JP2008004303A - 導電性パターン形成方法、及びワイヤグリッド型偏光子 - Google Patents

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Abstract

【課題】超微細な導電性パターンを容易に形成しうる導電性パターン形成方法、及び偏光度に優れたワイヤグリッド型偏光子を提供する。
【解決手段】光開裂によりラジカル重合を開始しうる光重合開始部位と基材結合部位とを有する化合物を基材に結合させる工程と、パターン露光を行い、露光領域の該光重合開始部位を失活させる工程と、前記基材上に、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物を接触させた後、該撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物が光吸収しない波長の光のみで全面露光を行い、前記パターン露光時の非露光領域に残存した該光重合開始部位に光開裂を生起させ、グラフトポリマーを生成させて、当該基材表面にグラフトポリマーの生成領域と非生成領域とを形成する工程と、該グラフトポリマーの非生成領域に導電性素材を付着させる工程と、をこの順に行う導電性パターン形成方法、及び該方法により得られるワイヤグリッド型偏光子。
【選択図】図1

Description

本発明は導電性パターン形成方法、及び該導電性パターン形成方法で得られたワイヤグリッド型偏光子に関する。
従来より、フッ素化合物などの強撥油性を示す化合物を用いたパターン状の撥油性領域を備えるパターン材料には、例えば、薄層のエッチングレジストや、インクジェット法等により液滴を適所に配置するためのテンプレートなどの多岐の用途がある。特に、パターン材料をテンプレートとして用いると、精度の高い導電性パターンが形成されることが知られている。
このようなパターン材料の形成方法として、具体的には、例えば、フッ化アルキルシラン等の単分子膜を気相成長(CVD)によって基材全面に形成し、ガラスマスクを介して短波長の紫外線を照射することで照射領域の単分子膜を分解除去してパターンを形成する方法(例えば、特許文献1参照。)などが提案されている。
上記特許文献1の技術のように、単分子膜を短波長の紫外線を照射することで除去する方法では、単分子膜を十分に分解除去するために、特殊な波長の紫外線、例えば、波長172nmの紫外線を、10mW/cmの強度で5分ほど照射する必要があった。また、この波長の紫外線はガラスに対する透過率が低く、特に、大きな面積のパターン材料を形成する際にガラスマスクが厚くなると、更に照射時間が長くなるため、パターン材料を得るための実際のプロセスに応用するには問題があった。加えて、この方法では、その機構の詳細は不明であるが、微細なパターンを形成しにくいという問題を有していた。
これらのことから、フッ素化合物などの強撥油性を示す化合物を用いたパターン状の撥油性領域を備えるパターン材料を、容易に、かつ、効率よく形成することで、高解像度で、精度の高い導電性パターンを得るための方法が切望されていた。
一方、導電性パターンの用途の一つとして、微細な直線状金属線を平行に並べたワイヤグリッド偏光子が知られている。
このワイヤグリッド偏光子では、金属線の間隔であるピッチが入射光に対して十分に短い時、入射光のうち、金属線に直交する電場ベクトルを有する成分は通過し、金属線と平行な電場ベクトルを有する成分は反射される。そのため、例えば、入射光が500nm程の可視光の場合、良好な偏光度を得るためには、入射光の1/5程度のピッチサイズ(即ち100nmのピッチサイズ)で金属線が形成されていることが好ましく、ラインアンドスペースの幅としては50nm程度であることが望まれる。
このような超微細な金属線を有するワイヤグリッド偏光子としては、例えば、特許文献2に、共鳴エンハンストンネリングという物理現象を利用し、ピッチ、及びワイヤ幅を、それぞれ130nm、52nmとしたものが開示されている。しかしながら、このワイヤグリッド偏光子を得るためには、66nmの厚みを有する金属細線と33nmの厚みの誘電細線とが交互に6〜18積層されたワイヤに置き換る手法が用いられ、このような高度な技術が要求されることから、多大なコストも必要となるという問題があった。
つまり、上記のように、ラインアンドスペースの幅が50nm程度の金属線(導電性パターン)を、簡易な方法で形成する方法は、未だ達成されていないのが現状である。
特開2000−282240号公報 特表2002−328234号公報
本発明の前記従来における問題点を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、超微細な導電性パターンを容易に形成しうる導電性パターン形成方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、偏光度に優れたワイヤグリッド型偏光子を提供することにある。
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
即ち、導電性パターン形成方法は、光開裂によりラジカル重合を開始しうる光重合開始部位と基材結合部位とを有する化合物を基材に結合させる工程と、パターン露光を行い、露光領域の該光重合開始部位を失活させる工程と、前記基材上に、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物を接触させた後、該撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物が光吸収しない波長の光のみで全面露光を行い、前記パターン露光時における非露光領域に残存した該光重合開始部位に光開裂を生起させ、ラジカル重合を開始させることでグラフトポリマーを生成させて、当該基材表面にグラフトポリマーの生成領域と非生成領域とを形成する工程と、該グラフトポリマーの非生成領域に導電性素材を付着させる工程と、をこの順に行うことを特徴とする。
本発明の導電性パターン形成方法において、グラフトポリマーを生成させるために行う全面露光は、320〜700nmの範囲の波長の光のみで行われることが好ましく、320〜400nmの範囲の波長の光のみで行われることがより好ましい。
また、本発明に導電性パターン形成方法は、好ましくは1μm以下の線幅の導電性素材の付着領域を形成することが好ましい態様である。
これらの結果、ラインアンドスペースの幅がそれぞれ1μm以下の導電性パターンを得ることができる。
また、本発明の導電性パターン形成方法において、グラフトポリマーの非生成領域に導電性素材を付着させる工程が、以下の3つの方法で行われることが好ましい。
第1の方法としては、グラフトポリマーの非生成領域に導電性微粒子を含有する液体を付与した後、該液体を乾燥させる方法がある。この方法により、グラフトポリマーの非生成領域には、導電性微粒子が付着した導電性パターンが形成される。また、導電性微粒子を含有する液体を付与した後、加熱することが好ましい態様である。
第2の方法としては、グラフトポリマーの非生成領域にアクティベーション処理を施し、該処理を施した領域に無電解メッキを行う方法である。この方法により、グラフトポリマーの非生成領域には、メッキによる導電性パターンが形成される。
第3の方法としては、グラフトポリマーの非生成領域に導電性ポリマー層を形成する方法がある。この方法により、グラフトポリマーの非生成領域には、導電性ポリマー層による導電性パターンが形成される。
また、本発明のワイヤグリッド型偏光子は基材上に平行に並んだ直線状金属線を有する形態を有し、上述のような本発明の導電性パターン形成方法により得られる。
また、このワイヤグリッド型偏光子は、可視光に対する優れた偏光度を得るために、金属線(導電性パターン)のラインアンドスペースの幅がそれぞれ10〜1000nmの範囲であることが好ましい。
本発明におけるグラフトポリマーの生成は、露光により光開裂が生起した重合開始部位を起点として、フリーラジカル重合を用いた重合反応で行われるため、重合速度が速く、また、重合反応に厳密な制御を必要としない。そのため、基材表面には、容易に、高撥油性を有するグラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなるパターンを形成することが可能になったものと考えられる。
また、本発明では、グラフトポリマーが生成される際に行う全面露光において、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物が光吸収しない波長の光のみを用いることを必須としている。そのため、ラジカル重合性化合物間の重合による所望されないホモポリマーが発生し難くなる。グラフトポリマーの生成の際に所望されないホモポリマーが生じると、そのホモポリマーは基材からの除去が困難であるため、現像性の低下の一因となり、超微細なパターン形成を阻害していたが、本発明のように、ホモポリマーの生成が少なくなると、基材表面を洗浄することでその除去が容易になり、その結果、超微細のグラフトポリマーパターンを高精度で形成することができるものと推測される。
その後、得られたグラフトポリマーパターンの非生成領域に応じた導電性素材の付着領域が形成され、超微細で、且つ、高精度の導電性パターンを形成することができる。
本発明の導電性パターン形成方法によれば、超微細な導電性パターンを容易に形成することができる。
また、本発明の導電性パターン形成方法を用いて、偏光度に優れたワイヤグリッド型偏光子を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の導電性パターン形成方法は、光開裂によりラジカル重合を開始しうる光重合開始部位と基材結合部位とを有する化合物を基材に結合させる工程(以下、適宜、「光開裂化合物結合工程」と称する。)と、パターン露光を行い、露光領域の該光重合開始部位を失活させる工程(以下、適宜、「重合開始能失活工程」と称する。)と、パターン露光を行い、露光領域の該光重合開始部位を失活させる工程と、前記基材上に、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物を接触させた後、該撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物が光吸収しない波長の光のみで全面露光を行い、前記パターン露光時における非露光領域に残存した該光重合開始部位に光開裂を生起させ、ラジカル重合を開始させることでグラフトポリマーを生成させて、当該基材表面にグラフトポリマーの生成領域と非生成領域とを形成する工程(以下、適宜、「グラフトポリマー生成工程」と称する。)と、該グラフトポリマーの非生成領域に導電性素材を付着させる工程(以下、適宜、「導電性素材付着工程」と称する。)と、をこの順に行うことを特徴とする。
この方法を用いることで、基材上に超微細の導電性パターンを形成することができる。 ここで、本発明における「超微細」とは、少なくとも導電性素材の付着領域(導電性パターン)の幅が1000nm以下であるものを指し、好ましくは、ラインアンドスペースの幅がそれぞれ10〜1000nmの範囲のものであり、ラインアンドスペースの幅がそれぞれ10〜500nmの範囲であることがより好ましい。
本発明における「超微細の導電性パターン」については、原子間顕微鏡(AFM)や電子顕微鏡(SEM)にて観察することにより確認することができる。
本発明において、「撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物が光吸収しない」とは、具体的には、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物を、溶媒(アセトン、酢酸エチル、1−メトキシ−2−プロパノール等の、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物を溶解しうる溶媒)に溶解した溶液における吸光係数が10以下であることを意味する。撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物が光吸収しない波長は、その種類によって異なるが、(メタ)アクリレート系の化合物、(メタ)アクリルアミド系の化合物、ビニル系の化合物であれば、通常、320nm以上である。
具体的には、2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレートを1−メトキシ−2−プロパノールに溶解した溶液における、320nmの光の吸光係数は1.0である。
以上のことから、グラフトポリマー生成工程における全面露光は、320nm以上の波長の光のみで行われることが好ましい。
また、上記の吸光係数は、市販の紫外可視吸収スペクトロメーターにより測定することができる。
まず、本発明の導電性パターン形成方法における光開裂化合物結合工程からグラフトポリマー生成工程までの概略について、図1を用いて説明する。ここで、図1は本発明における光開裂化合物結合工程からグラフトポリマー生成工程の概略を示す概念図である。
図1(a)に示されるように、基材表面には当初より官能基(図中、Zで表される)が存在する。ここに、基材結合部位(Q)と、光開裂によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位(Y)と、を有する化合物(Q−Y)を付与し、基材表面に接触させる。これにより、図1(b)に示されるように、基材表面に存在する官能基(Z)と、基材結合部位(Q)と、が結合して、基材表面に化合物(Q−Y)が導入される〔光開裂化合物結合工程〕。その後、この化合物(Q−Y)が導入された面に、図1(b)の矢印のようにパターン露光を行う。これにより、重合開始部位(Y)は、露光エネルギーにより光開裂する。その結果、図1(c)に示されるように、化合物(Q−Y)の露光部は、重合開始部位(Y)が失活して、重合開始能失活部位(S)となる〔重合開始能失活工程〕。
その後、図1(d)に示されるように、撥油性の官能基を有するモノマー等の公知のグラフトポリマー原料を接触させた状態で、図1(d)の矢印のように、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物が光吸収しない波長の光のみで全面露光を行う。これにより、図1(e)に示されるように、重合開始部位(Y)が残存している領域において、化合物(Q−Y)の重合開始部位(Y)を起点としてグラフトポリマーが生成し、基材表面には、グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とが形成される〔グラフトポリマー生成工程〕。
以下、このような各工程について具体的に説明する。
図1においてZで表示される基は、基材表面に存在する官能基であり、具体的には、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。これらの官能基はシリコーン基板、ガラス基板における基材の材質に起因して基材表面にもともと存在しているものでもよく、基材表面にコロナ処理などの表面処理を施すことにより表面に存在させたものであってもよい。
次に、光開裂によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位(以下、単に、重合開始部位と称する。)と基材結合部位とを有する化合物の構造について具体的に説明する。この化合物について、図1の概念図における、基材結合部位(Q)と、重合開始部位(Y)と、を有する化合物(Q−Y)のモデルを用いて詳細に説明すれば、一般に、重合開始部位(Y)は、光により開裂しうる単結合を含む構造である。
この光により開裂する単結合としては、カルボニルのα開裂、β開裂反応、光フリー転位反応、フェナシルエステルの開裂反応、スルホンイミド開裂反応、スルホニルエステル開裂反応、N−ヒドロキシスルホニルエステル開裂反応、ベンジルイミド開裂反応、活性ハロゲン化合物の開裂反応などを利用して開裂が可能な単結合が挙げられる。これらの反応により、光により開裂しうる単結合が切断される。この開裂しうる単結合としては、C−C結合、C−N結合、C−O結合、C−Cl結合、N−O結合、及びS−N結合等が挙げられる。
また、これらの光により開裂しうる単結合を含む重合開始部位(Y)は、グラフトポリマー生成工程におけるグラフト重合の起点となることから、光により開裂しうる単結合が開裂すると、その開裂反応によりラジカルを発生させる機能を有する。このように、光により開裂しうる単結合を有し、かつ、ラジカルを発生可能な重合開始部位(Y)の構造としては、芳香族ケトン基、フェナシルエステル基、スルホンイミド基、スルホニルエステル基、N−ヒドロキシスルホニルエステル基、ベンジルイミド基、トリクロロメチル基、ベンジルクロライド基などの基を含む構造が挙げられる。
これらの中でも、グラフトポリマー生成工程において、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物が光吸収しない波長の光(好ましくは、320nm以上、より好ましくは320〜700nmの範囲の波長の光)のみで全面露光した際に、容易に光開裂し、かつ、ラジカルを発生する点から、重合開始部位(Y)はトリクロロメチル基を含む構造であることがより好ましい。
このような重合開始部位(Y)は、露光により開裂してラジカルを発生するため、そのラジカル周辺に重合可能な化合物が存在する場合には、このラジカルがグラフト重合反応の起点として機能し、所望のグラフトポリマーを生成することができる(グラフトポリマー生成領域)。
一方、重合開始部位(Y)が露光により開裂してラジカルが発生しても、ラジカルの周辺に重合可能な化合物が存在しない場合には、そのラジカルは使用されず失活してしまい、その結果、重合開始能自体が失活することとなる。その結果、このような領域はグラフトポリマー非生成領域となる。
一方、基材結合部位(Q)としては、基材表面に存在する官能基(Z)と反応して結合しうる反応性基で構成され、その反応性基としては、具体的には、以下に示すような基が挙げられる。
Figure 2008004303
また、重合開始部位(Y)と、基材結合部位(Q)と、は直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。この連結基としては、炭素、窒素、酸素、及び硫黄からなる群より選択される原子を含む連結基が挙げられ、具体的には、例えば、飽和炭素基、芳香族基、エステル基、アミド基、ウレイド基、エーテル基、アミノ基、スルホンアミド基等が挙げられる。なお、この連結基は更に置換基を有していてもよく、その導入可能な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
基材結合部位(Q)と、重合開始部位(Y)と、を有する化合物(Q−Y)の具体例〔例示化合物1〜例示化合物17〕を、開裂部と共に以下に示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
Figure 2008004303
Figure 2008004303
Figure 2008004303
本発明における光開裂化合物結合工程は、このような化合物(Q−Y)を基材に結合させる工程である。
例示された如き化合物(Q−Y)を基材表面に存在する官能基Zに結合させる方法としては、化合物(Q−Y)を、トルエン、ヘキサン、アセトンなどの適切な溶媒に溶解又は分散し、その溶液又は分散液を基材表面に塗布する方法、又は、溶液又は分散液中に基材を浸漬する方法などを適用すればよい。このとき、溶液中又は分散液の化合物(Q−Y)の濃度としては、0.01質量%〜30質量%が好ましく、特に0.1質量%〜15質量%であることが好ましい。接触させる場合の液温としては、0℃〜100℃が好ましい。接触時間としては、1秒〜50時間が好ましく、10秒〜10時間がより好ましい。
本発明において用いられる基材には、特に制限はなく、基材表面に、水酸基、カルボキシル基、アミノ基などの官能基(Z)を有する基材、或いは、コロナ処理、グロー処理、プラズマ処理などの表面処理により、水酸基、カルボキシル基などを発生させた基材などを適用できる。
また、一般的には、平板状の基材が用いられるが、必ずしも平板状の基材に限定されず、円筒形などの任意の形状の基材表面にも同様にグラフトポリマーを導入することができる。
本発明に好適な基材として、具体的には、ガラス、石英、ITO、シリコーン等の表面水酸基を有する各種基材、コロナ処理、グロー処理、プラズマ処理などの表面処理により、表面に水酸基やカルボキシル基などを発生させたPET、ポリプロピレン、ポリイミド、エポキシ、アクリル、ウレタンなどのプラスチック基材等が挙げられる。
また、ワイヤグリッド型偏光子などの光学材料として用いられる導電性パターンを得る場合には、基材として、ガラス、石英、PETフィルム、アセテートフィルム等の透明なものを用いることができる。
基材の厚みは、使用目的に応じて選択され、特に限定はないが、一般的には、10μm〜10cm程度である。
その後、重合開始能失活工程において、グラフトポリマーを生成させたくない領域に沿ってパターン露光を行い、基材表面に結合している化合物(Q−Y)を光開裂させ、重合開始能を失活させる。
そして、このようにして、重合開始可能領域と、重合開始能失活領域と、が形成された後、グラフトポリマー生成工程が行なわれる。
このグラフトポリマー生成工程では、重合開始可能領域と重合開始能失活領域とを有する基材を、所望とするグラフトポリマーの材料となる、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物(例えば、フッ素含有モノマーに代表される撥油性モノマーなど)を接触させた後、全面露光を行い、重合開始可能領域の重合開始基を活性化させてラジカルを発生させ、そのラジカルを起点として、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物との間で、グラフト化反応を生起、進行させる。その結果、重合開始可能領域にのみ、撥油性を有するグラフトポリマーが生成する。
本発明におけるグラフトポリマーの生成方法について詳細に説明する。
本発明におけるグラフトポリマーは、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物を原料とし、露光により光開裂した重合開始部位(Y)から発生したラジカルを起点として生成する。
グラフトポリマーの生成の際には、まず、原料である、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物を基材上に接触させるが、その方法としては、当該化合物を単独で接触させる、いわゆる無溶媒で接触させる方法、当該化合物が溶解された溶液又は分散された分散液を塗布する方法、その溶液又は分散液中に基材を浸漬する方法などがある。
原料を無溶媒で基材上に接触させる場合、基材上に接触させる組成物中の撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物の濃度は100%となる。
また、ハンドリング性の観点から、このような撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物を溶解しうる溶媒で希釈して、組成物として用いることが好ましい。ここで用いる溶媒には特に制限はないが、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン、エタノール、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン等が好ましい。また、このとき、該組成物中には、撥油性の官能基を有する撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物と共に、必要に応じて、他の単官能及び多官能モノマーや、界面活性剤、増粘剤等の添加剤を添加してもよい。
撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物を含有する組成物を前記基材上に接触させる際には、基材結合部位と重合開始部位とを有する化合物が溶解し(分解し)、グラフトポリマーの生成が不均一となることを抑制するため、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物を含有する組成物中に含まれる溶剤やその他の化合物には、基材結合部位と重合開始部位とを有する化合物を溶解しないものを選択することが好ましい。
グラフトポリマーの生成する際の酸素による重合阻害を防止するため、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物を含有する組成物の基材への接触、及び、グラフト重合反応を、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行なったり、基材上に、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物を含有する組成物を接触させた後、グラフト重合反応を生起させるための光、即ち、本発明においては、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物が光吸収しない波長の光(好ましくは、320nm以上の波長の光)が透過する材質、例えば、ガラス、石英、透明プラスチック製の板やフィルム等で、当該組成物を覆ってもよい。これら、組成物を覆う部材は、後述する、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物が光吸収する波長の光をカットするカットフィルターとして機能してもよい。
次に、本発明におけるグラフトポリマー生成工程に用いられる、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物について説明する。
撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物としては、撥油性の官能基を有し、かつ、ラジカル重合性基を有する化合物であれば、如何なるものも用いることができるが、それらは、モノマー、マクロマー、オリゴマー、ポリマーなどのいずれの形態を有するものであってよい。
(撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物)
以下に、グラフトポリマー生成工程において好適に用いられる、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物について例示する。
本発明において、撥油性を有するグラフトポリマーの生成領域と非生成領域との間に高いディスクリミネーションを発現するという観点からは、形成されたグラフトポリマーの空中水滴接触角は、90度以上あることが望ましい。この高い撥油性の値はESCAで測定した表面原子量の割合で予想することができる。例えば、シリコーンを含有するシリコーン系グラフトポリマーの場合は表面の元素組成中に占めるSiの比率がSi、C、及びOの合計量に対して10原子%以上あればほぼ達成できる。また、フッ素を含有するフッ素系グラフトポリマーの場合は表面の元素組成中に占めるFの比率がF、C、及びOの合計量に対して30原子%以上必要である。このような表面原子量を有するグラフトポリマーを生成させるためには、原料として、少なくともシリコーン系モノマーの場合には、モノマーの構成原子のうちケイ素量が10原子%以上であるものを用いることが必要であり、また、フッ素系モノマーの場合は、モノマーの構成原子のうちフッ素量が30原子%以上であるものを用いることが必要である。従って、高い撥油性を発現させるためには、このような要件を満足するモノマーを使用することが必要である。
また、表面原子量を有するグラフトポリマーを生成させるための材料としての、マクロマー、オリゴマー、ポリマーなども、同様に、分子中のケイ素やフッ素の原子の含有割合が上記の範囲であるものを用いることが必要である。
上記の要件を満足するような撥油性の官能基を有するモノマーとしては、具体的には、フッ素含有モノマー、ケイ素(シリコーン)含有モノマーなどが挙げられる。
以下、本発明において用いられるフッ素含有モノマー、及びケイ素(シリコーン)含有モノマーについて説明する。
−フッ素含有モノマー−
グラフトポリマー生成工程に用いられるフッ素含有モノマーとしては、下記一般式(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V)よりなる群から選ばれた少なくとも1種のフッ素含有モノマーが挙げられる。
CH=CRCOOR ・・・ (I)
〔式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは、−C2p−、−C(C2p+1)H−、−CHC(C2p+1)H−、又は−CHCHO−を表わし、Rは、−C2n+1、−(CFH、−C2n+1−CF、−(CFOC2n2i+1、−(CFOC2m2iH、−N(C2p+1)COC2n+1、又は−N(C2p+1)SO2n+1を表わす。但し、pは1〜10、nは1〜16、mは0〜10、iは0〜16の整数である。〕
CF=CFOR ・・・ (II)
〔式中、Rは、炭素数1〜20のフルオロアルキル基を表わす。〕
CH=CHR ・・・ (III)
〔式中、Rは、炭素数1〜20のフルオロアルキル基を表わす。〕
CH=CRCOOROCOCR=CH ・・・ (IV)
〔式中、R、Rは、各々独立に、水素原子又はメチル基を表わし、R、Rは、各々独立に、−C2q−、−C(C2q+1)H−、−CHC(C2q+1)H−、又は−CHCHO−を表わし、Rは、−C2t表わす。但し、qは1〜10、tは1〜16の整数である。〕
CH=CHRCOOCH(CH)CHOCOCR=CH ・・・ (V)
〔式中、R、Rは、各々独立に、水素原子又はメチル基を表わし、Rは、−C2y+1を表わす。但し、yは1〜16の整数である。)
グラフトポリマー生成工程に用いられるフッ素含有モノマーの具体例を挙げるが、本発明はこれに制限されるものではない。
一般式(I)で示されるモノマーとしては、例えば、CF(CFCHCHOCOCH=CH、CFCHOCOCH=CH、CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、C15CON(C)CHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)CHCHOCOCH=CH、CF(CFSON(C)CHCHOCOCH=CH、CSON(C)CHCHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CF(CHOCOCH=CH、(CFCF(CF10(CHOCOC(CH)=CH、CF(CFCH(CH)OCOC(CH)=CH
Figure 2008004303
、CFCHOCHCHOCOCH=CH、C(CHCHO)CHOCOCH=CH、(CFCFO(CHOCOCH=CH、CF(CFOCHCHOCOC(CH)=CH、CCON(C)CHOCOCH=CH、CF(CFCON(CH)CH(CH)CHOCOCH=CH、H(CFC(C)OCOC(CH)=CH、H(CFCHOCOCH=CH、H(CFCHOCOCH=CH、H(CF)CHOCOC(CH)=CH
Figure 2008004303
、CF(CFSON(CH)CHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)(CH10OCOCH=CH、CSON(C)CHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)(CHOCOCH=CH、CSON(C)C(C)HCHOCOCH=CHなどが挙げられる。
また、一般式(II)及び(III)で表わされるフルオロアルキル化オレフィンとしては、例えば、CCH=CH、CCH=CH、C1021CH=CH、COCF=CF、C15OCF=CF、及びC17OCF=CFなどが挙げられる。
一般式(IV)及び(V)で表わされるモノマーとしては、例えば、CH=CHCOOCH(CFCHOCOCH=CH、CH=CHCOOCHCH(CH17)OCOCH=CHなどが挙げられる。
フッ素含有グラフトポリマーの材料となるモノマーとして、上記フッ素含有モノマーに加えて、本発明の効果を損なわない限りにおいて、フッ素を有しない他のモノマーを併用することができる。そのようなモノマーとしては、ラジカル重合可能なものであれば特に限定されないが、具体的には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸類、及びそのアルキル又はグリシジルエステル類、スチレン、アルキル酸のビニルエステル類、ケイ素含有モノマーなどが挙げられる。
併用する場合の配合量は、フッ素含有モノマーに対して50質量%以下が好ましい。
−ケイ素含有モノマー−
グラフトポリマー生成工程に用いられるケイ素含有モノマーとしては、Si−CH基若しくはO−Si−CH基を有するケイ素含有モノマーを挙げることができる。具体的には、シリコーンアクリレート又はシリコーンメタクリレートであり、一般式(CHO)Si(CH3−n−R−O−CO−CR=CHで表されるものであり、Rは連結基であり、Rはメチル若しくは水素である。その他、例えば、特開2003−335984公報の段落番号〔0025〕に記載されるシリコーン系モノマーもまた、好適なものとして挙げることができる。
本発明におけるグラフトポリマー生成工程では、上記フッ素含有モノマー、ケイ素含有モノマーに加え、フッ素系の官能基、ケイ素系の官能基などの撥油性の官能基と、ラジカル重合性基と、を有するポリマー(以下、「ラジカル重合性基含有撥油性ポリマー」と称する。)も使用することができる。
−ラジカル重合性基含有撥油性ポリマー−
本発明におけるラジカル重合性基含有撥油性ポリマーとは、分子内に、撥油性の官能基と、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのラジカル重合性を有するエチレン付加重合性不飽和基と、が導入されたポリマーを指す。このラジカル重合性基含有撥油性ポリマーは、ラジカル重合性基を主鎖末端及び/又は側鎖に有することを要し、その双方にラジカル重合性基を有することが好ましい。
このようなラジカル重合性基含有撥油性ポリマーは以下のようにして合成することができる。
合成方法としては、前記で挙げたフッ素含有モノマーなどの撥油性モノマーを使用し、(a)撥油性モノマーとエチレン付加重合性不飽和基を有するモノマーとを共重合する方法、(b)撥油性モノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、(c)カルボン酸などの官能基を有する撥油性ポリマーの官能基とエチレン付加重合性不飽和基を有する化合物とを反応させる方法、が挙げられる。これらの中でも、特に好ましいのは、合成適性の観点から、(c)撥油性ポリマーの官能基とエチレン付加重合性不飽和基を有するモノマーとを反応させる方法である。
ラジカル重合性基含有撥油性ポリマーの合成に用いられる撥油性モノマーとしては、上述したフッ素モノマー、シリコーン系モノマーなどが挙げられる。
また、ラジカル重合性基含有撥油性ポリマーの合成に用いられる撥油性ポリマーとしては、これらの撥油性モノマーから選ばれる少なくとも一種を用いて得られる撥油性ホモポリマー若しくはコポリマーが挙げられる。
(a)の方法でラジカル重合性基含有撥油性ポリマーを合成する際、撥油性モノマーと共重合するエチレン付加重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、アリル基含有モノマーがあり、具体的には、アリル(メタ)アクリレート、2−アリルオキシエチルメタクリレートが挙げられる。
また、(b)の方法でラジカル重合性基含有撥油性ポリマーを合成する際、撥油性モノマーと共重合する二重結合前駆体を有するモノマーとしては、2−(3−クロロ−1−オキソプロポキシ)エチルメタクリレー卜が挙げられる。
更に、(c)の方法でラジカル重合性基含有撥油性ポリマーを合成する際、撥油性ポリマー中のカルボキシル基、アミノ基若しくはそれらの塩と、水酸基及びエポキシ基などの官能基と、の反応を利用して不飽和基を導入するために用いられる付加重合性不飽和基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートなど挙げられる。
これらの撥油性の官能基を有するモノマーや、ラジカル重合性基含有撥油性ポリマーは、その1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
本発明の導電性パターン形成方法の重合開始能失活工程でのパターン露光、及びグラフトポリマー生成工程での撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物が光吸収しない波長の光による全面露光に用いうる露光方法には特に制限はなく、前記重合開始部位(Y)において開裂を生じさせるエネルギーを付与できる露光であれば、紫外線による露光でも、可視光による露光でもよい。また、重合開始能失活工程におけるパターン露光、及び、グラフトポリマー生成工程における全面露光は、同じ露光条件で行なわれてもよいし、異なる露光条件で行なわれてもよい。
露光に用いられる光源としては、紫外光、深紫外光、可視光、レーザー光等が挙げられ、具体的には、紫外光、i線、g線、KrF、ArFなどのエキシマレーザーが用いられる。中でも、好ましくは、i線、g線、エキシマレーザーである。
本発明により形成される導電性パターンの解像度は、パターン露光における露光条件に左右される。
本発明の導電性パターン形成方法を用いれば、超微細な導電性パターンの形成が可能であり、高精細のパターン露光を施すことにより、露光に応じた高精細な導電性パターンが形成される。高精細な導電性パターン形成のための露光方法としては、光学系を用いた光ビーム走査露光、マスクを用いた露光などが挙げられ、所望のパターンの解像度に応じた露光方法をとればよい。
特に、50nm程度の超微細な導電性パターンを形成する際のパターン露光としては、具体的には、i線ステッパー、g線ステッパー、KrFステッパー、ArFステッパーのようなステッパー露光や、二光束干渉露光機による露光などが挙げられる。
また、本発明におけるグラフトポリマー生成工程では、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物が光吸収しない波長の光による全面露光が行われることを必須とする。撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物が光吸収しない波長の光を用いると、所望されないホモポリマーの生成が見られ、超微細の導電性パターンが形成できなくなることから、本発明においては、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物が光吸収しない波長の光のみによる全面露光を行う。
本発明において、所望されないホモポリマーの生成を抑制し、且つ、前記重合開始部位(Y)において開裂を効率的に生じさせる点から、グラフトポリマー生成工程の全面露光は、320〜700nmの範囲の波長の光のみで行われることが好ましく、320〜400nmの範囲の波長の光のみで行われることがより好ましい。このような範囲の波長の露光には、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプなどを適用することができる。
上記のような全面露光には、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物が光吸収しない波長の光のみを発する光源を用いる方法や、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物が光吸収しない波長の光のみを透過させる、つまり、光吸収してしまう波長の光をカットするカットフィルターを用いて露光を行う方法が用いられる。具体的には、例えば、320nm未満の波長の光をカットするカットフィルターを用いて露光を行う方法が用いられる。また、好ましい態様として、露光の際には、320〜700nm(好ましくは320〜400nm)の範囲に発光波長(放射スペクトル)を有する光源を用いることが好ましい。
更に、解像度を上げるために、基材と対物レンズとの間に水等の液浸液を介在させた、いわゆる、液浸露光法を用いることもできる。
また、露光エネルギーとしては、100mJ/cm以上であることが好ましく、500mJ/cm以上であることがより好ましい。
このように、グラフトポリマー生成工程を経ることで、表面にグラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなるパターンが形成された基材は、露光後、溶剤浸漬や溶剤洗浄などの処理を行って、残存するホモポリマーを除去して、精製する。具体的には、水やアセトンによる洗浄、乾燥などが挙げられる。ホモポリマーの除去性の観点からは、超音波などの手段を採ることが好ましい。精製後の基材は、その表面に残存するホモポリマーが完全に除去され、基材と強固に結合したパターン状のグラフトポリマーのみが存在することになる。
これらのことから、上述の工程で得られたグラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなるグラフトポリマーパターンは、露光の解像度に応じた微細なパターンとなる。
続いて、本発明の導電性パターン形成方法における導電性素材付着工程について説明する。
本工程では、基材上のグラフトポリマーの非生成領域に導電性素材を付着させて、該非生成領域に応じた導電性パターン(導電性素材の付着領域)を形成することができる。具体的には、以下の3つの方法が挙げられる。
第1の方法としては、グラフトポリマーの非生成領域に導電性微粒子を含有する液体を付与した後、該液体を乾燥させる方法がある。この方法により、グラフトポリマーの非生成領域には、導電性微粒子が付着した導電性パターンが形成される。また、導電性微粒子を含有する液体を付与した後、加熱することが好ましい態様である。
第2の方法としては、グラフトポリマーの非生成領域にアクティベーション処理を施し、該処理を施した領域に無電解メッキを行う方法である。この方法により、グラフトポリマーの非生成領域には、メッキによる導電性パターンが形成される。
第3の方法としては、グラフトポリマーの非生成領域に導電性ポリマー層を形成する方法がある。この方法により、グラフトポリマーの非生成領域には、導電性ポリマー層による導電性パターンが形成される。
以下、これらの3つの方法について詳細に説明する。
(第1の方法:導電性微粒子を用いた導電性パターンの形成)
グラフトポリマーの非生成領域に導電性微粒子を含有する液体を選択的に付与した後、乾燥により溶剤を除去して導電性領域を形成する方法は、具体的には、撥油性を有するグラフトポリマーの生成領域と非生成領域とを有する基材上に、導電性微粒子を含有する液体を塗布し、その液体が、当該グラフトポリマーの生成領域の撥油性に加え、グラフトポリマーの生成領域と非生成領域との間に発現する隔壁効果の存在により、グラフトポリマーの非生成領域に選択的に固定化した後、乾燥させて溶剤を除去するものである。
基材上の、グラフトポリマーの生成領域(撥油性、撥液性)と、非生成領域(親液部)と、の接触角の差が30°より大きい場合には、具体的には、例えば、グラフトポリマーがヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリクロロシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン(以下、「FAS」と称する。)からなり、前記液体がエタノールのようなアルコール類、n−ヘプタンのような炭化水素系溶剤、エチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル系溶剤、プロピレンカーボネートのような極性溶剤などである場合は、前記塗布方法としては、スピンコート法、カーテンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、インクジェット法などの方法を用いることができる。
このような方法を用いることで、塗布した液体が、撥液性のグラフトポリマーの生成領域からはじかれて親液性を有するグラフトポリマーの非生成領域(重合開始能失活領域)に集まったり、また、撥液性のグラフトポリマーの生成領域から除去され親液性の非生成領域にのみ残存したりするからである。その結果、導電性微粒子を含有する液体は、親液性のグラフトポリマーの非生成領域のみに塗布されることとなる。
また、グラフトポリマーの生成領域と非生成領域との間の接触角の差が30°より小さい場合、前記塗布法としてインクジェット法を用いるのが好ましい。この方法によれば、グラフトポリマーの非生成領域にのみ、簡単な工程で精度良く、液体を付与することができ、精度のよい導電性パターンを形成することができる。
次いで、本発明における、導電性微粒子を用いた導電性パターンの形成について詳細に説明する。
導電性微粒子を含有する液体としては、導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液を用いる。ここで用いられる導電性微粒子は、金、銀、銅、パラジウム、ニッケル、アルミニウムなどを含む金属微粒子の他、導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともでき、そのコーティング材としては、これらの微粒子の分散媒として用いられる分子そのものや、クエン酸などの有機分子、その他、一般的な界面活性剤なども挙げられる。
また、このような導電性微粒子の粒径は、溶剤への分散性と、インクジェット法を用いた際の吐出性の観点から、5nm〜0.1μmであることが好ましい。
これらの導電性微粒子は、単独で用いてもよいし、或いは2種以上を混合して用いてもよい。
上記の導電性微粒子を含有する液体に用いられる分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されないが、膜の形成性や、乾燥速度の観点から、室温での蒸気圧が0.001mmHg以上200mmHg以下(約0.133Pa以上約26.6kPa以下)であるものが好ましい。
また、上記液体の塗布をインクジェット法によって行う場合には、膜の形成性や、ノズル詰まりの発生の観点から、分散媒の室温での蒸気圧は、0.001mmHg以上50mmHg以下(約0.133Pa以上約6.65kPa以下)であることがより好ましい。
用いられる分散媒としては、具体的には、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物;プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物;を挙げることができる。
これらの中でも、導電性微粒子の分散性と分散液の安定性、更には、インクジェット法への適用のし易さの点から、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、水、炭化水素系化合物が更に好ましく用いられる。
これらの分散媒は、単独でも、或いは2種以上の混合物としても使用できる。
このような導電性微粒子を分散した分散液(以下、「微粒子分散液」と称する。)における導電性微粒子の分散質濃度は、所望の導電膜の膜厚に応じて調整することができるが、凝集の発生や、塗布回数に起因する経済性の観点から、一般的に、1質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
また、微粒子分散液の表面張力は、インクジェット法への適用性及び吐出条件の制御の観点から、0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲に入ることが好ましい。
この表面張力を調整するため、分散液には、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を添加することができる。中でも、ノニオン系表面張力調節剤は、微粒子分散液の基材への濡れ性を良好化させ、かつ、塗膜のレベリング性を改良することができることから、塗膜に発生するぶつぶつや、ゆず肌などの防止に役立つものである。
更に、微粒子分散液の粘度は、塗布回数に起因する経済性や、グラフトポリマーの非生成領域に対する液体の集り性、更には、インクジェット法への適用性の観点から、所望の導電性を1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。
このような微粒子分散液を、グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とを有する基材上に塗布する方法としては、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ディップコート法、スプレー法、インクジェット法などを用いることができる。
この中でも、スピンコート法を用いる場合のスピナーの回転数としては、必要な導電膜の膜厚、導電性微粒子の分散液の固形分濃度や粘度などにより決まるが、一般に、100rpm〜5000rpm、好ましくは300rmp〜3000rpmが用いられる。
また、微粒子分散液の塗布方法としては、親液部であるグラフトポリマーの非生成領域のみに、必要量を選択的に塗布できることから、インクジェット法を用いることが特に好ましい。インクジェット法を用いることにより、微粒子分散液の吐出量を制御することにより膜厚制御が容易となり、基材上の異なったグラフトポリマーの非生成領域には異なった膜厚や異なった種類の導電性微粒子からなる膜を形成することが可能となる。また、グラフトポリマーの非生成領域のみに微粒子分散液を塗布することができるため、微粒子分散液を構成する材料の使用量が少なくてすむという利点もある。
ここで、微粒子分散液の塗布方法に用いられるインクジェット方式の液滴吐出装置としては、任意の微粒子分散液の液滴を一定量吐出できるものであれば如何なる機構のものでもよく、特に、数十ng程度の液滴を形成、吐出できる圧電素子を用いたインクジェット方式、ヒーターの熱エネルギーを利用して気泡を発生させるバブルジェット(登録商標)方式など、いずれの方式のものをも用いることができる。
更に、微粒子分散液の塗布方法としては、インクジェット法に加え、必要に応じて、上記のスピンコート、ディップコート、スプレーコート、ロールコート、カーテンコート等の一般的な塗布方式を組み合わせることもできる。
これらの方法によりグラフトポリマーの非生成領域に付着した微粒子分散液は、乾燥により液体(分散媒)が除去される。この際、乾燥を速め、導電性微粒子間を融合させ、電気的接触をよくするために、微粒子分散液が付着した基材を加熱することが好ましい。
この加熱処理は、製造性の観点から、通常大気中で行われるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行うこともできる。また、加熱処理の処理温度は、基材の材質、微粒子分散液に用いられた溶媒(分散媒)の沸点(蒸気圧)、圧力及び導電性微粒子の熱的挙動により、適宜、決定すればよく、特に限定されるものではないが、一般的に、室温以上300℃以下で行うことが望ましい。特に、基材としてプラスチックなどの広範囲なものを使用できるという点では、室温から100℃以下で行うことが特に望ましい。
また、上記の加熱処理は、通常のホットプレート、電気炉などでの処理の他、ランプアニールによって行うこともできる。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを使用することができる。これらの光源は、一般には、10〜5000Wの出力のものが用いられるが、通常100〜1000Wで十分である。
以上のようにして、グラフトポリマーの非生成領域に導電性微粒子が付着した、導電性パターンが得られる。なお、導電性微粒子として金属微粒子を用いた場合には、金属パターンが得られることになる。
(第2の方法:無電解メッキを用いた導電性パターンの形成)
グラフトポリマーの非生成領域にアクティベーション処理を施し、該処理を施した領域に無電解メッキを行い導電性領域を形成する方法は、具体的には、基材上に形成されたグラフトポリマーの非生成領域にアクティベーターを付与した後、基材を無電解メッキ液に浸漬させ、アクティベーターを付与した箇所にのみ選択的にメッキを行い、金属薄膜を形成するものである。
この方法によれば、グラフトポリマーの非生成領域に、簡単な工程で、精度良く、金属薄膜パターン(導電性パターン)を形成することができる。
次いで、本発明における、無電解メッキを用いた導電性パターンの形成について詳細に説明する。
この方法において用いられる無電解メッキ液としては、ニッケル塩化物、次亜リン酸及び水を含むニッケル無電解メッキ液、水を含む金無電解メッキ液等のメッキ溶液が挙げられる。
特に、FAS等を用いたグラフトポリマーが生成した基材を用いる場合には、例えば、アクティベーターとして、4質量%塩酸100mlに塩化パラジウム20mgを溶解し、更に、水酸化ナトリウムを加えてpHが5となるように調整した液体を用い、無電解メッキ液として、水1リットルに塩化ニッケル25g及び次亜リン酸ナトリウム25gを溶解し、更にpH調整剤を加えてpH5程度にした溶液を用いることが好ましい。
また、グラフトポリマーの非生成領域には、無電解メッキ液等のメッキ液滴を2種以上用い、異なる箇所に2種以上の異なる金属薄膜を成形してもよい。例えば、ある箇所はニッケル薄膜を形成し、これ以外の箇所は金薄膜を形成することで、導電性パターンとして、種々の配線を形成することもできる。また、グラフトポリマーの非生成領域の同一箇所に2種以上の無電解メッキ液滴を吐出して、異なる金属薄膜を重ね合わせることも可能である。
金属薄膜の厚さは、無電解メッキ液滴に用いる金属の析出条件に応じて、インク吐出条件を調整することで制御することができる。具体的には、例えば、無電解メッキ液滴の吐出ドット数を調整する方法があるが、この場合には、所望の金属薄膜の厚さに応じて、ロット毎に吐出ドット数を変更したり、1つの基材中で、吐出ドット数を吐出位置に応じて変更して、金属薄膜の厚みを適宜変更することができる。また、メッキ液滴の吐出を所定回数繰り返す方法もあるが、この場合には、無電解メッキ液滴の吐出ドット数と吐出回数とを調整することにより、金属薄膜の厚みを適宜変更することができる。このような金属薄膜の制御方法により、金属薄膜の変化を±5%以内に抑えることができる。
本発明においては、上記のような無電解メッキ液を付与する前に、グラフトポリマーの非生成領域にはアクティベーション処理しておくことが必要である。即ち、アクティベーション処理によりグラフトポリマーの非生成領域に活性種層を形成し、次いで、その活性種層上に選択的に無電解メッキ液滴を吐出・塗布して金属皮膜を形成する。
ここで、アクティベーション処理とは、公知のアクティベーター(パラジウム塩化物、塩化水素等を含有する混合液に、例えば、室温で、pHが5.8になるように水酸化ナトリウム水溶液を加えて調節したもの等)中に、グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とを有する基材を1〜5分間浸漬することで行われる。この際、アクティベーターは、グラフトポリマーの生成領域における撥油性に加え、グラフトポリマーの生成領域と非生成領域との間に発現する隔壁効果の存在により、グラフトポリマーの非生成領域に選択的に付着することができる。また、アクティベーターをインクジェット法にて、グラフトポリマーの非生成領域のみに吐出する方法も用いることができる。この場合には、アクティベーターをインクジェット法にて吐出した後に、室温で1〜5分間放置して、その後、基材を水洗することが好ましい。
このような方法を用いて、最終的に得られるメッキ膜(金属薄膜)の厚さは、用途に応じて任意に設定することができるが、0.02〜2μmとするのが好ましい。
ここで、無電解メッキを行う際は、無電解メッキ液滴に用いる金属の析出条件に応じて、吐出条件が制御される。具体的には、金属としてニッケルを用いる場合には、吐出時の基材温度を30〜60℃とし、湿度を70%以上に保持するのが好ましく、吐出ドット数を5回程度、吐出回数を1回程度とし、1ドット当たりの吐出量を、30pL程度とすることが好ましい。
(第3の方法:導電性ポリマー層による導電性パターンの形成)
グラフトポリマーの非生成領域に導電性ポリマー層を形成し導電性領域を形成する方法は、具体的には、撥油性を有するグラフトポリマーの生成領域と非生成領域とを有する基材上に、導電性ポリマーを含む液体を塗布し、その液体が、当該グラフトポリマーの生成領域の撥油性に加え、グラフトポリマーの生成領域と非生成領域との間に発現する隔壁効果の存在により、グラフトポリマーの非生成領域に選択的に固定化した後、乾燥させることにより、導電性ポリマー層を形成するものである。
導電性ポリマー層を構成する導電性ポリマーとしては、10-6S・CM-1以上、好ましくは、10-1S・CM-1以上の導電性を有するものであればよいが、具体的には、例えば、置換及び非置換の導電性ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリピロール、ポリセレノフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセチレン、ポリピリジルビニレン、ポリアジン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、また、目的に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、導電性ポリマー層は、所望の導電性を達成できる範囲であれば、導電性を有しない他のポリマーとの混合物であってもよいし、導電性モノマーと導電性を有しない他のモノマーとのコポリマーから構成されていてもよい。
導電性ポリマー層の層厚は、用途に応じて任意に設定することができるが、0.1〜10μmとするのが好ましい。
本発明における導電性素材付着工程では、導電性素材をグラフトポリマーの非生成領域に付着させる前に、該非生成領域に対して、表面コロナ処理や、過マンガン酸などを用いた表面酸化処理を施し、その表面に、水酸基やカルボキシル基などの極性基を生成させることが好ましい。このように、極性基が生成したグラフトポリマーの非生成領域に対して、上述の各方法のように、導電性微粒子を含有する液体、アクティベーター、導電性ポリマーを含む液体、を付与することで、これらの液体や該液体を構成する導電性微粒子、金属イオン、導電性ポリマーと、極性基と、の間に相互作用が形成され、結果的に、導電性素材が非生成領域に強固に吸着する状態が形成される。これにより、得られた導電性パターンの耐久性は向上し、用途の拡大や、使用環境の拡大を図ることができる。
上述の各工程を経ることで、所望の解像度を有する導電性パターンを形成することができる。得られた導電性パターンは、強度と耐久性に優れ、広い用途が期待される。
例えば、マイクロマシンや超LSIなどに用いられる、単一の回路形成からなる高精細(高解像度)な配線基板や、広い面積の導電性領域を要する配線基板として用いることも可能である。また、高密度磁性ディスク、磁気ヘッド、磁気テープ、磁気シート、磁気ディスクなどの用途も期待できる。
また、基材にPETなどの透明フィルムを使用した場合には、パターン形成された透明導電性フィルムとして使用することができる。このような透明導電性フィルムの用途としては、ディスプレイ用透明電極、調光デバイス、太陽電池、タッチパネル、その他の透明導電膜が挙げられるが、CRTやプラズマディスプレイにつける電磁波シールドフィルターとして特に有用である。このような電磁波シールドフィルターは高い導電性と透明性とを必要とするため、導電性材料を格子状に設けることが好ましい。このような格子線幅は、20〜100μm、開口部は50〜600μm程度が好ましい。この格子は必ずしも規則正しく、直線で構成されていなくてもよく、曲線状で構成されていてもよい。
また、本発明においては、グラフトポリマー生成工程における所望されないホモポリマーの生成を抑制することができ、結果的に、超微細で、且つ、高精度の導電性パターンが得られる。そのため、本発明の導電性パターン形成方法により、良好な偏光度を有するワイヤグリッド型偏光子(本発明のワイヤグリッド型偏光子)を得ることができる。
本発明の導電性パターン形成方法を用いて、基材上に平行に並んだ直線状金属線を有するワイヤグリッド型偏光子を作製する場合には、導電性素材付着工程には、第1の方法、又は第2の方法を適用することが好ましい。なお、形成される金属線(導電性パターン)は、入射光の反射率が高い金属から形成されていることが好ましく、例えば、入射光が可視光であればアルミニウム、銀が好ましく、赤外光であれば、金、銀、銅などが好ましいものとして挙げられる。
更に、可視光に対し偏光度に優れるものとするために、基材上の直線状金属線(導電性発現層)は、好ましくは、ラインアンドスペースの幅がそれぞれ10〜500nmの範囲、より好ましくは、20〜300nmの範囲で形成されることが好ましい。
加えて、本発明の導電性パターン形成方法によりワイヤグリッド型偏光子を得る場合には、基材として、ガラス、石英、PETフィルム、アセテートフィルム等の光学的に透明なものを用いることが好ましい。
本発明のワイヤグリッド型偏光子は、上述のように光に対する偏光に加え、電磁波を偏光することも可能である。
このようなワイヤグリッド型偏光子は、液晶表示装置、投影型の表示装置、自動車のヘッドランプ等に用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
(光開裂化合物結合工程)
石英板(日本板硝子社製、片面研磨、4インチ)を用いて、5分間UVオゾン処理を行うことで表面洗浄を行った。
次に、下記に示す重合開始部位と基材結合部位とを有する化合物P1を脱水トルエンに溶解して1.0質量%溶液を調製し、これを上記の石英板上にスピンコートした。スピンコートは、まず、300rpmで5秒回転させ、次に1000rpmで20秒間回転させた。スピンコート後、100℃で60秒間加熱し、表面をトルエン及びアセトンで洗浄した。このようにして得られた化合物P1が結合したシリコーンウエハを基材A1とする。
Figure 2008004303
(重合開始能失活工程)
基材A1の片面に、二光束干渉露光機(ニコン社製、LEIES193−1、193nm、pawer15mW)を用いて、幅50nmの直線が50nm毎に平行に並ぶようにパターン露光を行った。このように処理を施した基材を基材B1とする。
(グラフトポリマー生成工程)
フッ素含有モノマーである、2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート(アブマックス(株)社製)0.5gと、1−メトキシ−2−プロパノール(和光純薬工業(株)社製)2.5gと、を混合して均一溶液とした。この溶液を、基材B1上に膜厚が1〜3mm程度になるように塗布し、その上に、320nm以上の光のみを透過するガラス板(青色ガラス、松並ガラス社製)をかぶせ、基材B1とガラス板とでフッ素含有モノマーを含む溶液を挟み込んだ。
次に、ガラス板上から、露光機(UVX−02516S1LP01、ウシオ電機社製、63mW/cm、主たる発光波長:254nm、365nm)を用いて、5分間全面露光を行った。その後、ガラス板を取り除き、露光面をアセトンで充分洗浄した。続いて、露光面を、アセトンを用いて超音波洗浄器にて15分間洗浄した。以上のようにして、パターンC1を形成した。
なお、2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレートを1−メトキシ−2−プロパノールに溶解した溶液における、320nmの光の吸光係数は1.0であり、365nmの光の吸光係数は0であった。
ここで、形成されたパターンC1を、原子間顕微鏡AFM(ナノピクス1000,セイコーインスツルメンツ社製、DFMカンチレバー使用)で観察したところ、ラインアンドスペースの線幅が50nmの超微細なグラフトポリマーパターンが形成されていたことが確認された。
(導電性素材付着工程)
<Ag粒子水分散液の調製>
過塩素酸銀のエタノール溶液(5mmol/l)50mlにビス(1,1−トリメチルアンモニウムデカノイルアミノエチル)ジスルフィド3gを加え、激しく撹拌しながら水素化ホウ素ナトリウム溶液(0.4mol/l)30mlをゆっくり滴下してイオンを還元し、4級アンモニウムで被覆された銀粒子の分散液を得た。この銀粒子のサイズを電子顕微鏡で測定したところ、平均粒径は5nmであった。
フッ素系グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなるパターンC1に、上記の銀粒子水分散液をスピンコート法により塗布した。塗布された微粒子分散液について観察したところ、該微粒子分散液はフッ素系グラフトポリマーの非生成領域のみに選択的に固定化され、フッ素系グラフトポリマーの生成領域には残存していないことが分かった。
続いて、この基材を、大気中にて、300℃で15分間焼成したところ(加熱処理)、フッ素系グラフトポリマーの非生成領域に塗布されていた微粒子分散液が融合し、銀配線が形成された。
形成された銀配線を、電子顕微鏡(JEOL JEM−200CX)にて50万倍で観察したところ、前記のようなフッ素系グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなるパターンに従った、幅50nm、スペース50nmの銀配線のラインパターンが形成された。
〔比較例1〕
実施例1におけるグラフトポリマー生成工程において、320nm以上の波長の光のみを透過するガラス板に代えて、石英板を用いて全面露光を行った以外は、実施例1と同様の方法で、パターンC2を形成した。
使用した石英板は、320nm未満の波長の光を透過しうるものである。
ここで、2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレートを1−メトキシ−2−プロパノールに20質量%で溶解した溶液における、254nmの光の吸光度は4以上であり、同溶液における、254nmの光の吸光係数は20以上であった。
また、形成されたパターンC2を、原子間顕微鏡AFM(ナノピクス1000,セイコーインスツルメンツ社製、DFMカンチレバー使用)で観察したところ、ホモポリマーの残存が見られ、グラフトポリマーの非生成領域が不明瞭となっており、50nm程度の超微細なグラフトポリマーパターンは確認できなかった。
その後、パターンC2に対して、実施例1と同様の導電性素材付着工程を行い、更に、300℃で15分間焼成した。
導電性素材を付着させた面について、電子顕微鏡(JEOL JEM−200CX)にて50万倍で観察したところ、銀の付着がほとんど見られず、銀配線のラインパターンは確認できなかった。
<導電性の評価>
実施例1により得られた導電性パターン材料について、下記のようにして導電性の評価を行った。
三菱化学製の表面抵抗計(ロレスタ、4深針法)を用いて、得られた導電性パターンの表面導電性を測定した。その結果、100Ω/□であった。
このように本発明の導電性パターン形成方法により得られた導電性パターンは、優れた導電性を示していた。
<ワイヤグリッド型偏光子としての性能評価>
実施例1により得られた導電性パターン材料について、ワイヤグリッド型偏光子としての性能評価を行った。
得られたワイヤグリッド型偏光子の金属線(導電性パターン)が形成されている面から波長405nmの固体レーザー光、及び波長635nmの半導体レーザー光を、該ワイヤグリッド型偏光子に対して垂直に入射し、その偏光分離性能(偏光度)を測定した。
その結果、入射光405nmにおける透過光の偏光度は98.2%であり、635nmにおける透過光の偏光度は99.6%であった。
このように、本発明の導電性パターン形成方法により得られたワイヤグリッド型偏光子は、可視光に対して優れた偏光度を有していることが分かる。
本発明の導電性パターン形成方法における光開裂化合物結合工程からグラフトポリマー生成工程の概略を示す概念図である。

Claims (5)

  1. 光開裂によりラジカル重合を開始しうる光重合開始部位と基材結合部位とを有する化合物を基材に結合させる工程と、
    パターン露光を行い、露光領域の該光重合開始部位を失活させる工程と、
    前記基材上に、撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物を接触させた後、該撥油性の官能基を有するラジカル重合性化合物が光吸収しない波長の光のみで全面露光を行い、320nm以上の波長の光で全面露光を行い、前記パターン露光時における非露光領域に残存した該光重合開始部位に光開裂を生起させ、ラジカル重合を開始させることでグラフトポリマーを生成させて、当該基材表面にグラフトポリマーの生成領域と非生成領域とを形成する工程と、
    該グラフトポリマーの非生成領域に導電性素材を付着させる工程と、
    をこの順に行うことを特徴とする導電性パターン形成方法。
  2. 前記全面露光が320〜700nmの範囲の波長の光のみで行われることを特徴とする請求項1に記載の導電性パターン形成方法。
  3. 前記全面露光が320〜400nmの範囲の波長の光のみで行われることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の導電性パターン形成方法。
  4. 1μm以下の線幅の導電性素材の付着領域を形成する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法により得られた、基材上に平行に並んだ直線状金属線を有するワイヤグリッド型偏光子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014102082A (ja) * 2012-11-16 2014-06-05 Kumagai Gumi Co Ltd 中性子線遮蔽構造体
JP2016090639A (ja) * 2014-10-30 2016-05-23 Jsr株式会社 金属線を有する基材の製造方法、偏光素子および電極基板

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