JP2007523187A - 癌を処置または予防するためのβ−ラパコンの使用 - Google Patents

癌を処置または予防するためのβ−ラパコンの使用 Download PDF

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Abstract

本発明は癌および前癌状態の治療に効果的な物質を利用する方法を提供する。さらに、本発明は細胞増殖の阻害剤として作用可能な物質を提供する。本発明は、β−ラパコン、またはその誘導体または類似体、またはその薬学的に許容される塩、またはその代謝産物、および薬学的に許容される担体を含む治療有効量の医薬組成物を、該組成物が約0.15μM〜約50μMの血漿濃度を維持し、癌または前癌状態を治療または癌を予防するように対象に投与する工程を包含する、対象中の癌または前癌状態を治療または癌を予防する方法を提供する。

Description

(発明の背景)
癌細胞は定義によれば異質である。例えば、単一組織または細胞型内で、複数の変異「機構」は癌の発達を導くだろう。そのようなものとして、異質性は異なる個体に由来した同じ組織と同じ種類の腫瘍から受け継いだ癌細胞間にしばしば存在する。一部の癌に関連するよく観察される変異「機構」は1組織型と別の型との間で異なるであろう(例えば、結腸癌を導くよく見られる変異「機構」は白血病を導くよく見られる機構とは異なるだろう)。したがって、特定の癌が特定の化学療法剤に応答するかどうかを予測することはしばしば難しい(Cancer Medicine、第5版、Bast等編、B.C.Decker社、オンタリオ州ハミルトン(非特許文献1))。
手術と放射線治療は癌が初期に発見された場合に治療可能であろうが、転移性疾病のための現在の薬物療法はほとんど苦痛緩和であり、長期の治癒を提供することは稀である。市場に参入する新しい化学療法剤でさえ、患者生存の向上は年よりもむしろ月で判定され、抵抗力のある腫瘍の治療において、第一ラインの治療および第二と第三ラインの治療として現存する物質を組合わせて用いるのが効果的な新しい医薬に対する必要性が存在し続ける。
β−ラパコンは限定された数の癌において報告された抗癌活性を有する物質である。例えば、タキサン誘導体と組み合わされた効果的な量のβ−ラパコンの投与を包含する癌の治療方法と組成物が報告されている(米国特許第6,664,288号(特許文献1);国際公開第00/61142(特許文献2))。さらに、米国特許第6,245,807号(特許文献3)はヒト前立腺疾病の治療に用いるために、他のβ−ラパコン誘導体の間でもβ−ラパコンの使用を開示する。単一の物質として、β−ラパコンは、ヒト卵巣癌の異種移植されたマウス模型(Li,C.J.et al.,(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96(23):13369−13374(非特許文献2))、ヒト前立腺癌(非特許文献2)、ヒト乳癌(Li,C.J.et al.,(2000)AACR Proc.,p.9(非特許文献3))およびヒト多発性骨髄腫(米国特許出願第2003−0036515(特許文献4);国際公開第3/011224(特許文献5))において、腫瘍の数を減少し、腫瘍の大きさを低減し、または生存期間を増加し、またはこれらの組合せを行うことも報告されている。
米国特許第6,664,288号明細書 国際公開第00/61142号パンフレット 米国特許第6,245,807号明細書 米国特許出願第2003−0036515号明細書 国際公開第03/011224号パンフレット Cancer Medicine、第5版、Bast等編、B.C.Decker社、オンタリオ州ハミルトン Li,C.J.et al.,(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96(23):13369−13374 Li,C.J.et al.,(2000)AACR Proc.,p.9
(発明の要旨)
本発明は、β−ラパコン、またはその誘導体または類似体、またはその薬学的に許容される塩、またはその代謝産物、および薬学的に許容される担体を含む治療有効量の医薬組成物を、該組成物が約0.15μM〜約50μMの血漿濃度を維持し、癌または前癌状態を治療または癌を予防するように対象に投与する工程を包含する、対象中の癌または前癌状態を治療または癌を予防する方法を提供する。
さらに、本発明は、β−ラパコン、またはその誘導体または類似体、またはその薬学的に許容される塩、またはその代謝産物、および薬学的に許容される担体を含む治療有効量の医薬組成物を、該組成物が約0.15μM〜約50μMの血漿濃度を維持し、一以上の癌細胞における一以上の細胞周期チェックポイントを調節し、癌または前癌状態を治療または癌を予防するように対象に投与する工程を包含する、対象中の癌または前癌状態を治療または癌を予防する方法を提供する。
さらに、本発明は、β−ラパコン、またはその誘導体または類似体、またはその薬学的に許容される塩、またはその代謝産物、および薬学的に許容される担体を含む治療有効量の医薬組成物を、該組成物が約0.15μM〜約50μMの血漿濃度を維持し、一以上の癌細胞において細胞死を選択的に調節し、癌または前癌状態を治療または癌を予防するように対象に投与する工程を包含する、対象中の癌または前癌状態を治療または癌を予防する方法を提供する。
さらに、本発明は、β−ラパコン、またはその誘導体または類似体、またはその薬学的に許容される塩、またはその代謝産物、および薬学的に許容される担体を含む治療有効量の医薬組成物を、該組成物が約0.15μM〜約50μMの血漿濃度を維持し、細胞増殖性疾患を治療または予防するように対象に投与する工程を包含する、対象中の細胞増殖性疾患を治療または予防する方法を提供する。
血漿濃度は約0.1μM〜約100μM、約0.125μM〜約75μM;約0.15μM〜約50μM;約0.175μM〜約30μM;および約0.2μM〜約20μMであることができる。
対象は、約0.5μM−hr〜約100μM−hr、約0.5μM−hr〜約50μM−hr、約1μM−hr〜約25μM−hr、約1μM−hr〜約10μM−hr;約1.25μM−hr〜約6.75μM−hr、約1.5μM−hr〜約6.5μM−hrのAUC範囲で医薬組成物に曝露させることができる。
好ましい実施形態において、対象は哺乳類である。より好ましくは、対象はヒトである。
医薬組成物は1日あたり約2mg/m〜5000mg/m、より好ましくは1日あたり約20mg/m〜2000mg/m、さらに好ましくは1日あたり約20mg/m〜500mg/m、最も好ましくは1日あたり約30mg〜300mg/mの用量で投与することができる。好ましくは、1日あたり約2mg/m〜5000mg/mがヒトの投与用量である。
医薬組成物は静脈内、経口または腹腔内で投与することができる。
癌は、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病、膵臓癌、非小細胞肺癌、肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、悪性メラノーマ、非メラノーマ皮膚癌、血液学的腫瘍、血液学的腫瘍、血液悪性腫瘍、小児白血病、小児リンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキン病、リンパ球起源のリンパ腫、皮膚起源のリンパ腫、急性白血病、慢性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、形質細胞腫、リンパ系腫瘍、AIDS関連癌、舌、口、咽頭および口腔の癌、食道癌、胃癌、小腸の癌、肛門癌、肛門管の癌、直腸肛門癌、肝臓癌、肝内胆管癌、胆嚢癌、胆管癌、他の消化器官の癌、喉頭癌、骨関節癌、子宮癌、子宮頚癌、子宮体癌、陰門の癌、膣癌、睾丸癌、陰茎癌、膀胱癌、腎臓癌(kidney cancer)、腎臓癌(renal cancer)、尿管および他の泌尿器の癌、眼の癌、脳および神経系の癌、CNS癌および甲状腺癌であることができる。
薬学的に許容される担体は溶解担体分子であることができる。好ましくは、溶解担体分子は、Poloxamer、Povidone K17、Povidone K12、Tween 80、エタノール、Cremophor/エタノール、Lipiodol,ポリエチレングリコール(PEG)400、プロピレングリコール、Trappsol、アルファ−シクロデキストリンまたはその類似体、ベータ−シクロデキストリンまたはその類似体、およびガンマ−シクロデキストリンまたはその類似体であることができる。
別の実施形態において、治療としては、β−ラパコンではない医薬による単一治療を受けた集団に比較して、腫瘍の大きさの減少、腫瘍数の減少、腫瘍の成長速度の減少、腫瘍の再生の減少、未治療の集団に比較して治療対象の集団の平均生存時間の増加、または治療対象の集団の平均生存時間の増加を挙げることができる。
一以上の細胞周期チェックポイントの活性化は、一以上の癌細胞の一以上の細胞周期経路または細胞周期レギュレータを活性化することができる。
本発明の医薬組成物の投与は、細胞周期チェックポイントを活性化でき、E2F転写因子経路を活性化でき、E2F転写因子の上昇を誘導でき、E2F転写因子の予定外の活性化を促進でき、または細胞死を選択的に誘導できる。好ましくは、活性化される細胞周期チェックポイントは、G1またはS細胞周期チェックポイント、E2F転写因子の上昇は選択的であり、E2F転写因子の活性化は選択的であり、そして細胞死はアポトーシス、壊死または老化である。
好ましい実施形態において、治療有効量は正常細胞に対する細胞毒ではなく、正常細胞の生存性に影響を与えない
本発明は、β−ラパコン、またはその誘導体または類似体、またはその薬学的に許容される塩、またはその代謝産物、および薬学的に許容される担体からなる医薬組成物とともに、治療有効量の第二抗癌剤または第二抗増殖剤、またはその誘導体または類似体を投与することも含むことができる。
第二の抗癌剤または抗増殖剤は、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロン、ナベルビン、エトポシド、アドリアマイシン、カンプトセシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ミトキサントロン、アムサクリン、エピルビシン、イダルビシン、ゲンシタビンおよびイマチニブであることができる。
本発明の医薬組成物は、第二抗癌剤または第二抗増殖剤の投与と同時またはその後に投与することができ、さらに好ましくは第二抗癌剤または第二抗増殖剤は医薬組成物投与後に投与され、最も好ましくは、第二抗癌剤または第二抗増殖剤は医薬組成物の投与後24時間以内に投与される。
本発明の他の特徴や利点は下記の詳細な説明および請求の範囲から明らかとなるだろう。
(発明の詳細な説明)
本発明は、β−ラパコン、またはその誘導体または類似体、またはその薬学的に許容される塩、またはその代謝産物、および薬学的に許容される担体を含む治療有効量の医薬組成物を、該組成物が約0.15μM〜約50μMの血漿濃度を維持し、癌または前癌状態を治療または癌を予防するように対象に投与する工程を包含する、対象中の癌または前癌状態を治療または癌を予防する方法を提供する。
さらに、本発明は、β−ラパコン、またはその誘導体または類似体、またはその薬学的に許容される塩、またはその代謝産物、および薬学的に許容される担体を含む治療有効量の医薬組成物を、該組成物が約0.15μM〜約50μMの血漿濃度を維持し、一以上の癌細胞における一以上の細胞周期チェックポイントを調節し、癌または前癌状態を治療または癌を予防するように対象に投与する工程を包含する、対象中の癌または前癌状態を治療または癌を予防する方法を提供する。
さらに、本発明は、β−ラパコン、またはその誘導体または類似体、またはその薬学的に許容される塩、またはその代謝産物、および薬学的に許容される担体を含む治療有効量の医薬組成物を、該組成物が約0.15μM〜約50μMの血漿濃度を維持し、一以上の癌細胞において細胞死を選択的に調節し、癌または前癌状態を治療または癌を予防するように対象に投与する工程を包含する、対象中の癌または前癌状態を治療または癌を予防する方法を提供する。
さらに、本発明は、β−ラパコン、またはその誘導体または類似体、またはその薬学的に許容される塩、またはその代謝産物、および薬学的に許容される担体を含む治療有効量の医薬組成物を、該組成物が約0.15μM〜約50μMの血漿濃度を維持し、細胞増殖性疾患を治療または予防するように対象に投与する工程を包含する、対象中の細胞増殖性疾患を治療または予防する方法を提供する。
本発明は癌の治療に有用な医薬の調製のためにβ−ラパコンの使用も提供する。また、本発明は細胞増殖性疾患の治療または予防に有用な医薬の調製のためにβ−ラパコンの使用を提供する。
ここではCO−501およびARQ−501とも称されるβ−ラパコン(3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ナフト[1,2−b]ピラン−5,6−ジオン)は単純な不水溶性オルトナフトキノンであり、ラパチョ木の心材からPaternoによって1882年に最初に単離された(Hooker,SC,(1936)I.Am.Chem.Soc.58:1181−1190;Goncalves de Lima,O,et al.,(1962)Rev.Inst.Antibiot.Univ.Recife.4:3−17を参照)。β−ラパコンの構造は1896年にHookerにより確立され、1927年にFieserにより最初に合成された(Hooker,SC,(1936)I.Am.Chem.Soc.58:1181−1190)。例えば、β−ラパコンは、主にブラジルで生育するTabebuia avellenedaeから容易に単離される天然のラパコルの単純な硫酸処理により得ることができ、またはオーストラリアで生育するロマチアの種子から容易に合成される(Li,CJ,et al.,(1993)J.Biol.Chem.268:22463−33464)。β−ラパコンの製剤設計方法は米国特許第6,458,974号および米国公告第US−2003−0091639−A1に記載されているように達成することができる。
本明細書中で用いられるβ−ラパコンの誘導体または類似体として、例えば、3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)−2H−ナフト[1,2b]ピラン−5,6−ジオン、3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ナフト[1,2b]チオピラン−5,6−ジオンおよび3,4−ジヒドロ−4,4−ジメチル−2H−ナフト[1,2b]チオピラン−5,6−ジオンが挙げられる。β−ラパコンの他の誘導体または類似体はPCT国際出願PCT/US93/07878(WO94/04145)および米国特許第6,245,807号に記載されている。PCT国際出願PCT/US00/10169(WO00/61142)は、3位に多様な置換基を有し、また2位に結合したメチル基の場所にも多様な置換基を有してよいβ−ラパコンを開示する。米国特許第5,763,625号、同第5,824,700号および同第5,969,163号は、2位、3位および4位に多様な置換基を有する類似体と誘導体を開示する。さらに、多くの定期刊行物が、2位、3位、8位および/または9位の一以上に置換基を有するβ−ラパコン類似体と誘導体を報告する(Sabba et al.,(1984)J Med Chem 27:990−994(2位、8位および9位に置換基)を参照);(Portela and Stoppani,(1996)Biochem Pharm 51:275−283(2位および9位に置換基);Goncalves et al.,(1998)Molecular and Biochemical Parasitology 1:167−176(2位および3位に置換基))。β−ラパコンの他の誘導体または類似体はラパコンの「α」位と「β」位にイオウ含有複素環を有する(Kurokawa S,(1970)Bulletin of The Chemical Society of Japan 43:1454−1459;Tapia,RA et al.,(2000)Heterocycles 53(3):585−598;Tapia,RA et al.,(1997)Tetrahedron Letters 38(1):153−154;Chuang,CP et al.,(1996)Heterocycles 40(10):2215−2221;Suginome H et al.,(1993)Journal of the Chemical Society,Chemical Communications 9:807−809;Tonholo J et al.,(1988)Journal of the Brazilian Chemical Society 9(2):163−169;およびKrapcho AP et al.,(1990)Journal of Medicinal Chemistry 33(9):2651−2655)。
本発明の化合物の全ての立体異性体は、混合物または純粋もしくは実質的に純粋な形態のいずれにおいても意図される。本発明による化合物の定義は、全ての可能な立体異性体(例えば、各不斉中心に対してRおよびS立体配置)およびそれらの混合物を包含する。特定の活性を有するラセミ体および単離された光学異性体を殊更特に包含する。ラセミ体は、例えば、ジアステレオマー誘導体の分別晶出、分離または結晶化やキラルカラムクロマトグラフィーによる分離等の物理的方法により分割することができる。個々の光学異性体は、例えば光学活性酸による塩形成およびそれに続く結晶化等の慣習的な方法によりラセミ化合物から得ることができる。さらに、特に明記しないかぎり、二重結合でのE−およびZ−立体配置等のすべての幾何異性体が本発明の範囲内にある。本発明のいくつかの化合物は互変異性体形で存在してよい。他に明記しないかぎり、そうした全ての互変変異体形の化合物は本発明の範囲内にあると考えられる。
本明細書中で用いられる「塩」との用語は薬学的に許容される塩であり、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、乳酸塩および酒石酸塩;Na、K、Li等のアルカリ金属カチオン、MgまたはCa等のアルカリ土類金属塩、または有機アミン塩を含む酸付加塩を挙げることができる。
本明細書中で用いられる「代謝産物」との用語は、β−ラパコンの代謝の産物、またはインビボでβ−ラパコンと類似の活性を示すその薬学的に許容される塩を意味する。
本明細書中で用いられる「対象」との用語は、哺乳類、例えば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ラクダ、バイソンであってよい。好ましい態様において、対象はそれらを必要とするヒトである。
本明細書中で用いられる「細胞増殖性疾患」との用語は、細胞の無秩序および/または異常な成長が、癌性であってもなくても、望まれない状態または疾病の発達を導きうる状態をいう。一つの局面において、細胞増殖性疾患として、例えば、皮膚癌および皮膚の前癌状態が挙げられる。「皮膚の細胞増殖性疾患」とは、皮膚の細胞を伴う細胞増殖性疾患である。一つの局面において、細胞増殖性疾患は前癌を含む。別の態様において、細胞増殖性疾患として、過形成、化生および異形成が挙げられる。
本明細書中で用いられる「正常な細胞」とは「細胞増殖性疾患」の一部として分類できない細胞である。一つの局面において、正常な細胞は、望まれない状態または疾病の発達を導きうる無秩序および/または異常な成長を欠く。好ましくは、正常な細胞は、正常に機能する細胞周期チェックポイント制御機構を有する。
本明細書中で用いられる「細胞を接触させる」とは、化合物または他の組成物を細胞に直接接触させるか、または望ましい生物学的効果を細胞に誘導するのに十分近づける状態をいう。
本明細書中で用いられる「単一療法」とは単一の活性または治療化合物を、それを必要とする対象に投与することをいう。好ましくは、単一療法とは、治療有効量の活性化合物を投与することを伴うだろう。例えば、癌に対するβ−ラパコン単一療法は、治療有効量のβ−ラパコン、またはその薬学的に許容される塩、またはその代謝産物を癌治療の必要性のある対象に投与する工程を包含する。単一療法は、複数の活性化合物の組合せを、好ましくは組合せの各成分を治療有効量で存在させて投与する併用療法とは対照をなすものであろう。一つの局面において、β−ラパコン単一療法は所望の生物学的効果を誘導するのに併用療法よりも効果的である。
一つの局面において、併用療法としては、β−ラパコンとTaxol(登録商標);β−ラパコンとドセタキセル;β−ラパコンとビンクリスチン;β−ラパコンとビンブラスチン;β−ラパコンとノコダゾール;β−ラパコンとテニポシド;β−ラパコンとエトポシド;β−ラパコンとアドリアマイシン;β−ラパコンとエポチロン;β−ラパコンとナベルビン;β−ラパコンとカンプトセシン;β−ラパコンとダウノルビシン;β−ラパコンとダクチノマイシン;β−ラパコンとミトキサントロン;β−ラパコンとアムサクリン;β−ラパコンとエピルビシン;β−ラパコンとイダルビシン;β−ラパコンとゲンシタビンまたはβ−ラパコンとイマチニブが挙げられる。別の態様において、併用療法としては、還元β−ラパコンとTaxol(登録商標);還元β−ラパコンとドセタキセル;還元β−ラパコンとビンクリスチン;還元β−ラパコンとビンブラスチン;還元β−ラパコンとノコダゾール;還元β−ラパコンとテニポシド;還元β−ラパコンとエトポシド;還元β−ラパコンとアドリアマイシン;還元β−ラパコンとエポチロン;還元β−ラパコンとナベルビン;還元β−ラパコンとカンプトセシン;還元β−ラパコンとダウノルビシン;還元β−ラパコンとダクチノマイシン;還元β−ラパコンとミトキサントロン;還元β−ラパコンとアムサクリン;還元β−ラパコンとエピルビシン;還元β−ラパコンとイダルビシン;還元β−ラパコンとゲンシタビンまたは還元β−ラパコンとイマチニブが挙げられる。
本発明の好ましい局面において、細胞増殖性疾患は癌である。癌として、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病、膵臓癌、非小細胞肺癌、肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、悪性メラノーマ、非メラノーマ皮膚癌、血液学的腫瘍、血液学的腫瘍、血液悪性腫瘍、小児白血病、小児リンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキン病、リンパ球起源のリンパ腫、皮膚起源のリンパ腫、急性白血病、慢性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、形質細胞腫、リンパ系腫瘍、AIDS関連癌、舌、口、咽頭および口腔の癌、食道癌、胃癌、小腸の癌、肛門癌、肛門管の癌、直腸肛門癌、肝臓癌、肝内胆管癌、胆嚢癌、胆管癌、他の消化器官の癌、喉頭癌、骨関節癌、子宮癌、子宮頚癌、子宮体癌、陰門の癌、膣癌、睾丸癌、陰茎癌、膀胱癌、腎臓癌、腎臓癌、尿管および他の泌尿器の癌、眼の癌、脳および神経系の癌、CNS癌および甲状腺癌が挙げられる。
好ましい局面において、本発明の組成物は、結腸癌または結腸の細胞増殖性疾患を治療するために用いてよい。一つの局面において、結腸癌は結腸のすべての形態の癌を含む。別の態様において、結腸癌として、散発性および遺伝性の結腸癌を含む。別の態様において、結腸癌として悪性結腸新生物、上皮内癌、代表的なカルチノイド腫瘍および代表的ではないカルチノイド腫瘍が挙げられる。別の態様において、結腸癌として、腺癌、扁平上皮細胞癌および腺扁平細胞上皮癌が挙げられる。別の態様において、結腸癌として、ステージI、ステージII、ステージIIIまたはステージIVの結腸癌が挙げられる。別の態様において、結腸癌は、遺伝性非ポリープ症結腸直腸癌、家族性大腸腺腫症、ガードナー症候群、ポイツ・ジェガース症候群、ターコット症候群および若年性ポリープ症からなる群から選択される遺伝性症候群に関連する。別の態様において、結腸癌は、遺伝性非ポリープ症結腸直腸癌、家族性大腸腺腫症、ガードナー症候群、ポイツ・ジェガース症候群、ターコット症候群および若年性ポリープ症からなる群から選択される遺伝性症候群により引き起こされる。
一つの局面において、結腸の細胞増殖性疾患は結腸細胞に影響を与えるすべての形態の細胞増殖性疾患を含む。一つの局面において、結腸の細胞増殖性疾患として、結腸癌、結腸の前癌状態、結腸の腺腫性ポリープおよび結腸の異時性病変が挙げられる。一つの局面において、結腸の細胞増殖性疾患は腺腫を含む。一つの局面において、結腸の細胞増殖性疾患は、結腸の過形成、化生および異形成により特徴付けられる。別の態様において、個体に結腸の細胞増殖性疾患を生じやすくさせる前結腸疾病として前結腸癌が挙げられる。別の態様において、個体に結腸の細胞増殖性疾患を生じやすくさせる現下の疾病として、クローン病および潰瘍性大腸炎が挙げられる。一つの局面において、結腸の細胞増殖性疾患はp53、ras、FAPおよびDCCからなる群から選択される遺伝子の変異に関連する。別の態様において、個体はp53、ras、FAPおよびDCCからなる群から選択される遺伝子の変異の存在のために結腸の細胞増殖性疾患を発達させる高い危険を有する。
好ましい局面において、本発明の組成物は肺癌または肺の細胞増殖性疾患を治療するために用いてよい。一つの局面において、肺癌は肺のすべての形態の癌を含む。別の態様において、肺癌として、悪性肺新生物、上皮内癌、代表的なカルチノイド腫瘍および代表的ではないカルチノイド腫瘍が挙げられる。別の態様において、肺癌として、小細胞肺癌(“SCLC”)、非小細胞肺癌(“NSCLC”)、扁平上皮細胞癌、腺癌、小細胞癌、大細胞癌、腺扁平上皮癌および中皮腫が挙げられる。別の態様において、肺癌として、「瘢痕癌」、気管支肺胞性癌腫、巨細胞癌、紡錘体細胞癌および大細胞神経内分泌癌腫が挙げられる。別の態様において、肺癌として、組織学的で超微形態的な不均質を有する肺新生物(例えば、混合細胞型)が挙げられる。
一つの局面において、肺の細胞増殖性疾患は肺細胞に影響を与えるすべての形態の細胞増殖性疾患を含む。一つの局面において、肺の細胞増殖性疾患として、肺癌、肺の前癌状態が挙げられる。一つの局面において、肺の細胞増殖性疾患として、肺の過形成、化生および異形成が挙げられる。別の態様において、肺の細胞増殖性疾患として、アスベスト誘発過形成、扁平上皮化生および良性反応性中皮過形成が挙げられる。別の態様において、肺の細胞増殖性疾患として、円柱上皮の重層扁平上皮による置換および粘膜異形成が挙げられる。別の態様において、タバコの煙やアスベスト等の吸入された有害な環境要因に曝された個体は肺の細胞増殖性疾患を発達させる高い危険にさらされているだろう。別の特徴において、個体に肺の細胞増殖性疾患を生じやすくさせる前肺疾患として、慢性間質性肺炎、壊死性肺疾患、強皮症、リウマチ様疾患、サルコイドーシス、間質性肺炎、結核、繰り返しの肺炎、特発性肺線維症、肉芽腫、石綿肺症、線維化性肺胞炎およびホジキン病が挙げられる。
好ましい局面において、本発明の組成物は膵臓癌または膵臓の細胞増殖性疾患を治療するために用いてよい。一つの局面において、膵臓癌は全ての形態の膵臓癌を含む。別の態様において、膵臓癌は管状腺癌を含む。別の態様において、膵臓癌として、腺扁平上皮癌、多形性巨細胞癌、粘液腺癌および破骨細胞様巨細胞癌が挙げられる。別の態様において、膵臓癌として、ムチン性嚢胞腺癌、細葉細胞癌、未分類の大細胞癌、小細胞癌、膵芽細胞腫、乳頭新生物、粘液性嚢胞腺腫、乳頭嚢胞性新生物および漿液性嚢胞腺腫が挙げられる。別の態様において、膵臓癌は組織学的および超微形態的な不均一性を有する膵臓新生物(例えば、混合細胞型)が挙げられる。
一つの局面において、膵臓の細胞増殖性疾患としては、膵臓細胞に影響を与える全ての形態の細胞増殖性疾患を含む。一つの局面において、膵臓の細胞増殖性疾患として、膵臓癌、膵臓の前癌状態、膵臓の過形成および膵臓の形成不全が挙げられる。別の態様において、前膵臓疾病は個体に膵臓の細胞増殖性疾患を生じやすくするだろう。別の態様において、個体に膵臓の細胞増殖性疾患が生じやすくする既存の膵臓疾患として糖尿病と膵炎が挙げられる。
好ましい局面において、本発明の組成物は、本発明の血液癌または本発明の血液細胞増殖性疾患からなる群から選択される癌を治療するために用いてよい。一つの局面において、本発明の血液癌からなる群から選択される癌として、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、小児性リンパ腫、およびリンパ球性および皮膚起源のリンパ腫)、白血病(例えば、小児白血病、毛様細胞白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、および肥満細胞白血病)、骨髄性新生物および肥満細胞新生物が挙げられる。本明細書中で用いられる「白血病」との用語は多発性骨髄腫を含まない。
一つの局面において、本発明の血液細胞増殖性疾患として、リンパ腫、白血病、骨髄性新生物、肥満細胞新生物、骨髄異形成、良性単クローン性免疫グロブリン血、リンパ腫様肉芽腫症、リンパ腫様丘疹症、真性赤血球増加、慢性骨髄性白血病、原発性骨髄線維症および本態性血小板血が挙げられる。別の態様において、本発明の血液細胞増殖性疾患として、過形成、異形成および化生が挙げられる。
本明細書中で用いられる「治療有効量」とは、研究者または臨床医により求められている組織、システム、動物またはヒトの望ましい生物学的または医学的応答を引き出す医薬または薬物の量を意味する。好ましい局面において、生物学的または医学的応答は本発明の癌の治療である。別の態様において、生物学的または医学的応答は本発明の癌または前癌の細胞増殖性疾患の治療または予防である。
一つの局面において、血漿濃度は約0.1μM〜約100μM、約0.125μM〜約75μM;約0.15μM〜約50μM;約0.175μM〜約30μM;および約0.2μM〜約20μMでありうる。
別の態様において、医薬組成物は適当な血漿濃度を少なくとも1ヶ月、少なくとも1週間、少なくとも24時間、少なくとも12時間、少なくとも6時間、少なくとも1時間を維持することができる。さらなる態様において、医薬組成物の適当な血漿濃度は無期限に維持することができる。
さらなる別の態様において、対象は、医薬組成物に、約0.5μM−hr〜約100μM−hr、約0.5μM−hr〜約50μM−hr、約1μM−hr〜25μM−hr、約1μM−hr〜約10μM−hr、約1.25μM−約6.75μM−hr、約1.5μM−約6.5μM−hrのAUC範囲においてさらすことができる。
一つの局面において、本発明の癌の治療は腫瘍の大きさの減少をもたらす。腫瘍の大きさの減少は「腫瘍の緩解」と称してもよい。好ましくは、治療後、腫瘍の大きさは治療前の大きさに比べて5%以上減少し;さらに好ましくは、腫瘍の大きさは10%以上減少し;さらに好ましくは、20%以上減少し;さらに好ましくは、30%以上減少し;さらに好ましくは、40%以上減少し;さらに好ましくは、50%以上減少し;最も好ましくは、75%を超えて減少する。腫瘍の大きさは再現性のある測定手段により測定され得る。好ましい局面において、腫瘍の大きさは腫瘍の直径として測定され得る。
別の態様において、本発明の癌の治療は腫瘍数の減少をもたらす。好ましくは、治療後、腫瘍数は治療前の数に比べて5%以上減少し;さらに好ましくは、腫瘍数は10%以上減少し;さらに好ましくは、20%以上減少し;さらに好ましくは、30%以上減少し;さらに好ましくは、40%以上減少し;さらに好ましくは、50%以上減少し;最も好ましくは、75%を超えて減少する。腫瘍数は再現性のある測定手段により測定され得る。好ましい局面において、腫瘍数は肉眼で見える腫瘍の数を数えるか、または特定の倍率で測定され得る。好ましい局面において、特定の倍率は2×、3×、4×、5×、10×または50×である。
別の態様において、本発明の癌の治療は、担体のみを受けた集団に比べて治療された対象の集団の平均生存期間の増加をもたらす。好ましくは、平均生存期間は、30日より多く増加し;さらに好ましくは60日より多く;さらに好ましくは90日より多く;最も好ましくは120日より多く増加する。集団の平均生存期間の増加は再現性のある手段により測定され得る。好ましい局面において、集団の平均生存期間の増加は、例えば、活性のある化合物による治療の開始後に集団に関する平均生存期間を計算することにより測定され得る。別の好ましい局面において、集団の平均生存期間の増加は、例えば、活性のある化合物による1回目の治療の終了後に集団に関する平均生存期間を計算することで測定してもよい。
別の態様において、本発明の癌の治療は未治療の対象集団に比較して治療集団の平均生存期間の増加をもたらす。好ましくは、平均生存期間は30日より多く;さらに好ましくは60日より多く;さらに好ましくは90日より多く;最も好ましくは120日より多く増加する。集団の平均生存期間の増加は再現性のある手段により測定され得る。好ましい局面において、集団の平均生存期間の増加は、例えば、活性のある化合物による治療の開始後に集団に関する平均生存期間を計算することにより測定され得る。別の好ましい局面において、集団の平均生存期間の増加は、例えば、活性のある化合物による1回目の治療の終了後に集団に関する平均生存期間を計算することにより測定してもよい。
別の態様において、本発明の癌の治療は、β−ラパコンではない医薬、またはその薬学的に許容される塩または代謝産物による単一療法を受けた集団と比較して、治療対象の集団の平均生存期間の増加をもたらす。好ましくは、平均生存期間は30日より多く増加し;さらに好ましくは60日より多く;さらに好ましくは90日より多く;最も好ましくは120日より多く増加する。集団の平均生存期間の増加は再現性のある手段により測定され得る。好ましい局面において、集団の平均生存期間の増加は、例えば、活性のある化合物による治療の開始後に集団に関する平均生存期間を計算することにより測定され得る。別の好ましい局面において、集団の平均生存期間の増加は、例えば、活性のある化合物による1回目の治療の終了後に集団に関する平均生存期間を計算することにより測定してもよい。
別の態様において、本発明の癌の治療は担体のみを受けた集団に比べて治療対象集団の死亡率の減少をもたらす。別の態様において、本発明の癌の治療は未治療対象の集団に比べて治療対象集団の死亡率の減少をもたらす。さらなる態様において、本発明の癌の治療は、β−ラパコンではない医薬、またはその薬学的に許容される塩または代謝産物による単一療法を受けた集団と比較して、治療対象集団の死亡率の減少をもたらす。好ましくは、死亡率は2%より多く減少し;さらに好ましくは5%より多く;さらに好ましくは10%より多く;最も好ましくは25%より多く減少する。好ましい局面において、集団の死亡率の減少は再現性のある手段により測定され得る。別の好ましい局面において、死亡率の減少は、例えば、活性のある化合物による治療の開始後に集団に関する単位時間あたりの疾患関連死の平均数を計算することにより測定され得る。別の好ましい局面において、集団の死亡率の減少は、例えば、活性のある化合物による1回目の治療の終了後に集団に関する単位時間あたりの疾患関連死の平均数を計算することにより測定され得る。
別の態様において、本発明の癌の治療は腫瘍成長速度の減少をもたらす。好ましくは、治療後、腫瘍成長速度は治療前の速度に比較して少なくとも5%減少し;より好ましくは、腫瘍成長速度は少なくとも10%減少し;さらに好ましくは少なくとも20%減少し;さらに好ましくは少なくとも30%減少し;より好ましくは少なくとも40%減少し;さらに好ましくは少なくとも50%減少し;最も好ましくは少なくとも75%減少する。腫瘍の成長速度は再現性のある測定手段により測定され得る。好ましい局面において、腫瘍の再増殖は、例えば治療後の腫瘍の縮小後の腫瘍の直径における増加を測定することにより測定される。別の好ましい局面において、腫瘍の成長速度は単位時間あたり腫瘍直径の変化により測定される。
別の態様において、本発明の癌の治療は腫瘍の再増殖の減少をもたらす。好ましくは、治療後、腫瘍の再増殖は5%未満減少し;より好ましくは、腫瘍の再増殖は、10%未満であり;より好ましくは、20%未満;より好ましくは、30%未満;より好ましくは、40%未満;より好ましくは、50%未満;さらに好ましくは、50%未満;最も好ましくは、75%未満である。腫瘍の再増殖は、再現性のある測定手段により測定され得る。好ましい局面において、腫瘍再増殖の減少は、治療が停止された後に腫瘍が再発しないことによって示される。
別の態様において、本発明の癌または前癌の細胞増殖性疾患の治療または予防は、細胞増殖速度の減少をもたらす。好ましくは、治療後、細胞増殖の速度は、少なくとも5%減少し;より好ましくは、少なくとも10%;より好ましくは、少なくとも20%;より好ましくは、少なくとも30%;より好ましくは、少なくとも40%;さらに好ましくは、少なくとも50%;最も好ましくは、少なくとも75%減少する。細胞増殖速度は、再現性のある測定手段により測定され得る。好ましい局面において、細胞増殖速度は、例えば、組織試料中の分裂細胞の単位時間あたりの数を測定することにより測定される。
別の態様において、本発明の癌または前癌の細胞増殖性疾患の治療または予防は、増殖細胞の比率の減少をもたらす。好ましくは、治療後、増殖細胞の比率は、少なくとも5%減少し;より好ましくは、少なくとも10%;より好ましくは、少なくとも20%;より好ましくは、少なくとも30%;より好ましくは、少なくとも40%;より好ましくは、少なくとも50%;さらに好ましくは、少なくとも50%;最も好ましくは、少なくとも75%減少する。増殖細胞の比率は再現性のある測定手段により測定され得る。好ましい局面において、増殖細胞の比率は、例えば、組織試料中の非分裂細胞の数に対する分裂細胞の数を定量することにより測定される。別の好ましい局面において、増殖細胞の比率は分裂指数と同等である。
別の態様において、本発明の癌または前癌の細胞増殖性疾患の治療または予防は、細胞増殖の領域または区域の大きさの減少をもたらす。好ましくは、治療後、細胞増殖の領域または区域の大きさは、治療前の大きさに比較して少なくとも5%減少し;より好ましくは、少なくとも10%減少し;より好ましくは、少なくとも20%減少し;より好ましくは、少なくとも30%減少し;より好ましくは、少なくとも40%減少し;さらに好ましくは、少なくとも50%減少し;最も好ましくは、75%より多く減少する。細胞増殖の領域または区域の大きさは、再現性のある測定手段により測定され得る。好ましい局面において、細胞増殖の領域または区域の大きさは、細胞増殖の領域または区域の直径として測定され得る。
本明細書中で用いられる「選択的」との用語は、一集団において、他の集団よりも高い頻度で起こる傾向を意味する。一つの局面において、比較される集団は細胞集団である。好ましい局面において、β−ラパコン、またはその薬学的に許容される塩または代謝産物は癌細胞または前癌細胞に選択的に作用するが、正常な細胞に作用することはない。好ましくは、ある事象が集団Bと比較して集団Aで2倍を超えて起こる場合、その事象は集団Bに比べて集団Aで選択的に起こっている。さらに好ましくは、ある事象が集団Aで5倍を超える高い頻度で起こる場合にその事象は選択的に起こっている。さらに好ましくは、ある事象が、集団Bに比べて集団Aで10倍を超えて;より好ましくは、50倍を超えて;さらに好ましくは、100倍を超えて;最も好ましくは、1000倍を超えて起こる場合にその事象は選択的に起こっている。例えば、細胞死が正常細胞に比較して癌細胞で2倍を超えて頻繁に起こる場合、それは癌細胞で選択的に起こると言ってよいだろう。
一つの局面において、本発明の癌または前癌または細胞増殖性疾患の治療は細胞死をもたらし、好ましくは細胞死は集団内の細胞の少なくとも10%の減少をもたらす。さらに好ましくは、細胞死は少なくとも20%の減少;さらに好ましくは、少なくとも30%の減少;さらに好ましくは、少なくとも40%の減少;さらに好ましくは、少なくとも50%の減少;最も好ましくは、少なくとも75%の減少を意味する。集団の細胞数は再現性のある手段により測定され得る。一つの局面において、集団の細胞数は蛍光細胞分析分離装置(FACS)により測定される。別の態様において、集団の細胞数は免疫蛍光顕微鏡検査法により測定される。別の態様において、集団の細胞数は光学顕微鏡検査により測定される。別の態様において、細胞死の測定方法はLi et al.,(2003)Proc Natl Acad Sci USA.100(5):2674−8に示されている通りである。好ましい局面において、細胞死はアポトーシス、壊死または老化に起因する。
好ましい実施形態において、効果的な量のβ−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物は正常細胞に対する細胞毒性がない。治療有効量の化合物は、化合物の治療有効量での投与が10%を超える正常細胞にアポトーシスを引き起こさない場合、正常細胞に対する細胞毒性がない。治療有効量の化合物は、化合物の治療有効量での投与が10%を超える正常細胞に細胞死を引き起こさない場合、正常細胞の生存性に影響を与えない。
理論に縛られるわけではないが、本発明は、β−ラパコンによる細胞周期チェックポイントの活性化の理解と方法を包含し、それらに部分的に基づく。細胞周期チェックポイントを一般に活性化することはActivated Checkpoint Therapy(登録商標)またはACT(登録商標)と称される。β−ラパコンが効果的なチェックポイント活性剤であるという事実は、一連の癌および前癌に対するその広い適用性を容易にする(WO04/007531)。
手短に説明すると、多くの癌細胞は、それらの分子モジュレータの一つ(例えばp53)の変異に続発して細胞周期チェックポイント機能が欠けている。癌細胞が発癌プロセス中に遺伝的エラーを蓄積するのは一部はこの理由からである。癌細胞の制御されない増殖原動力と人工的に誘導されたチェックポイント遅延との対立により細胞死が誘導されるように思われるため、細胞周期チェックポイント機能を活性化する治療剤は、癌細胞の細胞死を選択的に促進することができる。ACT(登録商標)は、一以上のチェックポイントを活性化することにより細胞周期進行対停止に関する相反するシグナルを作ることで、細胞増殖周期中にチェックポイントで細胞死が起こる傾向を巧みに利用する。一つを超えるチェックポイントが活性化される場合、制御されない増殖シグナルと遺伝的異常を有する癌細胞は複数のチェックポイントでブロックされて、相乗的な細胞死を促進する「衝突」を作る。
ACT(登録商標)は、正常細胞に比較して癌細胞に対する選択性を提供するため、選択性の低い治療よりも安全である。第一に、ACT(登録商標)法は、細胞周期チェックポイントを調節(活性化または阻害)するが、中断することはない。第二に、よく調節された増殖シグナルを有する正常な細胞は、チェックポイントにおいて調節された方法で遅らせられ、細胞死を受けやすい衝突をもたらさない。第三に、損なわれていないG1チェックポイント調節を有する正常細胞はG1で停止すると期待される。一方、ほとんどの癌細胞はG1チェックポイント欠陥を有して、癌細胞をS/M期チェックポイントを強いる医薬に対して、より感受性となるために、癌細胞はS期、G2期およびM期で遅らせられると期待される。β−ラパコンはG1およびS期化合物であり、細胞をβ−ラパコンに接触させることはG1またはS細胞周期チェックポイントの活性化をもたらす。
一つの局面において、活性化は、一以上の組成物(例えば、タンパク質または核酸)を、望ましい生物学的機能を達成するために適当な状態に置くことをいう。一つの局面において、活性化されうる組成物は非活性化状態も有する。一つの局面において、活性化組成物は抑制的または促進的な生物学的機能、またはその両方を有するだろう。
一つの局面において、上昇とは組成物(例えば、タンパク質または核酸)の望ましい生物学的活性の増加をいう。一つの局面において、上昇は組成物の濃度の増加により起こるだろう。
本明細書中で用いられる「細胞周期チェックポイント経路」とは細胞周期チェックポイントの調節に関与する生化学的な経路を言う。細胞周期チェックポイント経路は、細胞周期チェックポイントを構成する一以上の機能に対して、促進的または抑制的な効果、またはその両方を有するだろう。細胞周期チェックポイント経路は少なくとも二つの組成、好ましくはタンパク質からなり、そのいずれも細胞チェックポイントの調節に寄与する。細胞周期チェックポイント経路は細胞周期チェックポイントの一以上のメンバーの活性化により活性化されるだろう。好ましくは、細胞周期チェックポイント経路は生化学的なシグナル経路である。
本明細書中で用いられる「細胞周期チェックポイントレギュレータ」は、細胞周期チェックポイントの調節のために少なくとも部分的に機能することのできる組成をいう。細胞周期チェックポイントレギュレータは、細胞周期チェックポイントを構成する一以上の機能に対して、促進的または抑制的な効果、またはその両方を有するだろう。一つの局面において、細胞周期チェックポイントレギュレータはタンパク質である。別の態様において、細胞周期チェックポイントレギュレータは非タンパク質である。
一つの局面において、β−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物によるチェックポイント分子の予定外の発現の刺激は、欠陥チェックポイント(癌および前癌細胞の特質)を有する細胞に細胞死を選択的に誘導する。一つの局面において、細胞をβ−ラパコンに接触させることはチェックポイント分子E2Fの予想外の発現を促進する。本明細書中で用いられる「E2F」は(E2F−1、E2F−2、E2F−3等の、しかしこれらに限定されない)E2F転写因子ファミリーである。
損なわれていない調節機構を有する正常細胞では、チェックポイント分子の(例えば、細胞をβ−ラパコン、またはその薬学的に許容される塩、代謝産物、類似体または誘導体に接触させることにより誘導される)強いられた発現は、実質的な重要性を有すると報告されていない発現パターンをもたらす。対照的に、癌および前癌細胞は、予定外のチェックポイント分子(例えば、E2F)の未チェックまたは持続的な発現、またはその両方をもたらして、癌および前癌細胞の選択的な細胞死を導く欠陥機能を有する。本発明は、β−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物の投与による予定外のチェックポイント分子の未チェックまたは持続的な発現を含み、これを提供する。
一つの局面において、細胞をβ−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物に接触させることは、一以上の細胞周期チェックポイントの活性化をもたらす。好ましくは、β−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物を、それを必要とする患者に投与することは、一以上の細胞周期チェックポイントの活性化をもたらす。
一つの局面において、細胞をβ−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物に接触させることは、一以上の細胞周期チェックポイントレギュレータの活性化をもたらす。好ましくは、β−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物を、それを必要とする患者に投与することは、一以上の細胞周期チェックポイントレギュレータの活性化をもたらす。
一つの局面において、細胞をβ−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物を接触させることは、本発明の癌の細胞において選択的に細胞死を調節(誘導または活性化)する。好ましくは、β−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物を、それを必要とする患者に投与することは、本発明細胞の癌において選択的に細胞死を誘導または活性化する。別の態様において、細胞をβ−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物に接触させることは、本発明の癌または前癌の細胞増殖性疾患により影響を受けた一以上の細胞において選択的に細胞死を誘導する。好ましくは、β−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物を、それを必要とする患者に投与することは、本発明の癌または前癌の細胞増殖性疾患により影響を受けた一以上の細胞において選択的に細胞死を誘導する。
一つの局面において、細胞をβ−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物に接触させることは、E2F転写因子経路の活性化をもたらす。好ましくは、β−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物を、それを必要とする患者に投与することは、E2F転写因子経路の活性化をもたらす。好ましい局面において、E2F活性は5%を超えるだけ増加させ;さらに好ましくは、10%を超えるだけ;さらに好ましくは、25%を超えるだけ;さらに好ましくは、50%を超えるだけ;最も好ましくは、2倍を超えるだけ増加する。E2F活性の誘導とE2Fレベルの上昇の測定方法はLi et al.,(2003)Proc Natl Acad Sci USA.100(5):2674−8に示されている通りである。
一つの局面において、細胞をβ−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物に接触させることは、E2F転写因子の活性化をもたらす。好ましくは、β−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物を、それを必要とする患者に投与することは、E2F転写因子の上昇をもたらす。
一つの局面において、細胞をβ−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物に接触させることは、正常細胞ではなく、本発明の癌または前癌細胞で選択的にE2F転写因子の上昇をもたらす。好ましくは、β−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物を、それを必要とする患者に投与することは、正常細胞ではなく、本発明の癌または前癌で選択的にE2F転写因子の上昇をもたらす。
一つの局面において、細胞をβ−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物に接触させることは、E2F転写因子の予定外の活性化を促進する。好ましくは、β−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物を、それを必要とする患者に投与することは、E2F転写因子の予定外の活性化を促進する。
一つの局面において、細胞をβ−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物に接触させることは、正常細胞ではなく、癌または前癌細胞で選択的にE2F転写因子の予定外の活性化を促進する。好ましくは、β−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物を、それを必要とする患者に投与することは、正常細胞ではなく、癌または前癌細胞で選択的にE2F転写因子の予定外の活性化を促進する。
好ましい局面において、本発明は、β−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物を、それを必要とする対象に投与することにより癌を治療または予防する方法に関し、β−ラパコン、またはその薬学的に許容される塩または代謝産物の投与は下記の一以上をもたらす:細胞周期のG1および/またはS期での細胞の蓄積、正常細胞ではなく癌細胞での細胞死による細胞毒性、動物において少なくとも2の治療指数を有する抗腫瘍活性、および細胞周期チェックポイントの活性化(例えば、転写因子のE2Fファミリーのメンバーの活性化または上昇)。本明細書中で用いられる「治療指数」は有効用量により分割された最大許容用量である。
さらなる態様において、β−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物は第二の抗癌剤または抗増殖剤(化学療法剤)と組み合されて投与することができる。化学療法剤は微小管標的医薬、トポイソメラーゼ毒医薬またはシチジン類似体医薬であってよい。好ましい局面において、化学療法剤は、Taxol(登録商標)(パクリタキセル)、ロバスタチン、ミノシン、タモキシフェン、ゲンシタビン、アラC、5−フルオロウラシル(5−FU)、メトトレキサート(MTX)、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、テニポシド、エトポシド、アドリアマイシン、エポチロン、ナベルビン、カンプトセシン、ダウノニビシン、ダクチノマイシン、ミトキサントロン、アムサクリン、エピルビシン、イダルビシン、ゲンシタビンまたはイマチニブであってよい。
β−ラパコン、またはその薬学的に許容される塩、またはその代謝産物、またはその類似体または誘導体(本発明の医薬組成物)は、第二の抗癌剤または第二の抗増殖剤の投与と同時または投与後に投与することができ、より好ましくは、第二の抗癌剤または第二の抗増殖剤は本発明の医薬組成物の投与後に投与され、最も好ましくは第二の抗癌剤または第二の抗増殖剤は本発明の医薬組成物の投与後の24時間以内に投与される。
β−ラパコン、またはその薬学的に許容される塩、またはその代謝産物等の本発明の化合物は投与に適する医薬組成物に配合することができる。そのような組成物は典型的には化合物(すなわち、活性化合物等)および薬学的に許容される賦形剤または担体を含む。本明細書中で用いられる「薬学的に許容される賦形剤」または「薬学的に許容される担体」とは、医薬投与に適合するありとあらゆる溶媒、分散媒体、塗膜、抗菌剤、抗真菌薬、等張の吸収遅延剤等を含むものとする。適当な担体はこの分野で標準的な参考文献であるRemington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されている。そのような担体または希釈剤の好ましい例として、水、食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液および5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される担体として、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸等の固体担体が挙げられる。例示的な液体担体として、シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、水等が挙げられる。同様に、担体または希釈剤は、単独、もしくはワックス、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルメタクリレート等と組合わされたグリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレート等の公知の時間遅延物質を含んでよい。他の増量剤、賦形剤、香料剤、および従来知られる他の添加剤も本発明の医薬組成物に含ませてもよい。リポソームおよび非水性賦形剤、例えば不揮発性油を用いてもよい。薬学活性物質のためにそのような媒体や物質の使用はよく知られている。慣習的な媒体または物質が活性化合物に非適合である場合を除いて、組成物中のこれらの使用が意図される。補助的な活性成分も組成物に配合することができる。
一つの局面において、β−ラパコンは治療有効量(例えば、腫瘍成長の阻害、腫瘍細胞の死滅、細胞増殖性疾患の治療または予防等により望ましい治療効果を達成するのに有効なレベル)のβ−ラパコンまたはその薬学的に許容される塩または代謝産物(有効成分として)を慣習的な操作に従って標準的な医薬担体または希釈剤と組合わせることにより(すなわち、本発明の医薬組成物を作ることにより)調製された適当な投与形で投与される。これらの操作は望まれる調製物を得るために必要に応じて成分の混合、造粒および圧縮または溶解を伴ってよい。
本発明の医薬組成物はその意図する投与経路に適合するように配合される。投与経路の例として、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜および直腸投与が挙げられる。非経口、皮内または皮下適用に用いられる溶液または懸濁液としては下記の成分を挙げることができる:注射用の水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリピレングリコールまたは他の合成溶媒等の滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤;エチレンジアミンテトラ酢酸等のキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩等の緩衝剤および塩化ナトリウムまたはデキストロース等の等張性の調節剤。pHは塩酸または水酸化ナトリウム等の酸または塩基により調節できる。非経口調製物はガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または複数回投与バイアルに封入することができる。
本発明の化合物または医薬組成物は、化学療法で現在使われているよく知られた多くの方法により対象に投与することができる。例えば、癌の治療のために、本発明の化合物を腫瘍中に直接注射するか、血流または体腔中に注射するか、または経口で摂取するか、またはパッチを用いて経皮膚で適用してもよい。選択される投与量は有効的な治療を構成するには十分であるべきだが、許容されない副作用を引き起こす程に高いものであってはならない。病状(例えば、癌、前癌等)の状態および患者の健康は、好ましくは治療中および治療後の適当な期間厳密にモニターしなければならない。
本発明の活性化合物を含む医薬組成物は、一般的に知られている方法、例えば、慣習的な混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、微粒子状化、乳化、カプセル化、エントラッピングまたは凍結乾燥法の手段により製造してよい。医薬組成物は、活性化合物の薬学的に用いることのできる調製物への加工を容易にする賦形剤および/または助剤を含む一以上の薬学的に許容される担体を用いる慣習的な方法により製造してよい。勿論、適当な製剤は選択された投与経路に依存する。
注射可能な使用に適する医薬組成物として、滅菌水溶液(水溶性である場合)または分散液および滅菌された注射可能な溶液または分散液の使用時調製用の滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与のために、適当な担体として、生理食塩水、静菌性の水、Cremophor ELTM(BASF、Parsippany、N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合で、組成物は無菌でなければならなく、容易な注射針通過が存在する程度に流動性でなければならない。製造および保存条件下で安定でなければならず、細菌や真菌等の微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液状ポリエチレングリコール等)およびそれらの適当な混合物を含む溶媒または分散媒体であることができる。適当な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用により、分散液の場合、必要とされる粒径の維持により、および界面活性剤の利用により維持することができる。微生物の作用の防止は多様な抗菌剤と抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等により達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、マンニトール等のポリアルコール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物に含めることが望ましいだろう。注射可能な組成物の長期の吸収は、吸収を遅延する物質、例えばアルミニウムモノステアレートおよびゼラチンを組成物に含めることにより達成することができる。
滅菌された注射可能な溶液は活性化合物(例えば、細胞周期チェックポイント活性化モジュレータ)を、必要なら上記成分の一つまたは組み合わせとともに適当な溶媒中に必要な量で配合した後、滅菌ろ過することにより調製することができる。一般的に、分散液は活性化合物を、基本的な分散媒体および上記成分からの必要とされる他の成分を含む滅菌賦形剤に配合することにより調製される。滅菌の注射可能な溶液の調製用滅菌粉末の場合、調製方法は、有効成分と、前もって滅菌ろ過した溶液からのさらなる所望の成分との粉末を生じる真空乾燥および凍結乾燥である。
経口組成物は一般的に不活性希釈剤または食べられる薬学的に許容される担体を含む。これらはゼラチンカプセルに封入されるか、または錠剤へと圧縮される。経口治療投与の目的のために、活性化合物は賦形剤に配合され、錠剤、トローチまたはカプセルの形で用いることができる。経口組成物はうがい薬としての使用のために液状担体を用いて調製することもでき、ここでは液状担体中の化合物は経口で適用され、口の中でグチュグチュして、吐くか、または飲み込まれる。薬学的に適合性のある結合剤および/または補助物質を組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル、トローチ等は下記成分のいずれか、または類似の性質の化合物を含むことができる:微結晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン等の結合剤;デンプンまたはラクトース等の賦形剤、アルギン酸、Primogelまたはコーンスターチ等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはSterotes等の滑剤;コロイド状二酸化ケイ素等の流動促進剤;スクロースまたはサッカリン等の甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジフレイバリングの香料添加剤。
吸入による投与のためには、化合物は、適当なスプレー用高圧ガス、例えば、二酸化炭素等のガス、または噴霧器を含む加圧容器またはディスペンサーからのエアゾールスプレーの形で投与される。
全身投与は経粘膜的手段によっても経皮的手段によってもよい。経粘膜的または経皮的投与のためには、透過すべきバリヤーに適当な浸透剤が製剤に用いられる。そのような浸透剤は一般的に知られ、例えば、経粘膜的投与のために、洗浄剤、胆汁酸およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜的投与は鼻内噴霧または座薬の使用により達成することができる。経皮的投与のためには、活性化合物を一般的に知られているように軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームに配合する。
一つの局面において、活性成分は、移植物やマイクロカプセル化投与システムを含む制御放出製剤等、体からの速い排出に対して化合物を保護する薬学的に許容される担体とともに調製される。エチレンビニルアセテート、多無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸等の生分解性で生体適合性のあるポリマーを用いることができる。そのような製剤の調製方法は当業者に自明であろう。それら物質はAlza社およびNova Pharmaceuticals社からも市販され入手することができる。(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体により感染細胞をターゲットとするリポソームを含む)リポソーム懸濁液も薬学的に許容される担体として用いることができる。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載されているように当業者に公知の方法にしたがって調製することができる。
好ましい局面において、薬学的に許容される担体は溶解担体分子であることができる。より好ましくは、溶解担体分子は、Poloxamer、Povidone K17、Povidone K12、Tween 80、エタノール、Cremophor/エタノール、Lipiodol,ポリエチレングリコール(PEG)400、プロピレングリコール、Trappsol、アルファ−シクロデキストリンまたはその類似体、ベータ−シクロデキストリンまたはその類似体、およびガンマ−シクロデキストリンまたはその類似体であることができる。
投与の容易さおよび投与量の均一性のために、経口または非経口組成物を投与量単位形で処方することが特に有利である。本明細書中で用いられる投与量単位形とは、治療される対象に対して単位投与量として適する物理的に分離した単位をいい、各単位が必要とされる薬学担体と関連して所望の治療効果を生むように計算された所定量の活性化合物を含んでいる。本発明の投与量単位形の詳細は、活性化合物の独自の特徴と達成されるべき特定の治療効果により決定され、またそれらに直接依存する。
治療の用途において、本発明にしたがって用いられる医薬組成物の投与量は、該物質、受容患者の年齢、体重および病態、および治療を管理する臨床医または開業医の経験および判断、とりわけ選択された投与量に影響を与える因子に基づいて変えられる。一般的に、投与量は腫瘍の成長を遅くし、好ましくは退行させ、また好ましくは癌の完全な退行を引き起こす結果とするのに十分でなければならない。投与量は1日あたり約0.0001mg/キロから一日あたり約1000mg/キロの範囲であってよい。好ましい局面において、投与量は1日あたり約1mg/キロから1日あたり約200mg/キロの範囲であってよい。効果的な量の医薬物質は臨床医または他の資格のある観察者により見受けられるような客観的に同定可能な改善を提供するものである。患者における腫瘍の退行は典型的には腫瘍の直径を基準にして測定する。腫瘍の直径の減少は退行を示す。退行は、治療が停止された後に腫瘍が再発しないことによっても示される。本明細書中で用いられる「用量効果的な様式」および「治療有効量」とは、対象または細胞において所望の効果を生じる活性化合物の量をいう。
別の態様において、医薬組成物は1日あたり約2mg/m〜5000mg/m、好ましくは1日あたり約20mg/m〜2000mg/m、さらに好ましくは1日あたり約20mg/m〜500mg/m、最も好ましくは1日あたり約30〜300mg/mの投与量で投与することができる。1日あたり約2mg/m〜約5000mg/mがヒトでの好ましい投与用量である。
別の態様において、医薬組成物は、1日あたり、受容者の体重1キログラムあたり、約10〜1,000,000μg;好ましくは、1日あたり受容者の体重1キログラムあたり、約100〜500,000μg、さらに好ましくは、1日あたり受容者の体重1キログラムあたり、約1000〜250,000μg、最も好ましくは、1日あたり受容者の体重1キログラムあたり、約10,000〜150,000μgの投与量で投与することができる。
当業者は、1日あたりのmg/m、または受容者の体重1キログラムあたりμgでの適当な投与量を、医薬組成物が投与される対象に基づいて決定することができる。
医薬組成物は、投与説明書とともに容器、パックまたはディスペンサーに含めることができる。
本発明は、下記の実施例に基づいてさらに定義される。前記の詳細な説明および下記の実施例は例示のためだけであって、本発明の範囲に対する制限と見なされるべきではないことを理解されたい。材料と方法の両方に対する多くの改変が、本発明の目的と利益から離れることなく実施してよいことは当業者には明らかであろう。他に示されなければ、本明細書中で用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。ここに示される全ての出版物、特許出願、特許および他の参考文献は、参考として、それら全体が本明細書に援用される。不一致の場合、本明細書(定義を含めて)が優先するものとする。
(実施例1)
マウスにおける腹腔内(IP)投与の薬物動態プロフィールを決定するために研究を行った。この研究では、最初のβ−ラパコン注射(「第一サイクル」)後および8回目のβ−ラパコン注射(「最終サイクル」)後に全血試料を採取した。血漿は全血試料から調製し、LC−MSによるβ−ラパコン濃度の分析まで凍結した。図1はLipiodolに配合した150mg/mのβ−ラパコンの最初のIP投与の後および再度150mg/mのβ−ラパコンおよび3mg/mのTaxol(登録商標)(共にLipiodolに配合)による8回の3日サイクル処理後のβ−ラパコン血漿濃度を示す。この研究において、ピーク血漿レベルは投与の三十分以内に達成され、投与後少なくとも一時間にわたって大体同じレベルであり続け、投与後6時間で低いレベルに下降した。最初の投与サイクルと最後の投与サイクルとの差は明らかではなく、β−ラパコンの循環半減期は繰り返しの投与後に変化しないことを示す。ピーク血漿レベルはおおよそ8μMのβ−ラパコンに対応する。この研究において動物は明らかな毒性を示さなかった。
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPBCD)に配合されたβ−ラパコンを用いて、腫瘍を持たないメスのヌード(Ncr)マウスで類似の研究を行った。好ましい製剤は、40%HPBCD中の10mg/mLのβ−ラパコンである。ヌードマウスに、50mg/kgまたは10mg/kgを腹腔内に与えた。各時点で、全血試料を、単一β−ラパコンIP注射後に3匹のメスマウス(NCR)から心臓穿刺により採取した。血漿を全血試料から調製し、LC−MSによるβ−ラパコン濃度の分析まで凍結した。図2と表1に示す結果は、ピーク血清レベルはLipiodol製剤よりも水性HPBCD製剤による方が低いが、濃度曲線下面積(AUC)は6時間にわたってほとんど同一であることを示す。表1はLipiodol製剤およびHPBCD製剤により達成されたAUCとCmaxを比較する。
(表1)
Figure 2007523187
両製剤によるインビボ有効性はCmaxの有意な差にもかかわらず等しいため、データは有効性がAUCに関連することを示す。これらの研究は、AUC範囲が約0.5〜約100(μM−hr)、Cmax範囲が約0.1〜約100(μM)および投与量が約2〜約5000(mg/m)にありうることを示す。これは、全薬物曝露は、ピーク薬物濃度よりもアポトーシスの誘導に密接に関連することを示すインビトロデータと一致する。よって、動物での有効性は、2〜約5000mg/mの投与された量に対応する約0.5〜約100μM−hrの医薬に対する全暴露をもたらす臨床製剤中のβ−ラパコンの投与量により達成することができる。
前の研究は、細胞におよそ4時間適用される1〜2μM(4〜8μM−hr/mLの曝露)は多くの癌細胞系でインビトロLC50に達するか、それを超えることを示した。したがって、薬物動態データはインビトロ細胞毒性結果に一致し、2〜約5000mg/mの投与された量に対応する約0.5〜約100μM−hrの医薬に対する全暴露をもたらす臨床製剤中のβ−ラパコンの投与量が患者の治療上の処置に重要なことが確認された。
(実施例2)
ラットとイヌの両方での静脈内投与後のβ−ラパコンの薬物動態を評価した。オスSprague−Dawleyラットに対するHPBCD製剤中の低用量β−ラパコンの1時間または10分間の静脈内注射後の結果を図3と表2に示す。β−ラパコンの血漿濃度はLC−MSにより決定した。これらの投与量では毒性の徴候はなかった。これらの結果は、AUCが直線的であり、排除半減期は、5〜15mg/kgの範囲の投与量の1時間注射後のラットにおいて4.5〜7時間である。疎水性製剤原料から予想されるように、分配量は大きい(20〜26L/kg)。
(表2)
Figure 2007523187
毒性研究からの薬物動態データを図4と表3に示す。この研究において、2匹のイヌ(1匹のオス、1匹のメス)にHPBCD製剤中のβ−ラパコンを一時間にわたって静脈内投与した。動物は、5、15、30および45mg/kgの段階的に増加させた投与量を、投与間に3〜4日間おいて受けた。2匹のイヌの平均応答を各投与量レベルで示す。β−ラパコンの血漿濃度はLC−MSにより決定した。30mg/kgを含む投与量まで毒性を生じなかった。動物は、激しい毒性症候を生じた45mg/kgの投与量の終了前に安楽死させた。
イヌにおいて、分布相は低く、血漿レベルは投与後の最初の8時間比較的保存されたままにあった。最終半減期は投与量範囲にわたっておよそ16時間であった。これらの研究はラットとイヌに対するβ−ラパコンの静脈内投与が、毒性の所見がなく容易に治療レベルを達成することを示す。
(表3)
Figure 2007523187
(実施例3)
ヒト血漿タンパク質に対するβ−ラパコンの結合の程度を37℃でPBS緩衝液に対する平衡透析を用いて測定した。40%のHPBCDに処方されたβ−ラパコンを、プールされたヒト血漿アリコートに2、5、10、17および25μMの最終濃度まで加えた;各血漿アリコートは70,000〜90,000DPMの14C標識β−ラパコンを含んだ。血漿アリコートを37℃で1時間インキュベートし、次にDianorm平衡透析器を用いて37℃で4時間PBS緩衝液に対して透析した。次に、血漿とPBSとの間のβ−ラパコンの分布を両溶液の14C標識β−ラパコンを定量することにより決定し、次にヒト血漿中の遊離β−ラパコン分画をHuおよびCurryの方法(Biopharm Drug Dispos.1986年、3月〜4月;7(2):211−4)を用いて計算した。前の研究はβ−ラクトンがヒト血漿中で37℃、16時間インキュベートされたときに分解に対して安定であることを示したため、血漿中のβ−ラパコン分解に対する調節は行わなかった。研究の結果は、調べられた濃度の全範囲(2〜25μM)にわたってヒト血漿中の遊離β−ラパコンの量が約7%(93%タンパク質結合)であることを示した。
β−ラパコンのヒト血漿タンパク質への結合の可逆性は類似の実験で評価した。40%HPBCDに処方されたβ−ラパコンを、プールされたヒト血漿に10μMの最終濃度まで加えた;血漿アリコートは70,000〜90,000DPMの14C標識β−ラパコンを含んだ。スパイクされた血漿を37℃で1時間インキュベートし、次に37℃で新鮮な血漿アリコートに対して3回透析した。スパイクされた血漿と新鮮な血漿との間のβ−ラパコンの分布は14C標識β−ラパコンを定量することにより決定した。
この研究は、血漿中の少なくとも65%のβ−ラパコンが血漿タンパク質に可逆的に結合し、新鮮なヒト血漿中へ透析できることを示した。透析は消耗させるものではないため、可逆的に結合したβ−ラパコンの実際の量は高くなり、おそらく100%近いだろう。
(実施例4)
多数の毒性研究をβ−ラパコンを用いて行い、ここに記載する。β−ラパコンに関して実施したGLPおよび毒性研究を下記の表4と表5にそれぞれ示す。MDS Pharma Services−Taiwan Ltd.(台湾、台北)により実施されたイヌでの心臓血管研究以外は、Calvert Preclinical Services,Inc.(ペンシルバニア州オリファント)が全ての動物実験を実施した。
(表4)
Figure 2007523187
(表5)
Figure 2007523187
静脈内注射用HPBCD製剤中のβ−ラパコン製剤が契約試験実験室に提供された。製剤は40%HPBCD中の10mg/mLのβ−ラクトンを含む。製剤を、注射前に0.45%または0.9%NaClによって投与濃度まで希釈した。
個々の研究の設計上の特徴を表6と表7に要約する。
(表6)
Figure 2007523187
Figure 2007523187
研究の結果は、β−ラパコンの治療血漿濃度が、ヒトにおいて10〜40mg/mの範囲の投与量の投与後に達成できることを示す。我々の研究は多様なこれら投与量の毒性の検討に集中した。さらに、実施例5〜14に詳細に説明される研究結果は以下のとおりである:
・ 急性単一投与量増加研究は、1時間のIV注射がラットにおいて270mg/m(45mg/kg)およびイヌにおいて535mg/m(30mg/kg)を含む量まで一般的によく許容されることを示した。
・ 意図される臨床経路および投与間隔の後にモデル化された繰り返しの毎週の一時間静脈内注射×4は、ラットおよびイヌにおいて、270mg/m未満の投与量で有意な毒性がない。このレベルか、またはこのレベル以上での主な発見は網状赤血球増加によるヘモグロビンのわずかな減少と穏やかに上昇したビリルビンレベルであり、両者ともに2週間の回復中に正常に戻った。
・ 360mg/m(60mg/kg)の1時間の静脈内注射後のラットおよび800mg/m(45mg/kg)のイヌにおいて致死性が観察された。死の原因は巨視的または微視的病理学からは明らかでなかい。致死性は、注射部位組織および血液に対する高濃度の医薬溶液の注射の非特異的な効果のためであろう。
・ 骨髄抑制、肝臓、腎臓、神経毒性または心臓毒性等の主要な器官毒性の徴候は試験された投与量または投薬計画では存在しない。
作用機序に基づくβ−ラパコンに予期された高い選択性に一致して、有意な非可逆的な毒性が複数の予想された治療投与量で同定された。これらの投与量以上のラットとイヌの両方での毒性の最初の発現は、網状赤血球増加、高ビリルビン血およびヘモジデリン沈着症によるヘモグロビンの可逆的な低下であり、脈管外赤血球溶血を示唆する。これらの徴候は両種における二週間の回復期間中に消滅した。
これらの値以上で、毒性レベルにおいて、短期間の致死が起こらない場合に可逆的である筋肉衰弱がそれに伴う呼吸不全とともに起こる。この毒性の原因は、医薬の薬理学に関連しない全身効果をもたらす注射部位組織(血液を含む)に対する高い医薬濃度の局所効果であると考えられる;しかし、他の病因を除外しているわけではない。
β−ラパコンは骨髄抑制、胃腸毒性または脱毛の徴候を示さない。心臓、循環系、神経系、肝臓または腎臓に関連する特定の主要器官毒性の徴候も存在しなかった。
4回の毎週の一時間静脈内注射で投与されたβ−ラパコンに関する無影響量(NOEL)はラットにおいて60mg/m(10mg/kg)であり、イヌにおいて90mg/m(5mg/kg)である。STDはラットにおいて>270mg/m(45mg/kg)であり、イヌにおいて≧625mg/m(35mg/kg)である。
(実施例5)
ラットとイヌにおけるGLP毒性研究は、ヒトにおけるβ−ラパコンの投与をまねて、1週間おきに1時間注射により投与されたβ−ラパコンの広い範囲の投与量を網羅する。投与量範囲は、毒性研究の結果に基づく高容量で致死下の毒性を引き出すように設計した。使用された投与量を表8に示す。これらの研究で使用された低用量はβ−ラパコンの上記の治療血漿レベルを生じることに注意されたい。
(表8)
Figure 2007523187
(実施例6)
研究No.1Aにおいて、以下の表9と表10に示されるように、成熟したオスとメスのSprague−Dawley Hsd:SDラットを無作為に複数の処置グループに分け、0(賦形剤(vehicle))、10、25および45mg/kgのβ−ラパコンの投与量を静脈内注射により投与した。
(表9)
Figure 2007523187
(表10)
Figure 2007523187
HPBCD製剤(10mg/mL)として提供されるβ−ラパコンを0.9%NaClで投与濃度まで希釈した。投与溶液中のβ−ラパコン濃度は分光学的分析により確認した。β−ラパコン投与溶液は毒性グループとトキシコキネティク(toxicokinetic)グループの各ラットに静脈内注射として1時間にわたり尾の静脈から毎週投与した(1、8、15および22日目)。各動物は、その最近の体重に基づいて投薬を受けた。
血液学および血清化学用の血液試料(1動物あたり最大2.5mL)を2日目に全ての毒性研究動物(グループ1〜4)の尾の支脈から採取した。血液学、凝固および血清化学用の血液試料は殺す前の23日目(10動物/性/グループ)または37日目(全ての生存動物)に心臓穿刺により集めた。全血を、ベースライン値の研究に割り当てられなかった動物から10動物/性で集めた。
トキシコキネティク評価用の血液試料(0.5mL)を1日目と22日目にトキシコキネティクグループ動物(グループ5〜7)から、後方眼窩穿刺により、前処置および注射開始の1、2、4、8、12および24時間後の時点で採取した。血液試料は、各時点で3動物/性/グループから採取し、どの動物からも24時間の期間に3回を超えて血液を採取することはなかった。トキシコキネティク動物を最終的な血液採取の後に安楽死させた。
研究の23日目に、10動物/性/グループを安楽死させ(CO窒息)、下記のように剖検に供した。グループ1および4の残りの動物は37日目に殺すまで処置しないで研究用に残した。
この研究の間に行われた主要な臨床観察は、研究医薬の1回目の用量の投与後の主に高用量動物間の脹れて炎症を起こした尾の外見であった。引き続く用量の投与後、取り除く前の投与針に少量の塩溶液をどっと流した。これは、引き続く用量の投与での所見率を顕著に低減したが、かなりの組織炎症が多数の高用量動物の尾で持続した。
トキシコキネティク動物間のどのグループにも死亡例はなかった。毒性動物間で、コントロール、低用量または中用量のグループで死亡例または毒性の臨床的徴候は起こらなかった。45mg/kg毒性高用量グループの1匹の動物が3日目に死んだのがわかり、右心房拡張およびうっ血を有する中度の多発性心筋壊死の組織学病理学的所見を有したが、この研究の他の動物には病変は見られなかった。医薬研究との関連性は確立することはできなかった。2匹の他の高用量動物は14日目と15日目に殺した。一匹の動物は、研究獣医の判断の際に、動物の尾の炎症を起こした状態が全身感染の顕著な危険にあることを示したときに殺した。殺した後、この動物は本研究の他の高用量動物に類似する組織病理学的変化を有した(下記を参照)。もう一方の動物は体重の損失のために殺した。この動物は、被験物質に直接関連するとは考えられないストレスに関連した非特異的な組織病理学的所見を有した。
臨床病理性は、中用量と高用量の動物で見られたヘモグロビンの小さい(<2g/dl)減少を除き全てのグループで一般的に気づかれないものであった;これらの徴候は37日までに正常化した。ビリルビンのわずかな増加(例えば、0.33mg/dl、ULN 0.27mg/dl)は2日目および23日目に高用量動物に見られたが、同じく37日目には正常であった。CKおよびASTのわずかな増加は2日目の1回目の投与後の高用量動物に見られたが、全ての用量の終了後の23日目および37日目では正常であった。
高用量動物の組織病理学的な評価は、肝臓および脾臓におけるヘモジデリン沈着症と髄外造血を示した。これらの変化は、中用量動物においてさらに軽い程度で見られた。高用量動物の注射部位は、周囲組織に炎症および壊死のある中度〜著しい炎症性変化を示した。坐骨神経のわずかな軸索変性症は尾炎症の局所的拡張および/または血管変化に起因したものだろう。部分的に消失した尾静脈の所見以外の組織病理学的変化は37日目までに消失した。
この研究の結果は、β−ラパコンを、45mg/kgを含む量までの投与量で4回の毎週1時間の静脈内注射として投与したとき、オスのSprague Dawleyラットでよく許容されることを示す。この最大用量では、医薬が停止されたときに消失した不明確な病因の軽い脈管外赤血球溶血に対応するヘモグロビンの小さな低下、わずかに上昇したビリルビンおよび組織病理学的所見が見られる。この研究の結果に基づき、NOELは10mg/kg/投与量であった。
(実施例7)
研究No.2Aにおいて、表11に示すように、成熟したオスとメスのビーグル犬を無作為に複数の処置グループに分け、0(賦形剤)、5、15および35mg/kgの投与量で4×1時間の静脈内注射により投薬した。
(表11)
Figure 2007523187
HPBCD製剤(10mg/mL)として提供されるβ−ラパコンは0.9%NaClで投与濃度まで希釈した。投与溶液中のβ−ラパコン濃度は分光学的分析により確認した。β−ラパコン投与溶液は各イヌに静脈内注射として1時間にわたり橈側皮静脈から毎週投与した(1、8、15および22日目)。各動物に、その最近の体重に基づいて投薬した。
血液学、凝固および血清化学用の血液試料(1日につき1動物あたり最大20mL)を、処置開始前、2日目および23日目または37日目に頚静脈から採取した。血液採取の前に動物に絶食させなかった2日目を除き、動物は血液採取の前、12〜24時間絶食させた。トキシコキネティク評価用の血液試料(約1mL/試料)を1日目と22日目に各動物の頚静脈から、即時の前処置および注射開始後の1、2、4、6、8、12および24時間の時点で採取した。
研究の23日目に、4匹の動物/性/グループを安楽死(バルビツール酸塩の過剰摂取)させた後、放血させて、下記のように剖検に供した。グループ1および4の残りの動物は37日目に殺すまで処置しないで研究用に残した。
この研究中に初期の死亡例は存在しなかった。最小の臨床的徴候がコントロールグループと低用量グループで見受けられた。中用量グループにおいて、一時的な臨床的徴候が投与後にしばしば見受けられたが、24時間内に消失した。これらは、低下した活動、異常な歩き方と姿勢、唾液分泌および注射部位における脹れを含んだ。高用量グループにおいて、同様な所見が、発声、頭部のたたくような動き、身震い、体のたたくような動きおよびどきどきの嘔吐等、医薬投与中の不快症状の徴候とともに起こった。典型的には、高用量動物の臨床的徴候は24時間以内に消失した。
低用量グループと中用量グループの体重および食物消費はコントロールに匹敵した。高用量動物は、減少した食物消費に一般的に関連した体重のわずかな平均的減少(オスで−7%およびメスで−4%)を示した;回復期間中、体重はコントロールと匹敵するレベルまで回復した。
薬物に関連する眼科所見は存在しなかった。
臨床的病理学的データは、中用量(〜3g/dl)および高用量(〜5g/dl)動物で23日目の網状赤血球増加とともに減少ヘモグロビンを示す。これらの値は回復期間中に正常に戻った。用量依存するビリルビンのわずかな増加が2日目と23日目に見られたが、同じく37日目には消失した。
唯一の顕著な巨視的病理学的観察は、肝臓および脾臓における用量関連髄外造血とヘモジデリン沈着症の微視的所見に関連する中用量動物と高用量動物(それぞれ5/8および3/8)における脾臓増大であった。これらは14日間の回復中に部分的に消失した。高用量動物の胸腺は非特異的なストレス反応に一致する退縮を示した。高用量グループにおいて、副腎は皮質萎縮およびストレス反応と両立しうる他の変化を示した。
予備的なトキシコキネティク結果は、中用量および高用量動物におけるβ−ラパコンの血漿レベルは用量範囲設定パイロット試験から予想される値よりも有意に上にあることを示す。これらのデータの詳細なトキシコキネティク分析は未解決であり、試料可能なときに提出したい。
これらのデータの結果は、β−ラパコンの4回の毎週の静脈内投与物の投与が5mg/kgでイヌにおいてよく許容されることを示す。15mg/kgおよび35mg/kgでは、可逆的脈管外赤血球溶血の徴候は、多様な一時的臨床徴候とともに明らかであった。ヘモグロビンの低下はラット研究で見られたよりも幾分か高かったが、投与量は高く(mg/m)、別々のトキシコキネティクグループが利用されなかったために動物は高い放血を受けた。35mg/kgを受けた動物は副腎と胸腺でストレス反応を示した。
(実施例8)
研究No.3Aにおいて、表12に示されるように、10匹のオスSprague−Dawleyラットの4グループに、0(賦形剤)、5、25および60mg/kgの投与量で単一の1時間静脈注射により尾の静脈から投薬した。
(表12)
Figure 2007523187
投与に続いて、蓋を取り付け、排泄物を検出する吸着紙上に置かれたプレキシグラススクエアからなる固定環境に動物を置いた。ラットを、処置の5、15および30分後および1、2、3、4および24時間後に薬理学的または毒物学的活性の徴候について観察した。表13の症候に関して観察を行った。
(表13)
Figure 2007523187
用量投与後に15分間隔で全ての動物の体温を測った。
0、5および25mg/kgのβ−ラパコンが投与された動物は投与後24時間にわたって薬理学的または毒性学的な徴候を示さなかった。60mg/kg投与量を受けた(6mg/mLの濃度で投与された)10匹の動物のうち5匹が注射中に死んだ。努力性呼吸は注射中にすべての10匹の動物に見受けられた。生存動物は典型的には努力性呼吸、異常歩行、減少活動、および減少腹部音を注射後の1〜4時間示した。すべての生存動物は投与後の24時間までに回復した。この投与グループにおいて、投与後の15分間の平均体温は34.6℃であり、他の3処置グループよりも約3℃低かった。
この研究の結果は、β−ラパコンに関するNOELは、オスSprague Dawleyラットに対して単一の静脈内用量として投与された場合に、25mg/kgであることを示す。60mg/kgを受けた動物の徴候は呼吸欠損を有する筋力低下を示唆した。低体温症の原因はこの研究からは明らかではないが、それは減少筋肉活動に対する二次的なものであろう。他の神経学的徴候は観察されなかった。前の研究でSprague Dawleyラットでよく許容された60mg/kgの投与量はこの研究では致死を引き起こし、60mg/kgはラットでの閾値に近いことを示唆する。生存動物における臨床的徴候は24時間以内で消失し、動物が暴露に対して生き延びる場合、急性毒性は主に可逆性のあることを示した。
(実施例9)
研究No.1Bにおいて、表14に示されるように、6匹の成熟Sprague−Dawleyラット(3匹のオスおよび3匹のメス)を無作為に5つの処置グループに分け、静脈内注射により処置した。
(表14)
Figure 2007523187
β−ラパコン投与溶液を、各ラットに、その最近の体重に基づいて、単一の静脈内注射として1時間にわたって尾静脈から投与した。
動物を投与後7日間観察した。2日目に、血液試料を、血液学および臨床化学的評価のために後眼窩穿刺により(投与後約24時間に)採取した。他の観察は臨床的徴候、体重および食物消費を含んだ。8日目に、動物をCOで麻酔し、試験用血液を心臓穿刺により集め、次に動物をCO窒息により安楽死させ、主要器官(肺、心臓、肝臓、脳、脾臓および腎臓)に対して行われた組織病理学的評価による巨視的剖検に供した。
コントロール、30または45mg/kg投与量グループでは死亡例または毒性の臨床的徴候は見受けられなかった。60mg/kg投与量に死亡例はなかったが、投与終了の1〜2時間後に一時的な臨床的徴候が発達したが(速い呼吸、異常な歩き方および姿勢)、2日目には解消した。
75mg/kgの投与量グループにおいて、類似の臨床的徴候が用量投与後すぐに見受けられ、6匹の動物中のうち5匹が投与終了の1時間内に死んだ。一匹のオス動物は生存したが、2〜4日目に徴候を示し続けた。動物の状態は1週間の投与後観察期間で幾分か向上した。
血液学および血清化学値は全てのグループで一般的に目立たなかった。
内臓の巨視的異常は巨視的剖検で見受けられなかった。組織病理学的評価は、0、30、45または60mg/kgを投与された動物において顕著な所見を示さなかった。最小〜軽い肝細胞空胞形成および腎尿細管上皮蒼白および弱化が75mg/kgグループにおける唯一の組織病理学的所見であった。これらの所見は、75mg/kg投与に対して生き延び、8日目に殺した動物では明らかではなかった。
この研究の結果は、β−ラパコンに関するNOELは、オスとメスのSprague Dawleyラットに3mg/mLの濃度で単一の1時間静脈内用量として投与した場合に、45mg/kgであったことを示す。4mg/mLの医薬濃度で投与された60mg/kgの高用量は永続する臨床的徴候がなく、毒性の実験的証拠もなく許容された。肝細胞空胞形成および腎尿細管蒼白は高用量グループにおける最終的な事象をおそらく反映する。
(実施例10)
研究No.3Bにおいて、3匹のオスSprague−Dawleyラットの1グループに、10mL/kgの用量体積で75mg/kgの投与量で尾静脈から単一の1時間静脈内注射により投薬した。3匹の未処理コントロールオス動物の別のグループを実験値の比較のために用いた。処置群の詳細を表15に示す。
(表15)
Figure 2007523187
動物の死亡率と投与中の臨床的徴候を観察した。投与終了直後に、動物をCOに曝し、血液学および血清化学用の血液試料を心臓穿刺により採取した。次に動物を安楽死させ(CO窒息)、処分した。投与前に、比較のために、血液を3匹の投薬を受けたことがないコロニー動物からも採取した。
3ラットのうち1匹がβ−ラパコン注射中に死んだ(合計2.9mL用量の2.4mLが投与された)。全ての動物は投与中に努力性呼吸を示した。2匹の生存動物は投与後に低下した体の調子および異常な歩行を有した。血液学的パラメータの有意な変化は見られなかった。ビリルビンは少し上昇した(コントロールの0.12mg/dlに対して0.5mg/dl)。血漿リン、カルシウム、マグネシウム、血液学または他の血清化学の有意な変化は存在しなかった。
この研究において、7.5mg/mLの医薬濃度で投与された75mg/kgは3匹の動物のうち1匹に対して致死的であった。臨床的徴候は筋力低下に一致した。リンレベルの減少はラットでは見られなかった。肝臓酵素または血液学的パラメータの変化が存在しない場合の上昇ビリルビンの有意性は明らかでない。
(実施例11)
研究No.2Bにおいて、2匹の成熟したビーグル犬(1匹のオスと1匹のメス)を表16に示されたように処置した。
(表16)
Figure 2007523187
β−ラパコン投与溶液を、各イヌに、その最近の体重に基づき、単一の静脈内注射として1時間にわたって橈側皮静脈から投与した。重篤な毒性の徴候が見受けられるまで投与レベルを増加させた。各投与量間の時間間隔は3〜4日であった。
動物の臨床的徴候を観察し、体重と食品消費を記録した。用量投与前、投与の約1時間後、投与の約24時間後および最後に殺す前に、血液学用および臨床化学用の血液試料を、絶食させた動物の頚静脈から集めた。全血試料(1mL/試料)もトキシコキネティク分析のために用量投与のそれぞれの日に集めた。
研究中、体重および食品消費に対する被験物質関連効果は存在しなかった。毒性の臨床的症候は5、15または30mg/kgの投与量で見受けられなかった。苦しい呼吸、発声、および痛み応答の欠如と疲労を有する他の苦痛等の臨床徴候が、45mg/kg用量の投与中に起こった。投与の完了の前に投与を中止し、動物を安楽死させた。巨視的な剖検により、薄いおよび/または無色の粘膜と内臓を明らかにした。
5、15および30mg/kgの投与量で血清化学パラメータに有意な変化は見受けられなかった。45mg/kgの投与量で、全ビリルビンレベルは0.38および0.26mg/dlの投与前値から0.66および0.87mg/dlまで増加した。リンレベルは5.8および5.2mg/dl投与前値から2.6および0.8mg/dlまで減少し、(全)血清カルシウムに変化はなかった。他の血清化学は有意な異常を示さなかった。
11日間の研究にわたって、両方の動物のヘモグロビンは14.9および13.5g/dlから9.1および9.7g/dlまで下降した。赤血球不同および軽い多染性が45mg/kg用量の投与前(30mg/kg投与後の3日目)に見受けられた。
この研究の結果は、30mg/kgを含む量までのβ−ラパコンの1時間にわたる静脈内注射が、ビーグル犬に対して有意な急性毒物効果をも持たないことを示した。毒性は45mg/kg用量で起こった。臨床効果(例えば、呼吸効果、疲労)および巨視的剖検からの結果(薄い組織と無色の器官)は筋力低下およびその結果として起こる低酸素症を有する呼吸不全と適合した。繰り返しの採血(1動物あたり約142mLの全血)、血液希釈および他の実験操作はすべてヘモグロビンの減少に寄与しただろう。脈管外赤血球溶血等の他の効果は除外することはできず、上昇ビリルビンに寄与したこともありうるだろう。
(実施例12)
研究No.4Bにおいて、表17に示されるように、成熟したメスのビーグル犬(コントロールグループは1匹のオス)を無作為に3処置グループ(3動物/グループ)に分けた。
(表17)
Figure 2007523187
動物をペントバルビタールナトリウムで麻酔した(実験にわたって、1mL/kgの量での30mg/kgのIV静脈内ボーラス後に、5mg/kg/2.5mL/時間IVの連続注射)。β−ラパコン投与溶液は1時間にわたって橈側皮静脈から静脈内注射により投与した。心臓血管機能の測定のために、皮下針電極とECGシグナルコンディショナを用いてリードII ECGを得た。心拍数(HR)は脈拍数タコメーターを用いて測定した。右大腿動脈を、平均の最大および最低の動脈圧(BP)を記録するために圧力トランスデューサおよび圧力プロセッサーに接続したカテーテルにつなげた。左大腿動脈は、側腹切開により露出させ、電磁血流計に接続したプローブ(2.5mm i.d.)を血流(BF)測定のために動脈周囲に置いた。ECG、HR、BPおよびBFを記録し、サーマルライティングオシログラフ上に示した。肺機能の測定のために、呼吸流量図に接続した5.0mmの気管内チューブが、統合された流れを記録して、呼吸数(RR)の連続的な記録を得た。食道の下部3分の1に置いた食道バルーンから胸腔内圧を得た。肺圧差、つまり胸郭(すなわち、気管内チューブの外部末端)圧と胸腔内圧との差は、差圧トランスデューサにより測定した。呼吸の流れおよび肺圧差の測定結果を用いて全肺抵抗(R)および動的コンプライアンス(CDYN)を計算した。
全てのパラメータを測定し、注射開始の直前(0分)および注射開始の5、10、30、60、90および120分後に記録した。平均±SEM値と投与後の各観察時点での前処置値に対するパーセンテージとを計算し、相対観察時間間隔で賦形剤コントロールグループと試験物質処理グループとの比較のためにダネット検定を適用した。差はp<0.05レベルで有意とみなした。
20mg/kg投与グループの唯一の有意な結果は、60分でのわずかに減少した1回換気量(16%)であったが、120分間までに正常に戻った。40mg/kgのβ−ラパコンは、注射の終わりまでに、呼吸数の4倍の増加を伴なう1回換気量の41%の減少を引き起こした。動的コンプライアンスは標準の約52%まで減少し、肺抵抗は約50%増加した。これらの変化はすべて回復期間中に標準に向かって戻った。β−ラパコンのいずれの投与量も血圧の有意な変化(平均的な最大または最小血圧)、血流、心拍数またはECG(S−Tセグメント、QRS継続時間、PR間隔およびQTc値)を引き起こさなかった。
この研究の結果は、40mg/kgを含む量までのβ−ラパコンの1時間にわたる静脈内注射はビーグル犬の心臓血管機能に有意な効果を持たず、20mg/kgを含む量までの投与は肺機能に有意な効果を持たないことを示した。40mg/kgの投与は、麻酔されていないイヌおよびラットで見られる毒性徴候に類似すると考えられる換気量の可逆的な低下と呼吸数の増加を引き起こした。
(実施例13)
研究No.5Bにおいて、表18に示されるように、3匹のオスSprague−Dawleyラットの3グループに0(賦形剤)、30および45mg/kgの投与量で4×1時間の静脈内注射により尾の静脈から投薬した。
(表18)
Figure 2007523187
血液試料を、血液学および臨床化学的評価(1、15および24日目)および凝固評価(24日目のみ)および臨床化学的評価のために採取した。
致死性および毒性の臨床的徴候は、コントロールまたは30mg/kg投与グループではなかった。45mg/kg投与グループには死亡例は存在しなかったが、毒性の臨床的徴候は1日目と8日目の投与のすぐ後に1匹の動物に見受けられ(騒がしい呼吸、苦しい(labored)呼吸、異常な歩き方および姿勢)、1〜2日以内に消失した。いずれの動物も15日目または22日目の投与後に何の症候も示さなかった。
15日目の高用量グループにおいてわずかに上昇した網状赤血球数(コントロールの2.1%に対して4.1%)以外は、全てのグループで血液学的値は一般的に目立たなかった。24日目では、網状赤血球数を含める全ての血液学パラメータが目立たなかった。血清臨床化学データは、全ビリルビンのわずかな増加を1日目と15日目にグループ2と3(正常の上限0.27mg/dlに対して0.30mg/dl〜0.53mg/dl)で示したが、両グループとも24日目では正常であった。クレアチンキナーゼは両投与量グループで1日目に上昇したが(それぞれ正常の上限の2倍と4倍)、継続する投薬にもかかわらず15日目までには正常となった。
内臓の異常は剖検では見受けられなかった。45mg/kgグループにおいて、関連性の明らかでないいくつかの小さな組織病理学的所見が存在した。これらはわずかな気管支拡張と稀な気管支上皮衰弱(グループ1と2の一部動物にも見られた)および3匹の動物のうち2匹にわずかな程度の腎尿細管上皮の脹れを含んだ。
この研究の結果は、4回の毎週の1時間静脈内注射として45mg/kgを含む用量まで投与されたオスのSprague Dawleyラットにおいてβ−ラパコンはよく許容されたことを示した。1日目と15日目のビリルビンのわずかな上昇(肝臓毒性の徴候はない)および1日目のCKは、継続する投与にもかかわらずこの研究の最後には消失した。
(実施例14)
研究No.6Bにおいて、表19に示されるように、3匹のオスSprague−Dawleyラットの2グループに0(賦形剤)および45mg/kgを投薬した。
(表19)
Figure 2007523187
β−ラパコン投与溶液を、連続する5日間(1〜5日目)、各ラットに静脈内注射として1時間にわたって尾の静脈から投与した。毒性の臨床的な徴候が5回の投与後に見受けられなかった場合、用量投与は毎日2倍に増加させ(投与と投与の間隔は約8時間)、14日目まで継続した。屠殺前の15日目に、血液学、凝固および血清臨床化学評価のために血液試料をすべての生存動物から採取した。完全な剖検を実施し、主要な器官(副腎、脳、心臓、腎臓、肺、脾臓、肝臓および睾丸)を組織病理学的評価のために調製した。
軟糞便がときどき観察される以外は、致死性および毒性の臨床的徴候は、コントロールグループではこの研究全体にわたって見受けられず、45mg/kg投与グループでは5日目まで見受けられなかった。9〜10日目に、動物はぼさぼさの被毛状態、薄い色、医薬投与に関連する尾の外傷、散発的な軟糞便およびやせた体の状態を示し始めた。1匹の動物は13日目にはひん死の状態であることがわかり、安楽死させた。β−ラパコン処置された残りの2匹の動物は15日目に殺すまで生き延びた。
3匹の45mg/kgの動物のうち1匹のみ(1匹の動物はひん死であることがわかり、別の動物から試料を得られなかった)に対して臨床的実験測定を行った。血液尿素窒素は正常なクレアチンを有して上昇し(ULN 19mg/dlに対して40)、小さな増加が全ビリルビン(ULN 0.27mg/dLに対して0.46)およびクレアチンホスホキナーゼ(ULN 513IU/Lに対して553)に存在した。
45mg/kgグループにおいて、動物は、ひん死の動物の尾の侵食および腐肉の形成等の中度〜重度の注射部位損傷を示した。
顕微鏡での観察で、尾の注射部位と周囲組織は、軟組織壊死および側面尾静脈における血管内血栓等の中度〜重度の炎症性変化を示した。血管内血栓は2匹のコントロール動物にも同定されたが、壊死は伴わず、治癒の徴候を示した。
ひん死の状態で殺された動物では、肺動脈に見られた血栓塞栓は動物のひん死の状態をもたらすか、またはそれに寄与するようであったが、閉塞性ではなかった。血栓はたぶん血管外傷の部位(側面尾静脈)から損傷を経て全身循環に入るのであろう。
被験物質に関連する脾臓の微視的な所見は、直接的な被験物質効果または注射部位に引き起こされた慢性炎症に関連する間接的な効果に適合性のある1匹の動物において、軽度〜中度のリンパ萎縮、ヘモジデリン沈着症を伴う組織球増殖症、中度のうっ血、および髄外造血(EMH)の温和な増加を含んだ。
この研究の結果は、オスSprague Dawleyラットに対する45mg/kgのβ−ラパコンの14日間の1日2回までの繰り返しの毎日の投薬が、低い体重増加および食物消費等の毒性の臨床的徴候をもたらしたことを示した。巨視的な所見は脾臓に限定され、他の器官には被験物質に関連する変化はなかった。
(実施例15)
指数関数的に増殖する細胞を、6ウエルプレートの1ウエルあたり(2.5mL)、250、1000または5000細胞で播種し、24時間付着させた。β−ラパコンをDMSO中20mMの濃度で溶解し、完全培地に希釈した。β−ラパコン(0.5mL)を最終濃度の6倍で3.0mL/ウエルの全体積まで加えた。コントロールプレートは同体積のDMSOのみを入れた。4時間の曝露後、医薬を注意して除去し、医薬を含まない培地を加えることができた。培養物を14〜21日間そのままに放置してコロニーを形成させ、次に固定してクリスタルバイオレット染色(Sigma)で染色した。50細胞を超えるコロニーを生存細胞と評価した。細胞を完全な湿度下に37℃、5%CO2中で維持した。。
β−ラパコンは、標準化された条件下で他の抗腫瘍剤との比較を可能とする60癌細胞系のNCIインビトロスクリーンにて試験した。NCIスクリーンは、白血病、非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸癌、中枢神経系(CNS)癌、メラノーマ、卵巣癌、前立腺癌および乳癌の組織から単離された細胞系を含む。NCIアッセイは標準化された条件で実施され、終点としてスルホルホダミン(sulforhodamine)Bアッセイを用いる。β−ラパコンは多くの細胞系に対して広く活性があり、−4.5〜−5.3のLC50(50%致死率をもたらすlog10モル濃度)および全ての細胞にわたって−5.07の平均を有した。表5に示されるように、公に利用可能なデータを有する一般的な癌種に対する多くのFDA承認化学療法剤と比較して、どの承認された医薬もすべての細胞にわたりβ−ラパコンの平均を超えるものはなく、わずかにミトキサントロンのみがそれと等しかった。さらに、表20には、膵臓、結腸、前立腺、卵巣、肺、乳およびメラノーマの癌組織から単離された細胞系に対するLC50(μM)を示した。各「リプリケート結果」は別々の実験の結果を表す。
(表20)
Figure 2007523187
(実施例16)
指数関数的に増殖する細胞を、6ウエルプレートの1ウエルあたり(2.5mL)、250、1000または5000細胞で播種し、24時間付着させた。β−ラパコンをDMSO中20mMの濃度で溶解し、完全培地に希釈した。β−ラパコン(0.5mL)を最終濃度の6倍で3.0mL/ウエルの全体積まで加えた。コントロールプレートは同体積のDMSOのみを入れた。4時間の曝露後、医薬を注意して除去し、医薬を含まない培地を加えた。培養物を14〜21日間そのままに放置してコロニーを形成させ、次に固定してクリスタルバイオレット染色(Sigma)で染色した。50細胞を超えるコロニーを生存細胞と評価した。細胞を完全な湿度下に37℃、5%CO2中で維持した。。3リプリケートの結果を表21に示す。各「リプリケート結果」は別々の実験の結果を表す。
(表21)
Figure 2007523187
(実施例17)
β−ラパコンは、標準化された条件下で他の抗腫瘍剤との比較を可能とする60癌細胞系のNCIインビトロスクリーンにて試験した。NCIアッセイは標準化された条件で実施され、終点としてスルホルホダミンBアッセイを用いる。60系のNCIスクリーンは、9種類の結腸癌細胞系(COLO205、DLD−1、HCC−2998、HCT−116、HCT−15、HT29、KM12、KM20L2およびSW−620)を含んだ。その結果は、β−ラパコンは多くの細胞系に対して広く活性があり、−4.5〜−5.3のLC50(50%致死率をもたらすlog10モル濃度)および全ての細胞にわたって−5.07の平均を有することを示す。図6に示されるように、公に利用可能なデータを有する一般的な癌種に対する多くのFDA承認化学療法剤と比較して、どの承認された医薬もすべての細胞にわたりβ−ラパコンの平均を超えるものはなく、わずかにミトキサントロンのみがそれと等しい。
(実施例18)
本発明の化合物は、SW−480、HT−29、DLD1およびHCT−116ヒト結腸癌腫細胞等の多様な結腸癌細胞系に対して強力な抗増殖活性を示す。β−ラパコンは選択的に癌細胞系にアポトーシスを引き起こすが、正常細胞では起こさないため(Li et al.,(2003)Proc Natl Acad Sci USA.100(5):2674−8)、本化合物は、NCM460正常結腸上皮細胞等の多様な組織からの正常な細胞系の一団に対しても調べた。細胞増殖アッセイは既に記載されたように実施する(Muller et al.,(1996)J.Med.Chem.39:3132−3138;Muller et al.,(1994)J.Med.Chem.37:1660−1669)。
より具体的には、指数関数的に増殖する細胞を、6ウエルプレートの1ウエルあたり1000細胞で播種し、24時間付着させた。β−ラパコンをDMSOに溶解し、マイクロモル濃度でウエルに加えた。コントロールプレートは同体積のDMSOで処理した。4時間後、上清を除去し、新しい培地を加えた。培養物は10〜15日間にわたって毎日観察し、次に固定して染色した。30細胞を超えるコロニーを生存細胞と評価した。本発明のアッセイを表21に示し、E2F活性の誘導とE2Fレベルの上昇の測定方法はLi et al.,(2003)Proc Natl Acad Sci USA.100(5):2674−8および米国特許出願公開第2002/0169135号に見られる説明にしたがって実施した。
表22は、細胞増殖の50%を阻害する化合物の濃度(IC50)を示す。低マイクロモル範囲以下のIC50値が試験された3種類の結腸癌細胞系中のβ−ラパコンについて得られた。本発明の化合物の別の効果は、転写因子のE2Fファミリーの少なくとも1種類のメンバーの活性の誘導または上昇(例えば、レベルの上昇)である(表22を参照)。本発明の試験された化合物は、利用されたアッセイでは正常な結腸細胞に対する明らかまたは有意な毒性効果を示さない。
(表22)
Figure 2007523187
(実施例19)
ヒト結腸癌異種移植片模型を用いてβ−ラパコンの抗腫瘍活性を調べた。メスの胸腺欠損ヌードマウス(Ncr)に2×10個のHT−29ヒト結腸癌細胞を皮下接種し、腫瘍を80mmの大きさになるまで成長させた。動物を無作為に3グループに分けた。動物に、腹腔内で、3日ごとにβ−ラパコン(60mg/kg)、5−フルオロウラシル(5−FU、40mg/kg)または賦形剤コントロールを、1動物につき合計10回処置するか、またはβ−ラパコン(40mg/kg)で28日間毎日処置した。次に、平均腫瘍容積を分析した。
図7は、β−ラパコンの60mg/kgでの処置が異種移植されたヒト結腸癌の平均腫瘍容積を約75%減少させたことを示す。いずれの処置投薬計画にも有意な毒性徴候は見受けられなかった。多様な組織起源の細胞系を用いるインビトロ実験はβ−ラパコンが正常細胞に対して毒性がないことをさらに示した。
スチューデントT検定により調べられた統計的な有意性(P値)を表23に示す。
(表23)
Figure 2007523187
(実施例20)
指数関数的に増殖する細胞を、6ウエルプレートの1ウエルあたり1000細胞で播種し、48時間付着させた。医薬を5μL未満の濃縮液(0.1%未満の最終DMSO濃度に対応する)としてディッシュに加えた。β−ラパコンをDMSO中20mMの濃度で溶解し、完全培地に希釈した。コントロールプレートは同体積のDMSOのみを入れた。1〜4時間の曝露後、細胞をすすぎ、医薬を含まない培地を加えた。培養物は10〜20日間そのままに放置してコロニーを形成させ、次に固定して、改変Wright−Giemsa染色(Sigma)で染色した。30細胞を超えるコロニーを生存細胞と評価した。細胞を完全な湿度下に37℃、5%CO2中で維持した。。
G480肺癌細胞に対するβ−ラパコンの4μMでの4時間の処理は、担体のみによる処理と比較して、68%の細胞死(すなわち、細胞の32%の生存)をもたらした。表23は結果の要約を示す。コントロールウエル中のコロニーの数を100%生存とみなした。処理細胞はコントロールに対する比率として示した。データは3回の独立した実験からの平均(+SEM)として示した。
(表23)
Figure 2007523187
(実施例21)
指数関数的に増殖する細胞を、6ウエルプレートの1ウエルあたり(2.5mL)、250、1000または5000細胞で播種し、24時間付着させた。β−ラパコンをDMSO中20mMの濃度で溶解し、完全培地に希釈した。β−ラパコン(0.5mL)を最終濃度の6倍で3.0mL/ウエルの全体積まで加えた。コントロールプレートは同体積のDMSOのみを入れた。4時間の曝露後、医薬を注意して除去し、医薬を含まない培地を加えた。培養物を14〜21日間そのままに放置してコロニーを形成させ、次に固定してクリスタルバイオレット染色(Sigma)で染色した。50細胞を超えるコロニーを生存細胞と評価した。細胞を完全な湿度下に37℃、5%CO2中で維持した。。3リプリケートの結果を表24に示す。各「リプリケート結果」は別々の実験の結果を表す。
(表24)
Figure 2007523187
(実施例22)
β−ラパコンは、標準化された条件下で他の抗腫瘍剤との比較を可能とする60癌細胞系のNCIインビトロスクリーンにて試験した。NCIアッセイは標準化された条件で実施され、終点としてスルホルホダミンBアッセイを用いる。60系のNCIスクリーンは、12種類の結腸癌細胞系(A549、EKVX、HOP−18、HOP−19、HOP−62、HOP−92、HCI−H226、NCI−H23、HCI−H322M、NCI−H460、HCI−H522およびLXFL529)および3種類の小細胞肺癌細胞系(DMS114、DMS273およびSHP−77)を含んだ。その結果は、β−ラパコンは多くの細胞系に対して広く活性があり、−4.5〜−5.3のLC50(50%致死率をもたらすlog10モル濃度)および全ての細胞にわたって−5.07の平均を有することを示す。図8は、公に利用可能なデータを有する一般的な癌種に対する多くのFDA承認化学療法剤と比較した場合に、どの承認された医薬もすべての細胞にわたりβ−ラパコンの平均を超えるものはなく、わずかにミトキサントロンのみがそれと等しいことを示す。
(実施例23)
指数関数的に増殖するA549細胞を、60mmのディッシュに2×10個の細胞にてプレーティングし、48時間付着させた。β−ラパコンをDMSO中20mMの濃度で溶解し、完全培地に希釈した。成長培地を培養物から除去し、β−ラパコンを1、2、5、10および20μMの最終医薬濃度で加えた。4時間の曝露後、医薬媒体を液体吸引し、培養物をPBSで洗浄し、トリプシン処理し、200〜40,000細胞/100mmディッシュでプレーティングした。可変細胞数をプレーティングして、約50〜200コロニー/医薬濃度を得た。培養物を14〜21日間そのままに放置してコロニーを形成させ、次に固定してクリスタルバイオレット染色で染色した。50細胞を超えるコロニーを生存細胞と評価した。各細胞系について、二種類のコロニー(「クローンA」と「クローンB」)を、β−ラパコンの>LC99濃度で生き残ったコロニーから選択し、単離し、拡大させて、これを用いてアッセイを繰り返した。β−ラパコンの>LC99濃度に対する4時間の曝露を生き延びた個々の癌細胞を単離し、培養し、次にβ−ラパコンに対する感受性を再試験した。
下記の表25に示されるように、指数関数的に増殖する生存肺癌細胞の培養物は初期の培養物と同じLC50濃度を示した。よって、β−ラパコンの致死下濃度に対する腫瘍細胞系の長期の連続的な曝露により耐性を生じさせる試みはこれまで成功していない。したがって、インビトロ研究はβ−ラパコンが耐性細胞集団を選択しないことを示唆する。
(表25)
Figure 2007523187
(実施例24)
ヒト肺癌異種移植片模型を用いてβ−ラパコンの抗腫瘍活性を調べた。メスの胸腺欠損ヌードマウス(Ncr)に4×10個のA549ヒト肺癌細胞を皮下接種し、腫瘍を50mmの大きさになるまで成長させた。動物を各グループあたり7匹とする3グループに無作為に分けた。動物を、腹腔内で、3日ごとにβ−ラパコン(40mg/kgまたは60mg/kg)または賦形剤コントールのいずれかで1動物につき合計8回処置した。次に、平均腫瘍容積を分析した。
図9は、β−ラパコンの60mg/kgでの処置が異種移植されたヒト肺癌の平均腫瘍容積を約50%減少させたことを示す。いずれの処置投薬計画にも有意な毒性徴候は見受けられなかった。多様な組織起源の細胞系を用いるインビトロ実験はβ−ラパコンが正常細胞に対して比較的毒性がないことをさらに示した。
(実施例25)
マイクロモル濃度のβ−ラパコンがTaxol(登録商標)のIC50に組み合されて腫瘍細胞培養物に適用された場合にコロニー形成を完全に阻止することが示された。これらの研究において、指数関数的に増殖する細胞を、6ウエルプレートの1ウエルあたり1000細胞で播種し、48時間付着させた。DMSOに溶解したβ−ラパコンおよび/またはTaxol(登録商標)を細胞に加える。コントロールウエルは同体積のDMSOで処理した。4時間後、細胞をすすぎ、新しい培地を加えた。培養物は10〜20日間毎日観察し、次に固定し、染色した。30細胞を超えるコロニーを生存細胞と評価した。表26に示されるように、癌細胞生存の相乗的な阻害がヒト癌腫膵臓細胞系について見られる。減少細胞生存はMTTおよびトリプタンブルー排除アッセイによって、死によるものであることが示された。DNAラダーリング形成およびアネキシン染色は細胞死がアポトーシスによるものであることを示す。
(表26)
Figure 2007523187
(実施例26)
指数関数的に増殖する細胞を、6ウエルプレートの1ウエルあたり(2.5mL)、250、1000または5000細胞で播種し、24時間付着させた。β−ラパコンをDMSO中20mMの濃度で溶解し、完全培地に希釈した。β−ラパコン(0.5mL)を最終濃度の6倍で3.0mL/ウエルの全体積まで加えた。コントロールプレートは同体積のDMSOのみを入れた。4時間の曝露後、医薬を注意して除去し、医薬を含まない培地を加えた。培養物を14〜21日間そのままに放置してコロニーを形成させ、次に固定してクリスタルバイオレット染色(Sigma)で染色した。50細胞を超えるコロニーを生存細胞と評価した。細胞を完全な湿度下に37℃、5%CO2中で維持した。。3リプリケートの結果を表27に示す。各「リプリケート結果」は別々の実験の結果を表す。
(表27)
Figure 2007523187
(実施例27)
指数関数的に増殖するPaCa−2膵臓細胞を、60mmのディッシュに2×10個の細胞にてプレーティングし、48時間付着させた。β−ラパコンをDMSO中20mMの濃度で溶解し、完全培地に希釈した。成長培地を培養物から除去し、β−ラパコンを1、2、5、10および20μMの最終医薬濃度で加えた。4時間の曝露後、医薬媒体を液体吸引し、培養物をPBSで洗浄し、トリプシン処理し、200〜40,000細胞/100mmディッシュでプレーティングした。可変細胞数をプレーティングして、約50〜200コロニー/医薬濃度を得た。培養物を14〜21日間そのままに放置してコロニーを形成させ、次に固定してクリスタルバイオレット染色で染色した。50細胞を超えるコロニーを生存細胞と評価した。各細胞系について、二種類のコロニー(「クローンA」と「クローンB」)を、β−ラパコンの>LC99濃度で生き残ったコロニーから選択し、単離し、拡大させて、これを用いてアッセイを繰り返した。β−ラパコンの>LC99濃度に対する4時間の曝露を生き延びた個々の癌細胞を単離し、培養し、次にβ−ラパコンに対する感受性を再試験した。
下記の表28に示されるように、指数関数的に増殖する生存膵臓癌細胞の培養物は初期の培養物と同じLC50濃度を示した。よって、β−ラパコンの致死下濃度に対する腫瘍細胞系の長期の連続的な曝露により耐性を生じさせる試みはこれまで成功していない。したがって、インビトロ研究はβ−ラパコンが耐性細胞集団を選択しないことを示唆する。
(表28)
Figure 2007523187
(実施例28)
本発明の化合物は、MIA PACA−2およびBXPC−3ヒト膵臓癌腫細胞等の多様な癌細胞系に対して強力な抗増殖活性を示す。指数関数的に増殖する細胞を、6ウエルプレートの1ウエルあたり1000細胞で播種し、24時間付着させた。β−ラパコンをDMSOに溶解し、マイクロモル濃度でウエルに加えた。コントロールウエルは同体積のDMSOで処理した。4時間後、上清を除去し、新しい培地を加えた。培養物は10〜15日間にわたって毎日観察し、次に固定して染色した。30細胞を超えるコロニーを生存細胞と評価した。
表29は、細胞増殖の50%を阻害するために必要とされる化合物の濃度(IC50)を示す。低マイクロモル範囲以下のIC50値が膵臓癌細胞系中のβ−ラパコンで得られた。本発明の化合物の別の効果は、転写因子のE2Fファミリーの少なくとも1種類のメンバーの活性の誘導または上昇(例えば、レベルの上昇)である。研究は、β−ラパコンが癌細胞の核で持続E2F活性(例えば、E2Fレベルの上昇)を誘導したが、正常細胞では誘導せず、癌細胞のG1および/またはS期の停止をもたらした。β−ラパコンはE2F活性の誘導(例えば、E2Fレベルの上昇)に効果的であるため、G1および/またはS期の停止を引き起こした。
(表29)
Figure 2007523187
(実施例29)
図10は、ウエスタンブロット分析により示されたもので、E2F−1タンパク質発現がヒト膵臓癌細胞(Paca−2)により上方調節されたことを示す。この実験において、Paca−2細胞を培地に播種し、0(賦形剤)、β−ラパコンの0.5、2または4μM濃度に対して0.5時間時間曝した。細胞を集め、全細胞溶解物を調製し、SDS/PAGEにより分離し、次にSanta Cruz Biotechnology(カリフォルニア州サンタクルーズ)から入手したE2F−1抗体と増強化学発光アッセイシステム(Amersham Pharmacia)とを用いてウエスタンブロットを調製した。ブロットは、E2F−1タンパク質が、調べられたβ−ラパコンの最小濃度(0.5μM)により誘導されることを示す。
(実施例30)
ヒト膵臓癌異種移植片模型を用いてβ−ラパコンの抗腫瘍活性を調べた。メスの胸腺欠損ヌードマウス(Ncr)に4×10個のヒトPanc−1膵臓癌細胞を皮下接種し、腫瘍を50mmの大きさになるまで成長させた。動物を無作為に3グループに分けた。動物を、腹腔内で、3日ごとにβ−ラパコン(40mg/kgまたは60mg/kg)または賦形剤コントールのいずれかで1動物につき合計5回処置した。次に、平均腫瘍容積を分析した。
本研究は、β−ラパコンの40および60mg/kgでの処置が異種移植されたヒト膵臓癌の平均腫瘍容積を減少させたことを示した。いずれの処置投薬計画にも有意な毒性徴候は見受けられなかった。多様な組織起源の細胞系を用いるインビトロ実験はβ−ラパコンが正常細胞に対して比較的毒性がないことをさらに示した。
(実施例31)
増殖するヒト白血病またはリンパ腫細胞を、6ウエルプレートの1ウエルあたり1000細胞で播種し、48時間インキュベートした。β−ラパコンを5μL未満の濃縮液(0.1%未満の最終DMSO濃度に対応する)としてディッシュに加えた。β−ラパコンをDMSO中20mMの濃度で溶解し、完全培地に希釈した。コントロールプレートは同体積のDMSOのみを入れた。1〜4時間の曝露後、細胞をすすぎ、医薬を含まない培地を加えることができた。培養物は10〜20日間そのままに放置してコロニーを形成させ、次に固定して、改変Wright−Giemsa染色(Sigma)で染色した。30細胞を超えるコロニーを生存細胞と評価した。細胞を完全な湿度下に37℃、5%CO2中で維持した。。
もしくは、β−ラパコンの非存在下または存在下(例えば、2、4,8および20μMで)に1〜24時間培養したヒト白血病またはリンパ腫細胞の細胞死をMTTアッセイで測定した。簡単に説明すれば、96ウエルプレートに1ウエルあたり10,000細胞をプレーティングし、完全成長培地で48時間培養し、β−ラパコンで1〜24時間処理し、医薬なしの培地中で24時間培養することによりMTTアッセイを実施した。MTT溶液を培養培地に加え、2時間後、光学密度をELISAリーダーで読むことができた。
もしくは、β−ラパコンの非存在下または存在下に培養したヒト白血病またはリンパ腫細胞の細胞死を蛍光細胞分析分離(FACS)分析により測定した。もしくは、β−ラパコンの非存在下または存在下に培養したヒト白血病またはリンパ腫細胞の細胞死をLi et al.,(2003)Proc Natl Acad Sci USA.100(5):2674−8に記載されたように測定した。
(実施例32)
アンドロゲン依存性で、p53のない(null)DU145細胞(8×10)をオスのSCID(ICR)マウスに皮下接種し、約21日間観察して、接種物を直径が5mmの触知可能な腫瘍へと発達させた。次に、21〜30日間にわたり3日間に1回、β−ラパコンまたは賦形剤コントロールで動物を腹腔内処置した。処置の終了後、動物をさらに14日間観察した。腫瘍を処置中および処置後の観察期間にわたって測定した。
図11Aにおいて、確立された皮下DU145ヒト前立腺癌を有するSCID(ICR)マウスにβ−ラパコン(25または50mg/kg、Lipiodol中、IP q3d)または賦形剤コントロールを同様なスケジュールで投与した。腫瘍小結節を処置期間(21〜43日目)中および観察の終わり(56日目)に測定した。腫瘍成長の用量依存性阻害が見られ、処置の終了後には腫瘍成長はほとんどなかった。図11Aに示されるように、25および50mg/kgのβ−ラパコンによる処置は用量依存的に腫瘍成長を阻害し、処置終了後の2週間に腫瘍の成長はほとんどなかった。
図11Bにおいて、確立された皮下DU145ヒト前立腺癌を有するSCID(ICR)マウスにβ−ラパコン(100mg/kg、Lipiodol中、IP q3d)または賦形剤コントロールを同様なスケジュールで投与した。腫瘍小結節を前処置(「Pre−Tx」)、30日間の処置期間の終わり(「Post−Tx」)および処置後の14日間の処置後観察期間の終わりにあたり(「Post−Exp’t」)測定した。図11Bは、同様な設計の別個の実験においてβ−ラパコンを確立した腫瘍に100mg/kgで投与した場合に腫瘍成長の高い抑制が観察されたことを示す。
(実施例33)
研究は、β−ラパコンがチェックポイントを調節し(すなわち、活性化または阻害し)、多様な組織に由来する癌細胞において、これら組織に由来する正常細胞に影響を与えずにアポトーシスを誘導することを示した(米国公報第US−2002−0169135−A1)。この研究において、β−ラパコンの非存在下または存在下(2、4、8および20μM)で24時間培養した多発性骨髄腫(MM)細胞の増殖をMTTアッセイで測定した。4μMの濃度で、患者のMM細胞および薬物抵抗性細胞の増殖の劇的な減少等を含めて、培養物中の細胞の生存性がすべての7種類のMM細胞系において有意に減少したことがわかった。β−ラパコンのヒトPBMCに対する細胞毒を検討するために、細胞を抗凝血剤処理血液から単離した。増殖するPBMCが、2μg/mLのフィトヘムアグルチニン(PHA)との72時間のインキュベーションにより作られた。β−ラパコンの非存在下または存在下(0.5、2、4および8μM)で24時間培養した細胞の成長を、MTTで測定した。新しいかまたは増殖するPBMC成長のいずれに対する細胞毒性も観察されなかった。図12は、ヒト多発性骨髄腫(MM)細胞対正常ヒト末梢血単核細胞(PBMC)に対するβ−ラパコンの示差効果を示す。
(実施例34)
この研究において、指数関数的に増殖する細胞を1000細胞/ウエルで播種し、48時間付着させた。細胞をいろいろな濃度β−ラパコンにより4時間処理し、次にすすぎ、新しい培地を加えた。10〜20日後、細胞を固定して、改変Wright−Giemsa染色で染色した。ヒト乳癌細胞(MCF−7)は2〜4μMおよびそれ以上のβ−ラパコン濃度でコロニーの基本的に完全な除去を示す一方で、正常な乳上皮細胞(MCF−10A)は、チェックポイント活性化成長の遅れにより予想されるようにこれらコロニーの大きさは小さいが、コロニー数の減少を示さない。図13はヒト乳癌細胞(MCF−7)対正常なヒト乳上皮細胞(MCF−10A)に対するβ−ラパコン(μM)の示差効果を示す。
図1は、癌を持ったメスのヌード(Ncr)マウスにおける150mg/mのβ−ラパコンのIP投与後のβ−ラパコンの血漿濃度を示す折れ線グラフである。 図2は、癌を持ったメスのヌード(Ncr)マウスにおけるHPBCD製剤中の50mg/kgまたは10mg/kgのβ−ラパコンのIP投与後のβ−ラパコンの血漿濃度を示す折れ線グラフである。 図3は、HPBCD製剤中の1時間または10分間の静脈内注射としてラットに投与されたβ−ラパコンの薬物動態学を示す折れ線グラフである。 図4は、HPBCD製剤中の1時間の静脈内注射としてイヌに投与されたβ−ラパコンの薬物動態学を示す折れ線グラフである。 図5は、インビトロにおけるNCI60アッセイでヒト癌細胞系の生存に対するβ−ラパコンの効果を示す棒グラフである。 図6は、インビトロにおけるNCI60アッセイでヒト結腸癌細胞系の生存に対するβ−ラパコンの効果を示す棒グラフである。 図7は、胸腺欠損ヌードマウス模型における異種移植されたHT−29ヒト結腸腫瘍の成長に対するβ−ラパコンの効果を示す折れ線グラフである。 図8は、インビトロにおけるNCI60アッセイでヒト肺癌細胞系の生存に対するβ−ラパコンの効果を示す棒グラフである。 図9は、胸腺欠損ヌードマウス模型における異種移植されたA549ヒト肺腫瘍の成長に対するβ−ラパコンの効果を示す折れ線グラフである。 図10は、E2F−1タンパク質発現がヒト膵臓癌細胞(Paca−2)においてβ−ラパコンにより上方制御されることを示すウエスタンブロットの写真である。 図11は、A)25および50mg/kgのβ−ラパコンによる処置が前立腺腫瘍の成長を用量依存的に阻害したこと、およびB)100mg/kgのβ−ラパコンが確立された腫瘍に投与された場合の前立腺癌成長の高い抑制を示す棒グラフである。 図12は、ヒト多発性骨髄腫(MM)細胞対正常ヒト末梢血単核細胞(PBMC)に対するβ−ラパコンの示差効果を示す一連の折れ線グラフと棒グラフである。 図13は、ヒト乳癌細胞(MCF−7)対正常ヒト乳房上皮細胞(MCF−10A)に対するβ−ラパコンの示差効果を示すコロニー形成アッセイの写真である。

Claims (41)

  1. β−ラパコン、またはその誘導体または類似体、またはその薬学的に許容される塩、またはその代謝産物、および薬学的に許容される担体を含む治療有効量の医薬組成物を、該組成物が約0.15μM〜約50μMの血漿濃度を維持し、癌または前癌状態を治療または癌を予防するように対象に投与する工程を包含する、対象中の癌または前癌状態を治療または癌を予防する方法。
  2. β−ラパコン、またはその誘導体または類似体、またはその薬学的に許容される塩、またはその代謝産物、および薬学的に許容される担体を含む治療有効量の医薬組成物を、該組成物が約0.15μM〜約50μMの血漿濃度を維持し、一以上の癌細胞における一以上の細胞周期チェックポイントを調節し、癌または前癌状態を治療または癌を予防するように対象に投与する工程を包含する、対象中の癌または前癌状態を治療または癌を予防する方法。
  3. β−ラパコン、またはその誘導体または類似体、またはその薬学的に許容される塩、またはその代謝産物、および薬学的に許容される担体を含む治療有効量の医薬組成物を、該組成物が約0.15μM〜約50μMの血漿濃度を維持し、一以上の癌細胞において細胞死を選択的に調節し、癌または前癌状態を治療または癌を予防するように対象に投与する工程を包含する、対象中の癌または前癌状態を治療または癌を予防する方法。
  4. β−ラパコン、またはその誘導体または類似体、またはその薬学的に許容される塩、またはその代謝産物、および薬学的に許容される担体を含む治療有効量の医薬組成物を、該組成物が約0.15μM〜約50μMの血漿濃度を維持し、細胞増殖性疾患を治療または予防するように対象に投与する工程を包含する、対象中の細胞増殖性疾患を治療または予防する方法。
  5. 前記一以上の細胞周期チェックポイントの活性化が、一以上の癌細胞の一以上の細胞周期経路を調節する、請求項2に記載の方法。
  6. 前記一以上の細胞周期チェックポイントの活性化が、一以上の癌細胞の一以上の細胞周期レギュレータを活性化する、請求項2に記載の方法。
  7. 前記血漿濃度が約0.175μM〜約30μMである、請求項1〜4に記載の方法。
  8. 前記血漿濃度が約0.2μM〜約20μMである、請求項1〜4に記載の方法。
  9. 前記対象が約0.5μM−hr〜約100μM−hrのAUC範囲で医薬組成物に曝露される、請求項1〜4に記載の方法。
  10. 前記対象が約1μM−hr〜約25μM−hrのAUC範囲で医薬組成物に曝露される、請求項1〜4に記載の方法。
  11. 前記対象が約1.5μM−hr〜約6.5μM−hrのAUC範囲で医薬組成物に曝露される、請求項1〜4に記載の方法。
  12. 前記医薬組成物が1日あたり約2mg/m〜5000mg/mの用量で投与される、請求項1〜4に記載の方法。
  13. 前記医薬組成物が1日あたり約20mg/m〜2000mg/mの用量で投与される、請求項1〜4に記載の方法。
  14. 前記医薬組成物が1日あたり約30〜300mg/mの用量で投与される、請求項1〜4に記載の方法。
  15. 前記医薬組成物が静脈内、経口または腹腔内で投与される、請求項1〜4に記載の方法。
  16. 前記癌が、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病、膵臓癌、非小細胞肺癌、肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、悪性メラノーマ、非メラノーマ皮膚癌、血液学的腫瘍、血液学的腫瘍、血液悪性腫瘍、小児白血病、小児リンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキン病、リンパ球起源のリンパ腫、皮膚起源のリンパ腫、急性白血病、慢性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、形質細胞腫、リンパ系腫瘍、AIDS関連癌、舌、口、咽頭および口腔の癌、食道癌、胃癌、小腸の癌、肛門癌、肛門管の癌、直腸肛門癌、肝臓癌、肝内胆管癌、胆嚢癌、胆管癌、他の消化器官の癌、喉頭癌、骨関節癌、子宮癌、子宮頚癌、子宮体癌、陰門の癌、膣癌、睾丸癌、陰茎癌、膀胱癌、腎臓癌(kidney cancer)、腎臓癌(renal cancer)、尿管および他の泌尿器の癌、眼の癌、脳および神経系の癌、CNS癌および甲状腺癌からなる群から選択される、請求項1〜3に記載の方法。
  17. 前記医学的に許容される担体が、Poloxamer、Povidone K17、Povidone K12、Tween 80、エタノール、Cremophor/エタノール、Lipiodol,ポリエチレングリコール(PEG)400、プロピレングリコール、Trappsol、アルファ−シクロデキストリンまたはその類似体、ベータ−シクロデキストリンまたはその類似体、およびガンマ−シクロデキストリンまたはその類似体からなる群から選択される溶解担体分子である、請求項1〜4に記載の方法。
  18. 前記対象が哺乳類である、請求項1〜4に記載の方法。
  19. 前記対象がヒトである、請求項18に記載の方法。
  20. 前記癌の治療が腫瘍の大きさの減少を含む、請求項1〜3に記載の方法。
  21. 前記癌の治療が腫瘍の数の減少を含む、請求項1〜3に記載の方法。
  22. 前記癌の治療が腫瘍の成長速度の減少を含む、請求項1〜3に記載の方法。
  23. 前記癌の治療が腫瘍の再生の減少を含む、請求項1〜3に記載の方法。
  24. 前記癌の治療が、未治療の集団に比較して治療対象の集団の平均生存時間の増加を含む、請求項1〜3に記載の方法。
  25. 前記癌の治療が、β−ラパコンではない医薬による単一治療を受けた集団に比較して治療対象の集団の平均生存時間の増加を含む、請求項1〜3に記載の方法。
  26. 前記投与が細胞周期チェックポイントの活性化をもたらす、請求項1〜4に記載の方法。
  27. 前記投与がG1またはS細胞周期チェックポイントの活性化をもたらす、請求項26に記載の方法。
  28. 前記投与がE2F転写因子経路の活性化をもたらす、請求項1〜4に記載の方法。
  29. 前記投与がE2F転写因子の上昇を誘導する、請求項1〜4に記載の方法。
  30. 前記投与がE2F転写因子の上昇を選択的に誘導する、請求項1〜4に記載の方法。
  31. 前記投与がE2F転写因子の予定外の活性化を刺激する、請求項1〜4に記載の方法。
  32. 前記投与がE2F転写因子の予定外の活性化を選択的に刺激する、請求項1〜4に記載の方法。
  33. 前記投与が細胞死を選択的に誘導する、請求項1〜4に記載の方法。
  34. 前記細胞死が、アポトーシス、壊死および老化からなる群から選択される、請求項3または33に記載の方法。
  35. 前記治療有効量が正常細胞に対する細胞毒ではない、請求項1〜4に記載の方法。
  36. 前記治療有効量が正常細胞の生存性に影響を与えない、請求項1〜4に記載の方法。
  37. さらに、治療有効量の第二抗癌剤または第二抗増殖剤、またはその誘導体または類似体を投与する工程を包含する、請求項1〜4に記載の方法。
  38. 前記第二の抗癌剤または抗増殖剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロン、ナベルビン、エトポシド、アドリアマイシン、カンプトセシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ミトキサントロン、アムサクリン、エピルビシン、イダルビシン、ゲンシタビンおよびイマチニブからなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
  39. 前記医薬組成物が、第二抗癌剤または第二抗増殖剤の投与と同時またはその後に投与される、請求項37に記載の方法。
  40. 前記第二抗癌剤または第二抗増殖剤が医薬組成物投与後に投与される、請求項37に記載の方法。
  41. 前記第二抗癌剤または第二抗増殖剤が医薬組成物の投与後24時間以内に投与される、請求項37に記載の方法。
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