JP2008022602A - インクジェットプリンタおよびその搬送モータの制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】搬送モータを冷却するための休止時間により単位時間当たりの印刷枚数が急に変化してしまうことを防止すること。
【解決手段】インジェットプリンタ1は、印刷媒体の搬送に利用される搬送モータ11と、搬送モータ11の蓄熱量に関する値36と比較される所定の複数の値の範囲毎に対応付けられる複数の休止時間演算式を記憶する記憶手段55と、搬送モータ11の蓄熱量に関する値が複数の値の範囲の中の1つの値の範囲内である場合、記憶手段55においてその範囲と対応付けられている休止時間演算式により休止時間を演算し、その休止時間の経過を待ってから搬送モータ11の制御を開始する搬送制御手段32と、を有する。
【選択図】図1
【解決手段】インジェットプリンタ1は、印刷媒体の搬送に利用される搬送モータ11と、搬送モータ11の蓄熱量に関する値36と比較される所定の複数の値の範囲毎に対応付けられる複数の休止時間演算式を記憶する記憶手段55と、搬送モータ11の蓄熱量に関する値が複数の値の範囲の中の1つの値の範囲内である場合、記憶手段55においてその範囲と対応付けられている休止時間演算式により休止時間を演算し、その休止時間の経過を待ってから搬送モータ11の制御を開始する搬送制御手段32と、を有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、インクジェットプリンタおよびその搬送モータの制御方法に関する。
特許文献1は、キャリッジが1パスするときのキャリッジモータの電流値(実行電流値)とキャリッジの移動時間とから1パス当たりの単位発熱量を演算し、現在の発熱温度を求め、複数の閾値と比較するインクジェット式記録装置を開示する。そして、インクジェット式記録装置は、休止時間テーブルにおいて、現在の発熱温度が超えた閾値と対応付けられている休止時間で休止してから、所定のパスの動作を開始する。
しかしながら、特許文献1では、キャリッジモータの現在の発熱温度が超えている閾値が変化すると、休止時間テーブルに基づいて決定される休止時間は、離散的に(段階的に)変化する。そのため、たとえばインクジェット式記録装置のユーザは、単位時間当たりの印刷枚数(スループット)が急に低下したことに気付く可能性がある。そのようなスループットの低下が正常な制御の結果であることを知らないユーザは、不具合が生じたと誤解してしまう可能性がある。
本発明は、搬送モータを冷却するための休止時間により単位時間当たりの印刷枚数が急に変化してしまうことを防止するインクジェットプリンタおよびその搬送モータの制御方法を得ることを目的とする。
本発明に係るインジェットプリンタは、印刷媒体の搬送に利用される搬送モータと、搬送モータの蓄熱量に関する値と比較される所定の複数の値の範囲毎に対応付けられる複数の休止時間演算式であって、且つ、その複数の値の範囲の境界において、搬送モータの蓄熱量に関する値を演算式に代入して得られる値同士が隣接する範囲の演算式の間で一致する複数の休止時間演算式を記憶する記憶手段と、搬送モータの蓄熱量に関する値が複数の値の範囲の中の1つの値の範囲内である場合、記憶手段においてその範囲と対応付けられている休止時間演算式により休止時間を演算し、その休止時間の経過を待ってから搬送モータの制御を開始する搬送制御手段と、を有するものである。
この構成を採用すれば、搬送モータの蓄熱量に関する値が対応する値の範囲が、搬送モータの発熱により変化したとしても、休止時間は、搬送モータの蓄熱量に関する値の増減に応じて連続的に変化する。したがって、値の範囲が変わることによりスループットが急に変化してしまったり、仮にたとえば最も高い値の範囲の休止時間しか設定できない場合のように、その長い休止時間がいきなり設定されてしまったりすることはない。
本発明に係るインジェットプリンタは、上述した発明の構成に加えて、搬送モータの駆動速度に基づいて演算される搬送モータの瞬時的な発熱量に関する値から、搬送モータの蓄熱量に関する値を演算する蓄熱演算手段を有するものである。
この構成を採用すれば、搬送モータの駆動速度から、搬送モータの蓄熱量に関する値を演算することができる。搬送モータの温度を検出するセンサは不要である。
本発明に係るインジェットプリンタは、上述した発明の各構成に加えて、以下の特徴を有するものである。すなわち、複数の値の範囲の中の最も小さい値の範囲の休止時間演算式は、その範囲の下限での、搬送モータの蓄熱量に関する値を代入して得られる休止時間が、休止時間無しに相当する値となるものである。
この構成を採用すれば、搬送モータの蓄熱量に関する値が複数の値の範囲より小さいとき、休止時間は設定されない。しかも、たとえばその休止時間が設定されない状態から休止時間が設定される状態へ変化するとき、休止時間は、連続的に変化する。スループットは、連続的な変化により生成されるようになる。
本発明に係るインジェットプリンタは、上述した発明の各構成に加えて、以下の特徴を有するものである。すなわち、複数の値の範囲に対応付けられる複数の休止時間演算式は、搬送モータの蓄熱量に関する値を変数とする一次式である。
この構成を採用すれば、各休止時間演算式の演算時間は、短くなる。印刷制御中においてその印刷を制御するマイクロコンピュータにおいて、この休止時間を周期的に演算し、印刷中に休止時間を制御することができる。しかも、この一次式は、搬送モータの蓄熱量に関する値と比較される値の範囲毎に複数設けられる。したがって、たとえば搬送モータが焼損してしまう温度の直前となる最も高い値の範囲と最も低い値の範囲とでは、休止時間演算式による休止時間の変化率を異ならせることができる。たとえば、高い値の範囲ほど休止時間の変化率が少なくなる特性が可能である。変化率を一律にしなくてよい。
本発明に係るインジェットプリンタは、上述した発明の各構成に加えて、以下の特徴を有するものである。すなわち、複数の値の範囲は、1枚以上の所定枚数以下の印刷媒体への印刷をしたときに搬送モータの蓄熱量に関する値が到達する値より高いものである。
この構成を採用すれば、1枚以上の所定枚数以下の印刷媒体への印刷では、有効な休止時間は設定されない。したがって、所定枚数以下の印刷では、インクジェットプリンタが本来有するスループットにより連続的な印刷をすることができる。しかも、その所定枚数以上となる枚数への連続的な印刷であっても、まず、低い値の範囲の短い休止時間が設定される。したがって、この短めの休止時間により搬送モータの温度上昇を抑制して比較的高いスループットを維持しつつ、所定枚数より多い枚数への連続的な印刷をすることができる。
本発明に係る搬送モータの駆動方法は、インクジェットプリンタにおいて印刷媒体の搬送に利用される搬送モータの制御方法である。そして、搬送モータの蓄熱量に関する値と所定の複数の値の範囲とを比較するステップと、この比較により搬送モータの蓄熱量に関する値を含む範囲として特定された範囲に予め対応付けられている演算式であって、且つ、その値の範囲の境界における搬送モータの蓄熱量に関する値を代入して得られる値が隣接する値の範囲のものによる値と一致する休止時間演算式に、搬送モータの蓄熱量に関する値を代入して休止時間を演算するステップと、演算された休止時間が経過したら、搬送モータの所定の制御を開始するステップと、を有するものである。
この方法を採用すれば、搬送モータの蓄熱量に関する値に対応する値の範囲が、搬送モータの駆動に応じて変化したとしても、休止時間は、搬送モータの蓄熱量に関する値の増減に応じて連続的に変化する。
以下、本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタおよびその搬送モータの制御方法を、PF(ペーパフィード)モータの場合を例として、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタ1の構成を示すブロック図である。インクジェットプリンタ1の用紙搬送機構は、LD(リタード)ローラ3、PFローラ4、排紙ローラ7を有する。これらのローラ3、4および7は、搬送モータとしてのPFモータ11により図示外のギアユニットを介して回転駆動される。給紙トレイ2上の用紙(印刷媒体)は、印刷位置を経由して排紙トレイ8まで搬送される。以下において、この用紙の給紙方向を副走査方向とよび、それと略垂直な方向を主走査方向とよぶ。
PFモータ11は、DC(直流)モータなどであり、所定のデューティ比のパルス電圧が供給されると、そのデューティ比に応じた速度で回転する。PFモータ11は、インクジェットプリンタ1において、たとえばプラテン5の下側などに配設される。プラテン5の周囲には、PFローラ4、排紙ローラ7、キャリッジ66などの機構部品が密に配設されており、それらを可動可能に軸支するための図示外のフレームが配設される。そのため、PFモータ11の周囲の空間は狭い。PFモータ11は、少しの駆動により、その温度が上昇してしまう傾向にある。
また、インクジェットプリンタ1のインク吐出機構は、図示外のCR(キャリッジ)モータによりプラテン5上を主走査方向へ駆動されるキャリッジ6を有する。キャリッジ6のプラテン5側には、インクを吐出する図示外の記録ヘッドが設けられる。
インクジェットプリンタ1の制御系は、PFモータ11を駆動するモータドライバ14と、PFローラ4による用紙の搬送速度を検出するロータリエンコーダ15と、LDローラ3とPFローラ4との間で用紙を検出するPFセンサ16と、ASIC13と、マイクロコンピュータ12と、を有する。
ASIC13は、メモリ21を有し、図示外の中央処理装置がプログラムを実行することで、DCユニット22と、検出データ生成部23とが実現される。DCユニット22は、モータドライバ14へ瞬時電流指令値などを出力する。検出データ生成部23は、ロータリエンコーダ15からの受光信号に基づいて用紙の送り速度に関する値を有する瞬時搬送速度データ24を生成したり、PFセンサ16による給紙検出データ25を生成したりする。瞬時搬送速度データ24や給紙検出データ25は、メモリ21に保存される。
マイクロコンピュータ12は、メモリ52、タイマ54、演算式データベース71を記憶する記憶手段としてのEEPROM55などを有し、図示外の中央処理装置がプログラムを実行すると、瞬時発熱演算部33、蓄熱演算手段としての蓄熱更新部34、主制御部31、搬送制御手段としてのPFモータ駆動制御部32が実現される。
図2は、図1中の演算式データベース71のデータ構造を示すブロック図である。演算式データベース71は、図2に示すように4つの蓄熱値の範囲を記憶する。この4つの蓄熱値の範囲は、蓄熱レベルの1から4に対応する。また、演算式データベース71は、各蓄熱値の範囲毎に、蓄熱値から休止時間を演算するための演算式を有する。休止時間は、PFモータ11の駆動を停止する時間である。
図3は、蓄熱値と、図2中の複数の演算式による演算される休止時間との関係を示す図である。図2に示すように、各蓄熱値の範囲の演算式は、蓄熱値が代入される一次式である。各範囲において、休止時間は蓄熱値と比例する。蓄熱レベル3での休止時間の変化率は、蓄熱レベル2より少なく、蓄熱レベル4での休止時間の変化率は、蓄熱レベル3より少ない。高い蓄熱値の範囲ほど、演算式による休止時間の変化率が小さくなっている。
特に、図3に示すように、蓄熱値の各範囲の境界での休止時間は、隣接する範囲のものと一致する。休止時間は、範囲の境界で連続する。最も低い蓄熱レベル1の範囲の下限の休止時間は0(休止無し)であり、休止時間を設定しない範囲と境界において連続する。なお、蓄熱レベル1の下限である蓄熱値「40」は、インクジェットプリンタ1において1枚以上の所定枚数以上の連続的な印刷をすることではじめて到達する値である。
次に、以上の構成を有するインクジェットプリンタ1の動作を説明する。電源が投入されると、インクジェットプリンタ1には、図1の構成が実現される。
図4は、図1中の主制御部31が実行する主制御の流れを示すフローチャートである。主制御部31は、まず、初期化処理を実行する。初期化処理において、主制御部31は、瞬時発熱演算部33、蓄熱更新部34へ起動を指示する(ステップST1)。
瞬時発熱演算部33は、タイマ54により所定の計測時間(たとえば数十ミリ秒)が計測される度に、瞬時発熱値の計測処理を実行する。具体的には、瞬時発熱演算部33は、メモリ21から読み込んだ瞬時搬送速度データ24からPFモータ11の回転数を演算し、その回転数を下記式1に代入し、PFモータ11の瞬時的な電流値を演算する。下記式1において、Vsは、PFモータ11の印加電圧であり、デューティ比は、その印加電圧のデューティ比であり、Rは、PFモータ11の内部抵抗である。
I={Vs×デューティ比−(Vs×PFモータ11の回転数/PFモータ11の定格電圧での回転速度)/R ・・・式1
また、瞬時発熱演算部33は、上記式1により演算した電流値Iを二乗し、計測時間を乗算する。瞬時発熱演算部33は、演算した値をPFモータ11の瞬時的な発熱値としてメモリ52に保存する。マイクロコンピュータ12のメモリ52には、所定の計測時間毎に、瞬時発熱演算部33により、PFモータ11の瞬時的な発熱値が蓄積される。
蓄熱更新部34は、タイマ54により所定の更新時間が計測される度に、蓄熱値を更新する。具体的には、蓄熱更新部34は、前回の蓄熱更新時以降にメモリ52に蓄積された複数の発熱値を加算により積分し、PFモータ11の区間総発熱値を演算する。蓄熱更新部34は、前回計算した蓄熱値に1より小さい値の放熱係数(たとえば0.93など)を乗算し、それに今回演算した区間総発熱値を加算し、新たな蓄熱値を演算する。これにより、マイクロコンピュータ12のメモリ52には、更新時間毎に、蓄熱更新部34により最新のPFモータ11の蓄熱値が保存される。
瞬時発熱演算部33および蓄熱更新部34へ起動を指示して初期化処理(ステップST1)を終えると、主制御部31は、印刷データ待ちとなる。インジェットプリンタ1が図示外のパーソナルコンピュータなどから印刷データを受信すると、主制御部31は、印刷処理を開始する。主制御部31は、次に実行する制御動作として給紙動作を判断し(ステップST2)、PFモータ駆動制御部32へ給紙駆動を指示する(ステップST3)。
図5は、図1中のPFモータ駆動制御部32が実行する給紙処理の流れを示すフローチャートである。PFモータ駆動制御部32は、まず、メモリ52から、蓄熱データ37を読み込み(ステップST11)、蓄熱値の蓄熱レベルを判断する(ステップST12)。PFモータ駆動制御部32は、演算式データベース71の複数の蓄熱値の範囲と、蓄熱データ37の蓄熱値とを比較し、蓄熱レベルを判断する。
その後、PFモータ駆動制御部32は、PFモータ11を冷却するための休止制御の要否を判断する(ステップST13)。PFモータ駆動制御部32は、たとえば図2に示す演算式データベース71に該当する蓄熱レベルが無い場合、つまり蓄熱データ37の蓄熱値が40未満である場合、休止不要と判断する。PFモータ駆動制御部32は、後述する給紙動作の制御を開始する。それ以外の場合、PFモータ駆動制御部32は、休止要と判断し、有意な休止時間の設定処理を実行する。
休止要と判断すると、PFモータ駆動制御部32は、演算式データベース71から、特定した蓄熱レベルに対応する演算式を読み込む(ステップST14)。たとえば蓄熱値が「70」であり、蓄熱レベルが「2」であるとき、PFモータ駆動制御部32は、図2中の「A2(蓄熱値−B2)+C2」を読み込む。PFモータ駆動制御部32は、読み込んだ演算式に蓄熱値を代入し、休止時間を演算する(ステップST15)。そして、PFモータ駆動制御部32は、タイマ54を参照し、この演算した休止時間が経過するのを待つ(ステップST16)。休止時間が経過すると、PFモータ駆動制御部32は、主制御部31により指示された給紙動作の制御を開始する。
給紙動作の制御において、PFモータ駆動制御部32は、PFモータ11を駆動する。PFモータ駆動制御部32は、給紙速度を「0」から所定の速度へ加速した後、その所定の速度を維持するように、ASIC13のDCユニット22への瞬時目標速度値を更新する。また、ASIC13の検出データ生成部23は、PFローラ4とともに回転するロータリエンコーダ15からの信号に基づいて、用紙の送り速度を演算する。DCユニット22は、所定の周期で、この瞬時目標速度値と瞬時搬送速度データ24との差に応じた瞬時電流指令値を生成する。モータドライバ14は、その瞬時電流指令値によりPFモータ11を駆動する。これにより、PFモータ11の回転により回転するLDローラ3およびPFローラ4は、給紙トレイ2上から搬送した用紙を所定の速度へ加速し、その後その所定の速度を維持するように搬送する(ステップST17)。
所定の定速で搬送される用紙は、PFセンサ16により検出される。PFセンサ16により用紙が検出されると、ASIC13のメモリ21に記憶される給紙検出データ25は、検出データ生成部23により「用紙無し」から「用紙あり」へ更新される(ステップST18)。PFモータ駆動制御部32は、減速停止制御を開始する(ステップST19)。これにより、用紙の搬送速度は減速し、PFセンサ16により検出されてから所定の距離(時間)で停止する。用紙は、印刷位置に対して安定的に供給される。
以上の給紙動作が完了すると、PFモータ駆動制御部32は、給紙駆動を終了する。 主制御部31は、図4に示すように、インクジェットプリンタ1が停止状態にあると判断した(ステップST4)後、次に実行する制御動作として印字動作を判断し(ステップST2)、図示外のCRモータ駆動制御部へ印字動作を指示する(ステップST3)。CRモータ駆動制御部は、CRモータを駆動し、キャリッジ6は、主走査方向へ定速で移動する。キャリッジ6の記録ヘッドは、印刷データに基づいてインクを吐出する。これにより、用紙の印刷位置へ給紙されている部位には、インクが付着する。
CRモータ駆動制御部による印字制御が終了すると、主制御部31は、インクジェットプリンタ1が停止状態にあると判断した(ステップST4)後、次に実行する制御動作として紙送り動作を判断し(ステップST2)、PFモータ駆動制御部32へ紙送り動作を指示する(ステップST3)。PFモータ駆動制御部32は、図5の給紙制御と同様の紙送り制御により紙送り制御を実行する。つまり、PFモータ駆動制御部32は、蓄熱データ37に基づいて休止が必要であるか否かを判断し、休止が必要である場合は所定の休止時間で待った後に、紙送り制御を実行する。印刷位置の用紙は、所定の幅で搬送される。
主制御部31は、たとえば印刷データが終了したり、用紙の後端が印刷位置を通過したりするまでの間、紙送り制御が完了すると、次に実行する制御動作として印字動作を判断し、印字動作が完了すると、次に実行する制御動作として紙送り動作を判断する(ステップST2)。これにより、用紙には、紙送り量毎にインクが付着する。用紙には、印刷データに基づく画像が、紙送り量の単位で印刷される。
また、印刷データが終了したり、用紙の後端が印刷位置を通過したりすると、主制御部31は、次に実行する制御動作として排紙動作を判断し(ステップST2)、PFモータ駆動制御部32へ排紙動作を指示する。PFモータ駆動制御部32は、図5の給紙制御と同様の排紙制御により排紙制御を実行する。つまり、PFモータ駆動制御部32は、蓄熱データ37に基づいて休止が必要であるか否かを判断し、休止が必要である場合には蓄熱レベルに応じた休止時間で待った後に、排紙制御を実行する。これにより、印刷位置にある用紙は、排紙トレイ8へ排出される。
なお、以上の動作説明は、1枚の用紙への印刷を例に説明している。この他にも、インクジェットプリンタ1は、給紙トレイ2に載置される複数の用紙に対して連続的に印刷をすることができる。複数枚の用紙へ連続的に印刷する場合、インクジェットプリンタ1は、たとえば上述した1枚毎の印刷シーケンスをその枚数分繰り返せばよい。
また、主制御部31は、連続的な印刷では、排紙動作およびそれに続く給紙動作の替わりに、給排紙動作を指示するようにしてもよい(ステップST3)。PFモータ駆動制御部32は、主制御部31の指示に基づいて、図5の給紙制御と同様の給排紙制御により給排紙制御を実行する。つまり、PFモータ駆動制御部32は、蓄熱データ37に基づいて休止が必要であるか否かを判断し、休止が必要である場合には蓄熱レベルに応じた休止時間で待った後に、給排紙制御を実行する。これにより、印刷位置にある用紙が排紙トレイ8へ排出され、且つ、次の未印刷の用紙が給紙トレイ2から印刷位置へ給紙される。
以上のように、この実施の形態に係るインクジェットプリンタ1は、給紙動作、紙送り動作、排紙動作および給排紙動作において、PFモータ11を駆動する。この各制御動作において、PFモータ駆動制御部32は、図5に給紙動作の場合を例示するように、必要に応じて蓄熱値のレベルに応じた演算式により休止時間を演算し、その休止時間が経過してから主制御部31により指示された所定の制御動作を実行する。
図6は、インクジェットプリンタ1のある期間の動作を示す動作説明図である。図6(A)は、PFモータ11の回転速度の波形であり、図6(B)は、PFモータ11に流れる電流の波形であり、図6(C)は、PFモータ11の温度であり、図6(D)は、蓄熱値の変化を示すものである。横軸は、時間である。図に示すように、PFモータ11の温度は、PFモータ11が回転するたびに上昇する。また、PFモータ11が停止している期間では放熱により冷却され、低下する。蓄熱値は、このPFモータ11の温度の昇降に対応するように増減する。
そして、図6(D)の3段目の更新期間に示すように、蓄熱データ37の値が蓄熱レベル1の下限値「40」以上になると、図6(D)に示すように、PFモータ駆動制御部32は、演算式に基づいて有意な休止時間を演算し、その休止時間が経過するのを待ってから各制御動作を開始する。3段目以降の更新期間におけるPFモータ11の各制御動作は、蓄熱データ37の値が蓄熱レベル1の下限値「40」より小さくなるまで、休止時間の分だけ遅れて開始されるようになる。
その結果、3段目の更新期間におけるPFモータ11の合計の駆動時間は、たとえば2段目などより少なくなる。これにより、温度上昇が抑えられ、蓄熱データ37の値の増加も抑えられる。図6(D)の四段目の更新期間における蓄熱値およびPFモータ11の温度は、3段目より低くなる。休止時間を設けることで、PFモータ11の過熱を防止することができる。
図7は、図2の演算データベース71に基づく休止時間の設定効果を示す説明図である。図7において、横軸は、時間であり、縦軸は、蓄熱値である。蓄熱値は、PFモータ11の温度と連動して増減する。休止時間を設けない場合、図7中の点線で示すように、蓄熱値およびPFモータ11の温度は、PFモータ11による連続的な印刷動作により連続的に上昇する。休止時間を設けない場合、連続的に動作可能な期間には、限界がある。
これに対して、休止時間を設けると、図7中の実線で例示するように、蓄熱値は、たとえば蓄熱レベル「2」までしか上昇しない。インクジェットプリンタ1は、休止時間を設けない場合の限界期間を超える連続的に印刷をすることができる。PFモータ11を過熱により焼損してしまうことなく、長い時間にわたって連続して印刷をすることができる。
特に、この実施の形態では、最上位の蓄熱レベル4(限界範囲)の上限の蓄熱値として、PFモータ11が熱により焼損する温度に対応する蓄熱値(限界蓄熱値)以下の値を設定している。しかも、その最上位の蓄熱レベル4(限界範囲)の演算式は、それに上限の蓄熱値が代入された場合に、インクジェットプリンタ1の動作環境温度の上限温度(たとえば40度)においてPFモータ11を印刷のために連続的に駆動したとしても、蓄熱値がその限界蓄熱値とならない程度となる休止時間が得られるように設定されている。したがって、通常の使用環境下において、PFモータ11の温度は、最上位の蓄熱レベル4(限界範囲)の上限を超えて、PFモータ11を焼損する温度にまで上昇し難い。
また、この実施の形態では、最上位の蓄熱レベル4(限界範囲)の下には、その他の蓄熱レベル(1〜3)が設定されている。各レベルにおいて休止時間が設定される。したがって、蓄熱値が演算データベース71の最上位の蓄熱レベル4に到達してしまうまでの連続的な駆動時間を長くすることができ、その結果、スループットを維持しつつ印刷することができる印刷枚数を増やすことができる。また、最下位の蓄熱レベル1より蓄熱値が下がれば、有意な休止時間は設定されなくなる。
しかも、これらの蓄熱レベル1〜4の範囲は、1枚以上の所定枚数以下の用紙への印刷をしたときに蓄熱値が到達する値より高く設定されている。したがって、1枚以上の所定枚数以下の用紙への印刷をするときには、休止時間が設定されない。このように所定枚数以下の少ない枚数の印刷においては、休止時間によるスループットの低下が生じない。インクジェットプリンタ1が本来有するスループットにより、所定枚数についての連続的な印刷をすることができる。
図8は、この実施の形態のインクジェットプリンタ1によるスループットの変化を示す説明図である。横軸は、蓄熱値であり、縦軸は、スループットである。図2に示すように、蓄熱値の範囲は、4段階である。休止時間は、各段階での演算式により演算される。このように休止時間が蓄熱値の範囲毎に異なる演算式により演算されているにもかかわらず、スループットは、図8中において実線で示すように、連続的に変化する。たとえば、連続的な印刷時間が長くなり、その結果として蓄熱値の値がだんだんと大きくなると、スループットは、連続的な変化により低下することになる。
これに対して、仮にたとえば図2の演算式データベース71において各蓄熱値の範囲と対応して、所定の固定的な蓄熱時間や蓄熱割合が対応付けられた場合、スループットは、図8中において点線で示すように、離散的に(段階的に)低下する。このように蓄熱値などに応じてスループットが離散的に変化するとき、ユーザにインジェットプリンタ1の動作が変化したことに気付いてしまい易い。その動作の変化が正常な制御動作の結果であるにもかかわらず、ユーザは、インジェットプリンタに不具合が発生したと誤解してしまう可能性がある。これに対して、本実施の形態では、スループットが連続的に変化するので、ユーザはその変化に気付き難く、ユーザの誤解を招き難い。
しかも、各蓄熱値の範囲に対応する演算式は、一次式である。その結果、インクジェットプリンタ1におけるPFモータ11の温度上昇を抑制するための演算負荷を減らすことができる。休止時間を周期的に演算する負荷により、たとえばインクジェットプリンタ1の本来の制御である印刷のための制御に悪影響を与えないようにすることができる。印刷中においても、PFモータ11の温度上昇を抑制するための演算処理を、印刷のための制御を実行するマイクロコンピュータ12により実行することができる。マイクロコンピュータ12は、印刷のための制御と、PFモータ11の温度上昇を抑制するための演算処理とを印刷中に同時に実行することができる。
以上の実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。たとえば上記実施の形態では、PFモータ11の温度上昇を制御している。この他にもたとえば、給紙時に動作するASF(Auto Seet Feeder)モータ、CRモータ、給紙トレイ2上の用紙をLDローラ3に当接させるASFサブモータ、キャリッジ6のインクを吸引する吸引モータなどの各種のモータの温度上昇を制御するようにしてもよい。
上記実施の形態では、瞬時発熱演算部33は、瞬時搬送速度データ24および式1に基づいて、PFモータ11の計測周期における発熱値を演算している。この他にもたとえばPFモータ11に流れる電流をセンサで検出し、瞬時発熱演算部33は、その検出電流から、PFモータ11の発熱値を演算するようにしてもよい。また、式1以外の演算式やテーブルを用いて、PFモータ11の発熱値を演算するようにしてもよい。
上記実施の形態では、PFモータ駆動制御部32が、蓄熱データ37に基づいて休止時間を演算し、休止時間の経過を待っている。この他にもたとえば、主制御部31が、蓄熱データ37に基づいて休止時間を演算し、休止時間の経過を待ち、その後に各種の駆動指示を出力するようにしてもよい。この場合でも、休止時間を確保し、PFモータの温度を制御することができる。
本発明は、インクジェットプリンタに好適に利用することができる。
1 インクジェットプリンタ、11 PFモータ(搬送モータ)、32 PFモータ駆動制御部(搬送制御手段)、55 EEPROM(記憶手段)、34 蓄熱更新部(蓄熱演算手段)、71 演算式データベース
Claims (6)
- 印刷媒体の搬送に利用される搬送モータと、
上記搬送モータの蓄熱量に関する値と比較される所定の複数の値の範囲毎に対応付けられる複数の休止時間演算式であって、且つ、その複数の値の範囲の境界において、搬送モータの蓄熱量に関する値を演算式に代入して得られる値同士が隣接する範囲の演算式の間で一致する複数の休止時間演算式を記憶する記憶手段と、
上記搬送モータの蓄熱量に関する値が複数の上記値の範囲の中の1つの値の範囲内である場合、上記記憶手段においてその範囲と対応付けられている上記休止時間演算式により休止時間を演算し、その休止時間の経過を待ってから上記搬送モータの制御を開始する搬送制御手段と、
を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。 - 前記搬送モータの駆動速度に基づいて演算される前記搬送モータの瞬時的な発熱量に関する値から、前記搬送モータの蓄熱量に関する値を演算する蓄熱演算手段を有することを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
- 前記複数の値の範囲の中の最も小さい値の範囲の休止時間演算式は、その範囲の下限での、前記搬送モータの蓄熱量に関する値を代入して得られる休止時間が、休止時間無しに相当する値となることを特徴とする請求項1または2記載のインクジェットプリンタ。
- 前記複数の値の範囲に対応付けられる複数の休止時間演算式は、前記搬送モータの蓄熱量に関する値を変数とする一次式であることを特徴とする請求項1から3の中のいずれか1項記載のインクジェットプリンタ。
- 前記複数の値の範囲は、1枚以上の所定枚数以下の印刷媒体への印刷をしたときに前記搬送モータの蓄熱量に関する値が到達する値より高いことを特徴とする請求項1から4の中のいずれか1項記載のインクジェットプリンタ。
- インクジェットプリンタにおいて印刷媒体の搬送に利用される搬送モータの制御方法であって、
上記搬送モータの蓄熱量に関する値と所定の複数の値の範囲とを比較するステップと、
この比較により上記搬送モータの蓄熱量に関する値を含む範囲として特定された範囲に予め対応付けられている演算式であって、且つ、その値の範囲の境界における上記搬送モータの蓄熱量に関する値を代入して得られる値が隣接する値の範囲のものによる値と一致する休止時間演算式に、上記搬送モータの蓄熱量に関する値を代入して休止時間を演算するステップと、
演算された上記休止時間が経過したら、上記搬送モータの所定の制御を開始するステップと、
を有することを特徴とする搬送モータの制御方法。
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JP2006190086A JP2008022602A (ja) | 2006-07-11 | 2006-07-11 | インクジェットプリンタおよびその搬送モータの制御方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009073180A (ja) * | 2007-08-24 | 2009-04-09 | Seiko Epson Corp | プリンタおよびプリンタのモータ制御方法 |
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2006
- 2006-07-11 JP JP2006190086A patent/JP2008022602A/ja not_active Withdrawn
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