しかしながら、特許文献1に参照された技術によれば、画像表示領域に形成された各種電極等の電気特性を模擬的に検査するだけであり、画像表示領域に形成された各画素の透過率、コントラスト等の光学特性を検査することは困難である。特に、液晶パネル等の電気光学装置の各画素における透過率等の光学特性は、例えば画素部に含まれる透明電極等の設計、及び画素部を形成する際の製造プロセス条件によって変動し、所定の光学特性を有するように画素部を設計した場合であっても、製造プロセス条件の変動によって各画素部で互いに透過率等の光学特性にばらつきが生じ、液晶パネル等の表示品位を高めることが困難になる。したがって、各画素が所定の光学特性を有するように最適な設計で画素部を形成することが困難となる問題点がある。
加えて、各画素における透過率或いはコントラスト等の光学特性は、画素部を駆動するために基板上に形成された画素スイッチング用のTFT等の電子素子、画像信号を各データ線にサンプリングするためのサンプリング回路、或いは配線等の電気特性の変動に応じて変化する。より具体的には、例えば画素部の光学特性に寄与する透明な画素電極の間隔等の設計パラメータについて互いに異なる値を有するTEGを形成し、当該TEGについて透過率等の光学特性を検査したとしても、画素部について設計通りに光学特性を得ることができない場合も多い。また、透明な画素電極等を形成する前に画素部に作り込まれる画素スイッチング用のTFTの製造プロセス条件、或いは画素電極を形成した後に画素電極上に形成される配向膜、或いは液晶パネルを組み上げる際の各種条件に応じて画素部の光学特性は変動する。
したがって、各画素部の光学特性は、単に画素電極等の光学特性に寄与すると推測される部分の設計、及び当該部分の製造プロセス条件のみに注目して画素部を検査しただけでは所定の光学特性を得るための画素部の最適設計を特定することが困難となる、設計上及び製造プロセス上の問題点もある。
また、仮に、画素部の光学特性に変動を生じさせる各種製造プロセス条件について複数の値を組み合わせて画素部の光学特性を評価したとしても、当該評価に要するコスト及び手間が膨大なものとなり、高品位の液晶パネル等の電気光学装置を迅速に開発することが非常に困難になる。このような事態が解消されない場合、電気光学装置を開発するために要した開発コスト等を市場で回収する機会が失われ、電気光学装置を市場に提供するための更なる技術開発に支障が生じる恐れもある。
よって、本発明は上記問題点等に鑑みてなされたものであり、例えば、液晶パネル等の電気光学装置の一部を構成する電気光学装置用基板に形成される画素部の光学特性について各種情報を抽出するためのTEG等を形成するためのフォトマスク、及び当該TEGの光学特性を測定することによって、例えば当該画素部の光学特性、及び最適設計に関する情報を抽出できる電気光学装置の製造方法、並びに電気光学装置用基板を提供することを課題とする。より高品位或いは高機能を有する。
本発明に係るフォトマスクは上記課題を解決するために、基板上に形成される画素部の光学特性に関する各種情報を抽出するために夫々の光学特性が測定される第1検査対象部及び第2検査対象部を前記基板上に形成するために用いられるフォトマスクであって、前記第1検査対象部のパターンに対応した第1マスクパターンと、前記第2検査対象部のパターンに対応した第2マスクパターンとを備え、前記第1マスクパターン及び前記第2マスクパターンの夫々は、前記画素部の光学特性に寄与する第1設計パラメータについて互いに異なる値を有するマスクパターンである。
本発明に係るフォトマスクによれば、第1検査対象部及び第2検査対象部は、基板上に形成される画素部の光学特性に関する各種情報を抽出するために、電気光学装置用基板となるべきシリコンウェハ等の基板上に形成される。
ここで、「光学特性」とは、例えば画素部における光の透過率、複数の画素部相互の輝度の差に起因するコントラスト、フリッカ、及びその他電気光学装置の表示特性を示すことが可能な指標である。
第1マスクパターンは、第1検査対象部のパターンに対応しており、第2マスクパターンは、第2検査対象部のパターンに対応している。加えて、第1マスクパターン及び第2マスクパターンの夫々は、画素部の光学特性に寄与する第1設計パラメータについて互いに異なる値を有するマスクパターンである。
「画素部の光学特性に寄与する第1設計パラメータ」とは、例えば液晶等の電気光学物質を配向制御するための透明な画素電極のサイズ、或いは形状、画素電極相互の間隔、画素部において実質的に光が透過する領域である開口領域を規定する遮光膜の幅等のように透過率等の光学特性に直接的に寄与すると想定される画素部の構成部分であって、設計者が具体的な寸法、或いは形状を設定可能な構成部分のパラメータ、或いは基板上における画素部の配列状態を規定する画素ピッチのように設計者が具体的に設定可能なパラメータを意味する。
第1マスクパターン及び第2マスクパターンの夫々は、第1設計パラメータについて互いに異なる値を有しているため、本発明に係るフォトマスクを用いて形成されたパターンを有する第1検査対象部及び第2検査対象部では、画素部の光学特性に寄与する第1設計パラメータについて互いに異なる値を有するパターンが第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々の一部として形成される。より具体的には、例えば第1マスクパターン及び第2マスクパターンの夫々を介して、第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々の一部を構成するパターンの一例として基板上の所定の領域に互いに異なる間隔で配列された複数の透明電極を形成した場合には、第1検査対象部及び第2検査対象部における透過率等の光学特性を測定することによって、複数の透明電極相互の間隔に起因する第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々における透過率等の光学特性に関する具体的な相違が判明する。
第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々は、第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々において互いに異なる値で形成された第1設計パラメータとして、第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々において相互に異なる画素ピッチとなるように互いに異なる間隔でパターニングされたデータ線等の配線を有していてもよい。
したがって、本発明に係るフォトマスクを用いて形成された第1検査対象部及び第2検査対象部の光学特性を測定することによって、製造プロセス等によって生じる当該異なる値間の設計範囲における画素部の光学特性の変動、言い換えれば画素部の光学特性のばらつきが検査でき、画素部の第1設計パラメータの設計値として設定された値が、所定の光学特性で画素部が動作するように妥当な値に設定されているか否かに関する情報を抽出できる。加えて、画素部の光学特性に要求される性能に関する許容値の幅、即ち光学特性に寄与する第1設計パラメータについて許容される最大及び最小の値を見積もるための情報も抽出できる。
第1検査対象部及び第2検査対象部では、画素部に形成される透明な画素電極上に形成される配向膜等を含む積層構造と同様の構造が、第1マスクパターン及び第2マスクパターンを介して第1設計パラメータに対応したパターンを所定の値で形成した段階で、第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々が有する透明電極上に形成されていてもよく、このような積層構造が形成された状態で第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々の光学特性が測定されてもよい。また、第1検査対象部及び第2検査対象部では、例えば画素部と同様の構造が透明電極の下層に予め画素部と共通の工程によって形成されていてもよい。
これにより、画素部の光学特性に寄与する第1設計パラメータについて互いに異なる値のみに起因して生じる光学特性の相違だけでなく、第1設計パラメータの各値に対応する部分を第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々に形成する工程以前の各種製造工程と、当該工程以後の各種製造工程とによって生じる第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々の光学特性の変動或いはばらつきに関する情報も抽出することが可能である。このような光学特性の変動、或いはばらつきに関する情報を抽出することによって、画素部の光学特性に寄与する第1設計パラメータに関して、製造プロセスの変動に対して当該光学特性の変動、或いはばらつきが低減できる値を見積もるための情報を抽出することが可能である。
よって、本発明に係るフォトマスクによれば、画素部の光学特性に寄与する第1設計パラメータについて互いに異なる値を有する第1検査対象部及び第2検査対象部を形成できるため、製造プロセス等によって生じる当該異なる値間の設計範囲における画素部の光学特性の変動、言い換えれば画素部の光学特性のばらつきが検査できる。これにより、画素部の第1設計パラメータの設計値として設定された値が、所定の光学特性で画素部が動作するように妥当な値に設定されているか否か、言い換えれば、画素部が所定の光学特性を有することが可能である第1設計パラメータの値に関するマージン、或いは製造プロセスの限界値を特定するための情報を抽出でき、ばらつきが低減された光学特性に基づいて高品位の画像表示が可能である液晶パネル等の電気光学装置を構成できる電気光学装置用基板を製造できる。
加えて、本発明に係るフォトマスクを用いて形成された第1検査対象部及び第2検査対象部の光学特性を測定することによって得られた各種情報によれば、製造プロセス条件、及び設計パラメータについて複数の値の組み合わせに応じた複数の実験を行うことによって光学特性のばらつきが相対的に小さい第1設計パラメータの値を特定する場合に比べて、短期間で相対的にばらつきが小さく、且つ画素部の光学特性として要求される性能を有する画素部を形成するための第1設計パラメータの値を特定することが短期間で可能となる。これにより、液晶パネル等の電気光学装置の開発期間を短縮することが可能である。
本発明に係るフォトマスクの一の態様では、前記第1設計パラメータに対応したパターンを前記画素部の一部として前記基板上に形成するためのマスクパターンである第3マスクパターンを備えていてもよい。
この態様によれば、第3マスクパターンを介して、画素部の一部として画素部の光学特性に寄与する第1設計パラメータに対応した、例えば透明な画素電極等のパターンを、第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々のパターンを形成する工程と共通の工程で形成できる。したがって、第1設計パラメータに対応したパターンを画素部に形成する際の製造プロセスの変動、及びばらつきは、第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々のパターンにそのまま反映される。このため、第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々の光学特性を測定して得られた測定結果は、第1設計パラメータに対応したパターンを画素部に形成する製造プロセスの変動、及びばらつきが考慮された状態で、第1設計パラメータについて互いに異なる値を有する第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々のパターンの値の相違を反映する。
第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々について測定された光学特性によれば、第1設計パラメータに対応したパターンを形成する製造プロセスについて、当該第1設計パラメータに関する設計マージン及び製造プロセス条件の限界に関する情報を抽出できる。より具体的には、第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々の透過率等の光学特性を比較することによって、例えば画素部の一部として形成される透明な画素電極相互の間隔等の設計マージンに関する情報、或いは、当該透明な画素電極相互の間隔の相違に応じた透過率の変動及びばらつきの変化に関する情報を抽出できる。
この態様によれば、第1設計パラメータに対応するパターンを画素部の一部として形成するための製造プロセス条件を振って実験を行うことなく、画素部の光学特性を見極めることができ、且つ当該光学特性についてばらつきを相対的に小さくできる第1設計パラメータの値の範囲を特定できる。したがって、第1設計パラメータについて、画素部を形成するための製造プロセスの条件の変動に対して、光学特性のばらつきが相対的に小さい値を特定でき、高品位の表示特性を有する電気光学装置が製造可能となる。
加えて、例えば基板上に画素部を形成する製造工程と共通の工程、言い換えれば、画素部に透明な画素電極等を形成するのと並行して第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々に透明電極を形成できるため、基板上に画素部を形成する工程、或いは当該工程を含む電気光学装置用基板の製造工程にシリコンウェハ等の基板を一度流動させることによって、第1設計パラメータについて、画素部を形成するための製造プロセスの条件の変動に対して、光学特性のばらつきが相対的に小さい値を特定できる。したがって、高品位の電気光学装置を短期間で開発可能である。
本発明に係る電気光学装置の製造方法は上記課題を解決するために、基板上に形成される画素部の光学特性に関する各種情報を抽出するために前記基板上に形成されており、前記画素部の光学特性に寄与する第1設計パラメータについて互いに異なる値を有する第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々の光学特性を測定する第1工程と、該測定された前記第1検査対象部及び前記第2検査対象部の夫々の光学特性に基づいて、前記画素部の光学特性に関する各種情報を抽出する第2工程とを備える。
本発明に係る電気光学装置の製造方法によれば、第1工程に先立ち、電気光学装置用基板となるべき、例えばシリコンウェハ等の基板上において、画素部が形成される表示領域とは別の領域にTEGの一部として形成される第1検査対象部及び第2検査対象部の一部として第1設計パラメータについて互いに異なるパターンが形成されている。このような第1検査対象部及び第2検査対象部は、基板上に形成される画素部の光学特性に関する各種情報を抽出するために形成されており、電気光学装置を組み上げた際に電気光学装置用基板にそのまま残されていてもよいし、第1検査対象部及び第2検査対象部の光学特性が測定された後に基板から除去されていてもよい。尚、「第1設計パラメータ」及び「光学特性」とは、上述した本発明に係るフォトマスクにおける「第1設計パラメータ」及び「光学特性」と同様の意味である。
第1工程では、第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々の光学特性を測定する。ここで、第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々は、画素部の光学特性に寄与する第1設計パラメータについて互いに異なる値を有するパターンを有しているため、例えば第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々の一部を構成するパターンの一例として基板上の所定の領域に互いに異なる間隔で配列された透明電極を形成した場合には、第1検査対象部及び第2検査対象部における透過率等の光学特性を測定することによって、透明電極相互の間隔に起因する第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々における透過率等の光学特性に関する具体的な相違が判明する。
第2工程では、測定された第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々の光学特性に基づいて、画素部の光学特性に関する各種情報を抽出する。ここで、「各種情報」とは、製造プロセス等によって生じる当該異なる値間の範囲における画素部の光学特性の変動、言い換えれば画素部の光学特性のばらつきに関する情報である。加えて、「各種情報」は、画素部の第1設計パラメータの設計値として設定された値が、所定の光学特性で画素部が動作するように妥当な値に設定されているか否かに関する情報、或いは、画素部の光学特性に要求される性能に関する許容値の幅、即ち光学特性に寄与する設計パラメータについて許容される最大及び最小の値を見積もるための情報も含む。したがって、第2工程において抽出された各種情報に基づいて、画素部の光学特性に寄与する第1設計パラメータが、所定の光学特性を画素部に発揮させるように妥当な、或いは最適な設計値に設定されているか否かを判定できる。
加えて、第1検査対象部及び第2検査対象部では、第1検査対象部及び第2検査対象部に透明電極等を第1設計パラメータの所定の値で形成した段階で、或いは画素部に形成される透明な画素電極上に形成される配向膜等を含む積層構造と同様の構造が、第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々が有する透明電極上に形成されていてもよく、このような積層構造が形成された状態で第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々の光学特性が測定されてもよい。また、第1検査対象部及び第2検査対象部の設計パラメータの一例である透明電極の下層には、例えば画素部と同様の構造が予め画素部と共通の工程によって形成されていてもよい。
これにより、第2工程において、画素部の光学特性に寄与する透明電極の間隔等の設計パラメータについて互いに異なる値のみに起因して生じる光学特性の相違だけでなく、透明電極の間隔等の第1設計パラメータについて、第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々に形成する透明電極形成工程以前の各種製造工程と、当該透明電極形成工程以後の各種製造工程とによって生じる第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々の光学特性の変動或いはばらつきに関する情報も抽出することが可能である。このような光学特性の変動、或いはばらつきに関する情報を抽出することによって、画素部の光学特性に寄与する第1設計パラメータに関して、製造プロセスの変動に対して当該光学特性の変動、或いはばらつきが低減できる値を見積もるための情報を抽出することも可能である。
また、第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々の光学特性を測定することによって、画素部が所定の光学特性を有することが可能である第1設計パラメータの値に関するマージン、或いは製造プロセスの限界値を特定するための情報も抽出できる。
よって、本発明に係る電気光学装置の製造方法によれば、画素部の光学特性に寄与する第1設計パラメータについて互いに異なる値を有する第1検査対象部及び第2検査対象部の光学特性を測定することによって得られた各種情報に基づいて、ばらつきが低減された高品位の画像表示が可能である液晶パネル等の電気光学装置を製造可能である。
加えて、第1検査対象部及び第2検査対象部の光学特性を測定することによって得られた各種情報によれば、製造プロセス条件、及び設計パラメータの複数の値の組み合わせに応じた複数の実験を行うことによって光学特性のばらつきが相対的に小さい第1設計パラメータの値を特定する場合に比べて、短期間で相対的にばらつきが小さく、且つ画素部の光学特性として要求される性能を有する画素部を形成するための第1設計パラメータの値を特定することが短期間で可能となる。これにより、高品位の表示特性を有する電気光学装置の開発期間を短縮できる。
この態様では、前記第1工程に先んじて、前記第1設計パラメータについて互いに異なる値を有する第1マスクパターン及び第2マスクパターンの夫々を有するフォトマスクを用いて前記基板上に前記第1検査対象部及び前記第2検査対象部の夫々のパターンを形成する第3工程を備えていてもよい。
この態様によれば、第1設計パラメータについて互いに異なる値を有する第1マスクパターン及び第2マスクパターンの夫々を有するフォトマスクを用いて、第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々のパターンを並行して形成できる。したがって、第1検査対象部及び第2検査対象部相互の関係について、製造プロセス条件の変動及びばらつきに起因して光学特性の変動及びばらつきが生じることが、殆どなく光学特性の相違は第1設計パラメータの値の相違に起因する。
この態様では、前記フォトマスクは、前記第1設計パラメータに対応したパターンを前記画素部の一部として前記基板上に形成するためのマスクパターンである第3マスクパターンを有しており、前記第3工程において、前記第1マスクパターン、前記第2マスクパターン、及び前記第3マスクパターンの夫々を介して、前記第1検査対象部及び前記第2検査対象部の夫々のパターン、及び前記一部を形成してもよい。
この態様によれば、第3マスクパターンを介して、画素部の一部として画素部の光学特性に寄与する第1設計パラメータに対応した、例えば透明な画素電極等のパターンを、第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々のパターンを形成する工程と共通の工程で形成できる。したがって、第1設計パラメータに対応したパターンを画素部に形成する製造プロセスの変動、及びばらつきは、第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々のパターンにそのまま反映される。このため、第2工程において第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々の光学特性を測定して得られた測定結果の相違は、第1設計パラメータに対応したパターンを画素部に形成する製造プロセスの変動、及びばらつきが考慮された状態で、第1設計パラメータについて互いに異なる値を有する第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々のパターンの値の相違に起因する。
このような測定結果によれば、第1設計パラメータに対応したパターンを形成する製造プロセスについて、当該第1設計パラメータに関する設計マージン及び製造プロセス条件の限界に関する情報を抽出できる。より具体的には、第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々の透過率等の光学特性を比較することによって、例えば画素部の一部とし形成される透明な画素電極相互の間隔等の設計マージンに関する情報、或いは、透過率の変動及びばらつきの変化に関する情報を抽出できる。
この態様によれば、第1設計パラメータに対応するパターンを画素部の一部として形成するための製造プロセス条件を振って実験を行うことなく、画素部の光学特性を見極めることができ、且つ当該光学特性についてばらつきを相対的に小さくできる第1設計パラメータの値の範囲を特定できる。したがって、第1設計パラメータについて、画素部を形成するための製造プロセスの条件の変動に対して、光学特性のばらつきが相対的に小さい値を特定でき、高品位の表示特性を有する電気光学装置を製造可能となる。
加えて、例えば基板上に画素部を形成する製造工程と共通の工程、言い換えれば、画素部に透明な画素電極等を形成すると同時に第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々に透明電極を形成できることから、基板上に画素部を形成する工程、或いは当該工程を含む電気光学装置用基板の製造工程に基板を一度通すことによって、第1設計パラメータについて、画素部を形成するための製造プロセスの条件の変動に対して、光学特性のばらつきが相対的に小さい値を特定できる。したがって、高品位の電気光学装置を短期間で開発可能である。
本発明に係る電気光学装置の製造方法の一の態様では、前記第3工程に先んじて、前記画素部の電気特性に寄与する第2設計パラメータについて互いに異なる値を有するパターンを第3検査対象部及び第4検査対象部の夫々の一部として形成する第4工程と、前記第3検査対象部及び前記第4検査対象部の夫々の電気特性を測定する第5工程と、該第5工程で測定された電気特性に基づいて、前記画素部の電気特性に関する各種情報を抽出する第6工程とを備えていてもよい。
この態様によれば、第3検査対象部及び第4検査対象部は、基板上において、例えば画素部が形成される領域とは別の領域に形成されるTEGに作り込まれた部分である。このような第3検査対象部及び第4検査対象部は、基板上に形成される画素部の電気特性に関する各種情報を抽出するために、電気光学装置用基板となるべきシリコンウェハ等の基板上に形成される。
ここで、「電気特性」とは、基板上に形成される各種電子素子の動作特性及び配線の電気抵抗のように画素部の光学特性に間接的に寄与する特性を意味する。このような電気特性としては、例えば画素スイッチング用TFTのプッシュダウン電圧、当該TFTにおけるチャージアップ、画素部に供給された画像信号を保持する蓄積容量の容量値、サンプリング回路に含まれるTFTのスイッチング特性等が挙げられる。加えて、「電気特性」は、基板上に形成される多層構造中で経時的に発生する構造的欠陥であって、TFT等の電子素子の動作特性及び配線の電気抵抗に間接的に寄与するクラック等の構造的欠陥、及び当該多層構造に含まれる絶縁膜の経時的な絶縁性能の劣化のように、各種電子素子及び各種回路部の動作特性、並びに配線の電気特性に間接的に寄与する特性をも含む。
この態様において、「画素部の電気特性に寄与する第2設計パラメータ」とは、基板上に形成された各種電子素子、配線、或いは画素部の構成要素の具体的な構造、サイズ、形状等のように具体的に設計者が設定可能なパラメータを意味する。
第3検査対象部及び第4検査対象部では、画素部の電気特性に寄与する第2設計パラメータについて互いに異なる値を有するパターンが第3検査対象部及び第4検査対象部の夫々の一部として形成される。
より具体的には、例えば、第3検査対象部及び第4検査対象部の夫々の一部を構成するパターンの一例として、画素スイッチング用TFTのチャネル長或いはチャネル幅を規定する電極が挙げられる。このような電極のサイズ等は、第3検査対象部及び第4検査対象部の夫々において互いに異なる値に設定される。したがって、第3検査対象部及び第4検査対象部の夫々において、画素スイッチング用TFTに入力されるスイッチング信号に対するプッシュダウン電圧が当該電極のサイズ或いは形状等の値に応じて相互に相違し、各検査対象部における透過率等の光学特性に変動を生じさせる。
第5工程では、例えば、画素部の光学特性に寄与する第1設計パラメータについて互いに異なる値を有するパターンが第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々に形成される前に、或いは形成された後に、第3検査対象部及び第4検査対象部の夫々の電気特性を測定する。第6工程では、第5工程によって得られた電気特性に基づいて、第2設計パラメータの値について安定して画素部を駆動できる値を特定できる情報を抽出できる。
より具体的には、第2設計パラメータに対応したパターンを形成する製造プロセスについて、当該第2設計パラメータに関する設計マージン及び製造プロセス条件の限界に関する情報を抽出できる。例えば、第3検査対象部及び第4検査対象部の夫々における画素スイッチング用TFTにおけるプッシュダウン電圧を比較することによって、例えば画素部の一部である画素スイッチング用TFTにおけるチャネル長等の設計マージンに関する情報、或いは、当該チャネル長等のサイズの相違に応じたプッシュダウン電圧の変動及びばらつきに関する情報を抽出できる。
この態様によれば、第2設計パラメータに対応するパターンを画素部の一部として形成するための製造プロセス条件を振って実験を行うことなく、画素部の電気特性を見極めることができ、且つ当該電気特性についてばらつきを相対的に小さくできる第2設計パラメータの値の範囲を特定できる。したがって、第2設計パラメータについて、画素部を形成するための製造プロセスの条件の変動に対して、電気特性のばらつきが相対的に小さい値を特定でき、当該電気特性に連動する画素部の光学特性が高められた、或いは画素部の光学特性のばらつきが低減された高品位の電気光学装置を短期間で開発可能である。
本発明に係る電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記第1工程に先んじて、前記画素部の電気特性に寄与する第2設計パラメータについて互いに異なる値を有するパターンを前記第1検査対象部及び前記第2検査対象部の夫々の一部として形成する第7工程と、前記第1検査対象部及び前記第2検査対象部の夫々の電気特性を測定する第8工程と、該測定された前記第1検査対象部及び前記第2検査対象部の夫々の電気特性に基づいて、前記画素部の電気特性に関する各種情報を抽出する第9工程とを備えていてもよい。
この態様によれば、第1設計パラメータについて互いに異なる値と、第2設計パラメータについて互いに異なる値との交互作用に起因する光学特性の相違を検出できる。第2工程において、画素部の光学特性に寄与する第1設計パラメータに関する互いに異なる値と、画素部の電気特性に寄与する第2設計パラメータに関する互いに異なる値との交互作用によって生じる第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々の光学特性の相違を抽出することが可能である。
この態様では、例えば、第1設計パラメータの一例である透明電極相互の間隔と、第2設計パラメータの一例である画素スイッチング用TFTのチャネル長等とを品質工学における制御因子として予め選択しておき、当該制御因子における互いに異なる値の組み合わせを直交表に割付ける。第1検査対象部及び第2検査対象部は、第3工程及び第7工程によって、当該直交表に割り付けられた各条件に応じた構造が作り込まれる。したがって、電気光学装置の組み上げる組み上げ工程までの一連の製造工程に、第1検査対象部及び第2検査対象部が形成された基板を一度通すことによって、例えば、測定された第1検査対象部及び第2検査対象部の夫々の光学特性から、画素部の光学特性のばらつきを低減可能な第1設計パラメータ及び第2設計パラメータの夫々の最適な値を特定できる。
したがって、この態様によれば、画素部における光学特性のばらつきを低減できる画素部の第1設計パラメータ及び第2設計パラメータの夫々の値を特定でき、高品位の画像表示が可能な電気光学装置を短期間で製造できる。
本発明に係る電気光学装置用基板は上記課題を解決するために、基板と、前記基板上に形成された画素部の光学特性に関する各種情報を抽出するために前記基板上に形成されており、前記画素部の光学特性に寄与する第1設計パラメータについて互いに異なる値を有する第1検査対象部及び第2検査対象部とを備える。
本発明に係る電気光学装置用基板によれば、上述した電気光学装置の製造方法と同様に、電気光学装置の表示性能を高めることができる電気光学装置用基板を提供できる。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
以下、図面を参照しながら、本発明に係るフォトマスク、電気光学装置の製造方法、及び電気光学装置用基板の各実施形態を説明する。
<1:電気光学装置の全体構成>
先ず、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法を用いて製造可能な電気光学装置の構成を説明し、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法における各設計パラメータの具体例を明示しておく。ここに、図1は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た電気光学装置の平面図であり、図2は、図1のII−II´断面図である。本実施形態では、電気光学装置の一例として、駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例に挙げる。
図1及び図2において、液晶装置1では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、複数の画素部が設けられる画素領域たる画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。複数の配線105が二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。
対向基板20の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらのコーナー部に対向する領域において上下導通端子が設けられている。
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜16が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光膜23、更には最上層部分に配向膜22が形成されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる画素電極9a及び対向電極21は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)膜などの透明導電膜からなり、配向膜16及び22は、ポリイミド膜などの有機膜からなる。TFTアレイ基板10は例えば石英基板、ガラス基板、シリコン基板等の透明基板である。対向基板20もTFTアレイ基板10と同様に透明基板である。
このように構成され、画素電極9aと対向電極21とが対面するように配置されたTFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層50が形成されている。液晶層50は、画素電極9aからの電界が印加されていない状態で配向膜により所定の配向状態をとる。
尚、図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等の駆動回路に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するために、後に説明するTEGが取り除かれることなく、検査回路としてTFTアレイ基板10上に残されてもよい。
<2:画素部の電気的な接続構成>
次に、図3を参照しながら、液晶装置1の画素部の電気的な接続構成を詳細に説明する。図3は、液晶装置1の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。
図3において、液晶装置1の画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素部72の夫々には、画素電極9a及びTFT30が形成されている。TFT30は、画素電極9aに電気的に接続されており、液晶装置1の動作時に画素電極9aをスイッチング制御する。画像信号が供給されるデータ線6aは、TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、・・・、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
TFT30のゲートに走査線11aが電気的に接続されており、液晶装置1は、所定のタイミングで、走査線11aにパルス的に走査信号G1、G2、・・・、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、・・・、Snが所定のタイミングで書き込まれる。画素電極9aを介して電気光学物質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、・・・、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。
液晶層50を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として液晶装置1からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射される。ここで保持された画像信号がリークすることを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に、蓄積容量70が電気的に接続されている。蓄積容量70は、画像信号の供給に応じて各画素電極9aの電位を一時的に保持する保持容量として機能する容量素子である。蓄積容量70によれば、画素電極9aにおける電位保持特性が向上し、コントラスト向上やフリッカの低減といった表示特性の向上が可能となる。
<3:画素部の具体的な構成>
次に、図4乃至図7を参照しながら、液晶装置1の画素部の具体的な構成を説明する。図4乃至図6は、TFTアレイ基板10上の画素部に係る部分構成を表す平面図である。図4及び図5は、夫々、後述する積層構造のうち下層部分(図4)と上層部分(図5)に相当する。図6は、積層構造を拡大した平面図であり、図4及び図5を重ね合わせたようになっている。図7は、図4及び図5を重ね合わせた場合のVII−VII´線断面図である。尚、図7においては、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。
図4乃至図7では、上述した画素部72の各回路要素が、パターン化され、積層された導電膜としてTFTアレイ基板10上に構築されている。各回路要素は、下から順に、走査線11aを含む第1層、TFT30等を含む第2層、データ線6a等を含む第3層、保持容量70等を含む第4層、画素電極9a等を含む第5層からなる。また、第1層−第2層間には下地絶縁膜12、第2層−第3層間には第1層間絶縁膜41、第3層−第4層間には第2層間絶縁膜42、第4層−第5層間には第3層間絶縁膜43がそれぞれ設けられ、前述の各要素間が短絡することを防止している。尚、このうち、第1層から第3層が下層部分として図4に示され、第4層から第5層が上層部分として図5に示されている。
(第1層の構成―走査線等―)
第1層は、走査線11aで構成されている。走査線11aは、図4のX方向に沿って延びる本線部と、データ線6aが延在する図4のY方向に延びる突出部とからなる形状にパターニングされている。走査線11aは、例えば導電性ポリシリコンからなり、その他にもチタン(Ti)、クロム(Cr)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド又はこれらの積層体等により形成することができる。本実施形態では特に、走査線11aは、TFT30の下層側に、チャネル領域1aに対向する領域を含むように配置された導電膜である。
(第2層の構成―TFT等―)
第2層は、TFT30で構成されている。TFT30は、例えばLDD(Lightly Doped Drain)構造とされ、例えば導電性ポリシリコンで形成されたゲート電極3a、半導体層1a、ゲート電極3aと半導体層1aを絶縁するゲート絶縁膜を含んだ絶縁膜2を備えている。半導体層1aは、例えばポリシリコンからなり、チャネル領域1a´、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、並びに高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eからなる。TFT30のゲート電極3aは、その一部分3bにおいて、例えばシリコン酸化膜等からなる下地絶縁膜12に形成されたコンタクトホール12cvを介して走査線11aに電気的に接続されている。TFT30のチャネル長Lchは、本発明の「第2設計パラメータ」の一例である。
(第3層の構成―データ線等―)
第3層は、データ線6a及び中継層600で構成されている。データ線6aは、下から順にアルミニウム、窒化チタン、窒化シリコンの3層膜として形成されている。データ線6aは、第1層間絶縁膜41を貫通するコンタクトホール81を介して、TFT30の高濃度ソース領域1dと電気的に接続されている。
中継層600は、データ線6aと同一膜として形成されている。中継層600とデータ線6aとは、図4に示したように、夫々が分断されるように形成されている。また、中継層600は、第1層間絶縁膜41を貫通するコンタクトホール83を介して、TFT30の高濃度ドレイン領域1eと電気的に接続されている。
第1層間絶縁膜41は、例えばNSG(ノンシリケートガラス)、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG(ボロンリンシリケートガラス)等のシリケートガラス、窒化シリコンや酸化シリコン等によって形成されている。
(第4層の構成―蓄積容量等―)
第4層は、蓄積容量70で構成されている。保持容量70は、容量電極300と下部電極71とが誘電体膜75を介して対向配置された構成となっている。容量電極300の延在部は、第2層間絶縁膜42を貫通するコンタクトホール84を介して、中継層600と電気的に接続されている。
容量電極300及び下部電極71は、例えば、Al、Ti、Cr、W、Ta、Mo等の金属のうちの少なくとも一つを含む金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、ナイトライドこれらを積層したものからなる。蓄積容量70の容量値は、容量電極300、下部電極71及び誘電体膜75相互の重なり面積の大きさに比例しており、後に説明するように、図5中Y方向に沿った容量電極300の幅Wが、本発明の「第2設計パラメータ」の一例である。図5に示すように、誘電体膜75は、シリコン窒化膜、酸化ハフニュウム(HfO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化タンタル(Ta2O5)等の単層膜又は多層膜から構成されている。
(第5層の構成―画素電極等―)
第4層の全面には第3層間絶縁膜43が形成され、更にその上に、第5層として画素電極9aが形成されている。第3層間絶縁膜43は、例えばNSG、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス、窒化シリコンや酸化シリコン等によって形成されている。
画素電極9a(図5中、破線9a´で輪郭が示されている)は、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電性膜からなり、縦横に区画配列された画素領域の各々に配置され、その境界にデータ線6a及び走査線11aが格子状に配列するように形成されている(図4及び図5参照)。これら画素電極9a相互の間隔Lが、本発明の「第1設計パラメータ」の一例である。画素電極9aは、層間絶縁膜43を貫通するコンタクトホール85を介して、容量電極300の延在部と電気的に接続されている(図7参照)。
容量電極300の延在部及び中継層600と、中継層600及びTFT30の高濃度ドレイン領域1eとは、夫々コンタクトホール84及び83を介して、電気的に接続されている。画素電極9aの上側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜16が設けられている。以上が、TFTアレイ基板10側の画素部の構成である。
他方、対向基板20には、その対向面の全面に対向電極21が設けられており、更にその上(図7では対向電極21の下側)に配向膜22が設けられている。対向電極21は、画素電極9aと同様、例えばITO膜等の透明導電性膜からなる。尚、対向基板20と対向電極21の間には、TFT30における光リーク電流の発生等を防止するため、少なくともTFT30と正対する領域を覆うように遮光膜が設けられていてもよい。
以上に説明した画素部の構成は、図4及び図5に示すように、各画素部に共通である。画像表示領域10a(図1参照)には、かかる画素部が周期的に形成されていることになる。
<4:電気光学装置の製造方法>
次に、図8乃至図16を参照しながら、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法を説明する。図8は、シリコンウェハ等の基板においてTFTアレイ基板10が形成される領域と、画素部72の電気特性或いは光学特性に関する各種情報を抽出するためのTEGが形成される領域とを示した図式的平面図である。図9は、TEGに含まれる各検査対象部を図式的に示した平面図である。図10は、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法のフローチャートである。図11は、図10における積層構造形成工程を詳細に示したフローチャートである。図12は、フォトマスクを用いて画素電極をパターンニングする工程の概要を示した概略斜視図である。図13は、フォトマスクにおいて互いに異なるマスクパターンが形成された領域を図式的に示した平面図である。図14は、TEGの一例を詳細に示した平面図である。図15は、TEGの他の例を詳細に示した平面図である。図16は、TEGの他の例を詳細に示した平面図である。図17は、画素部の光学特性に寄与する複数の設計パラメータを制御因子として取り上げた直交表の一例である。
尚、以下では、上述した図1乃至図7に図示された部分と共通の構成とされる部分に共通の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
<4−1:TFTアレイ基板が形成される基板の構成>
図8及び図9を参照しながら、シリコンウェハ等の基板においてTFTアレイ基板10になる部分と、画素部72の電気特性或いは光学特性に関する各種情報を抽出するためのTEGが形成される部分とを説明する。
図8において、シリコンウェハ等の基板900は、TFTアレイ基板10となる部分を含む領域901と、TFTアレイ基板10が有する画素部72の電気特性或いは光学特性に関する各種情報を抽出するためのTEGが形成される複数の領域902を有している。
領域901には、スクライブ等の分離方法によって基板900の他の部分と分離されるTFTアレイ基板10が、後に詳細に説明する本実施形態に係る電気光学装置の製造方法によって形成される。領域902の夫々には、TFTアレイ基板10に含まれる積層構造が形成される工程と並行して、画素部72の電気特性及び光学特性に関する各種情報を抽出するための検査対象部が形成される。より具体的には、領域902の夫々は、基本的にはTFTアレイ基板10上の積層構造と同様の回路構成が形成されるが、当該積層構造のうち画素部72の電気特性或いは光学特性に寄与する各設計パラメータが互いに異なる値を有するようなパターンが夫々形成されている。
例えば、図9に示すように、領域902aには、領域901に画素電極9aを形成する工程と並行して、或いは共通の工程で互いに間隔が異なる複数の透明電極が形成された、本発明の「第1検査対象部」及び「第2検査対象部」の夫々一例となる検査対象部902a1及び902a2が形成され、検査対象部902a1及び902a2が画素部72の光学特性に関する各種情報を抽出するためのTEGを構成する。
ここで、図16を参照しながら、検査対象部902a1及び902a2の具体的な構成を説明する。尚、図16では、複数の透明電極9a1及び9a2の夫々の下層側に形成されるデータ線6a及び走査線11aも合わせて図示している。図16(a)及び(b)に示すように、設計パラメータの一例である透明電極同士の間隔L1とL2とが互いに異なっている。すなわち、検査対象部902a1が有する複数の透明電極9a1相互の間隔L1と、検査対象部902a2が有する複数の透明電極9a2相互の間隔L2とは、画素電極9aの間隔Lについての互いに異なる値となっている具体例である。
再び、図9において、領域902bには、領域901に画素スイッチング用のTFT30を形成する工程と並行して、或いは共通の工程で互いにチャネル長が異なる画素スイッチング用のTFTが形成された、本発明の「第3検査対象部」及び「第4検査対象部」の夫々一例となる検査対象部902b1及び901b2が形成され、これら検査対象部902b1及び902b2が画素部72の電気特性に関する各種情報を抽出するためのTEGを構成する。
ここで、図14を参照しながら、検査対象部902b1及び902b2の具体的な構成を説明する。図14(a)及び(b)に示すように、検査対象部902b1が有する複数のTFT30−1のチャネル長Lch1は、検査対象部902b2が有する複数のTFT30−2のチャネル長Lch2より短く、チャネル長Lch1及びLch2がTFT30のチャネル長Lchについての互いに異なる値となっている具体例である。
再び、図9において、領域902cには、領域901に蓄積容量70を形成する工程と並行して、或いは共通の工程で互いに容量が互いに異なる、より具体的には容量電極の幅が互いに異なる蓄積容量が形成された、本発明の「第3検査対象部」及び「第4検査対象部」の夫々一例となる検査対象部902c1及び901c2が形成される。これら検査対象部902c1及び902c2が画素部72の電気特性に関する各種情報を抽出するためのTEGを構成する。
ここで、図15を参照しながら、検査対象部902c1及び902c2の具体的な構成を説明する。図15(a)及び(b)に示すように、検査対象部902c1が有する複数の蓄積容量70−1の容量値と、検査対象部902c2が有する複数の蓄積容量70−2の容量値とは、蓄積容量70の容量値についての互いに異なる値の一例である。より具体的には、容量電極300−1及び300−2の夫々の幅W1及びW2は相互に異なっており、各蓄積容量70−1及び70−2の容量値を規定する容量電極、誘電体膜及び下部電極の重なり面積Cs1及びCs2は、幅W1及びW2の相違に応じて相互に異なる値に設定される。これにより、蓄積容量70−1及び70−2の容量値が相互に異なる値に設定される。
<4−2:電気光学装置の製造方法>
次に、図10乃至図13、及び図17を参照しながら、上述した検査対象部において各設計パラメータの値に対応した構造が作り込まれる工程を含んだ、本実施形態に係る電気装置の製造方法を説明する。
図10において、TFTアレイ基板10上に画素電極9aを最上層とする積層構造(図7参照。)を形成する(ステップS100)。より詳細には、図11に示すように、積層構造形成工程(ステップS100)は、TFTアレイ基板10にTFT30を形成するTFT形成工程(ステップS101)、蓄積容量70を形成する蓄積容量形成工程(ステップS102)、画素電極9aを形成する画素電極形成工程(ステップ103)、第1TEG形成工程(ステップS104)、第2TEG形成工程(ステップS105)、及び第3TEG形成工程(ステップS106)を有している。
図11において、TFT形成工程(S101)では、図4、図6及び図7に示したTFT30を形成する。これと並行して、基板900上の領域902bに互いにチャネル長が異なる(即ち、チャネル長Lch1及びLch2を有するTFT30−1及び30−2の夫々を形成し、検査対象部902b1及び902b2からなる第1TEGを形成する(ステップS104)。より具体的は、TFT30−1及び30−2、並びに70の夫々のゲート電極3a−1、3a−2、及び3aをパターニング可能なマスクパターンを備えたマスクを用いて基板900に形成された導電性ポリシリコンをパターニングすることによって、各TFTに対応したゲート電極のパターンを形成する。第1TEGを形成するステップS104が、本発明の「第4工程」の一例に相当する。
TFT形成工程、及びこれと並行して実行される第1TEG形成工程によれば、ゲート電極3a、3a−1及び3a−2が並行して形成されるため、ゲート電極を形成する際に製造プロセス条件の変動及びばらつきの影響がゲート電極3a、3a−1、及び3a−2の電気抵抗、及びチャネル長等に共通に反映される。したがって、後に説明する電気特性測定工程において、例えばTFT30、30−1及び30−2の夫々の走査信号に対するスイッチング特性等の電気特性を測定することによって、TFTアレイ基板10を形成する一連の工程において、プッシュダウン等が殆ど生じないチャネル長の最適値、或いは、限界値を見極めることが可能となる。
図11において、蓄積容量形成工程(S102)では、所定の平面形状にパターニングされた下部電極71及び誘電体75上に容量電極300を形成し、蓄積容量70を形成する。これと並行して、基板900上の領域902cに互いに容量値が相互に異なる(即ち、相互に異なる幅W1及びW2の夫々を有する容量電極300−1及び300−2のパターンを形成)蓄積容量70−1及び70−2の夫々を有する検査対象部902c1及び902c2からなる第2TEGを形成する(ステップS105)。より具体的は、蓄積容量70−1及び70−2、並びに70の夫々の容量電極300−1、300−2、及び300をパターニング可能なマスクパターンを備えたフォトマスクを用いて基板900に形成された導電膜を所定の形状にパターニングすることによって、各蓄積容量に対応した容量電極のパターンを形成する。第2TEGを形成するステップS105も、本発明の「第4工程」の一例に相当する。
蓄積容量形成工程、及びこれと並行して実行される第2TEG形成工程によれば、容量電極300、300−1及び300−2が並行して形成されるため、容量電極を形成する際の製造プロセス条件の変動及びばらつきの影響が蓄積容量70、70−1、及び70−2の容量値に反映される。したがって、TFT形成工程及び第1TEG形成工程と同様に、例えば蓄積容量70、70−1、及び70−2の夫々の容量値を測定することによって、TFTアレイ基板10を形成する一連の工程において、設計通りの容量値が形成できる容量電極の設計値の最適値、或いは、限界値を見極めることが可能となる。尚、本実施形態うでは、容量電極の幅を例に挙げているが、下部電極71及び誘電体膜75のパターンを互いに異なる値に設定しても同様である。
次に、図11において、画素電極形成工程(S103)では、基板900上に第3層間絶縁膜43までが形成された状態で、領域901に形成されたITO等の透明導電膜をパターニングし、各画素部72に対応した画素電極9aを形成する。これと並行して、基板900上の領域902aに互いに異なる間隔で配列された(即ち、相互に異なる間隔L1及びL2の夫々を有する)複数の透明電極9a1及び9a2を形成し、検査対象部902a1及び902a2からなる第3TEGを形成する(ステップS106)。画素電極9aを形成する画素電極形成工程(ステップS103)と、これと並行して実行される第3TEGを形成するステップS106の両方を含んだ工程が、本発明の「第3工程」の一例に相当する。
ここで、図12を参照しながら、画素電極9a、透明電極9a1及び9a2を形成する工程を詳細に説明する。
図12に示すように、本発明の「フォトマスク」の一例であるマスク800は、不図示の光学系と共にフォトリソグラフィ技術を用いることによって、基板900の領域901に画素電極9aを形成すると共に、領域902aに透明電極9a1及び9a2を形成する。より具体的には、マスク800の領域801には、領域901に形成されたITO等の透明導電膜をパターニングするための、本発明の「第3マスクパターン」の一例であるマスクパターンが形成されており、領域901に形成された透明導電膜を当該マスクパターンを介して露光することによって、画素電極9aを形成する。加えて、図13に示すように、マスク800の領域802aは、本発明の「第1マスクパターン」及び「第2マスクパターン」の夫々の一例に相当するマスクパターンが形成された領域802a1及び802a2を有している。
マスク800は、領域802a1及び802a2に形成されたマスクパターンを介して基板900上の領域902aに露光することによって、領域902aに形成された透明導電膜に対して、画素電極9aをパターニングするのと並行してパターニングを施し、透明電極9a1及び9a2を形成する。画素電極9a、透明電極9a1及び9a2は並行して形成されるため、画素電極9aを形成する製造プロセスにおけるプロセス条件の変動及びばらつきが透明電極9a1及び9a2にそのまま反映される。したがって、例えば後に説明する光学特性測定工程で検査対象部901a1及び901a1における光の透過率、コントラスト及びフリッカ等の光学特性を測定することによって、TFTアレイ基板10を形成する一連の工程において、設計通りの光学特性を得ることができる画素電極の最適値、或いは、限界値を見極めることが可能となる。尚、本実施形態では、画素電極9aの間隔を第1設計パラメータの一例としているが、画素電極のサイズ、画素ピッチ等を第1設計パラメータの具体例としてもよい。
再び、図10において、本発明の「第5工程」の一例である電気特性測定工程(S110)において、検査対象部902b1、902b2、902c1、及び902c2の電気特性を測定する。より具体的には、検査対象部902b1及び902b2については、TFT30−1及び30−2のスイッチング特性を測定する。検査対象部902c1及び902c2については、蓄積容量70−1及び70−2の容量値を測定する。これに加えて、検査対象部902c1及び902c2は、基本的にはTFTアレイ基板10における積層構造と同様な電気的接続構成を有しているため、検査対象部902c1及び902c2の夫々におけるフリッカの発生状態を測定することによって、TFT及び蓄積容量の夫々最適設計或いは限界設計を見極めることも可能である。
次に、本発明の「第6工程」の一例である各種情報抽出工程において、ステップS110で測定された電気特性に基づいて、画素部72に関する電気特性に関する各種情報を抽出する。より具体的には、例えばTFT30−1及び30−2の夫々のスイッチング特性を測定して得られた測定結果に基づいて、スイッチング用TFTのチャネル長及びスイッチング特性に関する情報を抽出し、プッシュダウン等が生じない最適なチャネル長、或いは安定したスイッチング動作が可能なチャネル長の限界値を特定する。検査対象902c1及び902c2の電気特性を測定して得られた測定結果に基づいて、フリッカ等が生じない、或いは安定した画像表示が可能な蓄積容量の最適容量値、或いは限界容量値に関する情報を抽出することもできる。
ここで、検査対象部902b1、902b2、902c1及び902c2の夫々では、画素スイッチング用TFTのチャネル長、及び蓄積容量の容量値が画素部72におけるTFTのチャネル長及び蓄積容量の容量値の夫々と異なるのみであり、画素部72と並行して共通の工程で、TFT30−1及び30−2、並びに蓄積容量70−1及び70−2が形成されている。したがって、これら各部を形成する際に生じる製造プロセス条件の変動及びばらつきは、TFTアレイ基板10と各検査対象部を含むTEGとの間で共通である。TFTアレイ基板10を製造する際に、上述した各検査対象部を含むTEGを基板900上に作り込み、当該検査対象部の電気特性を測定することによって、画素部72を構成する部分のうち電気特性に寄与する部分について最適設計に関する情報が抽出可能となる。つまり、TFTアレイ基板10を製造する製造工程に基板900を一度流動させることによって、当該製造工程について最適な画素部72の設計条件に関する情報を取得できる。したがって、当該抽出された情報を画素部72の設計に反映させることによって、高品位の画像表示が可能となる電気光学装置の開発期間を格段に短縮できる。
尚、電気特性測定工程(ステップS110)及び電気特性に関する各種情報を抽出する情報抽出工程(ステップS120)は、後述する光学特性測定工程(ステップS320)及び光学特性に関する各種情報を抽出する情報抽出工程(ステップS或いはその後に実行されてもよい。
次に、画素電極9a、透明電極9a1及び9a2までが形成された基板900上に配向膜16を形成する(ステップS130)。330)と並行して、
尚、ステップS100乃至ステップ130と並行して、或いは相前後して対向基板20側に対向電極21及び遮光膜23を形成し(ステップS210)、対向基板2側に設けられる配向膜22を形成する(ステップS220)。
次に、基板900及び対向基板20を貼り合わせ(ステップS300)、基板900及び対向基板20間に液晶を注入する(ステップS310)。次に、本発明の「第1工程」の一例に相当する光学特性測定工程(ステップS320)において、検査対象部902a1及び902a2の夫々を駆動させ、当該検査対象部902a1及び902a2に画像を表示させることによって、検査対象部902a1及び902a2の夫々の輝度(即ち、光の透過率)、コントラスト、或いはフリッカの発生状態等の光学特性を測定する。
次に、本発明の「第2工程」の一例である光学特性に関する各種情報を抽出する情報抽出工程(ステップS330)において、検査対象部902a1及び902a2の構成の相違、言い換えれば、画素部72の光学特性に寄与する透明電極9a1及び9a2の夫々の間隔に起因して測定された輝度、コントラスト或いはフリッカの発生状況に基づいて、高品位で画像を表示できる画素部72の設計を特定する。より具体的には、情報抽出工程(ステップS330)では、画素電極9aの間隔等に関して最適な設計、限界値、或いは設計マージンを特定することが可能である。
加えて、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法によれば、領域901にTFTアレイ基板10を形成する一連の製造工程と並行して検査対象部902a1及び902a2が形成されているため、このような画素部72の光学特性に寄与する第1設計パラメータに関する最適な設計値、或いは限界値を、例えば基板900を一度TFTアレイ基板10の一連の製造工程に流動させるだけで特定可能である。したがって、高品位の表示性能を有する液晶装置1等の電気光学装置を開発するための開発期間を格段に短縮できる。
基板900のうち領域901を含む部分は、当該領域901上に形成される複数の画素電極9aを含む積層構造と共にTFTアレイ基板10となる部分であり、光学特性に関する各種情報が抽出された後、対向基板20のうち領域901と対向する部分と共に基板900の他の部分と分離され、液晶装置1が形成される。
尚、本実施形態では、第2設計パラメータの一例として、画素スイッチング用TFTのチャネル長、及び蓄積容量の容量値を例に挙げているが、画素部72の電気特性に寄与する設計パラメータは、本実施形態で挙げた例に限定されるものではなく、例えば、画素部72に供給される画像信号をサンプリングするためのサンプリング回路に含まれるTFTのチャネル長、或いはチャネル幅等でもよい。また、本発明の「第2設計パラメータ」としては、例えば、基板900上に形成される多層構造中で経時的に発生する構造的欠陥であって、各種電子素子の動作特性及び配線の電気抵抗に間接的に寄与するクラック等の構造的欠陥、及び当該多層構造に含まれる第1層間絶縁膜41、第2層間絶縁膜42、第3層間絶縁膜42の経時的な絶縁性能の劣化のような画素部の信頼性に影響するものであってもよい。また、本発明の「第2設計パラメータ」としては、基板900上に形成される各種電子素子、配線、或いは画素部の構成要素の具体的な構造、サイズ、形状等のように具体的に設計者が設定可能なパラメータであってもよい。
同様に、本発明の「第1設計パラメータ」は、画素ピッチ、遮光膜及び画素電極相互の重なり幅等のように、画素部を構成する構成要素のうち電気光学装置の設計者が画素部の光学特性に寄与すると想定するものであれば如何なるものであってもよい。
本実施形態では、検査対象部902a1及び902a2について、当該検査対象部に形成される透明電極の間隔のみについて互いに異なる値で形成する場合を例に挙げたが、図17に示すように、画素部の光学特性に寄与すると想定される画素ピッチ、透明電極の間隔、透明電極及びデータ線相互の重なり幅等の複数の制御因子を第1設計パラメータとしてもよい。より具体的には、図17に示すように、画素ピッチが2水準(A1、A2)、透明電極の間隔が2水準(B1、B2)、透明電極及びデータ線相互の重なり幅が2水準(C1、C2)によって構成されるL8の直交表を用い、これらL1乃至L8の夫々の割付条件に対応する構造が形成された検査対象部を、画素部72を形成する工程と並行して形成する。そして、光学特性測定工程(S320)において、これら検査対象部の夫々の透過率等の光学特性を測定し、情報抽出工程(S330)において、光学特性に関する各種情報を抽出する。これにより、画素ピッチ、透明電極の間隔、透明電極及びデータ線の重なり幅等の各水準間の交互作用に起因する透過率等の光学特性に関する各種情報を抽出することも可能である。
(変形例)
次に、図18及び図19を参照しながら、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法の変形例を説明する。図18は、本例に係る電気光学装置の製造方法のフローチャートである。図19は、本例に係る電気光学装置の製造方法に応用可能な直交表の一例である。
図18に示すように、本例に係る電気光学装置の製造方法は、液晶装置1を組み上げた後に、図18に示す直交表に対応する構造が形成された各検査対象部の光学特性及び電気特性を測定することによって、画素部の光学特性に寄与する第1設計パラメータに関して互いに異なる値と、画素部の電気特性に寄与する第2設計パラメータに関して互いに異なる値との交互作用に起因して生じる光学特性の相違に関する情報を抽出できる点に特徴がある。
より具体的には、図18に示す各工程のうち積層構造形成工程(ステップS100)において、図19に示す直交表の各割付条件に対応した積層構造を複数の検査対象部に形成する。より具体的には、図19に示した直交表(L8)、即ち画素部の光学特性に寄与する第1設計パラメータの一例である画素ピッチについて2水準(A1、A2)、画素部の光学特性に寄与する第1設計パラメータの一例である透明電極及びデータ線の重なり幅について2水準(C1、C2)、画素部の電気特性に寄与する第2設計パラメータの一例である画素スイッチング用TFTのチャネル長について2水準(D1、D2)の夫々の組み合わせに応じた8通りの積層構造を有する検査対象部を画素部72と並行して形成する。
このような積層構造は、例えば、領域901に画素電極9aを形成する工程に先んじて、画素ピッチが互いに異なるように検査対象部902a1及び902a2にデータ線を形成し、その後、互いにチャネル長の異なるTFTを形成する。当該チャネル長が相互に異なるTFTを検査対象部902a1及び902a2に形成する工程が、本発明の「第7工程」の一例に相当する。そして、画素電極9aを領域901に形成する工程と並行して、検査対象部902a1及び902a2に透明電極9a1及び9a2とデータ線6aの重なり幅が相互に異なるように当該透明電極9a1及び9A12を形成する。
本発明の「第8工程」及び「第9工程」の夫々一例に相当する、図18における電気特性測定工程(ステップS110)及び各種情報抽出工程(ステップS120)では、直交表の各割付条件に対応する検査対象部の電気特性を測定し、画素部の電気特性について各種情報を抽出する。ここで、ステップS110及びステップS120と並行して各検査対象部の透過率等の光学特性が測定され(ステップS320)、光学特性に関する各種情報が抽出される(ステップS330)。
したがって、本例に係る電気光学装置の製造方法によれば、ステップS330において、画素部の光学特性に寄与する第1設計パラメータに関する互いに異なる値と、画素部の電気特性に寄与する第2設計パラメータに関する互いに異なる値との交互作用によって各検査対象部間に生じる光学特性の相違に関する情報を抽出することが可能である。
よって、本例に係る電気光学装置の製造方法によれば、液晶装置1を組み上げるまでの全ての製造プロセスの変動及びばらつきが考慮された状態で透過率等の光学特性を評価できる。これにより、例えば、画素スイッチング用TFT等のスイッチング特性を個別に評価する場合に比べて、画素部の光学特性を高めるために最適な設計、或いは画素部の設計の限界値、又は設計マージンを短期間で評価でき、高品位の表示性能を有する電気光学装置の開発期間を格段に短縮することが可能である。
<5:電気光学装置用基板>
次に、図20を参照しながら、本実施形態に係る電気光学装置用基板を説明する。図20は、本実施形態に係る電気光学装置用基板を備える液晶装置1Aの構成を示す平面図である。本実施形態に係る電気光学装置用基板は、上述した液晶装置1が備えるTFTアレイ基板10に適用可能である。
図20に示すように、液晶装置1Aは、本発明に係る電気光学装置用基板の一例であるTFTアレイ基板10Aを備えている。TFTアレイ基板10Aの端部には、上述した検査対処部902a1及び902a2の夫々と同様の構成を有する検査対象部を有するTEG500が形成されている。このようなTEG500によれば、液晶装置1Aが組み上げられた状態で、各画素部72の透過率等の光学特性を検査でき、当該検査結果に基づいて、表示性能に優れた液晶装置1のみを選別することが可能である。
1,1A・・・液晶装置、10,10A・・・TFTアレイ基板、20・・・対向基板、30,30−1,30−1・・・TFT、70,70−1,70−2・・・蓄積容量、9a・・・画素電極、9a1,9a2・・・透明電極、800・・・フォトマスク、900・・・基板