JP2007335378A - 誘導加熱コイルと高周波加熱装置 - Google Patents

誘導加熱コイルと高周波加熱装置 Download PDF

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Abstract

【課題】磁気異方性付加工程で回転軸の磁歪膜基礎部分を高周波加熱するとき、磁歪膜基礎部分での温度分布を均一にし、磁気異方性を均一にする誘導加熱コイルと高周波加熱装置を提供することにある。
【解決手段】 円柱棒状ワークの円周表面に形成された磁歪膜14A,14Bを囲むように配置された一巻コイル部101aを有し、この一巻コイル部により磁歪膜を高周波加熱する誘導加熱コイルであって、一巻コイル部101aは、円筒形状であり、隙間を介して対向して配置される2つのプレート状高周波電流導入端子部と、一巻コイル部の内周面にその軸方向に平行な2本以上の線状溝141a,141b,141cを有し、隙間と2本以上の線状溝が、一巻コイル部の円周上で等間隔に配されるように形成される。
【選択図】図11

Description

本発明は誘導加熱コイルと高周波加熱装置に関し、特に、磁歪式トルクセンサの製造方法での磁気異方性付加工程で使用される誘導加熱コイルと、これを備える高周波加熱装置に関する。
例えば自動車の操舵系として装備される電動パワーステアリング装置では、一般的に、運転者の操舵操作によってステアリングホイールからステアリング軸に加えられる操舵トルクを操舵トルク検出部によって検出する。操舵トルク検出部は、通常、トーションバー式トルクセンサで構成され、最近では磁歪式トルクセンサも提案されている。上記のステアリング軸は、操舵操作による回転力を受けて回転する回転軸として機能し、操舵トルク検出部でその回転軸となっている。電動パワーステアリング装置は、当該操舵トルク検出部から検出されたトルク信号に応じて、操舵力補助用のモータを駆動制御し、運転者の操舵力を軽減して快適な操舵フィーリングを与える。
上記電動パワーステアリング装置に用いられる操舵トルク検出部として、上記のごとく磁歪式トルクセンサが知られている。この磁歪式トルクセンサは、ステアリング軸の表面の所定の2箇所に、互いに逆向きの磁気異方性を持つ磁歪膜を備えている。磁歪式トルクセンサは、ステアリング軸にステアリングホイールからトルクが作用したときに、ステアリング軸に生じる捩れに応じた磁歪膜の磁歪特性の変化を非接触で検出するセンサ構成を有している。
上記のごとき磁歪式トルクセンサを製造するプロセスでは、上記ステアリング軸の一部の所定表面、すなわち回転軸における所定の軸方向幅の円周表面に磁歪膜を形成し、この磁歪膜に磁気異方性を付加する工程が必要である。磁歪式トルクセンサの製造において磁歪膜に磁気異方性を付加する従来の方法は、例えばめっき処理により磁歪材めっき部(磁歪膜)を形成した回転軸に対して捩りトルクを作用させ、回転軸の円周表面に応力を付与し、この応力付与状態にて当該回転軸を高周波による誘導加熱により所定時間の間加熱処理するという方法であった(例えば特許文献1参照)。
また関連する従来の加熱コイルとして特許文献2に記載された一巻線誘導加熱コイルが存在する。
特開2004−340744号公報 特表2001−509633号公報
従来の磁歪式トルクセンサの製造方法によれば、回転軸の磁歪膜に磁気異方性を付加する工程では、磁歪材めっき部を加熱する加熱手段として、誘導加熱コイルと誘導加熱電源を使用している。従来の高周波加熱装置では、誘導加熱コイルは円筒形状の一巻コイル部を有し、一巻コイル部の内周面については、内径が内周面の全面に渡って一定で、かつ凹凸のない滑らかな面であった。このような一巻コイル部を利用した場合、一巻コイル部における高周波電流導入端子部に対応する近傍箇所での誘導加熱が不十分であり、そのため磁歪膜で温度分布の中心ずれが生じ、加熱ばらつきが生じてしまうという問題があった。
そこで上記の加熱ばらつきを解消し加熱の均一性を実現するにあたり、回転軸の垂直断面において、高周波電流導入端子部のプレート部の方向に一致する一巻きコイル部の直径方向、および当該直径方向に直交する直径方向のそれぞれで、偏りのない均一な分布状態になることが望まれ、回転軸の中心の回りに真円に近い加熱分布が作られることが望まれている。
本発明の目的は、上記の課題を鑑み、磁歪式トルクセンサの回転軸の磁歪膜に磁気異方性を付加する工程で回転軸の磁歪膜基礎部分(磁歪材めっき部)を高周波加熱するとき、加熱温度分布を均一にさせることによって磁歪膜の感度性能を向上でき、さらに回転軸中心と温度中心を一致させ、回転軸中心の回りに真円に近い温度分布で回転軸の加熱を行うことができる誘導加熱コイルと高周波加熱装置を提供することにある。
本発明に係る誘導加熱コイルと高周波加熱装置は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
本発明に係る誘導加熱コイル(請求項1に対応)は、円柱棒状ワーク(回転軸)の円周表面に形成された磁歪膜(磁歪材めっき部)を囲むように配置された一巻コイル部(リング部)を有し、この一巻コイル部により磁歪膜を高周波加熱する誘導加熱コイルであって、一巻コイル部は、円筒形状であり、隙間を介して対向して配置される2つのプレート状高周波電流導入端子部と、一巻コイル部の内周面にその軸方向に平行な2本以上の線状溝を有し、隙間と2本以上の線状溝が、一巻コイル部の円周上で等間隔に配されるように形成される。
上記の誘導加熱コイルでは、一巻コイル部の内周面に形成されかつ等間隔で配置された2本以上の線状溝を設けたため、磁歪膜を高周波加熱するとき当該加熱の円周方向対称性を高めることが可能となり、磁歪膜での温度分布を均一にし、検出感度を向上することが可能となる。
他の誘導加熱コイル(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、上記線状溝は、一端の開口部から他端の開口部まで形成されることを特徴とする。
また上記の線状溝は、溝の断面形状が四角、三角、半円のいずれかであることを特徴とする(請求項3に対応)
本発明に係る高周波加熱装置(請求項4に対応)は、上述したいずれかの誘導加熱コイルと、この誘導加熱コイルに高周波を給電する高周波電源とを備えるように構成される。
本発明によれば次の効果を奏する。本発明に係る誘導加熱コイル、またはこれを利用して構成される高周波加熱装置によれば、加熱誘導コイルの一巻コイル部を、その内周面に所定の線状溝を2本以上形成するようにしたため、磁歪式トルクセンサ等の回転軸の磁歪膜(磁歪材めっき部)を高周波加熱するとき、加熱温度分布を均一にさせることができ、これにより磁歪膜で精密でかつ均質の磁気異方性を付加することができる。
さらに上記回転軸を磁歪式トルクセンサに用いれば、この磁歪式トルクセンサの検出感度を向上することができる。回転軸中心と温度中心を一致させ、回転軸中心の回りに真円に近い温度分布で回転軸の加熱を行うことができる。
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
最初に図1と図2を参照して磁歪式トルクセンサの基本的構成について説明する。図1と図2は磁歪式トルクセンサの一構造例を示している。図1は磁歪式トルクセンサの基本的構造を示す一部断面側面図を示し、図2は磁歪式トルクセンサの基本的構成を概念的に示す側面図を示している。
図1と図2に示すように磁歪式トルクセンサ10は、回転軸11と、この回転軸11の周囲に配置される1つの励磁コイル12と2つの検出コイル13A,13Bとから構成されている。回転軸11は、図1と図2では、説明の便宜上、上部および下部を切断し省略して示している。
回転軸11は、例えばステアリング軸の一部として構成される。回転軸11は、その軸心11aの周りに矢印Aのごとく右回転(時計回り)または左回転(反時計回り)の回転力(トルク)を受ける。回転軸11は例えばクロムモリブデン鋼材(SCM材)等の金属棒で形成されている。回転軸11には、軸方向にて上下2箇所に磁歪膜14A,14Bが設けられている。磁歪膜14A,14Bの各々は、回転軸11の軸方向にて一定の幅(軸方向幅)を有しかつ回転軸11の円周方向の全周に渡って形成されている。各磁歪膜14A,14Bの軸方向の幅寸法、および2つの磁歪膜14A,14Bの間隔寸法は条件に応じて任意に設定される。磁歪膜14A,14Bは、実際には、電解めっき加工処理等により回転軸11の表面に磁歪材めっき部として形成される。この磁歪材めっき部に磁気異方性加工を施すことにより、磁気異方性を有する磁歪膜14A,14Bが形成される。
以下の説明では、説明の便宜上、「磁歪膜14A,14B」と「磁歪材めっき部(14A,14B)」は同一物を指すが、製造の段階・状況に応じて使い分けている。原則的に、磁気異方性を付加されて完成した段階を「磁歪膜14A,14B」といい、その前の段階では「磁歪材めっき部(14A,14B)」という。
上記の励磁コイル12と検出コイル13A,13Bは、図1に示すごとく、回転軸11の表面に形成された2つの磁歪膜14A,14Bのそれぞれに対応して設けられる。すなわち、図1に示されるように、磁歪膜14Aの周囲には隙間を介在させて検出コイル13Aが配置される。リング状の検出コイル13Aは、磁歪膜14Aの全周囲を囲み、かつ検出コイル13Aの軸方向の幅寸法は磁歪膜14Aの軸方向の幅寸法と略等しい。また磁歪膜14Bの周囲には隙間を介在させて検出コイル13Bが配置される。同様に、リング状の検出コイル13Bは、磁歪膜14Bの全周囲を囲み、かつ検出コイル13Bの軸方向の幅寸法は磁歪膜14Bの軸方向の幅寸法と略等しい。さらに、2つの検出コイル13A,13Bのそれぞれの周囲にはリング状の励磁コイル12が配置される。図1では、磁歪膜14A,14Bのそれぞれに対応して個別に励磁コイル12が設けられるように図示されているが、実際には1つの励磁コイル12の2つの部分を分けて示したものである。検出コイル13A,13Bと励磁コイル12は、回転軸11の周囲に回転軸11を囲むように設けられたリング状の支持枠体部15A,15Bを利用して磁歪膜14A,14Bの周囲スペースに巻設されている。
図2では、回転軸11の磁歪膜14A,14Bに対して配置される励磁コイル12と検出コイル13A,13Bを電気的関係として概念的に示している。磁歪膜14A,14Bに対して共通に配置される励磁コイル12には、励磁用交流電流を常時に供給する交流電源16が接続されている。また、磁歪膜14A,14Bのそれぞれに対応して配置される検出コイル13A,13Bの各出力端子からは、検出対象であるトルクに対応する誘導電圧V,Vが出力される。
回転軸11の表面に形成された磁歪膜14A,14Bは、例えばNi−Feめっきによる電解めっき加工処理で作られた磁気異方性を有する磁歪膜である。2つの磁歪膜14A,14Bの各々は、互いに逆方向の磁気異方性を有するように作られている。回転軸11に対して回転力によるトルクが作用したとき、磁歪膜14A,14Bの各々に生じる逆の磁歪特性を、磁歪膜14A,14Bの周囲に配設した検出コイル13A,13Bを利用して検出する。
上記磁歪式トルクセンサ10は、例えば、電動パワーステアリング装置のステアリング軸に操舵トルク検出部として組み込まれて利用される。
図3についてさらに詳述する。図3は2つの磁歪膜14A,14Bのそれぞれの磁歪特性曲線51A,51Bを示す図である。図3において、横軸は、ステアリング軸21に加えられた操舵トルクを意味し、正側(+)が右回転に対応し、負側(−)が左回転に対応している。また図3の縦軸は電圧軸を意味する。
磁歪膜14A,14Bについての上記磁歪特性曲線51A,51Bは同時に検出コイル13A,13Bの検出出力特性を表している。すなわち、磁歪特性曲線51A,51Bを有する磁歪膜14A,14Bに対して共通の励磁コイル12により励磁用交流電流を供給し、この励磁用交流電流に感応して検出コイル13A,13Bは誘導電圧を出力していることから、検出コイル13A,13Bの誘導電圧の変化特性は、磁歪膜14A,14Bの磁歪特性曲線51A,51Bに対応している。換言すれば、磁歪特性曲線51Aは検出コイル13Aから出力される誘導電圧Vの変化特性を示し、他方、磁歪特性曲線51Bは検出コイル13Bから出力される誘導電圧Vの変化特性を示している。
磁歪特性曲線51Aによれば、検出コイル13Aから出力される誘導電圧Vの値は、操舵トルクの値が負領域から正領域に変化しさらに操舵トルクの正の値T1に到るにつれて略線形特性にて増加し、操舵トルクが正の値T1となったときにピーク値となり、操舵トルクがT1よりさらに増加すると徐々に減少するという特性を有する。他方、磁歪特性曲線51Bによれば、検出コイル13Bから出力される誘導電圧Vの値は、操舵トルクの値が負の値−T1に到るまでは徐々に増加し、操舵トルクが負の値−T1のときにピーク値をとり、操舵トルクがさらに−T1よりも増加して負領域から正領域に変化すると略線形特性にて減少するという特性を有する。
図3に示すように、検出コイル13Aに関連する磁歪特性曲線51Aと検出コイル13Bに関連する磁歪特性曲線51Bは、磁歪膜14A,14Bのそれぞれで互いに逆方向となる磁気異方性を有することが反映して、両磁歪特性曲線が交わる点を含む縦軸に関して略線対称との関係になっている。
図3において示された線52は、磁歪特性曲線51A,51Bの共通領域であって略線形特性を有する領域において、検出コイル13Aの出力電圧として得られる磁歪特性曲線51Aの各値から、検出コイル13Bの出力電圧として得られる磁歪特性曲線51Bの対応する各値を差し引いた値に基づいて作成されるグラフを示す。操舵トルクがゼロのときに、各検出コイル13A,13Bから出力される誘導電圧は等しいので、その差の値はゼロとなる。操舵トルク検出部20では、上記の磁歪特性曲線51A,51Bにおける操舵トルクの中立点(ゼロ点)付近の略一定勾配とみなされる領域を使用することで、上記線52を略直線特性を有するものとして形成している。なお線52の特性グラフに関しては、図3の縦軸は差電圧の値を示す軸を意味している。特性グラフである直線52は、原点(0,0)を通る直線であって、縦軸および横軸の正側・負側に存在する。操舵トルク検出部20の検出出力値は前述のごとく検出コイル13A,13Bから出力される誘導電圧の差(V−V)として得られることから、上記直線52を利用することに基づいて、回転軸11に加えられた操舵トルクの方向と大きさを検出することができる。
次に図4〜図7を参照して磁歪式トルクセンサ10の製造方法の全体工程を説明する。図4に示した磁歪式トルクセンサ10の製造方法は磁歪式トルクセンサ10の回転軸11の製造工程である。
図4において、回転軸11の製造工程は、大きく分けると、磁歪膜形成工程P1と磁気異方性付加工程P2と特性安定化工程P3と検査工程P4から構成されている。特性安定化工程P3はアニール工程P31を含み、検査工程P4は、製造された回転軸11の品質を抜取り検査にて検査する工程である。なお磁歪式トルクセンサ10として完成するためには、検査工程P4の後に、回転軸11に対して励磁コイル12や検出コイル13A,13B等の検出器を付設する検出器付設工程が設けられている。
最初に磁歪膜形成工程P1が実行される。この磁歪膜形成工程P1では、電解めっき処理により回転軸11の表面の所定箇所に磁歪材めっき部が磁歪膜の基礎となる部分として形成される。
磁歪膜形成工程P1では、まず、回転軸11の洗浄等の前処理が行われる(ステップS11)。その後に電解めっきが行われる(ステップS12)。この電解めっき工程では、回転軸11の上下の箇所で磁歪材が所定の膜厚になるように施される。上下の磁歪材めっき部は、後述する後処理によって磁気異方性を有する磁歪膜14A,14Bになる部分である。その後、乾燥が行われる(ステップS13)。
上記の磁歪膜形成工程P1では、回転軸11の表面に前述した磁歪膜14A,14Bを形成するために電解めっき処理法を用いた。しかしながら、回転軸11における磁歪膜14A,14Bを形成する基礎部分は、電解めっき法以外の方法、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法、プラズマ溶射法などの方法によって形成することもできる。
次に、磁気異方性付加工程P2が実行される。この磁気異方性付加工程P2は、回転軸11に形成された上下2箇所の磁歪材めっき部に対して磁気異方性を付加し前述の磁歪膜14A,14Bを形成する工程である。磁気異方性付加工程P2は、上側の磁歪材めっき部に対して高周波加熱を行うステップS21と、下側の磁歪材めっき部に対して高周波加熱を行うステップS22とを有している。
図5は、磁気異方性付加工程P2の各ステップS21,S22で実施される処理工程のフローチャートを示す。図6は、磁気異方性付加工程P2の各ステップS21,S22における回転軸11の磁歪材めっき部での軸径方向の温度分布と軸径方向の歪分布を示す図である。
磁気異方性付加工程P2の上側磁歪材めっき部を高周波加熱するステップS21は、図5に示すごとく、トルク印加装置により回転軸11に所定の捩りトルクを印加するステップS201、所定の捩りトルクを印加した状態の回転軸11の上側磁歪材めっき部に対して所定時間だけ高周波電流を供給し電磁誘導により加熱処理を行う熱処理ステップS202、加熱した回転軸11を自然に冷却するステップS203、最後に捩りトルクを解放することによって上側磁歪材めっき部に磁気異方性を付加して上記磁歪膜14Aを形成するトルク解放ステップS204から構成されている。
上記の熱処理ステップS202では、回転軸11の上側磁歪材めっき部を囲むごとくその周囲に誘導加熱コイルを配置し、この誘導加熱コイルに誘導加熱電源の高周波発振回路から高周波を供給して上側磁歪材めっき部のみを誘導加熱する。
上記のステップS201〜S204により、回転軸11の上側磁歪材めっき部は磁気異方性が付加され、これにより磁気異方性を有する磁歪膜14Aが形成される。
回転軸11の下側磁歪材めっき部に対する高周波加熱ステップS22においても同様に上記のステップS201〜S204が実行され、下側磁歪材めっき部に対して磁気異方性が付加され、これにより磁気異方性を有する磁歪膜14Bが形成される。下側磁歪材めっき部に磁気異方性を付加するときには、磁歪膜14Bの磁気異方性とは逆向きになるように、回転軸11に与えるトルクの印加方向を逆向きにする。
次に図6と図7を参照して、磁気異方性付加工程P2で磁歪材めっき部に磁気異方性を付加し磁歪膜14Aを形成するメカニズムについて詳述する。
図6では、縦方向に示された回転軸11の径方向の温度分布(1)と歪み分布(2)について、横方向に(a)トルク印加状態、(b)誘導加熱状態、(c)めっき部歪み解放状態、(d)トルク解放状態の4つの状態が示されている。トルク印加状態(a)は図5に示したステップS201に対応し、誘導加熱状態(b)は同図のステップS202に対応し、めっき部歪み解放状態(c)は同図のステップS203に対応し、トルク解放状態(d)は同図のステップS204に対応している。図6の(1)で軸61は温度を表す軸を示し、(2)で軸62は歪みを表す軸を示す。
図6の(a)では、捩りトルクTqを回転軸11に作用させ、回転軸11の円周表面に応力を与える。これにより捩りトルクTqが作用する。この場合、回転軸11の径方向の歪み分布は、回転軸11の中心に位置する軸心11aから周縁方向に向かって増加した分布ST1となる。ただし、分布ST1では、歪みの分布方向も含めて考えると、軸心11aの右側と左側では反対になるので、右側の歪み分布は正側(+)に示され、左側の歪み分布は負側(−)に示されている。さらに、図6(a)で回転軸11の径方向の温度分布は、破線で示すごとくなり、回転軸11の軸心11aから周縁方向まで室温であって一定の分布T1となる。この室温は回転軸11の温度の基準温度になる。
図6の(b)では、回転軸11に捩りトルクTqを作用させたまま、磁歪材めっき部の周囲を誘導加熱コイルで囲み、この誘導加熱コイルに対して高周波電流を流し、磁歪材めっき部を加熱処理する。図6の(b)で、回転軸11の径方向の歪み分布は、図6(a)の場合と同じである。また回転軸11の径方向の温度分布は、回転軸11の外周縁部に近いところから当該外周縁に向かって急激に増加する分布T2となる。
図6の(c)では、冷却が行われ、その結果、磁歪材めっき部にクリープが生じ、磁歪材めっき部での歪みがゼロとなる。このときの回転軸11の径方向の歪み分布は符号ST2で示される。図6(c)の状態を示すステップは、加熱処理後、自然に冷却させるステップS203である。回転軸11の径方向の温度分布T2の形状については実質的には変化がなく、冷却過程の推移と共に全体に温度は低下する。
図6の(d)では、冷却後、回転軸11に印加されていた捩りトルクTqを解除し、トルク解放を行う。これにより、歪み分布ST3に示されるごとく、回転軸11内での径方向での歪み分布はゼロとなる。他方、反対に、歪み分布ST3に示されるごとく、磁歪材めっき部においてのみ歪み分布が生じる。この結果、当該歪み分布ST3によって磁歪材めっき部に磁気異方性を付加することができ、これにより磁気異方性を有する磁歪膜14Aを形成することができる。なお、図6(d)で温度分布は、T3に示すごとく全体になだらかに分布するように低減する。
なお磁歪膜14Bを作る場合には、磁歪膜14Aに比較して逆向きの磁気異方性を付加するため、上記の捩りトルクTqとは逆方向の時計回りの捩りトルクを与えて前述のプロセスを実行する。
図7では、回転軸11の上下2箇所に設けられる磁歪材めっき部のインピーダンス特性Zと、磁歪材めっき部に磁気異方性を付加して形成された磁歪膜14A,14Bのインピーダンス特性Z,Zを示す。図7において、横軸はトルク(Nm)を意味し、縦軸はインピーダンス(Ω)を意味している。磁気異方性が付加される前の段階の磁歪材めっき部のインピーダンス特性Zは、磁気異方性が付加されることにより、磁歪膜14Aの場合にはインピーダンス特性Zに、または磁歪膜14Bの場合にはインピーダンス特性Zに変化する。磁歪膜14Aはインピーダンス特性Zを有するため、磁歪膜14Aに対応する検出コイル13Aは前述した磁歪特性曲線51Aを有することになる。また磁歪膜14BはインピーダンスZを有するため、磁歪膜14Bに対応する検出コイル13Bは前述した磁歪特性曲線51Bを有することになる。
なお図7において、範囲73は、インピーダンス特性Z,Zの重複部分として略線形の変化特性が得られる範囲である。この範囲73が磁歪式トルクセンサ10のセンサ使用範囲として利用される。
上記の磁気異方性付加工程P2の後に特性安定化工程P3が行われる。特性安定化工程P3ではアニール工程P31が行われる。アニール工程P31では、例えば操舵トルク検出部20が使用される状況での使用温度以上の温度で所定時間加熱処理を行う。
次に前述の磁気異方性付加工程P2における磁歪材めっき部の高周波加熱(誘導加熱)の工程(ステップS202)について、さらに詳述する。
図8〜図10を参照して高周波加熱工程を実施する高周波加熱装置の構成を説明する。図8は誘導加熱コイルの要部側面図を示し、図9は誘導加熱電源の構成を示し、図10は誘導加熱コイルの詳細な形状と構造を示す要部断面図である。
図8において、円柱棒形状の回転軸11は誘導加熱コイル101の先部のリング部101aに挿通させて配置されている。図8の回転軸11は、図1等に示した回転軸11と同じものである。回転軸11には前述した上側磁歪材めっき部114Aと下側磁歪材めっき部114Bが形成されている。
誘導加熱コイル101はその先部にリング部101aを有する。このリング部101aはコイル部を形成している。リング部101aによるコイル部は、板状物を一巻きにして形成された一巻コイル部である。リング部101aはその軸方向に所定の幅を有する。リング部101aは、この図示例では、上側磁歪材めっき部114Aを囲むごとく配置されている。リング部101aの幅は、上側磁歪材めっき部114Aの幅よりも大きくなるように設定されている。この誘導加熱コイル101は、全体として、板状物を、先部にリング部101aを形成するように形成した一巻誘導加熱コイルである。誘導加熱コイル101は、図9に示すごとく狭い隙間102を介して近接して対向して配置される同形の2枚のプレート部101bを備える。誘導加熱コイル101の2枚のプレート部101bの先部には上記のリング部101aが設けられ、2枚のプレート部101bはリング部101aを介してつながっている。
図9では、回転軸11と誘導加熱コイル101を上側から見ている。誘導加熱コイル101の2枚のプレート部101bのそれぞれは誘導加熱電源103のワンポートの出力端子104に接続されている。高周波電源である誘導加熱電源103の出力端子104から出力される高周波電流は、誘導加熱コイル101のプレート部101bに供給される。誘導加熱コイル101において、2枚のプレート部101bは、リング部101aに対して高周波電流を導入するための高周波電流導入端子部として機能する。
誘導加熱電源121の入力側には、三相交流122を変圧する三相変圧器123と、三相変圧器123から出力される三相交流を整流する三相整流器124を備える。三相整流器124から出力される直流電流は投入電力として誘導加熱電源121に入力される。誘導加熱電源121内には高周波発振回路125を備える。高周波発振回路125は、発振用3極真空管とLC回路とで構成される発振回路である。誘導加熱電源121に投入された直流電流は高周波発振回路125の3極真空管のアノードに供給される。高周波発振回路125は、発振作用を生じ、給電された直流電流を入力として所要周波数の高周波電流(I)を出力する。当該高周波電流は上記出力端子104に供給される。
図10を参照して誘導加熱コイル101のリング部(一巻コイル部)101aの形状および構造を説明する。図10は、円柱棒状の回転軸11の上側磁歪材めっき部114Aを誘導加熱コイル101で高周波加熱するときの配置状態を示している。
図10に示した配置状態において、リング部101aの軸方向幅aは、回転軸11の上側磁歪材めっき部114Aの軸方向幅dよりも長くなるように設定されている。リング部101aの上端部は上側磁歪材めっき部114Aの上端部よりも上側にあり、そのリング部101aの下端部は上側磁歪材めっき部114Aの下端部よりも下側にある。リング部101aの上側開口部と下側開口部の内周面には全周にわたり突起部131が形成されている。突起部131の軸方向幅はcである。リング部101aで、両側開口部の突起部131の幅を除いた部分の軸方向寸法はbである。この軸方向寸法bは好ましくは上側磁歪材めっき部114Aの軸方向幅dよりも大きい。従って、リング部101aの上下端の両端開口部に形成された突起部131は前述の通り上側磁歪材めっき部114Aに対して軸方向でその外側に位置するように配置されている。またリング部101aの軸方向中央部の内径eに対して、突起部131の内径fは小さくなっている。リング部101aの内周面において両端開口部の内周部の全周に形成された突起部131は、当該内周面に内径小径部を形成している。
さらに図11〜図15を参照して上記誘導加熱コイルの特徴的形状とその作用効果を説明する。図11は誘導加熱コイル101の平面図を示し、図12は図11におけるC1−C1線断面図を示し、図13は図11におけるC2−C2線断面図を示し、図14と図15は、それぞれ従来の誘導加熱コイルと誘導加熱コイル101による回転軸の加熱温度分布を示す。
図11に示すごとく、誘導加熱コイル101は、前述のように2枚のプレート部101bと円筒形状のリング部(一巻コイル部)101aを備え、全体として1枚の板状物に基づいて作られている。2枚のプレート部101bは隙間102を介在させている。誘導加熱コイル101において、プレート部101bは誘導加熱電源121の出力端子104に接続されており、出力端子104から供給された高周波電流をリング部101aに導入する。一方のプレート部101bから導入された高周波電流は、リング部101aをその円周方向に流れ、さらに他方のプレート部101bへ流れる。2枚のプレート部101bは、誘導加熱を行うリング部101aに対して高周波電流を導入する部分となる。従ってリング部101aで、その円周方向においてプレート部分101bの部分Dは高周波電流導入の端子部となる。
上記において、プレート部101bの厚みは例えば4mmであり、隙間102の幅は例えば1mmである。また、2枚のプレート部101bの間に形成される隙間102によって平面が定義される。隙間102で定義される平面は、図11中のC1−C1線断面の断面線と一致している。
次に、リング部101aの内周面には、その軸方向に平行な線状の溝141a,141b,141cが形成されている。溝141aは、上記隙間102で定義される上記平面に含まれ、当該隙間102に対向するごとく形成される。溝141b、141cは、上記平面に垂直で中心P3を含む平面に含まれ、対向して形成される。溝141aの深さ方向は隙間102で定義される平面の方向である。換言すれば、誘導加熱コイル101のリング部(一巻コイル部)101aの高周波電流導入端子部の中心対称位置に線状溝141aを形成するようにしている。溝141b,141cの深さ方向は、隙間102で定義される平面に垂直で中心P3を含む平面の方向である。溝141a,141b,141cの幅は好ましくは1mm、その深さは好ましくは1.5mmである。さらに溝141a,141b,141cは、好ましくは、リング部101aの上側開口部から下側開口部に至るまで形成されている。
次に上記のリング部101aを備える誘導加熱コイル101を用いて回転軸11の上側磁歪材めっき部114A等を高周波加熱を行うことにより次の作用効果が生じる。
誘導加熱コイル101のリング部(一巻コイル部)101aの内周面において、高周波電流導入端子部の中心対称位置に線状溝141aを形成し、隙間102で定義される平面に垂直で中心P3を含む平面の方向に線状溝141b、141cを形成するようにしたため、すなわち、図11に示すように2枚のプレート部101bの間の隙間102の延長線上の位置に線状溝141aを形成し、隙間102で定義される平面に垂直で中心P3を含む平面の方向に線状溝141b、141cを形成するようにしたため、上側磁歪材めっき部114Aでの電磁誘導加熱の円周方向における加熱分布(温度分布)を、偏りを生じさせることなく、均一にすることができる。これを図14と図15を参照して説明する。
図14と図15は、本実施形態に係る誘導加熱コイル101と従来コイルとの特性の比較を示している。図14aは、溝141a,141b,141cが形成されないコイル部を有する従来の誘導加熱コイル(以下「従来コイル」と記す)により、回転軸11の周囲温度の測定の模式図を示す。回転軸11には、図で示す回転軸11の表面の点P11,P12,P13,P14に熱電対を接触させ、それにより、点P11,P12,P13,P14の温度を測定する。図14bは、熱電対によって測定された回転軸11の表面上の4つの点P11,P12,P13,P14の温度を示す。点P12では、約332℃、点P11と点P13では、約335℃、点P14では、約338℃であり、偏りのある不均一な温度分布となっている。
図15aは、溝141a,141b,141cが形成されているコイル部を有する本発明の誘導加熱コイル(以下「コイル101」と記す)により、回転軸11の周囲温度の測定の模式図を示す。回転軸11には、図で示す回転軸11の表面の点P11,P12,P13,P14に熱電対を接触させ、それにより、点P11,P12,P13,P14の温度を測定する。図15bは、熱電対によって測定された回転軸11の表面上の4つの点P11,P12,P13,P14の温度を示す。4点での温度は、ほぼ同じで約332℃となっている。
図14と図15に基づくコイル101と従来コイルとの比較において、結論を先に述べると、従来コイルの場合には回転軸の表面温度に不均一があり、中心ズレが生じているのに対して、コイル101による加熱では、回転軸の表面温度はほぼ均一となっている。この結果、従来コイルの場合には、誘導加熱工程で回転軸をコイルに設置するとき、回転軸をコイルの幾何中心よりも高周波電流導入端子部側にオフセットしていた。これに対して、コイル101を利用する場合には、回転軸の加熱温度が均一なので、位置調整が不要となり、位置調整工程が大幅に簡略化される。
以上によって、本実施形態に係る誘導加熱コイル101では、そのコイル部101aの内周面の所定位置に所定形状の溝141a,141b,141cを形成するようにしたため、コイル加熱による円周方向の温度分布が改善され、回転軸の加熱温度分布を均一にさせることが可能となる。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態での誘導加熱コイル側のリング部の溝の位置が異なるのみで、その他の構造は同一である。
図16は本発明の第2の実施形態に係る誘導加熱コイル201の平面図を示す。図16に示すごとく、誘導加熱コイル201は、第1の実施形態と同様に2枚のプレート部201bと円筒形状のリング部(一巻コイル部)201aを備え、全体として1枚の板状物に基づいて作られている。2枚のプレート部201bは隙間202を介在させている。誘導加熱コイル201において、プレート部201bは誘導加熱電源121の出力端子104に接続されており、出力端子104から供給された高周波電流をリング部201aに導入する。一方のプレート部201bから導入された高周波電流は、リング部201aをその円周方向に流れ、さらに他方のプレート部201bへ流れる。2枚のプレート部201bは、誘導加熱を行うリング部201aに対して高周波電流を導入する部分となる。従ってリング部201aで、その円周方向においてプレート部分201bの部分Dは高周波電流導入の端子部となる。
上記において、プレート部201bの厚みは例えば4mmであり、隙間202の幅は例えば1mmである。また、2枚のプレート部201bの間に形成される隙間202によって平面が定義される。
次に、リング部201aの内周面には、その軸方向に平行な線状の溝241a,241bが形成されている。溝241aは、上記隙間202で定義される上記平面から、点P3を中心として60°と−60°の角度に位置するように形成される。溝241aの深さ方向は隙間102で定義される平面と点P3を中心に60°の角度をなす平面の方向である。また、溝241bの深さ方向は、隙間202で定義される平面と点P3を中心に−60°の角度をなす平面の方向である。溝241a,241bの幅は好ましくは1mm、その深さは好ましくは1.5mmである。さらに溝241a,241bは、好ましくは、リング部201aの上側開口部から下側開口部に至るまで形成されている。
次に上記のリング部201aを備える誘導加熱コイル201を用いて回転軸11の上側磁歪材めっき部114A等を高周波加熱を行うことにより次の作用効果が生じる。
誘導加熱コイル201のリング部(一巻コイル部)201aの内周面において、高周波電流導入端子部に対して線状溝241a,241bを上記隙間202で定義される上記平面から、点P3を中心として60°と−60°の角度に位置するように形成されようにしたため、上側磁歪材めっき部114Aでの電磁誘導加熱の円周方向における加熱分布(温度分布)を、偏りを生じさせることなく、均一にすることができる。
次に第3実施形態を説明する。第3の実施形態では、第1の実施形態での誘導加熱コイル側のリング部の溝の形状が異なるのみで、その他の構造は同一である。
図17は本発明の第3の実施形態に係る誘導加熱コイル301の平面図を示す。図17に示すごとく、誘導加熱コイル301は、第1の実施形態と同様に2枚のプレート部301bと円筒形状のリング部(一巻コイル部)301aを備え、全体として1枚の板状物に基づいて作られている。2枚のプレート部301bは隙間302を介在させている。誘導加熱コイル301において、プレート部301bは誘導加熱電源121の出力端子104に接続されており、出力端子104から供給された高周波電流をリング部301aに導入する。一方のプレート部301bから導入された高周波電流は、リング部301aをその円周方向に流れ、さらに他方のプレート部301bへ流れる。2枚のプレート部301bは、誘導加熱を行うリング部301aに対して高周波電流を導入する部分となる。従ってリング部301aで、その円周方向においてプレート部分301bの部分Dは高周波電流導入の端子部となる。
上記において、プレート部301bの厚みは例えば4mmであり、隙間302の幅は例えば1mmである。また、2枚のプレート部301bの間に形成される隙間302によって平面が定義される。
次に、リング部301aの内周面には、その軸方向に平行な線状の溝341a,341b,341cが形成されている。それらの溝の断面は半円形をしている。溝341aは、上記隙間302で定義される上記平面に含まれ、当該隙間302に対向するごとく形成される。溝341b、341cは、上記平面に垂直で中心P3を含む平面に含まれ、対向して形成される。溝341aの深さ方向は隙間302で定義される平面の方向である。換言すれば、誘導加熱コイル301のリング部(一巻コイル部)301aの高周波電流導入端子部の中心対称位置に線状溝341aを形成するようにしている。溝341b,341cの深さ方向は、隙間302で定義される平面に垂直で中心P3を含む平面の方向である。溝341a,341b,341cの幅は好ましくは3mm、その深さは好ましくは1.5mmである。したがって断面の半円の半径が1.5mmであることが好ましい。さらに溝341a,341b,341cは、好ましくは、リング部301aの上側開口部から下側開口部に至るまで形成されている。
次に上記のリング部301aを備える誘導加熱コイル301を用いて回転軸11の上側磁歪材めっき部114A等を高周波加熱を行うことにより次の作用効果が生じる。
誘導加熱コイル301のリング部(一巻コイル部)301aの内周面において、高周波電流導入端子部の中心対称位置に線状溝341aを形成し、隙間302で定義される平面に垂直で中心P3を含む平面の方向に線状溝341b、341cを形成するようにしたため、すなわち、図11に示すように2枚のプレート部301bの間の隙間302の延長線上の位置に線状溝341aを形成し、隙間102で定義される平面に垂直で中心P3を含む平面の方向に線状溝341b、341cを形成するようにしたため、上側磁歪材めっき部114Aでの電磁誘導加熱の円周方向における加熱分布(温度分布)を、偏りを生じさせることなく、均一にすることができる。
次に、第4実施形態を説明する。第4の実施形態では、第1の実施形態での誘導加熱コイル側のリング部の溝の形状が異なるのみで、その他の構造は同一である。図18は本発明の第4実施形態に係る誘導加熱コイル401の平面図を示す。
図18に示すごとく、誘導加熱コイル401は、前述のように2枚のプレート部401bと円筒形状のリング部(一巻コイル部)401aを備え、全体として1枚の板状物に基づいて作られている。2枚のプレート部401bは隙間402を介在させている。誘導加熱コイル401において、プレート部401bは誘導加熱電源121の出力端子104に接続されており、出力端子104から供給された高周波電流をリング部401aに導入する。一方のプレート部401bから導入された高周波電流は、リング部401aをその円周方向に流れ、さらに他方のプレート部401bへ流れる。2枚のプレート部401bは、誘導加熱を行うリング部401aに対して高周波電流を導入する部分となる。従ってリング部401aで、その円周方向においてプレート部分401bの部分Dは高周波電流導入の端子部となる。
上記において、プレート部401bの厚みは例えば4mmであり、隙間402の幅は例えば1mmである。また、2枚のプレート部401bの間に形成される隙間402によって平面が定義される。
次に、リング部401aの内周面には、その軸方向に平行な線状の溝441a,441b,441cが形成されている。それらの溝の断面は三角形状をしている。溝441aは、上記隙間402で定義される上記平面に含まれ、当該隙間402に対向するごとく形成される。溝441b、441cは、上記平面に垂直で中心P3を含む平面に含まれ、対向して形成される。溝441aの深さ方向は隙間402で定義される平面の方向である。換言すれば、誘導加熱コイル401のリング部(一巻コイル部)401aの高周波電流導入端子部の中心対称位置に線状溝441aを形成するようにしている。溝441b,441cの深さ方向は、隙間402で定義される平面に垂直で中心P3を含む平面の方向である。溝441a,441b,441cの幅は好ましくは1mm、その深さは好ましくは1.5mmである。すなわち断面のb三角形状の高さが1.5mmが好ましい。さらに溝441a,441b,441cは、好ましくは、リング部401aの上側開口部から下側開口部に至るまで形成されている。
次に上記のリング部401aを備える誘導加熱コイル401を用いて回転軸11の上側磁歪材めっき部114A等を高周波加熱を行うことにより次の作用効果が生じる。
誘導加熱コイル401のリング部(一巻コイル部)401aの内周面において、高周波電流導入端子部の中心対称位置に線状溝441aを形成し、隙間402で定義される平面に垂直で中心P3を含む平面の方向に線状溝441b、441cを形成するようにしたため、すなわち、図17に示すように2枚のプレート部401bの間の隙間402の延長線上の位置に線状溝441aを形成し、隙間402で定義される平面に垂直で中心P3を含む平面の方向に線状溝441b、441cを形成するようにしたため、上側磁歪材めっき部114Aでの電磁誘導加熱の円周方向における加熱分布(温度分布)を、偏りを生じさせることなく、均一にすることができる。
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成の組成(材質)については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
本発明は、電動パワーステアリング装置などで操舵トルクを検出する磁歪式トルクセンサを製造する工程で用いられる高周波加熱装置の誘導加熱コイルとして利用される。
本発明が利用される磁歪式トルクセンサの基本的構造を示す一部断面側面図である。 磁歪式トルクセンサの基本的構成を概念的に示す側面図である。 磁歪式トルクセンサにおける各検出コイルに関する磁歪特性曲線とセンサ検出特性を示すグラフである。 磁歪式トルクセンサの製造方法であり、回転軸の製造プロセスを示す工程図である。 磁気異方性付加工程のフローチャートである。 磁気異方性付加工程の各ステップ(a)〜(d)での回転軸における径方向の温度分布(1)と歪み分布(2)を示す図である。 磁歪式トルクセンサの製造方法での磁歪材めっき部形成直後の磁歪式トルクセンサのインピーダンス特性と磁気異方性付加後の磁歪膜を用いた磁歪式トルクセンサのインピーダンス特性を示す図である。 誘導加熱コイルの要部側面図である。 誘導加熱電源の構成を示すブロック図である。 誘導加熱コイルのリング部(一巻コイル部)の特徴的形状を示す要部断面図である。 本実施形態に係る誘導加熱コイルの実際の形状を示す平面図である。 図11におけるC1−C1線断面図である。 図11におけるC2−C2線断面図である。 従来の誘導加熱コイルで加熱した回転軸における円周方向の温度分布を示すグラフである。 本発明に係る誘導加熱コイルで加熱した回転軸における円周方向の温度分布を示すグラフである。 第2実施形態に係る誘導加熱コイルの実際の形状を示す平面図である。 第3実施形態に係る誘導加熱コイルの実際の形状を示す平面図である。 第4実施形態に係る誘導加熱コイルの実際の形状を示す平面図である。
符号の説明
10 磁歪式トルクセンサ
11 回転軸
12 励磁コイル
13A,13B 検出コイル
14A,14B 磁歪膜
51A,51B 磁歪特性曲線(インピーダンス特性曲線)
101 誘導加熱コイル
101a リング部(一巻コイル部)
121 誘導加熱電源
125 高周波発振回路
131 突起部(内径小径部)
141a,141b,141c 線状溝
P1 磁性膜形成工程
P2 磁気異方性付加工程
P3 特性安定化工程

Claims (4)

  1. 円柱棒状ワークの円周表面に形成された磁歪膜を囲むように配置された一巻コイル部を有し、この一巻コイル部により前記磁歪膜を高周波加熱する誘導加熱コイルであって、
    前記一巻コイル部は、円筒形状であり、隙間を介して対向して配置される2つのプレート状高周波電流導入端子部と、前記一巻コイル部の内周面にその軸方向に平行な2本以上の線状溝を有し、
    前記隙間と前記2本以上の線状溝が、前記一巻コイル部の円周上で等間隔に配されるように形成されることを特徴とする誘導加熱コイル。
  2. 前記線状溝は、一端の開口部から他端の開口部まで形成されることを特徴とする請求項1記載の誘導加熱コイル。
  3. 前記線状溝は、溝の断面形状が四角、三角、半円のいずれかであることを特徴とする請求項1または2記載の誘導加熱コイル。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載される誘導加熱コイルと、
    前記誘導加熱コイルに高周波を給電する高周波電源と、
    を備えることを特徴とする高周波加熱装置。
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