しかしながら、従来の狭小地における外装材内貼り工法では、建物内部側に組んだ仮足場に乗りながら順次下側から適当な高さまで防水シートを張って縦胴縁で押え、これに横張り外装材を装着する作業がやりにくく手間がかかり、特に屋根面近くでは建物内部からは施工できないため屋根に上がって屋根から壁面に外装材を取り付けなければならずさらに作業性が悪かった。
また、外装材内面に防水シートを貼って壁面の躯体に取付ける工法では、縦胴縁が用いられないため、外装材の内面側に通気層が形成されない。したがって防水シート(透湿防水シート)を通して室外に出た湿気が外装材内面や柱等の躯体に滞留してこれらを劣化させるとともに、建物外部から外装材内面側に進入した雨水が排出されずに内部に滞留してさらに劣化を速める。また、断熱性も低下する。さらに1枚ずつ外装材に貼られる防水シートのシール性も十分確保できなかった。
また、外壁面の窓等の開口部においては、開口部に設けたサッシ周囲と防水シートとが確実に重なって壁面をシールすることが必要であるが、施工誤差や防水シートの切断誤差等によりサッシ周囲のシール性が不充分になることがある。シール性が不充分であればその部分から雨水などが浸入しサッシや躯体が劣化する。また狭小地においては、一旦外壁面を形成した後はこれを補修点検するメンテナンスが非常に困難であるため、シーリング材の使用は極力避けなければならない。
本発明は上記従来技術を考慮したものであって、外装材を建物内部側から効率よく容易に外壁面に取付けることができ、特に屋根面近くの外装材取付けの作業性を高めるとともに充分な防水性および通気性を確保し、また開口部の施工については、充分な防水性を確保できるようにした特に狭小地の施工に適した建物の開口部施工方法の提供を目的とする。
上記目的を解決するため、本発明では、外壁面の開口部周囲にサッシが装着され、この外壁面に防水シートを介して外装材を取付ける建物の開口部施工方法において、外装材取付け前に、前記サッシ背面と躯体側との間に先張り防水シートを挟み込み、この先張り防水シートをサッシ外周に突出させ、この突出した部分の先張り防水シートに重ねて外壁面の防水シートを張り付けてから外装材を取付けることを特徴とする建物の開口部施工方法を提供する。
この構成によれば、開口部に設けたサッシの周囲に先張り防水シートが装着され、この先張り防水シートに重ねて外壁面の防水シートが張り付けられるため、サッシ周囲の防水の信頼性が高まる。
好ましい構成例では、前記サッシ背面周縁にはフランジ部が形成され、このフランジ部と前記先張り防水シートとの間を防水テープで封止したことを特徴としている。
この構成によれば、サッシのフランジ部とその背面に装着された先張り防水テープとの間が防水テープで封止して目張りされるため、防水性がさらに高められる。
さらに好ましい構成例では、前記サッシは、小幅板を用いることなく該サッシの外縁に真物外装材を接続可能とする横幅寸法を有することを特徴としている。
この構成によれば、サッシ外縁には例えば外額縁が取付けられ、全体の横幅寸法が、例えば縦張り真物外装材の幅寸法の整数倍の開口部幅と同じであって、現場加工した小幅の外装材を用いることなく真物外装材を接続できる。このため、シール性が向上するとともに、シーリングのメンテナンスがサッシ周囲のみとなって容易にでき、特に一旦施工後は外面からメンテナンスができない狭小地において有効である。また、外装材を縦張りとすることにより、狭小地での内貼り工法による外装材取付けの作業性が向上する。
本発明の応用として、建物の外壁面に外装材を建物内部側から取付ける内貼り工法において、壁面上部の外装材は屋根面の野地板を省いた状態で取付けることを特徴とする建物の外装材内貼り工法を提供する。
この構成によれば、野地板が外されているため、屋根上に上ることなく最上階の天井あるいはその上方の建物内部側に設けた仮足場等から作業しやすい安全な姿勢で外装材を取付けることができ、外装材取付け作業が容易になり、特に狭小地において建物外側に足場を組めない場合に大きな効果が得られる。
好ましい適用例では、切妻屋根を有する建物の妻面に外装材を取付ける内貼り工法であって、妻面に近い部分の野地板を省いた状態で外装材を取付けることを特徴としている。
この構成によれば、切妻造り建物の妻面側が狭小スペースである場合に、この妻面側の野地板を外して妻壁の内部側から屋根端縁に沿ったけらば部に連なる外装材を容易に取付けることができる。
さらに好ましい構成例では、前記野地板下側の妻壁に複数本の縦胴縁が配設され、この縦胴縁の各々の上端部外面に屋根に沿って傾斜する斜め胴縁が取付けられ、各斜め胴縁の下側に妻壁を形成する外装材が取付けられ、前記斜め胴縁に沿ってその前面に破風板が取付られ、前記斜め胴縁の厚さは前記外装材の厚さより厚いことを特徴としている。
この構成によれば、縦胴縁の上部に斜め胴縁が取付けられその下部に外装材が取付けられるため、縦胴縁により上下方向に通気層が形成され、また斜め胴縁がその下側の外装材より厚いため、その差により破風板の背面に前記通気層に連通する通気用隙間が形成される。したがって、縦胴縁により形成された通気層が確実に外部と連通し、通気性能が向上する。
さらに好ましい構成例では、野地板取付け前に先張り防水シートをけらばに沿った垂木に取付けて妻面側に垂らしておき、野地板取付け後にこの妻面に垂れた先張り防水シートを野地板上面までめくり上げて野地板端部を覆うことを特徴としている。
この構成によれば、けらばに沿って妻面に突出する野地板端縁が、妻面を覆う防水シートとは別に、その下面側の垂木部分から上面まで先張りの防水シートで覆われるため、けらば部の野地板端縁部分の防水性が高まる。この場合、防水シートは野地板の固定前に垂木に取付けて先張りで垂らしておくため、野地板を外した状態での外装材取付け作業等が円滑に行われ、外装材取付け後に野地板を固定してその端縁を巻込んで覆うことができる。
さらに好ましい構成例では、けらばに沿った野地板の端縁部を覆ってけらばカバーを装着し、該けらばカバーの野地板下面側の端部を下側に屈曲させ、この屈曲端部の外面側に破風板を取付けたことを特徴としている。
この構成によれば、野地板端縁を例えば板金を曲げ加工したけらばカバーで覆い、このけらばカバーの下側端部を下向きに屈曲させてその外面側に破風板を取付けるため、破風板と野地板下面側との間の隙間から建物内部への雨水の進入が防止され、けらば部の防水性が向上する。
本発明の応用として、さらに、複数の外装材を縦張りで順次並列して取付け、これらの外装材の内面側に防水シートが設けられた建物の外装材内貼り工法において、前記防水シートは帯状であって、前記外装材とともに縦張りで順番に外壁面に装着したことを特徴とする外装材の内貼り工法を提供する。
この構成によれば、定寸の矩形長尺物からなる外装材を縦張りにするとともに防水シートも縦張りとして躯体側に取付けるため、作業者は、躯体の間柱間から身を乗出すことができ、順番に間柱間から防水シートおよびこれを押える縦胴縁を固定しその上に外装材を取付けることができ、作業性が向上する。また、長辺同士が合いじゃくり接合する外装材を縦張りとすることにより、壁面中間部で短辺同士を接合するシーリングがなくなり、特に狭小地において外面からシーリングのメンテナンスができない場合に有効である。
好ましい構成例では、前記防水シートの装着前に、この防水シートをその長手方向を軸として巻回して外装材の長さに対応した巻物状態とし、装着時にこの巻物状態の防水シートを巻き解きながら張り付けることを特徴としている。
この構成によれば、防水シートがその長手方向を軸として長尺ロール状に巻回されるため、これを縦張りで躯体側に張付けるときの作業がしやすくなる。
さらに好ましい構成例では、前記縦張りの防水シートの側縁をオーバーラップさせるとともにその重なり部分を縦胴縁で建物躯体側に固定したことを特徴としている。
この構成によれば、縦張りで順番に並べて張付けられた防水シートの側縁がオーバーラップしてその重なり部分が縦胴縁で押えられるため、確実な防水機能が得られる。
さらに好ましい構成例では、前記外装材の長さに対応した防水シートの一方の側縁に沿って、予め縦胴縁を貼り付けておくことを特徴としている。
この構成によれば、縦胴縁と防水シートを一体化しておくことにより、縦胴縁と防水シートとを同時に躯体に取付けできるため、作業が効率よく行われるとともに、予め防水シートに合わせて縦胴縁が貼り合わされるため、寸法誤差や切断組付け誤差等がなくなり、防水シートは縦胴縁により確実に躯体側に押えられ防水機能の信頼性が高まる。
さらに好ましい構成例では、前記縦胴縁に予め釘を仮打ちしておくことを特徴としている。
この構成によれば、縦胴縁に釘が仮打ちされているため、壁面外側のスペースが狭い場所であっても縦胴縁の取付け作業が建物内側から容易にできる。
さらに好ましい構成例では、出隅部の外装材は、定寸の真物より幅が広い幅広物を現場で切断加工して用いることを特徴としている。
この構成によれば、縦張り外装材の出隅部の幅寸法の調整を幅広の外装材を切断加工して行うため、定寸の真物に幅の狭い小幅物を接合する方法に比べ、小幅物を用いないためシール性が向上するとともに、シーリングのメンテナンスが不要になり、特に一旦施工後は外面からメンテナンスができない狭小地において有効である。
好ましい構成例では、前記防水シートを縦胴縁により間柱側に押えて固定し、該縦胴縁に外装材を釘打ちで固定する工法であって、前記外装材の釘を受けるための受け木を前記間柱の両側面に固定しておくことを特徴としている。
この構成によれば、外装材を縦胴縁に固定するための釘が縦胴縁を貫通して背面の防水シートを刺し通しても、その釘は防水シート背面の受け木に打込まれるため、防水性が損なわれることはない。
別の好ましい構成例では、前記防水シートを縦胴縁により間柱側に押えて固定し、該縦胴縁に外装材を釘打ちで固定する工法であって、前記縦胴縁の厚さは、前記釘がこの縦胴縁の内面側に実質上突出しない程度以上に厚くしたことを特徴としている。
この構成によれば、外装材を釘打ちで固定する縦胴縁の厚さを釘の長さ以上に厚くすることにより、縦胴縁背面の防水シートが破られることはなく防水性が損なわれることはない。
さらに別の好ましい構成例では、複数の並列した縦張り外装材にわたる長さを有し且つ下面に磁石を備えた水平位置合わせ用スペーサを用い、このスペーサを水切り金具上に仮固定し、このスペーサ上に外装材を支持した状態でこの外装材を躯体側に固定することを特徴としている。
この構成によれば、磁石付きの横長のスペーサ(またはキャンバ)を、例えば板金を折り曲げ加工した水切り金具上に磁力で吸着保持して仮固定し、このスペーサ上に縦張り外装材を順次載せて支持しながら躯体の下地側に固定することにより、高さ方向の寸法調整が容易にできる。この場合、スペーサは複数の外装材を載せられる程度に横長であり、この上に順番に外装材を載せて支持したとき、重量が分散されるため、これを載せている水切り金具を変形させたり破損させることはない。
さらに好ましい構成例では、基礎水切り上に仮固定した前記スペーサ上に外装材とともに縦胴縁を載せて位置合わせし、この縦胴縁は外装材より一定長さだけ短く、前記スペーサで底辺を位置合わせされた縦胴縁および外装材は、縦胴縁の上辺が外装材の上辺より一定長さだけ下がった位置に揃えて取付けられることを特徴としている。
この構成によれば、外装材とともに縦胴縁が同じスペーサ上で底辺を揃えて位置合わせされ、外装材とともに縦胴縁の位置調整が容易にできる。各上辺は縦胴縁が外装材背面で一定長さだけ下がった位置に揃い、したがって、外装材背面に一定深さの溝が形成される。この溝に例えば中間水切り固定用の受け板等を高さを揃えて差込むことができる。
以上説明したように、本発明では、開口部に設けたサッシの周囲に先張り防水シートが装着され、この先張り防水シートに重ねて外壁面の防水シートが張り付けられるため、サッシ周囲の防水の信頼性が高まる。また、本発明の前記応用例の建物の外壁面に外装材を建物内部側から取付ける内貼り工法において、壁面上部の外装材は屋根面の野地板を省いた状態で取付けるため、屋根上に上ることなく最上階の天井あるいはその上方に設けた仮足場等の建物内部側から外装材を作業しやすい安全な姿勢で取付けることができ、外装材取付け作業が容易になり、特に狭小地において建物外側に足場を組めない場合に大きな効果が得られる。また、本発明の前記応用例によれば、外装材を縦張りにするとともに防水シートも縦張りとして躯体側に取付けるため、作業者は、躯体の間柱間から順番に防水シートおよびこれを押える縦胴縁を固定しその上に外装材を取付けることができ、作業性が向上する。また、長辺同士が合いじゃくり接合する外装材を縦張りとすることにより、壁面中間部で短辺同士を接合するシーリングがなくなり、特に狭小地において外面からシーリングのメンテナンスができない場合に有効である。
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明が適用される狭小地での建物の概略斜視図である。切妻造りの住宅建物1が隣地境界線2(又は不図示の隣接建物)に近接して建てられる。斜線部で示す妻面3と境界線2との間は足場を組めない程度に狭い狭小スペースである。本実施形態では、妻面3の外側には足場が組めないため、建物内部に仮足場を組んで建物内部側から妻面3の外装材(不図示)を取付ける内貼り工法が行われる。この場合、切妻屋根4の妻側の端縁であるけらば5近傍の屋根の野地板(斜線部A)を後述のように一旦取外した状態で妻面3のけらば部分近くの外装材(不図示)が取付けられる。
図2は、妻面上部の施工状態の説明図である。屋根面の野地板(図1の斜線部A)を取外した状態で、図示したように、作業者は室内側の2階床(または平屋の場合1階天井)6の上方に設けた仮足場7上から外壁面上端部の外装材8の取付け作業を行う。外装材8は、縦張りで配設され、釘あるいは取付け金具等により下地材である縦胴縁9に取付けられる。各縦胴縁9は、釘10により、建物躯体を構成する間柱(または柱)11あるいは横梁12に固定される。縦胴縁9の背面側には透湿防水シート13が張付けられる。縦張り外装材8の底辺の水平位置合わせはスペーサ(またはキャンバ)14を用いて行う。スペーサ14は、底面に磁石(不図示)を備え、複数の外装材8の長さ(例えば外装材2枚分の長さである910mm)を有する横長形状である。このスペーサ14は、下層側の外装材8の上端部に設けた板金曲げ加工品等からなる中間水切り15上に磁力により吸着保持される。中間水切り15は、下層側の外装材8の背面に差込まれた受け板16(後述)に固定される。施工時のスペーサ14の着脱は、作業者が下層部の仮足場(不図示)から、外装材8を取付けていない部分の間柱(または柱)11の間を通して行う。
図3は、けらば部の施工手順のフローチャートである。建築中の建物内部には資材等が一時的に保管されるため、外壁の施工前に屋根面には野地板が取付けられる。本実施形態では、この野地板を仮留め状態としておき、けらば部下の妻壁の外装材取付け作業時に、まずこの仮留めの野地板を外す(ステップS1)。この状態で、前述の図2に示したように、室内側から外装材(サイディング)を取付ける(ステップS2)。外装材の取付けが終了したら野地板を屋根面に戻し本締めして固定する(ステップS3)。次に、けらば部の前方に垂らしている先張り透湿防水シート(後述)をめくり上げて野地板の端部を覆う(ステップS4)。続いて、この先張り透湿防水シートで覆われた野地板の端部をさらに覆ってけらばカバー(後述)を取付ける(ステップS5)。その後、野地板端部に沿ってその下面側に破風板を取付ける(ステップS6)。
図4は外装材取付け前のけらば部の構成図であり、上記ステップS1でけらば部の野地板を外した状態であり、かつ外装材を取付ける前の状態を示す。また、図5は外装材取付け後のけらば部の断面図であり、上記けらば部の施工終了後の状態(前記ステップS6)を示す。
図4に示すように、縦胴縁9の上端部に屋根の傾斜に沿った斜め胴縁17が固定される(後述の図8参照)。この斜め胴縁17の前面に先張り透湿防水シート18が垂れ下がっている。この先張り透湿防水シート18は、縦胴縁9や斜め胴縁17を取付ける前に、予め垂木19、桁20あるいは間柱11等の躯体側に屋根の傾斜に沿って取付けておく。この先張り透湿防水シート18の背面側には、この透湿防水シート18で覆われない部分の妻面を覆う透湿防水シート13の上端部が差込まれた状態で装着されている。
外装材8を斜め胴縁17の下側に取付け後、図5に示すように、野地板21を垂木19等に本締めし、垂れ下がっていた先張り透湿防水シート18を巻き上げて野地板21の端部を覆う。この野地板21の端部はさらに先張り透湿防水シート18の上からけらばカバー22で覆われる。このけらばカバー22は板金の曲げ加工品であり、下側の端部は90°下方に曲げられて屈曲端部22aが形成される。この屈曲端部22aの前面側に破風板23が取付けられる。
野地板21の上面にはルーフィング24が張られ、その端部は縁材25で押えられる。この縁材25および野地板21の端部を覆って、板金の曲げ加工品からなるけらば水切り26が装着される。このけらば水切り26の凹部26a内に屋根材27が嵌め込まれて屋根が形成される。
このようなけらば部の構造において、外装材8の上側に設けた斜め胴縁17の厚さは外装材8の厚さより厚くしておく(例えば外装材の厚さが12mmで斜め胴縁の厚さが18mm)。これにより、破風板23の背面側下部に、外装材8と斜め胴縁17の厚さの差による隙間77が形成される。この隙間77は縦胴縁9間に形成されている通気層(不図示)と連通するため、透湿防水シート13を通した室内側の湿気が矢印Bで示すように室外側に逃がされる。これにより、通気性が充分確保され、その結果透湿防水シートを通して室外に出た湿気が外装材内面や柱等の躯体に滞留してこれらを劣化させることが抑制される。
野地板21の端部は先張りの透湿防水シート18で覆われるため、防水性が高められる。この先張り透湿防水シート18で覆われた野地板21の端部はさらにけらばカバー22で覆われるため、防水性がさらに高められる。
野地板21の端部を覆うけらばカバー22は、その下面側に屈曲端部22aが形成されるため、外部から野地板下側と破風板23との間を通して室内側へ雨水が進入することを防止できる。したがって、破風板23の上端部にシーリングを施す必要がなくなり、特に妻面側からのシーリングの施工やメンテナンスが困難な狭小地において効果的である。
図6〜図10は、上記けらば部下側(妻面上部)の外装材施工手順を順番に示す図であり、図6は最初の手順の斜視図、図7は図6の次の手順の斜視図、図8は図7の次の手順の斜視図、図9は図8の次の手順の斜視図、図10は完成状態の斜視図である。
まず、図6に示すように、先張り透湿防水シート18を垂木19に沿って配設する。出隅の柱の外面にも透湿防水シート28を張っておく。この出隅の透湿防水シート28は先張り透湿防水シート18の裏側になるように軒高上端まで設ける。先張り透湿防水シート18の垂木下側の端部を斜めに切込んでその切込み片18aを出隅の側面に留め付け、防水性を充分確実なものにする。
次に、図7に示すように、妻面を覆う透湿防水シート13を先張り透湿防水シート18の裏側に差込みながら、各位置の軒高に対応した長さの縦胴縁9を間柱11に固定する。各縦胴縁9は、前述の図2に示したように、中間水切り15の背面に装着されている受け板16上に設けられる。
次に、図8に示すように、各縦胴縁9の上端部に、屋根の傾斜に合わせて傾斜した斜め胴縁17を固定する。この斜め胴縁17の厚さは、前述のように外装材の厚さより厚い。なお、斜め胴縁17は、予め縦胴縁9の上端部に固定しておいてもよい。
続いて、図9に示すように、上端を屋根の傾斜に合わせて斜めに切断した外装材8を装着する。この場合、端部の外装材8は、定寸の真物外装材より幅の広い幅広物を切断して取付ける。各外装材8は、前述の図2で示したように、中間水切り15上に設置したスペーサ14上をスライドさせながら位置決めされ、釘打ちで留付けられる。このような手順で、透湿防水シート、縦胴縁、斜め胴縁および外装材の施工を順番に繰返してすべての外装材8の取付けが終了したら、野地板及びけらば部を施工し、図10に示すように破風板23を取付けて妻面の施工が完了する。
図11は、出隅部分の施工方法説明図である。(A)(B)はそれぞれ別の例を示す水平断面図である。(A)の施工方法は出隅ジョイナー29を用いた例を示す。柱30の外面を覆って透湿防水シート28(図6参照)が張られる。この透湿防水シート28を押えて縦胴縁31が出隅の両側面に取付けられ、その角部に板金を曲げ加工した出隅ジョイナー29が取付けられる。柱30を覆う透湿防水シート28に重ねて縦張りの透湿防水シート32が柱30に沿って張られる。この透湿防水シート32の外側から外装材(不図示)が出隅ジョイナー29に差込まれて装着される。
この出隅部の外装材は、定寸の真物外装材より幅の広い幅広物を切断加工して、その切断面を出隅ジョイナー29に差込んで取付けられる。この幅広物を切断加工した出隅部の外装材に接続して順次縦張りの真物外装材が取付けられる。出隅ジョイナー29はシーリングが不要であり、また真物外装材との接合部は合じゃくり接合であるためシーリングは不要である。したがって、このような幅広の外装材を切断加工して出隅ジョイナーとともに用いることにより、シーリングが不要になって施工プロセスが簡素化するとともにメンテナンスも不要になるため、特に狭小地でシーリングのメンテナンスができない場合に効果が高まる。
(B)の施工方法は、外装材と同じ材質の同質出隅33を用いた例を示す。前述の(A)の場合と同様に、柱30に透湿防水シート28を張り、柱側面に縦胴縁31を取付ける。縦胴縁31の外側の角部に同質出隅33が取付けられる。この同質出隅33に接続して、透湿防水シート32を介して真物外装材(不図示)が取付けられる。真物外装材と同質出隅33との接合位置は、柱30の柱芯にほぼ対応した位置である。このような柱芯位置に外装材端部が配設されるように真物外装材が壁面に割付けられる。この場合、真物外装材の端部の合じゃくりが切り落とされて板金曲げ加工品であるハット型ジョイナー34を介して同質出隅33と接合される。このハット型ジョイナー34に沿ってシーリングが施される。
図12〜図17は、1階壁面の外装材内貼り工法の手順を順番に示す斜視図である。この例は、図11(A)の出隅ジョイナーを用いた工法を示す。
図12に示すように、基礎35上に土台36が設けられ、その上に間柱37が設けられる。1,2階間に横梁39が設けられ、その上に2階部分の間柱37が設けられる。基礎35の外周面には板金曲げ加工品からなる基礎水切り38が取付けられる(後述の図20参照)。出隅部の柱(不図示)には前述の図11(A)で説明したように、透湿防水シート28が留め付けられ、その外側角部に縦胴縁31および出隅ジョイナー29が取付けられる。
次に、図13に示すように、各間柱37の両側面に受け木40を取付ける。この受け木40は、後述(図22(A))のように、外装材固定用の釘を受けるためのものである。出隅部の縦胴縁31の背面に差込むようにして張り始め位置の透湿防水シート41を張る。この透湿防水シート41は一定幅の帯状シートであり、これを縦張りする。この場合、予め帯状シートを階高の長さに切断してこれを長手方向を巻き軸として巻回して巻物状態にしておき、施工時にこれを巻き解きながら張りつけることにより施工性が向上する。
次に、図14に示すように、張り始めの透湿防水シート41にオーバーラップさせて次の列の透湿防水シート42を張るとともに縦胴縁43を間柱37の中心に合わせて釘打ちで固定する。透湿防水シート同士の重なり幅Cは防水の信頼性を充分に確保できる長さ(例えば100mm程度)とする。この重なり部分を縦胴縁43で押えることにより重なり部の隙間からの雨水の進入を確実に防止する。この場合、後述の図18に示すように、予め透湿防水シート42と縦胴縁43とを貼り合せて一体化し、さらに釘を仮打ちしておけば作業がし易くかつ効率的に行える。
次に、図15に示すように、出隅部の張り始めの外装材44を取付ける。この最初の外装材44は、前述のように、幅広物を切断加工して切断面を出隅ジョイナー29に嵌め込み、両側縁を釘打ちして縦胴縁31,43に取付けられる(図11(A)参照)。このとき、次に張る透湿防水シート42が縦方向に巻かれているため、室内側の作業者が間柱の間から身を乗出して行う外装材44の取付け作業が邪魔されず作業性が向上する。
続いて、図16に示すように、縦胴縁43に貼られて縦に巻かれていた透湿防水シート42を巻き解いて間柱37,37間に張り渡すとともに、その端部を次の縦胴縁43で押える。このとき、縦胴縁43の背面に貼着され一体化された透湿防水シート42が縦方向に巻かれているため、縦胴縁43の取付け作業が支障なく円滑にできるとともに、縦胴縁43の取付作業と透湿防水シート42をオーバーラップさせて張付ける作業が同時に効率よく行われる。
続いて、図17に示すように、間柱間に張り渡された透湿防水シート42上に定寸の真物外装材45が釘打ちで取付られる。以降同様にして真物の外装材45が順次取付けられる。
図18は縦胴縁と透湿防水シートの一体化手順を示す説明図である。まず(A)に示すように、階高寸法に合わせた一定長さの縦胴縁43の片面に接着剤46を塗布する。次に(B)に示すように、透湿防水シート42を貼り付ける。この透湿防水シート42の上端部42aは、(C)に示すように、一定の長さ(例えば250mm程度)だけ縦胴縁43より長く突出させる。これは上層の透湿防水シートと確実にオーバーラップさせて防水機能を確保するためである。次にこれを反転させて、(D)に示すように、縦胴縁43側から釘47を仮打ちしておく。その後、透湿防水シート42を長手方向を巻き軸として縦に巻いて縦胴縁43に沿った巻物状とする(図示しない)。このように縦胴縁43と透湿防水シート42を予め一体化することにより、内貼り工法による前述の外装材取付作業が効率よく行われる。
図19は、上記本発明の内貼り工法の作業性を高める方法の説明図である。一定間隔ごと(例えば3〜4mごと)に間柱37を抜いておく。この間柱37を抜いて間隔が広がった部分から外装材を室内側から室外側に出してこれを順次室内側から手で持ちながら横送りして取付位置まで運ぶ。奥側から順番に外装材を取付け、間柱を抜いた位置まで外装材を取付けたら間柱37を戻して固定する。これにより外装材が出しやすくなって内貼り工法の施工性が向上する。
図20は上記本発明の1階部分の施工時の断面図である。前述のように、建物躯体側は、基礎35上に設けた土台36、間柱37および横梁39等により構成され、基礎35の前面には基礎水切り38が取付られる。48は1階床材である。基礎水切り38上に、底面に磁石(不図示)を備えた前述のスペーサ14が吸着保持される。このスペーサ14上に縦胴縁43を載せて水平位置合わせするとともに、外装材45を載せて縦胴縁43と底面を揃えて位置合わせする。縦胴縁43は、定寸の外装材45より一定長さ(例えば30mm)だけ短くしておく。これにより、外装材45の上端部背面の縦胴縁43の上側に深さ30mmの溝49が形成され、この溝49内に例えば高さ90mmの受け板16が差込まれて60mmだけ突出して躯体側に固定される。この突出した部分の受け板16に中間水切り15が固定される。
図21は上記本発明の中間水切りの取付手順を示す斜視図である。(A)に示すように、受け板16を外装材45の背面に形成された溝49内に挿入して釘等により透湿防水シート42の背面側にある横梁(不図示)に固定する。次に、(B)に示すように、受け板16の前面側に、外装材45の上端縁を覆って中間水切り15を取付ける。
図22は、外装材の下地構造の例を示す。(A)(B)はそれぞれ別の構造例を示す水平断面図である。(A)の構造は、間柱37の前部両側に受け木40を固定したものである。左右両側の透湿防水シート42は、この間柱37の位置で重ね合わされ縦胴縁43で押えられる。前述のように、左右いずれか一方の透湿防水シート42は縦胴縁43に貼着一体化されていてもよい。この縦胴縁43は中央の間柱37に中心を合わせて釘(不図示)により間柱37に固定される。この縦胴縁43の位置で外装材45同士が合じゃくり接合され、それぞれ縦胴縁43に対し釘10により固定される。このとき、釘10が縦胴縁43を貫通すると、その背面の透湿防水シート42を突き通して孔があく。しかしながら、本実施形態の構成例によれば間柱37の両側の受け木40に釘10が打込まれるため、この釘10が透湿防水シート42を突き通しても防水機能は損なわれない。なお、一例を挙げれば、外装材45の厚さは12mm、縦胴縁43の厚さは18mm、釘10の長さは40mmであり、釘が約10mm縦胴縁43から突出する。
(B)の構造は、厚物の縦胴縁50を用いたものである。この厚物縦胴縁50の厚さは例えば27mmあるいはそれ以上として、例えば厚さ12mmの外装材45を固定する釘10の長さが40mmの場合、この釘10が縦胴縁50を実質上貫通せず、したがって背面の透湿防水シート42を突き通さないようにできる。
図23〜図27は、外壁開口部の施工手順を順番に示す斜視図である。図23(A)は開口部を屋外側から見た図であり、同図(B)は屋内側から見た図である。図23(A)に示すように、間柱37が並列して設けられた外壁面に窓等の開口部51が形成される。開口部51にはサッシ52が装着される。サッシ52はその背面側の周縁部4辺にフランジ52aを有する。このサッシ周縁のフランジ52aの背面側に先張り透湿防水シート53a〜53dが取付けられる。上辺の透湿防水シート53aの背面側に両側辺の透湿防水シート53b,53cの上端部が挿入される。両側辺の透湿防水シート53b,53cの各下端部に下辺の透湿防水シート53dの左右両端部がそれぞれ挿入される。これにより、上から雨水等が流れた場合に、透湿防水シートの重なり部分から雨水等が室内側に進入することが防止される。これらの先張り透湿防水シート53a〜53dの背面側には、同図(B)に示すように、受け材54が取付けられ、サッシ52の4辺のフランジ52aとともに各先張り透湿防水シート53a〜53dを確実に受け止める。これにより、フランジ部に後述の防水テープを確実に貼ることができ防水機能の信頼性が高まる。
次に、図24に示すように、サッシ52の周縁のフランジ52a(図23(A)参照)とその背面側に装着された先張り透湿防水シート53a〜53dの間を防水テープ55で目張りする。壁面には順次透湿防水シート42および縦胴縁(不図示)を介して縦張り外装材(不図示)が取付けられる。開口部下側の壁面を覆う透湿防水シート56が、サッシ下辺の先張り透湿防水シート53dと100mm以上重なり代が取れるようにカットされて準備される。
次に、図25に示すように、開口部横の透湿防水シート42に100mm以上重ねて透湿防水シート57を取付け、縦胴縁43で押える。この縦胴縁43に外装材45を取付け、その後、開口部下側の先張り透湿防水シート53dの背面に透湿防水シート56の上端部を差込んで装着する。
次に、図26に示すように、開口部横の透湿防水シート57を先張り透湿防水シート53a,53b(図25参照)に上から重ねて張り、サッシ横は縦胴縁58で押え、サッシ上は上部透湿防水シート61をさらに上から100mm程度重ねて縦胴縁60で押えて固定する。また、サッシ下は、さらに透湿防水シート56を100mm程度重ねて張り縦胴縁59で押える。これらの縦胴縁58,59,60上に外装材が取付けられる。
図27に示すように、開口部51周りの外装材45の取付けが終了したら、サッシ52の周囲にシーリング材62を充填する。この場合、開口部上辺側のシーリング材62の中央部には、水抜き用の孔63を例えば幅20mm程度開口させて形成する。
図28は、開口部のサッシ取付け構成例を示す説明図である。(A)(B)はそれぞれ別の構成例の水平断面図である。(A)の構成は、外額縁付きサッシを用いた例を示す。開口部51は、柱64,64間に形成される。両柱64の外側には間柱37がそれぞれ所定の間隔で配設される。間柱37と柱64間の間隔および間柱37間のピッチは一定で、例えば455mmである。また柱64間の開口部51の間隔は間柱37間のピッチの整数倍で、例えば910mm,1365mmまたは1820mmである。このような開口部51を有する壁面に定寸の縦張り真物外装材66が縦胴縁65を介して間柱37および柱64に取付けられる。真物外装材66の幅は間柱37のピッチ間隔と同じ455mmであり、開口部51の左右両横の外装材66の端部は柱芯と整合した位置に配置される。この開口部51に装着されるサッシ67は、その周縁4辺に外額縁67aを備えたものであり、全体の幅は柱芯間の幅にほぼ等しい。したがって、真物外装材66の端部が直接サッシ67の外額縁67aに接続されるため、寸法合わせのための小幅板は不要になり、シーリングはサッシ周縁の4辺のみとなる。これにより、外装材取付け作業の手間が軽減され容易に効率よく施工することができる。特に、一旦施工した後は外側からシーリングのメンテナンスができない狭小地において効果的である。なお、サッシ周縁のシーリングは、窓を外し又は引き違い窓を開けて体を乗出して作業することができる。
(B)は、外額縁のない幅詰めサッシを用いた例である。このサッシ68は、その幅が柱芯間の幅より狭いサッシである。したがって、サッシの片側には真物外装材66がそのまま接合されるが、他方の側には枠材70を設けるとともに、寸法合わせした小幅板69(真物外装材66を切断加工したもの)が縦胴縁65を介して取付けられる。このようにして、幅詰めサッシ68を用いることも可能である。
図29は、外額縁付きサッシを用いた窓部の水平断面図である。柱64,64間の開口部51に外額縁付きサッシ67が装着される。このサッシ67には、その外周4辺に外額縁67aが一体成形されている。サッシ67には引き違い式の二重ガラス窓71が嵌め込まれる。各辺の外額縁67aには、フランジ72が形成され、その背面側(躯体側)に前述のように先張り透湿防水シート73が取付けられ、防水テープ75で封止される。この先張り透湿防水シート73の上面または下面に重ねて開口部周囲の上下左右に透湿防水シート74が張られる。各外額縁67aの外側には縦胴縁65に固定された真物の外装材66が接合される。各外装材66の端部と外額縁67aとの間には、片ハットジョイナー(不図示)を介してシーリング材76が充填される。
以上の説明は狭小地の内貼り工法についての実施形態であるが、これらは狭小地以外の建物に対しても当然適用できる。また、屋根のけらば部の防水構造や開口部の防水構造等は縦張り外装材の内貼り工法以外の建物に対しても適用可能である。
1:住宅建物、2:陸地境界線、3:妻面、4:切妻屋根、5:けらば、6:2階天井、7:仮足場、8:外装材、9:縦胴縁、10:釘、11:間柱、12:横梁、13:透湿防水シート、14:スペーサ、15:中間水切り、16:受け板、17:斜め胴縁、18:先張り透湿防水シート、19:垂木、20:桁、21:野地板、22:けらばカバー、23:破風板、24:ルーフィング、25:縁材、26:けらば水切り、27:屋根材、28:透湿防水シート、29:出隅ジョイナー、30:柱、31:縦胴縁、32:透湿防水シート、33:同質出隅、34:ハット型ジョイナー、35:基礎、36:土台、37間柱、38:基礎水切り、39:横梁、40:受け木、41:透湿防水シート、42:透湿防水シート、43:縦胴縁、44:外装材、45:真物外装材、46:接着剤、47:釘、48:1階床材、49:溝、50:厚物縦胴縁、51:開口部、52:サッシ、53:透湿防水シート、54:受け材、55:防水テープ、56:透湿防水シート、57:透湿防水シート、58:縦胴縁、59:縦胴縁、60:縦胴縁、61:透湿防水シート、62:シーリング材、63:孔、64:両柱、65:縦胴縁、66:真物外装材、67:サッシ、67a:外額縁、68:サッシ、69:小幅板、70:枠材、71:二重ガラス窓、72:フランジ、73:透湿防水シート、74:透湿防水シート、75:防水テープ、76:シーリング材、77:隙間