JP2008001793A - ポリイミドフィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】多層の基板を加熱プレスにより積層した際のヒンジ部におけるフィルム同士の密着を低減し、フィルム同士が擦れ有っての「音鳴り」トラブルを解消することのできる易滑性に優れたポリイミドフィルムおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】表面に高低差が0.05〜10μmの範囲にあるスジ状の凹凸を有し、かつスジ状凹凸の高低差の最大高さRyが4〜10μmの範囲にある、フィルム表面粗さRzが0.7〜8μmであるポリイミドフィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、スジ状凹凸を有することにより、易滑性に優れ、多層基板を結んでいるヒンジ部の離型性を良好にすることができる易滑性ポリイミドフィルムに関する。
ポリイミドフィルムは、絶縁性、耐熱性、電気特性、機械的特性に優れていることから、例えば銅箔などの金属箔と積層したフレキシブル回路基板用のベースフィルムなどの用途に幅広く利用されている。
そして、ポリイミドフィルムがこれらの用途に用いられる際の重要な要求特性の一つとして、フィルム表面の易滑性が挙げられる。フィルム表面が完全に平滑なポリイミドフィルムは滑り性が悪く、フィルム加工工程において、搬送時の支持体(例えばロールなど)との摩擦係数が大きく、しわが入ったり、ロールに巻き付いたりするため、例えばフレキシブルプリント基板を生産する際に、銅箔とのラミネートがうまくできないといったトラブルが生じることがある。
さらには、多層の基板をボンディングシートを用いて加熱プレスにより積層した際に基板同士を接合する役目をになっているヒンジ部にも熱プレスの影響を受けフィルム同士が密着し合ってしまい、それらを剥がす手間が生じるほか、擦れあって「音鳴り」を起こしてしまうといった不具合が生じることがある。
従来、ポリイミドフィルム表面に易滑性を付与する方法として、表面の粗面化が挙げられ、様々な方法が知られている。例えばポリイミドフィルムにリン酸カルシウムなどのフィラーを混合し、フィルム表面に微細な突起を生じさせることにより易滑性を付与する方法(例えば、特許文献1および特許文献2参照)が知られていた。また、ポリイミドがアルカリに溶解性があることを利用し、ポリイミドフィルム表面をアルカリ性溶液で処理して、表面を粗面化させることにより易滑性を付与する方法(例えば、特許文献3参照)が知られていた。これらの方法によってフィルム加工工程の搬送時に生じていた銅箔とのラミネートができないなどのトラブルは解消されたが、ヒンジ部におけるフィルム同士が密着し合うといった不具合、「音鳴り」などの不具合は生じたままであり、さらなるフィルム表面の粗面化が必要であった。
特開昭62−68852号公報 特開2002−256085号公報 特開平6−313055号公報
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
したがって、本発明の目的は、多層の基板を加熱プレスにより積層した際のヒンジ部におけるフィルム同士の密着を低減し、フィルム同士が擦れあって生じる「音鳴り」トラブルが解消された易滑性に優れたポリイミドフィルムを提供することにある。
上記の目標を達成するために、本発明のポリイミドフィルムは表面に高低差が0.05〜10μmの範囲にある多数のスジ状凹凸を有し、かつスジ状凹凸の高低差の最大高さRyが4〜10μmの範囲にあることを特徴とする。
さらに、本発明ポリイミドフィルムは下記(1)〜(4)を併せ持つことが好ましい。
(1)JIS B−0601(2001)に準じて測定したフィルム表面粗さRzが0.7〜10μmであること。
(2)スジ状凹凸の幅が0.1〜20μmの範囲であること。
(3)スジ状凹凸が0.1〜10000本/mmの範囲でフィルム表面に存在すること。
(4)表面にスジ状凹凸を付与することによって、JIS K―7105(1981)に準じて測定したヘイズ(曇価)の値が表面にスジ状凹凸を付与する前よりも1〜15増加したものであること。
また、本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、研磨物でポリイミドフィルム表面を擦過処理することによって、フィルム表面にスジ状凹凸を形成させることを特徴とする。
さらに、本発明ポリイミドフィルムの製造方法は下記(1)〜(5)を併せ持つことが好ましい。
(1)研磨物が、シート状物の表面に研磨材粒子を配した研磨テープであること。
(2)研磨材粒子が炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化セリウム、ダイヤモンドの各粒子のいずれかであること。
(3)研磨材の粒度が0.1〜100μmであること。
(4)1段階目で粒度0.1μm以上10μm未満の研磨材粒子を配置した研磨テープでポリイミドフィルム表面を擦過処理した後、2段階目で粒度10μm以上100μm以下の粒子を配置した研磨テープでポリイミドフィルム表面を擦過処理すること。
(5)1段階目で粒度10μm以上100μm以下の粒子を配置した研磨テープでポリイミドフィルム表面を擦過処理した後、2段階目で粒度0.1μm以上10μm未満の研磨材粒子を配置した研磨テープでポリイミドフィルム表面を擦過処理すること。
本発明のポリイミドフィルムは、表面にスジ状の凹凸を有することによって、易滑性を高め、その結果フィルム同士の密着が無くなり、折り曲げ時のフィルムの擦れ合いも無くなるため、フレキシブルプリント基板のヒンジ部へ好適に用いることができる。
以下本発明について詳細に説明する。
本発明で使用されるポリイミドフィルムの例としては、ピロメリット酸二無水物および4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから得られるポリアミド酸から製造されたポリイミドフィルム、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの4成分から得られるポリアミド酸から製造されたポリイミドフィルム、ピロメリット酸二無水物、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルの3成分から得られるポリアミド酸から製造されたポリイミドフィルム、ピロメリット酸二無水物、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンの3成分から得られるポリアミド酸から製造されたポリイミドフィルム、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびp−フェニレンジアミンから得られるポリアミド酸から製造されたポリイミドフィルム、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および4,4’−オキシジアニリンから得られるポリアミド酸から製造されたポリイミドフィルム、等が挙げられる。ポリアミド酸からポリイミドへの脱環化は化学的閉環法、熱的閉環法のいずれでも構わない。また加工性改善などを目的として10重量%以下の無機質または有機質の添加物を含有することも可能である。
本発明のポリイミドフィルムの厚みは3〜200μmであることが望ましい。厚みが3μm未満では形状を保持することが困難となり、また200μmを越えると屈曲性に欠けるため、フレキシブル回路基板用途には不向きである。またポリイミドフィルムの寸法安定性を向上させるために、アニール処理等により低熱収縮化させることや、接着性を向上させるためにプラズマ処理等を行っても良い。
本発明のポリイミドフィルムは表面に高低差が0.05〜10μmの範囲にある多数のスジ状凹凸を有し、かつスジ状凹凸の高低差の最大高さRyが4〜10μmの範囲にあることが必要である。
スジ状凹凸とは、フィルムの表面に凹部と凸部が連続して表面に存在することを言う。代表的な形状のスジ状凹凸を有するフィルムの断面図を図5に示す。図において、9は本来のフィルムの表面位置を示し、8は凹部、7は凸部である。凹凸の高低差5は凸部7の頂点と凹部8の頂点の長さを計測した値である。なお、図5の凹凸は凹部を長目に示して描いているが、凹凸のパターンはこれのみに限るものではなく、凸部が極めて低くフィルム表面位置9からあまり盛り上がらない場合もある。本発明のフィルムは、表面にこのようなスジ状凹凸が多数存在する。多数のスジ状凹凸の中には高低差の大きいもの(溝が深いもの)や高低差が小さいもの(溝が浅いもの)が存在するが、それらの高低差は0.05〜10μmの範囲にあることが必要である。スジ状凹凸の高低差が0.05μm未満のものが多数存在するとフィルムの滑り性が悪化し、また10μmを超えるものが存在するとフィルムの機械特性が悪化するので好ましくない。
またスジ状凹凸の高低差の最大高さRyが4〜10μmの範囲にあることが好ましい。ここでの最大高さRyは、具体的にはレーザーテック(株)製走査型レーザー顕微鏡「1LM15W」にて、ニコン製50倍レンズ(CF Plan Apo 50×/0.95 ∞/0 EPI)を用いて、「SURFACE2」モードで撮影後のSALTでの拡張表面粗さ0.01mm以上の面積での解析による最大高さRyで確認した値である。最大高さ4〜10μmのスジ状の凹凸が存在すると、熱プレスによるフィルム同士の密着後の剥離性がさらに向上するので好ましい。さらにスジ状の凹凸の幅は、0.1〜20μmの範囲に調整させることが好ましく、0.1〜10μmの範囲に調整させることがより好ましい。ここでのスジ状の凹凸の幅は図5の6を計測した値である。この範囲より下回ると滑り性が悪化し、上回るとフィルムの機械特性が悪化するので好ましくない。殊さらにはスジ状の凹凸が0.1〜10000本/mmの範囲に調整させることが好ましく、10〜1000本/mmに調整させることがより好ましく、100〜500本/mmに調整させることがさらにより好ましい。この範囲を下回ると滑り性が悪化するので好ましくなく、この範囲を上回るとフィルムの機械特性が悪化するので好ましくない。
本発明のポリイミドフィルムは、JIS B−0601(2001)に準じて測定したフィルム表面粗さRzが0.7〜10μmであることが好ましく、2〜9μmがさらに好ましく、3〜8μmがよりさらに好ましい。ここで示すフィルム表面粗さRzとは、JIS B−0601(2001)「表面粗さ」に基づき、レーザー顕微鏡により測定した値であり、実際にはレーザーテック(株)製走査型レーザー顕微鏡「1LM15W」にて、ニコン製50倍レンズ(CF Plan Apo 50×/0.95 ∞/0 EPI)を用いて、「SURFACE2」モードにてフィルム表面を撮影後、三谷商事(株)製SALTにて、粗さ曲線を作成する時のカットオフ値を0.025mmに設定して、拡張表面粗さ0.01mm以上の面積を解析し、Rz(十点平均粗さ)の値を読み取った値である。これらの特性は、フィルム表面上に特定のスジ状の凹凸を付与することによって得ることができる。
まず、本発明のポリイミドフィルムへのスジ状の凹凸を付与する方法としては、例えば図1〜図4に示すように、ポリイミドフィルムに研磨テープを接触させて走行させることによって得ることができる。
図1において、ポリイミドフィルムは巻出しロール1から送り出され、走行方向に対して逆方向に回転している研磨ロール3の表面を擦過しながら巻取りロール2に巻き取られる。図2では、巻出しロール1を出たポリイミドフィルムは逆方向に回転している研磨ロール3と押さえロール4との間を擦過しながら通り、巻取りロール2に巻き取られる。この時の面圧は1〜10kg/500mmが好ましい。図3では、巻出しロール1を出たポリイミドフィルムは2個の逆方向に回転している研磨ロール3、3’との間を擦過しながら通り、巻取りロール2に巻き取られる。ここでは面圧を高くするとフィルムの走行が困難となるので0.1〜5kg/500mmに面圧を設定しておくことが好ましい。さらには研磨処理を2回以上連続して処理する時には図4のように並べて処理することも可能である。
フィルムの片面のみを処理する場合は図1、図2あるいは図4のような方式で処理することができるが、図2あるいは図4の方が研磨ロールをフィルムに接触させる時の圧力をコントロールでき、効率的に凹凸を付与できるので好ましい。フィルムの両面を処理する場合は図3のように処理することによって得ることができる。これらの処理をする際にフィルムに与える張力としては10〜50N/mの範囲で調整することが好ましく、また処理速度は5〜40m/minの範囲で調整することが好ましい。
研磨ロールは表面が硬く、粗い状態のものであればよいが、テープに研磨剤をコーティングした研磨テープを通常のロールに貼り付けたものも使用可能である。研磨テープとしては、例えばPETフィルムをベースとし、その上に研磨材がコーティングされている形式のものが挙げられる。そのベースとなるPETフィルムの厚みは25〜75μmの範囲にあると取り扱いやすいので好ましい。研磨材は炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化セリウム、ダイヤモンドなどが挙げられ、研磨材の粒度は粗面化したい程度に応じて0.1〜100μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは1〜50μmの範囲にあること、さらに好ましくは5〜40μmの範囲にあることである。この範囲より粒度が大きいとフィルムを荒らしすぎて強度などの機械特性を損ねる恐れがあったり処理中にフィルムが破れたりして好ましくなく、この範囲より粒度が小さいとフィルムの易滑性を付与する効果が低くなるので好ましくない。また複数の研磨材による処理も可能であり、最初に粒度が10μm未満の研磨材を使用して、全面に細かいスジ状の凹凸を付けた後、次に粒度が10μm以上の研磨材を使用して、高低差が高く幅の大きいスジ状の凹凸を付ける方法もあり、またその逆も可能である。
このようにフィルム表面にスジ状の凹凸を付与することによって、フレキシブルプリント基板のヒンジ部を形成した後、熱プレスの影響を受けてもフィルム同士が密着し合わず、音鳴りなどの不具合を防ぐことができる。
フィルム表面にスジ状の凹凸を付与した際、フィルムの曇価を表すヘイズが高くなる。スジ状の凹凸の程度によってヘイズも変化するが、凹凸を付与する前よりもヘイズの上昇値を1〜15に調整させた方が好ましく、3〜10に調整させた方がより好ましい。ここに記すヘイズとは、具体的にはJIS K―7105(1981)「プラスチックの光学的特性試験法」にて、シングルビーム方式ヘイズコンピューター(HZ−1、スガ試験機製)を用いて、以下のような測定条件のもと測定したものである。
試料寸法:50mm×50mm
測定雰囲気:25℃
測定機条件:
(1)光源 :C光
(2)受光素子 :シリコンフォトダイオード//フィルター
(3)積分球 :140mmφ
(4)測定開口部 :18mmφ
(5)測定値の基準 :NPL(英国国立物理研究所)発行の標準板を基準
試料枚数:1枚
この範囲以下で調整すると熱プレスによるフィルム同士の密着後の剥離性に対する効果が無く、範囲を超えた調整をすると処理時にフィルムが破れたりして大量に処理することが困難であり好ましくない。
スジ状の凹凸の方向は、フィルムの機械送り方向(MD)に平行に沿って付与させること、フィルムの幅方向(TD)に平行に沿って付与させること、また機械送り方向とは斜めに沿って付与させること等、どのように付与させても構わないが、図1〜4に示すようにフィルムの機械送り方向(MD)に平行に沿って付与させる方法が、最も工程的に簡易にできるので好ましい。
その他研磨方法については、研磨テープとして円盤状のディスクタイプのものを使用して、これをフィルム表面に回転させながら接触させることで、スジ状の凹凸をまったくのランダム方向に発生させても良い。
かくして、易滑性に優れ、多層フレキシブル板を結んでいるヒンジ部の離型性を良好にすることができる易滑性ポリイミドフィルムを提供することができる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の各特性は、以下の方法により測定した値である。
[摩擦係数(静摩擦係数)]フィルムの処理面同士を重ね合わせ、JIS K−7125(1999)に基づき測定した。すなわち、スベリ係数測定装置Slip Tester(株式会社テクノニーズ製)を使用し、フィルム処理面同士を重ね合わせて、その上に200gのおもりを載せ、フィルムの一方を固定、もう一方を100mm/分で引っ張り、摩擦係数を測定した。
[フィルムの表面粗さRzの測定]JIS B−0601(2001)「表面粗さ」に基づき、レーザー顕微鏡により測定した。すなわちレーザーテック(株)製走査型レーザー顕微鏡「1LM15W」にて、ニコン製50倍レンズ(CF Plan Apo 50×/0.95 ∞/0 EPI)を用いて、「SURFACE2」モードにてフィルム表面を撮影後、三谷商事(株)製SALTにて、粗さ曲線を作成する時のカットオフ値を0.025mmに設定して、拡張表面粗さ0.01mm以上の面積を解析し、Rz(十点平均粗さ)の値を読み取った。
[スジ状凹凸の高低差]レーザーテック(株)製走査型レーザー顕微鏡「1LM15W」にて、ニコン製50倍レンズ(CF Plan Apo 50×/0.95 ∞/0 EPI)を用いて、「SURFACE1」モードにてフィルム表面を撮影・解析し得られたチャートから各スジ状凹凸の高低差(図5の5)を読み取った。代表値としては無作為に選んだ5点の平均値とし、最大高さとしては、「SURFACE2」モードで撮影後のSALTでの拡張表面粗さ0.01mm以上の面積での解析による最大高さRyで確認した。
[スジ状凹凸の幅]レーザーテック(株)製走査型レーザー顕微鏡「1LM15W」にて、ニコン製50倍レンズ(CF Plan Apo 50×/0.95 ∞/0 EPI)を用いて、「SURFACE1」モードにてフィルム表面を撮影・解析し、各スジにLキー(左)とRキー(右)を定めてスジ幅(図5の6)を読み取った。この視野で見える中で最大幅のスジの幅を代表値とした。
[スジ状凹凸の数(密度)]レーザーテック(株)製走査型レーザー顕微鏡「1LM15W」にて、ニコン製50倍レンズ(CF Plan Apo 50×/0.95 ∞/0 EPI)を用いて、「SURFACE1」モードにてフィルム表面を撮影し、観察されているスジの数をカウントした。
[ヘイズ]JIS K―7105(1981)「プラスチックの光学的特性試験法」にて、シングルビーム方式ヘイズコンピューター(HZ−1、スガ試験機製)を用いて、以下のような測定条件のもとヘイズを測定した。
試料寸法:50mm×50mm
測定雰囲気:25℃
測定機条件:
(1)光源 :C光
(2)受光素子 :シリコンフォトダイオード//フィルター
(3)積分球 :140mmφ
(4)測定開口部 :18mmφ
(5)測定値の基準 :NPL(英国国立物理研究所)発行の標準板を基準
試料枚数:1枚
[プレス後の剥離性評価]研磨処理されたフィルムについて、処理面とは反対側の面に接着剤Pyralux LF100(デュポン社製)を介して34μm厚の圧延銅箔(日鉱マテリアルズ社製)を積層させ、これを2組作成した。この銅張積層体のフィルム面同士を合わせて、180℃×1時間、10MPaの圧力で加熱プレスし、プレス後に2組の銅張積層体が剥離されるかどうかを下記のよう評価した。
○:取り出して既に剥離している(剥離性:良好)
△:手に持って軽く振ると剥離する(剥離性:可)
×:手に持って軽く振っても剥離されず密着している(剥離性:不良)。
[実施例1]ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから得られるポリアミド酸に平均粒経1μmのリン酸水素カルシウムを約0.1重量%混入させ、製造された厚さ25μmのポリイミドフィルムに、図4の要領にて走行速度10m/min、処理面圧3kg/500mmで、粒度5μmの炭化ケイ素を研磨材として用いた研磨テープを使用して処理し、続いて粒度40μmの炭化ケイ素を研磨材として用いた研磨テープを使用して処理した。得られたフィルムの静摩擦係数は0.38、表面粗さRzは4.56μmであり、フィルム表面上に付与されたスジ状凹凸の高低差は2.30μm、最大高さRyは7.49μm、スジ状凹凸の最大幅は17.4μm、スジ状凹凸の数は270本/mm幅であった。フィルムのヘイズは研磨処理前が5.2、処理後が13.7であった。プレス後の剥離性評価については、プレスから取り出した時に2組の銅張積層体は既に剥離していた(剥離性:良好(○))。結果を表1に示す。
[実施例2]ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから得られるポリアミド酸に平均粒径1μmのリン酸水素カルシウムを約0.1重量%混入させ、製造された厚さ12.5μmのポリイミドフィルムを用いて実施例1と同様に研磨処理した結果、得られたフィルムの静摩擦係数は0.41、表面粗さRzは、5.06μmであり、フィルム表面上に付与されたスジ状凹凸の高低差は1.91μm、最大高さRyは5.56μm、スジ状凹凸の最大幅は10.2μm、スジ状凹凸の数は295本/mm幅であった。フィルムのヘイズは研磨処理前が3.1、処理後が12.2であった。プレス後の剥離性評価については、プレスから取り出した時に2組の銅張積層体は既に剥離していた(剥離性:良好(○))。結果を表1に示す。
[実施例3]ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから得られるポリアミド酸に平均粒径1μmのリン酸水素カルシウムを約0.1重量%混入させ、製造された厚さ12.5μmのポリイミドフィルムに、粒度40μmの炭化ケイ素を研磨材として用いた研磨テープを使用して図1の要領にて走行速度10m/min、処理面圧3kg/500mmで処理した。得られたフィルムの静摩擦係数は0.44、表面粗さRzは7.35μmであり、フィルム表面上に付与されたスジ状凹凸の高低差は2.38μm、最大高さRyは8.38μm、スジ状凹凸の最大幅は17.4μm、スジ状凹凸の数は180本/mm幅であった。フィルムのヘイズは研磨処理前が3.0、処理後が11.9であった。プレス後の剥離性評価については、プレスから取り出した時に2組の銅張積層体は既に剥離していた(剥離性:良好(○))。結果を表1に示す。
[実施例4]ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから得られるポリアミド酸に平均粒径1μmのリン酸水素カルシウムを約0.1重量%混入させ、製造された厚さ12.5μmのポリイミドフィルムに、図4の要領にて走行速度10m/min、処理面圧3kg/500mmで、粒度5μmの炭化ケイ素を研磨材として用いた研磨テープを使用して処理し、続いて粒度30μmの炭化ケイ素を研磨材として用いた研磨テープを使用して処理した。得られたフィルムの静摩擦係数は0.39、表面粗さRzは3.80μmであり、フィルム表面上に付与されたスジ状凹凸の高低差は1.64μm、最大高さRyは4.24μm、スジ状凹凸の最大幅は8.8μm、スジ状凹凸の数は252本/mm幅であった。フィルムのヘイズは研磨処理前が3.0、処理後が8.8であった。プレス後の剥離性評価については、プレスから取り出した時に2組の銅張積層体は既に剥離していた(剥離性:良好(○))。結果を表1に示す。
[実施例5]ピロメリット酸二無水物70モル%、3,3‘,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物30モル%と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル80モル%、パラフェニレンジアミン20モル%とから得られるポリアミド酸に平均粒径1μmのリン酸水素カルシウムを約0.1重量%混入させ、製造された厚さ12.5μmのポリイミドフィルムに図4の要領にて走行速度10m/min、処理面圧3kg/500mmで、粒度5μmの炭化ケイ素を研磨材として用いた研磨テープを使用して処理し、続いて粒度40μmの炭化ケイ素を研磨材として用いた研磨テープを使用して処理した。得られたフィルムの静摩擦係数は0.35、表面粗さRzは5.34μmであり、フィルム表面上に付与されたスジ状凹凸の高低差は2.23μm、最大高さRyは6.67μm、スジ状凹凸の最大幅は9.5μm、スジ状凹凸の数は268本/mm幅であった。フィルムのヘイズは研磨処理前が3.0、処理後が11.2であった。プレス後の剥離性評価については、プレスから取り出した時に2組の銅張積層体は既に剥離していた(剥離性:良好(○))。
[実施例6]ピロメリット酸二無水物70モル%、3,3‘,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物30モル%と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル80モル%、パラフェニレンジアミン20モル%とから得られるポリアミド酸に平均粒径1μmのリン酸水素カルシウムを約0.1重量%混入させ、製造された厚さ12.5μmのポリイミドフィルムに図4の要領にて走行速度10m/min、処理面圧3kg/500mmで、粒度9μmの炭化ケイ素を研磨材として用いた研磨テープを使用して処理し、続いて粒度30μmの炭化ケイ素を研磨材として用いた研磨テープを使用して処理した。得られたフィルムの静摩擦係数は0.38、表面粗さRzは4.54μmであり、フィルム表面上に付与されたスジ状凹凸の高低差は1.82μm、最大高さRyは4.50μm、スジ状凹凸の最大幅は8.5μm、スジ状凹凸の数は225本/mm幅であった。フィルムのヘイズは研磨処理前が3.1、処理後が7.7であった。プレス後の剥離性評価については、プレスから取り出した時に2組の銅張積層体は既に剥離していた(剥離性:良好(○))。結果を表1に示す。
[比較例1]ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから得られ、ポリアミド酸から製造された厚さ25μmのポリイミドフィルムを研磨テープで処理することなく各種特性を測定した。スジ状の凹凸は無く、静摩擦係数は2.20、表面粗さRzは、0.13μmであった。プレス後の剥離性評価については、2組の銅張積層体は完全に密着してしまい手で振っても剥離しなかった(剥離性:不良(×))。結果を表2に示す。
[比較例2]ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから得られたポリアミド酸に平均粒径1μmのリン酸水素カルシウムを約0.1重量%混入させ、製造された厚さ25μmのポリイミドフィルムを研磨テープで処理することなく各種特性を測定した。スジ状の凹凸は無く、静摩擦係数は0.74、表面粗さRzは、0.68μmであった。プレス後の剥離性評価については、2組の銅張積層体は完全に密着してしまい手で振っても剥離しなかった(剥離性:不良(×))。結果を表2に示す。
[比較例3]ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから得られるポリアミド酸に平均粒径1μmのリン酸水素カルシウムを約0.1重量%混入させ、製造された厚さ12.5μmのポリイミドフィルムに、粒度9μmの炭化ケイ素を研磨材として用いた研磨テープを使用して図1の要領にて走行速度10m/min、処理面圧3kg/500mmで処理した。得られたフィルムの静摩擦係数は0.48、表面粗さRzは1.58μmであり、フィルム表面上に付与されたスジ状凹凸の高低差は0.76μm、最大高さRyは1.44μm、スジ状凹凸の最大幅は1.5μm、スジ状凹凸の数は245本/mm幅であった。フィルムのヘイズは研磨処理前が3.0、処理後が4.2であった。プレス後の剥離性評価については、プレスから取り出した時に2組の銅張積層体は軽く密着しており手に持って軽く振ると剥離した(剥離性:可(△))。結果を表2に示す。
Figure 2008001793
Figure 2008001793
本発明のポリイミドフィルムは絶縁性、耐熱性、電気特性、機械的特性に優れかつ,易滑性に優れていることから、例えば銅箔などの金属箔と積層したフレキシブル回路基板用のベースフィルムとして好ましく利用できる。
フィルム表面にスジ状の凹凸を形成させる方法を示す説明図である。 フィルム表面にスジ状の凹凸を形成させる他の方法を示す説明図である。 フィルム表面にスジ状の凹凸を形成させるさらに他の方法を示す説明図である。 フィルム表面にスジ状の凹凸を形成させるまたさらに他の方法を示す説明図である。 フィルム表面のスジ状の凹凸を示す模式図である。
符号の説明
1:巻出しロール、2:巻取りロール、3,3’:研磨ロール、4:押さえロール、5:スジ状凹凸の高低差、6:スジ状凹凸の幅、7:凸部、8:凹部、9:フィルム表面位置

Claims (11)

  1. 表面に高低差が0.05〜10μmの範囲にある多数のスジ状凹凸を有し、かつスジ状凹凸の高低差の最大高さRyが4〜10μmの範囲にあることを特徴とするポリイミドフィルム。
  2. JIS B−0601(2001)に準じて測定したフィルム表面粗さRzが0.7〜10μmであることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルム。
  3. スジ状凹凸の幅が0.1〜20μmの範囲であることを特徴とする請求項2に記載のポリイミドフィルム。
  4. スジ状凹凸が0.1〜10000本/mmの範囲でフィルム表面に存在することを特徴とする請求項3に記載のポリイミドフィルム。
  5. 表面にスジ状凹凸を付与することによって、JIS K―7105(1981)に準じて測定したヘイズ(曇価)値が表面にスジ状凹凸を付与する前よりも1〜15増加したものであることを特徴とする請求項4に記載のポリイミドフィルム。
  6. 研磨物でポリイミドフィルム表面を擦過処理することによって、フィルム表面にスジ状凹凸を形成させることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  7. 研磨物が、シート状物の表面に研磨材粒子を配した研磨テープであることを特徴とする請求項6に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  8. 研磨材粒子が炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化セリウム、ダイヤモンドの各粒子のいずれかであることを特徴とする請求項7に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  9. 研磨材の粒度が0.1〜100μmであることを特徴とする請求項7または8に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  10. 1段階目で粒度0.1μm以上10μm未満の研磨材粒子を配置した研磨テープでポリイミドフィルム表面を擦過処理した後、2段階目で粒度10μm以上100μm以下の粒子を配置した研磨テープでポリイミドフィルム表面を擦過処理することを特徴とする請求項9に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  11. 1段階目で粒度10μm以上100μm以下の粒子を配置した研磨テープでポリイミドフィルム表面を擦過処理した後、2段階目で粒度0.1μm以上10μm未満の研磨材粒子を配置した研磨テープでポリイミドフィルム表面を擦過処理することを特徴とする請求項9に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
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