JP2008024644A - 固定床反応装置およびその使用方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
気相接触酸化を行うにあたり、高い収率を維持しながら、圧力損失の増加を抑えて、長期間にわたる安定的な連続操業を可能にする気相接触酸化方法、特に(メタ)アクリル酸の製造方法を提供すること。
【解決手段】
気相接触酸化反応を行うに際して、ガス流れ方向に対して気相酸化触媒層の上流側に有機物および/または炭化物を除去するための処理剤を配置した固定床反応器を用い、該処理剤のすくなくとも一部を年1回以上の頻度で交換する。
【選択図】 なし
気相接触酸化を行うにあたり、高い収率を維持しながら、圧力損失の増加を抑えて、長期間にわたる安定的な連続操業を可能にする気相接触酸化方法、特に(メタ)アクリル酸の製造方法を提供すること。
【解決手段】
気相接触酸化反応を行うに際して、ガス流れ方向に対して気相酸化触媒層の上流側に有機物および/または炭化物を除去するための処理剤を配置した固定床反応器を用い、該処理剤のすくなくとも一部を年1回以上の頻度で交換する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、固定床反応器を用いた気相接触酸化方法に関する。
石油化学工業の分野において、固定床反応器を用いた気相接触酸化反応が数多く実施されているが、これらの気相接触酸化反応に使用される原料は必ずしも高純度のものが使用されているわけではない。
例えば、アクリル酸やメタクリル酸(以下、「(メタ)アクリル酸」という。)の製造においては、まず、第一段目の気相接触酸化工程で炭化水素類を不飽和アルデヒドとし、次に第二段目の気相接触酸化工程で得られた不飽和アルデヒドを(メタ)アクリル酸としているが、通常これらの反応は、途中で不飽和アルデヒドを分離・精製することなく、第一段目の気相接触酸化工程での反応生成ガスをそのまま、あるいは、必要により分子状酸素などを追加したガスを第二段目の気相接触酸化工程に導入して(メタ)アクリル酸としている。したがって、これらの反応では、反応原料中に含まれる不純物に起因して発生する有機物や炭化物(以下、これらを「触媒阻害物質」という。)の第一段目の気相接触酸化用触媒(以下、「前段触媒」という。)への付着・蓄積や、第一段目の反応によって生じる副生物などに起因して発生する触媒阻害物質の第二段目の気相接触酸化用触媒(以下、「後段触媒」という。)への付着・蓄積により、これら触媒を一定期間連続して使用すれば、触媒活性の低下、触媒層での圧力損失の増大により、目的生成物の収率が経時的に低下する等の問題がある。
このような問題を解決する方法として、例えば、特許文献1および2には、定期的に触媒阻害物質を燃焼などの処理により触媒を再生する方法が開示されている。具体的には、定期的に反応を停止し、触媒を反応管に充填したままで、分子状酸素と水蒸気とを含有する混合ガスを流通させながら所定の温度で熱処理することにより、触媒を安全かつ効率よく再生する方法が開示されている。しかし、これらの方法は、確かに触媒を反応管から抜き出すことなく再生することができる利点はあるが、触媒を再生するたびに反応を停止する必要があり、また、高温で処理を行うため触媒に熱負荷がかかるため使用する触媒によっては再生するたびに触媒寿命が低下することもある。反応停止による生産量の低下や触媒寿命の低下を引き起こす方法は経済的に満足できる解決策とは言えず、長期間にわたる安定的な連続操業を可能にする方法が求められている。
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、気相接触酸化を行うにあたり、高い収率を維持しながら、圧力損失の増加を抑えて、長期間にわたる安定的な連続操業を可能にする気相接触酸化方法、特に(メタ)アクリル酸の製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、気相酸化触媒を充填した反応管を有する固定床反応器を用いて気相接触酸化を行うにあたり、触媒層の上流側に反応ガス中の触媒阻害物質を除去するための処理剤を配置し、該処理剤の少なくとも一部を定期的に交換することにより、触媒の劣化がなく、高い収率を維持しながら、触媒層での圧力損失の増加を抑えて、長期間にわたる安定的な連続操業が可能になることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、気相接触酸化反応を継続して行う際して、ガス流れ方向に対して気相酸化触媒層の上流側に反応ガス中の触媒阻害物質を除去するための処理剤を配置した固定床反応器を用い、該処理剤の少なくとも一部を年1回以上の頻度で交換することを特徴とする気相接触酸化方法を提供する。本発明の気相接触酸化方法において、前記処理剤は前記反応管内および/または反応器上部管板の上部に配置されていることが好ましい。
また、本発明の気相接触酸化方法において、前記処理剤のすくなくとも一部に再生品を用いれば製造コストの低減につながるため好ましい。
本発明は、プロピレンを触媒の存在下、分子状酸素により二段階で気相接触酸化してアクリル酸を製造する際に好適に用いられる。当該、プロピレンを触媒の存在下、分子状酸素により二段階で気相接触酸化で行うには、例えば、タンデム式のリアクター(反応器)を採用すればよい。
本発明の気相接触酸化方法を用いれば、触媒阻害物質の触媒への付着を抑制することができ、反応を頻繁に停止することなく、触媒の劣化がなく、高い収率を維持しながら、圧力損失の増加を抑えて、長期間にわたり連続して安定的な気相接触酸化を行うことができる。
それゆえ、本発明の製造方法によれば、アクリル酸の大幅な製造コスト低下が期待できる。
本発明の気相接触酸化方法は、気相酸化触媒(以下、単に「触媒」ということがある。)を充填した反応管を有する固定床反応器を用い、原料化合物および/または生成化合物を含むガス流路に(以下、単に「反応器内に」ということがある。)触媒阻害物質を除去するための処理剤を配置し、該処理剤の少なくとも一部を年1回以上の頻度で交換することを特徴とする気相接触酸化方法である。
ここで、「固定床反応器」とは、反応管に静止充填された気相酸化触媒の存在下で、前記反応管のガス入口から供給された原料ガスを気相接触酸化して、前記反応管のガス出口から最終生成物含有ガスを排出する容器を意味し、それ自体が独立した容器であっても、あるいは、製造プラントに組み込まれた容器であってもよい。
本発明で用いるの固定床反応器は、反応器内に触媒阻害物質を除去するための処理剤が配置されていること以外は、一般的な気相接触酸化用の固定床反応器と実質的に同様の構成を有するものであり、特に限定されるものではない。それゆえ、本発明の固定床反応器は、例えば、触媒を多数の細径反応管に充填した多管式反応器や、触媒を1本の太径反応管に充填した断熱型反応器のいずれであってもよい。
本発明においては上記処理剤を定期的に抜き出し交換するものであるが、その交換頻度は、少なくとも年1回以上交換するのが好ましく、より好ましくは年2回以上である。処理剤を長期間交換せずに連続使用した場合、触媒阻害物質の除去が不完全になり、触媒層にも触媒阻害物質が付着するため、触媒の活性低下や圧力損失の増大などの不具合が生じる。
また、1回の交換時の交換量は、使用状況により適宜選択でき、処理剤の一部または全量を交換すればよい。
また交換方法としては、公知の交換方法を採用すればよい。例えば、特開2002−301355号記載のように、反応管上部より、吸引管を使用し処理剤を吸引すればよい。また、国際公開番号WO98/02239号のように、反応管に、加圧気体を導入しながら当該処理剤を吸引を行ってもよい。また当該処理剤の交換に際しては、新品もしくは再生品が使用できる。
ここで、「再生品」とは、一度使用した処理剤を抜き出し後、熱処理や洗浄により、処理剤に付着した触媒阻害物質を除去した物を意味し、熱処理や洗浄の条件は、特に限定されるものではなく、触媒阻害物質の付着量に応じて適宜決めることができる。
熱処理としては、処理剤に付着した触媒阻害物質が燃焼などで除去でき、かつ処理剤が変質しない雰囲気、温度、時間であれば良く、通常分子状酸素含有ガスの雰囲気下、300〜700℃で2〜72時間程度行えばよく、好ましくは空気雰囲気下、350〜600℃で3〜24時間行えばよい。
洗浄としては、処理剤に付着した触媒阻害物質が除去でき、かつ処理剤が変質しない条件であれば良く、酸やアルカリ水溶液あるいは有機溶剤による洗浄が挙げられる。また、洗浄に際しては加熱することで洗浄効果が向上する。
本発明に用いられる処理剤は、反応原料中に含まれる不純物や第一段目の反応によって生じる副生物などに起因して発生する有機物や炭化物を除去できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ニオブ(Nb)から選ばれる少なくとも1種の元素を含む酸化物、複合酸化物または炭酸塩(以下、「(複合)酸化物等」という)あるいはこれらの混合物が例示され、具体的には、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、シリカ・アルミナ、シリカ・チタニア、シリカ・酸化亜鉛、シリカ・ジルコニア、アルミナ・チタニア、アルミナ・酸化亜鉛、アルミナ・ジルコニア、チタニア・ジルコニア、酸化亜鉛・ジルコニア、ゼオライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
これらの処理剤のうち、アルミニウム、ケイ素、チタンおよびジルコニウムから選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物あるいは複合酸化物、中でもアルミニウムとケイ素とを含む複合酸化物が特に好適である。
また、処理剤は、上記「(複合)酸化物等」を2種以上含む混合物の形態や、上記「(複合)酸化物等」を異種の上記「(複合)酸化物等」に担持させた形態、あるいは、上記「(複合)酸化物等」とそれ以外の固体との混合物の形態や、上記「(複合)酸化物等」をそれ以外の固体に担持させた形態であってもよい。
処理剤は、(複合)酸化物等の構成元素を含む原料から調製すればよい。例えば、上記(複合)酸化物等のうち、アルミニウムとシリカとを含む複合酸化物である処理剤は、例えば、アルミナ粉体とアルミナゾルとコロイド状シリカとの混合物を所望の形状に成形した後、焼成することにより調製することができる。
この場合、アルミナ粉体とアルミナゾルとコロイド状シリカとの合計量100質量部に対して、アルミナ粉体とアルミナゾルとの合計量は、60質量部以上、97質量部以下、好ましくは70質量部以上、95質量部以下、より好ましくは80質量部以上、90質量部以下であり、コロイド状シリカの配合量は、3質量部以上、40質量部以下、好ましくは5質量部以上、30質量部以下、さらに好ましくは10質量部以上、20質量部以下である。
また、アルミナ粉体とアルミナゾルとの合計量100質量部に対して、アルミナ粉体の配合量は、60質量部以上、97質量部以下、好ましくは70質量部以上、96質量部以下、さらに好ましくは85質量部以上、95質量部以下であり、アルミナゾルの配合量は、3質量部以上、40質量部以下、好ましくは4質量部以上、30質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上、15質量部以下である。
焼成温度は、好ましくは600℃以上、1300℃以下、より好ましくは650℃以上、1200℃以下、さらに好ましくは700℃以上、1100℃以下である。焼成時間は、好ましくは0.5時間以上、50時間以内、より好ましくは1時間以上、20時間以内である。
処理剤の形状は、特に限定されるものではなく、任意の形状を選択すればよいが、具体的は、例えば、球状、円柱状、円筒状、星形状、リング状、タブレット状、ペレット状など、通常の打錠成形機、押出成形機、造粒機などで成形されるものが挙げられる。処理剤の寸法は、小さすぎると、圧力損失が大きくなり、反応を効率的に行えないことがあり、逆に大きすぎると、触媒阻害物質の除去が不充分となることがある。それゆえ、その平均直径で、好ましくは1mm以上、15mm以下、より好ましくは2mm以上、12mm以下、さらに好ましくは3mm以上、10mm以下である。
処理剤の使用量は、使用する処理剤の種類、比重および形状、ならびに、触媒の種類、比重、形状および使用量などに応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、少なすぎると、触媒阻害物質の除去が充分に行われないことがあり、逆に多すぎると、必要以上に処理剤を用いることになり、製造コストの上昇に繋がることがある。それゆえ、処理剤の使用量は、処理剤:触媒の比率(体積比)で、好ましくは1:0.5〜100、より好ましくは1:2〜50、さらに好ましくは1:3〜30である。
本発明で用いる固定床反応器において、反応器内に処理剤を配置する箇所は、触媒阻害物質の触媒への付着を抑制するのに適した箇所であり、処理剤のみを抜き出し再充填し得る限り、特に限定されるものではない。好ましくは、触媒層の温度すなわち反応温度よりもガス温度が低い箇所に配置すれば触媒阻害物質の除去効果が高まるため、反応管の上端部、具体的には反応管内の触媒層の上部または反応器の上管板の上部に配置するのが好適である。
本発明の気相接触酸化としては、例えば、オレフィンなどから不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸を製造する気相接触酸化、不飽和アルデヒドから不飽和カルボン酸を製造する気相接触酸化、オレフィンとアンモニアとから不飽和ニトリルを製造する気相接触酸化などが挙げられる。
本発明はこれらの気相接触酸化のうち、オレフィンなどから不飽和アルデヒドを経由して不飽和カルボン酸を製造する気相接触酸化反応に好適に使用され、中でも、プロピレンからアクロレインを経由してアクリル酸を製造する気相接触酸化が特に好適である。
さらに、これらのプロピレンからアクロレインを経由したアクリル酸の製造においては、プロピレン中に含まれる不純物による前段触媒に対する影響に比較して、第一段目の反応によって生じる副生物などによる後段触媒に対する影響が顕著であり、二段目のアクロレインからアクリル酸の製造に好適に使用される。
気相接触酸化に用いる触媒としては、この種の反応に一般的に用いられている触媒である限り、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、プロピレンからアクロレインを生成させる気相接触酸化に用いる触媒としては、下記式(1):
MoaWbBicFedAeBfCgDhOx (1)
[式中、Moはモリブデン、Wはタングステン、Biはビスマス、Feは鉄、Aはニッケルおよびコバルトから選択される少なくとも1種の元素、Bはアルカリ金属、アルカリ土類金属およびタリウムから選択される少なくとも1種の元素、Cはリン、ヒ素、ホウ素およびニオブから選択される少なくとも1種の元素、Dはケイ素、アルミニウムおよびチタンから選択される少なくとも1種の元素、Oは酸素であり、a、b、c、d、e、f、g、hおよびxは各々Mo、W、Bi、Fe、A、B、C、DおよびOの原子比を表し、2≦a≦10、0≦b≦10、a+b=12のとき、0.1≦c≦10、0.1≦d≦10、1≦e≦20、0.005≦f≦3、0≦g≦4、0≦h≦15であり、xは各元素の酸化状態により定まる数値である]で示される複合酸化物触媒が好適である。
MoaWbBicFedAeBfCgDhOx (1)
[式中、Moはモリブデン、Wはタングステン、Biはビスマス、Feは鉄、Aはニッケルおよびコバルトから選択される少なくとも1種の元素、Bはアルカリ金属、アルカリ土類金属およびタリウムから選択される少なくとも1種の元素、Cはリン、ヒ素、ホウ素およびニオブから選択される少なくとも1種の元素、Dはケイ素、アルミニウムおよびチタンから選択される少なくとも1種の元素、Oは酸素であり、a、b、c、d、e、f、g、hおよびxは各々Mo、W、Bi、Fe、A、B、C、DおよびOの原子比を表し、2≦a≦10、0≦b≦10、a+b=12のとき、0.1≦c≦10、0.1≦d≦10、1≦e≦20、0.005≦f≦3、0≦g≦4、0≦h≦15であり、xは各元素の酸化状態により定まる数値である]で示される複合酸化物触媒が好適である。
また、アクロレインからアクリル酸を生成させる気相接触酸化に用いる触媒としては、下記式(2):
MomVnQqRrSsTtOy (2)
[式中、Moはモリブデン、Vはバナジウム、Qはタングステンおよびニオブから選択される少なくとも1種の元素、Rは鉄、銅、ビスマス、クロムおよびアンチモンから選択される少なくとも1種の元素、Sはアルカリ金属およびアルカリ土類金属から選択される少なくとも1種の元素、Tはケイ素、アルミニウムおよびチタンから選択される少なくとも1種の元素、Oは酸素であり、m、n、q、r、s、tおよびyは各々Mo、V、Q、R、S、TおよびOの原子比を表し、m=12のとき、2≦n≦14、0≦q≦12、0≦r≦6、0≦s≦6、0≦t≦30であり、yは各元素の酸化状態により定まる数値である]で示される複合酸化物触媒が特に好適である。
MomVnQqRrSsTtOy (2)
[式中、Moはモリブデン、Vはバナジウム、Qはタングステンおよびニオブから選択される少なくとも1種の元素、Rは鉄、銅、ビスマス、クロムおよびアンチモンから選択される少なくとも1種の元素、Sはアルカリ金属およびアルカリ土類金属から選択される少なくとも1種の元素、Tはケイ素、アルミニウムおよびチタンから選択される少なくとも1種の元素、Oは酸素であり、m、n、q、r、s、tおよびyは各々Mo、V、Q、R、S、TおよびOの原子比を表し、m=12のとき、2≦n≦14、0≦q≦12、0≦r≦6、0≦s≦6、0≦t≦30であり、yは各元素の酸化状態により定まる数値である]で示される複合酸化物触媒が特に好適である。
気相接触酸化の反応条件としては、反応器内に処理剤を配置すること以外は、一般的な気相接触酸化の反応条件と実質的に同様の反応条件を採用すればよく、特に限定されるものではない。
本発明の製造方法において、目的生成物のアクリル酸は、原料化合物のプロピレンを分子状酸素で気相接触酸化して前駆体物質のアクロレインを生成させ、次いで、アクロレインを分子状酸素で気相接触酸化することにより製造される。
この製造には、好ましくは、プロピレンを分子状酸素で気相接触酸化してアクロレインを生成させる前段触媒を充填した反応管と、アクロレインを分子状酸素で気相接触酸化してアクリル酸を生成させる後段触媒を充填した反応管とを有する固定床反応器が用いられる。この固定床反応器において、処理剤は、ガス流通方向において、前段触媒あるいは後段触媒の上流側に配置することができ、好ましくは前段触媒の下流側でかつ後段触媒の上流側に配置される。いずれの場合も、前記触媒への触媒阻害物質の付着を抑制することができる。
気相接触酸化の反応条件としては、反応器内に処理剤を配置すること以外は、気相接触酸化によるアクロレインまたはアクリル酸の製造に一般的に用いられている反応条件と実質的に同様の反応条件を採用すればよく、特に限定されるものではない。
例えば、原料ガスとして、1体積%以上、15体積%以下、好ましくは4体積%以上、12体積%以下の原料化合物と、この原料化合物に対する体積比で1倍以上、10倍以下、好ましくは1.5倍以上、8倍以下の分子状酸素と、希釈剤として、不活性ガス(例えば、窒素、二酸化炭素、水蒸気など)とからなる混合ガスを、250℃以上、450℃以下、好ましくは260℃以上、400℃以下の温度で、常圧以上、1MPa以下、好ましくは0.8MPa以下の圧力下、300h-1以上、5000h-1以下、好ましくは500h-1以上、4000h-1以下の空間速度(STP)で、触媒と接触させて反応させればよい。
本発明によれば、下記実施例で示すように、気相接触酸化を行うにあたり、触媒の劣化がなく、高い収率を維持しながら、圧力損失の増加を抑えて、長期間にわたる安定的な連続操業が可能である。それゆえ、本発明の製造方法によれば、アクロレインまたはアクリル酸を高い収率で効率的かつ安定的に得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
<気相酸化触媒の調製>
実験に用いた気相酸化触媒、すなわちプロピレンを分子状酸素で気相接触酸化してアクロレインを生成させるのに用いたプロピレン酸化用触媒(以下「前段触媒」という。)およびアクロレインを分子状酸素で気相接触酸化してアクリル酸を生成させるのに用いたアクロレイン酸化用触媒(以下「後段触媒」という。)は、特開昭64−63543号公報の実施例1に記載の方法に準じて調製した。
実験に用いた気相酸化触媒、すなわちプロピレンを分子状酸素で気相接触酸化してアクロレインを生成させるのに用いたプロピレン酸化用触媒(以下「前段触媒」という。)およびアクロレインを分子状酸素で気相接触酸化してアクリル酸を生成させるのに用いたアクロレイン酸化用触媒(以下「後段触媒」という。)は、特開昭64−63543号公報の実施例1に記載の方法に準じて調製した。
これらの触媒の担体を除く酸素以外の組成は、原子比で以下の通りであった。
前段触媒 Co4Fe1Bi1W2Mo10Si1.35K0.06
後段触媒 Mo12V4.6Cu2.2Cr0.6W2.4
<触媒層の圧力損失の測定>
本発明における圧力損失は、反応管下部を開放した状態で、空気を30L(リッター)/分(標準状態)で反応管上部から導入した時の圧力を測定し、初期との圧力差を求めた。
前段触媒 Co4Fe1Bi1W2Mo10Si1.35K0.06
後段触媒 Mo12V4.6Cu2.2Cr0.6W2.4
<触媒層の圧力損失の測定>
本発明における圧力損失は、反応管下部を開放した状態で、空気を30L(リッター)/分(標準状態)で反応管上部から導入した時の圧力を測定し、初期との圧力差を求めた。
<触媒性能>
下記式で定義されるアクリル酸収率により評価した。
アクリル酸収率(モル%)
=(生成したアクリル酸のモル数/供給したプロピレンのモル数)×100。
下記式で定義されるアクリル酸収率により評価した。
アクリル酸収率(モル%)
=(生成したアクリル酸のモル数/供給したプロピレンのモル数)×100。
<実施例1>
まず、平均粒子径5μmのアルミナ粉体75質量部と、バインダーとしてメチルセルロース5質量部とをニーダーに投入し、十分混合した。次いで、この混合物に平均粒子径10nmのアルミナゾルをAl2O3として8質量部と、平均粒子径10nmのコロイド状シリカをSiO2として17質量部とを添加し、さらに適量の水を添加、混合した。この混合物を押出成形し、乾燥させた後、1000℃で2時間焼成して、平均値として外径7mm、長さ7mmの円柱状のアルミナ−シリカ処理剤(A)を得た。
まず、平均粒子径5μmのアルミナ粉体75質量部と、バインダーとしてメチルセルロース5質量部とをニーダーに投入し、十分混合した。次いで、この混合物に平均粒子径10nmのアルミナゾルをAl2O3として8質量部と、平均粒子径10nmのコロイド状シリカをSiO2として17質量部とを添加し、さらに適量の水を添加、混合した。この混合物を押出成形し、乾燥させた後、1000℃で2時間焼成して、平均値として外径7mm、長さ7mmの円柱状のアルミナ−シリカ処理剤(A)を得た。
内径25mm、長さ3000mmで外部に熱媒が循環用のジャケット付き鋼鉄製反応管を2本用意し、一方の反応管には下から空筒部500mm、前段触媒2450mmとなる
ように前段触媒を充填した(以下、第1反応管という。)。別の反応管には、下から後
段触媒2000mm、処理剤(A)500mmとなるように後段触媒および上記処理剤(
A)を充填した。(以下第2反応管という。)。2つの反応管の上端部を、外部から電
気ヒーターで加熱できるようにした内径20mm、長さ4000mmの鋼鉄製パイプで連結した。
ように前段触媒を充填した(以下、第1反応管という。)。別の反応管には、下から後
段触媒2000mm、処理剤(A)500mmとなるように後段触媒および上記処理剤(
A)を充填した。(以下第2反応管という。)。2つの反応管の上端部を、外部から電
気ヒーターで加熱できるようにした内径20mm、長さ4000mmの鋼鉄製パイプで連結した。
次いで、第1反応管の下端から、プロピレン5体積%、酸素10体積%、水蒸気25体積%および窒素60体積%からなる混合ガスを原料ガスとして、前段触媒に対する空間速度2200h-1(標準状態)で導入し、気相接触酸化を行った。このとき、第1反応管における反応温度(熱媒温度)を325℃、第2反応管における反応温度(熱媒温度)を260℃であり、連結管は170℃に保温した。
4000時間毎に処理剤(A)を交換しながら、上記反応装置を用いてプロピレンの気相接触酸化反応を9600時間継続して行った。4000時間経過時点、8000時間経過時点、9600時間経過時点で、第2反応管出口ガスの分析および処理剤(A)を抜き出した後の後段触媒層の圧力損失を測定した。4000時間経過時点、8000時間経過時点では後段触媒層の圧力損失の測定後、新しい処理剤(A)を再度充填して連続して行った。
結果、後段触媒層の圧力損失は、反応初期に比べて増加は見られなかった。また、処理剤(A)を抜き出す前のアクリル酸の収率は、それぞれ88.7モル%、87.2モル%、86.6モル%であった。
<実施例2>
8000時間経過後にのみ処理剤を交換した以外は実施例1と同様にプロピレンの気相接触酸化反応を連続して行った。8000時間反応を継続した後、処理剤を抜き出し、触媒層の圧力損失を測定した結果、初期に対する圧力損失の増加は、0.1kPaであった。また、その際のアクリル酸収率は、85.6モル%であった。
8000時間経過後にのみ処理剤を交換した以外は実施例1と同様にプロピレンの気相接触酸化反応を連続して行った。8000時間反応を継続した後、処理剤を抜き出し、触媒層の圧力損失を測定した結果、初期に対する圧力損失の増加は、0.1kPaであった。また、その際のアクリル酸収率は、85.6モル%であった。
<比較例1>
処理剤を交換しなかった以外は実施例1と同様にしてプロピレンの気相接触酸化反応を9600時間連続して行った。9600時間経過後、処理剤を抜き出し触媒層の圧力損失を測定した結果、初期に対する圧力損失の増加は、2.1kPaであった。また、その際のアクリル酸収率は、82.7モル%であった。
処理剤を交換しなかった以外は実施例1と同様にしてプロピレンの気相接触酸化反応を9600時間連続して行った。9600時間経過後、処理剤を抜き出し触媒層の圧力損失を測定した結果、初期に対する圧力損失の増加は、2.1kPaであった。また、その際のアクリル酸収率は、82.7モル%であった。
<実施例3〜6>
実施例1において、処理剤として、コロイド状シリカに代えて、それぞれ炭酸マグネシウム(実施例3)、炭酸カルシウム(実施例4)、酸化ジルコニウム(実施例5)を用いて調製したものあるいはアルミナに代えて酸化チタンを用いて調製したものとした以外は実施例1と同様の試験を行った。
結果、いずれの場合も後段触媒層の圧力損失の増加は認められなかった。
実施例1において、処理剤として、コロイド状シリカに代えて、それぞれ炭酸マグネシウム(実施例3)、炭酸カルシウム(実施例4)、酸化ジルコニウム(実施例5)を用いて調製したものあるいはアルミナに代えて酸化チタンを用いて調製したものとした以外は実施例1と同様の試験を行った。
結果、いずれの場合も後段触媒層の圧力損失の増加は認められなかった。
<実施例7>
実施例1において、4000時間継続して反応を行った後、処理剤(A)を抜き出し、この使用済み処理剤(A)を、空気雰囲気下、500℃で5時間焼成処理し再生した。この再生した処理剤(A)を、再度充填しプロピレンの気相接触酸化反応を継続した。その後4000時間連続反応を行った後、実施例1と同様に後段触媒層の圧力損失を測定した結果、反応初期に対する圧力損失の増加は認められなかった。
実施例1において、4000時間継続して反応を行った後、処理剤(A)を抜き出し、この使用済み処理剤(A)を、空気雰囲気下、500℃で5時間焼成処理し再生した。この再生した処理剤(A)を、再度充填しプロピレンの気相接触酸化反応を継続した。その後4000時間連続反応を行った後、実施例1と同様に後段触媒層の圧力損失を測定した結果、反応初期に対する圧力損失の増加は認められなかった。
以上のように、本発明の気相接触酸化は、触媒の劣化が大幅に抑制され、高い収率を維持しながら、圧力損失の増加を抑えて、長期間にわたる安定的な連続操業を可能にする。また、高価な触媒を交換する必要もない。それゆえ、本発明の方法によれば、例えば、アクリル酸など、気相接触酸化により得られる基礎化学品の製造コストを大幅に低下させることができる。
Claims (5)
- 気相接触酸化反応を行うに際して、ガス流れ方向に対して気相酸化触媒層の上流側に有機物および/または炭化物を除去するための処理剤を配置した固定床反応器を用い、該処理剤のすくなくとも一部を年1回以上の頻度で交換することを特徴とする気相接触酸化方法。
- 該処理剤を反応管内および/または反応器上管板上部に配置することを特徴とする請求項1記載の方法。
- 該処理剤のすくなくとも一部が再生品である、請求項1または2記載の方法。
- プロピレンを二段階の気相酸化反応によりアクリル酸を製造する方法において、ガス流れ方向に対して第二段目の反応用触媒の上流側に有機物および/または炭化物を除去するための処理剤を配置した固定床反応器を用い、該処理剤のすくなくとも一部を年1回以上の頻度で交換することを特徴とするアクリル酸の製造方法。
- 該処理剤が、ガス流れ方向に対して第一段目の反応用触媒層の下流側でかつ第二段目の反応用触媒の上流側に配置した固定床反応装置を用いることを特徴とする請求項4記載のアクリル酸の製造方法。
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