JP2008031127A - ポリウレタン加工したナイロン繊維のケミカルリサイクル方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリウレタン加工したナイロン繊維を、有機溶媒と加熱処理してポリウレタン成分を除去した後、ポリウレタン成分の除去されたナイロン繊維を解重合してラクタムを回収することにより、効率的にケミカルリサイクルする方法を提供することである。
【解決手段】
ポリウレタン加工したナイロン6繊維およびナイロン12繊維から選択されるナイロン繊維を、有機溶媒中で加熱処理し、前記ポリウレタン成分を有機溶媒に溶出させる工程(a工程)、前記有機溶媒中のナイロン繊維を取り出す工程(b工程)、ポリウレタン成分が除去されたナイロン繊維を解重合してラクタムを回収する工程(c工程)を含むことを特徴とするポリウレタン加工したナイロン繊維のケミカルリサイクル方法。
【選択図】なし
【解決手段】
ポリウレタン加工したナイロン6繊維およびナイロン12繊維から選択されるナイロン繊維を、有機溶媒中で加熱処理し、前記ポリウレタン成分を有機溶媒に溶出させる工程(a工程)、前記有機溶媒中のナイロン繊維を取り出す工程(b工程)、ポリウレタン成分が除去されたナイロン繊維を解重合してラクタムを回収する工程(c工程)を含むことを特徴とするポリウレタン加工したナイロン繊維のケミカルリサイクル方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、雨衣や防寒衣等のポリウレタン加工したナイロン繊維のケミカルリサイクル方法に関するものである。さらに詳しくは、ポリウレタン加工したナイロン繊維からポリウレタン成分が除去されたナイロン繊維を解重合してラクタムを回収する方法に関するものである。
ナイロン繊維は衣料や工業材料として広く使用されており、リサイクルが容易な繊維として知られている。ナイロン繊維をリサイクルする方法としては、焼却して熱エネルギーとして回収するサーマルリサイクル法や、溶融した後に再成型して再利用するマテリアルリサイクル、化学的に解重合してナイロンの原料にまで戻し、ナイロン製造等に再利用するケミカルリサイクルがある。これらのうち、ケミカルリサイクルはナイロンを原料まで分解するので、ナイロン原料としての再利用を含め広範囲の用途に利用できるので、産業上有用なリサイクル方法といえる。しかし、近年ではナイロン繊維の表面をポリウレタンで加工して透湿防水性を付与した布帛が雨衣や防寒着、スキーウェアーとして使用される等、種々のポリウレタンで表面加工されたナイロン繊維が種々の用途で使用されるようになり、その使用量は年々増加傾向にある。これらポリウレタン加工したナイロン繊維の多くは使用後に廃棄されて、殆どは焼却や地中に埋める等の方法で処理されている。そこで、廃棄されたポリウレタン加工したナイロン繊維をリサイクルすることが重要になってきた。
ナイロン以外の成分を含むナイロン製品には、表面を樹脂加工したり、セルロース系繊維やガラス繊維を含むもの等、種々の成分が含まれることから、ケミカルリサイクルにおいて得られる原料の回収率を低下させたり、純度を低下させる等、効率よくケミカルリサイクルでラクタムを回収することは難しく、数多くの方法が提案されている。
ナイロン繊維をケミカルリサイクルする方法として、例えば特許文献1には、りん酸触媒の存在下、布帛および衣料付属品の素材が実質的にナイロン6で統一されているナイロン製衣料製品を解重合し、ε−カプロラクタムを回収する方法が提案されている。また、特許文献2にはナイロン6とセルロース系繊維により構成される複合物を濃度65質量%以上、77質量%以下のりん酸水溶液中で30〜70℃に加熱し、溶解したナイロン6と不溶のセルロース系繊維とを分離し、ナイロン6を回収する方法が提案されている。特許文献3にはガラス繊維等の非溶融物を含有するナイロン6廃棄物に酸性物質を添加し、220〜400℃で加熱処理して溶液粘度を低下させることにより、非溶融物を分離したのち、解重合して高収率でラクタムを得る方法が提案されている。特許文献4にはナイロン6を主成分とする熱可塑性物質を直接解重合して得たε−カプロラクタムを晶析する方法が提案されている。特許文献5には、ナイロン6を解重合し、アルキルフェノール性化合物でカプロラクタムを抽出して回収する方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1の方法はナイロン繊維衣料製品のケミカルリサイクルではあるが、実質的にナイロン6単一成分の解重合でラクタムを回収する方法である。また、特許文献2,3はナイロン6を主成分とする別成分を含む複合物をケミカルリサイクルする方法であるが、複合される別成分のセルロース系繊維やガラス繊維等の非溶融物が酸性物質と反応しない化合物であることから、直接りん酸や酸性水溶液と加熱処理してナイロン6を溶解し、非溶融物を除去してから、ナイロン6を解重合してラクタムを回収する方法である。また、特許文献4はナイロン6を主成分とする熱可塑性物質を直接解重合してケミカルリサイクルする方法であるが、回収ラクタムに不純物が多く含有されるために炭化水素、塩素系炭化水素、アルコール等の有機溶媒で再結晶精製が必要となり、煩雑であるだけでなく、ラクタム回収率も低下し廃棄物となる残渣量が増加する。特許文献5もナイロン6を含む混合物を直接解重合してケミカルリサイクルする方法であるが、回収ラクタムに不純物が多く含有されるためにフェノール性化合物でラクタムを抽出して精製する必要がある等、煩雑である。
これら文献に記載された技術をポリウレタン加工したナイロン繊維(例えば防水、透湿等の機能を付与するためウレタン樹脂等を含浸、塗布したナイロン繊維)のケミカルリサイクルに適用すると、種々の問題を起こす可能性があることが本発明者らの検討により判明した。すなわちポリウレタンは、酸性水溶液の加熱状態で化学的に不安定であるため、ポリウレタンが付着したままとなっているナイロン繊維を解重合条件下で分解すると、ラクタム純度を低下させると共に、解重原料の粘度上昇や触媒失活の原因となりラクタム回収率を低下させるといった問題を起こす可能性がある。そのため上記文献の技術はいずれも実用的なケミカルリサイクルという観点では満足できるものではなかった。
特開平07−310204号公報
特開平09−241416号公報
特開2001−294571号公報
特開平08−048666号公報
特表平11−508913号公報
そこで本発明は、ポリウレタン加工したナイロン繊維をケミカルリサイクルするに際し、簡単な操作で、ポリウレタン成分の分解によるラクタムの純度低下や、ラクタムの回収率の低下の問題無く、高純度、高収率でラクタムを回収することを課題とする。
本発明者は、課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリウレタン加工したナイロン繊維を、有機溶媒と加熱処理してナイロン繊維を取り出し、ついで解重合してラクタムを回収することにより、効率的なケミカルリサイクルができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、ポリウレタン加工したナイロン6繊維およびナイロン12繊維から選択されるナイロン繊維を、有機溶媒中で加熱処理し、前記ポリウレタン成分を有機溶媒に溶出させる工程(a工程)、前記有機溶媒中のナイロン繊維を取り出す工程(b工程)、b工程で得られるポリウレタン成分を除去したナイロン繊維を解重合してラクタムを回収する工程(c工程)を含むことを特徴とするポリウレタン加工したナイロン繊維のケミカルリサイクル方法である。ポリウレタン成分は、酸性水溶液の加熱状態で化学的に不安定なため、解重合条件下で分解してラクタム純度低下の原因となると共に、ラクタム回収率を低下させるため、本発明の方法はポリウレタン加工したナイロン繊維に対して特に有効であることを見出した。
本発明によれば、ポリウレタン加工したナイロン繊維のケミカルリサイクルにおいて、高収率でラクタムを回収し、残渣量を低減させることができる。また、より不純物量の少ない高純度のラクタムが回収できるため、煩雑な精製を行わずに工業的に有利に、例えばナイロン原料として必要な品質が得られる。
本発明は、ポリウレタン加工したナイロン繊維を、有機溶媒中で加熱処理し、前記ポリウレタン成分を有機溶媒に溶出させ、前記有機溶媒中のナイロン繊維を取り出し、ポリウレタン成分が除去されたナイロン繊維を解重合してラクタムを回収することを特徴とする、ポリウレタン加工したナイロン繊維のケミカルリサイクル方法である。
<ナイロン繊維>
本発明において、使用されるナイロン繊維としては、ナイロン6繊維またはナイロン12繊維である。このナイロン繊維としては、ナイロン6繊維が好ましい。上記ナイロン繊維としては、単一組成であること、すなわちホモポリマーであることが好ましいが、本発明の効果を損なわない程度、例えば全単量体中50モル%以下、好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下であれば他の共重合成分が共重合されていても構わない。解重合触媒としてリン酸等の酸性触媒を使用して解重合する場合、触媒が共重合成分のジアミアン成分等により失活する場合があるが、ジアミン成分により失活する触媒量相当の触媒を追加することにより、解重合反応を問題無く行うことができる。また、これらのナイロン繊維には、重合度調節剤、末端基調整剤などが付加されていても良い。共重合成分としては、ヘキサンメチレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、p−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミンなどのジアミン成分、またアジピン酸、セバシン酸、コハク酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのジカルボン酸成分、あるいはラウロラクタムなどのアミノカルボン酸成分などを挙げることができる。重合度調節剤、末端基調整剤としては、たとえば酢酸、安息香酸などを挙げることができる。
本発明において、使用されるナイロン繊維としては、ナイロン6繊維またはナイロン12繊維である。このナイロン繊維としては、ナイロン6繊維が好ましい。上記ナイロン繊維としては、単一組成であること、すなわちホモポリマーであることが好ましいが、本発明の効果を損なわない程度、例えば全単量体中50モル%以下、好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下であれば他の共重合成分が共重合されていても構わない。解重合触媒としてリン酸等の酸性触媒を使用して解重合する場合、触媒が共重合成分のジアミアン成分等により失活する場合があるが、ジアミン成分により失活する触媒量相当の触媒を追加することにより、解重合反応を問題無く行うことができる。また、これらのナイロン繊維には、重合度調節剤、末端基調整剤などが付加されていても良い。共重合成分としては、ヘキサンメチレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、p−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミンなどのジアミン成分、またアジピン酸、セバシン酸、コハク酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのジカルボン酸成分、あるいはラウロラクタムなどのアミノカルボン酸成分などを挙げることができる。重合度調節剤、末端基調整剤としては、たとえば酢酸、安息香酸などを挙げることができる。
<ポリウレタン加工したナイロン繊維>
本発明でいうナイロン繊維をポリウレタン加工するのに用いられるポリウレタン成分としては、後述する有機溶媒により除去されれば特に制限はなく、また、加工方法としては実質的にナイロン繊維に付着・浸透・一体化されていれば、いかなる加工方法により加工されたポリウレタン成分でも良い。使用されるポリウレタン成分としては、酸性水溶液の加熱状態で化学的に不安定なため、解重合条件下で分解し、解重合触媒の失活やラクタム純度低下の原因となるようなポリウレタン成分である場合に本発明の効果が有効に発揮される。また、加工方法としては、コーティング、フィルム加工、ラミネート加工等であり、溶融ポリウレタンもしくはポリウレタン溶液等を浸透させ、繊維表面に接着、付着もしくは浸透させることにより実質的にポリウレタン成分を付着・浸透・一体化させたものなどを含む。このような加工は一般的に、透湿防水機能を樹脂を用いて布帛に付与するために行われるものである。
本発明でいうナイロン繊維をポリウレタン加工するのに用いられるポリウレタン成分としては、後述する有機溶媒により除去されれば特に制限はなく、また、加工方法としては実質的にナイロン繊維に付着・浸透・一体化されていれば、いかなる加工方法により加工されたポリウレタン成分でも良い。使用されるポリウレタン成分としては、酸性水溶液の加熱状態で化学的に不安定なため、解重合条件下で分解し、解重合触媒の失活やラクタム純度低下の原因となるようなポリウレタン成分である場合に本発明の効果が有効に発揮される。また、加工方法としては、コーティング、フィルム加工、ラミネート加工等であり、溶融ポリウレタンもしくはポリウレタン溶液等を浸透させ、繊維表面に接着、付着もしくは浸透させることにより実質的にポリウレタン成分を付着・浸透・一体化させたものなどを含む。このような加工は一般的に、透湿防水機能を樹脂を用いて布帛に付与するために行われるものである。
ウレタン成分としては、ウレタン結合を有する樹脂であれば特に制限はなく、ポリイソシアネート化合物とポリエーテル、またはポリエステルなどのポリオールと助剤および触媒等を用いて製造されるものが挙げられる。
ポリウレタン加工されたナイロン製品としては、例えば「エントラント」(登録商標)(東レ株式会社製)をコーティングしたナイロン6繊維製品が挙げられる。
また、本発明で用いるポリウレタン加工したナイロン繊維としては、ナイロン繊維を含む、好ましくはそれを50質量%以上含むナイロン繊維製品、ナイロン繊維製品製造過程で発生する産業廃棄物、あるいはナイロン繊維製品使用済み廃棄物などを挙げることができる。たとえば、工業用、衣料用、屋内外用の繊維構造物、あるいはこれらの繊維屑などを挙げることができる。
さらに具体的には、ポリウレタン加工により透湿防水性等の機能を付与された繊維を使用した繊維製品、例えば雨衣や防寒着、スキーウェアー、水着、ユニホーム、インナーウエアー、ストッキング、ニットウエアーなどの衣料品、カーテン、カーペットなどの屋内用品、漁網、船舶用ロープなどの工業用品、ロープ、網、タイヤコード、ベルト、シートなどの屋外用品、また繊維屑としては、製造過程で生じるポリマー糸屑、布帛の破砕屑、不良品屑、使用済み製品などを挙げることができる。上記のナイロン繊維は上記形態のものを単独で使用しても良いし、これらを組み合わせて原料としても良い。
<ポリウレタン成分を溶出させる有機溶媒>
本発明で用いる有機溶媒は、ポリウレタン加工されているナイロン繊維を、後述するa工程の加熱処理で溶出させる溶媒であれば何れでも良いが、含窒素有機溶媒、含硫黄有機溶媒、エチレングリコール系溶媒であることが好ましい。含窒素溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の含窒素鎖状アミド化合物、N−メチルピロリドン等のラクタム、またはその他の含窒素環状化合物等が好ましく挙げられ、含硫黄有機溶媒としては、ジメチルスルホキサイド等が好ましく挙げられ、エチレングリコール系溶媒としては、エチレングリコール、グライム、ジグライム等が好ましく挙げられる。特に好ましくはジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイドである。これら有機溶媒としては、1種又は2種以上で用いることもできる。
本発明で用いる有機溶媒は、ポリウレタン加工されているナイロン繊維を、後述するa工程の加熱処理で溶出させる溶媒であれば何れでも良いが、含窒素有機溶媒、含硫黄有機溶媒、エチレングリコール系溶媒であることが好ましい。含窒素溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の含窒素鎖状アミド化合物、N−メチルピロリドン等のラクタム、またはその他の含窒素環状化合物等が好ましく挙げられ、含硫黄有機溶媒としては、ジメチルスルホキサイド等が好ましく挙げられ、エチレングリコール系溶媒としては、エチレングリコール、グライム、ジグライム等が好ましく挙げられる。特に好ましくはジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイドである。これら有機溶媒としては、1種又は2種以上で用いることもできる。
<a工程>
本発明において、まず、ポリウレタン加工したナイロン繊維を、有機溶媒と加熱処理してウレタン成分を溶出させる工程(a工程)が行われる。a工程では、ポリウレタン加工したナイロン繊維と有機溶媒を混合し、加熱しながら撹拌する。ここで、加熱温度は有機溶媒の融点以上、ナイロン繊維の融点未満、かつ通常は80〜180℃であり、好ましくは90〜160℃である。ナイロン繊維がナイロン6繊維の場合には、90〜140℃が特に好ましい。この範囲であれば、ポリウレタン加工したナイロン繊維から有機溶媒にポリウレタン成分を溶出させるのも容易であり、ナイロン繊維も融解することもなく、さらに有機溶媒に溶出したポリウレタン成分の分解を抑制することができ、作業性も良好である。また、ウレタン溶出工程は減圧、常圧、加圧のいずれであっても良い。
本発明において、まず、ポリウレタン加工したナイロン繊維を、有機溶媒と加熱処理してウレタン成分を溶出させる工程(a工程)が行われる。a工程では、ポリウレタン加工したナイロン繊維と有機溶媒を混合し、加熱しながら撹拌する。ここで、加熱温度は有機溶媒の融点以上、ナイロン繊維の融点未満、かつ通常は80〜180℃であり、好ましくは90〜160℃である。ナイロン繊維がナイロン6繊維の場合には、90〜140℃が特に好ましい。この範囲であれば、ポリウレタン加工したナイロン繊維から有機溶媒にポリウレタン成分を溶出させるのも容易であり、ナイロン繊維も融解することもなく、さらに有機溶媒に溶出したポリウレタン成分の分解を抑制することができ、作業性も良好である。また、ウレタン溶出工程は減圧、常圧、加圧のいずれであっても良い。
本工程に供するポリウレタン加工したナイロン繊維はいかなる形態でも使用することはできるが、回収衣料をリサイクルする場合には、事前に金具やナイロン繊維と異なる種類の樹脂からなるボタンやチャック、その他の付属部品、有機溶媒に不溶のセルロース繊維等の他素材を取り除いてあることが作業性向上の観点から好ましい。
投入するポリウレタン加工したナイロン繊維のサイズは特に規定しないが、ポリウレタン成分除去を効率的に実施するためには大き過ぎると撹拌が難しく有機溶媒との接触効率が悪く、また、小さ過ぎても後工程においてナイロン繊維を取り出す分離操作が煩雑となるので、設備に応じた適度なサイズにカットしてあることが好ましい。
ポリウレタン成分を溶出させる有機溶媒の使用量は、ナイロン繊維成分に対して、0.1から200質量倍である。好ましくは、0.5から50質量倍、さらに好ましくは、1から10質量倍である。有機溶媒の使用量は、少ないと、ポリウレタン成分の除去速度が遅くなり、多いと、有機溶媒コストがかさみ経済的に不利である。
ポリウレタン成分を溶出させる撹拌時間はナイロン繊維のサイズや設備等により異なるが、生産効率を考慮すると通常は0.1〜20時間、好ましくは0.1〜10時間、更に好ましくは0.1〜5時間が好ましい。
<b工程>
a工程でポリウレタン成分が除去されたナイロン繊維は、b工程において有機溶媒より取り出す。取り出す方法はナイロン6繊維を投入したカプロラクタム溶液からナイロン6繊維を引き上げることにより取り出してもよいし、ナイロン6繊維を投入した系からカプロラクタム溶液を除去することによりナイロン6繊維を取り出してもよく、特に拘らないが、濾過操作や遠心脱液操作が採用できる。
a工程でポリウレタン成分が除去されたナイロン繊維は、b工程において有機溶媒より取り出す。取り出す方法はナイロン6繊維を投入したカプロラクタム溶液からナイロン6繊維を引き上げることにより取り出してもよいし、ナイロン6繊維を投入した系からカプロラクタム溶液を除去することによりナイロン6繊維を取り出してもよく、特に拘らないが、濾過操作や遠心脱液操作が採用できる。
ここで、溶出したポリウレタン成分及び溶出に使用した有機溶媒の付着量は少ない方が好ましいが、実質的にナイロン繊維に付着するポリウレタン成分が少なければ問題ない。溶出したポリウレタン成分及び溶出に使用した有機溶媒の付着量が多い場合は、溶媒を使用してすすぎ落としても良い。使用する溶媒の量は、ポリウレタン成分の溶出した有機溶媒の付着量にもよるが、通常は、ナイロン繊維に対して、0.1から200質量倍である。このましくは、0.5から50質量倍、更に好ましくは1から10質量倍である。溶媒は「すすぎ」の効果が得られれば何れでも良い。好ましくはa工程で用いた有機溶媒または水である。
有機溶媒が回収されるラクタムに不純物として残存する場合には、この工程において減圧乾燥等により十分に脱溶媒を行うことにより有機溶媒がラクタムの不純物として残存してラクタムの純度低下、ラクタムの臭気・着色等の原因となるのを防ぐことができる。
<c工程>
かくして取り出したポリウレタン成分が除去されたナイロン繊維をc工程に供し、解重合してラクタムを回収する。b工程でポリウレタン成分が除去されたこれらのナイロン繊維は、それのみで解重合してもよいし、他のナイロン繊維屑等と一緒に解重合してもよく、また、例えばナイロン重合工程で生成する重合抽出水に含まれるラクタムオリゴマー等と一緒に解重合することもできる。
かくして取り出したポリウレタン成分が除去されたナイロン繊維をc工程に供し、解重合してラクタムを回収する。b工程でポリウレタン成分が除去されたこれらのナイロン繊維は、それのみで解重合してもよいし、他のナイロン繊維屑等と一緒に解重合してもよく、また、例えばナイロン重合工程で生成する重合抽出水に含まれるラクタムオリゴマー等と一緒に解重合することもできる。
<解重合>
本発明で行う解重合法は、いかなる方法でも良い。通常、ナイロン繊維は加熱により解重合され、触媒を用いても良く、水の不存在下でも(乾式)、存在下でも良い(湿式)。
本発明で行う解重合法は、いかなる方法でも良い。通常、ナイロン繊維は加熱により解重合され、触媒を用いても良く、水の不存在下でも(乾式)、存在下でも良い(湿式)。
解重合圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれであっても良い。解重合温度は、通常、100〜400℃であり、好ましくは、200〜350℃、さらに好ましくは、220〜300℃である。温度が低いと、ナイロン繊維が溶融しないうえ、解重合速度が遅くなる。温度が高いと、不必要なナイロン繊維の分解が起こり、回収ラクタムの純度低下をもたらす。
触媒を用いる場合は、通常、酸、あるいは塩基触媒などを用いる。酸触媒としては、リン酸、ホウ酸、硫酸、有機酸、有機スルホン酸、固体酸、およびこれらの塩、また塩基触媒としては、アルカリ水酸化物、アルカリ塩、アルカリ土類水酸化物、アルカリ土類塩、有機塩基、固体塩基などが挙げられる。好ましくは、リン酸、ホウ酸、有機酸、アルカリ水酸化物、アルカリ塩などが挙げられる。さらに好ましくは、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられる。
触媒の使用量は、通常、ナイロン繊維成分に対して、0.01から50質量%である。好ましくは、0.1から20質量%、さらに好ましくは、0.5から10質量%である。触媒使用量は少ないと、反応速度が遅くなり、多いと、副反応が多くなるうえ、触媒コストがかさみ経済的に不利になる。
湿式解重合の水使用量は、ナイロン繊維成分に対して、0.1から50質量倍である。好ましくは、0.5から20質量倍、さらに好ましくは、1から10質量倍である。水の使用量は、少ないと、反応速度が遅くなり、多いと、回収ラクタム水溶液の濃度が低くなり、ラクタムの取得上、不利になる。
<ラクタムの回収方法>
乾式解重合を行う場合、生成したラクタムを反応装置から減圧蒸留により留出させ、回収ラクタムを得る。解重合反応が終了してから、減圧蒸留によりラクタムを取り出しても良いし、反応の進行とともに、連続的に取り出しても良い。
乾式解重合を行う場合、生成したラクタムを反応装置から減圧蒸留により留出させ、回収ラクタムを得る。解重合反応が終了してから、減圧蒸留によりラクタムを取り出しても良いし、反応の進行とともに、連続的に取り出しても良い。
湿式解重合を行う場合は、生成したラクタムを反応装置から水とともに留出させ、回収ラクタム水溶液を得る。解重合反応が終了してから、蒸留によりラクタム水溶液を取り出しても良いし、反応の進行とともに、連続的に取り出しても良い。好ましくは、反応装置へ連続的に、水を供給し、かつ、生成するラクタム水溶液を反応装置から連続的に取り出す。さらに好ましくは、常圧で、反応装置へ連続的に水蒸気を供給し、かつ生成するラクタム水溶液を反応装置から連続的に取り出す。
a工程によりポリウレタン成分が除去されたナイロン繊維は実質的にナイロン純度が高いので、c工程で解重合すると高収率で、しかも高純度のラクタムが回収できる。得られたラクタム水溶液は蒸留で水と分離することで高純度のラクタムを回収することができる。さらに高純度のラクタムが必要な場合には、目的に応じて精密蒸留するか、再結晶等の精製方法と組み合わせることができる。
<ラクタム品質の確認方法>
本発明で行う解重合により得られたラクタム品質の確認は、キャピラリーガスクロマトグラフィー及びHPLC純度により確認した。即ち、キャピラリーガスクロマトグラフィーによる純度の確認方法としては、強極性カラム(TC−FFAP、60m、0.25mm、0.25μm)(ジーエルサイエンス株式会社製)を装着したキャピラリーガスクロマトグラフィーで分析し、ラクタムのピーク面積によりGC純度を確認した。また、HPLCによる純度の確認方法としては逆相カラム(TSK−GEL、ODS―120T、4.6mm×25.0cm)(東ソー株式会社製)を装着したHPLCで分析し、ラクタムのピーク面積によりHPLC純度を確認した。
本発明で行う解重合により得られたラクタム品質の確認は、キャピラリーガスクロマトグラフィー及びHPLC純度により確認した。即ち、キャピラリーガスクロマトグラフィーによる純度の確認方法としては、強極性カラム(TC−FFAP、60m、0.25mm、0.25μm)(ジーエルサイエンス株式会社製)を装着したキャピラリーガスクロマトグラフィーで分析し、ラクタムのピーク面積によりGC純度を確認した。また、HPLCによる純度の確認方法としては逆相カラム(TSK−GEL、ODS―120T、4.6mm×25.0cm)(東ソー株式会社製)を装着したHPLCで分析し、ラクタムのピーク面積によりHPLC純度を確認した。
実施例1
<原料>
多孔質ポリウレタン(「エントラント」(登録商標)(東レ株式会社製))をコーティングしたナイロン6繊維衣料300gを10cm角に裁断して裁断屑を得た。
<原料>
多孔質ポリウレタン(「エントラント」(登録商標)(東レ株式会社製))をコーティングしたナイロン6繊維衣料300gを10cm角に裁断して裁断屑を得た。
<ポリウレタン成分除去条件>
得られた裁断屑300gをジメチルホルムアミド3,000gと共に5Lのセパラブルフラスコに仕込み、120℃のシリコーンオイルバスに漬け、コンデンサー、攪拌機をセットし、途中約15分毎に約1分間攪拌し、3時間加熱処理を実施した結果、ポリウレタン成分がジメチルホルムアミドに溶出した。
得られた裁断屑300gをジメチルホルムアミド3,000gと共に5Lのセパラブルフラスコに仕込み、120℃のシリコーンオイルバスに漬け、コンデンサー、攪拌機をセットし、途中約15分毎に約1分間攪拌し、3時間加熱処理を実施した結果、ポリウレタン成分がジメチルホルムアミドに溶出した。
<裁断屑の取り出し・脱溶媒条件>
加熱処理終了後、裁断屑を取り出し、1,000gの水で2回洗浄を行い溶出したポリウレタン成分及び溶媒の除去を行った。水洗浄後の裁断屑を、80℃、約1.3kPaの減圧条件下で1時間加熱し、裁断屑に付着したジメチルホルムアミド及び水の除去を行ったところ、225gのナイロン繊維が得られた。
加熱処理終了後、裁断屑を取り出し、1,000gの水で2回洗浄を行い溶出したポリウレタン成分及び溶媒の除去を行った。水洗浄後の裁断屑を、80℃、約1.3kPaの減圧条件下で1時間加熱し、裁断屑に付着したジメチルホルムアミド及び水の除去を行ったところ、225gのナイロン繊維が得られた。
<解重合条件>
ポリウレタン成分除去・溶媒除去を行ったナイロン繊維184gと、解重合触媒である75質量%のリン酸水溶液7.8gを解重合装置に仕込み、窒素雰囲気下で260℃まで加熱した。窒素の導入を止め、解重合装置に、過熱水蒸気を約250g/時間の導入速度で連続的に導入することにより、反応を開始した。解重合装置から連続的に留出するカプロラクタムと水蒸気を冷却し、カプロラクタム水溶液を回収しながら、6時間解重合反応を実施した。
ポリウレタン成分除去・溶媒除去を行ったナイロン繊維184gと、解重合触媒である75質量%のリン酸水溶液7.8gを解重合装置に仕込み、窒素雰囲気下で260℃まで加熱した。窒素の導入を止め、解重合装置に、過熱水蒸気を約250g/時間の導入速度で連続的に導入することにより、反応を開始した。解重合装置から連続的に留出するカプロラクタムと水蒸気を冷却し、カプロラクタム水溶液を回収しながら、6時間解重合反応を実施した。
<結果>
6時間の解重合反応の結果、1662gの留出液が得られた。得られた留出液中のカプロラクタムの濃度は9.2%であり、解重合装置に仕込んだナイロン繊維を基準として回収率83%でカプロラクタムが得られた。得られたカプロラクタム水溶液からエバポレーターで水を留去し、濃縮した後、100℃のシリコーンオイルバス中で減圧度約3.3kPaで脱水した。脱水して得られたカプロラクタム153gに20wt%水酸化ナトリウム水溶液6.3gを添加して、再度脱水を行った後に、160℃のシリコーンオイルバス中で減圧度約0.7kPaで蒸留を行った。得られたカプロラクタムは145gで1度目の脱水後のカプロラクタムに対して94.8%の収率であり、GC純度は99.98%、HPLC純度は93.14%であった。また、解重合反応における残渣量は22.8gであり触媒として添加したリン酸を除くと、原料として仕込んだナイロン繊維に対して9.2%の残渣が得られた。
6時間の解重合反応の結果、1662gの留出液が得られた。得られた留出液中のカプロラクタムの濃度は9.2%であり、解重合装置に仕込んだナイロン繊維を基準として回収率83%でカプロラクタムが得られた。得られたカプロラクタム水溶液からエバポレーターで水を留去し、濃縮した後、100℃のシリコーンオイルバス中で減圧度約3.3kPaで脱水した。脱水して得られたカプロラクタム153gに20wt%水酸化ナトリウム水溶液6.3gを添加して、再度脱水を行った後に、160℃のシリコーンオイルバス中で減圧度約0.7kPaで蒸留を行った。得られたカプロラクタムは145gで1度目の脱水後のカプロラクタムに対して94.8%の収率であり、GC純度は99.98%、HPLC純度は93.14%であった。また、解重合反応における残渣量は22.8gであり触媒として添加したリン酸を除くと、原料として仕込んだナイロン繊維に対して9.2%の残渣が得られた。
<実施例2>
ポリウレタン成分除去溶媒としてジメチルスルホキサイドを用いた以外は、実施例1と同様に300gの裁断屑からポリウレタン成分を除去し、裁断屑を取り出し、脱溶媒を行ったところ、216gのナイロン繊維が得られた。
ポリウレタン成分除去溶媒としてジメチルスルホキサイドを用いた以外は、実施例1と同様に300gの裁断屑からポリウレタン成分を除去し、裁断屑を取り出し、脱溶媒を行ったところ、216gのナイロン繊維が得られた。
比較例1
<原料>
原料に対するポリウレタン成分除去処理・脱溶媒処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に解重合操作を実施した。
<原料>
原料に対するポリウレタン成分除去処理・脱溶媒処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に解重合操作を実施した。
<結果>
仕込んだ原料に対して回収率47%でカプロラクタムが得られた。実施例1と同様の方法で得られたカプロラクタム水溶液からエバポレーターで水を留去し、濃縮した後、水酸化ナトリウムを添加して減圧蒸留したところ、蒸留後の収率は79.0%であり、得られたカプロラクタムのGC純度は99.02%、HPLC純度は36.0%であった。また、解重合反応における残渣量は原料として仕込んだナイロン繊維の32%であった。
仕込んだ原料に対して回収率47%でカプロラクタムが得られた。実施例1と同様の方法で得られたカプロラクタム水溶液からエバポレーターで水を留去し、濃縮した後、水酸化ナトリウムを添加して減圧蒸留したところ、蒸留後の収率は79.0%であり、得られたカプロラクタムのGC純度は99.02%、HPLC純度は36.0%であった。また、解重合反応における残渣量は原料として仕込んだナイロン繊維の32%であった。
本発明によれば、ポリウレタン加工したナイロン繊維から、工業的に有利な方法で原料のラクタムを得ることができる。
Claims (4)
- ポリウレタン加工した、ナイロン6繊維およびナイロン12繊維から選択されるナイロン繊維を、有機溶媒中で加熱処理し、前記ポリウレタン成分を有機溶媒に溶出させる工程(a工程)、前記有機溶媒中のナイロン繊維を取り出す工程(b工程)、b工程で得られるポリウレタン成分を除去したナイロン繊維を解重合してラクタムを回収する工程(c工程)を含むことを特徴とするポリウレタン加工したナイロン繊維のケミカルリサイクル方法。
- 有機溶媒が、含窒素有機溶媒、含硫黄有機溶媒、エチレングリコール系溶媒から選択されるものであることを特徴とする請求項1記載のポリウレタン加工したナイロン繊維のケミカルリサイクル方法。
- 有機溶媒がジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキサイドであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレタン加工したナイロン繊維のケミカルリサイクル方法。
- a工程における加熱処理温度が80〜180℃であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のポリウレタン加工したナイロン繊維のケミカルリサイクル方法。
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JP2006209315A JP2008031127A (ja) | 2006-07-31 | 2006-07-31 | ポリウレタン加工したナイロン繊維のケミカルリサイクル方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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IT202200007520A1 (it) | 2022-04-14 | 2023-10-14 | Consorzio Radici Per La Ricerca E Linnovazione S C A R L | Riciclo meccanico di scarti polimerici multicomponenti comprendenti poliammide e poliuretano |
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-
2006
- 2006-07-31 JP JP2006209315A patent/JP2008031127A/ja active Pending
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