる事もできる。
又、請求項9に記載した様に、回転部材を、上記転がり軸受ユニットを構成する1対の軌道輪同士の間に設けられ、複数のポケット内に保持した転動体の公転に伴って回転する保持器とする事もできる。この場合には、上記演算器に、これら1対の保持器の回転速度に基づいて、上記各軌道輪同士の間に作用する荷重を算出する機能を持たせる。
上述の様に構成する本発明の回転部材の状態量測定装置によれば、フィルタ回路を用いた状態量の算出(測定)に伴う、不可避的な算出初期時の変動(初期暴れ)に基づく不都合を防止できる。
即ち、演算器は、フィルタリング処理を施された出力信号若しくはこの出力信号に基づいて得られる処理信号に基づいて、状態量(荷重、変位、傾斜角、回転速度等)の算出(測定)を開始しても、予め設定された所定の条件を満たさなければ、上記状態量の算出結果を(例えばこの算出結果を使用する制御器等に)出力しない。より具体的には、予め設定した、不可避的な算出初期時の変動(初期暴れ)が収束するまでに必要な、パルス数の算出が完了しなければ(請求項2の場合)、又は、回転速度に達しなければ(請求項3の場合)、上記状態量の算出結果を出力しない。そして、上記不可避的な算出初期時の変動(初期暴れ)が収束した直後から、上記算出結果の出力を開始する。この為、この算出結果に基づいて、異常な荷重が作用していると誤認識して不適切な制御を行なう事を防止し、しかも、上記算出結果を迅速に使用する事ができる。この結果、例えば車両(自動車)が停止状態から走り始めたばかりの状況等でも、算出された状態量に応じて必要な制御を適切に行なえる。
又、例えば請求項4、5に記載した様に、エンコーダの被検出面の特性や、この被検出面と対向させる複数のセンサの位置関係を、測定(算出)すべき状態量に応じて適切に規制すれば、このセンサの出力信号若しくは処理信号に基づいて{出力信号若しくは処理信号が変化するパターン(変化の周期或は振幅、位相、デューティ比等)に基づいて}、上記エンコーダを支持した上記回転部材の状態量を適切に算出(測定)できる。特に、上記出力信号若しくは処理信号にフィルタリング処理を施す為、このフィルタリング処理による効果と相まって、上記状態量の算出を正確に行なえる。より具体的には、例えば回転部材に対する上記エンコーダの組み付け不良に基づき、このエンコーダの被検出面が振れ回りしたり、この被検出面の特性変化に関してピッチ誤差が存在する場合等でも、上記状態量(変位量、荷重等)を正確に求められる。
尚、上記フィルタリング処理を施すフィルタ回路は、例えば適応フィルタを使用する。又、この適応フィルタを使用する場合に好ましくは、LMS(最小二乗平均)アルゴリズム(二乗平均誤差を最急降下法に基づいて最小にする演算規則)により作動する、ディジタルフィルタ又はアナログフィルタを使用する。或いは、同期式LMSアルゴリズムを用いる適応フィルタを使用する。この場合に、LMS適応フィルタのステップサイズパラメータμは、例えば特許文献3に記載されている様に、或は、特願2005−329717号に開示されている様に、適切な初期値を設定すると共に、その値を必要に応じて変化させる。例えば、算出初期時の上記ステップサイズパラメータμを大きくすると共に、一定時間経過後はこのステップサイズパラメータμを小さな値にする事により、算出初期時の収束性を改善する(算出結果を早期に収束させる)。
又、上記フィルタ回路には、必要に応じて、ローパスフィルタとノッチフィルタとのうちの少なくとも何れか一方のフィルタを含ませる(例えば適応フィルタと、ローパスフィルタとノッチフィルタとのうちの少なくとも何れか一方のフィルタとを互いに直列に設ける)事もできる。
尚、以上に述べた各フィルタによるフィルタリング処理は、センサの出力信号(の周期や周波数)又は処理信号に対してフィルタリング処理を行ない、フィルタリングされた結果から、必要な状態量を算出する為の回転速度、デューティ比、位相差等を取り出しても良い。或は、フィルタリング処理される前のセンサの出力信号又は処理信号から得られるデューティ比、位相差に関するデータ(信号)に、フィルタリング処理を行なっても良い。何れの場合も、前述した様に所定の条件を満たさなければ、上記状態量の算出結果を(例えばこの算出結果を使用する制御器等に)出力しない様にする。
又、請求項6〜8に記載した様に、回転部材を、転がり軸受ユニットの回転側軌道輪若しくはこの回転側軌道輪と共に回転する部材とすれば、組み付け不良等に基づくエンコーダの被検出面の振れやセンサの振動等に拘らず、静止側、回転側両軌道輪同士の相対変位量、延いては、これら両軌道輪同士の間に作用する荷重を正確に求められる。又、請求項9に記載した様に、1対の保持器をそれぞれ回転部材とした場合には、これら各保持器の振れ回りに拘わらず、これら各保持器の回転速度を正確に求められると共に、これら各保持器の回転速度の違いに基づいて、上記各軌道輪同士の間に作用する荷重を正確に求められる。
[実施の形態の第1例]
図1〜4は、請求項1〜4、6〜8、10に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の状態量測定装置付転がり軸受ユニットは、車輪支持用転がり軸受ユニット1と、回転速度検出装置、変位量検出装置、荷重検出装置としての機能を兼ね備えた、状態量測定装置2とを備える。
このうちの車輪支持用転がり軸受ユニット1は、図1に示す様に、外輪3と、ハブ4と、複数の転動体5、5とを備える。このうちの外輪3は、使用状態で懸架装置に支持固定される静止側軌道輪であって、内周面に複列の外輪軌道6、6を、外周面にこの懸架装置に結合する為の外向フランジ状の取付部7を、それぞれ有する。又、上記ハブ4は、使用状態で車輪を支持固定してこの車輪と共に回転する回転側軌道輪であって、ハブ本体8と内輪9とを組み合わせ固定して成る。この様なハブ4は、外周面の軸方向外端部(懸架装置への組み付け状態で車体の幅方向外側となる端部)に車輪を支持固定する為のフランジ10を、軸方向中間部及び内輪9の外周面に複列の内輪軌道11、11を、それぞれ設けている。上記各転動体5、5は、これら各内輪軌道11、11と上記各外輪軌道6、6との間にそれぞれ複数個ずつ、予圧を付与した状態で転動自在に設けて、上記外輪3の内径側に上記ハブ4を、この外輪3と同心に回転自在に支持している。尚、図示の例では、転動体として玉を使用しているが、重量の嵩む車両の車輪支持用転がり軸受ユニットの場合には、各転動体として円すいころを使用する場合もある。
一方、上記状態量測定装置2は、図1に示す様に、エンコーダ12と、1対のセンサ13、13と、図示しない演算器とを備える。
このうちのエンコーダ12は、図2に詳示する様に、磁性金属板を円筒状に形成して成るもので、上記ハブ4の中間部に締り嵌めにより外嵌固定されている。被検出面である、このエンコーダ12の外周面には、スリット状の透孔14a、14bと、柱部15a、15bとが、円周方向に関して交互に且つ等間隔で配置されている。本例の場合、上記各透孔14a、14bと上記各柱部15a、15bとを、上記エンコーダ12の軸方向に対し同じ角度だけ傾斜させると共に、この軸方向に対する傾斜方向を、このエンコーダ12の軸方向中間部を境に互いに逆方向としている。即ち、本例のエンコーダ12は、軸方向片半部(例えば図3の上半部)に、上記軸方向に対し所定方向に同じだけ傾斜した透孔14a、14aを形成すると共に、軸方向他半部(例えば図3の下半部)に、この所定方向と逆方向に同じ角度だけ傾斜した透孔14b、14bを形成している。
又、上記各センサ13、13は、前記外輪3の軸方向中間部で複列の外輪軌道6、6の間部分に形成された取付孔16、16に、この外輪3の径方向外方から内方に向け挿通している。そして、上記各センサ13、13の先端部に設けた検出部を、上記エンコーダ12の外周面に、近接対向させている。これら両センサ13、13の検出部がこのエンコーダ12の外周面に対向する位置は、このエンコーダ12の円周方向に関して同じ位置としている。言い換えれば、上記両センサ13、13の検出部は、上記外輪3の中心軸に平行な仮想直線上に配置されている。又、この外輪3とハブ4との間にアキシアル荷重が作用しない状態で、上記各透孔14a、14b同士の間に位置し、全周に連続するリム部17が、上記両センサ13、13の検出部同士の間の丁度中央位置に存在する様に、各部材12、13、13の設置位置を規制している。
又、上記各センサ13、13は、例えばアクティブ型の磁気センサとし、その検出部に、ホール素子、磁気抵抗素子等の磁気検出素子を設けている。この様な磁気検出素子の特性は、上記各透孔14a、14bに対向している状態と上記各柱部15a、15bに対向している状態とで変化する。従って、前記ハブ4と共に上記エンコーダ12が回転すると、上記磁気検出素子の特性が変化し、上記各センサ13、13の出力信号が変化する。この様にして上記各センサ13、13の出力信号が変化する周期(周波数)は、上記ハブ4の回転速度に応じて変化する。具体的には、この回転速度が速くなる程、上記出力信号が変化する周期が短くなり、変化する周波数が高くなる。この為、この出力信号を車体側等に設けた図示しない制御器に送れば、上記エンコーダ12と共に回転する前記車輪の回転速度を求めて、ABSやTCSの制御を行なえる。この点に就いては、従来から知られている技術と同様である。
尚、上記各センサ13、13は、上述の様なアクティブ型の磁気センサの他、パッシブ型の磁気センサとする事もできる。パッシブ型の磁気センサは、永久磁石と、ポールピースと、コイルとにより構成する。更には、光学式のものとする事もできる。又、上記各センサ13、13として、磁気センサを使用する場合には、エンコーダの被検出面に、透孔に代えて、凹部や凸部を形成する事もできる。又、この様なエンコーダの被検出面を、N極に着磁した部分とS極に着磁した部分とを円周方向に関して交互に且つ等間隔に配置した、永久磁石により構成する事もできる。より具体的には、N極に着磁された部分とS極に着磁された部分との境界を、エンコーダの軸方向に対し同じ角度だけ傾斜させると共に、この軸方向に対する傾斜方向を、このエンコーダの軸方向中間部を境に互いに逆方向とする{N極に着磁された部分とS極に着磁された部分とを、軸方向中間部が円周方向に関して最も突出した(又は凹んだ)、「く」字形とする}事もできる。
何れにしても、上記外輪3とハブ4との間にアキシアル荷重が作用すると、上記両センサ13、13の出力信号が変化する位相がずれる。即ち、上記外輪3とハブ4との間にアキシアル荷重が作用していない状態では、上記両センサ13、13の検出部は、図4の(A)の実線イ、イ上、即ち、上記リム部17から軸方向に同じだけずれた部分に対向する。従って、上記両センサ13、13の出力信号の位相は、同図の(C)に示す様に一致する。これに対して、上記エンコーダ12を固定したハブ4に、図4の(A)で下向きのアキシアル荷重が作用した場合には、上記両センサ13、13の検出部は、図4の(A)の破線ロ、ロ上、即ち、上記リム部17からの軸方向に関するずれが互いに異なる部分に対向する。この状態では上記両センサ13、13の出力信号の位相は、同図の(B)に示す様にずれる。更に、上記エンコーダ12を固定したハブ4に、図4の(A)で上向きのアキシアル荷重が作用した場合には、上記両センサ13、13の検出部は、図4の(A)の鎖線ハ、ハ上、即ち、上記リム部17からの軸方向に関するずれが、逆方向に互いに異なる部分に対向する。この状態では上記両センサ13、13の出力信号の位相は、同図の(D)に示す様にずれる。
上述の様に本例の場合は、上記両センサ13、13の出力信号の位相が、上記外輪3とハブ4との間に加わるアキシアル荷重の方向に応じた方向にずれる。又、このアキシアル荷重により上記両センサ13、13の出力信号の位相がずれる程度は、このアキシアル荷重が大きくなる程大きくなる。そこで、本例の場合は、上記両センサ13、13の出力信号の位相のずれの有無、ずれが存在する場合にはその方向及び大きさに基づいて、前記演算器により、上記外輪3とハブ4との間の軸方向に関する変位量及びこれら外輪3とハブ4との間に作用しているアキシアル荷重の方向及び大きさを求める。
この様に本例の場合には、位相差に基づいて、上記外輪3と上記ハブ4との軸方向相対変位量、更には、これら外輪3とハブ4との間に作用するアキシアル荷重を、上記演算器により求めるが、この相対変位量並びにアキシアル荷重を正確に求める為には、前記エンコーダ12の被検出面の精度が良好である必要がある。これに対してこの被検出面の特性が変化する境界部分の位置に関する精度は、上記ハブ4に対する上記エンコーダ12の組み付け誤差等により、必ずしも十分でない場合がある。そこで本例の場合には、上記位相差に関するデータを、図5に示す様な適応フィルタ18により処理する事で、上記境界部分の位置に関する誤差を除去する様にしている。この適応フィルタ18は、LMSアルゴリズムを用いるものである。以下、この適応フィルタ18の動作に就いて、上記ハブ4に対する上記エンコーダ12の組み付け誤差等に伴う、軸方向に関する振れ等による誤差(回転1次成分の誤差)を除去する場合を中心に説明する。
前記各センサ13、13の検出部が対向する部分での、前記エンコーダ12の被検出面に存在する透孔14a、14bと柱部15a、15bとの境界の位置は、実際にこのエンコーダ12が上記各センサ13、13に対し軸方向に変位する事に伴って変化した分dd と、上記軸方向に関する振れによる誤差成分dn とが重畳されたもの(dd +dn )となる。即ち、上記各センサ13、13の出力信号に基づく信号(又は、これら各センサ13、13の出力信号から得られる位相差を表す信号)は、上記実際の軸方向変位分を表す信号dd と上記誤差成分dn とが足し合わされた信号(又は、これら足し合わされた信号から得られる位相差を表す信号)d(=dd +dn )になる。従って、上記適応フィルタ18によりこの変動分dn を上記出力信号dから差し引けば(減ずれば)、上記実際の軸方向変位量dd (又は外輪3とハブ4との間に作用するアキシアル荷重)を求められる事になる。
一方、上記適応フィルタ18を作動させる為には、上記軸方向に関する振れに基づく変動分dn と相関性のある参照信号xが必要になる。この参照信号xを入手できれば、上記適応フィルタ18は自己学習によって、実際の信号の流れ「dn →d」の伝達特性と同じ特性を持った、FIR(finite impulse response )フィルタ(インパルス応答時間が有限なフィルタ=インパルス応答が有限時間内に0になるフィルタ)を形成する。そして、上記各センサ13、13の出力信号(又は、これらセンサ13、13の出力信号から得られる位相差を表す信号)dから、上記適応フィルタ18による計算の結果得られる、キャンセル信号y{=後述するy(k)}を差し引けば、上記各センサ13、13の出力信号(又は、これらセンサ13、13の出力信号から得られる位相差を表す信号)dから上記軸方向に関する振れによる変動分dn を取り除いた(d−dn )事と等価になる。この様にしてこの変動分dn を取り除く場合に、上記適応フィルタ18は、信号の主ルート(図5の上半部分)を送られる出力信号dに対してフィルタリングするのではなく、副ルート(図5の下半部分)を送られる参照信号xに基づいて上記変動分dn を取り除く為のキャンセル信号yを計算する。そして、上記主ルートである出力信号dから上記キャンセル信号yを引き算する。
又、本例の場合、上記参照信号xを、前記エンコーダ12の1回転中での特性変化の回数に基づき、このエンコーダ12に対向した上記各センサ13、13の出力信号の処理回路、又は、この出力信号に基づいて前記外輪3と前記ハブ4との軸方向に関する変位量又は作用するアキシアル荷重(更には変位量からアキシアル荷重)を求める為の処理回路により、自己生成する。言い換えれば、本例の場合は、別途設けたセンサの検出信号を使用する事なく上記参照信号xを入手して、上記適応フィルタ18により、上記エンコーダ12の軸方向に関する振れに基づく、上記各センサ13、13の出力信号dの変動分dn を低減させる。即ち、上記エンコーダ12の1回転中での特性変化の回数(透孔14a、14bの数)は予め分かっている。従って、このエンコーダ12の1回転分のパルス数を観察する事で、特に変位センサや回転速度センサ等のセンサを別途設けなくても、上記変動分dn と相関のある上記参照信号xを生成できる。具体的には、上記エンコーダ12の軸方向に関する振れの影響は、回転1次が主成分の波形であり、例えばこのエンコーダ12が、1回転当り60パルスのものであれば、60データで1周期となる様なサイン波、三角波、鋸波、矩形波、パルス波等として自己生成できる。
この様な参照信号xの波形は、前記外輪3と前記ハブ4との軸方向に関する相対変位量(更にはアキシアル荷重)を算出する為の処理回路(CPU)で生成する事もできるし、上記各センサ13、13に付属の電子回路部(IC)で生成する事もできる。何れにしても、得られた上記参照信号xに基づいて算出したキャンセル信号yは、上記各センサ13、13の出力信号(又は、これら各センサ13、13の出力信号から得られる位相差を表す信号)dから差し引いて、前記実際の変位量dd を表す修正信号e{=後述するe(k)}を求める。この様にして求めた修正信号eは、上記相対変位量(アキシアル荷重)を算出する為の処理回路に送ってこの変位量(アキシアル荷重)を求める為に利用する他、上記適応フィルタ18が自己学習する為の情報としても利用する。
尚、上記適応フィルタ18部分で、上記キャンセル信号yを求め、更にこのキャンセル信号yを上記各センサ13、13の出力信号(又は、これら各センサ13、13の出力信号から得られる位相差を表す信号)dから差し引いて、上記修正信号eを得る為の処理は、次の(1)〜(3)式に基づいて行なう。
Figure 2008039537
Figure 2008039537
Figure 2008039537
上記(1)(2)(3)式中、kは時系列でのデータ番号、Nは適応フィルタ18として用いるFIRフィルタのタップ数である。又、wはFIRフィルタのフィルタ係数を表し、wk はk番目のデータ処理をする場合に使用するフィルタ係数を、wk+1 は次のデータ系列(k+1番目)を処理する場合に使用するフィルタ係数を、それぞれ表している。即ち、本例の場合、上記FIRフィルタは、上記(3)式により逐次適正にフィルタ係数が更新されていく適応フィルタとなる。
尚、上記適応フィルタ18に入力する前記参照信号xは、前記エンコーダ12の振れ等に代表される、このエンコーダ12の回転n次(nは正の整数)成分と相関のある信号であれば良いので、このエンコーダ12の1回転当り1インパルス信号でも構わない。そこで、上記参照信号xが1インパルス信号であると同時に、上記適応フィルタ18のタップ数Nが、上記エンコーダ12の1回転当りのパルス数と等しい場合を想定する。この場合、時系列kの瞬間に計算に使用する参照信号xは、次の(4)式で表される。
Figure 2008039537
この(4)式で、参照信号xが値1のインパルスとなる位置jは、時系列kが進んでいくのに従って右側に1個ずつずれて行き、一番右側の「N−1」番目までずれると、次の時系列では、新たなインパルス値が一番左の0番目に表れる事になる。即ち、上記参照信号xは、値1のインパルスの位置を0番目からN−1番目まで巡回させただけのデータ列となる。この(4)式を、前述の(1)(3)式に当て嵌めると、次の(5)(6)式を得られる。
Figure 2008039537
Figure 2008039537
同期式でない、通常のLMSアルゴリズムで適応フィルタを作動させる場合には、前述した様に、(1)(2)(3)各式に示す計算を繰り返し行なう必要があるのに対して、同期式LMSアルゴリズムで適応フィルタを作動させる場合には、上記(5)(6)式及び(2)式に示す計算を行なうだけで済む。例えば、適応フィルタ18のタップ数Nを60とした場合、通常のLMSアルゴリズムで適応フィルタ18を作動させると、エンコーダ12の1ピッチ毎の演算の回数の合計は、上記(1)式で掛け算を60回、上記(2)式で引き算を1回、上記(3)式で掛け算を120回と足し算を60回との180回、合計で241回になる。これに対して、同期式LMSアルゴリズムで適応フィルタ18を作動させる場合には、上記(5)式はデータ入れ替えのみで演算なし、上記式(2)で引き算1回、上記(6)式で掛け算1回と足し算1回との2回、合計で3回の四則演算を、上記エンコーダ12の1パルス毎に行なえば良い。即ち、LMSアルゴリズムとして同期式を採用する事で、採用しない場合に比べて、演算の回数を凡そ1/80に削減できる。
但し、上記適応フィルタ18を作動させるのに同期式LMSアルゴリズムを採用した場合に、実際の変位量を表す信号であるDC成分までもがキャンセルされる事を防止する為に、上記適応フィルタ18の零点を補正する必要がある。即ち、この適応フィルタ18を動作させるLMSアルゴリズムとして同期式を採用し、特に対策を施さない場合には、上記エンコーダ12の振れ回りに基づく変動成分だけでなく、このエンコーダ12の変位量を表すDC成分までもがキャンセルされて、出力値が零となる。これは、適応動作によって上記適応フィルタ18のフィルタ係数WがDCレベルを持ってしまい、結果としてこの適応フィルタ18の出力信号yがDCレベルを持ってしまう為に生じる現象である。この問題を解決する為には、前記(6)式で表されるフィルタ係数wの平均値から上記DCレベルを算出し、このDCレベルに参照信号xのインパルス値を掛け算したDC信号を計算しておく(インパルス値が1である場合には掛け算不要)。そして、上記適応フィルタ18によって誤差をキャンセルされた信号eに、上述の様にして計算したDC信号を加える事で、正確な変位量を表すDCレベルを得られる様にする。
尚、演算を開始する際に最初に用いるフィルタ係数wk は、零を代入しておいても、動き始めれば自己適応していくので差し支えはないが、予め望ましいフィルタ特性を求めてその値を代入しておいても良い。或いは、前回の処理で最後に使用したフィルタ係数を、EEPROM等の記憶手段に記憶しておき、再始動時に使用しても良い。更には、最初に入力される信号により表されるデータを、上記フィルタ係数の初期値とする事もできる。
又、前記(3)式中のμは、ステップサイズパラメータと呼ばれる、フィルタ係数を自己適正化させていく場合の更新量を決定する値であり、通常0.01〜0.001程度の値となるが、実際には、適応動作の妥当性を事前に調べて設定するか、次の(7)式を用いて逐次更新する事もできる。
Figure 2008039537
尚、この(7)式中のαも、フィルタ係数を自己適正化させていく為の更新量を決定するパラメータとなるが、0<α<1の範囲であれば良く、上記μよりも設定が容易である。又、本例の場合には、前記参照信号xを自己生成するので、上記(7)式中の分母の値は既知であり、μの最適値を事前に算出しておく事もできる。計算量削減の観点からは、予め(7)式でこのμを算出しておき、このμを定数として上記(3)式でフィルタ係数を自己適正化させるのが望ましい。
上述の様に、前記各センサ13、13の出力信号dから、前記適応フィルタ18が算出したキャンセル信号yを差し引く事で、前記実際の変位量dd を表す修正信号eを求められる。そして、この様にして求めた修正信号eに基づいて、前記外輪3と前記ハブ4との軸方向に関する相対変位量、更には、これら外輪3とハブ4との間に作用するアキシアル荷重を正確に求められる。尚、実際の場合には、上記各センサ13、13の出力信号(又は、これら各センサ13、13の出力信号から得られる位相差を表す信号)d中には、前記ピッチ誤差に基づく第二の変動(エンコーダ12の軸方向に関する振れに基づく変動よりも周期が短い第二の変動)が存在する。そこで、この第二の変動を平均化する為の平均化フィルタ等のローパスフィルタを、上記適応フィルタ18の前又は後に設けて、上記第二の変動に拘らず、上記変位量、更にはアキシアル荷重を正確に求められる様にする。高周波の変動を抑える為の、平均化フィルタ等のローパスフィルタの構造及び作用に関しては、従来から周知である為、詳しい説明は省略する。
図6、7は、この様なフィルタリング処理を行なった場合のコンピュータシミュレーションの結果を示している。この様な図6、7の縦軸は、位相差、即ち、上記エンコーダ12の軸方向変位に伴う、上記両センサ13、13の出力信号同士の位相差、即ち、図4の(B)〜(D)に示したこれら両センサ13、13の出力信号同士の時間ずれ量を(検出すべき値を100として)表している。又、同じく横軸は、パルス数を表している。この様な図6、7のうちの細線(計測データ)は、上記フィルタリング処理を施さずに、上記両センサ13、13の出力信号をそのまま比較して、上記位相差を求めた場合を示している。この様な図6、7の各細線には、上記エンコーダ12の組み付け誤差に基づく回転1次の変動成分(誤差)が大きく現れている。これに対して図6、7の全線(ろ過データ)は、上記位相差を表す信号に関して、同期式LMS適応フィルタによるフィルタリング処理を施した(ろ過した)結果得られる信号を示している。この様な図6、7の全線から明らかな通り、上記フィルタリング処理を施す事により、前記変位量、更には、アキシアル荷重を求める場合に問題となる回転1次の変動成分(誤差)を低減できる。
尚、上記図6と図7とでは、混入する回転1次の誤差成分レベル(誤差の大きさ、例えばエンコーダ12の振れ量の大きさ)を、意図的に異なる値にしている。即ち、上記図6では誤差の片振幅レベルを10に、上記図7では誤差の片振幅レベルを20に、それぞれ設定している。そして、この様に異なる誤差レベルのそれぞれに対し、同期式LMSのステップサイズパラメータμをそれぞれ異ならして(大中小の3種類の異なる値で)シミュレーションを行なっている。即ち、上記図6、7の(A)は、ステップサイズパラメータμを0.1とし、同じく(B)はμ=0.3とし、同じく(C)はμ=0.5としたシミュレーション結果を示している。又、上記な図6、7で、上記フィルタリング処理を施した(ろ過した)結果得られる信号(ろ過データ、全線)が収束する時点を、矢印で示している。この様な図6、7から明らかな様に、上記ステップサイズパラメータμが大きいほど、算出初期時(測定初期時)の変動(初期暴れ)の収束性を良好にできる(早く収束させられる)。又、この算出初期時の変動(初期暴れ)が収束するのに必要なデータ数(パルス数)は、混入している誤差レベル(振幅)には依存せず、上記ステップサイズパラメータμによってほぼ一定に定まる。
即ち、例えば、誤差レベル10の条件で、μ=0.1{図6(A)}では収束するまでに約1000パルスのデータ数を要しているのに対して、μ=0.5{図6(C)}では約60パルスのデータ数で収束している。誤差レベル20の条件でも、同様にμ=0.1{図7(A)}では収束するまでに約1000パルスのデータ数を要しているのに対して、μ=0.5{図7(C)}では約60パルスのデータ数で収束している。即ち、算出初期時(初期暴れ)が収束するのに必要なデータ数(パルス数)は、混入している誤差レベル(振幅の大きさ)には依存せず、上記ステップサイズパラメータμのみのよってほぼ一定に定まる事が分かる。
上記ステップサイズパラメータμは、前述した様に、予め演算器等に、所望の要求性能に合致する様にインストールしておくパラメータであり、既知の値である。そして、例えば前述の特許文献3に記載されている様に、収束性を重視する場合には、上記ステップサイズパラメータμを大きく設定したり、回転n次以外の成分の悪化を防止する場合には、このステップサイズパラメータμを小さく設定したりする事ができる。或は、前記特願2005−329717号に開示されている様に、算出を開始してからのパルスデータ数が少ない間は上記ステップサイズパラメータμを大きくしておき、パルスデータ数が多くなるに従い、上記ステップサイズパラメータμを小さくする事もできる。この様に構成すれば、上記算出初期時の変動(初期暴れ)を早期に収束させる事ができる他、例えば走行安定性を確保する為の制御が必要な走行状態で上記μを大きくする事で、回転n次以外の成分の算出結果の精度が悪化する事も抑えられる。
更に本例の場合は、上述の様なフィルタリング処理を施された信号(位相差を表す信号)に基づいて状態量(変位量、荷重)の算出を行なう前記演算器に、次の機能を持たせている。即ち、上記フィルタリング処理を施された上記信号に基づいて、上記状態量の算出を開始しても、この状態量の算出結果を、例えばこの算出結果を使用する制御器(例えば車両の走行安定性の為の制御を行なう制御器、車両制御コントローラ)等に対しそのまま直ちには出力せずに、予め設定された所定の条件を満たした事を条件に、上記状態量の算出結果の出力を開始する機能を、上記演算器に持たせている。より具体的には、予め設定したパルス数の算出が完了した事を条件に(図6、7の各矢印までパルス数が達した事を条件に)、上記状態量の算出結果の出力を、上記制御器等に対し開始する様にしている。上述の様にステップサイズパラメータμは既知であり、且つ、算出初期の変動(初期暴れ)の収束性は、誤差レベル(振幅の大きさ)に依存しにくい。この為、最初の位相差検出から、どの程度のパルスデータ数を処理すれば、上記変動(初期暴れ)が収束し、上記位相差データに基づいた状態量(荷重、変位量)の算出結果を、上記制御器等(例えば車両制御コントローラ)に送信(出力)して良いかを予測できる。そこで、本例の場合には、予め定めたパルスデータ数に達した直後から、算出結果を演算器から出力し始める事で、変動(暴れ)の無いデータ(信号)を迅速に提供できる様にしている。
尚、上記「最初の位相差検出」とは、前記エンコーダ12が停止状態から徐々に回転速度が上昇し、演算器のカウンタタイマが認識できる最も低速の回転速度に達した場合の位相差を言う。即ち、本例の場合は、複数(1対)のセンサ13、13の一方のパルスエッジと他方のパルスエッジとの時間差をカウンタタイマで測定し、これら各センサの出力信号の位相差を認識する。ここで、ハブ4、延いては上記エンコーダ12の回転速度が極端に低速だと、上記時間差が大きくなり過ぎて上記カウンタタイマがオーバフローしてしまい、この時間差の測定(位相差の測定)ができなくなる可能性がある。そこで、本例の場合には、オーバフローが無くなったデータを1個目の位相差データ(最初の位相差データ)とし、所定のパルスデータ数まで達したら、算出結果を演算器から出力し始める様にする。尚、上記所定のパルスデータ数まで達した後に、或は、所定のパルスデータ数に達する以前であっても、再び極低速になり、1回でもオーバフローしたら、算出内容を初期状態にリセットし、上記操作を最初からやり直す(最初の位相差データを設定し直す)。又、上記所定のパルスデータ数まで達した後で、算出結果を上記制御器等に出力していた場合には、オーバフローを認識した時点で、その算出結果の出力を停止する。
尚、本例の場合は、所定のパルス数に達した事を条件に算出結果を出力する様にしている(閾値をパルス数で設定している)が、予め定めておいた回転速度に達した事を条件に(直後から)、上記演算器から算出結果の出力を開始する事もできる(閾値を回転速度で設定する事もできる)。この様な構成は、例えば上記算出結果である位相差、延いては変位、荷重等を表す信号が、上記演算器から出力されているか否かを、例えば出力先である制御器(車両側コントローラ)側で認識させる必要がある場合等に、好適である。例えばCAN(Controller Area Network :シリアル通信プロトコル)等のデジタル通信の場合には、例えば予め定めておいた信号によって、上記演算器が算出結果を出力しているのか停止しているのかを判別する事ができるのに対して、アナログ通信の場合はその判別が難しい。上述の様にパルス数を閾値として演算器から算出結果を出力する場合、このパルス数は、この演算器のみが知っている値であり、上記制御器(車両側コントローラ)側ではこの値を認識していない。従って、そのままでは、この制御器は、上記演算器が算出結果を出力しているか否かを判断できない可能性がある。これに対して、回転速度であれば上記制御器(車両側コントローラ)も認識しているので、この回転速度を閾値にして算出結果の出力を開始すれば、この制御器(車両側コントローラ)側で、上記演算器が算出結果を出力しているのか否かを判断できる。
但し、この様に回転速度を閾値として演算器から出力する方法を採用した場合でも、算出結果の初期の変動(初期暴れ)が収束した後、可及的速やかにその算出結果を上記制御器等に出力し始める様にする事が好ましい。即ち、上記回転速度の閾値の設定によっては、例えばこの回転速度が閾値に達しなくても、既に算出結果の変動が収束してしまう可能性がある。この様な場合、選出結果が収束しているにも拘わらず、この算出結果が演算器から出力されなくなる可能性がある。この様な不都合を防止する為には、例えば車両の急発進時の最大加速性能(加速度)を想定し、この状態に於ける上記所定のパルスデータ数と回転速度(車速)との関係を予め求めておく。そして、この最大加速時に於ける上記所定のパルスデータ数に達する回転速度よりも若干速い値を、上記演算器の算出結果の出力開始条件に設定しておけば、例え最大加速で急発進した場合でも、収束が完了した直後から演算結果を、制御器等に出力し始められる。
尚、上述した説明は、演算器が出力する算出結果の開始条件について説明したが、この演算器が出力する算出結果を停止する条件に就いても、同様に設定できる。この場合にはこの停止条件(閾値)を、回転速度を基準として設定しても良いし、カウンタタイマのオーバフローを基準として設定しても良い。尚、上記回転速度を基準として算出結果の出力を停止させる場合には、この基準を、上記開始条件の回転速度よりも低く設定する(差分を設ける)。この理由は、開始条件と停止条件とを同一回転速度に設定すると、この設定回転速度付近で走行した場合に、上記演算器で算出結果の出力開始と停止とが頻繁に繰り返されてしまう、所謂ハンチングが発生してしまう可能性がある為である。
上述の様に構成する本例の状態量測定装置を組み込んだ、状態量測定装置付転がり軸受ユニットによれば、フィルタ回路を用いた状態量の算出(測定)に伴う、不可避的な算出初期時の変動(初期暴れ)に基づく不都合を防止できる。
即ち、演算器は、フィルタリング処理を施された出力信号若しくはこの出力信号に基づいて得られる処理信号に基づいて、状態量(荷重、変位、傾斜角、回転速度等)の算出(想定)を開始しても、予め設定されたパルス数の算出が完了しなければ、上記状態量の算出結果を(例えばこの算出結果を使用する制御器等に)出力しない。そして、上記不可避的な算出初期時の変動(初期暴れ)が収束した直後から、上記算出結果の出力を開始する。この為、この算出結果に基づいて、異常な荷重が加わっていると誤認識し、不適切な制御を行なう事を防止しつつ、上記算出結果を迅速に使用する事ができる。この結果、例えば車両(自動車)が停止状態から走り始めたばかりの状況等でも、算出された状態量に応じて必要な制御を適切に行なえる。
[実施の形態の第2例]
図8は、請求項1〜8、10に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、磁性金属板製のエンコーダ12の外周面に、3個のセンサ13a〜13cの検出部をラジアル方向に対向させるのみで、アキシアル方向の変位(荷重)だけでなく、ラジアル方向の変位(荷重)も求められる様にしている。即ち、前述の図1〜4に示した第1例の構造にセンサを1個加える事により、静止側軌道輪である外輪3と、回転側軌道輪であるハブ4(図1参照)との間のアキシアル方向の変位(荷重)だけでなく、ラジアル方向の変位(荷重)を測定可能にしている。このラジアル方向の変位(荷重)を測定可能にする点以外の構成及び作用は、上述の第1例の場合と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。尚、上記3個のセンサ13a〜13cのうちの2個のセンサ13a、13bが、上記第1例の構造に組み込まれた1対のセンサ13、13に対応する。又、エンコーダ12の構造に就いては、上記第1例の構造と同じである。
上記3個のセンサ13a〜13cのうち、上記2個のセンサ13a、13bの検出部を、上記エンコーダ12の外周面の軸方向両側部分に振り分けて、上記エンコーダ12の円周方向に関して同じ位置に対向させている。又、上記第1例の場合と同様に、上記外輪3と上記ハブ4(図1参照)との中立状態で、上記エンコーダ12に形成した各透孔14a、14b同士の間に位置し、全周に連続するリム部17が、上記両センサ13a、13bの検出部同士の間の丁度中央位置に存在する様にしている。
これに対して、上記3個のセンサ13a〜13cのうちの残り1個のセンサ13cの検出部は、上記エンコーダ12の外周面のうちの軸方向片側寄り部分(図8の右側寄り部分)に対向させている。上記1個のセンサ13cの検出部が上記エンコーダ12の外周面に対向する位置は、上記外輪3と上記ハブ4との中立状態で、上記エンコーダ12の回転方向に関しては、上記センサ13a、13bが対向している部分から90度(円周方向に)ずれた位置としている。又、上記エンコーダ12の軸方向に関しては、上記センサ13bが対向している部分と同じ位置としている。
上述の様に構成する本例の構造によれば、上記外輪3と上記ハブ4との相対変位により生じる、上記3個のセンサ13a〜13bの出力信号同士の間の位相差に基づいて、アキシアル方向の変位(荷重)だけでなく、ラジアル方向の変位(荷重)も求められる。この点に就いて、x、y、z各方向の変位と、上記3個のセンサ13a〜13cの出力信号同士の間の位相差の有無とに就いて説明する。尚、x、y、z各方向とは、本実施例を自動車の車輪支持用転がり軸受ユニットに適用した場合に於いて、x方向が前後方向に関するラジアル方向を、y方向が幅方向に関するアキシアル方向を、z方向が上下方向に関するラジアル方向を、それぞれ表している。
(1) x方向の変位が発生(外輪3とハブ4とが前後方向に相対変位)した場合。
この場合には、下側に設けた2個のセンサ13a、13bの出力信号同士の間には位相差は発生しない。
これに対して、水平方向に設けて上記エンコーダ12の軸方向片半部(図8の右半部)に対向した上記1個のセンサ13cの出力信号と、上記下側に設けた2個のセンサ13a、13bの出力信号との間に、上記x方向の変位(方向及び大きさ)に応じた方向及び大きさの位相差が発生する。
(2) y方向の変位が発生{外輪3とハブ4とが幅方向(軸方向)に相対変位}した場合。
この場合には、上記下側に設けた2個のセンサ13a、13bの出力信号同士の間に位相差が発生する。
同様に、上記水平方向に設けた1個のセンサ13cの出力信号と上記下側に設けて上記エンコーダ12の軸方向他半部(図8の左半部)に対向したセンサ13aの出力信号との間にも位相差が発生する。
これに対して、上記下側に設けて上記エンコーダ12の軸方向片半部に対向したセンサ13bの出力信号と上記水平方向に設けた1個のセンサ13cの出力信号との間には位相差は発生しない。
(3) z方向の変位が発生(外輪3とハブ4とが上下方向に相対変位)した場合。
この場合には、上記下側に設けた2個のセンサ13a、13bの出力信号同士の間には位相差は発生しない。
これに対して、上記水平方向に設けた1個のセンサ13cの出力信号と、上記下側に設けた2個のセンサ13a、13bの出力信号との間に、上記z方向の変位(方向及び大きさ)に応じた方向及び大きさの位相差が発生する。
これら、x、y、z各方向の変位が発生した状態での、上記各センサ13a〜13cの出力信号同士の間の位相差の出現状態から明らかな通り、本例の場合には、アキシアル方向の変位(荷重)だけでなく、ラジアル方向の変位(荷重)も求められる。但し、x、z両方向に関するラジアル方向の変位を見分ける事はできない。従って、本例の構造は、アキシアル方向の変位(アキシアル荷重)に加えて、何れか一方向のラジアル方向の変位(ラジアル荷重)を求める場合に有効である。即ち、x方向或はz方向の何れか一方向にのみ変位が発生し、他方向には変位が発生しない(一定値である)と見做せる様な用途、構造であれば、上記アキシアル、ラジアル、両方向の変位(荷重)を求められる。
例えば、転がり軸受ユニットが、自動車の従動輪(FR車の後輪、FF車、RR車、MR車の前輪)を支持する為の転がり軸受ユニットの場合には、走行中に作用する荷重は、制動時を除き、アキシアル荷重と上下方向のラジアル荷重のみであり、前後方向のラジアル荷重はほぼ無視できる場合がある。そこで、上記x方向のラジアル変位を0であるとして、上記各センサ13a〜13cの出力信号同士の間の位相差を処理すれば、残りの2方向、即ち、車両の幅方向であるy方向に関するアキシアル方向の変位(アキシアル荷重)と、同じく上下方向であるz方向に関するラジアル方向の変位(ラジアル荷重)とを求められる。即ち、y方向の変位はセンサ13a、13bの出力信号同士の位相差により、z方向の変位はセンサ13a(13b)、13cの出力信号同士の位相差により、それぞれ求められる。上記各センサ13a〜13cの出力信号同士の間の位相差に基づいて、上記y、z両方向の変位を求める方法は、基本的には前述の図1〜4に示した、第1例の場合と同様であるから、詳しい説明は省略する。
上述の様にして、上記y、z両方向の変位を求められれば、これらy、z両方向に加わる荷重を求められる。そして、この様な構造で、上記各センサ13a〜13cの出力信号の位相のずれの方向及び大きさに関して前述の第1例に記載した様なフィルタ処理を施せば、前記エンコーダ12の被検出面の振れに拘らず、上記アキシアル方向及びラジアル方向の変位(アキシアル荷重及びラジアル荷重)を精度良く求められる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した第1例と同様である。
以上に述べた各例は、外輪とハブとの相対変位量、これら外輪とハブとに作用する荷重、ハブの回転速度を求める場合を示した。この場合に、上記荷重は、相対変位量からこの相対変位量と対応する(相関関係を有する)荷重として求めても良いし、この相対変位量を求める事なくセンサの出力信号又は処理信号(1対のセンサの出力信号の位相差を表す信号)から直接荷重を求めても良い。何れの場合も、上記センサから出力される出力信号又は処理信号をフィルタ処理を施す事で、上記荷重を精度良く求める事ができる。
又、特許文献3に記載されている様に、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する、複列に配置された各転動体を保持する保持器の回転速度を測定し、これら各列の保持器の回転速度同士の間に存在する違いに基づいて、外輪とハブとの間に作用する荷重を求める事もできる。この場合にも、センサから出力される出力信号又は処理信号をフィルタ処理を施す事で、上記荷重を精度良く求める事ができる。
又、エンコーダの被検出面の特性や、この被検出面と対向させる複数のセンサの位置関係は、例えば前述の特許文献4、5に記載されている様に、或は、特願2005−329717号に開示されている様に、測定(算出)すべき状態量に応じて適切に規制する。
本発明の実施の形態の第1例を示す断面図。 エンコーダを取り出して示す斜視図。 同じく展開図。 アキシアル荷重の変動に伴って変化するセンサの出力信号を示す線図。 センサの出力信号に基づくデータをフィルタリング処理する適応フィルタのブロック図。 同期式LMS適応フィルタにより、回転センサから求めた位相差を表す信号の変動を低減する状態を、ステップサイズパラメータを大中小の3通りに異ならせて示す線図。 同別例を示す線図。 本発明の実施の形態の第2例を示す、エンコーダ及びセンサの斜視図。 適応フィルタにより、回転センサから求めた転動体の公転速度(保持器の回転速度)を表す信号の変動を低減する状態の1例を示す線図。 ステップサイズパラメータの違いに基づいて、同期式LMS適応フィルタの減衰特性が変化する状態を示す線図。
符号の説明
1 車輪支持用転がり軸受ユニット
2 状態量測定装置
3 外輪
4 ハブ
5 転動体
6 外輪軌道
7 取付部
8 ハブ本体
9 内輪
10 フランジ
11 内輪軌道
12、12a、12b エンコーダ
13、13a、13b、13c センサ
14a、14b 透孔
15a、15b 柱部
16 取付孔
17 リム部
18 適応フィルタ

Claims (10)

  1. 回転部材に支持されてこの回転部材と共に回転する、被検出面の特性を円周方向に関して交互に変化させたエンコーダと、その検出部をこの被検出面に対向させた状態で回転しない部分に支持され、この被検出面の特性変化に対応してその出力信号を変化させるセンサと、このセンサの出力信号若しくはこの出力信号に基づいて得られる処理信号にフィルタリング処理を施すフィルタ回路と、このフィルタ回路によりフィルタリング処理を施された上記出力信号若しくは上記処理信号に基づいて、上記エンコーダを支持した上記回転部材の状態量を算出する演算器とを備え、上記フィルタ回路は、上記出力信号若しくは上記処理信号の変動のうち、上記回転部材の状態量算出に対する誤差となる変動の影響を除去するものである回転部材の状態量測定装置に於いて、上記演算器は、上記フィルタリング処理を施された上記出力信号若しくは上記処理信号に基づいて、上記状態量の算出を開始しても、この状態量の算出結果をそのまま直ちには出力せずに、予め設定された所定の条件を満たした事を条件に、上記状態量の算出結果の出力を開始する機能を備えたものである事を特徴とする回転部材の状態量測定装置。
  2. 予め設定したパルス数の算出が完了した事を条件に、状態量の算出結果の出力を開始する、請求項1に記載した回転部材の状態量測定装置。
  3. 回転部材の回転速度が予め設定した値に達した事を条件に、状態量の算出結果の出力を開始する、請求項1に記載した回転部材の状態量測定装置。
  4. エンコーダの被検出面にそれぞれの検出部を対向させた状態で少なくとも1対のセンサを設置し、この被検出面のうちで、少なくとも何れかのセンサの検出部が対向する部分は、円周方向に関して特性が変化する境界が、上記エンコーダの被検出面の幅方向に関して連続的に変化しており、演算器は、フィルタリング処理を施された出力信号若しくは処理信号に基づいて、上記エンコーダを支持した回転部材の変位量又はこの回転部材に加わる荷重を求める、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した回転部材の状態量測定装置。
  5. エンコーダの被検出面の円周方向に離隔した位置にそれぞれの検出部を対向させた状態で少なくとも1対のセンサを設置し、演算器は、フィルタリング処理を施された出力信号若しくは処理信号に基づいて、上記エンコーダを支持した回転部材の径方向に関する変位量又はこの回転部材に加わるラジアル荷重を求める、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載した回転部材の状態量測定装置。
  6. 回転部材は、転がり軸受ユニットの回転側軌道輪若しくはこの回転側軌道輪に結合固定されてこの回転側軌道輪と共に回転する部材であり、
    上記転がり軸受ユニットは、使用状態で回転する上記回転側軌道輪と、使用状態でも回転しない静止側軌道輪と、これら回転側軌道輪と静止側軌道輪との互いに対向する周面に存在する静止側軌道と回転側軌道との間に設けられた複数個の転動体とを備えたものであり、演算器は、フィルタリング処理を施された出力信号若しくは上記処理信号に基づいて、上記回転側軌道輪と上記静止側軌道輪との相対変位量を算出する、請求項1〜5のうちの何れか1項に記載した回転部材の状態量測定装置。
  7. 静止側軌道輪と回転側軌道輪との相対変位量を、これら静止側軌道輪と回転側軌道輪との間に作用する荷重を求める為に使用する、請求項6に記載した回転部材の状態量測定装置。
  8. 回転部材は、転がり軸受ユニットの回転側軌道輪若しくはこの回転側軌道輪に結合固定されてこの回転側軌道輪と共に回転する部材であり、
    上記転がり軸受ユニットは、使用状態で回転する上記回転側軌道輪と、使用状態でも回転しない静止側軌道輪と、これら回転側軌道輪と静止側軌道輪との互いに対向する周面に存在する静止側軌道と回転側軌道との間に設けられた複数個の転動体とを備えたものであり、演算器は、フィルタリング処理を施された出力信号若しくは上記処理信号に基づいて、上記回転側軌道輪と上記静止側軌道輪との間に作用する荷重を直接算出する、請求項1〜5のうちの何れか1項に記載した回転部材の状態量測定装置。
  9. 回転部材が、転がり軸受ユニットを構成する1対の軌道輪同士の間に設けられ、複数のポケット内に保持した転動体の公転に伴って回転する保持器であり、演算器は、これら1対の保持器の回転速度に基づいて、上記各軌道輪同士の間に作用する荷重を算出する、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した回転部材の状態量測定装置。
  10. 転がり軸受ユニットが、自動車の車輪を支持する為の車輪支持用転がり軸受ユニットである、請求項6〜9のうちの何れか1項に記載した回転部材の状態量測定装置。
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