JP2008008882A - タイヤのコーナリング特性の評価方法および装置 - Google Patents

タイヤのコーナリング特性の評価方法および装置 Download PDF

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Abstract

【課題】試作されたタイヤあるいは未試作の検討タイヤについて、車両を実際に操舵した状態のコーナリング特性を精度良く評価、予測することができる、タイヤのコーナリング特性の評価方法および装置を提供する。
【解決手段】接地面に接地しかつ所定の転動速度で転動するタイヤの、時系列のスリップ角に対する時系列の横力データF(t)を取得する。次に、複数のタイヤ力学要素パラメータを用いて構成され、スリップ角に対してタイヤに発生する過渡応答の横力データに対応する出力データF(t)を算出する過渡応答算出モデルと、取得した横力データF(t)とを用いて、タイヤのコーナリング特性を表すコーナリングスティフネスの値K、時定数の値t及びタイヤの等価横剛性KLの値を導出する。
Figure 2008008882

【選択図】なし

Description

本発明は、タイヤのコーナリング特性の評価方法および装置に関し、特に、転動するタイヤにスリップ角を与えた際にタイヤに発生するタイヤ横力の過渡的な応答特性を、定量的に評価する方法および装置に関する。
最近のエンジンの高出力化に伴って、乗用車タイヤは偏平化等による高性能化が進み、車の限界性能や応答性およびトラクション性能の改善が図られている。しかし、高速での微小操舵時の操縦安定性は、必ずしも改善されているとはいえず、高速道路の発達と相まって、高速での微小操舵時における操縦安定性が優れたタイヤの開発は、非常に重要度の高い項目となっている。タイヤが車両に装着された際のタイヤの操縦安定性能には、自動車の早い操舵時の応答特性に関係する特性である、タイヤのコーナリング特性が大きく寄与している。タイヤのコーナリング特性は、タイヤを速く操舵した場合の、荷重・スリップ角・キャンバ角・スリップ率などのタイヤへの入力に対する、タイヤ横力やコーナリングフォース、セルフアライニングトルクなどの応答で表される。昨今、高速での微小操舵時においても良好な操縦安定性を有する高性能なタイヤの開発の要求にともない、タイヤ単体でのコーナリング特性を、定量的に精度良く評価することができる方法や装置が求められている。
従来、操縦安定性を評価するための試験方法として、試験タイヤを車に装着して評価者が車両を操舵し、評価者が感じた操縦安定性についての情報を得る実車フィーリング試験がある。この実車フィーリング試験では、実際に舵を切ったときの操縦安定性についての情報が得られるといった利点はあるが、評価者の感覚に基いて行う評価は、定量的なものとは言えなかった。
一方、室内コーナリング試験機を用いてタイヤ動特性を評価する方法もある(例えば、下記非特許文献1)。従来、このような、室内コーナリング試験機を用いてタイヤ動特性を評価するコーナリング動特性の評価方法は、例えば、一定の転動速度で、接地面上でタイヤを転動させて、異なる複数の周波数でスリップ角入力をタイヤに与える。そして、距離周波数に対する、タイヤ横力やコーナリングフォース、セルフアライニングトルクなどの応答特性(距離周波数特性)を求めていた。距離周波数は、タイヤの転動速度に対するスリップ角入力の角速度ωの割合で定められるものである。
飯田、「タイヤ動特性が車両の運動性能へ及ぼす影響」、自動車技術、1984年、No3、vol38、P320
このような、与えられたスリップ角に対する、タイヤ横力などの距離周波数応答特性(距離周波数特性とする)は、上記実車フィーリング試験との対応が良好でないことが知られている。これは、距離周波数特性が、タイヤの転動速度に応じて変化してしまうからである。距離周波数特性がタイヤの転動速度に応じて変化するのは、例えば、タイヤの転動速度に応じて転動中のタイヤの温度が異なることで、タイヤ自体のコーナリング特性が多少なりとも変化してしまうからであると考えられる。また、室内コーナリング試験機では、タイヤ横力などの出力情報を計測する際、時系列でサイン波状に連続して変化するスリップ角を、繰り返しタイヤに与えている。スリップ角を与えられたタイヤは、必要以上に高温になって劣化も早い。また、連続的にスリップ角が入力される状態は、実際の車両走行時においてタイヤに発生する時系列のスリップ角とはかけ離れたものである。このような、時系列でサイン波状に連続して変化するスリップ角に対するタイヤ横力などの応答が、実車フィーリング試験の結果に対応しないのは、当然ともいえる。すなわち、サイン波状に連続して変化するスリップ角に対する応答として得られるタイヤ横力は、実車フィーリング試験の結果と対応しない。さらに、実車フィーリング試験の結果と対応するように、タイヤの応答として得られる横力データをどのようにデータ処理すればよいのかも不明である。
また、今日、試作されていない種々の検討タイヤについて、それぞれのタイヤを再現した有限要素モデルを用いて有限要素法を用いてシミュレーションを行うことにより、各検討タイヤの特性を評価することが可能となっている。しかし、上述したように、入力されたスリップ角に対する応答として得られるタイヤの横力データをどのようにデータ処理すればよいか不明であるため、検討タイヤのコーナリング特性について、実車フィーリング試験の結果と対応するように、精度良く評価することができないといった問題もある。
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、試作されたタイヤあるいは未試作の検討タイヤについて、車両を実際に操舵した状態のコーナリング特性を精度良く評価、予測することができる、タイヤのコーナリング特性の評価方法および装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、スリップ角の付与条件下のタイヤのコーナリング特性の評価方法であって、スリップ角の付与条件下、接地面に接地しかつ所定の転動速度で転動することでタイヤ横力が発生するタイヤの、時系列のスリップ角に対する時系列の横力データを取得するステップと、 複数のタイヤ力学要素パラメータを用いて構成され、スリップ角に対して前記タイヤに発生する過渡応答の横力データに対応する出力データを算出する過渡応答算出モデルと、取得した前記横力データとを用いて、タイヤのコーナリング特性を表すタイヤ力学要素パラメータの値を導出するステップと、を有することを特徴とするタイヤのコーナリング特性の評価方法を提供する。
なお、前記横力データを取得するステップでは、評価しようとするタイヤを有限個の要素に分割したタイヤ有限要素モデルで再現し、有限要素法を用いて、接地面に接地させかつ所定の転動速度で転動させたタイヤ有限要素モデルに時系列のスリップ角を入力として与えたときのタイヤ有限要素モデルに作用する横力のシミュレーションデータを前記横力データとして取得する。
その際、前記タイヤ有限要素モデルは、リムを再現したリムモデルと結合し、前記タイヤ有限要素モデルは平坦な仮想路面を前記接地面として接地させ、前記仮想路面に対して前記所定の転動速度で相対的に移動させることで、接地面に接地しかつ所定の転動速度で転動するタイヤを再現することが好ましい。
又、タイヤ中のコード補強材に対応する前記タイヤ有限要素モデルの補強材部分は、引張り方向の剛性と圧縮方向の剛性とが互いに異なる材料特性を有することが好ましい。
さらに、前記タイヤ有限要素モデルは、タイヤの内圧充填を再現する充填処理を施したものであり、前記タイヤ有限要素モデルの少なくとも一部分に初期応力あるいは初期歪みを与えた後、前記充填処理を施すことが好ましい。
あるいは、タイヤのコーナリング特性の評価方法の前記横力データを取得するステップでは、接地面にタイヤを接地させて前記タイヤを所定の転動速度で転動させた状態で、前記タイヤに時系列のスリップ角を与えて、このスリップ角に対応した時系列のタイヤ横力の計測データを、前記横力データとして取得する。
又、前記過渡応答算出モデルは、前記スリップ角に対する前記タイヤ横力の過渡応答を1次遅れ系として表したモデルであり、入力する前記スリップ角の大きさの範囲が、入力するスリップ角の大きさと、このスリップ角に対するタイヤ横力の応答の大きさとが略線形関係となる、線形領域内であることが好ましい。
前記タイヤ力学要素パラメータの値を導出するステップでは、入力した前記時系列のスリップ角と、このスリップ角に対応した時系列の横力データとを用いて、前記過渡応答算出モデルの出力データが前記時系列の横力データに許容範囲内で一致するように、前記タイヤ力学要素パラメータの値を導出することが好ましい。
前記スリップ角の大きさをαとすると、−2.0(deg)≦α≦2.0(deg)を満たすことが好ましい。
その際、前記過渡応答算出モデルは、出力データをF(t)としたとき、下記式(1)で表される式を有し、前記タイヤ力学要素パラメータの値を導出するステップでは、前記入力した時系列のスリップ角α(t)を用いて、下記式(1)中のF(t)がこのスリップ角α(t)に対応した時系列の横力データF(t)に許容範囲内で一致するように、下記式(1)における力学要素パラメータである、コーナリングスティフネスKの値および時定数tの値を求めることが好ましい。
Figure 2008008882
前記過渡応答算出モデルで算出される出力データは、前記スリップ角の入力に対してタイヤ全体の等価横剛性KLを介してホイール側に伝わるタイヤ横力のデータであり、さらに、前記タイヤ力学要素パラメータの値を導出するステップでは、前記横力データを取得するときの前記所定の転動速度をVとしたとき、上記式(1)を用いて求めた、コーナリングスティフネスの値K、時定数の値t、及び転動速度Vを、下記式(2)に代入することで、タイヤ横力の伝達特性を表す前記等価横剛性KLの値を導出することが好ましい。
Figure 2008008882
さらに、本発明は、スリップ角の付与条件下のタイヤのコーナリング特性を評価する装置であって、接地面に接地しかつ所定の転動速度で転動するタイヤの、時系列のスリップ角に対する時系列の横力データを取得するデータ取得手段と、複数のタイヤ力学要素パラメータを用いて構成される、スリップ角に対して前記タイヤに発生する過渡応答の横力データに対応する出力データを算出する過渡応答算出モデルと、前記横力データとを用いて、タイヤのコーナリング特性を表すタイヤ力学要素パラメータの値を導出する導出手段と、を有することを特徴とするタイヤのコーナリング特性の評価装置を提供する。
本発明のタイヤのコーナリング特性評価方法および装置では、実際のタイヤに時系列のスリップ角を与えたときの時系列の計測データを、タイヤの横力データとして取得することができるほか、タイヤの有限要素モデルに作用する横力のシミュレーションデータを横力データとして取得することもできる。
タイヤの横力の計測データを取得する場合、タイヤに入力するスリップ角の変化率を、実際の車両の操舵の際のスリップ角の変化率とし、実際に車両を操舵した状態に近い、コーナリング特性の評価結果を得ることができる。さらに、タイヤに入力するスリップ角の範囲を比較的狭い範囲として、タイヤのコーナリング特性を定量的に評価することができる。このため、試験を実施することで生じるタイヤの劣化を抑制することができ、同一のタイヤについて、複数の速度条件それぞれにおけるコーナリング動特性の評価値を得ることができる。
タイヤの有限要素モデルに作用する横力のシミュレーションデータを横力データとして取得する場合、実際のタイヤを試作することなく、有限要素モデルを用いてシミュレーションを行うことにより、実際に車両を操舵したときの評価結果に対応する評価結果を得ることができる。
また、入力するスリップ角の大きさの範囲を、入力するスリップ角の大きさと、このスリップ角入力に対するタイヤ横力の応答の大きさとが略線形関係となる線形領域内とすることで、入力されたスリップ角に対するコーナリング特性の応答を一次遅れ系で表した、比較的簡略化された過渡応答算出モデルを用いることを可能としている。このような比較的簡略化された過渡応答算出モデルを用いることで、タイヤのコーナリング特性を表すタイヤ力学要素パラメータの値を、比較的簡単な処理のみによって導出することができる。本発明で求められた、このようなタイヤのコーナリング特性の情報は、例えば、高速走行時における操縦安定性を向上させるタイヤの開発などに際し、好適に用いることができる。
以下、タイヤのコーナリング特性の評価方法および装置について、添付の図面に示される好適実施形態を基に詳細に説明する。
図1は、本発明のタイヤのコーナリング特性の評価装置の一例である、コーナリング特性計測装置10(以降、装置10という)について説明する概略構成図である。図1は、装置10を用いて、測定対象タイヤであるタイヤ12について、それぞれ異なる複数の転動速度でタイヤ12を転動させ、各転動速度それぞれにおける、タイヤのコーナリング特性を表すタイヤ力学要素パラメータの値を導出し、さらに、各パラメータの値の転動速度依存性を表すプロット図を表示出力する場合について示している。装置10は、コーナリング試験機14と測定・評価ユニット16とを有して構成される。なお、測定・評価ユニット16には、ディスプレイ18が接続されている。
コーナリング試験機14は、タイヤ軸22に回転可能に軸支したタイヤ12を、ベルト20の表面である代用路面24に接地させて、ベルト20を回転駆動させることで、タイヤ12にベルト20の代用路面24上を走行(転動)させる、公知のフラットベルト型室内試験機である。本実施形態のコーナリング試験機14では、代用路面24上を走行中のタイヤ12に対して、時系列でステップ状に変化するスリップ角を順次与えて、このスリップ角に対応してタイヤ12に発生するタイヤ横力(横力)を時系列に計測し、横力データを取得する。急激な舵角変化や外乱などで、タイヤのスリップ角(SA)が急激に変わった場合、スリップ角に対する横力(SF)やセルフアライニングトルク(SAT)は、時間遅れをもって発生する。本明細書では、この時のタイヤ特性をコーナリング特性とよんでいる。
本実施形態では、スリップ角の最大値を2.0deg以下とする、比較的小さいスリップ角範囲でスリップ角を入力する。すなわち、測定対象タイヤ12の、スリップ角が比較的小さいステアリング中立付近におけるスリップ角に対応してタイヤ12に発生するタイヤ横力を計測する。このようなステアリング中立付近では、入力するスリップ角と、このスリップ角に対するタイヤ横力の応答が略線形関係となっている。本実施形態では、この略線形関係を有する線形領域内でスリップ角が入力される。
ベルト20は、ローラ対28に掛けまわされている。このローラ対28は、図示しないモータを有して構成された駆動ユニット26と接続されており、この駆動ユニット26のモータによってローラ対28が回転して、ベルト20の代用路面24が移動する構成となっている。駆動ユニット26は、測定・評価ユニット16の、後述する測定ユニット40と接続されている。
タイヤ軸22は、タイヤ軸支持部材32に設けられている。タイヤ軸支持部材32は、スリップ角調整手段であるスリップ角調整アクチュエータ(以降、アクチュエータという)29によって、図1中のZ軸周りに回転駆動される構成となっている。図1中のZ軸は、タイヤ12の回転中心軸(すなわちタイヤ軸22の中心)に垂直な、タイヤ12の赤道面上に位置する。タイヤ軸支持部材32が図1中Z軸周りに回転駆動されることで、転動中のタイヤ12のスリップ角(タイヤ12の転動方向すなわち代用路面24の移動方向と、タイヤ12の赤道面とのなす角)が変動される。アクチュエータ29は、測定・評価ユニット16の、後述する測定ユニット40と接続されている。
タイヤ軸支持部材32には、また、タイヤ軸22にかかる力を計測可能なセンサ34が設けられている。センサ34は、タイヤ軸22にかかるタイヤ赤道面に垂直な方向の力(図1中Y軸方向の力)、すなわちタイヤ横力を計測する。なお、センサ34は、圧電素子を用いたものや歪みゲージを用いたもの等、タイヤ軸22にかかる、少なくともタイヤ横力を計測できるデバイスであればよく、特に限定されない。なお、タイヤ軸支持部材32は、図示しない荷重負荷装置と接続されており、タイヤ12の転動中、この荷重負荷装置から所定の荷重が印加されることで、タイヤ軸22に支持されたタイヤ12が、ドラム20の代用路面24に、所定の接地荷重で接地する。センサ34は、測定・評価ユニット16の、後述する測定ユニット40と接続されている。
測定・評価ユニット16は、測定ユニット40と評価ユニット50とを有して構成されている。図2は、測定・評価ユニット16について説明する概略構成図である。測定・評価ユニット16は、測定ユニット40と、評価ユニット50と、CPU17と、メモリ19とを有する。測定・評価ユニット16は、メモリ19に記憶されたプログラムをCPU17が実行することで、測定ユニット40および評価ユニット50の各部が機能するコンピュータである。
なお、メモリ19には、タイヤの過渡応答算出モデルの出力算出プログラム(以降、過渡応答算出モデルのプログラムという)が予め記憶されている。この過渡応答算出モデルは、複数のタイヤ力学要素パラメータによって構成されたタイヤ力学モデルを、スリップ角の条件を最大値を2.0deg以下とする線形領域内とすることで簡略化し、さらに、タイヤの横力の過渡応答を簡略化して表したモデルである。
ここで、タイヤ力学モデルについて説明する。本発明で用いるタイヤ力学モデルは、個々のタイヤ部材の変形(遅延変形を含む)と関連づけて表されたモデルである。
図3は、本発明で用いるタイヤ力学モデルおよびこのモデルを用いたデータ処理について説明する概略図である。タイヤ力学モデルは、図3に示す式(3)〜式(10)の各式によって表される。なお、図2に示す各力学要素パラメータは、以下の意味をもつものである。
(a)タイヤの横方向のせん断剛性によって定められる横剛性Ky0
(b)路面とタイヤ間の滑り摩擦係数μ
(c)横剛性Ky0を路面とタイヤ間の凝着摩擦係数μで除算した横剛性係数(Ky0/μ)、
(d)ベルト部材の横方向曲げ係数ε、
(e)タイヤのタイヤ中心軸周りの捩じり剛性の逆数であるねじりコンプライアンス(1/Gmz)、
(f)横力発生中の接地面の接地圧力分布を規定する係数n、
(g)接地圧力分布の偏向の程度を表す係数C
(h)接地面におけるタイヤ中心位置の前後方向への移動の程度を示す移動係数Cxc
(i)横力発生時の実効接地長l
(j)接地面内の前後剛性A(前後力トルク成分を定めるパラメータ)、等である。
また、過渡応答特性を特徴付ける過渡応答パラメータは、以下のものが例示される。
(k)トレッド部のせん断変形による変形応答を規定する1次遅れ応答の遅延時定数ts
(l)サイド部の捩じり変形による変形応答を規定する1次遅れ応答の遅延時定数tr
(m)ベルト部の曲げ変形による変形応答を規定する1次遅れ応答の遅延時定数td、等である。
図3に示す式(3)〜(10)は、タイヤに任意のスリップ角α(t)を与えた際の、横力データF(t)とセルフアライニングトルクM(t)を表している。式(3)は、ホイールに装着されたタイヤを考えたとき、タイヤのホイール側から入力されたスリップ角α(t)は、「サイドウォールのねじり変形」によって伝達が阻害され、タイヤのトレッド部には、実効スリップ角α(t)のみが入力されることを表している。式(6)は、トレッドゴムは粘弾性体であるため、入力角α(t)に対する変形応答には遅れがともなうことに着目して、時定数tの1次遅れ系を仮定して、時刻(t)において実現されるトレッドの実際の変形分のスリップ角を表した式である。なお、各式の詳細な説明や図3に表されるデータ処理については、本願出願人による出願である特許願第2006−98250号明細書に詳細に記載されている。
タイヤ力学モデルを表す式(3)〜(10)は、個々のタイヤ部材の変形(および遅延変形)と関連づけて表されている。式(3)〜(10)を用いれば、タイヤの各部材の特性をそれぞれ個別に変更した場合それぞれについて、タイヤのコーナリング特性を評価することもできる。上記タイヤ力学モデルは、タイヤの設計にも適用(利用)することができる。このタイヤ力学モデルにおいて、最大値を2.0deg以下とする線形領域内のスリップ角では、簡略的に下記式(11)〜(13)で表される。この式で表されるモデルが上述の過渡応答算出モデルである。
Figure 2008008882
上記式(11)〜(13)において、Fys(α)とMzs(α)は、無限小の操舵角速度で試験した際に得られるような、定常的な、横力FyとセルフアライニングトルクMzのスリップ角依存曲線であり、既知のものである。tは、タイヤ全体の遅延応答の時定数を表し、上記タイヤ力学モデルにおけるt、t、tが反映された値である。このような過渡応答算出モデルでは、時定数tが、定常的な応答と、過渡応答との差異を生み出す重要な要素となっている。
上記時定数tを算出する方法は、下記の2つの方法がある。
1つは、本願出願人による出願である特許願第2006−98250号明細書に詳細に記載されている。具体的には、横力を計測する場合、実際のタイヤに時系列のスリップ角α(t)を与え、このときタイヤに発生する横力データF(t)を計測した後、下記(a),(b)の処理を行う。スリップ角は、スリップ角ゼロから増大し、その後減少するように設定される。
(a)入力したスリップ角α(t)と、この時得られる計測データである横力データF(t)とからなる計測データ群{α(t)、Fy(t)}に対し、適当な値を時定数tに用いて、式(11)による変換(α(t)をα’(t)に変換)を行い、変換データ群{α’(t)、Fy(t)}を得る。
(b)得られた変換データ群{α’(t)、Fy(t)}を、滑らかな曲線関数(スプライン関数等を使用)に最小二乗回帰し、このとき得られる回帰曲線を求め、この回帰曲線と変換データ群{α’(t)、Fy(t)}との間の二乗残差和を算出する。このような(a)と(b)の処理を繰り返し、例えばNewton−Raphson法の非線形最小回帰アルゴリズムを用いて、上記二乗残差和が最小になるようなtの値を決定する。このようにして決定された、上記二乗残差和が最小になるようなtの値を用いて表された回帰曲線(上記スプライン関数等を使用して表された滑らかな曲線関数)が、定常的な横力のスリップ角依存曲線Fys(α)に相当する。
もう1つの方法は、タイヤに入力するスリップ角の範囲を、低スリップ角である線形領域(スリップ角αの絶対値<2.0°)に限定することによって、タイヤ力学モデルを更に簡略化した線形タイヤモデルを用いる。すなわち、Fys(α)をK・tan(α)と表し、このK・tan(α)の出力データが横力データFy(t)に許容範囲内で一致する時定数tを算出する。
このような線形領域においては、横力に対応する出力データF(t)は、下記式(1)のように表される。
Figure 2008008882
ここで、Kは、スリップ角が0°のときの横力の立ち上がりの勾配を表す、タイヤ全体のコーナリングスティフネスである。線形領域においては、このような式(1)の関係が近似的に成り立っているといえる。さらに、接地面とタイヤの間で発生した横力が、単純に等価横剛性KLを介してホイール側に伝わるものとすると、上記の式中の時定数tは、タイヤの転動速度をVとして、下記式(2)のように近似的に表される。ここで、KLは、タイヤの複数の部材の剛性が複合的に関与して定められた等価横剛性である。KLおよびtは、タイヤ全体の伝達特性を表す重要な指標であり、タイヤのコーナリング特性の指標である。本実施形態では、このような一次遅れ系で表された線形タイヤモデルによる出力データのプログラム、すなわち式(1)および(2)に沿って出力データF(t)を算出するプログラムが、メモリ19に予め記憶されている。
Figure 2008008882
測定ユニット40は、条件設定部42、動作制御部44、およびデータ取得部46を有して構成されている。評価手段50は、第1パラメータ導出部52、第2パラメータ導出部54、依存性評価部56を有して構成されている。
測定ユニット40は、コーナリング試験機14の各部の動作を制御することで、所定の転動速度および所定の接地荷重でタイヤ12を転動させつつ、転動するタイヤ12に時系列で変化するスリップ角を入力し、タイヤの横力データを取得する。
測定ユニット40の条件設定部42は、代用路面24上を走行中のタイヤ12に順次与える、時系列でステップ状に変化するスリップ角の条件や、タイヤ12の転動速度の条件、タイヤに与える接地荷重の条件などを設定する部位である。
条件設定部42は、タイヤ横力の出力信号取得時における、タイヤ12の転動速度や接地荷重の条件、およびタイヤ12に入力する、時系列に変動するスリップ角を設定する部位である。本実施形態では、条件設定部42では、予め複数の転動速度の条件を設定しておく。なお、後述する評価部56において、コーナリング特性を表すタイヤの力学要素パラメータの値について、荷重依存性を表すプロット図を作成したい場合など、条件設定部42は、上述の、図示しない荷重負荷装置によって印加する、タイヤにかかる荷重の大きさを、複数設定しておけばよい。
また、条件設定部42では、例えば図4(a)または図4(b)に示すような、ステップ状に変化する時系列のスリップ角を設定する。このようにステップ状に変化するスリップ角を設定することで、タイヤ12に入力するスリップ角の時系列データに、比較的高い周波数成分を含ませることができる。本発明において、入力されるスリップ角は、変化率が0.1〜0.5(sec/deg)であることが好ましい(図4(a)および(b)の例では、0.25(sec/deg))。スリップ角をこのような範囲に設定するのは、高速走行時における実際の車両の操舵にともなうスリップ角の変化率が、おおよそ0.1〜0.5(sec/deg)の範囲だからである。このように、タイヤに入力するスリップ角の変化率を、実際の車両の操舵にともなうスリップ角の変化率とすることで、実際に車両を操舵した状態により近い、コーナリング特性の計測結果を得ることができる。また、本発明におけるスリップ角の絶対値の最大値は、2.0deg以下とすることが好ましい。スリップ角の最大値をこのような範囲に設定するのは、タイヤの横力データを、上記式(1)で表す線形タイヤモデルで精度良く表せる範囲が、タイヤに入力するスリップ角の大きさが比較的小さい線形領域の範囲内であるからである。また、タイヤに入力するスリップ角の大きさを比較的小さい範囲とすることで、測定対象タイヤの、測定による消耗を抑制するといった効果も奏する。
本発明では、入力されるスリップ角の変化率やスリップ角の最大値の上限値を、実際の車両の走行状態に則した範囲に設定する。これにより、室内コーナリング試験において、実際の車両の走行時におけるスリップ角の変動を再現し、実際の車両の走行時における車両のコーナリング動特性を、高精度に再現することを可能としている。なお、入力する時系列のスリップ角としては、同様のステップ状の変化を繰り返すことが好ましい。同様のステップ状の変化を繰り返し、同様の動特性情報を繰り返し得ることで、信頼性の高い、高精度な情報を得ることができる。
動作制御部44は、条件設定部42で設定された、タイヤ12の転動速度および時系列のスリップ角の条件に基づき、コーナリング試験機14の各部の動作を制御する部位である。動作制御部44は、駆動ユニット26およびアクチュエータ29と接続されている。動作制御部44は、条件設定部42で設定された転動速度でタイヤ12が転動するよう、駆動ユニット26の動作(モータの回転速度など)を制御する。また、条件設定部42で設定された時系列のスリップ角の条件で、タイヤ12のスリップ角が変化するよう、アクチュエータ29の動作も制御する。具体的には、条件設定部42で設定された1つの転動速度でタイヤ12を転動させた状態で、設定したスリップ角をタイヤ12に順次入力する。なお、入力するスリップ角の時系列のデータは、評価手段50のデータ処理部52にも順次送られる。
データ取得部46は、転動するタイヤ12にスリップ角を与えた際の、スリップ角に対応したタイヤ横力の時系列の出力信号(横力データ)を得る部位である。データ取得部46は、センサ34と接続されており、センサ34から出力される、タイヤに発生するタイヤ横力の出力信号を時系列に取得する。取得したタイヤ横力の時系列の横力データは、評価ユニット50の第1パラメータ導出部52に送られる。
評価ユニット50の第1パラメータ導出部52は、動作制御部44から送られるスリップ角の時系列データと、データ取得部46が取得した時系列の横力データと、をそれぞれ取得する。さらに、メモリ19から過渡応答算出プログラム(線形タイヤモデルのプログラム)を読み出し、この線形タイヤモデルと受け取ったデータとを用いて、タイヤのコーナリング特性を表すタイヤ力学要素パラメータの一部を導出する。より具体的には、スリップ角の時系列データα(t)を用いて、線形タイヤモデルのプログラムによって算出される出力データF(t)が、計測によって得られた横力データF(t)に近似するように、式(1)におけるコーナリングスティフネスKの値および遅延時定数tの値を導出する。第1パラメータ導出部52で導出されたタイヤ力学要素パラメータの値は、第2パラメータ導出部54に送られるとともに、メモリ19に記憶される。この第1パラメータ導出部52では、コーナリングスティフネスKの値および時定数tの値を、例えば最小二乗回帰によって導出すればよく、より具体的には、例えばNewton−Raphson法の非線形最小回帰アルゴリズムを用いることができる。
評価ユニット50の第2パラメータ導出部54は、第1パラメータ導出部52より受け取ったタイヤ力学要素パラメータの値と、タイヤの転動速度の情報と、上記線形タイヤモデルとを用いて、タイヤのコーナリング特性を表すタイヤ力学要素パラメータの値の一部を導出する。具体的には、コーナリングスティフネスKの値、遅延時定数tの値、タイヤの転動速度Vの値を、線形タイヤモデルで規定される上記式(2)に代入することでタイヤの等価横剛性KLの値を求め、メモリ19に記憶する。
装置10では、1つの転動速度においてタイヤ力学要素パラメータの値を導出し、メモリ19に記憶すると、条件設定部42で設定した他の転動速度でタイヤを転動させて、この変更した転動速度における時系列のタイヤの横力データFy(t)及びスリップ角α(t)を取得する。この変更した転動速度について、上述のような、タイヤのコーナリング特性を表すタイヤ力学要素パラメータの値をそれぞれ導出し、メモリ19に記憶する。装置10では、CPU17の制御の下、このような手順を繰り返すことで、条件設定部42で設定した、複数の転動速度及び荷重の条件における、タイヤのコーナリング特性を表すタイヤ力学要素パラメータの値を導出し、メモリ19に記憶する。
評価ユニット50は、このようにして記憶された、複数のタイヤ力学要素パラメータの値を読み出し、例えば、転動速度の大きさと各転動速度における各力学要素パラメータの値との対応を表すプロット図を作成して、ディスプレイ18に出力する。このプロット図は、各力学要素パラメータの値の転動速度依存性を表す。条件設定部42において、タイヤに印加する荷重の条件を複数設定した場合には、荷重の大きさと各荷重における各力学要素パラメータの値との対応を表すプロット図を作成して、ディスプレイ18に出力する。このプロット図は、各力学要素パラメータの荷重依存性を表す。タイヤは高速になるほど、遠心力によってトレッド部がラジアル方向にせり上がることでタイヤ形状が変化し、コーナリング特性に影響を与える。各力学要素パラメータの値の転動速度依存性を表すプロット図を表示することで、評価部56は、タイヤのコーナリング特性について、上記タイヤ形状の変化の影響を含んだ詳しい情報を提供する。また、実車評価にて、タイヤに掛かる荷重は一定ではなく、ハンドル操作・ブレーキなどにより、それぞれに掛かる荷重は変化する。このため、荷重依存性を評価することは重要である。
図5は、装置10を用いて実施する、タイヤのコーナリング特性の計測方法の一例のフローチャートである。図5に示すフローチャートでは、異なる複数の転動速度でタイヤ12を転動させ、各転動速度それぞれにおける、タイヤのコーナリング特性を表すタイヤ力学要素パラメータの値(t,K,KL)を導出した上、各パラメータの転動速度依存性を表すプロット図を表示する場合について示している。まず条件設定部42が、タイヤの横力データ取得時の、タイヤ12の転動速度、タイヤ12に負荷する荷重、およびタイヤ12に入力する時系列のスリップ角の条件を設定する(ステップS102)。上述したように、条件設定部42では、タイヤに与えるスリップ角を定めるために、時系列でステップ状に変化するスリップ角を設定する。本発明では、上述のように、入力するスリップ角の変化率の範囲として、0.1〜0.5(sec/deg)、入力するスリップ角の最大値を2.0deg以下として、高速走行時における実際の車両の操舵にともなうスリップ角の変動に対応するようにスリップ角の条件を設定する。
次に、動作制御部44が、駆動ユニット26の動作(モータの回転速度など)を制御して、条件設定部42で設定された複数の転動速度の1つで、タイヤ12を転動させる(ステップS104)。設定した転動速度でタイヤ12が転動している状態で、動作制御部44が、アクチュエータ29の動作を制御して、条件設定部42で設定した、時系列でステップ状に変化するスリップ角をタイヤ12に入力する(ステップS106)。データ取得部46は、設定した転動速度でタイヤ12を転動させた状態で、タイヤ12に時系列で変化するスリップ角を与えた際にセンサ34から出力される、タイヤに発生する横力データの信号を時系列に取得する(ステップS108)。
次に、評価ユニット50の第1パラメータ導出部52は、動作制御部44から送られるスリップ角の時系列データと、データ取得部46が取得したタイヤの横力データと、メモリ19から読み出した上記線形タイヤモデルのプログラムとを用いて、タイヤのコーナリング特性を表すタイヤ力学要素パラメータの一部の値を導出して、メモリ19に記憶する(ステップS110)。具体的には、スリップ角入力の時系列データα(t)と、時系列のタイヤの横力データF(t)を、上記式(1)に回帰するように、最小二乗回帰させることで(式(1)中の出力データF(t)が横力データF(t)に許容範囲内で一致させることで)、式(1)におけるコーナリングスティフネスKの値および時定数tの値を導出する。第1パラメータ導出部56で導出されたタイヤ力学要素パラメータの値は、第2パラメータ導出部58に送られるとともに、メモリ19に記憶される。
次に、評価ユニット50の第2パラメータ導出部54は、第1パラメータ導出部56より受け取った結果と、タイヤの転動速度の情報とを用いて、タイヤのコーナリング特性を表すタイヤ力学要素パラメータの一部の値を導出して、メモリ19に記憶する(ステップS112)。具体的には、コーナリングスティフネスKの値、時定数tの値、タイヤの転動速度Vの値を、上記式(2)に代入することでタイヤの等価横剛性KLの値を導出し、メモリ19に記憶する。
1つの転動速度(条件)について、タイヤ力学要素パラメータである、コーナリングスティフネスK、時定数t、および等価横剛性KLの値が導出されて記憶されると、設定された複数の転動速度の条件全てについて、タイヤ力学要素パラメータの値が算出されて記憶されたか否かが判定される(ステップS114)。判定がNoの場合、すなわち、設定された複数の転動速度のうち、タイヤ力学要素パラメータの値が算出・記憶されていない転動速度がある場合、転動速度を変更(ステップS118)した後、ステップS104〜S114の処理を繰り返す。このようなステップS104〜S114は、ステップS114における判定がYesとなるまで、すなわち、設定した複数の転動速度の全てについて、タイヤ力学要素パラメータの値が算出されて、メモリ19に記憶されるまで繰り返される。
ステップS114における判定がYesとなった場合、依存性評価部56が、記憶された複数のタイヤ力学要素パラメータの値を読み出し、例えば、転動速度の大きさと各転動速度における各力学要素パラメータの値との対応を表すプロット図を作成して、ディスプレイ18に出力する(ステップS116)。条件設定部42において、タイヤに印加する荷重の条件を複数設定した場合には、各力学要素パラメータの荷重依存性を表す、荷重の大きさと各荷重における各力学要素パラメータの値との対応を表すプロット図を作成して、ディスプレイ18に出力すればよい。本発明のタイヤのコーナリング特性の評価方法の一例である、コーナリング特性の計測方法はこのように実施される。
本発明のタイヤのコーナリング特性の評価方法の一例を用いて、上記実車フィーリング試験における評価結果がそれぞれ異なる2つのタイヤA,Bそれぞれについて、タイヤのコーナリング特性を評価した結果を以下に示す。
2つのタイヤAおよびBは、いずれもサイズ205/55R16のタイヤであり、室内特性として得られ、定常状態の特性を表す、タイヤの横方向、前後方向、および周方向それぞれの剛性(バネ)及びコーナリングパワーCPがほぼ同一である。上記実車フィーリング試験における評価結果は、タイヤAが操安性が良く、タイヤBが操安性が悪いといった結果であった。
本実施例では、タイヤに印加する荷重の条件を複数設定し、各荷重におけるタイヤ力学要素パラメータの値をそれぞれ導出した。そして、各タイヤ力学要素パラメータの値の荷重依存性を表す、荷重の大きさと各荷重における各力学要素パラメータの値との対応を表すプロット図を作成した。
第1の実施例では、タイヤに与える時系列のスリップ角は、図4(a)に示すような、時系列でステップ状に変化するようなスリップ角の条件を設定した。図6は、このような第1の実施例の結果について示すグラフであり、特定の転動速度(120km/h)および特定の荷重(4kN)における、タイヤAおよびBそれぞれの時定数(上述の時定数t)をそれぞれ示すグラフである。また、図7は、このような第1の実施例の結果について示すグラフであり、特定の転動速度(120km/h)における、タイヤAおよびBそれぞれの横バネ(上述の等価横剛性KL)の値の荷重依存性を示すプロット図である。図6および図7から判断できるように、タイヤAに比べてタイヤBの方が時定数tが大きく、タイヤAに比べてタイヤBの方が、応答性が悪いタイヤであるといえる。また、タイヤBは、横バネの荷重依存性の線形性が低く、荷重によるタイヤの変形にともなってコーナリング特性が大きく変化する、バランスの悪いタイヤであるといえる。また、タイヤBは、横バネがほとんどの領域で(設定した荷重にわたって)低く、剛性が弱いタイヤであるといえる。このような情報から、タイヤBの方が、コーナリング特性の低い、すなわち操縦安定性の劣るタイヤであると評価できる。これは、実車フィーリング試験による評価結果と一致する。本発明のコーナリング特性の評価方法を用いることで、実車フィーリング試験と精度よく一致する、コーナリング特性の評価結果を得ることができる。
また、第2の実施例として、タイヤに与える時系列のスリップ角を、周波数1Hz、振幅±1°のサイン波とするスリップ角の条件を設定した。図8は、このような第2の実施例の結果について示すグラフであり、特定の転動速度(120km/h)および特定の荷重(4kN)における、タイヤAおよびBそれぞれの時定数(上述の時定数t)をそれぞれ示すグラフである。また、図9は、このような第2の実施例の結果について示すグラフであり、特定の転動速度(120km/h)における、タイヤAおよびBそれぞれの横バネ(上述の等価横剛性KL)の値の荷重依存性を示すプロット図である。図8および図9から判断できるように、入力するスリップ角をサイン波とした第2の実施例においても、タイヤAに比べてタイヤBの方が時定数tが大きく、タイヤBの方が、応答性が悪いタイヤであるといえる。また、タイヤBは、横バネがほとんどの領域で(設定した荷重にわたって)低く、剛性が弱いタイヤであるといえる。第2の実施例においても、タイヤBの方が、コーナリング特性の低い、すなわち操縦安定性の劣るタイヤであることが評価でき、実車フィーリング試験による評価結果と一致する。ただし、第2の実施例の場合、タイヤBが、横バネの荷重依存性の線形性が低く、荷重によるタイヤの変形にともなってコーナリング特性が大きく変化する、バランスの悪いタイヤであると判断することは難しい。これに対し第1の実施例では、時系列でステップ状に変化するスリップ角を設定することで、タイヤ12に入力するスリップ角の時系列データに、比較的高い周波数成分を含ませることができるため、横バネの荷重依存性をより高精度に求めることが可能となっている。本発明のタイヤのコーナリング特性の評価方法では、タイヤに入力するスリップ角として、時系列でステップ状に変化するスリップ角を設定することが好ましい。
次に、本発明のタイヤのコーナリング特性の評価方法の他の実施形態について説明する。
上述の実施形態では、実際に試作したタイヤを、装置10を用いて横力データF(t)を計測するが、本実施形態では、実際のタイヤに替わって、評価しようとするタイヤを有限個の要素に分割したタイヤ有限要素モデルで近似してモデルを作成し、このモデルを転動させたときの横力に対応するシミュレーションデータを横力データF(t)として取得する。
図10は、転動状態のタイヤの有限要素モデルに、スリップ角を与えたときのシミュレーションを再現し、そのときの横力データからタイヤのコーナリング特性を評価する評価装置116の概略構成図である。
評価装置116は、データ算出ユニット140と評価ユニット150を有する。データ算出ユニット140は、条件設定部142、特性値算出部144,モデル作成部146及びシミュレーション演算部148を有し、評価ユニット150は、第1パラメータ導出部152、第2パラメータ導出部154及び評価部156を有し、これらの部分は、それぞれサブルーチンとしてモジュール化されて構成されている。この他、上記各部分の処理を実質的に行なうCPU117および各部分で得られた処理結果や上述した線形タイヤモデルのプログラムを記憶するメモリ119を有する。
評価ユニット150の第1パラメータ導出部152、第2パラメータ導出部154及び評価部156は、図2に示す測定・評価ユニット16の第1パラメータ導出部52、第2パラメータ導出部54及び評価部56と同様の構成を有するので、その説明は省略する。
データ算出ユニット140の条件設定部142は、図示されないキーボードやマウスから入力された条件に応じてタイヤ有限要素モデルの作成条件やシミュレーション演算の条件、予測する性能等各種の条件を設定する部分である。例えば、タイヤ挙動シミュレーションに用いるタイヤ有限要素モデルの作成条件としては、製品タイヤの各構成部材の形状パラメータや各構成部材の形状を表す特徴量のパラメータの値、および製品タイヤの各構成部材の物性値や各構成部材の物性値を表す特徴量の値が設定される。
特性値算出部144は、予めメモリ119に記憶された、製品タイヤの特定構成部材の歪分布、応力分布、歪エネルギー分布等のタイヤ製品情報を呼び出し、このタイヤ製品情報から、製品タイヤにおける特定構成部材、例えばカーカスコードの物性値を算出する。物性値の算出は、例えば、予めタイヤの構成材料の応力と歪の対応関係を表す、応力−ひずみ曲線の情報をデータベースとして記憶しておき、予めメモリ119に記憶した歪分布の情報から、製品タイヤにおける構成部材の粘弾性やモジュラスなどの特性値の情報を算出する。
モデル作成部146、特性値算出部144で算出された特定構成部材の特性値に応じて、条件設定部142において予め設定されたタイヤモデルの作成条件のうち、特定構成部材に対応する物性値など、必要に応じて修正したうえ、この修正後のタイヤモデルの作成条件に基づき、図11に示すタイヤ有限要素モデル160を作成する。なお、図11では、タイヤ有限要素モデルの一部分が示されている。モデルの作成によって、タイヤ有限要素モデル160の節点の位置座標、各有限要素を構成する番号化された節点の番号の組、各有限要素毎の材料定数等が少なくとも1つのファイルとなってメモリ119に記憶される。
シミュレーション演算部148は、作成されたタイヤ有限要素モデル160を、条件設定部142で設定されたシミュレーション演算の条件に従ってシミュレーション演算を行なう部分である。例えば、タイヤ有限要素モデル160に別途作成した図示されないリムモデルを装着し、タイヤ有限要素モデル160の内周面に一定の力を負荷することによって内圧充填を再現するように内圧充填処理を施す。さらに、この内圧充填処理後のタイヤ有限要素モデル160を、図示しない剛体の路面モデルに設定された負荷荷重で接地させ、接地状態のタイヤ有限要素モデル160を作成する。さらに、この接地状態のタイヤ有限要素モデル160に並進速度と回転角速度を付与して路面上をタイヤが転動する状態を再現した転動状態のタイヤ有限要素モデル160を作成する。
このような状態はドライ路面状態を再現しており、この状態を利用してシミュレーション演算を行なう。シミュレーション演算は、特に制限されず、公知の演算であればよい。例えば、スリップ角を与えてコーナリングの挙動をシミュレーションする。このときのタイヤ軸力に作用する横力データF(t)がシミュレーションにおける出力データとして算出される。シミュレーション演算では、タイヤが使用されるときの使用条件を模擬した条件(荷重、転動速度の各条件)を用いる。
算出された時系列の横力データF(t)は、入力された時系列のスリップ角α(t)とともに、第1パラメータ導出部152に送られる。
第1パラメータ導出部152は、第1パラメータ導出部52と同様に、スリップ角α(t)を用いて、上述した式(1)の出力データF(t)が横力データF(t)に許容範囲内で一致するように、式(1)中のt3及びKの値を求める。第2パラメータ導出部154は、第2パラメータ導出部54と同様に、上述した式(2)を用いて、転動速度の情報とともに用いて等価横剛性KLの値を求める。評価部156は、メモリ119に記憶された複数のタイヤ力学要素パラメータの値(t3、K、KL)を読み出し、例えば、転動速度の大きさと各転動速度における各力学要素パラメータの値との対応を表す速度依存性のプロット図を作成して、ディスプレイ118に出力する。あるいは、荷重の大きさと各荷重における各力学要素パラメータの値との対応を表す荷重依存性のプロット図を作成して、ディスプレイ118に出力する。
なお、モデル作成部146において作成されるタイヤ有限要素モデル160の特定構成部材は、例えば、ベルトカバー材やカーカスコードであり、特性値算出部144において、メモリ119に予め記憶された、製品タイヤのベルトカバー材やカーカスコードの歪み分布の情報に基づき、評価しようとするタイヤにおけるベルトカバー材やカーカスコードの物性値が算出される。ここで、メモリ119に予め記憶されたカーカスコードの歪み分布の情報は、評価しようとするタイヤに近似する実際の製品タイヤのカーカスコードを測定し、この測定結果から、カーカスコードの歪み分布を求める。
具体的には、まず、製品タイヤのライナ部分を取り除き、製品タイヤに配列されたカーカスコードをむき出しの状態にする。この状態では、カーカスコードには、タイヤの製造工程において与えられた応力が残留したままとなっている。この状態で、むき出しとなったカーカスコードに所定間隔(例えば、5〜30mm間隔)で、識別可能な印をつける(マーキングを行なう)。そして、例えば、非伸縮テープを用いて、実際にカーカスコードにつけた印を転写する。この非伸縮テープに転写した印の間隔(L)は、カーカスコードに応力が残留した状態で、カーカスコードにつけた印の間隔である。次に、製品タイヤから、マーキングしたカーカスコードを、余分な応力を加えないようにして抜き取り、抜き取ったカーカスコードにおける上記マーキングでつけた印の間隔(L’)を測定する。この抜き取ったカーカスコードからは、上記製造工程で加わった圧力が除去されている。仮に、製造工程で圧力が加わる前に上記間隔(L’)でカーカスコードに印をつけていた場合、製造工程において応力が加わることで、この間隔(L’)は、上記非伸縮テープに転写した印の間隔(L)となる。上記のような手法で、間隔(L)および間隔(L’)を求め、下記式により、製品タイヤにおけるカーカスコードの歪みεを求めることができる。
ε=(L−L’)/L’
この歪みを、複数のカーカスコードそれぞれについて、また、1つのカーカスコードにマーキングされた印の各間隔それぞれについて測定することで、製品タイヤにおける歪み分布を算出することができる。
このようにして算出されたカーカスコードの歪み分布の情報から、評価しようとするタイヤにおけるカーカスコードの物性値を算出する。具体的には、上述のカーカスコードの歪み分布の情報から、カーカス部材の物性値(ヤング率やポアソン比等の材料定数)を算出する。例えば、カーカスコードにかかる応力とひずみ量との対応関係を表す、図12に示すような応力−ひずみ曲線の情報をデータベースとして記憶しておき、上述の歪分布の情報から、製品タイヤにおけるカーカスコードの物性値を算出する。図12に示す応力−ひずみ曲線では、カーカスコードに対応するタイヤ有限要素モデルの補強材部分は、引張り方向の剛性と圧縮方向の剛性とが互いに異なる材料特性を有するように設定されている。これは、後述する実施例でも判るように、引張り方向のモジュラスと圧縮方向のモジュラスとを異ならせることで、実際の評価結果に近い評価が得られるからである。図12に示す応力−ひずみ曲線の所定点における傾き(すなわち所定点を通る曲線の接線の傾き)は、カーカスコードの特定方向(引張り方向、または圧縮方向)への粘弾性を表している。カーカスコードの物性値は、カーカスコードに圧縮応力がかかっているか、引張応力がかかっているか、どの程度の歪みが発生しているかにより、大きく異なる。このような応力−ひずみ曲線を用いて、上述の歪分布からカーカスコードの物性値を求める。さらに、評価しようとするタイヤ有限要素モデルに内圧充填処理を行う前に、タイヤ有限要素モデルのカーカスコードに対応する部分に、上記応力分布、すなわち初期応力を与えることもできる。又、初期歪みを与えることもできる。
このようなシミュレーションによるタイヤの評価結果について第3の実施例を用いて説明する。
実際の製品タイヤ(サイズ205/55R16 V550)を有限要素にて再現したタイヤ有限要素モデル160(図11参照)を作成した。タイヤ有限要素モデル160におけるカーカスコードは、材料の引張り方向と圧縮方向で材料特性が異なる図12に示すような材料定数の異方性を定義して四辺形膜要素でモデル化し、ゴム層、ビードコア等は6面体又は5面体ソリッド要素でモデル化した。平坦な仮想路面を剛体で定義し、静止摩擦係数及び動摩擦係数はともに1.3とした。タイヤ有限要素モデルの節点数は118028であり、要素数は112294であった。
シミュレーション方法は、まずタイヤ有限要素モデルにリムモデルを結合し、200kPa相当の内圧充填処理を施した。この後、タイヤ有限要素モデルを仮想路面に複数の負荷荷重(2,4,6kN)で接地させ、路面を相対変位させて、複数の転動速度(40,80,120,160km/時)で転動させた。複数の荷重でシミュレーションを行う場合、転動速度は40km/時とし、複数の転動速度でシミュレーションを行う場合、荷重は4kNとした。入力する時系列のスリップ角α(t)は、図13に示すような1山のステップ形状を用いた。
図14(a),(b)は、シミュレーションによって得られた速度依存性のプロット図及び荷重依存性のプロット図である。図4(a)及び図4(b)中のケースAは、タイヤ有限要素モデルの元となる実際の製品タイヤを図1に示すコーナリング特性計測装置10を用いて計測して得られた速度依存性及び荷重依存性の結果である。ケースBは、上記タイヤ有限要素モデルにおいて、カーカスコードの他にベルトカーバ材の対応部分のモジュラスについて圧縮モジュラスと引っ張りモジュラスを同じに値に設定したものである。ケースCは、カーカスコードの他にベルトカバー材のモジュラスをバイリニアにした(圧縮モジュラスの値は引っ張りモジュラスの値の100分の1とした)ものであり、ケースDは、カーカスコードの他にベルトカバー材のモジュラスをバイリニアにし、かつ、実際の製品タイヤの歪み分布を上述した方法で計測したときの歪みに相当する初期応力(初期張力)を与えたものである。
図14(a),(b)から判るように、ケースCの等価横剛性KLは、ケースBに比べて製品タイヤを実測した横力データから得られるケースAに近づいている。さらに、ケースDの等価横剛性KLは、製品タイヤを実測した横力データから得られるケースAに略一致している。これより、タイヤ有限要素モデルにおいて、タイヤ補強材の材料定数をバイリニアにすることで、あるいは、タイヤ補強材に初期応力(初期張力)を与えることで、実際のタイヤのコーナリング特性を精度よく評価できることがわかる。特に、タイヤ補強材のモジュラスをバイリニアにし、かつ、タイヤ補強材に初期応力(初期張力)を与えることで、実際の製品タイヤを計測して得られるケースAに略一致することがわかる。上述したように製品タイヤにスリップ角を与えて計測して得られるコーナリング特性の評価結果は、実車試験におけるコーナリング特性の評価結果に対応することから、タイヤの有限要素モデルを用いてシミュレーションした結果から評価されるコーナリング特性も、実車試験におけるコーナリング特性の評価結果に対応する。
本発明で求められる力学要素パラメータの値(t3,Ky,KL)の速度依存性の情報は、例えば、高速走行時における操縦安定性を向上させるタイヤの開発などに際し、好適に用いることができる。
以上、本発明のタイヤのコーナリング特性の計測方法および評価装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
本発明のタイヤのコーナリング特性の評価装置について説明する概略構成図である。 図1に示すタイヤのコーナリング特性の評価装置の、測定・評価ユニットについて説明する概略構成図である。 本発明で用いるタイヤモデルの基となる、個々のタイヤ部材の変形(および遅延変形)と関連づけて表されたタイヤモデル、およびこのタイヤモデルを用いたデータ処理について説明する概略図である。 (a)および(b)は、図1に示すタイヤのコーナリング特性の計測装置においてタイヤに入力する、スリップ角の時系列の変動を示すグラフである。 本発明のタイヤのコーナリング特性の評価方法の一例のフローチャートである。 本発明のタイヤのコーナリング特性の評価方法を実施した結果の一例であり、2つのタイヤそれぞれの時定数を算出した結果を示すグラフである。 本発明のタイヤのコーナリング特性の評価方法を実施した結果の一例であり、2つのタイヤそれぞれの等価横剛性の荷重依存性を示すプロット図である。 本発明のタイヤのコーナリング特性の評価方法を実施した結果の他の例であり、2つのタイヤそれぞれの時定数を算出した結果を示すグラフである。 本発明のタイヤのコーナリング特性の評価方法を実施した結果の他の例であり、2つのタイヤそれぞれの等価横剛性の荷重依存性を示すプロット図である。 本発明のタイヤのコーナリング特性の評価装置の別の実施形態を説明する概略構成図である。 図10に示す評価装置で作成されるタイヤの有限要素モデルの例を示す図である。 タイヤのカーカスコードの応力―ひずみ曲線の一例を示す図である。 図10に示すタイヤのコーナリング特性の計測装置においてタイヤ有限要素モデルに入力する、スリップ角の時系列の変動を示すグラフである。 (a),(b)は、図10に示す評価装置で得られる等価横剛性の荷重依存性の一例を示すプロット図である。
符号の説明
10 コーナリング特性計測装置
12 タイヤ
14 コーナリング試験機
16,116 測定・評価ユニット
17,117 CPU
18,118 ディスプレイ
19,119 メモリ
20 ベルト
22 タイヤ軸
24 代用路面
26 駆動ユニット
28 ローラ対
29 スリップ角調整アクチュエータ
32 タイヤ軸支持部材
34 センサ
40 測定ユニット
42,142 条件設定部
44 動作制御部
46 データ取得部
50,150 評価ユニット
52 第1パラメータ導出部
54 第2パラメータ導出部
56,156 評価部
140 データ算出ユニット
144 特性値算出部
146 モデル作成部
148 シミュレーション演算部

Claims (12)

  1. スリップ角の付与条件下のタイヤのコーナリング特性の評価方法であって、
    スリップ角の付与条件下、接地面に接地しかつ所定の転動速度で転動することでタイヤ横力が発生するタイヤの、時系列のスリップ角に対する時系列の横力データを取得するステップと、
    複数のタイヤ力学要素パラメータを用いて構成され、スリップ角に対して前記タイヤに発生する過渡応答の横力データに対応する出力データを算出する過渡応答算出モデルと、取得した前記横力データとを用いて、タイヤのコーナリング特性を表すタイヤ力学要素パラメータの値を導出するステップと、を有することを特徴とするタイヤのコーナリング特性の評価方法。
  2. 前記横力データを取得するステップでは、評価しようとするタイヤを有限個の要素に分割したタイヤ有限要素モデルで再現し、有限要素法を用いて、接地面に接地させかつ所定の転動速度で転動させたタイヤ有限要素モデルに時系列のスリップ角を入力として与えたときのタイヤ有限要素モデルに作用する横力のシミュレーションデータを前記横力データとして取得する請求項1に記載のタイヤのコーナリング特性の評価方法。
  3. 前記タイヤ有限要素モデルは、リムを再現したリムモデルと結合し、前記タイヤ有限要素モデルは平坦な仮想路面を前記接地面として接地させ、前記仮想路面に対して前記所定の転動速度で相対的に移動させることで、接地面に接地しかつ所定の転動速度で転動するタイヤを再現する請求項2に記載のタイヤのコーナリング特性の評価方法。
  4. タイヤ中のコード補強材に対応する前記タイヤ有限要素モデルの補強材部分は、引張り方向の剛性と圧縮方向の剛性とが互いに異なる材料特性を有する請求項2又は3に記載のタイヤのコーナリング特性の評価方法。
  5. 前記タイヤ有限要素モデルは、タイヤの内圧充填を再現する充填処理を施したものであり、前記タイヤ有限要素モデルの少なくとも一部分に初期応力あるいは初期歪みを与えた後、前記充填処理を施す請求項2〜4のいずれか1項に記載のタイヤのコーナリング特性の評価方法。
  6. 前記横力データを取得するステップでは、接地面にタイヤを接地させて前記タイヤを所定の転動速度で転動させた状態で、前記タイヤに時系列のスリップ角を与えて、このスリップ角に対応した時系列のタイヤ横力の計測データを、前記横力データとして取得する請求項1に記載のタイヤのコーナリング特性の評価方法。
  7. 前記過渡応答算出モデルは、前記スリップ角に対する前記タイヤ横力の過渡応答を1次遅れ系として表したモデルであり、
    入力する前記スリップ角の大きさの範囲が、入力するスリップ角の大きさと、このスリップ角に対するタイヤ横力の応答の大きさとが略線形関係となる、線形領域内である請求項1〜6のいずれか1項に記載のタイヤのコーナリング特性の評価方法。
  8. 前記タイヤ力学要素パラメータの値を導出するステップでは、入力した前記時系列のスリップ角と、このスリップ角に対応した時系列の横力データとを用いて、前記過渡応答算出モデルの出力データが前記時系列の横力データに許容範囲内で一致するように、前記タイヤ力学要素パラメータの値を導出する請求項1〜7のいずれか1項に記載のタイヤのコーナリング特性の評価方法。
  9. 前記スリップ角の大きさをαとすると、−2.0(deg)≦α≦2.0(deg)を満たす請求項1〜8のいずれか1項に記載のタイヤのコーナリング特性の評価方法。
  10. 前記過渡応答算出モデルは、出力データをF(t)としたとき、下記式(1)で表される式を有し、
    前記タイヤ力学要素パラメータの値を導出するステップでは、前記入力した時系列のスリップ角α(t)を用いて、下記式(1)中のF(t)がこのスリップ角α(t)に対応した時系列の横力データF(t)に許容範囲内で一致するように、下記式(1)における力学要素パラメータである、コーナリングスティフネスKの値および時定数tの値を求める請求項9に記載のタイヤのコーナリング特性の評価方法。
    Figure 2008008882
  11. 前記過渡応答算出モデルで算出される出力データは、前記スリップ角の入力に対してタイヤ全体の等価横剛性KLを介してホイール側に伝わるタイヤ横力のデータであり、
    さらに、前記タイヤ力学要素パラメータの値を導出するステップでは、前記横力データを取得するときの前記所定の転動速度をVとしたとき、上記式(1)を用いて求めた、コーナリングスティフネスの値K、時定数の値t、及び転動速度Vを、下記式(2)に代入することで、タイヤ横力の伝達特性を表す前記等価横剛性KLの値を導出する請求項10に記載のタイヤのコーナリング特性の評価方法。
    Figure 2008008882
  12. スリップ角の付与条件下のタイヤのコーナリング特性を評価する装置であって、
    接地面に接地しかつ所定の転動速度で転動するタイヤの、時系列のスリップ角に対する時系列の横力データを取得するデータ取得手段と、
    複数のタイヤ力学要素パラメータを用いて構成される、スリップ角に対して前記タイヤに発生する過渡応答の横力データに対応する出力データを算出する過渡応答算出モデルと、前記横力データとを用いて、タイヤのコーナリング特性を表すタイヤ力学要素パラメータの値を導出する導出手段と、を有することを特徴とするタイヤのコーナリング特性の評価装置。
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