JP2008000102A - ヨーグルト製造用種菌 - Google Patents

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Abstract

【課題】環境温度によらず、通常のヨーグルト製造法と何ら変わることのない手順で、発酵遅延も起こすことなく、しかも発酵が進行しすぎても酸味が上がり過ぎることもない、マイルドな酸味と旨味をいつまでも維持することができるヨーグルトを製造するための種菌を提供する。
【解決手段】発酵が進行しすぎても酸味が上がり過ぎない菌種の組み合わせであって、しかも至適温度が異なる菌種を混合して種菌とすることで、より具体的には、好熱性(thermophilic)菌と中温性(mesophilic)菌、たとえば、好熱性のストレプトコッカス・サリバリウス・亜種・サーモフィラス(Streptococcus salivarius subsp.thermophilus)あるいはエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)と、中温性のラクトコッカス・ラクティス・亜種・クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)との混合菌種を種菌とすることで課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、発酵が進行しすぎても酸味が上がり過ぎない菌種の組み合わせであって、しかも好熱性(thermophilic)菌種と中温性(mesophilic)菌種との組み合わせからなることを特徴とするヨーグルト製造用種菌に関する。より詳しくは、ストレプトコッカス(Streptococcus)属あるいはエンテロコッカス(Enterococcus)属から選択される好熱性の1菌種と、ラクトコッカス(Lactococcus)属あるいはラクトバシラス(Lactobacillus)属から選択される中温性の1菌種との混合2菌種からなることを特徴とするヨーグルト製造用種菌に関する。
ヨーグルトはヨーロッパ地方で古くから飲用されており、特殊な種菌で牛乳を発酵させ、カード状に凝固したものである。その特有の爽やかな呈味性はもとより、栄養学的に優れ、しかも、整腸作用等の優れた生理作用も有することから、重要な発酵食品の一つとなっている。
ヨーグルトは、その歴史を紀元前にまで遡ることができ、伝統的に自家製造されてきた。ヨーグルト発祥の地域で長寿人口が多いことで、その効用が広く宣伝されるようになってからは、ヨーグルト製造用の種菌は人手を渡って今では簡単に入手できるようになった。
日本国内でも最近は、主婦がヨーグルトを家庭で製造する習慣が広まり、種々のヨーグルトの種菌が販売されるようになった。その中にはブルガリアヨーグルト(Bulgarian yoghurt)、ケフィア(Kefir)、カスピ海ヨーグルト(Caspian sea yoghurt)等のヨーグルトが人気を博している。
ヨーグルト製造用の種菌には、生育のための至適温度が37℃から45℃の好熱性の菌種と、至適温度が20℃から30℃の中温性の菌種とがある(例えば、非特許文献1,2参照)。
森地敏樹,乳酸菌,岡見吉郎ら編集,最新微生物ハンドブック,pp.317−334,サイエンスフォーラム,1986. Dairy processing handbook,pp.234-235,Tetra Pak Processing Systems AB,S-221 86 Lund,Sweden.
好熱性の菌種には、Streptococcus salivarius subsp.thermophilus(至適温度:37℃から45℃)、Enterococcus durans(至適温度:37℃から40℃)、Enterococcus faecium(至適温度:37℃から40℃)等の乳酸球菌、Lactobacillus acidphilus(至適温度:37℃から40℃)、Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus(至適温度:37℃から45℃)、Lactobacillus helveticus(至適温度:37℃から40℃)、Lactobacillus delbrueckii subsp.lactis(至適温度:40℃から45℃)等のラクトバシラス(Lactobacillus)属、及びビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属(至適温度:37℃)の乳酸桿菌が挙げられ、これらの種菌は単一あるいは複合してヨーグルトの製造に用いられる。
中温性の菌種には、Lactococcus lactis subsp.cremoris(至適温度:25℃から30℃)、Lactococcus lactis subsp.lactis(至適温度:30℃)、Lactococcus lactis subsp.lactis biovar diacetylactis(至適温度:30℃)、Leuconostoc mesenteroides subsp.cremoris(至適温度:20℃から25℃)等の乳酸球菌、及びLactobacillus casei(至適温度:30℃)、Lactobacillus plantarum(至適温度:25℃から30℃)、Lactobacillus paracasei subsp.paracasei(至適温度:25℃から30℃)、Lactobacillus brevis(至適温度:25℃から30℃)等のラクトバシラス(Lactobacillus)属の乳酸桿菌が挙げられ、これらの種菌は単一あるいは複合してヨーグルトの製造に用いられる。
たとえば、ブルガリアヨーグルトは、いずれも好熱性の菌種であるStreptococcus salivarius subsp.thermophilusとLactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricusとの混合菌種を種菌にして製造される。好熱性の菌種を利用する最大の利点は、熱くした牛乳に種菌を熱いうちに加えて毛布等に包んで発酵させることで、雑菌の繁殖を抑えてヨーグルトを短時間の発酵で製造できることにある。最近では、主婦の要望から製造のための専用の保温器が発売されるに至っている。
また、カスピ海ヨーグルトは、いずれも中温性の菌種であるLactococcus lactis subsp.cremorisとAcetobacter orientalisの2菌種(例えば、非特許文献3参照)を種菌にして製造される。このヨーグルトの製造は、保温器を使う必要がないことで、主婦が室温で片手間につくることができ、家庭で気軽に作れるヨーグルトの定番になりつつある。
石田達也,いわゆるカスピ海ヨーグルトをめぐって,健康・栄養ニュース,10,2,2004.
このように、ヨーグルトの製造においては、乳酸菌による乳発酵を一定の温度条件のもとに管理することで一定品質の仕上がりが可能となるため、混合菌種を種菌とする場合には、至適温度が同じ菌種を組み合わせることが慣用的である(例えば、非特許文献1参照)。
なお、チーズ等の乳発酵用種菌に好熱性菌種と中温性菌種とが偶然に混在することはある。しかし、ヨーグルト製造用種菌に、好熱性菌種と中温性菌種を1菌種ずつあえて混合して使用する報告例は、本発明者の知り得る限り未だ存在しない。その理由として、至適温度が異なる菌種の組み合わせは、乳発酵の管理をかえって難しくするため、一定温度に管理して製造する工業生産には全く適さないからである。
ところで、日本のように気候に四季の変化があり、1年を通して外気温が変化し、寒暖差が30℃以上にもなる地域でヨーグルトを一般家庭でつくる場合、冬場はヨーグルトの仕上がりが遅れて、食べたいときに食べることができなかったり、夏場はその逆に仕上がりが早まり、発酵が進み過ぎて酸味が上がって食するには好ましくなくなったりする課題があった。
その理由は、ヨーグルト製造が乳酸菌による発酵の温度と時間の影響を受けるため、発酵に関する専門的知識がない主婦にとって美味しいと感ずる酸味を片手間に管理することが難しいからである。
たとえば、カスピ海ヨーグルトの場合、Lactococcus lactis subsp.cremorisには発酵時間が長くなると酸の生産が止まるという性質があるため、発酵時間が長くなっても酸っぱくなりすぎて不味いと感じることはない。しかしAcetobacter orientalisが酢酸を産生するため、発酵が進み過ぎると酸味が上がって食するには好ましくなくなってしまう課題があった。
これを解決する手段のひとつに、カスピ海ヨーグルトからAcetobacter orientalisを取り除き、Lactococcus lactis subsp.cremorisのみを単独で種菌とする製造方法が報告された(特許文献1参照)。
特開2005−110615号公報
しかしながらLactococcus lactis subsp.cremorisを単菌で種菌として作ったカスピ海ヨーグルトは、呈味が単調なため、毎日作り続けた場合には飽きがくるという欠点があった。また、室温でつくることが多いため、冬場はヨーグルトの仕上がりが遅れて、食べたいときに食べることができないという課題があった。
一方、ブルガリアヨーグルトの場合、発酵時間が数時間長くなるだけで、酸の生産量が多くなり、酸っぱくなり過ぎてしまい、発酵に関する専門的知識がない主婦が美味しいと感ずる酸味のところで発酵を止めることは非常に困難であった。また、発酵停止時の酸味が最適であっても、冷蔵庫で保存しているうちに、酸味が強くなってしまう難点があった。
これを解決するために、酸生産が止まる性質があるStreptococcus salivarius subsp.thermophilus単菌でヨーグルトを製造した場合、上記カスピ海ヨーグルトと同様、味に飽きがくるという欠点のほかに、酸の生産量が少ないためにヨーグルトの固まり具合が弱いという課題があった。
この課題の解決に関しては、発酵遅延を起こすことがない、優れた増殖性と生酸性を示す高酸生成型Streptococcus salivarius subsp.thermophilus菌株KT01(FERM P−19381)を単菌で種菌としてヨーグルトを製造する方法が一部報告された(特許文献2参照)。
特開2005−21050号公報
このように、発酵に関する専門的知識がない主婦とっては、ヨーグルトを片手間に製造しても、発酵遅延を起こすことなく、しかも発酵が進行しすぎて酸味が上がり過ぎることもない、マイルドな酸味と旨味をいつまでも維持することができる種菌の提供が強く渇望されている。
そこで、本発明の目的は、従来の問題を解決し、通常のヨーグルト製造法と何ら変わることのない手順で、発酵遅延を起こすことなく、しかも発酵が進行しすぎて酸味が上がり過ぎることもない、マイルドな酸味と旨味をいつまでも維持することができるヨーグルトを製造するための種菌を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく、ヨーグルト製造に用いられる種菌の組み合わせを鋭意検索した。その過程で、至適温度が異なる菌種をあえて組み合わせて種菌とすることで、発酵遅延を起こすことなく、しかも発酵が進行しすぎて酸味が上がり過ぎることもない、マイルドな酸味と旨味をいつまでも維持することができるヨーグルトを製造できるようになることを見出した。さらに、至適温度が異なる菌種を混合種菌とすることで、発酵の適応温度域が拡がり、日本のように1年を通して外気温が変化する環境で、呈味が四季を通じて微妙に変化するヨーグルトを製造できることも見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、発酵が進行しすぎても酸味が上がり過ぎない菌種の組み合わせであって、しかも好熱性菌種と中温性菌種との混合菌種からなることを特徴とするヨーグルト製造用種菌、より詳しくは、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、あるいはラクトバシラス(Lactobacillus)属から選択される好熱性の1菌種と、ラクトコッカス(Lactococcus)属から選択される中温性の1菌種との混合2菌種からなることを特徴とするヨーグルト製造用種菌を提供するものである。
以下、本発明について詳細に説明する。先ず、本発明の「ヨーグルト製造用種菌」は、発酵が進行しすぎても酸味が上がり過ぎない菌種を種菌とすることを第1の特徴とする。
このことによって、夏場の熱帯期であっても、仕上がりが早まり、発酵が進み過ぎて酸味が上がって食するには好ましくなくなる課題が解決される。しかも、ブルガリアヨーグルトの場合のように、保温器を用いて製造しても、発酵が進み過ぎて酸味が上がって食するには好ましくなくなることも、さらに、冷蔵庫で保存しているうちに酸味が強くなってしまうこともない。
本発明の「発酵が進行しすぎても酸味が上がり過ぎない」とは、具体的には発酵による有機酸の産生が主に乳酸を主体とし、発酵期間が2日間経過してもpHが4.0以下に下がらないことを指す。
さらに、本発明の「ヨーグルト製造用種菌」は、至適温度が異なる菌種を混合種菌とすることを第2の特徴とする。
このことは、微生物の生育スピードが、発酵温度が低いときには中温性菌が優勢となり、逆に発酵温度が高いときには好熱性菌が優勢となることで、さらに混合種菌を構成する個々の種菌の共棲関係によって単菌種よりも生育が早まることで、ヨーグルト製造の適応温度域が8℃から52℃まで拡がる点で有用となる。このことによって、室温で発酵しても、冬場の寒冷期にヨーグルトの仕上がりが遅れて、食べたいときに食べることができないという課題を解決できるようになる。
ところで、微生物はそれぞれ特有の呈味性成分を産生する。したがって、混合種菌でヨーグルトを製造した場合、その呈味は構成する個々の種菌が産生する呈味性成分を複合したものとなる。したがって、本発明のように至適温度が異なる菌種を混合種菌とすることは、構成する個々の種菌の生育が発酵温度の影響を受け、ヨーグルト中の細菌叢が変化するため、呈味がヨーグルトをつくる温度によって変わる点で有用となる。このことによって、単菌種を種菌としてヨーグルトを製造した場合に生じた、呈味が単調で飽きがくるという課題を解決できるようになる。
たとえば、カスピ海ヨーグルトのように室温で製造した場合には、混合種菌を構成する個々の種菌の生育が1年を通して変化する外気温の影響を受けるため、呈味が四季を通じて微妙に変化し、味に奥深さがあるヨーグルトを製造できるようになる。
この呈味性が変化するヨーグルトの製造は、保温器を用いた場合でも、設定する保温(発酵)温度を変えることで可能となる。さらに、保温の設定温度を選択することで、家庭ごとにその家族がもっとも美味しいと感じるヨーグルトができるようになる。
このように本発明の「ヨーグルト製造用種菌」であれば、家庭の主婦が同じ種菌を使っても、毎日作り続けて飽きがくることがないヨーグルトを通年製造できる。
本発明の「ヨーグルト製造用種菌」に使用される「好熱性の菌種」とは、生育のための至適温度が37℃から45℃までくらいの菌種を指し、例えばStreptococcus salivarius subsp.thermophilus(至適温度:37℃から45℃)、Enterococcus durans(至適温度:37℃から40℃)、Enterococcus faecium(至適温度:37℃から40℃)等の乳酸球菌、Lactobacillus acidphilus(至適温度:37℃から40℃)、Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus(至適温度:37℃から45℃)、Lactobacillus helveticus(至適温度:37℃から40℃)、Lactobacillus delbrueckii subsp.lactis(至適温度:40℃から45℃)等のラクトバシラス属、及びビフィドバクテリウム属(至適温度:37℃)の乳酸桿菌が挙げられる。その中で、発酵が進行しすぎても酸味が上がり過ぎない菌種として、ホモ型乳酸菌がより好ましい。
本発明の「ヨーグルト製造用種菌」に使用される「中温性の菌種」とは、生育のための至適温度が20℃から30℃までくらいの菌種を指し、例えばLactococcus lactis subsp.cremoris(至適温度:25℃から30℃)、Lactococcus lactis subsp.lactis(至適温度:30℃)、Lactococcus lactis subsp.lactis biovar diacetylactis(至適温度:30℃)、Leuconostoc mesenteroides subsp.cremoris(至適温度:20℃から25℃)等の乳酸球菌、及びLactobacillus casei(至適温度:30℃)、Lactobacillus plantarum(至適温度:25℃から30℃)、Lactobacillus paracasei subsp.paracasei(至適温度:25℃から30℃)、Lactobacillus brevis(至適温度:25℃から30℃)等のラクトバシラス(Lactobacillus)属の乳酸桿菌が挙げられる。
本発明の「ヨーグルト製造用種菌」に使用される「ストレプトコッカス(Streptococcus)属の1菌種」とは、Streptococcus salivarius subsp.thermophilus等の菌種を指し、好ましくはStreptococcus salivarius subsp.thermophilus菌株DL1が挙げられる。
「Streptococcus salivarius subsp.thermophilus菌株DL1」は、グルジア産ヨーグルト・マリアーミ(Mariami)からの分離菌株で、その16SリボゾームDNA塩基配列はDDBJ/EMBL/GenBank国際塩基配列データベースに番号AB200871のもとに登録された。FASTA解析の結果、菌株DL1はその基準菌株ATCC 19258と99.934%という極めて高い相同性を示した。この菌株は独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに番号FERM P−20764のもとに寄託された。
本発明の「ヨーグルト製造用種菌」に使用される「エンテロコッカス(Enterococcus)属の1菌種」とは、Enterococcus duransあるいはEnterococcus faecium等の菌種を指し、好ましくはEnterococcus faecium菌株ML4が挙げられる。
「Enterococcus faecium菌株ML4」は、グルジア産ヨーグルト・マッツォーニライク(Matsoni-like)からの分離菌株で、その16SリボゾームDNA塩基配列はDDBJ/EMBL/GenBank国際塩基配列データベースに番号AB232954のもとに登録された。FASTA解析の結果、菌株ML4はその基準菌株ATCC 19434と99.669%という極めて高い相同性を示した。この菌株は独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに番号FERM P−20765のもとに寄託された。
本発明の「ヨーグルト製造用種菌」に使用される「ラクトコッカス(Lactococcus)属の1菌種」とは、Lactococcus lactis subsp.cremoris、Lactococcus lactis subsp.lactis、Lactococcus lactis subsp.lactis biovar diacetylactis等の菌種を指し、好ましくはLactococcus lactis subsp.cremoris菌株CF4が挙げられる。
「Lactococcus lactis subsp.cremoris菌株CF4」は、カスピ海ヨーグルトからの分離菌株で、その16SリボゾームDNA塩基配列はDDBJ/EMBL/GenBank国際塩基配列データベースに番号AB181302のもとに登録された。FASTA解析の結果、菌株CF4はその基準菌株NCDO 607と99.933%という極めて高い相同性を示した。この菌株は独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに番号FERM P−20848のもとに寄託された。
本発明の「ヨーグルト製造用種菌」に使用される「ラクトバシラス(Lactobacillus)属の1菌種」とは、Lactobacillus casei、Lactobacillus paracasei subsp.paracasei、Lactobacillus brevis等の菌種を指し、好ましくはLactobacillus paracasei subsp.paracasei菌株FERM BP−10123及びLactobacillus brevis菌株FERM BP−4693が挙げられる。
本発明の「混合2菌種」とは、好熱性の1菌種と中温性の1菌種との生菌数の割合が1:100億から100億:1の菌数比で、より好ましくは1:1である。なお、この生菌数の割合は、初期の割合を示すものである。
上記に述べた本発明の「ヨーグルト製造用種菌」は、通常のヨーグルトのような活性状態にある菌であっても、凍結した菌や凍結乾燥した菌であってもよい。特に、凍結乾燥により粉末状としたものは、衛生面、品質保持性、取り扱い性等の点で好ましい。なお、この粉末中には脱脂粉乳等の培地成分が残ったまま含まれていてもよいが、生菌数は粉末1g中1×107以上であることが好ましい。
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
なお、使用した菌株DL1及びDL2、並びに菌株CF4は、グルジア産ヨーグルト・マリアーミ並びにカスピ海ヨーグルトからの分離菌株で、脱脂粉乳培地を含む凍結乾燥粉末を使用した。
好熱性のStreptococcus salivarius subsp.thermophilus菌株DL1の凍結乾燥粉末〔粉末1g中の生菌数は、1×108(概数)〕と中温性のLactococcus lactis subsp.cremoris菌株CF4の凍結乾燥粉末〔粉末1g中の生菌数は、1×108(概数)〕を1:1の割合で混合し、その1gをヨーグルト製造用種菌として牛乳1Lに添加して37℃で発酵した。
〔比較例1〕
好熱性のStreptococcus salivarius subsp.thermophilus菌株DL1の菌体粉末〔粉末1g中の生菌数は、1×108(概数)〕の1gをヨーグルト製造用種菌として牛乳1Lに添加して37℃で発酵した。
〔比較例2〕
好熱性のStreptococcus salivarius subsp.thermophilus菌株DL1の凍結乾燥粉末〔粉末1g中の生菌数は、1×108(概数)〕と好熱性のLactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus菌株DL2の凍結乾燥粉末〔粉末1g中の生菌数は、1×10(概数)〕を1:1の割合で混合し、その1gをヨーグルト製造用種菌として牛乳1Lに添加して37℃で発酵した。
〔比較例3〕
中温性のLactococcus lactis subsp.cremoris菌株CF4の凍結乾燥粉末〔粉末1g中の生菌数は、1×108(概数)〕の1gをヨーグルト製造用種菌として牛乳1Lに添加して30℃で発酵した。
〔発酵時間とpHの関係〕
各サンプルの発酵時間とpHの関係を図1に示す。pHは、好熱性球菌と好熱性桿菌との混合種菌による比較例2のサンプルが最も早く下がり、発酵20時間後にすでに4.0を下回った。
好熱性球菌の単独種菌による比較例1は、pHの低下が遅く、発酵20時間後ではまだ固まらず、発酵48時間後のpHも4.4にとどまり、ヨーグルトの固まり具合は非常に弱かった。
好熱性球菌と中温性球菌との混合種菌による実施例と中温性球菌の単独種菌による比較例3は、発酵20時間後のpHは4.2で、発酵48時間後のpHも4.1と4.2にとどまった。ヨーグルトの固まり具合は非常によかった。
〔官能試験〕
20時間発酵した上記4種類のヨーグルトサンプルを10名の被験者に食べさせ官能評価を行った。各サンプルの酸味を比較した結果を図2に、また旨味を比較した結果を図3に示す。
pHの低下が早かった比較例2のサンプルは、酸味が強いと感ずる被験者が10名中9名(図2)に上り、旨いと感ずる被験者は2名(図3)にとどまった。
pHの低下が遅かった比較例1のサンプルは、酸味が弱いと感ずる被験者が10名中9名(図2)に上り、旨いと感ずる被験者は4名(図3)にとどまった。
pHの低下がほどよかった比較例3のサンプルは、酸味が丁度よい感ずる被験者が10名中7名(図2)に上り、旨いと感ずる被験者は9名(図3)であった。
pHの低下がほどよかった実施例のサンプルは、酸味が丁度よい感ずる被験者が10名中8名(図2)に上り、しかも旨いと感ずる被験者は10名中10名の全員(図3)であった。このヨーグルトのpHは4.2で、砂糖などの甘味料を入れる必要のない適度の酸味を有していた。このヨーグルトを更に発酵を続けた場合でも、48時間後のpHは4.1にとどまり、酸味の程度は賞味できる範囲内にあった。
これらの結果より、実施例は適度な酸味と旨味を有する美味しいヨーグルトであると判断できる。そして発酵中のpHの推移から、発酵時間を厳密に管理しなくても、酸味が上がり過ぎず、美味しいと感ずる酸味を維持することができることが確認できた。
本発明によれば、至適温度が異なる菌種をあえて混合して種菌とすることで、通常のヨーグルト製造法と何ら変わることのない手順で、発酵遅延を起こすことなく、しかも発酵が進行しすぎて酸味が上がり過ぎることもない、マイルドな酸味と旨味をいつまでも維持することができるヨーグルトを製造できるようになることが確認された。
このように発酵時間を厳密に管理しなくても、常に美味しいヨーグルトが製造できるヨーグルトの種菌は、家庭において主婦が片手間にヨーグルトをつくる上で非常に有用といえる。
各サンプルの発酵時間とpHの関係を示した図である。 各サンプルの酸味を比較した図である。 各サンプルの旨味を比較した図である。

Claims (4)

  1. 発酵が進行しすぎても酸味が上がり過ぎない菌種の組み合わせであって、しかも好熱性(thermophilic)菌種と中温性(mesophilic)菌種との混合2菌種からなることを特徴とするヨーグルト製造用種菌。
  2. 請求項1記載の混合2菌種が、ストレプトコッカス(Streptococcus)属あるいはエンテロコッカス(Enterococcus)属から選択される好熱性の1菌種と、ラクトコッカス(Lactococcus)属あるいはラクトバシラス(Lactobacillus)属から選択される中温性の1菌種とからなることを特徴とするヨーグルト製造用種菌。
  3. 請求項1記載の混合2菌種が、ストレプトコッカス・サリバリウス・亜種・サーモフィラス(Streptococcus salivarius subsp.thermophilus)あるいはエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)から選択される好熱性の1菌種と、ラクトコッカス・ラクティス・亜種・クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)、ラクトバシラス・ブレヴィス(Lactobacillus brevis)あるいはラクトバチルス・パラカゼイ・亜種・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp.paracasei)から選択される中温性の1菌種とからなることを特徴とするヨーグルト製造用種菌。
  4. 請求項1記載の混合2菌種が、好熱性のストレプトコッカス・サリバリウス・亜種・サーモフィラス菌株DL1(FERM P−20764)あるいはエンテロコッカス・フェシウム菌株ML4(FERM P−20765)から選択される1菌種と、ラクトコッカス・ラクティス・亜種・クレモリス菌株CF4(FERM P−20848)、ラクトバシラス・ブレヴィス菌株FERM BP−4693、あるいはラクトバチルス・パラカゼイ・亜種・パラカゼイ菌株FERM BP−10123から選択される中温性の1菌種とからなることを特徴とするヨーグルト製造用種菌。
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