JP2007523215A - 癌治療のためのβ−ラパコンおよびS期薬組み合わせ - Google Patents
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Abstract
S期薬(有利には、ゲムシタビン)と組み合わせたG1/S期薬(好ましくは、β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体)の投与によって癌および/または悪性疾患を治療することができる。G1/S期薬とS期薬との組み合わせは、予想外に有効な癌の治療をもたらす。本発明は、G1/S期薬およびS期薬の組み合わせを投与することによる癌の治療方法、これらの方法において使用される薬物の組み合わせを含む医薬組成物、および医薬キットを包含する。
Description
(関連出願の相互参照)
本願は、35 U.S.C.§119(e)の下での、2004年2月23日に出願された米国出願番号第60/547,287号の利益を主張する。
本願は、35 U.S.C.§119(e)の下での、2004年2月23日に出願された米国出願番号第60/547,287号の利益を主張する。
(発明の背景)
癌は、アメリカ合衆国における死亡原因の第2位であり、心臓疾患だけが上回っている。Cancer Facts and Figures 2004, American Cancer Society, Inc.。最近の癌診断および治療の進歩にもかかわらず、手術および放射線療法は癌が早期に発見された場合には治癒を期待できるが、転移性疾患に関する現行の薬物療法はほとんど対症的であり、めったに長期治療に使用されない。市場に新しく入ってくる化学療法でさえ、一次治療として、ならびに耐性腫瘍の治療における二次および三次治療として、単独療法でまたは現存する薬剤と組み合わせて有効な新しい薬物が引き続き必要とされている。
癌は、アメリカ合衆国における死亡原因の第2位であり、心臓疾患だけが上回っている。Cancer Facts and Figures 2004, American Cancer Society, Inc.。最近の癌診断および治療の進歩にもかかわらず、手術および放射線療法は癌が早期に発見された場合には治癒を期待できるが、転移性疾患に関する現行の薬物療法はほとんど対症的であり、めったに長期治療に使用されない。市場に新しく入ってくる化学療法でさえ、一次治療として、ならびに耐性腫瘍の治療における二次および三次治療として、単独療法でまたは現存する薬剤と組み合わせて有効な新しい薬物が引き続き必要とされている。
癌細胞は本質的には異質である。例えば、単一の組織または細胞型内で、複数の変異「メカニズム」が癌の発生を引き起こすことがある。そのようなものとして、異質性は、しばしば、異なる個体に由来した同一組織の同一タイプの腫瘍に由来する癌細胞間に存在する。いくつかの癌と関連付けられるしばしば見られる変異「メカニズム」は、一の組織型と別の組織型との間で異なることがある(例えば、結腸癌を引き起こすしばしば見られる変異「メカニズム」と、白血病を引き起こすしばしば見られる「メカニズム」とは異なることがある)。したがって、特定の癌が特定の化学療法薬に応答するかどうかを予測するのはしばしば困難である。(Cancer Medicine, 5th Edition, Bast et al. eds., B.C. Decker Inc., Hamilton, Ontario)。
細胞がDNA損傷を修復するかまたは細胞死を受けることに打ち込む細胞増殖周期の機構に複数のチェックポイントが組み込まれている。多くの癌細胞は、チェックポイント制御を失っており、未制御増殖駆動をもつ。主要なチェックポイントはG1/S期移行時およびG2/M期移行時に生じ、そこで細胞がDNAを修復するかまたは細胞死(例えば、アポトーシス)を受けることに打ち込む。細胞は、DNA損傷が修復不可能である場合には細胞死(例えば、アポトーシス)を受け得る(Li, CJ et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:13369-13374)。
チェックポイント制御を調節する治療薬の同定は癌治療を改善し得る。実際に、最近の報告は、細胞周期チェックポイントの活性化が癌の治療において重要な新しいパラダイムを示し得ることを示唆している(例えば、Y. Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(2003), 100(5), 2674-8を参照)。
G1/S期移行時に作用する細胞周期チェックポイント活性化因子β−ラパコンは、限られた数の癌において抗癌活性を有することが報告されている薬剤である。例えば、β−ラパコンの有効量をタキサン誘導体と組み合わせて投与することを含む腫瘍治療のための方法および組成物が報告されている(WO 00/61142)。さらに、米国特許第6,245,807号には、ヒト前立腺疾患の治療に用いるための、β−ラパコン誘導体の中でも特にβ−ラパコンの使用が記載されている。単一薬剤としては、β−ラパコンは、ヒト卵巣癌(Li, C.J. et al., (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96(23): 13369-13374)、ヒト前立腺癌(Li, C.J. et al., (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96(23): 13369-13374)、ヒト乳癌(Li, C.J. et al., (2000) AACR Proc., p. 9)およびヒト多発性骨髄腫(WO 03/011224)の異種移植マウスモデルにおいて、腫瘍の数を減少させること、腫瘍サイズを縮小させること、または生存期間を延ばすこと、またはこれらの組み合わせも報告されている。さらに、β−ラパコンがカスパーゼの誘発を介してヒト乳癌細胞における壊死ならびに卵巣、結腸および膵癌細胞におけるアポトーシスを誘発することが報告されている(Li, YZ et al., (1999) Molecular Medicine 5:232-239)。
β−ラパコンは、中等量のタキソール(登録商標)(パクリタキセル;Bristol-Myers Squibb Co.、ニューヨーク州ニューヨーク)と組み合わせた場合、ヌードマウスのヒト卵巣癌、前立腺癌および乳癌異種移植モデルにおいて有効な抗腫瘍活性を有することも報告されている。マウスに対する毒性の徴候は観察されず、治療後の続く2ヶ月の間に体重減少は記録されず、その間に腫瘍は再発しなかった(Li, CJ et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:13369-13374を参照)。タキソールは、細胞周期のG2/M期移行時に作用すると考えられる。
この度、β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体のようなG1/S期薬とS期薬(例えば、ゲムシタビン、商標名GEMZAR(登録商標)の下にEli Lillyから入手可能)との組み合わせが膵癌のようなある種の癌に対して予想外に有効な治療を提供することが見出された。GEMZAR(登録商標)(ゲムシタビン塩酸塩)は、抗腫瘍活性を示すヌクレオシドアナログである。ゲムシタビンは、膵癌、乳癌、非小細胞肺癌、卵巣癌および膀胱癌を包含する種々の癌を治療するために、単独療法で、または、他の薬剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、TAXOL(登録商標)(パクリタキセル))と組み合わせて、使用することができる。ゲムシタビンは、細胞期特異性を示し、主にDNA合成(S期)を受けている細胞を死滅させ、また、G1/S境界を経る細胞の進行を遮断する。理論によって制限されないが、ゲムシタビンヌクレオチドがDNAに取り込まれた後は、成長DNA鎖に付加できるさらなるヌクレオチドは1個だけであると考えられる。再び理論によって制限されないが、DNAポリメラーゼεは、ゲムシタビンヌクレオチドを除去することおよび成長DNA鎖を修復することができない(例えば、マスクドチェインターミネーション)と考えられる。CEM Tリンパ芽球腫細胞において、ゲムシタビンは、プログラム細胞死(例えば、アポトーシス)の特徴の1つであるヌクレオソーム間DNAフラグメンテーションを誘発する。
(発明の概要)
本発明は、癌の治療を必要とする対象体に治療上有効量のa)医薬上許容される担体と組み合わせたβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩およびb)医薬上許容される担体と組み合わせたS期薬またはその医薬上許容される塩を投与すること(ここで、癌が治療される)を含む、癌の治療方法を提供する。
本発明は、癌の治療を必要とする対象体に治療上有効量のa)医薬上許容される担体と組み合わせたβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩およびb)医薬上許容される担体と組み合わせたS期薬またはその医薬上許容される塩を投与すること(ここで、癌が治療される)を含む、癌の治療方法を提供する。
本発明はまた、膵癌の治療を必要とする対象体に治療上有効量のa)医薬上許容される担体と組み合わせたβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩およびb)医薬上許容される担体と組み合わせたS期薬またはその医薬上許容される塩を投与すること(ここで、膵癌が治療される)を含む、膵癌の治療方法を提供する。
本発明はまた、肺癌の治療を必要とする対象体に治療上有効量のa)医薬上許容される担体と組み合わせたβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩およびb)医薬上許容される担体と組み合わせたS期薬またはその医薬上許容される塩を投与すること(ここで、肺癌が治療される)を含む、肺癌の治療方法を提供する。
本発明はまた、癌の治療を必要とする対象体に治療上有効量のa)医薬上許容される担体と組み合わせたβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩およびb)医薬上許容される担体と組み合わせたゲムシタビンまたはその医薬上許容される塩を投与すること(ここで、癌が治療される)を含む、癌の治療方法を提供する。
本発明はまた、膵癌の治療を必要とする対象体に治療上有効量のa)医薬上許容される担体と組み合わせたβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩およびb)医薬上許容される担体と組み合わせたゲムシタビンまたはその医薬上許容される塩を投与すること(ここで、膵癌が治療される)を含む、膵癌の治療方法を提供する。
本発明はまた、肺癌の治療を必要とする対象体に治療上有効量のa)医薬上許容される担体と組み合わせたβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩およびb)医薬上許容される担体と組み合わせたゲムシタビンまたはその医薬上許容される塩を投与すること(ここで、肺癌が治療される)を含む、肺癌の治療方法を提供する。
本発明はまた、癌細胞を有効量のa)β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩およびb)S期薬またはその医薬上許容される塩と接触させること(ここで、該接触が癌細胞における細胞死を誘発する)を含む、癌細胞における細胞死を誘発する方法を提供する。
本発明はまた、癌細胞を有効量のa)β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩およびb)ゲムシタビンまたはその医薬上許容される塩と接触させること(ここで、該接触が癌細胞における細胞死を誘発する)を含む、癌細胞における細胞死を誘発する方法を提供する。
本発明はまた、β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩の治療上有効量、ゲムシタビンの治療上有効量および医薬上許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
本発明はまた、β−ラパコンの治療上有効量、ゲムシタビンの治療上有効量および医薬上許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
本発明はまた、a)β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩の治療上有効量を含む第1容器、b)S期薬またはその医薬上許容される塩の治療上有効量を含む第2容器、およびc)対象体を治療するためのβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩およびS期薬またはその医薬上許容される塩の使用説明書を含むキットを提供する。
本発明はまた、a)β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩の治療上有効量を含む第1容器、b)ゲムシタビンの治療上有効量を含む第2容器、およびc)対象体を治療するためのβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩およびゲムシタビンの使用説明書を含むキットを提供する。
本発明はまた、a)β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩の治療上有効量、ゲムシタビンの治療上有効量および医薬上許容される担体を含む医薬組成物を含む容器、およびb)対象体を治療するための該医薬組成物の使用説明書を含むキットを提供する。
本発明はまた、細胞増殖性障害の治療を必要とする対象体に治療上有効量のa)医薬上許容される担体と組み合わせたβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体およびb)医薬上許容される担体と組み合わせたS期薬またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を投与すること(ここで、細胞増殖性障害が治療される)を含む方法を提供する。
本発明はまた、細胞増殖性障害の治療を必要とする対象体に治療上有効量のa)医薬上許容される担体と組み合わせたβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体およびb)医薬上許容される担体と組み合わせたゲムシタビンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を投与すること(ここで、細胞増殖性障害が治療される)を含む、細胞増殖性障害の治療方法を提供する。
本発明はまた、癌の治療を必要とする対象体に治療上有効量のa)医薬上許容される担体と組み合わせたβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体およびb)医薬上許容される担体と組み合わせたS期薬またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を投与すること(ここで、癌が治療される)を含む、癌の治療方法を提供する。
本発明はまた、膵癌の治療を必要とする対象体に治療上有効量のa)医薬上許容される担体と組み合わせたβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体およびb)医薬上許容される担体と組み合わせたS期薬またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を投与すること(ここで、膵癌が治療される)を含む、膵癌の治療方法を提供する。
本発明はまた、肺癌の治療を必要とする対象体に治療上有効量のa)医薬上許容される担体と組み合わせたβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体およびb)医薬上許容される担体と組み合わせたS期薬またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を投与すること(ここで、肺癌が治療される)を含む、肺癌の治療方法を提供する。
本発明はまた、癌の治療を必要とする対象体に治療上有効量のa)医薬上許容される担体と組み合わせたβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体およびb)医薬上許容される担体と組み合わせたゲムシタビンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を投与すること(ここで、癌が治療される)を含む、癌の治療方法を提供する。
本発明はまた、膵癌の治療を必要とする対象体に治療上有効量のa)医薬上許容される担体と組み合わせたβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体およびb)医薬上許容される担体と組み合わせたゲムシタビンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を投与すること(ここで、膵癌が治療される)を含む、膵癌の治療方法を提供する。
本発明はまた、肺癌の治療を必要とする対象体に治療上有効量のa)医薬上許容される担体と組み合わせたβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体およびb)医薬上許容される担体と組み合わせたゲムシタビンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を投与すること(ここで、肺癌が治療される)を含む、肺癌の治療方法を提供する。
本発明はまた、癌細胞を有効量のa)β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体およびb)S期薬またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体と接触させること(ここで、該接触が癌細胞における細胞死を誘発する)を含む、癌細胞における細胞死を誘発する方法を提供する。
本発明はまた、癌細胞を有効量のa)β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体およびb)ゲムシタビンと接触させること(ここで、該接触が癌細胞における細胞死を誘発する)を含む、癌細胞における細胞死を誘発する方法を提供する。
本発明はまた、β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量、ゲムシタビンの治療上有効量および医薬上許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
本発明はまた、a)β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を含む第1容器、b)S期薬またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を含む第2容器、およびc)対象体を治療するためのβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体およびS期薬またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の使用説明書を含むキットを提供する。
本発明はまた、a)β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を含む第1容器、b)ゲムシタビンの治療上有効量を含む第2容器、およびc)対象体を治療するためのβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体およびゲムシタビンの使用説明書を含むキットを提供する。
本発明はまた、a)β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量、ゲムシタビンの治療上有効量および医薬上許容される担体を含む医薬組成物を含む容器、およびb)対象体を治療するための該医薬組成物の使用説明書を含むキットを提供する。
本発明はまた、癌性または前癌性細胞、腫瘍および/または悪性腫瘍に罹患している個体を治療する方法を提供する。この方法は、対象体(例えば、かかる治療を必要とする対象体、例えば、癌に罹患している個体)にβ−ラパコンまたはその誘導体もしくはアナログのようなG1/S期薬の有効量をゲムシタビンのようなS期薬の有効量と一緒に投与して、結果として癌が治療されることを含む。本発明の組み合わせは、結果として、特に転移性疾患に罹患している患者において、全身腫瘍組織量の減少および/または腫瘍増殖の退縮に有益である意外な効力を発揮する。一の実施態様では、治療されるヒト悪性腫瘍は膵癌のような癌であるが、本発明はこの点において限定されず、他の転移性疾患は本発明の組み合わせによって治療され得る。
本発明はまた、対象体における癌の治療方法であって、該対象体に、癌が治療されるような条件下にて治療上有効量のG1/S期薬(好ましくは、β−ラパコンまたはその誘導体もしくはアナログである)をゲムシタビンのようなS期薬と一緒に投与することによる方法を提供する。ある種の実施態様では、癌は膵癌である。
別の実施態様では、本発明は、癌の治療に有用な組成物を提供する。好ましい実施態様では、該組成物は、β−ラパコンまたはその誘導体もしくはアナログのようなG1/S期薬とゲムシタビンのようなS期薬との組み合わせの治療上有効量を含む。好ましい実施態様では、該組成物は、さらに、医薬上許容される溶媒、担体、希釈剤または賦形剤を含む。
別の実施態様では、本発明は、癌を治療するためのキットを提供する。該キットは、β−ラパコンまたはその誘導体もしくはアナログのようなG1/S期薬およびゲムシタビンのようなS期薬を含む。該G1/S期薬およびS期薬は、組み合わせにおいて癌を治療するために有効な量で存在する。
本発明の組み合わせは、膵癌を包含する化学療法に不応な転移性癌に罹患している患者の治療において特に有利である。本発明の方法は、該患者にG1/S期薬(例えば、β−ラパコン)およびS期薬の組み合わせにおいて有効な量を投与することを含む。好ましくは、組み合わせは、(1)β−ラパコンまたはその誘導体もしくはアナログのような細胞周期チェックポイント活性化因子(G1および/またはS期薬)ならびに(2)ゲムシタビン、5−フルオロウラシル(5−FU)、キャパシタビン(capacitabine)、メトトレキセート、5−フルオロデオキシウリジンおよびシタラビン(araC)などおよびその医薬上許容される塩のような代謝拮抗剤(S期薬)である。好ましい実施態様では、細胞周期チェックポイント活性化因子はβ−ラパコンである。好ましい実施態様では、代謝拮抗剤は、ゲムシタビン、5−FU、キャパシタビンまたはaraCのようなピリミジンアンタゴニストであり、最も好ましくは、ゲムシタビンである。
上記の説明は、以下の本発明の詳細な説明が理解され得るために、そして、本技術的貢献がより良く評価され得るために、本発明のより重要な特徴を概略記載するものである。本発明の他の目的および特徴は、添付した図面と合わせて考慮される以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、該図面は単に説明目的のために作製されており、本発明の範囲を明確にするものとして作製されたものではなく、本発明の範囲は請求の範囲を参照すべきである。
(発明の詳細な説明)
本発明は、癌のような細胞増殖性障害の治療を必要とする対象体に治療上有効量のa)医薬上許容される担体と組み合わせたβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体およびb)医薬上許容される担体と組み合わせたS期薬またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体(例えば、ゲムシタビン)を投与すること(ここで、細胞増殖性障害が治療される)を含む、癌のような細胞増殖性障害の治療方法を提供する。本発明はまた、癌の治療に有用な医薬の調製のためのβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体およびS期薬またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体(例えば、ゲムシタビン)の使用を提供する。本発明はまた、β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体およびS期薬またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体(例えば、ゲムシタビン)を含むキットを提供する。
本発明は、癌のような細胞増殖性障害の治療を必要とする対象体に治療上有効量のa)医薬上許容される担体と組み合わせたβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体およびb)医薬上許容される担体と組み合わせたS期薬またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体(例えば、ゲムシタビン)を投与すること(ここで、細胞増殖性障害が治療される)を含む、癌のような細胞増殖性障害の治療方法を提供する。本発明はまた、癌の治療に有用な医薬の調製のためのβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体およびS期薬またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体(例えば、ゲムシタビン)の使用を提供する。本発明はまた、β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体およびS期薬またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体(例えば、ゲムシタビン)を含むキットを提供する。
理論によって制限されないが、本発明は、細胞周期チェックポイント活性化調節物質(例えば、β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体)による細胞周期チェックポイントの活性化についての理解および該活性化のための方法を含み、また、一部該理解および該方法に基づく。細胞周期チェックポイントの活性化は、一般に、Activated Checkpoint TherapyTMまたはACTTMと称される。すなわち、多くの癌細胞は、それらの分子調節物質の1つ(例えばp53)における変異に続発するそれらの細胞周期チェックポイント機能が不完全である。癌細胞が発癌プロセスの間に遺伝的エラーを蓄積していくのは、一つには、この理由による。細胞死は、少なくとも一部は、癌細胞における未制御増殖駆動と人工的に誘発されたチェックポイント遅延との間の対立によって誘発されると考えられるので、細胞周期チェックポイント機能を活性化する治療薬は、癌細胞における細胞死を選択的に促進することができる。ACTTMは、1つまたはそれ以上のチェックポイントを活性化し、それにより細胞周期進行対停止に関する相反するシグナルを生じることによって細胞増殖周期の間にチェックポイントにて細胞死が生じる傾向を利用する。2つ以上のチェックポイントが活性化される場合、未制御増殖シグナルおよび遺伝子異常を有する癌細胞は複数のチェックポイントにて遮断され、相乗的細胞死を促進する「衝突」を引き起こす。
ACTTMは、正常細胞と比べて癌細胞に対して選択性を提供し、したがって、選択性の低い治療法よりも安全である。第一に、ACTTM法は、細胞周期チェックポイントを活性化するが、破壊しない。第二に、増殖シグナルが十分に制御されている正常細胞は、調節された方法でチェックポイントにて遅延され得、その結果、細胞死を起こしがちな衝突を引き起こさない。第三に、G1チェックポイント制御が損なわれていない正常細胞はG1にて停止すると思われる。他方、ほとんどの癌細胞はG1チェックポイント欠陥を持っており、それにより癌細胞はS期およびM期チェックポイントを強制する薬物に対する感受性がより高まるので、癌細胞はS期、G2期およびM期において遅延されると思われる。β−ラパコンはG1およびS期化合物であり、細胞とβ−ラパコンとの接触はG1またはS細胞周期チェックポイントの活性化を引き起こす。
好ましい実施態様では、G1/S期薬(例えば、β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体)とS期薬との組み合わせは、癌細胞および/または腫瘍の相乗的治療をもたらす。本発明の組み合わせは、β−ラパコンおよびゲムシタビンを使用する(ここで、相乗的結果を得ることができる)のが特に有利である。理論によって制限されないが、チェックポイント(例えば、G1/S期およびS期)での細胞周期遅延の基礎をなす分子変化が、悪性細胞における細胞死(例えば、アポトーシス)の相乗的誘発をもたらすと考えられる。好ましくは、G1/S期化合物は、S期チェックポイントで細胞を標的とする化合物の前、または該化合物と同時に投与される。より好ましくは、G1/S期化合物は、S期チェックポイントで細胞を標的とする化合物の前に投与される。
「細胞周期チェックポイント活性化調節物質」なる用語は、本明細書で用いる場合、好ましくはチェックポイント媒介DNA修復メカニズムを活性化することにより、または細胞周期活性を調節する細胞経路における機能不全または変異のために失われたチェックポイント活性を復元することにより、細胞におけるチェックポイント活性化を変更する(好ましい実施態様においては、1つまたはそれ以上の細胞周期チェックポイントを活性化する)能力を有する化合物をいう。当該技術分野において知られているように、主要な細胞周期チェックポイントは、G1/S期移行時およびG2/M期移行時に生じる。モデルでは、4つの主要な細胞周期チェックポイントが遺伝物質の完全性をモニターする。DNA合成は、G1の間の調製が細胞周期継続のために満足のいくものであったかを細胞が決定する制限ポイント(Rポイント)を過ぎただけで始まる。第2のチェックポイントは、S期における複製開始の間に生じる。第3および第4のチェックポイントは、それぞれ、G2期およびM期に生じる。細胞周期チェックポイント活性化の調節は、さらに、例えば、C.J. Li et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1999), 96(23), 13369-13374、およびY. Li et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2003), 100(5), 2674-2678、およびPCT公開WO 00/61142(Pardee et al.)にて検討されている。本発明で用いる好ましい細胞周期チェックポイント活性化調節物質は、好ましくは実質的なDNA損傷を引き起こすことなく、チェックポイント活性化を誘発する(すなわち、好ましくはG1/S期にて、1つまたはそれ以上の細胞周期チェックポイントを活性化する)。また、ある種の好ましい細胞周期チェックポイント活性化調節物質は、細胞中のE2F(より好ましくは、E2F1)のレベルまたは活性を増大させる能力を有する。細胞中のE2F活性またはレベルを上昇させる能力を有する化合物を包含する細胞周期チェックポイント活性化調節物質についてのスクリーニング方法としては、PCT特許出願番号PCT/US03/22631(Li et al.)に記載されているものが挙げられる。ある種の実施態様では、好ましい細胞周期チェックポイント活性化調節物質は、細胞が癌性細胞である場合には、該細胞中のE2Fのレベルまたは活性を、細胞死(例えば、アポトーシス)を引き起こすのに十分な量増大させる能力を有する。より好ましい細胞周期チェックポイント活性化調節物質は、細胞が癌性細胞である場合には、該細胞中のE2F1のレベルまたは活性を、細胞死(例えば、アポトーシス)を引き起こすのに十分な量上昇させる能力を有する。一の態様では、細胞周期チェックポイント活性化調節物質は、β−ラパコンではない。
理論によって制限されないが、DNA損傷に対する細胞性応答はATM/ATRシグナル伝達経路によって調節される(ここで、ATMおよびATRはホスファチジル−イノシトール−3キナーゼファミリー(PI3K)のプロテインキナーゼである)。DNA損傷に応答して、ATMおよびATRはそれぞれChk2およびChk1をリン酸化し、次に、細胞周期のG1/S期で細胞を停止させることに関与する種々の基質を活性化し、また、DNA修復に関与するタンパク質を誘発および活性化する。Chk2は、腫瘍抑制因子BRCA1を含むDNA修復に関与するタンパク質を活性化し、それによりDNA損傷後のDNA修復能を増強することが示されている。Chk2はまた、p53を直接リン酸化すること、およびp53を分解の標的とするユビキチンリガーゼであるMdm2を阻害することの両方によってp53を安定化することが示されている。かかる条件下にて、p53のレベル増加は、G1/S停止、DNA修復、および修復不可能なDNA損傷をもつ細胞におけるアポトーシスを引き起こす。理論によって制限されないが、Chk2は、条件に依存して、細胞周期停止およびDNA修復を誘発したり、DNA損傷が重篤すぎる場合には細胞死(例えば、アポトーシス)を開始したりすることができる重要な細胞周期調節因子であると考えられる。ある種の実施態様では、好ましい細胞周期チェックポイント活性化調節物質は、細胞が癌性細胞である場合には、該細胞中のChk2のレベルまたは活性を、細胞死(例えば、アポトーシス)を引き起こすのに十分な量増大させる能力を有する。
理論によって制限されないが、E2F1はE2Fファミリーの核転写因子における関連タンパク質の1つであり、このファミリーは、細胞周期の調節に非常に重要である。E2F1は、G1/Sチェックポイントの通過を促進することによって細胞増殖に必要とされる。正常細胞の増殖の間に、転写活性なE2F1は、Rbのリン酸化の後に不活性E2F1/Rb複合体から遊離される。E2F1レベルは上昇し、G1を経る進行を促進する。細胞がS期の終わりに向かって移動する時、E2F1レベルは進行が続くように減少しなければならない。細胞周期におけるこの時点でのE2F1の持続的上昇は、S期チェックポイントの活性化およびその結果生じる細胞死(例えば、アポトーシスによる)を引き起こす。かくして、細胞周期の期およびE2F1上昇の動態に依存して、この調節タンパク質は、細胞増殖を促進すること、または細胞周期遅延、DNA修復もしくは細胞死を誘発することのいずれかを行うことができる。細胞周期のG1期の間、Rbのリン酸化は、Rb−E2F1複合体の分解を引き起こして活性E2F1を遊離し、次いで、重要な細胞周期エフェクターの転写を促進することによってS期への移行を刺激する。S期の間、E2F1は進行が続くように分解されなければならない。しかしながら、DNA損傷の存在下では、E2F1レベルは減少するのではなくむしろ増加し、細胞周期遅延およびDNA修復を生じ、損傷が重篤な場合には細胞死を生じる。本明細書で用いる場合、「E2F」は、E2F転写因子ファミリー(E2F−1、E2F−2、E2F−3を包含するが、これらに限定されるものではない)である。
本明細書で用いる場合、「細胞周期チェックポイント経路」とは、細胞周期チェックポイントの調節に関与する生化学的経路をいう。細胞周期チェックポイント経路は、細胞周期チェックポイントを含む1つまたはそれ以上の機能に対する刺激効果または抑制効果またはその両方を有し得る。細胞周期チェックポイント経路は、細胞周期チェックポイントの調節に寄与する少なくとも2つの物質合成物(composition of matter)、好ましくは、タンパク質から構成されている。細胞周期チェックポイント経路は、細胞周期チェックポイント経路の1つまたはそれ以上のメンバーの活性化を介して活性化され得る。好ましくは、細胞周期チェックポイント経路は生化学的シグナル伝達経路である。
本明細書で用いる場合、「細胞周期チェックポイント調節因子」とは、細胞周期チェックポイントの調節において少なくとも部分的に機能することができる物質合成物をいう。細胞周期チェックポイント調節因子は、細胞周期チェックポイントを含む1つまたはそれ以上の機能に対する刺激効果または抑制効果またはその両方を有し得る。一の態様では、細胞周期チェックポイント調節因子はタンパク質である。別の態様では、細胞周期チェックポイント調節因子はタンパク質ではない。一の態様では、細胞周期チェックポイント調節因子は、ATM、ATR、Chk1、Chk2、E2F1、BRCA1、Rb、p53、p21、Mdm2、Cdc2、Cdc25、および14−4−3[シグマ]からなる群から選択される。
本明細書で用いる場合、「細胞周期チェックポイント活性化剤」なる用語は、例えば、チェックポイント媒介DNA修復メカニズムを活性化することにより、または細胞周期活性を調節する細胞経路における機能不全または変異のために失われたチェックポイント活性を復元することにより、細胞周期チェックポイントを活性化する能力を有する化合物をいう。当該技術分野において知られているように、主要な細胞周期チェックポイントは、G1/S期移行時およびG2/M期移行時に生じる。細胞周期チェックポイント活性化の調節は、さらに、例えば、C.J. Li et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1999), 96(23), 13369-13374、およびY. Li et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2003), 100(5), 2674-2678、およびPCT公開WO 00/61142(Pardee et al.)にて検討されている。本発明で用いる好ましい細胞周期チェックポイント活性化剤は、好ましくは実質的なDNA損傷を引き起こすことなく、チェックポイント活性化を誘発する(すなわち、好ましくはG1/S期にて、1つまたはそれ以上の細胞周期チェックポイントを活性化する)。また、ある種の好ましい細胞周期チェックポイント活性化剤は、細胞中のE2F(より好ましくは、E2F1)のレベルまたは活性を増大させる能力を有する。細胞中のE2F活性またはレベルを上昇させる能力を有する化合物を包含する細胞周期チェックポイント活性化剤についてのスクリーニング方法としては、Li et al.のPCT特許出願番号PCT/US03/22631に記載されるものが挙げられる。ある種の実施態様では、好ましい細胞周期チェックポイント活性化剤は、細胞が癌細胞である場合には、該細胞中のE2Fのレベルを、細胞死(例えば、アポトーシス)を引き起こすのに十分な量増加させる能力を有する。より好ましい細胞周期チェックポイント活性化剤は、細胞が癌細胞である場合には、該細胞中のE2F1のレベルまたは活性を、細胞死(例えば、アポトーシス)を引き起こすのに十分な量上昇させる能力を有する。一の態様では、細胞周期チェックポイント活性化剤は、β−ラパコンではない。
I.組成物
本明細書で用いる場合、「β−ラパコン」なる語句は、3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ナフト[1,2−b]ピラン−5,6−ジオンならびにその誘導体およびアナログをいい、化学構造:
を有する。好ましい誘導体およびアナログを以下に記載する。
本明細書で用いる場合、「β−ラパコン」なる語句は、3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ナフト[1,2−b]ピラン−5,6−ジオンならびにその誘導体およびアナログをいい、化学構造:
本明細書で用いる場合、G1/S期薬とは、例えば細胞周期チェックポイントを活性化することにより、G1およびS期チェックポイントにて細胞周期を調節する(例えば、細胞死を引き起こす)薬物をいう。β−ラパコンは、好ましいG1/S期薬である。同様に、S期薬は、S期チェックポイントにて細胞周期を調節する(例えば、細胞死を引き起こす)薬物である。一の実施態様では、S期薬は、DNA合成を阻害することによって治療効果を発揮する。一の実施態様では、本発明は、細胞周期におけるG1/S期チェックポイントにて悪性細胞を標的とする薬物または化合物を投与することによりかかる悪性細胞を有する対象体を治療する方法またはかかる悪性細胞のさらなる増殖を阻害する方法に関する。細胞周期におけるS期チェックポイントにて作用する第2の薬物または化合物をG1/S期薬または化合物と同時またはその後に投与する。これらの基準を満たしている個々の化合物は当業者に知られており、Physician's Desk Reference, 59th Edition, Thomson PDR (2005)のような参考書に見ることができる。例えば、β−ラパコンおよびその誘導体はG1/S期薬であり、一方、ゲムシタビンおよび他の代謝拮抗剤はS期薬である。代表的な化合物のリストを下記表1に示す。
本明細書で用いる場合、「代謝拮抗剤」は、内因性細胞性代謝物の利用を阻害することにより治療効果を発揮するいずれもの化合物である。代表的な代謝拮抗剤としては、葉酸アンタゴニスト(例えば、メトトレキセート)、プリンアンタゴニスト(例えば、チオグアニン)およびピリミジンアンタゴニスト(例えば、フルオロウラシル)が挙げられる。代表的な代謝拮抗剤は当業者に知られており、Physician's Desk Reference, 59th Edition, Thomson PDR (2005)のような参考書に見ることができる。一の態様では、代謝拮抗剤は、S期チェックポイントにて、例えば細胞死を引き起こすことにより、細胞周期を調節するS期代謝拮抗剤である。
本明細書で用いる場合、「ヌクレオシドアナログ」は、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシシチジン、デオキシウリジン、チミジン、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジンおよびチミンリボシドのアナログ(これらに限定されるものではない)のようなデオキシリボヌクレオシドおよびリボヌクレオシドのアナログを包含する内因性細胞性ヌクレオシドに対するアナログとして作用することによって治療効果を発揮するいずれもの化合物である。例えば、ゲムシタビンHCl(GEMZAR(登録商標))は、抗腫瘍活性を示すヌクレオシドアナログである2'−デオキシ−2',2'−ジフルオロシチジン・一塩酸塩(β異性体)である。本明細書で用いる場合、「ヌクレオチドアナログ」は、デオキシアデニル酸、デオキシグアニル酸、デオキシシチジル酸、チミジル酸、2'−アデニル酸、3'−アデニル酸、5'−アデニル酸、3'−グアニル酸、3'−シチジル酸、3'−ウリジル酸、およびそれらのリン酸含有誘導体のアナログ(これらに限定されない)のようなデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドのアナログを包含する内因性細胞性ヌクレオチドに対するアナログとして作用するいずれもの化合物である。ヌクレオシドアナログおよびヌクレオチドアナログは、癌のような細胞増殖性障害のための化学療法剤として有用であり得る。理論によって制限されないが、ヌクレオシドアナログおよびヌクレオチドアナログは、DNAポリメラーゼの阻害およびDNA分子中への直接的取り込みを介するDNA鎖の伸長の防止によってDNA合成を阻害すると考えられる。高レベルのヌクレオシドアナログ薬は、DNA鎖切断、DNA合成の阻害、S期またはG1/S移行部での細胞の蓄積、または細胞死をもたらし得る。代表的なヌクレオシドアナログおよびヌクレオチドアナログは当業者に知られており、Physician's Desk Reference, 59th Edition, Thomson PDR (2005)のような参考書に見ることができる。
好ましいG1/S期チェックポイント標的化合物としては、G1/S期薬(例えば、β−ラパコン)、G1期薬(例えば、ロバスタチン、ミモシンおよびタモキシフェンなど)およびS期薬(例えば、ゲムシタビン、5−FUおよびMTXなど)が挙げられる。本発明で用いる好ましいG1/S期薬は、好ましくは、正常細胞中では有意なDNA損傷を引き起こさない。β−ラパコン、その誘導体およびアナログは、最も好ましいG1/S期薬である。好ましいG1/S期化合物は、細胞周期チェックポイント活性化の直接的活性化剤である(例えば、Y. Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(2003), 100(5), 2674-8を参照)。好ましいG1/S期化合物は、癌細胞中のE2F(好ましくは、E2F1)の量または活性を上昇させる能力を有しており、それによりチェックポイントを活性化させ、癌性または前癌性細胞における細胞死を引き起こす。
単純な非水溶性オルトナフトキノンであるβ−ラパコン(3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ナフト[1,2−b]ピラン−5,6−ジオン)は、1882年にPaternoによって初めてラパチョ(lapacho)の木の心材から単離された(Hooker, SC, (1936) I. Am. Chem. Soc. 58:1181-1190;Goncalves de Lima, O, et al., (1962) Rev. Inst. Antibiot. Univ. Recife. 4:3-17を参照)。β−ラパコンの構造は、1896年にHookerによって確立され、1927年にFieserによって初めて合成された(Hooker, SC, (1936) I. Am. Chem. Soc. 58:1181-1190)。β−ラパコンは、例えば、主にブラジルに生えているタベブイア・アベラネダエ(Tabebuia avellenedae)から容易に単離される天然ラパコールの単純な硫酸処理によって得ることができるか、またはオーストラリアに生えているロマティア(lomatia)の種子から容易に合成される(Li, CJ, et al., (1993) J. Biol. Chem. 268:22463-33464)。β−ラパコンまたはその誘導体もしくはアナログを処方する方法は、米国特許第6,458,974号および米国公開番号US-2003-0091639-A1に記載されているように行うことができる。
本明細書で用いる場合、β−ラパコンの誘導体またはアナログとしては、例えば、3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)−2H−ナフト[1,2−b]ピラン−5,6−ジオン、3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ナフト[1,2−b]チオピラン−5,6−ジオンおよび3,4−ジヒドロ−4,4−ジメチル−2H−ナフト[1,2−b]チオピラン−5,6−ジオンが挙げられる。β−ラパコンの他の誘導体またはアナログは、PCT国際出願PCT/US93/07878(WO94/04145)および米国特許第6,245,807号に記載されている。PCT国際出願PCT/US00/10169(WO 00/61142)には、3位に、および2位に結合しているメチル基の代わりに、様々な置換基を有していてよいβ−ラパコンが記載されている。米国特許第5,763,625号、第5,824,700号および第5,969,163号には、2位、3位および4位に様々な置換基を有するアナログおよび誘導体が記載されている。さらにまた、数多くの学会誌が1つまたはそれ以上の下記位置に置換基を有するβ−ラパコンアナログおよび誘導体を報告している:2位、3位、8位および/または9位(Sabba et al., (1984) J Med Chem 27:990-994(2位、8位および9位に置換基);Portela and Stoppani, (1996) Biochem Pharm 51:275-283(2位および9位に置換基);Goncalves et al., (1998) Molecular and Biochemical Parasitology 1:167-176(2位および3位に置換基)を参照)。β−ラパコンの他の誘導体またはアナログは、ラパコンの「α」位および「β」位において硫黄含有複素環を有する(Kurokawa S, (1970) Bulletin of The Chemical Society of Japan 43:1454-1459;Tapia, RA et al., (2000) Heterocycles 53(3):585-598;Tapia, RA et al., (1997) Tetrahedron Letters 38(1):153-154;Chuang, CP et al., (1996) Heterocycles 40(10):2215-2221;Suginome H et al., (1993) Journal of the Chemical Society, Chemical Communications 9:807-809;Tonholo J et al., (1988) Journal of the Brazilian Chemical Society 9(2):163-169;およびKrapcho AP et al., (1990) Journal of Medicinal Chemistry 33(9):2651-2655)。
また、G1/S期チェックポイント標的薬としては、還元β−ラパコン(例えば、R'およびR”が共に水素である式Ia)および還元β−ラパコンの誘導体(例えば、R'およびR”が各々独立して、水素、C1−C6アルキル、C1−C6アルキルカルボニルまたはその医薬上許容される塩である式Iaを参照)が挙げられる。
本明細書で用いる場合、「本発明の組み合わせ」なる用語は、本発明のG1/S期薬および本発明のS期薬を意味する。本明細書で用いる場合、「本発明の化合物」なる用語は、本発明のG1/S期薬または本発明のS期薬を意味する。本発明の好ましい組み合わせとしては、β−ラパコンとゲムシタビン;β−ラパコンと5−FU;β−ラパコンとメトトレキセート;β−ラパコンと5−フルオロデオキシウリジン;またはβ−ラパコンとシタラビンが挙げられる。β−ラパコンとゲムシタビンは、最も好ましい組み合わせである。本発明の好ましい組み合わせとしてはまた、還元β−ラパコンとゲムシタビン;還元β−ラパコンと5−FU;還元β−ラパコンとメトトレキセート;還元β−ラパコンと5−フルオロデオキシウリジン;または還元β−ラパコンとシタラビンが挙げられる。好ましい実施態様では、β−ラパコンまたはその誘導体もしくはアナログ(G1/S期薬として)はシスプラチンと組み合わせない。
β−ラパコンは本発明にかかる組成物に用いる好ましいG1/S期化合物であるが、本発明はこの点において限定されず、ラパコールのようなβ−ラパコン誘導体またはアナログ、ならびにその医薬組成物および処方物は本発明の一部である。かかるβ−ラパコンアナログとしては、式:
で示される化合物を記載するPCT国際出願PCT/US93/07878(WO 94/04145)に記載されているものが挙げられる。ここで、RおよびR1は、各々独立して、水素、置換および非置換アリール、置換および非置換アルケニル、置換および非置換アルキルおよび置換または非置換アルコキシである。該アルキル基は、好ましくは、炭素原子1〜約15個、より好ましくは、炭素原子1〜約10個、さらにより好ましくは、炭素原子1〜約6個を有する。他に修飾されない限りアルキルなる用語は、環状および非環状のどちらの基も表すが、もちろん、環状の基は少なくとも3個の炭素環構成メンバーを含むであろう。一般に環状の基よりも直鎖または分枝鎖非環状アルキル基の方が好ましい。一般に分枝鎖よりも直鎖アルキル基の方が好ましい。アルケニル基は、好ましくは、炭素原子2〜約15個、より好ましくは、炭素原子2〜約10個、さらにより好ましくは、炭素原子2〜6個を有する。特に好ましいアルケニル基は、炭素原子3個を有しており(すなわち、1−プロペニルまたは2−プロペニル)、アリル基が特に好ましい。フェニルおよびナフチルは一般に好ましいアリール基である。アルコキシ基としては、1個またはそれ以上の酸素結合を有するこれらのアルコキシ基が挙げられ、好ましくは、炭素原子1〜15個、より好ましくは、炭素原子1〜約6個を有する。置換されたRおよびR1基は、例えば、炭素原子1〜10個または炭素原子1〜6個を有するアルキル基のようなアルキル基、炭素原子2〜10個または炭素原子2〜6個を有するアルケニル基のようなアルケニル基、炭素原子6〜10個を有するアリール基、フルオロ、クロロおよびブロモのようなハロゲン、ならびに、ヘテロアルキル(例えば、1個またはそれ以上のヘテロ原子結合(かくして、アルコキシ、アミノアルキルおよびチオアルキルを含む)および炭素原子1〜10個または炭素原子1〜6個を有するヘテロアルキル)を含むN、OおよびSのような1個またはそれ以上の適当な基によって1つまたはそれ以上の利用可能な位置で置換されていてもよい。
本発明において意図する他のβ−ラパコンアナログは、下記構造:
を有するβ−ラパコンアナログおよび誘導体が記載されている米国特許第6,245,807号に記載されているものを包含する。ここで、RおよびR1は、各々独立して、水素、ヒドロキシ、スルフヒドリル、ハロゲン、置換アルキル、非置換アルキル、置換アルケニル、非置換アルケニル、置換アリール、非置換アリール、置換アルコキシ、非置換アルコキシ、およびその塩から選択され、ここで、環炭素原子間に点線を引いた二重結合は任意の環二重結合を表す。
さらなるβ−ラパコンアナログおよび誘導体は、下記構造:
を有する化合物が記載されているPCT国際出願PCT/US00/10169(WO 00/61142)に記載されている。ここで、R5およびR6は、独立して、ヒドロキシ、C1−C6アルキル、C1−C6アルケニル、C1−C6アルコキシ、C1−C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−フェニルから選択され得る;R7は、水素、ヒドロキシル、C1−C6アルキル、C1−C6アルケニル、C1−C6アルコキシ、C1−C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−アミノ、−−(CH2)n−アリール、−−(CH2)n−ヘテロアリール、−−(CH2)n−ヘテロサイクル、または−−(CH2)n−フェニルであり、ここで、nは、0〜10の整数である。
他のβ−ラパコンアナログおよび誘導体は、米国特許第5,763,625号、米国特許第5,824,700号および米国特許第5,969,163号、ならびに以下の位置:2位、8位および/または9位のうちの1つまたはそれ以上の位置に置換基を有するβ−ラパコンを記載しているSabba et al., J Med Chem 27:990-994(1984)のような科学学術論文に記載されている。Portela et al., Biochem Pharm 51:275-283(1996)(2位および9位に置換基);Maruyama et al., Chem Lett 847-850(1977);Sun et al., Tetrahedron Lett 39:8221-8224(1998);Goncalves et al., Molecular and Biochemical Parasitology 1:167-176(1998)(2位および3位に置換基);Gupta et al., Indian Journal of Chemistry 16B: 35-37(1978);Gupta et al., Curr Sci 46:337(1977)(3位および4位に置換基);DiChenna et al., J Med Chem 44: 2486-2489(2001)(モノアリールアミノ誘導体)も参照。
より好ましくは、本発明において意図するアナログおよび誘導体は、一般式VおよびVI:
式V 式VI
で示される化合物を包含するものである。ここで、環炭素原子間に点線を引いた二重結合は、任意の環二重結合を表し、RおよびR1は、各々独立して、水素、ヒドロキシ、スルフヒドリル、ハロゲン、置換アルキル、非置換アルキル、置換アルケニル、非置換アルケニル、置換アリール、非置換アリール、置換アルコキシ、非置換アルコキシ、およびその塩から選択される。アルキル基は、好ましくは、炭素原子1〜約15個、より好ましくは、炭素原子1〜約10個、さらにより好ましくは、炭素原子1〜約6個を有する。アルキルなる用語は、環状および非環状のどちらの基も表す。一般に環状の基よりも直鎖または分枝鎖非環状アルキル基の方が好ましい。一般に分枝鎖よりも直鎖アルキル基の方が好ましい。アルケニル基は、好ましくは、炭素原子2〜約15個、より好ましくは、炭素原子2〜約10個、さらにより好ましくは、炭素原子2〜6個を有する。特に好ましいアルケニル基は、炭素原子3個を有しており(すなわち、1−プロペニルまたは2−プロペニル)、アリル基が特に好ましい。フェニルおよびナフチルは一般に好ましいアリール基である。アルコキシ基としては、1個またはそれ以上の酸素結合を有するこれらのアルコキシ基が挙げられ、好ましくは、炭素原子1〜15個、より好ましくは、炭素原子1〜約6個を有する。置換されたRおよびR1基は、例えば、炭素原子1〜10個または炭素原子1〜6個を有するアルキル基、炭素原子2〜10個または炭素原子2〜6個を有するアルケニル基、炭素原子6〜10個を有するアリール基、フルオロ、クロロおよびブロモのようなハロゲン、ならびに、ヘテロアルキル(例えば、1個またはそれ以上のヘテロ原子結合(かくして、アルコキシ、アミノアルキルおよびチオアルキルを含む)および炭素原子1〜10個または炭素原子1〜6個を有するヘテロアルキル)を含むN、OおよびSのような1個またはそれ以上の適当な基によって1つまたはそれ以上の利用可能な位置で置換されていてもよい;ここで、R5およびR6は、独立して、ヒドロキシ、C1−C6アルキル、C1−C6アルケニル、C1−C6アルコキシ、C1−C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−アリール、−−(CH2)n−ヘテロアリール、−−(CH2)n−ヘテロサイクル、または−−(CH2)n−フェニルから選択され得る;R7は、水素、ヒドロキシル、C1−C6アルキル、C1−C6アルケニル、C1−C6アルコキシ、C1−C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−アミノ、−−(CH2)n−アリール、−−(CH2)n−ヘテロアリール、−−(CH2)n−ヘテロサイクル、または−−(CH2)n−フェニルであり、ここで、nは0〜10の整数である。
で示される化合物を包含するものである。ここで、環炭素原子間に点線を引いた二重結合は、任意の環二重結合を表し、RおよびR1は、各々独立して、水素、ヒドロキシ、スルフヒドリル、ハロゲン、置換アルキル、非置換アルキル、置換アルケニル、非置換アルケニル、置換アリール、非置換アリール、置換アルコキシ、非置換アルコキシ、およびその塩から選択される。アルキル基は、好ましくは、炭素原子1〜約15個、より好ましくは、炭素原子1〜約10個、さらにより好ましくは、炭素原子1〜約6個を有する。アルキルなる用語は、環状および非環状のどちらの基も表す。一般に環状の基よりも直鎖または分枝鎖非環状アルキル基の方が好ましい。一般に分枝鎖よりも直鎖アルキル基の方が好ましい。アルケニル基は、好ましくは、炭素原子2〜約15個、より好ましくは、炭素原子2〜約10個、さらにより好ましくは、炭素原子2〜6個を有する。特に好ましいアルケニル基は、炭素原子3個を有しており(すなわち、1−プロペニルまたは2−プロペニル)、アリル基が特に好ましい。フェニルおよびナフチルは一般に好ましいアリール基である。アルコキシ基としては、1個またはそれ以上の酸素結合を有するこれらのアルコキシ基が挙げられ、好ましくは、炭素原子1〜15個、より好ましくは、炭素原子1〜約6個を有する。置換されたRおよびR1基は、例えば、炭素原子1〜10個または炭素原子1〜6個を有するアルキル基、炭素原子2〜10個または炭素原子2〜6個を有するアルケニル基、炭素原子6〜10個を有するアリール基、フルオロ、クロロおよびブロモのようなハロゲン、ならびに、ヘテロアルキル(例えば、1個またはそれ以上のヘテロ原子結合(かくして、アルコキシ、アミノアルキルおよびチオアルキルを含む)および炭素原子1〜10個または炭素原子1〜6個を有するヘテロアルキル)を含むN、OおよびSのような1個またはそれ以上の適当な基によって1つまたはそれ以上の利用可能な位置で置換されていてもよい;ここで、R5およびR6は、独立して、ヒドロキシ、C1−C6アルキル、C1−C6アルケニル、C1−C6アルコキシ、C1−C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−アリール、−−(CH2)n−ヘテロアリール、−−(CH2)n−ヘテロサイクル、または−−(CH2)n−フェニルから選択され得る;R7は、水素、ヒドロキシル、C1−C6アルキル、C1−C6アルケニル、C1−C6アルコキシ、C1−C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−アミノ、−−(CH2)n−アリール、−−(CH2)n−ヘテロアリール、−−(CH2)n−ヘテロサイクル、または−−(CH2)n−フェニルであり、ここで、nは0〜10の整数である。
本発明において意図する好ましいアナログおよび誘導体はまた、下記一般式VII:
で示される化合物を包含する。ここで、R1は、(CH2)n−R2であり、ここで、nは、0〜10の整数であり、R2は、水素、アルキル、アリール、複素環式芳香族、複素環、脂肪族、アルコキシ、アリルオキシ、ヒドロキシル、アミン、チオール、アミド、またはハロゲンである。
本発明において意図するアナログおよび誘導体はまた、4−アセトキシ−β−ラパコン、4−アセトキシ−3−ブロモ−β−ラパコン、4−ケト−β−ラパコン、7−ヒドロキシ−β−ラパコン、7−メトキシ−β−ラパコン、8−ヒドロキシ−β−ラパコン、8−メトキシ−β−ラパコン、8−クロロ−β−ラパコン、9−クロロ−β−ラパコン、8−メチル−β−ラパコンおよび8,9−ジメトキシ−β−ラパコンを包含する。
本発明において意図する好ましいアナログおよび誘導体はまた、下記一般式VIII:
で示される化合物を包含する。ここで、R1〜R4は、各々独立して、H、C1−C6アルキル、C1−C6アルケニル、C1−C6アルコキシ、C1−C6アルコキシカルボニル、−−(CH2)n−アリール、−−(CH2)n−ヘテロアリール、−−(CH2)n−ヘテロサイクル、または−−(CH2)n−フェニルからなる群から選択されるか;またはR1およびR2が一緒になって上記の群から選択される単一の置換基となり、R3およびR4が一緒になって上記の群から選択される単一の置換基となり、この場合、----は二重結合である。
本発明において意図する好ましいアナログおよび誘導体はまた、ダンニオン(dunnione)および2−エチル−6−ヒドロキシナフト[2,3−b]−フラン−4,5−ジオンを包含する。
本発明の方法およびキットにおいて有用なさらなる好ましいβ−ラパコンアナログは、式X:
によって表されるかまたはその医薬上許容される塩、またはその位置異性体混合物である(2002年11月18日に出願された米国仮出願番号第60/427,283号を優先権主張して2003年11月18日に出願された、“NOVEL LAPACHONE COMPOUNDS AND METHODS OF USE THEREOF”なる発明の名称のPCT特許出願PCT/US2003/037219もまた参照)。ここで、R1〜R6は、各々独立して、H、OH、置換および非置換C1−C6アルキル、置換および非置換C1−C6アルケニル、置換および非置換C1−C6アルコキシ、置換および非置換C1−C6アルコキシカルボニル、置換および非置換C1−C6アシル、−(CH2)n−アミノ、−(CH2)n−アリール、−(CH2)n−ヘテロサイクル、および−(CH2)n−フェニルからなる群から選択されるか;または、R1またはR2のうちの1つとR3またはR4のうちの1つ;またはR3またはR4のうちの1つとR5またはR6のうちの1つが、4〜8個の環構成メンバーを有する縮合環を形成し;R7〜R10は、各々独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;nは0〜10の整数である。
好ましい実施態様では、R1およびR2はアルキルであり、R3〜R6は、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、置換もしくは非置換アシル、置換アルケニルまたは置換アルキルカルボニルであり、R7〜R10は水素である。別の好ましい実施態様では、R1およびR2は、各々、メチルであり、R3〜R10は、各々、水素である。別の好ましい実施態様では、R1〜R4は、各々、水素であり、R5およびR6は、各々、メチルであり、R7〜R10は、各々、水素である。
本発明の方法およびキットにおいて有用なさらなる好ましいβ−ラパコンアナログは、式XI:
によって表されるかまたはその医薬上許容される塩、またはその位置異性体混合物である(2003年11月18日に出願された、“NOVEL LAPACHONE COMPOUNDS AND METHODS OF USE THEREOF”なる発明の名称のPCT特許出願PCT/US2003/037219もまた参照)。ここで、R1〜R4は、各々独立して、H、OH、置換および非置換C1−C6アルキル、置換および非置換C1−C6アルケニル、置換および非置換C1−C6アルコキシ、置換および非置換C1−C6アルコキシカルボニル、置換および非置換C1−C6アシル、−(CH2)n−アミノ、−(CH2)n−アリール、−(CH2)n−ヘテロサイクル、および−(CH2)n−フェニルからなる群から選択されるか;またはR1またはR2のうちの1つとR3またはR4のうちの1つが、4〜8個の環構成メンバーを有する縮合環を形成し;R5〜R8は、各々独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;nは、0〜10の整数である。式XIのある実施態様では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、各々同時にHではない。
一の実施態様では、G1/S期薬は、3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)−2H−ナフト[1,2−b]ピラン−5,6−ジオン、3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ナフト[1,2−b]チオピラン−5,6−ジオンおよび3,4−ジヒドロ−4,4−ジメチル−2H−ナフト[1,2−b]チオピラン−5,6−ジオンからなる群から選択される。
本発明の化合物の全ての立体異性体は、ラセミ混合物の結晶性形状および個々の異性体の結晶性形状を包含する、混合物または純粋な形態もしくは実質的に純粋な形態のいずれかであることが意図される。本発明にかかる化合物の定義は、全ての起こり得る立体異性体(例えば、各不斉中心についてのRおよびS配置)およびそれらの混合物を含む。特に、ラセミ形態および特定の活性を有する単離した光学異性体を含む。ラセミ形態は、例えば、ジアステレオマー誘導体の分別結晶、分離もしくは結晶化、またはキラルカラムクロマトグラフィーもしくは超臨界流体クロマトグラフィーによる分離のような物理的方法によって分割することができる。個々の光学異性体は、例えば、光学活性酸との塩形成の後の結晶化のような慣用的な方法によってラセミ化合物から得ることができる。さらにまた、二重結合におけるE配置およびZ配置のような全ての幾何異性体は、特記しない限り本発明の範囲内である。本発明のある種の化合物は、互変異性体の形態で存在し得る。当該化合物のかかる互変異性体は全て、特記しない限り、本発明の範囲内であると考える。本発明はまた、β−ラパコンのアナログまたは誘導体の1つまたはそれ以上の位置異性体混合物も包含する。
さらなる態様では、本発明の化合物または組み合わせは、化学療法剤と組み合わせて投与することができる。膵癌のような細胞増殖性障害に対して活性を有する代表的な化学療法剤は当業者に知られており、Physician's Desk Reference, 59th Edition, Thomson PDR (2005)のような参考書に見ることができる。例えば、該化学療法剤は、タキサン、アロマターゼ阻害物質、アントラサイクリン、微小管標的薬(microtubule targeting drug)、トポイソメラーゼ毒薬(topoisomerase poison drug)、標的モノクローナルまたはポリクローナル抗体、分子標的または酵素の阻害物質(例えば、キナーゼ阻害物質)、またはシチジンアナログ薬であり得る。好ましい態様では、該化学療法剤は、タモキシフェン、ラロキシフェン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、HERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)、GLEEVEC(登録商標)(イマタニブ(imatanib))、TAXOL(登録商標)(パクリタキセル)、IRESSA(登録商標)(ゲフィチニブ)、TARCEVATM(エルロチニブ)、シクロホスファミド、ロバスタチン、ミノシン、araC、5−フルオロウラシル(5−FU)、メトトレキセート(MTX)、TAXOTERE(登録商標)(ドセタキセル)、ZOLADEX(登録商標)(ゴセレリン)、AVASTINTM(ベバシズマブ)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、テニポシド、エトポシド、エポシロン、ナベルビン、カンプトテシン、ダウノニビシン(daunonibicin)、ダクチノマイシン、ミトキサントロン、アムサクリン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシンまたはイダルビシン、またはwww.cancer.org/docroot/cdg/cdg_0.aspに挙げられている薬剤であり得るが、これらに限定されるものではない。別の態様では、該化学療法剤は、G−CSF(顆粒球コロニー刺激因子)のようなサイトカインであり得る。別の態様では、β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体は、放射線療法と組み合わせて投与され得る。さらに別の態様では、β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体は、CMF(シクロホスファミド、メトトレキセートおよび5−フルオロウラシル)、CAF(シクロホスファミド、アドリアマイシンおよび5−フルオロウラシル)、AC(アドリアマイシンおよびシクロホスファミド)、FEC(5−フルオロウラシル、エピルビシン、およびシクロホスファミド)、ACTまたはATC(アドリアマイシン、シクロホスファミド、およびパクリタキセル)、またはCMFP(シクロホスファミド、メトトレキセート、5−フルオロウラシルおよびプレドニゾン)(これらに限定されない)のような標準的な化学療法組み合わせと組み合わせて投与することができる。
本明細書で用いる場合、「塩」なる用語は、医薬上許容される塩であり、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、乳酸塩および酒石酸塩を含む酸付加塩;Na+、K+、Li+のようなアルカリ金属陽イオン、MgまたはCaのようなアルカリ土類金属塩、または有機アミン塩を挙げることができる。
本明細書で用いる場合、「代謝物」なる用語は、本発明の化合物と同様のインビボ活性を示す、本発明の化合物またはその医薬上許容される塩、アナログもしくは誘導体の代謝の産物を意味する。
本明細書で用いる場合、「プロドラッグ」なる用語は、アミノ酸部分または他の水可溶化部分のような1つまたはそれ以上のプロ部分と共有結合した本発明の化合物を意味する。本発明の化合物は、加水分解性、酸化性および/または酵素性遊離メカニズムを介してプロ部分から遊離され得る。一の実施態様では、本発明のプロドラッグ組成物は、水溶性の増強、安定性の向上、および薬物動態プロファイルの改善の付加利益を示す。プロ部分は、所望のプロドラッグ特性を得るように選択され得る。例えば、プロ部分、例えば、アミノ酸部分または他の水可溶化部分は、溶解性、安定性、生物学的利用能、および/またはインビボ送達もしくは取り込みに基づいて選択され得る。
II.治療方法
本明細書で用いる場合、「対象体」は、いずれもの哺乳動物、例えば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダであり得る。好ましい実施態様では、対象体は、ヒトである。
本明細書で用いる場合、「対象体」は、いずれもの哺乳動物、例えば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダであり得る。好ましい実施態様では、対象体は、ヒトである。
本明細書で用いる場合、「必要とする対象体」は、細胞増殖性障害に罹患している対象体、または細胞増殖性障害を発症するリスクが人口全般と比べて高くなっている対象体である。一の態様では、必要とする対象体は、前癌症状を有する。好ましい態様では、必要とする対象体は、癌に罹患している。一の態様では、対象体は、過剰細胞増殖を特徴とする既知の(すなわち、診断された)症状(例えば、癌)に罹患しているものであり得る。
本明細書で用いる場合、「細胞増殖性障害」なる用語は、細胞の未制御増殖または異常増殖またはその両方が望ましくない症状または疾患(癌性であってもなくてもよい)の発症を引き起こす可能性がある症状をいう。一の態様では、細胞増殖性障害としては、非癌性症状、例えば、関節リウマチ;炎症;自己免疫疾患;リンパ球増殖性症状;末端肥大症;リウマチ様脊椎炎;変形性関節症;痛風、他の関節症状;敗血症;敗血症ショック;エンドトキシショック;グラム陰性菌敗血症;毒素性ショック症候群;喘息;成人呼吸窮迫症候群;慢性閉塞性肺疾患;慢性肺炎;炎症性腸疾患;クローン病;乾癬;湿疹;潰瘍性大腸炎;膵臓線維症;肝臓線維症;急性および慢性腎疾患;過敏性腸症候群;ピレシス(pyresis);再狭窄;脳性マラリア;脳卒中および虚血性障害;神経外傷;アルツハイマー病;ハンチントン病;パーキンソン病;急性および慢性痛;アレルギー性鼻炎;アレルギー性結膜炎;慢性心不全;急性冠状動脈症候群;悪液質;マラリア;ハンセン病;リーシュマニア症;ライム病;ライター症候群;急性滑膜炎;筋肉変性、滑液包炎;腱炎;腱鞘炎;ヘルニア、破裂または脱出性の椎間板症候群;大理石骨病;血栓症;再狭窄;珪肺症;肺サルコイドーシス;骨粗鬆症のような骨吸収疾患;移植片対宿主反応;多発性硬化症;狼瘡;線維筋痛症;AIDS、および帯状疱疹、単純疱疹I型またはII型、インフルエンザウイルスおよびサイトメガロウイルスのような他のウイルス性疾患;および真性糖尿病が挙げられる。別の態様では、細胞増殖性障害は、前癌または前癌症状を包含する。別の態様では、細胞増殖性障害は癌を包含する。別の態様では、細胞増殖性障害は非癌性細胞増殖性障害を包含する。治療される種々の癌としては、原発腫瘍部位から離れている他の組織または器官における転移病変を含む、乳癌、肺癌、結腸癌、結腸直腸癌、膵癌、卵巣癌、前立腺癌、腎臓癌、肝臓癌、肝細胞腫、脳腫瘍、皮膚癌、黒色腫、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病、血液腫瘍およびリンパ性腫瘍が挙げられるがこれらに限定されるものではない。治療される癌としては、肉腫、癌腫および腺癌が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一の態様では、「前癌細胞」または「前癌性細胞」は、前癌または前癌症状である細胞増殖性障害が現れている細胞である。別の態様では、「癌細胞」または「癌性細胞」は、癌である細胞増殖性障害が現れている細胞である。いずれもの再現性のある測定手段が、癌細胞または前癌性細胞を同定するために使用され得る。好ましい態様では、癌細胞または前癌性細胞は、組織試料(例えば、生検試料)の組織学的分類またはグレード分けによって同定される。別の態様では、癌細胞または前癌性細胞は、適当な分子マーカーの使用によって同定される。
一の態様では、固形腫瘍が、乳癌、肺癌、結腸癌、結腸直腸癌、膵癌、卵巣癌、前立腺癌、腎臓癌、肝臓癌、肝細胞癌、脳腫瘍、皮膚癌および黒色腫からなる群から選択される癌の結果として形成される。
「血液系の細胞増殖性障害」は、血液系の細胞に関する細胞増殖性障害である。一の態様では、血液系の細胞増殖性障害としては、リンパ腫、白血病、骨髄腫瘍、肥満細胞腫瘍、骨髄異形成症候群、良性単クローン性γグロブリン血症、リンパ腫様肉芽腫症、リンパ腫様丘疹症、真性赤血球増多症、慢性骨髄性白血病、原発性骨髄線維症、および本態性血小板増多症が挙げられる。別の態様では、血液系の細胞増殖性障害は、血液系の細胞の過形成、異形成および化生を包含する。好ましい態様では、本発明の組成物は、本発明の血液癌または本発明の血液細胞増殖性障害からなる群から選択される癌を治療するために使用され得る。一の態様では、本発明の血液癌(すなわち、血液腫瘍)としては、多発性骨髄腫、リンパ腫(ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、小児リンパ腫、ならびにリンパ球および皮膚原発リンパ腫を包含する)、白血病(小児白血病、有毛細胞白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、および肥満細胞白血病を包含する)、骨髄腫瘍および肥満細胞腫瘍が挙げられる。
「肺の細胞増殖性障害」は、肺の細胞に関する細胞増殖性障害である。一の態様では、細胞増殖性障害は、肺の前癌または前癌症状を包含する。一の態様では、肺の細胞増殖性障害は肺の非癌性細胞増殖性障害を包含する。別の態様では、細胞増殖性障害は、原発腫瘍部位から離れている他の組織または器官における転移病変を含む肺癌を包含する。一の態様では、「前癌細胞」または「前癌性細胞」は、前癌または前癌症状である細胞増殖性障害が現れている細胞である。別の態様では、「癌細胞」または「癌性細胞」は、癌である細胞増殖性障害が現れている細胞である。いずれもの再現性のある測定手段が、癌細胞または前癌性細胞を同定するために使用され得る。好ましい態様では、癌細胞または前癌性細胞は、組織試料(例えば、生検試料)の組織学的分類またはグレード分けによって同定される。別の態様では、癌細胞または前癌性細胞は、適当な分子マーカーの使用によって同定される。
好ましい態様では、肺の細胞増殖性障害は肺癌である。好ましい態様では、本発明の組成物は、肺癌または肺の細胞増殖性障害を治療するために使用され得る。一の態様では、肺癌は、肺のあらゆる形態の癌を包含する。治療される癌としては、肉腫、癌腫および腺癌が挙げられるが、これらに限定されるものではない。別の態様では、肺癌としては、悪性肺腫瘍、上皮内癌、定型カルチノイド腫瘍、および非定型カルチノイド腫瘍が挙げられる。別の態様では、肺癌としては、小細胞肺癌(「SCLC」)、非小細胞肺癌(「NSCLC」)、扁平上皮細胞癌、腺癌、小細胞癌、大細胞癌、腺扁平上皮細胞癌、および中皮腫が挙げられる。別の態様では、肺癌としては、「瘢痕癌」、細気管支肺胞癌、巨細胞癌、紡錘細胞癌、および大細胞神経内分泌癌が挙げられる。別の態様では、肺癌としては、組織的および超微細構造的異質性(例えば、混合細胞型)を有する肺腫瘍が挙げられる。一の態様では、肺癌としては、小細胞/大細胞混合型癌が挙げられる。
一の態様では、肺の細胞増殖性障害は、肺細胞を冒しているあらゆる形態の細胞増殖性障害を包含する。一の態様では、肺の細胞増殖性障害は、肺癌および肺の前癌症状を包含する。一の態様では、肺の細胞増殖性障害は、肺の過形成、化生および異形成を包含する。一の態様では、治療される細胞増殖性障害は、肺の散発性および遺伝性細胞増殖性障害を包含する。一の態様では、肺の細胞増殖性障害は、肺の良性腫瘍を包含する。別の態様では、肺の細胞増殖性障害は、アスベスト誘発性過形成、扁平上皮化生、および良性反応性中皮化生を包含する。別の態様では、肺の細胞増殖性障害は、円柱上皮が重層扁平上皮と置き換わること、および粘膜異形成を包含する。別の態様では、たばこの煙およびアスベストのような吸入された有害な環境要因に曝露された個体は、肺の細胞増殖性障害を発症するリスクが高くなり得る。別の態様では、個体に肺の細胞増殖性障害が生じやすくなり得る既往肺疾患としては、慢性間質性肺疾患、壊死性肺疾患、強皮症、リウマチ様疾患、サルコイドーシス、間質性肺炎、結核、反復性肺炎、特発性肺線維症、肉芽腫、石綿沈着症、線維化肺胞炎、およびホジキン病が挙げられる。
一の態様では、治療される肺癌は、30歳もしくはそれ以上の年齢の対象体または30歳よりも若い対象体に生じた。一の態様では、治療される肺癌は、50歳もしくはそれ以上の年齢の対象体または50歳よりも若い対象体に生じた。一の態様では、治療される肺癌は、70歳もしくはそれ以上の年齢の対象体または70歳よりも若い対象体に生じた。一の態様では、治療される肺癌は、p53、Rb、CDKN2A(P16INK4A)、FHIT、myc、ras、TP73、MADH2、MADH4、PPP2R1bまたはPTENにおける家族性変異または自然変異を同定するようにタイプ分けされた。別の態様では、治療される肺癌は、GSTM1ヌル対立遺伝子と関連している。別の態様では、治療される肺癌は、del(3p)、del(9p)およびdel(1p36)からなる群から選択される変異と関連している。一の態様では、治療される肺癌は、CEA(癌胎児性抗原)またはNSE(ニューロン特異的エノラーゼ)のレベルの上昇、またはテロメラーゼの1つまたはそれ以上の成分のアップレギュレーションと関連している。別の態様では、治療される肺癌は、MOC−1、MOC−21、MOC−31、MOC−32およびMOC−52からなる群から選択されるマーカーのレベルの上昇と関連している。
一の態様では、治療される肺癌は、肺の限局性腫瘍を包含する。一の態様では、治療される肺癌は、陰性の局所リンパ節生検と関連している肺の腫瘍を包含する。一の態様では、治療される肺癌は、陽性の局所リンパ節生検と関連している肺の腫瘍を包含する。別の態様では、治療される肺癌は、節性陰性状態(例えば、節陰性)または節性陽性状態(例えば、節陽性)を有するとタイプ分けされた肺の腫瘍を包含する。別の態様では、治療される肺癌は、体内の他の部位に転移した肺の腫瘍を包含する。一の態様では、治療される肺癌は、リンパ節、胃、胆管、肺、肝臓、骨および脳からなる群から選択される部位に転移していると分類される。別の態様では、治療される肺癌は、転移性、限局期、進行期、切除不能、切除可能、限局性(localized)、局所性(regional)、限局性−局所性(local-regional)、限局性進行型(locally advanced)、遠隔型、多中心性、両側性、同側性、対側性、新たに診断された、再発性、および手術不可能からなる群から選択される特徴に従って分類される。
一の態様では、治療される肺癌は、対癌米国合同委員会(American Joint Committee on Cancer)(AJCC)TNM分類体系に従って段階分けされている(ここで、腫瘍(T)には、Tis、T1、T2、T3、T4のステージが割り当てられおり;局所リンパ節(N)には、NX、N0、N1、N2、N2a、N2b、N3、N3a、N3b、またはN3cのステージが割り当てられており;遠隔型転移(M)には、MX、M0、またはM1のステージが割り当てられている)。別の態様では、治療される肺癌は、対癌米国合同委員会(AJCC)分類に従ってステージ0、I、IA、IB、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IIICおよびIVの肺癌と段階分けされている。別の態様では、治療される肺癌は、AJCC分類に従ってグレードGX(例えば、グレードを評価できない)、グレード1、グレード2、グレード3またはグレード4のグレードが割り当てられている。
一の態様では、治療される肺癌は、直径約3センチメートルまたはそれ以下であると測定された腫瘍を包含する。別の態様では、治療される肺癌は、直径約3〜約5センチメートルであると測定された腫瘍を包含する。別の態様では、治療される肺癌は、直径約3センチメートルまたはそれ以上であると測定された腫瘍を包含する。別の態様では、治療される肺癌は、直径5センチメートル以上であると測定された腫瘍を包含する。別の態様では、治療される肺癌は、顕微鏡像によって、高分化、中分化、低分化または未分化であると分類される。別の態様では、治療される肺癌は、有糸分裂カウント(例えば、細胞分裂の量)または核多形性(例えば、細胞の変化)に関して顕微鏡像によって分類される。別の態様では、治療される肺癌は、顕微鏡像によって、壊死の領域(例えば、細胞が死んでいるかまたは変性している領域)と関連していると分類される。一の態様では、治療される肺癌は、異常核型を有する、異常な数の染色体を有する、または外観が異常である1つまたはそれ以上の染色体を有すると分類される。一の態様では、治療される肺癌は、異数体、三倍体または四倍体であるか、または倍数性変化を有すると分類される。一の態様では、治療される肺癌は、染色体転座、または染色体全体の欠失もしくは重複、または染色体の一部の欠失、重複もしくは増幅の領域を有すると分類される。
「結腸の細胞増殖性障害」は、結腸の細胞に関する細胞増殖性障害である。一の態様では、細胞増殖性障害は、結腸の前癌または前癌症状を包含する。一の態様では、結腸の細胞増殖性障害は、結腸の非癌性細胞増殖性障害を包含する。別の態様では、細胞増殖性障害は、原発腫瘍部位から離れている他の組織または器官における転移病変を含む結腸癌を包含する。一の態様では、「前癌細胞」または「前癌性細胞」は、前癌または前癌症状である細胞増殖性障害が現れている細胞である。別の態様では、「癌細胞」または「癌性細胞」は、癌である細胞増殖性障害が現れている細胞である。いずれもの再現性のある測定手段が、癌細胞または前癌性細胞を同定するために使用され得る。好ましい態様では、癌細胞または前癌性細胞は、組織試料(例えば、生検試料)の組織学的分類またはグレード分けによって同定される。別の態様では、癌細胞または前癌性細胞は、適当な分子マーカーの使用によって同定される。
好ましい態様では、結腸の細胞増殖性障害は結腸癌である。好ましい態様では、本発明の組成物は、結腸癌または結腸の細胞増殖性障害を治療するために使用され得る。一の態様では、結腸癌は、結腸のあらゆる形態の癌を包含する。一の態様では、治療される結腸癌としては、癌腫、肉腫、および腺癌が挙げられる。別の態様では、結腸癌としては、散発性および遺伝性結腸癌が挙げられる。別の態様では、結腸癌としては、悪性結腸腫瘍、上皮内癌、平滑筋肉腫、定型カルチノイド腫瘍、および非定型カルチノイド腫瘍が挙げられる。別の態様では、結腸癌としては、腺癌、扁平上皮細胞癌、印環細胞腺癌および腺扁平上皮細胞癌が挙げられる。別の態様では、結腸癌は、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌(HNPCC)、家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)、ガードナー症候群、ポイツ−ジェガーズ症候群、ターコット症候群および若年性ポリポーシスからなる群から選択される遺伝性症候群と関係している。別の態様では、結腸癌は、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌(HNPCC)、家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)、ガードナー症候群、ポイツ−ジェガーズ症候群、ターコット症候群および若年性ポリポーシスからなる群から選択される遺伝性症候群によって引き起こされる。
一の態様では、結腸の細胞増殖性障害は、結腸細胞を冒しているあらゆる形態の細胞増殖性障害を包含する。一の態様では、結腸の細胞増殖性障害は、結腸癌、結腸の前癌症状、結腸の腺腫様ポリープおよび結腸の経時病変(metachronous lesions)を包含する。一の態様では、結腸の細胞増殖性障害は、腺癌を包含する。一の態様では、結腸の細胞増殖性障害は、結腸の過形成、化生および異形成を特徴とする。別の態様では、個体に結腸の細胞増殖性障害が生じやすくなり得る既往結腸疾患としては、既往結腸癌が挙げられる。別の態様では、個体に結腸の細胞増殖性障害が生じやすくなり得る現在の疾患としては、クローン病および潰瘍性大腸炎が挙げられる。一の態様では、結腸の細胞増殖性障害は、p53、ras、FAPおよびDCCからなる群から選択される遺伝子における変異と関連している。別の態様では、個体は、p53、ras、FAPおよびDCCからなる群から選択される遺伝子における変異の存在のために結腸の細胞増殖性障害を発症するリスクが高い。
一の態様では、治療される結腸癌は、30歳もしくはそれ以上の年齢の対象体または30歳よりも若い対象体に生じた。一の態様では、治療される結腸癌は、50歳もしくはそれ以上の年齢の対象体または50歳よりも若い対象体に生じた。一の態様では、治療される結腸癌は、70歳もしくはそれ以上の年齢の対象体または70歳よりも若い対象体に生じた。一の態様では、治療される結腸癌は、p53、Rb、mycまたはrasにおける家族性変異または自然変異を同定するようにタイプ分けされた。一の態様では、治療される結腸癌は、MSH2、MSH6、MLH1、PMS1、PMS2、TGFBR2、BAXおよびAPCからなる群から選択される遺伝子における変異と関連している。別の態様では、治療される結腸癌は、de(1p)、del(8p)、del(8q21)、del(17p)、LOH17pおよび染色体18q対立遺伝子欠失からなる群から選択される変異と関連している。一の態様では、治療される結腸癌は、複製エラー表現型RER+を有するとタイプ分けされた。一の態様では、治療される結腸癌は、CpGアイランド・メチレーター(island methylator)表現型陽性(CIMP+)またはCpGアイランドメタレーター表現型陰性(CIMP−)であるとタイプ分けされた。一の態様では、治療される結腸癌は、CEA(癌胎児性抗原)のレベルの上昇と関連している。
一の態様では、治療される結腸癌は、結腸の限局性腫瘍を包含する。一の態様では、治療される結腸癌は、陰性の局所リンパ節生検と関連している結腸の腫瘍を包含する。一の態様では、治療される結腸癌は、陽性の局所リンパ節生検と関連している結腸の腫瘍を包含する。別の態様では、治療される結腸癌は、節性陰性状態(例えば、節陰性)または節性陽性状態(例えば、節陽性)を有するとタイプ分けされた結腸の腫瘍を包含する。別の態様では、治療される結腸癌は、体内の他の部位に転移した結腸の腫瘍を包含する。一の態様では、治療される結腸癌は、リンパ節、胃、胆管、肝臓、骨、卵巣、腹膜および脳からなる群から選択される部位に転移していると分類される。別の態様では、治療される結腸癌は、転移性、限局期、進行期、切除不能、切除可能、限局性(localized)、局所性(regional)、限局性−局所性(local-regional)、限局性進行型(locally advanced)、遠隔型、多中心性、両側性、同側性、対側性、新たに診断された、再発性、および手術不可能からなる群から選択される特徴に従って分類される。
一の態様では、治療される結腸癌は、対癌米国合同委員会(AJCC)TNM分類体系に従って段階分けされている(ここで、腫瘍(T)には、Tx、Tis、T1、T2、T3、T4のステージが割り当てられており;局所リンパ節(N)には、NX、N0、N1、N2、N2a、N2b、N3、N3a、N3b、またはN3cのステージが割り当てられており;遠隔型転移(M)には、MX、M0、またはM1のステージが割り当てられている)。別の態様では、治療される結腸癌は、対癌米国合同委員会(AJCC)分類に従ってステージ0、I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IIICおよびIVの結腸癌と段階分けされている。別の態様では、治療される結腸癌は、AJCC分類に従ってグレードGX(例えば、グレードを評価できない)、グレード1、グレード2、グレード3またはグレード4のグレードが割り当てられている。別の態様では、治療される結腸癌は、A、B、またはCのデューク・ステージングシステムに従ってグレードが割り当てられている。別の態様では、治療される結腸癌は、A、B1、B2、B3またはC1、C2、C3、またはDのアストラー−コラー(Astler-Coller)・ステージングシステムに従ってグレードが割り当てられている。
一の態様では、治療される結腸癌は、直径約2センチメートルまたはそれ以下であると測定された腫瘍を包含する。別の態様では、治療される結腸癌は、直径約2〜約5センチメートルであると測定された腫瘍を包含する。別の態様では、治療される結腸癌は、直径約2センチメートルまたはそれ以上であると測定された腫瘍を包含する。別の態様では、治療される結腸癌は、直径5センチメートル以上であると測定された腫瘍を包含する。別の態様では、治療される結腸癌は、顕微鏡像によって、高分化、中分化、低分化または未分化であると分類される。別の態様では、治療される結腸癌は、有糸分裂カウント(例えば、細胞分裂の量)または核多形性(例えば、細胞の変化)に関して顕微鏡像によって分類される。別の態様では、治療される結腸癌は、顕微鏡像によって、壊死の領域(例えば、細胞が死んでいるかまたは変性している領域)と関連していると分類される。一の態様では、治療される結腸癌は、異常核型を有する、異常な数の染色体を有する、または外観が異常である1つまたはそれ以上の染色体を有すると分類される。一の態様では、治療される結腸癌は、異数体、三倍体または四倍体であるか、または倍数性変化を有すると分類される。一の態様では、治療される結腸癌は、染色体転座、または染色体全体の欠失もしくは重複、または染色体の一部の欠失、重複もしくは増幅の領域を有すると分類される。
「乳房の細胞増殖性障害」は、乳房の細胞に関する細胞増殖性障害である。一の態様では、乳房の細胞増殖性障害は、乳房細胞を冒しているあらゆる形態の細胞増殖性障害を包含する。一の態様では、乳房の細胞増殖性障害は、乳癌、乳房の前癌または前癌症状、乳房の良性増殖または病変、および乳房の悪性増殖または病変、および乳房以外の体内の組織および器官における転移病変を包含する。別の態様では、乳房の細胞増殖性障害は、乳房の過形成、化生および異形成を包含する。
一の態様では、乳房の細胞増殖性障害は、乳房の前癌症状である。一の態様では、本発明の組成物は、乳房の前癌症状を治療するために使用され得る。一の態様では、乳房の前癌症状としては、乳房の異型過形成、非浸潤性乳管癌(DCIS)、腺管内癌、上皮内小葉癌(LCIS)、小葉腫瘍症、およびステージ0またはグレード0の乳房の増殖または病変(例えば、ステージ0またはグレード0の乳癌または上皮内癌)が挙げられる。別の態様では、乳房の前癌症状は、対癌米国合同委員会(AJCC)によって承認されたTNM分類体系に従って段階分けされている(ここで、原発腫瘍(T)には、T0またはTisのステージが割り当てられており;局所リンパ節(N)にはN0のステージが割り当てられており;遠隔型転移(M)にはM0が割り当てられている)。
好ましい態様では、乳房の細胞増殖性障害は乳癌である。好ましい態様では、本発明の組成物は、乳癌を治療するために使用され得る。一の態様では、乳癌は、乳房のあらゆる形態の癌を包含する。一の態様では、乳癌は、原発性上皮乳癌を包含する。別の態様では、乳癌としては、乳房にリンパ腫、肉腫または黒色腫のような他の腫瘍がある癌を包含する。別の態様では、乳癌としては、乳房の癌、乳房の腺管癌、乳房の小葉癌、乳房の未分化癌、乳房の葉状嚢胞肉腫、乳房の血管肉腫、および乳房の原発性リンパ腫が挙げられる。一の態様では、乳癌は、ステージI、II、IIIA、IIIB、IIICおよびIVの乳癌を包含する。一の態様では、乳房の腺管癌としては、浸潤性癌、腫瘍乳管内成分を伴う浸潤性上皮内癌、炎症性乳癌、ならびに面皰、粘液性(コロイド)、髄様、リンパ球浸潤を伴う髄様、乳頭、スキルスおよび管状からなる群から選択される組織タイプをもつ乳房の腺管癌が挙げられる。一の態様では、乳房の小葉癌としては、主要な上皮成分(predominant in situ component)を伴う浸潤性小葉癌腫、浸潤小葉癌(invasive lobular carcinoma)、および浸潤小葉癌(infiltrating lobular carcinoma)が挙げられる。一の態様では、乳癌としては、パジェット病、腺管内癌を伴うパジェット病、および浸潤腺管癌を伴うパジェット病が挙げられる。別の態様では、乳癌としては、組織的および超微細構造的異質性(例えば、混合細胞型)を有する乳房腫瘍症が挙げられる。
一の態様では、治療される乳癌は、BRCA1、BRCA2またはp53における家族性変異または自然変異を同定するようにタイプ分けされた。一の態様では、治療される乳癌は、HER2/neu遺伝子増幅を有する、HER2/neuを過剰発現する、または低レベル、中間レベルまたは高レベルのHER2/neu発現を有するとタイプ分けされた。別の態様では、治療される乳癌は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、ヒト上皮細胞成長因子受容体−2、Ki−67、CA15−3、CA 27−29、およびc−Metからなる群から選択されるマーカーに関してタイプ分けされた。一の態様では、治療される乳癌は、ER−未知、ER−高またはER−低とタイプ分けされた。別の態様では、治療される乳癌は、ER−陰性またはER−陽性とタイプ分けされた。乳癌のER−タイプ分けは、いずれもの再現性のある手段によって行われ得る。好ましい態様では、乳癌のER−タイプ分けは、Onkologie 27: 175-179(2004)に記載されているように行うことができる。一の態様では、治療される乳癌は、PR−未知、PR−高またはPR−低とタイプ分けされた。別の態様では、治療される乳癌は、PR−陰性またはPR−陽性とタイプ分けされた。別の態様では、治療される乳癌は、受容体陽性または受容体陰性とタイプ分けされた。一の態様では、治療される乳癌は、CA 15−3、またはCA 27−29、またはその両方の血中レベルの上昇と関係しているとタイプ分けされた。
「膵臓の細胞増殖性障害」は、膵臓の細胞に関する細胞増殖性障害である。一の態様では、細胞増殖性障害は、膵臓の前癌または前癌症状を包含する。一の態様では、膵臓の細胞増殖性障害は、膵臓の非癌性細胞増殖性障害を包含する。別の態様では、細胞増殖性障害は、原発腫瘍部位から離れている他の組織または器官における転移病変を含む膵癌を包含する。一の態様では、「前癌細胞」または「前癌性細胞」は、前癌または前癌症状である細胞増殖性障害が現れている細胞である。別の態様では、「癌細胞」または「癌性細胞」は、癌である細胞増殖性障害が現れている細胞である。いずれもの再現性のある測定手段が、癌細胞または前癌性細胞を同定するために使用され得る。好ましい態様では、癌細胞または前癌性細胞は、組織試料(例えば、生検試料)の組織学的分類またはグレード分けによって同定される。別の態様では、癌細胞または前癌性細胞は、適当な分子マーカーの使用によって同定される。
好ましい態様では、膵臓の細胞増殖性障害は膵癌である。好ましい態様では、本発明の組成物は、膵癌または膵臓の細胞増殖性障害を治療するために使用され得る。一の態様では、膵癌は、膵臓のあらゆる形態の癌を包含する。一の態様では、治療される膵癌としては、癌腫、肉腫および腺癌が挙げられる。別の態様では、治療される膵癌としては、散発性および遺伝性膵癌が挙げられる。別の態様では、治療される膵癌としては、導管細胞癌、腺房細胞癌、乳頭粘液性癌、印環癌、腺扁平上皮細胞癌、未分化癌、粘液性癌、巨細胞癌、小細胞癌、嚢胞腺癌、漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、未分類膵癌、および膵芽腫(pancreatoblastoma)が挙げられる。別の態様では、治療される膵癌は、混合型膵癌(例えば、管−内分泌または腺房−内分泌)を含む。一の態様では、治療される膵癌としては、導管腺癌、腺扁平上皮細胞癌、多形性巨細胞癌、粘液性腺癌、破骨細胞様巨細胞癌、粘液性嚢胞腺癌、腺房癌、未分類大細胞癌、および小細胞癌が挙げられる。
一の態様では、治療される膵臓の細胞増殖性障害は、膵臓細胞を冒しているあらゆる形態の細胞増殖性障害を包含する。一の態様では、治療される膵臓の細胞増殖性障害は、膵癌、膵臓の前癌または前癌症状、膵臓の良性増殖または病変、および膵臓の悪性増殖または病変、および膵臓以外の体内の組織および器官における転移病変を包含する。別の態様では、治療される膵臓の細胞増殖性障害は、膵臓の過形成、化生および異形成を包含する。別の態様では、治療される膵臓の細胞増殖性障害は、粘液性嚢胞腺腫、管内乳頭腫瘍、漿液性嚢胞腺腫、乳頭−嚢胞腫瘍、異形成を伴う粘液性嚢胞腫瘍、異形成を伴う管内乳頭粘液性腫瘍、および偽性乳頭固形腫瘍を包含する。一の態様では、個体に膵臓の細胞増殖性障害が生じやすくなり得る現在の疾患は、真性糖尿病または膵炎を包含する。別の態様では、個体は、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌(HNPCC)および家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)からなる群から選択される遺伝性症候群のために膵癌のような膵臓の細胞増殖性障害を発症するリスクが高い。別の態様では、個体は、MSH2、MSH6、MLH1、およびAPCからなる群から選択される遺伝子における変異のために膵癌のような膵臓の細胞増殖性障害を発症するリスクが高い。
一の態様では、治療される膵癌は、30歳もしくはそれ以上の年齢の対象体または30歳よりも若い対象体に生じた。一の態様では、治療される膵癌は、50歳もしくはそれ以上の年齢の対象体または50歳よりも若い対象体に生じた。一の態様では、治療される膵癌は、70歳もしくはそれ以上の年齢の対象体または70歳よりも若い対象体に生じた。一の態様では、治療される膵癌は、p53、Rb、mycまたはrasにおける家族性変異または自然変異を同定するようにタイプ分けされた。一の態様では、治療される膵癌は、K−Ras、p53、BRCA2、p16(CDKN2A)、MADH4(DPC4)、STK11、MSH2、MSH6、MLH1、およびAPCからなる群から選択される遺伝子における変異と関連している。一の態様では、治療される膵癌は、EGF、TGF−α、TGF−β 1−3、aFGF、およびbTGFからなる群から選択される成長因子の発現レベルの上昇と関連している。一の態様では、治療される膵癌は、CEA(癌胎児性抗原)の血中濃度の上昇と関連している。一の態様では、治療される膵癌は、腫瘍マーカー糖鎖抗原19−9(CA 19−9)の血中濃度の増加またはその細胞性発現の増加と関連している。
一の態様では、治療される膵癌は、膵臓の限局性腫瘍を包含する。一の態様では、治療される膵癌は、陰性の局所リンパ節生検と関連している膵臓の腫瘍を包含する。一の態様では、治療される膵癌は、陽性の局所リンパ節生検と関連している膵臓の腫瘍を包含する。別の態様では、治療される膵癌は、節性陰性状態(例えば、節陰性)または節性陽性状態(例えば、節陽性)を有するとタイプ分けされた膵臓の腫瘍を包含する。別の態様では、治療される膵癌は、体内の他の部位に転移した膵臓の腫瘍を包含する。一の態様では、治療される膵癌は、リンパ節、胃、胆管、肝臓、骨、卵巣、腹膜および脳からなる群から選択される部位に転移していると分類される。別の態様では、治療される膵癌は、転移性、限局期、進行期、切除不能、切除可能、限局性進行型(locally advanced)、限局性(localized)、局所性(regional)、限局性−局所性(local-regional)、限局性進行型(locally advanced)、遠隔型、多中心性、両側性、同側性、対側性、新たに診断された、再発性、および手術不可能からなる群から選択される特徴に従って分類される。
一の態様では、治療される膵癌は、対癌米国合同委員会(AJCC)TNM分類体系に従って段階分けされている(ここで、腫瘍(T)には、Tx、T1、T2、T3、T4のステージが割り当てられおり;局所リンパ節(N)には、NX、N0、N1のステージが割り当てられており;遠隔型転移(M)には、MX、M0、またはM1のステージが割り当てられている)。別の態様では、治療される膵癌は、対癌米国合同委員会(AJCC)分類に従ってステージ0、I、IA、IB、II、IIA、IIB、III、およびIVの膵癌と段階分けされている。別の態様では、治療される膵癌は、AJCC分類に従ってグレードGX(例えば、グレードを評価できない)、グレード1、グレード2、グレード3またはグレード4のグレードが割り当てられている。
一の態様では、治療される膵癌は、直径約2センチメートルまたはそれ以下であると測定された腫瘍を包含する。別の態様では、治療される膵癌は、直径約2〜約5センチメートルであると測定された腫瘍を包含する。別の態様では、治療される膵癌は、直径約2センチメートルまたはそれ以上であると測定された腫瘍を包含する。別の態様では、治療される膵癌は、直径5センチメートル以上であると測定された腫瘍を包含する。別の態様では、治療される膵癌は、顕微鏡像によって、高分化、中分化、低分化または未分化であると分類される。別の態様では、治療される膵癌は、有糸分裂カウント(例えば、細胞分裂の量)または核多形性(例えば、細胞の変化)に関して顕微鏡像によって分類される。別の態様では、治療される膵癌は、顕微鏡像によって、壊死の領域(例えば、細胞が死んでいるかまたは変性している領域)と関連していると分類される。一の態様では、治療される膵癌は、異常核型を有する、異常な数の染色体を有する、または外観が異常である1つまたはそれ以上の染色体を有すると分類される。一の態様では、治療される膵癌は、異数体、三倍体または四倍体であるか、または倍数性変化を有すると分類される。一の態様では、治療される膵癌は、染色体転座、または染色体全体の欠失もしくは重複、または染色体の一部の欠失、重複もしくは増幅の領域を有すると分類される。
「前立腺の細胞増殖性障害」は、前立腺の細胞に関する細胞増殖性障害である。一の態様では、前立腺の細胞増殖性障害は、前立腺細胞を冒しているあらゆる形態の細胞増殖性障害を包含する。一の態様では、前立腺の細胞増殖性障害は、前立腺癌、前立腺の前癌もしくは前癌症状、前立腺の良性増殖または病変、および前立腺の悪性増殖または病変、および前立腺以外の体内の組織および器官における転移病変を包含する。別の態様では、前立腺の細胞増殖性障害は、前立腺の過形成、化生および異形成を包含する。
「皮膚の細胞増殖性障害」は、皮膚の細胞に関する細胞増殖性障害である。一の態様では、皮膚の細胞増殖性障害は、皮膚細胞を冒しているあらゆる形態の細胞増殖性障害を包含する。一の態様では、皮膚の細胞増殖性障害は、皮膚の前癌または前癌症状、皮膚の良性増殖または病変、黒色腫、悪性黒色腫および皮膚の他の悪性増殖または病変、および皮膚以外の体内の組織および器官における転移病変を包含する。別の態様では、皮膚の細胞増殖性障害は、皮膚の過形成、化生および異形成を包含する。
「卵巣の細胞増殖性障害」は、卵巣の細胞に関する細胞増殖性障害である。一の態様では、卵巣の細胞増殖性障害は、卵巣の細胞を冒しているあらゆる形態の細胞増殖性障害を包含する。一の態様では、卵巣の細胞増殖性障害は、卵巣の前癌または前癌症状、卵巣の良性増殖または病変、卵巣癌、卵巣の悪性増殖または病変、および卵巣以外の体内の組織および器官における転移病変を包含する。別の態様では、皮膚の細胞増殖性障害は、卵巣の過形成、化生および異形成を包含する。
一の態様では、治療される癌は、対癌米国合同委員会(AJCC)TNM分類体系に従って段階分けされている(ここで、腫瘍(T)には、TX、T1、T1mic、Tis、T1a、T1b、T1c、T2、T3、T4、T4a、T4b、T4c、またはT4dのステージが割り当てられており;局所リンパ節(N)には、NX、N0、N1、N2、N2a、N2b、N3、N3a、N3b、またはN3cのステージが割り当てられており;遠隔型転移(M)には、MX、M0、またはM1のステージが割り当てられている)。別の態様では、治療される癌は、対癌米国合同委員会(AJCC)分類に従ってステージI、ステージII、ステージIIA、ステージIIB、ステージIII、ステージIIIA、ステージIIIB、ステージIIIC、またはステージIVと段階分けされている。別の態様では、治療される癌は、AJCC分類に従ってグレードGX(例えば、グレードを評価できない)、グレード1、グレード2、グレード3またはグレード4のグレードが割り当てられている。別の態様では、治療される癌には、pNX、pN0、PN0(I−)、PN0(I+)、PN0(mol−)、PN0(mol+)、PN1、PN1(mi)、PN1a、PN1b、PN1c、pN2、pN2a、pN2b、pN3、pN3a、pN3b、またはpN3cのAJCC病理学的分類(pN)に従って段階分けされている。
一の態様では、治療される癌は、直径約2センチメートルまたはそれ以下であると測定された腫瘍を包含する。別の態様では、治療される癌は、直径約2〜約5センチメートルであると測定された腫瘍を包含する。別の態様では、治療される癌は、直径約3センチメートルまたはそれ以上であると測定された腫瘍を包含する。別の態様では、治療される癌は、直径5センチメートル以上であると測定された腫瘍を包含する。別の態様では、治療される癌は、顕微鏡像によって、高分化、中分化、低分化または未分化であると分類される。別の態様では、治療される癌は、有糸分裂カウント(例えば、細胞分裂の量)または核多形性(例えば、細胞の変化)に関して顕微鏡像によって分類される。別の態様では、治療される癌は、顕微鏡像によって、壊死の領域(例えば、細胞が死んでいるかまたは変性している領域)と関連していると分類される。一の態様では、治療される癌は、異常核型を有する、異常な数の染色体を有する、または外観が異常である1つまたはそれ以上の染色体を有すると分類される。一の態様では、治療される癌は、異数体、三倍体または四倍体であるか、または倍数性変化を有すると分類される。一の態様では、治療される癌は、 染色体転座、または染色体全体の欠失もしくは重複、または染色体の一部の欠失、重複もしくは増幅の領域を有すると分類される。
一の態様では、治療される癌は、DNAサイトメトリー、フローサイトメトリーまたはイメージサイトメトリーによって評価される。一の態様では、治療される癌は、細胞分裂の合成期にある(例えば、細胞分裂のS期にある)細胞を10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%有するとタイプ分けされている。一の態様では、治療される癌は、低S期分画または高S期分画を有するとタイプ分けされている。
本明細書で用いる場合、「正常細胞」は、「細胞増殖性障害」の一部であると分類することができない細胞である。一の態様では、正常細胞は、望ましくない症状または疾患の発症を引き起こす可能性がある未制御増殖もしくは異常増殖がないかまたはそのどちらの増殖もない。好ましくは、正常細胞は、正常に機能する細胞周期チェックポイント制御メカニズムを有する。
本明細書で用いる場合、「細胞を接触させること」とは、化合物または他の物質合成物が細胞と直接接触しているか、または、細胞中にて所望の生物学的効果を誘発するのに十分に接近している状態をいう。
本明細書で用いる場合、「治療」とは、疾患、症状または障害と闘うことを目的とする患者の管理およびケアをいい、症状もしくは合併症の発症の予防、症状もしくは合併症の軽減、または疾患、症状もしくは障害の除去のための本発明の組み合わせの投与を含む。
一の態様では、本発明の癌の治療は、癌性細胞の数の減少をもたらす。好ましくは、治療後、癌性細胞の数は、治療前の数と比べて5%またはそれ以上減少し;より好ましくは、癌性細胞の数は、10%またはそれ以上減少し;より好ましくは、20%またはそれ以上減少し;より好ましくは、30%またはそれ以上減少し;より好ましくは、40%またはそれ以上減少し;さらにより好ましくは、50%またはそれ以上減少し;最も好ましくは、75%以上減少する。癌性細胞の数は、いずれもの再現性のある測定手段によって測定され得る。好ましい態様では、癌性細胞の数は、特定の倍率で癌性細胞をカウントすることによって測定され得る。好ましい態様では、特定の倍率は、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、または50倍である。別の態様では、癌性細胞の数は、蛍光活性化細胞分取(FACS)によって測定される。別の態様では、癌性細胞の数は、免疫蛍光顕微鏡法によって測定される。
一の態様では、本発明の癌の治療は、腫瘍の大きさの縮小をもたらす。腫瘍の大きさの縮小はまた、「腫瘍退縮」ということもできる。好ましくは、治療後、腫瘍の大きさは、治療前のその大きさと比べて5%またはそれ以上縮小し;より好ましくは、腫瘍の大きさは、10%またはそれ以上縮小し;より好ましくは、20%またはそれ以上縮小し;より好ましくは、30%またはそれ以上縮小し;より好ましくは、40%またはそれ以上縮小し;さらにより好ましくは、50%またはそれ以上縮小し;最も好ましくは、75%またはそれ以上縮小する。腫瘍の大きさは、いずれもの再現性のある測定手段によって測定され得る。好ましい態様では、腫瘍の大きさは、腫瘍の直径として測定され得る。
別の態様では、本発明の癌の治療は、腫瘍容積の減少をもたらす。好ましくは、治療後、腫瘍容積は、治療前のその大きさと比べて5%またはそれ以上減少し;より好ましくは、腫瘍容積は、10%またはそれ以上減少し;より好ましくは、20%またはそれ以上減少し;より好ましくは、30%またはそれ以上減少し;より好ましくは、40%またはそれ以上減少し;さらにより好ましくは、50%またはそれ以上減少し;最も好ましくは、75%またはそれ以上減少する。腫瘍容積は、いずれもの再現性のある測定手段によって測定され得る。
別の態様では、本発明の癌の治療は、腫瘍の数の減少をもたらす。好ましくは、治療後、腫瘍の数は、治療前の数と比べて5%またはそれ以上減少し;より好ましくは、腫瘍の数は、10%またはそれ以上減少し;より好ましくは、20%またはそれ以上減少し;より好ましくは、30%またはそれ以上減少し;より好ましくは、40%またはそれ以上減少し;さらにより好ましくは、50%またはそれ以上減少し;最も好ましくは、75%以上減少する。腫瘍の数は、いずれもの再現性のある測定手段によって測定され得る。好ましい態様では、腫瘍の数は、肉眼でまたは特定の倍率で見ることができる腫瘍をカウントすることによって測定され得る。好ましい態様では、特定の倍率は、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍または50倍である。
別の態様では、本発明の癌の治療は、原発腫瘍部位から離れている他の組織または器官における転移病変の数の減少をもたらす。好ましくは、治療後、転移病変の数は、治療前の数と比べて5%またはそれ以上減少し;より好ましくは、転移病変の数は、10%またはそれ以上減少し;より好ましくは、20%またはそれ以上減少し;より好ましくは、30%またはそれ以上減少し;より好ましくは、40%またはそれ以上減少し;さらにより好ましくは、50%またはそれ以上減少し;最も好ましくは、75%以上減少する。転移病変の数は、いずれもの再現性のある測定手段によって測定され得る。好ましい態様では、転移病変の数は、肉眼でまたは特定の倍率で見ることができる転移病変をカウントすることによって測定され得る。好ましい態様では、特定の倍率は、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍または50倍である。
別の態様では、本発明の癌の治療は、治療対象体の集団の平均生存期間を、担体だけを投与されている集団と比べて延長させる。好ましくは、平均生存期間は、30日以上;より好ましくは、60日以上;より好ましくは、90日以上;最も好ましくは、120日以上延びる。集団の平均生存期間の延長は、いずれもの再現性のある手段によって測定され得る。好ましい態様では、集団の平均生存期間の延長は、例えば、活性化合物での治療開始後の平均の生存の長さを集団について算出することによって測定することができる。別の好ましい態様では、集団の平均生存期間の延長はまた、例えば、活性化合物での1回目の治療の完了後の平均の生存の長さを集団について算出することによって測定することができる。
別の態様では、本発明の癌の治療は、治療対象体の集団の平均生存期間を未治療対象体の集団と比べて延長させる。好ましくは、平均生存期間は、30日以上;より好ましくは、60日以上;より好ましくは、90日以上;最も好ましくは、120日以上延びる。集団の平均生存期間の延長は、いずれもの再現性のある手段によって測定され得る。好ましい態様では、集団の平均生存期間の延長は、例えば、活性化合物での治療開始後の平均の生存の長さを集団について算出することによって測定することができる。別の好ましい態様では、集団の平均生存期間の延長は、例えば、活性化合物での1回目の治療の完了後の平均の生存の長さを集団について算出することによって測定することができる。
別の態様では、本発明の癌の治療は、治療対象体の集団の平均生存期間を、本発明の化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体ではない薬物の単独療法を受けている集団と比べて延長させる。好ましくは、平均生存期間は、30日以上;より好ましくは、60日以上;より好ましくは、90日以上;最も好ましくは、120日以上延びる。集団の平均生存期間の延長は、いずれもの再現性のある手段によって測定され得る。好ましい態様では、集団の平均生存期間の延長は、例えば、活性化合物での治療開始後の平均の生存の長さを集団について算出することによって測定することができる。別の好ましい態様では、集団の平均生存期間の延長はまた、例えば、活性化合物での1回目の治療の完了後の平均の生存の長さを集団について算出することによって測定することができる。
別の態様では、本発明の癌の治療は、治療対象体の集団の死亡率を、担体だけを投与されている集団と比べて低下させる。別の態様では、癌の治療は、治療対象体の集団の死亡率を未治療集団と比べて低下させる。さらなる態様では、癌の治療は、治療対象体の集団の死亡率を、本発明の化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体ではない薬物での単独療法を受けている集団と比べて低下させる。好ましくは、死亡率は、2%以上;より好ましくは、5%以上;より好ましくは、10%以上;最も好ましくは、25%以上低下する。好ましい態様では、治療対象体の集団の死亡率の低下は、いずれもの再現性のある手段によって測定され得る。別の好ましい態様では、集団の死亡率の低下は、例えば、活性化合物での治療開始後の単位時間当たりの平均疾患関連死亡数を集団について算出することによって測定することができる。別の好ましい態様では、集団の死亡率の低下はまた、例えば、活性化合物での1回目の治療の完了後の単位時間当たりの平均疾患関連死亡数を集団について算出することによって測定することができる。
別の態様では、本発明の癌の治療は、腫瘍増殖率の低下をもたらす。好ましくは、治療後、腫瘍増殖率は、治療前の数と比べて少なくとも5%低下し;より好ましくは、腫瘍増殖率は、少なくとも10%低下し;より好ましくは、少なくとも20%低下し;より好ましくは、少なくとも30%低下し;より好ましくは、少なくとも40%低下し;より好ましくは、少なくとも50%低下し;さらにより好ましくは、少なくとも50%低下し;最も好ましくは、少なくとも75%低下する。腫瘍増殖率は、いずれもの再現性のある測定手段によって測定され得る。好ましい態様では、腫瘍増殖率は、単位時間当たりの腫瘍の直径の変化にしたがって測定される。
別の態様では、本発明の癌の治療は、腫瘍再増殖の減少をもたらす。好ましくは、治療後、腫瘍再増殖は、5%未満であり;より好ましくは、腫瘍再増殖は、10%未満;より好ましくは、20%未満;より好ましくは、30%未満;より好ましくは、40%未満;より好ましくは、50%未満;さらにより好ましくは、50%未満;最も好ましくは、75%未満である。腫瘍再増殖は、いずれもの再現性のある測定手段によって測定され得る。好ましい態様では、腫瘍再増殖は、例えば、治療の後に起こった先の腫瘍収縮の後の腫瘍の直径の増加を測定することによって測定される。別の好ましい態様では、腫瘍再増殖の減少は、治療をやめた後に腫瘍が再発しないことによって示される。
別の態様では、癌転移の予防は、原発腫瘍部位から離れている他の組織または器官における転移病変の数の減少をもたらす。好ましくは、治療後、転移病変の数は、治療前の数と比べて5%またはそれ以上減少し;より好ましくは、転移病変の数は、10%またはそれ以上減少し;より好ましくは、20%またはそれ以上減少し;より好ましくは、30%またはそれ以上減少し;より好ましくは、40%またはそれ以上減少し;さらにより好ましくは、50%またはそれ以上減少し;最も好ましくは、75%以上減少する。転移病変の数は、いずれもの再現性のある測定手段によって測定され得る。好ましい態様では、転移病変の数は、肉眼でまたは特定の倍率で見ることができる転移病変をカウントすることによって測定され得る。好ましい態様では、特定の倍率は、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍または50倍である。
別の態様では、本発明の細胞増殖性障害の治療または予防は、細胞増殖率の低下をもたらす。好ましくは、治療後、細胞増殖率は、少なくとも5%;より好ましくは、少なくとも10%;より好ましくは、少なくとも20%;より好ましくは、少なくとも30%;より好ましくは、少なくとも40%;より好ましくは、少なくとも50%;さらに好ましくは、少なくとも50%;最も好ましくは、少なくとも75%低下する。細胞増殖率は、いずれもの再現性のある測定手段によって測定され得る。好ましい態様では、細胞増殖率は、例えば、単位時間当たりの組織試料中の分裂細胞の数を測定することによって測定される。
別の態様では、本発明の細胞増殖性障害の治療または予防は、増殖細胞の割合の減少をもたらす。好ましくは、治療後、増殖細胞の割合は、少なくとも5%;より好ましくは、少なくとも10%;より好ましくは、少なくとも20%;より好ましくは、少なくとも30%;より好ましくは、少なくとも40%;より好ましくは、少なくとも50%;さらにより好ましくは、少なくとも50%;最も好ましくは、少なくとも75%減少する。増殖細胞の割合は、いずれもの再現性のある測定手段によって測定され得る。好ましい態様では、増殖細胞の割合は、例えば、組織試料中の非分裂細胞の数に対する分裂細胞の数の割合を定量化することによって測定される。別の好ましい態様では、増殖細胞の割合は、分裂指数に相当する。
別の態様では、本発明の細胞増殖性障害の治療または予防は、細胞増殖の領域または帯域の大きさの減少をもたらす。好ましくは、治療後、細胞増殖の領域または帯域の大きさは、治療前のその大きさと比べて少なくとも5%減少し;より好ましくは、少なくとも10%減少し;より好ましくは、少なくとも20%減少し;より好ましくは、少なくとも30%減少し;より好ましくは、少なくとも40%減少し;より好ましくは、少なくとも50%減少し;さらにより好ましくは、少なくとも50%減少し;最も好ましくは、少なくとも75%減少する。細胞増殖の領域または帯域の大きさは、いずれもの再現性のある測定手段によって測定され得る。好ましい態様では、細胞増殖の領域または帯域の大きさは、細胞増殖の領域または帯域の直径または幅として測定され得る。
別の態様では、本発明の細胞増殖性障害の治療または予防は、異常な外観または形態を有する細胞の数または割合の減少をもたらす。好ましくは、治療後、異常な形態を有する細胞の数は、治療前のその大きさと比べて少なくとも5%減少し;より好ましくは、少なくとも10%減少し;より好ましくは、少なくとも20%減少し;より好ましくは、少なくとも30%減少し;より好ましくは、少なくとも40%減少し;より好ましくは、少なくとも50%減少し;さらにより好ましくは、少なくとも50%減少し;最も好ましくは、少なくとも75%減少する。異常な細胞外観または形態は、いずれもの再現性のある測定手段によって測定され得る。一の態様では、異常な細胞形態は、例えば倒立組織培養顕微鏡を使用して、顕微鏡法によって測定される。一の態様では、異常な細胞形態は、核多型の形態をとる。
一の態様では、活性化とは、物質合成物(例えば、タンパク質または核酸)を、所望の生物学的機能を果たすのに適当な状態に置くことをいう。一の態様では、活性化され得る物質合成物はまた、活性化されていない状態である。一の態様では、活性化された物質合成物は、阻害性または刺激性の生物学的機能またはその両方をもち得る。
一の態様では、上昇とは、物質合成物(例えば、タンパク質または核酸)の所望の生物学的活性の増大をいう。一の態様では、上昇は、物質合成物の濃度の増加を介して起こり得る。
本明細書で用いる場合、「選択的に」なる用語は、一の集団における方が別の集団におけるよりも高い頻度で生じる傾向にあることを意味する。一の態様では、比較される集団は細胞集団である。好ましい態様では、本発明の化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体は、癌または前癌性細胞に対して選択的に作用するが、正常細胞に対しては作用しない。別の好ましい態様では、本発明の化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体は、一の分子標的(例えば、E2F−1)を調節するように選択的に作用するが、別の分子標的(例えば、プロテインキナーゼC)を有意には調節しない。別の好ましい態様では、本発明は、キナーゼのような酵素の活性を選択的に阻害する方法を提供する。好ましくは、ある事象が集団Aにおいて集団Bと比べて2倍以上の頻度で生じる場合には、その事象は集団Aにおいて集団Bと比べて選択的に生じている。より好ましくは、ある事象が集団Aにおいて5倍以上の頻度で生じる場合には、その事象は選択的に生じている。より好ましくは、ある事象が集団Aにおいて集団Bと比べて10倍以上、より好ましくは50倍以上、さらにより好ましくは100倍以上、最も好ましくは1000倍以上の頻度で生じる場合には、その事象は選択的に生じている。例えば、細胞死が癌細胞において正常細胞と比べて2倍以上の高い頻度で生じる場合には、その細胞死は癌細胞において選択的に生じると言われる。
好ましい態様では、本発明の化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体は、分子標的(例えば、E2F−1)の活性を調節する。一の態様では、調節することとは、分子標的の活性を刺激または阻害することをいう。好ましくは、本発明の化合物が分子標的の活性を、該化合物の存在だけを欠いている以外は同一の条件下での分子標的の活性と比べて少なくとも10%刺激または阻害する場合には、この本発明の化合物は分子標的の活性を調節している。より好ましくは、本発明の化合物が分子標的の活性を、該化合物の存在だけを欠いている以外は同一の条件下における分子標的の活性と比べて少なくとも25%、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍刺激または阻害する場合には、この本発明の化合物は分子標的の活性を調節している。分子標的の活性は、いずれもの再現性のある手段によって測定され得る。分子標的の活性は、インビトロまたはインビボで測定され得る。例えば、分子標的の活性は、酵素活性アッセイまたはDNA結合アッセイによってインビトロで測定することができるか、または、分子標的の活性は、レポーター遺伝子の発現についてアッセイすることによってインビボで測定することができる。
一の態様では、本発明の化合物の添加が分子標的の活性を、該化合物の存在だけを欠いている以外は同一の条件下での分子標的の活性と比べて10%未満しか刺激または阻害しない場合、本発明の化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体は分子標的の活性を有意には調節していない。
本明細書で用いる場合、「イソ酵素選択的」なる用語は、第2のイソ型の酵素と比べて選択的な第1のイソ型の酵素の阻害または刺激(例えば、キナーゼイソ酵素βと比べて選択的なキナーゼイソ酵素αの阻害または刺激)を意味する。好ましくは、本発明の化合物は、生物学的効果を得るのに必要とされる投与量において最低4倍差、好ましくは、10倍差、より好ましくは50倍差を示す。好ましくは、本発明の化合物は、阻害の範囲の全体にわたってこの差を示し、該差は、目的の分子標的に対するIC50、すなわち、50%阻害にて例示される。
好ましい実施態様では、必要とする細胞または対象体へのβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の投与は、E2Fファミリーの転写因子のメンバー(例えば、E2F−1、E2F−2、またはE2F−3)の活性の調節(すなわち、刺激または阻害)をもたらす。本明細書で用いる場合、E2Fファミリーの転写因子のメンバーの活性は、E2Fファミリーメンバーによって行われるいずれもの生物学的機能または活性をいう。例えば、E2F−1の機能は、E2F−1のその同族DNA配列への結合を包含する。E2F−1の他の機能は、細胞核への移動および転写の活性化を包含する。
一の態様では、癌または細胞増殖性障害の治療は細胞死を引き起こし、好ましくは、細胞死は、集団中の細胞の数の少なくとも10%の減少をもたらす。より好ましくは、細胞死は、少なくとも20%の減少;より好ましくは、少なくとも30%の減少;より好ましくは、少なくとも40%の減少;より好ましくは、少なくとも50%の減少;最も好ましくは、少なくとも75%の減少を意味する。集団中の細胞の数は、いずれもの再現性のある手段によって測定され得る。一の態様では、集団中の細胞の数は、蛍光活性化細胞分取(FACS)によって測定される。別の態様では、集団中の細胞の数は、免疫蛍光顕微鏡法によって測定される。別の態様では、集団中の細胞の数は、光学顕微鏡法によって測定される。別の態様では、細胞死を測定する方法は、Li et al., (2003) Proc Natl Acad Sci USA. 100(5): 2674-8に示されるとおりである。一の態様では、細胞死はアポトーシスによって生じる。
好ましい態様では、発明の化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の有効量は、正常細胞に対して有意には細胞毒性でない。化合物の治療上有効量は、該化合物の治療上有効量での投与が10%を超える正常細胞において細胞死を誘発しない場合には正常細胞に対して有意には細胞毒性でない。化合物の治療上有効量は、該化合物の治療上有効量での投与が10%を超える正常細胞において細胞死を誘発しない場合には正常細胞の生存率に有意に影響を及ぼさない。一の態様では、細胞死はアポトーシスによって生じる。
一の態様では、細胞の、本発明の組み合わせまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体との接触は、癌細胞において選択的に細胞死を誘発または活性化する。好ましくは、必要とする対象体への本発明の組み合わせまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の投与は、癌細胞において選択的に細胞死を誘発または活性化する。別の態様では、細胞の、本発明の組み合わせまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体との接触は、細胞増殖性障害に冒されている1つまたはそれ以上の細胞において選択的に細胞死を誘発する。好ましくは、必要とする対象体への本発明の組み合わせまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の投与は、細胞増殖性障害に冒されている1つまたはそれ以上の細胞において選択的に細胞死を誘発する。好ましい態様では、本発明は、必要とする対象体に本発明の組み合わせまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を投与することによる癌の治療または予防方法であって、本発明の組み合わせまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の投与が以下のことの1つまたはそれ以上を引き起こす、方法に関する:細胞周期のG1および/またはS期における細胞の蓄積、正常細胞における有意な量の細胞死を伴わない癌細胞における細胞死を介する細胞毒性、少なくとも2の治療指数をもつ動物における抗腫瘍活性、および細胞周期チェックポイントの活性化。本明細書で用いる場合、「治療指数」とは、最大耐性量を有効投与量で割ったものである。
一の態様では、β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体によるチェックポイント分子の予定外発現の刺激は、癌および前癌細胞の特徴である、欠陥のあるチェックポイントを有する細胞における細胞死を引き起こす。一の態様では、細胞のβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体との接触は、チェックポイント分子E2Fの予定外発現を刺激する。
一の態様では、細胞のβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体との接触は、E2Fチェックポイント経路の活性化を引き起こす。好ましくは、必要とする対象体へのβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体の投与は、E2Fチェックポイント経路の活性化を引き起こす。好ましい態様では、E2F経路活性は、10%以上;25%以上;50%以上;2倍以上;5倍以上;最も好ましくは、10倍以上増大する。好ましい態様では、E2F活性は、10%以上;25%以上;50%以上;2倍以上;5倍以上;最も好ましくは、10倍以上増大する。E2F活性の誘発およびE2Fレベルの上昇を測定する方法は、Li et al., (2003) Proc Natl Acad Sci U S A. 100(5): 2674-8に示されるとおりである。
一の態様では、細胞のβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体との接触は、E2F転写因子の上昇を引き起こす。好ましくは、必要とする対象体へのβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体の投与は、E2F転写因子の上昇を引き起こす。
一の態様では、細胞のβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体との接触は、癌細胞において選択的にE2F転写因子の上昇を引き起こすが、正常細胞においては引き起こさない。好ましくは、必要とする対象体へのβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体の投与は、癌細胞において選択的にE2F転写因子の上昇を引き起こすが、正常細胞においては引き起こさない。
一の態様では、細胞のβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体との接触は、E2F転写因子の予定外活性化を刺激する。好ましくは、必要とする対象体へのβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体の投与は、E2F転写因子の予定外活性化を刺激する。
一の態様では、細胞のβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体との接触は、癌細胞において選択的にE2F転写因子の予定外活性化を刺激するが、正常細胞においては刺激しない。好ましくは、必要とする対象体へのβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体の投与は、癌細胞において選択的にE2F転写因子の予定外活性化を刺激するが、正常細胞においては刺激しない。
無傷の調節メカニズムを有する正常細胞においては、チェックポイント分子の強制発現(例えば、細胞をβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体と接触させることによって誘発される)は、実質的に重要であることが報告されていない発現パターンを引き起こす。対照的に、癌および前癌細胞は、欠陥のあるメカニズムを有しており、その結果、予定外チェックポイント分子(例えば、E2F)の抑制のない発現または持続性発現またはその両方を引き起こし、癌および前癌細胞における選択的細胞死をもたらす。本発明は、β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体の投与による予定外チェックポイント分子の抑制のない発現または持続性発現またはその両方を包含し、提供する。
一の態様では、細胞のβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体との接触は、1つまたはそれ以上の細胞周期チェックポイントの活性化を引き起こす。好ましくは、必要とする対象体へのβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体の投与は、1つまたはそれ以上の細胞周期チェックポイントの活性化を引き起こす。
一の態様では、細胞のβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体との接触は、1つまたはそれ以上の細胞周期チェックポイント経路の活性化を引き起こす。好ましくは、必要とする対象体へのβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体の投与は、1つまたはそれ以上の細胞周期チェックポイント経路の活性化を引き起こす。
一の態様では、細胞のβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体との接触は、1つまたはそれ以上の細胞周期チェックポイント調節因子の活性化を引き起こす。好ましくは、必要とする対象体へのβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体の投与は、1つまたはそれ以上の細胞周期チェックポイント調節因子の活性化を引き起こす。
一の態様では、細胞のβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体との接触は、癌細胞において選択的に細胞死を誘発または活性化する。好ましくは、必要とする対象体へのβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体の投与は、癌細胞において選択的に細胞死を誘発または活性化する。別の態様では、細胞のβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体との接触は、細胞増殖性障害に冒されている1つまたはそれ以上の細胞において選択的に細胞死を誘発する。好ましくは、必要とする対象体へのβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、代謝物、アナログもしくは誘導体の投与は、細胞増殖性障害に冒されている1つまたはそれ以上の細胞において選択的に細胞死を誘発する。
当業者は、本明細書に記載した既知の技術または等価技術の詳細な説明のために一般的な参考書を参考にすることができる。これらの参考書としては、以下のものを挙げることができる:Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Inc. (2005);Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (3d ed.), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2000);Coligan et al., Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, N.Y.;Enna et al., Current Protocols in Pharmacology, John Wiley & Sons, N.Y.;Fingl et al., The Pharmacological Basis of Therapeutics (1975), Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA, 18th edition (1990)。これらの参考書は、もちろん、本発明の態様を行ったり使用したりする際にも参考にすることができる。
本発明の化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体は、投与に適した医薬組成物中に配合することができる。かかる組成物は、典型的には、当該化合物(すなわち、当該活性化合物を含む)および医薬上許容される賦形剤または担体を含む。本明細書で用いる場合、「医薬上許容される賦形剤」または「医薬上許容される担体」とは、医薬投与に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、ならびに等張および吸収遅延剤などを含むものである。適当な担体は、当該技術分野における標準的な参考書であるRemington's Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されている。かかる担体または希釈剤の好ましい例としては、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。医薬上許容される担体としては、ラクトース、白土、シュークロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸などのような固体担体が挙げられる。代表的な液体担体としては、シロップ、落花生油、オリーブ油および水などが挙げられる。同様に、該担体または希釈剤は、単独でまたはワックス、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはメチルメタクリレートなどと一緒に使用する、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのような当該技術分野で知られている時間遅延物質を含むことができる。他の充填剤、賦形剤、フレーバー、および当該技術分野で知られているような他の添加剤もまた本発明の医薬組成物に含むことができる。リポソーム、および固定油のような非水性ビヒクルもまた使用することができる。医薬的活性物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は当該技術分野では周知である。いずれもの慣用的な媒体または薬剤が活性化合物と適合しない場合を除いて、組成物におけるその使用が意図される。補助的な活性化合物を当該組成物中に配合することもできる。
併用療法の一部として提供される本発明の医薬組成物は、固体、半固体または液体(例えば、懸濁剤またはエアゾール剤など)としての投与剤形で存在し得る。好ましくは、当該組成物は、正確な投与量の1回投与に適した単位投与剤形で投与される。当該組成物はまた、所望の処方に依存して、動物またはヒト投与用の医薬組成物を処方するために一般的に使用される賦形剤であると定義される医薬上許容される非毒性担体または希釈剤を含んでもよい。該希釈剤は、組み合わせの生物学的活性に影響を及ぼさないように選択される。かかる希釈剤の例は、蒸留水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース液、およびハンクス液である。β−ラパコンの可溶化のための好ましい担体は、水可溶化担体分子であるヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリンである。Poloxamer、Povidone K17、Povidone K12、Tween 80、エタノール、Cremophor/エタノール、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコールおよびTrappsolのような、β−ラパコンおよび/またはS期化合物と組み合わせるための他の水可溶化剤が意図される。さらにまた、本発明は水可溶化剤に限定されず、リピオドールおよび落花生油のような油性可溶化剤を使用することもできる。
さらに、医薬組成物または処方物はまた、他の担体、アジュバント、または非毒性、非治療性および非免疫性安定剤などを含むこともできる。かかる希釈剤または担体の有効量は、成分の溶解性または生物学的活性などの点から見て医薬上許容される処方物を得るための有効な量である。リポソーム処方物もまた本発明において意図されるものであり、記載されている。例えば、米国特許第5,424,073号を参照。
本発明の目的のために、本明細書に記載されるG1/S期薬または化合物、またはその誘導体もしくはアナログ、およびS期薬または化合物、またはその誘導体もしくはアナログは、それらの医薬上許容される塩、好ましくはナトリウム;ハロゲン置換(好ましくは塩素またはフッ素)を含有するアナログ;アンモニウムまたは置換アンモニウム塩(好ましくは第2もしくは第3アンモニウム塩)を含有するアナログ;アルキル、アルケニル、アリールまたはそれらのアルキル、アルケニル、アリール、ハロ、アルコキシ、アルケニルオキシ置換誘導体(好ましくはメチル、メトキシ、エトキシ、またはフェニルアセテート)を含有するアナログ;およびナフチルアセテートのような天然アナログを包含する。また、本明細書に記載されるG1/S期化合物またはその誘導体もしくはアナログ、およびS期化合物またはその誘導体もしくはアナログは、水溶性ポリマーと結合してもよく、または水溶性キレート化剤または放射性核種で誘導体化されてもよい。水溶性ポリマーの例としては、ポリグルタミン酸ポリマー、ポリカプロラクトンとのコポリマー、ポリグリコール酸、ポリアクチン酸、ポリアクリル酸、ポリ(2−ヒドロキシエチル1−グルタミン)、カルボキシメチルデキストラン、ヒアルロン酸、ヒト血清アルブミン、ポリアルギン酸またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。水溶性キレート化剤の例としては、DIPA(ジエチレントリアミンペンタ酢酸)、EDTA、DTTP、DOTAまたはそれらの水溶性塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。放射性核種の例としては、111In、90Y、166Ho、68Gaおよび99mTcなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
β−ラパコンの水不溶性のために、医薬担体または可溶化剤は、本発明の治療方法に使用するのに十分な量のβ−ラパコンを提供できるように使用することができる。例えば、Jiang et al.の米国特許公開20030091639、およびBoothman et al.の米国特許公開20040001871を参照。この公開公報には、投与に十分なレベルのβ−ラパコンの可溶化を可能にするための、ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン(HPBCD)を包含するシクロデキストリンのような錯化剤の使用が記載されている。Boothman et al.の米国特許公開20040001871もまた参照。実施態様では、G1/S期薬またはその誘導体もしくはアナログは、Poloxamer、Povidone K17、Povidone K12、Tween 80、エタノール、Cremophor/エタノール、ポリエチレングリコール(PEG)400、プロピレングリコール、Trappsol、α−シクロデキストリンまたはその誘導体もしくはアナログ、β−シクロデキストリンまたはその誘導体もしくはアナログ、およびγ−シクロデキストリンまたはその誘導体もしくはアナログからなる群から選択される医薬上許容される水可溶化担体分子と一緒に投与される。
一の態様では、本発明の化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体は、慣用的な方法に従って本発明の化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体(活性成分として)の治療上有効量(例えば、腫瘍増殖の阻害、腫瘍細胞の死滅、細胞増殖性障害の治療または予防などを介して所望の治療効果を得るのに十分な有効レベル)を標準的な医薬担体または希釈剤と組み合わせることによって(すなわち、本発明の医薬組成物を製造することによって)調製される適当な投与剤形で投与される。これらの方法は、所望の製剤を得るために必要に応じて、成分の混合、造粒、および圧縮または溶解を含むことができる。
本発明の医薬組成物は、その意図された投与経路と適合するように処方される。投与経路の例としては、非経口投与、例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経口投与(例えば、吸入投与)、経皮投与(局所投与)、および経粘膜投与が挙げられる。上記したように静脈内投与が好ましいけれど、本発明はこれに関して限定されるものではなく、当該化合物は、当該技術分野において知られているいずれもの手段によって投与することができる。かかる仕様としては、経口投与、直腸投与、経鼻投与、局所投与(頬腔投与および舌下投与を含む)または非経口投与(皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与および皮内投与を含む)が挙げられる。投与の容易さおよび患者にとっての快適さに関しては、経口投与が一般に好ましい。しかしながら、経口投与は、静脈内投与よりも高い投与量の投与を必要とすることがある。当業者は、特定のケースにおいてどの投与剤形が最良であるかを決定することができ、必要とされる投与量と1ヶ月当たりの投与回数とのバランスをとることが必要である。
非経口、皮内または皮下用途に使用される液剤または懸濁剤は、以下の成分を含むことができる:注射用蒸留水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒のような無菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗細菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミンテトラ酢酸のようなキレート化剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩のような緩衝剤、および塩化ナトリウムまたはデキストロースのような等張性の調節のための薬剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムのような酸または塩基で調整することができる。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または複数回投与バイアルに密閉され得る。
本発明の化合物または医薬組成物は、現在化学療法に使用されている周知の方法の多くにおいて対象体に投与することができる。例えば、癌の治療については、本発明の化合物は、腫瘍に直接注射しても、血流または体腔中に注射しても、または、経口摂取させても、パッチを用いて皮膚を介して投与してもよい。用量は、有効な治療を構成するのに十分であるが、許容できない副作用を引き起こすほど高くはない量を選択すべきである。患者の病状(例えば、癌および前癌など)および患者の健康状態は、好ましくは、治療の間および治療後の相当期間、厳密にモニターされるべきである。
本明細書で用いる場合、「治療上有効量」なる用語は、同定された疾患または症状を治療、寛解または予防することができるか、または検出可能な治療効果または阻害効果を示すことができる医薬物の量をいう。該効果は、当該技術分野で知られているいずれものアッセイ方法によって検出することができる。対象体のための正確な有効量は、対象体の体重、サイズおよび健康;症状の性質および程度;および投与のために選択された治療薬または治療薬の組み合わせに依存するであろう。所定の状況についての治療上有効量は、臨床医のスキルおよび判断の範囲内である通常の実験によって決定することができる。好ましい態様では、治療される疾患または症状は癌である。別の態様では、治療される疾患または症状は細胞増殖性障害である。
いずれの化合物についても、治療上有効量は、最初は、細胞培養アッセイ(例えば、腫瘍性細胞の)、または動物モデル(通常、ラット、マウス、ウサギ、イヌまたはブタ)のいずれかで予測することができる。該動物モデルはまた、適当な投与濃度範囲または経路を決定するために使用することもできる。かかる情報は、次に、ヒトにおける投与に有用な用量および経路を決定するために使用することができる。治療的/予防的効力および毒性は、細胞培養物または実験動物における標準的な製薬方法、例えば、ED50(集団の50%において治療的に有効な用量)およびLD50(集団の50%にとって致命的な用量)によって決定することができる。治療効果と毒性効果との間の用量比は、治療指数であり、比ED50/LD50として表すことができる。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。当該用量は、使用される剤形、患者の感受性、および投与経路に応じてこの範囲内で異なってよい。
投薬および投与は、十分なレベルの活性薬剤を提供できるように、または所望の効果を維持できるように調節される。考慮することができるファクターとしては、病状の重篤度、対象体の全体的な健康、対象体の年齢、体重および性別、食生活、投与時間および投与回数、薬物組み合わせ、反応感受性、および治療に対する耐性/応答が挙げられる。長時間作用性医薬組成物は、特定の処方物の半減期およびクリアランス速度に応じて、3〜4日ごと、毎週、または2週間ごとに投与することができる。
本発明の活性化合物を含有する医薬組成物は、一般的に知られている方法で、例えば、慣用的な混合、溶解、造粒、糖衣錠調製、研和(levigating)、乳化、カプセル化、封入(entrapping)、または凍結乾燥のプロセスによって、製造され得る。医薬組成物は、活性化合物の医薬的に使用することができる製剤への調製を容易にする賦形剤および/または補助剤を含む1種類またはそれ以上の医薬上許容される担体を使用して慣用的な方法で処方することができる。もちろん、適当な処方物は、選択された投与経路に依存する。
注射用途に適した医薬組成物としては、無菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および無菌注射溶液または分散液の即時調製用の無菌粉末が挙げられる。静脈内投与について、適当な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF、ニュージャージー州パーシパニィ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、当該組成物は、無菌でなければならず、容易な注射針通過性が存在する程度に流動的であるべきである。それは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌類のような微生物の汚染作用から保護されなければならない。該担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適当な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適正な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散液の場合には所要の粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗細菌・抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸およびチメロサールなどによって行うことができる。多くの場合、当該組成物中に等張化剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを含ませるのが好ましいであろう。注射用組成物の持続的吸収は、当該組成物中に、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含ませることによってもたらすことができる。
無菌注射液剤は、適当な溶媒中の所要の量の活性化合物を上記成分の1つまたは組み合わせと配合し、必要に応じて、次に、濾過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散液剤は、基本的な分散媒および上記にて列挙されたものからの所要の他の成分を含有する無菌ビヒクルに当該活性化合物を配合することによって調製される。無菌注射液剤の調製のための無菌粉末の場合、調製方法は、予め滅菌濾過した溶液から活性成分といずれものさらなる所望の成分とを合わせた粉末が得られる真空乾燥および凍結乾燥である。
経口組成物は、一般的に、不活性希釈剤または可食性の医薬上許容される担体を含む。それらは、ゼラチンカプセルに封入したり、圧縮して錠剤にしたりすることができる。治療のための経口投与の目的のために、当該活性化合物は、賦形剤と配合することができ、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤の剤形で使用することができる。経口組成物はまた、流動担体中の化合物を口に含み、すすいで、吐き出すかまたは飲み込むマウスウォッシュとして使用するための流動担体を使用して調製することもできる。医薬的に適合する結合剤、および/または補助剤は、当該組成物の一部として含ませることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤およびトローチ剤などは、以下の成分または類似の性質をもつ化合物のいずれかを含有することができる:微結晶性セルロース、トラガカントガムまたはゼラチンのような結合剤;デンプンまたはラクトースのような賦形剤、アルギン酸、Primogelまたはコーンスターチのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはSterotesのような滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素のような流動促進剤;シュークロースまたはサッカリンのような甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジフレーバーのようなフレーバー剤。
吸入による投与のためには、当該化合物は、適当な噴射剤(例えば、二酸化炭素のようなガス)を含有する加圧容器もしくはディスペンサーまたはネブライザーからのエアゾールスプレーの剤形で送られる。
全身投与はまた、経粘膜または経皮手段によるものであり得る。経粘膜または経皮投与のためには、透過する障壁に適合した浸透剤が処方に使用される。かかる浸透剤は、当該技術分野で一般的に知られており、例えば、経粘膜投与のためには、洗浄剤(detergent)、胆汁酸、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻腔用スプレーまたは坐剤の使用を介して行うことができる。経皮投与のためには、活性化合物は、当該技術分野で一般的に知られているような軟膏剤(ointments)、軟膏剤(salves)、ゲル剤またはクリーム剤に処方される。
一の態様では、活性化合物は、植込錠およびマイクロカプセル型送達システムを包含する、制御放出製剤のような、当該化合物を身体からの急速な排除から保護する医薬上許容される担体を用いて調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸のような生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。かかる製剤の調製方法は、当業者には明らかであろう。該物質はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に入手することができる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染細胞を標的とするリポソームを包含する)はまた、医薬上許容される担体として使用することもできる。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載されるように、当業者に知られている方法に従って製造することができる。
投与の容易さおよび投薬量の均一性のために単位投与剤形の経口または非経口組成物を処方するのが特に好都合である。本明細書で用いられる単位投与剤形とは、治療される対象体のための単一の投薬量として適する物理的に個別の単位をいう;各単位は、所望の治療効果が得られるように算出された活性化合物の予め決定された量を所要の医薬担体と共に含有する。本発明の単位投与剤形に関する詳細は、活性化合物の固有の特徴およびもたらされる特定の治療効果によって決定づけられるものであり、直接それらに左右される。
治療用途においては、本発明に従って使用される医薬組成物の用量は、選択された用量に影響を及ぼす因子の中で特に、薬剤、受容患者の年齢、体重および臨床症状、ならびに治療を施す臨床医または開業医の経験および判断に応じて異なる。一般的に、投与量は、腫瘍の増殖の緩徐化および好ましくは退縮をもたらすのに十分であるべきであり、また、好ましくは癌の完全な退縮をもたらすのにも十分であるべきである。投与量は、約0.01mg/kg/日〜約3000mg/kg/日の範囲であり得る。好ましい態様では、投与量は、約1mg/kg/日〜約1000mg/kg/日の範囲であり得る。一の態様では、用量は、1回投与、分割投与または連続投与で、約0.1mg/日〜約70g/日;約0.1mg/日〜約25g/日;約0.1mg/日〜約10g/日;約0.1mg〜約3g/日;または約0.1mg〜約1g/日の範囲であろう(該用量は、患者の体重(kg)、体表面積(m2)および年齢に合わせて調整され得る)。医薬物の有効量は、臨床医または他の有資格オブザーバーが気付くような客観的に同定可能な改善をもたらすものである。例えば、患者における腫瘍の退縮は、腫瘍の直径に関して測定され得る。腫瘍の直径の減少は、退縮を示す。退縮はまた、治療をやめた後に腫瘍が再発しないことによっても示される。本明細書で用いる場合、「有効な量」なる用語は、対象体または細胞において所望の生物学的効果を生じる活性化合物の量をいう。
当該医薬組成物は、投与説明書と一緒に容器、パック、またはディスペンサー中に含ませることができる。
代謝拮抗剤のようなS期化合物は、Physician's Desk Reference, 59th Edition, Thomson PDR(2005)(「PDR」)に記載されているもののような一般に認められた効果的な用量範囲で臨床医によって適当であることが見出されたいずれもの方法で投与することができる。一般に、ゲムシタビンのようなS期薬または化合物は、約10mg/m2〜約10,000mg/m2、好ましくは、約100mg/m2〜約2000mg/m2、最も好ましくは、約500〜約1500mg/m2の投与量で静脈内投与される。一の実施態様では、S期薬は、約100mg/m2〜約2000mg/m2の投与量で静脈内投与される。一の実施態様では、S期薬は、約1000mg/m2の投与量で静脈内投与される。用量は、例えば週1回、好ましくは約1〜6週間、繰り返すことができる。用量は約30分間〜約6時間にわたって、典型的には約3時間にわたって投与するのが好ましい。
代謝拮抗剤のようなS期薬は、β−ラパコンまたはその誘導体もしくはアナログのようなG1/S期薬を用いて類似のレジメンにて投与されるであろうが、量は、好ましくは、通常投与される量から減らされるであろう。例えば、S期薬はβ−ラパコンと同時またはその後に患者に投与されるのが好ましい。S期薬がβ−ラパコンの後に投与される場合、S期薬は、好都合には、β−ラパコンが投与されてから約24時間後に投与される。
本明細書に記載される併用療法薬は、1つずつ連続して、または、両方の薬剤もしくは薬剤の1つを、免疫抑制剤、増強剤および副作用緩和剤を包含するがこれらに限定されるものではない他の治療薬と一緒に含有するカクテルまたは組み合わせにおいて、投与することができる。上記のように、治療的組み合わせは、連続投与される場合、S期薬(例えば、ゲムシタビン)の前にG1/S期薬成分(例えば、β−ラパコン)を投与する場合がより効果的であり得る。例えば、G1/S期薬成分(例えば、β−ラパコン)は、S期薬(例えば、ゲムシタビン)の投与の少なくとも1時間(より好ましくは、少なくとも2時間、4時間、8時間、12時間、または24時間)前に投与される。別の実施態様では、G1/S期薬成分(例えば、β−ラパコン)は、S期薬(例えば、ゲムシタビン)の投与の少なくとも1時間(より好ましくは、少なくとも2時間、4時間、8時間、12時間、または24時間)後に投与される。該治療薬は、好ましくは、静脈内投与、または筋肉注射、皮下注射、髄腔内注射もしくは腹腔内注射によって全身投与されるであろう。一の実施態様では、S期薬は、G1/S期薬の投与と同時または後に投与される。別の実施態様では、S期薬は、G1/S期薬の投与の後に投与される。別の実施態様では、S薬は、G1/S期薬を投与してから24時間以内に投与される。
S期薬または化合物との組み合わせに関する併用療法の他の成分は、G1/S期薬(好ましくは、β−ラパコンまたはその誘導体もしくはアナログ)である。
β−ラパコンは、様々な薬理効果を有することが示されている。β−ラパコンは、DNA損傷剤に対して細胞を感作させるDNA修復阻害剤であることが示されている(Boorstein, R.J., et al., (1984) Biochem. Biophys. Res. Commun., 118:828-834;Boothman, D.A., et al., (1989) J. Cancer Res., 49:605-612)。β−ラパコンは、一般的にイヌ、ラットおよびマウスにおいて耐容性がよい。
本発明は、対象体における癌もしくは前癌症状の治療方法または癌の予防方法であって、医薬組成物が約0.15μM〜約50μMの血漿濃度を維持し、癌もしくは前癌症状を治療するかまたは癌を予防するような、β−ラパコン、またはその誘導体もしくはアナログ、またはその医薬上許容される塩、またはその代謝物、および医薬上許容される担体を含む医薬組成物の治療上有効量を該対象体に投与することを含む方法を提供する。一の態様では、血漿濃度は、約0.1μM〜約100μM、約0.125μM〜約75μM;約0.15μM〜約50μM;約0.175μM〜約30μM;および約0.2μM〜約20μMであり得る。別の態様では、当該医薬組成物は、少なくとも1ヶ月、少なくとも1週間、少なくとも24時間、少なくとも12時間、少なくとも6時間、少なくとも1時間、適当な血漿濃度を維持することができる。さらなる態様では、当該医薬組成物の適当な血漿濃度は無制限に維持され得る。さらに別の態様では、対象体は、約0.5μM−時〜約100μM−時、約0.5μM−時〜約50μM−時、約1μM−時〜約25μM−時、約1μM−時〜約10μM−時;約1.25μM−時〜約6.75μM−時、約1.5μM−時〜約6.5μM−時のAUC(曲線下面積)範囲にて医薬組成物に曝露され得る。当該医薬組成物は、1日あたり約2mg/m2〜5000mg/m2、より好ましくは、1日あたり約20mg/m2〜2000mg/m2、より好ましくは、1日あたり約20mg/m2〜500mg/m2、最も好ましくは、1日あたり約30〜300mg/m2の投与量で投与することができる。好ましくは、ヒトについて投与される量は1日あたり2mg/m2〜5000mg/m2である。別の態様では、当該医薬組成物は、1日あたり受容者の体重1kgにつき約10〜1,000,000μg;好ましくは、1日あたり受容者の体重1kgにつき約100〜500,000μg、より好ましくは、1日あたり受容者の体重1kgにつき約1000〜250,000μg、最も好ましくは、1日あたり受容者の体重1kgにつき約10,000〜150,000μgの用量で投与することができる。当業者は、医薬組成物が投与される対象体に応じて、1日あたりのmg/m2または1日あたりの受容者の体重1kgについてのμgにて適当な用量を決定することができる。
他の化学療法薬の使用と同様に、個々の患者は、治療医が適当であると思う方法でモニターされるであろう。用量はまた、米国国立癌研究所(National Cancer Institute)の一般毒性判定基準(Common Toxicity Criteria)を使用して、重篤な好中球減少症または重篤な末梢神経障害が生じる場合、またはグレード2またはそれよりも高いレベルの粘膜炎が観察される場合には、減らすこともできる。
β−ラパコンのようなG1/S期化合物を投与する際には、かかる化合物の通常の投与量は、個々に、上記したように使用される。しかしながら、併用療法を使用する場合、低い投与量、好ましくは、個々の量の75%またはそれ以下、より好ましくは、50%またはそれ以下、さらにより好ましくは、40%またはそれ以下を使用するのが好ましい。ここで用いる場合、「有効量」なる用語は、本発明の併用投与計画においていずれかの他の活性薬剤と組み合わせて病状を治療するのに有効な量をいう。
治療用途では、本発明に従って使用される薬剤の投与量は、選択された用量に影響を及ぼす因子の中で特に、薬剤、受容患者の年齢、体重および臨床症状、ならびに治療を施す臨床医または開業医の経験および判断に応じて異なる。一般的に、投与量は、腫瘍の増殖の緩徐化および好ましくは退縮をもたらすのに十分であるべきであり、また、好ましくは癌の完全な退縮をもたらすのにも十分であるべきである。医薬物の有効量は、臨床医または他の有資格オブザーバーが気付くような客観的に同定可能な改善をもたらすものである。患者の腫瘍退縮は、典型的には、腫瘍の直径を参照して測定される。腫瘍の直径の減少は退縮を示す。退縮はまた、治療をやめた後に腫瘍が再発しないことによっても示される。好ましい実施態様では、少なくとも20%、より好ましくは、50%、80%、90%、95%または99%の腫瘍サイズまたは腫瘍組織量の減少が好ましい。
本発明はまた、一用量のG1/S期薬(例えば、上記したβ−ラパコンまたはその誘導体もしくはアナログ)および一用量のG1/S期薬(例えば、上記したβ−ラパコンまたはその誘導体もしくはアナログ)を含む組成物を包含する。該組成物は、所望により、医薬上許容される溶媒または担体を含んでよい。G1/S期薬およびS期薬は、組み合わせにおいて有効量で存在する。
一の実施態様では、本発明のキットは、a)β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量を含有する第1の容器、b)S期薬(例えば、ゲムシタビン)またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログまたは誘導体の治療上有効量を含有する第2の容器、およびc)対象体を治療するためのβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体、およびS期薬またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の使用説明書を含む。一の実施態様では、本発明のキットは、癌のような細胞増殖性障害を治療するためのβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体、およびS期薬またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の使用説明書を含む。一の実施態様では、本発明のキットはまた、β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量の1回分またはそれ以上を含む。別の実施態様では、本発明のキットはまた、S期薬またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体の治療上有効量の1回分またはそれ以上を含む。
一の実施態様では、本発明のキットは、β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体、およびS期薬またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を別々の容器中に含む。別の実施態様では、本発明のキットは、β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体、およびS期薬またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を単一の容器中に含む。別の実施態様では、本発明のキットは、β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体、およびS期薬またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を(例えば、単一の丸剤または単一の静脈製剤を介して同時投与するための)医薬上許容される担体と組み合わせて含む。
一の実施態様では、本発明のキットは、経口、静脈内、筋肉内、および注射からなる群から選択される投与経路によってβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を投与することについての説明書を含む。別の実施態様では、本発明のキットは、経口、静脈内、筋肉内、および注射からなる群から選択される投与経路によってS期薬またはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体を投与することについての説明書を含む。
別の実施態様では、本発明のキットは、一用量のG1/S期薬(例えば、上記したβ−ラパコンまたはその誘導体もしくはアナログ)および一用量のG1/S期薬(上記したβ−ラパコンまたはその誘導体もしくはアナログ)を、例えば上記した適当な用量で、含む。薬物の各用量は個々のバイアルに入れられ得る。好ましくは、該キットは、癌の治療のための薬物の併用を記載する説明書を含む。一の実施態様では、G1/S期薬またはその誘導体もしくはアナログの治療上有効量は第1のバイアルに入れられ、S期薬は第2のバイアルに入れられ、第1のバイアルおよび第2のバイアルの内容物は同時にまたは逐次的に患者に投与される。
本発明はまた、以下の実施例を参照することにより定義される。上記の詳細な説明および下記の実施例は単に説明的なものであり、本発明の範囲を限定するものであると解されるべきではないと理解される。本発明の目的および権利から逸脱せずに物質および方法の両方について多くの変更を行うことができることは当業者には明らかであろう。
実施例1.単独療法で、またはゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))と組み合わせて投与したβ−ラパコンは、ヒト膵癌異種移植マウスモデルにおいて平均腫瘍容積を非常に減少させる。
単独の、およびゲムシタビンと組み合わせたβ−ラパコンは、膵癌異種移植モデルにおいて顕著な効力を示す。雄性胸腺欠損ヌード(Ncr)マウスにヒト膵癌Panc−1細胞(2×106)を皮下接種する。腫瘍小結節(約50mm3)の樹立後、該動物を1グループあたり5匹の4つのグループに無作為に分ける。該動物を以下の4つの処理のうちの1つで腹腔内治療する:40%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストラン中のβ−ラパコン40mg/kg;ゲムシタビン(Gemzar(登録商標))120mg/kg(PBS中);β−ラパコン(40mg/kg)+ゲムシタビン(120mg/kg);またはビヒクル対照。マウスは、3日ごとに投与されて合計10回の治療を受ける(研究の5、8、11、14、17、20、31、34、37、および40日目)。併用療法グループには、各治療においてβ−ラパコンおよびゲムシタビンを同日に投与する。治療後、該動物をさらに19日間観察する。治療期間および治療後の期間の間じゅう、腫瘍を測定する。
単独の、およびゲムシタビンと組み合わせたβ−ラパコンは、膵癌異種移植モデルにおいて顕著な効力を示す。雄性胸腺欠損ヌード(Ncr)マウスにヒト膵癌Panc−1細胞(2×106)を皮下接種する。腫瘍小結節(約50mm3)の樹立後、該動物を1グループあたり5匹の4つのグループに無作為に分ける。該動物を以下の4つの処理のうちの1つで腹腔内治療する:40%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストラン中のβ−ラパコン40mg/kg;ゲムシタビン(Gemzar(登録商標))120mg/kg(PBS中);β−ラパコン(40mg/kg)+ゲムシタビン(120mg/kg);またはビヒクル対照。マウスは、3日ごとに投与されて合計10回の治療を受ける(研究の5、8、11、14、17、20、31、34、37、および40日目)。併用療法グループには、各治療においてβ−ラパコンおよびゲムシタビンを同日に投与する。治療後、該動物をさらに19日間観察する。治療期間および治療後の期間の間じゅう、腫瘍を測定する。
図1および表2に示されるように、β−ラパコン単独による治療は、治療終了時に30〜40%の腫瘍退縮を誘発した。対照的に、ビヒクル治療対照グループにおける腫瘍は、300%に増加した。β−ラパコン治療終了後に有意な再増殖はなかった。120mg/kgのゲムシタビンは、治療終了時に腫瘍サイズを30〜40%減少させた;しかしながら、ゲムシタビンで治療した動物における腫瘍は、治療終了後に400%再増殖した。併用して投与した場合、β−ラパコンおよびゲムシタビンは、形成した腫瘍のほぼ完全な退縮を誘発した。治療に関連する毒性の徴候は全く示されず、治療動物の体重は、研究終了時に対照動物のものに匹敵する。
実施例2.単独療法で、またはゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))と組み合わせて投与したβ−ラパコンは、ヒト肺癌異種移植マウスモデルにおいて平均腫瘍容積を強く減少させる。
ヒト肺癌異種移植モデルを使用してβ−ラパコンの抗腫瘍活性を試験する。すなわち、胸腺欠損雌性ヌードマウス(Ncr)に4×106個のA549ヒト肺癌細胞を皮下接種し、腫瘍を約50mm3の大きさに増殖させる。該動物を1グループあたり7匹の5つのグループに無作為に分け、以下の5つの治療法のうちの1つで3日ごとに腹腔内治療する:40%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストラン(「HPBCD」)中のβ−ラパコン40mg/kg;40%HPBCD中のβ−ラパコン60mg/kg;PBS中のゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))120mg/kg;β−ラパコン(40mg/kg)+ゲムシタビン(120mg/kg);またはビヒクル対照(40%HPBCD)。併用療法グループは、3日ごとに、同日に所定の濃度のβ−ラパコンおよびゲムシタビンでの治療を受ける。マウスは合計8回の治療を受ける。平均腫瘍容積を分析する;図2におけるデータポイントは5つの腫瘍の相加平均+/−SEMを表す。
ヒト肺癌異種移植モデルを使用してβ−ラパコンの抗腫瘍活性を試験する。すなわち、胸腺欠損雌性ヌードマウス(Ncr)に4×106個のA549ヒト肺癌細胞を皮下接種し、腫瘍を約50mm3の大きさに増殖させる。該動物を1グループあたり7匹の5つのグループに無作為に分け、以下の5つの治療法のうちの1つで3日ごとに腹腔内治療する:40%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストラン(「HPBCD」)中のβ−ラパコン40mg/kg;40%HPBCD中のβ−ラパコン60mg/kg;PBS中のゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))120mg/kg;β−ラパコン(40mg/kg)+ゲムシタビン(120mg/kg);またはビヒクル対照(40%HPBCD)。併用療法グループは、3日ごとに、同日に所定の濃度のβ−ラパコンおよびゲムシタビンでの治療を受ける。マウスは合計8回の治療を受ける。平均腫瘍容積を分析する;図2におけるデータポイントは5つの腫瘍の相加平均+/−SEMを表す。
図2に示されるように、β−ラパコン(60mg/kg)またはゲムシタビン(120mg/kg)のいずれか単独での治療は、治療の間に同程度に腫瘍増殖を遅らせた。例えば、図2の治療の24日目および27日目を参照。ゲムシタビン(120mg/kg)と組み合わせてβ−ラパコン(40mg/kg)で治療した動物は、腫瘍増殖の予想外の相乗的な遅延を示した。60mg/kgで投与したβ−ラパコンは、40mg/kgで投与したβ−ラパコンよりも腫瘍増殖の遅延に有効であることが示された。該治療計画のいずれについても有意な毒性は示されなかった。本発明者らは、この研究から、単独またはゲムシタビンと組み合わせたβ−ラパコンを肺癌の治療のために有効な投与計画で安全に投与することができると結論付ける。
Claims (80)
- 癌の治療を必要とする対象体に治療上有効量の
a)医薬上許容される担体と組み合わせたβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、および
b)医薬上許容される担体と組み合わせたS期薬またはその医薬上許容される塩
を投与すること(ここで、癌が治療される)を含む、癌の治療方法。 - S期薬が代謝拮抗剤である、請求項1記載の方法。
- S期薬がヌクレオシドアナログまたはヌクレオチドアナログである、請求項1記載の方法。
- S期薬がゲムシタビン、5−フルオロウラシル、メトトレキセート、ヒドロキシ尿素、クラドリビン、フルダラビン、シタラビン、アザシチジン、5−フルオロデオキシウリジン、メルカプトプリン、アザチオプリン、チオグアニンおよびキャパシタビンからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
- S期薬がゲムシタビンである、請求項1記載の方法。
- S期薬が5−フルオロウラシルである、請求項1記載の方法。
- S期薬がメトトレキセートである、請求項1記載の方法。
- 癌が膵癌、肺癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、慢性骨髄性白血病、黒色腫、および卵巣癌からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
- 癌が膵癌である、請求項1記載の方法。
- 癌が肺癌である、請求項1記載の方法。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体がS期薬またはその医薬上許容される塩の投与と同時に投与される、請求項1記載の方法。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体がS期薬またはその医薬上許容される塩の投与の前に投与される、請求項1記載の方法。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体がS期薬またはその医薬上許容される塩の投与の後に投与される、請求項1記載の方法。
- 膵癌の治療を必要とする対象体に治療上有効量の
a)医薬上許容される担体と組み合わせたβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、および
b)医薬上許容される担体と組み合わせたS期薬またはその医薬上許容される塩
を投与すること(ここで、膵癌が治療される)を含む、膵癌の治療方法。 - S期薬が代謝拮抗剤である、請求項14記載の方法。
- S期薬がヌクレオシドアナログまたはヌクレオチドアナログである、請求項14記載の方法。
- S期薬がゲムシタビン、5−フルオロウラシル、メトトレキセート、ヒドロキシ尿素、クラドリビン、フルダラビン、シタラビン、アザシチジン、5−フルオロデオキシウリジン、メルカプトプリン、アザチオプリン、チオグアニンおよびキャパシタビンからなる群から選択される、請求項14記載の方法。
- S期薬がゲムシタビンである、請求項14記載の方法。
- S期薬が5−フルオロウラシルである、請求項14記載の方法。
- S期薬がメトトレキセートである、請求項14記載の方法。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体がS期薬またはその医薬上許容される塩の投与と同時に投与される、請求項14記載の方法。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体がS期薬またはその医薬上許容される塩の投与の前に投与される、請求項14記載の方法。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体がS期薬またはその医薬上許容される塩の投与の後に投与される、請求項14記載の方法。
- 肺癌の治療を必要とする対象体に治療上有効量の
a)医薬上許容される担体と組み合わせたβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、および
b)医薬上許容される担体と組み合わせたS期薬またはその医薬上許容される塩
を投与すること(ここで、肺癌が治療される)を含む、肺癌の治療方法。 - S期薬が代謝拮抗剤である、請求項24記載の方法。
- S期薬がヌクレオシドアナログまたはヌクレオチドアナログである、請求項24記載の方法。
- S期薬がゲムシタビン、5−フルオロウラシル、メトトレキセート、ヒドロキシ尿素、クラドリビン、フルダラビン、シタラビン、アザシチジン、5−フルオロデオキシウリジン、メルカプトプリン、アザチオプリン、チオグアニンおよびキャパシタビンからなる群から選択される、請求項24記載の方法。
- S期薬がゲムシタビンである、請求項24記載の方法。
- S期薬が5−フルオロウラシルである、請求項24記載の方法。
- S期薬がメトトレキセートである、請求項24記載の方法。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体がS期薬またはその医薬上許容される塩の投与と同時に投与される、請求項24記載の方法。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体がS期薬またはその医薬上許容される塩の投与の前に投与される、請求項24記載の方法。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体がS期薬またはその医薬上許容される塩の投与の後に投与される、請求項24記載の方法。
- 癌の治療を必要とする対象体に治療上有効量の
a)医薬上許容される担体と組み合わせたβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、および
b)医薬上許容される担体と組み合わせたゲムシタビンまたはその医薬上許容される塩
を投与すること(ここで、癌が治療される)を含む、癌の治療方法。 - 癌が膵癌、肺癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、慢性骨髄性白血病、黒色腫、および卵巣癌からなる群から選択される、請求項34記載の方法。
- 癌が膵癌である、請求項34記載の方法。
- 癌が肺癌である、請求項34記載の方法。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩がゲムシタビンの投与と同時に投与される、請求項34記載の方法。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩がゲムシタビンの投与の前に投与される、請求項34記載の方法。
- 癌細胞を有効量の
a)β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩、および
b)S期薬またはその医薬上許容される塩
と接触させること(ここで、該接触が癌細胞における細胞死を誘発する)を含む、癌細胞における細胞死を誘発する方法。 - S期薬が代謝拮抗剤である、請求項40記載の方法。
- S期薬がヌクレオシドアナログまたはヌクレオチドアナログである、請求項40記載の方法。
- S期薬がゲムシタビン、5−フルオロウラシル、メトトレキセート、ヒドロキシ尿素、クラドリビン、フルダラビン、シタラビン、アザシチジン、5−フルオロデオキシウリジン、メルカプトプリン、アザチオプリン、チオグアニンおよびキャパシタビンからなる群から選択される、請求項40記載の方法。
- S期薬がゲムシタビンである、請求項40記載の方法。
- S期薬が5−フルオロウラシルである、請求項40記載の方法。
- S期薬がメトトレキセートである、請求項40記載の方法。
- S期薬またはその医薬上許容される塩が医薬上許容される担体と組み合わせられている、請求項40記載の方法。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩が医薬上許容される担体と組み合わせられている、請求項40記載の方法。
- 癌細胞が膵癌細胞、肺癌細胞、結腸癌細胞、乳癌細胞、前立腺癌細胞、慢性骨髄性白血病細胞、黒色腫細胞、または卵巣癌細胞である、請求項40記載の方法。
- 癌細胞が膵癌細胞である、請求項40記載の方法。
- 癌細胞が肺癌細胞である、請求項40記載の方法。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩の治療上有効量、ゲムシタビンの治療上有効量および医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
- β−ラパコンの治療上有効量、ゲムシタビンの治療上有効量および医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
- a)β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩の治療上有効量を含む第1容器、
b)S期薬またはその医薬上許容される塩の治療上有効量を含む第2容器、および
c)対象体を治療するためのβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩およびS期薬またはその医薬上許容される塩の使用説明書
を含むキット。 - さらに、β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩の治療上有効量の1回分またはそれ以上を含む、請求項54記載のキット。
- さらに、S期薬またはその医薬上許容される塩の治療上有効量の1回分またはそれ以上を含む、請求項54記載のキット。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩が経口投与される、請求項54記載のキット。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩が静脈内投与される、請求項54記載のキット。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩が注射により投与される、請求項54記載のキット。
- S期薬またはその医薬上許容される塩が経口投与される、請求項54記載のキット。
- S期薬またはその医薬上許容される塩が静脈内投与される、請求項54記載のキット。
- S期薬またはその医薬上許容される塩が注射により投与される、請求項54記載のキット。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩がS期薬またはその医薬上許容される塩の投与と同時に投与される、請求項54記載のキット。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩がS期薬またはその医薬上許容される塩の投与の前に投与される、請求項54記載のキット。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩がS期薬またはその医薬上許容される塩の投与の後に投与される、請求項54記載のキット。
- a)β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩の治療上有効量を含む第1容器、
b)ゲムシタビンの治療上有効量を含む第2容器、および
c)対象体を治療するためのβ−ラパコンまたはその医薬上許容される塩およびゲムシタビンの使用説明書
を含むキット。 - さらに、β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩の治療上有効量の1回分またはそれ以上を含む、請求項66記載のキット。
- さらに、ゲムシタビンまたはその医薬上許容される塩の治療上有効量の1回分またはそれ以上を含む、請求項66記載のキット。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩が経口投与される、請求項66記載のキット。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩が静脈内投与される、請求項66記載のキット。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩が注射により投与される、請求項66記載のキット。
- ゲムシタビンが静脈内投与される、請求項66記載のキット。
- ゲムシタビンが注射により投与される、請求項66記載のキット。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩がゲムシタビンの投与と同時に投与される、請求項66記載のキット。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩がゲムシタビンの投与の前に投与される、請求項66記載のキット。
- β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩がゲムシタビンの投与の後に投与される、請求項66記載のキット。
- a)β−ラパコンまたはその医薬上許容される塩の治療上有効量、ゲムシタビンの治療上有効量および医薬上許容される担体を含む医薬組成物を含む容器、および
b)対象体を治療するための該医薬組成物の使用説明書
を含むキット。 - さらに、該医薬組成物の1回分またはそれ以上を含む、請求項77記載のキット。
- 該医薬組成物が静脈内投与される、請求項77記載のキット。
- 該医薬組成物が注射により投与される、請求項77記載のキット。
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