JP2006297915A - 圧電アクチュエータ、インクジェットヘッドおよびそれらの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】圧電特性の低下を低減できる圧電アクチュエータ、インクジェットヘッドおよびそれらの製造方法を提供することにある。
【解決手段】振動板2上に下部電極3を形成するための導電性材料として、低温で焼結可能な金属ナノ粒子を使用する。これとともに、圧電層4の形成に、焼成工程を必要としないエアロゾルデポジション法(材料粒子を含むエアロゾルを噴き付けてこの粒子を付着させることにより薄膜を形成する方法)を用いる。このような構成によれば、下部電極形成時、および圧電層形成時に、厳しい条件での焼成を行う必要がない。また、圧電層4の形成後に必要なアニール工程において、下部電極3の焼成を同時に進行させることができる。したがって、製造工程中での熱サイクルを必要最低限度とすることができ、熱履歴による層間剥離や振動板2材料の圧電層4への拡散を抑制できる。これにより、圧電特性の低下を抑制することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、圧電アクチュエータ、インクジェットヘッドおよびそれらの製造方法に関する。
インクジェットヘッド等に用いられる圧電アクチュエータは、流路形成体においてノズル開口と連通する圧力室の開口部を閉じるように設けられる基板(振動板)を備え、この基板上に下部電極、圧電層、上部電極を積層したものである。下部電極と上部電極との間に電界を印加すると、圧電層の変形に伴って基板が撓み、圧力室内のインクが加圧されてノズル開口から吐出される(特許文献1参照)。
このような圧電アクチュエータは、例えば以下のようにして製造される。まず、基板上に、Ptペースト等の金属ペーストを塗布し、焼成することにより下部電極を形成する。次いで、この下部電極上に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電材料の粒子を含むペーストを基板表面に塗布し、焼成することにより圧電膜を形成させる(ゾル−ゲル法)。
特開平11−334087号公報
ところが、上記のような方法では、焼成時に基板が高温環境下にさらされることとなる。このため、各層を構成する材料の熱膨張率の差によって重なり合う層の界面に応力が生じ、層間剥離が起こるために、充分な圧電特性が得られなくなることがある。また、基板に含まれる元素が下部電極層を通過して圧電膜中に拡散することによって、圧電特性の低下が生じることがある。
すなわち、電極形成時においては、電極材料である金属の融点以上の極めて高い温度(例えば電極材料がPtであれば900℃以上)で焼成を行う必要がある。また、圧電層形成時においても、圧電材料である酸化物セラミックスの焼結温度以上の極めて高い温度(例えば900℃以上)で焼成を行う必要がある。さらに、ゾルーゲル法による膜形成では、一度のペースト塗布−焼成という工程によって形成される膜の厚みは数μm程度が限界である。このため、厚みのある層を形成するためには数度にわたって塗布−焼成を繰り返さなければならず、基板が数度にわたって高温環境下にさらされることとなる。このように、製造工程中で繰り返し厳しい熱処理を行うこととなるため、層間剥離や拡散等による圧電特性の低下が顕著となる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧電特性の低下を低減できる圧電アクチュエータ及びインクジェットヘッドを提供することにある。また、本発明の別の目的は、少ない熱負荷で且つ簡単なプロセスで圧電アクチュエータ及びインクジェットヘッドを製造することができる方法を提供することにある。
本発明者らは、圧電特性の低下を低減できる圧電アクチュエータ、インクジェットヘッドおよびそれらの製造方法を開発すべく鋭意研究してきたところ、圧電膜の形成にエアロゾルデポジション法を用いつつ導電性材料として低温焼結材料を使用することにより、製造工程における熱履歴の影響を著しく低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の第1の態様に従えば、基板上に、所定の温度で焼結する導電性材料により一の電極層を形成する第1の電極層形成工程と、
前記一の電極層上に圧電材料の粒子を含むエアロゾルを噴き付けてこの圧電材料の粒子を付着させることにより圧電層を形成する圧電層形成工程と、
前記圧電層をアニール処理するアニール処理工程と、
前記圧電層上に前記一の電極層と対をなす他の電極層を形成する第2の電極層形成工程とを含み、かつ、
前記導電性材料の焼結開始温度が、前記アニール処理工程におけるアニール温度以下である圧電アクチュエータの製造方法が提供される。
本発明によれば、圧電層の形成に、焼成工程を必要としないエアロゾルデポジション法(材料粒子を含むエアロゾルを噴き付けてこの粒子を付着させることにより薄膜を形成する方法)を用いるとともに、基板上に電極層を形成するための導電性材料として、圧電層のアニール処理工程におけるアニール温度以下の温度で焼結開始する低温焼結材料を使用している。それゆえ、第1電極層形成時および圧電層形成時に、厳しい条件での焼成を行う必要がない。また、圧電層の形成後に必要であるアニール工程において、低温焼結材料から形成された電極層の焼成を同時に行うことができる。すなわち、第1電極層の焼成を別途行う必要がない。したがって、製造工程中での熱サイクルを必要最低限度とすることができ、熱履歴による層間剥離や基板材料の圧電層への拡散を抑制できる。これにより、圧電特性の低下を抑制することができる。また、製造プロセスを簡略化して、省エネルギーにも貢献する。
本発明に用いる所定の温度で焼結する導電性材料(低温焼結材料)は、ナノスケールの粒子径をもつ金属ナノ粒子、具体的には粒径50nm以下の金属ナノ粒子を含む材料(例えば、ペースト状材料)使用し得る。このような金属ナノ粒子は、粒子径が非常に小さいために、構成金属の融点以下の低温であっても、表面付近の一部が軟化して粒子同士の結合がおきるため、ある程度の密着性を得ることができる(図4参照)。特に、アニール処理においては、アニール温度より金属粒子の表面の大半の部分を溶融させ、粒の成長により粒子同士の結合を促進させることができ、それにより基板への強い密着性を得ることができる。金属ナノ粒子の金属の種類として、例えば、銀、金、白金を使用することができる。
本発明の方法は、さらに、前記一の電極層を420℃以下の温度で仮焼成する仮焼成工程を、前記アニール処理工程の前に含み得る。仮焼成においては、仮焼成温度を、導電性材料が溶融し、粒子が互いに融着することが可能な限度でできるだけ低くすることが好ましく、具体的には、420℃以下にし得る。熱履歴の影響を最低限度に抑えるためである。
さらに、アニール工程におけるアニール温度は、圧電層の圧電特性回復、および一の電極層の充分な焼成が可能な限度でできるだけ低くすることが好ましく、具体的には、600℃〜1000℃、特には、600〜900℃とすることが好ましい。また、焼成温度は、アニール温度よりも低い420℃以下にし得る。
本発明の第2の態様に従えば、前記基板上に形成されて粒径50nm以下の金属ナノ粒子を含む一の電極層と、前記一の電極層上に圧電材料の粒子を含むエアロゾルを噴き付けて前記粒子を付着させることにより設けられた圧電層と、前記圧電層上に設けられて前記一対の電極と対となる他の電極層とを備える圧電アクチュエータが提供される。この圧電アクチュエータは、低温焼結材料である粒径50nm以下の金属ナノ粒子から構成され、圧電層はエアロゾルデポジション法により形成されているので、製造時におけるそれらの層の熱負荷が少なく、基板からの原子の拡散が抑制されているので、良好な圧電特性を有する。
本発明の圧電アクチュエータおよびその製造方法は、インクジェットプリンタ等に用いられるインクジェットヘッドに適用し得る。
以下、本発明を具体化した一実施形態について、図1〜図3を参照しつつ詳細に説明する。
図1には、本実施形態のインクジェットヘッド10を示す。インクジェットヘッド10は、インク20が収容される複数の圧力室16を備えた流路ユニット11(本発明のインク流路形成体に該当する)と、この流路ユニット11上に圧力室16を閉じるように接合されたアクチュエータプレート1(本発明の圧電アクチュエータに該当する)とを備えている。
流路ユニット11は、全体として平板状をなしており、ノズルプレート12、マニホールドプレート13、流路プレート14、および圧力室プレート15を順に積層するとともに、各プレート12、13、14、15を互いにエポキシ系の熱硬化性接着剤にて接合した構成となっている。
ノズルプレート12は、ポリイミド系の合成樹脂材料にて形成されており、その内部にはインク20を噴射するための複数のインク吐出ノズル19となる孔が整列して形成されている。マニホールドプレート13は、例えばステンレス(SUS430)にて形成され、その内部には、インク吐出ノズル19に接続する複数のノズル流路18となる孔が設けられている。流路プレート14は、同じくステンレス(SUS430)にて形成されており、内部にノズル流路18に連通した複数のプレッシャ流路17となる孔が設けられている。圧力室プレート15は同じくステンレス(SUS430)にて形成され、その内部にはプレッシャ流路17に連通した複数の圧力室16となる孔が設けられている。圧力室16は、流路プレート14およびマニホールドプレート13に設けられた図示しないマニホールド流路および共通インク室を介してインクタンクに接続されている。このようにして、インクタンクに接続された共通インク室から、マニホールド流路、圧力室16、プレッシャ流路17およびノズル流路18を経てインク吐出ノズル19へと至るインク流路Fが形成されている。
この流路ユニット11に積層されるアクチュエータプレート1は、圧力室16の壁面の一部を構成する振動板2(基板)と、この振動板2上に形成された下部電極3(一の電極層)と、この下部電極3上に積層された圧電層4と、この圧電層4上に設けられた上部電極5(他の電極層)とで構成されている。
振動板2は、例えばステンレス(SUS430)にて矩形状に形成されており、流路ユニット11の上面に熱圧着により接合されて、流路ユニット11の上面全体を覆う形態となっている。なお、この振動板2は、流路ユニット11を構成するマニホールドプレート13、流路プレート14、および圧力室プレート15と同種の金属材料により形成されており、これにより、振動板2を流路ユニット11に熱圧着する際の反りを防止することができる。
この振動板2において流路ユニット11に接する面と反対側の面には、全面にわたって下部電極3が形成されている。この下部電極3は、駆動回路IC(図示せず)のグランドに接続されてグランド電極として使用される。この下部電極3は、粒径50nm以下の金属ナノ粒子(ここではAg粒子)によって形成されたものである。下部電極3の厚みは100〜300nmにし得る。これは、
一般的な数μm程度の金属粒子を含む電極ペーストの場合、基となる粒子径が大きいために、電極が4〜10μm程度になってしまうのに対し、金属ナノ粒子は基となる粒子径が小さいために電極層を薄くすることが可能となるからである。
圧電層4は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電体の圧電セラミックス材料から形成されており、振動板2との間で下部電極3を挟み込むようにしながら、振動板2の表面全体に均一な厚みで積層されている。この圧電層4は、エアロゾルデポジション法により形成されたものであって、その厚み方向に分極するように分極処理が施されている。
この圧電層4上において振動板2に密着されている側と逆側の面上には、複数の上部電極5が備えられている。この上部電極5は、各圧力室16の開口部16Aに対応する領域にそれぞれ設けられるとともに、駆動回路ICに接続されており、駆動電極として使用される。
印刷を行う際には、駆動回路ICから所定の駆動信号が発せられると、上部電極5の電位が下部電極3よりも高い電位とされ、圧電層4の分極方向(厚み方向)に電界が印加される。すると、圧電層4が厚み方向に膨らむとともに、面方向に収縮する。これにより、圧電層4および振動板2(即ちアクチュエータプレート1)において圧力室16の開口に対応する領域が、圧力室16側に凸となるように局所的に変形する(ユニモルフ変形)。このため、圧力室16の容積が低下して、インク20の圧力が上昇し、インク吐出ノズル19からインク20が噴射される。その後、上部電極5が下部電極3と同じ電位に戻されると、圧電層4と振動板2とが元の形状になって圧力室16の容積が元の容積に戻るので、インク20をインクタンクに連通するマニホールド流路より吸い込む。
次に、このインクジェットヘッド10を製造する方法について説明する。まず、ステンレスにより形成されたマニホールドプレート13、流路プレート14、圧力室プレート15に、それぞれノズル流路18、プレッシャ流路17、圧力室16となる孔をエッチングにより形成する。次いで、これらを積層した状態で接合し、流路ユニット11の大半を形成する(流路形成体形成工程)。なお、ノズルプレート12は合成樹脂材料により形成されているため、後述するアニール処理の際に加熱すると溶融するから、ここでは接合せず、アニール処理の後に接合する。
次に、図2Aに示すように、ステンレスにより形成された振動板2を流路ユニット11における圧力室プレート15の上面に位置合わせした状態で重ねて熱圧着により接合し、振動板2によって各圧力室16を閉鎖する(振動板接合工程)。
次に、図2Bに示すように、振動板2上に拡散防止層を兼ねる下部電極3を形成する(第1の電極層形成工程)。まず、粒径50nm以下の銀ナノ粒子(この実施形態では平均粒径50nm)を分散剤に分散したペーストを調整し、このペーストを振動板2上に塗布する。この後、形成した下部電極3を乾燥するのみで次の圧電層形成工程に進むことも可能であるが、圧電層形成工程における材料粒子Mの衝突の衝撃に充分に耐えられる程度の強度を確保しておくという観点からは、仮焼成を行っておくことが好ましい。ここで、下部電極3の形成に使用された粒径50nm以下の金属ナノ粒子は金属本来の融点よりも低い温度で溶融・融着する低融点材料であるため、約250〜400℃(特には、150〜400℃)という低い温度(焼結開始温度)で焼成を行うことができる。なお、後述のアニール工程においても下部電極3の焼結が進行するため、本工程では必要最低限度の時間・温度で仮焼成を行っておけばよい。このように、電極層形成における加熱プロセスを必要最小限度に抑えることにより、熱履歴の影響を可能な限り小さなものとすることができる。また、後述するように焼結開始温度は最大収縮温度よりも十分に低いために、焼結温度での焼成は下部電極3を構成する導電性材料を緻密にしつつ粒界を形成・拡大することはないために、振動板に含まれる原子が圧電層へ拡散することを防止することができる。
次に、図2Cに示すように、圧電層4をエアロゾルデポジション法(AD法)によって形成する(圧電層形成工程)。図3には、圧電層4を形成するための成膜装置30の概略図を示した。この成膜装置30は、材料粒子Mをキャリアガスに分散させてエアロゾルZを形成するエアロゾル発生器31、およびエアロゾルZを噴射ノズル37から噴出させて基板に付着させるための成膜チャンバ35を備えている。
エアロゾル発生器31には、内部に材料粒子Mを収容可能なエアロゾル室32と、このエアロゾル室32に取り付けられてエアロゾル室32を振動する加振装置33とを備えている。エアロゾル室32には、キャリアガスを導入するためのガスボンベBが導入管34を介して接続されている。導入管34の先端はエアロゾル室32内部において底面付近に位置し、材料粒子M中に埋没するようにされている。キャリアガスとしては、例えばヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性ガスや空気、酸素等を使用することができる。
成膜チャンバ35には、圧電層4を形成する基板を取り付けるためのステージ36と、このステージ36の下方に設けられた噴射ノズル37が備えられている。噴射ノズル37は、エアロゾル供給管38を介してエアロゾル室32に接続されており、エアロゾル室32内のエアロゾルZが、エアロゾル供給管38を通って噴射ノズル37に供給されるようになっている。また、この成膜チャンバ35には、粉体回収装置39を介して真空ポンプPが接続されており、その内部を減圧できるようにされている。
この成膜装置30を用いて圧電層4を形成する際には、まず、振動板2をステージ36にセットする。次いで、エアロゾル室32の内部に材料粒子Mを投入する。材料粒子Mとしては、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を使用することができる。
そして、ガスボンベBからキャリアガスを導入して、そのガス圧で材料粒子Mを舞い上がらせる。それととともに、加振装置33によってエアロゾル室32を振動することで、材料粒子Mとキャリアガスとを混合してエアロゾルZを発生させる。そして、成膜チャンバ35内を真空ポンプPにより減圧することにより、エアロゾル室32と成膜チャンバ35との間の差圧により、エアロゾル室32内のエアロゾルZを高速に加速しつつ噴射ノズル37から噴出させる。噴出したエアロゾルZに含まれる材料粒子Mは振動板2に衝突して堆積し、圧電層4を形成する。ここで、エアロゾルデポジション法は、材料粒子が衝突の衝撃によって完全固化する現象を利用したものであって、焼成を必要としない薄膜形成プロセスである。このようなプロセスを圧電層の形成に利用することにより、製造工程中での熱サイクルを必要最低限度とすることができる。
続いて、必要な圧電特性を得るために、形成した圧電層4のアニール処理を行う(アニール処理工程)。アニール温度は、600℃〜1000℃、好ましくは 600〜900℃にすることができる。この実施形態では 600℃の環境下に 30 分間さらすことでアニールした。下部電極3の焼結温度はこのアニール温度よりも低いために、アニール処理により下部電極3の焼成が進行する。これにより、下部電極3は、振動板2や圧電層4と高い密着力で密着する。このように、圧電層4の形成後に必要なアニール工程を下部電極3の本焼成工程と兼ねることができるから、製造工程中での熱サイクルを必要最低限度とすることができ、またプロセスを簡略化することができる。なお、圧電層をエアロゾルデポジション法で形成した場合には、圧電層の結晶性が他の方法、例えば、スパッタ法により形成した場合と異なるので、X線回折などにより結晶性を分析することにより圧電層がエアロゾルデポジション法で形成されていることは比較的容易に特定できる。図6は、通常の焼結体バルクの圧電層とエアロゾルデポジション法で成膜及びアニールされた圧電層とのX線回折結果を示す比較グラフである。このグラフに示されている通り、エアロゾルデポジション法で成膜/アニールされた圧電層では焼結体バルクとは明らかに異なる波形が45度、55度前後にはっきりと出ており、結晶構造が変化していることを示している。
ここで、下部電極3の焼結温度について説明する。本願における「焼結開始温度」とは、導電性材料を焼成する際の加熱により導電性材料が収縮し始める温度(収縮開始温度)をいう。図4に、種々の粒子径を有するAg粒子を含む導電性材料の温度に対する収縮率の変化(焼成時の導電性材料の挙動)を示す。収縮率は、応力測定器で測定した電極層にかかる応力測定値から計算により求めた。いずれの導電性材料も加熱に従って所定の温度で収縮が始まる。導電性材料の収縮は、導電性材料に含まれる金属粒子の溶融により起こる。収縮率が0から増大(負の方向)し始める温度が収縮開始温度である。収縮開始温度は、導電性材料に含まれるAg粒子の粒径により異なることが分る。粒子径が10nmの場合には、収縮開始温度は約150℃であり、昇温(加熱)に従って金属粒子の隙間が溶融により消失して収縮率は増大するが、約270℃で収縮率は最大となり(最大収縮温度)、その温度からさらに昇温すると収縮率は徐々に減少する。最大収縮温度を超えると、導電性材料の粒界(境界)がかなり大きく、例えば、1μmを超える程度にまで発達すると考えられる。このように粒界(境界)が発達すると、粒界を通じて基板を構成する原子が圧電層に拡散し易くなると考えられる。それゆえ、拡散を防止する観点から、アニール温度は最大収縮温度を超えないほうが望ましい。
粒子径が50nmの場合には、収縮開始温度は約200℃であり、加熱に従って収縮率は増大するが、約400℃で収縮率は最大となり(最大収縮温度)、その温度からさらに昇温すると収縮率は徐々に減少する。粒子径700nm及び1.2μmの場合は、収縮開始温度はそれぞれ約330℃及び420℃であり、最大収縮温度はそれぞれ700℃及び800℃である。粒子径による最大収縮温度の変化を示す図5からすれば、粒子径に依存して最大収縮温度が増大するために、アニール温度との関係では粒子径は小さい方が望ましいことが分る。
なお、図4及び5において平均粒径が50nm及び10nmの収縮率は以下のようにして市販の銀粒子(5nm)を含むペーストを使って求めた。種々の平均粒径に対して最大収縮温度の対数表示がほぼ線形になることが予測される。このような知見に基づいて、発明者は、平均粒径が5nmの銀粒子のペースト(ハリマ化成:NPS−J)を用いてその最大収縮温度210〜220℃(ハリマ化成カタログ値)の値を基準(215℃)として平均粒径が10nm及び50nmにおける収縮率を各温度で計算(累乗回帰 y=b*xn)により求めた。具体的には、図4に示すように、平均粒子径が5nm、700nm、1.2μmのデータから得られている最大収縮率を示す温度(最大収縮温度)をプロットし、近似曲線(=累乗回帰曲線)の最小二乗誤差(ここでは(1−R2)を示す。R2は決定係数ともいい、統計的な確かさを示す値として一般的に用いられている指標である。決定係数とはある変数Y(被説明変数)をある変数X(説明変数)で回帰分析したとき、Yの変動をXの変動で説明可能である部分の割合を表す統計量である。決定係数は0と1との間の数値をとり、1に近いほど説明可能である部分の割合が高いことを示す。)が最も小さくなるように近似曲線を決定した(b=148.93、n=0.2371、R2=0.9997)。この決定した近似曲線に基づき、10、50nmの最大収縮率を達成する温度(最大収縮温度)を予測し、10nmに対して270℃、50nmに対して400℃を算出した。
次に、図2Dに示すように、各圧電層4の上面において各圧力室16に対応する領域に上部電極5、および各上部電極5に接続した複数のリード部を形成する(第2の電極形成工程)。上部電極5及びリード部を形成するには、例えば、圧電層4上の全域に導体膜を形成した後、フォトリソグラフィ・エッチング法を利用して所定のパターンに形成してもよく、あるいは圧電層4の上面に直接スクリーン印刷により形成しても良い。
この後、上部電極5−下部電極3間に通常のインク噴射動作時よりも強い電界を印加して、両電極間の圧電層4を厚み方向に分極する(分極処理)。最後にノズルプレート12をマニホールドプレート13に接合する。以上によりアクチュエータプレート1が完成する。
以上のように本実施形態によれば、振動板2上に下部電極3を形成するための導電性材料として、低温で焼結可能な金属ナノ粒子を使用する。これとともに、圧電層4の形成に、焼成工程を必要としないエアロゾルデポジション法(材料粒子を含むエアロゾルを噴き付けてこの粒子を付着させることにより薄膜を形成する方法)を用いる。このようなプロセスによれば、下部電極形成、および圧電層形成のいずれの工程でも、厳しい条件(昇温温度)での焼成を行う必要がない。また、圧電層4の形成後に必要なアニール工程において、下部電極3の焼成を同時に進行させることができる。したがって、製造工程中での熱サイクルを必要最低限度とすることができ、熱履歴による層間剥離や振動板2材料の圧電層4への拡散を抑制できる。これにより、圧電特性の低下を抑制することができる。また、プロセスを簡略化することができる。
本発明の技術的範囲は、上記した実施形態によって限定されるものではなく、例えば、次に記載するようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。その他、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。(1)上記実施形態では、振動板2上に下部電極3を形成したが、振動板と下部電極との間に、振動板に含まれる元素の圧電層への拡散を防止する拡散防止層など、種々の機能を有する中間層を設けても構わない。(2)上記実施形態では、下部電極3を形成する低温焼結材料として、銀ナノ粒子を使用したが、例えば金のナノ粒子を使用しても良い。(3)上記実施形態では、ノズルプレート12を合成樹脂材料にて形成したが、マニホールドプレート13と同様にステンレス(SUS430)等の金属材料により形成しても良い。この場合、ノズルプレート12は流路形成体形成工程おいて、マニホールドプレート13、流路プレート14、圧力室プレート15とともに接合しても良い。
本実施形態のインクジェットヘッドの側断面図 アクチュエータプレートの製造工程を示す側断面図 (A)振動板を圧力室プレートに接合した様子を示す図 (B)振動板上に下部電極を形成した様子を示す図(C)圧電層を形成した様子を示す図 (D)上部電極を形成した様子を示す図 成膜装置の概略図 異なる平均粒径を有する銀粒子から形成された拡散防止層の収縮率の温度に対する変化を示すグラフである。 図4から得られた銀粒子の平均粒子径に対する最大収縮温度の変化を示するグラフである。 焼結体バルクの層とエアロゾルデポジション法で形成及びアニールされた圧電層とのX線回折結果を示す比較グラフである。
符号の説明
1...アクチュエータプレート(圧電アクチュエータ)
2...振動板
3...下部電極(一の電極層)
4...圧電層
5...上部電極(他の電極層)
10...インクジェットヘッド
11...流路ユニット(インク流路形成体)
19...インク吐出ノズル
M...材料粒子(圧電材料の粒子)
Z...エアロゾル

Claims (12)

  1. 基板上に、所定の温度で焼結を開始する導電性材料により一の電極層を形成する第1の電極層形成工程と、
    前記一の電極層上に圧電材料の粒子を含むエアロゾルを噴き付けてこの圧電材料の粒子を付着させることにより圧電層を形成する圧電層形成工程と、
    前記圧電層をアニール処理するアニール処理工程と、
    前記圧電層上に前記一の電極層と対をなす他の電極層を形成する第2の電極層形成工程と、を含み、かつ、
    前記導電性材料の焼結開始温度が、前記アニール処理工程におけるアニール温度以下であることを特徴とする圧電アクチュエータの製造方法。
  2. さらに、前記一の電極層を420℃以下の温度で仮焼成する仮焼成工程を、前記アニール処理工程の前に含むことを特徴とする請求項1に記載の圧電アクチュエータの製造方法。
  3. 前記導電性材料が、粒径50nm以下の金属ナノ粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の圧電アクチュエータの製造方法。
  4. 金属ナノ粒子の金属が、銀であることを特徴とする請求項3に記載の圧電アクチュエータの製造方法。
  5. 前記アニール温度が600℃〜1000℃であることを特徴とする請求項1に記載の圧電アクチュエータの製造方法。
  6. 前記焼結温度が、約420℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の圧電アクチュエータの製造方法。
  7. インクを吐出するためのインク吐出ノズルに連通するとともに一面側に開口する開口部を備えた圧力室が複数設けられたインク流路形成体を形成することと、
    前記インク流路形成体の一面側に前記開口部を閉じるように基板を設けることとと、
    前記基板上に、請求項1に記載の方法に従って圧電アクチュエータを形成することとを備えることを特徴とするインクジェットヘッドを製造する方法。
  8. 前記基板が、振動板であることを特徴とする請求項7に記載のインクジェットヘッドを製造する方法。
  9. 前記基板上に形成されて粒径50nm以下の金属ナノ粒子を含む一の電極層と、
    前記一の電極層上に圧電材料の粒子を含むエアロゾルを噴き付けて前記粒子を付着させることにより設けられた圧電層と、
    前記圧電層上に設けられて前記一対の電極と対となる他の電極層と、
    を備えることを特徴とする圧電アクチュエータ。
  10. 金属ナノ粒子の金属が、銀であることを特徴とする請求項9に記載の圧電アクチュエータ。
  11. 前記一の電極層の厚みが、100〜300nmであることを特徴とする請求項9に記載の圧電アクチュエータ。
  12. インクを吐出するためのインク吐出ノズルに連通するとともに一面側に開口する開口部を備えた圧力室が複数設けられたインク流路形成体と、
    前記インク流路形成体の一面側に前記開口部を閉じるように上記基板が設けられたことを特徴とする請求項8に記載の圧電アクチュエータとを備えるインクジェットヘッド。

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