JP2011079877A - 高分子超薄膜および高分子超薄膜パターン、並びに、パターン形成用組成物 - Google Patents

高分子超薄膜および高分子超薄膜パターン、並びに、パターン形成用組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、膜厚のバラツキが少なく、かつ基板との密着性に優れ、電子線や短波長の露光光などの照射露光によって十分なパターン解像度を示し、ナノメートルレベルで構造制御された高分子超薄膜およびそのパターン、並びに、高分子超薄膜パターンの形成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】露光によりラジカルを発生しうる基板表面とラジカル重合性基を有する高分子とが直接結合して、前記基板表面上に形成される高分子超薄膜であって、前記ラジカル重合性基が式(1)で表されるα位置換アクリロイル基であり、膜厚が1〜10nmである高分子超薄膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、高分子超薄膜および高分子超薄膜パターン、並びにパターン形成用組成物に関するものである。より詳しくは、露光によりラジカルを発生しうる基板表面と、所定の置換基を有するラジカル重合性基を含む高分子とが直接結合して形成される高分子超薄膜とそのパターンに関する。また、高分子超薄膜パターンの形成に有用な組成物に関する。
近年、高度な機能やより優れた性能を求める新材料の研究開発が活発に行われるなか、膜厚がナノメートルレベル(特に、10nm以下)の高分子超薄膜(以後、超薄膜とも称する)への関心が高まっている。このようなナノレベルで構造制御された薄膜は通常の材料とは異なった性質を示すため、電子デバイス、物質分離材、光機能膜などへの応用が期待されている。
従来の薄膜作製方法としては、例えば、スピンコート法、LB(ラングミュアーブロジェット)法(特許文献1)、モノマーグラフト法などが挙げられる。スピンコート法は、回転させた固体基板の表面に高分子含有液などを滴下して膜を作製する方法である。しかしながら、スピンコート法では、膜厚を50nm以下とすることはきわめて困難である。具体的には、得られた薄膜の膜厚の均一性や膜の平坦性が乏しく、さらに膜中にピンホールなどが数多く発生してしまう。
一方、LB法を用いてナノメートルレベルの薄膜を作製することはできるが、適用できる高分子は、極性基、親水性基、イオン性基などの置換基をもつ緻密に分子設計された特定の構造を持つ高分子に限定されている。例えば、疎水的な性質を示す高分子はLB法の適用対象外であるため、LB法は薄膜の作製方法としての汎用性が乏しい。また、LB法は大面積化での製造が難しく、工業性・生産性という点では必ずしも満足できるものでない。
さらに、スピンコート法やLB法で得られた薄膜は、基板との密着性が十分でないため、摩擦などによる物理的作用や溶媒などの化学的処理によって容易に基板から剥がれてしまう。
他の薄膜作製方法としては、基板上よりモノマーの重合を行い、基板に結合したポリマーを製造するモノマーグラフト法などが提案されている。しかしながら、該方法では、バッチ方式で基板を液状モノマー中に浸漬させる必要があるため、生産性に乏しく、かつ大面積化も困難である。また、重合の制御が難しいため、膜厚にバラツキが生じやすく再現性に劣る。さらには、モノマーの揮発により異臭が発生するため作業環境面の点においても好ましくない。
さらに、他の薄膜作製方法として、重合開始能を有する基板と、ラジカル重合性基を有する高分子とを直接結合させて得られるグラフトポリマー膜を作製する方法が提案されている(特許文献2)。
特開平5−265005号公報 特開2009−79154号公報
本発明者らが、特許文献2に具体的に開示されているメタクリロイル基やアクリロイル基を有する高分子を用いて高圧水銀灯(波長:254nm)からの照射による高分子膜の作製方法について検討したところ、この方法ではナノメートルレベルで構造制御された超薄膜を得ることが困難であった。より具体的には、露光によって得られる薄膜は、基板と直接結合しているものの、スピンコートなどで形成される露光前の基板上の塗布膜と同程度の厚みを有しており、膜厚が10nm以下の超薄膜を得ることが困難であった。この原因としては254nmの短波の光により本来意図した基板からの重合以外に、メタクリロイル基やアクリロイル基自身の分解、重合が起こり、膜全体の架橋が起こるためと推定される。したがって、この方法では10nm以下での膜厚の薄膜を得ることが極めて困難であった。
また、通常、曲面などの凹凸表面上で薄膜を作製する場合、塗布膜内の位置によって塗膜厚みの差が生じやすい。そのため、上述の方法では塗布膜と同じ膜厚分布を有する薄膜しか得ることができず、凹凸表面上に一定の膜厚を有する薄膜を得ることが困難となることも予想される。
また、従来から薄膜を作製した後、所望のパターン形状にすることによって、様々な用途展開がなされている。例えば、その一例としてフォトレジストなどが挙げられる。より具体的には、感光性組成物などのレジスト材料を用いてスピンコートなどによって薄膜を形成した後、所望の像様露光を行ってパターンを形成し、得られたパターンを利用して導電性のパターンなどを作製する。
近年、マイクロマシンの開発の進行や超LSIの一層の小型化に伴い、パターン形状もナノ単位の微細なものを要求されるようになってきている。特に、最近では、より解像度の高い微細なパターン加工を行うため、短波長の露光光(例えば、ArFエキシマレーザー:193nm、UV光:254nm)や電子線の照射が用いられており、それらに適用できる材料および方法などの開発が望まれている。
しかしながら、従来の材料および方法では、パターン解像度が十分でない、または、パターン上に形成された金属配線の密着性に劣るなど、実用上の要求に十分に応えることが出来ていない。
実際、本発明者らが特許文献2に記載の方法を参照して、メタクリロイル基やアクリロイル基を有する高分子を用いて電子線照射によるパターン形成を行ったところ、未照射部においても塗膜の硬化が進行し、ナノメートルレベルでの微細パターンを高精度に形成することができなかった。つまり、特許文献2に記載されるような従来技術では、短波長の露光光源または電子線によって、ナノメートルレベルで制御され、十分なパターン解像度を示す高分子超薄膜は得られておらず、さらなる改良が必要であった。
さらに、上記の導電性パターンを形成する用途以外にも、パターン状の薄膜を、その上に形成される材料の配向制御を促す下地層として使用することも期待される。特に、ブロックポリマーより形成されるラメラ構造中の相配向を制御することができれば、従来よりも高解像度のリソグラフィ用マスクとして使用することも可能である。
しかしながら、従来の感光性組成物を用いたパターン材料や、特許文献2に記載の方法で得られる解像度が不十分なパターン材料では、ブロックポリマーの相分離構造を制御するための下地層としては十分に機能せず、さらなる改良が必要とされていた。
そこで、本発明は、上記問題点を解決すべく、導電性パターンの形成や配向制御用下地層としての使用など様々な用途への展開が可能であり、膜厚のバラツキが少なく、かつ基板との密着性に優れ、電子線や短波長の露光光などの照射露光によって十分なパターン解像度を示し、ナノメートルレベルで構造制御された高分子超薄膜およびそのパターン、並びに、高分子超薄膜パターンの形成方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記高分子超薄膜パターンの形成に有用な組成物を提供することも目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、ラジカルを発生する基板上に形成されたラジカル重合性基を有する高分子の塗布膜に、短波長の露光光や電子線の照射を行った場合、基板と塗布膜との界面間で選択的に反応が進行するだけでなく、塗布膜内部で高分子間での分子内架橋が進行することを見出した。その結果、得られる基板と結合した硬化膜の膜厚が厚くなると共に、照射部以外へも分子内架橋が伝搬して未照射部でも硬膜してしまい、十分な解像度を有するパターンが形成できないことを見出した。
これらの知見をもとに検討行った結果、α位が炭素数2以上の嵩高いアルキル基、または炭素数1以上の置換アルキル基で置換されたα位置換アクリロイル基(α位置換アクリレート基)を有する高分子を使用することにより、基板上に所望の特性を示す高分子超薄膜またはそのパターンを簡便に製造できることを見出した。
即ち、本発明者らは、上記課題が下記の<1>〜<20>の構成により解決されることを見出した。
<1> 露光によりラジカルを発生しうる基板表面とラジカル重合性基を有する高分子とが直接結合して、前記基板表面上に形成される高分子超薄膜であって、前記ラジカル重合性基が後述する式(1)で表されるα位置換アクリロイル基であり、膜厚が1〜10nmである高分子超薄膜。
<2> 露光によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位と基板結合部位とを有する化合物が前記基板結合部位を介して前記基板と結合して形成される重合開始層を、前記基板が表面上に有する、<1>に記載の高分子超薄膜。
<3> 前記ラジカル重合性基を有する高分子が、後述する式(2)で表される繰り返し単位を有する高分子である、<1>または<2>に記載の高分子超薄膜。
<4> 前記高分子中において後述する式(2)で表される繰り返し単位が、全繰り返し単位に対して、1〜80モル%含有される、<3>に記載の高分子超薄膜。
<5> R1がイソプロピル基である、<1>〜<4>のいずれかに記載の高分子超薄膜。
<6> 平均表面粗さRaが1.0nm以下である、<1>〜<5>のいずれかに記載の高分子超薄膜。
<7> 波長300nm以下のエネルギー線または電子線の照射によって、前記基板表面とラジカル重合性基を有する高分子との直接結合が形成される、<1>〜<6>のいずれかに記載の高分子超薄膜。
<8> 露光によりラジカルを発生しうる基板上に、後述する式(1)で表されるα位置換アクリロイル基を有する高分子を接触させ、パターン状にエネルギーを付与して形成される、膜厚1〜10nmの前記基板表面上に直接結合した高分子超薄膜パターン。
<9> 前記エネルギー付与が、波長300nm以下のエネルギー線または電子線の照射によって行われる、<8>に記載の高分子超薄膜パターン。
<10> R1がイソプロピル基である、<8>または<9>に記載の高分子超薄膜パターン。
<11> <8>〜<10>のいずれかに記載の高分子超薄膜パターンに無電解メッキ触媒またはその前駆体を付与し、その後、無電解メッキを行いパターン状の金属薄膜を形成してなる導電性パターン。
<12> <8>〜<10>のいずれかに記載の高分子超薄膜パターンに金属イオンまたは金属塩を付与し、その後、該金属イオンまたは該金属塩中の金属イオンを還元して金属を析出させ、パターン状の金属薄膜を形成してなる導電性パターン。
<13> <8>〜<10>のいずれかに記載の高分子超薄膜パターンを備える基板と、前記高分子超薄膜パターン上に、2種以上の互いに非相溶であるポリマー鎖が結合してなるブロックポリマーより形成され、ラメラ状相分離構造を有するブロックポリマー層とを備え、上記ラメラ状相分離構造の相が前記基板に対して垂直方向に配向している、構造体。
<14> 露光によりラジカルを発生しうる基板上に、後述する式(1)で表されるα位置換アクリロイル基を有する高分子を接触させ、波長300nm以下のエネルギー線または電子線によってパターン状にエネルギーを付与して、膜厚が1〜10nmで、線幅が200nm以下の前記基板表面上に直接結合した高分子超薄膜パターンを製造する、高分子超薄膜パターンの形成方法。
<15> R1がイソプロピル基である、<14>に記載の高分子超薄膜パターンの形成方法。
<16> 後述する式(1)で表されるα位置換アクリロイル基を有する高分子を含有するパターン形成用組成物。
<17> 前記高分子が、後述する式(2)で表される繰り返し単位を有する高分子である、<16>に記載のパターン形成用組成物。
<18> 前記高分子が、さらに、後述する式(3)で表される繰り返し単位を有する高分子である、<16>または<17>に記載のパターン形成用組成物。
<19> 後述する式(1)で表されるα位置換アクリロイル基と、式(3)で表される繰り返し単位とを高分子を含有する被めっき用組成物。
(式(3)中、R3は、水素原子またはアルキル基を表す。Lは、連結基または単なる結合手を表す。Yは、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、水酸基、シアノ基、ピリジル基、またはシアノ基を表す。)
<20> 後述する式(1)で表されるα位置換アクリロイル基と、式(3)で表される繰り返し単位とを高分子を含有する、ブロックポリマーより構成される相分離構造中の相の配向を制御するための下地層用組成物。
(式(3)中、R3は、水素原子またはアルキル基を表す。Lは、連結基または単なる結合手を表す。Yは、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、アンモニウム基、アミノ基、または水酸基を表す。)
本発明によれば、膜厚のバラツキが少なく、かつ基板との密着性に優れ、電子線や短波長の露光光などの照射露光によって十分なパターン解像度を示し、ナノメートルレベルで構造制御された高分子超薄膜およびそのパターン、並びに、高分子超薄膜パターンの形成方法を提供することができる。
また、本発明によれば、上記高分子超薄膜パターンの形成に有用な組成物を提供することもできる。
また、本発明によれば、高分子超薄膜パターンを利用して、金属との密着性に優れ、さらに耐久性にも優れ、ナノメートルレベルでの高解像度を有する導電性パターンを提供することもできる。
さらに、本発明によれば、基板上に形成された高分子超薄膜パターンを用いて、ラメラ状の相が基板に対して垂直方向に配向したミクロ相分離構造を有するブロック共重合体の層を備える構造体を提供することもできる。
図1は、実施例3で得られた高分子超薄膜の上面からのAFM像である。 図2は、実施例6で得られた高分子超薄膜の上面からのAFM像である。 図3は、実施例7で得られた高分子超薄膜の上面からのAFM像である。 図4は、実施例8で得られた高分子超薄膜の上面からのAFM像である。
以下、本発明に係る高分子超薄膜および高分子超薄膜パターン、並びに、その製造方法(パターン形成方法)について説明する。
まず、本発明において使用する材料(基板、高分子など)について詳述し、次に、製造方法について詳述する。
<露光によりラジカルを発生しうる基板>
露光によりラジカルを発生しうる基板は、後述する所定のα位置換アクリロイル基を有する高分子と直接結合し、得られる高分子超薄膜を支持するための基板である。この基板は、特定の波長の光露光、電子線照射などの活性エネルギー線の照射露光により、ラジカルを発生させることができれば、如何なる基板を用いてもよい。
露光によりラジカルを発生しうる基板としては、例えば、(a)ラジカル発生剤を含有する基板、(b)ラジカル発生部位を有する高分子化合物を含有する基板、(c)側鎖にラジカル発生部位を有する高分子化合物と架橋剤とを含有する塗布液を支持体表面に塗布、乾燥し、被膜内に架橋構造を形成させてなる基板、などが挙げられる。他には、(d)その表面上に重合開始能を有する化合物を含む重合開始層を設けた基板が挙げられる。具体例として、例えば、エネルギー線照射によって開裂してラジカル重合を開始しうる重合開始部位と、基板結合部位とを有する化合物を、基板結合部位を介して基板表面に結合させ、形成される重合開始層を有する基板である。なかでも、得られる高分子超薄膜の膜厚の均一性・平坦性が優れる点から、(d)の方法が好ましい。
上記(a)の方法で使用される露光によりラジカルを発生しうる化合物(以下、適宜、ラジカル発生剤と称する)は低分子化合物でも、高分子化合物でもよく、一般に公知のものが使用される。低分子のラジカル発生剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのケトン、ベンゾイルベンゾエート、ベンゾイン類、α−アシロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、トリクロロメチルトリアジンおよびチオキサントン等の公知のラジカル発生剤を使用できる。
また、上記(b)の方法で使用されるラジカル発生部位を有する高分子化合物(高分子ラジカル発生剤)としては特開平9−77891号段落番号〔0012〕〜〔0030〕や、特開平10−45927号段落番号〔0020〕〜〔0073〕に記載の活性カルボニル基を側鎖に有する高分子化合物などを使用できる。
また、上記(c)の方法では、任意の支持体上に、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層を形成することで、露光によりラジカルを発生しうる基板とする。具体的には、側鎖にラジカル発生部位を有する高分子化合物と架橋剤とを含有する塗布液を支持体(基板)表面に塗布、乾燥し、被膜内に架橋構造を形成させて重合開始層を形成する。このような重合開始層の形成方法については、例えば、特開2004−123837号公報に詳細に記載され、このような重合開始層を本発明に適用することができる。
上記(d)の方法に適用しうる重合開始能を有する化合物としては、例えば、開裂によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位(Y)と基板結合部位(Q)とを有する化合物(以下、適宜「光開裂化合物(Q−Y)」と称する。)等が挙げられる。
ここで、エネルギー線照射により開裂してラジカル重合を開始しうる重合開始部位(以下、単に「重合開始部位(Y)」と称する。)は、光や電子線などのエネルギー線照射により開裂しうる単結合を含む構造である。この開裂する単結合としては、カルボニルのα開裂、β開裂反応、光フリー転位反応、フェナシルエステルの開裂反応、スルホンイミド開裂反応、スルホニルエステル開裂反応、N−ヒドロキシスルホニルエステル開裂反応、ベンジルイミド開裂反応、活性ハロゲン化合物の開裂反応、などを利用して開裂が可能な単結合が挙げられる。これらの反応により、光や電子線などにより開裂しうる単結合が切断される。この開裂しうる単結合としては、C−C結合、C−N結合、C−O結合、C−Cl結合、N−O結合、及びS−N結合などが挙げられる。より具体的には、下記開裂部位例1〜10が挙げられ、構造中の波線で表示された部分の単結合が開裂する。
また、これらの光や電子線により開裂しうる単結合を含む重合開始部位(Y)は、後述するラジカル重合性基を有する高分子のグラフト反応の起点となることから、この単結合が開裂すると、その開裂反応によりラジカルを発生させる機能を有する。このように、開裂しうる単結合を有し、かつ、ラジカルを発生可能な重合開始部位(Y)の構造としては、以下に挙げる基を含む構造が挙げられる。即ち、芳香族ケトン基、フェナシルエステル基、スルホンイミド基、スルホニルエステル基、N−ヒドロキシスルホニルエステル基、ベンジルイミド基、トリクロロメチル基、ベンジルクロライド基、などが挙げられる。
このような重合開始部位(Y)はエネルギー付与により開裂して、ラジカルが発生すると、そのラジカル周辺にラジカル重合性基を有する高分子が存在する場合に、このラジカルがグラフト反応の起点として機能し、グラフトポリマーを生成することができる。
このため、表面に光開裂化合物(Q−Y)が導入された基板を用いてグラフトポリマーを生成させる場合、エネルギー付与手段として、重合開始部位(Y)を開裂させうる波長の光または電子線など高エネルギー線の露光を用いる。
また、基板結合部位(Q)としては、ガラスに代表される絶縁基板表面に存在する官能基(水酸基、カルボキシル基など)と反応して結合しうる反応性基で構成され、その反応性基として具体的には、以下に示すような基板結合基が挙げられる。なかでも、反応性に優れる点で、−Si(OA)3基(Aは、アルキル基を表す。好ましくは、メチル基、エチル基)、−SiX3基(Xはハロゲン原子を表す。好ましくは、塩素原子)などが挙げられる。基板表面と光開始部位との結合の例としては、O−C、O−Si、N−C、N−Si、S−C、S−Si、S−Oなどの共有結合が好ましく挙げられる。
重合開始部位(Y)と、基板結合部位(Q)とは直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。連結基(L)を有する場合、光開裂化合物は(Q−L−Y)と表される。この連結基としては、炭素、窒素、酸素、及びイオウからなる群より選択される原子を含む連結基が挙げられる。具体的には、飽和炭化水素基(アルキレン基など)、アリーレン基、エステル基、アミド基、ウレイド基、エーテル基、アミノ基、スルホンアミド基、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。また、この連結基は更に置換基を有していてもよく、その導入可能な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、などが挙げられる。
以下、光開裂化合物(Q−Y)の例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。これらの化合物は基板表面と化学反応させることにより表面に固定化される。
本発明において用いられる基板材料は特に制限はなく、有機材料、無機材料、有機と無機とのハイブリッド材料のいずれでもよい。具体的には、ガラス、石英、ITO、シリコン、エポキシ樹脂などの表面水酸基を有する各種基板、PET、ポリプロピレン、ポリイミド、アクリルなどのプラスチック基板などが挙げられる。なかでも、ガラス、石英、ITO、シリコン、エポキシ樹脂などの表面水酸基を有する基板が好ましい。基板の厚みは、使用目的に応じて選択され、特に限定はないが、一般的には10μm〜10cm程度である。基板は、平坦であっても、平坦でなくてもよい。
本発明においては後述するラジカル重合性基を有する高分子を含む溶液の塗布膜の膜厚に関わらず、露光後に均一な膜厚の高分子超薄膜が得られるという特徴がある。基板が平坦でない凹凸表面で、塗布時に膜厚の差が大きくあったとしても、後述する方法によれば、種々の基板上に均一な膜厚の高分子超薄膜を作製できる。つまり、本発明に係る高分子超薄膜は基板の表面形状に対して優れた追随性(凹凸追随性)を示す。そのため、各種レンズ(両凸レンズ、凹凸レンズ、平凸レンズ、平凹レンズ、両凹レンズ)などの凹凸曲面や、剣山状の微細突起を有する面などに対して、その表面形状を保持しつつ、種々の面上に均一な膜厚の超薄膜コートが可能となる。例えば、基板の表面平均粗さと、その基板上に形成される高分子超薄膜の表面平均粗さとの差は、好ましくはRaの値で10nm以下程度である。また、高分子超薄膜の膜厚の標準偏差は、好ましくは1.0nm以下である。
上記基板は、その材質に起因して水酸基などの官能基(Z)が、基板表面上に存在している。そこで、基板と上述の光開裂化合物(Q−Y)を接触させ、官能基(Z)と基板結合部位(Q)とを結合させることで、基板表面上に光開裂化合物(Q−Y)を導入することができる。また、各種基板、特に樹脂基板などの絶縁基板を用いる場合は、基板表面にコロナ処理、グロー処理、UV処理、プラズマ処理などの表面処理により、水酸基、カルボキシル基などを発生させてもよい。
基板結合部位(Q)を介して光開裂化合物(Q−Y)を基板に結合させて、重合開始層を作製する方法(光開裂化合物結合工程)としては、光開裂化合物(Q−Y)を、トルエン、ヘキサン、アセトンなどの適切な溶媒に溶解または分散させ、その溶液または分散液を基板表面にスピンコートなどによって塗布する方法(塗布方法)、または、溶液または分散液中に基板を一定時間浸漬させ、洗浄する方法(浸漬方法)などを用いることができる。
浸漬方法を用いると、膜厚が薄く、平坦性に優れた重合開始層を得ることができ、基板表面の重合開始層上に作製される高分子超薄膜の膜厚の均一性がより優れたものとなる。好ましくは、得られた重合開始層は、光開裂化合物(Q−Y)からなる自己組織化単分子膜(SAM:Self Assembled Monolayer)である。
なかでも、得られる高分子超薄膜の膜厚の均一性がより優れ、後述する用途などに好適に用いることができるという点で、重合開始層の膜厚が1〜15nmであることが好ましく、さらに1.0〜5.0nmが好ましく、特に1.5〜5.0nmが好ましい。重合開始層の膜厚の測定方法は、エリプソメトリー(溝尻光学社製 DHA−XA/S4)など公知の手段を用いて、膜表面上の任意の点を12ヵ所以上測定して数平均して求めた値である。
また、得られる高分子超薄膜の膜厚の均一性がより優れ、後述する用途などに好適に用いることができるという点で、重合開始層の膜厚の標準偏差は0.8nm以下が好ましい。下限値に関しては、特に制限なく小さければ小さくほど好ましく、0がより好ましい。
また、得られる高分子超薄膜の膜厚の均一性がより優れ、後述する用途などに好適に用いることができるという点で、重合開始層の平均表面粗さRaが、0.01〜2nmであることが好ましく、さらに0.05〜1nmが好ましく、特に0.1〜0.6nmが好ましい。なお、平均表面粗さRa(算術平均表面粗さRa)は、JIS B 0601によりRaの略号で表される値であり、表面粗さの値の平均線から絶対値偏差の平均値を表す。測定方法は、AFM(原子間力顕微鏡)などにより測定することができ、任意の点を2ヵ所以上測定して求めた値である。
なお、上述の塗布方法または浸漬方法で使用される溶液中または分散液の光開裂化合物(Q−Y)の濃度としては、溶液または分散液全量に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜2質量%がより好ましい。また、接触させる際の液温としては、10〜50℃が好ましい。接触時間としては、10秒〜24時間が好ましく、3分〜10時間がより好ましい。
<α位置換アクリロイル基を有する高分子>
本発明において使用される高分子は、後述する式(1)に示すように、α位に所定の置換基を有するアクリロイル基を有する。このアクリロイル基と基板表面との反応を介して、高分子と上述の基板(または基板表面上の重合開始層)との間で直接結合(共有結合)が形成され、基板表面上に高分子超薄膜が形成される。
特に、アクリロイル基のα位に炭素数2以上のアルキル基、または炭素数1以上の置換アルキル基が置換されているため、アクリロイル基間での連鎖重合反応が進行しにくい。そのため、得られる高分子超薄膜の厚みの制御が容易となり、厚みのバラツキが小さく、平坦性およびパターン解像度に優れる高分子超薄膜を得ることができる。
α位置換アクリロイル基(より具体的には、α位アルキル基置換アクリル酸)の反応性について記述してあるJournal of Polymer Science : Part A: Polymer Chemistry vol.29, p.1837-1843 (1991)を参照すると、α位置換アクリロイル基の重合速度はα位のアルキル基が、メチル>エチル>n−プロピル>i−プロピル〜(ほぼ等しい)iso-ブチルの順で減少することが報告されている。具体的には、メチル基とエチル基とを比較すると、エチル基の重合反応速度がメチル基に比べて14倍以上低下する。さらに、エチル基からn−プロピル基になることで、モノマーの重合反応速度は1.2倍低下する。また、更にiso−プロピルまたはiso-ブチル基になることで、モノマーの重合反応速度はエチル置換のものより260倍以上に低下する。
また上記文献中には、スチレンとα位アルキル基置換アクリル酸との共重合速度比が記載されている。それらの値を用いると、スチレンラジカルからα位アルキル基置換アクリル酸への反応速度定数を見積もることが出来る。具体的には、スチレンラジカルからα位メチル基置換アクリル酸(メタクリル酸)への反応速度を1とすると、スチレンラジカルからα位エチル基置換アクリル酸への反応速度は0.31、α位イソプロピル基置換アクリル酸への反応速度は0.17、α位イソブチル基置換アクリル酸への反応速度は0.16である。
よって、アクリロイル基中のα位の置換基をエチル基以上にすると、フリーラジカルとの反応性は下がるものの、その程度はせいぜい0.16倍であり、重合反応速度ほどアルキル基の大きさに比べて低下しないことが分かる。
上記の点より、基板表面に生じたフリーラジカルは、アクリロイル基のα位アルキル置換基が大きくなってもその二重結合と十分反応結合する。一方、反応で生じた二重結合末端の重合性基はそこで重合が止まり、さらなる重合が進行しないと予想される。結果として、膜厚が必要以上厚くなることなく、膜厚の制御がより容易となる。
以下に、式(1)で表されるアクリロイル基中の各基について詳述する。
式(1)中、R1は、炭素数2以上のアルキル基、または、置換基としてアリール基、ハロゲン基、もしくはアルコキシカルボニル基を有する炭素数1以上の置換アルキル基を表す。
炭素数2以上のアルキル基としては、直鎖状、分岐状または環状であってもよい。なかでも、炭素数2〜12が好ましく、炭素数2〜7がより好ましい。例えば、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基などが挙げられる。
なかでも好ましくは、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基である。また、反応性制御の観点から分岐状アルキル基が好ましく、iso−プロピル基、iso−ブチル基、t−ブチル基が好ましい。さらに合成の観点からiso−プロピル基、iso−ブチル基が好ましい。特に、原料入手および反応性制御の観点からiso−プロピル基が好ましい。
上記の置換アルキル基は、さらに置換基を有していてもよく、例えば、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基などを有していてもよい。
また、アリール基(フェニル基)、ハロゲン基(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、またはアルコキシカルボニル基を有する炭素数1以上の置換アルキル基としては、直鎖状、分岐状または環状であってもよい。なかでも、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜6がより好ましい。例えば、ブロモエチル基などが挙げられる。なお、置換基であるアリール基、ハロゲン基、アルコキシカルボニル基の数は特に制限されない。
式(1)中、Lは、単結合または2価の連結基を表す。
連結基としては、具体的に、アルキレン基(炭素数1〜20が好ましく、炭素数1〜10がより好ましい。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基などが挙げられる。)、−O−、アリーレン基(フェニレン基など)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。なかでも、アルキレン基、−O−、−NH−、−COO−、またはこれらを組み合わせた基が好ましい。なお、これら連結基は、ヒドロキシル基、アルキル基などの置換基を有していてもよい。
Lが単なる結合手の場合、式(1)のC(炭素原子)と高分子とが直接結合することをさす。
式(1)中、*は高分子との結合位置を示す。式(1)で表されるアクリロイル基は、少なくとも高分子鎖の末端または側鎖に結合するものであり、側鎖に結合するものがより好ましい。
高分子中の高分子骨格の種類は、特に制限されないが、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ノボラック樹脂、クレゾール樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂などが挙げられる。これらのうち本発明で有用なポリマーはアクリル樹脂、スチレン樹脂が好ましい。
なお、上記高分子の好ましい態様として、以下の式(2)で表される繰り返し単位を有する高分子が好ましい。
式(2)中、R1およびLは、上記の定義と同義である。
式(2)中、R2は、水素原子またはアルキル基を表す。アルキル基としては、炭素数1〜4が好ましく、炭素数1がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基などが挙げられる。
また、さらなる好ましい態様としては下記式(2−1)に示される、上記式(2)におけるLが、下記の構造によって高分子と直接結合している繰り返し単位である。
式(2−1)中、R1およびR2は、上記の定義と同義である。
式(2−1)中、Lは、2価の連結基を表す。
連結基としては、具体的に、アルキレン基(炭素数1〜20が好ましく、炭素数1〜10がより好ましい。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基などが挙げられる。)、アリーレン基(フェニレン基など)、−NH−、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。また、これらと−CO−、−O−、−COO−、−CONH−、とを組み合わせた基でもよい。なかでも、アルキレン基、−O−、−NH−、−COO−、またはこれらを組み合わせた基が好ましい。なお、これら連結基は、ヒドロキシル基、アルキル基などの置換基を有していてもよい。
上記高分子において、式(2)及び式(2−1)で表される繰り返し単位の含有量は、特に限定されないが、高分子を構成する全繰り返し単位(100モル%)に対して、1〜80モル%が好ましく、3〜50モル%がより好ましい。上記範囲内であれば、より強固に基板と結合することが可能である。含有量が多すぎると他の成分が多くなり、超薄膜の物性のコントロールが困難となる。含有量が少なすぎると、欠陥のない均一な薄膜が得られにくくなる。
上記高分子中、上記式(2)で表される繰り返し単位以外に、下記式(3)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
式(3)中、R3は、水素原子またはアルキル基を表す。アルキル基の定義は、上記R2と同義である。
式(3)中、Lは、連結基または単なる結合手を表し、上記式(2)中のLと同義である。なかでも、Lは単結合、並びに、炭素原子、水素原子、窒素原子、および酸素原子の原子群から構成され、その原子数の合計が1〜50の連結基が好ましく、1〜20の連結基がより好ましい。
式(3)中、Yは、カルボキシ基、アルキルアミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、アリール基、ピリジル基、ピロリドン基、アルキルカルボニルオキシ基、アミノ基、アンモニウム基、水酸基、エチレンオキシ基、アミド基、リン酸基、またはシアノ基を表す。好ましくは、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、アンモニウム基、アミノ基、水酸基、シアノ基、ピリジル基、アミド基、またはアリール基などである。
なかでも、超薄膜親水性表面の作製、親疎水性パターン形成によるパターン部と非パターン部との間の親疎水性の大きなディスクリ(差)の作製のためには、Yは親水性の高い官能基(特に、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、アンモニウム基、アミノ基、水酸基などの親水性基)であることが好ましい。なお、該官能基を有する高分子を含む組成物は、後述するブロックポリマーより構成される相分離構造中の相配向制御を行うための下地層を作製するのに特に有用である。
また、めっきパターンの作製のためには、銀イオン、パラジウムイオンなどの金属イオンと相互作用しうる官能基、特に、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、水酸基、シアノ基、ピリジル基などが好ましい。なお、該官能基を有する高分子を含む組成物は、後述するめっき処理を行うための被めっき物を作製するのに特に有用である。
高分子は、式(2)および式(3)で表される繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。その場合、連結の様式は特に限定されず、それらが1ずつ交互に連結しても、複数ずつ交互に連結しても、ランダムに連結してもよい。
高分子の重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、溶媒への溶解性などの観点から、1000〜1000000が好ましく、3000〜400000がより好ましい。本発明で得られる高分子超薄膜は使用される分子量と相関し、分子量が小さいと膜厚は小さく、分子量が大きいと膜厚が大きい。したがって、1000より小さいと膜厚は小さく均一な膜が得られにくくなり、また分子量が1000000より大きいと10nm以上の膜厚となりやすい。
高分子の合成方法は特に限定されず、公知の合成方法を使用できる。例えば、国際公開2008−050715号パンフレットの段落番号[0196]〜[0243]に記載されている合成方法などを参照して合成することができる。
以下に高分子の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、式中の数値は、各繰り返し単位のモル%を表す。
<高分子超薄膜の製造方法>
上記した基板、高分子を用いて得られる高分子超薄膜またはそのパターンの製造方法は特に限定されないが、好ましくは露光によりラジカルを発生しうる基板上に、上記式(1)で表されるα位置換アクリロイル基を有する高分子を接触させ、全面または画像様にエネルギーを付与して形成される。
より具体的には、主に以下の工程により実施されることが好ましい。
<工程1>露光によりラジカルを発生しうる基板に、上記高分子を接触させる工程
<工程2>工程1で得られた基板にエネルギーを付与し、上記高分子を基板表面に結合させる工程
<工程3>工程2で得られた基板を溶媒で洗浄する工程
以下、各工程について詳細に説明する。
<工程1:接触工程>
工程1は、露光によりラジカルを発生しうる基板に、上記高分子を接触させる工程である。具体的な方法としては、ラジカル重合性基を有する高分子を溶解した溶液または分散した分散液(パターン形成用組成物)をスピンコート法などによって基板に塗布する方法(塗布方法)、溶液または分散液に基板を浸漬する方法(浸漬方法)などが挙げられる。これらの方法により基板上に上記高分子を含む塗膜が形成される。取り扱いや製造効率の観点からは、塗布方法が好ましい。
使用される溶媒は、使用される高分子などの種類によって適宜最適な溶媒が選択される。例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、1−メトキシ−2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、水などが挙げられる。なかでも、テトラヒドロフラン、トルエン、1−メトキシ−2−プロパノールが好ましい。
使用される溶液または分散液中の高分子の濃度としては、溶液全量に対して、0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。上記範囲内であれば、得られる高分子超薄膜の膜厚の制御がより容易となり、膜厚の均一性がより高まる。
また、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて上記溶液に界面活性剤など添加剤を加えてもよい。例えば、界面活性剤としては、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドなどのカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品として、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどの非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
工程1の後に、必要に応じて、得られる塗膜から溶媒の除くために、塗膜を乾燥する工程(乾燥工程)を設けてもよい。乾燥条件は、使用する高分子などにより適宜最適な条件が選択される。
本工程で得られる塗膜の膜厚は、使用される用途などに応じて、適宜最適な膜厚が選択される。なかでも、1〜500nmが好ましく、2〜200nmがより好ましい。上記範囲内であれば、得られる高分子超薄膜の膜厚の均一性がより好ましい。
<工程2:露光工程>
工程2は、工程1で得られた基板に全面または画像様にエネルギー線の照射露光を行い、基板表面に発生したラジカルを起点として、ラジカル重合性基を有する高分子を基板表面に結合させ、基板表面上に結合した高分子超薄膜または高分子超薄膜パターンを作製する工程である。具体的には、重合性基を有する高分子を上述のように塗布方法や浸漬方法により基板と接触させた状態で、露光を行う。
塗膜に付与するエネルギーの種類は特に制限されないが、例えば、露光などの放射線照射(高エネルギー線)を用いることができる。放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビームなどが挙げられる。なかでも電子線、または光照射(好ましくは波長300nm以下のエネルギー線であり、具体的には、紫外線)が好ましい。また、露光光源としては、特に限定されず、高圧水銀灯、低圧水銀灯、ハロゲンランプ、キセノンランプ、エキシマレーザー、色素レーザーなどが用いられる。
なお、波長300nm以下のエネルギー線の照射露光に際しては、波長300nm以下のエネルギー線を発する光源を用いる方法や、所定の波長の光をカットするカットフィルターを用いて露光を行う方法が用いられる。例えば、300nm以上の波長の光をカットするガラスなどのカットフィルターを用いて露光を行う方法が用いられる。
なお、波長300nm以下のエネルギー線の照射の際には、300nmを超えるエネルギー線が含まれていてもよい。
また、露光の際に、高精細なパターン露光を施すことにより、露光に応じた高精細(高解像度)パターン形状を有する高分子超薄膜(高分子超薄膜パターン)を基板表面上に作製することもできる。高精細パターン形成方法のための露光方法としては、光学系を用いた光ビーム走査露光、マスクを用いた露光などが挙げられ、所望のパターンの解像度に応じた露光方法を用いることができる。
特に、ラインアンドスペースの線幅が1000nm以下の超微細な導電性パターンを形成する際のパターン露光としては、具体的には、i線ステッパー、g線ステッパー、KrFステッパー、ArFステッパーのようなステッパー露光や、二光束干渉露光機による露光などが挙げられる。
露光は、酸素の影響を低減させるため、窒素などの不活性雰囲気下や真空下で行われることが好ましい。
露光条件は、使用する高分子の種類や使用する光源などによって適宜最適な条件が選択されるが、通常、露光時間は0.1〜30分である。また、露光エネルギーとしては、10000mJ/cm2以下であることが好ましく、1000mJ/cm2以下であることがより好ましい。
なお、本発明の高分子超薄膜の形成方法においては、電子線描画を使用した場合、電子線の実用的な感度(300μC/cm2以下)で高分子超薄膜およびそのパターンを得られるのが特徴である。電子線露光では描画に必要な時間を短縮するために出来るだけ高感度、すなわち300μC/cm2以下(好ましくは200μC/cm2以下、さらに好ましくは10〜150μC/cm2)が好ましいとされている。
従来の電子線を用いたグラフトパターン形成(モノマー重合法)においては、多くの露光量を必要とした。例えば、Polymer 2002年43巻3837-3841ページ 著者Takeshi Fukudaらの報告では、パターンを形成するのに1000-2000μC/cm2の露光量が必要であることが記載されている。従来技術では電子線照射により一旦開始剤を分解させ、その後に、モノマーのグラフト化を行なっていた。
このように従来方法では所望のパターンを作製するには開始剤を完全に分解させる必要があり、そのために多くの露光量を必要とした。一方、本発明では直接露光でグラフトパターンを形成することが出来るため、より少ない露光量でパターンが形成できるのが特徴である。
<工程3:洗浄工程>
工程3は、工程2より得られた高分子が直接結合した基板を洗浄する工程である。具体的には、得られた基板に溶媒浸漬や溶媒洗浄などの処理を施して、基板上に残存する高分子を除去する工程である。使用する溶媒は、工程2で使用した高分子の種類などにより適宜最適な溶媒が使用される。例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、水、メタノール、アルカリ水などが挙げられる。なお、洗浄の際に、超音波などの手段を併用して用いてもよい。
本発明に係る高分子超薄膜を製造する際、増感剤は実質的に使用されないことが好ましく、使用されないことがより好ましい。ここで、増感剤とは、露光の際に使用される活性エネルギー線により励起状態となり、基板上のラジカル重合開始層などと相互作用(例えば、エネルギー移動、電子移動など)することにより、ラジカルの発生を促進する化合物をさす。より具体的には、特願2006−350307号明細書、段落番号[0032]〜[0056]に記載されている化合物をさす。本発明者らは、ラジカルを発生しうる基板中に増感剤などが含まれている場合、膜厚が10nm未満の高分子超薄膜が得られない場合があることを見出した。理由の詳細は不明であるが、基板中または基板表面上にある増感剤が重合性基を有する高分子の塗布膜中に移動して、露光の際に高分子同士の分子内架橋を誘起するラジカル発生源となり、基板表面以外で重合反応が進行するためと考えられる。
上述した本発明に係る高分子超薄膜の製造方法において、重合性基を有する高分子は、実質的に基板表面に固定されたラジカルとのみ反応する。したがって、発生するラジカルとラジカル重合性基を有する高分子は選択的に基板界面で反応すると考えられる。
本発明に係る高分子超薄膜は、上記の方法により作製される。特に、得られる高分子超薄膜の平坦性、膜厚の均一性がより優れるという点で、光開裂化合物(Q−Y)を用いて形成される重合開始層を表面上に有する基板(特に、浸漬方法で作製される基板)を用いることが好ましい。より具体的には、光開裂化合物(Q−Y)を含む溶液に基板を浸漬させ、基板表面上に重合開始層を作製する工程(工程A)と、工程Aで得られた基板と上記高分子を接触させ、波長300nm以下の活性エネルギー線または電子線による照射露光を行い、上記高分子を該基板表面の重合開始層に結合させる工程(工程B)と、工程Bで得られた基板を洗浄する工程(工程C)を含む方法により得られる高分子超薄膜(または、基板と高分子超薄膜を含む積層体)が好ましい。
<高分子超薄膜>
上述の製造方法などにより得られる基板上の高分子超薄膜の膜厚は、通常1〜10nmであり、使用する重合性基を有する高分子の種類や露光条件などによりその厚みは適宜調整される。好ましい範囲は、使用用途によって大きく異なる。ITOなどの導電性基板の表面電位調整材料、または電子若しくはホール移動制御材料として使用する場合には1〜5nm、より好ましくは1〜3nmである。また表面親水性材料などに使用する場合には2〜10nm、より好ましくは4〜10nmである。なお、膜厚の測定方法は、エリプソメトリーなどの公知の方法により、膜表面上の任意の点を10ヵ所以上測定して数平均して求めた値である。
さらに、後述する用途などに好適に用いることができるという点で、高分子超薄膜の膜厚の標準偏差は、1nm以下が好ましく、0.5nm以下がより好ましい。下限としては小さければ小さいほど好ましく、0がより好ましい。
本発明に係る高分子超薄膜の平均表面粗さRaは、好ましくは1.0nm以下である。特に、使用する基板表面上に作製される重合開始層が上述した浸漬方法により作製された場合、得られる高分子超薄膜の平坦性はより向上する。得られる高分子超薄膜の平均表面粗さRaは、好ましくは0.1〜0.5nmである。平均表面粗さRaが上記範囲内であれば、この薄膜を用いた材料の信頼性があがることになる。例えば、ITOの上に設けた電荷制御用の薄膜に関していえば、薄膜を通した電子の移動などが均一に進行し、デバイスの性能、信頼性が高まることになる。
なお、平均表面粗さRa(算術平均表面粗さRa)は、JIS B 0601によりRaの略号で表される値であり、表面粗さの値の平均線から絶対値偏差の平均値を表す。測定方法は、AFM(原子間力顕微鏡)などにより測定することができる。
上述した高分子超薄膜の製造方法において、パターン状(例えば、ストライプ状)に像様露光をして所定のパターン形状を有する高分子超薄膜(高分子超薄膜パターン材料)を得る場合、その線幅は適宜選択できるが、本発明によれば線幅200nm以下(好ましくは、10〜200nm)の高分子超薄膜パターンを得ることができる。なかでも、後述する用途に好適な点で、線幅150nm以下がより好ましい。
本発明においては、上述のように露光未照射部での基板と高分子との界面反応および高分子同士の分子内架橋が抑制され、よりシャープなエッジ部を有するパターン構造が形成され、ナノレベルでのパターン解像度が達成される。つまり、上述した高分子を含む組成物は、高解像度を示すパターンを形成するための組成物(パターン形成用組成物)として好適に使用できる。
<用途>
本発明に係る高分子超薄膜は、基板と結合しているため摩擦などによる物理的作用や溶媒などの化学的処理に対する耐性に優れるとともに、ナノメートルレベルでの構造制御が可能である。また、大面積かつ短時間での製造が可能であり、生産性・工業性という観点からも好ましい。さらには、製造方法によっては、膜の平坦性・膜厚の均一性が極めて高い高分子超薄膜が得られる。そのため、該高分子超薄膜は、多様な用途に応用することが可能である。例えば、電子情報記録媒体、吸着剤、ナノ反応場膜、分離膜、ディスプレイなどのフィルム材料、ITOなどの導電性基板の電位調節材料、または、電子やホール注入材料、表面親水性材料、表面撥水材料などが挙げられる。
特に、本発明に係る高分子超薄膜は、基板の表面形状に対する追随性に優れる。そのため、基板の曲面や凹凸表面などの初期表面形状を保持しつつ、基板上に均一な膜厚の高分子超薄膜が形成される。通常、レンズ表面を機能化するために塗布処理などを行うと、レンズの中心部と周辺部との間で塗布膜の膜厚差が生じ、歪みなどを引き起こして、レンズ自体の性能を落としてしまう。一方、本発明の高分子超薄膜は、種々の表面形状に対して優れた追随性を示すため、レンズ曲面の形状を保持したまま膜が形成される。つまり、曲面上に均一な膜厚の高分子超薄膜を作製することができる。そのため、レンズ自体の性能を落とすことなく種々の表面機能化が可能であり、例えば、防曇レンズや超撥水ガラスなどの作製に好適に使用することができる。
また、本発明に係る高分子超薄膜は膜厚が非常に薄いため、電子のトンネリングなどが起こりやすい。そのため、ITOなどの基板上に本発明に係る高分子超薄膜を作製することにより、ITO表面の親水化や高分子超薄膜上に積層される化合物の配向制御など所望の表面特性を与えることが出来ると共に、高分子超薄膜上に積層される有機半導体などに高分子超薄膜を介して電子を送ることができる。そのため、該膜は従来材料にない機能を有しており、有機デバイスなどの材料としての使用が期待される。なお、重合開始層を基板が備える場合は、該層の厚みが薄いほど、電子のトンネリングなどが起こりやすく好ましい。また、高分子超薄膜の平坦性・膜厚の均一性が高いと、作製される膜ごとの物性値のバラツキが小さく、再現性に優れるため生産性の点から好ましい。
さらには、高分子超薄膜上に金属膜を有する場合、膜厚が薄いために加熱することにより、金属膜が高分子超薄膜の分解を介して基板へマイグレーションする。そのため、金属膜の基板に対する密着性の向上が期待でき、従来よりも簡易な方法で基板と金属膜との密着性に優れた半導体集積回路などを作製できる可能性がある。
また、本発明に係わる高分子超薄膜パターンは立体障害の大きいα位アルキル置換アクリロイル基の効果によって、高分子と基板表面との界面反応が主に進行し、膜中での連鎖重合が抑えられるため電子線露光でも微細なパターンが形成できることが大きな特徴である。
さらに、従来のレジスト材料に比較して、本発明においては基板上のパターン部分とそれ以外の部分との親疎水性のディスクリ(差)が大きい。特に、上述した高分子が相互作用性基(例えば、親水性基)を有する場合、所定のパターン形状を有する高分子超薄膜は、従来のレジスト材料を用いてできるパターン形状よりも、パターン部分とそれ以外の部分との間に大きな親疎水性の差が生じる(特に、露光によりラジカルを発生しうる基板表面に重合開始層がある場合は、親疎水性の差がより顕著となる)。つまり、パターン部分が非パターン部分と比較して、より親水性を示す。従来使用されたレジスト材料などでは、パターン部分とそれ以外の部分との間での親疎水性の差が十分に生じていなかった。
(下地パターン用途)
このような高分子超薄膜パターンの親疎水性のディスクリ(差)を使用した用途として、ブロックポリマーリソグラフィの下地パターン(ブロックポリマー層用下地パターン)が挙げられる(特に、上述した高分子がカルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、アンモニウム基、アミノ基、または水酸基などの親水性基を有する場合に有用である。)。つまり、本発明の高分子超薄膜パターンは、ブロックポリマーを用いて構成される相分離構造中の相の配向を制御するための下地層として有用である(下地層用高分子超薄膜パターン)。
ブロックポリマーリソグラフィ(ブロック共重合体リソグラフィ)とは、ブロックポリマーの自己組織化によって形成される相分離構造を利用したリソグラフィ技術である。従来のリソグラフィ技術では、パターンの解像度として20nm程度が限界といわれている。一方、ブロックポリマーの相分離構造では、相のパターン幅が20nm以下のものを作製することができる。このようなパターン構造をリソグラフィ技術のマスクなどに応用することによって、20nm以下のパターンも形成可能となり、次世代のリソグラフィ技術として期待されている(例えば、J. Y. Chenら,Adv. Mater., 2008, vol.20, p.3155, P. F. Nealey, Adv. Mater., 2004, vol.16, p.1315, J. Y. Chenら,J. Photopolymer Science and Technology, vol.22 (2009) No.2 p.219-222参照)。
この手法ではシリコン基板上にレジスト法により親疎水性のパターンを形成し、例えば、その上にポリスチレン(PS)とポリメチルメタクリレート(PMMA)とからなるブロックポリマーを塗布すると、親水性パターン部分にブロックポリマーの親水性部分であるPMMA部分が配列し、得られるブロックポリマー膜中で垂直ラメラ構造の相分離構造が形成される。この垂直相分離構造をイオンエッチングするとエッチング耐性の低いPMMA部分が除去され、PS部分が残存し、PS部分のパターンが形成される。
このパターン形成方法の利点は、下地のレジストで形成したパターンの形状(ラインエッジラフネス:LER)がそれほどきれいでなくとも、ブロックポリマーの効果でLERが改善され、下地パターンの3倍〜4倍の解像度を得ることが可能となる。例えば、85nmのピッチの下地パターンであっても、ブロックポリマーの構造を適切に選択することで、下地パターン上に形成されるブロックポリマー層中では、28nmピッチのブロックポリマーのパターン(ラメラパターン)が形成される。
このブロックポリマーリソグラフィ技術において、ミクロドメインが基板に対して垂直に配向した垂直相分離構造を得るには、ブロックポリマーの配向剤として作用する下地の親疎水性パターンの極性の調整が重要であると言われている。
本発明で得られた高分子超薄膜パターンをブロックポリマーの下地パターンとして使用したところ、高分子超薄膜パターン上のブロックポリマー層中に優れた垂直ラメラパターン構造が得られることが判明した。一方、従来のレジスト材料であるカリックスアレンを使用したところ、ブロックポリマーリソグラフィの下地パターンとして有用ではなかった。これはパターン部とそれ以外との親疎水性のディスクリ(差)が小さいためと推定される。
例えば、本発明の高分子超薄膜パターン(例えば、ストライプ状パターン)上にブロックポリマーの膜を作製すると、該膜中にラメラ状相分離構造が作製され、さらにそのラメラドメインが基板に対して垂直に配向したパターン構造(垂直ラメラパターン構造)が得られる。
つまり、本発明の高分子超薄膜パターンを備える基板と、このパターン上に2種以上の互いに非相溶であるポリマー鎖が結合してなるブロックポリマーより形成され、ラメラ相分離構造を有するブロックポリマー層とを備える構造体であって、上記ラメラ相分離構造の相が基板に対して垂直方向に配向している、構造体を作製できる。
使用されるブロックポリマーは、互いに非相溶な二種以上のポリマーからなり、ジブロックポリマー、トリブロックポリマーまたはマルチブロックポリマーのいずれの形態であってもよい。
使用されるブロックポリマーを構成するポリマーとしては特に限定されないが、例えば、ビニル系高分子として、ポリスチレン類(例えば、ポリスチレン)、ポリ(メタ)アクリレート類(例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル)、ポリビニルエステル類(例えば、ポリビニルアセテート)、ポリアルキレン類(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリビニルハロゲン化物類(例えば、ポリ塩化ビニル)などが挙げられる。ジエン系高分子としては、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどが挙げられる。エーテル系高分子としては、ポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシドなどが挙げられる。
より具体的には、例えば、ポリスチレン−ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン−ポリエチレンオキシド、ポリブタジエン−ポリスチレン、ポリイソプレン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリスチレン−ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリスチレン−ポリジメチルシロキサン、ポリスチレン−ポリアクリル酸などが好ましく挙げられる。
ラメラ状相構造を形成するためのジブロックポリマー(A−B型)またはトリブロックポリマー(A−B−A型)を構成するポリマーAとポリマーBとの比率(ポリマーA/ポリマーB)=0.65/0.35〜0.35/0.65(体積比)が好ましく、より好ましくは0.6/0.4〜0.4/0.6(体積比)である。上記範囲内であれば、より配列の整ったラメラ状のミクロ相分離構造が得られる。
なお、ポリマーの分子量(M)は特に限定されない。
ラメラ状相の幅は、使用するブロックポリマーの分子量などにより適宜制御することができ、5〜200nmが好ましく、10〜100nmがより好ましい。ラメラ状相の幅は、原子間力顕微鏡観察などによって測定することができる。
ラメラ状相は、高分子超薄膜を有する基板に対して垂直方向に配向しており、略垂直であることが好ましい。具体的に略垂直とは、ラメラ状相間の界面と、基板の法線とのなす角度が±45度以内、好ましくは±30度以内であることを指す。角度は、超薄切片のTEM解析や、小角X線散乱解析などによって測定することができる。
ブロックポリマー層の平均層厚は、使用するブロックポリマーの濃度などを変えることにより適宜制御することができるが、10〜5000nmが好ましく、40〜2500nmがより好ましい。上記範囲内であれば、得られるミクロ相分離構造の規則性がより向上する。
なお、上記ブロックポリマー層の製造方法は特に限定されず、ブロックポリマーを含む溶液を高分子超薄膜パターン上へ塗布する方法(工程)が好ましく挙げられる。
塗布方法としては特に限定されず、スピンコート法、溶媒キャスト法などの一般的な塗布方法を採用することができ、生産性などの観点から、スピンコート法が好ましく挙げられる。スピンコート法の条件は、使用するブロック共重合体などにより適宜選択される。塗布後に、必要に応じて、乾燥工程を設けてもよい。
なお、使用される溶媒はブロックポリマーが溶解すれば特に限定されず、トルエン、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
また、必要に応じて、得られた基板、高分子超薄膜、およびブロックポリマー層を備える構造体(積層体)を加熱する処理(加熱工程)を施してもよい。
加熱温度および時間は、使用するブロックポリマーおよび層厚に応じて適宜設定するが、一般的には、ブロックポリマーのガラス転移温度以上で加熱を行う。加熱温度は通常、60〜300℃が好ましく、80〜270℃がより好ましい。加熱時間は1分以上が適当であり、好ましくは10〜70時間である。また、加熱によるブロックポリマー層の酸化劣化を防ぐため、不活性雰囲気または真空中で加熱を行うことが好ましい。
(導電性パターン用途)
上述のように、本発明に係わる高分子超薄膜パターンはパターン部分とそれ以外の部分との間で親疎水性ディスクリが高い(特に、上述した高分子がカルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、水酸基、シアノ基、ピリジル基などの親水性基を有する場合に有用となる。)。
そこで、本発明の好適な他の用途の一つとして、親水性を示すパターン部分に金属を析出させて、高分子超薄膜パターン上に金属薄膜を作製し、超微細な導電性パターン形成を行うことができる。言い換えると、本発明の高分子超薄膜パターンは、めっき処理を施す被めっき物として有用である(被めっき物用高分子超薄膜パターン)。また、高分子超薄膜パターン上の金属薄膜は、高分子超薄膜との間で優れた密着性を示す。
導電性パターンの形成は、公知の方法を用いて作製することができる。例えば、親水性ポリマーパターン部分に金ナノ粒子などの導電性物質を付着させる方法、または、親水性ポリマーパターン部分に銀イオン、パラジウムイオンを付着させた後、還元して、生じた金属微粒子を核として作用させ、パターン上にメッキなどを作製する方法で、高分子超薄膜パターン上に金属を成長させることができる。例えば、新めっき技術(小岩一郎ら著,工業調査会2007年)、特願2001-398048号明細書などを参照できる。
より具体的には、導電性パターン形成方法としては、基板上に高分子超薄膜パターンを形成した後に、i)当該高分子超薄膜パターン領域に金属イオンまたは金属塩を付与した後、該金属イオンまたは金属塩中の金属イオンを還元することによって金属を析出させる(第1の態様)か、または、ii)当該高分子超薄膜パターン領域に無電解メッキ触媒またはその前駆体を付与した後、無電解メッキ処理を行い、該パターン上に金属薄膜を形成すること(第2の態様)により、導電性パターン(導電性パターン材料)が形成される。特に、ii)の態様が好ましい。
まず、第1の態様について詳述する。
上記第1の態様においては、高分子超薄膜パターン領域に金属イオンまたは金属塩を付与する工程(金属イオン又は金属塩付与工程)、該金属イオンまたは該金属塩中の金属イオンを還元して金属を析出させる工程(金属(微粒子)膜形成工程)が行われることにより、導電性パターンが形成される。即ち、第1の態様においては、まず、パターン領域におけるグラフトポリマーが有する親水性基などの金属イオンや、金属塩を付着させうる相互作用性基(例えば、親水性基)が、その機能に応じて、金属イオンや金属塩を付着(吸着)させる。次いで、吸着した金属イオン等が還元されることで、高分子超薄膜パターン領域に金属単体が析出し、その析出態様によって、金属薄膜が形成されたり、金属微粒子が分散してなる金属微粒子付着層が形成されることになる。
なお、付与する方法は特に限定されず、例えば、金属塩が含有する溶液、または、金属塩が溶解した溶液に高分子超薄膜パターンを備える基板を浸漬して、金属イオンおよび/または金属塩を含む溶液を高分子超薄膜パターン領域に含浸させる方法などが挙げられる。
金属塩としては、適切な溶媒に溶解し、金属イオンと塩基(陰イオン)に解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO3n、MCln、M2/n(SO4)、M3/n(PO4)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Ag、Cu、Al、Ni、Co、Fe、Pdが挙げられ、導電膜としてはAg、磁性膜としてはCoが好ましく用いられる。
高分子超薄膜パターン領域に吸着または含浸して存在する金属塩または金属イオンを還元し、金属(微粒子)膜を成膜するために用いられる還元剤としては、用いた金属塩化合物を還元し、金属を析出させる物性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、次亜リン酸塩、テトラヒドロホウ素酸塩、ヒドラジンなどが挙げられる。
次に、第2の態様について詳述する。
上記第2の態様においては、上述の方法で得られた基板上の高分子超薄膜パターン領域に、無電解メッキ触媒またはその前駆体を付与する工程(無電解メッキ触媒等付与工程)と、無電解メッキを行いパターン状の金属薄膜を形成する工程(無電解メッキ工程)と、が順に行われることにより、導電性パターンが形成される。
即ち、第2の態様においては、例えば、無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基(即ち、極性基)を有する高分子超薄膜パターンが、無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用し、次いで行われる無電解メッキ処理により金属薄膜が形成されることになる。
(無電解メッキ触媒)
使用される無電解メッキ触媒とは、主に0価金属であり、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。特に、Pd、Agがその取り扱い性の良さ、触媒能の高さから好ましい。0価金属を高分子超薄膜パターン領域に固定する手法としては、例えば、高分子超薄膜パターン領域中の上の相互作用性基(例えば、親水性基)と相互作用するように荷電を調節した金属コロイドを、高分子超薄膜パターン領域に付与する手法が用いられる。
(無電解メッキ触媒前駆体)
使用される無電解メッキ触媒前駆体とは、化学反応により無電解メッキ触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には上記無電解メッキ触媒で用いた0価金属の金属イオンが用いられる。無電解メッキ触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解メッキ触媒である0価金属になる。無電解メッキ触媒前駆体である金属イオンは、高分子超薄膜パターンへ付与した後、無電解メッキ浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解メッキ触媒としてもよい。また、無電解メッキ触媒前駆体のまま無電解メッキ浴に浸漬し、無電解メッキ浴中の還元剤により金属(無電解メッキ触媒)に変化させてもよい。
例えば、無電解メッキ前駆体である金属イオンは、金属塩の状態で高分子超薄膜パターン領域に付与する。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO3)n、MCln、M2/n(SO4)、M3/n(PO4)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、Agイオン、Pdイオンが触媒能の点で好ましい。
(無電解メッキ触媒等付与工程)
無電解メッキ触媒(例えば、金属コロイド)、または、無電解メッキ前駆体(例えば、金属塩)を高分子超薄膜パターン領域に付与する方法としては、金属コロイドを適当な分散媒に分散させた溶液、または、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その溶液を高分子超薄膜パターンが存在する基板表面に塗布するか、または、その溶液中に高分子超薄膜パターンを有する基板を浸漬すればよい。金属イオンを含有する溶液を接触させることで、高分子超薄膜パターン領域中の相互作用性基に、イオン−イオン相互作用、若しくは、双極子−イオン相互作用を利用して金属イオンを吸着させること、または、高分子超薄膜パターン領域に金属イオンを含浸させることができる。このような吸着または含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる溶液中の金属イオン濃度、または金属塩濃度は0.01〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、1分〜24時間程度であることが好ましく、5分〜1時間程度であることがより好ましい。
(無電解メッキ工程)
本工程では、高分子超薄膜パターン領域に、無電解メッキ触媒またはその前駆体を付与された基板上に、無電解メッキを行うことで、パターン状に金属膜が形成される。即ち、本工程における無電解メッキを行うことで、高分子超薄膜パターン領域上に該パターンに従った高密度の金属膜(金属パターン)が形成される。形成された金属パターンは、優れた導電性、密着性を有する。
(無電解メッキ)
無電解メッキとは、メッキとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解メッキは、例えば、無電解メッキ触媒がパターン状に付与された基板を、水洗して余分な無電解メッキ触媒(金属)を除去した後、無電解メッキ浴に浸漬して行う。使用される無電解メッキ浴としては一般的に知られている無電解メッキ浴を使用することができる。
また、無電解メッキ触媒前駆体がパターン状に付与された基板を、無電解メッキ触媒前駆体が高分子超薄膜パターンに吸着または含浸した状態で無電解メッキ浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、基板を無電解メッキ浴中へ浸漬する。この場合には、無電解メッキ浴中において、前駆体の還元とこれに引き続き無電解メッキが行われる。ここ使用される無電解メッキ浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解メッキ浴を使用することができる。
一般的な無電解メッキ浴の組成としては、1.メッキ用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このメッキ浴には、これらに加えて、メッキ浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
無電解メッキ浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解メッキの浴は、銅塩としてCu(SO4)2、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤が含まれている。また、CoNiPの無電解メッキに使用されるメッキ浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解メッキ浴は、金属イオンとして(Pd(NH3)4)Cl2、還元剤としてNH3、H2NNH2、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのメッキ浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
このようにして形成される金属膜の膜厚は、メッキ浴の金属塩若しくは金属イオン濃度、メッキ浴への浸漬時間、または、メッキ浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。金属膜は、高分子超薄膜パターンと同じ線幅のものを作製することができ、具体的には、200nm以下(好ましくは、10〜200nm)が可能である。
また、メッキ浴への浸漬時間としては、1分〜3時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によりなんら制限されるものではない。
後述する重合開始層および高分子超薄膜の測定は、溝尻光学(株)(DHA−XA/SA)を用いて測定を行った。
<合成例1:側鎖にα−イソプロピルアクリレート基を有するポリアクリル酸ポリマーP1の合成>
(第一段階:前駆体モノマーP1aの合成)
本合成は、Journal of Polymer Science A vol.31 p.2407 (1993)およびJournal of Organic Chemistry vol.33 p.3036 (1968)に記載の方法に準じて行なった。詳細を記載すると、まず、ジエチルイソプロピルマロン酸エステル(200g)を99.5%のエタノール400mlに溶解させ、氷冷しながら、その中に400mlのエタノールに溶かした60gのKOH溶液を徐々に添加した。2日間放置後、氷水200mlおよび12N塩酸89mlを反応液に加えた後、酢酸エチルで抽出した。得られた抽出液を乾燥後、溶媒を溜去し、エチルイソプロピルマロン酸エステルを得た。
エチルイソプロピルマロン酸エステル(85g)を三口フラスコにいれ、氷冷下、攪拌しながらジエチルアミン(35.86g)を10分かけて添加した。反応液を0−10℃で3時間攪拌した後、ホルマリン(37%)46.7gを10分かけて滴下した。20時間の攪拌後、反応液に2wt%の重曹水200mlを加えた後、酢酸エチルで抽出した。抽出液を0.82Mの硫酸水600mlで洗浄し、さらに食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムで抽出液を乾燥の後、溶媒を溜去し、エチルα−イソプロピルアクリル酸を得た。
得られたエチルα−イソプロピルアクリル酸(20g)の中に、125mlの水に溶解したKOH(20g)の溶液を添加し、10時間攪拌した。反応液を塩酸で酸性化した後、酢酸エチルで抽出して、10.6gのα−イソプロピルアクリル酸(P1a)を得た。
(第二段階:前駆体モノマーP1bの合成)
α−イソプロピルアクリル酸(14.25g)、トルエン70mlおよびジメチルアセトアミド5滴を三口フラスコにいれ、内温50℃に加温した。その中に、塩化チオニル(14.9g)を加え、一時間攪拌した後、室温に戻した。その後、減圧で溶媒と過剰の塩化チオニルを溜去し、α−イソプロピルアクリル酸クロライドを得た。
次に、α−イソプロピルアクリル酸クロライド(11.0g)にトリエチルアミンを数滴添加した。この溶液を、グリシドール(13.05g)、トルエン150mlおよびトリエチルアミン(25.25g)からなる溶液に、0℃で30分かけて添加した。攪拌を6時間続けた後、水を加え酢酸エチルで抽出した。溶媒を溜去後、残渣をヘキサン/酢酸エチル=4/1のカラムを用いて精製し、5.77gのグリシジルα−イソプロピルアクリル酸エステルP1bを得た。
(第三段階:P1の合成)
ポリアクリル酸(和光純薬製 M:25000)(11.43g)を1−メトキシ−2−プロパノール(48g)に溶解させた液に、2,5−t−ブチルヒドロキノン(39mg)とトリエチルアンモニウムベンジルクロリド(400mg)とを添加した。次に、反応液に3.0gのグリシジルα−イソプロピルアクリル酸エステルP1bを添加し、100℃で6時間攪拌した。反応終了後、反応液をヘキサン/酢酸エチル=1/1の混合液1000mlに加え、生じた固体(高分子P1)を濾取した(収量11.0g)。
なお、以下の式中の数値は、各繰り返し単位のモル%を示す。高分子P1中のアクリロイル基を有する繰り返し単位は、全繰り返し単位に対して、7モル%含まれていた。また、高分子P1の重量平均分子量は2.8万であった。
なお、上記の合成例1を参照して、上述した高分子の例示高分子14、15、16および19を合成した。なお、式中の数値は、各繰り返し単位のモル%を示す。
例示高分子14の重量平均分子量は、3.2万であった。
例示高分子15の重量平均分子量は、5.8万であった。
例示高分子16の重量平均分子量は、2.1万であった。
例示高分子19の重量平均分子量は、6.6万であった。
<比較合成例1:ラジカル重合性基を有する高分子B1の合成>
500ml三口フラスコに、ジメチルアセトアミド(200g)、ポリアクリル酸(和光純薬製、分子量:25000)(30g)、テトラエチルアンモニウム、ベンジルクロライド(2.4g)、ジターシャリーペンチルハイドロキノン(25mg)、サイクロマーM(ダイセル化学(株)製)(26g)を入れ、窒素気流下、100℃にて5時間反応させた。
その後、アセトニトリルで再沈を行い、固形物を濾取し、水で洗浄、乾燥して、重合性基含有ポリマーB1を30g(Mw:6.3万)得た。なお、以下の式中の数値は、各繰り返し単位のモル%を示す。
<合成例2:光開裂化合物Q1の合成>
4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル29.33g(0.15mol)を200ml三口フラスコに量り取り、DMAc100mlを加え撹拌し(300rpm)、溶解させた。以下、同回転数で撹拌を続けながら反応を進めた。発熱しないように少量ずつKCO22.81g(0.165mol)を加え、反応液を80℃に加温した。11−ブロモ−1−ウンデセン38.78g(0.166mol)を30分かけて反応液に滴下し、滴下後1.5時間攪拌し、さらに100℃にて2.5時間撹拌した。反応終了後、氷水へと反応溶液を流し入れ固体を析出させ、吸引ろ過後、大量の蒸留水にて洗浄した。得られた固体を、アセトニトリルにて再結晶を行い、やや黄色のかかった白色固体であるシアノエーテル体(40.21g)を得た。
得られたシアノエーテル体10.42g(0.03mol)を200ml三口フラスコに量り取り、三口フラスコを氷浴に浸し(塩化ナトリウム添加)冷却後、トリクロロアセトニトリル25.99g(0.18mol)を加え撹拌し(300rpm)、溶解させた。以下、同回転数で撹拌を続けながら反応を進めた。反応溶液をHClガスで1時間バブリングした。バブリング終了後、5時間撹拌し、さらに氷浴で24時間撹拌を続けた。氷浴を外し、トリクロロアセトニトリル6.5gを追加後、室温にて24時間反応を続けた。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、蒸留水で2回、飽和食塩水で2回洗浄し、酢酸エチル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。酢酸エチルを減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて単離後、さらにn−hexaneにて再結晶を行い、やや黄色のかかった白色固体のトリアジン化合物(3.37g)を得た。
得られた二重結合を有するトリアジン化合物1.42gとTHF8mlを50mlナスフラスコに量り取り、氷水でナスフラスコを冷却し、窒素気流下、トリクロロシラン0.9gを滴下した。さらに、塩化白金酸60mgをイソプロピルアルコール0.6gに溶解した液を滴下した。反応液を氷冷下で6時間攪拌した後、室温に戻し、一晩放置した。反応液をエバポレーターにて濃縮し、さらに真空ポンプにて揮発成分を取り除き、所望の光開裂化合物Q1(2.3g)を得た。
<実施例1>
UVオゾンクリーナー処理したシリコン基板を、光開裂化合物Q1の0.1wt%トルエン溶液に5時間浸漬した。浸漬後、基板表面をトルエンで洗浄した。シリコン基板表面上に作製された重合開始層の膜厚を、エリプソメトリー(溝尻光学)(測定範囲5mm2)を用いて測定したところ、2.5nm(12点平均値、標準偏差0.91Å、平均表面粗さRa0.1nm)であった。
次に、α位置換アクリロイル基を有する高分子P1の濃度が1wt%の1−メトキシ−2−プロパノール溶液を、重合開始層を備えるシリコン基板上にスピンコート(回転数1500rpm)により塗布した。得られた塗布膜の膜厚は、33nmであった。
次に、高圧水銀灯(UVX−02516S1LP01、ウシオ電機社製、主たる発光波長:254nm(光量22mW/cm2)、365nm(光量35mW/cm2))を使用して、上述のシリコン基板上の塗布膜に60秒間露光した。露光後、1wt%の重層水にシリコン基板を10分間浸漬し、さらに基板表面を水洗いした。
洗浄および乾燥後、シリコン基板上に得られた高分子超薄膜の膜厚を測定したところ、3.0nm(標準偏差0.5Å)であった。また、得られた高分子超薄膜の平均表面粗さRaは、0.2nmであった。さらに、得られた膜は無色透明で目視により着色は認められなかった。
<実施例2>
高圧水銀灯を使用した露光時間を60秒から120秒に変更した以外は、実施例1と同様の手順で高分子超薄膜の作製を行った。得られた高分子超薄膜の膜厚は、3.2nm(標準偏差0.4Å)であった。また、得られた高分子超薄膜の平均表面粗さRaは、0.8nmであった。さらに、得られた膜は無色透明で目視により着色は認められなかった。
<比較例1>
高分子P1の代わりに上記で合成した高分子B1を用いた以外は、上記実施例1と同様の手順により高分子薄膜を作製した。
得られた高分子薄膜の膜厚は、31.5nm(標準偏差30Å)で、平均表面粗さRaは、2.0nmであった。
<比較例2>
高圧水銀灯を使用した露光時間を60秒から120秒に変更した以外は、比較例1と同様の手順で高分子薄膜の作製を行った。得られた高分子薄膜の膜厚は、35.2nm(標準偏差26Å)であった。また、得られた高分子超薄膜の平均表面粗さRaは、5.3nmであった。
上記実施例1および2より、所定のラジカル重合性基を有する高分子を用いることにより、波長300nm以下のエネルギー線を含む光照射露光においても、10nm以下の高分子超薄膜を得ることができた。
一方、α位置にメチル基を有するメタクリロイル基を有する高分子B1を使用した比較例1および2においては、得られる高分子薄膜は光照射前の基板上の塗膜とほぼ同じ厚みであり、所望の膜厚を有する高分子超薄膜を得ることができなかった。これは上記のように、基板と塗膜との界面反応のみならず、塗膜内部における高分子同士の反応が進行したためと考えられる。
<実施例3:電子線による高分子超薄膜パターンの形成>
実施例1と同じ方法により、重合開始層を表面上に設けたシリコン基板上に、高分子P1の塗布膜を作製した。この塗布膜を使用して、電子線描画装置(日本電子(株)製JSM-6500F(株)東京テクノロジー製BEAMDRAW)を用いて、加速電圧30Kev、ビーム電流100pAにて照射を行い、線幅と空間の巾がL/S=60nm/60nmのパターン露光を行った。露光量は120μC/cm2であった。露光後、1wt%の重層水にシリコン基板を10分間浸漬し、さらに基板表面を水洗いした。次に、得られた基板表面を、AFMを用いて観察した。なお、AFMの測定装置は以下の通りである。
装置:SII-NT社製E-sweep型SPM
探針:SII-NT社製 SI-DF20
測定モード:DFM(タッピングモード)
AFM測定より得られた結果を図1に示す。このAFM図より、ストライプ状の60nmのライン幅を有する高分子超薄膜パターンの形成が確認された。なお、得られた高分子超薄膜の膜厚は、5nm(標準偏差0.1nm)であった。
<比較例3>
高分子P1に代えて高分子B1を用いた以外は、実施例3と同様な方法にて電子線照射、現像を行った。得られたサンプルについてAFM観察を行ったが、パターン形成は認められなかった。
これは、電子線照射部において発生した塗膜内部の高分子同士のラジカル反応が、電子線未照射部へも伝搬したために、電子線未照射部においても基板と高分子との界面反応または高分子同士の架橋反応が進行して硬膜され、結果として所望のパターン構造が得られなかったと考えられる。
<実施例4>
線幅と空間の巾がL/S=40nm/40nmのパターン露光を行った以外は、実施例3と同様の方法により、高分子超薄膜パターンの製造を行った。AFM測定を行ったところ、ストライプ状の40nmのライン幅を有する高分子超薄膜パターンの形成が確認された。なお、得られた高分子超薄膜の膜厚は、5nm(標準偏差3Å)であった。
<実施例5>
線幅と空間の巾がL/S=50nm/50nmのパターン露光を行った以外は、実施例3と同様の方法により、高分子超薄膜パターンの製造を行った。AFM測定を行ったところ、ストライプ状の50nmのライン幅を有する高分子超薄膜パターンの形成が確認された。なお、得られた高分子超薄膜の膜厚は、5nm(標準偏差3Å)であった。
上記実施例4および5に示すように、ライン幅を変更してパターン形成を行った場合も、所望の厚みとパターン形状を有する高分子超薄膜を得ることができた。
<実施例6>
露光量を60μC/cm2に変更した以外は、実施例3と同様の方法により、高分子超薄膜パターンの製造を行った。AFM測定(図2)を行ったところ、ストライプ状の60nmのライン幅を有する高分子超薄膜パターンの形成が確認された。なお、得られた高分子超薄膜の膜厚は、5nm(標準偏差2Å)であった。
<実施例7>
露光量を80μC/cm2に変更した以外は、実施例3と同様の方法により、高分子超薄膜パターンの製造を行った。AFM測定(図3)を行ったところ、ストライプ状の60nmのライン幅を有する高分子超薄膜パターンの形成が確認された。なお、得られた高分子超薄膜の膜厚は、5nm(標準偏差2Å)であった。
<実施例8>
露光量を100μC/cm2に変更した以外は、実施例3と同様の方法により、高分子超薄膜パターンの製造を行った。AFM測定(図4)を行ったところ、ストライプ状の60nmのライン幅を有する高分子超薄膜パターンの形成が確認された。なお、得られた高分子超薄膜の膜厚は、6nm(標準偏差3Å)であった。
上記実施例3および6〜8の結果より、より少ない露光量によっても所望のパターン形成が達成されることが確認された。
<実施例9−1>
線幅と空間の巾がL/S=45nm/45nmのパターン露光を行った以外は、実施例3と同様の方法により、高分子超薄膜パターンの製造を行った。AFM測定を行ったところ、ストライプ状の45nmのライン幅を有する高分子超薄膜パターンの形成が確認された。なお、得られた高分子超薄膜の膜厚は、5nm(標準偏差3Å)であった。
次に、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートのブロックポリマー(PS-b-PMMA、分子量(M)104000、PS部分の分子量(M):52000、PMMA部分の分子量(M):52000、PSおよびPMMAポリマー鎖長は48nm、Polymer Source Inc.製)の1.5wt%のトルエン溶液を調整し、この溶液を作製したパターンの上に300rpmで塗布し、厚さ40nmの塗布膜を得た。この塗布膜を、真空中190℃で70時間加熱した。得られた膜の表面をAFMで観察したところ、ブロックポリマー膜においてラメラ状ミクロドメインが基板に対して垂直に配向した構造(ラメラ状相の界面が基板に垂直に配向した構造)の形成が確認された。
<実施例9−2>
ポリマーとして上述した例示高分子14を使用し、線幅と空間の巾がL/S=45nm/45nmのパターン露光を行った以外は、実施例3と同様の方法により、高分子超薄膜パターンの製造を行った。AFM測定を行ったところ、ストライプ状の45nmのライン幅を有する高分子超薄膜パターンの形成が確認された。なお、得られた高分子超薄膜の膜厚は、それぞれ5nm(標準偏差3Å)であった。
次に、<実施例9−1>と同様の条件にて、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートのブロックポリマーの膜を製造した(塗布膜厚さ:40nm)。得られた膜の表面をAFMで観察したところ、ブロックポリマー膜においてラメラ状ミクロドメインが基板に対して垂直に配向した構造(ラメラ状相の界面が基板に垂直に配向した構造)の形成が確認された。
<実施例9−3>
ポリマーとして上述した例示高分子15を使用し、線幅と空間の巾がL/S=45nm/45nmのパターン露光を行った以外は、実施例3と同様の方法により、高分子超薄膜パターンの製造を行った。AFM測定を行ったところ、ストライプ状の45nmのライン幅を有する高分子超薄膜パターンの形成が確認された。なお、得られた高分子超薄膜の膜厚は、それぞれ5nm(標準偏差5Å)であった。
次に、<実施例9−1>と同様の条件にて、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートのブロックポリマーの膜を製造した(塗布膜厚さ:40nm)。得られた膜の表面をAFMで観察したところ、ブロックポリマー膜においてラメラ状ミクロドメインが基板に対して垂直に配向した構造(ラメラ状相の界面が基板に垂直に配向した構造)の形成が確認された。
<比較例4>
電子線ネガレジスト:TEBN-1((株)トクヤマ社製)を使用し、シリコン基板上にスピナーで2000rpmにて10秒で塗布を行なった。次に、実施例3と同じ方法にて電子線を用いて露光し、線幅と空間の幅がL/S=45nm/45nmのパターン露光を行なった。露光量は120μC/cm2であった。
次に、現像を行なった。現像はキシレン中で30秒行い、その後リンスをイソプロピルアルコール中にて30秒行った。しかしながら、基板上には所望のパターンは得られなかった。
そこで、露光量を3000μC/cm2に上げて再度露光を行なったところ、厚み10nm、線幅と空間の幅がL/S=45nm/45nmのパターン形成がされていることが分かった。
次に、上記実施例9−1と同じ方法にて、得られたパターンを有する基板上にブロックポリマーを塗布して、ブロックポリマーのパターン形成を行なった。しかしながら、AFM測定を実施してもパターン形成は認められず、ブロックポリマーのランダムな構造があるのみであった。
<実施例10>
実施例3で得られたパターンを用いて、下記の方法にてメッキ処理を行なった。
実施例3で得られたパターンを、硝酸パラジウム(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、下記組成の無電解メッキ浴に20分間浸漬し、金属パターンAを作製した。
(無電解メッキ浴成分)
・OPCカッパ−H T1(奥野製薬(株)製) 6mL
・OPCカッパ−H T2(奥野製薬(株)製) 1.2mL
・OPCカッパ−H T3(奥野製薬(株)製) 10mL
・水 83mL
得られた金属パターンAをAFMで観察したところ、ポリマーが存在する線状部分にのみ金属が堆積し、きれいなパターンが形成されていることが判明した。
(金属パターンの密着評価)
得られた金属パターンの密着性を評価するために、新東科学製Tribostation Type 32を用い、φ10mmのガラス球をプローブとして室温にて垂直荷重0.49Nでサンプル面に押し当て、摺動距離20mmの条件で繰り返し表面を摩擦した。60回摩擦を行なった後、表面をAFMで観察したが、配線の欠落は認められなかった。
<実施例11>
実施例3で得られたパターンを用いて、下記の方法にて金属パターン形成を行なった。
実施例3で得られたパターンを、硝酸銀(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、水素化ホウ素ナトリウムの1質量%液に1時間浸漬した。浸漬後、サンプルを取り出し、水洗、乾燥後、表面をAFMで観察したところポリマーが存在する線状部分にのみ明瞭な金属パターンが認められた。
<実施例12>
高分子P1に代えて、例示高分子16を用いて実施例3と同様の方法にて、高分子超薄膜パターンの製造を行った。なお、その際、塗布溶媒および現像液としては、1−メトキシ−2−プロパノールを使用した。その結果、L/S=60nm/60nmの高分子超薄膜パターンが形成されていることを確認した。なお、得られた高分子超薄膜の膜厚は、それぞれ5nm(標準偏差5Å)であった。
次に、得られたパターンを、硝酸パラジウム(和光純薬製)0.1質量%の水/メタノール溶液(1/4体積比)に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、実施例10と同じ方法にて無電解めっきを行なった。サンプルを取り出し、水洗、乾燥後、表面をAFMで観察したところ、ポリマーが存在する線状部分にのみ金属が堆積し、明瞭なL/S=60nm/60nmの金属パターンが認められた。
<実施例13>
高分子P1に代えて、例示高分子19を用いて実施例3と同様の方法にて、高分子超薄膜パターンの製造を行った。なお、その際、塗布溶媒および現像液としては、1−メトキシ−2−プロパノールを使用した。その結果、L/S=60nm/60nmの高分子超薄膜パターンが形成されていることを確認した。なお、得られた高分子超薄膜の膜厚は、それぞれ5nm(標準偏差5Å)であった。
次に、得られたパターンを、硝酸パラジウム(和光純薬製)0.1質量%の水/メタノール溶液(1/4体積比)に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、実施例10と同じ方法にて無電解めっきを行なった。サンプルを取り出し、水洗、乾燥後、表面をAFMで観察したところ、ポリマーが存在する線状部分にのみ金属が堆積し、明瞭なL/S=60nm/60nmの金属パターンが認められた。
(金属パターンの密着評価)
実施例11〜13において得られた金属パターンの密着性を評価するために、新東科学製Tribostation Type 32を用い、φ10mmのガラス球をプローブとして室温にて垂直荷重0.49Nでサンプル面に押し当て、摺動距離20mmの条件で繰り返し表面を摩擦した。65回摩擦を行なった後、表面をAFMで観察したが、いずれも金属パターンにおいても配線の欠落は認められなかった。

Claims (18)

  1. 露光によりラジカルを発生しうる基板表面とラジカル重合性基を有する高分子とが直接結合して、前記基板表面上に形成される高分子超薄膜であって、前記ラジカル重合性基が下記式(1)で表されるα位置換アクリロイル基であり、膜厚が1〜10nmである高分子超薄膜。

    (式(1)中、R1は、炭素数2以上のアルキル基、または、置換基としてアリール基、ハロゲン基、もしくはアルコキシカルボニル基を有する炭素数1以上の置換アルキル基を表す。Lは、2価の連結基または単なる結合手を表す。*は、結合位置を表す。)
  2. 露光によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位と基板結合部位とを有する化合物が前記基板結合部位を介して前記基板と結合して形成される重合開始層を、前記基板が表面上に有する、請求項1に記載の高分子超薄膜。
  3. 前記ラジカル重合性基を有する高分子が、下記式(2)で表される繰り返し単位を有する高分子である、請求項1また2に記載の高分子超薄膜。

    (式(2)中、R1は、炭素数2以上のアルキル基、または、置換基としてアリール基、ハロゲン基、もしくはアルコキシカルボニル基を有する炭素数1以上の置換アルキル基を表す。Lは、2価の連結基または単なる結合手を表す。R2は、水素原子またはアルキル基を表す。)
  4. 前記高分子中において前記式(2)で表される繰り返し単位が、全繰り返し単位に対して、1〜80モル%含有される、請求項3に記載の高分子超薄膜。
  5. 1がイソプロピル基である、請求項1〜4のいずれかに記載の高分子超薄膜。
  6. 平均表面粗さRaが1.0nm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の高分子超薄膜。
  7. 波長300nm以下のエネルギー線または電子線の照射によって、前記基板表面とラジカル重合性基を有する高分子との直接結合が形成される、請求項1〜6のいずれかに記載の高分子超薄膜。
  8. 露光によりラジカルを発生しうる基板上に、下記式(1)で表されるα位置換アクリロイル基を有する高分子を接触させ、パターン状にエネルギーを付与して形成される、膜厚1〜10nmの前記基板表面上に直接結合した高分子超薄膜パターン。

    (式(1)中、R1は、炭素数2以上のアルキル基、または、置換基としてアリール基、ハロゲン基、もしくはアルコキシカルボニル基を有する炭素数1以上の置換アルキル基を表す。Lは、2価の連結基または単なる結合手を表す。*は、結合位置を表す。)
  9. 前記エネルギー付与が波長300nm以下のエネルギー線または電子線の照射によって行われる、請求項8に記載の高分子超薄膜パターン。
  10. 1がイソプロピル基である、請求項8または9に記載の高分子超薄膜パターン。
  11. 請求項8〜10のいずれかに記載の高分子超薄膜パターンに無電解メッキ触媒またはその前駆体を付与し、その後、無電解メッキを行いパターン状の金属薄膜を形成してなる導電性パターン。
  12. 請求項8〜10のいずれかに記載の高分子超薄膜パターンに金属イオンまたは金属塩を付与し、その後、該金属イオンまたは該金属塩中の金属イオンを還元して金属を析出させ、パターン状の金属薄膜を形成してなる導電性パターン。
  13. 請求項8〜10のいずれかに記載の高分子超薄膜パターンを備える基板と、
    前記高分子超薄膜パターン上に、2種以上の互いに非相溶であるポリマー鎖が結合してなるブロックポリマーより形成され、ラメラ状相分離構造を有するブロックポリマー層とを備え、
    上記ラメラ状相分離構造の相が前記基板に対して垂直方向に配向している、構造体。
  14. 露光によりラジカルを発生しうる基板上に、下記式(1)で表されるα位置換アクリロイル基を有する高分子を接触させ、波長300nm以下のエネルギー線または電子線によってパターン状にエネルギーを付与して、膜厚が1〜10nmで、線幅が200nm以下の前記基板表面上に直接結合した高分子超薄膜パターンを製造する、高分子超薄膜パターンの形成方法。

    (式(1)中、R1は、炭素数2以上のアルキル基、または、置換基としてアリール基、ハロゲン基、もしくはアルコキシカルボニル基を有する炭素数1以上の置換アルキル基を表す。Lは、2価の連結基または単なる結合手を表す。*は、結合位置を表す。)
  15. 1がイソプロピル基である、請求項14に記載の高分子超薄膜パターンの形成方法。
  16. 下記式(1)で表されるα位置換アクリロイル基を有する高分子を含有するパターン形成用組成物。

    (式(1)中、R1は、炭素数2以上のアルキル基、または、置換基としてアリール基、ハロゲン基、もしくはアルコキシカルボニル基を有する炭素数1以上の置換アルキル基を表す。Lは、2価の連結基または単なる結合手を表す。*は、結合位置を表す。)
  17. 前記高分子が、下記式(2)で表される繰り返し単位を有する高分子である、請求項16に記載のパターン形成用組成物。

    (式(2)中、R1は、炭素数2以上のアルキル基、または、置換基としてアリール基、ハロゲン基、もしくはアルコキシカルボニル基を有する炭素数1以上の置換アルキル基を表す。Lは、2価の連結基または単なる結合手を表す。R2は、水素原子またはアルキル基を表す。)
  18. 前記高分子が、さらに、下記式(3)で表される繰り返し単位を有する高分子である、請求項16または17に記載のパターン形成用組成物。

    (式(3)中、R3は、水素原子またはアルキル基を表す。Lは、連結基または単なる結合手を表す。Yは、カルボキシ基、アルキルアミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、アリール基、ピリジル基、ピロリドン基、アルキルカルボニルオキシ基、アミノ基、アンモニウム基、水酸基、エチレンオキシ基、アミド基、リン酸基、またはシアノ基を表す。)
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