JP2008007394A - ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の製造方法およびペロブスカイト型複合酸化物の製造方法 - Google Patents

ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の製造方法およびペロブスカイト型複合酸化物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】一般式ABO3で表されるペロブスカイト型複合酸化物の、ペロブスカイト相に
結晶化していない前駆体を高効率かつ安価に調製する方法、ならびにこの前駆体を用いた結晶化した貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法を提供する。
【解決手段】Aサイトを占める元素それぞれの、酸化物、水酸化物、酸化水酸化物および金属単体の少なくとも1種を含有する原料と、Bサイトを占める元素それぞれの、酸化物、水酸化物、酸化水酸化物および金属単体の少なくとも1種を含有する原料とを、粉砕媒液中で混合粉砕処理することにより上記前駆体が得られる。また、この前駆体と貴金属塩とを溶媒中で攪拌混合し、生成物を500〜1300℃で熱処理することにより、上記貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物が得られる。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子材料、電池材料、触媒材料等の機能性材料として有用なペロブスカイト型複合酸化物の製造方法であって、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体、ペロブスカイト型複合酸化物及び貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法に関するものである。
従来一般式ABO3で表わされるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物(以下、「
ペロブスカイト型複合酸化物」と記す。)の製造方法としては、Aサイトの元素の酸化物とBサイトの元素の酸化物などの固体原料を粉砕混合し、高温加熱により反応させる「固相法」が知られている。
しかし、固相法には、例えば1000℃程度あるいはそれ以上での長時間の高温処理が必要とされること、この高温処理のためペロブスカイト型複合酸化物の比表面積が低下し、活性が低下すること、また、得られるペロブスカイト型複合酸化物の結晶相にペロブスカイト相以外の不純物相が多く混在することなどの問題がある。
また、金属の酸化物等の原料をボールミルにより乾式粉砕混合し、ボールミルの機械的応力の作用によりペロブスカイト相への結晶化を促進させ、加熱処理なく結晶化したペロブスカイト相を得る固相法(特開2002−284531号公報:特許文献1)なども提案されている。しかし、このような方法で得られるすでに結晶化したペロブスカイト型複合酸化物に対しては、後述するような貴金属元素などの他の成分元素をあとから置換固溶させることが困難である。
一方、溶液を原料とする共沈法、アルコキシド法、クエン酸分解法、シアン塩分解法、フリーズドライ法などの液相法により、ペロブスカイト相に結晶化していないペロブスカイト型複合酸化物(「前駆体」ともいう。)を生成させ、この前駆体を固相法におけるよりも低い800℃以下などの温度で熱処理することにより、結晶化したペロブスカイト型複合酸化物を製造する方法も提案されている。
しかし、これらの液相法についても、例えば、Aサイトの元素とBサイトの元素の金属硝酸塩水溶液をアンモニア水で共沈させる共沈法においては、副生物として生成される硝酸アンモニウムを除去するための水洗工程に多大の労力が必要であったり、高価な金属アルコキシドを原料とするアルコキシド法においては、製造コストがかかるなどの問題が見られる。
ところで、近年電子材料、電池材料、触媒材料等の機能性材料においては、一般式ABO3で表わされるペロブスカイト型複合酸化物のAサイトあるいはBサイトに多数の微量
元素を置換固溶させ機能を発現させなければならなくなっている。
ペロブスカイト型複合酸化物の結晶格子中に、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)などの貴金属を固溶させた「貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物」は、例えば、排ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)及び窒素酸化物(NOx)を同時に浄化できる三元触媒として用いることができるなど触媒材料として重要である。
このような貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法としては、上述した液相
法により得られる前駆体を用いる方法、例えば、貴金属以外の元素の金属アルコキシド(アルコキシアルコラート)の有機溶媒溶液と貴金属塩の水溶液とを混合攪拌して前駆体を生成させ、これを500〜800℃程度で焼成する「アルコキシド法」(特開平8−217461号公報:特許文献2)、貴金属以外の元素の鉱酸塩の混合水溶液に沈殿剤を添加し、前駆体の沈殿を生成させ、この沈殿にさらに貴金属塩を添加し、乾燥処理して得られる固形物を400〜700℃で熱処理する「共沈法」(特開2005−179168号公報:特許文献3)、あるいは、貴金属を含む元素の塩化物に水酸化ナトリウムを加え、乾式粉砕処理により前駆体を生成させ、この前駆体を500〜600℃で熱処理後に副生した塩化ナトリウムを水洗除去する方法(特開2005−298251号公報:特許文献4)などが知られている。
しかし、上記貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物のアルコキシド法および共沈法による製造においても、貴金属を含有しないペロブスカイト型複合酸化物のアルコキシド法および共沈法による製造の時と同じ副生成物や原料のコストなどに関する問題点が依然として存在し、また、上記乾式粉砕処理を用いる方法においても、塩化ナトリウムなどの副生物を除去する工程が必要とされるなどの問題点が見られる。
特開2002−284531号公報 特開平8−217461号公報 特開2005−179168号公報 特開2005−298251号公報
本発明は、かかる背景の下になされたものであり、高効率かつ安価に、ペロブスカイト相に結晶化していないペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を調製する方法、ならびにこの前駆体を用いた貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法を提供しようとするものである。
本発明者らは、上述したような問題点を解決すべく鋭意検討を進めた結果、少なくとも、Aサイトを占める元素の酸化物、水酸化物、酸化水酸化物または金属単体の少なくとも1種を含有する原料(a)と、Bサイトを占める元素の酸化物、水酸化物、酸化水酸化物または金属単体の少なくとも1種を含有する原料(b)とを、粉砕溶媒中で混合粉砕処理することにより、水以外の副生物を生成せず、しかも安価で効率的に、ペロブスカイト相に結晶化していない均一かつ微細で高活性なペロブスカイト型複合酸化物の前駆体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記原料(a)および(b)の一部または全部が金属単体である場合は、さらに過酸化水素水などの酸化剤を添加して、混合粉砕処理することが好ましい。このような本発明のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の製造方法は、例えば、Y、La、Ce、Pr、Sm、Gd、Dy、Ybなどの元素がAサイトを占める場合、さらにはAサイトをLa、BサイトをFeが占める場合に好適に用いることができる。
上記前駆体を300℃以上700℃未満の温度で熱処理することにより、ペロブスカイト型複合酸化物の非晶質相を含む前駆体が得られる。また、上記前駆体を400〜1300℃の温度で熱処理することにより、結晶性ペロブスカイト相を含むペロブスカイト型複合酸化物が得られる。
また、上記前駆体に貴金属塩を添加し、酸化雰囲気中500〜1300℃の温度で熱処理することにより、貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物を製造することができる。こ
の貴金属塩としては、貴金属の有機カルボン酸塩および/またはジケトン錯体、例えばパラジウムアセチルアセトナートを好適に用いることができる。
本発明によれば、特殊な機材や高価な原料を用いることなく、ペロブスカイト相に結晶化していないペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を製造することが可能となる。この製造工程においては水以外の副生物を生成しないため、得られるペロブスカイト型複合酸化物を機能性材料として使用する際の性能に影響する場合が多い、未反応物(塩化物原料等)、副生成物、または不純物元素(Cl等)の微量な残存の心配がない。また、このようなことなどから、この前駆体を用いて、結晶化したペロブスカイト型複合酸化物および結晶化した貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物を好適に製造できる。
以下、本発明におけるペロブスカイト型複合酸化物、その前駆体の製造方法、貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法などについて、順次説明する。
ペロブスカイト型複合酸化物
本発明におけるペロブスカイト型複合酸化物は、一般式ABO3で表わされる、ペロブ
スカイト型構造を有する複合酸化物である。上記式中、Aサイトは希土類元素(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)から選ばれる少なくとも1種の希土類元素で占められ、Bサイトはマンガン(Mn)、鉄(Fe)およびコバルト(Co)からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で占められる。
また、本発明における貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物は、上記一般式ABO3
におけるBサイトに、Pd、Rh、Ptからなる群より選ばれる少なくとも1種の貴金属元素を置換固溶させた化合物である。
本発明のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の製造方法および貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法は、上記AサイトがY、La、Ce、Pr、Sm、Gd、Dy、Ybからなる群より選ばれる少なくとも1種の希土類元素で占められた化合物、特に上記AサイトがLaであり、かつBサイトがFeであるペロブスカイト型複合酸化物(LaFeO3)を対象として、好適に使用することができる。
なお、一般式ABO3で表わされるペロブスカイト型複合酸化物のA/B比であるが、
AサイトあるいはBサイトに他の成分元素をあとから置換固溶させようとする量に応じて決定すればよく、A/B比が1に限定されるものではない。
ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の製造方法
本発明において、一般式ABO3におけるAサイトを占める希土類元素の原料(以下「
原料(a)」ともいう。)と、Bサイトを占める元素の原料(以下「原料(b)」ともいう。)とを、粉砕媒液中で混合粉砕処理(以下「湿式粉砕処理」ともいう。)することにより、ペロブスカイト相に結晶化していない、ペロブスカイト型複合酸化物の「前駆体」が生成される。
以下、本発明のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の製造に用いられる原料およびその製造工程などについて、順次説明する。
・原料
上記原料(a)としては、上述したAサイトを占める希土類元素の酸化物、水酸化物、酸化水酸化物および金属単体が挙げられ、これらは結晶質、非晶質のどちらであっても構わない。上記酸化物、水酸化物および酸化水酸化物は、不定比な水和物または結晶水を含
有してもよい。また、これらの酸化物、水酸化物、酸化水酸化物および金属単体は、単独で用いても複数を組み合わせて用いてもよい。
同様に、上記原料(b)としては、上述したBサイトを占める元素の酸化物、水酸化物、酸化水酸化物または金属単体が挙げられ、これらは結晶質、非晶質のどちらであっても構わない。上記酸化物、水酸化物および酸化水酸化物は、不定比な水和物または結晶水を含有してもよい。また、これらの酸化物、水酸化物、酸化水酸化物および金属単体は、単独で用いても複数を組み合わせて用いてもよい。
上記金属単体は、後述する湿式粉砕処理の際に水と反応し、酸化物、水酸化物または酸化水酸化物が生成するため、上記原料(a)および(b)の一部または全部として用いることができる。この反応における水は、後述する粉砕媒液として用いられる水系溶媒の水であってもよいし、原料の一部として酸化水酸化物あるいは水酸化物を使用し、これらの化合物を水の供給源としても用いてもよい。
また、この金属単体と水との反応において、水の酸化性のみを利用して酸化物化、水酸化物化させることも可能であるが、効率化の点から酸化剤として過酸化水素のような酸化剤の使用が推奨される。例えば、30%過酸化水素(H22)水溶液などの酸化剤を、酸化物ないし水酸化物にするために必要な化学量論量の4当量以下程度を添加することが好ましい。
なお、上記原料(a)および(b)の粒径は100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましいが、金属あるいは酸化物の場合には、混合粉砕処理する過程で水和あるいは水酸化物化が起こり、粒径が小さくなるので、最初の粒径が大きくても原料として使用することができる。
・湿式粉砕処理工程
本発明における原料(a)と原料(b)との「湿式粉砕処理」は、通常、混合粉砕機を用いて行われる。この混合粉砕機としては、機械的に粉砕、摩砕の力が働くものであればよく、粉砕容器内に粉砕媒体(例えば、ロッド、シリンダー、ボール、ビーズ)を入れ撹拌して粉砕を行なう転動ボールミル、振動ボールミル、撹拌ボールミル、遊星ボールミル等のボールミルが好適に使用できる。これらボールミルを連続型にした粉砕機(連続型ボールミル)を使用することも推奨される。例えば市販の連続型ボールミルとしては、三井鉱山社製「SCミル」、シンマルエンタープライゼス社製「ダイノーミル」等が挙げられる。また直径1mm以下の非常に小さいボール(ビーズ)を使用できるボールミルなども推
奨される。
また、上記混合粉砕処理は粉砕媒液の存在下に行われるが、この粉砕媒液は湿式粉砕処理時に原料に添加して用いられる。例えば、上記混合粉砕機を用いて湿式粉砕処理する場合は、原料(a)および(b)と共に粉砕容器内に供給すればよい。この粉砕媒液は、一般的には、水と相溶性のある有機溶媒に水を混合した「水系溶媒」であるが、結晶水を含有する酸化物、水酸化物または酸化水酸化物を原料とする場合には、水と相溶性のある有機溶媒だけを粉砕媒液として用いてもよい。
この粉砕媒液に用いられる「水と相溶性のある有機溶媒」としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等)、多価アルコール類(エチレングリコール等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)などが挙げられる。これら有機溶媒は、複数を組み合わせて使用することも可能である。
上記水と相溶性のある有機溶媒については、その比誘電率および粘性が適切なものを用いることにより、水系溶媒中の粉砕処理物の分散性を調整し、粉砕応力を吸収しやすくすることがより望ましい。例えば、比誘電率が適度な範囲にある有機溶媒を用いた場合、上記分散性が高まりすぎることなく、粒子会合体(凝集粒子)の形成が充分なものとなり、熱処理により得られるペロブスカイト型複合酸化物の結晶性が向上する。また、有機溶媒の粘性が適度な範囲にある場合、沈降性の粒子会合体が形成され、粉砕応力がこの粒子会合体に効果的に作用するため、上記結晶性がより向上する。このような好ましい範囲の比誘電率および粘性を有する有機溶媒は、湿式粉砕処理に用いる原料(a)および(b)や処理条件に応じて適宜選択することができるが、例えば、本発明の一態様として、原料(a)としてLa23を、原料(b)としてFeO(OH)を用いて湿式粉砕処理を行う場合は、テトラヒドロフラン、1−ブタノール、2−プロパノール、メチルエチルケトンなどが、熱処理における結晶性の向上などの点から好ましい有機溶媒として挙げられる。
なお、粉砕媒液として、水と相溶性のない有機溶剤(ベンゼン、トルエン、キシレン等)と水とを混合した液体を使用すると、粉砕機の内部に原料粉末が付着してしまい、混合、粉砕の処理効率が大幅に低下するおそれがある。しかし、水と相溶性のない有機溶剤についても、水と相溶性のある有機溶媒と混合して使用することは可能である。
また、上記水系溶媒による水の添加量は、特に限定されるものではないが、湿式粉砕処理により生成する複合水酸化物の水和粒子会合体が、化学的量論組成を満たすような量を添加することがより好ましい。例えば、本発明の一態様として、原料(a)としてLa2
3を、原料(b)としてFeO(OH)を用いて湿式粉砕処理を行う場合、水酸化物とし
て凝集力の強いLa(OH)3・nH2Oが生成し、これにFeO(OH)が混練されつつ強い粉砕応力を受けてLaFeO3の前駆体が生成すると考えられる。ここで、水の添加量を
、複合水酸化物LaFeO3・xH2Oの化学的量論組成であるx=3を満足する量に近づけることにより、前記粒子会合体は良好に発達し、得られた前駆体を熱処理した際のペロブスカイト相への結晶化はより促進される。なお、ここで述べた水の添加量は、酸化物、水酸化物または酸化水酸化物に由来する結晶水が存在する場合は、それを勘案して調整されうるものである。
このような湿式粉砕処理は、混合粉砕機の種類に応じて適宜最適な条件の下に行えばよい。例えば遊星ボールミルを使用する場合には、容器容積100mL当たり、粉砕媒体であるボール(ビーズ)の充填量を15〜60mL、粉砕媒液ならびに原料(a)および(b)の充填量の合計を10〜30mLとし、粉砕媒液と原料との混合物中の原料の濃度は2〜30体積%とすることが好ましい。遊星ボールミルの公転回転数は、1〜10Hz、好ましくは4〜6Hzであり、混合粉砕の処理時間は1〜10時間が好ましい。上記粉砕媒体のボール(ビーズ)としては、直径0.1〜10mm程度のZrO2(ジルコニア)ボール、Si34(窒化ケイ素)ボール、SiC(炭化ケイ素)ボール、WC(タングステンカーバイド)ボール、スチールボール等が好適に使用できる。
湿式粉砕処理における原料(a)と原料(b)との添加量は、例えば、添加される原料に含有される各元素のモル比が、目的とするペロブスカイト型複合酸化物における各元素のモル比と等しくなるような量とすることができる。また、湿式粉砕処理により得られるペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を用いて後述するような貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物を製造する場合は、貴金属元素を除く各元素のモル比により、上記と同様に添加量を勘案することが可能である。
・ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の形成および熱処理工程
以上のような湿式粉砕処理により調製される処理物をろ別し、沈殿物を乾燥させること
により、粉末状のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体が得られる。
上記「ろ別」の方法としては、通常の加圧ろ過、吸引ろ過、遠心分離等の方法を適宜選択すればよく特に限定されない。また上記「乾燥」も通常の通風乾燥、真空乾燥等のいずれの方法でもよい。粉砕媒液以外の塩類等の副生物がないので、蒸発乾固、スプレードライ等の乾燥方法も選択できる。乾燥温度は、特に限定されないが50〜300℃が好ましい。
このようにして得られるペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を300℃以上700℃未満の温度で熱処理した場合、ペロブスカイト型複合酸化物の非晶質相を含む(すなわち一部または全部が結晶性ではない)前駆体の粉末を得ることができる。
また、上記ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を400〜1300℃、好ましくは600〜1200℃の温度で熱処理した場合、結晶性ペロブスカイト相を含む(すなわち一部または全部が結晶性ペロブスカイト相であり、残部は非晶質相であっても他の結晶相であってもあるいはその両方(非晶質相+他の結晶相)であってもよい)ペロブスカイト型複合酸化物の粉末を得ることができる。
ペロブスカイト型複合酸化物の結晶性の様子はX線回折図形により確認することが可能である。上記熱処理前の前駆体および「非晶質相を含む前駆体」のX線回折図形には、ペロブスカイト型複合酸化物(結晶性ペロブスカイト相)のシャープなピークは確認されず、一方「結晶性ペロブスカイト相を含むペロブスカイト型複合酸化物」では、そのピークが明確に現れる。所望の結晶化率などに応じて、熱処理の温度や時間などを適宜調節することができる。
本発明のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体は、以下に述べるように、一般式ABO3で表わされるペロブスカイト型複合酸化物のBサイトに貴金属を置換固溶させて得られ
る貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物の製造に好適に用いることができるが、Aサイトに例えばSrなどの貴金属以外の微量元素を置換固溶させたペロブスカイト型複合酸化物の製造に用いることも可能である。
貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法
本発明では、前述したような湿式粉砕処理により得られるペロブスカイト型複合酸化物の前駆体に貴金属塩を添加、混合したのち、熱処理することにより、貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物を製造することができる。なお、この際に用いられる前駆体は、熱処理していない前駆体でもよく、300℃以上700℃未満の温度で熱処理して得られる非晶質相を含む前駆体でもよい。
上記前駆体と貴金属塩との混合処理は、乾式で混合粉砕機などを使用して行うことも可能であるが、湿式で貴金属塩を混合する方法が好ましく、貴金属塩を溶解する溶媒中で撹拌混合することがより好ましい。さらに、この攪拌混合は、例えば60〜180℃程度の加熱下で行われることが、均一な混合などの点で好ましい。なお、上記攪拌混合および加熱は常法を用いて行うことができる。
上記「貴金属塩」としては、固溶させる貴金属それぞれの、硝酸塩、塩化物、ジニトロジアンミン硝酸塩、ヘキサアンミン塩化物およびヘキサクロロ酸水和物などの無機塩類、あるいはカルボン酸塩およびジケトン錯体などの有機塩類を用いることができる。これらPd、Rh、Ptの貴金属塩は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
前駆体と貴金属塩との混合処理品を500〜1300℃で熱処理する場合、有機塩類の
方が無機塩類に比べて温和に分解し、吹き上がりの心配もないこと、また、無機塩類使用時のような硝酸等の有害な腐食性ガスの発生もなく、クリーンな条件での製造が可能となることなどから、本発明では、貴金属塩としてカルボン酸塩および/またはジケトン錯体を用いることが好ましい。
上記カルボン酸塩としては、酢酸塩、プロピオン酸塩などが挙げられる。また、上記ジケトン錯体としては、一般式R1COCH2COR2[式中、R1及びR2は、同一でも異なっていてもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの、炭素数1〜4のアルキル基を示す。]で示されるジケ
トン化合物から形成されるPd、Rh、Ptの金属キレート錯体が挙げられる。具体的には、パラジウムアセチルアセトナート[Pd(CH3COCHCOCH3)2]、ロジウムアセ
チルアセトナート[Rh(CH3COCHCOCH3)3]、白金アセチルアセトナート[Pt(
CH3COCHCOCH3)2]などが挙げられる。
本発明の貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法は、貴金属塩としてパラジウムアセチルアセトナートを使用し、パラジウム固溶ペロブスカイト型複合酸化物を製造する場合に好適に用いることができる。
貴金属塩の添加量は、Bサイトにおける置換固溶の割合などに応じて適宜調節することが可能である。一例として、Pd固溶ペロブスカイト型複合酸化物[La1.00Fe1-xPdx3.00](式中、xは例えば0.005以上0.2以下)を製造する場合、上述したような湿式粉砕処理工程において添加された原料(b)に含有されるFeと、貴金属塩に含有されるPdとのモル比が1−x:xとなる量で、これらの金属塩を添加することができる。
また、貴金属塩を溶解させる溶媒は特に限定されないが、貴金属塩が無機塩類の場合は水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど、有機塩類の場合はアセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの有機溶媒が好適であり、適量を用いればよい。これらの溶媒は、複数を組み合わせて使用してもよい。
以上のようなペロブスカイト型複合酸化物の前駆体と貴金属との混合処理により得られる混合物、例えば、スラリーから溶媒を除去し、さらに乾固、乾燥させて得られる混合物粉末を、酸化雰囲気中500〜1300℃の温度で熱処理することにより、貴金属を結晶格子中に固溶した、貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物が生成される。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載のみに何ら制限されるものではない。
(酸化水酸化鉄粉末の調製)
濃度3.5mol/Lのアンモニア水1L中に濃度1mol/Lの硝酸第2鉄水溶液1L
を撹拌しながら氷温下で滴下した。この溶液を氷温下で16時間熟成後、ろ過し、沈殿物を200℃で20時間真空乾燥することにより非晶質酸化水酸化鉄[FeO(OH)]の粉末を得た。
(混合粉砕処理)
栗本鐵工所社製遊星ボールミル(窒化珪素製ポット、容積480mL)に、原料粉末La2313.42g、前記調製により得られた非晶質酸化水酸化鉄[FeO(OH)]7.32g、2mmφ東ソー社製YTZボール(ジルコニアボール)192mL、アセトン75mLおよび水5mLを充填し、公転及び自転回転数5Hzで3時間の湿式粉砕処理を行なった。処理物をろ過し、沈殿物を80℃で12時間、真空乾燥させ、LaFeO3の複合酸
化物の前駆体を得た。
このLaFeO3の複合酸化物の前駆体を大気中400℃で2時間の熱処理をすること
により、LaFeO3の複合酸化物の非晶質相を含む前駆体粉末を得た。
また、このLaFeO3の複合酸化物の前駆体を大気中700℃で2時間の熱処理をす
ることにより、結晶性ペロブスカイト相を含むLaFeO3の複合酸化物粉末を得た。
図1に、これら前駆体およびその熱処理により生成された粉末の、X線回折図形を示す。熱処理温度80℃および400℃のラインはLaFeO3のピークを持たず、これらが
「前駆体」および「非晶質相を含む前駆体粉末」であることを示している。また、熱処理温度700℃のラインはLaFeO3の強いピークを示しており(○印)、「結晶性ペロ
ブスカイト相を含むLaFeO3の複合酸化物粉末」が得られたことを示している。
栗本鐵工所社製遊星ボールミル(窒化珪素製ポット、容積480mL)に、原料粉末La2313.42g、前記実施例1において調製された非晶質酸化水酸化鉄[FeO(OH)]3.66g、金属鉄[Fe]2.30g、2mmφ東ソー社製YTZボール192mL、ア
セトン75mLおよび30%過酸化水素水5mLを充填し、公転及び自転回転数5Hzで3時間の湿式粉砕処理を行なった。処理物をろ過し、沈殿物を80℃で12時間、真空乾燥させ、LaFeO3の複合酸化物の前駆体を得た。
このLaFeO3の複合酸化物の前駆体を大気中400℃で2時間の熱処理をすること
により、LaFeO3の複合酸化物の非晶質相を含む前駆体粉末を得た。
また、上記LaFeO3の複合酸化物の前駆体を大気中700℃で2時間の熱処理をす
ることにより、結晶性ペロブスカイト相を含むLaFeO3の複合酸化物粉末を得た。
図2にこれら得られた粉末のX線回折図形を示す。図1の場合と同様に、「前駆体」、「非晶質相を含む前駆体粉末」および「結晶性ペロブスカイト相を含むLaFeO3の複
合酸化物粉末」が得られたことを裏付けている。
栗本鐵工所社製遊星ボールミル(窒化珪素製ポット、容積480mL)に、原料粉末La2313.42g、前記実施例1において調製された非晶質酸化水酸化鉄[FeO(OH)]6.96g、2mmφ東ソー社製YTZボール192mL、アセトン75mLおよび水5mLを充填し、公転及び自転回転数5Hzで3時間の処理を行なった。処理物をろ過し、沈殿物を80℃で12時間、真空乾燥させ、LaFeO3の複合酸化物の前駆体22.55gを得た。
次いで、この前駆体22.55gとパラジウムアセチルアセトナート[Pd(CH3COCHCOCH3)2]1.255gとトルエン400gとを丸底フラスコに入れ、攪拌機(翼)
、マントルヒーターおよび冷却管を用いて加熱還流下2時間の撹拌混合を行ない、その後溶媒を留去して粉末を得た。得られた粉末は、80℃で12時間乾燥後、大気中800℃で1時間の熱処理を行ない、Pd固溶ペロブスカイト型複合酸化物[La1.00Fe0.95
0.053.00]粉末20.21gを得た。
図3に、得られたPd固溶ペロブスカイト型複合酸化物粉末のX線回折図形を示す。PdまたはPdO等、遊離したPdに由来するピークは検出されず、得られたペロブスカイト型複合酸化物にPdが置換固溶されていることが示されている。
栗本鐵工所社製遊星ボールミル(窒化珪素製ポット、容積480mL)に、原料粉末La2313.42g、前記実施例1において調製された非晶質酸化水酸化鉄[FeO(OH)]6.96g、2mmφ東ソー社製YTZボール192mL、アセトン75mLおよび水5mLを充填し、公転及び自転回転数5Hzで3時間の処理を行なった。処理物をろ過し、沈殿物を80℃で12時間、真空乾燥させ、LaFeO3の複合酸化物の前駆体22.55gを得た。
このLaFeO3の複合酸化物の前駆体を大気中400℃で1時間の熱処理をすること
により、LaFeO3の複合酸化物粉末の非晶質相を含む前駆体粉末20.93gを得た。
次いで、このLaFeO3の複合酸化物の非晶質相を含む前駆体粉末20.93gとパラジウムアセチルアセトナート[Pd(CH3COCHCOCH3)2]1.255gとトルエン400gとを丸底フラスコに入れ、攪拌機(翼)、マントルヒーターおよび冷却管を用いて加熱還流下2時間の撹拌混合を行ない、その後溶媒を留去して粉末を得た。得られた粉末は、80℃で12時間乾燥後、大気中800℃で1時間の熱処理を行ない、Pd固溶ペロブスカイト型複合酸化物[La1.00Fe0.95Pd0.053.00]粉末20.21gを得た。
図4に、得られたPd固溶ペロブスカイト型複合酸化物粉末のX線回折図形を示す。図3の場合と同様に、Pdが置換固溶されたペロブスカイト型複合酸化物が得られたことを示している。
栗本鐵工所社製遊星ボールミル(窒化珪素製ポット、容積480mL)に、原料粉末La2313.42g、前記実施例1において調製された非晶質酸化水酸化鉄[FeO(OH)]7.32g、2mmφ東ソー社製YTZボール(ジルコニアボール)192mLと、それぞれ表1に示す6種類の有機溶媒82.7mLおよび水3.5mLを充填し、公転及び自転回転数5Hzで3時間の湿式粉砕処理を行なった。処理物をろ過し、沈殿物を85℃で12時間、真空乾燥させ、6種類のLaFeO3の複合酸化物の前駆体を得た。
これらLaFeO3の複合酸化物の前駆体を大気中400℃で0.5時間の熱処理をすることにより、LaFeO3の複合酸化物の非晶質相を含む前駆体粉末を得た。
また、これらLaFeO3の複合酸化物の前駆体を大気中700℃で0.5時間の熱処理をすることにより、結晶性ペロブスカイト相を含むLaFeO3の複合酸化物粉末を得た
。表1に700℃で0.5時間の熱処理で得られた粉末の比表面積値を示す。
図5から図7に、これら前駆体およびその熱処理により生成した粉末の、X線回折図形を示す。図5は熱処理温度85℃、図6は400℃のX線回折図形を示し、LaFeO3
のピークを持たず、これらが「前駆体」および「非晶質相を含む前駆体粉末」であることを示している。また、図7は熱処理温度700℃のX線回折図形を示し、LaFeO3
強いピークを示しており(○印)、「結晶性ペロブスカイト相を含むLaFeO3の複合
酸化物粉末」が得られたことを示している。これらのうち、MEK(メチルエチルケトン)、i−PrOH(2−プロパノール)、n−BuOH(1−ブタノール)およびTHF(テトラヒドロフラン)のX線回折図形におけるLaFeO3のピークは、DMSO(ジ
メチルスルホキシド)およびi−PrOH(2−プロパノール)と比較してより明瞭であり、得られたLaFeO3の結晶性がより高いことを示している。
Figure 2008007394
(非晶質酸化鉄粉末の調製)
濃度3.5mol/Lのアンモニア水1L中に濃度1mol/Lの硝酸第2鉄水溶液1L
を撹拌しながら氷温下で滴下した。この溶液を氷温下で16時間熟成後、ろ過し、沈殿物を25時間凍結乾燥後、120℃で17時間の通風乾燥、150℃で5時間の真空乾燥を行ない非晶質酸化鉄の水和物[Fe23・0.66H2O]の粉末を得た。
(混合粉砕処理)
栗本鐵工所社製遊星ボールミル(窒化珪素製ポット、容積480mL)に、原料粉末Ln23(Ln;La,Sm,Gd,Dy,Yb)あるいはPr611と、前記調製により
得られた非晶質酸化鉄の水和物[Fe23・0.66H2O]とアセトンおよび水を表2に示す重量で充填し、更に2mmφ東ソー社製YTZボール(ジルコニアボール)192mLを加え、公転及び自転回転数6Hzで3時間の湿式粉砕処理を行なった。処理物をろ過し、沈殿物を85℃で12時間、真空乾燥させ、5種類のLnFeO3あるいはPrFe
3の複合酸化物の前駆体を得た。
これらLnFeO3あるいはPrFeO3の複合酸化物の前駆体を大気中400℃で1時間の熱処理をすることにより、LnFeO3あるいはPrFeO3の複合酸化物の非晶質相を含む前駆体粉末を得た。
また、これらLnFeO3あるいはPrFeO3の複合酸化物の前駆体を大気中700℃で1時間の熱処理をすることにより、結晶性ペロブスカイト相を含むLnFeO3あるい
はPrFeO3の複合酸化物粉末を得た。
これら前駆体およびその熱処理により生成した粉末の、比表面積値を表3に,X線回折図形を図8から図10に示す。
図8は熱処理温度85℃、図9は400℃のX線回折図形を示し、LnFeO3あるい
はPrFeO3のピークを持たず、これらが「前駆体」および「非晶質相を含む前駆体粉
末」であることを示している。また、図10は熱処理温度700℃のX線回折図形を示し,LnFeO3あるいはPrFeO3の強いピークを示しており(○印)、「結晶性ペロブスカイト相を含むLnFeO3あるいはPrFeO3の複合酸化物粉末」が得られたことを示している。
Figure 2008007394
Figure 2008007394
栗本鐵工所社製遊星ボールミル(窒化珪素製ポット、容積480mL)に、原料粉末Pr61113.91gと、前記調製(実施例6)により得られた非晶質酸化鉄の水和物[Fe23・0.66H2O]3.50g、金属鉄[Fe]2.28gとアセトン79.3mLお
よび水5.7mLを充填し、更に2mmφ東ソー社製YTZボール(ジルコニアボール)
192mLを加え、公転及び自転回転数6Hzで3時間の湿式粉砕処理を行なった。処理物をろ過し、沈殿物を85℃で12時間、真空乾燥させ、PrFeO3の複合酸化物の前
駆体を得た。
このPrFeO3の複合酸化物の前駆体を大気中400℃で1時間の熱処理をすること
により、PrFeO3の複合酸化物の非晶質相を含む前駆体粉末を得た。
また、このPrFeO3の複合酸化物の前駆体を大気中700℃で1時間の熱処理をす
ることにより、結晶性ペロブスカイト相を含むPrFeO3の複合酸化物粉末を得た。
図11に、これら前駆体およびその熱処理により生成した粉末の、X線回折図形を示す。
熱処理温度85℃および400℃のラインはPrFeO3のピークを持たず、これらが
「前駆体」および「非晶質相を含む前駆体粉末」であることを示している。また、熱処理温度700℃のラインはPrFeO3の強いピークを示しており(○印)、「結晶性ペロ
ブスカイト相を含むLaFeO3の複合酸化物粉末」が得られたことを示している。
栗本鐵工所社製遊星ボールミル(ステンレスポット、容積420mL)に、原料粉末Laと、MnO、Mn、CoあるいはCo(OH)と、アセトンおよび水あるいは30%過酸化水素水とを表4に示す重量で充填し、更に2mmφ東ソー社製YTZボール(ジルコニアボール)168mLを加え、公転及び自転回転数6Hzで3時間の湿式粉砕処理を行なった。処理物をろ過し、沈殿物を85℃で12時間、真空乾燥させ、4種類のLaMOの複合酸化物の前駆体を得た。
これらLaMO3の複合酸化物の前駆体を大気中400℃で1時間の熱処理をすること
により、LaMO(M;Mn,Co)の複合酸化物の非晶質相を含む前駆体粉末を得た。
また、これらLaMOの複合酸化物の前駆体を大気中800℃で1時間の熱処理をすることにより、結晶性ペロブスカイト相を含むLaMOの複合酸化物粉末を得た。
これら前駆体およびその熱処理により生成した粉末の、比表面積値を表5に、X線回折図形を図12から図14に示す。
図12は熱処理温度85℃、図13は400℃のX線回折図形を示し、LaMOのピークを持たず、これらが「前駆体」および「非晶質相を含む前駆体粉末」であることを示している。また、図14は熱処理温度800℃のX線回折図形を示し、LaMOの強いピークを示しており(○印)、「結晶性ペロブスカイト相を含むLaMOの複合酸化物粉末」が得られたことを示している。
Figure 2008007394
Figure 2008007394
実施例1において得られた前駆体およびその熱処理により生成された粉末のX線回折図形。 実施例2において得られた前駆体およびその熱処理により生成された粉末のX線回折図形。 実施例3において得られたPd固溶ペロブスカイト型複合酸化物粉末のX線回折図形。 実施例4において得られたPd固溶ペロブスカイト型複合酸化物粉末のX線回折図形。 実施例5において得られた6種類の前駆体のX線回折図形。 実施例5において得られた6種類の前駆体のそれぞれを400℃で熱処理することにより生成された、非晶質相を含む前駆体粉末のX線回折図形。 実施例5において得られた6種類の前駆体のそれぞれを700℃で熱処理することにより生成された、結晶性ペロブスカイト相を含むLaFeO3の複合酸化物粉末のX線回折図形。 実施例6において得られた6種類の前駆体のX線回折図形。 実施例6において得られた6種類の前駆体のそれぞれを400℃で熱処理することにより生成された、非晶質相を含む前駆体粉末のX線回折図形。 実施例6において得られた6種類の前駆体のそれぞれを700℃で熱処理することにより生成された、結晶性ペロブスカイト相を含むLnFeO3あるいはPrFeO3の複合酸化物粉末のX線回折図形。 実施例7において得られたPrFeO3の複合酸化物の前駆体およびその熱処理により生成された粉末のX線回折図形。 実施例8において得られた4種類の前駆体のX線回折図形。 実施例8において得られた4種類の前駆体のそれぞれを400℃で熱処理することにより生成された、非晶質相を含む前駆体粉末のX線回折図形。 実施例8において得られた4種類の前駆体のそれぞれを800℃で熱処理することにより生成された、結晶性ペロブスカイト相を含むLaMO(M;Mn,Co)の複合酸化物粉末のX線回折図形。

Claims (11)

  1. 一般式ABO(式中、Aは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素で占められ、Bはマンガン、鉄、コバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で占められる。)で表わされるペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の製造方法であって、
    少なくとも、Aサイトを占める元素の酸化物、水酸化物、酸化水酸化物および金属単体の少なくとも1種を含有する原料(a)と、Bサイトを占める元素の酸化物、水酸化物、酸化水酸化物および金属単体の少なくとも1種を含有する原料(b)とを、水系溶媒中で混合粉砕処理することを特徴とする、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の製造方法。
  2. 一部または全部が金属単体である上記原料(a)および(b)を水系溶媒中で混合粉砕処理をする際に酸化剤を使用することを特徴とする、請求項1に記載のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の製造方法。
  3. 上記酸化剤が過酸化水素水であることを特徴とする、請求項2に記載のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の製造方法。
  4. 上記Aサイトを占める元素がY、La、Ce、Pr、Sm、Gd、Dy、Ybからなる群より選ばれる少なくとも1種の希土類元素であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の製造方法。
  5. 上記Aサイトを占める元素がLaであり、上記Bサイトを占める元素が鉄であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を300℃以上700℃未満の温度で熱処理することを特徴とする、ペロブスカイト型複合酸化物の非晶質相を含む前駆体の製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を400〜1300℃の温度で熱処理することを特徴とする、結晶性ペロブスカイト相を含むペロブスカイト型複合酸化物の製造方法。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体に貴金属塩を添加し、酸化雰囲気中500〜1300℃の温度で熱処理することを特徴とする貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法。
  9. 請求項6に記載のペロブスカイト型複合酸化物の非晶質相を含む前駆体に貴金属塩を添加し、酸化雰囲気中500〜1300℃の温度で熱処理することを特徴とする貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法。
  10. 上記貴金属塩が、貴金属の有機カルボン酸塩および/またはジケトン錯体であることを特徴とする、請求項8または9に記載の貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法。
  11. 上記貴金属塩がパラジウムアセチルアセトナートであることを特徴とする、請求項10に記載の貴金属固溶ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法。
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