本発明は概して治療剤および/または診断/治験剤の送達を達成するための組成物および方法に向けられる。
関連技術の背景
脳は潜在的に有害な物質から血液脳関門(BBB:blood-brain barrier)によって防護されている。血液と脳の間の微小血管関門は、基底膜および強固に会合したアクセサリー細胞(周皮細胞、アストロサイト)によって取り囲まれた毛細管内皮層で構成されている。脳毛細管内皮は、隣り合った細胞の膜間に存在する強固に会合した頂端部バンド(タイトジャンクションという)により、低分子量溶質に対する透過性が他の毛細管内皮よりもはるかに低い。受動拡散が減少しているだけでなく、脳毛細管内皮が示す液相ピノサイトーシスも、他の内皮細胞より少ない。脳毛細管は、他の器官の毛細管と比較して、窓が少なく、エンドサイトーシス小胞も少ない(Pardridge,J.Neurovirol.5:556-569,1999参照)。受容体介在性エンドサイトーシスによって取り込まれるトランスフェリン、ラクトフェリンおよび低密度リポタンパク質などの一部のタンパク質を除くと、大きい親水性分子がBBBを横切ることはほとんどない(Pardridge,J.Neurovirol.5:556-569,1999、TsujiおよびTamai,Adv.Drug Deliv.Rev.36:277-290(1999)、KusuharaおよびSugiyama,Drug Discov.Today 6:150-156(2001)、Dehouck et al.,J.Cell.Biol.138:877-889(1997)、Fillebeen et al.,J.Biol.Chem.274:7011-7017,1999参照)。
血液脳関門(BBB)は、有益な活性剤(active agent)(例えば治療薬および診断剤)の中枢神経系(CNS:central nervous system)組織へのアクセスも妨害するので、それらを通過させるには担体の使用が必要になる。血液脳関門の透過性は、CNSへの薬物またはペプチドの浸透にとって、しばしば律速因子になる(Pardridge,J.Neurovirol.5:556-569,1999、Bickel et al.,Adv.Drug Deliv.Rev.46:247-279,2001参照)。例えばリソソーム蓄積症(LSD)の神経症状発現の管理は、治療酵素が脳細胞リソソームにアクセスできないことによって、かなり妨害される。LSDは、細胞リソソーム内の特定酵素の活性が存在しないか、低下していて、その結果、分解されない「蓄積物質」が細胞内リソソーム中に蓄積し、リソソームの膨張および機能不全が起こり、最終的には細胞損傷および組織損傷が起こることを特徴とする。静脈内酵素補充療法(ERT:enzyme replacement therapy)はLSD(例えばMPS I、MPS II)にとって有益である。しかし、BBBは血液から脳への多くの薬剤の自由な移動を阻止し、重大な神経学的続発症(例えばMPS III、MLD、およびGM1)を呈するLSDが、静脈内ERTに応答するとは思えない。そのような疾患には、BBBを横切って患部細胞のリソソーム中に補充酵素を送達する方法が、きわめて望ましいだろう。
投与された活性剤の脳への送達を増進するためにBBBを回避する3つの方法として、直接的頭蓋内注射、BBBの一時的な透過化(permeabilization)、および活性剤の修飾による組織分布の改変が挙げられる。脳組織への活性剤の直接注射は血管系を完全に迂回するものであるが、主として、頭蓋内注射が招く合併症(感染、組織損傷)の危険および投与部位からの活性剤の不十分な拡散という欠点がある。BBBの透過化は静脈内活性剤の注射と同時にBBBを非特異的に損なう必要があり、これは高浸透圧ショック(例えば静脈内マンニトール)でタイトジャンクションを緩めることによって達成される。高血漿オスモル濃度は、タイトジャンクションの部分的崩壊を伴う毛細管内皮の脱水、これらの条件下で脳にアクセスする血液媒介物質のタイプに関する選択性の低下、および生涯にわたる処置レジメンによる損傷をもたらす。
脳への活性剤の分布は、一定のタンパク質をBBBの管内腔(血液側)から管外腔(脳側)に輸送する能動輸送であるトランスサイトーシスによっても増加しうる。トランスサイトーシス経路は、毛細管内皮細胞における他の小胞輸送とは異なり、通過は、輸送される物質の改変を伴わずに起こりうる。トランスサイトーシスは、BBB内皮表面上の受容体によって媒介される細胞タイプ特異的過程である。トランスサイトーシスされるタンパク質(ベクターまたは担体)に活性剤を取り付けると、脳への活性物質の分布が増加すると予想される。トランスサイトーシスにおいて、ベクターは、接合されたペアの分布に対して、優勢な影響を持つと推定される。ベクタータンパク質としては、脳毛細管内皮上の受容体に対する抗体(Pardridge,J.Neurovirol.5:556-569,1999)およびそのような受容体に対するリガンド(Fukuta et al.,Pharm Res.,11(12):1681-8;1994、Broadwell et al.,Exp Neurol.,142(1):47-65 1996)が挙げられる。抗体ベクターは吸着性エンドサイトーシス(非特異的膜相エンドサイトーシス)の過程によって毛細管内皮越しに輸送され、飽和可能なエネルギー依存的機序によってBBBを横切る現実の受容体リガンドと比べると、その輸送効率ははるかに低い(Broadwell et al.,Exp Neurol.,142(1):47-65 1996)。
リポタンパク質受容体関連タンパク質(LRP)受容体ファミリーは、LDL受容体に対して相同性を有する一群の膜貫通エンドサイトーシスタンパク質である。リポタンパク質代謝において重要な役割を果たすと特徴づけられたLRPは、その後、血中に存在する様々なリガンドを結合することが示されている(HerzおよびStrickland,J Clin Invest.,108(6):779-84,2001)。LRPリガンドとしては、リポタンパク質関連タンパク質であるApoE、ApoJおよびリポタンパク質リパーゼ;プロテイナーゼであるtPA、uPA、第IX因子およびMMP−9;プロテイナーゼ阻害物質であるPAI−1、アンチトロンビンIII、アルファ−2−マクログロブリンおよびアルファ−アンチトリプシン;抗細菌タンパク質であるラクトフェリン;シャペロンである受容体関連タンパク質(RAP)、ホルモンであるチロトロピン、補因子であるコバラミン、ならびにリソソームタンパク質であるサポシンおよびスフィンゴ脂質活性化タンパク質が挙げられる。これらのリガンドのうちの4つ、すなわちApoJ(Zlokovic et al.,Proc.Nat'l Acad.Sci.,USA 93(9):4229-34 1996、Zlokovic,Life Sci.,59(18):1483-97,1996)、チロトロピン(Marino et al.,J.Biol.Chem.,275(10):7125-37 2000、Marino et al.,J.Biol.Chem.,274(18):12898-904,1999)、リポタンパク質リパーゼ(Obunike et al.,J.Biol.Chem.,276(12):8934-41,2001)およびコバラミン(Ramanujam et al.,Arch Biochem Biophys.,315(1):8-15,1994)は、LRPファミリーメンバーにより、インビトロおよびインビボで、毛細管内皮細胞を横切ってトランスサイトーシスされることが示されている。
総合すると、LRP受容体ファミリーは、毛細管内皮、ニューロンおよびアストロサイトを含む様々な組織において様々なレベルで発現される構成的および機能的に関連する受容体のプールを含む。LRPファミリーメンバーは、極性上皮を横切ってリガンドをトランスサイトーシスすることも示されているプロフェッショナルエンドサイトーシス受容体である。
ユニークなLRPリガンドは、小胞体およびゴルジに局在化している39kDシャペロン、受容体関連タンパク質RAPである(BuおよびSchwartz,Trends Cell.Biol.8(7):272-6,1998)。RAPはこれらのコンパートメントにおいてLRPに強固に結合し、受容体が同時発現したリガンドと時期尚早に会合するのを防止する(HerzおよびWillnow,Atherosclerosis 118 Suppl:S37-41,1995)。RAPは、LRP受容体ファミリーの全てのメンバーに対して高い親和性を持ち(約2nM)、あらゆる既知LRPリガンドに打ち勝つことができるので、LRP用の魅力的なターゲティング配列として役立つ。RAPは分泌されないので、血中の内因性レベルは低い。LRPによるRAPのエンドサイトーシスは、リソソームへの局在化と、タンパク質の完全な分解をもたらす。構造機能研究がRAPで行なわれて、ターゲティング機能を実現させるために必要な配列の極小化に関するいくつかの指針が得られている(Melman et al.,J.Biol.Chem.276(31):29338-46,2001)。RAPがトランスサイトーシスされるかどうかはわからないが、メガリン−RAP複合体は後期エンドソームまでは完全なままであることが示されている(Czekay et al.,Mol.Biol.Cell.8(3):517-32,1997)。メガリン−RAP複合体がCURL(Compartmant of Uncoupling Ligand from Receptor)を経てこの後期エンドソームコンパートメントまで完全であることは、初期エンドソームで観察される他のLRP−リガンド複合体の不安定性とは対照的である。したがってLRP−RAP複合体は、トランスサイトーシス適性の潜在的指標である酸依存的な解離に対する耐性が高まっているようである。RAPは、LRPファミリーの特定のメンバーに対する特異性が増すように操作することができるだろう。そのような修飾によって、当該組織での様々なLRPファミリーメンバーの発現によって決定される特定組織へのRAP融合物のターゲティングを、より選択的にすることができるだろう。
さらにRAPは、リソソーム酵素上のマンノース−6−リン酸ターゲティングシグナルの好適な代替物になりうる。LRP−RAP系はマンノース−6−リン酸受容体(MPR)−マンノース−6−リン酸(M6P)系と多くの特徴を共有している。すなわち、受容体−リガンド複合体LRP−RAPおよびMPR−M6Pはどちらも1〜2nM領域の解離定数を示し、CURL中で安定である。LRPおよびMPRはどちらも、様々な組織上に広く発現され、結合したリガンドを効率よくリソソームに輸送する。どちらのリガンドタイプも、リソソームに到達すると分解される。M6Pターゲティングに対するRAPターゲティングの利点は、それが修飾糖質よりもタンパク質配列に依存することである。生合成の処理量および品質管理はアミノ酸配列の方が修飾オリゴ糖よりもはるかに高度であり、より良い薬物収量、効力および安全性が可能である。LRP−RAP系は、他の組織を効率よくターゲティングする方法にもなりうる。例えば、LRPファミリーのメンバーである超低密度リポタンパク質受容体(VLDLR)ならびにLRP1が筋細胞上に高密度に存在することは、RAP融合物がLRP受容体依存的エンドサイトーシスによって筋肉にかなり取り込まれうることを暗示している(Takahashi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89(19):9252-6,1992)。
しかし、脳および他の生物学的コンパートメントに活性剤をより効果的に送達することができる新規化合物、薬学的組成物、ならびにそのような化合物および組成物の投与方法は、今なお必要とされている。特に、タイトジャンクションによって密封された毛細管内皮細胞によって血液コンパートメントから仕切られている脳および組織または器官に活性剤を送達する、そのような新規化合物、薬学的組成物、および投与方法が必要とされている。特に、多種多様な組織への活性剤の送達を効率よくターゲティングする、そのような新規化合物、薬学的組成物、および投与方法が必要とされている。特に、上記組織内の細胞のリソソームコンパートメントへの活性剤の送達をターゲティングする、そのような新規化合物、薬学的組成物、および投与方法が必要とされている。本発明は、そのような化合物、薬学的組成物およびそれらの使用方法を提供する。
発明の概要
本発明は、トランスサイトーシスによって活性剤を送達するための担体またはベクターとしてメガリンリガンドを使用することができるという発見に関する。そのようなリガンドの典型例はRAPであり、これは、血液脳関門を横切る治療剤および/または診断/治験剤の輸送を増加させ、かつ/またはCNS内およびCNS外の細胞のリソソームに薬剤を送達するのに役立つ。
一態様として、本発明は、治療剤および/または診断/治験剤にコンジュゲートされたメガリンリガンドまたはメガリンリガンドのメガリン結合性断片を含む化合物、ならびにそのような化合物の薬学的組成物を提供する。一部の実施形態では、メガリンリガンドまたはそのようなリガンドのメガリン結合性断片を、その安定性または薬物動態特性を高める目的で、要望どおりに修飾することができる(例えばコンジュゲートのRAP部分のPEG化、コンジュゲートのRAP部分の突然変異誘発)。
本願では、特に、関心対象の薬剤にコンジュゲートされたメガリン結合部分を含む化合物が考えられる。薬剤は、通例、治療剤、診断剤、中枢神経系(CNS)疾患のマーカー、CNS障害のマーカーを結合する標識モノクローナル抗体からなる群より選択することができる。ここで考えられる化合物に役立つ治療剤には、例えばタンパク質、細胞毒性化学療法剤、タンパク質核酸、siRNA分子、アンチセンス分子、および関心対象の治療タンパク質をコードする核酸を含む発現コンストラクトなどがあるが、これらに限定されるわけではない。メガリン結合部分と関心対象の薬剤は互いに直接連結するか、あるいは例えばペプチドリンカーなどのリンカーを介して連結することができる。好ましくは、メガリン結合部分は、インビボでトランスサイトーシスされる部分である。そのような部分の典型例には、例えばRAP、チログロブリン、リポタンパク質リパーゼ、ラクトフェリン、アポリポタンパク質J/クラスタリン、アポリポタンパク質B、アポリポタンパク質E、組織型プラスミノゲン活性化因子、uPA、PAI−1、ビタミンD結合タンパク質、ビタミンA/レチノール結合タンパク質、β2−ミクログロビン、α1−ミクログロブリン、ビタミンB12/コバラミン血漿担体タンパク質、トランスコバラミン(TC)−B12、PTH、インスリン、EGF、プロラクチン、アルブミン、apoH、トランスサイレチン、リゾチーム、シトクロム−c、α−アミラーゼ、およびCa2+、およびアプロチニンなどがあるが、これらに限定されるわけではない。化合物は、任意選択的に、ApoJを除外してもよい。
本発明では、血液脳関門を横切って脳内に経細胞的(transcytotic)に送達するためのキメラ分子であって、トランスサイトーシスによって血液脳関門を横切って送達されるべき活性剤にコンジュゲートされたメガリンリガンドを含み、そのメガリンリガンドが血液脳関門を横切るキメラ分子の輸送を容易にする、キメラ分子が考えられる。また、血液脳関門を横切るトランスサイトーシスによって脳内に送達するためのキメラ分子であって、トランスサイトーシスによって血液脳関門を横切って送達されるべき活性剤にコンジュゲートされたLRPリガンドを含み、そのメガリンリガンドが、LRP1と比較してメガリンに優先的に結合する、キメラ分子も考えられる。ここで考えられる化合物またはキメラ分子はいずれも、薬学的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤中に当該化合物またはキメラ分子を含む薬学的組成物として製造することができる。
特定の実施形態では、薬剤が、メガリンリガンドまたはそのメガリン結合性断片に共有結合された生物活性タンパク質またはペプチドである。そのようなコンジュゲートまたはキメラ分子は、合成化学反応によって形成させるか、リンカー基によって接合することができる。好ましい実施形態では、活性剤がタンパク質または酵素である場合に、そのタンパク質または酵素は、ヒトタンパク質もしくはヒト酵素、ネイティブタンパク質もしくはネイティブ酵素の生物学的活性を持つヒトタンパク質もしくはヒト酵素の断片、またはヒトタンパク質もしくはヒト酵素と実質的なアミノ酸配列相同性を持つポリペプチドである。一部の実施形態では、薬剤が、ヒトもしくは哺乳類配列、ヒトもしくは哺乳類起源、またはヒトもしくは哺乳類由来のタンパク質であり、一定の態様では、そのタンパク質がメガリンリガンドまたはそのようなリガンドのメガリン結合性断片と融合タンパク質を形成する。融合タンパク質の活性剤ポリペプチド部分は、成長因子、リンホカインまたはペプチド薬物などの治療活性を持つ物質であることができる。薬剤は、酵素または他の生物活性タンパク質もしくは生物活性ポリペプチドであることができる。他の実施形態では、薬剤は、その欠乏がポンペ病などのヒト疾患を引き起こす酵素またはタンパク質(例えばアルファ−グルコシダーゼ)である。他の実施形態では、酵素が、その薬効によって選択される。他の実施形態では、担体と、活性剤を取り付けた抗体との間の非共有結合によって、コンジュゲートが形成される。
メガリンリガンドも、ヒトもしくは哺乳類配列、ヒトもしくは哺乳類起源、またはヒトもしくは哺乳類由来のものであることができる。好ましい実施形態では、メガリンリガンドが、RAP、チログロブリン、リポタンパク質リパーゼ、ラクトフェリン、アポリポタンパク質J/クラスタリン、アポリポタンパク質B、アポリポタンパク質E、組織型プラスミノゲン活性化因子、uPA、PAI−1、ビタミンD結合タンパク質、ビタミンA/レチノール結合タンパク質、β2−ミクログロビン、α1−ミクログロブリン、ビタミンB12/コバラミン血漿担体タンパク質、トランスコバラミン(TC)−B12、PTH、インスリン、EGF、プロラクチン、アルブミン、apoH、トランスサイレチン、リゾチーム、シトクロム−c、α−アミラーゼ、およびアプロチニンからなる群より選択される。
本発明のさらに別の実施形態では、その態様のそれぞれにおいて、上記メガリンリガンドがいずれも、ヒトまたは哺乳類供給源から得られる与えられたリガンドのアミノ酸配列と同一である。別の実施形態では、メガリンリガンドがヒトまたは哺乳動物から得られるネイティブタンパク質である。別の実施形態では、RAPまたはRAPポリペプチドが、ネイティブタンパク質に対して、少なくとも25、50、100、150、もしくは200アミノ酸の長さにわたって、またはメガリンリガンドの全長にわたって、実質的に相同(すなわち、アミノ酸配列が少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一)である。
好ましい実施形態では、メガリンリガンドがRAPまたはRAPのメガリン結合性断片である。別の実施形態では、コンジュゲートを投与されるべき対象がヒトである。
さらにもう一つの態様として、本発明は、治療剤および/または診断/治験剤を中枢神経系に送達する方法であって、タイトジャンクションによって密封された毛細管内皮細胞によって形成されるBBBを横切ってそのような薬剤を輸送するために、メガリンリガンド/メガリン受容体担体系を使用する方法を提供する。これにより、本発明は、中枢神経系内に作用部位を持つ薬剤を投与する新規経路を提供する。さらにもう一つの実施形態では、メガリンの調整物質が、そのようなコンジュゲートの治療作用または有害作用を調整するために同時投与される。
本発明では、薬剤を動物の中枢神経系に送達する方法であって、メガリン結合部分にコンジュゲートされた薬剤を動物に投与することを含み、動物の血液脳関門を横切って起こるメガリン結合部分にコンジュゲートされた薬剤の輸送が、メガリン結合部分へのコンジュゲーションが存在しない場合の薬剤の輸送よりも多い方法が考えられる。薬剤のトランスサイトーシスを増加させる方法であって、薬剤をメガリン結合部分にコンジュゲートすることを含み、メガリン結合部分にコンジュゲートした場合に、薬剤のトランスサイトーシスが、コンジュゲーションが存在しない場合の薬剤のトランスサイトーシスよりも多い方法も考えられる。また本発明では、哺乳動物における障害を処置する方法であって、その動物に、メガリン結合部分にコンジュゲートされた治療剤を投与することを含む方法も考えられる。本発明の方法では、メガリン結合部分が、通例、送達される治療剤のトランスサイトーシスを改善する。本発明のもう一つの方法は、治療酵素を、メガリンを発現させる細胞中のリソソームコンパートメントに送達する方法であって、細胞を、メガリン結合部分にコンジュゲートされた治療酵素を含む組成物と接触させることを含み、その細胞のリソソームコンパートメントへの治療酵素の取り込みは、その細胞の表面上に存在するメガリンによって媒介される。
一部の実施形態では、メガリンリガンドと活性剤とを含むコンジュゲートキメラ分子が、単一のメガリンリガンドに連結された、1個を越える、同じ状態または障害を処置するのに有用な治療活性剤を含む。一部の実施形態では、約1〜約5分子または約2〜10分子の活性剤が、その疾患、状態または障害を持つ患者に投与される1つのメガリンリガンド分子に取り付けられる。
もう一つの態様として、本発明は、疾患、障害、または状態の処置においてメガリン受容体に基づく送達を用いる方法を提供する。一群の実施形態では、活性剤とメガリンリガンドとのコンジュゲートを使って、CNSの状態または障害を処置することができる。特に好ましい実施形態の一群では、処置すべきCNSの状態または障害が、脳腫瘍または他の新形成(例えば膠芽腫などのCNS腫瘍)である。そのような腫瘍および新形成は原発腫瘍であってもよいし、転移巣であってもよい。これらの実施形態では、本発明の化合物は、癌化学療法剤にコンジュゲートされたメガリンリガンドまたはそのようなリガンドのメガリン結合性断片を含みうる。好ましい化合物は、各メガリンリガンド部分に共有結合された約1〜約20分子の化学療法剤を持つ。そのような化合物は、脳腫瘍および脳内または脳周辺に局在化した他の新形成への化学療法剤の送達を増進するための、そしてそのような腫瘍および新形成の処置を改善するための、優れたビヒクルである。一部の実施形態では、1つのメガリンリガンドポリペプチドにコンジュゲートされている癌化学療法剤が、同じであっても、異なっていてもよい。例えば1〜3個の異なる化学療法剤を、そのようなキメラ化合物のメガリンリガンドまたはメガリン結合性断片に対して、同じまたは異なる活性剤1モルあたりのメガリンリガンドポリペプチドモル数の比(例えば1:1、1:2、1:3、1:4、および1:5〜1:10)で、取り付けることができる。
そのようなコンジュゲートにとって好ましい化学療法剤は細胞毒性化学療法剤であり、例えばアドリアマイシン、シスプラチン、5−フルオロウラシル、カンプトテシン、およびパクリタキセルなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。もう一つの実施形態として、本発明は、脳腫瘍またはCNS腫瘍または膠芽腫を持つ患者を、その患者に治療有効量の、化学療法剤にコンジュゲートされたメガリンリガンドを投与することによって処置する方法を提供する。もう一つの実施形態として、本発明は、関心対象の化合物を対象の血液脳関門越しに脳実質中に送達する方法であって、化合物が腫瘍細胞の分裂を妨害する能力を持つ化学療法剤であり、分裂細胞にとって毒性である方法を提供する。これらの化合物は、ベクターの分解後にリソソーム内で遊離し、リソソーム膜越しに拡散して、核に入ることができる。
別の一群の実施形態では、本発明は、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、および筋萎縮性側索硬化症など(ただしこれらに限定されるわけではない)の神経および精神疾患ならびにCNSの疾患、障害および状態を処置するための化合物、薬学的組成物、および方法を提供する。一部の実施形態では、本発明の化合物は、そのような疾患、障害および状態を処置するための治療剤にコンジュゲートされたメガリンリガンドポリペプチドを含む。好ましい一群の実施形態では、治療剤が、例えば神経成長因子、他のペプチドホルモンもしくは成長因子、およびペプチド神経伝達物質など(ただしこれらに限定されるわけではない)のペプチドである。もう一つの実施形態では、本発明は、対象の血液脳関門越しに脳実質中に活性剤を送達する方法であって、活性剤が例えば神経成長因子、脳由来神経栄養因子、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4/5、aFGF、bFGF、CNTF、白血病阻害因子、カルジオトロフィン−1、TGFb、BMP類、GDF類、ニュールツリン、アルテミン、パーセフィン、EGF、TGFa、ニューレグリン類、IGF−1、IGF−2、ADNFおよびPDGF類など(ただしこれらに限定されるわけではない)の神経栄養因子である方法を提供する。カスパーゼ阻害剤などの他の因子も、化合物の活性剤構成要素としてコンジュゲートすることができる。他の実施形態では、活性剤が、CNSの構成成分に対する治療抗体である。別の実施形態では、活性剤が、CNS感染を処置もしくは防止するための抗微生物剤またはリンホカインなどの免疫調整物質である。
一部の実施形態では、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、統合失調症、およびてんかんなどの状態;神経膠腫、髄膜腫、神経鞘腫、下垂体腺腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、血管腫、類表皮腫、肉腫および他の腫瘍源からの頭蓋内転移を含む原発性脳腫瘍などの神経癌、ならびに神経感染症または神経炎症状態からなる群より選択される疾患または状態を処置するために、メガリンリガンド(またはそのメガリン結合性断片、例えばRAPまたはRAPのメガリン結合性断片)と活性剤とのコンジュゲートであるキメラ分子を投与する。
脳の他の疾患も処置することができる。脳の疾患は2つのカテゴリーに大別される。すなわち(a)感染、外傷および新生物などの病的過程と、(b)ミエリンの疾患およびニューロンの変性を含む、神経系に特有の疾患である。ニューロン生存の減少によって生じる脳関連変性疾患には、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、虚血関連疾患および脳卒中、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症、小脳変性症などがある。脱髄性疾患には多発性硬化症(MS)およびその変形ならびに静脈周囲脳炎が包含される。主要病変は原発性脱髄であるが、通常は他のカテゴリーに分類される他の疾患としては、白質ジストロフィー、例えばアリールスルファターゼAの欠乏による異染性白質ジストロフィー、ガラクトセレブロシドβ−ガラクトシダーゼの欠乏によるクラッベ病、副腎白質ジストロフィーおよび副腎脊髄神経障害、ならびに進行性多巣性白質脳症、急性散在性脳脊髄炎、急性壊死性出血性白質脳炎などのウイルス感染後疾患が挙げられる。また、ミトコンドリア脳筋症もある。本発明のコンジュゲートはそのような疾患の処置に使用することができると考えられる。
さらに別の態様として、本発明のメガリンリガンドコンジュゲートは、非CNS(すなわちBBBで分界されていない疾患、例えば非CNS器官の癌、疾患および状態)を処置するために使用することができる。例えば、コンジュゲート薬剤は、患者の筋肉を冒す状態を処置するために使用することができる。
別の態様として、本発明は、他の組織または器官と比較して比率的に多量の、好ましくは2倍を超える量のメガリン受容体をその細胞上に有する組織または器官を処置する方法を提供する。さらに別の態様として、本発明は、他の組織または器官と比較して比率的に多量の、好ましくは2倍を超える量のLRP受容体をその細胞上に有する組織または器官を処置する方法を提供する。メガリンリガンドコンジュゲート活性剤の選択的生体内分布は、そのようなコンジュゲート薬剤の特定器官への選択的ターゲティングを増進することができる。
さらなる一態様として、本発明は、疾患、障害、または状態の診断にRAP/メガリン担体系を使用する方法を提供する。本明細書ではメガリンが好ましいRAP結合受容体であることを教示するが、他の受容体、例えばLRPも使用することができ、RAP/LRP担体系は疾患、障害または状態の診断に使用しうると考えられる。本発明は、CNSの疾患または障害を防止、改善、または処置することができるメガリンリガンド(例えばRAP)のコンジュゲートを、そのような薬剤のトランスサイトーシスをインビトロモデルで測定することによって、またはそのようなコンジュゲートの脳実質に到達もしくは結合する能力をインビボで測定することによって、同定または選択するためのスクリーニングアッセイを提供する。トランスサイトーシスまたは送達は、コンジュゲートを標識した後、そのラベルの位置または輸送を、インビトロ法の場合は試験チャンバで、インビボ法では組織コンパートメントにおいて、監視または検出することによって、評価することができる。また、コンジュゲートの治療作用または他の生物学的作用を使って、中枢神経系の実質へのコンジュゲートの通過について監視することもできる。好ましい実施形態では、CNSの状態が脳腫瘍である。
もう一つの態様として、本発明は、治療酵素を対象の脳細胞中のリソソームに送達する方法であって、(i)治療酵素にコンジュゲートされたメガリンリガンド(またはそのメガリン結合性断片)を含む化合物を投与すること、(ii)毛細管内皮を横切って前記化合物を輸送すること、(iii)前記化合物と、細胞上のメガリン受容体との接触により、エンドサイトーシスによる前記細胞への前記化合物の進入を容易にすること、および(iv)細胞内のリソソームへの送達、を含む方法を提供する。一定の他の態様では、本発明は、細胞のリソソームに治療剤または診断剤を送達するための、上述のような化合物、組成物、および方法を提供する。
さらにもう一つの態様として、本発明は、治療酵素にコンジュゲートされたメガリンリガンド(またはそのメガリン結合性断片)、およびそのようなコンジュゲートを投与することによって、リソソーム蓄積症を処置する方法であって、リガンド−酵素複合体がメガリン受容体に結合し、細胞膜を横切って輸送され、細胞に進入し、細胞内のリソソームに送達される方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、患者のリソソーム蓄積症を処置する方法であって、そのような疾患を持つ対象のリソソーム中で欠乏しているタンパク質または酵素である治療剤にコンジュゲートされたメガリンリガンド(またはそのメガリン結合性断片)を投与すること(例えば酵素補充療法)による方法も提供する。そのようなコンジュゲートは、例えば、リソソームタンパク質欠乏がその疾患状態の一因になっているMPS I、MPS II、MPS III A、MPS III B、異染性白質ジストロフィー、ゴーシェ病、クラッベ病、ポンペ病、CLN2、ニーマン・ピック病およびテイ・サックス病などのリソソーム蓄積症の処置には、特に有用である。さらに別の実施形態では、本発明は、リソソーム蓄積症において欠乏しているタンパク質または酵素に共有結合されたメガリンリガンド(例えばRAP)を含む薬学的組成物も提供する。
したがって本発明では、対象のリソソーム蓄積症(LSD)を処置する方法であって、LSDの処置に使用される治療剤にコンジュゲートされたメガリン結合部分を含む組成物を、LSDの症状を改善するのに有効な量で、対象に投与することを含む方法が考えられる。通例、そのような方法では、組成物は薬学的組成物であり、哺乳動物の脳組織中に存在する蓄積顆粒の量を減少させるのに有効な量で投与される。投与は、哺乳動物の中枢神経系への髄腔内投与であることができる。好ましくは、哺乳動物の髄膜組織中に存在する蓄積顆粒の量を減少させるのに有効な量で、組成物を投与する。LSDの症状は当業者に知られた技術を使って監視され、通例、病歴、理学的検査、心エコー法、心電図検査、磁気共鳴画像、睡眠ポリグラフ、骨格調査、一連の運動計測、角膜写真、および皮膚生検の定型的評価によって監視される。
一部の実施形態では、アスパルチルグルコサミン尿症、コレステロールエステル蓄積症/ウォルマン病、シスチノーシス、ダノン病、ファブリ病、ファーバー脂肪肉芽腫症/ファーバー病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシスI/II型、ゴーシェ病I/IIIII型ゴーシェ病、グロボイド細胞型白質ジストロフィー/クラッベ病、グリコーゲン蓄積症II/ポンペ病、GM1−ガングリオシドーシスI/II/III型、GM2−ガングリオシドーシスI型/テイ・サックス病、GM2−ガングリオシドーシスII型サンドホフ病、GM2−ガングリオシドーシス、アルファ−マンノシドーシスI/II型、アルファ−マンノシドーシス、異染性白質ジストロフィー、ムコリピドーシスI型/シアリドーシスI/II型ムコリピドーシスII/III型I細胞病、ムコリピドーシスIIIC型偽ハーラーポリジストロフィー、ムコ多糖症I型、ムコ多糖症II型ハンター症候群、ムコ多糖症IIIA型サンフィリポ症候群、ムコ多糖症IIIB型サンフィリポ症候群、ムコ多糖症IIIC型サンフィリポ症候群、ムコ多糖症IIID型サンフィリポ症候群、ムコ多糖症IVA型モルキオ症候群、ムコ多糖症IVB型モルキオ症候群、ムコ多糖症VI型、ムコ多糖症VII型スライ症侯群、ムコ多糖症IX型、多発性スルファターゼ欠損症、ポンペ病、神経性セロイドリポフスチノーシス、CLN1バッテン病、神経性セロイドリポフスチノーシス、CLN2バッテン病、ニーマン・ピック病A/B型ニーマン・ピック病、ニーマン・ピック病C1型ニーマン・ピック病、ニーマン・ピック病C2型ニーマン・ピック病、ピクノディスオストーシス、シンドラー病I/II型シンドラー病、およびシアル酸蓄積症などのリソソーム蓄積症を処置するために、本発明の化合物、組成物、および方法を使用することができる。特に好ましい実施形態では、リソソーム蓄積症がMPS III、MLD、またはGM1である。
さらにもう一つの実施形態として、本発明は、酵素補充治療を必要とする対象に治療有効量のコンジュゲートを投与することによる酵素補充治療の方法であって、コンジュゲートがリンカーを介して酵素に連結されたメガリンリガンド(またはそのメガリン結合性断片)を含み、患者の細胞が細胞に対する損傷を防止または軽減するには不十分な量の酵素を含有するリソソームを持っており、本方法によって、細胞に対する損傷を防止または軽減するのに十分な量の酵素がリソソームに進入する方法を提供する。細胞はCNS内の細胞でもCNS外の細胞でもよく、タイトジャンクションによって活性剤の拡散に対して密封された内皮細胞を持つ毛細管壁によって血液から仕切られていてもよいが、その必要があるわけではない。
一部の実施形態では、活性剤とのメガリンリガンドコンジュゲートが、単一のメガリンリガンドに連結された、1個を越える、リソソーム蓄積症を処置するための活性剤を含む。一部の実施形態では、関心対象の活性剤約1〜約5分子または約2〜10分子が、単一のメガリンリガンド分子に結合される。好ましい実施形態では、メガリンリガンドがRAPまたはRAPポリペプチドのメガリン結合性断片である。
ある特定の実施形態では、本発明は、当該化合物を投与する対象の標的リソソーム内で減少しているか、欠乏しているか、または欠失している生物学的活性を持つ活性剤に結合されたメガリンリガンドを含む化合物を提供する。好ましい実施形態では、メガリンリガンド(またはそのメガリン結合性断片)が、活性剤に共有結合される。好ましい活性剤には、例えばアルパルチルグルコサミニダーゼ、酸性リパーゼ、システイン輸送体、Lamp−2、アルファ−ガラクトシダーゼA、酸性セラミダーゼ、アルファ−L−フコシダーゼ、ベータ−ヘキソサミニダーゼA、GM2−活性化因子欠乏症、アルファ−D−マンノシダーゼ、ベータ−D−マンノシダーゼ、アリールスルファターゼA、サポシンB、ノイラミニダーゼ、アルファ−N−アセチルグルコサミニダーゼホスホトランスフェラーゼ、ホスホトランスフェラーゼγサブユニット、アルファ−L−イズロニダーゼ、イズロン酸−2−スルファターゼ、ヘパラン−N−スルファターゼ、アルファ−N−アセチルグルコサミニダーゼ、アセチルCoA:N−アセチルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミン6−スルファターゼ、ガラクトース6−スルファターゼ、アルファ−ガラクトシダーゼ、N−アセチルガラクトサミン4−スルファターゼ、ヒアルロノグルコサミニダーゼ、パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ、トリペプチジルペプチダーゼI、酸性スフィンゴミエリナーゼ、コレステロール輸送、カテプシンK、ベータ−ガラクトシダーゼB、α−グリコシダーゼ、およびシアル酸輸送体などがあるが、これらに限定されるわけではない。好ましい一実施形態では、アルファ−L−イズロニダーゼ、α−グリコシダーゼまたはN−アセチルガラクトサミン4−スルファターゼが上記酵素である。
特定の実施形態では、ここに提供する方法によって処置される疾患が、ムコ多糖症、より具体的にはムコ多糖症Iである。特定の実施形態では、LSDを持つ哺乳動物が、正常値の約50%以下のα−L−イズロニダーゼ活性を示す。通例、薬学的組成物は、ヒトα−L−イズロニダーゼとして週に約0.001mg/kg体重〜0.5mg/kg体重の用量で、その欠乏症を患っている対象に投与される。これらは単なる例示であって、当業者は治療的に有効な結果を得るために他の用量を使用することができる。また、本明細書では剤形をmg/kg体重の形で記載するが、代わりに使用することができる投薬量計量法は当業者にはわかるだろう。一部の実施形態では、薬学的組成物が、ヒトα−L−イズロニダーゼとして週に約0.01mg/当該哺乳動物のCSF 15cc〜約5.0mg/当該哺乳動物のCSF 15ccの用量で、その欠乏症を患っている対象に投与される。LSDの処置では、治療剤にコンジュゲートされたメガリン結合部分の投与が、好ましくは、対象における発育遅延および退行の正常化、高圧水頭症の軽減、対象における脊髄圧迫の軽減、対象の脳血管周辺の血管周囲嚢胞の数および/または大きさの減少をもたらす。投与が髄腔内投与である場合、そのような投与は、脳室中に薬学的組成物を導入することを含みうる。本方法は、腰部または大槽中に薬学的組成物を導入する髄腔内投与を含みうる。髄腔内投与は、例えば注入ポンプを使って達成することができる。期間は、通例、少なくとも数日間でありうる。処置される哺乳動物は好ましくはヒトである。
リソソーム蓄積症を持つ対象の脳細胞におけるグリコサミノグリカン(GAG)の破壊を促進する方法であって、メガリン結合部分にコンジュゲートされた当該リソソーム蓄積症で欠乏している酵素を含む薬学的組成物を、脳細胞中に存在するGAGの量を投与前に細胞中に存在するGAGの量と比較して減少させるのに有効な量で、対象に投与することを含む方法も考えられる。好ましくは、脳細胞はニューロン、膠細胞、小膠細胞、アストロサイト、乏突起膠細胞、血管周囲細胞、血管外皮細胞、髄膜細胞、上衣細胞、くも膜顆粒細胞、くも膜、硬膜、軟膜および脈絡叢細胞である。これらの方法において、対象は高圧水頭症の症状を示すことができ、上記の投与により、対象の髄膜組織中のCSF液の量が減少する。別の態様では、細胞中のリソソーム蓄積顆粒の数が、コンジュゲートの投与を行なわない場合に同様の細胞中に存在するリソソーム蓄積顆粒の数と比べて減少する。別の実施形態では、細胞中のリソソーム蓄積顆粒の数が、メガリン結合部分にコンジュゲートされていない酵素のみで処置した同様の細胞中に存在するリソソーム蓄積顆粒の数と比べて減少する。
もう一つの態様として、本発明は、リソソーム蓄積症を防止、改善、または処置することができる活性剤にコンジュゲートされたメガリンリガンド(またはそのメガリン結合性断片)を、そのコンジュゲートをリソソームを含有する細胞と接触させ、かつそのコンジュゲートが薬剤をリソソームに送達するかどうかを決定することによって同定するためのスクリーニングアッセイを提供する。送達は、コンジュゲートを標識した後、そのラベルの位置を監視もしくは検出することによって、またはリソソーム中に見いだされる蓄積物質の量に対するコンジュゲートの影響を決定することによって、評価することができる。好ましい一実施形態では、薬剤が、当該リソソーム蓄積症で欠乏しているタンパク質または酵素である。もう一つの実施形態では、細胞には、メガリンリガンドにコンジュゲートされる薬剤が不足している。
もう一つの実施形態として、本発明は、リソソーム蓄積症を防止、改善、または処置することができる薬剤を同定する方法であって、細胞にメガリンリガンド(またはそのメガリン結合性断片)コンジュゲート酵素(この酵素の不在は当該リソソーム蓄積症を引き起こす)を投与し、かつその薬剤が、細胞に対する損傷を、その細胞にコンジュゲート薬剤を投与しなかった場合の細胞に対する損傷と比較して減少させるかどうかを決定することによる方法を提供する。一定の実施形態では、本方法はハイスループットアッセイである。
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるだろう。しかし詳細な説明および具体例は、本発明の好ましい実施形態を示すものではあるが、単なる例示にすぎない。なぜなら、本発明の精神および範囲に包含される様々な改変および変更は、この詳細な説明から当業者には明らかになるだろうからである。
添付の図面は本明細書の一部を形成し、本発明の諸態様を詳しく例示するために含めるものである。本発明は、これらの図面を、本明細書に提示する特定実施形態の詳細な説明と組み合わせて参照することにより、より良く理解することができる。
好ましい実施形態の説明
血液脳関門を横切る治療剤の設計および送達にはかなりの進歩があったという事実にもかかわらず、治療剤のトランスサイトーシスを媒介することができるさらなる化合物を生み出しうる新しい薬剤が、今なお必要とされている。
本発明は、RAPおよびRAPポリペプチドがメガリン受容体に選択的に結合するという発見に関する。別の実施形態は、RAPまたはRAPポリペプチドがLRP受容体を結合するという発見を利用しようとするものである。RAPは、それにコンジュゲートされた活性剤を、血液脳関門を横切って細胞内のリソソームに、そしてメガリン受容体を持つ細胞の細胞内コンパートメントに送達するのに、とりわけ有効なメガリンリガンドである。本明細書では、そのような送達を媒介するのに有効であるものとして、他のメガリンリガンドも例示する。活性剤にコンジュゲートされたメガリンリガンド(またはそのメガリン結合性断片)を含む化合物は、例えば癌およびリソソーム蓄積症(ただしこれらに限定されるわけではない)などの様々なCNSおよび非CNS疾患、状態、および障害の診断および処置に役立つ。これらの発見を利用するための方法および組成物を以下に詳述する。
[I.定義]
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語はいずれも、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解しているものと同じ意味を持つ。当業者は、以下の参考文献により、本明細書で用いられる用語の多くについて、その一般的定義を知ることができる:Singletonら「DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY」(第2版,1994)、「THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY」(Walker編,1988)、「THE GLOSSARY OF GENETICS」第5版,R.Rieger,et al.(eds.)Springer Verlag(1991)、ならびにHaleおよびMarham「THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY」(1991)。
本明細書で引用する各刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、本開示に矛盾しない限りにおいて、参照によりそのまま本明細書に組み入れられる。
本明細書および特許請求の範囲においては、単数形「a」「an」および「tha」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、複数の意味も包含することに留意されたい。
本明細書で使用される以下の用語は、別段の指定がない限り、それらが持つとされている意味を持つ。
本明細書にいう「脳腫瘍および脳内または脳周辺の他の新形成」は、脳内または脳周辺に発生する原発腫瘍および/または転移巣の両方を包含する。またこれは、体内のどこかに移動しているが、RAPまたはRAPポリペプチドと化学療法剤とのコンジュゲートに対する応答性をまだ持っている、脳腫瘍の転移巣も意味しうる。様々なタイプのそのような腫瘍および新形成が知られている。原発性脳腫瘍には、神経膠腫、髄膜腫、神経鞘腫、下垂体腺腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、血管腫、類表皮腫、肉腫、その他が包含される。全頭蓋内腫瘍の50%は頭蓋内転移である。本明細書にいう腫瘍および新形成は、脳および神経組織に関係するか、または髄膜、頭蓋、頭頸部の脈管構造もしくは他の組織に関係しうる。そのような腫瘍は一般に固形腫瘍であるか、頭部に限局的に蓄積する散在性腫瘍である。本発明の処置を受ける腫瘍または新形成は悪性でも良性でもよく、過去に化学療法、放射線および/または他の処置によって処置されていてもよい。
「有効量」という用語は、対象の健康状態、病態、および疾患に望ましい結果をもたらすのに十分な投薬量、または診断目的にとって十分な投薬量を意味する。望ましい結果は、その投薬量の受容者における主観的または客観的改善を含みうる。「治療有効量」は、健康に対して意図した薬効を生じるのに有効な薬剤の量を指す。
「小有機分子」は、医薬品によく使用される有機分子と同等な大きさを持つ有機分子を指す。この用語は有機生体ポリマー(例えばタンパク質、核酸など)を除外する。好ましい小有機分子は、約5000Daまで、約2000Daまで、または約1000Daまでの大きさをとる。
診断または処置の「対象」は、哺乳動物または霊長類を含むヒトまたは非ヒト動物である。
「処置」は予防的処置または治療的処置または診断的処置を指す。
「予防的」処置は、疾患の徴候を示さない対象または初期徴候しか示さない対象に病態が発生する危険を減少させる目的で投与される処置である。本発明のコンジュゲート化合物は、ある病態が発生する可能性を低下させるために、またはその病態が発生した場合の重症度を最小にするために、予防的処置として与えることができる。
「治療的」処置は、ある病態の徴候または症状を示す対象に、その徴候または症状を軽減または排除する目的で投与される処置である。徴候または症状は、生化学的、細胞的、組織学的、機能的、主観的または客観的なものであることができる。本発明のコンジュゲート化合物は、治療的処置として、または診断を目的として、与えることができる。
「診断」とは、病的状態の存在または性質を同定することを意味する。診断方法はその特異性および選択性が様々である。ある診断方法ではある状態の確定診断は得られないかもしれないが、その方法が診断を助ける明確な指標を与えるなら、それで十分である。
「薬学的組成物」は、ヒトおよび哺乳動物を含む対象動物における薬学的使用に適した組成物を指す。薬学的組成物は、薬理学的に有効な量の、活性剤にコンジュゲートされたRAPポリペプチド(または他のメガリンリガンド)を含み、薬学的に許容できる担体も含む。薬学的組成物は、活性成分および担体を構成する不活性成分を含む組成物、ならびに任意の2以上の成分の組合せ、複合体化もしくは凝集によって、直接的もしくは間接的にもたらされる任意の物品、または1以上の成分の解離によってもたらされる任意の物品、または1以上の成分の他のタイプの反応もしくは相互作用によってもたらされる任意の物品を包含する。したがって、本発明の薬学的組成物は、本発明のコンジュゲートと薬学的に許容される担体とを混合することによって製造される任意の組成物を包含する。
「薬学的に許容できる担体」は、任意の標準的な担体、緩衝剤、および賦形剤、例えばリン酸緩衝食塩水、5%デキストロース水溶液、ならびにエマルション、例えば油/水型または水/油型エマルション、ならびに様々なタイプの湿潤剤および/または佐剤を指す。好適な薬学的担体および製剤は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」第19版(Mack Publishing Co.,イーストン,1995)に記載されている。好ましい薬学的担体は、意図している活性剤の投与様式に依存する。典型的な投与様式には、経腸(例えば経口)投与または非経口投与(例えば皮下、筋肉内、静脈内もしくは腹腔内注射、または局所、経皮、または経粘膜投与)が包含される。「薬学的に許容できる塩」は、薬学的使用のために製剤化することができる塩であり、例えば金属塩(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)およびアンモニアまたは有機アミンの塩などがある。
本明細書で使用する「単位剤形」という用語は、ヒトおよび動物対象への単位投薬量として適した物理的に不連続な単離を指し、各単位は、所望の作用をもたらすのに十分な量の、計算された本発明化合物の所定量を、薬学的に許容できる希釈剤、担体またはビヒクルと共に含有している。本発明の新規単位剤形の仕様は、使用する特定コンジュゲートおよび達成されるべき作用、ならびにホストにおける各化合物に関する薬力学に依存する。
本明細書にいう「調整する」とは、増加または減少によって変化させる能力(例えばアンタゴニストもしくはアゴニストとして作用する能力)を指す。
本明細書にいう「相対的送達を増加する」とは、意図する送達部位(例えば脳、リソソーム)におけるRAP−コンジュゲート活性剤の蓄積が、非コンジュゲート活性剤の蓄積と比較して増加するような作用を指す。
「治療係数」は、最小治療量より高く、かつ許容できない中毒量より低い、用量範囲(量および/またはタイミング)を指す。
「等価用量」は、同じ量の活性剤を含有する用量を指す。
「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチド単位から構成されるポリマーを指す。ポリヌクレオチドには、天然核酸、例えばデオキシリボ核酸(「DNA」)およびリボ核酸(「RNA」)、ならびに核酸類似体が包含される。核酸類似体には、非天然塩基、天然のリン酸ジエステル結合以外の結合様式で他のヌクレオチドと結合しているヌクレオチドを含むもの、またはリン酸ジエステル結合以外の結合様式で取り付けられ塩基を含むものが包含される。したがって核酸類似体には、例えばホスホロチオエート類、ホスホロジチオエート類、ホスホロトリエステル類、ホスホロアミデート類、ボラノホスフェート類、メチルホスホネート類、キラル−メチルホスホネート類、2−O−メチルリボヌクレオチド類、ペプチド核酸(PNA)などが包含されるが、これらに限定されるわけではない。そのようなポリヌクレオチドは、例えば自動DNA合成装置などを使って合成することができる。「核酸」という用語は、通例、大きなポリヌクレオチドを指す。「オリゴヌクレオチド」という用語は、通例、短いポリヌクレオチドを指し、一般的には約50ヌクレオチドを越えない。ヌクレオチド配列がDNA配列(すなわちA、T、G、C)によって表される場合、これが、「T」を「U」で置き換えたRNA配列(すなわちA、U、G、C)も包含することは、理解されるだろう。
「cDNA」は、mRNAに相補的または同一な、一本鎖型または二本鎖型のDNAを指す。
本明細書ではポリヌクレオチド配列の記述に通常の表記法を用いる。すなわち、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左端は5’末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左方向を5’方向という。新生RNA転写物へのヌクレオチドの5’→3’付加の方向を転写方向という。mRNAと同じ配列を持つDNA鎖を「コード鎖」という。また、当該DNAから転写されるmRNAと同じ配列を持つDNA鎖上の配列であって、RNA転写物の5’末端に対して5’側に位置する配列を、「上流配列」という。また、RNAと同じ配列を持つDNA鎖上の配列であって、コードRNA転写物の3’末端に対して3’側にある配列を、「下流配列」という。
「相補的」とは、2つのポリヌクレオチドの相互作用する面の位相幾何学的適合性または一致を指す。したがって、それら2つの分子は相補的であると記述することができ、接触面の特徴は互いに相補的である。第1ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、第2ポリヌクレオチドのポリヌクレオチド結合パートナーのヌクレオチド配列と同一であるなら、第1ポリヌクレオチドは第2ポリヌクレオチドに相補的である。例えば、5’−TATAC−3’という配列を持つポリヌクレオチドは、5’−GTATA−3’という配列を持つポリヌクレオチドに相補的である。
問題のヌクレオチド配列に相補的な配列が基準ヌクレオチド配列と実質的に同一であるならば、その配列は基準ヌクレオチド配列に「実質的に相補的」である。
「コードする」とは、所定のヌクレオチド配列(すなわちrRNA、tRNAおよびmRNA)または所定のアミノ酸配列を持つ他のポリマーおよび高分子ならびにそこから得られる生物学的性質を生物学的過程において合成するためのテンプレートとして役立つという、遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定配列が持つ固有の特性を指す。したがって、ある遺伝子によって産生されるmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物学的系でタンパク質をもたらすのであれば、その遺伝子はタンパク質をコードしている。ある遺伝子またはcDNAのうち、mRNA配列と同じヌクレオチド配列を持ち、通常、配列表に記載されるコード鎖と、転写のテンプレートとして使用される非コード鎖は、どちらも、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードするということができる。別段の指定がない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、互いの縮重型であって同じアミノ酸配列をコードしている、全てのヌクレオチド配列が包含される。タンパク質およびRNAをコードする核酸配列はイントロンを含みうる。
「組換えポリヌクレオチド」は、自然界では互いに接合されていない配列を持つポリヌクレオチドを指す。増幅されたまたは組み立てられた組換えポリヌクレオチドは、適切なベクターに含まれていてもよく、そのベクターは適切な宿主細胞の形質転換に使用することができる。組換えポリヌクレオチドを含む宿主細胞を「組換え宿主細胞」という。次に、遺伝子は組換え宿主細胞中で発現されて、例えば「組換えポリペプチド」を産生する。組換えポリヌクレオチドは非コード機能(例えばプロモーター、複製起点、リボソーム結合部位など)も果たしうる。
「発現制御配列」は、それに作動的に連結されたヌクレオチド配列の発現(転写および/または翻訳)を調節する、ポリヌクレオチド中のヌクレオチド配列を指す。「作動的に連結」とは、一方の部分の活性(例えば転写を調節する能力)が他方の部分(例えば配列の転写)に対する作用をもたらすような2つの部分間の機能的関係を指す。発現制御配列には、例えばプロモーター(例えば誘導性プロモーターまたは構成的プロモーター)、エンハンサー、転写ターミネーター、開始コドン(すなわちATG)、イントロンのスプライシングシグナル、および停止コドンの配列などがあるが、これらに限定されるわけではない。
「発現ベクター」は、発現させるべきヌクレオチド配列に作動的に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは十分なシス作用性発現要素を含む。他の発現要素は宿主細胞細胞によって供給されるか、インビトロ発現系に供給されうる。発現ベクターには、組換えポリヌクレオチドを組み込んだコスミド、プラスミド(例えば裸のプラスミドまたはリポソームに含まれているもの)およびウイルスなど、当業者に知られている全ての発現ベクターが包含される。
「増幅」は、例えば逆転写、ポリメラーゼ連鎖反応、およびリガーゼ連鎖反応などにより、ポリヌクレオチド配列がコピーされ、その結果として、大量のポリヌクレオチド分子に拡大されるような、任意の手段を指す。
「プライマー」は、指定されたポリヌクレオチドテンプレートに特異的にハイブリダイズして、相補的ポリヌクレオチドの合成の開始点を与える能力を持つポリヌクレオチドを指す。そのような合成は、ポリヌクレオチドプライマーを、合成が誘導される条件下に置いた場合、すなわちヌクレオチド、相補的ポリヌクレオチドテンプレート、およびDNAポリメラーゼなどの重合用薬剤の存在下に置いた場合に起こる。プライマーは通例、一本鎖であるが、二本鎖であってもよい。プライマーは通例、デオキシリボ核酸であるが、多種多様な合成プライマーおよび天然プライマーが、多くの用途に有用である。プライマーは、それがハイブリダイズすることによって合成の開始部位として役立つように設計されたテンプレートに相補的であるが、テンプレートの正確な配列を反映する必要はない。そのような場合、テンプレートに対するプライマーの特異的ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに依存する。プライマーは、例えば発色性部分、放射性部分、または蛍光部分などで標識して、検出可能部分として使用することができる。
ポリヌクレオチドに関して「プローブ」という場合、これは別のポリヌクレオチドの指定された配列に特異的にハイブリダイズする能力を持つポリヌクレオチドを指す。プローブは標的相補配列に特異的にハイブリダイズするが、テンプレートの正確な相補配列を反映する必要はない。そのような場合、標的に対するプローブの特異的ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに依存する。プローブは、例えば発色性部分、放射性部分、または蛍光部分などで標識して、検出可能部分として使用することができる。
第1配列である配列を持つポリヌクレオチドが、第2配列である配列を持つポリヌクレオチドと、特異的にハイブリダイズする場合、その第1配列は第2配列に関して「アンチセンス配列」である。
「特異的にハイブリダイズする」または「特異的ハイブリダイゼーション」または「〜に選択的にハイブリダイズする」とは、ある核酸分子が、ストリンジェントな条件下で、特定のヌクレオチド配列に、その配列が複雑な混合(例えば全細胞)DNAまたはRNA中に存在する場合に、優先的に結合、二重鎖化、またはハイブリダイズすることを指す。
「ストリンジェントな条件」という用語は、プローブがその標的配列に優先的にハイブリダイズし、他の配列にはそれほどハイブリダイズしないか、全くハイブリダイズしないような条件を指す。サザンハイブリダイゼーションおよびノーザンハイブリダイゼーションなどの核酸配列ハイブリダイゼーション実験における「ストリンジェントなハイブリダイゼーション」および「ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件」は配列依存的であり、異なる環境パラメータ下では異なる。核酸のハイブリダイゼーションに関する詳細な指針は、Tijssen(1993)「Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Acid Probes part I」の第2章「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays」(Elsevier,ニューヨーク)に記載されている。一般に、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、所定のイオン強度およびpHで特異的配列の熱融解温度(Tm)より約5℃低くなるように選択される。Tmは、標的配列の50%が完全に一致するプローブにハイブリダイズするような(所定のイオン強度およびpH下での)温度である。極めてストリンジェントな条件は、特定プローブのTmと等しくなるように選択される。
サザンブロットまたはノーザンブロットにおいて、フィルター上で、100個を越える相補残基を持つ相補的核酸のハイブリダイゼーションを行なう場合、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の一例は、1mgのヘパリンを含む42℃の50%ホルマリンであり、ハイブリダイゼーションは終夜行なわれる。高度にストリンジェントな洗浄条件の一例は、72℃の0.15M NaClで約15分間である。ストリンジェントな洗浄条件の一例は、65℃で15分間の0.2×SSC洗浄である(SSC緩衝液の説明についてはSambrookらを参照のこと)。バックグラウンドプローブシグナルを除去するために、高ストリンジェンシー洗浄の前に低ストリンジェンシー洗浄が、しばしば行なわれる。例えば100ヌクレオチドより大きい二重鎖の場合、中ストリンジェンシー洗浄の一例は、45℃の1×SSCで15分である。例えば100ヌクレオチドより大きい二重鎖の場合、低ストリンジェンシー洗浄の一例は、40℃の4〜6×SSCで15分である。一般に、特定のハイブリダイゼーションアッセイにおいて無関係なプローブで観察される信号対雑音比の2倍(以上)の信号対雑音比は、特異的ハイブリダイゼーションの検出を示す。
「ポリペプチド」は、ペプチド結合、その関連天然構造変異体、および合成非天然類似体によって連結されたアミノ酸残基、その関連天然構造変異体、および合成非天然類似体から構成されるポリマーを指す。合成ポリペプチドは、例えば自動ポリペプチド合成装置などを使って合成することができる。「タンパク質」という用語は、通例、大きいポリペプチドを指す。「ペプチド」という用語は、通例、短いポリペプチドを指す。
本明細書ではポリペプチド配列の表現に通常の表記法を用いる。すなわち、ポリペプチド配列の左端はアミノ末端であり、ポリペプチド配列の右端はカルボキシル末端である。
1)アラニン(A)、セリン(S))、スレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
「対立遺伝子変異体」は、同じ遺伝子座を占有する遺伝子の2以上の多型のいずれかを指す。対立遺伝子変異体は突然変異によって自然に生じ、集団内に表現型多型をもたらしうる。遺伝子突然変異はサイレントである(コードされるポリペプチドに変化がない)場合もあるし、変化したアミノ酸配列を持つポリペプチドをコードすることもできる。「対立遺伝子変異体」は、対立遺伝子変異体遺伝子のmRNA転写物から得られるcDNA、ならびにそれらがコードするタンパク質も指す。
2以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に関する「同一」または「一致」率という用語は、下記の配列比較アルゴリズムの一つを使った測定で、または目視検査による測定で、両者を比較し最大限の対応が得られるように整列した場合に、同じであるか、または指定したパーセンテージの同じヌクレオチドもしくはアミノ酸残基を持つ、2以上の配列または部分配列を指す。
2つの核酸またはポリペプチドに関する「実質的に相同」または「実質的に同一」という表現は、一般に、下記の配列比較アルゴリズムの一つを使った測定で、または目視検査による測定で、両者を比較し最大限の対応が得られるように整列した場合に、少なくとも40%、60%、80%、90%、95%、98%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基一致率を持つ、2以上の配列または部分配列を指す。好ましくは、実質的一致は、少なくとも約50残基長である配列の領域にわたって、より好ましくは少なくとも約100残基の領域にわたって存在し、最も好ましくは、それらの配列は、少なくとも約150残基にわたって実質的に同一である。最も好ましい実施形態では、配列は、比較する生体ポリマーの一方または両方の全長にわたって、実質的に同一である。
配列を比較するには、通例、ある配列を基準配列にして、試験配列をその基準配列と比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合は、試験配列および基準配列をコンピュータに入力し、必要ならば部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。そうすると、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、基準配列に対する試験配列の配列一致率を計算する。
比較のための最適な配列アラインメントは、例えば、SmithおよびWaterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所的相同性アルゴリズムによって、またはNeedlemanおよびWunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、またはPearsonおよびLipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索法によって、またはこれらのアルゴリズムのコンピュータ実装によって(Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computrer Group、ウィスコンシン州マジソン・サイエンスドライブ575)のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または目視検査によって行なうことができる。
有用なアルゴリズムの一例はPILEUPである。PILEUPは、プログレッシブペアワイズアラインメントを使って一群の関連配列から多重配列アラインメントを作成して、関係および配列一致率を示す。また、アラインメントを作成するために使用したクラスター化関係を示すツリーまたは系統樹もプロットする。PILEUPでは、FengおよびDoolittle,J.Mol.Evol.35:351-360(1987)のプログレッシブアラインメント法の簡略化を使用する。使用される方法は、HigginsおよびSharp,CABIOS 5:151-153(1989)に記載されている方法と類似している。このプログラムは、それぞれ最大5000ヌクレオチドまたは5000アミノ酸の長さを持つ300配列までを整列させることができる。多重アラインメント法は、最も類似している2つの配列のペアワイズアラインメントにより、整列された2配列のクラスターを作成することから開始する。次に、このクラスターを、次の最も関連する配列または整列された配列のクラスターと整列させる。2つの配列クラスターは、2つの個々の配列のペアワイズアラインメントの単純な拡張によって整列される。最終アラインメントは一連のプログレッシブペアワイズアラインメントによって達成される。このプラグラムは、特定配列と、配列比較領域についてそれらのアミノ酸座標またはヌクレオチド座標とを指定すること、そしてプログラムパラメータを指定することによって実行される。例えば、以下のパラメータを使って、基準配列を他の試験配列と比較することにより、配列一致率関係を決定することができる:デフォルトのギャップ重み(gap weight)(3.00)、デフォルトのギャップ長重み(gap length weight)(0.10)、および重みつき末端ギャップ(weighted end gaps)。配列の多重アラインメントの作成に有用なもう一つのアルゴリズムはClustal W(Thompson et al.,Nucleic Acids Research 22:4673-4680,1994)である。
配列一致率および配列類似率を決定するのに適したアルゴリズムのもう一つの例は、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)に記載されているBLASTアルゴリズムである。BLAST解析を行なうためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から、公に入手することができる。このアルゴリズムでは、まず、クエリ配列中の長さWの短いワードであって、データベース配列中の同じ長さのワードと整列させた場合に、一致するか、または何らかの正の値の閾スコアTを満足するものを同定することによって、HSP(high scoring sequence pairs)を同定する。Tを隣接ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)という。これらの初期隣接ワードヒットは、それらを含有するさらに長いHSPを見いだすための検索を開始するための種になる。次に、それらのワードヒットを各配列に沿って、累積アラインメントスコアを増加させることができる限り、両方向に延長する。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合は、パラメータM(一致残基対に対する得点、常に>0)およびN(ミスマッチ残基に対する減点、常に<0)を使って計算される。アミノ酸配列の場合は、スコアリング行列を使って、累積スコアを計算する。各方向へのワードヒットの延長は、累積アラインメントスコアが、その最大達成値から量Xだけ低下した場合、または累積スコアが0以下になった場合、または一方の配列の末端に到達した場合に停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、アラインメントの感度および速さを決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)では、デフォルトとして、ワード長(wordlength:W)11、期待値(expectation:E)10、M=5、N=4、および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列には、ワード長(W)3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコアリング行列を使用する(HenikoffおよびHenikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915,1989参照)。
配列一致率の計算だけでなく、BLASTアルゴリズムは2つの配列間の類似性の統計解析も行なう(例えばKarlinおよびAltschul,Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA 90:5873-5787,1993参照)。BLASTアルゴリズムが与える類似性の尺度の一つは、最小和確率(smallest sum probability)(P(N))である。これは、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の一致が偶然に起こる確率の指標を与える。例えば試験核酸と基準核酸との比較における最低和確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満であるなら、その核酸は基準配列に類似しているとみなされる。
2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であることのさらにもう一つの指標は、後述するように、第1の核酸によってコードされるポリペプチドが第2の核酸によってコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応することである。したがって、例えばあるポリペプチドと第2のポリペプチドとの相違点が保存的置換だけである場合、それら2つのポリペプチドは、通例、実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であることのもう一つの指標は、後述するように、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。
「実質的に純粋」または「単離された」は、目的の種が、存在する主要な(すなわち、モルベースで、その組成物に含まれる他の個々の高分子のどれよりも豊富な)種であることを意味し、実質的に精製された画分とは、目的の種が存在する全高分子の少なくとも約50%を(モルベースで)占めている組成物である。一般に、実質的に純粋な組成物とは、組成物中に存在する高分子種の約80〜90%以上が精製された関心対象の種であることを意味する。組成物が本質的に単一の高分子種からなっているのであれば、目的の種は本質的に均一に精製されている(夾雑種は通常の検出方法では組成物中に検出することができない)。溶媒種、小分子(<500ダルトン)、安定剤(例えばBSA)、および元素イオン種は、この定義においては高分子種とみなされない。一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、実質的に純粋であるか、単離されている。一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、それらの合成に使用される高分子出発物質に関して、実質的に純粋であるか、単離されている。一部の実施形態では、本発明の薬学的組成物は、実質的に純粋なまたは単離された、RAPポリペプチドと活性剤とのコンジュゲートが、1以上の薬学的に許容できる賦形剤と混合されてなる。
物体に適用される「天然」という用語は、その物体を自然界に見いだすことができるという事実を指している。例えば、自然界にある由来源から単離することができる生物(ウイルスを含む)中に存在し、人間が実験室が意図的に改変していないポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然である。
「検出」は、試料中の分析物の存在、不在、または量を決定することを指し、これには、試料中の分析物の量または試料中の1細胞あたりの分析物の量を定量することも含まれうる。
「検出可能部分」または「ラベル」は、分光法的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、または化学的手段によって検出することができる組成物を指す。例えば有用なラベルには、32P、35S、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えばELISAでよく使用されるもの)、ビオチン−ストレプトアビジン、ジオキシゲニン(dioxigenin)、対応する抗血清またはモノクローナル抗体を入手することができるハプテンおよびタンパク質、または標的に相補的な配列をもつ核酸分子などがある。検出可能部分は、多くの場合、試料中の結合された検出可能部分の量を定量するために使用することができる測定可能シグナル、例えば放射能シグナル、発色シグナル、または蛍光シグナルなどを生成する。検出可能部分は、共有結合によって、またはイオン結合、ファンデルワールス結合もしくは水素結合によって、プライマーまたはプローブに組み込むか、取り付けることができる(例えば放射性核種またはストレプトアビジンによって認識されるビオチン化ヌクレオチドの組み込み)。検出可能部分は直接的に検出可能であっても、間接的に検出可能であってもよい。間接的検出は、その検出可能部分への第2の直接的または間接的に検出可能な部分の結合を伴いうる。例えば、検出可能部分は、結合パートナーのリガンド、例えばストレプトアビジンの結合パートナーであるビオチン、またはヌクレオチド配列(これは、それが特異的にハイブリダイズすることのできる相補的配列の結合パートナーである)であることができる。結合パートナーはそれ自体が直接的に検出可能であることができる。例えば抗体はそれ自体を蛍光分子で標識することができる。結合パートナーは間接的に検出可能であってもよい。例えば、相補的ヌクレオチド配列を持つ核酸を分岐DNA分子の一部にして、それを他の標識核酸分子とのハイブリダイゼーションによって検出することができる(例えばPD.FahrlanderおよびA.Klausner,Bio/Technology(1988)6:1165参照)。シグナルの定量は、例えばシンチレーション計数、デンシトメトリー、またはフローサイトメトリーなどによって達成される。
「リンカー」は、他の2つの分子を共有結合によって、またはイオン結合、ファンデルワールス結合もしくは水素結合によって、接合する分子を指す(例えば、5’末端で、ある相補的配列にハイブリダイズし、3’末端で、もう一つの相補的配列にハイブリダイズすることにより、2つの非相補的配列を接合する核酸分子)。
[II.メガリン]
メガリンはLRP2とも呼ばれ、LRP受容体ファミリーの大きい(600kDa)メンバーである(Hussain et al.,Annu Rev Nutr.,19:141-72 1999、ChristensenおよびBirn Am.J.Physiol.Renal.Physiol.,280:F562-573,2001)。LRPファミリーの全てのメンバーと同様に、メガリンはRAPを高い親和性で結合する(Czekay et al.,Mol.Biol.Cell.8(3):517-32,1997)。しかし、メガリンが、腎臓近位尿細管、甲状腺、精巣上体、肺胞および眼の毛様体中のものを含む限られた一組の上皮細胞層の頂端面でしか発現されない点は、LRPファミリーの中でユニークである(Zheng et al.,J Histochem Cytochem.,42(4):531-42,1994)。メガリンは、古典的扁平上皮細胞層である脳毛細管内皮の管腔表面でも発現される(Chun et al.,Exp Neurol.,157(1):194-201,1999)。脳毛細管内皮上のメガリンは、インビトロで、血液脳関門を横切って、そのリガンドの1つであるapoJのトランスサイトーシスを媒介することが、先に証明されている(Zlokovic et al.,Proc.Nat'l Acad.Sci.,USA 93(9):4229-34 1996、Zlokovic Life Sci.,59(18):1483-97,1996)。メガリンによるリガンドの頂端側から側底側へのトランスサイトーシスは、腎臓および甲状腺でも詳述されている(Marino et al.,J Am Soc Nephrol.,12(4):637-48,2001、Marino et al.,Thyroid,11(1):47-56,2001)。
本願では、メガリンが強固なMDCK細胞層を横切るRAPのトランスサイトーシスを媒介することを示す。本願は、LRP1ではなくメガリンが、上述のような細胞層を横切るRAPおよび他のリガンドのトランスサイトーシスを媒介することを、初めて示すものである。この発見からすると、ありとあらゆるメガリンリガンドの使用は、腎臓、甲状腺、精巣上体、眼および脳細胞において標的送達による活性剤の送達を媒介するための優れた候補になると考えられる。したがって、特定の実施形態では、BBBを横切る活性剤のトランスサイトーシスを媒介するために他のLRPファミリーメンバーを使用することは依然として望ましいが、特に好ましい実施形態では、そのようなトランスサイトーシスがメガリンリガンドへの活性剤のコンジュゲーションによって媒介される。
したがって本願では、メガリンに対する特異性がLRP1に対する特異性よりも強いリガンドは、血液から脳にタンパク質および小分子を輸送するためのベクターとして特に有用であるだろうと考えられる。一定の実施形態では、リガンドは、任意選択的に、ApoJを除外する。この利点は、LRP1が媒介する肝臓でのクリアランスを避け、血清滞留時間を増加させ、その結果として脳インフラックスを増加させることによって生じる。
[III.他のLRP受容体]
メガリンは、それを介して活性剤トランスサイトーシスを達成するのに好ましい受容体であるが、それでもなお、他のLRP受容体はそのようなトランスサイトーシスを達成するのに有用だろうと考えられる。「LRP」は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)を含む低密度リポタンパク質受容体ファミリーのメンバーを指す。LRP1は4525アミノ酸(600kDa)の大きいタンパク質であり、フリンによって切断されて、非共有結合したままの515(アルファ)kDと85(β)kDaの2つのサブユニットを生じる。LRPはほとんどの組織タイプで発現される。低密度リポタンパク質(LDL)受容体ファミリーの他のメンバーには、LDL−R(132kDa)、LRP/LRP1およびLRP1B(600kDa)、メガリン((LRP2),600kDa)、VLDL−R(130kDa)、ER−2(LRP−8,130kDa)、モザイクLDL−R(LR11,250KDa)、ならびに他のメンバー、例えばLRP3、LRP6、およびLRP−7などがある。このファミリーに特有の特徴としては、細胞表面発現、細胞外リガンド結合ドメインリピート(DxSDE)、リガンド結合にCa++が必要、RAPおよびApoEの認識、EGF前駆体相同ドメインリピート(YWTD)、一回膜貫通領域、細胞質ドメイン中の内在化シグナル(FDNPXY)、および様々なリガンドの受容体介在性エンドサイトーシスが挙げられる。このファミリーの一部のメンバー、例えばLRP1およびVLDLRなどは、シグナル伝達系路に関与する。
LRPリガンドとは、LRPを結合することが知られている数多くの分子を指す。これらの分子には、例えばラクトフェリン、RAP、リポタンパク質リパーゼ、ApoE、第VIII因子、ベータ−アミロイド前駆体、アルファ−2−マクログロブリン、トロンボスポンジン2 MMP−2(マトリックスメタロプロテイナーゼ−2)、MPP−9−TIMP−1(マトリックスメタロプロテイナーゼ1の組織阻害因子)、uPA(ウロキナーゼプラスミノゲン活性化因子):PAI−I(プラスミノゲン活性化因子阻害因子1):uPAR(uPA受容体)、およびtPA(組織プラスミノゲン活性化因子):PAI−I:uPARなどがある。
LRP1は、システインリッチ型リピートがクラスター化している多機能受容体であると考えられる。LDL受容体に見いだされるものに類似している結合リピートは、以前は無関係であると考えられていた様々なリガンドを結合するという能力の分子的原理である。これらには、シュードモナス外毒素A、ヒトライノウイルス、ラクトフェリンおよびいわゆる受容体関連タンパク質(RAP)の他に、先の段落に記載したリガンドが含まれる。Meilinger et al.,FEBS Lett,360:70-74(1995)参照。LRP1はGenBankアクセッション番号X13916およびSwissProtプライマリーアクセッション番号Q07954である。LRP1遺伝子/タンパク質の別名として、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1[前駆体]、LRP、アルファ−2−マクログロブリン受容体、A2MR、アポリポタンパク質E受容体、ApoER、CD91、LRP1またはA2MRが挙げられる。
LRPファミリーのメンバーは毛細管内皮上ならびにニューロンおよびアストロサイトを含むCNS細胞タイプ上によく発現される(例:LDL受容体、メガリン、LRP)。LRP受容体は結合したリガンドをエンドサイトーシスし、腎臓、甲状腺の極性上皮細胞を横切って、また脳内の毛細管内皮細胞を横切って、リガンドをトランスサイトーシスする。したがってLRPは、様々な組織において様々なレベルで発現される構成的および機能的に関連する受容体のプールを含む。一部の実施形態では、本発明はRAPを使用する。RAPはこの関連受容体プールのメンバー(そして特にこのプールのメンバーを発現させる細胞、組織、および器官)を結合し、その結果、それらを標的とする。例として、筋組織上のVLDLR、ニューロン組織上のLRP1B、腎臓およびニューロン組織上のメガリン、ならびに血管平滑筋組織上のLRP1が挙げられる。
[IV.RAPおよび他のメガリンリガンド]
本発明の特定の実施形態では、メガリンリガンドまたはそのメガリン結合性断片である第1部分と、メガリンへのメガリンリガンド(またはその断片)の結合によってその送達が媒介される活性剤である第2部分とを含むキメラ分子を製造する。好ましい実施形態では、これらのキメラ分子の一部を形成させるために選択されるリガンドは、インビボでトランスサイトーシスされるものだろう。「RAP」は約39kDaおよび323アミノ酸の周知のタンパク質であり、LRPファミリーのメンバーに特化したシャペロンである。これはインビボでトランスサイトーシスされる。RAPは、LRPなどのLDL受容体ファミリーのメンバーへのリガンドの結合を阻害する(BuおよびRennke,J.Biol.Chem.271:22218-2224(1996)、Willnow et al.,J.Biol.Chem.267:26172-26180(1992)、BuおよびSchwartz,Trends Cell Biol.8:272-276(1998)、ならびにHerzおよびStrickland,J.Clin.Invest.108:779-784(2001)参照)。また、BuおよびSchwartz,Trends Cell Biol.8:272-276(1998)も参照されたい。RAPのさらなる特徴づけは、ヒトRAPの全アミノ酸配列(図15)を含めて、参照によりそのまま本明細書に組み入れられる米国特許第5,474,766号に記載があり、RAPアミノ酸配列および断片についてもそこに詳しく開示されている。28kDaヒトC末端断片(図16)は極めて活性なRAPポリペプチドであり、本発明の好ましい実施形態においては、コンジュゲートが活性剤の担体としてこの断片を含む。
RAPポリペプチドには、例えばRAP、可溶型のRAP、切断されたRAP、RAPポリペプチド断片、RAPの相同体および類似体などがあるが、これらに限定されるわけではない。LRP受容体結合の調整、トランスサイトーシス、またはエンドサイトーシスに関してRAPの機能的等価物であるRAPポリペプチドは、そのRAPポリペプチドのLRPに結合する能力についてスクリーニングすることによって、容易に同定することができる。好ましい実施形態では、RAPポリペプチドが、同様の長さを持つ天然、ネイティブまたは野生型哺乳類RAPアミノ酸配列に対して、またはRAPポリペプチドの少なくとも10アミノ酸、25アミノ酸、50アミノ酸、100アミノ酸、もしくは200アミノ酸、300アミノ酸のドメインまたは全長にわたって、例えば80%、90%、95%、98%、または99%を越える配列一致率を持つRAPの相同体である。RAPポリペプチドには、RAPの対立遺伝子変異体、ヒト、マウス、ラット、ニワトリ、ゼブラフィッシュ、ブタ、ミバエ、カ、および扁形動物ネイティブRAPにおけるパラログおよびオルソログ、ならびにその誘導体、部分、または断片が包含される(Genbankアクセッション番号:P30533(ヒト)、XP132029(マウス)、Q99068(ラット)、CAA05085(ニワトリ)、AAH49517(ゼブラフィッシュ)、AAM90301(ブタ)、NP649950(ミバエ)、XP313261(カ)、NP506187(扁形動物))。マウス、ラット、ニワトリ、ゼブラフィッシュ、ミバエ、カ、および扁形動物由来のアミノ酸配列の多重アラインメントならびにコンセンサス配列を図14に示す。
RAPポリペプチドは酸性塩もしくは塩基性塩の形態をとるか、その中性型であることができる。また、個々のアミノ酸残基は、酸化または還元などによって修飾することができる。さらに、RAPの望ましい生物学的活性が保持されるか改善されるという正味の作用を持つような様々な置換、欠失、または付加を、アミノ酸配列または核酸配列に施すこともできる。RAPのさらなる特徴づけは、RAPの全アミノ酸配列を含めて、参照によりそのまま本明細書に組み入れられる米国特許第5,474,766号に記載があり、RAPアミノ酸配列および断片についてもそこに詳しく開示されている。例えば、コードの縮重により、当業者には、同じアミノ酸配列をコードする多数のヌクレオチド配列変種が知られている。
好ましいRAPポリペプチドは、受容体関連タンパク質(RAP)のネイティブアミノ酸配列、特にネイティブヒト配列(配列番号1)との間に実質的な相同性を持つ。好ましい実施形態では、RAPポリペプチドが、同様の長さを持つネイティブまたは野生型哺乳類RAPアミノ酸配列に対して、または少なくとも10アミノ酸、25アミノ酸、50アミノ酸、100アミノ酸、もしくは200アミノ酸、または300アミノ酸以上のドメインまたは比較ウインドウにわたって、例えば80%、90%、95%、98%、または99%を越える配列一致率を持つRAPの相同体である。
特に好ましいヒトまたは哺乳類RAPは、単離されたRAP、またはRAPのLRP結合部位を少なくとも1つは含有するその断片、例えばRAPの可溶性ポリペプチド断片である。RAPのどの部分がそのLRP結合および調節活性にとって重要であり、どの部分なら結合活性を失わずに突然変異、改変、または欠失させることができるかについては、かなりの指針が当分野には存在する(Nielsen et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 94:7521(1997)、およびRall et al.,J.Biol.Chem.273(37):24152,1998参照)。例えばRAPのLRP結合機能は、オーバーラップしたRAPドメインに相当する融合タンパク質で直接結合研究を行なうことによって、マッピングされている(Willnow et al.,J.Biol.Chem.267(36):26172-80,1992参照)。また、RAP結合モチーフは、切断型および指定部位RAP突然変異体の使用によっても、特徴づけられている(Melman et al.,J.Biol.Chem.276(31):29338-29346,2001参照)。本発明での使用に適した具体的なRAPポリペプチド断片としては、断片(RAP N末端アミノ酸位置からRAP C末端アミノ酸位置に向かって定義):1−323(RAP)、1−319、1−250、1−110、91−210、191−323、221−323、1−190、1−200、および1−210が挙げられる。好ましいRAP ポリペプチドとしては、断片1−323(RAP)、1−319、191−323、および1−210が挙げられる。C末端の4アミノ酸の配列が配列KDELで置換されている改変RAPポリペプチドも好適である。C末端の4アミノ酸の配列(HNEL)が欠失している改変RAPポリペプチドも好適である。また、RAPのネイティブ配列をアミノ酸201から210まで含むRAPポリペプチド断片も好ましい。
別の好ましい実施形態は、位置282〜289、201〜210、および311〜319にわたってRAPのネイティブアミノ酸配列を含む、ヒトまたは哺乳類RAPポリペプチドを含む。RAPの突然変異型およびN末端またはC末端切断型変異体であってLRP受容体に結合するものはMelmanら(J.Biol.Chem.276(31):29338-46,2001)に開示されており、この文献は参照によりそのまま、特にこれらのRAP突然変異型および切断型変異体に関して、本明細書に組み入れられる。別の好ましいRAPポリペプチドは、アミノ酸85〜148および178〜248間のRAPのネイティブ配列を含む(Farquhar et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 91:3161-3162(1994)参照)。
このように多くの文献が、LRP受容体に対するRAPおよびRAP断片の結合に関して、結合部位および構造活性相関を開示している。当業者は、LRP結合部位を含有し本発明のRAPポリペプチドとしての使用に適したRAPポリペプチドを得るために、当分野で周知の様々な技術を容易に適合させることができる。RAPの好ましい断片は生理学的条件下で可溶である。これらのポリペプチドのN末端またはC末端は、LRP粒子に対する結合能が影響を受けずに残っている限り、望みどおりに短縮することができる。RAPの好ましいアミノ酸配列はヒトタンパク質に相当する。RAPポリペプチドの好適な配列は、他の哺乳動物または動物界のメンバーから単離されたRAPのアミノ酸配列に由来することもできる。
LRP結合部位を含有するRAPの断片を生成させるために、単離されたネイティブタンパク質を酵素的および/または化学的切断で変換することによって、例えばRAPをパパインもしくはトリプシンなどの酵素または臭化シアンなどの化学薬品と反応させることによって、タンパク質全体の断片を生成させることができる。好ましくは、細胞外受容体領域が遊離するように、タンパク質分解活性を持つ酵素または化学薬品を選択する。次に、LRP結合部位を含有する断片、特に生理学的条件下で可溶性である断片を、既知の方法を使って単離することができる。
あるいは、例えばWilliams et al.,J.Biol.Chem.267:9035-9040(1992)、Wurshawsky et al.,J.Biol.Chem.269:3325-3330(1994)、Melman et al.,J.Biol.Chem.276(31):29338-46(2001)などに記載されているように、RAPまたはRAPの断片を組換え細菌中で発現させることもできる。
RAPは酸性塩もしくは塩基性塩の形態をとるか、中性型であることができる。また、個々のアミノ酸残基は、酸化または還元などによって修飾することもできる。さらに、RAPの望ましい生物学的活性が保持されるか改善されるという正味の作用を持つような様々な置換、欠失、または付加を施すこともできる。例えば、コードの縮重により、同じアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列には、かなりの変種が存在しうる。
本明細書で用いられるRAP断片には、RAPまたはその生物学的に等価な類似体であって、それがLRPに結合し、血液脳関門を横切ってトランスサイトーシスされ、輸送されるのを可能にするのに十分であるようなそのリガンドの部分を含有している任意の部分、またはそのリガンドの望ましいLRP媒介性担体活性を他の形で保持または改善する任意の部分が包含されるが、これらに限定されるわけではない。図15にヒトRAPのアミノ酸配列を示す。図16に28kd RAPポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
RAPの他に、他のメガリンリガンドも、トランスサイトーシスによる活性剤の輸送を促進するために使用することができる。RAP以外のメガリンリガンドには、例えばチログロブリン(Zheng et al.,Endocrinol.,139:1462-1465,1998;例示的配列については、例えばGenBankアクセッション番号NP#003226およびCollins et al.,J.Clin.Endocrinol.Metab.88(10),5039-5042,2003参照)、リポタンパク質リパーゼ(Kounnas et al.,J.Biol.Chem.,268:14176-14181,1993;例示的配列については、例えばGenBankアクセッション番号AAP35372参照)、ラクトフェリン(Willnow et al.,J.Biol.Chem.,267:26172-26180,1992;例示的配列については、例えばVelliyagounder et al.,Infect.Immun.71(11),6141-6147,2003によるGenBankアクセッション番号AAN1130参照)、アポリポタンパク質J/クラスタリン(Kounnas et al.,J.Biol.Chem.,270:13070-13075,1995;例示的配列については、例えばGenBankアクセッション番号NP#001822およびNP#976084ならびにOta et al.,Nat.Genet.,Nat.Genet.36(1),40-45(2004)、Ota et al.,Int.J.Cancer 108(1),23-30,2004参照)、アポリポタンパク質B(Stefansson et al.,J.Biol.Chem.,270:19417-19421,1995;例示的配列については、例えばGenBankアクセッション番号AAP72970参照)、アポリポタンパク質E(Willnow et al.,J.Biol.Chem.,267:26172-26180,1992;例示的配列については、例えばGenBankアクセッション番号NP#000032およびHirono et al.,J Neuropsychiatry Clin Neurosci 15(3),354-358,2003参照)、組織型プラスミノゲン活性化因子(Willnow et al.,J.Biol.Chem.,267:26172-26180,1992;例示的配列については、例えばGenBankアクセッション番号P00750およびPennica et al.,Nature 301(5897),214-221(1983)参照)、uPA(Moestrup et al.,J.Clin.Invest.,102:902-909,1998;例示的配列については、例えばGenBankアクセッション番号NP#002649およびTran et al.,Mol.Cell.Biol.23(20),7177-7188(2003)参照)、PAI−1(Stefansson et al.,J.Cell.Sci.,108:2361-2368,1995;例示的配列については、例えばGenBankアクセッション番号NP#000593およびHe et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.310(3),878-883,2003参照)、ビタミンD結合タンパク質(DBP;Nykjaer et al.,Cell 96:507-515,1999;例示的配列については、例えばGenBankアクセッション番号AAA19662およびYang et al.,Gene 54(2-3),285-290,1987参照)、ビタミンA/レチノール結合タンパク質(RBP;Christensen et al.,J.Am.Soc.Nephrol.,10:685-695,1999;例示的配列については、例えばGenBankアクセッション番号AAA59188参照)、β2―ミクログロビン(Orlando et al.,J.Am.Soc.Nephrol.,9:1759-1766,1998;AAA51811およびAAH64910)、α1−ミクログロブリン(Orlando et al.,J.Am.Soc.Nephrol.,9:1759-1766,1998;AAH41593およびCAA38585)、ビタミンB12/コバラミン血漿担体タンパク質、トランスコバラミン(TC)−B12、PTH、インスリン(Orlando et al.,J.Am.Soc.Nephrol.,9:1759-1766,1998)、EGF(Orlando et al.,J.Am.Soc.Nephrol.,9:1759-1766,1998)、プロラクチン(Orlando et al.,J.Am.Soc.Nephrol.,9:1759-1766,1998)、アルブミン、apoH(例示的配列については、例えばGenBankアクセッション番号P02749およびGene 108(2),293-298,1991参照)、トランスサイレチン(例示的配列については、例えばGenBankアクセッション番号NP#000362参照)、リゾチーム(Orlando et al.,J.Am.Soc.Nephrol.,9:1759-1766,1998;例えばCAA00878およびEP 0222366-A参照)、シトクロム−c(Orlando et al.,J.Am.Soc.Nephrol.,9:1759-1766,1998)、α−アミラーゼ、およびCa2+、ならびにアプロチニンなどがあるが、これらに限定されるわけではない。メガリンの構造、機能および発現パターンの詳細な総説については、ChristensenおよびBirn(Am.J.Physiol.Renal.Physiol.,280:F562-573,2001)を参照されたい。上記GenBankアクセッション番号は、当業者に知られているこれらタンパク質の例示的配列であることに留意すべきである。同様に当業者に知られていて、野生型配列としてまたは修飾配列として(例えば断片、保存的変異体など)として本願のコンジュゲートに使用することができる配列は、他にも数多く存在する。
上記メガリンリガンドはいずれも、トランスサイトーシスによる活性剤の送達に使用することができる。そのような実施形態では、メガリンリガンドが当業者に知られる技術を使って関心対象の活性剤にコンジュゲートされる。好ましい実施形態では、メガリンに対する結合親和性を高めるために、そのようなリガンドをさらに修飾することができると考えられる。そのような修飾リガンドは、メガリン受容体を発現させる任意の細胞を横切るトランスサイトーシスにとって、とりわけ有用な送達ビヒクルになるだろう。別の好ましい実施形態では、リガンドがLRP1よりもメガリンに対して高い結合親和性を持つようにメガリンリガンドを修飾することができると考えられる。そのようなリガンドは、血液脳関門を横切ってタンパク質および小分子を輸送するためのベクターとして、とりわけ有用だろう。この利点は、肝臓内で肝細胞上のLRP1受容体によって媒介される活性剤のLRP1媒介性クリアランスを回避することによって血清滞留時間を増加させ、その結果として活性剤の脳インフラックスを増加させることによって生じる。
[V.メガリン結合部分と活性剤とのコンジュゲーション]
本明細書の全体を通して、出願人はメガリン結合部分に言及する。通例、そのような部分は、上述したリガンドなどの天然メガリン結合リガンドである。別の実施形態では、前記部分が、修飾された、そのようなリガンドである。さらなる実施形態として、メガリン結合部分は、メガリンと免疫反応しそれゆえにメガリンを認識する抗体の全部または一部であることもできる。本発明では、メガリン結合部分が、所定の標的(例えば脳)に送達されるべき薬剤にコンジュゲートされる。本明細書では、メガリンリガンド−活性剤コンジュゲートに言及する。メガリンリガンドには任意の上記メガリン結合実体が包含されうると理解すべきである。
「メガリンリガンドコンジュゲート」「リガンドポリペプチドコンジュゲート」「活性剤にコンジュゲートされたメガリンリガンドを含むキメラ分子」は、それぞれ、活性剤に取り付けられたメガリンのリガンドまたはそのメガリン結合性断片を含む化合物を指す。本明細書で使用する「コンジュゲートされた」という用語は、治療剤とメガリンポリペプチドとが、例えば共有化学結合、ファンデルワールス相互作用または疎水相互作用などの物理力、封入、包埋、またはそれらの組合せなどによって、物理的に連結されることを意味する。好ましい実施形態では、治療剤とメガリンリガンドポリペプチドとが、共有化学結合によって物理的に連結される。したがって好ましい化学療法剤は、メガリンリガンドまたはその断片とのコンジュゲーションに使用されるアルコール、酸、カルボニル、チオールまたはアミン基などの官能基を含有する。好ましい実施形態では、メガリンリガンドがRAPまたはRAPポリペプチドである。アドリアマイシンはアミンクラスに属し、カルボニルを介して連結することも可能である。パクリタキセルはアルコールクラスに属する。適切なコンジュゲーション基を持たない化学療法剤は、そのような基が付加されるようにさらに修飾することができる。これらの化合物は全て本発明において考えられる。治療剤が複数である場合は、様々なコンジュゲーションの組合せを使用することができる。
一部の実施形態では、直接的な(介在原子なし)または間接的な(リンカー、例えば共有結合した原子の鎖を介した)共有化学結合が、メガリンリガンドと活性剤とを接合する。好ましい実施形態では、コンジュゲートのメガリンリガンドと活性剤部分とが、メガリンリガンドの原子と活性剤の原子との共有結合によって直接的に連結される。一部の好ましい実施形態では、メガリン結合部分が、メガリンリガンドもしくはそのメガリン結合性断片を活性剤に結びつけることができる共有結合または事実上任意のアミノ酸配列のペプチドまたは任意の分子もしくは原子を含むリンカーによって、本発明化合物の活性剤部分に結びつけられる。
一部の実施形態では、リンカーが1〜約30原子以上、2〜5原子、2〜10原子、5〜10原子、または10〜20原子長の原子の鎖を含む。一部の実施形態では、鎖原子が全て炭素原子である。一部の実施形態では、鎖原子がC、O、N、およびSからなる群より選択される。鎖原子およびリンカーは、可溶性の高いコンジュゲートが得られるように、それらの予想溶解度(親水性)に従って選択することができる。一部の実施形態では、リンカーは、リソソーム内で酵素の攻撃を受ける官能基を与える。一部の実施形態では、リンカーは、標的組織または標的器官内に見いだされる酵素による攻撃を受け、攻撃または加水分解を受けると、活性剤とメガリンリガンドとの間の連結を切り離す官能基を与える。一部の実施形態では、リンカーは標的部位に見いだされる条件下(例えばリソソームの低いpH)で加水分解を受ける官能基を与える。リンカーは、1以上のそのような官能基を含有しうる。一部の実施形態では、リンカーの長さが、メガリンリガンド結合部位および活性剤活性結合部位の一方または両方との間の立体障害(活性剤が大きい場合)の可能性を減少させるのに十分な長さである。
リンカーが共有結合またはペプチドであり、活性剤がポリペプチドである場合、コンジュゲート全体は融合タンパク質であることができる。そのような融合タンパク質は、当業者に知られる組換え遺伝子操作法によって製造することができる。一部の実施形態では、コンジュゲートのメガリンリガンド部分は、迅速に分解して活性化合物を遊離するように製剤化される。別の実施形態では、リンカーは細胞内環境条件下で、より好ましくはリソソーム環境条件下で切断されて、活性剤部分をメガリンリガンドポリペプチド部分から遊離または分離する。
コンジュゲートは、同じメガリンリガンドに連結された1以上の活性剤を含むことができる。例えばコンジュゲーション反応は、メガリンリガンドポリペプチドに対して1〜5、約5、約1〜10、約5〜10、約10〜20、約20〜30、または30分子以上の活性剤をコンジュゲートしうる。これらの製剤は混合物として使用するか、特定の化学量論を持つ製剤に精製することができる。当業者は、どの形式およびどの化学量論比が好ましいかを決定することができる。さらに、1タイプを越える薬剤を標的部位または標的コンパートメントに送達することが望まれる場合は、1タイプを越える活性剤をメガリンリガンドポリペプチドに連結することもできる。例えばアドリアマイシン−シスプラチナムRAPポリペプチド(または他のメガリンリガンド)コンジュゲートなど、複数の活性剤種を同じメガリンリガンドポリペプチドに取り付けることができる。したがってコンジュゲートは、ある範囲の化学量論比からなることができ、1タイプを越える活性剤を組み込むことができる。これらもまた、精製された混合物に分離するか、または集合体として使用することができる。
本発明のメガリンリガンドまたはその断片のコンジュゲートは、その安定性または薬物動態特性が向上するように、望みどおりに修飾することができる(例えばPEG化)。メガリンリガンドポリペプチドと活性剤とをコンジュゲートするのに好適なリンカー、およびそれらの製造に容易に適合させることができる合成化学法は、本願と同じ譲受人に譲渡された米国特許出願第60/395,762号(参照によりそのまま本明細書に組み入れられる)に記載されている。
これらのコンジュゲートの合成は効率がよく、便利であり、高い収率と水溶性の向上した薬物とをもたらす。
[VI.活性剤]
本発明の活性剤には、生物学的過程に影響を及ぼすことができる薬剤が包含される。本発明の化合物、組成物および方法における使用にとりわけ好ましい活性剤は、薬物および診断剤を含む治療剤である。「薬物」または「治療剤」という用語は、治療有効量で投与した場合に、薬理学的活性または薬理学的利益を持つ活性剤を指す。特に好ましい薬剤は天然の生物学的薬剤(例えば酵素、タンパク質、ポリヌクレオチド、抗体、ポリペプチド)である。一部の実施形態では、メガリンリガンドまたはそのメガリン結合性断片(例えば一定の好ましい実施形態ではRAPまたはRAPポリペプチド)にコンジュゲートされる活性剤は、生きている宿主内の生物学的過程を調整する能力を持つ分子ならびにその任意の結合部分もしくは断片である。薬物または治療剤の例には、疾患または状態の防止、診断、改善、処置または治療に用いられる物質が包含される。特に、本薬剤は疾患を引き起こす薬剤ではないと考えられる。具体的には、本薬剤はアミロイドβタンパク質ではない。
〔A.タンパク質活性剤〕
活性剤は非タンパク質またはタンパク質であることができる。活性剤はタンパク質もしくは酵素、またはそれらタンパク質もしくは酵素の治療活性もしくは生物学的活性の一部、実質的に全て、もしくは全てをまだ保持しているそれらの任意の断片であることができる。一部の実施形態では、前記タンパク質または酵素は、それが発現または産生されないか、またはその発現量または産生量が実質的に減少すると、リソソーム蓄積症を含む(ただしこれに限定されるわけではない)疾患を生じるであろうものである。好ましくは、前記タンパク質または酵素は、ヒトまたはマウスに由来するかヒトまたはマウスから得られるものである。
本発明の好ましい実施形態では、RAPまたはRAPポリペプチドにコンジュゲートされた活性剤がタンパク質もしくは酵素または前記タンパク質もしくは酵素の生物学的活性を持つその断片である場合に、活性剤はヒトまたは哺乳類タンパク質または酵素の対応する部分のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を持つ。別の実施形態では、コンジュゲートの活性剤部分は、ヒトまたは哺乳動物の種にネイティブなタンパク質または酵素である。別の実施形態では、上記タンパク質もしくは酵素、またはその断片は、対応するヒトまたは哺乳類タンパク質または酵素のネイティブ配列に対して実質的に相同(すなわち、活性剤の少なくとも10、25、50、100、150もしくは200アミノ酸長にわたって、または活性剤の全長にわたって、アミノ酸配列が少なくとも80%、85%、90%、95%、より好ましくは98%、もしくは最も好ましくは99%同一)である。
化合物がタンパク質である場合、化合物は酵素、または酵素活性の一部、実質的に全て、もしくは全てをまだ保持している酵素の任意の断片であることができる。好ましくは、リソソーム蓄積症の処置においては、酵素は、細胞中に見いだされる酵素であって、それが発現または産生されないか、発現量または産生量が実質的に低下すると、リソソーム蓄積症を生じるであろう酵素である。好ましくは、酵素はヒトまたはマウスに由来するか、ヒトまたはマウスから得られる。好ましくは、酵素はリソソーム蓄積酵素、例えばα−L−イズロニダーゼ、イズロン酸−2−スルファターゼ、ヘパランN−スルファターゼ、α−N−アセチルグルコサミニダーゼ、アリールスルファターゼA、ガラクトシルセラミダーゼ、酸性−アルファ−グリコシダーゼ、トリペプチジルペプチダーゼ、ヘキソサミニダーゼ・アルファ、酸性スフィンゴミエリナーゼ、β−ガラクトシダーゼ、または他の任意のリソソーム蓄積酵素などである。
したがって一部の実施形態では、ヒトリソソーム蓄積症(LSD)の処置で、メガリンリガンド−活性剤コンジュゲートが、処置される対象または患者のリソソームにおいて欠乏している活性剤タンパク質または酵素を含む。そのような酵素には、例えばアルファ−L−イズロニダーゼ、イズロン酸−2−スルファターゼ、ヘパランN−スルファターゼ、アルファ−N−アセチルグルコサミニダーゼ、アリールスルファターゼA、ガラクトシルセラミダーゼ、酸性−アルファ−グリコシダーゼ、チオエステラーゼ、ヘキソサミニダーゼA、酸性スフィンゴミエリナーゼ、アルファ−ガラクトシダーゼ、または他の任意のリソソーム蓄積酵素が包含される。リソソーム蓄積症と、そこで欠乏している、活性剤として有用なタンパク質の一覧表を、以下に記載する。
したがって、本発明の方法を使って処置または防止することができるリソソーム蓄積症には、ムコ多糖症I(MPS I)、MPS II、MPS IIIA、MPS IIIB、異染性白質ジストロフィー(MLD)、クラッベ病、ポンペ病、セロイドリポフスチノーシス、テイ・サックス病、ニーマン・ピック病AおよびB、ならびに他のリソソーム疾患が包含されるが、これらに限定されるわけではない。
したがって上記の表に示すように、各疾患について、コンジュゲート薬剤は、好ましくは、その疾患で欠乏している特定の活性剤酵素を含むだろう。例えばMPS Iに関わる方法では、好ましい化合物または酵素はα−L−イズロニダーゼである。MPS IIに関わる方法では、好ましい化合物または酵素はイズロン酸−2−スルファターゼである。MPS IIIAに関わる方法では、好ましい化合物または酵素はヘパランN−スルファターゼである。MPS IIIBに関わる方法では、好ましい化合物または酵素はα−N−アセチルグルコサミニダーゼである。異染性白質ジストロフィー(MLD)に関わる方法では、好ましい化合物または酵素はアリールスルファターゼAである。クラッベ病に関わる方法では、好ましい化合物または酵素はガラクトシルセラミダーゼである。ポンペ病に関わる方法では、好ましい化合物または酵素は酸性α−グリコシダーゼである。CLNに関わる方法では、好ましい化合物または酵素はトリペプチジルペプチダーゼである。テイ・サックス病に関わる方法では、好ましい化合物または酵素はヘキソサミニダーゼ・アルファである。ニーマン・ピック病AおよびBに関わる方法では、好ましい化合物または酵素は酸性スフィンゴミエリナーゼである。
メガリンリガンド−活性剤コンジュゲートは、メガリンリガンドまたはそのメガリン結合性断片に連結された1以上の活性剤部分(例えば1〜10個、または1〜4個、または2〜3個の部分)を含むことができる。例えばコンジュゲーション反応は、RAPポリペプチド分子などの単一のメガリンリガンドに対して、1〜4分子以上のアルファ−L−イズロニダーゼをコンジュゲートすることができる。これらの製剤は混合物として使用するか、特定のメガリンリガンドポリペプチド−薬剤化学量論製剤に精製することができる。当業者は、どの形式およびどの化学量論比が好ましいかを決定することができる。さらに、蓄積された基質のより完全な分解が容易になるように、1以上の異なる活性剤を、メガリンリガンドまたはメガリンリガンドのメガリン結合性断片の与えられた任意の分子に連結することもできる。これらのメガリンリガンドコンジュゲート薬剤は、ある範囲の化学量論比からなることができる。これらもまた、精製された混合物に分離するか、集合体として使用することができる。融合物におけるメガリン結合部分とLSDの順序は、メガリン結合部分のメガリン結合能にとって重要であるかもしれない。したがって好ましい実施形態では、メガリン結合部分がLSD酵素コード配列のN末端側に位置する。特定の実施形態では、本発明のコンジュゲートが、LSD酵素コード配列のN末端側に位置するRAPコード配列を含むことが考えられる。
メガリンリガンドコンジュゲート活性剤は、CNS内またはCNS外の細胞のリソソーム中に進入するか、それらリソソーム中に輸送されるか、それらリソソーム中に存在する結果に至ることができる。コンジュゲート薬剤の通過速度は、メガリン結合活性を調整することができる任意の化合物またはタンパク質によって調整することができる。好ましい実施形態では、コンジュゲートのメガリン結合親和性がLRP1結合親和性よりも高い。細胞はリソソーム蓄積症に冒された任意の組織または器官系に由来することができる。細胞は、例えば内皮、上皮、筋、心臓、骨、肺、脂肪、腎臓、または肝臓の細胞であることができる。一部の実施形態では、細胞は、好ましくは、BBB内に見いだされる細胞である。一部の実施形態では、細胞はニューロンまたは脳細胞である。別の実施形態では、細胞は末梢の細胞であるか、BBBなどの内皮によって体循環から隔離されない細胞である。
〔B.薬物活性剤〕
一般に、薬物活性剤は任意の大きさを持ちうる。好ましい薬物は、関心対象の標的に結合する能力を持つ小さい有機分子である。コンジュゲートの薬物部分は、それが小分子である場合には、一般に少なくとも約50D、通常は少なくとも約100Dの分子量を持ち、その分子量は500D以上であってもよいが、通常は約2000Dを越えないだろう。
薬物部分は、本方法の実施に際してそのコンジュゲートが投与される宿主内の標的と相互作用する能力を持つ。標的は、多種多様な天然構造であることができ、関心対象の標的には細胞内標的および細胞外標的の両方が包含され、そのような標的はタンパク質、リン脂質、核酸などであることができ、タンパク質は特に興味深い。関心対象である特定のタンパク質標的には、例えばキナーゼ、ホスファターゼ、レダクターゼ、シクロオキシゲナーゼ、プロテアーゼなどの酵素、例えばSH2、SH3、PTBおよびPDZドメインなどのタンパク質−タンパク質相互作用に関与するドメインを含む標的、例えばアクチン、チューブリンなどの構造タンパク質、膜受容体、例えばIgEなどの免疫グロブリン、例えばインテグリンなどの細胞接着受容体、イオンチャネル、膜貫通ポンプ、転写因子、シグナル伝達タンパク質などが包含される。
一部の実施形態では、活性剤または薬物が、イソシアネート試薬と反応させるためのヒドロキシル基またはアミノ基を持つか、イソシアネート試薬と反応させるためのヒドロキシル基またはアミノ基が導入されるように、活性剤が化学修飾される。
一部の実施形態では、活性剤または薬物が、好ましくはその活性剤の望ましい生物学的活性を喪失させずに修飾することができそして/または共有結合に関与することができる領域を含む。薬物部分はしばしば、1以上の上記官能基で置換された環状炭素構造または複素環構造および/または芳香族構造または多環芳香族構造を含む。ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン類、ピリミジン類、誘導体、その構造類似体または組合せを含む生体分子、タンパク質、酵素、多糖、およびポリ核酸に見いだされる構造も、薬物部分として興味深い。
好適な活性剤には、精神薬理剤、例えば(1)中枢神経系抑制剤、例えば全身麻酔薬(バルビツレート類、ベンゾジアゼピン類、ステロイド類、シクロヘキサノン誘導体、およびその他の薬剤)、鎮静催眠薬(ベンゾジアゼピン類、バルビツレート類、ピペリジンジオン類およびトリオン類、キナゾリン誘導体、カルバメート、アルデヒド類および誘導体、アミド類、非環式ウレイド類、ベンゾアゼピン類および関連薬物、フェノチアジン類など)、中枢随意筋緊張調整薬(抗痙攣薬、例えばヒダントイン類、バルビツレート類、オキサゾリジンジオン類、スクシンイミド類、アシルウレイド類、グルタルイミド類、ベンゾジアゼピン類、2級および3級アルコール類、ジベンゾアゼピン誘導体、バルプロ酸および誘導体、GABA類似体など)、鎮痛薬(モルヒネおよび誘導体、オリパビン誘導体、モルフィナン誘導体、フェニルピペリジン類、2,6−メタン−3−ベンザゾカイン(benzazocaine)誘導体、ジフェニルプロピルアミン類および同配体、サリチレート、p−アミノフェノール誘導体、5−ピラゾロン誘導体、アリール酢酸誘導体、フェナメートおよび同配体など)、および制吐薬(抗コリン作用薬、抗ヒスタミン薬、抗ドーパミン薬など)、(2)中枢神経刺激物質、例えば興奮薬(呼吸刺激薬、痙攣刺激薬、精神運動刺激薬)、麻薬拮抗薬(モルヒネ誘導体、オリパビン誘導体、2,6−メタン−3−ベンゾキサシン(benzoxacine)誘導体、モルフィナン誘導体)、向知性薬、(3)精神薬物、例えば抗不安鎮静剤(ベンゾジアゼピン類、プロパンジオールカルバメート類)、抗精神病薬(フェノチアジン誘導体、チオキサンチン誘導体、他の三環式化合物、ブチロフェノン誘導体および同配体、ジフェニルブチルアミン誘導体、置換ベンズアミド類、アリールピペラジン誘導体、インドール誘導体など)、抗うつ薬(三環式化合物、MAO阻害剤など)、(4)気道薬、例えば中枢性鎮咳薬(アヘンアルカロイドおよびそれらの誘導体);薬力学剤、例えば(1)末梢神経系薬、例えば局所麻酔薬(エステル誘導体、アミド誘導体)、(2)シナプス接合部または神経効果器接合部に作用する薬物、例えばコリン作用剤、コリン遮断剤、神経筋遮断剤、アドレナリン作用剤、抗アドレナリン作用剤、(3)平滑筋活性薬、例えば鎮痙薬(抗コリン作用薬、向筋性鎮痙薬)、血管拡張薬、平滑筋刺激薬、(4)ヒスタミン類および抗ヒスタミン薬、例えばヒスタミンおよびその誘導体(ベタゾール)、抗ヒスタミン薬(H1アンタゴニスト、H2アンタゴニスト)、ヒスタミン代謝薬、(5)心血管薬、例えば強心薬(植物抽出物、ブテノリド類、ペンタジエノリド類(pentadienolids)、エリスロフレウム(erythrophleum)属由来のアルカロイド類、イオノフォア類、アドレノセプター刺激薬など)、抗不整脈薬、血圧降下薬、抗高脂血剤(クロフィブリン酸誘導体、ニコチン酸誘導体、ホルモンおよび類似体、抗生物質、サリチル酸および誘導体)、抗静脈瘤薬、止血薬、(6)血液および造血系薬、例えば抗貧血薬、血液凝固薬(止血剤、抗凝固剤、抗血栓剤、血栓溶解剤、血液タンパク質およびそれらの画分)(7)消化管薬、例えば消化剤(健胃剤、利胆薬)、抗潰瘍薬、止痢剤、(8)局所作用薬;化学療法剤、例えば(1)抗感染症剤、例えば外部寄生生物撲滅薬(塩素化炭化水素、ピレチン類(pyrethins)、硫酸化化合物)、駆虫薬、抗原虫薬、抗マラリア薬、抗アメーバ剤、抗リーシュマニア薬、抗トリコモナス剤、抗トリパノソーマ剤、スルホンアミド類、抗マイコバクテリア薬、抗ウイルス化学療法剤など、および(2)細胞分裂抑制剤、すなわち抗新生物剤または細胞毒性薬、例えばアルキル化剤、例えば塩酸メクロルエタミン(ナイトロジェンマスタード、マスタージェン(Mustargen)、HN2)、シクロホスファミド(サイトバン(Cytovan)、エンドキサナ(Endoxana))、イホスファミド(IFEX)、クロラムブシル(リューケラン)、メルファラン(フェニルアラニンマスタード、L−サルコリシン、アルケラン、L−PAM)、ブスルファン(ミレラン)、チオテパ(トリエチレンチオホスホルアミド)、カルムスチン(BiCNU、BCNU)、ロムスチン(CeeNU、CCNU)、ストレプトゾシン(ザノサール)など;植物アルカロイド、例えばビンクリスチン(オンコビン)、ビンブラスチン(ベルバン、ベルベ(Velbe))、パクリタキセル(タキソール)など;代謝拮抗物質、例えばメトトレキセート(MTX)、メルカプトプリン(プリネトール、6−MP)、チオグアニン(6−TG)、フルオロウラシル(5−FU)、シタラビン(サイトサール(Cytosar)−U、Ara−C)、アザシチジン(ミロサール(Mylosar)、5−AZA)など;抗生物質、例えばダクチノマイシン(アクチノマイシンD、コスメゲン)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン(ダウノマイシン(duanomycin)、セルビジン(Cerubidine))、イダルビシン(イダマイシン)、ブレオマイシン(ブレノキサン)、ピカマイシン(Picamycin)(ミトラマイシン、ミトラシン(Mithracin))、マイトマイシン(ムタマイシン(Mutamycin))など、および他の抗細胞増殖剤、例えばヒドロキシ尿素(ハイドレア)、プロカルバジン(ムタラン(Mutalane))、ダカルバジン(DTIC−Dome)、シスプラチン(プラチノール)、カルボプラチン(パラプラチン)、アスパラギナーゼ(エルスパール(Elspar))、エトポシド(ベペシド(VePesid)、VP−16−213)、アムサクリン(Amsarcrine)(AMSA、m−AMSA)、ミトタン(リソドレン(Lysodren))、ミトキサントロン(ノバトロン(Novatrone))などが包含されるが、これらに限定されるわけではない。好ましい化学療法剤は、遊離型では望ましい用量で、許容できない全身毒性を示すものである。治療レベルのそれら薬物に伴う一般的全身毒性は、それらをRAPもしくはRAPポリペプチドまたは他のメガリンリガンドに連結することによって低下させることができる。有用な治療剤であるが心毒性による用量制限を受ける心毒性化合物は、特に好ましい。古典的な例はアドリアマイシン(ドキソルビシンとも呼ばれる)およびその類似体、例えばダウノルビシンである。そのような薬物にRAPもしくはRAPポリペプチドまたは他のメガリンリガンドもしくはそのようなリガンドのメガリン結合性断片を連結することにより、活性剤の心臓における蓄積およびそれに伴う心毒性を防止することができる。
好適な活性剤には、抗生物質、例えばアミノグリコシド類、例えばアミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、バンベルマイシン類(bambermycins)、ブチロシン、ジベカシン、ジヒドロストレプトマイシン、ホルチマイシン(fortimicin)、ゲンタマイシン、イセパマイシン、カナマイシン、ミクロノムシン(micronomcin)、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロマイシン(paromycin)、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、トロスペクトマイシン(trospectomycin);アムフェニコール類、例えばアジダムフェニコール(azidamfenicol)、クロラムフェニコール、フロルフェニコール、およびテイマフェニコール(theimaphenicol);アンサマイシン類、例えばリファミド(rifamide)、リファンピン、リファマイシン、リファペンチン、リファキシミン;ベータ−ラクタム類、例えばカルバセフェム類、カルバペネム類、セファロスポリン類、セファマイシン(cehpamycin)類、モノバクタム類、オキサフェム(oxaphem)類、ペニシリン類;リンコサミド類、例えばクリナマイシン(clinamycin)、リンコマイシン;マクロライド類、例えばクラリスロマイシン、ジルスロマイシン(dirthromycin)、エリスロマイシンなど;ポリペプチド類、例えばアンホマイシン、バシトラシン、カプレオマイシンなど;テトラサイクリン類、例えばアピサイクリン(apicycline)、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリン(clomocycline)など;合成抗細菌剤、例えば2,4−ジアミノピリミジン類、ニトロフラン類、キノロン類およびそれらの類似体、スルホンアミド類、スルホン類などが包含されるが、これらに限定されるわけではない。
好適な活性剤には、抗真菌剤、例えばポリエン類、例えばアンホテリシンB、カンジシジン、デルモスタチン(dermostatin)、フィリピン、フンギクロミン、ハチマイシン、ハマイシン(hamycin)、ルセンソマイシン、メパルトリシン、ナタマイシン、ニスタチン、ペシロシン(pecilocin)、ペリマイシン(perimycin);合成抗真菌剤、例えばアリルアミン類、例えばブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン;イミダゾール類、例えばビホナゾール、ブトコナゾール、クロルダントイン、クロルミダゾールなど、チオカルバメート類、例えばトルシクレート、トリアゾール類、例えばフルコナゾール、イトラコナゾール、テルコナゾールなどが包含されるが、これらに限定されるわけではない。
好適な活性剤には、駆虫薬、例えばアレコリン、アスピジン、アスピジノール、ジクロロフェン、エンベリン、コシン(kosin)、ナフタレン(napthalene)、ニクロスアミド、ペレチエリン、キナクリン、アラントラクトン、アモカルジン、アモスカネート、アスカリドール、ベフェニウム、ビトスカネート、四塩化炭素、カルバクロール、シクロベンダゾール、ジエチルカルバマジンなどが包含されるが、これらに限定されるわけではない。
好適な活性剤には、抗マラリア薬、例えばアセダプソン、アモジアキン、アルテエーテル(areteether)、アルテンエーテル(artemether)、アルテミシニン、アルテスネート、アトバクオン、ベベリン、ベルベリン、チラタ(chirata)、クロルグアニド、クロロキン、クロルプログアニル、キナ皮、シンコニジン、シンコニン、シクログアニル、ゲンチオピクリン、ハロファントリン、ヒドロキシクロロキン、塩酸メフロキン、3−メチルアルサセチン、パマキン、プラスモシド(plasmocid)、プリマキン、プリメタミン、キナクリン、キニジン、キニン、キノシド、キノリン、ヒ酸水素二ナトリウムなどが包含されるが、これらに限定されるわけではない。
好適な活性剤には、抗原虫薬、例えばアクラニル(acranil)、チニダゾール、イプロニダゾール、エチルスチバミン、ペンタミジン、アセタルゾン、アミニトロゾール、アニソマイシン、ニフラテル、チニダゾール、ベンジダゾール(benzidazole)、スラミンなどが包含されるが、これらに限定されるわけではない。
活性剤としての使用に好適な薬物は「Goodman and Gilman's,The Pharmacological Basis of Therapeutics(9th Ed)」(Goodman et al.eds)(McGraw-Hill)(1996)および「1999 Physician’s Desk Reference」(1998)にも列挙されている。
好適な活性剤には、米国特許第5,880,161号、第5,877,206号、第5,786,344号、第5,760,041号、第5,753,668号、第5,698,529号、第5,684,004号、第5,665,715号、第5,654,484号、第5,624,924号、第5,618,813号、第5,610,292号、第5,597,831号、第5,530,026号、第5,525,633号、第5,525,606号、第5,512,678号、第5,508,277号、第5,463,181号、第5,409,893号、第5,358,952号、第5,318,965号、第5,223,503号、第5,214,068号、第5,196,424号、第5,109,024号、第5,106,996号、第5,101,072号、第5,077,404号、第5,071,848号、第5,066,493号、第5,019,390号、第4,996,229号、第4,996,206号、第4,970,318号、第4,968,800号、第4,962,114号、第4,927,828号、第4,892,887号、第4,889,859号、第4,886,790号、第4,882,334号、第4,882,333号、第4,871,746号、第4,863,955号、第4,849,563号、第4,845,216号、第4,833,145号、第4,824,955号、第4,785,085号、第4,684,747号、第4,618,685号、第4,611,066号、第4,550,187号、第4,550,186号、第4,544,501号、第4,541,956号、第4,532,327号、第4,490,540号、第4,399,283号、第4,391,982号、第4,383,994号、第4,294,763号、第4,283,394号、第4,246,411号、第4,214,089号、第4,150,231号、第4,147,798号、第4,056,673号、第4,029,661号、第4,012,448号に開示されている抗新生物剤;
米国特許第5,192,799号、第5,036,070号、第4,778,800号、第4,753,951号、第4,590,180号、第4,690,930号、第4,645,773号、第4,427,694号、第4,424,202号、第4,440,781号、第5,686,482号、第5,478,828号、第5,461,062号、第5,387,593号、第5,387,586号、第5,256,664号、第5,192,799号、第5,120,733号、第5,036,070号、第4,977,167号、第4,904,663号、第4,788,188号、第4,778,800号、第4,753,951号、第4,690,930号、第4,645,773号、第4,631,285号、第4,617,314号、第4,613,600号、第4,590,180号、第4,560,684号、第4,548,938号、第4,529,727号、第4,459,306号、第4,443,451号、第4,440,781号、第4,427,694号、第4,424,202号、第4,397,853号、第4,358,451号、第4,324,787号、第4,314,081号、第4,313,896号、第4,294,828号、第4,277,476号、第4,267,328号、第4,264,499号、第4,231,930号、第4,194,009号、第4,188,388号、第4,148,796号、第4,128,717号、第4,062,858号、第4,031,226号、第4,020,072号、第4,018,895号、第4,018,779号、第4,013,672号、第3,994,898号、第3,968,125号、第3,939,152号、第3,928,356号、第3,880,834号、第3,668,210号に開示されている精神薬理/向精神剤;
米国特許第4,966,967号、第5,661,129号、第5,552,411号、第5,332,737号、第5,389,675号、第5,198,449号、第5,079,247号、第4,966,967号、第4,874,760号、第4,954,526号、第5,051,423号、第4,888,335号、第4,853,391号、第4,906,634号、第4,775,757号、第4,727,072号、第4,542,160号、第4,522,949号、第4,524,151号、第4,525,479号、第4,474,804号、第4,520,026号、第4,520,026号、第5,869,478号、第5,859,239号、第5,837,702号、第5,807,889号、第5,731,322号、第5,726,171号、第5,723,457号、第5,705,523号、第5,696,111号、第5,691,332号、第5,679,672号、第5,661,129号、第5,654,294号、第5,646,276号、第5,637,586号、第5,631,251号、第5,612,370号、第5,612,323号、第5,574,037号、第5,563,170号、第5,552,411号、第5,552,397号、第5,547,966号、第5,482,925号、第5,457,118号、第5,414,017号、第5,414,013号、第5,401,758号、第5,393,771号、第5,362,902号、第5,332,737号、第5,310,731号、第5,260,444号、第5,223,516号、第5,217,958号、第5,208,245号、第5,202,330号、第5,198,449号、第5,189,036号、第5,185,362号、第5,140,031号、第5,128,349号、第5,116,861号、第5,079,247号、第5,070,099号、第5,061,813号、第5,055,466号、第5,051,423号、第5,036,065号、第5,026,712号、第5,011,931号、第5,006,542号、第4,981,843号、第4,977,144号、第4,971,984号、第4,966,967号、第4,959,383号、第4,954,526号、第4,952,692号、第4,939,137号、第4,906,634号、第4,889,866号、第4,888,335号、第4,883,872号、第4,883,811号、第4,847,379号、第4,835,157号、第4,824,831号、第4,780,538号、第4,775,757号、第4,774,239号、第4,771,047号、第4,769,371号、第4,767,756号、第4,762,837号、第4,753,946号、第4,752,616号、第4,749,715号、第4,738,978号、第4,735,962号、第4,734,426号、第4,734,425号、第4,734,424号、第4,730,052号、第4,727,072号、第4,721,796号、第4,707,550号、第4,704,382号、第4,703,120号、第4,681,970号、第4,681,882号、第4,670,560号、第4,670,453号、第4,668,787号、第4,663,337号、第4,663,336号、第4,661,506号、第4,656,267号、第4,656,185号、第4,654,357号、第4,654,356号、第4,654,355号、第4,654,335号、第4,652,578号、第4,652,576号、第4,650,874号、第4,650,797号、第4,649,139号、第4,647,585号、第4,647,573号、第4,647,565号、第4,647,561号、第4,645,836号、第4,639,461号、第4,638,012号、第4,638,011号、第4,632,931号、第4,631,283号、第4,628,095号、第4,626,548号、第4,614,825号、第4,611,007号、第4,611,006号、第4,611,005号、第4,609,671号、第4,608,386号、第4,607,049号、第4,607,048号、第4,595,692号、第4,593,042号、第4,593,029号、第4,591,603号、第4,588,743号、第4,588,742号、第4,588,741号、第4,582,854号、第4,575,512号、第4,568,762号、第4,560,698号、第4,556,739号、第4,556,675号、第4,555,571号、第4,555,570号、第4,555,523号、第4,550,120号、第4,542,160号、第4,542,157号、第4,542,156号、第4,542,155号、第4,542,151号、第4,537,981号、第4,537,904号、第4,536,514号、第4,536,513号、第4,533,673号、第4,526,901号、第4,526,900号、第4,525,479号、第4,524,151号、第4,522,949号、第4,521,539号、第4,520,026号、第4,517,188号、第4,482,562号、第4,474,804号、第4,474,803号、第4,472,411号、第4,466,979号、第4,463,015号、第4,456,617号、第4,456,616号、第4,456,615号、第4,418,076号、第4,416,896号、第4,252,815号、第4,220,594号、第4,190,587号、第4,177,280号、第4,164,586号、第4,151,297号、第4,145,443号、第4,143,054号、第4,123,550号、第4,083,968号、第4,076,834号、第4,064,259号、第4,064,258号、第4,064,257号、第4,058,620号、第4,001,421号、第3,993,639号、第3,991,057号、第3,982,010号、第3,980,652号、第3,968,117号、第3,959,296号、第3,951,950号、第3,933,834号、第3,925,369号、第3,923,818号、第3,898,210号、第3,897,442号、第3,897,441号、第3,886,157号、第3,883,540号、第3,873,715号、第3,867,383号、第3,873,715号、第3,867,383号、第3,691,216号、第3,624,126号に開示されている心血管剤;
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米国特許第4,446,128号、第4,524,147号、第4,720,484号、第 4,722,899号、第 4,748,018号、第4,877,619号、第 4,998,931号、第5,049,387号、第5,118,509号、第5,152,980号、第5,256,416号、第5,468,729号、第5,583,139号、第5,604,234号、第5,612,060号、第5,612,350号、第 5,658,564号、第5,672,605号、第 5,681,571号、第5,708,002号、第5,723,718号、第 5,736,143号、第5,744,495号、第5,753,687号、第5,770,201号、第5,869,057号、第5,891,653号、第5,939,455号、第5,948,407号、第6,006,752号、第6,024,957号、第6,030,624号、第6,037,372号、第6,037,373号、第6,043,247号、第6,060,049号、第6,087,096号、第6,096,315号、第6,099,838号、第6,103,235号、第6,124,495号、第6,153,203号、第6,169,087号、第6,255,278号、第6,262,044号、第6,290,950号、第6,306,651号、第6,322,796号、第6,329,153号、第6,344,476号、第6,352,698号、第6,365,163号、第6,379,668号、第6,391,303号、第6,395,767号、第6,403,555号、第6,410,556号、第6,412,492号、第6,468,537号、第6,489,330号、第6,521,232号、第6,525,035号、第6,525,242号、第6,558,663号、第6,572,860号に開示されている免疫調整剤;
米国特許第5,292,736号、第5,688,825号、第5,554,789号、第5,455,230号、第5,292,736号、第5,298,522号、第5,216,165号、第5,438,064号、第5,204,365号、第5,017,578号、第4,906,655号、第4,906,655号、第4,994,450号、第4,749,792号、第4,980,365号、第4,794,110号、第4,670,541号、第4,737,493号、第4,622,326号、第4,536,512号、第4,719,231号、第4,533,671号、第4,552,866号、第4,539,312号、第4,569,942号、第4,681,879号、第4,511,724号、第4,556,672号、第4,721,712号、第4,474,806号、第4,595,686号、第4,440,779号、第4,434,175号、第4,608,374号、第4,395,402号、第4,400,534号、第4,374,139号、第4,361,583号、第4,252,816号、第4,251,530号、第5,874,459号、第5,688,825号、第5,554,789号、第5,455,230号、第5,438,064号、第5,298,522号、第5,216,165号、第5,204,365号、第5,030,639号、第5,017,578号、第5,008,264号、第4,994,450号、第4,980,365号、第4,906,655号、第4,847,290号、第4,844,907号、第4,794,110号、第4,791,129号、第4,774,256号、第4,749,792号、第4,737,493号、第4,721,712号、第4,719,231号、第4,681,879号、第4,670,541号、第4,667,039号、第4,658,037号、第4,634,708号、第4,623,648号、第4,622,326号、第4,608,374号、第4,595,686号、第4,594,188号、第4,569,942号、第4,556,672号、第4,552,866号、第4,539,312号、第4,536,512号、第4,533,671号、第4,511,724号、第4,440,779号、第4,434,175号、第4,400,534号、第4,395,402号、第4,391,827号、第4,374,139号、第4,361,583号、第4,322,420号、第4,306,097号、第4,252,816号、第4,251,530号、第4,244,955号、第4,232,018号、第4,209,520号、第4,164,514号、第4,147,872号、第4,133,819号、第4,124,713号、第4,117,012号、第4,064,272号、第4,022,836号、第3,966,944号に開示されている鎮痛薬;
米国特許第5,219,872号、第5,219,873号、第5,073,560号、第5,073,560号、第5,346,911号、第5,424,301号、第5,073,560号、第5,219,872号、第4,900,748号、第4,786,648号、第4,798,841号、第4,782,071号、第4,710,508号、第5,482,938号、第5,464,842号、第5,378,723号、第5,346,911号、第5,318,978号、第5,219,873号、第5,219,872号、第5,084,281号、第5,073,560号、第5,002,955号、第4,988,710号、第4,900,748号、第4,798,841号、第4,786,648号、第4,782,071号、第4,745,123号、第4,710,508号に開示されているコリン作用剤;
米国特許第5,091,528号、第5,091,528号、第4,835,157号、第5,708,015号、第5,594,027号、第5,580,892号、第5,576,332号、第5,510,376号、第5,482,961号、第5,334,601号、第5,202,347号、第5,135,926号、第5,116,867号、第5,091,528号、第5,017,618号、第4,835,157号、第4,829,086号、第4,579,867号、第4,568,679号、第4,469,690号、第4,395,559号、第4,381,309号、第4,363,808号、第4,343,800号、第4,329,289号、第4,314,943号、第4,311,708号、第4,304,721号、第4,296,117号、第4,285,873号、第4,281,189号、第4,278,608号、第4,247,710号、第4,145,550号、第4,145,425号、第4,139,535号、第4,082,843号、第4,011,321号、第4,001,421号、第3,982,010号、第3,940,407号、第3,852,468号、第3,832,470号に開示されているアドレナリン作用剤;
米国特許第5,874,479号、第5,863,938号、第5,856,364号、第5,770,612号、第5,702,688号、第5,674,912号、第5,663,208号、第5,658,957号、第5,652,274号、第5,648,380号、第5,646,190号、第5,641,814号、第5,633,285号、第5,614,561号、第5,602,183号、第4,923,892号、第4,782,058号、第4,393,210号、第4,180,583号、第3,965,257号、第3,946,022号、第3,931,197号に開示されている抗ヒスタミン剤;
米国特許第5,863,538号、第5,855,907号、第5,855,866号、第5,780,592号、第5,776,427号、第5,651,987号、第5,346,887号、第5,256,408号、第5,252,319号、第5,209,926号、第4,996,335号、第4,927,807号、第4,910,192号、第4,710,495号、第4,049,805号、第4,004,005号、第3,670,079号、第3,608,076号、第5,892,028号、第5,888,995号、第5,883,087号、第5,880,115号、第5,869,475号、第5,866,558号、第5,861,390号、第5,861,388号、第5,854,235号、第5,837,698号、第5,834,452号、第5,830,886号、第5,792,758号、第5,792,757号、第5,763,361号、第5,744,462号、第5,741,787号、第5,741,786号、第5,733,899号、第5,731,345号、第5,723,638号、第5,721,226号、第5,712,264号、第5,712,263号、第5,710,144号、第5,707,984号、第5,705,494号、第5,700,793号、第5,698,720号、第5,698,545号、第5,696,106号、第5,677,293号、第5,674,861号、第5,661,141号、第5,656,621号、第5,646,136号、第5,637,691号、第5,616,574号、第5,614,514号、第5,604,215号、第5,604,213号、第5,599,807号、第5,585,482号、第5,565,588号、第5,563,259号、第5,563,131号、第5,561,124号、第5,556,845号、第5,547,949号、第5,536,714号、第5,527,806号、第5,506,354号、第5,506,221号、第5,494,907号、第5,491,136号、第5,478,956号、第5,426,179号、第5,422,262号、第5,391,776号、第5,382,661号、第5,380,841号、第5,380,840号、第5,380,839号、第5,373,095号、第5,371,078号、第5,352,809号、第5,344,827号、第5,344,826号、第5,338,837号、第5,336,686号、第5,292,906号、第5,292,878号、第5,281,587号、第5,272,140号、第5,244,886号、第5,236,912号、第5,232,915号、第5,219,879号、第5,218,109号、第5,215,972号、第5,212,166号、第5,206,415号、第5,194,602号、第5,166,201号、第5,166,055号、第5,126,488号、第5,116,829号、第5,108,996号、第5,099,037号、第5,096,892号、第5,093,502号、第5,086,047号、第5,084,450号、第5,082,835号、第5,081,114号、第5,053,404号、第5,041,433号、第5,041,432号、第5,034,548号、第5,032,586号、第5,026,882号、第4,996,335号、第4,975,537号、第4,970,205号、第4,954,446号、第4,950,428号、第4,946,834号、第4,937,237号、第4,921,846号、第4,920,099号、第4,910,226号、第4,900,725号、第4,892,867号、第4,888,336号、第4,885,280号、第4,882,322号、第4,882,319号、第4,882,315号、第4,874,855号、第4,868,167号、第4,865,767号、第4,861,875号、第4,861,765号、第4,861,763号、第4,847,014号、第4,774,236号、第4,753,932号、第4,711,856号、第4,710,495号、第4,701,450号、第4,701,449号、第4,689,410号、第4,680,290号、第4,670,551号、第4,664,850号、第4,659,516号、第4,647,410号、第4,634,695号、第4,634,693号、第4,588,530号、第4,567,000号、第4,560,557号、第4,558,041号、第4,552,871号、第4,552,868号、第4,541,956号、第4,519,946号、第4,515,787号、第4,512,986号、第4,502,989号、第4,495,102号に開示されているステロイド剤が包含されるが、これらに限定されるわけではない(上記特許文献の開示内容は全て参照により本明細書に組み入れられる)。
コンジュゲートの薬物部分は薬物全体であるか、あるいはベクタータンパク質リガンドまたはリンカーに共有結合するための連結部位を持つと共に関心対象の標的に対する親和性および特異性を保持しているその結合性断片または結合部分であることができる。そのような薬物のコンジュゲートは、その薬物自体と同じ障害、疾患および適応に使用することができる。
〔C.好ましい癌化学療法活性剤〕
本発明のメガリンリガンドに基づくコンジュゲートにおける使用に好ましい癌化学療法剤には、脳腫瘍または脳内もしくは脳周辺の他の新形成の処置に、遊離型として役立ちうる、またはそのような腫瘍に遊離型で有用でないなら、メガリンリガンドもしくはそのメガリン結合性断片に連結した場合に役立ちうる、あらゆる薬物が包含される。そのような化学療法剤は、好ましくは、例えばアドリアマイシン(ドキソルビシンとも呼ばれる)、シスプラチン、パクリタキセル、その類似体を含む細胞毒性化学療法剤、ならびにエクスビボおよびインビボで腫瘍に対して活性を示す他の化学療法剤である。そのような化学療法剤には、アルキル化剤、代謝拮抗物質、天然物(ビンカアルカロイド類、エピドフィロトキシン(epidophyllotoxin)類、抗生物質、酵素および生物学的応答調整剤)、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管阻害剤、紡錘体毒、ホルモンおよびアンタゴニスト、ならびにその他の薬剤、例えば白金配位錯体、アントラセンジオン類、置換尿素類なども包含される。当業者には他の化学療法剤もわかるだろう。
好ましい化学療法剤は、遊離型では望ましい用量で、許容できない全身毒性を示すものである。治療レベルのそれら薬物に伴う一般的全身毒性は、それらをメガリンリガンドまたはメガリンリガンドのメガリン結合性断片に連結することによって低下する。有用な治療剤であるが心毒性による用量制限を受ける心毒性化合物は、特に好ましい。古典的な例はアドリアマイシン(ドキソルビシンとも呼ばれる)およびその類似体、例えばダウノルビシンである。そのような薬物にメガリンリガンドまたはそのメガリン結合性断片を連結すると、心臓における蓄積およびそれに伴う心毒性が低下する。
[VII.コンジュゲートの製造方法]
本発明は概して、活性剤に連結されたメガリンリガンドまたはそのメガリン結合性断片を含む方法および組成物を提供する。
一般に、メガリンリガンド−活性剤コンジュゲートは、当分野で知られる技術を使って製造することができる。化合物をタンパク質にコンジュゲートまたは化学架橋するためのアプローチは数多くあり、当業者は、コンジュゲートすべき活性剤にどの方法が適しているかを決定することができる。使用する方法は、メガリンリガンド/断片のメガリン結合能を損なわずに、また好ましくは、化合物が送達されたらその化合物の望ましい活性を変化させずに、活性剤をメガリンリガンドまたはそのメガリン結合性断片に接合することができなければならない。リガンドを種々の化合物にコンジュゲートする好ましい方法については実施例の項で後述する。RAPなどのメガリンリガンドに複雑な分子を連結する場合、SATA/スルホ−SMCC架橋反応(Pierce,イリノイ州ロックフォード)は特に好ましい。メガリンリガンドに金属を連結する場合、好ましい反応には、例えばクロラミンT法によるチロシン残基への結合や、ヨードビーズ(Pierce)を使ったヨウ素化反応などがあるが、これらに限定されるわけではない。
メガリンリガンドを上述の代表的なラベルとコンジュゲートする方法は、当業者であれば容易に達成することができる(「Trichothecene Antibody Conjugate(トリコセシン抗体コンジュゲート)」米国特許第4,744,981号;「Antibody Conjugate(抗体コンシ゛ュゲート)」米国特許第5,106,951号;「Fluorogenic Materials and Labeling Techniques(蛍光原材料および標識技術)」米国特許第4,018,884号;「Metal Radionuclide Labeled Proteins for Diagnosis and Therapy(診断および治療用金属放射性核種標識タンパク質)」米国特許第4,897,255号;および「Metal Radionuclide Chelating Compounds for Improved Chelation Kinetics(キレート速度を改善するための金属放射性核種キレート化合物)」米国特許第4,988,496号参照;また、Inman,Methods In Enzymology,Vol.34「Affinity Techniques,Enzyme Purification:Part B(アフィニティー技術、酵素精製:パートB)」Jakobyおよび Wichek編,Academic Press,ニューヨーク,30頁,1974も参照されたい;さらに、WilchekおよびBayer「The Avidin-Biotin Complex in Bioanalytical Applications(生体分析用途におけるアビジン−ビオチン複合体)」Anal.Biochem.171:1-32,1988も参照されたい;これらは全て参照によりあらゆる目的でそのまま本明細書に組み入れられる)。
活性剤がタンパク質またはペプチドである場合、活性剤をメガリンリガンドまたはそのメガリン結合性断片とコンジュゲートするために利用することができる架橋剤は数多くある。(例えば「Chemistry of Protein Conjugation and Crosslinking」1991,Shans Wong,CRC Press,アナーバーを参照されたい)。架橋剤は一般に、治療化合物上の利用可能な反応性官能基または治療化合物上に挿入された反応性官能基に基づいて選択される。また、反応性基がない場合は、光活性化可能な架橋剤を使用することもできる。場合によっては、メガリンリガンドと活性剤との間にスペーサーを含めることが望ましいこともある。一例として、メガリンリガンド上にスルフヒドリル基を導入し、タンパク質化合物上にカルボキシル基を介して反応性チオール基を含有する架橋剤を導入することによって、メガリンリガンドとタンパク質治療化合物とをコンジュゲートすることができる(例えばC.W.Vogel編「Immunoconjugates:Antibody Conjugates in Radioimaging and Therapy of Cancer」(Oxford University Press,1987)の28-55頁(著者WawizynczakおよびThorpe)ならびにBlairおよびGhose,J.Immunol.Methods 59:129,1983参照)。
リガンド−化学療法剤は、メガリンリガンドまたはそのメガリン結合性断片に連結された1以上の化合物部分を含むことができる。例えばコンジュゲーション反応は、単一のメガリンリガンド分子に対して1〜10分子以上のアドリアマイシンをコンジュゲートしうる。数個の金原子またはヨウ素原子を単一のメガリンリガンドまたはそのメガリン結合性断片にコンジュゲートすることができる。これらの製剤は混合物として使用するか、特定のメガリンリガンド−活性化合物化学量論製剤に精製することができる。当業者は、どの形式およびどの化学量論比が好ましいかを決定することができる。さらに、実施例に記載するRAP−アドリアマイシン−シスプラチナム組成物のように、活性化合物の混合物をメガリンリガンドまたはそのメガリン結合性断片に連結することもできる。これらのメガリンリガンド−活性剤コンジュゲートは、ある範囲のリガンド対活性剤化学量論比(例えば1:1〜1:4、1:5〜1:10、または1:10〜1:20のRAP:活性剤比)からなりうる。任意選択的に、複数の異なる活性剤(例えば2、3、または4個のそれら薬剤)を、それぞれの化学量論比で、メガリンリガンドまたはそのメガリン結合性断片対それら追加活性剤の合計比が活性剤20個あたり1個のメガリンリガンドまたはそのメガリン結合性断片より少なくならないように、メガリンリガンドまたはそのメガリン結合性断片にそれぞれコンジュゲートすることもできる。これらもまた、精製された混合物に分離するか、集合体として使用することができる。
リンカーは、好ましくは、アルキル、アリールおよび/またはアミノ酸主鎖を含有するように構築された有機部分であって、アミド、エーテル、エステル、ヒドラゾン、ジスルフィド結合またはそれらの任意の組合せを含有するだろう。アミノ酸、エーテルおよびアミド結合した成分を含有する結合は、生理的pH条件(通常、血清中では7.4であり、細胞(エンドソーム)内に取り込まれると4〜5である)では安定であるだろう。好ましい結合は、血清pHでは安定であるが細胞内pHにばく露されると加水分解して薬物を遊離させるエステル含有結合またはヒドラゾン含有結合である。ジスルフィド結合は還元的切断に対して感受性を持つので好ましい。アミノ酸リンカーは望ましい標的器官における特異的酵素による切断に対して感受性を持つように設計することができる。例示的なリンカーはBlattler et al.,Biochem.24:1517-1524,1985、King et al.,Biochem.25:5774-5779,1986、SrinivasacharおよびNevill,Biochem.28:2501-2509,1989に記載されている。
薬物−リンカー中間体は上述したものに似ているが、メガリンリガンドまたはそのメガリン結合性断片上の遊離アミノ基と反応するための活性エステルを持つか、当業者がメガリンリガンドまたはそのメガリン結合性断片に他の基を取り付けることができる場合にはそれら他の基によってメガリンリガンドまたはそのメガリン結合性断片上に生じさせた遊離チオールと反応するためのマレイミドを持つ。
タンパク質およびペプチドを架橋する方法は当業者によく知られている。関心対象の化合物を、例えばメガリンリガンドまたはそのメガリン結合性断片などのポリペプチドとコンジュゲートするか、そのようなリガンドを結合する物質とコンジュゲートするには、何百もの架橋剤を利用することができる(例えば、参照によりそのまま本明細書に組み入れられる「Chemistry of Protein Conjugation and Crosslinking」Shans Wong,CRC Press,アナーバー(1991)ならびに米国特許第5,981,194号およびPCT特許公開番号WO02/13843およびWO01/59459を参照されたい)。活性剤とメガリンリガンド、例えばRAP分子とのコンジュゲートを製造するために、多くの試薬および架橋剤を使用することができる(例えばHermansonら「Bioconjugate Techniques」Academic Press(1996))。架橋剤は一般に、治療化合物上の利用可能な反応性官能基または治療化合物上に挿入された反応性官能基に基づいて選択される。また、反応性基がない場合は、光活性化可能な架橋剤を使用することもできる。場合によっては、メガリンリガンドと活性剤との間にスペーサーを含めることが望ましいこともある。一例として、メガリンリガンド上にスルフヒドリル基を導入し、タンパク質化合物上にカルボキシル基を介して反応性チオール基を含有する架橋剤を導入することによって、メガリンリガンドとタンパク質治療化合物とをコンジュゲートすることができる(例えばC.W.Vogel編「Immunoconjugates:Antibody Conjugates in Radioimaging and Therapy of Cancer」(Oxford University Press,1987)の28-55頁(著者WawizynczakおよびThorpe)ならびにBlairおよびGhose,J.Immunol.Methods 59:129,1983参照)。一部の実施形態では、薬剤がリンカーから解放されるように、リンカーがリソソームの酸性pHでの加水分解を受けやすい。
リンカーを使用する場合、リンカーは、好ましくは、アルキル、アリールおよび/またはアミノ酸主鎖を含有するように構築された有機部分であって、アミド、エーテル、エステル、ヒドラゾン、ジスルフィド結合またはそれらの任意の組合せを含有するだろう。アミノ酸、エーテルおよびアミド結合した成分を含有する結合は、生理的pH条件(通常、血清中では7.4)では安定である。好ましい結合は、血清pHでは安定であるがリソソームpHにばく露されると加水分解して薬物を遊離させるエステル含有結合またはヒドラゾン含有結合である。ジスルフィド結合は還元的切断に対して感受性を持つので好ましい。また、アミノ酸リンカーは、望ましい標的器官(より好ましくはリソソームそのもの)における特異的酵素による切断に対して感受性を持つように設計することができる。例示的なリンカーはBlattlerら(1985)Biochem.24:1517-1524、Kingら(1986)Biochem.25:5774-5779、SrinivasacharおよびNevill(1989)Biochem.28:2501-2509に記載されている。
一部の実施形態では、リンカーがポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールである。別の実施形態では、リンカーが4〜20原子長である。別の実施形態では、リンカーが1〜30原子長であり、O、NまたはSからなる群より独立して選択されるヘテロ原子で置換されていてもよい炭素鎖原子を持つ。一部の実施形態では、1〜4個のC原子またはC原子の3分の1までが、O、N、Sから独立して選択されるヘテロ原子で置換される。別の実施形態では、リンカーが、リソソーム環境に送達されると加水分解を受ける部分(例えばリソソームpHで加水分解を受けやすいか、リソソーム酵素に接触した場合に加水分解を受けやすい部分)を含有する。一部の実施形態では、体液へのコンジュゲートの溶解度が高まるように、リンカー基が好ましくは親水性である。一部の実施形態では、リンカーが、他のリソソーム酵素(例えば標的リソソームにおいて欠乏していない酵素またはメガリンリガンド担体にコンジュゲートされていないリソソーム酵素)による攻撃の対象となる官能基を含有するか、またはそのような官能基によってメガリンリガンド分子もしくはタンパク質薬剤に取り付けられる。一部の実施形態では、アミノ酸もしくはペプチド、脂質、または糖残基を含むリンカーによって、メガリンリガンドと薬剤とが接合される。一部の実施形態では、合成的に導入された基または翻訳後修飾によって導入された基で、メガリンリガンドと薬剤とが接合される。
一部の実施形態では、薬剤−リンカー中間体は既に記載したものに似ているが、例えば、メガリンリガンド上の遊離アミノ基と反応することができる活性エステル、またはSATA反応もしくは活性剤を取り付けることができる他の基を介してメガリンリガンド上に生じさせた遊離チオールと反応することができるマレイミドなどを含む。
〔A.メガリンリガンドポリペプチドをタンパク質または酵素にコンジュゲートする方法〕
活性剤をタンパク質またはペプチドにコンジュゲートする方法は、当業者にはわかるだろう。例えば米国特許第5,981,194号を参照されたい。活性剤と生体ポリマーとのバイオコンジュゲートの製造には、多くの試薬および架橋剤を使用することができる。例えばHermanson et al.,Bioconjugate Techniques,Academic Press(1996)を参照されたい。
本発明の一部の実施形態では、メガリンリガンドおよび活性剤がどちらもポリペプチドであり、メガリンリガンド−活性剤コンジュゲートは融合タンパク質である。融合タンパク質は当分野で知られる標準的技術を使って製造することができる。通例、メガリンリガンドまたはその一部をコードするDNA分子が、タンパク質化合物をコードするDNA分子に連結される。そのキメラDNAコンストラクトを発現ベクター中にクローニングし、適切な宿主中で発現させることができる。その結果得られる融合タンパク質は、選択したタンパク質化合物に融合したメガリンリガンドまたはその一部を含有する。特にメガリンリガンド−LSD酵素タンパク質が考えられ、そのようなコンジュゲートの典型例としては、実施例VIIならびに図3および4に記載のRAP−ヒトアルファグルコシダーゼおよびRAP−イズロニダーゼコンジュゲート/融合タンパク質が挙げられる。これらの融合タンパク質は、当分野で知られる標準的技術を使って製造された。
本発明のキメラタンパク質は、キメラタンパク質全体をコードする単一の核酸を発現させる宿主細胞を使って、またはそれぞれがキメラタンパク質のドメインと、任意選択的にそれらのドメインを連結する役割を果たす1以上のアミノ酸とをコードする2以上の核酸配列を発現させる宿主細胞を使って、製造することができる。キメラタンパク質は化学合成によって製造することもできる。
(宿主細胞)
キメラタンパク質を製造するために使用される宿主細胞は、細菌、酵母、昆虫、非哺乳類脊椎動物、または哺乳類細胞であり、哺乳類細胞には、例えばハムスター、サル、チンパンジー、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジおよびヒト細胞が包含されるが、これらに限定されるわけではない。宿主細胞は不死化細胞(細胞株)または非不死化(初代または二次)細胞であることができ、多種多様な細胞タイプ、例えば線維芽細胞、ケラチノサイト、上皮細胞(例えば乳房上皮細胞、腸上皮細胞)、卵巣細胞(例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞、すなわちCHO細胞)、内皮細胞、膠細胞、神経細胞、血液の固形成分(例えばリンパ球、骨髄細胞)、筋細胞、肝細胞およびこれら体細胞タイプの前駆体のいずれであってもよい。宿主細胞には、LRPを発現しないCHO細胞の突然変異体、例えばCHO13−5−1などを含めることができる(FitzGerald et al.,J.Biol.Chem.,129(6):1533-41,1995)。
キメラタンパク質をコードするDNAまたはRNAを含有し発現させる細胞を、本明細書では遺伝子改変細胞という。キメラタンパク質をコードするDNAまたはRNAを含有し発現させる哺乳類細胞を、遺伝子改変哺乳類細胞という。細胞へのDNAまたはRNAの導入は、例えばエレクトロポレーション、マイクロインジェクション、マイクロプロジェクタイルボンバードメント、リン酸カルシウム沈殿法、改変リン酸カルシウム沈殿法、陽イオン脂質処理、フォトポレーション、融合法、受容体媒介導入法、またはポリブレン沈殿法などの既知のトランスフェクション法によって行なわれる。あるいは、ウイルスベクターへの感染によってDNAまたはRNAを導入することもできる。キメラタンパク質をコードするDNAまたはRNAを発現させる細胞(哺乳類細胞を含む)を作製する方法は、Richard F Selden、Douglas A.TrecoおよびMichael W.Heartleinによる「In Vivo Protein Production and Delivery System for Gene Therapy(遺伝子治療のためのインビボタンパク質産生および送達システム)」と題する同時係属中の米国特許出願第08/334,797号(1994年11月4日出願)、Richard F Selden、Douglas A.TrecoおよびMichael W.Heartleinによる「In Vivo Production and Delivery of Erythropoietin or Insulinotropin for Gene Therapy(遺伝子治療のためのエリスロポエチンまたはインスリノトロピンのインビボ産生および送達)」と題する米国特許出願第08/334,455号(1994年11月4日出願)、ならびにDouglas A.Treco、Michael W.HeartleinおよびRichard F Seldenによる「Targeted Introduction of DNA Into Primary or Secondary Cells and Their Use for Gene Therapy(初代細胞または二次細胞へのDNAの標的導入および遺伝子治療へのそれらの使用)」と題する米国特許出願第08/231,439号(1994年4月20日出願)に記載されている。これらの出願のそれぞれが教示する内容は特に、参照によりそのまま本明細書に組み入れられる。
(核酸コンストラクト)
キメラタンパク質を発現させるために用いられる核酸コンストラクトは、トランスフェクトされた哺乳類細胞において染色体外で(エピソームとして)発現されるものであるか、受容細胞のゲノム中にランダムに、または前もって選択された標的部位に相同組換えによって、組み込まれるものであることができる。染色体外で発現されるコンストラクトは、キメラタンパク質コード配列の他に、細胞内でのタンパク質の発現に十分な配列と、任意選択的に、そのコンストラクトの複製に十分な配列とを含む。通例、これは、プロモーター、キメラタンパク質コードDNAおよびポリアデニル化部位を含む。キメラタンパク質をコードするDNAは、その発現がプロモーターの制御を受けるような形で、コンストラクト中に配置される。任意選択的に、コンストラクトは追加成分、例えば以下の成分の1以上を含有してもよい:スプライス部位、エンハンサー配列、適当なプロモーターの制御を受ける選択可能マーカー、および適当なプロモーターの制御を受ける増幅可能マーカー遺伝子。
DNAコンストラクトが細胞のゲノムに組み込まれる実施形態では、コンストラクトが含む必要があるのは、キメラタンパク質コード核酸配列だけである。任意選択的に、コンストラクトはプロモーターおよびエンハンサー配列、1以上のポリアデニル化部位、1以上のスプライス部位、1以上の選択可能マーカーをコードする核酸配列、増幅可能マーカーをコードする核酸核酸および/またはDNAの組み込みをゲノム内の選択した部位にターゲティングするための、受容細胞中のゲノムDNAと相同なDNA(ターゲティングDNAまたはDNA配列)を含むこともできる。
(細胞培養法)
キメラタンパク質をコードするDNAまたはRNAを含有する哺乳類細胞は、細胞の成長および当該DNAまたはRNAの発現に適した条件下で培養される。キメラタンパク質を発現させる細胞は既知の方法および本明細書に記載されている方法を使って同定することができ、キメラタンパク質産生の増幅を行なって、または行なわずに、既知の方法および同様に本明細書に記載されている方法を使ってキメラタンパク質を単離し精製することができる。同定は、例えば、キメラタンパク質をコードするDNAまたはRNAの存在を示唆する表現型を示す遺伝子改変哺乳類細胞をスクリーニングすることによって、例えばPCRスクリーニング、サザンブロット解析によるスクリーニング、またはキメラタンパク質の発現に関するスクリーニングなどによって、実行することができる。キメラタンパク質コードDNAが組み込まれている細胞の選択は、DNAコンストラクト中に選択可能マーカーを含め、選択可能マーカー遺伝子を含有するトランスフェクト細胞または感染細胞を、その選択可能マーカー遺伝子を発現させる細胞だけの生き残りに適した条件下で培養することによって、行なうことができる。導入されたDNAコンストラクトのさらなる増幅は、増幅に適した条件下で遺伝子改変哺乳類細胞を培養することによって(例えば、増幅可能マーカー遺伝子を含有する遺伝子改変哺乳類細胞を、その増幅可能マーカー遺伝子のコピーを複数含有する細胞だけが生き残りうるような濃度の薬物の存在下で培養することによって)、達成することができる。
キメラタンパク質を発現させる遺伝子改変哺乳類細胞は、本明細書に記載するとおり、発現産物の検出によって同定することができる。例えば、担体がメガリンリガンドであるキメラタンパク質を発現させる哺乳類細胞は、サンドイッチ酵素免疫アッセイによって同定することができる。抗体は、コンジュゲートのメガリン結合部分または活性剤部分に対する抗体であることができる。
[VIII.ラベル]
一部の実施形態では、メガリンリガンドに基づく活性剤コンジュゲートを、その検出が容易になるように、標識する。「ラベル」または「検出可能部分」とは、分光法的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、化学的手段、または他の物理的手段によって検出することができる組成物である。例えば、本発明での使用に適したラベルには、放射性ラベル(例えば32P)、蛍光物質(例えばフルオレセイン)、高電子密度試薬、酵素(例えばELISAでよく使用されるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、または例えば放射性ラベルを当該ハプテンもしくはペプチドに組み込むことなどによって検出可能にすることができるハプテンおよびタンパク質、または当該ハプテンもしくはペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために用いることができるハプテンおよびタンパク質などがあるが、これらに限定されるわけではない。
上述のように、使用するスクリーニングアッセイに依存して、コンジュゲートの活性剤、リンカーまたはメガリンリガンドポリペプチド部分を標識することができる。使用される個々のラベルまたは検出可能基は、それがコンジュゲートの生物学的活性を著しく妨害しない限り、本発明の決定的な側面ではない。検出可能基は、検出可能な物理的または化学的性質を持つ任意の物質であることができる。したがってラベルは、分光法的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、電気的手段、光学的手段または化学的手段によって検出することができる任意の組成物である。
本発明での使用に適したラベルの例には、例えば蛍光染料(例えばフルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミンなど)、放射性ラベル(例えば3H、125I、35S、14C、または32P)、酵素(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、その他ELISAでよく使用されるもの)、および比色用ラベル、例えばコロイド金または有色のガラスもしくはプラスチックビーズ(例えばポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)があるが、これらに限定されるわけではない。
ラベルは、当分野で周知の方法に従って、所望のアッセイ成分に直接または間接的にカップリングすることができる。好ましくは、一実施形態として、本発明の活性剤をコンジュゲートするために、イソシアネート試薬を使って生体ポリマーにラベルを共有結合する。本発明の一態様では、本発明の二官能性イソシアネート試薬を使って、生体ポリマーにラベルをコンジュゲートすることにより、活性剤が取り付けられていないラベル生体ポリマーコンジュゲートを形成させることができる。そのラベル生体ポリマーコンジュゲートは、本発明の標識コンジュゲートを合成するための中間体として使用するか、生体ポリマーコンジュゲートを検出するために使用することができる。上述のように、多種多様なラベルを使用することができ、ラベルの選択は要求される感受性、所望するアッセイ成分とのコンジュゲーションの容易さ、安定性の要件、利用できる計器装備、および廃棄規定に依存する。非放射性ラベルはしばしば間接的手段によって取り付けられる。一般に、リガンド分子(例えばビオチン)が分子に共有結合される。次に、そのリガンドが、生得的に検出可能であるもう一つの分子、または検出可能酵素、蛍光化合物もしくは化学発光化合物などのシグナル系に共有結合されたもう一つの分子(例えばストレプトアビジン)に結合する。
コンジュゲートは、シグナル生成化合物に、例えば酵素または蛍光物質とのコンジュゲーションによって、直接コンジュゲートすることもできる。ラベルとしての使用に適した酵素には、例えばヒドロラーゼ、特にホスファターゼ、エステラーゼおよびグリコシダーゼ、またはオキシダーゼ類(oxidotases)、特にペルオキシダーゼなどがあるが、これらに限定されるわけではない。ラベルとしての使用に適した蛍光化合物、すなわち蛍光物質には、例えばフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなどがあるが、これらに限定されるわけではない。好適な蛍光物質のさらなる例には、例えばエオシン、TRITC−アミン、キニン、フルオレセインW、アクリジンイエロー、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、エリスロセイン(erythroscein)、ルテニウム(トリス、ビピリジニウム)、テキサスレッド、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチドなどがあるが、これらに限定されるわけではない。ラベルとしての使用に適した化学発光化合物には、例えばルシフェリンおよび2,3−ジヒドロフタラジンジオン類、例えばルミノールがあるが、これらに限定されるわけではない。本発明の方法で使用することができる様々な標識およびシグナル生成システムの概要については、米国特許第4,391,904号を参照されたい。
ラベルを検出する手段は当業者にはよく知られている。例えば、ラベルが放射性ラベルである場合、検出手段にはシンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィーでの写真フィルムなどが包含される。ラベルが蛍光ラベルである場合は、適当な波長の光で蛍光色素を励起させ、その結果生じた蛍光を検出することによって検出することができる。蛍光は視覚的に、電荷結合素子(CCD)または光電子倍増管などの電子検出器を使って検出することができる。同様に酵素ラベルも、適当な酵素基質を与えて、その結果生じる反応生成物を検出することによって、検出することができる。比色用ラベルまたは化学発光ラベルは、単にラベルに付随する色を観察するだけで検出することができる。本発明の方法での使用に適した他の標識および検出系は、当業者には直ぐにわかるだろう。そのような標識された調整物質およびリガンドは、疾患または健康状態の診断に使用することができる。
[VIII.メガリンリガンド−活性剤コンジュゲートおよびそれらの送達の調整物質に関するスクリーニングアッセイ]
本発明は、メガリンリガンドポリペプチド−活性剤コンジュゲートに関するスクリーニングアッセイを提供する。この場合、コンジュゲートは、メガリン受容体(これは全細胞中にあるか、細胞抽出物中にあるか、半精製状態、精製状態またはその活性の測定が可能な他の任意の形式で存在することができる)の測定可能な活性に影響を及ぼすその能力について試験される。活性は、メガリンの発現、機能または分解における任意の活性であることができ、例えばそのような活性の量またはタイミングを含む。そのような活性には、例えば、メガリン遺伝子配列またはmRNA転写物の転写、転写物プロセシング、翻訳または転写物の安定性などが包含される。そのような活性には、例えば、新しいLRPの合成、メガリンの細胞内局在、およびメガリンの生物学的活性の活性化などが包含される。そのような活性には、例えば、メガリンの物質結合能力、コンフォメーション採択能力、反応触媒能力、既知リガンド結合能力などが包含される。そのような活性には、例えばメガリンの量または安定性、メガリンのプロセシングおよび除去または分解などが包含される。好ましい実施形態では、使用されるメガリンリガンドが、改変されたものであるか、元々、他のどのLRP受容体よりもメガリンに対して高い結合親和性を持つもの、特にLRP1よりもメガリンに対して高い結合親和性を持つものである。メガリンに関して上述したものと同様のスクリーニングアッセイは、他のLRP受容体と比較したメガリンに対するメガリンリガンドの相対的結合親和性の比較が得られるように、他のどのLRP受容体についても設定することができる。
本発明では多種多様なスクリーニング形式が考えられる。一部の設計はロースルプットとみなされ、1個または数個の化合物が逐次的にまたは並行して試験されるに過ぎない。ハイスループットスクリーニングアッセイは、何万または何十万という化合物を数週間または数ヶ月でスクリーニングするのに適している。「インシリコ」スクリーニング形式では、コンピュータ援用合理設計技術を利用して、メガリンの生物学的活性の潜在的調整物質を同定する。
〔A.メガリン受容体活性を調整することによるメガリンリガンドコンジュゲート活性剤の取り込みの調整〕
例えば脳またはリソソーム(ただしこれらに限定されるわけではない)へのメガリンリガンド−活性剤コンジュゲートの取り込みおよび送達を増加させることが、例えばコンジュゲートが神経学的状態および/またはLSDの処置に使用されていて、送達量の増加が治療上の利益をもたらすなど(ただしこれらに限定されるわけではない)の状況では有用であり、望ましいことは、当業者には理解されるだろう。例えばコンジュゲートがその潜在的心臓保護作用のために用いられているか、または他の(非CNS)器官で使用されていて、脳取り込みの副作用が回避されるべきである場合(ただしこれらに限定されるわけではない)など、様々な理由により、血液脳関門を横切るコンジュゲートの取り込みおよび送達を減少させることが有用であり、望ましいことは、当業者には理解されるだろう。
好適なメガリンリガンド、そのメガリン結合性断片、メガリンリガンドまたはそのメガリン結合性断片の活性剤コンジュゲート、およびメガリンおよび/または他のLRP活性の調整物質およびメガリンリガンドコンジュゲート送達の調整物質は、下記実施例1に記載のトランズウェル(Transwell)装置の変法を使って容易に同定することもできる。この変法では、化合物(例えばメガリンリガンド、メガリンリガンドと活性剤とのコンジュゲートまたは調整物質)をトランズウェル装置内の細胞の管腔表面に加える。次に、その化合物を、それがどの程度、BBCECを横断して管外側に至ることができるか、あるいは(調整物質であれば)それがどの程度、BBCECを横切って管外側に至るメガリンリガンドもしくはメガリンリガンドのメガリン結合性断片または他のLRPリガンドの輸送を増加または減少させるかについて、スコア化する。薬理学的に優れた調整物質を同定するために、化合物ライブラリーを容易にスクリーニングまたは試験することができる。
ここで用いられる例示的リガンドはRAPである。メガリン受容体の他の既知リガンドをスクリーニングして、コンジュゲートの送達の調整物質として、またはそのような調整物質を設計するためのモデルとして使用することができる。これらのリガンドには、例えばApoE、キロミクロン残骸、β−VLDL、活性化α2−マクログロブリン、tPA、組織因子阻害剤、プロ−uPA、PAI−1、サポシン、ゲンタマイシン、チログロブリン、ポリミキシンB、精嚢分泌タンパク質A、トロンボスポンジン−1、ラクトフェリン、およびβ−APPなどがあるが、これらに限定されるわけではない。これらのリガンドはメガリンに対するそれらの結合親和性が増加するように修飾することができる。LRP1と比較してメガリンに対して高い結合親和性を持つリガンドは特に好ましい。
[IX.使用方法、薬学的組成物、およびそれらの投与]
コンジュゲートおよび調整物質は、様々な経路で投与することができる。経口製剤の場合、コンジュゲートは単独で使用するか、錠剤、散剤、顆粒剤またはカプセル剤を製造するために適当な添加剤と組合せて、例えば、ラクトース、マンニトール、トウモロコシデンプンまたはバレイショデンプンなどの通常の添加剤と組合せて、結晶性セルロース、セルロース誘導体、アラビアゴム、トウモロコシデンプンまたはゼラチンなどの結合剤と組合せて、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤と組み合わせて、そして所望であれば、希釈剤、緩衝化剤、湿潤剤、保存剤および着香剤と組み合わせて、使用することができる。
コンジュゲートおよび調整物質は、それらを、水性溶媒または非水性溶媒、例えば植物油もしくは他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステルまたはプロピレングリコールなど(所望であれば、可溶化剤、等張化剤、懸濁剤、乳化剤、安定剤および保存剤を含むもの)に溶解、懸濁または乳化することによって、注射用の製剤に製剤化することができる。
コンジュゲート、調整物質、およびLRPリガンドは、吸入によって投与されるエアロゾル製剤に利用することができる。本発明の化合物は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧された許容できる噴射剤中に製剤化することができる。
さらに、コンジュゲートおよび調整物質は、乳化基剤または水溶性基剤などの種々の基剤と混合することによって、坐剤にすることもできる。本発明の化合物は、坐剤により直腸投与することができる。坐剤は、体温で溶解するが室温では固化するカカオ脂、カーボワックスおよびポリエチレングリコールなどのビヒクルを含むことができる。
シロップ剤、エリキシル剤および懸濁剤などの経口投与用または直腸投与用のコンジュゲート、調整物質、およびLRPリガンドの単位剤形を提供することができ、例えば茶さじ一杯、食匙一杯、錠剤または坐剤などの各投与単位は、所定の量の活性剤含有組成物を含有する。同様に、注射用または静脈内投与用の単位剤形は、滅菌水、生理食塩水または他の薬学的に許容できる担体中の溶液として、組成物中にコンジュゲートを含むことができる。
実際の使用にあたって、本発明のコンジュゲート、調整物質、およびLRPリガンドは、活性成分として、通常の薬学的配合技術に従って薬学的担体と十分に混和することができる。担体は、投与、例えば経口投与または非経口投与(静脈内投与を含む)に望まれる製剤の形態に依存して、多種多様な形態をとりうる。経口剤形用の組成物を製造する際には、通常の薬学的媒質、例えば懸濁剤、エリキシル剤および溶液剤などの経口液状製剤の場合であれば、例えば水、グリセロール、油、アルコール、着香剤、保存剤、着色剤などを、また例えば散剤、硬および軟カプセル剤ならびに錠剤などの経口固形製剤の場合であれば、担体、例えばデンプン、糖類、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、分散剤などを、どれでも使用することができ、固形経口製剤は液状経口製剤よりも好ましい。
経皮投与経路については、薬物の経皮投与法が「Remington's Pharmaceutical Sciences」第17版(Gennaro et al.Eds,Mack Publishing Co.,1985)に記載されている。皮膚貼付剤は、本発明のコンジュゲート、調整物質、およびLRPリガンドの好ましい経皮送達手段である。貼付剤は、好ましくは、化合物の吸収量が増加するように、DMSOなどの吸収促進剤を供給する。他の経皮薬物送達法は、米国特許第5,962,012号、第6,261,595号、および第6,261,595号に開示されている。これらの特許はそれぞれ参照によりそのまま本明細書に組み入れられる。
具体的実施形態では、本明細書に記載するコンジュゲートの治療的投与が、CSFへの髄腔内投与によって行なわれるだろうと考えられる。本発明の髄腔内投与は、薬学的組成物を脳室中に導入することを含みうる。もう一つの選択肢として、髄腔内投与は、薬学的組成物を腰部に導入することを含みうる。さらにもう一つの選択肢として、髄腔内投与は大槽中に薬学的組成物を導入することを含む。そのような投与はいずれも、好ましくは、ボーラス注射によって行なわれる。症状の重症度およびその治療に対する対象の応答性に応じて、そのようなボーラス注射は週に1回、月に1回、6週間毎に1回、または年に1回投与することができる。別の実施形態では、髄腔内投与が注入ポンプを使って達成される。医薬品は、もちろん、少なくとも数日間にわたって持続的に髄腔内投与することができるだろう。あるいは、髄腔内投与は少なくとも4週間にわたって持続的に行なわれる。もちろん、投与が持続注入によって行なわれる場合は、その酵素補充療法の投薬速度は、ボーラス注射投与と比較して著しく低下させることができる。好ましい実施形態では、コンジュゲートの活性剤がイズロニダーゼであり、MPSの処置を受ける哺乳動物の体重20kgにつき約1mgのイズロニダーゼを含む量で送達される。特定実施形態では、上記の用量が15ccのCSFに送達される。そのような濃度では、酵素濃度がCSF1mlあたり18,000単位になると考えられる。上述の投薬量は単なる例示的投薬量であると理解すべきであり、この投薬量を変更できることは、当業者には理解されるだろう。
本発明の方法および組成物は、酵素補充療法に先だって抗原特異的寛容を誘導する方法および組成物と併用することができる。そのような方法には、抗原特異的寛容の誘導であって、例えばシクロスポリンAなどの免疫抑制剤の投与を含み、さらに例えばヌクレオチド類似体または代謝拮抗物質など(ただしこれらに限定されるわけではない)の抗増殖剤の投与を含んでもよいものが包含される。抗増殖剤はアザチオプリンであることができる。さらなる方法は、例えば米国特許公開第20030211113号として公開された米国特許出願第10/141,668号、および米国特許公開第20040009906号として公開された米国特許出願第10/429,314号に記載されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
薬学的に許容できる賦形剤、例えばビヒクル、アジュバント、担体または希釈剤は、市販されている。さらに、薬学的に許容できる補助物質、例えばpH調節および緩衝剤、張性調節剤、安定剤、湿潤剤なども市販されている。
用量レベルが具体的化合物、症状の重症度および副作用に対する対象の感受性の関数として変動しうることは、当業者には容易に理解されるだろう。当業者は、例えば患者、試験動物およびインビトロで行なわれる用量応答評価および薬物動態評価など(ただしこれらに限定されるわけではない)の様々な手段により、与えられた化合物に関する好ましい投薬量を容易に決定することができる。
これらの各態様において、組成物には、経口投与、直腸投与、局所投与、非経口投与(皮下、筋肉内および静脈内投与を含む)、肺投与(鼻または口腔吸入)、または鼻投与に適した組成物(ただしこれらに限定されない)が包含されるが、どの場合でも、最も適切な経路は、一つには、処置される状態の性質および重症度と、活性成分の性質とに依存するだろう。例示的な投与経路は経口経路および静脈内経路である。組成物は単位剤形で便利に提供することができ、薬学分野で周知の方法のいずれかによって製造することができる。
実際の使用にあたって、本発明の調整物質は、活性成分として、通常の薬学的配合技術に従って薬学的担体と十分に混和することができる。担体は、投与、例えば経口投与または非経口投与(静脈内投与を含む)に望まれる製剤の形態に依存して、多種多様な形態をとりうる。経口剤形用の組成物を製造する際には、通常の薬学的媒質、例えば懸濁剤、エリキシル剤および溶液剤などの経口液状製剤の場合であれば、例えば水、グリセロール、油、アルコール、着香剤、保存剤、着色剤などを、また例えば散剤、硬および軟カプセル剤ならびに錠剤などの経口固形製剤の場合であれば、担体、例えばデンプン、糖類、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、分散剤などを、どれでも使用することができ、固形経口製剤は液状経口製剤よりも好ましい。
錠剤およびカプセル剤は投与が容易なので、これらは最も有利な単位剤形に相当し、この場合は明らかに固形の薬学的担体が使用される。所望であれば、錠剤は標準的な水性技術または非水性技術によって被覆してもよい。これらの組成物における活性化合物のパーセンテージはもちろん変動することができ、当該単位の重量の約2パーセント〜約60パーセントが好都合であるだろう。
本発明のコンジュゲート、調整物質、およびリガンドは、動物(特にヒト)における治療的介入、予防的介入および診断的介入に役立つ。本明細書に記載するように、本コンジュゲートは、使用する生体ポリマーに依存して、任意の標的器官、コンパートメント、または部位で活性剤の優先的な蓄積および/または放出を示す。
本発明の組成物は、ウイルスエンベロープまたは小胞に封入するか取り付けて、または細胞中に組み込んで、投与することができる。小胞は、通常は球状でしばしば脂質性のミセル粒子である。リポソームは二分子膜で形成される小胞である。好適な小胞には、例えばユニラメラ小胞およびマルチラメラ脂質小胞またはリポソームが包含されるが、これらに限定されるわけではない。そのような小胞およびリポソームは多種多様な脂質またはリン脂質化合物、例えばホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、糖脂質、ガングリオシドなどから、標準的な方法、例えば米国特許第4,394,448号に記載の方法などを使って製造することができる。そのような小胞およびリポソームは、化合物の細胞内に投与するため、および標的器官に化合物を送達するために、使用することができる。p97−関心対象組成物の制御放出も、封入を使って達成することができる(例えば米国特許第5,186,941号参照)。
メガリンリガンドに基づく活性剤コンジュゲートまたは調整物質組成物を血流中に、または好ましくは少なくとも血液脳関門の外側に送達する任意の投与経路を使用することができる。組成物は好ましくは末梢に、最も好ましくは静脈内に投与されるか、心臓カテーテルによって投与される。頚静脈内注射および頚動脈内注射も有用である。組成物は局所的または局部的に、例えば腹腔内または皮下または筋肉内に、投与することができる。ある態様では、組成物を適切な薬学的希釈剤または担体と共に投与する。
投与すべき投薬量は個々の必要、所望する作用、使用する活性剤、生体ポリマーおよび選択した投与経路に依存するだろう。コンジュゲートの好ましい投薬量は約0.2pmol/kg〜約25nmol/kgの範囲であり、特に好ましい投薬量は2〜250pmol/kgの範囲である。あるいは、コンジュゲートの好ましい用量は0.02〜2000mg/kgの範囲内にあるだろう。これらの投薬量は生体ポリマーに付随する活性剤部分または薬物部分の数による影響を受けるだろう。もう一つの選択肢として、投薬量は投与される活性剤に基づいて計算することもできる。
好ましい実施形態ではコンジュゲートがヒトRAPを含む。例えば、0.005〜100mg/kgのアドリアマイシンを含むRAP−アドリアマイシンの用量も、インビボで有用である。アドリアマイシンとして0.05mg/kg〜20mg/kgのRAP−アドリアマイシンの投薬量は、特に好ましい。当業者は、メガリンリガンドに連結された化合物の好ましい用量を、一つには、遊離型の当該化合物に用いられている推奨投薬量に基づいて決定することができる。RAPなどのメガリンリガンドに対する活性剤のコンジュゲーションは、一般的には、同じ作用を得るのに必要な薬物の量を低下させる。
本発明のコンジュゲートおよび調整物質は、動物(特にヒト)における治療的介入、予防的介入および診断的介入に役立つ。メガリンリガンド化合物は特定の組織における優先的蓄積を示しうる。診断用途に関する好ましい医学的適応には、例えば関心対象の標的器官(例えば肺、肝臓、腎臓、脾臓)に関係する任意の状態が包含される。特に好ましい実施形態では、関心対象の標的器官は脳である。
本方法は多種多様な疾患状態の処置に利用することができる。一定の実施形態では、所望の活性を持つ活性剤または薬物は既に同定されているが、その活性剤または薬物が標的部位、標的領域または標的コンパートメントに、完全に満足できる治療結果をもたらすほど十分には送達されないような疾患状態における本方法の使用が、特に興味深い。そのような活性剤または薬物と共に、メガリンリガンドまたはそのメガリン結合性断片に活性剤をコンジュゲートする本方法を使用することにより、活性剤または薬物の治療効力および治療係数を高めることができる。
本コンジュゲートを使って処置することができる具体的な疾患状態は、そのコンジュゲート中に存在することができる薬物部分のタイプと同じように多様である。したがって、疾患状態には、細胞増殖性疾患、例えば新生物疾患、自己免疫疾患、心血管疾患、ホルモン異常疾患、変性疾患、加齢疾患、中枢神経系の疾患(例えばアルツハイマー病、てんかん、高脂血症)、精神疾患および精神医学的状態(例えば統合失調症、うつおよび不安などの気分障害)、感染性疾患、酵素欠乏疾患、上述したようなリソソーム蓄積症などが包含される。
処置は、コンジュゲートの投与に伴って対象にもたらされる任意の有益な結果、例えば疾患に冒される可能性の低下、疾患の防止、宿主を患わせる疾患の進行の鈍化、停止もしくは逆転、またはその疾患状態に伴う症状の改善などを包含するものとし、ここに改善または有益という用語は、パラメータの強さの、例えば処置される病的状態に伴う症状(炎症およびそれに伴う疼痛など)の、少なくとも減少を指すべく、広い意味で用いられる。したがって処置には、病的状態が、または少なくともそれに伴う症状が、完全に阻害される状況、例えばその発生が妨げられるか、停止されて、例えば終結されて、宿主がもはやその病的状態に、または少なくともその病的状態を特徴づける症状に、患わされない状況も包含される。
特定の実施形態では、処置される障害がリソソーム蓄積症であり、コンジュゲートが薬学的組成物として、前記哺乳動物の脳組織中に存在する蓄積顆粒の量を減少させるのに有効な量で投与される。通例、そのような障害の症状は、病歴、理学的検査、心エコー法、心電図検査、磁気共鳴画像、睡眠ポリグラフ、骨格調査、一連の運動計測、角膜写真、および皮膚生検の定型的評価によって監視される。そのような障害において、治療剤にコンジュゲートされたメガリン結合部分を投与すると、前記対象における発育遅延および退行の正常化、高圧水頭症の軽減、前記対象における脊髄圧迫の軽減、ならびに前記対象の脳血管周辺の血管周囲嚢胞の数および/または大きさの減少が起こる。そのような続発症を監視し評価する方法は当業者には知られている。そのような続発症のさらなる説明について、当業者は、米国特許第6,585,971号、米国特許第6,569,661号および米国特許第6,426,208号ならびに米国特許公開第20040009906号を参照されたい。
一部の態様では、送達される治療に対する動物の耐性を増加させることが有用であるだろう。そのような方法は、2003年5月5日に出願され20040009906として公開された米国特許出願第10/429,314号に記載されている(この文献は参照によりそのまま本明細書に組み入れられる)。
好ましい実施形態では、動物がムコ多糖症Iを患っていて、そのα−L−イズロニダーゼ活性は正常値の約50%以下である。そのような実施形態では、例えば週に約0.001mg/kg体重〜0.5mg/kg体重の有効量のヒトα−L−イズロニダーゼを、その欠乏症を患っている対象に、コンジュゲートの一部として、投与することが望ましいだろう。別の実施形態では、対象に、週に約0.01mg/当該哺乳動物のCSF 15cc〜約5.0mg/当該哺乳動物のCSF 15ccの用量の前記ヒトα−L−イズロニダーゼを投与する。ここで考えられる治療法は、リソソーム蓄積症を持つ対象の脳細胞におけるグリコサミノグリカン(GAG)の破壊を促進する。脳細胞は、ニューロン、神経膠細胞、上衣細胞であることができる。通例、顆粒蓄積が起こる脳細胞であって、本発明のコンジュゲートを投与することによって改善すべきであるものには、ニューロン、膠細胞、小膠細胞、アストロサイト、乏突起膠細胞、血管周囲細胞、血管外皮細胞、髄膜細胞、上衣細胞、くも膜顆粒細胞、くも膜、硬膜、軟膜および脈絡叢細胞が包含される。好ましい実施形態における治療は、髄膜細胞中の蓄積顆粒を、前記コンジュゲートの投与を行なっていない同様の細胞中に存在するリソソーム蓄積顆粒の数と比較して、減少させる。これにより、一部の対象における高圧水頭症の症状が緩和されるという治療効果が得られ、前記投与は前記対象の髄膜組織中のCSF液の量を減少させる。
種々の宿主または対象を本方法で処置することができる。一般的に、そのような宿主は「哺乳動物」または「哺乳類」であり、この場合これらの用語は、食肉目(例えばイヌおよびネコ)、齧歯目(例えばマウス、モルモットおよびラット)、および霊長目(例えばヒト、チンパンジー、およびサル)を含む哺乳綱に属する生物を記述するために広く用いられる。多くの実施形態では、宿主はヒトであるだろう。
[XI.メガリンリガンドポリペプチドの製造]
本発明では、与えられた活性剤のトランスサイトーシスを容易にするために、数多くのメガリンリガンドを使用することができる。そのようなリガンドの典型例の一つはRAPである。本発明で使用されるRAPおよびRAPポリペプチドには、米国特許第5,474,766号に開示されているものが包含され、この特許はそのようなペプチドを開示すると共に本発明の化合物および組成物で使用するためにそれらを取得する方法を開示する目的で、参照によりそのまま本明細書に組み入れられる。RAPおよびRAPポリペプチドならびに他のメガリンリガンドは、当業者に知られる任意のタンパク質製造および精製法を使って製造することができる。
リガンドは天然のタンパク質源から精製するか、そのリガンドを発現させる組換え宿主から単離するか、タンパク質合成分野で周知の技術を使って合成することができる。当業者は、メガリン結合部位を含有するメガリンリガンドを得るために、種々のそのような技術を容易に適合させることができる。そのようなメガリンリガンドは、例えば、RAP上に見いだされるメガリンドッキング/結合部位を持ちうる。例えばMelman et al.,J.Biol.Chem.276(31):29338-29346(2001)、Savonen et al.,J Biol Chem.274(36):25877-25882(1999)、Nielsen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:7521-7525(1997)、Medved et al.,J.Biol.Chem.274(2):717-727(1999)、Rall et al.,J.Biol.Chem.273(37):24152-24157(1998)、Orlando et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 3161-3163(1994)を参照されたい。
ネイティブRAPタンパク質の単離は、Ashcom et al.,J.Cell.Biol.110:1041-1048(1990)およびJensen et al.,FEBS Lett.255:275-280(1989)に記載されている。メガリン結合部位を含有するメガリンリガンド断片は、単離されたネイティブタンパク質から、タンパク質全体の断片が生成するように酵素的および/または化学的切断で変換することによって、作製することができる。そのような方法の典型例が米国特許第6,447,775号に教示されており、この特許は参照により、特にそのようなRAPポリペプチド取得法に関して、本明細書に組み入れられる。
また、Williams et al.,J.Biol.Chem.267:9035-9040(1992)およびWurshawsky et al.,J.Biol.Chem.269:3325-3330(1994)に記載されているように、メガリンリガンドまたはそのようなリガンドのメガリン結合性断片を、組換え細菌中で発現させることもできる。
本明細書の至るところに示すように、RAPは好ましいメガリンリガンドである。組換え大腸菌株から39kDa RAPタンパク質を精製する手順は既にHerz et al.,J.Biol.Chem.266,21232-21238(1991)によって記述されている。その手順の変法を、米国特許第5,474,766号および以下に記述するように使用することができる。
発現プラスミドpGEX−39kDaを保持する大腸菌株DH5アルファの培養物を、100μg/mlアンピシリンを含むLB培地中、37℃で、対数増殖期中期まで生育させることができる。次に、培養物を30℃まで冷まし、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ−39kDa融合タンパク質の発現を誘導するために、0.01%イソプロピルチオ−ベータ−D−ガラクトシドを添加することができる。30℃で4〜6時間インキュベートした後、培養物を氷で冷却し、遠心分離によって回収することができる。
これ以降の工程は全て4℃で行なうべきである。1%トリトンX100、1μMペプスタシン、2.5μg/mlロイペプチン、0.2mMフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)および1μMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含むPBS中で、細胞ペレットを溶解する。この溶解物をBranson Model 450 Sonifierで超音波処理し、得られた膜および他の細胞残渣を15,000gで15分間の遠心分離によって分離した後、上清を回収する。この工程で得た上清をアガロース固定化グルタチオンビーズ(Sigma Chemical Co.)と共にPBSおよび0.1%アジ化ナトリウム中で終夜インキュベートする。次に、ビーズを洗浄することができ、融合タンパク質の溶出は、5mM還元型グルタチオン(Sigma Chemical Co.)との競合によって行なうことができる。透析に続いて、融合タンパク質50μgにつき100ngの活性化ヒトトロンビンと共に終夜インキュベートすることにより、融合タンパク質を切断することができる。次いで、アガロース固定化グルタチオンビーズと共にさらにインキュベートすることにより、グルタチオン−S−トランスフェラーゼエピトープを除去することができる。
本発明の39kDaタンパク質の28kDaタンパク質断片(「28kDaタンパク質」)は、配列表に配列番号2として後述するアミノ酸配列(図16)を持つ。
この28kDaタンパク質は、SDS−PAGE上で28,000ダルトンの分子量を持ち、酸加水分解に対して比較的安定であり、1%トリトンX100に溶解し、肝受容体へのt−PA結合に対して39kDaタンパク質とほぼ同じ阻害活性(Ki)を持つ。この28kDaタンパク質は、米国特許第5,474,766号にさらに例示されているように、クローニングし、精製することができ、この特許はそのようなクローニング法に関して特に参照により本明細書に組み入れられる。
上記の方法は上述のようにRAPの製造および精製について説明しているが、他のメガリンリガンドおよびメガリン結合性断片も、同様の技術を使って製造することができる。そのようなリガンドの総説は、ChristensenおよびBirn(Am.J.Physiol.Renal Physiol.,280:F562-F573,2001、特に表1およびそこに引用されている文献を参照されたい)に見いだすことができる。そのようなリガンドを製造および精製する技術は当業者にはよく知られている。
[XIII.実施例]
本発明の好ましい実施形態を実証するために以下の実施例を記載する。以下の実施例に開示する技術は、本発明の実施に際してうまく機能することを本発明者らが発見した技術を表し、それゆえにその実施の好ましい形態を構成するとみなしうることを、当業者は理解すべきである。しかし当業者は、本明細書の開示に照らして、ここに開示する特定の実施形態には数多くの改変を施すことができ、そうしてもなお、本発明の精神および範囲から逸脱することなくよく似たまたは同様の結果が得られることを理解すべきである。以下の実施例は、インビトロでトランスサイトーシスを評価するためのプロトコールならびにRAPなどのメガリンリガンドとメガリンおよび他の受容体との相互作用を特徴づけるためのプロトコールの典型例を提供する。
[実施例1]
〔p97のトランスサイトーシス〕
トランスサイトーシス実験は以下のように行なった。ウシ脳毛細管内皮細胞(BBCEC)で覆われた1個のインサートを、2mlのリンゲル/ヘペスが入った6穴マイクロプレートを含有するトランズウェル装置に入れ、37℃で2時間プレインキュベートした。[125I]−p97(250nM)を細胞で覆われたフィルターの上側に加えた。BBCECの管外側によるp97の再エンドサイトーシスを避けるために、様々な時点で、インサートを移動させた。実験の終了時に、TCA沈殿を行なってから、[125I]−p97を測定した。図17にトランスサイトーシスを図示する。
125I−p97のトランスサイトーシスに対するRAPの作用を評価した。図1では、LRPファミリーの既知ポリペプチド阻害剤であるRAPを細胞に適用した(25マイクログラム/ml)。RAPはp97のトランスサイトーシスを有意に阻害したことから、LRPファミリーがトランスサイトーシスに関連づけられた。
[実施例2]
〔RAP融合物の構築、発現、精製および特徴づけ〕
ヒト受容体関連タンパク質(RAP)とヒトアルファ−グルコシダーゼ(GAA)、アルファ−L−イズロニダーゼ(IDU)または膠細胞由来神経栄養因子(GDNF)との融合物をコードする発現コンストラクトを作製した。この目的のために、RAPをコードする配列を、様々な融合パートナーをコードする配列の5’末端に融合した。配列は全て、図2に示す後述のプライマーを使ったヒトcDNAの高忠実度PCR増幅によって取得した。GDNF融合物は細菌での発現用に設計した。そのために、このコンストラクトのRAP増幅では、プライマーRAPFの代わりにプライマーRAPBACFを使用した(図2b)。
シグナルペプチド配列を除去するためにRAPの5’末端を切断した。その代わりに、哺乳類発現コンストラクトには、ジペプチドGSをコードするインフレームBamHI部位を付加した。細菌発現コンストラクトには、5’末端にNcoI部位を持つテトラペプチドMGGSをコードする配列を付加した。テトラペプチドHNEL小胞体保持シグナルを除去するためにRAPの3’末端を切断した。その代わりに、6アミノ酸スペーサー(AEAETG)のコード配列を付け加えた。このスペーサーの最後の2コドンはAgeI制限部位を指定する。シグナルペプチドおよびプロペプチド配列を除去するためにGAAの5’末端を切断した(Wisselaar et al.,J.Biol.Chem.268(3):2223-31,1993)。その代わりに、融合物のRAP−スペーサー部分への融合が可能なように、AgeI部位を付加した。IDUの5’末端も、シグナルペプチドを除去して制限部位を導入するために、同様に切断した。GDNFの5’末端は、シグナルペプチドおよびプロペプチド配列の両方を除去するために切断した(Lin et al.,Science,260(5111):1130-2,1993)。
GAAおよびIDU融合物をコードするオープンリーディングフレームを、発現ベクターpCINmt中に、隣接するBamHIおよびXhoI部位を使ってライゲートした。このベクターは、3’末端にインフレームBamHI部位を持つヒトメラノトランスフェリンシグナルペプチドを含有している。結果として得られた融合タンパク質の配列を図3および4に示す。pCINmt(InvitrogenベクターpcDNA3.1由来)制御配列は、ヒトCMVプロモーターと、それに続くウサギIVS2およびラットプレプロインスリンRNAリーダー配列とからなる。ウシ成長ホルモンターミネーター配列は発現カセットの3’に位置する。このベクターは、弱いHSV−tkプロモーターによって駆動される減弱化ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子から構成される選択可能マーカーを含んでいる(Yenofsky et al.,Proc.Nat'l Acad.Sci.,USA 87(9):3435-9,1990)。RAP−GAAおよびRAP−IDUをLrp欠損CHO細胞株(CHO13−5−1)にトランスフェクトし、800μg/mLのG418で組換え体を選択した。
RAPGDNF融合物(図5)を、細菌発現ベクターpBDhisA(Invitrogen)に、隣接するNcoIおよびXbaI部位を使ってクローニングした。その結果得られた発現ベクターをBL21細胞にトランスフェクトし、組換え体をカルベニシリンで選択した。発現させ精製したRAP−GDNF融合物を、ドーパミン作動性ニューロンを保護する能力または既に記載されている他の活性(Kilic et al.,Stroke 34(5):1304-10,2003)についてアッセイすることができる。
〔RAP融合物の発現〕
培地は、2mM L−グルタミン、ゲンタマイシン、アンホテリシン、800μg/mL G418および2.5%ウシ胎仔血清を添加したJRH302とした。組換えクローンをT225フラスコ中で生育してから、血清の存在下で、1L CorningスピナーフラスコのCytopore 1ビーズ(Amersham)上に播種した。37℃および5%CO2に設定した組織培養インキュベーター中にスピナーフラスコを維持した。培地を2日毎に血清レベルが検出されなくなるまで無血清培地で置き換えた。次に、収穫物を2日毎に収集し、培地を交換した。
〔取り込みアッセイ用のRAP−GAAの精製〕
スピナーフラスコから培地中に収集したRAP−GAAを、中性pHの低塩緩衝液中のブルーセファロースカラム(Amersham)にかけた。直線的塩勾配で画分を溶出させ、融合物含有画分をヘパリンセファロースカラム(Amersham)に負荷し、再び直線的塩勾配で溶出させた。溶出した活性含有画分をプールし、フェニルセファロースカラム(Amersham)にかけた。そのフェニルセファロースカラムから、塩濃度が低下するステップ勾配を使って、RAP−GAAを溶出させた。溶出した画分をSDS−PAGEゲルで泳動し、染色することによって、相対的パーセント純度を決定した。ゲル解析によれば、ピーク活性画分は約70%純粋だった。画分をプールし、30kD MWCOメンブレン(Millipore)を使って濃縮し、中性pHのリン酸緩衝食塩水に交換した。
融合物中のリソソーム酵素の活性は、RAPへの融合による影響を受けないことを確認した。精製ヒトLRP(1μg、組み換え体、結合ドメイン2)を、96穴ドットブロット装置中のPVDFフィルター上にスポットした。5mM CaCl2および3%脱脂粉乳を含むpH7.5のトリス緩衝食塩水(TBS/Ca/BLOTTO)中の精製RAP−リソソーム酵素融合物(RAP−LE)を、固定化LRPに重層した。RAP−LEを含有する調整培地、緩衝液のみおよびRAPのみを、同様に固定化LRPと共にインキュベートした。結合していないタンパク質を除去するためにフィルターを3回洗浄した。2枚一組のフィルターを抗LE抗体または抗RAP抗体でプローブした。ブロットを化学発光検出によって呈色させた。蛍光基質を使ってリソソーム酵素の活性を測定した。図10に示すように、RAPに対する抗体またはリソソーム酵素に対する抗体はLRPに結合したRAP−LEを検出することが観察され、ウェスタンブロット上の融合タンパク質に結合することがわかったので、融合タンパク質は完全であり、折りたたまれていることが示された。シグナル強度を比較することにより、融合タンパク質は、RAPのみの場合とよく似た程度に、固定化LRPによって結合されることも観察される。
〔RAP−GAA融合物の特徴づけ〕
アイデンティティ、純度および糖質含量を決定するために、精製RAP−GAAを調べた。アイデンティティ試験では、融合物をSDS−PAGE上で分割し、PVDFにブロットし、抗GAA抗体および抗RAP抗体でプローブした。約150kDの単一バンドが両方の抗体と交差反応した(図6)。融合物純度は、SDS−PAGEゲルのクーマシーブルー染色によって決定し、>95%と推定された。ノイラミニダーゼで消化し、IEFゲルで未消化の試料と比較することにより、複合型オリゴ糖の存在を測定した。ノイラミニダーゼ消化により、複合型オリゴ糖の存在に合致する塩基性pI側への移動度の定量的シフトが起こった(図7)。Endo H消化を使って高マンノース型オリゴ糖の存在について調べた。対照タンパク質とは異なり、Endo H消化後もSDS−PAGEゲル上で融合物の分子量の変化は観察されなかった。これは融合物上に高マンノース型オリゴ糖が存在しないことを示唆している(図8)。
〔RAP−IDU融合物の精製〕
第1精製工程にはブルーセファロース6 Fast Flow樹脂を使用する。収穫した液体をpH7.0に調節し、70mL/mL樹脂の割合でブルーセファロースカラムに負荷した。カラムを75mM NaCl、20mM Na2HPO4(pH7.0)で平衡化した。RAP−IDUは1.2M NaCl、20mM Na2HPO4(pH7.0)でカラムの外に溶出した。次に、溶出したRAP−IDU含有画分(イズロニダーゼ活性アッセイで決定)を、75mM NaCl、20mM Na2PO4(pH7.0)に溶媒交換し、ヘパリンCL 6B樹脂に負荷した。そのヘパリンカラムから0.5M NaCl(pH7.0)でRAP−IDUを溶出させた。次に、溶出した画分を2M NaCl、20mM Na2HPO4(pH7.0)に調節し、フェニルセファロースカラムに直接負荷した。最終工程として、RAP−IDUをこのカラムから0.3〜0.5M NaClで溶出させた。融合物純度はSDS−PAGEで>80%と見積られた(図9)。
[実施例3]
〔非コンジュゲートRAPの脳へ取り込みおよび分布〕
マウスインサイチュー灌流モデルを使って脳へのRAPの分布を測定した。RAP、陽性対照トランスフェリンおよび陰性対照アルブミンの分布容積(Vd)を5分間の灌流期間で決定した。また、灌流した脳の血管画分および実質画分における試験タンパク質の相対量を、毛細管消耗技術(capillary depletion technique;Gutierrez et al.,J.Neuroimmunol.,47(2):169-76,1993)を使って決定した。図11に示す結果には、トランスフェリンについて1μL/g/分という観測補正Kinfluxが含まれている。RAPは、2.2μL/g/分という観測補正Kinfluxを持っていた。RAPは脳内に取り込まれる。
RAPが脳脈管構造を横切って実質に進入することができるかどうかを決定するために、単一の5分時点で、別個の実験を行なった。脳は前と同様に収集したが、血管空間および実質空間内のRAPおよびアルブミンのレベルを決定するために、毛細管消耗処置を施した。収集後に、単離された皮質を計量し、氷上のダウンスホモジナイザーに入れた。皮質を、0.7mlの毛細管緩衝液(10mMヘペス、141mM NaCl、4mM KCl、2.8mM CaCl2、1mM NaH2PO4、1mM MgSO4、10mMグルコース、pH7.4)中、10回のストロークで直ちにホモジナイズした後、1.7mlの26%デキストランを加え、その混合物を、氷上でさらに3回のストロークで、さらにホモジナイズした。様々な組織画分を分離するために、1.3mlのホモジネートを超遠心管に充填した。ホモジネートを、Beckman TLV−100スイングバケットローター中、4℃、9000rpm(5400×g)で、15分間遠心分離した。次に、実質部分(上清)および毛細管部分(ペレット)を、デュアルチャンネルガンマカウンターで個別にカウントした。Vd計算のために、ポストCNS灌流液の試料もカウントした。場合によっては、脳組織への取り込みが飽和しうるかどうかを決定するために、競合剤として非標識RAPを含めた(マウス1匹につき5μgの非標識RAP、標識RAPに対して約80倍過剰)。結果を補正Vdとしてプロットした(図11)。各データポイントは、5〜6匹のマウスから得た平均値である。図12に、脳毛細管内皮と脳実質の間のRAPの分布を示す。これらの結果は、RAPが血液脳関門を横切って脳実質に進入すること、そして取り込みの過程が飽和しうることを示している。
[実施例4]
〔酵素欠乏患者の線維芽細胞へのRAP−GAAの特異的取り込みの測定〕
GAAが欠乏している細胞へのRAGAの取り込みを特徴づけた。使用した細胞株はGM244(Coriell Cell Repository)である。これはグリコーゲン蓄積症II型(ポンペ病)を持つ患者から単離された初代細胞株である。これらの線維芽細胞はリン酸化組換えGAAをマンノース−6−リン酸受容体によって取り込むが、RAPを結合するLRP1受容体も持っている。様々な試験リガンドの取り込みに関与する受容体を同定するために、過剰量の遊離RAPまたはマンノース−6−リン酸を含有する試料を調製した。
RAP−GAAの希釈液を取り込み培地(25mMヘペス(pH7.0)、2mM L−グルタミンおよび250μg/mLウシ血清アルブミンを添加したダルベッコ変法イーグル培地)中に調製することにより、33、11、3.7、1.2、0.4および0.1nMの融合タンパク質濃度を得た。3mMマンノース−6−リン酸、500nM RAPおよびこれらの2つの組合せが、5nM RAP−GAAの取り込みに及ぼす作用もアッセイした。GM244線維芽細胞を12穴プレートに播種し、3日間生育してから、取り込み実験を行なった。
取り込みを開始するために、成長培地をウェルから吸引し、各試料を2つ一組のウェルに各ウェル1mlずつ分注した。プレートを37℃、5%CO2で4時間インキュベートした。次に、試料を各ウェルから吸引し、ウェルをリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、予め温めておいた0.25%トリプシン/0.1%EDTAを各ウェルに37℃で5分間加えて、付着細胞を遊離させた。遊離した細胞をペレット化し、冷却したPBSで濯いだ。次に、予め冷却しておいた溶解緩衝液(0.15%トリトンX100を含むリン酸−クエン酸緩衝液、pH4.0)を加え、穏やかにボルテックスすることにより、ペレットを再懸濁した。溶解した細胞は−80℃で保存することができた。
溶解細胞中のGAA活性のレベルを測定するために、凍結した溶解物を室温で融解した。溶解物(50μl)を、96穴不透明マイクロタイターウェル中の2つ一組のウェルに、直接加えた。反応を開始させるために、予め温めておいたGAA蛍光基質(4−メチルウンベリフェリル−アルファ−D−グルコシド、100μL)を各ウェルに加えた。プレートを37℃で30分間インキュベートし、150μlのグリシン/炭酸緩衝液(pH10)を添加することによって、反応を停止させた。蛍光を、プレートリーダーにて、励起波長366nmおよび放射波長446nmで測定した。
図13の結果は、RAP−GAAがGM244線維芽細胞によって取り込まれることを示している。GraFitソフトウェアプログラムに記載されている非線形フィット酵素アルゴリズム(SandoおよびNeufeld,Cell,12(3):619-27,1977)で決定したKuptakeは約19nMだった。組換えGAAより約60倍多いRAP−GAAが線維芽細胞に入り(Vmax比)、10nMでは25倍多い。加えて、RAP−GAA融合物取り込みの90%は50nM RAPによって阻害されるが、3mMマンノース−6−リン酸では取り込みの20%しか阻害されない。ネイティブGAAの取り込みはマンノース−6−リン酸によってほとんど完全に阻害されることから、RAP−GAAおよび組換えGAAの代替受容体経路が示唆される。
[実施例5]
〔様々なLRP受容体ファミリーメンバー(LRP1B、LDLR、VLDLR)を発現させるLRPnull CHO細胞およびLRP2(メガリン、gp330)だけを発現させるBN細胞へのRAP−GAAの取り込みおよびリソソーム局在の測定〕
ヨウ素標識:ヨードジェン(IODO−GEN)試薬を使って、RAP−GAAおよび組換えGAAを125Iで放射標識した。
細胞を12穴プレートに200,000細胞/ウェルの密度で播種し、終夜培養後に使用した。実験当日に細胞を氷冷リガンド結合緩衝液(0.6%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する最少イーグル培地)中で2回濯ぎ、次に同じ緩衝液で125I−RAP−GAAまたはGAAのみを加えた(0.5ml/ウェル)。試験した初期リガンド濃度は10nMである。結合は、受容体結合の特異性を確認するために、非標識500nM RAPまたは10mMマンノース6−リン酸の存在下または不在下で、穏やかに揺動しながら4℃で30分間行なった。次に、細胞単層を氷冷結合緩衝液で3回洗浄することによって未結合リガンドを除去した。次に、氷冷停止/ストリップ溶液(0.2M酢酸、pH2.6、0.1M NaCl)を温めずに一組のプレートに加え、氷上に保ってからカウントした。得られた結合データから受容体−リガンド複合体の解離定数を決定した。次に、残りのプレートを37℃の水浴に入れ、内在化を開始させるために、37℃に予め温めておいた0.5mlのリガンド結合緩衝液をウェル単層に加えた。各時点(2分間は30秒ごと、その後は3分ごと)で、ウェルを氷上に置き、リガンド結合緩衝液を氷冷停止/ストリップ溶液に置き換えた。20分間(0.75mlで10分間を2回)インキュベートすることによって細胞表面に留まっているリガンドをはぎ取り、カウントした。このデータから内在化速度を決定した。次に、細胞単層をSDS溶解緩衝液(62.5mMトリス−HCl、pH6.8、0.2%SDS、および10%(v/v)グリセロール)中で可溶化し、カウントした。各アッセイ後に内在化したリガンドを細胞表面に留まっているリガンドに加えた和を、最大潜在内在化量として使用した。各時点後に内在化したリガンドの割合を計算し、プロットした。
〔リガンド分解効率(内在化後のリソソームへの輸送)の測定〕
アッセイの1日前に、12穴プレートに、細胞を200,000細胞/ウェルの密度で播種した。実験当日に、RAP−GAAまたはGAAのみを含有する予め温めておいたアッセイ緩衝液を、非標識500nM RAPまたは10nMマンノース−6−リン酸の存在下または不在下で、細胞単層に加え、次に37℃で4時間インキュベートした。インキュベーション後に、細胞単層を覆っている培地を取り出し、BSAを10mg/mlになるように、そしてトリクロロ酢酸を最終濃度20%になるように添加することによって、タンパク質を沈殿させた。リガンドのリソソーム分解を、20%トリクロロ酢酸中に可溶な放射性断片の培地への出現と定義した。各細胞溶解物のタンパク質濃度は、LRPリガンドを含有していない並行ディッシュで測定した。RAP−GAAおよびGAA分解効率は、分解した放射性物質(可溶性cpm/mg細胞タンパク質)を細胞表面LRPファミリー受容体の数(先にフローサイトメトリーによって決定したもの、非掲載データ)で割った値として計算した。
[実施例6]
〔酵素欠乏患者の線維芽細胞におけるRAP−LEの特異的取り込みおよびそれに伴う蓄積グリコサミノグリカンのクリアランスの測定〕
患者線維芽細胞を12穴プレートに播種し、コンフルエントまで生育する。実験当日に、MgSO4を欠き4μCi/mLのNa2 35SO4を含有する新鮮な培地を、細胞に供給する。細胞には、500nM RAPまたは10mMマンノース−6−リン酸の存在下または不在下で、RAP−LE融合物またはLEのみも添加する。細胞を4日間毎日収集する。PBSで濯いだ後、細胞を凍結融解法で溶解する。蓄積GAGを80%エタノールによる沈殿でアッセイし、シンチレーション計数によって定量する。蓄積GAG値を細胞溶解物のタンパク質含量に対して標準化する。
[実施例7]
〔GAA欠損マウスにおける静脈内投与されたRAP−GAAのリソソーム分布および蓄積物クリアランスの測定〕
GAAノックアウトマウス(C57Bl/6バックグランド)を4つの処置群にランダムに割り当て、静脈内尾静脈注射により、2日ごとに100μlのリン酸緩衝食塩水、1.3mg/kgまたは0.33mg/kg RAP−GAA融合タンパク質で4回処置した。4回目の注射の48時間後にマウスを二酸化炭素吸入によって安楽死させ、脳、心臓、横隔膜、上半身および下半身骨格筋ならびに肝臓を直ちに収集し、急速冷凍した。3匹の年齢一致野生型マウスも安楽死させ、組織を収集し、凍結した。各組織を、OCTブロックに包埋することによってGAA免疫組織化学染色用に調製し、グルタルアルデヒドで固定しパラフィンに包埋することによってグリコーゲン染色用に調製した。残りの組織は、実施例4に記載の蛍光基質アッセイを使って、GAA活性について試験した。屠殺時に血清を集め、GAA抗体について調べた。
[実施例8]
〔MPS−I障害を持つ患者の処置〕
RAPに連結された治療酵素を含むコンジュゲート薬剤を含んでいる薬学的組成物を静脈内投与する。その液体の最終剤形はコンジュゲート薬剤、生理食塩水、pH5.8のリン酸緩衝液および1mg/mlのヒトアルブミンを含む。これらは生理食塩水バッグ中で調製される。
好ましい組成物は、0.05〜0.5mg/mLまたは1mLあたり12,500〜50,000単位の量のコンジュゲート薬剤(RAPに連結された治療酵素)、塩化ナトリウム溶液150mM、リン酸ナトリウム緩衝液10〜50mM(pH5.8)、ヒトアルブミン1mg/mLを含む。この組成物は50〜250mlの静注バッグ内に存在しうる。
この研究には、リソソーム酵素の欠乏という臨床表現型を呈するヒト患者、例えば白血球および線維芽細胞中のアルファ−L−イズロニダーゼレベルが正常値の1%未満であるMPS I患者などを含める。全ての患者はグリコサミノグリカンの内臓および軟組織蓄積を示す何らかの臨床的証拠を呈し、様々な機能障害度を持つ。効力は、経時的な尿中GAG排泄の減少率を測定することによって決定される。MPS−I患者における尿中GAGレベルを正常排泄値と比較する。無処置MPS−I患者では尿中GAG値が広範囲にわたる。コンジュゲート薬剤による治療に続いて起こる非分解GAGの排泄の50%を越える減少は、治療に対する個体の応答を判定する妥当な手段である。例えばMPS I患者において治療前および治療後に白血球イズロニダーゼ活性および口腔イズロニダーゼ活性を測定することにより、データを収集する。肝臓サイズおよび脾臓サイズの臨床的評価を行なう。なぜなら、これがMPS−I患者の骨髄移植処置の成功を評価するための最も広く受け入れられている手段だからである(Hoogerbrugge et al.,Lancet 345:1398,1995)。
[実施例9]
〔対応するRAP−LEコンジュゲートで処置することできるリソソーム蓄積症〕
本発明の方法を使って処置または防止することができる疾患は:ムコ多糖症I(MPS I)、MPS II、MPS IIIA、MPS IIIB、異染性白質ジストロフィー(MLD)、クラッベ病、ポンペ病、セロイドリポフスチノーシス、テイ・サックス病、ニーマン・ピック病AおよびB、ならびに他のリソソーム疾患である。各疾患について、コンジュゲート薬剤は特定の化合物または酵素を含むだろう。MPS Iに関わる方法では、好ましい化合物または酵素はα−L−イズロニダーゼである。MPS IIに関わる方法では、好ましい化合物または酵素はイズロン酸−2−スルファターゼである。MPS IIIAに関わる方法では、好ましい化合物または酵素はヘパランN−スルファターゼである。MPS IIIBに関わる方法では、好ましい化合物または酵素はα−N−アセチルグルコサミニダーゼである。異染性白質ジストロフィー(MLD)に関わる方法では、好ましい化合物または酵素はアリールスルファターゼAである。クラッベ病に関わる方法では、好ましい化合物または酵素はガラクトシルセラミダーゼである。ポンペ病に関わる方法では、好ましい化合物または酵素は酸性α−グリコシダーゼである。CLNに関わる方法では、好ましい化合物または酵素はトリペプチジルペプチダーゼである。テイ・サックス病に関わる方法では、好ましい化合物または酵素はヘキソサミニダーゼ・アルファである。ニーマン・ピック病AおよびBに関わる方法では、好ましい化合物または酵素は酸性スフィンゴミエリナーゼである。
[実施例10]
〔RAPとα−L−イズロニダーゼまたは酸性αグルコシダーゼとの融合物の受容体結合、細胞取り込みおよびリソソーム送達のさらなる例証〕
本実施例では、RAPを送達ビヒクルとして使用することによる治療酵素の効率的なLRP受容体結合、細胞取り込みおよびリソソーム送達を実証する追加データを提供する。
(融合物発現コンストラクト)
アミノ酸35〜353を含むヒトRAPコード配列を、ヒト肝臓cDNAから、PfuTurboポリメラーゼ(Stratagene)ならびにプライマーRAPF 5’−GCGATAGGATCCTACTCGCGGGAGAAGAACCAGCCCAAGCCGTCCCCGA−3’(配列番号12)およびRAPR 5’−GCGATAAACCGGTTTCTGCCTCGGCGCGAGCTCTGGAGATCCTGCCGGACAGGTCCT−3’(配列番号13)を使って増幅した。この断片はシグナルペプチドまたはHNEL ER保持シグナルをコードする配列を含まない。5’−RAPプライマーにはインフレームBamHI部位が5’末端に組み込まれている。3’−RAPプライマーは、インフレームAgeI部位を3’末端に含んでいる6アミノ酸スペーサー(AEAETG;配列番号29)をコードする配列を付加する。この改変RAP配列を、ヒトα−L−イズロニダーゼ(アミノ酸27〜652)またはヒトアルファ−グルコシダーゼ(アミノ酸70〜952)とのインフレーム融合物としてベクターpC3B中にクローニングした。どちらのリソソーム酵素配列も、シグナルペプチドを除去し、インフレームAgeI部位を付加するために、5’部分を改変した。この発現ベクターはpCDNA3.1(+)(Invitrogen)に由来し、ウサギベータ−アクチンIVS2、ラットプレプロインスリン転写物リーダー配列、およびインフレームBamHIで終わるヒトメラノトランスフェリンの最初の18アミノ酸(シグナルペプチド)を含んでいる。
プラスミドベクターをAclIで直線化し、標準的なプロトコールを使ってCHO−K1 LRP-(CHOdL)にトランスフェクトした。800μL/mL G418を含有する培地での限界希釈によってクローンを選択した。各リソソーム酵素の蛍光単糖基質を使って、発現についてクローンをスクリーニングした。RAP−IDUを発現するクローン(CHOdL−RI7)およびRAP−GAAを発現するクローン(CHOdL−RG20)を、さらなる研究のために選択した。
(融合物の発現)
CHOdL−RI7およびCHOdL−RG20を、Tフラスコ中、2.5%ウシ胎仔血清を添加した無タンパク質培地で培養した。産生は、pH、酸素および温度制御した3L Applikonバイオリアクター中、血清の不在下で行なった。産生期は細胞をCytopore 1ビーズ(Amersham)上で生育した。灌流中は内部セトラー(Biotechnology Solutions)を使ってマイクロキャリアを保持した。バイオリアクター灌流速度は、残存グルコースを監視することによって決定した。
(RAP融合物の精製および特異的活性)
SartoPore 1.2デプスフィルターに通し、次に滅菌のために0.2μmPESメンブレンフィルターを通すことによって、RAP−IDU細胞培養培地を清澄化した。その滅菌清澄化培地をpH調節した後、ヘパリンセファロースCL−6B(Amersham)、フェニルセファロースHP(Amersham)およびSPセファロースFast Flow(Amersham)で順次、分割した。酵素活性画分をプールし、濃縮し、必要な場合は、次の工程のために50kDaミニTFFメンブレン(Vivascience)を使って緩衝液交換した。最終緩衝液は10mMリン酸ナトリウム(pH5.8)、150mM塩化ナトリウムとした。DEAE Fast Flow(Amersham)の非結合通過を行なって、または行なわずに、RAP−GAAを精製した。次に、RAP−GAA融合物をヘパリンセファロースCL−6B(Amersham)およびフェニルセファロースHP(Amersham)で順次、分割した。工程内溶出物および最終溶出物を、RAP−IDUについて説明したように処理した。
(酵素活性アッセイ)
公表された方法を96穴プレートに適合させたものを使って、小さい蛍光原単糖基質の加水分解により、酵素活性を測定した。RAP−IDU活性の場合は、基質4−メチルウンベリフェリルイズロニド(4−MUI)を2.5mMの濃度で使用した。RAP−GAA活性の場合は、基質4−メチルウンベリフェリル−アルファ−D−グルコシドを5.4mMの濃度で使用した。活性単位は37℃で1分あたりに加水分解される基質のマイクロモル数と定義する。
(FACEによるオリゴ糖の特徴づけ)
FACE解析は、基本的に既に記述されているとおりに行なった(Starr et al.,J.Chromatogr.A.,720(1-2):295-321,1996、Hague et al.,Electrophoresis,19(15):2612-20)。簡単に述べると、タンパク質を変性させ、N結合型オリゴ糖を遊離させるために、N−グリカナーゼで処理した。次に、単離したオリゴ糖を、還元的アミノ化により、アミノナフタレン−6−スルホンで蛍光標識し、ポリアクリアミドゲルで分割し、蛍光検出した。バンドのアイデンティティは、移動度を既知標準品と比較して測定することによって推断した。必要な場合は、オリゴ糖のアイデンティティを、特異的エキソグリコシダーゼによる消化後の追加FACE解析によって確認した。
(IEFによるシアリル化の特徴づけ)
精製融合物を、50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5)中、37℃で1時間、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)ノイラミニダーゼ(Sigma)で処理した。処理した試料および未処理の対照をpH3〜9勾配ゲルでのIEFによって解析した(Amersham Phastgel System)。
(インビトロでのリソソームプロテアーゼによる融合物の分解)
リソソームプロテアーゼカテプシンB、DおよびLをCalbiochemから購入し、50mMリン酸ナトリウム(pH5)に再懸濁し、凍結保存した。消化には、各融合物0.5μgを上記カテプシンの等モル混合物(それぞれ最終濃度約300μM)10ngと共に、100mM酢酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウム、0.5mM DTT、pH4.5中、37℃で1時間インキュベートした。2%SDSを含有するSDS−PAGE試料ローディング緩衝液で反応を停止させ、95℃で5分間加熱した。試料をNu−PAGE 4〜12%ビス−トリスSDS−PAGEゲルで分割し、クーマシーブルーで染色した。
(sLRP2の発現および精製)
先に記述されているとおり(BuおよびRennke,J.Biol.Chem.,271(36):22218-24 1996)。
(ヒトリソソーム酵素の発現)
ヒトアルファ−L−イズロニダーゼ(アルドラザイム)はBioMarin PharmaceuticalおよびGenzyme Therapeuticsの厚意で譲り受けた。ヒトリソソームアルファ−グルコシダーゼは、独自の方法を使って発現させ、精製した。精製酵素は純度が95%より高く、タンパク質1分子につき少なくとも1つのビスリン酸化オリゴマンノース構造を持っている(FACE解析およびマンノース−6−リン酸受容体カラムでの保持に基づく、未公表結果)。
(リガンドブロット)
PVDFメンブレン(Millipore)をメタノールで予め湿らせておき、PBS(11.9mMリン酸ナトリウム、137mM塩化ナトリウム、2.7mM塩化カリウム、pH7.4)中で平衡化した。次に、メンブレンをBio−Radドットブロット装置にマウントした。LRP1の第2リガンド結合ドメイン(sLRP2、1μg/ウェル)を真空濾過によってメンブレンに適用した。次に、そのメンブレンを細断し、それらを24穴プレートの別々のウェルに入れた。メンブレンを、TBS(20mMトリス(pH7.4)、150mM塩化ナトリウム)中、5mM塩化カルシウムおよび3%脱脂粉乳で30分間ブロックした。リガンドを各メンブレンスポットと共に室温で2時間インキュベートした。個々のブロットをブロッキング緩衝液で2回、それぞれ5分間洗浄した後、結合を検出するために、ブロック緩衝液中の様々な抗体と共に、室温で1時間インキュベートした。
(細胞への取り込み)
ヒト線維芽細胞はCoriel Cell Repositoryから入手した。ラットC6膠芽腫細胞およびマウスC2C12筋芽細胞はAmerican Type Culture Collectionから入手した。通例、取り込みは、20mMヘペス(pH7.0)および0.5mg/mLウシ血清アルブミンを含有する無血清培地中で行なった。適当な試験タンパク質および阻害剤を同じ培地に希釈し、細胞と共に様々な期間インキュベートした。次に細胞をPBSで濯ぎ、トリプシン処理した。低速遠心分離によってペレットを収集し、PBSで洗浄し、0.1%トリトンX100の存在下に−80℃で凍結することによって溶解した。溶解物を遠心分離によって清澄化した。可溶性溶解物画分を酵素活性についてアッセイすると共に、ビシンコン酸(bicinchonic acid)法を使って総タンパク質量についてアッセイした。
(RAP−idu融合物によって媒介されるヒトハーラー線維芽細胞におけるグリコサミノグリカンクリアランス)
ヒトGM−01391ハーラー線維芽細胞をCoriell Cell Repositoryから入手し、DMEM 10%ウシ胎仔血清および2mMグルタミン中で生育した。クリアランス実験の4日前に、6穴プレートに1ウェルあたり250,000細胞の割合で細胞を播種した。実験当日に細胞に硫酸非含有培地(S−MEM、Irvine Scientific)、15%透析ウシ胎仔血清、5mM塩化カルシウム、110mg/Lピルビン酸ナトリウムを1時間供給した後、4μCi/mL 35S−硫酸ナトリウムおよび5nMのRAP−iduまたはイズロニダーゼのみを含む同じものを供給した。細胞を、5%CO2/95%空気の湿潤細胞培養インキュベーター中、37℃で48時間にわたって、この培地でインキュベートした。トリプシン処理の前後に細胞層をPBSで3回濯いだ。ペレットを0.5N水酸化ナトリウム中で溶解し、1H塩酸で中和した。タンパク質濃度はBioRadプロテインアッセイにより96穴プレートで決定した。溶解物をBeckman Ready Capsでカウントした。
〔結果〕
(融合物の発現および特徴づけ)
RAPコード配列がリソソーム酵素コード配列のN末端側に位置するように、RAP融合物を構成した。この配列の順序は、RAPがGSTのC末端側に位置するGST−RAP融合物が、RAPのみの場合と比較して、LRPに対して10分の1までの低い親和性を持つことを示す、先に公表された研究に基づいた(Warshawsky et al.,J Clin Invest 92,937-944,1993)。RAP融合物の製造にはCHO−K1突然変異体(CHOdL)を選択した(FitzGerald et al.,J.Biol.Chem.,129,1533-1541,1995)。CHOdLはLRP受容体を何も発現させず、過剰発現細胞株による分泌タンパク質の再取り込みおよび分解を防ぐ。RAPとIDU(RAP−IDU)およびGAA(RAP−GAA)との融合物を、この系で発現させた。各融合物のクローンを細胞培養培地中の酵素活性に基づいて選択し、バイオリアクターでの製造にスケールアップした。容積生産性値を精製rhIDUまたはrhGAAの活性濃度(U/L)および比活性(U/mg)から計算した。この方法で計算したところ、平均一日リアクター生産性は、RAP−IDUの場合で1〜2mg/L−日、RAP−GAAの場合で10〜15mg/L−日だった。
(融合物の精製および特徴づけ)
融合物を通常の樹脂を使って>95%に精製した(図19A、レーン1)。抗RAP抗体(図19A、レーン2)および抗IDUまたは抗GAA抗体(図19A、レーン3)は、調整細胞培養培地のウェスタンブロットで、各融合物の分子量と合致するバンドを同時染色した。融合物は、調整培地中では安定であるが、精製中はタンパク質分解切断事象に対して感受性であり、それが両融合タンパク質のN末端からのRAPの除去をもたらすことが観察された。タンパク質分解は精製に先だって調整培地にプロテアーゼ阻害剤を添加することによって軽減された。
精製融合物のモル比活性は、酵素活性濃度(U/mL)を融合物のタンパク質濃度(nmol/mL)で割ることによって計算した。融合物濃度はA280測定と理論吸光係数から計算した(表A)。
RAP−IDUは5.7U/nmolのモル比活性を持っていたが、rhIDUは12.5U/nmolのモル比活性を持っていた。RAP−IDUとrhIDUのモル比活性がかなり相違することから、融合物ではRAPが何らかの形でIDUの触媒活性を妨害していることが示唆される。融合タンパク質における活性の減少には、活性部位へのアクセスの制限、IDUのフォールディングの変化、または触媒に関与するタンパク質の運動に影響を及ぼす他のコンフォメーション上の制約が関わりうる。rhIDUとRAP−IDUとの触媒的相違に関してさらなる洞察を得るために、4−MUIの切断の速度論的パラメータを測定した(図19B)。これら2つのタンパク質のKm値は区別できなかったが、rhIDUのVmaxはRAP−IDUを25%上回っていた。この差は、融合物では、活性部位へのアクセスの制限ではなく、IDUの運動に何らかの制約が課せられることと一致する。RAP−GAAおよびrhGAAはほぼ同じモル比活性を持つことがわかった。
(リソソームプロテアーゼによるRAP融合物の消化)
リソソームにおける融合物の挙動をシミュレートするために、RAP−IDUおよびRAP−GAAの調製物をカテプシンD、BおよびLの混合物と共に、pH4.5、37℃で1時間インキュベートした。消化されたタンパク質をSDS−PAGEで解析した。RAPはこれらの条件下で分解されて、完全なリソソーム酵素を残した(図19C、レーン2および5)。上記2つの融合タンパク質のそれぞれについて、残っている主要バンドは、rhIDUおよびrhGAAよりもわずかに大きかった。追加質量は一部のRAPまたはリンカー配列が処理後に残ることを示している可能性がある。N末端配列決定およびペプチドマッピングにより、切断はRAPおよびリンカー配列の最後の20アミノ酸内にある複数部位で起こることが示される。消化物の単位容積あたりのGAA活性は、インビトロタンパク質分解によって有意な影響を受けなかった。この結果は、RAP−GAAおよびrhGAAのモル比活性が類似していることと合致する。消化物の単位容積あたりのIDU活性は、融合物のインビトロ加水分解後に26%増加したことから、rhIDUとの比較で、遊離したIDU部分の酵素活性の部分的な回復が示唆された。リソソームに送達された後の融合物由来のIDUの比活性は決定していない。
(RAP融合オリゴ糖の特徴づけ)
オリゴ糖受容体がリソソーム酵素の取り込みにインビボで果たす重要な役割を考慮して、RAP融合物上に存在するオリゴ糖のアイデンティティおよびタイプを決定した。まず、精製融合物をFACE解析にかけて、リン酸化オリゴ糖のレベルをネイティブリソソーム酵素と比較して測定した(図20A)。リン酸化オリゴ糖は、FACEゲルでのそれらの特徴的な移動度によって、容易に同定される。rhIDUとrhGAAはどちらも、かなりの量のビスリン酸化オリゴマンノース7(ビス−7(Bis−7))(これはMPRによって強固に結合される構造である)を持っている(Zhao et al.,J Biol Chem 272,22758-22765,1997;図20A、レーン2、矢印)。各オリゴ糖バンドを蛍光強度によって定量した。ビス−7はrhIDUおよびrhGAA上の全オリゴヌクレオチドのそれぞれ30%および20%を占めていた。どちらの場合も、これらのパーセンテージは、各酵素分子に対して1〜2分子のビス−7に合致する。rhIDUおよびRAP−IDUのオリゴ糖プロファイルはその他の点では類似しているが、融合物は酵素のみの場合と比較してBis−7保持量が60%少ない(図20B、レーン3)。この値はRAP−IDU融合物3分子につきおよそ1分子のBis−7に相当する。rhGAAおよびRAP−GAAのオリゴ糖プロファイルも類似しているが(図20A、レーン2および3を比較されたい)、RAP−IDUとは異なり、リン酸化オリゴ糖はRAP−GAA融合物上に有意な量では見いだされなかった。
シアル酸を末端に持つ複合型オリゴ糖について調べるために、RAP−GAA融合物をノイラミニダーゼによる処理後にIEF解析にかけた。融合物はより塩基性の等電点にシフトしたことから、RAP−GAAがシアリル化された複合型オリゴ糖を含有することを示す証拠が得られた(図20B、レーン1および2を比較されたい)。陽性対照rhIDUをノイラミニダーゼで処理すると、同様のシフトを起こした(図20Bレーン3および4を比較されたい)。
融合物はサイズが大きいので、オリゴ糖の質量および含量をグリコシダーゼによる消化で解析することは難しかった。タンパク質成分のサイズを小さくするために、RAP−IDUおよびRAP−GAAの試料をカテプシンで消化した。次に、タンパク質分解した融合物をさらにEndo HまたはN−グリカナーゼで消化することにより、それぞれ高マンノース型オリゴ糖および全オリゴ糖を遊離させた。この実験は融合物のRAP部分のオリゴ糖含量を扱うものではない。というのも、これはカテプシンタンパク質分解時に失われるからである。RAPは糖鎖付加部位を1つ持っている。タンパク質分解されたRAP−GAAのEndo H消化は、バンド移動度にほとんど影響を持たなかったことから、融合物のGAA部分上の高マンノース型または混成型オリゴ糖はごくわずかであることが示された(図20C、レーン3および4を比較されたい)。タンパク質分解したRAP−GAAをN−グリカナーゼで消化すると、17kDのバンドシフトが起こった。この結果と等電点電気泳動実験とは、両者がRAP−GAA融合物上の高レベルの複合型オリゴ糖を示す点で合致している。RAP−GAAとは対照的に、タンパク質分解したRAP−IDUのEndo H消化は著しいバンドシフトをもたらした。これは、融合物由来のIDU上に高マンノース型または混成型オリゴ糖が存在することと合致する(図20Cレーン7および8を比較されたい)。この実験に使用したRAP−IDU試料は、精製時に既に部分的にタンパク質分解されていた。質量でいうと、endo HによるIDUの消化時に起こる損失は、N−グリカナーゼによる消化時に観察される全損失量の大半を占める(図20Cレーン9)。
(リガンドブロッティング)
ヒトLRP1の第2リガンド結合ドメイン全体である組換え体sLRP2をナイロンメンブレンフィルター上にスポットした(図21)。ブロッキング後に、個々のフィルターを結合緩衝液中でRAP(列B)、RAP−IDU(列C)またはrhIDU(列D)と共にインキュベートした。フィルターを洗浄し、抗RAP(行1)または抗IDU抗体(行2)でプローブした。シグナル強度から判断して、これらの条件下でRAP−IDUはRAPのみの場合と同様に受容体断片に結合した(列BおよびC、行1)。RAPおよびRAP−IDUの結合は、過剰の非放射性RAPによってブロックすることができた(列C、行3)。組換えヒトIDUはsLRP2に結合しなかった(列D)。これらの結果は、RAP−IDU融合物内のRAP部分がLRPに特異的に結合する能力を保っていることを実証している。
(患者線維芽細胞へのRAP融合物の取り込み)
RAP融合物が培養細胞に取り込まれうるかどうかを決定するために、ハーラー病患者(IDU欠損性、GM1391)またはポンペ病患者(GAA欠損性、GM244)から単離した初代ヒト線維芽細胞にRAP−IDU、RAP−GAA、rhIDUまたはrhGAAを加えた。取り込み実験用の試験タンパク質濃度をA280測定および理論吸光係数から計算した。取り込ませるための1〜2時間の期間後に、細胞を収集し、溶解し、リソソーム酵素活性についてアッセイした。取り込みシグナルは、溶解物の単位容積あたりの切断された蛍光基質の単位数として報告する。各ウェルで同数の細胞を使用した。そして各試料中の総タンパク質量に対する活性データの標準化は結果を変化させなかった。曲線を双曲線関数に当てはめ、GraphFit(Erithacus Software)を使って取り込みパラメータを求めた。双曲線漸近値をここでは最大取り込み能と定義する。半最大取り込みをもたらす融合物または酵素の濃度を、以前と同様に、Kuptakeと定義する(SandoおよびNeufeld,Cell,12(3):619-27,1977)。
培養線維芽細胞が取り込む量は、酵素のみの場合よりもRAP融合物の方が有意に多いことがわかった(図22A、Bおよび表B)。この相違は、融合物および酵素の濃度が高くなると、より一層顕著になった。特に、ハーラー線維芽細胞では、rhIDUの方が25倍有利なKuptakeを持つにもかかわらず、融合物に関する最大取り込み能は、RAP−IDUの場合、遊離の酵素のそれを43倍上回った。RAP−IDU融合物の比活性はrhIDUの約半分なので、この実験では融合物の取り込みを過小評価しているといえる。ポンペ線維芽細胞では、rhGAAの方が25倍有利なKuptakeを持つにもかかわらず、RAP−GAAに関する最大取り込み能は、rhGAAのそれを70倍上回った(図22B)。
RAP−IDUおよびRAP−GAAの線維芽細胞への取り込みが受容体特異的であるかどうかを決定するために、LRP(RAP)およびMPR(マンノース6リン酸)系の阻害剤を培養培地に含めた。過剰量のRAPは線維細胞におけるRAP−IDUおよびRAP−GAAの取り込みを有意に阻害した(図22Cおよび図22D)。逆に過剰量のマンノース6リン酸は同じ細胞へのRAP−GAAの取り込みに対してごくわずかな作用しかもたなかった(図22D)。
次に、脳細胞株ラットC6神経膠腫細胞(図22E)および筋細胞株マウスC2C12筋芽細胞(図22F)を使って同様の実験を行なった。5nM濃度では、C6神経膠腫細胞へのRAP−GAAの取り込みはrhGAAよりも7倍を越えて高効率だった。同じ条件下で、C2C12筋芽細胞では、RAP−GAAの取り込みがrhGAAよりも18倍を超えて高効率だった。線維芽細胞の場合と同様に、どちらの細胞株へのRAP−GAAの取り込みも、RAPによって阻害されたが、マンノース6−リン酸では阻害されなかった。これらの結果は、融合物が培養細胞によって効率よくエンドサイトーシスされたこと、そしてエンドサイトーシスがLRPによって起こったことを示している。MPR系およびLRP系の相対的取り込み効率は、各特定細胞タイプ上の各受容体の相対密度に依存するだろう。
様々なLRP受容体によるRAP−GAAの取り込み−取り込みが特異的LRP受容体によって媒介されうるかどうかを決定するために、RAP−GAAを放射性ヨウ素化し、様々なLDLRファミリーメンバーを発現させる一群の組換えCHOdL株と共にインキュベートした。ブラウンノルウェイラット卵黄嚢細胞(BN)をメガリン用の試験株として使用した。LRP1およびLRP1Bは、完全長タンパク質のC末端側3分の1ぐらいを含むミニ受容体によって表した。これはRAPの高親和性結合を媒介する能力を持つ第4リガンド結合ドメインを含んでいる。また、これらのミニ受容体は、完全な細胞質テールも持ち、完全長受容体の輸送挙動を忠実に再現することが、既に示されている(Li et al.,J.Biol.Chem.,276,18000-18006,2001、Obermoeller-McCormick et al.,J Cell Sci 114,899-908,2001)。融合物の取り込みは、細胞培養培地における可溶性カウントの出現を測定することによって決定した。可溶性カウントは取り込み、リソソーム送達、分解および細胞からの標識アミノ酸の放出を反映することは、既に実証されている(Iadonato et al.,Biochem J 296(Pt 3),867-875,1993)。LRP受容体特異的な取り込みは、過剰量の非放射性RAP競合剤の存在下で得られるシグナルを差し引くことによって計算した(図23)。RAP−GAAは、メガリン、LRP1、LRP1B、VLDLRおよびapoER2を発現させる細胞によって特異的に取り込まれ、分解されたが、LDLRを発現させる細胞または空ベクターを含有する細胞では、これが起こらなかった。これらの知見は、LDLRがLDLRファミリーの他のメンバーと比較するとかなり低い親和性でRAPに結合する(Kd≒250nM、Medh et al.,J Biol Chem 270,536-540)という事実と合致している。この実験は、RAPの結合挙動がRAP融合物の結合挙動の予言に役立つことを裏付けている。同様に、RAPによる阻害が可能な可溶性カウントの生成は、RAP−GAAが様々なLRP受容体によってエンドサイトーシスされ、リソソームにターゲティングされることを示している。
(RAP−GAAの細胞内半減期)
RAP送達されたリソソーム酵素のリソソームにおける安定性を調べるために、RAP−GAAまたはrhGAAをポンペ病患者線維芽細胞(GM244)と共に多穴プレート中で24時間インキュベートし、試験タンパク質を欠く成長培地に移した後、2週間にわたって細胞を収集した。次に、細胞溶解物をGAA活性についてアッセイした。融合物由来のGAAおよびrhGAAは、それぞれ約12日および10日という、ほぼ同一の細胞内半減期を持っていた(図24)。GAAは中性pHでは時間単位で測定される半減期を持つので、rhGAAおよび融合物GAAの複数日という半減期は、両者がエンドサイトーシス後に酸性コンパートメントに、おそらくはリソソームに送達されることを暗示している。リソソームへのリン酸化rhGAAの送達は文献に詳述されており、rhGAAによるERTの根拠になっている(Van der Ploeg et al.,J Clin Invest 87,513-518,1991、Yang et al.,Pediatr Res 43,374-380,1998)。RAPへの融合の結果としてGAAに課せられた変化はいずれも、リソソームにおけるこの酵素の安定性には影響しないようである。
RAP−IDUによるリソソーム蓄積物のクリアランス−融合物由来のIDUがインビトロで持つ減弱化した酵素活性を考慮して、RAP−IDUが患者線維芽細胞におけるグリコサミノグリカンの蓄積を防止できるかどうかを決定するための実験を行なった。ハーラー線維芽細胞を硫酸非含有培地(S−MEM)中、35S−硫酸塩の存在下で生育した(BartonおよびNeufeld,J Biol Chem 246,7773-7779,1971)。RAP−IDU、rhIDUまたは緩衝液を5nMの濃度で成長培地に含めた。RAP−IDUおよびrhIDU試験材料の純度は、SDS−PAGEで確認した(図25B(挿入図))。蓄積された35S−グリコサミノグリカンを48時間後に測定し、総タンパク質濃度に対して標準化した。試料あたりの総放射能は4,000〜20,000cpmの範囲にあり、総タンパク質濃度は試料間で著しくは異ならなかった。RAP−IDUおよびIDUはどちらも35S−GAG蓄積を同じ程度に防止したことから、融合物由来のIDUは天然基質を消化する能力を持つことが示された。
[実施例11]
〔メガリンは血液脳関門を横切るトランスサイトーシスを媒介する〕
本実施例では、トランスサイトーシスのモデル系としてトランズウェルプレート中の強固なMDCK細胞単層を使って行なった実験を説明する。このモデルは、LRP1ではなくメガリンがRAPのトランスサイトーシスを媒介することを実証するために用いた。MDCK細胞には、LRP1の第4リガンド結合ドメインおよび膜貫通ドメインとLRP1(mLRP/LRPTmT=LRPt)またはメガリン(mLRP/LRPTmMegT=MEGt)のC末端細胞質テールとからなるミニ受容体をトランスフェクトしておいた。この系は、これらのミニ受容体の優れた発現レベルおよび様々なLRP受容体ドメインのモジュール性を利用している。この系の前提は、LRP1エクトドメインおよびメガリンエクトドメインがRAPを同様に結合すること、ならびにMDCK中でメガリンテールによって媒介される輸送が、脳毛細管内皮を含む他の上皮細胞層におけるものと類似していることである。
(インビトロ輸送アッセイ)
安定にトランスフェクトされたMDCK細胞および親MDCK株をMaria-Paz Marzolo博士(チリ・サンチアゴ)から入手した。抗HA抗体を使った間接免疫蛍光法で示されるように、LRPtは側底側に分布し、MEGtはトランスフェクトMDCK細胞の頂端側表面に局在化している(Marzolo et al.,Traffic,4(4):273-88,2003)。0.4μmの均一な孔径を持つトランズウェルシステムのポリアセテートメンブレンインサート(Costar,マサチューセッツ州ケンブリッジ)の表面に、細胞をプレーティングした。細胞を2×105細胞/mlの密度で播種し、10%FBSを添加したDMEM中で、3日ごとに培地を交換しながら培養した。細胞を5%CO2インキュベーター中に37℃で維持した。トランスサイトーシス研究は、3つ一組のトランズウェル6群で、頂端側から側底側への輸送または側底側から頂端側への輸送について、2μg/mlの過剰非標識RAPを含めてまたは過剰非標識RAPを含めずに行なった。
輸送アッセイの20分前に、トランズウェルインサートおよびその支持内皮細胞単層を輸送緩衝液(25mMヘペスおよび0.1%アルブミンを含むハンクス平衡塩類溶液)中、37℃で平衡化した。時刻0で、125I−RAP(1μCi/ml)および99mTc−アルブミン(2μCi/ml)を上チャンバまたは下チャンバに添加することによって、輸送を開始させた。プレートは全工程にわたって約130rpmで穏やかに混合しながら37℃に保った。5、10、15、20、30、40、50および60分時に、各ウェルの下チャンバで、10μlの試料を収集した。60分時に、上チャンバおよび下チャンバ中の溶液を、4℃の独立した試験管に移した。125I−RAPおよび99mTc−アルブミンの放射能をデュアルチャンネルプログラムを持つガンマカウンターで測定した。輸送後の完全な125I−RAPおよび99mTc−アルブミンの量を酸沈殿によって測定した。選択した試料に対して、10〜90%アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸の40分間にわたる直線的勾配でHPLC分析を行い、1mlずつの画分を集めた。
試験時に、関門の強固さを示すパラメータであるコンフルエント単層のTEERは、ネイティブMDCKで757Ω/cm2、LRPtトランスフェクトMDCKで364Ω/cm2、およびMEGtトランスフェクトMDCKで370Ω/chm2だった。
時刻0で、125I−RAPおよび傍細胞透過性マーカー99mTc−アルブミンを同時に添加することによって、トランスサイトーシスアッセイを開始した。試験終了時点(60分)で、125I−RAPは、供与チャンバ中の酸沈殿可能な放射能の99%を占め、受容チャンバ中の酸沈殿可能な放射能の91%を占めた。これは、測定された放射能の大半が完全な125I−RAPを表すことを示している。試験期間を120分に延長しても、完全な125I−RAPのパーセンテージやフラックス速度は変化しなかった。
頂端側から側底側へのフラックスに関して、非トランスフェクトMDCK細胞では、60分間の輸送後の125I−RAPの透過係数は5.1±0.8×10-6cm/秒だった。これに対して、MEGtをトランスフェクトしたMDCK細胞では、125I−RAPの透過係数は18.1±1.2×10-6cm/秒だった。驚いたことに、LRPtをトランスフェクトしたMDCKでは、有意なフラックスがなかった。全ての群で、99mTc−アルブミンも、有意なフラックスを持たなかった。
2μg/mlの過剰な非標識RAPを添加すると、MEGtトランスフェクト細胞における125I−RAPの透過係数が有意に減少した(6.3±0.4×10-6cm/秒)[F(1,12)=86.1,p<0.0001]。非トランスフェクト細胞が過剰なRAPの添加後に有意なフラックスを持たなかったことから、過剰のRAPを含む群と含まない群との差は統計的に有意だった[F(1,11)=24,p<0.0005]。したがって、これらの結果は、頂端側RAPの飽和可能な輸送系の存在および輸送過程におけるメガリンの極めて重要な役割を裏付けている。
側底側から頂端側へのフラックスに関して、125I−RAPの輸送は3つの群の全てで、傍細胞透過性のマーカーである99mTc−アルブミンの輸送よりも有意に高くなかった(図18)。MEGtを安定にトランスフェクトされたMDCK細胞の場合、125I−RAPの頂端側から側底側への透過係数は、側底側から頂端側への透過係数より460倍高かった。これらの結果は全体として、RAPのメガリンテール媒介性トランスサイトーシスを裏付けている。
本明細書に開示しクレームする全ての組成物および/または方法は、本明細書の開示に照らせば、甚だしい実験を行なわずに製造し、実行することができる。本発明の組成物および方法を好ましい実施形態に関して説明したが、本明細書に記載した組成物および/または方法ならびに方法の工程または工程の順序に、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく変更を加えうることは、当業者には明白だろう。より具体的に述べると、化学的にも物理的にも関連する一定の薬剤を、本明細書に記載した薬剤の代わりに使用することができ、そのようにしても同じ結果または類似する結果が達成されるだろうことは、明白だろう。当業者にとって明白なそのような類似の置換および変更はいずれも、本願特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲および概念に包含されるとみなされる。
本明細書を通して引用した文献は、それらが本明細書の記載を補足する例示的な手法上の詳細または他の詳細を提供する限りにおいて、全て参照により特に本明細書に組み込まれる。
BBCEC単層を横切る[125I]−p97トランスサイトーシスに対するRAPの作用。
ヒトRAPと、ヒトガラクトシダーゼ(GAA)、アルファ−L−イズロニダーゼ(IDU)および膠細胞由来神経栄養因子(GDNF)との融合物をコードする発現コンストラクトの製造。(RAPFプライマー:配列番号12;RAPRプライマー配列番号13;GAAフォワードプライマー配列番号14;GAAリバースプライマー配列番号15;IDUフォワードプライマー配列番号16;IDUリバースプライマー配列番号17;GDNFフォワードプライマー配列番号18;GDNFリバースプライマー配列番号19;RAPBACFプライマー配列番号20)。
RAP−GAA融合物のヌクレオチド配列およびタンパク質配列(ヌクレオチド配列:配列番号6;タンパク質配列:配列番号7)。
RAP−IDU融合物のヌクレオチド配列およびタンパク質配列(ヌクレオチド配列:配列番号8;タンパク質配列:配列番号9)。
RAP−GDNF融合物のヌクレオチド配列およびタンパク質配列(ヌクレオチド配列:配列番号10;タンパク質配列:配列番号11)。
RAP−GAA融合物の特徴づけ。
RAP−GAA上の複合型オリゴ糖に関するアッセイ。
RAP−GAA上の高マンノース型オリゴ糖に関するアッセイ。
RAP−IDU融合物の特徴づけ。
RAPおよびRAP−リソソーム酵素融合物のLRPへの結合。
15分でのヨウ素化RAPおよびトランスフェリンの補正Vd対灌流時間。
脳毛細管内皮と脳実質(brain parenchyma)との間のRAPの分布。
ヒトポンペ線維芽細胞によるRAP−アルファ−グリコシダーゼの取り込み。
様々な種に由来するRAPのアミノ酸配列の多重アライメント:ヒト(配列番号21);マウス(配列番号22);ラット(配列番号23);ニワトリ(配列番号24);ゼブラフィッシュ(配列番号25);ミバエ(配列番号26);カ(配列番号27);扁形動物(配列番号28)。
配列番号1、ヒトRAPのアミノ酸配列。
配列番号2、28kD RAPポリペプチドのアミノ酸配列。
ウシ脳毛細管内皮細胞におけるトランスサイトーシス。
側底側から頂端側へのフラックスを示すMDCK細胞における125I−RAPの輸送。
RAP融合物のゲルおよびブロット解析。A:RAP−IDU。B:RAP−GAA。レーン1:クーマシーブルー染色。レーン2:抗RAP抗体。レーン3:抗IDUまたは抗GAA抗体。
rhIDUおよびRAP−IDUの速度論的解析。タンパク質(1nM)を、様々な濃度の4−MUI中、室温で5分間インキュベートした。得られたVmaxおよびKm値を表Aに列挙する。
RAP融合物のインビトロタンパク質分解。融合物をカテプシン類の混合物で処理し、SDS−PAGEゲルで分割し、クーマシーブルーで染色した。レーン1:未消化RAP−GAA融合物。レーン2:タンパク質分解したRAP−GAA融合物。レーン3:rhGAA。レーン4:未消化RAP−IDU融合物。レーン5:タンパク質分解したRAP−IDU融合物。レーン6:rhIDU。レーン7:RAP。レーン8:分子量マーカー。
rhGAA(A)、RAP−GAA(A)、rhIDU(B)およびRAP−IDU(B)の蛍光ラベル糖鎖電気泳動(FACE)。N結合型オリゴ糖を遊離させ、還元末端を蛍光標識し、電気泳動した。蛍光バンドをFACEイメージャーシステムで解析した。バンド強度は、存在する特定オリゴ糖のモル量に比例する。レーン1:重合度(DP)単位で目盛りづけしたオリゴグルコースラダー。レーン2:rhGAA(A)またはrhIDU(B)。レーン3:RAP−GAA(A)またはRAP−IDU(B)。AでもBでもレーン2の底部付近にある矢印を付けた顕著なバンドはビス−7である。
複合型オリゴ糖に関するRAP−GAAの等電点電気泳動。タンパク質をクロストリジウム・パーフリンジェンスノイラミニダーゼで処理し、PhastGelで分割し、銀染色した。レーン1:未処理rhIDU(陽性対照)。レーン2:ノイラミニダーゼで処理したrhIDU。レーン3:未処理RAP−GAA。レーン4:ノイラミニダーゼで処理したRAP−GAA。レーン5:pI標準。
タンパク質分解したRAP−GAAおよびRAP−IDUのEndo HおよびN−グリカナーゼ消化。融合物をカテプシン類の混合物でタンパク質分解し、Endo HまたはN−グリカナーゼで処理し、SDS−PAGEゲルで分割し、クーマシーブルーで染色した。レーン1および10:分子量標準。レーン2:RAP−GAA。レーン3:タンパク質分解したRAP−GAA。レーン4:タンパク質分解しendo H消化したRAP−GAA。レーン5:タンパク質分解しN−グリカナーゼ消化したRAP−GAA。レーン6:RAP−IDU。レーン7:タンパク質分解したRAP−IDU。レーン8:タンパク質分解しendo H消化したRAP−IDU。レーン9:タンパク質分解しN−グリカナーゼ消化したRAP−IDU。内挿した分子量を各バンドの下に印刷する。
sLRP2リガンドブロット。LRP1の第2リガンド結合ドメインをナイロンメンブレンにブロットし、過剰のRAPの存在下または非存在下に、リガンドでプローブした。結合したリガンドを表示した抗体によるウェスタンブロット法で検出した。リガンドは次のとおりである。列A:緩衝液のみ。列B:RAP。列C:RAP−IDU。列D:rhIDU。
GM1391線維芽細胞へのRAP−IDUおよびrHIDUの取り込み。様々な濃度のタンパク質を線維芽細胞と共に2時間インキュベートした。洗浄後、線維芽細胞を溶解し、取り込み量を酵素アッセイによって測定した。曲線の当てはめを行なって、記載の定数を得た。挿入図:rhIDUデータのみのプロット。
GM244線維芽細胞へのRAP−GAAおよびrhGAAの取り込み。様々な濃度のタンパク質を線維芽細胞と共に2時間インキュベートした。洗浄後、線維芽細胞を溶解し、取り込み量を酵素アッセイによって測定した。曲線の当てはめを行なって、記載の定数を得た。挿入図:rhGAAデータのみのプロット。
GM1391線維芽細胞へのRAP−IDU取り込みの阻害。RAP−IDU(3nM)を様々な濃度のRAPの存在下で線維芽細胞と共に2時間インキュベートした。洗浄後、線維芽細胞を溶解し、取り込み量をイズロニダーゼ酵素アッセイによって測定した。
GM244線維芽細胞へのRAP−GAA取り込みの阻害。RAP−GAA(5nM)を様々な阻害剤の存在下で線維芽細胞と共に2時間インキュベートした。洗浄後、線維芽細胞を溶解し、取り込み量を酵素アッセイによって測定した。
C6神経膠腫細胞へのRAP−GAA(灰色)およびrhGAA(黒)取り込みの阻害。タンパク質(5nM)を阻害剤の存在下でC6神経膠腫細胞と共に2時間インキュベートした。洗浄後、線維芽細胞を溶解し、取り込み量を酵素アッセイによって測定した。ND:未検。
C2C12筋芽細胞へのRAP−GAA取り込み(灰色)およびrhGAA取り込み(黒色)の阻害。RAP−GAAおよびrhGAA(どちらも5nM)を阻害剤の存在下で細胞と共に2時間インキュベートした。洗浄後、線維芽細胞を溶解し、取り込み量を酵素アッセイによって測定した。
様々なLRP受容体によって媒介されるRAP−GAA取り込み。値は過剰量の非放射性RAPの存在下および非存在下での取り込みの差を表す(受容体特異的取り込み)。可溶化125Iのフェムトモル数を各試料中の総タンパク質量に対して標準化した。
GM244線維芽細胞におけるRAP−GAAおよびrhGAAの細胞内半減期。タンパク質を線維芽細胞と共に24時間インキュベートした。培地を換え、細胞を2〜14日間にわたって成長させた後、溶解して、アルファ−グルコシダーゼ酵素アッセイを行なった。
rhIDUおよびRAP−IDUによる、ハーラー線維芽細胞中に蓄積されたグリコサミノグリカンのクリアランス。細胞を3つ一組にしてrhIDUまたはRAP−IDUの存在下に35S−サルフェートで48時間標識した。次に標識された細胞を洗浄し、溶解し、放射能および総タンパク質量についてアッセイした。
実験に使用したタンパク質のSDS−PAGE解析。クーマシーブルーで染色したもの。レーン1:RAP−IDU。レーン2:rhIDU。