JP2008007745A - 水性路面標示塗料用硬化促進剤及び水性路面標示塗料 - Google Patents

水性路面標示塗料用硬化促進剤及び水性路面標示塗料 Download PDF

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Abstract

【課題】 塗料の乾燥性を促進することを目的とする取り扱いの容易な水性路面標示塗料用硬化促進剤、及び当該硬化促進剤の使用に適した水性路面標示塗料、とこれらの施工に適した塗装方法を提供する。
【解決手段】 硬化促進剤は、水に不溶でありアルカリ水溶液に可溶である金属化合物である。水性路面標示塗料は、硬化促進剤が散布されることによって成膜・固化する合成樹脂エマルションを結合材とし、塗料の水素イオン指数(pH)が10以上12以下の範囲にある塗料である。硬化促進剤を水性路面標示塗料と共に路面に散布することによって、水性路面標示塗料に硬化促進剤が容易に溶け、水性路面標示塗料の乾燥性を促進することができる。
【選択図】 なし

Description

この発明は、路面に塗布する水性路面標示塗料に関し、塗料の乾燥性を促進することを目的とする水性路面標示塗料用硬化促進剤、水性路面標示塗料用硬化促進剤分散液及び当該硬化促進剤の使用に適した水性路面標示塗料、とこれらの施工に適した塗装方法に関するものである。
水性路面標示塗料は、揮発性有機化合物を多く含有する溶剤系路面標示塗料に替わって種々提案されている(特許文献1〜3参照)。
特許文献1として示す、特許第3049642号公報には、トラフィックペイントに適した水性の急速硬化性組成物の開示がある。
特許文献1の主たる特徴は、(a)0℃以上のTgを有する陰イオン的に安定化された乳化重合体、(b)アミン基またはイミン基を含有するモノエチレン性不飽和単量体の単量体単位を20〜100重量%含む、付加重合された水溶性または水分散性多官能性アミン重合体、および(c)本質的にすべての多官能性アミン重合体が非イオン性状態にある点まで組成物のpHを上昇させるのに十分な量の揮発性塩基の、(a)、(b)、(c)を含有させたものであった。特許文献1の発明では、水性のトラフィックペイントの結合材成分と配合成分により急速硬化性を得られるようにしている。
特許文献2として示す、特許第3300458号公報には、水性の路面標示用組成物の開示がある。特許文献2の主たる特徴は、分子量10,000〜100,000の樹脂からなる固形分を45%以上含み、かつ0〜50℃のガラス転移温度を有した機械的安定性の優れたエマルションと、顔料、充填剤、およびその他塗料用添加剤からなる塗料であって、エマルション固形分と、顔料、充填剤、およびその他塗料用添加剤との重量比率が、100:200〜100:900に構成され、更に該塗料中の不揮発分が、70重量%以上であり、かつ該塗料中に反応性官能基として炭素−炭素二重結合を少なくとも分子内に二個有するモノマーまたはそのオリゴマーを含むことにあった。特許文献2の発明では、塗料の固形分と不揮発分の他、結合材成分の分子量、Tg、反応性官能基の種類に特徴を持つようにしている。
特許文献3として示す、特開2004−182917号公報は、本件出願人が出願人に一人となる発明であり、水性の路面標示用塗料組成物の開示がある。特許文献3の主たる特徴は、エマルション系の水性塗料中に、無機充填材(顔料を除く。)が配合されてなる路面標示用の塗料組成物において、前記無機充填材の一部として、モース硬度5以上を示す硬質無機充填材が、塗面に耐摩耗性を付与可能な量配合されてなることにあり、路面標示用塗料の耐摩耗性を改良したものにあった。
水性路面標示塗料は水分が蒸発しないと塗膜の成膜が行われないため、乾燥時間は、塗布の際の気温や湿度といった周囲の環境に大きく依存するものである。特に湿度が高い環境下の施工においては、水性路面標示塗料は乾燥時間に数時間程度要することがあり、係る時間、道路の交通規制を行わなければならないという問題がある。
上記の水性路面標示塗料の乾燥時間の問題を解決するためにいくつかの提案がなされている。例えば、特許文献4(特開2004−244467号公報)では、路面に塗布された路面標示用水性塗料の塗膜上に路面標示用水性塗料定着剤を散布する路面標示の形成方法が開示されている。そして、路面標示用水性塗料定着剤として、酸化カルシウム、酸化バリウム及び酸化ストロンチウムなどの水と反応することで発熱可能な無機化合物粒子が開示されている。
特許第3049642号公報
特許第3300458号公報
特開2004−182917号公報
特開2004−244467号公報
特許文献4(特開2004−244467号公報)に記載された発明においては、定着剤としての無機化合物粒子が水と反応することによって発熱し、塗料の乾燥性を促進するものである。しかし、定着剤が接触している塗料の周辺は定着剤が発熱することによって乾燥性が促進されるものの、発熱が終了すると乾燥性は促進されないため、定着剤の散布量が少ない場合には塗料の乾燥性が充分でない恐れがある。また、定着剤としての無機化合物粒子が水と反応するため、定着剤は長期の保存の際に空気中の水分と反応し、定着剤が変化する恐れがある。特に酸化カルシウム、酸化バリウム及び酸化ストロンチウムは、従来より乾燥剤として好んで使用されるものであり、長期の保存の際には密閉して保管する必要があるなど、取り扱いが困難であるという問題がある。
この発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、塗料の乾燥性を促進することを目的とする取り扱いの容易な水性路面標示塗料用硬化促進剤、水性路面標示塗料用硬化促進剤分散液及び当該硬化促進剤の使用に適した水性路面標示塗料、とこれらの施工に適した塗装方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の水性路面標示塗料用硬化促進剤は、水性路面標示塗料と共に路面に散布する水性路面標示塗料用硬化促進剤において、硬化促進剤が、水に不溶でありアルカリ水溶液に可溶である金属化合物であることを要旨とする。
請求項2に記載の発明の水性路面標示塗料用硬化促進剤は、請求項1に記載の発明において、金属化合物が、亜鉛酸化物、マグネシウム酸化物、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウムまたはこれら混合物を主成分とすることを要旨とする。
請求項3に記載の発明の水性路面標示塗料用硬化促進剤分散液は、請求項1又は請求項2に記載の水性路面標示塗料用硬化促進剤を、水に分散させたことを要旨とする。
請求項4に記載の発明の水性路面標示塗料は、合成樹脂エマルション系の水性路面標示塗料において、請求項1又は請求項2に記載の水性路面標示塗料用硬化促進剤によって成膜・固化する合成樹脂エマルションを結合材として含有すること、および、塗料の水素イオン指数(pH)が10以上12以下の範囲にあることを要旨とする。
請求項5に記載の発明の水性路面標示塗料は、請求項4に記載の発明において、揮発性塩基を含有することにより塗料の水素イオン指数(pH)が10以上12以下の範囲に調整されたことを要旨とする。
請求項6に記載の発明の水性路面表示塗料の塗布方法は、請求項1または2に記載の水性路面標示塗料用硬化促進剤または請求項3に記載の水性路面標示塗料用硬化促進剤分散液を、請求項4または請求項5に記載の水性路面標示塗料と共に路面に散布することを要旨とする。
請求項7に記載の発明の路面標示塗料セットは、請求項1または2に記載の水性路面標示塗料用硬化促進剤または請求項3に記載の水性路面標示塗料用硬化促進剤分散液と、請求項4または請求項5に記載の水性路面標示塗料からなることを要旨とする。
請求項1の発明によれば、請求項1に記載の水性路面標示塗料用硬化促進剤を用いることにより、水性路面標示塗料の乾燥性を促進することができる。
請求項2の発明によれば、請求項2に記載の水性路面標示塗料用硬化促進剤を用いることにより、請求項1の発明の効果に加え、硬化促進剤の長期の保存の際に、硬化促進剤の変化を少なくすることができる。
請求項3の発明によれば、請求項3に記載の水性路面標示塗料用硬化促進剤分散液を用いることにより、硬化促進剤の散布を容易に行うことができる。
請求項4の発明によれば、請求項4の水性路面標示塗料を用いることにより、請求項1又は請求項2に記載の水性路面標示塗料用硬化促進剤が散布されることによって、塗料の乾燥性を促進することができる。
請求項5の発明によれば、請求項5の水性路面標示塗料を用いることにより、請求項4の発明の効果に加え、塗料が成膜・固化した塗膜の耐水性・耐アルカリ性といった塗膜物性が良好なものとなる。
請求項6の発明によれば、請求項6の塗布方法を用いることにより、路面上に乾燥性の良い塗膜を形成することができる。
請求項7の発明によれば、請求項7の路面標示塗料セットを用いることにより、本発明の水性路面表示塗料の塗布方法を好適に実施することができる。
以下、この発明の水性路面標示塗料用硬化促進剤(以下、「本発明の硬化促進剤」という)及び水性路面標示塗料(以下、「本発明の塗料」という)及び水性路面表示塗料の塗布方法(以下、「本発明の方法」という)について詳細に説明する。
本発明の硬化促進剤は、水に不溶でありアルカリ水溶液に可溶である金属化合物である。この硬化促進剤を用いることにより、塗料の乾燥性を促進することができる。水に不溶とは、金属化合物が、故意に他の物質を溶解させた水溶液ではない水に不溶であることをいう。水は、他の物質が溶けていることによって溶解力が増す性質を有している。したがって、故意に他の物質を溶解させた水溶液ではない水にまで不溶であることを要するものではない。なお、水は非常に物質を溶かしやすい液体であるため、1×10−3(g/100g・HO)以下の溶解は、本発明では水に不溶であるとする。アルカリ水溶液に可溶であるとは、金属化合物が、故意に他の物質を溶かすことによってアルカリ性に調整された水溶液に可溶であることをいう。詳しくは、アルカリ水溶液の水素イオン濃度(以下、pHとする。)が8以上で可溶であるものが好ましい。
本発明の硬化促進剤としての金属化合物として、金属酸化物または金属水酸化物が挙げられ、これらの中には水に不溶でありアルカリ水溶液に可溶である性質を有するものが多く、塗料の乾燥性を促進することができる。
本発明の硬化促進剤としての金属酸化物として、亜鉛酸化物、カドミウム酸化物、マグネシウム酸化物、ベリリウム酸化物が挙げられ、具体的には、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウムを使用することができる。また、金属水酸化物として、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化銅を使用することができる。これらは1種類単独でも2種類を混合しても本発明の硬化促進剤として使用することができる。これらは、水に不溶でありアルカリ水溶液に可溶である性質を有し、水に不溶であるため、空気中の水分と反応することがなく、硬化促進剤の長期の保存の際に、硬化促進剤の変化が少ないという利点を有している。これら金属化合物の中でも、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化亜鉛および水酸化マグネシウムが市場において一般に流通しており価格が安価であるため、本発明の硬化促進剤として好適に使用することができ、特に酸化亜鉛および酸化マグネシウムは、市場において大量に流通しているため、より好適に使用することができる。
また、本発明の硬化促進剤の平均粒子径は、0.2〜1000μmであることが好ましい。好適に硬化促進剤を散布することができ、塗料が成膜・固化してなる塗膜の仕上がりも良いためである。0.2μm以下だと本発明の塗料に散布する際に硬化促進剤が空気中に舞い、散布が困難となる恐れがある。一方、1000μm以上だと本発明の塗料に散布した際に硬化促進剤が粒子として残り、塗膜の仕上がりが良くならない恐れがある。より好ましくは、平均粒子径が5〜500μmにある硬化促進剤である。上記の利点に加え、入手が容易となるからである。
また、本発明の硬化促進剤を、水に分散させた硬化促進剤分散液として使用することもできる。この硬化促進剤分散液を用いることにより、硬化促進剤の散布を容易に行うことができる。粒子である硬化促進剤より水に分散させた硬化促進剤分散液の方が散布が容易であるからである。
水とは、水道水や井戸水など容易に入手することができるものを含み、精製水やイオン交換水などに限定されるものではない。水には必要に応じ、硬化促進剤の分散を安定にする分散剤、水の揮発を早めるためにメタノール、エタノール、アセトンまたは酢酸エチルといった低沸点有機溶剤を添加することができる。また、硬化促進剤分散液を安定にするための添加剤として湿潤剤、消泡剤、凍結防止剤及び増粘剤を必要に応じ添加することもできる。
硬化促進剤分散液における本発明の硬化促進剤の分散割合としては、15〜60重量%程度が好ましい。硬化促進剤分散液を散布されることによって塗料が十分に成膜・固化させることができ、また、硬化促進剤分散液における硬化促進剤の分散が安定であるためである。15%未満だと硬化促進剤分散液が散布された塗料が十分に成膜・固化しない恐れがあり、一方、60重量%以上だと、硬化促進剤分散液における硬化促進剤の分散が不安定になり硬化促進剤の沈降などが生じる恐れがある。
本発明の塗料は、本発明の硬化促進剤が散布されることによって成膜・固化する合成樹脂エマルションを結合材として含有すること、および、揮発性塩基を含有することにより塗料のpHが10以上12以下の範囲に調整されている水性路面標示塗料である。
本発明の硬化促進剤が散布されることによって成膜・固化する合成樹脂エマルションとは、本発明の硬化促進剤が溶けることによって生じる金属イオンによって合成樹脂エマルションが成膜・固化する合成樹脂エマルションをいう。具体的には、陰イオンによって安定化された乳化重合体を含有する合成樹脂エマルションが好ましく、陰イオンとしては、陰イオン性界面活性剤、陰イオン性官能基又はアニオン性官能基などが好適に使用することができる。本発明の塗料により、本発明の硬化促進剤が散布されることによって、塗料の乾燥性を促進することができる。本発明の塗料に本発明の硬化促進剤を散布することによって、本発明の硬化促進剤の金属化合物が当該水性塗料に溶け、金属化合物の金属が陽イオンとなって、陰イオンによって安定化された乳化重合体を含有する合成樹脂エマルションが不安定になり、成膜・固化すると考えられるからである。
揮発性塩基を含有することにより塗料のpHが10以上12以下の範囲に調整された水性路面標示塗料とは、揮発性塩基の添加によりpHが10以上12以下の範囲に調整した水性路面標示塗料をいう。本発明の塗料のpHが10以上12以下の範囲にあることによって、塗料物性が劣ることなく、本発明の塗料に本発明の硬化促進剤は容易に溶かすことができる。なお、pHが10未満では、本発明の硬化促進剤が十分に溶けない恐れがあり、一方、pHが12を越える値では、添加される揮発性塩基の量が多くなり、水性路面標示塗料の粘度、固形分といった塗料物性が劣る恐れがある。
揮発性塩基とは、塗料の成膜・固化の際に揮発する塩基をいう。揮発性塩基を用いることによって、成膜した塗料に塩基が残ることがないため、塗料が成膜・固化した塗膜の耐水性・耐アルカリ性といった塗膜物性が良好なものとなる。一方、塗料の成膜・固化の際に揮発しない塩基を用いた場合には、塗料が成膜・固化した塗膜に塩基が残るため、耐水性、耐アルカリ性といった、塗膜物性が満たされない恐れがある。好ましい揮発性塩基は、入手が容易なアンモニア水で、沸点は約40℃(25%)である。その他、低級アルキルアミン、エチレンジアミンなど、またはこれらの混合物も好適に使用することができる。
本発明の塗料は、本発明の硬化促進剤が散布されることによって成膜・固化する合成樹脂エマルションに、充填材として炭酸カルシウム、着色顔料として二酸化チタンを混合させた塗料である。本発明の塗料には塗料物性及び作業性などを向上させるために、分散剤、湿潤剤、消泡剤、凍結防止剤、増粘剤及び成膜助剤を必要に応じて加えることができる。なお、本発明の塗料は、本発明の硬化促進剤が散布されることによって、塗料の乾燥性を促進することができるものであるが、本発明の硬化促進剤が散布されない場合であっても、塗料の乾燥性が促進されないだけであって塗料が成膜・固化することに変わりはない。
本発明の塗装方法とは、本発明の硬化促進剤を本発明の塗料と共に路面に塗布することを特徴とする水性路面表示塗料の塗布方法である。本発明の硬化促進剤を本発明の塗料と共に路面に塗布するとは、本発明の硬化促進剤と本発明の塗料を同時に同じ箇所に塗布及び散布することをいい、これにより、本発明の塗料に本発明の硬化促進剤を好適に溶かすことができ、塗料の乾燥性を促進することができる。なお、本発明の塗布方法は、これに限定されることなく、例えば、本発明の硬化促進剤を、本発明の塗料の塗布に際し予め散布する方法であっても、路面に塗布された本発明の塗料上に後から散布する方法であっても、本発明の塗料に本発明の硬化促進剤を好適に溶かすことができる限り、同じように塗料の乾燥性を促進することができる。
本発明の硬化促進剤の塗料への散布量は、塗料に対し0.5〜5重量%程度が好ましい。塗料を好適に成膜・固化させることができ、また、塗料が成膜・固化した塗膜の物性が満たされたものとなるからである。0.5重量%未満だと塗布された塗料を十分に成膜・固化することができない恐れがあり、一方、5重量%以上だと塗料が成膜・固化した塗膜の視感反射率が劣るといった、塗膜の物性が満たされない恐れがある。なお、硬化促進剤の散布量は、硬化促進剤である金属化合物の散布量を表し、硬化促進剤分散液である場合には溶媒分の塗布量を含まないものとする。
水性路面標示塗料用硬化促進剤と、水性路面標示塗料からなる路面標示塗料セットとは、本発明の硬化促進剤と本発明の塗料からなる組み合わせからなるセットである。この路面標示塗料セットを用いることにより、本発明の塗装方法を好適に実施することができる。
以下、本発明の実施例及び比較例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。
なお、比較例4を除く、塗料の結合材としての合成樹脂エマルションには、ローム・アンド・ハース社製の「Fastrack53」を使用した。この合成樹脂エマルションは、本発明の硬化促進剤によって好適に成膜・固化する合成樹脂エマルションである。ただし、これに限定されることなく、本発明の硬化促進剤によって成膜・固化する合成樹脂エマルションであれば、本発明の効果を達成し得る。
表1は実施例及び比較例を示し、実施例及び比較例の塗料配合と用いた硬化促進剤を記載し、併せて、発明の効果に係わる試験の試験結果を記載した。発明の効果に係わる試験として、塗膜の乾燥時間、硬化促進剤の安定性および耐アルカリ性の試験があり、各々の試験方法については以下に記載する。
なお、本発明の塗料および本発明の硬化促進剤についての一般的な試験の規格として、JIS K 5665(路面標示用塗料)2種があり、これに準じた試験結果を表2に記載する。
塗膜の乾燥時間は、JIS K 5665(路面標示用塗料)2種のタイヤ付着性に準拠し、塗料の塗装後1分毎にタイヤ付着性を測定し、タイヤに塗膜が付着しなくなる時間を測定した。なお、硬化促進剤は塗料と共に塗布した。
硬化促進剤の安定性は、JIS K 5665(路面標示用塗料)2種の試験項目ではないが、多湿度の環境の保存を想定し、25℃・湿度80%の環境下で硬化促進剤を1日放置し、硬化促進剤の膨張等、異常の発生の有無を調べた。
耐アルカリ性は、JIS K 5665(路面標示用塗料)2種の耐アルカリ性に準拠し、アルカリ溶液に18時間浸した塗膜に、膨れ、割れ、剥がれ及び穴を認めるか否かによって判断した。
Figure 2008007745
Figure 2008007745
以下に、実施例及び比較例の試験結果を記載するが、比較例については、上記の発明の効果に係わる試験のうち効果が認められない又は試験として不合格の項目のみ記載する。
なお、JIS K 5665(路面標示用塗料)2種に規定されている試験項目の内、上記の発明の効果に係わる試験に含まれる試験以外の試験項目では、実施例及び比較例の全てにおいて、不合格となるような満たされない結果は確認できなかった。
実施例1から実施例4
硬化促進剤として実施例1では酸化亜鉛を、実施例2では酸化マグネシウムを、実施例3では水酸化亜鉛を、実施例4では水酸化マグネシウムを、実施例5では酸化亜鉛50%分散液を使用した。路面標示用塗料は、アンモニア水(25%)を0.2重量%添加することによって塗料のpHを11に調整した塗料を使用した。
(乾燥時間)
実施例1および2では3分で塗料が乾燥し、著しい乾燥促進効果が見られた。
実施例3および4では4分で塗料が乾燥し、著しい乾燥促進効果が見られた。
実施例5では5分で塗料が乾燥し、著しい乾燥促進効果が見られた。
(硬化促進剤の安定性)
乾燥剤に膨張等の変化は認められず、異常の発生は認められなかった。
(耐アルカリ性)
塗膜に、膨れ、割れ、剥がれ又は穴の発生は認められなかった。
比較例1
硬化促進剤は使用しなかった。路面標示用塗料は、アンモニア水(25%)を0.2重量%添加することによって塗料のpHを11に調整した塗料を使用した。
(乾燥時間)
硬化促進剤を使用しないと、乾燥に10分を要し乾燥が促進されることはない。
比較例2
硬化促進剤として酸化カルシウムを使用した。路面標示用塗料は、アンモニア水(25%)を0.2重量%添加することによって塗料のpHを11に調整した塗料を使用した。
(硬化促進剤の安定性)
乾燥剤が、著しく膨張した。空気中の水分と反応したためと考えられる。
比較例3
硬化促進剤として酸化亜鉛使用した。路面標示用塗料は、塗料のpHの調整を行っていない塗料を使用した。
(乾燥時間)
乾燥時間に7分を要した。塗料のpHが10未満であるため、硬化促進剤が十分に塗料に溶けなかったためと考えられる。
比較例4
硬化促進剤として酸化亜鉛を使用した。面標示用塗料の合成樹脂エマルションには、建築仕上塗材等に使用されているアクリル系合成樹脂エマルションを使用した。このアクリル系合成樹脂エマルションは、本発明の硬化促進剤によって成膜・固化する合成樹脂エマルションではないものである。路面標示用塗料は、アンモニア水(25%)を0.2重量%添加することによって塗料のpHを11に調整した塗料を使用した。
(乾燥時間)
15分以上経過しても塗料が乾燥することはなかった。本発明の硬化促進剤によって成膜・固化する合成樹脂エマルションではないためと考えられる。
比較例5
硬化促進剤として酸化亜鉛を使用した。路面標示用塗料は、アミノメチルプロパノールを0.2重量%添加することによって塗料のpHが11に調整した塗料を使用した。なお、アミノメチルプロパノールは、塗料の成膜・固化の際に揮発しない塩基である。
(耐アルカリ性)
塗膜に膨れが見られた。アミノメチルプロパノールが塗料の乾燥過程で揮発せずに塗膜に残ったために、アルカリ溶液に対し塗膜が溶けたものと考えられる。
比較例6
硬化促進剤として酸化亜鉛を使用した。路面標示用塗料は、アンモニア水(25%)を3.6重量%添加することによって塗料のpHを12.5に調整した塗料を使用した。
(乾燥時間)
乾燥時間に10分を要した。アンモニア水(25%)を3.6重量%添加したために揮発成分が多くなり、塗料の成膜・固化に時間を要したと考えられる。

Claims (7)

  1. 水性路面標示塗料と共に路面に散布する水性路面標示塗料用硬化促進剤において、硬化促進剤が、水に不溶でありアルカリ水溶液に可溶である金属化合物であることを特徴とする水性路面標示塗料用硬化促進剤。
  2. 金属化合物が、亜鉛酸化物、マグネシウム酸化物、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウムまたはこれら混合物を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の水性路面標示塗料用硬化促進剤。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の水性路面標示塗料用硬化促進剤を、水に分散させたことを特徴とする水性路面標示塗料用硬化促進剤分散液。
  4. 合成樹脂エマルション系の水性路面標示塗料において、請求項1又は請求項2に記載の水性路面標示塗料用硬化促進剤によって成膜・固化する合成樹脂エマルションを結合材として含有すること、および、塗料の水素イオン指数(pH)が10以上12以下の範囲にあること、を特徴とする水性路面標示塗料。
  5. 揮発性塩基を含有することにより塗料の水素イオン指数(pH)が10以上12以下の範囲に調整された請求項4に記載の水性路面標示塗料。
  6. 請求項1または請求項2に記載の水性路面標示塗料用硬化促進剤または請求項3に記載の水性路面標示塗料用硬化促進剤分散液を、請求項4または請求項5に記載の水性路面標示塗料と共に路面に散布することを特徴とする水性路面表示塗料の塗布方法。
  7. 請求項1または請求項2に記載の水性路面標示塗料用硬化促進剤または請求項3に記載の水性路面標示塗料用硬化促進剤分散液と、請求項4または請求項5に記載の水性路面標示塗料からなる路面標示塗料セット。
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