本発明は、水からスケールや界面活性剤などのイオンを除去するイオン除去装置とその使用方法に関するものである。
従来より、コンデンサなどの被冷却対象を水にて冷却するクーリングタワーや電解水を生成する電解水生成装置などでは、水が使用されているが、この水中からスケールが発生し易く、発生したスケールは伝熱面や配管、又は、電極などに付着して悪影響を及ぼす不都合を招いていた。このため、定期的に薬剤を添加してスケールの発生を防止していた。しかしながら、薬剤を添加する場合には、添加する薬剤濃度や薬品の在庫の十分な管理と、使用する薬剤の十分な知識が必要となり、このような繁雑な作業や取り扱い状の危険性、更には、薬剤処理による環境負荷への影響などから薬剤を用いずにスケールを除去する技術が求められていた。
その一つとして、水を電解処理することでスケールを防止する試みがなされて来ている。当該電解処理は、水中に一対の電極を浸漬し、これら電極間に電圧を印加して、陰極の表面に炭酸カルシウムやケイ酸マグネシウムなどの硬度成分を析出させ、付着させる。次に、電極の極性を転換して上記スケール成分を電極から剥離した後、別の装置でこれらスケール成分を回収して、係る硬度成分を除去処理するものであった。そして、スケールが除去された水(被処理水)を前述したクリーングタワーの冷却水や電解水生成装置の電解水を生成するための水として用いることで、これら装置の伝熱面や配管内、又は、電極などにスケールが発生する不都合を解消することができるようになった(例えば、特許文献1参照)。
一方、洗濯機等の洗浄装置では、洗浄工程で界面活性剤を含んだ洗剤が使用されるが、従来より水中から界面活性剤を除去して排出する試みが成されてきている。この界面活性剤を含む廃水処理方法として、廃水に凝集材を転化した後沈澱させ、続いてろ過することにより処理する方法や、UV照射により界面活性剤を分解して処理する方法など様々な方法が提案されてきている。
特開2001−259690号公報
しかしながら、前述したスケール除去装置では少なくとも電解を行う電解装置と、電極から剥離させたスケールを回収する回収装置とが必要となり、装置の設置面積が広く要求されるという問題が生じていた。
また、電解装置と回収装置とを接続する配管に剥離したスケールが付着して配管が詰まる恐れがあった。更に、電極に付着したスケールを剥離させるためには、極性の転換を行う必要があるが、この極性の転換によるスケール成分の剥離作業は電極の劣化の要因となるため、なるべく極性転換を行わずに運転することが求められていた。
更に、スケールの除去に加えて、界面活性剤の除去を行うためには界面活性剤除去用の装置を追加しなければならず、全体の装置がより大型化し、コストの増大を招くといった問題が生じる。更にまた、従来では1つの系内で、スケールと界面活性剤の除去を可能とした装置はなかった。
本発明は、係る従来技術を解決するために成されたものであり、被処理水から発生するスケールや界面活性剤などのイオンを除去することができる、特に、低コストでコンパクトなイオン除去装置とその使用方法を提供することを目的とする。
本発明のイオン除去装置は、被処理水中に浸漬される少なくとも一対の電極とイオン回収手段を一体化したことを特徴とする。
請求項2の発明のイオン除去装置は、上記発明において被処理水をアノードとなる電極が位置するアノード室側とカソードとなる電極が位置するカソード室側とに区画するイオン交換膜を備え、このイオン交換膜を電極及びイオン回収手段と一体化したことを特徴とする。
請求項3の発明のイオン除去装置は、上記各発明において電極間にイオン回収手段を配設したことを特徴とする。
請求項4の発明のイオン除去装置は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の発明において流通される被処理水の流路中の第1の電極の下流側であって第2の電極の上流側となる位置にイオン回収手段を配設したことを特徴とする。
請求項5の発明のイオン除去装置は、請求項3又は請求項4に記載の発明においてカソードとなる電極側からアノードとなる電極側に被処理水を流通させることを特徴とする。
請求項6の発明のイオン除去装置は、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の発明において電極及びイオン回収手段を同心円状に配置すると共に、外側となる電極側から被処理水を流通させることを特徴とする。
請求項7の発明のイオン除去装置は、請求項1乃至請求項6の何れかに記載の発明において電極及びイオン回収手段は通水性を有すると共に、このイオン回収手段は前記被処理水中のスケールを収集可能な絶縁性のスケール回収材であることを特徴とする
請求項8の発明のイオン除去装置は、請求項1乃至請求項6の何れかに記載の発明において電極及びイオン回収手段は通水性を有すると共に、イオン回収手段は、被処理水中のスケールを収集可能な絶縁性のスケール回収材と、第1の電極のみと導通関係とされて被処理水中の界面活性剤を収集可能な導電性の界面活性剤回収材とから成り、電極に印加する電流値を制御することにより、スケール回収材によるスケール除去処理工程と界面活性剤回収材による界面活性剤除去処理工程を選択的に実行することを特徴とする。
請求項9の発明のイオン除去装置は、請求項8に記載の発明において界面活性剤がアニオン性かカチオン性かに応じて、界面活性剤除去処理工程において電極に印加する電位の極性を切り替える手段を有することを特徴とする。
請求項10の発明のイオン除去装置は、請求項8又は請求項9に記載の発明において界面活性剤除去処理工程において第1の電極に負電位を印加する場合、電流値を500mA以下とすることを特徴とする。
請求項11の発明のイオン除去装置は、請求項7乃至請求項10の何れかに記載の発明においてイオン回収手段を構成するスケール回収材に種結晶を担持させたことを特徴とする。
請求項12の発明のイオン除去装置は、請求項7乃至請求項11の何れかに記載の発明においてイオン回収手段を構成するスケール回収材は、当該スケール回収材に捕集されるスケールと補色関係となる色を呈することを特徴とする。
請求項13の発明のイオン除去装置は、請求項1乃至請求項12の何れかに記載の発明においてイオン回収手段を交換可能な構造としたことを特徴とする。
請求項14の発明のイオン除去装置は、請求項1乃至請求項13の何れかに記載の発明においてイオン回収手段を外部より目視可能としたことを特徴とする。
請求項15の発明のイオン除去装置の使用方法は、請求項1乃至請求項14の何れかに記載のイオン除去装置において、被処理水の流入側と流出側における水圧の差に基づいてイオン回収材の交換時期を予測することを特徴とする。
本発明のイオン除去装置によれば、被処理水中に浸漬される少なくとも一対の電極とイオン回収手段を一体化したので、スケールや界面活性剤などのイオンをイオン回収手段にて回収して、被処理水中から除去することができる。また、単一の系内で電解処理を行い、スケールと界面活性剤とを回収することができるので、装置の小型化とコストの低減を図ることができる。更に、イオン回収手段において、付着したスケールが種結晶となるので、スケールの除去効率を向上させることができる。
特に、請求項2の発明の如く被処理水をアノードとなる電極が位置するアノード室側とカソードとなる電極が位置するカソード室側とに区画するイオン交換膜を備え、このイオン交換膜を電極及びイオン回収手段と一体化したので、スケールの析出を促進することができるようになる。
また、上記各発明において、請求項3の発明の如く電極間にイオン回収手段を配設することで、例えば、請求項4の発明の如く流通される被処理水の流路中の第1の電極の下流側であって第2の電極の上流側となる位置にイオン回収手段を配設すれば、装置をより一層小型化することができる。
特に、請求項3又は請求項4に記載の発明において、請求項5の発明の如くカソードとなる電極側からアノードとなる電極側に被処理水を流通させることで、上流側に位置して周囲がアルカリ性となるカソード電極側にて硬度成分を塩として、下流側に位置するアノード電極側に流すこととなるので、イオン回収手段によりスケール成分を効率よく回収することができる。
請求項6の発明によれば、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の発明において電極及びイオン回収手段を同心円状に配置すると共に、外側となる電極側から被処理水を流通させるので、電極との接触面積を増大することができる。これにより、イオン回収手段でのイオンの回収効率を改善できる。
請求項7の発明によれば、請求項1乃至請求項6の何れかに記載の発明において電極及びイオン回収手段は通水性を有すると共に、このイオン回収手段は被処理水中のスケールを収集可能な絶縁性のスケール回収材であるので、被処理水を支障なく流通させながら、スケールを回収することができる。特に、請求項3の如く流通される被処理水の流路中の第1の電極の下流側であって第2の電極の上流側となる位置にイオン回収手段を配設した場合には、第1の電極に負電位を印加することで、第1の電極で析出したスケールをその下流側に流して、スケール回収材にて回収することができる。これにより、スケールにより電極間の短絡が生じる不都合を極力解消することができる。
請求項8の発明によれば、請求項1乃至請求項6の何れかに記載の発明において電極及びイオン回収手段は通水性を有すると共に、イオン回収手段は、被処理水中のスケールを収集可能な絶縁性のスケール回収材と、第1の電極のみと導通関係とされて被処理水中の界面活性剤を収集可能な導電性の界面活性剤回収材とから成り、電極に印加する電流値を制御することにより、スケール回収材によるスケール除去処理工程と界面活性剤回収材による界面活性剤除去処理工程を選択的に実行するので、例えば、スケール除去処理工程では電極に流す電流値が高く、界面活性剤除去処理工程では電極に流す電流値が低くなるように制御することで、被処理水を支障なく流通させながら、スケールの回収と、界面活性剤の回収とを行うことができる。特に、界面活性剤除去処理工程では、スケール除去処理工程において電極に流す電流値より著しく低い電流値にて、被処理水中から界面活性剤を除去処理することが可能であるので、消費電力を著しく低減することができる。
特に、請求項3の如く流通される前記被処理水の流路中の第1の前記電極の下流側であって第2の前記電極の上流側となる位置に前記イオン回収手段を配設した場合には、スケール除去処理工程において第1の電極に負電位を印加することで、第1の電極で析出したスケールをその下流側のスケール回収材にて回収することができる。また、界面活性剤回収材除去工程において界面活性剤回収材に界面活性剤が帯電している電位と異なる電位を印加することで、界面活性剤回収材に界面活性剤を引き寄せて回収することができる。
更に、請求項9の発明の如く界面活性剤がアニオン性かカチオン性かに応じて、界面活性剤除去処理工程において電極に印加する電位の極性を切り替える手段を有するので、アニオン性の界面活性剤を処理する場合には、上記手段を操作して、界面活性剤回収材を正電位に帯電させることで、当該界面活性剤回収材にてアニオン性の界面活性剤を効果的に回収することができる。また、カチオン性の界面活性剤を処理する場合には、上記手段を操作して、界面活性剤回収材を負電位に帯電させることで、この界面活性剤回収材にてカチオン性の界面活性剤を効果的に回収することができる。
特に、アニオン性の界面活性剤を処理する場合には、上述の如く第1の電極に正電位を印加し、界面活性剤回収材を正電位に帯電させて、該界面活性剤回収材にてアニオン性の界面活性剤の回収を行うが、この場合、正電位に帯電した界面活性剤回収材付近の被処理水は酸化され、水酸化物イオンが放電して酸素が発生し、酸性水となる。このため、高い電流値で電極に電圧を印加すると、酸化力の高い酸素が多量に発生し、界面活性剤回収材を腐食し、耐久性を著しく低下させる問題がある。そこで、請求項10の発明の如く第1の電極に負電位を印加する場合には電流値を500mA以下に制御することで、界面活性剤回収材の腐食を抑制することができる。これにより、安定的にアニオン性の界面活性剤を除去することが可能となる。
また、請求項7乃至請求項10の何れかに記載の発明において、請求項11の発明の如くイオン回収手段を構成するスケール回収材に種結晶を担持させたので、スケール回収材にスケールが更に付着しやすくなって回収効率を更に改善することができる。
更に、請求項7乃至請求項11の何れかに記載の発明において、請求項12の発明の如くイオン回収手段を構成するスケール回収材は、当該スケール回収材に捕集されるスケールと補色関係となる色を呈するので、スケール回収材に捕集されたスケールを目視することができるようになる。
請求項13の発明によれば、請求項1乃至請求項12の何れかに記載の発明においてイオン回収手段を交換可能な構造としたので、イオンが付着したイオン回収手段を容易に交換することができる。
請求項14の発明によれば、請求項1乃至請求項13の何れかに記載の発明においてイオン回収手段を外部より目視可能としたので、イオン回収手段の交換時期を把握することが可能となる。
更に、上記各発明のイオン除去装置を、請求項15の発明の使用方法の如く被処理水の流入側と流出側における水圧の差に基づいてイオン回収材の交換時期を予測するものとすれば、イオン回収材の交換時期を確実に把握することができる。これにより、常に良好な状態でイオンの回収を行うことができるようになる。
本発明のイオン除去装置は、被処理水からスケールや界面活性剤などのイオンを除去するものであり、衣類や食器などを洗浄する洗浄装置、コンデンサなどの被冷却物を冷却するクーリングタワーや水を電解処理して次亜塩素酸や酸性水などの殺菌水やアルカリイオン水などの電解水を生成する電解水生成装置など被処理水を用いた種々の装置に適用することができる。以下、図面に基づき本発明の実施の形態を詳述する。
先ず、本発明のイオン除去装置を洗浄装置に適用した場合について説明する。本実施例では、本発明のイオン除去装置を衣類等の洗濯に用いられる洗濯機Wに適用した場合を例に挙げて説明する。具体的に、本実施例のイオン除去装置は、洗濯機Wの排水通路に設置して、洗浄水やすすぎ水に含まれる界面活性剤やスケールなどを除去するものとする。
図1は本発明のイオン除去装置を適用した洗濯機Wの概略構成図、図2は図1の洗濯機Wにおける水の流れを示す図である。
本実施例の洗濯機Wは、衣類等の被洗濯物の洗浄に用いられるものであり、外郭を構成する本体101により構成されている。この本体101の前面には、被洗濯物を出し入れするための開口扉103が取り付けられており、該開閉扉103の上方に位置する本体101の前面上部には、各種操作スイッチや表示部が設けられた操作パネル104が配設されている。
本体101内には、樹脂製の図示しない外槽ドラムとこの外槽ドラムの内側に配設された洗濯槽と脱水槽を兼ねるステンレス製の内槽ドラム102から成るドラム本体Dが設けられている。外槽ドラム及び内槽ドラム102は、共に有底筒状を呈しており、円筒の軸を前上方から後下方に延在する斜め方向となるように配設され、上端開口は、本体101に設けられる開閉扉103に向けて斜め上方向となるように配設されている。そして、内槽ドラム102は内部が被洗濯物を収容する収容室105とされ、当該内槽ドラム102の図示しない回転軸は、外槽ドラムに装着された駆動モータ108の軸109に連結され、当該軸109に連結された内槽ドラム102の回転軸を中心とし、内槽ドラム102は外槽ドラム内で回転可能に保持されている。また、内槽ドラム102の全周壁には、空気及び水(被処理水)が流通可能な多数の透孔(図示されない)が形成されている。
前記駆動モータ108は、洗濯運転の洗浄工程及びすすぎ工程時において、前記軸109を中心として内槽ドラム102を回転させるためのモータである。尚、駆動モータ108は後述する制御装置Cにより駆動が制御されている。また、駆動モータ108は、軸109の他端に装着されている。
前記本体101の上部には、給水通路112が設けられており、この給水通路112の一端には、内槽ドラム102内に水道水を供給するための給水源107が給水バルブ112Vを介して接続されている。この給水バルブ112Vは前記制御装置Cにて開閉制御される。
また、給水通路112の他端は、外槽ドラムの内部と連通しており、制御装置Cにて給水バルブ112Vが開放されると、外槽ドラム内に設けられた内槽ドラム102内の収容室に給水源107から水(水道水)が供給されるように構成されている。
そして、外槽ドラムの下部には収容室105にて用いられた後の洗浄水やすすぎ水を収容室105から排出するための排水通路113の一端が接続され、この排水通路113の他端には、貯留タンク110が排水バルブ113Vを介して接続されている。そして、貯留タンク110の最下部には二つの出口110A、110Bが形成されており、一方の出口110Aには、循環通路115の一端が接続され、この循環通路115の他端には、貯留タンク110内に貯えられた上記洗浄水やすすぎ水等(被処理水)からスケールや界面活性剤などのイオンを除去するための本発明のイオン除去装置Sの流入口2が循環バルブ115Vを介して接続されている。
そして、イオン除去装置Sの上端部には、流出口3が形成されており、当該流出口3には、循環通路116の一端が接続されている。そして、循環通路116は、イオン除去装置Sの流出口3に接続された一端からイオン除去装置S外部に延出し、他端はポンプPを介して貯留タンク110に接続されている。また、貯留タンク110の最下部に形成された他方の出口110Bには外部排水通路114の一端が接続されている。そして、外部排出通路114は外部排水バルブ114Vを介し、他端は洗濯機Wの外部の排水溝にて開口して、ここから洗濯機Wの排水が外部に排出可能とされている。上記ポンプPの運転、外部排水バルブ114V及び循環バルブ115Vの開閉も前記制御装置Cにて制御されている。
ここで、上記イオン除去装置Sについて図3を用いて詳述する。図3は洗濯機Wの本体101の下部に設置されたイオン除去装置Sの概略構成図である。本実施例のイオン除去装置Sは、内部に被処理水の流入口2と流出口3を有する電解室5を構成する処理槽1と、この処理槽1内の被処理水中に浸漬されるように対向して配置された一対の電極(即ち、第1の電極6及び第2の電極7)と、後述する界面活性剤回収材9とスケール回収材8等から構成されている。また、一対の電極6、7間の電流値が一定(定電流)となるように、制御装置Cから電圧が印加されている。
本実施例の処理槽1は、縦長円筒状を呈し、下端に電解室5内に被処理水を流入させる流入口2、上端に電解室5内の被処理水を流出させる流出口3とを有するものであり、流入口2から流出口3に被処理水が流通するよう電解室5内に流路が形成されている。また、本実施例のイオン除去装置Sは、処理槽1の少なくとも一部が分解可能に構成されていてる。具体的に、処理槽1の上面、若しくは、下面が分解可能に構成されている。これにより、界面活性剤回収材9やスケール回収材8の交換時に、上面、或いは、下面を取り外して、当該処理槽1を分解し、内部に収容されている第1及び第2の電極6、7と一体に構成された界面活性剤回収材9とスケール回収材8を取り出すことができる。前記第1及び第2の電極6、7は、例えば、白金(Pt)、炭素、チタン又はステンレスなどの単体、若しくは、白金(Pt)、炭素、チタン又はステンレスの何れかを含む導電体をメッシュ状、繊維状、若しくは、パンチングプレート状に加工した多孔質体から成る。特に、両電極6、7は、不溶性電極である白金(Pt)、若しくは、白金をコーティングした電極を導電体とすることが望ましい。尚、電極の材質は上記に限らず、その他の電極を導電体としても良いものとする。
本実施例では第1及び第2の電極6、7として、白金をメッシュ状で、且つ、全体が円盤形状を呈するよう加工したものを用いるものとする。即ち、両電極6、7は、メッシュ状に加工することで、被処理水を流通可能な通水性の電極とされている。また、係るメッシュ状の電極を全体が円盤形状となるように、具体的には、前記縦長円筒状の処理槽1の内径と略同一の外径を有する円盤形状となるよう形成されている。また、第1及び第2の電極6、7は制御装置Cに接続されて、当該制御装置Cにより電極6、7への通電及び電極6、7に流す電流値が制御されている。
前記界面活性剤回収材9及びスケール回収材8は、被処理水からスケールやなどのイオンを除去するためのイオン回収手段であり、第1の電極6と第2の電極7の間に配設されている。即ち、本実施例の界面活性剤回収材9及びスケール回収材8は本発明のイオン除去装置Sに流通される被処理水の流路の第1の電極6の下流側であって第2の電極7の上流側となる位置に配設されている。
具体的に、界面活性剤回収材9は、第1の電極6のみと導通関係とされ、被処理水中の界面活性剤を収集可能であって、被処理水を流通可能な通水性を有した導電体にて構成されている。本実施例の界面活性剤回収材9は、第1の電極6の流路下流側となる第1の電極の上面に密着された状態で配置されている。
界面活性剤回収材9の流路下流側となる界面活性剤回収材9の上面にはスケール回収材8が当接して設けられている。即ち、スケール回収材8は、界面活性剤回収材9と第2の電極7との間に介在されている。このスケール回収材8は、被処理水中のスケールを回収可能な絶縁体であり、例えば、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、アクリルなどの合成樹脂やアルミナ、ゼオライトなどのセラミック等の絶縁性の素材を前記同様に多孔質体、或いは、粒子状、不織布若しくは中空糸フエルト等に加工して成るものである。本実施例のスケール回収材8も、被処理水を流通可能な通水性とされている。尚、本実施例の界面活性剤回収材9及びスケール回収材8は前記電極6、7と略同一の外径を有する縦長円柱状を呈している。
一方、イオン除去装置Sは、上記電極6、7とイオン回収手段としての界面活性剤回収材9及びスケール回収材8とが一体化されている。即ち、界面活性剤回収材9とスケール回収材8とから成るイオン回収手段の上下が電極6と電極7にて挟持され、一体となるように構成されている。本実施例では、第1の電極6の上面にイオン回収手段の界面活性剤回収材9、この界面活性剤回収材9の上面にスケール回収材8、スケール回収材8の上面に第2の電極7がそれぞれ当接して処理槽1の電解室5内に収容されている。
ところで、以上の構成から成るイオン除去装置Sを組み立てるには、先ず、界面活性剤9の上端面にスケール回収材8を当接させてイオン回収手段を形成する。そして、その上端面(スケール回収材8の上端面)に第2の電極7を、下端面(界面活性剤回収材9の下端面)に第1の電極6をそれぞれ取り付ける。これにより、第1及び第2の電極6、7とイオン回収手段(界面活性剤回収材9及びスケール回収材8)とが一体化される。その後、処理槽1の上面、若しくは、下面のうちの一方から一体化された第1及び第2の電極6、7及びイオン回収手段(界面活性剤回収材9及びスケール回収材8)を挿入して、処理槽1内に収容する。例えば、処理槽1の上面から両電極6、7、界面活性剤回収材9及びスケール回収材8を挿入する場合、当該電極6、7、界面活性剤回収材9及びスケール回収材8を処理槽1の上側から挿入し、処理槽1内の所定の位置に収容した後、上面をネジ止めするなどして取り付けることで、容易にイオン除去装置Sを組み立てることができる。
このように、本発明のイオン除去装置Sでは、電極6、7とイオン回収手段としての界面活性剤回収材9とスケール回収材8とを一体化したので、単一の系内(処理槽1内)で電解処理とスケール及び界面活性剤の回収を行うことができるようになる。これにより、装置の小型化を図ることができる。特に、イオン回収手段(界面活性剤回収材9及びスケール回収材8)を電極6、7間で、且つ、流通される被処理水の流路中の第1の電極6の下流側であって第2の電極7の上流側となる位置に配置することで、当該イオン除去装置Sをより一層小型化することができる。
尚、本実施例の洗濯機Wは、前述した制御装置Cにより運転が制御されている。この制御装置Cは駆動モータ108の駆動、給水通路112の給水バルブ112Vの開閉、排水通路113の排水バルブ113Vの開閉、外部排水通路114の外部排水バルブ114Vの開閉、第1及び第2の電極6、7の通電等、洗濯機Wの制御を司る制御手段であり、汎用のマイクロコンピュータにて構成されている。特に、制御装置Cは、第1及び第2の電極6、7への電流値を制御することにより、スケール回収材8によるスケール除去処理工程と界面活性剤回収材9による界面活性剤除去処理工程とを選択的に実行する。スケール除去処理は、被処理水をカソードとなる電極側からアノードとなる電極側に流通させることで、カソードとなる電極のアノード側の面で被処理水中の硬度成分をスケールとして析出させて、これをスケール回収材8にて回収し、被処理水中から除去するものである。この場合、スケール除去処理工程では、制御装置Cにより被処理水の流路の上流側となる第1の電極6及び界面活性剤回収材9に負電位を印加し、下流側となる第2の電極7に正電位を印加することで、カソードとなる界面活性剤回収材9のアノード側の面(上面)で被処理水中の硬度成分をスケールとして析出させて、この析出したスケールを下流側にあるスケール回収材8に捕えて、当該スケール回収材8にてスケールを回収することができる。
また、界面活性剤除去工程は、界面活性剤回収材9に界面活性剤が帯電している電位と異なる電位を印加し、この界面活性剤回収材9にて界面活性剤を回収するものである。この場合、界面活性剤は使用される洗剤の種類によりその洗剤中に含まれる界面活性剤がアノード性の界面活性剤とカチオン性の界面活性剤とに分かれるので、使用される洗剤に応じて第1の電極6及び第2の電極7に印加する電位の極性を切り換える必要がある。例えば、アニオン性の界面活性剤を除去処理する場合(即ち、アニオン性の界面活性剤を含む洗剤が使用された場合)には、第1の電極6及び界面活性剤回収材9に正電位を印加し、第2の電極7に負電位を印加することで、界面活性剤回収材9にアニオン性の界面活性剤を付着させて、被処理水中からアニオン性の界面活性剤を除去することができる。
一方、カチオン性の界面活性剤を除去処理する場合(即ち、カチオン性の界面活性剤を含む洗剤が使用された場合)には、第1の電極6及び第2の電極7の極性を切り換える。即ち、第1の電極6及び界面活性剤回収材9に負電位を印加し、第2の電極7に正電位を印加することで、界面活性剤回収材9にカチオン性の界面活性剤を付着させ、被処理水中からカチオン性の界面活性剤を除去することができる。
本実施例では、前述した操作パネル104に上記各除去処理工程を選択するための操作スイッチSW1、SW2、SW3が設けられており、当該操作スイッチSW1、SW2、SW3の操作により被処理水に対して実行する処理が選択可能に構成されている。即ち、操作スイッチSW1及び操作スイッチSW2は、界面活性剤がアニオン性であるかカチオン性であるかに応じて、界面活性剤工程において電極6、7に印加する電位の極性を切り換えるための切替手段である。SW1に使用者によりこの操作スイッチSW1が選択されると、制御装置Cは、後述する比較的低い電流値で、第1の電極6に正電位を印加し、第2の電極7に負電位を印加する。これにより、界面活性剤回収材9及び第1の電極6はアノードとなり、第2の電極7はカソードとなる。また、使用者によりこの操作スイッチSW2が選択されると、制御装置Cは、後述する比較的低い電流値で、第1の電極6に負電位を印加し、第2の電極7に正電位を印加する。これにより、界面活性剤回収材9及び第1の電極6はカソードとなり、第2の電極7はアノードとなる。ここで、上述したように洗剤の種類によりその洗剤中に含まれる界面活性剤がアノード性の界面活性剤とカチオン性の界面活性剤とが分かれるので、使用者に分かりやすいようにSW1にアニオン性の界面活性剤を含む洗剤名を記載し、SW2にカチオン性の界面活性剤を含む洗剤名を記載しておいても良い。
また、操作スイッチSW3は、スケールを除去する処理モードを選択するためのスイッチである。使用者によりこの操作スイッチSW3が選択されると、制御装置Cは後述する高い電流値で第1の電極6に負電位を印加し、第2の電極7に正電位を印加する。これにより、界面活性剤回収材9及び第1の電極6はカソードとなり、第2の電極7はアノードとなる。
ここで、本実施例のイオン除去装置Sを用いた被処理水の処理において電極6、7に流す電流値と処理時間について具体的に検討した。先ず、本発明のイオン除去装置Sに一定時間繰り返し被処理水循環して流して、電極6、7に流れる電流値を変化させて、被処理水中の界面活性剤とスケールの除去率を調べた。この場合、硬度成分65.22mg/Lの標準水を用い、スケールの除去については該標準水を被処理水とし、アニオン性の界面活性剤の除去ではこの標準水にアニオン性の界面活性剤を含む洗剤を添加したものを被処理水とすると共に、カチオン性の界面活性剤の除去では上記標準水にカチオン性の界面活性剤を含む洗剤を添加したものを被処理水として用いた。尚、界面活性剤回収材8として直径40mm、表面積12.56cm2の炭素繊維を用いた。
図4は、イオン除去装置Sに60分間繰り返し被処理水を循環させて、電流値を変化させた場合の被処理水中の界面活性剤及びスケールの除去率である。図4において、縦軸は除去率、横軸は電流値である。また、菱形のプロットはカチオン性の界面活性剤、四角のプロットはアニオン性の界面活性剤、黒丸のプロットはスケールをそれぞれ示している。
図4に示すように、本実施例のイオン除去装置Sに60分間繰り返し被処理水を循環させた場合、カチオン性の界面活性剤を含む被処理水では、電流値が60mAのとき、被処理水から当該カチオン性の界面活性剤を約60%除去でき、150mA以上の電流値となると被処理水からカチオン性の界面活性剤を約80%除去できることがわかった。また、アニオン性の界面活性剤を含む被処理水では、電極6、7に150mA(ミリアンペア)の定電流で電圧を印加すると、被処理水からアニオン性の界面活性剤を43%除去でき、電流値が500mAでは当該界面活性剤を約50%除去できることがわかった。
しかしながら、当該アニオン性の界面活性剤の処理において、図4に示すように電極6、7に500mAより電流値を高くすると、除去率が低下することがわかった。即ち、アニオン性の界面活性剤の処理では、電極6に正電位を印加し、界面活性剤回収材9を正電位に帯電させて、該界面活性剤回収材9にてアニオン性の界面活性剤の回収を行うが、この場合、正電位に帯電した界面活性剤回収材9付近の被処理水は酸化され、水酸化物イオンが放電して酸素が発生し、酸性水となる。このため、500mAより高い電流値で電極6、7に電圧を印加すると、酸化力の高い酸素が大量に発生し、界面活性剤回収材9を腐食するため、除去率が低下するものと考えられる。そこで、アニオン性の界面活性剤の処理では、電極6、7に流す電流値を500mA以下に制御するものとする。これにより、界面活性剤回収材の腐食を抑制することができ、安定的にアニオン性の界面活性剤を除去することが可能となる。
次に、イオン除去装置Sにおける処理時間を変更して、被処理水中のカチオン性の界面活性剤の除去率を調べた。図5は、本実施例のイオン除去装置Sの各電極6、7にそれぞれ60mA、150mA、500mAの定電流となるように電圧を印加し、処理時間を変化させた場合の被処理水中のカチオン性界面活性剤の除去率である。図5において、縦軸は界面活性剤の除去率の目安となる被処理水中のTOC(全有機炭素)の除去率、横軸は処理時間である。図5の菱形のプロットに示すように、電極6、7に流れる電流値が60mAと最も低い場合には、処理時間20分で除去率は20%以下、40分では30%程度となり、60分間、被処理水を循環処理した場合には除去率は約60%となった。また、四角のプロットで示すように、電流値を150mAとすると、40分以上の処理時間で約80%の界面活性剤を除去できることがわかった。また、電流値を更に上昇して、500mAとした場合(図5の三角のプロット)、150mAの定電流となるように電極6、7に電圧を印加した場合と同様に、40分以上被処理水をイオン除去装置Sに循環処理することで、約80%の界面活性剤を除去できることがわかった。
以上の結果から、本実施例のイオン除去装置Sにて被処理水中の界面活性剤を除去する場合には、各電極6、7に150mAの定電流で電圧を印加すると共に、当該イオン除去装置Sに40分以上、例えば本実施例では60分間、被処理水を循環させるものとする。但し、界面活性剤の回収効率は、界面活性剤の濃度、量、界面活性剤回収材9の表面積に依存するので、電流値、循環時間はこれに限定されるものではない。
また、図4に示すように、電極6、7に150mAの定電流で電圧を印加した場合、被処理水からは殆どスケールを除去することができなかった。当該スケールの除去率は、電流値の上昇と比例して高くなり、図4に示すように1500mAの高電流値とした場合に被処理水からスケールを64%程除去できることがわかった。
図4に示すようにカチオン性の界面活性剤の除去処理とスケールの除去処理では、共に第1の電極6に負電位を印加し、第2の電極7に正電位を印加することとなるが、両者では除去可能な電流値が大きく相違することがわかった。即ち、カチオン性の界面活性剤を除去する場合には、比較的低い電流値(例えば、前述した150mA)であっても被処理水から界面活性剤を充分に除去することができるが、スケール除去の場合には150mA程の電流値では被処理水から充分にスケールを除去することができず、1500mAの高電流値とした場合に被処理水からスケールを在る程度除去出来ることがわかった。
そこで、本実施例のイオン除去装置Sにて被処理水中のスケール除去を行う場合には高い電流値、例えば、1500mA以上の電流値(本実施例では、1500mAの定電流)にて各電極6、7に電圧を印加すると共に、上述した各界面活性剤除去処理と同様に60分間、イオン除去装置Sに被処理水を循環させるものとする。
(1)アニオン性の界面活性剤除去処理工程
以上の構成で次に本実施例の洗濯機Wの動作を説明する。始めに、被処理水中のアニオン性の界面活性剤を除去する場合について説明する。先ず、開閉扉103から内槽ドラム102の収容室105に被洗濯物と当該被洗濯物の量に応じた所定量の洗剤(この場合、使用される洗剤はアニオン性の界面活性剤を含む洗剤)が投入され、開閉扉103が閉じられて、前述した操作スイッチのうちの電源スイッチと選択スイッチSW1が選択され、スタートスイッチが操作されると、前記制御装置Cにより洗濯運転が開始される。
これにより、前記給水バルブ112Vが開かれ、給水通路112が開放される。これにより、給水源107から外槽ドラム内の内槽ドラム102の収容室105内に水が供給される。尚、このとき、排水通路113の排水バルブ113Vは閉じられているものとする。
そして、内槽ドラム102の収容室105内に所定量の水が溜まると、制御装置Cにより給水バルブ112Vが閉じられて給水通路112が閉塞される。これにより、給水源107からの水の供給が停止される。
次に、制御装置Cは駆動モータ108を通電起動し、軸109を回転させる。これにより、当該軸109に取り付けられた内槽ドラム102が外槽ドラム内で回転し始め、洗浄工程が開始される。
この洗浄工程において、収容室105内に貯留された水(以下、洗浄水)には、上述したようにアニオン性の界面活性剤を含む洗剤が添加されていることから、当該界面活性剤により洗浄水の表面張力が小さくされ、衣類等の被洗濯物の繊維の間に洗浄水が浸透する。そして、繊維に付着した汚れ成分を界面活性剤により取り囲み、洗浄水中に汚れ成分を取り出す。界面活性剤の疎水基に付着する形で洗浄水中に取り出された汚れ成分は、界面活性剤分子によって取り囲まれて可溶化しているため、再び繊維に付着しない。また、衣類等に付着している汗に由来するナトリウムイオンなどのカチオンは、洗浄水中に溶出する。
当該洗浄工程の開始から所定時間経過すると、制御装置Cは、駆動モータ108を停止し、排水通路113の排水バルブ113Vを開放する。これにより、内槽ドラム102内の収容室105の洗浄水(即ち、外槽ドラム内の洗浄水)が排水通路113を介して貯留タンク110内に排出される。このとき、イオン除去装置Sに接続された循環通路115の循環バルブ115V及び外部に導出される外部排水通路114に接続された外部排水バルブ114Vは閉じられているものとする。
そして、内槽ドラム102内の収容室105の洗浄水が貯留タンク110内に排出されると、制御装置Cは、洗浄工程から脱水工程に移行する。この脱水工程では、制御装置Cは、前記洗浄工程の終了時に開放した排水通路113の排水バルブ113Vを開放した状態を維持したまま、この脱水を所定時間実行した後、排水通路113の排水バルブ113Vを閉じて、脱水工程を終了する。尚、本実施例の洗濯機Wでは、この脱水工程の後段、又は、脱水工程の終了後において、制御装置Cは、以下の界面活性剤除去処理工程を実行する。
この界面活性剤除去処理工程では、制御装置Cは、循環通路115の循環バルブ115Vを開放し、ポンプPの運転を開始する。これにより、貯留タンク110内の洗浄水(当該工程では以降、被処理水と称する)は、出口110Aから循環通路115、循環バルブ115Vを介して、イオン除去装置Sの流入口2から処理槽1内の電解室5に供給される。尚、外部排水バルブ114Vは閉じられた状態のままである。
上記流入口2から処理槽1内の電解室5に被処理水が供給されると、電解室5内の第1の電極6、界面活性剤回収材9、スケール回収材8及び第2の電極7は被処理水中に浸漬されるかたちとなる。そして、電解室5に供給された被処理水は、第1の電極6、界面活性剤回収材9、スケール回収材8及び第2の電極7を順次通過した後、最終的に流出口3に接続された循環通路116よりイオン除去装置Sの外部に流出する。
また、制御装置Cは上記循環バルブ115Vの開放及びポンプPの運転の開始と同時にイオン除去装置Sの被処理水の流路上流側となる第1の電極6に正電位を印加し、下流側となる第2の電極7に負電位を印加する。これにより、界面活性剤回収材9が第1の電極6と同じ正電位に帯電される。このとき、制御装置Cは、後述するスケール除去処理工程において各電極6、7に流れる電流値より低い電流値で電圧を印加する。本実施例では、制御装置Cは、上述したように150mAの定電流となるように電極6、7に電圧を印加するものとする。
上述の如く第1の電極6及び界面活性剤回収材9に正電位が印加され、第2の電極7に負電位が印加されると、被処理水の流路上流側となる第1の電極6及び界面活性剤回収材9はアノードとなり、下流側となる第2の電極7はカソードとなる。ここで、前述したように本実施例ではアニオン性の界面活性剤を含む洗剤が使用されていることから、即ち、洗剤に含まれる界面活性剤は負電位に帯電していることから、当該界面活性剤は、正電位とされた界面活性剤回収材9に引き寄せられる。また、界面活性剤に取り囲まれた汚れ成分を含む界面活性剤も界面活性剤回収材9に引き寄せられる。従って、界面活性剤及び汚れ成分は界面活性剤回収材9に積極的且つ効果的に静電吸着又は固着されていく。
更に、上記の如く電極6、7に電圧を印加すると、被処理水の電気分解が生じる。即ち、電極6、7により電解室5内の被処理水に通電すると、アノードとなる第1の電極6及び界面活性剤回収材9では、
2H2O→4H++O2+4e-
の反応が起こり、カソードとなる第2の電極7では、
4H++4e-+(4OH-)→2H2+(4OH-)
の反応が起こると同時に、被処理水に含まれる塩化物イオンが、
2Cl-→Cl2+2e-
のように反応し、更にこのCl2は水と反応し、
Cl2+H2O→HClO+HCl
となる。
この構成では電極6、7に通電することで、HClO(次亜塩素酸)が生成され、当該HClOにより界面活性剤を分解することができる。更に、被処理水中の汚れ成分などの有機物も次亜塩素酸により分解処理することができる。尚、本実施例では電極6、7に通電することで、HClO(次亜塩素酸)が生成されるものとしたが、当該次亜塩素酸に限らず、電解処理により活性酸素種を含む電解水が生成されるものであれば良く、例えば、電解処理することによりオゾンが生成されるものとしても、界面活性剤や洗剤、汚れ成分などを分解処理することが可能である。
そして、上記の如くイオン除去装置Sにてアニオン性の界面活性剤、洗剤及び汚れ成分が除去された後の被処理水は、循環通路116からポンプPを経て再び貯留タンク110内に戻る。そして、貯留タンク110の出口110Aから循環通路115に入り、循環バルブ115Vを介してイオン除去装置Sの流入口2から処理槽1内の電解室5に供給されるサイクルを繰り返す。これにより、界面活性剤回収材9による吸着効果と電気分解により発生する次亜塩素酸による分解効果により、界面活性剤、洗剤及び汚れ成分等が被処理水から徐々に除去処理されていく。
上記界面活性剤除去処理工程が所定時間(例えば、本実施例では60分)実行されると、制御装置Cは、循環通路115の循環バルブ115Vを閉じ、次に、循環通路116のポンプPを停止して、界面活性剤除去処理工程を終了する。尚、界面活性剤除去処理工程において界面活性剤が除去処理された被処理水は制御装置Cにより外部排出バルブ114が開放されて、貯留タンク110の出口110Bより外部排出通路114から洗濯機Wの外部に排出される。尚、当該界面活性剤処理工程で処理された被処理水は、界面活性剤及び汚れ成分を含まないので、次回の洗浄やすすぎ等に再利用することも可能である。この場合、例えば、図2に破線で示すように貯留タンク110と給水通路112とを配管120にて接続し、この配管120上に貯留タンク110内の被処理水を汲み上げるためのポンプP2を取り付け、洗濯運転の洗浄工程やすすぎ工程の給水時に当該ポンプP2の運転により、貯留タンク110内の被処理水を配管120及び給水通路112を介して収容室105に供給するものとすれば、給水源107からの給水量を著しく低減することができ、効率的な節水を実現することができるようになる。
他方、本実施例の洗濯機Wでは、この界面活性剤除去処理工程の後段、又は、界面活性剤除去処理工程の終了後において、制御装置Cは、以下のすすぎ工程を実行する。
このすすぎ工程では、先ず、給水バルブ112Vが開かれ、給水通路112が開放される。これにより、給水源107から外槽ドラム内の内槽ドラム102の収容室105内に水が供給される。このとき、排水通路113の排水バルブ113Vは閉じられているものとする。内槽ドラム102の収容室105内に所定量の給水が行われると、制御装置Cにより給水バルブ112Vが閉じられ、給水通路112が閉塞される。これにより、給水源107からの水の供給が停止される。
そして、前記駆動モータ108の回転動作が所定時間繰り返されてすすぎが行われると、制御装置Cは、駆動モータ108を停止して、排水通路113の排水バルブ113Vを開放する。これにより、収容室105(外槽ドラム内)のすすぎ水が排水通路113を介して貯留タンク110内に排出される。このとき、イオン除去装置Sに接続される循環通路115の循環バルブ115V及び外部に導出される外部排水通路114に接続される外部排水バルブ114Vは閉じられているものとする。
そして、収容室105(外槽ドラム内)のすすぎ水が貯留タンク110内に排出されると、制御装置Cは、すすぎ工程から脱水工程に移行する。脱水工程では、制御装置Cは、前記すすぎ工程の終了時に開放した排水通路113の排水バルブ113Vを開放した状態を維持したまま、この脱水を所定時間実行した後、排水通路113の排水バルブ113Vを閉じて、脱水工程を終了する。尚、本実施例の洗濯機Wでは、この脱水工程の後段、又は、脱水工程の終了後において、制御装置Cは、前記同様に界面活性剤除去処理工程を実行する。尚、界面活性剤除去処理工程における動作は前記同様であるためここでは説明を省略する。
(2)カチオン性の界面活性剤除去処理工程
次に、カチオン性の界面活性剤のみを除去する場合について説明する。先ず、開閉扉103から内槽ドラム102の収容室105に被洗濯物と当該被洗濯物の量に応じた所定量の洗剤(この場合、使用される洗剤はカチオン性の界面活性剤を含む洗剤)が投入され、開閉扉103が閉じられて、前述した操作スイッチのうちの電源スイッチと選択スイッチSW2が選択され、スタートスイッチが操作されると、前記制御装置Cにより洗濯運転が開始される。
尚、洗濯運転の洗浄工程、脱水工程及びすすぎ工程における動作は上記(1)で説明した動作と同様であるため、ここでは説明を省略し、上記と相違するカチオン性の界面活性剤の除去処理工程のみ説明する。
即ち、制御装置Cは、循環通路115の循環バルブ115Vを開放し、ポンプPの運転を開始する。これにより、貯留タンク110内の洗浄水(当該工程では以降、被処理水と称する)は、出口110Aから循環通路115、循環バルブ115Vを介して、イオン除去装置Sの流入口2から処理槽1内の電解室5に供給される。尚、外部排水バルブ114Vは閉じられた状態のままである。
上記流入口2から処理槽1内の電解室5に被処理水が供給されると、電解室5内の第1の電極6、界面活性剤回収材9、スケール回収材8及び第2の電極7は被処理水中に浸漬されるかたちとなる。そして、電解室5に供給された被処理水は、第1の電極6、界面活性剤回収材9、スケール回収材8及び第2の電極7を順次通過した後、最終的に流出口3に接続された循環通路116よりイオン除去装置Sの外部に流出する。
また、制御装置Cは上記循環バルブ115Vの開放及びポンプPの運転の開始と同時にイオン除去装置Sの被処理水の流路上流側となる第1の電極6に負電位を印加し、下流側となる第2の電極7に正電位を印加する。これにより、界面活性剤回収材9が第1の電極6と同じ負電位に帯電される。このとき、制御装置Cは、後述するスケール除去処理工程において各電極6、7に流れる電流値より低い定電流で電圧を印加する。本実施例では、制御装置Cは、上記(1)のアニオン性の界面活性剤除去処理工程と同様に150mAの定電流となるように電極6、7に電圧を印加するものとする。
上述の如く第1の電極6及び界面活性剤回収材9に負電位が印加され、第2の電極7に正電位が印加されると、被処理水の流路上流側となる第1の電極6及び界面活性剤回収材9はカソードとなり、下流側となる第2の電極7はアノードとなる。ここで、前述したように本実施例ではカチオン性の界面活性剤を含む洗剤が使用されていることから、即ち、洗剤に含まれる界面活性剤は正電位に帯電していることから、当該界面活性剤は、負電位とされた界面活性剤回収材9に引き寄せられる。また、界面活性剤に取り囲まれた汚れ成分を含む界面活性剤も界面活性剤回収材9に引き寄せられる。従って、界面活性剤及び汚れ成分は界面活性剤回収材9に積極的且つ効果的に静電吸着又は固着されていく。
更に、上述の如く電極6、7により電解室5内の被処理水に通電すると、カソードとなる第1の電極6及び界面活性剤回収材9(特に、界面活性剤回収材9の第2の電極7側の面)では、
4H++4e-+(4OH-)→2H2+(4OH-)
の反応が起こると同時に、被処理水中に含まれる塩化物イオンが、
2Cl-→Cl2+2e-
のように反応し、更にこのCl2は水と反応し、
Cl2+H2O→HClO+HCl
となる。
また、アノードとなる第2の電極7では、
2H2O→4H++O2+4e-
の反応が起こる。
このように、電極6、7に通電することで、HClO(次亜塩素酸)が生成され、当該HClOにより、被処理水中の汚れ成分などの有機物も分解処理することができる。
そして、上記の如くイオン除去装置Sにてカチオン性の界面活性剤、洗剤及び汚れ成分が除去された後の被処理水は、循環通路116からポンプPを経て再び貯留タンク110内に戻る。そして、貯留タンク110の出口110Aから循環通路115に入り、循環バルブ115Vを介してイオン除去装置Sの流入口2から処理槽1内の電解室5に供給されルサイクルを繰り返す。これにより、界面活性剤回収材9による吸着効果と電気分解により発生する次亜塩素酸による分解効果により、界面活性剤、洗剤及び汚れ成分等が徐々に除去されていく。
上記界面活性剤除去処理工程が所定時間(例えば、本実施例では60分)実行されると、制御装置Cは、循環通路115の循環バルブ115Vを閉じ、次に、循環通路116のポンプPを停止して、界面活性剤除去処理工程を終了する。尚、界面活性剤除去処理工程において界面活性剤が除去処理された被処理水は制御装置Cにより外部排出バルブ114が開放されて、貯留タンク110の出口110Bより外部排出通路114から洗濯機Wの外部に排出される。尚、このように当該界面活性剤処理工程で処理された被処理水は、界面活性剤及び汚れ成分を含まないので、次回の洗浄やすすぎ等に再利用することも可能である。この場合、前記同様に図2に破線で示すように貯留タンク110と給水通路112とを配管120にて接続し、この配管120上に貯留タンク110内の被処理水を汲み上げるためのポンプP2を取り付け、洗濯運転の洗浄工程やすすぎ工程の給水時に当該ポンプP2の運転により、貯留タンク110内の被処理水を配管120及び給水通路112を介して収容室105に供給するものとすれば、給水源107からの給水量を著しく低減することができ、効率的な節水を実現することができるようになる。
(3)スケール除去処理工程
次に、被処理水中のスケールを除去する場合について説明する。先ず、開閉扉103から内槽ドラム102の収容室105に被洗濯物と当該被洗濯物の量に応じた所定量の洗剤が投入され、開閉扉103が閉じられて、前述した操作スイッチのうちの電源スイッチと選択スイッチSW3が選択され、スタートスイッチが操作されると、前記制御装置Cにより洗濯運転が開始される。
尚、洗濯運転の洗浄工程、脱水工程及びすすぎ工程における動作は前記(1)で説明した動作と同様であるため、ここでは説明を省略し、上記と相違するスケールの除去処理工程のみ説明する。
即ち、制御装置Cは、循環通路115の循環バルブ115Vを開放し、ポンプPの運転を開始する。これにより、貯留タンク110内の洗浄水(当該工程では以降、被処理水と称する)は、出口110Aから循環通路115、循環バルブ115Vを介して、イオン除去装置Sの流入口2から処理槽1内の電解室5に供給される。尚、外部排水バルブ114Vは閉じられた状態のままである。
上記流入口2から処理槽1内の電解室5に被処理水が供給されると、電解室5内の第1の電極6、界面活性剤回収材9、スケール回収材8及び第2の電極7は被処理水中に浸漬されるかたちとなる。そして、電解室5に供給された被処理水は、第1の電極6、界面活性剤回収材9、スケール回収材8及び第2の電極7を順次通過した後、最終的に流出口3に接続された循環通路116よりイオン除去装置Sの外部に流出する。
また、制御装置Cは上記循環バルブ115Vの開放及びポンプPの運転の開始と同時にイオン除去装置Sの被処理水の流路上流側となる第1の電極6に負電位を印加し、下流側となる第2の電極7に正電位を印加する。これにより、界面活性剤回収材9が第1の電極6と同じ負電位に帯電される。このとき、制御装置Cは、前述した界面活性剤除去処理工程において各電極6、7に流れる電流値より高い定電流で電圧を印加する。本実施例では、制御装置Cは、1500mA(ミリアンペア)の定電流となるように電極6、7に電圧を印加するものとする。
これにより、被処理水の流路の上流側となる第1の電極6はカソードとなり、下流側となる第2の電極7はアノードとなる。即ち、各電極6、7により電解室5内の被処理水に通電すると、カソードとなる第1の電極6及び界面活性剤回収材9(特に、界面活性剤回収材9の第2の電極7側の面)では、
4H++4e-+(4OH-)→2H2+(4OH-)
の反応が起こり、アノードとなる第2の電極7では、
2H2O→4H++O2+4e-
の反応が起こる。
上記の如くカソードとなる界面活性剤回収材9のアノードとなる第2の電極7側の面(即ち、界面活性剤回収材9の上面)では、水酸化物イオン(OH-)が生成される。水酸化物イオンは非常に強い塩基であるため、界面活性剤回収材9の上面周囲は局所的にアルカリ性となる。これにより、被処理水中の硬度成分が当該水酸化物イオンと反応し、塩となる。具体的には、被処理水中に含まれ主なスケール成分となるカルシウム、マグネシウム、カリウム、シリカなどのイオンが、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムなどの難溶性の塩となって析出する。尚、被処理水中にリン、イオウや亜鉛などのイオンが含まれるときは、塩として硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛、水酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛なども析出することがある。尚、スケール成分となる上記カルシウム、マグネシウム、カリウム、シリカなどのイオンの一部は、電析作用により、界面活性剤回収材9の上面にも直接析出する。
そして、析出したスケールは、当該界面活性剤回収材9の流路下流側となるスケール回収材8に捕らわれ、回収されていく。即ち、界面活性剤回収材9の上面にて析出したスケールは、被処理水の流れにより界面活性剤回収材9の上面に当接するスケール回収材8に流れ、当該スケール回収材8の界面活性剤回収材9側の面に付着し、そこから流路下流側となるスケール回収材8側(即ち、第2の電極7側)に渡って成長する形で、スケール回収材8に付着していく。
このように、第1の電極6、界面活性剤回収材9、スケール回収材8及び第2の電極7とを一体化し、第1の電極6と当該第1の電極6と同じ電位に帯電された界面活性剤回収材9と第2の電極7との間にスケール回収材8を設置し、被処理水をカソードとなる第1の電極6及び界面活性剤回収材9からアノードとなる第2の電極7に流通させることで、界面活性剤回収材9の第2の電極7側の面(上面)で析出したスケールをスケール回収材8にて効率よく回収できる。
更に、スケール回収材8に付着したスケールは種結晶となる。即ち、スケール回収材8に付着したスケールを核として後にスケール回収材8を通過するスケールが付着して成長するので、回収効率をより一層向上させることができる。
更にまた、上述したように電極6、7、界面活性剤回収材9及びスケール回収材8を通水性を有する構造とすると共に、スケール回収材8を絶縁体とすることで、被処理水を支障なく流通させながら、スケール回収材8によりスケールを回収することができる。
また、第1の電極6に通電される導電性の界面活性剤回収材9と第2の電極7の間にスケール回収材8を設置し、被処理水をカソードとなる界面活性剤回収材9側からアノードとなる第2の電極7側に流通させることで、界面活性剤回収材9の上面にて析出したスケールが当該界面活性剤回収材9に付着することを極力避けることができる。特に、被処理水の流速が速い場合には、一度界面活性剤回収材9の上面に付着したスケールが剥離し易く、剥離したスケールを界面活性剤回収材9の下流側に配置されたスケール回収材8にて回収することができる。これにより、界面活性剤回収材9にスケールが付着して、このスケールにより電極6、7間の短絡が生じる不都合も極力解消できるようになる。
そして、上記の如くイオン除去装置Sにてスケールが除去された後の被処理水は、循環通路116からポンプPを経て再び貯留タンク110内に戻る。そして、貯留タンク110の出口110Aから循環通路115に入り、循環バルブ115Vを介してイオン除去装置Sの流入口2から処理槽1内の電解室5に供給され、上述したスケールが除去されるサイクルを繰り返す。尚、当該スケール除去処理工程では、上記カチオン性の界面活性剤も除去することができる。即ち、洗剤としてカチオン性の界面活性剤を含む洗剤が使用された場合には、スケール除去処理工程を選択することで、スケール回収材8にてスケールを回収し、界面活性剤回収材9にてカチオン性の界面活性剤を回収することができる。当該カチオン性の界面活性剤の除去動作は上記(2)で詳述した通りであるのでここでは説明を省略する。
上記スケール除去処理工程が所定時間(例えば、本実施例では60分)実行されると、制御装置Cは、循環通路115の循環バルブ115Vを閉じ、次に、循環通路116のポンプPを停止して、スケール除去処理工程を終了する。尚、スケール除去処理工程においてスケールが除去処理された被処理水は制御装置Cにより外部排出バルブ114が開放されて、貯留タンク110の出口110Bより外部排出通路114から洗濯機Wの外部に排出される。尚、当該スケール処理工程で処理された被処理水は、次回の洗浄やすすぎ等に再利用することも可能である。この場合、前記同様に図2に破線で示すように貯留タンク110と給水通路112とを配管120にて接続し、この配管120上に貯留タンク110内の被処理水を汲み上げるためのポンプP2を取り付け、洗濯運転の洗浄工程やすすぎ工程の給水時に当該ポンプP2の運転により、貯留タンク110内の被処理水を配管120及び給水通路112を介して収容室105に供給するものとすれば、給水源107からの給水量を著しく低減することができ、効率的な節水を実現することができるようになる。
上記のようにスケールが除去された後の被処理水を洗浄やすすぎ等に利用することで、特に、界面活性剤とスケールとが結合してできる金属石けんが減少するので、被洗浄物の洗浄効果を向上することができる。
更に、カチオン性の界面活性剤を含む洗剤が使用された場合には、スケール処理工程において、カソードとなる界面活性剤回収材9にてカチオン性の界面活性剤が静電吸着又は固着されるので、カチオン性の界面活性材も積極的且つ効果的に除去することが可能である。
他方、例えば、アニオン性の界面活性剤を含む洗剤が使用された場合に、スケールとアニオン性の界面活性剤の両方を除去処理したい場合には、スイッチSW1、SW3を選択することで制御装置Cが両工程を順次実行する。例えば、制御装置Cが上記(1)で説明した界面活性剤除去処理工程を所定時間行った後、上記(3)で説明したスケール除去処理工程を実行するものとすれば、被処理水中からスケールとアニオン性の界面活性剤の両方を除去処理することが可能である。
以上詳述したように本発明のイオン除去装置Sによりスケールや界面活性剤などのイオンを回収して被処理水中から除去することができる。特に、本発明の装置によれば、単一の系内で電解処理を行い、スケールと界面活性剤とを回収することができるので、装置の小型化とコストの低減を図ることができる。
特に、界面活性剤除去処理では、上述したようにスケール除去処理工程で各電極6、7に流れる大電流値より遙かに低い電流値であってもイオン除去装置Sに繰り返し被処理水を流すことで、界面活性剤回収材9にて界面活性剤を充分に除去することができるので、本実施例の如く当該界面活性剤除去処理工程において低い電流値にて電極6、7に電圧を印加し、繰り返してイオン除去装置Sに被処理水を流すことで、消費電力を著しく低減することができるようになる。
尚、本実施例のイオン除去装置Sにおいて、例えば、スケール回収材8に予め種結晶を担持させるよう構成すれば、スケール除去処理工程においてスケール回収材8により一層スケールが付着し易くなり、回収効率を更に改善することができるようになる。
一方、上記界面活性剤回収材9に多量の界面活性剤が付着した場合やスケール回収材8に多量のスケールが付着した場合、被処理水の流通に支障を来す恐れがあるため、これらを交換する必要がある。この場合、先ず、イオン除去装置Sの電源を切断して、電極6、7への通電を停止した後、前述したように処理槽1の上面、或いは、下面を取り外して、処理槽1を分解し、前記一体形成された第1の電極6、界面活性剤回収材9、スケール回収材8及び第2の電極7とを当該処理槽1内から引き抜く。その後、スケール回収材8の上面に取り付けられた第2の電極7と、界面活性剤回収材9の下面に取り付けられた電極6第1の電極6とを取り外し、更に、界面活性剤回収材9とスケール回収材8とを分離する。
その後、新しいスケール回収材8及び界面活性剤回収材9、若しくは、洗浄して界面活性剤を除去した界面活性剤回収材9及びスケールを除去したスケール回収材8とを組み立て、その上端面(スケール回収材8の上端面)に第2の電極7を、下端面(界面活性剤回収材9の下端面)に第1の電極6をそれぞれ取り付けて一体化した後、処理槽1内に挿入して、取り外した一面(上面或いは下面)を再びネジ止めするなどして取り付ける。以上のように界面活性剤回収材9及びスケール回収材8は交換可能な構造とされているので、界面活性剤が付着した界面活性剤回収材9及びスケールが付着したスケール回収材8を交換することが可能である。
次に、本発明のイオン除去装置の他の実施例について図6を用いて説明する。図6は本発明のイオン除去装置をコンデンサ22を冷却するクーリングタワー20に適用した場合の概略構成図である。クーリングタワー20では、未使用時において、クーリングタワー20内に貯溜された水からスケールが発生し易く、また、使用時においては、回路内を循環する水が凝集されて行き、スケールが発生して配管やコンデンサ22の表面(伝熱面)に付着し易いので、係るスケールの発生による悪影響を除去するために本発明のイオン除去装置を使用することが好ましい。尚、図6において上記図1乃至図5と同一の符号が付されたものは同一、或いは、類似の効果、若しくは作用を奏するものであるため説明を省略する。
図6において、25は冷却水が流れる回路を示している。当該回路25は、本実施例のイオン除去装置Tと、負荷手段26と、クーリングタワー20と、循環ポンプ27等を配管接続することにより構成されており、配管の途中部には複数の電磁弁SV1乃至SV8が配設されている。即ち、水道などの給水源には配管30の一端が接続され、ここから、回路25内に水(補給水)が補給される。当該配管30は給水源に接続された一端から電磁弁SV1を介して、他端はイオン除去装置Tの流入口2に接続されている。また、イオン除去装置Tの流出口3に接続された配管31は二股に分岐し、一方は、電磁弁SV5を介してクーリングタワー20に接続され、当該クーリングタワー20内の下方であって、内部に貯溜された水の水面より上面となる位置にて開口している。
そして、分岐した他方の配管31は、電磁弁SV6、電磁弁SV8を介して負荷手段26に接続される。この負荷手段26は水に負荷を付与して、減圧し、後側(下流側)に設けられてクーリングタワー20で水を蒸発させるためのものである。この負荷手段26の出口に接続された配管32はクーリングタワー20に接続され、当該クーリングタワー20内の上端にて開口している。また、クーリングタワー20内の底部には配管33が接続されている。当該配管33はクーリングタワー20内に貯溜された水内にて一端が開口し、そこからクーリングタワー20を出て、循環ポンプ27の入口側に接続される。
また、循環ポンプ27の出口側には配管34の他端が接続され、当該配管34は循環ポンプ27の出口側に接続された他端から電磁弁SV3、電磁弁SV2を順次経て一端は前記配管30の電磁弁SV1の下流側に接続されている。また、配管31の電磁弁SV8の下流側であり、負荷手段26の上流側となる位置には、配管35の一端が接続され、他端は配管34の循環ポンプ27の下流側であり、電磁弁SV3の上流側となる位置に接続される。また、配管35の一端側には電磁弁SV7が接続され、他端側には電磁弁SV4が接続されている。また、クーリングタワー20内には前記コンデンサ22が設置されている。このコンデンサ22は、図示しない圧縮機、膨張手段、蒸発器と共に配管接続されて、例えば、空気調和機の冷媒サイクルを構成している。
本実施例のイオン除去装置Tは、イオン回収手段が被処理水中のスケールを収集可能な絶縁性のスケール回収材8により構成されていおり、前記実施例1に示す界面活性剤回収材9を有さない。即ち、イオン除去装置Tは、イオン回収手段がスケール回収材8から成り、被処理水からスケールを回収可能なスケール除去装置である。具体的に、本実施例のイオン除去装置Tは、図7に示すように第1の電極6と第2の電極7とイオン回収手段としてのスケール回収材8から成り、スケール回収材8の上下が電極6と電極7にて挟持され、一体となるよう構成されている。本実施例では、スケール回収材8の下端に電極6、上端に電極7がそれぞれ着脱可能に当接し、処理槽1の電解室5内に収容されている。
また、本実施例のスケール回収材8は、スケール回収材8に捕集されるスケールと補色関係となる色を呈している。一般的に本実施例のスケール回収材8にて捕集されるスケールは白色を呈しているため、例えば、スケール回収材8は黒、緑などのスケールの白色が目立つ色とされている。これにより、スケール回収材8に捕集されたスケールを目視することができるようになる。
更に、本実施例のイオン除去装置Tの処理槽1には、図8に示すようにのぞき窓100が設けられて、処理槽1内に収容されたスケール回収材8が外部より目視可能に構成されている。このように、スケール回収材8を当該スケール回収材8に捕集されるスケールと補色関係となる色とすると共に、のぞき窓100を設けて処理槽1内に収容されたスケール回収材8が外部より目視可能に構成することで、スケール回収材8の交換時期を目で見て確認することができる。
更にまた、本実施例の回路25は、イオン除去装置Tのスケール回収材8の交換時期を予測して、使用者に通知するための交換通知手段10を備えている。当該交換通知手段10は、被処理水の流入側と流出側における水圧の差に基づいてスケール回収材8の交換時期を予測するものであり、イオン除去装置T内に流入する水の圧力を検出する流入側水圧検出装置10Aと、イオン除去装置Tから流出する水の圧力を検出する流出側水圧検出装置10Bと、図示しない制御装置と、交換時期通知手段等から構成されている。
本実施例では、流入側水圧検出装置10Aはイオン除去装置Tの流入口2に接続された配管30上に設置され、流出側水圧検出装置10Bは流出口3に接続された配管31上に設置されている。これら水圧検出装置10A、10Bは図示しない制御装置に接続されている。そして、制御装置は、制御装置は係る水圧検出装置10A、10Bにて検出される水圧が所定の圧力差に達すると、図示しない交換時期通知手段を作動するよう構成されている。
通常水圧検出装置10A、10Bにて検出される水圧は所定の圧力差以内であるが、スケール回収材8にスケールが付着して、被処理水の流れが阻害されると、流入側と流出側における水圧に差が生じてくる。即ち、流入側の被処理水が流れ難くなるため、流入側水圧検出装置10Aにて検出される流入側の水圧が急激に低下する。これにより、圧検出装置10A、10Bにて検出される水圧が所定の圧力差以上となる。このとき、制御装置が図示しない交換時期通知手段(警報や警告表示装置などから成る)を作動して、使用者にスケール回収材8の交換時期が近づいていることを知らせる。
このように、被処理水の流入側と流出側における水圧の差に基づいてスケール回収材8の交換時期を予測することで、上述したスケール回収材8の色と、のぞき窓100の効果に加えて、スケール回収材8の交換時期をより確実に把握することができ、適切な交換を行うことが可能となる。これにより、常に良好な状態でスケールの回収を行うことができるようになる。尚、図8の如く処理槽1にのぞき窓100を設けるものに限らず、例えば、図9に示すように処理槽1全体を透明な槽にて構成しても良い。この場合にも、処理槽1内に収容されたスケール回収材8を外部より目視することができるので、スケール回収材8の交換時期を目で見て確認することができる。
更に、上記交換通知手段10は上述した構造に限らず、イオン除去装置Tのスケール回収材8の流入側と流出側における水圧の差を検出して、スケール回収材8の交換時期を予測できるものであればどのようなものであっても構わない。また、本実施例では、上記流入側水圧検出装置10Aを配管30上、流出側水圧検出装置10Bを配管31上に設置するものとしたが、これに限らず、イオン除去装置T内に設けるものとしても差し支えない。この場合、例えば、流入側水圧検出装置10Aを流入口2とスケール回収材8の間の流路内、流出側水圧検出装置10Bをスケール回収材8と流出口3の間の流路内に配置することで、上述の如く流入側と流出側における水圧の差に基づいてスケール回収材8の交換時期を予測することが可能である。
以上の回路構成で、次に水の循環動作について説明する。先ず、回路内に水を補給する給水時の動作を説明する。当該給水時には、電磁弁SV1及び電磁弁SV5が開放され、電磁弁SV2及び電磁弁SV6が閉塞される。これにより、水源からの水が電磁弁SV1を介して、流入口2からイオン除去装置Tに流入する。そして、このイオン除去装置Tにて、第1の電極6、スケール回収材8、第2の電極7を順次通過して、スケール成分が除去された被処理水は、流出口3から配管31に入り、電磁弁SV5を経てクーリングタワー20内に流入する。このとき、クーリングタワー20内に貯えられる給水源からの水はイオン除去装置Tを通過し、スケール成分の除去された被処理水である。このため、従来のように当該クーリングタワー20内に貯溜された水からスケールが発生する不都合を極力避けることができる。
次に、クーリングタワー20内を流れる水の循環動作を説明する。先ず、イオン除去装置Tに水を循環させずに、クーリングタワー20を運転する場合について説明する。この場合、電磁弁SV4及び電磁弁SV7が開放され、電磁弁SV3及び電磁弁SV8が閉塞される。そして、循環ポンプ27が駆動されると、クーリングタワー20内に貯えられた水が配管33に入り、循環ポンプ27に吸い込まれる。循環ポンプ27に吸い込まれた水は、配管35に吐出され、電磁弁SV4、電磁弁SV7を経て負荷手段26に至る。当該負荷手段26にて水は減圧され、その後、配管32を介してクーリングタワー20内に吐出される。クーリングタワー20内に吐出された水は当該クーリングタワー20と熱交換可能に配設されたコンデンサ22から吸熱して蒸発する。一方、コンデンサ22内を流れる冷媒は水と熱交換することにより冷却される。そして、クーリングタワー20内で蒸発した水はその後、液体に戻り底部に流下し、配管33の循環ポンプ27に吸い込まれるサイクルを繰り返す。
次に、イオン除去装置Tに水を循環させてスケール成分を除去しながら、クーリングタワー20を運転する場合について詳述する。この場合、電磁弁SV3、電磁弁SV2、電磁弁SV6及び電磁弁SV8が開放され、電磁弁SV1、電磁弁SV4、電磁弁SV5及び電磁弁SV7が閉塞される。そして、循環ポンプ27が駆動されると、クーリングタワー20内に貯えられた水が配管33に入り、循環ポンプ27に吸い込まれる。循環ポンプ27に吸い込まれた水は、配管34に吐出され、電磁弁SV3、電磁弁SV2、前記イオン除去装置Tを順次通過する。そして、イオン除去装置Tにてスケール成分が除去された被処理水は、流出口3から配管31に入り、電磁弁SV6、電磁弁SV8を経て負荷手段26に至る。そこで、水は減圧された後、配管32を介してクーリングタワー20内に吐出される。負荷手段26にて減圧され、クーリングタワー20に吐出された水は、当該クーリングタワー20内において、熱交換可能に配設されたコンデンサ22から吸熱して蒸発する。一方、コンデンサ22内を流れる冷媒は水と熱交換することにより冷却される。
そして、クーリングタワー20内で蒸発した水はその後、液体に戻り底部に流下し、配管34に流れるサイクルを繰り返す。このように、クーリングタワー20によりコンデンサ22を冷却する循環運転中であっても、イオン除去装置Tに水を循環させて、スケール成分を除去することができる。これにより、クーリングタワー20内を循環し凝集する水からスケールが発生する不都合を防止することができる。特に、回路25内を循環する水をイオン除去装置Tに流すことで、配管(配管30乃至配管35)内にスケールが付着して水の循環が阻害されたり、コンデンサ22の表面(伝熱面)にスケールが付着して、熱交換能力が低下する不都合を未然に回避することができる。
一方、上記クーリングタワー20の停止時においてもクーリングタワー20内に貯えられた水をイオン除去装置Tに流してスケール成分を除去処理することで、クーリングタワー20内に貯えられた水からのスケールの発生をより一層防止することができる。この場合、電磁弁SV3、電磁弁SV2及び電磁弁SV5が開放され、電磁弁SV1、電磁弁SV4及び電磁弁SV6が閉塞される。そして、循環ポンプ27が駆動されると、クーリングタワー20内に貯えられた水が配管33に入り、循環ポンプ27に吸い込まれる。循環ポンプ27に吸い込まれた水は、電磁弁SV3、電磁弁SV2、イオン除去装置Tを順次通過する。そして、イオン除去装置Tにてスケール成分が除去された被処理水は、流出口3から配管31に入り、電磁弁SV5を介してクーリングタワー20内に流入し、底部に貯えられる。このように、クーリングタワー20の停止時であっても循環ポンプ27を駆動して、クーリングタワー20内に貯えられた水をイオン除去装置Tに流してスケール成分を除去処理することができる。
次に、本発明のイオン除去装置のもう一つの他の実施例について図10を用いて説明する。図10は、本発明のイオン除去装置を水を電解処理して次亜塩素酸や酸性水などの殺菌水やアルカリイオン水などの電解水を生成する電解水生成装置に適用した場合の概略構成図である。尚、図10のイオン除去装置Tは図7にて説明したイオン除去装置と同一の構成から成る装置である。図10において、図1乃至図9と同一の符号が付されたものは同一、或いは、類似の効果、若しくは、作用を奏するものであるため、説明は省略する。
図10において、40は電解水を生成する電解水生成装置40であり、電解槽41と、当該電解槽41内に浸漬された一対の電極42、43と、電極42、43に通電する電源45を備えている。当該電解水生成装置40は従来の電解水生成装置と同様であるため本実施例では具体的な説明は省略する。即ち、電極42、43は、例えばベースがTi(チタン)で皮膜層がIr(イリジウム)、Pt(白金)から構成された電極板であり、この電極42、43に流れる電流値は、電流密度が20mA(ミリアンペア)/cm2(平方センチメートル)として、所定の浮遊残留塩素濃度(例えば、1mg(ミリグラム)/l(リットル))を発生させる。
上記電極42、43により水道水に通電すると、カソード電極42では、
4H++4e-+(4OH-)→2H2+(4OH-)
の反応が起こり、アノード電極43では、
2H2O→4H++O2+4e-
の反応が起こると同時に、水に含まれる塩化物イオン(水道水に予め添加されているもの)が、
2Cl-→Cl2+2e-
のように反応し、更にこのCl2は水と反応し、
Cl2+H2O→HClO+HCl
となる。
この構成では、電極42、43に通電することで、殺菌力の大きいHClO(次亜塩素酸)を含む殺菌水を生成することができる。
ここで、上記電解水生成装置40において使用する水(水道水など)には、種々の硬度成分(カルシウム、マグネシウム、カリウム、シリカなど)が含まれており、当該水道水をそのまま電解水生成装置40に供給して電解水を生成した場合、電解処理により水道水に溶け込んだ硬度成分がスケールとして析出して電極に付着し、電極を劣化させたり、電解処理能力を低下させるなどの不都合を招く恐れがあった。
そこで、このようなスケールの発生による悪影響を除去するため、イオン除去装置にてスケール成分を除去処理し、これを電解水生成装置40に供給して電解処理することで、電解水生成装置40におけるスケールの発生を防止することができる。
以上の如く被処理水を用いた様々な装置において、本発明のイオン除去装置を適用し、スケールの発生による悪影響を除去することができる。
尚、上記各実施例では、イオン除去装置の電極6、7として、白金をメッシュ状で、且つ、全体が円盤形状を呈するよう加工し、被処理水を流通可能な通水性の電極としたが、これに限らず、電極6、7として炭素、チタン又はステンレスなどの単体、若しくは、白金(Pt)、炭素、チタン又はステンレスの何れかを含む導電体などやその他の電極を導電体としても良い。また、当該電極6、7の形状も被処理水を流通可能な通水性のものであれば差し支えなく、例えば繊維状、若しくは、パンチングプレート状に加工した多孔質体より構成することも可能である。
尚、前記実施例1においてイオン除去装置は、処理槽1の少なくとも一部が分解可能に構成されているものとしたが、ここで、その具体的な構造について、例を挙げて説明する。この実施例ではイオン回収手段がスケール回収材8のみからなる前記実施例2で説明した装置を用いて説明する。図11は、処理槽1が分解可能に構成された本実施例のイオン除去装置Uの縦断側面図である。本実施例のイオン除去装置Uの処理槽1は、図11に示すように、円筒状の本体150と、その下端の開口部を閉塞する蓋部材160と、上端の開口部を閉塞する蓋部材170とから成る。この円筒状の本体150には上下端部近傍の外周面に蓋部材160、170の外郭部161、171の内面に形成されたねじ溝161A、171Aと相互に螺合するねじ山150A、150Bが形成される。
蓋部材160は、上記外郭部161と、その内側に配置され、下端に流入口2が形成された内部材162から構成されている。また、蓋部材170は、前記外郭部171と、その内側に配置され、上端に流出口3が形成された内部材172から構成されている。また、本体150の中心部の内径は、上下端部の内径より小さく構成され、これにより、中心部と上下端部とは段差形状を呈している。そして、この段差部と蓋部材160、170の内部材162、172とで各電極6、7を保持している。
具体的に、イオン除去装置Uを組み立てるには、先ず、スケール回収材8を本体150の上端或いは下端の開口から本体150内に挿入し、その上面に第2の電極7、下面に第1の電極6を当接させる。この状態で本体150の上端縁部にOリング155を介して内部材172を配置し、その上側から外郭部171を挿入し、外郭部171のねじ溝171Aと本体150の上端に形成されたねじ山150Bとを相互に螺合する。同様に、本体150の下端縁部にOリング154を介して内部材162を配置し、その下側から外郭部161を挿入し、外郭部161のねじ溝161Aと本体150の下端に形成されたねじ山150Aとを相互に螺合することで、容易にイオン除去装置Uを組み立てることができる。また、当該イオン除去装置Uを分解するには上記組み立て時と逆の手順で順次取り外すことで、容易に分解することができる。これにより、スケール回収材8を容易に交換することが可能である。特に、本体150の上下端部にOリング154、155を介して取り付けることで、処理槽1の水密性を向上でき、処理槽1内の被処理水が漏れ出る不都合を防ぐことができる。尚、当該実施例で示す図11のイオン除去装置Uの構造の如くねじ込み式の形状に限らず、蓋部材をねじ止めする形状としても、当該ねじ止めを解除することでイオン除去装置は分解可能であり、イオン回収手段を交換可能な構造とすることができる。
更にまた、本実施例のイオン除去装置Uにおいて図12に示すように本体150にのぞき窓100を形成することで前記実施例2と同様にスケール回収材8を外部より目視可能な構造とすることができる。特に、スケール回収材8を当該スケール回収材8に捕集されるスケールと補色関係となる色(例えば、前記実施例2の如く黒、緑などのスケールの白色が目立つ色)とすることで、スケール回収材8に付着するスケールを目で見て容易に確認し、交換時期を把握することが可能となる。
次に、図13は第5実施例のイオン除去装置Xの外観図、図14は図13のイオン除去装置Xの概略構成図をそれぞれ示している。尚、図13及び図14において図1乃至図12と同一の番号が付されたものは、類似の効果若しくは作用を奏するものとして説明を省略する。本実施例のイオン除去装置Xは、縦長円筒状を呈し、上面の軸心方向の中心部に流入口2、当該流入口2の外周に流出口3が形成された処理槽1と、この処理槽1内に同心円状に配置された電極6、7及びイオン回収手段としてのスケール回収材8から構成されている。
電極6は、軸心方向に空間部50を有する筒状を呈しており、当該空間部50の上端は前記流入口2に連通している。また、電極6の外周面には、当該電極6に当接してスケール回収材8が設けられている。このスケール回収材8は、中心に前記電極6が挿通する孔を有したドーナッツ状を呈しており、内周面は電極6の外周面に当接して、外周面は電極7の内周面に当接して配置されている。そして、電極7は、スケール回収材8の外周面を被覆するように配置されている。また、処理槽1内に設置された状態で、電極7の外周面と処理槽1の内面との間には所定の空間部55が構成され、この空間部55の上端に対応して前記流出口3が開口している。即ち、本実施例のスケール除去装置Xは、中心から被処理水を当該処理槽1内に流入させ、これを電極6、スケール回収材8及び電極7へと順次通過させ、即ち、被処理水を内側から外側に流し、電極7の外周面と処理槽1の内周面との間に形成された空間部55の上端に形成された流出口3から流出させるよう構成されている。
これら電極6、7、及び、スケール回収材8は前記実施例同様に一体化され、且つ、処理槽1から出入可能に構成されている。尚、電極6、7、及びスケール回収材8の材質は前記実施例1にて既に詳述したものと同様であるので、ここでは説明を省略する。
以上の構成で次に本実施例のイオン除去装置Xの動作について説明する。先ず、イオン除去装置Xの電源が投入されると、電極6、7への通電が開始される。これにより、被処理水の流路の上流側となる電極6はカソードとなり、下流側となる電極7はアノードとなる。即ち、電極6、7により電解室5内の被処理水に通電すると、カソードとなる電極6では、
4H++4e-+(4OH-)→2H2+(4OH-)
の反応が起こり、アノード電極では、
2H2O→4H++O2+4e-
の反応が起こる。
上記の如くカソードとなる電極6のアノード側の面(即ち、電極6の外周面)では、水酸化物イオン(OH-)が生成される。水酸化物イオンは非常に強い塩基であるため、電極6の外周面周囲は局所的にアルカリ性となる。これにより、被処理水中の硬度成分が当該水酸化物イオンと反応し、塩となる。具体的には、被処理水中に含まれ主なスケール成分となるカルシウム、マグネシウム、カリウム、シリカなどのイオンが、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムなどの難溶性の塩となって析出する。尚、被処理水中にリン、イオウや亜鉛などのイオンが含まれるときは、塩として硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛、水酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛なども析出することがある。尚、上記スケール成分となるカルシウム、マグネシウム、カリウム、シリカなどのイオンの一部は、電析作用により、電極6の外周面にも直接析出する。
そして、上記の如く析出したスケール(上記各塩)は、電極6の流路下流側に位置するスケール回収材8に捕らわれ、回収されていく。即ち、電極6の外周面にて析出したスケールは、被処理水の流れにより電極6の外周面に当接するスケール回収材8に流れ、当該スケール回収材8の電極6側の面(即ち、スケール回収材8の内周面)に付着し、そこからスケール回収材8の外側(即ち、電極7側)に渡ってスケールが成長するように付着していく。
このように、電極6、スケール回収材8、電極7とを一体化し、電極6と電極7の間にスケール回収材8を設けて、被処理水をカソード側となる電極6からアノード側となる電極7に流通させることで、電極6の電極7側の面(電極6の外周面)で析出したスケールをスケール回収材8にて効率よく回収することができる。
更に、スケール回収材8に付着したスケールは種結晶となる。即ち、スケール回収材8に付着したスケールを核として後にスケール回収材8を通過するスケールが付着して成長するので、回収効率をより一層向上させることができる。
更にまた、上述したように電極6、7及びスケール回収材8を通水性を有する構造とすると共に、スケール回収材8を絶縁体とすることで、被処理水を支障なく流通させながら、スケール回収材8によりスケールを回収することができる。
また、電極6と電極7の間にスケール回収材8を設置し、被処理水をカソードとなる電極6側からアノードとなる電極7側に流通させることで、電極6の外周面にて析出したスケールが当該電極6に付着することを極力避けることができる。特に、被処理水の流速が速い場合には、一度電極6に付着したスケールが剥離し易く、剥離したスケールは電極6の下流側に配置されたスケール回収材8にて回収することができる。これにより、電極6にスケールが付着して、このスケールにより電極6、7間の短絡が生じる不都合も極力解消できるようになる。
尚、本実施例のイオン除去装置Xにおいて、図15に示すように、処理槽1の上端面にのぞき窓100を形成することで、処理槽1に収容されたスケール回収材8が外部から目視できるようになる。この場合、特に、スケール回収材8を捕集されるスケールと補色関係となる色とすることで(例えば、前記実施例2と同様に黒、緑等)、スケール回収材8に捕集されるスケールを容易に目視できるようになるので、スケール回収材8の交換時期を把握することが可能となる。
更に、図15の構造に限定されるものでなく、例えば、図16の如く処理槽1の上端面、或いは、下端面、若しくは、処理槽1の全体を透明に構成しても同様な効果を得ることができる。
更にまた、処理槽1の一部を分解可能に構成するものとすれば、スケールの付着したスケール回収材8を交換することができる。図17は、その場合の処理槽1の一例である。この処理槽1は、本体180の下端部が、蓋部材185にて開閉可能に閉塞されている。具体的に、蓋部材185は、中心部に電極7の外径より大きい孔が形成され、その孔の全周にねじ溝186Aが形成されたドーナッツ状の外蓋186と、外周にねじ溝186Aに相互に螺合するねじ山187Aが形成され、上記外蓋186の孔内に取り付けられる内蓋187から構成されている。
上記構成の処理槽1を有するイオン除去装置Xにおいて、スケール回収材8を交換する場合には、スケール回収装置Xの電源を切断して、電極6、7への通電を停止した後、前述したように蓋部材185の内蓋187のねじ山187Aと外蓋186のねじ溝186Aとの螺合を解除し、処理槽1の下面から一体化された電極6、スケール回収材8、電極7を引き抜く。その後、当該スケール回収材8の外周面に当接する電極7と、内周面に当接する電極6とを取り外す。そして、新しいスケール回収材8、或いは、洗浄してスケールを除去したスケール回収材8の内周面に電極6を挿入し、これを電極7の内周面に挿入する。これにより、電極6、7及びスケール回収材8を一体化することができる。そして、上述のように一体化された電極6、7及びスケール回収材8を処理槽1内に挿入し、Oリング188を配し、前記ねじ山187Aとねじ溝186Aとを相互に螺合することで、再び組み立てる。以上のように構造とすることで、スケール回収材8を容易に交換することができる。
このとき、ネジ溝186Aの外周縁にOリング188を取り付けることで、処理槽1の水密性を向上でき、処理槽1内の被処理水が漏れ出る不都合を防ぐことができる。尚、当該実施例で示す図17のイオン除去装置Uの構造の如くねじ込み式の形状に限らず、蓋部材をねじ止めする形状としても、当該ねじ止めを解除することでイオン除去装置は分解可能であり、イオン回収手段としてのスケール回収材8を交換可能な構造とすることができる。
尚、上記では処理槽1内に配置された電極6、7及びスケール回収材8を一旦、処理槽1から取り出した後、これらを取り外して、スケール回収材8を交換するものとしたが、これに限らず、処理槽1からスケール回収材8のみを取り外し可能に構成するものとしても構わない。
尚、上記実施例5では電極6、7は前記実施例1同様に白金電極を用いたが、上記実施例4のように白金などから成る電極6、7に導電体(例えば、炭素繊維CF)を組み合わせることで、両電極9A、9Bを構成しても良い(図18)。このように、白金電極7、8に炭素繊維CFを組み合わせて、カソードとなる電極9Aとアノードとなる電極9Bを形成することで、特に、カソードとなる電極9Aを白金電極7、8に炭素繊維CFを組み合わせた構造とすることで、被処理水と電極9Aとの接触面積が拡大するので、塩の生成効率が向上し、スケール回収材8にて回収することができる。これにより、スケール回収材8での回収効率を改善することができる。
また、上記実施例5及び実施例6では、処理槽1の軸心方向の中心に流入口2、その外周に流出口3をそれぞれ形成して、中心から被処理水を当該処理槽1内に流入させ、これを外側に流した後、流出口3から流出させるよう構成したが、図19に示すように流出口3を処理槽1の軸心方向の中心に形成し、その周囲に流入口2を形成すると共に、電極6をスケール回収材8の外周面に配置し、電極7の内周面にスケール回収材8を配置するものとしても本発明は有効である。
この場合、処理槽1内を被処理水が外側に配置されたカソード電極6側から内側に配置されたアノード電極7側に流れるので、被処理水と外側に位置するカソードとなる電極6との接触面積が増大するので、塩の生成効率の向上を図ることができるようになる。これにより、スケール回収材8での回収効率を改善することができるようになる。
次に、図20は本発明のイオン除去装置の第8実施例のイオン除去装置の概略構成図を示している。本実施例のイオン除去装置Yは、処理槽1と、この処理槽1内の被処理水中に浸漬された一対の電極6、7と、処理槽1内の被処理水をアノードとなる電極7が位置するアノード室7A側とカソードとなる電極6が位置するカソード室6A側とに区画するイオン交換膜4と、イオン回収手段としてのスケール回収材8から構成されている。尚、図20において、前記図1乃至図19と同一の符号が付されているものは同様、或いは、類似の効果、若しくは、作用を奏するものであり、ここでは説明を省略する。
前記処理槽1は、上面1Aに被処理水の流入口2と流出口3が形成され、下面に開口部1Cを有する縦長円筒状の本体1Bと、この処理槽1の下面の開口部1Cを閉塞する蓋部材1Dから構成されている。また、本体1Bの開口部1Cの内周縁には蓋部材1Dの外周縁に形成されたネジ山72と相互に螺合するネジ溝70が形成され、このネジ溝70の外側(下側外方)には全周に渡ってOリング73が取り付けられている。そして、蓋部材1Dのねじ山72と開口部1Cのネジ溝70とを相互に螺合することで、当該蓋部材1Dにて開口部1Cを水密的に閉塞することができる。
前記電極6、7は、同心円状に互いに離間して非接触状態に配置された中空円筒状の電極であり、電極7が電極6の外面側に位置している。即ち、中空円筒状の電極6の外面側に当該電極6と同心円状に配置され電極6と所定の間隔を存して電極7が配置されている。 本実施例では電極6、7として、白金をメッシュ状に加工したものを用いるものとする。このように、電極6、7をメッシュ状に加工することで、被処理水を流通可能な通水性の電極とされている。
本実施例のスケール回収材8は、電極6、7と同心円状に配置され、中空円筒状を呈する。そして、当該スケール回収材8は、流通される被処理水の流路中のカソードとなる電極6の下流側に配設されている。具体的に、スケール回収材8は、電極6の内面側に配設され、被処理水は電極6を介して、当該スケール回収材8を通過するよう構成されている。本実施例のスケール回収材8も前記各実施例で説明したように絶縁体であり、例えば、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、アクリルなどの合成樹脂やアルミナ、ゼオライトなどのセラミック等の絶縁性の素材を多孔質体、或いは、粒子状、不織布若しくは中空紙フエルト等に加工して成る。また、本実施例のスケール回収材8も電極6、7と同様に、被処理水を流通可能な通水性とされている。
前記イオン交換膜4は、陽イオンのみを透過可能な陽イオン交換膜であり、アノードとなる電極7が位置するアノード室10側と、カソードとなる電極6が位置するカソード室6A側とに区画するように設けられている。また、本実施例のイオン交換膜4は、前記電極6、7及びスケール回収材8と同心円状に配置されると共に、電極6と電極7の間に配設されている。
一方、前記蓋部材1Dには被処理水が流れる通路80が形成されている。この通路80は、蓋部材1Dの中心部にて一端が開口し、当該一端の開口81は前記スケール回収材8の内周に形成された空間10と連通する。また、蓋部材1Dの開口81より外方となる位置には通路80の他端の開口82が設けられ、イオン交換膜4と電極7との間に形成された空間14と連通している。本実施例では、通路80の他端の開口82は2つ形成されている。即ち、本実施例の通路80は一端の開口81から当該蓋部材1Dを下方に延在し、そこから2つに分岐して、分岐した通路は共に蓋部材1Dを水平方向(外周方向)に延びた後、起立して、イオン交換膜4と電極7との間に形成された空間14に対応する位置にて開口するよう形成されている。
また、前記処理槽1の上面に形成された流入口2は電極6とイオン交換膜4との間に形成された空間12内に連通するように設けられ、流出口3は電極7と処理槽1の本体1Bの内周との間に形成された空間16と連通するように設けられている。
ここで、本発明では電極6、7、イオン交換膜4及びスケール回収材8とが一体化されている。この場合、前記蓋部材1Dに電極6、7、イオン交換膜4及びスケール回収材8の一端(下端)を取り付けて、当該蓋部材1Dにより電極6、7、イオン交換膜4及びスケール回収材8とを一体化しても良いし、電極6、7、イオン交換膜4及びスケール回収材8の両端を枠体に嵌め込むことで一体化しても良い。また、その他の方法で電極6、7、イオン交換膜4及びスケール回収材8とを一体化しても構わない。尚、本実施例では電極6、7、イオン交換膜4及びスケール回収材8の下端が蓋部材1Dの上面に着脱可能に取り付けられているものとする。このように電極6、7、イオン交換膜4及びスケール回収材8とを一体化することで、単一の系内(処理槽1内)にて電解処理とスケールの回収が可能となる。これにより、イオン除去装置の小型化を図ることができるようになる。
以上の構成で次に本実施例のイオン除去装置Yの動作を説明する。先ず、イオン除去装置Yの電源が投入されると、電極6、7への通電が開始される。このとき、電極6、7には、電流密度が10mA(ミリアンペア)/cm2(平方センチメートル)の電流値が印加される。これにより、被処理水の流路の上流側となる電極6はカソードとなり、下流側となる電極7はアノードとなる。即ち、電極6、7により電解室5内の被処理水に通電すると、カソードとなる電極6では、
4H++4e-+(4OH-)→2H2+(4OH-)
の反応が起こり、アノードとなる電極7では、
2H2O→4H++O2+4e-
の反応が起こる。
ここで、電極6で生成された水酸化物イオン(OH-)は、非常に強い塩基である。この水酸化物イオンは、イオン交換膜4の存在により、電極7の設けられたアノード室7A側に移動できないので、カソード室6A側にとどまることとなる。これにより、カソード室6A側はアルカリ性となる。
一方、被処理水は、イオン除去装置Yの処理槽1内を図20に矢印で示す如く流通する。即ち、被処理水は、流入口2からイオン除去装置Yの処理槽1内のイオン交換膜4にて区画されたカソード室6Aのイオン交換膜4と電極6の間に形成された空間12に流入し、電極6、スケール回収材8を順次通過して、スケール回収材8の内面に形成されたカソード室6Aの空間10に至る。このとき、カソード室6A側は前述したようにアルカリ性となるため、被処理水中に含まれる硬度成分(スケール成分)が水酸化物イオンと反応して塩(即ち、スケール)となり、電極6の下流側に配置されたスケール回収材8に付着して、回収される。
具体的には、被処理水中に含まれ主なスケール成分となるカルシウム、マグネシウム、カリウム、シリカなどのイオンが、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムなどの難溶性の塩となって析出する。尚、被処理水中にリン、イオウや亜鉛などのイオンが含まれるときは、塩として硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛、水酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛なども析出することがある。尚、上記スケール成分となるカルシウム、マグネシウム、カリウム、シリカなどのイオンの一部は、電析作用により、電極6上、特に、被処理水の流路下流側となる電極6の内周面にも直接析出する。
析出したスケールは、電極6の流路下流側のスケール回収材8に流れ、当該スケール回収材8の電極6側の面(即ち、スケール回収材8の外周面)に付着し、そこから流路下流側となるスケール回収材8内(内面側)に渡って成長するようにスケール回収材8に付着していく。
このように、本発明によれば、イオン交換膜4にてアノードとなる電極7が位置するアノード室7A側とカソードとなる電極6が位置するカソード室6A側とに区画することで、電極6にて発生した水酸化物イオンがカソード室6A側にとどまり、アルカリ性となるので、スケールの析出を促進することができる。即ち、被処理水の硬度成分(スケール成分)から塩(スケール)が生成され易くなる。そして、生成された上記塩(スケール)を電極6、若しくは、電極6の下流側に配置されたスケール回収材8にて効率よく回収することができる。特に、スケール回収材8に付着したスケールは種結晶となる。即ち、スケール回収材8に付着したスケールを核として後にスケール回収材8を通過するスケールが付着して成長するので、除去効率をより一層向上させることができる。
更に、上述したように電極6、7及びスケール回収材8を通水性を有する構造とすると共に、スケール回収材8を絶縁体とすることで、被処理水を支障なく流通させながら、スケール回収材8によりスケールを回収することができる。
一方、スケール回収材8を通過してスケール成分が除去された被処理水は、空間10の下側に位置する前述した蓋部材1Dの一端の開口81から蓋部材1D内の通路80に流入し、そこで2股に分岐した後、イオン交換膜4にて区画されたもう一方のアノード室7Aのイオン交換膜4と電極7との間に形成された空間14内に至る。
当該空間14の被処理水は電極7を通過して処理槽1の内面と電極7の外面に形成されたアノード室7Aの空間16に至り、当該空間16の上端に形成された流出口3からイオン除去装置Yの処理槽1外部に流出する。
このように、電極6の下流側にスケール回収材8を設置し、被処理水をカソード室6A側からアノード室7A側に流通させることで、電極6にて析出したスケールが当該電極6に付着することを極力避けることができる。特に、被処理水の流速が速い場合には、一度電極6に付着したスケールが剥離し易く、剥離したスケールは電極6の下流側に配置されたスケール回収材8にて回収することができる。
ところで、スケール回収材8に多量のスケールが付着した場合、被処理水の流通に支障を来す恐れがあるため、当該スケール回収材8を交換する必要がある。この場合、先ず、イオン除去装置Yの電源を切断して、電極6、7への通電を停止する。次に、処理槽1の下面に取り付けられた前記蓋部材1Dを取り外して、一体形成された電極6、7、イオン交換膜4及びスケール回収材8を取り出す。
そして、当該蓋部材1Dに取り付けられたスケール回収材8を蓋部材1Dから取り外し、新しいスケール回収材8、或いはスケールを除去したスケール回収材8を蓋部材1Dに取り付ける。そして、電極6、7、イオン交換膜4及びスケール回収材8が一体化された蓋部材1Dを処理槽1の下側から挿入し、蓋部材1Dの外周縁に形成されたねじ山72と本体1Bの開口部1Cの内周縁に形成されたネジ溝70とを相互に螺合する。このように、スケール回収材8は交換可能な構造とされているので、スケールが付着したスケール回収材8を容易に交換することができる。
尚、上記実施例のイオン除去装置Yにおいて、例えば、スケール回収材8に予め種結晶を担持させるよう構成すれば、スケール回収材8により一層スケールが付着し易くなり、回収効率を更に改善することができるようになる。
本実施例のイオン除去装置Yも、前記実施例2と同様にクーリングタワー(図21)や、実施例3と同様に電解水生成装置(図22)など被処理水を用いた種々の装置に適用することができる。尚、クーリングタワーに適用した場合の構成や動作は実施例2で詳述したものと同様、或いは、類似であり、電解水生成装置に適用した場合の構成及び動作は実施例3で説明したものと同様、或いは、類似であるのでここでは説明を省略する。
更に、本実施例においても、例えば、蓋部材1Dにのぞき窓を形成したり、蓋部材1D全体を透明に構成することで、スケール回収材8をイオン除去装置Yの外部から目視可能な構造とすることができる。特に、スケール回収材8を当該スケール回収材8に捕集されるスケールと補色関係となる色(例えば、前記実施例2の如く黒、緑などのスケールの白色が目立つ色)とすることで、スケール回収材8に付着するスケールを目で見て容易に確認し、交換時期を把握することが可能となる。
尚、上記実施例8では単一のスケール回収材8を電極6の内面側に配設したが、これに限らず、スケール回収材8を複数設けても構わない。図23は上記スケール回収材8に加えて、電極7の外面側にスケール回収材8Bを設置したイオン除去装置の概略構成図である。尚、図23において、図1乃至図22と同一の符号が付されたものは、同一、又は、類似の効果、若しくは、作用を奏するものとしてここでは説明を省略する。このスケール回収材8Bは上記スケール回収材8と同様に電極6、7及びイオン交換膜4と同心円状に配置され、中空円筒状を呈している。また、当該スケール回収材8Bは、電極7の外面側であって、前記流出口3より内面側となる位置に配設されている。
被処理水は、このスケール除去装置を図23の矢印で示すように流通する。即ち、被処理水は、流入口2から処理槽1内のイオン交換膜4にて区画されたカソード室6Aの空間12に流入し、電極6、スケール回収材8を順次通過して、スケール回収材8の内面に形成されたカソード室6Aの空間10に至る。そして、空間10の下側に位置する蓋部材1Dの一端の開口81から蓋部材1D内の通路80に流入し、そこで2股に分岐した後、イオン交換膜4にて区画されたもう一方のアノード室7Aの空間14内に至る。当該空間14の被処理水は電極7、スケール回収材8Bを順次通過してアノード室7Aの空間16に至り、当該空間16の上端に形成された流出口3から処理槽1外部に流出する。
このように、スケール回収材8に加えてスケール回収材8Bを設けることで、スケール回収材8にて回収しきれなかったスケールを当該スケール回収材8Bにて回収できる。これにより、スケールの除去効率をより一層向上できるようになる。
更に、上記スケール回収材8及びスケール回収材8Bに加えて、図24の如く電極6の外面側にスケール回収材8C、電極7の内面側にスケール回収材8Dを設けることも可能である。この場合、被処理水は図24に矢印で示すように流入口2から処理槽1内のイオン交換膜4にて区画されたカソード室6Aの空間12に流入し、スケール回収材8C、電極6、スケール回収材8を順次通過して、スケール回収材8の内面に形成されたカソード室6Aの空間10に至る。そして、空間10の下側に位置する蓋部材1Dの一端の開口81から蓋部材1D内の通路80に流入し、そこで2股に分岐した後、イオン交換膜4にて区画されたもう一方のアノード室7Aの空間14内に至る。当該空間14の被処理水はスケール回収材8D、電極7、スケール回収材8Bを順次通過してアノード室7Aの空間16に至り、当該空間16の上端に形成された流出口3から処理槽1の外部に流出する。
このように、電極6及び電極7の両側にスケール回収材8、8B、8C及び8Dを設けることで、スケールの回収効率をより一層向上することができる。特に、本実施例の如く電極6、7を白金電極などの貴金属にて構成した場合、白金電極は高価であるため、電極6へのスケールの付着を抑えて、極性転換を極力行わずに運転することが望ましい。そこで、上記の如く電極6の外面側、及び、電極7の内面側にもスケール回収材8C、8Dを設けることで、これらスケール回収材8、8B、8C、8Dにてスケールを回収し、電極6にスケールが付着する不都合を極力回避して、電極6、7の耐久性を向上することができる。
尚、上記実施例8乃至実施例10のスケール除去装置Yでは、図20乃至図24に黒矢印で示すように処理槽1の軸心方向の略中心となる位置に形成された流入口2から処理槽1内に流入し、外面側に形成された流出口3から処理槽1の外部に流出する構成であったが、図25に示すように流出口3を処理槽1の軸心方向の略中心となる位置に形成し、その外面側に流入口2を形成しても本発明は有効である。この場合、図25に示すようにカソードとなる電極6を外側、アノードとなる電極7を内側に配置することが好ましい。図25において、図1乃至図24と同一の符号が付されているものは同様、或いは、類似の効果、若しくは作用を奏するものであり、詳細な説明は省略する。
ここで、本実施例のイオン除去装置Z内を被処理水は図25に矢印で示すように外側から内側に流れる。即ち、被処理水は、流入口2からイオン除去装置Zの処理槽1内のカソード室6A側の電極6と処理槽1の内面との間に形成された空間に流入し、電極6、スケール回収材8を順次通過して、スケール回収材8の内面とイオン交換膜4の外面の間に形成されたカソード室6Aの空間に至る。このとき、カソード室6A側は上述の如くアルカリ性となるため、被処理水中に含まれる硬度成分(スケール成分)が水酸化物イオンと反応して塩(即ち、スケール)となり、電極6の下流側に配置されたスケール回収材8に付着して、回収される。
一方、スケール回収材8を通過してスケール成分が除去された被処理水は、スケール回収材8の内面とイオン交換膜4の外面の間に形成されたカソード室6Aの空間の下側に位置する前述した蓋部材1Dの他端の2つの開口82からそれぞれ蓋部材1D内の通路80に流入し、合流して電極7の内面側に形成されたアノード室7Aの空間に至る。
当該空間の被処理水は電極7を通過してイオン交換膜4の内面と電極7の間に形成されたアノード室7Aの空間に流入し、当該空間の上端に形成された流出口3から処理槽1の外部に流出する。
このように、本実施例のイオン除去装置Zに示す構成しても前記各実施例同様に電極6にて析出したスケールを当該電極6の下流側に設置されたスケール回収材8にて回収し、除去することができ、且つ、上記各実施例と同様の効果を得ることができる。更に、本実施例のようにスケール回収材8の外側となる電極6側から被処理水を流通させることで、被処理水とカソードとなる電極6との接触面積が増大し、塩の生成効率を向上することができる。これにより、スケール回収材8での回収効率をより一層改善できるようになる。
尚、上記実施例11では単一のスケール回収材8を電極6の内面側に配設したが、これに限らず、スケール回収材8を複数設けても構わない。図26は上記スケール回収材8に加えて、電極7の外面側にもスケール回収材8Bを設置している。尚、図26において、図1乃至図25と同一の符号が付されたものは、同一、又は、類似の効果、或いは、作用を奏するものとしてここでは説明を省略する。このスケール回収材8Bは上記スケール回収材8と同様に電極6、7及びイオン交換膜4と同心円状に配置され、中空円筒状を呈している。また、当該スケール回収材8Bは、電極7の外面側であって、前記流出口3より内面側となる位置に配設されている。
このように、スケール回収材8に加えてスケール回収材8Bを設けることで、スケールをより回収できるようになる。これにより、スケールの除去効率を向上させることができる。
更に、上記スケール回収材8及びスケール回収材8Bに加えて、図27の如く電極6の外面側にスケール回収材8C、電極7の内面側にスケール回収材8Dを設ければ、スケールの回収効率をより一層向上することができる。
特に、電極6、7にスケールが付着した場合、当該電極の極性を転換してスケールを剥離させる必要があるが、係る極性の転換による剥離作業は電極の劣化の原因となる。本実施例の如く電極6、7を白金電極などの貴金属にて構成した場合、白金電極は高価であるため、電極6へのスケールの付着を抑えて、極性転換を極力行わずに運転することが望ましい。そこで、上記の如く電極6、7の内面側にもスケール回収材8C、8Dを設けることで、これらスケール回収材8、8B、8C、8Dにてスケールを回収し、電極6にスケールが付着する不都合を極力回避して、電極6、7の耐久性を向上させることができる。
本発明のイオン除去装置を適用した洗濯機の概略構成図である(実施例1)。
図1の洗濯機の水の流れを示す図である。
図1の洗濯機に適用した本発明の一例のイオン除去装置の概略構成図である。
電流値の変化に伴う被処理水中の界面活性剤の除去率を示す図である。
処理時間の変化に伴う被処理水中の界面活性剤の除去率を示す図である。
本発明のイオン除去装置をクーリングタワーに適用した場合の概略構成図である(実施例2)。
図6のイオン除去装置の概略構成図である。
図6のイオン除去装置の外観図である。
図8の他の例のイオン除去装置の外観図である。
図7のイオン除去装置を電解水生成装置に適用した一例を示す概略構成図である(実施例3)。
第4実施例のイオン除去装置の縦断側面図である(実施例4)。
図12のイオン除去装置の外観図である。
第5実施例のイオン除去装置の外観図である(実施例5)。
図13のイオン除去装置の概略構成図である。
図14のイオン除去装置の平面図である。
図14のイオン除去装置の他の例の平面図である。
処理槽が分解可能に構成されたイオン除去装置の一例の縦断側面図である。
第6実施例のイオン除去装置の概略構成図である。
第7実施例のイオン除去装置の概略構成図である。
第8実施例のイオン除去装置の概略構成図である。
図20のイオン除去装置をクーリングタワーに適用した場合の概略構成図である。
図20のイオン除去装置を電解水生成装置に適用した一例を示す概略構成図である。
第9実施例のイオン除去装置の概略構成図である。
第10実施例のイオン除去装置の概略構成図である。
第11実施例のイオン除去装置の概略構成図である。
第12実施例のイオン除去装置の概略構成図である。
第13実施例のイオン除去装置の概略構成図である。
符号の説明
C 制御装置
S、T、U、X、Y、Z イオン除去装置
W 洗濯機
1 処理槽
2 流入口
3 流出口
5 電解室
6 第1の電極
7 第2の電極
8 スケール回収材
9 界面活性剤回収材
101 本体
102 内槽ドラム
103 開閉扉
104 操作パネル
105 収容室
107 給水源
108 駆動モータ
109 軸
110 貯留タンク
110A、110B 出口
112 給水通路
112V 給水バルブ
113 排水通路
113V 排水バルブ
114 外部排水通路
114V 外部排水バルブ
115、116 循環通路
115V 循環バルブ
SW1、SW2、SW3 操作スイッチ