JP2008016662A - キャパシタ構造およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】エアロゾルデポジション法により、キャパシタンスを増大させたキャパシタ構造を作製する。
【解決手段】下部電極上にエアロゾルデポジション法によりセラミック膜を形成する際に、最初に粒径の大きい微粒子を使ってエアロゾルを形成し、エアロゾル粒子を下部電極中に侵入するように打ち込み、その後で通常の、粒径のより小さい微粒子を使ってエアロゾルを形成し、堆積を行う。
【選択図】図6

Description

本発明は一般に電子装置に係り、特にエアロゾルデポジション法を使ったキャパシタ絶縁膜の形成方法、かかる方法で形成されたキャパシタ、およびかかるキャパシタを有する回路基板に関する。
一般に電子装置は、LSIなどの能動素子やキャパシタなどの受動素子を樹脂回路基板上に実装することにより構成される。特に最近の小型化された高性能電子装置では、受動素子、特にセラミックキャパシタを回路基板内に集積化する要求が存在する。
このため、従来セラミックチップキャパシタをビルドアップ回路基板中に形成された凹部に実装する技術などが提案されているが、回路基板の厚さをさらに減少させ、信号路のインダクタンスを減少させるには、ビルドアップ基板を構成する樹脂層に一体的かつ直接にセラミックキャパシタを形成するのが好ましい。
特開2002−299462号公報 特開平9−36322号公報 特開平11−163284号公報
一般にセラミックキャパシタは、キャパシタ絶縁膜を形成するのに数百℃から1000℃、あるいはそれ以上の温度での焼成工程が必要であり、樹脂基板に直接に集積化することはできない。
これに対し従来、室温など、低温でセラミック誘電体膜を形成できる技術としてエアロゾルデポジション法が提案されている。
エアロゾルデポジション法では、1μm以下、好ましくは0.5μm以下の粒径のセラミック超微粒子によりエアロゾルを形成し、これを真空処理室中において高速で基板に衝突させ、セラミック微粒子を衝撃固化させ、室温など、低温でセラミック誘電体膜を形成する技術である。
図1は、典型的なエアロゾルデポジション装置10の構成を示す。
図1を参照するに、エアロゾルデポジション装置10はメカニカルブースタポンプ12および真空ポンプ12Aにより真空排気される処理容器11を備えており、前記処理容器11中には、ステージ11A上に被処理基板Wが、X−Yステージ駆動機構11aおよびZステージ駆動機構11bによりX−Y−Z―θ方向に駆動自在に保持される。
前記処理容器11中には、前記ステージ11A上の被処理基板Wに対向してノズル11Bが設けられており、前記ノズル11Bは原料容器12より、セラミック材料のエアロゾルをキャリアガスとともに供給され、これを前記被処理基板Wの表面に、ジェット11cとして吹き付ける。
このようにして吹き付けられたエアロゾルを構成するセラミック粒子は先にも述べたように好ましくは0.5μm以下の粒径を有しており、前記被処理基板Wの表面で衝撃固化し、セラミック膜を形成する。
前記ノズル11Bに前記エアロゾルを供給するため、図1のエアロゾルデポジション装置10は粒径が好ましくは0.5μm以下のセラミック粉末原料を保持した原料容器13が設けられており、前記原料容器13には高純度酸素などのキャリアガスが、高圧ガス源14から、質量流量コントローラ14Aを介して供給される。また前記原料容器13は、エアロゾルの発生を促進するため、振動台13A上に保持されている。前記原料容器13は、前記メカニカルブースタポンプ12および真空ポンプ13により減圧状態に維持される。
図2は、図1のエアロゾルデポジション法を使って樹脂基板21上に形成されたセラミックキャパシタ構造20を示す。
図2を参照するに、前記樹脂基板21上にはCuなどの電極22がメッキ法などにより形成されており、前記電極22上には、例えばBaTiO3などのセラミック高誘電体よりなるキャパシタ絶縁膜23が、図1のエアロゾルデポジション装置を使って形成されている。図2の例では、前記電極22およびキャパシタ絶縁膜23が前記樹脂基板21上に、繰り返し積層されている。
このように、図1のエアロゾルデポジション技術を使うと、室温でセラミック誘電体膜を形成することが可能となり、例えば樹脂ビルドアップ基板上にキャパシタを集積化して形成することも可能である。
一方、このようにしてエアロゾルデポジション法で形成されたセラミック膜では、低温成長のため、セラミック粒子に粒成長が生じることがなく、また個々のセラミック粒子の結晶構造が破壊され非晶質化しているため、バルクセラミック誘電体膜のような大きな比誘電率を得ることが困難である。
この問題を解決し、エアロゾルデポジションセラミック膜の比誘電率を向上させるため、例えば原料中に金属などの導電性成分を導入する提案されているが、このような材料面での改良には限界があるものと考えられる。
そこで、キャパシタの内部構造、例えば誘電体膜の厚さや層数を最適化することが考えられるが、誘電体膜の厚さを減少させた場合にはリーク電流が増大してしまい、一方、総数を増加させると、形成されたセラミック膜中に蓄積する応力が増大してしまい、歩留まりが低下する問題が生じる。
このような課題を解決し、リーク電流特性を劣化させずに歩留まり良く大容量のキャパシタを樹脂基板中に形成するためには、エアロゾルデポジション法で形成されるキャパシタにおいて、キャパシタ構造を改良する必要がある。
一の側面によれば本発明は、基板上の下部電極層と、前記下部電極層上に形成されたセラミックキャパシタ絶縁膜と、前記セラミックキャパシタ絶縁膜上に形成された上部電極層とよりなるキャパシタ構造であって、前記セラミックキャパシタ絶縁膜を構成するセラミック粒子は衝撃固化しており、前記下部電極層と前記セラミックキャパシタ絶縁膜との界面には、凹凸が形成されていることを特徴とするキャパシタ構造を提供する。
他の側面によれば本発明は、樹脂基板上に下部電極層を形成する工程と、前記下部電極層上にエアロゾルデポジション法によりセラミック層を、キャパシタ絶縁膜として形成する工程と、前記セラミック層上に上部電極層を形成する工程とよりなり、前記セラミック層をエアロゾルデポジション法により形成する工程は、前記下部電極層上に平均粒径が1μm以上のセラミック粒子を衝撃固化させ、より大粒径のセラミック粒子よりなる前記セラミック層下層部を、前記セラミック粒子が前記下部電極層に侵入するように形成する第1の工程と、前記セラミック層下層部上に、平均粒径が1μm未満のセラミック粒子を衝撃固化させ、より小粒径のセラミック粒子よりなる前記セラミック層上層部を形成する工程とよりなることを特徴とするセラミックキャパシタの形成方法を提供する。
本発明によれば、エアロゾルデポジション法により下部電極増上にキャパシタ絶縁膜を形成する際に、前記下部電極層とキャパシタ絶縁膜との界面に凹凸を形成することにより、キャパシタ容量を、リーク特性を犠牲にすることなく向上させることができる。特に本発明によれば、下部電極層上にキャパシタ絶縁膜となるセラミック層を、エアロゾルデポジション法により、キャパシタ絶縁膜の下層部を形成する際に、上層部を形成する場合よりも大きな粒径のセラミック粒子を使うことにより、セラミック粒子が下部電極表面に深く侵入し、下部電極層とキャパシタ絶縁膜の接触面積を効果的に増大することができる。
なお、かかる凹凸は、サンドブラスト、ドライエッチング、逆スパッタ、あるいはエアロゾルデポジションにより形成することができる。エアロゾルデポジションにより前記凹凸を形成する場合には、かかる凹凸を、平坦な下部電極表面に大粒径のセラミック粒子を打ち込むことで形成することができる。
[第1の実施形態]
図3は、本発明の一実施形態によるキャパシタ構造を含む基板40の概略を示す。ただし図中、先の実施形態と同様に形成されている部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図3を参照するに、本実施形態では、前記平坦なCu電極層22のかわりに、上主面に凹凸を有するCu電極層22Aを使い、前記電極層22A上に高誘電体セラミック膜23をエアロゾルデポジション法により形成している。
このように凹凸を形成された下部電極層22Aを使うことにより、下部電極層22Aとキャパシタ絶縁膜を構成する高誘電体セラミック膜23の接触面積が増大し、キャパシタ構造のキャパシタンスを増大させることができる。
図4は、本発明で使われるエアロゾルデポジション装置10Aの構成を示す。ただし図中、先に説明したのと同様な構成を有する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図4を参照するに、エアロゾルデポジション装置10Aには、第1の高圧酸素ガス源34Aから質量流量コントローラ14aを介して高純度高圧酸素ガスを供給される第1の原料容器33Aと、第2の高圧酸素ガス源34Bから質量流量コントローラ34bを介して高純度高圧酸素ガスを供給される第2の原料容器33Bが設けられ、前記原料容器33Aからのエアロゾルと前記原料容器33Bからのエアロゾルは、前記ノズル11Bに、切替えバルブ35を介して供給される。
さらに前記原料容器33Aは超音波振動台32Aにより保持されており、また前記原料容器33Bは超音波振動台32Bにより保持されている。本実施形態では、前記原料容器33Aに、平均粒径が1μmのBaTiO3微粉末が原料として保持されており、また原料容器33Bに、平均粒径が0.5μmのBaTiO3膜が保持されている。いずれの原料容器においても、容器全体に超音波振動台32A,32Bから超音波振動を印加し、この状態において前記容器33A,33Bを真空ポンプ12,13で脱気しながら150℃の温度に加熱することで、微粒子表面の水分を除去している。またこの工程において、前記処理容器11の内部は10Pa以下の高真空に減圧されている。
なお図4の装置において、前記原料容器33A,33Bに対応して二つのノズルを設けることも可能である。この場合には、セラミックエアロゾルによるバルブ35の摩耗の問題が回避できる。
次に、前記図4の装置を使って実行される本発明の一実施形態によるキャパシタ構造の形成例を、図5(A)〜(C)および図6(D)を参照しながら説明する。
図5(A)を参照するに、例えばエポキシ樹脂よりなる基板21上には平坦なCu電極層22が形成されており、図5(B)の工程において、前記Cu電極層22の表面をサンドブラスト加工により、例えばRa値にして0.5μmの表面粗さに粗面化する。これにより、前記Cu電極層22は、Cu電極層22Aに加工される。
次に図5(C)の工程において前記Cu電極層22A上に、BaTiO3よりなるセラミック層23を、前記図2のエアロゾルデポジション装置10Aを使って形成する。
すなわち図5(C)の工程では、前記高圧酸素ガス源34Aより高純度酸素ガスを、前記質量流量コントローラ34aを介して、2kg/cm2の圧力と4l/分の流量で前記原料容器33Aに供給し、前記原料容器33Aに保持された平均粒径が1μmのBaTiO3微粒子をエアロゾルとして前記ノズル11Bに供給する。このようにして供給されたBaTiO3微粒子は、前記電極層22A上に、ジェット11cとして噴射される。
このような噴射を2分間実行することにより、前記Cu電極層22A上には、粒径が10〜1000nmの比較的大粒径のBaTiO3粒子が衝撃固化により堆積し、BaTiO3膜23Aが形成される。なお、前記図5(C)の噴射工程では、前記処理容器11内部は200Paの圧力に保持している。
その際、図5(C)の工程では、前記BaTiO3微粒子の粒径が比較的大きく質量が大きいため、前記BaTiO3微粒子は衝撃固化する際、前記下部電極層22A中に、凹凸面を超えて、塑性変形を誘起しながら侵入し、前記下部電極層22Aと密着する。その結果、前記下部電極層22Aの表面に図5(B)の工程で凹凸面が形成されていても、図5(C)に示すように前記下部電極層22AとBaTiO3膜23Aの界面に500nmを超えるような隙間が生じることはない。すなわち、前記Cu電極層22の凹凸面は、前記BaTiO3膜23Aを構成するBaTiO3微粒子の形状に整合した形状を有する。
次に図6(D)の工程において、前記処理容器11内部の圧力が再び10Paまで減圧され、さらに前記高圧酸素ガス源34Bより高純度酸素ガスが、前記質量流量コントローラ34bを介して、2kg/cm2の圧力と4l/分の流量で前記原料容器33Aに供給され、前記原料容器33Aに保持された平均粒径が0.5μmのBaTiO3微粒子がエアロゾルとして前記ノズル11Bに供給され、前記電極層22上に、ジェット11cとして噴射される。
このような噴射を18分間実行することにより、前記下部BaTiO3膜23A上には、粒径が5〜500nmの比較的小粒径のBaTiO3粒子が堆積する。本実施例1では、BaTiO3膜23Bを、前記膜23Aまで含めたBaTiO3膜23の厚さが2μmとなるように形成した。なお、前記図6(D)の噴射工程では、前記処理容器11内部は200Paの圧力に保持している。
その際、図6(D)の工程では、前記BaTiO3微粒子の粒径が比較的小さく質量が小さいため、前記BaTiO3微粒子は、その下のBaTiO3膜23A上に、自身が衝撃固化しながら堆積する。
このようにして形成されたBaTiO3膜23の表面粗さRaは0.03μmであり、さらに図6(E)の工程で、図6(D)のBaTiO3膜23B上にCu上部電極層24を、無電解メッキおよび電解メッキを行うことにより、所望のキャパシタ構造が形成した。
このように形成されたキャパシタ構造は、単位面積あたりのキャパシタンスが80nF/cm2であり、10Vの電圧印加時におけるリーク電流は10-6Aであることが確認された。
本実施例2では、先の実施例1において、粒径が1μmのBaTiO3微粒子の代わりに粒径が2μmのBaTiO3微粒子を前記原料容器33Aに充填し、図5(C)の工程において、前記粒径がBaTiO3の微粒子を、前記図5(B)のサンドブラスト加工されたCu電極層22Aの凹凸面に、先と同じ条件で噴射し、下側のBaTiO3膜23Aを形成した。
さらに前記下側BaTiO3膜23A上に図6(D)の工程と同様にして、上側BaTiO3膜23Bを、原料容器33Bに保持された平均粒径が0.5μmのBaTiO3を使い、前記BaTiO3膜23AとBaTiO3膜23Bを合わせたBaTiO3膜23全体の厚さが2μmとなるように形成し、さらに前記図6(D)の工程で、前記BaTiO3膜23B上にCu上部電極層24を同様にして形成した。
このようにして得られたBaTiO3膜23は、表面粗さRaが0.035μmであり、図6(E)で得られたキャパシタ構造の単位面積あたりのキャパシタンスは100nF/cm2,10Vの電圧印加時におけるリーク電流値は10-6Aであることが確認された。

[比較例1]
図7(A)〜図8(D)は、上記実施例1,2に対する比較例を説明する図である。ただし図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図7(A)を参照するに、基板21上には平坦なCu電極層22が形成されており、図7(B)の工程において、前記Cu電極層22の表面がサンドブラスト加工により、Ra値にして約0.5μmまで粗面化された後、図7(C)の工程において前記粗面加工されたCu電極層22A上に、BaTiO3よりなるセラミック層23が、前記図1のエアロゾルデポジション装置10を使って形成される。
より具体的には、前記基板21上には前記Cu電極層22が電解メッキ法により形成され、図7(B)の工程ではサンドブラスト加工により、表面荒さRaが約0.5μmの粗面加工された下部電極層22Aが形成される。
次に図7(B)の構造はクリーニングの後、前記図1のエアロゾルデポジション装置10の処理容器11中に導入され、被処理基板Wとして、ステージ12上に装着される。
さらに平均粒径が0.5μmのBaTiO3微粒子を原料粉末として前記原料容器13に導入し、前記処理容器11および原料容器13を前記ポンプ12および13により、例えば10Pa以下の高真空に排気する。
この状態で、前記原料容器13に振動台13Aより超音波振動を印加しながら約150℃の温度で加熱し、30分間真空脱気し、粉末表面の水分を除去する。
次に前記原料容器13に高圧ガス源14より、高純度酸素ガスを、質量流量コントローラ14Aを介して、2kg/cm2の圧力および4l/分の流量で導入し、BaTiO3のエアロゾルを形成する。
このようにして形成されたBaTiO3のエアロゾルは前記ノズル11Bからジェット11cとなって前記被処理基板Wの表面に20分間噴射され、前記Cu電極層22A上にBaTiO3層23が2μmの膜厚に形成される。なお、この例では、前記電極層22A上へのBaTiO3層23の堆積速度は1±0.5μm/分であり、BaTiO3微粒子の噴射中、前記処理容器11内部の圧力は200Paに維持している。また本発明では、前記ノズル11Bとして、実施例1,2と同様に内側にらせん状の溝を形成したものを使っており、形成された前記BaTiO3層43の表面粗さは、0.02μmであった。
さらに図8(D)の工程において、前記図7(C)の構造上に、無電解メッキおよび電解メッキを行うことにより、前記BaTiO3層23に接して、上部電極24が形成される。これにより、前記BaTiO3層43をキャパシタ絶縁膜としたキャパシタ構造が形成される。
このようにして形成されたキャパシタについて、単位面積あたりのキャパシタンスを測定したところ、20nF/cm2であり、10Vの電圧印加時におけるリーク電流は、10-5Aであることが確認された。
このように、図5(C)の大粒径粒子を使ったエアロゾルデポジション工程を省略した場合、得られるキャパシタンスの値が減少し、またリーク電流の値が増加してしまうが、これは図7(B)のような凹凸面が形成された下部電極22A上に微粒子のエアロゾルデポジション工程を直接に行った場合、前記下部電極22AとBaTiO3膜23の間に、500nmを超える大きな隙間23Gが形成されてしまい、接触面積が減少すると同時に、このような隙間に吸着された不純物がリーク電流路を形成することを示唆している。

[比較例2]
図7(A)〜8(D)の比較例工程において、図7(B)のサンドブラスト加工工程を省略し、平坦なCu電極層22上に直接に粒径が0.5μmのBaTiO3微粒子を使ったエアロゾルデポジション法によりBaTiO3膜23を、同一の条件で形成した場合、得られるキャパシタ構造の単位面積あたりキャパシタンスは40nF/cm2となり、10V印加時のリーク電流が10-6Aとなることが確認された。この結果は、前記実施例1,2の結果よりもキャパシタンス値において劣るものの、前記比較例1のものよりは良好であり、前記比較例1においては、下部電極層22AとBaTiO3膜23の界面に欠陥が生じているとの推測を支持するものである。

[比較例3]
さらに図7(A)〜8(D)の比較例工程において、前記図7(B)のサンドブラスト加工工程を省略し、さらに前記図7(C)のエアロゾルデポジション工程の継続時間を1分間とすることで形成されるBaTiO3膜の膜厚を0.2μmとした場合、得られたキャパシタ構造の単位面積あたりキャパシタンスは420nF/cm2に大きく増大するのが確認された。しかし、このように膜厚を減少させた場合、10V印加時のリーク電流が10-3Aまで増大しており、これは膜中に欠陥が多量に含まれていることを示している。

以下の表1は、上記本発明の実施例1,2の結果を、比較例1〜3の結果と対照して示す図である。
Figure 2008016662
表1より、本発明の実施例1,2のように、サンドブラスト処理した下部電極上のセラミック膜のエアロゾルデポジションプロセスを2段階に分けて実行し、最初に質量の大きい、従って運動エネルギの大きい粒子を衝突させ、次に通常のエアロゾルデポジションを行うことにより、キャパシタンス値が改善され、かつリーク電流特性が劣化しないキャパシタ構造を、樹脂基板などの耐熱性を欠く基板上に形成することが可能となることがわかる。
さらに前記図5(A)〜6(E)の工程を繰り返すことにより、図3に示したキャパシタ構造が樹脂基板21上に形成される。図3では、図6(E)の構造が繰り返されるため、図3の電極22Aは、図5(A)〜図6(E)の上部電極24と同じものである。

[第2の実施形態]
図9は、本発明の第2の実施形態によるキャパシタ構造60を示す。ただし図中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図9を参照するに、本実施例では前記BaTiO3膜23の各々が図5(A)〜図6(E)の工程により形成され、その結果、各々のBaTiO3膜23は粒径の大きい下部層23Aと粒径の細かい上部層23Bとより構成され、凹凸面を有する下部電極22A上に形成されている。
さらに本実施形態では、BaTiO3膜23上に上部電極24,従って22Aを形成する際に、前記BaTiO3膜23の上部層23Bに凹凸パターンを、例えばレジストプロセスおよびエッチングにより形成し、上部電極24,従って22AをかかるBaTiO3膜23の凹凸面に形成している。
かかる構成により、電極層22AとBaTiO3膜23の接触面積がさらに増大し、キャパシタ構造のキャパシタンスをさらに増大させることができる。
以上の説明では、前記基板21をエポキシ樹脂基板としているが、前記基板21はエポキシ樹脂基板に限定されるものではなく、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系共重合体、ファイバガラス、テフロン(登録商標名)などを使うことも可能である。また前記基板21として、Fe,Ni,Mo,W,Al,Cu,Ag,Auなどを含む合金よりなる金属材料を使うことも可能である。また前記基板21としてセラミック基板を使うことも可能である。また前記電極層22,24として、Cuの代わりにAuなどを使うことも可能である。さらに前記セラミック層23,23A,23Bは、BaTiO3に限定されるものではなく、Pb(Zr,Ti)O3など、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物やアルミニウム系化合物、鉛系化合物などを使うことも可能である。

[第3の実施形態]
さらに図5(B)の粗面形成工程はサンドブラスト加工に限定されるものではなく、機械研磨や逆スパッタ、フォトリソグラフィによるパターンエッチングなどにより実行することもできる。
図10(A)は前記図5(A)の工程に対応しており、例えばエポキシ樹脂よりなる基板21上には平坦なCu電極層22が形成されているが、本実施形態では図10(B)の工程において、前記Cu電極層22の表面をレジストマスク(図示せず)を使ったドライエッチングあるいは逆スパッタにより処理し、凹凸面を形成する。これにより、前記Cu電極層22は、Cu電極層22Bに加工される。
次に図10(C)の工程において前記Cu電極層22B上に、BaTiO3よりなるセラミック層23を、前記図2のエアロゾルデポジション装置10Aを使って形成する。
すなわち図10(C)の工程では、前記高圧酸素ガス源34Aより高純度酸素ガスを、前記質量流量コントローラ34aを介して、2kg/cm2の圧力と4l/分の流量で前記原料容器33Aに供給し、前記原料容器33Aに保持された平均粒径が1μmのBaTiO3微粒子をエアロゾルとして前記ノズル11Bに供給する。このようにして供給されたBaTiO3微粒子は、前記電極層22B上に、ジェット11cとして噴射される。
このような噴射を2分間実行することにより、前記Cu電極層22A上には、粒径が10〜1000nmの比較的大粒径のBaTiO3粒子が衝撃固化により堆積し、BaTiO3膜23Aが形成される。なお、前記図10(C)の噴射工程では、前記処理容器11内部は200Paの圧力に保持している。
その際、図10(C)の工程では、前記BaTiO3微粒子の粒径が比較的大きく質量が大きいため、前記BaTiO3微粒子は衝撃固化する際、前記下部電極層22A中に、凹凸面を超えて、塑性変形を誘起しながら侵入し、前記下部電極層22Aと密着する。
次に図11(D)の工程において、前記処理容器11内部の圧力が再び10Paまで減圧され、さらに前記高圧酸素ガス源34Bより高純度酸素ガスが、前記質量流量コントローラ34bを介して、2kg/cm2の圧力と4l/分の流量で前記原料容器33Aに供給され、前記原料容器33Aに保持された平均粒径が0.5μmのBaTiO3微粒子がエアロゾルとして前記ノズル11Bに供給され、前記電極層22上に、ジェット11cとして噴射される。
このような噴射を18分間実行することにより、前記下部BaTiO3膜23A上には、粒径が5〜500nmの比較的小粒径のBaTiO3粒子が堆積する。本実施例1では、BaTiO3膜23Bを、前記膜23Aまで含めたBaTiO3膜23の厚さが2μmとなるように形成した。なお、前記図11(D)の噴射工程では、前記処理容器11内部は200Paの圧力に保持している。
その際、図11(D)の工程では、前記BaTiO3微粒子の粒径が比較的小さく質量が小さいため、前記BaTiO3微粒子は、その下のBaTiO3膜23A上に、自身が衝撃固化しながら堆積する。
本実施形態では、図10(C)の凹凸形成工程をドライエッチングあるいは逆スパッタにより行うため、形成される凹凸面の表面粗さを自在に制御でき、BaTiO3膜23と下部電極22Bの間に所望の大きな接触面積を、容易に確保することが可能となる。その際、本発明では図10(C)の工程で、先に粒径の大きなBaTiO3微粒子をエアロゾルデポジションにより堆積しているため、堆積したBaTiO3微粒子は下部電極22B中に深く侵入し、先に図7(C)で説明したような隙間が生じることはない。すなわち、前記Cu電極層22Bの凹凸面は、前記BaTiO3膜23Aを構成するBaTiO3微粒子の形状に整合した形状を有する。
さらに図11(D)の構造上に、前記図6(E)の工程と同様にして上部電極層24を形成することにより、大きなキャパシタ容量を有し、リーク電流の小さいキャパシタを実現することが可能になる。

[第4の実施形態]
さらに本発明では、粒径の大きな微粒子を使ったエアロゾルデポジション法を行うことにより、予め下部電極に凹凸を、サンドブラストやドライエッチング、逆スパッタなどにより形成しなくても、キャパシタ絶縁膜と下部電極との間の界面に凹凸を有するキャパシタ構造を実現することができる。
図12(A)は前記図5(A)の工程に対応しており、例えばエポキシ樹脂よりなる基板21上には平坦なCu電極層22が形成されているが、本実施形態では図10(B)の工程において前記Cu電極層22上に直接に、BaTiO3よりなるセラミック層23を、前記図2のエアロゾルデポジション装置10Aを使って形成する。
すなわち図12(B)の工程では、前記高圧酸素ガス源34Aより高純度酸素ガスを、前記質量流量コントローラ34aを介して、2kg/cm2の圧力と4l/分の流量で前記原料容器33Aに供給し、前記原料容器33Aに保持された平均粒径が1μmのBaTiO3微粒子をエアロゾルとして前記ノズル11Bに供給する。このようにして供給されたBaTiO3微粒子は、前記電極層22上に、ジェット11cとして噴射される。
このような噴射を2分間実行することにより、前記Cu電極層22上には、粒径が10〜1000nmの比較的大粒径のBaTiO3粒子が衝撃固化により堆積し、BaTiO3膜23Aが形成される。なお、前記図10(C)の噴射工程では、前記処理容器11内部は200Paの圧力に保持している。
その際、図12(B)の工程では、前記BaTiO3微粒子の粒径が比較的大きく質量が大きいため、前記BaTiO3微粒子は衝撃固化する際、前記下部電極層22中に塑性変形を誘起しながら侵入し、前記下部電極層22Aと密着する。その際、前記下部電極層22とBaTiO3膜23Aの界面には、凹凸が形成される。
次に図12(C)の工程において、前記処理容器11内部の圧力が再び10Paまで減圧され、さらに前記高圧酸素ガス源34Bより高純度酸素ガスが、前記質量流量コントローラ34bを介して、2kg/cm2の圧力と4l/分の流量で前記原料容器33Aに供給され、前記原料容器33Aに保持された平均粒径が0.5μmのBaTiO3微粒子がエアロゾルとして前記ノズル11Bに供給され、前記電極層22上に、ジェット11cとして噴射される。
このような噴射を18分間実行することにより、前記下部BaTiO3膜23A上には、粒径が5〜500nmの比較的小粒径のBaTiO3粒子が堆積する。本実施例1では、BaTiO3膜23Bを、前記膜23Aまで含めたBaTiO3膜23の厚さが2μmとなるように形成した。なお、前記図12(C)の噴射工程では、前記処理容器11内部は200Paの圧力に保持している。
その際、図12(C)の工程では、前記BaTiO3微粒子の粒径が比較的小さく質量が小さいため、前記BaTiO3微粒子は、その下のBaTiO3膜23A上に、自身が衝撃固化しながら堆積する。
本実施形態では、図12(B)のエアロゾルデポジション工程においてBaTiO3膜23と下部電極22の界面に凹凸が自己整合的に形成されるため、BaTiO3膜と下部電極22との間に隙間が生じることはなく、BaTiO3膜23と下部電極22の間に所望の大きな接触面積を、容易に確保することが可能となる。本実施形態においても、前記Cu電極層22の凹凸面は、前記BaTiO3膜23Aを構成するBaTiO3微粒子の形状に整合した形状を有する。
さらに図12(C)の構造上に、前記図6(E)の工程と同様にして上部電極層24を形成することにより、大きなキャパシタ容量を有し、リーク電流の小さいキャパシタを実現することが可能になる。
また本実施形態によれば、図5(B)あるいは図10(B)のような前処理工程が不要で、キャパシタ構造の製造工程を簡素化することができる。
以上、本発明を好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内において様々な変形・変更が可能である。
(付記1)
基板上の下部電極層と、
前記下部電極層上に形成されたセラミックキャパシタ絶縁膜と、
前記セラミックキャパシタ絶縁膜上に形成された上部電極層とよりなるキャパシタ構造であって、
前記セラミックキャパシタ絶縁膜を構成するセラミック粒子は衝撃固化しており、
前記下部電極層と前記セラミックキャパシタ絶縁膜との界面には、凹凸が形成されていることを特徴とするキャパシタ構造。
(付記2)
さらに前記セラミックキャパシタ絶縁膜と前記上部電極層との界面にも凹凸が形成されていることを特徴とする付記1記載のキャパシタ構造。
(付記3)
前記セラミックキャパシタ絶縁膜は、前記下部電極層に接する下部がより大粒径のセラミック粒子の積層により形成されており、前記上部電極層に接する上部が、より小粒径のセラミック粒子の積層により形成されていることを特徴とする付記1または2記載のキャパシタ構造。
(付記4)
前記大粒径のセラミック粒子は、10〜1000nmの範囲の粒径を有し、前記小粒径のセラミック粒子は、5〜500nmの範囲の粒径を有することを特徴とする付記1〜3のうち、いずれか一項記載のキャパシタ構造。
(付記5)
前記下部電極層と前記セラミックキャパシタ絶縁膜との界面に形成された凹凸は、前記大粒径のセラミック粒子の形状に整合して形成されていることを特徴とする付記3または4記載のキャパシタ構造。
(付記6)
前記下部電極層と前記セラミックキャパシタ絶縁膜との界面には、500nmを超える隙間が存在しないことを特徴とする付記5記載のキャパシタ構造。
(付記7)
前記下部電極層と前記セラミックキャパシタ絶縁膜と前記上部電極層の積層は、前記基板上において繰り返されることを特徴とする付記1〜6のうち、いずれか一項記載のキャパシタ構造。
(付記8)
前記基板は樹脂基板であることを特徴とする付記1〜7のうち、いずれか一項記載のキャパシタ構造。
(付記9)
樹脂基板上に下部電極層を形成する工程と、
前記下部電極層上にエアロゾルデポジション法によりセラミック層を、キャパシタ絶縁膜として形成する工程と、
前記セラミック層上に上部電極層を形成する工程とよりなり、
前記セラミック層をエアロゾルデポジション法により形成する工程は、
前記下部電極層上に平均粒径が1μm以上のセラミック粒子を衝撃固化させ、より大粒径のセラミック粒子よりなる前記セラミック層下層部を、前記セラミック粒子が前記下部電極層に侵入するように形成する第1の工程と、
前記セラミック層下層部上に、平均粒径が1μm未満のセラミック粒子を衝撃固化させ、より小粒径のセラミック粒子よりなる前記セラミック層上層部を形成する工程と
よりなることを特徴とするセラミックキャパシタの形成方法。
エアロゾルデポジション装置の構成を示す図である。 従来のキャパシタ構造を示す図である。 本発明の第1の実施形態によるキャパシタ構造を示す図である。 本発明の第1の実施形態で使われるエアロゾルデポジション装置の構成を示す図である。 (A)〜(C)は、本発明の第1の実施形態によるキャパシタ構造の製造工程を示す図(その1)である。 (D)〜(E)は、本発明の第1の実施形態によるキャパシタ構造の製造工程を示す図(その1)である。 (A)〜(C)は、本発明の比較例によるキャパシタ構造の製造工程を示す図(その1)である。 (D)は、本発明の比較例によるキャパシタ構造の製造工程を示す図(その2)である。 本発明の第2の実施形態によるキャパシタ構造を示す図である。 (A)〜(C)は本発明の第3の実施形態によるキャパシタ構造の製造工程を示す図(その1)である。 (D)は本発明の第3の実施形態によるキャパシタ構造の製造工程を示す図(その2)である。 (A)〜(C)は本発明の第4の実施形態によるキャパシタ構造の製造工程を示す図である。
符号の説明
10.10A エアロゾルデポジション装置
11 処理容器
11A ステージ
11a,11b ステージ駆動部
11c ジェット
11B ノズル
12.12A ポンプ
13、33A,33B 原料容器
13A,32A,32B 振動台
14,34A,34B 酸素ガス源
14A.34a,34b MFC
35 切替バルブ
21 樹脂基板
22,22A,22B 下部電極層
23,23A,23B セラミック層
23G 隙間
24 上部電極層

Claims (5)

  1. 基板上の下部電極層と、
    前記下部電極層上に形成されたセラミックキャパシタ絶縁膜と、
    前記セラミックキャパシタ絶縁膜上に形成された上部電極層とよりなるキャパシタ構造であって、
    前記セラミックキャパシタ絶縁膜を構成するセラミック粒子は衝撃固化しており、
    前記下部電極層と前記セラミックキャパシタ絶縁膜との界面には、凹凸が形成されていることを特徴とするキャパシタ構造。
  2. さらに前記セラミックキャパシタ絶縁膜と前記上部電極層との界面にも凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1記載のキャパシタ構造。
  3. 前記セラミックキャパシタ絶縁膜は、前記下部電極層に接する下部がより大粒径のセラミック粒子の積層により形成されており、前記上部電極層に接する上部が、より小粒径のセラミック粒子の積層により形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のキャパシタ構造。
  4. 前記下部電極層と前記セラミックキャパシタ絶縁膜との界面に形成された凹凸は、前記大粒径のセラミック粒子の形状に整合して形成されていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項記載のキャパシタ構造。
  5. 樹脂基板上に下部電極層を形成する工程と、
    前記下部電極層上にエアロゾルデポジション法によりセラミック層を、キャパシタ絶縁膜として形成する工程と、
    前記セラミック層上に上部電極層を形成する工程とよりなり、
    前記セラミック層をエアロゾルデポジション法により形成する工程は、
    前記下部電極層上に平均粒径が1μm以上のセラミック粒子を衝撃固化させ、より大粒径のセラミック粒子よりなる前記セラミック層下層部を、前記セラミック粒子が前記下部電極層に侵入するように形成する第1の工程と、
    前記セラミック層下層部上に、平均粒径が1μm未満のセラミック粒子を衝撃固化させ、より小粒径のセラミック粒子よりなる前記セラミック層上層部を形成する工程と
    よりなることを特徴とするセラミックキャパシタの形成方法。
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