JP2008004438A - 電池用セパレータ、およびリチウム二次電池 - Google Patents

電池用セパレータ、およびリチウム二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 エネルギー密度の低下を可及的に抑制し、安全性や信頼性に優れたリチウム二次電池を構成し得るセパレータ、および該セパレータを有するリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】 少なくとも、150℃で実質的に変形しない繊維状物と、微粒子で構成される電池用セパレータであって、上記微粒子が、電気化学的に安定な板状粒子であることを特徴とする電池用セパレータか、または電気化学的に安定な板状粒子を含有する多孔質層として、電極と一体化されていることを特徴とする電池用セパレータと、これらの電池用セパレータを有するリチウム二次電池である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、安価で高温時の寸法安定性に優れたセパレータ、およびこれを用いてなり、高温環境下においても安全なリチウム二次電池に関するものである。
非水電池の一種であるリチウムイオン電池は、エネルギー密度が高いという特徴から、携帯電話やノート型パーソナルコンピューターなどの携帯機器の電源として広く用いられている。携帯機器の高性能化に伴ってリチウムイオン電池の高容量化が更に進む傾向にあり、安全性の確保が重要となっている。
現行のリチウムイオン電池では、正極と負極の間に介在させるセパレータとして、例えば厚みが20〜30μm程度のポリオレフィン系の多孔性フィルムが使用されている。また、セパレータの素材としては、電池の熱暴走温度以下でセパレータの構成樹脂を溶融させて空孔を閉塞させ、これにより電池の内部抵抗を上昇させて短絡の際などに電池の安全性を向上させる所謂シャットダウン効果を確保するため、融点の低いポリエチレンが適用されることがある。
ところで、こうしたセパレータとしては、例えば、多孔化と強度向上のために一軸延伸あるいは二軸延伸したフィルムが用いられている。このようなセパレータは、単独で存在する膜として供給されるため、作業性などの点で一定の強度が要求され、これを上記延伸によって確保している。しかし、このような延伸フィルムでは結晶化度が増大しており、シャットダウン温度も、電池の熱暴走温度に近い温度にまで高まっているため、電池の安全性確保のためのマージンが十分とは言い難い。
また、上記延伸によってフィルムにはひずみが生じており、これが高温に曝されると、残留応力によって収縮が起こるという問題がある。収縮温度は、融点、すなわちシャットダウン温度と非常に近いところに存在する。このため、ポリオレフィン系の多孔性フィルムセパレータを使用するときには、充電異常時などに電池の温度がシャットダウン温度に達すると、電流を直ちに減少させて電池の温度上昇を防止しなければならない。空孔が十分に閉塞せず電流を直ちに減少できなかった場合には、電池の温度は容易にセパレータの収縮温度にまで上昇するため、内部短絡による発火の危険性があるからである。
このような熱収縮による短絡を防ぐために、耐熱性の樹脂を用いた微多孔膜や不織布をセパレータとして用いる方法が提案されている。例えば特許文献1には、全芳香族ポリアミドの微多孔膜を用いたセパレータが、特許文献2にはポリイミド多孔膜を用いたセパレータが開示されている。また、特許文献3には、ポリアミド不織布を用いたセパレータ、特許文献4にはアラミド繊維を用いた不織布を基材としたセパレータ、特許文献5にはポロプロピレン(PP)不織布を用いたセパレータ、特許文献6にはポリエステル不織布を用いたセパレータに関する技術が開示されている。
しかし、ポリアミドやポリイミドといった耐熱性の樹脂を用いた微多孔膜は高温での寸法安定性に優れ、薄型化が可能であるが高コストである。また、ポリアミドやアラミド繊維といった耐熱性の繊維を用いた不織布も、寸法安定性に優れるが、高コストである。PP繊維やポリエステル繊維を用いた不織布は安価であり、高温での寸法安定性に優れるが、不織布のままでは孔径が大きすぎるために、例えば30μm以下の厚みでは、正負極間の接触による短絡や、リチウムデンドライト発生による短絡を十分に防止することができない。
また、安価な材料で構成される不織布に種々の加工を施してセパレータとして用いる技術も提案されている。例えば、特許文献7には、PP不織布にポリエチレン(PE)の微粒子を塗布して用いる方法が、特許文献8にはポリエステル不織布にワックスを被覆させて用いる方法が、特許文献9にはポリエステル不織布とPP不織布の間にPE微多孔膜を接面させて用いる方法が、そして特許文献10にはPP不織布に無機微粒子や有機微粒子を混合させて用いる方法が開示されている。
しかしながら、無機微粒子を不織布に混合することでは、無機微粒子を均一に緻密に充填しないとリチウムデンドライト発生による短絡を完全に防止することは困難であり、不織布のような不均一性の大きな基材に無機微粒子を均一に緻密に充填することは困難である。また、PEなどの有機微粒子を用いた場合には、無機微粒子を用いた場合と同様の問題が生じ得る他、PEなどが軟らかいために、セパレータを薄くした場合に硬い正極材料と負極材料の間の絶縁を十分に保つことができずに短絡が発生する場合がある。
この他、電極上に無機微粒子などの電気化学的に安定な微粒子を塗布することでセパレータを構成する技術も提案されている(特許文献11、12)。
しかしながら、電池のエネルギー密度を上げるためにセパレータの厚みを薄くしようとすると、正極と負極の間の絶縁性を十分に保つことができないために、短絡を生じ易くなる。
特開平5−335005号公報 特開2000−306568号公報 特開平9−259856号公報 特開平11−40130号公報 特開2001−291503号公報 特開2003−123728号公報 特開昭60−136161号公報 特開昭62−283553号公報 特開平1−258358号公報 特開2003−22843号公報 国際公開97/8763号パンフレット 特開2000−149906号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エネルギー密度の低下を可及的に抑制し、安全性や信頼性に優れたリチウム二次電池を構成し得るセパレータ、および該セパレータを有するリチウム二次電池を提供することにある。
上記目的を達成し得た本発明の電池用セパレータは、下記の(1)または(2)の構成を有することを特徴とするものである。
(1)少なくとも、150℃で実質的に変形しない繊維状物と、微粒子で構成される電池用セパレータであって、上記微粒子が、電気化学的に安定な板状粒子である;
(2)電気化学的に安定な板状粒子を含有する多孔質層として、電極と一体化されている。
なお、本発明でいう上記繊維状物における「150℃で実質的に変形しない」とは、上記繊維状物により構成され、セパレータを形成するためのシート状物の形態で、軟化などによる実質的な寸法変化が生じないことをいい、具体的には、150℃(またはそれ以下の温度)でのシート状物の長さの変化、すなわち室温での長さに対する収縮の割合(収縮率)が5%以下のものをいう。また、本発明でいう上記板状粒子における「電気化学的に安定な」とは、電池の充放電の際に化学変化が生じないことを意味する。
また、少なくとも、Liを吸蔵放出可能な活物質を含有する負極と、Liを吸蔵放出可能な活物質を含有する正極と、本発明の電池用セパレータを備えているリチウム二次電池も本発明に包含される。
本発明によれば、エネルギー密度の低下を可及的に抑制し、安全性や信頼性に優れたリチウム二次電池を提供することができる。
本発明のセパレータの実施形態の内(1)は、150℃で実質的に変形しない繊維状物(A)を構成要素として含むものであり、更に電気化学的に安定な板状粒子(B)を含有しているものである。また、別の実施形態(2)は、電気化学的に安定な板状粒子(B)を含有する多孔質層として電極と一体化されていることを特徴とするものである。
(1)の実施形態における上記板状粒子(B)と、(2)の実施形態における上記板状粒子(B)とは、同じものが使用できる。本発明の電池用セパレータでは、(1)の実施形態、(2)の実施形態のいずれにおいても、上記板状粒子(B)を含有することで、該電池用セパレータが使用されたリチウム二次電池において、リチウムデンドライトの生成に起因する短絡の発生を防止して、該電池の信頼性を向上させることができる。その理由は必ずしも明らかではないが、以下のようであると推測される。図1に、本発明のセパレータについて、FIB(集束イオンビーム)で加工した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した写真を示している。図1中に、上記板状粒子(B)、繊維状物(A)および繊維状物(A)で構成されるシート状物の空隙を示しているが、板状粒子(B)については代表的な部分のみ示しており、繊維状物(A)や空隙以外の見えている粒子は全て板状粒子(B)である。なお、図1の上部にタングステンが存在しているが、これは測定時に保護皮膜として設けたものである。図1のセパレータでは、繊維状物(A)の空隙内に上記板状粒子(B)が存在しており、更にその平板面がセパレータの面に略平行となるように配向している。このように、セパレータ中において、上記板状粒子(B)を、その平板面がセパレータの面に略平行となるように配向させることで、該板状粒子(B)同士が平板面の一部で重なるように配置される。そのため、セパレータの片面から他面に向かう空隙(貫通孔)が、直線ではなく曲折した形で形成されると考えられ、これにより、リチウムデンドライトがセパレータを貫通することを防止できることから、短絡の発生が抑制される。
また、(1)の実施形態の場合におけるセパレータの主体をなす繊維状物(A)は、150℃でも実質的に変形しないために、例えば130℃以下の温度でセパレータの構成材料の一部が溶融してセパレータの空隙を塞ぎ、セパレータ中のイオンの移動を遮断する機能(所謂シャットダウン機能)を付与させておいた場合(詳しくは後述する)、電池内での発熱などによってシャットダウンが起こった後、更に20℃以上セパレータの温度が上昇しても、その形状が安定に保たれる。他方、シャットダウン機能を付与していない場合でも、150℃の温度においても実質的に変形せず、その形状が保持される。そのため、例えば従来のPE製多孔性フィルムで構成されるセパレータで生じていた熱収縮に起因する短絡の発生が防止できることから、電池内が異常加熱した際の安全性が確保できる。
また、(2)の実施形態においても、板状粒子(B)を含有するセパレータが、多孔質層として電極と密着し固定されているために、例えば従来のPE製多孔性フィルムで構成されるセパレータで生じていた熱収縮に起因する短絡の発生が防止できることから、電池内が異常加熱した際の安全性が確保できる。
このように、(1)の実施形態、(2)の実施形態のいずれにおいても、リチウムデンドライトの発生に起因する短絡の防止、および高温時におけるセパレータの熱収縮に起因する短絡の防止を、例えばセパレータを厚くする以外の構成で達成できるため、本発明のセパレータでは、その厚みを比較的薄くすることが可能であり、これを用いた電池のエネルギー密度の低下を可及的に抑制することもできる。
本発明に係る板状粒子(B)は、板状、すなわち平板面を有する形状のものであり、具体的には、粒子の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比の平均値が、0.3以上3以下である。なお、板状粒子(B)の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比の平均値は、0.5以上であることが好ましく、また、2以下であることが好ましい。板状粒子(B)の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比が大きすぎると、板状粒子の形状が針状に近づき、平板面がセパレータの面方向に並んでリチウムデンドライトの発生に起因する短絡を防止する効果が小さくなることがある。
また、板状粒子(B)の大きさとしては、その乾燥時における粒径がセパレータの厚みより小さければ良いが、セパレータの厚みの4/3〜1/100の平均粒径を有することが好ましく、具体的には、平均粒径が、0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上であって、10μm以下、より好ましくは5μm以下であることが望ましい。板状粒子(B)の平均粒径が小さすぎると、板状粒子(B)同士の隙間が小さくなることによってセパレータ中のイオンの伝導パスが長くなって電池特性が低下することがあり、大きすぎると、板状粒子(B)同士の隙間が大きくなって、リチウムデンドライトの発生に起因する短絡を防止する効果が小さくなることがある。
更に、板状粒子(B)のアスペクト比(板状粒子中の最大長さと板状粒子の厚みの比)は、5以上、より好ましくは10以上であって、100以下、より好ましくは50以下であることが望ましい。アスペクト比が小さすぎると、リチウムデンドライトの発生に起因する短絡を防止する効果が小さくなることがあり、大きすぎると、板状粒子の比表面積が大きくなりすぎるために取り扱いが困難となることがある。
なお、上記の板状粒子の平均粒径は、レーザー散乱粒度分布計(HORIBA社製「LA−920」)を用い、板状粒子が膨潤しない媒体(例えば水)に分散させて測定した数平均粒子径である。また、上記の板状粒子の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比の平均値は、例えば、SEMにより撮影した画像を、画像解析することにより求めることができる。更に上記の板状粒子のアスペクト比も、SEMにより撮影した画像を、画像解析することにより求めることができる。
また、セパレータ中における板状粒子(B)の存在形態は、上記の通り、平板面がセパレータの面に対して略平行であることが好ましく、セパレータの表面近傍での平均角度が30°以下であることが好ましい。ここでいう「表面近傍」とは、セパレータの表面から、全体厚みに対して10%以内の領域を意味している。
板状粒子(B)としては、電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、更に後述する電解液や、セパレータ製造の際に使用する液状組成物に用いる溶媒に安定であり、高温状態で電解液に溶解しないものであれば、特に制限はない。具体的な板状粒子(B)の構成材料としては、酸化鉄、SiO、Al、TiO、BaTiO、ZrO、CeOなどの酸化物微粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物微粒子;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶微粒子;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶微粒子;ベントナイト、モンモリロナイトなどの粘土微粒子、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、タルク、セリサイトなどの鉱物資源由来物質あるいはそれらの人造物;などが挙げられる。また、金属微粒子;SnO、スズ−インジウム酸化物(ITO)などの酸化物微粒子;カーボンブラック、グラファイトなどの炭素質微粒子;などの導電性微粒子の表面を、電気絶縁性を有する材料[例えば、上記の板状粒子(B)を構成できる非電気伝導性の材料や、後記の粒状微粒子(C)に該当する架橋高分子微粒子、耐熱性高分子微粒子を構成する材料など]で表面処理することで、電気絶縁性を持たせた微粒子であってもよい。
上記のような材料で構成される板状粒子としては、各種市販品が挙げられ、例えば、洞海化学工業社製「サンラブリー」(SiO)、石原産業社製「NST−B1」の粉砕品(TiO)、堺化学工業社製の板状硫酸バリウム「Hシリーズ」、「HLシリーズ」、林化成社製「ミクロンホワイト」(タルク)、林化成社製「ベンゲル」(ベントナイト)、河合石灰社製「BMM」や「BMT」(ベーマイト)、河合石灰社製「セラシュールBMT−B」[アルミナ(Al)]、キンセイマテック社製「セラフ」(アルミナ)、斐川鉱業社製「斐川マイカ Z−20」(セリサイト)などが入手可能である。この他、SiO、Al、ZrO、CeOについては、特開2003−206475号公報に開示の方法により作製することができる。
上記の中でも、AlOOHまたはAl・HOで示される化合物を主成分(例えば80質量%以上)とする板状粒子を用いるのが好的であり、ベーマイトを用いるのが特に好ましい。板状粒子(B)は、これらの構成材料の1種のみを有していてもよく、2種以上を有していても構わない。
(1)の実施形態、(2)の実施形態のいずれにおいても、板状粒子(B)は、セパレータの構成成分(全固形分)の全体積中、30体積%以上、より好ましくは40体積%以上であることが望ましい。板状粒子(B)の体積比率をこのようにすることで、上記の短絡防止機能をより確実なものとすることができる。なお、板状粒子(B)の体積比率の上限は、例えば80体積%であることが好ましい。
本発明のセパレータの(1)の実施形態のより具体的な態様としては、下記(1−1)および(1−2)の態様が挙げられる。
(1−1)の態様に係るセパレータは、繊維状物(A)が多数集合して、これらのみによりシート状物を形成しているもの、例えば織布、不織布(紙を含む)といった形態のものを用い、このシート状物中に板状粒子(B)を含有させたものである。
また、(1−2)の態様に係るセパレータは、繊維状物(A)と板状粒子(B)が均一に分散された形でシートを形成しているものである。
なお、(1−1)の態様と(1−2)の態様をあわせた形態、すなわち、繊維状物(A)で構成される独立したシート状物中に、繊維状物(A)と板状粒子(B)が分散されている形態を有していてもよい。
(1)の態様に係る繊維状物(A)は、150℃で実質的に変形せず、電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、更に下記に詳述する電解液や、セパレータ製造の際に使用する板状粒子(B)を含有する液状組成物に用いる溶媒に安定であれば、特に制限はない。なお、本発明でいう「繊維状物」とは、アスペクト比[長尺方向の長さ/長尺方向に直交する方向の幅(直径)]が4以上のものを意味している。本発明に係る繊維状物(A)のアスペクト比は、10以上であることが好ましい。
繊維状物(A)の具体的な構成材料としては、例えば、セルロース、セルロース変成体(カルボキシメチルセルロースなど)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル[ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)など]、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアラミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどの樹脂;ガラス、アルミナ、シリカなどの無機材料(無機酸化物);などが挙げられる。繊維状物(A)は、これらの構成材料の1種を含有していてもよく、2種以上を含有していても構わない。また、繊維状物(A)は、構成成分として、上記の構成材料の他に、必要に応じて、公知の各種添加剤(例えば、樹脂である場
合には酸化防止剤など)を含有していても構わない。
繊維状物(A)の直径は、セパレータの厚み以下であれば良いが、例えば、0.01〜5μmであることが好ましい。径が大きすぎると、繊維状物同士の絡み合いが不足して、これらで構成されるシート状物の強度、延いてはセパレータの強度が小さくなって取り扱いが困難となることがある。また、径が小さすぎると、セパレータの空隙が小さくなりすぎて、イオン透過性が低下する傾向にあり、電池の負荷特性を低下させてしまうことがある。
セパレータの(1)の実施形態における繊維状物(A)の含有量は、全構成成分中、例えば、10体積%以上、より好ましくは30体積%以上であって、90体積%以下、より好ましくは70体積%以下であることが望ましい。セパレータ(シート状物)中での繊維状物(A)の存在状態は、例えば、長軸(長尺方向の軸)の、セパレータ面に対する角度が平均で30°以下であることが好ましく、20°以下であることがより好ましい。
また、(2)の実施形態に係るセパレータは、板状粒子(B)と必要に応じて用いられる他の材料(詳しくは後述する)とで構成される多孔質層として電極表面に形成されており、該電極と一体化している。板状粒子(B)と共に使用できる材料としては、例えば、(1)の実施形態における上記例示の繊維状物(A)が挙げられる。
また、(1)の実施形態、(2)の実施形態によらず、本発明のセパレータでは、繊維状物(A)および板状粒子(B)以外にも、板状粒子(B)に該当しない粒状微粒子(C)や熱溶融性微粒子(D)を含有していてもよい。このような粒状微粒子(C)および熱溶融性微粒子(D)としては、電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、更に電解液や、セパレータ製造の際に使用する板状粒子(B)を含有する液状組成物に用いる溶媒に安定であり、また、電池の作動電圧範囲において酸化還元といった副反応しない微粒子であればよい。
粒状微粒子(C)の具体例としては、例えば、以下の無機微粒子や有機微粒子が挙げられ、これらを1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。無機微粒子(無機粉末)としては、例えば、酸化鉄、SiO、Al、TiO、BaTiO、ZrOなどの酸化物微粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物微粒子;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶微粒子;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶微粒子;モンモリロナイトなどの粘土微粒子、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビンなどの鉱物資源由来物質あるいはこれらの人造物;などが挙げられる。また、金属微粒子;SnO、スズ−インジウム酸化物(ITO)などの酸化物微粒子;カーボンブラック、グラファイトなどの炭素質微粒子;などの導電性微粒子の表面を、電気絶縁性を有する材料[例えば、粒状微粒子(C)を構成し得る上記材料のうち非電気伝導性のものや、後記の架橋高分子微粒子、耐熱性高分子微粒子を構成する材料など]で表面処理することで、電気絶縁性を持たせた微粒子であってもよい。有機微粒子(有機粉末)としては、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体架橋物、ポリイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの各種架橋高分子微粒子や、熱可塑性ポリイミドなどの耐熱性高分子微粒子などが例示できる。また、これらの有機微粒子を構成する有機樹脂(高分子)は、上記例示の材料の混合物、変性体、誘導体、共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、架橋体(熱可塑性のポリイミドの場合)であってもよい。
また、熱溶融性微粒子(D)としては、80〜130℃で融解するもの、すなわち、JIS K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度が80〜130℃であるものが好的である。具体的な熱溶融性微粒子(D)の構成材料としては、ポリエチレン(PE)、エチレン由来の構造単位が85モル%以上の共重合ポリオレフィン、またはポリオレフィン誘導体(塩素化ポリエチレンなど)、ポリオレフィンワックス、石油ワックス、カルナバワックスなどが挙げられる。上記共重合ポリオレフィンとしては、エチレン−ビニルモノマー共重合体、より具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体、またはエチレン−エチルアクリレート共重合体が例示できる。また、ポリシクロオレフィンなどを用いることもできる。熱溶融性微粒子(D)は、これらの構成材料の1種のみを有していてもよく、2種以上を有していても構わない。これらの中でも、PE、ポリオレフィンワックス、またはエチレン由来の構造単位が85モル%以上のEVAが好適である。また、熱溶融性微粒子(D)は、構成成分として、上記の構成材料の他に、必要に応じて、樹脂に添加される公知の各種添加剤(例えば、酸化防止剤など)を含有していても構わない。
また、本発明のセパレータは、(1)の実施形態、(2)の実施形態のいずれにおいても、上記例示の粒状微粒子(C)をコアとし、上記例示の熱溶融性微粒子(D)を構成し得る樹脂をシェルとして複合化したコアシェル構造の複合微粒子(E)を含有していてもよい。
上記の粒状微粒子(C)は、セパレータ中に含有されることで、該セパレータの形状安定性(特に高温時における形状安定性)向上に寄与し得る。また、セパレータが熱溶融性微粒子(D)やコアシェル構造の複合微粒子(E)を含有することで、該セパレータを有する電池において、内部の温度が上昇した場合に、熱溶融性微粒子(D)自体や複合微粒子(E)のシェル部分が溶融してセパレータの空隙を塞いてイオンの移動を遮断するシャットダウン機能を確保できるようになる。
なお、(1)の実施形態および(2)の実施形態に係るセパレータにおいて、良好なシャットダウン機能を確保する点からは、セパレータ中における熱溶融性微粒子(D)および/または複合微粒子(E)の含有量は、セパレータの全構成成分中、30〜70体積%であることが好ましい。これらの微粒子の含有量が少なすぎると、これらを含有させることによるシャットダウン効果が小さくなることがあり、多すぎると、セパレータ中における板状粒子(B)の含有量が減ることになるため、リチウムデンドライトの発生に起因する短絡を防止する効果が小さくなることがある。また、(1)の実施形態および(2)の実施形態に係るセパレータにおける粒状微粒子(C)の含有量は特に制限はないが、全構成成分中、例えば5〜30体積%であることが好ましい。
粒状微粒子(C)、熱溶融性微粒子(D)および複合微粒子(E)の粒径としては、板状粒子(B)と同じ測定法で測定される数平均粒子径で、例えば、0.001μm以上、より好ましくは0.1μm以上であって、15μm以下、より好ましくは1μm以下であることが推奨される。
また、(1)の実施形態においては、繊維状物(A)同士をシート状物とするために結着したり、繊維状物(A)で構成されるシート状物と板状粒子(B)やその他の粒子[粒状微粒子(C)、熱溶融性微粒子(D)、複合微粒子(E)]などとを結着したりする目的で、また、(2)の実施形態においても、板状粒子(B)とその他の材料[繊維状物(A)、粒状微粒子(C)、熱溶融性微粒子(D)、複合微粒子(E)など]とを結着する目的で、セパレータはバインダ(F)を含有していてもよい。
バインダ(F)としては、電気化学的に安定且つ電解液に対して安定で、更に繊維状物(A)や板状粒子(B)、粒状粒子(C)、熱溶融性微粒子(D)、複合微粒子(E)などを良好に接着できるものであれば良いが、例えば、EVA(酢酸ビニル由来の構造単位が20〜35モル%のもの)、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのエチレン−アクリレート共重合体、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で使用してもよく、2種以上を併用しても構わない。なお、これらバインダ(F)を使用する場合には、後記するセパレータ形成用の液状組成物の溶媒に溶解するか、または分散させたエマルジョンの形態で用いることができる。
なお、例えば、熱溶融性微粒子(D)や複合微粒子(E)が単独で接着性を有する場合には、これらがバインダ(F)を兼ねることもできる。
なお、電池の短絡防止効果をより高め、セパレータの強度を確保して取り扱い性を良好にしつつ、電池のエネルギー密度をより高める観点から、(1)の実施形態、(2)の実施形態のいずれにおいても、セパレータの厚みは、例えば、3μm以上、より好ましくは5μm以上であって、50μm以下、より好ましくは30μm以下であることが望ましい。
また、(1−1)の実施形態、(2)の実施形態のいずれにおいても、セパレータの空隙率としては、乾燥した状態で、例えば、20%以上、より好ましくは30%以上であって、70%以下、より好ましくは60%以下であることが望ましい。セパレータの空隙率が小さすぎると、イオン透過性が小さくなることがあり、また、空隙率が大きすぎると、セパレータの強度が不足することがある。なお、セパレータの空隙率:P(%)は、セパレータの厚み、面積あたりの質量、構成成分の密度から、次式を用いて各成分iについての総和を求めることにより計算できる。
P = Σ aρ /(m/t)
ここで、上記式中、a:質量%で表した成分iの比率、ρ:成分iの密度(g/cm)、m:セパレータの単位面積あたりの質量(g/cm)、t:セパレータの厚み(cm)、である。
更に、(1)の実施形態、(2)の実施形態のいずれにおいても、セパレータの強度としては、直径が1mmのニードルを用いた突き刺し強度で50g以上であることが望ましい。かかる突き刺し強度が小さすぎると、リチウムのデンドライト結晶が発生した場合に、セパレータの突き敗れによる短絡が発生する虞がある。
また、(1)の実施形態における(1−1)の態様および(1−2)の態様のセパレータにおいては、ガーレー値で示されるセパレータの透気度が、10〜300secであることが望ましい。透気度が大きすぎると、イオン透過性が小さくなり、他方、小さすぎると、セパレータの強度が小さくなることがある。
本発明のセパレータの製造方法としては、例えば、下記の(I)、(II)および(III)の方法が採用できる。(I)の方法は、150℃で実質的に変形しないイオン透過性のシート状物に、板状粒子(B)を含む液状組成物(スラリーなど)を塗布または含浸させた後、所定の温度で乾燥する製造方法である。(I)の方法によって、(1−1)の態様のセパレータを製造することができる。
すなわち、(I)の方法でいう「シート状物」には、繊維状物(A)で構成されたシート状物(各種織布、不織布など)が該当する。具体的には、上記例示の各材料を構成成分に含む繊維状物の少なくとも1種で構成される織布や、これら繊維状物同士が絡み合った構造を有する不織布などの多孔質シートなどが挙げられる。より具体的には、紙、PP不織布、ポリエステル不織布(PET不織布、PEN不織布、PBT不織布など)、PAN不織布などの不織布などが例示できる。
本発明のセパレータを形成するための上記液状組成物は、板状粒子(B)や、必要に応じて、粒状微粒子(C)、熱溶融性微粒子(D)、複合微粒子(E)、バインダ(F)などを含有し、これらを溶媒(分散媒を含む、以下同じ)に分散させたものである[バインダ(F)については溶解していてもよい]。液状組成物に用いられる溶媒は、板状粒子(B)や粒状粒子(C)、熱溶融性微粒子(D)、複合微粒子(E)を均一に分散でき、また、バインダ(F)を均一に溶解または分散できるものであれば良いが、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素;テトラヒドロフランなどのフラン類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;などの有機溶媒が好適である。なお、これらの溶媒に、界面張力を制御する目的で、アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、または、モノメチルアセテートなどの各種プロピレンオキサイド系グリコールエーテルなどを適宜添加しても良い。また、バインダ(F)が水溶性である場合、エマルジョンとして使用する場合などでは、水を溶媒としてもよく、この際にもアルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)を適宜加えて界面張力を制御することもできる。
上記液状組成物では、板状粒子(B)、粒状微粒子(C)、熱溶融性微粒子(D)、複合微粒子(E)、バインダ(F)を含む固形分含量を、例えば10〜40質量%とすることが好ましい。
上記シート状物が、紙、PP不織布、ポリエステル不織布などの不織布のように、繊維状物(A)で構成されるものであって、特にその空隙の開口径が比較的大きい場合(例えば、空隙の開口径が5μm以上の場合)には、これが電池の短絡の要因となりやすい。よって、この場合には、板状粒子(B)の一部または全部がシート状物の空隙内に存在する構造とすることが好ましい。また、板状粒子(B)以外の微粒子[粒状微粒子(C)、熱溶融性微粒子(D)、複合微粒子(E)]の一部または全部が、シート状物の空隙内に存在する構造とすることがより好ましい。このような構造とすることで、板状粒子(B)以外の微粒子を用いることによる効果[粒状微粒子(C)であれば、セパレータの形状安定性の向上効果、熱溶融性微粒子(D)や複合微粒子(E)であればシャットダウン効果]がより有効に発揮されるようになる。シート状物の空隙内に板状粒子(B)や粒状微粒子(C)、熱溶融性微粒子(D)、複合微粒子(E)を存在させるには、例えば、上記した液状組成物をシート状物に含浸させた後、一定のギャップを通し、余分の液状組成物を除去した後、乾燥するなどの工程を用いればよい。
なお、セパレータ中において、板状粒子(B)の配向性を高めるには、上記液状組成物を含浸させたシート状物において、該液状組成物にシェアをかければよい。例えば、(I)の製造方法においては、板状粒子(B)などをシート状物の空隙内に存在させる方法として上述した液状組成物をシート状物に含浸させた後、一定のギャップを通す方法により、液状組成物にシェアをかけることが可能であり、板状粒子(B)の配向性を高めることができる。
本発明のセパレータの(II)の製造方法は、上記液状組成物に、更に繊維状物(A)を含有させ、これをフィルムや金属箔などの基材上に塗布し、所定の温度で乾燥した後に、該基材から剥離する方法である。すなわち、繊維状物(A)のシート化と板状粒子(B)などを含有させる操作を同時に行う方法である。(II)の方法によって、(1−2)の態様のセパレータを製造することができる。なお、(II)の方法で使用する液状組成物は、繊維状物(A)を含有させることが必須である点を除き、(I)の方法で用いる液状組成物と同じであり、繊維状物(A)を含めた固形分量が、例えば10〜40質量%であることが好ましい。また、(II)の方法で得られるセパレータにおいても、繊維状物(A)で形成されるシート状物の空隙内に、板状粒子(B)の一部または全部が存在する構造とすることが望ましい。
なお、(II)の製造方法において、板状粒子(B)の配向性を高めるには、上記液状組成物を基材上に塗布する際に、液状組成物にシェアをかけ得る塗布方法を採用すればよい。具体的には、ダイコーターやブレードコーターなどの塗布装置を用いる塗布方法が挙げられる。
本発明のセパレータの(III)の製造方法は、板状粒子(B)と、必要に応じて粒状微粒子(C)、熱溶融性微粒子(D)、複合微粒子(E)、バインダー(F)などを、水や適当な溶媒に分散させた液状組成物(スラリーなど)を、電極表面に塗布し、乾燥して溶媒を除去することで電極と一体化した多孔質層としてセパレータを形成する方法である。(III)の方法によって、(2)の態様のセパレータを製造することができる。
(III)の製造方法で用いるセパレータ形成用の液状組成物としては、例えば、上記(I)の製造方法における液状組成物と同じものや、(II)の製造方法における液状組成物と同じもの[繊維状物(A)も含有する液状組成物]が使用できる。また、電極表面に液状組成物を塗布する方法としては、例えば、ブレードコーター、ロールコーター、ダイコーター、スプレーコーターなど、従来公知の塗布装置を用いた塗布方法が採用できる。なお、セパレータ中の板状粒子(B)の配向性を高める観点からは、上記の塗布装置の中でも、ブレードコーターやダイコーターなど、塗布時に液状組成物にシェアをかけ得る塗布装置を用いることが好ましい。
なお、本発明のセパレータは、上記に示した各構造に限定されるものではなく、例えば、板状粒子(B)は、個々に独立して存在していなくてもよく、互いに、または、繊維状物(A)に、一部が融着されていても構わない。
本発明のリチウム二次電池は、上記本発明のセパレータを有していれば、その他の構成や構造については特に制限はなく、従来公知の構成、構造が採用できる。
リチウム二次電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶などを外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形など)などが挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池とすることもできる。
正極としては、従来公知のリチウム二次電池に用いられている正極、すなわち、Liを吸蔵放出可能な活物質を含有する正極であれば特に制限はない。例えば、活物質として、Li1+xMOで(−0.1<x<0.1、M:Co、Ni、Mnなど)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物;LiMnなどのリチウムマンガン酸化物;LiMnのMnの一部を他元素で置換したLiMn(1−x);オリビン型LiMPO(M:Co、Ni、Mn、Fe);LiMn0.5Ni0.5;Li(1+a)MnNiCo(1−x−y)(−0.1<a<0.1、0<x<0.5、0<y<0.5);などを適用することが可能であり、これらの正極活物質に公知の導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの結着剤などを適宜添加した正極合剤を、集電体を芯材として成形体(すなわち、正極合剤層)に仕上げたものなどを用いることができる。
正極の集電体としては、アルミニウムなどの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、厚みが10〜30μmのアルミニウム箔が好適に用いられる。
正極側のリード部は、通常、正極作製時に、集電体の一部に正極合剤層を形成せずに集電体の露出部を残し、そこをリード部とすることによって設けられる。ただし、リード部は必ずしも当初から集電体と一体化されたものであることは要求されず、集電体にアルミニウム製の箔などを後から接続することによって設けても良い。
負極としては、従来公知のリチウム二次電池に用いられている負極、すなわち、Liを吸蔵放出可能な活物質を含有する負極であれば特に制限はない。例えば、活物質として、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si,Sn、Ge,Bi,Sb、Inなどの元素およびその合金、リチウム含有窒化物、または酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物、もしくはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金も負極活物質として用いることができる。これらの負極活物質に導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やPVDFなどの結着剤などを適宜添加した負極合剤を、集電体を芯材として成形体(負極合剤層)に仕上げたものや、上記の各種合金やリチウム金属の箔を単独、若しくは集電体上に形成したものなどの負極剤層を有するものが用いられる。
負極に集電体を用いる場合には、集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、また、下限は5μmであることが望ましい。
負極側のリード部も、正極側のリード部と同様に、通常、負極作製時に、集電体の一部に負極剤層(負極活物質を有する層、負極合剤層を含む)を形成せずに集電体の露出部を残し、そこをリード部とすることによって設けられる。ただし、この負極側のリード部は必ずしも当初から集電体と一体化されたものであることは要求されず、集電体に銅製の箔などを後から接続することによって設けても良い。
電極は、上記の正極と上記の負極とを、本発明のセパレータを介して積層した積層体や、更にこれを巻回した電極巻回体の形態で用いることができる。なお、本発明のセパレータが、電極と一体化された(2)の実施形態の場合には、上記の正極、負極のいずれか一方の表面(すなわち、正極であれば正極合剤層表面、負極であれば負極剤層表面)に形成されていればよく、正負極の両者に形成されていてもよい。
電解液としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピオン酸メチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールサルファイト、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチル−テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどの1種のみからなる有機溶媒、あるいは2種以上の混合溶媒に、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF 、LiSbF 、LiCFSO 、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)、LiN(RfOSO〔ここでRfはフルオロアルキル基〕などのリチウム塩から選ばれる少なくとも1種を溶解させることによって調製したものが使用される。このリチウム塩の電解液中の濃度としては、0.5〜1.5mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/lとすることがより好ましい。
本発明のリチウム二次電池は、従来公知のリチウム二次電池が用いられている各種用途と同じ用途に適用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1
板状粒子(B)として、板状ベーマイト(平均粒径:1μm、アスペクト比:10):1000g、水:800g、イソプロピルアルコール(IPA)200g、バインダ(F)として、ポリビニルブチラール:375gとを容器に入れ、スリーワンモーターで1時間撹拌して分散させ、均一なスラリーとした。このスラリー中に、厚みが15μmのPP製メルトブロー不織布を通し、引き上げ塗布によりスラリーを塗布した後、所定の間隔を有するギャップの間を通し、その後乾燥して、厚みが20μmのセパレータを得た。なお、このセパレータの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、不織布の空隙内に板状粒子(B)が存在していることが確認できた。また、断面のSEM観察により表面近傍の板状粒子の平板面がセパレータの面に対して平均で30°以内に配向していることが確認できた。断面の観察写真を図1に示す。
実施例2
実施例1と同じスラリーに、更に、粒状微粒子(C)としてアルミナ(Al)微粒子(平均粒径:1.5μm):300gを加え、スリーワンモーターで3時間撹拌して分散させ、均一なスラリーとした。このスラリー中に、厚みが28μmのPBT製メルトブロー不織布を通し、引き上げ塗布によりスラリーを塗布した後、所定の間隔を有するギャップの間を通し、その後乾燥して、厚みが35μmのセパレータを得た。なお、このセパレータの断面をSEMで観察したところ、不織布の空隙内に板状粒子(B)が存在していることが確認できた。
実施例3
バインダ(F)として、SBRラテックス:100g、CMC:30g、および水:6000gを容器に入れ、均一に溶解するまで室温にて撹拌した。更に板状粒子(B)として、アルミナ(平均粒径:2μm、アスペクト比:25):1000gを加え、ディスパーで、2800rpmの条件で1時間攪拌して分散させた。これに、熱溶融性微粒子(D)としてPEエマルジョン(平均粒径:1μm、融点:125℃):1000gを加え、ディスパーで、2800rpmの条件で3時間撹拌して、均一なスラリーとした。このスラリーを、アプリケーターを用いて、ギャップを50μmにして厚みが25μmの紙上に摺り切り塗布し、乾燥して、厚みが35μmのセパレータを得た。
実施例4
トルエン:1000gに、板状粒子(B)として板状アルミナ(平均粒径:2μm、アスペクト比:25):1000gを加え、ディスパーで、2800rpmの条件で1時間攪拌して分散させた。これに、粒状微粒子(C)としてアルミナ微粒子(平均粒径:1.5μm):300gを加え、ディスパーで、2800rpmの条件で3時間撹拌して分散させ、さらにホモジナイザー用いて10000rpmで10分間攪拌して均一に分散した。得られたスラリーにバインダ(F)として、エチレン−エチルアクリレート共重合体(エチルアクリレート由来の構造単位が20モル%):200gをトルエン:6000gに溶解した溶液を加え、均一に溶解するまで室温にて撹拌し、均一なスラリーとした。このスラリーを、アプリケーターを用いて、ギャップを50μmにして厚みが15μmのPP製メルトブロー不織布上に摺り切り塗布し、トルエンを除去して、厚みが20μmのセパレータを得た。
実施例5
バインダ(F)として、EVAエマルジョン(酢酸ビニル由来の構造単位が20モル%):100g、板状粒子(B)として、アルミナ(平均粒径:2μm、アスペクト:比10):1000gを加え、ディスパーで、2800rpmの条件で1時間攪拌して分散させて均一なスラリーとした。このスラリーに、繊維状物(A)としてアルミナ繊維(平均繊維径:3μm、アスペクト比:30000):1000gを加え、均一になるまで室温にて撹拌した。このようにして得られたスラリーを、ダイコーターを用いて、塗布厚:50μmでPET基材上に塗布し、乾燥した後、PET基材から剥離して厚みが15μmのセパレータを得た。セパレータの断面をSEMで観察したところ、アルミナ繊維のアスペクト比は10以上であり、また、セパレータ面に対する平均角度は30°以下であった。
比較例1
板状粒子(B)である板状ベーマイトに替えて、粒状アルミナ(平均粒径:0.3μm)を用いた以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
比較例2
板状粒子(B)である板状ベーマイトに替えて、PEエマルジョン(平均粒径:1μm、融点:125℃)を用いた以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
<セパレータの加熱特性>
実施例1〜5および比較例1〜2のセパレータ、および比較例3として、従来公知のセパレータである20μmの厚みのPE製微多孔膜を、150℃の恒温槽内に30分放置し、各セパレータの収縮率を測定して加熱特性を評価した。収縮率の測定は、次のようにして行った。4cm×4cmに切り出したセパレータ片を、クリップで固定した2枚のステンレス板で挟みこみ、150℃の恒温槽内に30分放置した後に取り出し、各セパレータ片の長さを測定し、試験前の長さと比較して長さの減少割合を収縮率とした。結果を表1に示す。
<シャットダウン特性>
また、実施例3および比較例3のセパレータに関しては、温度上昇に伴うガーレー値の変化を以下の条件で測定した。室温でガーレー値を測定した後、恒温槽中で、80℃でセパレータを10分間保持し、取り出した後徐冷して、80℃まで温度上昇させたときのガーレー値を測定した。ガーレー値は、JIS P 8117の規定に準拠した方法により測定した。以後、5℃刻みで150℃まで温度を上昇させ、それぞれの温度でセパレータを10分間保持した後、同様にしてガーレー値を測定した。上記測定から、加熱前(室温)、加熱後(150℃)のガーレー値とその比、および、ガーレー値が加熱前の3倍以上になった温度(上昇温度)を求めた。ガーレー値の変化は10から50であった。また、ガーレー値が加熱前の3倍以上になった温度を、「シャットダウン温度」とした。得られたシャットダウン温度を表1に併記する。
Figure 2008004438
表1から以下のことが分かる。従来品に相当する比較例3のセパレータでは、熱収縮率が大きく、これを電池に用いると、内部温度が150℃に達するまでの間にセパレータの収縮が生じて、正極と負極が接触することによる短絡の虞がある。これに対し、実施例1〜5のセパレータでは、熱収縮が殆ど見られず、目視レベルでは実質的に変形が生じていない。よって、これらを用いた電池では、内部温度が150℃に達しても、セパレータによって正極と負極との接触が十分に妨げられて、短絡の発生が防止され得る。更に、実施例3のセパレータでは、恒温槽での加熱前に対して、加熱後ではガーレー値(透気度)が100〜130℃の温度範囲で3倍以上に増大している。よって、これらを用いた電池では、内部温度が上昇する過程で、セパレータのイオン透過性が低下することによって電流の流れが妨げられるシャットダウン機能が有効に作動するため、より優れた安全性が確保され得る。
実施例6
<正極の作製>
正極活物質であるLiCoO:80質量部、導電助剤であるアセチレンブラック:10質量部、およびバインダであるPVDF:5質量部を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶剤として均一になるように混合して、正極合剤含有ペーストを調製した。このペーストを、集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に、活物質塗布長が表面280mm、裏面210mになるように間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って、全厚が150μmになるように正極合剤層の厚みを調整し、幅43mmになるように切断して、長さ280mm、幅43mmの正極を作製した。さらにこの正極のアルミニウム箔の露出部にタブ付けを行った。
<負極の作製>
負極活物質である黒鉛:90質量部と、バインダであるPVDF:5質量部とを、NMPを溶剤として均一になるように混合して負極合剤含有ペーストを調製した。この負極合剤含有ペーストを、銅箔からなる厚さ10μmの集電体の両面に、活物質塗布長が表面290mm、裏面230mmになるように間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って全厚が142μmになるように負極合剤層の厚みを調整し、幅45mmになるように切断して、長さ290mm、幅45mmの負極を作製した。さらにこの負極の銅箔の露出部にタブ付けを行った。
<電池の組立て>
上記のようにして得られた正極と負極とを、実施例1のセパレータを介して渦巻状に巻回して巻回電極体とした。この巻回電極体を押しつぶして扁平状にし、大日本印刷製ラミネートフィルム外装材内に装填し、電解液(エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを1:2の体積比で混合した溶媒に、LiPFを1.2mol/lの濃度で溶解させた溶液)を注入し、真空封止を行ってリチウム二次電池を作製した。
実施例7〜10、比較例4〜6
セパレータを、実施例2〜5または比較例1〜3のものに変更した他は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
実施例11
実施例6と同様にして作製した負極の負極合剤層表面に、実施例1と同様にして作製したスラリーを、ダイコーターを用いて乾燥時の厚みが15μmになるように塗布し、乾燥させて負極と一体化した多孔質層からなるセパレータを形成した。得られた負極と、実施例6と同様にして作製した正極とを、負極表面のセパレータを間にして重ね合わせ、渦巻状に巻回して巻回電極体とした。この巻回電極体を用いた以外は、実施例6と同様の方法でリチウム二次電池を作製した。
実施例12
実施例6と同様にして作製した正極の正極合剤層表面に、実施例3と同様にして作製したスラリーを、ダイコーターを用いて乾燥時の厚みが10μmになるように塗布し、乾燥させて正極と一体化した多孔質層からなるセパレータを形成した。得られた正極と、実施例11と同様にして作製した負極合剤層表面にセパレータが形成された負極とを、両者のセパレータ同士が対向するようにして重ね合わせ、渦巻状に巻回して巻回電極体とした。この巻回電極体を用いた以外は、実施例6と同様の方法でリチウム二次電池を作製した。
実施例6〜12および比較例4、6の各電池について、下記の電気化学的評価(放電容量割合の測定)および安全性試験を行った。結果を表2に示す。なお、比較例5の電池については、電池を作製した段階で内部短絡が発生していたため、以後の試験を中止した。
<放電容量割合>
実施例6〜12および比較例4、6の電池について、0.2Cでの定電流充電(4.2Vまで)と4.2Vでの定電圧充電による充電(定電流充電と定電圧充電の合計時間15時間)の後、3.0Vまで、0.2Cで放電を行い、得られた放電容量の充電容量に対する割合、すなわち放電容量割合(%)を求めた。なお放電容量割合はそれぞれ電池10個の平均値として求めた。
<信頼性試験>
実施例6〜12および比較例4、6の電池を150℃の高温層中に放置して、電池の機能が失われるまでの時間を測定し、高温時における信頼性試験を実施した。
Figure 2008004438
表2から分かるように、実施例5〜10のリチウム二次電池では、放電容量割合が良好で実用レベルにあり、リチウムデンドライトに起因する短絡の発生が抑えられており、また、150℃に放置した際に、電池の機能が失われるまでの時間が、従来の電池に相当する比較例6よりも長く、安全性や信頼性に優れる電池となっていた。これに対し、比較例4の電池は放電容量割合が低く、実用レベルに達しておらず、比較例5の電池は、上記の通り、電池を作製した段階で内部短絡が発生するなどの問題を生じていた。
実施例1のセパレータの断面の走査型電子顕微鏡写真である。

Claims (9)

  1. 少なくとも、150℃で実質的に変形しない繊維状物と、微粒子で構成される電池用セパレータであって、
    上記微粒子が、電気化学的に安定な板状粒子であることを特徴とする電池用セパレータ。
  2. 上記繊維状物がシート状物を形成している請求項1に記載の電池用セパレータ。
  3. 上記シート状物は、織布または不織布である請求項2に記載の電池用セパレータ。
  4. 上記板状粒子の一部または全部が、上記シート状物の空隙内に存在している請求項2または3に記載の電池用セパレータ。
  5. 電気化学的に安定な板状粒子を含有する多孔質層として、電極と一体化されていることを特徴とする電池用セパレータ。
  6. 上記板状粒子は、AlOOHまたはAl・HOで示される化合物を主成分とするものである請求項1〜5のいずれかに記載の電池用セパレータ。
  7. 上記板状粒子がベーマイトである請求項6に記載の電池用セパレータ。
  8. 80〜130℃で溶融する粒子を更に含有する請求項1〜7のいずれかに記載の電池用セパレータ。
  9. 少なくとも、Liを吸蔵放出可能な活物質を含有する負極と、Liを吸蔵放出可能な活物質を含有する正極と、請求項1〜8のいずれかに記載の電池用セパレータを備えていることを特徴とするリチウム二次電池。
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