JP2008020892A - 光学素子、画像投射光学系および画像投射装置 - Google Patents

光学素子、画像投射光学系および画像投射装置 Download PDF

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Abstract

【課題】所定の入射角の光線に対しては可視波長域全域において透過機能を有し、かつ他の入射角で入射するS偏光とP偏光に対しては偏光分離機能を有する多層膜を備えた光学素子を提供する。
【解決手段】光学素子1は、光が入射する2つの入射面11、光を射出する1つの射出面13およびそれぞれ反射型画像形成素子44〜46に対向する3つの透過面14〜16を含む複数の光学面を有する。該光学素子は、その内部で互いに交差する第1の平面と第2の平面に沿ってそれぞれ形成された第1及び第2の光学構造体21,22を有し、該2つの入射面、1つの射出面、3つの透過面及び第1、第2の平面すべての面法線が、同一平面に対して平行である。そして、以下の条件を満足する。45°<θ0<75°。
但し、θ0は、第1および第2の平面のなす角度のうち小さい方の角度である。
【選択図】図1A

Description

本発明は、反射型画像形成素子により画像を形成する画像投射装置に用いられる光学素子に関する。
いわゆる3板式反射型プロジェクタでは、青波長域、緑波長域、赤波長域の照明光の色分離と、3つの反射型画像形成素子のそれぞれで変調された画像光の色合成とを行う。このため、反射型画像形成素子と投射レンズとの間には、ダイクロイック素子や偏光ビームスプリッタなどの素子が配置されている。
従来の一般的な3板式反射型プロジェクタでは、1つの反射型画像形成素子と投射レンズとの間に、照明光学系の光軸に対して45°をなす分離膜を持った少なくとも2個の色分解又は色合成を行う素子が配置されている。つまり、プロジェクタ内には、ダイクロイック素子や偏光ビームスプリッタを含む素子が3〜4個配置されている。
このように青波長域光、緑波長域光および赤波長域光に対応した3つの反射型液晶パネルを用い、ダイクロイック素子および偏光ビームスプリッタにより色分解および色合成を行うプロジェクタとしては、特許文献1に開示されたものがある。
また、特許文献2には、色分離、偏光分離および色合成を1つで行うプリズム型素子が開示されている。このプリズム型素子は、立方体内に波長選択性偏光分離膜を3つ配置した構成を有する。立方体内には、1つの頂点に集まる3つの辺の1つずつに対して、その辺に接する2つの面と45°をなし、かつその辺を含む面が形成されている。すなわち、1つの頂点を通る3つの45°面が形成されている。そして、これらの45°面に沿って、所望の波長選択性偏光分離膜が配置されている。
一方、偏光分離膜等の光学薄膜としては多層膜が用いられることが多い。また、ブリュースター角においてP偏光が透過することを利用することで、偏光分離波長範囲が広い偏光分離膜が得られることも知られている。
非特許文献1には、P偏光を反射し、S偏光を透過する偏光ビームスプリッタが開示されている。これは、入射角がプリズムの屈折率と低屈折率の薄膜から求められる臨界角以上の高入射角となっている。通常では全反射が発生し、光は透過しないが、低屈折率薄膜の膜厚が波長以下のため、全反射減衰が発生し、光が透過する。この全反射減衰を利用することにより、通常のブリュースター角を用いた偏光ビームスプリッタと比較して、入射角範囲および偏光分離波長範囲が広く、消光比が高い、P偏光を反射、S偏光を透過する偏光ビームスプリッタを得ている。
また、特許文献3及び特許文献4には、特定波長帯域のS偏光を透過、P偏光を反射し、異なる波長帯域のS偏光を反射、P偏光を透過させる波長選択性のある偏光分離膜が開示されている。これは多層膜において、全反射減衰を利用することや特定の膜構成を用いることによって波長選択性のある偏光分離膜を得ている。
特開2001−154152号公報 特開2002−162520号公報 特開2006−47903号公報 特開2006−79058号公報 Li Li and J. A. Dobrowolski, Appl. Opt., vol.39, p.2754, 2000.
特許文献1に開示されたプロジェクタでは、まず照明光を2つの波長域光(第1および第2の波長域光)と1つの波長域光(第3の波長域光)とに色分離する。その後、第1および第2の波長域光について色分離と色合成を行い、最後に第1および第2の波長域光と第3の波長域光とを色合成する。このため、1つの波長域光の光路に、色分解又は色合成を行う2つの素子が必要となる。したがって、プロジェクタ全体では、4つの素子を必要とし、構成が複雑である。しかも、光路長が長くなり、必要光束を確保するために、各素子も大きくなる。さらに、投射レンズのバックフォーカスが長くなるため、投射レンズ自体も大きくなる。
また、特許文献2に開示されたプリズム型素子では、第1、第2および第3の波長域光の色分離合成を1つで行う。しかし、プリズム型素子の全ての開口部には、分離膜による境界線が存在する。このうち反射型液晶パネルに対する開口部に存在する境界線は、画像への影響が大きく、各パネルからの波長域光は、分離膜として機能する2つの波長選択性偏光分離膜以外の他の1つの波長選択性偏光分離膜に対してほぼ水平な光線となる。この光線の波長選択性偏光分離膜に対する入射角は大きいため、該光線の反射率が高くなる。この結果、ゴーストが発生し易くなる。
一方、従来の光学薄膜は、光線の入射角に応じて透過作用が強く表れたり反射作用が強く表れたりする特性を有する。例えば、ブリュースター角を用いた偏光ビームスプリッタでは、P偏光の入射角がブリュースター角の条件から外れると反射が発生する。このため、偏光分離を行うブリュースター角と異なる入射角で透過作用を得るのは困難であった。

非特許文献1にて開示された偏光ビームスプリッタにおいても、異なる入射角で偏光分離面に入射する可視波長域全域の光を透過させる機能は有していない。
また、特許文献3または特許文献4にて開示された波長選択性のある偏光分離膜においても、異なる入射角で偏光分離面に入射する光を透過させる機能は有していない。
本発明は、所定の入射角の光線に対しては可視波長域全域において透過機能を有し、かつ他の入射角で入射するS偏光とP偏光に対しては偏光分離機能を有する多層膜を備えた色分離合成素子を提供することを目的の1つとしている。
また、本発明は、所定の入射角の光線に対しては第1波長領域において透過機能を有している。さらに、他の入射角で入射する第2波長領域の光に対する透過率がS偏光よりもP偏光が高く、第3波長領域の光に対する透過率がP偏光よりS偏光が高い偏光分離機能を有している。このような多層膜を備えた色分離合成素子を提供することも目的の1つとしている。
本発明の一側面としての光学素子は、光が入射する2つの入射面、光を射出する1つの射出面およびそれぞれ反射型画像形成素子に対向する3つの透過面を含む複数の光学面を有する光学素子である。該光学素子は、その内部で互いに交差する第1の平面と第2の平面に沿ってそれぞれ形成された第1及び第2の光学構造体を有し、該2つの入射面、1つの射出面、3つの透過面及び第1、第2の平面すべての面法線が、同一平面に対して平行であり、かつ以下の条件を満足することを特徴とする。
45°<θ0<75°
但し、θ0は、前記第1および第2の平面のなす角度のうち小さい方の角度である。
また、本発明の他の側面としての光学素子は、多層膜を有する光学素子であって、該多層膜は、該多層膜に入射する全波長域の光であって該多層膜に対して入射角θ1で入射する光を透過し、入射角θ2で入射する光をその偏光状態に応じて分離する。さらに、以下の条件を満足することを特徴とする。
θ2−θ1>30°。
また、本発明の他の側面としての光学素子は、多層膜を有する光学素子であり、多層膜は、入射角θ1で入射する第1の波長領域の光に対して透過し、入射角θ2で入射する第2の波長領域の光のうちS偏光に対する透過率よりもP偏光に対する透過率が高く、第1及び第2の波長領域と異なる第3波長領域の光のうちP偏光に対する透過率よりもS偏光に対する透過率が高く、かつ以下の条件を満足することを特徴としている。
θ2−θ1>30°
なお、3つの反射型画像形成素子からの光を合成する上記光学素子と、該光学素子から射出した光を被投射面に投射する投射系とを有する画像投射光学系や、これを含む画像投射装置も本発明の他の側面を構成する。さらに、該画像投射装置と画像情報供給装置とを有する画像表示システムも本発明の他の側面を構成する。
本発明によれば、いわゆる全反射減衰を利用することによって、可視波長域全域において所定の入射角の光線を透過し、また他の入射角で入射するS偏光とP偏光を偏光分離する多層膜を備えた色分離合成素子を実現することができる。
これにより、六角柱状のプリズム型素子を用いた色分解と色合成を行うことができる。また、このような光学素子を用いることで、投射レンズのバックフォーカスを短くすることができ、この結果、投射レンズおよび装置全体を小型化することができる。
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1Aには、本発明の実施例1である光学素子としての色合成プリズム1の概略構成を示している。この色合成プリズム1は、図1Bに示すように、全ての内角IAが90°以上である六角柱として定義される立体形状(仮想六角柱)のうち六角形の両端面(図の上下面)を除いた6つ面上(6つの側面上)に6つの光学面11〜16を配置した形状を有する。
図1Aは、色合成プリズム1を図1Bの上方又は下方から見た形状を示している。仮想六角形の上面および下面は正六角形であり、また仮想六角形の上面および下面の各対辺は平行である。
ここで、光学面11は、不図示の光源からの光31の第1の入射面、光学面12は、不図示の光源からの光32の第2の入射面、光学面13は、光33の射出面である。そして、光学面14、15、16は、3つの反射型液晶パネル(図2中の44〜46)に対向する開口部(開口面)としての透過面(以下、入射出面という)であり、光34、35、36がそれらの面を入出射する。第1入射面11および第2入射面12は、射出面13と隣り合うように配置されている。また、入射面11,12および射出面13と対面するのは(の反対側の面は)入射出面であり、それぞれ第1入射出面14、第3入射出面16および第2入射出面15である。
色合成プリズム1の内部には、第1多層膜(第1光学構造体)21と第2多層膜(第2光学構造体)22が、互いに交差する2つの平面(第1の平面および第2の平面)に沿って形成されている。以下の説明では、該第1の平面および第2の平面がそれぞれ第1および第2多層膜21,22と同一面であるとみなして説明する。例えば、第1および第2多層膜21,22のなす角度やそれらの面法線とは、第1の平面および第2の平面のなす角度やそれらの面法線と同義である。そして、第1の平面と第2の平面とのなす角度(すなわち第1多層膜と第2多層膜とのなす角度)とは、第1の平面の面法線と第2の平面の面法線とのなす角度(すなわち第1多層膜の面法線と第2多層膜の面法線とのなす角度)と同義である。
第1多層膜21は、第2入射面12と射出面13との間の辺から第2および第3入射出面15,16の間の辺まで延びるように形成されている。また、第2多層膜22は、第1入射面11と射出面13との間の辺から第1および第2入射出面14,15の間の辺まで延びるように形成されている。
第1多層膜21および第2多層膜22は共に、入射角0°で入射した光線を透過する透過機能(反射防止機能)と、入射角60°で入射したS偏光を透過してP偏光を反射する偏光分離機能とを有する。すなわち、第1および第2多層膜21,22は、上記機能に関して同一の光学的特性を有する。これらの多層膜21,22と上記6つの光学面11〜16との関係は、以下の通りである。
第1入射面11の面法線と第1多層膜21の面法線とのなす角度は0°で、第1入射面11の面法線と第2多層膜22の面法線とのなす角度は60°である。また、第2入射面12の面法線と第1多層膜21の面法線とのなす角度は60°で、第2入射面12の面法線と第2多層膜22の面法線とのなす角度は0°である。さらに、第1多層膜21と第2多層膜22とのなす角度θ0は60°である。なお、これらの角度はいずれも面法線又は多層膜がなす角度のうち小さい方の角度である。また、第1、2入射面と、射出面と、第1、2、3入射出面と、第1、2平面のすべての法線は、図1Aにおける紙面(同一平面)と平行である。特に、この色合成プリズム内に入射した光が射出するまでに通過する光路中において、光を分離したり、合成したり、反射したりするすべての光学面の法線が図1Aにおける紙面(同一平面)に対して平行である。これらのことは以下の実施例でも同じである。
図2A〜図2Cには、本実施例の色合成プリズム1の基本的な光学作用を示している。図2Aは、光源より導かれた青波長域光線(以下、単に青光線という)311がS偏光として第1入射面11から色合成プリズム1内に入射する場合の光路を示している。図2A〜図2Cにおいて、実線はS偏光を、破線はP偏光を示している。S偏光及びP偏光は、互いに偏光状態が異なる光である。
色合成プリズム1に入射した青光線311は、第1多層膜21に対して入射角0°で入射してこれを透過した後、第2多層膜22に対して入射角60°で入射してこれを透過する。また、青光線311の入射位置によっては、第2多層膜22に対して入射角60°で入射してこれを透過した後、第1多層膜21に対して入射角0°で入射してこれを透過する。このように、青光線311は、多層膜21,22のいずれの位置に入射しても、第1および第2多層膜21,22を透過して、第1入射面11の対面である第1入射出面14から色合成プリズム1外に射出する。そして、青波長域用の反射型液晶パネル(以下、単に青パネルという)44に入射する。
青パネル44で反射され、かつ画像変調された青光線311は、P偏光として第1入射出面14から色合成プリズム1内に再入射する。色合成プリズム1に再入射した青光線311は、第1多層膜21に対して入射角0°で入射してこれを透過した後、第2多層膜22に対して入射角60°で入射してここで反射される。また、該青光線311の入射位置によっては、第2多層膜22に対して入射角60°で入射してここで反射された後、第1多層膜21に対して入射角60°で入射してこれを透過する。このように、再入射した青光線311は、多層膜21,22のいずれの位置に入射しても、第1多層膜21を透過して第2多層膜22で反射される。これにより、射出面13から色合成プリズム1外に射出し、不図示の投射レンズに向かう。
図2Bは、光源より導かれた赤波長域光線(以下、単に赤光線という)312がP偏光として第1入射面11から色合成プリズム1に入射する場合の光路を示している。色合成プリズム1に入射した赤光線312は、第1多層膜21に対して入射角0°で入射してこれを透過した後、第2多層膜22に対して入射角60°で入射してここで反射される。また、赤光線312の入射位置によっては、第2多層膜22に対して入射角60°で入射してここで反射された後、第1多層膜21に対して入射角60°で入射してこれを透過する。このように、赤光線312は、多層膜21,22のいずれの位置に入射しても、第1多層膜21を透過して、第2多層膜22で反射する。このため、第2入射出面15から色合成プリズム1外に射出し、赤波長域用の反射型液晶パネル(以下、単に赤パネルという)45に入射する。
赤パネル45で反射され、かつ画像変調された赤光線312は、S偏光として第2入射出面15から色合成プリズム1に再入射する。色合成プリズム1に再入射した赤光線312は、第1多層膜21に対して入射角60°で入射してこれを透過した後、第2多層膜22に対して入射角60°で入射してこれを透過する。また、赤光線312の入射位置によっては、第2多層膜22に対して入射角60°で入射してこれを透過した後、第1多層膜21に対して入射角60°で入射してこれを透過する。このように、再入射した赤光線312は、多層膜21,22のいずれの位置に入射しても、第1および第2多層膜21,22で透過する。これにより、第2入射出面15の対面である射出面13から色合成プリズム1外に射出し、投射レンズに向かう。
図2Cは、光源より導かれた緑波長域光線(以下、単に緑光線という)313がS偏光として第2入射面12から色合成プリズム1に入射する場合の光路を示している。色合成プリズム1に入射した緑光線313は、第1多層膜21に対して入射角60°で入射してこれを透過した後、第2多層膜22に対して入射角0°で入射してこれを透過する。また、緑光線313の入射位置によっては、第2多層膜22に対して入射角0°で入射してこれを透過した後、第1多層膜21に対して入射角60°で入射してこれを透過する。このように、緑光線313は、多層膜21,22のいずれの位置に入射しても、第1および第2多層膜21,22を透過する。このため、第2入射面12の対面である第3入射出面16から色合成プリズム1外に射出し、緑波長域用の反射型液晶パネル(以下、単に緑パネルという)46に入射する。
緑パネル46で反射され、かつ画像変調された緑光線313は、P偏光として第3入射出面16から色合成プリズム1内に再入射する。色合成プリズム1に再入射した緑光線313は、第1多層膜21に対して入射角60°で入射してここで反射された後、第2多層膜22に対して入射角60°で入射してこれを透過する。また、緑光線313の入射位置によっては、第2多層膜22に対して入射角0°で入射してこれを透過した後、第1多層膜21に対して入射角60°で入射してここで反射される。このように、再入射した緑光線313は、多層膜21,22のいずれの位置に入射しても、第1多層膜21で反射され、第2多層膜22を透過する。これにより、射出面13から色合成プリズム1外に射出し、投射レンズに向かう。
以上のように本実施例の色合成プリズム1は、青、赤および緑光線311〜313の青、赤および緑パネル44〜46に向けての光路分離(色分解)と、該3つのパネル44〜46からの光線311〜313の色合成とを1つプリズムで行うことができる。
なお、本発明の光学素子は、ここで説明した光路以外の光路を用いた色分解や色合成を行うことができる。すなわち、図2A〜図2Cで説明した青、赤および緑光線311〜313を入れ替えてもよい。
次に、第1多層膜21および第2多層膜についてさらに詳しく説明する。前述したように、第1多層膜21および第2多層膜22は共に、入射角0°の光線を透過する反射防止機能と、入射角60°のS偏光を透過してP偏光を反射する偏光分離機能とを有する。
通常、光が高屈折率媒質から低屈折率媒質に臨界角以上で入射すると、全反射が起こる。この全反射の際、波長程度の領域においてエバネッセント波(evanescent wave)がしみ出している。このエバネッセント波がしみ出している領域に別の媒質が存在すると、光が透過する。この現象は全反射減衰と呼ばれる。この全反射減衰を利用することによって、通常のブリュースター角を用いた偏光分離膜と比較して、入射角範囲および偏光分離波長範囲が広く、消光比が高い、P偏光を反射してS偏光を透過する偏光分離膜が得られる。
光学ガラス等の屈折率nPのプリズム基材上、すなわち該プリズム基材の面に、屈折率nHの光学薄膜(以下、H層という)と該nHより低い屈折率nLを有する光学薄膜(以下、L層という)とを交互に繰り返して積層した多層膜において、全反射減衰が発生する。このためには、偏光分離を行う光線の入射角θ2が屈折率nPと屈折率nLから求められる臨界角を超える必要があるため、以下の関係を満足することが好ましい。
θ2>sin−1(nL/nP) …(1)
プリズム基材としてSCHOTT社の商品名SF6(波長550nmでの屈折率1.81)を用い、H層としてTiO(波長550nmでの屈折率2.49)、L層としてSiO(波長550nmでの屈折率1.46)を用いた場合、臨界角は53.8°である。偏光分離すべき光線の入射角60°はこの臨界角を超えているため、全反射減衰が発生する。
さらに、色合成プリズム1を六角柱プリズム形状にするためには、多層膜が形成されたプリズム基材に他のプリズム基材に貼り合わせる(接合する)必要がある。これには、通常、接着剤が利用される。
但し、通常の接着剤の屈折率は1.5〜1.6程度であるため、プリズム基材と接着剤の界面で全反射が発生してしまう。プリズム基材がSCHOTT社の商品名SF6で、接着剤の屈折率が1.55である場合、臨界角は58.9°である。つまり、偏光分離を行う光線の入射角60°はこの臨界角を超えている。接着剤は全反射減衰を発生させるほど薄膜化することは困難であるため、全反射が発生し、偏光分離特性が得られない。
このため、偏光分離を行う光線の入射角θ2が、屈折率nPと接着剤の屈折率nBから求められる臨界角を超えない必要があるため、以下の関係を満足することが好ましい。
θ2<sin−1(nB/nP) …(2)
プリズム基材がSCHOTT社の商品名SF6であり、接着剤として高屈折率かつ紫外線硬化樹脂であるPVCz(波長550nmでの屈折率1.7)を利用した場合、臨界角は69.9度である。偏光分離光線の入射角60°はこの臨界角を超えていないため、全反射が発生しない。
ただし、上記(1),(2)の条件は、必ずしも満足すべき条件ではない。
以上の検討より、プリズム基材である入射側媒質をSCHOTT社の商品名SF6とし、H層をTiO、L層をSiO、接着剤である射出媒質をPVCzとして膜設計を行った。このときの膜設計結果を図3Aおよび図3Bに、膜構成を表1に示す。層数は37層である。
図3Aは、各多層膜にP偏光およびS偏光を入射角60°およびその近傍で入射させたときの透過率のシミュレーション結果である。Tp60、Tp58およびTp62はそれぞれ、P偏光を60°、58°および62°の入射角で入射させたときの透過率を示している。また、Ts60、Ts58およびTs62はそれぞれ、S偏光を60°、58°および62°の入射角で入射させたときの透過率を示している。プロジェクタでは入射する光線が角度分布を有している場合が多いため、基準となる入射角60°に対して±2°の入射角を有する場合の透過率も示している。図3Aでは、S偏光の透過率を左側の縦軸で示し、P偏光の透過率を右側の縦軸で示している。
図3Aから分かるように、可視波長域全域に対して消光比(extinction ratio)が高い偏光分離特性が得られている。消光比とは、透過光の強度を測定したときの最小強度と最大強度の比である。
図3Bは、各多層膜にP偏光およびS偏光を入射角0°およびその近傍で入射させたときの透過率のシミュレーション結果である。Tp0およびTp2はそれぞれ、P偏光を0°および2°の入射角で入射させたときの透過率を示している。また、Ts0およびTs2はそれぞれ、S偏光を0°および2°の入射角で入射させたときの透過率を示している。前述した理由により、基準となる入射角0°に対して+2°の入射角を有する場合の透過率も示している。Tp0とTs0は、光線が各多層膜に対して垂直に入射するため、完全に一致する。また、各多層膜は、垂直入射近傍の角度特性に対しては鈍感であるので、Tp2とTs2に大きな差は見られない。図3Bにおいても、可視波長域全域に対して透過率が高い特性が得られている。
このように、本実施例では、全反射減衰を利用することによって、入射角60°で入射したS偏光を透過してP偏光を反射する、消光比の高い偏光分離機能をそれぞれ有する多層膜21,22、つまりは色合成プリズム1を実現することができる。さらに、入射角0°の光線を透過する反射防止機能をそれぞれ有する多層膜21,22を得ることができる。
なお、表1に示したプリズム基材の材料、薄膜の材料、薄膜の順番、層数および膜厚は例に過ぎず、本発明はこれに限定されない。また、本実施例では、接着剤としてPVCzを採用した場合について説明したが、プリズム基材と接着剤との界面で使用入射角において全反射が発生しなければ、上記接着剤に限定されない。さらに、接着剤を用いずにプリズム基材の接着を行うオプティカルコンタクトが知られているが、本発明においてもこれを用いることで全反射の発生を回避できる。
尚、本実施例1においては、第1平面に第1多層膜を、第2平面に第2多層膜22を形成したがこの限りではない。例えば第1平面に第1のSWS(構造的複屈折を有する光学素子、構造的に屈折率異方性を持つ光学素子)を、第2平面に第2のSWSを形成しても構わない。これは以下の実施例においても同じである。
図4には、本発明の実施例2である色合成プリズム101の概略構成を示している。本実施例の色合成プリズム101も、実施例1と同様に、そのベースとなる立体形状は仮想六角柱である。但し、実施例1では仮想六角柱が正六角柱であるのに対し、本実施例では正六角柱ではない。このため、実施例1とは第1多層膜および第2多層膜への入射角が異なり、膜特性が異なる。
本実施例の色合成プリズム101において、第1多層膜23および第2多層膜24はともに、入射角15°の構成を透過する反射防止機能と、入射角55°のS偏光を透過してP偏光を反射する偏光分離機能とを有する多層膜である。
これらの多層膜23,24と6つの光学面11〜16との関係は、以下の通りである。第1入射面11の面法線と第1多層膜23の面法線とのなす角度は15°で、第1入射面11の面法線と第2多層膜24の面法線とのなす角度は55°である。また、第2入射面12の面法線と第1多層膜23の面法線とのなす角度は55°で、第2入射面12の面法線と第2多層膜24の面法線とのなす角度は15°である。また、第1多層膜21と第2多層膜22とのなす角度は70°である。
本実施例の色合成プリズム101の基本的な光学作用は、青光線、緑光線および赤光線について実施例1と同様である。
第1多層膜23および第2多層膜24は、実施例1と同様に、全反射減衰を利用することによって、入射角55°のS偏光を透過してP偏光を反射する。さらに、入射角10°の光線を透過する反射防止機能を有する。
本実施例ではこのような条件を満たすように膜設計を行った。具体的には、プリズム基材である入射側媒質としてSCHOTT社の商品名SF6を、H層としてTiOを、L層としてSiOを、接着剤である射出媒質としてPVCzを用いた。このときの膜設計結果を図5Aおよび図5Bに、膜構成を表1に示す。層数は37層である。
図5Aは、各多層膜にP偏光およびS偏光を入射角55°およびその近傍で入射させたときの透過率のシミュレーション結果である。Tp55、Tp53およびTp57はそれぞれ、P偏光を55°、53°および57°の入射角で入射させたときの透過率を示している。また、Ts55、Ts53およびTs57はそれぞれ、S偏光を55°、53°および57°の入射角で入射させたときの透過率を示している。基準となる入射角55°に対して±2°の入射角を有する場合の透過率も示している理由は、実施例1と同じである。図5Aでは、S偏光の透過率を左側の縦軸で示し、P偏光の透過率を右側の縦軸で示している。
図5Aから分かるように、可視波長域全域に対して消光比が高い偏光分離特性が得られている。
図5Bは、各多層膜にP偏光およびS偏光を入射角15°およびその近傍で入射させたときの透過率のシミュレーション結果である。Tp15、Tp13およびTp17はそれぞれ、P偏光を15°、13°および17°の入射角で入射させたときの透過率を示している。また、Ts15、Ts13およびTs17はそれぞれ、S偏光を15°、13°および17°の入射角で入射させたときの透過率を示している。前述した理由により、基準となる入射角15°に対して±2°の入射角を有する場合の透過率も示している。図5Bでも、可視波長域全域に対して透過率が高い特性が得られている。
このように、本実施例でも、全反射減衰を利用することによって、入射角55°のS偏光を透過してP偏光を反射する、消光比の高い偏光分離機能をそれぞれ有する多層膜23,24、つまりは色合成プリズム101を実現することができる。さらに、入射角15°の光線を透過する反射防止機能をそれぞれ有する多層膜23,24を得ることができる。
以上のように、正六角柱をベース形状としない1つのプリズムによっても、色分解と色合成を行うことができる。したがって、色合成プリズムのベース形状は、正六角柱である必要はなく、任意の光線入射角度に応じたプリズム形状と多層膜を設計することができる。
図6には、本発明の実施例3である色合成プリズム201の概略構成を示している。本実施例の色合成プリズム201も、実施例1と同様に、そのベースとなる立体形状は仮想六角柱である。但し、実施例1では仮想六角柱が正六角柱であるのに対し、本実施例では正六角柱ではない。このため、実施例1とは第1多層膜および第2多層膜への入射角が異なり、膜特性が異なる。
本実施例の色合成プリズム201において、第1多層膜23および第2多層膜24はともに、入射角15°の構成を透過する反射防止機能と、入射角65°のS偏光を透過してP偏光を反射する偏光分離機能とを有する多層膜である。
これらの多層膜23,24と6つの光学面11〜16との関係は、以下の通りである。第1入射面11の面法線と第1多層膜23の面法線とのなす角度は15°で、第1入射面11の面法線と第2多層膜24の面法線とのなす角度は65°である。また、第2入射面12の面法線と第1多層膜23の面法線とのなす角度は65°で、第2入射面12の面法線と第2多層膜24の面法線とのなす角度は15°である。また、第1多層膜21と第2多層膜22とのなす角度は50°である。
本実施例の色合成プリズム201の基本的な光学作用は、青光線、緑光線および赤光線について実施例1と同様である。
第1多層膜23および第2多層膜24は、実施例1と同様に、全反射減衰を利用することによって、入射角65°のS偏光を透過してP偏光を反射する。さらに、入射角15°の光線を透過する反射防止機能を有する。
本実施例ではこのような条件を満たすように膜設計を行った。具体的には、プリズム基材である入射側媒質としてSCHOTT社の商品名SF6を、H層としてTiOを、L層としてSiOを、接着剤である射出媒質としてPVCzを用いた。このときの膜設計結果を図7Aおよび図7Bに、膜構成を表1に示す。層数は25層である。
図7Aは、各多層膜にP偏光およびS偏光を入射角65°およびその近傍で入射させたときの透過率のシミュレーション結果である。Tp65、Tp63およびTp67はそれぞれ、P偏光を65°、63°および67°の入射角で入射させたときの透過率を示している。また、Ts65、Ts63およびTs67はそれぞれ、S偏光を65°、63°および67°の入射角で入射させたときの透過率を示している。基準となる入射角65°に対して±2°の入射角を有する場合の透過率も示している理由は、実施例1と同じである。図7Aでは、S偏光の透過率を左側の縦軸で示し、P偏光の透過率を右側の縦軸で示している。
図7Aから分かるように、可視波長域全域に対して消光比が高い偏光分離特性が得られている。
図7Bは、各多層膜にP偏光およびS偏光を入射角15°およびその近傍で入射させたときの透過率のシミュレーション結果である。Tp15、Tp13およびTp17はそれぞれ、P偏光を15°、13°および17°の入射角で入射させたときの透過率を示している。また、Ts15、Ts13およびTs17はそれぞれ、S偏光を15°、13°および17°の入射角で入射させたときの透過率を示している。前述した理由により、基準となる入射角15°に対して±2°の入射角を有する場合の透過率も示している。図7Bでも、可視波長域全域に対して透過率が高い特性が得られている。
このように、本実施例でも、全反射減衰を利用することによって、入射角65°のS偏光を透過してP偏光を反射する、消光比の高い偏光分離機能をそれぞれ有する多層膜23,24、つまりは色合成プリズム201を実現することができる。さらに、入射角15°の光線を透過する反射防止機能をそれぞれ有する多層膜23,24を得ることができる。しかも、偏光分離を行う光線の入射角が大きいほど、多層膜の層数を減少させることができるため、好ましい。
以上のように、正六角柱をベース形状としない1つのプリズムによっても、色分解と色合成を行うことができる。したがって、色合成プリズムのベース形状は、正六角柱である必要はなく、任意の光線入射角度に応じたプリズム形状と多層膜を設計することができる。
図8には、本発明の実施例4である光学素子としての色分離合成プリズム301の概略構成を示している。本実施例の色分離合成プリズム301も、実施例1と同様に、そのベースとなる立体形状は仮想六角柱である。但し、実施例1から3では第1多層膜および第2多層膜は共に同一の光学的機能を有しているが、実施例4では第1多層膜と第2多層膜が異なった光学的機能を有する。
第1多層膜25は、可視域全領域に対して、入射角0°で入射した光線を透過する透過機能(反射防止機能)と、入射角60°で入射したS偏光を透過してP偏光を反射する偏光分離機能とを有する。第2多層膜26は、緑波長領域(第1波長領域)に対して、入射角0°で入射した光線を透過する透過機能(反射防止機能)を有する。さらに、青波長領域(第2波長領域)に対して、入射角60°で入射したS偏光を透過してP偏光を反射する偏光分離機能と、赤波長領域(第3波長領域)に対して、入射角60°で入射したS偏光を反射してP偏光を透過する偏光分離機能を有する。これらの多層膜25,26と上記6つの光学面11〜16との関係は、実施例1と同様である。ここで、第1波長領域、第2波長領域、第3波長領域それぞれは、上述の各波長領域に対応することが望ましいが、それに限定されず、第1、2、3波長領域はいずれが緑、赤、青のどの波長領域であってもよい。
図9A〜図9Cには、本実施例の色分離合成プリズム1の基本的な光学作用を示している。図9Aは、光源より導かれた青波長域光線(以下、単に青光線という)311がS偏光として第1入射面11から色合成プリズム1内に入射する場合の光路を示している。図9A〜図9Cにおいて、実線はS偏光を、破線はP偏光を示している。S偏光及びP偏光は、互いに偏光状態が異なる光である。
色分離合成プリズム301に入射した青光線311は、第1多層膜25に対して入射角0°で入射してこれを透過した後、第2多層膜26に対して入射角60°で入射してこれを透過する。また、青光線311の入射位置によっては、第2多層膜26に対して入射角60°で入射してこれを透過した後、第1多層膜25に対して入射角0°で入射してこれを透過する。このように、青光線311は、多層膜25,26のいずれの位置に入射しても、第1および第2多層膜25,26を透過して、第1入射面11の対面である第1入射出面14から色分離合成プリズム301外に射出する。そして、青波長域用の反射型液晶パネル(以下、単に青パネルという)44に入射する。
青パネル44で反射され、かつ画像変調された青光線311は、P偏光として第1入射出面14から色分離合成プリズム301内に再入射する。色分離合成プリズム301に再入射した青光線311は、第1多層膜25に対して入射角0°で入射してこれを透過した後、第2多層膜26に対して入射角60°で入射してここで反射される。また、該青光線311の入射位置によっては、第2多層膜26に対して入射角60°で入射してここで反射された後、第1多層膜25に対して入射角0°で入射してこれを透過する。このように、再入射した青光線311は、多層膜25,26のいずれの位置に入射しても、第1多層膜25を透過して第2多層膜26で反射される。これにより、射出面13から色分離合成プリズム301外に射出し、不図示の投射レンズに向かう。
図9Bは、光源より導かれた赤波長域光線(以下、単に赤光線という)312がS偏光として第1入射面11から色分離合成プリズム301に入射する場合の光路を示している。色合成プリズム1に入射した赤光線312は、第1多層膜25に対して入射角0°で入射してこれを透過した後、第2多層膜26に対して入射角60°で入射してここで反射される。また、赤光線312の入射位置によっては、第2多層膜26に対して入射角60°で入射してここで反射された後、第1多層膜25に対して入射角0°で入射してこれを透過する。このように、赤光線312は、多層膜25,26のいずれの位置に入射しても、第1多層膜25を透過して、第2多層膜26で反射する。このため、第2入射出面15から色分離合成プリズム301外に射出し、赤波長域用の反射型液晶パネル(以下、単に赤パネルという)45に入射する。
赤パネル45で反射され、かつ画像変調された赤光線312は、P偏光として第2入射出面15から色合成プリズム301に再入射する。色合成プリズム301に再入射した赤光線312は、第1多層膜25に対して入射角60°で入射してこれを透過した後、第2多層膜26に対して入射角60°で入射してこれを透過する。また、赤光線312の入射位置によっては、第2多層膜26に対して入射角60°で入射してこれを透過した後、第1多層膜21に対して入射角60°で入射してこれを透過する。このように、再入射した赤光線312は、多層膜25,26のいずれの位置に入射しても、第1および第2多層膜25,26で透過する。これにより、第2入射出面15の対面である射出面13から色合成プリズム301外に射出し、投射レンズに向かう。
図9Cは、光源より導かれた緑波長域光線(以下、単に緑光線という)313がS偏光として第2入射面12から色分離合成プリズム301に入射する場合の光路を示している。色分離合成プリズム301に入射した緑光線313は、第1多層膜25に対して入射角60°で入射してこれを透過した後、第2多層膜26に対して入射角0°で入射してこれを透過する。また、緑光線313の入射位置によっては、第2多層膜26に対して入射角0°で入射してこれを透過した後、第1多層膜25に対して入射角60°で入射してこれを透過する。このように、緑光線313は、多層膜25,26のいずれの位置に入射しても、第1および第2多層膜25,26を透過する。このため、第2入射面12の対面である第3入射出面16から色分離合成プリズム301外に射出し、緑波長域用の反射型液晶パネル(以下、単に緑パネルという)46に入射する。
緑パネル46で反射され、かつ画像変調された緑光線313は、P偏光として第3入射出面16から色分離合成プリズム301内に再入射する。色合成プリズム301に再入射した緑光線313は、第1多層膜25に対して入射角60°で入射してここで反射された後、第2多層膜26に対して入射角0°で入射してこれを透過する。また、緑光線313の入射位置によっては、第2多層膜26に対して入射角0°で入射してこれを透過した後、第1多層膜25に対して入射角60°で入射してここで反射される。このように、再入射した緑光線313は、多層膜25,26のいずれの位置に入射しても、第1多層膜25で反射され、第2多層膜26を透過する。これにより、射出面13から色分離合成プリズム301外に射出し、投射レンズに向かう。
以上のように本実施例の色分離合成プリズム301は、青、赤および緑光線311〜313の青、赤および緑パネル44〜46に向けての光路分離(色分解)と、該3つのパネル44〜46からの光線311〜313の色合成とを1つプリズムで行うことができる。
次に、第1多層膜25および第2多層膜26についてさらに詳しく説明する。第1多層膜25は、入射角0°の光線を透過する反射防止機能と、入射角60°のS偏光を透過してP偏光を反射する偏光分離機能とを有する。これは実施例1と同一であり、膜構成も実施例1で示した通りである。
第2多層膜26は緑波長領域に対して、入射角0°で入射した光線を透過する透過機能(反射防止機能)を有する。さらに、青波長領域に対して、入射角60°で入射したS偏光を透過してP偏光を反射する偏光分離機能と、赤波長領域に対して、入射角60°で入射したS偏光を反射してP偏光を透過する偏光分離機能を有する。前述した文献3または特許文献4には、特定波長帯域のS偏光を透過、P偏光を反射し、異なる波長帯域のS偏光を反射、P偏光を透過させる波長選択性のある偏光分離膜が開示されている。これは多層膜において、全反射減衰を利用することや特定の膜構成を用いることによって波長選択性のある偏光分離膜を得ている。この膜構成を基本として、入射角60°で入射したS偏光を透過してP偏光を反射する偏光分離機能と、赤波長領域に対して、入射角60°で入射したS偏光を反射してP偏光を透過する偏光分離機能とを有する多層膜を設計する。さらに、緑波長領域に対して、入射角0°で入射した光線を透過する透過機能を有するように膜設計を行った。
プリズム基材である入射側媒質をOHARA社の商品名S−LAH55とし、H層をTiO、L層をSiO、接着剤である射出媒質をPVCzとして膜設計を行った。このときの膜設計結果を図10Aおよび図10Bに、膜構成を表2に示す。層数は46層である。
図10Aは、各多層膜にP偏光およびS偏光を入射角60°およびその近傍で入射させたときの透過率のシミュレーション結果である。Tp60、Tp58およびTp62はそれぞれ、P偏光を60°、58°および62°の入射角で入射させたときの透過率を示している。また、Ts60、Ts58およびTs62はそれぞれ、S偏光を60°、58°および62°の入射角で入射させたときの透過率を示している。プロジェクタでは入射する光線が角度分布を有している場合が多いため、基準となる入射角60°に対して±2°の入射角を有する場合の透過率も示している。
図10Aから分かるように、青波長領域に対して、入射角60°で入射したS偏光を透過してP偏光を反射する偏光分離特性と、赤波長領域に対して、入射角60°で入射したS偏光を反射してP偏光を透過する偏光分離特性が得られている。
図10Bは、各多層膜にP偏光およびS偏光を入射角0°およびその近傍で入射させたときの透過率のシミュレーション結果である。Tp0およびTp2はそれぞれ、P偏光を0°および2°の入射角で入射させたときの透過率を示している。また、Ts0およびTs2はそれぞれ、S偏光を0°および2°の入射角で入射させたときの透過率を示している。前述した理由により、基準となる入射角0°に対して+2°の入射角を有する場合の透過率も示している。Tp0とTs0は、光線が各多層膜に対して垂直に入射するため、完全に一致する。また、各多層膜は、垂直入射近傍の角度特性に対しては鈍感であるので、Tp2とTs2に大きな差は見られない。図10Bからわかるように、緑波長領域に対して透過率が高い特性が得られている。
このように、本実施例では、所定の入射角の光線に対しては第1の波長領域において透過機能を有している。さらに、他の入射角で入射する第2の波長領域の光のうちS偏光に対する透過率よりもP偏光の透過率が高く、第3の波長領域の光のうちP偏光に対する透過率よりもS偏光の透過率が高い偏光分離機能を有している。
より好ましくは、多層膜は、入射角θ2で入射する第2の波長領域の光のうちS偏光に対する透過率よりもP偏光に対する透過率が60%以上高い。また、入射角θ2で入射する第3の波長領域の光のうちP偏光に対する透過率よりもS偏光に対する透過率が60%以上高い。さらに、第2及び第3の波長領域は30nm以上の帯域幅を有する。
このような波長選択性のある透過機能と偏光分離機能をそれぞれ有する多層膜26を実現し、これを用いることにより色分離合成プリズム301を実現することができる。
なお、表2に示したプリズム基材の材料、薄膜の材料、使用する薄膜種の数、薄膜の順番、層数および膜厚は例に過ぎず、本発明はこれに限定されない。
また、実施例2、3に示したように正六角柱をベース形状としない1つのプリズムによっても、色分解と色合成を行うことができる。したがって、色合成プリズムのベース形状は、正六角柱である必要はなく、任意の光線入射角度に応じたプリズム形状と多層膜を設計することができる。
また、本実施例において、緑波長領域に対して、入射角0°で入射した光線を透過する透過機能(反射防止機能)を有する。さらに、青波長領域に対して、入射角60°で入射したS偏光を透過してP偏光を反射する偏光分離機能と、赤波長領域に対して、入射角60°で入射したS偏光を反射してP偏光を透過する偏光分離機能を有する。しかし、この透過機能と偏光分離機能の色波長帯域の組合せは本発明はこれに限定されず、個別に設計することができる。
実施例1〜4の色合成プリズムは、ベース形状である仮想六角柱の六角形以外の6面が光学面であり、そのうち入射面が2面、射出面が1面、入射出面が3面設けられている。このため、偏光分離を行う光線の入射角が大きいほど、プリズムが大きくなってしまう。したがって、実際上は、2つの多層膜のなす角度θ0が以下の関係を満足することが必要である。
45°<θ0<75°。
また、多層膜に関しても、全波長域において、反射防止(透過)を行う光線の入射角θ1と、偏光分離を行う光線の入射角θ2とが以下の関係を満足することが好ましい。
θ2−θ1>30°
これらを満たさなければ、プリズムが大きくなり過ぎ、従来のダイクロイック素子や偏光ビームスプリッタを含むプリズムを3〜4個配置した構成に対する小型化や投射レンズのバックフォーカスの短縮化において優位性がなくなる可能性がある。ただし、θ2−θ1>30°は、必ずしも満足すべき条件ではない。
また、実施例1〜4で説明した色合成プリズムは、平面視において線対称(立体的には面対称)な形状を有するが、非線対称形状でもよい。この場合は、第1多層膜と第2多層膜が異なる光学的特性を有する多層膜となるが、各実施例と同様に設計することができる。
図11には、本発明の実施例5であるプロジェクタ(画像投射装置)の概略構成を示している。本実施例のプロジェクタは、実施例1で説明した色合成プリズム1を用いている。
高圧水銀ランプ等の光源51からは、白色光が平行光束に変換されて射出される。ここにいう平行光束は、完全に平行な光束だけでなく、光学系の特性上平行とみなせる程度に拡散又は収束する光束も含む。このことは、以下の実施例でも同じである。
この平行光束は、第1のフライアイレンズ52によって複数の光束に分割され、各分割光束は集光される。各分割光束は、第2のフライアイレンズ53、偏光変換素子54の近傍に集光され、光源の像(2次光源像)を作る。フライアイレンズ52,53は複数のレンズセルが2次元方向に配置されて構成されている。各レンズセルは、被照明面に配置された反射型液晶表示素子(反射型画像形成素子)である青、赤および緑パネル44〜46と相似形状である矩形のレンズ形状を有する。
偏光変換素子54は、第2のフライアイレンズ53を射出した各分割光束をS偏光に変換する。偏光変換素子54から射出した光は、コンデンサレンズ55によって集光されながら、色分解合成光学系に入射する。色分解合成光学系は、入射した光を青波長帯域、赤波長帯域および緑波長帯域の光(以下、単に青光、赤光および緑光という)に分解する。コンデンサレンズ55によって集光されたこれら青光、赤光および緑光はそれぞれ、青パネル44、赤パネル45および緑パネル46を重畳的に照明する。なお、光源51からコンデンサレンズ55までを照明光学系といい、該照明光学系、色分解合成光学系および後述する投射系としての投射レンズ71を含めて画像投射光学系という。このことは、以下に説明する実施例でも同様である。
以下、色分解合成光学系について説明する。コンデンサレンズ55を透過した偏光は、青光と赤光を反射して緑光を透過するダイクロイックミラー61に入射する。ダイクロイックミラー61で反射された青光と赤光は、2つのミラー62で反射されて、波長選択性位相子63に入射する。波長選択性位相子63は、赤光の偏光方向のみを90°回転させる。
波長選択性位相子63からS偏光として射出した青光は、色合成プリズム1に第1入射面11から入射する。そして、青光は第1多層膜21に入射角0°で入射してこれを透過し、第2多層膜22に入射角60°で入射してこれを透過する。こうして第1多層膜21および第2多層膜22を透過した青光は、第1入射面11の対面である第1入射出面14から色合成プリズム1外に射出して青パネル44に入射する。
ここで、各パネルは、駆動回路81に接続されている。プロジェクタの一部である駆動回路81には、パーソナルコンピュータ、DVDプレーヤ、ビデオデッキ、テレビチューナ等の画像供給装置150からの画像信号(画像情報)が入力される。駆動回路81は、入力された画像信号のR,G,B成分に基づいてそれぞれの色に対応するパネルを駆動する。これにより、各パネルは、入射した光を反射するとともに画像変調して画像光として射出する。プロジェクタと画像供給装置により画像表示システムが構成される。なお、このような構成は、以下の実施例でも、図示しないが同じである。
青パネル44で反射され変調された青光(青画像光)は、P偏光として第1入射出面14から色合成プリズム1に再入射する。色合成プリズム1に入射した青画像光は、第1多層膜21に入射角0°で入射してこれを透過し、第2多層膜22に入射角60°で入射してここで反射される。こうして第1多層膜21を透過して第2多層膜22で反射された青画像光は、射出面13から色合成プリズム1外に射出して投射レンズ71に入射し、不図示のスクリーン(被投射面)上に投射される。
波長選択性位相子63でP偏光に変換された赤光は、第1入射面11から色合成プリズム1に入射する。P偏光である赤光は、第1多層膜21に対して入射角0°で入射してこれを透過し、第2多層膜22に入射角60°で入射してここで反射される。こうして第1多層膜21を透過し、第2多層膜22で反射された赤光は、第2入射出面15から色合成プリズム1外に射出して赤パネル45に入射する。
赤パネル45で反射され、かつ画像変調された赤画像光は、S偏光として第2入射出面15から色合成プリズム1に内に再入射する。色合成プリズム1に入射した赤画像光は、第1多層膜21に入射角0°で入射してこれを透過し、第2多層膜22に入射角60°で入射してこれを透過する。こうして第1多層膜21および第2多層膜22で透過した赤画像光は、第2入射出面15の対面である射出面13から色合成プリズム1外に射出し、投射レンズ71に入射してスクリーン上に投射される。
ダイクロイックミラー61を透過した緑光は、2つのミラー62で反射されて光学部材64に入射する。この光学部材64は、緑光の光路長を青光および赤光の光路長と等しくするために設けられている。
光学部材64から射出した緑光は、第2入射面12から色合成プリズム1内に入射する。色合成プリズム1内にS偏光として入射した緑光は、第1多層膜21に入射角60°で入射してこれを透過し、第2多層膜22に入射角0°で入射してこれを透過する。こうして第1多層膜21および第2多層膜22を透過した緑光は、第2入射面12の対面である第3入射出面16から色合成プリズム1外に射出し、緑パネル46に入射する。
緑パネル46で反射され、かつ画像変調された緑画像光は、P偏光として第3入射出面16から色合成プリズム1内に入射する。色合成プリズム1に入射した緑画像光は、第1多層膜21に入射角60°で入射してここで反射され、第2多層膜22に入射角60°で入射してこれを透過する。こうして第1多層膜21で反射されて第2多層膜22を透過した緑画像光は、射出面13から色合成プリズム1外に射出し、投射レンズ71に入射してスクリーン上に投射される。
このように、六角柱形状をベース形状とする実施例1の色合成プリズム1を1つ用いて、反射型液晶パネルを用いたプロジェクタにおける色分離合成光学系を構成することができる。また、実施例1の色合成プリズム1を1つだけ用いることで、投射レンズ71のバックフォーカスを短くすることができるため、投射レンズ71を小型化することができる。これより、プロジェクタの構成部品点数を削減することが可能であるとともに、該プロジェクタの小型化が可能である。
なお、本実施例のプロジェクタにおいて、青光、赤光および緑光を互いに入れ替えてもよい。また、色合成プリズムは実施例2,3で説明したものを用いてもよい。これらのことは、以下の実施例でも同様である。
また、本実施例のプロジェクタにおいて、色合成プリズムを実施例4で説明したものを用いてもよい。但し、その場合は、実施例4で示したように色合成プリズムに入射する青光、赤光および緑光の偏光方向は全てS偏光である。このため、本実施例のプロジェクタにおいて、波長選択性位相子63で赤光をP偏光に変換する必要はなく、S偏光のまま、色合成プリズムに入射させることとなる。すなわち、波長選択性位相子63を除去することが必要となる。同時に緑光の光路にあり、緑光の光路長を青光および赤光の光路長と等しくするために設けられている光学部材64も除去することが必要である。これより、実施例4の色合成プリズムを用いることにより、プロジェクタの構成部品点数をさらに削減することが可能であるとともに、該プロジェクタの低コスト化が可能である。
図12には、本発明の実施例6であるプロジェクタの概略構成を示している。本実施例のプロジェクタは、実施例1で説明した色合成プリズム1を用いている。また、実施例5と同じ構成要素については、実施例5と同符号を付す。
光源51からコンデンサレンズ55までの光学作用は、実施例5と同じである。但し、本実施例では、ダイクロイックミラー61に入射する前に、光源51からの光をミラー62で反射させ、該光の進行方向を変える。
ダイクロイックミラー61を透過した青光および赤光と緑光はそれぞれ、ミラー62によって反射されて色合成プリズム1に入射する。この場合、青光および赤光の光路長と、緑光の光路長とを一致させるために、緑光の光路にはリレーレンズ56が設けられている。これにより、各色光により各色パネルを重畳的に照明することができる。
色合成プリズム1の作用は、実施例3と同様である。本実施例では、色合成プリズム1の射出側に波長選択性位相子63と偏光子65とが設けられている。色合成プリズム1から射出する青画像光および緑画像光はP偏光であり、赤画像光がS偏光である。波長選択性位相子63は、赤画像光の偏光方向のみを90°回転させる。これにより、波長選択性位相子63から射出した青画像光、赤画像光および緑画像光は全てS偏光となる。その後、P偏光を遮断する偏光子65を透過した青画像光、赤画像光および緑画像光は、投射レンズ71に入射して不図示のスクリーンに投射される。
黒表示の場合、各パネルで反射した光の偏光方向は、該パネルに入射する光の偏光方向と同じである。このため、各パネルで反射した光は色合成プリズム1を介して光源51に向かって戻る。しかし、光源51に向かって戻る光の一部は、色合成プリズム1においていわゆる漏れ光となり、色合成プリズム1から投射レンズ71を介してスクリーン上に投射されてしまう。この漏れ光は、コントラストを低下させる原因となる。
しかし、本実施例では、この漏れ光が波長選択性位相子63からP偏光として射出されるため、偏光子65で遮断される。したがって、漏れ光によるコントラスト低下を回避することができる。
このように、六角柱形状をベース形状とする色合成プリズム1と、該色合成プリズム1の射出側に配置した波長選択性位相子63および偏光子65とを用いて、高コントラストの画像を投射可能な色分離合成光学系(つまりはプロジェクタ)を構成できる。また、本実施例では、ミラー62およびリレーレンズ56により構成される光学系がおおよそ長方形の範囲内に収まる。このため、最終形状であるプロジェクタの小型化が可能であるとともに、プロジェクタの取り扱いが容易になる。
また、本実施例のプロジェクタにおいて、色合成プリズムを実施例4で説明したものを用いてもよい。但し、その場合は、実施例5で示したことと同様に、色合成プリズムの入射側の波長選択性位相子63を除去することが必要となる。また、実施例4で示したように色合成プリズムから射出する青光、赤光および緑光の偏光方向は全てP偏光である。このため、本実施例のプロジェクタにおいて、色合成プリズムの射出側の波長選択性位相子63で赤光の偏光方向を変換する必要はなく、青光、赤光および緑光はP偏光のままで射出させる。その後、S偏光を遮断させる偏光子65で漏れ光を遮断することが可能である。これより、実施例4の色合成プリズムを用いることにより、プロジェクタの構成部品点数をさらに削減することが可能であるとともに、該プロジェクタの低コスト化が可能である。
なお、偏光子65を用いて漏れ光を遮断することは実施例5においても可能であり、また、以下の実施例でも同様である。
図13には、本発明の実施例7であるプロジェクタの概略構成を示している。本実施例のプロジェクタは、実施例1で説明した色合成プリズム1を用いている。また、実施例5,6と同じ構成要素については、実施例5,6と同符号を付す。
本実施例では、光源として、それぞれ青光および赤光と緑光を発光する発光ダイオードを複数備えた光源アレイ91BR、91Gを用いている。なお、同様の光源アレイとして、レーザダイオードや有機エレクトロルミネッセンス素子を用いたものを使用してもよい。このことは、以下の実施例でも同様である。
アレイ光源91BRでは、青光を発光する発光ダイオードと赤光を発光する発光ダイオードとがそれぞれ二次元方向に複数配置されている。アレイ光源91BRから発せられた青光および赤光は、無偏光光として偏光変換素子54に入射し、S偏光に変換される。
偏光変換素子54からS偏光として射出した青光および赤光は、波長選択性位相子63に入射する。ここで、赤光の偏光方向のみが90°回転させられる。波長選択性位相子63をS偏光として射出した青光およびP偏光として射出した赤光は、色合成プリズム1に第1入射面11から入射する。色合成プリズム1の作用は実施例3と同様である。このため、青画像光および赤画像光は、射出面13から色合成プリズム1外に射出して投射レンズ71に入射し、スクリーン上に投射される。なお、波長選択性位相子63は、コンデンサレンズ55の入射側に設けてもよい。
アレイ光源91Gでは、緑光を発光する発光ダイオードが二次元方向に複数配置されている。アレイ光源91Gから発せられた緑光は、無偏光光として偏光変換素子54に入射し、S偏光に変換される。偏光変換素子54からS偏光として射出した緑光は、色合成プリズム1に第2入射面12から入射する。色合成プリズム1の作用は実施例3と同様である。このため、緑画像光は、射出面13から色合成プリズム1外に射出して投射レンズ71に入射し、スクリーン上に投射される。
このように、波長の異なる光を発生するアレイ光源と実施例1の色合成プリズムを用いることにより、非常に簡単な構成のプロジェクタを実現することが可能である。すなわち、部品点数が少なく、従来に比べてはるかに小型化が可能なプロジェクタを実現できる。
また、実施例4および5に示した白色光源(高圧水銀ランプ等)は非常に大きな熱が発生するため、これを冷却するための冷却ファン等の冷却機構が必要であるが、本実施例では光源が大きな熱を発生しないため、そのような冷却機構の排除又は簡易化が可能である。この結果、光学系以外の構成部品点数も少なくすることができ、冷却機構から発生する騒音も低減することができる。
なお、アレイ光源において、個々の発光ダイオードの光束分布を考慮して複数の発光ダイオードの配置を決めることで、均一な光束分布を有するアレイ光源を得ることができる。これを用いて、反射型液晶パネルを均一に照明することが好ましい。
また、本実施例でも、青光、赤光および緑光を互いに入れ替えることができる。但し、白色を得るためには、緑光成分を可視波長域の光のおよそ60〜80%を占めるようにする必要がある。このため、上述したように、青と赤の光源アレイとは別に緑の光源アレイを設けた方がよい。このことは以下の実施例でも同様である。
また、本実施例のプロジェクタにおいても、色合成プリズムを実施例4で説明したものを用いてもよい。但し、その場合は、実施例4で示したように色合成プリズムに入射する青光、赤光および緑光の偏光方向は全てS偏光である。このため、本実施例のプロジェクタにおいて、波長選択性位相子63で赤光をP偏光に変換する必要はなく、S偏光のまま、色合成プリズムに入射させることとなる。すなわち、波長選択性位相子63を除去することが必要となる。同時に緑光の光路にあり、緑光の光路長を青光および赤光の光路長と等しくするために設けられている光学部材64も除去することが必要である。これより、実施例4の色合成プリズムを用いることにより、プロジェクタの構成部品点数をさらに削減することが可能であるとともに、該プロジェクタの低コスト化が可能である。
図14には、本発明の実施例8であるプロジェクタの概略構成を示している。本実施例のプロジェクタは、実施例1で説明した色合成プリズム1と、実施例7で説明した光源アレイ91BR,91Gを用いている。また、実施例5〜7と同じ構成要素については、実施例4〜6と同符号を付す。
アレイ光源91BRから発せられた青光および赤光は、個々の発光ダイオードの光束分布に対応した複数のレンズセルを有するレンズアレイ92に入射する。レンズアレイ92は、個々の発光ダイオードからの光をコリメートレンズ93の有効径部分の全域に重畳的に入射させる。コリメートレンズ93からは、平行光束が射出される。
この平行光束は、第1のフライアイレンズ52によって複数の光束に分割され、各分割光束は集光される。各分割光束は、第2のフライアイレンズ53および偏光変換素子54の近傍に集光され、光源像を作る。フライアイレンズ52,53は複数のレンズセルが2次元方向に配置されて構成されている。各レンズセルは、被照明面に配置された青および赤パネル44,45と相似形状である矩形のレンズ形状を有する。
偏光変換素子54は、第2のフライアイレンズ53を射出した無偏光光をS偏光に変換する。偏光変換素子54から射出した青および赤光は、コンデンサレンズ55によって集光され、赤光の偏光方向のみを90°回転させる波長選択性位相子63に入射する。波長選択性位相子63をS偏光として射出した青光およびP偏光として射出した赤光は、色合成プリズム1に入射し、それぞれ青および赤パネル44,45を重畳的に照明する。
色合成プリズム1の作用は実施例3と同様である。このため、青画像光および赤画像光は、射出面13から色合成プリズム1外に射出して投射レンズ71に入射し、スクリーン上に投射される。なお、波長選択性位相子63を、コンデンサレンズ55の入射側に配置してもよい。
アレイ光源91Gから発せられた緑光は、個々の発光ダイオードの光束分布に対応した複数のレンズセルを有するレンズアレイ92に入射する。レンズアレイ92は、個々の発光ダイオードからの光をコリメートレンズ93の有効径部の全域に重畳的に入射させる。コリメートレンズ93からは平行光束が射出する。この平行光束は、第1のフライアイレンズ52によって複数の光束に分割され、各分割光束は集光される。各分割光束は、第2のフライアイレンズ53および偏光変換素子54の近傍に集光され、光源像を作る。フライアイレンズ52,53は、複数のレンズセルが2次元方向に配置されて構成されている。各レンズセルは、被照明面に配置された緑パネル46と相似形状である矩形のレンズ形状を有する。
偏光変換素子54は、第2のフライアイレンズ53を射出した無偏光光をS偏光に変換する。偏光変換素子54からS偏光として射出した緑光は、コンデンサレンズ55によって集光されて色合成プリズム1に入射し、緑パネル46を重畳的に照明する。色合成プリズム1の作用は実施例3と同様である。このため、緑画像光は、射出面13から色合成プリズム1外に射出し、投射レンズ71に入射してスクリーン上に投射(画像投射)される。
このように、波長の異なる光を発生するアレイ光源と実施例1の色合成プリズム1を1つ用いることにより、部品点数が少なく、小型のプロジェクタを実現できる。
また、レンズアレイ92、コリメートレンズ93およびフライアイレンズ52,53を用いることにより、各反射型液晶パネルの均一照明が可能となる。これにより、均一な明るさの投射画像を得ることができるだけでなく、個々の発光ダイオードの輝度ばらつきおよび波長ばらつきによる色むらを低減することができる。
また、実施例7と同様に、冷却機構が不要又は簡素化できるため、光学系以外の部品の点数を削減したり、騒音を低減させたりすることができる。
また、本実施例のプロジェクタにおいても、色合成プリズムを実施例4で説明したものを用いてもよい。但し、その場合は、実施例4で示したように色合成プリズムに入射する青光、赤光および緑光の偏光方向は全てS偏光である。このため、本実施例のプロジェクタにおいて、波長選択性位相子63で赤光をP偏光に変換する必要はなく、S偏光のまま、色合成プリズムに入射させることとなる。すなわち、波長選択性位相子63を除去することが必要となる。同時に緑光の光路にあり、緑光の光路長を青光および赤光の光路長と等しくするために設けられている光学部材64も除去することが必要である。これより、実施例4の色合成プリズムを用いることにより、プロジェクタの構成部品点数をさらに削減することが可能であるとともに、該プロジェクタの低コスト化が可能である。
図15には、本発明の実施例9であるプロジェクタの概略構成を示している。本実施例のプロジェクタは、実施例1で説明した色合成プリズム1と、実施例7,8で説明した光源アレイ91BR,91Gを用いている。また、実施例5〜8と同じ構成要素については、これら実施例と同符号を付す。
アレイ光源91BRから発せられた青光および赤光は、ロッドレンズ94に入射する。ロッドレンズ94は、その入射面から入射した複数の光束を内壁または外壁にて全反射させて重畳的に均一な光束として射出する。ロッドレンズ94を射出した光束は、ロッドレンズ95の射出面に配置された反射型偏光子95に入射する。反射型偏光子95は、S偏光を透過し、P偏光を反射する。このため、反射型偏光子95からの射出光は、S偏光となる。
反射型偏光子95で反射したP偏光は、再びロッドレンズ94に入射し、該ロッドレンズ94内で反射を繰り返す。反射を繰り返すことで偏光方向が回転し、最終的に反射型偏光子95からS偏光として射出する。なお、反射型偏光子95に代えて、無偏光光をS偏光に変換する偏光変換素子を用いてもよい。
反射型偏光子95から射出したS偏光である青光および赤光は、コンデンサレンズ55によって集光され、波長選択性位相子63で赤光の偏光方向のみが90°回転する。波長選択性位相子63をS偏光として射出した青光およびP偏光として射出した赤光はそれぞれ、色合成プリズム1に入射して青および赤パネル44,45を重畳的に照明する。色合成プリズム1の作用は実施例3と同様である。このため、青画像光および赤画像光は、射出面13から色合成プリズム1外に射出し、投射レンズ71に入射してスクリーン上に投射される。なお、波長選択性位相子63を、コンデンサレンズ55の入射側に配置してもよい。
アレイ光源91Gから発せられた緑光は、青光および赤光用のロッドレンズ94と同様の機能を有するロッドレンズ94および反射型偏光子95に入射して、反射型偏光子95からS偏光として射出する。反射型偏光子95に代えて、無偏光光をS偏光に変換する偏光変換素子を用いてもよい。
反射型偏光子95から射出したS偏光としての緑光は、コンデンサレンズ55によって集光され、色合成プリズム1に入射して緑パネル46を重畳的に照明する。色合成プリズム1の作用は実施例3と同様である。このため、緑画像光は、射出面13から色合成プリズム1外に射出し、投射レンズ71に入射してスクリーン上に投射される。
このように、波長の異なる光を発生するアレイ光源と実施例1の色合成プリズムを用いることにより、部品点数が少なく、小型化のプロジェクタを実現できる。また、ロッドレンズ94を用いることにより、各反射型液晶パネルの均一照明が可能となる。これにより、均一な明るさの投射画像を得ることができるだけでなく、個々の発光ダイオードの輝度ばらつきおよび波長ばらつきによる色むらを低減することができる。
また、実施例6と同様に、冷却機構が不要又は簡素化できるため、光学系以外の部品の点数を削減したり、騒音を低減させたりすることができる。
また、本実施例のプロジェクタにおいても、色合成プリズムを実施例4で説明したものを用いてもよい。但し、その場合は、実施例4で示したように色合成プリズムに入射する青光、赤光および緑光の偏光方向は全てS偏光である。このため、本実施例のプロジェクタにおいて、波長選択性位相子63で赤光をP偏光に変換する必要はなく、S偏光のまま、色合成プリズムに入射させることとなる。すなわち、波長選択性位相子63を除去することが必要となる。同時に緑光の光路にあり、緑光の光路長を青光および赤光の光路長と等しくするために設けられている光学部材64も除去することが必要である。これより、実施例4の色合成プリズムを用いることにより、プロジェクタの構成部品点数をさらに削減することが可能であるとともに、該プロジェクタの低コスト化が可能である。
以上説明したように、上記各実施例によれば、全反射減衰を利用することによって、入射角60°で入射したS偏光を透過してP偏光を反射し、さらに入射角0°の光線を透過する反射防止機能を有する多層膜を得ることができる。
また、上記各実施例によれば、全反射減衰を利用することや特定の膜構成を用いることによって所定の入射角の光線に対しては第1の波長領域において透過機能を有している。さらに、他の入射角で入射する第2の波長領域の光のうちS偏光に対する透過率よりもP偏光に対する透過率が高く、第3の波長領域の光のうちP偏光に対する透過率よりもS偏光に対する透過率が高い偏光分離機能を有している多層膜を得ることができる。
そして、反射型画像形成素子を用いた色分解合成光学系において、この多層膜を設けた六角柱形状ベースの色合成プリズムを用いることで、投射レンズのバックフォーカスを短くし、投射レンズの小型化を図ることができる。そして、これにより、プロジェクタの部品点数を削減し、プロジェクタ全体の小型化が可能となる。特に、光源アレイを用いることにより、光源ランプを用いる従来のプロジェクタに比べてきわめて小型のプロジェクタを実現することができる。
なお、上記各実施例では、光学素子として六角柱形状ベースのプリズム形態のものについて説明したが、本発明の光学素子はこのようなプリズム形態のものに限られず、種々の形態で実施することが可能である。
本発明の実施例1である色合成プリズムの概略図。 実施例1の色合成プリズムの光学面配置を説明する図。 実施例1の色合成プリズムの青光に対する基本的光学作用を示す図。 実施例1の色合成プリズムの赤光に対する基本的光学作用を示す図。 実施例1の色合成プリズムの緑光に対する基本的光学作用を示す図。 実施例1の色合成プリズムに用いられている多層膜の特性を示す図。 実施例1の色合成プリズムに用いられている多層膜の特性を示す図。 本発明の実施例2である色合成プリズムの概略図。 実施例2の色合成プリズムに用いられている多層膜の特性を示す図。 実施例2の色合成プリズムに用いられている多層膜の特性を示す図。 本発明の実施例3である色合成プリズムの概略図。 実施例3の色合成プリズムに用いられている多層膜の特性を示す図。 実施例3の色合成プリズムに用いられている多層膜の特性を示す図。 本発明の実施例4である色合成プリズムの概略図。 実施例4の色合成プリズムの青光に対する基本的光学作用を示す図。 実施例4の色合成プリズムの赤光に対する基本的光学作用を示す図。 実施例4の色合成プリズムの緑光に対する基本的光学作用を示す図。 実施例4の色合成プリズムに用いられている多層膜の特性を示す図。 実施例4の色合成プリズムに用いられている多層膜の特性を示す図。 本発明の実施例5であるプロジェクタの概略図。 本発明の実施例6であるプロジェクタの概略図。 本発明の実施例7であるプロジェクタの概略図。 本発明の実施例8であるプロジェクタの概略図。 本発明の実施例9であるプロジェクタの概略図。
符号の説明
1,101,201,301 色合成プリズム
11,12 入射面
13 射出面
14,15,16 入射出面
21,22,23,24,25,26 多層膜.
311 青波長域光線
312 赤波長域光線
313 緑波長域光線
44,45,46 反射型液晶パネル
51 白色光源
52,53 フライアイレンズ
54 偏光変換素子
55 コンデンサレンズ
56 リレーレンズ
61 ダイクロイックミラー
62 ミラー
63 波長選択性位相子
64 光学部材
71 投射レンズ
91BR、91G アレイ光源
92 レンズアレイ
93 コリメートレンズ
94 ロッドレンズ
95 反射型偏光子

Claims (16)

  1. 光が入射する2つの入射面、光を射出する1つの射出面およびそれぞれ反射型画像形成素子に対向する3つの透過面を含む複数の光学面を有する光学素子であって、
    前記光学素子の内部で互いに交差する第1の平面と第2の平面に沿ってそれぞれ形成された第1及び第2光学構造体を有し、
    前記2つの入射面、前記1つの射出面、前記3つの透過面及び前記第1、第2の平面すべての面法線が、同一平面に対して平行であり、
    かつ以下の条件を満足することを特徴とする光学素子。
    45°<θ0<75°
    但し、θ0は、前記第1および第2の平面のなす角度のうち小さい方の角度である。
  2. 前記2つの入射面、前記1つの射出面、前記3つの透過面が、全ての内角が90°以上である六角柱として定義される立体形状における六角形の両端面を除く6つの面上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
  3. 前記射出面と隣り合う2つの面が前記入射面であり、
    該射出面および2つの入射面の反対側の面が前記3つの透過面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子。
  4. 前記第1光学構造体及び前記第2光学構造体は、入射角θ1で入射する光を透過し、入射角θ2で入射する光をその偏光状態に応じて分離し、かつ、
    θ2−θ1>30°
    を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の光学素子。
  5. 前記第1及び第2の光学構造体のうち少なくとも一方は、入射角θ1で入射する第1波長領域の光を透過し、入射角θ2で入射する第2の波長領域の光に対する透過率がS偏光に対する透過率よりもP偏光に対する透過率が高く、前記第1及び第2の波長領域とは異なる第3の波長領域の光に対する透過率がP偏光に対する透過率よりもS偏光に対する透過率が高いことを特徴とする請求項4に記載の光学素子。
  6. 多層膜を有する光学素子であって、
    前記多層膜は、該多層膜に入射する全波長域の光であって該多層膜に対して入射角θ1で入射する光を透過し、入射角θ2で入射する光をその偏光状態に応じて分離し、かつ以下の条件を満足することを特徴とする光学素子。
    θ2−θ1>30°
  7. 該光学素子は、屈折率がnPである基材上に、屈折率がnHと該nHより低い屈折率nLを有する2つの多層膜が交互に形成されて構成されており、以下の条件を満足することを特徴とする請求項6に記載の光学素子。
    θ2>sin−1(nL/nP)
  8. 前記多層膜は、入射角θ2で入射するS偏光に対する透過率がP偏光に対する透過率よりも高いことを特徴とする請求項6又は7に記載の光学素子。
  9. 多層膜を有する光学素子であって、
    前記多層膜は、入射角θ1で入射する第1の波長領域の光に対して透過し、入射角θ2で入射する第2の波長領域の光のうちS偏光に対する透過率よりもP偏光に対する透過率が高く、前記第1及び第2の波長領域と異なる第3波長領域の光のうちP偏光に対する透過率よりもS偏光に対する透過率が高く、かつ以下の条件を満足することを特徴とする光学素子。
    θ2−θ1>30°
  10. 前記多層膜は、入射角θ2で入射する前記第2の波長領域の光のうちS偏光に対する透過率よりもP偏光に対する透過率が60%以上高く、入射角θ2で入射する前記第3の波長領域の光のうちP偏光に対する透過率よりもS偏光に対する透過率が60%以上高く、かつ前記第2及び第3の波長領域は30nm以上の帯域幅を有することを特徴とする請求項9に記載の光学素子。
  11. 該光学素子は、前記多層膜が形成された基材と他の基材とを屈折率nBを有する接着剤を用いて接合して構成されており、かつ以下の条件を満足することを特徴とする請求項6から10のいずれか1つに記載の光学素子。
    θ2<sin−1(nB/nP)
  12. 前記第1の入射面の面法線と前記第1の平面の面法線とのなす角度がθ1であり、
    前記第1の入射面の面法線と前記第2の平面の面法線とのなす角度がθ2であり、
    前記第2の入射面の面法線と前記第1の平面の面法線とのなす角度がθ2であり、
    前記第2の入射面の面法線と前記第2の平面の面法線とのなす角度がθ1であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の光学素子。
  13. 3つの反射型画像形成素子からの光を合成する請求項1から12のいずれか1つに記載の光学素子と、
    該光学素子から射出した光を被投射面に投射する投射系とを有することを特徴とする画像投射光学系。
  14. 請求項13に記載の画像投射光学系を有することを特徴とする画像投射装置。
  15. 光源として、互いに異なる波長帯域の光を発生させる複数の光源を有することを特徴とする請求項14に記載の画像投射装置。
  16. 請求項1から15のいずれか1つに記載の画像投射装置と、
    該画像投射装置に画像情報を供給する画像供給装置とを有することを特徴とする画像表示システム。
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