JP2007331713A - 低床式鉄道車両用台車 - Google Patents

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保政 奥
Shinya Matsuki
信哉 松木
Masaru Tachibana
勝 橘
Yoshinori Seki
美範 関
Noboru Kobayashi
昇 小林
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Abstract

【課題】 誘導輪を備えた一軸ボギー台車からなり、曲線通過性および直線走行安定性にも優れ、輪重抜けを防止できる低床式鉄道車両用台車を提供する。
【解決手段】 大径車輪6aおよび誘導輪8aは、ともに左右の車輪を車軸に対して一体回転可能に固定した串軸とし、台車枠5を、大径車輪6aを回転可能に備えた主車輪台車枠部7と誘導輪8aを回転可能に備えた誘導輪台車枠部9とに分割するとともに、各台車枠部7・9をそれぞれ平面視略コの字形に形成し、主車輪台車枠部7に対し誘導輪台車枠部9をロール方向に回転可能に連結している。
【選択図】 図1

Description

本発明は、特に低床式路面電車に好適な低床式鉄道車両用台車に関し、詳しくは、車両の最前端部又は最後端部に配置される大径車輪と車両の中央寄りに配置される小径車輪の誘導輪とを備え、車体に対し水平旋回可能に取り付けられる一軸ボギー台車からなる低床式鉄道車両用台車に関するものである。
・ 21世紀を迎え、本格的な高齢化社会が訪れようとしているとともに、移動制約者への対応などで欧州では本格的にLRV (Light Rail Vehicle)車両が開発され、国内でも1997年に熊本市に低床車両が登場した。その後、各地で低床車両の導入あるいは導入計画が活発になった。このような背景を受け、国土交通省の呼びかけによって、環境改善とバリアフリー化に対応できる日本型超低床LRVの開発を目指し、「超低床エルアールブイ台車技術研究組合」が設けられ、要素開発を行い、種々の台車が開発された。
・ これと平行して、純国産低床車両が鹿児島市(交通)に始めて導入され、土佐電鉄、伊予電鉄にも導入された。純国産車両は二軸ボギー台車を運転台下に設け、台車部分を除いて中間部を低床とする(部分低床車両:床面の一部が高床でそのほかの部分が低床な車両)もので、最近では欧州車と類似仕様の30m級の低床車両が広島電鉄に導入された。
・ 車軸なしの独立車輪(左右の車輪が別々に回転する)を使用した低床LRVはフランスのグルノーブルに導入されたものが始まりであるが、初期の頃の低床車両は既に述べているが部分低床車両と呼ばれるもので、両先頭車には在来構造の駆動車台車を配置してこの部分を高床式とし、中間台車には特殊な構造の付随台車(付随車用の台車を用いている。ここで、付随車とは運転室も動力装置も無い車両)を設けた低床式としたものである(図11参照)。構造的には、例えば、特許文献1・2に見られる構造となる。前者は「運転台車体と端寄客室車体との間は、水平方向の回動が自在な水平可動連接装置にて連接され、端寄客室車体と中間客室車体との間は、水平方向の回動が自在で且つ垂直方向の回動も可能な水平・垂直可動連接装置にて連接され、運転台車体は、枕梁と中心ピンが省略されたボルスタレス二軸動力台車の空気バネの上に、台車の枕梁と中心ピンを省略して車体の台枠に直接に二軸動力台車が取り付けられ、中間客室車体は、左右の車輪が同一車軸ではなく独立保持され、駆動機構と枕梁とが省略されたボルスタレス独立車輪付随台車上に配置され、端寄客室車体は、台車は設けられず、運転台車体と中間客室車体の各台車にて保持された構造(特許文献1)」からなり、後者は「中間の客室部を挟んで前後両端に運転室部を有する電車を前後両端の運転室部とその間の客室部とに分離し、前後両端の運転室部の底部に台車ユニットが取り付けられ、この前後両端の運転室部と中間の客室部とは、左右水平方向に相対揺動可能に連結され、中間の客室部は、前後両端の運転室部より低床構造とし、前記台車ユニットは、前後両端の運転室部の底部の前後両端ぎりぎりの位置に車輪が位置するように取り付けられた構造(特許文献2)」からなる。
・ 1984年ごろには、小径車輪を使用した低床式車両が出現している。この車両は小径車輪を連接箇所寄りの台車に使用したフローティング方式と呼ばれるもので、メンテナンス面における問題と、独立車輪方式の登場により退潮傾向にある。低床度という意味では、部分低床式である。
・ 車軸を廃止して、その空間を利用するアイデアが登場し、通常使用している車輪径でも低床化か可能となり、これを付随台車とした低床車両が登場している(仏グルノーブル)。この中間台車の車輪部分はバスのタイヤハウスと同様に車内に出っ張っているが、これを座席の脚台に使用し、台車は車体に固定されているのでボギー(水平旋回)できない反面、小さな車軸枠でよく、低床部分の通路が広く取れる利点がある。
・ 部分低床式から徐々に改良がされてきて、高床部分と低床部分を傾斜角が5%程度のスロープで結ぶなどかなりの改善がなされているが、このようなスロープやわずかな段差を解消したいというニーズが高まり、100%低床車両への要求が強くなってきた。
・ こうした要求にこたえるため、部分低床車両の付随台車へ使用した独立車輪方式を動力台車(動力車用の台車。動力車とは動力装置を有する車両)にも使用することによって、100%低床車両を実現した。この独立車輪方式の台車を動力台車とするために、主電動機の取り付け方法及び駆動装置に各メーカが色々なアイデアを出し、競っている。
・ 従来構造の動力台車では、一対の車軸間の空間に電動機および歯車装置(減速機)を装備し、主電動機配置などの違いから平行カルダン式、直角カルダン式と呼ばれている。これらに対して、100%低床車両では、前記空間が車体に含まれることになるので、駆動装置および主電動機の配置構造が動力台車のキーポイントとなる。
・ このように、100%低床車両用動力台車に関しては、色々な配置方法が考えられ、現在では大略、以下のような方式に分類することができる(図12参照)。
1) 車体装架主電動機とプロペラシャフト方式(図12 Aタイプ)
2) 車輪組み込み式主電動機方式(ハブモータ方式)(図12 Cタイプ)
3) 主電動機台車装架方式(図12 B、EタイプでEタイプの変形版が多い)
4) 主電動機縦型取付け門型連接台車(図12 Dタイプ)
・ 1)の方式は、車体床下にレール方向に装架した主電動機から自在継手とスプライン軸で伝達し、対になる車輪へはねじり軸により動力を伝達する方式である。
・ 2)の方式は一車輪に一個の主電動機を組み込み、遊星歯車によって車輪を一体になった主電動機のヨークに回転力を伝達する方式で、遊星歯車の無い直接駆動方法もある。
・ 3)は最も多い方法で、各メーカで種々の方法がとられている。以下に特徴を示す。
a)「ユーロトラム(フランス ストラスブールのLTRV)」に採用されている方法は、一車輪に一個の小型主電動機を軸箱外側に吊り掛け式に装架し、歯車を介して駆動する方式である。
b)「コンビーノ(広島電鉄のLRV)に採用されている方法は、台車両側の2車輪の軸箱間にレール方向に細長い主電動機を装架して歯車を介して駆動する方式である。
c)「シタデス(フランス リヨンのLRV)」に採用されている方法は、台車枠の対角の位置に小型主電動機を枕木方向に装架し、直下の車輪を歯車を介して駆動、更に対になる車輪をねじり軸によって駆動する。
d)「インチェントロ(フランス ナントのLRV)」に採用されている方法は、台車枠に主電動機をレール方向に取り付け、歯車を介して主電動機1個で1車輪駆動する方式である。
e)「ウルボス(イギリス リーズのLRV)」に採用されている方法は、固定軸距離が短いため台車の軸箱間に主電動機を枕木方向に装架して歯車を介して前後の車輪を駆動する。
・ 4)は低床部分の通路幅を確保するために、車輪を連接部へ配置するという考えで、主電動機を縦形に取り付けた二車輪門型の連接台車である。
・ 独立車輪方式の特許としては、多数出願されており、代表的なものとしては、例えば、W02005049401、W02000064721、CA2391566など著名なメーカの2軸独立車輪方式の台車が見受けられる。
・ 国内に関しては欧州などと比較するとまだ数は少ないにしろ代表的なものとして、例えば、特許文献3〜5のような特許出願が見受けられる。
・ 大径車輪と小径車輪を用いた台車の例としては、特許文献6に見られるように、独立車輪方式で前輪(大径車輪)の左右車輪毎に主電動機が装着されており、後輪(小径車輪)は駆動されない方式で、曲線通過性を高めるために非常に複雑なリンク機構を有している(図13参照)。
ところで、
1) 従来の一般的な路面電車では、急曲線通過時は左右車輪回転半径差による自己操舵はあまり期待できず、フランジ等によりガイドされながら、かつ車輪踏面とレールとの間である程度滑りながら通過している。
2) 鉄道車両の脱線の形態としては複数の要因が重なって発生するが、主に a)乗り上がり脱線、b)すべり上がり脱線、c)飛び上がり脱線の3種類の形態に分類され、この中で最も起こる可能性が高い脱線はa)の乗り上がり脱線である。
3) 乗り上がり脱線は、アタックアングルがプラスの状態で、車輪・レール間に横方向の力(横圧)が発生し、車輪がレールを乗り上がるために起こる脱線である。
4) 1)に記したような急曲線通過であると、過大な横圧がフランジに作用するので、車輪のフランジがレールと相対運動、すなわち滑り出してしまうために車輪が浮いてしまい、乗り上がり脱線を起こす可能性が高くなる。乗り上がり脱線に関する評価指標はNadalの考え方が使われ、すなわち横圧をQ、輪重をPとすると、脱線係数はQ/Pで定義され、通常は0.8 より低い値になるように計画するが、輪重抜けが発生すると脱線係数が大きくなるので、曲線通過速度が制限される。
5) 輪重抜けは、車両の重心高さにも影響を受けるが、重心高さの影響を無視した場合、このような現象が起こるのは軸ばねのばね定数が高く(ばねが硬く)、台車各軸のロール方向の剛性が無限大に近い状態であり、不静定支持が起こりやすいために、各車輪の踏面が一平面上に存在しない状態になるからである。したがって、台車の各車輪が平面上で踏ん張っているような状態であるため、横圧が増大し輪重抜けへと至る。
6) 鉄道車両の安全性が特に問題視されている現状では、この輪重抜けが起こらないように対策する必要がある。実際に走行している鉄道車両の輪重および横圧を測定するのは非常に難しく、実際に車輪とレールがどのように接触して走行しているかを予測するのはかなり困難であり、計画段階ではシミュレーションによって挙動を把握している。
7) 上記のような現状から、あらかじめ輪重抜けが発生しないような構造を採る台車の開発が必要になってくる。
特開2002−264809号公報 特開2001-301614号公報 特開2004−276730号公報 特開2003-226234号公報 特開2001-1897号公報 欧州特許EP0348378号公報
上記した従来の一般的な低床車両では、次のような課題がある。
1)急曲線通過時には、軌道の外軌側車輪と内軌側車輪の回転半径は軌間分の差が生じるため、左右の車輪で回転半径が異なる必要がある。このため、この差を左右の車輪の踏面勾配による半径差で吸収できない場合、外軌側の車輪には後ろ向きのクリープ力または摩擦力が作用することになり進行したい方向とは逆向きの方向に進もうとする(逆ステアリング)。
2)この時に、外軌側の車輪のフランジ部には大きな横圧が作用し、この横圧の分力(車輪・レール間の摩擦力の垂直方向分力)が輪重よりも大きくなると車輪がレールから浮き上がろうとする、これと同時に浮き上る車輪に隣接する車輪の輪重が軽くなる傾向が見られる。これは、台車の軸ばねによるローリング剛性が大きい場合に起こる現象である。
3)このようなことから、輪重の小さい誘導輪側の輪重抜けを解消するために誘導輪側のローリング剛性を何らかの方法で下げて、ある程度自由度を持たせる構造としなければならない。
本発明は上述の課題を解決するためになされたもので、誘導輪を備えた一軸ボギー台車からなり、曲線通過性および直線走行安定性にも優れ、輪重抜けを防止できる低床式鉄道車両用台車を提供しようとするものである。
上記の課題を解決するために本発明の低床式鉄道車両用台車は、車両の最前端部下または最後端部下に配置される大径車輪を主車輪とし、前記車両の中央寄りに配置される小径車輪の誘導輪を備え、台車枠を車体に対し水平旋回可能に取り付けた誘導輪付き一軸ボギー台車からなる低床式鉄道車両用台車であって、前記大径車輪および前記誘導輪は、ともに左右の車輪を車軸に対して一体回転可能に固定した串軸とし、前記台車枠を、大径車輪を回転可能に備えた主車輪台車枠部と前記誘導輪を回転可能に備えた誘導輪台車枠部とに分割するとともに、各台車枠部をそれぞれ平面視略コの字形に形成し、前記主車輪台車枠部に対し前記誘導輪台車枠部をロール方向に回転可能に連結したことを特徴とする。
上記の構成を有する本発明の低床式鉄道車両用台車によれば、車両の最前端部下または最後端部下に大径車輪を配置し、その中央寄りに小径車輪の誘導輪を配置したことから、例えば車両の最前端部および最後端部を運転台とし、それより中央寄りを客室とした車両構成により、客室において100%低床の車両が実現する。また、主車輪および誘導輪の両輪とも両側の車輪を車軸に対して固着した串軸を使用したから、主車輪および誘導輪の背面間距離が正確に規定され、小曲線や分岐部通過時には車輪の背面をガードレールに沿って接触させ案内させることができる。さらに、誘導輪がロール方向に自由度を持つので、輪重に応じた回転が可能なため、過大な輪重を避けることができ、また、輪重抜けにも対応できる。輪重抜け対策について詳しく説明すると、誘導輪台車枠部は主車輪台車枠部に対し回転軸を中心にしてロール方向に回転することができ、自由度が得られる。これにより、片方の誘導輪の輪重が小さくなると、回転軸を中心にして力のモーメントが等しくなるように誘導輪一体車軸枠が回転する(他方の車輪の輪重が大きくなるため)。このとき、輪重の小さい車輪はレールに押し付けられるので、輪重抜けが防止される。また、横圧の回転軸に対するモーメントをある程度抑える構造とすれば、輪重の自動平衡装置の役目をする。これにより、誘導輪の片減りが防止できる。ただし、誘導輪のロール方向の回転を完全に自由にすることも可能であるが、前記脱線係数の式からも理解できるように一定の範囲内で回転できるようにストッパ等で回転の範囲を制限することもできる。
請求項2に記載のように、前記誘導輪を回転可能に支持する副車軸枠の前端部を、前記誘導輪台車枠部間を連結する横はりを一体に備えた誘導輪台車枠部本体の後端部に対しピッチ(前後で傾斜)方向に揺動自在に連接するとともに、前記誘導輪を下向きに付勢する軸ばねを、前記誘導輪台車枠部本体と前記副車軸枠との間に介設することができる。
このように構成することにより、副車軸枠自身はロール方向だけでなく、ピッチ方向にも自由度を持つように支持され、かつ軸ばねで下向きに付勢されるから、誘導輪の輪重抜けが防止され、脱線係数=横圧/輪重を下げることができる。また、軸ばねのばね定数を非線形に(いいかえれば、縮み側には硬く、伸び側には柔らかく)することによって動的に見たピッチ方向の剛性も任意に設定可能である。さらに、脱線係数をを下げるために横圧が作用する車輪には、ある程度輪重を上げることが望ましいので、前記2組の台車枠の間にローリング剛性を持たせた結合、即ち、相互の台車枠間にスタビライザー(アンチローリング装置)等を設けて一定の割合でローリングモーメントを負担させることも可能である。
請求項3に記載のように、前記誘導輪台車枠部を一体的構成部品とし、前記主車輪台車枠部の車幅方向の中間位置に、支軸にて前記中間位置を通る軸線を中心にロール方向に回転可能に支持し、前記支軸にボルト兼用の機能を持たせ、前記誘導輪台車枠部を前記主車輪台車枠部にナットを介して着脱可能に締結できるようにしてもよい。
このように構成することにより、誘導輪台車枠部は軸受等を介して主車輪台車枠部に取り付けられ、誘導輪は左右それぞれに設けられた副車軸枠に配置され、この副車軸枠が誘導輪台車枠部本体に支持され、誘導輪十副車軸枠十誘導輪台車枠部本体の一体的構成からなるから、誘導輪を支軸を中心にロール方向に回転可能に支持する構造が複雑な機構および制御方法を用いなくても、簡単な構造でしかも安価に製作できる。
請求項4に記載のように、前記軸ばねのばね荷重を可変にし、前記主車軸枠に対する前記副車軸枠の上下方向の揺動範囲が大きくなるのに伴ってばね荷重が増大するようにすることができる。
このように構成することにより、誘導輪のフランジ部がレールに当たったときに誘導輪を副車軸枠とともに上方にスムーズに逃がす一方、誘導輪が車体床面に接近するのにしたがって軸ばねのばね定数を非線形(縮み側には硬く、伸び側には柔らかく)にすることによって、車体床面との衝突が防止される。また、ピッチングだけでなく誘導輪のローリング剛性についても可変にでき、左右の誘導輪の一方が輪重抜けして脱線するのも防止される。
請求項5に記載のように、軌道分岐部での車両の異線進入防止を分岐器のガードレールで防止するとともに、左右軌条の外軌側溝(フランジウエイ)の底面上を誘導輪のフランジ頭頂部で走行するように構成することができる。
このように構成することにより、分岐器のガードレールで異線進入の防止を図れるほか、クロッシング交差点付近の左右軌条で構成する溝の底を誘導輪においても車輪のフランジ頭頂部(フランジトップ)で走行することによって、左右車輪の半径差によって異線進入とは逆向きの操舵トルクが発生し、異線進入を防止する方向に台車を操向させて異線進入を防止する(なお、左右独立回転車輪を用いた場合にはフランジ頭頂部(フランジトップ)で走行することによる左右車輪の半径差は有効に作用しない)。
請求項6に記載のように、車両の異線進入防止において前記誘導輪の無誘導距離が最小限に抑制されるように、フランジ部の背面を同フランジ部分で2つ以上の曲線の組み合わせた形状とするか、あるいは曲線と直線を組み合わせた形状とすることができる。
このように構成することにより、異線進入防止、すなわち車輪の無誘導距離を減らすためには車輪の背面形状が影響を与えるので、誘導輪の車輪のフランジ部の背面はフランジを構成する部分で2つ以上の曲線、あるいは曲線と直線を組み合わせた形状としたことにより、誘導輪の無誘導距離を最小限に抑えることができる。そして、最悪な条件で検討した結果においても、誘導輪の無誘導距離は3番分岐で−19mmと問題のない値に設計できるとともに、小径車輪からなる誘導輪の車輪踏面とレールとの接触面圧は主車輪との垂直荷重の負担割合で誘導輪の負担荷重を下げられ(例えば、主車輪の1/2)るので、車輪の摩耗限度においても最大で120kgf/mm2以下に抑えることができ、車輪踏面のきずの発生を防げる。
本発明に係る低床式鉄道車両用台車は上記のように構成したから、下記のような優れた効果を奏する。すなわち、車両の最前端部下または最後端部下に大径車輪を配置し、その中央寄りに小径車輪の誘導輪を配置したので、例えば車両の最前端部および最後端部の運転台より中央寄りを客室とした車両構成により、客室において100%低床車両が実現する。しかも、従来の運転台下に2軸台車を配置した低床型車両(例えば特許文献1・2参照)に比べて運転台と客室前端間の距離を短くでき、運転士が乗降客からのチケットや料金の徴収などの取り扱いが便利になり、乗降客とのコミュニケーションを密接に図れる。また、主車輪および誘導輪の背面間距離が正確に規定され、小曲線や分岐部通過時には車輪の背面をガードレールに沿って接触させながら案内させられる。さらに誘導輪がロール方向に自由度を持つので、輪重に応じた回転が可能なため、過大な輪重を避けることができ、また、輪重抜けにも対応できる。
以下、本発明の低床式鉄道車両用台車について実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の低床式路面電車用台車の実施例を示す平面図、図2は同側面図である。図3(a)は左半分が図2のA方向矢視図で、右半分が図2のB方向矢視図であり、図3(b)は誘導輪(副輪軸)がロール方向に揺動する状態を示す背面図である。
図1および図2に示すように、本例の台車1は、低床式路面電車(車体)20の最前端部下および最後端部下に左右一対の枕ばね2を介して取り付けられる枕はり3を備えた、誘導輪付きの一軸ボギー台車からなり、枕はり3の幅方向の中央位置に心ざら4を中心に水平旋回可能に支持された台車枠5を備えている。この台車枠5は、車軸6bの両側に大径車輪6aを一体回転可能に備えた主輪軸6が主車軸枠7a間に跨って回転可能に取り付けられる主車輪台車枠部7と、車軸8bの両側に小径車輪からなる誘導輪8aを一体回転可能に備えた副輪軸8が副車軸枠9a間に跨って回転可能に取り付けられる誘導輪台枠部9とに分割されている。
各台車枠部7・9はそれぞれ平面視略コの字形で、両側の主車軸枠7a間を連結する主車輪台車枠部7の後部側の横はり7bと、誘導輪台枠部9の本体9’両側の間を連結する前部側の横はり9bとを備えている。そして、主車輪台車枠部7の後端で車幅方向に中間位置に軸受け11が一体に固設され、副車軸枠部9における本体9’の車幅方向の中間位置に貫通孔9dを前後方向に設け、軸受け11の内輪部に支軸12を圧入して後方に突出させる。この支軸12に誘導輪枠部9の本体の貫通孔9dを挿通して支軸12の一部を後方へ突出させ、支軸12の後部(突出部)に形成した雄ねじ部にナット12aを螺合して締め付けることにより、副車軸枠部9が主車輪台車枠部7に対しロール方向に回転可能に連結される。
誘導輪台枠部9の本体9’両側の後端二股部間に、副車軸枠9aの前端部がそれぞれピッチ方向(前後方向の傾斜)に揺動自在に水平ピン13で連結されている。両側の副車軸枠9aの後部間に副輪軸8が回転可能に支持され、左右の水平ピン13を中心に誘導輪8aが副車軸枠9aとともにピッチ方向に揺動する。本体9’両側の後部下端において、水平ピン13よりやや前方からブラケット(スプリング受け)14が側方に一体に張り出して設けられ、副車軸枠9aの長手方向に中間位置より側方に張り出した二股部9cの前端部とブラケット14との間に、コイルスプリング(軸ばね)15が縮装状態で介設され、誘導輪8aが下向きに付勢されている。
したがって、左右の誘導輪8aは主車輪台車枠部7に対し、支軸12を中心にロール方向に回転するとともに、水平ピン13を中心に副車軸枠9aを介してピッチ方向に揺動する。また誘導輪8aは軸ばね15により下方へ付勢されているので、軌道(レール)に対し一定の荷重で押し付けられる。これにより、誘導輪8aが軌道上から浮き上がるなどの輪重抜けが防止され、同時に誘導輪8a(もしくは副車軸枠9a)と車両(車体)20の下面との接触が回避される。
主車輪台枠部7の横はり7b上の両側に、図1・図3に示すように左右の各大径車輪6aに対向する踏面ブレーキ16が設けられている。また、車軸6bの左側に減速歯車装置17が一体に組み込まれ、横はり5bの中央部付近に取り付けられた駆動装置18と減速歯車装置17とが接続され、両側の大径車輪6aが駆動輪として機能する。
図2・図3に示すように、枕はり3の下面両側にブラケット21aがそれぞれ下向きに突設され、各ブラケット21aの下端部と車体20の鉛直面20aに固定したブラケット21bとの間にボルスタアンカ21が連結されている。これにより、ボギー台車1の大径車輪6aが駆動装置18で駆動されることによる動力で、車体20がボルスタアンカ21を介して牽引される。なお、台車枠5の先端にガードプレート22の上端が下向けに固定されている。
図示をしていないが、主車輪台車枠部7と誘導輪台車枠部9との間に、スタビライザ(アンチローリング装置)等を設けて相互の台車枠間にローリング剛性を付加、又は一定の範囲内でローリングの相対回転できるようにストッパを設けて回転の範囲を制限することもできる。
上記のようにして、本発明の実施例に係る誘導輪付き一軸台車が構成される。
図4・図5は上記実施例の誘導輪付き一軸台車1を備えた低床式路面電車の実施例を示すもので、これらの図面に示すように、本例の低床式路面電車20は前後端部に運転台Dが配置され、運転台Dより中央寄りが100%低床の客室Pに構成されている。路面電車20の運転台Dの床面20bが客室Pの低床面20aに比べてやや高く上がっており、各運転台Dの床面20b下に誘導輪付き1軸台車1の枕はり3を枕ばね2を介して取り付け、大径車輪6aを運転台D下に配置する。車体20の運転台Dと客室Pとの段差部における鉛直壁20’に左右一対のボルスタアンカ21を連結する。この配置により、誘導輪8aは車体20の中央寄りで客室Pの低床面20a下に配置される。なお、車両20の客室Pは座席20cが車幅方向に向かい合って配置され、座席20c下の床面および通路20dの床面がともに低床面になっている。また、路面電車20の座席20cに隣接して出入り口20eが設けられているが、出入り口20eの床面も通路20dと同じ低床面になっている。つまり、路面電車20は運転台Dを除き100%低床車両である。図5中の符号23はパンタグラフである。
本例では単車両(一両編成)に適用した場合について説明したが、複数編成車両の最前端部と最後端部に上記実施例の誘導輪付き一軸台車1を設けて、100%低床の車両を実現することもできる。
次に、誘導輪8aの形状について説明する。ここで、図6は誘導輪の実施例を示す外観形状で、誘導輪8aの背面は車輪径dからなる直線部+直線部又は直線に近い曲線部R2+小径曲線部R1からなる。dは車輪径、sはフランジ高さでフランジトップ半径−車輪半径、k1はフランジトップと(曲線部R2と曲線部R1の接点p)間の距離、k2は誘導輪8aのフランジトップと(直線部と曲線部の接点q)間の距離、vは誘導輪8aのフランジ接点q間のフランジ径、uは誘導輪8aの背面接点p間のフランジ背面径で、u+2k1=v+2k2である。
図7はシーザスクロッシング(軌道分岐部)の平面図と同一部拡大図、図8は上段が図7のクロッシング部を拡大して表した平面図、以下は左方から右方へ走行するとして説明すると、中段(D−D線矢視図)は誘導輪のフランジトップ(破線で表した円はフランジトップの外径を示す)とフランジウエイ(図中 FW)底面の高さ関係を示す軌条(走行レール:図中 Ra)断面図、A−A線断面図、B−B線断面図、およびC−C線断面図である(図中 GRはガードレール)。
さらに、図8に示す軌道分岐部においてB−B線断面図のように、フランジウエイの溝底を浅くし、片側(外軌側)の誘導輪8aがフランジトップで走行し、反対側(内軌側)のレール上を踏面で走行することによって左右の誘導輪8aに有効半径差が生じ、この有効半径差により異線進入とは逆向きの操舵トルクが発生するように、軌道設備面からも配慮している。なお、図8中の45kgHT軌条は一例を示すものである。
図9は誘導輪8aの背面視説明図と正面視説明図である。図10は上段が走行方向左側誘導輪と走行レールおよびノーズとの高さ関係を示す側面視説明図、中段が軌道分岐部を拡大した平面図と誘導輪を、下段が走行方向右側誘導輪と走行レールおよびノーズとの高さ関係を示す側面視説明図である。
図10の中段に示すように、左側誘導輪8aがガードレールから離れて右側誘導輪8aがノーズに接触するまでの距離xが無誘導長である(図10の車輪中心点O1〜O2間が無誘導長)。ここで上記距離aおよび上記距離bは、図10に示す関係寸法に基づいて求められる。
無誘導長xに関する算出式は下記の通りである。
a=√[(u/2)2-(u/2-h+s+k1)2]
b=√(v/2)2-(v/2-s+y+k2)2
u=d+2s-2k1 v=d+2s-2k2
n=1/2×cot(α/2)
c=(L-w)tan(α/2) ・l1+・l2=w/sinα+zn
無誘導長x=(・1+・2)-(a+b+c)になる。
ここで、
n:分岐路の番数
L:軌間(走行レール間の距離)
w:フランジウエイ幅
d:車輪直径
S:フランジ高さ
z:クロッシング先端頭部(ノーズ)幅
y:クロッシング先端落ち込み量
h:ガードレールの高さ
k1、k2:車輪形状によって決まる数値
そして、本例の誘導輪8a(車輪径250mm)においては、3番分岐で無誘導長が−19mmとなり、安全に走行することが確認された。
本発明の低床車両用誘導輪付き一軸ボギー台車の実施例を示す平面図である。 同側面図である。 (a)は左半分が図2のA方向矢視図で、右半分が図2のB方向矢視図であり、(b)は誘導輪(副輪軸)がロール方向に揺動する状態を示す背面図である。 本発明の実施例に係る誘導輪付き一軸台車を備えた低床式路面電車の一例を示す平面図である。 (a)は図4のA−A線断面図、(b)は図(a)のB−B線断面図である。 誘導輪の外観形状の一例を示す側面図、上段は車輪寸法、中段はk1の算出方法、下段はk2の算出方法を表している。 (a)がシーザスクロッシング(軌道分岐部)の平面図で、(b)が(a)の一部拡大図である。 上段が軌道の分岐部を示す平面図、中段が同平面図のD−D線矢視図、下段が左から順番に同平面図の軌条断面図、A−A線断面図,B−B線断面図およびC−C線断面図である。 (a)は誘導輪の背面視説明図で、(b)は正面視説明図である。 中段が軌道分岐部を拡大した平面図と誘導輪を示し、上段が走行方向左側誘導輪と走行レールおよびノーズとの高さ関係を示す側面視説明図、下段が走行方向右側誘導輪と走行レールおよびノーズとの高さ関係を示す側面視説明図である。 従来の路面電車と台車構造、超低床LRTと台車構造および狭軌超低床LRTと台車構造を示す参考図である。 100%低床車両用動力台車の形態と適用例を示す参考図である。 大径車輪と小径車輪を用いた台車の例を示す参考図である。
符号の説明
1 誘導輪付き一軸ボギー台車
2 枕ばね
3 枕はり
4 心ざら
5 台車枠
6 主輪軸
6a大径車輪
6b車軸
7 主車輪台車枠部
7a主車軸枠
7b主車輪台車枠部7の横はり
8 副輪軸
8a誘導輪(小径車輪)
8b車軸
9 誘導輪台枠部
9’誘導輪台枠部9の本体
9a副車軸枠
9b誘導輪台枠部9の横はり
9c二股部
9d貫通孔
11 軸受け
12 支軸
12aナット
13 水平ピン
14 ブラケット(スプリング受け)
15 コイルスプリング(軸ばね)
16 踏面ブレーキ
17 減速歯車装置
18 駆動装置
20 低床式路面電車(車体)
20’鉛直面
20a 客室Pの低床面
20b 運転台Dの床面
20c 座席
20d 通路
20e 出入り口
21 ボルスタアンカ
21a・21b ブラケット
22 ガードプレート
23 パンタグラフ
D 運転台
P 100%低床の客室

Claims (6)

  1. 車両の最前端部下または最後端部下に配置される大径車輪を主車輪とし、前記車両の中央寄りに配置される小径車輪の誘導輪を備え、台車枠を車体に対し水平旋回可能に取り付けた誘導輪付き一軸ボギー台車からなる低床式鉄道車両用台車であって、
    前記大径車輪および前記誘導輪は、ともに左右の車輪を車軸に対して一体回転可能に固定した串軸とし、
    前記台車枠を、大径車輪を回転可能に備えた主車輪台車枠部と前記誘導輪を回転可能に備えた誘導輪台車枠部とに分割するとともに、各台車枠部をそれぞれ平面視略コの字形に形成し、
    前記主車輪台車枠部に対し前記誘導輪台車枠部をロール方向に回転可能に連結したことを特徴とする低床式鉄道車両用台車。
  2. 前記誘導輪を回転可能に支持する両側の各副車軸枠の前端部を、前記誘導輪台車枠部間を連結する横はりを一体に備えた誘導輪台車枠部本体の両側後端部に対しピッチ方向に揺動自在に連設するとともに、前記誘導輪を下向きに付勢する軸ばねを、前記誘導輪台車枠部本体と前記副車軸枠との間に介設したことを特徴とする請求項1記載の低床式鉄道車両用台車。
  3. 前記誘導輪台車枠部を一体的構成部品とし、前記主車輪台車枠部の車幅方向の中間位置に、支軸にて前記中間位置を通る軸線を中心にロール方向に回転可能に支持し、前記支軸にボルト兼用の機能を持たせ、前記誘導輪台車枠部を前記主車輪台車枠部にナットを介して着脱可能に締結できるようにしたことを特徴とする請求項1記載の低床式鉄道車両用台車。
  4. 前記軸ばねのばね定数を非線形とし、前記主車軸枠に対する前記副車軸枠の上下方向の揺動範囲が大きくなるのに伴ってばね変位の割合が減少するようにしたことを特徴とする請求項2記載の低床式鉄道車両用台車。
  5. 軌道分岐部での車両の異線進入防止を分岐器のガードレールで防止するとともに、左右軌条の溝の底面上を誘導輪のフランジ頭頂部で走行するように構成したことを特徴とする請求項1記載の低床式鉄道車両用台車。
  6. 車両の異線進入防止において前記誘導輪の無誘導距離が最小限に抑制されるように、フランジ部の背面を同フランジ部分で2つ以上の曲線の組み合わせた形状とするか、あるいは曲線と直線を組み合わせた形状としたことを特徴とする請求項1記載の低床式鉄道車両用台車。
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