JP2007526483A - 物体の2エネルギー放射線走査 - Google Patents

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Abstract

一実施形態では、物体を第1および第2の放射線エネルギーで走査し、第1および第2のエネルギーの放射線を検出し、さらに第1および第2のエネルギーで検出された放射線の関数を計算することを含んだ、物体を調査する方法が開示される。関数は、物体の対応する部分について計算することができる。この関数に少なくとも部分的に基づいて、物体が所定の原子番号よりも大きな原子番号を有する高原子番号物質を少なくとも可能性として含むかどうかが決定される。関数は比であってもよい。この関数は第2の関数と比較することができ、この第2の関数は、所定の原子番号の物質に少なくとも部分的に基づいた値を有する閾値であってもよい。第2の関数は第1の関数と同じであってもよい。

Description

本出願は、2004年3月1日に出願された仮特許出願第60/549,093号および2004年5月5日に出願された仮特許出願第60/568,541号の利益を主張する。これらの仮特許出願は、本発明の譲受人に譲渡されており、また参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、禁制品を識別するための、貨物コンテナのような大きな物体を含んだ物体の放射線走査に関する。
例えば空港、海港、および公共建造物で隠された禁制品を識別するために、手荷物、バッグ、カバン、貨物コンテナ、および同様なもののような物体の中身の非侵入的検査で、放射線が一般的に使用されている。禁制品には、例えば、隠された銃、ナイフ、爆発装置、不法薬物、および原子爆弾または「汚い」放射性爆弾のような大量破壊兵器があることがある。1つの一般的な検査システムはラインスキャナであり、この場合には、検査されるべき物体は、X線放射線のような静止した放射線源と静止した検出器の間を通過する。放射線は、扇状ビームまたはペンシルビームに平行化されている。物体を透過した放射線は、中身よって様々な程度に減衰される。放射線の減衰は、放射線ビームが通過する物質の密度の関数である。透過した放射線は、検出され、測定される。検査のために物体の中身のX線透過画像を生成することができる。この画像は、中身の形、大きさおよび様々な密度を示す。
一般的な検査システムで使用される静止放射線源は、一般に、約160KeVから約450KeVのX線放射線源である。このX線源は、例えば、制動X線放射線源であってもよい。このエネルギー範囲のX線源は、X線管であることがある。450KeVのX線放射線は、貨物コンテナのような大きな物体を完全には貫通しない。標準的な貨物コンテナは、一般に、長さが20〜50フィート(6.1〜15.2メートル)、高さが8フィート(2.4メートル)、および幅が6〜9フィート(1.8〜2.7メートル)である。航空機の機体中に格納される複数個の手荷物または他の貨物を入れるために使用される航空貨物コンテナは、大きさ(長さ、高さ、幅)が約35×21×21インチ(0.89×0.53×0.53メートル)から約240×118×96インチ(6.1×3.0×2.4メートル)までにおよぶことがある。多数個の手荷物のような物体の大きな集合体は、また、パレットで支えられることがある。支持側壁を有することがあるパレットは貨物コンテナと同等な大きさであることがあり、「貨物輸送機関」という用語の使用は、また、貨物コンテナおよびパレットも含む。
機内持ち込みバッグおよび手荷物で銃、爆発物および他の禁制品を飛行機にこっそり持ち込むことは、よく知られた継続中の問題であるが、余り公表されていないがまた深刻な脅威は、大きな貨物輸送機関で国境を越えて、また船によって、禁制品をこっそり持ち込むことである。船で合衆国に運ばれる1700万個の貨物コンテナのうちのたった2%〜10%が検査されているだけである(「検問所の恐怖」、合衆国ニュースおよびワールドレポート(World Report)、2002年2月11日、52頁)。
従来の爆発を使用して広い領土全体にわたって放射性物質を撒き散らす原子爆弾および「汚い爆弾」は、貨物輸送機関およびより小さな物体でこっそり持ち込むことができる原子力装置の例である。原子兵器を製造するために使用することができる放射性物質、核分裂可能物質、核分裂性物質、および燃料親物質は、また、同じ様にそのような物体でこっそり持ち込むことができる。ウラン235、ウラン233、およびプルトニウム239のような核分裂性物質は、遅い(熱)中性子を獲得することで核分裂することができる。核分裂可能物質には、核分裂性物質、および、ウラン238のような、高速中性子を獲得することで核分裂することができる物質がある。燃料親物質は、遅い(熱)中性子を獲得することで核分裂性物質に変換される可能性がある。例えば、ウラン238は、プルトニウム239に変換される可能性がある。例えば、トリウム232は、ウラン233に変換される可能性がある。核分裂可能物質、核分裂性物質、および燃料親物質は、本明細書で「核物質」と呼ぶ。
貨物輸送機関のような物体の中身を手作業で検査して原子力装置、核物質、および放射性物質(核物質でない可能性がある)を識別することは、常用するには余りにも作業が遅すぎる。放射線検出器のような受動的な検査システムによる放射性物質および原子力装置の識別は、より高速であるが、困難である。例えば、放射線検出器は、物体の経路に沿って位置付けすることができる。しかし、核物質は、一般に高密度であるので、それが放射した光子の大部分を吸収する。また、鉄、鉛、タングステン、またはパラジウムのような遮蔽物質が、放射線の漏れを阻止するために使用されることがあり、放射線の検出を妨げる。その上、ウラン233、ウラン235、およびプルトニウム239のような特定の核分裂性物質は、放射性であるが、非常に長い半減期(おおよそ104〜108年)を有している。そのような物質の自然崩壊の計数率は非常に小さいので、受動検出は信頼性がない。また、比較的少量の放射性物質が大きな貨物輸送機関の中にある可能性がある。標準的なX線走査によって、物体の中に含まれる可能性がある他の高密度品と原子力装置および核物質を区別することは、また、困難である。
X線走査によって物体の中身の物質組成について得ることができる情報は、物体の中身と異なった相互作用をする2つの異なるエネルギー端点(ピークエネルギー)を有するエネルギースペクトルの放射線ビームを使用することで高めることができる。相互作用は物質に依存している。例えば、エネルギースペクトルを有する2つのX線ビームは、6MeVおよび9MeVのピークエネルギーを有するX線放射線ビームをそれぞれ生成する6MVおよび9MVまたはもっと高い加速電位のX線源で供給することができる。6MeVのピークエネルギーを有するX線ビームの場合、X線放射線は、主にコンプトン散乱によって減衰する。そのスペクトルの大部分で対生成は余りない。9MeV以上のピークエネルギーを有するX線ビームの場合、より多くの対生成が誘起される。また、コンプトン散乱も起こる。2つのエネルギー端点で検出される透過放射線の比は、放射線ビームが通過した物質の原子番号を示すことができる。対生成は1.022eVで始まるが、より高いピークエネルギーになるまで、コンプトン散乱が支配的である。
例えば、米国特許第5,524,133号は、コンテナまたは車の貨物のような大きな物体用の走査システムを開示している。一実施形態では、2つの静止したX線放射線源が設けられ、各々が、扇状ビームに平行化されたビームを放射する。貨物の側面に近接して対向する放射線源と扇型ビームは互いに垂直である。静止した検出器アレイが、貨物を透過した放射を受け取るように、各放射線源の反対側に、貨物の反対側に位置している。その上、2つの異なるエネルギーのX線放射線が、各放射源で放射される。一方のエネルギーは、他方よりも相当に高い。例えば、1MeVと5または6MeVのエネルギーが使用されることがある。スライスごとに全体としての検出器アレイによって、またはアレイの個々の検出器によって、各エネルギー端点で検出されたX線の平均数の比が、決定され、そして、この比に対応する平均原子番号を識別するために、ルックアップテーブルと比較される。それによって、貨物の中身の物質が決定される。
X線走査に関したさらに他の厄介な問題は、検査中の物体との相互作用後の放射線の測定が統計的であることである。物体を透過したX線放射線の測定の精度は、例えば、固有のシステム雑音だけでなく、測定を行うために使用される光子の数によって制限される。同じ量の繰返し測定は、一般に、平均値のまわりに一群の測定値を与える。その測定値群のプロットは、一般に、「正規分布」曲線を形成する。個々の測定値のばらつき(正規分布曲線の幅)は、標準偏差によって特徴付けられる。単色X線ビームを用いたX線走査にポアソン統計を使用すると、測定値の百分率誤差は、システム雑音を除いて、検出された光子の数の平方根で1を割ったものである。より多くの光子が検出されるにつれて、標準偏差は減少し、測定精度は高くなる。走査時間を増すことによって検出される光子の数を増すことができるが、一般的なX線走査システムのスループット率を落とすことは一般に容認できない。例えば、港または国境を通る貨物輸送機関の通過を相当に遅くすること、または空港で乗客のバッグおよび手荷物の審査を遅くすることは、現在の市場では許されない。
例えば、ウランのような物質を識別しようとする走査システムの精度は、それの「感度」とそれの「特定性」によって特徴付けることができる。感度は、貨物輸送機関中のウランの存在が識別される確率である。高感度のシステムは、低感度のシステムよりも多い真の肯定(ウランの存在の正しい識別)および少ない誤否定(ウランの検出の見落し)を識別する。しかし、感度の向上は誤肯定の数の増加をもたらす可能性があり、これは容認できないだろう。精度の統計的な目安である特定性は、例えば、走査システムが貨物輸送機関の中にウランのないことを適切に識別する確率である。高い特定性を有するシステムは、低特定性のシステムよりも少ない誤肯定を識別する(ウランが存在していないとき貨物輸送機関にウランを識別すること)。
不十分な光子の収集は、大きな標準偏差を有する測定値分布をもたらす可能性がある。したがって、ウランのような関心のある物質の分布が、他の非脅威物質の分布と重なり合う可能性がある。したがって、特定の測定値が関心のある物質を示しているかどうかが明らかでなく、誤肯定をもたらす可能性がある。貨物輸送機関および他の物体の内部に隠された核物質をより高い精度で検出するための実際的で効率の良い非侵入的な方法およびシステムが、依然として必要とされている。
核分裂可能物質、核分裂性物質、および燃料親物質(「核物質」)は、大きな原子番号(Z)を有する。例えば、ウランは92の原子番号(「Z」)を有し、そして、プルトニウムは94の原子番号を有する。他の核分裂性物質よりも容易に核分裂する特殊核物質(「SNM」)は、米国原子力規制委員会によって、プルトニウム、ウラン233、およびウラン233または235の同位元素に富んだウランを含むように定義されている。その中のいくつかは核物質よりも小さな原子番号を有する可能性がある放射性物質(例えば、コバルト60は27の原子番号を有する)は、一般に、鉛(Z=82)、タングステン(Z=74)、およびパラジウム(Z=46)のような高原子番号物質で遮蔽されている。対照的に、貨物輸送機関で輸送される大多数の工業製品の主要な物質である鉄は、26の原子番号を有する。また、貨物輸送機関で輸送されることがある農産品は、さらにより小さな原子番号を有する。農産品は、主に、炭素(Z=6)、窒素(Z=7)、および水(H2O、H(Z=1);O(Z=8))で構成され、これらはさらにより小さな原子番号を有する。本発明の実施形態は、核物質である可能性のある高原子番号物質として物体を分類するように物体を調査する。他の物体の中の物体および地下に埋められた物体もまた調査することができる。
本発明の実施形態に従って、異なるエネルギー端点のような異なるエネルギーを有する放射線ビームで物体を走査し、2つのエネルギーで検出された放射線の関数を計算し、さらに、この関数に少なくとも部分的に基づいて、物体が所定の原子番号よりも大きな原子番号を有する物質を含むかどうかを決定することによって、物体が調査される。例えば、物体は貨物輸送機関であってもよく、また両方のエネルギー端点は1MeVよりも大きくてもよい。例えば、エネルギー端点は、9Mevと5MeVであってもよい。関数は、例えば、2つのエネルギー端点で検出された放射線の比であってもよい。そのような比は、本明細書で透過比(「TR」)と呼ばれる。所定の原子番号よりも大きな原子番号を有する物質は、高原子番号物質(「HANM」)と呼ばれる。第1の関数を、所定の原子番号に少なくとも部分的に基づいた第2の関数と比較して、決定を行うことができる。第2の関数は、例えば、閾値であってもよい。閾値は、所定の原子番号を有する試験物質を例えば同じ2つのエネルギー端点で走査することで得られる比(また、TR)に少なくとも部分的に基づいていることがある。閾値は、さらに、標準偏差の所定の整数または非整数によって調整することができる。標準偏差の数を変えることは、システムの感度と特定性に、一般に反対方向で、影響を及ぼす。例えば、標準偏差の数を増すことは、特定性を改善して誤肯定の数を減少させることができるが、また、感度を減少させて真の肯定の検出を減少させることがある。特定性および感度は、特定の用途で釣合いが取れている必要がある。
本発明の実施形態に従って、物体の第1の複数の部分を第1のエネルギーの第1の放射線ビームで走査し、第1の放射線ビームの第1の複数の部分との相互作用の後で第1の放射線を検出することを含んだ、物体を調査する方法が開示される。本方法は続いて、物体の第2の複数の部分を第2の放射線ビームで走査し、第2の放射線ビームの第2の複数の部分との相互作用の後で第2の放射線を検出する。本方法は、さらに、対応する第1の部分と第2の部分に関して第1の放射線の関数と第2の放射線の関数の比を計算し、そして、各比と閾値との比較に少なくとも部分的に基づいて、物体の中身が所定の原子番号よりも大きな原子番号を有する高原子番号物質を少なくとも可能性として含むかどうかを決定することを含む。
他の実施形態に従って、物体の少なくとも一部を第1および第2の放射線エネルギーで走査するための手段を備えた物体を調査するためのシステムが開示される。第1および第2の放射線エネルギーの放射線を物体との相互作用の後で検出するための手段が設けられている。第1および第2のエネルギーで検出された放射線の関数を計算するための手段、およびこの関数に少なくとも部分的に基づいて、物体が所定の原子番号よりも大きな原子番号を有する高原子番号物質を少なくとも可能性として含むかどうかを決定するための手段が、また、設けられている。
関連した実施形態に従って、物体の少なくとも一部を第1および第2の放射線エネルギーで走査するための少なくとも1つの放射線源を備えた、物体を調査するためのシステムが開示される。少なくとも1つの検出器が、第1および第2の放射線エネルギーの放射線を物体との相互作用の後で検出するように位置付けされている。少なくとも1つのプロセッサがこの検出器に結合されている。このプロセッサは、第1および第2のエネルギーで検出された放射線の関数を計算し、かつこの関数に少なくとも部分的に基づいて、物体が所定の原子番号よりも大きな原子番号を有する高原子番号物質を少なくとも可能性として含むかどうかを決定するようにプログラムされている。
用語「放射線エネルギー」は、放射線ビームのエネルギー特性を意味する。この特性は、例えば、ビームのエネルギー端点すなわちピークエネルギーであってもよい。放射線エネルギーは、また、ビームのエネルギーの平均値または公称値を意味することもできる。同様に、ビームのエネルギーの他の特性を使用することもできる。
本発明の実施形態に従って、物体を通過する2つの異なるエネルギーの放射線の透過または減衰の関数は、物体または、物体の中の品物または領域を高原子番号物質(「HANM」)として分類するために使用される。この高原子番号物質は、核物質またはそのような物質の遮蔽である可能性がある。その関数は比であってもよい。比または他のそのような関数は、知られた原子番号の試験物質を通過した同じ2つのエネルギーの放射線の透過または減衰の同じ関数と比較することができる。物質は、試験物質よりも大きな原子番号を有する場合、HANMとして分類することができる。試験物質は、問題の物質の原子番号よりも小さな原子番号を有するどんな物質でもよい。試験物質は、例えば、鉄でもよい。物体は、例えば、貨物輸送機関でもよい。また、本発明の実施形態に従って、この決定を所望の統計的信頼度で行うことができる。
鉄は26の原子番号(「Z」)を有する。貨物輸送機関の一般的な品物は、鉄および鉄よりも小さな原子番号の他の物質を含むので、鉄よりも大きな原子番号を有するどんな物質の存在も怪しい。したがって、鉄は、特定の物質を識別することなく(これは選択肢であるが)、HANMを選別するのに十分である。いくつかのHANMは核物質でない可能性があるが、鉛(Pb、Z=82)、タングステン(W、Z=74)、およびビスマス(Bi、Z=83)のような非核HANMが核物質を遮蔽するために使用されることがあり、したがって、また怪しい物質である。貨物輸送機関および同様なものの中に合法的にHANMが存在することはまれであり、それらは、存在するとき、貨物輸送機関の積荷目録で識別されるはずである。例えば、銀(Ag、Z=47)には、医療用、工業用および写真用の使用がある。そのような合法的な使用のために銀が輸送されているならば、積荷目録で識別されるはずである。さらに、核物質は、画像におけるそれらの透過および形で他のHANMと区別することができる。積荷目録を調べ、貨物輸送機関のX線画像を目視検査することで、HANMを核物質として識別することを無くし、誤肯定の発生率を減少させることができる。
異なるエネルギーの異なる物質の透過の比で物質をHANMとして分類することができることを実証するために、鉄、鉛、ルーサイト、およびタングステンの試料を9Mev(測定半価層(「HVL」)1.16インチ、2.95cm)および5MeV(HVL1.04インチ、2.64cm)の公称エネルギーを有する放射線ビームで走査した。放射線ビームは、8.5MeVおよび4.5MeVで動作するように設定されたカリフォルニア州パロアルトのVarian Medical System,Inc.から入手可能なM9Linatron(登録商標)直線加速器によって、供給された。M9は、1つのエネルギー端点から別のエネルギー端点に切り換えることができる。各試料は1つのエネルギー端点で走査され、データが収集され、それから、その試料は第2のエネルギー端点で走査され、データが収集された。各試料を透過した放射線は、放射源の中心軸に沿って位置付けされた放射源から約2メートルのPaXscan(登録商標)4030ガドリニウム酸化物(GdO)シンチレータで検出された。放射源の電子回路部分は鉛で覆った。8.5MeVのデータ収集では、放射源は、毎秒300パルス(「pps」)で動作させ、検出器は、毎秒1.5フレーム(「fps」)で動作させた。4.5MeVのデータ収集では、放射源は200ppsで動作させ、検出器は3fpsで動作させた。画像は128フレームにわたって合計した。
異なる厚さの鉄、鉛、およびルーサイトの試料を個々に放射源と検出器の間に置いた。異なる厚さは、異なる量の透過をもたらした。試料ごとに、2つの画像を得て、.vivフォーマットで格納した。検出器の不均一性を補正するために各画像を正規化し、そして格納した。さらに、異なる物質の試料を互いに隣接して配置した。例えば、タングステンと鉄を別々に鉛の隣に配置した。また、複数の物質の試料を、ビームの方向に沿って一方を他方の後ろに配置した。例えば、タングステンと鉛を別々に鉄の後ろに配置した。
例えばhttp://rsb.info.nih.gov/ij/でNational Institutes of Healthから入手することができるフリーウェアプログラムである、Java(登録商標)のImageJ画像処理解析で、各画像を処理した。当技術分野で知られている他の画像処理ソフトウェアもまた使用することができる。画像の関心のある領域のヒストグラムは、各画像の一定の位置で取得し、関心のある領域から収集されたデータの平均値および標準偏差を記録した。いくつかの場合には、2つの異なる物質が互いに隣接して配置されたとき、関心のある領域は、マクロでなく手で選ばなければならなかった。したがって、両方のエネルギーで走査された試料の対応する場所は必ずしも全く同じというわけではなかった。ImageJの位置標識は、位置が少なくとも非常に近接していることを可能にした。
各画像のエネルギー透過は、画像を正規化するように、画像のヒストグラム平均値を、試料が存在しない場合の同じエネルギーの画像のヒストグラム平均値で割って計算した。それから、8.5MeV対4.5MeVのエネルギー透過の比を計算し、記録した。8.5MeVの透過も記録した。
その結果を図1aに示す。図1aは、Y軸に沿った、9MeVの公称エネルギーを有する放射線ビームの透過と4.5MeVの公称エネルギーを有する放射線ビームの透過の比の、X軸に沿った8.5MeVの透過に対するグラフである。X軸は片対数である。曲線Aは、鉄に関して、試料の異なる厚さに対応する異なる透過の計算された比を接続する、目に対するガイドである。曲線Bは、鉛に関して、異なる透過の計算された比を接続する。曲線Cは、ルーサイトに関して、異なる透過の計算された比を接続する。点Dは、タングステンのすぐ隣にある鉄に関する比を示す。点Eは、鉄のすぐ隣にある鉛に関する比を示す。点Fは、3インチ(76.2mm)の鉄の後ろにある1.5インチ(38.1mm)のタングステンの透過に関する比を示す。点Gは、異なる画像での、3インチ(76.2mm)の鉄の後ろにある1.5インチ(38.1mm)のタングステンに関する比を示す。点Hは、3インチ(76.2mm)の鉄の後ろにある3インチ(76.2mm)の鉛に関する比を示す。
図1aの曲線および点は、低透過(高減衰)で物質間の良好な分離を示す。鉄の後ろにあるタングステンと鉛がはっきり区別できるので、鉄、鉛、およびルーサイトは、約0.1以下の透過ではっきり区別することができる。さらに、これらの曲線の相対的な位置は、この例では、原子番号が大きくなるにつれて物質の比が減少することを示している。したがって、各物質の比およびそれぞれの比と例えば鉄の比との比較に基づいて、物質をHANMとして分類することができる。留意されたいことであるが、完全な透過(X=1)が近づくにつれて、これらの曲線は収束する。例えば最適化されたシステムで、より多くの光子が検出され、かつ散乱がより少ない場合には、おそらく、より高い透過(より小さな減衰)でも同様に分離を決定することができるだろう。
図1bは、1.5インチ(38.1mm)の鉛に隣接した3インチ(76.2mm)の鋼(鉄)を通過した8.5MeVの透過と4.5MeVの透過の比の画像の表面プロットである。両方の物質を通過した透過が同じであるように、異なる厚さが使用されている。この画像の部分Iは鋼(鉄)の画像であり、この画像の部分Jは鉛の画像である。鋼(鉄)および鉛は、検出器で測定されるように、8.5MeVでほぼ同じエネルギー透過を有する。比は著しく異なっている。各表面の粗さは、比測定の統計的なばらつきによっている。2つの物質の比は多くの標準偏差で分離されるので、これら2つの物質は容易に区別することができる。透過がより小さい場合、標準偏差はより大きくなり、比は互いにより近くなり、そしてより高度な統計的解析が必要になるだろう。
上述の実験では、放射源と検出器は互いに接近し、広い放射線ビームを必要とし、このために入射放射線の均一性が減少している。さらに、散乱は減らなかったし、検出器の効率は低かった。図1cは、これらの問題のないシミュレーションに基づいた、9MeVの5つの異なる物質を透過した放射線と5MeVの透過エネルギーのシミュレートされた比を、9MeVの透過したエネルギーの関数として表す5つの曲線を示す。検出器は、30mmのタングステン酸カドミウム(CdWO4)を備える。シミュレーションでは、上の実際の試験と比べて、散乱を減少させ、さらに放射源と検出器はより遠く離した(約13メートル)。物質は、図示のように、水(H2O)、アルミニウム、鉄、ウラン、および金であった。曲線は、上の試験におけるよりも滑らかであり、9MeVの透過が増すにつれて収束している。上のように、入射放射線の高減衰(低透過)のとき、異なる物質間に著しい分離がある。透過が減少する(減衰が増加する)につれて増加するこの分離は、原子番号依存性を示している。さらに、この例では、原子番号が大きくなるにつれて、この比は減少している。より低いエネルギーをより高いエネルギーで割って比を計算すると、原子番号が大きくなるにつれて、この比は大きくなるだろう。
どんな特定の理論にも限定されることなく、比と原子番号の関係は、異なるエネルギーでのコンプトン散乱と対生成の差の効果に起因すると信じられる。低原子番号物質(アルミニウム(Z=13)および水(H2O、H(Z=1)、O(Z=8))のような)では、コンプトン散乱が、9MeVのような高エネルギーで支配的な機構である。コンプトン散乱によって、低原子番号物質は、9MeV光子のようなより高いエネルギーの光子を散乱するよりも高い率で5MeVのようなより低いエネルギーの光子を散乱するようになり、このために、低原子番号物質に対して透過放射線の割合が増加する。銀(Z=47)およびウラン(Z=92)のようなより高い原子番号の物質では、対生成によって高エネルギー光子が除去されるようになり、したがって、比が減少する。さらに、比の変化はエネルギー透過の変化に対して余り敏感でなく、その結果として、エネルギー透過が増加するときにほぼ平坦な曲線となる。
図1aおよび1cにおいて、貨物輸送機関に一般に存在する物質の中で最も大きな原子番号を有する鉄(Fe、Z=26)が試験物質として使用される場合、鉄の比よりも小さな計算された比は、鉄よりも大きな原子番号を有する物質の存在を示している。上で述べたように、貨物輸送機関中の一般的な品物は、鉄および鉄よりも小さな原子番号を有する他の物質を備えている。したがって、鉄よりも大きな原子番号を有するどんな物質の存在も怪しい。
図1aおよび1cは、また、エネルギー透過が増すにつれて(物質が薄くなるために)、異なる物質の比の差が減少することを示す。図1aおよび1cは、エネルギー透過が減少するにつれて(より厚い物体で)、異なる元素および物質の比の差がより大きくなることを示しているが、エネルギー透過が小さくなるにつれて、1ピクセル当たりにより少ない光子が検出される可能性があることに留意されたい。これによって、測定された比の誤差余裕が増し、物質を区別することができる精度が減少する可能性がある。本発明の実施形態は、雑音のあるデータの原因を統計的に説明する。
本発明の実施形態の例では、物体が所定の原子番号よりも大きな原子番号を有する物質を少なくとも可能性として含むかどうかを決定するために、2つの異なるエネルギーで物質を通過する放射線の透過または減衰の比とこの物質の原子番号の間の関係が使用される。この物質は、高原子番号の物質(「HANM」)であると考えられる。所定の原子番号は、HANMが核物質または核物質の遮蔽であるように選ばれる。
一例では、物体は、少なくとも2つの異なるX線エネルギー分布すなわち異なる最大エネルギーレベルを有するスペクトルで走査される。この最大エネルギーレベルは、また、端点またはピークエネルギーとも呼ばれる。使用することができるエネルギー分布の例には、5MeVと9MeV、1MeVと9MeV、および5MeVと15MeVがある。2つの異なるエネルギー端点の物体を透過した放射線は、検出器アレイの検出器要素で測定される。また、正規化で使用するために、例えば、物体がそれぞれの放射線ビームに入るすぐ前に、空気を透過した後の各エネルギー端点で放射線を検出することができる。空気透過に対する正規化は随意である。各検出器要素は、X線源から検出器要素までの物体の部分を通過するビーム経路に沿って、放射線を受け取る。各ビーム経路に沿って透過した放射線の表面への投影は、「ピクセル」と呼ばれる。この表面は、検出器アレイの受取り面の全てまたは一部に対応することが可能であり、この面は、当技術分野で知られているように、例えば平らであっても、または曲がっていてもよい。各ピクセルは、検出器アレイの1つまたは複数の検出器要素に対応することができる。画像が生成される場合、このことは本発明の実施形態では選択肢であり必須でないが、ピクセルは画像のピクセルに対応してもよい。
対応する部分またはピクセルに関して2つの異なるエネルギー端点で検出された放射線の関数が計算される。「対応する」部分またはピクセルは、物体を通過する同じビーム経路または実質的に同じビーム経路から生じる。物体は一般に走査中に放射線ビームを横切って動いているので、第1のエネルギー端点での走査と第2のエネルギー端点での走査の間に物体が僅かな距離を動いている可能性がある。したがって、対応するピクセルは、貨物輸送機関を通過する正確に同じビーム経路から得られない可能性がある。好ましくは、貨物輸送機関を通過するピクセルそれぞれのビーム経路が、必須ではないが少なくとも半分重なり合っている場合に、ピクセルは「対応」していると見なされる。例えば、ピクセルは、半分より少なく重なり合っていてもよい。当業者には明らかなことであろうが、より小さな感度および特定性が容認できるようなある特定の場合には、対応するピクセルは互いに近接(互いに数ピクセルの範囲内)していてもよく、重なり合う必要はない。
上で述べたように、関数は、例えば、より高いエネルギー端点(9MeVのような)で検出された放射線とより低いエネルギー端点(5MeVのような)で検出された放射線の比であってもよく、またはその逆の比であってもよい。そのような比は、透過比(「TR」)と呼ばれる。一例ではTRを計算するために、複数の対応するピクセルに関して、より高いエネルギー端点で検出された透過放射線を、より低いエネルギー端点で検出された透過放射線で割る。「合成ピクセル」またはただ単にピクセルと呼ばれる対応するピクセルのTRは、それぞれの合成ピクセルの位置に関連した数(比に対応する)のアレイまたはマトリックスとして表すことができる。放射線透過を測定する代わりに、放射線減衰を測定し、比で使用することができる。他の関数もまた使用することができる。例えば、1)第1のエネルギー端点で検出されたエネルギーに第2のエネルギー端点で検出されたエネルギーを加えたものと、2)第1のエネルギー端点で検出されたエネルギーから第2のエネルギー端点で検出されたエネルギーを引いたものとの比のような、非対称パラメータ関数を使用することができる。言い換えると、(9MeVでの検出放射線+5MeVでの検出放射線)÷(9MeVでの検出放射線-5MeVでの検出放射線)、またはその逆である。
本発明の実施形態では、合成ピクセルのTRは、所定の原子番号を有する試験物質(上で、この物質はHANMであると見なされている)に基づいた第2の関数と比較される。可能性のあるHANMは、そのTRが第2の関数に関して基準を満たすかどうかに少なくとも部分的に基づいて識別される。第2の関数は、例えば、閾値であってもよく、そして、基準は、TRが閾値より上か下かであってもよい。閾値は、試験物質の合成ピクセルに関して、検査中の物体を走査するシステムで使用されるのと同じ2つのエネルギー端点で透過放射線のTRの平均値を計算することによって決定することができる。試験片を特徴付けるために、全ての合成ピクセルを解析してもよく、または統計的に十分な数の合成ピクセルを解析してもよい。好ましくは、所望の感度および特定性を達成するように、TRの標準偏差の整数または非整数で平均TRを調整することができる。また、試験片の異なる厚さについて平均TRを計算することが好ましい。透過は厚さで変化するので、それによって特定の閾値を計算し、各ピクセルで検出された特定の透過または透過の範囲に対して使用することができる。ここでは9MeVであるより高いエネルギー端点での透過を、閾値を選ぶために使用することができる。5MeVでの透過を代わりに使用することができる。
好ましくは、試験物質は、容認できる物質の知られている最高原子番号以上の原子番号を有する。例えば、ウラン(Z=92)およびプルトニウム(Z=94)のような放射性物質は、自立核分裂反応を行うことができるので、特に問題のあるものである。したがって、試験物質は、好ましくは、ウランの原子番号よりも小さな原子番号を有する。上で言及したように、鉛(Z=82)、タングステン(Z=74)、およびビスマス(Z=83)は、また、放射性物質を遮蔽するために使用することができるので、問題のあるものである。したがって、より好ましくは、試験物質はタングステンよりも小さな原子番号を有する。試験物質が鉄(Z=26)であることがさらにいっそう好ましい。鉄は、貨物輸送機関および手荷物に相当な量で一般に存在する最高原子番号の物質である。鉄に近い原子番号を有する銅(Z=29)およびニッケル(Z=28)も使用することができる。貨物輸送機関または他のそのような物体が、例えば、貨物輸送機関の積荷目録に基づいて決定することができる農産物を含む場合、ルーサイト(登録商標)またはデルリン(登録商標)のようなプラスチックの試験片に基づいた閾値を使用することができる。鉄、銅、ニッケル、または問題のある物質よりも小さな原子番号を有する他の物質を、同じく、農産物を含む貨物輸送機関の解析で使用することができる。
ピクセルのTRと閾値との比較の結果は、放射線ビームが横切った物体の体積中の物質の原子番号が試験片の物質の原子番号より上であるか下であるかを示す。高エネルギーピクセルの値を対応する低エネルギーピクセルの値で割ってTRが計算される場合は、TRが閾値よりも小さければ、放射ビームが横切ったそれらのピクセルをもたらす体積は、少なくとも可能性として、試験片の物質よりも大きな原子番号を有する物質を含み、少なくとも可能性のあるHANMとして識別される。その原子番号より下の物質は、非HANMとして分類される。低エネルギーピクセルの値を対応する高エネルギーピクセルの値で割ってTRが計算される場合は、TRが閾値よりも大きいと、放射線ビームが横切ったそれらのピクセルをもたらす体積は、少なくとも可能性として、試験片の物質よりも大きな原子番号を有する物質を含み、少なくとも可能性のあるNAHMとして識別される。留意されたいことであるが、本発明のこれらの実施形態に従って、当技術分野で知られているように、物質の原子番号を識別することは必要でないが、選択肢である。例えば、上で述べた米国特許第5,524,133号には、各エネルギーで検出されたX線放射線の比に基づいて物質の平均原子番号を識別する2エネルギー技術が記載されている。
図2は、品物405、品物410および例示のピクセルA、B、F、GおよびHを含んだ選ばれたピクセルを含む貨物輸送機関の一部の画像10である。ピクセルAは品物405の中にある。ピクセルBは品物410の中にある。また、以下で詳細に説明する調査窓Wが示されている。ピクセルの大きさは、検出器を構成する検出器要素の大きさおよび/または数、画像形成積分時間、その他に依存することがある。最小ピクセルの大きさは、単一検出器要素または検出器要素の数に対応することがある。一例では、各検出器要素および各ピクセルの大きさは、0.5cm×0.5cmである。
貨物輸送機関10を走査するために使用される放射線ビームが縦方向扇状ビームである場合、図2は、貨物輸送機関の走査から生じる複数の隣接した縦方向一次元走査アレイの組合せを表す。放射線ビームが円錐状ビームである場合、図2は、貨物輸送機関10の走査から生じる1つまたは複数の2次元走査領域を表す。
これらおよび他のピクセルで検出された透過放射線の値は、コンピュータのようなプロセッサで処理するために走査システムのメモリにアレイとして格納される。図3は、貨物輸送機関の部分を透過した9MeVの放射線に対して複数のピクセルで検出された放射線エネルギーの値のアレイの部分の例である。図4は、貨物輸送機関の対応する部分を通過した5MeVの貨物輸送機関を透過した放射線に対して、対応するピクセルで検出された放射線の対応するアレイの例である。例えば、9MeVでは、ピクセルXで検出された正規化透過放射線は5.9×10-3であり、5MeVでは、ピクセルX'で検出された透過放射線は2.4×10-3である。透過放射線の全ての測定値は同じ桁の大きさ(10-3)であるので、以後この項は省略する。図5は、貨物輸送機関の図3および4と同じ部分について計算されたTRのアレイの例である。Xの値(5.9)をX'の値(2.4)で割って2.5のTRを生じることによる合成ピクセルAのTRが示されている。合成ピクセルは、一般に、最初のピクセルと同じ大きさおよび形を有する。これらの値の全ては仮定である。
図6aは、X線走査システムで自動的に実施することができるTRを計算解析する方法800の例の流れ図である。この例では、ステップ801および802で、複数の対応するピクセルについて5MeVおよび9MeVで透過がそれぞれ検出される。ステップ803で、ピクセルの9MeVで測定された透過放射線を対応するピクセルの5MeVで測定された透過放射線で割って、図5に示すように、各合成ピクセルのTRが計算される。それから、ステップ805で、解析のために現在合成ピクセルが選ばれる。この例では、合成ピクセルAが選ばれる。ステップ808で、好ましくは、1つのエネルギー端点で検出された透過に基づいて、現在ピクセルのTRと比較するための閾値が選ばれる。以下でさらに述べるように、格納された閾値を補間することに基づいて適用可能な閾値を計算することが必要なことがある。ステップ808で、この選択は、9MeVで検出された透過に基づいている。代わりに、5MeVで検出された透過に基づいてもよい。この例の選択された閾値は4.35である。
それから、ステップ810で、現在合成ピクセルAのTRが4.35の閾値より下であるかどうかが決定される。2.5は4.35よりも小さいので、この条件は満たされている。したがって、合成ピクセルAはHANMである可能性がある。ステップ815で、図6aのアレイのピクセルAの場所にフラグを立てて、このピクセルに可能性のあるHANMとして「マーク」を付ける。それから、ステップ820で、合成ピクセルAが解析すべき最後のピクセルであるかどうかが決定される。解析すべき他のピクセルがあるので、条件が満たされておらず、本方法はステップ805に戻って解析用の新しいピクセルを選択し、そして本方法は続く。コンピュータが全てのピクセルのTRの解析を完了した後で、現在ピクセルが最後のピクセルであるので、ステップ820の条件は真になる。方法800の処理ステップは、走査システムのコンピュータのようなプロセッサで行うことができる。
物体がさらなる検査を正当化する1つまたは複数の高密度領域を含むかどうかを決定するために知られた技術による事前走査を行うことによって、走査システムの処理量を高めることができる。含む場合、本明細書で説明した試験のうちの1つまたは複数を行うことができる。含まない場合、物体はさらなる検査無しにシステムを通過することができる。事前走査は、1つのエネルギー端点を有する放射線ビームで物体を走査することを含むことができる。より低いエネルギー端点の放射線ビームが一般により敏感なので、これを使用することが好ましい。可能性のある怪しい物質を示す放射線の減衰または透過について結果を解析することができる。これは、例えば、検出された放射線またはコントラストを閾値と比較して自動的に行うことができる。同様に、画像を生成し目視で調査することもできる。
HANMを横切る放射線ビーム経路は、一般に、HANMの前および/または後ろにある農業材料または工業製品のような「背景」物質を横切る。背景物質の透過放射線および、同じビーム経路を占める疑わしいHANMと背景物質の組合せの透過放射線に基づいて、背景物質の中に埋もれた疑わしいHANMの各ピクセルのTRを別個に計算して、疑わしいHANMの背景に関して正規化することによって、走査システム100の感度および特定性を改善することができる。セグメンテーションのような当技術分野で知られている画像処理技術に基づいて、可能性のあるHANMを示す高密度領域の境界を背景に対して識別することができる。そのような高密度領域は、上で述べたように、1つのエネルギー端点での、調査される物体の事前走査で、識別することができる。それから、各エネルギー端点において高密度領域を通過するピクセルの透過放射線を、背景を通過する透過放射線で割って、高密度領域を通過する各ピクセルの透過放射線を計算することができる。そして、高密度領域の各ピクセルのTRは、上で述べたように、各エネルギー端点の調整された透過放射線を割って、計算することができる。
高密度領域および背景のTR値の同等な統計的精度を得るために、好ましくは、背景の大きさは、背景の面積が高密度領域の面積にほぼ等しいか、または同じオーダーであるように選ばれる。一例では、高密度領域の境界の外側の各方向に中身から周囲1から5センチメートルのような予め決められた面積を、背景物質と見なすことができる。背景物質のTRは、背景を形成するピクセルのTRの平均値または他の数学関数であってもよい。また、例えば、中心値を使用してもよい。例えば、高密度領域のピクセルのまわりに2つの環状リングを画定することができる。高密度領域の正確な境界の決定の不正確のために、高密度領域に最も近い環状リングを、例えば、高密度領域の境界から各方向に2から3ピクセルだけ離すことができる。怪しいHANMと同じ面積を含んでもよい次のリングは、背景物質を含むと見なすことができる。
図6bは、物体の怪しい高密度領域を通過して検出された放射線を高密度領域の背景に対して調整するために、コンピュータのようなプロセッサで実行することができる方法850の例を示す。ステップ855で、物体の高密度領域が識別される。高密度領域は、例えば、1つのエネルギー端点での物体の事前走査で識別することができる。ステップ860で、高密度領域の境界が決定される。例えば、当技術分野でよく知られているセグメンテーションのような画像処理技術を使用することができる。
ステップ862で、高密度領域の背景が識別され、ステップ864で、上で述べたように、各エネルギー端点で背景の平均透過が決定される。ステップ866で、各エネルギー端点で、ビーム経路に沿った背景を含んだ高密度領域の各ピクセルの検出放射線を、背景を透過した平均検出放射線で割る。この結果は、ビーム経路に沿った背景の影響のない状態での、各エネルギーでの高密度領域の透過放射線である。それから、本方法は、図6aのステップ803に進んで、対応するピクセルの計算された透過に基づいて高密度領域の合成ピクセルのTRを計算し、そのTRを閾値と比較することができる。
個々のTRと閾値の比較に基づいて低TRピクセルがHANMを少なくとも可能性として示す決定の感度および特定性は、特定の用途にとって十分でない可能性がある。本発明の実施形態は、解析されるピクセルの数を増やすことによって、この決定の特定性および感度をさらに改善しようとする。走査システムのコンピュータのようなプロセッサは、以下で説明する本発明の実施形態に従って、合成データをさらに解析することができる。
調査窓試験
本発明の一実施形態では、調査窓と呼ばれる所定の面積を有するピクセルのグループに含まれた閾値より下のTRを有するピクセル(「低TRピクセル」)の数が調査される。この調査窓は、例えば、3ピクセル×3ピクセルまたは9ピクセル×9ピクセルの、ピクセルのマトリックスであってもよい。図2に、9×9ピクセル調査窓Wが示されている。調査窓の中の低TRピクセルの数が所定の数を超えると、HANMが存在していると見なされる。閾値の値(標準偏差の値を引いた/加えた試験片の平均TR)、窓の大きさ、および脅威と見なされる低TRピクセルの最小数は、閾値より下に少なくとも1つのピクセルを有する物体の独立調査窓(独立窓は共通ピクセルを共有しない)の数に非NAHMが脅威基準を満たす確率を掛けたものが所望の感度および特定性よりも小さくなるように選ぶことができる。閾値を計算するために調査窓の大きさおよび試験物質の平均TRから引くべき標準偏差の数を選ぶことは、次の統計的な解析に基づいている。この試験は、「調査窓試験」と呼ばれる。
調査窓の大きさは、走査システムが検出することができる問題のある最小HANMの断面積に対応してもよい。HANMは、一般に、球の形でひそかに持ち込まれる。調査窓は、その球の断面内にすっぽり入る最も大きな正方形であってもよい。いったん窓の大きさが選ばれると、閾値および、もしある場合には、脅威と見なされるこの閾値より下のピクセルの最小数を選ぶ。好ましくは、標準偏差の数が増すにつれて、真のHANMからの応答の確率が減少するので、最小標準偏差が選ばれる。非HANMが検出基準を満たす確率に、解析された独立調査窓の数を掛けたものが所望の誤警報率よりも小さくなるように、閾値および最小数は選ばれる。許容可能な誤警報率の例は、1/100未満である。1/1,000未満が好ましい。1/10,000未満がいっそう好ましい。
一例では、同じ走査システムで貨物輸送機関を走査するために使用される同じ2つのエネルギー端点で、鉄の試験片が走査される。各ピクセルで測定されたTRは、鉄のTRの独立した測定値であると見なされる。試験物体の平均TRより下の標準偏差の各値(整数または非整数)について、統計的なばらつきのためであってHANMの存在のためでない標準偏差のそんな特定の値を平均TRから引いたものよりも単一測定値が小さくなる1ピクセル当たりの確率「p」がある。「N」個のピクセルが調査された後で、また統計的なばらつきのために、これらのピクセルのちょうど「n」個が閾値より下である確率「P」がある。この確率は、次の二項分布によって与えられる。
Figure 2007526483
したがって、すべての予想される結果の確率を計算することができる。統計的に非常に小さな発生確率を有する、したがって真のHANMである高い確率を有するそんな低TRピクセルを、識別することができる。特定の状況に対する誤警報率「Pfa」が設定され、そして高原子番号物質の存在を示さないと思われる全ての低TRピクセルの確率が評価される。合計と1の差がPfaより小さくなるまで、この確率は加算される。確率のこの合計は、誤肯定である低TRピクセルの数に対応する。その対応する数より上の低TRピクセルの数はどれも真のHANMの存在を示している。
例えば、9×9ピクセルの窓および、鉄の平均TRから2つの標準偏差を引いたものに等しい閾値を想定しよう。そのとき、統計的なばらつきのためにピクセルが閾値より下である1ピクセル当たりの確率は、p=0.02275である。9×9の窓で統計的ばらつきのためにn個のピクセルを閾値より下に見る確率P(n/N)は、次の表のようになる。
Figure 2007526483
8個のピクセルが統計的なばらつきのために閾値より下にある確率P(n/81)は0.0004である。8個のピクセルが統計的なばらつきのために閾値より下にある確率の合計は、0.9999である。したがって、8以上のピクセルが閾値より下にある場合、これが統計的なばらつきのためであってHANMの存在のためでないという1/10,000の可能性がある。これは、8以上のピクセルに基づいた、1調査窓当たりの誤否定率すなわち誤警報率Pfaである。9以上の低TRピクセルが統計的なばらつきの結果である確率は、この例では、1/10,000の誤警報率Pfaよりも小さい。したがって、1窓当たり1/10,000未満の誤警報率Pfaを達成するために、低TRを有する9以上のピクセルが調査窓にあることが必要である。
図7は、様々な大きさの調査窓および標準偏差について1/10,000の誤警報率Pfaを達成するために必要な低TRピクセルの最少の数の棒グラフである。例えば比較的大きな数の標準偏差(3以上)を選んだ場合、その誤警報率PfaでHANMを示すために必要なピクセルの最少の数はほんの少量(ピクセルの何分の1)だけ変化するので、調査窓の大きさは比較的重要でない。1のような非常に小さな数の標準偏差を使用する場合、特定の誤警報率PfaでHANMの存在を示すために必要な最少の数は、調査窓の大きさの非常に強い関数である。例えば、9×9マトリックスの窓の大きさおよび1の標準偏差では、1/10,000の誤警報率PfaでHANMを示すために27ピクセルが必要である。8×8マトリックの窓の大きさでは、24ピクセルが必要である。
2つの調査を行うことができる。すなわち、1つは、HANMのより大きな塊を検出するためにより大きな調査窓を用いるものと、もう1つは、より小さな塊を検出するためにより小さな調査窓を用いるものである。上で述べたように、このシステムで、より大きな塊を検出するために9×9マトリックスを使用することができる。より小さな窓は、例えば、3×3マトリックスでもよい。3×3マトリックスの場合、試験物体の平均TRから標準偏差の数を引いたものは、例えば2または2.5である可能性がある。2.5の標準偏差および3×3マットリックのとき、閾値より下に3個のピクセルが存在することは、図7に示すように、1/10,000の誤肯定率でHANMを示すだろう。調査窓試験は、HANMが存在するかどうかを決定するための唯一の試験であってもよく、または、以下で述べる本発明の他の実施形態を含んだ他の検査技術と共に使用してもよい。
物体のTR全体にわたって動かされる調査窓を解析して、物体全体を調査することができる。例えば、窓は、物体の角のような1つの場所に動き始めとして位置付けされ、そして反対側の角に向かって、一度に1ピクセル列を動いてもよい。その後、調査窓は1ピクセル行だけ下方に動き、それからTRを横切って一度に1ピクセル列を動いてもよい。各窓のピクセルは解析され、物体の全ての可能な調査窓が解析されたとき、解析は終了する。
調査窓試験の実施の例では、貨物走査システムの動作中に、貨物輸送機関は、各々9MeVおよび5MeVのような異なるエネルギー端点を有する2つのX線放射線ビームにさらされる。各放射線端点の放射線は、貨物輸送機関と相互作用した後で、検出器によって検出される。本発明のこのおよび他の実施形態を実施するようにプログラムすることができる貨物走査システムの例を、以下で述べる。
図8は、調査窓試験を実施するために、例えばコンピュータのようなプロセッサで実行することができる方法900の例である。例えば、図6aの方法800で(および、場合によっては、図6bの方法850と共に)合成ピクセルのTRを計算した後で、ステップ910で、コンピュータはピクセルを選び、この選ばれたピクセルのまわりに集中した9×9マトリックスのような調査窓を構築する。ステップ912で、コンピュータは、調査窓の中の低TR(マークの付いた)ピクセルの数を識別し、そして、ステップ915で、それを所定の数と比較する。所定の数は、上で述べたように、選ばれた条件の下で、誤肯定であることもある低TRピクセル(たとえそのピクセルがHANMでなくても、低TRを有するピクセル)の統計的に決定された最も大きな数である。閾値の計算は、例えば図13に関連して以下でさらに説明する。
低TRピクセルの数が所定の数以上である場合には、ステップ920で、低TRピクセルに対応する貨物輸送機関の面積がHANMとして分類される。調査窓の中の低TRピクセルの数が所定の数よりも少ない場合には、ステップ925で、現在調査窓が解析すべき最後の調査窓であるかどうかが決定される。
最後の調査窓でなければ、調査窓は、適切に1ピクセル列から下方に残された1ピクセル行までシフトされ、ステップ910で、新しい現在調査窓を構築する。それから、コンピュータは、上で述べたように、方法900の全てのステップを繰り返す。本方法900は、より小さな調査窓、標準偏差の異なる数および異なる所定数を用いて繰り返すことができる。現在調査窓が解析すべき最後の窓である場合には、ステップ930で、出力が作業者に与えられる。
図9は、貨物走査システム100の作業者に解析の結果を表示するために、コンピュータのようなプロセッサで実行することができる方法950の例である。ステップ960で、例えば方法900のステップ915で決定されたように、プロセッサは、所定の数以上のマーク付きピクセルの数のある調査窓があるかどうかを確かめる。もしあっても、マーク付きピクセルの数がどの調査窓でも所定の数以上でない場合には、プロセッサはステップ970に進み、「HANM無し」のメッセージを表示する。どれかの調査窓のマーク付きピクセルの数が所定の数よりも大きい場合には、プロセッサはステップ980に進んで、例えば「HANM有り」のメッセージを表示し、このように、貨物輸送機関中に高原子番号物質の存在することを作業者に警告する。また、ステップ990で、プロセッサは、HANMの存在を示す1つまたは複数の調査窓の画像を表示することができる。窓の画像の代わりに、または窓の画像と共に、窓を含んだ画像全体を表示することもまた可能である。
HANMが存在することを出力が示す場合、作業者はいくつかの選択肢を有していることがある。例えば、貨物輸送機関の積荷目録を確かめて、HANMが適切に宣言されておりかつ脅威がないかどうかを決定することができる。HANMは、HANMであるが、例えば、積荷目録で識別されるはずである工業または医療用途の銀のような、放射性物質でない可能性がある。また、HANMは、積荷目録に宣言されるべきである医療用途の放射性物質である可能性がある。また、作業者は、走査ユニットおよびプロセッサで貨物輸送機関の追加の走査および/または本明細書で述べた他の試験を含んだ測定値の数学的解析を行うことができ、かつ/または作業者は、貨物輸送機関の手作業の検査を行うことができる。HANMの疑わしい存在のために検査に落第する貨物輸送機関は、その区域から移動させ、知られた手順に従って取り扱うことができる。
出力がHANMの存在を示さない場合、貨物輸送機関は、検査に「合格」したと見なすことができる。しかし、HANMが存在していると作業者が疑う場合には(例えば、事前走査に基づいて)、作業者は、やはり手作業の検査を行うことができる。また、図6bの方法850が図6aの方法800のTRの計算と共に使用されなかった場合には、方法850を行い、TRを計算し直し、そして上で説明したように解析することができる。HANMが依然として証明されない場合には、本明細書で説明したその他の試験のどれかまたは全て、または当技術分野で知られている他の試験を行うことができる。作業者が納得すると、貨物輸送機関は「通過」させることができる。
接触試験
試験基準を満たす最初の合成ピクセルが発見されると(例えば、図6aに関して説明したように)、解析される合成ピクセルの数を増やすための他の方法は、そのピクセルの環境を解析してそのピクセルに接触した同じく試験基準を満たすピクセルを識別することである。接触ピクセルがまたHANMの一部であれば、その最初のピクセルがHANMの一部である可能性がいっそう高くなるので、その最初の合成ピクセルの環境を解析することで、測定値の統計的な精度が高くなる(標準偏差が減少する)。最初のピクセルを囲繞するピクセルを解析することで、決定に寄与する光子の数がまた効果的に増加する。接触したピクセルの面積が所定の面積以上である場合、HANMの識別は、単一ピクセルまたは所定面積よりも小さな面積を有するグループに基づいた決定よりも大きな感度および特定性を有している。
所定の面積は、自立核反応を引き起こすことができる最小HANMの断面積であってもよい。例えば、この面積は20.25cm2であってもよく、これは4.5cm×4.5cm平方の面積である。この大きさの正方形は、この寸法の正方形を含む最小の球の断面積を表す。この面積の大きさは、マーク付きピクセルを数えることによって決定することができる。(低TRピクセルにマークが付けられる上述の図6a、ステップ815を参照されたい。)より小さな、またはより大きな他の面積もまた使用することができる。接触ピクセルの面積は、正方形の形である必要はない。
所定の面積以上の面積を含む接触ピクセルがある場合には、HANMが少なくとも可能性として存在すると見なされる。一例では、図2のピクセルGおよびピクセルHのような縁を共有するピクセルは、接触していると見なされるが、一方で、ピクセルFおよびGのような頂点だけを共有するピクセルは接触していると見なされない。「接触した」についての異なる定義を使用することができ、この定義は、例えば頂点を共有するピクセルを含んでもよい。本発明のこの実施形態は、「接触試験」と呼ばれる。形ではなく面積に基づいた比較は、より信頼性が高いと信じられるが、形もまた考えることができる。
図10は、接触試験を実施するために、コンピュータのようなプロセッサで実行することができる方法1000の例を示す。ステップ1010で、マーク付きピクセルが選ばれる。ステップ1020で、選ばれたピクセルに接触した追加のマーク付きピクセルがあるかどうかが決定される。あらゆる方向で最初の「マークの付いていない」ピクセル(このピクセルのTRは閾値より上である)に達するまで、選ばれたマーク付きピクセルから全ての方向でアレイのピクセルが確かめられ、集積される。そのような解析のアルゴリズムは当技術分野でよく知られている。
選ばれたマーク付きピクセルに接触したマーク付きピクセルがある場合には、ステップ1030で、接触したマーク付きピクセルの面積の大きさは、システム100が検出するように設計されている最小HANMの面積のような所定の面積、この例では20.25cm2と比較される。好ましくは、ステップ1030で「集積された」マーク付きピクセルが含む面積は、例えば、マーク付きピクセルを数えることによって決定される。各ピクセルが0.5cm×0.5cmである場合、例えば、図5に示すピクセルAのまわりに集中した81個の接触したマーク付きピクセルが含む面積は、20.25cm2(4.5cm×4.5cm)に等しい。この例では面積は正方形であるが、それは必須でない。ステップ1030の条件が満たされた場合、ステップ1040で、接触したマーク付きピクセルの面積は、HANMとマーク付けされる。場合によっては、作業者に表示するために、この面積の画像を生成することがきる。
マーク付きピクセルの含む面積が所定の面積よりも小さい場合には、ステップ1050で、隣接したマーク付きピクセルの面積は未確認HANMとマーク付けされる。ステップ1040か1050かのどちらかの後で、ステップ1060で、処理すべき他のマーク付きピクセルがあるかどうかが決定される。もしあれば、ステップ1010で、新しいマーク付きピクセルが選ばれ、方法1000が繰り返される。処理すべき他のピクセルがない場合、ステップ1060の条件は満たされないかもしれず、ステップ1070で、コンピュータは作業者に出力を与える。留意されたいことであるが、個々のピクセルが前にマーク付けされた面積の一部になると、そのピクセルはこのプロセスでさらに解析する必要がない(ただし、解析してもよい)。したがって、ステップ1010は、前にマーク付けされた面積の一部でないマーク付きピクセルを選ぶことに限定することができる。ステップ1060は、同様に、前にマーク付けされた面積の一部でない他のマーク付きピクセルがあるかどうかを決定することに限定することができる。
この接触試験は、単独で使用することができ、または、本明細書で説明した他の実施形態の試験を含んだ他の調査技術と共に使用することができる。作業者は、調査窓試験に関して上で説明したような、与えられた出力に対応することができる。
疑わしい合成ピクセルの環境を解析することは、また、限られた数の光子だけが各合成ピクセルで検出される可能性のある場合に有用である。例えば、農産品のようなある特定の非脅威物質(非HANM)が非常に高密度であることがある。高密度物質の低透過が大きな統計的な不正確を引き起こすために、たとえ物質がHANMでなくても、低TRピクセルがあることがある。接触試験は、ピクセルの環境で検出された放射線もまた考慮して、ピクセルで測定された放射線に基づいた決定の統計的な精度を高めることできる。
マトリックス試験
他の実施形態では、合成ピクセルはグループ分けされ、そしてグループのTRの関数が解析される。この関数は、例えば、グループのTRの平均値または中心値であってもよい。疑わしいピクセルのまわりにグループを形成することができ、または全てのピクセルを含むように複数のグループを設けることができる。このグループは、例えば、マトリックスであってもよい。したがって、この試験は「マトリックス試験」と呼ばれる。
図2の品物410は、貨物輸送機関10の中の他の品物の例である。品物410の中でピクセルBは低TRであり、したがって疑わしいピクセルである。図2の3×3ピクセルのマトリックスB3は、ピクセルBのまわりに「構築された」グループの例である。図11は、貨物輸送機関10の一部についてのTRのアレイの例であり、低TRピクセルBおよびマトリックスB3を示している。マトリックスB3の例えば平均TRは、マトリックス中の各ピクセルのTRを平均することによって計算される。そして、平均TRは閾値と比較される。平均値が閾値よりも下の場合には、HANMがあると見なすことができる。ピクセルの大きさが0.5cmである一例では、3×3ピクセルのマトリックスB3を使用して、少なくとも約1.5cm×1.5cmの断面積を有する可能性のあるHANMを識別することができる。この比較に使用される閾値は、マトリックスのピクセルの透過の平均値または他のそのような関数に基づいて選ぶことができる。
3×3マトリックスのTRの統計的な精度は、個々の低TRピクセルのTRの統計的な精度の3倍である。誤肯定は、不必要で高価で時間がかかり、かつ混乱を招く貨物輸送機関の検査の原因となることがあるので、好ましくは、ピクセルBがHANMに属していると最終的に結論する前に、いっそう高い精度での追加の確認を得る。
より大きな物体について決定の精度をさらに改善するために(標準偏差を減少させるために)、好ましくは、3×3マトリックスを調査した後で、図2および図11にも示す9×9ピクセルのマトリックスB9のようなさらに大きなマトリックスが、同じ選ばれた低TRピクセルBのまわり集中してつくられる。代わりに、または同じく、5×5および7×7ピクセルのマトリックスのような他の大きさのマトリックスを構築してもよい。より大きなマトリックスの大きさは、識別すべき品物の大きさおよびピクセルの大きさに依存する可能性がある。9×9ピクセルのマトリックスB9は、HANMが存在するかどうかの決定に寄与するデータを有する81個の追加の隣接ピクセルを含む。より大きなマトリックスのピクセルのTRの平均値が生成され、同様に閾値と比較される。第1および第2のマトリックスの両方の平均TRが閾値よりも下である場合には、現在低TRピクセルは、HANMを表すといっそう高い信頼度で決定される。この例では、3×3ピクセルのマトリックスB3は、可能性のあるHANMの第1の識別を行い、このHANMの存在は、9×9ピクセルのマトリックスB9によって、より大きな信頼度で確認される。
全ての低TRピクセルが処理されるまで、解析は続く。重なり合う9×9マトリックスだけでなく、複数の重なり合う3×3マトリックスも、アレイ全体にわたって構築することができる。図2は、例えば、追加の3×3マトリックスB4を示し、このマトリックスB4は、マトリックスB3に部分的に重なり合っている。
他の例では、検出器要素が1.5cm×1.5cmで、ピクセルの大きさが1.5cmである場合、3×3ピクセルのマトリックスは4.5cm立方のHANMを含むだろう。検出器要素が0.1cmで、ピクセルの大きさが0.1cmである場合、4.5cm立方のHANMまたは20.25cmの面積を覆うHANMを含むためには、45ピクセル×45ピクセルのマトリックスが必要であろう。
図12は、マトリックス試験を実施するために、コンピュータのようなプロセッサで実行することができる方法1100の例である。この例では、ピクセルの大きさは0.5cm×0.5cmである。低HANMピクセルを識別し、かつマーク付けするために図6aの方法800を実行した後で、かつ、場合によっては、1つの例が図10の方法1000に示されている接触試験を実施した後で、ステップ1105で、現在マーク付きピクセルが選ばれる。例えば、図2の物体410の中の低TRピクセルBが選ばれる。ステップ1115で、0.5cm×0.5cm以上の面積を含むHANMを識別するために、ピクセルBのまわりに集中した3×3マトリックスB3が「構築される」(図11を参照されたい)。
そして、ステップ1120で、マトリックスB3の9個のTRを合計し、その合計を個々のピクセルの数で割って、マトリックスB3の平均TRが計算される。この例では、マトリックスB3の平均TRは2.7である。それから、ステップ1125で、マトリックスB3の平均TRが閾値より下であるかどうかが決定される。この例の閾値は3.9である。2.7は3.9よりも小さいので、条件は満たされている。このことは、ピクセルBが低TRを有することだけに基づいてピクセルBがHANMである可能性があるという最初の疑いの精度の3倍の精度で、マトリックスB3がHANMを表すことを意味する。
この例では、4.5cm×4.5cm以上の断面積を含むHANMの場合、ステップ1130で、好ましくは、ピクセルBのまわりに集中して9×9マトリックスB9がまた構築されて、3×3ピクセルのマトリックスによるHANMの発見に、より大きな感度および特定性を与える。9×9マトリックスB9の例を図12に示す。ステップ1135で、マトリックスB9の平均TRが計算される。マトリックスB9のTRが合計され、この合計が81(個々のピクセルの数)で割られる。この例では、図11のマトリックスB9のTRは2.9である。9倍のピクセルが考慮されるので、マトリックスB9のTRの精度の統計的な確率は、マトリックスB3のTRの精度の統計的確率の3倍である。ステップ1138で、マトリックスB9のTRは閾値と比較される。そして、ステップ1138で、平均TRが閾値よりも小さいかどうかが決定される。小さい場合、ステップ1140で、より高度の感度および特定性で、現在マーク付きピクセルがHANMに対応することが確認される。2.9は3.9よりも小さいので、条件は満たされている。それから、ステップ1145で、ピクセルBが、解析すべき最後のマーク付きピクセルであるかどうかが決定される。解析されるべき他のマーク付きピクセルがあるので、条件は満たされておらず、この方法はステップ1105に戻り、次のマーク付きピクセルについて方法1100が繰り返される。
マトリックスB9のTRが閾値よりも小さくない場合、上で述べたように、ステップ1140でピクセルBはHANMとして確認されず、本方法はステップ1145に進む。全てのマーク付きピクセルの全てのTRが解析された後で、ステップ1145の条件は真になり、出力が作業者に与えられる。作業者は、調査窓試験に関して上で説明したように、出力に応答することができる。
例えば、マトリックス試験は、厚さ20cmの鉄シールドの後ろにあるウラン立方体のような4.5cmの辺を有するHANMの立方体を識別することができると信じられる。マトリックス試験は、単独で行うことができ、または、本明細書で説明した他の試験のどれかまたは全て、または当技術分野で知られている他の試験と共に行うことができる。例えば、品物410の面積が、上で述べた接触試験の所定の大きさよりも小さい場合には、この品物は、その試験でHANMとして識別されないかもしれない。しかし、SNMのいくつかの物体が1つまたは複数の貨物輸送機関にひそかに持ち込まれ、そして核反応を維持するだけ十分に大きな単一物体に統合されることがあるので、その品物は依然として危険なHANMである。所定の大きさよりも小さなHANMが、また、「汚い」爆弾に使用されるかもしれない。接触試験の所定の面積よりも小さな品物は、接触試験の所定面積よりも小さなマトリックスを使用するマトリックス試験で識別することができる。接触試験の所定の大きさよりも小さな面積で低TRピクセルを調査するようにマトリックス試験が使用されるとき、その所定の大きさよりも大きな物体の一部でない低TRピクセルだけを、マトリックス試験による解析のために選ぶ必要があるが、それは必須でない。
ほんの小さなマトリックス(3×3ピクセルのマトリックスB3のような)が、少なくとも可能性として品物をHANMとして識別するのに十分な量のその品物を含んでいる、より小さな品物の場合、HANMの識別は、より大きなマトリックスも使用される場合ほど信頼性が高くないことに留意されたい。しかし、そのような可能性のある識別は、本明細書で説明された、または当技術分野で知られている他の試験を行うこと、積荷目録を確かめること、および/または手作業調査を行うことのようなさらに他の調査を妥当なものする可能性がある。また、留意されたいことであるが、マトリックス以外のグループのTRの平均または他のそのような関数を閾値と比較して、そのグループが少なくとも可能性としてHANMであるかどうか決定することができる。例えば、そのグループは、上で述べたように、事前走査で識別された高密度領域であってもよい。高密度領域の境界を上で述べたように画定することができ、高密度領域のピクセルのTRを平均することができ、さらにその平均を閾値と比較することができる。
閾値計算
上で述べたように、HANMと非HANMとを区別するための閾値は、好ましくは、走査システムごとに計算される。貨物走査システムが周期的に較正されるとき、閾値計算が行われてもよい。この計算は、部分的に、システムの感度および特定性の所望の程度に依存する。上で述べたように、問題のある物質(ウランのような)の最低原子番号よりも小さな原子番号を有する試験物質を、貨物輸送機関を走査するために使用されるのと同じ2つのエネルギーで走査することによって、閾値を決定することができる。好ましくは、誤肯定を無くするために、試験片は、また、一般的な許される物質の原子番号以上の原子番号を有している。鉄、ニッケル、および銅は、好ましい試験物質の例である。
好ましくは、試験片は、試験片の異なる透過で閾値を計算することができるように、様々な厚さを有する。試験片は、例えば、くさび状、または段状であってもよい。厚さは、容認できる物質およびHANMの予想される透過範囲に対応することができる。異なる厚さで計算された閾値は、対応する透過を有する合成ピクセルに適用される試験基準と共に使用することができる。試験片は、例えば、約1mmから約400mmの厚さであってもよい。どちらかのエネルギー端点での透過を使用することができる。試験片が段状である場合、各段のTRについて標準偏差が計算される。試験片がくさび状である場合、くさびの部分の特定の厚さのTRについて、標準偏差が計算される。1つまたは少数の列のデータを各厚さに使用することができる。この標準偏差は、物体の調査中に、測定された透過の間を補間するために、すなわち試験片に基づいて計算された閾値の間の閾値を計算するために使用される。代わりに、測定された透過に最も近い計算された閾値を使用することができるが、それは同程度に正確でない可能性がある。
各厚さでTRが計算され、合計され、そして平均される。当技術分野で知られているように、測定値がTRのような測定量の統計的なばらつきである確率は、測定値の分布の算術平均と当の測定値の間の隔たりの関数である。この隔たりは、標準偏差で測定される。そのような確率は、表で表され、当技術分野でよく知られている。例えば、複数の測定値の算術平均から3標準偏差離れた測定値は、統計的なばらつきである確率が約0.0013である。この確率は誤警報率であり、この例では誤警報率は13/10,000である。したがって、TRが、正しくない確率0.0013を有する実際のTRの統計的なばらつきである確率を減らすために、この例では、各厚さで閾値を計算するために、3標準偏差が選ばれる。使用される標準偏差の値は、整数であってもよく、この例では3、または、例えば2.5のような非整数であってもよい。好ましくは、同じ標準偏差が各厚さで使用される。
試験片の低原子番号物質の平均TRから異なる値の標準偏差を引いて、異なる感度および特定性を達成することができ、各々で、透過放射線の任意の測定値がHANMまたは非HANMからであることを考慮すると、低原子番号物質のTRから引くべき標準偏差の数は、誤肯定の容認できる数と誤否定の容認できる数の間に所望の釣合いを達成するように選ばれる。例えば、低原子番号物質のTRから8標準偏差を引くと、誤肯定がゼロ(0)になるだろうが、おそらく容認できない数の誤否定になる。上で言及したように、比較的多数の誤肯定が許容できる場合には、標準偏差を考慮に入れることは必要でない可能性がある。
より高いエネルギー端点での測定値をより低いエネルギー端点での測定値で割る場合、試験片の平均TRから標準偏差が引かれる。より低いエネルギー端点での測定値をより高いエネルギー端点での測定値で割る場合、試験片の平均TRに標準偏差の値が加えられる。標準偏差の特定の数が、システムの感度および特定性を決定する。
図13は、閾値を計算するために、コンピュータのようなプロセッサで実施することができる方法1200の例を示す。ステップ1210で、試験片が、複数の厚さで、9MeVのような第1の高エネルギー端点を有する放射線を用いて、貨物走査システムによって走査される。またステップ1220で、試験片を透過した放射線は、ピクセルごとに検出される。走査は、代わりに、最初に5MeVで行ってもよい。
それから、ステップ1220で、試験片は、5MeVのような、第1のエネルギー端点よりも小さな第2のエネルギー端点を有する第2の放射線ビームで走査され、そしてステップ1210のピクセルに対応する複数のピクセルについて、複数の厚さで試験片を透過した放射線が検出される。ステップ1230で、対応するピクセルについて、9MeVで測定された透過放射線を5MeVで測定された透過放射線で割って(または、その逆)、合成ピクセルのTRが計算される。
ステップ1240で、計算されたTRの標準偏差が決定される。好ましくは、実際の測定中に、計算された閾値の間を補間する際に使用するために、試験片の各厚さのTRについて標準偏差が計算される。標準偏差は、次式に従って計算することができる。
Figure 2007526483
ここで、xiはピクセルiの測定された減衰放射線であり、
Figure 2007526483
は全てのピクセルについての測定された減衰放射線の算術平均値であり、これは式
Figure 2007526483
に従って計算され、Nはピクセルの数である。この例示の例では、透過放射線の試験測定値の標準偏差は、0.2と計算される。測定された減衰放射線の異なる分布に関して、他の統計的な方法を使用することができる。
ステップ1250で、各厚さでのTRの平均TRが計算される。ステップ1260で、各厚さで閾値が計算される。ステップ1250で、好ましくは、所望の感度および特定性に依存して、標準偏差の整数または非整数によって試験片の各厚さの平均TRを調整して、閾値が計算される。ステップ1270で、計算された閾値が格納される。閾値は、例えば、試験片の厚さごとに、対応する透過および標準偏差と関連して閾値のデータベースに格納することができる。
約4.5である可能性のある鉄の平均TRに基づいた閾値を使用して、約7のTRを有する可能性のある農産品の2メートル立方の中に埋め込まれた、約2.5のTRを有する可能性のある4.5cm×4.5cmのHANMを区別することは、困難であろう。HANMは、一般に、一般的な農産品の原子番号から鉄の原子番号よりも遠く離れた原子番号を有するので、要求された程度の統計的精度でHANMを農産品と区別することは、鉄と区別するよりも容易である。HANMの識別の感度および特定性を改善するために、調査される貨物輸送機関の中身に基づいて、閾値を選ぶことができる。したがって、貨物輸送機関が農産品を含むことが分かっている場合には、鉄または他のそのような物質のTRではなく、農産品のTRまたはプラスチックまたは水のような農産品を表す物質のTRを、閾値を決定する際に使用することができる。例えば、ルーサイト(登録商標)またはデルリン(登録商標)を使用することができる。上で述べたように、好ましくは、様々な厚さの試験片が使用される。計算された閾値は、また、上で述べたグループ分け関連技術で使用するために、閾値のデータベースに格納してもよい。
例えば、税関積荷目録によって貨物輸送機関の中身についての十分な情報を入手可能であることがある。貨物輸送機関の荷送り人または荷主によって提出された一般的な積荷目録は、農産品、工業製品、その他のような、貨物輸送機関で送られることになっている品物の種類を宣言している。
図14は、積荷目録で宣言された中身の種類に基づいて閾値を選ぶ方法1600の例である。ステップ1605で、貨物輸送機関104が工業製品を含むかどうかを決定するために、積荷目録が確かめられる。含んでいれば、ステップ1610で、例えば、上で述べたように鉄および検出された透過に基づいた閾値が、貨物輸送機関104の中身を解析する際に使用される閾値として選ばれる。閾値は、代わりに、銅またはニッケルに基づいてもよい。貨物輸送機関が工業製品を含むことを積荷目録が示していない場合、ステップ1615で、貨物輸送機関が農産品を含むことを積荷目録が示しているかどうかが決定される。示していれば、貨物輸送機関の中身の解析で使用するために、農産品に基づいた閾値が選ばれる。示していなければ、ステップ1610で、鉄の閾値が選ばれる。方法1600は、検査される貨物輸送機関の積荷目録を綿密に調べる作業者が実施することができる。そのとき、作業者は、どの閾値または閾値のグループを上で説明した試験で使用すべきかを入力することができる。例えば、積荷目録が電子的に入力されると、コンピュータのようなプロセッサが方法1600を実施することができる。
核試験
他のX線走査および/または解析技術を、上で説明したグループ分け関連技術と共に使用して、1つまたは複数の疑わしいピクセルがHANMであるという結論の精度をさらに高め、かつ誤警報率を減少させることができる。上の試験は、貨物輸送機関の中の任意の物質がHANMとして分類できるかどうかを決定する。HANMは核物質(核分裂可能物質、核分裂性物質、または燃料親物質)である可能性があり、核物質の存在は、高度の感度および特定性で識別する必要がある。上で述べたように、ウラン235、プルトニウム239、およびウラン233は、核分裂性物質の例である。核分裂可能物質には、核分裂性物質およびウラン238がある。燃料親物質には、プルトニウム239に変換可能なウラン238、ウラン233に変換可能なトリウム232がある。他のものよりも容易に核分裂する特定の核分裂性物質は、特殊核物質(「SNM」)と呼ばれる。SNMHは、現在、米国原子力規制委員会によって、プルトニウム、ウラン233、ウラン233またはウラン235同位元素に富んだウランを含むように定義されている。核物質は、当技術分野で知られているように、十分なエネルギーのX線放射線にさらされることによって、さらされて1〜2μs後に引き起こされるそれの原子核の核分裂の後で、ベータ崩壊のために、遅発中性子を放射する。非核物質は遅発中性子を放射しないので、遅発中性子の存在を使用して、核物質の存在を識別することができる。遅発中性子は、例えば、中性子検出器によって検出し、かつ数えることができる。中性子検出器は、以下でさらに述べる。
核物質に光核分裂を誘起するために必要な最小エネルギーは、光核分裂閾値または核分裂閾値と呼ばれ、その物質に依存する。表Iは、選ばれた元素の質量超過値に基づいて計算された選ばれた元素の核分裂閾値を識別する。質量超過値は、1985年1月に、NNDDCブルックヘイブン研究所から入手可能なNuclear Wallet Cardから得られた。Nuclear Wallet Cardの現在版は、www.nndc.bnl.gov/wallet/wallet-2000.pdfから入手可能である。留意されたいことであるが、核物質と非核物質の両方が、また、X線放射線にさらされる非常に短い期間(10-15秒)内に光中性子を生成することができる。光中性子は、コンテナの中の物質およびX線走査システムの部品で吸収される。表Iはまた、選ばれた核物質の光中性子放射の閾値も示す。光中性子のデータは、http://+2.lan/gov/data/photonuclear.htmlのT-2 Nuclear Information Service、ロスアラモスから得られた。光核分裂および光中性子のデータは、また、当業者には知られている様々な他のソースから容易に入手することができる。
Figure 2007526483
全ての核物質の核分裂閾値は、約5.0MeVから約5.8MeVの範囲にあるので、核物質を少なくとも約5.8MeVのX線放射線で走査すると、そのような物質に光核分裂および遅発中性子が誘起される。閾値を超えてエネルギーを増やすと、放射される遅発中性子の数が増加し、検出が容易になる。上の例のように、9MeVを使用してもよい。好ましくは、X線ビームがオフで、かつ光中性子放射が終わった後で、遅発中性子が検出される。その上、このときまでは、遅発中性子の計数を妨げる可能性のあるX線光子はまた存在していない。
本発明の実施形態に従って光核分裂による遅発中性子を検出するための一連の動作の例をここで説明する。当技術分野で知られているように、最初に、時間t=0に、9MeV電子の電子バーストがターゲットに衝突して、X線光子を生成する。このX線光子は平行され、検査中の貨物輸送機関に投射される。電子バーストは、一般に、数マイクロ秒継続する。パルス幅の一般的な値は、2.0〜4.5μsである。X線光子生成が終わって1.0〜2.0μs後に、存在していれば核物質中の光核分裂からの遅発中性子を検出するために、中性子検出システムがオンにされる。収集期間は、次の電子バーストがターゲットの送られようとしている時点まで、一般に時間t=0から約2.5〜5.0ミリ秒後まで継続することができる。この第2のバーストは、9MeVまたは5MeVであってもよい。ここでは例えば9MeVである各高エネルギーバーストの後で、中性子検出システムをオンにすることができる。他の例では、TRピクセル試験が合成ピクセルのアレイでHANMの可能な存在を示した後で初めて(上で述べたように、両方のエネルギー端点での走査、TR計算、および結果の解析の後のような)、中性子検出器がオンにされる。
貨物輸送機関全体について、または貨物輸送機関の疑わしい面積だけについて、光核分裂の結果を解析することができる。疑わしい面積は、閾値より下のTRを有する合成ピクセルまたは合成ピクセルのグループであり、HANMが存在する可能性があることを示している可能性がある。一例では、疑わしい面積の識別は、容認できない感度および特定性を有し、さらに進んだ試験を促すことがある。他の例では、容認可能な感度および特定性でHANMが識別された場合、SNMまたは他の核物質が存在するかどうかを決定するために、光核分裂の結果を解析することができる。
遅発中性子の検出は、貨物輸送機関の中に核物質が存在することを示す。そのような核物質の概略の位置は、また、当技術分野で知られているように、識別することができる。その上、核物質の正体を決定することができる。異なるピークエネルギーでSNM中に光核分裂を誘起することによって生じるいくつかの遅発中性子の実験的な数および遅発中性子の減衰時間を、各々特定の核物質に対応する5または6の範囲にまとめることができる。試験されている物体の遅発中性子の数をこれらの範囲と比較することで、特定の核物質(およびそれの原子番号)の識別が可能になる。実時間遅発中性子計数および中性子検出技術は、当技術分野で知られている。例えば、Tsahi Gozani、Active Non-Destructive Analysis of Nuclear Materials (National Technology Information Service 1981)、pp.173〜205を参照されたい。
SNMのような核物質が貨物輸送機関の中の特定の位置に存在するというさらなる確認が必要(例えば、手作業検査が行われる前に)である場合には、核物質の光核分裂エネルギーの13MeVと15MeVの間のピーク範囲に、他の光核分裂反応を誘起することができる。より高いエネルギーレベルで行われるこの第3の走査によって、光核分裂で生成される遅発中性子の数が最大になり、中性子検出が容易になる。高エネルギー放射線ビームは、別個の放射源、または他のエネルギー端点に放射線を生成する同じ放射源で供給することができる。
図15aは、一実施形態に従って中性子試験を行う方法1700の例である。ステップ1710で、例えば5MeVのような低エネルギー端点を有する放射線で、物体の一部が走査される。ステップ1720で、放射線は、物体との相互作用の後で検出される。ステップ1730で、9MeVのような高エネルギー端点を有する放射線で、物体の対応した部分が走査され、ステップ1740で、物体との相互作用の後で放射線が検出される。物体のこれらの部分は、各放射線端点の放射線ビームが通過した物体の部分である可能性がある。例えば、放射線ビームが扇状の形である場合、物体の各部分は、2つの放射線ビームが通過する物体の1つまたは複数のスライスである。上述の試験または他の試験の1つを行うために十分な面積を含む十分な数のピクセルが集められるまで、走査は5MeV放射線ビームと9MeV放射線ビームを繰り返す。
ステップ1744で、結果が解析される。この解析は、上で述べた試験のどれかを含むことができる。一対の対応する部分に対するHANMの識別は、中性子検出システムをオンにすべきかどうかを決めるのに必要なだけ素早く行うことができる。代わりに、上述の試験に従って所望の感度および特定性でHANMの存在を示す1つのピクセルまたはHANMの存在を示す十分な数のピクセルの存在で、中性子検出システムの活動化を引き起こすことができる。
HANMが疑われない場合、方法1700は物体の他の部分について繰り返される。
ステップ1746で、HANMが疑われる場合には、ステップ1750で中性子検出システムが活動化される。上で述べたように、中性子検出システムは、好ましくは、9MeV(この例では)端点での走査の1.0〜2.0μs後に活動化される。
それから、ステップ1760で、遅発中性子が検出されたかどうかが決定される。検出された場合には、ステップ1770で、遅発中性子の存在を示す出力が与えられる。検出されない場合には、方法1700が物体の他の部分について繰り返される。物体全体が走査された場合、遅発中性子を検出できないことを示す出力を与えることができる。
他の実施形態に従って、上述の試験および当技術分野で知られている他のものを含んだ任意の他の試験の後で、HANMまたは核物質の存在が疑われた場合には、核試験を行うことができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,524,133号に記載されているように、物体が少なくとも可能性として特定の核物質を含むかどうかを決定するために、物体の実際の中身の物質を予備的に識別するように2エネルギー比試験を行うことができる。米国特許第5,524,133号は、上でより詳細に説明した。そのような2エネルギー試験は、例えば、図15aの方法1700のステップ1744で、より詳細に行うことができる。試験はまた、たった1つのエネルギー端点で行うこともできる。最初の1つまたは複数の試験は、結果の自動的な解析および/または1つまたは複数の画像の目視解析を含むことができる。見いだされた物体が識別できない場合には、手作業検査の後で核試験を行うこともできる。
図15bは、この実施形態に従った方法1800の例である。ステップ1810で、物体の少なくとも一部に対して第1の試験が行われる。それから、ステップ1820で、核物質が少なくとも疑われるかどうかが決定される。疑われない場合には、物体の残り部分を試験する必要があれば、本方法はステップ1810に戻る。物体全体が走査された場合、核物質の存在の疑いのないことを示す出力を与えることができる。
核物質が疑われる場合には、核試験を行うために、ステップ1830で、遅発中性子を誘起するのに十分なエネルギーで物体が走査される。少なくとも5.8MeVのエネルギー端点を有する放射線ビームを使用することができる。ステップ1840で、遅発中性子の検出が確かめられる。ステップ1850で遅発中性子が検出された場合には、ステップ1860で、核物質の存在の識別を示す結果の出力が与えられる。1850で遅発中性子が検出されなかった場合には、本方法はステップ1810に戻って、物体の他の部分を走査する。物体全体が走査され、遅発中性子が検出されなかった場合には、同じく、適切な出力を与えることができる。ステップ1810の第1の試験で、十分高いエネルギーが使用される場合、ステップ1830を行うことは必要でない可能性がある。
走査システム
図16は、本発明の実施形態を実施するようにプログラムされた貨物走査システム2000の例の前面図である。移送機システム2020は、X線源2060と検出器2070の間で走査システム100を通して貨物輸送機関2040を支えかつ運ぶ。移送機システム2020は、例えば、機械的に駆動される移送機ベルト、トラック、または機械的に駆動されるローラであってもよい。X線源2060は、制動放射X線放射線の放射線ビームRを貨物輸送機関2040の方に向ける。遮蔽壁2080は、X線源2060および検出器2070を取り囲んでいる。移送機システム2020は、貨物輸送機関2040の出入りを可能にするように遮蔽壁2080の開口を通って延びている。
貨物輸送機関2040は、移送機システム2020によって遮蔽されたトンネル2100を通って運ばれる。トンネル2100は、X線源2060から貨物輸送機関2040まで、および貨物輸送機関2040から検出器アレイ2070までのX線放射線ビームRの通過を可能にするように第1の窓2110および第2の窓2120を有している。放射線ビームRが移送機システム2020を横切り、移送機システム2020がベルトまたはトラックである場合、放射線の低減衰を引き起こす物質をそのベルトまたはトラックに使用することができる。移送機システム2020がローラを備える場合、必要な場合には複数のローラの間に隙間を設けてもよい。また、窓は、必要であれば、移送機システム2020支える構造物に設けてもよい。散乱された放射線が検出器に達するのを阻止するために貨物輸送機関2040と検出器2070の間にコリメータ(図示しない)を設けてもよい。貨物輸送機関2040の一部または貨物輸送機関全体を再び調査するために、移送機システム2020を逆進させることができる。以下でさらに述べるように、例えば、貨物輸送機関2040が走査ユニット2000を通って運ばれているときに放射源2060を2つのエネルギー端点の間で素早く循環させることによって、または2つの隣接した放射源を設けることによって、複数のエネルギーを貨物輸送機関2040に照射することができる。
コリメータ2140は、X線源2060の端から延びている。コリメータ2140は、X線源2060で放射されたX線ビームを、扇状ビームまたは円錐状ビームのような所望の形状に平行化するように形作られたスロット(図示しない)を含む。このスロットは、例えば、弧θを有する縦向き扇状ビームを画定するように1度未満から約50度の範囲の、また円錐状ビームを画定するように約5度から約45度の範囲の縦向きの弧であってもよい。スロットはまた他の形であってもよい。
検出器2070は、画像プロセッサ2160に電気的に結合され、この画像プロセッサ2160は表示装置2180に結合されている。画像プロセッサ2160は、当技術分野で知られているように、アナログ・ディジタル変換部品およびディジタル処理部品を備える。コンピュータ2200のようなプロセッサは、1つまたは複数のX線源2060、検出器アレイ、移送機システム2020、画像プロセッサ2160、および表示装置2180に電気的接続され、それらの動作を制御する。プロセッサ2200と全ての部品の間の接続は図を簡単にするために示されていない。プロセッサ2200は、上述の試験のどれかまたは全てを実施するようにプログラムすることができる。プロセッサ2200は、画像プロセッサ2160の処理機能のいくらかまたは全てを行うことができる。1つのプロセッサ2200が示されているが、追加のプロセッサまたはコンピュータを設けることもまた可能である。画像プロセッサ2160、コンピュータ2200および表示装置2180は、様々に配列し接続することができる。画像プロセッサ2160は、例えば、コンピュータの一部であってもよい。コンピュータは、上述の試験のどれかまたは全てを行うように、ソフトウェアおよび/またはハードウェアでプログラムすることができる。一例では、プログラムは、例えば用途特定集積回路(ASIC)によって実施することができる。
検出器2070は、検出器アレイであってもよい。検出器2070の構成は、平行放射線ビームRの形に依存する可能性がある。例えば、放射線ビームRが扇状ビームに平行化された場合には、単一列の検出器要素を備える一次元検出器アレイを設けることができる。平行放射線ビームが非対称ピラミッド形円錐ビームのような円錐状ビームである場合、検出器アレイは、2以上の隣接した列の検出器要素を備える二次元検出器アレイであってもよい。検出器アレイは、当技術分野で知られているように、ハウジングに支持された1つまたは複数の列の検出器要素を各々備える検出器の複数のモジュールを備えてもよい。検出器または検出器アレイは、直線またはL字状であってもよい。L字状検出器アレイの水平アーム2070aが図16に透視で示されている。以下で述べる図19は、また、L字状検出器を示す。L字状検出器が図16で使用される場合には、放射源2060は下の方の垂直位置に位置付けされ、放射線ビームRは水平アーム2070aのより多くの部分を横切り、検出器2070の縦部分2070bはより短くなるだろう。
検出器2070は、当技術分野で知られているように、無機シンチレータを備えるフォトダイオード検出器アレイのような光子検出器であってもよい。例えば、タングステン酸カドミウム(CdWO4)シンチレータを使用することができる。また、カリフォルニア州パロアルトのVarian Medical Systems, Inc.から入手可能なPaXScan(商標)検出器のような非晶質シリコン(aSi)検出器を使用してもよい。
好ましくは、中性子検出器2072、2074、2076および2078が、全ての方向に等方的に放射される中性子を検出するように貨物コンテナのまわりの複数の位置に位置付けされる。中性子検出器2072は、例えば、放射源で支持してもよい。中性子検出器2074は、検出器2070で支持してもよい。中性子検出器2076は、検出器2070の上の方の部分で、またはL字状検出器の垂直アームで支持してもよい(2076を参照されたい)。中性子検出器2078は、貨物輸送機関2040の下で、移送機システム2020または走査システムのある他の部分で支持してもよい。
中性子検出器2072〜2078は、3Heで満たされた円筒形比例カウンタであってもよい。これらの検出器は、例えば、貨物輸送機関2040で使用するためにほぼ15〜25cmの有用な長さを有してもよい。一例では、カウンタは、カドミウム(Cd)層およびポリエチレン層で覆われている。カドミウムの層は、「遅い」中性子である熱中性子を吸収するために使用される。高速中性子は、3He検出器で検出される前に、ポリエチレン層で熱中性子化される。したがって、遅発中性子だけが、3He検出器で検出される。適切な中性子検出器が、例えば、コネティカット州、メリデンのCanberra Industriesから市販されている。
図17は、貨物走査システム2000aの例の一部の上面図であり、各々異なるエネルギー端点を有する放射線を生成する2つの隣接した放射線源2060a、2060bを示す。図16のシステム2000に共通な要素は、共通の番号を付けられている。移送機システム2020は、第1のX線源2060aと第1の検出器2070aの間、および第2のX線源2060bと第2の検出器2070bの間で、走査システム2000aを通過する貨物輸送機関2040を支持し、かつ運ぶ。X線源2060aおよび2060bは、放射線ビームR1、R2を貨物輸送機関2040の方に向ける。例えば、X線源2060aは、5MeVの第1のX線エネルギー端点を有する第1の放射線ビームR1を発生させることができ、X線源2060bは、9MeVの第2のエネルギー端点を有する第2の放射線ビームR2を発生させることができ、またはその逆である。X線源2060aおよび2060bは、貨物輸送機関2040に対して同じ角度で、かつ同じ水平面に位置付けされている。これらのX線源は、互いにすぐ隣接していてもよく、または互いに離れて位置していてもよい。また、これらのX線源は、他方の上に一方が位置付けされていてもよい。2つのX線源を有するシステムで、40フィートのコンテナを約30から60秒で調査することができると信じられている。
約5フィート(1.5メートル)よりも大きな幅を有する貨物輸送機関2040を調査するために、好ましくは、X線源2060a、2060bは、約1MeVよりも大きなエネルギー端点を有する放射線を発生させる。上で述べたように、例えば、5MeVおよび9MeVが使用されてもよい。約5フィート(1.5メートル)よりも大きな幅を有する貨物輸送機関用のエネルギー端点の他の例には、例えば、1MeVと9MeV、および5MeVと15MeVがある。中性子試験を行うために、エネルギー端点の1つは少なくとも5.8MeVである必要がある。X線源は、適切な1つまたは複数のレベルの加速電位を有し、例えばカリフォルニア州パロアルトのVarian Medical Systems,Inc.(「Varian」)から入手可能なLinatron(登録商標)直線加速器(「Linatron(登録商標)」)のような、直線加速器であってもよい。Varian Linatron(登録商標)では、1秒当たりに360パルスが出力される。Varian Linatron(登録商標)は、例えば、約20〜30度の開き角を有する。例えば、静電加速器、マイクロトロンおよびベータトロンのような他のX線源もまた使用することができる。1つまたは複数の放射源は、炭素12(C-12)、コバルト60(Co-60)、プルトニウム−ベリリウム(Pu-Be)、および/またはアメリシウム−ベリリウム(Am-Be)をベースにした放射源を含むことができる。約5フィート(1.5メートル)よりも小さな幅を有する物体を調査する際に、keV範囲のエネルギーを放射するX線管を使用することもできる。1MeVより下の1つのエネルギーと1MeVより上の1つのエネルギーを、そのような小さな物体に使用してもよい。例えば、600keVと5MeVを使用してもよい。また、両方のエネルギーが1MeVより下であってもよい。放射線が調査されている物体を貫通する限り、例えば、120keVと200keVを使用することができる。
例えば、米国特許第5,682,411号および米国特許第6,438,201B1号に記載されているように、また、エネルギースペクトルの高い部分と低い部分を別々に検出する単一エネルギー敏感検出器アレイを用いて、単一のエネルギー端点を有する単一X線ビームを使用することができる。これらの特許は、参照により本明細書に組み込む。これらの特許に記載されているように、交互になるラインのような検出器アレイの異なる部分が、一方または他方のエネルギーの放射線に対してより敏感であってもよい。
エネルギー端点を切り換える単一放射線源を使用することもできる。適切な放射源についての記載を、2004年10月1日に出願されたStanding Wave Particle Beam Acceleratorの米国出願第10/957,212号に見出すことができる。この出願は、本発明の譲受人に譲渡されており、また参照により本明細書に組み込まれる。本発明で使用することができる他の直線加速器が、また、米国特許第6,366,021B1号、米国特許第4,400,650号、および米国特許第4,382,208号に記載されている。これらの特許は、また、本発明の譲受人に譲渡されており、また参照により本明細書に組み込まれる。リレーのような機械的スイッチおよび固体スイッチのような他の型のスイッチを使用してエネルギーを切り換える技術は知られている。貨物輸送機関の長さ20フィート(6.1メートル)を数分で走査するために、例えば、約100ミリ秒の切換え速度を達成することができる。
他の例では、上述の技術は、トラックおよびトレーラトラックで運ばれる貨物輸送機関の実時間検査のために、移動システムで使用することができる。試験は、例えば、ハイウェイの休憩施設で行うことができる。2003年6月6日に出願された米国出願第10/455,864号(「'864出願」)に記載されているように、このシステムは、2つの伸縮式トレーラトラックを備えることができる。この出願は、本発明の譲受人に譲渡されており、また参照により本明細書に組み込まれる。'864出願に記載されている一例では、一方の伸縮式トラックは1つまたは複数のX線源を搭載している。他方の伸縮式トレーラは、X線光子検出器およびデータ解析装置を搭載している。伸縮するトレーラは、縮められた圧縮状態で検査現場まで運転され、その現場で拡大され、走査のために設定されてもよい。そして、検査すべきトラックは、トレーラの間に駐車することができる。X線源および検出器は、それぞれのトレーラの拡大された伸縮部分を端から端まで動いて貨物輸送機関を走査する。
図18は、'864出願に記載された移動走査システム2300の透視図の模式的な描写である。貨物輸送機関2302は、トラックまたはトラクタートレーラ2304で運ばれる。また、扇状ビーム2307を放射する放射源2306と、水平部分2308aおよび垂直部分2308bを備えるL字状光子検出器2308の一部とが示されている。放射源2306および検出器2308を支持する伸縮トレーラは、図を簡単にするために示されていない。1つの中性子検出器2310は放射源2306で支持され、他の中性子検出器2312は検出器2308の水平部分2308aで支持され、他の中性子検出器2314(図19に示す)は検出器の垂直部分2308bで支持されている。
図19は、図18の線19−19に沿ったシステム2300の模式的な裏面図である。共通の要素は共通の番号が付けられている。追加の中性子検出器2314が、垂直アーム2308bで支持されている。他の中性子検出器2316は、トラックまたはトレーラが駐車したときの貨物輸送機関2302の位置の下の土地Gの溝Tの中に配置することができる。'864出願に示されているように、垂直検出器2304を使用することもできる。その場合、中性子検出器2314は、例えば、垂直検出器の上に、または上近くに支持することができる。検出器2308〜2316は、上で図示しまた説明したように、上述の実施形態のどれかまたは全ての試験を実施するようにプログラムされたプロセッサまたはコンピュータに結合することができる。放射源2306は、例えば、交互になる9MeVと5MeVのX線放射線ビームを生成する単一放射源であってもよい。また、2つの放射源を積み重ねるか、または互いに隣接して配置してもよく、例えば、一方は第1のエネルギーの放射線ビームを生成し、他方は第2のエネルギーの放射線ビームを生成するためのものである。上述の試験のどれかまたは全ては、HANMおよびSNMのような核物質を自動的に検出するように使用することができる。
本発明は、禁制品のために貨物輸送機関を走査するのに特に適しているが、本発明は、同様に、空港および海港で手荷物および機内持ち込みバッグのような他の物体を走査するように容易に構成することができる。
さらに、上の例で1つまたは複数のX線源を説明したが、その1つまたは複数の放射源は、例えば時間遅延中性子ビームまたはガンマ線のような他の型の放射線を供給することができる。
上の例では、貨物輸送機関を通過したより高いエネルギーの放射線(例えば、9MeV)の透過を、貨物輸送機関を通過したより低いエネルギーの放射線(例えば、5MeV)の透過で割って、TRを与え、可能性のあるHANMの試験基準は、TRが閾値よりも小さいことであった。しかし、上で言及したように、より低いエネルギーの放射線の透過をより高いエネルギーの放射線の透過で割ってもよく、この場合には、上の全ての例で、閾値より上のTRが、可能性のあるHANMであると見なされるだろう。さらに、TRは、2つのエネルギー端点での放射線透過の代わりに、放射線減衰に基づいて計算することができる。
以下の特許請求の範囲で定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなしに、本明細書で説明した実施形態に他の変更を加えることができることを、当業者は認めるであろう。
図1aは様々な物質について、9MeVおよび5MeVの透過放射線の測定値を9MeVの透過放射線の関数として示すグラフである。 図1bは鉛片に隣接した鉄片を通過した9MeVの透過放射線の5MeVの透過放射に対する比を示す表面プロットである。 図1cは識別された物質を通過した9MeVと5MeVの透過放射線のシミュレートされた測定値の比を、9MeVの透過放射線の関数として示す5つの曲線である。 貨物輸送機関のX線画像の一部の例を示す模式図である。 貨物輸送機関の一部を透過した9MeVのX線放射線の値のアレイの例を、複数のピクセルについて示す図である。 図2の貨物輸送機関の一部を透過した5MeVのX線放射線の値のアレイの例を、複数のピクセルについて示す図である。 本発明の実施形態に従って、図3および4の測定されたX線放射線に基づいた合成ピクセルのグループの透過比(TR)のアレイの例を示す図である。 図6aは本発明の実施形態で使用するためにTRを計算する方法の例を示す流れ図である。 図6bは画像の高密度領域を通過した検出放射線を背景の分だけ調整する方法の例を示す流れ図である。 本発明の実施形態で、様々な大きさの調査窓および様々な標準偏差に関して10,000分の1の誤警報率を達成するために必要な低TRピクセルの最小数を示す棒グラフである。 図7の実施形態に従った「調査窓試験」の例を示す流れ図である。 本発明の実施形態に従って、検査の出力を作業者に与える方法の例を示す流れ図である。 本発明の他の実施形態に従った「接触試験」の例を示す流れ図である。 本発明の実施形態で使用するための、貨物コンテナの一部を表すピクセルのグループのTRのアレイの例を示す図である。 図11の実施形態に従って、「マトリックス試験」の例を示す流れ図である。 本発明の実施形態に従った閾値を計算する方法の例を示す流れ図である。 本発明の他の実施形態に従った、貨物輸送機関の中身に基づいて閾値を選択する方法の例を示す流れ図である。 図15aは本発明の他の実施形態に従った、核物質の存在を求めて物体を調査する方法の例を示す図である。 図15bは本発明の他の実施形態に従った、核物質の存在を求めて物体を調査する他の方法の例を示す図である。 本発明の実施形態を実施するようにプログラムされた貨物走査システムを示す前面図である。 図15のシステムと同様な貨物走査システムの一部を示す上面図であり、2つの隣接したX線放射線源を示す。 本発明の実施形態を実施することができる他のX線走査システムを示す模式的な透視図である。 図18のシステムを示す裏面図である。

Claims (24)

  1. 物体を調査する方法であって、
    異なる第1および第2の放射線エネルギーで物体の少なくとも一部を走査することと、
    前記第1および第2の放射線エネルギーの放射線を前記物体の少なくとも一部との相互作用の後で検出することと、
    前記第1および第2のエネルギーで検出された前記放射線の関数を計算することと、
    前記関数に少なくとも部分的に基づいて前記物体が所定の原子番号よりも大きな原子番号を有する高原子番号物質を少なくとも可能性として含むかどうかを決定することとを含む方法。
  2. 前記関数は比であって、
    前記第1の放射線エネルギーで検出された前記放射線の関数と前記第2の放射線エネルギーで検出された放射線の関数との比を計算することを含む請求項1に記載の方法。
  3. 前記物体が高原子番号物質を含むかどうかを、
    前記第1の関数を、前記所定の原子番号に少なくとも部分的に基づいた第2の関数と比較して決定することを含む請求項1に記載の方法。
  4. 前記第2の関数は、閾値を定義し、
    前記第1の関数を前記閾値と比較することを含む請求項1に記載の方法。
  5. 前記第2の関数は前記第1の関数と同じであって、さらに、
    前記第1および第2の放射線エネルギーで前記所定の原子番号に等しい原子番号を有する試験物質を走査した後で検出された放射線に少なくとも部分的に基づいて前記第2の関数を計算することを含む請求項4に記載の方法。
  6. 前記第2の関数は閾値であって、
    試験物質との相互作用の後、前記第1および第2の放射線で検出された前記放射線の比を計算することにより前記閾値を計算することを含む請求項5に記載の方法。
  7. さらに、
    前記物体の対応する部分について、前記第1および第2のエネルギーで検出された前記放射線の前記関数を計算することを含む請求項1に記載の方法。
  8. 前物体の対応する部分は、少なくとも半分だけ重なる請求項7に記載の方法。
  9. さらに、
    前記物体を透過した後で前記第1および第2の放射線エネルギーの放射線を検出することを含む請求項1に記載の方法。
  10. 物体を調査する方法であって、
    物体の第1の複数の部分を第1のエネルギーの第1の放射線ビームで走査することと、
    第1の放射線を前記第1の放射線ビームと前記第1の複数の部分との相互作用の後で検出することと、
    前記物体の第2の複数の部分を前記第1のエネルギーと異なる第2のエネルギーの第2の放射線ビームで走査することと、
    第2の放射線を前記第2の放射線ビームと前記第2の複数の部分との相互作用の後で検出することと、
    前記第1の放射線と前記第2の放射線の関数の比を、対応する第1および第2の部分について、計算することと、
    各比と閾値との比較に少なくとも部分的に基づいて、前記物体の中身が所定の原子番号よりも大きな原子番号を有する高原子番号物質を少なくとも可能性として含むかどうかを決定することとを含む方法。
  11. さらに、
    少なくとも部分的に、
    前記所定の原子番号に等しい原子番号を有する物質を含む第2の物体の少なくとも一部を前記第1のエネルギーの第3の放射線で走査し、
    第3の放射線を前記第3の放射線ビームと前記第2の物体の少なくとも一部との相互作用の後で検出し、
    前記第2の物体の少なくとも一部を第2のエネルギーの第4の放射線ビームで走査し、
    第4の放射線を前記第4の放射線ビームと前記第2の物体の少なくとも一部との相互作用の後で検出し、
    前記第3の放射線と前記第4の放射線の関数の第2の比を計算することにより閾値を計算することを含む請求項10に記載の方法。
  12. 前記第2の物体の少なくとも一部を走査することは、
    ウランの原子番号よりも小さい原子番号を有する物質を含む第2の物体の少なくとも一部を走査することを含む請求項11に記載の方法。
  13. 鉛の原子番号よりも小さい原子番号を有する物質を含む第2の物体の少なくとも一部を走査することを含む請求項12に記載の方法。
  14. 鉄、銅、およびニッケルからなる群から選ばれた第2の物体の少なくとも一部を走査することを含む請求項13に記載の方法。
  15. さらに、
    標準偏差の整数または非整数であってもよい所定の数を前記第2の比から減算することにより前記閾値を計算することを含む請求項11に記載の方法。
  16. 前記第1のエネルギーは、前記第2のエネルギーよりも大きく、
    前記比を計算することは、前記第1の放射線を前記第2の放射線で除算することと、
    前記物体の前記複数の対応する部分のうちの少なくとも1つが高原子番号物質を含むかどうかを、各対応する部分に対する前記比が前記閾値よりも小さい場合に決定することとを含む請求項10に記載の方法。
  17. さらに、
    前記第1の放射線と前記第2の放射線のうちの少なくとも一方で検出された放射線に基づいて閾値を選択することを含む請求項10に記載の方法。
  18. 物体を調査するシステムであって、
    異なる第1および第2の放射線エネルギーで物体の少なくとも一部を走査する手段と、
    前記物体との相互作用の後で前記第1および第2の放射線エネルギーの放射線を検出する手段と、
    前記第1および第2のエネルギーで検出された前記放射線の関数を計算する手段と、
    前記関数に少なくとも部分的に基づいて前記物体が所定の原子番号よりも大きな原子番号を有する高原子番号物質を少なくとも可能性として含むかどうかを決定する手段とを備えるシステム。
  19. 物体を調査するシステムであって、
    第1の放射線エネルギーは第2の放射線エネルギーと異なる前記第1および第2の放射線エネルギーで、物体の少なくとも一部を走査するための少なくとも1つの放射線源と、
    前記物体との相互作用の後で前記第1および第2の放射線エネルギーの放射線を検出するように位置付けされている少なくとも1つの検出器と、
    前記検出器に結合された少なくとも1つのプロセッサであって、
    前記第1および第2のエネルギーで検出された前記放射線の関数を計算し、
    前記関数に少なくとも部分的に基づいて前記物体が所定の原子番号よりも大きな原子番号を有する高原子番号物質を少なくとも可能性として含むかどうかを決定するようにプログラムされている少なくとも1つのプロセッサとを備えるシステム。
  20. 前記プロセッサは、
    前記第1および第2のエネルギーで検出された前記放射線の関数の比を計算するようにプログラムされている請求項19に記載のシステム。
  21. 前記プロセッサは、
    前記第1の関数を、前記所定の原子番号に少なくとも部分的に基づいた第2の関数と比較するようにプログラムされている請求項19に記載のシステム。
  22. 前記プロセッサは、少なくとも部分的に、
    それぞれ前記第1および第2の放射線エネルギーにより前記所定の原子番号に等しい原子番号を有する物質を走査した後で検出される第3および第4の放射線に基づいて前記第2の関数を計算するようにプログラムされている請求項21に記載のシステム。
  23. 前記プロセッサは、さらに、
    前記物体の複数の対応する部分について前記第1および第2の放射線の前記関数を計算し、
    前記関数に少なくとも部分的に基づいて前記物体が所定の原子番号よりも大きな原子番号を有する高原子番号物質を少なくとも可能性として含むかどうかを決定するようにプログラムされている請求項19に記載のシステム。
  24. 前記検出器は、前記物体を透過した放射線を検出するように位置付けされている請求項19に記載のシステム。
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