JP2008149586A - グラフト膜形成用積層体、グラフト膜、その形成方法、グラフトパターン、及びその形成方法 - Google Patents

グラフト膜形成用積層体、グラフト膜、その形成方法、グラフトパターン、及びその形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高感度でグラフトポリマーを生成し、グラフト膜を形成しうるグラフト膜形成用積層体、該グラフト膜形成用積層体を用いたグラフト膜、その形成方法、該グラフト膜形成用積層体を用いたグラフトパターン、及びその形成方法を提供すること。
【解決手段】光によりラジカルを発生しうる基材と、該基材上に設けられ、下記式(I)で表される構造単位を含む重合体を含有する重合体含有層と、を有することを特徴とするグラフト膜形成用積層体〔式中、Rは、水素原子、又はメチル基を表し、Xは、酸素原子、又はNHを表し、Yは、側鎖間の相互作用性部位を表し、Zは、(メタ)アクリロイル基、又は(メタ)アクリルアミド基を表す。〕。
Figure 2008149586

【選択図】なし

Description

本発明は、グラフト膜形成用積層体、グラフト膜、その形成方法、グラフトパターン、及びその形成方法に関する。
近年、固体表面に、種々の機能を設ける技術が注目され、特に、固体表面のポリマーによる表面修飾は、ぬれ性、汚れ性、接着性、表面摩擦、細胞親和性などの性質を変えることができるため、工業的な分野で幅広く研究されている。
その中でも、固体表面に直接結合してなるグラフトポリマーによる表面修飾は、i)固体表面とグラフトポリマーとの間に強固な結合が形成されるという利点を有すること、ii)グラフトポリマーの構造を制御することにより、グラフトポリマーに対する親和性が高い様々な物質を吸着させることが可能となり、更に、表面に種々の機能を付与することができること、が知られている。
このような、固体表面をグラフトポリマーによる表面修飾する際には、例えば、固体表面に光を照射し活性種を生成させ、この活性種を基点として重合性化合物を重合させる表面グラフト重合法が用いられる(例えば、非特許文献1参照。)。
この表面グラフト重合法では、固体表面に活性種を生成させるために光を照射するが、露光エネルギーが低い光の照射に可視光レーザーなどを用いた場合には、連鎖重合が効率的に行われず、所望の表面修飾ができないといった問題が生じる場合がある。
そのため、低エネルギーの露光によっても、効率的にグラフトポリマーを生成させる技術が望まれていた。
Langmuir. 2006. 22. 8571-8575
本発明の前記従来における問題点を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、高感度でグラフトポリマーを生成し、グラフト膜を形成しうるグラフト膜形成用積層体、該グラフト膜形成用積層体を用いたグラフト膜、その形成方法、該グラフト膜形成用積層体を用いたグラフトパターン、及びその形成方法を提供することにある。
本発明者らは、検討の結果、少ない露光量で連鎖重合を効率的に促進させることができる化合物を用いることで、上記問題点を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明のグラフト膜形成用積層体は、光によりラジカルを発生しうる基材と、該基材上に設けられ、下記式(I)で表される構造単位を含む重合体を含有する重合体含有層と、を有することを特徴とする。
Figure 2008149586
〔式中、Rは、水素原子、又はメチル基を表し、Xは、酸素原子、又はNHを表し、Yは、側鎖間の相互作用性部位を表し、Zは、(メタ)アクリロイル基、又は(メタ)アクリルアミド基を表す。〕
本発明において、前記式(I)で表される構造単位を含む重合体の重量平均分子量が、2000〜200000であることが好ましい。
また、前記重合体が、前記式(I)で表される構造単位を5〜30質量%の範囲で含むことが好ましい。
更に、前記式(I)におけるYが、結晶性を示す部位、会合性を示す部位、πスタッキング構造、水素結合部位、又は疎水相互作用性部位であることが好ましい態様である。
更に、本発明のグラフト膜の形成方法は、本発明のグラフト膜形成用積層体の重合体含有層の全面に対し、250nm〜800nmの波長の光を照射する全面露光工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明のグラフト膜は、本発明のグラフト膜の形成方法により得られたものである。
本発明のグラフトパターンの形成方法(以下、グラフトパターンの形成方法(1)と称する。)は、本発明のグラフト膜形成用積層体の重合体含有層に対し、250nm〜800nmの波長の光を像様に照射するパターン露光工程と、を含むことを特徴とする。
なお、前記パターン露光工程において、レーザーによる走査露光、若しくはフォトマスクを通しての像様露光を用いることが好ましい態様である。
また、本発明のグラフトパターンの形成方法(以下、グラフトパターンの形成方法(2)と称する。)の他の態様としては、光開裂によりラジカルを発生しうるラジカル発生部位と基材結合部位とを有する化合物を支持体に結合させる工程と、パターン露光を行い、露光領域の該ラジカル発生部位を失活させる工程と、前記基材上に、下記式(I)で表される構造単位を含む重合体を接触させた後、全面露光を行い、前記パターン露光時における未露光領域に残存した該ラジカル発生部位に光開裂を生起させ、ラジカル重合を開始させることでグラフトポリマーを生成させる工程と、をこの順に行うことを特徴とする。
Figure 2008149586
〔式中、Rは、水素原子、又はメチル基を表し、Xは、酸素原子、又はNHを表し、Yは、側鎖間の相互作用性部位を表し、Zは、(メタ)アクリロイル基、又は(メタ)アクリルアミド基を表す。〕
また、本発明のグラフトパターンは、本発明のグラフトパターンの形成方法(1)又は(2)により得られたものである。
本発明によれば、高感度でグラフトポリマーを生成し、グラフト膜を形成しうるグラフト膜形成用積層体、該グラフト膜形成用積層体を用いたグラフト膜、その形成方法、該グラフト膜形成用積層体を用いたグラフトパターン、及びその形成方法を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
<グラフト膜形成用積層体>
本発明のグラフト膜形成用積層体は、光によりラジカルを発生しうる基材と、該基材上に設けられ、下記式(I)で表される構造単位を含む重合体を含有する重合体含有層と、を備えたことを特徴とする。
以下、本発明のグラフト膜形成用積層体を構成する、基材及び重合体含有層について説明する。
〔重合体含有層〕
本発明における重合体含有層は、下記式(I)で表される構造単位を含む重合体(以下、適宜、「特定重合体」と称する。)を含有する。
Figure 2008149586
式(I)において、Rは、水素原子、又はメチル基を表し、Xは、酸素原子、又はNHを表し、Yは、側鎖間の相互作用性部位を表し、Zは、(メタ)アクリロイル基、又は(メタ)アクリルアミド基を表す。
つまり、本発明における特定重合体は、側鎖間の相互作用性部位を介して、末端にラジカル重合性部位を有する重合体である。
式(I)におけるYで表される側鎖間の相互作用性部位とは、分子間及び/又は分子内において、側鎖間の距離を接近させうる部位を意味し、具体的には、結晶性を示す部位、会合性を示す部位、πスタッキング構造、水素結合部位、疎水相互作用性部位等が挙げられる。
前記液晶性を示す部位としては、液晶性骨格(メソゲン部位)を含むものであり、具体的には、一般的に下記のような構造が挙げられる。ここで、下記の構造中、Rは、アルキル基、炭素原子1以上含む鎖状エーテル基、エステル基、アミド基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基などを含む官能基一般を指す。また、下記の構造中、Xは、炭素原子、酸素原子、又は窒素原子を指す。
なお、液晶の形態としては、棒状液晶、円盤状液晶、イオン性液晶、金属錯体液晶など如何なるものでもよく、また、ネマティック、ディスコティック、スメクチック、コレステリック相などの液晶相も問わない。
また、液晶性骨格の具体的な構造として、液晶便覧(丸善、平成12年10月30日発行)第3章、P259〜364に記載のような構造を有していてもよい。
Figure 2008149586
Figure 2008149586
前記会合性を示す部位としては、上記結晶性を示す骨格と同様であるが、結晶性を示す濃度よりも低い範囲での適応された場合を指す。
前記πスタッキング構造とは、π−π相互作用やπ−H相互作用を形成しうる構造を意味する。
このπ−π相互作用とは、有機化合物分子の芳香環の間に働く分散力(ロンドン分散力)であり、2つの芳香環がコインを積み重ねたような配置で安定化する傾向があるため、スタッキング(積み重ね)相互作用とも呼ばれる。芳香族化合物は堅固な平面構造をとり、π電子系により非局在化した電子が豊富に存在するため、とくにロンドン分散力が強く発現する。したがって、π電子が増えるほど強くなる。この他、1つの芳香環とそれに垂直の位置にある他の芳香環についた水素原子との間にT型スタッキング(T−stacking:芳香環がT字形に配置することから)と呼ばれる相互作用(また、一般の水素原子の場合を含めπ−H相互作用ともいう)が働くことが知られている。
πスタッキング構造として具体的には、π電子を多く有するほど相互作用は大きいため、特に、ベンゼン環、ヘテロ環、ジエンなどπ結合を2つ以上有する構造が好ましい。
前記水素結合性部位における水素結合とは、窒素、酸素、ハロゲン、硫黄等の電気陰性度の大きい電子吸引性の高い原子と電子供与性の水素が共有結合することにより、水素の電子密度が低くなり、分子間の距離が近づくと分子間の結合引力が分子内の結合引力並に強まるために起こる結合である。水素結合のために特異な性質をもつ代表的な官能基として、水酸基、カルボキシル基(C=O、−OH)、アミノ基、ウレア結合(N−H、C=O)、ウレタン部位(N−H、C=O)、アミド結合(N−H、C=O)、ヘテロ環などが挙げられる。
これらの官能基を有する分子の中でも、1分子に付き2点以上の水素結合を形成が可能な構造が、分子の会合という観点で好ましい。
前記疎水相互作用性部位における疎水相互作用の原理は次のように考えられている。ミクロ的に見ると、水の分子は部分的には水素結合でつながりあっているが、液体であるから分子は乱雑に激しく動いている。ところが、ここに疎水性分子が入ってくると、その付近の水分子は疎水性分子と水素結合を作れないので、隣の水分子と強い結合を作ってしまい動きがとれなくなる。つまり乱雑さが減少し、熱力学的にはエントロピーが減少することになる。従って、逆に疎水性分子が水から出て行く、つまり油は油だけで集まる方が熱力学的に安定になる。このような疎水相互作用を形成しうる具体的な構造として、長鎖アルキル鎖(炭素数8以上)、アルキル環構造(炭素数6以上)を有する構造などが挙げられる。
以下、式(I)で表される構造単位の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
Figure 2008149586
Figure 2008149586
上記の如き、式(I)で表される構造単位のみで本発明における特定重合体が形成されていてもよいが、式(I)で表される構造単位以外に、他の構成単位を含んでいてもよい。
本発明において、特定重合体中、式(I)で表される構造単位が5〜30質量%の範囲で含まれることが好ましく、7〜25質量%の範囲で含まれることがより好ましく、10〜20質量%の範囲で含まれることが更に好ましい。
この範囲で、式(I)で表される構造単位が含まれていることで、グラフト膜形成用積層体の高感度化を効率良く発現することができる。
−機能性官能基を有する他の構造単位−
本発明における特定重合体は、種々の機能性を有していてもよく、その機能性の付与のために、機能性官能基を有する構造単位を含むことが好ましい。
本発明において、機能性官能基を有する構造単位としては、例えば、特定重合体に親水性を付与するための、親水性基を有する構造単位や、特定重合体に機能性材料を吸着させる機能を付与するための、極性基やヘテロ環基を有する構造単位が挙げられる。また、本発明における特定重合体に対し、所望とする溶剤への溶解性を付与するために、他の構造単位として、所望とする溶媒に溶解し易い官能基を有する構造単位を用いてもよい。
以下、式(I)で表される構造単位以外に用いられる、機能性官能基を有する構造単位について説明する。
本発明における機能性官能基を有する構造単位は、モノマー、マクロモノマー、又は、重合性基を有するポリマーのいずれかの重合性化合物に由来するものであればよい。
なお、機能性官能基が極性基である場合、この極性基の中でも親水性基が好ましい。親水性基としてより具体的には、アンモニウム、ホスホニウなどの正の荷電を有する官能基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有する官能基、その他にも、例えば、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシ基、シアノ基などの非イオン性基が挙げられる。
以下、本発明における機能性官能基を有する構造単位を形成しうる重合性化合物、即ち、機能性官能基を有する重合性化合物について説明する。
本発明に用いうる重合性化合物としてのモノマーは、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、スチレンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、N−ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルチオフェン、スチレン、エチル(メタ)アクリル酸エステル、n−ブチル(メタ)アクリル酸エステルなど炭素数1〜24までのアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。
本発明に用いうる重合性化合物としてのマクロモノマーは、前記モノマーを用いて公知の方法にて作製することができる。このマクロモノマーの製造方法は、例えば、平成1年9月20日にアイピーシー出版局発行の「マクロモノマーの化学と工業」(編集者 山下雄也)の第2章「マクロモノマーの合成」に各種の製法が提案されており、本発明においても適用することができる。
このようなマクロモノマーの有用な重量平均分子量は、500〜50万の範囲であり、特に好ましい範囲は1000〜5万である。
本発明に用いうる重合性化合物としてのポリマーとは、機能性官能基(例えば、極性基、親水性基、ヘテロ環基等)と、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基(重合性基)と、を導入したポリマーを指す。このポリマーは、少なくとも末端又は側鎖にエチレン付加重合性不飽和基を有するものであり、側鎖にエチレン付加重合性不飽和基を有するものがより好ましく、末端及び側鎖にエチレン付加重合性不飽和基を有するものが更に好ましい。
このようなポリマーの有用な重量平均分子量は、500〜50万の範囲で、特に好ましい範囲は1000〜5万である。
機能性官能基と重合性基とを有する高分子化合物の合成方法としては、i)機能性官能基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)機能性官能基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)機能性官能基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法が挙げられる。
好ましい合成方法は、合成適性の観点から、ii)機能性官能基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により重合性基を導入する方法、iii)機能性官能基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
上記i)及びii)の合成方法に用いられる機能性官能基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、より具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン(下記構造)、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニル安息香酸等が挙げられ、一般的には、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、アミド基、ホスフィン基、イミダゾール基、ピリジン基、トリアジン基若しくはそれらの塩、及びエーテル基などの官能基を有するモノマーが使用できる。
Figure 2008149586
上記機能性官能基を有するモノマーと共重合する重合性基を有するモノマーとしては、アリル(メタ)アクリレート、2−アリルオキシエチルメタクリレートが挙げられる。
また、上記ii)の合成方法に用いられる重合性基前駆体を有するモノマーとしては、2−(3−クロロ−1−オキソプロポキシ)エチルメタクリレー卜や、特開2003−335814号公報に記載の化合物(i−1〜i−60)が使用することができ、これらの中でも、特に下記化合物(i−1)が好ましい。
Figure 2008149586
更に、上記iii)の合成方法に用いられる機能性官能基を有するポリマー中の、カルボキシル基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、及びエポキシ基などの官能基との反応を利用して、重合性基を導入するために用いられる重合性基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートなどがある。
上記ii)の合成方法における、機能性官能基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させた後の、塩基などの処理により重合性基を導入する方法については、例えば、特開2003−335814号公報に記載の手法を用いることができる。
なお、機能性置換基として極性基(親水性基)やヘテロ環基を有する構造単位は、本発明の特定重合体中、10〜95質量%の範囲で含まれることが好ましく、40〜80質量%の範囲で含まれることがより好ましい。
また、機能性置換基として所望とする溶媒に溶解し易い官能基を有する構造単位は、本発明の特定重合体中、0〜85質量%の範囲で含まれることが好ましく、40〜80質量%の範囲で含まれることがより好ましい。
本発明における特定重合体の具体例〔P1〜P18〕を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
Figure 2008149586
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Figure 2008149586
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本発明における特定重合体は、以下の方法で合成することができる。
合成法は大きく分けて2種類ある。(メタ)アクリル酸としての骨格が異なる共重合体に関しては、(メタ)アクリル酸を基にモノマーを合成し、それぞれのモノマーを共重合し、特定重合体が得られる。もう一方は、高分子反応を利用する方法であり、共重合成分の主鎖骨格が共通している場合に便利である。つまり、ポリ(メタ)アクリル酸を合成した後、導入したい機能性部位をその分だけ側鎖に導入するという方法である。
本発明における特定重合体の分子量は、溶解性、塗布適正の点から、重量平均分子量にて2000〜200000の範囲であることが好ましく、5000〜100000の範囲であることがより好ましく、6000〜30000の範囲であることが更に好ましい。
上記のような特定重合体を含有する重合体含有層は、該特定重合体を適当な溶剤に溶解又は分散して液状組成物(塗布液)を調製し、これを後述する基材上に塗布、乾燥させることで形成される。
上記液状組成物(塗布液)に用いられる溶剤は、主成分である特定重合体を溶解、或いは分散することが可能であれば特に制限はないが、水、水溶性溶剤などの水性溶剤が好ましく、これらの混合物や、溶剤に更に界面活性剤を添加したものであってもよい。
使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミドの如きアミド系溶剤、などが挙げられる。
また、この液状組成物(塗布液)に対し、必要に応じて添加することのできる界面活性剤は、溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
基材表面に、特定重合体を含有する液状組成物を塗布して塗膜を形成する場合には、その塗布量としては、充分な塗布膜を得る観点からは、固形分換算で0.1〜10g/mが好ましく、特に0.5〜5g/mが好ましい。
なお、特定重合体を含有する重合体含有層の膜厚は、基材表面への機能性付与の点から、0.01〜20μmの範囲であることが好ましく、0.05〜10μmの範囲であることがより好ましく、0.1〜5μmの範囲であることが更に好ましい。
〔光によりラジカルを発生しうる基材〕
次に、本発明における光によりラジカルを発生しうる基材(以下、単に「基材」と称する場合がある)を説明する。
この基材は、例えばポリエチレンテレフタレートのように、光によりラジカルを発生しうる材料からなるものであってもよいし、光によりラジカルを発生する化合物を含有するものであってもよい。
より具体的には、光によりラジカルを発生しうる基材としては、(a)低分子ラジカル発生剤を含有する基材、(b)主鎖や側鎖にラジカル発生部位を有する高分子化合物(高分子のラジカル発生剤)を含有する基材、(c)側鎖に架橋部位とラジカル発生部位とを有する高分子化合物を含有する塗布液を支持体表面に塗布、乾燥した後、塗膜内に架橋構造を形成させてなる基材、などが挙げられる。
なお、上記(a)や(b)の基材は、基材を構成する成分中にラジカル発生剤を直接含有させて構成されるものであってもよいし、また、任意の支持体上に、ラジカル発生剤を含有する層(ラジカル発生剤含有層)を設けることで構成されていてもよい。このように、基材が、支持体とラジカル発生剤含有層とから構成される場合、その間には、密着性を向上させるために、下塗り層を設けてもよい。
また、特殊な材料を用いる方法として、(d)ラジカル発生部位を有する化合物を共有結合により支持体表面に結合させてなる基材がある。これは、支持体表面に、ラジカル発生部位と支持体結合部位とを有する化合物を結合させたものである。
まず、上記(d)の基材について説明する。
この基材に適用しうるラジカル発生部位と支持体結合部位とを有する化合物としては、例えば、光開裂によりラジカルを発生しうるラジカル発生部位(Y)と支持体結合部位(Q)とを有する化合物(以下、適宜「光開裂化合物(Q−Y)」と称する。)等が挙げられる。
ここで、光開裂によりラジカルを発生しうるラジカル発生部位(以下、単に「重合開始部位(Y)」と称する。)は、光により開裂しうる単結合を含む構造である。
この光により開裂する単結合としては、カルボニルのα開裂、β開裂反応、光フリー転位反応、フェナシルエステルの開裂反応、スルホンイミド開裂反応、スルホニルエステル開裂反応、N−ヒドロキシスルホニルエステル開裂反応、ベンジルイミド開裂反応、活性ハロゲン化合物の開裂反応、などを利用して開裂が可能な単結合が挙げられる。これらの反応により、光により開裂しうる単結合が切断される。この開裂しうる単結合としては、C−C結合、C−N結合、C−O結合、C−Cl結合、N−O結合、及びS−N結合等が挙げられる。
また、これらの光により開裂しうる単結合を含む重合開始部位(Y)は、前述の特定重合体のグラフト重合の起点となるため、光により開裂しうる単結合が開裂すると、その開裂反応によりラジカルを発生させる機能を有する。このように、光により開裂しうる単結合を有し、かつ、ラジカルを発生可能な重合開始部位(Y)の構造としては、以下に挙げる基を含む構造が挙げられる。
即ち、芳香族ケトン基、フェナシルエステル基、スルホンイミド基、スルホニルエステル基、N−ヒドロキシスルホニルエステル基、ベンジルイミド基、トリクロロメチル基、ベンジルクロライド基などである。
このような重合開始部位(Y)は、露光により開裂して、ラジカルが発生すると、そのラジカル周辺に特定重合体が存在する場合には、このラジカルがグラフト重合反応の起点として機能し、グラフトポリマーを生成することができる。
このため、表面に光開裂化合物(Q−Y)が導入された基材を用いてグラフトポリマーを生成させる場合には、エネルギー付与手段として、重合開始部位(Y)を開裂させうる波長での露光を用いることが必要である。
また、支持体結合部位(Q)としては、ガラスに代表される絶縁基板表面に存在する官能基(Z)と反応して結合しうる反応性基が用いられ、その反応性基としては、具体的には、以下に示すような基材結合基が挙げられる。
Figure 2008149586
重合開始部位(Y)と、支持体結合部位(基材結合基)(Q)と、は直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。この連結基としては、炭素、窒素、酸素、及びイオウからなる群より選択される原子を含む連結基が挙げられ、具体的には、例えば、飽和炭素基、芳香族基、エステル基、アミド基、ウレイド基、エーテル基、アミノ基、スルホンアミド基、等が挙げられる。また、この連結基は更に置換基を有していてもよく、その導入可能な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、等が挙げられる。更に、重合開始部位(Y)と支持体結合物(Q)とが、それぞれポリマーの側鎖に存在していてもよく、その場合には、連結基はポリマーの主鎖構造を含み、重合開始部位(Y)と支持体結合物(Q)との間を連結するものとなる。
重合開始部位(Y)と、支持体結合部位(Q)と、を有する化合物(Q−Y)の具体例〔例示化合物T1〜T6〕を、開裂部と共に以下に示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
Figure 2008149586
Figure 2008149586
上記の光開裂化合物(Q−Y)を結合させる支持体として、例えば、ガラス基板を用いた場合、その材質に起因して、例えば、水酸基等の官能基(Z)が、もともと存在しているため、ガラス基板上に光開裂化合物(Q−Y)を接触させ、支持体表面に存在する官能基(Z)と、支持体結合部位(Q)と、を結合させることで、支持体表面に光開裂化合物(Q−Y)が容易に導入される。また、支持体として樹脂基板を用いる場合は、支持体表面に、コロナ処理、グロー処理、プラズマ処理などの表面処理を施し、水酸基、カルボキシル基などを発生させ、その官能基(Z)と光開裂化合物(Q−Y)の支持体結合部位(Q)とを結合させてもよい。
光開裂化合物(Q−Y)を支持体表面に存在する官能基(Z)に結合させる具体的な方法としては、光開裂化合物(Q−Y)を、トルエン、ヘキサン、アセトンなどの適切な溶媒に溶解又は分散し、その溶液又は分散液を支持体表面に塗布する方法、又は、溶液又は分散液中に支持体を浸漬する方法などを適用すればよい。これらの方法により、光開裂化合物(Q−Y)が導入された基材表面が得られる。
このとき、溶液中又は分散液の光開裂化合物(Q−Y)の濃度としては、0.01質量%〜30質量%が好ましく、特に0.1質量%〜15質量%であることが好ましい。接触させる場合の液温としては、0℃〜100℃が好ましい。接触時間としては、1秒〜50時間が好ましく、10秒〜10時間がより好ましい。
また、このとき、ラジカル発生能を有する前記化合物とともに、後述する増感剤を共存させてもよい。
本発明において、前記(a)の基材において用いられる低分子ラジカル発生剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーズケトン、ベンゾイルベンゾエート、ベンゾイン類、α−アシロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、トリクロロメチルトリアジンなどのトリアジン類、及びチオキサントン等の公知のラジカル発生剤を使用できる。また、通常、光酸発生剤として用いられるスルホニウム塩やヨードニウム塩なども光照射によりラジカル発生剤として作用するため、本発明ではこれらを用いてもよい。
また、前記(b)の基材において用いられる高分子ラジカル発生剤としては、特開平9−77891号段落番号〔0012〕〜〔0030〕や、特開平10−45927号段落番号〔0020〕〜〔0073〕に記載の活性カルボニル基を側鎖に有する高分子化合物などを使用することができる。このような高分子ラジカル発生剤のうち、側鎖にラジカル発生部位を有する高分子化合物が好ましい。
また、高分子ラジカル発生剤の分子量としては、0.1万〜30万のものが好ましく、合成上の製造コントロールの観点からは、より好ましくは、0.3万〜10万のものである。
これらの低分子ラジカル発生剤や高分子ラジカル発生剤の含有量は、基材の種類、所望のグラフトポリマーの生成量などを考慮して、適宜、選択することができる。
一般的には、低分子ラジカル発生剤の場合は、基材の全固形分又はラジカル発生剤含有層に対して、0.1〜40質量%の範囲であることが好ましく、また、高分子ラジカル発生剤の場合は、基材の全固形分又はラジカル発生剤含有層に対して、1.0〜50質量%の範囲であることが好ましい。
前記(c)の基材は、具体的には、任意の支持体表面に、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層を形成したものである。このような重合開始層を加熱又は露光することで、ラジカルを発生させることができる。
このような重合開始層の形成方法については、例えば、特開2004−123837公報に詳細に記載され、このような重合開始層も本発明の基材に適用することができる。
上記の各基材において、感度を高める目的で、各種のラジカル発生部位を有する化合物に加え、増感剤を併用することが好ましい。
増感剤は、光により励起状態となり、ラジカル発生部位に作用(例えば、エネルギー移動、電子移動等)することにより、ラジカルの発生を促進することが可能である。
本発明に使用しうる増感剤としては、特に制限はなく、公知の増感剤の中から、グラフトポリマーを生成させる際に用いられる露光波長に合わせて、適宜選択することができる。
具体的には、例えば、公知の多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、インドカルボシアニン、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、アクリドン類(例えば、アクリドン、クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−ブチル−クロロアクリドン等)、クマリン類(例えば、3−(2−ベンゾフロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−(1−ピロリジニル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−メトキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3'−カルボニルビス(5,7−ジ−n−プロポキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(2−フロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−メトキシ−3−(3−ピリジルカルボニル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン等が挙げられ、この他に、特開平5−19475号、特開平7−271028号、特開2002−363206号、特開2002−363207号、特開2002−363208号、特開2002−363209号等の各公報に記載のクマリン化合物など)が挙げられる。
ラジカル発生部位(重合開始剤)と増感剤との組合せとしては、例えば、特開2001−305734号公報に記載の電子移動型開始系[(1)電子供与型開始剤及び増感色素、(2)電子受容型開始剤及び増感色素、(3)電子供与型開始剤、増感色素及び電子受容型開始剤(三元開始系)]などの組合せが挙げられる。
より具体的には、トリアジン系の重合開始剤と、360nm〜700nmの波長に極大吸収を有する増感剤との組合せが好ましく挙げられる。
その他の増感剤としては、塩基性核を有する増感剤、酸性核を有する増感剤、蛍光増白剤を有する増感剤などが挙げられる。これらについて順次説明する。
塩基性核を有する増感剤は、その分子内に塩基性核を有する色素であれば特に制限はなく、グラフトポリマーを生成させる際に用いられる露光波長(例えば、可視光線、可視光レーザー等)に合わせて適宜選択することができる。
本発明においては、360〜700nmの波長のレーザー露光を行うため、増感剤の極大吸収波長は700nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、450nm以下であることが特に好ましい。
前記塩基性核を有する色素としては、例えば、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素、スチリル色素系、ストレプトシアニン系色素、などが挙げられる。前記各色素には、ビス型、トリス型、ポリマー型の色素、なども含まれるものである。また、これらの中でも、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素、スチリル系色素が好ましく、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素がより好ましい。
前記塩基性核を有する色素がシアニン系色素の場合は、メチン基の数は1個が好ましく、ヘミシアニン系色素の場合は、メチン基の数は5個以下が好ましい。また、スチリル系色素の場合で、アニリン母核を有している場合には、メチン鎖の数は4個以下が好ましい。
塩基性核とは、例えば、ジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス(The Theory of the Photographic Process)」第4版、マクミラン出版社、1977年、第8章「増感色素と減感色素」により定義され、米国特許第3,567,719号、第3,575,869号、第3,804,634号、第3,837,862号、第4,002,480号、第4,925,777号、特開平3−167546号などに記載されているものが挙げられる。
前記塩基性核としては、例えば、ベンゾオキサゾール核、ベンゾチアゾール核及びインドレニン核などが好ましい。
また、前記塩基性核は、芳香族基が置換した塩基性核、又は3環以上縮環した塩基性核である場合が好ましい。
ここで、塩基性核の縮環数は、例えば、ベンゾオキサゾール核は2であり、ナフトオキサゾール核は3である。また、ベンゾオキサゾール核がフェニル基で置換されても、縮環数は2である。3環以上縮環した塩基性核としては3環以上縮環した多環式縮環型複素環塩基性核であればいかなるものでも良いが、好ましくは3環式縮環型複素環、及び4環式縮環型複素環が挙げられる。
3環式縮環型複素環としては、例えば、ナフト[2,3−d]オキサゾール、ナフト[1,2−d]オキサゾール、ナフト[2,1−d]オキサゾール、ナフト[2,3−d]チアゾール、ナフト[1,2−d]チアゾール、ナフト[2,1−d]チアゾール、ナフト[2,3−d]イミダゾール、ナフト[1,2−d]イミダゾール、ナフト[2,1−d]イミダゾール、ナフト[2,3−d]セレナゾール、ナフト[1,2−d]セレナゾール、ナフト[2,1−d]セレナゾール、インドロ[5,6−d]オキサゾール、インドロ[6,5−d]オキサゾール、インドロ[2,3−d]オキサゾール、インドロ[5,6−d]チアゾール、インドロ[6,5−d]チアゾール、インドロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6−d]オキサゾール、ベンゾフロ[6,5−d]オキサゾール、ベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ベンゾフロ[5,6−d]チアゾール、ベンゾフロ[6,5−d]チアゾール、ベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾチエノ[5,6−d]オキサゾール、ベンゾチエノ[6,5−d]オキサゾール、ベンゾチエノ[2,3−d]オキサゾール等が挙げられる。
また、4環式縮環型複素環としては、例えば、アントラ[2,3−d]オキサゾール、アントラ[1,2−d]オキサゾール、アントラ[2,1−d]オキサゾール、アントラ[2,3−d]チアゾール、アントラ[1,2−d]チアゾール、フェナントロ[2,1−d]チアゾール、フェナントロ[2,3−d]イミダゾール、アントラ[1,2−d]イミダゾール、アントラ[2,1−d]イミダゾール、アントラ[2,3−d]セレナゾール、フェナントロ[1,2−d]セレナゾール、フェナントロ[2,1−d]セレナゾール、カルバゾロ[2,3−d]オキサゾール、カルバゾロ[3,2−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3−d]チアゾール、カルバゾロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2−d]オキサゾール、テトラヒドロカルバゾロ[6,7−d]オキサゾール、テトラヒドロカルバゾロ[7,6−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[2,3−d]チアゾール、ジベンゾチエノ[3,2−d]チアゾール、テトラヒドロカルバゾロ[6,7−d]チアゾール等が挙げられる。
3環以上縮環した塩基性核として更に好ましくは、ナフト[2,3−d]オキサゾール、ナフト[1,2−d]オキサゾール、ナフト[2,1−d]オキサゾール、ナフト[2,3−d]チアゾール、ナフト[1,2−d]チアゾール、ナフト[2,1−d]チアゾール、インドロ[5,6−d]オキサゾール、インドロ[6,5−d]オキサゾール、インドロ[2,3−d]オキサゾール、インドロ[5,6−d]チアゾール、インドロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6−d]オキサゾール、ベンゾフロ[6,5−d]オキサゾール、ベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ベンゾフロ[5,6−d]チアゾール、ベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾチエノ[5,6−d]オキサゾール、アントラ[2,3−d]オキサゾール、アントラ[1,2−d]オキサゾール、アントラ[2,3−d]チアゾール、アントラ[1,2−d]チアゾール、カルバゾロ[2,3−d]オキサゾール、カルバゾロ[3,2−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3−d]チアゾール、カルバゾロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾチエノ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2−d]オキサゾール、が挙げられ、特に好ましくは、ナフト[2,3−d]オキサゾール、ナフト[1,2−d]オキサゾール、ナフト[2,3−d]チアゾール、インドロ[5,6−d]オキサゾール、インドロ[6,5−d]オキサゾール、インドロ[5,6−d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6−d]オキサゾール、ベンゾフロ[5,6−d]チアゾール、ベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾチエノ[5,6−d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3−d]オキサゾール、カルバゾロ[3,2−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3−d]チアゾール、カルバゾロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾチエノ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2−d]オキサゾールである。
また、前記塩基性核としては、以下に示す塩基性複素環が挙げられる。
Figure 2008149586
ここで、Rは、水素原子、脂肪族基、又は、芳香族基を表す。
次に、酸性核を有する増感剤について説明する。この増感剤は、酸性核を有する色素であれば特に制限はなく、露光波長に合わせて適宜選択することができる。
具体的には、例えば、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、オキソノール色素などが挙げられ、これらの中でも、メロシアニン色素、ロダシアニン色素が好ましく、メロシアニン色素がより好ましい。
前記酸性核とは、例えば、ジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス(The Theory of the Photographic Process)」第4版、マクミラン出版社、1977年、第8章「増感色素と減感色素」により定義され、米国特許第3,567,719号、第3,575,869号、第3,804,634号、第3,837,862号、第4,002,480号、第4,925,777号、特開平3−167546号などに記載されているものが挙げられる。
前記酸性核が、非環式であるとき、メチン結合の末端は、マロノニトリル、アルカンスルフォニルアセトニトリル、シアノメチルベンゾフラニルケトン、シアノメチルフェニルケトン、マロン酸エステル、及びアシルアミノメチル置換したケトン類等の活性メチレン化合物などの基であることが好ましい。
前記酸性核を形成するために必要な原子群が環式であるとき、炭素、窒素、及びカルコゲン(典型的には酸素、硫黄、セレン、及びテルル)原子からなる5員又は6員の含窒素複素環が形成されることが好ましく、前記含窒素複素環としては、例えば、2−ピラゾリン−5−オン、ピラゾリジン−3、5−ジオン、イミダゾリン−5−オン、ヒダントイン、2−チオヒダントイン、4−チオヒダントイン、2−イミノオキサゾリジン−4−オン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2、4−ジオン、イソオキサゾリン−5−オン、2−チアゾリン−4−オン、チアゾリジン−4−オン、チアゾリジン−2,4−ジオン、ローダニン、チアゾリジン−2,4−ジチオン、イソローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、インドリン−2−オン、インドリン−3−オン、2−オキソインダゾリニウム、3−オキソインダゾリニウム、5,7−ジオキソ−6,7−ジヒドロチアゾロ[3,2−a]ピリミジン、シクロヘキサン−1,3−ジオン、3,4−ジヒドロイソキノリン−4−オン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クロマン−2,4−ジオン、インダゾリン−2−オン、ピリド[1,2−a]ピリミジン−1,3−ジオン、ピラゾロ[1,5−b]キナゾロン、ピラゾロ[1,5−a]ベンゾイミダゾール、ピラゾロピリドン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2,4−ジオン、3−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1,1−ジオキサイド、3−ジシアノメチン−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1,1−ジオキサイドの核などが挙げられる。
また、前記酸性核としては、以下に示すもの(酸性複素環など)が挙げられる。
Figure 2008149586
ここで、Rは、水素原子、脂肪族基、又は、芳香族基を表す。
次に、蛍光増白剤を有する増感剤について説明する。
「蛍光性白化剤」("fluorescent whitening agent")としても知られる前記蛍光増白剤は、紫外〜短波可視である300〜450nm付近の波長を有する光を吸収可能であり、かつ400〜500nm付近の波長を有する蛍光を発光可能な無色ないし弱く着色した化合物である。蛍光増白剤の物理的原理及び化学性の記述は、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Sixth Edition, Electronic Release, Wiley-VCH 1998に示されている。基本的には、適する蛍光増白剤は炭素環式又は複素環式核を含んでなるπ−電子系を含有する。
本態様の増感剤としては、蛍光増白剤であれば特に制限はなく、グラフトポリマーを生成させる際に用いられる露光波長、露光手段(例えば、可視光線や紫外光・可視光レーザー等)に合わせて適宜選択することができる。
蛍光増白剤としては、非イオン性核を有する化合物が好ましい。前記非イオン性核としては、例えば、スチルベン核、ジスチリルベンゼン核、ジスチリルビフェニル核、及びジビニルスチルベン核から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
前記非イオン性核を有する化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、ピラゾリン類、トリアジン類、スチルベン類、ジスチリルベンゼン類、ジスチリルビフェニル類、ジビニルスチルベン類、トリアジニルアミノスチルベン類、スチルベニルトリアゾール類、スチルベニルナフトトリアゾール類、ビス−トリアゾールスチルベン類、ベンゾキサゾール類、ビスフェニルベンゾキサゾール類、スチルベニルベンゾキサゾール類、ビス−ベンゾキサゾール類、フラン類、ベンゾフラン類、ビス−ベンズイミダゾール類、ジフェニルピラゾリン類、ジフェニルオキサジアゾール類、ナフタルイミド類、キサンテン類、カルボスチリル類、ピレン類及び1,3,5−トリアジニル−誘導体などが挙げられる。これらの中でも、スチリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基から選択される少なくとも1種を有するものが好ましく、更にジスチリルベンゼン類、ジスチリルビフェニル類、又はエテニル基、芳香環基、複素環基からなる2価の連結基で連結されたビスベンゾオキサゾール類、ビスベンゾチアゾール類、などが特に好ましい。
また、前記蛍光増白剤は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、脂肪族基、芳香族基、複素環基、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシ基、炭素数30以下のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基)、炭素数30以下のアルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、炭素数30以下のアシルアミノスルホニル基、炭素数30以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシエトキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数30以下のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、メチルチオエチルチオエチル基等)、炭素数30以下のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等)、ニトロ基、炭素数30以下のアルキル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数30以下のアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)、炭素数30以下のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基等)、炭素数30以下のアリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、α−ナフチル基等)、置換アミノ基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アシルアミノ基等)、置換ウレイド基、置換ホスホノ基、などが挙げられる。
前記のそれぞれの代表的な蛍光増白剤の例は、例えば大河原編「色素ハンドブック」、講談社、84〜145頁、432〜439頁に記載されているものを挙げることができる。
前記トリアジン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、エチレンビスメラミン、プロピレン−1,3−ビスメラミン、N,N’−ジシクロヘキシルエチレンビスメラミン、N,N’−ジメチルエチレンビスメラミン、N,N’−ビス[4,6−ジ−(ジメチルアミノ)−1,3,5−トリアジニル]エチレンジアミン、N,N’−ビス(4,6−ジピペリジノ−1,3,5−トリアジニル)エチレンジアミン、N,N’−ビス[4,6−ジ−(ジメチルアミノ)−1,3,5−トリアジニル]−N,N’−ジメチルエチレンジアミン、などが挙げられる。代表的な蛍光増白剤の例を下記構造式(1)〜(7)に挙げる。
Figure 2008149586
Figure 2008149586
これらの増感剤は、各種のラジカル発生部位を有する化合物に対して、5〜200質量%程度の量で含有させることが好ましい。
本発明に適用される基材を構成する材料としては、用途に応じた物性や、前記(a)〜(d)のラジカルの発生機構に応じた材料を用いていれば、特に制限されるものではなく、その構成材料としては、有機材料、無機材料、或いは有機材料と無機材料とのハイブリッド材料のいずれでもよい。
前記(a)及び(b)の基材の材料としては、PET、ポリプロピレン、ポリイミド、アクリルなどのプラスチック材料が用いられる。
また、前記(a)、(b)、及び(c)の基材において用いられる支持体の材料としては、PET、ポリプロピレン、ポリイミド、アクリルなどのプラスチック材料や、ガラス、石英、ITO等の無機材料が用いられる。
更に、上記(d)の基材の場合、ラジカル発生部位と支持体結合部位とを有する化合物を結合する支持体として、ガラス、石英、ITO、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の表面水酸基を有する各種の支持体を用いることが好ましい。また、コロナ処理などの表面処理により表面に水酸基やカルボキシル基などを発生させた、PET、ポリプロピレン、ポリイミド、エポキシ、アクリル、ウレタンなどのプラスチック材料も好ましい支持体として挙げられる。
また、支持体がガラス基板である場合、例えば、ケイ素ガラス基板、無アルカリガラス基板、石英ガラス基板、ガラス基材表面にITO膜を形成してなる基板等が用いられる。
基材(支持体)の厚みは、使用目的に応じて選択され、特に限定はないが、一般的には、10μm〜10cm程度である。
以上説明した光によりラジカルを発生しうる基材上に、特定重合体を含む重合体含有層を設けることで、本発明のグラフト膜形成用積層体を得ることができる。
本発明のグラフト膜形成用積層体は、特定重合体中の側鎖間の相互作用性部位の働きにより、特定重合体の分子間、分子内で重合性基の距離が近くなり、基材上に発生したラジカルにより、効率よく連鎖重合が起こることになる。
その結果、グラフトポリマーの生成(グラフト膜の形成)を高感度で行うことができる。
<グラフト膜の形成方法、及びグラフトパターン形成方法(1)>
本発明のグラフト膜の形成方法は、本発明のグラフト膜形成用積層体の重合体含有層の全面に対し、250nm〜800nmの波長の光を照射する全面露光工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明のグラフトパターンの形成方法(1)は、本発明のグラフト膜形成用積層体の重合体含有層に対し、250nm〜800nmの波長の光を像様に照射するパターン露光工程と、を含むことを特徴とする。
以下、全面露光工程及びパターン露光について説明する。
全面露光工程及びパターン露光において、グラフトポリマーを生成させるための露光は、いずれも、基材中のラジカル発生部位や増感剤に作用し、ラジカルを発生させることのできる露光であり、具体的には、250nm〜800nmの波長の光であることが好ましい。
全面露光工程には、レーザー光源による全面走査露光、若しくは高圧水銀灯などの定常光を用いることができる。
また、パターン露光工程には、レーザーによる走査露光又はフォトマスクを通しての像様露光が用いられることが好ましい。また、例えば、陰極線管(CRT)を用いた走査露光をも用いることができる。この像様露光に用いる陰極線管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば、赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種又は2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤色、緑色及び青色に限定されず、黄色、橙色、紫色に発光する蛍光体も用いられる。
また、本工程においては、パターン露光は種々のレーザービームを用いて行うことができる。例えば、パターン露光としては、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザーなどのレーザー、半導体レーザー又は半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組み合わせた第二高調波発光光源(SHG)、等の単色高密度光を用いた走査露光方式を好ましく用いることができる。更に、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2レーザ等も用いることができる。
本発明により形成されるパターン解像度は露光条件に左右される。つまり、グラフトポリマーを生成させるためのパターン露光において、高精細のパターン露光を施すことにより、露光に応じた高精細パターンが形成される。高精細パターン形成のための露光方法としては、光学系を用いた光ビーム走査露光、マスクを用いた露光などが挙げられ、所望のパターンの解像度に応じた露光方法をとればよい。
高精細パターン露光としては、具体的には、i線ステッパー、g線ステッパー、KrFステッパー、ArFステッパーのようなステッパー露光などが挙げられる。
以上のようにしてグラフトポリマーの生成が行われた基材は、溶剤浸漬や溶剤洗浄などの処理が行われ、残存するホモポリマー等を除去して、精製する。具体的には、水やアセトンによる洗浄、乾燥などが挙げられる。ホモポリマー等の除去性の観点からは、超音波などの手段をとってもよい。精製後の基材は、その表面に残存するホモポリマーが完全に除去され、基材と強固に結合したグラフトポリマーのみが存在することになる。
<グラフトパターンの形成方法(2)>
本発明のグラフトパターンの形成方法(2)は、光開裂によりラジカルを発生しうるラジカル発生部位と基材結合部位とを有する化合物を支持体に結合させる工程(以下、化合物結合工程と称する。)と、パターン露光を行い、露光領域の該ラジカル発生部位を失活させる工程(以下、失活工程と称する。)と、前記基材上に、前記式(I)で表される構造単位を含む重合体(特定重合体)を接触させた後、全面露光を行い、前記パターン露光時における未露光領域に残存した該ラジカル発生部位に光開裂を生起させ、ラジカル重合を開始させることでグラフトポリマーを生成させる工程(以下、グラフトポリマー生成工程と称する。)と、をこの順に行うことを特徴とする。
前記化合物結合工程は、前述の(d)の基材を作製する方法を適用することができる。
続いて、この方法で得られた光開裂によりラジカルを発生しうるラジカル発生部位と基材結合部位とを有する化合物(光開裂化合物(Q−Y))が導入された基材に対して、失活工程が施される。
つまり、失活工程では、光開裂化合物(Q−Y)が導入された基材に対し、予め、グラフトポリマーを生成させたくない領域に沿ってパターン露光を行い、露光領域のラジカル発生部位(Y)を光開裂させてラジカル発生能を失活させることで、基材表面に、ラジカル発生領域とラジカル発生能失活領域とを形成する。
ここで、失活工程におけるパターン露光は、グラフトパターンの形成方法(1)におけるパターン露光を適用することができる。
そして、グラフトポリマー生成工程において、ラジカル発生領域とラジカル発生能失活領域とが形成された基材表面に、本発明における特定重合体を接触させた後、全面露光することで、ラジカル発生領域にのみにグラフトポリマーが生成し、結果的に、パターン状にグラフトポリマーが生成される。
なお、基材表面に、特定重合体を接触させる方法としては、基材を、特定重合体を含有する液状組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、基材表面に、特定重合体をそのまま接触させるか、特定重合体を含有する液状組成物を塗布して塗膜を形成する方法、更には、その塗膜を乾燥して、基材表面に特定重合体を含有する層(グラフトポリマー前駆体層)を形成することにより行うことが好ましい。
なかでも、特定重合体と250nm〜800nmの波長に極大吸収を有する増感剤とを含有する液状組成物を塗布、乾燥してなる増感剤含有グラフトポリマー前駆体層を形成させることにより行うことが、グラフトポリマーパターン形成効率の観点から更に好ましい。
以上のように、本発明のグラフト膜の形成方法により、基材上にグラフトポリマーが全面に直接結合されたグラフト膜を作製することができる。
また、本発明のグラフトパターンの形成方法(1)又は(2)により、基材上にグラフトポリマーがパターン状に直接結合されたグラフトパターンを作製することができる。
なお、得られるグラフトポリマーからなる膜(グラフトポリマー膜)は、膜厚が0.1〜2.0g/mの範囲にあることが好ましく、0.3〜1.0g/mが更に好ましく、最も好ましくは、0.5〜1.0g/mの範囲である。
<グラフト膜、グラフトパターンの応用>
上記のようにして得られた、本発明のグラフト膜、グラフトパターンは、基材上に結合したグラフトポリマーの有する機能性官能基により、様々な表面修飾が可能となる。
例えば、基材上に結合したグラフトポリマーが、極性基、親水性基、イオン性基を有する場合、導電性素材を付着させるなどの手段の導電性付与工程を施すことにより、導電膜や導電パターンを形成することができる。
〔導電膜、導電パターンへの応用〕
以下、導電性付与工程を行い、導電膜や導電パターンを形成する方法について説明する。
導電性付与工程としては、以下の4つの態様が挙げられる。
即ち、第1の態様としては、グラフトポリマーの機能性官能基に対し導電性粒子を吸着させて導電性粒子吸着層を形成する方法である。
第2の態様としては、グラフトポリマーの機能性官能基に対し無電解メッキ触媒又はその前駆体を吸着させた後、無電解メッキを行い、メッキ膜を形成する方法である。
第3の態様としては、グラフトポリマーの機能性官能基に対し金属イオン又は金属塩を吸着させた後、該金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元させて金属微粒子分散膜を形成する方法である。
第4の態様としては、グラフトポリマーの機能性官能基に対し導電性モノマーを吸着させた後、重合反応を生起させて導電性ポリマー層を形成する方法である。
以下、上記第1〜第4の態様について説明する。
(第1の態様:導電性粒子吸着層の形成)
導電性付与工程の第1の態様は、以下に説明する導電性粒子を、上記グラフトポリマーが有する機能性官能基、特に好ましくはイオン性基に対し、その極性に応じて、イオン的に吸着させて導電性粒子吸着層を形成する方法である。この方法により、導電性粒子吸着層からなる導電層が形成される。
ここで吸着させた導電性粒子はグラフトポリマーの機能性官能基と相互作用を形成して単分子膜状態や多層状態で固定されることで導電性粒子吸着層を形成するため、基材と導電性粒子吸着層との密着性に優れると共に、充分な導電性を発現できるという利点を有する。
この第1の態様に適用し得る導電性粒子としては、導電性を有するものであれば特に制限はなく、公知の導電性材料からなる微粒子を任意に選択して用いることができる。例えば、Au、Ag、Pt、Cu、Rh、Pd、Al、Crなどの金属微粒子、In、SnO、ZnO、Cdo、TiO、CdIn、CdSnO、ZnSnO、In−ZnOなどの酸化物半導体微粒子、及びこれらに適合する不純物をドーパントさせた材料を用いた微粒子、MgInO、CaGaOなどのスピネル形化合物微粒子、TiN、ZrN、HfNなどの導電性窒化物微粒子、LaBなどの導電性ホウ化物微粒子、また、有機材料としては導電性高分子微粒子などが好適なものとして挙げられる。
これらの導電性粒子は1種のみならず、必要に応じて複数種を併用することができる。また、所望の導電性を得るため、予め複数の材料を混合して用いることもできる。
−グラフトポリマーのイオン性基(機能性官能基)の極性と導電性粒子との関係−
本発明において得られるグラフトポリマーが、カルボキシル基、スルホン酸基、若しくはホスホン酸基などの如きアニオン性を有する機能性官能基を有する場合は、グラフトポリマーの機能性官能基は選択的に負の電荷を有するようになり、ここに正の電荷を有する(カチオン性の)導電性粒子を吸着させることができる。
このようなカチオン性の導電性粒子としては、正電荷を有する金属(酸化物)微粒子などが挙げられる。表面に高密度で正荷電を有する微粒子は、例えば、米澤徹らの方法、即ち、T. Yonezawa, Chemistry Letters., 1999 page1061、T. Yonezawa, Langumuir 2000, vol16, 5218、及び米澤徹、Polymer preprints, Japan vol.49. 2911(2000)に記載された方法にて作製することができる。米澤らは、金属−硫黄結合を利用し、正荷電を有する官能基で高密度に化学修飾された金属粒子表面が形成できることを示している。
一方、得られるグラフトポリマーが特開平10−296895号公報に記載のアンモニウム基などの如きカチオン性基の機能性官能基を有する場合は、グラフトポリマーの機能性官能基は選択的に正の電荷を有するようになり、ここに負の電荷を有する導電性粒子を吸着させることができる。
負に帯電した導電性粒子としては、クエン酸還元で得られた金若しくは銀粒子を挙げることができる。
本発明に用いられる導電性粒子の粒径は、機能性官能基に対する吸着性と、導電性発現の観点から、0.1nmから1000nmの範囲であることが好ましく、1nmから100nmの範囲であることが更に好ましい。
導電性粒子をグラフトポリマーの機能性官能基に吸着させる方法としては、表面上に荷電を有する導電性粒子を溶解又は分散させた液を、グラフトポリマーの生成領域に塗布する方法、及び、これらの溶液又は分散液中に、グラフトポリマーが生成された基材を浸漬する方法などが挙げられる。
塗布、浸漬のいずれの場合にも、過剰量の導電性粒子を供給し、機能性官能基(イオン性基)との間に十分なイオン結合による導入がなされるために、溶液又は分散液とグラフトポリマー生成面との接触時間は、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
また、これらの導電性粒子は、耐久性の点や導電性確保の観点から、グラフトポリマーの機能性官能基に吸着し得る最大量結合されることが好ましく、その場合、分散液の分散濃度は、0.001〜20質量%程度が好ましい。
また、第1の態様では、このように、グラフトポリマーに導電性粒子が吸着した後、その基材ごと加熱することが好ましい。この加熱を行うことで、付着した導電性粒子間にて融着が起こり、導電性粒子間の密着性を向上させると共に、導電性をも上昇させることができる。
ここで、加熱工程における温度としては、50℃〜500℃が好ましく、更に好ましくは100℃〜300℃、特に好ましくは、150℃〜300℃である。
(第2の態様:メッキ膜の形成)
導電性付与工程の第2の態様は、上記グラフトポリマーが有する機能性官能基に対し、グラフトポリマーの機能性官能基に対し無電解メッキ触媒又はその前駆体を吸着させた後、無電解メッキを行いメッキ膜を形成する方法である。この方法により、メッキ膜からなる導電性発現層が形成される。
このように、メッキ膜は、グラフトポリマーの機能性官能基に吸着している触媒や前駆体に対し無電解メッキされて形成されることから、メッキ膜とグラフトポリマーとが強固に結合しており、その結果、基材とメッキ膜との密着性に優れると共に、メッキ条件により導電性を調整することができるという利点を有する。
まず、この第2の態様における無電解メッキ触媒又はその前駆体の付与方法について説明する。
本態様において用いられる無電解メッキ触媒とは、主に0価金属であり、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。本発明においては、特に、Pd、Agがその取り扱い性の良さ、触媒能の高さから好ましい。0価金属を相互作用性領域に固定する手法としては、例えば、グラフトポリマーの機能性官能基と相互作用するように荷電を調節した金属コロイドを、グラフトポリマー表面に供する手法が用いられる。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができ、このように荷電を調節した金属コロイドを、グラフトポリマーが有する機能性官能基と相互作用させることで、グラフトポリマーに金属コロイド(無電解メッキ触媒)を付着させることができる。
本態様において用いられる無電解メッキ触媒前駆体とは、化学反応により無電解メッキ触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には上記無電解メッキ触媒で用いた0価金属の金属イオンが用いられる。無電解メッキ触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解メッキ触媒である0価金属になる。無電解メッキ触媒前駆体である金属イオンはグラフトポリマーの生成領域に付与した後、無電解メッキ浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解メッキ触媒としてもよいし、無電解メッキ触媒前駆体のまま無電解メッキ浴に浸漬し、無電解メッキ浴中の還元剤により金属(無電解メッキ触媒)に変化させてもよい。
実際には、無電解メッキ前駆体である金属イオンは、金属塩の状態でグラフトポリマーに付与する。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO)n、MCln、M2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、Agイオン、Pdイオンが触媒能の点で好ましい。
無電解メッキ触媒である金属コロイド、或いは、無電解メッキ前駆体である金属塩をグラフトポリマーに付与する方法としては、金属コロイドを適当な分散媒に分散、或いは、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その溶液をグラフトポリマーの生成領域に塗布するか、或いは、その溶液中にグラフトポリマーが生成した基材を浸漬すればよい。金属イオンを含有する溶液を接触させることで、グラフトポリマーが有する機能性官能基に、イオン−イオン相互作用、又は、双極子−イオン相互作用を利用して金属イオンを付着させること、或いは、相互作用性領域に金属イオンを含浸させることができる。このような付着又は含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる溶液中の金属イオン濃度、或いは金属塩濃度は0.01〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、1分〜24時間程度であることが好ましく、5分〜1時間程度であることがより好ましい。
次に、この第2の態様における無電解メッキ方法について説明する。
無電解メッキ触媒又はその前駆体が付与された基材に対して、無電解メッキを行うことで、無電解メッキ膜が形成される。
無電解メッキとは、メッキとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解メッキは、例えば、無電解メッキ触媒が付与された基材を、水洗して余分な無電解メッキ触媒(金属)を除去した後、無電解メッキ浴に浸漬して行なう。使用される無電解メッキ浴としては、一般的に知られている無電解メッキ浴を使用することができる。
また、無電解メッキ触媒前駆体が付与された基材を、無電解メッキ触媒前駆体がグラフトポリマーに付着又は含浸した状態で無電解メッキ浴に浸漬する場合には、基材を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解メッキ浴中へ浸漬される。この場合には、無電解メッキ浴中において、前駆体の還元とこれに引き続き無電解メッキが行われる。ここで使用される無電解メッキ浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解メッキ浴を使用することができる。
一般的な無電解メッキ浴の組成としては、1.メッキ用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このメッキ浴には、これらに加えて、メッキ浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
無電解メッキ浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。
例えば、銅の無電解メッキの浴は、銅塩としては、銅イオンを提供しうるものであれば特に限定されず使用することができる。例えば、硫酸銅(CuSO)、塩化銅(CuCl)、硝酸銅(Cu(NO)、水酸化銅(Cu(OH))、酸化銅(CuO)、塩化第1銅(CuCl)等がある。浴中に存在する銅イオンの量は一般に0.005M〜0.1M、好ましくは0.01M〜0.07Mである。還元剤としては、銅イオンを金属銅に還元できるものならば、特に限定されないが、ホルムアルデヒド及びその誘導体、並びにパラホルムアルデヒドのような重合体、或いはその誘導体や前駆体が好適である。還元剤の量は、ホルムアルデヒドに換算して0.05M以上、好ましくは0.05M〜0.3Mの範囲内である。
pH調整剤は、pHを変化させうるものなら特に限定されず使用することができ、目的に応じて、pHを上昇させる化合物、下降させる化合物を適宜選択して用いる。pH調整剤としては、具体的には、例えば、NaOH、KOH、HCl、HSO、HF等が挙げられる。
無電解メッキ浴のpHは一般に12.0〜13.4(25℃)、望ましくは12.4〜13.0(25℃)の範囲内である。添加剤として、銅イオンの安定剤であるEDTA、ロッシェル塩、トリアルカノールアミンなどが含まれているが、ガラス基材とメッキ膜の密着性の点からトリアルカノールアミンが好ましい。これら安定剤の添加量は、銅イオンの1.2倍〜30倍、好ましくは1.5倍〜20倍である。また、浴中に存在する安定剤の絶対量は、0.006〜2.4M、特に0.012〜1.6Mの範囲内であることが望ましい。
安定化剤として用いられるトリアルカノールアミンとしては、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等が挙げられるが、ガラス基材とメッキ膜の密着性の点からトリエタノールアミンが特に好ましい。
また、浴の安定化やめっき皮膜の平滑性を向上させるための添加剤としてポチエチレングリコール、フェロシアン化カリウム、ビピリジン等が挙げられる。浴中に存在するこれら添加剤の濃度は0.001〜1M、特に0.01〜0.3Mの範囲内であることが好ましい。
CoNiPの無電解メッキに使用されるメッキ浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解メッキ浴は、金属イオンとして(Pd(NH)Cl、還元剤としてNH、HNNH、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのメッキ浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
このようにして形成される無電解メッキ膜の膜厚は、メッキ浴の金属塩又は金属イオン濃度、メッキ浴への浸漬時間、或いは、メッキ浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、メッキ浴への浸漬時間としては、1分〜3時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
以上のようにして得られる無電解メッキ膜は、SEMによる断面観察により、グラフトポリマー膜中に無電解メッキ触媒やメッキ金属の微粒子がぎっしりと分散しており、更にその上に比較的大きな粒子が析出していることが確認された。界面はグラフトポリマーと微粒子とのハイブリッド状態であるため、基材表面の平均粗さ(Rz)が3μm以下であっても、基材(有機成分)と無機物(無電解メッキ触媒又はメッキ金属)との密着性が良好であった。
また、導電性付与工程の第2の態様では、無電解メッキ終了後、電気メッキを行うこともできる。即ち、電気メッキは、前述の無電解メッキにより得られた無電解メッキ膜を電極として行う。これにより基材との密着性に優れた無電解メッキ膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつメッキ膜を容易に形成することができる。この工程を付加することにより、導電性膜を目的に応じた厚みに形成することができる。
本態様における電気メッキの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、電気メッキに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
電気メッキにより得られるメッキ膜の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、メッキ浴中に含まれる金属濃度、浸漬時間、或いは、電流密度などを調整することでコントロールすることができる。なお、本発明により得られる導電膜や導電パターンをプリント配線板に適用する場合には、メッキ膜の膜厚は、導電性の観点から、0.3μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
(第3の態様:金属微粒子分散膜の形成)
導電性付与工程の第3の態様は、以下に説明する金属イオン又は金属塩を、上記グラフトポリマーが有する機能性官能基、特に好ましくはイオン性基に対し、その極性に応じて、イオン的に吸着させた後、該金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元させて金属単体を析出させて金属微粒子分散膜を形成する方法である。なお、金属単体の析出態様によって、金属微粒子分散膜は金属薄膜になる場合もある。この方法により、金属微粒子分散膜からなる導電性発現層が形成される。
ここで、金属微粒子分散膜を形成する、析出された金属微粒子は、グラフトポリマーの機能性官能基と相互作用を形成し、吸着しているため、基材と金属微粒子分散膜との密着性に優れると共に、充分な導電性を発現できるという利点を有する。
(金属イオン及び金属塩)
まず、本態様において用いられる金属イオン及び金属塩について説明する。
本発明において、金属塩としては、グラフトポリマーの生成領域に付与するために、適切な溶媒に溶解して、金属イオンと塩基(陰イオン)に解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO、MCl、M2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Ag、Cu、Al、Ni、Co、Fe、Pdが挙げられ、中でも、Ag、Cuが好ましい。
金属塩や金属イオンは1種のみならず、必要に応じて複数種を併用することができる。また、所望の導電性を得るため、予め複数の材料を混合して用いることもできる。
(金属イオン及び金属塩の付与方法)
金属イオン又は金属塩をグラフトポリマーに付与する際、(1)グラフトポリマーがイオン性基を有する場合には、そのイオン性基に金属イオンを吸着させる方法を用いる。この場合、上記の金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含むその溶液を、グラフトポリマーの生成領域に塗布するか、或いは、その溶液中にグラフトポリマーが生成した基材を浸漬すればよい。金属イオンを含有する溶液を接触させることで、前記イオン性基には、金属イオンがイオン的に吸着することができる。これら吸着を充分に行なわせるという観点からは、接触させる溶液の金属イオン濃度は1〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
金属イオン又は金属塩をグラフトポリマーに付与する際、(2)グラフトポリマーがポリビニルピロリドンなどのように金属塩に対し親和性の高い構造を含む場合は、上記の金属塩を微粒子状にして直接付着させる、又は、金属塩が分散し得る適切な溶媒を用いて分散液を調製し、その分散液を、グラフトポリマーの生成領域に塗布するか、或いは、その溶液中にグラフトポリマーが生成した基材を浸漬すればよい。
グラフトポリマーが機能性官能基として親水性基を有する場合には、グラフトポリマー膜は高い保水性を有するため、その高い保水性を利用して、金属塩が分散した分散液をグラフトポリマー膜中に含浸させることが好ましい。分散液の含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる分散液の金属塩濃度は1〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
金属イオン又は金属塩をグラフトポリマーに付与する際、(3)グラフトポリマーが親水性基を有する場合、金属塩が分散している分散液、又は、金属塩が溶解した溶液をグラフトポリマーの生成領域に塗布するか、或いは、その分散液や溶液中にグラフトポリマーが生成した基材を浸漬すればよい。
かかる方法においても、上述と同様に、グラフトポリマー膜が有する高い保水性を利用して、分散液又は溶液をそのグラフトポリマー膜中に含浸させることができる。分散液又は溶液の含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる分散液の金属イオン濃度、或いは金属塩濃度は1〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
特に、この(3)の方法によれば、グラフトポリマーの有する機能性官能基の特性に関わらず、所望の金属イオン又は金属塩を付与させることができる。
(還元剤)
続いて、グラフトポリマー(膜)に吸着又は含浸して存在する金属塩、或いは、金属イオンを還元しるために用いられる還元剤について説明する。
本発明において用いられる還元剤は、金属イオンを還元し、金属単体を析出させる物性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、次亜リン酸塩、テトラヒドロホウ素酸塩、ヒドラジンなどが挙げられる。
これらの還元剤は、用いる金属塩、金属イオンとの関係で適宜選択することができるが、例えば、金属イオン、金属塩を供給する金属塩水溶液として、硝酸銀水溶液などを用いた場合にはテトラヒドロホウ素酸ナトリウムが、二塩化パラジウム水溶液を用いた場合には、ヒドラジンが、好適なものとして挙げられる。
上記還元剤の添加方法としては、例えば、グラフトポリマーが生成した基材表面に金属イオンや金属塩を付与させた後、水洗して余分な金属塩、金属イオンを除去した後、該表面を備えた基材をイオン交換水などの水中に浸漬し、そこに還元剤を添加する方法や、該基材表面上に所定の濃度の還元剤水溶液を直接塗布或いは滴下する方法等が挙げられる。また、還元剤の添加量としては、金属イオンに対して、等量以上の過剰量用いるのが好ましく、10倍当量以上であることが更に好ましい。
ここで、第3の態様におけるグラフトポリマーの機能性官能基と金属イオン又は金属塩との関係について説明する。
グラフトポリマーの機能性官能基が、負の電荷を有する極性基や、カルボキシル基、スルホン酸基、若しくはホスホン酸基などの如きアニオン性のイオン性基である場合は、グラフトポリマー膜が選択的に負の電荷を有するようになることから、ここに正の電荷を有する金属イオンを吸着させ、その吸着した金属イオンを還元させることで金属単体を析出される。
また、グラフトポリマーの機能性官能基が、特開平10−296895号公報に記載のアンモニウム基などの如きカチオン性基のイオン性基である場合は、グラフトポリマー膜が選択的に正の電荷を有するようになり、金属イオンはそのままの形状では吸着しない。そのため、機能性官能基のイオン性基に起因する親水性を利用して、グラフトポリマー膜に、金属塩が分散した分散液、又は、金属塩が溶解した溶液を含浸させ、その含浸させた溶液の中の金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元させることで金属単体を析出させる。
以上のように、金属単体が析出することで、金属微粒子分散膜が形成される。
金属微粒子分散膜中の析出された金属単体(金属微粒子)の存在は、表面の金属光沢により目視でも確認することができるが、透過型電子顕微鏡、或いは、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて表面を観察することで、その構造(形態)を確認することができる。また、金属パターンの膜厚は、常法、例えば、切断面を電子顕微鏡で観察するなどの方法により、容易に行なうことができる。
このように、金属単体が析出した状態を上記の顕微鏡で観察すると、グラフトポリマー膜中にぎっしりと金属微粒子が分散していること確認される。この時、析出された金属微粒子の大きさとしては、粒径1μm〜1nm程度である。
金属微粒子分散膜において、金属微粒子が密に分散していて外見上金属薄膜を形成しているような場合には、そのまま用いてもよいが、効率のよい導電性の確保という観点からは、金属微粒子分散膜を更に加熱処理することが好ましい。
加熱処理工程における加熱温度としては、100℃以上が好ましく、更には150℃以上が好ましく、特に好ましくは200℃程度である。加熱温度は、処理効率や基材の寸法安定性などを考慮すれば400℃以下であることが好ましい。また、加熱時間に関しては、10分以上が好ましく、更には30分〜60分間程度が好ましい。
加熱処理による作用機構は明確ではないが、一部の近接する金属微粒子同士が互いに融着することで導電性が向上するものと考えている。
(第4の態様:導電性ポリマー層の形成)
導電性付与工程の第4の態様は、以下に説明する導電性モノマーを、上記グラフトポリマーが有する機能性官能基、特に好ましくはイオン性基に対し、イオン的に吸着させた後、そのまま重合反応を生起させて導電性ポリマー層を形成する方法である。この方法により、導電性ポリマー層からなる導電性発現層が形成される。
ここで、導電性ポリマー層は、グラフトポリマーの機能性官能基とイオン的に吸着した導電性モノマーを重合させてなるため、基材との密着性や耐久性に優れると共に、モノマーの供給速度などの重合反応条件を調整することで、膜厚や導電性の制御を行うことができるという利点を有する。
このような導電性ポリマー層を形成する方法には特に制限はないが、均一な薄膜を形成し得るという観点からは、以下に述べるような方法を用いることが好ましい。
まず、グラフトポリマーが生成された基材を、過硫酸カリウムや、硫酸鉄(III)などの重合触媒や重合開始能を有する化合物を含有する溶液に浸漬し、この液を撹拌しながら導電性ポリマーを形成し得るモノマー、例えば、3,4−エチレンジオキシチオフェンなどを徐々に滴下する。このようにすると、該重合触媒や重合開始能を付与されたグラフトポリマー中の機能性官能基(イオン性基)と導電性ポリマーを形成し得るモノマーとが相互作用により強固に吸着すると共に、モノマー同士の重合反応が進行し、基材上のグラフトポリマーの生成領域に導電性ポリマーの極めて薄い膜が形成される。これにより、均一で、かつ、薄い導電性ポリマー層が得られる。
この方法に適用し得る導電性ポリマーとしては、10−6s・cm−1以上、好ましくは、10−1s・cm−1以上の導電性を有する高分子化合物であれば、いずれのものも使用することができるが、具体的には、例えば、置換及び非置換の導電性ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリピロール、ポリセレノフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセチレン、ポリピリジルビニレン、ポリアジン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、また、目的に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、所望の導電性を達成できる範囲であれば、導電性を有しない他のポリマーとの混合物として用いることもできるし、これらのモノマーと導電性を有しない他のモノマーとのコポリマーなども用いることができる。
本発明においては、導電性モノマー自体がグラフトポリマーの機能性官能基と静電気的に、或いは、極性的に相互作用を形成することで強固に吸着するため、それらが重合して形成された導電性ポリマー層は、グラフトポリマーの生成領域との間に強固な相互作用を形成しているため、薄膜であっても、擦りや引っ掻きに対しても充分な強度を有するものとなる。
更に、導電性ポリマーとグラフトポリマーの機能性官能基とが、陽イオンと陰イオンの関係で吸着するような素材を選択することで、機能性官能基が導電性ポリマーのカウンターアニオンとして吸着することになり、一種のドープ剤として機能するため、導電性ポリマー層(導電性発現層)の導電性を一層向上させることができるという効果を得ることもできる。具体的には、例えば、機能性官能基を有する重合性化合物としてスチレンスルホン酸を、導電性ポリマーの素材としてチオフェンを、それぞれ選択すると、両者の相互作用により、グラフトポリマーの生成領域と導電性ポリマー層との界面にはカウンターアニオンとしてスルホン酸基(スルホ基)を有するポリチオフェンが存在し、これが導電性ポリマーのドープ剤として機能することになる。
グラフトポリマーの生成領域表面に形成された導電性ポリマー層の膜厚には特に制限はないが、0.01μm〜10μmの範囲であることが好ましく、0.1μm〜5μmの範囲であることがより好ましい。導電性ポリマー層の膜厚がこの範囲内であれば、充分な導電性と透明性とを達成することができる。0.01μm以下であると導電性が不充分となる懸念があるため好ましくない。
以上説明した、4つの態様により、導電膜又は導電パターンが形成される。
この導電性パターンは、電子材料の配線や電極として好適に用いることができ、薄層トランジスタなどへの応用に好適である。
〔その他の応用〕
上記のようにして得られた、本発明のグラフト膜、グラフトパターンは、基材上に結合したグラフトポリマーが、極性基、親水性基、イオン性基を有する場合、染料を付着させるなどの手段を用いることにより、着色膜や着色パターンを形成することができる。
ここで用いられる染料は、電荷を有するものが好ましく、更に、特定の分子間相互作用により吸着が可能である構造を有するものが好ましい。
具体的には、グラフトポリマーがアニオン性の官能基を有する場合には、カチオン性のメチレンブルーなどを用い、グラフトポリマーがカチオン性の官能基を有する場合には、アニオン性のエリスロシンなどを用いることで、染料がグラフトポリマーの官能基に吸着し、所望の着色膜や着色パターンを形成することができる。
〔合成例1〕
(モノマー合成)
グリシルグリシン(下記化合物2)66gをTHF250mLに溶解し、氷浴にて0℃に冷却した。そこへ、アクリル酸クロライド(下記化合物1)50gを滴下し、1時間撹拌後、室温に戻し、更に3時間撹拌した。その後、THFで抽出し、油状化合物を得た。これを減圧乾燥し、塩化チオニル200mLに溶解し、p−メトキシフェノール0.1gを添加し、80℃で7時間還流した。その後、溶媒を減圧除去し、乾燥THF200mLに溶解し、氷浴にて0℃に冷却した後、2−アミノエタノール(下記化合物3)31gを滴下した。1時間撹拌後、室温で5時間撹拌した。その後、溶媒を減圧除去し、抽出にて下記化合物4の物質を得た後、シリカゲルカラムにて精製を行った。
Figure 2008149586
(特定重合体の合成)
化合物4:12gと、ビニルイミダゾール(下記化合物5)42gと、をDMAc500mLに溶解し、そこへAIBN100mgを添加し、80℃に過熱した。そのまま7時間撹拌した。これにより、下記化合物6が生成した。その後、室温まで冷却し、反応溶液にp−メトキシフェノール0.3gを添加し、更にジブチルチンラウレート0.28g、カレンズAOI(昭和電工(株)製、下記化合物7)15gを加え、55℃、6時間反応を行った。その後、反応溶液にメタノールを30g加え、更に2時間反応を行った。反応終了後、水で再沈を行い、下記構造の特定重合体P2’を得た。
Figure 2008149586
〔合成例2〕
(モノマー合成)
ビフェノール(下記化合物9)62gをTHF200mLに溶解し、氷浴にて0℃に冷却し、そこへメタクリル酸クロライド(下記化合物8)35gを滴下した。1時間撹拌後、室温に戻し、更に3時間撹拌した。TLCで反応の進行を確認した後(下記化合物10が生成)、氷浴にて0℃に冷却し、p−メトキシフェノール0.1gを添加し、2−ブロモイソブタン酸ブロミド(下記化合物11)77gを2時間かけて滴下した。1時間撹拌後、室温で5時間撹拌した。その後、溶媒を減圧除去し、抽出にて下記化合物12の物質を得た後、シリカゲルカラムにて精製を行った。
Figure 2008149586
(特定重合体の合成)
化合物12:30gと、メタクリル酸(下記化合物13)37gと、をDMAc500mLに溶解し、そこへAIBN100mgを添加し、80℃に過熱した。そのまま7時間撹拌した。これにより、下記化合物14が生成した。その後、室温まで冷却し、反応溶液にp−メトキシフェノール0.3gを添加し、氷浴を用い0℃に冷却した。続いて、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン(DBU)190gを滴下し、滴下後、室温に戻して8時間撹拌した。反応溶液に水50gとメタンスルホン酸120mLとを混合した液を添加し、4時間撹拌した。反応終了後、水で再沈し、下記構造の特定重合体P8を得た。
Figure 2008149586
〔合成例3〕
(モノマー合成)
1,16−ヘキサデカンジオール(下記化合物15)130gをTHF300mLに溶解し、氷浴にて0℃に冷却し、そこへアクリル酸クロライド(前記化合物1)50gを滴下した。1時間撹拌後、室温に戻し、更に3時間撹拌した。THFで抽出し、シリカゲルカラムで精製した後、減圧乾燥し、下記化合物16を得た。
Figure 2008149586
(特定重合体)
化合物16:16gと、アクリル酸33gと、をDMAc500mLに溶解し、そこへAIBN100mgを添加し、80℃に過熱した。そのまま7時間撹拌した。これにより、下記化合物17が生成した。その後、室温まで冷却し、反応溶液にp−メトキシフェノール0.3gを添加し、更にジブチルチンラウレート0.28g、カレンズAOI(昭和電工(株)製、前記化合物7)15gを加え、55℃、6時間反応を行った。その後、反応溶液にメタノールを30g加え、更に2時間反応を行った。反応終了後、水で再沈を行い、下記構造の特定重合体P14を得た。
Figure 2008149586
〔実施例1〕
(光開裂化合物の結合)
ガラス基板(日本板硝子)に、UVオゾンクリーナー(UV42、日本レーザー電子社製)を用いて10分間UVオゾン処理を行った。その基板表面に、脱水エチルメチルケトン(2−ブタノン)に溶かして1.0質量%の溶液とした化合物(前記例示化合物T1)をスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、その後750rpmで20秒間回転させた。例示化合物T1をスピンコートしたガラス基板を100℃で10分間加熱し、表面をエチルメチルケトンで洗浄してエアーガンで乾燥した。この基材をA1とする。
(重合体含有層の形成)
前記合成例1で得られた特定重合体P2:0.5gを炭酸水素ナトリウム水溶液2.5g、ジメチルアセトアミド(DMAc)2.5g、及びアセトニトリル1.5gの混合溶媒に溶解させて、塗布液とした。その塗布液を基材A1の表面にスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、その後750rpmで20秒間回転させた。塗布膜は、80℃で5分間乾燥した。得られた重合体含有層の膜厚は0.8μmであった。
これにより、基材上に特定重合体を含有する重合体含有層が設けられたグラフト膜形成用積層体B1が得られた。
(露光)
得られたグラフト膜形成用積層体B1を、フォトマスクと高圧水銀灯露光機(ウシオ電機製)とを用い、で所定のパターンに従って露光した。露光後、重合体含有層表面をワイパー(ベンコット、小津産業社製)で軽くこすりながら水で洗浄し、次にアセトンで洗浄した。
以上のようにして、グラフトポリマーがパターン状に形成されたガラス基板C1を形成した。
得られたパターンをAFM(ナノピクス1000、セイコーインスツルメンツ社製、DFMカンチレバー使用)で観察した。その結果、ガラス基板B1の表面に線幅10μm、空隙幅10μm、が交互に存在する膜厚1μmのグラフトパターンが形成されていることが確認された。
〔実施例2〕
(重合体含有層の形成)
前記合成例2により得られた特定重合体P8:0.5gをジメチルアセトアミド(DMAc)4.5g、及びアセトニトリル2.5gの混合溶媒に溶解させて、塗布液とした。その塗布液を、実施例1と同じ基材A1の表面にスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、その後750rpmで20秒間回転させた。塗布膜は、80℃で5分間乾燥した。得られた重合体含有層の膜厚は0.8μmであった。
これにより、基材上に特定重合体を含有する重合体含有層が設けられたグラフト膜形成用積層体B2が得られた。
(露光)
得られたグラフト膜形成用積層体B2を、フォトマスクと高圧水銀灯露光機(ウシオ電機製)とを用い、所定のパターンに従って露光した。露光後、重合体含有層をワイパー(ベンコット、小津産業社製)で軽くこすりながら水で洗浄し、次にアセトンで洗浄した。
以上のようにして、グラフトポリマーがパターン状に形成されたガラス基板C2を形成した。
得られたパターンをAFM(ナノピクス1000,セイコーインスツルメンツ社製,DFMカンチレバー使用)で観察した。その結果、ガラス基板C2の表面に線幅10μm、空隙幅10μmが交互に存在する膜厚1μmのグラフトパターンが形成されていることが確認された。
〔実施例3〕
(光開裂化合物の結合)
ガラス基板(日本板硝子)に、UVオゾンクリーナー(UV42、日本レーザー電子社製)を用いて10分間UVオゾン処理を行った。その基板表面に、脱水エチルメチルケトン(2−ブタノン)に溶かして5.0質量%の溶液とした化合物(前記例示化合物T2)をスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、その後750rpmで20秒間回転させた。例示化合物T2をスピンコートしたガラス基板を170℃で1時間加熱し、表面をエチルメチルケトンで洗浄してエアーガンで乾燥した。この基材をA2とする。
(重合体含有層の形成)
前記合成法により得られた特定重合体P2:0.5gと下記増感色素S1:0.03gとを、炭酸水素ナトリウム水溶液2.0g、ジメチルアセトアミド(DMAc)4.0g、及びアセトニトリル1.5gの混合溶媒に溶解させて、塗布液とした。その塗布液を、基材A2の表面にスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、その後750rpmで20秒間回転させた。塗布膜は、80℃で5分間乾燥した。得られた重合体含有層の膜厚は1.0μmであった。
これにより、基材上に特定重合体を含有する重合体含有層が設けられたグラフト膜形成用積層体B3が得られた。
Figure 2008149586
(露光)
グラフト膜形成用積層体B3を、405nmの発信波長を有するレーザー露光機で所定のパターンに従って露光した。露光後、重合体含有層表面をワイパー(ベンコット、小津産業社製)で軽くこすりながら水で洗浄し,次にアセトンで洗浄した。
以上のようにして、グラフトポリマーがパターン状に形成されたガラス基板C3を形成した。
得られたパターンをAFM(ナノピクス1000、セイコーインスツルメンツ社製、DFMカンチレバー使用)で観察した。その結果、ガラス基板C3の表面に線幅10μm、空隙幅10μmが交互に存在する膜厚1μmのグラフトパターンが形成されていることが確認された。
〔実施例4〕
(重合体含有層の形成)
前記合成例で得られた特定重合体P14:0.5gと前記増感色素S1:0.03gとを、ジメチルアセトアミド(DMAc)4.5g、及びアセトニトリル2.5gの混合溶媒に溶解させて、塗布液とした。その塗布液を、実施例3と同じ基材A2の表面にスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、その後750rpmで20秒間回転させた。塗布膜は、80℃で5分間乾燥した。得られた重合体含有層の膜厚は0.9μmであった。
これにより、基材上に特定重合体を含有する重合体含有層が設けられたグラフト膜形成用積層体B4が得られた。
(露光)
グラフト膜形成用積層体B4を、405nmの発信波長を有するレーザー露光機で所定のパターンに従って露光した。露光後、重合体含有層表面をワイパー(ベンコット、小津産業社製)で軽くこすりながら水で洗浄し,次にアセトンで洗浄した。
以上のようにして、グラフトポリマーがパターン状に形成されたガラス基板C4を形成した。
得られたパターンをAFM(ナノピクス1000,セイコーインスツルメンツ社製,DFMカンチレバー使用)で観察した。その結果、ガラス基板C4の表面に線幅10μm、空隙幅10μmが交互に存在する塗布膜厚と同等の膜厚を有するグラフトパターンが形成されていることが確認された。
〔比較例1〕
(化合物Aの合成)
化合物Aの合成は、以下の2つのステップにより行われる。それぞれのステップのスキームを挙げて説明する。
1.ステップ1(化合物aの合成)
DMAc50gとTHF50gの混合溶媒に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 24.5g(0.12mol)を溶かし、氷浴下でNaH(60% in oil)7.2g(0.18mol)を徐々に加えた。そこに、11−ブロモ−1−ウンデセン(95%)44.2g(0.18mol)を滴下し、室温で反応を行った。1時間で反応が終了した。反応溶液を氷水中に投入し、酢酸エチルで抽出し、黄色溶液状の化合物aを含む混合物が得られた。この混合物37gをアセトニトリル370mlに溶かし、水7.4gを加えた。p−トルエンスルホン酸一水和物1.85gを加え、室温で20分間撹拌した。酢酸エチルで有機相を抽出し、溶媒を留去した。カラムクロマトグラフィー(充填剤:ワコーゲルC−200、展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/80)で化合物aを単離した。
合成スキームを以下に示す。
Figure 2008149586
H NMR(300MHz CDCl
δ=1.2−1.8(mb,24H),2.0(q,2H),3.2(t,J=6.6,2H),4.9−5.0(m,2H)5.8(ddt,J=24.4,J=10.5,J=6.6,1H),7.4(t,J=7.4,2H),7.5(t,J=7.4,1H),8.3(d,1H)
2.ステップ2(化合物aのハイドロシリル化による化合物Aの合成)
化合物a5.0g(0.014mol)にSpeir catalyst(HPtCl・6HO/2−PrOH、0.1mol/l)を2滴加え、氷浴下でトリクロロシラン2.8g(0.021mol)を滴下して撹拌した。更に1時間後にトリクロロシラン1.6g(0.012mol)を滴下してから室温に戻した。3時間後に反応が終了した。反応終了後、未反応のトリクロロシランを減圧留去し、化合物Aを得た。
合成スキームを以下に示す。
Figure 2008149586
H NMR(300MHz CDCl
δ=1.2−1.8(m,30H),3.2(t,J=6.3,2H),7.3−7.7(m,3H),8.3(d,2H)
(重合性基を有する親水性ポリマーPの合成)
ポリアクリル酸(平均分子量25,000)18gをDMAc(ジメチルアセトアミド)300gに溶解し、そこに、ハイドロキノン0.41gと2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート19.4gとジブチルチンジラウレート0.25gを添加し、65℃で4時間反応させた。得られたポリマーの酸価は7.02meq/gであった。1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液でカルボキシル基を中和し、酢酸エチルに加えポリマーを沈殿させ、よく洗浄し、重合性基を有する親水性ポリマーPを得た。
(光開裂化合物の結合)
ガラス基板(日本板硝子(株)製)を、終夜、ピランハ液(硫酸/30%過酸化水素=1/1vol混合液)に浸漬した後、純水で洗浄した。その基板を、窒素置換したセパラブルフラスコ中に入れ12.5wt%の化合物Aの脱水トルエン溶液に1時間浸漬した。取り出し後、トルエン、アセトン、純水で順に洗浄した。これを基材A3とする。
(グラフトポリマー生成工程)
前記のようにして得られた親水性ポリマーP(0.5g)を純水4.0gとアセトニトリル2.0gの混合溶媒に溶かし、塗布液を調製した。その塗布液を、スピンコーターで基材A3に塗布した。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、その後1000rpmで20秒間回転させた。塗布後の基材A3を、100℃で2分間乾燥した。乾燥後のグラフトポリマー生成層の膜厚は2μmであった。
−パターン露光−
グラフトポリマー生成層を有する基材上に、パターンマスク(NC−1、凸版印刷社製)を密着させるようにクリップで留め、露光機(UVX−02516S1LP01、ウシオ電機社製)で1分間露光した。露光後マスクを取り外し、純水で充分洗浄した。
以上のようにして、グラフトポリマーがパターン状に形成されたガラス基板C5を形成した。
パターンA1を、原子間顕微鏡AFM(ナノピクス1000、セイコーインスツルメンツ社製、DFMカンチレバー使用)で観察した。その結果、ガラス基板C5の表面に、幅7μmのグラフトポリマー生成領域が形成されていることが確認された。
<評価>
前述の実施例、及び比較例において、グラフトポリマーを生成させる際の露光量を下記表1のように変更し、露光エネルギーとグラフトポリマーの生成に関して、以下のように評価した。
グラフトポリマーの生成状態を、メチレンブルーによるグラフトポリマー染色後の目視による観察に加え、原子間顕微鏡AFM(ナノピクス1000、セイコーインスツルメンツ社製、DFMカンチレバー使用)で観察した。また、同時に、原子間力顕微鏡AFMを用いてグラフトポリマーからなる膜(グラフトポリマー膜)の膜厚を測定し、該膜厚と重合体含有層(比較例1の場合はグラフトポリマー生成層)の膜厚とを比較した。
なお、評価指標としては以下の通りである。
○: 重合体含有層と同等又はそれ以上の厚さのグラフトポリマー膜が生成している
△: グラフトポリマー膜は生成するが、その膜厚が重合体含有層の膜厚に満たない若しくは不均一
×: グラフトポリマー膜が生成されない
Figure 2008149586
表1によれば、本実施例のグラフト膜形成用積層体は、低エネルギー露光によっても、均一に多くのグラフトポリマーが生成していることが分かる。

Claims (10)

  1. 光によりラジカルを発生しうる基材と、該基材上に設けられ、下記式(I)で表される構造単位を含む重合体を含有する重合体含有層と、を有することを特徴とするグラフト膜形成用積層体。
    Figure 2008149586
    〔式中、Rは、水素原子、又はメチル基を表し、Xは、酸素原子、又はNHを表し、Yは、側鎖間の相互作用性部位を表し、Zは、(メタ)アクリロイル基、又は(メタ)アクリルアミド基を表す。〕
  2. 前記式(I)で表される構造単位を含む重合体の重量平均分子量が、2000〜200000であることを特徴とする請求項1に記載のグラフト膜形成用積層体。
  3. 前記重合体が、前記式(I)で表される構造単位を5〜30質量%の範囲で含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグラフト膜形成用積層体。
  4. 前記式(I)におけるYが、結晶性を示す部位、会合性を示す部位、πスタッキング構造、水素結合部位、又は疎水相互作用性部位であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のグラフト膜形成用積層体。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のグラフト膜形成用積層体の重合体含有層の全面に対し、250nm〜800nmの波長の光を照射する全面露光工程と、を含むことを特徴とするグラフト膜の形成方法。
  6. 請求項5に記載のグラフト膜の形成方法により得られたグラフト膜。
  7. 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のグラフト膜形成用積層体の重合体含有層に対し、250nm〜800nmの波長の光を像様に照射するパターン露光工程と、を含むことを特徴とするグラフトパターンの形成方法。
  8. 前記パターン露光工程において、レーザーによる走査露光、若しくはフォトマスクを通しての像様露光を用いることを特徴とする請求項7に記載のグラフトパターンの形成方法。
  9. 光開裂によりラジカルを発生しうるラジカル発生部位と基材結合部位とを有する化合物を支持体に結合させる工程と、
    パターン露光を行い、露光領域の該ラジカル発生部位を失活させる工程と、
    前記基材上に、下記式(I)で表される構造単位を含む重合体を接触させた後、全面露光を行い、前記パターン露光時における未露光領域に残存した該ラジカル発生部位に光開裂を生起させ、ラジカル重合を開始させることでグラフトポリマーを生成させる工程と、
    をこの順に行うことを特徴とするグラフトパターンの形成方法。
    Figure 2008149586
    〔式中、Rは、水素原子、又はメチル基を表し、Xは、酸素原子、又はNHを表し、Yは、側鎖間の相互作用性部位を表し、Zは、(メタ)アクリロイル基、又は(メタ)アクリルアミド基を表す。〕
  10. 請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載のグラフトパターンの形成方法により得られたグラフトパターン。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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