JP2008028122A - 沸騰冷却方法、沸騰冷却装置およびその応用製品 - Google Patents

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Abstract

【課題】遷移沸騰の生じ得る高い温度領域において、核沸騰による沸騰冷却を、より大きな冷却流路長に対して可能ならしめる沸騰冷却装置を実現する。
【解決手段】沸騰冷却装置は、被冷却物Obの表面もしくは表面に密接する伝熱部材SPの表面を冷却面として、冷却面に一体的に形成される主流路10A、主流路に隔壁を介して一体的に形成される副流路10B、副流路側から隔壁を貫通し、先端部が冷却面に対向して近接もしくは当接するように形成された複数のノズルをと有する流路構造体10と、流路構造体の主流路と副流路とに冷却液を循環的に供給し、主流路と副流路とに流通させる冷却液供給・流通手段とを有し、冷却液供給・流通手段が対流式の放熱手段50を有し、放熱手段が、流路構造体10に流通されて冷却面の冷却に寄与した冷却液のうち少なくとも主流路に流通された冷却液の放熱を行うものである。
【選択図】図1

Description

この発明は、沸騰冷却方法、この沸騰冷却方法を実施する沸騰冷却装置、および沸騰冷却装置が適用された応用製品に関する。
液体を加熱していくと次第に液温が上昇し、やがて液温がそれ以上に上昇しない「飽和温度」に達する。さらに加熱すると液体内部で「液体の気化」が発生する。この状態が沸騰であり、上記飽和温度は「沸騰点」と呼ばれる。
沸騰状態では液温は上昇せず、加熱により液体に加えられる熱エネルギーは「液体内部で液体を気化する」のに消費される。この熱エネルギーは「潜熱」と呼ばれる。潜熱は、液体を温度上昇させる熱エネルギーに比して極めて大きい。したがって、液体の沸騰を利用することにより大きな冷却効果をあげることができる。
沸騰を利用した冷却は「沸騰冷却」と呼ばれ、従来から種々の沸騰冷却装置が提案されている。
例えば、冷却用液体を収容する容器と該冷却用液体内を通るパイプを有し、被冷却物としての半導体素子を冷却用液体に浸漬し、前記パイプ内に「冷却用液体よりも沸点の低い液体」を循環させるようにした、浸漬方式の沸騰冷却装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
沸騰現象は一般に以下の如き経過を辿る。
液体中に例えば金属等による「加熱ブロック」を浸漬し、加熱ブロックを加熱してその伝熱面温度を上昇させる。伝熱面温度がある程度まで高くなると、加熱ブロックの伝熱面に「大きさが1mm程度以下の微少な気泡」が発生する。この状態は「加熱ブロック表面である伝熱面に接する液層部分が飽和温度に達し、伝熱面部分で沸騰が生じている状態」である。
液体の沸騰による冷却の効果を表す物理量として「熱流束」がある。説明中の例に喩えて言えば、熱流束とは「加熱ブロックの液体に接している表面(上記「伝熱面」)の単位面積を通して単位時間あたりに液体に移る熱量」であり、熱流束が大きいほど冷却効果が大きい。
加熱ブロックの伝熱面に微少な気泡が発生するようになると「熱流束の増加率」が増大し、加熱ブロックの加熱をさらに続けると、伝熱面で発生する気泡の量も増大し、熱流束も大きな増加率をもって増大しつづけるが、やがて飽和する。
このように「熱流束が飽和した状態」は、加熱ブロック表面が「大きな気泡」で覆われた状態となっている。
即ち、伝熱面での微少な気泡の発生量が増大すると、発生した気泡同士が合体して、伝熱面の大きさにもよるが数cmにもなる「大きな気泡」に成長する。このように大きく成長した気泡は「押し潰されたような厚みの薄い気泡」であり、このような大きな気泡が加熱ブロック表面に付着していると、付着部では加熱ブロックと液体が直接に接触しないため沸騰が阻害され、熱流束が飽和する。
このときの熱流束は「限界熱流束」と呼ばれている。
熱流束が限界熱流束に達した後も加熱ブロックを加熱すると、大きな気泡の部分で伝熱面が乾き始めて伝熱面温度の上昇に伴って熱流束は急激に減少し、冷却効果が急速に低下する。加熱がさらに続くと、大きな気泡に覆われた部分で伝熱面は完全に乾き、この部分は「薄い蒸気膜で覆われた状態」となる。そして、この乾燥した部分では、加熱ブロックの熱エネルギーが輻射熱として液体へ伝えられ、熱流束は再び増加に転ずるが、伝熱面は液体に接していないため伝熱面の温度も上昇し、この温度が加熱ブロックの融点を越えれば伝熱面は「焼損」する。
加熱ブロックの伝熱面に微少な気泡が発生し始める状態から、熱流束が限界熱流束に達するまでの沸騰形態は「核沸騰」と呼ばれ、限界熱流束状態から熱流束が減少し、熱流束が再度増加に転ずるまでの沸騰形態は「遷移沸騰」、熱流束の変化が再度増加に転じた以後の沸騰形態は「膜沸騰」とそれぞれ呼ばれる。即ち、液体中に浸漬した加熱ブロックを加熱しつづけると、核沸騰、遷移沸騰、膜沸騰の沸騰形態が順次に現れ、ついには加熱ブロックの焼損に至る。
通常、限界熱流束以後の「遷移沸騰から膜沸騰を経て焼損に至るプロセス」は極めて迅速に生じ、制御が著しく困難であるところから、従来の沸騰冷却は一般に「限界熱流束以下の核沸騰の領域」で行われていた。このような「核沸騰領域を利用する沸騰冷却方法」では、例えば、長さ1〜2cmの伝熱面に対してせいぜい100W/cm程度の熱流束(約100℃)しか得られないのが一般的であった。
一方、高い熱流束を得るために種々の試みがなされており、例えば、ノズルを用い、沸騰気泡を速やかに消滅させて高い冷却効率を狙う冷却装置が提案されている(例えば、特許文献2)。
特許文献2に開示されているのは、主として「半導体デバイスを冷却対象」とする冷却装置であって、2種類のノズルを用い、第1のノズルから低温冷媒液を発熱体に向けて噴射し、発熱体の熱によって沸騰気泡を発生させて「気液2相状態の高温冷媒液」とし、第2のノズルから同じ低温冷媒液を該高温冷媒液に向けて噴射させて急冷し、沸騰気泡を凝縮・消滅させて冷却を行うものである。この冷却方式では「120℃程度の温度領域で200W/cm程度の熱流束」が得られると考えられ、半導体デバイスのような短い伝熱面の冷却には適するものであるが、より大きな伝熱面の冷却は困難と考えられる。
冷却液を被冷却物の冷却面(伝熱面)に沿わせて流通させつつ沸騰冷却を行う場合に、冷却液を予め「飽和温度より低い温度」にサブクールして冷却面に供給すると、冷却が開始する冷却面端部からある程度の流路の範囲では「遷移沸騰への移行」を生ずることなく、相当の高温度領域まで核沸騰形態を維持して良好な沸騰冷却を実現できることが報告されている(非特許文献1)。
冷却液を冷却面に沿わせて流通させつつ沸騰冷却を行う場合、冷却液がサブクールされていると、冷却面からの熱は、冷却面に接する冷却液の温度を飽和温度まで急速に昇温させたのち沸騰を生じさせ、生じる微小な気泡が互いに合体して成長し、冷却面を覆う状態となるが、気泡の外側の領域にはサブクール状態、即ち、飽和温度よりも温度の低い冷却液(このようにサブクールされた冷却液を「サブクール液」と言う。)が流通している。
このような「成長した合体気泡」の外側を流れる「サブクール液」は、合体気泡の温度を低下させて「微細な気泡に凝縮崩壊」させる。このように合体気泡が崩壊すると、気泡に覆われていた伝熱面に再び冷却液が供給されるので、遷移沸騰から膜沸騰に移行することなく再び核沸騰による冷却が行われ、熱流束を「通常の限界熱流束より高める」ことができる。この現象は「気泡微細化沸騰」と呼ばれている。このように、サブクール液を用いる気泡微細化沸騰を利用することにより、伝熱面から「より多くの熱」を冷却液に伝えることができ、限界熱流束を高めることができる。
図7(a)は、上に説明した沸騰冷却の概念図である。
横軸は冷却面(伝熱面)の温度、縦軸は熱流束を表している。冷却面の温度が上昇すると、当初「非沸騰領域」では冷却面の熱が冷却液の温度を上げるのに消費されるが、「核沸騰領域」では冷却液の沸騰により熱流束が急激に増大して限界熱流束に達する。通常の沸騰では、限界熱流束に達した核沸騰領域の後に、破線で示す「遷移沸騰領域」が続き、熱流束は急速に減少して「膜沸騰領域」に移行し、熱流束は再び増大するが終には「冷却面の焼損」に到る。
一方、サブクール液を用いて「成長した合体気泡を微細な気泡に崩壊させる」ことにより、限界熱流束以後に「気泡微細化沸騰」を行うことにより、限界熱流束を超えてさらに熱流束を増大させることができる。図7(b)の左図は、合体により大きく成長した合体気泡LBが伝熱面HSFに付着している状態を示し、右図は、サブクール液の流れにより合体気泡LBが微細な気泡SBの群れに崩壊した状態を示している。このように、個方微細化沸騰を利用する冷却を「気泡微細化沸騰冷却」と呼ぶ。
サブクールされた冷却液を用いて気泡微細化沸騰冷却を行う場合でも、冷却液が冷却面に沿って流れる流路長の増大と共に、冷却液の温度が次第に上昇し、流路の下流側に行くほどサブクールによる効果は減じていく。
気泡微細化沸騰冷却に関する説明はなされていないが、沸騰冷却方法として、冷媒(冷却液)が流通される流路に対し、隔壁を介して副流路を形成し、副流路にも冷媒を通じ、「隔壁に設けた補給孔」を通して副流路の側から冷媒を補給し、温度上昇した冷媒の温度を下げることにより「成長途上にある気泡」を凝縮崩壊させるにより、「気泡の分割」を行う方法が提案されている(特許文献3)。
特許文献3記載の方法は、大きく成長した気泡を副流路から補給される冷媒によって崩壊分割させて、熱流束を高めようとするものであるが、例えば、電力変換用のインバータに用いられる「高発熱密度電子デバイス」のICパッケージのように「伝熱面長さが10〜30cm程度の長い被冷却面」の冷却には、300W/cm程度以上の熱流束を得られる冷却方法が必要になるものと予想され、特許文献3記載の冷却方法でこの要求に応じることは困難であると考えられる。また、大きく成長した気泡の崩壊時に「騒音」が発生する問題もある。
さらに、例えば、5cm程度あるいはそれ以下の短い被冷却面については、管状流路を流通させる冷却液によって冷却するやり方が従来から一般的に行なわれていたが、このやり方によると300W/cm程度以上の熱流束が得られるものの、「騒音」が発生する問題がある。
特開昭61−54654号公報 特開平5−136305号公報 特開2005−79337 「気泡微細化を伴うサブクール流動沸騰」(第41回日本伝熱シンポジウム講演論文集(2004年6月)Vol.1、第19〜20頁)
この発明は、上述したところに鑑み、沸騰現象のプロセスにおいて、遷移沸騰の生じ得る高い温度領域において、核沸騰による沸騰冷却を、より大きな冷却流路長に対して可能ならしめる沸騰冷却方法とこれを実施するための沸騰冷却装置を実現することを課題とする。また、上記沸騰冷却装置を冷却手段として用いる各種製品の実現を課題とする。
発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、冷却対象の冷却面に隣接させて、冷却液の流路となる主流路と副流路とを順次設置し、かつ主流路と副流路間の隔壁を貫通して先端部が冷却面に近接又は当接するように、副流路側から複数のノズルを突設させた流路構造体を用いる冷却装置が、上記課題を解決するのに効果的であることを確認し、この発明をするに至った。
即ち、本発明の沸騰冷却装置は、流路構造体と、冷却液供給・流通手段とを有する。
「流路構造体」は、被冷却物の表面もしくは該表面に密接する伝熱部材の表面を冷却面(以後、「伝熱面」とも言う。)として、冷却面に一体的に形成される主流路、および、この主流路に「冷却面と逆の側から重なる」ように、隔壁を介して一体的に形成される副流路と、副流路側から隔壁を貫通し、先端部が冷却面に対向して近接もしくは当接するように形成された複数のノズルをと有する。
「冷却液供給・流通手段」は、流路構造体の主流路と副流路とに、予め所定の温度にサブクールした冷却液を循環的に供給し、主流路と副流路とに流通させる手段である。冷却液の流通の向きは、主流路と副流路とで同じ向きでもよいし、互いに逆の向きでもよい。
「サブクール」は、冷却液の温度を「冷却面との接触部で冷却液に沸騰が生じる飽和温度よりも低い温度」にすることを意味し、冷却液の飽和温度(主流路内で沸騰が生じる温度)とサブクールされた冷却液との温度差を「サブクール度」と呼ぶ。
請求項1記載の沸騰冷却装置は、この冷却液供給・流通手段が「対流式の放熱手段」を有し、この放熱手段が、流路構造体に流通されて冷却面の冷却に寄与した冷却液のうち、少なくとも「主流路に流通された冷却液」の放熱を行うものであることを特徴とする。放熱手段は「流路構造体に流通されて冷却面の冷却に寄与した冷却液のうち、少なくとも主流路に流通された冷却液」の放熱を行うのであるから、主流路・副流路に流通された冷却液の放熱を行うこともできる。
なお「被冷却物の表面に密接する伝熱部材の表面」としては、例えば、ヒ−トスプレッダのような「発熱体に密着させた金属板」のように、熱伝導で熱の流れを広げる機能を有する表面等を挙げることができる。
ノズル先端の開口部は冷却面に「対向して近接もしくは当接」していることが特に重要である。また、ノズルは「冷却面に略垂直」に設けられることが特に好ましく、冷却効果を高めるのに有効である。
ノズルとしては、管状体で、開口部に「切り欠き構造」があるものとないものとを用いることができるが、切り欠き構造があるノズルの場合には、開口部を冷却面に当接させ、切り欠き構造にないノズルの場合には、開口部を冷却面に近接させて設置することが好ましい。
この発明の沸騰冷却装置に用いるノズルは、ノズルから排出される冷却液によって気泡を微細化して冷却効果を発揮させるため、冷却面に対し突設させ、冷却面に対向させて近接あるいは当接させているが、さらに、主流路内にノズルが突設されているために、その表面は必然的に「主流路内で冷却面を冷却後、昇温した液体から熱を吸収する放熱フィン効果」を有し、そのために、ノズルを構成する材料は、熱伝導性であり、さらにノズルの配列形態や配列密度等を適宜に選択して設定することが好ましい。
また、ノズルの配列密度をある程度高めることにより、主流路内に「ノズルが林立した状態」となるが、このような状態では、気泡がある程度成長しても、気泡がノズルで分割された状態となり、微細気泡化するときに「大きな気泡が崩壊する場合」に比して、発生する騒音が有効に軽減される。
請求項1記載の沸騰冷却装置における冷却液供給・流通手段は「流路構造体の副流路側から主流路側へ、複数のノズルを通して、冷却液を強制的に供給するもの」であることができる(請求項2)。
即ち、この場合には、副流路に流れる冷却液の流量や圧力を増大させて、副流路の側から冷却液を強制的に主流路側に供給する。流路構造体の構造上、副流路は伝熱面に対して「副流路と隔壁とで隔」てられているので、副流路における冷却液の温度は主流路内の冷却液温度よりも常に低く、副流路の側から冷却液(サブクール液)を主流路側へ強制的に供給することにより、主流路内の冷却液の温度を有効に低下させることができ、また、ノズル先端が冷却面に対向して近接もしくは当接しているので、副流路側から噴出状態で供給される冷却液が「伝熱面上に発生した気泡を直撃的に崩壊させる」ので、気泡微細化が極めて効率よく行われる。
請求項1記載の沸騰冷却装置における冷却液供給・流通手段は「流路構造体の副流路側から主流路側へ、複数のノズルを通して、冷却液を自然供給するもの」であることもできる(請求項3)。ノズルの先端部は冷却面に対向して近接もしくは当接しているので、ノズル先端部に気泡が付着したような状態では、ノズル先端部から気泡の側に向かって「毛細管現象」により副流路側の冷却液が冷却面近傍に「滲みだす」ように供給される。このように強制的な供給でない供給を「自然供給」と呼ぶ。熱流速がさほど大きくない場合には、副流路側からの冷却液の自然供給のみでも有効な冷却が可能である。
なお、副流路側からの冷却液の供給を上記の如く「強制的に行う場合」をアクティブ冷却方式、「自然供給により行う場合」をパッシブ冷却方式と呼ぶ。パッシブ冷却方式では、冷却面近傍に滲み出るように供給された冷却液が、沸騰により主流路内に発生した気泡の近傍あるいは底部に入るようにし、冷却面から気泡を離脱させ、気泡による冷却効果低減を排除し、冷却を有効に行う。
請求項1記載の沸騰冷却装置における冷却液供給・流通手段は「流路構造体の副流路側から主流路側へ、複数のノズルを通して、冷却液の強制的な供給と自然供給とを切換可能である」ことができる(請求項4)。即ち、請求項4記載の沸騰冷却装置はアクティブ冷却方式とパッシブ冷却方式とを切換可能である。この切換は「冷却条件」に応じて行う。
パッシブ冷却方式とアクティブ冷却方式との「冷却条件に応じた切り替え」は、主流路と副流路の冷却液の圧力差を、徐々に、あるいは急激に変化させる等、状況に応じて行うことができる。冷却面の温度がより高くなりパッシブ冷却方法では「遷移沸騰への移行を抑えきれない状況」では、アクティブ冷却方法により「気泡を強制的に崩壊させる」ことにより、遷移沸騰への移行を有効に防止することができる。
発明者等の実験によれば、目安として、発熱密度が約60〜70W/cm程度未満の低熱流束域では「パッシブ冷却方式」を用い、発熱密度が70〜100W/cmではパッシブ冷却法で主流路の流速を0.5m/秒に増加することにより、またそれ以上の500W/cm程度までの高熱流束域では「アクティブ冷却方式」を用いること実用的である。
また、「パッシブ冷却方式」から「アクティブ冷却方式」へ、またはその逆の切り替えは、例えば、冷却面に設置された熱流束センサの信号により、主流路および副流路の冷却液の流量を制御することにより容易に行うことができる。
パッシブ・アクティブ冷却を併用する沸騰冷却装置の場合には、例えば「流体ループで主流路系と副流路系にそれぞれポンプをつけて流量を制御する方法」と「ポンプ1つで流量調整弁によって流量を制御する方法」が可能である。
上記「パッシブ冷却方式」における主流路の流速は小さくてよく、例えば、0.03〜0.06m/秒程度の流速にして、60〜70W/cm程度までの熱流束の除熱が可能である。従って「パッシブ冷却方式」は、冷却液を主流路内に低流速で流し、かつ、副流路側からノズルを通して滲み出す状態にして、上記限界熱流束を達成可能としているため、省エネ型で冷却装置の小型軽量化に適している。
「アクティブ冷却方式」における冷却液の流速は、1例を挙げるならば、主流路内では0.5〜1.0m/秒、副流路内では0.3〜0.6m/秒に、それぞれ調整することができる。アクティブ冷却方式では、1例を挙げると、主流路における「冷却面の下流側端部」でサブクール度が20K(ケルビン温度)以上となるように、冷却液のサブクール度と流量と、主流路と副流路の冷却液の圧力差を設定することが好ましい。
ノズルが「冷却面に近接」する場合のノズル先端部と冷却面との間隔は「パッシブ冷却方式単独の装置」及び「パッシブ冷却方式とアクティブ冷却方式の併用装置」の場合には、例えば0.1〜1mm程度が効果的である。「アクティブ冷却方式単独の装置」の場合には、冷却液の噴射圧力レベルに応じ、該間隔をより広くすることができる。
請求項1〜4の任意の1に記載の沸騰冷却装置は、流路構造体における少なくとも主流路が「冷却液の流通方向に直交する方向において、隔壁により複数のチャンネルに分割されている」ことができる(請求項5)。この場合の「複数チャンネルに分割するための隔壁」は、主流路内においては冷却面から「主流路を副流路と隔てる隔壁」に向かって立ち上がり、形成される複数のチャンネルは冷却液の流れの方向に平行である。
請求項1〜5の任意の1に記載の沸騰冷却装置における「対流式の放熱手段」は、空気を対流させるものでもよく、水等の液を対流させるものでもよいが、空冷式のラジエータであることができる(請求項6)。
上記請求項1〜6の任意の1に記載の沸騰冷却装置において用いられる「冷却液」は、
上記「アクティブ冷却方式やパッシブ冷却方式により、気泡を、微細化あるいは崩壊させることのできるもの」であれば、特に制限無く使用することができるが、入手容易性、低コスト性、取り扱いの容易性、安全性、化学的・物理的安定性等の観点から、水あるいはアルコール、もしくは、水とアルコールとの混合液、水とエチレングレコールとの混合液、フッ素系不活性液体とすることが好ましい(請求項7)。「水」は、環境保全の面から言えば、冷却液として特に好適なものの1つである。フッ素系不活性液体は「フロリナート(登録商標 住友スリーエム社)」が市販されている。
請求項7記載の場合において、冷却液は不凍液であることが好ましい(請求項8)。
沸騰冷却装置が寒冷地で使用されるような場合、冷却液が凍結すると、冷却装置としての機能が果たせないので、冷却液の凍結を防ぐ「防結手段」が必要となり、装置のコスト上昇や大型化が問題となるが、このような問題は、冷却液として不凍液を用いることにより有効に回避することができる。
「不凍液」としては「水とアルコールの混合液や水とエチレングレコールの混合液」が好適である。これらの混合液では、混合比により凝固点(凍結温度)を制御することができる。例えば、水とエタノールの混合液(混合液1)、水とエチレングレコールの混合液(混合液2)、水とメタノールの混合液(混合液3)の凝固点(℃)は、これらの混合液におけるエタノール等の濃度(%)に応じて、以下の如くに与えられる。
濃度(%) 10 20 30 40
混合液1 −2.5 −7 −13 −22
混合液2 −3 −8 −15.5 −25
混合液3 −5 −12 −21 −33 。
「冷却面」は上記の如く、冷却の対象となる被冷却物自体の表面もしくは、伝熱部材の表面である。伝熱部材が用いられる場合には、伝熱部材は被冷却物の表面に密接して設けられ、伝熱部材を介して被冷却物の沸騰冷却が行われる。
冷却面の表面形状は、主流路・副流路の形成が可能な形状であれば良く、平面であってもよいしシリンダ面等の曲面であっても良い。勿論、被冷却面が平面である場合には、主流路・副流路の形成が容易である。
冷却対象物としては、例えば、高発熱密度の電子機器・ハイブリッドカー・電気自動車・燃料電池自動車・燃料電池発電設備の電力変換インバータ・鉄道、航空機の電力システムの電力変換インバータ等を構成する、あるいはこれらに装着される伝熱部材を挙げることができる。
請求項1〜8の任意の1に記載の沸騰冷却装置は「冷却液供給・流通手段において冷却液を貯留する冷却液容器に冷却液を貯留していない状態」で出荷し、出荷後に冷却液を貯留させてもよいし、出荷時から「冷却液が貯留されて」いてもよい(請求項9)。
請求項10記載の沸騰冷却方法は、上に説明した請求項1〜9の任意の1に記載の沸騰冷却装置を用いる沸騰冷却方法である。
請求項11記載の製品は「稼動中に熱を発生し該熱の冷却手段を構成要素とする製品」であって、請求項1〜8の任意の1に記載の沸騰冷却装置を冷却手段とすることを特徴とする。この請求項10に記載の製品は「発熱体を有し、沸騰冷却装置を構成する流路構造体の管状流路が、発熱体の表面を管壁として一体的に形成された電子素子または燃料電池である」ことができる(請求項12)。
請求項11記載の製品は、電子素子と伝熱部材とを主構成要素とする高発熱密度電子機器が搭載された、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車、燃料電池発電設備の電力変換制御装置、又はコンピュータもしくはスーパーコンピュータ、又は、鉄道電車あるいは航空機用の電力システムの電力変換制御装置であって、沸騰冷却装置を構成する流路構造体の管状流路が伝熱部材の表面を管壁として形成されたことを特徴とするハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車、燃料電池発電設備の電力変換制御装置又は鉄道電車あるいは航空機用の電力システムの電力変換制御装置であることもできる(請求項13)。
若干付言すると、「主流路におけるノズルの配列密度を、主流路の下流側ほど密になるようにし、副流路からの冷却液の供給量を、主流路の下流側ほど増大させる」ことが好ましい。また、冷却液の流れの向きは「主流路と副流路とで同じ向き」としてもよいし「主流路と副流路における流れの向きを互いに逆向き」にしても良い。
冷却液の流れの向きを「主流路と副流路とで互いに逆」にすると、主流路の下流側ほど副流路では上流側となる。アクティブ冷却方法では、サブクールされた冷却液がノズルから主流路へ供給されるが、主流路では下流側ほど冷却液の温度が飽和温度に近づいているので、上記の如く、主流路・副流路で冷却液の流れの向きを逆にし、ノズルの配列密度を主流路の下流側ほど密になるようにし、主流路の下流側ほど副流路からの(サブクール度の大きい)冷却液の供給量を増大させることにより、主流路内の冷却液の温度を有効に低下させ、気泡崩壊の効果を維持することが容易になる。
ノズルの「配列形態や配列密度」は、前述の「ノズルの放熱フィン効果」を左右することにもなり、主流路内の冷却液の特性とその流速等を考慮に入れて調整することが好ましい。
アルコールとしてエチルアルコール、プロピルアルコールそれぞれを、水に対し5〜15%の割合で混合した液を冷却液として用い、アクティブ方式による沸騰冷却を行ったところ、いずれの混合液とも「水のみによる冷却液」に比して、気泡崩壊時の圧力振動が50%程度軽減するばかりでなく、30〜50%程度高い熱流束を得ることができることが確認された。このように圧力振動を軽減できる理由は、混合液の表面張力が水よりも小さいため、気泡が崩壊しやすく、崩壊時の圧力振動も水だけの場合に比して小さいためであると考えられる。
この場合に「高い熱流束」を得られる理由は、水とアルコールの混合液の沸騰では、高温の伝熱面近傍で沸点の低いアルコール分が先に蒸発し、伝熱面の気泡付着箇所の近傍と混合液との間で濃度差が生じ、この濃度差が気泡と混合液の界面に表面張力の差を生じさせ、気液界面の気泡上部の「温度の低い大きな表面張力」に混合液が引張られて、気泡上部に向かう流れ(マランゴニ対流という)が生じ、冷却液側から補うように「気泡と伝熱面の付着面」に向かって冷却液が供給されて気液交換が促進され、水よりも高い熱流束が得られるものと考えられる。
前記「被冷却物」としては、実用的な見地からすると、原子炉の炉心部分や、車両用インバータ等の各種半導体デバイスの冷却につきこの発明による沸騰冷却は有効である。例えば、現在広く用いられている、Si基板を用いるIGBTは、高出力化に伴い発熱密度が増加する傾向にあり、このような半導体デバイスに対する冷却として、この発明の冷却方法は極めて有効である。
また、近来「高温作動が可能なSiC半導体デバイス」の実用化が意図されているが、SiCはまだ高価なため、現在のSiベースのパワーデバイス(IGBT)がしばらくは優勢であると考えられる。この発明の沸騰冷却方法や装置は「高温作動、高発熱密度のSi素子」の冷却にも有効である。また、現在のSiベースのパワーデバイス(IGBT)の高負荷使用にも十分対応可能である。
上述したように、流路構造体における主流路・副流路は一体構造であり、主流路は冷却面に一体化されるから、冷却面は「流路構造体の構成要素」である。そして、冷却面は被冷却物の表面もしくは伝熱部材の表面である。したがって、被冷却物の表面自体を冷却面とする場合には「冷却面の実体をなす被冷却物自体も流路構造体の一部を構成する」ことになる。
即ち、流路構造体は、被冷却物を構成要素の一部として、被冷却物と一体的に構成することができる。また、伝熱部材の表面を冷却面とする場合には、伝熱部材に一体化して主流路・副流路を形成して「被冷却物とは別体の流路構造体」となし、その伝熱部材を被冷却物の表面に密接させて配置することにより、被冷却物の冷却を行うようにすることができる。流路構造体は熱伝導性の良い材料で構成される。例えば、金や銀やアルミニウムは大きな熱伝導率を持ち、特に、銀は熱伝導率の高さの点で流路構造体の材料として適しているが、コストの面からするとアルミニウムが好適である。特に、熱伝導率の高い材料で構成されるノズルは、前述した「放熱フィン効果」をもたらすのに有効である。
さらに、流路構造体の材料として、熱伝導性の良いものばかりでなく、安定した耐錆性、耐腐食性、耐熱性の高いものを使用することが好ましく、例えば、耐錆性処理を施したアルミニウム、ステンレス、さらにセラミックス等が使用可能である。
流路構造体の「複数のノズルの先端部に対向する冷却面の表面」は、平滑または微細な凹凸構造を有し、複数のノズルの先端部が、上記平滑面に近接もしくは微細な凹凸構造に当接した構成とすることができる。
また、複数のノズルの先端部に対向する冷却面の表面が微細な凹凸構造を有するようにし、複数のノズルの先端部が上記微細な凹凸構造に当接する構成とすることもでき、この場合、冷却面の表面の微細な凹凸構造は「粗面構造」としてもよいし、「環状もしくは螺旋状または主流路に沿って形成された細溝の集合」とすることもできる。
流路構造体における冷却面の表面を「微細な凹凸構造」とすると、冷却面の表面積が広がり、冷却液への熱の移動量を大きくできるとともに、ノズル先端部を冷却面に当接させることができ、ノズル先端部と冷却面の間隙が有効に小さくなって「冷却液の滲み出し」が有効に促進される。また、複数のノズルを「流路構造体の強度を高める手段」として使用することが可能となる。
流路構造体は、各ノズルの先端部に「微少な貫通孔および/または微細なスリットおよび/または切欠き」を1以上有するように構成できる。このような微少な貫通孔、スリット、切欠きを有するノズルを使用すると、副流路から流れる冷却液を分散して主流路内に供給し、より効果的に気泡崩壊を行うことになるので好ましく、ノズルが、先端部に上記微少な貫通孔、スリット、切欠き等を有する場合には「冷却面が平滑面の場合」であってもノズル先端部を冷却面に当接させることができる。
また、流路構造体における「副流路の流路断面積を主流路の流路断面積より大きくし、これら断面積の差により副流路の圧力が高くなるように動圧差を生じさせる構成」とすることができる。
また、パッシブ冷却方式の冷却を行う場合、主流路・副流路に供給する冷却液をサブクールする必要は必ずしもないが、このことは、パッシブ冷却方法の実施に際して「サブクールを行うことを排除する」ことを意味するものではない。パッシブ冷却方式の場合にも「冷却液をサブクールする」ことは有効である。例えば、冷却面における主流路の下流側端部で10K程度のサブクール度が得られるようにサブクールを行うことは、パッシブ冷却方式においても極めて有効である。
一方、パッシブ冷却方式とアクティブ冷却方式とを併用する装置の場合には、アクティブ冷却方式がサブクール液を使用する必要から、必然的にサブクール液が使用される。
また、上記流路構造体の冷却面を構成する被冷却物もしくは被冷却物に密接にする伝熱部材の、少なくとも表面を構成する材料として、先述の金属板のように、熱伝導で「発熱体からの熱の流れ」を広げる機能を有する部材ばかりでなく、超親水性材料を用いることができる。
伝熱面を超親水性材料からなる膜(超親水性膜)にすることによって、伝熱面の濡れ性が向上して気泡離脱が促進し、限界熱流束を向上させることができる。
超親水性材料としては、例えば、特許第3340149号、特許第3147251号、特許第259931号、特開2005−55066、特開2002−062069、特開2001−1336890、特開2000−144052、特開2000−103645等に挙げられているものを、流路構造体を用いる製品に応じて適宜適用可能である。
発明者の実験によると「500〜600℃で形成されたセラミック超親水性膜」は、限界熱流束を10〜20%増加させ、また特に、超微小重力環境下では気泡が大きくなる前に離脱させる効果が高いことを検証した。
以上に説明したように、この発明によれば、従来にない沸騰冷却方法および装置、製品を提供できる。沸騰冷却による微少な気泡は、冷却面の極く近傍で発生するが、この発明の冷却方法では、副流路を流れる冷却液がノズルを通して「冷却面に近接した開口部」から供給されるので、冷却面近傍で発生した微少な気泡を効率的に微細化もしくは崩壊させ、遷移沸騰領域への「沸騰形態の移行」を有効に抑制でき、「従来の沸騰冷却方法であれば遷移沸騰となるような高温領域」においても、核沸騰による良好な沸騰冷却を実現することが可能である。そして、この冷却液供給・流通手段が対流式の放熱手段を有し、この放熱手段が、流路構造体に流通されて冷却面の冷却に寄与した冷却液のうち、少なくとも主流路に流通された冷却液の放熱を行うので、流路構造体において冷却面から冷却液に移された熱が放熱手段により有効に放熱され、効率のよい沸騰冷却が可能である。
以下、実施の形態を説明する。
図1は、沸騰冷却装置の実施の1形態を要部のみ説明図として略示している。
図1において、符号obは「被冷却物」を示している。被冷却物Obは、例えば「インバータ等の半導体デバイス」であって発熱源H1、H2、H3等を有し、これら発熱源に接して「放熱手段」であるヒートスプレッダSPが形成されている。即ち、ヒートスプレッダSPは「被冷却物Obの構成部分」であり、ヒートスプレッダSPの外側表面が「冷却面」である。
符号10は「流路構造体部分」を示す。流路構造体部分10は、この実施の形態においてはヒートスプレッダSPの表面を冷却面として、冷却液用の主流路10Aおよび副流路10Bを、冷却面(ヒートスプレッダSPの表面)の側から上記順序に形成されている。
即ち、流路構造体部分10は「被冷却物Obの構成要素であるヒートスプレッダSP」に一体化されるから、被冷却物Obと共に「流路構造体」を構成する。流路構造体部分10は、例えばアルミニウム等の熱伝導性の良い材料で構成される。
符号20は「冷却液容器」、符号21は「冷却液」を夫々示す。また、符号30、40はポンプ、符号31A、31Bは「主流路用管路」、符号41A、41Bは「副流路用管路」を示し、符号50は「対流式の放熱手段」であるラジエータを示している。
ポンプ30、40、ラジエータ50は「図示されない制御手段」により制御される。制御手段による制御については後述する。冷却液容器21、ポンプ30、40、主流路用管路31A、31B、副流路用管路41A、41B、ラジエータ50は「図示されない制御手段」とともに「冷却液供給・流通手段」を構成する。
冷却液21としては、水あるいはアルコールもしくは、水とアルコールの混合液、水とエチレングレコールの混合液、または、フッ素系不活性液体を好適に用いることができるが、寒冷地での使用が予定される場合は「不凍液」であることが好ましい。
冷却を行うときには、冷却液容器20内の冷却液21をポンプ30により汲み上げ、主流路用管路31Aを通して流路構造体部分10の主流路10Aに供給する。主流路10Aに供給された冷却液21は主流路10Aを流れつつ被冷却物Obの沸騰冷却を行う。主流路10Aを通過した冷却液21は、主流路用管路31B内を流れて冷却液容器20内に戻されるが、その途上に於いてラジエータ50に依り放熱される。
一方、ポンプ40は冷却液容器20内の冷却液21を汲み上げ、副流路用管路41Aを通して流路構造体部分10の副流路10Bに供給する。副流路10Bに供給された冷却液21は副流路10Bを流れつつ、その一部を「主流路10Aと副流路10Bを隔てる隔壁を貫通し、先端部が冷却面に対向して近接もしくは当接するように形成された複数のノズル」により主流路10Aへ供給し、副流路10Bを通過すると、副流路用管路41B内を流れてラジエータ50に導液され、ラジエータ50により放熱されて冷却液容器20内に戻る。
なお、実際には、主流路用管路31Bと副流路用管路41Bとはラジエータ50の入口直前で合流し、これら管路を流れる冷却液は混合されてラジエータ50に流入する。
図1に示す沸騰冷却装置では、冷却液容器20に収容される同じ冷却液21が主流路10Aと副流路10Bとに供給されるが、供給される冷却液21はサブクール液であり、サブクールされている。冷却液容器20と流路構造体部分10との間を循環する循環路に設けられたラジエータ50が、冷却液21をサブクール液にするためのサブクール手段をなしている。
図2以下を参照して、主流路・副流路やノズルについて説明する。
図2(a)は、流路構造体部分10の内部構造を説明図として示している。主流路10Aは、冷却面であるヒートスプレッダSPの表面を「冷却面」として形成されており、副流路10Bは、隔壁10Cにより主流路10Aと分離されている。そして、副流路10Bの側から隔壁10Cを貫通し、先端部が冷却面(ヒートスプレッダSPの表面)に対向して近接するように複数のノズルNZが形成されている。
主流路10A、副流路10Bの、図2(a)上下方向における大きさは数mm〜10数mmの範囲である。ノズルNZは図2(b)に示すように「中空シリンダ状」で、内径:1〜2mm程度、外径:2.5〜4mm程度であり、先端部は、冷却面の表面に0.1〜1mm程度の間隙を介して対向近接する。この実施の形態においては「冷却面は平滑面で、ノズルNZと冷却面との間に間隙を隔している」が、図2(c)、(d)、(e)の例にあるようなノズルを用いる場合には、ノズル先端部を冷却面に当接させることもできる。
図2(b)〜(e)に示す3つのタイプのノズルNZa、NZb、NZcは何れも「中空シリンダ状」であるが、冷却面に近接する部分に特徴があり、ノズルNZaでは、冷却面に近接する先端部に1以上の微少な貫通孔K1、K2、K3・・を有し、ノズルNZbでは、冷却面に近接するノズル先端部に微細な切欠きKR1、KR2、KR3・・を有し、ノズルNZcでは、冷却面に近接するノズル先端部に微細なスリットSL1、SL2、SL3・・を形成されている。
これら貫通孔、切欠き、スリットの形成・個数は特に制限ないが、3〜6個程度を略等間隔に形成するのが実用的である。ノズルの形態は上記の如きものに限らず「冷却面に向かって縮径する形状」等、種々の形態が許容される。
図2(f)〜(h)は「流路構造体部分の内部の形態」を例示する図であり、流路構造体内部を流れる「冷却液の流れ方向に直交する仮想的断面」で切断した端面の状態を示している。
図2(f)に例示する、流路構造体部分12では、内部は主流路12Aと副流路12Bとに分離されており、主流路・副流路とも「単一流路」である。符号12aは主流路10Aに冷却液を通ずる主流路用管路の「主流路12Aへの連結部」を示す。符号12bは副流路10Bに冷却液を通ずる副流路用管路の「副流路12Bへの連結部」を示す。
図2(g)に例示する、流路構造体部分13では、内部は主流路13Aと副流路13Bとに分離されている。主流路13Aは、冷却面に沿って「冷却液の流れの方向に直交する方向(図の左右方向)」へ、1以上の分離隔壁によりn個の主流路部分13A1、・・13Ai、・・13Anに分離されており、副流路13Bも、主流路13Aとの隔壁に沿って冷却液の流れの方向に直交する方向(図の左右方向)へ、1以上の分離隔壁によりn個の副流路部分13B1、・・13Bi、・・13Bnに分離されている。
即ち、主流路13Aと副流路13Bとは同数の分離隔壁により分離されている。主流路13Aの分離隔壁と副流路13Bの分離隔壁とは、図の如く互いに上下の関係が整合的に合致し、これら分離隔壁により分離された主流路部分13Ai・副流路部分13Biの配列は、冷却液の流れの方向に直交する配列方向(図の左右方向)において互いにずれていない。即ち、主流路13Aと副流路13Bとは同数の分離隔壁により「整合格子状」に分離されている。この場合、主流路部分13Aiとこれに対応する副流路部分13Biとの組合せが、請求項5に謂う「チャンネル」である。
なお、図2(g)において、各主流路部分の内部に描かれた破線の円は、主流路13Aの各主流路部分13Aiに冷却液を通ずる主流路用管路の「各主流路部分への連結部」を示し、各副流路部分の内部に描かれた破線の円は、副流路13Bに冷却液を通ずる副流路用管路の「各副流路部分への連結部」を示す。
また、図2(g)に示す流路構造体部分13では、副流路13Bを構成する各副流路部分13Biの流路断面積が、主流路13Aを構成する各主流路部分13Aiの流路断面積より大きく、これら断面積の差により「副流路の圧力が高くなるように動圧差を生じさせる構成」である。このような動圧差により副流路の圧力を高めることにより、パッシブ冷却方式における「副流路から主流路への冷却液の滲み出しによる供給」を有効に助長できる。
図1に示した実施の形態においては「主流路10Aを流れる冷却液と副流路10Bを流れる冷却液の流れの向きが互いに逆」である。図2(g)に示す流路構造体部分13のように「主流路・副流路が整合格子状に分離」されている場合には、主流路13Aを構成する全ての主流路部分13Aiにおける冷却液の流れの向きを「同じ向き」とし、副流路13Bを構成する全ての副流路部分13Biにおける冷却液の流れの向きを「同じ向き(主流路における流れの向きと、同じ向きもしくは逆の向き)」としてもよいが、図2(h)に示すように、隣接する流路部分における冷却液の流れを「互いに逆向き(各流路部分内
の「三角印」は図面の表から裏ヘ向かう流れ、「×印」は図面の裏から表へ向かう流れを表す。)」に設定することもできる。
図3に、冷却面の形態の例を示す。
図3(a)に示したのは、図2(a)、(b)に即して説明した場合の例であり、各ノズルNZの先端部が微少な間隙を介して対向近接する冷却面RSは平滑面である。
図3(b)、(c)に例示するのは、複数のノズルNZの先端部に対向する冷却面の表面が「微細な凹凸構造」を有し、複数のノズルの先端部が「微細な凹凸構造に当接」する場合である。
図3(b)、(c)に示す例では、冷却面RSb、RScの表面の微細な凹凸構造は、主流路(図面に直交する方向)に沿って形成された細溝の集合である。細溝の形状は、図3(b)に示すように「V字溝」でもよいし、図3(c)に示す「断面矩形形状の溝」でもよく、さらには「U字溝」や「断面が半円形状や半楕円形状の溝」等、種々の形態の溝が許容される。溝幅は、ノズル先端部の断面径の「数分の1」程度が良い。また、溝の形成状態も「主流路に沿って形成」する場合の他、環状もしくは螺旋状に形成することもできる。また、溝を形成する変わりに「冷却面を粗し処理」して粗面構造としてもよい。
説明中の、図1に示す実施の形態ではアクティブ冷却方式とパッシブ冷却方式とが切り替えて行われるが、パッシブ冷却方式とアクティブ冷却方式とを別装置で実施する場合には、被冷却体の冷却面として、パッシブ冷却方法の場合には溝付きのものが、アクティブ冷却方法の場合には平滑のものを用いることが効果的である。
図3には、ノズルとして、図2(a)、(b)に即して説明したノズルNZを例示したが、図2(c)〜(e)に即して説明したノズルNZa、NZb、NZc等を用い得ることは言うまでもない。前述の如く、図2のノズルNZbやNZcを用いる場合には、ノズル先端を平滑面RSに当接させても良い。
図1に示す実施の形態においては、図2(a)に示すように、ノズルNZは「主流路における冷却液の流れの方向へ等間隔」に形成されているが、図4に示す変形例のように、ノズルNZ(図2に示すノズルNZa、NZb、NZc等の場合も同様である。)の配列密度を「主流路における冷却液21の流れの下流側(図5において図の左方)ほど密になる」ようにしてもよい。
以下に、図1に示した実施の形態において、パッシブ冷却方式を実施する場合を説明する。図1の実施の形態においては、冷却液容器20は冷却液21の蒸発による減少を防ぐため外部に対して密閉し、冷却液は「閉じた流路内を循環して流通」するが、冷却液容器20内の圧力は略大気圧とされており、主流路・副流路に流通される冷却液の圧力は略1気圧であり、ポンプ30、40による加圧もさほど大きくは無く、冷却液21の飽和温度は略100℃である。
図1の実施の形態の沸騰冷却装置は「パッシブ冷却方式とアクティブ冷却方式とを切り替えて実施」するものであるので、パッシブ冷却方式からアクティブ冷却方式に切り替えた場合に「直ちにアクティブ冷却方法を実施できる」ように、パッシブ冷却方法を実施する場合においても冷却液をサブクールする。
サブクール度は、冷却液21の流量や、アクティブ冷却方法を実施する場合の主流路と副流路の冷却液の圧力差等に応じて、冷却面における主流路の下流側端部でサブクール度が20K以上となるように設定する。サブクールは、冷却液容器20内の冷却液21の温度、主流路出口温度、副流路出口温度等に基づき、ラジエータ50における対流風量制御により、冷却液容器20内の冷却液21の温度に「所定のサブクール度」を持たせるように行われる。
図1の実施の形態により「パッシブ冷却方式」を行うときは、ポンプ30、40を作動させて、冷却液21を主流路10A、副流路10Bに夫々供給する。このとき、ポンプ30、40による冷却液21の供給量は同じでよい。
上記の如く、主流路10Aと副流路10Bとに冷却液21を流通させ、主流路10Aを流れる冷却液の沸騰により冷却面(ヒートスプレッダSPの表面)を冷却するとともに、副流路10Bの側から各ノズルNZを介して、副流路側の冷却液を冷却面近傍に供給し、主流路内の冷却液を冷却する。
図5は、パッシブ冷却方式による沸騰冷却中における「主流路内の状態」を説明図的に示している。冷却液21は主流路内を冷却面に接しつつ、図の左方へ向かう矢印の向きに流れる。このとき核沸騰が生じ、冷却面から微少な気泡BLが発生する。発生した気泡BLは冷却液21と共に、冷却面に沿って流れつつ、若干成長して気泡の大きさが増す。
このように大きさを増した気泡BLGが、図示の如く、ノズルNZの開口部に掛かると、図の如く、ノズル開口部に「メニスカス面」が形成され、メニスカス面の外側(気泡の外側)が低圧となって毛管現象を生じ、副流路側の冷却液21が主流路内に供給される。供給された冷却液は「若干成長した気泡BLG」を微細化する。このようにして、若干成長した気泡BLGは「微細な気泡」に微細化される。
気泡BLGは、大きいといっても高々数mm程度の大きさであり「熱流束を飽和させて沸騰形態を遷移沸騰形態に移行させるほどの大きさ」ではない。従って、パッシブ冷却方式での冷却が可能な発熱領域では、冷却液が主流路を流れる間において「気泡の微細化が繰り返される」ため、気泡が「沸騰形態を遷移沸騰形態に移行させるほどの大きさ」に成長することはなく、核沸騰状態を良好に維持して良好な沸騰冷却を実現できる。
上に説明した毛管現象による冷却液の供給は「副流路側から主流路側へ冷却液を滲み出させる要因」の代表的なものである。冷却液を滲み出させる他の要因としては、例えば、前述の「動圧差」を挙げることができる。
図1に実施の形態を示す沸騰冷却装置で「アクティブ冷却方式」を実施する場合には、主流路10Aと副流路10Bとに、予め所定の温度にサブクールした冷却液21を、副流路10Bにおける圧力を「主流路10Aにおける圧力」より高めて流通させ、主流路10Aを流れる冷却液の沸騰により冷却面を冷却するとともに、副流路10Bの側から各ノズルNZ(図2)を介して、副流路側の冷却液を「主流路と副流路の冷却液の圧力差」により強制的に冷却面近傍に噴出させて供給することにより、主流路内10Aの冷却液を冷却し「沸騰により主流路10A内の冷却液に生じた気泡」を崩壊させつつ冷却面の冷却を行う。
即ち、アクティブ冷却方式を実施する場合には、冷却液21は「所定の温度にサブクール」され、副流路10Bにおける冷却液の圧力を主流路10Aにおける冷却液の圧力より高めて流通させるために、ポンプ40の圧力をポンプ30の圧力よりも高くする。
冷却液容器20内の冷却液の温度は、前述の如く、冷却液21の流量や、上記「主流路と副流路の冷却液の圧力差」等に応じて、冷却面の下流側端部でサブクール度が20℃以上となるように設定する。
アクティブ冷却方式の場合には、副流路側から主流路側へ、サブクールされた冷却液が強制的に供給されるので、核沸騰により生じた気泡はあまり大きく成長する間もなく0.1mm程度以下の「極く微細な気泡」に崩壊し、消滅させられる。従って、パッシブ冷却方法では「遷移沸騰が生じてしまうような高温度領域」の冷却面に対しても、核沸騰による良好な沸騰冷却を実現することができる。
図1の実施の形態において、流路構造体部分10の構成として、図2〜図5に即して説明したものを適宜に用いることができることは言うまでもない。特に、図4に示した「ノズルNZの配列密度を、主流路の下流側ほど密になる」ようにした流路構造体部分を用い、主流路の下流側ほど副流路からの冷却液の供給量を増大させるようにして良好な沸騰冷却を実現することができる。また、上に説明した沸騰冷却装置の実施の形態においては、冷却液21として「水あるいはアルコール、もしくは、水とアルコールの混合液、水とエチレングレコールの混合液、またはフッ素系不活性液体」が用いられる。
先に述べたように、図1に示す実施の形態では「制御手段」による制御が行われる。
図6は制御手段70による制御の様子を説明図として簡単に示している。
制御手段70は「マイクロコンピュータ」である。上には説明しなかったが、図1に示した実施の形態では各種のセンサが用いられ、「冷却面温度」、「主流路入口温度・主流路入口圧力・主流路入口流量・主流路出口温度・主流路出口圧力」、「副流路入口温度・副流路入口流量・副流路出口温度・副流路出口圧力・副流路出口流量」、「ラジエータ出口温度・冷却液容器温度・冷却液容器圧力」が検出される。
これらのうち、各種温度の検出は「熱電対等の温度センサ」により行われ、各種圧力の検出は「半導体圧力センサ等の圧力計」により行われ、各種流量の検出は「浮子面積式流量計等の流量計」により行われる。
これら各種温度、流量、圧力等の検出結果は制御手段70に入力され、制御手段70は入力情報に応じて主・副流路用ポンプ30、40の駆動、ラジエータ50のRDファン51の駆動力の強弱、「主流路・副流路圧力安全弁、冷却容器圧力安全弁」を制御して、冷却動作に支障がでないようにする。また、冷却面温度が急激に上昇した場合(冷却面温度が上昇しすぎて冷却面の焼損が生じた場合が考えられる。)には被冷却体の電源61を遮断する。
制御手段70はまた冷却面温度の高低に応じ、主・副流路用ポンプの駆動力を切り替え、この切り替えにより「パッシブ冷却方式とアクティブ冷却方式との切り替え」を行う。
また、制御手段70により主流路・副流路の安全弁(バルブ)を制御することにより、アクティブ冷却の際の「副流路に流通される冷却液の圧力を、主流路に流通される冷却液の圧力より高く」するようにしても良く、この場合には、主流路・副流路の安全弁(バルブ)が「高圧化手段」、これを制御する制御手段が「圧力切り替え手段」を構成する。
発明者は、発熱面を冷却面として、主流路長:10cm、幅:1cm、高さ:5mmの主流路と、これに重なる同長・同幅・同高の副流路とによる1チャンネルの流路構造体をアルミニウム、ステンレスにより試作し、冷却液としてサブクール度が40Kの水を、主流路に流速:0.5m/秒で供給し、副流路には流速:0.4m/秒で供給して「アクティブ冷却方法」を実施したところ、両流路構造体の場合とも、1cm当たり最大450W(4.5MW/m)の熱流束による良好な沸騰冷却を実現でき、冷却面の焼損が発生しないことを確認した。
なお、ノズルは、流れの方向へ9本のノズルを、流路幅方向中央部に10mm間隔で、直線的に配列させて配置した。個々のノズルは図2(b)に示したタイプのもので内径:1mm、外径:3ミリであり、冷却面に対して1mmの間隙をあけて近接させた。冷却面は平滑面である。
さて、図1に即して実施の形態を説明した沸騰冷却装置は、前述の如く「稼動中に熱を発生し該熱の冷却手段を構成要素とする種々の製品」に対して冷却手段として使用することができるが、図1の沸騰冷却装置を「電気自動車」におけるインバータ(電力変換機)の冷却に用いる場合を想定し、ラジエータ50を「どのようなものとすべきか」を考察する。
電気自動車において電力変換機として用いられるインバータの発熱量を見積もるに当たって、インバータにより変換された電力で駆動される電動機の出力を100kWとする。
また、インバータと電動機との複合系の効率を85%とする。これらの数値は、実際的に妥当な数値である。ラジエータ50としては空気対流式のラジエータを用い、その前面面積を見積もることにする。
インバータと電動機との効率を85%としたので、電動機から100kWの出力を得るためのインバータの変換電力が118kWであり、これがインバータにおいて発生する熱量となる。この熱を「流路構造体を用いる沸騰冷却装置」で冷却するのであるが、上記のように、1チャンネルの流路構造体が4.5MW/mの熱流束を実現できるから、118kWの発熱量を熱流束として除熱するためには、1チャンネルあたりの除熱は以下のように算出できる。
4.5MW/m=4.5×10W/10cm=4.5×100W/cm
1チャンネルの冷却面積は10cmであるから、1チャンネルあたりの除熱量は、
4.5×1000W=4.5KW
となる。従って、118KWを除熱するのに必要なチャンネル数は、
118/4.5≒27
で27チャンネルが必要である。
すると、27チャンネルをもった流路構造体の主流路を構成する冷却面の面積は270cmとなる。電位自動車用のインバータの面積は、実際この程度である。
27チャンネルを有する流路構造体を用いて得られる除熱量は、4.5KW×27=121.5KWであり、インバータで発生する熱量:118KWを有効に除熱できる。
次に、主流路用ポンプ30、副流路用ポンプ40の動力をみると、ポンプの動力:Nは一般に、流量:Q、揚程:H、流体の密度:ρを用いて、
N=9.8ρQH
で与えられる。ここで、揚程:H=1mとし、ρとして100℃での水の密度:996.9を用いる。
流量:Qは、流速:vと流路断面積:Sの積であるが、1チャンネルの主流路について、幅:1cm、高さ:0.5cmであるから、S=0.5cm、また流速:v=0.5m/sec=50cm/secであるから、1チャンネルの主流路の流量は25cm/sec=25×10−6/secとなる。
また、副流路に付いては、幅:1cm、高さ:0.5cmで断面積:S=0.5cm、流速:0.4m/sec=40cm/secであるから、1チャンネルの主流路の流量は20cm/sec=20×10−6/secとなる。
従って27チャンネルでは、これらの値の27倍になる。
上に得られた流量:Q、揚程:H、密度:ρの値を用いて、ポンプの動力:Nを求めると、主流炉用ポンプ30に対して動力:
Nm=6.59W
副流路用ポンプ40に対して動力:
Ns=5.28W
が得られる。なお、流通路における損失水頭は微小であり無視することができる。
次に、ラジエータ50の放熱量:RQは、ラジエータ50を通過する冷却水の流量:Wtと、ラジエータ50の入口温度:Ti、出口温度:Toを用いて、
RQ=Wt(Ti−To)
で与えられる。
冷却水の流量は、主流路と副流路を流れる液量の和であるが、前述のように、主流路・副流路の1チャンネルを流れる冷却液の流量は、主流路につき毎秒25cm、副流路につき毎秒20cmであるから合わせて45cm/secであり、1時間当たりでは1チャンネルにつき、
45×3600=162000cm/sec=162l/h
となり、流路構造体を成す27チャンネルでは4374l/hとなる。
また、ラジエータ50は、冷却液をサブクール度:40度にサブクールし、冷却液の沸点は100℃であるから、ラジエータ50の出口温度は60℃(サブクール度:40℃)である。一方、ラジエータ50に流入するのは、主流路を流れた冷却液と副流路を流れた冷却液であり、1チャンネルにつき毎秒45cmが流入するが、副流路を流れた冷却液は60℃、主流路を流れた冷却液は100℃であるから、これらが合流すると、
(25×100+20×60)/45≒83℃
となる。
これらの数値を用いると、ラジエータ50の放熱量:RQは116.99KWとなり、インバータによる発熱量:118KWを略放熱できる。
さて、ラジエータ50の前面面積:Fstは、放熱面積/前面面積:φ、ラジエータの熱通過率:K(kcal/m℃h)、ラジエータ前の空気速度:v(Km/h)、空気通路面積/前面面積:λ、ラジエータ空気通過率:ρ、空気の入口温度:tiとして、上記ラジエータ50の放熱量:RQ、入口温度:Ti、冷却水の流量:Wtを用いて、
Fst={(1/φK)+(1/500vλρ)}
/[{(Ti−ti)/RQ}−(1/2Wt)]
で表される。
ここで、φ=60、K=110kcal/m℃・h、v=70km/h、λ=80、ρ=0.5、Ti=83℃、ti=40℃、Wt=4743l/hとすると、Estは、
Fst=0.48mとなる。
即ち、ラジエータ50の前面面積は略0.5mで足り、図1の沸騰冷却装置を電気自動車のインバータ冷却システムとして用いる場合、ラジエータとして十分に搭載可能である。若干付言すると、上記計算において、v=70km/hは電気自動車が時速:70kmで走行している状態であり、このとき、ラジエータは自動車に相対的な空気流のみで対流放熱する。自動車に相対的な空気流のみでは十分な放熱が行われないときは、図7に示すRDファン51により強制対流を行う。
沸騰冷却装置の実施の1形態を説明するための図である。 主流路・副流路、ノズルとこれらの変形例を説明するための図である。 冷却面の形態を3例説明するための図である。 ノズル配列の1例を説明するための図である。 パッシブ冷却方法における気泡の崩壊を説明するための図である。 発明の実施の形態における制御系統を説明するための図である。 沸騰冷却とサブクール液の作用を説明するための
符号の説明
Ob 被冷却体
10 流路構造体部分(被冷却体Obと一体化されて流路構造体をなす。)
10A 主流路
10B 副流路
NZ ノズル
21 冷却液
30 主流路用ポンプ
40 副流路用ポンプ
50 ラジエータ

Claims (13)

  1. 被冷却物の表面もしくは該表面に密接する伝熱部材の表面を冷却面として、上記冷却面に一体的に形成される主流路、および、この主流路に上記冷却面と逆の側から重なるように隔壁を介して一体的に形成される副流路と、上記副流路側から上記隔壁を貫通し、先端部が上記冷却面に対向して近接もしくは当接するように形成された複数のノズルをと有する流路構造体と、
    この流路構造体の上記主流路と副流路とに、予め所定の温度にサブクールした冷却液を循環的に供給し、上記主流路と副流路とに流通させる冷却液供給・流通手段とを有し、
    この冷却液供給・流通手段が対流式の放熱手段を有し、この放熱手段が、上記流路構造体に流通されて冷却面の冷却に寄与した冷却液のうち、少なくとも主流路に流通された冷却液の放熱を行うものであることを特徴とする沸騰冷却装置。
  2. 請求項1記載の沸騰冷却装置において、
    冷却液供給・流通手段が、流路構造体の副流路側から主流路側へ複数のノズルを通して、冷却液を強制的に供給するものであることを特徴とする沸騰冷却装置。
  3. 請求項1記載の沸騰冷却装置において、
    冷却液供給・流通手段が、流路構造体の副流路側から主流路側へ複数のノズルを通して、冷却液を自然供給するものであることを特徴とする沸騰冷却装置。
  4. 請求項1記載の沸騰冷却装置において、
    冷却液供給・流通手段が、流路構造体の副流路側から主流路側へ複数のノズルを通して、冷却液の強制的な供給と自然供給とを切換可能であることを特徴とする沸騰冷却装置。
  5. 請求項1〜4の任意の1に記載の沸騰冷却装置において、
    流路構造体における少なくとも主流路が、冷却液の流通方向に直交する方向において、隔壁により複数のチャンネルに分割されていることを特徴とする沸騰冷却装置。
  6. 請求項1〜5の任意の1に記載の沸騰冷却装置において、
    対流式の放熱手段が空冷式のラジエータであることを特徴とする沸騰冷却装置。
  7. 請求項1〜6の任意の1に記載の沸騰冷却装置において、
    冷却液を、水あるいはアルコール、もしくは、水とアルコールとの混合液、水とエチレングレコールとの混合液、または、フッ素系不活性液体としたことを特徴とする沸騰冷却装置。
  8. 請求項7記載の沸騰冷却装置において、
    冷却液が不凍液であることを特徴とする沸騰冷却装置。
  9. 請求項1〜8の任意の1に記載の沸騰冷却装置において、
    冷却液供給・流通手段において冷却液を貯留する冷却液容器に、冷却液が貯留されていることを特徴とする沸騰冷却装置。
  10. 請求項1〜9の任意の1に記載の沸騰冷却装置を用いる沸騰冷却方法。
  11. 稼動中に熱を発生し該熱の冷却手段を構成要素とする製品であって、請求項1〜9の任意の1に記載の沸騰冷却装置を冷却手段とすることを特徴とする製品。
  12. 請求項11に記載の製品において、
    発熱体を有し、沸騰冷却装置を構成する流路構造体の管状流路が、発熱体の表面を管壁として一体的に形成された電子素子または燃料電池であることを特徴とする製品。
  13. 請求項11記載の製品において、
    電子素子と伝熱部材とを主構成要素とする高発熱密度電子機器が搭載された、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車、燃料電池発電設備の電力変換制御装置、又はコンピュータもしくはスーパーコンピュータ、又は、鉄道電車あるいは航空機用の電力システムの電力変換制御装置であって、沸騰冷却装置を構成する流路構造体の管状流路が伝熱部材の表面を管壁として形成されたことを特徴とするハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車、燃料電池発電設備の電力変換制御装置又は鉄道電車あるいは航空機用の電力システムの電力変換制御装置であることを特徴とする製品。
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