JP2008260272A - 積層体、グラフト膜形成方法、グラフトパターン形成方法、金属パターン形成方法、プリント配線基板、薄層トランジスタ、装置、及びフォトマスク - Google Patents

積層体、グラフト膜形成方法、グラフトパターン形成方法、金属パターン形成方法、プリント配線基板、薄層トランジスタ、装置、及びフォトマスク Download PDF

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Abstract

【課題】グラフトポリマーを高感度で生成しうる積層体、及び該積層体を用い、高感度でグラフト膜又はグラフトパターンを形成する方法を提供することにある。
【解決手段】基材と、ラジカル重合開始部位と該基材に直接化学結合可能な部位とを有する化合物が前記基材に化学結合してなる重合開始層と、ラジカル重合可能な不飽和部位を有する化合物、及び、加熱又は露光によりラジカルを発生しうる化合物を含有するグラフトポリマー前駆体層と、をこの順に有することを特徴とする積層体、該積層体に対し、360nm〜700nmの波長の全面露光又は像様露光を行い、前記ラジカル重合可能な不飽和部位有するポリマーを前記重合開始層表面に直接結合してグラフトポリマーを生成させることを特徴とするグラフト膜形成方法、グラフトパターン形成方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、積層体、グラフト膜形成方法、グラフトパターン形成方法、金属パターン形成方法、プリント配線基板、薄層トランジスタ、装置、及びフォトマスクに関する。
近年、固体表面に、種々の機能を設ける技術が注目され、特に、固体表面のポリマーによる表面修飾は、ぬれ性、汚れ性、接着性、表面摩擦、細胞親和性などの性質を変えることができるため、工業的な分野で幅広く研究されている。
その中でも、固体表面に直接結合してなるグラフトポリマーによる表面修飾は、i)固体表面とグラフトポリマーとの間に強固な結合が形成されるという利点を有すること、ii)グラフトポリマーの構造を制御することにより、グラフトポリマーに対する親和性が高い様々な物質を吸着させることが可能となり、更に、表面に種々の機能を付与することができること、が知られている。
このような、固体表面をグラフトポリマーによる表面修飾する際には、例えば、固体表面に光を照射し活性種を生成させ、この活性種を基点として重合性化合物を重合させる表面グラフト重合法が用いられる(例えば、非特許文献1参照。)。
この表面グラフト重合法では、固体表面に活性種を生成させるために光を照射するが、露光エネルギーが低い光の照射に可視光レーザーなどを用いた場合には、連鎖重合が効率的に行われず、所望の表面修飾ができないといった問題が生じる場合がある。
そのため、低エネルギーの露光によっても、効率的にグラフトポリマーを生成させる技術が望まれていた。
一方、電子材料の小型化に伴い、高精細な電気配線を容易に形成する方法が求められている。
高精細で導電性に優れた微細配線は、真空成膜法などの気相法により形成されることが一般的であるが、この方法では、広い面積にわたって膜厚や膜質が均一な金属膜を成膜することが困難であり、信頼性の高い配線、電極などを形成しうる方法が切望されていた。更に、大面積のパネルに気相法で金属膜を製膜する場合、巨大な真空成膜装置とガス供給設備などの付帯設備が必要となり、莫大な設備投資が必要になるといった問題も発生する。また、スパッタ装置、CVD装置などの真空成膜装置は、真空ポンプを駆動する電力、基板加熱を行なう電力、プラズマを発生させる電力等多くの電力を必要とするが、当然ながら装置の巨大化に伴いこれら製造装置の消費エネルギーが増大するといった問題も発生する。
更に、金属配線などを形成する際、従来は、真空成膜装置を用いて基板の全面に金属膜を成膜した後、その不要部分をエッチングにより除去することで、電気配線パターンを形成していたが、この手法では、配線の解像度が限定され、金属材料の無駄が発生するといった問題もあった。近年、環境への配慮から、製造工程における消費エネルギーの低減や、材料資源の有効利用が求められ、より簡易に所望の解像度の金属膜パターンを形成しうる方法が求められている。
これに対して、例えば、無電解めっきの反応に必要な触媒層を予め基板上にパターン配置し、触媒層の存在する領域にのみ選択的に金属膜を形成する無電解めっき技術(例えば、特許文献1参照。)や、基板表面に金属酸化膜(例えば、ZnO)を形成した後、金属酸化膜をパターニングして、形成された金属酸化膜パターン上に選択的に金属膜パターンを形成する方法(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。これらの方法では、所望のパターンで金属配線が形成できるが、前者では、ガラス基板などの表面が平滑な基板上に無電解めっきで金属膜パターンを形成した場合、基板とめっき被膜の密着性が非常に弱く、実用上問題のあるレベルであり、更に、めっき膜の膜厚を増加させることが困難であった。また、後者では、基板全面に形成された酸化亜鉛膜をパターン化する工程において、レジスト樹脂などの使用が必要であり、工程が煩雑で、且つ、酸化亜鉛の耐薬品性の低さに起因して、エッチングレートの微妙な調整が要求されるとともに、大面積基板上ではエッチング速度の面内均一性を向上させることが困難であった。
また、これらの改良技術として、感光膜に触媒となる材料を担持させ、紫外線露光でパターン化された触媒層を形成し、その領域のみに酸化亜鉛膜を形成し、これを基点として無電解めっきにより金属パターンを形成する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。この方法によれば、解像度の高い酸化亜鉛膜パターンが形成されるという利点を有するが、感光膜などの特殊な材料を必要とし、また、金属膜の形成までに、2つの触媒層の形成を含む5工程を要し、工程が煩雑であった。
これらをうけて本願出願人は、赤外線レーザー等を操作することによりデジタルデータに基づき直接画像形成が可能な導電性パターン材料及びその形成方法について提案している(例えば、特許文献4参照)。この導電性パターン材料は、前述の表面グラフト重合法を用いて支持体の所望の領域にグラフトポリマーを生成させ、その生成領域に導電微粒子を吸着させた構成を有する。この構成によれば、デジタルデータに対応した高精細な導電性パターン(金属パターン)を、より簡便に形成することができる。
なお、この技術においても、導電性粒子を高密度で吸着させる点から、固体表面にグラフトポリマーを効率的に、且つ、高密度に生成させる方法が求められているのが実状である。
Langmuir. 2006. 22. 8571-8575 特開2000−147762公報 特開2001−85358公報 特開2003−213436公報 特開2003−114525公報
本発明の前記従来における問題点を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の第1の目的は、グラフトポリマーを高感度で生成しうる積層体、及び該積層体を用い、高感度でグラフト膜又はグラフトパターンを形成する方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、前記グラフトパターン形成方法を用い、基材との密着性に優れる金属パターンを形成する金属パターン形成方法を提供することにある。
本発明の第3の目的は、前記金属パターン形成方法により形成された金属パターンを有するプリント配線基板、薄層トランジスタ、フォトマスク、該プリント配線基板を備えた装置、及び該薄層トランジスタを備えた装置を提供することにある。
本発明者らは、検討の結果、以下の手段にて上記問題点を解決しうることを見出した。
すなわち、
本発明の積層体は、基材と、ラジカル重合開始部位と該基材に直接化学結合可能な部位とを有する化合物が前記基材に化学結合してなる重合開始層と、ラジカル重合可能な不飽和部位を有する化合物、及び、加熱又は露光によりラジカルを発生しうる化合物を含有するグラフトポリマー前駆体層と、をこの順に有することを特徴とする。
本発明の積層体において、重合開始層が加熱又は露光によりラジカルを発生しうる化合物を更に含有するが好ましい。
また、本発明における重合開始層及びグラフトポリマー前駆体層中の加熱及び露光によりラジカルを発生しうる化合物が、ハロオキソ酸塩、トリハロメチルトリアジン類、アシロキシムエステル、ビイミダゾール化合物、及びチタノセン化合物からなる群から選択された1種以上であることが好ましい。中でも、トリハロメチルトリアジン類、ビイミダゾール化合物、及びハロオキソ酸塩からなる群から選択された1種以上であることが好ましく、ハロオキソ酸塩が特に好ましい。
本発明におけるグラフト前駆体層は、加熱及び露光によりラジカルを発生しうる化合物を0.1質量%以上0質量%以下の範囲で含むことが好ましい。
また、重合開始層は、加熱及び露光によりラジカルを発生しうる化合物を0.1質量%以上20質量%以下の範囲で含むことが好ましい。
本発明の積層体において、特に、金属パターンへの応用の観点から、ラジカル重合可能な不飽和部位を有するポリマーが、金属イオン又は金属塩を吸着する部位、或いは、無電解めっき触媒又はその前駆体を吸着する部位を更に有することが好ましい。
また、本発明の積層体において、グラフトポリマー前駆体層が、ラジカル重合可能な不飽和部位を有する化合物を複数種含有することも好ましい態様の一つである。
本発明のグラフト膜形成方法は、本発明の積層体に対し、360nm〜700nmの波長の全面露光を行い、前記ラジカル重合可能な不飽和部位を有する化合物を前記重合開始層表面に直接結合してグラフトポリマーを生成させることを特徴とする。
本発明のグラフトパターン形成方法は、本発明の積層体に対し、360nm〜700nmの波長の像様露光を行い、前記ラジカル重合可能な不飽和部位を有する化合物を前記重合開始層表面に直接結合してグラフトポリマーを生成させることを特徴とする。
本発明の金属パターン形成方法の第1の態様は、本発明のグラフトパターン形成方法にて生成したグラフトポリマーに金属イオン又は金属塩を吸着させた後、該金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元し金属粒子を析出させる工程を有することを特徴とする。
また、本発明の金属パターン形成方法の第2の態様は、本発明のグラフトパターン形成方法にて生成したグラフトポリマーに無電解めっき触媒又はその前駆体を吸着させた後、無電解めっきを行い、めっき膜を形成する工程を有することを特徴とする。
なお、この態様において、無電解めっきを行った後に、更に電気めっきを行うことが好ましい。
本発明のプリント配線基板は、本発明の金属パターン形成方法により形成された金属パターンを有する。
本発明の薄層トランジスタは、本発明の金属パターン形成方法により形成された金属パターンを有する。
また、本発明の装置は、本発明のプリント配線基板、又は、薄層トランジスタを備えたものである。
更に、本発明のフォトマスクは、本発明の金属パターン形成方法により形成された金属パターンを用いたフォトマスクである。
本発明によれば、グラフトポリマーを高感度で生成しうる積層体、及び該積層体を用い、高感度でグラフト膜又はグラフトパターンを形成する方法を提供することができる。
また、本発明のグラフトパターン形成方法を用い、基材との密着性に優れる金属パターンを形成する金属パターン形成方法を提供することができる。
更に、本発明の金属パターン形成方法により形成された金属パターンを有するプリント配線基板、薄層トランジスタ、フォトマスク、該プリント配線基板を備えた装置、及び該薄層トランジスタを備えた装置を提供することができる。
<積層体>
まず、本発明の積層体について詳細に説明する。
本発明の積層体は、(A)基材と、(B)ラジカル重合開始部位と該基材に直接化学結合可能な部位とを有する化合物が前記基材に化学結合してなる重合開始層と、(C)ラジカル重合可能な不飽和部位を有する化合物、及び、加熱又は露光によりラジカルを発生しうる化合物を含有するグラフトポリマー前駆体層と、をこの順に有する。
以下、本発明の積層体を構成する(A)基材、(B)重合開始層、及び(C)グラフトポリマー前駆体層について、順に説明する。
〔(A)基材〕
本において用いられる基材は、用途に応じた機能や物性を有し、更に(B)重合開始層や(C)グラフトポリマー前駆体層を形成しうる程度の保形性を有していれば、特に制限されるものではなく、基材の構成材料としては、有機材料、無機材料、或いは有機材料と無機材料とのハイブリッド材料のいずれでもよい。
具体的には、基材としては、PET、ポリプロピレン、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの有機材料や、ガラス、石英、ITO等の無機材料が用いられる。
なお、基材がガラス基板である場合、例えば、ケイ素ガラス基板、無アルカリガラス基板、石英ガラス基板、ガラス基材表面にITO膜を形成してなる基板等が用いられる。
本発明においては、(B)重合開始層を構成する、ラジカル重合開始部位と基材に直接化学結合可能な部位とを有する化合物との化学結合を形成し易い点から、表面に水酸基等の官能基を予め有するガラス基板や、コロナ処理、グロー処理、プラズマ処理などの表面処理を施し、水酸基、カルボキシル基などが発生した樹脂基板を用いることが好ましい。
なお、基材の形状は特に限定されない。例えば、板状の基材の場合、その厚みは、使用目的に応じて選択され、一般的には、10μm〜10cm程度である。
〔(B)重合開始層〕
本発明における(B)重合開始層は、ラジカル重合開始部位と基材に直接化学結合可能な部位とを有する化合物が基材に化学結合して形成される。なお、この重合開始層は、360nm〜700nmの波長のレーザー露光により、ラジカルを発生するものであることが好ましい。
なお、この重合開始層の膜厚は、使用するラジカル重合開始部位と基材に直接化学結合可能な部位とを有する化合物により異なるが、1nm〜1μmが好ましい範囲である。
以下、重合開始層を構成する、(b−1)ラジカル重合開始部位と基材に直接化学結合可能な部位とを有する化合物(以下、適宜、「基材結合性ラジカル重合開始剤」と称する。)について説明する。
[(b−1)基材結合性ラジカル重合開始剤]
本発明における基材結合性ラジカル重合開始剤は、分子の一部に、露光によりラジカルを発生する部位(ラジカル重合開始部位)と、基材と直接化学結合可能な部位(以下、基材結合部位と称する場合がある。)と、を有していればその形態は限定されず、低分子化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよい。
具体的には、例えば、(1)分子の一方の末端にラジカル重合開始部位を有し、他方の末端に基材結合部位を有する低分子化合物、(2)分子の一方の末端にラジカル重合開始部位を有し、他方の末端に基材結合部位を有するホモポリマー、(3)ラジカル重合開始部位を有するモノマーと、基材結合部位を有するモノマーとを共重合して得られたコポリマーが挙げられる。
ここで、基材結合性ラジカル重合開始剤中のラジカル重合開始部位としては、例えば、後述の光開裂によりラジカルを発生しうる部位が挙げられる。
また、基材結合性ラジカル重合開始剤中の基材結合部位としては、シランカップリング基、環状エーテル基、イソシアネート基、カルボキシル基など、その部位単体で基材と直接化学結合を形成可能な官能基に加え、例えば、水酸基のように、ジイソシアナートなどの架橋剤の併用することで基材と結合しうる官能基(つまり、架橋剤との組み合わせにより基材と結合しうる架橋性基)等が挙げられる。
本発明における基材結合性ラジカル重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始部位として、光開裂によりラジカルを発生しうる部位(Y)を有し、更に基材結合部位(Q)を有する化合物(以下、適宜、「光開裂化合物(Q−Y)」と称する。)が好ましく用いられる。
ここで、光開裂によりラジカルを発生しうる部位(以下、単に「光開裂型ラジカル重合開始部位(Y)」と称する。)は、光により開裂しうる単結合を含む構造である。
この光により開裂する単結合としては、カルボニルのα開裂、β開裂反応、光フリー転位反応、フェナシルエステルの開裂反応、スルホンイミド開裂反応、スルホニルエステル開裂反応、N−ヒドロキシスルホニルエステル開裂反応、ベンジルイミド開裂反応、活性ハロゲン化合物の開裂反応、などを利用して開裂が可能な単結合が挙げられる。これらの反応により、光により開裂しうる単結合が切断される。この開裂しうる単結合としては、C−C結合、C−N結合、C−O結合、C−Cl結合、N−O結合、及びS−N結合等が挙げられる。
また、これらの光により開裂しうる単結合を含む光開裂型ラジカル重合開始部位(Y)は、グラフト重合の起点となるため、光により開裂しうる単結合が開裂すると、その開裂反応によりラジカルを発生させる機能を有する。このように、光により開裂しうる単結合を有し、かつ、ラジカルを発生可能な光開裂型ラジカル重合開始部位(Y)の構造としては、以下に挙げる基を含む構造が挙げられる。
即ち、芳香族ケトン基、フェナシルエステル基、スルホンイミド基、スルホニルエステル基、N−ヒドロキシスルホニルエステル基、ベンジルイミド基、トリクロロメチル基、ベンジルクロライド基などである。
このような光開裂型ラジカル重合開始部位(Y)は、露光により開裂して、ラジカルが発生すると、そのラジカル周辺に重合性化合物が存在する場合には、このラジカルがグラフト重合反応の起点として機能し、グラフトポリマーを生成することができる。
このため、光開裂化合物(Q−Y)により形成された重合開始層を有する基材の場合、グラフトポリマーを生成させる場合には、エネルギー付与手段として、重合開始部位(Y)を開裂させうる波長での露光を用いることが必要である。
また、基材結合部位(Q)としては、基材表面に存在する官能基(Z)と反応して結合しうる反応性基や、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアナート基、アミノ基、エポキシ基等の、ジイソシアナートなどの架橋剤の併用することで基材と結合しうる官能基が用いられ、その反応性基としては、具体的には、以下に示すような基材結合基が挙げられる。
Figure 2008260272
光開裂型ラジカル重合開始部位(Y)と、基材結合部位(基材結合基)(Q)と、は直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。この連結基としては、炭素、窒素、酸素、及びイオウからなる群より選択される原子を含む連結基が挙げられ、具体的には、例えば、飽和炭素基、芳香族基、エステル基、アミド基、ウレイド基、エーテル基、アミノ基、スルホンアミド基、等が挙げられる。また、この連結基は更に置換基を有していてもよく、その導入可能な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、等が挙げられる。更に、重合開始部位(Y)と基材結合部位(Q)とが、ホモポリマーの両端に存在していてもよく、それぞれポリマーの側鎖に存在していてもよい。このように、光開裂化合物(Q−Y)が高分子化合物(ポリマー)である場合には、連結基はポリマーの主鎖構造を含み、重合開始部位(Y)と支持体結合物(Q)との間を連結するものとなる。
重合開始部位(Y)と、基材結合部位(Q)と、を有する光開裂化合物(Q−Y)の具体例〔例示化合物T1〜T10〕を、開裂部と共に以下に示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
Figure 2008260272
Figure 2008260272
Figure 2008260272
光開裂化合物(Q−Y)を基材表面と直接化学結合させる具体的な方法としては、光開裂化合物(Q−Y)を、トルエン、ヘキサン、アセトンなどの適切な溶媒に溶解又は分散し、その溶液又は分散液を基材表面に塗布する方法、又は、溶液又は分散液中に基材を浸漬する方法などを適用すればよい。これらの方法により、光開裂化合物(Q−Y)が基材表面に結合し重合開始層が得られる。
なお、光開裂化合物(Q−Y)中の基材結合部位(Q)が、架橋剤の併用することで基材と結合しうる官能基である場合には、上記溶液又は分散液として、更に、該当する基材結合部位(Q)の官能基に対応した、一般的な市販の架橋剤を添加させたものを用いればよい。
架橋剤の添加量としては、重合開始層を形成する際に用いられる化合物の総量に対して、0.1モル%〜1000モル%の範囲であることが好ましい。
前記溶液中又は分散液の光開裂化合物(Q−Y)の濃度としては、0.01質量%〜30質量%が好ましく、特に0.1質量%〜15質量%であることが好ましい。接触させる場合の液温としては、0℃〜100℃が好ましい。接触時間としては、1秒〜50時間が好ましく、10秒〜10時間がより好ましい。
なお、この方法は、光開裂化合物(Q−Y)に限らず、他の基材結合性ラジカル重合開始剤を基材表面に結合させる際に用いることができる。
[(b−2)加熱又は露光によりラジカルを発生しうる化合物]
本発明における重合開始層には、更に、(b−1)基材結合性ラジカル重合開始剤とは異なる、(b−2)加熱又は露光によりラジカルを発生しうる化合物(以下、単に「ラジカル発生剤」と称する場合がある。)を含有させることができる。
(b−2)ラジカル発生剤としては、低分子ラジカル発生剤や、ラジカル発生部位を有する高分子化合物(高分子ラジカル発生剤)が挙げられる。
低分子のラジカル発生剤としては、例えば、ハロオキソ酸塩、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーズケトン、ベンゾイルベンゾエート、ベンゾイン類、α−アシロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、トリハロメチルトリアジンなどのトリアジン類、ビイミダゾール化合物、チタノセン化合物、及びチオキサントン等の公知のラジカル発生剤を使用できる。また、通常、光酸発生剤として用いられるスルホニウム塩やヨードニウム塩なども光照射によりラジカル発生剤として作用するため、本発明ではこれらを用いてもよい。
中でも、増感反応効率の点から、ハロオキソ酸塩、トリハロメチルトリアジン類、アシロキシムエステル、ビイミダゾール化合物、及びチタノセン化合物からなる群より選択される1種以上であることが好ましく、中でも、トリハロメチルトリアジン類、ビイミダゾール化合物、及びハロオキソ酸塩からなる群から選択された1種以上であることが好ましく、ハロオキソ酸塩が特に好ましい。
また、本発明におけるハロオキソ酸塩としては、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸テトラメチルアンモニウム塩、過ブロモ酸ナトリウム、過ブロモ酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸カリウム等が挙げられ、中でも、高感度化の効果の観点から、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウムが好ましい。
高分子ラジカル発生剤としては、特開平9−77891号段落番号〔0012〕〜〔0030〕や、特開平10−45927号段落番号〔0020〕〜〔0073〕に記載の活性カルボニル基を側鎖に有する高分子化合物などを使用することができる。
(b−2)ラジカル発生剤の含有量は、特に制限はないが、重合開始層を形成する基材結合性ラジカル重合開始剤や、積層体の用途に応じて、決定すればよい。
一般的には、重合開始層中に0.1質量%以上20質量%以下の範囲で含まれていることが好ましく、0.1質量%以上10質量%以下の範囲で含まれていることがより好ましい。
例えば、後述のように、本発明の積層体を用いてグラフトパターンを形成する場合、重合開始層のパターンの非形成領域にはラジカル発生剤が残存することになるため、この非形成領域に吸収が存在することが好ましくない態様であれば、該ラジカル発生剤の吸収について加味する必要がある。具体的には、重合開始層中の吸収を1以下、好ましくは0.5以下とすることが望ましい。
なお、本発明における吸収値は、一般的な吸収測定器により、露光波長の吸収強度を測定することで求められる。
(b−2)ラジカル発生剤を重合開始層に含ませる方法としては、基材結合性ラジカル重合開始剤を基材へ結合させる際に用いる溶液又は分散液中に、ラジカル発生剤を添加したものを用いればよい。この際の仕込み量を調整することで、(b−2)ラジカル発生剤の重合開始層中の含有量を前述の範囲に制御することができる。
[(b−3)増感剤]
本発明における重合開始層は、更に、感度を高めるために、(b−1)基材結合性ラジカル重合開始剤に加え、(b−3)増感剤を含有することが好ましい。
増感剤は、光により励起状態となり、ラジカル発生部位に作用(例えば、エネルギー移動、電子移動等)することにより、ラジカルの発生を促進することが可能である。
本発明に使用しうる増感剤としては、特に制限はなく、公知の増感剤の中から、グラフトポリマーを生成させる際に用いられる露光波長(好ましくは360nm〜700nm)に合わせて、適宜選択することができる。
具体的には、例えば、公知の多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、インドカルボシアニン、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、アクリドン類(例えば、アクリドン、クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−ブチル−クロロアクリドン等)、クマリン類(例えば、3−(2−ベンゾフロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−(1−ピロリジニル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−メトキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3'−カルボニルビス(5,7−ジ−n−プロポキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(2−フロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−メトキシ−3−(3−ピリジルカルボニル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン等が挙げられ、この他に、特開平5−19475号、特開平7−271028号、特開2002−363206号、特開2002−363207号、特開2002−363208号、特開2002−363209号等の各公報に記載のクマリン化合物など)が挙げられる。
ラジカル発生部位(重合開始剤)と増感剤との組合せとしては、例えば、特開2001−305734号公報の〔0013〕〜〔0020〕に記載の電子移動型開始系[(1)電子供与型開始剤及び増感色素、(2)電子受容型開始剤及び増感色素、(3)電子供与型開始剤、増感色素及び電子受容型開始剤(三元開始系)]などの組合せが挙げられる。
より具体的には、トリアジン系の重合開始剤と、360nm〜700nmの波長に極大吸収を有する増感剤との組合せが好ましく挙げられる。
その他の増感剤としては、塩基性核を有する増感剤、酸性核を有する増感剤、蛍光増白剤を有する増感剤などが挙げられる。これらについて順次説明する。
塩基性核を有する増感剤は、その分子内に塩基性核を有する色素であれば特に制限はなく、グラフトポリマーを生成させる際に用いられる露光波長(例えば、可視光線、可視光レーザー等)に合わせて適宜選択することができる。
本発明においては、360nm〜700nmの波長のレーザー露光に対応するため、増感剤の極大吸収波長は700nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、450nm以下であることが特に好ましい。
前記塩基性核を有する色素としては、例えば、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素、スチリル色素系、ストレプトシアニン系色素、などが挙げられる。前記各色素には、ビス型、トリス型、ポリマー型の色素、なども含まれるものである。また、これらの中でも、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素、スチリル系色素が好ましく、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素がより好ましい。
前記塩基性核を有する色素がシアニン系色素の場合は、メチン基の数は1個が好ましく、ヘミシアニン系色素の場合は、メチン基の数は5個以下が好ましい。また、スチリル系色素の場合で、アニリン母核を有している場合には、メチン鎖の数は4個以下が好ましい。
塩基性核とは、例えば、ジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス(The Theory of the Photographic Process)」第4版、マクミラン出版社、1977年、第8章「増感色素と減感色素」により定義され、米国特許第1,567,719号、第1,575,869号、第1,804,634号、第1,837,862号、第4,002,480号、第4,925,777号、特開平3−167546号などに記載されているものが挙げられる。
前記塩基性核としては、例えば、ベンゾオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、及びインドレニン核などが好ましい。
また、前記塩基性核は、芳香族基が置換した塩基性核、又は3環以上縮環した塩基性核である場合が好ましい。
ここで、塩基性核の縮環数は、例えば、ベンゾオキサゾール核は2であり、ナフトオキサゾール核は3である。また、ベンゾオキサゾール核がフェニル基で置換されても、縮環数は2である。3環以上縮環した塩基性核としては3環以上縮環した多環式縮環型複素環塩基性核であればいかなるものでも良いが、好ましくは3環式縮環型複素環、及び4環式縮環型複素環が挙げられる。
3環式縮環型複素環としては、例えば、ナフト[2,3−d]オキサゾール、ナフト[1,2−d]オキサゾール、ナフト[2,1−d]オキサゾール、ナフト[2,3−d]チアゾール、ナフト[1,2−d]チアゾール、ナフト[2,1−d]チアゾール、ナフト[2,3−d]イミダゾール、ナフト[1,2−d]イミダゾール、ナフト[2,1−d]イミダゾール、ナフト[2,3−d]セレナゾール、ナフト[1,2−d]セレナゾール、ナフト[2,1−d]セレナゾール、インドロ[5,6−d]オキサゾール、インドロ[6,5−d]オキサゾール、インドロ[2,3−d]オキサゾール、インドロ[5,6−d]チアゾール、インドロ[6,5−d]チアゾール、インドロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6−d]オキサゾール、ベンゾフロ[6,5−d]オキサゾール、ベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ベンゾフロ[5,6−d]チアゾール、ベンゾフロ[6,5−d]チアゾール、ベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾチエノ[5,6−d]オキサゾール、ベンゾチエノ[6,5−d]オキサゾール、ベンゾチエノ[2,3−d]オキサゾール等が挙げられる。
また、4環式縮環型複素環としては、例えば、アントラ[2,3−d]オキサゾール、アントラ[1,2−d]オキサゾール、アントラ[2,1−d]オキサゾール、アントラ[2,3−d]チアゾール、アントラ[1,2−d]チアゾール、フェナントロ[2,1−d]チアゾール、フェナントロ[2,3−d]イミダゾール、アントラ[1,2−d]イミダゾール、アントラ[2,1−d]イミダゾール、アントラ[2,3−d]セレナゾール、フェナントロ[1,2−d]セレナゾール、フェナントロ[2,1−d]セレナゾール、カルバゾロ[2,3−d]オキサゾール、カルバゾロ[3,2−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3−d]チアゾール、カルバゾロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2−d]オキサゾール、テトラヒドロカルバゾロ[6,7−d]オキサゾール、テトラヒドロカルバゾロ[7,6−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[2,3−d]チアゾール、ジベンゾチエノ[3,2−d]チアゾール、テトラヒドロカルバゾロ[6,7−d]チアゾール等が挙げられる。
3環以上縮環した塩基性核として更に好ましくは、ナフト[2,3−d]オキサゾール、ナフト[1,2−d]オキサゾール、ナフト[2,1−d]オキサゾール、ナフト[2,3−d]チアゾール、ナフト[1,2−d]チアゾール、ナフト[2,1−d]チアゾール、インドロ[5,6−d]オキサゾール、インドロ[6,5−d]オキサゾール、インドロ[2,3−d]オキサゾール、インドロ[5,6−d]チアゾール、インドロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6−d]オキサゾール、ベンゾフロ[6,5−d]オキサゾール、ベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ベンゾフロ[5,6−d]チアゾール、ベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾチエノ[5,6−d]オキサゾール、アントラ[2,3−d]オキサゾール、アントラ[1,2−d]オキサゾール、アントラ[2,3−d]チアゾール、アントラ[1,2−d]チアゾール、カルバゾロ[2,3−d]オキサゾール、カルバゾロ[3,2−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3−d]チアゾール、カルバゾロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾチエノ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2−d]オキサゾール、が挙げられ、特に好ましくは、ナフト[2,3−d]オキサゾール、ナフト[1,2−d]オキサゾール、ナフト[2,3−d]チアゾール、インドロ[5,6−d]オキサゾール、インドロ[6,5−d]オキサゾール、インドロ[5,6−d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6−d]オキサゾール、ベンゾフロ[5,6−d]チアゾール、ベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾチエノ[5,6−d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3−d]オキサゾール、カルバゾロ[3,2−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3−d]チアゾール、カルバゾロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾチエノ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2−d]オキサゾールである。
また、前記塩基性核としては、以下に示す塩基性複素環が挙げられる。
Figure 2008260272
ここで、Rは、水素原子、脂肪族基、又は、芳香族基を表す。
次に、酸性核を有する増感剤について説明する。この増感剤は、酸性核を有する色素であれば特に制限はなく、露光波長に合わせて適宜選択することができる。
具体的には、例えば、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、オキソノール色素などが挙げられ、これらの中でも、メロシアニン色素、ロダシアニン色素が好ましく、メロシアニン色素がより好ましい。
前記酸性核とは、例えば、ジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス(The Theory of the Photographic Process)」第4版、マクミラン出版社、1977年、第8章「増感色素と減感色素」により定義され、米国特許第1,567,719号、第1,575,869号、第1,804,634号、第1,837,862号、第4,002,480号、第4,925,777号、特開平3−167546号などに記載されているものが挙げられる。
前記酸性核が、非環式であるとき、メチン結合の末端は、マロノニトリル、アルカンスルフォニルアセトニトリル、シアノメチルベンゾフラニルケトン、シアノメチルフェニルケトン、マロン酸エステル、及びアシルアミノメチル置換したケトン類等の活性メチレン化合物などの基であることが好ましい。
前記酸性核を形成するために必要な原子群が環式であるとき、炭素、窒素、及びカルコゲン(典型的には酸素、硫黄、セレン、及びテルル)原子からなる5員又は6員の含窒素複素環が形成されることが好ましく、前記含窒素複素環としては、例えば、2−ピラゾリン−5−オン、ピラゾリジン−3、5−ジオン、イミダゾリン−5−オン、ヒダントイン、2−チオヒダントイン、4−チオヒダントイン、2−イミノオキサゾリジン−4−オン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2、4−ジオン、イソオキサゾリン−5−オン、2−チアゾリン−4−オン、チアゾリジン−4−オン、チアゾリジン−2,4−ジオン、ローダニン、チアゾリジン−2,4−ジチオン、イソローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、インドリン−2−オン、インドリン−3−オン、2−オキソインダゾリニウム、3−オキソインダゾリニウム、5,7−ジオキソ−6,7−ジヒドロチアゾロ[3,2−a]ピリミジン、シクロヘキサン−1,3−ジオン、3,4−ジヒドロイソキノリン−4−オン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クロマン−2,4−ジオン、インダゾリン−2−オン、ピリド[1,2−a]ピリミジン−1,3−ジオン、ピラゾロ[1,5−b]キナゾロン、ピラゾロ[1,5−a]ベンゾイミダゾール、ピラゾロピリドン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2,4−ジオン、3−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1,1−ジオキサイド、3−ジシアノメチン−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1,1−ジオキサイドの核などが挙げられる。
また、前記酸性核としては、以下に示すもの(酸性複素環など)が挙げられる。
Figure 2008260272
ここで、Rは、水素原子、脂肪族基、又は、芳香族基を表す。
次に、蛍光増白剤を有する増感剤について説明する。
「蛍光性白化剤」("fluorescent whitening agent")としても知られる前記蛍光増白剤は、紫外〜短波可視である300nm〜450nm付近の波長を有する光を吸収可能であり、かつ400nm〜500nm付近の波長を有する蛍光を発光可能な無色ないし弱く着色した化合物である。蛍光増白剤の物理的原理及び化学性の記述は、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Sixth Edition, Electronic Release, Wiley-VCH 1998に示されている。基本的には、適する蛍光増白剤は炭素環式又は複素環式核を含んでなるπ−電子系を含有する。
本態様の増感剤としては、蛍光増白剤であれば特に制限はなく、グラフトポリマーを生成させる際に用いられる露光波長、露光手段(例えば、可視光線や紫外光・可視光レーザー等)に合わせて適宜選択することができる。
蛍光増白剤としては、非イオン性核を有する化合物が好ましい。前記非イオン性核としては、例えば、スチルベン核、ジスチリルベンゼン核、ジスチリルビフェニル核、及びジビニルスチルベン核から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
前記非イオン性核を有する化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、ピラゾリン類、トリアジン類、スチルベン類、ジスチリルベンゼン類、ジスチリルビフェニル類、ジビニルスチルベン類、トリアジニルアミノスチルベン類、スチルベニルトリアゾール類、スチルベニルナフトトリアゾール類、ビス−トリアゾールスチルベン類、ベンゾキサゾール類、ビスフェニルベンゾキサゾール類、スチルベニルベンゾキサゾール類、ビス−ベンゾキサゾール類、フラン類、ベンゾフラン類、ビス−ベンズイミダゾール類、ジフェニルピラゾリン類、ジフェニルオキサジアゾール類、ナフタルイミド類、キサンテン類、カルボスチリル類、ピレン類及び1,3,5−トリアジニル−誘導体などが挙げられる。これらの中でも、スチリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基から選択される少なくとも1種を有するものが好ましく、更にジスチリルベンゼン類、ジスチリルビフェニル類、又はエテニル基、芳香環基、複素環基からなる2価の連結基で連結されたビスベンゾオキサゾール類、ビスベンゾチアゾール類、などが特に好ましい。
また、前記蛍光増白剤は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、脂肪族基、芳香族基、複素環基、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシ基、炭素数30以下のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基)、炭素数30以下のアルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、炭素数30以下のアシルアミノスルホニル基、炭素数30以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシエトキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数30以下のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、メチルチオエチルチオエチル基等)、炭素数30以下のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等)、ニトロ基、炭素数30以下のアルキル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数30以下のアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)、炭素数30以下のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基等)、炭素数30以下のアリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、α−ナフチル基等)、置換アミノ基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アシルアミノ基等)、置換ウレイド基、置換ホスホノ基、などが挙げられる。
前記のそれぞれの代表的な蛍光増白剤の例は、例えば、大河原編「色素ハンドブック」、講談社、84〜145頁、432〜439頁に記載されているものを挙げることができる。
前記トリアジン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、エチレンビスメラミン、プロピレン−1,3−ビスメラミン、N,N’−ジシクロヘキシルエチレンビスメラミン、N,N’−ジメチルエチレンビスメラミン、N,N’−ビス[4,6−ジ−(ジメチルアミノ)−1,3,5−トリアジニル]エチレンジアミン、N,N’−ビス(4,6−ジピペリジノ−1,3,5−トリアジニル)エチレンジアミン、N,N’−ビス[4,6−ジ−(ジメチルアミノ)−1,3,5−トリアジニル]−N,N’−ジメチルエチレンジアミン、などが挙げられる。代表的な蛍光増白剤の例を下記構造式(1)〜(7)に挙げる。
Figure 2008260272
Figure 2008260272
これらの(b−3)増感剤の含有量は、基材表面まで露光波長の光が到達する必要があるため、吸収値により、一般的に、0.01質量%〜20質量%が望ましい。吸収値の測定は一般的な吸収測定器により、露光波長の吸収強度を測定すればよい。
〔(C)グラフトポリマー前駆体層〕
本発明における(C)グラフトポリマー前駆体層は、(c−1)ラジカル重合可能な不飽和部位を有する化合物(以下、単に、「重合性化合物」と称する場合がある。)、及び、(c−2)加熱又は露光によりラジカルを発生しうる化合物(以下、単に「ラジカル発生剤」と称する。)を含有する。
以下、(C)グラフトポリマー前駆体層を構成する(c−1)及び(c−2)成分について説明する。
[(c−1)重合性化合物]
本発明において用いられる(c−1)重合性化合物としては、モノマー、マクロモノマー、或いは重合性基を有する高分子化合物のいずれも用いることができる。これらの重合性化合物は公知のものを任意に使用することができ、用途に応じて、種々の相互作用性基を有する重合性化合物を用いることができる。
本発明において特に有用な重合性化合物としては、不飽和二重結合などのラジカル重合可能な不飽和部位(重合性基)の他、機能性材料を吸着しうる官能基を有するものが好ましく、後述する金属パターン形成方法においては、生成したグラフトポリマーに対し導電性素材を効率よく、容易に、高密度で、保持させるために、導電性素材と直接相互作用を形成しうる官能基、又は、導電性素材を効率よく保持するために用いる材料(例えば、無電解めっき触媒など)と相互作用を形成しうる官能基を有する重合性化合物を用いることが好ましい。
以下、金属パターン形成方法に好適に用いられる導電性素材と直接相互作用を形成しうる官能基(金属イオン又は金属塩を吸着する部位)、及び、導電性素材を効率よく保持するために用いる材料と相互作用を形成しうる官能基(無電解めっき触媒又はその前駆体を吸着する部位)を、総じて相互作用性基として説明する。
この相互作用性基としては、例えば、極性基が挙げられる。この極性基の中でも、親水性基が好ましく、より具体的には、アンモニウム、ホスホニウなどの正の荷電を有する官能基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有する官能基、その他にも、例えば、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシ基、シアノ基などの非イオン性基が挙げられる。
以下、金属パターンを形成する際に好適に用いられる相互作用性基を有する重合性化合物について具体的に説明する。
本発明に用いうる相互作用性基を有する重合性化合物としてのモノマーは、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、スチレンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、N−ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルチオフェン、スチレン、エチル(メタ)アクリル酸エステル、n-ブチル(メタ)アクリル酸エステルなど炭素数1〜24までのアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。
本発明に用いうる相互作用性基を有する重合性化合物としてのマクロモノマーは、前記モノマーを用いて公知の方法にて作製することができる。本態様に用いられるマクロモノマーの製造方法は、例えば、平成1年9月20日にアイピーシー出版局発行の「マクロモノマーの化学と工業」(編集者 山下雄也)の第2章「マクロモノマーの合成」に各種の製法が提案されている。
このようなマクロモノマーの有用な重量平均分子量は、500〜50万の範囲であり、特に好ましい範囲は1000〜5万である。
本発明に用いうる相互作用性基を有する重合性化合物としての高分子化合物とは、相互作用性基と、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基(重合性基)と、を導入したポリマーを指す。このポリマーは、少なくとも末端又は側鎖にエチレン付加重合性不飽和基を有するものであり、側鎖にエチレン付加重合性不飽和基を有するものがより好ましく、末端及び側鎖にエチレン付加重合性不飽和基を有するものが更に好ましい。
このような高分子化合物の有用な重量平均分子量は、500〜50万の範囲で、特に好ましい範囲は1000〜5万である。
相互作用性基と重合性基とを有する高分子化合物の合成方法としては、i)相互作用性基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)相互作用性基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法が挙げられる。
好ましい合成方法は、合成適性の観点から、ii)相互作用性基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により重合性基を導入する方法、iii)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
上記i)及びii)の合成方法に用いられる相互作用性基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、より具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン(下記構造)、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニル安息香酸等が挙げられ、一般的には、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、アミド基、ホスフィン基、イミダゾール基、ピリジン基、若しくはそれらの塩、及びエーテル基などの官能基を有するモノマーが使用できる。
Figure 2008260272
上記相互作用性基を有するモノマーと共重合する重合性基を有するモノマーとしては、アリル(メタ)アクリレート、2−アリルオキシエチルメタクリレートが挙げられる。
また、上記ii)の合成方法に用いられる重合性基前駆体を有するモノマーとしては、2−(3−クロロ−1−オキソプロポキシ)エチルメタクリレー卜や、特開2003−335814号公報に記載の化合物(i−1〜i−60)が使用することができ、これらの中でも、特に下記化合物(i−1)が好ましい。
Figure 2008260272
更に、上記iii)の合成方法に用いられる相互作用性基を有するポリマー中の、カルボキシル基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、及びエポキシ基などの官能基との反応を利用して、重合性基を導入するために用いられる重合性基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートなどがある。
上記ii)の合成方法における、相互作用性基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させた後の、塩基などの処理により重合性基を導入する方法については、例えば、特開2003−335814号公報に記載の手法を用いることができる。
本発明における(C)グラフトポリマー前駆体層は、露光感度の向上や、膜物性を制御することを目的に、(c−1)重合性化合物を複数種含有していてもよい。
このように、(C)グラフトポリマー前駆体層に、(c−1)重合性化合物を複数種含有する場合には、その組み合わせは特に限定されず、目的に応じて、適宜、決定すればよい。
本発明においては、(c−1)重合性化合物を複数種用いる場合、重合性基を有する高分子化合物を主たる重合性化合物とし、これに対し、低分子量の重合性化合物(以下、適宜、「低分子モノマー」と称する。)を併用することが好ましい態様である。
本発明における「低分子モノマー」とは、分子量600以下のものを意味する。
低分子モノマーとしては、ラジカル重合可能な不飽和部位(重合性基)を1つ以上有し、且つ、分子量が上記の範囲を満たしていればよく、前述の、相互作用性基を有する重合性化合物としてのモノマーであってもよいし、汎用のラジカル重合性化合物であってもよい。
低分子モノマーについて、より具体的に説明する。
低分子モノマー中の重合性基については、特に制限は無く、汎用のラジカル重合性化合物中の重合性基であればいずれも使用可能であるが、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基などが挙げられる。これらの中でも、主たる重合性化合物とラジカル重合性が近いものを選択することが好ましい。例えば、主たる重合性化合物が(メタ)アクリロイル基を有している場合は、(メタ)アクリロイル基を有する低分子モノマーを用いることが望ましい。
また、低分子モノマー中の重合性基は、分子内に1つ以上有していればよいが、汎用性、安全性、ラジカル重合性の観点から2〜6の範囲が望ましく、2〜4の範囲が更に望ましい。
更に、低分子モノマーの重合性基以外の構造は特に制限はなくが、分子長を調整する、又は、導入する官能基を選択することにより、低分子モノマーの物性を制御しうるものである。低分子モノマーの選択は、(C)グラフトポリマー前駆体層を構成する物質(主に、併用する重合性基を有する高分子化合物)との相溶性を考慮し、極性、親疎水性などが似通った構造を選択することが好ましい。
例えば、前述のように、重合性基を有する高分子化合物として、相互作用性基を有する高分子化合物を使用する際には、低分子モノマー中にも、前述のような相互作用性基を有することが好ましい。特に、本発明の積層体を金属パターン形成方法に適用する場合を考慮し、低分子モノマー中、相互作用性基として、金属イオン又は金属塩を吸着する部位を導入してもよい。金属イオン又は金属塩を吸着する部位の例としては、極性基が挙げられる。この極性基の中でも、酸基や水酸基などの親水性基が好ましく、より具体的には、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有する官能基が挙げられる。中でも、金属イオン又は金属塩に対する吸着能の観点から、カルボキシル基、ホスホン酸基が好ましい。このような金属イオン又は金属塩を吸着する部位を導入することにより、本発明の積層体を金属パターン形成方法に適用する際、吸着可能な金属量を増加させることができるため、得られた金属パターンの導電性や、遮光能の向上に繋がる。
本発明における低分子モノマーの具体例を以下に示すが、本発明はこれらの限定されるものではない。
Figure 2008260272
本発明において、(C)グラフトポリマー前駆体層に、重合性基を有する高分子化合物を主たる重合性化合物とし、これに対し、低分子モノマーを併用する場合、低分子モノマーの添加量は、主たる重合性化合物に対して、1質量%〜100質量%が望ましく、10質量%〜80質量%が更に望ましく、30質量%〜70質量%が更に望ましい。
[(c−2)ラジカル発生剤]
本発明における(C)グラフトポリマー前駆体層には、更に、(c−2)加熱又は露光によりラジカルを発生しうる化合物(ラジカル発生剤)を含有させる。
(c−2)ラジカル発生剤としては、前述の重合開始層中に添加される(b−2)ラジカル発生剤と同様のものに用いられ、その好ましい例も同様である。
(c−2)ラジカル発生剤の含有量は、(B)重合開始層の構成や(C)グラフトポリマー前駆体層の構成、更には、積層体の用途に応じて、適宜決定される。
例えば、(B)重合開始層中の(b−1)基材結合性ラジカル重合開始剤、(b−2)ラジカル発生剤、(C)グラフトポリマー前駆体層中の(c−2)ラジカル発生剤が直接吸収する波長の光を露光源として用いる場合、重合開始層表面まで光が到達することが必要となるので、グラフトポリマー前駆体層に添加する(c−1)ラジカル発生剤の吸収が3以下であることが好ましく、更に2以下であることが望ましい。添加する(c−1)ラジカル発生剤、また、グラフトポリマー前駆体層の膜厚に依存するが、固形分濃度として、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
また、積層体に照射される露光波長が、(B)重合開始層中の(b−1)基材結合性ラジカル重合開始剤、(b−2)ラジカル発生剤、(C)グラフトポリマー前駆体層中の(c−2)ラジカル発生剤の吸収波長と異なる場合、増感剤を用いることになる。この場合、増感剤の分量としては重合開始層表面まで光が到達することが重要であるので、上限は限られる(吸収3以下、好ましくは2以下)が、ラジカル発生剤に関しては特にその制限は受けない、一般的には、固形分濃度として、0.01質量%〜20質量%が好ましく、更に好ましくは0.1質量%〜10質量%である。
更に、(B)重合開始層中の(b−2)ラジカル発生剤、(C)グラフトポリマー前駆体層中の(c−2)ラジカル発生剤が、加熱によりラジカルを発生する化合物である場合には、ラジカル発生剤の含有量に関しては特にその制限は受けず、一般的には、固形分濃度として、0.01質量%〜20質量%が好ましく、更に好ましくは0.1質量%〜10質量%である。この場合、露光と同時に40℃〜120℃程度の加熱が必要である。
[(c−3)増感剤]
本発明における(C)グラフトポリマー前駆体層には、更に、(c−3)増感剤を含有させることができる。
(c−3)増感剤としては、前述の重合開始層中に添加される(b−3)増感剤と同様のものに用いられる。
また、(C)グラフトポリマー前駆体層中の(c−3)増感剤の含有量は、前述のように、重合開始層表面まで光が到達することを考慮して、適宜、決定される。
本発明における(C)グラフトポリマー前駆体層は、前述の(c−1)重合性化合物、(c−2)ラジカル発生剤、更に、必要に応じて、(c−3)増感剤を適当な溶剤に溶解、又は分散して液状組成物(塗布液)を調製し、これを前述の(B)重合開始層上に塗布、乾燥させることで形成される。
ここで用いられる溶剤は、各成分を溶解或いは分散することが可能であれば特に制限はないが、水、水溶性溶剤などの水性溶剤が好ましく、これらの混合物や、溶剤に更に界面活性剤を添加してもよい。
使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミドの如きアミド系溶剤、などが挙げられる。
また、この液状組成物に対し、必要に応じて添加することのできる界面活性剤は、溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
重合開始層表面に重合性化合物含有の液状組成物を塗布して塗膜を形成する方法を用いた場合には、その塗布量としては、充分な塗布膜を得る観点からは、固形分換算で0.1g/m〜10g/mが好ましく、特に0.5g/m〜5g/mが好ましい。
また、(C)グラフトポリマー前駆体層の厚みは、0.01μm〜20μmの範囲であることが好ましく、0.05μm〜10μmの範囲であることがより好ましく、0.1μm〜5μmの範囲であることが更に好ましい。
以上のように、重合開始層上にグラフトポリマー前駆体層を形成することで、本発明の積層体を得ることができる。
本発明の積層体は、グラフトポリマー前駆体層中のラジカル発生剤の働きにより、高感度にグラフトポリマーが生成する。
<グラフト膜形成方法、及びグラフトパターン形成方法>
本発明のグラフト膜形成方法は、本発明の積層体に対し、360nm〜700nmの波長の全面露光を行い、ラジカル重合可能な不飽和部位有する化合物を重合開始層表面に直接結合してグラフトポリマーを生成させることを特徴とする。
また、本発明のグラフトパターンの形成方法は、本発明の積層体に対し、360nm〜700nmの波長の像様露光を行い、ラジカル重合可能な不飽和部位有するポリマーを重合開始層表面に直接結合してグラフトポリマーを生成させることを特徴とする。
以下、全面露光工程及びパターン露光について説明する。
全面露光工程及びパターン露光において、グラフトポリマーを生成させるための露光は、いずれも、重合開始層中の基材結合性ラジカル重合開始剤や、グラフトポリマー前駆体層中のラジカル発生剤や増感剤に作用し、ラジカルを発生させることのできる露光であり、具体的には、360nm〜700nmの波長の光であることが好ましい。増感剤の選択、また、レーザー露光装置などの製造の観点から、より好ましくは360nm〜550nmの範囲である。
全面露光工程には、レーザー光源による全面走査露光、若しくは高圧水銀灯などの定常光を用いることができる。
また、パターン露光工程には、レーザーによる走査露光又はフォトマスクを通しての像様露光が用いられることが好ましい。また、例えば、陰極線管(CRT)を用いた走査露光をも用いることができる。この像様露光に用いる陰極線管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば、赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種又は2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤色、緑色及び青色に限定されず、黄色、橙色、紫色に発光する蛍光体も用いられる。
また、本工程においては、パターン露光は種々のレーザービームを用いて行うことができる。例えば、パターン露光としては、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザーなどのレーザー、半導体レーザー又は半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組み合わせた第二高調波発光光源(SHG)、等の単色高密度光を用いた走査露光方式を好ましく用いることができる。更に、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2レーザー等も用いることができる。
本発明により形成されるパターン解像度は露光条件に左右される。つまり、グラフトポリマーを生成させるためのパターン露光において、高精細のパターン露光を施すことにより、露光に応じた高精細パターンが形成される。高精細パターン形成のための露光方法としては、光学系を用いた光ビーム走査露光、マスクを用いた露光などが挙げられ、所望のパターンの解像度に応じた露光方法をとればよい。
高精細パターン露光としては、具体的には、i線ステッパー、g線ステッパー、KrFステッパー、ArFステッパーのようなステッパー露光などが挙げられる。
本発明における「パターン」とは、基材上の任意の位置にエネルギーを付与することにより形成されたレリーフ像のことである。そのパターンは、用途に応じて、適宜、決定されればよい。例えば、特開2001−349949号公報の図6において12で示される配線パターンに応じたものであってもよいし、特開2004−207275号公報の図5おいて11で示される導電パターンに応じたものであってもよい。
以上のようにしてグラフトポリマーの生成が行われた基材は、溶剤浸漬や溶剤洗浄などの処理が行われ、残存するホモポリマー等を除去して、精製する。具体的には、水やアセトンによる洗浄、乾燥などが挙げられる。ホモポリマー等の除去性の観点からは、超音波などの手段をとってもよい。精製後の基材は、その表面に残存するホモポリマーが完全に除去され、基材と強固に結合したグラフトポリマーのみが存在することになる。
<グラフトパターンの形成方法(2)>
本発明のグラフトパターンの形成方法(2)は、光開裂によりラジカルを発生しうるラジカル発生部位と基材結合部位とを有する化合物を支持体に結合させる工程(以下、化合物結合工程と称する。)と、パターン露光を行い、露光領域の該ラジカル発生部位を失活させる工程(以下、失活工程と称する。)と、前記基材上に、重合性化合物を接触させた後、全面露光を行い、前記パターン露光時における未露光領域に残存した該ラジカル発生部位に光開裂を生起させ、ラジカル重合を開始させることでグラフトポリマーを生成させる工程(以下、グラフトポリマー生成工程と称する。)と、をこの順に行うことを特徴とする。
前記化合物結合工程は、前述の重合開始層を形成する方法を適用することができる。
続いて、この方法で得られた光開裂によりラジカルを発生しうるラジカル発生部位と基材結合部位とを有する化合物(光開裂化合物(Q−Y))が導入された基材に対して、失活工程が施される。
つまり、失活工程では、光開裂化合物(Q−Y)が導入された基材に対し、予め、グラフトポリマーを生成させたくない領域に沿ってパターン露光を行い、露光領域のラジカル発生部位(Y)を光開裂させてラジカル発生能を失活させることで、基材表面に、ラジカル発生領域とラジカル発生能失活領域とを形成する。
ここで、失活工程におけるパターン露光は、グラフトパターンの形成方法(1)におけるパターン露光を適用することができる。
そして、グラフトポリマー生成工程において、ラジカル発生領域とラジカル発生能失活領域とが形成された基材表面に、重合性化合物を接触させた後、全面露光することで、ラジカル発生領域にのみにグラフトポリマーが生成し、結果的に、パターン状にグラフトポリマーが生成される。
なお、基材表面に、重合性化合物を接触させる方法としては、基材を、重合性化合物を含有する液状組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、基材表面に、重合性化合物をそのまま接触させるか、重合性化合物を含有する液状組成物を塗布して塗膜を形成する方法、更には、その塗膜を乾燥して、重合開始層表面にグラフトポリマー前駆体層を形成することにより行うことが好ましい。
以上のように、本発明のグラフト膜の形成方法により、基材上にグラフトポリマーが全面に直接結合されたグラフト膜を作製することができる。
また、本発明のグラフトパターンの形成方法(1)又は(2)により、基材上にグラフトポリマーがパターン状に直接結合されたグラフトパターンを作製することができる。
なお、得られるグラフトポリマーからなる膜(グラフトポリマー膜)は、膜厚が0.1g/m〜2.0g/mの範囲にあることが好ましく、0.3g/m〜1.0g/mが更に好ましく、最も好ましくは、0.5g/m〜1.0g/mの範囲である。
<グラフト膜、グラフトパターンの応用>
上記のようにして得られた、本発明のグラフト膜形成方法より得られたグラフト膜、本発明のグラフトパターン形成方法により得られたグラフトパターンは、生成したグラフトポリマーの有する相互作用性基により、様々な表面修飾が可能となる。
例えば、基材上に結合したグラフトポリマーが、極性基、親水性基、イオン性基を有する場合、導電性素材を付着させるなどの手段の導電性付与工程を施すことにより、導電膜や金属パターンを形成することができる。
<金属パターンの形成方法>
本発明の金属パターン形成方法は、以下の2つの態様がある。
即ち、本発明の金属パターン形成方法の第1の態様は、本発明のグラフトパターン形成方法にて生成したグラフトポリマーに金属イオン又は金属塩を吸着させた後、該金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元し金属粒子を析出させる工程を有することを特徴とする。
また、本発明の金属パターン形成方法の第2の態様は、本発明のグラフトパターン形成方法にて生成したグラフトポリマーに無電解めっき触媒又はその前駆体を吸着させた後、無電解めっきを行いめっき膜を形成する工程を有することを特徴とする。
以下、この2態様について説明する。
(第1の態様:金属微粒子分散膜の形成)
第1の態様では、グラフトポリマーの相互作用性基に対し金属イオン又は金属塩を吸着させた後、該金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元させて金属微粒子分散膜を形成する方法である。
より具体的には、この第1の態様は、以下に説明する金属イオン又は金属塩を、上記グラフトポリマーが有する相互作用性基、特に好ましくはイオン性基に対し、その極性に応じて、イオン的に吸着させた後、該金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元させて金属単体を析出させて金属微粒子分散膜を形成する方法である。なお、金属単体の析出態様によって、金属微粒子分散膜は金属薄膜になる場合もある。この方法により、金属微粒子分散膜からなる導電性発現層が形成される。
ここで、金属微粒子分散膜を形成する、析出された金属微粒子は、グラフトポリマーの相互作用性基と相互作用を形成し、吸着しているため、基材と金属微粒子分散膜との密着性に優れると共に、充分な導電性を発現できるという利点を有する。
(金属イオン及び金属塩)
まず、本態様において用いられる金属イオン及び金属塩について説明する。
本発明において、金属塩としては、グラフトポリマーの生成領域に付与するために、適切な溶媒に溶解して、金属イオンと塩基(陰イオン)に解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO、MCl、M2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Ag、Cu、Al、Ni、Co、Fe、Pdが挙げられ、中でも、Ag、Cuが好ましい。
金属塩や金属イオンは1種のみならず、必要に応じて複数種を併用することができる。また、所望の導電性を得るため、予め複数の材料を混合して用いることもできる。
(金属イオン及び金属塩の付与方法)
金属イオン又は金属塩をグラフトポリマーに付与する際、(1)グラフトポリマーがイオン性基を有する場合には、そのイオン性基に金属イオンを吸着させる方法を用いる。この場合、上記の金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含むその溶液を、グラフトポリマーの生成領域に塗布するか、或いは、その溶液中にグラフトポリマーが生成した基材を浸漬すればよい。金属イオンを含有する溶液を接触させることで、前記イオン性基には、金属イオンがイオン的に吸着することができる。これら吸着を充分に行なわせるという観点からは、接触させる溶液の金属イオン濃度は1質量%〜50質量%の範囲であることが好ましく、10質量%〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
金属イオン又は金属塩をグラフトポリマーに付与する際、(2)グラフトポリマーがポリビニルピロリドンなどのように金属塩に対し親和性の高い構造を含む場合は、上記の金属塩を微粒子状にして直接付着させる、又は、金属塩が分散し得る適切な溶媒を用いて分散液を調製し、その分散液を、グラフトポリマーの生成領域に塗布するか、或いは、その溶液中にグラフトポリマーが生成した基材を浸漬すればよい。
グラフトポリマーが相互作用性基として親水性基を有する場合には、グラフトポリマー膜は高い保水性を有するため、その高い保水性を利用して、金属塩が分散した分散液をグラフトポリマー膜中に含浸させることが好ましい。分散液の含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる分散液の金属塩濃度は1質量%〜50質量%の範囲であることが好ましく、10質量%〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
金属イオン又は金属塩をグラフトポリマーに付与する際、(3)グラフトポリマーが親水性基を有する場合、金属塩が分散している分散液、又は、金属塩が溶解した溶液をグラフトポリマーの生成領域に塗布するか、或いは、その分散液や溶液中にグラフトポリマーが生成した基材を浸漬すればよい。
かかる方法においても、上述と同様に、グラフトポリマー膜が有する高い保水性を利用して、分散液又は溶液をそのグラフトポリマー膜中に含浸させることができる。分散液又は溶液の含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる分散液の金属イオン濃度、或いは金属塩濃度は1質量%〜50質量%の範囲であることが好ましく、10質量%〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
特に、この(3)の方法によれば、グラフトポリマーの有する相互作用性基の特性に関わらず、所望の金属イオン又は金属塩を付与させることができる。
(還元剤)
続いて、グラフトポリマー(膜)に吸着又は含浸して存在する金属塩、或いは、金属イオンを還元しるために用いられる還元剤について説明する。
本発明において用いられる還元剤は、金属イオンを還元し、金属単体を析出させる物性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、次亜リン酸塩、テトラヒドロホウ素酸塩、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、ジアルキルアミノボラン(ジメチルアミンボランなど)などが挙げられる。
これらの還元剤は、用いる金属塩、金属イオンとの関係で適宜選択することができるが、例えば、金属イオン、金属塩を供給する金属塩水溶液として、硝酸銀水溶液などを用いた場合にはテトラヒドロホウ素酸ナトリウム、ホルムアルデヒド、ジアルキルアミノボランが、二塩化パラジウム水溶液を用いた場合には、ヒドラジンが、好適なものとして挙げられる。
上記還元剤の添加方法としては、例えば、グラフトポリマーが生成した基材表面に金属イオンや金属塩を付与させた後、水洗して余分な金属塩、金属イオンを除去した後、該表面を備えた基材をイオン交換水などの水中に浸漬し、そこに還元剤を添加する方法や、該基材表面上に所定の濃度の還元剤水溶液を直接塗布或いは滴下する方法等が挙げられる。また、還元剤の添加量としては、金属イオンに対して、等量以上の過剰量用いるのが好ましく、10倍当量以上であることが更に好ましい。
ここで、第1の態様におけるグラフトポリマーの相互作用性基と金属イオン又は金属塩との関係について説明する。
グラフトポリマーの相互作用性基が、負の電荷を有する極性基や、カルボキシル基、スルホン酸基、若しくはホスホン酸基などの如きアニオン性のイオン性基である場合は、グラフトポリマー膜が選択的に負の電荷を有するようになることから、ここに正の電荷を有する金属イオンを吸着させ、その吸着した金属イオンを還元させることで金属単体を析出される。
また、グラフトポリマーの相互作用性基が、特開平10−296895号公報に記載のアンモニウム基などの如きカチオン性基のイオン性基である場合は、グラフトポリマー膜が選択的に正の電荷を有するようになり、金属イオンはそのままの形状では吸着しない。そのため、相互作用性基のイオン性基に起因する親水性を利用して、グラフトポリマー膜に、金属塩が分散した分散液、又は、金属塩が溶解した溶液を含浸させ、その含浸させた溶液の中の金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元させることで金属単体を析出させる。
以上のように、金属単体が析出することで、金属微粒子分散膜が形成される。
金属微粒子分散膜中の析出された金属単体(金属微粒子)の存在は、表面の金属光沢により目視でも確認することができるが、透過型電子顕微鏡、或いは、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて表面を観察することで、その構造(形態)を確認することができる。また、金属パターンの膜厚は、常法、例えば、切断面を電子顕微鏡で観察するなどの方法により、容易に行なうことができる。
このように、金属単体が析出した状態を上記の顕微鏡で観察すると、グラフトポリマー膜中にぎっしりと金属微粒子が分散していること確認される。この時、析出された金属微粒子の大きさとしては、粒径1μm〜1nm程度である。
なお、本発明においては、この析出した金属粒子をめっき触媒として用いて、後述のような無電解めっきを行ってもよい。
金属微粒子分散膜において、金属微粒子が密に分散していて外見上金属薄膜を形成しているような場合には、そのまま用いてもよいが、効率のよい導電性の確保という観点からは、金属微粒子分散膜を更に加熱処理することが好ましい。
加熱処理工程における加熱温度としては、100℃以上が好ましく、更には150℃以上が好ましく、特に好ましくは200℃程度である。加熱温度は、処理効率や基材の寸法安定性などを考慮すれば400℃以下であることが好ましい。また、加熱時間に関しては、10分以上が好ましく、更には30分〜60分間程度が好ましい。
加熱処理による作用機構は明確ではないが、一部の近接する金属微粒子同士が互いに融着することで導電性が向上するものと考えている。
(第2の態様:めっき膜の形成)
第2の態様は、グラフトポリマーが有する相互作用性基に対し、グラフトポリマーの相互作用性基に対し無電解めっき触媒又はその前駆体を吸着させた後、無電解めっきを行いめっき膜を形成する方法である。この方法により、めっき膜からなる導電性発現層が形成される。
このように、めっき膜は、グラフトポリマーの相互作用性基に吸着している触媒や前駆体に対し無電解めっきされて形成されることから、めっき膜とグラフトポリマーとが強固に結合しており、その結果、基材とめっき膜との密着性に優れると共に、めっき条件により導電性を調整することができるという利点を有する。
まず、この第2の態様における無電解めっき触媒又はその前駆体の付与方法について説明する。
本態様において用いられる無電解めっき触媒とは、主に0価金属であり、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。本発明においては、特に、Pd、Agがその取り扱い性の良さ、触媒能の高さから好ましい。0価金属を相互作用性領域に固定する手法としては、例えば、グラフトポリマーの相互作用性基と相互作用するように荷電を調節した金属コロイドを、グラフトポリマー表面に供する手法が用いられる。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができ、このように荷電を調節した金属コロイドを、グラフトポリマーが有する相互作用性基と相互作用させることで、グラフトポリマーに金属コロイド(無電解めっき触媒)を付着させることができる。
本態様において用いられる無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には上記無電解めっき触媒で用いた0価金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンはグラフトポリマーの生成領域に付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
実際には、無電解めっき前駆体である金属イオンは、金属塩の状態でグラフトポリマーに付与する。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO)n、MCln、M2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、Agイオン、Pdイオンが触媒能の点で好ましい。
無電解めっき触媒である金属コロイド、或いは、無電解めっき前駆体である金属塩をグラフトポリマーに付与する方法としては、金属コロイドを適当な分散媒に分散、或いは、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その溶液をグラフトポリマーの生成領域に塗布するか、或いは、その溶液中にグラフトポリマーが生成した基材を浸漬すればよい。金属イオンを含有する溶液を接触させることで、グラフトポリマーが有する相互作用性基に、イオン−イオン相互作用、又は、双極子−イオン相互作用を利用して金属イオンを付着させること、或いは、相互作用性領域に金属イオンを含浸させることができる。このような付着又は含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる溶液中の金属イオン濃度、或いは金属塩濃度は0.01質量%〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.1質量%〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、1分〜24時間程度であることが好ましく、5分〜1時間程度であることがより好ましい。
次に、この第2の態様における無電解めっき方法について説明する。
無電解めっき触媒又はその前駆体が付与された基材に対して、無電解めっきを行うことで、無電解めっき膜が形成される。
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与された基材を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行なう。使用される無電解めっき浴としては、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
また、無電解めっき触媒前駆体が付与された基材を、無電解めっき触媒前駆体がグラフトポリマーに付着又は含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基材を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴中へ浸漬される。この場合には、無電解めっき浴中において、前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
一般的な無電解めっき浴の組成としては、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。
例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としては、銅イオンを提供しうるものであれば特に限定されず使用することができる。例えば、硫酸銅(CuSO)、塩化銅(CuCl)、硝酸銅(Cu(NO)、水酸化銅(Cu(OH))、酸化銅(CuO)、塩化第1銅(CuCl)等がある。浴中に存在する銅イオンの量は一般に0.005M〜0.1M、好ましくは0.01M〜0.07Mである。還元剤としては、銅イオンを金属銅に還元できるものならば、特に限定されないが、ホルムアルデヒド及びその誘導体、並びにパラホルムアルデヒドのような重合体、或いはその誘導体や前駆体が好適である。還元剤の量は、ホルムアルデヒドに換算して0.05M以上、好ましくは0.05M〜0.3Mの範囲内である。
pH調整剤は、pHを変化させうるものなら特に限定されず使用することができ、目的に応じて、pHを上昇させる化合物、下降させる化合物を適宜選択して用いる。pH調整剤としては、具体的には、例えば、NaOH、KOH、HCl、HSO、HF等が挙げられる。
無電解めっき浴のpHは一般に12.0〜13.4(25℃)、望ましくは12.4〜13.0(25℃)の範囲内である。添加剤として、銅イオンの安定剤であるEDTA、ロッシェル塩、トリアルカノールアミンなどが含まれているが、ガラス基材とめっき膜の密着性の点からトリアルカノールアミンが好ましい。これら安定剤の添加量は、銅イオンの1.2倍〜30倍、好ましくは1.5倍〜20倍である。また、浴中に存在する安定剤の絶対量は、0.006〜2.4M、特に0.012〜1.6Mの範囲内であることが望ましい。
安定化剤として用いられるトリアルカノールアミンとしては、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等が挙げられるが、ガラス基材とめっき膜の密着性の点からトリエタノールアミンが特に好ましい。
また、浴の安定化やめっき皮膜の平滑性を向上させるための添加剤としてポチエチレングリコール、フェロシアン化カリウム、ビピリジン等が挙げられる。浴中に存在するこれら添加剤の濃度は0.001〜1M、特に0.01〜0.3Mの範囲内であることが好ましい。
CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH)Cl、還元剤としてNH、HNNH、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのめっき浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
このようにして形成される無電解めっき膜の膜厚は、めっき浴の金属塩又は金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、或いは、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜3時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
以上のようにして得られる無電解めっき膜は、SEMによる断面観察により、グラフトポリマー膜中に無電解めっき触媒やめっき金属の微粒子がぎっしりと分散しており、更にその上に比較的大きな粒子が析出していることが確認された。界面はグラフトポリマーと微粒子とのハイブリッド状態であるため、基材表面の平均粗さ(Rz)が3μm以下であっても、基材(有機成分)と無機物(無電解めっき触媒又はめっき金属)との密着性が良好であった。
また、この第2の態様では、無電解めっき終了後、電気めっきを行うこともできる。即ち、電気めっきは、前述の無電解めっきにより得られた無電解めっき膜を電極として行う。これにより基材との密着性に優れた無電解めっき膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつめっき膜を容易に形成することができる。この工程を付加することにより、導電性膜を目的に応じた厚みに形成することができる。
本態様における電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、電気めっきに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
電気めっきにより得られるめっき膜の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、めっき浴中に含まれる金属濃度、浸漬時間、或いは、電流密度などを調整することでコントロールすることができる。なお、本発明により得られる導電膜や金属パターンをプリント配線基板に適用する場合には、めっき膜の膜厚は、導電性の観点から、0.3μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
以上説明した、2つの態様により、金属パターンが形成される。
この金属パターンは、電子材料の配線や電極として好適に用いることができ、薄層トランジスタなどへの応用に好適である。
なお、上記の2つの態様を、全面にグラフトポリマーが生成しているグラフト膜に対して適用した場合には、全面に導電性が付与され、導電膜を形成することができる。
〔その他の応用〕
上記のようにして得られた、本発明のグラフト膜形成方法により得られたグラフト膜、本発明のグラフトパターン形成方法により得られたグラフトパターンは、基材上に結合したグラフトポリマーが、極性基、親水性基、イオン性基を有する場合、染料を付着させるなどの手段を用いることにより、着色膜や着色パターンを形成することができる。
ここで用いられる染料は、電荷を有するものが好ましく、更に、特定の分子間相互作用により吸着が可能である構造を有するものが好ましい。
具体的には、グラフトポリマーがアニオン性の官能基を有する場合には、カチオン性のメチレンブルーなどを用い、グラフトポリマーがカチオン性の官能基を有する場合には、アニオン性のエリスロシンなどを用いることで、染料がグラフトポリマーの官能基に吸着し、所望の着色膜や着色パターンを形成することができる。
<プリント配線基板、薄層トランジスタ>
本発明のプリント配線基板、又は薄層トランジスタは、本発明の金属パターン形成方法を用いて形成された金属パターンを有することを特徴としている。
本発明の薄層トランジスタは、前記金属パターン形成方法を用いて形成された金属パターンである、ゲート電極、ドレイン電極、ソース電極又は金属配線を有することが好ましい。
薄層トランジスタが本発明の金属パターン形成方法を用いて形成される金属パターンを備えることにより、高精細でかつ導電性に優れた微細配線を広い面積にわたって、膜厚、膜質が均一に形成することができる。これにより、信頼性の高い配線、電極を有する薄層トランジスタとすることができる。
<装置>
本発明の装置は、本発明のプリント配線基板又は薄層トランジスタを備えたことを特徴とする。
このような装置としては、液晶表示装置(LCD)、フィールドエミッション表示装置(FED)、電気泳動表示装置(EPD)、プラズマ表示装置(PDP)、エレクトロクロミック表示装置(ECD)、エレクトロルミネッセント表示装置(ELD)などのフラットパネルディスプレイが挙げられる。
本発明のプリント配線基板又は薄層トランジスタを備えた装置とすることにより、所望の解像度で基板との密着性も良好であり、装置の小型化、高集積化を達成することができる。
本発明の装置としては、前記プリント配線基板又は薄層トランジスタを備えたこと以外は、特に限定されず、公知の構成要素を有することができ、中でも、表示装置であるが好ましい。
以上のように、本発明により得られた金属パターンを適用したゲート電極、ドレイン電極、ソース電極或いは金属配線を有する、液晶表示装置(LCD)、フィールドエミッション表示装置(FED)、電気泳動表示装置(EPD)、プラズマ表示装置(PDP)、エレクトロクロミック表示装置(ECD)、エレクトロルミネッセント表示装置(ELD)などのフラットパネルディスプレイは、所望の解像度で基板との密着性に優れた電極や配線を容易に形成でき、TFTの小型化、高性能化、或いは液晶表示装置などの配線の低抵抗化のために導電層が使用されるすべての場合に、有効である。
本発明における好適な液晶表示装置は、ドライ成膜に代わって、湿式成膜による電極或いは配線の形成が求められる場合や、表示面積の大面積化が求められる場合に極めて有用である。また、本発明における好適なアクティブマトリックス型表示装置は、フラットパネルディスプレイのみならず、フラットパネル型イメージセンサにも適用することができ、本発明の薄層トランジスタ(TFT素子ともいう。)を組み込んだアクティブマトリクス基板は種々の液晶表示装置に好適に使用しうる。
<フォトマスク>
本発明のフォトマスクは、本発明の金属パターン形成方法により形成された金属パターンを用いたことを特徴としている。
本発明のフォトマスクは、遮光部が金属パターンにより形成されたものである。この遮光部(金属パターン)は、膜厚、膜質が均一であり、広い面積にわたって形成され、更には、基材(ガラス基板)との密着性にも優れることから、遮光性能、及び環境適合性に優れたフォトマスクを得ることができる。
なお、本発明のフォトマスクの遮光部は、その遮光性能の点から、銀からなる金属パターンであることが好ましい態様である。
本発明のフォトマスクは、フラットパネルディスプレイ、CRT用シャドーマスク、印刷配線板、半導体等の分野におけるフォトリソ工程において用いられる。
また、特にプラズマディスプレイ(PDP)、やLCD等の大サイズガラス基板を用いる分野におけるフォトマスクとしても好適である。
(合成例1:基材結合性ラジカル重合開始剤の例示化合物T1の合成)
4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル29.3gをN,N−ジメチルアセトアミド75mLに溶解し、炭酸カリウム22.8gを添加した。80℃の加温し、11−ブロモ−1−ウンデセン38.8gを滴下、全量を滴下後に100℃に昇温し、3時間反応させた。その後、反応用液に蒸留水250mLを加え、析出した固体を濾取、アセトニトリルで再結晶を行い、白黄色固体を得た。
この白黄色固体20.0gをトリクロロアセトニトリル150mLに溶解し、臭化アルミニウム1.54gを添加した。ここへ塩化水素ガスを4時間バブリングし、更に4時間静置した。溶媒を減圧除去し、酢酸エチルで抽出、シリカゲルカラムで精製し、黄色固体を得た。
この黄色固体10.0gをTHF20mLに溶解、氷浴を用い0℃に冷却、ヘキサクロロ白金酸六水和物1.0mgを添加、トリクロロシラン30mLを加えた。室温で12時間撹拌、その後溶媒を減圧除去し、黄色固体(基材結合性ラジカル重合開始剤の例示化合物T1、前記構造)を得た。
(合成例2:基材結合性ラジカル重合開始剤の例示化合物T2の合成)
N−[4−[4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−4−ヒドロキシベンズアミド(富士フイルム製)40.0gをTHF200mLに溶解。トリエチルアミン15.8mL、ピリジン0.60mLを添加し、氷浴にて0℃に冷却。無水メタクリル酸12.3gを滴下、室温で12時間撹拌、その後溶媒を減圧除去し、油状物を得た。この油状物をヘキサンで晶出、アセトニトリルで洗浄し、黄色固体を得た。
次に、この黄色固体8gをN,N−ジメチルアセトアミド67.4mLに溶解、グリシジルメタクリレート1.91g、ベンジルメタクリレート7.12g、AIBN116mg添加し、70℃に加温、6時間反応させた。その後、反応溶液にTHF50mLを加え、ヘキサンで最沈殿することにより、基材結合性ラジカル重合開始剤の例示化合物T2(前記構造)を得た。
(合成例3:基材結合性ラジカル重合開始剤の例示化合物T3の合成)
上記合成例2:基材結合性ラジカル重合開始剤T2で得られた黄色固体10.0gをN,N−ジメチルアセトアミド84.0mLに溶解、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4.37g、ベンジルメタクリレート5.92g、AIBN138mg添加し、70℃に加温、6時間反応させた。その後、反応溶液にTHF50mLを加え、ヘキサンで最沈殿することにより、基材結合性ラジカル重合開始剤の例示化合物T3(前記構造)を得た。
(合成例4:基材結合性ラジカル重合開始剤の例示化合物T6の合成)
イルガキュア2959(チバガイギ製)9.00gをTHF30mLに溶解し、p−メトキシフェノール20mgと2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート6.28g、ジブチルチンジラウレート81mgを添加し、50℃、4時間反応させた。溶媒を減圧除去し、酢酸エチル―ヘキサンを用い再結晶し、白色固体を得た。
次に、この白色固体10gをメチルエチルケトン50mLに溶解し、グリシジルメタクリレート15.7g、AIBN140mg添加し、70℃に加温、6時間反応させた。その後、反応溶液をヘキサンで最沈殿することにより、基材結合性ラジカル重合開始剤の例示化合物T6(前記構造)を得た。
(合成例5:親水性ポリマーP1の合成)
ポリアクリル酸(平均分子量25,000)30gをN,N−ジメチルアセトアミド200mLに溶解し、2−エチル−4−エチル−イミダゾール0.9g、ジターシャリーペンチルハイドロキノン50mg、下記構造のモノマーA27gを添加し、窒素気流下、100℃、5時間反応させた。
その後、反応液を50gとり、氷浴中で4N NaOHを11.6mL加え、酢酸エチルで再沈を行い、濾取後に水で洗浄、乾燥し、下記構造の親水性ポリマーP1を得た。
Figure 2008260272
(合成例6:親水性ポリマーP2の合成)
ポリアクリル酸(平均分子量25,000)18gをN,N−ジメチルアセトアミド300mLに溶解し、ハイドロキノン0.41gと2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート3.53gとジブチルチンジラウレート0.25gを添加し、窒素気流下、65℃、4時間反応させた。
その後、反応液を1N水酸化ナトリウム水溶液でカルボキシル基を中和し、酢酸エチルで再沈を行い、濾取後に洗浄、乾燥し、下記構造の親水性ポリマーP2を得た。
Figure 2008260272
(合成例7:モノマーBの合成)
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(東京化成製)10.2gをTHF200mLに溶解した。そこへ、トリエチルアミン31.6mL、ピリジン1.20mLを添加し、氷浴にて0℃に冷却した。続いて、無水メタクリル酸24.6gを滴下して、室温で12時間撹拌し、その後、溶媒を減圧除去し、得られた油状物を、シリカゲルカラムを用いて精製し、下記構造のモノマーB14.3gを得た。
Figure 2008260272
〔実施例1〕
(重合開始層形成工程)
ガラス基板(日本板硝子)に、UVオゾンクリーナー(UV42、日本レーザー電子社製)を用いて5分間UVオゾン処理を行った。その基板表面に前記例示化合物T1のメチルエチルケトン1質量%溶液をスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後、ガラス基板を100℃で10分間加熱し、表面をメチルエチルケトンで洗浄、エアーガンで乾燥し、重合開始層を形成した。重合開始層が形成されたガラス基板を基材A1とした。
(グラフトポリマー生成工程)
前述の方法で合成した親水性ポリマーP1:0.5gを、蒸留水4.2mL、N,N−ジメチルアセトアミド0.05mL、アセトニトリル1.5mL、炭酸水素ナトリウム0.3gの混合溶液に溶解し、更に、増感剤である下記化合物S1:0.03g、過ヨウ素酸ナトリウム7mgを加え、塗布液を調製した。この塗布液を、基材A1の重合開始層表面にスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後この基板を80℃で5分間乾燥した。
得られたグラフトポリマー前駆体層の膜厚は0.9μmであった。このようなグラフトポリマー前駆体層が形成されたガラス基板を基材A2とした。
Figure 2008260272
−露光−
グラフトポリマー前駆体層を備えた基材A2(積層体)を、405nmの発信波長を有するレーザー露光機で所定のパターンに従って光量50mJ/cmで露光した。露光後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬し現像を行い、エアーガンで乾燥した。
これにより、グラフトポリマーが重合開始層表面にパターン状に形成された基材A3を得た。
得られたパターンを原子間力顕微鏡(Nanopix1000:セイコーインスルメンツ社製)を使用して観察した。その結果、L/S=10/10μm、膜厚0.9μmのパターンが形成されていることが確認された。
[実施例2]
(重合開始層形成工程)
ガラス基板(日本板硝子)に、UVオゾンクリーナー(NL−UV42:日本レーザー電子社製)を用いて5分間UVオゾン処理を行い、その基板表面に前記例示化合物T2のメチルエチルケトン1質量%溶液に下記化合物S2をT2に対し20質量%添加したものをスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後、ガラス基板を170℃で1時間加熱し、表面をメチルエチルケトンで洗浄、エアーガンで乾燥し、重合開始層を形成した。重合開始層が形成されたガラス基板を基材B1とした。
Figure 2008260272
(グラフトポリマー生成工程)
前述の方法で得られた親水性ポリマーP2:0.5gを、蒸留水4.2mL、N,N−ジメチルアセトアミド0.05mL、アセトニトリル1.5mL、炭酸水素ナトリウム0.3gの混合溶液に溶解し、更に、増感剤(前記化合物S1):0.03g、過ヨウ素酸カリウム7mgを加え、塗布液を調製した。この塗布液を、基材B1の重合開始層表面にスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後この基板を80℃で5分間乾燥した。
得られたグラフトポリマー前駆体層の膜厚は0.9μmであった。このようなグラフトポリマー前駆体層が形成されたガラス基板を基材B2とした。
−露光−
グラフトポリマー前駆体層を備えた基材B2(積層体)を、405nmの発信波長を有するレーザー露光機で所定のパターンに従って光量20mJ/cmで露光した。露光後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬し現像を行い、エアーガンで乾燥した。
これにより、グラフトポリマーが重合開始層表面にパターン状に形成された基材B3を得た。
得られたパターンを原子間力顕微鏡(Nanopix1000:セイコーインスルメンツ社製)を使用して観察した。その結果、L/S=10/10μm、膜厚0.9μmのパターンが形成されていることが確認された。
[実施例3]
(重合開始層形成工程)
ガラス基板(日本板硝子)に、UVオゾンクリーナー(NL−UV42:日本レーザー電子社製)を用いて5分間UVオゾン処理を行い、その基板表面に前記例示化合物T3:0.05g、2,4−トリレンジイソシアナート12mgをメチルエチルケトンに溶解し1質量%溶液にしたものをスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後、ガラス基板を120℃で10分間加熱し、表面をメチルエチルケトンで洗浄、エアーガンで乾燥し、重合開始層を形成した。重合開始層が形成されたガラス基板を基材C1とした。
(グラフトポリマー生成工程)
前記親水性ポリマーP1:0.5gを、蒸留水4.2mL、N,N−ジメチルアセトアミド0.05mL、アセトニトリル1.5mL、炭酸水素ナトリウム0.3gの混合溶液に溶解し、更に、増感剤(前記化合物S1):0.03g、過ヨウ素酸ナトリウム7mgを加え、塗布液を調製した。この塗布液を、基材C1の重合開始層表面にスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後この基板を80℃で5分間乾燥した。
得られたグラフトポリマー前駆体層の膜厚は0.9μmであった。このようなグラフトポリマー前駆体層が形成されたガラス基板を基材C2とした。
−露光−
グラフトポリマー前駆体層を備えた基材C2(積層体)を、405nmの発信波長を有するレーザー露光機で所定のパターンに従って光量20mJ/cmで露光した。露光後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬し現像を行い、エアーガンで乾燥した。
これにより、グラフトポリマーが重合開始層表面にパターン状に形成された基材C3を得た。
得られたパターンを原子間力顕微鏡(Nanopix1000:セイコーインスルメンツ社製)を使用して観察した。その結果、L/S=10/10μm、膜厚0.9μmのパターンが形成されていることが確認された。
[実施例4]
(重合開始層形成工程)
ガラス基板(日本板硝子)に、UVオゾンクリーナー(NL−UV42:日本レーザー電子社製)を用いて5分間UVオゾン処理を行い、その基板表面に前記例示化合物T6のメチルエチルケトン1質量%溶液をスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後、ガラス基板を170℃で1時間加熱し、表面をメチルエチルケトンで洗浄、エアーガンで乾燥し、重合開始層を形成した。重合開始層が形成されたガラス基板を基材D1とした。
(グラフトポリマー生成工程)
前記親水性ポリマーP2:0.5gをN,N−ジメチルアセトアミド6.2mLに溶解し、更に、過ヨウ素酸カリウム7mgを加え、塗布液を調製した。この塗布液を基材D1の重合開始層表面にスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後この基板を110℃で5分間乾燥した。
得られたグラフトポリマー前駆体層の膜厚は0.9μmであった。このようなグラフトポリマー前駆体層が形成されたガラス基板を基材D2とした。
−露光−
グラフトポリマー前駆体層を備えた基材D2(積層体)を、高圧水銀灯露光機(ウシオ電機社製)で所定のパターンに従って光量20mJ/cmで露光した。露光後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬し現像を行い、エアーガンで乾燥した。
これにより、グラフトポリマーが重合開始層表面にパターン状に形成された基材D3を得た。
得られたパターンを原子間力顕微鏡(Nanopix1000:セイコーインスルメンツ社製)を使用して観察した。その結果、L/S=10/10μm、膜厚0.9μmのパターンが形成されていることが確認された。
[実施例5]
(重合開始層形成工程)
ガラス基板(日本板硝子)に、UVオゾンクリーナー(NL−UV42:日本レーザー電子社製)を用いて5分間UVオゾン処理を行い、その基板表面に前記例示化合物T3:0.05g、2,4−トリレンジイソシアナート12mgをメチルエチルケトンに溶解し1質量%溶液にしたものをスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後、ガラス基板を170℃で1時間加熱し、表面をメチルエチルケトンで洗浄、エアーガンで乾燥し、重合開始層を形成した。重合開始層が形成されたガラス基板を基材E1とした。
(グラフトポリマー生成工程)
前記親水性ポリマーP2:0.5gをN,N−ジメチルアセトアミド6.2mLに溶解し、更に、光重合開始剤(前記化合物S2):25mgを加え、塗布液を調製した。この塗布液をガラス基材E2表面にスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後この基板を110℃で5分間乾燥した。
得られたグラフトポリマー前駆体層の膜厚は0.9μmであった。このようなグラフトポリマー前駆体層が形成されたガラス基板を基材E2とした。
−露光−
グラフトポリマー前駆体層を備えた基材E2(積層体)を、高圧水銀灯露光機(ウシオ電機社製)で所定のパターンに従って光量20mJ/cmで露光した。露光後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬し現像を行い、エアーガンで乾燥した。
これにより、グラフトポリマーが重合開始層表面にパターン状に形成された基材E3を得た。
得られたパターンを原子間力顕微鏡(Nanopix1000:セイコーインスルメンツ社製)を使用して観察した。その結果、L/S=10/10μm、膜厚0.9μmのパターンが形成されていることが確認された。
[実施例6]
まず、実施例6における基材F1として、実施例1で使用した、例示化合物T1がガラス基板に結合してなる重合開始層を有する基材A1を用いた。
(グラフトポリマー生成工程)
前述の方法で合成した親水性ポリマーP1:0.5gを、1−メトキシ−2−プロパノール:3.1gに溶解し、更に、メチルエチルケトン:3.0g添加した。次に増感剤(前記化合物S1):0.03g、光重合開始剤(前記化合物S2):0.03g、1,3−ジメタクリル酸グリセロール(和光純薬製):0.25gを添加し、塗布液を調製した。この塗布液を、基材F1の重合開始層表面にスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後この基板を80℃で5分間乾燥した。
得られたグラフトポリマー前駆体層の膜厚は1.0μmであった。このようなグラフトポリマー前駆体層が形成されたガラス基板を基材F2とした。
−露光−
グラフトポリマー前駆体層を備えた基材F2(積層体)を、405nmの発信波長を有するレーザー露光機で所定のパターンに従って光量50mJ/cmで露光した。露光後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬し現像を行い、エアーガンで乾燥した。
これにより、グラフトポリマーが重合開始層表面にパターン状に形成された基材F3を得た。
得られたパターンを原子間力顕微鏡(Nanopix1000:セイコーインスルメンツ社製)を使用して観察した。その結果、L/S=10/10μm、膜厚1.2μmのパターンが形成されていることが確認された。
[実施例7]
まず、実施例7における基材G1として、実施例1で使用した、例示化合物T1がガラス基板に結合してなる重合開始層を有する基材A1を用いた。
(グラフトポリマー生成工程)
前述の方法で合成した親水性ポリマーP2:0.5gを、1−メトキシ−2−プロパノール:3.1gに溶解し、更に、メチルエチルケトン:3.0g添加した。次に増感剤(前記化合物S1):0.03g、光重合開始剤(前記化合物S2):0.03g、前述の方法で合成したモノマーB:0.25gを添加し、塗布液を調製した。この塗布液を、基材G1の重合開始層表面にスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後この基板を80℃で5分間乾燥した。
得られたグラフトポリマー前駆体層の膜厚は0.8μmであった。このようなグラフトポリマー前駆体層が形成されたガラス基板を基材G2とした。
−露光−
グラフトポリマー前駆体層を備えた基材G2を、405nmの発信波長を有するレーザー露光機で所定のパターンに従って光量50mJ/cmで露光した。露光後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬し現像を行い、エアーガンで乾燥した。
これにより、グラフトポリマーが重合開始層表面にパターン状に形成された基材G3を得た。
得られたパターンを原子間力顕微鏡(Nanopix1000:セイコーインスルメンツ社製)を使用して観察した。その結果、L/S=10/10μm、膜厚1.0μmのパターンが形成されていることが確認された。
[比較例1]
(重合開始層形成工程)
ガラス基板(日本板硝子)に、UVオゾンクリーナー(NL−UV42:日本レーザー電子社製)を用いて5分間UVオゾン処理を行い、その基板表面に前記例示化合物T2のメチルエチルケトン1質量%溶液をスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後、ガラス基板を170℃で1時間加熱し、表面をメチルエチルケトンで洗浄、エアーガンで乾燥し、重合開始層を形成した。重合開始層が形成されたガラス基板を基材H1とした。
(グラフトポリマー生成工程)
前述の方法で得られた親水性ポリマーP2:0.5gを、蒸留水4.2mL、N,N−ジメチルアセトアミド0.05mL、アセトニトリル1.5mL、炭酸水素ナトリウム0.3gの混合溶液に溶解し、塗布液を調製した。この塗布液を、基材H1の重合開始層表面にスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後この基板を80℃で5分間乾燥した。
得られたグラフトポリマー前駆体層の膜厚は0.9μmであった。このようなグラフトポリマー前駆体層が形成されたガラス基板を基材H2とした。
−露光−
グラフトポリマー前駆体層を備えた基材H2(積層体)を、高圧水銀灯露光機(ウシオ電機社製)で所定のパターンに従って光量50mJ/cmで露光した。露光後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬し現像を行い、エアーガンで乾燥した。
しかしながら、この工程では現像に耐えうる程の膜の硬化ができず、現像時にグラフトポリマー前駆体層は全て溶解、剥離してしまった。また、原子間力顕微鏡(Nanopix1000:セイコーインスルメンツ社製)を使用して観察したが、グラフトパターンの形成は確認できなかった。
〔比較例2〕
まず、比較例2における基材I1として、実施例1で使用した、例示化合物T1がガラス基板に結合してなる重合開始層を有する基材A1を用いた。
(グラフトポリマー生成工程)
前述の方法で合成した親水性ポリマーP1:0.5gを、蒸留水4.2mL、N,N−ジメチルアセトアミド0.05mL、アセトニトリル1.5mL、炭酸水素ナトリウム0.3gの混合溶液に溶解し、更に、増感剤である前記化合物S1:0.03gを加え、塗布液を調製した。この塗布液を、基材I1の重合開始層表面にスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後この基板を80℃で5分間乾燥した。
得られたグラフトポリマー前駆体層の膜厚は0.9μmであった。このようなグラフトポリマー前駆体層が形成されたガラス基板を基材I2とした。
−露光−
グラフトポリマー前駆体層を備えた基材I2(積層体)を、405nmの発信波長を有するレーザー露光機で所定のパターンに従って光量50mJ/cmで露光した。露光後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬し現像を行い、エアーガンで乾燥した。
しかしながら、この工程では現像に耐えうる程の膜の硬化ができず、現像時にグラフトポリマー前駆体層は全て溶解、剥離してしまった。また、原子間力顕微鏡(Nanopix1000:セイコーインスルメンツ社製)を使用して観察したが、グラフトパターンの形成は確認できなかった。
<評価>
前述の実施例1〜7、及び比較例1、2において、グラフトポリマーを生成させる際の露光量を下記表1のように変更し、露光エネルギーとグラフトポリマーの生成に関して、以下のように評価した。
グラフトポリマーの生成状態を、メチレンブルーによるグラフトポリマー染色後の目視による観察に加え、原子間顕微鏡AFM(ナノピクス1000、セイコーインスツルメンツ社製、DFMカンチレバー使用)で観察した。また、同時に、原子間力顕微鏡AFMを用いてグラフトポリマーからなる膜(グラフトポリマー膜)の膜厚を測定し、該膜厚とグラフトポリマー前駆体層の膜厚とを比較した。結果を下記表1に示す。
なお、評価指標としては以下の通りである。
○: グラフトポリマー前駆体層と同等又はそれ以上の厚さのグラフトポリマー膜が生成している
△: グラフトポリマー膜は生成するが、その膜厚がグラフトポリマー前駆体層の膜厚に満たない若しくは不均一(部分的に基材に対する密着が低下している箇所があり、密着力の均一性が低いことを意味する。)
×: グラフトポリマー膜が生成されない
Figure 2008260272
[実施例8]
(無電解めっき触媒付与工程)
前記実施例2で得られた基材B3を、硝酸銀1質量%水溶液に1分間浸漬し、その後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
(無電解めっき工程)
その後、下記組成の市販無電解めっき浴ATSアドカッパーIW(pH:12.7)に90分間浸漬して無電解めっきを行った。無電解めっき後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
<無電解めっき浴の組成>
水 258mL
ATSアドカッパーIW−A 15mL
ATSアドカッパーIW−M 24mL
ATSアドカッパーIW−C 3mL
この表面を原子間力顕微鏡で観察したところL/S=12/8μm、膜厚3.0μmの金属パターンが形成されていることが確認された。
金属パターン部の表面導電性をロレスタ−FP(LORESTA−FP:三菱化学(株)製)を用いて四探針法により測定したところ、7μΩ・cmであり、導電性は良好であった。
上記と同様の方法で10mm×200mmの金属パターンを形成し、JIS 5400の碁盤目テープ法に準じ、カットした碁盤目に対するテープの引き剥がしテストを行い、金属パターンの密着性を評価した。その結果、碁盤目状の100マスに対し、剥離は0であり密着性は十分であった。
[実施例9]
(金属イオン吸着工程)
前記実施例2で得られた基材B3を、硝酸銀1質量%水溶液に1分間浸漬し、その後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
(金属粒子形成工程)
その後、下記組成のグリオキシル酸水溶液(pH=12.5)に1分間浸漬して銀イオンを還元し金属粒子を形成させ、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
<グリオキシル酸水溶液の組成>
水 100mL
水酸化ナトリウム 1.0mg
グリオキシル酸 1.0mL
この表面を原子間力顕微鏡で観察したところL/S=10/10μm、膜厚0.9μmの250nm〜900nmに吸収を有する金属パターンが形成されていることが確認された。
上記と同様の方法で10mm×200mmの金属パターンを形成し、JIS 5400の碁盤目テープ法に準じ、カットした碁盤目に対するテープの引き剥がしテストを行い、金属パターンの密着性を評価した。その結果、碁盤目状の100マスに対し、剥離は0であり密着性は十分であった。
[実施例10]
(金属イオン吸着工程)
前記実施例2で得られた基材B3を、硝酸銀1質量%水溶液に1分間浸漬し、その後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
(金属粒子形成工程)
次に、下記組成のホルムアルデヒド水溶液(pH=13.0)に1分間浸漬して銀イオンを還元し金属粒子を形成させ、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
<ホルムアルデヒド水溶液の組成>
水 100mL
水酸化ナトリウム 1.4mg
ホルムアルデヒド 1.0mL
(無電解銀めっき工程)
その後、下記組成の無電解めっき浴(pH:7.0)に20分間浸漬して無電解めっきを行った。無電解めっき後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
<無電解めっき浴の組成>
水酸化ナトリウム−硝酸緩衝溶液 988mL
硝酸銀 2.0g
コハク酸イミド 5.9g
グリオキシル酸 3.7g
この表面を原子間力顕微鏡で観察したところL/S=10/10μm、膜厚1.1μmの250nm〜900nmに吸収を有する金属パターンが形成されていることが確認された。
また、金属パターン部の表面導電性をロレスタ−FP(LORESTA−FP:三菱化学(株)製)を用いて四探針法により測定したところ、40μΩ・cmであり、導電性は良好であった。
上記と同様の方法で10mm×200mmの金属パターンを形成し、JIS 5400の碁盤目テープ法に準じ、カットした碁盤目に対するテープの引き剥がしテストを行い、金属パターンの密着性を評価した。その結果、碁盤目状の100マスに対し、剥離は0であり密着性は十分であった。
[実施例11]
(無電解めっき触媒付与工程)
前記実施例2で得られた基材B3を、硫酸ニッケル1質量%水溶液に1分間浸漬し、その後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
(無電解めっき工程)
その後、無電解めっき浴(ニッケル−クロム:林メッキ工業所製)に10分間浸漬して無電解めっきを行った。無電解めっき後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
この表面を原子間力顕微鏡で観察したところL/S=10/10μm、膜厚1.5μmの250nm〜900nmに吸収を有する金属パターンが形成されていることが確認された。
また、金属パターン部の表面導電性をロレスタ−FP(LORESTA−FP:三菱化学(株)製)を用いて四探針法により測定したところ、100μΩ・cmであり、導電性は良好であった。
上記と同様の方法で10mm×200mmの金属パターンを形成し、JIS 5400の碁盤目テープ法に準じ、カットした碁盤目に対するテープの引き剥がしテストを行い、金属パターンの密着性を評価した。その結果、碁盤目状の100マスに対し、剥離は0であり密着性は十分であった。
[実施例12]
(金属イオン吸着工程)
実施例6で得られた基材F3を、硝酸銀1質量%水溶液に2分間浸漬し、その後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
(金属粒子形成工程)
続いて、基材F3を、下記組成のジメチルアミンボラン水溶液(pH=12.1)中に1分間浸漬し、銀イオンを還元して金属粒子を析出させた。その後、基材F3は水で洗浄して、エアーガンで乾燥させた。
<ジメチルアミンボラン水溶液の組成>
・水 100mL
・水酸化ナトリウム 400mg
・ジメチルアミンボラン 295mg
金属粒子が析出した表面について、原子間力顕微鏡(Nanopix1000:セイコーインスルメンツ社製)を使用して観察したところ、L/S=10/10μm、膜厚1.5μmの金属パターンが形成されていることが確認された。
上記と同様の方法で10mm×200mmの金属パターンを形成し、JIS 5400の碁盤目テープ法に準じ、カットした碁盤目に対するテープの引き剥がしテストを行い、金属パターンの密着性を評価した。その結果、碁盤目状の100マスに対し、剥離は0であり密着性は十分であった。
また、金属粒子含有膜について、日立高分解能電解放出形走査電子顕微鏡(FESEM)S−4700(日立ハイテク社製)を用いて表面観察(倍率50000倍)を行い、体積平均粒径20nmの金属粒子が存在することが確認された。この金属粒子含有膜は250nm〜600nmに強い吸収を有し、遮光材料(フォトマスク)への利用が可能であることが分かる。
[実施例13]
(金属イオン吸着工程)
実施例7で得られた基材G3を、硝酸銀10質量%水溶液に1分間浸漬し、その後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
(金属粒子形成工程)
次に、下記組成のホルムアルデヒド水溶液(pH=13.0)に1分間浸漬して銀イオンを還元し金属粒子を形成させ、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
<ホルムアルデヒド水溶液の組成>
水 100mL
水酸化ナトリウム 1.4mg
ホルムアルデヒド 1.0mL
金属粒子が析出した表面について、原子間力顕微鏡(Nanopix1000:セイコーインスルメンツ社製)を使用して観察したところ、L/S=10/10μm、膜厚1.1μmの金属パターンが形成されていることが確認された。
上記と同様の方法で10mm×200mmの金属パターンを形成し、JIS 5400の碁盤目テープ法に準じ、カットした碁盤目に対するテープの引き剥がしテストを行い、金属パターンの密着性を評価した。その結果、碁盤目状の100マスに対し、剥離は0であり密着性は十分であった。
また、金属粒子含有膜について、日立高分解能電解放出形走査電子顕微鏡(FESEM)S−4700(日立ハイテク社製)を用いて表面観察(倍率50000倍)を行い、体積平均粒径30nmの金属粒子が存在することが確認された。この金属粒子含有膜は250nm〜600nmに強い吸収を有し、遮光材料(フォトマスク)への利用が可能であることが分かる。

Claims (20)

  1. 基材と、
    ラジカル重合開始部位と該基材に直接化学結合可能な部位とを有する化合物が前記基材に化学結合してなる重合開始層と、
    ラジカル重合可能な不飽和部位を有する化合物、及び、加熱又は露光によりラジカルを発生しうる化合物を含有するグラフトポリマー前駆体層と、
    をこの順に有することを特徴とする積層体。
  2. 前記重合開始層が、加熱又は露光によりラジカルを発生しうる化合物を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の積層体。
  3. 前記加熱又は露光によりラジカルを発生しうる化合物が、ハロオキソ酸塩、トリハロメチルトリアジン類、アシロキシムエステル、ビイミダゾール化合物、及びチタノセン化合物からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層体。
  4. 前記加熱及び露光によりラジカルを発生しうる化合物が、トリハロメチルトリアジン類、ビイミダゾール化合物、及びハロオキソ酸塩からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の積層体。
  5. 前記加熱及び露光によりラジカルを発生しうる化合物がハロオキソ酸塩であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の積層体。
  6. 前記グラフト前駆体層が、前記加熱及び露光によりラジカルを発生しうる化合物を0.1質量%以上20質量%以下の範囲で含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の積層体。
  7. 前記重合開始層が、前記加熱及び露光によりラジカルを発生しうる化合物を0.1質量%以上20質量%以下の範囲で含むことを特徴とする請求項2〜請求項6のいずれか1項に記載の積層体。
  8. 前記ラジカル重合可能な不飽和部位を有するポリマーが、金属イオン又は金属塩を吸着する部位を更に有することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の積層体。
  9. 前記ラジカル重合可能な不飽和部位を有するポリマーが、無電解めっき触媒又はその前駆体を吸着する部位を更に有することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の積層体。
  10. 前記グラフトポリマー前駆体層が、前記ラジカル重合可能な不飽和部位を有する化合物を複数種含有することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の積層体。
  11. 請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の積層体に対し、360nm〜700nmの波長の全面露光を行い、前記ラジカル重合可能な不飽和部位を有する化合物を前記重合開始層表面に直接結合してグラフトポリマーを生成させることを特徴とするグラフト膜形成方法。
  12. 請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の積層体に対し、360nm〜700nmの波長の像様露光を行い、前記ラジカル重合可能な不飽和部位を有する化合物を前記重合開始層表面に直接結合してグラフトポリマーを生成させることを特徴とするグラフトパターン形成方法。
  13. 請求項12に記載のグラフトパターン形成方法にて生成したグラフトポリマーに金属イオン又は金属塩を吸着させた後、該金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元し金属粒子を析出させる工程を有することを特徴とする金属パターン形成方法。
  14. 請求項12に記載のグラフトパターン形成方法にて生成したグラフトポリマーに無電解めっき触媒又はその前駆体を吸着させた後、無電解めっきを行い、めっき膜を形成する工程を有することを特徴とする金属パターン形成方法。
  15. 前記無電解めっきを行った後に、更に電気めっきを行うことを特徴とする請求項14に記載の金属パターン形成方法。
  16. 請求項13〜請求項15のいずれか1項に記載の金属パターン形成方法により形成された金属パターンを有するプリント配線基板。
  17. 請求項13〜請求項15のいずれか1項に記載の金属パターン形成方法により形成された金属パターンを有する薄層トランジスタ。
  18. 請求項16に記載のプリント配線基板を備えた装置。
  19. 請求項17に記載の薄層トランジスタを備えた装置。
  20. 請求項13〜請求項15のいずれか1項に記載の金属パターン形成方法により形成された金属パターンを用いたフォトマスク。
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