JP2007535563A - レチノイド含有徐放性薬剤送達システム、ならびに関連する製造法 - Google Patents

レチノイド含有徐放性薬剤送達システム、ならびに関連する製造法 Download PDF

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Abstract

生体適合性眼内インプラントは、レチノイド成分、及び長期間にわたってレチノイド成分の眼への放出を促進する生分解性ポリマーを含む。インプラントの治療剤は、生分解性ポリマーマトリックス、例えばポリビニルアルコールを実質的に含まないマトリックスに付随していてよい。インプラントは、例えば、緑内障及び増殖性硝子体網膜症を含む網膜損傷のような1つ以上の眼の症状を治療または軽減するために、眼に配置できる。

Description

本発明は、一般に、患者の眼を治療する器具および方法に関し、更に詳しくは、薬剤送達システムが配置されている眼に治療剤を長期間放出する、インプラントおよび微粒子のような眼内薬剤送達システム、およびたとえば、1以上の眼球状態の症状を治療または軽減するための、そのような薬剤送達システムを製造および使用する方法に関する。
レチノイド関連核内受容体RAR(レチノイン酸受容体)およびRXR(レチノイドX受容体)のいずれかまたは両方の生化学的活性を、刺激する、遮断する、または阻害することによって、レチノイド薬剤は、その治療活性を発揮する。特定の理論に束縛されることは意図しないが、これら受容体のそれぞれは、認知性アゴニストがこの受容体に結合した時、構造変化を起こすと考えられている。この構造変化によって、特定の遺伝子の一群の発現を刺激または阻害する受容体となる。このプロセスを転写活性化と言う。更に、おそらく転写活性化事象ではない、細胞リン酸化カスケードの刺激または媒介に関わるような無数のリガント媒介効果がある。
経口送達用に処方されたレチノイド薬剤、たとえば、1種以上のレチノイン酸受容体またはRARに作用するRARアゴニストが、現在、乾せん(アシトレチンおよびエトレチナート)および座瘡(イソトレチノイン)の治療で使用されている。これらのRARアゴニストは、許容しうる、実質的に最適なまたは最適な治療活性に必要な用量で、副作用、たとえば、通常、ビタミンA過剰症、代謝性および栄養的副作用、全身的副作用、内分泌腺副作用、血管系およびリンパ系副作用、消化器系副作用、眼性副作用、心臓血管関連の副作用、神経系統の副作用、精神医学的副作用、局所レチノイド毒性副作用、呼吸器系副作用、耳の副作用、胃腸管副作用および泌尿器系副作用(これらに限定されない)に伴うものに類似する副作用、を広く伝達することに関与することが知られている。これらの薬剤の使用に伴う副作用は、重大な臨床的意義を有し、しばしば、多くの患者において、これらの薬剤の使用を妨げ、あるいは肝酵素の厳密なモニタリング、血液化学検査などを必要とする。
RARアゴニストの他に、ベキサロテンのようなRXRアゴニストも、肝酵素および血中脂質の上昇のような、多くの古典的なレチノイド副作用を伴う。また、甲状腺機能低下もRXR活性レチノイドの比較的一般的な特徴とされ、この状態はそれ自体で精神錯乱およびうつ病などの多くの重大で重篤な病訴を伴う。
RARおよびRXRはそれぞれ、それ自身(RXR-RXRホモダイマーの場合)または他の受容体とダイマーを形成することが知られていることに注目すべきである。すなわち、RXRは、ホモダイマーの形成に加えて、甲状腺受容体(TR)、ビタミンD受容体およびPPAR(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体)のような受容体とのダイマーを形成する可能性がある。したがって、レチノイド受容体ダイマーは、RXR-RXRホモダイマーまたはRXR-RAR、TXR-TRまたはRXR-PPARのようなヘテロダイマーも含む可能性がある。RARは、ホモダイマーを形成しないように見られるが、明らかに不変的にRXRと対になる。
RAR受容体およびRXR受容体は、それぞれ、3種の主要なサブタイプを有し、すなわち、RAR受容体は、RARα、RARβおよびRARγを含む。同様に、RXR受容体は、RXRα、RXRβおよびRXRγを含む。
トレチノインは、内因性レチノイドであり、容易に代謝されて、イソトレチノインと9−シスレチノイン酸を含む他の代謝物になる。トレチノインは、イソトレチノインと9−シス−レチノイン酸のように、RARおよびRXRの両方に結合し、トランス活性化する。トレチノイン(ベサノイド)は、急性前骨髄性貧血の治療のために全身的に使用される。全身的トレチノインの副作用は、全身的にレチノイドを使用する場合に一般的に付随する代表的なものであり、RARタイプおよびRXRタイプの両方の副作用が存在するようである。
たとえば、イソトレチノイン(アキュテイン)のようなRARアゴニスト、ベキサロテン(ターグレチン)のようなRXRアゴニストおよびアシトレチン(ソリアタン)のようなRAR、RXR二重アゴニストなど、多くのレチノイド薬剤が経口送達用に処方されている。これらのレチノイドのピーク血液濃度は、経口薬剤が食事との関係でいつ投与されたかによって変化するが、ピーク血液濃度は時間には依存しないようである。イソトレチノインの場合、同じピーク血液濃度に到達するためには、薬剤の総用量を、高脂肪食の後は絶食状態に比べて、2倍を超える量にしなければならない。このことは、患者の絶食または摂食状態によって劇的に変化するので、これらの可能性のある経口レチノイドにとって重大な欠点であると見られる。
処方された治療法および経口投与指示を遵守しなければ、加齢性黄斑変性症および糖尿病神経障害(これらに限定されない)などの網膜眼球状態の疾患状態を治療する時、これらのレチノイドの実効性を弱める可能性がある。更に、レチノイド吸収変動は、治療的薬剤血液レベルの変動から起こる治療効果を減少させるばかりでなく、なんらか事情での組織高曝露による不当な薬剤副作用も起こす。したがって、レチノイドの経口用量は食品とともに服用することは、重要であり、実際、処方を行う医師および米国食品医薬品局(FDA)によって強化されている。
増殖性硝子体網膜症(PVR)は、網膜復位術における不具合の主な原因である。PVRの病態生理には、網膜色素上皮(RPE)細胞およびグリア細胞の移行、退行分化および増殖、続いて起こる網膜上膜形成が含まれる。細胞膜の収縮によって、血液−網膜関門の破壊および牽引性網膜剥離が起こる。
PVRは、先ずRPE細胞の硝子体への移行によって開始される。RPE退行分化および増殖は、PVR、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)および脈絡膜新生血管形成において起こる。数種の成長因子およびサイトカインは、増殖過程と関連付けられており、aFGF、bFGF、上皮性成長因子、IGF-I、TGF−ベータ、インターロイキン1、6および8(IL-1、IL-6、IL-6)、インターフェロンガンマ(IFNガンマ)、上皮性成長因子、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)および単核細胞白血球遊走因子−1(MCP-1)を包含する。PVRの薬理学的処置は、一般に、RPE増殖、特に、膜生成および炎症性浸潤の二次的後遺症を対象としている。このために、炎症反応およびマクロファージ補充を予防するためにコルチコステロイドを、増殖段階を予防するために細胞静止薬を使用する。トリアムシノロンアセトニドおよびデキサメタゾンはともに、PVRから牽引性網膜剥離を予防するために研究されてきた。コルチコステロイドはある程度効果があるが、白内障発現およびIOPの上昇を含む重大な副作用がある。また、数多くの細胞増殖抑制剤も試験されており、シタラビン、5−フルオロウラシル、デュアノルビシン、アクラシノマイシンA、BCNU、N,N−ジメチルアドリアマイシンおよびタキソールが上げられる。これらの剤は、PVRの動物モデルで牽引性網膜剥離を阻害することが示されているが、網膜破裂から発ガンまでの範囲にわたる重大な副作用を持つ。
レチノイン酸(RA)および他のレチノイドの使用は、研究されてきており、PVR処置の必要性を満たすことが有望である。レチノイド類は、PVR、RPE退行分化増殖の根本的な病理を治療するとともに下流効果も治療する。レチノイドは、上皮、間葉および新生細胞上での抗増殖性効果を有する。トランス−レチノイン酸(RA)は全て、網膜色素上皮増殖を阻害することが知られている。また、レチノイドはRPEにおいて、密度依存成長調整を増強する可能性も示唆されている。研究では、RAが、RPE増殖をインビトロで、二相性法において10pMおよび17nMのIC50で予防することを示している。また、レチノイン酸は、ストロメリシンのヒトRPE発現も阻害する。これが、RPE分散を招く細胞外空間におけるタンパク質の開裂を予防すると考えられる。更に、RAは、培養RPE細胞内のbFGFの効果を調整することが示されている。RAは、bFGF刺激RPE増殖を阻害した。分散プロット分析により、RAがRPE細胞上のbFGF結合部位の数を減少させることが示唆された。レチノイドのリサイクリングは、それらが可視伝達において重要な役割を担うので、正常な可視機能の維持のために求められる。レチノイド投入量の不足は、網膜はく離の後に起こるRPE退行分化、移行および増殖過程に影響を与え、網膜の再付着の後、PVRが先に関与した場所での視力の回復不足を生じる可能性がある。
PVRの動物モデルによって、レチノイドが、牽引性網膜剥離の予防において比較的安全で有効であることが実証されている。1%ヒアルロン酸およびBSS中の10および15μgのRAが、PVRの動物モデルにおいて、牽引性網膜剥離を軽減した。シリコーン油タンポナーデ中の5〜10μgのRAおよび13−cis−レチノイン酸は、ともに、牽引性網膜剥離を効果的に予防することを示した。組織検査および眼内検査は、RAのこの用量では、眼毒性を伴わないことを示した。更なる研究で、RA濃度が15μg/mLまでであると、ERG変化を起こすことなく、良好な抵抗力を持つことが示された。また、PVRの予防におけるレチノイドの好ましい効果は、ヒトにおいても示されている。経口投与された13−cis−レチノイン酸は、レトロスペクティブ研究において、PVRを減らし、網膜付着の速度を増すのに効果的であった。
加齢性黄斑変性症は、50歳を超える個人を視覚消失症に導く原因である。この疾患は、ブルッフ膜中の黄色−灰色の巣状病変が形成されることが前触れとなる。RPE表現型変化は、細胞外マトリックス合成の調節不全および分解を生じる。この病変、ドルーゼは、脂質が豊富な細胞外マトリックス成分で構成され、時間の経過とともに合体し、RPE細胞の低い隆起となる。RPE細胞は、凝集、終結および萎縮し始める。RPE細胞の退化は、被覆光受容体の第二の退化を招く。
レチノイドは、RPE細胞の表現型を変更することがある。RPE細胞機能、ECM代謝作用およびRPEと光受容体との間の親密な関係を回復する。RPE効果に加えて、タザロテンも光退化動物モデルにおいて網膜を保護するようである。
また、レチノイドは、スタルガルト病に対し効果的であり、ロドプシン突然変異トランスジェニックマウスにおける神経の生存および光を改良することも示される。
網膜ニューロンの退化は、視覚消失の主な原因である。緑内障では、リンパ節細胞死は、視覚消失の直接的な原因である。色素性網膜炎および加齢性黄斑変性症、光受容体死を含む網膜退行性疾患は、失明となる。現在、網膜ニューロンの退化を予防する効果的な治療は存在しないが、網膜ニューロンを種々の神経親和性因子および小分子によって保護する最近の実験によって、これらの症状に対する薬理学的治療が可能であることが示唆された。
眼球状態の治療では、眼の内部構造が、高選択的バリアによって患者の体循環から隔離されていることに留意することが重要である。これらのバリアは、眼の組織とともに、リンパ漿中の化合物の早期の平衡化を予防する。眼の解剖学および生理学は、血液−房水および血液−網膜関門の概念を生じさせる。これらは、集合的に血液−眼球関門として知られている。
前眼房および後眼房の房水への接近は、血液−房水関門によって制限される。房水は、血液の単なる限外ろ過物質ではなく、毛様突起中の分泌活性と血液−房水関門の選択性とが組み合わされた作用から得られる組成を持つ。毛様体の非色素性細胞は後眼房の内側に並び、血液−房水関門の一部に相当する。しかし、細胞の膜に結合する密着体は、完全なベルト状ではなく、この不連続部が中間サイズの溶質を拡散させる細胞間細孔となる。
虹彩管の内皮細胞は、血液−房水関門の残部を成す。しかし、虹彩ストローマの前部表面に並ぶ細胞は、数多くの開口を有し、前眼房に通じるバリアとはほとんどならない。全身投与される化合物は、毛様体の漏出性管に浸透し、虹彩を通って前眼房の眼房水に拡散する。前眼房から後眼房への動きは、レンズ上の虹彩の動作のように、隔膜によって制限される。クロラムフェニコールおよびテトラサイクリンのような多くの親油性物質は容易に血液−房水関門を横切って後眼房へ浸入する。
後眼房を介する硝子体への接近を増す化合物の全身投与は、非常に効率が低い。薬剤は、前眼房および正常な眼房水出口通路を通る後部眼房水の平行した除去と競争しながら、後眼房から硝子体内のより深い部位に拡散しなければならない。後眼房から硝子体へ拡散した化合物は、硝子体を横断して濃度勾配を発現する。しかし、この濃度勾配は小さく、眼房水濃度が下がると直ちに逆転する。
後眼部への薬剤の直接的な浸透は、血液−網膜関門によって制限される。血液−網膜関門は内部および外部血液バリアに解剖的に分離される。脈絡膜は、強膜のすぐ内側にあり、後部球の最も血管化された組織である。脈絡膜血管の内皮細胞に数多くの窓が存在し、その結果、脈絡膜への系統的な溶質の移送に対する抵抗が殆どなくなる。全身投与された化合物は、ほんの数分で脈絡膜へ浸透し、脈絡膜はリンパ漿で直ちに平衡化する。脈絡膜から眼内構造体への全身的な搭載溶質の更なる移動は、網膜色素上皮(RPE)によって制限される。この構造体の細胞は、閉鎖小帯細胞間結合によって結合されている。RPEは、バリアを移送する「タイト」イオンであり、RPEを横切る溶質の傍細胞輸送は制限される。
網膜血管の内皮細胞は、内部血液−網膜関門を代表する。網膜血管の内皮細胞は、閉鎖小帯結合によって完全に団結され、殆どの血液溶質の傍細胞輸送が妨げられる。網膜血管は、血管が非常に不透過性である血液−脳バリアを含む脳内の血管と類似している。血液−網膜関門を通る殆どの化合物の透過性は、非常に低い。しかし、非常に親油性である化合物、たとえば、クロラムフェニコールおよびベンジルペニシリンは、全身投与の後、血液−網膜関門に浸透することができ、硝子体液内の適正な濃度を達成する。
化合物の親油性は、浸透速度と相関し、受動的細胞拡散と一致する。しかし、血液−網膜関門は、移送機構の不存在下では、極性または荷電化合物に対して非透過性である。
したがって、薬剤の網膜、硝子体および眼球血管膜への送達は、普通、高度な全身的投与または直接的な眼内注射によって達成される。
タザロテン、6−[4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチル]ニコチン酸エチルは、Allergan により開発された、乾せんおよび尋常性座瘡用のアセチレン系レチノイド化合物である。タザロテンは、動物およびヒトにおいて,代謝されると素早く脱エステル化してその活性形であるタザロテン酸を形成する、エチルエステルプロドラッグである。タザロテン酸は、核レチノイド受容体の活性化を介してその応答を優先的に媒介し、増殖性硝子体網膜症(PVR)動物モデルを使用した試験において、薬理学的に活性であることが証明されている。
レチノイド、タザロテンの使用は以下の文献で検討されている。Drugs Future28(2): 208-09 Marks, "Topical tazarotene: review and re-evaluation", Retinoids, 17(3):72-74(2001); Phillips et al., "Efficacy of 0.1 %tazarotene cream for the treatment of photodamage", Arch Dermatol, 138(11): 1486-1493(2002); Guenther, "Optimizing treatment with topical tazarotene", Am J Clin Dermatol, 4(3): 197-202(2003)。
米国特許第6713081号は、ポリビニルアルコールから製造され、制御的または持続的に眼に治療薬を送達するのに使用される眼球インプラント器具を開示している。該インプラントは、眼において、結膜下または硝子体内に配置しうる。
眼への配置用の生体適合性インプラントは、下記のような多くの特許に開示されている:米国特許第4521210号、第4853224号、第4997652号、第5164188号、第5443505号、第5501856号、第5766242号、第5824072号、第5869079号、第6074661号、第6331313号、第6369116号および第6699493号。
長期間にわたって、かつ負の副作用をほとんどまたは全く生じずに、治療薬を持続的または制御的速度で放出することができる眼内移植可能な薬剤送達システム、例えば眼内インプラント、およびそのようなシステムを使用する方法を提供することが好都合である。
本発明は、例えば1つまたはそれ以上の所望の治療効果を得るための、眼への長期間または持続的薬物放出用の新規薬剤送達システム、ならびにそのようなシステムの製造法および使用法を提供する。該薬剤送達システムは、眼に配置しうるインプラントまたはインプラント要素または微粒子の形態である。本発明のシステムおよび方法は、好都合にも、1つまたはそれ以上の治療薬の長い放出時間を与える。従って、眼に薬剤送達システムを配置された患者は、薬剤の付加的投与を必要とせずに、長期間または延長された期間にわたって、治療量の薬剤を受ける。例えば、患者は、比較的長い期間にわたって、例えば、インプラントまたは微粒子を配置されてから、少なくとも約1週間程度、例えば約2ヶ月〜約6ヶ月間にわたって、実質的に一貫したレベルの治療的活性剤を、一貫した眼の治療のために得ることができる。そのような長い放出時間は、優れた治療効果を得ることを促進する。
本発明のシステムからの治療剤の持続性局所送達は、パルス状投薬に伴う高い一過性濃度を軽減する。さらに、本発明のシステムの直接的な硝子体内投与は、血液−網膜関門による拘束を未然に防ぎ、全身的毒性の危険性を大きく低下させる。
本明細書の開示に従った、インプラントおよび微粒子を含有する眼内薬剤送達システムは、治療成分と、治療成分に付随する薬剤放出持続成分とを含む。本発明によれば、治療成分は、レチノイド成分を含む、またはそれから本質的に成る、またはそれのみから成る。たとえば、治療成分は、1種以上のタザロテン酸のようなRARまたはRXRアゴニスト、またはタザロテンのようなRARまたはRXRアゴニストのプロドラッグなどを含む、またはそれから本質的に成る、またはそれのみから成るものでもよい。
プロドラッグは、増強された送達特性と治療的価値のある既知の活性薬剤の不活性誘導体である。生物学的システム内で、酵素的および/または化学的不安定性の故に、親化合物に戻される。本発明のシステムは、対象組織が眼の後部にある治療剤を含有してもよい。プロドラッグ誘導体化に利用される親化合物の官能基には、カルボン酸、水酸基、アミン基またはプロドラッグ誘導体化に利用できると知られている他の感応基が包含され得る。プロドラッグは、水酸基含有基のエステルを含有する。水酸基含有化合物の他のプロドラッグには、リン酸エステル、ジカルボン酸のヘミエステル、アシルオキシアルキルおよびエーテル類が挙げられる。アミン官能性のプロドラッグには、N−マンニッヒ塩基およびアミドが含まれる。
薬剤放出持続成分は治療成分と付随して、薬剤送達システムが配置されている眼にある量のレチノイド成分を持続的に放出する。レチノイド成分は、システムが眼の中に配置された後1週間を超える期間、眼の中に放出され、とりわけ、増殖性硝子体網膜症、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症および色素性網膜炎のような眼球状態を軽減または治療するのに有効である。
一態様では、眼内薬剤送達システムは、レチノイド成分と、生分解性ポリマーマトリックスとを含む。レチノイド成分は、眼球状態を治療するのに有効な量のレチノイド成分をシステムから持続的に放出するのに有効な速度で分解する生分解性ポリマーマトリックスに付随する。眼内薬剤送達システムは、生分解性あるいは生体内分解性であり、たとえば、約1ヶ月以上、約6ヶ月まで、またはそれ以上のような、1週間を超える長期にわたる期間、眼において、レチノイド成分の持続的な放出を提供する。薬剤送達システムは、1以上の硝子体内インプラントまたは1以上の硝子体内微粒子またはそれらの組合せを含有してもよい。
本発明のシステムのレチノイドは、RARα、RARβ、RARγ、RXRα、RXRβまたはRXRγの活性を活性化または増強することができるものであってよい。あるシステムでは、レチノイド成分は親水性化合物であり、たとえば、レチノイドの対数分配係数(logP)は、3.0未満であってもよい。あるシステムでは、レチノイド成分は、タザロテン酸、そのプロドラッグ、その塩およびこれらの混合物である。
前記のインプラントの生分解性ポリマーマトリックスは、生分解性ポリマーの混合物であってもよく、または該マトリックスは、単一型の生分解性ポリマーを含んで成ってもよい。例えば、マトリックスは、ポリラクチド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリカプロラクトン、およびそれらの混合物から成る群から選択されるポリマーを含んで成ってよい。
本発明のシステムの製造法は、レチノイド成分と、1つまたはそれ以上の生分解性ポリマーとを組み合わすかまたは混合することを含む。次に、該混合物を押し出すかまたは圧縮して、単一組成物を形成しうる。次に、単一組成物を処理して、患者の眼に配置するのに好適な個々のインプラントを形成しうる。別の方法は、ポリマー微粒子を製造するのに有利であり得る乳化物/溶媒抽出工程を含むことができる。
他のインプラントは、例えば米国特許第6331313号に開示されたインプラントのような、レチノイド成分を含む、またはそれから本質的に成る、またはそれのみから成る治療成分、および非生分解性ポリマーを含む薬剤放出持続成分、例えば1つ以上の開口または孔を有する被覆を含んでなる。
別のシステムは、ヒドロゲルからなる薬剤放出持続成分を含んでいてよい。
薬剤送達システムは、種々の眼球状態を治療する、例えば、増殖性硝子体網膜症、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症および色素性網膜炎(これらに限定されない)を含む眼球状態の少なくとも1つを治療、予防または軽減または治療するために、眼の領域に配置され得る。
本発明のキットは、1つまたはそれ以上の本発明の薬剤送達システム、およびシステムの使用説明書を含んで成ってよい。例えば、使用説明書は、患者へのインプラントの投与の仕方、およびインプラントで治療しうる症状のタイプを説明しうる。
本明細書に記載する個々のおよび全ての特徴、ならびにそのような特徴の2つまたはそれ以上の個々のおよび全ての組合せは、そのような組合せに含まれる特徴が互いに矛盾しないことを条件として、本発明の範囲に含まれる。さらに、任意の特徴または特徴の組合せは、本発明の任意の態様から特に除外しうる。
本発明の付加的局面および利点は、特に添付の図面および実施例に関連して考慮する場合に、以下の説明および請求の範囲に示されている。
本明細書に記載するように、1つまたはそれ以上の眼内薬剤送達システム、例えばインプラントおよび微粒子の使用による治療薬の制御および持続投与は、望ましくない眼症状の治療を向上させることができる。システムは、医薬的に許容されるポリマー組成物を含んで成り、1つまたはそれ以上の医薬的に活性な薬剤、例えばレチノイド(例えば、RARまたはRXRアゴニスト)若しくはレチノイド前駆体を、長期間にわたって放出するように配合される。システムは、1つまたはそれ以上の望ましくない眼症状の1つまたはそれ以上の症状を、治療、予防および/または軽減させるために、眼の領域に直接的に、治療有効量の1つまたはそれ以上の薬剤を与えるのに有効である。従って、患者を、繰り返しの注入、または自己投与点眼剤の場合の単に限定されたバーストの活性剤への暴露による非効率的な治療、または全身投与の場合のより高い全身暴露及び付随する副作用、または非持続性投与の場合、パルス非持続性放出投与に付随して生じ得る一時的高組織濃度にさらすのではなく、単一投与によって、治療薬が、それらを必要とする部位で使用され、しかも長期間にわたって維持される。
本明細書の開示による眼内薬剤送達システムは、治療成分、および治療成分に付随する薬剤放出持続成分を含んで成る。本発明によれば、治療成分は、レチノイド成分(例えば、RARアゴニストまたはRXRアゴニスト)若しくはあるいはRARアゴニスト前駆体またはプロドラッグ、あるいはRXRアゴニスト前駆体またはプロドラッグを含んで成るか、またはそれから本質的に成るか、またはそれのみから成る。薬剤放出持続成分は、インプラントを配置した眼への有効量の治療成分の放出を持続させるために、治療成分に付随している。治療成分は、システムを眼に配置してから約1週間より長い期間にわたって放出され、1つまたはそれ以上の眼症状、例えば、増殖性硝子体網膜症、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症および色素性網膜炎等の少なくとも1つの症状を治療および/または減少させるのに有効である。
定義
本発明の説明のために、用語の文脈が異なる意味を示す場合を除いて、このセクションで定義されるように以下の用語を使用する。
本明細書において使用する場合、「薬剤送達システム」は、少なくとも1種の治療剤または活性成分を含み、眼に配置できるような形状にされた器具または要素を意味する。薬剤送達システムには、眼内インプラントおよび微粒子が包含される。微粒子は、眼内インプラントより小さい要素である。
本明細書において使用する場合、「眼内インプラント」は、眼に配置されるように構成され、サイズ設定され、またはその他の設計を施された器具または要素を意味する。眼内インプラントは、一般に、眼の生理学的条件に生体適合性であり、不利な副作用を生じない。眼内インプラントは、視覚を損なわずに眼に配置しうる。
本明細書において使用する場合、「治療成分」は、眼の医学的症状を治療するのに使用される1つまたはそれ以上の治療薬または物質を含んで成る眼内薬剤送達システムの部分を意味する。治療成分は、眼内インプラントの個別の領域であってもよく、またはインプラント全体に均一に分布させてもよい。治療成分の治療薬は、一般に、眼科的に許容され、インプラントを眼に配置した際に不利な反応を生じない形態で使用される。
本明細書において使用する場合、「薬剤放出持続成分」は、システムの治療薬の持続放出を与えるのに有効な、眼内薬剤送達システムの部分を意味する。薬剤放出持続成分は、生分解性ポリマーマトリックスであってもよく、または治療成分を含んで成るインプラントのコア領域を覆う被覆物であってもよい。
本明細書において使用する場合、「付随する」は、混合するか、分散するか、結合するか、覆うか、または包囲することを意味する。
本明細書において使用する場合、「眼の領域」または「眼の部位」は、眼の前区および後区を含む眼球の任意領域を一般に意味し、かつ、眼球に見出される任意の機能的(例えば、視覚用)または構造的組織、または眼球の内部または外部に部分的にまたは完全に並んだ組織または細胞層を一般に包含するが、それらに限定されない。眼領域における眼球領域の特定の例は、前眼房、後眼房、硝子体腔、脈絡膜、脈絡膜上腔、結膜、結膜下腔、強膜外隙、角膜内隙、角膜上隙、強膜、毛様体輪、外科的誘導無血管領域、網膜黄斑および網膜である。
本明細書において使用する場合、「眼の症状」は、眼、または眼の部分または領域の1つを冒しているか、またはそれに関係している疾患、不快または症状である。一般的に言えば、眼は、眼球、および眼球を構成している組織および流体(体液)、眼周囲筋(例えば、斜筋および直筋)、ならびに眼球の中かまたは眼球に近接した視神経の部分を包含する。
前眼症状は、水晶体包の後壁または毛様体筋の前方に位置する、前眼(即ち、眼の前方)領域または部位、例えば、眼周囲筋、眼瞼または眼球組織または流体を冒しているか、またはそれに関係している疾患、不快または症状である。従って、前眼症状は、結膜、角膜、前眼房、虹彩、後眼房(網膜の後ろであるが、水晶体包の後壁の前)、水晶体または水晶体包、および前眼領域または部位を血管新生化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒しているかまたはそれに関係している。
従って、前眼症状は、下記のような疾患、不快または症状を包含しうる:無水晶体;偽水晶体;乱視;眼瞼痙攣;白内障;結膜疾患;結膜炎;角膜疾患;角膜潰瘍;眼乾燥症候群;眼瞼疾患;涙器疾患;涙管閉塞;近視;老眼;瞳孔障害;屈折障害および斜視。緑内障も前眼症状と考えられるが、その理由は、緑内障治療の臨床目的が、前眼房における水性液の高圧を減少させる(即ち、眼内圧を減少させる)ことでありうるからである。
後眼症状は、後眼領域または部位、例えば、脈絡膜または強膜(水晶体包の後壁全体にわたる平面の後方位置)、硝子体、硝子体腔、網膜、網膜色素上皮、ブルッフ膜、視神経(即ち、視神経円板)、ならびに後眼領域または部位を血管新生化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒しているかまたはそれに関係している疾患、不快または症状である。
従って、後眼症状は、下記のような疾患、不快または症状を包含しうる:急性斑状視神経網膜疾患;ベーチェット病;脈絡膜新生血管形成;糖尿病性ブドウ膜炎;ヒストプラスマ症;感染症、例えば、真菌またはウイルスによる感染症;黄斑変性、例えば、急性黄斑変性、非滲出性老化関連黄斑変性および滲出性老化関連黄斑変性;浮腫、例えば、黄斑浮腫、類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫;多病巣性脈絡膜炎;後眼部位または領域を冒す眼の外傷;眼腫瘍;網膜障害、例えば、網膜中心静脈閉鎖、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜動脈閉鎖性疾患、網膜剥離、ブドウ膜炎網膜疾患;交感性眼炎;フォークト−コヤナギ−ハラダ(VKH)症候群;ブドウ膜拡散;眼のレーザー治療によって生じたかまたは影響を受けた後眼症状;光ダイナミック療法によって生じたかまたは影響を受けた後眼症状;光凝固、放射線網膜症、網膜上膜疾患、網膜枝静脈閉鎖、前虚血性視神経症(anterior ischemic optic neuropathy)、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、色素性網膜炎および緑内障。緑内障は、その治療目標が、網膜細胞または視神経細胞の損傷または欠損による視力低下を予防するか、または視力低下の発生を減少させること(即ち、神経保護)であるので、後眼症状と考えることができる。
「生分解性ポリマー」という用語は、生体内で分解する1つまたはそれ以上のポリマーを意味し、1つまたはそれ以上のポリマーの侵食は、治療薬の放出と同時かまたはそれに続いて、経時的に起こる。厳密に言えば、ポリマーの膨潤によって薬剤を放出する作用をするメチルセルロースのようなヒドロゲルは、「生分解性ポリマー」という用語から特に除外される。「生分解性」および「生体内分解性」という用語は、同意義であり、本明細書において互換的に使用される。生分解性ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、または3種類以上のポリマー単位を有するポリマーであってよい。
本明細書において使用する場合、「治療する」、「治療すること」または「治療」という用語は、眼症状、眼の傷害または損傷の減少または回復または予防、または傷害または損傷を受けた眼組織の治癒を促進することを意味する。
本明細書において使用する場合、「治療有効量」という用語は、眼または眼領域に有意な負のまたは不利な副作用を生じずに、眼症状を治療するか、眼傷害または損傷を減少させるかまたは予防するのに必要とされる薬剤のレベルまたは量を意味する。
様々な期間にわたって薬剤装入量を放出することができる眼内薬剤送達システムが開発されている。これらのシステムは、眼、例えば眼の硝子体に挿入された場合に、治療レベルのレチノイド成分(例えば、RARまたはRXRアゴニスト)若しくはそれらの前駆体を、長期間にわたって(例えば、約1週間またはそれ以上)与える。開示されたシステムは、眼症状、例えば、増殖性硝子体網膜症、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症および色素性網膜炎を治療するのに有効である。
本発明の1つの態様において、眼内薬剤送達システムは、生分解性ポリマーマトリックスを含んで成る。生分解性ポリマーマトリックスは、薬剤放出持続成分の1つのタイプである。生分解性ポリマーマトリックスは、生分解性眼内薬剤送達システムを形成するのに有効である。生分解性眼内薬剤送達システムは、生分解性ポリマーマトリックスを伴うレチノイド成分を含んで成る。マトリックスは、インプラントを眼の領域または眼の部位、例えば眼の硝子体に配置してから約1週間より長い期間にわたって、所定量のエストラジオール誘導体の放出を持続させるのに有効な速度で分解する。
レチノイド成分は、活性レチノイド剤、および/またはRAR-αに対するRAR-βおよびRAR-γの少なくとも1つに、選択的に、さらに特異的に、作用する、たとえば、結合するおよび/またはその活性化を阻害するおよび/または遮断する活性レチノイド剤の前駆体を含有するのが好ましい。
本明細書で使用する用語「選択的に」または「より選択的に」は、RARの1以上の他の第二サブタイプ比べ、RARの1以上の第一サブタイプに作用する活性レチノイド剤の能力を言う。好ましい態様では、第一サブタイプは、第二サブタイプより少なくとも約5、約10、約20、約50、約100または約1000倍、作用される。用語「特異的に」は、1以上の他の第二RARサブタイプには、実質的に作用せずに、好ましくは検出できる程度には作用せずに、1以上の第一RARサブタイプに作用する活性レチノイド剤の能力を言う。
ある薬剤送達システムでは、レチノイド成分は、選択的にあるいは特異的にRAR-αに比べてRAR-βおよびRAR-γの両方に作用するのに有効な活性レチノイド剤または活性レチノイド剤の前駆体を含有する。レチノイド成分は、RAR-αに比べてRAR-βおよびRAR-γのいずれかあるいは両方の活性化または遮断を選択的にあるいは特異的に活性化または阻害するのに有効な、活性レチノイド剤または活性レチノイド剤の前駆体を含有するのが有利である。一態様では、レチノイド成分は、RAR-αに比べてRAR-βおよびRAR-γのいずれかまたは両方を選択的にあるいは特異的に活性化させるのに有効な活性レチノイド剤または活性レチノイド剤の前駆体を含有する。
本発明のシステムは、非常に多様なレチノイド成分、たとえば、RAR−アンタゴニスト活性およびRAR逆アゴニスト活性を有する活性レチノイド剤または活性レチノイド剤の前駆体を含有してもよいが、本発明では、RAR−アゴニスト活性を持つ活性レチノイド剤または活性レチノイド剤の前駆体を含有するレチノイド成分が特に有用である。
あるシステムでは、レチノイド成分は、たとえば、イソトレチノインより水溶性である、あるいはヒトまたは動物において、実質的な程度の水溶性を持つ活性レチノイド剤に代謝的に変換される、実質的な程度の水溶性を持つ活性レチノイド剤を含有する。このようにして、血液−脳バリアおよび網膜−血液バリアのような、脂質バリアを横断するレチノイドを避けることが可能である。これは、他のレチノイドの通常の有害な副作用、たとえば、中枢神経(CNS)効果および眼毒性のいくつかを特異的に避ける。
レチノイド成分は、RXRに結合する又は活性化する又はブロックするのに実質的に不活性である活性RARリガンド、および/またはRXRに結合する又は活性化する又はブロックするのに実質的に不活性である活性RARリガンドの前駆体を有していてよい。
本発明において有用なレチノイド成分には、以下の式Iの化合物が含まれる。
Figure 2007535563
(式中、Xは、S、OまたはNR=(ここで、R=は、水素または低級アルキルである)であり;Rは水素または低級アルキルであり;Aは、ピリジニル、チエニル、フリル、ピリダジニル、ピリミジニルまたはピラジニルであり;nは0〜2であり;Bは、H、-COOHまたはその医薬的に許容しうる塩、エステルまたはアミド、CH2OHまたはエーテルまたはエステル誘導体、または-CHOまたはアセタール誘導体、または−COR1またはケタール誘導体(ここで、R1は、-(-CH2mCH3(mは0〜4)である)である。)
式Iの化合物は、ヨウ化銅およびPd(PQ32Cl2または類似の複合体の存在下、式IIの化合物と式IIIの化合物とを反応させることにより製造することができる。式IIおよび式IIIの化合物は以下の通りである。
Figure 2007535563
(式中、X=は、ハロゲン、このましくはIであり;nおよびAは先に定義した通りであり;Bは、Hまたは保護された酸、アルコール、アルデヒドまたはケトンであり、式Iに対応する化合物を与える。)
あるいは、式Iの化合物は、Pd(PQ34(Qはフェニル)または類似の複合体の存在下で、式IVの亜鉛塩と式IIIの化合物とを反応させることによって製造することもできる。
Figure 2007535563
化合物Iに対応する化合物を与える。
さらに、式Iの化合物は、式Vの化合物を相同化することによっても製造することができる。
Figure 2007535563
(式中、nは0〜1であり、式Iの酸を与える;または
式Iの酸を塩に変換する;または
酸付加塩を形成する;
式Iの酸をエステルに変換する;または
式Iの酸をアミドに変換する;または
式Iの酸をアルコールまたはアルデヒドに還元する;または
式Iのアルコールをエーテルまたはエステルに変換する;または
式Iのアルコールをアルデヒドに酸化する;または
式Iのアルデヒドをアセタールに変換する;
式Iのケトンをケタールに変換する。)
本明細書で使用する用語「エステル」は、有機化学で古典的に使用されている用語の定義内に入る全ての化合物を言い、また対象とする。Aが-COOHの場合、この用語は、アルコールによるこの基の処理から誘導される生成物を対象とする。エステルが、Aが-CH2OHである化合物から誘導される場合、この用語は、式:-CH-2OOCR(式中、Rは任意の置換または非置換の脂肪族、芳香族または脂肪芳香族基である)の化合物を対象とする。
約10個以下の炭素原子を有する飽和脂肪族アルコールまたは酸、または約5〜約10個の炭素原子の環状または飽和脂肪族環状アルコールおよび酸から誘導されるエステルが好ましい。特に好ましい脂肪族エステルは、低級アルキル酸およびアルコールから誘導されるものである。ここであるいは他で使用される低級アルキルは、1〜約6個の炭素原子を持つものを意味する。また、好ましくは、フェニルまたは低級アルキルフェニルエステルである。
アミドは、有機化学において古典的に与えられている意味を持つ。この場合、非置換アミドおよび全ての脂肪族および芳香族モノおよびジ置換アミドを包含する。好ましいアミドは、約10個以下の炭素原子の飽和脂肪族基または約5〜約10個の炭素原子の環状または飽和脂肪族−環状基から誘導されるモノおよびジ置換アミドである。特に好ましいアミドは、低級アルキルアミンから誘導されるものである。また、フェニルまたは低級アルキルフェニルアミンから誘導されるモノおよびジ置換アミドも好ましい。また、非置換アミドも好ましい。
アセタール類およびケタール類は、式-CK(式中、Kは(-OR)2である)の基を含有する。ここで、Rは低級アルキルである。またKは、-OR1O-(式中、R1は、約2〜約5個の炭素原子の、直鎖または分岐状の低級アルキルである)であってもよい。
本発明のインプラントで使用されるあるレチノイド成分は、(エチニル基およびB基が、それぞれ、ピリジン環の2位および5位に結合する(ニコチン酸命名法における6位および3位は、ピリジン命名法における2/5指定と同じである)、またはそれぞれ、チオフェン基の5および2位に結合し;nが0であり;Bが、-COOH、アルカリ金属塩または有機アミン塩、または低級アルキルエステル、またはCH2OHおよびその低級アルキルエステル類およびエーテル類、またはその-CHOおよびアセタール誘導体である、ものも含有する。
本発明のシステムでの使用に更に好ましい化合物として、
6−(2−(4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)−ニコチン酸エチル;
6−(2−(4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸;
6−(2−(4,4−ジメチルクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸;
6−(2−(4,4−ジメチルクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチル;
6−(2−(4,4,7−トリメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチル;
6−(2−(4,4−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチル;
5−(2−(4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)−チオフェン−2−カルボン酸エチル;
6−(2−(4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)−3−ピリジルメタノール;および
2−(2−(4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)−5−ピリジンカルボキシアルデヒド
が含まれる。
これらの化合物およびこれらの化合物の製造法は、米国特許第5,089,509号に記載されている。
有用なレチノイド成分のグループは以下の構造を持つ。
Figure 2007535563
(式中、Xは、S、O、NR'(ここで、R'は、Hまたは1〜6個の炭素のアルキルである)、または
Xは、[C(R12n(ここで、R1は、独立して、Hまたは1〜6個の炭素のアルキルであり、nは、0〜2の整数(0および2を含む)であり;
R2は、水素、1〜6個の炭素の低級アルキル、F、Cl、Br、I、CF3、1〜6個の炭素のフルオロ置換アルキル、OH、SH、1〜6個の炭素のアルコキシまたは1〜6個の炭素のアルキルチオであり;
R3は、水素、1〜6個の炭素の低級アルキルまたはFであり;
mは、0〜3の値を持つ整数であり;
oは、0〜3の値を持つ整数であり;
Zは、-C=C-、
-N=N-、
-N=CR1-、
-CR1=N
-(CR1=CR1n’- (ここで、n'は0〜5の値を持つ整数である)、
-CO-NR1-、
-CS-NR1-、
-NR1-CO-
-NR1-CS-
-COO-、
-OCO-、
-CSO-、
-OCS-であり;
Yは、フェニルまたはナフチル基、またはピリジル、チエニル、フリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリルおよびピラゾールからなる群から選択されるヘテロアリールであって、前記の基は、場合によっては1個または2個のR2で置換されてもよく、
Zが-(CR1=CR1)n-で、n'が3、4または5の場合、Yは、この(CR2=CR2n基とBとの間の直接原子価結合を表し;
Aは、(CH2q(ここで、qは0〜5である)、3〜6個の炭素を持つ低級分岐鎖アルキル、3〜6個の炭素を持つシクロアルキル、2〜6個の炭素と1または2個の二重結合を持つアルケニル、2〜6個の炭素と1または2個の三重結合を持つアルキニルであり;
Bは、水素、COOHまたはその医薬的に許容しうる塩、COOR8、CONR9R10、-CH2OH、CH2OR11、CH2OCOR11、CHO、CH(OR122、CHOR13O、-COR7、CR7(OR122、CR7OR13O、またはトリ低級アルキルシリル(ここで、R7は、1〜5個の炭素を含有するアルキル、シクロアルキルまたはアルケニル基であり、R8は、1〜10個の炭素をもつアルキル基、またはアルキル基が1〜10個の炭素を持つトリメチルシリルアルキル、または5〜10個の炭素のシクロアルキルであり、またR8は、フェニルまたは低級アルキルフェニルであり、R9およびR10は、独立して、水素、1〜10個の炭素のアルキル基であり、または5〜10個の炭素のシクロアルキル、またはフェニルまたは低級アルキルフェニルであり、R11は、低級アルキル、フェニルまたは低級アルキルフェニルであり、R12は、低級アルキルであり、R13は、2〜5個の炭素の2価のアルキル基であり、
R14は、(R15r−フェニル、(R15r−ナフチルまたは(R15r−ヘテロアリール(ここで、ヘテロアリール基は、O、SおよびNからなる群から選択される1〜3個のへテロ原子を持つ)であり、
rは、0〜5の値を持つ整数であり、
R15は、独立して、H、F、Cl、Br、I、NO2、N(R82、N(R8)COR、NR8CON(R82、OH、OCOR8、OR8、CN、1〜10個の炭素を持つアルキル基、1〜10個の炭素を持つフルオロ置換アルキル基、1〜10個の炭素および1〜3個の二重結合を持つアルケニル基、1〜10個の炭素および1〜3個の三重結合を持つアルキニル基、またはアルキルが独立して、1〜6個の炭素を持つトリアルキルシリルまたはトリアルキルシリルオキシ基である。)
このような化合物は、周知の技術を使用して製造することができる。たとえば、米国特許第5,776,699号を参照されたい。
本発明で使用されるレチノイド成分の特に有用なグループの1つは、活性アセチレン系レチノイド剤、活性アセチレン系レチノイド剤の前駆体およびこれらの混合物から選択される。活性アセチレン系レチノイド剤は、少なくとも1個の
Figure 2007535563
を含有する、活性レチノイド剤である。そのようなレチノイド成分の例として、本明細書中の他の場所に記載がある。
本発明の方法において、特に有用なレチノイド成分として、タザロテン、タザロテン酸およびこれらの混合物が挙げられる。特に有効な結果が、タザロテンをレチノイド成分として使用した時に得られる。
一態様では、眼内薬剤送達システムは、下記式で表される化合物を含む。
Figure 2007535563
この化合物は、タザロテンであり、便宜のために、本出願では化合物Aとも言う。
他の態様において、眼内薬剤送達システムは、下記式で表される化合物を含む。
Figure 2007535563
上記化合物は、タザロテン酸であり、便宜のために、本出願では化合物Bとも言う。
他の態様では、眼内薬剤送達システムは、下記式で表される化合物を含む。
Figure 2007535563
便宜のため、この化合物を本出願では化合物Cと言う。
他の態様では、眼内薬剤送達システムは、下記式によって表される化合物を含む。
Figure 2007535563
便宜のため、この化合物を本出願では、化合物Dと言う。
他の態様では、眼内薬剤送達システムは、下記式で表される化合物を含む。
Figure 2007535563
便宜のため、この化合物を本出願では、化合物Eと言う。
また、これらの薬剤送達システムは、レチノイド成分の塩類も含有する。システムの化合物の医薬的に許容される酸付加塩は、医薬的に許容される陰イオンを含有する非毒性付加塩を形成する酸から形成される酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、沃化水素酸塩、硫酸塩または二硫酸塩、燐酸塩または酸性燐酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、蓚酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、糖酸塩およびp−トルエンスルホン酸塩である。
したがって、薬剤送達システムは、タザロテン酸、タザロテン酸前駆体、その塩、およびそれらの混合物のようなレチノイドを含む、またはそれから本質的に成る、またはそれのみから成る治療成分を含んでもよい。治療成分のこれらの要素が、レチノイド成分であると理解してもよい。このようなシステムの生分解性ポリマーマトリックスは、実質的にポリビニルアルコールを含有しない、言い換えるとポリビニルアルコールを含有しなくてもよい。
付加的なレチノイド成分は、当業者に既知の所定の化学合成法のような従来の方法を使用して得てもよい。レチノイド成分の構造および製造方法のいくつかの例が、米国特許第5,776,699号、米国特許第5,958,954号、米国特許第5,877,207号および米国特許第5,919,970号にある。
治療的に有効なレチノイド成分は、従来のスクリーニング技術を使用して、検査し、同定してもよい。広い意味では、たとえば、従来の周知技術、たとえば(限定ではない)前記特許文献中に記載されたものを使用して、任意の化合物のRAR活性を試験することができる。
一度化合物が適切なRAR活性を持つと決定されると、副作用のために適切なモニタリングで試験動物に投与することができる。そのようなモニタリングの結果を、参考レチノイド剤を与えられた試験動物の類似のモニタリングと比較することで、この化合物が本発明によって有用であるかどうか決定することができる。
本発明の他の態様では、たとえば、有用なRAR活性を持つことが知られている、または従来の周知技術を使用して試験して有用なRAR活性を持つことがわかった化合物のスクリーニングライブラリーからの1以上の化合物に関し、従来の周知試験法(たとえば、米国特許第5,906,920号参照)を使用して、個別にあるいは集団でRXR活性を試験する。
実質的にRXR活性のない化合物を更なる試験のために選択してもよい。所望のRAR活性はあるが実質的にRXR活性のない化合物は、本発明の1以上の態様によれば、有用である。
他の周知の単純な試験方法および/またはアッセイを、RAR-α、RAR-βおよびRAR-γに対するRAR活性化合物の選択性および特異性を測定するために、使用してもよい。たとえば、米国特許第5,776,699号および/または前記特許文献に記載されるような従来の周知のアッセイを使用して、化合物のRAR-α、RAR-βおよびRAR-γに対する選択性または特異性を測定することができる。そのようなアッセイの結果に基づいて、ある化合物が本発明の1以上の態様によって、有用であるか否か決定することができる。
任意の化合物が本発明により有用であるかという更なる確認を、この化合物を動物に経口投与し、副作用の存在、非存在をモニタリングすることによって得ることができる。
いずれにしても、どの化合物が本発明によって有用であるかの測定は、過度の実験をすることなく、従来の周知技術を使用して達成することができる。
レチノイド成分は、粒状または粉末形態であってよく、生分解性ポリマーマトリックスに閉じ込めうる。一般に、眼内インプラントにおけるレチノイド成分粒子は、約3000ナノメートル未満の有効平均粒度を有する。あるインプラントにおいて、粒子は、約3000ナノメートル未満のオーダーの有効平均粒度を有しうる。例えば、粒子は、約500ナノメートル未満の有効平均粒度を有しうる。他のインプラントにおいて、粒子は、約400ナノメートル未満の有効平均粒度、さらに他の態様においては、約200ナノメートル未満の粒度を有しうる。
眼内薬剤送達システムのレチノイド成分は、好ましくは、システムの重量に対して約10%〜90%である。より好ましくは、レチノイド成分は、システムの重量に対して約20%〜約80%である。好ましい態様において、レチノイド成分は、インプラントの重量の約40%(例えば、30%〜50%)を占める。他の態様において、レチノイド成分は、インプラントの重量の約60%を占める。
薬剤送達システムに使用される好適なポリマー材料または組成物は、眼に適合性、即ち生体適合性であり、それによって、眼の機能または生理機能に実質的障害を生じない材料を包含する。そのような材料は、好ましくは少なくとも部分的に、より好ましくは実質的に完全に生分解性または生体内分解性である。
有用なポリマー材料の例は、有機エステルおよび有機エーテルから誘導され、かつ/またはそれらを含有する材料であって、分解した際に、生理学的に許容される分解生成物を生じる材料(モノマーを含む)であるが、それらに限定されない。無水物、アミド、オルトエスエル等から誘導され、かつ/またはそれらを含有するポリマー材料を、単独で、または他のモノマーと組み合わせて、使用してもよい。ポリマー材料は、付加または縮合重合体、好都合には縮合重合体であってよい。ポリマー材料は、架橋または非架橋、例えば軽架橋以下であってよく、例えば、ポリマー材料の約5%未満または約1%未満が架橋されている。多くの場合、炭素および水素の他に、ポリマーは、酸素および窒素の少なくとも1つ、好都合には酸素を含有する。酸素は、オキシ、例えばヒドロキシまたはエーテル、カルボニル、例えば非オキソ−カルボニル、例えばカルボン酸エステル等として存在しうる。窒素は、アミド、シアノおよびアミノとして存在しうる。制御薬剤送達のための被包形成を記載しているHeller, Biodegradable Polymers in Controlled Drug Delivery, CRC Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 第1巻, CRC Press, Boca Raton, FL 1987, p.39-90に示されているポリマーを、本発明のインプラントに使用しうる。
他に関心がもたれるものは、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)、および多糖類である。関心がもたれるポリエステルは、D−乳酸、L−乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸、ポリカプロラクトンおよびそれらの組合せのポリマーを包含する。一般に、L−ラクテートまたはD−ラクテートを使用することによって、ゆっくり侵食されるポリマーまたはポリマー材料が得られ、一方、ラクテートラセミ体を使用することによって、侵食が実質的に促進される。
有用な多糖類の例は、アルギン酸カルシウム、および官能化セルロース、特に、水不溶性であることを特徴とし、分子量が例えば約5kD〜500kDの、カルボキシメチルセルロースエステルであるが、それらに限定されない。
関心がもたれる他のポリマーは、生体適合性であり、かつ生分解性および/または生体内分解性の場合もある、ポリエステル、ポリエーテルおよびそれらの組合せであるが、それらに限定されない。
本発明に使用されるポリマーまたはポリマー材料のいくつかの好ましい特徴は、生体適合性、治療成分との適合性、本発明の薬剤送達システムの製造におけるポリマーの使い易さ、少なくとも約6時間の、好ましくは約1日より長い、生理環境における半減期、硝子体の粘度を有意に増加させないこと、および水不溶性を包含しうる。
マトリックスの形成のために含有される生分解性ポリマー材料は、酵素的または加水分解的に不安定になりやすいことが望ましい。水溶性ポリマーを、加水分解的または生分解的に不安定な架橋で架橋させて、有用な水不溶性ポリマーが得られる。安定性の程度は、モノマーの選択、ホモポリマーまたはコポリマーを使用するか、ポリマー混合物の使用、ポリマーが末端酸根を有するか、に依存して広く変化させることができる。
システムに使用されるポリマー組成物の相対平均分子量も、ポリマーの生分解性、従ってシステムの長時間放出プロフィールを調節するのに同じく重要である。種々の分子量の同じかまたは異なるポリマーの組成物を、システムに含有させて、放出プロフィールを調節しうる。特定のシステムにおいて、ポリマーの相対平均分子量は、約9〜約64kD、一般に約10〜約54kD、より一般的には約12〜約45kDである。
いくつかの薬剤送達システムにおいて、グリコール酸と乳酸のコポリマーを使用し、生分解速度をグリコール酸/乳酸の比率によって調節する。最も急速に分解されるコポリマーは、ほぼ同量のグリコール酸および乳酸を含有する。ホモポリマー、または等しくない比率を有するコポリマーは、分解に対してより抵抗性である。グリコール酸/乳酸の比率は、薬剤送達システムの脆性にも影響を与え、より大きい形状には、より柔軟性のインプラントが望ましい。ポリ乳酸ポリグリコール酸(PLGA)コポリマーにおけるポリ乳酸のパーセントは、0〜100%、好ましくは約15〜85%、より好ましくは約35〜65%にすることができる。いくつかの薬剤送達システムにおいて、50/50 PLGAコポリマーが使用される。
眼内薬剤送達システムの生分解性ポリマーマトリックスは、2つまたはそれ以上の生分解性ポリマーの混合物を含有しうる。例えば、インプラントは、第一生分解性ポリマーおよび異なる第二生分解性ポリマーの混合物を含有しうる。1つまたはそれ以上の生分解性ポリマーは、末端酸根を有してよい。
分解性ポリマーからの薬剤放出は、いくつかのメカニズム、またはメカニズムの組合せの結果である。これらのメカニズムのいくつかは、システム表面からの脱離、溶解、水和ポリマーの多孔流路からの拡散、および侵食である。侵食は、本体または表面、またはその両方の組合せであることができる。本明細書に記載するように、眼内薬剤送達システムのマトリックスは、眼への移植から1週間より長い期間にわたって、所定量のレチノイド成分の放出を持続させるのに有効な速度で、薬剤を放出しうる。特定のシステムにおいて、治療量のレチノイド成分を、約1ヶ月より長い期間、さらには約6ヶ月間またはそれ以上にわたって放出させる。
生分解性眼内薬剤送達システムの1つの例は、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)またはポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)を含有する生分解性ポリマーマトリックスを伴うタザロテン、タザロテン酸またはこれらの混合物を含んで成る。システムは、システム重量の約40%〜約70%の量のレチノイド成分を含有しうる。そのような混合物は、システムを眼に配置してから約1ヶ月間〜約4ヶ月間にわたって、治療有効量のレチノイド成分の放出を持続させるのに有効である。
生分解性ポリマーマトリックスを含有する眼内薬剤送達システムからのレチノイド成分の放出は、初期放出バースト、次に、放出されるレチノイド成分の量の漸増を含む場合があり、または該放出は、レチノイド成分の初期放出遅延、次に、放出増加を含む場合もある。薬剤送達システムが実質的に完全に分解した場合、放出されたレチノイド成分のパーセントは、約100である。既存の薬剤送達システムと比較して、本明細書に開示する薬剤送達システムは、眼に配置してから約1週間後までは、レチノイド成分を完全には放出しないか、または約100%を放出しない。
システムの寿命にわたって、薬剤送達システムからのレチノイド成分の比較的定速の放出を与えることが望ましい場合がある。例えば、レチノイド成分が、システムの寿命にわたって、1日当たり約0.01μg〜約2μgの量で放出されることが望ましい場合がある。しかし、放出速度は、生分解性ポリマーマトリックスの配合に依存して変化して、増加するかまたは減少する場合もある。さらに、レチノイド成分の放出プロフィールは、1つまたはそれ以上の直線部分および/または1つまたはそれ以上の非直線部分を含みうる。一旦、システムが分解または侵食しはじめたら、放出速度はゼロより大きいことが好ましい。
薬剤送達システムは、モノリシックである(即ち、1つまたはそれ以上の活性剤がポリマーマトリックス全体に均一に分散されている)か、または被包され、その場合、活性剤の貯留部がポリマーマトリックスによって被包されている。製造容易性により、モノリシックシステムが、被包形態より一般に好ましい。しかし、被包された貯留部型インプラントによって得られるより優れた調節は、薬剤の治療レベルが狭い幅内にあるいくつかの状況において有利な場合もある。さらに、レチノイド成分を含有する治療成分を、マトリックス中に不均質に分散させてもよい。例えば、インプラントは、インプラントの第二部分に対してより高い濃度のレチノイド成分を有する部分を含有してよい。
本明細書に開示する眼内薬剤送達システムは、針での投与用に、約5μm〜約2mm、または約10μm〜約1mmの大きさ、外科的移植による投与用に、1mmより大、または2mmより大、例えば3mm〜10mmの大きさであってよい。ヒトの硝子体腔は、例えば1〜10mmの長さを有する種々の形状の比較的大きいインプラントを収容することができる。インプラントは約2mm×0.75mm直径の寸法を有する円筒形ペレット(例えばロッド)であってよい。または、インプラントは、長さ約7mm〜約10mm、直径約0.75mm〜約1.5mmの円筒形ペレットであってもよい。
眼内インプラントは、眼、例えば硝子体へのインプラントの挿入、およびインプラントの収容の両方を容易にするように、少なくとも幾分柔軟性であってもよい。インプラントの全重量は、一般に約250〜5000μg、より好ましくは約500〜1000μgである。例えば、インプラントは約500μg、または約1000μgであってよい。非ヒト個体に関しては、インプラントの寸法および全重量は、個体の種類に依存してより大きいかまたはより小さくてよい。例えば、ウマの約30mLおよびゾウの約60〜100mLと比較して、ヒトは約3.8mLの硝子体容量を有する。ヒトに使用される大きさのインプラントを、他の動物に応じて大きくするかまたは小さくし、例えばウマ用のインプラントは約8倍大きくし、または、例えばゾウ用のインプラントは26倍大きくしうる。
例えば、中心が1つの材料で形成され、表面が同じかまたは異なる組成物の1つまたはそれ以上の層を有し、層が架橋しているか、または異なる分子量、異なる密度または多孔率等であるインプラントを製造することができる。例えば、薬剤の初期ボーラスを急速に放出することが望ましい場合、中心が、ポリラクテート−ポリグリコレートコポリマーで被覆されたポリラクテートであってよく、それによって初期分解速度を増加しうる。または、中心が、ポリラクテートで被覆されたポリビニルアルコールであってもよく、それによって、外側のポリラクテートの分解時に、中心が溶解し、眼から急速に流れ出るようにしうる。
薬剤送達システムは、繊維、シート、フィルム、微小球、球体、円板、プラク等を包含する任意の形状であってよい。インプラントの大きさの上限は、インプラントに関する許容性(toleration for the implant)、挿入時の大きさ制限、取扱い容易性等のような要因によって決定される。シートまたはフィルムを使用する場合、シートまたはフィルムは、取扱い容易性のために、少なくとも約0.5mm×0.5mm、一般に約3〜10mm×5〜10mm、厚さ約0.1〜1.0mmである。繊維を使用する場合、繊維の直径は、一般に約0.05〜3mmであり、繊維の長さは一般に約0.5〜10mmである。球体は、直径約0.5μm〜4mmであり、他の形状の粒子に匹敵する容量を有しうる。
薬剤送達システムの大きさおよび形は、放出速度、治療期間、および移植部位における薬剤濃度を調節するために使用することもできる。より大きいシステムは、比例的により高い投与量を送達するが、表面積/質量比に依存して、より遅い放出速度を有する場合もある。移植部位または投与部位に適合させるために、システムの特定の大きさおよび形状を選択する。
薬剤送達システムは、封止パッケージなどのキットとして供給できる。システムは滅菌または未滅菌であってよい。有利には、本発明のシステムは、滅菌または未滅菌のいずれの状態であっても、比較的長期間、例えば6ヶ月以上、安定である。例えば、本発明のシステムは、その物理的外観、およびレチノイド成分のような治療成分の放出プロフィールを、約20℃〜約40℃の温度範囲で、少なくとも6ヶ月、更には少なくとも1年間も保持する。従って、このシステムは、治療効果の顕著な損失を伴わずに実質的な期間、貯蔵することができる。
レチノイド成分、ポリマーおよび任意の他の調節剤の比率は、変化する比率においていくつかの薬剤送達システムを処方することによって経験的に決定しうる。USP承認の溶解または放出試験方法を使用して、放出速度を測定することができる(USP 23;NF 18(1995), p.1790-1798)。例えば、無限沈下法(infinite sink method)を使用して、秤量したインプラント試料を、水中に0.9%NaClを含有する測定容量の溶液に添加すると、該溶液容量は、放出後の薬剤濃度が飽和の5%未満であるような容量になる。混合物を37℃に維持し、ゆっくり撹拌して、インプラントを懸濁状態に維持する。時間の関数としての溶解薬剤の外観を、当分野で既知の種々方法、例えば、分光光度的に、HPLC、質量分析等によって、吸収が一定になるまでか、または90%を超える薬剤が放出されるまで、追跡しうる。
本明細書に開示される眼内薬剤送達システムに含有されるレチノイド成分に加えて、眼内システムは、1つまたはそれ以上の付加的な眼科的に許容される治療剤も含有しうる。例えば、システムは、1つまたはそれ以上の抗ヒスタミン薬、1つまたはそれ以上の抗生物質、1つまたはそれ以上のβ遮断薬、1つまたはそれ以上のステロイド、1つまたはそれ以上の抗新生物薬、1つまたはそれ以上の免疫抑制薬、1つまたはそれ以上の抗ウイルス薬、1つまたはそれ以上の酸化防止剤、およびそれらの混合物を含有しうる。
本発明のシステムに使用しうる薬理学的または治療的薬剤は、米国特許第4474451号第4〜6欄、および同第4327725号第7〜8欄に開示されている薬剤を包含するが、それらに限定されない。
抗ヒスタミン薬の例は、ロラダチン、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、ブロムフェニルアミン、シプロヘプタジン、テルフェナジン、クレマスチン、トリプロリジン、カルビノキサミン、ジフェニルピラリン、フェニンダミン、アザタジン、トリペレナミン、デクスクロルフェニラミン、デクスブロムフェニラミン、メトジラジン、およびトリメプラジン、ドキシラミン、フェニラミン、ピリラミン、キオルシクリジン、トンジラミン、ならびにそれらの誘導体であるが、それらに限定されない。
抗生物質の例は、セファゾリン、セフラジン、セファクロール、セファピリン、セフチゾキシム、セフォペラゾン、セフォテタン、セフトキシム(cefutoxime)、セフォタキシム、セファドロキシル、セフタジジム、セファレキシン、セファロチン、セファマンドール、セフォキシチン、セフォニシド、セフォラニド、セフトリアキソン、セファドロキシル、セフラジン、セフロキシム、シクロスポリン、アンピシリン、アモキシリン、シクラシリン、アンピリシン、ペニシリンG、ペニシリンVカリウム、ピペラシリン、オキサシリン、バカンピシリン、クロキサシリン、チカルシリン、アズロシリン、カルベニシリン、メチシリン、ナフシリン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、アズトレオナム、クロラムフェニコール、塩酸シプロフロキサシン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、ゲンタマイシン、リンコマイシン、トブラマイシン、バンコマイシン、硫酸ポリミキシンB、コリスチメテート、コリスチン、アジスロマイシン、オーグメンチン、スルファメトキサゾール、トリメトプリム、ガチフロキサシン、オフロキサシン、およびそれらの誘導体であるがそれらに限定されない。
β遮断薬の例は、アセブトロール、アテノロール、ラベタロール、メトプロロール、プロプラノロール、チモロール、およびそれらの誘導体である。
ステロイドの例は、コルチコステロイド、例えば、コルチゾン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、デキサメタゾン、メドリゾン、ロテプレドノール(loteprednol)、フルアザコート、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、ベタメタゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、リアムシノロンヘキサカトニド、酢酸パラメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノニド、フルオシノロン、トリアムシノロン、それらの誘導体、ならびにそれらの混合物である。
抗新生物薬の例は、アドリアマイシン、シクロホスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ジュアノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、メトトレキサート、フルオロウラシル、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、メチル−CCNU、シスプラチン、エトポシド、インターフェロン、カンプトテシンおよびその誘導体、フェネステリン、タキソールおよびその誘導体、タキソテールおよびその誘導体、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タモキシフェン、エトポシド、ピポスルファン、シクロホスファミド、およびフルタミド、ならびにそれらの誘導体である。
免疫抑制薬の例は、シクロスポリン、アザチオプリン、タクロリムスおよびそれらの誘導体である。
抗ウイルス薬の例は、インターフェロンガンマ、ジドブジン、塩酸アマンタジン、リバビリン、アシクロビル、バルシクロビル、ジデオキシシチジン、ホスホノ蟻酸、ガンシクロビルおよびそれらの誘導体である。
酸化防止剤の例は、アスコルベート、α−トコフェロール、マンニトール、還元型グルタチオン、種々のカロテノイド、システイン、尿酸、タウリン、チロシン、スーパーオキシドジスムターゼ、ルテイン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、アスタザンチン(astazanthin)、リコペン、N−アセチル−システイン、カルノシン、γ−グルタミルシステイン、ケルセチン、ラクトフェリン、ジヒドロリポ酸、シトレート、イチョウエキス、茶カテキン、ビルベリーエキス、ビタミンEまたはビタミンEのエステル、レチニルパルミテート、およびそれらの誘導体である。
他の治療薬は、スクアラミン、炭酸脱水酵素阻害薬、αアゴニスト、プロスタミド、プロスタグランジン、駆虫薬、抗真菌薬、およびそれらの誘導体を包含する。
個々にまたは組み合わせて薬剤送達システムに使用される1つまたはそれ以上の活性剤の量は、必要とされる有効投与量、およびシステムからの所望放出速度に依存して広く変化する。本明細書に示すように、薬剤は、インプラントの少なくとも約1wt%、より一般的には少なくとも約10wt%であり、かつ、一般に約80wt%以下、より一般的には約40wt%以下である。
本明細書に開示する眼内薬剤送達システムは、治療成分に加えて、有効量の緩衝剤、防腐剤等も含有しうる。好適な水溶性緩衝剤は、アルカリおよびアルカリ土類炭酸塩、燐酸塩、炭酸水素塩、クエン酸塩、硼酸塩、酢酸塩、琥珀酸塩等、例えば、燐酸、クエン酸、硼酸、酢酸、炭酸水素、炭酸等を包含するが、それらに限定されない。これらの緩衝剤は、システムのpHを約2〜約9、より好ましくは約4〜約8に維持するのに充分な量で存在するのが好都合である。従って、緩衝剤は、全薬剤送達システムの約5wt%もの量で存在する場合もある。好適な水溶性防腐剤は、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルベート、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硼酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、パラベン、メチルパラベン、ポリビニルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール等、およびそれらの混合物を包含する。これらの防腐剤は、0.001〜約5wt%、好ましくは0.01〜約2wt%の量で存在しうる。
さらに、薬剤送達システムは、溶解促進成分を含有していない実質的に同じシステムと比較して、レチノイド成分の溶解性を増加させるのに有効な量で使用される溶解促進成分を含有しうる。例えば、インプラントは、レチノイド成分の溶解性を増加させるのに有効なβ−シクロデキストリンを含有しうる。β−シクロデキストリンは、インプラントの約0.5%(w/w)〜約25%(w/w)の量で使用しうる。特定のインプラントにおいて、β−シクロデキストリンは、インプラントの約5%(w/w)〜約15%(w/w)の量で使用される。
ある場合には、同じかまたは異なる薬理学的物質を使用して、薬剤送達システムの混合物を使用しうる。この場合、単一投与によって二相または三相放出を与える放出プロフィールの組み合わせが得られ、放出のパターンがかなり変化しうる。
さらに、米国特許第5869079号に記載されているような放出調節剤もインプラントに含有させてよい。使用される放出調節剤の量は、所望の放出プロフィール、調節剤の活性、および調節剤の不存在下のレチノイドの放出プロフィールに依存する。電解質、例えば塩化ナトリウムおよび塩化カリウムも、インプラントに含有させてよい。緩衝剤または促進剤が親水性である場合、それは放出促進剤としても作用しうる。親水性添加剤は、薬剤粒子を囲んでいる材料のより速い溶解(これは、露出した薬剤の表面積を増加させ、それによって薬剤の生体内分解速度を増加させる)によって、放出速度を増加させる作用をする。同様に、疎水性緩衝剤または促進剤は、よりゆっくり溶解し、薬剤粒子の露出を遅くし、それによって薬剤の生体内分解速度を遅くする。
種々の方法を使用して、本明細書に開示する薬剤送達システムを製造しうる。有用な方法は、溶媒蒸発法、相分離法、界面法、成形法、射出成形法、押出法、同時押出法、カーバープレス(carver press)法、ダイ打抜き法、熱圧縮法、それらの組合せ等であるが、必ずしもそれらに限定されない。
特定の方法が、米国特許第4997652号に記載されている。押出法を使用して、製造における溶媒の必要性を回避しうる。押出法を使用する場合、ポリマーおよび薬剤は、製造に必要とされる温度(一般に、低くとも約85℃)において安定であるように選択される。押出法は、約25℃〜約150℃、より好ましくは約65℃〜約130℃の温度を使用する。インプラントは、薬剤/ポリマー混合のために、約0〜1時間、0〜30分間、または5〜15分間にわたって、温度を約60℃〜約150℃、例えば約130℃にすることによって製造しうる。例えば、時間は、約10分間、好ましくは約0〜5分間であってよい。次に、インプラントを、約60℃〜約130℃、例えば約75℃の温度で押し出す。好ましくは、この温度は、治療薬に付随する変性温度より実質的に高くない。
さらに、インプラントを同時押出してもよく、それによってインプラントの製造の間に、コア領域に被膜を形成しうる。
圧縮法を使用してインプラントを製造してもよく、圧縮法は、一般に、押出法より速い放出速度のインプラントを生じる。圧縮法は、約50〜150psi、より好ましくは約70〜80psi、さらに好ましくは約76psiの圧力を使用し、約0℃〜約115℃、より好ましくは約25℃の温度を使用する。
更に、インプラント、特にウエハインプラントのような所望のサイズおよび形に切断されたインプラントは、潤滑剤のような、添加剤を含まない実質的に同じインプラントに対して、インプラントの脆性を減少させるのに有効な添加剤を含有してもよい。添加剤をインプラント中に加えることによって、破損によって損傷したまたは使用不能のインプラントの量が減少する。
微粒子は、溶剤蒸発法を使用して製造できる。このような方法は、種々の組成物成分の液体ふるい分け、凍結乾燥および滅菌工程を含み得る。一態様では、レチノイド成分とポリマー成分とを塩化メチレンと混合して第一組成物を形成し、また水とポリビニルアルコールとを混合して第二組成物を形成することができる。この第一および第二組成物を混合して乳化物を形成することができる。この乳化物を、濯ぎおよび/または遠心分離し、得られた生成物を乾燥させることができる。更なる態様では、乳化物を蒸発過程に供し、乳化物から塩化メチレンを除去する。たとえば、乳化物を約2日以上かけて蒸発することができる。この態様の方法は、レチノイド含有微粒子の乾燥相でのふるい分けを含む方法と比べると、レチノイド含有微小球を液相でふるい分けすることを含む。また、この方法は、ふるい分けされた微粒子を凍結乾燥する工程、および凍結乾燥された微粒子を袋詰めする工程も含む。レチノイド含有微小球を製造する方法の他の例は、米国特許公開第2005/0003007号(Boixら)に開示されている。
したがって、一態様では、レチノイド含有微小球を製造する方法は、以下の工程の1以上を含む。ある態様では、方法は、以下の工程のいずれかを含む。PLGAのようなポリマー材料を塩化メチレンのような溶剤に溶解する。PLGAの溶解は、PLGAが完全に溶解するまで、混合物を撹拌することによって行うことができる。タザロテンのようなレチノイド成分の所定量を、PLGAが溶解した組成物に加える。得られた組成物は、この方法に関しては、第一組成物と理解することができる。熱水、たとえば約80℃の温度の水と、ポリビニルアルコール(PVA)とを混合して、異なる第二組成物を製造する。PVAは、実質的に泡が形成されることなく、PVAを懸濁物内に保つのに有効な速度で水を撹拌することによって、熱水と混合することができる。次いで、第二組成物を所望の温度、たとえば室温に冷却してもよい。
乳化物は、先の段落で記載した、第一組成物と第二組成物とを混合することによって製造することができる。たとえば、第二組成物(すなわちPVA溶液)を、泡の形成を避けながら、激しく撹拌することができる。第二組成物を撹拌しながら、第一組成物を加え、乳化物を形成する。混合物が乳化すると、乳化物表面の動きを維持するために、撹拌速度を速めてもよい。泡形成は、これらの工程の間は最小限にする。この方法では、乳化物は、少なくとも2日間(たとえば、約48時間以上)撹拌される。乳化物を約24時間撹拌すると、乳化物は、液化し始める。泡形成の可能性を少なくするため、乳化物が液化した時、撹拌速度を遅くすることができる。約48時間後、塩化メチレンを実質的に、あるいは完全に留去する。この方法は、蒸発物中の塩化メチレンの量を測定する工程を含むことができる。
塩化メチレンの蒸留の後、微粒子含有組成物を濯ぎ、ふるい分けする。たとえば、微粒子含有組成物を液体と混合し、遠心分離する。上澄み液を取り除き、ペレットを、音波破砕または他の適切な方法によって、追加の遠心分離工程のために再懸濁することもできる。微小球懸濁物を遠心分離した後、水を加えて微小球を濯ぎ、得られた上澄み液を減圧排出によって取り除くことができる。好ましい方法では、少なくとも3つの水濯ぎ工程が望ましい。濯いだペレットを、次いで、複数のフィルターを通してふるい分けする。たとえば、ペレットを、それぞれ孔径が約125マイクロメーターおよび約45マイクロメーターの2つの積層フィルターを通過させることができる。このフィルターを水で濯ぎ、溶液をフィルターの底に回収することもできる。
次いで、回収された溶液を追加量の水と混合し、遠心分離を使用して2ないし3回濯ぐことができる。濯いだペレットを、次いで、フィルターの底に置き、フィルターで覆い、真空凍結乾燥中の微小球材料の消失を減少させる。次いで、この材料を凍結する。たとえば、材料は、50℃で凍結し、少なくとも12時間凍結乾燥する。凍結乾燥後、微小球を包装中に保存しおよび/またはγ線源のような滅菌装置によって滅菌してもよい。
本発明の薬剤送達システムは、2〜3mmの強膜切開後の鉗子またはトロカールによる配置を包含する種々の方法によって、眼、例えば眼の硝子体腔に挿入しうる。インプラントを眼に挿入するのに使用しうる器具の1つの例は、米国特許出願公開第2004/0054374号に開示されている。配置方法は、治療成分または薬剤放出速度論に影響を与えうる。例えば、トロカールでのインプラントの送達は、鉗子による配置より、硝子体内に深くインプラントを配置し、それによって、インプラントを硝子体の縁により近づけうる。インプラントの位置は、要素の周囲の治療成分または薬剤の濃度勾配に影響を与える場合があり、従って、放出速度に影響を与えうる(例えば、硝子体の縁の近くに配置するほど、より遅い放出速度を生じうる)。針または類似デバイスを用いて、本発明の微粒子を眼の硝子体に注入できる。
本発明の薬剤送達システムは、とりわけ、増殖性硝子体網膜症、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症および色素性網膜炎のような眼球状態の症状を治療または軽減するのに有効な量のレチノイド成分を放出するような形状にされる。
本明細書に開示するシステムは、下記のような疾患または症状を予防するために、前記のレチノイドまたは他の治療薬を放出するように構成してもよい。
黄斑症/網膜変性:
非滲出性老化関連黄斑変性(ARMD)、滲出性老化関連黄斑変性(ARMD)、脈絡膜新生血管形成、糖尿病性網膜症、急性斑状視神経網膜疾患、中心性漿液性脈絡網膜症、類嚢胞黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫。
ブドウ膜炎/網膜炎/脈絡膜炎:
急性多発性斑状色素上皮症、ベーチェット病、バードショット(Birdshot)網膜脈絡膜症、感染症(梅毒、ライム病、結核、トキソプラズマ症)、中間部ブドウ膜炎(扁平部炎)、多病巣性脈絡膜炎、多発性一過性白点症候群(Multiple Evanescent White Dot Syndrome)(MEWDS)、眼類肉腫症、後強膜炎、ほ行性脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、フォークト−コヤナギ−ハラダ(VKH)症候群。
血管疾患/滲出性疾患:
網膜動脈閉塞疾患、網膜中心静脈閉塞症、播種性血管内凝血障害、網膜静脈分枝閉塞症、高血圧性眼底変化、眼虚血症候群、網膜微小動脈瘤、コーツ病、傍中心窩(parafoveal)毛細管拡張症、半網膜静脈閉塞症、乳頭静脈炎、網膜中心動脈閉塞、網膜動脈分枝閉塞症、頸動脈疾病(CAD)、霜状分岐血管炎、鎌状赤血球網膜症および他の異常ヘモグロビン症、網膜色素線条症、家族性滲出性硝子体網膜症、イールズ病。
外傷性/外科性:
交感神経性眼炎、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー、PDT、光凝固、手術時低灌流、放射線性網膜症、骨髄移植性網膜症。
増殖性疾患:
増殖性硝子体網膜症および網膜上膜、増殖性糖尿病性網膜症、未熟児網膜症(水晶体後線維増殖症)。
感染性疾患:
眼ヒストプラスマ症候群、眼トキソカラ症、推定眼ヒストプラスマ症候群(POHS)、眼内炎、トキソプラスマ症、HIV感染関連網膜疾患、HIV感染関連脈絡膜疾患、HIV感染関連ブドウ膜炎疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性外網膜壊死、真菌性網膜疾患、眼梅毒、眼結核、広汎性片側性亜急性視神経網膜炎、ハエウジ病。
遺伝性疾患:
網膜色素変性、網膜ジストロフィー関連全身性疾患、先天性停在夜盲症、錐体ジストロフィー、黄色斑眼底、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー(Pattern Dystrophy of the Retinal Pigmented Epithelium)、X染色体性網膜分離、ソーズビー眼底ジストロフィー、良性同心性黄斑症、ビエッティ結晶性ジストロフィー(Bietti's Crystalline Dystrophy)、弾性線維性仮性黄色腫、オースラー−ウェーバー症候群。
網膜断裂/円孔:
網膜剥離、斑状円孔、巨大網膜断裂。
腫瘍:
腫瘍、固形腫瘍、腫瘍転移、良性腫瘍、例えば、血管腫、神経線維腫、トラコーマおよび化膿性肉芽腫に関連した網膜疾患;RPEの先天性肥大、後部ブドウ膜黒色腫、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜転移、網膜および網膜色素上皮の複合過誤腫、網膜芽細胞腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜星状細胞腫、眼内リンパ系腫瘍。
その他:
点状内脈絡膜症、急性後多発性斑状色素上皮症、近視性網膜変性、急性網膜色素上皮炎、眼炎症性および免疫性疾患、眼血管機能不全、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障等。
1つの態様において、薬剤送達システム、例えば、本明細書に開示するインプラントを、ヒトまたは動物患者、好ましくは生体ヒトまたは動物の、眼の後区に投与する。少なくとも1つの態様において、眼の網膜下腔に接近せずに、インプラントを投与する。例えば、患者の治療法は、後眼房に直接的にインプラントまたは微粒子を配置することを含みうる。他の態様において、患者の治療法は、硝子体内注入、結膜下注入、テノン下注入、眼球後注入および脈絡膜上注入の少なくとも1つによって、患者にインプラントまたは微粒子を投与することを含みうる。
少なくとも1つの態様において、患者における視力向上または視力維持の方法は、本明細書に開示する1つまたはそれ以上のレチノイド成分を含有する1つまたはそれ以上のインプラントまたは微粒子を、硝子体内注入、結膜下注入、テノン下注入、眼球後注入および脈絡膜上注入の少なくとも1つによって、患者に投与することを含んで成る。適切な太さの針、例えば、22ゲージ針、27ゲージ針または30ゲージ針を含む注入器具を効果的に使用して、ヒトまたは動物の眼の後区に薬剤送達システムを注入することができる。システムからのレチノイド成分の長期間放出により、繰り返しの注入が必要でない場合が多い。
本発明の他の局面において、下記を含んで成る眼疾患治療用キットを提供する:a)レチノイド成分、例えばRARアゴニスト(例えば、タザロテン、タザロテン酸またはこれらの混合物)を含有する治療成分および薬剤放出持続成分を含んで成る長期間放出インプラントまたは微粒子を含有する容器またはパッケージ、およびb)使用説明書。使用説明書は、薬剤送達システムの取扱い方法、眼領域へのシステムの挿入方法、およびシステムの使用により予期される事象を含みうる。
実施例1
レチノイド成分および生分解性ポリマーマトリックスを含有するインプラントの製造および試験
レチノイド成分、例えばタザロテンまたはタザロテン酸を、生分解性ポリマー組成物と、ステンレス鋼乳鉢において合わすことによって、生分解性インプラントを製造する。他のレチノイド成分は、1つまたはそれ以上の上記化合物を含んでよい。その組合せを、96RPMに設定したTurbulaシェーカーで15分間混合する。粉末ブレンドを、乳鉢の壁からこすり取り、次に、さらに15分間再混合する。混合した粉末ブレンドを、所定の温度で合計30分間にわたって半溶融状態に加熱し、ポリマー/薬剤メルトを形成する。
9ゲージのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)管を使用してポリマー/薬剤メルトをペレット化し、ペレットをバレルに装填し、材料を所定コア押出温度でフィラメントに押し出すことによって、ロッドを製造する。次に、フィラメントを、約1mgサイズのインプラントまたは薬剤送達システムに切る。ロッドは、約2mm長さ×0.72mm直径の寸法を有する。ロッドインプラントは、約900μg〜1100μgの重さである。
所定温度においてCarverプレスでポリマーメルトを平板化し、該平板材料を、それぞれ約1mgのウエハに切ることによって、ウエハを形成する。ウエハは、直径約2.5mm、厚さ約0.13mmである。ウエハインプラントは、約900μg〜約1100μgの重さである。
生体外放出試験を、インプラント(ロッドまたはウエハ)の各ロットについて行うことができる。各インプラントを、37℃において、燐酸緩衝生理食塩水10mLと共に、24mLのネジ蓋バイアルに入れ、第1、4、7、14、28日およびその後2週間ごとに、1mLアリコートを取り、等容量の新しい媒質と交換する。
薬剤アッセイは、HPLC(Waters 2690 Separation Module(または2696)、およびWaters 2996 Photodiode Array Detectorから成る)によって行ってよい。30℃に加熱したUltrasphere, C-18(2), 5μm;4.6×150mmカラムを分離に使用することができ、検出器は264nmに設定することができる。移動相は、流速1mL/分および合計実行時間12分/試料の(10:90)MeOH緩衝移動相であってよい。緩衝移動相は、(68:0.75:0.25:31)13mM 1−ヘプタンスルホン酸、ナトリウム塩−氷酢酸−トリエチルアミン−メタノールを含んで成ってよい。放出速度は、時間の経過に伴って、所定容量の媒質に放出された薬剤量(μg/日)を算出することによって求めることができる。
インプラント用に選択されるポリマーは、例えば、Boehringer IngelheimまたはPurac Americaから得ることができる。ポリマーの例は、RG502、RG752、R202H、R203およびR206、ならびにPurac PDLG(50/50)である。RG502は、(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、RG752は、(75:25)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、R202Hは、酸末端基または末端酸根を有する100%ポリ(D,L−ラクチド)であり、R203およびR206は両方とも100%ポリ(D,L−ラクチド)である。Purac PDLG(50/50)は、(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)である。RG502、RG752、R202H、R203およびR206、ならびにPurac PDLGの固有粘度は、それぞれ、0.2、0.2、0.2、0.3、1.0および0.2dL/gである。RG502、RG752、R202H、R203、R206およびPurac PDLGの平均分子量は、それぞれ、11700、11200、6500、14000、63300および9700ダルトンである。
微小球は、PLGAの生分解性ポリマー組成物に10%w/wのタザロテンを充填して製造することができる。次いで、微小球を2.5〜4.0mRadの照射線量のγ線照射で滅菌することができる。5gバッチサイズの1配合例は以下のとおりである。
Figure 2007535563
5リットルのビーカー中で、3.0%PVAの溶液を、高せん断インペラを使用し、撹拌速度400〜500rpm、80℃で製造する。一旦溶液になると、撹拌速度を200RPMに減速し、泡形成を最小限にする。次いで、PLGAを塩化メチレンに溶解する。一旦PLGAが溶解すると、タザロテンを溶液中に加える。
次いで、微小球を、溶剤蒸発技術を使用して製造する。タザロテン/PLGA溶液をゆっくり加えながら、PVA溶液を激しく撹拌する。次いで、乳化物を48時間、撹拌し続け、塩化メチレンを取り除く。次いで、微小球を濯ぎ、真空乾燥し、最後に凍結乾燥する。微小球を−50℃で凍結し、次いで、少なくとも12時間4mbar最低圧(400Pa)で凍結乾燥する。
実施例2
網膜色素上皮の増殖の予防方法としてのレチノイン酸受容体アゴニストの制御放出
RARアゴニストを含む眼内インプラントは、実施例1に記載したように調製できる。このインプラントは、必要に応じて、他の活性分または賦形剤を含有してもよい。RARアゴニストは、拡散、侵食、溶解または浸透によってインプラントから放出され得る。薬剤は、インプラントから、7日間から1年を超える期間の間放出される。ポリマーインプラントは、生体内分解性または非腐食性ポリマーで構成されていてよい。生体内分解性ポリマーとしては、ポリエステル、ポリ(o−エステル)、ポリ(ホスファジン)、(ホスフェートエステル)、ゼラチンまたはコラーゲンのような天然ポリマー、またはポリマーブレンドが挙げられる。プラットホームは、固体インプラント、半固体または粘弾性であってもよい。薬剤送達プラットホームの投与は、硝子体内、結膜下、網膜下、球後視体内移植または注射によって達成することができる。この発明は、網膜色素上皮の増殖に伴う網膜疾患の治療のための、レチノイン酸受容体(RAR)アゴニストの制御されたまたは持続性送達を記載する。
図1Aおよび図1Bは、PLAおよびPLGA微小球インプラントからのタザロテンのインビトロ放出の累積割合を示す。
図2は、ポリラクチド(PLA)およびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)インプラントからのタザロテン酸のインビトロ放出の累積割合を示す。
このように、眼領域への本発明のインプラントの直接または局所投与は、複数個の硝子体内ボーラス注射の必要性を軽減しつつ、全身投与の副作用および毒性の問題を解決する。インプラントからレチノイドの制御されたまたは持続性送達により、外科手術の際にレチノイドの投与が1回で済む。
実施例3
PLGAおよびPLA微小球、および生体内分解性インプラントの滅菌方法
タザロテン含有微小球(75:25PLGA)を、実施例1の記載のように調製した。PLAおよびPLGA微小球またはインプラントを、0℃のような低温で、2.5〜4.0mRadのような1.0〜4.5mRadの範囲内の照射量でγ線照射した。コールドパックを滅菌箱に加えて、あるいは周りの温度を低下させることによって、温度を低下させた。温度を約5℃以下に保てない場合は、γ線照射の結果、微小球が著しく凝集する。
温度を約5℃以下に保てない場合は、γ線照射の結果、薬剤を含む微小球にも、プラセボ微小球にも、大きな凝集が観察された。微小球を、低温で滅菌した場合、凝集は防止された。室温で滅菌した微小球は、顕著な凝集を示す。これは、10%のタザロテンを含む、低分子量および高分子量PLGAインプラントを含有する。体積平均粒径が、増加方向に強くシフトすることが全てのサブロットで観察される。低温で滅菌されたそれらのサブロットは、滅菌されていない対応物と比べた場合、殆ど重ね合わせることができる体積および数平均粒子径分布を示す。
したがって、PLAおよびPLGA微小球は、最終的に滅菌し、それによって、滅菌操作、熱または上記滅菌またはエチレンオキサイドの使用の必要性を減らす。この方法で滅菌されたPLAおよびPLGA微小球、およびインプラントの安定性は、他の方法に比べて改良されている。これは、PLAおよびPLGAポリマーが熱および湿気に不安定なので重要なことである。更に、一体式(モノリス)インプラントからの薬剤放出速度は、拡散および分解過程の集積された結果である。このように、凝集を受けた表面積の変化が、薬剤放出およびインプラント分解特性において重大なばらつきを起こす。
実施例4
眼内薬剤送達用の滅菌生体内分解性網膜プラグ
生体内分解性プラグは、1種以上の生体内分解性ポリマーと、レチノイドと、他の活性化合物または賦形剤とから構成される。レチノイドは、増殖性硝子体網膜症(PVR)および網膜新生血管形成の治療、または器具の生体親和性の改良のための活性分として存在する。生体内分解性ポリマーは、ポリエステル、ポリ(o−エステル)、ポリ(ホスファジン)、(ホスフェートエステル)、ゼラチンまたはコラーゲンのような天然ポリマー、またはポリマーブレンドを含有してよい。
器具の成分は、プラグの形で均質な器具として押出される。次いで、プラグは、強膜、脈絡膜および網膜を介して硝子体空隙に挿入される。プラグの先端部は、硝子体空隙へ突き出している。器具の基端に開けられた孔は、強膜へプラグを縫合するために使用される。プラグは、0.1〜40%w/wの薬理学的に活性な化合物を保持され得る。薬剤は、プラグから強膜、脈絡膜、網膜および硝子体空隙へ、7日間〜1年を超える期間の間放出する。
レチノイド類(タザロテン酸、タザロテンまたは他のレチノイド受容体アゴニスト)のプラグへの配合は、インプラントの生体親和性を改善し、PVRの予防または治療において、治療的効果を提供する。プラグを最適化し、プラグの強膜および脈絡膜侵食に耐えるようにすることができる。これは、硝子体空隙への離断または断片化を防ぐ。これは、プラグの表面仕上げを変えることによって、またはプラグを生分解性半透過性ポリマーにより被覆することによって、または他のポリマーをブレンドに加えることによって、達成し得る。活性剤および賦形剤のポリマーマトリックスへの導入に有機溶剤を必要としないことは有利である。活性化合物、ポリマーおよび賦形剤は、押出しの前に粉砕される。プラグは、製造しやすく、簡単な押出し技術でスケールアップできる均質なシステムである。
さらに、ポリマープラグは、射出成型によって製造することもできる。薬剤放出の機構および速度は、ポリマーの選択、ポリマー分子量、ポリマー結晶化度、コポリマー比、加工条件、表面仕上げ、幾何形状、賦形剤添加およびポリマー被覆によって調整できる。薬剤は、器具から、拡散、侵食、溶解または浸透によって放出される。
プラグからのレチノイドの放出は、10%レチノイドの初期バースト、および眼に配置した後1ヶ月の間に追加の10%が行われてよい。
いくつかの関連情報を、米国特許第4,712,500号、第5,466,233号およびKimura, Hideyaら、A New Citreal Drug Delivery System using an Implantable Biodegradable Polymeric Device、Invest Ophthalmol Vis Sci、1994;35、2815 2819およびHashizoe, Mototaneら、Scleral Plug of Biodegadable Polymers for Controlled Drug Release in the Citreous, Arch Ophthalmol. 1994; 112、1380-1384に見出すことができる。
実施例5
改良した安全性を有するプロドラッグの結膜下および眼周囲硝子体薬剤送達
本実施例は、エステルプロドラッグの結膜下および眼周囲投与が、プロドラッグの直接眼内投与より高い治療指標を提供することを教示する。
硝子体は、エステルプロドラッグを活性な親化合物に加水分解する限定された能力を持つ。経験とは異なるが、エステルプロドラッグの結膜下または眼周囲投与は、直接眼内投与より効率的である。これは、現在の文献から予期しえることと反対のことである。血液−網膜関門は、本明細書で説明したように、硝子体網膜薬剤送達を大きく拘束する。直接眼内投与によるこれらのバリアの問題を回避することが、送達の最も効率的なモードに対する現行の実践と考え方である。直接眼内投与より非常に非効率的であるので、結膜下または眼周囲投与により送達される化合物は殆どない。
本実施例では、エステルプロドラッグが、実際、結膜下投与によって、直接眼内投与より効率的に硝子体に送達できることを実証する。これは、硝子体に対する脈絡膜および虹彩−毛様体内の特異的なエステラーゼ活性の結果であると考えられる。興味深いことに、虹彩−毛様体および脈絡膜循環中のエステラーゼの偏在性という性質が、眼内注射より眼周囲投与からの薬剤の硝子体への送達をより効率的にする。
本実施例は、後部眼構造体に向けられた低治療指標の化合物による薬剤療法の改良を実証する。すなわち、本実施例では、(i)硝子体薬剤送達のためのエステルプロドラッグの結膜下または眼周囲投与の使用;(ii)網膜薬剤送達のためのエステルプロドラッグの結膜下または眼周囲投与の使用;(iii)レチノイドエステルプロドラッグの結膜下または眼周囲送達;(iv)カルボン酸のエステルプロドラッグの結膜下または眼周囲送達;(v)アルコール類のエステルプロドラッグの結膜下または眼周囲送達;(vi)眼球血管膜、硝子体、網膜、脈絡膜および網膜色素上皮を含む眼の後部構造体への化合物の送達のためのエステルプロドラッグの結膜下または眼周囲投与の使用;(vii)バイオ転換に反応する酵素が、硝子体より結膜下または眼周囲領域におけるほうが高活性である非エステルプロドラッグの結膜下または眼周囲投与の使用について、実証する。これらは、眼球血管膜、硝子体、網膜、脈絡膜および網膜色素上皮を含む眼の後部構造体への化合物の送達に関する。
したがって、より効率的な薬剤の硝子体網膜への送達を可能にし、それによる治療指標の改善を可能にするインプラントおよび方法が提供される。
本実施例では、眼内の特異的なエステラーゼ分布を利用し、効率的な方法で、薬剤を眼の後方に送達する。結膜下または眼周囲領域は、エステルプロドラッグの貯留部として働くことができる。眼内浸透の際の容易な加水分解は、虹彩−繊毛過程および脈絡膜循環におけるエステラーゼの偏在性という性質のため、硝子体内加水分解より効率的である。結果は、(i)トランス網膜浸透を強化することのできる親油性プロドラッグを利用する能力と、一方(ii)眼内注射後に達成される親プロドラッグ濃度に対して、親プロドラッグの眼内濃度の低下である。これは、活性薬剤に対するより効率的な加水分解、(iii)眼内プロドラッグ/薬剤比が改良されたこと、および(iv)持続性送達のための結膜下または眼周囲領域における化合物の親油性貯留部の創生の故である。
6−[(4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル]ニコチン酸エチルは、活性レチノイド4,4−ジメチル6−[2'−(5''−カルボキシ−2''−ピリジル)−エチニル]−チオクロマン(タザロテン酸)のエチルエステルである。
Figure 2007535563
タザロテンは、logPが4.3および水溶解度が1g/mLのタンザロテン酸の親油性プロドラッグである。レチノイド類は、色素性網膜炎および増殖性硝子体網膜症のような網膜および網膜色素上皮のいくつかの症状の治療に治療的効果があることが知られている。残念ながら、レチノイド類は、白内障を起こすことも知られている。これは、おそらく、レンズ上皮上に対するレチノイドの効果によるものであろう。親油性の高いレチノイド類は、さらに、親油性レンズ上皮への都合のよい分化という欠点を持つ。タザロテン酸に対する硝子体内のタザロテンの量を最小限にすることが、この化合物の治療指標を向上させることになるであろう。
眼内および結膜下に投与されたタザロテンおよびタザロテン酸の一般的な配置を分析した。要約すると、アルビノラビットに、眼内注射で、1.25μgのタザロテンまたはタザロテン酸を投与した。注射は、硝子体中央に行った。硝子体に投与した後、網膜および眼房水中のタザロテンおよびタザロテン酸濃度を、投与から0.5、1、2、4、8、12および24時間後に測定した。データは、硝子体内で、タザロテン酸がタザロテンから生成していることを示す。更に、タザロテン酸濃度は、漸近的に約10ng/mLに近づいている。硝子体エステラーゼ活性は、直接眼内体内移植後に得られ得る、10ng/mLに等しいタザロテン酸の最高硝子体濃度で圧倒的になることが明らかである。タザロテン酸は、硝子体中央への1.25μgのタザロテン酸の投与から24時間後の半減期の硝子体からの明らかな一次プロセスで、消滅する。
また、タザロテンを結膜下領域へ投与した。タザロテン水性懸濁物(1mg)、タザロテン結膜下オリーブ油溶液(1mg)およびタザロテンポリ(ラクチド−コ−グリコリド)微小球懸濁物の3種の投与形態を評価した。投与後、硝子体、網膜および眼房水中のタザロテンおよびタザロテン酸濃度を、投与から2、8、24、48、96、168および336時間後に測定した。結膜下投与によって、眼組織中のタザロテンおよびタザロテン酸は顕著なレベルに達していることが観察された。さらに重要なことに、タザロテン酸に対するタザロテンの比が、有意に低下し、この経路で、エステルプロドラッグを加水分解し親化合物にする能力がより高いことを示唆していた。硝子体濃度のデータを表1にまとめる。硝子体濃度時間の分析結果を、図3〜9にまとめる。
データは、硝子体内送達に比べると、結膜下送達からのタザロテン酸送達がより効率的であることを示す。タザロテン/タザロテン酸比は、図10に示すように、結膜下送達からは、有意に低下している。この驚くべき結果は、網膜と比較した時、脈絡膜および虹彩−毛様体のより高いエステラーゼ活性のためであるとであると考えられる。また、レチノイド、タザロテンおよびタザロテン酸の濃度は、低い効果的なレベルで336時間の間、維持したに注目することは重要なことである。
すなわち、本実施例では、(i)硝子体薬剤送達のためのエステルプロドラッグの結膜下または眼周囲投与の使用;(ii)網膜薬剤送達のためのエステルプロドラッグの結膜下または眼周囲投与の使用;(iii)レチノイドエステルプロドラッグの結膜下または眼周囲送達;(iv)カルボン酸のエステルプロドラッグの結膜下または眼周囲送達;(v)アルコール類のエステルプロドラッグの結膜下または眼周囲送達;(vi)眼球血管膜、硝子体、網膜、脈絡膜および網膜色素上皮を含む眼の後部構造体への化合物の送達のためのエステルプロドラッグの結膜下または眼周囲投与の使用;(vii)バイオ転換に反応する酵素が、硝子体より結膜下または眼周囲領域におけるほうが高活性である非エステルプロドラッグの結膜下または眼周囲投与の使用について、記載する。これらは、眼球血管膜、硝子体、網膜、脈絡膜および網膜色素上皮を含む眼の後部構造体への化合物の送達に関する。
Figure 2007535563
実施例6
軽減された眼性副作用を持つ親水性レチノイド
本実施例では、改良された眼性副作用特性を伴う良好な経口および局所生物学的利用能を持つ親水性レチノイドを記載する。本実施例では、軽減された眼性副作用を持つ、対数分配係数(logP)が3.0未満のレチノイドの用途を記載する。
タザロテン酸眼球濃度
Figure 2007535563
表2は、タザロテンの局所および経口投与後の硝子体レチノイドレベルをまとめたものである。殆どの部分で、局所または経口投与後、タザロテンはリンパ漿中に観察されない。全身前代謝作用による簡易加水分解で、遊離酸が素早く生成する。局所投与からのタザロテン酸リンパ漿濃度(Cmax、最高リンパ漿レベル)は、0.25ng/mL〜12ng/mLの範囲である。これらはリンパ漿濃度であり、眼リンパ漿分布比は0.02であることに注意することが重要である。第3相臨床試験における90%を超える全ての患者に関し、親化合物であるタザロテンの濃度は<1ng/mL、最高は6ng/mLであった。
1.1mgおよび6mgの複数回投与の経口送達により、2.56ng/mLトラフを伴う28.9ng/mLおよび227ng/mlピークレベルを示す。これは、最高用量に関し、最大可能4ng/mL眼レベルに相当する。図11は、タザロテン酸の組織分布を示す。眼は、ラットにおいて、2%組織/リンパ漿比を示す。タザロテン酸は、99%タンパク質結合であり、分布は、結合していない薬剤に限定されることに留意すべきである。したがって、眼タザロテン酸濃度の圧倒的多数は、ほぼ確実に前部組織内にある。さらに、タザロテン酸の対数Pは、2.53と計算され、したがって、血液−網膜関門の効率的な浸透が発現することは予測されない。
Figure 2007535563
本実施例の前述の化合物は、本明細書に記載されたいずれの眼内インプラントに供給されてもよい。
実施例7
持続性送達システムの結膜下および眼周囲投与による対象網膜薬剤送達
本実施例では、即時放出または直接眼内投与から得られる網膜濃度より高い網膜濃度を提供する化合物の結膜下および眼周囲投与を記載する。RPEを透過する化合物が眼内投与によって送達される場合より高い網膜/硝子体濃度比を発現することが、観察された。結膜下経路からの制御されたまたは持続性送達は、制御されていない送達より有意に高い網膜/硝子体比となるという事実は、より重要である。
本実施例では、後部眼構造体に向けられた薬剤の薬剤療法の改良を実証する。本実施例では、(i)持続性または制御された、結膜下または眼周囲での、対象脈絡膜、RPEおよび網膜薬剤送達への薬剤の投与の用途;(ii)より高い網膜/硝子体濃度比となる、持続または制御された、結膜下または眼周囲、薬剤投与へのPLGA微小球の用途;(iii)より高い網膜/硝子体濃度比となる、持続または制御された、結膜下または眼周囲、薬剤投与への一体式PLGAインプラントの用途;(iv)より高い網膜/硝子体濃度比となる、持続または制御された、結膜下または眼周囲、薬剤投与への生体内分解性制御送達システムの用途;(v)より高い網膜/硝子体濃度比となる、持続または制御された、結膜下または眼周囲、薬剤投与への非生体内分解性制御送達システムの用途;(vi)現行の、高用量全身的投与または直接眼内移植または注射を含む、薬剤の治療的網膜濃度を達成する唯一の方法を記載する。本実施例では、薬剤のより効率的な脈絡膜、RPEおよび網膜送達を提供し、およびそれによって、治療指標の改良を可能にする。
本明細書で説明したように、網膜、硝子体および眼球血管膜への薬剤の送達は、普通、高全身投与または直接眼内注射によって達成される。本実施例では、眼内注射または非持続性放出結膜下投与から送達される化合物に関する網膜/硝子体薬剤濃度比が比較的低いこと示す。これに反し、持続性結膜下投与からの網膜への化合物の送達では、薬剤の網膜/硝子体濃度比が劇的に増加する結果となる(表4参照)。
化合物は、眼房水を介し隙間のある小帯後隙への拡散によって、またはトランスレチナール排除によって、硝子体から排出される。殆どの化合物は前者の経路を利用し、一方、親油性化合物およびトランスレチナール輸送メカニズムを持つ親油性化合物は後者の経路を利用する。いずれの場合も、薬剤の網膜/硝子体濃度比は、比較的低い結果となる。眼周囲投与からの薬剤の浸透は、RPEを通る浸透または虹彩根への拡散を伴うトランス強膜拡散、続いて薬剤の硝子体への後部拡散によって、進行することができる。脈動的投与の結果は、比較的低い網膜/硝子体濃度勾配となる。本実施例では、持続性または制御された薬剤送達システムを利用することによって、より高い網膜/硝子体薬剤濃度比を達成することができること示した。持続性送達は、眼に定常速度過程を発現し保つことを可能にする。結果は、(i)硝子体を超えて網膜を薬剤の標的とし;(ii)所定の網膜レベルに関し、他の送達の経路に対して硝子体濃度がより低く;(iii)脈絡膜、RPEまたは網膜で作用する化合物の薬効が改善され;および(iv)硝子体レベルの軽減による眼内副作用の軽減が可能となることを含む。
要約すると、アルビノラビットは眼内注射により1.25μgのタザロテンまたはタザロテン酸を投与された。注射は硝子体中央に行った。投与後、タザロテンおよびタザロテン酸の硝子体、網膜および眼房水濃度を、投与して0.5、1、2、4、8、12および24時間後に測定した。
また、タザロテンを結膜下領域へ投与した。タザロテン水性懸濁物(1mg)、タザロテン結膜下オリーブ油溶液(1mg)およびタザロテンポリ(ラクチド−コ−グリコリド)微小球懸濁物の3種の投与形態を評価した。投与後、硝子体、網膜および眼房水中のタザロテンおよびタザロテン酸濃度を、投与から2、8、24、48、96、168および336時間後に測定した。
平均網膜/硝子体濃度比および網膜/硝子体AUC0-24tlast比を表4に示す。データは、持続性放出から送達されたタザロテンについて、より高い網膜/硝子体比を示す。これを図12にグラフで示す。非持続性結膜下または直接眼内投与と比べた場合、網膜におけるタザロテンの高い比が持続性放出により達成された。したがって、本実施例により、(i)硝子体を超えて網膜を薬剤の標的とし;(ii)所定の網膜レベルに関し、他の送達の経路に対して硝子体濃度がより低く;(iii)脈絡膜、RPEまたは網膜レベルで作用する化合物の薬効が改善され;および(iv)硝子体レベルの軽減による眼内副作用の可能性のある軽減のためのインプラントおよび方法が提供される。
Figure 2007535563
実施例8
添加剤を含むタザラテンウエハインプラント
タザラテンウエハを、タザロテン、RG752および添加剤(Solutol(登録商標)、Kollidon(登録商標)、またはLutrol(登録商標))を混合して調製した。添加剤はポリビニルアセテートでもよい。粉末混合物を溶融し、ポリマー溶融物中へ注いだ。次いで、これを圧縮して所望の厚さにし、2.5mmトレフィンに切断した。これらのウエハは、向上した機械特性を持ち、特に、図13に示すように、結膜下眼薬剤送達によく適応した、あつらえた放出速度を持つ生分解性薬剤送達システムである。
添加剤なしで調製されたウエハは、薬剤用量および使用されるポリマーによっては、脆すぎあるいは脆弱すぎて、切断、単離ができないであろう。添加剤は、同じ加工条件でウエハの脆弱性を少なくし、したがって破損によるロスを低減し、収量を増やす潤滑剤として作用できる。使用する添加剤の選択および量によって、薬剤放出速度を改変し、放出速度を上げるあるいは下げる。
実施例9
混合ポリマーを用いたタザロテン薬剤送達システム
タザロテンインプラントを、タザロテンと、ポリマーRG502HおよびR202HまたはポリマーRG502HおよびRG752とを混合することにより、調製した。粉末混合物を溶融し、ペレットとし、所定の温度で、薬剤用量およびポリマー混合比に応じて押出した。インプラントは、図14に示すように、ポリマー混合比を調整することにより達成することのできるより正確で直線的な放出特性を提供する。長所の1つは、1つだけのポリマーで得られる、代表的なS字型放出曲線を、緩和あるいは軽減することである。
実施例10
タザロテン含有眼内インプラント
意図する送達は、1インプラント当たり、3〜6ヶ月にわたる0.1mg〜0.5mgの初期薬剤用量であった。4種の異なるポリマーRG502、RG502H、RG752およびR202Hを使用し、タザロテンを製剤化した。製剤#9、RG752中の50%タザロテン(500μg用量)を更なる実験のために使用した。また、50μgのタザロテンを含むインプラントを製造した。また、ポリマーブレンドを使用した、より直線的な放出特性を持つ製剤、および機械特性を向上させるための添加剤入りのウエハ製剤をここで検討する。
初期タザロテンPLGA(PLA)眼内インプラントは、0.1〜0.5mgの薬剤用量について3〜6ヶ月の送達が意図された。タザロテンインプラントの2つの調製法、すなわち、ポリマーの溶融および粉末の圧縮を、使用した。前者の方法は、先ずポリマーを医薬品有効成分(API)と混合し、次いで、得られた粉末混合物を、分解を避けるために、APIの融点より低い温度で溶融し、最後にAPIポリマーブレンドをフィラメントに押出すことを含む。後者の方法は、先ず、ポリマーとAPIとを混合し、次いで、粉末ブレンドを圧縮して押出しバレルとし、最後にバレルを加熱し、フィラメントに押出すことによって、行った。粉末圧縮法は粉塵雲を作る可能性があるので、ポリマー溶融物方法がより好ましいであろう。次いで、押出しフィラメントを、ロッド型インプラントまたは薬剤送達システム(DDS)として、1mg+/-10%の適正な重さに切断した。
このプロセスでは、タザロテン(m.p.=103〜106℃)の低い融点のために、タザロテンの融点未満の範囲で溶融するポリマーのみが、効率よく使用することができた。市販のポリマーのなかでは、0.2dl/g以下の固有粘度(I.V.)を持つものだけを選択した。より高い固有粘度を持つポリマーは、タザロテンの融点より高い温度で溶融し始め、タザロテンの分解を起こす可能性があった。
タザロテンDDSの製造で使用された第二幾何形状は、ウエハであった。この形状は、ロッドよりより簡単に結膜下に移植できると考えられた。ウエハ法は、溶融ポリマーブレンドを取り、圧縮して所望の厚さにし、次いで、各1mgの重さの2.5mm直径ディスクに切り指すことによって行われた。切断工程を改良するために、種々の加工助剤が試された。
材料および方法
インプラントは、ロッド(2mm(長さ)×0.72mm(直径))またはウエハ(0.13mm(厚さ)×2.5mm(直径))薬剤送達システム(DDS)であり、それぞれの重さは、900μgと1100μgとの間であった。各製剤において、タザロテンはポリマーとステンレス鋼乳鉢中で組み合わされ、96RPMに設定されたターブラシェーカで15分間混合し、粉末ブレンドを乳鉢の壁から引き剥がし、次いで、さらに15分間再混合した。混合粉末ブレンドを、半溶融状態で95℃、3回の10分間隔で合計30分間加熱し、ポリマー/薬剤溶融物を形成した。ポリマー/薬剤溶融物を、9ゲージポリテトラフルオロエチレン(PTFE)チューブを用いて、ペレット化し、バレルに充填し、特定のコア押出温度で押出して、フィラメントとし、次いで1mgサイズのDDSに切断した。あるいは、ポリマー溶融物を、Carverプレスを用い、特定の温度で平らにし、各重さが1mgの2.5mmウエハに切断した。
生体外放出試験を、最初に3回、後に6回、インプラント(ロッドまたはウエハ)の各ロットについて行った。各インプラントを、37℃において、様々な量のTween-80を含む食塩水35mLと共に、40mLのネジ蓋バイアルに入れ、第1、4、7、14、28日およびその後2週間ごとに、30mLアリコートを取り、等容量の新しい媒質と交換した。
薬剤アッセイは、HPLC(Waters 2690 Separation Module(または2696)、およびWaters 2996 Photodiode Array Detectorから成る)によって行ってよい。Phenomenex Luna C8(2), 3μm;4.6×100mmカラムを分離に使用し、検出器は325nmに設定した。移動相は、流速1mL/分および合計実行時間15分/試料の(60:39.8:0.2)アセトニトリル−H2O−CH3COOHであった。放出速度は、時間の経過に伴って、所定容量の媒質に放出された薬剤量(μg/日)を算出することによって求めることができた。
結果および検討
初期用量(100〜700μg)タザロテン製剤
選択されたポリマーは、Boehringer Ingelheim 製Resomer(生分解性ポリマー)RG502、RG502H、RG752およびR202Hであった。RG502は、(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、RG502Hは、酸末端基を持つ(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、RG752は、(75:25)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、R202Hは、100%ポリ(D,L−ラクチド)である。全て、固有粘度は、0.2dl/gであり、約90〜95℃で溶融し始める。ResomerRG502、RG502H、RG752およびR202Hの平均分子量は、それぞれ、11700、8400、11200および6500ダルトンである。
0.9%生理食塩水中の最初の8個の製剤のインビトロ放出試験から得られた予備データは、最初の2週間、薬剤放出がなかったことを示した。これは、0.9%生理食塩水中のタザロテンの溶解度が非常に低いためであり、溶解度は、1μg/mL未満と測定された。従って、異なる製剤の放出特性において、差を見出すのは困難であった。研究は、全ての製剤の放出特性を識別する放出媒体の探索を始めた。タザロテンの溶解度は、0.9%生理食塩水へのTween 80の添加によって増加することができることを見出した。種々の試験したTween 80/生理食塩水溶液(0.25%、0.5%、0.75%および1%)と比較して、生理食塩水中0.5%のTween 80が最も安定で予想可能な放出曲線を提供した。したがって、これを後の全ての放出試験用の媒体として使用した。0.9%生理食塩水中では放出を示さなかった、8つの製剤の放出試験は、放出媒体として、生理食塩水中の0.5%Tween 80を使用して、再び開始した。
インプラントはタザロテンを用い、表5に示すように、4種のポリマーを用い、薬剤用量を10〜50%(製剤#1〜14)で種々変更して製剤化した。続いて、放出データに基づいて、修正または変更を行い、他の製剤(製剤#15〜28)を、製造した。最初の24製剤(1〜2、3〜19、22、24〜28)から得られた放出データを指定した日で集め、次いで、図15A、15B、15Cおよび15Dに示すように、ポリマーに基づいて編集した。理論では、薬剤用量と放出速度との間に一般的な相関関係があり、より高い薬剤用量で、放出がより速くなる。
Figure 2007535563
異なるポリマーで異なる放出速度が得られた。すなわち、RG502HおよびRG502は、薬剤量に依存して、3〜4ヶ月の最高放出を生じ、RG752は4〜6ヶ月の最高放出を生じ、R202Hは、それらより上の6ヶ月以上の放出を生じた。製剤#17(50%Taz/RG502Hウエハ)、製剤#5(25%Taz/RG502)、製剤#8(35%Taz/RG502)、製剤#18(50%Taz/RG502ウエハ)、製剤#9(50%Taz/RG752)、および製剤#28(60%Taz/RG752ウエハ)は、全て、3〜6ヶ月放出する、かなり直線的な放出曲線を示した。
ウシ硝子体液(BVH)を使用したインビトロ放出分析を行うため、3つのロッドおよび3つのウエハDDSを選択した。選択したDDS製剤は#1、4、9で、選択したウエハ製剤は#17、18および19であった。6つの製剤の放出特性を図16に示す。
製剤#1は、累積タザロテン放出が80%で、71日後に横ばいになり、一方それに相当するウエハ(製剤#17)は、累積放出が91%で97日後に横ばいになった。製剤#9は、累積放出が77%で、155日後に横ばいになり、一方それに相当するウエハ(製剤#19)は、126日後の累積放出が94%であった。最後に、製剤#4は、約71日後に最高タザロテン放出96%に達し、一方それに相当するウエハ(製剤#18)は、97日後にその最高タザロテン放出82%に達した。
製剤#1、9、12、#17はさらに研究した。これら4製剤のインビトロ放出特性を図17に示す。製剤#9は、滅菌前に製品薬効および含量均一性に関する予備分析を行い、表6に示すように、それぞれ、98%および100.5%±5%のラベル強度(Label Strength)であり、滅菌後の製品薬効および含量均一性はそれぞれ96.6%および96.9%±3.9%のラベル強度であった。
Figure 2007535563
GLPロットおよび安定性ロット(40℃/75%RHおよび25℃/60%RHで1ヶ月保存)の放出特性を図18に示す。
低用量(50μg)タザロテン製剤
低用量インプラントを、1/10のタザロテン用量(すなわち50μg)で製剤化した。元のインプラント(製剤#9)は、RG752ポリマー中50%タザロテンであったので、類似の放出特性を達成するために、ポリマーに対する同じ薬剤比を使用した。したがって、インプラントのサイズを小さくする必要があった。これを達成するために、フィラメントの直径を元の720μmからより小さい径にした。低用量タザロテンインプラント用の製剤を表7に示す。
Figure 2007535563
これらのインプラント用に、4個の異なるノズル径、300μm、380μm、380 vμmおよび450μmを使用した。380と380vとの間の違いは、前者の入り口は浅い溝であり、後者はv−溝であることである。取得した放出データは、同じ薬剤用量内では、図19および図20に示すように、300μm、380μm、380vμmまたは450μm径のノズルで調製されたDDSの間に有意な差はなかったことを示した。
製剤#49および#53、およびこれらに相当するプラセボ、および1個の標準用量ウエハ製剤#17(ウエハ、1μmg)およびそのプラセボをさらに研究した。製剤#49は、フィラメント径300μmの50%Taz/RG752であり、製剤#53は、フィラメント径300μmの40%Taz/RG752であった。図21に示すように、両製剤とも、放出速度はGLPロットより僅かに速く、105日目まで、#49および#53は、それぞれ46%および40%放出し、一方、GLPロットは40%放出した。137日目、製剤#49および製剤#53は、それぞれ、56%および52%放出し、一方、GLPロットは、ほぼ同じ時期に77%放出した。これとは対照的に、製剤#17は、4製剤全てより圧倒的に速く、97日後に91%まで放出した。
追加の500μgタザロテン製剤:直線的放出特性
製剤#9のGLPロットの完成後、より直線的な放出特性を持つタザロテンを製剤化する研究を開始した。1つのアプローチは、2種の異なるポリマーとタザロテンとを組み合わせることであった。2種のポリマーの選択は、個々のポリマーを用いたタザロテンの放出特性を助長することを意味した。可能性のあるブレンドの例は、ポリマーRG502HおよびR202H、およびRG752を使用することであった。それらの個々の放出特性を図22に示す。RG502Hを用いて製剤化されたタザロテンは、85日後、81%の最高値に達し、一方、RG752を用いて製剤化されたタザロテンは、181日後に74%の最高値に、R202Hを用いて製剤化されたタザトテンは、非常に遅く、296日後に90%に達した。
比率が(50:40:10)、(50:30:20)および(50:25:25)である、タザロテン/R202H/RG502Hの3種の異なるブレンドを製造した。同様に、比が(50:40:10)、(50:30:20)および(50:25:25)である、タザロテン/RG752/RG502H3種の異なるブレンドを製造した。放出特性を、図23Aおよび23Bに示す。
図23Aにおいて、RG752およびRG502Hの3種の異なるブレンドの放出特性は、TazおよびRG752の放出特性とTazおよびRG502Hの放出特性との間にあることをグラフは明確に示した。さらに、100日目まで、より多くRG502Hを含有するブレンドは、RG502Hをより少なく含有するブレンドよりより速い速度で放出した。図23Bにおいて、ブレンドの放出特性は、60日目まで、TazおよびR202Hの放出特性とTazおよびRG502の放出特性との間にあり、次いで、ブレンドの特性は、ほぼ0オーダーの放出速度特性で放出を続けた。この場合もやはり、RG502Hをより多く含むブレンドは、より速い速度で放出した。直線性が、RG502HおよびR202H(これらはそれぞれPLGAおよびPLAである)を使用して達成されたことに注目することは興味深い。RG502HおよびRG752の組合せは、製剤#9および製剤#12の放出特性がいくらか小さいことを考えると、より直線的な特性を得る点では、成功ではなかった。
追加のウエハ製剤:加工助剤の添加
タザロテンウエハの製造の間、いくつかの製剤(#20および#21)は、非常に脆いあるいは脆弱すぎて、加工できない(各ウエハの厚さは0.005インチ、0.127mmであり直径は、2.5mmである)、一方、他の製剤は製造できたが、50%以上のロスがあることが分かった。そこで、ウエハの機械特性を変更でき、脆さを少なくする加工助剤を使用することが決定された。多くの経口服用形態で通常用いられているSolutol(登録商標)、Kollidon(登録商標)、およびLutrol(登録商標)の賦形剤が最初の3つの候補であった。Solutolは、ポリエチレングリコール660・12−ヒドロキシステアレートであり、Kollidon(12または17)は、ポリビニル−ピロリドンであり、Lutrolは、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマーである。3種の添加剤は全て、タザロテン製剤に加えられた時、殆ど脆くないウエハを、非常に簡単に高い収量で製造できた。3種の添加剤を用いて作られたウエハの放出特性を図24に示す。
製剤#57と比較した時、類似の放出特性が製剤67および製剤68に関しても得られ、一方、製剤#66は、より直線的で僅かにより速い放出特性を示した。
結論:
低い固有粘度のポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)/ポリ(D,L−ラクチド)ポリマーを使用して、30種類を超える異なるTaz製剤を製造した。それらの放出特性は、37℃で、生理食塩水中0.5%Tween 80の中で測定された。Boehringer Ingelheim 製Resomer RG752 ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を用いたタザロテン(製剤#9、50:50Taz/RG752)は、6ヶ月に近いインビトロ連続薬剤放出特性を提供した。タザロテンインプラントは、それぞれ、重さが約1mgで、500μgの活性医薬品成分を含有していた。このインプラントは、薬効(96.6%)および含量均一性(96.9%±3.9%)規格をパスし、良好な安定性を有する。元の製剤(50μgのAPIを持つインプラント)の1/10の用量のインプラント、製剤#9より直線的な放出特性を持つ新しいタザロテン製剤、および加工助剤として添加剤を含むタザロテンウエハもまた製造し、検討した。
実施例11
レチノイド含有眼内インプラントおよび増殖性硝子体網膜症
ポリマー薬剤ブレンドの押出しによって直径1.5mmおよび長さ3mmのPLAおよびPLGAインプラントを製造した。タザロテン酸(タザロテンの遊離酸)、タザロテンおよび13−cis−レチノイン酸を10%の濃度でインプラント中に仕込んだ。簡単に言うと、有色素ラビットを硝子体切除し、500,000個のヒトRPE細胞の硝子体内注射を行った。RPE細胞の注射後、レチノイドインプラントを硝子体内に置き、強膜切開を縫合するために使用される縫合糸で、強膜に留めた。
眼を4週間、毎週調べた。PVRの重症度は、Fastenbergスケールに基づいて等級分けした。4週目に、全体的な病状および限定された組織検査を行った。28日目に、12%だけのタザロテンおよびタザロテン酸で治療された眼は、牽引性網膜剥離が進行し、22%のアキュテイン治療された眼でも進行した。これは、ステージ3またはより大きな牽引性剥離を経験する、94%のコントロール眼との比較である。この実験により、この動物モデルにおけるタザロテンインプラントの有効性が明らかに実証された。大まかな病状および限定された組織検査は、タザロテンおよびそのPLGA/PLAインプラントの良好な安定性特性を示した。
表2で示し、実施例6で検討したように、タザロテンの殆どの部分は、局所または経口投与後、リンパ漿中に観察されない。全身前代謝作用による簡易加水分解は、素早く遊離酸を生成する。局所投与からのタザロテン酸リンパ漿濃度(Cmax、最高リンパ漿レベル)は、0.25ng/mL〜12ng/mLの範囲である。これらはリンパ漿濃度であり眼リンパ漿分布比が0.02であることに注意することが重要である。相3の臨床試験の全ての患者の90%を超える患者の親化合物、タザロテンの濃度は<1ng/mLであり、最も高い濃度は、6ng/mLであった。
1.1mgおよび6mgの複数用量経口送達により、28.9ng/mLおよび227ng/mlのピークレベル、2.56ng/mLトラフになった。これは、最高用量に関し、発生可能最高眼レベル4ng/mLに相当する。図11に、タザロテン酸の組織分布を示す。眼は、ラットにおいて、2%の組織/リンパ漿比を示す。タザロテン酸は99%タンパク質結合であり、分布は非結合薬剤に限定されていることに注意すべきである。したがって、眼タザロテン酸濃度の圧倒的な量が前部組織内に存在することがほぼ確実である。さらに、タザロテン酸の対数Pは、2.53と計算され、したがって、血液−網膜関門の効率的透過を示すことは予測されない。
結膜下微小球
また、20%タザロテンを仕込んだタザロテンPLGA微小球を、2mgの用量で、結膜下に投与した。試験された特定の製剤は、75:25PLGA微小球(Applied Polymer Technologies 製PLGA75:25、固有粘度:0.67dl/gm、20%タザロテン/80%ポリマー、用量2mg)である。これらの微小球の放出特性を図25に示す。
タザロテンの眼内薬物動態を、1本の硝子体内注射を打ったメスのニュージーランド白ラビットで評価した。ラビットに、タザロテン(50L中1250ng)の硝子体内注射で両目に投薬した。投薬の0.5、1、2、4、8、12および24時間後、動物を殺し、房水、硝子体液および網膜サンプルを分析した。硝子体液中のタザロテン濃度は、投薬後2時間の578±77ng/gから投薬後24時間で115±33ng/gに減少し、平均半減期(t1/2)は9.22時間であった。平均硝子体クリアランス(Cl)は0.123mL/hrと評価した。網膜中のタザロテン濃度は、全ての時点でその硝子体濃度に近く、投薬後2時間の859±131ng/gから投薬後24時間で93.1±28.9ng/gに減少した。網膜からタザロテンの排出は、7.63の類似の平均t1/2を有していた。タザロテンは比較的長い硝子体内半減期を持ち、ストレートの注射として投与された時、網膜濃度は硝子体に匹敵することが示された。しかし、非常に低い溶解度であるにもかかわらず、網膜からのタザロテンクリアランスは、長期にわたる作用のために持続性放出に要求されるのに充分に速いものである。
持続性放出タザロテンインプラントの薬物動態を評価した。硝子体内に投与されたタザロテンの予備データに基づいて、6ヶ月間送達される500mgの用量を、持続性放出用に選択した。タザロテンの硝子体クリアランスは、2.95mL/日であり、したがって、所望の6ヶ月放出速度は、3μg/日である。製剤1(F1)、9(F9)および12(F12)の放出速度は、それぞれ、1.8、2.5および5.5mg/日である(図16参照)。製剤17(F17)は、結膜下に移植された時、より速い速度7μg/日で放出し、先ずRPEに浸透し眼に接触するに違いない(図16参照)。
これらの製剤の6ヶ月の眼内薬物動態実験は、メスのニュージーランド白ラビットで始められた。タザロテン硝子体内インプラントの外科手術の後、組織を分析した。ラビットの両目に、1個の硝子体内インプラント、すなわち、500μgのタザロテン用量を含む高(製剤#1)、中間(製剤#9)または低(製剤#12)放出速度製剤を置いた。リンパ漿、硝子体、レンズ、網膜および眼房水を、4、8、14、21、31、57、113および171日目に評価した。タザロテン酸、タザロテン酸はタザロテンエチルプロドラッグの遊離酸である。タザロテン酸は、エステラーゼによって、インビボでタザロテンから素早く生成する。そこで、薬物動態実験では、タザロテン酸をモニターした。データは、インプラントが、インビボで6ヶ月のタザロテンの硝子体内濃度の持続を成功させたことを示した。この実験のデータを表8-1および図26〜29にまとめる。
タザロテンの単一移植後の眼組織及びリンパ漿中のタザロテン酸の重要な薬物動態パラメータを以下の表に示す。
Figure 2007535563
このデータに基づいて、約1mg/mLの名目濃度を設計標的として選択した。タザロテンは、より強力なRARアゴニストであり、そのような効果的な濃度は1mg/mLより大きく下回る。
Figure 2007535563
網膜退化モデル
この実験の目的は、網膜退化のロドプシン突然変異トランスジェニックラットモデルにおける網膜損傷の予防または網膜生存の改良に関し、種々のレチノイドの有効性を測定することであった。T検査の全体的な目標は、RARα、RARβおよびRXRレチノイドアゴニストを使用した、突然変異ロドプシントランスジェニックラットにおける強力な光受容体生存を調べることであった。
実験計画は、簡潔であった。
所定の期間、化合物を毎日ライン3動物に、2日おきにライン4動物に注射し(i.p.)、CO2過剰用量の最後に動物を殺し、その直後混合アルデヒドの血管灌流を行った。2系統のラットを使用した。
1. トランスジェニックS334ter−3匹のラット ライン3は、ロドプシン突然変異S334terを生産する。このラインの動物は、生後第2週で速い光受容体退化を示す。化合物の注射は、PD6(ポスト送達6日目)からPD20まで毎日行った。
2. トランスジェニック S334ter−4匹のラット ライン4は、ロドプシン突然変異S334ter.を生産する。本ラインの動物は、生後60日までに光受容体の80%損失を経験する。ONLは、核の1列に軽減する。化合物の注射は、1日おきに、PD25からPD60まで行った。
ライン3動物に関して、処置はPD6で始め、終点はPD20であった。ライン4に関して、注射はPD25で始め、眼を取ったPD60で終わった。眼は、縦方向の経線に沿って1μmの厚さで切断するために、Epopn/Araldite混合物中に埋め込んだ。光受容体の保護は、外側核層中の核の列を数えて評価した。
結果は、8週間にわたる網膜外側層の厚さの測定と細胞診であった。化合物は、レチノイドアゴニスト、タザロテン(化合物A、RARβγ)、化合物C(RARα)および化合物E(RXR)を包含していた。タザロテンが唯一、有効性を示した化合物であり、RARβγは、ロドプシン突然変異ラットにおいて、光受容体を保護できることを示唆する。これは、かなり過酷なモデルで、このように、タザロテンによる穏やかな改善が非常に重要である。
光退化モデル
化合物D、化合物Eおよびタザロテンを、青色光網膜退化モデルにおいて評価した。Sprague dawley ラットを、レチノイドの1日経口投与を5日間行い予備処置した。次いで、ラットを高強度光、12000ルクス青色蛍光灯に8時間曝した。5日間の曝露の後、網膜の機能を全閃光ERGによって評価し、構造を外側核層の厚さによって評価した。
タザロテンによって、網膜機能も構造も有意に保護されたことが示された。RXRアゴニストは、受容体選択性を保つために必要な濃度未満では網膜機能を保護しないことが示された。
実施例12
タザロテン含有ポリマー微粒子の製造と特性
ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)酸ポリマー(PLGAポリマー)を使用して、ポリマー微粒子を製造した。第一バッチの微粒子は、タザロテンと、Sigma Aldrich から入手した、PLGA50/50(50%乳酸および50%グリコール酸)およびPLGA75/25(75%乳酸および25%グリコール酸)とを含んでいた。PLGA50/50の固有粘度は、0.55dL/gと0.75dL/gとの間であった。PLGA75/25の固有粘度は、0.69dL/gであった。第二バッチの微粒子は、タザロテンと、Absorbable Polymer Technologies(APT)から得たPLGA75/25とを含んでいた。APT・PLGA75/25の固有粘度(i.v.)は、HFIP中30℃で約0.35〜約0.55dL/gであった。
微粒子のバッチは、2つの別個の組成物から乳化物を形成することによって製造した。第一組成物は、塩化メチレン(溶剤)、PLGAおよびタザロテンを含有していた。第二組成物は、水およびポリビニルアルコール(PVA、安定剤)を含有していた。第一および第二組成物を組み合わせて乳化物を形成した。乳化物を濯ぎ、遠心分離した。次いで、得られた材料を乾燥した。この方法では、乾燥を、真空炉を用いて40℃の温度で行った。
別の方法では、得られた材料を凍結乾燥法で乾燥した。
別の方法は、微粒子を滅菌する工程を含む。別の方法は、包装の中で微粒子を所定の相対湿度中、25℃、30℃または40℃で保存する工程を含む。
真空熱乾燥(40℃)により、生成物のいくらかは失われ、微粒子は凝集したことが、観察された(図32)。また、遠心分離過程でペレット中にPVAが存在すると、微粒子を懸濁することが困難であることも観察された。材料を凍結乾燥すると、図32で示されるように、細かい粉末が得られた。γ滅菌(32-33KG)によって、凝集体と黄色が発現する結果となった(図33)。塩化メチレンの不完全な除去は、凝集体形成を招いた。
0%のタザロテン、10%のタザロテンまたは20%のタザロテンを含有する微粒子のバッチを生成した。10%タザロテンバッチは、20%タザロテンバッチより均質であった。滅菌されていない微粒子の最大径は、約10マイクロメーターであった。
γ滅菌において観察される微粒子の凝集は、滅菌過程での温度の上昇によるものであろう。たとえば、25kGy照射で5〜10℃の上昇である。低温、たとえば5℃未満で滅菌が行われた場合、ミクロ粒径分布は、図34に示すように、滅菌粒子および非滅菌微粒子の間で実質的に同じである。ポリマー微粒子を滅菌する方法は、米国特許出願公開第2005/0003007(Boixら)に記載されている。
先に記載した観察に鑑み、別の製造方法を開発した。
この方法は、溶剤である塩化メチレンを、第一組成物(すなわちPLGAおよびタザロテンを含有する組成物)から完全に蒸発または除去する工程を含む。また、この方法は、炉乾燥微粒子のふるい分けと比較して、微粒子を液体環境中でふるい分ける工程を含む。また、この方法は、微粒子含有材料を炉乾燥するのとは異なる。換言すると、微粒子含有材料を実質的に40℃未満の温度で乾燥する。図35はそのような方法のフローチャートである。
この方法の詳細な実施態様を以下に記載する。
タザロテン含有微粒子の3gバッチを、以下のように製造する。この微粒子中のタザロテンの量は、10%であった。
2.7gのPLGA75/25(i.v. 0.43または0.65)を、250mLのキャップされたマグネットバー付エルレンマイヤーフラスコに充填した。乾燥PLGAを撹拌した。約180mLの塩化メチレンをフラスコ中のPLGAに加え、PLGAが完全に溶解するまで撹拌した。いくらかの塩化メチレンを、この過程中に計量容器およびフラスコを濯ぐために残した。0.300gのタザロテンをPLGA/塩化メチレン組成物に加え、第一組成物、すなわち図35に示されるパート1を形成した。
第二ビーカーで、1000mLの水を80℃まで加熱した。マグネットバーを用い、水を約400〜500rpmで撹拌した。PVA(30.0g)を撹拌されている水の渦巻き側に振り込んだ。PVAが一旦分散されると、懸濁物中にPVAを保持しながら撹拌速度を約200rpmに減速して泡の形成を回避した。この第二組成物(図35に示されるパート2)を15分間加熱し、室温まで冷却した。
第二組成物を、泡が入り込むのを避けるように注意しながら、高せん断インペラを用いて約500〜600rpmで撹拌することにより、乳化物を形成した。第一組成物を、撹拌されている第二組成物に、使い捨てピペットを用い、ゆっくりと加えた。約40mLの第一組成物を加えた後、溶液を濃くし、乳化物を形成した。溶液が濃縮するにつれ、撹拌速度を上げ、溶液表面が動くようにした。必要であれば、泡が形成しないように、撹拌速度を上げたながら、第一組成物を加え続けた。第一組成物容器を、先に記載したように、残りの塩化メチレンで濯ぎ、第二組成物に加えた。組合わせた組成物を速い速度でさらに5分間撹拌し、次いで、速度を、僅かに表面が動くように、減速した。組み合わせた組成物を2日間撹拌した。1日後、乳化物は液化し始めた。したがって、泡形成を減らすために、撹拌速度を減速する必要があった。2日後、最終組成物中の塩化メチレンの量を、ドレーガー(Drager)チューブを使用して測定した。
蒸発によって溶液から塩化メチレンを完全に取り除いた時点で、残っている微粒子製剤を、遠心分離を使用して濯いだ。特に、チューブに40mLの微粒子組成物を充填し、5000rpmで15分間遠心分離した。チューブを逆さまにして、上澄み液をチューブから取り除いた。次いで、チューブを懸濁物で再び満たした。次の遠心分離の前に、先の遠心分離からのペレットは、組成物を10分間超音波処理し、1分間ボルテックス処理を行うことにより、懸濁させた。超音波処理およびボルテックス処理工程は、ペレットを完全に溶解するように所望の回数繰り返した。
全微小球懸濁物を遠心分離した後、チューブに精製水を充填し、生成物を濯いだ。真空抽出を使用して、上澄み液を取り除いた。微小球生成物を水で3回濯いだ。異なるチューブのペレットを、1本のチューブに合わせた。この1本のチューブ中の最終ペレットを、少量の水の中に懸濁し、得られた懸濁物を2個の積層フィルターを通し、フィルターの底に集めた。また、この通過工程は、ふるい分け工程とも考えられる。最初のフィルターの孔径は125μm、第二フィルターの孔径は、45μmであった。フィルターを水で濯ぎ、その溶液をフィルターの底に集めた。
集めた溶液を2本の清浄な遠心分離チューブに移した。追加の水を加え、所望の容積とし、15分間の遠心分離を使用して濯ぎを繰り返した。2本のチューブの内容物を合わせ、1本のチューブに入れた。
最終ペレットを少量の水に懸濁し、この懸濁物をフィルターの底に置いた。フィルターの底を125μmのフィルターで覆い、真空凍結乾燥工程中、起こり得る噴出を防いだ。懸濁物を含む装置を50℃で凍結し、次いで、0.4mbar(400Pa)の最低圧力で少なくとも12時間凍結乾燥した。水は完全に取り除された。
残った微粒子生成物を保存し、光および湿気から保護した。
バッチを琥珀色のエッペンドルフ(Eppendorf)チューブに詰めた。約150mgの微粒子を各チューブ中に置いた。各チューブを乾燥剤入り二重プラスチックパウチ中に置き、γ線照射(32.3〜33kGy)で滅菌した。
また、最終タザロテン含量を10%ではなく20%とした以外は、先の方法を使用して、バッチを製造した。
前述した方法で製造した、タザロテンを含有する微小球のような微粒子のバッチは、見た目がやや黄色ないし黄色の粉末であった。10%バッチ(すなわち10%タザロテン)は、実質的に均質な中身であったが、20%バッチは、不均質な中身であった。微視的外観を、SOP STAB20に従って測定した。微視的外観は、20倍、60倍および100倍の倍率で、微粒子含有サンプルの1滴を検査することによって、測定した。最大直径および体積のような粒子サイズは、微粒子サンプルの少量を1mLの脱イオン水に懸濁させることによって、測定した。5μLのTween 80を加え、混合物を10分間、超音波処理し、15秒間ボルテックス処理した。粒径は、Coulter LS230 装置を使用して測定した。高速液体クロマトフラフィー(HPLC)を使用して、タザロテンおよび分解生成物を検査した。アセトニトリル/水/氷酢酸(50/49.5/0.5)から成る移動相を用いて、分析対象物をBeckman Ultrasphere XL C8カラムから溶離させた。検出は、325および270nmでの紫外吸収によって行った。定量はタゾーテン(tazorten)の325nmでのピーク面積に基づいた。
タザロテンの微粒子からの放出特性は、透析バックと、緩衝液およびエタノール混合物(69.9/30.1)を含む溶解媒体とを用い、pH7.4で調べた。サンプルは、37℃で約110rpmでの撹拌水浴中でモニターした。各時点で、サンプルの少量を採取し、新しい媒体と入れ替える。
図36は、0%(プラセボ)、10%または20%タザロテンを、PLGA75/25(iv 0.43)とともに非滅菌および滅菌状態で含む微小球の3種のバッチの微視的外観写真を示し、類似の微小球の3種のバッチは、非滅菌および滅菌状態でPLGA75/25(iv 0.65)を含んでいた。
10%バッチの微小球の最大径は、約10μm未満であり、微小球の大多数の最大径は約1.5〜約1.7μmであった。20%バッチ中の微小球の最大径は、約14〜15μmであり、この微小球の大多数の最大径は、約0.5〜約0.8μmであった。
バッチDL005、DL006、DL009およびDL010(図36に示す)について、21日目の放出特性を、下記表9に示す。
Figure 2007535563
図37は、タザロテン(上部枠)、タザロテン酸(下部枠)および別のレチノイド(中間枠)について、溶解特性傾向のグラフを示す。21日後のインビトロ溶解の累積%タザロテン総放出量に基づいて、10%バッチ(DL005およびDL009)の溶解速度は、20%バッチ(DL006およびDL010)の速度より速いようである。
25℃または30℃、相対湿度40%±5%で3ヶ月保存した後の粒径および粒度分布は、新しい微粒子と実質的に同じであった。40℃、相対湿度20%±5%で3ヶ月保存した後の凝集を観察した(図38および39)。5℃で相対湿度を調整せずに保存した粒子について、粒子径および粒度分布で変化は観察されなかった。
PLGA75/25(iv 0.69dl/g)および10%タザロテンを含み、3ヶ月保存した微小球(DL003)のバッチの溶解特性を、下記表10および図40に示す。
Figure 2007535563
上記した3ヶ月保存後のバッチDL005、DL006、DL009およびDL010についての溶解特性を下記表11および図41に示す。
Figure 2007535563
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先に記載したように、微視的外観の変化は観察されなかった。バッチDL003は、1ヶ月40Cでの保存で凝集体を含み、25Cおよび30Cで保存した場合、2ヶ月後に不規則な形を持つ粒子を含んでいた。バッチDL005およびDL010は、最初の新しい微小球からの変化は見られなかった。バッチDL005およびDL010の微小球の粒径は、所望の目標範囲内であった。バッチDL003は、全温度で類似のタザロテン傾向が存在する。3ヶ月の保存後のバッチDL005およびDL010では、タザロテン傾向は、全ての保存条件で、分解生成物が生じることなく減少する。溶解特性において、試験したバッチの異なる保存条件の間に有意な差は観察することができない。
示差走査熱量分析(DSC)を使用して、本発明の微小球で使用されるポリマーの物理化学特性を得た。DSC7 Perkin Elmer を使用して、DSC分析を行った。第一回の温度上昇を25C〜70Cに5K/分で行い、次いで温度下降を70C〜25CにK/分で行い、また、第二回の温度上昇を25C〜70Cに5K/分で行った。ガラス転移温度の測定は、第二回の温度上昇時に行った。
ポリマーのガラス転移温度は、分子量(固有粘度)に依存して約44.6C〜約45.3Cであった。より低分子量のポリマーほど、より低いガラス転移温度を有していた。ガラス転移温度は、タザロテンについての可塑化効果を反映して、負荷しているタザロテンに比例して低下した。
更なる溶解特性試験を44日目のバッチDL003で行った。結果を図42のグラフに示す。44日の溶解後、総タザロテンの約41.5%が1日当たりの平均放出量約0.94%で放出した。これらの値は、50mg微小球サンプルからの一日当たりのタザロテンの放出量約47.2μgに相当する。したがって、50mg微小球サンプルは、約3.5ヶ月のタザロテン放出が期待できる。
図43は、タザロテンの累積%放出およびタザロテンの平均%放出/日と、溶解から252日後に得られたタザロテンの用量/日(g)を示す。二重対数回帰を使用すると、10%バッチ(DL005およびDL009)について、タザロテンの完全放出は約338日〜約643日間で生じ、一方、20%バッチ(DL006およびDL010)は、約685日〜約890日間で総放出を示す。
図44は、10%および20%タザロテンが負荷された微粒子の走査電子顕微鏡写真を示す。10%微粒子は平滑な球状であり、20%微粒子は、ゴルフボールに似た窪みのある表面をゆうしていた。
図45は、微小球におけるγ滅菌の効果を示す。右枠に示すように、γ滅菌によって、個々の微小球が凝集している。
図46は、溶解から21日後、および溶解から45日後の微小球の電子顕微鏡写真を示す。溶解から21日目では、微小球はまだ目視可能である(左枠)。溶解から45日目では、微小球は溶融したようであり、互いに固着している(右枠)。
電子顕微鏡写真は、前記可視顕微鏡画像に類似した結果を示している。
本明細書に引用されている全ての文献、論文、刊行物、特許および特許出願は、参照により全体として本明細書に組み入れられる。
本発明を、種々の特定の実施例および態様に関して記載したが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲内において様々に実施しうるものと理解される。
PLA微小球からのタザロテンの放出を示すグラフである。グラフは、同じサンプルについての3つの異なる実験を示している。 PLGA微小球からのタザロテンの放出を示すグラフである。グラフは、同じサンプルについての3つの異なる実験を示している。 PBS, pH7.4 中へのポリ(乳酸)、PLA、及びポリ(ラクチド−コ−グリコリド)からのタザロテン酸のインビトロ放出を示すグラフである。 懸濁液中1mgタザロテンの結膜下注射を1回打った後の、房水、硝子体液および網膜(N = 4)中のタザロテン濃度(平均+SD)を示すグラフである。 懸濁液中1mgタザロテン酸の結膜下注射を1回打った後の、房水、硝子体液および網膜(N = 4)中のタザロテン酸濃度(平均+SD)を示すグラフである。 溶液中1mgタザロテンの結膜下注射を1回打った後の、房水、硝子体液および網膜(N = 4)中のタザロテン濃度(平均+SD)を示すグラフである。 溶液中1mgタザロテン酸の結膜下注射を1回打った後の、房水、硝子体液および網膜(N = 4)中のタザロテン酸濃度(平均+SD)を示すグラフである。 PLGA微小球中0.5mgタザロテンの結膜下注射を1回打った後の、房水、硝子体液および網膜(N = 4)中のタザロテン濃度(平均+SD)を示すグラフである。 PLGA微小球中0.5mgタザロテン酸の結膜下注射を1回打った後の、房水、硝子体液および網膜(N = 4)中のタザロテン酸濃度(平均+SD)を示すグラフである タザロテンの硝子体内投与後のタザロテンおよびタザロテン酸の硝子体内濃度を示すグラフである。 硝子体内タザロテン/タザロテン酸濃度比を示すグラフである。1.結膜下懸濁液、2.結膜下油、3.結膜下微小球、4.硝子体内注射 ラットの皮膚への14C-タザロテンの局所投与を毎日21日間行った後の組織対リンパ漿濃度比を示すグラフである。 眼内および結膜下投与後のタザロテンの網膜/硝子体比を示すグラフである。1.硝子体内注射、2.結膜下懸濁液、3.結膜下油、4.結膜下微小球 タザロテン放出特性−RG502H(0.5% TWEEN-80/塩水, 37℃, n = 3)を示すグラフである。 タザロテン放出特性−RG502(0.5% TWEEN-80/塩水, 37℃, n = 3)を示すグラフである。 タザロテン放出特性−RG752(0.5% TWEEN-80/塩水, 37℃, n = 3)を示すグラフである。 タザロテン放出特性−R202H(0.5% TWEEN-80/塩水, 37℃, n = 3)を示すグラフである。 製剤1,4,9,17,18および19のタザロテン放出特性(500μg用量, n = 3, 37℃)を示すグラフである。 製剤1,9,12および17のタザロテン放出特性(500μg用量, n = 3, 37℃)を示すグラフである。 GLP ロット#229-01のタザロテン放出特性(500μg用量, n = 3, 37℃)を示すグラフである。 タザロテン放出特性−50μg用量(0.5% TWEEN-80/塩水, 37℃, n = 6)を示すグラフである。 タザロテン放出特性−50μg用量(0.5% TWEEN-80/塩水, 37℃, n = 6)を示すグラフである。 タザロテン放出特性−50μg用量(0.5% TWEEN-80/塩水, 37℃, n = 6)を示すグラフである。 タザロテン放出特性(0.5% TWEEN-80/塩水, 37℃, n = 3)を示すグラフである。 ポリマーブレンドを用いたタザロテン放出特性(0.5% TWEEN-80/塩水, 37℃, n = 6)を示すグラフである。 ポリマーブレンドを用いたタザロテン放出特性(0.5% TWEEN-80/塩水, 37℃, n = 6)を示すグラフである。 タザロテンウエハ放出特性(0.5% TWEEN-80/塩水, 37℃, n = 6)を示すグラフである。 微小球からのタザロテンウエハ放出特性を示すグラフである。 タザロテン500μgを含む製剤#1,#9及び#12の硝子体内1回移植後の、房水中(上のグラフ)及び水晶体中(下のグラフ)(N = 4)のタザロテン濃度(平均+SED)を示すグラフである。 タザロテン500μgを含む製剤#1,#9及び#12の硝子体内1回移植後の、網膜中(上のグラフ)及び硝子体液中(下のグラフ)(N = 4)のタザロテン濃度(平均+SED)を示すグラフである。 タザロテン500μgを含む製剤#1,#9及び#12の硝子体内1回移植後の、リンパ漿中(N = 2)のタザロテン濃度(平均+SD)を示すグラフである。 タザロテン硝子体内インプラントからの、房水、網膜及びリンパ漿中のタザロテン酸及びタザロテン濃度のグラフである。 タザロテン結膜下インプラントからの、房水、網膜及びリンパ漿中のタザロテン酸及びタザロテン濃度のグラフである。 PVRインプラントから得られるFastenbergの結果のグラフである。 炉乾燥または凍結乾燥されたポリマー含有組成物における相違を示す写真である。 微粒子サイズ容積におけるガンマ滅菌の効果を説明するグラフおよび写真である。左枠はガンマ滅菌前、右枠はガンマ滅菌後である。 滅菌していない微粒子および低温で滅菌された滅菌微粒子の微粒子容積分布のグラフである。 レチノイド成分を含有するポリマー薬剤送達システムを製造する1つの方法のフローチャートである。 異なる量のレチノイド成分と異なるポリマーを含有する微粒子の異なるバッチについて、滅菌の効果を示す写真である。 異なる量と異なるポリマーでの、3種の異なるレチノイド類(上部枠、中間枠および下部枠)の溶解特性を示すグラフである。 40℃で1ヶ月保存後の微粒子(DL003)の1バッチの、倍率20倍(左枠)、60倍(中間枠)および100倍(左枠)の写真である。微粒子凝集体が観察される。 25、30または40℃で2ヶ月保存後の一バッチの微粒子の例の写真である。微粒子の不規則な形状が観察される。 25、30または40℃で保存されたタザロテン含有微小球の溶解特性のグラフである。 異なる温度で保存され、異なる量のタザロテンおよび/またはポリマーを含有する、タザロテン含有微小球の溶解特性のグラフである。 44日目に観察されたバッチDL003についての溶解特性のグラフである。 252日目に観察された、バッチDL005、DL006、DL009およびDL010についての溶解特性のグラフである。 10%タザロテン(左枠)または20%タザロテン(右枠)を含有する微粒子の電子顕微鏡写真である。 10%タザロテンを含有する微粒子に対するガンマ滅菌の効果を示す電子顕微鏡写真である。 溶解から21日後(左枠)および45日後(右枠)の微粒子の外観を示す電子顕微鏡写真である。

Claims (31)

  1. レチノイド成分、および薬剤送達システムを眼に配置してから少なくとも約1週間、薬剤送達システムからレチノイド成分の放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する生分解性ポリマーマトリックスを含んでなる、生分解性眼内薬剤送達システム。
  2. レチノイド成分が、レチノイドおよびレチノイド前駆体の少なくとも1種を含む請求項1に記載のシステム。
  3. レチノイド成分が、レチノイン酸受容体アゴニストを含む請求項1に記載のシステム。
  4. レチノイド成分が、タザロテン、その塩およびそれらの混合物を含む請求項1に記載のシステム。
  5. レチノイド成分が、タザロテン酸を含む請求項1に記載のシステム。
  6. 付加的な眼科的に許容される治療薬をさらに含んで成る請求項1に記載のシステム。
  7. レチノイド成分が、生分解性ポリマーマトリックスに分散している請求項1に記載のシステム。
  8. マトリックスが、ポリラクチド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、それらの誘導体、およびそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つのポリマーを含んで成る請求項1に記載のシステム。
  9. システムが滅菌さている請求項1に記載のシステム。
  10. マトリックスが、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を含んで成る請求項1に記載のシステム。
  11. マトリックスが、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)を含んで成る請求項1に記載のシステム。
  12. マトリックスが、眼の硝子体にシステムを配置してから1ヶ月より長い期間にわたって、薬剤送達システムからの所定量のレチノイド成分の放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する請求項1に記載のシステム。
  13. レチノイド成分がタザロテンまたはタザロテン酸であり、マトリックスが、約2ヶ月〜約6ヶ月にわたって治療有効量の2タザロテンまたはタザロテン酸の放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する請求項1に記載のシステム。
  14. 眼の硝子体に配置するように構成された請求項1に記載のシステム。
  15. レチノイドが、インプラントの約40wt%〜約70wt%の量で使用されるタザロテンまたはタザロテン酸であり、生分解性ポリマーマトリックスが、薬剤送達システムの約30wt%〜約60wt%の量のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を含んで成る請求項1に記載のシステム。
  16. ロッド、ウエハまたは粒子として形成された請求項1に記載のシステム。
  17. 押出法によって形成された請求項1に記載のシステム。
  18. レチノイドおよび生分解性ポリマー成分の混合物を押出して、薬剤送達システムを眼に配置してから少なくとも約1週間にわたって所定量のレチノイドの薬剤送達システムからの放出を持続させるのに有効な速度で分解する生分解性物質を形成する
    工程を含んで成る生分解性眼内インプラントの製造法。
  19. 混合物が、RARアゴニストおよび生分解性ポリマーから基本的に成る請求項16に記載の方法。
  20. 押出工程の前に、レチノイドをポリマー成分と混合する工程をさらに含んで成る請求項16に記載の方法。
  21. レチノイド成分およびポリマー成分が、粉末形態である請求項16に記載の方法。
  22. ポリマー成分が、ポリラクチド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、およびそれらの組合せから成る群から選択されるポリマーを含んで成る請求項16に記載の方法。
  23. ポリマー成分が、ポリビニルアルコールを実質的に含有しない請求項16に記載の方法。
  24. 患者の眼に生分解性眼内薬剤送達システムを配置することにより患者の眼の視力を改善または維持するための生分解性眼内薬剤送達システムである薬剤であって、薬剤送達システムは、患者の眼の視力を改善または維持するのに有効な所定量のレチノイド成分の薬剤送達システムからの放出を持続させるのに有効な速度で分解する薬剤。
  25. 網膜眼疾患を治療するのに有効な請求項22に記載の薬剤。
  26. 眼疾患が、増殖性硝子体網膜症である請求項22に記載の薬剤。
  27. 薬剤送達システムを眼の後部に配置する請求項22に記載の薬剤。
  28. トロカールを使用して薬剤送達システムを眼に配置する請求項22に記載の薬剤。
  29. 注射器を使用して薬剤送達システムを眼に配置する請求項22に記載の薬剤。
  30. レチノイド成分に加えて、治療薬を患者に投与する請求項22に記載の薬剤。
  31. レチノイド成分が、タザロテン、その塩およびそれらの混合物を含む請求項22に記載の薬剤。
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