JP2007509705A - タバコ使用頻度を低下させる方法および装置 - Google Patents

タバコ使用頻度を低下させる方法および装置 Download PDF

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Abstract

ニコチン使用者の角質層を穿刺するようにされ、少なくとも1つのニコチンをベースとする薬剤を有する生体適合性被膜を含む複数の微小突起を有する微小突起部材を含んでなる、ニコチン使用者にニコチンをベースとする薬剤を経皮的に送達するための装置。

Description

関連出願の相互参照
この出願は、2003年10月28日出願の米国特許暫定出願番号60/515,396の特典を主張する。
本発明は、個人のタバコ使用の習慣、特に喫煙、およびタバコ使用により生じる関連のニコチン依存を低減させるか、あるいは無くするための方法および装置に関する。
近年、タバコ喫煙の有害な影響の認識と共に、政府機関、種々の健康グループおよび他の関連組織による多数のキャンペーンおよびプログラムがタバコ喫煙からもたらされる悪い健康影響についての情報を広めてきた。更には、そしてこの有害な影響の認識の結果として、喫煙頻度の低減の試みを指向する多くのプログラムが行われた。
しかしながら、現在既知の方法によっては、喫煙頻度の低減の達成という点での成功は比較的劣悪なものであった。現状技術は行動療法アプローチと薬理学的アプロ−チの両方を伴うものである。若干の行動療法アプローチまたは薬理学的アプロ−チを使用して、喫煙頻度を単独で低減した後に喫煙を初期的にやめるタバコ喫煙者のほぼ80%以上は一般に再発し、約1年以内に以前の喫煙率の喫煙の習慣に戻る。
喫煙頻度の低減に普通に使用される一つのアプローチは、喫煙禁断症状を低減させるように設計されたニコチン含有チューイングガムに依存するものである。報告された成功率は、なお比較的低いが、これまでに使用された他の方法のそれのほぼ2倍である。味が悪いこと、歯科装置を破壊することを含む、ニコチンガムの使用に関連する多数の欠点および不利益が存在する。更なる不利益は、ニコチンガムが胃腸の不調を引き起こし、しばしばコンプライアンスを低下させるということである。
加えて、ニコチン含有ガムは、煙中のニコチンにより誘引されるのどおよび胸の独特な感覚を求める大多数の喫煙者が経験する渇望を満足させないことが判った。長年のタバコ喫煙の過程で、これらの特別な感覚は、喫煙者の習慣の重要な部分となり、そして結び付いたものとなり、そしてタバコ喫煙者の大多数にタバコの煙依存性を生じさせる。
喫煙頻度を低減させるのに、ニコチンをベースとする薬剤の受動的な経皮的送達も使用されてきた。この送達は皮膚に取り外し可能なように適用された経皮的パッチにより通常得られる。Glaxo Smith Klineにより商品名NICODERM CQ(登録商標)で市販されている系で使用される経皮的パッチがその例である。
当業界でよく知られているように、経皮的薬剤送達系は、ニコチンなどの薬剤の投与に受動的拡散に一般に依存するが、一方では積極的な経皮的薬剤送達系は薬剤の送達に電気(イオントホレシス(iontophoresis))および超音波(例えば、フォノホレシス)を含む外部エネルギー源に依存する。受動的経皮的薬物送達系がより一般的である。
受動的な経皮的薬剤送達系は、通常、高濃度の薬剤を含有する薬物リザバ(reservoir)を含む。リザバは皮膚に接触するようにされ、これによって薬剤がタバコ使用者などの個人の皮膚から、そして体内組織または血流の中へ拡散することが可能となる。
当業界でよく知られているように、経皮的薬剤流束は、皮膚の状態、薬物分子の大きさおよび物理的/化学的性質、および皮膚を横切る濃度勾配に依存する。皮膚は多くの薬剤に対して低透過性であるために、経皮的送達は限定された適用を有する。この低い透過性は、リン脂質二分子層に取り囲まれているケラチン繊維(すなわち、角質細胞)により充填された平坦な、死んだ細胞からなる最外皮膚層の角質層に主として帰せられる。リン脂質二分子層のこの高秩序構造は角質層に比較的不透過性の性格を付与する。
受動的な経皮的拡散薬剤流束を増進する一つの普通の方法は、皮膚を皮膚透過増進剤により前処理するか、あるいはこの薬剤と共に共送達することを伴う。透過増進剤は、薬剤を送達する体表面に塗布される場合、それを通る薬剤の流束を増進する。しかしながら、多くの薬剤の経皮的タンパク流束の増進におけるこれらの方法の効力は、限定されてきた。
経皮的薬剤の流束を増進する更なる方法は、積極的輸送系を使用することによるものである。述べたように、積極的輸送系は、角質層中の薬剤流束を助け、そして多くの場合増進するのに外部エネルギー源を使用する。経皮的薬剤送達用の一つのこのような増進は「電気的輸送」と呼ばれる。この機構は、電流を生じて、皮膚などの体表面からの薬剤の輸送を助ける電気ポテンシャルを使用する。
経皮的に送達される薬剤の量を増進するために、最外皮膚層を機械的に貫通あるいは崩壊させ、それによって皮膚の中への通路を作り出す多くの技術および系も開発された。スカリファイヤ(scarifiers)として知られる初期のワクチン注射器具は、皮膚に適用されて、適用の領域において引っ掻きを作るか、あるいは小さな切り傷を付ける複数の尖叉または針を一般に含む。米国特許第5,487,726号で開示されているなど皮膚上に局所的に、あるいは米国特許第4,453,926号、第4,109,655号、および第3,136,314号で開示されているなどスカリファイヤ尖叉に塗布され、濡らされた液体としてワクチンを施すものであった。
しかしながら、スカリファイヤに関連する多くの不利益および欠点が存在する。スカリファイヤを使用して薬剤を送達する場合の深刻な不利益は、経皮的薬剤流束と結果として送達される投与量を決めることが困難であることである。また、皮膚の性状が穿孔を横にそらしかつ穿孔に抵抗する弾性、変形性および反発性であることによって、小さい穿刺要素は、しばしば、皮膚に均一に貫通せずそして/あるいは皮膚貫通時に拭き取られて、薬剤の液体被膜を無くする。
加えて、皮膚の自己治癒過程により、皮膚中に作られる穿孔またはスリットは、角質層から穿刺要素を取り除いた後閉じる傾向がある。このように、皮膚の弾性的性状は、これらの要素が皮膚の中に貫通する時小さな穿刺要素に塗布された活性薬剤液体の被膜を除去するように作用する。更には、穿刺要素により形成される小さなスリットは、この器具の除去後急速にふさがり、液体薬剤溶液が穿刺要素により作られる通路を通過することを制限し、次にはこのような器具の経皮的流束を制限する。
小さな皮膚穿刺要素を使用して、経皮的薬剤送達を増進する他の系および装置は、すべて引用により本明細書に全体で組み込まれている、米国特許第5,879,326号、第3,814,097号、第5,279,54号、第5,250,023号、第3,964,482号、再発行番号25,637、およびPCT公告WO96/37155、WO96/37256、WO96/17648、WO97/03718、WO98/11937、WO98/00193、WO97/48440、WO97/48441、WO97/48442、WO98/00193、WO99/64580、WO98/28037、WO98/29298、およびWO98/29365で開示されている。
この開示された系および装置は、種々の形状および大きさの穿刺要素を使用して、皮膚の最外層(すなわち、角質層)を穿刺する。これらの参考文献で開示されている穿刺要素は、パッドまたはシートなどの薄い、平坦な部材から一般に垂直に延びている。これらの器具の一部中の穿刺要素は極めて小さく、あるものはたった約25−400ミクロンの微小突起長さおよびたった約5−50ミクロンの微小突起厚さを有する。これらの小さい穿刺/切断要素は、その中の経皮的薬剤送達を増進するために対応して小さい微小スリット/微小切断を角質層中に作る。
この開示された経皮的送達系は、薬剤を保持するリザバと、器具それ自身の中空の尖叉により角質層中に薬剤を移動させるための送達系を更に通常含む。このような器具の一つの例は、液体薬剤リザバを有するWO93/17754で開示されている。しかしながら、このリザバは、液体薬剤を小さい管状要素から皮膚の中に押し込むために加圧されなければならない。このような器具の不利益は、加圧液体リザバおよび圧力駆動送達系の存在による複雑さを追加するための更なる複雑さと出費を含む。
引用により本明細書に全部組み込まれている、米国特許出願番号10/045,842で開示されているように、送達対象の薬剤を物理的リザバ中に入れる代わりに微小突起上に被覆することも可能である。このことは、別の物理的リザバおよび特にリザバ用の薬物製剤あるいは組成物の開発の必要性を不用とする。
しかしながら、これまでのところ、タバコあるいはニコチンの使用者にニコチンをベースとする薬剤を経皮的に送達して、これらへの依存性を低下させるために、被覆された微小突起が使用されたことはない。
それゆえ、本発明の目的は、先行技術のニコチンをベースとする薬剤送達系に関連する前に挙げた欠点および不利益を実質的に低減させるか、あるいは無くする経皮的薬剤送達の装置および方法を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、タバコおよび/またはニコチン使用率を実質的に低下させるか、あるいは無くするニコチンをベースとする薬剤を送達するために、経皮的な装置および方法を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、ボーラス(bolus)送達においてニコチンをベースとする薬剤を有効な用量で送達する被覆された微小突起アレイを有する経皮的な装置を提供することである。
上記の目的と、下記に述べる目的および下記で明白となる目的によって、タバコあるいはニコチンの使用者にニコチンをベースとする薬剤を本発明により経皮的に送達するための装置は、微小突起上に配設されたニコチンをベースとする薬剤を有する生体適合性被膜を有するニコチン使用者の角質層を通って下地の表皮および真皮層に穿刺するようにされた複数の微小突起を有する微小突起部材を含んでなる。好ましくは、このニコチンをベースとする薬剤は、ニコチン塩基、ニコチン塩およびニコチン単純な誘導体からなる群から選択される。
この明細書で詳細に議論するように、皮膚の角質層を穿刺すると、薬剤含有被膜は、体液(細胞内液および間質液などの細胞外液)により溶解され、そして局所的あるいは全身
的な治療のために皮膚の中に放出される(すなわち、ボーラス送達)。このように、本発明の利点は、(i)ニコチンをベースとする薬剤の有効な経皮的ボーラス送達、(ii)ニコチンの迅速な投与または配設、および(iii)タバコをやめる試みの間必要とする場合小量のニコチンを投与することによる渇望の有効な治療を含む。本発明は、ニコチン置換治療を補助するのに使用が簡便で、容易な方法を更に提供する。
好ましくは、この微小突起の各々は、1000ミクロン未満の、更に好ましくは500ミクロン未満の長さを有する。本発明の一つの態様においては、各微小突起は250ミクロン未満の長さを有する。
生体適合性被膜の形成に使用される被覆配合物は、好ましくは少なくとも1つの湿潤剤と、場合によっては親水性ポリマーを含む。
好ましくは、この被覆配合物は、少なくとも1つの界面活性剤を含み、限定ではないが、ナトリウムラウロアンフォアセテート、(lauroamphoacetate)ナトリウムドデシルサルフェート(SDS)、セチルピリジニウムクロリド(CPC)、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(TMAC)、ベンザルコニウムクロリド、Tween20およびTween80などのポリソルベート、ソルビタンラウレートなどの他のソルビタン誘導体、およびラウレス−4(laureth−4)などのアルコキシル化アルコールを含む。最も好ましい界面活性剤はTween20、Tween80、およびSDSを含む。
この被覆配合物は、更に好ましくは、両親媒性を有する少なくとも1つのポリマー材料を含み、限定ではないが、セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)およびエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、ならびにプルロニクスを含む。
この被覆配合物は親水性ポリマーを更に含むことができる。好ましくは、この親水性ポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(n−ビニルピロリドン)、ポリエチレングリコールおよびこれらの混合物、および類似のポリマーの群から選択される。
本発明の更なる態様においては、この被覆配合物としたがってこの生体適合性被膜は血管収縮剤を含む。好ましくは、この血管収縮剤は、アミデフリン、カファミノール、シクロペンタミン、デオキシエピネフリン、エピネフリン、フェリプレシン、インダナゾリン、メチゾリン、ミドドリン、ナファゾリン、ノルデフリン、オクトドリン、オルニプレシン、オキシメタゾリン、フェニルエフリン、フェニルエタノールアミン、フェニルプロパノールアミン、プロピルヘキセドリン、プソイドエフェドリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、タウアミノヘプタン(tuaminoheptane)、チマゾリン、ヴァソプレッシンおよびキシロメタゾリンからなる群から選択される。
本発明の更なる態様においては、この被覆配合物、したがって生体適合性被膜は生体適合性キャリアを更に含むことができる。生体適合性キャリアの例は、ヒトアルブミン、生体工学処理されたヒトアルブミン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジン、ペントサンポリサルフェート、ポリアミノ酸、サッカロース、トレハロース、メレジトース、ラフィノースおよびスタキオースを含む。
この微小突起上に配設される生体適合性被膜の厚さは好ましくは50ミクロン未満であ
る。本発明の一つの態様においては、この被膜厚さは25ミクロン未満である。
この生体適合性被膜は、生物学的に有効な量のニコチンをベースとする薬剤および、使用する場合には、生物学的に有効な量の血管収縮剤を提供する。
この生体適合性被膜は、既知の被覆方法を用いてこの微小突起上に塗布および乾燥可能である。例えば、この微小突起は被膜水溶液に浸漬あるいは部分浸漬可能である。別法としては、この被膜溶液はこの微小突起上にスプレー可能である。好ましくは、このスプレーは約10−200ピコリットルの液滴大きさを有する。更に好ましくは、この液滴の大きさおよび配置は、被膜溶液がこの微小突起上に直接に堆積され、そして微小突起を有する部材の他の「非穿刺」部分上には堆積されないように印刷技術を用いて精密に制御される。
本発明の一つの態様によりニコチン使用者にニコチンをベースとする薬剤を経皮的に送達する方法は、(i)ニコチン使用者の角質層を穿刺するようになされている複数の微小突起を有する微小突起部材を準備し、(ii)少なくとも一つのニコチンをベースとする薬剤を有する被覆配合物により微小突起部材を被覆して、生体適合性被膜を形成し、そして(iii)ニコチン使用者の皮膚にこの微小突起部材を適用し、それによりこの微小突起部材がニコチン使用者の角質層を穿刺し、生体適合性被膜を、したがってその上に配設されたニコチンをベースとする薬剤を送達する段階を含んでなる。
本発明を詳細に説明する前に、本発明は特別に例示された材料、方法または構造物に限定されないということを理解すべきである。このように、この明細書中で述べたものに類似であるか、あるいは同等の多数の材料および方法が本発明の実施において使用可能であり、好ましい材料および方法がこの明細書中で述べられている。
この明細書中で使用される術語は単に本発明の特別な態様を記述する目的のものであり、限定的なものと意図されていないことも理解すべきである。
別に定義しない限り、この明細書中で使用されるすべての技術的および科学的な用語は、本発明が関係する分野における業者により共通に理解されるのと同一の意味を有する。
更には、この明細書中で引用されるすべての刊行物、特許および特許出願は、上記あるいは下記においても、引用により本明細書に全体で組み込まれている。
最後に、この明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形は内容がそうでないことを明らかに示さない限り、複数形を含む。したがって、例えば「ニコチンをベースとする薬剤」を参照することは2つ以上のこのような剤を含む;「微小突起」を参照することは2つ以上のこのような微小突起を含む。
定義
用語「生物学的に活性な薬剤」、「活性な薬剤」および「薬剤」は、この明細書で使用されるように、治療的に有効な量で投与される場合に薬理学的に有効である、下記に述べるニコチンをベースとする薬剤などの物質または薬物を含有する組成物または混合物を指す。
用語「ニコチンをベースとする薬剤」は、この明細書で使用されるように、ニコチン、ニコチンと類似の生理学的な効果を生じるありとあらゆる既知の化合物および/または組成物またはニコチンと類似の効果を生じるこれらの混合物を含むニコチンに同等なあるい
は近似する物質を意味し、そして含む。このように、用語「ニコチンをベースとする薬剤」は、限定ではないが、ニコチン塩基、ニコチン塩およびニコチン単純な誘導体を含む。
医薬的に許容し得るニコチン塩の例は、限定ではないが、アセテート、プロピオネート、ブチレート、ペンタノエート、ヘキサノエート、ヘプタノエート、レブリネート(levulinate)、クロリド、ブロミド、シトレート、スクシネート、マレエート、グリコレート、グルコネート、グルクロネート(glucuronate)、3−ヒドロキシイソブチレート、2−ヒドロキシイソブチレート、ラクテート、マレート、ピルベート、フマレート、タータレート、タルトロネート(tartronate)、ニトレート(nitrate)、ホスホネート、ベンゼンスルホネート、メタンスルホネート、サルフェート、スルホネート、サリシレートおよび塩化亜鉛などの複塩を含む。
単純なニコチン誘導体の例は、限定ではないが、アミド、カーバメート、イミン、エナミン、およびN−アシロキシアルコキシカルボニルを含む。
上記のニコチンをベースとする薬剤は、遊離の塩基、酸、帯電あるいは非帯電の分子、分子錯体の成分または非刺激性の、薬理学的に許容し得る塩など種々の形のものであることもできる。
用語「経皮的」は、この明細書で使用されるように、全身的な治療のための皮膚の中への、そして/あるいは皮膚を通しての薬剤の送達を意味する。
用語「経皮的流束」は、この明細書で使用されるように、経皮的送達の速度を意味する。
用語「共送達」は、この明細書で使用されるように、薬剤の経皮的流束の前および実質的に同時に、薬剤の経皮的流束の間、薬剤の経皮的流束の間および後、そして/あるいは薬剤の経皮的流束の後に、薬剤を送達する前に補助的な薬剤が投与されるということを意味する。加えて、2つ以上の生物学的活性剤が微小突起上に被覆されて、生物学的活性剤の共送達を生じ得る。
1つ以上のニコチンをベースとする薬剤が本発明の被覆配合物、したがって生体適合性被膜の中に組み込まれ得ること、そして用語「活性な薬剤」および/または「ニコチンをベースとする薬剤」の使用が2つ以上のこのような薬剤の使用を除外するものでないということを理解すべきである。
用語「生物学的に有効な量」または「生物学的に有効な速度」は、ニコチンをベースとする薬剤が医薬的に活性な薬剤であり、そして所望の治療的な結果、しばしば有益な結果を生じるのに必要とされる医薬的に活性な薬剤の量または速度を指す場合に使用されるものとする。本発明の被膜中で使用される治療的な活性な薬剤の量は、所望の治療的な結果を得るのに必要とされる量の活性な薬剤を送達するのに必要な量である。実際には、これは、送達対象の特定の薬理学的に活性な薬剤、送達の部位、治療されるべき状態の重篤の度合、望まれる治療効果および皮膚組織の中への溶解および薬剤の送達に対する放出動力学に依って広く変わる。
用語「ボーラス送達」は、「ある時間内での皮膚の中へのニコチンをベースとする薬剤の放出」を指す。
用語「ある時間内での皮膚の中へのニコチンをベースとする薬剤の放出」は、皮膚の中への全送達用量の大部分(例えば、50%超)がその時間で実際に送達されるということ
を意味する。この用語は、全装着時間(更に長くともよい)または微小突起上に被覆された薬剤の全量を指すものでない。
用語「生物学的に有効な量」または「生物学的に有効な速度」は、ニコチンをベースとする薬剤が免疫学的活性剤であり、そして所望の免疫学的な結果、時には有益な結果を刺激あるいは開始するのに必要とされる免疫学的活性剤の量または速度を指す場合に使用されるものとする。本発明の被膜中で使用される免疫学的活性剤の量は、所望の免疫学的結果を得るのに必要とされる量の活性な薬剤を送達するのに必要な量である。実際には、これは、送達対象の特定の免疫学的な活性な薬剤、送達の部位、および皮膚組織の中への溶解および活性な薬剤の送達に対する放出動力学に依って広く変わる。
用語「微小突起」および「微小突出」は、この明細書で使用されるように、生きている動物、特に哺乳類そして更に特にヒトの皮膚の角質層を通って下地の表皮層、または表皮および真皮層を穿刺あるいは切断するようになされている穿刺要素を指す。
本発明の一つの態様においては、この微小突起は1000ミクロン未満の突起長さを有する。更なる態様においては、この微小突起は、500ミクロン未満の、更に好ましくは250ミクロン未満の突起長さを有する。この微小突起は、通常、約5〜50ミクロンの幅および厚さを有する。この微小突起は、針、中空針、ブレード、ピン、パンチおよびこれらの組み合わせ物などの異なる形状にも形成され得る。
用語「微小突起アレイ」は、この明細書で使用されるように、角質層を穿刺するためにアレイに配列された複数の微小突起を指す。この微小突起アレイは、薄いシートから複数の微小突起をエッチングまたはパンチングし、そして微小突起をシート面から折り重ねあるいは曲げて、図1に示すものなどの構造を形成することにより成形可能である。この微小突起アレイは、また、米国特許第6,050,988号で開示されているように各々の細片の縁に沿って微小突起を有する1つ以上の細片を形成することによるなど他の既知の方法でも形成可能である。
シートまたは部材の領域を参照すること、およびシートまたは部材の領域当たりのある性質を参照することは、シートの外周または境界により規定される領域を指している。
用語「溶液」は完全に溶解した成分の組成物のみならず、ニコチンをベースとする薬剤の懸濁液も含むものとする。
本発明は、この明細書で使用されるように、個人のタバコあるいはニコチンの使用習慣、特に喫煙、ならびにこの習慣に関連するニコチン依存性を低減させるか、あるいは無くする有効な方法および装置を提供する。タバコ使用を低減させるか、あるいは無くすることは、行動療法を中断して、あるいは中断せずに行われる。このような戦略は、ニコチン置換治療の使用をタバコ使用の突然の中断から漸次的な低減まで拡大させる。ニコチンを本発明の被覆された微小突起部材などの代替源により置換しながら、喫煙されるシガレット数または使用される他のニコチン製品を徐々に低減することによって、ニコチンの渇望および禁断を低減させ、それによってタバコ使用を低減するか、あるいは無くすることを容易にする。
上記に示したように、本発明は、タバコあるいはニコチンの使用者にニコチンをベースとする薬剤を経皮的に送達するための装置および系を含んでなる。この系は、一般に、角質層を通って下地の表皮層、または表皮および真皮層の中に穿刺するようにされた複数の微小突起を含んでなる微小突起アレイを有する微小突起部材を含む。
好ましくは、この微小突起は、少なくとも1つの生物学的に活性な薬剤、更に好ましくはニコチンをベースとする薬剤を含有する被膜をその上に有する。皮膚の角質層層を穿刺すると、薬剤含有被膜が体液(細胞内液および間質液などの細胞外液)により溶解され、そして全身的な治療のために表皮の中に放出される(すなわち、ボーラス送達)。
対照的に、在来の受動的パッチにおいては、全身的な送達を達成するためには、薬剤を含有する被膜は、角質層の中に、そして角質層を通して拡散しなければならない。このように、このような系はボーラス送達を呈さない。
好ましくは、皮膚の表皮層の中へのニコチンをベースとする薬剤の放出は、微小突起アレイの適用の後1時間以内で起こる。更に好ましくは、皮膚の表皮層の中にニコチンをベースとする薬剤の放出は、微小突起アレイの適用の後15分以内で起こる。なお更に好ましくは、皮膚の表皮層の中へのニコチンをベースとする薬剤の放出は、微小突起アレイの適用の後5分以内で起こる。
本発明によれば、被膜の溶解および放出の動力学は、生物学的に活性な薬剤の性状、被覆方法、被膜厚さおよび被膜組成(例えば、被膜配合添加剤の存在)を含む多数の因子に依存する。放出動力学プロフィールに依って、被覆された微小突起を皮膚との穿刺の関係に長時間維持することが必要であり得る。このことは、引用により全体で本明細書に組み込まれている、PCT公告WO97/48440で述べられているように、接着剤を用いて微小突起部材を皮膚に係留するか、あるいは係留された微小突起を使用することにより達成可能である。
図1を参照すると、本発明により使用されるための微小突起部材5の一つの態様が示されている。図1に図示するように、微小突起部材5は複数の微小突起10を有する微小突起アレイ7を含む。微小突起10は、好ましくは開口14を含むシート12から実質的に90°の角度で延びる。
本発明によれば、シート12は、シート12に対する裏打ち材15を含む送達パッチに組み込まれ、そして加えてこのパッチを皮膚に接着するための接着剤16を含み得る(図3を参照)。この態様においては、微小突起10は、薄い金属シート12から複数の微小突起10をエッチングまたはパンチングし、そして微小突起10をシート12の面から曲げることにより形成される。
微小突起部材5は、ステンレススチール、チタン、ニッケルチタン合金などの種々の金属、またはポリマー材料などの類似の生体適合性材料から製造可能である。好ましくは、微小突起部材5はチタンから製造される。
本発明により使用可能な微小突起部材は、限定ではないが、引用により本明細書に全体で組み込まれている、米国特許第6,083,196号、第6,050,988号および第6,091,975号で開示されている部材を含む。
本発明により使用可能な他の微小突起部材は、引用により本明細書に全体で組み込まれている、米国特許第5,879,326号で開示されている部材など、シリコンチップエッチング法を用いてシリコンをエッチングすることにより、あるいはエッチングされた微小金型を用いてプラスチックを鋳型することにより形成される部材を含む。
図2を参照すると、薬剤を含有する生体適合性被膜16を含む微小突起10を有する微小突起部材5が示されている。本発明によれば、被膜16は各微小突起10を部分的あるいは完全に被覆することができる。例えば、被膜16は微小突起10上の乾燥したパター
ン被膜であり得る。被膜16は微小突起10の形成の前あるいは後でも塗布可能である。
本発明によれば、被膜16は種々の既知の方法により微小突起10に塗布可能である。好ましくは、この被膜は皮膚を穿刺する微小突起部材5または微小突起10の一部(例えば、先端18)に塗布されるのみである。
一つのこのような被覆方法はディップコーティングを含んでなる。ディップコーティングは、微小突起10を被覆溶液の中に部分的あるいは全体的に浸漬することにより微小突起を被覆する手段として記述可能である。部分浸漬法を使用することにより、被膜16を微小突起10の先端18のみに限定することが可能である。
更なる被覆方法は、被膜16を微小突起10の先端18に同様に限定するローラーコーティング機構を使用するローラーコーティングを含んでなる。このローラーコーティング法は、引用により本明細書に全体で組み込まれている、米国特許出願番号10/099,604(公告番号2002/0132054)で開示されている。
上記の出願で詳細に議論されているように、開示されているローラーコーティング法は、皮膚穿刺時に微小突起10から容易に押し退けられない平滑な被膜を提供する。微小突起の先端被覆の平滑な断面は図2Aに更に図示されている。
本発明によれば、微小突起10は、開口(図示せず)、溝(図示せず)、表面不規則性(図示せず)または類似の改変などの被膜16の容積を受けるそして/あるいは増強するようになされた手段であって、更に多量の被膜が堆積可能な増大された表面積をもたらす手段を更に含むことができる。
本発明の範囲内で使用可能な別の被覆方法はスプレーコーティングを含んでなる。本発明によれば、スプレーコーティングはこの被膜組成物のエアロゾル懸濁液の形成を網羅することができる。一つの態様においては、約10〜200ピコリットルの液滴大きさを有するエアロゾル懸濁液が微小突起10上にスプレーされ、次に乾燥される。
パターン被覆も微小突起10を被覆するのに使用可能である。このパターン被膜は、微小突起表面上に堆積された液体を位置決めするための分注系を使用して塗布可能である。堆積された液体の量は、好ましくは0.1〜20ナノリットル/微小突起の範囲にある。好適な精密計量液体分注器の例は、引用により本明細書に全体で組み込まれている、米国特許第5,916,524号;第5,743,960号;第5,741,554号;および第5,738,728号で開示されている。
微小突起被膜溶液は、既知のソレノイドバルブ分注器、随意の流体駆動手段および電場の使用によりおおむね制御される位置決め手段を用いるインキジェット技術を用いても塗布可能である。印刷業界からの他の液体分注技術または当業界で既知の類似の液体分注技術は、本発明のパターン被膜を塗布するために使用可能である。
本発明によれば、微小突起部材に塗布されて、固体被膜を形成する被膜溶液配合物は、生体適合性キャリアと少なくとも1つのニコチンをベースとする薬剤を有する水性あるいは非水性の配合物を含んでなることができる。本発明によれば、この活性な薬剤は生体適合性キャリア内に溶解可能あるいはキャリア内に懸濁可能である。
好ましくは、このニコチンをベースとする薬剤は、ニコチン塩基、ニコチン塩、およびニコチンの単純な誘導体を含んでなる。更に好ましくは、このニコチンをベースとする薬剤はニコチンの塩である。
塩基の代わりに塩を使用することに関連するいくつかの利点がある。第1に、ニコチン塩の使用は、ニコチン塩基に比較して皮膚のデポットを低減させるか、あるいは無くすると期待される。もう一つの利点は、ニコチン塩形がニコチン塩基と比較してニコチンの化学的安定性および貯蔵時の被膜の化学組成の安定性を安定させるということである。更なる利点は、ニコチン塩形がニコチン塩基の悪臭特性を低減させるか、あるいは無くすると期待される。
医薬的に許容し得るニコチン塩の例は、限定ではないが、アセテート、プロピオネート、ブチレート、ペンタノエート、ヘキサノエート、ヘプタノエート、レブリネート、クロリド、ブロミド、シトレート、スクシネート、マレエート、グリコレート グルコネート、グルクロネート、3−ヒドロキシイソブチレート、2−ヒドロキシイソブチレート、ラクテート、マレート、ピルベート、フマレート、タータレート、タルトロネート、ニトレート、ホスホネート、ベンゼンスルホネート、メタンスルホネート、サルフェート、スルホネート、サリシレートおよび塩化亜鉛などの複塩を含む。
単純なニコチン誘導体の例は、限定ではないが、アミド、イミン、エナミン及びN−アシロキシアルコキシカルボニルを含む。好ましくは、これらの誘導体は可逆性であり、体内に導入されると、ニコチンに分解されるか、あるいは代謝される。
更に好ましくは、ニコチンをベースとする薬剤は低揮発性を呈するニコチンの塩である。このタイプの塩の使用は、貯蔵時の被膜の化学組成の最適な安定性を生じると期待される。この固体被膜は、米国特許出願2002/0128599で述べられているように配合物を微小突起上で乾燥することにより得られる。多数の要素が化合物の揮発性に影響する。これらは温度、大気圧、およびこの化合物の蒸気圧を含む。蒸発過程は時間依存性である。
加えて、イオン化された化合物は、これらの非イオン化形と比較して極めて低い揮発性を呈する。例えば、酢酸は118℃の沸点を示すが、酢酸ナトリウムは本質的に非揮発性である。乾燥工程時、水を含むすべての揮発分は大部分除去される。イオン化された形と非イオン化形の間で平衡の揮発性化合物が溶液中に存在する場合には、非イオン化形のみが配合物から消滅し、乾燥工程が起こり、そしてイオン化形が溶液中に留まる。
微小突起アレイ上の固体被膜中では、活性な薬剤は、通常、単位用量当たり約2mg未満の量で存在する。賦型剤と対イオンの添加により、固体被膜の全重量は単位用量当たり4mg未満である。
この微小突起アレイは、使い捨てのポリマー性保持器環に取り付けられた接着性裏打ち材上に通常配設される。この組み立て体は、通常、パウチまたはポリマー性ハウジング中に個別にパッケージされる。この組み立て体に加えて、パッケージは少なくとも3mLの容積を持つ雰囲気(通常不活性)を含有する。この大きな容積(被膜の容積と比較して)は、いかなる揮発性成分にもシンクとして作用する。例えば、20℃においては、蒸気圧の結果として3mLの雰囲気中に存在する酢酸の量は約0.15mgである。この量は、酢酸を対イオンとして使用する場合に、固体被膜中に通常存在する量である。加えて、接着剤などの組み立て体の成分は揮発性成分の更なるシンクとして作用する公算がある。結果として、長期貯蔵時、この被膜中に存在するいかなる揮発性成分の濃度も劇的に変化する公算がある。これらの条件は大量の添加剤が通常存在する医薬化合物の包装の非典型的なものである。ニコチン塩基は若干の揮発性も呈し、そして配合物中に存在する場合には、これらの方法により同様に影響される公算がある。
低揮発性を呈するニコチン塩の選択は、ニコチンのpKaならびに酸対イオンのpKaおよび融点に基づく。当業界でよく知られているように、ニコチンは室温でそれ自体液体であり、そして若干の揮発性を呈する。ニコチン塩基の臭いは実際極めて強く、そしてこの臭い(一部揮発性分解物による)は塩形成により大きく低減される。実際、すべてではないが大部分のニコチン塩はニコチンそれ自身よりも高い融点を呈する。加えて、ニコチン塩形成が約4以上のpKaを有する酸性化合物により行われる場合には、この酸および/またはニコチンの一部は遊離していて、そして対イオンは系の成分中でゆるやかに蒸発および/あるいは移行し、結果として系の安定性は劣ったものとなる。揮発性対イオンの例は、限定ではないが、酢酸、プロピオン酸および酪酸を含む。
最も好ましい態様は、対イオンが強酸である低揮発性のニコチン塩を指向する。強酸は少なくとも1つの約2以下のpKaを呈する酸性化合物として定義される。このような酸の例は、塩酸、臭化水素酸、硝酸、スルホン酸、硫酸、マレイン酸、リン酸、ベンゼンスルホン酸およびメタンスルホン酸を含む。
もう一つの最も好ましい態様においては、この酸性対イオンは低揮発性の弱酸である。このような化合物は、少なくとも1つの約2以上のpKaと約50℃以上の融点を呈する酸性化合物として定義される。このような酸の例は、クエン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グルクロン酸、乳酸、リンゴ酸、ピルビン酸、酒石酸、タルトロン酸、フマル酸、およびサリシル酸を含む。
本発明によれば、ニコチンと対イオンは種々の化学量論的量で合体可能である。pHを制御するためには、過剰の対イオン(遊離酸としてあるいは塩として)がニコチンに添加可能である。異なる対イオンの混合物も使用可能である。
ニコチンをベースとする薬剤を含有する被覆配合物は好ましくは水性ベースである。米国特許出願2002/0128599(世界特許公告WO02/094368)で述べられているように乾燥の後、残存水は10重量%まで存在し得るが、この配合物は実質的に水を含まない。
場合によっては、ニコチンをベースとする薬剤は非水性配合物中で配合可能である。使用可能な溶媒の例は、エタノール、IPA、クロロホルム、エーテル、ペトロリウムエーテル、ケロシン、および他の揮発性溶媒を含む。配合物添加剤(湿潤剤、粘度増強剤)もこの配合物に添加可能である。乾燥後、残存溶媒は10重量%まで存在し得るが、この配合物は実質的に揮発性溶媒を含まない。
この被覆配合物中のニコチンをベースとする薬剤の濃度は、好ましくはほぼ5−80重量%の範囲に、更に好ましくはほぼ10−70重量%の範囲にある。なお更に好ましくは、この被覆配合物中のニコチンをベースとする薬剤の濃度は、被覆配合物のほぼ20−60重量%の範囲にある。
この固体被膜中のニコチンをベースとする薬剤の濃度は好ましくはほぼ99重量%までである。更に好ましくは、この固体被膜中のニコチンをベースとする薬剤の濃度は、ほぼ30−70重量%の範囲にある。
本発明によれば、本発明で使用されるニコチンをベースとする薬剤は、微小突起アレイの微小突起上に被覆される薬剤の全量がほぼ0.02−2.0mgの範囲でこの薬剤をニコチン使用者に有効に送達するのに充分であるということを必要とする。本発明によれば、10cmまでの面積と、1cm当たり2000個微小突起までの微小突起密度を有する図1に示すタイプの微小突起アレイ上にこの範囲内の量を被覆することができる。
本発明によれば、この被覆配合物は、好ましくは少なくとも1つの湿潤剤を含む。当業界でよく知られているように、湿潤剤は一般に両親媒性分子として記述可能である。この湿潤剤を含有する溶液を疎水性基材に塗布すると、この分子の疎水性基は疎水性基材に結合するが、この分子の親水性部分は水と接触したままである。結果として、この基材の疎水性表面は湿潤剤の疎水性基により被覆されず、溶媒による濡れに敏感となる。湿潤剤は界面活性剤、ならびに両親媒性を呈するポリマーを含む。
本発明の一つの態様においては、この被覆配合物は少なくとも1つの界面活性剤を含む。本発明によれば、この界面活性剤は、両性イオン性、両親媒性、カチオン性、アニオン性、あるいは非イオン性であることができる。界面活性剤の例は、ナトリウムラウロアンホアセテート、ナトリウムドデシルサルフェート(SDS)、セチルピリジニウムクロリド(CPC)、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(TMAC)、ベンザルコニウム、クロリド、Tween20およびTween80などのポリソルベート、ソルビタンラウレートなどの他のソルビタン誘導体、およびラウレス−4などのアルコキシル化アルコールを含む。最も好ましい界面活性剤はTween20、Tween80、およびSDSを含む。
本出願者らは、所望の範囲における上記の界面活性剤の使用が臨界ミセル濃度(CMC)以上で最大の濡れをもたらすということを見出した。濡れはCMCの約1桁下の低い濃度においても認め得る。
好ましくは、この界面活性剤の濃度は、被覆溶液配合物のほぼ0.001−2重量%の範囲にある。
本発明の更なる態様においては、この被覆配合物は、少なくとも1つの両親媒性を有するポリマー材料またはポリマーを含む。上記のポリマーの例は、限定ではないが、セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)またはエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)ならびにプルロニクスを含む。
本発明の一つの態様においては、両親媒性を呈するポリマーの濃度は、好ましくは被覆配合物のほぼ0.01−20重量%の範囲に、更に好ましくはほぼ0.03−10重量%の範囲にある。なお更に好ましくは、この湿潤剤の濃度は、被覆配合物のほぼ0.1−5重量%の範囲にある。
当業者ならば認識するように、上記の湿潤剤は別々あるいは組み合わせで使用可能である。
本発明によれば、この被覆配合物は親水性ポリマーを更に含むことができる。好ましくは、この親水性ポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(n−ビニルピロリドン)、ポリエチレングリコールおよびこれらの混合物と類似のポリマーから選択される。当業界でよく知られているように、上記のポリマーは粘度を増加させる。
被覆配合物中のこの親水性ポリマーの濃度は、好ましくは被覆配合物のほぼ0.01−20重量%の範囲に、更に好ましくはほぼ0.03−10重量%の範囲にある。なお更に好ましくは、この湿潤剤の濃度は被覆配合物のほぼ0.1−5重量%の範囲にある。
本発明によれば、この被覆配合物は、引用により本明細書に全体で組み込まれている同時係属の米国特許出願番号10/127、108で開示されているものなどの生体適合性キャリアを更に含むことができる。生体適合性キャリアの例は、ヒトアルブミン、生体工学処理されたヒトアルブミン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジン、ペントサンポリサルフェート、ポリアミノ酸、サッカロース、トレハロース、メレジトース、ラフィノースおよびスタキオースを含む。
この被覆配合物中のこの生体適合性キャリアの濃度は、好ましくは被覆配合物のほぼ2−70重量%の範囲に、更に好ましくはほぼ5−50重量%の範囲にある。なお更に好ましくは、この湿潤剤の濃度は被覆配合物のほぼ10−40重量%の範囲にある。
本発明の被膜は、引用により本明細書に全体で組み込まれている同時係属の米国特許出願番号10/674、626および60/514,433で開示されているものなどの血管収縮剤を更に含むことができる。上記の同時係属の特許出願に述べられているように、この血管収縮剤は微小突起部材上に塗布する間および後に出血を制御するように使用される。好ましい血管収縮剤は、限定ではないが、アミデフリン、カファミノール、シクロペンタミン、デオキシエピネフリン、エピネフリン、フェリプレシン、インダナゾリン、メチゾリン、ミドドリン、ナファゾリン、ノルデフリン、オクトドリン、オルニプレシン、オキシメタゾリン、フェニルエフリン、フェニルエタノールアミン、フェニルプロパノールアミン、プロピルヘキセドリン、プソイドエフェドリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、タウアミノヘプタン、チマゾリン、ヴァソプレッシン、キシロメタゾリンおよびこれらの混合物を含む。最も好ましい血管収縮剤は、エピネフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン インダナゾリン、メチゾリン、トラマゾリン、チマゾリン、オキシメタゾリンおよびキシロメタゾリンを含む。
この血管収縮剤の濃度は、使用する場合には、好ましくは被膜のほぼ0.1重量%〜10重量%の範囲にある。
本発明のなおもう一つの態様においては、この被覆は、引用により本明細書に全体で組み込まれている、同時係属の米国特許出願番号09/950,436で開示されているものなど、少なくとも一つの「経路開通性調節因子(pathway patency modulator)」を含むことができる。上記の同時係属出願で述べられているように、通路開通性調節因子は皮膚の自然の治癒過程を防止あるいは低減させ、それにより微小突起部材アレイにより角質層中に形成される通路または微小スリットの閉鎖を防止する。経路開通性調節因子の例は、限定ではないが、浸透圧性薬剤(例えば、塩化ナトリウム)、および両性イオン化合物(例えば、アミノ酸)を含む。
用語「通路開通性調節因子」は、この同時係属出願で定義されているように、ベタメタソン21−ホスフェートジナトリウム塩、トリアムシノロンアセトニド21−ジナトリウムホスフェート、ヒドロコルタメートヒドロクロリド、ヒドロコルチゾン21−ホスフェートジナトリウム塩、メチルプレドニソロン21−ホスフェートジナトリウム塩、メチルプレドニソロン21−スクシネートナトリウム塩、パラメタソンジナトリウムホスフェートおよびプレドニソロン21−スクシネートナトリウム塩などの抗炎症性薬剤、およびクエン酸、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、デキストリンサルフェートナトリウム、アスピリンおよびEDTAなどの抗凝固剤を更に含む。
本発明によれば、この被覆配合物は、非水性溶媒、例えばエタノール、クロロホルム、エーテル、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど、染料、顔料、不活性充填剤、透過増進剤、賦型剤、および当業界で既知の医薬製品または経皮的器具の他の在来の成分も含むことができる。
この被覆配合物の必要な溶解性および粘度特性と乾燥された被膜の物理的完全性に悪影響を及ぼさない限り、他の既知の配合物補助剤もこの被覆配合物に添加可能である。
好ましくは、各微小突起10を有効に被覆するためには、この被覆配合物は、ほぼ500センチポイズ未満で3センチポイズ以上の粘度を有する。更に好ましくは、この被覆配合物はほぼ3−200センチポイズの範囲の粘度を有する。
本発明によれば、所望の被膜厚さは、このシートの単位面積当たりの微小突起の密度と、被膜組成物の粘度および濃度ならびに選択される被覆方法に依存する。好ましくは、この被膜厚さは50ミクロン未満である。
一つの態様においては、被膜厚さは、微小突起表面から測定して25ミクロン未満、更に好ましくは10ミクロン未満である。なお更に好ましくは、被膜厚さはほぼ1〜10ミクロンの範囲にある。
すべての場合、被膜を塗布した後、被膜溶液は種々の手段により微小突起10上で乾燥される。本発明の好ましい態様においては、被覆された部材5は外周室内条件で乾燥される。しかしながら、微小突起上で被膜溶液を乾燥するのに種々の温度および湿度レベルが使用可能である。加えて、被覆された部材5を加熱、凍結乾燥あるいは類似の方法を使用して、被膜から水を除去することができる。
図4および5を参照すると、貯蔵と塗布のために、引用により本明細書に全体で組み込まれている、同時係属出願番号09/976、762(公告番号2002/0091357)詳述されているように、微小突起部材5は、好ましくは保持器環40中で接着剤タブ6により懸垂される。
微小突起部材5を保持器環40中に配置した後、微小突起部材5は患者の皮膚に適用される。好ましくは、同時係属出願番号09/976、798に開示されているように、衝撃アプリケーターを用いて、微小突起部材5は皮膚に適用される。
当分野の業者ならば認識するように、本発明は、同時係属出願番号60/514,433で開示されている経皮的薬剤送達系および装置によっても使用可能である。
[実施例]
次の実施例は、当業者が本発明を更に明確に理解し、実施することが可能となるように提供される。これらは、本発明の範囲を限定するものと考えられるべきでなく、単にこれらを代表する例と考えられるべきである。
40重量%の酒石酸水素ニコチンを含有する水溶液を製造した。0.001Mの濃度を生成させるように充分なフルオレッセインをこの溶液に添加した。この薬剤を使用して、乾燥後の被膜の品質を評価した。
この表面をアセトンにより洗浄し、乾燥することによりチタン箔片を作製した。5マイクロリットルのこの被覆溶液(または配合物)を塗布し、室温で4時間乾燥した。蛍光顕微鏡下で見ると、この被膜の品質は極めて劣っており、このニコチン溶液の濡れ性が劣っていることを示していた。0.1重量%のヒドロキシエチルセルロース(NATROSOL(登録商標)250HHX PHARM、HERCULES Int.Lim.,(Netherland)、分子量測定値1890000、Mn1050000)を同一の被
覆溶液に添加すると、この被膜は目立って改善された。
30重量%のニコチン溶液を水中で作製する。この溶液に0.1重量%のヒドロキシエチルセルロースと0.2重量%の界面活性剤のTween20を添加する。次に、米国特許公告番号2002/0132054で述べられている被覆方法を用いて、この被覆溶液を微小突起に塗布する。この被膜を評価する。そしてこの被膜は微小突起にわたって良好に分布していることが判明する。2cmの器具の被覆され、乾燥された微小突起は約300マイクログラムのニコチンを含有することが判明する。米国特許公告2002/0123675で述べられているアプリケーターを用いて、この器具をヒトに適用すると、この微小突起上に含まれているニコチンの70%超の送達が達成される。
5重量%のニコチン塩基、5重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC,Methocel E 5premium LVEPJP、Dow Chemical Company(Midland,MI))および0.2重量%のTween20からなる水溶液を作製する。次に、米国特許公告番号2002/0132054で述べられている被覆方法を用いて、この被覆溶液を微小突起に塗布する。この被膜を評価する。そしてこの被膜は微小突起にわたって良好に分布していることが判明する。2cmの器具の被覆され、乾燥された微小突起は約400マイクログラムのニコチンを含有することが判明する。この器具を皮膚に適用することによって、使用者への300マイクログラムのニコチン塩基の本質的に即時の送達が得られる。
前出の説明から、なかんずく、本発明は、ニコチンをベースとする薬剤をタバコ使用者に経皮的に送達して、タバコ使用習慣を実質的に低減するか、あるいは無くするための有効かつ効率的な手段を提供するということを当業者ならば容易に確認することができる。
当業者ならば認識するように、本発明は多数の利点を提供する。利点には、ニコチンをベースとする薬剤の有効な経皮的ボーラス送達;ニコチンの迅速な投与または配設;タバコをやめる試みの間必要とする場合小量のニコチンを投与することによる渇望の有効な治療および貼剤系を用いるニコチン置換治療を補給するための簡便な方法が挙げられる。
本発明の精神および発明から逸脱せずに、当業者ならば本発明に対して種々の変更および改変を加えて、これを種々の使用および条件に適合させることができる。これらの変更および改変は、添付の特許請求の範囲の同等物の全範囲内にあるということは適切、公平なことであり、そして添付の特許請求の範囲の同等物の全範囲内にあるように意図されている。
本発明の好ましい態様を添付の図面で図示するように次に、更に特別に説明することにより、更なる特徴および利点が明白になるであろう。図面において、類似の参照文字は一般に図中で同一の部品あるいは要素を指す。
図1は微小突起アレイの一つの例の部分の透視図である。 図2は本発明による微小突起上に堆積された被膜を有する図1に示す微小突起アレイの透視図である。 図2Aは図2の線2A−2Aに沿って切断した本発明による単一の微小突起の断面図である。 図3は接着性裏打ち材を有する微小突起アレイの側面断面図である。 図4はその中に配設された微小突起部材を有する保持器の側面断面図である。 図5は図4に示す保持器の透視図である。

Claims (18)

  1. ニコチン使用者の角質層を穿刺するようにされており、かつ、少なくとも1つのニコチンをベースとする薬剤を有する生体適合性被膜を含む複数の微小突起を有する微小突起部材を含んでなる、ニコチン使用者にニコチンをベースとする薬剤を経皮的に送達するための装置。
  2. 前記ニコチンをベースとする薬剤がニコチン塩基、ニコチン塩およびニコチンの単純な誘導体からなる群から選択される請求項1に記載の装置。
  3. 前記微小突起の各々がほぼ1000ミクロン未満の長さを有する請求項1に記載の装置。
  4. 前記微小突起の各々がほぼ500ミクロン未満の長さを有する請求項3に記載の装置。
  5. 前記微小突起の各々がほぼ250ミクロン未満の長さを有する請求項4に記載の装置。
  6. 前記生体適合性被膜が少なくとも1つの湿潤剤を更に含む請求項1に記載の装置。
  7. 前記生体適合性被膜が親水性ポリマーを更に含む請求項1に記載の装置。
  8. 前記生体適合性被膜が界面活性剤を更に含む請求項1に記載の装置。
  9. 前記生体適合性被膜が両親媒性ポリマーを更に含む請求項1に記載の装置。
  10. 前記生体適合性被膜が血管収縮剤を更に含む請求項1に記載の装置。
  11. 前記生体適合性被膜が生体適合性キャリアを更に含む請求項1に記載の装置。
  12. 前記生体適合性被膜がほぼ50ミクロン未満の厚さを有する請求項1に記載の装置。
  13. 前記生体適合性被膜がほぼ25ミクロン未満の厚さを有する請求項1に記載の装置。
  14. 接触表面を有するアプリケーターを更に含んでなり、かつ、前記微小突起部材が保持器により前記アプリケーター上に取り外し可能なように搭載されており、そして活性化時には前記アプリケーターが前記接触表面を前記微小突起部材と接触せしめ、そして前記微小突起部材がニコチン使用者の角質層に10ミリ秒以下で微小突起部材1cm当たり少なくとも0.05ジュールのパワーで当たる、請求項1に記載の装置。
  15. ニコチン使用者にニコチンをベースとする薬剤を経皮的に送達する方法であって、前記ニコチン使用者の角質層を穿刺するようになされており、かつ、少なくとも1つのニコチンをベースとする薬剤を有する生体適合性被膜を含む複数の微小突起を有する微小突起部材を準備し;
    そして
    前記ニコチン使用者の皮膚に前記微小突起部材を適用し、それにより前記微小突起部材が前記角質層を穿刺し、前記ニコチンをベースとする薬剤を送達する
    段階を含んでなる、方法。
  16. 前記生体適合性被膜が前記微小突起を被覆配合物中に浸漬することにより前記微小突起部材に塗布される請求項15に記載の方法。
  17. 前記生体適合性被膜が被覆配合物を前記微小突起上にスプレーすることにより前記微小突起部材に塗布される請求項15に記載の方法。
  18. 接触表面を有するアプリケーターを設け、前記微小突起部材が保持器により前記アプリケーター上に取り外し可能なように搭載されており;そして
    前記アプリケーターを活性化して、前記微小突起部材が当たるように前記接触表面を前記微小突起部材と接触せしめる
    段階を更に含んでなる請求項15に記載の方法。
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