JP2008034113A - 燃料電池セパレータの製造方法 - Google Patents

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博道 中田
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Abstract

【課題】 接触抵抗の増大を抑制することができる燃料電池セパレータの製造方法を提供する。
【解決手段】 燃料電池セパレータの製造方法は、セパレータ用基材(10)を準備する第1工程と、セパレータ基材表面に所定値以下のバイアス電圧を印加しつつドライコート法によってTi膜(11)またはTiN膜(20)を成膜する第2工程とを含む。Ti膜またはTiN膜におけるTiCの発生を抑制することができる。それにより、TiCの酸化によるTiOの発生を抑制することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、燃料電池に用いる燃料電池セパレータの製造方法に関する。
燃料電池は、一般的には水素及び酸素を燃料として電気エネルギーを得る装置である。この燃料電池は、環境面において優れかつ高いエネルギー効率を実現できることから、今後のエネルギー供給システムとして広く開発が進められてきている。
一般的に、アノードおよびカソードに電解質が挟まれた発電部がセパレータに挟まれることによってセルが形成され、そのセルが複数積層されることによって燃料電池となる。このセパレータは、アノードに燃料ガスを供給する燃料ガス流路およびカソードに酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス流路が形成されるとともに、隣接するセル間の電子の通路を構成している。
セパレータは、導電性を有する必要性があることから、金属、炭素、導電性樹脂等から構成される。カーボンセパレータおよび導電性樹脂セパレータは、化学的に安定していることから、長期間安定して導電性を維持することができる。しかしながら、カーボンセパレータおよび導電性セパレータは流路を形成した際に流路底面に強度上必要な厚さを有していなければならないことから、カーボンセパレータおよび導電性セパレータを用いる燃料電池においてはスタック長が長くなるという問題がある。
メタルセパレータは、強度が大きいことから、流路底面の厚さが小さくても一定の強度を保つことができる。しかしながら、腐食による導電性低下、出力低下が問題になる。したがって、メタルセパレータを用いる場合には、メタルセパレータに導電性と耐食性を持たせることが課題となる。
そこで、セパレータとして用いるチタンプレート表面にプラズマ窒化処理を施すことによって窒化チタン層を形成する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、セパレータの接触抵抗を小さくすることができる。
特開2006−12455号公報
しかしながら、通常、チタンプレートには炭素が不純物として混入している。特許文献1の技術によって窒化チタンを形成すると、窒化チタン層中に炭化チタンが形成されるおそれがある。炭化チタンは、燃料電池の使用条件下において酸化されて酸化チタンとなりやすい。この場合、セパレータの接触抵抗が増大してしまう。
本発明は、接触抵抗の増大を抑制することができる燃料電池セパレータの製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る燃料電池セパレータの製造方法は、セパレータ用基材を準備する第1工程と、セパレータ基材表面に所定値以下のバイアス電圧を印加しつつドライコート法によってTi膜またはTiN膜を成膜する第2工程とを含むことを特徴とするものである。
本発明に係る燃料電池セパレータの製造方法においては、基材に所定値以下のバイアス電圧が印加されていることから、ドライコートの際にTi膜またはTiN膜に炭素が混入しにくい。この場合、Ti膜またはTiN膜におけるTiC(窒化チタン)の発生を抑制することができる。それにより、TiCの酸化によるTiOの発生を抑制することができる。したがって、本発明に係る燃料電池セパレータの接触抵抗増大を抑制することができる。
第2工程は、0V以下のバイアス電圧条件下におけるスパッタ法にて、Ti膜またはTiN膜を成膜する工程であってもよい。この場合、Ti膜またはTiN膜への炭素の混入をより効率よく抑制することができる。また、第2工程はTi膜を成膜する工程であり、本発明に係る製造方法は、Ti膜の少なくとも表面を窒化することによってTiN膜を形成する第3工程をさらに含んでいてもよい。この場合、TiN膜への炭素の混入を抑制することができる。なお、第3工程は、窒素雰囲気下においてTi膜を窒化してTiN膜を形成する工程であってもよい。
Ti膜またはTiN膜中の炭素濃度は、0.2at%以下であってもよい。この場合、本発明に係る燃料電池セパレータの接触抵抗を、200mΩ・cm以下に抑制することができる。また、セパレータ基材は、ステンレスまたはTiからなるものであってもよい。
本発明によれば、燃料電池セパレータの接触抵抗の増大を抑制することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る燃料電池セパレータ100の模式的断面図である。図1に示すように、燃料電池セパレータ100は、セパレータ用の基材10上にTiN(窒化チタン)層20が積層された構造を有する。基材10は、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)、ステンレス、高耐食金属ガラス等の高耐食材料から構成される。高耐食金属ガラスとしては、Ni(ニッケル)基アモルファス合金(例えば、NiNbCrMoPB系合金(Nb:ニオブ、Cr:クロム、P:リン、B:ホウ素))、Fe(鉄)−Cr系アモルファス合金(例えば、FeCrMoCBP系合金(C:炭素))等を用いることができる。TiN膜20は、TiNから構成される導電性層である。TiN膜20の層厚は、例えば、40nm程度である。
このように、表面にTiN膜20が形成されている場合、燃料電池セパレータ100表面における酸化被膜発生を抑制することができる。したがって、燃料電池セパレータ100と燃料電池の発電部との間の接触抵抗増大を抑制することができる。なお、TiN膜20に含まれる炭素の濃度は、0.2at%以下であることが好ましい。後述するように、燃料電池セパレータ100の接触抵抗を200mΩ・cm以下に抑制することができるからである。
続いて、燃料電池セパレータ100の製造方法について説明する。図2は、燃料電池セパレータ100の製造方法について説明するためのフロー図である。まず、図2(a)に示すように、基材10を準備する。次に、図2(b)に示すように、基材10に100V未満のバイアス電圧を印加する。次いで、図2(c)に示すように、基材10に上記バイアス電圧を印加しつつ、PVD法(例えば、スパッタ法)、CVD法等のドライコート法によってTiN膜20を形成する。それにより、燃料電池セパレータ100が完成する。
なお、TiN膜20を形成する際のターゲットは、99.9%以上の純度を有するTiを用いることが好ましい。また、TiN膜20を形成する際にチャンバに導入する不活性ガス(例えば、アルゴンガス)流量は、例えば120ml/min程度であり、窒素ガス流量は、例えば40ml/min程度である。
本実施の形態においては、基材10に印加されるバイアス電圧が100V未満に抑えられていることから、TiN膜20に炭素が混入しにくい。したがって、TiN膜20におけるTiC(炭化チタン)の発生を抑制することができる。なお、チャンバ内に炭素が付着している場合においても、本実施の形態に係る製造方法によれば、TiN膜20への炭素の混入を抑制することができる。
ここで、TiC、TiNおよびTiO(酸化チタン)の標準生成自由エネルギについて説明する。図3は、TiC、TiNおよびTiOの標準生成自由エネルギを示す図である。図3の縦軸は標準生成自由エネルギを示し、図3の横軸は温度を示す。図3に示すように、TiOが最も安定しており、TiCが最も不安定である。したがって、TiN膜20に含まれるTiCは、TiNより優先してTiOを形成すると考えられる。なお、TiOは絶縁性を有することから、TiN膜20にTiOが混在するとTiN膜20の導電率が低下する。その結果、燃料電池セパレータ100の接触抵抗が増大してしまう。
本実施の形態に係る燃料電池セパレータ100の製造方法によれば、TiN膜20内への炭素の混入を抑制することができることから、TiN膜20におけるTiCの発生を抑制することができる。この場合、TiN膜20におけるTiOの発生を抑制することができる。したがって、燃料電池セパレータ100の接触抵抗増大を抑制することができる。
図4は、燃料電池セパレータ100の他の製造方法について説明するためのフロー図である。まず、図4(a)に示すように、基材10を準備する。次に、図4(b)に示すように、基材10に100V未満のバイアス電圧を印加する。次いで、図4(c)に示すように、基材10に上記バイアス電圧を印加しつつ、PVD法(例えば、スパッタ法)、CVD法等のドライコート法によってTi膜11を形成する。次に、図4(d)に示すように、ガス窒化法、塩浴窒化法、プラズマ窒化法等によってTi膜11を窒化する。それにより、燃料電池セパレータ100が完成する。
このように、図4の製造方法によれば、基材10に印加されるバイアス電圧が100V未満に抑えられていることから、Ti膜11に炭素が混入しにくい。したがって、TiN膜20におけるTiCの発生を抑制することができる。その結果、TiCの酸化によるTiOの発生を抑制することができる。以上のことから、燃料電池セパレータ100の接触抵抗を抑制することができる。
(第2の実施の形態)
続いて、本発明の第2の実施の形態に係る燃料電池セパレータ100aについて説明する。図5は、燃料電池セパレータ100aの模式的断面図である。図5に示すように、燃料電池セパレータ100aが図1の燃料電池セパレータ100と異なる点は、基材10とTiN膜20との間に、中間膜30が設けられている点である。
中間膜30は、Ti、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)等の4A族、V(バナジウム)、Nb、Ta(タンタル)等の5A族、Cr、Mo、W(タングステン)等の6A族、Si(シリコン)等の、C、N、Bとの親和力が高くかつ高耐食性を有する金属、ならびに、これらの炭化物、窒化物、ホウ化物等から構成される。中間膜30の層厚は、例えば、40nm程度である。
本実施の形態に係る燃料電池セパレータ100aにおいては、Nとの親和力が高い中間膜30が設けられていることから、基材10とTiN膜との密着性が向上する。なお、中間膜30は、基材10上にPVD法、CVD法等によって形成することができる。
(第3の実施の形態)
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る燃料電池200の模式的断面図である。図6に示すように、燃料電池200は、アノード2およびカソード4により電解質層3が挟まれた発電部が2枚のセパレータ1により挟まれた構造を有する。セパレータ1として、上記燃料電池セパレータ100,100aを用いることができる。アノード2に接するセパレータ1においては、TiN膜20はアノード2側に設けられている。また、カソード4に接するセパレータ1においては、TiN膜20はカソード4側に設けられている。
燃料電池200においては、セパレータ1とアノード2との間に水素を含有する燃料ガスが供給される。また、セパレータ1とカソード4との間に酸素を含有する酸化剤ガスが供給される。それにより、電解質層3を水素イオンまたは酸素イオンが伝導し、発電が行われる。セパレータ1の表面にTiN膜20が形成されていることから、セパレータ1の表面の酸化を抑制することができる。したがって、燃料電池200の発電効率低下を抑制することができる。
以下、燃料電池セパレータ100を作製し、その特性について調べた。
(実施例)
実施例においては、図1の燃料電池セパレータ100を作製し、その特性について調べた。基材10としては、99.9%の高純度Tiを用いた。TiN膜20は、スパッタ法によって作製した。TiN膜20を作製する際には、スパッタ装置内を0.4Pa程度の真空にした後に、アルゴンガスを120ml/min流し、窒素ガスを40ml/min流した。また、スパッタ装置の出力を2kWとし、TiN膜20の積層時間を24分とし、基材10への印加バイアス電圧を0Vとした。TiN膜20の層厚は、40nmとなった。
(比較例)
比較例においては、燃料電池セパレータ100と同様の積層構造を有するものを作製し、その特性について調べた。比較例に係る製造条件が上記実施例に係る製造条件と異なる点は、基材10への印加バイアス電圧を100Vとした点である。
(分析1)
次に、実施例および比較例に係る燃料電池セパレータの特性の評価方法について説明する。図7は、実施例および比較例に係る燃料電池セパレータの評価方法について説明する図である。図7(a)は接触抵抗試験の方法を示し、図7(b)は定電位腐食試験の方法を示す。
まず、接触抵抗試験について説明する。図7(a)に示すように、各燃料電池セパレータのTiN膜20上にカーボンペーパを載せ、各燃料電池セパレータおよびカーボンペーパを一定荷重(1MPa)で挟んだ。この状態で、各燃料電池セパレータに1Aの電流を流しつつ各燃料電池セパレータに印加される電圧を測定することにより各燃料電池セパレータの接触抵抗を調べた。図7(a)の接触抵抗試験は、図7(b)の定電位腐食試験の前後において1回ずつ行った。接触抵抗試験における各サンプルの評価面積は4cm(2cm×2cm)である。
次に、定電位腐食試験について説明する。図7(b)に示すように、各燃料電池セパレータを硫酸溶液(300ml、pH4、80℃)に浸す。この状態で、白金板からなる対極と各燃料電池セパレータとを電気的に接続することにより対極と各燃料電池セパレータとの電位差を生じさせ、各燃料電池セパレータを腐食させる。なお、参照極によって各燃料電池セパレータの電位を一定(浸漬電位〜1000mV)に保持してある。また、定電位腐食試験における各燃料電池セパレータの評価面積は16cm(4cm×4cm)であり、試験時間は50時間程度である。
各燃料電池セパレータの定電位腐食試験および接触抵抗試験の結果を図8に示す。図8の縦軸は、接触抵抗を示す。図8に示すように、比較例に係る燃料電池セパレータの接触抵抗は、定電位腐食試験後に大幅に増加した。一方、実施例に係る燃料電池セパレータの接触抵抗は、定電位腐食試験後においてもあまり増加しなかった。これは、100V未満のバイアス電圧を基材10に印加しつつTiN膜20を形成したことによってTiN膜20中への炭素の混入を抑制できたことを示すと考えられる。
(分析2)
続いて、各燃料電池セパレータのTiN膜20中の炭素濃度と定電位腐食試験後の接触抵抗との関係について調べた。炭素濃度は、SIMS(2次イオン質量分析計)によって調べた。各測定条件を表1に示す。また、各測定結果を図9に示す。
Figure 2008034113
図9の縦軸は各TiN膜20中の炭素濃度を示し、図9の横軸はTiN膜20の表面からの深さを示す。図9に示すように、比較例に係る燃料電池セパレータにおいては、TiN膜20の炭素濃度の平均値が0.38at%となった。一方、実施例に係る燃料電池セパレータにおいては、TiN膜20の炭素濃度の平均値が0.12at%となった。これは、基材10に印加するバイアス電圧を小さくすることによってスパッタ装置内の炭素の混入を抑制できたことを示すと考えられる。
図10は、TiN膜20中の炭素濃度と定電位腐食試験後の接触抵抗との関係を示す図である。図10の縦軸は定電位腐食試験後の接触抵抗を示し、図10の横軸はTiN膜20中の炭素濃度を示す。図10の実線は、2次回帰分析によって求めた直線である。図10の実施例および比較例以外の2点は、燃料電池セパレータ100と同様の構成を有するTiN膜20に適当な量の炭素を混入させたものの定電位腐食試験結果である。
図10に示すように、TiN膜20中の炭素濃度の増加とともに、接触抵抗も増加した。したがって、接触抵抗を所定値以下に制御するためには、TiN膜20中の炭素濃度を所定値以下に制御する必要があることがわかる。ここで、燃料電池に用いるセパレータに要求される接触抵抗は、一般に200mΩ・cm以下、好ましくは100mΩ・cm以下である。図10から読み取れるように、接触抵抗を100mΩ・cm以下にするためには、TiN膜20中の炭素濃度は0.2at%以下であることが必要である。
以上のことから、基材10に100V未満のバイアス電圧を印加しつつTiN膜20を形成することによって、TiN膜20への炭素の混入を抑制できることがわかった。また、燃料電池セパレータの接触抵抗を100mΩ・cm以下にするためには、TiN膜20の平均炭素濃度を0.2at%以下にする必要があることがわかった。
本発明の第1の実施の形態に係る燃料電池セパレータの模式的断面図である。 燃料電池セパレータの製造方法について説明するためのフロー図である。 TiC、TiNおよびTiOの標準生成自由エネルギを示す図である。 燃料電池セパレータの他の製造方法について説明するためのフロー図である。 本発明の第2の実施の形態に係る燃料電池セパレータの模式的断面図である。 本発明の第3の実施の形態に係る燃料電池の模式的断面図である。 実施例および比較例に係る燃料電池セパレータの評価方法について説明する図である。 各燃料電池セパレータの定電位腐食試験および接触抵抗試験の結果を示す図である。 各燃料電池セパレータのTiN膜中の炭素濃度と定電位腐食試験後の接触抵抗との関係について示す図である。 TiN膜中の炭素濃度と定電位腐食試験後の接触抵抗との関係を示す図である。
符号の説明
10 基材
11 Ti膜
20 TiN膜
30 中間膜
100,100a 燃料電池セパレータ
200 燃料電池

Claims (6)

  1. セパレータ用基材を準備する第1工程と、
    前記セパレータ基材表面に所定値以下のバイアス電圧を印加しつつドライコート法によってTi膜またはTiN膜を成膜する第2工程とを含むことを特徴とする燃料電池セパレータの製造方法。
  2. 前記第2工程は、0V以下のバイアス電圧条件下におけるスパッタ法にて、Ti膜またはTiN膜を成膜する工程であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池セパレータの製造方法。
  3. 前記第2工程は、Ti膜を成膜する工程であり、
    前記Ti膜の少なくとも表面を窒化することによって前記TiN膜を形成する第3工程をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の燃料電池セパレータの製造方法。
  4. 前記第3工程は、窒素雰囲気下において前記Ti膜を窒化して前記TiN膜を形成する工程であることを特徴とする請求項3記載の燃料電池セパレータの製造方法。
  5. 前記Ti膜または前記TiN膜中の炭素濃度は、0.2at%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池セパレータの製造方法。
  6. 前記セパレータ基材は、ステンレスまたはTiからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池セパレータの製造方法。
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