JP5066751B2 - 気泡微細化沸騰冷却方法、沸騰冷却装置および流路構造体並びにその応用製品 - Google Patents

気泡微細化沸騰冷却方法、沸騰冷却装置および流路構造体並びにその応用製品 Download PDF

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Description

この発明は、沸騰冷却方法、当該沸騰冷却方法を実施する沸騰冷却装置、およびこの沸騰冷却装置に使用される流路構造体、並びにこれらが適用された応用製品に関する。
液体を加熱していくと次第に液温が上昇し、やがて液温がそれ以上に上昇しない「飽和温度」に達する。さらに加熱すると液体内部で「液体の気化」が発生する。この状態が沸騰であり、上記飽和温度は沸騰点と呼ばれる。
沸騰状態では液温は上昇せず、加熱により液体に加えられるエネルギーは「液体内部で液体を気化する」のに消費される。この熱エネルギーは「潜熱」と呼ばれる。潜熱は、液体を温度上昇させる熱エネルギーに比して極めて大きい。したがって、液体の沸騰を利用することにより高温物体から大量の熱を取り去り大きな冷却効果をあげることができる。
これは、例えて言えば、1Kg(1リットル)の水を1気圧の下で0℃から飽和温度の100℃まで加熱する場合には420KJの熱を必要とするが、1気圧、100℃で全部蒸気にする場合には2256KJ(潜熱)を必要とすることから、理解できる。
沸騰を利用した冷却は「沸騰冷却」と呼ばれ、従来から種々の沸騰冷却装置が提案されている。
例えば、冷却用液体を収容する容器と該冷却用液体内を通るパイプを有し、被冷却物としての半導体素子を冷却用液体に浸漬し、前記パイプ内に「冷却用液体よりも沸点の低い液体」を循環させるようにした、浸漬方式の沸騰冷却装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
沸騰現象は一般に以下の如き経過を辿る。
液体中に例えば金属等による「加熱ブロック」を浸漬し、加熱ブロックを加熱してその伝熱面温度を上昇させる。「伝熱面」は、加熱ブロックの「上記液体に接している表面」であり、その温度が「伝熱面温度」である。
伝熱面温度がある程度まで高くなると、加熱ブロックの伝熱面に「大きさが1mm程度以下の微小な気泡(一次気泡)」が発生する。この状態は「加熱ブロック表面である伝熱面に接する液層部分が飽和温度に達し、伝熱面部分で沸騰が生じている状態」である。
液体の沸騰による冷却の効果を表す物理量として「熱流束」がある。説明中の例に喩えて言えば、熱流束とは「加熱ブロックの液体に接している表面(上記「伝熱面」)の単位面積を通して単位時間あたりに液体に移る熱量」であり、一般に、W/cmまたはW/mの単位で表され、熱流束が大きいほど除熱量が大きく冷却効果が大きい。
加熱ブロックの伝熱面に微小な気泡が発生するようになると「熱流束の増加率」が増大し、加熱ブロックの加熱をさらに続けると、伝熱面で発生する一次気泡の量も増大し、伝熱面から離脱、互いに合体成長を繰り返すが、加熱ブロック表面が「大きな気泡」で覆われた状態になる。
即ち、伝熱面での微小な気泡の発生量が増大すると、発生した気泡同士が合体成長して、伝熱熱面の大きさにもよるが、差し渡し数cmにもなる「大きな気泡」に成長する。このように大きく成長した気泡は「押し潰されたような厚みの薄い気泡」であり、このような大きな気泡が加熱ブロック表面に付着していると、付着部では加熱ブロックと液体が直接に接触しないため沸騰が阻害され、熱流束の増加はなくなり最大になる。
換言すれば、小さな気泡が合体し徐々に成長して大きくなった気泡(以下、「合体気泡」とも言う)は、やがて固体の表面を覆って液の浸入を妨げて沸騰を阻害することになるが、被冷却面から液へ伝達される熱は最大になり、このときの熱流束を「限界熱流束」と言い、単位時間当たりに伝達される熱流束(W/cm又はW/m)で表わす。限界熱流束は英語で「Critical Heat Flux」と呼ばれその頭文字をとって「CHF」が沸騰熱伝達の分野で広く使われている。
熱流束が限界熱流束に達した後も加熱ブロックを加熱すると、大きな気泡と伝熱面の接触部分で伝熱面が乾き始めて伝熱面温度の急激な上昇に伴って熱流束は減少し、冷却効果が急速に低下する。加熱がさらに続くと、大きな気泡に覆われた部分で伝熱面は完全に乾き、この部分は「薄い蒸気膜で覆われた状態」となる。
そして、この乾燥した部分では、加熱ブロックの熱エネルギーが輻射熱として液体へ伝えられ、熱流束は再び増加に転ずるが、伝熱面は液体に接していないため伝熱面温度は高温になり、この温度が加熱ブロックの融点を超えれば伝熱面は「焼損」(焼き切れ(バーンアウト)とも言う)する。
加熱ブロックの伝熱面に微小な気泡が発生し始める状態から、熱流束が限界熱流束に達するまでの沸騰形態は「核沸騰」と呼ばれ、限界熱流束状態から熱流束が減少し、熱流束が再度増加に転ずるまでの沸騰形態は「遷移沸騰」、伝熱面が薄い蒸気膜に覆われて乾いた状態で熱流束の変化が再度増加に転じた以後の沸騰形態は「膜沸騰」とそれぞれ呼ばれる。
即ち、液体中に浸漬した加熱ブロックを加熱しつづけると、核沸騰、遷移沸騰、膜沸騰の沸騰形態が順次に現れ、ついには加熱ブロックの焼損に至る。
通常、限界熱流束以後の「遷移沸騰から膜沸騰を経て焼損に至るプロセス」は極めて迅速に生じ、制御が著しく困難であるところから、電子機器の冷却には核沸騰冷却の例もあるが、殆ど用いられていなかった。
電子機器の冷却には、従来空気や冷却液の単相の自然対流及び強制対流が主として用いられあるいはその除熱限界は100W/cm(1MW/m)程度と言われている。
冷却液を被冷却物の被冷却面(伝熱面)に沿わせて流通させつつ沸騰冷却を行う場合に、冷却液を予め「飽和温度より低い温度」にサブクールして被冷却面に供給すると、冷却が開始する被冷却面端部からある程度の流路の範囲では「遷移沸騰への移行」を生ずることなく、相当の高温度領域まで核沸騰形態を維持して良好な沸騰冷却を実現できることが報告されている(非特許文献1)。
冷却液を被冷却面に沿わせて流通させつつ沸騰冷却を行う場合、冷却液がサブクールされていると、被冷却面からの熱は、被冷却面に接する冷却液の温度を飽和温度まで急速に昇温させたのち沸騰を生じさせ、生じる微小な気泡が互いに合体して成長し、被冷却面を覆う状態となるが、「合体気泡」の外側の領域にはサブクール状態、即ち、飽和温度よりも温度の低い冷却液(このようにサブクールされた冷却液を「サブクール液」と言う。)が流通している。
このような「成長した合体気泡の外側を流れるサブクール液」は、合体気泡の温度を低下させて「微細な気泡に崩壊」、すなわち凝縮崩壊させる。このように合体気泡が崩壊すると、気泡に覆われていた伝熱面に再び冷却液が供給されるので、遷移沸騰に移行することなく再び核沸騰による冷却が行われ、これが1秒間の間に繰り返されるので、熱流束を「通常の限界熱流束より高める」ことができる。
伝熱面温度は液が供給され固液接触が生じた瞬間に低下するが、測定上温度変化は短時間に追従しないので見かけ上この現象は「遷移沸騰」で発生し、この現象は「気泡微細化沸騰」と言われる(これは気泡微細化沸騰のメカニズムの一つの形であって詳細は未だ明らかにされていない)。
このように、サブクール液を用いる気泡微細化沸騰を利用することにより、伝熱面から「より多くの熱」を冷却液に伝えることができ、限界熱流束より高い熱流束を得ることができる。
「気泡微細化沸騰」が起こる沸騰形態の過程を纏めて言うと、通常合体気泡で覆われた被冷却面の温度が上がり渇き始めて遷移沸騰域に移るが、サブクール液中に生長した気泡が凝縮崩壊し、液が再び供給されて沸騰が開始し、「気泡崩壊―液供給―沸騰開始―気泡生長―限界熱流束―気泡崩壊」が、本発明者等の実験結果によれば、短時間に繰り返され(例えば1秒間に20回〜90回)、その結果として、通常の限界熱流束を超えた高い熱流束で除熱することができる。
図6(a)は、上に説明した沸騰冷却について、気泡微細化沸騰を含む沸騰曲線と除熱限界を比較した概念図である。
横軸は被冷却面(伝熱面)の過熱度(冷却液の飽和温度と伝熱面温度との差)、縦軸は熱流束を表している。被冷却面の過熱度(被冷却面の温度)が上昇すると、当初「非沸騰領域」では被冷却面の熱が冷却液の温度を上げるのに消費されるが、「核沸騰領域」では冷却液の沸騰により熱流束が急激に増大して限界熱流束(CHF)に達する。
例えば、1気圧で40Kのサブクール水を0.5m/sで流した場合、300W/cm(3MW/m)程度の限界熱流束に至る。
通常の沸騰では、限界熱流束に達した核沸騰領域の後に、破線で示す「遷移沸騰領域」が続き、熱流束は急速に減少して「膜沸騰領域」に移行し、熱流束は再び増大するが終には「被冷却面の焼損」に到る。
一方、サブクール液を用いて「成長した合体気泡を微細な気泡に崩壊させる」ことにより、限界熱流束以後に「気泡微細化沸騰(MEB)」を行うことにより、限界熱流束(CHF)を超えてさらに熱流束を増大させることができる。
すなわち、気泡微細化沸騰によって、限界熱流束(CHF)で大きく成長した合体気泡が遷移沸騰域で微細な気泡群に凝縮崩壊し,熱流束がCHFを超えて増加することになる。
図6(b)の左図は、合体により大きく成長した合体気泡LBが伝熱面HSFに付着している状態を示し、右図は、サブクール液SLの流れにより合体気泡LBが微細な気泡SBの群れに崩壊した状態を示している。このように、気泡微細化沸騰を利用する冷却を「気泡微細化沸騰冷却」と呼ぶ。
図11は、図6(a)の内容を分かり易くかつ詳細に示した図である。図11中、横に細長い黒塗りの形状は被冷却面を、その下の黒塗りの略円形状は加熱源を表し、イメージを把握し易いように、被冷却面上に各段階での気泡を模式的に示している。
従がって、例えば、サブクール液の流れ方向の長さが5cm程度あるいはそれ以下の短い被冷却面について、1気圧で40Kのサブクール水を0.5m/sで流して「成長した合体気泡を微細な気泡に崩壊させる」と、400W/cm(4MW/m)以上、特に450〜1000W/cm程度の熱流束を得ることができ、被冷却面の長さが短ければ短い程1000W/cmに近づく。
しかしながら、サブクールされた冷却液を用いて気泡微細化沸騰冷却を行う場合、冷却液が被冷却面に沿って流れるに伴い、冷却液の温度が次第に上昇し、流路の下流側に行くほどサブクールによる効果が減じてしまう問題がある。
さらに、サブクール液による気泡微細化沸騰冷却における別の大きな問題として、大きく成長した合体気泡の崩壊に伴う高い圧力変動による、高い「騒音・振動」が発生する問題がある。
即ち、サブクール液を冷却流路に流して気泡微細化沸騰冷却を行うと、冷却液の流路部分に大きな振動と騒音が繰り返し発生し、気泡微細化沸騰冷却の実用化に対する阻害要因の一つとなっている。
高い熱流束を得るための試みは種々提案がなされているが、何れの提案においても「騒音・振動」の防止については検討がなされていない。
例えば、ノズルを用い、沸騰気泡を速やかに消滅させて高い冷却効率を狙う冷却装置が提案されている(例えば、特許文献2)。
特許文献2に開示されているのは、主として「半導体デバイスを冷却対象」とする冷却装置であって、2種類のノズルを用い、第1のノズルから低温冷媒液を発熱体に向けて噴射し、発熱体の熱によって沸騰気泡を発生させて「気液2相状態の高温冷媒液」とし、第2のノズルから同じ低温冷媒液を該高温冷媒液に向けて噴射させて急冷し、沸騰気泡を凝縮・消滅させて冷却を行うものである。
この特許文献2に記載される冷却方式は、発熱体であるLSIチップを内蔵した半導体デバイスを多数搭載したセラミック製多層配線基板の冷却を目的とし、複数の被冷却体を対象としているためにエネルギー効率が低い大掛かりな装置となり、さらに、冷却液の流通路が長い上に、複数の被冷却体間に存在する凹部で流通する冷却液に対流あるいは渦を発生させることになるため、合体気泡の成長を妨げ、あるいは成長した合体気泡が冷却しにくくして、所期の気泡微細化沸騰冷却を困難にする問題がある。
従がって、この冷却方式によれば、高くてもせいぜい「120℃程度の温度領域で200W/cm程度の熱流束」が得られると考えられ、また、「騒音や振動」に関してなんら記載がなく従ってその対策についての言及はない。
また、沸騰冷却方法として、冷媒(冷却液)が流通される流路に対し、隔壁を介して副流路を形成し、副流路にも冷媒を通じ、「隔壁に設けた補給孔」を通して副流路の側から冷媒を補給し、温度上昇した冷媒の温度を下げることにより「成長途上にある気泡」を凝縮崩壊させ、「気泡の分割」を行って高い熱流束を得ることを狙いとする方法が提案されている(例えば、特許文献3)。
この方法の場合にも、大きく成長した合体気泡の凝縮崩壊に伴い、かなり大きな騒音・振動が発生すると考えられるが、同文献中に、騒音・振動に関する言及はない。
なお、「気泡微細化沸騰冷却」は、被冷却面上を覆い被冷却面に接触する合体気泡をサブクール液で凝縮崩壊させて行うことを特徴とするものであるが、特許文献3に記載の冷却方法は、被冷却面を離脱したあるいは被冷却面に非接触の合体気泡を崩壊させるものであり、これは沸騰冷却効果はなく、「気泡微細化沸騰」とは異なるものである。
以上述べたように、従来から提案されている沸騰冷却方法において、合体気泡の崩壊に伴う騒音・振動に対する有効な解決策は未だ提案されていない。
一方、「沸騰冷却」の分野ではないが、電気温水器において電気ヒータで缶水を加熱すると、該電気ヒータの周辺で缶水が沸騰して水蒸気の気泡になり、この気泡が成長し崩壊する際に騒音となるので、この騒音を軽減させるために、電気ヒータ自体の表面に凹凸や溝、突起等を設けることにより「発生する気泡を小さな状態に留めて、騒音を軽減させる方法」が提案されている(例えば、特許文献4)。
しかし、核沸騰領域のように熱流束が小さい領域では、気泡の成長を有効に抑えることはできても、高熱流束冷却を行う気泡微細化沸騰冷却では「合体気泡が発生する領域で、合体気泡を崩壊させることにより大きな熱流束を実現する」のであるから、特許文献4の提案は、気泡微細化沸騰冷却における合体気泡の崩壊に伴う騒音・振動軽減へ転用することはできない。
特開昭61−54654号公報 特開平5−136305号公報 特開2005−79337公報 特開2000−329406公報 「気泡微細化を伴うサブクール流動沸騰」(第41回日本伝熱シンポジウム講演論文集(2004年6月)Vol.1、第19〜20頁)
本発明は、上述したところに鑑み、高熱流束冷却を行う気泡微細化沸騰冷却に伴う騒音・振動を有効に軽減することができる沸騰冷却法とその装置を実現することを課題とする。
本発明はまた、気泡微細化沸騰冷却を有効に用いたコンパクトでかつ省エネタイプの沸騰冷却法とその装置を実現することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、気泡微細化沸騰冷却の利点を有効に活かし、かつ騒音・振動を軽減させるための手法について鋭意検討した。
騒音・振動状態を観察すると、振動あるいは圧力の急上昇が周期的に、かつ合体気泡の崩壊直後に生じ、合体気泡全体が一度に崩壊すると、高い空気圧を発生させて騒音・振動の原因になっていることを確認し、実験を重ねた結果、管状流路内壁に細径の剛針群(あるいは棒状体群)を設けると、合体気泡を一度に崩壊させずに、発生する空気圧を減少させることができることを確認した。
この理由は明確ではないが、気泡が限界熱流束まで成長して合体気泡を形成し、合体気泡が該剛針群を構成する各剛針に接触すると、表面張力によって個々の剛針と合体気泡との接触部に小さな窪み・凹部を形成して、気泡の表面積を拡大し、すなわち、冷却液との接触面積を増加させて崩壊可能性のより大きな状態をつくり、その後、該窪み・凹部が崩壊開始点となって、ほぼ冷却液温度に冷却された剛針の該窪み・凹部で合体気泡の崩壊が開始し、剛針に接触していない部分の崩壊を連鎖し、各剛針が気泡崩壊分割手段のような、同じ機能をして、合体気泡の崩壊を一度ではなく分割させ、その結果、発生する空気圧を減少させる効果をもたらすものと推察される。
また、本発明の合体気泡の崩壊メカニズムを別の観点から推察すると、各剛針との接触面ではサブクール液が合体気泡の中に入り込んで液膜を作る。この場合、合体気泡の内部の圧力で液を押上げようとする力と接触面の下向きに働く表面張力が釣り合っていると考えられる。
合体気泡の熱は気液界面から液体に伝わるよりも、最初に熱伝導性の良い液膜を通してサブクール液と同じ温度あるいはそれより低い温度の金属針に伝えられる。その結果、剛針群との接触部から凝縮崩壊が始まり(崩壊開始点)、気泡微細化沸騰に至るものと考えられる。
その結果、剛針群のない気泡塊が一度に崩壊するよりも、剛針群で小さい気泡塊に分割されて崩壊するために、気泡崩壊時に発生する瞬間圧力は小さいものと考えられる。
従って、本発明は、剛針群に限定されるものではなく、合体気泡内に入り込んで液膜を作ることが可能な「液体(ここではサブクール液)に対するぬれ性を有する凸部材」であればよいと考えられる。
さらに、本発明者等はこのような剛針群を中心とする凸部材群による騒音・振動の軽減の効果を、有効に発揮させるための条件をさらに検討し、その結果、以下のような発明を創出するに至った。
すなわち、本発明の沸騰冷却方法は、被冷却物の表面もしくは該表面に密接する伝熱部材の表面を被冷却面とし、1つの該被冷却面が設けられた管状流路に沿ってサブクールされた冷却液を平行流で流通させ、加熱した前記被冷却面で該冷却液が沸騰して発生する気泡を成長させて、前記被冷却面に押し潰されたように全面を覆い接触状態に形成される合体気泡を前記冷却液によって凝縮崩壊させ、該凝縮崩壊を繰り返し行わせることによって、限界流束が得られる温度より高い温度で熱流束除熱を行う気泡微細化沸騰冷却方法であって、前記管状流路として、前記管状流路の該流路内壁に規則的に固定され、該流路内の前記被冷却面に向けて又は前記被冷却面上に突設させた凸部材群を有し、かつ下記(1)〜(3)の条件を備えた流路構造体を用い、前記凸部材群の少なくとも一部が前記合体気泡内に入り込む状態で凝縮崩壊させることによって、前記合体気泡の崩壊時に発生する圧力を低減させることを特徴とする。
(1)被冷却面が管状流路内壁の一部かつ同一面を構成する。
(2)被冷却面の長さが、流通する冷却液のサブクール度に被冷
却面の上流側と下流側との間で差が生じない程度に調整されたものである。
(3)被冷却面が位置する管状流路の高さが、押し潰されたように形成される合体気泡の厚みに合わせ調整されたものである。
ここで、「凸部材の少なくとも一部」とは、複数の凸部材のなかの一本のみのは含まず、あくまでも複数本(全体)のなかの一部の複数本を意味する(以下、同じ)。
また、本発明の沸騰冷却装置は、被冷却物の表面もしくは該表面に密接する伝熱部材の表面を被冷却面とし、1つの該被冷却面が設けられた管状流路に沿ってサブクールされた冷却液を平行流で流通させ、加熱した前記被冷却面で該冷却液が沸騰して発生する気泡を成長させて、前記被冷却面に押し潰されたように全面を覆い接触状態に形成される合体気泡を前記冷却液によって凝縮崩壊させ、該凝縮崩壊を繰り返し行わせることによって、限界流束が得られる温度より高い温度で熱流束除熱を行う気泡微細化沸騰冷却方法に用いられる沸騰冷却装置であって、前記管状流路として、前記管状流路の該流路内壁に規則的に固定され、該流路内の前記被冷却面に向けて又は前記被冷却面上に突設させた凸部材群を有し、かつ下記(1)〜(3)の条件を備えた流路構造体が搭載されて、合体気泡の崩壊時に発生する圧力を低減させる機能を有することを特徴とするものである。
(1)被冷却面が管状流路内壁の一部かつ同一面を構成する。
(2)被冷却面の長さが、流通する冷却液のサブクール度に被冷
却面の上流側と下流側との間で差が生じない程度に調整され
たものである。
(3)被冷却面が位置する管状流路の高さが、押し潰されたよう
に形成される合体気泡の厚みに合わせ調整されたものである。
すなわち、本発明の前記沸騰冷却方法および沸騰冷却装置における、凸部材群による騒音・振動の軽減の効果を有効に発揮させるための条件について述べる。
先ず、管状流路内を流通し被冷却面を冷却する冷却液は、安定な流れによって所期の凝縮崩壊と凸部材群の効果を得るために、平行流であることが必要であることが確認された。
特にこの平行流が「乱流」であると、合体気泡に接して暖められた液と気泡から離れた冷たい液とが混合しやすくなって、その結果凝縮崩壊を促進させ、凸部材群による騒音・振動の軽減の効果を有効に発揮させるのに、有効である。
管状流路内に流通する冷却液を乱流とするためには、前記被冷却面の上流側末端部に繋がる管状流路部の長さを調整することが1つの方法として好ましく、この管状流路部は乱流を形成させるための冷却液の「助走区間」として機能し、被冷却面の長さの2〜6倍程度であることが好ましいことを確認した。
また、管状流路に設ける被冷却面の条件として、冷却液の安定な流れを形成して合体気泡の所期の凝縮崩壊を得るためには、対流あるいは渦を発生させて、合体気泡の成長と成長した合体気泡の冷却を妨げないような状態、例えば、段差とか凹部のない状態を形成することが必要であり、そのために本発明の冷却装置の流路構造体を構成する管状流路に、連続した1つの被冷却面を管状流路の内壁の一部かつ同一面となるように設けることとし、こうすることによって凸部材群による騒音・振動の軽減の所期効果を発揮させ、気泡微細化沸騰冷却を効果的に行なうことができる。
また、冷却液が流通する方向の長さが長い被冷却面を用いる場合、流れる冷却液が温まって上流側と下流側では流れる冷却液のサブクール度に差が生じて、上流側では合体気泡の凝縮崩壊とサブクール液の供給がスムースに繰り返されるが、下流側では、冷却液が温まっているため合体気泡が凝縮崩壊しにくくなって、合体気泡で覆われた被冷却面が乾いて温度が急上昇し、最終的に焼損が発生することになる。
省エネの観点を省略しエネルギー効率を考慮しないで、多量の冷却液を高速で流せば、焼損のような事態を避けられることができるのは当たり前のことである。
しかしながら、本発明において気泡微細化沸騰冷却を検討するにあたっては、合体気泡の周りに所期の凝縮崩壊を起こすための十分なサブクール液を供給することを前提として、省エネの観点からサブクール液の効果が保たれる冷却面の長さを検討し、その結果、被冷却面の長さの条件として、流通する冷却液のサブクール度に被冷却面の上流側と下流側との間で差が生じない程度のものにして、凸部材群による騒音・振動の軽減の効果を有効に発揮させ、省エネかつコンパクトな「冷却」の実現を達成することを可能にした。
この被冷却面の長さとして、供給するサブクール液の種類と温度、さらに流速などの条件によって左右されるが、1cm〜6cmが好ましく、さらに3cm〜5cmが好ましいが、特に5cm前後が有効である。
さらに、本発明において、被冷却面が位置する管状流路の高さの条件として、省エネかつコンパクトで、かつ所期の気泡微細化沸騰冷却と騒音・振動の軽減を可能とする「冷却」を実現するために、押し潰されたように形成される合体気泡の厚みに合わせ、表面に冷却液が流入するに必要な空間を考慮して調整されたものであることが重要である。
この被冷却面が位置する管状流路の高さとして、供給するサブクール液の種類と温度、さらに流速などの条件によって左右されるが、2mm〜7mmが好ましく、さらに4mm〜6mm、特に5mm前後が有効である。
合体気泡表面に冷却液が流入するに必要な最小限の空間を考慮する場合の因子として、管状流路内の空気量があり、上限は20%が好ましく、下限は0%を含まないより高いことが好ましい。
また、本発明においては、合体気泡が前記被冷却面に押し潰されたように全面を覆い接触状態に形成されることが必要であり、そのための重要因子として、上記の被冷却面の長さと被冷却面が位置する管状流路の高さを選択する必要があるが、被冷却面の幅についても十分考慮する必要がある。
該被冷却面の幅は、冷却液が管状流路内を平行流で流通するのを維持させるためにも、大きな影響を有する。
このような意味を有する該被冷却面の幅として、1.0cm〜3.0cm程度が好ましく、特に1.0cm〜2.0cm程度であることが好ましい。
本発明の前記沸騰冷却方法および沸騰冷却装置においては、被冷却面とこれに対向する前記管状流路の管内壁(以下、単に「管壁」ともいう)が互いに平行的であり、前記剛針群が前記被冷却面に相対する内壁部に固定し前記被冷却面に向けて突出させて設けられた流路構造体を用いることが好ましい。
本発明の前記沸騰冷却方法および沸騰冷却装置においては、前記剛針群が前記管状流路の流れ方向に少なくとも1列設けられた流路構造体を用いることが好ましい。
本発明の前記沸騰冷却方法においては、冷却液の水に換算したサブクール度は、下限が20K未満であることが好ましく、一方、上限が60Kであることが好ましく、また、管状流路内を流通する前記冷却液の平均流速は、下限が0.2/秒であることが好ましく、一方、上限が1.0m/秒であることが好ましい。
サブクール度を高くするに従い平均流速を低くするように、前記サブクール度に応じて平均流速を組み合わせて選定し、本発明の前記必須条件と組み合わせることが必要である。
本発明の前記沸騰冷却方法においては、前記冷却液が水あるいはアルコール、もしくは、水とアルコールとの混合液、または、フッ素系不活性液体であることが好ましい。
本発明の前記沸騰冷却装置においては、流路構造体の前記凸部材群の配列が規則的である必要であるが、前記凸部材群が棒状体群であることが好ましく、また規則的な配列が格子状であることが好ましい。
本発明の前記沸騰冷却装置においては、被冷却面とこれに対向する管壁が互いに平行的であり、棒状体群が、上記被冷却面に対向する管壁から突出して、その先端部が被冷却面に0.5mm以下の間隔を設けて近接するように形成された流路構造体を用いることが好ましい。
本発明の前記沸騰冷却方法および沸騰冷却装置においては、流路構造体として、前記冷却液を流通される前記管状流路に対し隔壁を隔して管状の副流路が形成され、前記副流路から前記隔壁を通して前記管状流路内に前記冷却液を供給する細管供給部を複数個有するものを用い、前記流路構造体の前記管状流路と前記副流路とに前記冷却液を供給・流通させ、前記副流路の側から前記管状流路内へ前記冷却液を供給しつつ主流路である前記管状流路の冷却液と併せて冷却を行うこともできる。
本発明の前記沸騰冷却装置においては、前記冷却液を前記管状流路に供給して流通させる冷却液供給・流通手段を備えることができる。
本発明の前記沸騰冷却装置においては、前記冷却液供給・流通手段が、前記冷却液を貯留させる冷却液容器を有することが好ましい。
本発明の前記沸騰冷却装置においては、前記冷却液容器に前記冷却液が貯留されていることが好ましい。
本発明の前記沸騰冷却装置においては、前記冷却液供給・流通手段が、対流式の放熱手段を有し、この放熱手段が、上記流路構造体に流通されて被冷却面の冷却に寄与した冷却液の冷却を行うものであることが好ましい。
本発明の前記沸騰冷却装置においては、対流式の放熱手段が、空冷式のラジエータであることが好ましい。
本発明の前記沸騰冷却装置においては、管状流路の断面形状が略矩形形状である流路構造体を用いることが好ましい。
本発明の前記沸騰冷却装置においては、管状流路の断面形状が円形状もしくは楕円形状、または、半円形状もしくは半楕円形状である流路構造体を用いることが好ましい。
本発明の前記沸騰冷却装置においては、被冷却物もしくは被冷却物に密接する伝熱部材の少なくとも表面を構成する材料が超親水性である流路構造体を用いることが好ましい。 本発明の前記沸騰冷却装置においては、冷却液を流通される管状流路に対し隔壁を隔して管状の副流路が形成され、副流路から隔壁を通して管状流路内に冷却液を供給する供給部を複数個有する流路構造体を用いることが好ましい。
本発明の前記沸騰冷却装置においては、流路構造体を複数個、互いに近接して平行に組み合わせた構成とすることが好ましい。
本発明の気泡微細化沸騰冷却方法およびその装置によれば、管状流路内に設けられる、剛針群に代表される棒状体群を含む凸部材群によって、合体気泡の崩壊により発生する圧力・騒音を80%程度低減させ、500W/cm2以上の熱流束を得ることを可能とし、しかも省エネ対応で、コンパクトな装置とすることができる。
本発明の気泡微細化沸騰冷却方法は、被冷却物の表面もしくは該表面に密接する伝熱部材の表面を被冷却面とし、1つの該被冷却面が設けられた管状流路に沿ってサブクールされた冷却液を平行流で流通させ、加熱した前記被冷却面で該冷却液が沸騰して発生する気泡を成長させて、前記被冷却面に押し潰されたように全面を覆い接触状態に形成される合体気泡を前記冷却液によって凝縮崩壊させ、該凝縮崩壊を繰り返し行わせることによって、限界流束が得られる温度より高い温度で熱流束除熱を行う気泡微細化沸騰冷却方法であって、前記管状流路として、前記管状流路の該流路内壁に規則的に固定され、該流路内の前記被冷却面に向けて又は前記被冷却面上に突設させた凸部材群を有し、かつ下記(1)〜(3)の条件を備えた流路構造体を用い、前記凸部材群の少なくとも一部が前記合体気泡内に入り込む状態で凝縮崩壊させることによって、前記合体気泡の崩壊時に発生する圧力を低減させることを特徴とするものである。
(1)被冷却面が管状流路内壁の一部かつ同一面を構成する。
(2)被冷却面の長さが、流通する冷却液のサブクール度に被冷却面の上流側と下流側との間で差が生じない程度に調整されたものである。
(3)被冷却面が位置する管状流路の高さが、押し潰されたように形成
される合体気泡の厚みに合わせ調整されたものである。
本発明における流路構造体とは、沸騰冷却装置の一部を構成し、サブクールされた冷却液を流通させる管状流路に前記凸部材群が設けられたものを言い、この「流路構造体」が本発明の要であり、「流路構造体」を構成要素とする沸騰冷却方法及び沸騰冷却装置によって、本発明の上記課題を解決することができる。
なお、本発明においては、前記凸部材群として細径の棒状体群が好ましく用いられ、以後、前記凸部材群として細径の棒状体群を用いる場合を中心に説明し、また、棒状体群を剛針群とも言う。
該「管状流路」とは、サブクールされた冷却液を流通する流路であるが、2つのタイプを包含する。
第一のタイプは、内壁部に被冷却面と剛針群が設けられた管状体からなる一重構造体である。
一方、第二のタイプは、図3(f)に示すように、管状体50とその内部に中心軸に沿って固定設置された柱状体51とからなる二重構造体であって、該管状体50の内壁部50Aと柱状体表面51Aの、一方に被冷却面、他方に剛針群が設けられたものである。
従がって、本発明における「管状流路の内壁部」とは、管状体の内壁部だけではなく、柱状体の表面部をも意味するものである。
高発熱密度のパワーICのような、ヒートスプレッダの中に冷却管を通して沸騰冷却を行うような場合には、第二のタイプが用いられるが、通常の冷却装置は、第一のタイプの管状流路が用いられるので、以後、第一のタイプの管状流路を中心に説明する。
「被冷却物」は冷却対象となるものである。
「被冷却物の表面に密接する伝熱部材」とは、例えば、ヒ−トスプレッダの如き「被冷却物の発熱体に密着させた金属板」のように、熱伝導性で「発熱体からの熱の流れ」を広げる機能を有する部材等である。
「被冷却面」は、被冷却物自体の表面もしくは伝熱部材の表面であり伝熱面とも言う。
該被冷却面は、平滑面としても良いが、例えば環状、螺旋状、細溝のような凹凸面あるいは粗面にすると、被冷却面の面積が増大し、高い熱流束を得るのに好ましい。
上記第一のタイプの「管状流路」においては、被冷却物の表面を被冷却面とする場合には「被冷却物は流路構造体の構造の内壁の一部でかつ同一面」をなし、伝熱部材の表面を被冷却面とする場合には「伝熱部材は流路構造体の構造の内壁の一部でかつ同一面」をなす。
「サブクール」は、冷却液の温度を「被冷却面との接触部で冷却液に沸騰が生じる飽和温度よりも低い温度」にすることを意味し、冷却液の飽和温度(管状流路内で沸騰が生じる温度)とサブクールされた冷却液との温度差を「サブクール度」と言い『K』で表わし、サブクールされた冷却液を「サブクール液」と言う。
本発明における「サブクール度」に特に制限はないが、被冷却面を安定した気泡微細化沸騰により冷却し、かつ、冷却した後の冷却液のラジエータ等による放熱を考慮すると、管状流路における「被冷却面上流側端部におけるサブクール度」は、下限が20Kであることが好ましく、一方、上限が60Kであることが好ましく、30K〜50Kの範囲がより好ましい。
この「サブクール度の範囲」は、冷却液として水を用いる場合のみならず、後述するような、水とアルコール等との混合液の場合にも水に換算し適用可能である。
本発明の沸騰冷却方法において、沸騰冷却装置を構成する流路構造体の管状流路内に流通させる冷却液の流速には特に制限はないが、1.0m/秒程度を上限とすることが好ましく、さらに、0.6m/秒以下が好ましい。1.0m/秒を超えると、冷却液流通のための配管系の流動抵抗が増加し、冷却液を流通させるための大きな駆動力が必要となり、本発明の目的の省エネ・冷却を満足させないものになる。
また、管状流路内を流通する前記冷却液の平均流速は、下限が0.2/秒であることが好ましく、一方、上限が1.0m/秒であることが好ましい。
本発明で用いられる「凸部材群」とは、管状流路の内壁部に固定し設けられた複数の凸部材からなり、気泡崩壊分割手段となって、崩壊時に発生する空気圧を減少させる機能を有するものでありさえすれば、特に限定されるものではなく、「剛針」を含む各種棒状体および薄板(凝縮崩壊促進板)を用いることができる。
該棒状体としては、針形状のみならず、断面が円形のものも四角形のものも使用することができ、気泡崩壊分割手段として機能を果たすのに必要な剛性を有するものである。
また、薄板(凝縮崩壊促進板)として、例えば、厚さが0.1〜0.5mm、長さが5〜10mm程度のものを用いることができ、その材質として後述する棒状体と同じものが用いられる。
この薄板群を、剛針群と同様に、流路内で被冷却面に向けて突出するように、配列した構成とすることができるが、この場合、特に、流動抵抗を考慮し、薄板数と配列方法等を選択する必要がある。
以下、棒状体群あるいは剛針群を用いた管状流路を中心に説明する。
該剛針群は、管状流路の被冷却面に相対する内壁部に固定し、該被冷却面に向けて設けることができるが、被冷却面に固定し相対する内壁部に向けて設けることもできる。後者の場合には、剛針を被冷却面に固定する付け根部分が発泡点となって気泡が発生しやすいため、前者の方がはるかに好ましい。
しかしながら、後者の場合にも、付け根部分を弧を描くような形状にスムージングすれば、気泡発生を制御でき、剛針群がフィン機能を発揮して冷却効果を高めることが期待できる。
第一のタイプの「管状流路」においては、剛針群を管状流路の被冷却面に相対する内壁部に固定し、該被冷却面に向けて突出させて設ける場合、個々の剛針は、「管壁に対して適当な角度」をなす。
この「適当な角度」は、剛針群の機能を果たしうるものであればよく、例えば、該被冷却面が管状流路上に設けられ、かつ管状流路の断面形状が矩形である場合には、管壁に対して直交する角度、あるいは、直交に近い角度等である。
「剛針が細径」であるとは、断面が円形状の剛針の場合であって、剛針群として流路内に突出した状態において「冷却液の流れに対して大きな抵抗とならない」ような太さを言い、管状流路の断面積や、剛針群をなす剛針の数、さらには冷却液の流量等に応じて最適化することができるが、1例を挙げれば直径が0.1mm〜1mm程度である。
「剛針群の機能を果たすのに必要な剛性」は、冷却液の流れにより大きく撓んだり、変形したりしないための剛性であり、従って、この場合にも、冷却液の流量(流速)等に応じて最適化することができる。
また、各剛針の材質としては、特に限定的ではないが、「必要な剛性」があって、また、耐熱性かつ防錆性を有し、さらに「熱伝導率の高い材質」が好ましく、その上、「冷却液に対して濡れ性のよいもの」が好ましく、例えば、ステンレス、アルミニウムのような金属、テフロン(登録商標)のような軟化点の高い合成樹脂などが用いられる。
高密度内における剛針群の配列、即ち、個々の剛針の配列としては、「ランダムな配列」の場合も使用可能であるが、剛針群による騒音・振動の軽減の効果を有効に発揮させるためには、規則的である必要があり、格子状配列とか千鳥状配列のような整然とした配列であるが、単位面積あたりの剛針数は大きく変動しない配列である。
すなわち、本発明者等の観察によると、合体気泡の崩壊によって生じる空気圧の抑制に、規則的に配列された剛針群が相互に等間隔に隣接する4個の剛針が格子を形成し、これらの合体気泡との4つの接触部に形成される4つの窪み・凹部が同等の崩壊力を有することによることが考えられ、特に格子状配列がこのような状態を形成しやすく、好ましい。
剛針群の配列密度は、管状流路の流路方向に沿って一定としてもよいが、配列密度を「流通される冷却液の下流側でより高密度」とすることができる。
流路方向の剛針群の規則的な配列は、その列数の限定はなく、管状流路の幅の大きさに依り、狭い場合には1列でも可能であるが、等間隔に隣接する4個の剛針が格子を形成して、前記のような効果を得るために、2列以上が好ましく、4〜8列がより好ましい。
また、剛針群の流路方向に対する幅方向(流れ方向と直交する方向)の剛針の配列密度を高くすることが効果的であるが、配列密度が高すぎると、冷却液の流通の抵抗になるため、その剛針の間隔は、2〜5mmが好ましく、特に、2〜3mmであることが好ましい。
さらに、剛針の配列に関し、幅方向の密度を高くした方が、管状流路の上流側より下流側を高密度にする上記のやり方に比べてはるかに有効である。
剛針群を構成する複数の剛針は、被冷却面に相対する管壁部から被冷却面に向けて設ける場合には、管壁部上に格子状に規則的に配置することが好ましく、また、剛針の先端部を被冷却面とわずかな間隔を空けて非接触に近接させて設置することが好ましい。
このように2列以上規則的に剛針群を設けることによって、被冷却面に合体成長した気泡が格子状に配置した剛針により貫かれるように該剛針と接触し、表面張力により形成される窪み・凹部が、合体気泡を細かいセルに分割する要因になることが考えられ、従がって、気泡微細化沸騰で気泡が崩壊する時に、各セル毎に存在する気泡が個別に崩壊していることも推察される。
この場合、崩壊時の瞬間圧力は気泡の大きさに関係するので、剛針の密度を増やしセルの大きさを小さくすれば、発生する瞬間圧力が低下することにはなると考えられるが、反面、サブクール液の流動抵抗が増加することになるので、剛針の太さと配列密度については被冷却面の長さと幅の大きさ等の条件に応じて適宜選択する必要がある。
流路内に突出するように管状流路の管壁上に剛針を設ける方法として、管壁に穴を空けて剛針の一端部を埋め込んで接着剤等で固定するか、管壁に穴を空けずに剛針の一端部を管壁表面に蝋付け等で固定するか、管壁が耐熱性樹脂板性の場合に、剛針の一端部を加熱し樹脂板に押し込んだ後冷却し固定するか、あるいは成形等によって管状流路と剛針とを一体に形成する等があるが、いずれにせよ、固定した剛針がはずれないような、高熱環境における高い耐久性が必要である。
例えば、「熱伝導率の高い材質」による剛針を、管状流路の管壁をなす被冷却面に植え込んだり接着したりして流路内に突出させると、細径の剛針群が被冷却面と一体化したことにより被冷却面の表面積が大きくなり、冷却液との接触面積が増大し、冷却液への伝熱効率が有効に向上する。
また、凝縮崩壊への効果をさらに大きくするために、剛針の温度を冷却液の温度よりも低く保持することが考えられ、そのために、剛針群を構成する各剛針の一端部を、被冷却面に相対する管壁部から被冷却面に向け突出させる流路構造体の場合には、他端部を管壁部を貫通させ管状流路の外壁表面上に突出するように管壁部で固定する構成にして、外壁表面上の該剛針部から大気への自然対流により放熱させ、さらに、外壁表面上の該剛針部を送風機よって送風するとかダクトをつけて送風し強制対流放熱させるような、冷却手段を設けて剛針群を冷却することができる。
剛針を被冷却面に埋め込む構造は、冷却面積を増加させる効果はあるものの、被冷却面と剛針とが固定されて形成される角形状部が発泡点になって気泡に覆われた接触部分が高温になる場合があり、部分的に「焼き切れ(バーンアウト)」まで進む恐れがあるので好ましくない。
一方、剛針が「熱伝導率の高い材質」の場合には、管状流路の管壁をなす被冷却面に植え込んだり接着したりして流路内に突出させると、細径の剛針群が被冷却面と一体化したことにより被冷却面の表面積が大きくなり、冷却液との接触面積が増大し、冷却液への伝熱効率を有効に向上させるので、好ましい。
また、本発明の流路構造体において、管状流路の断面形状が略「矩形形状」であることが好ましく、「被冷却面とこれに対向する管内壁」が互いに平行的で、剛針群が、被冷却面および/または被冷却面に対向する管壁から突出して、その先端部が反対側の面である「被冷却面に対向する管壁もしくは被冷却面に、近接もしくは当接」するように構成することができる。
剛針群の先端部を「被冷却面に対向する管壁もしくは被冷却面に当接」させる場合には、剛針自体が放熱フィンとして冷却効果をもたらす。このような放熱フィンとしての機能を効果的に果たさせるためには、剛針の材質として熱伝導性のものを用いることが好ましい。また、剛針群の先端部を「被冷却面に対向する管壁もしくは被冷却面に近接」させる場合、近接させる管壁との間隔は高々0.5mm以下であることが好ましく、特に0.1mm以下であることが好ましい。
しかしながら、剛針の先端部を被冷却面に当接し接触すると、接触部分が発泡点になり、その結果、気泡に覆われた接触部分が高温になって部分的に「焼き切れ(バーンアウト)」に進むことが考えられるので、間隔を0.1mm以下であっても、当接させず近接させた方が好ましい。
上記「被冷却面とこれに対向する管壁が互いに平行的」であるとは、これらの面が平面であって互いに平行して対向する場合のみならず、これらの面がそれぞれ円筒面等であって、互いに平行的に対向する場合も含む。即ち、被冷却面とこれに対向する管壁とは、平面である場合も曲面である場合もある。
また、本発明の流路構造体において、管状流路の断面形状としては、前述の「矩形形状」以外に、「円形状もしくは楕円形状」または「半円形状または半楕円形状」にできる。
例えば、被冷却物または伝熱部材の内部に「断面形状が円形状もしくは楕円形状の孔」を穿設すると、被冷却物または伝熱部材の内部に「円筒面状もしくは楕円筒面状の表面」が形成されるので、この円筒面状もしくは楕円筒面状の表面を被冷却面とし、この表面を管壁とする管状流路に冷却液を流通させて気泡微細化沸騰冷却を行うことができる。
この場合には、管状流路の管壁はすべて「被冷却物もしくは伝熱部材の、円筒面状もしくは楕円筒面状の表面」になる。
本発明の流路構造体は、後述するように、稼動中に熱を発生し該熱の冷却手段を構成要素とする多種の製品に幅広く適用可能なものであり、冷却液を流す被冷却面の長さは、製品によって様々である。
本発明の流路構造体を単体で用いる場合に、所期の気泡微細化沸騰効果を十分発揮するためには、その「冷却液を流す被冷却面の長さ」として、先述のように、1cm〜6cmが好ましく、さらに3cm〜5cm、特に5cm前後が有効である。被冷却面の長さがより大きい場合には、本発明の流路構造体を複数個組合せて用いることが好ましい。
一方、先述のように、該被冷却面の幅として、1.0cm〜3.0cm程度が好ましく、特に1.0cm〜2.0cm程度であることが好ましい。
また、該被冷却面が設けられる管状流路の幅については、限定的でなく、該被冷却面に合わせても、多少広くしても良い。
また、被冷却面が長い電子パッケージが必要な場合は、被冷却面の長さを、例えば5cmとする複数のパッケージに分割し、本冷却装置をサンドイッチ状に配置することにより、よりコンパクトになり高熱流束冷却を行うことができる。
すなわち、本発明の流路構造体は「管状流路を複数個、互いに近接して直列的もしくは並列的に有する」構成とすることができる。複数個の管状流路を並列的に組合せる場合、複数の管状流路における冷却液の流通の向きは、同一方向としてもよいし、管状流路のうちに、他の管状流路とは逆向きに冷却液を流通されるものが1以上あってもよい。このように複数の管状流路を併設することにより、流路の並列的な配列方向における冷却領域を増大することができる。
図17−1および図17−2は、前記流路構造体が複数個組み合わせて構成し、パッケージ化した気泡微細化沸騰冷却装置の具体例を示すものである。
また、本発明の流路構造体は「冷却液を流通される管状流路に対し、隔壁を隔して管状の副流路が形成され、副流路から隔壁を通して管状流路内に冷却液を供給する供給部を複数個有する」構成とすることができる。
副流路は、管状流路を介して被冷却面から離れる位置に形成されてもよいし、管状流路の流路方向に沿う側方に形成されてもよい。
また「供給部」は、管状流路との隔壁に「貫通孔」として形成されてもよいし、隔壁自体を「多孔質」として形成してもよく、隔壁から管状流路側へノズル状に突設させて、先端部を被冷却面に近接させるようにしてもよい。
この場合、流路構造体の管状流路と副流路における「冷却液の流通の向き」は、管状流路と副流路とで同じ向きでも良いし、互いに逆の向きでも良いが、後者の方がサブクール度がほぼ一定に保持可能となり、好ましい。副流路に流通される冷却液は勿論「サブクール液」である。
本発明の流路構造体は、熱伝導性の良い材料で構成するのがよい。例えば、金や銀やアルミニウムは大きな熱伝導率を持ち、特に、銀は熱伝導率の高さの点で流路構造体の材料として適しているが、コストの面からするとアルミニウムが好適である。
さらに、流路構造体の材料として、熱伝導性の良いものばかりでなく、安定した耐錆性、耐腐食性、耐熱性の高いものを使用することが好ましく、例えば、耐錆性処理を施したアルミニウム、ステンレス、セラミックス、アクリル樹脂等を好適に使用できる。
本発明の冷却装置は「気泡微細化沸騰冷却を行う装置」であり、流路構造体と、冷却液供給・流通手段とを少なくとも有する。
「流路構造体」は、被冷却物の表面もしくは該表面に密接する伝熱部材の表面を被冷却面とし、被冷却面を管壁として形成され、サブクールされた冷却液を流通される管状流路を有し、管状流路の管壁から細径の剛針群を流路内に突出させた構造をもち、具体的には上述したものが用いられる。
「冷却液供給・流通手段」は、流路構造体の管状流路もしくは管状流路と副流路に流通される冷却液を流路構造体に供給して流通させる手段である。
上記「冷却液供給・流通手段」は、冷却液を貯留させる冷却液容器と流路構造体との間に、冷却液を流通させることができ、この場合において「冷却液容器に冷却液が貯留された状態」が含まれる。
また、上記「冷却液供給・流通手段」の構成要素として、対流式の放熱手段を有することができる。
「対流式の放熱手段」は、流路構造体に流通されて被冷却面から冷却液に移された熱を有効に放熱し、より効率良い沸騰冷却を可能とするものである。この放熱手段は、空気を対流させる方式のものでも、水などの液体を対流させる方式のものでも良いが、空冷式のラジエータは好適なものの1つである。
本発明の沸騰冷却装置における冷却液としては「被冷却面温度に対して適当な飽和温度を持つもの」であれば、特に制限無く使用することができるが、入手の容易性、低コスト性、取り扱いの容易性、安全性、化学的・物理的安定性等の観点から、水あるいはアルコール、もしくは、水とアルコールの混合液、または、フッ素系不活性液体が特に好適である。
「水」は、環境保全の面から言えば、冷却液として特に好適なものである。フッ素系不活性液体は「フロリナート(登録商標 住友スリーエム社)」が市販されている。
「水とアルコールの混合液」としては、アルコールとしてエチルアルコール、プロピルアルコールそれぞれを、水に対し5〜15%の割合で混合した冷却液が好適である。
また、先述のように、「水とアルコールの混合液」を用いる場合には、サブクール度は水に換算して20K以上が好ましく、20K未満になると気泡微細化沸騰が安定に起こりにくいことが確認されている。
「水とアルコールの混合液」は、「水のみによる冷却液」を用いる場合に比して、崩壊後の微細気泡が明らかに小さく、また、合体気泡崩壊時の圧力振動を50%程度さらに低減することを可能とし、30%程度高い熱流束を得ることを可能とする。
圧力振動を低減できる理由は、水とアルコールとを混合すると、表面張力が水単独の場合よりも小さくなり、気泡の崩壊が容易になるためと考えられる。また、高い熱流束が得られる理由は、沸騰時に「沸点の低いアルコールが先に蒸発」することにより、伝熱面の「気泡付着箇所近傍と混合液の間に生じるアルコール濃度差」が、気泡における表面張力の差をもたらし、気液界面の「気泡上部における温度の低い部分の大きな表面張力」に混合液が引張られ、気泡上部に向かう流れ(マランゴニ流れ)が生じ、「伝熱面の気泡付着面」に向かって温度の低い冷却液が供給されて気液交換が促進されることによるものと推察される。
本発明の沸騰冷却装置が、寒冷地又は低温雰囲気中で使用される場合、冷却液の凍結により冷却装置として機能が果たせなくなる虞がある。この対策として、冷却液の凍結を防ぐ「防結手段」として冷却液を不凍液とすることができる。
不凍液は、本発明の沸騰冷却装置を搭載する製品種に応じて適宜選択使用することができ、市販されているものも適用可能であり、例えば、エチレングリコールを主成分とするものを用いることができるが、エチレングリコールに代えて、メチルアルコールやエチルアルコールのようなアルコール類と水とを濃度調整して不凍液として使用することができる。
例えば、水とエチレングリコールとの混合液(混合液1)、水とメチルアルコールとの混合液(混合液2)、水とエチルアルコールとの混合液(混合液3)のそれぞれの凝固点(℃)は、水と混合するエチレングリコールなどの成分の濃度(%)によって変化し、次のようになる。
濃度(%) 10 20 30 40
混合液1 −3℃ −8℃ −15.5℃ −25℃
混合液2 −5℃ −12℃ −21℃ −33℃
混合液3 ー2.5℃ −7℃ −13℃ −22℃ 。
また、この発明の流路構造体の被冷却面を構成する「被冷却物もしくは被冷却物に密接にする伝熱部材」の、少なくともその表面を構成する材料として、先述の金属板のように、熱伝導で「発熱体からの熱の流れ」を広げる機能を有する部材ばかりでなく「超親水性材料」を用いることができる。
伝熱面を親水性材料からなる膜(親水性膜あるいは超親水性膜)とすることにより、伝熱面が冷却液による濡れ性が向上して気泡離脱が促進し、剛針による気泡微細化効果と相俟って、限界熱流束を向上させることができる。
親水性材料としては、例えば、特許第3340149号、特許第3147251号、特許第259931号、特開2005−55066、特開2002−062069、特開2001−1336890、特開2000−144052、特開2000−103645等に挙げられているものを、この発明の流路構造体を用いる製品に応じて適宜適用可能である。
発明者等の実験によると「500〜600℃で形成されたセラミック親水性膜」は、限界熱流束を10〜20%増加させ、また特に、微小重力環境下では気泡離脱を促進する効果が高いことが確認された。
本発明を図面を用いて説明する。
図1(a)の右図と左図は、本発明の流路構造体の断面模式図であり、該流路構造体は、管壁KHから被冷却面HBSに向けて、かつ被冷却面HBSに近接させて(図示されていない)、剛針N1、N2、・・・Niを突出させ、管壁KH上に一列に並べた剛針群が固定され、管壁KHの幅方向(図示していないが紙面と直角方向)に、図示された一列の前記剛針群に並んで、同じ剛針群が2列目として固定されている。
図1に示されるように、流路構造体の管状流路の内壁の一部かつ同一面となるように1つの被冷却面が、管状流路の間に段差が形成されないように設けられている。
右図と左図は共に、サブクールされた冷却液が流路構造体の管壁KH側に沿って、右方から左方に流れている状態を表わし、左図は、右図よりも冷却液を流し始めてから経過した時間が長く、被冷却面HBSと接触時間が長くなるに従い、被冷却面HBS表面で発生した微小気泡SBが流れと共に次第に合体し成長していく状態が示されている。
右図は微小気泡SBが合体気泡LBに成長する状態を、左図は、2列の剛針群の隣接する4本の剛針が形成する各格子内に合体気泡LBが、被冷却面の一部を覆うように被冷却面HBSに付着して形成された状態を示している。
微小気泡SBは徐々に合体気泡に成長し、該合体気泡は最終的に前記被冷却面に押し潰されたように全面を覆い接触状態に形成される。
成長するに従がって合体気泡は、剛針Niが合体気泡LBに「突き刺さった状態」あるいは合体気泡LB内に入り込んだ状態となると共に、2列の剛針群の隣接する4本の剛針に接触し、この4つの接触部では表面張力によって、合体気泡側に引っ込み冷却液側に盛り上げるような、窪み・凹部が形成され、合体気泡LBの表面は、剛針の分布に従って、複数の凸曲面LB1、LB2、・・LBi・・に分かれたような状態を形成する。
このように剛針群によって形成される格子が、合体気泡に「窪み・凹部」とか「凸曲面」状態をつくって、合体気泡を一度に崩壊させないで、振動・騒音の原因となる高い瞬間圧力の発生防止効果をもたらすものと考えられる。
また、図6(b)左図のような、剛針群を用いない場合に形成される「単一の表面を持つ合体気泡LB」に比して、上記のように合体気泡の表面が「複数の凸曲面」で構成された状態は、表面エネルギーが大きく、不安定な状態であり、この状態における「サブクール液による微細気泡への崩壊」は、合体気泡LB全体として瞬時に崩壊が生じるのではなく、複数の凸曲面LB1、LB2、・・LBi・・毎の崩壊になるものと考えられる。
即ち、凸曲面LB1、LB2、・・LBi・・のうちの「もっとも崩壊しやすい部分」で崩壊が生じ、これが引き金となって他の凸曲面部分での崩壊が誘発され、全体の崩壊へと進むと推察される。図1(a)の右図は、凸曲面LB1、LB3を除く凸曲面部分で微小気泡SBへの崩壊が生じた状態を示している。
また、冷却液を管状流路内を流通させるのは、図1(a)で言えば右側上流の、冷却液流入側の圧力を1気圧より多少高目の、例えば1.02〜1.15気圧に、出口側圧力を1気圧に、上記の流速と合わせて調整して流通することが好ましい。
また、本発明の沸騰冷却方法においては、前記剛針群が固定された内壁部に相対する前記管状流路の外部表面から超音波を当てて、微細化を促進しより安定した気泡微細化沸騰を行うことができ、沸騰冷却装置として超音波発生装置を取り付けたものとすることができる。
管状流路を流通し、一旦被冷却面の冷却に供した冷却液は温度が上昇しサブクール度が低下するため、元のサブクール度に戻すのにラジエータのような放熱手段が用いられる。例えば、沸騰して高温になっている冷却液を、元のサブクール度40Kに戻すにはかなりの時間を要することになるが、20Kにするとなるとさほど時間をかけないで済む。
しかしながら、冷却液のサブクール度が20Kでは40Kに比べて、気泡微細化沸騰を低めることになるが、このような場合に、例えば、20kHz程度の超音波をあてかつ20Kの冷却液を用いて行うと、超音波をあてないで行う場合に比べて、2倍以上の除熱熱流束が得られることが検証された。
本発明の沸騰冷却方法によって、300W/cm以上の、特に500W/cm程度の熱流束を容易に得ることができ、振動・騒音を有効に低減化でき、60%以上低減させることができる。
さらに、本発明の沸騰冷却方法において、沸騰冷却装置に用いられる流路構造体として、副流路を有するものを用いる場合には、冷却液供給・流通手段により、流路構造体の管状流路と副流路とに冷却液を供給・流通させ、副流路の側から管状流路内へ冷却液を供給しつつ冷却を行うことができる。
この場合、副流路から管状流路への冷却液供給は、副流路内の圧力を管状流路内の圧力より高くして「強制的」に行ってもよいし、管状流路に流通する冷却液と副流路に流通する冷却液の「動圧差」や毛管現象を利用して、副流路内の冷却液が管状流路内に滲出するようにしてもよい。
本発明の沸騰冷却装置は「稼動中に熱を発生し該熱の冷却手段を構成要素とする製品」に適用可能であり、例えば、発熱体を有し、沸騰冷却装置を構成する流路構造体の管壁の少なくとも一部が発熱体の表面となる電子素子または燃料電池であることができる。
この製品としては、例えば、電子素子と伝熱部材とを主構成要素とする高発熱密度電子機器が搭載された、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車、燃料電池発電設備の電力変換制御装置、又はコンピュータもしくはスーパーコンピュータ、又は鉄道電車あるいは航空機用の電力システムの電力変換制御装置であって、沸騰冷却装置を構成する流路構造体の管状流路が伝熱部材を管壁として形成されたことを特徴とするハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車、燃料電池発電設備の電力変換制御装置又は鉄道電車あるいは航空機用の電力システムの電力変換制御装置であることができる。
現在広く用いられている、Si基板を用いるIGBTは、高出力化に伴い発熱密度が増加する傾向にあり、このような半導体デバイスに対する冷却として、この発明の冷却装置・冷却方法は極めて有効である。
次に本発明の流路構造体について、先述した、内壁部に被冷却面と剛針群が設けられた第一のタイプ管状体の変形例を挙げて説明する。図3に、5つの変形例を示す。
図3(a)に示す実施の形態では、サブクールされた冷却液は、図の左方から右方へ向かって流れ、管状流路の一部をなす流路部材12Bの管壁から流路内へ突出する剛針群N1、N2、・・Ni・・の配列密度が冷却液の下流側ほど高くなっている例であり、各剛針の先端部が相対する管壁に当接させずに近接するように固定することが好ましい。
前述した如く、合体気泡は、核沸騰で生じた微小な気泡が、冷却液の流れと共に次第に合体して成長して被冷却面に付着するものであるために、冷却液の下流側で大きくなって被冷却面に付着し易い。従って、合体気泡を「小分けにして崩壊させる剛針群」の密度を下流側で大きくすることにより、合体気泡の小分けされる数(前記凸曲面LBiの数)が大きくなり、剛針群による効果がより有効に発揮される。
図3(b)に示す実施の形態は、管状流路の断面形状が「円形状」である場合の例である。
即ち、この例では、被冷却物30の内部に、断面円形状の孔が穿設されて、管状流路31A、31B、31Cとなっている。これら管状流路31A、31B、31Cは、全面が被冷却面であり、これらの管状流路に冷却液を、図面に直交する方向へ流通させて気泡微細化沸騰冷却を行うことができる。
剛針群を構成するNi、Nj、Nkは、管状流路の管壁に直交する角度で管状流路内に突出している。しかしながら、剛針群を管状流路の管壁に固定する場合、結合部が発泡点になりやすいため、結合部を弧を描くようなスムージングすることが好ましい。
図3(b)の例はまた、複数個の管状流路31A、31B、31Cを互いに近接して平行に有する構成である。
図3(c)に示す実施の形態は、管状流路の断面形状を半円形とした例である。
被冷却物32の被冷却面32Aの上方に、アーチ型の断面形状を持つ半円筒状の管壁が形成された流路部材34が設けられ、被冷却物32と一体化して管状流路を形成している。この管状流路の管壁の一部をなす被冷却面32Aの側から、被冷却面32Aに直交する角度を持って剛針群N1、N2、・・Ni・・が、管状流路内に突出するように設けられ、各剛針の先端部が相対する管壁に当接させずに近接するように固定することが好ましい。管状流路の断面形状が半円形状であることに応じて剛針Niの長さが異なる。
図3(d)に示す実施の形態は、被冷却物33の被冷却面33Aと流路部材35とを組合せて、断面形状が矩形形状で互いに平行管状流路37A、37B、37Cが近接して形成された例である。個々の管状流路37A、37B、37Cには、図の如く剛針群が設けられている。各剛針の先端部が相対する管壁に当接させずに近接するように固定することが好ましい。
図3(e)に示す実施の形態は、冷却液を流通される管状流路42に対し、隔壁を隔して管状の副流路44が形成され、副流路44から隔壁を通して管状流路42内に冷却液を供給する複数個の供給部42A、42Bを有する例である。管状流路42は被冷却物40の被冷却面40Aを管壁の一部として、流路部材421、422により構成され、剛針N1、・・Ni、・・による剛針群は流路部材422の側から流路部材422の管壁に直交する角度をもって管状流路42内に突出し、それらの先端部は被冷却面40Aに近接している。
流路部材422はまた、副流路44に対して管状流路42を隔する隔壁であり、この隔壁をなす流路部材422と副流路部材441とにより副流路44が形成されている。管状流路42、副流路44の断面形状は矩形形状であるが、これに限らず円形状や半円形状当の他の断面形状でもよい。また、図3(e)の例では、管状流路42と副流路44とをサブクールされた冷却液が同じ向き(図の左方から右方へ向かう向き)に流通しているが、これに限らず、管状流路42と副流路44とで冷却液の流れの向きを逆にした方が好ましい。
供給部42A、42B等は、隔壁422から管状流路側へノズル状に突設させて、先端部を被冷却面40Aに近接させている。
このような流路構造体を用いると、剛針群による効果に加え、副流路側からのサブクール液の供給により、管状流路を流れる冷却液の温度を有効に低下させ、サブクール液のもつ「気泡微細化崩壊効果」を助長することができる。
前述の如く、副流路44から管状流路42への冷却液供給は、副流路44内の圧力を管状流路42内の圧力より高くして「強制的」に行ってもよいし、管状流路42に流通する冷却液と副流路44に流通する冷却液の「動圧差」や毛管現象を利用して副流路44内の冷却液が管状流路42内に滲出するようにしてもよい。
図4は、沸騰冷却装置の実施の1形態を説明するための図である。
図4において、符号500は被冷却物で、発熱部501、502、503を有する。これらの複数の発熱部501,502、503に接してヒートスプレッダ510が一体の「伝熱部材」として設けられ、図においてヒートスプレッダ510の上側の表面が、平滑な平面状の1つの被冷却面510Aとなっている。
符号512は流路部材を示し、ヒートスプレッダ510とともに「管状流路」を構成する。
即ち、管状流路514の管壁の一部は、前記管壁と同一面を構成するヒートスプレッダ510の被冷却面510Aで、管状流路514内には、剛針Niによる剛針群が突出している。個々の剛針Niは、管状流路514における図の上側の管壁から管壁に対して直交する角度で突出し、その先端部は被冷却面510に当接している。
即ち、ヒートスプレッダ510と、剛針群を有する流路部材512とは、被冷却物500の表面に密接する伝熱部材510の表面を被冷却面510Aとし、被冷却面510Aを管壁として形成され、サブクールされた冷却液を流通される管状流路514を有し、管状流路514の管壁から細径の剛針群を流路内に突出させた構造をもつ流路構造体である。
図4における符号520は「冷却液容器」、符号522は「冷却液」を夫々示す。また、符号532は「流路用ポンプ」、符号530、540は「冷却液用管路」、符号550は「凝縮手段」を示している。
流路用ポンプ532、凝縮手段550は後述する「制御手段」により制御される。
冷却液容器520には冷却液522が貯留されている。冷却液522としては、水あるいはアルコールもしくは、水とアルコールの混合液、またはフッ素系不活性液体を好適に用いることができ、特に、先の実施の形態で説明した「純水」や、「エチルアルコールとプロピルアルコールを、水に対し5〜15%の割合で混合した冷却液」は好適である。また、冷却液として不凍液を用いることができることは言うまでもない。
冷却を行うときには、冷却液容器520内の冷却液522を流路用ポンプ532により汲み上げ、冷却液用管路530を通して流路構造体の管状流路514に供給する。管状流路に供給された冷却液522は管状流路内を流れつつ被冷却面510Aの気泡微細化沸騰冷却を行う。その際、管状流路内に突出する剛針群の作用により、管状流路内における圧力変動が有効に軽減され、騒音・圧力共に有効に軽減される。
管状流路514を通過した冷却液522は、冷却液用管路540内を流れて冷却液容器520内に戻されるが、その途上に於いて凝縮手段550に依り凝縮される。
凝縮手段550は冷却液用管路540内に組み込まれた凝縮部551と、この凝縮部551に冷却風553を吹き付けるファン552とにより構成される。凝縮部551は流路を長く取り、冷却液522はこの部分を流れる間に冷却風553により冷却され、凝縮して冷却液容器520に戻される。
即ち、冷却液容器520と、冷却液用管路530、540と、流路用ポンプ532と、凝縮手段550は、管状流路514に流通される冷却液520を流路構造体に供給して流通させる「冷却液供給・流通手段」を構成する。
従って、図4に実施の形態を示す沸騰冷却装置の「冷却液供給・流通手段」は、流路構造体510、512と冷却液容器520との間に冷却液522を流通させるものである。
従って、図4の沸騰冷却装置によれば、本発明の沸騰冷却方法が実施される。
なお、図4の沸騰冷却装置における流路構造体として、図3(e)に示した副流路を有するものを用い、冷却液供給・流通手段により「流路構造体の管状流路と副流路とに冷却液を供給・流通させ、副流路の側から管状流路内へ冷却液を供給」しつつ冷却を行うようにして、本発明の沸騰冷却方法を実施することができることは言うまでもない。
図5は制御手段70による制御の様子を説明図として簡単に示している。
制御手段70は「マイクロコンピュータ」である。上には説明しなかったが、図4に示した沸騰冷却装置には各種センサが用いられ、「被冷却面温度」、「管状流路の流路入口温度・流路入口圧力・流路入口流量・流路出口温度・流路出口圧力」、「凝縮部出口温度・冷却液容器温度・冷却液容器圧力」が検出される。
これらのうち、各種温度の検出は「熱電対等の温度センサ」により行われ、各種圧力の検出は「半導体圧力センサ等の圧力計」により行われ、各種流量の検出は「浮子面積式流量計等の流量計」により行われる。
これら各種温度、流量、圧力等の検出結果は制御手段70に入力され、制御手段70は入力情報に応じてポンプ532の駆動、凝縮手段550のファン552の駆動力の強弱、「流路圧力安全弁、冷却容器圧力安全弁」を制御して、冷却動作に支障がでないようにする。また、被冷却面温度が急激に上昇した場合(被冷却面温度が上昇しすぎて被冷却面の焼損が生じた場合が考えられる。)には被冷却物の電源を遮断する。
この発明は、従来の「核沸騰領域を利用した沸騰冷却」の冷却限界を、気泡微細化沸騰冷却により大幅に向上させることができ、騒音・振動の少ない静かな冷却を実現できる。
またこの発明の沸騰冷却装置は、広い技術分野における伝熱部材の適用可能な、対環境性、対省エネ性の発展性ある技術と言うことができる。
この発明の沸騰冷却装置が用いられる技術・製品分野(以下、製品と称する)は「稼動中に熱が発生しその熱を冷却する冷却手段を構成要素とするもの」であれば、特に限定されない。
例えば、パソコンのような発熱体を有する電子機器または発熱体を有する燃料電池、高発熱密度の電子機器、ハイブリッドカー、電気自動車、燃料電池自動車、燃料電池発電設備の電力変換インバータ又は鉄道電車あるいは航空機の電力システムの電力変換インバータ、電力制御の電子パッケージを含む複数の電子素子および伝熱部材(例えば、ヒートスプレッダ)を主構成要素とする電子機器が搭載され、この発明の沸騰冷却装置は、伝熱部材の表面を「流路構造体の管状流路の管壁」として一体的に形成した構成とし、製品とすることができる。
現在広く用いられている、Si基板を用いるIGBTは、高出力化に伴い発熱密度が増加する傾向にあり、このような半導体デバイスに対する冷却として、この発明の冷却装置・冷却方法は極めて有効である。
すなわち、パソコンのような発熱体を有する電子機器または発熱体を有する燃料電池では、この発明の沸騰冷却装置は、流路構造体の主流路と発熱体の表面とを一体的に形成した構成とし、製品とすることができる。
このような電子機器としては、一般的に高発熱密度電子機器が用いられており、例えば50kW以上のような高い電力が扱われるので、単位面積当たりの発熱量が多く、発熱密度が100W/cm以上、さらには300W/cmにもなることも考えられるが、このような電子機器の冷却に対しても、この発明の沸騰冷却方法・装置は好適である。
一方、この発明の流路構造体およびこの流路構造体を構成要素として備えた沸騰冷却装置は、それぞれ単独の製品として扱うこともできる。
流路構造体を単独の製品として扱う場合には、沸騰冷却装置の構成要素として設置する際に、被冷却物の大きさ、放熱器の最適取り付け場所、空間余裕によって配管の長さ等を調節することができるが、冷却液が入っていないため、放熱器、送液ポンプ等を含む冷却系を組み上げた時に空気が入らないように冷却液を注入することが必要である。
また、沸騰冷却装置を単独の製品として扱う場合には、冷却液容器に冷却液が予め貯留された構成のものであっても、貯蔵されていない構成のものであっても製品とすることができるが、冷却液容器に冷却液が予め貯留された構成のものの場合には、予め冷却液を封入した状態で扱うことができるので、冷却液注入と空気抜き作業を省略できる。
以上に説明したように、この発明によれば、従来にない沸騰冷却方法および装置、流路構造体および応用製品を提供できる。この発明の沸騰冷却方法では気泡微細化沸騰冷却を行うので「従来の沸騰冷却方法であれば遷移沸騰となるような不安定領域」においても、良好な沸騰冷却を実現可能であり、気泡微細化沸騰冷却に特有の振動・騒音を極めて効果的に軽減できるので、沸騰冷却装置やこれを備える応用製品の振動・騒音を有効に低減化でき、60%以上低減させることができる。また、冷却液下流側における熱流束の低下も有効に軽減もしくは防止される。
(実験装置の説明)
図12は、実験装置の概念図である。
本発明の流路構造体の効果を検証するために、図12に示す実験装置を準備し、試験部28に図13に示される流路構造体(図1(b)と実質同じ)を取り付けて実験を行った。
該実験装置を構成する各部品は以下のとおりであるが、それぞれの機能については、説明を省略する。
図12において、符号21は恒温槽を、22は自動温度調節器を、23はポンプを、24は流量調節弁を、25は流量計を、26はフィルタを、27は圧力センサを、28は試験部を、29は熱電対を、30はマノメータを、31は電気炉を、32は高速度ビデオカメラを、33は電気炉制御器を、34はデータ記録PCを、35は圧力センサ用直流増幅器を、36はAD変換器を、それぞれ示している。
(実験例1)
図1(b)及び図13は、本発明の流路構造体の断面模式図であるが、本発明者等はこの模式図に基づいた流路構造体を作製して、剛針郡による振動・騒音抑制効果を検証した。
この流路構造体を用いた実験は、伝熱ブロックの長方対に埋め込まれた熱電対の温度分布および温度勾配から,伝熱面温度および除熱熱流束を求めることを基本とするものである。
先ず、この流路構造体について説明する。
図1(b)において、符号10は「被冷却物」である高発熱体を示す。高発熱体10は銅製で、その上面の平面状部分の周辺部分を一段切り欠き、この部分に断熱材11Aと耐熱シリコン11Bとを設け、残りの部分を被冷却面(伝熱面とも言う)10Aとした。被冷却面10Aのサイズは冷却液の流通方向である図の左右方向において50mm、図面に直交する方向である幅方向に20mmである。
管状流路を構成する部材12はステンレスで、管状流路16の「冷却液の流通方向に直交する断面形状」は、管状流路の内側の寸法で言えば、図の上下方向の高さが5mm、図面に直交する方向の幅が24mmの矩形形状で、流通方向の長さは500mmである。
管状流路16の前記高さは、冷却面全体を覆い押し潰されたように接触状態で形成される合体気泡の厚みが3.5mm〜4mm程度であることに基づいて設定したものである。
また、前記被冷却面の上流側末端部に繋がる管状流路部の長さが225mmであり、この長さが冷却液の「助走区間」として機能して乱流を形成させることができる。
流路部材12の下方部分を切り欠き、切り欠いた部分に高発熱体10の上部をぴったりと嵌め込み、被冷却面10Aと管状流路16の管壁が同一面となるようにした。
一方、流路部材12の上部の「被冷却面に対向する部分」を切り欠き、この部分に透明なアクリル板14を嵌め込んで「観察用窓」とした。該アクリル板14の内側の面は、管状流路の管壁の一部を構成し、図の如く剛針N1、N2、・・Ni・・で表される剛針群が予め設けられている。
個々の剛針Niとして、断面形状が直径1.0mmの円形状で長さ5mm強のステンレス製の針状体を用い、剛針Niの先端部を加熱し、アクリル板14の流路側面(管壁)に押し込んだ後冷却し、突出した先端部を被冷却面10Aに当接させずわずかな隙間が空くように近接し、流路内に突出する長さが5mm弱となるように固定した。
剛針Niは、流通方向へ5mm間隔で11本を直線状に配列し、これを1列として、幅方向に配置する列の数を1列から7列まで変えたものと、剛針群がないものと合わせて合計8つの流路構造体試料を準備した。
なお、流路幅方向(図面に直交する方向)の剛針群の配列は、剛針郡列が1つだけの試料を除いて、6つの試料すべてについて列同士の間隔を3.3mmに統一し、また、剛針郡が1列、3列、5列及び7列の試料については、中央の剛針郡列が被冷却面10Aの流路方向の中央線と一致するように、2列、4列及び6列のについては、前記中央線をベースに均等に分けて、設置される。
「冷却液」としては「純水」をサブクール度40K(液温:60℃)にサブクールして用い、流入側(図の左方)の圧力を1.1気圧程度、出口側圧力を1気圧程度として、平均流速500mm/秒に調整した。
上記の7つの流路構造体試料を用いて、剛針の配列数をパラメータとして変化させ、被冷却面10Aにおける冷却液流通の上流側端部(端から5mmの箇所)と、中央部と、下流側端部(端から5mmの箇所)の3箇所における「熱流束」と、管状流路内の圧力変動における最大瞬間圧力と平均圧力とを調べた。結果を図1(c)に示す。
図1(c)における左側の縦軸は「熱流束」、右側の縦軸は「圧力」を、また横軸は配列された剛針の数を表す。
M=1(11本)、M=2(22本)、M=3(33本)、M=4(44本)、M=5(55本)およびM=7(77本)の剛針群配列の各々の試料(Mは剛針の列数を表す)につき、熱流束及び最大瞬間圧力と平均圧力を測定した(圧力計として、豊田工機製の半導体圧力変換機を用いた)。
グラフ線FUは被冷却面10Aにおける「冷却液の流通方向における上流側端部」における熱流束を表し、グラフ線FCは被冷却面10Aにおける「冷却液の流通方向における中央部」における熱流束を表し、グラフ線FDは被冷却面10Aにおける「冷却液の流通方向における下流側端部」における熱流束を表している。
これらのグラフ線FU、FC、FDの様子から明らかなように、得られる熱流束は400〜500W/cm2(4〜5MW(メガワット)/m)を維持し、被冷却面の冷却液流路位置によって変わりがなく、また、流路に形成された剛針群を構成する剛針の配列数は、熱流束に実質的に影響せず、剛針群の存在の有無に拘わらず、上記の熱流束が得られていることが分かる。
一方、図1(c)におけるグラフ線Pは、管状流路16内における「圧力変動の最大瞬間圧力」を、 グラフ線MPは、管状流路16内における「圧力変動の平均圧力」をそれぞれ表わしている。グラフ線P、MPから明らかなように、剛針群を構成する剛針の配列数が増加するに伴い、最大瞬間圧力と平均圧力は共に急激に減少している。
「平均圧力」は、変動する瞬間圧力を平均したものである。図1(c)は、剛針が少ないほど「変動する瞬間圧力」が高いことを表している。騒音・振動の原因は「瞬間圧力」であり、平均圧力の減少は変動する瞬間圧力が低下していることを意味する。
例えば、剛針群の列が1つ(上記M=1、剛針の数が11本)の場合でも、剛針群を設けない場合に比べて、最大瞬間圧力:Pが略その80%程度まで低減され、剛針の配列数が22本(上記M=2の場合)〜44本(M=4)の範囲では、最大瞬間圧力Pは、剛針群を設けない場合の略800kPaに対し、略その60%程度まで低減され、配列数55本(M=5)〜77本(M=7)の範囲では、最大瞬間圧力は250kPa以下(剛針群を設けない場合に対し、略その30%以下)まで減少し、約70%以上の圧力抑制効果があることが分かった。
また、平均圧力MPは、Mが2〜4の範囲では、剛針群を設けない場合の略510kPaに対し、略その45%程度まで低減され、Mが5〜7の範囲では、剛針群を設けない場合に対し、略その35%以下まで減少している。
次に、上記実験装置の被冷却面10Aの下に3本の熱電対を設置し、これらの熱電対によって測定した温度の勾配から、熱流束と過熱度を算出した。
通常、過熱度は、(過熱度=被冷却面の温度―液の飽和温度)で表され、飽和温度の異なる液も共通に表現される。
図7は冷却液流路の上流側端部について、図8は冷却液流路の下流側端部について、熱流束と過熱度をプロットした図である。
これらの図における横軸の「SuperheatΔTsat」は「過熱度」、縦軸の「Heat flux q」は「熱流束」を表し、図中における「0needl〜77needles」は、剛針群の針数:0〜77(上記のM=0(剛針群なし)〜M=7)を表している。上記の如く、サブクール度は40K、冷却液流速は500mm/秒である。
図7、図8から、冷却液流路の上流側端部・下流側端部とも「熱流束が剛針群の針数に無関係である」ことが明らかである。
図9は、剛針群を設けない場合における「圧力の時間的変化」を示している。図9の如く、1秒以下の「不定周期」で大きな圧力が繰り返し発生しており、最大圧力は800kPaを超える。
図10は、77本の剛針群を設けた場合の「圧力の時間的変化」を示している。図10から明らかなように、大きな圧力は0.1秒以下の不定周期で繰り返し現れるが、その最大のものでも200kPaを超えないことが判る。
図2(b)に示される、観察窓14の部分から冷却液の様子を高速撮影CCDカメラで撮影して観察した。
その結果、剛針群を設けない場合、気泡は次第に成長し、その後合体した大きな合体気泡は上流側から崩壊始め、やがて全く見えなくなるが、77本の剛針群を設けた場合には、気泡は成長するが、合体した気泡はかなり小さいものに留まっていることが観察された。
さらに、本発明の気泡微細化沸騰において、気泡の崩壊が極めて高い速度で起こるためにその状態を精確に確認するのは困難であるが、上記CCDカメラによれば、気泡の成長が剛針群のそれぞれの格子内に分割されているかのように観察され、このことは気泡が各格子内で崩壊するため、その気泡の崩壊時に発生する最大瞬間圧力は、剛針群を設けない場合の大きな気泡の崩壊時に発生する最大瞬間圧力に比べて極めて小さいものになると考えられる。
図14は、剛針を設けた場合と設けない場合について、気泡が発生してから崩壊するまでの気泡の変化を、捉えた高速度写真(7000コマ/秒)である。
(b)に示すように、剛針群を7列の77本設置した場合には、剛針群によって合体気泡が細かい気泡に分断されて崩壊する様子が観られるが、(a)に示すように、剛針なしの被冷却面の場合には、剛針群を設けた場合と異なり、大きな合体気泡が一度に崩壊する様子が観られる。
(実験例2)
実験例1において、平均流速を300mm/秒に変更し、同じ流路構造体で、剛針群がない流路構造体と、剛針群の列数(M)が、1つ、3つ、5つ、7つの5つの流路構造体を用いる以外、同じ条件で気泡微細化沸騰実験を行った。
その結果、剛針列が増加しても、最大熱流束は略350〜450W/cmの範囲の値を維持し、剛針数によって変化しないことが確認された。
一方、合体気泡の崩壊圧力については、剛針列が増加するに従がって低減し、最大瞬間圧力Pは、剛針群を設けない場合が略400kPaに対し、剛針群を1列設けると略310kPa(77%)に低減し、3列で略270kPa(67%)、5列で略210kPa(52%)に順次低減し、剛針群が7列になると、略160kPa(40%)に低減し、約60%の圧力抑制効果があることが分かった。
また、平均圧力MPは、剛針群を設けない場合の略125kPaに対し、剛針群が7列になると、略70kPa(56%)に低減した。
しかしながら、実験例1と比較すると、冷却液の平均流速が遅くなるに伴って、針群がない場合にも除熱熱流束および瞬間圧力が共に低くなるが、針群の列数(針の数)の増加に伴う流路内圧力減少率も減少することが、図15から明確である。
すなわち、図15は、除熱熱流束および瞬間圧力について、平均流速を300mm/秒に設定した場合(b)と、平均流速を500mm/秒に設定した場合(a)[図1(c)と同じ]とを比較のために示したものである。
(実験例3)
実験例1において、サブクール度が20Kの冷却液に変更し、同じ流路構造体で、剛針群がない流路構造体と、剛針群の列数(M)が、1つ、3つ、5つ、7つの4つの流路構造体を用いる以外、同じ条件で気泡微細化沸騰実験を行った。
その結果、剛針列が増加しても、最大熱流束は略300〜400W/cm2の範囲の値を維持し、剛針数によって変化しないことが確認された。
一方、合体気泡の崩壊圧力については、最大瞬間圧力Pは、剛針群を設けない場合が略380kPaに対し、剛針群を1列設けると略190kPa(50%)に低減し、3列と5列では略160kPa(47%)となり、剛針群が7列になると、略160kPa(40%)に低減し、約60%の圧力抑制効果があることが分かった。
また、平均圧力MPは、剛針群を設けない場合の略135kPaに対し、剛針群が7列になると、略45kPa(33%)に低減した。
しかしながら、実験例1と比較すると、冷却液のサブクール度が20Kに減少すると、針群がない場合にも除熱熱流束および瞬間圧力が共に大きく低下するが、針群の列数(針の数)の増加に伴う流路内圧力減少率も低くなり、騒音・振動抑制効果が大きくかつ冷却効率の高い安定な沸騰冷却が得られにくくなる。
サブクール度が20Kの冷却液を用いると、特に下流側では所期の除熱熱流束が安定に得られない傾向があり、長さ50mm×20mmの被冷却面(伝熱面)を用いて0.5m/秒の平均流速で冷却液を流して冷却する場合には、サブクール度20Kが所期の効果が得られる限界点であると推察される。
図16は、除熱熱流束および瞬間圧力について、サブクール度が20Kの場合(b)と、サブクール度が40Kの場合(a)[図1(c)と同じ]とを比較のために示したものである。
(実験例4)
実験例4は、図2に示される流路構造体を用いて行われた。
この流路構造体は、実験例1で用いた図1(b)に示される流路構造体の、流路部材12の上部の「被冷却面に対向する部分」を切り欠いて、この部分に透明なアクリル板14を嵌め込んで「観察用窓」とした部分を、切り欠きを行わずに「観察用窓」を設けず、かつ、剛針群を蝋付けにより固定した以外は、同じものである。
この流路構造体を用い、実験例1と同じ条件で気泡微細化沸騰実験を行い、その結果、略400〜500W/cm2の範囲の最大熱流束を維持し、一方、最大瞬間圧力Pは、剛針群を設けない場合の800kPa以上に対し、剛針を7列設けた場合には、圧力最大値250kPa以下まで減少し(剛針群を設けない場合に対し、その略30%)、略70%の圧力抑制効果があり、振動・騒音は「全く気にならないレベル」であった。
発明の原理を説明するための図である。 流路構造体の実施の1形態を示す断面模式図である。 流路構造体の変形例の特徴部分を説明するための図である。 沸騰冷却装置の実施の1形態を説明するための図である。 図4の装置例おける制御系統を説明するための図である。 気泡微細化沸騰冷却を説明するための図である。 冷却液流路の上流側端部における熱流束と過熱度をプロットした図である。 冷却液流路の下流側端部における熱流束と過熱度をプロットした図である。 実験装置に用いる流路構造体において剛針群の配列を用いない場合の圧力の変動を示す図である。 実験装置に用いる流路構造体において剛針群の配列を用いる場合の圧力の変動を示す図である。 図6(a)で示した概念を分かり易く詳細に説明した図である。 実験装置の概念図である。 流路構造体の実施の1形態を示す断面模式図である。 気泡崩壊状態を捉えた高速度写真である。 冷却液の平均流速の違いによる除熱熱流束および瞬間圧力変動を比較するためのグラフである。 冷却液のサブクール度の違いによる除熱熱流束および瞬間圧力変動を比較するためのグラフである。 本発明の流路構造体が複数個組み合わせて構成された冷却装置の具体例である。 本発明の流路構造体が複数個組み合わせて構成された冷却装置の具体例である。
符号の説明
10 被冷却物
10A 被冷却面(伝熱面)
12A 流路構造体の一部を構成する流路部材
16 管状流路
Ni 剛針群を構成する剛針

Claims (22)

  1. 被冷却物の表面もしくは該表面に密接する伝熱部材の表面を被冷却面とし、1つの該被冷却面が設けられた管状流路に沿ってサブクールされた冷却液を平行流で流通させ、加熱した前記被冷却面で該冷却液が沸騰して発生する気泡を成長させて、前記被冷却面に押し潰されたように全面を覆い接触状態に形成される合体気泡を前記冷却液によって凝縮崩壊させ、該凝縮崩壊を繰り返し行わせることによって、限界流束が得られる温度より高い温度で熱流束除熱を行う気泡微細化沸騰冷却方法であって、前記管状流路として、前記管状流路の該流路内壁に規則的に固定され、該流路内の前記被冷却面に向けて又は前記被冷却面上に突設させた凸部材群を有し、かつ下記(1)〜(3)の条件を備えた流路構造体を用い、前記凸部材群の少なくとも一部が前記合体気泡内に入り込む状態で凝縮崩壊させることによって、前記合体気泡の崩壊時に発生する圧力を低減させることを特徴とする気泡微細化沸騰冷却方法。
    (1)被冷却面が管状流路内壁の一部かつ同一面を構成する。
    (2)被冷却面の長さが、流通する冷却液のサブクール度に被冷
    却面の上流側と下流側との間で差が生じない程度に調整された
    ものである。
    (3)被冷却面が位置する管状流路の高さが、押し潰されたように形成
    される合体気泡の厚みに合わせ調整されたものである。
  2. 前記管状流路を流通する冷却液が乱流であることを特徴とする請求項1に記載の気泡微細化沸騰冷却方法。
  3. 前記凸部材群が棒状体群であって、該流路内の前記被冷却面に向けて、先端部が前記被冷却面に近接するように突設させた流路構造体を用いる
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の気泡微細化沸騰冷却方法。
  4. サブクール度が20〜60Kの冷却液を前記サブクール度に応じて平均流速1.0〜0.2m/秒で流動させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の気泡微細化沸騰冷却方法。
  5. 前記冷却液が水あるいはアルコール、もしくは、水とアルコールとの混合液、または、フッ素系不活性液体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の気泡微細化沸騰冷却方法。
  6. 前記管状流路内の空気量が0〜20%になるように前記冷却液を調整し流動させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の気泡微細化沸騰冷却方法。
  7. 被冷却物の表面もしくは該表面に密接する伝熱部材の表面を被冷却面とし、1つの該被冷却面が設けられた管状流路に沿ってサブクールされた冷却液を平行流で流通させ、加熱した前記被冷却面で該冷却液が沸騰して発生する気泡を成長させて、前記被冷却面に押し潰されたように全面を覆い接触状態に形成される合体気泡を前記冷却液によって凝縮崩壊させ、該凝縮崩壊を繰り返し行わせることによって、限界流束が得られる温度より高い温度で熱流束除熱を行う気泡微細化沸騰冷却方法に用いられる沸騰冷却装置であって、前記管状流路として、前記管状流路の該流路内壁に規則的に固定され、該流路内の前記被冷却面に向けて又は前記被冷却面上に突設させた凸部材群を有し、かつ下記(1)〜(3)の条件を備えた流路構造体が搭載されて、合体気泡の崩壊時に発生する圧力を低減させる機能を有することを特徴とする気泡微細化沸騰冷却装置。
    (1)被冷却面が管状流路内壁の一部かつ同一面を構成する。
    (2)被冷却面の長さが、流通する冷却液のサブクール度に被冷
    却面の上流側と下流側との間で差が生じない程度に調整された
    ものである。
    (3)被冷却面が位置する管状流路の高さが、押し潰されたように形成
    される合体気泡の厚みに合わせ調整されたものである。
  8. 前記被冷却面の上流側末端部に繋がる管状流路部が、流動する冷却液に乱流を形成させるための助走区間として機能する長さを有することを特徴とする請求項7に記載の気泡微細化沸騰冷却装置。
  9. 前記凸部材群が棒状体群であって、該流路内の前記被冷却面に向けて、先端部が前記被冷却面に近接するように該棒状体群を突設させた流路構造体が搭載されたことを特徴とする請求項7又は8に記載の気泡微細化沸騰冷却装置。
  10. 前記被冷却面が位置する前記管状流路の高さが、前記冷却液が流動する際の前記管状流路内の空気量が0〜20%になるように調整されたものであることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1に記載の気泡微細化沸騰冷却装置。
  11. サブクール度が20〜60Kの冷却液をサブクール度に応じて平均流速1.0〜0.2m/秒で流通させて行なう気泡微細化沸騰冷却方法に用いられる沸騰冷却装置であって、被冷却面の長さが1〜6cm、被冷却面が位置する管状流路の高さが2〜10mmの流路構造体が搭載されたことを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1に記載の気泡微細化沸騰冷却装置。
  12. 前記棒状群体が格子状に設けられたことを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1に記載の気泡微細化沸騰冷却装置。
  13. 前記棒状体群が前記管状流路の流れ方向に少なくとも2列設けられたことを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1に記載の気泡微細化沸騰冷却装置。
  14. 前記棒状体の先端部が前記被冷却面に0.5mm以下の間隔を設けて近接し設けられたことを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1に記載の気泡微細化沸騰冷却装置。
  15. 前記流路構造体が複数個組み合わせて構成されることを特徴とする請求項7乃至14のいずれか1に記載の気泡微細化沸騰冷却装置。
  16. 前記冷却液を流通される前記管状流路に対し隔壁を隔して管状の副流路が形成され、前記副流路から前記隔壁を通して前記管状流路内に前記冷却液を供給する細管供給部を複数個有する流路構造体が搭載された気泡微細化沸騰冷却装置であって、前記流路構造体の前記管状流路と前記副流路とに前記冷却液を供給・流通させ、前記副流路の側から前記管状流路内へ前記冷却液を供給しつつ主流路である前記管状流路の冷却液と併せて冷却を行うことを特徴とする請求項7乃至15のいずれか1に記載の気泡微細化沸騰冷却装置。
  17. 前記冷却液を前記管状流路に供給して流通させる冷却液供給・流通手段を備えることを特徴とする請求項7乃至16のいずれか1に記載の気泡微細化沸騰冷却装置。
  18. 前記冷却液供給・流通手段が対流式の放熱手段を有し、この放熱手段が、前記流路構造体に流通されて前記被冷却面の冷却に寄与した冷却液の冷却を行うものであることを特徴とする請求項17に記載の気泡微細化沸騰冷却装置。
  19. 請求項7乃至18のいずれか1に記載の気泡微細化沸騰冷却装置に用いられる流路構造体。
  20. 稼動中に熱を発生し該熱の冷却手段を構成要素とする製品であって請求項7乃至18のいずれか1に記載の気泡微細化沸騰冷却装置を前記冷却手段とすることを特徴とする製品。
  21. 発熱体を有し、前記気泡微細化沸騰冷却装置を構成する前記流路構造体の前記管状流路が、前記発熱体の表面を管内壁として一体的に形成された電子素子パッケイジであることを特徴とする請求項20に記載の製品。
  22. 電子素子と伝熱部材とを主構成要素とする高発熱密度電子機器が搭載された、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車、燃料電池発電設備の電力変換制御装置、又はコンピュータもしくはスーパーコンピュータ、又は、鉄道電車あるいは航空機用の電力システムの電力変換制御装置であって、前記気泡微細化沸騰冷却装置を構成する前記流路構造体の前記管状流路が前記伝熱部材の表面を管内壁として形成されたことを特徴とするハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車、燃料電池発電設備の電力変換制御装置又は鉄道電車あるいは航空機用の電力システムの電力変換制御装置であることを特徴とする請求項20に記載の製品。
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